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三陸の海「今」と「これから」 釜石で「いわて水産アカデミー」研修交流会 漁業者ら共有

漁業関係者らが海洋環境の変化と対策を考える研修交流会

漁業関係者らが海洋環境の変化と対策を考える研修交流会

 
 岩手県内の漁業現場で即戦力となる人材を育てる「いわて水産アカデミー」(同アカデミー運営協議会主催)の研修交流会が8日、釜石市天神町の市役所で開かれた。研修生11人のほか、アカデミー修了生、研修を受け入れる漁業者、協議会員ら約40人が参加。漁場となる三陸の海の「今」と「これから」に理解を深め、変化に対応した取り組みを考え共有する機会にした。
 
 同アカデミーは岩手県、県内の漁業関係団体などが連携し、2019年に開講。8年目を迎え、修了した約50人が各地の海で漁業者として活躍している。情報交換の場ともなる研修交流会を沿岸各地の持ち回りで開催しており、釜石では2回目。
 
 三陸の海は海水温の上昇や漁業資源の減少、漁場・漁期の変化など、気候変動によるものと考えられるさまざまな影響が続く。海を糧とする漁業者は不安定な経営を余儀なくされ、担い手を受け入れる環境へ厳しさももたらす状況。「今」を知るため、三陸沖の海洋環境に関する調査研究に取り組む国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)主任研究員の美山透さん(専門は海洋物理学)を講師に迎え、基調講演を行った。
 
基調講演で三陸沖の海洋状況を解説する美山透さん(左の写真)

基調講演で三陸沖の海洋状況を解説する美山透さん(左の写真)

 
 テーマは「三陸の海を読み解く~気候変動がもたらす影響と最新の予測」。三陸の海は親潮(北から来る冷たい流れ。栄養が多く、魚や海藻を育む)、黒潮(南から来る暖かな流れ。栄養は少ない)、津軽暖流(日本海から津軽海峡を抜けてくる暖かい流れ)という3つの流れが出合うことで豊かな漁場となった。日本近海の海面水温は100年の長期変化で見ると平均で1~2度上昇しているが、「近年は表面だけでなく、海の中も暖まっている」と美山さん。25、26年の夏に三陸沖を調査した結果を交え、海洋環境変動の要因を解説した。
 
三陸の海で起きていることや今後の見通しに関心を持ち聴講

三陸の海で起きていることや今後の見通しに関心を持ち聴講

 
 キーワードは「スーパーエルニーニョ」「黒潮大蛇行」「海洋熱波」。海水温の上昇は地球温暖化による「ゆっくりとした底上げ」に加え、海洋熱波(ある海域の過去​の平年値を大幅に上回る水温が5日以上続く現象)が同時に起こることで「上乗せ」されているという。
 
 さらに、親潮の勢いが著しく弱く、黒潮が極端に北上。一因となる黒潮大蛇行(日本の太平洋側を流れる海流が南に大きく湾曲する)は長引いたものの、「26年6月中旬頃に完全終了と見られる」と説明した。太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続くエルニーニョ現象も「過去のパターンではなく、おきて破り」の様相。研究者としても困惑する状況があり、「温暖化で自然のリズムが崩れてしまったのではないか」と指摘した。
 
 「三陸の海では普通ではないことが起こっている。暖かい海流の影響は続くだろう」と、改めて強調した美山さん。研究・調査のほか、海洋情報サイト「黒潮親潮ウォッチ」で黒潮流路の変化とその予測について情報発信を行っていて、JAMSTECなどさまざまな機関が提供する情報サイトを天気予報と同じように使い分けながら海況を予測し「備える」ことを勧めた。
 
変化する三陸の海と養殖業への影響を説明する山口正希さん

変化する三陸の海と養殖業への影響を説明する山口正希さん

 
 岩手県水産技術センター増養殖部の山口正希部長は、高水温化に対応した養殖の取り組みについて話題を提供。ホタテやマガキなどの貝類、ワカメ、コンブなどの海藻類の養殖はともに厳しい状況が続いており、それに代わるものとして貝類ではアサリ、ヨーロッパヒラガキ、ムラサキイガイ(ムール貝)、海藻類ではワカメ生産の回復に向けた品種改良や作業の効率化、省力化などの研究を進めていることを紹介した。
 
 意見交換では、修了生や漁業者らが漁に出て感じていることを伝え合った。高水温化や海洋環境の変化に対する受け止めは共通。大船渡市三陸町越喜来でホタテ養殖に携わる修了生は「自然にはあらがえず、どう対応するかが重要」と話し、稚貝をロープに結びつける「耳吊(づ)り」と呼ばれる作業の時期を春から秋に変えてみるといった挑戦を紹介した。宮古市重茂で海藻養殖に取り組む漁業者は天然コンブを確保する難しさを吐露。工夫として養殖コンブから種をとる生産の動きを知らせた。
 
漁業者が現場で感じていることや工夫していることを情報交換

漁業者が現場で感じていることや工夫していることを情報交換

 
 釜石で研修する三上朗央さん(49)は、平田の尾崎白浜でホタテ養殖の作業に携わっていることもあり、先輩漁師たちが話した工夫点に関心を寄せた。唐丹町の海で各種の養殖やイカ釣りの遊漁船事業に取り組む藤原和貴さん(28)は「先輩たちに教わりながら、のびのびと仕事をさせてもらっている。ムール貝養殖という新しい挑戦にも関わることができ、学びになる。作業の改善点や伸ばしていけることを自分なりに考え、将来に生かせたらいい」と充実した表情で話した。

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建設業の仕事を身近に 釜石東中生が重機、ドローン操作など体験 協会釜石青年部恒例ふれあい事業

県建設業協会釜石支部青年部の「ふれあい事業」で重機操作を体験する釜石東中の1年生

県建設業協会釜石支部青年部の「ふれあい事業」で重機操作を体験する釜石東中の1年生

 
 一般社団法人岩手県建設業協会釜石支部青年部(小澤二郎部会長、25社)は18日、釜石市鵜住居町の釜石東中(高橋晃一校長、生徒83人)で、建設現場の仕事の一端を体験してもらう「ふれあい事業」を行った。同校1年生21人がバックホー(油圧ショベルの一種)やドローン(小型無人機)の操作、VR(仮想現実)での危険察知、高所作業車の試乗を体験。生徒たちは普段接することのないさまざまな機械に触れ、生活基盤を支える建設業の仕事に理解を深めた。
 
 同事業は釜石青年部が地域の学校に出向き、毎年この時期に実施している。以前は小学校を巡回していたが、昨年から中学校も対象とし、釜石東中は市内2校目の実施。会員企業と重機リースなどの協賛各社から31人が参加した。今回は4つの体験メニューを用意。生徒はグループごとに各コーナーを回った。
 
生徒が体験した(左上から時計回りに)バックホー操作、高所作業車試乗、ドローン操作、VR事故体験・安全教育

生徒が体験した(左上から時計回りに)バックホー操作、高所作業車試乗、ドローン操作、VR事故体験・安全教育

 
 土木工事に欠かせない建設機械「バックホー」の体験では、バケット(ショベル)の根本部分に取り付けた鎖で地面に置かれた魚の絵の板を釣り上げ、移動させる動作に挑戦した。運転席に座った生徒は会員から左右のレバー操作の基本を学んだ後、鎖を板に近づけ釣り上げるための上下、左右の動きを両手を駆使して実践。最初は思うように動かすのに苦戦していたが、操作に慣れてくるとゲーム感覚で“模擬魚釣り”を楽しむ様子が見られた。
 
バックホー操作体験。バケットに付けた鎖で“模擬魚釣り”

バックホー操作体験。バケットに付けた鎖で“模擬魚釣り”

 
青年部会員が操作の仕方を教えると、わずかな時間でコツをつかむ生徒も

青年部会員が操作の仕方を教えると、わずかな時間でコツをつかむ生徒も

 
 さまざまな現場を上空から撮影できるカメラ機能を備えたドローンは、建設業界でも普及率が高い機材。施工の前後、進捗(しんちょく)状況などを俯瞰(ふかん)でき、記録した写真や映像は測量や施工管理、工事報告などに活用されている。生徒らは離着陸のほか、数十メートル離れた場所に置いたコーンの上空まで飛行させるコントローラー操作を体験した。
 
ドローン操作体験。手元のコントローラーを操り、思うような飛行ができると笑みがこぼれた

ドローン操作体験。手元のコントローラーを操り、思うような飛行ができると笑みがこぼれた

 
ゲームより楽しい!? ドローン操作に夢中になる生徒

ゲームより楽しい!? ドローン操作に夢中になる生徒

 
 生徒の歓声がひときわ響いたのが高所作業車の試乗体験。墜落制止用の胴ベルトとヘルメットを着用した生徒は作業床(デッキ)に乗り込み、会員の操作で約12メートルの高さまで上昇した。作業車を止めた校庭は海抜15メートル。作業床は中学校校舎の敷地とほぼ同じ高さに達し、震災復興で整備された鵜住居町の街並みのほか、鵜住居川水門や大槌湾も見渡せた。
 
高所作業車試乗体験。安全ベルトを装着しデッキへ…。会員の操作で徐々に上昇

高所作業車試乗体験。安全ベルトを装着しデッキへ…。会員の操作で徐々に上昇

 
高さ約12メートルまで上昇。上からの景色にびっくり!

高さ約12メートルまで上昇。上からの景色にびっくり!

 
 山崎愛加さんは初めて乗った高所作業車に「高くて怖いけど、町内の土地が満遍なく見えてすごく楽しかった」と声を弾ませた。父親は建設業で、この日の体験もサポート。「建設業の人たちは危険がありながらも地域のいろいろな安全を守るための仕事をしてくれているので、すごくありがたい。父は尊敬する存在」と山崎さん。同じグループで行動した藤原菫さんも「全部楽しいけど、一番はあれ!」と高所作業車を指差した。「建設業はまちをつくる大切な仕事」と藤原さん。実際に現場で活躍する人たちとの交流機会を得て、「皆さん社交的で素敵な方ばかり。こういう仕事もいいなあ」と興味を持った様子。楽しい触れ合いを通して「将来の職業の選択の幅が広がった」と喜んだ。
 
「お~い!」校庭にいる仲間に手を振る生徒。写真左中央部には鵜住居川水門、駅前の復興住宅などが見える

「お~い!」校庭にいる仲間に手を振る生徒。写真左中央部には鵜住居川水門、駅前の復興住宅などが見える

 
校庭にいる人たちがこんなに小さく見える(右)。車両近くから見上げる景色も圧巻

校庭にいる人たちがこんなに小さく見える(右)。車両近くから見上げる景色も圧巻

 
 現場作業員の安全対策教育に活用されるVR事故体験教材では、死亡災害要因の上位を占める20の事故のシチュエーションを体験。墜落・転落、土砂崩壊、重機巻き込み、トンネル崩落など、さまざまな危険をVRで体感した。
 
 浦島光真さんは「VRで現場にある危険を知ることができた」と安全対策の重要性を実感。印象的だったのはドローン操作。「高い視点で土地を見られるので、建設業でもすごく役立ちそう」と話した。今、考えている職業は「父と同じ自動車整備士。工業系に進みたい」と将来を思い描いた。藤原英佑さんはバックホーの操作に興味を持ち、「最初は難しかったけど、3枚目の板を釣り上げるぐらいからコツをつかんでできた。大きい機械だけど繊細な動きも可能で、実際の作業員さんはすごいなと思った」。建設業の仕事は「危険もあるが、ちょっとやってみたい気持ちが芽生えた」と進路選択の参考にした。
 
担当者からVR安全教育教材の説明を受ける生徒

担当者からVR安全教育教材の説明を受ける生徒

 
生徒、会員が楽しい時間を共有したふれあい事業。たくさんの笑顔が広がった

生徒、会員が楽しい時間を共有したふれあい事業。たくさんの笑顔が広がった

 
 同じ鵜住居町に本社がある青紀土木の今井大志さん(27)はドローン操縦士の二等国家資格を持つ。中学生のドローン体験のサポートは昨年に続き2回目。「反応をじかに見られるのが面白い。初めてコントローラーに触る子も体験するうちに笑顔になってくる」と自身も楽しい時間を共有。「建設業を少しでも身近に感じてもらえたら」と話し、将来一緒に働く仲間が増えることも期待した。
 
 子どもたちへの出前授業は同青年部が長年継続する地域貢献活動の一つ。建設業の仕事を知ってもらい、将来の担い手育成のきっかけになればとの思いもある。小澤部会長(47)は「少子化の影響で県内工業高校にあった土木科がなくなってきていて、人材確保は各社共通の課題。人口減、高齢化が進む釜石地域は特にも」と話し、こうした機会を通じた建設業の魅力発信に力を注ぐ。
 
 青年部は同事業の開催校で奉仕活動も実施。事前に学校から希望を聞いて環境整備を行っている。今回、東中ではグラウンド整備と周辺の草刈り、砂利駐車場の水はけの改善に取り組んだ。
 
天候を考慮し、会員の一部は校庭の草刈りを並行して実施。午後からは全員で奉仕活動に取り組んだ

天候を考慮し、会員の一部は校庭の草刈りを並行して実施。午後からは全員で奉仕活動に取り組んだ

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農林水産物がずらり!釜石の街なかで「軽トラ市」にぎわう 生産者と消費者が交流

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野菜がずらりと並んだ「かまいし軽トラ市」に人だかり

 
 軽トラックの荷台を売り場に見立てて地場産品を販売する「かまいし軽トラ市」が13日、釜石市大町の市民ホールTETTO前広場で開かれた。新鮮な農産物や加工品、雑貨などを売る農家や生産者、産直、福祉団体など、市内から17店が出店。楽しみにしていた大勢の人でにぎわった。
 
 地産地消や生産者の販路確保、消費者との交流づくりなどを目的に、釜石市水産農林課が主催する。2020年度にスタートし、7年目。今年度2回目の開催との位置づけだが、実は今期初。7月に予定されていた初回は天候不良で中止となった。
 
品定めをらくに!軽トラの荷台を上手に活用して野菜を陳列

品定めをらくに!軽トラの荷台を上手に活用して野菜を陳列

 
 今回は新鮮野菜を荷台いっぱいに広げる農家、種類豊富な売り物をテーブルに並べる生産者グループのほか、木工品、海産物、手作り雑貨、弁当や総菜などを販売する店舗が集結。軽食を提供するキッチンカーも乗りつけた。
 
おいしい旬がやってきた!リンゴを買い求める人たち

おいしい旬がやってきた!リンゴを買い求める人たち

 
木工品を販売したり、焼きたて・揚げたてを提供するブースも

木工品を販売したり、焼きたて・揚げたてを提供するブースも

 
 「安いよ」「採れたてだよ」「ハイ、ラスト1個」。購買意欲をかき立てる元気な呼び込みで人の流れをつかんだのは、唐丹町荒川で月に数度産直をオープンさせる「五葉ファーム」の面々。カボチャやサツマイモ、ナス、トマトなど畑で育てたもの、クリやクルミといった自然の恵みを売り出した。
 
五葉ファームのブースは明るく元気なかけ声も売り

五葉ファームのブースは明るく元気なかけ声も売り

 
 「4軒8人がそれぞれ趣味で野菜を育てているから、集まると多彩になる」と代表の久保正春さん(74)。軽トラ市への出店は3年目になるといい、「作ったものが売れる喜びをじかに感じられる場。次はこれに挑戦しようと意欲が出る。数も種類もどんどん増えていくと思うから、楽しみにして」とニヤリと笑った。猟師として山に入っており、シカの角やクマの爪を使った加工品も販売した。
 
 初出店した「AGUru hakozaki(あぐる はこざき)」は、箱崎町のビニールハウスで育てるイチゴを使ったスイーツやドリンクをその場でつくって販売した。品種は「夏のしずく」。冷涼な地域でも育ち、生産量が落ち込む6~11月の端境期に収穫できる。糖度と酸度がともに高く、ケーキなどに向いているという。
 
初出店の「AGUru hakozaki」はイチゴの加工品を販売

初出店の「AGUru hakozaki」はイチゴの加工品を販売

 
釜石産イチゴをPRする菊池隼さん(左)と松田知也さん

釜石産イチゴをPRする菊池隼さん(左)と松田知也さん

 
 もともと町内で薪(まき)づくりを通じた就労、福祉支援を行ってきた一般社団法人「ゴジョる」が昨年12月に新たに立ち上げた農業分野の取り組み。薪づくりで出た端材で炭をつくる際の廃熱を活用してイチゴを栽培する。
 
 同法人代表理事の菊池隼さん(48)、市地域おこし協力隊の松田知也さん(27)が中心となって活動。メニューの開発や調理も2人でこなし、「対面販売は消費者の声、反響を実感できて楽しい」と笑顔を重ねる。6次産業化、新産業を生み出す試みは始まったばかり。「地域の中で循環できる仕組みを知ってもらえるよう挑戦を続けたい」と力を込めた。
 
おいしいものと出合い、人との交流を楽しむ場は笑顔がいっぱい

おいしいものと出合い、人との交流を楽しむ場は笑顔がいっぱい

 
 来場者は会場内を回りながら好みの商品を買い求めた。会場ではスタンプラリーも行われ、景品交換は長い列ができた。嬉石町の伊藤寿美さん(9)は「イチゴのおいしいジュースがあった。ピーマン釣りも楽しかった」と満喫。母親の慶美さん(31)は「目移りしちゃう。安く買えるのもいい。また来たい」と笑顔で会場を後にした。
 
街なか開催の軽トラ市は大勢の人でにぎわった

街なか開催の軽トラ市は大勢の人でにぎわった

 
 昨年度の軽トラ市は4回開催し、過去最多の1万1247人が来場(平均415人)した。1回の出店者数は平均14団体で、こちらも年々増えている。「隊長」として会場の様子を見守る市水産農林課主任の木川田琢磨さん(34)は「釜石らしい農業イベントとして市民に定着し、楽しみにしてくれているのが感じられる。出店者も売れると捉えているようで、たくさん出してくれる。野菜以外のものも多くあり、街なかの来やすい場所での開催も好意的な受け止めにつながっているようだ」と話した。
 
 釜石産のよさをPRする場、生産者と消費者の交流の機会となる軽トラ市はこの後も続く。次回は10月10日午前10時から、今回と同じ会場で開催。11月21、22日には「釜石まんぷくフェス」との同時開催(鈴子町周辺)を予定する。

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来たぞ!秋味サンマ 釜石・新浜町魚市場で今季初水揚げ 量は低調も「好転に期待」

釜石港に今季初めてサンマが水揚げされた

釜石港に今季初めてサンマが水揚げされた

 
 釜石市の新浜町魚市場に14日、サンマが今季初めて水揚げされた。昨年より2週間ほど遅い。岩手県内をはじめ、全国的に水揚げ量が低調で高値での取引が続いているサンマ漁だが、魚体は大きいものも多く見られ、関係者は今後の漁の好転に期待を寄せる。
 
 午前6時過ぎ、富山県魚津市の中島漁業が所有する大型船、第八珠(す)の浦丸(199トン、乗組員15人)が釜石港に到着。秋の味覚の到来を待ち構えた釜石の漁業関係者らが手を振って歓迎した。
 
秋の味覚サンマが届き活気づく新浜町魚市場

秋の味覚サンマが届き活気づく新浜町魚市場

 
水揚げ作業を進める第八珠の浦丸の乗組員

水揚げ作業を進める第八珠の浦丸の乗組員

 
秋の使者⁉銀色の魚体が朝日に光る

秋の使者⁉銀色の魚体が朝日に光る

 
 数量は約6.4トン。拠点とする花咲港(北海道根室市)のはるか東沖の公海で捕獲した銀色の魚体を、乗組員らが勢いよく水槽に移した。1匹120グラム~140グラムの中型が多く、中には160グラムほどの大型も交じった。価格は1キロ当たり900~1200円で取引された。
 
 3日間操業し、一昼夜以上の時間をかけて釜石に入港した第八珠の浦丸の猟田雄輔漁労長(71)は、好調だった昨年を振り返ながら、「比べ物にならない。(魚影が)とにかく薄い」と苦戦する今季の出だしに顔をしかめる。だた、漁場は比較的に近いといい、「これからだと期待して漁に出る」と気持ちは前向き。三陸沿岸で秋味を届けるのは「釜石港だけ」と言い、「高値で買い取ってもらっているから、ありがたい。また寄れたらと思っているから、楽しみに」と笑みを浮かべた。
 
小野共市長が猟田雄輔漁労長(左)に飲料などを差し入れ

小野共市長が猟田雄輔漁労長(左)に飲料などを差し入れ

 
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釜石の漁業関係者もサンマを確認しながら水揚げ作業に協力

 
 今回は水揚げされた生のサンマのほか、船上で箱詰めした冷凍ものも陸揚げ。新浜町の水産加工会社「平庄」がほぼ全量を買い取った。初水揚げの数量が96トンと好調だった昨季を大幅に下回る形となったが、平野隆司社長(50)は「去年が良かっただけで、近年はこんな感じ。でも、やっぱり量が少ない。形はいい、大ぶりのもある」と静観。「海の状況、魚も変わるから」と、今後の漁が上向くことを信じて待つ。
 
 釜石港の昨年のサンマ水揚げ量は2189トン(取引額約5億9442万円)。ここ数年で見れば漁獲量、金額ともに増加したものの、漁業者にとっては依然として厳しい状況が続いている。

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和山へ牛放牧2年目のエム牧場(福島県) 釜石市と連携協定締結 市内に肉の自販機設置も

連携協定締結式の後、エム牧場の和山放牧を見学する市職員=7月27日

連携協定締結式の後、エム牧場の和山放牧を見学する市職員=7月27日

 
 昨年度から釜石市の和山牧場で肉用牛の放牧を行っている福島県二本松市のエム牧場(吉田和代表取締役)が、釜石市と地域活性化に向けた連携協定を締結した。同社の和山放牧牛はハンバーグに加工した商品「和の風バーグ」が本年1月から同市のふるさと納税返礼品に登録されるなど、地域振興に貢献している。今後、釜石駅前の商業施設入り口に同放牧牛の食肉自動販売機が設置される予定で、市民や観光客にも広くアピールしていく考えだ。
 
 連携協定締結式は7月27日に橋野町で行われ、吉田代表取締役と小野共市長が協定書に署名した。協定は両者が相互に連携し、和山牧場での牛の放牧事業を通じた地域振興策の展開、市内畜産農家などとの交流機会創出を推進することで、同市の畜産業、地域活性化につなげることを目的とする。連携事項には放牧牛への付加価値の企画、新規特産品やふるさと納税返礼品の企画、畜産業に対する理解促進への取り組みなどを盛り込む。
 
署名した協定書を取り交わしたエム牧場の吉田和代表取締役(左)と釜石市の小野共市長

署名した協定書を取り交わしたエム牧場の吉田和代表取締役(左)と釜石市の小野共市長

 
 エム牧場は肉用牛の繁殖から肥育、精肉加工、販売までを手がける農業生産法人。福島、宮城、岩手3県に15カ所の牧場を所有し、2500頭を飼育する。釜石市は和山牧場の活用について2021年度から同社に情報提供。地元との協議も重ねながら放牧の誘致活動を続けてきた。その結果、昨年度から放牧事業が実現。市が管理する公共牧場地の“立岩”エリアで、5月から10月まで5種25頭を放牧した。
 
昨年5月、エム牧場による初めての放牧=和山牧場立岩エリア

昨年5月、エム牧場による初めての放牧=和山牧場立岩エリア

 
今年5月15日に放牧された牛。見学に訪れた市職員らをお出迎え!?

今年5月15日に放牧された牛。見学に訪れた市職員らをお出迎え!?

 
和山で行うのは「放牧肥育」。“山で肉を仕上げる” のがコンセプト

和山で行うのは「放牧肥育」。“山で肉を仕上げる” のがコンセプト

 
 同社が和山で行うのは「肥育のための放牧」。肉本来のうまみを味わえる赤身肉の需要拡大に応えるため、新たな挑戦の場に和山を選んだ。「広大な山の牧場で青草を食べて駆け回り、伸び伸び自由に育った牛」という付加価値が食肉卸業者や料理人の心をつかみ、昨年度は全25頭が買い取られた。素材にこだわる東京・六本木のスーパーでは「釜石・和山の牛」として写真付きで紹介されたほか、都内のフランス料理店などでもメニューの一つとして提供されたという。
 
 2年目となる本年度は同エリア14ヘクタールに短黒(日本短角牛と黒毛和牛の交配)、ジャー黒(ジャージー牛と黒毛和牛の交配)、褐黒(褐毛和牛と黒毛和牛の交配)の3種20頭を5月に放牧。昨年度の経験を踏まえ、放牧に向く種類に絞った。本年度も10月まで放牧する予定。
 
黒毛と掛け合わせた3種の牛がそろい踏み!

黒毛と掛け合わせた3種の牛がそろい踏み!

 
「好きな時に草を食べ、暑い時には林の中に入って休む。自由な生き方をしている牛たちです」と吉田代表取締役

「好きな時に草を食べ、暑い時には林の中に入って休む。自由な生き方をしている牛たちです」と吉田代表取締役

 
 昨年度は、興味を持つ人たちを何度も現地に案内したという吉田代表取締役。遠くは京都などから足を運ぶ人もいて、「釜石・和山で半年間過ごしたストレスフリーな牛」というストーリー性や“いいとこ取り”の変わった畜種がうけ、「使ってみたいという声をたくさんいただいた」という。今年もすでに購入の予約が入っていて、耳標に予約業者の名前が入った牛も。
 
耳標に買い取り業者の名前が付いた牛も。「信濃屋」は東京のスーパー

耳標に買い取り業者の名前が付いた牛も。「信濃屋」は東京のスーパー

 
 同社は「地元釜石の皆さんにも食べていただきたい」と、今後、釜石駅前の商業施設サン・フィッシュ釜石の入り口に食肉の自動販売機を設置する。和山放牧牛の冷凍精肉(ステーキ用など)やハンバーグを中心に販売予定。同社の自販機は二本松市にもあり、釜石が2カ所目。吉田代表取締役は「釜石にも牛がいることをどんどんアピールしていきたい。放牧頭数をさらに増やすため、人材育成にも取り組んでいければ」と今後の展開に夢を膨らませる。
 
群れで仲良く暮らす牛たち。広々、ほどよい傾斜地もある牧場を駆け健康に育つ

群れで仲良く暮らす牛たち。広々、ほどよい傾斜地もある牧場を駆け健康に育つ

 
和山牧場の現状について水産農林課職員から説明を聞く小野市長(中央)

和山牧場の現状について水産農林課職員から説明を聞く小野市長(中央)

 
 同社の釜石での放牧は後継者不足が課題の地元畜産業に新たな風をもたらし、再興への起爆剤になるものと期待される。小野市長は「和山牧場の活用は市や市議会、地元の栗橋地域振興社の関心の的だった。吉田社長のご英断に心から感謝したい。協定を機に連携を深め、市としても一次産業の振興に一丸となって取り組んでいきたい」と話した。

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おいしい“ハート”届けます!釜石・唐丹町の漁師3人が養殖 海と人を結ぶムール貝

釜石市唐丹町から“おいしいもの”を届けようと奮闘する3人の漁師

釜石市唐丹町から“おいしいもの”を届けようと奮闘する3人の漁師

 
 豊かな海を生かした漁業をなりわいとしてきた三陸沿岸は、近年の気候変動や海洋環境の変化に伴って、秋サケなど主要魚種が歴史的な不漁に見舞われている。先行きは見通せないが、釜石市唐丹町では海洋変化に対応すべく新たな養殖がスタート。「副産物」を主役としてブランド化し、販路を拡大させている。「信用第一」に安定供給に向けて技術を高めている地元の漁師3人を地域も後押し。ひらくとハート型に見える二枚貝に添えて届ける“あたたかい気持ち”が海と人をつなぎ、浜を活気づけている。
 
 唐丹町漁業協同組合に所属する佐々木和則さん(59)、佐々木武さん(44)、小野寺計さん(41)の3人が唐丹の海で育てるのは、ホタテの養殖いかだや綱などにくっついている「シュウリ貝」。「ムラサキイガイ」とも呼ばれるヨーロッパ原産の外来種で、都市部では「ムール貝」として高級レストランなどで使われる人気の食材だ。
 
「はーとふるムール」として売り出す唐丹産ムール貝

「はーとふるムール」として売り出す唐丹産ムール貝

 
ムール貝の養殖に取り組む(左から)小野寺計さん、佐々木和則さん、佐々木武さん

ムール貝の養殖に取り組む(左から)小野寺計さん、佐々木和則さん、佐々木武さん

 
 現在、水揚げは週1回。「新鮮なうちに」と、水揚げ後すぐに出荷までを行う。7月末、今シーズン一番の注文が入ったため、2日間かけて作業。29日、漁師たちは日の出とともに唐丹湾内の養殖場に出航。30分ほどの作業で、かごはムール貝でいっぱいになった。家族らが待つ港の岸壁に戻ると皆で力を合わせ、貝にこびりついた海藻や小さな貝を丁寧に除去。翌30日朝、唐丹町漁協の職員らの力も借りて箱詰めし、計約300キロを出荷した。
 
唐丹・小白浜漁港から船で5分ほどの養殖場でムール貝を育てる。以前はホタテを養殖していた場所を活用。春に養殖用ロープを垂らし、翌年に収穫する形で継続する

唐丹・小白浜漁港から船で5分ほどの養殖場でムール貝を育てる。以前はホタテを養殖していた場所を活用。春に養殖用ロープを垂らし、翌年に収穫する形で継続する

 
 シュウリ貝は地元では副産物として水揚げされるが、売っても「二束三文」、養殖施設に付着したものは作業の妨げとなる「やっかいもの」だった。一方、主力とするホタテやワカメの養殖は海水温の上昇などの影響で大量へい死や品質低下が見られ、なりわいの継続に危機感を持った3人。この副産物は岸壁などでも見かけ、力強く自生していることもあり、「高水温環境への対応力」に目を付けた。
 
 「養殖で品質や収量を安定させることができれば」。新たな水産資源として可能性を見いだした3人は2023年、和則さんを組合長に「唐丹ムール貝養殖組合」を設立。釜石市内にある岩手県水産技術センターなどの協力を得ながら養殖試験に取り組んだ。
 
 “言い出しっぺ”の武さんいわく、「もっと簡単だと思った。こんなに苦戦するとは…甘くなかった」。もともと自生しているため種となる幼生は容易に手に入り「お金をかけず」にスタートできた。数年育てて付着密度と成長の関係性を確かめ、養殖施設となる綱を設置する時期や方法も確立させた。
 
水揚げ後、陸に戻って貝の洗浄作業。船の帰港を見計らって集まった家族らと力を合わせる

水揚げ後、陸に戻って貝の洗浄作業。船の帰港を見計らって集まった家族らと力を合わせる

 
 そうした中で課題となったのが、貝の洗浄作業。貝にこびりついたものを取り除くのは大変な手間と時間を要した。先進地視察として北海道余市町の漁業者と交流した際に見せてもらった洗浄機をヒントに、独自の洗浄機を試作。和則さんが、以前からつながりがあった宮城県気仙沼市の業者に依頼したもので、導入により作業時間が半分以下と省力化できた。
 
独自の洗浄機を導入して作業の省力化を図る

独自の洗浄機を導入して作業の省力化を図る

 
洗浄機から出した後、さらに磨きをかける

洗浄機から出した後、さらに磨きをかける

 
 次の課題は売り先。高単価な直接取引を目指し、首都圏の水産卸などへ持ち込んだものの、知名度がなく、高くは売れなかった。ただ、クリスマスシーズンの需要をつかみ、約500キロを出荷。3人にとって「大きなモチベーションになった」という。
 
 「(シュウリ貝は)よく食べていて、好きだったから」と話すのは、武さん。味には自信があった。特においしい夏の味わいを知ってもらうべく、人づてに県内外の飲食店への売り込みを開始。釜石市内の飲食店との定期取引も実現した。
 
 昨年からは「はーとふるムール」と名付けてブランド化。「貝を開いた形がハートに見えるから」と、和則さんは笑う。東日本大震災後にもらった多くの「優しさ」「愛情」「真心」を力に復興したこともあり、「復興の証し」「感謝」を届けようと思いを込め、ロゴマークもデザイン。生産者の顔が見える取り組みとして、料理研究家と一緒に試食会や商談会を開いたり消費者との接点を増やしながら、少しずつ販路を切り開いた。
 
貝を開くとハート型に!ブランド性を高めて販路を拡大中 width=

貝を開くとハート型に!ブランド性を高めて販路を拡大中

 
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水揚げしたムール貝を箱詰め。唐丹町漁協の職員も協力

 
 生産から出荷、売り込みまで手がける体制を継続し、昨年は1.6トンを出荷。今季は12月までの収穫期に2トンを目標にしている。価格も、地元では1キロ当たり200~300円ほどだったが、今は1000円ほどで売れるようになった。
 
 こうした取り組みは、3月に東京であった「第31回全国青年・女性漁業者交流大会」(全国漁業協同組合連合会主催)の流通・消費拡大部門で最高賞に次ぐ水産庁長官賞を受賞した。和則さんは「ゼロから始め、手探りでやってきたことが評価されてうれしい。唐丹から新しい産物を届けられたらいい」と率直に喜ぶ。
 
 武さんは「誰もやっていないことだからこそ、やってみようと思った。生産、開発、流通のすべてに関わり、いろいろな経験ができた。売れた時の喜びは最高。やってよかった」と熱い思いを吐露。小野寺さんは「楽しい。いっぱい売れるように考え、模索し、やりがいもある」と言って、笑顔を見せた。
 
 3人で始めた取り組みを地域も後押し。唐丹町漁協加工課長の佐々木憲佑さん(42)は「高水温の環境に対応できる新事業として期待。流通面やできることで軌道に乗るよう協力したい」と見守る。
 
「新たな名産品に」。これからも唐丹の海でムール貝を育てていく

「新たな名産品に」。これからも唐丹の海でムール貝を育てていく

 
 和則さんと武さんは主にワカメやコンブの養殖、イカ釣り漁業に携わる。小野寺さんはメインとしていたホヤ漁が危機的状況となり、ワカメ養殖に転向すべく試行中とのこと。それぞれの本業と組み合わせつつ、「無理のない、できる形で収入源を増やしていければ」というのが、3人共通の意識だ。
 
 そして、地域や人とのつながり、販売先や消費者の顔が見える関係性から「信頼の大切さ」を改めて実感。注文に応えるべく、海の状況や天候の変化を読みながら漁に出る。「唐丹の海と人を結び、水産業の未来を照らす存在として『はーとふるムール』を育てていきたい」。3人はこれからも“こころ”を届けていく。

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釜石・片岸公園が「自然共生サイト」に 震災津波からの環境再生の取り組み 国が評価

環境省東北環境局の東岡礼治局長(中)から「自然共生サイト」の認定証を受け取った釜石市の小野共市長(右)、かまいしDMCの村上舞子さん(左)

環境省東北環境局の東岡礼治局長(中)から「自然共生サイト」の認定証を受け取った釜石市の小野共市長(右)、かまいしDMCの村上舞子さん(左)

 
 沼や池があり、野鳥や水生生物がすみ着く釜石市片岸町の片岸公園が、国の「自然共生サイト」に認定された。東日本大震災津波で失われた自然環境を回復させ、地域の各種団体と連携して行う保全活動が評価された。27日、代表申請者の市と連携活動実施者の観光地域づくり法人かまいしDMC(河東英宜代表取締役)に認定証が贈られた。本県での同認定は6カ所目となる。
 
 認定証授与式は市役所で行われた。環境省東北環境局の東岡礼治局長が認定の経緯を説明。小野共市長と同社旅行マーケティング事業部の村上舞子さんが東岡局長から認定証を受け取った。
 
 国は、さまざまな要因で失われつつある自然環境を回復させる取り組みの一環で、企業や市町村が地域で行う生物多様性増進の活動計画を認定。活動実施区域を「自然共生サイト」として広く周知している。釜石市は震災後に整備した片岸公園の生物多様性“回復”を目指す保全活動実施計画(2026年~5カ年)を申請。環境、農林水産、国土交通3省の最終審査を経て同サイトの認定を受けた。
 
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認定証授与式には東岡局長と東北環境局の関係部署職員3人が訪れ、認定の経緯などを説明した

 
 鵜住居川左岸河口域に位置する片岸公園は、震災津波で流失した豊かな自然環境を取り戻したいとの市民の声を受け市が整備。2021年6月に供用を開始した。一帯は震災前、みのすけ沼を中心に多くの野鳥や魚類が生息する湿地帯だったが、津波でヨシ原などの植生が全て流失した。公園は一部残った沼地のほか、減災機能を兼ねて作った遊水池を中心に水辺環境を確保。丘陵地には樹木を植え、遊歩道も整備した。年月を重ねる中で、水辺周辺にはヨシ原が再生。水生生物やトンボなどの昆虫が増えてきた。鵜住居川と行き来する野鳥の姿も見られるようになり、冬にはオオハクチョウの飛来地として市民に親しまれる。
 
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東日本大震災の津波で植物などが流失した現片岸公園のエリア=2011年4月撮影

 
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2021年に完成した片岸公園。遊水池の周りに遊歩道を整備し、さまざまな木々を植樹した

 
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野鳥やトンボなどさまざまな生き物が見られるようになった遊水池。冬にはオオハクチョウが飛来する

 
 今回の認定について東岡局長は「全国でも事例の少ない『回復』タイプ。震災で失われた自然環境を再生し、生物多様性を回復していく取り組みが評価された。震災復興を経て新たな自然共生の姿を示す大変意義深い事例」と称賛。同市は2024年9月に環境省の「脱炭素先行地域」にも選定されていて、環境に配慮した取り組みを推進する。「ネイチャーポジティブ(自然再興)と地域脱炭素を一体的に推進する先進的なモデル」としても高く評価されたという。東岡局長は「片岸公園が多様な生き物と人とが共に暮らす地域のシンボルとして、次世代に受け継がれていくことを願う」と期待した。
 
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「釜石の取り組みは全国のモデルとなる」と話す東岡局長。今後の活動にも期待した

 
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片岸公園では野鳥観察会なども開かれてきた。市は今回の認定を機に子どもたちの環境学習にも力を入れたい考え

 
 小野市長は「震災以降、手探りで続けてきた取り組みが国に認められたことは励みになる」と喜ぶ。世界規模の気候変動で自然環境にも大きな影響が出る中、「釜石市として何ができるか?しっかり考え行動し、グローカルな考え方を行政の責任として子どもたちにも伝えていきたい」と話した。市では認定により、地域の自然への理解や愛着がさらに深まることを期待。環境学習や交流人口拡大にもつなげていきたいとする。
 
 保全活動計画には、浚渫(しゅんせつ)やヨシの間引きなどで水の循環を促し、水質維持のための定期的なモニタリング調査を行うことが盛り込まれる。かまいしDMCはサスティナブルツーリズム(持続可能な観光)を推進し、首都圏企業を中心に企業研修を受け入れている。そのコンテンツの一つが片岸公園の保全活動で、外来植物の除去や研究機関と連携した水生生物による水質調査などを実施。村上さんは「活動を通じて環境に対する行動変容が生まれるよう工夫している。認定を機に未来へ向けた活動をさらに進めていきたい」と意を強くする。
 
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かまいしDMCの村上舞子さんは企業研修に取り入れている片岸公園の保全活動について紹介した

 
 国は2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する世界目標「30 by 30(サーティーバイサーティー)」の達成に向け、自然共生サイトの認定を重要な取り組みと位置付ける。認定は2023年度から始まり、今回の釜石を含む26年度第1回認定を合わせ、全国610カ所となった。

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地域産業の理解へ 釜石商工高2年生 水産加工の津田商店を見学 地域経済支える企業姿勢学ぶ

水産加工品製造の工場を見学する釜石商工高の2年生=3日、津田商店(鵜住居町)

水産加工品製造の工場を見学する釜石商工高の2年生=3日、津田商店(鵜住居町)

 
 釜石市大平町の県立釜石商工高(小松了校長、生徒160人)の2年生50人は3日、県の「いわて高校魅力化推進事業(探究共創事業)」の一環で、地元水産業への理解を深める学習を行った。研究施設や水産加工品製造の工場を見学。地域の魅力や可能性を知り、古里の将来を支える一員として考えを巡らせた。
 
 地元就職を希望する生徒が多い同校では、地域に貢献できる人材育成を目指し、地場産業への理解や地域課題に目を向ける探究学習の機会を設けている。本年度、2年生は平田の三陸水産研究センター(岩手大釜石キャンパス内)と鵜住居町の津田商店を訪れ、地域と関わりの深い水産業への学びを深めた。
 
 午後に訪問した津田商店(小笠原正勝代表取締役社長、従業員190人)では、同社の歴史や事業の説明を聞き、工場内を見学した。水産加工品の製造販売を行う同社は1933(昭和8)年創業。2011年の東日本大震災津波で大槌町安渡にあった工場が被災し、翌12年、釜石市浜町にあった本社事務所と共に同市鵜住居町に移転再建した。主に学校給食で提供される業務用冷凍食品(調理済み煮魚)と、大手ブランドの缶詰(サンマ、サバ、サケの中骨など)を製造。自衛隊員が災害派遣や訓練時に食するレトルト食品の製造も手がける。3年前には個食用に開発した自社ブランド「子どもようおさかなさん」(冷凍煮魚)のオンライン販売も開始した。
 
津田商店の会社概要や製品について学ぶ。学校給食用の魚は45都道府県に供給しているという

津田商店の会社概要や製品について学ぶ。学校給食用の魚は45都道府県に供給しているという

 
メモを取りながら担当者の話を聞く機械科の生徒ら

メモを取りながら担当者の話を聞く機械科の生徒ら

 
 担当者からは、衛生管理を徹底し安全安心な食品を提供していること、残物(魚の頭や尾など)の飼料加工や微生物による水浄化処理で環境負荷軽減を図っていることも説明された。近年は海水温の変化などで三陸産魚の水揚げが減少。原料確保のため、全国に足を運んでいる現状も伝えられた。同社は「地域共存」を理念とし、釜石湾で養殖されるサクラマスや地元酒造会社の梅酒製造過程で出る漬梅を活用した商品開発にも取り組んできた。
 
 全国に販路を持つ同社。得られた利益は従業員や外部の委託業者の収入となり、さらには地域内消費を生む。「地域内でお金が回る。地域経済を支えることが自社の目的の一つ」と担当者。10~70代の幅広い年代の雇用、外国人技能実習生の受け入れでも貢献する。
 
工場内の各部屋を回り、製品ができるまでの工程に理解を深める

工場内の各部屋を回り、製品ができるまでの工程に理解を深める

 
初めて見る工場内の作業に目がくぎ付け(写真下)。身近な魚の缶詰が地元釜石で作られていることを知り興味津々(同上)

初めて見る工場内の作業に目がくぎ付け(写真下)。身近な魚の缶詰が地元釜石で作られていることを知り興味津々(同上)

 
 電気電子科の岩﨑春燈さんは、同社の見学は小学校時代に続き2回目。高校生になり新たな視点での見学となったようで、「金属探知機やX線検査機などの設置が多い印象。それだけ消費者の食の安全に対し徹底しているのが伝わる」と感心。同社製造の缶詰を目にする機会も多く、「それが地元で作られているのはすごい」と郷土の誇りも実感。地元就職を考える上での判断材料にした。
 
「魚が大好き。ずっと(工場見学を)楽しみにしてきた」と目を輝かせたのは総合情報科の門﨑愛生さん。「気軽に食べている缶詰がこのような多くの工程を経て私たちの食卓に届いていると知って驚いた。多くの人の努力が詰まっていることを思いながら大切に食べたい」と感謝の気持ちも芽生えた様子。高校卒業後は県外就職を考えているが、「地元も大好きなので、いずれは戻ってくることも」とUターンも選択肢の一つに考えた。
 
地元企業の素晴らしさを実感する生徒。今後の進路の参考に…

地元企業の素晴らしさを実感する生徒。今後の進路の参考に…

 
 生徒たちの見学をサポートした同社管理部総務経理課の小倉敦美主任(30)は「地元の企業を知ってもらえるいい機会。地域への理解が進むのは大変ありがたい」と感謝。生徒たちが説明にうなずいたり、真剣なまなざしで話に聞き入る姿を頼もしく感じ、「若い方々の今後の力に期待したい。地元の魅力を感じてもらい、将来の就職の選択肢の一つに考えてもらえれば」と話した。

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仙人秘水仕込みの酒 浜千鳥が釜石鉱山で貯蔵開始 大島高任生誕200年記念で“物語”を仕込む

釜石鉱山の水で仕込んだ酒を5年間貯蔵のため坑道に運び入れる浜千鳥の社員ら=6月16日

釜石鉱山の水で仕込んだ酒を5年間貯蔵のため坑道に運び入れる浜千鳥の社員ら=6月16日

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は、釜石鉱山の“仙人秘水”で仕込んだ日本酒を、同鉱山の坑道で長期貯蔵する取り組みを始めた。1857(安政4)年にこの地で、日本初の鉄鉱石による鉄の連続出銑に成功した大島高任(1826-1901)の生誕200年を記念した企画。坑道貯蔵は同社にとって初の試みで、高任の没後130年にあたる5年後の2031年に取り出す予定。“鉄のまち釜石”で生まれる新たなストーリーの地酒。低温熟成、磁場による効果で、どんな味わいに仕上がるか、期待が膨らむ。
 
 貯蔵するのは、同鉱山の大峰山(標高1147メートル)地下600メートルから湧き出す“仙人秘水”で仕込んだ純米吟醸。720ミリリットル入りの瓶で1千本を、高任の誕生日である6月16日に坑内に入れた。同社社員らが坑道走行用カートに積み込み、海抜550メートルの坑口から約500メートル入った地点に設けた酒類蔵置場(税務署の許可を受けた一時保管場所)に運んだ。
 
個別に乾燥剤入りのビニール袋に入れた「純米吟醸」(720ミリリットル入り)をカートに積み込む

個別に乾燥剤入りのビニール袋に入れた「純米吟醸」(720ミリリットル入り)をカートに積み込む

 
海抜550メートルに位置する坑口からいざ搬入!ここから約3キロの地点で「仙人秘水」を採水している

海抜550メートルに位置する坑口からいざ搬入!ここから約3キロの地点で「仙人秘水」を採水している

 
看板が掲げられた保管場所の扉を開けて、カートが後進

看板が掲げられた保管場所の扉を開けて、カートが後進

 
 坑内は年間を通じて気温約11度。同社によると、温度変化が少なく長期の低温貯蔵に適しているほか、光や振動の影響がないため、劣化せずに安定した熟成が可能になるという。磁鉄鉱の鉱脈があることから、磁場の効力による味の変化も期待している。
 
 同社が仙人秘水で仕込む酒は「仙人郷」シリーズとして商品化されている。1991年10月には純米酒、95年11月には本醸造を発売。さらに品質の高い酒をと今冬、新たに仕込んだのが純米吟醸で、原料米は大槌町で栽培された本県オリジナル酒米「吟ぎんが」。口当たりが柔らかく、果物のような吟醸香がほのかに香る。貯蔵分以外は今年11月に販売を開始する。
 
カートから酒瓶が入ったケースを降ろし、保管場所に運ぶ。照明がなければ辺りは真っ暗

カートから酒瓶が入ったケースを降ろし、保管場所に運ぶ。照明がなければ辺りは真っ暗

 
貯蔵する「純米吟醸」を手に5年後を楽しみにする浜千鳥の新里進社長

貯蔵する「純米吟醸」を手に5年後を楽しみにする浜千鳥の新里進社長

 
 今回の取り組みは、「単なる貯蔵や保存ではなく、『物語を仕込む。未来への贈り物を創る』がコンセプト」。新里社長(68)は「ここで採れた水で仕込んだ酒が再び、この場所へ戻る。そういう意味では遺産の中にもう一つ遺産ができるような…」と、魅力的なストーリーをアピール。5年間“寝かせた”後の気になる味は、ふたを開けてみないと分からないが、「滑らかな感じで、飲んだ時に体に吸い込まれていくような…そんなお酒になれば」と楽しみにする。貯蔵酒は一般への販売を予定する。
 
釜石の製鉄の歴史を物語る場所で、どんな味わいが生まれるのか? 期待が高まる

釜石の製鉄の歴史を物語る場所で、どんな味わいが生まれるのか? 期待が高まる

 
 貯蔵酒の搬入に立ち会った釜石鉱山会社総務部総務課の千葉慎吾課長代理(42)は「ストーリー的にはすごくロマンを感じる。坑道での貯蔵がどんな変化を及ぼすのかも楽しみ」と浜千鳥の挑戦に注目。外部企業による坑道利用に関しては、「当社でも何ができるか探っている部分もあるので、この取り組みが今後の坑道活用検討へのいいきっかけになるのではないか」と話した。

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鶏肉のオヤマ(一関市) 釜石2カ所目の養鶏場「和山ファーム」で7月から飼育開始 年内本格稼働へ

釜石市橋野町和山に建設されたオヤマの新養鶏農場「和山ファーム」。鶏舎1~4号棟が完成した=2日

釜石市橋野町和山に建設されたオヤマの新養鶏農場「和山ファーム」。鶏舎1~4号棟が完成した=2日

 
 一関市の鶏肉生産加工販売業オヤマ(小山雅也代表取締役社長)が、釜石市橋野町和山に新たな養鶏農場「和山ファーム」を建設。一部鶏舎の完成を受け、7月から飼育を開始する。同社の釜石農場は2024年4月から稼働する栗林町の「リアスファーム」に次ぎ2カ所目。和山の農場も鶏の健康飼育や資源循環などの環境に配慮した設備で、栗林と同規模の生産を見込む。全施設の完成は11月。年内の本格稼働を目指す。
 
 昨春から工事が進められてきた和山ファームは鶏舎6棟のうち4棟が完成。今月2日、関係者約60人が出席し、第1期工事完成竣工式が現地で行われた。神事で出席者の代表が神前に玉串をささげ、新農場の安全、安定操業を祈願。鶏舎の内覧会で、施設の概要や設備について同社の担当者から説明があった。
 
3号棟鶏舎で行われた和山ファーム第1期工事完成竣工式の神事

3号棟鶏舎で行われた和山ファーム第1期工事完成竣工式の神事

 
神前に玉串をささげ、安全操業を祈願。出席者が乾杯して竣工を祝った

神前に玉串をささげ、安全操業を祈願。出席者が乾杯して竣工を祝った

 
上空から見た「和山ファーム」の敷地。(左上から)鶏舎6棟を配置。右側2棟(5、6号棟)は建設中=写真提供:千葉建設

上空から見た「和山ファーム」の敷地。(左上から)鶏舎6棟を配置。右側2棟(5、6号棟)は建設中=写真提供:千葉建設

 
 新農場は一般社団法人栗橋地域振興社(菊池録郎代表理事会長)が管理する和山地内の土地を借用して建設。約4万平方メートルの敷地に鶏舎6棟(総面積9741平方メートル)のほか、鶏ふん倉庫、ボイラー室、灰倉庫、管理棟、排水処理施設などを整備する。総事業費は約15億円。
 
 鶏舎は窓のない閉鎖型断熱構造(ウインドレス鶏舎)で、広さは国内最大級。鶏の成長過程に適した室温をコンピューターで自動制御できる換気、入気システムを導入する。床下には、鶏ふんの燃焼熱で沸かした温水を活用した床暖房設備もある。夏場の暑さ対策としてミスト噴霧装置や空気の流れを変えるロールカーテンも。照明は小電力、環境に配慮したLED電球で、一部鶏舎には除菌、鶏の健康促進に効果が期待される紫外線発光機能付き電球を試験導入する。鳥インフルエンザ防除など野鳥・野生動物侵入防止策、各種衛生管理を徹底する。
 
内覧会会場となった4号棟鶏舎の内部。面積1623平方メートル。奥行きは約74メートル

内覧会会場となった4号棟鶏舎の内部。面積1623平方メートル。奥行きは約74メートル

 
両側の入気口から入った空気が奥の壁一面の換気扇に流れていって換気。入気、換気はコンピューターによる自動制御

両側の入気口から入った空気が奥の壁一面の換気扇に流れていって換気。入気、換気はコンピューターによる自動制御

 
夏場の暑さ対策のためのミスト噴霧装置。鶏の体感温度を下げ、ヒートストレス軽減

夏場の暑さ対策のためのミスト噴霧装置。鶏の体感温度を下げ、ヒートストレス軽減

 
 屋外には鶏舎1棟につき4基の飼料タンクが配置され、パイプで送られた餌を自動給餌。水も自動給水で、新鮮な餌や水を与えることができる。鶏舎1棟で約2万8000羽を飼育。6棟の年6回の出荷で、年間約100万羽の生産を見込む。成長した鶏は一関市の工場に輸送して食肉処理される。鶏ふんの燃焼灰はリン酸カリ肥料として販売するほか、飼料米の水田などに使用。資源循環型の生産システムで環境に配慮した取り組みに貢献する。
 
餌や水もパイプから自動で供給されるシステム。オレンジ色の容器が給餌皿

餌や水もパイプから自動で供給されるシステム。オレンジ色の容器が給餌皿

 
 「奥州いわいどり」などのブランド鶏で知られる同社は、鶏の飼育から食肉処理、加工品製造、販売まで自社の一貫システムで行い、安全で高品質の鶏肉を提供する。国産鶏肉の市場拡大に伴い、生産量増加を目指し、餌の仕入れ先がある釜石市への養鶏農場新設を計画。2021年7月に同市と立地協定を結んだ。同市栗林町の養豚場跡地に鶏舎8棟を有する「リアスファーム」を建設し、24年4月から稼働する。さらなる事業規模拡大に向け、昨年3月には一関市室根町に処理能力が従来の約2.5倍、一日8万羽となる新工場が完成。釜石2カ所目となる「和山ファーム」の稼働は、安定的な供給体制確立につながるものと期待される。
 
 竣工式で小山社長は「地元関係者、建設事業者のご尽力の結晶を会社の発展につなげ、恩返しをしていきたい。室根の処理場と釜石の2農場の連携を深め、本県の鶏肉生産全国3位を1位に押し上げるよう頑張っていく」と決意を示した。釜石への農場設置は餌の供給拠点が近いことによる飼料運搬費削減のほか、三陸道を利用した一関の工場への鶏輸送時間短縮などの利点がある。「高速道路網の完成、釜石市の協力も後押しになって、とんとん拍子でここまできた。近くに民家のない和山は立地もいい。病気対策もしっかりしながら安全安心な生産に努めたい」と小山社長。
 
「目指すは岩手の鶏肉生産日本一」。オヤマの小山雅也代表取締役社長

「目指すは岩手の鶏肉生産日本一」。オヤマの小山雅也代表取締役社長

 
 同社は昨年6月、釜石市の酒造会社浜千鳥、食品加工の麻生三陸釜石工場、みそ、しょうゆ製造販売の藤勇醸造とタッグを組み、新商品「むね肉の漬梅焼き」を開発。同市ふるさと納税の返礼品にも採用される。釜石の農場で生産された鶏肉は市内の学校給食や子ども食堂にも提供された。
 
 竣工式に出席した同市の平松福壽副市長は2カ所目の農場進出に「釜石の農畜産業振興、経済効果を含め、地域の希望になる。さらなる特産品開発にもつなげていければ。海産物だけではない当市の食の魅力を発信できれば」と大いに期待。栗橋地域振興社の菊池録郎代表理事会長は「和山の土地利用が進むのは喜ばしい。環境に配慮した先進的な施設で安心感もある。今後も産業や観光で和山の活性化が図れれば」と願った。
 
1~4号棟鶏舎は7月から鶏の飼育を開始。年内に「2回転はできるのでは」と小山社長

1~4号棟鶏舎は7月から鶏の飼育を開始。年内に「2回転はできるのでは」と小山社長

 
 同社によると、今後は残る鶏舎2棟と付属施設の建設を進める。完成した4棟では7月から飼育を開始。従業員は7~8人の雇用を予定する。

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学びと休暇「どっちも楽しむ」 東京・文京学院大、釜石市で実践型インターンに挑戦

「釜石スタディケーション」に参加する文京学院大の学生ら=5月23日

「釜石スタディケーション」に参加する文京学院大の学生ら=5月23日

 
 学生が就業体験(インターンシップ)先の企業の課題解決に知恵を絞る「釜石スタディケーション」が5月16日から29日までの約2週間、釜石市内で展開された。文京学院大学(東京都文京区)が取り組む実践型教育プログラムで、今年で4年目。経営学部の学生10人が社会人の疑似体験、仕事終わりや休日のまち歩き、地方での生活を通じて視野を広げる機会にした。
 
 同プログラムでは大学を飛び出し地方に滞在しながら授業とフィールドワーク(現地学習)を両立させる。スタディケーションは「Study(学び)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語。同大学が10年以上にわたり交流を続ける釜石を実践地として継続実施している。
 
 今年は酒造会社や水産加工会社、市役所など4つの企業、機関がインターンの受け入れ先に。学生たちはSNS(交流サイト)発信やデジタルマーケティング施策の提案、営業・品質保証業務、文化財調査などに取り組んだ。
 
藤勇醸造でインターンに取り組んだ学生(右)=5月18日

藤勇醸造でインターンに取り組んだ学生(右)=5月18日

 
 みそ・しょうゆ製造販売業、藤勇醸造(大渡町)では、阿久津優菜さんと伊藤四葉さん(ともに2年)がインターンシップに挑んだ。2人に託されたミッションは「市内の小学校で行う、みそ造り体験と講演会のPRスライドづくり」。5月18日に同社で会社の歴史や事業内容の説明を受け、みそ造りを体験した。
 
 小学校でのみそ造り体験で講師を務めている「みそソムリエ」の小山和宏専務(61)、広報・商品開発などを担う小山明日奈さん(37)が2人の活動をサポート。スライドに盛り込みたい内容(▽創業124年の歴史▽みそのにおいと味の話▽発酵と腐るの違い▽みそのつくり方―など)を伝えた。聴講者となるのは児童だけでなく、大人の参加も見込まれることから、「分かりやすさに配慮しつつも、バランスの良いものに」「若い柔軟な感性で提案してほしい」と求めた。
 
藤勇醸造が市内の学校で行っているみそ造り体験の工程を確認

藤勇醸造が市内の学校で行っているみそ造り体験の工程を確認

 
インタビューやみそ造り体験をしながらミッションに挑んだ

インタビューやみそ造り体験をしながらミッションに挑んだ

 
 2人は週に3回ほど出勤し、工場でみその仕込み作業を見学したり、スライド作成を進めた。30日にまとめ発表として完成したスライドを披露した。小山専務は「丁寧に作り込んでいる。おおむねイメージ通り。伝えたいことや思いを届けられる」と評価。明日奈さんは「重要なポイントを限られた時間内にまとめてくれた。期待した柔軟性を見られたし、パソコンなどでの資料作成の便利な機能を教えてもらったり、逆に刺激をもらった」と感謝した。
 
 同大の准教授らも同席。「みそは身近にあっても、どう作られるか知らない。みそ造りの背景、文化を知り、効能にも触れていて、大人が見ても面白い」などと感想を伝えた。
 
まとめ発表をする伊藤四葉さん(右)、阿久津優菜さん=5月29日

まとめ発表をする伊藤四葉さん(右)、阿久津優菜さん=5月29日

 
 資料作りが得意という阿久津さんが中心になりスライドをまとめた。文章を簡潔に、写真を多用するなどして見やすさを重視。上々の評価を得て、うれしさをにじませた。大学生活の早い段階から社会経験を積みたいと参加。「課題を解決できるのが魅力。特技を生かせた」と笑顔を見せた。福島出身で、将来はデザイン分野での活躍を目指している。
 
 伊藤さんは、地域を食で支えてきた同社の歴史に感銘を受けた。その感動をミッションに盛り込んだようで「納得のいくものを残せた」と充実感を漂わせた。神奈川の実家では母親がちまき屋を営み、自身も食に関心があり、将来的には「パン屋を」と想像。「東京の企業とは違った職場を見る機会になった。藤勇さんは地域の人との距離が近い『食業』を長く続けていて、学びの場にピッタリだった」と柔らかい笑みを浮かべた。
 
釜石の復興まちづくりに理解を深めるまち歩き=5月23日

釜石の復興まちづくりに理解を深めるまち歩き=5月23日

 
 23日にはプログラムに参加する学生みんなで市内のまち歩きをした。案内人は、釜石市総合政策課長の金野尚史さん(54)。只越町の市役所本庁舎前から鈴子町の三陸鉄道釜石駅に向かう道沿いに建つ災害公営住宅の特徴や、災害時の避難場所を示す避難誘導標識の役割などを紹介した。
 
 大町の市民ホール周辺では、東日本大震災後に市が復興まちづくりの中核に位置付けた「フロントプロジェクト1」事業について説明した。大型ショッピングセンターや文化施設、商店街と一体化して自由な通り抜けができる“まちの散策路”的な開放空間を作ることで、にぎわい創出につなげようと工夫。復興推進本部、オープンシティ推進室などで震災直後の復旧、復興後の将来を見据えたまちづくりに携わってきた金野さんは当時を振り返り、「いろんな人の協力で復興を遂げたのが釜石。まさに市民の総力戦」と熱く語った。
 
金野尚史さん(左)の話に耳を傾ける文京学院大の学生たち

金野尚史さん(左)の話に耳を傾ける文京学院大の学生たち

 
 復興の歩みをじかに見聞きした常松楓さん(2年)は「復興事業には一つひとつに深い理由がある」と受け止めた。インターン先では遺跡見学や文化財の仕分け作業など「貴重な経験」への挑戦を楽しむ。釜石での生活も「思ったより食に困らない」と適応力も養ったようだ。
 
 この後、三鉄に乗車し鵜住居地区へ向かった一行。地域公共交通の現状、中心市街地とは異なる復興まちづくりの実相、地方創生の取り組みを象徴するイベントとなったラグビーワールドカップ日本大会の会場となったスタジアムなどを見て回った。
 
学生は復興まちづくりを視点に散策して防災について考えた

学生は復興まちづくりを視点に散策して防災について考えた

 
 学生リーダーの山後柊季さん(2年)は「講義形式では得られない学びで成長を」と臨んだ。各自、ミッションを果たすため努力はするが、「まずは楽しむこと。釜石生活を一番楽しんでいるのは自分」と主張。活動や仲間と過ごすことで、「見る力」に磨きをかけられたと感じていて、「地域に溶け込んで住んでいる人が見えていない魅力を発見して発信するのは面白い。ここでの気づきを学校生活、社会で生かしたい」と刺激にした。

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釜石市がウェブ制作会社「アンテナ」(東京)と立地協定 事業者の情報発信サポート

立地協定を結んだ小野共市長(中央)と吉井豊代表取締役(右から2人目)ら

立地協定を結んだ小野共市長(中央)と吉井豊代表取締役(右から2人目)ら

 
 釜石市は1日、ウェブサイト制作やインターネット戦略立案などを手がける「アンテナ」(本社・東京都、吉井豊代表取締役)と企業立地協定を結んだ。市内への支社開設に合わせたもので、情報通信技術(ICT)に関する企業支援などを展開。地元事業者の声をすくい上げながらサイト構築や交流サイト(SNS)運用などを協働で進めていく計画で、地域経済やコミュニティーの活性化が期待される。
 
 同社は2005年に創業。大手企業や全国自治体のホームページの構築・更新・保守・管理業務のほか、ネット戦略立案や調査、改善の実施、コンサルティング業務なども担う。近年は地方への進出も行っており、神奈川県三浦市など全国に4つの支社を開設。地域企業のICT能力の向上、デジタル技術を使って業務改善を進めるデジタルトランスフォーメーション(DX)化をサポートしている。岩手県内では洋野町に支社を構え、釜石は2拠点目となる。
 
 釜石支社は釜石市平田の釜石・大槌地域産業育成センター内に開設し、1日から業務を始めた。新たに3人を地元雇用する予定。事業拡大による市中心部への支社移転拡張も目指す。
 
釜石市役所で行われた締結式。協定書に署名し取り交わした

釜石市役所で行われた締結式。協定書に署名し取り交わした

 
 締結式は市役所で行われた。協定では、同社の▽支社設置、円滑な事業の推進▽従業員の確保―などについて、市が誠意をもって協力することを明文化。小野共市長と吉井代表取締役が協定書にそれぞれ署名し取り交わした。
 
 吉井代表取締役は「IT企業だが、特殊な技術を研究、開発しているわけではなく、多くの雇用を生む会社ではない」と自社を紹介しつつ、「地元の事業者を一緒になって支援する活動をしている、地域活性に特化したウェブ会社。世に知らしめたい情報を発信するのを担当者1人が頑張るのではなく、地域全体がICT化されてみんなで発信する世界を目指している」と思いを伝えた。
 
「釜石のいいものを地域みんなで発信する未来を」と思いを共有

「釜石のいいものを地域みんなで発信する未来を」と思いを共有

 
 釜石を何度も訪れ「いいものがたくさんある」と吉井代表取締役。発信したい情報は各地共通することが多いため埋もれてしまいがちだとしたが、「それ(釜石のいいもの)を必要とする人は全国、全世界にいるので一緒に広げていきたい」と意欲を示した。まずは、事業者の困り事や課題の聞き取りから開始。事業の改善点などを提案し、特定のニーズを持つ人に深く刺さる情報の発信をサポートしていく考えだ。
 
釜石支社の開設を歓迎する小野市長(左)

釜石支社の開設を歓迎する小野市長(左)

 
 釜石市は、同社の事業概要や洋野町での実績、ICTを活用した企業支援、地域活性化の取り組みに共感。市内への拠点設置と事業展開を求めて精力的にアプローチし、今回の協定締結につなげた。
 
 小野市長は「人口が減少する地域で、事業の効率化を図ることは事業者が生き残る鍵になってくる。いい素材を持ち、面白い取り組みをする事業者の情報発信とDX化をサポートしていただき、釜石の経済発展の可能性を大きく伸ばしてほしい」と期待した。