タグ別アーカイブ: 文化・教育

オーケストラと名曲の数々を届けるあんべ光俊さん

あんべ光俊さん企画 思い出の校歌 高らかに〜第2部は復興祈念コンサート

現在の日向グラウンドの場所にあった「鵜住居中」の校歌を歌う同窓生ら

現在の日向グラウンドの場所にあった「鵜住居中」の校歌を歌う同窓生ら

 

よみがえる心のふるさと、17小・中・高の旋律響く

 

 釜石市出身のシンガーソングライターあんべ光俊さんがプロデュースする東日本大震災復興祈念コンサート「ふるさとはかまいし」(同実行委主催)が4日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。閉校になった市内の学校の校歌を同窓生らが歌う1部、あんべさんが釜石ゆかりの音楽仲間とオーケストラ演奏で届ける2部と、古里への感謝が込められたプログラムを延べ約720人が楽しんだ。

 

 午前の1部「思い出の校歌コンサート」には86人が出演。昭和から平成にかけ学校統合などで閉校した17小・中・高の校歌が披露された。歌う前には時代を感じさせる校舎写真も映し出され、出演者が在籍した当時の思い出を発表。代々歌い継がれた校歌は各校出身者にとってまさに心の古里で、高らかな歌声が会場に響いた。

 

 釜石鉱山学園出身の橋本(旧姓・佐々木)秀子さん(71)=東京都小平市=は、同窓のあんべさん、大橋小・中出身者らと声を重ねた。「朝礼時、全員で『明るい心、良い言葉、真心こもった行い』と斉唱してから校歌を歌ったのが思い出される」と懐かしみ、「どこの学校も、くろがね、五葉山、太平洋など釜石らしい言葉が入り、釜石人の精神が歌詞に表れている」と実感を込めた。

 

 最多の同窓生が集った鵜住居中の歌唱を応援団の手ぶりで盛り上げた徳増初子さん(68)は「何十年ぶりかで会う同級生も。校歌は忘れかけていても少し聞けばよみがえる。ついでにあの頃に帰ってしまう」と、今はなき学びやに思いをはせた。

 

 最後は全員で「ふるさと」を大合唱。県小学校長会で県内の校歌を集めた経験を持ち、同コンサート実現に協力した太田代政男さんは「校歌は年を取れば取るほど、大きな生きる力になる」と述べた。

 

復興祈念コンサート 音楽仲間と奏でる“ふるさと愛”、あんべさん「釜石には宝物がたくさん」

 

オーケストラと名曲の数々を届けるあんべ光俊さん

オーケストラと名曲の数々を届けるあんべ光俊さん

 

 午後の2部は、オーケストラコンサート。1日限りで結成された「碧き風のオーケストラKAMAISHI」は、あんべさんの新旧の音楽仲間で編成。釜石出身のオーボエ奏者池田肇さん、指揮、フルート奏者として釜石の音楽活動をけん引する山﨑眞行さん、山﨑さんの愛弟子で、アマチュアオーケストラ「ムジカプロムナード」の代表を務める瓦田尚さんとオケメンバーなど総勢15人が演奏を担当した。

 

 あんべさんの代表曲「遠野物語」で幕開け。オケ伴奏で自身のさまざまな楽曲を届けた。 釜石南高の先輩ミュージシャン大瀧詠一さんの名曲「君は天然色」「恋するカレン」、釜石ゆかりの作家井上ひさしさん作詞「ひょっこりひょうたん島」は、地元で音楽活動をする小笠原拓生さん、Sachiさん、高橋成弘さんらと一緒に歌った。釜石出身の民謡歌手佐野よりこさんは三味線の弾き語りで「釜石浜唄」を披露。瓦田季子さん、加藤直子さんが踊りで花を添えた。

 

 井上さん作詞の釜石小校歌「いきいき生きる」、あんべさん作詞作曲の釜石中校歌「心に翼」をあんべさんと児童、生徒が合唱。「力は無限大」、「ロングラン」などのアンコールまで全16曲に約600人が酔いしれた。

 

 陸前高田市から訪れた熊谷登代子さん(58)は30年来のファン。あんべさんが釜石市芸文協前会長の岩切潤さんら、自分を支えてくれた故人への思いを述べる姿に「ジーンときた」と目頭を押さえ、「今日は地元の方が多く出演し、いつもとはまた違った雰囲気。あんべさんの曲は歌詞がすごくいい。震災後、被災地を応援してくれるのも力になる」と感謝した。

 

 野田町の紺野節子さん(69)は「演奏中、懐かしい街並みや市民の姿が背景に映され、歌とともに楽しめた。釜中の校歌もあんべさんらしい味が出ている。地元愛を強く感じる構成が良かった」と喜んだ。

 

 あんべさんが新設された市民ホールでコンサートを開くのは初めて。自身の提案で始まった「釜石よいさ」が震災後、若い世代に引き継がれ、昨年30回目を迎えたのを機に「何かでよいさを応援できれば」と、翌日のコンサートを企画。「帰省した釜石出身者がよいさを見る流れで、閉校した母校の校歌を歌って帰るのもいいのでは」と校歌コンサートとの2本立てプログラムを組んだ。

 

 「釜石には音楽に関わる宝物がたくさんある。新しい空間(市民ホール)をみんなで使って元気になっていければ」とあんべさん。

 

(復興釜石新聞 2019年8月7日発行 第814号より)

 

復興釜石新聞

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満島真之介さん(中央)らが演じたオペラ「四次元の賢治」

心に響く 賢治の世界〜四次元のオペラ 釜石で初演

満島真之介さん(中央)らが演じたオペラ「四次元の賢治」

満島真之介さん(中央)らが演じたオペラ「四次元の賢治」

 

 宮沢賢治の作品を基にしたオリジナルオペラ「四次元の賢治―完結編」が13日、釜石市大町の市民ホールTETTOで上演された。三陸防災復興プロジェクト2019文化芸術祭の一環。思想家、人類学者の中沢新一さんが書き下ろした脚本を音楽プロデューサーの小林武史さんがオペラ作品に仕上げた舞台で、約800人が賢治の童話や詩の世界に引き込まれた。

 

 2017年に宮城県石巻市を中心に開催された震災復興支援の総合芸術祭「リボーンアートフェスティバル」で、第1幕を上演。新たに2、3幕を加えた完結編が制作され、本年8月に開幕する2回目のフェスティバルとの連携企画として釜石での初演が実現した。

 

 歌唱力でも注目を集める俳優の満島真之介さんが賢治役、小林さんのプロデュースで活躍の場を広げる歌手Salyuさんが賢治の妹トシを演じたほか、「水曜日のカンパネラ」ボーカルのコムアイさん、Salyuさんらと音楽活動を共にするヤマグチヒロコさんが出演。劇中歌で太田光さん(爆笑問題)、櫻井和寿さん(Mr・Children)らが参加した。

 

 賢治を代表する童話「やまなし」「銀河鉄道の夜」などをベースにストーリーを展開。病で死にゆく最愛の妹への思いを詠んだ「永訣の朝」、童話「双子の星」でも歌詞が用いられる「星めぐりの歌」も盛り込まれ、賢治が生んだ印象的な言葉の数々が、小林さんが奏でるメロディーに乗せてよみがえった。出演者らの熱演と映像、照明、効果音で幻想的な世界を作り上げた舞台に観客はくぎ付けとなり、今なお愛される賢治作品の素晴らしさを体感した。

 

 小川町の小笠原千寿子さん(60)は満島さんらの声量や表現力に魅了され、「難しい言葉もこういう形で聞くと理解が深まる。賢治の死に対する向き合い方などが感じられ心に響いた」と大きな感動を胸に会場を後にした。

 

 舞台あいさつで中沢さんは「岩手県が生んだ宮沢賢治は日本で最高の精神の持ち主の一人。この地で初演を迎えられたのは奇跡のようなこと」と感謝。終演後、小林さんは「東日本大震災では東北の人たちの利他的行動に世界が注目した。これは賢治が持っていた精神そのもの。この作品が利己的になりがちな今の時代を考えるヒントになれば」と期待した。

 

(復興釜石新聞 2019年7月17日発行 第808号より)

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「思い出の校歌を一緒に歌おう」、あんべ光俊さん(釜石出身)参加呼び掛け〜コンサートは8月4日に、飛び入りもOK

「思い出の校歌を一緒に歌おう」、あんべ光俊さん(釜石出身)参加呼び掛け〜コンサートは8月4日に、飛び入りもOK

あんべ光俊さん(右)とコンサート実行委の藤井了会長

あんべ光俊さん(右)とコンサート実行委の藤井了会長

 

 「閉校になった母校の校歌を一緒に歌おう―」。釜石市出身のシンガーソングライター、あんべ光俊さん(65)=仙台市在住=が「思い出の校歌コンサート」を企画し、参加者を募っている。昭和から平成まで惜しまれながら閉校した学びやの懐かしい校歌を一緒に歌う集い。コンサートは8月4日午前10時半から釜石市民ホール(ホールB)で開く。

 

 シンガーソングライターとして40年余りにわたり活動してきたあんべさんの原点は、母校である釜石鉱山学園の校歌。「間違いなく自分の音楽活動の芯になっている。釜石の学びやで学んだ多くの人と一緒に校歌を歌い、ふるさとへの感謝の思いを共有したい」と呼び掛ける。

 

 校歌コンサートは、8月4日午後に同ホールで開かれる東日本大震災復興祈念コンサート(有料)の第1部として開かれ、入場は無料。当日、会場での飛び入り参加も歓迎するが、運営準備のため事前の申し込みを受け付ける。

 

 演奏対象校歌リストは次の通り(学校統合などにより校歌が新しくなった学校は旧校歌を含む)。申し込み多数の場合は抽選で12校をめどにプログラムを編成する。

 

 ①釜石鉱山学園②大橋小・中③大松小④大松中⑤釜石西中⑥甲子中(旧)⑦小川小⑧小佐野小(旧)⑨小佐野中⑩中妻小⑪釜石二中⑫八雲小⑬大渡小⑭釜石小(旧)⑮釜石一中⑯橋野小・中⑰栗林中⑱鵜住居中⑲箱崎小(旧)⑳箱崎小㉑箱崎中㉒白浜小㉓平田中㉔尾崎小・中㉕大石小㉖釜石商高㉗釜石工高㉘釜石北高㉙旧制釜石中㉚釜石高等女学校

 

 参加申し込みは今月13日までに、ふるさとはかまいし実行委員会(FAX0193・24・3399)へ。名前、歌いたい校歌、連絡先を明記する。持参・郵送の場合は桑畑書店(〒026・0024釜石市大町1の4の7)、洋菓子専科かめやま(〒026・0034釜石市中妻町2の13の8)へ。参加の問い合わせは事務局の千葉真児さん(電話090・2957・1446)へ。 

 

(復興釜石新聞 2019年7月6日発行 第805号より)

 

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「伝承者」として身につけておきたい震災の知識を学ぶ研修参加者

震災伝承は私たちの手で〜第1期応募者が研修、風化防止の最前線に

「伝承者」として身につけておきたい震災の知識を学ぶ研修参加者

「伝承者」として身につけておきたい震災の知識を学ぶ研修参加者

 

 東日本大震災の出来事や教訓を次代に語り継ぐため釜石市が募集した「大震災かまいしの伝承者」の基礎研修が6月29日、市役所第4庁舎で行われた。伝承者の自己啓発、共通認識、伝承手法の習得を目的とし、応募者51人中27人が参加。講義とグループワークで基礎知識を得た参加者に野田武則市長から「伝承者証」が交付された。今後、家族ら身近な人や市外から訪れる人たちへの震災伝承を進め、記憶の風化を防ぐ。

 

 同伝承者は5月15日から1カ月間募集。市内外の高校生から80代まで、伝承活動に意欲を持つ人たちが申し込んだ。6月、8月と2回に分けた基礎研修は両回とも、岩手大の教授らによる講義と参加者のグループワークで構成。講義では「釜石市防災市民憲章」に込められた教訓、三陸沿岸における地震発生のメカニズムと津波被害の特質を学ぶ。

 

 同市の防災・危機管理アドバイザーを務める齋藤徳美名誉教授は「三陸を繰り返し襲ってきた津波は今後も確実に起こる。適切な場所に適切に避難する災害文化の醸成が不可欠」との認識から3月に制定に至った同憲章を説明。多くの犠牲者を出した鵜住居地区防災センターの反省も示し、憲章に掲げた理念「備える、逃げる、戻らない、語り継ぐ」の意味を伝えた。津波避難の鉄則「各自で迅速に、より高台へ―」を確認。伝承者の役割について齋藤教授は「次の時代(の命)を守るのは、われわれの責任。ぜひご尽力を」と参加者の活躍を期待した。

 

「伝承者証」を手に今後の活動に意欲

「伝承者証」を手に今後の活動に意欲

 

 6班に分かれたグループワークでは、参加者同士が震災体験などを語り合い、伝承者として将来に伝えるべき教訓は何か、どのような取り組みをすべきか考えた。

 

 釜石高3年の佐々木千芽(ゆきめ)さんは震災時、鵜住居小の3年生。釜石東中の生徒らと学校から高台に避難し、避難所生活を送った経験から、「自分で判断してより高台に逃げる。避難所では思いやりの気持ちでお互い接する」ことを教訓として挙げた。防災教育の観点から「震災後に生まれた子どもたちが実際に経験した人から話を聞く機会を設けたほうがいい」との意見も。

 

 各班からのまとめ発表では、▽居住状況や避難場所など普段から地域を知っておく▽地震が来たらすぐ逃げられるよう高台確認など危機管理意識を持つ▽伝承者が伝えるべきは教訓。「九死に一生」は失敗談として語り、早期避難を訴える―といった声が聞かれた。

 

 研修には釜石観光ガイド会所属の14人も参加。甲子町の駒込日呂子さん(73)は「こういう研修は正しい知識を得るのに必要。会には震災の話を聞きたくて申し込む人も多い。今後の活動にプラスになる」とし、特にも子どもたちへの伝承活動に意欲を見せた。嬉石町の横山幸雄さん(82)は震災の津波にのまれ、死と隣り合わせの経験をした。「助かったから良かったではなく、この経験をいかに次の世代につないでいけるかが重要。被害を最小限に抑えるため、教訓を確実に伝えていきたい」と意気込んだ。

 

 市は今後、基礎研修修了者を対象にステップアップ研修も予定。伝承者としての資質向上を支援するとともに、既存の伝承活動団体を紹介するなど活動の場を広げてもらうことにしている。

 

(復興釜石新聞 2019年7月3日発行 第804号より)

 

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「釜石ふだん記の会」会誌を寄贈〜26年間の活動を刻む「多くの人に見てもらえれば」、市立図書館

「釜石ふだん記の会」会誌を寄贈〜26年間の活動を刻む「多くの人に見てもらえれば」、市立図書館

 会誌を贈った千葉会長(右)と桑畑さん

会誌を贈った千葉会長(右)と桑畑さん

 

 釜石市の文章運動グループ「釜石ふだん記(ぎ)の会」(千葉勝美会長)は11日、26年間の活動で発行した会誌「ふだん記」60冊と会員向けの情報紙159部を小佐野町の市立図書館(高橋悦子館長)に寄贈した。

 

 同会は人生記、旅行記、生活記などいわゆる「自分史」を気軽に文章にして記録する活動を行っているグループ。1992年に県高齢者大学釜石校で開講された自分史の作成講座を受講、修了した二十数人により結成された。グループ名の「ふだん記」とは、普段着からきたもの。よそゆきではなく、上手下手でもない「記録」という思いが込められている。

 

 会誌第1号は同年7月に発行。投稿したのは8人だった。2、3年たって入会した千葉会長(93)=中妻町=によると、「投稿者が少なく、すぐに終わるとみんなが思っていた」という。それに反し、自分史だけでなく、社会や文芸、風物、身近な出来事など多彩な内容の文章が寄せられ、年に2~3号の発行を続けている。

 

 最新刊は、昨年2月に発行した第60号。記念の特集、家族や旅の思い出など13編を掲載している。

 

 現在会員は50~90歳代で、釜石市をはじめ大槌町、北上市、花巻市、埼玉県川越市に10人。元教員、元看護師など釜石と縁のある人たちが、「みんなで書いてみんなで読もう」「気軽に書こう」を合言葉に、文章を寄せている。

 

 東日本大震災や戦争体験、日々の生活で感動したことなどを題材に寄稿している桑畑恒夫さん(83)=大町=は「文字に残すことで当時の思いを忘れず振り返ることができる。仲間の人生を感じることは自分にとってもプラスになる」と話す。

 

 庶民の歴史や思いがいっぱい詰まった会誌を手に、「どんな生き方をしてきたか、残したい」と千葉会長、目指すは「人生、悔いなし」。年齢とともに書くことがおっくうになる―と言うが、生きがいでもある。「会員が保存するより、多くの人に見てもらった方がいい」と今回の寄贈を決めた。

 

 同館では、ちょうど郷土資料の収集に力を入れようと考えていたところ。高橋館長は「地域の人が書いたもので、共感する部分が多いと思う。手作り感満載なところも親しみが持てる。読み継いでもらえるよう大切に保管していく。たくさんの方に見てもらう機会をつくっていきたい」と感謝した。

 

 同会では現在、新刊発行に向け編集作業を進めている。新たな仲間も募集中。問い合わせは千葉会長(電話0193・23・7896)へ。

 

(復興釜石新聞 2019年6月15日発行 第799号より)

 

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貝画で伝える「ありがとう」〜鵜住居スタジアムを壁画で飾る、市内小中学生らの力結集

貝画で伝える「ありがとう」〜鵜住居スタジアムを壁画で飾る、市内小中学生らの力結集

感謝の気持ちが詰まった壁画を背に思いを発信する生徒ら

感謝の気持ちが詰まった壁画を背に思いを発信する生徒ら

 

 縦2・5メートル、横12メートル。ひときわ目を引くモザイクアート(巨大壁画)「ありがとう貝画」が、ラグビーワールドカップ(W杯)の試合会場となる釜石市鵜住居町の釜石鵜住居復興スタジアムに出現した。バックスタンド東側サイドを飾る壁画には、三陸産ホタテやアカザラガイの貝殻約6千枚を活用。市内の小中学生らの力を結集し、アートでW杯を盛り上げようと製作された。

 

 企画したのは、市内の小中学校全14校の児童生徒の代表者による「かまいし絆会議」で、子どもが主役のW杯盛り上げを目的に2017年8月に始動した。加えて、東日本大震災からの復興に取り組む姿を国内外に伝える「三陸防災復興プロジェクト」の一環として実施。今年に入ってから、復興支援への感謝の気持ちを伝える壁画と歌の製作に本格的に取り組んできた。

 

 子どもたちの思いを散りばめた壁画は、大漁旗がモチーフ。郷土芸能の虎舞、未来に向けて進んでいくSL銀河、まちを見守る釜石大観音などをデザインし、ありがとうの文字と「キズナ」との隠れ文字が入っている。

 

 貝殻は各学校に振り分け、赤や青、黄などの塗料で色付け。2千人余りの児童生徒が作業に取り組んだ。色塗りされた貝殻を貼り付ける作業は3月に実施。市内で製作イベントを開き、参加した市民ら約130人が仕上げた。

 

 9日に同スタジアムで開かれた除幕式で、同会議を代表し壁画専門部会の矢内舞さん(唐丹中3年)があいさつ。「一つ一つ思いを込めて色を塗り、他の学校と協力して作り上げた。釜石の明るい未来の実現になれば」と思いを発信した。

 

 小林結愛さん(釜石東中3年)は想像以上の出来栄えに感動。「釜石の魅力がいっぱい詰まっている。良さをたっぷり味わってほしい」とW杯盛り上げに一役買う取り組みに充実感をにじませた。

 

 出席した同会議代表の中学生10人は、感謝の歌「ありがとうの手紙」も披露。各学校からフレーズを募り、専門家の助言を得ながら曲に仕上げられた。

 

(復興釜石新聞 2019年6月12日発行 第798号より)

 

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舞踊の祭典 新ホール彩る、市内外からほぼ満席に〜令和のスタート、華やかに盛り上げ

舞踊の祭典 新ホール彩る、市内外からほぼ満席に〜令和のスタート、華やかに盛り上げ

「令和」への希望を込め、にぎやかな手踊りで締めたフィナーレ

「令和」への希望を込め、にぎやかな手踊りで締めたフィナーレ

 

 釜石市内の舞踊6団体が出演する「舞踊の祭典」が19日、市民ホールTETTOで開かれた。東日本大震災の津波で旧市民文化会館を失った同市で大規模な舞踊の会が開かれるのは、被災後初めて。会場のホールA(838席)は、市内外から詰めかけた観客でほぼ満席状態となり、令和元年のスタートを華やかに盛り上げる32の演目に盛んな拍手が送られた。

 

 音羽会(及川光会主)、古川舞踊教室(古川明美会主)、平稀流糸扇会(麓糸子会主)、出雲流松栄会(三浦すみゑ会主)、天童流美輝優会(小笠原ちゑ子会主)、高雅会(高橋文子会主)から総勢約30人が出演した。

 

 1部は、及川会主が1987年に発表した創作神楽「忍龍の舞」を当時の映像で披露。悪化する地球環境の現状に警鐘を鳴らす舞台が30余年の時を経て再現された。古川会主が、古くから伝わる舞台清めの祝儀の舞「寿三番叟」を披露。豊年満作の祈りも込められた伝統の舞で1部を締めくくった。

 

熟練の舞で客席を沸かせた音羽会及川会主の「天竜三度笠」

熟練の舞で客席を沸かせた音羽会及川会主の「天竜三度笠」

 

 2部は各会の会主、会員と特別出演の鼓乃美流、さんさ鼓乃美会主によるステージ。高校生から80代まで幅広い年代の踊り手が多彩なジャンルの舞で観客を魅了した。股旅、マドロス舞踊では、客席から掛け声も。この日を待ちわびていた観客は目を輝かせながら舞台に見入り、楽しい時間を満喫した。

 

さまざまな演目を楽しみ、大満足の観客ら

さまざまな演目を楽しみ、大満足の観客ら

 

 大槌町から足を運んだ田代勝行さん(73)は「みんな上手。見ている方も心が躍った。元気になれる舞台はいいね」と大喜び。妻の正子さん(72)は「震災の悲しみを吹き飛ばすよう。ここまで復興してきたと思うと感動です。こういう催しがいっぱいあるといい」と声を弾ませた。

 

 同祭典は及川会主の呼び掛けで実現。「津波犠牲者を追悼しながら、自分たちも心の支えになればと企画した。満席の観客に感謝とうれしさでいっぱい。世代交代を図りながら、今後は若い人たちに頑張ってもらいたい」と及川会主(85)。釜石の舞踊のさらなる発展に期待を込めた。

 

(復興釜石新聞 2019年5月22日発行 第792号より)

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亡き母の思いかなえる「ちぎり絵展」、第二の古里 釜石で実現〜伊藤百代さん、新聞紙素材に独自の世界

亡き母の思いかなえる「ちぎり絵展」、第二の古里 釜石で実現〜伊藤百代さん、新聞紙素材に独自の世界

会場には伊藤さんの創作意欲がみなぎる作品が並んだ

会場には伊藤さんの創作意欲がみなぎる作品が並んだ

 

 第二の古里釜石で生きた証しを―。1992年まで31年間、釜石市で暮らし、今年1月20日に病で亡くなった伊藤百代さん(享年87)=東京都町田市=の新聞ちぎり絵展が、4月27~29日の3日間、釜石市民ホールTETTOで開かれた。80歳を過ぎてから独自の手法で芸術性の高い作品を生みだしてきた伊藤さん。昨年9月に釜石での個展開催を決め、準備を進めていたが、11月に病が見つかり帰らぬ人となった。「母の思いをかなえたい―」。長女の田中千賀子さん(60)ら家族が遺志を継ぎ、念願の“釜石展”を実現させた。

 

 会場には、伊藤さんが遺した新聞ちぎり絵や絵手紙、スケッチ画など100点以上が並んだ。絵手紙教室の教材で出会った新聞ちぎり絵に夢中になり、自分なりの創作法を確立した伊藤さんは、大小さまざまな作品を制作してきた。素材とするのは新聞紙の色刷り部分。描きたいものの写真などを見ながら、指でちぎった新聞紙を直接貼り付けて仕上げる。こだわりは、はさみやナイフを一切使わない、下書きはしない、着色はしないこと。一目では新聞紙をちぎったとは思えない油絵のような質感が見る人を驚かせる。

 

 伊藤さんが好んだモチーフは植物や風景。中には欧州各国などを旅した際の思い出の作品も。その国の新聞を使うのも“こだわり”だという。新聞ちぎり絵の絵手紙作品には、味わいのある言葉も添えられる。

 

生前の伊藤百代さん(右)と夫の孝さん

生前の伊藤百代さん(右)と夫の孝さん

 

 伊藤さんは静岡県湖西市出身。編み物師範として東京で働いていた時に釜石出身の伊藤孝さんと結婚し、61年、釜石に移り住む。2人の子どもを育てながら、大町商店街で事務員として働き、夜は編み物も教えた。81年、夫孝さん(当時46)が脳出血で倒れてからは、介護を続けながら生計を支えた。92年、伊藤さんが60歳の時に長女家族と同居するため、東京都町田市に移住。半身不随の夫の介護、孫の世話と忙しい日々を送った。

 

 孝さんが晩年大病を繰り返し、介護も大変になる中、精神的に落ち込む母を見かねた千賀子さんが「気晴らしに」と勧めたのがカルチャー教室。絵手紙が80歳の伊藤さんの支えになった。孝さんはその数カ月後、2013年3月に旅立った(享年78)。

 

 新聞ちぎり絵に生きがいを見いだしていた伊藤さん。釜石で個展を開こうとしたきっかけは、昨年9月に見た釜石特集のテレビ番組だった。震災を乗り越え前に進む市民の姿に涙し、「ぜひ釜石の皆さんに見てもらいたい」と、すぐに会場探しに着手。同月、元気に会場の下見にも訪れていたが、11月、腎臓がんが見つかり緊急入院した。

 

 「10月には食欲も落ちていたが、『心配しないで大丈夫』と言い続けていた。痛みもあっただろうが母は我慢強い人なので…」と千賀子さん。診断後、家族には命の危険も告げられていたが、病床では締め切りが迫った絵手紙展への応募を気にかけ、具合が悪いのを押して作品に筆を入れることも…。亡くなる3日前まで創作への情熱を燃やし、うわ言を口にしていた。

 

 <p class="cap">昨年10月に制作された新聞ちぎり絵の作品。釜石愛がにじむ</p>

昨年10月に制作された新聞ちぎり絵の作品。釜石愛がにじむ

 

 80歳からの挑戦。決してあきらめない姿勢。伊藤さんの生きざまが詰まった遺作展に、千賀子さんは「母の人生は苦労の連続。最後の最後に自分が打ち込めるものに出会い、こうして皆さんに褒めていただける花を開いた。母は愛情あふれる人だった。その愛を少しでも感じてもらえたなら」と思いを込めた。

 

 伊藤さんの個展は、17年に東京で初めて開催して以来2回目。

 

(復興釜石新聞 2019年5月8日発行 第788号より)

 

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「三陸は一つ」ブラスで奏でる、ルート45港町コンサート〜沿岸5団体、釜石の新ホールで熱演

5団体の合同ステージは圧巻。観客も出演者も音楽の素晴らしさを体感した

5団体の合同ステージは圧巻。観客も出演者も音楽の素晴らしさを体感した

 

 三陸沿岸5市の社会人吹奏楽団が一堂に会しての「ルート45港町コンサート」が21日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。三陸縦貫自動車道の早期完成を願い、1997年、釜石を皮切りに始まったコンサートは今年で21回目。釜石開催は東日本大震災後初めてで、同道路の釜石区間全線開通、待望の新ホールでのコンサート実現に、会場内は大きな感動に包まれた。

 

 1部は4団体による単独ステージ。ぷなと音楽団(大船渡)の「恋はあせらず」など2曲で幕を開け、気仙沼市民吹奏楽団が「昭和歌謡コレクション」で盛り上げた。宮古吹奏楽団は「珍獣ハンターイモトのテーマ」など2曲、釜石市民吹奏楽団は「風の谷のナウシカ」から1曲を届け、変化に富んだ楽曲で観客を楽しませた。

 

 2部は陸前高田市民吹奏楽団が加わり、5団体145人の合同ステージ。「イーグルの翼にのって」、「風紋」、バレエ音楽「ガイーヌ」を奏でた。舞台上を埋めた団員らは練習で磨いた技術、表現力を存分に発揮。大迫力の音量の一方で、各楽器の美しい音色も際立ち、観客の心を震わせた。アンコールに応え、「ラデツキー行進曲」など2曲で締めくくった。

 

 北上市から訪れた多田昭則さん(57)は「沿岸を盛り上げようというパワーを感じる。道路や鉄道の開通で、まち同士のつながりも深まっている印象」と交通網の整備効果を実感。TETTOの催し物をチェックし足を運んでいるといい、「北上からも1時間ちょっとで来られる。楽しみが増えました」と声を弾ませた。

 

 釜石東中の吹奏楽部員、佐々木清子さん(1年)は「今まで聞いた中で一番人数が多く、きれいな音だった。大人の演奏はやっぱり違う。自分はフルートを始めたばかり。先輩たちみたいに上手になりたい」と刺激を受けていた。

 

 同コンサートは宮古、釜石、気仙沼の3団体が立ち上げ、毎年各地持ち回りで開催。2008年に大船渡が加わり順調に回を重ねていたが、11年の震災で2年間の休止を余儀なくされた。13年、再び気仙沼に集い、コンサートを復活。16年に活動を開始した陸前高田も今年から仲間入りした。

 

 12人で参加した陸前高田市吹の山本健太団長(33)は「こんなに大人数は初めて。心配もあったが、胸を借りる形で楽しんで演奏できた」と大喜び。「今後も他楽団との共演を通じ、技術向上を図りたい。大人になっても吹奏楽を続けられることを地元中・高生にも見せられたら」と意欲を示した。

 

 新年度から団長を務める釜石市吹の谷澤栄一さん(60)は「毎年、車で移動しながら練習を重ねる私たちにとって(三陸道開通による)移動時間の短縮は、練習率を向上させ、質の高い練習を可能にした。沿岸の音楽仲間の結束が一層強くなっているのも道路のおかげ」と感謝。これまでに育まれた友情や切磋琢磨(せっさたくま)が深化することを願いながら、「互いの行き来が飲食や観光の機会を増やし、経済交流にもつながれば」と期待した。

 

 復興道路としてかつてないスピードで整備が進む三陸道。宮古―気仙沼間は19年度中の全線開通が見込まれる。

 

(復興釜石新聞 2019年4月24日発行 第785号より)

 

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タブレット画面を注視しながら高い解説機能を確かめる参加者

橋野鉄鉱山ガイドアプリ完成、世界遺産ARで動画〜報道関係者に現地で公開、一般利用は4月20日から

タブレット画面を注視しながら高い解説機能を確かめる参加者

タブレット画面を注視しながら高い解説機能を確かめる参加者

 

 釜石市は、2017年にユネスコ世界遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成要素として認定された釜石市橋野町青ノ木の「橋野鉄鉱山」の価値をより広く知ってもらおうと、アプリを整備。その説明会が16日、橋野高炉跡で行われた。釜石観光ガイド会(三浦達夫会長、30人)が参加し、報道関係者に公開した。一般の利用はきょう20日からスタートする。

 

 アプリに入力されたのは高炉のほか石切り場、種焼場(たねやきば)跡など11カ所。専用タブレット10台を受け取ったガイド会の会員は鉄鉱山の大門から一番高炉に向かい、二番、三番高炉を巡った。

 

 タブレット端末はGPS(全地球測位システム)機能を使い、訪れた史跡内の遺構を音声、文字、画像で解説する。中でも二番高炉跡は、県指定文化財の絵図(「紙本 両鉄鉱山御山内並高炉之図」)に基づき、VR(仮想現実)で復元し、操業当初(1860年代初頭)の高炉の仕組みや規模が体感できる。

 

操作の習得に集中するガイド

操作の習得に集中するガイド

 

 アプリで解説する11カ所をすべて巡ると、周辺環境と一体化させた画像のAR(拡張現実)がグレードアップ。10問のクイズに正解しても同じ上級機能が起動する。市内の製鉄関連10史跡ごとのARカードも作成。タブレットやスマートフォン(スマホ)をかざすと、3D(立体的)画像の高炉が浮かび上がり、史跡の訪問数やクイズの回答でグレードアップする。

 

 このガイドアプリの利用は、橋野鉄鉱山インフォメーションセンターでのタブレット貸し出し、スマホでもQRコードの読み取り(googleplay、Applestore)で可能だ。高炉の一番と三番は、県が整備した静止画像や文字での説明アプリが先行している。

 

 タブレットの利用は午前9時半~午後3時半、料金は1台300円で1時間使える。従来から提供する8個の音声ガイドペン(4カ国語対応)も継続する。

 

 説明会に参加した同ガイド会の川崎孝生さん(78)は「自由に使いこなすのは難しいが、勉強する。若い人や操作に慣れた人なら楽しめるだろう。最近は大震災の被災に関するガイドは少なくなり、橋野など文化財のガイドが多い。自分の言葉で、みなさんと直接やりとりする案内が主になる」と語った。

 

 市世界遺産課の森一欽課長補佐は「橋野鉄鉱山や製鉄について理解を容易にし、楽しむことで、(来訪者の)施設内、全市の回遊性を高めたい」と期待する。

 

 アプリの整備は国と県の助成を受け、昨年度に取り組んだ。総事業費は1300万円。

 

(復興釜石新聞 2019年4月20日発行 第784号より)

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