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「釜石ふだん記の会」会誌を寄贈〜26年間の活動を刻む「多くの人に見てもらえれば」、市立図書館

「釜石ふだん記の会」会誌を寄贈〜26年間の活動を刻む「多くの人に見てもらえれば」、市立図書館

 会誌を贈った千葉会長(右)と桑畑さん

会誌を贈った千葉会長(右)と桑畑さん

 

 釜石市の文章運動グループ「釜石ふだん記(ぎ)の会」(千葉勝美会長)は11日、26年間の活動で発行した会誌「ふだん記」60冊と会員向けの情報紙159部を小佐野町の市立図書館(高橋悦子館長)に寄贈した。

 

 同会は人生記、旅行記、生活記などいわゆる「自分史」を気軽に文章にして記録する活動を行っているグループ。1992年に県高齢者大学釜石校で開講された自分史の作成講座を受講、修了した二十数人により結成された。グループ名の「ふだん記」とは、普段着からきたもの。よそゆきではなく、上手下手でもない「記録」という思いが込められている。

 

 会誌第1号は同年7月に発行。投稿したのは8人だった。2、3年たって入会した千葉会長(93)=中妻町=によると、「投稿者が少なく、すぐに終わるとみんなが思っていた」という。それに反し、自分史だけでなく、社会や文芸、風物、身近な出来事など多彩な内容の文章が寄せられ、年に2~3号の発行を続けている。

 

 最新刊は、昨年2月に発行した第60号。記念の特集、家族や旅の思い出など13編を掲載している。

 

 現在会員は50~90歳代で、釜石市をはじめ大槌町、北上市、花巻市、埼玉県川越市に10人。元教員、元看護師など釜石と縁のある人たちが、「みんなで書いてみんなで読もう」「気軽に書こう」を合言葉に、文章を寄せている。

 

 東日本大震災や戦争体験、日々の生活で感動したことなどを題材に寄稿している桑畑恒夫さん(83)=大町=は「文字に残すことで当時の思いを忘れず振り返ることができる。仲間の人生を感じることは自分にとってもプラスになる」と話す。

 

 庶民の歴史や思いがいっぱい詰まった会誌を手に、「どんな生き方をしてきたか、残したい」と千葉会長、目指すは「人生、悔いなし」。年齢とともに書くことがおっくうになる―と言うが、生きがいでもある。「会員が保存するより、多くの人に見てもらった方がいい」と今回の寄贈を決めた。

 

 同館では、ちょうど郷土資料の収集に力を入れようと考えていたところ。高橋館長は「地域の人が書いたもので、共感する部分が多いと思う。手作り感満載なところも親しみが持てる。読み継いでもらえるよう大切に保管していく。たくさんの方に見てもらう機会をつくっていきたい」と感謝した。

 

 同会では現在、新刊発行に向け編集作業を進めている。新たな仲間も募集中。問い合わせは千葉会長(電話0193・23・7896)へ。

 

(復興釜石新聞 2019年6月15日発行 第799号より)

 

復興釜石新聞

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復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

貝画で伝える「ありがとう」〜鵜住居スタジアムを壁画で飾る、市内小中学生らの力結集

貝画で伝える「ありがとう」〜鵜住居スタジアムを壁画で飾る、市内小中学生らの力結集

感謝の気持ちが詰まった壁画を背に思いを発信する生徒ら

感謝の気持ちが詰まった壁画を背に思いを発信する生徒ら

 

 縦2・5メートル、横12メートル。ひときわ目を引くモザイクアート(巨大壁画)「ありがとう貝画」が、ラグビーワールドカップ(W杯)の試合会場となる釜石市鵜住居町の釜石鵜住居復興スタジアムに出現した。バックスタンド東側サイドを飾る壁画には、三陸産ホタテやアカザラガイの貝殻約6千枚を活用。市内の小中学生らの力を結集し、アートでW杯を盛り上げようと製作された。

 

 企画したのは、市内の小中学校全14校の児童生徒の代表者による「かまいし絆会議」で、子どもが主役のW杯盛り上げを目的に2017年8月に始動した。加えて、東日本大震災からの復興に取り組む姿を国内外に伝える「三陸防災復興プロジェクト」の一環として実施。今年に入ってから、復興支援への感謝の気持ちを伝える壁画と歌の製作に本格的に取り組んできた。

 

 子どもたちの思いを散りばめた壁画は、大漁旗がモチーフ。郷土芸能の虎舞、未来に向けて進んでいくSL銀河、まちを見守る釜石大観音などをデザインし、ありがとうの文字と「キズナ」との隠れ文字が入っている。

 

 貝殻は各学校に振り分け、赤や青、黄などの塗料で色付け。2千人余りの児童生徒が作業に取り組んだ。色塗りされた貝殻を貼り付ける作業は3月に実施。市内で製作イベントを開き、参加した市民ら約130人が仕上げた。

 

 9日に同スタジアムで開かれた除幕式で、同会議を代表し壁画専門部会の矢内舞さん(唐丹中3年)があいさつ。「一つ一つ思いを込めて色を塗り、他の学校と協力して作り上げた。釜石の明るい未来の実現になれば」と思いを発信した。

 

 小林結愛さん(釜石東中3年)は想像以上の出来栄えに感動。「釜石の魅力がいっぱい詰まっている。良さをたっぷり味わってほしい」とW杯盛り上げに一役買う取り組みに充実感をにじませた。

 

 出席した同会議代表の中学生10人は、感謝の歌「ありがとうの手紙」も披露。各学校からフレーズを募り、専門家の助言を得ながら曲に仕上げられた。

 

(復興釜石新聞 2019年6月12日発行 第798号より)

 

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舞踊の祭典 新ホール彩る、市内外からほぼ満席に〜令和のスタート、華やかに盛り上げ

舞踊の祭典 新ホール彩る、市内外からほぼ満席に〜令和のスタート、華やかに盛り上げ

「令和」への希望を込め、にぎやかな手踊りで締めたフィナーレ

「令和」への希望を込め、にぎやかな手踊りで締めたフィナーレ

 

 釜石市内の舞踊6団体が出演する「舞踊の祭典」が19日、市民ホールTETTOで開かれた。東日本大震災の津波で旧市民文化会館を失った同市で大規模な舞踊の会が開かれるのは、被災後初めて。会場のホールA(838席)は、市内外から詰めかけた観客でほぼ満席状態となり、令和元年のスタートを華やかに盛り上げる32の演目に盛んな拍手が送られた。

 

 音羽会(及川光会主)、古川舞踊教室(古川明美会主)、平稀流糸扇会(麓糸子会主)、出雲流松栄会(三浦すみゑ会主)、天童流美輝優会(小笠原ちゑ子会主)、高雅会(高橋文子会主)から総勢約30人が出演した。

 

 1部は、及川会主が1987年に発表した創作神楽「忍龍の舞」を当時の映像で披露。悪化する地球環境の現状に警鐘を鳴らす舞台が30余年の時を経て再現された。古川会主が、古くから伝わる舞台清めの祝儀の舞「寿三番叟」を披露。豊年満作の祈りも込められた伝統の舞で1部を締めくくった。

 

熟練の舞で客席を沸かせた音羽会及川会主の「天竜三度笠」

熟練の舞で客席を沸かせた音羽会及川会主の「天竜三度笠」

 

 2部は各会の会主、会員と特別出演の鼓乃美流、さんさ鼓乃美会主によるステージ。高校生から80代まで幅広い年代の踊り手が多彩なジャンルの舞で観客を魅了した。股旅、マドロス舞踊では、客席から掛け声も。この日を待ちわびていた観客は目を輝かせながら舞台に見入り、楽しい時間を満喫した。

 

さまざまな演目を楽しみ、大満足の観客ら

さまざまな演目を楽しみ、大満足の観客ら

 

 大槌町から足を運んだ田代勝行さん(73)は「みんな上手。見ている方も心が躍った。元気になれる舞台はいいね」と大喜び。妻の正子さん(72)は「震災の悲しみを吹き飛ばすよう。ここまで復興してきたと思うと感動です。こういう催しがいっぱいあるといい」と声を弾ませた。

 

 同祭典は及川会主の呼び掛けで実現。「津波犠牲者を追悼しながら、自分たちも心の支えになればと企画した。満席の観客に感謝とうれしさでいっぱい。世代交代を図りながら、今後は若い人たちに頑張ってもらいたい」と及川会主(85)。釜石の舞踊のさらなる発展に期待を込めた。

 

(復興釜石新聞 2019年5月22日発行 第792号より)

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亡き母の思いかなえる「ちぎり絵展」、第二の古里 釜石で実現〜伊藤百代さん、新聞紙素材に独自の世界

亡き母の思いかなえる「ちぎり絵展」、第二の古里 釜石で実現〜伊藤百代さん、新聞紙素材に独自の世界

会場には伊藤さんの創作意欲がみなぎる作品が並んだ

会場には伊藤さんの創作意欲がみなぎる作品が並んだ

 

 第二の古里釜石で生きた証しを―。1992年まで31年間、釜石市で暮らし、今年1月20日に病で亡くなった伊藤百代さん(享年87)=東京都町田市=の新聞ちぎり絵展が、4月27~29日の3日間、釜石市民ホールTETTOで開かれた。80歳を過ぎてから独自の手法で芸術性の高い作品を生みだしてきた伊藤さん。昨年9月に釜石での個展開催を決め、準備を進めていたが、11月に病が見つかり帰らぬ人となった。「母の思いをかなえたい―」。長女の田中千賀子さん(60)ら家族が遺志を継ぎ、念願の“釜石展”を実現させた。

 

 会場には、伊藤さんが遺した新聞ちぎり絵や絵手紙、スケッチ画など100点以上が並んだ。絵手紙教室の教材で出会った新聞ちぎり絵に夢中になり、自分なりの創作法を確立した伊藤さんは、大小さまざまな作品を制作してきた。素材とするのは新聞紙の色刷り部分。描きたいものの写真などを見ながら、指でちぎった新聞紙を直接貼り付けて仕上げる。こだわりは、はさみやナイフを一切使わない、下書きはしない、着色はしないこと。一目では新聞紙をちぎったとは思えない油絵のような質感が見る人を驚かせる。

 

 伊藤さんが好んだモチーフは植物や風景。中には欧州各国などを旅した際の思い出の作品も。その国の新聞を使うのも“こだわり”だという。新聞ちぎり絵の絵手紙作品には、味わいのある言葉も添えられる。

 

生前の伊藤百代さん(右)と夫の孝さん

生前の伊藤百代さん(右)と夫の孝さん

 

 伊藤さんは静岡県湖西市出身。編み物師範として東京で働いていた時に釜石出身の伊藤孝さんと結婚し、61年、釜石に移り住む。2人の子どもを育てながら、大町商店街で事務員として働き、夜は編み物も教えた。81年、夫孝さん(当時46)が脳出血で倒れてからは、介護を続けながら生計を支えた。92年、伊藤さんが60歳の時に長女家族と同居するため、東京都町田市に移住。半身不随の夫の介護、孫の世話と忙しい日々を送った。

 

 孝さんが晩年大病を繰り返し、介護も大変になる中、精神的に落ち込む母を見かねた千賀子さんが「気晴らしに」と勧めたのがカルチャー教室。絵手紙が80歳の伊藤さんの支えになった。孝さんはその数カ月後、2013年3月に旅立った(享年78)。

 

 新聞ちぎり絵に生きがいを見いだしていた伊藤さん。釜石で個展を開こうとしたきっかけは、昨年9月に見た釜石特集のテレビ番組だった。震災を乗り越え前に進む市民の姿に涙し、「ぜひ釜石の皆さんに見てもらいたい」と、すぐに会場探しに着手。同月、元気に会場の下見にも訪れていたが、11月、腎臓がんが見つかり緊急入院した。

 

 「10月には食欲も落ちていたが、『心配しないで大丈夫』と言い続けていた。痛みもあっただろうが母は我慢強い人なので…」と千賀子さん。診断後、家族には命の危険も告げられていたが、病床では締め切りが迫った絵手紙展への応募を気にかけ、具合が悪いのを押して作品に筆を入れることも…。亡くなる3日前まで創作への情熱を燃やし、うわ言を口にしていた。

 

 <p class="cap">昨年10月に制作された新聞ちぎり絵の作品。釜石愛がにじむ</p>

昨年10月に制作された新聞ちぎり絵の作品。釜石愛がにじむ

 

 80歳からの挑戦。決してあきらめない姿勢。伊藤さんの生きざまが詰まった遺作展に、千賀子さんは「母の人生は苦労の連続。最後の最後に自分が打ち込めるものに出会い、こうして皆さんに褒めていただける花を開いた。母は愛情あふれる人だった。その愛を少しでも感じてもらえたなら」と思いを込めた。

 

 伊藤さんの個展は、17年に東京で初めて開催して以来2回目。

 

(復興釜石新聞 2019年5月8日発行 第788号より)

 

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「三陸は一つ」ブラスで奏でる、ルート45港町コンサート〜沿岸5団体、釜石の新ホールで熱演

5団体の合同ステージは圧巻。観客も出演者も音楽の素晴らしさを体感した

5団体の合同ステージは圧巻。観客も出演者も音楽の素晴らしさを体感した

 

 三陸沿岸5市の社会人吹奏楽団が一堂に会しての「ルート45港町コンサート」が21日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。三陸縦貫自動車道の早期完成を願い、1997年、釜石を皮切りに始まったコンサートは今年で21回目。釜石開催は東日本大震災後初めてで、同道路の釜石区間全線開通、待望の新ホールでのコンサート実現に、会場内は大きな感動に包まれた。

 

 1部は4団体による単独ステージ。ぷなと音楽団(大船渡)の「恋はあせらず」など2曲で幕を開け、気仙沼市民吹奏楽団が「昭和歌謡コレクション」で盛り上げた。宮古吹奏楽団は「珍獣ハンターイモトのテーマ」など2曲、釜石市民吹奏楽団は「風の谷のナウシカ」から1曲を届け、変化に富んだ楽曲で観客を楽しませた。

 

 2部は陸前高田市民吹奏楽団が加わり、5団体145人の合同ステージ。「イーグルの翼にのって」、「風紋」、バレエ音楽「ガイーヌ」を奏でた。舞台上を埋めた団員らは練習で磨いた技術、表現力を存分に発揮。大迫力の音量の一方で、各楽器の美しい音色も際立ち、観客の心を震わせた。アンコールに応え、「ラデツキー行進曲」など2曲で締めくくった。

 

 北上市から訪れた多田昭則さん(57)は「沿岸を盛り上げようというパワーを感じる。道路や鉄道の開通で、まち同士のつながりも深まっている印象」と交通網の整備効果を実感。TETTOの催し物をチェックし足を運んでいるといい、「北上からも1時間ちょっとで来られる。楽しみが増えました」と声を弾ませた。

 

 釜石東中の吹奏楽部員、佐々木清子さん(1年)は「今まで聞いた中で一番人数が多く、きれいな音だった。大人の演奏はやっぱり違う。自分はフルートを始めたばかり。先輩たちみたいに上手になりたい」と刺激を受けていた。

 

 同コンサートは宮古、釜石、気仙沼の3団体が立ち上げ、毎年各地持ち回りで開催。2008年に大船渡が加わり順調に回を重ねていたが、11年の震災で2年間の休止を余儀なくされた。13年、再び気仙沼に集い、コンサートを復活。16年に活動を開始した陸前高田も今年から仲間入りした。

 

 12人で参加した陸前高田市吹の山本健太団長(33)は「こんなに大人数は初めて。心配もあったが、胸を借りる形で楽しんで演奏できた」と大喜び。「今後も他楽団との共演を通じ、技術向上を図りたい。大人になっても吹奏楽を続けられることを地元中・高生にも見せられたら」と意欲を示した。

 

 新年度から団長を務める釜石市吹の谷澤栄一さん(60)は「毎年、車で移動しながら練習を重ねる私たちにとって(三陸道開通による)移動時間の短縮は、練習率を向上させ、質の高い練習を可能にした。沿岸の音楽仲間の結束が一層強くなっているのも道路のおかげ」と感謝。これまでに育まれた友情や切磋琢磨(せっさたくま)が深化することを願いながら、「互いの行き来が飲食や観光の機会を増やし、経済交流にもつながれば」と期待した。

 

 復興道路としてかつてないスピードで整備が進む三陸道。宮古―気仙沼間は19年度中の全線開通が見込まれる。

 

(復興釜石新聞 2019年4月24日発行 第785号より)

 

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タブレット画面を注視しながら高い解説機能を確かめる参加者

橋野鉄鉱山ガイドアプリ完成、世界遺産ARで動画〜報道関係者に現地で公開、一般利用は4月20日から

タブレット画面を注視しながら高い解説機能を確かめる参加者

タブレット画面を注視しながら高い解説機能を確かめる参加者

 

 釜石市は、2017年にユネスコ世界遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成要素として認定された釜石市橋野町青ノ木の「橋野鉄鉱山」の価値をより広く知ってもらおうと、アプリを整備。その説明会が16日、橋野高炉跡で行われた。釜石観光ガイド会(三浦達夫会長、30人)が参加し、報道関係者に公開した。一般の利用はきょう20日からスタートする。

 

 アプリに入力されたのは高炉のほか石切り場、種焼場(たねやきば)跡など11カ所。専用タブレット10台を受け取ったガイド会の会員は鉄鉱山の大門から一番高炉に向かい、二番、三番高炉を巡った。

 

 タブレット端末はGPS(全地球測位システム)機能を使い、訪れた史跡内の遺構を音声、文字、画像で解説する。中でも二番高炉跡は、県指定文化財の絵図(「紙本 両鉄鉱山御山内並高炉之図」)に基づき、VR(仮想現実)で復元し、操業当初(1860年代初頭)の高炉の仕組みや規模が体感できる。

 

操作の習得に集中するガイド

操作の習得に集中するガイド

 

 アプリで解説する11カ所をすべて巡ると、周辺環境と一体化させた画像のAR(拡張現実)がグレードアップ。10問のクイズに正解しても同じ上級機能が起動する。市内の製鉄関連10史跡ごとのARカードも作成。タブレットやスマートフォン(スマホ)をかざすと、3D(立体的)画像の高炉が浮かび上がり、史跡の訪問数やクイズの回答でグレードアップする。

 

 このガイドアプリの利用は、橋野鉄鉱山インフォメーションセンターでのタブレット貸し出し、スマホでもQRコードの読み取り(googleplay、Applestore)で可能だ。高炉の一番と三番は、県が整備した静止画像や文字での説明アプリが先行している。

 

 タブレットの利用は午前9時半~午後3時半、料金は1台300円で1時間使える。従来から提供する8個の音声ガイドペン(4カ国語対応)も継続する。

 

 説明会に参加した同ガイド会の川崎孝生さん(78)は「自由に使いこなすのは難しいが、勉強する。若い人や操作に慣れた人なら楽しめるだろう。最近は大震災の被災に関するガイドは少なくなり、橋野など文化財のガイドが多い。自分の言葉で、みなさんと直接やりとりする案内が主になる」と語った。

 

 市世界遺産課の森一欽課長補佐は「橋野鉄鉱山や製鉄について理解を容易にし、楽しむことで、(来訪者の)施設内、全市の回遊性を高めたい」と期待する。

 

 アプリの整備は国と県の助成を受け、昨年度に取り組んだ。総事業費は1300万円。

 

(復興釜石新聞 2019年4月20日発行 第784号より)

関連情報 by 縁とらんす
橋野鉄鉱山をVR・ARで体感しよう!!

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「感動を伝えられるピアニストに」日本音楽コンクール1位の小井土文哉さん〜さらなる飛躍へ古里で演奏会

「感動を伝えられるピアニストに」日本音楽コンクール1位の小井土文哉さん〜さらなる飛躍へ古里で演奏会

地元釜石での初公演。思いを込めた演奏を披露する小井土さん

地元釜石での初公演。思いを込めた演奏を披露する小井土さん

 

 釜石市出身で桐朋学園大ソリスト・ディプロマコースの小井土文哉さん(23)=東京都在住=によるピアノ・リサイタルが6日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。昨年10月の第87回日本音楽コンクールピアノ部門本選での1位受賞を記念し、地元での初公演。古里で奏でる喜びと感謝の思いを優美な音色に乗せ、詰め掛けた来場者約800人を魅了した。

 

 大只越町出身の小井土さんは、3歳でピアノを始めた。釜石小5年で東北ショパン学生ピアノコンクール小学生の部で金賞、進学した盛岡一高在学中に全日本学生音楽コンクール東京大会高校生の部で1位を受賞。桐朋学園大進学後も国内外の音楽コンクールで数々の賞を受賞している。

 

 同大を首席で卒業し、現在、同コース2年に在学中。昨年、若手演奏家の登竜門とも言われる第87回コンクールで最高の栄誉に輝いたのに続き、今年3月には英国の著名なピアノコンクールであるヘイスティングス国際ピアノコンチェルトコンペティションでも1位を獲得した。

 

 公演では、バッハの「フランス組曲第5番」やブラームスの「4つの小品Op.119」、最も好きな作曲家として挙げるロシア人のスクリャービン作曲「ソナタ第2番・幻想ソナタ」などアンコールを含めて7曲を演奏した。

 

公演終了後、感動を伝える観客らに笑顔で応える小井土さん

公演終了後、感動を伝える観客らに笑顔で応える小井土さん

 

 小学1年からピアノを続けている小佐野町の菊池莉歩さん(釜石高2年)は「好きな曲への思いが込められた素晴らしい演奏。表現力が卓越。好きなことを仕事にできるのがすごい。好きなことにまっすぐに取り組み、努力する姿勢を見習いたい」と力をもらった。

 

 小井土さんが音楽の道を志すきっかけとなったのは、高校進学直前に発生した東日本大震災。実家は幸いにも直接の被害を免れたが、音楽どころではなく、ピアノから遠ざかった。戻るきっかけとなったのが震災後に盛岡市で開かれた演奏会。「心に響いた。その感動を自分の演奏で届けたい」と道を定めた。

 

 道のりは平たんではなかったが、さまざまな自分を表現できるピアノを追求し、地元で演奏する喜びを選曲に込めた小井土さん。「びっくりするくらい多くの人に聴いていただいた。やりがいがあった」と充実感をにじませた。

 

 高校時代に地元を離れたが、「音楽活動の根本にあるのは釜石。古里の風景を思い浮かべて演奏することもある。続けられること、聴いてもらえることに感謝の気持ちでいっぱい」と小井土さん。演奏する楽しみをより深めた様子で、「感動を伝えられるピアニストに」と力を込めた。

 

(復興釜石新聞 2019年4月10日発行 第781号より)

関連情報 by 縁とらんす
小井土文哉 ピアノ・リサイタル
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照井翠さん(前列中央左)の初エッセー集出版を祝おうとサイン会に集まった釜石市民ら

俳人 照井翠さん、「釜石の風」出版〜震災の現実を浮き彫りに、エッセーに思い凝縮

照井翠さん(前列中央左)の初エッセー集出版を祝おうとサイン会に集まった釜石市民ら

照井翠さん(前列中央左)の初エッセー集出版を祝おうとサイン会に集まった釜石市民ら

 

 東日本大震災当時、釜石高教諭で、被災の過酷な現状を俳句に詠んだ照井翠(本名・葉子)さん(56)=北上市在住、現北上翔南高教諭=が、2013年から俳誌や新聞に発表してきたエッセーを1冊の本にまとめ、出版した。タイトルは「釜石の風」(コールサック社、税込み1620円)。被災地をつぶさに見つめ、湧き立つ思いをつづった文章が、震災の現実を浮き彫りにする。

 

照井翠エッセイ集 釜石の風

 

 国語教諭で俳人の照井さんは勤務先の釜石高で被災。避難所となった同校で生徒や住民と1カ月余り避難生活を共にした。発災直後から突き動かされるように詠み続けた俳句は、12年に句集「龍宮」として出版され、第12回俳句四季大賞、第68回現代俳句協会賞特別賞を受賞した。

 

 13年に俳誌「藍生(あおい)」を主宰する黒田杏子さんから、エッセー連載の打診を受け、同年11月号から毎月寄稿。連載5年を機に昨年11月、エッセー集出版の話が持ち上がった。同誌に寄せた60回分のエッセーに、共同通信社加盟の全国約40社の新聞紙上や各種俳句総合誌に掲載された文章、国際シンポジウムで講演した要旨などを加え、全255ページのエッセー集が完成した。各編には、照井さん自らが撮影した59枚の写真も添えられる。「藍生」の連載タイトル「釜石の風」が同書にも使われた。

 

 震災後、市内外の被災地を訪ね、見聞きしたこと、感じたことを俳人、教育者の視点で記したエッセー。「震災とは何か」という思索の中で、「この悲しみ、苦しみは決して癒えることはない」と気付かされた。

 

 震災から3年目の「藍生」14年3月号の記述。「被災地では、私達は三月を愛さないし、三月もまた私達を愛さない」。鵜住居地区防災センターの惨劇を書いたこの回は、3年目にして深まる苦悩や絶望を色濃く映し出した。

 

 一方で、釜石高野球部のセンバツ甲子園出場など同校の出来事、復興に向かうまちの様子、自然の営み―といった被災地の希望に焦点を当てた回も。震災にからみながらも「読んでいてどこかほっとする部分」にこだわった。

 

教え子、鈴木大和さん(左)との再会を喜ぶ照井さん

教え子、鈴木大和さん(左)との再会を喜ぶ照井さん

 

 随想という観点から、短い文章の中に思いを凝縮。俳句的手法を用いた文章で、一つの言葉からさまざまな発想、想像を呼び起こすよう構成された。

 

 当初、文章で書くことは考えていなかった。場を与えられ、5年間書き継いできたことで「震災の本質を見つめ、揺れ動く心を書き残すことができた」と話す。復興は進むが、いまだに心の整理がつかない人もいる。

 

 「震災後の日々は永遠に終わらない」

 

 震災から8年―。風化だけでなく、今後、震災自体を知らない世代が増えていく。照井さんは「日付や写真も盛り込み、記録的要素もある。長いスパンで読み継がれてほしい」と願う。

 

(復興釜石新聞 2019年3月16日発行 第774号より)

 

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復興応援「おひなさま色紙」〜「製鉄のまち」北九州市から今年も

復興応援「おひなさま色紙」〜「製鉄のまち」北九州市から今年も

今年も北九州市から届けられた「おひなさま色紙」

今年も北九州市から届けられた「おひなさま色紙」

 

 釜石の復興を応援する「おひなさま色紙展」(釜石市芸術文化協会主催)が、釜石市港町のイオンタウン釜石で開かれている。北九州市で書道や絵手紙を教える近藤紫鳳さん主宰の「紫鳳会」の会員が制作した絵手紙調の色紙を展示。応援の気持ちをつづった書の色紙、かな書道の手紙も並んでいる。

 

 同じ「製鉄のまち」という縁で2011年に北九州市から応援メッセージが添えられた色紙が届いたのをきっかけに同展が始まり、今回で8回目。これまでに贈られた作品に加え、新たに11枚の色紙が届いた。

 

 150点余りになる作品は、2階と3階のイベントスペースに分けて紹介されている。色鮮やかに描いたお内裏さまに「春のひだまり何かいいことありそうな」「あなたと二人未来に向かって」などとメッセージを添えた色紙や、被災地を思う気持ちをつづった書作品を展示。今年はラグビーワールドカップ(W杯)を応援する特別色紙も並んでいる。

 

 23日は開会式があり、市芸文協の河東眞澄会長が「温かみのある作品を見て、心をほっこりさせてほしい」あいさつ。バンド演奏や舞踊などステージ発表もあり、開会に彩りを添えた。

 

かわいい「おひなさま色紙」に彩りを添えるバンド演奏

かわいい「おひなさま色紙」に彩りを添えるバンド演奏

 

 展示は3月3日まで。期間中には大正琴の演奏などがあり、2日午前11時からは釜石芸能連合、同午後1時から「唄と語りの会 彬子とマチ子」が出演。3日は午後1時から釜石民謡クラブ、県芸文協の支援による記念演奏「ギターと声楽のコラボレーション」を予定している。塗り絵や折り紙、お手玉づくり、切り絵(3日のみ)などの体験コーナーも設けられている。

 

 今年も来場者には抽選で展示された色紙をプレゼントする。会場にある応募用紙に必要事項を記入し、応募箱に。最終日に抽選会を行う。

 

(復興釜石新聞 2019年2月27日発行 第769号より)

 

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釜石市の無形文化財に指定されている「尾崎町虎舞」

勇壮虎舞 大集合、全国フェスティバル〜県内外の10団体熱演、松山市(愛媛)から25年ぶり

釜石市の無形文化財に指定されている「尾崎町虎舞」

釜石市の無形文化財に指定されている「尾崎町虎舞」

 

 釜石市内外の虎舞団体が集う「全国虎舞フェスティバル」(幸せ出ずる国いわて実行委員会、釜石観光物産協会、市主催)は10日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。2010年から継続され、9回目の開催。11年の東日本大震災を乗り越えた7団体と、愛媛、青森両県から招かれた3団体が、各地伝統の舞を披露。4時間半にわたる公演に約2千人(主催者発表)が来場し、多様な舞を楽しんだ。

 

 演舞に先立ち、文科省から「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定を受ける釜石高の3年生3人が、ゼミ活動で南部藩の虎舞の起源を探った研究について発表した。同研究は第12回全国高校生歴史フォーラム(奈良大、奈良県主催)で評価され、最高賞の一つ「知事賞」を受賞している。高校生ならではの視点、熱心な探究姿勢が光る内容に会場から大きな拍手が送られた。

 

 演舞は、かまいしこども園を皮切りにスタート。市内からは平田青虎会、只越虎舞、尾崎青友会、箱崎虎舞保存会、錦町青年会、大槌町からは向川原虎舞、青森県からは日ケ久保虎舞(おいらせ町)、長者山麓八戸虎舞(八戸市)が出演した。 

 

元気いっぱいの子虎が跳ね踊るかまいしこども園の演舞

元気いっぱいの子虎が跳ね踊るかまいしこども園の演舞

 

 愛媛県松山市の「古三津虎舞」は、1992年に三陸・海の博覧会関連イベントとして初開催された同フェスに出演以来の来釜。同虎舞保存会(岡田利康会長)の17~85歳のメンバー12人が駆け付けた。 

 

 同虎舞は、1597(慶長2)年の豊臣秀吉第2回朝鮮出兵に参じた初代松山城主・加藤嘉明が、朝鮮の山中で虎狩りを行い、頭と皮を秀吉に献上し喜ばれたという言い伝えが元になっている。虎狩りに参加した兵士に古三津地区出身者が多く、その勇敢さを虎退治の舞で表現し、語り継いできたとされる。

 

鉄砲を持つ「勢子」に対抗して虎が舞う「古三津虎舞」

鉄砲を持つ「勢子」に対抗して虎が舞う「古三津虎舞」

 

 同会事務局の岡田賢二さん(56)は「約25年ぶりの再訪に縁を感じる。愛媛では唯一の虎舞団体で、普段、他地域の虎舞を見る機会がないので、こういう場は刺激になる。ありがたい」と、伝統芸能がつなぐ交流を喜んだ。

 

 震災後の市民に復興へ向かう力を与え、逆境に負けない「釜石人魂」を内外に発信してきた同フェス。これまでシープラザ遊やイオンタウン釜石駐車場など各所を転々としてきたが、昨年から新設された市民ホールでの開催が可能となった。

 

 友人らと3人で鑑賞した甲子町の女性(77)は「祭りのお通りと違い、踊りをじっくり見られるのがいい。太鼓やかねの音を聞くと気分も高まる。釜石の虎舞が一番好き。リズム感と躍動感があって、何回見ても飽きない」と声を弾ませた。

 

(復興釜石新聞 2019年2月13日発行 第765号より)

関連情報 by 縁とらんす
第9回全国虎舞フェスティバル
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