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釜石の消防団員ら 出初式で1年の活動へ意欲/SMC釜石工場が消防団協力事業所に

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新年を迎え、士気を高める団員ら=釜石市消防出初式、15日

 
 釜石市消防出初式(市、市消防団主催)は15日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。市消防団(川﨑喜久治団長、団員546人)から団員約200人、関係者含め約250人が出席。新年のスタートにあたり、消防防災活動への意欲を高めた。例年行う大町目抜き通りでの分列行進、まとい振りなどの街頭パレードは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止した。
 
 東日本大震災の犠牲者に黙とうをささげた後、統監の野田武則市長が式辞。昨年発生した地震、台風などの自然災害、市内の火災状況などを示し、「消防団は火災のみならず、複雑、多様化する災害現場への対応など、期待される役割が大きくなっている。住民の生命、財産を守るため、引き続き尽力を」と呼び掛けた。
 
 長年にわたる消防防災への功績、職務精励などで団員79人を表彰。釜石市長表彰では、勤続30年の団員8人に「永年勤続功労章」を贈り、代表で第3分団第1部の伊藤福明班長が表彰状を受け取った。県消防協会遠野釜石地区支部表彰では、40年勤続で第6分団第1部の堀川正部長、第7分団第1部の栗澤茂行班長に「勤続章」を授与。同様に25年勤続で9人、15年勤続で29人、10年勤続で18人を表彰し、それぞれの代表が受領した。消防技能に熟達し、規律厳正、業務への精励などで他の模範となる団員13人には「精練章」が授与された。
 
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コロナ禍で昨年に続き、式典のみの開催となった市消防出初式

 
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40年勤続で県消防協会遠野釜石地区支部表彰を受ける堀川正さん(第6分団第1部部長)

 
 団員らは式典できびきびとした行動を見せ、今年1年の活動へ気を引き締めた。川﨑団長(73)は「豪雨による河川の増水、倒木、土石流などの危険が高まっている。昨年9月に県が出した新たな津波想定では市内でも浸水区域が拡大した。訓練を重ね、火災や災害被害ゼロを目標に防災力を高めていきたい」と意気込んだ。
 
 昨年は1月に南太平洋トンガ諸島の海底火山噴火で本県沿岸に津波警報が発表され、5月の宮城県沖地震では同市で震度5弱を観測。地震、津波対応は予断を許さない状況が続く。市内の昨年の火災発生は5件(建物2、その他3)。一昨年は4件で、2年連続1桁台となっている。
 
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 市では地域防災力強化のため、今後も消防団車両の更新、老朽化した消防屯所の建て替えなどを計画的に行い、年々減少している消防団員の確保にも力を入れていく方針。
 

SMC釜石工場が消防団協力事業所に 市内13社目の認定 相互連携で防災力向上へ

 
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SMC釜石工場への消防団協力事業所表示証交付式=19日

 
 釜石市は消防団員確保や災害時の協力体制構築を目的とした「消防団協力事業所」に、上中島町のSMC釜石工場(浦島勝樹工場長)を認定した(15日付)。市内13社目の認定。同工場では従業員約30人が同市消防団に加入。火災や自然災害時の出動のほか、自社消防訓練での消火栓運用などでも力を発揮している。本認定を機に新入団員募集への協力、消防機関と連携した地域防災力向上に貢献したいとしている。
 
 19日、野田武則市長、釜石消防署の駒林博之署長ら6人が同工場に出向き、協力事業所表示証の交付式が行われた。交付書と掲示用の表示証を浦島工場長に手渡した野田市長は「消防団員が安心して働き、災害時に迅速に行動できる体制の構築が必要。協力事業所の存在は非常にありがたい。今後も活動への協力を」と願った。
 
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野田武則市長がSMC浦島勝樹釜石工場長(右)に協力事業所の表示証を交付

 
 浦島工場長は「勤務中の出動要請への対応、団員募集ポスターの掲示、新入社員向け説明会などで消防団活動への協力ができれば。社内の消防訓練時には団員である従業員に先頭に立ってもらえると心強い。自社の防災意識も高めながら、地域貢献につなげていきたい」と今後を見据える。同社では大槌町、遠野市の団も合わせると約50人の従業員が団員として活躍しているという。
 
 釜石市の消防団員数は人口減に伴い、減少傾向が続く。近年は全体の約7割がサラリーマン団員で、地域防災力の維持には市内企業の理解と協力が不可欠。同市では団員の確保や活動環境の整備を目指し、2008年度から「消防団協力事業所表示制度」を導入。就業時間中の消防団活動への積極的な配慮、災害時の資器材提供などで協力する事業所を認定することで、新規入団の促進、地域連携による防災力強化につなげている。協力事業所は社屋への表示証の掲示、自社ホームページでの公表などにより、社会貢献企業としての認知を広めるメリットがある。
 
 同市がこれまでに認定した消防団協力事業所は次の通り。
菊池建設、山元、山長建設、新光建設、小澤組、及川工務店、東陸建設、山崎建設、小鯖船舶工業、八幡建設、坂本電気、釜石レミコン、SMC釜石工場
 
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「消防団協力事業所」表示証(右下)の交付を受け、市側と意見交換するSMC釜石工場幹部

 
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 同市の消防団員は本年1月1日現在で546人(正規469人、機能別77人)。駒林署長は「当市では団員の高齢化が顕著。若い世代の加入を増やしていかなければ、10年、20年後には一気に人数が減る。残る団員がほぼ40代以上となると非常に厳しい。ぜひ、多くの若者の入団をお願いしたい」と窮状を訴える。同市消防団員の20~30代の割合は2020年度時点で26・8%。市では25年度までに30%に持っていきたい考え。
 
 同市では引き続き、協力事業所の認定、団員募集の広報活動を行いながら、地域の消防防災体制の強化を図っていきたいとしている。なお、同市消防団の入団要件は18歳以上で、市内に居住または勤務する健康な人。団員には報酬、各種手当が支給される。

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出たぞ!「アイアンマスター」 釜石・第15回鉄の検定 成績上位者、知識の深化へ意欲

JR釜石駅前広場の大島高任像、鉄のモニュメント前で記念撮影する第15回「鉄の検定」の成績優秀者ら

JR釜石駅前広場の大島高任像、鉄のモニュメント前で記念撮影する第15回「鉄の検定」の成績優秀者ら

 
 12月1日の「鉄の記念日」に合わせ、近代製鉄発祥の地・釜石市で行われている「鉄の検定」。15回目の今回、満点者に贈られる「アイアンマスター」の称号を中学生が獲得した。14日に鈴子町のシープラザ釜石で表彰式があり、小学校、中学校、一般の3部門で上位に入り級認定を受けた12人とともに喜びを分かち合った。
 
アイアンマスターの川端さん(中)、認定を喜ぶ野田市長(左)と佐々木副会長

アイアンマスターの川端さん(中)、認定を喜ぶ野田市長(左)と佐々木副会長

 
 アイアンマスターの認定は2回目。第13回検定で中学生2人が獲得していた。今回、マスターの称号を得たのは釜石中3年の川端海惺さん。13回検定で満点をとった1人で、2回目の認定となった。「小中学生の問題に挑戦するのは最後だったので、どうしてもマスターをとりたかった。実現できて、素直にうれしい」と笑う。小学5年生の時から同検定に挑戦していているが、数問は「今まで出たことがない。新しい」と悩ませられるという。そこが鉄検の魅力と感じている。そして、早くも一般の部への挑戦を視野に入れていて、「難しいと聞くが、持っている知識でどこまでいけるか知りたい。学び続ける」と意欲を高めていた。
  
 表彰式で、同実行委会長の野田武則市長は「それぞれ素晴らしい成績を残した。アイアンマスターの認定者も出たが、市内ではいまだに2人しかいない。知識を深めた皆さんが活躍し、地域を活性化させてほしい」とあいさつ。佐々木伸一副会長も「鉄は釜石の宝。勉学に励んで得た知識を皆さんの財産として外に向けて発信してほしい」と期待した。
 
シープラザ釜石で行われた鉄検の表彰式

シープラザ釜石で行われた鉄検の表彰式

 
 鉄検は釜石の鉄の歴史を幅広い年代で共有し、ふるさと発信の契機とするのが狙い。鉄のふるさと創造事業実行委員会が主催する。江戸時代末期に大橋地区に建設された洋式高炉で、大島高任が鉄鉱石を原料とする製鉄(連続出銑)に初めて成功した「近代製鉄の発祥」にちなんで制定された鉄の記念日・週間に合わせて行われる。
  
 釜石の製鉄の歩みや関わった人物・施設の変遷だけでなく、世界の製鉄の歴史や地学、鉱物学など幅広い知識を問う。15回目には小学生5人、中学生109人、一般8人の計122人が参加。小中学生は共通の50問(解答時間30分)、一般は80問(同60分)に挑んだ。
  
 小中学生、一般とも80点以上を2級、90点以上は1級、満点をアイアンマスターに認定する。今回は1級が小学生3人、一般3人。2級は中学生が24人、一般2人だった。
 
小学生の部で同点1位になった金野君(右)

小学生の部で同点1位になった金野君(右)

  
 小学生の部の最高点は98点で、2人が獲得した。その一人、双葉小4年の金野龍真君は今回が初挑戦。過去問で対策を練ったといい、「次回はアイアンマスターになる」と意気込んだ。
  
 市郷土資料館に勤務し、釜石観光ガイド・ジオガイドとしても活動する川畑郁美さん(58)は8回目の挑戦。一般の部1位で1級に認定された。「資料館の来場者を案内したり解説したりする仕事柄、それに釜石人なら鉄を知らないと…。一つずつ知識が増えていくのが楽しい」と向上心を見せた。
 
一般の部1位の川畑さん(右から2人目)ら成績上位者

一般の部1位の川畑さん(右から2人目)ら成績上位者

  
 上位成績は次の通り。
【小学校の部】①川端俐湖(双葉5年)、金野龍真(同4年)③川端虹河(同)=いずれも1級
 【中学生の部】①川端海惺(釜石3年)=アイアンマスター②森美惠(同3年)=2級③菊地蓮、菊池明、黒澤菜々子(同1年)=同
 【一般の部】①川畑郁美②伊藤雅子③花坂保雄=いずれも1級▽2級=谷藤稔、金野義男
 
 

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人口減、不漁、コロナ禍…環境厳しくも 「活路を見いだす」 釜石で仕事始め

釜石市魚市場に水揚げする定置網漁船の乗組員ら

釜石市魚市場に水揚げする定置網漁船の乗組員ら

 
 正月の三が日が明けた4日、釜石市内の官公庁や多くの企業は「仕事始め」を迎えた。魚河岸の市魚市場では新春恒例の初売り式があり、漁業関係者らが鏡開きや手締めで一年の豊漁を祈願。主要魚種の水揚げ不振が続く中、新たな魚種の活用や養殖事業の推進で活路を見いだしたい―と力を込めた。只越町の釜石市役所では野田武則市長が年頭訓示。人口減少・高齢化を踏まえた新たなまちづくり、新市庁舎の建設に向け力を注ぐとの考えを示し、市職員らに協力を求めた。
 

釜石魚市場で初売り式「魚のまち再生を」

 
水揚げされた魚を見定め、競りに臨む買い受け人ら

水揚げされた魚を見定め、競りに臨む買い受け人ら

  
 市魚市場には、午前5時ごろから漁船が入港。定置網はマイワシ28・9トン、ムギサバ4・7トンなどが水揚げされた。主要魚種はサケ10匹、スルメイカ237キロにとどまった。初競りに臨んだ買い受け人は魚を熱心に見定め、次々と取引を進めた。
  
 同市場の2022年の取り扱い実績は、昨年末時点で数量が4450トン(前年同期比34%減)、金額は6億8800万円(同23%減)。市漁業協同組合連合会の木村嘉人会長は「秋サケ漁は県全体で尾数、重量が若干増えたが、不漁は数年続くと思われる。巻き網船やサンマ船の積極的な誘致活動を行い、水揚げ増大に取り組んでいく」と前を向いた。
  
定置網漁船から水揚げしたイワシなどを選別する漁師ら

定置網漁船から水揚げしたイワシなどを選別する漁師ら

  
 市場開設者の野田市長は、20年秋から釜石湾で進める「釜石はまゆりサクラマス」の養殖事業に期待する。実証試験2期目の昨年は1万8000尾、30トンを水揚げ。「関係者らと力を合わせてサクラマスの養殖を本格化させ、魚のまち再生のために力を尽くしたい」とした。
  

釜石市役所で仕事始め式「人事を尽くして天命を開け」

  
仕事始め式で訓示する野田市長(写真右)。幹部職員らが聞き入った

仕事始め式で訓示する野田市長(写真右)。幹部職員らが聞き入った

  
 野田市長は約40人の幹部職員を前に訓示。東日本大震災からの復興完遂は目前とする一方、この10年で人口は4万人から3万700人ほどになっており、人口減という課題に直面する。年間600~700人の減少とすると、「今年は2万人台という歴史的な人口減の姿が現れる年になるかもしれない」と指摘。新しいまちづくりの視点が必要とした上で、「市役所が中心とって解決の糸口をつくり、市民の皆さんに元気を出してもらえる市政運営をしていかなければ」と気を引き締めた。
  
 少子化対策や高齢化を見据えた見守り体制の強化、「ウィズ・コロナ」時代の経済活性、新市庁舎建設の推進など重点的に取り組むべき事項を挙げ、「厳しい年になるだろう」「岐路に立たされている」などと繰り返し強調する野田市長。「人事を尽くす。われわれは、持っている最大限の能力を尽くさなければ。そして、天命を待つのではなく、自らの手で開いていかなければならない」と一層の奮起を促した。
 
 

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釜石の鉄文化・ジオの魅力体感 根浜キャンプ場に出現⁈ミニチュア高炉で製鉄体験

根浜キャンプ場で行われた鉄づくりの様子を見守るジオガイドら

根浜キャンプ場で行われた鉄づくりの様子を見守るジオガイドら

 
 釜石市鵜住居町の根浜海岸にある観光施設「根浜シーサイド」のキャンプ場で8日、古来の製鉄法「たたら製鉄」の体験会があった。指定管理者の観光地域づくり法人「かまいしDMC」(河東英宜代表取締役)が、鉄文化や三陸ジオパークの魅力を再認識してもらおうと企画したモニターツアーの一環。市内外のジオガイドら10人余りが参加し、当時の光景を想像しながら鉄づくりの一端に触れた。
 
真夏のキャンプ場で見かけた使い道が気になる構造物

真夏のキャンプ場で見かけた使い道が気になる構造物

 
 キャンプ場で鉄づくり?-今年7月に新設されたフリーサイトに、不思議な石造りの構造物があった。焚き火台?手洗い場?…使用目的が分からなかったため、同社の関係者に聞いてみると、「ここで鉄づくりをします」と答えが返ってきた。じっと見つめると、石を組み上げたあの高炉が思い出された。「鉄のまち釜石」の象徴でもある世界遺産「橋野鉄鉱山・高炉跡」。それを模した石造りの炉に「なるほど」と思い、使われる機会を待った。
  
炉を囲んで説明を聞きながら体験活動が進められた

炉を囲んで説明を聞きながら体験活動が進められた

  
 その時が来た―。12月1日の「鉄の記念日」が近づくと、近代製鉄発祥の地・釜石では関連した各種イベントが目白押し。今年は、鉄文化ともつながるジオをテーマにした企画が複数用意された。「釜石のジオサイトは鉄に関わるものが多い。ジオを活用し、鉄にまつわる体験を増やしていけたら面白い」と市世界遺産課の森一欽さん(課長補佐)。ジオサイトでもある橋野鉄鉱山、根浜海岸を生かした体験活動を同社と実行した。
  
 今回はモニターツアーのため、7日に同社社員らがあの構造物の内側にコンクリートブロックや耐火レンガを組み上げて炉を構築。8日に参加者が炉の火入れ、鉄の原料となる鉄鉱石や石灰、木炭の投入など一部の作業を体験した。不純物(ノロ)の抽出が思うようにできず成果に不安もありつつ、解体した炉から0・5キロほどの鉄の混合物「ケラ」が得られた。
  
鉄の原料を炉に投入する作業を体験する参加者

鉄の原料を炉に投入する作業を体験する参加者

 
鉄づくりの熱さを感じながら炉を解体した

鉄づくりの熱さを感じながら炉を解体した

  
 たたら製鉄は炉に砂鉄と木炭を交互に入れて風を送り、熱して鉄を作る方法。森さんによると、古代の製鉄は海側で多く行われていて、釜石・箱崎半島の先端「御箱崎」(ジオサイト・千畳敷)には花こう岩帯があり、砂鉄を含む。根浜でも砂鉄がとれることから、「たたらをやっていた可能性もある」という。江戸時代末期に大島高任が日本初の鉄鉱石を用いた洋式高炉での製鉄(連続出銑)に成功した地で、「たたら製鉄を体験する。ユニークな試みだ」といたずらっぽく笑う。
 
 そんな森さんの説明を聞いたり、橋野鉄鉱山でジオ巡りをした岩泉観光ガイド協会の菊池義彦さん(77)は「岩泉でもたたら製鉄体験を行っている。自分が体験することで鉄づくりの大変さを伝えられ、砂鉄の話題も増える。ジオガイドはいろいろなことを知り、情報の引き出しをたくさん持つことが大事。雑学の積み重ね、新しい知識をアップデートし続ける必要がある」と学びの機会を楽しんだ。
 
製鉄体験を通して釜石の魅力を伝える森さん(中央)

製鉄体験を通して釜石の魅力を伝える森さん(中央)

 
 同社が石造りの構造物を使って製鉄体験を行ったのは、今回が初めて。社員らが使い勝手や鉄づくりの手順を確認する機会にした。森さんは「外気の影響が少なく効率的に加熱できるのかもしれない。ただ、解体作業では邪魔になる」と指摘。地元出身で明治時代の製鉄技師・高橋亦助が48回の失敗を経て出銑に成功したのを思い起こし、「もう少し試行錯誤が必要」とした。
 
 河東代表取締役は「ミニチュアで鉄づくりに触れ、使われ方を知ったうえで橋野鉄鉱山を見ると、当時の操業のイメージを想像できると思う。鉄のストーリーにより理解を深めてもらえる」と意義を強調。同社のジオガイド2人を中心にワーケーションや教育旅行の体験プログラムを作り上げ、誘致に力を入れたい考えだ。

 

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釜石地方森林組合 持続可能、先駆的取り組みなどで農林水産、環境両大臣賞を初受賞

受賞報告会で県沿岸広域振興局の眞島芳明農林部長(中右)から表彰状を受け取った釜石地方森林組合の植田収組合長(中左)

受賞報告会で県沿岸広域振興局の眞島芳明農林部長(中右)から表彰状を受け取った釜石地方森林組合の植田収組合長(中左)

 
 釜石地方森林組合(植田収代表理事組合長)は本年度、公益社団法人国土緑化推進機構主催の全国育樹活動コンクールで「農林水産大臣賞」、一般社団法人日本ウッドデザイン協会主催のウッドデザイン賞で「環境大臣賞」を受賞した。共に最高位の賞で、同組合の受賞は初めて。適正な森林整備や人材育成、国連の持続可能な開発目標(SDGs)、脱炭素社会への貢献などが認められた。
 
 同コンクールは地域の育樹活動の普及、向上に著しい実績をあげた個人、団体を表彰。最小限の皆伐と積極的な搬出間伐を実践する同組合は、木質バイオマス燃料の販売収入を原資とした基金を創設し、所有者負担のない森林整備を推進。2017年に発生した尾崎半島林野火災の復旧にも生かされた。管内外の林業事業体との業務提携のほか、企業や団体などのボランティア協力を得て、10年かかるとみられた復旧を5年で完了した。林業人材の育成、森林環境教育、企業との木製品開発など、新たな挑戦も評価されての受賞となった。
 
火災で森林が焼失した尾崎半島で行われたボランティアによる植樹活動(2018年6月、復興釜石新聞より)

火災で森林が焼失した尾崎半島で行われたボランティアによる植樹活動(2018年6月、復興釜石新聞より)

 
 同デザイン賞は暮らしや社会を豊かにする木造建築や木製品、木材利用の取り組みなどを表彰。同組合は、月額制の別荘利用サービスを提供し、収益の一部で植林を行うSanu(福島弦CEO、東京都)に釜石地域産木材(スギ間伐材)を供給。環境再生型事業の良質なモデルとして同サービス「SANU 2nd Home(サヌ セカンドホーム)」が、最優秀4大臣賞の一つ、環境大臣賞を受賞した。同社、同組合、ADX(福島県)、二葉測量設計事務所(静岡県)によるグループ受賞となった。
 
 同組合は東日本大震災の津波で事務所が全壊。役職員5人が犠牲になった。組合存続の危機に立たされたが、国内外の企業の支援を受けながら事業を再生。将来に向けた持続可能な林業のため、異業種のアドバイスも受け、課題克服へのアイデアを形にしてきた。世界的金融機関バークレイズグループの支援を受けた林業スクールは、森林を総合的にデザインできる人材の育成を目指して開講。2015年から5年間で115人が受講し、同組合に就職した人もいる。
 
釜石・大槌バークレイズ林業スクールでチェーンソーの扱い方を学ぶ受講生(2016年10月)

釜石・大槌バークレイズ林業スクールでチェーンソーの扱い方を学ぶ受講生(2016年10月)

 
 尾崎半島林野火災の被災木の活用も積極的に行った。2019年のラグビーワールドカップ(W杯)会場となった「釜石鵜住居復興スタジアム」建設の際には、同被災木が客席シートや諸室の壁材などに使われ、木質化の良さを全国に発信。シートはボランティアらのメンテナンスで大切に守られている。
 
釜石鵜住居復興スタジアムの木製シートを清掃するボランティア活動(2019年6月)

釜石鵜住居復興スタジアムの木製シートを清掃するボランティア活動(2019年6月)

 
 12日、両大臣賞の受賞報告会が大槌町内のホテルで開かれた。関係者約70人が出席。県沿岸広域振興局の眞島芳明農林部長が、全国育樹活動コンクール「農林水産大臣賞」の表彰状を植田組合長に伝達した。
 
 植田組合長は「震災から11年目にこのような賞をいただいたことは、非常に感慨深い。津波被害、林野火災の復興を成し遂げられたのは、県内外から大勢の人たちが協力してくれたおかげ。今回の受賞は数々のご支援があったればこそ」と感謝。今後を見据え、「森林は50年、100年と続くもの。持続した経営ができるよう、組合も世代交代が必要。若い人たちにどんどん入ってきてほしい」と願った。
 
「農林水産大臣賞」の表彰状を手にする釜石地方森林組合の植田収組合長

「農林水産大臣賞」の表彰状を手にする釜石地方森林組合の植田収組合長

 
受賞報告会は山神祭(安全祈願祭)、労働安全大会に合わせて行われた

受賞報告会は山神祭(安全祈願祭)、労働安全大会に合わせて行われた

 
 同組合は世界で重要視されるSDGs、CO2削減への取り組みにもいち早く着手。昨年8月には大槌町と構成する釜石地方森林管理協議会として、適正な森林経営で環境保全に貢献していることを証明する「FSC認証」を取得した。高橋幸男参事は「自分たちが模範となり森林を適正に管理することで、他地域にも波及していく。釜石、大槌の90%を占める森林資源を活用し地域に貢献することが、目標とする組合の在り方」と話した。

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近代製鉄発祥の地・釜石から発信!いわての鉄遺産 フォーラムで価値、活用を考える

初開催の「いわての鉄遺産フォーラム」。保存・継承の思いを共有した

初開催の「いわての鉄遺産フォーラム」。保存・継承の思いを共有した

  
 12月1日は「鉄の記念日」(日本鉄鋼連盟制定)。江戸時代末期の1857(安政4)年12月1日、大島高任が現釜石市甲子町大橋に建設した洋式高炉で日本初の鉄鉱石を用いた製鉄(連続出銑)に成功したことにちなむ。釜石市では記念日の前後1週間を「鉄の週間」として、各種イベントを催している。11月26日には「いわての鉄遺産フォーラムinかまいし」(いわて鉄文化関連遺産ネットワーク主催)が大町の市民ホールで開かれ、同市の世界遺産「橋野鉄鉱山」を含む本県の鉄関連遺跡の価値と活用について、鉄の歴史館(大平町)名誉館長の小野寺英輝さん(岩手大理工学部准教授)が講演。地域の歴史を学んだ児童らは成果発表で、再発見した「釜石のよさ」を発信した。
  
「釜石の意義」を強調した鉄の歴史館名誉館長の小野寺英輝さん

「釜石の意義」を強調した鉄の歴史館名誉館長の小野寺英輝さん

  
 小野寺さんは、橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(8県11市23資産)で描かれた「ストーリー」や、そこでの釜石の位置づけに関し、独自の解釈を織ませながら解説。「構成資産群は世界へ向けた日本の近代化を発信するために作られた人工的なストーリー。歴史の縦糸と言えるもので、これに対する横糸となるのが地域の歴史。2つを融合させることで、近代化の中での地域の役割を立体的に理解できる」と強調した。
  
 伝承について、「遺産は単に古いものというイメージで捉えてはいけない。長い年月にわたり保ち続けた歴史や習慣と、その価値であり、何かを伝えるものでなければならない」と指摘。伝承を基本とした観光客の誘致は重要とした上で、「ただ見て終わりではなく、具体的に何か受け取るものや付加価値を求めている社会学習や修学旅行、ゼミ合宿などを誘致することが遺産の活用につながる」とした。
  
三陸ジオパークの魅力から再発見した「釜石のよさ」を伝えた双葉小児童

三陸ジオパークの魅力から再発見した「釜石のよさ」を伝えた双葉小児童

  
 鉄の学習発表には市内の小学校2校が参加。双葉小5年生29人は、「三陸ジオパーク」について学んだ成果をスライドにまとめた。代表の9人が三陸の地形の歴史や釜石にある6つのジオサイト、鉄づくりの歴史や採取できる鉱物などをクイズ形式で紹介した。
  
 児童からは「豊かな自然がたくさんある。地形は海を育み、恵みをもたらすが、津波の被害を大きくすることもある。三陸や釜石のことをもっと知りたいし、よさを発信していきたい」などの声が聞かれた。
  
栗林小児童は大島高任と鉄づくりを題材にした創作劇を紹介した

栗林小児童は大島高任と鉄づくりを題材にした創作劇を紹介した

  
 栗林小5、6年生12人は鉄に関する座学、鉄の歴史館や橋野鉄鉱山の見学を行い、近代製鉄の歴史に理解を深めた。▽勉強熱心▽困難に立ち向かう心の強さ▽目標に向かって前に進む姿勢▽挑戦し続ける粘り強さ―といった大島高任の生き方が印象に残り、高任の考えと支えた釜石人の思いを想像しながら劇を作って校内の学習発表会で披露した。
  
 フォーラムには4人が参加し、劇の一部を動画で紹介。「世界に誇ることができる自慢がたくさんある。この地で偉業を成し遂げた熱い思いを持った人たちの生き方をつないでいきたい」と力を込めた。
  
釜石市に寄贈された絵画「坑底に闘う」。今後は旧釜石鉱山事務所に展示される予定

釜石市に寄贈された絵画「坑底に闘う」。今後は旧釜石鉱山事務所に展示される予定

  
絵画の寄贈式に臨んだ渕上範敏社長(右)、野田武則市長

絵画の寄贈式に臨んだ渕上範敏社長(右)、野田武則市長

  
 旧釜石鉱山事務所(甲子町大橋)で展示されていた絵画「坑底に闘う」(鈴木満作)が修復作業を終え、所有する日鉄鉱業(東京)から市に寄贈された。同社子会社の釜石鉱山(甲子町)の渕上範敏社長によると、作品の右上に「於日鉄釜石鉱山 18.8.2」とあり、戦時中の鉱山坑内で働く人々の姿を描いた100号の大作。「戦時中を考察する歴史資料としての価値もあり、当時のことを思い、ゆっくり鑑賞してほしい」と願う。市では、来年春以降に同事務所で見ることができようにしたいとしている。
  
鉄や三陸ジオパークに関するパネル展示で理解を深める来場者

鉄や三陸ジオパークに関するパネル展示で理解を深める来場者

  
 「明治日本の―」や三陸ジオパークに関する情報を紹介する「鉄のパネル展」。会場を鈴子町のシープラザ釜石に移し、12月4日まで開催する。
  
 同ネットワークは、橋野鉄鉱山を核に鉄文化関連遺産などを結び、情報発信や教育、保存活用、人的・文化的交流などの地域振興につなげていくため、県と県内15市町村を構成団体として、2021年に設立された。フォーラムは鉄遺産の価値を普及させ、保存・継承への意識を醸成するのを狙いに初開催。約70人が聴講した。
   
今後予定される鉄の週間行事は下記の通り。
◆3日(土)午前10時~・鉄の歴史館 記念講演会「三陸ジオパークと釜石の地質」
*同館で3、4日には県指定文化財「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図」(幕末の高炉操業の絵巻)公開
*同館で来年1月9日(月・祝)まで企画展「かまいしの大地の足跡展」
◆4日(日)午後13時半~・市立図書館 市民教養講座「鉄の町かまいし歴史講座」
*同館で14日(水)まで「鉄の記念日図書展」
◆8日(木)まで・旧釜石鉱山事務所 企画展「鉱山を極める その1―釜石鉱山新山について」
◆同・橋野鉄鉱山インフォメーションセンター 橋野高炉跡発掘調査速報展(三番高炉周辺・御日払所跡出土資料の展示)
◆来年1月22日(日)まで・市郷土資料館 企画展「新収蔵資料展」

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吟醸も純米も、釜石の酒といえば…浜千鳥! 東北清酒鑑評会でダブル受賞、3年連続

東北清酒鑑評会で優等賞を受賞した浜千鳥の社員ら

東北清酒鑑評会で優等賞を受賞した浜千鳥の社員ら

  
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は2022年の東北清酒鑑評会(仙台国税局主催)吟醸酒、純米酒の2部門で優等賞を受賞した。春の全国新種鑑評会(独立行政法人酒類総合研究所主催)で金賞受賞酒の3分の1を東北6県が占め、その東北産を評価する東北鑑評会での入賞は「全国より難しい」との声もある中で、3年連続のダブル受賞。新里社長は素直に喜びつつ、「地域に根差し、個性を生かした酒造りのため材料、技術を磨いて品質向上に励んでいく」と前を向く。
  
 東北清酒鑑評会は、清酒の製造技術と品質の向上を目的に毎年秋に開かれる。21酒造年度(21年7月~22年6月)に造られた清酒が対象。6県の142製造場(岩手県17製造場)から271点(同33点)が出品された。部門別では吟醸酒が120場137点(同12場14点)、純米酒は116場134点(同14場19点)。
   
 予審を経て10月7日に仙台市青葉区の国税局で決審があり、外国人2人を含む21人の評価員(国税局鑑定官、管内の指導機関職員、製造場の技術者など)が味や香りなどを評価。吟醸酒は41製造場の43点、純米酒は44製造場の47点を優等賞に選んだ。本県からは両部門で9製造場が受賞し、浜千鳥を含む3製造場がダブル受賞となったが、最優秀賞、これに次ぐ評価員特別賞の上位入賞はなかった。
   
釜石税務署の郡晴雅署長から表彰される浜千鳥の新里進社長(左)

釜石税務署の郡晴雅署長から表彰される浜千鳥の新里進社長(左)

   
 表彰式は11月16日に同社で行われ、釜石税務署の郡晴雅署長が表彰状を伝達。新里社長、奥村康太郎杜氏(とうじ)・醸造部長が受け取り、社員らと喜びを分かち合った。インバウンド消費や輸出促進に役立ててもらうため、英語の賞状も授与された。
   
 吟醸酒の部受賞の「浜千鳥 大吟醸」、純米酒の部受賞の「浜千鳥 純米大吟醸 結の香」は、共に岩手オリジナル酵母「ジョバンニの調べ」で醸造。麹(こうじ)菌も岩手オリジナル「Roots(ルーツ)36」を使う。純米大吟醸は本県最上級のオリジナル酒米「結の香」を原料とする。東北鑑評会ではここ5年で4回がダブル受賞。新里社長は自社製品に自信を見せながら、「岩手産の良さが認められた」と県全体の評価の高まりも実感し喜びを倍増させた。
   
地域の個性を生かし造り上げた代表銘柄「浜千鳥」を紹介する新里社長(左)

地域の個性を生かし造り上げた代表銘柄「浜千鳥」を紹介する新里社長(左)

   
 東北鑑評会には、冬場に仕込み、夏場に細心の注意を払って管理、熟成させた非常にレベルの高い清酒が出品され、製造技術の優劣も評価の要素となる。郡署長は「県内には地域の特産物を使ったこだわりの酒蔵が多い。その地でとれたものをさかなに酒を飲む…幸せなこと。おいしい岩手の酒のレベルがさらに上がることを期待」と酒好きの一面をのぞかせた。
 

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地元食材で「まるごと釜石給食」 試験養殖のサクラマス初登場 児童ら「おいしー!」

「まるごと釜石給食」を味わい、笑顔を広げる釜石小の3年児童

「まるごと釜石給食」を味わい、笑顔を広げる釜石小の3年児童

 
 釜石市内の全小中学校(小9・中5)で14日、地元食材を使用した「まるごと釜石給食」が提供された。地産地消、地域の農・水産業への理解促進を狙いに、市学校給食センターが実施。釜石湾での試験養殖が2年目を迎えた「釜石はまゆりサクラマス」も初めてメニューに採用された。釜石小(及川靖浩校長、児童92人)の3学年(10人)教室では市関係者4人が同席し、児童らと一緒に給食を味わった。
 
 この日の献立は▽釜石はまゆりサクラマスの塩こうじ焼き▽じゃがいものそぼろ煮▽三陸ワカメのみそ汁▽ご飯▽リンゴ▽牛乳―。地元で生産されたサクラマス、ワカメ、コメ(ひとめぼれ)、ジャガイモ、ダイコン、ハクサイ、ネギ、リンゴが使われた。釜石小3学年教室では食べる前に、市学校教育課学校給食センターの菅原良枝栄養教諭が食材について説明。「釜石のものを食べて元気に育ってほしいという地域の皆さんの願いがこもった献立です。感謝しながらよく味わって食べよう」と呼び掛けた。
 
サクラマスなど、釜石の味を楽しみにしながら給食の準備

サクラマスなど、釜石の味を楽しみにしながら給食の準備

 
食べる前に給食の献立と使われている食材について説明を受けた

食べる前に給食の献立と使われている食材について説明を受けた

 
 全員で「いただきます」と声を合わせ、昼食を開始した。給食初登場の釜石産サクラマスはほとんどの児童が初めて口にする魚。センター職員によると、今回は「うまみ、香りをシンプルに味わってもらおう」と塩こうじ焼きにしたという。小学生には40グラム、中学生には60グラムの切り身で提供された。児童らは新米のご飯とおかずを交互に口に運び、地元食材の素晴らしさを実感した。
 
黒板に掲げられた食材を確かめながら箸を進める

黒板に掲げられた食材を確かめながら箸を進める

 
初めて給食に出された釜石産サクラマスをいただく。さて、お味は?

初めて給食に出された釜石産サクラマスをいただく。さて、お味は?

 
 畝岡蓮恩君は「初めて食べたサクラマスは脂が乗っていておいしかった」と大満足。福士愛梨さんもサクラマスの味を気に入り、「釜石の海で養殖されていると聞きびっくり。もっといっぱい食べられるようになるといい」と期待した。
 
 同センターの山根美保子所長は「釜石にもおいしい農水産物があることを知ってほしい。これからも釜石産食材をできるだけ給食で提供していければ」と話す。センターでは今月11日には「鮭の日」にちなんだ給食を提供。8日の「いい歯の日」にちなみ、7日から11日まではかみごたえのある献立を取り入れ、子どもたちの食への関心を高めた。

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大学の知見をまちづくりに 「海と希望の学園祭」 釜石市・東京大連携協定記念で

「海と希望の学園祭」を太鼓演奏で盛り上げる重茂中(宮古市)の生徒

「海と希望の学園祭」を太鼓演奏で盛り上げる重茂中(宮古市)の生徒

 
 海と希望の学園祭(釜石市主催)は5、6の両日、同市大町の釜石PIT、市民ホールTETTOで開かれた。共同研究や技術開発、地域振興など各種分野で連携する同市と東京大3研究所の協定締結を記念し初めて開催。海洋研究や地域産業に関わる講演やパネル討論、楽しく海に親しむワークショップなど多彩な催しが行われ、幅広い年代が学びを深めた。
 
 同市と同大は2006年の同大社会科学研究所(社研)による「希望学」釜石調査を機につながり、東日本大震災後は「危機対応学」という新たな分野で研究連携を続けてきた。そうした実績を基に本年3月、社研、大槌町に研究施設を持つ同大大気海洋研究所、市の3者で「連携協力の推進に関する覚書」を締結。7月には、釜石港で実証試験が始まった波力発電の技術指導を行う同大先端科学技術研究センター(先端研)と市で「連携及び協力に関する協定」を締結した。
 
 記念の交流イベントとなった同祭。大気海洋研はヒトデやヤドカリ、ウニ、アメフラシなど海の生物に触れられるコーナーを開設し、来場者に生態などを教えた。中にはウニの一種ながら、硬貨のような平たい形状の「ハスノハカシパン」も。一般にはなじみのない生物で、来場者は興味深げに見入った。
 
海の生物に触れられるタッチプール。左下拡大は「ハスノハカシパン」

海の生物に触れられるタッチプール。左下拡大は「ハスノハカシパン」

 
 担当者の説明を熱心に聞いていた三浦海斗君(釜石中2年)は「いろいろな生物の特徴や生息場所を知れた。海には友だちとよく釣りに行く。今度行った時は、探してみたい」と貴重な学びを得た様子。「生き物に直接、触れられるのは面白い。これからもこういうイベントを続けてほしい」と望んだ。
 
 樹脂で作った海の生物フィギュアで注目を集めたのは大槌町のササキプラスチック(SASAMO)。魚やウニ、ホヤなどの身近な生物のほか、深海に生息する甲殻類の一種「オオグソクムシ」の大きなフィギュアがひときわ目を引いた。景品がもらえるキャスティングゲームもあり、釣りの楽しさも疑似体験できた。
 
ササキプラスチック製作海の生物フィギュアに目がくぎ付け。深海生物は重さもずっしり(右下)

ササキプラスチック製作海の生物フィギュアに目がくぎ付け。深海生物は重さもずっしり(右下)

 
 釜石海上保安部の海洋調査業務の展示、文京学院大の工作コーナー、海洋環境問題に関する映画上映も。大気海洋研との連携で「海と希望の学校」事業に取り組む重茂中(宮古市)の生徒35人は、学校で伝承する剣舞、鶏舞、魹埼太鼓を披露し、同祭を盛り上げた。
 
自分の船の位置を知るための角度測定に使う「六分儀」を体験する子ども=釜石海上保安部の展示

自分の船の位置を知るための角度測定に使う「六分儀」を体験する子ども=釜石海上保安部の展示

 
重茂中の生徒は郷土芸能「鶏舞」などを披露し、来場者を楽しませた

重茂中の生徒は郷土芸能「鶏舞」などを披露し、来場者を楽しませた

 
 講演やトークイベントは7プログラムを開催。3研究所の教授や准教授らが各種テーマで講演したほか、地元の観光や産業関係者を交えてのパネル討論などを行った。「海と希望のまち釜石~未来への船出~」をテーマとしたパネル討論には、教授3人と野田武則市長、かまいしDMCの河東英宜代表取締役が登壇。海洋環境、再生可能エネルギー、海を生かした観光、人材育成など多様な視点で意見を交わした。
 
 大気海洋研所長の河村知彦教授(海洋生態学、水産資源生物学)は海洋環境への関心喚起について「海の中は見えない。研究者が一般の人に伝え、みんなで共有していく必要がある。見えない部分に想像を働かせ、問題や可能性を見いだすことが大事」と述べた。先端研所長の杉山正和教授(再生可能エネルギーシステム)は地域におけるエネルギー政策について「資源はそれぞれ違う。画一的プランではなく、その地域ならではのロジック(論理、筋道)を作っていくことが重要。若い世代が自分たちの未来を考えるワークショップをしたり、地域の事情に合わせた展開が理想」とした。
 
5人が登壇した「海と希望のまち釜石」パネル討論。持続可能な未来へ意見を交わした

5人が登壇した「海と希望のまち釜石」パネル討論。持続可能な未来へ意見を交わした

 
パネル討論に聞き入る来場者

パネル討論に聞き入る来場者

 
 観光事業を行うDMCの河東代表取締役は「地域の魅力を生かしきれていない」との外部からの指摘に「増えている移住者の視点、地元住民の協力で魅力の掘り起こし、磨き上げ、発信に努めているところ。眠っている資源はまだまだある」と今後の可能性を示唆。野田市長は震災で発揮された防災教育の効果を例に挙げ、市民の学びの場の必要性に言及。「釜石は常に困難を乗り越えてきた歴史があるが、人口減もあり、次世代がその力を持ち続けられるかという不安もある。これからは多くの学びの中で気付きや感性を得て、課題解決に向かう力を養っていかなければならない」と話した。

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働くことにワクワクを! 若手社員、異業種交流セミナー 「未来の釜石」テーマに話し合う

期待するまちの将来像を発表する若手社員ら

期待するまちの将来像を発表する若手社員ら

 
 釜石市内の企業などで働く若手社員を対象とした「私たちがワクワクする働き方セミナー」(ジョブカフェかまいし主催)の最終講座が9日、港町のイオンタウン釜石内にある「しごと・くらしサポートセンター」で開かれた。社会人1~3年目の若者約20人が同年代との対話を通じ未来のまち、自身の姿を考えて発表。普段の働き方や自らの性格を見つめ直す機会にした。
 
 このセミナーは若手社員のキャリア形成支援や主体性の向上、同世代交流、職域を越えたコミュニティーづくりなどを目的に企画された。市内の民間事業所や行政機関など14団体の若手社員・職員ら計22人が参加。「釜石の未来」をテーマに個人やグループワークを行いながら個人の目標設定、望むまちの姿とそのために自分ができることを9月から2回にわたって考えてきた。
 
「未来の釜石」をテーマに話し合いをする参加者

「未来の釜石」をテーマに話し合いをする参加者

 
 最終回となる今回は、グループワークでまとめた成果や活動の中で発見したり確信したりした仕事や地域への思いなどを、派遣企業の経営者や人事担当者ら約20人を前に発表した。未来のまちについて、「夢物語」としつつ娯楽・商業施設の整備を語る人がいれば、「きらびやかなものを目指す必要はない」とした上で豊かな自然や地域資源を生かしレジャー、スポーツイベントの充実を提案する声もあった。
 
話し合いの成果をグループごとに発表した

話し合いの成果をグループごとに発表した

 
 未来に向けてできることとして共通していたのは、SNS(会員制交流サイト)を使った情報発信。「こういうのが欲しいな―と考え調べてみると、すでに存在していた。情報を知らない人が多く、周知が課題だと感じた。SNS発信は若い世代が得意とする分野。積極的にやっていけば、住みやすいまちになるはず」などと強調した。
 
 最後に、参加者それぞれが「宣言」。与えられた業務をこなすばかりで仕事に対し受け身だったと振り返った女性は「チャレンジをテーマに、できることを考えながら仕事したい」と力を込めた。仕事で注意されることが多く、後ろ向きな気持ちになっていたという若者は「ダメと言われても、やってやる!という気持ちになった」と前向きな姿勢を取り戻した様子。職場と家の往復という生活に視野の狭さを感じていた人は、同じ地域で暮らす多様な人との対話を通して「やっぱり釜石が好きだ」と再認識し、笑顔になった。
 
言葉を紡ぎながら「釜石が好き」という思いを深めた発表者

言葉を紡ぎながら「釜石が好き」という思いを深めた発表者

 
未来に向けてできることを書き出してみたり

未来に向けてできることを書き出してみたり

 
 産業振興釜石事業所(鈴子町)に就職して2年目の平野雅典さん(20)は「目標もやりたいこともなかった。同世代と話し意見を聞いて、ないものを見つけられた」と手応えを実感。趣味の釣りに行ったときは周辺のごみ拾いをして環境美化に協力、職場ではしっかりと仕事を覚え後輩に助言できるようにする―という目標を見いだした。
 
 釜石市地方創生アドバイザーで、女性の就労・キャリア形成支援などに取り組む「Will Lab(ウィル・ラボ)」(東京)代表の小安美和さんの講話も。「やりたいこと(will)」「できること(can)」「なすべきこと(must)」を考える自己理解作業などを紹介し、「自分を知り、対話することが大事。小さいwillでも言葉にすれば道が開ける。長距離の人生を生き抜くため、新しいことを学び続けてほしい」と激励した。
 
若手社員らの活動を見守り、助言した小安さん(中)

若手社員らの活動を見守り、助言した小安さん(中)

 
 トヨタレンタリース岩手釜石駅前店(鈴子町)の佐々愛佳さん(20)は「まちづくりについて考える過程は、仕事に対するモチベーションUPにつながる」と刺激を受けた。自己理解の手法で、これまでの働き方を見つめ直した様子。「レンタカーを利用するのは市外の方が多い。釜石ラーメンやまちの歴史について聞かれることもある。まちの魅力を発信できるようにしたい」とうなずいた。
 
セミナーに若手を送り出した企業関係者を交えて意見交換

セミナーに若手を送り出した企業関係者を交えて意見交換

 
 セミナーで同世代とざっくばらんに語り合い、「気づき」を得た若者たちの表情は明るかった。ジョブカフェかまいしでは今後も、人生そのものとも言える「キャリア」を主体的に考えるきっかけ、業種を超えた緩やかなつながりを促す場づくりを進めていく考えだ。
 

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釜石大観音仲見世通りに子連れオフィス「LIFULL FaM」 空き家改修しオープン

作業デスクに子どもと並んで座り、仕事をする母親

作業デスクに子どもと並んで座り、仕事をする母親

  
 働く母親が子どもを連れて出勤できる「子連れオフィス」が4日、釜石市大平町の釜石大観音仲見世通りに開所した。同市と東京都の不動産情報サービス業LIFULL(ライフル、井上高志社長)が結ぶ連携協定の一環で整備。テレワーク普及など働き方改革に関わる事業を行う同市のロコフィル(佐藤薫代表社員)が管理運営する。空き店舗を地域住民やボランティアの力を借りて改修。キッズスペースを備え、未就学児を持つ母親らの仕事と育児の両立を応援する。
  
子連れワークができるオフィス「LIFULL FaM釜石」

子連れワークができるオフィス「LIFULL FaM釜石」

 
釜石大観音仲見世通りの空き家を改修しオープン

釜石大観音仲見世通りの空き家を改修しオープン

 
 施設名は「LIFULL FaM(ライフル・ファム)釜石」。同通りにある木造2階建ての空き家を改修。延べ床面積は約70平方メートルで、1階は遊具などを置くキッズスペース、2階がテレワーカーの作業デスクなど配置したワークスペースで仕事や打合せなど多目的に利用することができる。
 
 同市とライフルは今年2月に結んだ連携協定に基づき、未就学児を持つ母親らの就労支援を促進。育児しながら仕事を通じてスキル取得やキャリアアップを目指すことができる新たな働き方として、Webマーケティングなどのテレワークへの挑戦を応援する。本年度は6~8月にテレワーカー育成研修を実施。修了生で、ロコフィルスタッフとして登録した人などの施設利用を想定する。
 
関係者がテープカットし、開所を祝った

関係者がテープカットし、開所を祝った

 
 この日、現地で開所式があり、関係者がテープカットで祝った。野田武則市長は「人口減に歯止めをかけるため、地元で暮らしながら、やりたい仕事ができるまちを目指したい。若者、子育て中の女性たちが活躍する拠点を温かい目で見守ってほしい」と願った。
 
 式の後には内覧会も。この空き家は、同通りでシェアオフィスを運営しながら、にぎわい再生と交流の場づくりに取り組んでいる宮崎達也さん(50)が、不動産賃貸事業を行う会社を新たに立ち上げて取得した。床の張り替えや壁塗りなど改修作業の大部分を地域住民や市内外の企業ボランティアの協力を得て進めた。階段には地元産スギ材を使い、木のぬくもりを感じてもらえるよう工夫。透かしの装飾が施された欄間(らんま)など和の雰囲気を残しつつ、温かみのある空間を作り上げた。
 
キッズスペースを備えたテレワークオフィスを内覧する関係者

キッズスペースを備えたテレワークオフィスを内覧する関係者

 
作業や打ち合わせなど多目的に利用できるワークスペース

作業や打ち合わせなど多目的に利用できるワークスペース

 
昔ながらの和の風情を残しつつ、落ち着いて仕事ができる環境を整えた

昔ながらの和の風情を残しつつ、落ち着いて仕事ができる環境を整えた

  
 研修の修了生で、5歳と2歳の娘を持つ源太沢町の平松寿倖(ひさこ)さん(32)は「託児付きで使える施設なら利用し、少しずつ仕事をしてみたい」と前向きに捉えた。ロコフィルから仕事の紹介を受け、「ママレポーター」として事業所紹介の記事作成を受注。今後もこうした情報通信技術(ICT)を活用し時間や場所の制約を受けず、柔軟に働く形を続けたいと考えていて、「作業している時に託児してもらえたり、子どもを遊ばせるスペースがあれば集中できる。同じ年代の子を持つ人たちとのつながりを持てるのもうれしい」と歓迎した。
 
保育士や子育て支援員らが見守る体制も用意する

保育士や子育て支援員らが見守る体制も用意する

 
 ライフルは、福井県鯖江市や島根県雲南市など全国にキッズスペース付きの拠点を開設しており、釜石は5カ所目。ライフルファム事業責任者の秋庭麻衣さんは「一人で仕事する日が続くとストレスを抱える。週に1、2回集まって話し合うコミュニケーションの場があることで、日々のモチベーションアップにもつながる」と利点を強調した。空き家の再生という地域と作り上げた施設にも手応えを実感。テレワーカーを目指す講座やイベントなどの開催を見据え、「気軽に来てもらえるような地域に開かれた場所にしたい」と力を込めた。

 

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脱炭素社会実現へ連携 釜石市、ゼロボード(東京都)、岩手銀行が基本合意

釜石市内における脱炭素社会実現に向けた連携について発表した(右から)岩手銀行の佐藤求専務、野田武則市長、ゼロボードの坂本洋一本部長

釜石市内における脱炭素社会実現に向けた連携について発表した(右から)岩手銀行の佐藤求専務、野田武則市長、ゼロボードの坂本洋一本部長

 
 釜石市は脱炭素社会実現に向け、温室効果ガス(GHG)排出量算定・可視化クラウドサービスを提供するゼロボード(渡慶次道隆代表取締役、東京都)、岩手銀行(岩山徹代表取締役頭取)と連携し各種取り組みを進めることを17日、発表した。同市の公共施設にサービスを導入し、GHG排出量を測定。計画を立て削減に取り組むとともに、市内企業への普及啓発を図っていく方針。両社と本県自治体との同様の連携は6例目となる。
 
 同市は昨年10月、2050年までにカーボンニュートラル(GHG排出量実質ゼロ)実現を目指すことを表明。本年1月、ゼロカーボンシティ推進室を立ち上げた。全市的な取り組みへの第一歩として、同市が所管する公共施設のGHG排出量を把握し、実効性のある削減策につなげる事業に着手する。排出量の測定にはゼロボードが開発、提供するシステムを利用。約350施設に順次導入し、測定データを基に23年度内に削減計画を策定。24年度から計画に基づく取り組みを開始したい考え。
 
 岩手銀行は6月から脱炭素経営に取り組む企業向けの融資を開始した。金利優遇などで支援するほか、事業者とゼロボードをつなぐ役割も果たす。ゼロボードはシステム利用の指導、データベース管理、削減に関するアドバイスなどを担う。
 
基本合意書締結にかかる発表会=17日、市役所

基本合意書締結にかかる発表会=17日、市役所

 
 3者は14日に基本合意書を締結。17日、市役所で経緯や連携内容などについて報道陣に発表した。野田武則市長は「これらの取り組みが市内に広く展開され、2050年までのカーボンニュートラル実現が加速することを期待する」、ゼロボードの坂本洋一ビジネス本部長は「環境配慮が深く根付く地域社会の達成に貢献したい」、岩手銀行の佐藤求取締役専務執行役員は「締結を機に地域の脱炭素支援に一層尽力していく」と思いを述べた。
 
 県は毎年、各自治体を対象にエネルギー使用量現況調査を実施。同市ではこれまでエクセル表でデータを取りまとめてきたが、集計などさまざまな業務の手間、表の見づらさがあった。導入するクラウドを使ったサービスは作業効率の向上、負担軽減、公表しやすさなどのメリットがある。市の担当者は「市役所が率先して見える化の取り組みを進めることで、企業を含め市全体の関心を高めていきたい」と話す。