タグ別アーカイブ: 文化・教育

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ラグビーのまち釜石 裾野の拡大着々と 小学校タグR大会で16チームが熱戦 低学年も楕円球に笑顔

6回目を迎えた小学校対抗タグラグビー大会(釜石東ロータリーカップ)

6回目を迎えた小学校対抗タグラグビー大会(釜石東ロータリーカップ)

 
 第6回釜石市小学校対抗タグラグビー大会(釜石東ロータリーカップ2024)は17日、釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた。県内外の有志で組織する釜石ラグビー応援団(中田義仁団長)が主催。小学4年生以上は試合を、3年生以下はボールを使った運動教室を楽しみ、約140人が紅葉に囲まれたグラウンドで心地良い汗を流した。ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会釜石開催から5年―。大会レガシー(遺産)を受け継ぐ子どもらの元気なプレーが「ラグビーのまち釜石」のさらなる発展を後押しする。
 
 開会式では双葉小6年の川村桔平さんが選手宣誓。同スタジアムが会場となったラグビーW杯で震災復興支援への感謝の気持ちを表した歌「ありがとうの手紙」を全員で合唱し、試合での健闘を誓い合った。
 
紅葉に囲まれたスタジアムで開会式。双葉小の川村桔平さんが元気に選手宣誓(写真左上)

紅葉に囲まれたスタジアムで開会式。双葉小の川村桔平さんが元気に選手宣誓(写真左上)

 
 今大会には市内6校と釜石シーウェイブス(SW)ジュニアから計16チームが参加。4ブロックで予選リーグを行った後、各ブロックの上位2チームが決勝トーナメントに挑んだ。1チームは4~6年の男女5人で編成。選手の入れ替えは自由で、登録選手全員に出場機会を与えた。試合時間は予選リーグが前後半なしの7分、決勝トーナメントは前後半5分ずつ。各ブロックの3、4位チームもフレンドリートーナメントで試合経験を重ねた。
 
4ブロックで総当たり戦が行われた予選リーグ

4ブロックで総当たり戦が行われた予選リーグ

 
対戦相手の腰にぶらさげたタグを取るのがタックル代わり

対戦相手の腰にぶらさげたタグを取るのがタックル代わり

 
タグを取りにくる相手を振り切りトライゾーンへまっしぐら

タグを取りにくる相手を振り切りトライゾーンへまっしぐら

 
 2チームを結成した双葉小はコロナ禍前以来の久しぶりの出場。参加希望メンバーを募り、大会に向けた放課後練習を重ねて本番に臨んだ。同大会初参加の金野優輝さん(5年)は「体育の授業も含めけっこう練習はしてきたが、(昨年優勝の)鵜住居のチームが強くてびっくりした」。同じチームで戦った鈴木慶大さん(同)も他校の強さを感じて闘志に火がついたようで、「来年も絶対出て、優勝を目指したい。僕たちの得意な部分は出せていたので、あとは気持ちの強さと緊張感があれば…」とリベンジを誓った。
 
双葉Jr.(赤ビブス)と平田ウォーリアーズの試合は接戦に…

双葉Jr.(赤ビブス)と平田ウォーリアーズの試合は接戦に…

 
 昨年、決勝で鵜住居のチームに敗れた小佐野バーバリアンズの鹿野遥斗さん(6年)は午前中の予選リーグを終え、「3試合とも点差をつけて勝てたので、いいスタート」と手応えを実感。今年は練習期間を長くとれたということで、「メンバーの仲も深まり、チームプレーの精度も上がった」という。プレー中は互いに声を掛け合い、コミュニケーションを意識。決勝トーナメントを前に「去年の優勝チームに一歩でも近づけるよう頑張りたい」と話していたが…。
 
 最終決戦は互いに切磋琢磨してきた同校の別チーム(小佐野バーバリアンズレッド)との対戦となり、6-3でバーバリアンズが頂点に輝いた。小佐野小は12月に行われるSMBCカップ全国小学生タグラグビー大会県予選などへの参加も予定。鹿野さんは「まだ時間があるので、強豪の日詰に食らいつけるようなチームになりたい」と意気込んだ。
 
予選は3戦全勝、決勝トーナメントに進んだ小佐野バーバリアンズ(赤ユニホーム)

予選は3戦全勝、決勝トーナメントに進んだ小佐野バーバリアンズ(赤ユニホーム)

 
優勝、準優勝を果たした小佐野小のチームは来月参加予定の県大会へ弾みをつけた

優勝、準優勝を果たした小佐野小のチームは来月参加予定の県大会へ弾みをつけた

 
 同大会は、釜石東ロータリークラブがラグビーW杯釜石開催の機運醸成を図ろうと、2年前の2017年に開始。初回は甲子町の市球技場で開かれ、第2回大会から新設された同スタジアムに会場を移した。W杯開催年の第3回大会には20チーム約190人が参加。その後、新型コロナウイルス感染症の影響で2年間の中止を余儀なくされた。仕切り直しの22年から釜石ラグビー応援団が主催を引き継ぎ、児童の健全育成、同市のスポーツ文化発展などを目的に大会を継続する。
 
 中田団長(56)は「学校側の大会に対する理解も深まり、子どもたちが参加しやすい環境ができている。大会経験者が中学生になり、県中総体ラグビーを制覇していることもうれしい限り。今後は他地域からの参加も促し、大会をより発展させていきたい」と思いを込めた。
 
ラグビー人口拡大への足掛かりにもなっている大会。将来、有名選手が出るかも?

ラグビー人口拡大への足掛かりにもなっている大会。将来、有名選手が出るかも?

 

低学年も集まれ~! SWアンバサダー向井陽さんら 楕円球との触れ合い、運動の楽しさ伝授

 
日本製鉄釜石SWアンバサダーの向井陽さん(中央)も指導に駆け付けた低学年対象の体験教室

日本製鉄釜石SWアンバサダーの向井陽さん(中央)も指導に駆け付けた低学年対象の体験教室

 
 同大会は地元クラブチームの日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)、釜石市ラグビーフットボール協会が全面支援する。試合は小学4年生以上が対象だが、3年生以下の子どもたちにもラグビーを通じて体を動かす楽しさを味わってもらおうと体験教室を開いている。今年は同市地域おこし協力隊員(ラグビー普及コーディネーター)で、SW事務局員でもある竹中伸明さん(36)が中心となってプログラムを提供した。
 
教室はラグビーの普及活動に取り組む地域おこし協力隊員竹中伸明さん(左奥)が中心となり実施

教室はラグビーの普及活動に取り組む地域おこし協力隊員竹中伸明さん(左奥)が中心となり実施

 
SWの選手OBらも子どもたちの体験をサポート

SWの選手OBらも子どもたちの体験をサポート

 
 SWからは桜庭吉彦ゼネラルマネジャーや選手OBらがサポートした。強力な“助っ人”として千葉県から駆け付けたのは同OBで、現在はチームのアンバサダーを務める向井陽さん(47)。釜石では甲東幼稚園(現・同こども園)に勤務しながら、SH として7年間プレー。2008年に退団、現役引退後はスポーツ教育の会社を経て、千葉県松戸市で保育園の園長を務めている。日本ラグビーフットボール協会の普及コーチでもあり、全国各地で子どもたちの指導にあたっている。
 
遊びの要素を取り入れたプログラムで子どもたちを楽しませる向井さん

遊びの要素を取り入れたプログラムで子どもたちを楽しませる向井さん

 
 「初めてボールに触る子どもたちが楽しさを感じ、(ラグビーをやってみたいとか)次につながるようなきっかけづくりをしたくて…」と向井さん。日本協会でも今、未就学児や小学校低学年向けのトレーニングプログラム作りに取り組んでいるという。「ラグビーボールは使うが、遊びの要素を入れて、その年代の運動能力を伸ばすようなメニュー」と、子どもの発育、発達を促す活動に力を注ぐ。この日もそうした知識や経験を釜石の子どもたちに還元した。
 
子どもたちはボールやタグを使った運動メニューに笑顔満開!

子どもたちはボールやタグを使った運動メニューに笑顔満開!

 
向井さんら指導者は釜石の子どもたちの健やかな成長を願う

向井さんら指導者は釜石の子どもたちの健やかな成長を願う

 
 タグラグビー大会をはじめ、子ども向けの競技普及、関心喚起活動に積極的な釜石の取り組みを喜ぶ向井さん。「このスタジアムで体を動かした思い出が残り、またここでラグビーをしたい、見たい、行ってみたいと思うような場所になったらいい。ラグビーはそれぞれの良さ(持ち味)を生かせるスポーツ。自分や仲間の良さに気付き、力を合わせて物事を成し遂げる素晴らしさも感じてもらえたら」と話した。

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釜石の海、今を伝える「おさかなフェス」 岩手大生が初開催 触れ合い創出・水産資源の魅力発信

釜石で水揚げされた新鮮な魚介類を買い求める人でにぎわう

釜石で水揚げされた新鮮な魚介類を買い求める人でにぎわう

 
 釜石市平田の岩手大学釜石キャンパスで16日、地元の海や水産資源の魅力を発信するイベント「おさかなフェス」が初めて開かれた。同大農学部食料生産環境学科水産システム学コースの学生が企画した同キャンパス独自の学園祭的な催しで、海洋生物との触れ合い、鮮魚の格安販売、魚や海にまつわる知識を試す検定などの体験プログラムを用意。市内外から多くの家族連れらが訪れて思い思いに楽しみ、「釜石の海」に理解を深めた。
 
 子どもたちに人気だったのは、三陸の海でとれた10種類以上の生物を間近で観察できるタッチプール。タコ、ヒトデ、ヤドカリ、ホヤ、カレイ…多様な生き物に和田優広ちゃん(2)は夢中になり、あちこちから手を伸ばして触れていた。子どもに楽しんでもらおうと北上市から足を運んだ父・哲志さん(35)は「生き物や自然を大切にしようと気持ちを育んでもらえたらいい。岩手は漁港から見る海の景色、海のそばにある街並みがきれいなところが多い。そんな地域性も感じてもらえたら」と目を細めた。
 
海洋生物に触れながら学びを深める子どもたち

海洋生物に触れながら学びを深める子どもたち

 
多様な生き物に触れ合う機会に大人も子どもも夢中

多様な生き物に触れ合う機会に大人も子どもも夢中

 
 学生が考えた問いに挑戦する「釜石さかなと海の検定」もプログラムに加えて実施。3回目となった今回も小中学生は40問(制限時間30分)、一般(高校生以上)は70問(同60分)の出題で、4つの選択肢から正解を選ぶ方式で行った。魚介類の生態や地理、海洋変化、漁港に関することなど幅広い知識を試す内容。それぞれの部門に合わせて約20人が挑んだ。
 
 終了後、小学生の部では答え合わせがあった。ギネス登録されている釜石港の湾口防波堤の水深について、同系統の魚の見分け方など、子どもらが解答に悩んだ問題を伝えると、学生がホワイドボードに図を描いたりして解説。「へ~、そうなんだー」と知識を増やした。
 
検定を終えて学生の解説に耳を傾ける子どもたち

検定を終えて学生の解説に耳を傾ける子どもたち

 
 初挑戦の前川大悟さん(8)は“ゆるい感じ”と思っていたら、“本格的な試験”で「驚いて緊張した」というが、海や釣り、生き物が好きなこともあって「楽しかった」とうなずいた。父・仁さん(49)は「頼もしい」とうれしそうな笑顔を見せ、「いろんなものに興味を持って、どんどん挑戦していってほしい」と背中を押した。
 
 大人たちが関心を示したのは、市魚市場で水揚げされた魚介類の販売コーナー。学生が市内の水産会社を通して仕入れたブリやサンマ、ドンコ、カワハギ、ワラサなどが「ほぼ仕入れ値と同じ価格」で並んだ。「安い!」と品定めすると、来場者が次々と購入。なじみのある「マアジ」の隣に並んだ「メアジ」が気になった人が、学生に質問して交流する場面も見られた。
 
釜石の魚市場に揚がった魚介類が並び人気を集めた

釜石の魚市場に揚がった魚介類が並び人気を集めた

 
 朝5時に起きて、いち早く買い物を楽しんだ市内の70代女性は「知らなかったことだらけ。釜石の新鮮な魚を安く買えたし、(学生の)若いエネルギーももらえた」と喜んだ。
 
 高品質の水産資源、水産業の魅力を広く知ってほしい―。そんな願いを込めて催しを企画し、全体を統括した髙山琢磨さん(4年)は、予想を上回る来場や反響に手応えを感じた様子だった。
 
消費者となる買い物客に仕入れた魚種の説明をする髙山琢磨さん(中)

消費者となる買い物客に仕入れた魚種の説明をする髙山琢磨さん(中)

 
 釜石キャンパスでは現在、同コースの3、4年生22人が学ぶ。普段、授業や研究では「漁獲量を増やすには」といった視点で漁業者と関わることが多いが、消費者に届けるという流通面に携わる機会は少ないという。そこで今回、“実践”という経験を積む場として鮮魚販売を設定。メアジやシイラ、ムツなど“なじみがない”魚種も積極的に仕入れて、「今の釜石の海が分かる」よう準備を進めてきた。
 
 「消費者とも関わることができてうれしい」と話す髙山さんら学生たち。そばで見守った釜石キャンパス特任専門職員の齋藤孝信さん(63)は「初めてのチャレンジ、よく頑張ってたどり着いた。ゼロから考え企画して実践、清算、報告書作りという一連の流れを経験することは、社会人の準備に役立つだろう。糧として釜石から巣立ってほしい」と願った。

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釜石市と東京大タッグ!海と希望の学園祭 「船出」テーマに未来考え、楽しみ学ぶ

釜石市と東京大の連携イベント「海と希望の学園祭」

釜石市と東京大の連携イベント「海と希望の学園祭」

 
 「海と希望の学園 in Kamaishi」は9、10の両日、釜石市大町の市民ホールTETTOと釜石PITを会場に開かれた。同市と東京大学の連携事業として継続する交流イベントで、今年のテーマは「船出」。船や海にまつわる展示や工作などがあり、子どもたちが楽しんだ。先を見据えた各種研究のかじ取りを担う教授陣によるパネル討論は大人たちの学びの機会に。一緒に「地域の未来」を考えて新たな思考を得たり刺激にした。
 
 2006年の同大社会科学研究所(社研)による「希望学」釜石調査を機につながり、東日本大震災後は「危機対応学」で研究連携を継続。そうした背景を基に22年に社研、同大大気海洋研究所(海洋研)、同大先端科学技術研究センター(先端研)と覚書や協定を結び、地域社会の発展、人材育成、学術振興に向けて相互交流を続ける。
 
 展示では同大生産技術研究所(生産研)、先端研などが研究内容を紹介した。社研は遂行中の「測る」をテーマにした研究プロジェクトを会場内で実践。来場者に「測ってみたい」「測ってはいけない」と思うものを書き込んでもらった。その理由や意味、影響などについて聞き取り、意見を交わす場面も。他の人の考えに触れ、関心や探究心をくすぐり合った。
 
「測る」を切り口にした東京大社会科学研究所の展示ブース

「測る」を切り口にした東京大社会科学研究所の展示ブース

 
先端科学技術研究センターは災害時避難の補助装置などを紹介

先端科学技術研究センターは災害時避難の補助装置などを紹介

 
大気海洋研究所の巨大バルーンオブジェは写真スポットに

大気海洋研究所の巨大バルーンオブジェは写真スポットに

 
 海に関する展示はさまざまあり、釜石海上保安部は海洋調査業務の紹介や海上保安官の制服試着体験などを用意。岩手大釜石キャンパスの学生らは三陸に生息する海の生き物に触れられるタッチプールを設け、子どもたちの心をつかんだ。ウニの殻を使ったランプづくり(釜石商工高ブース)、ウニを模した樹脂製のフィギュアを使ったインテリア小物づくり(SASAMOブース)は大人も楽しんだ。
 
海にまつわる活動やものづくりを楽しむ来場者

海にまつわる活動やものづくりを楽しむ来場者

 
海の生き物に触れるタッチプールは子どもに人気

海の生き物に触れるタッチプールは子どもに人気

 
 船や魚にちなんだアート作品づくりを提供したのは、文京学院大の学生9人。ペットボトルのキャップやラベルを使い、環境やリサイクルについて考えてもらう内容にした。浜田幸奈さん(経営学部3年)は「本来廃棄されるもので楽しんでもらえてうれしい」と素直な感想。自身にとっても学びの機会で、来場者との触れ合いを通して「社会とつながってできることをやる」という姿勢、スキルを磨いた。
 
文京学院大のブースは工作を楽しむ人でにぎわった

文京学院大のブースは工作を楽しむ人でにぎわった

 
ものづくり体験を提供したりチャリティーグッズも販売

ものづくり体験を提供したりチャリティーグッズも販売

 
 体験活動を楽しんだ大槌町の小國翔太郎さん(8)の夢は“生き物博士”。今一番のお気に入りは町の天然記念物に指定されているトゲウオ科の希少魚「(淡水型)イトヨ!」と胸を張った。そばで笑うのは父親の晃也さん(46)。子どもの興味を引き出す取り組みだと歓迎し、「海がそばにあるのに触れ合う機会は少なかったりする。自然を体感し、たくさん学んでほしい」と見守った。
 
 「希望の船出」をテーマにしたパネル討論は東京大の玄田有史副学長が進行。大海研の兵藤晋所長、社研の宇野重規所長、生産研の年吉洋所長、先端研の杉山正和所長というパネリストに小野共市長が加わり、長としての組織運営の苦労など、ざっくばらんに話した。
 
東京大の副学長や4研究所長、釜石市長がトークを展開

東京大の副学長や4研究所長、釜石市長がトークを展開

 
 船出には「新しいことに挑戦するというイメージもある」と玄田副学長。「未知の領域に挑む時、ゼロから始める時に気を付けていることは?」と聞くと、4月に就任したばかりの年吉所長は「とにかく始めちゃえばいい」とスパッと言い切った。兵藤所長は「船があるからではなく、行きたいから船を出す。自分から動き出すことだ」と強調。杉山所長は「思いを共有すれば実現する」とし、同じ船に乗る仲間集め、チームづくりを大切にしていると伝えた。
 
 「不安、悲観主義を持ちつつも歩いて、船を進めたら、何かの出会いで今がある」と語ったのは宇野所長。実は、希望学調査で釜石と関わりがあり、「思想や歴史、哲学といった昔のことが専門なのに…地域に放り込まれ、何をやっていいか分からなかった。これこそ、ドキドキの船出」と振り返った。20年も続く活動や関係性に見いだすことは多かったようで、「(挑戦には)新しい可能性がある」と確信を込めた。
 
教授らのざっくばらんな語り口を楽しむ聴講者

教授らのざっくばらんな語り口を楽しむ聴講者

 
 市政運営のかじ取り役を担い、船出して間もなく1年となる小野市長。財政再建や持続可能なまちづくりなど挑まなければならない課題は多いとの認識を示した。前向きな教授陣の考えに触れ、「希望学によって住んでいても気づかないことに気づかされ、希望が地域に伝ぱした。小さなネタでも地域にある限り、まちは生き続けられると感じた。失敗が多いほど希望も…」とヒントを得た様子。自身と同じように聴講した市民らが「未来を考えるきっかけになれば」と期待した。
 
 希望学のプロジェクトリーダーだった玄田副学長。釜石との縁は05年からと長い。「真剣な遊びとしてやろうと始めたのが希望学だったな」と思い返し、ニヤリ。この先も、「いろんな楽しいことに挑戦していきたい」とトークを締めくくった。

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釜石思う心今も… 小樽「旅するピアノ」8度目の訪問コンサート 元仮設住民らと交流継続

小樽市出身者らでつくる「旅するピアノ・プロジェクト」のメンバーと、交流を続ける釜石市民ら

小樽市出身者らでつくる「旅するピアノ・プロジェクト」のメンバーと、交流を続ける釜石市民ら

 
 北海道小樽市出身者でつくる被災地応援プロジェクト「旅するピアノ」(佐藤慶一代表)のメンバーが今年も釜石市でコンサートを開いた。2016年、東日本大震災の被災者が入居していた平田第6仮設団地を初めて訪問。以来、音楽を楽しむ時間を届け続けるメンバー。その寄り添いの気持ちは今も変わらない。8度目の訪問となった今回は大只越町のカトリック釜石教会を会場にし、集まった約30人を新たな趣向で楽しませた。
 
 3日、プロジェクトメンバー7人が来釜。「ピアノでつづる賢治童話の世界」と題したコンサートを繰り広げた。小樽で新聞記者をしていたこともある盛岡市出身の歌人石川啄木(1886-1912)の短歌に曲を付けた「初恋」を、畠山典之さんが歌って幕開け。三浦明子さんと関口ゆかりさんがピアノの独奏を披露した。今回初めての企画も。花巻市出身の童話作家宮沢賢治(1896-1933)の「どんぐりと山猫」を畠山さんが朗読し、三浦さんと関口さんがピアノ伴奏や間奏で物語の世界観を表現した。
 
昨年に続き、カトリック釜石教会で開かれたコンサート

昨年に続き、カトリック釜石教会で開かれたコンサート

 
宮沢賢治の童話「どんぐりと山猫」を朗読とピアノで…。畠山さん(写真右上)は「星めぐりの歌」も歌った

宮沢賢治の童話「どんぐりと山猫」を朗読とピアノで…。畠山さん(写真右上)は「星めぐりの歌」も歌った

 
岩手出身作家の作品を題材にしたコンサートに拍手を送る来場者

岩手出身作家の作品を題材にしたコンサートに拍手を送る来場者

 
 同プロジェクトは小樽潮陵高出身(1990年卒)の岩森勇児さん、野瀬栄進さん、山中泰さんが中心となって進めた東日本大震災復興支援活動が始まり。北海道などでチャリティーコンサートを行った後、2016年2月、初めて釜石市を訪問。平田第6仮設団地内の集会施設「平田パークホール」でピアノコンサートを開いた。ニューヨーク在住のジャズピアニスト野瀬さん、小樽市在住のクラシックピアニスト三浦さんが演奏し、仮設生活が長引いていた被災者らに元気と癒やしを届けた。釜石とのつながりを作った建築家の岩森さんは住民の声を聞き、ホールで使う木製の簡易ステージを製作。団地自治会役員らと一緒に作業し、心を通わせた。
 
2016年2月に平田第6仮設団地で開かれた初めてのコンサート。野瀬栄進さん(写真上)と三浦明子さんが演奏した

2016年2月に平田第6仮設団地で開かれた初めてのコンサート。野瀬栄進さん(写真上)と三浦明子さんが演奏した

 
仮設団地の住民と平田パークホール用の簡易ステージを作る岩森勇児さん(手前右)

仮設団地の住民と平田パークホール用の簡易ステージを作る岩森勇児さん(手前右)

 
 これを機に毎年、釜石を訪問し、幼児施設や公民館、教会などでコンサートを続けてきたメンバーら。訪問後は、小樽市民に被災地の現状を伝える活動も行ってきた。新型コロナウイルス禍で3年間は活動できなかったが、昨年から復活させている。
 
 今回、会場には1回目のコンサートが開かれた平田第6仮設の元住民らが多数訪れた。市内の復興住宅で暮らす人、自宅を再建した人、市外に移住した人…。それぞれ異なる環境で生活する人たちは久しぶりの再会となった人も多く、同窓会的な雰囲気も。コンサート後はメンバーとも会話を弾ませ、思い出話に花を咲かせた。平田の復興住宅に暮らす女性(80)は「懐かしい顔が見られてうれしい。年を重ねると出かけるのもおっくうになりがち。こういうきっかけがないとなかなかね…」と話し、(震災から)13年という年月の経過をあらためて実感した。
 
第1回目のコンサートから出演しているピアノの三浦明子さん(右から2人目)は顔なじみの住民らとの再会を喜んだ

第1回目のコンサートから出演しているピアノの三浦明子さん(右から2人目)は顔なじみの住民らとの再会を喜んだ

 
 ピアノの三浦さん(55)は初めて被災地に足を踏み入れたのが8年前の釜石訪問。被災から5年たっても仮設住宅で暮らす現状に衝撃を受けた。自分たちを温かく迎えてくれる住民と接し、「今回だけなんてありえない。喜んでくれるのなら継続しなければ」と思うようになった。他のメンバーも同じだった。「毎年お会いする中で元気な様子は見えるが、心には今も計り知れないものを抱えていると思う。これからも寄り添い続けたい」と三浦さん。
 
宮沢賢治の世界観を表現したステージセットも岩森さんらの手作り

宮沢賢治の世界観を表現したステージセットも岩森さんらの手作り

 
写真上:コンサート後、あいさつする岩森さん(右)と三浦さん 同左下:小樽の菓子をプレゼントするメンバー

写真上:コンサート後、あいさつする岩森さん(右)と三浦さん 同左下:小樽の菓子をプレゼントするメンバー

 
 岩森さん(53)は仕事の拠点がある静岡県から駆け付ける。「訪問の半年前にミーティングをして企画を練る。ステージは年々バージョンアップし、私たちは釜石の皆さんに育ててもらっている感がある」と話す。建築の技術を生かし、被災地(釜石、大槌、陸前高田など)訪問のたびに木製ベンチやテーブルなどを作る活動も続けてきた。木工品は仮設住宅や復興住宅、公共施設などで住民のコミュニティ―形成に役立てられてきた。今回は製作済みのベンチ5脚を持参し、希望者に引き渡した。これまでに製作したベンチは累計で50脚に上る。岩森さんは「(被災した)皆さんの生活も少しずつ落ち着いてきた印象。それでもメンバーからは『何年を区切りに』という話は出たことがない。被災者と支援者ではなく市民同士、長く縁をつないでいければ」と願う。

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編み物、絵画、写真、舞踊…個性豊かに釜石市民芸文祭 楽しみ発信「あなたは、何する?」

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生け花など多彩な作品が並んだ釜石市民芸術文化祭

 
 釜石市民芸術文化祭(釜石市、市芸術文化協会主催)は3日までの2日間、同市大町の市民ホールTETTOで開かれ、日頃の芸術活動の成果を披露した。秋を彩るこの催しは54回目。展示部門には生け花や書道、絵画、水墨画、切り絵などの作品が並び、ステージ発表部門では舞踊やバレエ、バンド演奏などが繰り広げられた。
 
 芸文協には26団体(約450人)が加盟。市外を拠点に活動している人、団体もあるが、みな釜石にゆかりがある。それぞれが多様な表現方法を楽しんでいて、年に一度、その姿を発信、共有している。
 
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多種多様な文化芸術活動に取り組む団体が一堂に会した芸文祭

 
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好きなことに取り組む人たちの楽しみが鑑賞者にも伝わる

 
 今年、2団体が新たに加わった。その一つが「ニット&レース編人・あみっとの会」。同市甲子町で教室を主宰する石井美智子さんと、釜石を中心とした岩手県沿岸部の生徒8人が繊細なレース編みの敷物や洋服、毛糸で編んだインテリア小物などを多数出展した。「タティング」「クンスト」「フィレ」などレース編みの多彩な技法のほか、ひもを結んだり編んだりして装飾模様や立体を作る手芸「マクラメ」、英国伝統刺しゅう「ニードルポイント」なども紹介。作り手たちの細やかな手仕事を楽しめる作品が目を引いた。
 
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芸文祭初参加の「あみっとの会」の展示コーナー

 
 教室に通って2年ほどという佐々木純子さん(55)は「いろんな技法に触れられるのが魅力」と話す。かぎ針編みの作品づくりに取り組むが、「年上の先輩たちのやる気がすごい。難しいものに挑戦しようとする姿勢は刺激になる。棒編み、タティングレースをやってみたい」と目標を見いだす。初参加の芸文祭は、他分野の活動を知る機会になった様子。「いざない」というタイトルが付いた写真に感動したといい、「風景を自然のまま写し出しているよう。自分が撮ってもそうならない」と笑っていた。
 
 写真作品「いざない」(全倍・900ミリ×600ミリ)は、幾重にも重なった橋脚の先にたたずむシカを捉えた一枚。撮影者は釜石写光クラブの生田輝夫さん(69)で、「偶然の一枚。趣のある古い橋を撮ろうと行ってみたら、シカがいた。何となく誘っている感じがあって…」とシャッターを切ったという。昨年度の第76回県芸術祭美術展写真部門入選作で、「見てほしい」と望むこの作品を今回、釜石市民に公開。気に入ってくれた人がいたことをうれしく思った様子で、「偶然の出会い、タイミングを楽しみに自然の風景を撮り続けたい」と意欲を高めた。
 
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仲間と集合写真に納まる生田輝夫さん(左から2人目)。右下の写真が「いざない」

 
 「優れたデザインが多い」と生田さんが感心を寄せたのは、美術集団サムディ45の展示。釜石の街並みをデザインしたマップ風の作品、災害時の冷静な行動の大切さを伝えるポスター看板などがあった。同集団に所属するイラストレーター須藤郁美さん(36)は、タブレット端末を使ったデジタルイラストの実演、体験を提供。色塗りに夢中になる岩洞木春さん(6)ら体験者の活動を見守り、「知らない人が多い分野。感動した表情がうれしい。見てもらったり触れる機会を作って普及させたい」と話した。
 
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個性あふれるデザイン画などが並んだ「サムディ45」の展示

 
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デジタルイラストの色塗り体験を提供した須藤郁美さん(左の写真)

 
 須藤さんはもともと絵を描くのが趣味で、大学時代からデジタルアートに取り組む。2年前にアーティスト活動に一本化。似顔絵、擬人化の表現を得意とし、「ポップで気軽に親しみやすい作品づくり」を心がける。芸文祭では多くの目があり、「見る側が求めているものを知ることができた」とヒントを得たようで、「もっと大きなサイズの作品を」と奮起した。
 
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書、絵画、切り絵なども並び、蘭煎会による呈茶もあった

 
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小柳玲子バレエ教室は「くるみ割り人形」で舞台発表。釜石のほか宮古、松園教室の生徒が出演

 
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KIKIダンススクールの3チームは今夏初出場を果たした全国大会の演技を披露した
 

古里釜石で舞踊初披露 菊池由美子(藤間宣福)さん 来春のタレント養成所開設に意欲

 
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「長唄 越後獅子」を踊る菊池由美子(藤間宣福)さん=2日、TETTO

 
 ステージ発表で日本舞踊を初披露したのは、釜石市出身で昨年、37年ぶりにUターンした菊池由美子さん(56)=FUKUプロモーション代表=。日本舞踊「藤間流」の名取で、舞踊家名は藤間宣福さん。東京で約30年、俳優やモデル、ナレーターとして活躍し、舞台の所作指導なども行ってきた菊池さんは、このたび市芸術文化協会にも加盟し、古里で第2の芸能人生をスタートさせた。
 
 菊池さんは釜石で踊ること自体が初めて。この日は、日本舞踊のゆったりとしたイメージを覆す「長唄 越後獅子」を披露。頭に獅子頭を乗せ、胸に太鼓をつけた越後の旅芸人が江戸に出稼ぎに来た様子を描いたもので、小道具を使って大道芸を踊りで表現した。16分の舞台を、早変わりを含め全て一人で演じ切った。
 
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元気で軽快な踊りを披露し、観客を楽しませた菊池さん
 
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釜石での初舞台を終え、ほっとした表情。会場には小中高の同級生らも駆け付けた

 
 菊池さんは高校までを釜石で過ごし、短大進学のため上京。後にモデルの仕事を始め、23歳で役者の道へ進んだ。劇団在籍時、舞台で必要だった日本舞踊を習うため、藤間流の門をたたいた。舞踊歴は約30年に及ぶ。劇団退団後、舞台の仕事を続けながら、興味のあった美容やリラクゼーションの業界にも足を踏み入れ、エステサロン経営や美容雑誌の監修なども手掛けた。
 
 2013年からはエンターテインメント会社に入り、舞台の所作指導のほかナレーターや俳優としても活躍。舞台や映画、ドラマなど制作側の仕事も学んだ。2022年には、古くからの日本女性の理想“大和なでしこ”を和の文化で発信する「なでしこ日本コンテスト全国大会クラシックの部」でグランプリを獲得した。
 
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芸能事務所「FUKUプロモーション」を立ち上げ、釜石で第2の人生を歩み始めた菊池由美子さん(写真:本人提供)

 
 Uターンを決めたのは高齢の両親のため。現在は「地方から芸能の世界を目指す人たちの力になりたい」と、タレント養成所の開設を目指して準備中。日本の伝統文化や芸能、礼儀作法などを学びながら、演技や声楽、ナレーションといった必要な技能を身に付けられる場を作りたいという。釜石の歴史や観光も学んでもらい、同市のPR役を担っていける人材の育成も目的とする。
 
 「日本には素晴らしい文化や伝統があるが、日本人は海外の人に比べ、自国の誇りを発信する力が弱い。勉強する機会が極端に少ないからだと思う。近年は担い手の高齢化や継承も問題になっている。まずは若い人たちに体験してもらい、次につながる一歩にできれば」と菊池さん。これまで自身が培ってきたものを古里釜石のために生かそうと奮闘する。
 
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2002年、厚木市文化会館で常磐津「廓八景」を踊る菊池さん(写真:本人提供)

 
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今年9月、早稲田edu日本語学校で開かれた日舞ワークショップでは講師を務めた(写真:同)

 
 養成所の開設は来春を予定。対象は幼児からシニアを想定する。将来的には、立ち上げた芸能事務所のタレントとして自らマネジメントもしていく考え。「芸能の世界を目指している子たちが自分の夢に近づけるよう全力で応援したい―」。菊池さんの新たな挑戦に目が離せない。

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油彩一筋45年 釜石市民絵画教室前会長・小野寺豊喜さん 初の個展で自身の創作活動回顧

油彩画の個展を初めて開いた小野寺豊喜さん(中央)=TETTO、30日

油彩画の個展を初めて開いた小野寺豊喜さん(中央)=TETTO、30日

 
 釜石市鵜住居町のアマチュア画家、小野寺豊喜さん(76)が自身初となる個展を開いた。釜石市民絵画教室(現・釜石絵画クラブ)で腕を磨き、長年、同教室の会長も務めてきた小野寺さん。油彩画に魅せられ、続けてきた創作活動は45年にも及ぶ。今回、同級生の働きかけも背中を押し、「これまで手がけた作品をもう一度見直す機会に」と個展開催を決めた。
 
 小野寺さんの個展は10月28日から30日まで、大町の市民ホールTETTOで開かれた。1980年代初頭の作品から近作まで計88点を展示。最小のF0(エフゼロ)から400号の大作まで見応えのある作品の数々が並んだ。小野寺さんが描くのは季節の野菜や果物、魚などの静物、海や山、花の自然風景…など。県内陸部出身ということもあり、興味をそそられるのは海や魚。中でも三陸海岸の荒々しい岩々に創作意欲をかき立てられるという。
 
野菜や果物、花などを描いた静物画。これまでに描いた作品は数知れず

野菜や果物、花などを描いた静物画。これまでに描いた作品は数知れず

 
昔、各家庭の軒先で見られた「新巻きザケ」は定番のモチーフ(左)。食卓に上る前の魚やカニも

昔、各家庭の軒先で見られた「新巻きザケ」は定番のモチーフ(左)。食卓に上る前の魚やカニも

 
悠久の時が生み出した三陸海岸の岩のある風景                                                 

悠久の時が生み出した三陸海岸の岩のある風景

 
 展示会場でひときわ目を引いたのが「震災前の御箱崎 仮宿海岸」という作品(1997年作)。画布を張ったベニヤ板4枚を一つのキャンバスにして、テトラポットの上から見えたダイナミックな“岩”風景を描いた400号の大作だ。今回の展示のために一部、加筆し、27年ぶりに日の目を見た。
 
F400の大作「震災前の御箱崎 仮宿海岸」には来場者が驚きの声を上げた

F400の大作「震災前の御箱崎 仮宿海岸」には来場者が驚きの声を上げた

 
 「震災後の風景」として4作品(F100)も公開した。がれきが積み重なるなど実際に目にした光景に、2人の孫の姿を入れて画面構成。荒れ果てた古里に立つ子どもたちの視線の先には何が見えるのか…。見る人の視点で、さまざまな感情が湧き起こる。このうち2作品は、岩手芸術祭美術展洋画部門で部門賞を受賞している。
 
県の芸術祭洋画部門で部門賞を受賞した作品「震災後の風景1」

県の芸術祭洋画部門で部門賞を受賞した作品「震災後の風景1」

 
震災後の風景2(左)と同3(右)。2人の孫とともに描かれる

震災後の風景2(左)と同3(右)。2人の孫とともに描かれる

 
 小野寺さんは1979(昭和54)年30歳の時、市教委が前年から始めた社会教育講座の絵画教室を受講。同教室終了後の81(同56)年、受講生らが自主活動グループとして立ち上げた「釜石市民絵画教室」の会員となり、創作活動を続けてきた。後に同教室の5代目会長に就任。昨年、グループ名を改称するまで務め上げた。これまでは、教室が年度末に開く「わたくしたちの絵画展」や11月の市民芸術文化祭で作品を発表してきたが、今回初めて“個展”と言う形での発表が実現した。
 
 油彩の魅力について小野寺さんは「こすったり削ったり重ねたり…。創作が自由にできるところ」と話し、その過程を人生に照らし合わせる。「人も失敗や成功、気持ちの高ぶりや落ち込み、いろいろな場面に遭遇するが、失敗したら直せばいいし、絵にも人生にも答えというものはない。ものの見方、感じ方も人それぞれ。どちらも自由さが必要」。自身は20代後半に単身でオーストラリアに渡り、砂漠地帯の一人旅を経験した。そこで得た「良いことも悪いことも受け止めて生きる」姿勢は絵を描く上でも生かされているという。
 
来場者に作品の説明をする小野寺豊喜さん(左)

来場者に作品の説明をする小野寺豊喜さん(左)

 
全88点の作品が小野寺さんの絵画人生を物語る

全88点の作品が小野寺さんの絵画人生を物語る

 
 縁あって釜石で仕事をすることになり、人生を豊かにする絵画の世界にも足を踏み入れた。それから45年―。2011年の東日本大震災では、高台の自宅は津波被害を免れたが、地元鵜住居の景色は一変した。発災時は市民絵画教室の展示会初日。会場の市民文化会館(大町)にいた会員4人は辛うじて避難し無事だった。小野寺さんは3日後、同館に向かい、暗く泥にまみれた室内から自作9点を含む43点の作品を“救出”。泥を落とし会員に返した。
 
左:函館連絡船でのスケッチ 右:ツバキを描いた小作品(F0)

左:函館連絡船でのスケッチ 右:ツバキを描いた小作品(F0)

 
小野寺さんの作風に触れながら鑑賞する来場者

小野寺さんの作風に触れながら鑑賞する来場者

 
 初の個展を経験した小野寺さんは、作品を振り返る中で「新たなテーマが見つかった」と話す。今までは忠実に描こうという気持ちが強かったが、「単純化された表現」に興味が向いた。「もっと物の見方、感じ方も変わっていいのではないか。そうすればさらに面白い作品ができる。まだまだ、あと10年は描きたい―」。当初、“最初で最後”と考えていた個展だが、また数年後にも実現するかもしれない。

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釜石・国際外語大学校で入学式 日本語学科開設、希望胸にネパール出身16人 観光系と2学科体制に

サリーなど華やかな衣装をまとって入学式に臨んだ学生たち

サリーなど華やかな衣装をまとって入学式に臨んだ学生たち

 
 釜石市鈴子町の「釜石市国際外語大学校」(竹内新也校長)に留学生を受け入れる日本語学科が開設され、28日、入学式があった。1年半コースの第1期生として、ネパール出身の16人が仲間入り。「日本語の勉強をがんばりたい」「日本で働きたい」との夢や希望を抱き、実現へ新たな一歩を踏み出した。日本人向けの外語観光学科との2学科体制が始動。同校にとっても新展開が予想され、関係者らは“わくわく感”を膨らませる。
 
 同校は学校法人龍澤学館(盛岡市)が運営する専門学校。若者の定着や地域活性化を狙いに釜石市が誘致し、今年4月に開校した。外国人対象の日本語学科は1年半と2年の2コースを設け、定員は各40人。法的手続きの影響で開講が予定より1年遅れていたが、ようやく1年半コースの10月開始にこぎつけた。
 
 日本語学科開設・入学式は大町の市民ホールTETTOであった。「サリー」など華やかな民族衣装や真新しいスーツに身を包んだ18~22歳の留学生16人が参加。学校や市の関係者ら約60人が拍手で迎えた。
 
拍手で迎えられる釜石市国際外語大学校日本語学科の1期生

拍手で迎えられる釜石市国際外語大学校日本語学科の1期生

 
 竹内校長は「ようこそ、日本、岩手県、釜石へ。皆さんが思い描く夢や希望の実現を導くために全力を挙げる」と式辞。2学科体制が本格化し、「わが校がどのように進むか興味深い」とワクワク感を募らせた。留学生を迎えるにあたり、市民から食器や調理器具などの提供があったことも紹介。「釜石のコミュニティーの一員として、自覚を持って生活をしてほしい」と望んだ。
 
日本語学科開設・入学式。式辞を述べた竹内新也校長(右上写真)

日本語学科開設・入学式。式辞を述べた竹内新也校長(右上写真)

 
竹内校長らのあいさつに熱心に耳を傾けるネパール人学生

竹内校長らのあいさつに熱心に耳を傾けるネパール人学生

 
 新入生を代表し、ラワル ユブラズさん(20)は「日本語の勉強をがんばります。卒業したら、日本でビジネスを勉強したいです。自動車のメカニックにも興味があります」と意気込みを伝えた。16日に来日し、釜石での生活は始まったばかり。「まち、道、海がとてもきれい。人も親切で優しい」と好印象を持った様子だ。
 
新入生を代表し意気込みを伝えるラワル ユブラズさん

新入生を代表し意気込みを伝えるラワル ユブラズさん

 
夢や希望を持ってネパールから釜石にやってきた学生たち

夢や希望を持ってネパールから釜石にやってきた学生たち

 
 先行する外語観光学科1年生の2人が歓迎の言葉。「多様性を尊重し、皆が分かり合うことを大切にするこの学校で一緒に学び、互いに成長できることを楽しみにしている。支え合いながら楽しい学校生活を送りましょう」と激励を込めた。
 
外語観光学科で学ぶ在校生は日本語と英語で歓迎を伝えた

外語観光学科で学ぶ在校生は日本語と英語で歓迎を伝えた

 
 同法人が取り組む日本語教育は20年目を迎え、これまで世界20カ国、1000人超を受け入れてきた。仕事の都合で入学式に参加できなかった龍澤尚孝理事長は「思いっきり勉強、アルバイトに励み、釜石での暮らしを楽しんでください。生きる学びで地域に溶け込み、多文化共生社会につなげてほしい」などとメッセージを寄せた。
 
 日本語学科の授業はすでに始まっている。学生らはある程度日本語は理解できるというが、今後週に20時間、日本語を学習。日本の大学や専門学校への進学を見据えており、1年半後には日常生活に必要な言葉が分かる程度の習熟を目指す。
 
釜石での生活をスタートさせた学生と見守る講師陣

釜石での生活をスタートさせた学生と見守る講師陣

 
食器や調理器具などの提供に感謝を伝えるパネル

食器や調理器具などの提供に感謝を伝えるパネル

 
 学生は市が整備したアパートで生活。学内の交流のほか、地域活動も進めながら異文化理解を深めていく。アルバイトについて、出入国管理法では申請すれば週28時間以内(長期休暇中は週40時間)の就労が可能となっていて、学校と市が市内事業所を訪問活動中。また、来春には2年コースが始まる予定で、ネパールやミャンマーからの留学生20人ほどが入学を希望しているという。

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楽しい!高校生活、見せます 釜石・商工祭 専門の学び 特色生かした体験、展示で

釜石商工高の学校祭で機械科の生徒の作業を見守る家族連れ

釜石商工高の学校祭で機械科の生徒の作業を見守る家族連れ

 
 釜石市大平町の釜石商工高(今野晋校長、生徒180人)で27日までの2日間、「商工祭」が開かれた。商業、工業高の統合から16年目の学校祭は「商工華~百花斉放~」がテーマ。機械、電気電子、総合情報科の生徒それぞれが専門的に学んできた成果を地域に公開した。学業と合わせ、「楽しい」を視点に取り組む委員会や部活動でも多彩な個性を発揮。生き生きとした魅力あふれる学校生活を来場者に伝えた。
 
 学校のことをたくさん知ってほしい―との思いが込もった商工祭。工業系、商業系の特徴を生かした企画や展示を用意した。機械科は旋盤や溶接作業の実演、電気電子科は静電気発生装置「バンデグラフ」を使った実験やエネルギー模型の展示などを実施。ものづくりの楽しさ、磨いてきた技術力を見せた。
 
s黒い線を感知しながら自動で走る模型を紹介した電気電子科

黒い線を感知しながら自動で走る模型を紹介した電気電子科

 
実演や体験を通じ、ものづくりの楽しさを伝えた工業系の生徒ら

実演や体験を通じ、ものづくりの楽しさを伝えた工業系の生徒ら

 
 体験企画もあり、機械科では六角形の真ちゅう(直径約1センチ、長さ10センチ)を加工する文鎮作りを準備。生徒の保護者や家族、地域住民らは、同科1、2年生の説明を聞きながら旋盤での切削、取っ手となるねじを付けるための穴あけなどの作業を見学したり、やすりでの面取りに取り組んで完成させた。
 
 同科の佐々木琥羽さん(1年)は「誰でもできる簡単な作業で、ものづくりの楽しさを体感してもらえる機会だ」と積極的にアピール。佐藤匠さん(同)は緊張しながらも体験を希望した子どもらに寄り添い、作業を支えた。機械関係の仕事を念頭に知識や技術を習得中で、「さまざまな工具、機械に触れられて楽しい。資格取得もできるので就活に有利」と意欲を見せた。
 
スマホカメラで撮影しながら真剣な表情で見守る保護者も

スマホカメラで撮影しながら真剣な表情で見守る保護者も

 
 総合情報科は伝統の「商工マーケット」でおもてなし。生徒らが調査し、「おいしそう」「売れる」と思った菓子や麺、レトルト食品などを全国から仕入れて販売した。「おすすめですよ」「おやつにどうぞ」など元気に呼び込み、購入者には「ありがとうございます」と笑顔を添えた。
 
商工マーケットで購入者に笑顔で感謝を伝える生徒

商工マーケットで購入者に笑顔で感謝を伝える生徒

 
 ご当地スナックと岩手産リンゴを販売した同科の木下莉星さん(2年)のイチ押しは京都の金平糖専門店・青木光悦堂の砂糖菓子「ボンボン」。小さくてカラフルな見た目が「かわいい!」と選んだ商品で、狙い通り、子連れの家族が手に取っていて、「うれしい」と笑った。班の仲間7人で調査、仕入れ、交渉などを手分けし、苦労もあったというが、「言葉遣いに気を付けたり、質問された時の対処とか、コミュニケーション力を身に付ける機会。大変だったことは将来、役立つはず」と充実感をにじませた。
 
工夫を凝らして呼び込みをする総合情報科の生徒ら

工夫を凝らして呼び込みをする総合情報科の生徒ら

 
 ステージ発表ではなぎなたの演舞や、吹奏楽部の演奏会があった。「商工虎舞」は若々しい舞、威勢のいい掛け声で学校祭を盛り上げた。虎舞委員会の委員長で機械科2年の山崎陸翔さんによると、練習は週2回、昼休み時間が主で、18人いるメンバーがそろうことはほぼなし。それでも、コロナ禍の影響が落ち着き、声を出せるようになったことで活動意欲は高まっている。
 
なぎなたの演舞や虎舞を生徒や地域住民が楽しんだ

なぎなたの演舞や虎舞を生徒や地域住民が楽しんだ

 
好き、楽しさを表現。息を合わせて虎舞を披露した

好き、楽しさを表現。息を合わせて虎舞を披露した

 
 幼少期から身近にあった虎舞が「大好き」な山崎さん。伝統の商工虎舞の素晴らしさを多くの人に知ってもらおうと演舞にも力が入る。委員会としての活動だが、1年生メンバーが少ないのが気になっている様子。学年間の基本的な礼儀はあるが壁はなく、「仲も雰囲気もいい。やってみれば楽しさも分かると思う。学外で披露したり、いろんなことに挑戦したい」と前を向いた。
 
 生徒たちが開かせた多彩な花(学びの成果)は来場者に届いた様子。総合情報科で学ぶ娘の姿を見守った高木未来さん(40)は「接客や運営をしっかりやっていたし、普段とは違った面を見られた」と目を細めた。高校時代から専門的な学びに取り組む生徒たちにも感心。「各科の特色を生かした内容で楽しむことができた」とほほ笑んだ。
 
階段を彩るアート作品。たくさんの「商工華」は成長を続ける

階段を彩るアート作品。たくさんの「商工華」は成長を続ける

 
 戸塚敏彦副校長は「人とのつながりを感じ、学びを実践する場になれば。失敗も経験。トライ&エラー、やって失敗しても、また挑戦して改善、磨き上げればいい。地域の人たちに学校を知り、理解し、喜んでもらえたらうれしい」と話した。

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釜石の民俗芸能・片岸虎舞 6年ぶりに演舞 待ちわびた住民ら「最高だ」目頭熱く

心一つに片岸虎舞を披露する保存会のメンバー

心一つに片岸虎舞を披露する保存会のメンバー

 
 釜石市片岸町で伝承される「片岸虎舞」が13日、住民らを前に6年ぶりに躍動した。地元鎮守・片岸稲荷神社の例大祭に合わせ舞の奉納や門打ちを行ってきたが、新型コロナウイルス禍の影響や少子高齢化による人手不足などから活動が停滞。そんな状況に危機感を持った保存会の中堅メンバーらが「地域の宝を守らねば。できることをやろう」と再び動き出した。
 
 70人ほどの人が集まった同神社前の広場。笛や太鼓の音、威勢のいい掛け声を町内に響かせながら近づく特設の山車を多くのワクワク顔が迎えた。片岸虎舞保存会(柏﨑育也会長)の有志約30人は鎮守にあいさつ。「よし、やるかー!」と、気持ちを一つに舞台に向かった。
 
 遊び戯れる様子を表現する「片岸虎」、笹で牙を磨く場面を見せる「笹喰(ば)み」を勇ましく舞った。「うさぎ」「甚句」「大漁万作」など手踊りも披露。鳥を捕らえる姿を表する「刺鳥舞」は風流な歌い節に合わせて舞い手が軽やかに踊り、住民から盛んな拍手を受けた。
 
片岸稲荷神社前にある広場で虎舞を披露した

片岸稲荷神社前にある広場で虎舞を披露した

 
多彩な手踊りを次々と繰り広げるメンバーら

多彩な手踊りを次々と繰り広げるメンバーら

 
 片岸虎舞は江戸時代から続き、市内でも古い歴史を有する芸能の一つ。1998年に市の無形文化財に指定された。虎舞のルーツとされる国性爺合戦の和藤内の虎退治の場面を演じ、多くの手踊りがあるのが特徴。虎の勢いのよいしぐさを表現した勇壮な舞と、テンポの速いおはやしも持ち味となっている。
 
 「おはやし、耳になじんでいる」「懐かしいね」「こんなに人が集まるのは久しぶり。ウキウキする」「覇気もらった」「虎舞がないなんて…考えられない」。民俗芸能が人、地域をつなぎ、住まう人たちに伝統を大切にする思いが根付く。
 
ベテランメンバーの歌声が舞い手を盛り立てる

ベテランメンバーの歌声が舞い手を盛り立てる

 
虎舞、再会を待ちわびた住民らには笑顔が広がった

虎舞、再会を待ちわびた住民らには笑顔が広がった

 
 そんな虎舞も近年、思うような活動ができない状況が重なった。片岸地区は2011年の東日本大震災で被災。虎頭や太鼓、踊り道具も津波で失ったが、全国からの支援でそろい、翌年に復活。その後は10月の同神社例大祭で舞を奉納、門打ちを行ってきた。
 
 19年、釜石も会場となったラグビーワールドカップ(W杯)日本大会では2試合目が台風災害の影響で中止されたが、同じように祭り時期を迎えていた虎舞もお披露目が取りやめとなった。以降、コロナ禍で制約の多い生活が続いた上、保存会メンバーの高齢化、踊り手となる子どもの減少などもあり、祭り神事での奉納だけとなった。門打ちはせず、郷土芸能が一堂に会す催しへの出演も控えていたため、住民の多くは目にする機会が減った。
 
 震災後、住民が散り散りになった同地区では再建が進んだものの、地区外に居を移した人も少なくない。保存会のメンバーも然り。そんな中、地区内に住む保存会メンバーの耳に「虎舞が見たい。おはやしが聞きたい。今年はどうするの、踊らないの?」などと声が届くようになっていたという。
 
 伝統継承-。思いを持ち続けていた保存会事務局の柏﨑洋也さん(41)が中心となって仲間に声掛けし、「伝え続けるため、やれることをやろう」と決めた。今年は11日が同神社例大祭で、前日の宵宮祭で虎舞を奉納。平日だったこともあり門打ちは行わず、週末の日曜日に披露する形にした。
 
つなぐ誇りを胸に虎舞、手踊りを披露する保存会のメンバー

つなぐ誇りを胸に虎舞、手踊りを披露する保存会のメンバー

 
 当初、40代メンバー8人ほどの予定だったが、本番には「やりたい」という子どもや地区外からも仲間が集った。見る側の住民も同じで、久しぶりの再会を楽しむ姿もあった。洋也さんは「地域の人たちが喜んでくれたのが一番。集いの場を作るいい機会にもなった」とうれしそうに目を細めた。
 
 地元の新屋碧さん(鵜住居小6年)は5年前に練習に参加したものの祭りが中止となり、「どうしても踊りたい」と、友達の三浦琉生さん(同)を誘って参加した。数回の練習だったことから緊張したというが、保存会メンバーの教え方や雰囲気が心地よく、「楽しかった」と満足げ。来年は中学生となり、部活などで忙しくなるが、「地域にこういう伝統があるのを誇りに思う。残していきたいから続けたい」と受け止めた。
 
ベテラン、若手、子ども、OBも加わり伝統芸をつなぐ

ベテラン、若手、子ども、OBも加わり伝統芸をつなぐ

 
息の合った演舞とおはやしに住民らが拍手を送った

息の合った演舞とおはやしに住民らが拍手を送った

 
 片岸の虎頭は市内でも数少ない木彫り。がれきの中から見つかった1つは修復し大切に保管する。支援で2つが新調された。かつてはケヤキが使われていたが、今回は桐の木を使い軽量化。それでもズシリとした重さは舞い手たちに残る。洋也さんも久々の感触に「年齢を感じる」というが、表情には充実感がにじむ。
 
 かつてメンバーだった70代男性のもとに現役メンバーが歩み寄り、「どうだ?」と虎頭を手渡す場面も。男性は「軽いと思って踊っていたけど、重いなー。昔を思い出す。片岸に住んでいたら、やっぱりやらなきゃ。虎舞が死んだら、地域も死ぬ」と目頭を熱くする。そして、しみじみと…「最高だ」。足腰が弱くなったというが、「来年は踊っているかも、そんな力をもらった。ありがてぇ」と笑顔も光らせた。
 
虎舞がつなぐ世代間交流。笑顔がまぶしい

虎舞がつなぐ世代間交流。笑顔がまぶしい

 
大人の演舞に感化されてウズウズ。子ども虎舞も躍動

大人の演舞に感化されてウズウズ。子ども虎舞も躍動

 
 若い世代につなぐステップに―。保存会では「来年は門打ちを」と気持ちを一つにする。そして、今回披露できなかった演目・和藤内の復活も目指す構え。片岸虎舞の見どころの一つで、子どもの舞い手が欠かせない。洋也さんは「今回、思いのほか子どもたちが参加してくれた。その意気込みを大事にしたい」と話した。
 
伝統芸が地域を彩る景色…来年もまた見られますように

伝統芸が地域を彩る景色…来年もまた見られますように

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医療従事者ら趣味の作品多彩に 釜石医師会が41回目の美術工芸展 20日まで開催中

17日に行われた釜石医師会「第41回医家美術工芸展」の展示作業

17日に行われた釜石医師会「第41回医家美術工芸展」の展示作業

 
 釜石医師会(小泉嘉明会長、会員52人)が開く「医家美術工芸展」が、本日18日から釜石市中妻町の釜石医師会館で始まった。会員医師や看護師、薬剤師とその家族らが制作した趣味の作品を展示する。医療現場の顔とはまた違った一面をのぞかせる同展。今年もさまざまなジャンルの作品が並び、出品者の豊かな人間性を感じさせる。20日までの開催で、同会事務局は「ぜひ多くの皆さんに見に来てほしい」と呼び掛ける。
 
 同展は1979(昭和54)年から続く秋の恒例行事。東日本大震災で2年間、新型コロナウイルス禍で3年間の中止はあったものの、脈々と回数を重ね、今回で41回目を迎えた。同医師会に所属する釜石大槌地区の開業医や地区内の国立、県立病院の勤務医のほか、関係病医院の看護師、薬局の薬剤師、それぞれの家族など67人が出品。作品数は114点に上る。
 
 絵画は油彩やパステルなど。医業の傍ら創作活動を続け、美術分野でも名を知られる医師の作品のほか、医師家族3世代が描いたほのぼのとした作品も。絵手紙や書、水墨画の作品も出品された。今回は写真が多く、各地の自然風景や祭り、スポーツなど多彩な被写体が並ぶ。季節の写真は年に6回発行する医師会報の紙面にも活用されるという。
 
東日本大震災津波に襲われた市中心市街地を描いた絵画も(右)

東日本大震災津波に襲われた市中心市街地を描いた絵画も(右)

 
市内外の季節の風景を捉えた写真作品

市内外の季節の風景を捉えた写真作品

 
体長1メートル18センチ! タチウオのデジタル魚拓は本物の色や質感が出てきれい

体長1メートル18センチ! タチウオのデジタル魚拓は本物の色や質感が出てきれい

 
 今の時代を感じさせるのが「デジタル魚拓」。スマートフォンやデジタルカメラで撮影した魚の画像を実寸大でプリントするもので、会員医師が釣り上げた1メートル超えのタチウオが色や大きさそのままに魚拓として残されている。
 
 細かな手仕事が光る作品も多数。ステンドグラス、レースや毛糸の編み物、各種フラワーアレンジなど、根気と集中力が発揮された作品が見られた。木の皮で編んだ籠バッグ、木の実細工など自然素材を生かした作品も。ツイッター(現X)発の人気キャラクター「ちいかわ」の漫画ページを刺しゅうで再現した作品は、一針一針でつないだ線の美しさに驚かされる。パン屋の店頭で見られる飾りパンもお目見え。ディスプレイ用だけでなくインテリアとしても楽しめる“食べられないパン”は実際の食材で作られ、焼きたての香りが漂ってきそうな仕上がり。
 
書やステンドグラス、フラワーアレンジの作品などが会場を彩る

書やステンドグラス、フラワーアレンジの作品などが会場を彩る

 
「ちいかわ」漫画の刺しゅう作品。文字まで全て縫い込まれている

「ちいかわ」漫画の刺しゅう作品。文字まで全て縫い込まれている

 
飾りパンやビーズアート(写真上段)など珍しい作品も…

飾りパンやビーズアート(写真上段)など珍しい作品も…

 
 県内には地域ごとに組織される医師会が14あるというが、同様の展示会を開いているのは釜石だけ。会場には会員やその家族のほか一般市民が足を運び、作品鑑賞を通じて交流の輪を広げている。同医師会の川崎浩一事務長(60)は「忙しい日々を送る医療関係者にとって、こうした趣味に親しむ時間は貴重なリフレッシュの機会になっているよう。診療でまとまった休みが取りづらい先生方も大型連休などに遠出して写真を撮ってきたり…。長く続くこの展示会は歴代の先生方が紡いできた医師会の大切な歴史の一つ」と話す。
 
展示会では作品に出品者の名前も添えられている。顔見知りの医師や看護師の作品もあるかも

展示会では作品に出品者の名前も添えられている。顔見知りの医師や看護師の作品もあるかも

 
 第41回医家美術工芸展は20日まで開催。開場時間は午前10時から午後5時まで。展示会場の釜石医師会館は、国道283号沿いの小泉医院裏手にある。

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紡ごう「鋼鐵の路」 釜石高校創立110周年記念式典 続く学び…OBの大学教授が講演

歴史と伝統をかみしめながら校歌を歌う釜石高の生徒ら

歴史と伝統をかみしめながら校歌を歌う釜石高の生徒ら

 
 釜石市甲子町の岩手県立釜石高校(青木裕信校長、生徒・全日制387人、定時制16人)の創立110周年記念式典は5日、同市大町の市民ホールTETTOで開かれた。在校生、教職員、同窓生ら約550人が出席。歴史の重みを感じながら「鋼鐵(はがね)の路(みち)」を紡ぐ思いを一つにした。
 
 同校の始まりは、1914(大正3)年に設置された釜石女子職業補習学校。学制改革を経て49(昭和24)年、3校の統合により釜石高校が誕生した。高校進学率の向上などで釜石南、釜石北の2高校に分離独立。2008(平成20)年、高校再編で2校が統合し新生「釜石高校」となった。これまでに4万人近くの卒業生を輩出している。
 
 教育理念「文礼一如(ぶんれいいちにょ)」を礎に、広い視野を持った人材の育成に力を入れる。ここ10年間は、変化する生活様式や社会との関係性に対応すべく変革を推進。ICT(情報通信技術)を教育活動に取り入れた生徒主体の探究的な学びや体験学習を重視する。東日本大震災後の復興の道のり、防災の学びを伝える活動も活発。新型コロナウイルス感染症の流行で生活の一変という逆境に直面したが、学び続ける姿勢は変わらない。
 
釜石高校の創立110周年を記念して開かれた式典

釜石高校の創立110周年を記念して開かれた式典

 
 式典で、青木校長が「先輩たちが築き上げた歴史と伝統の重さを受け止め、釜高生としての誇りを持ちながら新しい時代の創造者に。創立110周年を一つの出発点として、鋼鐵の路を紡いでいこう」と式辞。創立110周年記念事業実行委員会の澤田龍明委員長は「今、この時が人生においての経験であり、将来の大きな糧になる。高校時代の一瞬一瞬を大切に過ごしてほしい」とあいさつした。
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式典であいさつした青木裕信校長(左の写真)、澤田龍明委員長

式典であいさつした青木裕信校長(左の写真)、澤田龍明委員長

 
 生徒を代表し、前生徒会長の一関航帆(かずほ)さん(3年)は「110年の歴史を持つことは数多くの先輩方が挑戦し、地域に貢献してきた証し。その重みを受け止め、後世に伝えていく決意を新たに、それぞれが高みを目指して挑戦し続ける」と誓った。
 
釜高生としての誇りを胸に飛躍を誓う一関航帆さん

釜高生としての誇りを胸に飛躍を誓う一関航帆さん

 
 「岩手の山川 太平洋の……百錬鍛へし 鋼鐵の意志(こころ)……文あり 我等の釜石高校」。校歌斉唱、心一つに声を合わせた。歴代の校長(3人)やPTA会長(4人)、定時制教育振興会長(2人)、同窓会長(2人)、記念事業実行委員長(1人)への感謝状贈呈もあった。
 
教育理念「文礼一如」が詰まった釜石高の校歌

教育理念「文礼一如」が詰まった釜石高の校歌

 
校歌斉唱。「鋼鐵の意志」をかみしめながら歌う在校生ら

校歌斉唱。「鋼鐵の意志」をかみしめながら歌う在校生ら

 
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吹奏楽部の生徒らは音に思いをのせて演奏した

 
 式典後は、同校OBで広島大宇宙科学センター長の川端弘治教授(観測天文学)=1989年度卒=による記念講演があった。タイトルは「五葉下ろしと鉄の街に導かれた我が天文学の旅」。高校時代は山岳部に所属し、幾度も登った三陸沿岸最高峰・五葉山(標高1351メートル)などで見た絶景や星空に感動して天文学に興味を持ったこと、部活での経験が現在の研究者人生にも役立っていることを紹介し、「釜石高を選んで良かった」と大きくうなずいた。
 
高校時代や研究人生を振り返る川端弘治教授

高校時代や研究人生を振り返る川端弘治教授

 
 宇宙の成り立ちに大きく寄与する超新星に関する研究に取り組み続ける川端教授。謎に迫る研究の成果を示しながら、「『鉄』は超新星爆発を引き起こし、中性子やブラックホールをつくる特別な重元素。釜石とのつながりを感じ続けていた」と、これまでの道のりを振り返った。
 
 宇宙に関心があるという阿部愛奈(えな)さん(3年)は「ゴールがない研究をすることは大変なこともあったと思う。釜高での経験が今につながっている―という言葉が印象に残った。私も日々の生活、青春を大切にしていきたい」とお礼の言葉。木村妃菜さん(同)が花束を手渡した。
 
式典会場には生徒らの探究活動を紹介する展示もあった

式典会場には生徒らの探究活動を紹介する展示もあった

 
 記念事業は、記念誌「10年小史」の刊行、記念品(トートバッグ)やメッセージパネルの製作など。文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」指定校(第3期)として課題研究に取り組む生徒らを支援する取り組みも行っており、会場となった同ホール内には、研究成果をまとめたポスターが展示された。

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書で応援!ふるさと大使・支部蘭蹊さん(書家) 釜石で個展「言葉との出合いを」

釜石で2回目の個展を開いた書家の支部蘭蹊さん

釜石で2回目の個展を開いた書家の支部蘭蹊さん

 
 「釜石応援ふるさと大使」で宮城県仙台市在住の書家、支部蘭蹊(はせべらんけい=本名・一郎)さん(73)の個展「見る・観る・魅る-書・響きあい展」は9月27日~29日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。昨年に続く2回目の開催で、ずらりと並んだ約100点はほぼ新作。つづった言葉に込めた思いや表現世界を、独創性という“味”を加えた文字で伝えた。
 
 支部さんは中学、高校時代を釜石で過ごした。東日本大震災後、釜石市内の仮設住宅を回って書を届けたり、高校の同期生でつくった復興支援グループ「釜南44」の活動(作品展示や音楽イベントなど)を通じて古里応援を続けている。2022年に同大使に就任。今年から、「脳活書道」という手法で文字を書くことや創ることを楽しんでもらう講座を月に1回開いている。
 
 会場に多く並んだのは額入りや掛け軸、帯地を利用したタペストリーなど日常生活で目にできる形に仕上げられた作品。はがきや置物もあり、心に寄り添う言葉のほか、宮沢賢治や石川啄木、金子みすゞらの詩、井上ひさしの言葉、種田山頭火の句などを書で表現した。
 
大小さまざまな作品が並んだ「書・響きあい展」

大小さまざまな作品が並んだ「書・響きあい展」

 
紙、布、硯石、壁紙などさまざまなものに表現した書作品

紙、布、硯石、壁紙などさまざまなものに表現した書作品

 
 ひと味違う―のが、支部さんの作風。書道は「筆と紙があれば」と思うが、半紙のような白っぽい紙を使っているものは少ない。紙ではないものも多く、着物など布、壁紙を使い、表面の凸凹を生かした立体表現を見せる。硯石に刻字(すかし彫り)した作品は震災被災地で石の産地・石巻市(宮城)を応援、「一緒に頑張ろう」と気持ちを込めて使い続ける“書紙”の一つだ。
 
 立体との視点では、独自の技法「墨彩書(ぼくさいしょ)」も紹介する。表面には普通に文字を書くが、裏面から油分を含んだ墨を吹きかける手法。墨の黒文字の外側に白い枠線がついた“袋文字”的なものだが、色彩のコントラストで文字が浮かび上がっているように見える。
 
支部さんオリジナル技法「墨彩書」を用いた作品

支部さんオリジナル技法「墨彩書」を用いた作品

 
 墨をつけたら筆になるー。「何を求める 風の中ゆく」としたためた作品はたばこのフィルターを使い、「はばたき」と記したものは金色のインクが入ったチューブで字形を絞り出している。使う素材を生かす支部さんが残す文字は自然体。「書道は言葉との出合い。手紙文なようなもので、読めて、相手に伝わらなければ」と一文字ごとに思いを乗せている。
 
教えてもらわなければ分からない⁉筆ではないものを使った作品

教えてもらわなければ分からない⁉筆ではないものを使った作品

 
作品の説明をしながら来場者と触れ合いを楽しむ支部さん

作品の説明をしながら来場者と触れ合いを楽しむ支部さん

 
 書道は「難しい、次元が違う」「書いても下手」と思われがちだと話す支部さん。「違う世界がある」と、会期中に書のパフォーマンスを見せた。来場者の好きな言葉を書いてプレゼント。その際に見せたのが脳活書道で、文字を分解して書き順を変えながら書き上げた。「絵を描くように文字を創り上げる。書はデザイン。アートしようよ、ということ」と楽しそうに笑った。
 
訪れた人のリクエストに応えて書をしたためる支部さん

訪れた人のリクエストに応えて書をしたためる支部さん

 
脳活書道の実演。左上の写真から時計回りに見ていくと…

脳活書道の実演。左上の写真から時計回りに見ていくと…

 
 支部さんは、鑑賞をきっかけに「何かやってみよう」という人が増えることを期待する。「だまされたと思ってやってみてほしい」と呼びかける脳活書道講座は10月13日、11月24日(会場はいずれも釜石情報交流センター)に開催予定。「文字に対する新発見を糸口に発想を転換させ、脳に刺激を。若々しく元気に、人生、いきいき楽しみましょう」。個展のタイトルに込めた“響きあい”を待つ。