タグ別アーカイブ: 文化・教育

「息の合った演奏を」と意欲を高める(左から)山田さん、佐々木さん、菊池さん

21年ぶり、全日本アンサンブルコンテスト東北大会へ〜釜石高フルート三重奏 県大会で優勝、市民吹奏楽団の応援が力に

「息の合った演奏を」と意欲を高める(左から)山田さん、佐々木さん、菊池さん

「息の合った演奏を」と意欲を高める(左から)山田さん、佐々木さん、菊池さん

 

 釜石高(佐藤一也校長)の吹奏楽部員3人で編成するフルート三重奏が、全日本アンサンブルコンテスト第39回県大会(県吹奏楽連盟など主催)の高校の部で金賞に選ばれ、東北大会(2月9日、仙台市)に出場する。同部が東北切符を手にするのは、釜石南高時代の1997年以来、21年ぶり。「息の合った演奏を見せつけたい」と意気込んでいる。

 

 メンバーは、山田奏美さん(2年)、佐々木舞さん(同)、菊池優月さん(1年)の3人。県大会高校の部は20日に奥州市の市文化会館で行われた。32グループが出場。3人は「3本のフルートのための二章」(堀悦子作曲)の2楽章を奏でた。金賞には9グループが選ばれ、東北大会へは上位4グループが出場。顧問の細川正一教諭によると「(非公表の審査結果では)2位の評価だった」という。

 

 3人ともフルートを始めたのは中学からだが、それぞれが全日本中学生・高校生管打楽器ソロコンテスト東北大会出場経験を持つ。小佐野町で音楽教室を主宰する演奏家らの指導も受けているが、佐々木さんが山田町から通学していることもあり、昼休みなど授業の合間を利用して熱心に練習するなど努力も惜しまない。細川教諭は「陰の努力が花咲いたチーム。本番に強い」と評価する。

 

 「全国大会“金”」を目標に掲げていて、山田さんは「演奏曲が華やかではないので、息を合わせ見せる演奏を意識している。とにかく見せつけ、金をとる」と力を込める。佐々木さんは「自分たちのペースを大事にしたい。変に頑張り過ぎないで自然体でいきたい」と控えめながら、攻めの姿勢。菊池さんは「一人の力ではできないことで、支え合いながら目標を目指して頑張りたい」と抱負を語った。

 

 細川教諭によると、昨年12月に行われた県予選の釜石・気仙支部大会に同部から4グループが出場。高校の部は18グループで競われ、上位4位までを同部が独占した。県大会に進めるのは3グループだったが、「初の快挙」と歓喜。部員同士で励まし競い合って向上した結果でもあるが、同校OBらも多く所属する市民吹奏楽団メンバーが指導で応援したことが力になったと感謝する。

 

 同楽団の客員指揮も務める細川教諭は「釜石は音楽のまちでもある。東日本大震災があり、復興が進められているまちが元気になってほしい─そんな気持ちが生徒たちの演奏の力にもなっている」と強調。子どもたちのさらなる羽ばたきが、まちの未来につながると信じている。

 

(復興釜石新聞 2019年1月26日発行 第760号より)

 

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おすすめ本を紹介する発表参加者

読書家“一押し本”で合戦、チャンプ本に「徴産制」〜桑畑書店でビブリオバトル

おすすめ本を紹介する発表参加者

おすすめ本を紹介する発表参加者

 

 釜石市大町の桑畑書店(桑畑眞一社長)が主催する第2回ビブリオバトル(知的書評合戦)は12日、大町復興住宅4号1階の同店で開かれた。昨年10月に初めて開催され、好評を博した企画。読書愛好者の熱い支持を受け、続回が実現した。桑畑社長から声がかかった読書家5人が一押しの本を紹介。全参加者24人が読みたくなった本に一票を投じ、「チャンプ本」が決定した。

 

 紹介者が1人5分の持ち時間で、読んで面白いと思った本の要旨、感想、おすすめポイントなどを発表。2分間の質疑応答で、発表を聞いた参加者からの質問にも答えた。

 

 日本キリスト教団新生釜石教会牧師の柳谷雄介さんは「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(永崎裕麻)、読み聞かせボランティアの本田敬子さんは「ベルリンは晴れているか」(深緑野分)、釜石シーウェイブスRFCゼネラルマネジャー兼監督の桜庭吉彦さんは「嫌われる勇気」(岸見一郎、古賀史健)、甲子中教諭の村田理恵さんは「明星に歌え」(関口尚)、釜石市役所職員の石黒めぐみさんは「徴産制」(田中兆子)を紹介した。

 

 5人は、その本に出会ったきっかけや共感部分、紹介理由などをアピール。実際に読んだ人の生の声に興味をそそられた参加者は、積極的に質問をぶつけ、今回のバトルも大いに盛り上がった。最後に全参加者が一番読みたいと思った一冊に投票。最多票を獲得したのは、石黒さん(41)が紹介した「徴産制」(新潮社)で、“チャンプ本”の称号が与えられた。

 

 「徴産制」は2092年の日本を舞台にした小説。新型インフルエンザのまん延で、10~20代女性の85%が失われ、男性が出産するしか日本人を維持できない危機的状況に陥る。国は18歳から30歳までの全日本人男性に、性転換して出産を奨励する“徴産”制度を施行。最大2年間、女性になる義務を課す。これに従事したさまざまな立場の男性5人の姿が短編で描かれる。

 

 男女共同参画の新書を探していてこの本を手に取ったという石黒さんは「突飛な設定だが今、女性が抱える問題も視点を変えて浮き彫りにする本。男女問わず、読んでほしい」と話した。

 

 甲子町のフリーランスフォトグラファー土橋詩歩さん(28)は「どんな本が出るか当日まで分からないのも楽しみの一つ。要約と自分のエピソードを交えた発表が興味深く、とても面白かった。次回開催が待ち遠しい」と声を弾ませた。

 

 2007年、京都大大学院生によって考案されたビブリオバトルは全国的に広がり、読書の楽しみを倍増させるツールとして親しまれる。

 

 「いろいろな分野の人が面白いと思った本について、直接話を聞けるのは非常にいい機会。読書の幅を広げるきっかけにもなる」と桑畑社長。次回は5月か6月の開催を予定する。

 

(復興釜石新聞 2019年1月19日発行 第758号より)

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巨大壁画デザインに製作意欲を高める児童生徒

スタジアムをアートで彩る、市内小中学校のリーダー〜ラグビーW杯成功へ絆は強く、「ありがとう」の思いを発信

巨大壁画デザインに製作意欲を高める児童生徒

巨大壁画デザインに製作意欲を高める児童生徒

 

 釜石市内の小中学校の児童・生徒会リーダーで構成する「かまいし絆会議」(市教育委員会主催)の本年度2回目の会合が26日、釜石中(川崎一弘校長)で開かれた。2019年ラグビーワールドカップ(W杯)開催にどんな協力ができるか、昨年から子どもたちの視点で話し合いを進め、PRと盛り上げのため壁画と歌、映像の製作を決定。この日の会合では壁画デザインと歌がお披露目され、今後各学校で取り組む作業を確認した。

 

 同会議は昨年8月に発足し、W杯に向け市内の学校共通での取り組みを考えてきた。今年の1回目の会合で試合会場となる鵜住居町のスタジアムにホタテの貝殻を使ったモザイクアートを製作すること、「ありがとう」の気持ちを込めた歌を作ることを決め、モチーフにしたい絵や歌詞にのせたい言葉について意見交換。多くの人が関わることを目的に、各学校からもモチーフや言葉を募集した。

 

 子どもたちの思いを散りばめた壁画は、大漁旗がモチーフ。郷土芸能の虎舞、未来に向けて進んでいくSL銀河、まちを見守る釜石大観音などをデザインし、ありがとうの文字と「キズナ」との隠れ文字も入れる。

 

 大きさは縦約2・5メートル、横12メートル。赤や白、青、黄など12色で色付けしたホタテの貝殻約5千枚を使う予定。

 

 歌のタイトルは「ありがとうの手紙 ♯Thank You From KAMAISHI」。1番の歌詞は世界中から支援してくれた人たち、2番は友人、3番は家族、そしてみんなに伝えたい思いを集約した。

 

 この日は、市内14校のリーダー約30人が参加した。色付け作業と歌の練習を行い、3学期に各学校で取り組みを進める手順を確認。佐々木心響(しおん)さん(釜石東中2年)は「色付け作業は楽しい。歌は少し難しいが、釜石の小中学生みんなで取り組むことができるいい機会なので、楽しみながら進めたい」と話した。

 

 壁画専門部会リーダーの佐々木翔大君(釜石中2年)は「地元で開催されるW杯を楽しみにしている。ホタテを使ったアートは正直驚いたが、仕上がりを想像するとわくわくする。感謝の思いを込めた作品をみんなで作り上げ、見た人に子どもたちの頑張りや未来に進んでいることを感じてもらえたら」と意気込んだ。

 

 同会議は、W杯釜石開催実行委員会が募集する独自ボランティア「いわて・かまいしラグビー応援団」にも応募。この日は同実行委副会長の山崎秀樹副市長が受付書を持参し、「みんなの取り組みは心強い。大きな力になる。世界中から訪れる方を感謝の気持ち、温かいおもてなしの心を持って迎え、一緒にW杯の成功に向け頑張ろう」と激励した。

 

 実行委によると、応援団には20日時点で、県内外の59グループから応募がある。

 

(復興釜石新聞 2018年12月29日発行 第753号より)

 

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研究成果を発表する釜石高高橋ゼミ

釜石高SSHゼミ、「地歴甲子園」で全国1位〜南部藩虎舞の起源探る、市民を前に研究発表会

研究成果を発表する釜石高高橋ゼミ

研究成果を発表する釜石高高橋ゼミ

 

 第12回全国高校生歴史フォーラム(奈良大学、奈良県主催)で、南部藩の虎舞の起源を探った釜石高の研究グループ「SSH地歴公民(高橋ゼミ)」が「知事賞」を受賞。“地歴甲子園”とも呼ばれる大舞台で、「学長賞」と並ぶ全国1位の栄冠に輝いた。22日、受賞した生徒4人が釜石市大町の情報交流センター1階ラウンジで研究発表会を開き、1年半にわたる探究活動の成果を地元住民らに披露した。

 

 文科省から「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定を受ける釜石高は、全校生徒と教職員で探究(ゼミ)活動に取り組み、全教科のうち生徒が興味を持つ分野で、グループごとに自ら設定したテーマを研究する。

 

 今回受賞したメンバーは、いずれも3年の菊池知里さん(遠野東中出身)、多田栞さん(同)、鈴木笙子さん(大平中出身)、佐々木滉士君(釜石中同)。郷土芸能に着目し、「日本には虎がいないのに、なぜ釜石に虎舞があるのか」という素朴な疑問から研究をスタート。数少ない資料や文献を手掛かりに登場人物について調べ、舞が奉納される尾崎神社の宮司や虎舞分布を研究する盛岡大教授から聞き取りも行った。

 

 南部藩の虎舞の由来としては▽鎌倉幕府の命で伊豆から三陸に来た閉伊頼基が、士気を鼓舞するために虎の着ぐるみを着せて踊らせた▽三陸の豪商・前川善兵衛が江戸で近松門左衛門の「国性爺合戦」を見た際、和藤内の虎退治の場面に感動し、故郷に持ち帰った―という口伝が釜石、大槌に残る。

 

 生徒らは調査過程で浮かんだ疑問も探究。虎頭の形状、生態を詳しく表現した踊りから「生きている虎を実際に見たのでは?」と考え、調べた結果、27代南部藩主・南部利直が、カンボジア使節団から徳川家康に献上された虎を拝領し、盛岡城の一角で飼育していたことが分かった。利直は1611年に三陸を襲った〝慶長の大津波〟を受け、沿岸部を視察。後に港や帆船2隻を造り、1隻に「虎丸」と名付けている。航海安全、大漁を祈願する虎舞には、虎と海を結びつけた利直の存在も背景にあった可能性を示した。虎舞がある伊豆地方と三陸との関わりについても考察した。

 

 2011年の東日本大震災以降、沿岸住民らは虎舞で地域の絆を強くし、まちの再生を誓ってきた。「400年前の大津波で、利直が虎の力を借り復興を誓ったのと同じ。虎舞から東日本大震災につながるとは思わなかった」と発表を締めくくった。

 

 これら研究内容は8千字の論文に仕上げ、同フォーラムに応募。釜石高は全国45校73編の応募の中からベスト5となる「優秀賞」に選ばれた。さらに先月、奈良大で行われた受賞5校による発表会では、練習した虎舞の実演も交え、地域の歴史・文化を発信。見事、奈良県知事賞を獲得した。

 

 佐々木君は「正直驚いたが、みんなでやってきたことが評価され、うれしい。研究が行き詰まった時も協力して乗り越えることができた」、弟が平田虎舞に所属する鈴木さんは「歴史が好き。身近な虎舞について調べ、成果を得られたのは大きな経験。虎舞は釜石の象徴であることを改めて感じた」、遠野出身の多田さんは「虎舞は、震災で苦しい体験をした釜石の人たちを勇気づけ、元気にしたと思う。郷土芸能の力を感じる」、菊池さんは「史実と合わない部分も多く、事実だけを突き詰め、論文にまとめる作業は大変だったが、疑問から調べる経験は今後の糧になる」とし、社会科教諭になる夢を膨らませた。

 

 4人を指導した高橋利幸教諭は「生徒オリジナルの視点で、仮説を導き出した切り口が評価されたと考える。限られた時間の中で、本当によく頑張った」と、生徒らの取り組み姿勢をたたえた。

 

 同ゼミの研究成果は、来年2月に市民ホールで行われる虎舞フェスティバル、SS理数探究発表会でも報告される予定。

 

(復興釜石新聞 2018年12月26日発行 第752号より)

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【インタビュー】岩手県立釜石高等学校 第12回全国高校生歴史フォーラム優秀賞・知事賞受賞

【インタビュー】岩手県立釜石高等学校 第12回全国高校生歴史フォーラム優秀賞・知事賞受賞

【インタビュー】岩手県立釜石高等学校 第12回全国高校生歴史フォーラム優秀賞・知事賞受賞

 

【SS探究】SSH地歴公民(髙橋ゼミ)
「南部藩の虎舞の起源を探る~虎舞はどこで生まれ、どのように広まっていったのか~」
菊池知里さん、鈴木笙子さん、佐々木滉士君、多田栞さん

 

岩手県立釜石高等学校は平成24年度から平成28年度まで文部科学省スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に初指定、さらに平成29年度から平成33年度まで第2期として再指定され、「ゼミ活動」(探究活動)を行っています。

 

そのゼミ活動の一つ、地歴公民(髙橋ゼミ) 「南部藩の虎舞の起源を探る~虎舞はどこで生まれ、どのように広まっていったのか~」が、全国高校生歴史フォーラムで45校73編の中から優秀校5校に選ばれ、さらに奈良大学で行われた優秀校による研究発表を行った結果、歴史分野では実質1位となる「知事賞」を受賞しました。

 

受賞した髙橋ゼミの菊池知里さん、鈴木笙子さん、佐々木滉士君、多田栞さん(全員3年生)に聞いてきました。

 

ーーまずは受賞おめでとうございます!今の率直な気持ちを聞かせてください。

 

多田さん:とても頑張って来たので嬉しかったです。
佐々木君:正直驚いたんですけど嬉しかったです。
菊池さん:まさか受賞するとは思っていなかったので、受賞を知った時は嬉しいというよりは信じられない!という気持ちの方が強かったです。あとからじわじわと実感しました。
鈴木さん:優秀校の5校に選ばれただけでもすごい事だったので、まずはその事に「えー私たちが!」とびっくりしました。発表の当日、私は行けなかったんですけど、他の3人が素晴らしい発表をしてくれて賞を頂けて嬉しかったです。

 

【インタビュー】岩手県立釜石高等学校 第12回全国高校生歴史フォーラム優秀賞・知事賞受賞

 

ーーこのテーマを選んだ理由は?

 

「虎が居ないのにどうして釜石には虎舞があるのか?どうして虎舞なのか?」という素朴な疑問から始まりました。

 

ーー実際の研究、調査はどのように?

 

1年生の時は基礎を学び、2年生から歴史について探求活動をし、1年半取り組んできました。

 

まず、由来について文献や資料で調べて、そこに登場してくる人物について深く調べて行きました。
さらに郷土資料館に行って調べたり、由来に尾崎神社が出てきたので、尾崎神社の宮司さんにお話を聞きに行ったり、虎舞分布について研究していらっしゃる盛岡大学の大石先生に学校に来ていただき直接教えて頂きました。

 

虎舞には諸説あって、それぞれ調べて行くうちに辻褄が合わない事も出て、「じゃぁここからどう進めて行ったらいいのかなぁ」とか悩んだりした時もありましたが、髙橋先生からアドバイスももらいながら、本当かどうかわからない所は除いて、事実だけを拾い上げて繋げて行き、自分たちなりの結論を出しまとめました。

 

【インタビュー】岩手県立釜石高等学校 第12回全国高校生歴史フォーラム優秀賞・知事賞受賞

 

ーーこのゼミ活動で印象的だった事は?

 

菊池さん:尾崎神社の宮司さんに直接お話を聞いて、虎舞に対する地域の方々の想いを知る事が出来たのがとても貴重でしたし、自分が住んでいる地域とはまた違っていて、とても新鮮でした。
鈴木さん:SSH指定校だからこそ出来たこのゼミでの経験を通して成長する事が出来ましたし、こうした活動が出来て嬉しいと感じました。
多田さん:ゼミ活動を2年生の時に始めて、最初は少し面倒くさいなぁって思う事もあったんですけど、この4人で協力しながらやって行くうちにどんどん調べるのが楽しくなって来て、学校外での活動は私たちのゼミくらいだったので、そういう事もたくさん出来てとても楽しかったです。
佐々木君:行き詰る時もあったんですけど、そういう時も皆でおしゃべりする感じで相談しながら、ゼミを通して楽しくやって来られて良かったです。

 

ーー調べ終わって感じた事は?

 

調べていった結果、虎舞の始まりには過去に起きた震災とのつながりがある事を知って、虎舞が復興していく過程でとても重要な役割を果たした部分などは、東日本大震災の時と重なりました。郷土芸能にはやはり人を奮い立たせる何かがあって、被災した地域の人たちを元気づけて来たという事も。
そういう事を知ると地域にとって郷土芸能がとても大切な役割を果たしていると分かり、これからも後世に残して行く必要性を感じました。

 
 
 

釜石の郷土芸能の中でも市内外から人気を得る“虎舞”。高校生の皆さんが1年半かけて調べ上げたその研究、どんな内容なのか気になりませんか?
そこで、今回取材させていただいたご縁をきっかけに、研究発表の場を設けさせていただきました。皆さまお誘い合わせのうえ、ぜひお越しください!

 

第12回全国高校生歴史フォーラム優秀賞・知事賞受賞!! 【岩手県立釜石高等学校【SS探究】SSH地歴公民(髙橋ゼミ)研究発表会】「南部藩の虎舞の起源を探る~虎舞はどこで生まれ、どのように広まっていったのか~」

 

開催日時

2018年12月22日(土) 午前11時から

開催場所

釜石情報交流センター 1階 ラウンジ(釜石市大町1-1-10)
 
お申込み不要、参加料無料
発表の後に、虎舞グッズ(ストラップ・置物)の当たる抽選会を実施します。

 

岩手県立釜石高等高校公式サイト
http://www2.iwate-ed.jp/kas-h/
岩手県立釜石高等学校SHH Facebookページ
https://www.facebook.com/Kamaishissh

縁とらんす

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす

縁とらんす編集部による記事です。

問い合わせ:0193-22-3607 〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内

復興奏でる「かまいしの第九」〜歴史刻む歓喜の合唱、唐丹中も出演

復興奏でる「かまいしの第九」〜歴史刻む歓喜の合唱、唐丹中も出演

アンコールで客席の人たちも「歓喜の歌」に声を合わせた41回目の「かまいしの第九」

アンコールで客席の人たちも「歓喜の歌」に声を合わせた41回目の「かまいしの第九」

 

 師走恒例「かまいしの第九」演奏会(実行委主催)は9日、釜石市民ホールTETTOで開かれ、市内外から参加した約130人の合唱メンバーがホールいっぱいに「歓喜の歌」を響かせた。1978年、旧釜石市民文化会館の落成を記念してスタートしたかまいしの第九。人と人、時代と時代をつなぎながら長く続き、今年でちょうど40年。震災の惨禍を乗り越え、前に進もうとする市民の熱い思いを重ねた第九を高らかに歌い上げた。

 

 最初のステージでは唐丹中(菊地正道校長、生徒35人)の全校生徒が出演し、「勝利の行進」(ベルディ作曲)など2曲を演奏。少人数ながら、オーケストラの音に負けない元気な歌声を披露した。

 

35人で元気な歌声を披露した唐丹中の全校生徒

35人で元気な歌声を披露した唐丹中の全校生徒

 

 続いて、「第九」。山﨑眞行さんの指揮で47人編成のオーケストラが2楽章まで演奏した後、3楽章から4人のソリストが登場。最終楽章の途中から合唱メンバーも立ち上がり、クライマックスとなった。

 

 アンコールの声に応え、最後は客席も一緒になって「歓喜の歌」を響かせた。

 

 唐丹中の前生徒会長で、今回の合唱リーダーを務めた鈴木萌々夏さん(3年)は個人で第九のフルコーラスにも挑戦。「多くの人を勇気づけられる音楽のすごさを感じた」と感激を口にした。震災の津波で家を流され、大槌町に住んでいた祖父は行方不明のまま。そうした悲しみを乗り越え、高校でさらに深く音楽を学び、声楽家を目指すという。

 

 震災後にUR(都市再生機構)から釜石に派遣され土地区画整理事業に携わった戸塚勇孝さん(57)は、気仙沼市に転勤になったのを機に5年ぶりに釜石の第九に復帰。「合唱の仲間に温かく迎えてもらった。懐かしさと、うれしさでいっぱい。釜石は第二のふるさとになった」と感激をかみしめた。

 

 この春、県沿岸広域振興局長として釜石に赴任した石川義晃さん(56)は第九に初挑戦。「地域の人々と同じことができるいい機会。合唱の練習も楽しくできた」と大満足で、「また来年も」と意欲満々。

 

 山形県米沢市の戸屋進さん(54)は、転勤で4年間釜石に赴任したのが縁で、妻由美さん(53)が合唱に参加。10月に米沢に戻ったが、3年目の出演を決めた妻とともに演奏会に駆け付けた。

 

 進さんは今年、日本で最初に「第九」が演奏された徳島県鳴門市を訪問する機会があった。今年は、その初演から100年の節目にあたる。「今年は特別な感動を味わいながら聞かせていただいた」と声を弾ませた。

 

 盛岡市の大瀧陽子さん(45)は夫の父、粂夫さん(75)が初出演。「素晴らしい演奏に感動。客席から歓声も上がり、みんな楽しんでいるのを感じた」と盛り上がりを共有した。

 

 「75歳のチャレンジ。ドイツ語の歌詞は難しかったが、くじけず続けてきたことで(自分に)合格点をあげたい」と粂夫さん。「長年の歴史を持つ第九で、頑張っている人も多い。そんな姿から生きる力をもらった。残された人生に役立てていきたい」と感謝した。

 

(復興釜石新聞 2018年12月12日発行 第748号より)

 

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古里釜石に民謡で恩返し、震災で両親犠牲の佐野よりこさん〜民謡と踊りの祭典、新ホールで華やかに

古里釜石に民謡で恩返し、震災で両親犠牲の佐野よりこさん〜民謡と踊りの祭典、新ホールで華やかに

 

 自分を育ててくれた古里釜石に恩返しがしたい―。釜石市鵜住居町出身の民謡歌手、佐野よりこさん(盛岡市在住)が企画した東日本大震災復興支援チャリティーショー「笑福!民謡(うた)と踊りの祭典」(一般社団法人清流会主催)が2日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。震災の津波で両親を亡くした佐野さん。計り知れない深い悲しみを乗り越え、念願の舞台で大輪の花を咲かせる姿に、会場を埋めた観客から割れんばかりの拍手が送られた。

 

 佐野さんを支える県内の先輩歌手、若手の民謡、舞踊、三味線、尺八の仲間が協力し、2部構成のショーを披露。地元の柳家細川流舞踊(細川艶柳華家元)、桜舞太鼓、おおつち一心会が踊りや演奏で舞台を盛り上げた。漫談やお笑いパフォーマンスもあり、観客は多彩なステージを楽しんだ。

 

 佐野さんは「南部牛追唄」「釜石浜唄」など郷土を代表する民謡を聞かせたほか、師匠の山崎隆男さん(釜石市)と「南部木挽唄」で共演。山崎さんは、3歳から民謡を習い始めた佐野さんの幼いころの様子も明かし、“天才型”と称賛した。

 

 民謡歴45年の佐野さんは、数々の全国大会で日本一を獲得。一昨年には第56回郷土民謡民舞全国大会で最高賞の内閣総理大臣賞を受賞している。歌手のほかラジオDJ、イベント司会者としても活躍する。

 

 最愛の両親を奪った震災はあまりにもつらい出来事だった。ショックで歌えない日々が続いたが、被災した地元住民から「よりこちゃんの歌が聞きたい」と背中を押され、歌唱活動を再開。先輩の漆原栄美子さんが行っていた仮設住宅などを回る活動にも3年前から参加し、昨年は自身で復興支援のための民謡プロジェクトを立ち上げた。

 

 ショーでは、歌が好きだった父祐三さん(震災当時73)の“おはこ”「無法松の一生」も歌い、両親や世話になった人らに感謝の気持ちをささげた。最後は出演者全員で歌声を重ね、感動冷めやらぬ中で閉会した。

 

 花巻市から足を運んだ藤井智子さん(57)は「素晴らしいの一言。よくここまでたどり着いたなと泣けてきちゃって。自分も前向きに頑張らなきゃ」と涙をぬぐった。民謡仲間8人で駆け付けた遠野市の菊池一男さん(80)は「よりちゃんの歌のうまさ、さらには周りで支えている人たちの協力がすごい。お客さんの入りもたいしたもの」とたたえた。

 鵜住居町の尺八奏者古川芳吉さん(71)は、佐野さんが出た民謡大会など各種舞台で伴奏を担当。亡くなった両親とも親しく、互いの家を行き来する間柄だった。佐野さんがステージに立つ姿に「大人になったなぁと思ってね。歌も格段にうまくなった」と成長を実感。両親を失った悲しみを共有し、「これまで本当に大変だったろう…。2人を亡くしたのは非常に悔しい」と言葉を詰まらせた。

 

 古川さんは佐野さんらの復興支援活動に同行することも。「いろいろな所に出向いて顔と名前を知ってもらえた。体だけは気を付け、みんなのために歌ってほしい。釜石、そして鵜住居を忘れずに…」と願った。

 

両親からもらった声を宝物に

 

 「当日を迎えるまでは心配で心配で…」。地元釜石で初めて開く自身企画のショー。佐野さんは市内外から集まった大勢の観客に「感謝の気持ちでいっぱい」と目を潤ませた。

 

 生まれ育った釜石、震災後の支援活動で訪れた沿岸各地で「自分も元気をもらい、皆さんに心を育ててもらった。いつか釜石で恩返しを」と願い、この日を迎えた。支えてくれた人たち、応援してくれた両親への思いを込め、1曲1曲心を込めて歌い上げた。

 

万感の思いを込め歌う佐野さん

万感の思いを込め歌う佐野さん

 

 佐野さんを民謡の世界に導いたのは母マサエさん(震災当時74)。後に民謡を始めた母と二人三脚で精進を重ねた。父祐三さんは献身的に支えた。愛娘の舞台には必ず駆け付けていた両親。「今日も会場のどこかで見守ってくれている感覚がありました」と佐野さん。

 
 「両親からもらった声を一生の宝物とし、思いが伝わるような歌を届けていきたい。それが供養にもなるはず…」。

 

 今公演の収益の一部は釜石市の復興支援に役立ててもらう。釜石観光物産親善大使も務める佐野さんは「まずは住んでいる人たちが元気にならないと。芸能で後押しし、釜石の現状を発信する役目を果たしたい」と未来を見据えた。

 

(復興釜石新聞 2018年12月8日発行 第747号より)

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釜石の鉄鉱石から生まれた鉄瓶が田山さん(右)から野田市長へ

「鉄のまち」復興と発展の願い込め、南部鉄器寄贈〜釜石産餅鉄を原料に製造、いわてたたら研究会

 釜石の鉄鉱石から生まれた鉄瓶が田山さん(右)から野田市長へ

釜石の鉄鉱石から生まれた鉄瓶が田山さん(右)から野田市長へ

 

 「いわてたたら研究会」(田山和康会長、事務局・岩手県工業技術センター)は「鉄の記念日」の1日、釜石産の鉄鉱石、餅鉄(べいてつ)を原料とした南部鉄瓶を釜石市に寄贈した。この日、情報交流センター釜石PITで開かれた鉄の学習会の会場に田山会長(68)が足を運び、野田武則市長に手渡した。田山会長は「鉄のまちの復興と発展を願って造った。多くの人に見て楽しんでいただきたい」と期待した。市は、この鉄瓶を鉄の歴史館に展示、公開する予定だ。

 

 たたら製鉄は日本古来の製鉄方法で、木炭を燃料に砂鉄などが含まれる酸化鉄を還元して鉄を造る技術。手間と時間はかかるが、低温で還元することにより不純物の少ない鉄が得られる。

 

 鉄瓶の材料のけら(鉄)は、同研究会の初代会長中川淳さん(函館市在住)の指導で、市鉄の歴史館のたたら製鉄体験会で造ったもの。橋野町の沢桧川で採取した餅鉄を原料に簡易高炉で造り、3年分のけらを鉄瓶の製造に充てた。

 

 けらは岩手大学鋳造技術研究センターで精錬(鋳塊作製)。再溶解と成分調整は県工業技術センターが引き受け、田山会長に託された。

 

 田山会長は滝沢市に南部鉄器の田山鐵瓶工房を開く。南部鉄器は経済産業大臣指定の伝統的工芸品で、田山さんは南部鉄器伝統工芸士会の会長も務める。

 

 完成した作品は「釜石産餅鉄製 桜紋布団形鉄瓶」と名付けられた。重さ約1・6キロ、有効容量は1・6リットル。胴、蓋(ふた)一面に桜の花が散りばめられた。彩色はなく、光を受けて日本刀と同じように鈍色(にびいろ)の輝きを放つ。

 

 田山会長によると、鋳型の桜紋は花弁の一つ一つを3日間かけて造形、完成まで1カ月を要した。「胴と蓋が触れ、こすれる時に鳴る(金属音の)余韻がすばらしい。自分の作品の中でも1、2位ではないか」と、会心の作をなでた。

 

 たたら製鉄体験会は甲子中、栗林小、新日鉄住金釜石製鉄所などでも繰り返し行われている。田山会長は「けらを造った子どもたちに、ウエートなど小さな物を贈ることもできる」と思いを膨らませる。

 

(復興釜石新聞 2018年12月5日発行 第746号より)

 

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釜石鵜住居復興スタジアムで草取りをする弘前実業高生

弘前実業高校「被災地の力になれたら」〜ラグビー応援団、鵜住居スタジアムで清掃活動

釜石鵜住居復興スタジアムで草取りをする弘前実業高生

釜石鵜住居復興スタジアムで草取りをする弘前実業高生

 

 来年のラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催の準備を後押ししようと、青森県弘前市の弘前実業高(福士広司校長、生徒840人)は22日、会場となる釜石市鵜住居町のスタジアムで草取りなどの清掃活動を行った。

 

 同高農業経営科の3年生約40人が活動。篠崎唯太君は「東北の仲間として少しでも助けになれば。大きな大会がこんな近くで開かれるのは珍しく、力になれたらうれしい。震災被災地の復興への意思を強く感じてもらえる大会になるといい」と作業に取り組んだ。

 

 震災を受け、同高は地元青年会議所と協力して釜石に桜を植えるという被災地支援活動を実施してきた。今回は学校独自の取り組みとして、1泊2日の日程で来釜。前日には世界遺産「橋野鉄鉱山」の見学や根浜海岸周辺の清掃活動などを行った。

 

 こうした活動は、釜石市や県などでつくるW杯釜石開催実行委員会(会長・達増拓也知事、会長代行・野田武則釜石市長)が募集する独自ボランティア「いわて・かまいしラグビー応援団」の取り組みの一つ。同高では、来年以降も続けたい考えだ。

 

 実行委によると、応援団には20日時点で、県内外の37グループから応募があった。町内会、企業、学校などが、のぼり旗の設置によるPRや花いっぱい運動などを展開。スポーツ大会の開催やビデオメッセージの制作などを予定しているグループもある。

 

 募集は来年11月2日まで継続。国内外から来る選手や観客の「おもてなし」、機運醸成、地域美化、環境整備など「自由な発想による幅広い活動」をしてくれるグループを求めている。2人以上のグループなら、年齢や居住地などを問わず参加可能。個人での申し込みには、活動可能なグループの紹介などで対応する。

 

 実行委では「応援団に参加して、みんなで一緒に大会を盛り上げよう」と呼び掛けている。

 

 問い合わせは市ラグビーW杯2019推進本部事務局(電話0193・27・8420)へ。

 

(復興釜石新聞 2018年11月24日発行 第743号より)

 

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民謡で古里に恩返し、津波で両親犠牲の佐野よりこさん〜震災復興支援チャリティーショー、12月2日釜石で

民謡で古里に恩返し、津波で両親犠牲の佐野よりこさん〜震災復興支援チャリティーショー、12月2日釜石で

古里への感謝を込めて民謡ショーを企画する佐野よりこさん

古里への感謝を込めて民謡ショーを企画する佐野よりこさん

 

 釜石市鵜住居町出身の民謡歌手、佐野よりこさん(48)=盛岡市在住=は20日、小佐野町の特別養護老人ホームアミーガはまゆり(久喜真施設長、長期利用90人、短期利用10人、デイサービス利用25人)を慰問し、歌や踊りで高齢者らを癒やした。東日本大震災で両親を亡くした佐野さんは、ショックで声を出せない時期もあったというが、地元の声に背中を押されて活動を再開。「恩返しをしたい」と思いを込めて歌声を届けている。そんな佐野さんが企画する震災復興支援チャリティーショー「笑福! 民謡(うた)と踊りの祭典」(一般社団法人清流会主催)が12月2日、大町の市民ホールTETTOで開かれる。

 

 「一足先に歌っこ届けにきたよ」。慰問では、「南部俵積み唄」「涙そうそう」など民謡、歌謡曲を織り交ぜて披露。三味線の弾き語りでは「釜石浜唄」を、しっとりと聴かせた。

 

 佐野さんは3歳で民謡を習い始めると、めきめきと実力を付け、中学時代には釜石の民謡大会で史上最年少優勝。「南部牛追唄」「外山節」など数々の全国大会で日本一となるなど活躍している。一昨年には第56回郷土民謡民舞全国大会で最高賞の民謡グランプリ大賞に輝き、内閣総理大臣賞を受けている。

 

 震災の津波で実家が流され、父祐三さん(当時73)、母マサエさん(同74)も奪われた。失った衝撃で歌えない日が続いた。そんな中、聞こえてきたのは、地元の被災者の「よりこちゃんの歌が聴きたい」という声。古里の声に押され活動を再開してからは、県内の民謡仲間らと被災地を回る活動にも参加している。

 

 「育て、かわいがってもらった古里に恩返ししたい」と考えていた佐野さん。待望の市民ホールが完成し、「私には民謡しかない。古里の舞台で、歌で思いを伝えたい」と、自分なりの恩返しの場となるショーを企画した。

 

 ショーには佐野さんのほか、民謡の吉田やす子さん、北條真由美さん、舞踊の井上ひとみさん、吉田成美さんら県内の若手メンバーが出演。お笑いパフォーマーの石黒サンペイさんによるステージもある。菊池信夫さん、山崎隆男さん、漆原栄美子さん、細川艶柳華さんが特別出演。「桜舞太鼓」「おおつち一心会」も協力する。

 

 午後0時半開演。全自由席で大人1500円(当日2千円)、高校生以下800円(同1千円)。収益の一部を釜石の復興支援金として寄付する。

 

 慰問で、利用者らは曲が始まると自然と口ずさみ、手拍子を合わせる。佐野さんは「民謡は生活に根ざしたもの。自然と体が反応する」と歌の力を実感。恩返しはもちろん、「地域住民の集いの場となり、世代間交流につながれば。師走のTETTOで笑って楽しんで、笑顔で新しい年を迎えてほしい」と願っている。

 

 問い合わせは佐野よりこ民謡チャリティーショー事務局(電話019・651・8886)へ。

 

(復興釜石新聞 2018年11月24日発行 第743号より)

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入館者100万人目となった深谷さん夫妻(左)

鉄の歴史館100万人達成、東海市の深谷さん〜「鉄のまち」の発信拠点、開館から33年

入館者100万人目となった深谷さん夫妻(左)

入館者100万人目となった深谷さん夫妻(左)

 

 釜石市大平町の市立鉄の歴史館(佐々木育男館長)の入館者が16日、100万人を達成し、記念セレモニーが行われた。1985年7月に開館し、近代製鉄発祥の地・釜石の歴史と価値を発信する拠点として親しまれ、33年で大台に到達した。

 

 100万人目となったのは、釜石の姉妹都市・愛知県東海市の市民ツアーで訪れた深谷鈴子さん(72)。セレモニーでは、夫の守行さん(75)とくす玉を割って節目を祝った。

 

 野田武則市長がオリジナルピンバッジや地酒「浜千鳥」などを贈呈。ツアー参加者約20人にも記念のクリアファイルなどをプレゼントした。
 深谷さんは「突然でびっくり。大切な場に立ち会えて光栄」と感激。釜石を訪れるのは初めてで、「その土地の文化に触れられるのが旅の楽しみ。釜石は鉄つながりで身近に感じられる。いい思い出をもらった」と笑顔を広げた。

 

大台到達を東海市民も喜んだ

大台到達を東海市民も喜んだ

 

 鉄に関わる資料を数多く展示する同館は、1994年に大規模な改修工事を行って再オープンし、近代製鉄発祥150周年に合わせ2007年に1階の展示パネルをリニューアル。世界遺産登録を機に16年には建物自体の改修やシアター映像の内容を新調、17年に2階の展示パネルを新たにした。

 

 来館者は開館翌年の6万8800人余りをピークに、毎年2万人前後で推移。東日本大震災後は1万2千人前後となっていたが、「橋野鉄鉱山」が世界遺産に登録された2015年度は1万8千人余りと伸びた。

 

 今年度は、例年を若干上回るペース。佐々木館長は「鉄のまち釜石を発信する重要拠点。展示物の整理、見直しを図って新しいものを見せ続け、利用者の増加につなげたい」と気持ちを新たにした。

 

 同館では100万人達成を記念し、特製クリアファイルを5千枚作製、入館者に配布している。「鉄の記念日(12月1日)」特別企画として、23日から同館2階会議室で「高任再考」展を開催。未展示の収蔵資料などを紹介し、大島高任の偉業をひも解く。来年1月7日まで。

 

 開館時間は午前9時~午後5時(入館は同4時まで)。入館料は大人500円、高校生300円、小中学生150円。毎週火曜日と年末年始(12月29日―1月3日)は休館。問い合わせは同館(電話0193・24・2211)へ。

 

(復興釜石新聞 2018年11月21日発行 第742号より)

 

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先人の知恵を地域づくりに、釜石で嚶鳴フォーラム〜童門さんと高橋さん 近代製鉄の父・大島高任を語る

先人の知恵を地域づくりに、釜石で嚶鳴フォーラム〜童門冬二さんと高橋克彦さん、近代製鉄の父・大島高任を語る

公開フォーラムの会場で舞台に勢ぞろいした嚶鳴協議会加盟市町の代表ら

公開フォーラムの会場で舞台に勢ぞろいした嚶鳴協議会加盟市町の代表ら

 

 先人の知恵や経験から普遍的な人間の英知を再発見し、地域づくりに生かす「嚶鳴(おうめい)フォーラムin釜石」(釜石市、市教育委員会主催、嚶鳴協議会共催)が16、17の両日、釜石市を会場に開かれた。17日は作家の童門冬二さん(91)、高橋克彦さん(71)を講師に招き、市民ホールTETTOで公開フォーラムを実施。歴史小説で有名な2人が、近代製鉄の父・大島高任の生き方や地域の歴史を知る意義を語り、約250人が聞き入った。

 

 童門さんは、大島高任と明治の先人をテーマに講演。高任が釜石で日本初の洋式高炉連続出銑に成功した出発点として、17歳で上京、原書を読み込み蘭学の知識を習得していったことを挙げた。

 

 水戸藩で反射炉による大砲鋳造に成功後、南部藩に戻った高任は、砂鉄より強固な原料を求め、磁鉄鉱の鉱脈がある釜石で洋式高炉の建設に着手する。「地域資源を利用しながら自分の仕事を組み立てていく。これが高任の原点。従来の考え方や慣習を変えなければできなかったこと」と童門さん。高任の改革を「物・仕組み(制度)・心(意識)の3つの壁への挑戦」と表現し、「鉄生産の恩人だけでなく、むしろ日本近代化への新しい日本人を生むための教育者だった」と評価した。

 

 高任の人格にも言及。「徳あれば隣あり」という論語の言葉を引用し、「高任の生涯には隣人(理解、協力者)が多い。徳がオーラ(気)となって発せられると自然と人が集まり、手助けをしてくれる」とし、「私利私欲なく、自然科学で生活を豊かにしようとした。日本人、南部藩士の立場を捨てず、自分がやるべきことに一生懸命だった」と、高任の“徳”を示した。

 

 25年ぶりの釜石訪問という高橋さんは、母親の里帰り出産により釜石で生まれたことを明かし、東北を舞台にした小説を書くようになったきっかけなどを話した。「物書きになっていなければ、岩手や東北に全く興味を持たなかった」と高橋さん。上京した学生時代は方言がコンプレックスで、東北生まれに誇りを感じられなかったという。契機は作家になって約3年後。取材に訪れた京都の山中で高齢女性から土地の歴史を聞き、「一番大事なのは自分の住む土地に自信、愛着を持つこと」と気付かされた。

 

 後に、自分が生まれ育ったまちをテーマに書いた短編連作「緋い記憶」が直木賞を受賞。以来、長編にも幅を広げ、NHK大河ドラマ(炎立つ、時宗)の原作を執筆するまでになった。高橋さんは「東北の歴史資料はほとんど残されていないが、口伝という形で伝えられてきた隠された歴史がある。それを発掘するのも必要」と使命感をのぞかせた。

 

高橋さん(左)と童門さん

高橋さん(左)と童門さん

 

 この日は2人の対談も。著書は600冊以上、70歳を過ぎてからも120~30冊もの書籍を出している童門さんに、高橋さんが気力の源を尋ねると、「食事に気を使っているが、休肝日は無い。嫌なことは忘れる。人をとがめない。心穏やかに、前向きに」との答えが。童門さんは東京都庁に30年勤務後、作家活動に専念。1999年には「勲三等瑞宝章」を受章している。

 

(復興釜石新聞 2018年11月21日発行 第742号より)

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