タグ別アーカイブ: 文化・教育

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甲子中生徒会発案! 地域の先輩に学ぶミニ授業 6達人が人生のヒント、地域の魅力を伝授

授業をしてくれた地域の先輩方と記念写真に収まる甲子中の生徒ら

授業をしてくれた地域の先輩方と記念写真に収まる甲子中の生徒ら

 
 釜石市の甲子中(樋岡繁典校長、生徒111人)で1日、スポーツや文化など各種分野で活躍する地域の先輩を講師に迎えてのミニ授業が行われた。同校生徒会が「新たな形で地域とのつながりを深めたい」と発案。思いを聞いた学校関係者が動き、6人の講師を招いての学びの場が実現した。生徒らは地元の“達人”から、豊かな人生を歩む上でのヒントや地域の魅力を聞き、今後の生活や進路への参考にした。
 
 「甲子プロフェッショナルズ~教科書にはない、達人の流儀~」と題した初の企画は、6人の講師が20分ずつ2回行う授業を、生徒が希望する2授業を選択して受けるという形で行われた。講師を務めたのは▽小久保謙治さん(郷土芸能)▽桜庭吉彦さん(ラグビー)▽鈴木光幸さん(絵画)▽千田雅恵さん(読み聞かせボランティア)▽中村ひろみさん(箏)▽藤井サヱ子さん(地域活性化・甲子柿)。それぞれに情熱を持って取り組んできた各種活動から得たものを生徒らに伝えた。
 
はじめに体育館で講師6人が紹介された。生徒はどんな話が聞けるか期待感を高めた

はじめに体育館で講師6人が紹介された。生徒はどんな話が聞けるか期待感を高めた

 
 ラグビー元日本代表で、日本製鉄釜石シーウェイブスシニアアドバイザーの桜庭吉彦さん(60)は「ラグビーを通じて学んだこと」をテーマに授業。競技の特性、精神から自身が得たこととして、▽支えてくれる人に感謝の気持ちを伝える▽互いの個性、違いを理解し、認め合う▽コミュニケーションをとり信頼関係を築く―を挙げた。19歳で初めて日本代表に選ばれ、ラグビーワールドカップ(W杯)に3回出場。ニュージーランド戦で大敗した経験から「負けや失敗にはたくさんの学びがある。苦しい、悔しい時こそ成長のチャンス」とした。釜石市が会場となった2019年のW杯は台風の影響で1試合(ナミビア対カナダ)が中止となった。試合ができなかった選手らは被災地域で泥かきなどの奉仕活動を展開。桜庭さんは「人のために何ができるかを考え、行動してほしい」と願った。
 
桜庭吉彦さんはラグビー競技を通じて得た教訓などを話した。これからの人生に役立つ話が満載

桜庭吉彦さんはラグビー競技を通じて得た教訓などを話した。これからの人生に役立つ話が満載

 
 松倉町内会郷土芸能部長の小久保謙治さん(53)は地域で伝承する太神楽と虎舞について紹介した。松倉太神楽は江戸時代に、盛岡藩の庇護(ひご)を受けた芸能集団「七軒丁」(現盛岡市仙北町)から伝えられたとされる。小久保さんは150年以上前のものとみられる初代の獅子頭を見せながら、「地域の人たちの健康や安全、繁栄を願って演じられてきた」と話した。松倉虎舞は現山田町の大沢虎舞からもたらされ、市内14団体の中でもかなり古いもの。小久保さんは「頭や踊りには代々受け継がれてきた思いが込められる。伝統を継ぐだけではなく、最も大事なのは郷土芸能を通して地域や仲間がつながること。困っている人に手を差し伸べるなど人としての生き方も含めての郷土芸能」と教えた。
 
小久保謙治さんは地域に伝わる松倉太神楽、松倉虎舞について紹介。生徒は郷土芸能が持つ役割などに理解を深めた

小久保謙治さんは地域に伝わる松倉太神楽、松倉虎舞について紹介。生徒は郷土芸能が持つ役割などに理解を深めた

 
 地元の名産「甲子柿」の生産者で、地域資源を生かした震災復興で注目された藤井サヱ子さん(81)は地域への思いを話した。両親の介護を機に2000年にUターン。休耕田をコスモス畑にし、産直や創作農家レストランの開設で地域に新たな風を吹き込んだ。11年に発生した東日本大震災後は、遊び場を失った子どもたちのために公園を整備。隣接する工場の壁に気持ちが明るくなる壁画を施す活動も行った。関係者と「甲子柿を守る会」も立ち上げ、甲子柿を原料とした加工品開発にも着手。一連の活動は地域に人を呼び込むことにつながった。藤井さんは多くの人との関わりに感謝しながら、今後の課題として後継者不足を挙げた。
 
甲子に新たに人が集う場所を作った藤井サヱ子さん(右)。震災後は子どもたちや地域を元気にするために尽力

甲子に新たに人が集う場所を作った藤井サヱ子さん(右)。震災後は子どもたちや地域を元気にするために尽力

 
 生徒らはそれぞれの選択授業で講師の人生や信条、地域の歴史や文化に触れ、多くの発見や心に響くことがあった様子。佐々木美怜さん(2年)は甲子柿と絵画の授業を受け、「自分の強みや趣味を通して人脈が広がり、新しい考えや生活につながっていることが分かった。自分もいい意味で周りを巻き込み、新しいことにチャレンジしたい」と刺激を受けた。地域の人から直接話を聞くことで、「今まで“物”しか見えていなかったが、その裏にある内外の人たちの尽力で今の釜石があることに感謝の気持ちが芽生えた」とも。
 
67歳から水彩画を始めた鈴木光幸さんは入選作品を見せながら、絵画を始めた動機や魅力などを伝えた

67歳から水彩画を始めた鈴木光幸さんは入選作品を見せながら、絵画を始めた動機や魅力などを伝えた

 
甲子小で読み聞かせボランティアを行う千田雅恵さんは絵本の魅力を紹介。生徒も声を出して絵本の世界を楽しんだ

甲子小で読み聞かせボランティアを行う千田雅恵さんは絵本の魅力を紹介。生徒も声を出して絵本の世界を楽しんだ

 
文化箏の教室を開く中村ひろみさんは弾き方を教え、和楽器の音色に触れてもらった

文化箏の教室を開く中村ひろみさんは弾き方を教え、和楽器の音色に触れてもらった

 
 閉会式で講師を代表しあいさつした桜庭さんは「それぞれに得た学びをこれからの学校生活や社会に出た時の参考にしてもらえれば。たくさんの人に支えられて今があるということも今日の授業で気付くことができたのでは。地域に誇りを持ち、ぜひ甲子地区を盛り上げるように取り組んでほしい」と生徒にエールを送った。
 
 同校生徒会はこれまで「てくてくクリーン大作戦」という地域の清掃活動を続けてきたが、クマの出没増で昨年度から実施が見送られていた。同活動は地域を歩いて回ることで、気付かなかった良さを再発見でき、住民とコミュニケーションを取れる機会にもなっていたことから、生徒から復活を望む声が多かった。そこで生徒会執行部が考えたのが、清掃活動に替わる新たな取り組み。学校運営協議会の場で、「地域とのつながりを絶やしたくない」との思いを伝え、協力を願った。生徒会が提案した幾つかの案にアドバイスをもらい、最終的に今回のミニ授業の企画に至った。
 
 生徒会長の米澤悠真さん(3年)は「教科書では学べないことや学校の先生方では教え切れないことをたくさん知ることができた。地域と関わりたいという生徒の声に応えられたのは、(運営協委員や講師ら)地域の皆さんの協力のおかげ」と感謝。自身はラグビーの授業で「目標を達成するために何をすべきか考え行動に移すこと、相手を尊重することの大切さ」を実感。松倉虎舞に参加しており、「地元芸能の由来や踊りの意味を知れた。次に踊る時は今回の学びも生かしたい」と心にとどめた。
 
閉会式では各学年の代表が感想を発表。それぞれに貴重な学びの機会となったよう

閉会式では各学年の代表が感想を発表。それぞれに貴重な学びの機会となったよう

 
 甲子小・中の学校運営協委員で、今回の講師集めに尽力した鈴木みどりさん(69)は「生徒たちは真剣に講師の話を聞いていた。いろいろな分野の方々が集まったので楽しかったのでは。地域の方も甲子の子どもたちを応援したいと講師を引き受けてくれたと思うので、そういう気持ちも受け止めてもらえたら」と期待した。

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古里への愛着を表現!? アーティスト小林覚さん 書作品が釜石市新庁舎に リズミカルな文字で来庁者をお出迎え

新しい釜石市役所庁舎のエントランスホールにお目見えした小林覚さんの作品

新しい釜石市役所庁舎のエントランスホールにお目見えした小林覚さんの作品

 
 「鉄と魚とラグビーのまち」をうたう釜石市。9月24日に開庁した市役所の新庁舎エントランスホールに、まちを象徴するそれらの言葉をつづったパネル作品が掲げられ、来庁者を出迎えている。
 
 お目見えしたのは、一見すると「模様?」「抽象画?」と捉えてしまうかもしれない書作品。じっと見ていると、「文字じゃない⁉」と驚きが続く面白さがある。作品名は「鐵と魚とラグビーのまち かまいし」。釜石出身のアーティスト小林覚(さとる)さん(37)=花巻市在住=が制作した。
 
文字を探せ⁉作品「鐵と魚とラグビーのまち かまいし」

文字を探せ⁉作品「鐵と魚とラグビーのまち かまいし」

 
釜石市出身のアーティスト小林覚さん(中)が制作した

釜石市出身のアーティスト小林覚さん(中)が制作した

 
 障害のあるアーティストの作品をさまざまな形で世に送り出している福祉企画会社ヘラルボニーとのコラボレーションでも注目されている。独自の規則で自由に走り、踊り、つながる線は「サトル文字」として知られ、そこで表現されるのは豊かな感性と魅力的な造形性。分解された文字や言葉のつながりを発見する、わくわく感を味わえる作品を生み出し続けている。
 
 釜石の発展を支えてきた鉄鋼産業、豊かな海の恵み、市民に根づくラグビー文化という3つの要素を奔放な線で描いた小林さんの作品をパネル(縦約90センチ、横約168センチ)にして、市に寄贈したのはNPO法人釜石市身体障害者協議会(川畑克弘理事長)。新庁舎が高齢者や障害のある人、乳幼児を連れた家族など、誰もが安心して利用できるようユニバーサルデザインの考え方を取り入れて整備されたこともあり、「ボーダレスなまちづくりを」との願いを込めた。
 
作品を寄贈した釜石市身体障害者協議会の川畑克弘理事長に感謝状が贈られた

作品を寄贈した釜石市身体障害者協議会の川畑克弘理事長に感謝状が贈られた

 
 作品の寄贈を受け、市は28日に同法人と小林さんに感謝状を贈った。小野共市長は「新たな行政運営の拠点となる庁舎に潤いと彩りをもたらし、まちの魅力を広く発信するシンボル。作品に込められた豊かな感性と創造性は多くの市民に感動と希望を与える。末永く受け継いでいく」と述べた。
 
小野共市長(右)から感謝状を受け取る小林覚さん(左)、寄り添う父の俊輔さん

小野共市長(右)から感謝状を受け取る小林覚さん(左)、寄り添う父の俊輔さん

 
市関係者らに囲まれて、ほほ笑む小林さん(中)

市関係者らに囲まれて、ほほ笑む小林さん(中)

 
 この日、新庁舎を見学した小林さんは「明るくて楽しい」とほほ笑んだ。そばに寄り添った母の眞喜子さん(69)は「釜石への愛着を感じながら描いたと思う。言葉が少ない障害者も表現する力があることを理解してほしい。どんな文字が書いてあるのか、クイズみたいに楽しんでもらえたら」と望み、父の俊輔さん(71)は「覚の作品はダイナミックでリズミカル。障害者も健常者もお互い尊重し合いながら生きていける社会を目指すためのシンボルみたいになればいい」と期待した。
 
作品解説。画面の3分の2を占めるのは「鐵」という文字で、残りに「魚」「ラグビー」「かまいし(カマイシ)」が散りばめられているという。「解読を楽しんで」

作品解説。画面の3分の2を占めるのは「鐵」という文字で、残りに「魚」「ラグビー」「かまいし(カマイシ)」が散りばめられているという。「解読を楽しんで」

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建設業の仕事を身近に 釜石東中生が重機、ドローン操作など体験 協会釜石青年部恒例ふれあい事業

県建設業協会釜石支部青年部の「ふれあい事業」で重機操作を体験する釜石東中の1年生

県建設業協会釜石支部青年部の「ふれあい事業」で重機操作を体験する釜石東中の1年生

 
 一般社団法人岩手県建設業協会釜石支部青年部(小澤二郎部会長、25社)は18日、釜石市鵜住居町の釜石東中(高橋晃一校長、生徒83人)で、建設現場の仕事の一端を体験してもらう「ふれあい事業」を行った。同校1年生21人がバックホー(油圧ショベルの一種)やドローン(小型無人機)の操作、VR(仮想現実)での危険察知、高所作業車の試乗を体験。生徒たちは普段接することのないさまざまな機械に触れ、生活基盤を支える建設業の仕事に理解を深めた。
 
 同事業は釜石青年部が地域の学校に出向き、毎年この時期に実施している。以前は小学校を巡回していたが、昨年から中学校も対象とし、釜石東中は市内2校目の実施。会員企業と重機リースなどの協賛各社から31人が参加した。今回は4つの体験メニューを用意。生徒はグループごとに各コーナーを回った。
 
生徒が体験した(左上から時計回りに)バックホー操作、高所作業車試乗、ドローン操作、VR事故体験・安全教育

生徒が体験した(左上から時計回りに)バックホー操作、高所作業車試乗、ドローン操作、VR事故体験・安全教育

 
 土木工事に欠かせない建設機械「バックホー」の体験では、バケット(ショベル)の根本部分に取り付けた鎖で地面に置かれた魚の絵の板を釣り上げ、移動させる動作に挑戦した。運転席に座った生徒は会員から左右のレバー操作の基本を学んだ後、鎖を板に近づけ釣り上げるための上下、左右の動きを両手を駆使して実践。最初は思うように動かすのに苦戦していたが、操作に慣れてくるとゲーム感覚で“模擬魚釣り”を楽しむ様子が見られた。
 
バックホー操作体験。バケットに付けた鎖で“模擬魚釣り”

バックホー操作体験。バケットに付けた鎖で“模擬魚釣り”

 
青年部会員が操作の仕方を教えると、わずかな時間でコツをつかむ生徒も

青年部会員が操作の仕方を教えると、わずかな時間でコツをつかむ生徒も

 
 さまざまな現場を上空から撮影できるカメラ機能を備えたドローンは、建設業界でも普及率が高い機材。施工の前後、進捗(しんちょく)状況などを俯瞰(ふかん)でき、記録した写真や映像は測量や施工管理、工事報告などに活用されている。生徒らは離着陸のほか、数十メートル離れた場所に置いたコーンの上空まで飛行させるコントローラー操作を体験した。
 
ドローン操作体験。手元のコントローラーを操り、思うような飛行ができると笑みがこぼれた

ドローン操作体験。手元のコントローラーを操り、思うような飛行ができると笑みがこぼれた

 
ゲームより楽しい!? ドローン操作に夢中になる生徒

ゲームより楽しい!? ドローン操作に夢中になる生徒

 
 生徒の歓声がひときわ響いたのが高所作業車の試乗体験。墜落制止用の胴ベルトとヘルメットを着用した生徒は作業床(デッキ)に乗り込み、会員の操作で約12メートルの高さまで上昇した。作業車を止めた校庭は海抜15メートル。作業床は中学校校舎の敷地とほぼ同じ高さに達し、震災復興で整備された鵜住居町の街並みのほか、鵜住居川水門や大槌湾も見渡せた。
 
高所作業車試乗体験。安全ベルトを装着しデッキへ…。会員の操作で徐々に上昇

高所作業車試乗体験。安全ベルトを装着しデッキへ…。会員の操作で徐々に上昇

 
高さ約12メートルまで上昇。上からの景色にびっくり!

高さ約12メートルまで上昇。上からの景色にびっくり!

 
 山崎愛加さんは初めて乗った高所作業車に「高くて怖いけど、町内の土地が満遍なく見えてすごく楽しかった」と声を弾ませた。父親は建設業で、この日の体験もサポート。「建設業の人たちは危険がありながらも地域のいろいろな安全を守るための仕事をしてくれているので、すごくありがたい。父は尊敬する存在」と山崎さん。同じグループで行動した藤原菫さんも「全部楽しいけど、一番はあれ!」と高所作業車を指差した。「建設業はまちをつくる大切な仕事」と藤原さん。実際に現場で活躍する人たちとの交流機会を得て、「皆さん社交的で素敵な方ばかり。こういう仕事もいいなあ」と興味を持った様子。楽しい触れ合いを通して「将来の職業の選択の幅が広がった」と喜んだ。
 
「お~い!」校庭にいる仲間に手を振る生徒。写真左中央部には鵜住居川水門、駅前の復興住宅などが見える

「お~い!」校庭にいる仲間に手を振る生徒。写真左中央部には鵜住居川水門、駅前の復興住宅などが見える

 
校庭にいる人たちがこんなに小さく見える(右)。車両近くから見上げる景色も圧巻

校庭にいる人たちがこんなに小さく見える(右)。車両近くから見上げる景色も圧巻

 
 現場作業員の安全対策教育に活用されるVR事故体験教材では、死亡災害要因の上位を占める20の事故のシチュエーションを体験。墜落・転落、土砂崩壊、重機巻き込み、トンネル崩落など、さまざまな危険をVRで体感した。
 
 浦島光真さんは「VRで現場にある危険を知ることができた」と安全対策の重要性を実感。印象的だったのはドローン操作。「高い視点で土地を見られるので、建設業でもすごく役立ちそう」と話した。今、考えている職業は「父と同じ自動車整備士。工業系に進みたい」と将来を思い描いた。藤原英佑さんはバックホーの操作に興味を持ち、「最初は難しかったけど、3枚目の板を釣り上げるぐらいからコツをつかんでできた。大きい機械だけど繊細な動きも可能で、実際の作業員さんはすごいなと思った」。建設業の仕事は「危険もあるが、ちょっとやってみたい気持ちが芽生えた」と進路選択の参考にした。
 
担当者からVR安全教育教材の説明を受ける生徒

担当者からVR安全教育教材の説明を受ける生徒

 
生徒、会員が楽しい時間を共有したふれあい事業。たくさんの笑顔が広がった

生徒、会員が楽しい時間を共有したふれあい事業。たくさんの笑顔が広がった

 
 同じ鵜住居町に本社がある青紀土木の今井大志さん(27)はドローン操縦士の二等国家資格を持つ。中学生のドローン体験のサポートは昨年に続き2回目。「反応をじかに見られるのが面白い。初めてコントローラーに触る子も体験するうちに笑顔になってくる」と自身も楽しい時間を共有。「建設業を少しでも身近に感じてもらえたら」と話し、将来一緒に働く仲間が増えることも期待した。
 
 子どもたちへの出前授業は同青年部が長年継続する地域貢献活動の一つ。建設業の仕事を知ってもらい、将来の担い手育成のきっかけになればとの思いもある。小澤部会長(47)は「少子化の影響で県内工業高校にあった土木科がなくなってきていて、人材確保は各社共通の課題。人口減、高齢化が進む釜石地域は特にも」と話し、こうした機会を通じた建設業の魅力発信に力を注ぐ。
 
 青年部は同事業の開催校で奉仕活動も実施。事前に学校から希望を聞いて環境整備を行っている。今回、東中ではグラウンド整備と周辺の草刈り、砂利駐車場の水はけの改善に取り組んだ。
 
天候を考慮し、会員の一部は校庭の草刈りを並行して実施。午後からは全員で奉仕活動に取り組んだ

天候を考慮し、会員の一部は校庭の草刈りを並行して実施。午後からは全員で奉仕活動に取り組んだ

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未来を感じる修学旅行に!東京・文京学院大女子中 訪問地は釜石 震災の復興支援が縁

いのちをつなぐ未来館でガイドの説明を聞く文京学院大女子中の生徒たち

いのちをつなぐ未来館でガイドの説明を聞く文京学院大女子中の生徒たち

 
 防災学習をしながら未来を考える修学旅行に―。東京都文京区の文京学院大学女子中学校(島田美紀校長、生徒320人)の3年生90人が14、15の両日、釜石市を訪れ、東日本大震災の被災状況や復興まちづくりの過程を学んだ。当時の小中学生の避難行動も追体験。「命を守る」ことを自分事として捉え、必要な行動をとるための判断力、選択力を育む機会にした。
 
 同校が修学旅行で東北、岩手県を訪れるのは初めて。昨年度までは京都など関西方面を訪れていたが、近年のオーバーツーリズム(観光公害)の影響もあり宿泊先の確保や公共交通を使った班別活動などが難しくなったのを背景に、新たな訪問先を検討した。文京学院大の学生らが震災の復興支援を機にイベント参加や、現地に滞在し地域活性化に挑むインターンシップ(就業体験)を行うなどして交流を続けていることもあり、釜石市を選んだ。
 
 全国で自然災害が相次ぐ中、防災・減災への関心も高まっており、被災地での学びは時事性の高いテーマの一つ。「生徒が自分の目で被災地を見て、何かを感じ、考えるきっかけに」との教員らの思いもあり、3泊4日の日程の中に被災地での学習を盛り込んだ。
 
記念にパチリ!修学旅行で釜石にやってきた中学生

記念にパチリ!修学旅行で釜石にやってきた中学生

 
 14日は同市大町の釜石PITで、市職員から復興まちづくりに関する話を聞いた。いつ起こるか分からない災害からまちを守るための多重防御、被害の大きかった中心市街地の商業・なりわいの再生とにぎわいの創出などの観点から取り組んだ「まちを創り直す」事業を説明。その際に大切にしたのは「住民の声」で、生徒らは市民がまちづくりに関わり協議する場が何度も設けられたことに関心を示した。
 
釜石PITで行われた復興まちづくりに関する講話

釜石PITで行われた復興まちづくりに関する講話

 
復旧復興に携わった市職員の話に耳を傾ける生徒

復旧復興に携わった市職員の話に耳を傾ける生徒

 
 その後、鵜住居町に移動。3班に分かれ、いのちをつなぐ未来館、釜石鵜住居復興スタジアム、鵜住居川水門と片岸海岸防潮堤の3カ所を巡る防災学習プログラムに臨んだ。
 
震災時の避難を追体験。出発点は釜石鵜住居復興スタジアム

震災時の避難を追体験。出発点は釜石鵜住居復興スタジアム

 
 避難の追体験では震災当時に釜石東中、鵜住居小の児童生徒が津波から逃れるために向かった高台へのルートを、未来館スタッフの案内でたどった。2つの学校があった跡地に建設したスタジアムから国道45号の恋の峠までの距離は約1.6キロ。釜石の子どもらが想定の避難場所ではなく、状況を見極めてより高いところを目指してとった行動を「どう思うか」と問いかけられながら歩き、「自然が相手で、想定外は起こりうる。その時には自分で考え、選択、判断する場面が何度もあり、そのたびに最善を尽くすことが大事」などとの言葉をじっと受け止めていた。
 
震災を経験した未来館スタッフ(左)の語りを受け止める生徒

震災を経験した未来館スタッフ(左)の語りを受け止める生徒

 
震災当時に鵜住居町の子どもたちが避難したルートをたどる

震災当時に鵜住居町の子どもたちが避難したルートをたどる

 
 未来館では震災当時の被災状況、津波の緊急避難場所ではなかったが避難した多くの人が犠牲になった鵜住居地区防災センターの話、釜石東中や釜石小が取り組んできた防災活動について展示やガイドを通じて理解を深めた。水門(長さ180メートル、高さ14.5メートル)では管理する県職員から施設概要や機能などの説明を受け、点検時に入る機械室を見学したりした。
 
発見を共有⁉片岸海岸防潮堤から海を見つめる生徒たち

発見を共有⁉片岸海岸防潮堤から海を見つめる生徒たち

 
 松浦柚希さん(14)は「大きな地震を経験したことがないが、たくさんの人が被害を受ける災害はいつ起こるか分からないから、震災のことを受け継いでいくことが大事だと感じた。実際に歩いてみて、津波の到達した場所が思っていたより広くて驚いた。『情報を信じすぎてはいけない』という言葉が印象に残った。何かあったら命を守るためにできることを考えて行動したい」と意識を高めた。
 
 高橋心鈴さん(15)は「近頃、東京でも地震が連続しているから、防災を学べてよかった。(旅先は変わったけど)楽しいし、結果オーライ」と笑った。被災地を訪ねるにあたり、生徒それぞれが深堀したいテーマを設定しているようで、高橋さんの関心事は、商店街の再生と増加する訪日外国人の受け入れについて。釜石でその一端に触れた後、テーマ別に活動する15日は宮城県南三陸町の復興商店街を訪れ、「別の視点からも理解を深めたい」と意欲を見せた。
 
釜石祈りのパークも見学。生きること、未来を考える機会にした

釜石祈りのパークも見学。生きること、未来を考える機会にした

 
 15日はスポーツや伝承、産業、環境といったテーマの中から生徒が選択して活動。釜石ではラグビー体験、ユニバーサルビーチの取り組みに関する講義、海洋保全を考えるSDGs(持続可能な開発目標)プログラムなどが用意された。
 
 島田校長は「実際に見て聞いて感じる経験が子どもたちにとって大事になる。縁のある釜石で学びつつ、未来や社会に対して何ができるか、自分事して考えるきっかけにしてほしい」と期待。今年2月に釜石の地方創生アドバイザーに就任した学校法人文京学院の島田昌和学院長・理事長も同行し、「東京でも必ず災害は起こると言われている。生活体験のようなこの修学旅行で、いろいろと気がついてもらえたらいい」と見守った。
 
「か・ま・い・Cー」とポーズを決めて写真に納まる生徒たち

「か・ま・い・Cー」とポーズを決めて写真に納まる生徒たち

 
 今回、観光地域づくり法人かまいしDMCが修学旅行を受け入れ、各種プログラムを提供した。今年度、防災学習を含め受け入れた修学旅行生は小中高校を合わせ計20校の約1300人。例年と同程度で推移しているという。修学旅行は秋頃が多い傾向にあり、同社では「これから」とする。
 
 修学旅行の定番とされる地域ではオーバーツーリズムが問題となっているが、訪問先変更に伴う変化は「あまりない」のが現状。それでも好機と捉える同社旅行マーケティング事業部の村上舞子さん(30)は「受け入れの際はどういった学びを得たいか、希望を聞いて提案している。これからも釜石ならではの体験、オーダーメードを売りにやっていく」と話した。

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「おいしいよ~、安いよ~」 釜石小3年生が栽培野菜を販売 「食」テーマの総合学習で

釜石小3年生が自分たちで栽培した野菜を販売する「釜小スマイルマルシェ」

釜石小3年生が自分たちで栽培した野菜を販売する「釜小スマイルマルシェ」

 
 釜石小(五安城正敏校長、児童62人)の3年生13人は本年度、総合的な学習の時間で「食」をテーマとした体験学習に取り組む。4月から継続してきたのが農業体験。市内の農家の畑を借り、さまざまな野菜を育てている。8月には春に植えた2種の野菜を収穫。児童らは9月16日、釜石市大町の市民ホールTETTO前広場で地域の人たちに販売するマルシェを開いた。
 
 児童らが販売したのはジャガイモとカボチャ。カボチャはラグビーボールのような形が特徴の「ロロン」という品種。2019年のラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催を機に市内で栽培が進み、市民には“ラグビーカボチャ”として親しまれている。ジャガイモは500グラム、カボチャは半分に切ったものをビニール袋に入れ、一袋100円で販売した。
 
大きく成長したジャガイモとラグビーカボチャをPR。天候に恵まれ、カボチャは昨年の2倍、41個を収穫できたという

大きく成長したジャガイモとラグビーカボチャをPR。天候に恵まれ、カボチャは昨年の2倍、41個を収穫できたという
 
児童全員でスマイルマルシェの開店を元気に宣言!

児童全員でスマイルマルシェの開店を元気に宣言!

 
開店と同時に多くの買い物客が詰めかけた

開店と同時に多くの買い物客が詰めかけた

 
 午前10時半の開店を前に、会場には多くの人たちが訪れた。児童らの開店の発声とともに、袋を手にした人たちが列を作り、レジ担当は大忙し。代金を受け取ると手作りの領収書に金額を書き、買い物客に手渡した。呼び込み担当の児童は2カ所に分かれて道行く市民にPR。「いらっしゃいませ!」「ジャガイモとラグビーカボチャあります」「3年生が気持ちを込めて作りました」「おいしいですよ」「1種類100円。超安いです」などと元気な声でアピールした。
 
次々と訪れる買い物客の対応に児童らは大忙し

次々と訪れる買い物客の対応に児童らは大忙し

 
代金を受け取り、手書きの領収書を作成。買い物客に手渡した

代金を受け取り、手書きの領収書を作成。買い物客に手渡した

 
呼び込み担当の児童は大きな声で野菜販売をアピール。お客さまを誘導した

呼び込み担当の児童は大きな声で野菜販売をアピール。お客さまを誘導した

 
 孫から「買いに来てね」とLINE(ライン)をもらったという三浦一美さん(70)は2種類購入。「いろいろな野菜を育てたり、みそ作りを体験したりしている孫は、私よりも知識が豊富。今の子どもたちはすごいなぁと思って」と感心しきり。どうやって食べるか聞いてみると…「孫が好きなカボチャのシチューを作ってあげようかな」。愛情たっぷりの答えが返ってきた。孫の三浦唯花さんはこの日、レジを担当。「大きく育った野菜をお客さんに買ってもらえてうれしい」と生産者の喜びを体感した。
 
 イオンタウン釜石からの帰り道、児童らの呼び込みの声に誘われて立ち寄った平田の女性(83)は「みんな一生懸命やってえらいねぇ。私も孫やひ孫がいるので、孫たちの姿と重なった。買ったカボチャ、おいしくいただきます」と笑顔で広場を後にした。
 
 同校3年生の農業体験学習は昨年度から始まり2年目。4月に市水産農林課職員から釜石の農業について学んだ後、上小川の農家藤井茂さんの畑を借りて栽培をスタート。ジャガイモの種イモやカボチャの苗植え、栄養分を集中させ品質の良い作物を収穫するための「芽かき」などを行ってきた。8月にはダイコン、ハクサイ、カブも植えている。今回は収穫した野菜の販売第一弾。この日に向け、児童らは手書きのポスター約50枚を作成し、学区内の店舗などに貼ってもらえるようお願いしたり、家族を通じた告知などを行ってきた。
 
販売会に向け児童らが準備してきた看板や広告ボード、領収書。手書きのぬくもりが伝わる

販売会に向け児童らが準備してきた看板や広告ボード、領収書。手書きのぬくもりが伝わる

 
お客さまとの交流も。マルシェは地域の人たちと触れ合える機会にもなった

お客さまとの交流も。マルシェは地域の人たちと触れ合える機会にもなった

 
 菊池浩央さんは一連の体験学習で「自分たちが植えた野菜が大きく成長してうれしかった。楽しかったのは収穫作業。もっと野菜を育ててみたい」と話し、多くの客の来店ににっこり。「お客さんから『大事に食べます』とか言ってもらえた」と満足そうな表情を見せた。2種の野菜は開始から45分ほどで完売。収益は学校活動に役立てるという。
 
 同校地域コーディネーターとして児童らの学習をサポートする寺田恵美子さん(64)は「子どもたちは慣れない畑仕事に一生懸命取り組み、回を重ねるごとに表情が輝いていった。自然や土に触れ、植物が大きく育って実をつける過程を見ることは情操教育に、販売活動はキャリア教育にもつながる」とし、児童らの成長を見守る。農業体験の締めは11月20日に予定する第2弾のマルシェ。ダイコン、ハクサイ、カブを収穫し、今回のように販売する。

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いつもの暮らしが防災に!釜石・白山小児童、調理実習で学ぶ 命を守る食の大切さ

三浦優佳さん(右)から防災食の作り方を教わる白山小の児童

三浦優佳さん(右)から防災食の作り方を教わる白山小の児童

 
 釜石市嬉石町の白山小(鈴木慎校長、児童27人)で25日、食をテーマにした防災学習があった。国内外で食と栄養に関する活動を展開する公益財団法人味の素ファンデーション(東京都中央区)の協力を受け、全校児童が身近な材料を使った調理を体験。「いつも」の食や暮らしが「もしも」の時に命を守る力として役に立つことを改めて感じる機会にした。
 
 講師は同法人の栄養士で、日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)の一員としても活動する三浦優佳さん(41)。首都圏の学校での出前講座やユーチューブなどで食育と防災を絡めた情報を発信している。実は釜石出身で、白山小の卒業生。今年度で閉校する母校の後輩たちに、自身の経験や知識を伝えることで「何か残したい」と来校した。
 
「いつも」使えて「もしも」にも役立つことを伝える三浦さん

「いつも」使えて「もしも」にも役立つことを伝える三浦さん

 
 三浦さんは東日本大震災後に岩手、宮城、福島の被災3県で実施した復興支援の料理教室で気づいたことや課題を伝え、「災害がきてからでは遅い。『いつも』からの準備が大切」と強調。災害が起きたとしても日常の暮らしで使っているものを代用、工夫し活用する「フェーズフリー」という考え方を紹介した。
 
 フェーズフリーな食べ物とは、▽食べなれている好きなもの▽節電・節水時でも使える▽調理の手間がかからない▽保存がきく―の4つがポイントになるという。三浦さんは「いつもあってうれしい」「もしもの時にもあって良かった」という視点を示しながら、栄養バランスも考えて缶詰や乾物などを備えておくことを提案。「健康な心や体づくりは一番身近な防災。自分の命や健康を自分で守る『自助』の力を高めて、もしもに備えよう」と子どもたちに呼びかけた。
 
食の防災についての講話をメモを取りながら聞いた児童たち

食の防災についての講話をメモを取りながら聞いた児童たち

 
 児童たちはポリ袋や備蓄食品などを使った「どんなときもレシピ」を実践する調理実習に取り組んだ。三浦さんの指導を受けながら作ったのはキュウリとツナの缶詰を使ったあえ物、パックご飯を利用した味つけおにぎり、焼き鳥の缶詰をトッピングに使った餅のピザの3種。あえ物とおにぎりは袋の中で具材を混ぜ合わせると完成し、子どもでも手軽に楽しく食事の準備ができた。
 
防災食づくりに挑戦。ポリ袋に食材を入れて混ぜ込む

防災食づくりに挑戦。ポリ袋に食材を入れて混ぜ込む

 
学年を超え協力して調理。餅のピザづくりは高学年が担当

学年を超え協力して調理。餅のピザづくりは高学年が担当

 
 試食では「おいしい」「しっかり味がある」などと感想を言い合っていた。伊藤志鶴さん(2年)は、三浦さんが話した「一緒に作って食べる楽しさ」を体感し満足げ。これからの生活では「(備えとして)食料を準備する」と話し、「いつもの食事も大事にしたい。残さないように食べる」と思いをかみしめていた。
 
完成したおにぎりを頬張る児童。「一緒に作って食べるっておいしいね」

完成したおにぎりを頬張る児童。「一緒に作って食べるっておいしいね」

 
 今回の防災学習は、釜石市内の小中学校が力を入れて取り組む「いのちの教育」にちなんだもの。白山小ではこの後も同法人と連携した学習を4回実施する予定。10月に災害時を想定したおにぎりのレシピを考えたり、地域課題を話し合ったりして、11月に学習の成果を発表することにしている。
 
 災害時に被災した地域の避難所では、食料が十分に行き渡らなかったり栄養が偏ったりして心身の不調がおこるなど「食と栄養」が問題になることを知った住久杏璃さん(6年)は、食の大切さを再認識。レシピの考案は5、6年生が中心となり、「いざという時に食べてもらえるようなメニューをみんなで話し合いたい」と気持ちを高めていた。
 
災害の時を想定した食のレシピづくりへ意欲を高める児童たち

災害の時を想定した食のレシピづくりへ意欲を高める児童たち

 
 「いのちの教育は自分や周りのみんなの命を大切にするための心の授業」と話し、子どもたちの活動を見守る鈴木校長。「命について仲間と共に一つでも多くのことを学び合ってほしい」と期待する。

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歩いて確認!地域の危険箇所 命を守る手作り防災マップで共有 釜石小で発表会

釜石小で開かれた「ぼうさい安全マップ」発表会

釜石小で開かれた「ぼうさい安全マップ」発表会

 
 釜石市大渡町の釜石小(五安城正敏校長、児童62人)で10日、地震や大雨、台風などの災害ごとの危険場所をまとめた「ぼく・わたしのぼうさい安全マップ」の発表会が開かれた。通学路、遊び場など自分たちが住む地域で見つけた気になるポイントを児童同士で共有。自分の命を守る意識を高め合った。
 
 全校児童が参加。発表は6年生(11人)が中心となり、中高学年も加わった。学区内の5地区(浜町、天神・只越、大只越、大町、大渡)の子ども会ごとに発表。マップには「土砂崩れの可能性」「クマが出る」「排水が大雨であふれるかも」などと危険内容を記した付箋が貼られ、発表者は写真も示しながら津波の指定緊急避難場所と併せて説明した。
 
マップに示した危険箇所について発表する児童

マップに示した危険箇所について発表する児童

 
危険な点を書いた付箋や写真が貼られた手作りマップ

危険な点を書いた付箋や写真が貼られた手作りマップ

 
注意が必要な場所をスライドで示しながら説明した

注意が必要な場所をスライドで示しながら説明した

 
 東日本大震災について、家族らから聞いたことも紹介した。釜石を襲った津波の高さは9.3メートル。襲来時に家屋などを巻き込みバキバキという音が響き渡り、ものすごい勢いだった。2波、3波と繰り返し押し寄せると伝え聞いた天神・只越地区の児童は「絶対に戻らないということを大切にしなければいけません」と強調。大只越地区の児童も「地震が来たら逃げ道を作ることも大事。大津波がくる前に逃げ、絶対に引き返さないこと」と重ねて訴えた。
 
児童は家族らから聞いた東日本大震災のことも伝えた

児童は家族らから聞いた東日本大震災のことも伝えた

 
東日本大震災の津波浸水区域を知ってもらう工夫も

東日本大震災の津波浸水区域を知ってもらう工夫も

 
 マップには、震災の津波浸水区域がひと目で分かるような工夫も。山と川に挟まれた大渡地区は震災時、津波が川をさかのぼり、あふれる水が逆流して大きな被害を受けた。説明した児童は災害発生時、さまざまな危険が重なることに触れながら、「大渡地区にいたら釜石小に避難して命を守ってください」と呼びかけた。
 
 浸水区域の表示は今回初めての試み。マップをまとめた5、6年生が「次に大きな災害、津波がきた時、『ここまでだったから大丈夫』ではなく、より高く、もっと上、もっと上の方へ逃げてほしい」と願いを込めたのだという。
 
東日本大震災の津波浸水区域を示して注意を促す

東日本大震災の津波浸水区域を示して注意を促す

 
 発表を聞いた1年生は「津波が怖い」と感想を話した。そのほかの学年の児童は「川が近く心配なので、早く避難したい」「5地区の避難場所や危険な箇所が分かった。遊びに行ったり、一人の時には気をつけて行動したい」などと受け止めた。菊池浩央さん(3年)は「自分の家が震災の時に流されたところに入っていた。より早く避難場所に着けるようにしたい」と学びを深めた。
 
発表を聞いて学んだことや感想を話す児童

発表を聞いて学んだことや感想を話す児童

 
 釜小ぼうさい安全少年団長の山﨑良菜さん(6年)は「きょうの発表を通して、自分の命は自分で守るということを意識し、本当の災害が起きた時に生かしてほしい。登下校の時、危険な場所を確認しながら歩いて、日ごろから気をつけて生活してもらえたら」と願いつつ、自身も行動への心構えを新たにする機会にした。
 
 マップ作りは震災前から続けられている活動。今年も全児童が取り組み、6月上旬から中旬に自宅周辺の危険な場所を地図に記入。その後、持ち寄った情報を5、6年生が大きな地図にまとめた。避難場所や危険箇所、震災の津波の高さを示す看板などの写真も撮ったり、「みんなに分かりやすく伝わるよう」にした。昇降口に掲示する。
 
月に1回取り組む「釜小ぼうさいの日」。防災に関するメッセージを発信する

月に1回取り組む「釜小ぼうさいの日」。防災に関するメッセージを発信する

 
 震災発生日の3月11日にちなみ、同校では毎月11日を「釜小ぼうさいの日」として総合的な学習に取り組む。五安城校長は「命を守るため、きょうの勉強を大事にした上で、いざという時には自分の目で見て、音を聞いて判断できるようになってほしい」と期待。発表を聞いて「危険」「怖さ」を感じる子もいたようだが、「どこにいても危険はある。自分が住むまちのいろんな面を知ることで、いいところ、危ないところが見えてくると思う。だけど、みんなには今いる場所を好きになってほしい」と見守る。

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先人に鉄 宇宙とつながる釜石 天文学者2人が講演 唐丹「星座石、測量之碑」日本天文遺産認定記念で

「星座石と陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」日本天文遺産認定記念講演会=11日、TETTO

「星座石と陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」日本天文遺産認定記念講演会=11日、TETTO

 
 釜石市唐丹町に受け継がれる石碑「星座石」と「陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」の日本天文遺産認定を記念した講演会が11日、市民ホールTETTOで開かれた。同遺産認定に係る現地調査を担当したNPO法人イーハトーブ宇宙実践センター理事の亀谷收さん(同遺産選考委員)、釜石南高(現釜石高)出身で広島大宇宙科学センター長の川端弘治さんが講演。釜石と宇宙をつなぐロマンあふれる話に約150人が聞き入った。
 
 「星座石」と「陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」は江戸時代に全国を歩いて測量し、初の実測日本地図作成に至った伊能忠敬(1745-1818)が唐丹村(当時)で天体測量したことを示す遺産。両石碑は天文学を学んでいた地元唐丹の知識人、葛西昌丕(1765-1836)が建立した。伊能の業績を存命中に顕彰し、現存するものとしては全国唯一とされる。本年3月、公益社団法人日本天文学会が選ぶ「日本天文遺産」に認定された。認定は歴史的に貴重な天文学、暦学関連遺産の価値を広め、保全、活用を図るのが目的。
 
 亀谷さんは認定の理由として、▽江戸時代末期(1800年代前半)、最先端の西洋天文学の知識が文化的中心地(江戸、仙台)から離れた唐丹にまで伝播していたことを明確に示す資料▽測量之碑の中に「地球の微動あらざらんか」という、西洋の学説を後世の人々に確かめてほしいとの記述がある▽伊能の存命中に作られた石碑が地域住民の保存活動により残っている―ことを挙げた。
 
星座石と測量之碑が日本天文遺産に認定された理由などを話した亀谷收さん

星座石と測量之碑が日本天文遺産に認定された理由などを話した亀谷收さん

 
 星座石に刻まれている緯度「北緯39度12分」は、伊能が1801(享和元)年9月24日に唐丹村で天体測量を行い、求めた値とされる。これは現在の地図と合致するが、葛西は「この緯度が不変なのか、あるいは西洋の学説にあるように地球の微動により変動するのかを後世の人々に解明してほしい」とのメッセージを石碑に残している。
 
 亀谷さんは葛西の地球微動の問いかけに答える形で、緯度変化の要因として考えられる4つの可能性「歳差」「光行差」「章動」「極運動」について、自作の模型を示しながら考察した。自身の見解として示したのは、「1803年以降に存在が分かってきた章動と光行差が(葛西の言う)地球の微動に該当するのではないか」ということ。測量之碑は1814(文化11)年に建立されていて、「葛西が天文学を学んだ仙台でそうした知識を得ていた可能性は十分ある。緯度自体を変化させる極運動が発見されたのは1888年なので、こちらは想定していないと思われる」とした。
 
葛西昌丕が後世に解明を託した「地球の微動」について自身の見解を示す亀谷さん

葛西昌丕が後世に解明を託した「地球の微動」について自身の見解を示す亀谷さん

 
 同遺産認定は全国20例目、本県では3例目となる。亀谷さんは「岩手は星がきれいな“銀河県”。今回の認定で、多くの人にその重要性を知ってもらえれば」と願った。
 
 超新星の研究をしている川端さんは、“近代製鉄発祥の地”釜石と深く関わる鉄を、宇宙に存在する元素からひも解いた。宇宙は138億年前にビッグバンで誕生したとされる。これで生まれたのが水素とヘリウムで、水素は現在、宇宙に存在する全元素の9割を占める。その他の元素は、水素のような軽い原子核どうしがくっついて重い原子核をつくる「核融合」という現象によって生まれた。重い原子核をつくるにはプラスどうしの電気の反発力に打ち勝って原子核を融合させる必要があるため、星の内部のような高温、高圧状態が必要。「炭素、酸素から鉄までの元素は星の中での核融合反応でつくられてきた。鉄は原子核の中で最も安定な元素で、核融合の終着点」と川端さん。炭素や酸素などの重元素ができたからこそ、惑星や生命の誕生につながったことを明かした。
 
「ビッグバンから<鉄>へ:宇宙と釜石のつながり」と題した川端弘治さんの講演

「ビッグバンから<鉄>へ:宇宙と釜石のつながり」と題した川端弘治さんの講演

 
 一方、地球に限って見ると一番多い元素は鉄。地球を形作った物質の3分の1は鉄で、その多くは地球の中心部に存在する。地表付近にある鉄は太古の海が酸化して析出した鉄鉱床。これが隆起した地層があるのが釜石で、「鉄鉱石が採れる所は、ほとんどが海の底だった所。釜石鉱山もそう。宇宙から巡り巡ってきている」と話した。
 
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釜石の鉄鉱石の大元は宇宙でできた鉄元素。宇宙の進化とのつながりに驚き

 
 川端さんは講演の中で、国立天文台のプロジェクトが開発した4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka(みたか)」の映像も上映。地球から観測可能な太陽系、天の川銀河、宇宙の大規模構造をリアルタイムに可視化するソフトで、広大な宇宙を紹介した。人間が肉眼で見えている星は1000光年ぐらいまで。10億光年スケールで見た銀河の分布は銀河どうしが連なり、網の目状の姿を見せている。
 
4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」の映像も上映。地球から観測されている星や宇宙の構造を知ることができる

4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」の映像も上映。地球から観測されている星や宇宙の構造を知ることができる

 
興味深い講演に拍手を送る来場者

興味深い講演に拍手を送る来場者

 
 来場者は普段じっくり触れることのない宇宙の世界に興味をそそられながら、講師2人の話に耳を傾けた。講演後は星座石と測量之碑の管理者、本郷文化財愛護少年団育成会の小池直太郎会長がこれまでの保全活動や今回の遺産認定の住民の受け止めを紹介。認定以降、現地への来訪者が増えていることも話し、さらなる知名度アップに期待を寄せた。
 
本郷文化財愛護少年団育成会の活動などについて紹介した小池直太郎会長(写真左上)。市文化財保護審議会の藤原信孝会長は講演への感謝の気持ちを伝えた(同下)

本郷文化財愛護少年団育成会の活動などについて紹介した小池直太郎会長(写真左上)。市文化財保護審議会の藤原信孝会長は講演への感謝の気持ちを伝えた(同下)

 
ホール前のロビーでは関連資料の展示も行われた

ホール前のロビーでは関連資料の展示も行われた

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「よろしくね!」 来年度統合の栗林小と鵜住居小 学年交流スタート 5年生は宿泊体験学習を合同で

宿泊体験学習を一緒に行い、交流を深める栗林小と鵜住居小の5年生=7月7日、陸中海岸青少年の家

宿泊体験学習を一緒に行い、交流を深める栗林小と鵜住居小の5年生=7月7日、陸中海岸青少年の家

 
 2027年度に統合する釜石市の栗林小(高橋昭英校長、児童25人)と鵜住居小(高橋美友紀校長、児童130人)は、新年度からのスムーズな学校生活につなげようと、同学年児童の交流をスタートさせた。5年生(栗小4人、鵜小21人)は1泊2日の宿泊体験学習を同日程で実施し、自然体験活動やキャンプファイヤーで楽しい時間を共有。児童らは教職員も驚くほど互いに打ち解け、“新生”鵜住居小での学校生活に期待を膨らませた。
 
 両校の5年生は宿泊体験学習に先立ち、6月23日、鵜住居小の校舎で初の顔合わせ。互いに自己紹介した後、同学習で一緒に行うキャンプファイヤーに向け、フォークダンスの「マイムマイム」を練習した。手を取り合って体を動かした後は校内を“探検”。鵜小生が栗小生に教えながら、教室の一部を見て回った。
 
キャンプファイヤーで踊る「マイムマイム」を練習。本番を前にすでに大盛り上がり!=6月23日

キャンプファイヤーで踊る「マイムマイム」を練習。本番を前にすでに大盛り上がり!=6月23日

 
7月の本番を楽しみにフォークダンス練習。たくさんの笑顔が弾ける

7月の本番を楽しみにフォークダンス練習。たくさんの笑顔が弾ける

 
 この日は6年生(栗小5人、鵜小28人)も外国語の授業を一緒に受けた。5年生はその様子も見学。校内には鵜小の5、6年生が栗小生を歓迎しようと黒板に書いたウェルカムボードが置かれていて、心温まる雰囲気の中での交流となった。鵜小の藤原桔平さんは「栗小には保育園の時の友達もいたし、初めて会う人もいて楽しかった。来年、栗小のみんなが来たら笑顔で迎えたい」と心待ちに。栗小の三浦彩南さんは校舎探検で「栗小にはない教室があって驚いた。分からないことも新しい(鵜小の)友達に聞けたので良かった。キャンプファイヤーもみんなと仲良くやりたい」と目を輝かせた。
 
鵜住居小の校内を“探検”。各学年の教室や特別教室などを見て回った

鵜住居小の校内を“探検”。各学年の教室や特別教室などを見て回った

 
外国語の授業を一緒に受けている6年生の教室も見学(写真上)。栗小生は初めて見る校内に興味津々。鵜小の活動を示すものも(同下)

外国語の授業を一緒に受けている6年生の教室も見学(写真上)。栗小生は初めて見る校内に興味津々。鵜小の活動を示すものも(同下)

 
 両校の宿泊体験学習は7月7、8の両日、山田町の県立陸中海岸青少年の家で行われた。7日の日中は同施設の裏山でウオークラリーや沢登りなどの自然体験活動を満喫。夕食後はキャンプファイヤーで交流を深めた。
 
 栗小の高橋校長が扮(ふん)した“火の神”が登場。「友情」「奉仕」「希望」の3つの火を児童の代表に分け与えた。全員で「仲間と助け合う」「世のため人のために尽くす」「明るく素直に生きる」という3つの誓いを唱和。木材を積み上げた井桁に点火すると、勢いよく炎が立ち上った。
 
栗小の高橋校長が扮する「火の神」から3つの誓いが込められた火を分けてもらう

栗小の高橋校長が扮する「火の神」から3つの誓いが込められた火を分けてもらう

 
分火してもらった火を井桁に点火(写真上)。炎を囲みフォークダンス「ジェンカ」を楽しむ(同下)

分火してもらった火を井桁に点火(写真上)。炎を囲みフォークダンス「ジェンカ」を楽しむ(同下)

 
 児童らはたき火を囲んで歌を歌ったほか、5つのグループごとに“出し物”を披露。ダンスやクイズで盛り上がった。栗小の4人は自分たちの紹介を兼ねたクイズを出題。それぞれの好きな漫画、キャラクター、食べ物、色のほか、栗小の全校児童数を3択で答えてもらった。
 
グループの出し物でダンスを披露する鵜小生(写真上)。栗小生も一緒に手を動かし、この笑顔(同下)

グループの出し物でダンスを披露する鵜小生(写真上)。栗小生も一緒に手を動かし、この笑顔(同下)

 
栗小の4人は自分たちの好きなものをクイズで出題。絵を添えた問題を見せながら答えてもらった

栗小の4人は自分たちの好きなものをクイズで出題。絵を添えた問題を見せながら答えてもらった

 
 最後は前回の交流で一緒に練習したマイムマイムの時間。元気な掛け声を響かせながら踊り、一体感を高めた。“火の神”からは「分け与えた3つの火をこれからもそれぞれの心の中で大切に燃やし続けてほしい。楽しかった思い出、みんなで協力したことを忘れずに、明日からまた一歩一歩前進することを誓い、大きく成長していこう」とのお言葉が…。「今日の日はさようなら」を歌って会を締めくくった。
 
辺りが暗くなり始めると、キャンプファイヤーも大詰め。事前に練習してきた「マイムマイム」を踊る

辺りが暗くなり始めると、キャンプファイヤーも大詰め。事前に練習してきた「マイムマイム」を踊る

 
みんなで楽しい時間を共有し、かけがえのない思い出を作った両校の児童

みんなで楽しい時間を共有し、かけがえのない思い出を作った両校の児童

 
 鵜小の藤原奏多さんは「前回の交流会よりも仲が深まった感じ。来年度から一緒に学習するのに向けても一歩進んだのかなって思う。栗小のみんなと一緒になるのが楽しみ」と胸を躍らせた。栗小の栗澤学美さんは「ちょっと不安だったけど、今回のキャンプファイヤーとかで(鵜小の)友達と仲良くなれた。来年、統合しても大丈夫だと思った」と安心できた様子。栗小最後の1年に「もっともっと思い出をたくさん作って、鵜小に行きたい」と思いを込めた。
 
 児童らの活動を見守った鵜小の桜庭大輔副校長は「沢登りとかでも互いに声をかけ合って楽しむ自然な姿が見られ、普段の延長で交流できたのが一番良かった」と実感。スポ少など各種活動ですでに顔見知りという児童もいて、「私たちが思っているより、子どもたちは統合に対する敷居が高くないようだ。鵜小の子たちは一緒になるのをとても楽しみにしている」と話した。
 
夏本番の暑さとなる中、沢登りを楽しんだ児童=写真提供:栗林小

夏本番の暑さとなる中、沢登りを楽しんだ児童=写真提供:栗林小

 
 栗小の高橋校長は「両校の先生方が子どもたちの気持ちづくりを後押ししてくれている。鵜小の子どもたちにも栗小を受け入れてもらっているのがすごく伝わってくる」と感謝。来年4月に顔を合わせる時には「“新生”鵜住居小として、いいスタートを切ってくれると思う」と期待した。両校の来年度統合により、栗小は本年度で閉校する。「まずは各学年の1年をしっかり過ごし、新年度につなげてほしい。“子どもファースト”で負担をかけることなく、やれることは全部やっていきたい」と高橋校長。
 
ウオークラリーはなかなかのアップダウンコース。仲間と力を合わせ10個のチェックポイントを巡る

ウオークラリーはなかなかのアップダウンコース。仲間と力を合わせ10個のチェックポイントを巡る

 
 両校の同学年交流はこの後、鵜小3年生と栗小3、4年生による鵜住居川の水生生物調査を実施。2学期には1、2年生の交流も行っていく予定だ。この他、全校児童の交流も考えているという。

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「釜石艦砲」学ぶ 紙芝居、体験者の生の声に 戦後生まれ「平和」「思い」語り継ぐ

釜石小学校で行われた釜石艦砲射撃や戦争の歴史を学ぶ授業=7月3日

釜石小学校で行われた釜石艦砲射撃や戦争の歴史を学ぶ授業=7月3日

 
 太平洋戦争終戦直前、釜石市が連合軍艦隊による艦砲射撃を受けてから、7月14日で81年を迎えた。8月にも砲撃があり、その2度の「釜石艦砲射撃」の記憶と向き合う取り組みが市内で進められている。記憶のかけらを残す人、経験した親世代から伝え聞いた人たちが、戦争を知らない子どもたちに伝え継ぐ活動をこつこつと継続。その活動に今年は釜石高校の生徒が加わった。同市大渡町の釜石小学校(五安城正敏校長、児童62人)で7月3日に行われた戦禍を語り継ぎ、次世代に平和のバトンを託す授業を紹介する。
 
 釜石小では、市教委が推進する「いのちの教育」の一環で戦災という地元の歴史を学び、命を尊重する心を育む。今年も、市内の小学校などで活動する読書サポーター「颯(かぜ)・2000」(千田雅恵代表)による紙芝居や絵本の読み聞かせがあり、6年生11人が耳を傾けた。
 
 釜石への艦砲射撃は1945(昭和20)年7月14日と8月9日の2度あり、計5300発以上の砲弾が撃ち込まれ、少なくとも782人が亡くなった。「なぜ、釜石は狙われたのか」。概要を説明したメンバーの中嶋るみさん(67)が問いかけた。児童の答えは「鉄を作っていたから」。製鉄所があり、工業都市だった街。「武器をつくらせず、戦えないようにするため」に標的にされたことを改めて理解した。
 
釜石が受けた艦砲射撃の被害状況などを教える中嶋るみさん

釜石が受けた艦砲射撃の被害状況などを教える中嶋るみさん

 
 砲弾の大きさを実感してもらうため、中嶋さんは紙の模型を用意した。最も大きな直径40センチの16インチ砲は重さ約1トン。その重さを想像してもらおうと、メジャーリーガー大谷翔平選手の名を挙げ、「体重はほぼ100キロ。何人分かな?」と質問。艦船の全長については同校の校舎(横幅約80メートル)の2.5倍もあったことを説明に加えた。
 
 攻撃は海上からだけではなかった。艦載機が飛来、機銃掃射を繰り返した。「布団をかぶって逃げた。逃げる人を空から狙い撃ちする機銃掃射も怖かった。弾から逃れるために布団を持って逃げた」。中嶋さんは、かつて父から聞いたことを話した。「両親が亡くなっていたら、私は生まれていない。子ども、孫にも会えなかった。おじいちゃん、そのずっと前の代からつないできた大事な命、そして未来の命も奪うようなひどいことは絶対にしてはいけない」。強い気持ちを込めて訴えた。
 
颯・2000代表の千田雅恵さんの語りに聞き入る釜石小児童

颯・2000代表の千田雅恵さんの語りに聞き入る釜石小児童

 
 読み聞かせで取り上げた紙芝居「私の昭和20年7月14日」は、艦砲射撃で教え子を失った石橋巌さん(故人)が制作したもの。代表の千田さん(63)は「石橋さんが18歳の時に経験したこと、逃げ惑う人、防空壕(ごう)での様子が描かれている。凄惨(せいさん)な表現…怖かったり、気持ちの悪い表現があるかも。気分が悪くなったら耳をふさいでもいいから。無理のないように」と児童に寄り添いながら、ゆっくりと感情の込もった声で朗読した。
 
 「怖い、怖いと言って防空壕に向かって走りました。死ぬ、死ぬと言って逃げた記憶があります」。そう切り出したのは元メンバーで、4歳の時に艦砲射撃を体験した浅沼和子さん(85)。最近、退会したが「じかに経験したことを話すことで伝わることがあると思うから」と語り部は続けることにし、この日も同行した。
 
釜石艦砲射撃から逃れた記憶を伝える浅沼和子さん

釜石艦砲射撃から逃れた記憶を伝える浅沼和子さん

 
体験談に聞き入る児童。地元の歴史や平和に思いを巡らせた

体験談に聞き入る児童。地元の歴史や平和に思いを巡らせた

 
 「4歳の記憶って、特別なことがないと覚えていられないと思う。私は、これ(戦争)で本当に死ぬんじゃないかという思いをしました」
 「夏には花火がありますよね。ヒュー、ヒューと上がる花火。弾が飛んでくると、似たような音がするの。そして短時間でガラスが壊れて、いろんなものが倒れてきて…」
  
 脳裏に焼きついて離れることはない当時の記憶をたどった浅沼さん。太平洋戦争時の南の海の小さな島を舞台に特攻隊の若い兵士と小学生の交流を描いた絵本「すみれ島」の読み聞かせもした。「若い人たちには夢があったはず。かなえられず命を散らせる。戦争はむごい。絶対にしてはダメ。願い、希望がかなう世の中であってほしい」。口調は穏やかながらも、言葉には切なる思い、力が込もっていた。
 
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紙芝居を通して平和の尊さを伝えた(左から)古川明弥さん、川崎夏織さん、川崎由花梨さん

 
 釜石高3年の川崎夏織さん、古川明弥さん、川崎由花梨さんは、釜石艦砲をテーマにした探究活動の学びの成果を発表した。さまざまな文献を調べる中で、戦時中に釜石の捕虜収容所の所長を務めた故稲木誠さんの手記「降伏の時」を知り、「次世代につなぐ必要がある」と実感。手記を元にデジタル紙芝居を制作した。
 
 収容所の管理、捕虜の扱いに最善を尽くしたと考えていた稲木さんだが、終戦後、戦犯とされた。葛藤、苦悩し続けたというが、戦後30年がたったある日、元捕虜のオランダ人から1通の手紙が届いた。その手紙は稲木さんにとって“光”となり、その後、2人は文通を通じて友情を育んだ。
 
 「どんな時でも、人を人として扱うこと。それが戦争をなくす一歩なんだ」
 「戦争は人の心を曇らせ、人を傷つける」
 「だから、あなたたちは戦争を繰り返してはいけない。相手を思いやり、話し合うことを忘れないでほしい」
 
 戦時中、敵国の捕虜であっても大切に扱おうとできる限りのことをした。終生「人を守る心」を語り続けたという稲木さんが残した言葉を「平和のメッセージ」として子どもたちに届けた。
 
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戦時中の写真や戦争を題材にした本などに関心を示す児童

 
 さまざまな視点から戦争の歴史に触れた及川義規さんは「(戦争が)実際に起こったら怖い。『なんで戦争をする必要があるんだろう』ってなる。争いのない世界になってほしい」と強く願った。佐々木結音さんは「教科書だけでは分からないことをたくさん知れた。これからの勉強に生かしたい」と刺激を受け、感謝を口にした。
 
 颯・2000の協力もあって小学生に伝承する機会を得た高校生3人は「戦争の事実を情報として知るだけでなく、そこには人々の生活や気持ちがあったことが伝わればいい」「悲惨な証言もあったが、子どもが負担にならないような言葉を選んだ。前向きになるような表現を」「児童が真剣に受け止めてくれて、頑張ったかいがあった」と感想を話した。今回の学びを高校の後輩にも伝えたいと思っているようで、「さらに深めてもらえたら」と期待していた。
 
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歴史を語り継ぐ思いを強めた颯・2000のメンバー、釜石高の生徒

 
 釜石小では「戦争を身近に考えてもらう機会」として、颯・2000を招いた授業を継続したい考えだ。6年生は今年の市戦没者追悼・平和祈念式(8月9日)で献唱する予定。高校生3人も式の中で、今回の活動を踏まえ成果を発表する。

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釜石でゼミ合宿 東海大観光学部の学生 潮風トレイルで自然体感 地域活性化へ取り組み探る

釜石市の箱崎半島で自然を体感する東海大学の学生たち=6月28日
 

釜石市の箱崎半島で自然を体感する東海大学の学生たち=6月28日

 
 釜石市で6月27日〜29日、東海大学観光学部の学生8人がゼミ合宿を行い、同市内にある「みちのく潮風トレイル」のコースの一つになっている箱崎半島を歩き、地域住民らと交流する中で、資源を生かした地域活性化について考えた。
 
 この合宿は、同学部講師の遠藤晃弘さん(45)=観光学=による遠藤ゼミが昨年から実施。今年も同市箱崎白浜地区の民泊施設「御箱崎の宿」を拠点に、3年のゼミ生が観光メニューのトレイル体験や住民との交流、聞き取り調査に取り組んだ。
 
 27日は、交流会で住民から地域の歴史や東日本大震災での被災、復興の歩みなどを聞いた。同市箱崎町内にある佐々栄商店も訪問。ハイカーと住民の交流拠点となりうる場所として、活用のアイデアを検討した。
 
「御箱崎の千畳敷」のトレッキングに挑んだゼミ生ら

「御箱崎の千畳敷」のトレッキングに挑んだゼミ生ら

 
 28日は、箱崎半島部のトレッキングを体験。潮風トレイルの本コースから外れているが、半島先端部に位置する岩石海岸「御箱崎の千畳敷」に足を延ばした。スタート地点の大沢遺跡駐車場から始まる散策路はアップダウンが続く険しいコース。半島突端の御箱崎灯台までの道のりには、地元住民が漁業繁栄や家内安全を祈願する御箱崎神社があり、学生らは「実は参道」ということを受け止めながら歩を進めた。
 
樹木が生い茂る森の中の散策路を歩く一行

樹木が生い茂る森の中の散策路を歩く一行

 
複数の赤鳥居をくぐり御箱崎神社を参拝。さらに進むと御箱崎灯台

複数の赤鳥居をくぐり御箱崎神社を参拝。さらに進むと御箱崎灯台

 
 半島先端部南側には断崖を下った先に、三陸ジオパークのジオサイトの一つにもなっている千畳敷が広がる。散策路からは崖伝いに急峻、極狭の遊歩道があるが、下りるには十分な注意が必要。学生らは体力、安全を考慮しつつ慎重に下って岩場に立った。
 
散策路から太平洋の絶景を眺め、千畳敷へ向かう学生たち

散策路から太平洋の絶景を眺め、千畳敷へ向かう学生たち

 
展望スポットでの眺めも圧巻。慎重に崖下へ。さらに岩場を進んだ

展望スポットでの眺めも圧巻。慎重に崖下へ。さらに岩場を進んだ

 
壮大な景色を体感する学生。達成感、充実感に笑顔を広げた

壮大な景色を体感する学生。達成感、充実感に笑顔を広げた

 
 見所は満載で、学生はトレイルの魅力を認識した一方で、課題も把握した。駐車場からの往復は約8キロと、なかなかの距離。千畳敷の荒々しい岩場は不安定な場所もある。また散策路は樹木が生い茂る森となっており、動物との遭遇など考えなければいけない要素が増えていることを確認。その上で、地域住民と国内外からのハイカーをつなぐアイデアをそれぞれが思考していた。
 
 トレッキングの後は、箱崎町の桑ノ浜地区に移動。町内会長の小西勝見さん(76)から震災前後の地区の変化、なりわいの漁業など話を聞いた。トレイルの話題では「リアス海岸の景観のすばらしさを生かした観光を歓迎する」と小西さん。ハイカーらしき人を見かける機会が増えていることも話した。
 
潮風トレイルについて感じていることを学生に伝えた小西勝見さん(左の写真)

潮風トレイルについて感じていることを学生に伝えた小西勝見さん(左の写真)

 
 住民は半島部を歩くことの大変さを分かっているが、「ハイカーは十分に理解していないのでは」と不安を口にした小西さん。外国人、一人歩きの人が多いのも心配し、「地域の事情、情報交換ができる立ち寄り場所を設けたらいいのでは」との考えを打ち明けた。そもそもハイカーが地元住民との交流を望んでいるのか、と学生に質問を投げかける場面もあった。
 
 観光を生かしたまちづくりや地域創生に関心が高いゼミ生の宮城侑里さん(20)は「ここでしかできないような体験を大切にしたい」と熱心に活動した。震災復興に取り組んだ住民の地域力、団結力に感心し、漁師と同じ目線となって地域を見つめることも実践。静岡市出身で、Uターンを必須として大学で深めている「地域に密着した観光」への学びをさらに掘り進めた。
 
 学生たちは魚さばき体験などのフィールドワークも展開。29日の活動報告会で気づいたことなどを住民らと共有した。
 
 同ゼミでは、10月に第2弾の合宿を予定。今回の活動を他のゼミ生にも伝え、潮風トレイルを通した地域活性化策を探る。箱崎半島区間はトレイルの中では「難所」と言われるというが、その魅力を多くのハイカーに届け、受け入れる地域の機運醸成にもつながる形を検討。再来する秋にトレイルイベント開催を目指しており、企画立案にも取り組む。
 
学生を見守る東海大講師の遠藤晃弘さん(左)、かまいしDMCの平澤果鈴さん

学生を見守る東海大講師の遠藤晃弘さん(左)、かまいしDMCの平澤果鈴さん

 
 合宿の受け入れは、地元の観光地域づくり法人かまいしDMCが担った。スタッフの平澤果鈴さん(25)が同ゼミの出身で、後輩たちに実践的な学びを提供できると提案。遠藤さんによると、同学部の学生の半数は観光業界を志望するが、希望に沿った道に進むのは難しいのが現状だという。その中で、同法人は草分け的な事業を展開し全国から注目されていることもあり、学生がその取り組みにじかに触れてもらう好機と捉えた。
 
 遠藤さんは「ここはいろんなチャレンジができる学びのフィールド。この小さな集落で若者たちがどんな観光の力を見いだし広げられるか、楽しみ。歩くという基本的なアクティビティで日ごろ活性化していないものを存分に動かしてほしい。五感を開放して」と、学生たちを見守った。平澤さんは「学生目線で新しい釜石PRを」と期待する。

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多彩な創作活動 個性輝く 釜石の美術集団サムディ45 節目の60回記念展

個性豊かな作品で来場者を楽しませた「サムディ45」の60回記念展=6月20日

個性豊かな作品で来場者を楽しませた「サムディ45」の60回記念展=6月20日

 
 釜石市の美術集団「サムディ45」(大野晃平代表)による60回記念展は19日から21日まで、同市大町の市民ホールTETTOで開かれた。市内外の風景や独自の世界観を表現した日本画、洋画、デザイン、切り絵、工芸など幅広いジャンルの作品がずらりと並んだ。その数、150点余り。テーマを決めた企画展示という新たな試みもあり、変化を楽しむ会員たちの熱量が感じられた。
 
 同集団は1967年に結成。メンバーが最初に集まったのが土曜日だったことからフランス語の土曜日「サムディ」と、沿岸の美術愛好家をつなぐ意味で国道45号にちなんだ名称にしたのだとか。創作分野の垣根を超え、個々に活動する表現者たちが参加しているのが特徴だ。現在の会員は20代から80代まで約20人で、年代の幅も広い。県内外の公募展などに出品し入賞入選したり、それぞれが活躍中。そうした中でも作品を持ち寄って展示会を毎年開催しており、節目の60回を迎えた。
 
60回目の展示会を開いたサムディ45のメンバー。笑顔“輝く”

60回目の展示会を開いたサムディ45のメンバー。笑顔“輝く”

 
イカ釣り船や漁港の風景など身近な景色を描いた作品が並んだ

イカ釣り船や漁港の風景など身近な景色を描いた作品が並んだ

 
 今回は15人が出品。県内外の自然風景、四季折々の植物、沿線を走るSL銀河の雄姿などを描いた水彩画や油彩画のほか、繊細な切り絵、フェルトで作った小物作品、コンピューターグラフィックス(CG)といったデジタル技術を駆使して身近な日常や想像の世界をカラフルにポップに表現したイラスト画など、個性あふれる力作がそろった。
 
絵画、イラスト、銅版、彫金などジャンルは多彩。画材もさまざま

絵画、イラスト、銅版、彫金などジャンルは多彩。画材もさまざま

 
ずらりと並んだデジタルアート作品に来場者は興味津々

ずらりと並んだデジタルアート作品に来場者は興味津々

 
 若手会員の発案で、ある画題にちなんだ作品を集めた企画展示コーナーが初めて設けられた。初回のテーマは「釜石の風景」。ショッピングセンターを中心にした街並み、春の漁港、甲子川の夕景、曳(ひ)き船や虎舞といった祭りの様子など9点(7人が出展)を紹介した。会場には、共に腕を磨いた故鈴木睦さん、故菅野幸夫さんの遺作計4点も掲示。どれも会員が所有する作品で、筆致や色づかいの味わい深さを懐かしむ人たちの姿が見られた。
 
「釜石の風景」をテーマにした作品を集めた展示コーナー

「釜石の風景」をテーマにした作品を集めた展示コーナー

 
緻密な技で仕上げられた切り絵作品。体験コーナーもお目見え

緻密な技で仕上げられた切り絵作品。体験コーナーもお目見え

 
フェルトを使った作品に見入る来場者。プレゼントも用意

フェルトを使った作品に見入る来場者。プレゼントも用意

 
 来場した人に喜んでもらおうと、ガラスタイルなど多彩なバーツを使ったデコ写真立てや、花をあしらったちぎり絵のしおりなどのプレゼントを用意するメンバーも。気に入った1点を手に取った人たちは作品との出合いを楽しみ、嬉しそうに持ち帰った。
 
 4月に入会したばかりの木村房子さん(79)は、植物を題材にしたちぎり絵や鳥をモチーフにした木彫りの置物などを多数持ち込んだ。好きな手仕事を独自に続けてきたが、一堂に紹介するのは初めて。「作品を見てもらえてうれしい」と感激した。「きれいだね」との言葉、ものづくりに興味を示してくれる様子をじかに感じられたのも収穫。何かを作り出す楽しさに触れた人たちに「一緒にやりましょう」と声をかけていた。
 
ちぎり絵の作品は柔らかなぬくもりを感じさせ女性に人気

ちぎり絵の作品は柔らかなぬくもりを感じさせ女性に人気

 
簡潔なイラストと文言で訴えかける小田島凌一さんの作品

簡潔なイラストと文言で訴えかける小田島凌一さんの作品

 
 結成当初から在籍している小田島凌一さんは「よく続いてきたな。みんなの協力があってのこと」と感慨深げに会場を見渡した。出展数の多さに驚いたのに加え、さまざまな刺激を受けてか作風が変わった人がいれば、これまでの活動にさらに力を入れ完成度を高めた人もいて、「みんなの頑張りが見える」と会員それぞれの成長、発展に頼もしさを感じている様子だった。
 
 この集団は、当初4人でスタート。今なお精力的に作品を創り出し続けているのは小田島さんだけ。今年出せなかった年賀状や、もう破ることができないはずであろう「ギネス世界記録」として登録されている世界一短い手紙を題材にしたデザイン画など6点(うち4点が新作)を並べた。中東情勢を踏まえ「WARやめろ」と訴える作品も。展示会の看板制作も変わらず担当し、まもなく87歳になろうとも意欲は衰え知らずだ。
 
人が集う一角に展示された大野晃平代表の作品「安養寺」

人が集う一角に展示された大野晃平代表の作品「安養寺」

 
 それに負けず意欲的な大野代表(51)は、50点以上を公開。最新作は大船渡市の安養寺をモチーフにしたデジタルイラストで、檀家や地域との距離感の近さを表現したアットホームな雰囲気に心が和む一作だ。仕事として受けたもので、制作するうえで関係者からヒアリング。そして絵をイメージした後に“忘れる”という作業を幾度か繰り返して仕上げたという。
 
 代表を担い3年目にして、今年から事務局業務も若手が引き継いだ。大野代表は「新生サムディの初めての展示会で、準備にバタバタ…何とか形になった」と息を吐いた。「新しい風を」と考えてはいるが、行動に移すには課題も多いと認識。作品を見てもらうことで会員が創作への意欲を高める機会にする一方、「仕事につながるきっかけに」と望む声もあり、調整に知恵を絞る。「小さくても新しい試みを取り入れていきたい」。会を活性化させながら、さらなる歴史を積み上げていく。