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和山へ牛放牧2年目のエム牧場(福島県) 釜石市と連携協定締結 市内に肉の自販機設置も

連携協定締結式の後、エム牧場の和山放牧を見学する市職員=7月27日

連携協定締結式の後、エム牧場の和山放牧を見学する市職員=7月27日

 
 昨年度から釜石市の和山牧場で肉用牛の放牧を行っている福島県二本松市のエム牧場(吉田和代表取締役)が、釜石市と地域活性化に向けた連携協定を締結した。同社の和山放牧牛はハンバーグに加工した商品「和の風バーグ」が本年1月から同市のふるさと納税返礼品に登録されるなど、地域振興に貢献している。今後、釜石駅前の商業施設入り口に同放牧牛の食肉自動販売機が設置される予定で、市民や観光客にも広くアピールしていく考えだ。
 
 連携協定締結式は7月27日に橋野町で行われ、吉田代表取締役と小野共市長が協定書に署名した。協定は両者が相互に連携し、和山牧場での牛の放牧事業を通じた地域振興策の展開、市内畜産農家などとの交流機会創出を推進することで、同市の畜産業、地域活性化につなげることを目的とする。連携事項には放牧牛への付加価値の企画、新規特産品やふるさと納税返礼品の企画、畜産業に対する理解促進への取り組みなどを盛り込む。
 
署名した協定書を取り交わしたエム牧場の吉田和代表取締役(左)と釜石市の小野共市長

署名した協定書を取り交わしたエム牧場の吉田和代表取締役(左)と釜石市の小野共市長

 
 エム牧場は肉用牛の繁殖から肥育、精肉加工、販売までを手がける農業生産法人。福島、宮城、岩手3県に15カ所の牧場を所有し、2500頭を飼育する。釜石市は和山牧場の活用について2021年度から同社に情報提供。地元との協議も重ねながら放牧の誘致活動を続けてきた。その結果、昨年度から放牧事業が実現。市が管理する公共牧場地の“立岩”エリアで、5月から10月まで5種25頭を放牧した。
 
昨年5月、エム牧場による初めての放牧=和山牧場立岩エリア

昨年5月、エム牧場による初めての放牧=和山牧場立岩エリア

 
今年5月15日に放牧された牛。見学に訪れた市職員らをお出迎え!?

今年5月15日に放牧された牛。見学に訪れた市職員らをお出迎え!?

 
和山で行うのは「放牧肥育」。“山で肉を仕上げる” のがコンセプト

和山で行うのは「放牧肥育」。“山で肉を仕上げる” のがコンセプト

 
 同社が和山で行うのは「肥育のための放牧」。肉本来のうまみを味わえる赤身肉の需要拡大に応えるため、新たな挑戦の場に和山を選んだ。「広大な山の牧場で青草を食べて駆け回り、伸び伸び自由に育った牛」という付加価値が食肉卸業者や料理人の心をつかみ、昨年度は全25頭が買い取られた。素材にこだわる東京・六本木のスーパーでは「釜石・和山の牛」として写真付きで紹介されたほか、都内のフランス料理店などでもメニューの一つとして提供されたという。
 
 2年目となる本年度は同エリア14ヘクタールに短黒(日本短角牛と黒毛和牛の交配)、ジャー黒(ジャージー牛と黒毛和牛の交配)、褐黒(褐毛和牛と黒毛和牛の交配)の3種20頭を5月に放牧。昨年度の経験を踏まえ、放牧に向く種類に絞った。本年度も10月まで放牧する予定。
 
黒毛と掛け合わせた3種の牛がそろい踏み!

黒毛と掛け合わせた3種の牛がそろい踏み!

 
「好きな時に草を食べ、暑い時には林の中に入って休む。自由な生き方をしている牛たちです」と吉田代表取締役

「好きな時に草を食べ、暑い時には林の中に入って休む。自由な生き方をしている牛たちです」と吉田代表取締役

 
 昨年度は、興味を持つ人たちを何度も現地に案内したという吉田代表取締役。遠くは京都などから足を運ぶ人もいて、「釜石・和山で半年間過ごしたストレスフリーな牛」というストーリー性や“いいとこ取り”の変わった畜種がうけ、「使ってみたいという声をたくさんいただいた」という。今年もすでに購入の予約が入っていて、耳標に予約業者の名前が入った牛も。
 
耳標に買い取り業者の名前が付いた牛も。「信濃屋」は東京のスーパー

耳標に買い取り業者の名前が付いた牛も。「信濃屋」は東京のスーパー

 
 同社は「地元釜石の皆さんにも食べていただきたい」と、今後、釜石駅前の商業施設サン・フィッシュ釜石の入り口に食肉の自動販売機を設置する。和山放牧牛の冷凍精肉(ステーキ用など)やハンバーグを中心に販売予定。同社の自販機は二本松市にもあり、釜石が2カ所目。吉田代表取締役は「釜石にも牛がいることをどんどんアピールしていきたい。放牧頭数をさらに増やすため、人材育成にも取り組んでいければ」と今後の展開に夢を膨らませる。
 
群れで仲良く暮らす牛たち。広々、ほどよい傾斜地もある牧場を駆け健康に育つ

群れで仲良く暮らす牛たち。広々、ほどよい傾斜地もある牧場を駆け健康に育つ

 
和山牧場の現状について水産農林課職員から説明を聞く小野市長(中央)

和山牧場の現状について水産農林課職員から説明を聞く小野市長(中央)

 
 同社の釜石での放牧は後継者不足が課題の地元畜産業に新たな風をもたらし、再興への起爆剤になるものと期待される。小野市長は「和山牧場の活用は市や市議会、地元の栗橋地域振興社の関心の的だった。吉田社長のご英断に心から感謝したい。協定を機に連携を深め、市としても一次産業の振興に一丸となって取り組んでいきたい」と話した。

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おいしい“ハート”届けます!釜石・唐丹町の漁師3人が養殖 海と人を結ぶムール貝

釜石市唐丹町から“おいしいもの”を届けようと奮闘する3人の漁師

釜石市唐丹町から“おいしいもの”を届けようと奮闘する3人の漁師

 
 豊かな海を生かした漁業をなりわいとしてきた三陸沿岸は、近年の気候変動や海洋環境の変化に伴って、秋サケなど主要魚種が歴史的な不漁に見舞われている。先行きは見通せないが、釜石市唐丹町では海洋変化に対応すべく新たな養殖がスタート。「副産物」を主役としてブランド化し、販路を拡大させている。「信用第一」に安定供給に向けて技術を高めている地元の漁師3人を地域も後押し。ひらくとハート型に見える二枚貝に添えて届ける“あたたかい気持ち”が海と人をつなぎ、浜を活気づけている。
 
 唐丹町漁業協同組合に所属する佐々木和則さん(59)、佐々木武さん(44)、小野寺計さん(41)の3人が唐丹の海で育てるのは、ホタテの養殖いかだや綱などにくっついている「シュウリ貝」。「ムラサキイガイ」とも呼ばれるヨーロッパ原産の外来種で、都市部では「ムール貝」として高級レストランなどで使われる人気の食材だ。
 
「はーとふるムール」として売り出す唐丹産ムール貝

「はーとふるムール」として売り出す唐丹産ムール貝

 
ムール貝の養殖に取り組む(左から)小野寺計さん、佐々木和則さん、佐々木武さん

ムール貝の養殖に取り組む(左から)小野寺計さん、佐々木和則さん、佐々木武さん

 
 現在、水揚げは週1回。「新鮮なうちに」と、水揚げ後すぐに出荷までを行う。7月末、今シーズン一番の注文が入ったため、2日間かけて作業。29日、漁師たちは日の出とともに唐丹湾内の養殖場に出航。30分ほどの作業で、かごはムール貝でいっぱいになった。家族らが待つ港の岸壁に戻ると皆で力を合わせ、貝にこびりついた海藻や小さな貝を丁寧に除去。翌30日朝、唐丹町漁協の職員らの力も借りて箱詰めし、計約300キロを出荷した。
 
唐丹・小白浜漁港から船で5分ほどの養殖場でムール貝を育てる。以前はホタテを養殖していた場所を活用。春に養殖用ロープを垂らし、翌年に収穫する形で継続する

唐丹・小白浜漁港から船で5分ほどの養殖場でムール貝を育てる。以前はホタテを養殖していた場所を活用。春に養殖用ロープを垂らし、翌年に収穫する形で継続する

 
 シュウリ貝は地元では副産物として水揚げされるが、売っても「二束三文」、養殖施設に付着したものは作業の妨げとなる「やっかいもの」だった。一方、主力とするホタテやワカメの養殖は海水温の上昇などの影響で大量へい死や品質低下が見られ、なりわいの継続に危機感を持った3人。この副産物は岸壁などでも見かけ、力強く自生していることもあり、「高水温環境への対応力」に目を付けた。
 
 「養殖で品質や収量を安定させることができれば」。新たな水産資源として可能性を見いだした3人は2023年、和則さんを組合長に「唐丹ムール貝養殖組合」を設立。釜石市内にある岩手県水産技術センターなどの協力を得ながら養殖試験に取り組んだ。
 
 “言い出しっぺ”の武さんいわく、「もっと簡単だと思った。こんなに苦戦するとは…甘くなかった」。もともと自生しているため種となる幼生は容易に手に入り「お金をかけず」にスタートできた。数年育てて付着密度と成長の関係性を確かめ、養殖施設となる綱を設置する時期や方法も確立させた。
 
水揚げ後、陸に戻って貝の洗浄作業。船の帰港を見計らって集まった家族らと力を合わせる

水揚げ後、陸に戻って貝の洗浄作業。船の帰港を見計らって集まった家族らと力を合わせる

 
 そうした中で課題となったのが、貝の洗浄作業。貝にこびりついたものを取り除くのは大変な手間と時間を要した。先進地視察として北海道余市町の漁業者と交流した際に見せてもらった洗浄機をヒントに、独自の洗浄機を試作。和則さんが、以前からつながりがあった宮城県気仙沼市の業者に依頼したもので、導入により作業時間が半分以下と省力化できた。
 
独自の洗浄機を導入して作業の省力化を図る

独自の洗浄機を導入して作業の省力化を図る

 
洗浄機から出した後、さらに磨きをかける

洗浄機から出した後、さらに磨きをかける

 
 次の課題は売り先。高単価な直接取引を目指し、首都圏の水産卸などへ持ち込んだものの、知名度がなく、高くは売れなかった。ただ、クリスマスシーズンの需要をつかみ、約500キロを出荷。3人にとって「大きなモチベーションになった」という。
 
 「(シュウリ貝は)よく食べていて、好きだったから」と話すのは、武さん。味には自信があった。特においしい夏の味わいを知ってもらうべく、人づてに県内外の飲食店への売り込みを開始。釜石市内の飲食店との定期取引も実現した。
 
 昨年からは「はーとふるムール」と名付けてブランド化。「貝を開いた形がハートに見えるから」と、和則さんは笑う。東日本大震災後にもらった多くの「優しさ」「愛情」「真心」を力に復興したこともあり、「復興の証し」「感謝」を届けようと思いを込め、ロゴマークもデザイン。生産者の顔が見える取り組みとして、料理研究家と一緒に試食会や商談会を開いたり消費者との接点を増やしながら、少しずつ販路を切り開いた。
 
貝を開くとハート型に!ブランド性を高めて販路を拡大中 width=

貝を開くとハート型に!ブランド性を高めて販路を拡大中

 
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水揚げしたムール貝を箱詰め。唐丹町漁協の職員も協力

 
 生産から出荷、売り込みまで手がける体制を継続し、昨年は1.6トンを出荷。今季は12月までの収穫期に2トンを目標にしている。価格も、地元では1キロ当たり200~300円ほどだったが、今は1000円ほどで売れるようになった。
 
 こうした取り組みは、3月に東京であった「第31回全国青年・女性漁業者交流大会」(全国漁業協同組合連合会主催)の流通・消費拡大部門で最高賞に次ぐ水産庁長官賞を受賞した。和則さんは「ゼロから始め、手探りでやってきたことが評価されてうれしい。唐丹から新しい産物を届けられたらいい」と率直に喜ぶ。
 
 武さんは「誰もやっていないことだからこそ、やってみようと思った。生産、開発、流通のすべてに関わり、いろいろな経験ができた。売れた時の喜びは最高。やってよかった」と熱い思いを吐露。小野寺さんは「楽しい。いっぱい売れるように考え、模索し、やりがいもある」と言って、笑顔を見せた。
 
 3人で始めた取り組みを地域も後押し。唐丹町漁協加工課長の佐々木憲佑さん(42)は「高水温の環境に対応できる新事業として期待。流通面やできることで軌道に乗るよう協力したい」と見守る。
 
「新たな名産品に」。これからも唐丹の海でムール貝を育てていく

「新たな名産品に」。これからも唐丹の海でムール貝を育てていく

 
 和則さんと武さんは主にワカメやコンブの養殖、イカ釣り漁業に携わる。小野寺さんはメインとしていたホヤ漁が危機的状況となり、ワカメ養殖に転向すべく試行中とのこと。それぞれの本業と組み合わせつつ、「無理のない、できる形で収入源を増やしていければ」というのが、3人共通の意識だ。
 
 そして、地域や人とのつながり、販売先や消費者の顔が見える関係性から「信頼の大切さ」を改めて実感。注文に応えるべく、海の状況や天候の変化を読みながら漁に出る。「唐丹の海と人を結び、水産業の未来を照らす存在として『はーとふるムール』を育てていきたい」。3人はこれからも“こころ”を届けていく。

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釜石・片岸公園が「自然共生サイト」に 震災津波からの環境再生の取り組み 国が評価

環境省東北環境局の東岡礼治局長(中)から「自然共生サイト」の認定証を受け取った釜石市の小野共市長(右)、かまいしDMCの村上舞子さん(左)

環境省東北環境局の東岡礼治局長(中)から「自然共生サイト」の認定証を受け取った釜石市の小野共市長(右)、かまいしDMCの村上舞子さん(左)

 
 沼や池があり、野鳥や水生生物がすみ着く釜石市片岸町の片岸公園が、国の「自然共生サイト」に認定された。東日本大震災津波で失われた自然環境を回復させ、地域の各種団体と連携して行う保全活動が評価された。27日、代表申請者の市と連携活動実施者の観光地域づくり法人かまいしDMC(河東英宜代表取締役)に認定証が贈られた。本県での同認定は6カ所目となる。
 
 認定証授与式は市役所で行われた。環境省東北環境局の東岡礼治局長が認定の経緯を説明。小野共市長と同社旅行マーケティング事業部の村上舞子さんが東岡局長から認定証を受け取った。
 
 国は、さまざまな要因で失われつつある自然環境を回復させる取り組みの一環で、企業や市町村が地域で行う生物多様性増進の活動計画を認定。活動実施区域を「自然共生サイト」として広く周知している。釜石市は震災後に整備した片岸公園の生物多様性“回復”を目指す保全活動実施計画(2026年~5カ年)を申請。環境、農林水産、国土交通3省の最終審査を経て同サイトの認定を受けた。
 
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認定証授与式には東岡局長と東北環境局の関係部署職員3人が訪れ、認定の経緯などを説明した

 
 鵜住居川左岸河口域に位置する片岸公園は、震災津波で流失した豊かな自然環境を取り戻したいとの市民の声を受け市が整備。2021年6月に供用を開始した。一帯は震災前、みのすけ沼を中心に多くの野鳥や魚類が生息する湿地帯だったが、津波でヨシ原などの植生が全て流失した。公園は一部残った沼地のほか、減災機能を兼ねて作った遊水池を中心に水辺環境を確保。丘陵地には樹木を植え、遊歩道も整備した。年月を重ねる中で、水辺周辺にはヨシ原が再生。水生生物やトンボなどの昆虫が増えてきた。鵜住居川と行き来する野鳥の姿も見られるようになり、冬にはオオハクチョウの飛来地として市民に親しまれる。
 
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東日本大震災の津波で植物などが流失した現片岸公園のエリア=2011年4月撮影

 
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2021年に完成した片岸公園。遊水池の周りに遊歩道を整備し、さまざまな木々を植樹した

 
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野鳥やトンボなどさまざまな生き物が見られるようになった遊水池。冬にはオオハクチョウが飛来する

 
 今回の認定について東岡局長は「全国でも事例の少ない『回復』タイプ。震災で失われた自然環境を再生し、生物多様性を回復していく取り組みが評価された。震災復興を経て新たな自然共生の姿を示す大変意義深い事例」と称賛。同市は2024年9月に環境省の「脱炭素先行地域」にも選定されていて、環境に配慮した取り組みを推進する。「ネイチャーポジティブ(自然再興)と地域脱炭素を一体的に推進する先進的なモデル」としても高く評価されたという。東岡局長は「片岸公園が多様な生き物と人とが共に暮らす地域のシンボルとして、次世代に受け継がれていくことを願う」と期待した。
 
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「釜石の取り組みは全国のモデルとなる」と話す東岡局長。今後の活動にも期待した

 
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片岸公園では野鳥観察会なども開かれてきた。市は今回の認定を機に子どもたちの環境学習にも力を入れたい考え

 
 小野市長は「震災以降、手探りで続けてきた取り組みが国に認められたことは励みになる」と喜ぶ。世界規模の気候変動で自然環境にも大きな影響が出る中、「釜石市として何ができるか?しっかり考え行動し、グローカルな考え方を行政の責任として子どもたちにも伝えていきたい」と話した。市では認定により、地域の自然への理解や愛着がさらに深まることを期待。環境学習や交流人口拡大にもつなげていきたいとする。
 
 保全活動計画には、浚渫(しゅんせつ)やヨシの間引きなどで水の循環を促し、水質維持のための定期的なモニタリング調査を行うことが盛り込まれる。かまいしDMCはサスティナブルツーリズム(持続可能な観光)を推進し、首都圏企業を中心に企業研修を受け入れている。そのコンテンツの一つが片岸公園の保全活動で、外来植物の除去や研究機関と連携した水生生物による水質調査などを実施。村上さんは「活動を通じて環境に対する行動変容が生まれるよう工夫している。認定を機に未来へ向けた活動をさらに進めていきたい」と意を強くする。
 
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かまいしDMCの村上舞子さんは企業研修に取り入れている片岸公園の保全活動について紹介した

 
 国は2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する世界目標「30 by 30(サーティーバイサーティー)」の達成に向け、自然共生サイトの認定を重要な取り組みと位置付ける。認定は2023年度から始まり、今回の釜石を含む26年度第1回認定を合わせ、全国610カ所となった。

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地域産業の理解へ 釜石商工高2年生 水産加工の津田商店を見学 地域経済支える企業姿勢学ぶ

水産加工品製造の工場を見学する釜石商工高の2年生=3日、津田商店(鵜住居町)

水産加工品製造の工場を見学する釜石商工高の2年生=3日、津田商店(鵜住居町)

 
 釜石市大平町の県立釜石商工高(小松了校長、生徒160人)の2年生50人は3日、県の「いわて高校魅力化推進事業(探究共創事業)」の一環で、地元水産業への理解を深める学習を行った。研究施設や水産加工品製造の工場を見学。地域の魅力や可能性を知り、古里の将来を支える一員として考えを巡らせた。
 
 地元就職を希望する生徒が多い同校では、地域に貢献できる人材育成を目指し、地場産業への理解や地域課題に目を向ける探究学習の機会を設けている。本年度、2年生は平田の三陸水産研究センター(岩手大釜石キャンパス内)と鵜住居町の津田商店を訪れ、地域と関わりの深い水産業への学びを深めた。
 
 午後に訪問した津田商店(小笠原正勝代表取締役社長、従業員190人)では、同社の歴史や事業の説明を聞き、工場内を見学した。水産加工品の製造販売を行う同社は1933(昭和8)年創業。2011年の東日本大震災津波で大槌町安渡にあった工場が被災し、翌12年、釜石市浜町にあった本社事務所と共に同市鵜住居町に移転再建した。主に学校給食で提供される業務用冷凍食品(調理済み煮魚)と、大手ブランドの缶詰(サンマ、サバ、サケの中骨など)を製造。自衛隊員が災害派遣や訓練時に食するレトルト食品の製造も手がける。3年前には個食用に開発した自社ブランド「子どもようおさかなさん」(冷凍煮魚)のオンライン販売も開始した。
 
津田商店の会社概要や製品について学ぶ。学校給食用の魚は45都道府県に供給しているという

津田商店の会社概要や製品について学ぶ。学校給食用の魚は45都道府県に供給しているという

 
メモを取りながら担当者の話を聞く機械科の生徒ら

メモを取りながら担当者の話を聞く機械科の生徒ら

 
 担当者からは、衛生管理を徹底し安全安心な食品を提供していること、残物(魚の頭や尾など)の飼料加工や微生物による水浄化処理で環境負荷軽減を図っていることも説明された。近年は海水温の変化などで三陸産魚の水揚げが減少。原料確保のため、全国に足を運んでいる現状も伝えられた。同社は「地域共存」を理念とし、釜石湾で養殖されるサクラマスや地元酒造会社の梅酒製造過程で出る漬梅を活用した商品開発にも取り組んできた。
 
 全国に販路を持つ同社。得られた利益は従業員や外部の委託業者の収入となり、さらには地域内消費を生む。「地域内でお金が回る。地域経済を支えることが自社の目的の一つ」と担当者。10~70代の幅広い年代の雇用、外国人技能実習生の受け入れでも貢献する。
 
工場内の各部屋を回り、製品ができるまでの工程に理解を深める

工場内の各部屋を回り、製品ができるまでの工程に理解を深める

 
初めて見る工場内の作業に目がくぎ付け(写真下)。身近な魚の缶詰が地元釜石で作られていることを知り興味津々(同上)

初めて見る工場内の作業に目がくぎ付け(写真下)。身近な魚の缶詰が地元釜石で作られていることを知り興味津々(同上)

 
 電気電子科の岩﨑春燈さんは、同社の見学は小学校時代に続き2回目。高校生になり新たな視点での見学となったようで、「金属探知機やX線検査機などの設置が多い印象。それだけ消費者の食の安全に対し徹底しているのが伝わる」と感心。同社製造の缶詰を目にする機会も多く、「それが地元で作られているのはすごい」と郷土の誇りも実感。地元就職を考える上での判断材料にした。
 
「魚が大好き。ずっと(工場見学を)楽しみにしてきた」と目を輝かせたのは総合情報科の門﨑愛生さん。「気軽に食べている缶詰がこのような多くの工程を経て私たちの食卓に届いていると知って驚いた。多くの人の努力が詰まっていることを思いながら大切に食べたい」と感謝の気持ちも芽生えた様子。高校卒業後は県外就職を考えているが、「地元も大好きなので、いずれは戻ってくることも」とUターンも選択肢の一つに考えた。
 
地元企業の素晴らしさを実感する生徒。今後の進路の参考に…

地元企業の素晴らしさを実感する生徒。今後の進路の参考に…

 
 生徒たちの見学をサポートした同社管理部総務経理課の小倉敦美主任(30)は「地元の企業を知ってもらえるいい機会。地域への理解が進むのは大変ありがたい」と感謝。生徒たちが説明にうなずいたり、真剣なまなざしで話に聞き入る姿を頼もしく感じ、「若い方々の今後の力に期待したい。地元の魅力を感じてもらい、将来の就職の選択肢の一つに考えてもらえれば」と話した。

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仙人秘水仕込みの酒 浜千鳥が釜石鉱山で貯蔵開始 大島高任生誕200年記念で“物語”を仕込む

釜石鉱山の水で仕込んだ酒を5年間貯蔵のため坑道に運び入れる浜千鳥の社員ら=6月16日

釜石鉱山の水で仕込んだ酒を5年間貯蔵のため坑道に運び入れる浜千鳥の社員ら=6月16日

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は、釜石鉱山の“仙人秘水”で仕込んだ日本酒を、同鉱山の坑道で長期貯蔵する取り組みを始めた。1857(安政4)年にこの地で、日本初の鉄鉱石による鉄の連続出銑に成功した大島高任(1826-1901)の生誕200年を記念した企画。坑道貯蔵は同社にとって初の試みで、高任の没後130年にあたる5年後の2031年に取り出す予定。“鉄のまち釜石”で生まれる新たなストーリーの地酒。低温熟成、磁場による効果で、どんな味わいに仕上がるか、期待が膨らむ。
 
 貯蔵するのは、同鉱山の大峰山(標高1147メートル)地下600メートルから湧き出す“仙人秘水”で仕込んだ純米吟醸。720ミリリットル入りの瓶で1千本を、高任の誕生日である6月16日に坑内に入れた。同社社員らが坑道走行用カートに積み込み、海抜550メートルの坑口から約500メートル入った地点に設けた酒類蔵置場(税務署の許可を受けた一時保管場所)に運んだ。
 
個別に乾燥剤入りのビニール袋に入れた「純米吟醸」(720ミリリットル入り)をカートに積み込む

個別に乾燥剤入りのビニール袋に入れた「純米吟醸」(720ミリリットル入り)をカートに積み込む

 
海抜550メートルに位置する坑口からいざ搬入!ここから約3キロの地点で「仙人秘水」を採水している

海抜550メートルに位置する坑口からいざ搬入!ここから約3キロの地点で「仙人秘水」を採水している

 
看板が掲げられた保管場所の扉を開けて、カートが後進

看板が掲げられた保管場所の扉を開けて、カートが後進

 
 坑内は年間を通じて気温約11度。同社によると、温度変化が少なく長期の低温貯蔵に適しているほか、光や振動の影響がないため、劣化せずに安定した熟成が可能になるという。磁鉄鉱の鉱脈があることから、磁場の効力による味の変化も期待している。
 
 同社が仙人秘水で仕込む酒は「仙人郷」シリーズとして商品化されている。1991年10月には純米酒、95年11月には本醸造を発売。さらに品質の高い酒をと今冬、新たに仕込んだのが純米吟醸で、原料米は大槌町で栽培された本県オリジナル酒米「吟ぎんが」。口当たりが柔らかく、果物のような吟醸香がほのかに香る。貯蔵分以外は今年11月に販売を開始する。
 
カートから酒瓶が入ったケースを降ろし、保管場所に運ぶ。照明がなければ辺りは真っ暗

カートから酒瓶が入ったケースを降ろし、保管場所に運ぶ。照明がなければ辺りは真っ暗

 
貯蔵する「純米吟醸」を手に5年後を楽しみにする浜千鳥の新里進社長

貯蔵する「純米吟醸」を手に5年後を楽しみにする浜千鳥の新里進社長

 
 今回の取り組みは、「単なる貯蔵や保存ではなく、『物語を仕込む。未来への贈り物を創る』がコンセプト」。新里社長(68)は「ここで採れた水で仕込んだ酒が再び、この場所へ戻る。そういう意味では遺産の中にもう一つ遺産ができるような…」と、魅力的なストーリーをアピール。5年間“寝かせた”後の気になる味は、ふたを開けてみないと分からないが、「滑らかな感じで、飲んだ時に体に吸い込まれていくような…そんなお酒になれば」と楽しみにする。貯蔵酒は一般への販売を予定する。
 
釜石の製鉄の歴史を物語る場所で、どんな味わいが生まれるのか? 期待が高まる

釜石の製鉄の歴史を物語る場所で、どんな味わいが生まれるのか? 期待が高まる

 
 貯蔵酒の搬入に立ち会った釜石鉱山会社総務部総務課の千葉慎吾課長代理(42)は「ストーリー的にはすごくロマンを感じる。坑道での貯蔵がどんな変化を及ぼすのかも楽しみ」と浜千鳥の挑戦に注目。外部企業による坑道利用に関しては、「当社でも何ができるか探っている部分もあるので、この取り組みが今後の坑道活用検討へのいいきっかけになるのではないか」と話した。

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鶏肉のオヤマ(一関市) 釜石2カ所目の養鶏場「和山ファーム」で7月から飼育開始 年内本格稼働へ

釜石市橋野町和山に建設されたオヤマの新養鶏農場「和山ファーム」。鶏舎1~4号棟が完成した=2日

釜石市橋野町和山に建設されたオヤマの新養鶏農場「和山ファーム」。鶏舎1~4号棟が完成した=2日

 
 一関市の鶏肉生産加工販売業オヤマ(小山雅也代表取締役社長)が、釜石市橋野町和山に新たな養鶏農場「和山ファーム」を建設。一部鶏舎の完成を受け、7月から飼育を開始する。同社の釜石農場は2024年4月から稼働する栗林町の「リアスファーム」に次ぎ2カ所目。和山の農場も鶏の健康飼育や資源循環などの環境に配慮した設備で、栗林と同規模の生産を見込む。全施設の完成は11月。年内の本格稼働を目指す。
 
 昨春から工事が進められてきた和山ファームは鶏舎6棟のうち4棟が完成。今月2日、関係者約60人が出席し、第1期工事完成竣工式が現地で行われた。神事で出席者の代表が神前に玉串をささげ、新農場の安全、安定操業を祈願。鶏舎の内覧会で、施設の概要や設備について同社の担当者から説明があった。
 
3号棟鶏舎で行われた和山ファーム第1期工事完成竣工式の神事

3号棟鶏舎で行われた和山ファーム第1期工事完成竣工式の神事

 
神前に玉串をささげ、安全操業を祈願。出席者が乾杯して竣工を祝った

神前に玉串をささげ、安全操業を祈願。出席者が乾杯して竣工を祝った

 
上空から見た「和山ファーム」の敷地。(左上から)鶏舎6棟を配置。右側2棟(5、6号棟)は建設中=写真提供:千葉建設

上空から見た「和山ファーム」の敷地。(左上から)鶏舎6棟を配置。右側2棟(5、6号棟)は建設中=写真提供:千葉建設

 
 新農場は一般社団法人栗橋地域振興社(菊池録郎代表理事会長)が管理する和山地内の土地を借用して建設。約4万平方メートルの敷地に鶏舎6棟(総面積9741平方メートル)のほか、鶏ふん倉庫、ボイラー室、灰倉庫、管理棟、排水処理施設などを整備する。総事業費は約15億円。
 
 鶏舎は窓のない閉鎖型断熱構造(ウインドレス鶏舎)で、広さは国内最大級。鶏の成長過程に適した室温をコンピューターで自動制御できる換気、入気システムを導入する。床下には、鶏ふんの燃焼熱で沸かした温水を活用した床暖房設備もある。夏場の暑さ対策としてミスト噴霧装置や空気の流れを変えるロールカーテンも。照明は小電力、環境に配慮したLED電球で、一部鶏舎には除菌、鶏の健康促進に効果が期待される紫外線発光機能付き電球を試験導入する。鳥インフルエンザ防除など野鳥・野生動物侵入防止策、各種衛生管理を徹底する。
 
内覧会会場となった4号棟鶏舎の内部。面積1623平方メートル。奥行きは約74メートル

内覧会会場となった4号棟鶏舎の内部。面積1623平方メートル。奥行きは約74メートル

 
両側の入気口から入った空気が奥の壁一面の換気扇に流れていって換気。入気、換気はコンピューターによる自動制御

両側の入気口から入った空気が奥の壁一面の換気扇に流れていって換気。入気、換気はコンピューターによる自動制御

 
夏場の暑さ対策のためのミスト噴霧装置。鶏の体感温度を下げ、ヒートストレス軽減

夏場の暑さ対策のためのミスト噴霧装置。鶏の体感温度を下げ、ヒートストレス軽減

 
 屋外には鶏舎1棟につき4基の飼料タンクが配置され、パイプで送られた餌を自動給餌。水も自動給水で、新鮮な餌や水を与えることができる。鶏舎1棟で約2万8000羽を飼育。6棟の年6回の出荷で、年間約100万羽の生産を見込む。成長した鶏は一関市の工場に輸送して食肉処理される。鶏ふんの燃焼灰はリン酸カリ肥料として販売するほか、飼料米の水田などに使用。資源循環型の生産システムで環境に配慮した取り組みに貢献する。
 
餌や水もパイプから自動で供給されるシステム。オレンジ色の容器が給餌皿

餌や水もパイプから自動で供給されるシステム。オレンジ色の容器が給餌皿

 
 「奥州いわいどり」などのブランド鶏で知られる同社は、鶏の飼育から食肉処理、加工品製造、販売まで自社の一貫システムで行い、安全で高品質の鶏肉を提供する。国産鶏肉の市場拡大に伴い、生産量増加を目指し、餌の仕入れ先がある釜石市への養鶏農場新設を計画。2021年7月に同市と立地協定を結んだ。同市栗林町の養豚場跡地に鶏舎8棟を有する「リアスファーム」を建設し、24年4月から稼働する。さらなる事業規模拡大に向け、昨年3月には一関市室根町に処理能力が従来の約2.5倍、一日8万羽となる新工場が完成。釜石2カ所目となる「和山ファーム」の稼働は、安定的な供給体制確立につながるものと期待される。
 
 竣工式で小山社長は「地元関係者、建設事業者のご尽力の結晶を会社の発展につなげ、恩返しをしていきたい。室根の処理場と釜石の2農場の連携を深め、本県の鶏肉生産全国3位を1位に押し上げるよう頑張っていく」と決意を示した。釜石への農場設置は餌の供給拠点が近いことによる飼料運搬費削減のほか、三陸道を利用した一関の工場への鶏輸送時間短縮などの利点がある。「高速道路網の完成、釜石市の協力も後押しになって、とんとん拍子でここまできた。近くに民家のない和山は立地もいい。病気対策もしっかりしながら安全安心な生産に努めたい」と小山社長。
 
「目指すは岩手の鶏肉生産日本一」。オヤマの小山雅也代表取締役社長

「目指すは岩手の鶏肉生産日本一」。オヤマの小山雅也代表取締役社長

 
 同社は昨年6月、釜石市の酒造会社浜千鳥、食品加工の麻生三陸釜石工場、みそ、しょうゆ製造販売の藤勇醸造とタッグを組み、新商品「むね肉の漬梅焼き」を開発。同市ふるさと納税の返礼品にも採用される。釜石の農場で生産された鶏肉は市内の学校給食や子ども食堂にも提供された。
 
 竣工式に出席した同市の平松福壽副市長は2カ所目の農場進出に「釜石の農畜産業振興、経済効果を含め、地域の希望になる。さらなる特産品開発にもつなげていければ。海産物だけではない当市の食の魅力を発信できれば」と大いに期待。栗橋地域振興社の菊池録郎代表理事会長は「和山の土地利用が進むのは喜ばしい。環境に配慮した先進的な施設で安心感もある。今後も産業や観光で和山の活性化が図れれば」と願った。
 
1~4号棟鶏舎は7月から鶏の飼育を開始。年内に「2回転はできるのでは」と小山社長

1~4号棟鶏舎は7月から鶏の飼育を開始。年内に「2回転はできるのでは」と小山社長

 
 同社によると、今後は残る鶏舎2棟と付属施設の建設を進める。完成した4棟では7月から飼育を開始。従業員は7~8人の雇用を予定する。

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学びと休暇「どっちも楽しむ」 東京・文京学院大、釜石市で実践型インターンに挑戦

「釜石スタディケーション」に参加する文京学院大の学生ら=5月23日

「釜石スタディケーション」に参加する文京学院大の学生ら=5月23日

 
 学生が就業体験(インターンシップ)先の企業の課題解決に知恵を絞る「釜石スタディケーション」が5月16日から29日までの約2週間、釜石市内で展開された。文京学院大学(東京都文京区)が取り組む実践型教育プログラムで、今年で4年目。経営学部の学生10人が社会人の疑似体験、仕事終わりや休日のまち歩き、地方での生活を通じて視野を広げる機会にした。
 
 同プログラムでは大学を飛び出し地方に滞在しながら授業とフィールドワーク(現地学習)を両立させる。スタディケーションは「Study(学び)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語。同大学が10年以上にわたり交流を続ける釜石を実践地として継続実施している。
 
 今年は酒造会社や水産加工会社、市役所など4つの企業、機関がインターンの受け入れ先に。学生たちはSNS(交流サイト)発信やデジタルマーケティング施策の提案、営業・品質保証業務、文化財調査などに取り組んだ。
 
藤勇醸造でインターンに取り組んだ学生(右)=5月18日

藤勇醸造でインターンに取り組んだ学生(右)=5月18日

 
 みそ・しょうゆ製造販売業、藤勇醸造(大渡町)では、阿久津優菜さんと伊藤四葉さん(ともに2年)がインターンシップに挑んだ。2人に託されたミッションは「市内の小学校で行う、みそ造り体験と講演会のPRスライドづくり」。5月18日に同社で会社の歴史や事業内容の説明を受け、みそ造りを体験した。
 
 小学校でのみそ造り体験で講師を務めている「みそソムリエ」の小山和宏専務(61)、広報・商品開発などを担う小山明日奈さん(37)が2人の活動をサポート。スライドに盛り込みたい内容(▽創業124年の歴史▽みそのにおいと味の話▽発酵と腐るの違い▽みそのつくり方―など)を伝えた。聴講者となるのは児童だけでなく、大人の参加も見込まれることから、「分かりやすさに配慮しつつも、バランスの良いものに」「若い柔軟な感性で提案してほしい」と求めた。
 
藤勇醸造が市内の学校で行っているみそ造り体験の工程を確認

藤勇醸造が市内の学校で行っているみそ造り体験の工程を確認

 
インタビューやみそ造り体験をしながらミッションに挑んだ

インタビューやみそ造り体験をしながらミッションに挑んだ

 
 2人は週に3回ほど出勤し、工場でみその仕込み作業を見学したり、スライド作成を進めた。30日にまとめ発表として完成したスライドを披露した。小山専務は「丁寧に作り込んでいる。おおむねイメージ通り。伝えたいことや思いを届けられる」と評価。明日奈さんは「重要なポイントを限られた時間内にまとめてくれた。期待した柔軟性を見られたし、パソコンなどでの資料作成の便利な機能を教えてもらったり、逆に刺激をもらった」と感謝した。
 
 同大の准教授らも同席。「みそは身近にあっても、どう作られるか知らない。みそ造りの背景、文化を知り、効能にも触れていて、大人が見ても面白い」などと感想を伝えた。
 
まとめ発表をする伊藤四葉さん(右)、阿久津優菜さん=5月29日

まとめ発表をする伊藤四葉さん(右)、阿久津優菜さん=5月29日

 
 資料作りが得意という阿久津さんが中心になりスライドをまとめた。文章を簡潔に、写真を多用するなどして見やすさを重視。上々の評価を得て、うれしさをにじませた。大学生活の早い段階から社会経験を積みたいと参加。「課題を解決できるのが魅力。特技を生かせた」と笑顔を見せた。福島出身で、将来はデザイン分野での活躍を目指している。
 
 伊藤さんは、地域を食で支えてきた同社の歴史に感銘を受けた。その感動をミッションに盛り込んだようで「納得のいくものを残せた」と充実感を漂わせた。神奈川の実家では母親がちまき屋を営み、自身も食に関心があり、将来的には「パン屋を」と想像。「東京の企業とは違った職場を見る機会になった。藤勇さんは地域の人との距離が近い『食業』を長く続けていて、学びの場にピッタリだった」と柔らかい笑みを浮かべた。
 
釜石の復興まちづくりに理解を深めるまち歩き=5月23日

釜石の復興まちづくりに理解を深めるまち歩き=5月23日

 
 23日にはプログラムに参加する学生みんなで市内のまち歩きをした。案内人は、釜石市総合政策課長の金野尚史さん(54)。只越町の市役所本庁舎前から鈴子町の三陸鉄道釜石駅に向かう道沿いに建つ災害公営住宅の特徴や、災害時の避難場所を示す避難誘導標識の役割などを紹介した。
 
 大町の市民ホール周辺では、東日本大震災後に市が復興まちづくりの中核に位置付けた「フロントプロジェクト1」事業について説明した。大型ショッピングセンターや文化施設、商店街と一体化して自由な通り抜けができる“まちの散策路”的な開放空間を作ることで、にぎわい創出につなげようと工夫。復興推進本部、オープンシティ推進室などで震災直後の復旧、復興後の将来を見据えたまちづくりに携わってきた金野さんは当時を振り返り、「いろんな人の協力で復興を遂げたのが釜石。まさに市民の総力戦」と熱く語った。
 
金野尚史さん(左)の話に耳を傾ける文京学院大の学生たち

金野尚史さん(左)の話に耳を傾ける文京学院大の学生たち

 
 復興の歩みをじかに見聞きした常松楓さん(2年)は「復興事業には一つひとつに深い理由がある」と受け止めた。インターン先では遺跡見学や文化財の仕分け作業など「貴重な経験」への挑戦を楽しむ。釜石での生活も「思ったより食に困らない」と適応力も養ったようだ。
 
 この後、三鉄に乗車し鵜住居地区へ向かった一行。地域公共交通の現状、中心市街地とは異なる復興まちづくりの実相、地方創生の取り組みを象徴するイベントとなったラグビーワールドカップ日本大会の会場となったスタジアムなどを見て回った。
 
学生は復興まちづくりを視点に散策して防災について考えた

学生は復興まちづくりを視点に散策して防災について考えた

 
 学生リーダーの山後柊季さん(2年)は「講義形式では得られない学びで成長を」と臨んだ。各自、ミッションを果たすため努力はするが、「まずは楽しむこと。釜石生活を一番楽しんでいるのは自分」と主張。活動や仲間と過ごすことで、「見る力」に磨きをかけられたと感じていて、「地域に溶け込んで住んでいる人が見えていない魅力を発見して発信するのは面白い。ここでの気づきを学校生活、社会で生かしたい」と刺激にした。

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釜石市がウェブ制作会社「アンテナ」(東京)と立地協定 事業者の情報発信サポート

立地協定を結んだ小野共市長(中央)と吉井豊代表取締役(右から2人目)ら

立地協定を結んだ小野共市長(中央)と吉井豊代表取締役(右から2人目)ら

 
 釜石市は1日、ウェブサイト制作やインターネット戦略立案などを手がける「アンテナ」(本社・東京都、吉井豊代表取締役)と企業立地協定を結んだ。市内への支社開設に合わせたもので、情報通信技術(ICT)に関する企業支援などを展開。地元事業者の声をすくい上げながらサイト構築や交流サイト(SNS)運用などを協働で進めていく計画で、地域経済やコミュニティーの活性化が期待される。
 
 同社は2005年に創業。大手企業や全国自治体のホームページの構築・更新・保守・管理業務のほか、ネット戦略立案や調査、改善の実施、コンサルティング業務なども担う。近年は地方への進出も行っており、神奈川県三浦市など全国に4つの支社を開設。地域企業のICT能力の向上、デジタル技術を使って業務改善を進めるデジタルトランスフォーメーション(DX)化をサポートしている。岩手県内では洋野町に支社を構え、釜石は2拠点目となる。
 
 釜石支社は釜石市平田の釜石・大槌地域産業育成センター内に開設し、1日から業務を始めた。新たに3人を地元雇用する予定。事業拡大による市中心部への支社移転拡張も目指す。
 
釜石市役所で行われた締結式。協定書に署名し取り交わした

釜石市役所で行われた締結式。協定書に署名し取り交わした

 
 締結式は市役所で行われた。協定では、同社の▽支社設置、円滑な事業の推進▽従業員の確保―などについて、市が誠意をもって協力することを明文化。小野共市長と吉井代表取締役が協定書にそれぞれ署名し取り交わした。
 
 吉井代表取締役は「IT企業だが、特殊な技術を研究、開発しているわけではなく、多くの雇用を生む会社ではない」と自社を紹介しつつ、「地元の事業者を一緒になって支援する活動をしている、地域活性に特化したウェブ会社。世に知らしめたい情報を発信するのを担当者1人が頑張るのではなく、地域全体がICT化されてみんなで発信する世界を目指している」と思いを伝えた。
 
「釜石のいいものを地域みんなで発信する未来を」と思いを共有

「釜石のいいものを地域みんなで発信する未来を」と思いを共有

 
 釜石を何度も訪れ「いいものがたくさんある」と吉井代表取締役。発信したい情報は各地共通することが多いため埋もれてしまいがちだとしたが、「それ(釜石のいいもの)を必要とする人は全国、全世界にいるので一緒に広げていきたい」と意欲を示した。まずは、事業者の困り事や課題の聞き取りから開始。事業の改善点などを提案し、特定のニーズを持つ人に深く刺さる情報の発信をサポートしていく考えだ。
 
釜石支社の開設を歓迎する小野市長(左)

釜石支社の開設を歓迎する小野市長(左)

 
 釜石市は、同社の事業概要や洋野町での実績、ICTを活用した企業支援、地域活性化の取り組みに共感。市内への拠点設置と事業展開を求めて精力的にアプローチし、今回の協定締結につなげた。
 
 小野市長は「人口が減少する地域で、事業の効率化を図ることは事業者が生き残る鍵になってくる。いい素材を持ち、面白い取り組みをする事業者の情報発信とDX化をサポートしていただき、釜石の経済発展の可能性を大きく伸ばしてほしい」と期待した。

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サイズ、脂のり手応え 「釜石はまゆりサクラマス」今季初水揚げ 養殖事業で活性化

釜石湾で養殖されたサクラマスを水揚げする泉澤水産の社員

釜石湾で養殖されたサクラマスを水揚げする泉澤水産の社員

 
 釜石市東前町の泉澤水産(泉澤宏代表取締役)は25日、釜石湾で養殖する「釜石はまゆりサクラマス」を今季初めて水揚げした。サイズ、脂のりも「よし」とPR。昨季の1.5倍以上となる約400トンの生産を見込み、地元水産業の活性化につなげる。
 
 午前5時頃、湾内に設置したいけすから約3トンを積み込んだ漁船が同市魚河岸の市魚市場に到着。同社の社員ら約20人が水揚げと選別作業を手早く進めた。体長50~60センチ、平均の重さは2キロ未満で、1キロ当たり700~880円で取引。地元の水産加工業者、県内外のスーパーやすし店に流通する。
 
漁船から釜石市魚市場に水揚げする社員

漁船から釜石市魚市場に水揚げする社員

 
仕分け作業は自動重量選別機を使って効率化

仕分け作業は自動重量選別機を使って効率化

 
 この日は魚の大きさなどを確かめる“プレ出荷”としての水揚げで、本格的にスタートするのは6月に入ってから。水温などを考慮しながら7月後半まで20回程度を予定する。
 
 「去年よりサイズが少し大きい」と感触を話したのは同社代表取締役の泉澤さん(64)。今季はいけす2基に稚魚約28万尾を入れ、密度を高めて育てている。「投入時、200グラムに満たないものだったから少し心配したが、いい誤算。高水温を見越して早めに出荷としたが、思っていたより水温は低め。低水温だと餌を食べないが、今年は食べた」と、手探りながらも順調な成育ぶりにほっとした様子。3キロほどに成熟した魚体もあり、本格化するシーズンに期待を高める。
 
市場を活気づけた釜石湾産の「はまゆりサクラマス」

市場を活気づけた釜石湾産の「はまゆりサクラマス」

 
 試食会もあり、刺し身で味わった関係者らは「うまい」「いくらでも食べられる」と評価。「脂が身全体にのっているのに、さらりとした味わいが特徴。いい仕上がり」とうなずく泉澤さん。釜石地域では「ママス」の名でなじみのある日本の在来種のサクラマスに「希少性」を見いだし、増産を計画する。将来的には500トンを目指すとし、「知名度が高まり、ニーズが広がってくれたら。刺し身でも焼いてもうまいサクラマスを全国の皆さんに食べてほしい」と話した。
 
水揚げ後に開かれた養殖サクラマスの試食会。刺し身で味わう

水揚げ後に開かれた養殖サクラマスの試食会。刺し身で味わう

 
「いい仕上がり」とPRする泉澤代表取締役(左)、小野共市長(中)ら

「いい仕上がり」とPRする泉澤代表取締役(左)、小野共市長(中)ら

 
 同社は市、岩手大などとコンソーシアムを構成し、2020年から試験養殖を開始し、22年に事業化。種苗生産を自社で賄い、安全供給を実現する。環境負荷の小さい養殖業に与えられる国際認証(ASC)も取得。水産物の高付加価値化に取り組む。
 
 小野共市長は「近年の水揚げ量はかなり厳しいと認識。そうした中で海面養殖は釜石、岩手県の漁業に弾みをつけるものだ。全力で応援、バックアップしたい」と強調した。

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風車建て替え11基で運転再開 ユーラス釜石広域ウインドファーム 現地で竣工式

風車を建て替え、3月から営業運転を開始した「ユーラス釜石広域ウインドファーム」の竣工を祝った関係企業、自治体の代表者ら

風車を建て替え、3月から営業運転を開始した「ユーラス釜石広域ウインドファーム」の竣工を祝った関係企業、自治体の代表者ら

 
 釜石、遠野、大槌2市1町にまたがる風力発電所「ユーラス釜石広域ウインドファーム」は、2023年8月から進めてきた風車の建て替えが完了し、本年3月から営業運転を開始している。1基あたりの出力が大きい風車を導入し、以前の43基から11基に集約。これまでと同規模の発電量を維持する。22日、新山展望台近くの6号機ヤードで、事業者のユーラスエナジーホールディングス(諏訪部哲也代表取締役社長、本社:東京都千代田区)による竣工式が行われた。
 
 関係者約120人が出席。神事で自治体や関係企業の代表が神前に玉串をささげ、新施設の安全操業を祈願した。事業者を代表し諏訪部社長は「単なる設備の更新ではなく、これまで築いてきた地域との信頼関係、風という貴重な資源を次の世代へ確実につなげていくための新たな一歩。今後も安全を最優先とした安定操業に努め、脱炭素社会の実現と地域の持続的な発展に貢献していきたい」とあいさつした。
 
竣工式の神事で発電所の安全操業を祈る出席者ら

竣工式の神事で発電所の安全操業を祈る出席者ら

 
あいさつしたユーラスエナジーホールディングスの諏訪部哲也社長(左上)、平野公三大槌町長(右上)

あいさつしたユーラスエナジーホールディングスの諏訪部哲也社長(左上)、平野公三大槌町長(右上)

 
 来賓の平野公三大槌町長は「自然災害に直面するたび、持続可能なエネルギー社会構築の必要性を強く実感する。本事業は再生可能エネルギー先進地域としての新たな可能性を示すもの。災害発生時にも安全、安定的に稼働するクリーンエネルギー施設の存在は、地域の回復力向上にも資する」と期待を述べた。
 
出席者は神職のお祝いの言葉の後、お神酒をいただいた

出席者は神職のお祝いの言葉の後、お神酒をいただいた

 
 同発電所は2004年12月から営業運転を開始。約20年が経過し、高経年化が進んだため、設備の全面的な更新(建て替え)を行うことになった。23年3月に営業運転を終了。既存の風車43基を撤去し、新たに大槌町側の東サイトに8基、釜石、遠野市側の西サイトに3基の計11基を建設する工事が行われた。
 
 新設風車はベスタス社(デンマーク)製で、1基あたりの出力は国内最大級となる4200キロワット(以前は1000キロワット)。ブレード(羽根)3枚が描く円の直径(ローター径)は117メートル。タワーの高さは84メートル。11基の総出力は以前と同じ4万2900キロワット。これは一般家庭約2万4000世帯の消費電力に相当する電力供給量で、年間約4万トンのCO2削減効果が見込まれる。風車の大型化と集約化で発電量の増加、メンテナンス効率の向上が期待される。売電先は東北電力ネットワーク。
 
以前より大型の風車で営業運転する釜石広域ウインドファーム(写真提供:ユーラスエナジーホールディングス)

以前より大型の風車で営業運転する釜石広域ウインドファーム(写真提供:ユーラスエナジーホールディングス)

 
8基の風車が稼働する東サイト(写真提供:ユーラスエナジーホールディングス)

8基の風車が稼働する東サイト(写真提供:ユーラスエナジーホールディングス)

 
 釜石市の小山田俊一産業振興部長は「当市は2050年までにCO2排出実質ゼロを目指す『ゼロカーボンシティ』への取り組みを進めている。本ウインドファームの稼働は脱炭素社会実現を大きく推進させる。更新した施設が地域のシンボルとして親しまれ、安定したエネルギー供給により、持続可能なまちづくりへの力強い原動力となることを願う」と述べた。
 
 地球温暖化の進行で再生可能エネルギー導入の必要性が一層高まる中、ユーラス社は3市町の高原地帯に風車を増設する計画も進めている。
 
釜石市の和山高原などに3基が設置された西サイト。稜線を走る通称「スリーグリーンライン」から圧巻の風車風景を臨める

釜石市の和山高原などに3基が設置された西サイト。稜線を走る通称「スリーグリーンライン」から圧巻の風車風景を臨める

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酒造り支える田んぼ(大槌)で挑戦 釜石・浜千鳥の体験塾 親子ら、田植えに歓声

浜千鳥酒造り体験塾で田植えに取り組む参加者

浜千鳥酒造り体験塾で田植えに取り組む参加者

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は17日、大槌町大槌の田んぼで田植え体験会を開いた。地元の釜石や大槌のほか、盛岡、宮古、東京など岩手県内外から親子連れや学生ら約120人が参加。ぬかるむ泥の感触を楽しみつつ、酒造りの一端に触れた。
 
 体験の場は、同社に酒米を提供する佐々木重吾さん(69)の田んぼ(約7アール)。晴天の下、大人も子どもも泥まみれになりながら、酒米「吟ぎんが」の苗を横一列で手植えしていった。
 
参加者は横一列に並んで吟ぎんがの苗を植え付けた

参加者は横一列に並んで吟ぎんがの苗を植え付けた

 
 初めて体験した子どもたちは「気持ちいい」「ふにゅふにゅしてる」「ちょっとぬるい」などと、はしゃぎながら作業。大船渡市の小学生廣田千佳さん(8)は「天気がよくて気持ちいい。成長が楽しみ。おいしいお米ができたらいいな」とはにかんだ。父親の将さん(38)は「泥に触れる機会はめったになく、子どもたちの思い出になればと参加。人と触れる場でもあり、ずっと続いてほしい取り組み」と目を細めた。
 
青々とした苗を手に笑顔を見せる家族連れ

青々とした苗を手に笑顔を見せる家族連れ

 
幅広い世代が集結。苗の手植えに挑戦した

幅広い世代が集結。苗の手植えに挑戦した

 
子どもも大人も泥だらけになりながら作業を楽しむ

子どもも大人も泥だらけになりながら作業を楽しむ

 
 苗ができるだけ等間隔になるよう、スタッフが張ったロープに沿って植え付けるといった工夫も。釜石市内の銀行に勤める行員の佐藤碩人さん(24)は昨年に続いて2回目の参加で、「作業の大変さ、工夫あっての田植えを体験できるいい機会」と心地よい汗を流した。実は、日本酒に苦手意識があるというが、「浜千鳥は飲みやすい」とニヤリ。酒造りの一工程に携わったことで「より一層おいしく飲めそう」と心待ちにした。
 
 岩手大の学生団体「いわてi-Sakeプロジェクト」のメンバー5人も力を発揮した。農学部1年の桑野陽菜さん(19)、伊藤月野さん(18)は農業、米作りに関心があり、さらに酒造りの流れを知りたいと参加。「中腰の作業は腰が痛くなるし、泥に足をとられて大変だった。幅広い年代の人たちと関わりながら作業ができて楽しかった」と爽やかな笑顔を重ねた。それぞれ神奈川県横浜市、秋田県鹿角市の出身で、「いろんなことに挑戦したい」とあふれる意欲も共通。酒をたしなむのはまだ先だが、「いつか味わってみたい」と楽しみを残した。
 
手植えの大変さを実感。ひと休みして腰の筋肉を伸ばしたり

手植えの大変さを実感。ひと休みして腰の筋肉を伸ばしたり

 
力を合わせて7アールの田んぼに酒米の苗を植え付けた参加者

力を合わせて7アールの田んぼに酒米の苗を植え付けた参加者

 
 佐々木さんが会長を務める大槌酒米研究会では今年、6個人1法人が同社に供給する吟ぎんがを栽培。体験会の田んぼを含めて約20ヘクタールに作付けした。昨年より5日ほど早く進行。苗の出来もよく、「根づきが早いかも」との見立てだ。一方、今後の天候が読めない状況は例年通りのようで、佐々木さんは「やってみないと分からない」と笑う。
 
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苗の植え方を伝える佐々木重吾さん(右)。体験を通して農業や米作りへの理解が深まるのを願う

 
作業の安全や豊作を祈り行われた神事。新里進社長(右上)らが玉串をささげた

作業の安全や豊作を祈り行われた神事。新里進社長(右上)らが玉串をささげた

 
 地産地消の酒造りを目指す同社では、同研究会が栽培する吟ぎんがを使い「ゆめほなみ」などを醸造。今では同社が使うコメの半数を占める。そうした取り組みを理解してもらおうと、「酒造り体験塾」を展開。今後は稲刈りや仕込み体験も予定する。
 
 新里社長(68)は多世代の関わりについて「若い人のアルコール離れがある中で、日本の文化を見直す機会になるのでは。心強い。日本酒への親しみも感じてもらえるといい」と歓迎。「いい酒を届けたい」。これから始まる酒造りに腕まくりする。

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苦難乗り越え40周年 釜石地方森林組合が記念行事 式典&東京大 鈴木俊貴准教授講演

釜石地方森林組合創立40周年記念式典で表彰された役員、協力事業者の代表

釜石地方森林組合創立40周年記念式典で表彰された役員、協力事業者の代表

 
 釜石地方森林組合(野田武則代表理事組合長、組合員1616人)の創立40周年記念式典は11日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。東日本大震災、尾崎半島林野火災と大きな困難を乗り越えてきた歩みを振り返り、支援者らに感謝の気持ちを表した。記念講演では、野鳥のシジュウカラが異なる鳴き声を使い分けて意志疎通を図っていることを発見した、東京大先端科学技術研究センター准教授の鈴木俊貴さんが講演。森の豊かさと人間との関係について考えるパネルディスカッションも行われた。
 
 約700人が参加。式典で野田組合長は、震災で甚大な被害を受けた組合の復興を支えてきた多くの関係者、組合員に深く感謝。「森林を取り巻く環境はさまざまな課題を抱えるが、地域の宝である森林を大切に守り育て、地域に貢献できる組合としてさらなる飛躍を目指す所存」と決意を述べた。
 
記念式典の冒頭、森林組合綱領を唱和する組合員ら

記念式典の冒頭、森林組合綱領を唱和する組合員ら

 
 同組合は1985年、釜石、大槌両市町の森林組合が合併して発足した。2011年の東日本大震災では、当時の組合長ら役職員5人が津波の犠牲となり、只越町にあった事務所が流失。組合存続の危機的状況の中、官民の指導、支援を受けながら復旧復興にまい進し15年、片岸町に新事務所を構えた。
 
 事業再生にあたっては異業種の助言も受け、課題克服に取り組んできた。地域産業の未来を見据え、15年から5年間、人材育成のための林業スクールを開講。16年には新日鉄住金(現日本製鉄)釜石の石炭火力発電所に納入するバイオマス燃料の木材販売代金の収益の一部を積み立てる「釜石地域森林整備基金」を創設。組合員への助成で、森林整備にかかる負担を軽減する仕組みをつくった。17年に発生した尾崎半島林野火災の被災木活用も推進。釜石鵜住居復興スタジアムの建物や座席シートなどに使われたほか、各種木製品に加工された。持続可能な森づくり、森林資源の循環利用、組合員への利益還元など、同組合の先進的な取り組みは各方面から高く評価されている。
 
 式典では、歴代代表理事組合長2人、長年、理事や監事を務めた組合員4人、協力事業者6人を表彰。震災後の組合事業を支えてきた10企業・団体に感謝状を贈った。釜石市と大槌町には記念品の目録が贈呈された。
 
第5代代表理事組合長を務めた久保知久さんに野田武則現組合長から表彰状を贈呈

第5代代表理事組合長を務めた久保知久さんに野田武則現組合長から表彰状を贈呈

 
震災後の組合を支援してきた10企業・団体に感謝状を贈呈。バークレイズ証券が代表して受け取った

震災後の組合を支援してきた10企業・団体に感謝状を贈呈。バークレイズ証券が代表して受け取った

 
被表彰者は次の通り。
【歴代代表理事組合長】久保知久(第5代、2期5年2カ月)、植田收(第6代、1期3年)
【役員】佐々木廣(理事、6期18年)、阿部公一(理事、7期21年)、山崎巍(監事、7期21年)、柏木公博(監事、8期24年)
【協力事業者】福浦正一、大萬梅治、久保正勝、齊藤義一、及川一男、小笠原松見
【企業、団体】バークレイズ証券、日鉄興和不動産、日本製鉄北日本製鉄所釜石地区、オカムラ、乃村工藝社・ノムラ協力会、千代田化工建設、SANU、大成建設、岩手県協同組合間連携協議会、連合岩手釜石・遠野地域協議会
 

「僕には鳥の言葉がわかる」 東京大 鈴木俊貴准教授(動物言語学者)が記念講演

 
シジュウカラに言葉があることを発見した東京大先端科学技術研究センターの鈴木俊貴准教授(右)。組合40周年記念で講演した

シジュウカラに言葉があることを発見した東京大先端科学技術研究センターの鈴木俊貴准教授(右)。組合40周年記念で講演した

 
 釜石地方森林組合の40周年記念事業として行われた基調講演。講師に招かれたのは、「動物言語学」という新たな分野で国内外から注目を集める東京大先端科学技術研究センター准教授の鈴木俊貴さん(42)。本県では初めての講演となり、組合員だけでなく一般聴講者も多数集まった。
 
 幼い頃から生き物観察が好きだった鈴木さんは、高校生の時に始めたバードウオッチングで野鳥に興味を持った。研究ができる大学に進み、3年の冬に入った長野県の森で、シジュウカラが状況によってさまざまな鳴き声を使い分けていることに気付く。「シジュウカラにとって言葉になっているのでは」と考え、本格的に研究を始めた。講演では、録音した鳴き声や行動を捉えた映像を示しながら、森の中で20年以上続けてきた研究の成果について紹介した。
 
1年のうち長い時で10カ月以上森の中で調査を行うという鈴木准教授

1年のうち長い時で10カ月以上森の中で調査を行うという鈴木准教授

 
 シジュウカラは天敵が現れた時、餌を見つけた時、繁殖の縄張りを主張する時などで、異なった鳴き声を発するという。天敵の中でもヘビが迫っている時にしか出さないのが「ジャージャー」という鳴き声。1羽がこの声を出すと、周りにいる仲間は地面をじっと見るなどヘビを探すような動きを見せる。「頭の中にヘビをイメージしていることを証明できれば、『ジャージャー』は(シジュウカラにとって)ヘビを指す言葉(単語)であろう」。そう考えた鈴木さんは、録音した鳴き声を聞かせながらヘビに見立てた小枝を幹に沿って引き上げ、ヘビと見間違えるかどうかという実験を実施。ヘビに似ていない枝の動きも試したが、反応があったのは前者のみ。「ジャージャーという声は聞き手のシジュウカラの頭にヘビを思い描かせていて、ヘビを探す行動につながっていた。言葉は頭にイメージを呼び起こすものであることから、ジャージャーはヘビを示す言葉といえる」と鈴木さん。
 

 
 しかも、シジュウカラは異なる鳴き声を組み合わせて文章を作ることができるという。例えば「ピーツピ(警戒して)、ヂヂヂ(集まれ)」という組み合わせ。音声ファイルをスピーカーから流すと、複数のシジュウカラが首を振りながら近づいてくる。さらに天敵のモズの剝製を置くと、羽を動かして威嚇し追い払おうとする。鈴木さんの実験では、語順を逆にすると意味が伝わらず、追い払い行動も見られなかった。文法があり、1羽が「ピーツピ、ヂヂヂ」の順で発した時だけ他の仲間が認識しているという。親鳥が発する警戒の鳴き声はひな鳥も理解。巣箱の中にいても、どんな天敵が迫っているのかを判断し、身を守る適切な行動を取っていることが分かった。
 
 鈴木さんは「2000年以上昔から『言葉を持つのは人間だけ』、鳥の鳴き声も感情が表れているだけと考えられてきたが、そうではない。研究で、シジュウカラは単語、文章を使い、文法のルールを認識してコミュニケーションを取っていることがわかってきた」と説明。世界初の解明で国際的な賞も受賞していて、「新たに立ち上げた『動物言語学』という分野を次世代に伝えていきたい」と望んだ。
 

 
興味深いシジュウカラの能力を知り、目からうろこの観客。釜石での講演に感謝の拍手を送った

興味深いシジュウカラの能力を知り、目からうろこの観客。釜石での講演に感謝の拍手を送った

 
「森の役割を再認識し、次世代につないでいくためには?」。さまざまな視点で意見を交わしたパネルディスカッション

「森の役割を再認識し、次世代につないでいくためには?」。さまざまな視点で意見を交わしたパネルディスカッション

 
 講演に続くパネルディスカッションのテーマは「森の恵みに感謝し、豊かな森を未来に引き継ごう」。鈴木さんのほか、各界で活躍する5人がパネリストとして登壇。さまざまな観点から森林の保全、継承の重要性について話した。
 
 盛岡市の料理研究家、小野寺惠さんは東京で子育て中に公害を経験。35年前に本県に移住した。「岩手の農産物は豊かな土壌、水から生まれる。きれいな空気も含め、全て岩手の森林によって作り出されたお宝」と絶賛。おおつち百年之業協同組合の佐々木重吾理事長は「水でつながる山川海の自然サイクルの中で私たちは生かされている。謙虚になり、今の森を大事に守っていかねば。1次産業は持続性に危ういところがあるが、複数の産業が連携し雇用を生めば、独自の経済圏を作り出せるのではないか」と話した。
 
写真左上:小野寺惠さん(メグミプランニング代表)、同右上:佐々木重吾さん(おおつち百年之業協同組合理事長)

写真左上:小野寺惠さん(メグミプランニング代表)、同右上:佐々木重吾さん(おおつち百年之業協同組合理事長)

 
 岩手大農学部地域環境科学科の伊藤幸男教授は「森があること自体が大きな富。林業経営をうまく成り立たせるような制度、政策を今、構築しておかないと、次世代への継承が難しくなる」と指摘。大槌町でジビエ事業を手がけるMOMIJIの兼澤幸男代表はシカによる森林被害を減らし、土砂災害の危険性や生物多様性の低下を防ぐ同社の取り組みを紹介。次世代に豊かな森を残すためには「自然との共生が不可欠。森での体験活動を通じて子どもたちにも興味をもってもらえるようにしたい」と話した。
 
写真左上:伊藤幸男さん(岩手大農学部地域環境科学科教授)、同右上:兼澤幸男さん(MOMIJI代表)

写真左上:伊藤幸男さん(岩手大農学部地域環境科学科教授)、同右上:兼澤幸男さん(MOMIJI代表)

 
 釜石地方森林組合の高橋幸男理事兼参事は「森林業の使命は山から受けている恩恵を次の世代に送っていくこと」とし、地域で森づくりを支える取り組みの必要性を示唆。「異業種の知恵を得ながらチャンスを広げ、やれることを明確にし、若い世代もやる気を持って参画できる仕組みにしていかなければ。森の多様性を生かし、持続可能な地域づくりにつなげていきたい」と未来を見据えた。各パネリストの話を受け、鈴木さんは「森の豊かさにはいろいろな切り口がある。『緑を守ろう』という話をしても、何らかの体験がないと、その言葉は響かない。自然とのつながりを感じられる体験機会を積極的に増やしていくことが大事」とアドバイスした。