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鶏肉のオヤマ(一関市) 釜石2カ所目の養鶏場「和山ファーム」で7月から飼育開始 年内本格稼働へ

釜石市橋野町和山に建設されたオヤマの新養鶏農場「和山ファーム」。鶏舎1~4号棟が完成した=2日

釜石市橋野町和山に建設されたオヤマの新養鶏農場「和山ファーム」。鶏舎1~4号棟が完成した=2日

 
 一関市の鶏肉生産加工販売業オヤマ(小山雅也代表取締役社長)が、釜石市橋野町和山に新たな養鶏農場「和山ファーム」を建設。一部鶏舎の完成を受け、7月から飼育を開始する。同社の釜石農場は2024年4月から稼働する栗林町の「リアスファーム」に次ぎ2カ所目。和山の農場も鶏の健康飼育や資源循環などの環境に配慮した設備で、栗林と同規模の生産を見込む。全施設の完成は11月。年内の本格稼働を目指す。
 
 昨春から工事が進められてきた和山ファームは鶏舎6棟のうち4棟が完成。今月2日、関係者約60人が出席し、第1期工事完成竣工式が現地で行われた。神事で出席者の代表が神前に玉串をささげ、新農場の安全、安定操業を祈願。鶏舎の内覧会で、施設の概要や設備について同社の担当者から説明があった。
 
3号棟鶏舎で行われた和山ファーム第1期工事完成竣工式の神事

3号棟鶏舎で行われた和山ファーム第1期工事完成竣工式の神事

 
神前に玉串をささげ、安全操業を祈願。出席者が乾杯して竣工を祝った

神前に玉串をささげ、安全操業を祈願。出席者が乾杯して竣工を祝った

 
上空から見た「和山ファーム」の敷地。(左上から)鶏舎6棟を配置。右側2棟(5、6号棟)は建設中=写真提供:千葉建設

上空から見た「和山ファーム」の敷地。(左上から)鶏舎6棟を配置。右側2棟(5、6号棟)は建設中=写真提供:千葉建設

 
 新農場は一般社団法人栗橋地域振興社(菊池録郎代表理事会長)が管理する和山地内の土地を借用して建設。約4万平方メートルの敷地に鶏舎6棟(総面積9741平方メートル)のほか、鶏ふん倉庫、ボイラー室、灰倉庫、管理棟、排水処理施設などを整備する。総事業費は約15億円。
 
 鶏舎は窓のない閉鎖型断熱構造(ウインドレス鶏舎)で、広さは国内最大級。鶏の成長過程に適した室温をコンピューターで自動制御できる換気、入気システムを導入する。床下には、鶏ふんの燃焼熱で沸かした温水を活用した床暖房設備もある。夏場の暑さ対策としてミスト噴霧装置や空気の流れを変えるロールカーテンも。照明は小電力、環境に配慮したLED電球で、一部鶏舎には除菌、鶏の健康促進に効果が期待される紫外線発光機能付き電球を試験導入する。鳥インフルエンザ防除など野鳥・野生動物侵入防止策、各種衛生管理を徹底する。
 
内覧会会場となった4号棟鶏舎の内部。面積1623平方メートル。奥行きは約74メートル

内覧会会場となった4号棟鶏舎の内部。面積1623平方メートル。奥行きは約74メートル

 
両側の入気口から入った空気が奥の壁一面の換気扇に流れていって換気。入気、換気はコンピューターによる自動制御

両側の入気口から入った空気が奥の壁一面の換気扇に流れていって換気。入気、換気はコンピューターによる自動制御

 
夏場の暑さ対策のためのミスト噴霧装置。鶏の体感温度を下げ、ヒートストレス軽減

夏場の暑さ対策のためのミスト噴霧装置。鶏の体感温度を下げ、ヒートストレス軽減

 
 屋外には鶏舎1棟につき4基の飼料タンクが配置され、パイプで送られた餌を自動給餌。水も自動給水で、新鮮な餌や水を与えることができる。鶏舎1棟で約2万8000羽を飼育。6棟の年6回の出荷で、年間約100万羽の生産を見込む。成長した鶏は一関市の工場に輸送して食肉処理される。鶏ふんの燃焼灰はリン酸カリ肥料として販売するほか、飼料米の水田などに使用。資源循環型の生産システムで環境に配慮した取り組みに貢献する。
 
餌や水もパイプから自動で供給されるシステム。オレンジ色の容器が給餌皿

餌や水もパイプから自動で供給されるシステム。オレンジ色の容器が給餌皿

 
 「奥州いわいどり」などのブランド鶏で知られる同社は、鶏の飼育から食肉処理、加工品製造、販売まで自社の一貫システムで行い、安全で高品質の鶏肉を提供する。国産鶏肉の市場拡大に伴い、生産量増加を目指し、餌の仕入れ先がある釜石市への養鶏農場新設を計画。2021年7月に同市と立地協定を結んだ。同市栗林町の養豚場跡地に鶏舎8棟を有する「リアスファーム」を建設し、24年4月から稼働する。さらなる事業規模拡大に向け、昨年3月には一関市室根町に処理能力が従来の約2.5倍、一日8万羽となる新工場が完成。釜石2カ所目となる「和山ファーム」の稼働は、安定的な供給体制確立につながるものと期待される。
 
 竣工式で小山社長は「地元関係者、建設事業者のご尽力の結晶を会社の発展につなげ、恩返しをしていきたい。室根の処理場と釜石の2農場の連携を深め、本県の鶏肉生産全国3位を1位に押し上げるよう頑張っていく」と決意を示した。釜石への農場設置は餌の供給拠点が近いことによる飼料運搬費削減のほか、三陸道を利用した一関の工場への鶏輸送時間短縮などの利点がある。「高速道路網の完成、釜石市の協力も後押しになって、とんとん拍子でここまできた。近くに民家のない和山は立地もいい。病気対策もしっかりしながら安全安心な生産に努めたい」と小山社長。
 
「目指すは岩手の鶏肉生産日本一」。オヤマの小山雅也代表取締役社長

「目指すは岩手の鶏肉生産日本一」。オヤマの小山雅也代表取締役社長

 
 同社は昨年6月、釜石市の酒造会社浜千鳥、食品加工の麻生三陸釜石工場、みそ、しょうゆ製造販売の藤勇醸造とタッグを組み、新商品「むね肉の漬梅焼き」を開発。同市ふるさと納税の返礼品にも採用される。釜石の農場で生産された鶏肉は市内の学校給食や子ども食堂にも提供された。
 
 竣工式に出席した同市の平松福壽副市長は2カ所目の農場進出に「釜石の農畜産業振興、経済効果を含め、地域の希望になる。さらなる特産品開発にもつなげていければ。海産物だけではない当市の食の魅力を発信できれば」と大いに期待。栗橋地域振興社の菊池録郎代表理事会長は「和山の土地利用が進むのは喜ばしい。環境に配慮した先進的な施設で安心感もある。今後も産業や観光で和山の活性化が図れれば」と願った。
 
1~4号棟鶏舎は7月から鶏の飼育を開始。年内に「2回転はできるのでは」と小山社長

1~4号棟鶏舎は7月から鶏の飼育を開始。年内に「2回転はできるのでは」と小山社長

 
 同社によると、今後は残る鶏舎2棟と付属施設の建設を進める。完成した4棟では7月から飼育を開始。従業員は7~8人の雇用を予定する。

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学びと休暇「どっちも楽しむ」 東京・文京学院大、釜石市で実践型インターンに挑戦

「釜石スタディケーション」に参加する文京学院大の学生ら=5月23日

「釜石スタディケーション」に参加する文京学院大の学生ら=5月23日

 
 学生が就業体験(インターンシップ)先の企業の課題解決に知恵を絞る「釜石スタディケーション」が5月16日から29日までの約2週間、釜石市内で展開された。文京学院大学(東京都文京区)が取り組む実践型教育プログラムで、今年で4年目。経営学部の学生10人が社会人の疑似体験、仕事終わりや休日のまち歩き、地方での生活を通じて視野を広げる機会にした。
 
 同プログラムでは大学を飛び出し地方に滞在しながら授業とフィールドワーク(現地学習)を両立させる。スタディケーションは「Study(学び)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせ造語。同大学が10年以上にわたり交流を続ける釜石を実践地として継続実施している。
 
 今年は酒造会社や水産加工会社、市役所など4つの企業、機関がインターンの受け入れ先に。学生たちはSNS(交流サイト)発信やデジタルマーケティング施策の提案、営業・品質保証業務、文化財調査などに取り組んだ。
 
藤勇醸造でインターンに取り組んだ学生(右)=5月18日

藤勇醸造でインターンに取り組んだ学生(右)=5月18日

 
 みそ・しょうゆ製造販売業、藤勇醸造(大渡町)では、阿久津優菜さんと伊藤四葉さん(ともに2年)がインターンシップに挑んだ。2人に託されたミッションは「市内の小学校で行う、みそ造り体験と講演会のPRスライドづくり」。5月18日に同社で会社の歴史や事業内容の説明を受け、みそ造りを体験した。
 
 小学校でのみそ造り体験で講師を務めている「みそソムリエ」の小山和宏専務(61)、広報・商品開発などを担う小山明日奈さん(37)が2人の活動をサポート。スライドに盛り込みたい内容(▽創業124年の歴史▽みそのにおいと味の話▽発酵と腐るの違い▽みそのつくり方―など)を伝えた。聴講者となるのは児童だけでなく、大人の参加も見込まれることから、「分かりやすさに配慮しつつも、バランスの良いものに」「若い柔軟な感性で提案してほしい」と求めた。
 
藤勇醸造が市内の学校で行っているみそ造り体験の工程を確認

藤勇醸造が市内の学校で行っているみそ造り体験の工程を確認

 
インタビューやみそ造り体験をしながらミッションに挑んだ

インタビューやみそ造り体験をしながらミッションに挑んだ

 
 2人は週に3回ほど出勤し、工場でみその仕込み作業を見学したり、スライド作成を進めた。30日にまとめ発表として完成したスライドを披露した。小山専務は「丁寧に作り込んでいる。おおむねイメージ通り。伝えたいことや思いを届けられる」と評価。明日奈さんは「重要なポイントを限られた時間内にまとめてくれた。期待した柔軟性を見られたし、パソコンなどでの資料作成の便利な機能を教えてもらったり、逆に刺激をもらった」と感謝した。
 
 同大の准教授らも同席。「みそは身近にあっても、どう作られるか知らない。みそ造りの背景、文化を知り、効能にも触れていて、大人が見ても面白い」などと感想を伝えた。
 
まとめ発表をする伊藤四葉さん(右)、阿久津優菜さん=5月29日

まとめ発表をする伊藤四葉さん(右)、阿久津優菜さん=5月29日

 
 資料作りが得意という阿久津さんが中心になりスライドをまとめた。文章を簡潔に、写真を多用するなどして見やすさを重視。上々の評価を得て、うれしさをにじませた。大学生活の早い段階から社会経験を積みたいと参加。「課題を解決できるのが魅力。特技を生かせた」と笑顔を見せた。福島出身で、将来はデザイン分野での活躍を目指している。
 
 伊藤さんは、地域を食で支えてきた同社の歴史に感銘を受けた。その感動をミッションに盛り込んだようで「納得のいくものを残せた」と充実感を漂わせた。神奈川の実家では母親がちまき屋を営み、自身も食に関心があり、将来的には「パン屋を」と想像。「東京の企業とは違った職場を見る機会になった。藤勇さんは地域の人との距離が近い『食業』を長く続けていて、学びの場にピッタリだった」と柔らかい笑みを浮かべた。
 
釜石の復興まちづくりに理解を深めるまち歩き=5月23日

釜石の復興まちづくりに理解を深めるまち歩き=5月23日

 
 23日にはプログラムに参加する学生みんなで市内のまち歩きをした。案内人は、釜石市総合政策課長の金野尚史さん(54)。只越町の市役所本庁舎前から鈴子町の三陸鉄道釜石駅に向かう道沿いに建つ災害公営住宅の特徴や、災害時の避難場所を示す避難誘導看標識の役割などを紹介した。
 
 大町の市民ホール周辺では、東日本大震災後に市が復興まちづくりの中核に位置付けた「フロントプロジェクト1」事業について説明した。大型ショッピングセンターや文化施設、商店街と一体化して自由な通り抜けができる“まちの散策路”的な開放空間を作ることで、にぎわい創出につなげようと工夫。復興推進本部、オープンシティ推進室などで震災直後の復旧、復興後の将来を見据えたまちづくりに携わってきた金野さんは当時を振り返り、「いろんな人の協力で復興を遂げたのが釜石。まさに市民の総力戦」と熱く語った。
 
金野尚史さん(左)の話に耳を傾ける文京学院大の学生たち

金野尚史さん(左)の話に耳を傾ける文京学院大の学生たち

 
 復興の歩みをじかに見聞きした常松楓さん(2年)「復興事業には一つひとつに深い理由がある」と受け止めた。インターン先では遺跡見学や文化財の仕分け作業など「貴重な経験」への挑戦を楽しむ。釜石での生活も「思ったより食に困らない」と適応力も養ったようだ。
 
 この後、三鉄に乗車し鵜住居地区へ向かった一行。地域公共交通の現状、中心市街地とは異なる復興まちづくりの実相、地方創生の取り組みを象徴するイベントとなったラグビーワールドカップ日本大会の会場となったスタジアムなどを見て回った。
 
学生は復興まちづくりを視点に散策して防災について考えた

学生は復興まちづくりを視点に散策して防災について考えた

 
 学生リーダーの山後柊季さん(2年)は「講義形式では得られない学びで成長を」と臨んだ。各自、ミッションを果たすため努力はするが、「まずは楽しむこと。釜石生活を一番楽しんでいるのは自分」と主張。活動や仲間と過ごすことで、「見る力」に磨きをかけられたと感じていて、「地域に溶け込んで住んでいる人が見えていない魅力を発見して発信するのは面白い。ここでの気づきを学校生活、社会で生かしたい」と刺激にした。

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釜石市がウェブ制作会社「アンテナ」(東京)と立地協定 事業者の情報発信サポート

立地協定を結んだ小野共市長(中央)と吉井豊代表取締役(右から2人目)ら

立地協定を結んだ小野共市長(中央)と吉井豊代表取締役(右から2人目)ら

 
 釜石市は1日、ウェブサイト制作やインターネット戦略立案などを手がける「アンテナ」(本社・東京都、吉井豊代表取締役)と企業立地協定を結んだ。市内への支社開設に合わせたもので、情報通信技術(ICT)に関する企業支援などを展開。地元事業者の声をすくい上げながらサイト構築や交流サイト(SNS)運用などを協働で進めていく計画で、地域経済やコミュニティーの活性化が期待される。
 
 同社は2005年に創業。大手企業や全国自治体のホームページの構築・更新・保守・管理業務のほか、ネット戦略立案や調査、改善の実施、コンサルティング業務なども担う。近年は地方への進出も行っており、神奈川県三浦市など全国に4つの支社を開設。地域企業のICT能力の向上、デジタル技術を使って業務改善を進めるデジタルトランスフォーメーション(DX)化をサポートしている。岩手県内では洋野町に支社を構え、釜石は2拠点目となる。
 
 釜石支社は釜石市平田の釜石・大槌地域産業育成センター内に開設し、1日から業務を始めた。新たに3人を地元雇用する予定。事業拡大による市中心部への支社移転拡張も目指す。
 
釜石市役所で行われた締結式。協定書に署名し取り交わした

釜石市役所で行われた締結式。協定書に署名し取り交わした

 
 締結式は市役所で行われた。協定では、同社の▽支社設置、円滑な事業の推進▽従業員の確保―などについて、市が誠意をもって協力することを明文化。小野共市長と吉井代表取締役が協定書にそれぞれ署名し取り交わした。
 
 吉井代表取締役は「IT企業だが、特殊な技術を研究、開発しているわけではなく、多くの雇用を生む会社ではない」と自社を紹介しつつ、「地元の事業者を一緒になって支援する活動をしている、地域活性に特化したウェブ会社。世に知らしめたい情報を発信するのを担当者1人が頑張るのではなく、地域全体がICT化されてみんなで発信する世界を目指している」と思いを伝えた。
 
「釜石のいいものを地域みんなで発信する未来を」と思いを共有

「釜石のいいものを地域みんなで発信する未来を」と思いを共有

 
 釜石を何度も訪れ「いいものがたくさんある」と吉井代表取締役。発信したい情報は各地共通することが多いため埋もれてしまいがちだとしたが、「それ(釜石のいいもの)を必要とする人は全国、全世界にいるので一緒に広げていきたい」と意欲を示した。まずは、事業者の困り事や課題の聞き取りから開始。事業の改善点などを提案し、特定のニーズを持つ人に深く刺さる情報の発信をサポートしていく考えだ。
 
釜石支社の開設を歓迎する小野市長(左)

釜石支社の開設を歓迎する小野市長(左)

 
 釜石市は、同社の事業概要や洋野町での実績、ICTを活用した企業支援、地域活性化の取り組みに共感。市内への拠点設置と事業展開を求めて精力的にアプローチし、今回の協定締結につなげた。
 
 小野市長は「人口が減少する地域で、事業の効率化を図ることは事業者が生き残る鍵になってくる。いい素材を持ち、面白い取り組みをする事業者の情報発信とDX化をサポートしていただき、釜石の経済発展の可能性を大きく伸ばしてほしい」と期待した。

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サイズ、脂のり手応え 「釜石はまゆりサクラマス」今季初水揚げ 養殖事業で活性化

釜石湾で養殖されたサクラマスを水揚げする泉澤水産の社員

釜石湾で養殖されたサクラマスを水揚げする泉澤水産の社員

 
 釜石市東前町の泉澤水産(泉澤宏代表取締役)は25日、釜石湾で養殖する「釜石はまゆりサクラマス」を今季初めて水揚げした。サイズ、脂のりも「よし」とPR。昨季の1.5倍以上となる約400トンの生産を見込み、地元水産業の活性化につなげる。
 
 午前5時頃、湾内に設置したいけすから約3トンを積み込んだ漁船が同市魚河岸の市魚市場に到着。同社の社員ら約20人が水揚げと選別作業を手早く進めた。体長50~60センチ、平均の重さは2キロ未満で、1キロ当たり700~880円で取引。地元の水産加工業者、県内外のスーパーやすし店に流通する。
 
漁船から釜石市魚市場に水揚げする社員

漁船から釜石市魚市場に水揚げする社員

 
仕分け作業は自動重量選別機を使って効率化

仕分け作業は自動重量選別機を使って効率化

 
 この日は魚の大きさなどを確かめる“プレ出荷”としての水揚げで、本格的にスタートするのは6月に入ってから。水温などを考慮しながら7月後半まで20回程度を予定する。
 
 「去年よりサイズが少し大きい」と感触を話したのは同社代表取締役の泉澤さん(64)。今季はいけす2基に稚魚約28万尾を入れ、密度を高めて育てている。「投入時、200グラムに満たないものだったから少し心配したが、いい誤算。高水温を見越して早めに出荷としたが、思っていたより水温は低め。低水温だと餌を食べないが、今年は食べた」と、手探りながらも順調な成育ぶりにほっとした様子。3キロほどに成熟した魚体もあり、本格化するシーズンに期待を高める。
 
市場を活気づけた釜石湾産の「はまゆりサクラマス」

市場を活気づけた釜石湾産の「はまゆりサクラマス」

 
 試食会もあり、刺し身で味わった関係者らは「うまい」「いくらでも食べられる」と評価。「脂が身全体にのっているのに、さらりとした味わいが特徴。いい仕上がり」とうなずく泉澤さん。釜石地域では「ママス」の名でなじみのある日本の在来種のサクラマスに「希少性」を見いだし、増産を計画する。将来的には500トンを目指すとし、「知名度が高まり、ニーズが広がってくれたら。刺し身でも焼いてもうまいサクラマスを全国の皆さんに食べてほしい」と話した。
 
水揚げ後に開かれた養殖サクラマスの試食会。刺し身で味わう

水揚げ後に開かれた養殖サクラマスの試食会。刺し身で味わう

 
「いい仕上がり」とPRする泉澤代表取締役(左)、小野共市長(中)ら

「いい仕上がり」とPRする泉澤代表取締役(左)、小野共市長(中)ら

 
 同社は市、岩手大などとコンソーシアムを構成し、2020年から試験養殖を開始し、22年に事業化。種苗生産を自社で賄い、安全供給を実現する。環境負荷の小さい養殖業に与えられる国際認証(ASC)も取得。水産物の高付加価値化に取り組む。
 
 小野共市長は「近年の水揚げ量はかなり厳しいと認識。そうした中で海面養殖は釜石、岩手県の漁業に弾みをつけるものだ。全力で応援、バックアップしたい」と強調した。

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風車建て替え11基で運転再開 ユーラス釜石広域ウインドファーム 現地で竣工式

風車を建て替え、3月から営業運転を開始した「ユーラス釜石広域ウインドファーム」の竣工を祝った関係企業、自治体の代表者ら

風車を建て替え、3月から営業運転を開始した「ユーラス釜石広域ウインドファーム」の竣工を祝った関係企業、自治体の代表者ら

 
 釜石、遠野、大槌2市1町にまたがる風力発電所「ユーラス釜石広域ウインドファーム」は、2023年8月から進めてきた風車の建て替えが完了し、本年3月から営業運転を開始している。1基あたりの出力が大きい風車を導入し、以前の43基から11基に集約。これまでと同規模の発電量を維持する。22日、新山展望台近くの6号機ヤードで、事業者のユーラスエナジーホールディングス(諏訪部哲也代表取締役社長、本社:東京都千代田区)による竣工式が行われた。
 
 関係者約120人が出席。神事で自治体や関係企業の代表が神前に玉串をささげ、新施設の安全操業を祈願した。事業者を代表し諏訪部社長は「単なる設備の更新ではなく、これまで築いてきた地域との信頼関係、風という貴重な資源を次の世代へ確実につなげていくための新たな一歩。今後も安全を最優先とした安定操業に努め、脱炭素社会の実現と地域の持続的な発展に貢献していきたい」とあいさつした。
 
竣工式の神事で発電所の安全操業を祈る出席者ら

竣工式の神事で発電所の安全操業を祈る出席者ら

 
あいさつしたユーラスエナジーホールディングスの諏訪部哲也社長(左上)、平野公三大槌町長(右上)

あいさつしたユーラスエナジーホールディングスの諏訪部哲也社長(左上)、平野公三大槌町長(右上)

 
 来賓の平野公三大槌町長は「自然災害に直面するたび、持続可能なエネルギー社会構築の必要性を強く実感する。本事業は再生可能エネルギー先進地域としての新たな可能性を示すもの。災害発生時にも安全、安定的に稼働するクリーンエネルギー施設の存在は、地域の回復力向上にも資する」と期待を述べた。
 
出席者は神職のお祝いの言葉の後、お神酒をいただいた

出席者は神職のお祝いの言葉の後、お神酒をいただいた

 
 同発電所は2004年12月から営業運転を開始。約20年が経過し、高経年化が進んだため、設備の全面的な更新(建て替え)を行うことになった。23年3月に営業運転を終了。既存の風車43基を撤去し、新たに大槌町側の東サイトに8基、釜石、遠野市側の西サイトに3基の計11基を建設する工事が行われた。
 
 新設風車はベスタス社(デンマーク)製で、1基あたりの出力は国内最大級となる4200キロワット(以前は1000キロワット)。ブレード(羽根)3枚が描く円の直径(ローター径)は117メートル。タワーの高さは84メートル。11基の総出力は以前と同じ4万2900キロワット。これは一般家庭約2万4000世帯の消費電力に相当する電力供給量で、年間約4万トンのCO2削減効果が見込まれる。風車の大型化と集約化で発電量の増加、メンテナンス効率の向上が期待される。売電先は東北電力ネットワーク。
 
以前より大型の風車で営業運転する釜石広域ウインドファーム(写真提供:ユーラスエナジーホールディングス)

以前より大型の風車で営業運転する釜石広域ウインドファーム(写真提供:ユーラスエナジーホールディングス)

 
8基の風車が稼働する東サイト(写真提供:ユーラスエナジーホールディングス)

8基の風車が稼働する東サイト(写真提供:ユーラスエナジーホールディングス)

 
 釜石市の小山田俊一産業振興部長は「当市は2050年までにCO2排出実質ゼロを目指す『ゼロカーボンシティ』への取り組みを進めている。本ウインドファームの稼働は脱炭素社会実現を大きく推進させる。更新した施設が地域のシンボルとして親しまれ、安定したエネルギー供給により、持続可能なまちづくりへの力強い原動力となることを願う」と述べた。
 
 地球温暖化の進行で再生可能エネルギー導入の必要性が一層高まる中、ユーラス社は3市町の高原地帯に風車を増設する計画も進めている。
 
釜石市の和山高原などに3基が設置された西サイト。稜線を走る通称「スリーグリーンライン」から圧巻の風車風景を臨める

釜石市の和山高原などに3基が設置された西サイト。稜線を走る通称「スリーグリーンライン」から圧巻の風車風景を臨める

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酒造り支える田んぼ(大槌)で挑戦 釜石・浜千鳥の体験塾 親子ら、田植えに歓声

浜千鳥酒造り体験塾で田植えに取り組む参加者

浜千鳥酒造り体験塾で田植えに取り組む参加者

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は17日、大槌町大槌の田んぼで田植え体験会を開いた。地元の釜石や大槌のほか、盛岡、宮古、東京など岩手県内外から親子連れや学生ら約120人が参加。ぬかるむ泥の感触を楽しみつつ、酒造りの一端に触れた。
 
 体験の場は、同社に酒米を提供する佐々木重吾さん(69)の田んぼ(約7アール)。晴天の下、大人も子どもも泥まみれになりながら、酒米「吟ぎんが」の苗を横一列で手植えしていった。
 
参加者は横一列に並んで吟ぎんがの苗を植え付けた

参加者は横一列に並んで吟ぎんがの苗を植え付けた

 
 初めて体験した子どもたちは「気持ちいい」「ふにゅふにゅしてる」「ちょっとぬるい」などと、はしゃぎながら作業。大船渡市の小学生廣田千佳さん(8)は「天気がよくて気持ちいい。成長が楽しみ。おいしいお米ができたらいいな」とはにかんだ。父親の将さん(38)は「泥に触れる機会はめったになく、子どもたちの思い出になればと参加。人と触れる場でもあり、ずっと続いてほしい取り組み」と目を細めた。
 
青々とした苗を手に笑顔を見せる家族連れ

青々とした苗を手に笑顔を見せる家族連れ

 
幅広い世代が集結。苗の手植えに挑戦した

幅広い世代が集結。苗の手植えに挑戦した

 
子どもも大人も泥だらけになりながら作業を楽しむ

子どもも大人も泥だらけになりながら作業を楽しむ

 
 苗ができるだけ等間隔になるよう、スタッフが張ったロープに沿って植え付けるといった工夫も。釜石市内の銀行に勤める行員の佐藤碩人さん(24)は昨年に続いて2回目の参加で、「作業の大変さ、工夫あっての田植えを体験できるいい機会」と心地よい汗を流した。実は、日本酒に苦手意識があるというが、「浜千鳥は飲みやすい」とニヤリ。酒造りの一工程に携わったことで「より一層おいしく飲めそう」と心待ちにした。
 
 岩手大の学生団体「いわてi-Sakeプロジェクト」のメンバー5人も力を発揮した。農学部1年の桑野陽菜さん(19)、伊藤月野さん(18)は農業、米作りに関心があり、さらに酒造りの流れを知りたいと参加。「中腰の作業は腰が痛くなるし、泥に足をとられて大変だった。幅広い年代の人たちと関わりながら作業ができて楽しかった」と爽やかな笑顔を重ねた。それぞれ神奈川県横浜市、秋田県鹿角市の出身で、「いろんなことに挑戦したい」とあふれる意欲も共通。酒をたしなむのはまだ先だが、「いつか味わってみたい」と楽しみを残した。
 
手植えの大変さを実感。ひと休みして腰の筋肉を伸ばしたり

手植えの大変さを実感。ひと休みして腰の筋肉を伸ばしたり

 
力を合わせて7アールの田んぼに酒米の苗を植え付けた参加者

力を合わせて7アールの田んぼに酒米の苗を植え付けた参加者

 
 佐々木さんが会長を務める大槌酒米研究会では今年、6個人1法人が同社に供給する吟ぎんがを栽培。体験会の田んぼを含めて約20ヘクタールに作付けした。昨年より5日ほど早く進行。苗の出来もよく、「根づきが早いかも」との見立てだ。一方、今後の天候が読めない状況は例年通りのようで、佐々木さんは「やってみないと分からない」と笑う。
 
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苗の植え方を伝える佐々木重吾さん(右)。体験を通して農業や米作りへの理解が深まるのを願う

 
作業の安全や豊作を祈り行われた神事。新里進社長(右上)らが玉串をささげた

作業の安全や豊作を祈り行われた神事。新里進社長(右上)らが玉串をささげた

 
 地産地消の酒造りを目指す同社では、同研究会が栽培する吟ぎんがを使い「ゆめほなみ」などを醸造。今では同社が使うコメの半数を占める。そうした取り組みを理解してもらおうと、「酒造り体験塾」を展開。今後は稲刈りや仕込み体験も予定する。
 
 新里社長(68)は多世代の関わりについて「若い人のアルコール離れがある中で、日本の文化を見直す機会になるのでは。心強い。日本酒への親しみも感じてもらえるといい」と歓迎。「いい酒を届けたい」。これから始まる酒造りに腕まくりする。

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苦難乗り越え40周年 釜石地方森林組合が記念行事 式典&東京大 鈴木俊貴准教授講演

釜石地方森林組合創立40周年記念式典で表彰された役員、協力事業者の代表

釜石地方森林組合創立40周年記念式典で表彰された役員、協力事業者の代表

 
 釜石地方森林組合(野田武則代表理事組合長、組合員1616人)の創立40周年記念式典は11日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。東日本大震災、尾崎半島林野火災と大きな困難を乗り越えてきた歩みを振り返り、支援者らに感謝の気持ちを表した。記念講演では、野鳥のシジュウカラが異なる鳴き声を使い分けて意志疎通を図っていることを発見した、東京大先端科学技術研究センター准教授の鈴木俊貴さんが講演。森の豊かさと人間との関係について考えるパネルディスカッションも行われた。
 
 約700人が参加。式典で野田組合長は、震災で甚大な被害を受けた組合の復興を支えてきた多くの関係者、組合員に深く感謝。「森林を取り巻く環境はさまざまな課題を抱えるが、地域の宝である森林を大切に守り育て、地域に貢献できる組合としてさらなる飛躍を目指す所存」と決意を述べた。
 
記念式典の冒頭、森林組合綱領を唱和する組合員ら

記念式典の冒頭、森林組合綱領を唱和する組合員ら

 
 同組合は1985年、釜石、大槌両市町の森林組合が合併して発足した。2011年の東日本大震災では、当時の組合長ら役職員5人が津波の犠牲となり、只越町にあった事務所が流失。組合存続の危機的状況の中、官民の指導、支援を受けながら復旧復興にまい進し15年、片岸町に新事務所を構えた。
 
 事業再生にあたっては異業種の助言も受け、課題克服に取り組んできた。地域産業の未来を見据え、15年から5年間、人材育成のための林業スクールを開講。16年には新日鉄住金(現日本製鉄)釜石の石炭火力発電所に納入するバイオマス燃料の木材販売代金の収益の一部を積み立てる「釜石地域森林整備基金」を創設。組合員への助成で、森林整備にかかる負担を軽減する仕組みをつくった。17年に発生した尾崎半島林野火災の被災木活用も推進。釜石鵜住居復興スタジアムの建物や座席シートなどに使われたほか、各種木製品に加工された。持続可能な森づくり、森林資源の循環利用、組合員への利益還元など、同組合の先進的な取り組みは各方面から高く評価されている。
 
 式典では、歴代代表理事組合長2人、長年、理事や監事を務めた組合員4人、協力事業者6人を表彰。震災後の組合事業を支えてきた10企業・団体に感謝状を贈った。釜石市と大槌町には記念品の目録が贈呈された。
 
第5代代表理事組合長を務めた久保知久さんに野田武則現組合長から表彰状を贈呈

第5代代表理事組合長を務めた久保知久さんに野田武則現組合長から表彰状を贈呈

 
震災後の組合を支援してきた10企業・団体に感謝状を贈呈。バークレイズ証券が代表して受け取った

震災後の組合を支援してきた10企業・団体に感謝状を贈呈。バークレイズ証券が代表して受け取った

 
被表彰者は次の通り。
【歴代代表理事組合長】久保知久(第5代、2期5年2カ月)、植田收(第6代、1期3年)
【役員】佐々木廣(理事、6期18年)、阿部公一(理事、7期21年)、山崎巍(監事、7期21年)、柏木公博(監事、8期24年)
【協力事業者】福浦正一、大萬梅治、久保正勝、齊藤義一、及川一男、小笠原松見
【企業、団体】バークレイズ証券、日鉄興和不動産、日本製鉄北日本製鉄所釜石地区、オカムラ、乃村工藝社・ノムラ協力会、千代田化工建設、SANU、大成建設、岩手県協同組合間連携協議会、連合岩手釜石・遠野地域協議会
 

「僕には鳥の言葉がわかる」 東京大 鈴木俊貴准教授(動物言語学者)が記念講演

 
シジュウカラに言葉があることを発見した東京大先端科学技術研究センターの鈴木俊貴准教授(右)。組合40周年記念で講演した

シジュウカラに言葉があることを発見した東京大先端科学技術研究センターの鈴木俊貴准教授(右)。組合40周年記念で講演した

 
 釜石地方森林組合の40周年記念事業として行われた基調講演。講師に招かれたのは、「動物言語学」という新たな分野で国内外から注目を集める東京大先端科学技術研究センター准教授の鈴木俊貴さん(42)。本県では初めての講演となり、組合員だけでなく一般聴講者も多数集まった。
 
 幼い頃から生き物観察が好きだった鈴木さんは、高校生の時に始めたバードウオッチングで野鳥に興味を持った。研究ができる大学に進み、3年の冬に入った長野県の森で、シジュウカラが状況によってさまざまな鳴き声を使い分けていることに気付く。「シジュウカラにとって言葉になっているのでは」と考え、本格的に研究を始めた。講演では、録音した鳴き声や行動を捉えた映像を示しながら、森の中で20年以上続けてきた研究の成果について紹介した。
 
1年のうち長い時で10カ月以上森の中で調査を行うという鈴木准教授

1年のうち長い時で10カ月以上森の中で調査を行うという鈴木准教授

 
 シジュウカラは天敵が現れた時、餌を見つけた時、繁殖の縄張りを主張する時などで、異なった鳴き声を発するという。天敵の中でもヘビが迫っている時にしか出さないのが「ジャージャー」という鳴き声。1羽がこの声を出すと、周りにいる仲間は地面をじっと見るなどヘビを探すような動きを見せる。「頭の中にヘビをイメージしていることを証明できれば、『ジャージャー』は(シジュウカラにとって)ヘビを指す言葉(単語)であろう」。そう考えた鈴木さんは、録音した鳴き声を聞かせながらヘビに見立てた小枝を幹に沿って引き上げ、ヘビと見間違えるかどうかという実験を実施。ヘビに似ていない枝の動きも試したが、反応があったのは前者のみ。「ジャージャーという声は聞き手のシジュウカラの頭にヘビを思い描かせていて、ヘビを探す行動につながっていた。言葉は頭にイメージを呼び起こすものであることから、ジャージャーはヘビを示す言葉といえる」と鈴木さん。
 

 
 しかも、シジュウカラは異なる鳴き声を組み合わせて文章を作ることができるという。例えば「ピーツピ(警戒して)、ヂヂヂ(集まれ)」という組み合わせ。音声ファイルをスピーカーから流すと、複数のシジュウカラが首を振りながら近づいてくる。さらに天敵のモズの剝製を置くと、羽を動かして威嚇し追い払おうとする。鈴木さんの実験では、語順を逆にすると意味が伝わらず、追い払い行動も見られなかった。文法があり、1羽が「ピーツピ、ヂヂヂ」の順で発した時だけ他の仲間が認識しているという。親鳥が発する警戒の鳴き声はひな鳥も理解。巣箱の中にいても、どんな天敵が迫っているのかを判断し、身を守る適切な行動を取っていることが分かった。
 
 鈴木さんは「2000年以上昔から『言葉を持つのは人間だけ』、鳥の鳴き声も感情が表れているだけと考えられてきたが、そうではない。研究で、シジュウカラは単語、文章を使い、文法のルールを認識してコミュニケーションを取っていることがわかってきた」と説明。世界初の解明で国際的な賞も受賞していて、「新たに立ち上げた『動物言語学』という分野を次世代に伝えていきたい」と望んだ。
 

 
興味深いシジュウカラの能力を知り、目からうろこの観客。釜石での講演に感謝の拍手を送った

興味深いシジュウカラの能力を知り、目からうろこの観客。釜石での講演に感謝の拍手を送った

 
「森の役割を再認識し、次世代につないでいくためには?」。さまざまな視点で意見を交わしたパネルディスカッション

「森の役割を再認識し、次世代につないでいくためには?」。さまざまな視点で意見を交わしたパネルディスカッション

 
 講演に続くパネルディスカッションのテーマは「森の恵みに感謝し、豊かな森を未来に引き継ごう」。鈴木さんのほか、各界で活躍する5人がパネリストとして登壇。さまざまな観点から森林の保全、継承の重要性について話した。
 
 盛岡市の料理研究家、小野寺惠さんは東京で子育て中に公害を経験。35年前に本県に移住した。「岩手の農産物は豊かな土壌、水から生まれる。きれいな空気も含め、全て岩手の森林によって作り出されたお宝」と絶賛。おおつち百年之業協同組合の佐々木重吾理事長は「水でつながる山川海の自然サイクルの中で私たちは生かされている。謙虚になり、今の森を大事に守っていかねば。1次産業は持続性に危ういところがあるが、複数の産業が連携し雇用を生めば、独自の経済圏を作り出せるのではないか」と話した。
 
写真左上:小野寺惠さん(メグミプランニング代表)、同右上:佐々木重吾さん(おおつち百年之業協同組合理事長)

写真左上:小野寺惠さん(メグミプランニング代表)、同右上:佐々木重吾さん(おおつち百年之業協同組合理事長)

 
 岩手大農学部地域環境科学科の伊藤幸男教授は「森があること自体が大きな富。林業経営をうまく成り立たせるような制度、政策を今、構築しておかないと、次世代への継承が難しくなる」と指摘。大槌町でジビエ事業を手がけるMOMIJIの兼澤幸男代表はシカによる森林被害を減らし、土砂災害の危険性や生物多様性の低下を防ぐ同社の取り組みを紹介。次世代に豊かな森を残すためには「自然との共生が不可欠。森での体験活動を通じて子どもたちにも興味をもってもらえるようにしたい」と話した。
 
写真左上:伊藤幸男さん(岩手大農学部地域環境科学科教授)、同右上:兼澤幸男さん(MOMIJI代表)

写真左上:伊藤幸男さん(岩手大農学部地域環境科学科教授)、同右上:兼澤幸男さん(MOMIJI代表)

 
 釜石地方森林組合の高橋幸男理事兼参事は「森林業の使命は山から受けている恩恵を次の世代に送っていくこと」とし、地域で森づくりを支える取り組みの必要性を示唆。「異業種の知恵を得ながらチャンスを広げ、やれることを明確にし、若い世代もやる気を持って参画できる仕組みにしていかなければ。森の多様性を生かし、持続可能な地域づくりにつなげていきたい」と未来を見据えた。各パネリストの話を受け、鈴木さんは「森の豊かさにはいろいろな切り口がある。『緑を守ろう』という話をしても、何らかの体験がないと、その言葉は響かない。自然とのつながりを感じられる体験機会を積極的に増やしていくことが大事」とアドバイスした。

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漁業の担い手へ一歩!いわて水産アカデミー入講式 釜石で挑む2人「若者の力を証明したい」

水産業の担い手を目指す「いわて水産アカデミー」の8期生

水産業の担い手を目指す「いわて水産アカデミー」の8期生

 
 岩手県内の漁業現場で即戦力となる人材を育てる「いわて水産アカデミー」(同アカデミー運営協議会主催)の入講式が10日、釜石市平田の県水産技術センターであった。第8期生として、20~40代の11人が漁業者への一歩を踏み出した。
 
 式で、同協議会長を務める県の照井富也農林水産部長が「夢や目標の実現に向け多くのことを学び、研修生の仲間や地域の皆さんとのつながりを大切にしながら研さんを積んでほしい」と激励。代表者の浦嶋孝行さん(38)=大船渡市=に研修許可証を手渡した。
 
研修生を代表し研修許可証を受け取る浦嶋孝行さん

研修生を代表し研修許可証を受け取る浦嶋孝行さん

 
「地域に認められる漁業者に」と誓う中村海成さん(手前)

「地域に認められる漁業者に」と誓う中村海成さん(手前)

 
 8期生は、すでに漁業に携わる人もいるが経歴は多彩で、出身地も県内外とさまざま。代表し、山田町の地域おこし協力隊員の中村海成さん(27)が「仲間同士で刺激し合い、共に成長する実りある研修生活を送りたい。近い将来、漁業の担い手として地域に貢献したい」と宣誓した。
 
釜石で研修に臨む藤原和貴さん(前列右)、三上朗央さん(後列右から2人目)

釜石で研修に臨む藤原和貴さん(前列右)、三上朗央さん(後列右から2人目)

 
 釜石市関連では2人が挑む。地元・大渡町出身の三上朗央さん(49)は、観光業からの転身。観光地域づくり会社で海を生かした活動や、山岳ガイドなどの資格を生かした企画などを担当していた。その中で関わった人たちの影響もあり、「面白そう」と発起。元プロボクサーという経歴も持ち、高校時代のボクシング部の先輩のもとでワカメ漁などを学ぶ予定で、「体力には自信がある」と意気込む。
 
 もう一人は、趣味の海釣りが高じて盛岡市から沿岸部に移住した藤原和貴さん(27)。2023年秋頃から釜石・唐丹町の遊漁船のスタッフとして働いている。やはり人との出会いをきっかけに漁業者に関心を持ち、挑戦することに。ワカメやコンブ、ムール貝などの養殖を手掛ける漁業者から指導を受ける予定で、「ウニ、アワビ、ナマコなど季節の漁をやっているのが唐丹の強みで、それを残したい。そして、若者でも水産業で頑張れるということを証明したい」と熱く語った。
 
引き締まった顔で集合写真に納まる研修生、アカデミー関係者

引き締まった顔で集合写真に納まる研修生、アカデミー関係者

 
いざ研修へ!ポーズを決め、気持ちを新たにする研修生

いざ研修へ!ポーズを決め、気持ちを新たにする研修生

 
 研修生は1年間、漁業就業に必要な基礎知識から経営やICT(情報通信技術)の活用、6次産業化など高度知識までを学ぶ。小型船舶操縦士などの免許取得にも励む。
 
 アカデミーは県、県内の漁業関係団体などが連携し、2019年に開講。25年度までに55人が修了している。

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津波・火災…逆境下で立て直した森林組合の軌跡 手塚さや香さん(釜石)、自書寄贈

本を手にする著者の手塚さや香さん(右)と釜石地方森林組合の高橋幸男参事

本を手にする著者の手塚さや香さん(右)と釜石地方森林組合の高橋幸男参事

 
 東日本大震災の被災地、釜石市の森林をめぐる再生と挑戦の物語を一冊の本にまとめ出版した同市在住のライター兼キャリアコンサルタントの手塚さや香さん(46)は9日、自著「つなぐ森林業 海のまちの森林組合、復興からその先へ」を同市に20冊寄贈した。逆境のなかでも果敢に挑戦し、まちをたて直した組織の活動に迫った本に「伝えることが役目。希望を感じてもらえるといい」と思いを込める。
 
 同書は、2011年の震災と17年の大規模林野火災を経験した釜石地方森林組合(野田武則組合長)の復興の軌跡を記す。同組合は、釜石市と大槌町の森林所有者が参加する組織。震災の津波で事務所が全壊し、役職員5人が犠牲になった。組合存続の危機に立たされたが、国内外の企業の支援を受けながら事業を再生。将来に向けた持続可能な林業のため、異業種のアドバイスも受け、課題克服へのアイデアを形にしてきた。
 
釜石地方森林組合の再生の軌跡を記した本「つなぐ森林業」

釜石地方森林組合の再生の軌跡を記した本「つなぐ森林業」

 
 復興の途上で発生した尾崎半島の大規模林野火災では約413ヘクタールを焼失。山林経営の継続に苦慮する個人所有者の意識が前向きに変わるよう、負担なく再生できる仕組みを考え、熱心に働きかけをした。火災の被災木の活用も積極的に展開。19年のラグビーワールドカップ会場となった「釜石鵜住居復興スタジアム」の客席シートや諸室の壁材などに使われ、木質化の良さを全国に発信する。
 
 手塚さんは元毎日新聞記者。記者を辞めて釜石リージョナルコーディネーター(復興支援員、通称・釜援隊)となって派遣された森林組合で6年間働き、奮闘を目の当たりにした。2年ほど前に「組織の歩みをきちんと記録して残すべき」といった声が上がり、発起。ちょうど同じ頃、組合再生に向け現場指揮を執ってきた高橋幸男参事(61)が「当時のことを話せるようになった」と話していたのを耳にし、「今がその時」と背中を押され、約20人の関係者にインタビューを重ねて書き上げた。
 
 書籍はPHP研究所刊、四六判280ページ、税抜き1900円。▽海のまちの森林組合▽3月11日のこと▽錯綜(さくそう)する情報と絶望▽森林組合再生に向けて▽バークレイズ林業スクール開講▽地元の木材を復興に使うという悲願▽何度でも逆境を乗り越える-の7章構成。2月27日に発売開始となっている。
 
「子どもたちに林業の仕事を伝えてほしい」と小野共市長(左)に本を託した

「子どもたちに林業の仕事を伝えてほしい」と小野共市長(左)に本を託した

 
 3月9日に市役所で書籍贈呈式があり、手塚さんと高橋参事が出席。応対した小野共市長は「どんなつらい思いをして、そのまちをつくってきたのかが書かれている。災害が多発する中、全国各地で通りうる道なのではないか。全国の災害復旧の教科書のようになれば」と期待した。
 
 市では市内の全小中学校(14校)、市立図書館などに配布する。手塚さんは「小学生が読むのは難しいところもあると思うが、先生方に読んでもらい、一次産業のある地域の豊かさ、林業という仕事を伝えてほしい」と願った。
 
市役所を訪れて本の説明をする手塚さんと高橋参事

市役所を訪れて本の説明をする手塚さんと高橋参事

 
本をじっくりと見入る釜石市の関係者(右)

本をじっくりと見入る釜石市の関係者(右)

 
 高橋参事は取材に応じた心情に触れながら、「逃げ出したいと思ったこともあったが、立場上、弱音をはけなかった。本心とのギャップがつらく、悩み続けてきた15年。2年前かな、当時のこと、つらさを本当の意味でさらけ出せるようになった。記録として残ることで気持ち的に少し楽になった」と明かした。
 
 続けて、「災害は多分どこでも起こる。想像できないものも出てくるだろう」と指摘。「その時、確かに絶望感はあると思うが、落ち着いて足元を見て、できることを確実にやっていく。そして周りの力を借りて一つずつこなしていく。特別なことではなく、普通のことで誰にでもできる。それを伝えられたらいい。少しでも希望を見いだせるように」と望みを語った。
 
 本出版に合わせ、クラウドファンディング(CF)を3月末まで行っている。詳しくはCFプロジェクトページ(『つなぐ森林業 ~海のまちの森林組合、復興からその先へ』を多くの人に届けたい – CAMPFIRE (キャンプファイヤー))へ。

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釜石発!サーモン、ムール貝養殖「おいしいの、できてます」 水産フォーラムで紹介

釜石で進む新規事業が紹介された水産・海洋研究フォーラム

釜石で進む新規事業が紹介された水産・海洋研究フォーラム

 
 水産・海洋研究フォーラム(釜石市など主催)は1月24日、同市大町の釜石PITで開かれ、大学教授ら専門家や漁業者ら4人が研究や新規事業の取り組み事例を発表した。市民ら約60人が聴講。近年、気候や海洋環境の変化によって水産業を取り巻く状況は厳しさを増しており、市内で進む新たな取り組みを知ることで水産業の持続可能性を考える機会にした。
 
 「甲子川発!さけます人工ふ化場産 ご当地サーモンの取り組み」と題して事例を紹介したのは、北里大学海洋生命科学部附属三陸臨海教育研究センター(大船渡市三陸町)の清水恵子さん。助手として三陸各地で事業者らとさまざまな共同研究を進めている。その中で、釜石湾漁協甲子川さけ人工ふ化場(佐々木有賢場長)とタッグを組んで進めるヒメマス養殖の事業化の動きを伝えた。
 
甲子川さけ人工ふ化場の養殖事業を説明する清水恵子さん

甲子川さけ人工ふ化場の養殖事業を説明する清水恵子さん

 
 同ふ化場では大不漁が続く秋サケ(シロザケ)に代わる魚種としてヒメマスに着目し、2020年から陸上養殖に取り組む。同センターとの共同研究は2年ほど前に開始。海面養殖も視野にセンター側は海水適応などに関する分析や小規模飼育試験を進め、ふ化場では種苗生産や親魚養成・採卵を続けている。
 
 ヒメマスは、ベニザケが一生を湖で過ごすようになった陸封型。適水温は10度前後とされるが、「甲子ふ化場の水温は高め」と清水さん。そんな中でも、八幡平で採卵し、甲子ふ化場に移送したもののふ化率(生存率)は93%だったといい、高水温環境で飼育ができる理由や甲子川産の特性を調査していく考えを示した。
 
釜石で育ったヒメマスに関心を示すフォーラム参加者

釜石で育ったヒメマスに関心を示すフォーラム参加者

 
 清水さんは、ヒメマス養殖事業について「サケを人工的にふ化させ放流する技術を継承しながら、減少した収入を穴埋めできる生産システムだ」と可能性を強調した。現在は平均1.8キロ、大きいもので2.5キロに成長。採卵、ふ化も成功させ養殖技術が高まってきたことから数量限定ながら出荷にこぎ着けた。会場には、八幡平で採卵し育成した3歳魚(2キロ超)、“完全”釜石産の2歳魚(1.1キロ)を並べて紹介。「おいしいものができるという話です」と笑顔で締めくくった。
 
 水産資源を生かした新たな養殖事業の取り組みはまだあり、唐丹町漁協に所属する組合員3人で23年1月に設立した「唐丹ムール貝養殖組合」の副組合長、小野寺計さんはブランド化させた「はーとふるムール」をPRした。
 
小野寺計さんは唐丹湾で始めたムール貝養殖への思いを伝えた

小野寺計さんは唐丹湾で始めたムール貝養殖への思いを伝えた

 
 主力とするホタテやワカメの養殖は海水温の上昇などの影響で大量へい死や品質低下が見られ、なりわいの継続に危機感を持つ中で、着目したのがムール貝。養殖施設に付着するこの副産物は地域では「しゅうり貝」として水揚げされ、食されてきた。高水温への適応力があり、唐丹湾でも力強く自生していることから、養殖試験で技術を習得しつつ生産量の増大・安定化を進め、販路の開拓にも挑んできた。
 
唐丹の海と人をつなぐ「はーとふるムール」をPR

唐丹の海と人をつなぐ「はーとふるムール」をPR

 
 人脈を生かし首都圏の大手小売店へ売り込み、クリスマス商戦の需要をつかんだ一方、県内外の飲食店への売り込みは苦戦。それでも熱意を持ち続け、釜石市内の1店との定期取引が実を結んだ。小野寺さんは「はーとふるムールは唐丹の海と人を結ぶ象徴。出荷して終わりではなく、顔の見える関係性を大事にしながら、地域の未来を照らす存在として育てていきたい」と力を込めた。
 
 岩手大学三陸水産研究センター(釜石・平田)の谷田巌准教授はナマコの資源管理を説明し、新規種を用いた人工種苗生産技術の開発に関する研究の一端を紹介。東京大学大気海洋研究所国際・地域連携研究センター大槌研究拠点(大槌町)の藤井賢彦教授は二酸化炭素(CO2)の大量排出が引き起こす地球温暖化、海洋酸性化について解説し、影響の先読みと地域の実情に応じた対策の必要性を指摘した。
 
講演した岩手大学の谷田巌准教授(左)、東京大学の藤井賢彦教授

講演した岩手大学の谷田巌准教授(左)、東京大学の藤井賢彦教授

 
専門家や漁業者の報告に耳を傾け、関心を深めた参加者

専門家や漁業者の報告に耳を傾け、関心を深めた参加者

 
 各講演後には質疑応答の時間があり、聴講した人らが気になったことを問いかけた。「素晴らしい取り組みだ」などと水産業の未来に期待する声も聞かれた。

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正月彩るミニ羽子板作り ぼく、わたしだけの一枚に笑顔 冬休みの思い出 まちづくり会社が後押し

オリジナルの飾り付けを楽しんだ「羽子板作りワークショップ」

オリジナルの飾り付けを楽しんだ「羽子板作りワークショップ」

 
 釜石まちづくり会社主催の羽子板作りワークショップが昨年12月27日、釜石市大町の情報交流センターで開かれた。正月飾りや冬休みの工作に活用してもらおうと、初めて開催。帰省した親子を含む市内外の15人が参加し、レーザー加工機や豊富な装飾パーツを使ったミニ羽子板作りに挑戦した。同社は長期休み中の子ども応援企画第2弾として、あす10日には「冬休み 市内いっせいしゅくだいの日」イベントを市民ホールTETTOなどで開く(詳細は同社インスタグラムで)。
 
 レーザー加工機を使った製品の製作販売を行う大槌町吉里吉里のNRC(細川恵子代表取締役社長)が協力。同社取締役企画部長の井上藍さん(37)が持ち込んだ小型加工機を使って、下地作りからスタートした。羽子板の形にカットしたヒバ材(縦20センチ、横9センチ)に、参加者が選んだ年号やえとの図柄を配置。タブレットでデータ入力し、同加工機で刻印した。
 
羽子板の形、表面に施す図柄を選び、タブレットで配置場所や大きさを調整

羽子板の形、表面に施す図柄を選び、タブレットで配置場所や大きさを調整

 
入力されたデータ通りにレーザー加工機が図柄を刻印。機械の動きに子どもたちも興味津々

入力されたデータ通りにレーザー加工機が図柄を刻印。機械の動きに子どもたちも興味津々

 
 機械の稼働中に、参加者は板に貼り付ける装飾パーツを選んだ。井上さんが準備した木製パーツのほか、まちづくり会社社員が手作りした水引、手芸用の飾りなど豊富な種類が用意され、完成形をイメージしながら好みのものを集めた。木製パーツにはマジックで色付けも。子どもたちはレーザーで模様が刻まれていく様子も見学し、普段あまり見ることのない作業に目がくぎ付けになった。
 
えとの“ウマ”にちなんだ木製パーツや手作りの水引など種類豊富な飾りが用意された。「どれにしようかな?」

えとの“ウマ”にちなんだ木製パーツや手作りの水引など種類豊富な飾りが用意された。「どれにしようかな?」

 
 刻印が終わると最後の仕上げ。選んだ装飾パーツをバランスを考えながら板に並べ、木工用ボンドやグルーガンで接着した。幼児は保護者に手伝ってもらいながら作業。小学生は冬休みの宿題の工作にも応用しようと、それぞれに創造力を発揮した。完成品を手にした子どもたちは、うれしそうな表情を浮かべ、間もなく迎える正月を心待ちにした。
 
着色したパーツを木工用ボンドやグルーガンで貼り付け。ベースデザインとのバランスも考えながら…

着色したパーツを木工用ボンドやグルーガンで貼り付け。ベースデザインとのバランスも考えながら…

 
 小佐野小の前田瑛里さん(4年)、陸仁さん(1年)姉弟(きょうだい)は、ものづくりが大好きで、今回も自ら参加を希望。製作後、感想を聞くと、「楽しかった~」と声をそろえた。陸仁さんは木製パーツを組み合わせ、“雪だるま”や“ミカン”の形に。「頭で想像して形を作るのが楽しかった」と声を弾ませた。瑛里さんは「レーザーで模様が浮かび上がってくるところを初めて見た」と目を輝かせ、オリジナルの“デコ”羽子板を「自分の部屋に飾りたい」と楽しみにした。 2人を見守った母梨沙さん(35)は「一生懸命考えながら、頑張って作っていた。ものづくりを通して、いろいろな発想が豊かになっていけば」と期待した。
 
前田さん姉弟の作品。右が姉瑛里さん、左が弟陸仁さん作。出来は「100点満点!」だそう

前田さん姉弟の作品。右が姉瑛里さん、左が弟陸仁さん作。出来は「100点満点!」だそう

 
「すてきな羽子板ができました!」。大満足の子どもたち(前)と主催者ら(後)

「すてきな羽子板ができました!」。大満足の子どもたち(前)と主催者ら(後)

 
 NRCの井上さんは、東日本大震災後の緊急雇用制度を活用した一般社団法人の活動で、レーザー加工機の操作技術を習得。現会社ではオリジナル雑貨の製作販売のほか、企業や個人からの依頼で記念品などの受注製作を行っている。今回のようなワークショップは「子どもたちが喜んでくれるのがうれしい。レーザー加工機に興味を持ってくれる子もいる。将来、ものづくりに携わる仲間が増えてくれれば」と期待。釜石市ではこれまでにも製作実演会などを行っていて、今後も機会があればイベント協力していきたい考え。まちづくり会社の下村達志事業部長は「楽しんでもらえて良かった。これからも季節に応じたワークショップを開催していきたい」と話した。

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釜石の2026年、本格始動 仕事始めで各業界トップ「変化に対応、発展を」

2026年の仕事始め。釜石市魚市場に漁船が入港し活気づいた

2026年の仕事始め。釜石市魚市場に漁船が入港し活気づいた

 
 2026年の仕事始めとなった5日、釜石市内では各業界のトップが年頭のあいさつを行った。市役所(同市只越町)では小野共市長が「地域力を生かした発展のストーリーをつくっていこう」と訓示。一方、早朝の市魚市場(魚河岸)の初売り式で市漁業協同組合連合会の木村嘉人会長は急変する海洋環境に対応しながら「水揚げ増強を進める」と飛躍を誓った。
 

市役所で仕事始め式

 
釜石市の仕事始め式で幹部職員を前に訓示する小野共市長

釜石市の仕事始め式で幹部職員を前に訓示する小野共市長

 
 市の仕事始め式は市役所議場で行われ、幹部職員ら約40人が参加。小野市長は、市政のかじ取り役として2年目となった昨年を「地域力、つまり地域が持つ本来の力が表に見えてきた1年だった」と振り返った。憩いの場の環境整備やにぎわい創出のイベント企画など市内各業界の事業者らが力を結集し、自発的に取り組んだことを挙げ、「まちを良くしたい、盛り上げたいという市民一人一人の気概、力をどう引き出すかが、行政の手腕となる」と指摘した。
 
 4月には市政運営の指針となる第6次市総合計画の後期基本計画(5カ年)がスタートする。「釜石発展のストーリー」と強調し、▽交流人口の拡大▽地域力の活用▽人材育成―という3本の柱を絡ませた取り組みを進める考えを示した。まち発展のきっかけとなった製鉄、水産業の歴史を踏まえ、「釜石は外からの力を発展の力に変えてきた。外部の人を受け入れるフレンドリー性が釜石人の基礎でもある」と見解を説いた。
 
訓示に耳を傾け、気を引き締める幹部職員ら

訓示に耳を傾け、気を引き締める幹部職員ら

 
 課題は人口減。近年、年間800人以上のペースで減っているというが、「その一面だけを見るのではなく、住まう人たちが誇りと自信、満足感を持って生きていけるまちになればいい」とした。その上で、行政マンとして「釜石の良いところ、面白い取り組み、人材を生かすことをまち発展の基礎にすべく、全力でまい進してほしい」と奮起を促した。
 

市魚市場で初売り式

 
2026年の初漁日。漁船から陸上へ次々と水揚げする漁業者

2026年の初漁日。漁船から陸上へ次々と水揚げする漁業者

 
 市魚市場では午前6時半頃から定置網漁船や陸送で魚が運び込まれ、活気づいた。スルメイカを中心に約5トンを水揚げ。初競りに臨んだ買い受け人は魚を熱心に見定め、次々と取引を進めた。
 
水揚げされた魚を見定め、競りに臨む買い受け人ら

水揚げされた魚を見定め、競りに臨む買い受け人ら

 
 5日の水揚げは、マイワシが豊漁だった25年初日と比較すると、約90トン減った。「厳しい状況が続いている」と硬い表情だったのは、新浜町の水産加工会社「平庄」(平野隆司代表取締役)の菊池幸一本部長(59)。「買い受け人、漁師もだが魚が来ないと商売にならない」とため息交じりに話した。この日は、カレイ類やアイナメなど200キロを仕入れ、切り身や刺し身にして市内スーパーの店頭へ。「扱ったことのない魚種も受け入れたり柔軟に対応して、あがったものでやるしかない」と苦労をにじませた。
 
釜石市魚市場の初売り式で鏡開きをする関係者

釜石市魚市場の初売り式で鏡開きをする関係者

 
 初売り式も行い、漁業関係者らが鏡開きや手締めで一年の活況を願った。あいさつに立った木村会長によると、市魚市場の25年4~12月の水揚げ量は4892トン(24年同期比22%減)、金額は19億4400万円(同19%増)。サンマ棒受け網漁業は好調を維持し、釜石湾で展開するサクラマス、ギンザケの海面養殖事業も増産体制となり「地元漁業者の力で水揚げの増強が図られる」との明るい兆しが見られた。
 
関係者は手締めで1年間の豊漁や安全航海を祈願した

関係者は手締めで1年間の豊漁や安全航海を祈願した

 
 一方、主力の定置網漁業では数量、金額ともに落ち込んでいるという。気候変動による海洋環境の変化が水揚げされる魚種や時期に影響し、水産業を取り巻く状況は不透明感を増す。木村会長は「秋サケの不漁は続くと思われ、海面養殖の増産、増強へシフトしていくだろう。サンマ船の積極的な誘致活動にも取り組み、地域経済の発展に貢献していく」と前を向いた。