
運動会で「小川しし踊り」を披露する小佐野小児童。長年の伝承の取り組みに「いわてユネスコ文化賞」が贈られた(写真提供=小佐野小)
釜石市立小佐野小(松本孝嗣校長、児童249人)は、岩手県ユネスコ連絡協議会(三田地宣子会長)の2025年度顕彰で「いわてユネスコ文化賞」を受賞した。児童らが代々取り組んできた地元郷土芸能「小川しし踊り」の伝承活動が認められたもの。学校統合前の旧小川小から受け継ぐ活動は今年で48年―。地域の誇り、郷土愛を育む活動は児童らの成長に大きく寄与している。
同協議会は教育、科学、文化の分野で他の模範となる活動を行う児童生徒や指導者を「いわてユネスコ賞」として顕彰している。第30回の本年度は11件(科学賞2、文化賞6、活動奨励賞2、教育賞1)の表彰があり、小中高10校と1個人が受賞した。

県ユネスコ連絡協に代わり、釜石ユネスコ協会の岩切久仁会長(左)が小佐野小の松本孝嗣校長(右)に表彰状と盾を届けた=11月26日、同校
小佐野小への表彰伝達は11月26日、同校で行われた。釜石ユネスコ協会の岩切久仁会長、佐々木聡理事、岩間千枝子理事、高橋宏樹事務局長が訪問。岩切会長が松本校長に表彰状と盾を手渡した。松本校長は「子どもたちにとって、受賞は大きな励みになる」と感謝。全校朝会で報告する際に「受賞の意義をしっかり伝えたい。先輩たちが長い間続けてきた価値を知ることで、『自分たちも』と継続の意識が高まると思う。自己肯定感を得ることにもつながる」と話した。

小佐野小の小川しし踊り伝承活動について懇談する関係者
同校では総合的な学習の時間などを利用し、毎年5、6年生全員がしし踊りに取り組む。小川しし踊り保存会(佐々木義一会長)のメンバーが学校を訪れ、児童らを指導。踊り、太鼓、笛など演舞に必要な役割を分担し、パートごとに練習を重ねる。演舞を披露するのは運動会や学習発表会など。保護者や地域住民の前で練習の成果を発表し、多くの感動を与えている。

5月24日に開催された運動会では5、6年生のしし踊りがオープニングを飾った(写真提供:小佐野小)

今年度の5、6年生は計約100人。しし頭のほか、小踊り、太鼓、笛などを役割分担(同)
約140年の歴史を誇る小川しし踊り(市指定文化財)。同保存会は地元芸能の伝承、担い手育成を目指し、1977(昭和52)年頃から当時の小川幼稚園、小川小で芸能指導を開始。2005年に小川小と統合した小佐野小でもその取り組みが受け継がれ、現在に至る。保存会は指導者の立場として、昨年度の「いわてユネスコ教育賞」を受賞している。
同保存会副会長として児童らの指導にもあたる釜石協会の佐々木理事は「小川小の運動会でしし踊りを踊り始めたのが私たちの世代」と歴史の重みをかみしめる。全国的に伝統文化の継承が課題となる中、「地元の団体と学校が一緒になって伝承に取り組むのは意義あること。歴史あるものには先人の教えもある。大切にしていくことで、結果的に郷土愛にもつながるのでは」と期待した。

小川小卒業生で保存会副会長の佐々木聡さん(右)は学校統合後も続くしし踊りの伝承活動に喜びを表した

児童らはそれぞれの役割を果たし、一体感あふれる演舞で保護者や地域住民を魅了した(写真提供:同)
同校の活動を推薦した釜石協会の岩切会長は「指導する側と受ける側、双方が受賞できたことは大変うれしい。こうした活動は両者の思いが合致しないと成り立たない。学校のカリキュラムで活動環境を整えてくださっているのは心強い」とし、地域の素晴らしさを感じながら育つ子どもらの健やかな成長を願った。









































































































