タグ別アーカイブ: 産業・経済

wayama01

釜石・和山に肉用牛25頭放牧 エム牧場(福島県)が新たな挑戦! 消費者求める付加価値づくりに意欲

釜石市和山牧場に放たれ、元気に駆け出す「エム牧場」の牛=15日

釜石市和山牧場に放たれ、元気に駆け出す「エム牧場」の牛=15日

 
 釜石市北西部に位置する標高800メートルの和山高原。古くから牧場として活用されてきたこの地で今春、新たな挑戦が始まった。東北3県で肉用牛の生産を行う福島県二本松市のエム牧場(吉田和社長)が、肥育を目的とした放牧を開始。肥育のための“完全放牧”は全国でも珍しく、「ストレスフリーの健康牛」として料理人や消費者にアピールしていきたい考え。牧場開きが行われた15日、黒毛和牛、短黒牛など5種25頭が、市管理の牧場地に放たれた。震災以降、低迷する畜産業の活性化、“和山ブランド”の発信に地元関係者も大きな期待を寄せる。
 
 放牧する牛は、福島県と岩手県金ヶ崎町の自社農場から10トントラック2台で運ばれてきた。牧場地を所有する一般社団法人栗橋地域振興社(菊池録郎代表理事会長)の現地事務所近くで4トン車に移し、3回に分けて、放牧地の「立岩」と呼ばれるエリア(17ヘクタール)に運んだ。今季、放牧する25頭は黒毛和種、ホルスタイン種、ジャー黒(ジャージー牛と黒毛和牛の交配)、短黒(日本短角牛と黒毛和牛の交配)、あか牛(褐毛和種)の5種。生後約1~12歳。このうち、9頭は東京の食肉卸業者やスーパー、フランス料理店の買い取りが決まっている。
 
エム牧場のスタッフがトラックから牛を降ろし、牧場地に誘導

エム牧場のスタッフがトラックから牛を降ろし、牧場地に誘導

 
今季は5種25頭が10月末まで放牧される

今季は5種25頭が10月末まで放牧される

 
つながれていたロープがはずされると、牛たちが思い思いに散らばった

つながれていたロープがはずされると、牛たちが思い思いに散らばった

 
 牛の放牧といえば本来、繁殖牛や仔牛の育成のために行うのが一般的だが、今回行うのは「山で肉を仕上げる」ための放牧。料理人が求める“ストーリー性のある” 赤身肉を生産しようと、新たな挑戦の場に和山牧場を選んだ。「消費者は、自分が食べる肉がどこでどういう育ち方をしたかなど付加価値に興味を示す。山の中の広々とした牧場で青草を食べ、伸び伸びと育った牛は非常に魅力的に映るのでは」と吉田社長(45)。通常、肉用牛は牛舎で配合飼料などを食べながら育つが、近年は餌代が高騰。山への放牧は生産コスト削減にもつながる。
 
放牧した牛の様子を眺めるエム牧場の吉田和社長(右)と同社従業員ら

放牧した牛の様子を眺めるエム牧場の吉田和社長(右)と同社従業員ら

 
長旅の疲れも見せず?? 新天地の牧場を駆け回る牛たち

長旅の疲れも見せず?? 新天地の牧場を駆け回る牛たち

 
耳標に買い取り予約業者の名前が付いた牛も。業者は放牧前に牛舎を訪れ、「この牛を放して」と指定

耳標に買い取り予約業者の名前が付いた牛も。業者は放牧前に牛舎を訪れ、「この牛を放して」と指定

 
 同社は1995年創業。肉用牛の繁殖、肥育から精肉加工、販売までを手掛ける。福島、宮城、岩手3県の計15カ所で2500頭を飼育。昨年、赤身肉の販売に力を入れる牛肉卸の東京宝山(萩澤紀子社長)と仕事をすることになり、3年前から協議を続けていた同市和山牧場での放牧を決意。市が管理する牧場地で牛を預かる「預託」という形で、今春からの放牧が実現した。
 
 吉田社長は「放牧牛は脂の色の違いで市場評価が下がっていたが、肉自体はおいしい。新たな価値を生み出し、低コストでA5等級の肉を出せるようになれば、牛肉生産の可能性が広がる」と、常識を覆すチャレンジに心を躍らせる。すでに複数の料理人が興味を示しているといい、「うまくいけば頭数も増やしていきたい」と今後を見据える。
 
水場を教えるために団体移動。さまざまな種類の牛が和山の風景を彩る

水場を教えるために団体移動。さまざまな種類の牛が和山の風景を彩る

 
牧場内を流れる沢で水分補給。近くの木には塩分補給用の固形塩も設置された

牧場内を流れる沢で水分補給。近くの木には塩分補給用の固形塩も設置された

 
標高800メートルの和山高原。複数の牧場地が広がる

標高800メートルの和山高原。複数の牧場地が広がる

 
 今年創立70周年を迎える同振興社(旧栗橋牧野農業協同組合)によると、和山での牛の放牧のピークは1983(昭和58)年の937頭。最盛期には闘牛大会も行われていた。時代の変化とともに畜主、放牧数ともに減少。東日本大震災(2011年)前には約200頭の放牧があったが、震災後、牛の販売価格の下落や生産者の高齢化などで半減し、右肩下がりの状況が続く。今年は畜主7人による12~13頭の放牧にとどまる見込み。
 
 同振興社の菊池会長(73)は「エム牧場さんが来てくれたおかげで、牧場の有効活用が図られ、荒廃も防げる。来年にはユーラスエナジーさんの新たな風力発電施設も稼働予定。牛と風車が作り出す風景は和山の魅力を高め、観光客誘致にもつながる」と歓迎する。エム牧場の和山放牧牛は釜石市のふるさと納税の返礼品にも活用される予定。放牧の受け入れを行う市水産農林課の正木浩二課長は「牧場地の維持、畜産業の発展、食肉の特産品化など、当市にとっても多くのメリットが生まれる。さらなる規模拡大にも期待したい」と話す。
 
栗橋地域振興社の事務所近くで行われた牧場開きの安全祈願。市、県、振興社の代表らが山の神を祭る石碑や畜魂碑に向かって祈りをささげた

栗橋地域振興社の事務所近くで行われた牧場開きの安全祈願。市、県、振興社の代表らが山の神を祭る石碑や畜魂碑に向かって祈りをささげた

 
放牧を前に市水産農林課の職員らが牧場の電気柵のバッテリーを交換。受け入れ準備を整えた

放牧を前に市水産農林課の職員らが牧場の電気柵のバッテリーを交換。受け入れ準備を整えた

 
 今季の25頭は10月末まで放牧予定。頭数確認や健康チェックなど日々の管理は同社スタッフが行う。吉田社長は「関係する皆さんの協力があってここまでこぎ着けた」と感謝。「本来、牛舎で飼っていれば高値で売れるものをあえて外に放す」。“ありえないこと”に挑む若き牛飼いたちがつくる未来に注目したい。
 
今秋まで牛が無事に過ごせるよう願いを込めるエム牧場のスタッフら

今秋まで牛が無事に過ごせるよう願いを込めるエム牧場のスタッフら

plastic01

釜石市 プラスチックごみ分別収集開始から1カ月 現状は? 24日から市内8地区で説明会実施

釜石市で地区ごと月1回(土曜日)行われているプラスチックごみの収集=17日

釜石市で地区ごと月1回(土曜日)行われているプラスチックごみの収集=17日

 
 釜石市は本年度4月からプラスチックごみの分別収集を開始した。月1回(地区ごとに定められた土曜日)、すでに実施しているペットボトルと合わせ、同じ日に収集している。地球環境に配慮したプラスチックの再資源化を促し、同市のごみ処理費用を削減するのが大きな目的。開始から1カ月が経過したが、市民からは一般ごみとの分別の判断に迷う声も聞かれる。現状を取材した。
 
 同市が分別収集するプラごみは「プラスチック製容器包装」と「製品プラスチック」。容器包装は「プラ」マーク表示のある食料品や日用品などの容器、包装、緩衝材で、袋やボトル、ケース類、ペットボトルのキャップ・ラベル、発砲スチロール、食品トレイなど。製品プラは「プラ」表示はないが、プラ100%でできていて、大きさ50センチ以下のもの(厚さ5ミリ未満)。例としては食品保存容器や食器、バケツ、CD・DVDなど。収集できるのは食品の油分や塩分が付着していない、洗剤やシャンプーの中身が残っていない…など、いずれも汚れのないきれいな状態のものだけ。
 
 洗ったものは乾かし、容器包装、製品ともに中身を確認できる透明または半透明の袋に入れて、収集日当日午前8時までに集積所に出す。市指定ごみ袋で出す場合は袋に「プラ」と書き、一般ごみではないことを示すと良い。
 
4月から収集を開始した「プラスチック製容器包装(“プラ”表示あり)」と「製品プラスチック(同表示なし)」の例

4月から収集を開始した「プラスチック製容器包装(“プラ”表示あり)」と「製品プラスチック(同表示なし)」の例

 
地区ごとに定められている月1回の収集日(市配布のごみカレンダー参照)午前8時までに出す

地区ごとに定められている月1回の収集日(市配布のごみカレンダー参照)午前8時までに出す

 
市の委託業者「新菱和運送」によるプラごみの収集作業(ペットボトルと同時回収)。17日は車両6台が稼働

市の委託業者「新菱和運送」によるプラごみの収集作業(ペットボトルと同時回収)。17日は車両6台が稼働

 
 市生活環境課によると、4月の収集実績は5日484キロ、12日819キロ、19日1112キロ、26日708キロで、計3123キロ。分別が始まったばかりというのもあるが、「市全体の収集量としてみると、当初見込みよりもまだまだ少ない状況」だという。汚れの付着やプラ以外の混入で資源物にならなかった残渣(ざんさ)は4週で計140キロ。これは「割合としては比較的少なく、気を付けて分別してもらっている印象」と受け止める。
 
 市民からの問い合わせで多いのは、収集可能なプラの判断基準。次の再資源化につなげるためには「完全にきれいなもの」が求められるが、始まったばかりの現時点では市民の対応が追い付かない側面もあることから、「汚れを落とすのに手間や労力を要する場合や、どの程度洗えばいいか迷った時は一般ごみに。まずは分別の意識を高めてもらい、できるところからご協力を」と呼び掛ける。
 
収集した家庭プラごみは岩手資源循環の処理施設(釜石総合リサイクルセンター)に搬入される(17日午前撮影)

収集した家庭プラごみは岩手資源循環の処理施設(釜石総合リサイクルセンター)に搬入される(17日午前撮影)

 
プラごみは検品後、機械に投入。破集袋機で回収時の袋をはずす

プラごみは検品後、機械に投入。破集袋機で回収時の袋をはずす

 
 プラごみは市の収集運搬委託業者(釜石清掃企業、新菱和運送)が収集。リサイクルのための選別、梱包(こんぽう)を請け負う同市平田、岩手資源循環(谷博之代表取締役)の処理施設に持ち込まれる。破集袋機で回収時の袋をはずし、手選別ラインでプラ再生できないものを除去。磁選機で混入金属を回収した後、圧縮梱包機で「プラスチックベール」という固まりする。プラベールは再生事業者に引き渡され、再生プラ製品の一部材料となるペレットや物流パレット(荷役台)に加工される。
 
資源としてプラ再生できないものを人の目で見極め除去する手選別ライン

資源としてプラ再生できないものを人の目で見極め除去する手選別ライン

 
収集時に交じってしまったペットボトルもラインからはずす。ペットボトルは別に梱包するため

収集時に交じってしまったペットボトルもラインからはずす。ペットボトルは別に梱包するため

 
最後は圧縮梱包機で「プラスチックベール」に加工。1個の重さは約250キロ

最後は圧縮梱包機で「プラスチックベール」に加工。1個の重さは約250キロ

 
 同市のプラ分別収集について谷代表取締役は「搬入されているものは非常にきれい」と好感触。ペットボトルと同時収集だが、梱包は“容器包装、製品プラ”と“ペットボトル”それぞれに行うため、「必ず別々の袋に入れて出してほしい」と呼び掛ける。スタート1カ月の搬入量から、「(分別収集を)まだ知らない人が多いのでは。人口規模からすると、月に30トンぐらいは出ると思われるが、今はまだ10分の1程度」と話す。家庭から出るごみの約6割はプラごみ。分別するだけで、一般ごみの量は半分以下になるという。同社では市民の直接搬入も受け入れる(無料)。プラごみ、ペットボトルともに平日(月~金)は午前8時半から午後4時半まで、土曜日は午前8時半から正午まで受け付ける。
 
プラごみの処理作業には社員とパート10人前後があたる(19日午前撮影)

プラごみの処理作業には社員とパート10人前後があたる(19日午前撮影)

 
 2022年4月の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の施行で、自治体は容器包装プラに加え、製品プラの分別収集・再商品化が努力義務となった。容器包装プラの分別収集は本県33市町村のうち23市町村で開始済み。沿岸南部では大槌町だけが実施していた。釜石市は今回、容器包装と製品両プラの分別収集に着手。同市のごみは3市2町で運営する岩手沿岸南部クリーンセンター(同市平田)で溶融処理するが、プラ分別でセンターに持ち込む量を減らすことで、同市の処理費用の負担割合を減らしたいとの狙いがある。2023年度、同市のごみ処理にかかった費用は約6億1000万円。市民1人あたり、年間約2万円を負担している計算になる。
 
 市生活環境課の二本松史敏課長は「プラ分別の浸透には時間がかかると思うが、市広報などで繰り返し周知しながら、精度も高めていければ」とし、より多くの市民の意識変容、実践に期待する。
 
プラごみ分別収集開始に先駆け、栗林町で開かれた説明会。栗林共栄会が市に要請し開催した=3月30日

プラごみ分別収集開始に先駆け、栗林町で開かれた説明会。栗林共栄会が市に要請し開催した=3月30日

 
 市はプラスチック分別の方法についての住民向け説明会を5月24、25、31日に市内8地区で開催予定。実際にやってみて分からないこと、迷っていることなどを聞いてほしいとしている。日程、場所は市広報5月15日号に掲載している。
 
5月24、25、31日に開かれるプラスチック分別方法の説明会日程

5月24、25、31日に開かれるプラスチック分別方法の説明会日程

eurus-energy01

釜石広域風力発電 来春から新風車で稼働 橋野・県道沿いに新管理棟完成 地域住民も祝福

ユーラス釜石広域ウインドファームの新管理棟開所を祝う関係者によるテープカット=20日

ユーラス釜石広域ウインドファームの新管理棟開所を祝う関係者によるテープカット=20日

 
 釜石、遠野、大槌2市1町にまたがる風力発電施設「ユーラス釜石広域ウインドファーム」の新しい管理棟が、釜石市橋野町荻の洞の県道釜石遠野線沿いに完成した。20日、事業者のユーラスエナジーホールディングス(諏訪部哲也代表取締役社長、本社:東京都千代田区)による開所式が現地で行われ、関係者と地域住民約80人が新拠点の落成を祝った。同施設は現在、風車の建て替え工事が進行中で、2026年4月からの運転開始を目指す。風車増設の計画もあり、「2050年ゼロカーボン達成」を目指す釜石市にとっても追い風になることが期待される。
 
 開所式で同社常務執行役員、国内電源開発ユニット長の伊藤健さんは「新しい事務所、発電所が皆さまの身近な存在となり、岩手、日本の持続可能なエネルギー推進に寄与するよう努力していく。地元の信頼に応えるべく、地域創生にも力を入れていきたい」とあいさつ。来賓の小野共釜石市長は「地域脱炭素に向けた取り組みがさらに加速することを願う。当市の再生可能エネルギー事業導入にもアドバイスをいただくなど、発電事業にとどまらない地域貢献に感謝する」と述べた。
 
開所式ではユーラスエナジーホールディングスの伊藤健常務執行役員(左下)があいさつ

開所式ではユーラスエナジーホールディングスの伊藤健常務執行役員(左下)があいさつ

 
 設備の保守・点検、事故対応などに当たる新管理棟は風車の更新、拡張計画に伴い移転整備。鉄骨造り2階建てで、延べ床面積約523平方メートル。倉庫棟(同平屋建て、同約264平方メートル)も併設した。県道から約3キロ、和山高原登り口付近の通称・瀞渡(とろわたり)にある既存事務所周辺には雪上車車庫も新設した。今後、事務所機能を移転させ、5月からの供用開始を予定する。
 
橋野町荻の洞の県道釜石遠野線沿いに新設された管理棟(右奥が倉庫棟)

橋野町荻の洞の県道釜石遠野線沿いに新設された管理棟(右奥が倉庫棟)

 
開所式後、地域住民らが管理棟内を見学した

開所式後、地域住民らが管理棟内を見学した

 
ユーラスエナジーの社員らが各部屋の役割などを説明。この日は会議室を使って橋野町振興協議会の総会も開かれた(写真左下)

ユーラスエナジーの社員らが各部屋の役割などを説明。この日は会議室を使って橋野町振興協議会の総会も開かれた(写真左下)

 
 同ウインドファームは、1998年の県の風況調査で釜石市の和山高原一帯に発電に適した一定の風エネルギーがあることが判明し、市が地権者と協議し事業化への取り組みを開始。公募で選ばれたユーラス社が事業開発を行い、和山牧場、貞任山口・琴畑牧場(遠野市)、新山・白見牧場(大槌町)にわたる丘陵地帯に43基の風車(総出力4万2900キロワット)を建設。東北電力に売電する方式で、2004年12月から運転してきた。
 
 運転開始から約20年となり高経年化が進んだことで、23年3月に営業運転を終了。設備の全面的な更新(建て替え)を行うことになった。既存の43基を撤去し、国内最大級となる1基あたり出力4200キロワットの風車を11基建設。ローター(羽根部分)の直径は以前の約1.9倍の117メートル、風車の高さは約1.4倍の142メートルとなる。総出力は以前と同じ4万2900キロワット。これは一般家庭約3万1000世帯相当分の電力供給量となり、年間約4万4000トンのCO2削減効果が見込まれる(同社試算)。既存風車の撤去は完了し、現在、新設風車の基礎工事などが進められている。更新風車の営業運転開始は26年4月を予定する。
 
 同社は合わせて事業拡張も計画する。3市町の高原地帯に風車25基の増設を検討していて、更新分と合わせると総出力14万1500キロワット(一般家庭約10万世帯相当分)の事業規模となる見込み。一帯は国の天然記念物イヌワシの生息地であることから、環境保全措置として釜石市の楢ノ木平牧場に代替餌場の整備を進めている。
 
 地権者の一般社団法人栗橋地域振興社(旧栗橋牧野農業協同組合)の菊池録郎代表理事会長は「ユーラス社の事業拡大は、牧場の有効活用、地域活性化につながるものと期待している。管理棟が町の中心部に移り、住民との距離も一層近くなった。新たな拠点の完成、発電事業の発展は今年70周年を迎える振興社にとってもうれしいこと」と話す。
 
新管理棟開所記念の餅まきも。子どもから大人まで幅広い世代が楽しんだ

新管理棟開所記念の餅まきも。子どもから大人まで幅広い世代が楽しんだ

 
当たり券が入った餅を拾った人には菓子や食品をプレゼント(写真右

当たり券が入った餅を拾った人には菓子や食品をプレゼント(写真右)

 
 なお、本年中は新設風車の設置工事のため、周辺道路は大型車両の通行があることから、一般車の理解と協力を呼び掛ける。

czero01

開校!釜石初のタレント養成所「C-Zeroアカデミー」 1期生23人、夢への一歩踏み出す

釜石から夢への一歩を踏み出した「C-Zeroアカデミー」第1期生

釜石から夢への一歩を踏み出した「C-Zeroアカデミー」第1期生

 
 エンターテインメントでまちを盛り上げよう―。釜石市初のタレント養成所「C-Zero(シーゼロ)アカデミー」が開校した。20日に入校式を開催。演技やダンスなど芸能活動に生かせる知識や技能を学ぶ基礎科(1年)に1期生23人を迎えた。「演劇人に」「音楽のプロデュースをしたい」「憧れに挑戦」など、思い描く未来は人それぞれ。個々の希望に寄り添った多彩なカリキュラムを提供し、夢の実現を後押しする。
 
 養成所は、同市の芸能事務所「FUKUプロモーション」代表の菊池由美子さん(57)が芸能の世界を夢見る人たちの応援に加え、“地方だからできる”芸能活動の創出やエンタメによる地域活性化、若者が住みたくなるまちづくりなどを目指して立ち上げた。思いに賛同する地元の企業や劇団代表者、演出家らと実行委員会を組織して運営する。
 
 30年以上、芸能界のさまざまな仕事を経験してきた菊池さんが校長に就任。実行委メンバー、民謡やダンスの指導者らに講師になってもらい、それぞれで培ってきた育成ノウハウを生かしたレッスンを提供する。基礎科修了者の次なるステップとして研究科も用意。さまざまなことに前向きにチャレンジできる環境を整え、生徒一人一人と向かい合いながら個性、魅力を伸ばしていく。
 
釜石初のタレント養成所に入校した第1期生、講師陣ら

釜石初のタレント養成所に入校した第1期生、講師陣ら

 
 入校式は大町の釜石PITで行われ、約60人が出席。校長としてあいさつした菊池さんは「さあ、いよいよ始まりますよ。1年後、どんな自分になっていたいですか」と問いかけた。プロとして芸能界入りを目指すだけでなく、「自分の殻を破りたい」「人生を楽しみたい」など年齢も社会経験も異なる人が集まっているとし、「目標や夢は一人一人違うから、人と比べる必要はありません。戦う相手は自分。それぞれのペースで焦らず前に進みましょう」と助言。全力でサポートすると強調し、「ここ釜石から、夢の扉を一緒に開いていきましょう」と呼びかけに熱を込めた。
 
アカデミー校長の菊池由美子さん(左の写真)らの激励に1期生が耳を傾ける

アカデミー校長の菊池由美子さん(左の写真)らの激励に1期生が耳を傾ける

 
 実行委の坂本由加さん(三陸ブロードネット代表取締役)が「やってみたいという気持ち、挑戦に遅すぎることはない。新たなスタートは皆さんの人生を豊かにすると信じる。いつか一緒に仕事ができる日が楽しみ」と激励。演技部門の講師を務める小笠原景子さん(劇団もしょこむ主宰、脚本・演出家)が「アカデミーに入ることで本当に必要なこと、得られる情報の質は変わる。進む道を自分で選択する力をつけてもらえるようサポートする。きょう踏み出した一歩を自信に、どんどん挑戦して」と促した。
 
俳優、声優、アイドル…夢実現へ期待を膨らませる1期生

俳優、声優、アイドル…夢実現へ期待を膨らませる1期生

 
 1期生は、7~76歳と幅広い。地元釜石を中心に、岩手県内8市町から集まった。演劇専攻の大学進学やエンタメ業界での活躍を目指す釜石高3年の森美惠さんは「歌って演技もできる俳優に。さまざまなレッスンを通して自分の表現の幅を広げたり、コミュニケーション能力や人間性を高めるような1年にしていきたい」と意欲を見せる。
 
「囲み取材」体験で夢や目標を話す1期生、見守る菊池さん

「囲み取材」体験で夢や目標を話す1期生、見守る菊池さん

 
 「首都圏などに行かないと経験はできない」と思う人が多い、タレント養成所が地元にできたことを喜ぶ声は共通。自営業(建設関係)の行森勇人さん(30)は県内での音楽プロデュース活動を志しており、「自分が経験し、学びを生かした活動をしたい。岩手だからこそ作っていけるものがあると思う。声の逸材を見つけたい」と挑む。
 
 「やらないと後悔する」と扉をたたいたのは、紫波町のパート漆田真理さん(56)。演劇、声を使った仕事に興味があったものの、やらずに半世紀が経過。「この年だからできることがある」と挑戦を決めた。すると、入校前にCM出演のオファーが舞い込み、撮影を経験。「無駄にせず頑張りたい」。これから先の学びの刺激になったよう。レッスンには高速道路の釜石自動車道で約1時間半かけて通う。「何かあれば皆さんも釜石から盛岡に出かけていたと思うので、逆もありかなと」。明るい笑顔を見せた。
 
 式の後には、講師陣が指導する団体による民謡・民舞、ダンスのパフォーマンスが披露された。菊池さんは日本舞踊「藤間流」の名取でもあり、藤間宣福として長唄「越後獅子」を紹介。1期生は真剣な表情で見つめ、レッスンのイメージを膨らませた。
 
軽快な踊りで日本舞踊の魅力や楽しさを伝える菊池さん

軽快な踊りで日本舞踊の魅力や楽しさを伝える菊池さん

 
ステージ上で繰り広げられる演舞にじっと見入る1期生ら

ステージ上で繰り広げられる演舞にじっと見入る1期生ら

 
 レッスン開始は24日から。俳優や声優、アイドルなどを目指す人が多く、ボイストレーニングにも力を入れる。アカデミーの構想を2年間あたためた菊池さんも夢を一つかなえた。感慨に浸りつつ、「大事なのはこれから」と気を引き締める。実行委メンバーや協力・協賛企業の力を借りながら、生徒一人一人の背中を押し、熱いハートで引っ張っていく。

hamachidori01

初のTETTO開催 浜千鳥のすべてを楽しむ会 ファン100人25銘柄味わい尽くす

奥村康太郎杜氏(右)から各銘柄の特徴などを聞き、酒の試飲を楽しむ参加者

奥村康太郎杜氏(右)から各銘柄の特徴などを聞き、酒の試飲を楽しむ参加者

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は18日、浜千鳥のすべてを楽しむ会を大町の市民ホールTETTOで開いた。春恒例の催しは今年で33回目。市内外から約100人が参加し、今季醸造の酒など全25銘柄を飲み比べながら、その味わいを堪能した。昨年12月、日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことで、その価値にも注目が集まる日本酒。同社はさらなる消費拡大、認知度向上に期待を寄せる。
 
 この催しは1989年にスタート。当時、あまり認知されていなかった同社醸造の酒の種類(純米酒、本醸造、純米吟醸…など)を広く知ってもらおうと企画された。以来、冬から春にかけての酒造りを締めくくる催しとして多くの浜千鳥ファンに親しまれている。開会にあたり新里社長は、2003年から始まった大槌町での酒米生産を機に、より地域資源にこだわった酒造りが進んでいることを明かし、「地酒メーカーとして歩み続ける当社の特徴ある酒を楽しんでほしい」と呼び掛けた。
 
TETTOホールBを初めて会場にした「浜千鳥のすべてを楽しむ会」

TETTOホールBを初めて会場にした「浜千鳥のすべてを楽しむ会」

 
参加者全員で乾杯! おいしい酒に笑顔がこぼれる

参加者全員で乾杯! おいしい酒に笑顔がこぼれる

 
 全員で乾杯した後は、同社の全銘柄を味わえるパーティー。各テーブルには大槌町源水地区の湧水で仕込んだ限定醸造の「源水純米吟醸」、釜石鉱山の仙人秘水で仕込んだ「仙人郷純米酒」などが並んだほか、試飲コーナーには吟醸酒、純米酒、米焼酎、梅酒とさまざまなラインナップがずらり。中には1991年、2001年醸造の30年、20年ものの古酒もあった。参加者は同社社員らの話を聞きながら、気になった銘柄を飲み比べ。味や香りの違いを楽しみ、日本酒への理解を深めた。
 
おつまみは料亭幸楼の仕出し料理(写真左上)。試飲コーナーには古酒(同右上)を含む浜千鳥のさまざまな酒が並んだ。

おつまみは料亭幸楼の仕出し料理(写真左上)。試飲コーナーには古酒(同右上)を含む浜千鳥のさまざまな酒が並んだ。

 
 5種の酒を判別する利き酒コーナーも人気。多くの人が挑戦した。初チャレンジという山田町の三田地千絋さん(32)は「飲めば飲むほど分からなくなった。甘口と辛口ぐらいは分かるが、どれとどれが同じかは…??」と笑い、結果発表を楽しみに。華やかな香りとすっきりとした味わいが特徴とされる吟醸酒が好みといい、「移住してから沿岸の蔵元の酒をよく飲むようになった。浜千鳥さんの梅酒も大好き」と地域が育む味をお試し中。杜氏の多い本県の酒造り文化にも興味が湧いているという。
 
お楽しみの利き酒コーナー。成績優秀者には認定書と賞品のプレゼントが…

お楽しみの利き酒コーナー。成績優秀者には認定書と賞品のプレゼントが…

 
 会には東京など県外からの参加者の姿もあった。秋田県から夫婦で足を運んだのは佐藤一徳さん(60)。地元店舗のオープン記念でもらった「仙人郷」を飲んだのがきっかけで、浜千鳥の蔵元見学や酒造り体験塾参加を重ね、今回、念願の“楽しむ会”に初参加。「定年で時間的余裕ができたこともあり、やっと来られた。今まで飲んだことがない味もあってとても楽しめた。地元の仕込み水と杜氏さんの技術が相まって非常に魅力的な酒に仕上がっている印象。これからも機会あるごとに足を運びたい」と顔をほころばせた。
 
 会では、奥村康太郎杜氏(44)がユネスコの無形文化遺産に登録された日本の「伝統的酒造り」について、その歴史や技術、評価されたポイントなどを解説。こうじ菌を使った酒造りは日本の気候風土に適し、その技術は清酒のみならず焼酎や泡盛などにも応用され、祭礼や年中行事に欠かせない文化として発展を遂げてきたことを紹介した。新里社長は同登録を「日本酒を見直すきっかけになったと思う」と歓迎。本県沿岸に足を延ばす訪日外国人観光客の増加にも期待し、「酒蔵見学などで日本酒を正しく理解してもらうのはもちろん、ぜひ、地元食材を使った料理と一緒に味わってほしい」と望んだ。
 
浜千鳥の新里進社長(中)と「はい、ポーズ!」

浜千鳥の新里進社長(中)と「はい、ポーズ!」

 
客の好みに合う酒を社員らが提案(写真左)。日本酒にはやっぱり和食。飲んで食べて参加者同士の交流も(同右)

客の好みに合う酒を社員らが提案(写真左)。日本酒にはやっぱり和食。飲んで食べて参加者同士の交流も(同右)

 
 この催しをTETTOで開くのは初めて。市中心部で100人規模の宴会などを開催できる場所がなくなったため、同ホールに相談。ホールBを会場とし、仕出し料理を持ち込んでのパーティーが実現した。新里社長は「当社の場合はこれまでも従業員が飲料提供のサービスをしてきたこともあり、違和感なく運営できた。会場内にはあらかじめ、ごみ箱を設置。皆さんにもご協力いただく形にした」とし、同所利用の新たな可能性を示した。

sw01

釜石SW 首位愛知に23-40 後半反撃もホーム連勝ならず/SMC 2年目の出展ブース大盛況

リーグワン2部第11節 日本製鉄釜石シーウェイブス-豊田自動織機シャトルズ愛知=12日、釜石鵜住居復興スタジアム

リーグワン2部第11節 日本製鉄釜石シーウェイブス-豊田自動織機シャトルズ愛知=12日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
 NTTジャパンラグビーリーグワン2部の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)は12日、釜石鵜住居復興スタジアムでリーグ首位の豊田自動織機シャトルズ愛知と対戦。23-40(前半6-26)で敗れた。第8節から4連敗となった釜石は2勝9敗、勝ち点11で最下位。今季リーグ戦は残り3試合。次節は20日、初のリーグ戦会場となる北上市のウエスタンデジタルスタジアムきたかみで、6位の清水建設江東ブルーシャークスと対戦する。
 
 前半は釜石がPGで先制。SOミッチェル・ハントが安定のキックで8分、20分と得点を重ねた。愛知の1トライで中盤までは6-7。その後、相手の速い攻撃でディフェンスの穴を突かれた釜石は、33分までに3連続トライを許してしまう。前半の残り時間が少なくなる中、釜石も幾度となくゴール前に迫るも、ラインアウトのミスなどでトライまで持ち込むことができず、6-26、20点差で折り返した。
 
 後半8分、愛知の追加トライでさらに引き離された釜石。流れを変えたのは20分すぎ。敵陣中盤エリアでのスクラムを起点に、SH村上陽平がタップキックで素早く展開。後半出場のナンバー8ミューラー・ウェイス、SOハントがゴール前に運び、最後はフランカー河野良太がチーム初トライ。27分にはWTB阿部竜二がハーフウェイライン付近から蹴り上げたボールを自ら走り込んでキャッチ。サイドでフォローしていたFB落和史につなぎ、落が独走トライ。連続得点で16-33とした。33分にはロック、ハミッシュ・ダルゼルがトライを決め追い上げたが、点差を埋めることはできず、23-40で敗れた。
 
後半27分、FB落和史がトライ(写真左)。パスを出したWTB阿部竜二、SH村上陽平主将が駆け寄り祝福(同右)

後半27分、FB落和史がトライ(写真左)。パスを出したWTB阿部竜二、SH村上陽平主将が駆け寄り祝福(同右)

 
後半33分、ロック、ハミッシュ・ダルゼルがトライ。ゴールも決まって23-40

後半33分、ロック、ハミッシュ・ダルゼルがトライ。ゴールも決まって23-40

 
 試合後、須田康夫ヘッドコーチは前半の連続失点について、「自分たちの小さなほころびを得点につなげられてしまった。タックルの次のフェーズでできた穴を狙われた」などと分析。「得点を取り切る場面でしっかり取り切れていない、ボールを奪われているのが課題」とし、セットピース(ラインアウト、スクラム)を含めた攻撃面の改善を見据えた。村上陽平主将も「前半は相手のアタックにうまく順応できず、簡単に得点されてしまった。後半、修正できたような相手が嫌がるディフェンスをスタート時点からできなければ勝てない」と反省。「残り3戦、絶対に落とせない。高いワークレート(仕事量)で一人一人が働き続けなければいけないことを自覚し、いかに結果にこだわってやれるか。リーダーとして、しっかりチームを引っ張っていきたい」と意を強くした。
 
試合後、選手は応援への感謝を伝えにバックスタンド席へ…。観客が拍手で迎える

試合後、選手は応援への感謝を伝えにバックスタンド席へ…。観客が拍手で迎える

 
会場入り口では大船渡市山林火災の義援金を呼び掛ける募金活動が行われた

会場入り口では大船渡市山林火災の義援金を呼び掛ける募金活動が行われた

 

SMC 2年目のマッチスポンサーに 8月完成予定の遠野サプライヤーパークをPR

 
sw01

マッチスポンサーのSMCが開いたブース。外には順番待ちの長い列ができた

 
 釜石鵜住居復興スタジアムでの今季リーグ最終戦となった12日の試合は、釜石SWのチームスポンサーSMC(髙田芳樹代表取締役社長、本社:東京都中央区)がマッチスポンサーとなり、自社出展ブースなどで試合会場ににぎわいをもたらした。昨年3月に続く2年目の企画。今年は同社遠野工場の隣接地に建設中のサプライヤーパークを紹介するブースも設けられ、大勢の来場者が地元産業に理解を深めた。
 
 SMCは空気圧制御機器製造で世界首位の企業で、国内6カ所の生産拠点のほか、海外にも工場を持つ。本県には釜石、遠野両市に工場があり、釜石市では5工場が稼働。外国人労働者も多数、就労する。現在、同社に各種部品を供給する主要企業の集積地「遠野サプライヤーパーク」を建設中で、8月に完成予定。17社が入る見込みで、年内の本格稼働を目指す。
 
 スタジアムのイベントスペースに2棟の仮設ハウスを設置。サプライヤーの紹介ブースには15社が出展した。パンフレットや映像、製品サンプルなどで事業内容をPRした。見学した釜石市の松田卓也さん(49)は「ほとんどが聞いたことのない会社で興味深い。全国規模の会社がこの地に参入するのはいいこと。求人も増え、地元雇用拡大にもつながりそう」と期待。
 
サプライヤーパークに入る企業も出展。記念品なども配り来場者と交流した

サプライヤーパークに入る企業も出展。記念品なども配り来場者と交流した

 
各社の担当者が事業内容などを説明。来場者はものづくりの技術や製品に興味津々

各社の担当者が事業内容などを説明。来場者はものづくりの技術や製品に興味津々

 
子どもたちが楽しめる体験も(写真右上)。入り口には遠野サプライヤーパークの完成イメージ模型が設置された(同左下)

子どもたちが楽しめる体験も(写真右上)。入り口には遠野サプライヤーパークの完成イメージ模型が設置された(同左下)

 
 サプライヤーの一社、精密金属部品の切削加工を行うSANKA(神子島岩男代表取締役、本社:新潟県三条市)は、SMC遠野第2工場内で2年前から先行操業。この日はアルミ製のミニけん玉を組み立てる体験で子どもたちを喜ばせた。来場者の応対にあたった同社郡山工場の大内清美次長は「新たな施設では機械設備を増設し、事業規模を拡大していく予定。SMCさんと一緒に私たちの会社も成長できれば」と話した。
 
 SMCのブースは今年も大人気。工場生産ラインの自動化などあらゆる産業に使われる空気圧制御機器を応用した各種体験コーナーが用意され、幅広い年代が楽しんだ。会場内出店のキッチンカー飲食券が当たるクレーンゲーム機、的が動く輪投げ、吸着装置で菓子をゲットする縁日コーナーなど、同社の技術を駆使したアトラクションに長蛇の列ができた。模型で同社の事業や技術を紹介するコーナーも。今や同市誘致企業の代表格としてその名を知られる工場に、来場者も注目のまなざしを向けた。
 
SMCは空気圧機器を応用したアトラクションで楽しませた。記念ロゴ入りの限定エコバッグもプレゼント(写真左下)

SMCは空気圧機器を応用したアトラクションで楽しませた。記念ロゴ入りの限定エコバッグもプレゼント(写真左下)

 
会場内は終始、大にぎわい。社員らも応対に大忙しだった

会場内は終始、大にぎわい。社員らも応対に大忙しだった

 
 昨年は降雪の影響で試合が中止になったSMCプレゼンツマッチ。今年は大勢の来場者で同社ブースも終始混雑が続いた。久保至釜石工場長は「無料配布の綿あめの材料がなくなり追加発注した」と笑い、予想以上の盛況ぶりに喜びの表情。サプライヤーパークの完成で納期短縮や製品の安定供給が図られることに期待感を示し、「地元のより近くで部品生産してもらえるのは大きなメリット。ほとんどが関東圏などとの2拠点生産になるので、災害発生時の相互供給も可能。生産能力を高め、釜石のものづくりの工場としてさらに貢献していければ」と望んだ。

suisanacademy01

海を知る「もっと」 いわて水産アカデミー入講式 7期生、浜の盛り上げへ決意

「浜の担い手に」と意気込むいわて水産アカデミー7期生

「浜の担い手に」と意気込むいわて水産アカデミー7期生

 
 漁業の担い手を育成する「いわて水産アカデミー」(同アカデミー運営協議会主催)は10日、7期生10人を迎えて開講した。将来、岩手県の水産業を支える力になるため、釜石地域を含む三陸の海で実践研修を重ねながら知識や技術の習得に励む。
 
 釜石市平田の県水産技術センターで入講式が行われた。7期生は10~30代、すでに漁業に携わる人もいれば、県内外からのU・I・Jターン者もいて、経歴はさまざま。同協議会長を務める佐藤法之県農林水産部長が「それぞれの夢や目標の実現に向け、仲間や地域住民とのつながりを大切にし、研さんを」と激励した。
 
いわて水産アカデミーの入講式に臨む7期生

いわて水産アカデミーの入講式に臨む7期生

 
入講した10人を激励する県農林水産部の佐藤法之部長

入講した10人を激励する県農林水産部の佐藤法之部長

 
 研修生を代表し、釜石東部漁協に所属しワカメやコンブなどの養殖業に携わる久保翼さんが「同じ思いを持つ仲間と互いに刺激し合い、共に成長し、地域に認められる漁業者になるため精いっぱい努力する。近い将来、漁業の担い手として地域に貢献したい」と決意を述べた。
 
研修に臨む決意を伝える久保翼さん(手前)

研修に臨む決意を伝える久保翼さん(手前)

 
 釜石・唐丹町で養殖や遊漁船事業などを手がける佐々木優貴さん(29)は地域外の技術も学ぼうと入講。研修許可証を手に、「どんな学びがあるか、楽しみ。近年の海洋環境の変化で漁業は厳しさもあるが、どう対策するか学び、考えていけたら。海のことを知り、地域を盛り上げていきたい」と意気込む。
 
佐々木優貴さんは身を引き締め、研修許可証を受け取った

佐々木優貴さんは身を引き締め、研修許可証を受け取った

 
 研修生は1年間、基礎から漁業経営に必要となる高度知識までを学ぶ。釜石市、大船渡市、陸前高田市の漁業者の下でそれぞれ定置網漁や養殖業などを実践。ICT(情報通信技術)の活用や6次産業化などへの理解も深めながら、小型船舶操縦士などの免許取得も目指す。研修期間中に地域の行事やイベントなどにも参加して住民と交流し、修了後に地域に溶け込んでいけるような取り組みも予定する。
 
前を向く研修生。夢や目標の実現へ気持ちを新たにする

前を向く研修生。夢や目標の実現へ気持ちを新たにする

 
 同協議会は、県内の漁業関係団体や市町村単位で設立された新規漁業就業者育成協議会、県で構成する。担い手の育成と地域への定着を図るべく、2019年にアカデミーを設置し、これまでに46人が修了。多くが県内各地の実践の場に飛び立ち、活躍している。

co2zero01

2050年ゼロカーボン実現へ 「脱炭素先行地域」認定の釜石市 目標達成へ取り組み加速

co2zero01
 
 昨年9月、環境省の「脱炭素先行地域」に選定された釜石市は、2025年度から再生可能エネルギー導入や脱炭素をテーマにした企業研修受け入れへの取り組みを加速化させる。同市が掲げる50年度の「温室効果ガス排出量実質ゼロ(ゼロカーボンシティ)」の目標達成へ、国の財政支援を受けながら官民一体となって取り組む。市民の意識、行動変容も促しながら、地球温暖化防止策を強力に推し進める。
 
 猛暑や豪雨など異常気象発生の要因として考えられる地球温暖化。その対策として世界的に求められている「温室効果ガス排出量削減」に向け、釜石市は2021年10月、脱炭素社会を目指す「ゼロカーボンシティ」を表明。22年1月、同推進室を設置した。23年10月、温室効果ガス排出量を30年度に55%削減(13年度比)、50年度に排出量実質ゼロを目標とする「第二次市環境基本計画」を策定。24年3月には、同市の再生可能エネルギー(陸上風力、太陽光、水力、バイオマス)の活用をさらに進める「市再生可能エネルギービジョン」を示し、再エネ発電、熱利用の導入量を30年度までに約3倍(22年3月比)とする目標を掲げた。
 
釜石市再生可能エネルギービジョン(2024年3月策定)で示された将来像

釜石市再生可能エネルギービジョン(2024年3月策定)で示された将来像

 
 これら目標達成に拍車をかけるのが、環境省による「脱炭素先行地域」の選定。地域特性を生かした脱炭素の取り組みを国が支援するもので、釜石市は第5回の公募で、産学官29の共同提案者と共に選ばれた。同市の計画は、太陽光発電の導入拡大と脱炭素をテーマにした企業研修の受け入れを柱に、温室効果ガスの実質削減、内外の企業や一般市民の意識、行動変容につなげるもの。中心市街地、鵜住居の2エリアを対象に事業を展開する。
 
 中心市街地への再エネ発電による電力供給地として、片岸公園隣接地2.5ヘクタールに「地域共生型太陽光発電」施設を整備。公園周辺の自然環境と共生するため、敷地外周への樹木の植栽、昆虫や野鳥などの生息を助けるエコスタック、バードバスの設置を検討する。年間発電量は約330万キロワットアワー(kWh)。一般家庭約790世帯分を見込む。事業収益の一部は生物多様性保全活動に還元。27年度からの運用開始を目指す。「小規模分散型太陽光発電」として、中心市街地の施設や住宅などへの設備導入も進める。
 
脱炭素先行地域の事業対象は釜石市内2エリア

脱炭素先行地域の事業対象は釜石市内2エリア

 
「地域共生型太陽光発電」が行われる片岸公園周辺。自然環境に配慮した策を検討

「地域共生型太陽光発電」が行われる片岸公園周辺。自然環境に配慮した策を検討

 
 釜石ならではの取り組みの一つが、鉄鋼スラグを活用した藻場再生。ブルーカーボンクレジット(海洋植物の二酸化炭素吸収量を数値化し取引する仕組み)の創出に寄与するほか、ウニ食害対策モデルの可能性も探る。日本製鉄が唐丹町、釜石東部両漁協の協力を得て、24年度は約20トンを設置した。
 
 木質バイオマスの熱利用策として、まきストーブ12台を市内の施設などに導入。みちのく潮風トレイル、世界遺産「橋野鉄鉱山」観光などへの活用を想定し、レンタルEV(電動)バイク10台も導入予定。電気は地域の再エネを活用する。
 
 市内の脱炭素コンテンツをプログラムに取り入れた新たな「釜石版サステナブルツーリズム」(企業研修)を展開するため、研修を受け入れるかまいしDMCが、拠点となる企業向けワーケーション施設を浜町に整備中。エコマテリアル(環境に配慮した材料、技術)を採用し、太陽光発電・蓄電池、まきストーブの導入などで環境配慮のショーケースとしての役割を担う。
 
企業向けワーケーション施設は、かまいしDMCが企業版ふるさと納税などを活用して整備。地域脱炭素の活動拠点となる

企業向けワーケーション施設は、かまいしDMCが企業版ふるさと納税などを活用して整備。地域脱炭素の活動拠点となる

 
 市はこの計画で、電力消費に伴う二酸化炭素(CO2)排出量を約7万トン削減。再エネの地産地消でエネルギー代金の流出抑制、地域内の経済循環を促すとともに、脱炭素・環境を軸としたサステナブルツーリズムで交流、活動人口の拡大を図りたい考え。2月26日には、市、共同提案者、協力事業者らで組織する「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」を設立(正会員30、協力会員9)。規約の承認、役員の選任後、事業推進を図るための15のワーキンググループを設置した。
 
2月26日に開かれた「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」設立総会

2月26日に開かれた「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」設立総会

 
3月21日の釜石市環境審議会では脱炭素先行地域の取り組みが説明された

3月21日の釜石市環境審議会では脱炭素先行地域の取り組みが説明された

 
 25年度は地域共生型、小規模分散型両太陽光発電のためのSPC(特別目的会社)2社の設立に向けた協議、分散型発電の制度設計(民間商業施設、水産関連施設など)、住民や事業者の相談窓口、人材育成、普及啓発セミナー開催などを担う「釜石市デコ活支援センター」の設立を予定する(デコ活=脱炭素とエコを組み合わせた運動の愛称)。
 
 市国際港湾産業課ゼロカーボンシティ推進室の神山篤室長は「先行地域に選ばれたことで国の財政支援が受けられ、地域のCO2排出削減への取り組みを加速化できる。目標達成に向け、事業を着実に進めていきたい」と今後を見据える。
 

企業、団体間連携で広がる脱炭素、エコアクション ラグビー釜石SWホーム戦会場では…

 
co2zero01

日本製鉄釜石SWのホーム戦ではリサイクル可能な「1DAYスチールカップ」が来場者に配られた=8日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
 今月8日、釜石鵜住居復興スタジアムで行われたラグビーリーグワン2部の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)とレッドハリケーンズ大阪の試合。約4400人が訪れた会場内で来場者に無料で配られたのは、リサイクル可能なスチール素材の飲料用カップ。リーグワンプリンシパルパートナー、三菱UFJフィナンシャル・グループの三菱UFJ銀行と、釜石SWメインスポンサーの日本製鉄(市脱炭素先行地域推進協会員)、総合容器メーカーの大和製罐の3社が連携したエコプロジェクトとして実施された。
 
ベアレン醸造所(盛岡市)はスチールカップ利用で樽生ビール内容量4割以上増量のサービスを実施

ベアレン醸造所(盛岡市)はスチールカップ利用で樽生ビール内容量4割以上増量のサービスを実施

 
 釜石SWのチームカラー赤を基調とした限定デザインで、会場内のフードスペース対象店舗で利用すると、飲み物の割引や増量などのサービスが受けられる特典もあった。容器・包装の回収、リサイクルを行う青南商事(釜石SWパートナー)の協力で、使用済みカップの回収ボックスも設置された。ごみ減量、再資源化は地球温暖化対策への第一歩。多くの人たちが環境に配慮した行動への意識を高めた。
 
バイオディーゼル燃料発電で映像を映し出した「大型ビジョンカー」=8日

バイオディーゼル燃料発電で映像を映し出した「大型ビジョンカー」=8日

 
 観光地域づくり法人かまいしDMC(市脱炭素先行地域推進協会員)はこの日、試合をリアルタイムで映し出す大型ビジョンカーの電力供給に協力。使用済みの食用油から作られたバイオディーゼル燃料による発電で、CO2排出量削減に貢献した。
 
 同社は管理・運営業務を行う同市鵜住居町の根浜シーサイド(レストハウス)で、地域から出る廃食油を回収している。集められた油は、再生可能エネルギーを生かした循環型地域づくりに取り組む橋野町の一般社団法人ユナイテッドグリーン(山田周生代表理事)が燃料に精製。市内のスポーツ大会やイベント、イルミネーション点灯などで使う発電機の燃料に活用されてきた。
 
 SWホーム戦での同発電は約2年前から試験的に実施。今回が本格スタートとなった。大型ビジョンカーにつないだ発電機には、同燃料約20リットルを給油。前日のリハーサルから試合終了までの電力供給を担った。この日は、会場内で出店した9店舗から約100リットルの廃食油も回収した。次回のホーム戦の発電で活用される。
 
試合前日、廃食油を精製した燃料を発電機に給油するかまいしDMCのスタッフ

試合前日、廃食油を精製した燃料を発電機に給油するかまいしDMCのスタッフ

 
営業を終えた出店者から使用済み食用油を回収。9店舗が協力した(写真提供:かまいしDMC)

営業を終えた出店者から使用済み食用油を回収。9店舗が協力した(写真提供:かまいしDMC)

 
来場者や出店者にチラシを配布して取り組みをPR(写真提供:かまいしDMC)

来場者や出店者にチラシを配布して取り組みをPR(写真提供:かまいしDMC)

 
 バイオディーゼル燃料は植物由来の油が原料。植物は生育過程で光合成によってCO2を吸収。同燃料の使用時に排出されるCO2量は植物の吸収量と同等とみなされ、地球上のCO2量はプラスマイナスゼロ(大気中のCO2を増やさない)という「カーボン・ニュートラル」の考え方から、地球温暖化防止への効果が期待される。化石燃料の代替エネルギー、資源循環型社会構築の要素としても注目される。
 
 来場者には同発電の取り組みを知らせるチラシも配布した。かまいしDMC地域創生事業部の佐藤奏子さんは「バイオディーゼル燃料は軽油の代替品として使用可能。市が目指す2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロにも貢献できると考える。廃油が資源になり、燃料の地産地消につながる取り組みを今後も継続していきたい」と話す。

tetsurekishi01

釜石で洋式高炉操業成功 大島高任の知識はどこから? 鉄の歴史館・小野寺英輝名誉館長が講演

講演した鉄の歴史館名誉館長の小野寺英輝さん(岩手大理工学部准教授)

講演した鉄の歴史館名誉館長の小野寺英輝さん(岩手大理工学部准教授)

 
 釜石市立鉄の歴史館の名誉館長を務める小野寺英輝さん(岩手大理工学部准教授)の講演会が15日、同市大平町の同館で開かれた。2019年の就任以降、年1回実施する同館主催事業。今回は「教育面から見た大島高任」と題し、釜石で鉄鉱石が原料の洋式高炉による鉄づくりに成功した大島の学びの軌跡にスポットを当てた。市民ら22人が聴講した。
 
 1857(安政4)年、盛岡藩甲子村大橋(現釜石市甲子町同)に洋式高炉を築造し、日本初の鉄鉱石を原料とした連続出銑に成功した大島高任(1826-1901)。後に“近代製鉄の父”と称される大島は、全国の主要鉱山の開発も手掛け、日本鉱業界の第一人者としても知られる。その活躍の裏にあるのが、各地に出向いて得た豊富な知識。小野寺さんはその遊学の歩みについて解説した。
 
10代から学びを深め、日本鉱業界に数々の足跡を残した大島高任

10代から学びを深め、日本鉱業界に数々の足跡を残した大島高任

 
 盛岡生まれの大島は藩校「明義堂」で学んだ後、医学修行のため17歳で江戸に留学。オランダ医学やオランダ語、西洋史、兵学、宗教学に精通した箕作阮甫(みつくりげんぽ)に入門、医学は坪井信道にも教わった。一度、盛岡に戻ったが、砲術の習得を命じられ1846年に長崎へ。砲術の大家・高島秋帆の子息浅五郎に学び、発砲の免許皆伝を受けたとされる。3年後、長崎から大坂(大阪)に向かい、緒方洪庵の適塾(西洋医学、オランダ語)で1年ほど学んだ。滞在中、依頼を受け大砲の鋳造を指導。帰藩後、「西洋操銃編」などの冊子を作った。大島唯一の著作物とされる。
 
大島は20代前半に長崎で砲術を学び、免許皆伝を受ける

大島は20代前半に長崎で砲術を学び、免許皆伝を受ける

 
大坂(大阪)から帰藩後、再び江戸へ。伊東玄朴に師事する

大坂(大阪)から帰藩後、再び江戸へ。伊東玄朴に師事する

 
 1852年、西洋砲術研究のため再び江戸へ。入門した伊東玄朴は、オランダ人技師ヒュゲーニンが執筆した大砲鋳造法や高炉技術についての書物を翻訳した一人。小野寺さんは「ヒュゲーニンの著書を翻訳したもののうち、主要な3つ全てに大島が関わっている。本を読むだけでなく、訳した人からも話を聞ける環境にあった」とした。
 
 大島は長崎などで共に学んだ仲間らと水戸藩那珂湊の反射炉建設に従事。1856年、鉄製大砲の鋳造に成功したが、従来の砂鉄原料によるたたら銑では強度に問題があったため、磁鉄鉱を用いる洋式高炉の建設に乗り出した。翌57年、良質な鉄鉱石が産出される釜石・大橋に高炉を築造。国内で初めて連続出銑に成功した。
 
大島はヒュゲーニンの著書を翻訳した「鐵熕鋳鑑(てっこうちゅうかん)」を参考に釜石・大橋の洋式高炉を造ったとされる

大島はヒュゲーニンの著書を翻訳した「鐵熕鋳鑑(てっこうちゅうかん)」を参考に釜石・大橋の洋式高炉を造ったとされる

 
 1862年、江戸幕府が洋書翻訳と洋学研究、教育のために設立した「蕃書調所(ばんしょしらべしょ)」の出役教授となり、新設された製錬学を担当。幕府お雇いの米国人技師パンペリー、ブレークらと蝦夷地(北海道)の炭鉱調査に行き、発破技術も学んだ。時を同じくして、医学と洋学教育を行う私塾「日新堂」を盛岡に設立。藩校・明義堂は武士のみの入校だったが、日新堂は町人も受け入れた。当時の日本の就学率は60~80%(米、仏は30%)。寺子屋は6歳ごろから通え、さらに勉強したい人は私塾に進んだ。大島はパンペリーが箱館(函館)に設立した坑師学校(鉱山技術者養成)にも関わっていたとみられる。
 
 この後も尾去沢、小坂鉱山などの開発に着手。明治に入ると新政府の鉱山権正(鉱山局次長)、大学大助教(筆頭助教授)に任じられ、岩倉使節団に随行。米国や欧州を歴訪し、ドイツのフライベルク鉱山学校も視察した。帰国後の1874年、官営製鉄所の立地調査で釜石を訪れるが、大島の計画案は採用されなかった。後に阿仁銀山や佐渡金山など全国の主要鉱山の開発に尽力し、日本鉱業会の初代会長となった。
 
鉄の歴史館で開かれた名誉館長講演会。来場者は興味深い話に聞き入った

鉄の歴史館で開かれた名誉館長講演会。来場者は興味深い話に聞き入った

 
 小野寺さんによると、大島の若年時の行動が分かるのは自身が書いた精書履歴(履歴書文案)しかないが、履歴には各地の遊学の記述があり、師事した人物と時代から知識獲得の流れが読み取れる。「日本への西洋技術導入は蘭学から。江戸時代の外国語はオランダ語がメインで、多くの蘭書が日本語に翻訳された。大島高任が釜石で高炉を造る時に参考にしたのもオランダのヒュゲーニンの本」と小野寺さん。江戸時代の日本には海外新聞も入ってきていて、翻訳や手彫り印刷などで時間はかかったものの、世界情勢も知ることができた。大島は外国船の入港で海外の製品や技術、情報がもたらされる中で学びを深めていったと考えられる。

ramen01

釜石ラーメン×スタンプ=最高! 3月29日までラリー展開中 楽しみ尽くす旅、やってみた

釜石人のソウルフード「釜石ラーメン」

釜石人のソウルフード「釜石ラーメン」

 
 岩手県釜石市、ご当地の味と言えば…?その一つに挙がるのが「釜石ラーメン」だ。細めの縮れ麺と琥珀色(こはくいろ)の透明感あるスープが特徴の、あっさりとしたしょうゆラーメン。シンプルながらも奥深い味わいで、地元で長く愛されてきた。その味を食べ尽くすスタンプラリーが市内で展開中。食べ歩きを楽しめるうえ、景品というおまけ付きにつられ、記者も挑戦してみた。
 
 スタンプラリーは、映画「釜石ラーメン物語」の公開に合わせ2023年に始めた取り組みで、今回は第2弾。釜石観光物産協会が主催し、期間は1月25日から3月29日までの約2カ月間。市内のラーメン店など対象店(28店舗)でラーメン(釜石ラーメン以外も可)を食べ、台紙に押印をもらう。スタンプ台紙は対象店のほか、市内の観光施設で配布している。
 
 全店制覇の景品は、特製の「釜石ラーメンどんぶり」(先着60人)か「釜石ラーメンれんげ」(同100人)から選ぶ。台紙1枚につき、景品の交換は1回のみ。全店制覇以外にも3店、10店、20店以上達成には地酒や水産加工品などが用意されている。
 
 初参戦の記者は手始めに3店めぐって、オリジナル缶バッジの入手を狙うことに。対象店は市内全域に点在していて、今回は市中心部の大町を歩いた。
 
発祥の店・新華園本店の釜石ラーメン

発祥の店・新華園本店の釜石ラーメン

 
 最初に訪れたのは、その“元祖”ともいえる「新華園本店」。王道の釜石ラーメンを注文した。コシがある極細の縮れ麺、あっさりとしたやさしいしょうゆ味のスープは、どこか懐かしさを感じさせる望郷の味だった。「やっぱり、うまい」
 
 同店は1951年に創業。先代の味を受け継ぐ店主の西条優度(まさのぶ)さん(75)が腕を振るう。「これしかできない。作ったものを喜んでもらえたらいい」。2011年の東日本大震災で厨房(ちゅうぼう)などが傷ついたが、その爪痕を残したまま、その年のうちに再開した。「安否確認などコミュニティーの場にもなっていた」。そんな温かみのある店内の雰囲気は変わらない。
 
「また来るね」の声を励みにする店主の西条優度さん(手前)

「また来るね」の声を励みにする店主の西条優度さん(手前)

 
 コロナ禍以降、商売の厳しさを感じているが、宴会需要を見込んで、中断していた2階部分の開放を思案中。スタンプラリーの実施も歓迎し、「釜石ラーメンと言っても、シバリは緩く、それが面白い。各店舗のこだわり、異なる味わいを楽しんでほしい」と笑う。「全店制覇して、どんぶりをもらったら見せにくるね」という客の再来を楽しみにしている。
 
店名を冠した「あいどるラーメン」

店名を冠した「あいどるラーメン」

 
 次に向かったのは、「らーめん&コーヒー あいどる」。店名はかわいらしいが、意表をついて本格的なラーメンが楽しめる喫茶店だ。厚切りで存在感のあるチャーシュー2枚がのったラーメンが人気だというが、記者は「あいどるラーメン」を注文。ホタテと海老、野菜が入ったあんかけ海鮮スープ(塩味)が細麺にマッチしていた。「おいしい」
 
 店主の金澤重子さん(年齢は秘密)が50年ほど前から切り盛りしている。当初は食堂だったというから、ラーメンがあるのも納得。こちらも震災で被災し、「もう商売は…」と思ったというが、現在、厨房に立つ夫が「やろう」と引っ張り、再開した。
 
外観も店内も、かわいらしい雰囲気が魅力の喫茶店

外観も店内も、かわいらしい雰囲気が魅力の喫茶店

 
 店名の由来を聞くと、「花の名を付けようとしたが却下され、たまたま見かけた花屋からもらった。うちは、やわらかいイメージで平仮名に」とほほ笑む金澤さん。「釜石のラーメンはしょうゆ味でなくとも、あっさり系。細麺だからかな。いろいろ食べ比べて、おいしさを知ってほしい」。店内は昔ながらの喫茶店そのもので、ゆったりと過ごせる空気感も魅力だ。
 
青龍の看板メニュー「味噌チャンポン」

青龍の看板メニュー「味噌チャンポン」

 
 締めとして行ったのは、「中華飯店 青龍」。こちらでは店主おすすめであり、ファンの多い看板メニュー「味噌チャンポン」を味わった。イカ、タコ、豚肉、野菜など具だくさんで、とろみのある卵とじスープが特徴。お好みで特製「辛み」を加えれば、“味変”も楽しめる。この辛みが絶品で、スープも飲み干し完食。「口福」
 
 1981年創業。震災で自宅兼店舗を失ったが、同じ大町内で移転、再出発し、震災前と変わらぬメニューを提供している。味噌チャンポンは店主の池田恭也さん(77)が「店の売りとなるものが1つあればいい」と考案した自慢の味。辛みもしかり。「ピリッとして、おいしさが増す」と作り上げた味を目当てにする人も多いとか。
 
自慢の味を提供し続ける店主の池田恭也さん

自慢の味を提供し続ける店主の池田恭也さん

 
 池田さんを「マスター」と呼びながら、手際よく動く店員の姿も印象に残った。「チャンポンに細麺は意外と思うかもしれないけど、あっさりでいいでしょ。とろみのあるスープと麺もよく絡まる。最後まで飲み切って、エコにもなるし」としっかりPR。気さくな人柄に触れ、心もほんわかあたたまった。
 
 3つのスタンプを集め、景品を交換すべく、釜石観光案内所(鈴子町・シープラザ釜石内、午前9時~午後6時)へ。目当ての缶バッジを手にした。短い味めぐりの旅だったが、「やり切った」という達成感を得た。そして、釜石ラーメンの奥深さを改めて実感。店ごとに味わいが異なり、個性豊かだった。地元の味を知るだけでなく、店主らとの会話を楽しめるのも魅力。今回、記者は出会わなかったが、同じラーメンを求め歩く人との交流もあるらしい。
 
景品と交換。缶バッチは直径約8センチと意外に大きい

景品と交換。缶バッチは直径約8センチと意外に大きい

 
釜石ラーメンスタンプラリーをPRする釜石観光物産協会の職員

釜石ラーメンスタンプラリーをPRする釜石観光物産協会の職員

 
 記者が景品を交換したのは2月10日の昼過ぎ。同協会によると、その時点で記者より先に5人いて、うち3人が全店制覇で市外の人もいるという。仕事で訪れ、いくつか回って記念にする人もいるらしく、あらためて19日に交換者数を問い合わせると、3人増えていた。全制覇は計5人となり、そのうち1人がれんげを選択したとか。ゆるりとしたペースかと感じるも、協会では「特にどんぶりは限りがあるので、お早めに」と呼びかける。
 
 今回のスタンプラリーは観光客が減る冬季の消費活性化が狙い。協会の横木寛裕さん(24)も挑戦中で、こつこつとスタンプを集めている。目指すは全店制覇。「ラーメンを食べながら、あったまってもらえたら。行ったことのない店に足を運ぶきっかけにして新しい発見、お気に入りの味を見つけたり楽しみましょう」と意欲を見せた。
 
 記者は…。食したい店は確かにあるが、財布と相談かな…

kamaenkai2025thum

冬のごちそう祭り!釜宴会キャンペーン(第2弾)を開催します!(申請受付は終了しました)

kamaenkai2025
 

2/19(水)10:00 ご好評につき予算額に達したため、申請受付を終了しました。
多数のご利用ありがとうございました。引き続き市内飲食店等の冬の味覚をお楽しみください。
 
2/18(火)17:20 ご好評につき申請受付が予算額間近となりました。
飲食店のご利用をお考えの方は、お早めにお申し込みください。
2/17(月)17:00 対象店舗一覧を更新しました
利用手順の更新及び利用に係る注意事項の追記をしました
2/13(木)17:00 対象店舗一覧を更新しました

 
市は、エネルギー・原油価格や物価高騰の影響を受ける市内飲食事業者等の持続的な経営を支援するため、2人以上で飲食店等を利用した場合の飲食代金を割引するキャンペーンを開催します。
皆様のご利用が地元の飲食店等の支援につながります!釜宴会で、友達や家族、会社の同僚などと一緒に釜石の冬の味覚を楽しみましょう!

割引条件(いずれかを適用)

①2人以上で対象店舗を利用し、人数×4,000円以上(税込)の利用金額の場合
1人当たり 2,000円 割引
②2人以上で対象店舗を利用し、人数×2,000円以上(税込)の利用金額の場合
※7~14時の間に入店し飲食店を利用した場合に限る
1人当たり 1,000円 割引

割引期間

令和7年2月14日(金)~3月16日(日)
※2月11日(火・祝)から申請受付を開始します(窓口申請は2月12日(水)から)。
※予算額に達し次第、終了します。

対象店舗

市内飲食・宿泊事業者のうち、当キャンペーンに参加している店舗
参加店舗の一覧は釜石商工会議所のホームページで確認できます。
(対象店舗一覧は随時更新します)

利用方法

飲食店等を予約後、会食実施の3日前の15時までに利用予定のお店の名称、利用日、利用人数、1人当たりの予算額を、申込フォームまたは釜石商工会議所へ申請書にて申請ください。
※年齢、居住地等問わず、対象店舗をご利用する全ての方がご利用いただくことができます。
申請がない場合、割引の適用ができません。

様式ダウンロード

申請書(飲食店利用確認書)[DOCX:20.6KB]

事務局(お問い合わせ先)

釜石商工会議所 TEL:0193-22-2434

この記事に関するお問い合わせ
産業振興部 商工観光課 商工業支援係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-22-2111 / Fax 0193-22-2762 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2025012300069/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
furugiya01

夢をカタチに!高校生の挑戦 レンタルスペース×古着屋オープン 釜石大観音仲見世に新風

釜石大観音仲見世通りに開店した古着店とレンタルスペース

釜石大観音仲見世通りに開店した古着店とレンタルスペース

 
 高校生とその母親がそれぞれ店長を務める2つの店が、釜石市大平町の釜石大観音仲見世通りに開店した。レンタルスペース「crush on(クラッシュオン)」と、古着屋「たすいち」。親子がタッグを組んで営業する。「若者の居場所をつくりたい」「みんなのやりたいを応援したい」「釜石を盛り上げたい」という思いを形にした。
 
 クラッシュオン店長は市内在住の小笠原皐さん(16)=一関学院高通信制課程1年。たすいちは母・梓さん(39)が店長だが、主導権を握るのは皐さんだ。
 
古着店に立つ小笠原皐さん(右)と母親の梓さん

古着店に立つ小笠原皐さん(右)と母親の梓さん

 
「crush on」(手前)と「たすいち」が入る建物の外観

「crush on」(手前)と「たすいち」が入る建物の外観

 
 幼い頃にダンスを始め、その衣装に使う古着が好きだった皐さん。中学生の頃には店を持つ夢を持っていた。「本当にやりたいことは?」。進路選択の際、自分自身に問いかけた。「もとからあるものは変えたくなる。ゼロから生み出したい。やっちゃえ」。起業を見据え通信制の高校への進学を決めた。学業の傍ら、市主催の起業塾も受講し、経営のノウハウを学んで準備した。
 
 旧土産物店を改装し、広さは“はんぶんこ”。1月1日にプレオープン、31日に本格的に営業を始めた。古着店にはレディース、メンズ、キッズ用の衣類が並び、バッグやアクセサリーといった雑貨もある。置かれているものは、皐さんが「ビビッときたもの」ばかり。同年代の人たちに手に取ってもらえるよう、価格は1000~4000円を中心に設定する。
 
仕入れのポイントは「かわいさ」とPRする小笠原皐さん

仕入れのポイントは「かわいさ」とPRする小笠原皐さん

 
昭和感あり⁉土産物店時代に使われた棚や置物が活躍中

昭和感あり⁉土産物店時代に使われた棚や置物が活躍中

 
 レンタルスペースには4枚の大きな鏡を設置しており、ダンスや演劇などの練習での利用を見込む。冬場の現在は、こたつを持ち込んでいて、「ただ、のんびりしてもらう」要素を演出。誕生会などイベント利用も歓迎する。利用人数に関わらず、大人は1時間660円、高校生以下は550円。グループ利用で大人がいる場合は660円とする。
 
 クラッシュオンは英語で「夢中になる」という意味で、その言葉を使ったオリジナルブランドを、クリエーターとしても活動する梓さんと考案。関連グッズ(Tシャツ、スエットなど)を古着店に並べている。
 
「使い方は自由に」。小笠原皐さんが経営するレンタルスペース

「使い方は自由に」。小笠原皐さんが経営するレンタルスペース

 
オリジナルブランド「crush on」のロゴ入りスエット

オリジナルブランド「crush on」のロゴ入りスエット

 
 開店から数日たった2月のある日。2人は、来店した人の希望を聞きながら品出ししたり、おしゃべりを楽しんでいた。が、実はこの通り、人影はまばら。かつては約20軒の店が営業していたが、今は2軒だけ。初詣やイベントなど行事があれば人出も伴うが、理由がなければ市民が訪れる機会は多くない。なぜ、ここなのか…。
 
シャッターが下りたままの建物が並ぶ釜石大観音仲見世通り。左側の手前が新店舗

シャッターが下りたままの建物が並ぶ釜石大観音仲見世通り。左側の手前が新店舗

 
 「面白くて、なじみがある場所だから」と皐さん。この通りでは、大人たちがにぎわいを取り戻そうとマルシェやアートイベントなどを催していて、子どもの頃から一家で参加していた。楽しさ、何かに夢中になる人たちの姿を記憶にインプット。そこに集う人たちのように「自分も何かしたい。できることでまちを元気にしたい」と淡い思いを抱いてきた。そして、本当は自分がやりたかった「古着屋がマッチする場所」でもあったから。
 
 釜石が好き―。そんな思いが、皐さんから伝わってくる。そこには、東日本大震災時に支えてもらったことへの感謝がある。津波で自宅が全壊。「当時は守ってもらった立場。まちは復興したけど、元気がない。今度は私がまちを盛り上げる番」と凛とした表情を見せる。
 
 そんな皐さんを、少し離れたところから見守る梓さん。「やってみたらいい。楽しいことをどんどん。やれるタイミングがベストだと思うから。こうした新しい動きがまちの起爆剤になればいい」と、あたたかい視線を送る。
 
ほほ笑ましい親子のやりとりを見られるのも売り!

ほほ笑ましい親子のやりとりを見られるのも売り!

 
 学業があるため、店を開くのは週4回。金曜~月曜の午前11時~午後6時までが基本。「ゆる~く、気負わずにやっていきたい。高校生ならではの目線で、気軽に集まれる場所をつくっていけたら」と皐さん。「世間話をしに立ち寄って」とアピールする。
 
「一般的じゃないかも。でも、いろんな選択肢があるんです」と話す小笠原皐さん

「一般的じゃないかも。でも、いろんな選択肢があるんです」と話す小笠原皐さん

 
 自分たちが楽しいと思うことで、お客さんもハッピーになってくれたら―。一つの願いをかなえると、やりたいことが増えてきた皐さん。編み物、釣り、ネイル、ダンス教室、パン作り…。この空間を生かした活動も思案中だ。「時間が足りない」。笑顔が印象的な16歳の挑戦はまだ続く。「釜石には知らないだけでたくさん面白いことがある。それを伝え、つなげていきたい」