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迫力の演奏で観客を楽しませた演奏会

航空自衛隊中央音楽隊、4年ぶり釜石で演奏会〜ブラスでクリスマスプレゼント

迫力の演奏で観客を楽しませた演奏会

迫力の演奏で観客を楽しませた演奏会

 

 航空自衛隊航空中央音楽隊(松井徹生隊長、東京都立川市)の演奏会が19日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。岩手日報釜石広華会(澤田政男会長、23会員)、岩手日報社、釜石市民ホールが主催。同音楽隊の釜石来演は、2016年7月にイオンタウン釜石の屋外施設で開いた野外演奏会以来4年ぶり。隊員約50人が2部構成のステージで楽しませた。

 

 新型コロナウイルス感染防止のため、客席数を50%に制限。釜石市、大槌町の住民限定で事前に入場整理券を配り、約370人が来場した。

 

 ナイジェル・へス作曲「クリスマス序曲」で幕開け。1部では、約15分の大曲「メトロポリス1927」(ピーター・グレイアム作曲)を演奏。100年後の未来都市を描いたSF映画「メトロポリス」(1927年公開)のイメージを音楽で表現した作品で観客を魅了した。

 

 2部は耳なじみのある楽曲を披露。ジブリ映画「もののけ姫」より「アシタカとサン」、フィギュアスケーターの荒川静香さんがトリノ五輪で金メダルを獲得したことでも知られる歌劇曲「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」、ベートーベン交響曲第9番第4楽章の〝歓喜の歌〟をアレンジした「ジョイフル・ジョイフル」―などを聞かせた。

 

 アンコールに応え、「釜石市民歌」と日本の唱歌メドレーも演奏。音楽で最高のクリスマスプレゼントを届けた。

 

 同音楽隊は防衛大臣直轄部隊として1961年に発足。国家行事や国際イベント、国内外各地での演奏会など年間約100回の演奏活動を行うが、今年はコロナの影響で約10カ月間、演奏会ができない状態が続いた。先月からコンサートホールでの演奏が再開され、釜石は4カ所目の開催地となった。

 

 釜石市民吹奏楽団で活動する30代女性団員2人は、同隊の演奏を初めて鑑賞。「いい音を聞かせていただき、感激です。親しみのある曲も多かったが、技術レベルが高いとやはり伝わる力も大きいと感じた」と刺激を受けた様子。

 

 自衛隊OBによる県隊友会釜石気仙支部の横山幸雄支部長(83)は「4年前にも聞いたが、本当に素晴らしい演奏。心が落ち着く。釜石で演奏してくれるのはOBとしてもうれしいこと。また来てほしい」と望んだ。

 

 主催した釜石広華会は岩手日報の広告主で組織。会員は市内の多様な業種から成り、地域文化の発展を目指し、年に1回、コンサートや落語会、講演会などを行っている。

「井上ひさしの世界」一堂に、釜石との関わり幅広く紹介〜原点は「ふかいことをおもしろく」、釜石市立図書館 著作93冊を展示

「井上ひさしの世界」一堂に、釜石との関わり幅広く紹介〜原点は「ふかいことをおもしろく」、釜石市立図書館 著作93冊を展示

「井上ひさしの世界」一堂に、釜石との関わり幅広く紹介〜原点は「ふかいことをおもしろく」、釜石市立図書館 著作93冊を展示

 

 釜石ゆかりの作家井上ひさしさん(享年75)が亡くなって今年で10年―。釜石市小佐野町の市立図書館(高橋悦子館長)では、井上さんと釜石との関わりなどを紹介する企画展「井上ひさしの世界」を8日まで1階展示ホールで開いている。

 

 井上さんは山形県生まれ。仙台一高から上智大に進学後、東京での生活や言葉のコンプレックスに悩み、母マスさんが暮らす釜石市に帰省。大学を休学し、屋台を引いていた母の手伝いや国立釜石療養所の事務員などをしながら、約2年半を釜石で過ごした。

 

 大学復学後、文才が開花。後にラジオやテレビなど放送作家の仕事を始め、NHK総合テレビの人形劇「ひょっこりひょうたん島」で、その名を知られるようになる。小説や戯曲も手がけ、「手鎖心中」で第67回直木賞を受賞。2003年に大渡小と統合した釜石小の校歌も作詞している。

 

 企画展では、同館所蔵の井上さんの著作や関連書約150冊の中から93冊を展示(禁帯出含む)。中でも注目は没後の2011年4月に出版された、創作の原点「ふかいことをおもしろく」。井上さんの半生が赤裸々につづられた作品で、人生を見つめ直した釜石での出来事や気持ちの変化が明かされている。国療で医者に憧れ、医大を受験したが失敗したこと、自分は文学1本で行こうと心に決めたことなど、人生の分岐点が釜石であったことが読み取れる興味深い1冊。

 

 館長補佐の川畑広恵さんは「挫折を経験し、新たな道を切り開く井上さんの知られざる姿が描かれており、釜石への思いの強さが感じられる。コロナ下の今だからこそ、ぜひ読んでほしい」と薦める。井上さんは市中心部にあった同図書館でアルバイトもしており、「郷土資料の整理にも携わったと書かれている。もしかしたら今、2階にある資料にも触れているかも」と川畑さん。

 

 会場には、郷土資料館が所蔵する井上さんの写真も展示。魚河岸を散歩する姿や、母マスさん、兄滋さんと釜石の実家でくつろぐ姿など貴重なプライベートショットが公開されている。写真には、同館職員が「ふかいことを―」から抜粋した印象深い言葉を添えた。

 

 このほか、井上さんが学生時代に母マスさんに送った手紙のコピーも展示。苦学生だったころの生活ぶりがうかがえるこの手紙は、12年1月発行の週刊現代の特集記事で紹介された。

コロナ禍忘れさせる熱奏〜釜石市民吹奏楽団 第54回定期演奏会

コロナ禍忘れさせる熱奏〜釜石市民吹奏楽団 第54回定期演奏会

観客の目にも訴えた2部のステージ。音楽鑑賞の楽しみも倍増!

観客の目にも訴えた2部のステージ。音楽鑑賞の楽しみも倍増!

 

 釜石市民吹奏楽団(谷澤栄一団長、60人)の第54回定期演奏会は11月29日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルスの影響でコンクールは中止、イベントなどでの演奏機会も失われる中、団員らは「歩みは止めたくない」と感染防止策を講じながら活動を継続。演奏会も観客の理解と協力を得て対策を徹底し、一緒に音楽の楽しみを味わった。 

 

 2部構成(全8曲)のステージ。1部ではベートーベン生誕250周年を記念し、交響曲からピアノソナタまで名曲の数々をつないだ「不滅のベートーベン」(真島俊夫編曲)を披露。英雄、皇帝、田園、悲愴、月光、運命、第九―と耳なじみの旋律が続き、間には〝ハッピーバースデートゥーユー〟の挿入も。偉大な作曲家の功績をたたえた。

 

 2部は人気映画の楽曲などを吹奏楽バージョンで聞かせた。交響組曲「ハリー・ポッター(賢者の石)」は、映画の世界観そのままの幻想的で不思議に満ちた曲が作品の記憶をよみがえらせた。ステージのバックスクリーンには曲に合わせたイメージ画などが映し出され、雰囲気のある照明とともに演奏を引き立てた。

 

 感染防止策の一環で観客に用意されたのは「ブラボー!!」カード。声を出しての感動表現に代え、観客はカードの掲示と盛んな拍手でアンコールを求めた。これに応え、団員らは「マンハッタン・ビーチ」「オーメンズ・オブ・ラブ」を追加演奏。心通うエンディングで締めくくった。

 

 同定演を初めて鑑賞した大槌町の新谷洋一さん(68)は「思った以上に素晴らしい演奏で驚いた。個人の高いスキルとチームワークが生む最高のステージ。内側から湧き出るエネルギーを感じ、自分も明日から頑張れそう」と大感激。

 

 鵜住居町の小林凜さん(釜石高3年)は同校吹奏楽部を夏で引退。「演奏を聞いているとまた楽器を吹きたくなる。コンクールも中止され、部活にも心残りがあったので…。今日は吹奏楽の後輩にも会えた」と喜んだ。

 

 今春、釜石市吹に入団したパーカッションの古川りかさん(26)は「緊張したが、パートのフルメンバーで演奏するのは初めてなのでうれしかった。吹奏楽をやるのは高校以来。コンクールにも出てみたい」と今後の活動に意欲を示した。

防水シートに描かれた絵に色を塗る参加者=22日

防潮堤をアートで彩る、「曳き船」モチーフに〜コロナ下に元気を発信

釜石らしさがぎゅっと詰まった「防潮堤アート」

釜石らしさがぎゅっと詰まった「防潮堤アート」

 

 防潮堤に釜石のシンボルアートが出現!!。パブリックアートでまちのにぎわい創出を図る市民グループ「ゼロスポット」(小笠原梓代表、11人)は22、23の両日、釜石市の魚河岸テラス付近の防潮堤に飾る絵を一般参加者と制作、掲示した。メンバーの中学生が発案し、実現させた“防潮堤アート”。来年1月末まで掲示予定で、訪れる人たちに釜石の元気を発信する。

 

 同グループは昨年度の第6期「釜石○○(まるまる)会議」で誕生。市内の建造物をアートで彩る「マチナカラフル」プロジェクトを展開し、芸術によるまちづくりに新たな風をもたらしている。

 

 今回の取り組みは、グループ結成の中心メンバー川崎祐奈さん(釜石東中3年)、山﨑成美さん(同)が発足当初から温めていた企画。「釜石自慢の海の近くにインスタ映えするカラフルな絵があれば、人を呼び込むことにつながるのでは」と、防潮堤を飾るアート作品の制作を提案した。

 

 絵のモチーフは釜石まつりの呼び物の一つ「曳き船まつり」にヒントを得た、大漁旗をなびかせて進む船。旗には釜石大観音や橋野鉄鉱山、ラグビーボールなど釜石のシンボルのほか、新型コロナウイルスの早期収束を願うアマビエや「疫病退散」の文字をデザイン。絵が得意な川崎さんと小笠原代表が下絵を作成し、縦3・6メートル、横5・4メートルの防水シートに拡大して描いた。

 

 連休を利用した制作イベントは同テラス玄関付近の屋外スペースで行われ、最終段階となる色塗り作業を実施。テープでマスキングした区画に、手袋をはめた手でテント用塗料を施すもので、親子連れなどが楽しんだ。

 

防水シートに描かれた絵に色を塗る参加者=22日

防水シートに描かれた絵に色を塗る参加者=22日

 

 絵を描くのが大好きという山根來桃(くう)さん(甲子小3年)は「手で色を塗るのは初めて。どんな絵になるのか楽しみ」と熱心に作業。姉妹で参加した藤原彩華さん(鵜住居小5年)は「これで釜石がいい雰囲気になるなら、どんどんお手伝いしたい」と率先して取り組んだ。

 

 2日間で約100人が協力し、完成させた絵は23日午後、防潮堤に取り付けられた。山﨑さんは「自分たちのアイデアが形になり、地域に貢献できるのはうれしい。他の場所でも実現していけたら」、川崎さんは「コロナ下で大変な思いをしている人たちも笑顔になってくれたらいいな。釜石の子どもたちが将来の夢の実現に希望を持つきっかけにもなれば」と期待した。

 

 小笠原代表(35)は「色どりもきれいで予想以上の出来栄え。みんなで力を合わせて作れたのも良かった。これからも中学生らの挑戦を応援していきたい」と話した。

「釜石には夢の新合金がある!」、“鉄のまち”魅力発信〜文書デザインコンテスト、佐々木俊君(釜石祥雲支援学校)輝く優秀賞

「釜石には夢の新合金がある!」、“鉄のまち”魅力発信〜文書デザインコンテスト、佐々木俊君(釜石祥雲支援学校)輝く優秀賞

文書デザインコンテストで入賞した佐々木俊亮君

文書デザインコンテストで入賞した佐々木俊亮君

 

 パソコンを使って文章や画像をレイアウトし表現力を競う第11回文書デザインコンテストがこのほどあり、県立釜石祥雲支援学校(柏崎りえ校長)高等部(生徒29人)の佐々木俊亮君(1年)が優秀賞に輝いた。「率直に、うれしい」と喜んでいる。

 

 コンテストは、日本情報処理検定協会(名古屋市)が文書デザイン検定の認知度や著作権への理解向上などを目的に、文部科学省の後援を受けて実施。「地域の新発見」のテーマに、全国から1376点の応募があり、最優秀賞1点、優秀賞3点、審査員特別賞10点、佳作26点が選ばれた。

 

 最優秀に次ぐ評価を受けた佐々木君の作品タイトルは「『鉄のまち』釜石には夢の新合金がある!」。釜石市内で金属製造を手掛けるエイワのコバルト合金「コバリオン」をテーマに取り上げた。

 

 理科の授業で、医療や装飾用の新素材として世界から注目されるコバリオンを知った佐々木君。「すごい発明が身近にある。釜石を全国にPRしたい」と考えた。同高等部がある釜石高のそばに同社の金属事業部があることを知り、総合的探究の授業で企業見学。製造の様子など説明を受けた。

 

 作品では、見学を通して発見したコバリオンの魅力を簡潔な言葉で紹介。同社が提供した真空溶解中のコバリオン、赤く熱せられる金属の様子などの写真を組み合わせた。夏休み中に撮影していた「鉄のまち」を感じさせる風景写真も配置。釜石らしさを表現した。

 

 社会と情報の授業の一環でワープロ検定受験を目指す佐々木君は「ワープロの技術が上がったし、ものづくりの達成感もあった。パソコンの技術も磨き、凝った作品を作ってみたい。コンテストにまた挑戦し、もっと上の賞を目指す」と向上心にあふれている。

パスをつないでラグビーの楽しさに触れる児童

ラグビーで学ぶ「思いやり」、鵜住居小で体験授業

パスをつないでラグビーの楽しさに触れる児童

パスをつないでラグビーの楽しさに触れる児童

 

 鵜住居小(堀村克利校長、児童144人)は、ラグビーワールドカップ(W杯)の成果を生かしたまちづくりの推進に向け、釜石市が企画する「ラグビーのまち釜石」教室を体育の授業に取り入れている。12日は3、4年生が参加。地元のラグビー選手も実践する少しきつめのトレーニングメニューで競技を体験し、仲間を思いやる気持ちや協力することの大切さを体感した。

 

 講師は市スポーツ推進課ラグビーのまち推進係の長田剛主任。元ラグビー選手で、所属していた釜石シーウェイブス(SW)RFCの河野良太選手、吹越大清選手、吉田竜二選手兼コーチがサポートした。

 

 3年生27人の授業では「みんなで協力して目標を達成する」をテーマに、5チームに分かれて腕立て伏せや腹筋など10種類のトレーニングに挑んだ。走りながらパスをつなぐチャレンジでは、ボールを落として初めから何度もやり直しするチームも。「頑張れ」「もう少しだよ」と互いに声を掛け、励まし合ってメニューを達成した。

 

 小林大空(かなた)君は「みんなと力を合わせるのが楽しかった。ラグビーに親しみを持てた」と笑顔を見せた。

 

 品位、情熱、結束、規律、尊重という「ラグビー憲章」を紹介した長田主任。「ひとりでは難しいことも、みんなでやればできる。それぞれ得意、不得意なことがあり、できることで力を出し合うことが大事。普段の生活でも仲間と協力し合うことを忘れないで」と呼び掛けた。

 

 この教室は、ラグビーの魅力や楽しさに触れながら心身の健康増進、体力向上を図り、ラグビー精神を身に付ける機会にしてもらうのが狙い。実技・座学を選択でき、これまでに市内4小中学校で実施された。5校目の同校では6~13日に行い、全学年が取り組んだ。

高所作業車に試乗し、「高いね」と笑顔を見せる児童

「怖いな」でも「イエーイ」高所作業車に歓声、甲子小で建設業ふれあい事業

高所作業車に試乗し、「高いね」と笑顔を見せる児童

 

 県建設業協会釜石支部青年部(山元一輝部会長、28社)による「建設業ふれあい事業」は16日、甲子小(菅原正樹校長、児童259人)で行われ、1年生41人が工事現場で実際に使用されている建設重機の操作や試乗を体験した。

 

 青年部会員に重機のリース事業所が協力、合わせて31人が児童を迎えた。校庭にはバックホー、土やアスファルトを固めるコンバインドローラー、除雪作業などで使うショベルローダー、高所作業車がずらり。児童は実際に車両に乗り込み、青年部会員に手伝ってもらいながら操作に挑戦した。

 

重機の操作も体験し、建設の仕事に触れた

重機の操作も体験し、建設の仕事に触れた

 

 25メートルの高さまで伸びる高所作業車には、ヘルメットや安全帯を身に着けて乗車。「怖いな」と緊張気味の児童もいたが、3階建ての校舎より高く上昇すると、「面白い。イエーイ」などと校庭にいる友達に自慢げに手を振っていた。

 

 小川雛詩(ひなた)さんは「どの機械も初めて乗った。(操作を)教えてくれて面白かった。高い所が見えて楽しかった」と喜んだ。

 

 ふれあい事業は、建設業を理解してもらおうと継続する地域貢献活動。山元部会長は「体験を通じ建設現場の仕事や働いている人に親しみを持ってもらえたら。子どもたちはすごく喜んでくれた。そういう笑顔を見ると、次の仕事にリフレッシュした気分で向かえる」と目を細めた。

コロナ対策をして芸術の秋を楽しんだ今年の芸文祭

釜石市民芸文祭50周年〜芸術・文化の灯絶やさず、19団体 多彩に展示・発表

コロナ対策をして芸術の秋を楽しんだ今年の芸文祭

コロナ対策をして芸術の秋を楽しんだ今年の芸文祭

 

 釜石の芸術文化の灯を絶やさず、未来へつなごう―。第50回釜石市民芸術文化祭(市・市芸術文化協会主催)は13日から15日まで、大町の市民ホールTETTOで開かれた。長引く新型コロナウイルス感染症の影響で開催が危ぶまれたが、協会員の継続への熱意で実現にこぎつけた。春から活動制限や発表会中止などを余儀なくされてきた各団体は貴重な成果発表の場で躍動。来場者は素晴らしい作品や舞台を堪能し、コロナ下で疲弊する心を癒やした。

 

 14日の開会セレモニーで芸文協(32団体、540人)の河東眞澄会長は「(市民が受け継ぐ)芸術文化のレガシーを何とか守りたいと会員から強い要望が出た。釜石の文化創造のさらなる発展へ市民一丸となって歩みたい」とあいさつ。同祭と歴史を同じくする協会の結成50周年を記念し、11人を表彰した。芸文協前会長で、2017年9月に逝去した岩切潤さんを特別表彰。各団体で貢献してきた10人を功労者表彰でたたえた。

 

 04年から会長を務めた岩切さんは、さまざまな文化行事に足を運び、活動する市民を激励。東日本大震災があった11年にも芸文祭実現に尽力し、その後も芸術文化の力で復興を後押ししてきた。表彰状を受け取った妻久仁さん(77)は「『コロナでもよく頑張った』と、今日も見守っていると思う。後を引き継いでいる皆さんにエールを送りたい。今も多くの方が(夫のことを)覚えていてくださり、感謝でいっぱい」と目を潤ませた。

 

 展示部門には協会加盟の13団体が参加。コロナによる活動自粛などで出品がかなわなかった団体もあり、例年より少ない参加数となったが、絵画や水墨画、写真、生け花、ステンドグラスなど各分野の力作が並んだ。

 

 釜石郵趣会は、切手収集を趣味とする仲間が集い、同祭でその魅力を発信している。収集歴約60年の菅原照男さん(82)は、釜石が発祥の近代製鉄100年記念の切手(1957年発行)や国体記念切手、刺しゅうはがきなど自慢のコレクションを公開。「芸文祭は年に一度、皆さんに見てもらえる機会。今年も開催されて良かった」と喜んだ。

 

 新企画も注目を集めた。展示では本年度の県小・中学校新聞コンクールで上位入賞を果たした市内校の壁新聞や個人新聞、公民館の自主グループによる作品などを公開。体験コーナーでは色鉛筆画、ちぎり絵、切り絵、折り紙、エコたわし・お手玉作りが行われ、来場者が手作りの面白さを味わった。

 

 大只越町の山田知世さん(36)は毛糸を編んで作るエコたわしに挑戦。「これを機に編み物もやってみようかな。芸文祭は毎年来ている。市民が集い、いろいろな経験ができる場はとてもいい」と笑顔を見せた。

 

 ステージでは協会加盟の4団体と賛助出演の2団体がバレエ、エアロビックダンス、歌や舞踊を披露。大船渡市から招かれた「チンドン寺町一座」は疫病退散への願いを込めて、にぎやかな舞台を繰り広げた。

 

 同祭は1970年に開催された岩手国体を盛り上げようと始まり、今では市内最大の文化の祭典として市民に愛されている。

 

50周年功労表彰受賞者

 

50周年功労表彰受賞者

 

岩切潤(故人、芸文協前会長)、村上マサ子(釜石草月会)、高橋伊緒(釜石ユネスココーラス)、久保雅美栄(岩手三曲協会釜石支部)、木村睦子(琴城流大正琴白百合会)、種市圭子(釜石市合唱協会)、佐々木英雄(釜石書道協会)、西田弘(釜石市民絵画教室)、千坂誠久(釜石郵趣会)、遠藤顕一(釜石写光クラブ)、山崎隆男(故人、釜石芸能連合会)

海中の動物化石が見つかった栗林層の露頭

古生代に思いはせ、地層観察や化石採集楽しむ〜栗林町で地質観察会、県立博物館主催 県内から19人参加

海中の動物化石が見つかった栗林層の露頭

海中の動物化石が見つかった栗林層の露頭

 

 岩手県立博物館(盛岡市)主催の第80回地質観察会が10月25日、釜石市栗林町の山中で開かれた。同所は古生代(約5億4千万年前~2億5千万年前)の3つの時代「デボン紀・石炭紀・ペルム紀」の地層が狭い範囲で見られる特殊な場所。デボン紀の地層からは国内最古の植物化石が見つかっている。参加者は同館学芸員の案内で、地層観察や化石採集を楽しんだ。

 

 この観察会は、同館開館(1980年)以降、年2回実施。釜石市では過去に釜石鉱山などで4回の開催実績があるが、今回の場所は初めて。県内から親子連れなど19人が参加した。同町砂子畑集落から栗林銭座跡入り口付近まで車で移動。そこから大沢川沿いの林道を徒歩で登り、3つの観察地点に向かった。

 

 最初のポイントは、古生代の中で最も新しいペルム紀(約3億年前~2億5千万年前)の地層となる「栗林層」の露頭。層厚700メートルを超える地層の最下部で、礫岩(れきがん)層が見られる。礫岩は礫(砂利)が集まり固まった岩石。礫と礫の間を砂が埋めており、海中の動物化石が見つかっていることから、海でできた地層であることが分かる。ハンマーで岩石を割ってみると、ネジのような形状が残った「ウミユリ」の化石や腕足動物の化石が見つかった。

 

 栗林層にはペルム紀の一つ前の時代・石炭紀(約3億6千万年前~3億年前)の石灰岩が含まれており、そこからサンゴの化石も見つかっている。観察会でも運良く見ることができた。

 

石灰岩の中に見られるサンゴの化石

石灰岩の中に見られるサンゴの化石

 

 この後、今回の観察地点で最も古い地層となる「千丈ヶ滝層」(層厚800~1千メートル)へ。この地層は下部(大沢川部層)が火山岩や凝灰岩など、上部(砂子畑部層)は泥岩が主で、最上部の泥岩からはデボン紀(約4億2千万年前~3億6千万年前)の植物化石が見つかっている。学術的に貴重なのは、国内最古(デボン紀最後期)の植物化石「リンボク」。うろこのような樹皮を持ち、樹高40メートルにも達した大型シダ植物で、初期の森林植物の一種と考えられている。

 

 古生物の中にはリンボクのように、ある特定の時代だけに生息した種があり、地層に含まれる示準化石を調べることで、その地層ができた年代を推定することができる。

 

 今回は残念ながらリンボクの化石は見つからなかったが、葉脈の一部が残る植物化石を観察できた。他に、石炭紀前期の海の中で堆積した「小川層」も観察し、他層との岩石の違いなどを確認した。

 

観察会で訪れた各地層の地質図概略

観察会で訪れた各地層の地質図概略

 

 盛岡市の竹内敦海君(9)は両親と初参加。「化石はあんまり出てこないけど、ワクワク感がある。将来は(何かの)博士になりたい」と化石探しに夢中。石に興味があり、今夏は鉄鉱石を探しに釜石鉱山を訪れた。母なぎささん(46)は「大人も勉強になりますね。はるか昔のことも実際、現場に来ると、遠いような近いような不思議な感覚」と太古の世界に想像を膨らませた。

 

 会に同行した地元砂子畑の住民藤原信孝さん(72)は「こんな身近な所に最古の化石が出るような場所があったとは。地域の自慢がまた一つ増えた。ぜひ多くの市民に知ってほしい」と願った。

 

 同館専門学芸員(古生物担当)の望月貴史さん(37)は「複数の時代の地層を一度に見られる場所は珍しい。三陸ジオパークの活動とも連携し、地元の自然に広く目を向ける機会を増やしていってもらえたら」と期待した。

オーストラリアの同世代の生徒とオンライン上で交流した釜石市内の中学生

釜石市「ともだち2020」オーストラリアの中学生と交流〜オンラインで〜ゲーム・アニメ 共通話題で盛り上がる

オーストラリアの同世代の生徒とオンライン上で交流した釜石市内の中学生

オーストラリアの同世代の生徒とオンライン上で交流した釜石市内の中学生

 
 東京五輪・パラリンピックを機に国際交流を進めようと、釜石市と「復興『ありがとう』ホストタウン」相手国のオーストラリアの中学生とのオンライン交流が3日にあった。生徒たちは、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使って生活習慣や好きな言葉などを質問。日本語と英語を交えながら会話を重ね、互いの国に理解を深めた。

 

 この交流は、オーストラリアオリンピック委員会による教育交流プログラム「ともだち2020」試行事業の一環。釜石は同ホストタウン事業として参画し、市内5中学校から2、3年生8人が参加する。

 

 日本語を学ぶ南オーストラリア州にあるパラヒルズ高校の中学3年生に相当する8人を相手に、9月に取り組みを開始。これまで地域や日常生活、両国の比較などをテーマにしたメッセージ動画計13本を送り合った。

 

 3日はプログラムの最終日。ズームを通じ、大町の青葉ビルとパラヒルズ高校を結んだ。生徒らは言語を学ぶ理由や休日の過ごし方などをそれぞれ質問。釜石の中学生が「日本に来てやってみたいことは」と聞くと、「買い物。東京、秋葉原、京都に行きたい。釜石にも」と答えが返ってきた。

 

 ゲームやアニメなど共通の話題を見つけ、画面越しに盛り上がる生徒たち。「いつか直接会いたい」と思いを重ね、手を振って約45分の交流を終えた。

 

 香川美咲さん(唐丹中3年)は「動画のやりとりでは分からなかった人柄や気持ちが伝わってきた。この機会を生かして海外とつながることを考えてみたい」と充実した表情を見せた。

 

 釜石市は2017年11月に同ホストタウン相手国として豪州を登録し、青少年交流などを推進してきた。市国際交流課の中村達也課長は「こうした出会いを大切にし、感じたことを見つめ直し、生活に役立ててほしい。積極的にチャレンジを」と期待。東京五輪開催に合わせ来年4~7月にも交流事業を予定する。

作品展を開いた石井美智子さん、海老原正人さん、黒澤寿子さん(左から)

「土・花・糸」で絆深める、彩り豊かに同級生三人展〜大平中卒の海老原さん、黒澤さん、石井さん

作品展を開いた石井美智子さん、海老原正人さん、黒澤寿子さん(左から)

作品展を開いた石井美智子さん、海老原正人さん、黒澤寿子さん(左から)

 

 釜石市立大平中の1971(昭和46)年度卒業生、海老原正人さん(64)、黒澤(旧姓・大久保)寿子さん(63)、石井(旧姓・水戸)美智子さん(64)による同級生三人展「土・花・糸」が10月31日、11月1日の両日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。海老原さんの陶芸、黒澤さんの生け花、石井さんのレース作品が会場となったギャラリーを華やかに彩り、来場者に心潤うひとときを届けた。

 

 同展開催のきっかけは4年前の還暦祝いの集まりで3人が顔を合わせたこと。その後、釜石在住の石井さんは編み物の研修会で盛岡市に出向いた際、生け花展をやっていた盛岡在住の黒澤さんと偶然にも再会。石井さんから黒澤さん、海老原さん(釜石在住)へアプローチがあり、本企画が実現した。展示会は当初、今年4月に予定していたが、新型コロナの影響で断念。約半年遅れで開催にこぎつけた。

 

 上平田ニュータウンで「孤松窯」を開く海老原さんは皿や茶碗、小鉢、花器など約40点を公開。上薬の調合と窯の微妙な温度調整で雪の結晶のような美しい模様が浮き出た平皿など、プロの技術が光る作品の数々が注目を集めた。三人展という初の試みに「異業種(分野)とのコラボはお客さまからも好評。作品の魅力もアップする」と手応えを実感。

 

 故郷に陶房を構えて34年。市内で陶芸教室の講師も務めており、会場を訪れた生徒らは「先生の作品を見るのは勉強になる」と熱心に鑑賞していた。

 

 草月流生け花に親しむ黒澤さんは約10点を展示。コロナ下で花材集めに苦労しながらも何とか確保し、海老原さんの陶器も利用して豊かな感性を発揮した。驚きは、黒の塗料で炭のような風合いにした流木を組み合わせ、花器にした独創性あふれる作品。「(花材の)赤や黄、緑とのコントラストが素敵」と来場者から感嘆の声が上がった。

 

新鮮な感動を与えた陶芸、生け花、レース作品のコラボ展

新鮮な感動を与えた陶芸、生け花、レース作品のコラボ展

 

 黒澤さんの母は、釜石草月会の会長を長年務めた大久保カツ子さん(93)。震災の津波で松原町の自宅が全壊し、現在は盛岡市内の老人ホームに暮らす。黒澤さんが地元釜石で初めて作品を見てもらう機会を得て「幸せだな」と共に喜んでくれたという。「(海老原さんの)ぐい飲みなども使い、普段できない生け方ができた。会場には母の知り合いも多く来てくださり、釜石弁が耳に心地良い」と黒澤さん。

 

 甲子町で「ニッティングルーム石井」を主宰する石井さんはレース編み作品15点を並べ、技法や用具を紹介するコーナーも設けた。指導歴30年以上。石井さんのもとには県内各地から生徒が集まる。今年はコロナのため1カ月ほど教室休止を余儀なくされたが、「家で夢中になれるもの(編み物)があって良かった」と生徒らは前向きだったという。

 

 「レースというと、かぎ針しか知らない人も多いが、実はさまざまな技法がある」とPR。併せて「釜石出身者、地元在住者の活動、作品を知ってもらう機会になれば」と願った。

 

 会場には2日間で約150人が来場。海老原さんは「同級生のつながりが心強い。機会があれば、またやってみたい」と話した。

第50回釜石市民芸術文化祭

第50回釜石市民芸術文化祭

第50回釜石市民芸術文化祭

 

第50回釜石市民芸術文化祭リーフレット(PDF:1.2MB)

 

日時

令和2年11月13日(金)〜15日(日) 9時〜18時まで(15日は16時まで)

会場

釜石市民ホール TETTO
○展示部門/展示場所:ホールA・ホールB・ギャラリー・会議室(2階)
○発表部門/発表場所:ホールAステージ

プログラム

ホールAステージ
オープニングセレモニー
釜石市芸術文化協会結成50周年記念式典
日時/11月14日(土)13時〜16時
◆功労者表彰
◆記念ミニフェスティバル
・小柳玲子バレエ教室
・子どもエアロビックダンス「キッズDA★DA」
・チンドン寺町一座(大船渡)
・レコード鑑賞&映像鑑賞「懐かしの釜石商店街」
◆特別展示 11月13日(金)〜15日(日)
・釜石市内公民会等文化活動作品各種
・震災復興支援「北九州から“復興応援 書で贈る応援色紙”」
 
ホールA
・琴城流大正琴白百合会(11/13)
・MiA&リアスバンド(11/14)
・釜石芸能連合会(11/15)
 
ホールB◆特別展示
・釜石市内小中学校所有、釜石市所有芸術作品(絵画)
・釜石市芸術文化協会会員作品
・釜石市小中学校新聞コンクール入賞作品
 
共通ロビー
◆体験コーナー:〜手作りを楽しむ暮らし〜
・色鉛筆画/講師:小野寺浩さん(サムディ45会員)
・折紙/講師:笹木ゆり子さん
・エコたわし&お手玉/講師:ハナさん
・ちぎり絵/講師:小林静子さん(しゅんこう和紙ちぎり絵「はまゆり」代表)
・切り絵/講師:菅原信年さん(サムディ45会員)

入場料

無料

主催

釜石市・釜石市芸術文化協会
後援:岩手日報社、釜石新聞社、NHK盛岡放送局、IBC岩手放送、テレビ岩手、三陸ブロードネット株式会社

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 文化スポーツ部 文化振興課 芸術文化係
〒026-0031 岩手県釜石市鈴子町22番1号 シープラザ釜石2階
電話 0193-27-5714 / FAX 0193-31-1170 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2019102800065/
釜石市

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