古生代に思いはせ、地層観察や化石採集楽しむ〜栗林町で地質観察会、県立博物館主催 県内から19人参加
海中の動物化石が見つかった栗林層の露頭
岩手県立博物館(盛岡市)主催の第80回地質観察会が10月25日、釜石市栗林町の山中で開かれた。同所は古生代(約5億4千万年前~2億5千万年前)の3つの時代「デボン紀・石炭紀・ペルム紀」の地層が狭い範囲で見られる特殊な場所。デボン紀の地層からは国内最古の植物化石が見つかっている。参加者は同館学芸員の案内で、地層観察や化石採集を楽しんだ。
この観察会は、同館開館(1980年)以降、年2回実施。釜石市では過去に釜石鉱山などで4回の開催実績があるが、今回の場所は初めて。県内から親子連れなど19人が参加した。同町砂子畑集落から栗林銭座跡入り口付近まで車で移動。そこから大沢川沿いの林道を徒歩で登り、3つの観察地点に向かった。
最初のポイントは、古生代の中で最も新しいペルム紀(約3億年前~2億5千万年前)の地層となる「栗林層」の露頭。層厚700メートルを超える地層の最下部で、礫岩(れきがん)層が見られる。礫岩は礫(砂利)が集まり固まった岩石。礫と礫の間を砂が埋めており、海中の動物化石が見つかっていることから、海でできた地層であることが分かる。ハンマーで岩石を割ってみると、ネジのような形状が残った「ウミユリ」の化石や腕足動物の化石が見つかった。
栗林層にはペルム紀の一つ前の時代・石炭紀(約3億6千万年前~3億年前)の石灰岩が含まれており、そこからサンゴの化石も見つかっている。観察会でも運良く見ることができた。
石灰岩の中に見られるサンゴの化石
この後、今回の観察地点で最も古い地層となる「千丈ヶ滝層」(層厚800~1千メートル)へ。この地層は下部(大沢川部層)が火山岩や凝灰岩など、上部(砂子畑部層)は泥岩が主で、最上部の泥岩からはデボン紀(約4億2千万年前~3億6千万年前)の植物化石が見つかっている。学術的に貴重なのは、国内最古(デボン紀最後期)の植物化石「リンボク」。うろこのような樹皮を持ち、樹高40メートルにも達した大型シダ植物で、初期の森林植物の一種と考えられている。
古生物の中にはリンボクのように、ある特定の時代だけに生息した種があり、地層に含まれる示準化石を調べることで、その地層ができた年代を推定することができる。
今回は残念ながらリンボクの化石は見つからなかったが、葉脈の一部が残る植物化石を観察できた。他に、石炭紀前期の海の中で堆積した「小川層」も観察し、他層との岩石の違いなどを確認した。
観察会で訪れた各地層の地質図概略
盛岡市の竹内敦海君(9)は両親と初参加。「化石はあんまり出てこないけど、ワクワク感がある。将来は(何かの)博士になりたい」と化石探しに夢中。石に興味があり、今夏は鉄鉱石を探しに釜石鉱山を訪れた。母なぎささん(46)は「大人も勉強になりますね。はるか昔のことも実際、現場に来ると、遠いような近いような不思議な感覚」と太古の世界に想像を膨らませた。
会に同行した地元砂子畑の住民藤原信孝さん(72)は「こんな身近な所に最古の化石が出るような場所があったとは。地域の自慢がまた一つ増えた。ぜひ多くの市民に知ってほしい」と願った。
同館専門学芸員(古生物担当)の望月貴史さん(37)は「複数の時代の地層を一度に見られる場所は珍しい。三陸ジオパークの活動とも連携し、地元の自然に広く目を向ける機会を増やしていってもらえたら」と期待した。
復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)
復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3