「井上ひさしの世界」一堂に、釜石との関わり幅広く紹介〜原点は「ふかいことをおもしろく」、釜石市立図書館 著作93冊を展示


2020/12/14
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

「井上ひさしの世界」一堂に、釜石との関わり幅広く紹介〜原点は「ふかいことをおもしろく」、釜石市立図書館 著作93冊を展示

 

 釜石ゆかりの作家井上ひさしさん(享年75)が亡くなって今年で10年―。釜石市小佐野町の市立図書館(高橋悦子館長)では、井上さんと釜石との関わりなどを紹介する企画展「井上ひさしの世界」を8日まで1階展示ホールで開いている。

 

 井上さんは山形県生まれ。仙台一高から上智大に進学後、東京での生活や言葉のコンプレックスに悩み、母マスさんが暮らす釜石市に帰省。大学を休学し、屋台を引いていた母の手伝いや国立釜石療養所の事務員などをしながら、約2年半を釜石で過ごした。

 

 大学復学後、文才が開花。後にラジオやテレビなど放送作家の仕事を始め、NHK総合テレビの人形劇「ひょっこりひょうたん島」で、その名を知られるようになる。小説や戯曲も手がけ、「手鎖心中」で第67回直木賞を受賞。2003年に大渡小と統合した釜石小の校歌も作詞している。

 

 企画展では、同館所蔵の井上さんの著作や関連書約150冊の中から93冊を展示(禁帯出含む)。中でも注目は没後の2011年4月に出版された、創作の原点「ふかいことをおもしろく」。井上さんの半生が赤裸々につづられた作品で、人生を見つめ直した釜石での出来事や気持ちの変化が明かされている。国療で医者に憧れ、医大を受験したが失敗したこと、自分は文学1本で行こうと心に決めたことなど、人生の分岐点が釜石であったことが読み取れる興味深い1冊。

 

 館長補佐の川畑広恵さんは「挫折を経験し、新たな道を切り開く井上さんの知られざる姿が描かれており、釜石への思いの強さが感じられる。コロナ下の今だからこそ、ぜひ読んでほしい」と薦める。井上さんは市中心部にあった同図書館でアルバイトもしており、「郷土資料の整理にも携わったと書かれている。もしかしたら今、2階にある資料にも触れているかも」と川畑さん。

 

 会場には、郷土資料館が所蔵する井上さんの写真も展示。魚河岸を散歩する姿や、母マスさん、兄滋さんと釜石の実家でくつろぐ姿など貴重なプライベートショットが公開されている。写真には、同館職員が「ふかいことを―」から抜粋した印象深い言葉を添えた。

 

 このほか、井上さんが学生時代に母マスさんに送った手紙のコピーも展示。苦学生だったころの生活ぶりがうかがえるこの手紙は、12年1月発行の週刊現代の特集記事で紹介された。

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