歴史と伝統をかみしめながら校歌を歌う釜石高の生徒ら
釜石市甲子町の岩手県立釜石高校(青木裕信校長、生徒・全日制387人、定時制16人)の創立110周年記念式典は5日、同市大町の市民ホールTETTOで開かれた。在校生、教職員、同窓生ら約550人が出席。歴史の重みを感じながら「鋼鐵(はがね)の路(みち)」を紡ぐ思いを一つにした。
同校の始まりは、1914(大正3)年に設置された釜石女子職業補習学校。学制改革を経て49(昭和24)年、3校の統合により釜石高校が誕生した。高校進学率の向上などで釜石南、釜石北の2高校に分離独立。2008(平成20)年、高校再編で2校が統合し新生「釜石高校」となった。これまでに4万人近くの卒業生を輩出している。
教育理念「文礼一如(ぶんれいいちにょ)」を礎に、広い視野を持った人材の育成に力を入れる。ここ10年間は、変化する生活様式や社会との関係性に対応すべく変革を推進。ICT(情報通信技術)を教育活動に取り入れた生徒主体の探究的な学びや体験学習を重視する。東日本大震災後の復興の道のり、防災の学びを伝える活動も活発。新型コロナウイルス感染症の流行で生活の一変という逆境に直面したが、学び続ける姿勢は変わらない。
釜石高校の創立110周年を記念して開かれた式典
式典で、青木校長が「先輩たちが築き上げた歴史と伝統の重さを受け止め、釜高生としての誇りを持ちながら新しい時代の創造者に。創立110周年を一つの出発点として、鋼鐵の路を紡いでいこう」と式辞。創立110周年記念事業実行委員会の澤田龍明委員長は「今、この時が人生においての経験であり、将来の大きな糧になる。高校時代の一瞬一瞬を大切に過ごしてほしい」とあいさつした。
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式典であいさつした青木裕信校長(左の写真)、澤田龍明委員長
生徒を代表し、前生徒会長の一関航帆(かずほ)さん(3年)は「110年の歴史を持つことは数多くの先輩方が挑戦し、地域に貢献してきた証し。その重みを受け止め、後世に伝えていく決意を新たに、それぞれが高みを目指して挑戦し続ける」と誓った。
釜高生としての誇りを胸に飛躍を誓う一関航帆さん
「岩手の山川 太平洋の……百錬鍛へし 鋼鐵の意志(こころ)……文あり 我等の釜石高校」。校歌斉唱、心一つに声を合わせた。歴代の校長(3人)やPTA会長(4人)、定時制教育振興会長(2人)、同窓会長(2人)、記念事業実行委員長(1人)への感謝状贈呈もあった。
教育理念「文礼一如」が詰まった釜石高の校歌
校歌斉唱。「鋼鐵の意志」をかみしめながら歌う在校生ら
吹奏楽部の生徒らは音に思いをのせて演奏した
式典後は、同校OBで広島大宇宙科学センター長の川端弘治教授(観測天文学)=1989年度卒=による記念講演があった。タイトルは「五葉下ろしと鉄の街に導かれた我が天文学の旅」。高校時代は山岳部に所属し、幾度も登った三陸沿岸最高峰・五葉山(標高1351メートル)などで見た絶景や星空に感動して天文学に興味を持ったこと、部活での経験が現在の研究者人生にも役立っていることを紹介し、「釜石高を選んで良かった」と大きくうなずいた。
高校時代や研究人生を振り返る川端弘治教授
宇宙の成り立ちに大きく寄与する超新星に関する研究に取り組み続ける川端教授。謎に迫る研究の成果を示しながら、「『鉄』は超新星爆発を引き起こし、中性子やブラックホールをつくる特別な重元素。釜石とのつながりを感じ続けていた」と、これまでの道のりを振り返った。
宇宙に関心があるという阿部愛奈(えな)さん(3年)は「ゴールがない研究をすることは大変なこともあったと思う。釜高での経験が今につながっている―という言葉が印象に残った。私も日々の生活、青春を大切にしていきたい」とお礼の言葉。木村妃菜さん(同)が花束を手渡した。
式典会場には生徒らの探究活動を紹介する展示もあった
記念事業は、記念誌「10年小史」の刊行、記念品(トートバッグ)やメッセージパネルの製作など。文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」指定校(第3期)として課題研究に取り組む生徒らを支援する取り組みも行っており、会場となった同ホール内には、研究成果をまとめたポスターが展示された。