タグ別アーカイブ: 文化・教育

大人も子どもも協力し合い、素敵なすべり台を完成させた

手作りすべり台に完成、遊具に子どもらの夢乗せて〜栗林町の遊び場 くりりんのもり

大人も子どもも協力し合い、素敵なすべり台を完成させた

大人も子どもも協力し合い、素敵なすべり台を完成させた

 

 釜石市栗林町道々地区に2014年に整備された森の遊び場「くりりんのもり」で7、8の両日、新たな遊具を作る活動が行われた。子どもたちの意見で決まった設置遊具は、すべり台。地域の小学生や大人、大学生ボランティアらが協力し、手作りの木製すべり台を完成させた。

 

 この活動は、市生涯学習文化スポーツ課の委託を受け、同町の仮設住宅団地内で放課後子ども教室を開く一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校(さんつな、伊藤聡代表理事)が主催。同教室の特別編として実施した。

 

 遊び場は、震災後、公園や空き地に仮設住宅が建ち、子どもたちが安全にのびのびと遊べる場所が少なくなったことを背景に、同法人が地域住民と協働で整備した。なだらかな斜面にクリやクルミの木が立ち並ぶ広い土地を所有者が厚意で開放し、自生する樹木にロープやハンモック、ブランコなどを取り付けた手作り遊具を設置。同教室の活動やイベント、地域の子どもたちの日常の遊び場として利用されてきた。

 

 開設から5年が経過する中、劣化などで壊れた一部遊具を撤去。当時のワクワク感、安全な遊び場を取り戻そうと、今年から子どもたちも参加しての遊具作りに着手することになった。7月7日に地元の栗林小児童と、どんな場所にしたいか、どんな遊具が欲しいか話し合い。出された意見を集約し、今回はすべり台を作ることになった。

 

 宮城県名取市を拠点に冒険遊び場作りの指導、普及にあたる一般社団法人プレーワーカーズの廣川和紀理事をアドバイザーに迎え、遊具製作に挑戦。初日は小学生を中心に約30人が参加し、材料となる木材に防腐塗料を塗ったり、ノコギリやノミで角材を加工したりと下準備を行った。

 

子どもたちは塗料塗りに真剣な表情

子どもたちは塗料塗りに真剣な表情

 

 栗林小2年の菊池理央さんは、この遊び場がお気に入り。「知らない子ともすぐ仲良くなれる」と、心を開放できる自然空間の魅力を示し、作業に汗を流した。「完成が楽しみ。すべり台ができたらいっぱい遊びに来たい。他にボルダリングの壁も作れたらいいな」と夢を描いた。

 

 2日目は地域の大人8人も協力し組み立て作業。長さ約4メートル、横幅約2メートルのすべり台を作り上げた。

 

 さんつなスタッフの柏﨑未来さん(34)は「子どもたちからは秘密基地やターザンロープなどさまざまな案が出ている。今後、一つずつ実現していければ。遊具製作を手伝ってくれる大人には子どもたちの遊ぶ姿を見ることで、共に愛着を持ってもらえたら」と話す。

 

 この場所は自然資源が豊富で、四季折々の遊び方が可能。手作り遊具とともに子どもたちの成長を後押しする要素が詰まっており、今後の進化にも期待が高まる。

 

(復興釜石新聞 2019年9月11日発行 第823号より)

 

復興釜石新聞

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復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

客席を埋めた多くの市民も「夏の思い出」に声を合わせる

釜石市民合唱祭、9団体が歌声披露〜加盟団体減少、ターニングポイントに

客席を埋めた多くの市民も「夏の思い出」に声を合わせる

客席を埋めた多くの市民も「夏の思い出」に声を合わせる

 

 「こころからこころへ」をテーマに、41回目の釜石市民合唱祭(市民芸術文化祭参加)は8日、釜石市民ホールで開かれた。釜石市合唱協会(柿崎昌源会長)に加盟する混声、女声合唱団をはじめ9団体が活動成果を披露。一方で、同協会発足当初から中心を担ってきた釜石混声合唱団が休団に伴い参加を見送り。退職女性教職員の会フラウエンコールも今回のステージを最後とするなど、大きなターニングポイントとなる合唱祭となった。

 

 オープニングでは出演9団体の代表がプラカードを掲げて入場し、客席を埋めた市民とともに「釜石市民歌」を高らかに歌い上げた。

 

 最後のステージとなるフラウエンコールの6人がトップで歌声を披露。鵜住居歌う会、今回の合唱祭に向けて編成された男声合唱団ナインス・メンズ・コーラスの力強い歌声と続いた。

 

 甲子歌う会は、先日市内で発生した殺人事件に巻き込まれて亡くなったメンバーへの追悼の思いを込め、全員が胸に黒いリボンを付けてステージに臨んだ。

 

 釜石ユネスココーラスによる女声合唱を最後に、客席の市民も一つになって「夏の思い出」を歌い締めくくった。

 

40年の歩みに思い込め、退職女性教職員の会 最後のステージ

 

最後のステージで歌う退職女性教職員の会フラウエンコール

最後のステージで歌う退職女性教職員の会フラウエンコール

 

 退職女性教師のグループとして活動してきたフラウエンコールは1978年に発足。ピーク時には30人近くまでメンバーが膨らんだが、徐々に減少。現在は97歳から85歳までの6人となった。

 

 代表を務める種市圭子さん(85)は「毎週1回の練習は何とか頑張って続けてきたが、3階にある練習会場まで階段を上ることが難しくなってきた」と高齢化に伴う厳しい現実を嘆く。今回のステージを最後と決めたが、「家の中にこもるようなことがないように」と練習は継続するという。

 

 これまで3回の独自演奏会を重ねるなど、40年にわたる活動の足跡はしっかりと残してきた。ほぼ30年前からグループを指導してきた姉帯公子さん(60)は、最後のステージとなったことについて「みなさんで決めたことだからしようがない。さみしい気持ちもあるが、これが自然の流れ。こういう形で締めくくれて良かった」と、しみじみと語った。

 

(復興釜石新聞 2019年9月11日発行 第823号より)

関連情報 by 縁とらんす
第41回 釜石市民合唱祭
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色彩豊かな作品が並ぶ小林覚さんの作品展

心癒やす「微笑みの国」、色彩明るく奔放に〜知的障害者アーティスト 小林覚さん

色彩豊かな作品が並ぶ小林覚さんの作品展

色彩豊かな作品が並ぶ小林覚さんの作品展

 

 「微笑(ほほえ)みの国」をテーマに、釜石市鵜住居町出身の知的障害者アーティスト小林覚(さとる)さん(30)の作品展が、あす8日まで釜石市民ホールTETTOで開かれている。小林さんは現在、花巻市の「るんびにい美術館」で活動している。古里での個展は東日本大震災後初めて。明るく豊かな色調で描かれた独創的な作品約40点を展示している。

 

 作品は、自由奔放な線の造形性と明るく豊かな色調が特徴。郷土芸能を独自の色彩感覚で表現した「とらまい」や、万葉集の歌を題材に墨書の線が自在に伸び、交わる書の作品「風吹きて」などが並ぶ。

 

 音楽が大好きという小林さんは、文字をデザインした絵を描く。ザ・ビートルズの「Let It Be」や井上陽水の「少年時代」など、お気に入りの歌詞をつづった作品には、アートの一部になった「サトル文字」を見つける面白さがある。

 

 震災で鵜住居町の自宅が被災し、数多くの作品も流失した。個展には、自宅で見つかった作品の一部も展示。砂や汚れが残った状態で紹介されている。

 

家族に囲まれ笑顔を見せる覚さん(中)

家族に囲まれ笑顔を見せる覚さん(中)

 

 小林さんが本格的に絵を描き始めたのは釜石養護学校(現釜石祥雲支援学校)の中学部から。黒鉛筆のみで描いていたものが、次第に色鉛筆や油絵の具などを使った色合い豊かな作品へと変化する過程も見せる。

 

 県内各地で個展を開催している小林さん。古里釜石では学校や団体の作品展に数点出展し、さまざまな作品と合わせて見てもらうことが多かった。今回の個展は、小林さんの恩師、佐藤卓郎さん(奥州市)が企画。「震災を生き抜いた人たちの心に、作品の持つ力で癒やしと晴れやかな喜びを届けたい」と期待を込めた。

 

 小林さんは平日に美術館で創作活動を行い、週末は両親が再建した鵜住居町の自宅に帰る生活を送っている。父俊輔さん(64)は「息子の代表的な作品が集まった展示は初めて。見応えがある」とうれしそう。多くの来場を願っている。

 

 午前9時から午後9時まで。入場無料。7、8の両日は小林さんが会場を訪れる予定だ。

 

(復興釜石新聞 2019年9月7日発行 第822号より)

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80年の創作活動集大成、元小学校長の鈴木洋一さん 市民ホールで初の個展〜絵を描くことが生きがいに、「元気なうちに」と家族が企画

80年の創作活動集大成、元小学校長の鈴木洋一さん 市民ホールで初の個展〜絵を描くことが生きがいに、「元気なうちに」と家族が企画

初の個展を開いた鈴木洋一さん(中央)、後押しした家族ら

初の個展を開いた鈴木洋一さん(中央)、後押しした家族ら

 

 釜石市民絵画教室の講師を務めるなど長くキャンバスに向かい続けてきた鈴木洋一さん(87)=釜石市甲子町大畑=の絵画展は8月30日から9月1日まで、大町の釜石市民ホールTETTOで開かれた。自身初となる個展は、高齢の鈴木さんに代わって長男崇さん(56)ら家族が後押しし、米寿を記念して企画。釜石の港の風景をはじめ、遠野、江刺、秋田、函館など県内外の風景、花や魚などの静物を写実的に描いた油彩画合わせて93点を展示した。

 

 鈴子町出身の鈴木さんは釜石工業高(現釜石商工高)を卒業後、代用教員として働きながら通信教育で正規の教員となり、釜石や遠野市の小学校に勤務。校長として平田小(2年間)、釜石小(4年間)に務め、1992年に定年退職した。

 

 幼いころから絵を描くことが好きだった鈴木さん。小学5年の時に写生大会で“1番いい賞”をもらったうれしさで、さらに夢中になった。当時は「いたずらだった」と振り返るが、描く楽しさは教員となってからも残り、独学で描き続けた。美術の会派には属さず活動。退職後に同教室の講師などを務めた。

 

 同教室の作品展には数点の作品を出展。これまで描いた作品を見てもらう機会にと、画集の制作や個展の開催などを考えたことはあるが、忙しさで実現しなかった。

 

 ここ数年、鈴木さんは体調を崩し、入退院を繰り返すようになった。「元気なうちに実現させたい」。崇さんら家族が個展の開催を勧め、鈴木さんも「米寿の記念に」と発起した。

 

 古里を残しておきたい―。そんな思いを込め、筆を走らせた四季折々の海、川、山、街角といった風景画が並んだ。特にお気に入りのモチーフは製鉄所のクレーンと船が行き交う釜石港。「釜石らしさ」を見せる作品として10点近く紹介した。

 

 同教室のスケッチ旅行で訪れた奥入瀬(青森県)や小泊港(秋田県)、函館(北海道)の教会などを描いた作品も。「みんなで歩いた楽しい思い出」を残した。

 

 風景画だけでは見る人が息苦しくなると心を配り、動植物の静物画、孫など人物画も展示。郷土芸能の躍動感を表現した作品もあった。

 

 これまで描きためた作品は200点近くある。その一部を紹介でき、鈴木さんは「みんなに応援、力添えをもらい、ありがたい。思い残すことはない」と満足顔。だが、絵を描くことは生きがいで、「スケッチをしていて作品に仕上げてないモチーフがある。まだ描くでしょうね」と、キャンバスへ向かう思いは尽きない。

 

 崇さんは「(父は)昔からの知り合いに会い、話ができて楽しそうだ。生き生きして、目に力が戻った。絵を通してたくさんの人に喜んでもらい、うれしい」と目を細めた。

 

(復興釜石新聞 2019年9月4日発行 第821号より)

 

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植物をモチーフにした精緻な描写の作品が並んだ

タイミングは今。花開く釜石のように〜三浦幸恵さん 初の個展、自然の草花 丹念に写実

植物をモチーフにした精緻な描写の作品が並んだ

植物をモチーフにした精緻な描写の作品が並んだ

 

 釜石市甲子町の画家、三浦幸恵さん(34)の初の個展「身近な自然を見つめて」は8月25日から28日まで大町の市民ホールTETTOで開かれた。自宅の庭や畑、外出先で目にする花や山野草をモチーフにした水彩、油彩画23点を展示。思わず見入ってしまうほど、本物のように描かれた写実作品が並び、来場者から感嘆の声が上がった。

 

 幼い頃から「絵を描くことを仕事に」と思い描いていた三浦さん。釜石南高(現釜石高)から多摩美術大に進んで油彩画を学び、2010年にUターンした。翌年の東日本大震災を機に、市内の小学校で非常勤講師として活動を開始。依頼を受け肖像画を描くなど制作活動を続けていたが、「作品づくりに集中したい」と15年に退職した。

 

 13年には大学時代の友人との二人展を東京で開催。今回、画家としての歩みをしっかり踏み出そうと決め、古里での初個展が実現した。

 

初の個展を開いた三浦幸恵さん

初の個展を開いた三浦幸恵さん

 

 三浦さんは大学時代から「日常に潜む微細な感覚」をテーマに制作に取り組んできた。見過ごしがちな感覚を拾い上げようと、今回の展示で選んだモチーフは植物。特に花に心を寄せ、6月から描きためたバラやサクラソウなどを展示した。

 

 メイン作品となった「蒲公英(たんぽぽ)」は甲子川の河川敷で目に留め、力強さに引かれた。自宅で育てるオクラを描いた作品には「光りをもとめて」、毎年春に変わらず花を開かせて始まりを意識させてくれる名前の分からない植物には「新たに咲く」と画題を付けた。

 

 「持てるものを最大限生かして咲いている花と、最大限努力して生きる人の美しさは共通する」と三浦さん。震災から立ち上がりつつある古里、人の動きも活発になるまちの機運に、自身の気持ちも同調し、「タイミングは今。花開く釜石のように、画家として花を開かせたい」と思いを込めた。

 

 対象に向き合い細密に描いた写実作品に、来場者は「写真? え、絵なの!」と驚きの声。「丁寧に向き合っている」と感心する人もいた。

 

 自身の描く世界を見た人たちの声をじかに聞いた三浦さんは「迷い、もやもやが晴れ、頑張ろうという気持ちになった。人生の転機。現実と向き合おう」と表情を引き締める。「絵は現実を映す鏡みたいなもの。絵を描くというレンズを通して現実を見ている感じ」。独自の感覚を生かした作品を生み出し続ける思いを強めていた。

 

(復興釜石新聞 2019年8月31日発行 第820号より)

 

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オーケストラと名曲の数々を届けるあんべ光俊さん

あんべ光俊さん企画 思い出の校歌 高らかに〜第2部は復興祈念コンサート

現在の日向グラウンドの場所にあった「鵜住居中」の校歌を歌う同窓生ら

現在の日向グラウンドの場所にあった「鵜住居中」の校歌を歌う同窓生ら

 

よみがえる心のふるさと、17小・中・高の旋律響く

 

 釜石市出身のシンガーソングライターあんべ光俊さんがプロデュースする東日本大震災復興祈念コンサート「ふるさとはかまいし」(同実行委主催)が4日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。閉校になった市内の学校の校歌を同窓生らが歌う1部、あんべさんが釜石ゆかりの音楽仲間とオーケストラ演奏で届ける2部と、古里への感謝が込められたプログラムを延べ約720人が楽しんだ。

 

 午前の1部「思い出の校歌コンサート」には86人が出演。昭和から平成にかけ学校統合などで閉校した17小・中・高の校歌が披露された。歌う前には時代を感じさせる校舎写真も映し出され、出演者が在籍した当時の思い出を発表。代々歌い継がれた校歌は各校出身者にとってまさに心の古里で、高らかな歌声が会場に響いた。

 

 釜石鉱山学園出身の橋本(旧姓・佐々木)秀子さん(71)=東京都小平市=は、同窓のあんべさん、大橋小・中出身者らと声を重ねた。「朝礼時、全員で『明るい心、良い言葉、真心こもった行い』と斉唱してから校歌を歌ったのが思い出される」と懐かしみ、「どこの学校も、くろがね、五葉山、太平洋など釜石らしい言葉が入り、釜石人の精神が歌詞に表れている」と実感を込めた。

 

 最多の同窓生が集った鵜住居中の歌唱を応援団の手ぶりで盛り上げた徳増初子さん(68)は「何十年ぶりかで会う同級生も。校歌は忘れかけていても少し聞けばよみがえる。ついでにあの頃に帰ってしまう」と、今はなき学びやに思いをはせた。

 

 最後は全員で「ふるさと」を大合唱。県小学校長会で県内の校歌を集めた経験を持ち、同コンサート実現に協力した太田代政男さんは「校歌は年を取れば取るほど、大きな生きる力になる」と述べた。

 

復興祈念コンサート 音楽仲間と奏でる“ふるさと愛”、あんべさん「釜石には宝物がたくさん」

 

オーケストラと名曲の数々を届けるあんべ光俊さん

オーケストラと名曲の数々を届けるあんべ光俊さん

 

 午後の2部は、オーケストラコンサート。1日限りで結成された「碧き風のオーケストラKAMAISHI」は、あんべさんの新旧の音楽仲間で編成。釜石出身のオーボエ奏者池田肇さん、指揮、フルート奏者として釜石の音楽活動をけん引する山﨑眞行さん、山﨑さんの愛弟子で、アマチュアオーケストラ「ムジカプロムナード」の代表を務める瓦田尚さんとオケメンバーなど総勢15人が演奏を担当した。

 

 あんべさんの代表曲「遠野物語」で幕開け。オケ伴奏で自身のさまざまな楽曲を届けた。 釜石南高の先輩ミュージシャン大瀧詠一さんの名曲「君は天然色」「恋するカレン」、釜石ゆかりの作家井上ひさしさん作詞「ひょっこりひょうたん島」は、地元で音楽活動をする小笠原拓生さん、Sachiさん、高橋成弘さんらと一緒に歌った。釜石出身の民謡歌手佐野よりこさんは三味線の弾き語りで「釜石浜唄」を披露。瓦田季子さん、加藤直子さんが踊りで花を添えた。

 

 井上さん作詞の釜石小校歌「いきいき生きる」、あんべさん作詞作曲の釜石中校歌「心に翼」をあんべさんと児童、生徒が合唱。「力は無限大」、「ロングラン」などのアンコールまで全16曲に約600人が酔いしれた。

 

 陸前高田市から訪れた熊谷登代子さん(58)は30年来のファン。あんべさんが釜石市芸文協前会長の岩切潤さんら、自分を支えてくれた故人への思いを述べる姿に「ジーンときた」と目頭を押さえ、「今日は地元の方が多く出演し、いつもとはまた違った雰囲気。あんべさんの曲は歌詞がすごくいい。震災後、被災地を応援してくれるのも力になる」と感謝した。

 

 野田町の紺野節子さん(69)は「演奏中、懐かしい街並みや市民の姿が背景に映され、歌とともに楽しめた。釜中の校歌もあんべさんらしい味が出ている。地元愛を強く感じる構成が良かった」と喜んだ。

 

 あんべさんが新設された市民ホールでコンサートを開くのは初めて。自身の提案で始まった「釜石よいさ」が震災後、若い世代に引き継がれ、昨年30回目を迎えたのを機に「何かでよいさを応援できれば」と、翌日のコンサートを企画。「帰省した釜石出身者がよいさを見る流れで、閉校した母校の校歌を歌って帰るのもいいのでは」と校歌コンサートとの2本立てプログラムを組んだ。

 

 「釜石には音楽に関わる宝物がたくさんある。新しい空間(市民ホール)をみんなで使って元気になっていければ」とあんべさん。

 

(復興釜石新聞 2019年8月7日発行 第814号より)

 

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満島真之介さん(中央)らが演じたオペラ「四次元の賢治」

心に響く 賢治の世界〜四次元のオペラ 釜石で初演

満島真之介さん(中央)らが演じたオペラ「四次元の賢治」

満島真之介さん(中央)らが演じたオペラ「四次元の賢治」

 

 宮沢賢治の作品を基にしたオリジナルオペラ「四次元の賢治―完結編」が13日、釜石市大町の市民ホールTETTOで上演された。三陸防災復興プロジェクト2019文化芸術祭の一環。思想家、人類学者の中沢新一さんが書き下ろした脚本を音楽プロデューサーの小林武史さんがオペラ作品に仕上げた舞台で、約800人が賢治の童話や詩の世界に引き込まれた。

 

 2017年に宮城県石巻市を中心に開催された震災復興支援の総合芸術祭「リボーンアートフェスティバル」で、第1幕を上演。新たに2、3幕を加えた完結編が制作され、本年8月に開幕する2回目のフェスティバルとの連携企画として釜石での初演が実現した。

 

 歌唱力でも注目を集める俳優の満島真之介さんが賢治役、小林さんのプロデュースで活躍の場を広げる歌手Salyuさんが賢治の妹トシを演じたほか、「水曜日のカンパネラ」ボーカルのコムアイさん、Salyuさんらと音楽活動を共にするヤマグチヒロコさんが出演。劇中歌で太田光さん(爆笑問題)、櫻井和寿さん(Mr・Children)らが参加した。

 

 賢治を代表する童話「やまなし」「銀河鉄道の夜」などをベースにストーリーを展開。病で死にゆく最愛の妹への思いを詠んだ「永訣の朝」、童話「双子の星」でも歌詞が用いられる「星めぐりの歌」も盛り込まれ、賢治が生んだ印象的な言葉の数々が、小林さんが奏でるメロディーに乗せてよみがえった。出演者らの熱演と映像、照明、効果音で幻想的な世界を作り上げた舞台に観客はくぎ付けとなり、今なお愛される賢治作品の素晴らしさを体感した。

 

 小川町の小笠原千寿子さん(60)は満島さんらの声量や表現力に魅了され、「難しい言葉もこういう形で聞くと理解が深まる。賢治の死に対する向き合い方などが感じられ心に響いた」と大きな感動を胸に会場を後にした。

 

 舞台あいさつで中沢さんは「岩手県が生んだ宮沢賢治は日本で最高の精神の持ち主の一人。この地で初演を迎えられたのは奇跡のようなこと」と感謝。終演後、小林さんは「東日本大震災では東北の人たちの利他的行動に世界が注目した。これは賢治が持っていた精神そのもの。この作品が利己的になりがちな今の時代を考えるヒントになれば」と期待した。

 

(復興釜石新聞 2019年7月17日発行 第808号より)

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「思い出の校歌を一緒に歌おう」、あんべ光俊さん(釜石出身)参加呼び掛け〜コンサートは8月4日に、飛び入りもOK

「思い出の校歌を一緒に歌おう」、あんべ光俊さん(釜石出身)参加呼び掛け〜コンサートは8月4日に、飛び入りもOK

あんべ光俊さん(右)とコンサート実行委の藤井了会長

あんべ光俊さん(右)とコンサート実行委の藤井了会長

 

 「閉校になった母校の校歌を一緒に歌おう―」。釜石市出身のシンガーソングライター、あんべ光俊さん(65)=仙台市在住=が「思い出の校歌コンサート」を企画し、参加者を募っている。昭和から平成まで惜しまれながら閉校した学びやの懐かしい校歌を一緒に歌う集い。コンサートは8月4日午前10時半から釜石市民ホール(ホールB)で開く。

 

 シンガーソングライターとして40年余りにわたり活動してきたあんべさんの原点は、母校である釜石鉱山学園の校歌。「間違いなく自分の音楽活動の芯になっている。釜石の学びやで学んだ多くの人と一緒に校歌を歌い、ふるさとへの感謝の思いを共有したい」と呼び掛ける。

 

 校歌コンサートは、8月4日午後に同ホールで開かれる東日本大震災復興祈念コンサート(有料)の第1部として開かれ、入場は無料。当日、会場での飛び入り参加も歓迎するが、運営準備のため事前の申し込みを受け付ける。

 

 演奏対象校歌リストは次の通り(学校統合などにより校歌が新しくなった学校は旧校歌を含む)。申し込み多数の場合は抽選で12校をめどにプログラムを編成する。

 

 ①釜石鉱山学園②大橋小・中③大松小④大松中⑤釜石西中⑥甲子中(旧)⑦小川小⑧小佐野小(旧)⑨小佐野中⑩中妻小⑪釜石二中⑫八雲小⑬大渡小⑭釜石小(旧)⑮釜石一中⑯橋野小・中⑰栗林中⑱鵜住居中⑲箱崎小(旧)⑳箱崎小㉑箱崎中㉒白浜小㉓平田中㉔尾崎小・中㉕大石小㉖釜石商高㉗釜石工高㉘釜石北高㉙旧制釜石中㉚釜石高等女学校

 

 参加申し込みは今月13日までに、ふるさとはかまいし実行委員会(FAX0193・24・3399)へ。名前、歌いたい校歌、連絡先を明記する。持参・郵送の場合は桑畑書店(〒026・0024釜石市大町1の4の7)、洋菓子専科かめやま(〒026・0034釜石市中妻町2の13の8)へ。参加の問い合わせは事務局の千葉真児さん(電話090・2957・1446)へ。 

 

(復興釜石新聞 2019年7月6日発行 第805号より)

 

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「伝承者」として身につけておきたい震災の知識を学ぶ研修参加者

震災伝承は私たちの手で〜第1期応募者が研修、風化防止の最前線に

「伝承者」として身につけておきたい震災の知識を学ぶ研修参加者

「伝承者」として身につけておきたい震災の知識を学ぶ研修参加者

 

 東日本大震災の出来事や教訓を次代に語り継ぐため釜石市が募集した「大震災かまいしの伝承者」の基礎研修が6月29日、市役所第4庁舎で行われた。伝承者の自己啓発、共通認識、伝承手法の習得を目的とし、応募者51人中27人が参加。講義とグループワークで基礎知識を得た参加者に野田武則市長から「伝承者証」が交付された。今後、家族ら身近な人や市外から訪れる人たちへの震災伝承を進め、記憶の風化を防ぐ。

 

 同伝承者は5月15日から1カ月間募集。市内外の高校生から80代まで、伝承活動に意欲を持つ人たちが申し込んだ。6月、8月と2回に分けた基礎研修は両回とも、岩手大の教授らによる講義と参加者のグループワークで構成。講義では「釜石市防災市民憲章」に込められた教訓、三陸沿岸における地震発生のメカニズムと津波被害の特質を学ぶ。

 

 同市の防災・危機管理アドバイザーを務める齋藤徳美名誉教授は「三陸を繰り返し襲ってきた津波は今後も確実に起こる。適切な場所に適切に避難する災害文化の醸成が不可欠」との認識から3月に制定に至った同憲章を説明。多くの犠牲者を出した鵜住居地区防災センターの反省も示し、憲章に掲げた理念「備える、逃げる、戻らない、語り継ぐ」の意味を伝えた。津波避難の鉄則「各自で迅速に、より高台へ―」を確認。伝承者の役割について齋藤教授は「次の時代(の命)を守るのは、われわれの責任。ぜひご尽力を」と参加者の活躍を期待した。

 

「伝承者証」を手に今後の活動に意欲

「伝承者証」を手に今後の活動に意欲

 

 6班に分かれたグループワークでは、参加者同士が震災体験などを語り合い、伝承者として将来に伝えるべき教訓は何か、どのような取り組みをすべきか考えた。

 

 釜石高3年の佐々木千芽(ゆきめ)さんは震災時、鵜住居小の3年生。釜石東中の生徒らと学校から高台に避難し、避難所生活を送った経験から、「自分で判断してより高台に逃げる。避難所では思いやりの気持ちでお互い接する」ことを教訓として挙げた。防災教育の観点から「震災後に生まれた子どもたちが実際に経験した人から話を聞く機会を設けたほうがいい」との意見も。

 

 各班からのまとめ発表では、▽居住状況や避難場所など普段から地域を知っておく▽地震が来たらすぐ逃げられるよう高台確認など危機管理意識を持つ▽伝承者が伝えるべきは教訓。「九死に一生」は失敗談として語り、早期避難を訴える―といった声が聞かれた。

 

 研修には釜石観光ガイド会所属の14人も参加。甲子町の駒込日呂子さん(73)は「こういう研修は正しい知識を得るのに必要。会には震災の話を聞きたくて申し込む人も多い。今後の活動にプラスになる」とし、特にも子どもたちへの伝承活動に意欲を見せた。嬉石町の横山幸雄さん(82)は震災の津波にのまれ、死と隣り合わせの経験をした。「助かったから良かったではなく、この経験をいかに次の世代につないでいけるかが重要。被害を最小限に抑えるため、教訓を確実に伝えていきたい」と意気込んだ。

 

 市は今後、基礎研修修了者を対象にステップアップ研修も予定。伝承者としての資質向上を支援するとともに、既存の伝承活動団体を紹介するなど活動の場を広げてもらうことにしている。

 

(復興釜石新聞 2019年7月3日発行 第804号より)

 

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「釜石ふだん記の会」会誌を寄贈〜26年間の活動を刻む「多くの人に見てもらえれば」、市立図書館

「釜石ふだん記の会」会誌を寄贈〜26年間の活動を刻む「多くの人に見てもらえれば」、市立図書館

 会誌を贈った千葉会長(右)と桑畑さん

会誌を贈った千葉会長(右)と桑畑さん

 

 釜石市の文章運動グループ「釜石ふだん記(ぎ)の会」(千葉勝美会長)は11日、26年間の活動で発行した会誌「ふだん記」60冊と会員向けの情報紙159部を小佐野町の市立図書館(高橋悦子館長)に寄贈した。

 

 同会は人生記、旅行記、生活記などいわゆる「自分史」を気軽に文章にして記録する活動を行っているグループ。1992年に県高齢者大学釜石校で開講された自分史の作成講座を受講、修了した二十数人により結成された。グループ名の「ふだん記」とは、普段着からきたもの。よそゆきではなく、上手下手でもない「記録」という思いが込められている。

 

 会誌第1号は同年7月に発行。投稿したのは8人だった。2、3年たって入会した千葉会長(93)=中妻町=によると、「投稿者が少なく、すぐに終わるとみんなが思っていた」という。それに反し、自分史だけでなく、社会や文芸、風物、身近な出来事など多彩な内容の文章が寄せられ、年に2~3号の発行を続けている。

 

 最新刊は、昨年2月に発行した第60号。記念の特集、家族や旅の思い出など13編を掲載している。

 

 現在会員は50~90歳代で、釜石市をはじめ大槌町、北上市、花巻市、埼玉県川越市に10人。元教員、元看護師など釜石と縁のある人たちが、「みんなで書いてみんなで読もう」「気軽に書こう」を合言葉に、文章を寄せている。

 

 東日本大震災や戦争体験、日々の生活で感動したことなどを題材に寄稿している桑畑恒夫さん(83)=大町=は「文字に残すことで当時の思いを忘れず振り返ることができる。仲間の人生を感じることは自分にとってもプラスになる」と話す。

 

 庶民の歴史や思いがいっぱい詰まった会誌を手に、「どんな生き方をしてきたか、残したい」と千葉会長、目指すは「人生、悔いなし」。年齢とともに書くことがおっくうになる―と言うが、生きがいでもある。「会員が保存するより、多くの人に見てもらった方がいい」と今回の寄贈を決めた。

 

 同館では、ちょうど郷土資料の収集に力を入れようと考えていたところ。高橋館長は「地域の人が書いたもので、共感する部分が多いと思う。手作り感満載なところも親しみが持てる。読み継いでもらえるよう大切に保管していく。たくさんの方に見てもらう機会をつくっていきたい」と感謝した。

 

 同会では現在、新刊発行に向け編集作業を進めている。新たな仲間も募集中。問い合わせは千葉会長(電話0193・23・7896)へ。

 

(復興釜石新聞 2019年6月15日発行 第799号より)

 

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