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2050年ゼロカーボン実現へ 「脱炭素先行地域」認定の釜石市 目標達成へ取り組み加速

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 昨年9月、環境省の「脱炭素先行地域」に選定された釜石市は、2025年度から再生可能エネルギー導入や脱炭素をテーマにした企業研修受け入れへの取り組みを加速化させる。同市が掲げる50年度の「温室効果ガス排出量実質ゼロ(ゼロカーボンシティ)」の目標達成へ、国の財政支援を受けながら官民一体となって取り組む。市民の意識、行動変容も促しながら、地球温暖化防止策を強力に推し進める。
 
 猛暑や豪雨など異常気象発生の要因として考えられる地球温暖化。その対策として世界的に求められている「温室効果ガス排出量削減」に向け、釜石市は2021年10月、脱炭素社会を目指す「ゼロカーボンシティ」を表明。22年1月、同推進室を設置した。23年10月、温室効果ガス排出量を30年度に55%削減(13年度比)、50年度に排出量実質ゼロを目標とする「第二次市環境基本計画」を策定。24年3月には、同市の再生可能エネルギー(陸上風力、太陽光、水力、バイオマス)の活用をさらに進める「市再生可能エネルギービジョン」を示し、再エネ発電、熱利用の導入量を30年度までに約3倍(22年3月比)とする目標を掲げた。
 
釜石市再生可能エネルギービジョン(2024年3月策定)で示された将来像

釜石市再生可能エネルギービジョン(2024年3月策定)で示された将来像

 
 これら目標達成に拍車をかけるのが、環境省による「脱炭素先行地域」の選定。地域特性を生かした脱炭素の取り組みを国が支援するもので、釜石市は第5回の公募で、産学官29の共同提案者と共に選ばれた。同市の計画は、太陽光発電の導入拡大と脱炭素をテーマにした企業研修の受け入れを柱に、温室効果ガスの実質削減、内外の企業や一般市民の意識、行動変容につなげるもの。中心市街地、鵜住居の2エリアを対象に事業を展開する。
 
 中心市街地への再エネ発電による電力供給地として、片岸公園隣接地2.5ヘクタールに「地域共生型太陽光発電」施設を整備。公園周辺の自然環境と共生するため、敷地外周への樹木の植栽、昆虫や野鳥などの生息を助けるエコスタック、バードバスの設置を検討する。年間発電量は約330万キロワットアワー(kWh)。一般家庭約790世帯分を見込む。事業収益の一部は生物多様性保全活動に還元。27年度からの運用開始を目指す。「小規模分散型太陽光発電」として、中心市街地の施設や住宅などへの設備導入も進める。
 
脱炭素先行地域の事業対象は釜石市内2エリア

脱炭素先行地域の事業対象は釜石市内2エリア

 
「地域共生型太陽光発電」が行われる片岸公園周辺。自然環境に配慮した策を検討

「地域共生型太陽光発電」が行われる片岸公園周辺。自然環境に配慮した策を検討

 
 釜石ならではの取り組みの一つが、鉄鋼スラグを活用した藻場再生。ブルーカーボンクレジット(海洋植物の二酸化炭素吸収量を数値化し取引する仕組み)の創出に寄与するほか、ウニ食害対策モデルの可能性も探る。日本製鉄が唐丹町、釜石東部両漁協の協力を得て、24年度は約20トンを設置した。
 
 木質バイオマスの熱利用策として、まきストーブ12台を市内の施設などに導入。みちのく潮風トレイル、世界遺産「橋野鉄鉱山」観光などへの活用を想定し、レンタルEV(電動)バイク10台も導入予定。電気は地域の再エネを活用する。
 
 市内の脱炭素コンテンツをプログラムに取り入れた新たな「釜石版サステナブルツーリズム」(企業研修)を展開するため、研修を受け入れるかまいしDMCが、拠点となる企業向けワーケーション施設を浜町に整備中。エコマテリアル(環境に配慮した材料、技術)を採用し、太陽光発電・蓄電池、まきストーブの導入などで環境配慮のショーケースとしての役割を担う。
 
企業向けワーケーション施設は、かまいしDMCが企業版ふるさと納税などを活用して整備。地域脱炭素の活動拠点となる

企業向けワーケーション施設は、かまいしDMCが企業版ふるさと納税などを活用して整備。地域脱炭素の活動拠点となる

 
 市はこの計画で、電力消費に伴う二酸化炭素(CO2)排出量を約7万トン削減。再エネの地産地消でエネルギー代金の流出抑制、地域内の経済循環を促すとともに、脱炭素・環境を軸としたサステナブルツーリズムで交流、活動人口の拡大を図りたい考え。2月26日には、市、共同提案者、協力事業者らで組織する「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」を設立(正会員30、協力会員9)。規約の承認、役員の選任後、事業推進を図るための15のワーキンググループを設置した。
 
2月26日に開かれた「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」設立総会

2月26日に開かれた「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」設立総会

 
3月21日の釜石市環境審議会では脱炭素先行地域の取り組みが説明された

3月21日の釜石市環境審議会では脱炭素先行地域の取り組みが説明された

 
 25年度は地域共生型、小規模分散型両太陽光発電のためのSPC(特別目的会社)2社の設立に向けた協議、分散型発電の制度設計(民間商業施設、水産関連施設など)、住民や事業者の相談窓口、人材育成、普及啓発セミナー開催などを担う「釜石市デコ活支援センター」の設立を予定する(デコ活=脱炭素とエコを組み合わせた運動の愛称)。
 
 市国際港湾産業課ゼロカーボンシティ推進室の神山篤室長は「先行地域に選ばれたことで国の財政支援が受けられ、地域のCO2排出削減への取り組みを加速化できる。目標達成に向け、事業を着実に進めていきたい」と今後を見据える。
 

企業、団体間連携で広がる脱炭素、エコアクション ラグビー釜石SWホーム戦会場では…

 
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日本製鉄釜石SWのホーム戦ではリサイクル可能な「1DAYスチールカップ」が来場者に配られた=8日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
 今月8日、釜石鵜住居復興スタジアムで行われたラグビーリーグワン2部の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)とレッドハリケーンズ大阪の試合。約4400人が訪れた会場内で来場者に無料で配られたのは、リサイクル可能なスチール素材の飲料用カップ。リーグワンプリンシパルパートナー、三菱UFJフィナンシャル・グループの三菱UFJ銀行と、釜石SWメインスポンサーの日本製鉄(市脱炭素先行地域推進協会員)、総合容器メーカーの大和製罐の3社が連携したエコプロジェクトとして実施された。
 
ベアレン醸造所(盛岡市)はスチールカップ利用で樽生ビール内容量4割以上増量のサービスを実施

ベアレン醸造所(盛岡市)はスチールカップ利用で樽生ビール内容量4割以上増量のサービスを実施

 
 釜石SWのチームカラー赤を基調とした限定デザインで、会場内のフードスペース対象店舗で利用すると、飲み物の割引や増量などのサービスが受けられる特典もあった。容器・包装の回収、リサイクルを行う青南商事(釜石SWパートナー)の協力で、使用済みカップの回収ボックスも設置された。ごみ減量、再資源化は地球温暖化対策への第一歩。多くの人たちが環境に配慮した行動への意識を高めた。
 
バイオディーゼル燃料発電で映像を映し出した「大型ビジョンカー」=8日

バイオディーゼル燃料発電で映像を映し出した「大型ビジョンカー」=8日

 
 観光地域づくり法人かまいしDMC(市脱炭素先行地域推進協会員)はこの日、試合をリアルタイムで映し出す大型ビジョンカーの電力供給に協力。使用済みの食用油から作られたバイオディーゼル燃料による発電で、CO2排出量削減に貢献した。
 
 同社は管理・運営業務を行う同市鵜住居町の根浜シーサイド(レストハウス)で、地域から出る廃食油を回収している。集められた油は、再生可能エネルギーを生かした循環型地域づくりに取り組む橋野町の一般社団法人ユナイテッドグリーン(山田周生代表理事)が燃料に精製。市内のスポーツ大会やイベント、イルミネーション点灯などで使う発電機の燃料に活用されてきた。
 
 SWホーム戦での同発電は約2年前から試験的に実施。今回が本格スタートとなった。大型ビジョンカーにつないだ発電機には、同燃料約20リットルを給油。前日のリハーサルから試合終了までの電力供給を担った。この日は、会場内で出店した9店舗から約100リットルの廃食油も回収した。次回のホーム戦の発電で活用される。
 
試合前日、廃食油を精製した燃料を発電機に給油するかまいしDMCのスタッフ

試合前日、廃食油を精製した燃料を発電機に給油するかまいしDMCのスタッフ

 
営業を終えた出店者から使用済み食用油を回収。9店舗が協力した(写真提供:かまいしDMC)

営業を終えた出店者から使用済み食用油を回収。9店舗が協力した(写真提供:かまいしDMC)

 
来場者や出店者にチラシを配布して取り組みをPR(写真提供:かまいしDMC)

来場者や出店者にチラシを配布して取り組みをPR(写真提供:かまいしDMC)

 
 バイオディーゼル燃料は植物由来の油が原料。植物は生育過程で光合成によってCO2を吸収。同燃料の使用時に排出されるCO2量は植物の吸収量と同等とみなされ、地球上のCO2量はプラスマイナスゼロ(大気中のCO2を増やさない)という「カーボン・ニュートラル」の考え方から、地球温暖化防止への効果が期待される。化石燃料の代替エネルギー、資源循環型社会構築の要素としても注目される。
 
 来場者には同発電の取り組みを知らせるチラシも配布した。かまいしDMC地域創生事業部の佐藤奏子さんは「バイオディーゼル燃料は軽油の代替品として使用可能。市が目指す2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロにも貢献できると考える。廃油が資源になり、燃料の地産地消につながる取り組みを今後も継続していきたい」と話す。

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釜石で洋式高炉操業成功 大島高任の知識はどこから? 鉄の歴史館・小野寺英輝名誉館長が講演

講演した鉄の歴史館名誉館長の小野寺英輝さん(岩手大理工学部准教授)

講演した鉄の歴史館名誉館長の小野寺英輝さん(岩手大理工学部准教授)

 
 釜石市立鉄の歴史館の名誉館長を務める小野寺英輝さん(岩手大理工学部准教授)の講演会が15日、同市大平町の同館で開かれた。2019年の就任以降、年1回実施する同館主催事業。今回は「教育面から見た大島高任」と題し、釜石で鉄鉱石が原料の洋式高炉による鉄づくりに成功した大島の学びの軌跡にスポットを当てた。市民ら22人が聴講した。
 
 1857(安政4)年、盛岡藩甲子村大橋(現釜石市甲子町同)に洋式高炉を築造し、日本初の鉄鉱石を原料とした連続出銑に成功した大島高任(1826-1901)。後に“近代製鉄の父”と称される大島は、全国の主要鉱山の開発も手掛け、日本鉱業界の第一人者としても知られる。その活躍の裏にあるのが、各地に出向いて得た豊富な知識。小野寺さんはその遊学の歩みについて解説した。
 
10代から学びを深め、日本鉱業界に数々の足跡を残した大島高任

10代から学びを深め、日本鉱業界に数々の足跡を残した大島高任

 
 盛岡生まれの大島は藩校「明義堂」で学んだ後、医学修行のため17歳で江戸に留学。オランダ医学やオランダ語、西洋史、兵学、宗教学に精通した箕作阮甫(みつくりげんぽ)に入門、医学は坪井信道にも教わった。一度、盛岡に戻ったが、砲術の習得を命じられ1846年に長崎へ。砲術の大家・高島秋帆の子息浅五郎に学び、発砲の免許皆伝を受けたとされる。3年後、長崎から大坂(大阪)に向かい、緒方洪庵の適塾(西洋医学、オランダ語)で1年ほど学んだ。滞在中、依頼を受け大砲の鋳造を指導。帰藩後、「西洋操銃編」などの冊子を作った。大島唯一の著作物とされる。
 
大島は20代前半に長崎で砲術を学び、免許皆伝を受ける

大島は20代前半に長崎で砲術を学び、免許皆伝を受ける

 
大坂(大阪)から帰藩後、再び江戸へ。伊東玄朴に師事する

大坂(大阪)から帰藩後、再び江戸へ。伊東玄朴に師事する

 
 1852年、西洋砲術研究のため再び江戸へ。入門した伊東玄朴は、オランダ人技師ヒュゲーニンが執筆した大砲鋳造法や高炉技術についての書物を翻訳した一人。小野寺さんは「ヒュゲーニンの著書を翻訳したもののうち、主要な3つ全てに大島が関わっている。本を読むだけでなく、訳した人からも話を聞ける環境にあった」とした。
 
 大島は長崎などで共に学んだ仲間らと水戸藩那珂湊の反射炉建設に従事。1856年、鉄製大砲の鋳造に成功したが、従来の砂鉄原料によるたたら銑では強度に問題があったため、磁鉄鉱を用いる洋式高炉の建設に乗り出した。翌57年、良質な鉄鉱石が産出される釜石・大橋に高炉を築造。国内で初めて連続出銑に成功した。
 
大島はヒュゲーニンの著書を翻訳した「鐵熕鋳鑑(てっこうちゅうかん)」を参考に釜石・大橋の洋式高炉を造ったとされる

大島はヒュゲーニンの著書を翻訳した「鐵熕鋳鑑(てっこうちゅうかん)」を参考に釜石・大橋の洋式高炉を造ったとされる

 
 1862年、江戸幕府が洋書翻訳と洋学研究、教育のために設立した「蕃書調所(ばんしょしらべしょ)」の出役教授となり、新設された製錬学を担当。幕府お雇いの米国人技師パンペリー、ブレークらと蝦夷地(北海道)の炭鉱調査に行き、発破技術も学んだ。時を同じくして、医学と洋学教育を行う私塾「日新堂」を盛岡に設立。藩校・明義堂は武士のみの入校だったが、日新堂は町人も受け入れた。当時の日本の就学率は60~80%(米、仏は30%)。寺子屋は6歳ごろから通え、さらに勉強したい人は私塾に進んだ。大島はパンペリーが箱館(函館)に設立した坑師学校(鉱山技術者養成)にも関わっていたとみられる。
 
 この後も尾去沢、小坂鉱山などの開発に着手。明治に入ると新政府の鉱山権正(鉱山局次長)、大学大助教(筆頭助教授)に任じられ、岩倉使節団に随行。米国や欧州を歴訪し、ドイツのフライベルク鉱山学校も視察した。帰国後の1874年、官営製鉄所の立地調査で釜石を訪れるが、大島の計画案は採用されなかった。後に阿仁銀山や佐渡金山など全国の主要鉱山の開発に尽力し、日本鉱業会の初代会長となった。
 
鉄の歴史館で開かれた名誉館長講演会。来場者は興味深い話に聞き入った

鉄の歴史館で開かれた名誉館長講演会。来場者は興味深い話に聞き入った

 
 小野寺さんによると、大島の若年時の行動が分かるのは自身が書いた精書履歴(履歴書文案)しかないが、履歴には各地の遊学の記述があり、師事した人物と時代から知識獲得の流れが読み取れる。「日本への西洋技術導入は蘭学から。江戸時代の外国語はオランダ語がメインで、多くの蘭書が日本語に翻訳された。大島高任が釜石で高炉を造る時に参考にしたのもオランダのヒュゲーニンの本」と小野寺さん。江戸時代の日本には海外新聞も入ってきていて、翻訳や手彫り印刷などで時間はかかったものの、世界情勢も知ることができた。大島は外国船の入港で海外の製品や技術、情報がもたらされる中で学びを深めていったと考えられる。

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釜石ラーメン×スタンプ=最高! 3月29日までラリー展開中 楽しみ尽くす旅、やってみた

釜石人のソウルフード「釜石ラーメン」

釜石人のソウルフード「釜石ラーメン」

 
 岩手県釜石市、ご当地の味と言えば…?その一つに挙がるのが「釜石ラーメン」だ。細めの縮れ麺と琥珀色(こはくいろ)の透明感あるスープが特徴の、あっさりとしたしょうゆラーメン。シンプルながらも奥深い味わいで、地元で長く愛されてきた。その味を食べ尽くすスタンプラリーが市内で展開中。食べ歩きを楽しめるうえ、景品というおまけ付きにつられ、記者も挑戦してみた。
 
 スタンプラリーは、映画「釜石ラーメン物語」の公開に合わせ2023年に始めた取り組みで、今回は第2弾。釜石観光物産協会が主催し、期間は1月25日から3月29日までの約2カ月間。市内のラーメン店など対象店(28店舗)でラーメン(釜石ラーメン以外も可)を食べ、台紙に押印をもらう。スタンプ台紙は対象店のほか、市内の観光施設で配布している。
 
 全店制覇の景品は、特製の「釜石ラーメンどんぶり」(先着60人)か「釜石ラーメンれんげ」(同100人)から選ぶ。台紙1枚につき、景品の交換は1回のみ。全店制覇以外にも3店、10店、20店以上達成には地酒や水産加工品などが用意されている。
 
 初参戦の記者は手始めに3店めぐって、オリジナル缶バッジの入手を狙うことに。対象店は市内全域に点在していて、今回は市中心部の大町を歩いた。
 
発祥の店・新華園本店の釜石ラーメン

発祥の店・新華園本店の釜石ラーメン

 
 最初に訪れたのは、その“元祖”ともいえる「新華園本店」。王道の釜石ラーメンを注文した。コシがある極細の縮れ麺、あっさりとしたやさしいしょうゆ味のスープは、どこか懐かしさを感じさせる望郷の味だった。「やっぱり、うまい」
 
 同店は1951年に創業。先代の味を受け継ぐ店主の西条優度(まさのぶ)さん(75)が腕を振るう。「これしかできない。作ったものを喜んでもらえたらいい」。2011年の東日本大震災で厨房(ちゅうぼう)などが傷ついたが、その爪痕を残したまま、その年のうちに再開した。「安否確認などコミュニティーの場にもなっていた」。そんな温かみのある店内の雰囲気は変わらない。
 
「また来るね」の声を励みにする店主の西条優度さん(手前)

「また来るね」の声を励みにする店主の西条優度さん(手前)

 
 コロナ禍以降、商売の厳しさを感じているが、宴会需要を見込んで、中断していた2階部分の開放を思案中。スタンプラリーの実施も歓迎し、「釜石ラーメンと言っても、シバリは緩く、それが面白い。各店舗のこだわり、異なる味わいを楽しんでほしい」と笑う。「全店制覇して、どんぶりをもらったら見せにくるね」という客の再来を楽しみにしている。
 
店名を冠した「あいどるラーメン」

店名を冠した「あいどるラーメン」

 
 次に向かったのは、「らーめん&コーヒー あいどる」。店名はかわいらしいが、意表をついて本格的なラーメンが楽しめる喫茶店だ。厚切りで存在感のあるチャーシュー2枚がのったラーメンが人気だというが、記者は「あいどるラーメン」を注文。ホタテと海老、野菜が入ったあんかけ海鮮スープ(塩味)が細麺にマッチしていた。「おいしい」
 
 店主の金澤重子さん(年齢は秘密)が50年ほど前から切り盛りしている。当初は食堂だったというから、ラーメンがあるのも納得。こちらも震災で被災し、「もう商売は…」と思ったというが、現在、厨房に立つ夫が「やろう」と引っ張り、再開した。
 
外観も店内も、かわいらしい雰囲気が魅力の喫茶店

外観も店内も、かわいらしい雰囲気が魅力の喫茶店

 
 店名の由来を聞くと、「花の名を付けようとしたが却下され、たまたま見かけた花屋からもらった。うちは、やわらかいイメージで平仮名に」とほほ笑む金澤さん。「釜石のラーメンはしょうゆ味でなくとも、あっさり系。細麺だからかな。いろいろ食べ比べて、おいしさを知ってほしい」。店内は昔ながらの喫茶店そのもので、ゆったりと過ごせる空気感も魅力だ。
 
青龍の看板メニュー「味噌チャンポン」

青龍の看板メニュー「味噌チャンポン」

 
 締めとして行ったのは、「中華飯店 青龍」。こちらでは店主おすすめであり、ファンの多い看板メニュー「味噌チャンポン」を味わった。イカ、タコ、豚肉、野菜など具だくさんで、とろみのある卵とじスープが特徴。お好みで特製「辛み」を加えれば、“味変”も楽しめる。この辛みが絶品で、スープも飲み干し完食。「口福」
 
 1981年創業。震災で自宅兼店舗を失ったが、同じ大町内で移転、再出発し、震災前と変わらぬメニューを提供している。味噌チャンポンは店主の池田恭也さん(77)が「店の売りとなるものが1つあればいい」と考案した自慢の味。辛みもしかり。「ピリッとして、おいしさが増す」と作り上げた味を目当てにする人も多いとか。
 
自慢の味を提供し続ける店主の池田恭也さん

自慢の味を提供し続ける店主の池田恭也さん

 
 池田さんを「マスター」と呼びながら、手際よく動く店員の姿も印象に残った。「チャンポンに細麺は意外と思うかもしれないけど、あっさりでいいでしょ。とろみのあるスープと麺もよく絡まる。最後まで飲み切って、エコにもなるし」としっかりPR。気さくな人柄に触れ、心もほんわかあたたまった。
 
 3つのスタンプを集め、景品を交換すべく、釜石観光案内所(鈴子町・シープラザ釜石内、午前9時~午後6時)へ。目当ての缶バッジを手にした。短い味めぐりの旅だったが、「やり切った」という達成感を得た。そして、釜石ラーメンの奥深さを改めて実感。店ごとに味わいが異なり、個性豊かだった。地元の味を知るだけでなく、店主らとの会話を楽しめるのも魅力。今回、記者は出会わなかったが、同じラーメンを求め歩く人との交流もあるらしい。
 
景品と交換。缶バッチは直径約8センチと意外に大きい

景品と交換。缶バッチは直径約8センチと意外に大きい

 
釜石ラーメンスタンプラリーをPRする釜石観光物産協会の職員

釜石ラーメンスタンプラリーをPRする釜石観光物産協会の職員

 
 記者が景品を交換したのは2月10日の昼過ぎ。同協会によると、その時点で記者より先に5人いて、うち3人が全店制覇で市外の人もいるという。仕事で訪れ、いくつか回って記念にする人もいるらしく、あらためて19日に交換者数を問い合わせると、3人増えていた。全制覇は計5人となり、そのうち1人がれんげを選択したとか。ゆるりとしたペースかと感じるも、協会では「特にどんぶりは限りがあるので、お早めに」と呼びかける。
 
 今回のスタンプラリーは観光客が減る冬季の消費活性化が狙い。協会の横木寛裕さん(24)も挑戦中で、こつこつとスタンプを集めている。目指すは全店制覇。「ラーメンを食べながら、あったまってもらえたら。行ったことのない店に足を運ぶきっかけにして新しい発見、お気に入りの味を見つけたり楽しみましょう」と意欲を見せた。
 
 記者は…。食したい店は確かにあるが、財布と相談かな…

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冬のごちそう祭り!釜宴会キャンペーン(第2弾)を開催します!(申請受付は終了しました)

kamaenkai2025
 

2/19(水)10:00 ご好評につき予算額に達したため、申請受付を終了しました。
多数のご利用ありがとうございました。引き続き市内飲食店等の冬の味覚をお楽しみください。
 
2/18(火)17:20 ご好評につき申請受付が予算額間近となりました。
飲食店のご利用をお考えの方は、お早めにお申し込みください。
2/17(月)17:00 対象店舗一覧を更新しました
利用手順の更新及び利用に係る注意事項の追記をしました
2/13(木)17:00 対象店舗一覧を更新しました

 
市は、エネルギー・原油価格や物価高騰の影響を受ける市内飲食事業者等の持続的な経営を支援するため、2人以上で飲食店等を利用した場合の飲食代金を割引するキャンペーンを開催します。
皆様のご利用が地元の飲食店等の支援につながります!釜宴会で、友達や家族、会社の同僚などと一緒に釜石の冬の味覚を楽しみましょう!

割引条件(いずれかを適用)

①2人以上で対象店舗を利用し、人数×4,000円以上(税込)の利用金額の場合
1人当たり 2,000円 割引
②2人以上で対象店舗を利用し、人数×2,000円以上(税込)の利用金額の場合
※7~14時の間に入店し飲食店を利用した場合に限る
1人当たり 1,000円 割引

割引期間

令和7年2月14日(金)~3月16日(日)
※2月11日(火・祝)から申請受付を開始します(窓口申請は2月12日(水)から)。
※予算額に達し次第、終了します。

対象店舗

市内飲食・宿泊事業者のうち、当キャンペーンに参加している店舗
参加店舗の一覧は釜石商工会議所のホームページで確認できます。
(対象店舗一覧は随時更新します)

利用方法

飲食店等を予約後、会食実施の3日前の15時までに利用予定のお店の名称、利用日、利用人数、1人当たりの予算額を、申込フォームまたは釜石商工会議所へ申請書にて申請ください。
※年齢、居住地等問わず、対象店舗をご利用する全ての方がご利用いただくことができます。
申請がない場合、割引の適用ができません。

様式ダウンロード

申請書(飲食店利用確認書)[DOCX:20.6KB]

事務局(お問い合わせ先)

釜石商工会議所 TEL:0193-22-2434

この記事に関するお問い合わせ
産業振興部 商工観光課 商工業支援係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-22-2111 / Fax 0193-22-2762 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2025012300069/
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釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
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夢をカタチに!高校生の挑戦 レンタルスペース×古着屋オープン 釜石大観音仲見世に新風

釜石大観音仲見世通りに開店した古着店とレンタルスペース

釜石大観音仲見世通りに開店した古着店とレンタルスペース

 
 高校生とその母親がそれぞれ店長を務める2つの店が、釜石市大平町の釜石大観音仲見世通りに開店した。レンタルスペース「crush on(クラッシュオン)」と、古着屋「たすいち」。親子がタッグを組んで営業する。「若者の居場所をつくりたい」「みんなのやりたいを応援したい」「釜石を盛り上げたい」という思いを形にした。
 
 クラッシュオン店長は市内在住の小笠原皐さん(16)=一関学院高通信制課程1年。たすいちは母・梓さん(39)が店長だが、主導権を握るのは皐さんだ。
 
古着店に立つ小笠原皐さん(右)と母親の梓さん

古着店に立つ小笠原皐さん(右)と母親の梓さん

 
「crush on」(手前)と「たすいち」が入る建物の外観

「crush on」(手前)と「たすいち」が入る建物の外観

 
 幼い頃にダンスを始め、その衣装に使う古着が好きだった皐さん。中学生の頃には店を持つ夢を持っていた。「本当にやりたいことは?」。進路選択の際、自分自身に問いかけた。「もとからあるものは変えたくなる。ゼロから生み出したい。やっちゃえ」。起業を見据え通信制の高校への進学を決めた。学業の傍ら、市主催の起業塾も受講し、経営のノウハウを学んで準備した。
 
 旧土産物店を改装し、広さは“はんぶんこ”。1月1日にプレオープン、31日に本格的に営業を始めた。古着店にはレディース、メンズ、キッズ用の衣類が並び、バッグやアクセサリーといった雑貨もある。置かれているものは、皐さんが「ビビッときたもの」ばかり。同年代の人たちに手に取ってもらえるよう、価格は1000~4000円を中心に設定する。
 
仕入れのポイントは「かわいさ」とPRする小笠原皐さん

仕入れのポイントは「かわいさ」とPRする小笠原皐さん

 
昭和感あり⁉土産物店時代に使われた棚や置物が活躍中

昭和感あり⁉土産物店時代に使われた棚や置物が活躍中

 
 レンタルスペースには4枚の大きな鏡を設置しており、ダンスや演劇などの練習での利用を見込む。冬場の現在は、こたつを持ち込んでいて、「ただ、のんびりしてもらう」要素を演出。誕生会などイベント利用も歓迎する。利用人数に関わらず、大人は1時間660円、高校生以下は550円。グループ利用で大人がいる場合は660円とする。
 
 クラッシュオンは英語で「夢中になる」という意味で、その言葉を使ったオリジナルブランドを、クリエーターとしても活動する梓さんと考案。関連グッズ(Tシャツ、スエットなど)を古着店に並べている。
 
「使い方は自由に」。小笠原皐さんが経営するレンタルスペース

「使い方は自由に」。小笠原皐さんが経営するレンタルスペース

 
オリジナルブランド「crush on」のロゴ入りスエット

オリジナルブランド「crush on」のロゴ入りスエット

 
 開店から数日たった2月のある日。2人は、来店した人の希望を聞きながら品出ししたり、おしゃべりを楽しんでいた。が、実はこの通り、人影はまばら。かつては約20軒の店が営業していたが、今は2軒だけ。初詣やイベントなど行事があれば人出も伴うが、理由がなければ市民が訪れる機会は多くない。なぜ、ここなのか…。
 
シャッターが下りたままの建物が並ぶ釜石大観音仲見世通り。左側の手前が新店舗

シャッターが下りたままの建物が並ぶ釜石大観音仲見世通り。左側の手前が新店舗

 
 「面白くて、なじみがある場所だから」と皐さん。この通りでは、大人たちがにぎわいを取り戻そうとマルシェやアートイベントなどを催していて、子どもの頃から一家で参加していた。楽しさ、何かに夢中になる人たちの姿を記憶にインプット。そこに集う人たちのように「自分も何かしたい。できることでまちを元気にしたい」と淡い思いを抱いてきた。そして、本当は自分がやりたかった「古着屋がマッチする場所」でもあったから。
 
 釜石が好き―。そんな思いが、皐さんから伝わってくる。そこには、東日本大震災時に支えてもらったことへの感謝がある。津波で自宅が全壊。「当時は守ってもらった立場。まちは復興したけど、元気がない。今度は私がまちを盛り上げる番」と凛とした表情を見せる。
 
 そんな皐さんを、少し離れたところから見守る梓さん。「やってみたらいい。楽しいことをどんどん。やれるタイミングがベストだと思うから。こうした新しい動きがまちの起爆剤になればいい」と、あたたかい視線を送る。
 
ほほ笑ましい親子のやりとりを見られるのも売り!

ほほ笑ましい親子のやりとりを見られるのも売り!

 
 学業があるため、店を開くのは週4回。金曜~月曜の午前11時~午後6時までが基本。「ゆる~く、気負わずにやっていきたい。高校生ならではの目線で、気軽に集まれる場所をつくっていけたら」と皐さん。「世間話をしに立ち寄って」とアピールする。
 
「一般的じゃないかも。でも、いろんな選択肢があるんです」と話す小笠原皐さん

「一般的じゃないかも。でも、いろんな選択肢があるんです」と話す小笠原皐さん

 
 自分たちが楽しいと思うことで、お客さんもハッピーになってくれたら―。一つの願いをかなえると、やりたいことが増えてきた皐さん。編み物、釣り、ネイル、ダンス教室、パン作り…。この空間を生かした活動も思案中だ。「時間が足りない」。笑顔が印象的な16歳の挑戦はまだ続く。「釜石には知らないだけでたくさん面白いことがある。それを伝え、つなげていきたい」

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おいしい「甲子柿」届けたい 釜石の生産者 冬場の管理、知識深化へ講習会

柿の木のせん定の仕方を学ぶ「甲子柿」の生産者ら

柿の木のせん定の仕方を学ぶ「甲子柿」の生産者ら

 
 良い柿の実を作り、収穫、販売につなげようと釜石市甲子町などで1月30日、柿の木のせん定講習会が開かれた。甲子柿の里生産組合(佐々木裕一組合長)が、栽培農家の底上げを狙い、毎年この時期に実施。大船渡農業改良普及センター農業普及員の千田聡実さん(31)が講師を務め、枝切り作業のポイントを教えた。
 
 組合員ら約20人が参加。一部でせん定作業を始めている佐々木組合長(74)の柿畑(甲子・大畑)を見学した後、甲子町松倉で柿を育てる佐野朋彦さん(45)の畑に移動して成木のせん定作業の実演を見守った。
 
甲子町松倉地区の畑で枝切作業の実演を見守る参加者

甲子町松倉地区の畑で枝切作業の実演を見守る参加者

 
 千田さんは「成木は実の付き、バランスを考え、樹形を整える視点が必要」と強調。ノコギリやハサミを手に収穫期に良い実を出すために軸となる枝を決め、日当たりをさえぎるような不要な枝を切っていった。「悩ましいとことは多々あると思う。二股に分かれていたり、上に向かって勢い良すぎるくらい伸びている枝は切った方がいい。幹に向かって内側に伸びる枝も」などと助言。作業しやすさも考慮し、樹高を「ほど良く」することもポイントとして挙げた。
 
 見守った組合員らは「どこを切ればいいか悩む。なかなか切れない」と難しさをこぼした。親の代から柿生産を続ける60代女性は「大木で枝も多く、実がなると重さで垂れさがる。木を小さくコンパクトにしたいが、数が多くて大変。でも、良いものをとって届けたいから、少しずつやってみる」と話した。
 
「自分だったら」と意見を出し合う生産者たち

「自分だったら」と意見を出し合う生産者たち

 
小川町の柿畑で枝切りのポイントを説明する千田聡実さん(左)

小川町の柿畑で枝切りのポイントを説明する千田聡実さん(左)

 
 組合は現在、約30の個人、団体が加入する。昨年は30代の若手1人が加わった。新規就農者や収量アップを考えている人らの参考にと、幼木(植えて1年ほど、未収穫)のせん定方法も研修内容に組み込んだ。小川町の佐々木智勇さん(66)の畑で実演。千田さんは「幼木はまず体をしっかりつくること。よく伸び、成長させることを考えて」とアドバイスした。このほか、参加者は座学で病害虫防除についても知識を深めた。
 
 甲子柿は、甲子地区で育った小枝柿(渋柿の一種)を煙でいぶして甘さを凝縮させた地域の特産品。真っ赤に染まる鮮やかな色味とぷるんとした食感が特長。豊富な栄養素も注目され、国の2つの制度(地理的表示[GI]保護制度、機能性表示食品)で特性が認められている。
 
甲子地区で育つ柿の木。実の色合いは淡い

甲子地区で育つ柿の木。実の色合いは淡い

 
煙でいぶして渋抜きすると、釜石特産「甲子柿」に

煙でいぶして渋抜きすると、釜石特産「甲子柿」に

 
 ただ、近年は気象や温暖化などの影響を受け、一年ごとに豊作と不作を繰り返している。組合ではブランド化を進める中、講習会の開催などで高品質安定生産に向けた栽培管理、技術向上を図ってきた。
 
 組合などによると、2024年は夏場の気温が高めだったものの、順調に成育。ところが、収穫直前、9月の豪雨などで実が落ち、一部では落葉病など病害の影響も重なり、収量が予測より減った。実は残ったとしても、葉が落ちたことで栄養が十分に取り込めず、「甘味が不十分」と収穫を見送った農家もあったという。
 
仲間と情報を交換する佐々木裕一組合長(左)

仲間と情報を交換する佐々木裕一組合長(左)

 
 佐々木組合長も、半分ほどを収穫しなかった。それでも年間収量は例年と変わらずで、「長年の栽培管理のたまものだ」という。一方で、天候などの影響で収穫が遅れ、「自然が相手」の作業に改めて難しさを感じている。
 
 それでも、「好きだから、やれる」と笑う佐々木組合長。高齢の人には“小ぶり”のイメージがある甲子柿だが、最近はずっしりと重みのある“大ぶり”なものも増えている。「地域ならではだから残したい」。楽しみにしている人たちに季節の味を届けるべく、挑戦を続ける。

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より便利にスムーズに 県交通バス釜石大槌路線に地域連携ICカード28日から導入

地域連携ICカード「Iwate Green Pass」をバス車内で試す小野共市長(右)=28日

地域連携ICカード「Iwate Green Pass」をバス車内で試す小野共市長(右)=28日

 
 岩手県交通(本田一彦社長)の釜石営業所管内で28日、地域連携ICカード「Iwate Green Pass(いわてグリーンパス)」の運用が始まった。管内6路線、バス19台に順次導入される。「Suica(スイカ)」など全国交通系ICカードとの相互利用が可能で、独自のポイントサービスもある。スムーズな乗降、利便性向上で地域公共交通の活性化に期待が寄せられる。
 
 28日は釜石市鈴子町の釜石駅前ロータリーで、関係者による運用開始式が行われた。同市の小野共市長は「市内の交通弱者、バス利用者の利便性が大きく向上するものと期待している」とあいさつ。本田社長は「国、県、市町の支援に感謝する。地域のインフラの一部としてご愛顧いただき、皆さまのお力で育てていただきたい」と述べた。初日はICカード対応車両2台が運行した。
 
地域連携ICカードの運用開始を祝う小野市長と県交通の本田一彦代表取締役会長兼社長(右)

地域連携ICカードの運用開始を祝う小野市長と県交通の本田一彦代表取締役会長兼社長(右)

 
運用開始式には県交通と市、釜石駅周辺の事業者、団体など関係者が集まった

運用開始式には県交通と市、釜石駅周辺の事業者、団体など関係者が集まった

 
 いわてグリーンパスはJR東日本の「Suica」をベースにした地域版交通系ICカード。同カードで県交通バスの運賃を支払うと、3%が交通ポイントとして付与される。たまったポイントが乗車運賃と同額以上になると、自動的にポイントで運賃が支払われる。交通ポイントは県交通の対象路線でのみ利用できる。
 
 カードは無記名と記名式の2種類があり、発行金額は2千円。野田町の釜石営業所で販売している。チャージ(入金)は導入路線のバス車内、コンビニエンスストアなどでできる。バス車内では千円単位で、最大2万円までチャージ可能。
 
乗車時は右側のカードリーダー(読み取り機)にICカードをしっかりタッチ

乗車時は右側のカードリーダー(読み取り機)にICカードをしっかりタッチ

 
降車時は運賃箱上部のカードリーダーにタッチ(音が鳴る)。カード残高から自動的に精算される

降車時は運賃箱上部のカードリーダーにタッチ(音が鳴る)。カード残高から自動的に精算される

 
 釜石営業所管内の導入路線は釜石市内線、上平田ニュータウン線、小川線、定内県立病院線、浪板線、赤浜線。ICカード対応機器の入れ替えは2月中旬ごろまでかかる見通し。切り替え期間中はICカード対応車両と旧来の磁気式バスカード対応車両が混在するため、利用者には両カードの所持を呼び掛ける。
 
 同営業所の鶴飼光裕所長は「スピーディーに乗車でき、カードの買い替えの必要もない。ポイントもたまってお得。ぜひ、お客様にご利用いただきたい」と話す。
 
ICカードが使える車両にはロゴマーク(赤丸)が掲示されている(写真右下は拡大)

ICカードが使える車両にはロゴマーク(赤丸)が掲示されている(写真右下は拡大)

 
 同カードは2021年の盛岡地区での運用を皮切りに、県内営業所に導入されてきた。釜石は13営業所中11カ所目の導入。現在、盛岡地区だけで運用される “IC定期券”も将来的には県内全域に拡大していきたいという。

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賃上げ、組織拡大、平和実現へ共に歩もう 連合岩手釜石・遠野地域協議会新春旗開き

連合岩手釜石・遠野地域協議会 2025年新春旗開き=15日

連合岩手釜石・遠野地域協議会 2025年新春旗開き=15日

 
 連合岩手釜石・遠野地域協議会(小島安友議長)の2025年新春旗開きは15日、釜石市大町の釜石PITで開かれた。構成する各労組から75人が参加。「社会を新たなステージへ、ともに歩もう、ともに変えよう~仲間の輪を広げ、安心社会、賃上げが当たり前の社会をめざす~」をスローガンに掲げ、本年の活動へ意欲を高めた。
 
 主催者を代表し小島議長があいさつ。米国のトランプ新政権始動をはじめ世界情勢の変化が日本に及ぼす影響を懸念しながら、「国内では物価上昇が続くが、賃金上昇が追い付いていない状況。賃上げの流れを止めることなく、今度の春闘も頑張っていこう。地域の少子高齢化が厳しさを増す中、さまざまなレベルでの政策要請も必要」と組合員の奮起を促した。
 
小島安友議長(写真上)が主催者あいさつ

小島安友議長(写真上)が主催者あいさつ

 
 来賓の連合岩手、佐々木正人副事務局長は本年取り組むべき事項として、「戦後80年」「2025春闘」「参院選」の3つのキーワードを挙げた。先の大戦の悲惨な経験を次世代に伝える役割を若い世代が担っていく必要性を指摘。賃上げの新たなノルム(規範意識)を定着させ、本県最低賃金のさらなる引き上げを目指すこと、労働組合の組織強化、拡大を図ることなどを訴え、「互いに協力し合い、より良い職場や社会を作るため努力する1年に」と呼び掛けた。
 
協議会を構成する各労組から新年の決意表明

協議会を構成する各労組から新年の決意表明

 
 乾杯後、協議会を構成する15労組が紹介され、代表者が本年の活動へ決意表明。女性青年委員会によるお楽しみ抽選会で懇親を深めた。最後は“がんばろう”三唱で、団結を誓った。会場では発生から1年の能登半島地震被災者を支援するための募金活動も行われた。
 
お楽しみ抽選会で親睦を深めたほか、能登半島地震被災者支援の募金活動も…

お楽しみ抽選会で親睦を深めたほか、能登半島地震被災者支援の募金活動も…

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釜石、2025年の船出 市魚市場、市役所で仕事始め「厳しさあるも、力強く前進」

釜石市魚市場にマイワシを水揚げする漁業者=4日

釜石市魚市場にマイワシを水揚げする漁業者=4日

 
 2025年、新しい一年が本格的に動き出した。釜石市内では、各業界で働く人たちが仕事始めを迎えた。市魚市場(魚河岸)の初売り式では前年を上回る水揚げがあり、幸先のいいスタートを切った。市役所(只越町)では小野共市長が年頭訓示。「気概を持ってまちづくりを進めよう」と奮起を促した。
 

水揚げ好調、漁業関係者「上々のスタート」

 
朝早くから動き出す釜石市魚市場=4日

朝早くから動き出す釜石市魚市場=4日

 
 市魚市場では4日、初売り式が行われた。午前6時ごろから定置網船が次々と入港し、マイワシを中心に約95トンを水揚げ。24年初日の約14トンを大幅に上回り、上々の出だしとなった。
 
 同市場の24年4~12月の水揚げ量は6268トン(23年同期比66%増)、金額は16億3100万円(同45%増)。サンマ棒受け網漁業、かご漁業の好調が押し上げ要因となった一方、秋サケの記録的な不漁やサバなどの取扱量は伸び悩みも見られた。市漁業協同組合連合会の木村嘉人会長は「不透明さが増す状況にあっても、巻き網船やサンマ船の取り扱い増加を重点に積極的な誘致活動に取り組む」と意気込みを語った。
 
 市場開設者の小野市長や漁業関係者らが鏡開きや手締めをして景気づけ。初競りでは買い受け人が真剣な表情で鮮魚を見定め、取引を進めた。
 
初売り式で関係者が鏡開きをし、豊漁を祈った

初売り式で関係者が鏡開きをし、豊漁を祈った

 
買い受け人らの掛け声が響き活気づく魚市場

買い受け人らの掛け声が響き活気づく魚市場

 
 萬漁業生産組合(萬文貴組合長)も、この日が初漁日。萬宝丸(19トン)など2隻で暗いうちから水揚げ作業を続けた。いくら揚げてもなかなか魚槽の底が見えず、「飽きた」とこぼす漁師もいたが、声の主の顔をのぞくと、目尻は下がっていた。「おー、イキがいい」。うれしそうに手を動かした。
 
水揚げ、仕分け作業に励む漁師の目元は…緩む

水揚げ、仕分け作業に励む漁師の目元は…緩む

 
「とれるものをとる」と話す萬文貴組合長(奥)

「とれるものをとる」と話す萬文貴組合長(奥)

 
 まとまったマイワシの水揚げは昨年末から続き、「予定通り」と淡々と話す萬組合長(47)。とはいえ漁業の厳しさは依然として残り、「秋サケも諦めたくはないが、自然の状況に合わせてとれるものを狙う。それが漁師だ」と語る。自身は巳(み)年生まれの年男で、「事業拡大を視野に入れ、攻めていきたい。チャンスを得てチャレンジすれば、いいことがある。努力していかないと」と粘りを見せる。
 

市長、訓示「気概を持って前へ」

 
仕事始め式で訓示する小野共市長=6日

仕事始め式で訓示する小野共市長=6日

 
 市の仕事始め式は6日に市役所議場で行われ、小野市長が幹部職員ら約60人を前に訓示。手探りだった就任1年目を振り返りつつ、「令和7年は小野カラーを出していく」と強調した。人口減少や地域経済の悪化などを課題に挙げ、「原因や理由を探り、それに基づいた施策や事業を考える必要がある」と指摘。その上で、「まず歳入のことを考えながら事業などの精度を上げていく。長期的に体質を変えていく必要がある」と、財政健全化に本腰を入れる考えを示した。
 
 持続可能なまちづくりに向け、人材育成や、都市機能を縮小・集約して維持する「コンパクトシティー」化も進めたい考え。職務に臨む姿勢として、「釜石を引っ張っていくという気概を持って前に進んでいこう。能力をまちのために役立ててほしい」と協力を求めた。
 
訓示を聞き、身を引き締める幹部職員ら

訓示を聞き、身を引き締める幹部職員ら

 
 巳年生まれという中村達也総務企画部長は「住んでよかった、来てよかったと誇りに思えるまちづくりを進めたい。より実のある取り組みをしていかなければ」と気を引き締めた。来年、定年を迎えるにあたり「引き継ぎもしていかないと」と引き際を意識し始めている様子も。まちの持続性を守るため、行政マンとしての経験も後進に伝えていく。

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橋野鉄鉱山含む「明治日本の産業革命遺産」とは? 世界遺産登録10周年を前に市立図書館で講座

鉄の記念日に合わせ、市立図書館が開いた「鉄の町かまいし歴史講座」

鉄の記念日に合わせ、市立図書館が開いた「鉄の町かまいし歴史講座」

 
 釜石市の橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(8県11市23資産)は来年、世界遺産登録から10周年を迎える。これを前に同遺産の内容を学ぶ講座が1日、釜石市立図書館で開かれた。「鉄の記念日」に合わせた市民教養講座として同館が企画。同市世界遺産室の森一欽室長が講師を務め、市民ら20人が聴講した。
 
 日本における製鉄・製鋼、造船、石炭産業の急速な発展(1850年代~1910年)を物語る遺構が「顕著な普遍的価値」を有するとして、世界遺産に登録された同遺産。日本の産業革命は非西洋地域では初めて、さらには約60年という短期間で達成されたことから「東洋の奇跡」とも呼ばれる(英産業革命は200年を要した)。
 
 「日本の産業革命はその過程が独特」と森室長。1857(安政4)年、釜石・大橋で日本初の洋式高炉による連続出銑に成功した大島高任は、現物を見ずして蘭学書を頼りに高炉建設を実現した。試行錯誤の挑戦は世界遺産の鹿児島(旧集成館)、韮山、萩の反射炉建設でも象徴される。後に外国人技術者の招へいや留学から戻った日本人の活躍で、長崎、三池の造船、石炭産業を中心に西洋の科学技術導入が進む。明治末期までに官営八幡製鉄所が軌道に乗り、三菱長崎造船所や端島炭鉱(長崎)、三池炭鉱(福岡)の近代化で日本の産業基盤が確立されていった。
 
市世界遺産室の森一欽室長が「明治日本の産業革命遺産」について解説した width=

市世界遺産室の森一欽室長が「明治日本の産業革命遺産」について解説した

 
 世界遺産の構成資産以外にも重工業の産業革命に関連する資産は数多くあるものの、登録には「完全性」と「真実性」が求められるため、「“本物”が残っていないものは世界遺産にはならない」と森室長。近代製鉄発祥の地とされる釜石でも、最初に操業に成功した大橋の高炉は現物が残っていないため、翌年から稼働した橋野鉄鉱山(国内現存最古の洋式高炉がある)が世界遺産になったことを明かした。
 
 森室長は3分野の資産の相関図も示した。製鉄・製鋼の分野では、釜石(大橋、橋野)で成功した鉄鉱石を原料、木炭を燃料とした連続出銑、官営釜石製鉄所の失敗、釜石鉱山田中製鉄所のコークス燃料での大量生産実現が、後の官営八幡製鉄所(銑鋼一貫)の成功につながっていった歴史を紹介。八幡製鉄所の高炉建設では大島高任の息子、道太郎が技監を務め、釜石の田中製鉄所から技術者や熟練労働者が派遣された。八幡ではドイツの最新技術が導入されたものの相次ぐトラブルで操業停止に追い込まれ、高炉の改良や本格的なコークス炉の導入で操業を可能にしたのは、釜石でコークス操業技術を確立した野呂景義の尽力によるものだった。
 
コークス燃料での高炉操業に成功した釜石鉱山田中製鉄所に関連する遺構や遺物を紹介

コークス燃料での高炉操業に成功した釜石鉱山田中製鉄所に関連する遺構や遺物を紹介

 
長崎県は最も多い8資産(造船、石炭産業)が世界遺産に登録されている

長崎県は最も多い8資産(造船、石炭産業)が世界遺産に登録されている

 
 森室長は全国8エリアに分類される各地の構成資産についても説明した。釜石と他地域の資産とはつながりも多く、韮山のれんがが釜石の官営製鉄所で使われたり、釜石で作られた鉄が長崎で造船の原料になったり、釜石で採掘された銅の精錬に三池の石炭が使われていたり…。あまり知りえない話に聴講者は興味をそそられながら聞き入った。
 
市立図書館で開催中の「鉄の記念日図書展」。さまざまな書籍が並ぶ

市立図書館で開催中の「鉄の記念日図書展」。さまざまな書籍が並ぶ

 
 市立図書館では1日から「鉄の記念日図書展」も開催中。ユネスコに提出した「明治日本の産業革命遺産」世界遺産推薦書の原本のほか、釜石の鉄の歴史に関する著作、鉄がどうやってできるかを記したものなど、さまざまな視点の鉄に関する本が並ぶ。ほとんどが貸し出し可能。川畑広恵館長は「釜石のものづくりの精神が世界遺産に結実したのが10年前。身内が製鉄業に携わっていたという方も多いと思う。普段、手が出ない分野という方もこの機会に手に取っていただき、理解を深めてもらえれば」と来館を呼び掛ける。図書展は15日まで開催されている。
 
鉄をテーマに集めた本のほか、市が作成した橋野鉄鉱山に関するパンフレットなども展示

鉄をテーマに集めた本のほか、市が作成した橋野鉄鉱山に関するパンフレットなども展示

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地域の伝統・刺し子…つなぐには 釜石商工高生8人、課題研究で挑戦 一針に込める「手作業の味」

刺し子の製品づくりに取り組む釜石商工高の生徒ら

刺し子の製品づくりに取り組む釜石商工高の生徒ら

 
 釜石商工高(今野晋校長)では機械、電気電子、総合情報科の3年生が各科の特徴を生かした課題研究に取り組む。産業や地域課題などのテーマを選んで5月にスタートさせた探究活動は終盤戦に突入。年内に予定する校内発表会に向け、まとめの作業が進む。このうち、総合情報科の8人は地域で受け継がれてきた伝統的な手芸「刺し子」に注目。担い手の育成について考える中で、技術の習得にも挑む。集大成として東京での販売会(12月)を計画。参加のめどが立ち、応援者への“返礼品”づくりに励む。11月20日、同校の一教室。8人の挑戦をのぞいてみた。
 
 刺し子は重ねた布を細かく縫いつける伝統技法。布の補強や保温のために東北地方で始まったと言われる。「運針」と呼ばれる針を刺し進める手法は波縫いが基本。縫い目の間隔にとらわれず、ちくちくと直線に縫っていく手軽さが魅力。幾何学模様などの図柄を縫い込む技法もあり、少しの手間で布をよみがえらせ日常に彩りを添える。
 
 地域の産業として事業化、ブランド化させ新しい魅力を吹き込んでいるのが「大槌刺し子」。東日本大震災で被災した女性たちの生きがいづくりに―と2011年に復興支援プロジェクトで発足し、京都市のNPO法人テラ・ルネッサンスが運営する。バッグや小物などを作ってきたが、近年は売り上げが停滞。最盛期に約200人いたという職人も高齢化など社会変化の影響を受け、現在は15人と大きく減った。
 
 そんな中、長く取引を続ける東京のアパレル会社MOONSHOT(ムーンショット)から提案があり、ブランド「SASHIKO GALS(サシコギャルズ)」を創設。靴や洋服などに古布を縫い当てて刺し子を施して作り直す、ひと手間を加えたものづくりを始めた。新たな感性を取り入れた動きに合わせ、技術の担い手を育成する取り組みも開始。今回の釜石商工高との連携につなげた。
 
釜石商工高総合情報科の教室で生徒らが刺し子づくりに励む

釜石商工高総合情報科の教室で生徒らが刺し子づくりに励む

 
 同校には、もともと別のテーマで講師役を担当した人から刺し子の話が持ち込まれた。課題研究テーマとして組み込まれ、8人が手を挙げ、週3時間、刺し子を学んでいる。講師は大槌刺し子事務所スタッフで職人の黒澤かおりさんと佐々木加奈子さん(ともに47)。針を持つのは小学校の家庭科の授業以来という生徒がほとんどで、持ち方や進め方から、「くぐり刺し」「かがり刺し」といった技法も丁寧に教えてきた。
 
 “若さ”が光り、すんなり身に付けた生徒たちだが、始めた当初は「刺し子をやるとは思っていなかった」という。研究は担い手を増やす方策を考えたり、ビジネスを学ぶ内容だと思っていたらしい。
 
 堀切好花(このか)さんもそんな一人。苦笑いしつつも、新たな試みに挑戦できると前向きに捉えて実践。ムーンショット代表の講話などでサシコギャルズが世界的に評価されていることも知り、「刺し子の可能性を広げる過程に協力したい」と強く思うようになった。作り手としての大変さ、やりがいも実感。「ネクタイとか日常的、実用的なもので、目にする機会を増やした方がいい」とアイデアも出てきた。慣れてきたことで作業中に弾ませるのはおしゃべり。「手を動かしながら団らん。そこも刺し子の魅力」と楽しそうに笑う。
 
布を持ち真剣な表情で一針一針と進める生徒たち

布を持ち真剣な表情で一針一針と進める生徒たち

 
大槌刺し子の職人に助言をもらいながら取り組む

大槌刺し子の職人に助言をもらいながら取り組む

 
生徒を見守る講師とおしゃべりも楽しむ

生徒を見守る講師とおしゃべりも楽しむ

 
 生徒らはこの研究プログラムに「Harito(はりと)」と名を付けた。“針と〇〇(まるまる)”という意味で、「結びつけるものは無限大」と可能性の広がりを期待してのもの。半年たった今、総仕上げとしてさらに熱心に針を進めている。作っているのは「HOME」との刺しゅう文字が入ったミニトートバッグと、古布を重ねつなぎ合わせたりカラフルな波縫いの線が交差するクッション。10月に実施したクラウドファンディング(CF)の返礼品だ。
 
 成果を発信すべく、東京での販売会に臨むため行ったCFでは60人余りから応援が寄せられた。大槌刺し子の職人らを含めて参加できることになり、支援者へ感謝を込めた一点物を製作中。「手作業の味が伝わるように」と一針一針に思いをのせている。
 
クラウドファンディングに向けて撮影した集合写真(提供:釜石商工高)

クラウドファンディングに向けて撮影した集合写真(提供:釜石商工高)

 
ちくちく…一針ごとに感謝の気持ちを込めて縫い進める

ちくちく…一針ごとに感謝の気持ちを込めて縫い進める

 
返礼品として生徒がすべて手作業で仕上げている刺し子

返礼品として生徒がすべて手作業で仕上げている刺し子

 
 CFは生徒らの学びの機会にもなった。販売内容に関わる計画やマーケティング、広報、チラシ作り、交通費の算出など、それぞれが得意分野を生かして取り組んでいたと同科の沼﨑麗(うらら)教諭。「学校外の人と関わることで視野が広がったと思う。担い手の課題はすぐに結果が出るものではないが、地域の伝統を知り、外に出た時に伝え広げられたら、成功という一つの形になるのかな」と目を細めた。
 
 生徒自身もそれぞれ成長を感じている様子。久保菜月さんは「思った意見を言えるようになった」とはにかむ。刺しゅうデザインなど提案、相談を重ね、採用されたり意見が通らなかったこともあったが、「あとで生かされる」と確信。地域との関わりや伝統を身近に感じられる機会にもなり、「後輩たちにつなぎ、残したい」と願いを抱いた。
 
 技術を紹介した大槌刺し子の2人にも発見があった。長く携わると型にはまってしまうが、まっさらな状態の高校生は「自由に思うまま」で、色合いや発想に驚かされることもしばしば。「参考になる」と刺激を受けた。
 
講師を務める大槌刺し子職人の佐々木加奈子さん(左)、黒澤かおりさん(右)

講師を務める大槌刺し子職人の佐々木加奈子さん(左)、黒澤かおりさん(右)

 
 佐々木さんは「古くなったものを新しい糸で生き返らせる。補修にデザイン性が加わっておしゃれによみがえる。刺し子のすてきなところ」と愛着をにじませ、黒澤さんも「手を加えるだけでオリジナルになる」とうなずく。地方でもファッション業界に関われる可能性、世界での評価という手応えを得る一方、すべて手作業で一つの製品に一週間以上かかることもあり、大変さも身に染みて思う2人。それでも「現代にあった刺し子を作り続けたい」と気持ちも重ねる。今回の授業は間もなく終わるが、形は変わったとしても継続させたい考えだ。
 
大槌刺し子の拠点でも販売会に向け職人たちが追い込み作業中

大槌刺し子の拠点でも販売会に向け職人たちが追い込み作業中

 
 販売会は12月14日、東京の伊勢丹新宿本店の本館で予定する。ムーンショットが手がけるファッションブランド「KUON(クオン)」の期間限定店に参加する形で展開。大槌刺し子の職人が手がけた帽子などを並べる。

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ドローンなど活用で森林測量の効率、省力化へ 林業関係者ら事例学ぶ 釜石でセミナー開催

ドローン測量の実演などが行われた釜石地方林業活性化セミナー

ドローン測量の実演などが行われた釜石地方林業活性化セミナー

 
 険しい山での作業負担軽減や担い手確保が課題となっている林業―。そうした諸課題解決に、デジタル技術を活用し作業の効率、省力化を図ろうという取り組みが進む。産業用無人ヘリコプターやドローンを使った森林測量もその一つ。釜石市でこのほど開かれた「釜石地方林業活性化セミナー」では、ドローンや三次元計測が可能なアプリを使った森林測量の事例が紹介された。
 
 同セミナーは釜石地方林業振興協議会(会長=林春彦県沿岸広域振興局農林部長)と同振興局農林部が主催し、片岸町の釜石地方森林組合事務所で開かれた。沿岸市町村から自治体職員や民間事業者など約30人が参加した。
 
 本年8月、県は「デジタル技術を活用した森林整備事業の申請等に関する取扱について」という通知を発出。施行地の現地測量にGNSS(衛星測位システム)やドローン(無人航空機)などのデジタル技術を活用する場合に守るべき基準、適切な林務手続きを行うために参照すべき事項を定めた。セミナーでは同通知で定められている4つの測量方法について説明。現時点で補助金交付対象は人工造林、下刈りの周囲測量、森林作業道の延長測量のみであることが伝えられた。
 
県の担当者が8月に発出された通知について概要を説明

県の担当者が8月に発出された通知について概要を説明

 
 県林業技術センター(矢巾町)専門研究員の中軽米聖花さんはドローンなどを活用した測量事例を紹介。どんなデータが得られるかやメリット、デメリット、補助金申請書類の作成、検査の作業イメージなどを説明した。
 
 「ドローン測量」は、空中から連続撮影した写真をパソコンのSfMソフト(三次元形状に復元するソフトウェア)で正射投影化(オルソ画像という)。これを基にGISソフト(地理情報システム)で施行地の位置、形状、面積のデータを得る。GNSS受信機2つ(移動局、基準局)の観測データを使って高精度の測位をリアルタイムで行う方法(RTK-GNSS 対応)と、1つの受信機で測位する方法(単独測位)がある。
 
 この他、現地を歩いて衛星測位システム観測機器で測点の位置座標を記録し、GIS上でつないで施行地のデータを得る「GNSS測量」、“mapry(マプリィ)林業”などのアプリを入れたスマートフォン、タブレットを使い、現地を歩いて座標を記録する方法(地上レーザースキャナーによる三次元測量)がある。
 
衛星測位システムやドローンなどを活用した測量事例が紹介された

衛星測位システムやドローンなどを活用した測量事例が紹介された

 
 中軽米さんはドローン測量について、「全測点を歩かなくても測量ができ、画像、点群データとして森林全体の現況把握、記録ができる」一方、「ドローンや処理ソフト導入などの初期投資が必要で、GIS操作などが不慣れな人は使いこなすのに時間がかかる」ことを説明した。また、単独測位では3~10メートルほどの絶対位置のずれが生じるため、現地しゅん工検査にはST計算(水平距離、方位角算定)で変換した測量野帳が必要となることも付け加えた。
 
釜石地方森林組合事務所の駐車場でドローンのデモフライトが行われた

釜石地方森林組合事務所の駐車場でドローンのデモフライトが行われた

 
 この日は座学の後、同組合事務所の駐車場で、ドローン測量の実演も行われた。大槌町のNPO法人吉里吉里国の河井舞さん(同町地域おこし協力隊員)は「大槌町も実態が分かっていない山がたくさんあるので、こういう技術が使えればより現状把握が可能になりそう。地道に山を歩いて測量、分布を調査するのに比べ格段に便利。あとは金額の問題」と導入の課題を示した。
 
ドローン撮影の空中写真を基にした計測データ(写真左)を示す県林業技術センター専門研究員の中軽米聖花さん(写真右)

ドローン撮影の空中写真を基にした計測データ(写真左)を示す県林業技術センター専門研究員の中軽米聖花さん(写真右)

 
 中軽米さんは「林業は人手不足が顕著。現場労務が軽減されるドローン測量は今後、広がっていくと思われる。撮影した森林の画像データは施業計画立案にも活用可能」と話す。2022年6月からは100グラム以上の無人航空機の登録が義務化され、航空法の規制対象となっている。目視外を飛ばすには免許も必要だという。
 
 釜石市では22年6月に釜石地方森林組合が開いた研修会以降、レーザー計測機を搭載した産業用無人ヘリコプターによる森林計測サービス(ヤマハ発動機)が県内に先駆けて導入されている。
 
ドローン測量の実演に興味津々の参加者。写真右下はヤマハ発動機が森林計測サービスで使用する産業用無人ヘリコプター

ドローン測量の実演に興味津々の参加者。写真右下はヤマハ発動機が森林計測サービスで使用する産業用無人ヘリコプター