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海中の動物化石が見つかった栗林層の露頭

古生代に思いはせ、地層観察や化石採集楽しむ〜栗林町で地質観察会、県立博物館主催 県内から19人参加

海中の動物化石が見つかった栗林層の露頭

海中の動物化石が見つかった栗林層の露頭

 

 岩手県立博物館(盛岡市)主催の第80回地質観察会が10月25日、釜石市栗林町の山中で開かれた。同所は古生代(約5億4千万年前~2億5千万年前)の3つの時代「デボン紀・石炭紀・ペルム紀」の地層が狭い範囲で見られる特殊な場所。デボン紀の地層からは国内最古の植物化石が見つかっている。参加者は同館学芸員の案内で、地層観察や化石採集を楽しんだ。

 

 この観察会は、同館開館(1980年)以降、年2回実施。釜石市では過去に釜石鉱山などで4回の開催実績があるが、今回の場所は初めて。県内から親子連れなど19人が参加した。同町砂子畑集落から栗林銭座跡入り口付近まで車で移動。そこから大沢川沿いの林道を徒歩で登り、3つの観察地点に向かった。

 

 最初のポイントは、古生代の中で最も新しいペルム紀(約3億年前~2億5千万年前)の地層となる「栗林層」の露頭。層厚700メートルを超える地層の最下部で、礫岩(れきがん)層が見られる。礫岩は礫(砂利)が集まり固まった岩石。礫と礫の間を砂が埋めており、海中の動物化石が見つかっていることから、海でできた地層であることが分かる。ハンマーで岩石を割ってみると、ネジのような形状が残った「ウミユリ」の化石や腕足動物の化石が見つかった。

 

 栗林層にはペルム紀の一つ前の時代・石炭紀(約3億6千万年前~3億年前)の石灰岩が含まれており、そこからサンゴの化石も見つかっている。観察会でも運良く見ることができた。

 

石灰岩の中に見られるサンゴの化石

石灰岩の中に見られるサンゴの化石

 

 この後、今回の観察地点で最も古い地層となる「千丈ヶ滝層」(層厚800~1千メートル)へ。この地層は下部(大沢川部層)が火山岩や凝灰岩など、上部(砂子畑部層)は泥岩が主で、最上部の泥岩からはデボン紀(約4億2千万年前~3億6千万年前)の植物化石が見つかっている。学術的に貴重なのは、国内最古(デボン紀最後期)の植物化石「リンボク」。うろこのような樹皮を持ち、樹高40メートルにも達した大型シダ植物で、初期の森林植物の一種と考えられている。

 

 古生物の中にはリンボクのように、ある特定の時代だけに生息した種があり、地層に含まれる示準化石を調べることで、その地層ができた年代を推定することができる。

 

 今回は残念ながらリンボクの化石は見つからなかったが、葉脈の一部が残る植物化石を観察できた。他に、石炭紀前期の海の中で堆積した「小川層」も観察し、他層との岩石の違いなどを確認した。

 

観察会で訪れた各地層の地質図概略

観察会で訪れた各地層の地質図概略

 

 盛岡市の竹内敦海君(9)は両親と初参加。「化石はあんまり出てこないけど、ワクワク感がある。将来は(何かの)博士になりたい」と化石探しに夢中。石に興味があり、今夏は鉄鉱石を探しに釜石鉱山を訪れた。母なぎささん(46)は「大人も勉強になりますね。はるか昔のことも実際、現場に来ると、遠いような近いような不思議な感覚」と太古の世界に想像を膨らませた。

 

 会に同行した地元砂子畑の住民藤原信孝さん(72)は「こんな身近な所に最古の化石が出るような場所があったとは。地域の自慢がまた一つ増えた。ぜひ多くの市民に知ってほしい」と願った。

 

 同館専門学芸員(古生物担当)の望月貴史さん(37)は「複数の時代の地層を一度に見られる場所は珍しい。三陸ジオパークの活動とも連携し、地元の自然に広く目を向ける機会を増やしていってもらえたら」と期待した。

オーストラリアの同世代の生徒とオンライン上で交流した釜石市内の中学生

釜石市「ともだち2020」オーストラリアの中学生と交流〜オンラインで〜ゲーム・アニメ 共通話題で盛り上がる

オーストラリアの同世代の生徒とオンライン上で交流した釜石市内の中学生

オーストラリアの同世代の生徒とオンライン上で交流した釜石市内の中学生

 
 東京五輪・パラリンピックを機に国際交流を進めようと、釜石市と「復興『ありがとう』ホストタウン」相手国のオーストラリアの中学生とのオンライン交流が3日にあった。生徒たちは、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使って生活習慣や好きな言葉などを質問。日本語と英語を交えながら会話を重ね、互いの国に理解を深めた。

 

 この交流は、オーストラリアオリンピック委員会による教育交流プログラム「ともだち2020」試行事業の一環。釜石は同ホストタウン事業として参画し、市内5中学校から2、3年生8人が参加する。

 

 日本語を学ぶ南オーストラリア州にあるパラヒルズ高校の中学3年生に相当する8人を相手に、9月に取り組みを開始。これまで地域や日常生活、両国の比較などをテーマにしたメッセージ動画計13本を送り合った。

 

 3日はプログラムの最終日。ズームを通じ、大町の青葉ビルとパラヒルズ高校を結んだ。生徒らは言語を学ぶ理由や休日の過ごし方などをそれぞれ質問。釜石の中学生が「日本に来てやってみたいことは」と聞くと、「買い物。東京、秋葉原、京都に行きたい。釜石にも」と答えが返ってきた。

 

 ゲームやアニメなど共通の話題を見つけ、画面越しに盛り上がる生徒たち。「いつか直接会いたい」と思いを重ね、手を振って約45分の交流を終えた。

 

 香川美咲さん(唐丹中3年)は「動画のやりとりでは分からなかった人柄や気持ちが伝わってきた。この機会を生かして海外とつながることを考えてみたい」と充実した表情を見せた。

 

 釜石市は2017年11月に同ホストタウン相手国として豪州を登録し、青少年交流などを推進してきた。市国際交流課の中村達也課長は「こうした出会いを大切にし、感じたことを見つめ直し、生活に役立ててほしい。積極的にチャレンジを」と期待。東京五輪開催に合わせ来年4~7月にも交流事業を予定する。

作品展を開いた石井美智子さん、海老原正人さん、黒澤寿子さん(左から)

「土・花・糸」で絆深める、彩り豊かに同級生三人展〜大平中卒の海老原さん、黒澤さん、石井さん

作品展を開いた石井美智子さん、海老原正人さん、黒澤寿子さん(左から)

作品展を開いた石井美智子さん、海老原正人さん、黒澤寿子さん(左から)

 

 釜石市立大平中の1971(昭和46)年度卒業生、海老原正人さん(64)、黒澤(旧姓・大久保)寿子さん(63)、石井(旧姓・水戸)美智子さん(64)による同級生三人展「土・花・糸」が10月31日、11月1日の両日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。海老原さんの陶芸、黒澤さんの生け花、石井さんのレース作品が会場となったギャラリーを華やかに彩り、来場者に心潤うひとときを届けた。

 

 同展開催のきっかけは4年前の還暦祝いの集まりで3人が顔を合わせたこと。その後、釜石在住の石井さんは編み物の研修会で盛岡市に出向いた際、生け花展をやっていた盛岡在住の黒澤さんと偶然にも再会。石井さんから黒澤さん、海老原さん(釜石在住)へアプローチがあり、本企画が実現した。展示会は当初、今年4月に予定していたが、新型コロナの影響で断念。約半年遅れで開催にこぎつけた。

 

 上平田ニュータウンで「孤松窯」を開く海老原さんは皿や茶碗、小鉢、花器など約40点を公開。上薬の調合と窯の微妙な温度調整で雪の結晶のような美しい模様が浮き出た平皿など、プロの技術が光る作品の数々が注目を集めた。三人展という初の試みに「異業種(分野)とのコラボはお客さまからも好評。作品の魅力もアップする」と手応えを実感。

 

 故郷に陶房を構えて34年。市内で陶芸教室の講師も務めており、会場を訪れた生徒らは「先生の作品を見るのは勉強になる」と熱心に鑑賞していた。

 

 草月流生け花に親しむ黒澤さんは約10点を展示。コロナ下で花材集めに苦労しながらも何とか確保し、海老原さんの陶器も利用して豊かな感性を発揮した。驚きは、黒の塗料で炭のような風合いにした流木を組み合わせ、花器にした独創性あふれる作品。「(花材の)赤や黄、緑とのコントラストが素敵」と来場者から感嘆の声が上がった。

 

新鮮な感動を与えた陶芸、生け花、レース作品のコラボ展

新鮮な感動を与えた陶芸、生け花、レース作品のコラボ展

 

 黒澤さんの母は、釜石草月会の会長を長年務めた大久保カツ子さん(93)。震災の津波で松原町の自宅が全壊し、現在は盛岡市内の老人ホームに暮らす。黒澤さんが地元釜石で初めて作品を見てもらう機会を得て「幸せだな」と共に喜んでくれたという。「(海老原さんの)ぐい飲みなども使い、普段できない生け方ができた。会場には母の知り合いも多く来てくださり、釜石弁が耳に心地良い」と黒澤さん。

 

 甲子町で「ニッティングルーム石井」を主宰する石井さんはレース編み作品15点を並べ、技法や用具を紹介するコーナーも設けた。指導歴30年以上。石井さんのもとには県内各地から生徒が集まる。今年はコロナのため1カ月ほど教室休止を余儀なくされたが、「家で夢中になれるもの(編み物)があって良かった」と生徒らは前向きだったという。

 

 「レースというと、かぎ針しか知らない人も多いが、実はさまざまな技法がある」とPR。併せて「釜石出身者、地元在住者の活動、作品を知ってもらう機会になれば」と願った。

 

 会場には2日間で約150人が来場。海老原さんは「同級生のつながりが心強い。機会があれば、またやってみたい」と話した。

第50回釜石市民芸術文化祭

第50回釜石市民芸術文化祭

第50回釜石市民芸術文化祭

 

第50回釜石市民芸術文化祭リーフレット(PDF:1.2MB)

 

日時

令和2年11月13日(金)〜15日(日) 9時〜18時まで(15日は16時まで)

会場

釜石市民ホール TETTO
○展示部門/展示場所:ホールA・ホールB・ギャラリー・会議室(2階)
○発表部門/発表場所:ホールAステージ

プログラム

ホールAステージ
オープニングセレモニー
釜石市芸術文化協会結成50周年記念式典
日時/11月14日(土)13時〜16時
◆功労者表彰
◆記念ミニフェスティバル
・小柳玲子バレエ教室
・子どもエアロビックダンス「キッズDA★DA」
・チンドン寺町一座(大船渡)
・レコード鑑賞&映像鑑賞「懐かしの釜石商店街」
◆特別展示 11月13日(金)〜15日(日)
・釜石市内公民会等文化活動作品各種
・震災復興支援「北九州から“復興応援 書で贈る応援色紙”」
 
ホールA
・琴城流大正琴白百合会(11/13)
・MiA&リアスバンド(11/14)
・釜石芸能連合会(11/15)
 
ホールB◆特別展示
・釜石市内小中学校所有、釜石市所有芸術作品(絵画)
・釜石市芸術文化協会会員作品
・釜石市小中学校新聞コンクール入賞作品
 
共通ロビー
◆体験コーナー:〜手作りを楽しむ暮らし〜
・色鉛筆画/講師:小野寺浩さん(サムディ45会員)
・折紙/講師:笹木ゆり子さん
・エコたわし&お手玉/講師:ハナさん
・ちぎり絵/講師:小林静子さん(しゅんこう和紙ちぎり絵「はまゆり」代表)
・切り絵/講師:菅原信年さん(サムディ45会員)

入場料

無料

主催

釜石市・釜石市芸術文化協会
後援:岩手日報社、釜石新聞社、NHK盛岡放送局、IBC岩手放送、テレビ岩手、三陸ブロードネット株式会社

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 文化スポーツ部 文化振興課 芸術文化係
〒026-0031 岩手県釜石市鈴子町22番1号 シープラザ釜石2階
電話 0193-27-5714 / FAX 0193-31-1170 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2019102800065/
釜石市

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大漁旗に感謝の気持ち乗せ、「釜高祭」でお披露目〜釜石高2年生、動画も撮影「被災地の今」伝える

大漁旗に感謝の気持ち乗せ、「釜高祭」でお披露目〜釜石高2年生、動画も撮影「被災地の今」伝える

自分たちが考える「釜石らしさ」を込めた大漁旗のデザイン画を見つめる釜石高生

自分たちが考える「釜石らしさ」を込めた大漁旗のデザイン画を見つめる釜石高生

 

 東日本大震災から10年。世界中から届いた復興支援への感謝を伝えよう―。釜石高(鈴木広樹校長、生徒447人)の2年生176人は、感謝の気持ちを乗せる大漁旗づくりを進めている。5日に開かれた釜高祭で、クラスごとに考えた大漁旗のデザインをお披露目。投票も行い、一番多く票を集めた絵柄で思いを発信する。

 

 2年生は5クラスあり、それぞれ5人程度で制作チームを結成。虎舞や市の花「はまゆり」、釜石大観音、海産物などを散りばめた、赤や黄などを使った色鮮やかな図柄が生まれた。18カ国語で「ありがとう」を伝えたり、平和の象徴ハトをデザインしたものもある。

 

 プロジェクトは8月下旬に始まった。きっかけは、2年1組副担任の葛西雄子教諭の「来年3月には震災から10年がたつ。復興、感謝の気持ち、頑張っている姿を自分たちらしい形で伝えたいね」という提案。“釜石らしさ”として「大漁旗は!」とヒントを示した。

 

 この提案にリーダーとして手を挙げたのは、太田堅君。核兵器廃絶と世界平和を訴える第23代高校生平和大使として活動している。震災被災地枠で選ばれていて、支援への感謝を伝える役割も担う。「いい機会になる」と、まとめ役になったものの、「人を動かす大変さを実感。テストや新人戦、釜高祭の準備で忙しい中でも協力してくれてうれしい」と苦笑いする。

 

 学校祭後も数日展示し、投票してもらう予定。賛同を多く集めた1点を大漁旗に仕上げる。

 

 完成した旗を使って来年3月に動画の撮影を計画。その動画を太田君がスイス・ジュネーブの国連欧州本部に届け、「被災地の今」を伝える考えだ。

 

 この取り組みは、新型コロナウイルス感染症の影響で流動的。見守る葛西教諭はコロナ禍での活動に不安もあったというが、「生徒たちには何かをやりたい気持ち、伝えたい思いがある」と確信する。

 

 今年の釜高祭は感染予防のため、1日のみの開催で非公開となった。それでも「After the Rain~コロナに負けるな」をテーマに、定時制25人、同校に併設する釜石祥雲支援学校高等部29人とともに、日頃の学びや部活動の成果を披露。お化け屋敷やゲームなどの催しを楽しみ、「雨あがりの晴れ」に期待し、次に進む力を得た。

 

復興釜石新聞

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復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

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オーストラリアへのメッセージ動画を撮影する釜石市内の中学生ら

復興「ありがとう」ホストタウン、東京五輪を機に友好促進〜釜石と豪州中学生交流、メッセージ動画やりとり

オーストラリアへのメッセージ動画を撮影する釜石市内の中学生ら

オーストラリアへのメッセージ動画を撮影する釜石市内の中学生ら

 

 東京五輪・パラリンピックを機に国際交流を進めようと、釜石市と「復興『ありがとう』ホストタウン」相手国のオーストラリアの中学生がメッセージ動画をやりとりする取り組みを始めた。3日に市内の中学生が活動を開始し、同国から届いたビデオメッセージへの返信動画を撮影した。今後、2週に1回ペースで動画を送り合って交流。互いの国に理解を深めながら心を通わせる。

 

 この取り組みは、オーストラリアオリンピック委員会が企画する。来年の大会に合わせて本格実施される教育交流プログラム「ともだち2020」の試行版。8月にスタートし、日本の7自治体で展開されていて、両国から各約20校が参加する。

 

 釜石は同ホストタウン事業の一環として参画する。市内5中学校から2、3年生8人が参加。東海市と合同で実施する海外体験学習事業の参加者で、3月に豪州に派遣予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止になっていた。

 

 相手校は南オーストラリア州にあるパラヒルズ高校。中学3年生に相当する8人が参加する。

 

 この日は大町の青葉ビルに6人が集まった。パラヒルズ高で日本語を学ぶ生徒が送った自己紹介動画を視聴。家族構成や好きな食べ物、「日本語の勉強、楽しい。けど、難しい」「宿題、大嫌い」といったメッセージから同年代の生活の様子を感じ取った。

 

 その後、釜石から届ける動画を撮影。英語と日本語の2カ国語で自己紹介した。甲子中2年の佐々凱音(かいと)君は「友達をたくさん作りたい。話しかけてくれるとうれしい」とアピール。ラグビーやスポーツの話を楽しみ、英語力も上げたいと、わくわく感をにじませた。

 

 釜石中2年の佐々有寿(ありす)さんは「現地で直接交流したかったが、つながる機会をもらった。オーストラリアの文化を知りたいし、釜石のことも伝えたい」と、次に届く動画を楽しみにしている。

 

 釜石の8人は10月末まで活動。豪州から届く動画を見て興味を持ったこと、共通点や相違点を探りながら動画を撮って送る。

 

 釜石市は2017年11月に同ホストタウン相手国として豪州を登録し、青少年交流などを推進してきた。市国際交流課の中村達也課長は「交流の形は変わったが楽しく活動し、結び付きを強めてほしい。宝物を得る機会になれば」と見守る。

 

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ビブリオバトル

接戦 熱戦 ビブリオバトル〜5人でチャンピオン大会、おすすめポイント アピール

ビブリオバトル

初のチャンピオン大会となったビブリオバトル。約30人が楽しんだ

 

 釜石市大町の桑畑書店(桑畑眞一社長)が2018年から開催し、人気を集める「ビブリオバトル(知的書評合戦)」が22日、市民ホールTETTOで開かれた。5回目の今回は、過去4回で、紹介した本が〝チャンプ本〟に選ばれた5人を集め、チャンピオン大会として開催。今回もそれぞれ一押しの本を持ち寄り、お薦めポイントを熱弁した。チャンプ本を決める観客の投票結果はまれに見る接戦となり、大いに盛り上がった。

 

 ビブリオバトルは2007年に京都大の大学院生が考案。誰でも気軽に楽しめる書評合戦で、読書愛好者だけではなく、本に親しむことがなかった人も読書に目を向ける一つのきっかけになっている。

 

 発表者は1人5分の持ち時間で1冊の本を紹介。手に取ったきっかけ、要旨、読んで面白かった部分や心に響いた一節などを語り、終了後2分間、観客からの質問にも応えた。5人のプレゼン後、観客は読みたくなった本一冊に投票。その場で開票結果が発表された。

 

 チャンプ本に選ばれたのは、海老原祐治さん(釜石支援センター「望」代表)が紹介した「本能寺の変~431年目の真実」。明智光秀の末裔(まつえい)明智憲三郎氏が執筆した歴史本で、海老原さんによると「よく調べて書いている本。われわれが知る定説を見直し検証しているが、本能寺の変の真相に迫る部分は非常に説得力があり面白い。前後に起きる不可解な出来事のからくりも興味深い」という。

 

 海老原さんと1票差だった渡部真さん(フリーライター、編集者)が紹介したのは「ヤクザときどきピアノ」。アウトローを中心に取材し記事を書いている鈴木智彦氏が、あるきっかけでピアノ教室に通うようになり、発表会で弾くまでになる、自身を題材にした体験記。渡部さんは「鈴木さんがいかに優秀なライターであるかを誰もが実感できる本。時に漫画の比喩を用い、緊張感や臨場感あふれる文章は秀逸。本に出てくる曲を聞きたくなるような音楽本としての魅力もある」と薦めた。

 

 観客として足を運んだ大町の60代女性は「やっぱり本を読むのって楽しい。震災以降、遠ざかっていたが、また読んでみたい。ビブリオバトルは、全く違うジャンルのものに触れることができる」と有意義な時間を喜んだ。

 

 この催しはこれまで同書店内で行ってきたが、新型コロナ対策の3密回避のため、初めて市民ホールで開催。市が後援し、市立図書館の職員3人が運営サポートで協力した。「次回は図書館を会場に」という案も出ている。

 

 同館の高橋悦子館長は「ビブリオバトルは本を読みたい気持ちにさせてくれる(絶好のツール)。図書館のスタッフも興味を持っている。桑畑さんと連携し、ぜひ館内開催も実現できれば」と前向きな姿勢を示した。

 

 今大会の他の出演者と紹介した本は次の通り。
 ▽石黒めぐみさん「部長、その恋愛はセクハラです!」▽窪田優一さん「日本の品種はすごい~うまい植物をめぐる物語▽土橋詩歩さん「聖の青春」

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表千家茶道こども教室

浴衣でさわやか お点前披露〜表千家茶道こども教室、おもてなし学ぶ

表千家茶道こども教室

浴衣姿で茶道の作法を学ぶ子どもたち

 

 釜石市伝統文化表千家茶道こども教室が22日、只越町集会所で行われ、受講生11人が浴衣姿で参加した。普段着なれない浴衣姿での所作にぎこちなさが見える受講生もいたが、おしとやかな立ち居振る舞いを心掛けながら稽古に励んだ。

 

 同教室は表千家成和会(互野宗哲会長)を母体に実行委員会を組織し開催。17回目の今年は7月に開講し、子どもたちは、お点前の作法や客のおもてなしについて学んでいる。

 

 この日は2回目の勉強会。浴衣や甚平といった和装に親しんでもらおうと、毎年この時期に浴衣会として行っている。

 

 集会所には「旦坐喫茶」と書かれた掛け軸、シュウカイドウやミズヒキなど季節の花を生けた席が用意された。継続年数や習熟度に合わせ、交代でもてなす側と客側を体験。受講9年目の中学生2人がお点前を披露した。

 

 初受講、小学生などでグループ分けした稽古ではお菓子やお茶のいただき方、お運びの所作をおさらい。お点前の指導を受けた5年目の遠野愛実さん(平田小5年)は「浴衣を着ると動きにくい。気を付けないといけないことが多くて大変だった。けど、茶道は楽しい。一人でもお点前ができるようになりたい」とはにかんだ。

 

 互野会長は「畳の上、着物での所作を身に付け、わび、さび、みやびという日本の感性を深めてほしい。物言わずとも動作で気持ちを表すようになるのが理想。積み重ねが大事で、体が覚え自然と動きが付いてくるようになったら、しめたもの」と見守る。

 

 勉強会は来年1月まで月に2回程度実施。新型コロナウイルス感染症予防対策を講じながら進めており、歳末福祉茶会(成和会主催)への参加などは今後の感染状況を見極め判断する。

 

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20年の画業を1冊に、障害に寄り添い 独自の世界 支援者への返礼として出版〜「微笑みの国」発刊、釜石市出身小林覚さん

20年の画業を1冊に、障害に寄り添い 独自の世界 支援者への返礼として出版〜「微笑みの国」発刊、釜石市出身小林覚さん

画集を手にする小林覚さん(中)、寄り添う家族

画集を手にする小林覚さん(中)、寄り添う家族

 

 釜石市出身で花巻市在住のアーティスト小林覚(さとる)さん(31)による画集「微笑(ほほえ)みの国」が発刊された。自閉症と知的障害を持ち、「るんびにい美術館」(花巻市)で制作活動を展開する小林さん。本格的に絵を描き始めた養護学校中等部時代から現在までの画業を1冊で振り返っている。

 

 小林さんは箱崎町生まれ。釜石養護学校(現釜石祥雲支援学校)の小・中・高等部を経て、2007年から花巻市の障害者支援施設で生活しながら同美術館のアトリエで制作活動を行っている。

 

 作品は、自由奔放な線の造形性と明るく豊かな色調が特徴。文字をアレンジし、アートの一部として独自の世界を表現している。

 

 画集の表紙になったのは、小林さんのお気に入りの1曲、ザ・ビートルズの「Let It Be」。画面の中のすべてのものが微笑んでいる。

 

 でも、描き始めた頃の人物像は―。そして、使うのは黒鉛筆ばかりだった?

 

 小林さんをめぐる謎に触れることができるのが、この画集。A4判、118ページで、図版、資料二編に分かれている。図版には中等部、高等部、ルンビニー苑編があり、計85作品を紹介。変化する過程を見せる。

 

 いろんな文字がつながり、時には分離したり。線が自在に伸び、交わる。縦横無尽に駆け巡っているように見えるが、ある規則が隠れている。資料編では小林さんの恩師で、画集を編集した佐藤卓郎さん(奥州市)が文字の解読、色彩の変化など解説を加える。

 

 小林さんの自宅は鵜住居町にある。東日本大震災で被災し、数多くの作品も流失するなど被害を受けた。画集には、自宅で見つかった作品の一部も掲載。汚れが残った状態で紹介されている。

 

 平日に美術館で活動する小林さん。週末、両親が鵜住居町に再建した自宅に帰る生活を送っている。

 

 発行者は父俊輔さん(65)。当初、出版には抵抗があったが、支援者へのお礼として画集を作ることを決断した。500部製作。佐藤さんの熱意に押され、350部を販売することも決めた。

 

 予想以上の出来に満足そうな俊輔さん。特に資料編の充実ぶりに、「覚の歩み、絵の楽しみ方を知ってもらえる。作品を見たことがある人には新たな発見を楽しんでほしい。どんな反応があるか、楽しみ」と胸を高鳴らせる。

 

 「自閉症だけど人が好き。画集を作ったことを覚は楽しいと思っている。人とつながっているのが大好きだから」

 

 小林さんの障害が周囲に理解されないつらさを明かす母眞喜子さん(63)だったが、画集の完成を誰よりも喜んでいる。気持ちを言葉で表現するのが難しい子に寄り添い、持つ力を見いだし、伸び伸びと活動させ続けている人たちの存在と、子の成長を強く意識させるものが形として残るから。穏やかな笑みを浮かべ、「安心した」と小林さんを見つめた。

 

 釜石市内では大町の桑畑書店で販売中。3500円(税別)。同美術館でも購入できる。企画会社ヘラルボニー(花巻市)を通じネット販売も予定する。

 

(復興釜石新聞 2020年8月8日発行 第898号より)

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沈みがちな地域に元気を、感謝のハーモニー〜釜石高音楽部、宮古高とコラボ 絆深める

沈みがちな地域に元気を、感謝のハーモニー〜釜石高音楽部、宮古高とコラボ 絆深める

釜石高、、宮古高の部員が心をひとつに歌い上げた「願い〜震災を乗り越えて〜」=アンコールで

釜石高、、宮古高の部員が心をひとつに歌い上げた「願い〜震災を乗り越えて〜」=アンコールで

 

 釜石高音楽部(菊池風花部長、9人)の第6回定期演奏会は7月26日、釜石市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス感染拡大でコンクールなど各種発表の場が失われてきた同部にとって、本年度初の演奏会。部員らの思いが込められたステージは、コロナ禍で気持ちが沈みがちな地域住民に明日への元気をもたらした。

 

 4部構成のステージ。1部は2、3年生7人が無伴奏女声合唱曲集「なみだうた」より4曲を披露。昨年度のアンサンブルコンテスト県大会で歌い、銀賞を受賞した曲で、アカペラの美しい響きで観客を魅了した。

 

 2部は古くから歌い継がれる日本のわらべうたや唱歌。初舞台となった1年生男子2人を加え、「通りゃんせ」「ふるさと」など5曲を大人のアレンジで聞かせた。

 

 休憩後の後半は、友情出演した宮古高音楽部(7人)のステージから。震災後、被災地を勇気づけてきた「花は咲く」「糸」を歌い、沿岸住民の心の絆を深めた。

 

 3部は釜石高の部員がお気に入りの1曲をグループに分かれ歌唱。「勇気100%」「待つわ」などを振り付きで披露したほか、河内萌々子さん(2年)のソロを交えた英語の楽曲も届けた。

 

 4部はディズニーセレクション。「Let It Go~ありのままで~」「アンダー・ザ・シー」など人気の映画曲をそろえ、歌の前には物語の一場面を演じて楽しませた。

 

 3部合唱の豊かなハーモニー、工夫を凝らしたステージに約150人の観客から惜しみない拍手が送られた。アンコールでは2校の部員が「願い~震災を乗り越えて~」を手話付きで歌い、感動のフィナーレを迎えた。

 

 宮古高の1年生部員の母大澤美智子さん(48)は、初めて聞く釜石高の演奏に「男声が入ると幅が広がるというか、すごく素敵でした。エネルギッシュなパフォーマンスもいいですね。子どもたちの頑張りは親にも力をくれる」と喜びを表した。

 

 釜石高の菊池部長は本年度唯一の3年生部員。「課外とかで練習に行けないことも多かったが、2年生が率先して動いてくれた。こうして演奏会ができて感謝しかない」と思い出のステージを締めくくった。

 

 全日本合唱コンクールが中止となるも、落ち込む気持ちを奮い立たせ、定演を成功させた同部。アルトパートに加わった伊藤雄基君(1年)は「歌には人を喜ばせたり、気持ちを回復させたりする力がある。今日は自分も先輩たちの歌声に感動し、涙が出そうになった。音楽ってすごい」と実感を込めた。

 

(復興釜石新聞 2020年8月1日発行 第897号より)

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部員らの思いが込められた演奏を会場一体となって楽しんだ

コロナに負けず 迫力のブラス〜釜石高校吹奏楽部、演奏の喜びかみしめ

部員らの思いが込められた演奏を会場一体となって楽しんだ

部員らの思いが込められた演奏を会場一体となって楽しんだ

 

 釜石高吹奏楽部(高木李子部長、部員26人)の第87回定期演奏会は18日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス感染拡大の影響でコンクールが中止。練習時間も制限されるなど、例年とは違う状況下で迎えた演奏会。部員らは観客の前で演奏できる喜びを一層かみしめ、約270人に精いっぱいのステージを届けた。

 

 入場者の体温チェック、アルコール消毒、マスク着用など感染防止対策を徹底して開催。会場のホールAは客席最前列を使用せず、一席ずつ間隔を空け座ってもらう形で、通常の約半分420席のみ提供。〝密〟の回避に努めた。

 

 今年の定演のテーマは「青春~この夏に捧ぐ~」。1部は吹奏楽の名曲を中心に3曲を演奏した。今年のコンクールで演奏予定だった「マードックからの最後の手紙」は、豪華客船「タイタニック号」の沈没事件をモチーフにした曲。演奏中に、釜石高で古くに使われた始業開始を告げるハンドベルを楽器として用いた。

 

 2部はドラマやアニメの話題曲など5曲で、中には部員が編曲した作品も。前川真心君(2年)は大人気アニメ「鬼滅の刃」のオープニング曲「紅蓮華」を、川前優愛さん(3年)はディズニーメドレーを手がけ、迫力の吹奏楽サウンドで魅了した。打楽器(マリンバ)二重奏、サクソフォン四重奏のアンサンブルも聞かせた。

 

 例年の3部構成から規模を縮小した形となったが、部員らの努力が光るステージに客席から大きな拍手が送られた。

 

 同定演は久しぶりという甲子町の女性(67)は「感動で涙が出た。練習も苦労したんでしょうね。コロナや大雨災害のニュースでストレスもいっぱいだったが、今日は元気をもらった感じ」と喜びの笑顔。市民吹奏楽団で活動する平田の多田由佳さん(67)は「こうして演奏会ができるようになってきたのはうれしいこと。高校生たちも頑張っている。自分たちも8月2日のコンサートに向け力を注ぎたい」とバトンを受け継いだ。

 

 同部はコロナ対策で休校となった3月は全く活動ができず、新年度に入ってから再開。1年生10人を迎えスタートした矢先、本年度の全日本吹奏楽コンクールの中止が発表された。目標の一つを失い意気消沈するも、定演で良いものを届けたいと、限られた練習時間の中で懸命に取り組んできた。

 

 高木部長(3年)は「1年生を中心に基礎力を上げるのに苦労した。練習通りにいかない面もあったが、みんなで力を合わせ終われたのは何より」と充実の表情。編曲に加え、初めて指揮も担当した前川君は「何とか仕上げて発表できた。演奏を率いる立場になって、広い視野の必要性など大変さを感じた」と貴重な経験を成長につなげた様子。

 

 同部は昨年度のコンクールで19年ぶりの東北大会出場を果たした。今年の挑戦はかなわなかったが、前川君は「今のマイナスな状況をプラスにとって、個々の基礎固めなどをしながら高みを目指していきたい」と、次年度への精進を誓った。

 

(復興釜石新聞 2020年7月25日発行 第896号より)

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看板づくりに取り組んだ子どもたち

鵜住居「いのちをつなぐ未来館」、開・閉館知らせる看板作り 施設をより身近に

看板づくりに取り組んだ子どもたち

看板づくりに取り組んだ子どもたち

 

 釜石市の「かまいしDMC」が指定管理者として運営する鵜住居町の伝承施設「いのちをつなぐ未来館」は、地元の子どもたちの協力を得て、開館・閉館を知らせる看板を製作している。身近な風景を表現し、分かりやすさを重視。夏休み前までに完成させる考えだ。

 

 未来館ではA3サイズの紙に印刷しラミネート加工したものを掲げて開館、閉館を示している。来館者から多く聞かれたのは「開いているのか閉まっているのか、分かりづらい」との声。施設の利用しやすさ向上のため、今回の看板づくりを企画した。

 

 ここに伝承施設はあるが、地域には東日本大震災を知らない子どもが増えている―。伝える活動の課題の一つと捉えているのは、未来館スタッフの川崎杏樹(あき)さん(24)。製作活動を通じ、施設を訪れるきっかけに、より身近に感じてもらいたいと、子どもたちの力を借りることにした。

 

 鵜住居地区で放課後子ども教室を開いている一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校(伊藤聡代表理事)の協力で、6月下旬に製作を始めた。3回目の活動は7月9日、鵜住居公民館川目分館で実施。鵜住居小児童4人が参加した。

 

 現在進行するのは「CLOSE(閉館)」を知らせる看板。青い海と空をテーマにした画を描き、砂浜は根浜海岸の砂や貝殻などを使って表現している。

 

 川崎心花(ここな)さん(2年)は「色を作ったり、貝殻を貼って楽しかった。かわいいのができた」と満足そうだった。

 

 釜石産のサクラなどを加工した板(縦86センチ、横42センチ、厚さ約5ミリ)を使用。釜石地方森林組合が提供した。

 

 今後、「OPEN(開館)」も製作。テーマは山や森で、緑や茶で色づけし、葉っぱや木の実などを使って自然の豊かさを表する。

 

 川崎さんは「開館中かそうでないか、文字だけでなく、色でも区別できるよう工夫してもらった。作った看板がどんな風に活用されるか、楽しみに来てもらえたら」と期待する。

 

 未来館では地域の大人たちにも製作協力を依頼。近くにある復興住宅入居者らが「何か手伝いたい」と望んでいることを知ったからで、鵜住居地区生活応援センターと連携し活動を計画している。

 

(復興釜石新聞 2020年7月18日発行 第895号より)

 

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