鎮魂句集「泥天使」出版、釜石ゆかりの俳人 照井翠さん〜震災10年集大成 三部作完結、震災の様相 今も胸に迫る句を朗読


2021/02/15
復興釜石新聞 #文化・教育

新刊の2作にサインをしてもらう朗読会の来場者

新刊の2作にサインをしてもらう朗読会の来場者

 

 東日本大震災を釜石市で経験し、震災を詠んだ句が注目を集めてきた俳人の照井翠さん(58)=北上市在住=が、このほど震災10年の鎮魂句集「泥天使」を出版した。表現者として震災に向き合い続けた10年の集大成。2012年初版の句集「龍宮」も文庫新装版として同時発売され、19年刊行のエッセー集「釜石の風」と合わせ、照井さんの〝震災三部作〟が完結した。

 

 高校の国語教諭である照井さん(現北上翔南高教諭)は震災時、勤務先の釜石高で被災。避難所となった同校で、自宅や家族を失った生徒、住民らと約1カ月間、避難生活を共にした。

 

 被災直後から移り変わる季節ごと目にした光景や湧き起こる感情を言葉に紡ぎ、震災を俳句で表してきた照井さん。震災句集第2弾となる「泥天使」は全8章の構成で、奇数章に「龍宮」以降の震災詠、偶数章に〝コロナ禍〟の今を含む日常詠、計408句を収めた。

 

震災10年にあたり句集「泥天使」、「龍宮」(文庫新装版)を発刊した照井翠さん

震災10年にあたり句集「泥天使」、「龍宮」(文庫新装版)を発刊した照井翠さん

 

 前作から8年が経過する中で生み出された震災句は「直後の生々しさにフィルターがかかり、ろ過されてよりピュアな部分が出てきた」と説明する。時の流れは、直後の混乱で理解しきれなかったことも「今なら分かる」というように思索を深め、「それが作品の結実につながっていった」と明かす。

 

 「寄するもの容るるが湾よ春の雪」「蜩(ひぐらし)や海ひと粒の涙なる」―津波から数年後に生まれた句。「海を憎むだけだった以前には絶対詠めなかった句。時がたったからこそ本質を捉え、凝縮して表現できたところがある」

 

 震災10年にあたり「詩(俳)人の端くれとして、自分なりに震災に向き合ってきたつもり。今回の句集はその総決算。全てを出し切った」と照井さん。

 

 今後、震災の風化がさらに進むことは確実。自身の句集を「紙の石文(石碑)」と称し、「折りに触れ、忘れかけた時にひもといてもらえば、震災の大変さ、揺れ動く気持ちを感じてもらえるのではないか。多くの人の心に届くといい」と思いを込める。

 

 「泥天使」(税込み1980円)、文庫版「龍宮」(同1100円)、「釜石の風」(同1650円)は、いずれもコールサック社から発売中。

  

 照井翠さんの2作品出版を記念し、1月30日、釜石市大町の市民ホールTETTOで、照井さんによる句集の朗読&サイン会(桑畑書店主催)が開かれた。市民ら約20人が震災句を通して当時に思いをはせ、句に込められた意味を学んだ。

 

 「龍宮」から、震災1年目に詠んだ35句を朗読。池澤夏樹さん、伊集院静さんら著名作家も取り上げた「春の星こんなに人が死んだのか」「逢へるなら魂にでも なりたしよ」―など、印象的な句の解釈を示した。

 

 「泥天使」の震災句からは16句。「三月や何処へも引かぬ黄泉の泥」「抱いて寝る雪舞ふ遺体安置所で」「死が横で 息をしてゐる春の宵」―。多くの犠牲者を出した大津波、大切な人を失った深い悲しみ。17音が伝える震災の様相は、10年たった今も胸に迫る。

 

 「三・一一死者に添ひ伏す泥天使」。句集のタイトルに引用された同句には、犠牲者の救いを願う気持ちが込められる。「亡くなった人たちの最期には、天使のような寄り添ってくれた存在がいたのではないか。先祖の御霊でもいい。優しい言葉をかけてくれて天に召されたなら、少しは癒やされる」と照井さん。

 

 散りゆく桜に犠牲者の御霊を重ねた句も。訪れた人たちは照井さんが生む言葉の力を感じながら、解説に聞き入った。

 

 大平町の紺野きぬえさん(76)は、小佐野公民館で活動する俳句サークル「まゆみの会」の会員。震災後、照井さんから指導を受けている。「照井先生の句は心に響く。解説を聞いて震災当時の様子が目に浮かんだ。災害はこれで終わりではない。後世に語り継ぐ上でも先生の句は大きな意味を持つと思う」と話した。

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