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釜石港にもサンマ!第1船、秋味運ぶ 出足「まずまず」 去年上回る量も…厳しさ続く

釜石港に今シーズン初水揚げされたサンマ

釜石港に今シーズン初水揚げされたサンマ

 
 釜石市の新浜町魚市場に8月29日朝、今シーズン初となるサンマ船1隻が入港し、約26トンを水揚げした。昨年の初船と比べると1カ月以上早い到着で、量も約4倍と上向きに。重さは100グラム程度が中心で、「まずまず」「サイズ感がまだ…」と市場の反応はさまざまだったが、季節感を運ぶ味覚の到来に浜は活気づいた。
 
新浜町魚市場に接岸する第68善龍丸を関係者が見守った

新浜町魚市場に接岸する第68善龍丸を関係者が見守った

 
 水揚げしたのは、富山県魚津市の大型サンマ船「第68善龍丸」(199トン、大高真澄漁労長、17人乗り組み)。北海道東方の公海上で操業し、2昼夜をかけて釜石まで運んできた。重さは小ぶりのものが多いが、140グラムのものも交じり、価格は1キロ当たり800~1200円で取引された。
 
 この日は小野共市長らも駆け付け、飲み物を差し入れて船を歓迎。大高漁労長(44)は「走りとしてはまずまず。大きさも去年に比べればいい」と話しつつ、今後の漁については「魚次第」ともどかしい気持ちもこぼす。漁期は12月まで。「できるだけ長く操業したい。魚がいてくれれば」と望みを持つ。
 
乗組員たちの連係プレー。船から網で水揚げ

乗組員たちの連係プレー。船から網で水揚げ

 
大高真澄漁労長(左)に飲料水を手渡す小野共市長

大高真澄漁労長(左)に飲料水を手渡す小野共市長

 
 大部分を買い取った新浜町の水産加工会社「平庄」の平野隆司社長(48)は「昨年に比べて量はいいが、サイズ感はまだ小さい。今後、多少大きくなるだろうが、これ(小ぶりな魚)が主流になるかもしれない」と独自の見解。「漁場が日本に近い」とも聞いていて、早い時期の水揚げに「期待感はある」とうなずいた。
 
 漢字では「秋刀魚」と表記されるサンマ。その字のごとく“秋の訪れ”を感じさせるかと思いきや、全国的な暑さは釜石でも残っていて、水揚げ作業を繰り返す乗組員、仕分け作業に精を出す市場や水産会社の関係者は汗だく。そんな“熱気”を加えた秋味は関東方面に鮮魚出荷された。一部は釜石市内のスーパーや魚屋の店頭にも。平野社長も「旬の魚をご賞味ください」と促す。
 
網で釣り上げ、魚市場に運ぶ作業を何度も繰り返す

網で釣り上げ、魚市場に運ぶ作業を何度も繰り返す

 
釜石に初物をお届け。網を持つ手にも力が入る

釜石に初物をお届け。網を持つ手にも力が入る

 
重さなどで分別する関係者のかけ声で浜が活気づく

重さなどで分別する関係者のかけ声で浜が活気づく

 
 釜石港の2023年のサンマ水揚げ量は339トン(取引額約1億3000万円)。22年と比べると量は67%増(同4%増)となったものの、不漁が顕著になる前の18年の13%程度にとどまり、厳しい状況は続く。

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副業型の地域活性化起業人 釜石市、初登用 都市圏のデジタル人材に期待「地方に刺激を」

小野共市長(左)から委嘱状を受け取った野辺地葵さん

小野共市長(左)から委嘱状を受け取った野辺地葵さん

 
 釜石市は23日、「地域活性化起業人」として、IT(情報技術)を活用したものづくりや中小企業のコンサルタント業務などを手掛ける「Crossover Group」(東京)の最高経営責任者(CEO)、野辺地葵さん(27)に委嘱状を交付した。三大都市圏の民間力を地域活性に生かす総務省の制度を活用するが、これまでの企業派遣型とは異なり、「副業型」での受け入れ。野辺地さんは従来通り同社で働きながら、市が依頼する業務に取り組む。
 
 地域活性化起業人制度は、地域の課題解決に民間企業のノウハウや知見を活用しようと総務省が2014年度に創設した。地方自治体と協定を結んだ民間企業が社員を一定期間派遣し、即戦力として業務に取り組んでもらうもので、国は特別交付税措置で財源を支援する。
 
 この企業派遣型に加え、24年度からは企業に所属する社員個人と自治体が協定を結ぶ形の副業型制度がスタート。企業派遣型は月の半分以上は受け入れ自治体に滞在して働く必要があるが、副業型は月に4日以上、計20時間以上を自治体業務に充て、受け入れ自治体での滞在日数は最低月1日とする。居住の必要をなくし参加のハードルを下げた形だ。国は副業期間中の経費や交通費(上限合計200万円)を補助。自治体のホームページ運営など主にリモート対応が可能な分野で、都市部のデジタル人材らに働いてもらうことを想定する。
 
釜石初の副業型地域活性化起業人として活動を始める野辺地さん

釜石初の副業型地域活性化起業人として活動を始める野辺地さん

 
 野辺地さんは岩手県九戸村出身。3年ほど前に同社を立ち上げ、中小企業が抱える課題についてITデータなどを使って解決策を練ったり、ネット通販サイトやアプリ制作などの事業を展開する。釜石には母方の実家があり、年に数回訪れる「故郷のような街」だったことから、「活気ある街づくりの一助になりたい」と参加を決めた。
 
 任期は来年3月末まで(最長3年)。「地方創生・政策推進研究員」として、市の人口統計データや市内企業に関するデータなどを分析し現状と課題を整理、それに対応する施策の立案・展開に向けた助言といった活動に取り組む。
 
「釜石の熱意から生まれる活動を全力で手伝う」と話す野辺地さん

「釜石の熱意から生まれる活動を全力で手伝う」と話す野辺地さん

 
 市役所であった交付式で小野共市長から委嘱状を受け取った野辺地さんは「故郷が抱える課題に向き合い、解決の後押しができる取り組みだと感じ、一念発起。一朝一夕にはいかないだろうが、市の職員や企業関係者、市民の活動を全力で手伝いたい」と気合十分。もともと同起業人に関心があり、副業型の開始を耳にしていたことから、いち早く市の募集に手を上げた。拠点を移さず地方創生に携わったり、自身のキャリアを生かせることに魅力を感じていて、「関わる人と互いに刺激し合い、活動や施策を磨き上げたい」と力を込める。
 
委嘱後の懇談では公共交通のあり方などで意見を交わした

委嘱後の懇談では公共交通のあり方などで意見を交わした

 
 市はこれまでに企業派遣型で4人を受け入れ(全員任期終了)たが、副業型での受け入れは今回が初めて。小野市長は「目に見える課題だけでなく、裏に隠されている事実に対応した施策や事業を作り、精度を上げることが重要。民間の刺激、面白い指摘を期待している」と述べた。

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公共交通維持へ自動運転バス 釜石で実証実験スタート 生活の足に…可能性探る

釜石市平田地区を走行する自動運転バスを関係者が見送る

釜石市平田地区を走行する自動運転バスを関係者が見送る

 
 釜石市の平田地区で5日、自動運転バスの実証実験が始まった。オペレーターが同乗し、一部操作の指示を出す「レベル2」の方式で、22日まで運行。市内でも運転手の高齢化や人手不足で公共交通の維持が課題となっており、市では新たな交通手段としての可能性や安全性、課題を確認する。
 
 自動運転バスは、同市平田町のスーパー「ベルジョイスみずかみ平田店」を中心に循環する2つのルートで運行。上平田ニュータウン方面は1周約4キロ、復興住宅・県営平田アパートへ向かう経路は約2.6キロで、1日各5便を走らせる。県交通など既存のバス停近くで乗降でき、運賃は無料。乗車は事前予約制で、LINE(ライン)か電話(市生活環境課)で申し込む。
 
自動運転バスの実証実験が平田地区で進行中

自動運転バスの実証実験が平田地区で進行中

 
 車両は、エストニア製の電気バス「Mica(ミカ)」(8人乗り)。センサーとカメラが搭載され、車両の周りを検知し位置を把握しながら進む。事前に設定されたルートをハンドル操作なく、時速20キロ程度で走行。運行は自動運転事業を手がけるボードリー(東京)に委託し、オペレーターが同乗するため乗車できるのは7人となる。
 
釜石にちなんだ塗装が施された自動運転バス

釜石にちなんだ塗装が施された自動運転バス

 
車外にはセンサーやカメラ、車内にはモニターやタブレットなどの機器が搭載される

車外にはセンサーやカメラ、車内にはモニターやタブレットなどの機器が搭載される

 
 自動運転は自動化の度合いで5段階に区分され、今回の実証実験はレベル2。横断歩道や交差点では一時停止し、障害物を感知すると自動で停車したりするが、オペレーターが周囲を確認して停車や発進などの指示を出す。市は、特定の条件下で運転手不在でも走行が可能な「レベル4」への移行を見据えており、技術の立証や課題の検証も目的とする。
 
オペレーター(右)が同乗し、自動運転レベル2で運行する

オペレーター(右)が同乗し、自動運転レベル2で運行する

 
 同店駐車場で出発式があり、市関係者や住民ら約40人が参加した。小野共市長が「人口減や少子高齢化を踏まえ、従来の施策に新たな手法を加える必要がある。次世代の交通を体感し、生活の足としての可能性を考えるきっかけになれば」とあいさつ。関係者によるテープカットを行った後、住民5人を乗せた第1便が発進した。
 
実証事業の出発式でテープカットする関係者

実証事業の出発式でテープカットする関係者

 
自動運転バスの第1便に乗り込む地元住民

自動運転バスの第1便に乗り込む地元住民

 
 乗車した藤澤静子さん(82)は「少し不安だったが、スムーズに走っていて安心した。2年ほど前に運転免許を返納したので、早く実用化してもらいたい」と期待。佐藤清さん(80)は、ゆっくり走行するバスを車が追い越す際に自動でブレーキがかかって“おっ”と身構えたというが、危険性はほとんど感じなかったという。やはり自動化の実現を望み、「車を手放すことを考える歳になってきたからね。いろんな交通手段があった方がいい」とうなずいた。
 
 同地区は、中心地にスーパーや郵便局、歯科医院、三陸鉄道平田駅など社会基盤があり、住宅地から一定の距離もあってルート設定が可能なことから実験場所に選んだ。自動運転は期待感より、「きちんと走るか」「安心して乗れるのか」といった不安感が上回ると思われるが、通学や通院などで普段からバスを利用する学生や高齢者らがいて受け入れられやすい地域性、需要が見込まれることも選定の理由だという。事業費は約3500万円。全額、国土交通省の「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)」を充てる。
 
ベルジョイスみずかみ平田店敷地にある既存のバス乗り場を利用。写真右下のバス停が目印

ベルジョイスみずかみ平田店敷地にある既存のバス乗り場を利用。写真右下のバス停が目印

 
 市生活環境課の二本松史敏課長は「初めての自動運転バスの運行で不安もあると思うが、走っている姿を見て、実際に乗ってみて、安全で安心な乗り物と体感してほしい」と呼びかける。利用者へのアンケートも行い、課題を洗い出して導入の可能性を探る考えで、「将来的に安心して暮らしていけるよう公共交通の維持に努めていく」と強調した。

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三陸の海に人知れず生息!? 欧州原産カキ 岩手県水産技術センター(釜石)が研究 活用模索「起死回生の一手に」

岩手県水産技術センターで育てられているヨーロッパヒラガキ

岩手県水産技術センターで育てられているヨーロッパヒラガキ

 
 70年以上前に養殖試験のため日本に持ち込まれ、岩手県沿岸でも試験的に養殖されていた欧州原産の食用カキ。東日本大震災の津波で流失し消滅したと考えられていたが、県水産技術センター(釜石市)などの調査研究で“生息”していることが確認された。その名は「ヨーロッパヒラガキ」。人知れず生き残り、繁殖・定着した生存力は、不漁が続く三陸海域の有用な資源になりうる可能性を秘める。同センターでは既に種苗の生産に成功。その規模を拡大させながらさらに研究を進め、養殖試験につなげる考えだ。
 
 センターによると、ヨーロッパヒラガキは丸く平たい見た目が特徴で、殻の幅は10センチほど。欧州では古くから生食用として親しまれてきた高級食材で、独特の渋みがあり、シャンパンや白ワインに合うとされる。近年は病気の流行などで生産量が激減しているという。
 
ヨーロッパヒラガキとマガキを比較。3つ並んだものは右側の2つがヒラガキ

ヨーロッパヒラガキとマガキを比較。3つ並んだものは右側の2つがヒラガキ

 
調査研究に取り組んだ寺本沙也加さん(右)と小林俊将さん

調査研究に取り組んだ寺本沙也加さん(右)と小林俊将さん

 
 そんな高級食用カキの調査研究に取り組んだのは、同センター増養殖部専門研究員の寺本沙也加さん(29)と、部長の小林俊将さん(57)。成果は今年5月に日本貝類学会の国際学術誌に掲載された。
 
 研究のきっかけは昨年4月、寺本さんが山田湾でカキ養殖を行う漁業者のSNS(交流サイト)で「種が不明のカキ類」の写真を見つけたことだった。その漁業者から「正体を調べてほしい」との要望もあり、調査を開始。譲り受けた26個体から10個体を選定して貝殻の形態やDNA解析を行った結果、全てがヨーロッパヒラガキと判明した。
 
 ヒラガキは1952年に東北大がオランダから国内に持ち込み、北海道や、青森、岩手、宮城の3県で養殖試験を進めた。岩手県内では91~95年にかけて山田湾で種苗生産と養殖試験を行っていたが、94年の北海道東方沖地震の津波で母貝や種苗が流失して全ての試験を終了。最後まで養殖していた宮城沖でも2011年の震災の津波で流され、消滅したと考えられていた。
 
ヨーロッパヒラガキを手にする小林さん。センターで種苗生産試験を続ける

ヨーロッパヒラガキを手にする小林さん。センターで種苗生産試験を続ける

 
 今回の調査でヒラガキの存在を確認したこともあり、県内24の漁業協同組合を対象にアンケートを実施。その結果、宮古市から陸前高田市までの7湾で生息していることを確認した。養殖のホタテなどに付着した形でヒラガキを発見しているとのこと。小林さんは「あちこちに存在していると思われ、驚いた。定着の過程など実態は不明だが、生息できる環境があったということだろう。さらなる研究が必要」と目を光らせる。
 
 過去に人為的な移入が確認されていない海域でも生息していることが分かったが、今回、釜石地域の漁業者からの報告はなかったという。ただ、本県沿岸各地への分布拡大が進んでいると考えられることや、大槌湾でも見つかっていることから、小林さんは「近い海域ですから…」と、希望を残してくれた。
 
仕事でもあり趣味でもある貝類をテーマにした研究を楽しんだという寺本さん

仕事でもあり趣味でもある貝類をテーマにした研究を楽しんだという寺本さん

 
ヨーロッパヒラガキと、研究成果として発表された論文

ヨーロッパヒラガキと、研究成果として発表された論文

 
 国外から意図的に移入されたカキ類が天然海域に定着した事例としては国内初になると考えられる―。そうした成果をまとめた寺本さんは、貝類の分類が専門。「歴史をひもとく研究であり、地元の貝をネタにした研究で楽しかった」と、うれしそうに話す。貝殻のコレクターでもあると自認するが、「食べるのは苦手」というところが面白い。
 
 世界的に水産有用種として知られ、その利用が注目されると予想する寺本さん。分布把握や周辺海域でのモニタリングを続けていく構えで、「落ち込んでいる三陸の水産業にとって起死回生の一手を打てる産品になればいい」と期待する。
 
 同センターでは、新たな養殖対象種として利用の可能性を探るため、昨年度から種苗生産試験を続ける。今年の秋以降、漁業者と連携して養殖試験にも取り組みたい考え。今のところ生態系への影響は確認されていないとするが、状況を注視していくという。

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発足10年「釜石地方梅栽培研究会」生産者最多に 梅酒製造後の“漬梅”活用で地サイダー誕生

栗林町で行われた浜千鳥によるウメの実の集荷=6月25日

栗林町で行われた浜千鳥によるウメの実の集荷=6月25日

 
 梅酒製造に使うウメの実の生産者、漬梅(製造後のウメの実)の活用業者らで組織する釜石地方梅栽培研究会(前川訓章会長、34会員)は6月25日、本年度総会を釜石市栗林町の砂子畑集会所さんあいセンターで開いた。2014年に発足した同研究会は10年を経過。梅酒を製造する地元酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は会員からの継続的な原料の供給で、年間約9千~1万本の販売数を維持。課題だった漬梅の活用も進んでいる。総会では漬梅を活用した新商品も紹介された。
 
 総会には会員と県や市の農林担当者ら18人が出席した。前川会長(78)は「今年のウメは全国的に不作という情報を耳にした。自分のところも昨年の3分の1程度になりそう。自然界相手で結果を出すのは大変だが、新会員も増えてきている。できることをやって安定供給に努めたい」とあいさつした。
 
釜石地方梅栽培研究会が開いた2024年度総会

釜石地方梅栽培研究会が開いた2024年度総会

 
 事務局を務める浜千鳥によると、昨年度の青梅の集荷(期間:6月15日~7月5日)は6134キロ(前年度対比226%)で過去最高を記録。出荷者は22人(うち会員21人)だった。漬梅は3914キロ発生し、県内外で1074キロが再利用された。廃棄率は67%。
 
 本年度は生産者の会員が過去最多の31人に。総会では大船渡農業改良普及センターから病害虫防除の方法や収穫の注意点、市水産農林課から地域振興作物、農産物加工品開発を支援する補助金などについて説明があり、両機関の指導を受けながら栽培技術の向上、生産の安定化を図ることを確認した。来年1月に例年通り、せん定や病害虫防除の講習会を開く。役員改選では前川会長(栗林町)、山崎元市副会長(鵜住居町)が再選された。任期は2年。
 
23年度事業では市の補助金を活用しPR用のぼり旗を制作。会員5人が新たに苗木を購入した

23年度事業では市の補助金を活用しPR用のぼり旗を制作。会員5人が新たに苗木を購入した

 
 同研究会は廃棄されていた漬梅の活用策についても模索してきた。これまでに県外の業者の買い取りのほか、20年に開店した魚河岸テラスのジェラート店での活用、22年に大槌町の甘輝舎(研究会会員)が盛岡農業高と共同開発した「浜梅ジャム」の商品化が実現している。こうした取り組みで22年には廃棄量ゼロを達成した。
 
 本年4月には、釜石振興開発(研究会会員)が「梅しゅサイダー」(税込み250円)を新たに発売。漬梅をシロップに漬けてさらにエキスを抽出、風味が飛ばないようにアルコールをじっくり抜いて、釜石の“地サイダー”として仕上げた。下川原繁夫部長(かまいし特産店店長)は「アルコール度数は0.1%未満で、麺つゆなどと同レベル。子どもにも安心して飲んでもらえる。梅酒好きな方にもおいしく召し上がっていただける」と太鼓判。サンプルを提供した販売店からも注文が入っているという。「県内他地域の地サイダーとの区別化を図り、地元飲食店などでの定番需要にもつなげていければ」と下川原部長。県内では道の駅釜石仙人峠、同遠野風の丘、かまいし特産店(シープラザ釜石2階)などで販売中。
 
 片岸町の麻生三陸釜石工場(研究会会員)でも漬梅活用の研究が進む。総会では試作品を紹介し、出席者から意見を聞いた。
 
写真左:甘輝舎プロデュースの「浜梅ジャム」と釜石振興開発が販売する「梅しゅサイダー」同右:総会ではサイダーの紹介と試飲も行われた

写真左:甘輝舎プロデュースの「浜梅ジャム」と釜石振興開発が販売する「梅しゅサイダー」同右:総会ではサイダーの紹介と試飲も行われた

 
麻生三陸釜石工場は漬梅を活用した商品の試作品を配り、意見を聞いた

麻生三陸釜石工場は漬梅を活用した商品の試作品を配り、意見を聞いた

 
 総会後はウメの実の集荷も行われた。栗林地区では今季初で、会員らが収穫したばかりの青梅を持ち寄った。この日出荷したのは4人で計400キロ。3~4種、10数本を栽培する川崎充さん(76)は「昨年は一番の豊作だったので、それに比べれば今年は少ないと思う。ウメ栽培は定年後に始めた。少しでも収入になるのはいい」と話す。規模の拡大については「本数を増やすと今の時期、暑くて作業が大変」と現状維持を望んだ。
 
 ウメの実の収量はその年の気候に左右されるという。今年は春先の気温が高めに推移し開花が進んだが、満開の後に気温が降下。実になり始めたころに強風に見舞われ、多くの実が落ちてしまったという。前川会長は「毎年のことだが、良い悪いはどうしてもある。平均して右肩上がりにいけばいいが、そうもいかないのがウメ」と難しさを語る。それでも遊休農地などを活用し生産者は少しずつ増えていて、今後、出荷可能になる木も増えていくとみられる。
 
浜千鳥の担当者は会員が持ち込んだ青梅を計量、集荷した

浜千鳥の担当者は会員が持ち込んだ青梅を計量、集荷した

 
会員らは今季のウメの出来具合について確認し合いながら出荷

会員らは今季のウメの出来具合について確認し合いながら出荷

 
 浜千鳥の梅酒は2011年7月から発売。720ミリリットル入りに加え、21年からはコロナ禍の巣ごもり需要を背景に300ミリリットル入りが仲間入りしている。

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店開きは金曜日!? 釜石の事業者有志、買い物弱者ら支援で移動販売開始 交流の場創出にも

釜石市の事業者が連携して始めた移動販売で買い物をする利用客ら=6月28日、上平田ニュータウン

釜石市の事業者が連携して始めた移動販売で買い物をする利用客ら=6月28日、上平田ニュータウン

 
 スーパーの閉店、公共交通の減便や廃止などで深刻化する「買い物難民」。高齢者世帯が増え、交通が不便で買い物に行くのも大変という釜石市平田地区で、そんな“弱者”たちを支える取り組みが始まっている。市内の事業者有志による週1回の移動販売で、住民らの評価は上々。買い物難民の解消だけでなく、高齢者の交流の場、対面販売することで商店や商品の名も売る事業者支援の場としての役割が期待される。
 
 「車の運転免許を返納したから、移動の足はバス。知り合いの車に乗せてもらうこともあるけど、毎回というわけにはいかない。移動販売を近くでやってもらうのはありがたい」。買い物を済ませた後、70代の女性がにこやかに語った。
 
 移動販売が行われているのは、上平田ニュータウン地区。数年前に閉店したスーパーの敷地を利用し、毎週金曜日に店開きする(午前10時半~正午ごろ)。地元農家が育てた新鮮野菜、米屋の手作りおにぎりや総菜、菓子店の団子などがずらり。訪れた住民らが品定めしながら次々と手を伸ばした。
 
閉店したスーパーの軒先を利用して店開きする移動販売

閉店したスーパーの軒先を利用して店開きする移動販売

 
運び込まれる総菜や菓子などを品定めする買い物客ら

運び込まれる総菜や菓子などを品定めする買い物客ら

 
 シュークリームなどを買った1人暮らしの高齢女性は「今日のおやつ。ランチしに来る人がいるから2人分買った」と頬を緩めた。最も近いスーパーはバスで5分ほどの場所にあるが、運行は1時間に1本。週に1、2回出掛けるが、待ち時間があるのが少し気になっているという。移動販売の場所までは歩いて10分ほどかかるが、「散歩がてら。外に出る日が増える」と心待ちにしている様子だ。
 
 バスで片道約30分かけて市街地のスーパーに行っている人も。移動販売が始まって、往復で600円ほどかかる運賃を食費に回すことができ、「安く上がる」と喜ぶ。手押し車を押してやってきた高齢者は「元気だった?」と、顔見知りを見つけておしゃべり。帰り際、「お互いの安否確認だ」と笑った。
 
買い物を楽しむ地域住民ら。自然と会話も生まれる

買い物を楽しむ地域住民ら。自然と会話も生まれる

 
「高齢者にいいね」。小分けされた米は手ごろな価格で即完売

「高齢者にいいね」。小分けされた米は手ごろな価格で即完売

 
 この移動販売は、同市上中島町の菓子製造販売・卸業「小島製菓」(菊地広隆社長)が中心となって運営する。きっかけとなったのは、同じ場所で冬場に同社単独で実施した移動販売。自社製品の和洋菓子を売り出していたが、徐々に「〇〇がほしい」「××があったらいいな」と声が寄せられるようになった。高齢化率40%超という市内の状況と、利用者との触れ合いから高齢者の1人暮らしや移動手段に困難を抱えている人が増えていると感じた菊地社長(41)。一方、「やってくる人たちはたくさん買ってくれる」との感覚もあって、事業者の収入増になるのではと個人商店主らに声がけをした。
 
 それに3社が応え、今年5月24日に「さわやか移動販売」と銘打ち活動を始めた。市内の小澤商店が場所を提供し、芽吹き屋の団子なども陳列。佐々木仁平商店はおにぎりや弁当、小分けした米(2合)などを安価で売り出す。「作っているの、知らなかった」と驚く人も多い漬物は、食品容器などを製造・販売する菅原紙器の自家製品。人気の野菜は農家などから仕入れている。そして、小島製菓の菓子類ももちろん並ぶ。
 
菅原紙器の漬物。移動販売は事業者の商品を紹介する機会にも

菅原紙器の漬物。移動販売は事業者の商品を紹介する機会にも

 
 開始から約1カ月、6月最後の金曜日となった28日、菊地社長は集荷、陳列、販売対応と大忙し。住民らが楽しく買い物を楽しむ様子を見つめ、「自分で商品を手にとって選ぶことができるというのは、とても大切なこと。対面販売するスタッフや、住民同士の交流もできる。この風景がいいよね」と意義を強調する。
 
「笑顔のやりとり、いいね」。対面販売の良さを実感する菊地広隆社長(右)

「笑顔のやりとり、いいね」。対面販売の良さを実感する菊地広隆社長(右)

 
 「高齢者の生き生き生活応援」も狙いの一つ。委託販売的な形にし、参加事業者から受け取る手数料を人件費に充てている。スタッフとして活躍する菊池利教さん(71)は道の駅駅長を務めるなど長年接客に携わった経験を生かして住民らを迎えたり、事業者との調整役も担う。「楽しみにしてくれる人が一人でもいたら来ないとね。週1の活動は自分の健康管理にもなる」と腕をまくった。
 
 この日は新たな事業者が仲間入り。中妻町の「お茶の丸山園」が茶葉を並べた。消費者だけでなく事業者の高齢化も進み、後継ぎ不足などもあって個人商店が減る中で、商売の大変さを感じていた井ケ田昌信代表取締役(57)。「待っているだけではやっていけない。こちら側から地域に出ていき、一つでも多く買ってもらえたらありがたい」と参加する。
 
地域を盛り上げる取り組みに事業者も客もみんな笑顔

地域を盛り上げる取り組みに事業者も客もみんな笑顔

 
 「同じように感じる事業者は少なくない」と菊地社長。他にも参加の申し出があるといい、「個人商店をつないで商品を運んで販売する、そんな仕組みづくりをしているところ。お客さんとなる住民のニーズも聞きながら続けられる形を見いだしたい」と前を向く。ただ、「常設は無理。週に数回、2、3時間の活動が程よい」と実感。できる範囲で取り組みつつ、「他地区にも広げていければ」と展望した。
 
 そばにある高齢者施設付近も巡回。そこでもやりとりは続く。
 「来てくれて助かる」「お買い上げ、ありがとう。また、来週金曜日に」

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釜石湾養殖「はまゆりサクラマス」 水揚げ順調 大きさ、味も“うまい”と分かりマス⁉

釜石市魚市場に水揚げされる「釜石はまゆりサクラマス」=6月26日

釜石市魚市場に水揚げされる「釜石はまゆりサクラマス」=6月26日

 
 釜石湾で養殖される「釜石はまゆりサクラマス」が、今季も順調に水揚げされている。昨季より魚体が大きく、3キロ超のものも増加。1キロ当たり1000円前後で取引されており、こちらも高めで推移している。生産に取り組む泉澤水産(釜石市両石町、泉澤宏代表取締役)はこの春に養殖に関する国際認証「ASC」を取得し、価値を高めた安全で安心な水産物を届け続ける構え。その恵みに市内の水産加工業者や飲食店、スーパーの関係者らが視線を送っていて、店先、売り場で消費者が目にする機会も増えそうだ。
 
 今季の水揚げは6月24日に始まった。3回目となった26日は午前4時半ごろから同市魚河岸の市魚市場に次々と運び込まれ、同社の社員らが重さによって選別した。この日は約11トンが揚がり、体長約60センチ、重さ2~2.5キロのものが中心。昨季より100円ほど高値で取引され、主に地元の加工業者などが買い取った。水揚げは7月10日ごろまでの予定。200トンの漁獲を見込む。
 
釜石湾で養殖したサクラマスを水揚げする関係者

釜石湾で養殖したサクラマスを水揚げする関係者

 
魚市場に次々と水揚げされる養殖サクラマス

魚市場に次々と水揚げされる養殖サクラマス

 
重さ別に仕分ける関係者。魚市場が活気づく

重さ別に仕分ける関係者。魚市場が活気づく

 
 サクラマスの養殖は2020年、同社や市、岩手大などで構成するコンソーシアムが試験的に開始。22年に同社が事業化した。今季は直径40メートルのいけす2基に約11万9000匹の稚魚を投入。餌の中身を見直したり、自動給餌器と人による餌やりを併用するなど工夫しながら成長させた。昨季は約160トンの水揚げで1匹の平均は2キロ未満だったが、今季は2割ほどが3キロ以上に。漁獲量も増えそうで、養殖での生産量は日本一になるという。
 
今期のサクラマスは3キロを超えるものを増えた

今期のサクラマスは3キロを超えるものを増えた

 
関係者は笑顔を見せながら水揚げ、選別作業を進めた

関係者は笑顔を見せながら水揚げ、選別作業を進めた

 
 秋サケの不漁などを受け、サーモン養殖が広がっている三陸沿岸。釜石では日本の在来種で、地域で「ママス」としてなじみのあるサクラマスに着目してきた。主力の定置網漁業で記録的な不漁が続くサケの供給不足を補う手段として、事業を手がけてきた同社。泉澤代表取締役は「想定よりもいい仕上がり。単価を下げないことが大事で、工夫しながら他地域との差別化を図りたい。日本の固有種であることが一つの特徴。アピールしながら、特産品としての市場価値を高めたい」と力を込めた。
 
 同社では、自然や地域環境に配慮して生産された水産物であることを示すASC認証を受けた漁場で今季、ギンザケの養殖も始めた。6月中旬から水揚げしており、重さが4キロ以上のものも確認。こちらも200トンの出荷を目指す。
 
養殖事業へ期待を高める泉澤代表取締役(左)ら漁業関係者

養殖事業へ期待を高める泉澤代表取締役(左)ら漁業関係者

 
水揚げに合わせて行われた試食会で関係者らが味を確かめた

水揚げに合わせて行われた試食会で関係者らが味を確かめた

 
 26日は試食も用意され、関係者らが刺し身や市内の旅館で提供されている献立で味を確かめた。釜石湾漁業協同組合の佐藤雅彦組合長は「今年のサクラマスはいい。見ただけで脂がのっているのが分かる。食べても、やっぱりうまい」と太鼓判。市漁業協同組合連合会の木村嘉人会長は「市場にどんどんサクラマスが揚がり、釜石の活性化につながれば」と期待した。
 
 「脂がさっぱりしていて食べやすかった。生臭みもなく、魚が苦手な人にも味わってもらえると思う」と話したのは、港町のイオンタウン釜石内のイオンスーパーセンター食品商品部の清水大輔水産マネジャー。今季初めて仕入れ、切り身などにし店頭に並べた。「養殖なので、刺し身で食べられるのも売り。地元でとれるものを認知してもらえるようアピールに協力していければ」と強調。釜石店のほか、県内の同センター6店舗でも売り出される。

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浜千鳥 創業100年記念し新地酒「源水・純米大吟醸」発売 米、水の産地大槌でお披露目パーティー

源水のすべてを楽しむパーティーで新地域おこし酒「源水・純米大吟醸」の誕生を祝う関係者ら=三陸花ホテルはまぎく

源水のすべてを楽しむパーティーで新地域おこし酒「源水・純米大吟醸」の誕生を祝う関係者ら=三陸花ホテルはまぎく

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は創業100周年を記念した新商品「源水・純米大吟醸(720ミリリットル)」を21日から発売している。同社の酒造りを支える大槌町産酒米“吟ぎんが”と、良質で豊富な湧水で知られる同町源水地区の地下水で仕込んだ「地域おこし酒」の第2弾。発売日、町内のホテルで記念パーティーが開かれ、地域が誇る資源と同社の醸造技術で生まれたこだわりの地酒がお披露目された。
 
 関係者や一般客55人が参加。新里社長は22年前に始まった大槌町での酒米生産、地元発案で3年前から取り組む地域おこし酒「源水」のプロジェクトについて説明。「創業100周年にあたり、地酒メーカーとして『ひとつの柱になるものを』と考え、より品質の高い源水“純米大吟醸”の醸造に至った。皆さんの協力でできた自信作」と新商品を紹介した。
 
 「地域おこし酒 源水の魅力」と題し、関係者4人がトークセッション。古くから町内各地で見られた湧水を「地域おこしの一助に」と考え、酒の仕込み水としての活用を提案した地域商社ソーシャル・ネイチャー・ワークスの藤原朋代表取締役(39)は「住民の生活と密接だった湧水だが、震災で自噴する場所が減ってしまった。今回のプロジェクトで、大槌町の財産である湧水がいかに特別で尊いものかを知ってもらえれば」と期待。浜千鳥の奥村康太郎杜氏(43)は「源水の水はミネラルバランスなどが酵母の活動に適していて、発酵がよく進む。業界でも有名な酒所の水に近い。香りが非常に華やかに出る」と水質の良さを実感。上流の田んぼで生産される酒米との“水つながり”の相性も好要素に挙げた。
 
これまでの取り組みも紹介しながら源水の魅力について語ったトークセッション

これまでの取り組みも紹介しながら源水の魅力について語ったトークセッション

 
良質で豊富な湧水で知られる大槌町の源水川。希少種「淡水型イトヨ」の生息地

良質で豊富な湧水で知られる大槌町の源水川。希少種「淡水型イトヨ」の生息地

 
 新たな地酒の誕生を祝い乾杯。テーブルには2年前に発売した「源水・純米吟醸」、大槌産米の先駆け酒「ゆめほなみ本醸造」なども並び、参加者が飲み比べをしながら味わいを確かめた。
 
 宮古市の渡辺千津子さん(80)は“大吟醸”の味わいに「これはヒットしそう。さすが浜千鳥さん。いいのを出しましたね」と絶賛。地域資源に着目した取り組みにも触れ、「苦労もあったと思うが、若い人たちが地域のために積極的に頑張っているのは素晴らしい」と感心した。採水地の地元、源水自治会の佐藤孝夫副会長(51)は「昔から町民にはなじみの場所だったが、そこの水で酒が造られるとは思いも寄らなかった。これを機に全国に『源水』の名が広まっていけば」と願った。
 
 「源水・純米大吟醸」の“船出”を祝うパフォーマンス。商品を小舟に載せて会場を一周

「源水・純米大吟醸」の“船出”を祝うパフォーマンス。商品を小舟に載せて会場を一周

 
参加者全員で乾杯!

参加者全員で乾杯!

 
 プロジェクトでは、商品の売り上げの一部が源水地区の水辺環境保全、子どもたちの自然体験学習などに役立てられる。同パーティーで新里社長は、源水・純米吟醸の2022年11月の発売開始から本年3月までの売り上げの一部(1.8リットル=1本につき40円、720ミリリットル=同20円)計12万7780円を、NPO法人おおつちのあそびの大場理幹事務局長(理事)に手渡した。同町の東京大大気海洋研究所の施設で学ぶ院生でもある大場事務局長(27)は、源水川に生息する絶滅危惧種「淡水型イトヨ」の研究にも関わっていて、「市街地近くにこれだけの湧水地があるのは珍しい。生物進化の研究対象にもなっていて、世界に誇れる場所。地元の人にもっと知ってもらえるような活動をしたい」と意気込む。
 
浜千鳥の新里進社長(左)がNPO法人おおつちのあそびの大場理幹事務局長に寄付金を贈呈

浜千鳥の新里進社長(左)がNPO法人おおつちのあそびの大場理幹事務局長に寄付金を贈呈

 
 地酒「源水」は純米吟醸、純米大吟醸ともに、源水地区の地下40メートルの深井戸からくみ上げた水、大槌酒米研究会(佐々木重吾会長)栽培の吟ぎんがを原料に、本県オリジナルの酵母、こうじ菌で仕込む。大吟醸は精米歩合50%まで高めたことで、より洗練された味に仕上がり、バナナのような果実の香り、優しい甘みが感じられるという。奥村杜氏は「発酵が順調に進むことで適度な日数で酒をしぼることができ、雑味も抑えられる。大吟醸はボトルデザインもクール。今までにない当社のラインアップになるのではないか」と話す。
 
初めて「源水・純米大吟醸」を味わう参加者。お味は?

初めて「源水・純米大吟醸」を味わう参加者。お味は?

 
福を呼ぶにぎやかなアトラクションもパーティーを盛り上げた

福を呼ぶにぎやかなアトラクションもパーティーを盛り上げた

 
 プロジェクトの調整役を担うソーシャル・ネイチャー・ワークスの藤原代表は「地域おこし酒はハレの日がコンセプト。大事な人への贈り物、自分への特別なご褒美にもぴったり」と新商品の誕生を歓迎。今後は「源水川をより身近に感じられるようなしくみづくりにも取り組んでいきたい」と夢を描く。

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存在感増す!?釜石港 国際コンテナ定期航路が新設 週3便態勢で取扱量、回復期待

釜石港に新たな国際定期航路が開設され、初入港したコンテナ船

釜石港に新たな国際定期航路が開設され、初入港したコンテナ船

 
 釜石市の釜石港に22日、京浜港(東京・神奈川)を経由して海外へコンテナを輸送する「国際フィーダーコンテナ定期航路」が新たに開設された。運航船社は「横浜コンテナライン」(本社・横浜市)。中国海運大手「COSCO(コスコ)」の日本総代理店「コスコシッピングラインズジャパン」(本社・東京)が輸出入サービスで利用する。今回の新設により、釜石港には外貿コンテナ航路週1便、国際フィーダー航路週2便の計週3便の定期航路が就航。トラック運転手の残業規制強化による「2024年問題」で海上輸送への転換が見込まれており、関係者らはコンテナ取扱量の増大と港の存在感アップに期待を膨らませる。
 
 最初のコンテナ船「公龍丸」(749トン)が午前9時15分ごろ、ガントリークレーンが設置された釜石港公共ふ頭に着岸した。全長97メートル、全幅13.5メートルで、189TEU(20フィートコンテナ換算)を積載できる。今回は、中国で製造した量販雑貨や肥料の原料となる鉱石類が入ったコンテナ5個を陸揚げ。欧米向けに輸出するパルプ、除雪機などを収納したコンテナ8個を積み込んだ。
 
 新航路は苫小牧港(北海道苫小牧市)と横浜港(横浜市)を結ぶコスコの既存フィーダー(支線)航路に釜石港を加えた形で運航される。八戸を経て釜石には毎週土曜日に寄港。仙台を経て横浜港で貨物を積み替え、コスコが拠点とする京浜港から世界各国へ運ばれる。
 
釜石港公共ふ頭で国際定期航路の開設記念式典が行われた

釜石港公共ふ頭で国際定期航路の開設記念式典が行われた

 
 同日、開設を記念した式典が釜石港公共ふ頭であり、関係者約50人が出席した。小野共市長(釜石港湾振興協議会会長)は「堅調に推移していたコンテナ取扱量が新型コロナウイルス禍の影響で乱高下する事態に直面している。先行き不透明な社会経済情勢、2024年問題が顕在化する中、市や岩手県の経済発展の礎になると確信している」とあいさつ。関係者ら12人がテープカットして祝った。
 
荷主ら関係者を前に小野共市長(左上写真)らがあいさつした

荷主ら関係者を前に小野共市長(左上写真)らがあいさつした

 
釜石港に入港したコンテナ船の前で関係者がテープカットした

釜石港に入港したコンテナ船の前で関係者がテープカットした

 
 コスコシッピングラインズジャパンの喜多正樹取締役は「2024年問題への対応、脱炭素に向けて海上輸送へかじを切る荷主が増える中、釜石港と国内外の港をつなぐ我々のサービスに可能性を感じている。岩手は盛岡からの鉄道輸送サービスという環境もあり、十二分に生かすことで荷主の期待に応えることができる」と強調。横浜コンテナラインの菱沼昌祐営業部長は「6月はジューンブライド、釜石港と結ばれることになり、感無量。釜石、コスコ、横浜港、弊社がワンチームとなって盛り上げていきたい」と意欲を示した。
 
記念品の盾を手にする喜多正樹取締役(右)と菱沼昌祐部長

記念品の盾を手にする喜多正樹取締役(右)と菱沼昌祐部長

 
 釜石港は今年1月に開港90周年を迎えた。東日本大震災以降、県内に工場がある自動車メーカーの完成車物流は休止されたままだが、新たにコンテナ物流に活路を見いだし、誘致を進めた。11年7月に井本商運(神戸市)が香港の海運会社と連携して国際フィーダー航路を開設。17年11月には韓国船社による中国の主要港と韓国・釜山を結ぶ外貿コンテナ定期航路が新設された。新航路の開設は7年ぶり。今回はコスコ側からの提案を受け、市側も荷主探しに奔走した。
 
 同港のコンテナ取扱量は19年の9292TEUが最多。コロナ禍、中国による海産物の禁輸措置などの影響があり、23年は6444TEUに減った。今年は5月末現在で3168TEUとなっていて、今回の国際定期航路就航でさらに取扱量の上積みが見込まれる。

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同じ釜の飯!?釜石サクラマス 岩手大の学生、レシピ考案中 学食提供めざし“浜の母ちゃん”とタッグ

サクラマスを使った料理作りに取り組む岩手大釜石キャンパスの学生ら

サクラマスを使った料理作りに取り組む岩手大釜石キャンパスの学生ら

 
 岩手大釜石キャンパスの学生が、地元の漁協女性部の手を借り、釜石湾で養殖されたサクラマスを使ったレシピづくりに取り組んでいる。サクラマスの認知度を高めて販路拡大やブランド化の進展を図るのが狙い。盛岡市上田のキャンパスにある学生食堂で提供するのが目標で、学生が手を出したくなるメニューや量、価格帯など試行錯誤中だ。
 
 レシピづくりを進めるのは、釜石市平田のキャンパスで学ぶ岩大農学部食料生産環境学科水産システム学コース4年の阿部美幸さんと工藤りおさん。2020年度から継続する「浜のお母さんに学ぶ郷土料理教室」や、市を挙げてブランド化に取り組む「釜石はまゆりサクラマス」を合わせた活動を先輩から引き継ぎ、実現させようと奮闘する。
 
 協力するのは、釜石湾漁業協同組合平田女性部(高澤友子部長、部員約30人)。釜石キャンパス特任専門職員の齋藤孝信さん(62)が調整役を担う。今年3月に上田キャンパスの学食で担当者から実現の可能性や課題を聞き取り、5月の上旬からメニューづくりを本格化させた。
 
漁協女性部メンバー(左)の手を借りて試作に取り組む

漁協女性部メンバー(左)の手を借りて試作に取り組む

 
 6品考案し、レシピ化。15日には魚河岸の魚河岸テラスで試作し、学生に試食してもらった。この日のメニューは、火を通したサクラマスの身をほぐしカブと合わせたサラダ、みそや塩こうじに漬けた焼き物、しょうゆとみりんで下味をつけて揚げたフライの3品。学生たちは「一週間分の魚を食べた気分」と喜びつつ、「焼き物系はパサパサ。改善した方がいい」「サラダは酸味がいいアクセント。でも生臭さと混じるのを不快に感じる人もいるかも」と率直な感想を伝えた。一番人気はフライ。「外がサクサク、中はふっくらで食感がいい」と上々の評価だった。
 
焼き物やサラダなどを試作し、仲間に味わってもらった

焼き物やサラダなどを試作し、仲間に味わってもらった

 
 同じキャンパスで学ぶ仲間の声にうなずきながら耳を傾けた阿部さんと工藤さん。「机の上でしか考えていなかったが、料理として再現することで、学食で提供するイメージができた」と手応えを感じた。活動を後押しする“浜の母ちゃん”、高澤部長と中谷地万惠子副部長(ともに71)は「若い人たちに魚をいっぱい食べてほしいし、料理も覚えてほしい」と目を細めていた。
 
 今回使用したサクラマスは昨年水揚げされたものを市内の加工業者が急速冷凍した半身のフィレ。60~80グラムにそれぞれ切り分け、1食分のサイズ、原価なども考えながら調理した。20日にも残り3品の試作、試食の場を設定。食後のアンケートを用意し、味や量、見た目のほか、「単品だったら、いくら出す?」と問いかけていて、学生の反応を参考にしながら献立を絞り込む。
 
スマホで撮影しながら記録を残しつつ作業を進める

スマホで撮影しながら記録を残しつつ作業を進める

 
 「一切れのサイズは?」とイメージを膨らませながら調理

「一切れのサイズは?」とイメージを膨らませながら調理

 
「同じ釜の飯」を味わってもらおうと試行錯誤を続けるメンバーたち

「同じ釜の飯」を味わってもらおうと試行錯誤を続けるメンバーたち

 
 阿部さん、工藤さんはこの活動に「同じ釜の旬を食う」と名を付ける。24年度の同大学生支援事業「NEXT STEP工房」(学内基金)を活用したい考えで、応募に向け準備。「実現させて、釜石サクラマスの名とおいしさを多くの人たちに知ってもらいたい」と腕をまくる。

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釜石の養殖サクラマスとギンザケ 国際認証「ASC」取得 泉澤水産、持続可能な漁業へ環境配慮

ASC認証を受けた泉澤水産のいけすを船上から見学する関係者

ASC認証を受けた泉澤水産のいけすを船上から見学する関係者

 
 釜石湾で海面養殖を手掛ける泉澤水産(岩手県釜石市、泉澤宏代表取締役)の養殖場で育てられるサクラマスとギンザケが、自然・地域環境に配慮して生産された水産物であることを示す国際認証「ASC認証」を取得した。認証を受けたのは県内では初めてで、国内のサケマス養殖業者としては6件目。商用ベースのサクラマスでは世界初の事例だという。10日に認証書の授与式があり、泉澤代表取締役は「販路拡大や輸出も視野に入れて取り組みたい」と腕をまくる。
 
 同社は1933年創業。主力の定置網漁業でサケの記録的な不漁が続き、供給不足を補う手段として、市や岩手大などとコンソーシアムを構成して2020年11月から海面養殖を試験的に開始した。魚種は日本の在来種で、釜石地方で「ママス」としてなじみのあるサクラマス。翌年には稚魚の陸上養殖も始めた。22年に事業化。合わせて、ギンザケの試験養殖も開始し、今年事業化した。今期は、直径40メートルのいけすを計4基に倍増。2キロほどに成長したサクラマス200トン、ギンザケ180トンの出荷を見込む。
 
「asc認証」ののぼり旗を示し、展望を語る泉澤宏代表取締役

「asc認証」ののぼり旗を示し、展望を語る泉澤宏代表取締役

 
 ASC認証制度は、オランダに本部を置く国際的な非営利団体「水産養殖管理協議会(ASC)」が運営。認証取得には水資源や生態系の保全、餌原料となる天然魚の使用率、資源の保護など環境面だけでなく、養殖場の適切な労働環境や人権など社会面にも配慮を求め、細やかで厳しい審査基準を設ける。
 
 認証に向けて同社は、養殖場の泥を採取して水質検査をしたり、食べ残しがないよう給餌方法を見直したり、社員向けに養殖に関する勉強会を開くなど対応。さまざまある基準をクリアし、安全な環境と人による「責任ある養殖事業」を展開していると認められた。
 
認証ラベルには「責任ある養殖により生産された水産物」と文字が入る

認証ラベルには「責任ある養殖により生産された水産物」と文字が入る

 
 認証水産物には「ASCラベル」を付ける。適正に管理された養殖場で生産された水産物の保証になり、消費者へのメッセージ性も高まる。認証の有効期限は4月3日から3年間。継続するためのハードルも高く、認証機関による毎年の定期監査に加えて3年に1度、認証更新のための監査をクリアする必要がある。
 
認証書を手にする泉澤代表取締役(左から4人目)ら

認証書を手にする泉澤代表取締役(左から4人目)ら

 
 授与式は釜石・東前町の同社で行われ、ASCジャパンの山本光治ゼネラルマネジャーが「養殖では環境負荷が必ず起こってしまうが、環境汚染を最小限に抑える部分で改善が図られ、労働者の権利も守られていた。地域の一員として盛り上げていく姿勢も見られた」などと説明。審査に携わった認証機関アミタ大阪オフィスの纐纈(こうけつ)渉チームマネジャーが泉澤代表取締役に認証書を手渡した。
 
 先立って、養殖場の見学や試食会を実施。取引業者ら関係者約30人が参加した。刺し身などを味わい、「サクラマスは身の色が薄いが、上品な脂で中高年が好む。焼いても生でもよく、使っていきたい」と上々の声。「釜石サクラマス」「釜石サーモン」として広く認知されることへの期待も大きかった。
 
試食会で提供されたサクラマスとギンザケに手を伸ばす参加者

試食会で提供されたサクラマスとギンザケに手を伸ばす参加者

 
 今年の水揚げは間もなく始まる。泉澤代表取締役は「安全安心の基準をクリアすることは世界で必要になってきている。縮んでいたマーケットに、持続可能な漁業で踏み込んでいければ。安定供給し、漁業者の賃金と地位向上にも努めていく」と見据えた。

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賃上げ拡充、職場環境改善、平和実現…へ 5/1「メーデー」 釜石地区の労働者ら2集会で訴え

釜石市内で開かれたメーデー集会(写真上:連合岩手系、写真下:いわて労連系)

釜石市内で開かれたメーデー集会(写真上:連合岩手系、写真下:いわて労連系)

 
 メーデーの1日、釜石市内ではいわて労連系と連合岩手系の第95回地区集会がそれぞれ開かれた。円安、物価上昇、平和を脅かす世界情勢で暮らしの不安が増大する中、非正規を含む労働者の賃上げ、長時間勤務やハラスメントのない労働環境の実現などを目指し、声を上げた。集会後は中心市街地でデモ行進も行い、要求実現への強い思いをアピールした。
 
釜石地方労働組合連合会 第95回メーデー釜石地区集会=1日午前

釜石地方労働組合連合会 第95回メーデー釜石地区集会=1日午前

 
 釜石地方労働組合連合会のメーデー集会は1日午前、大町の市民ホールTETTO前広場で行われた。釜石、大槌、遠野3市町の医療、自治体の職員労組、年金者組合など8団体から約40人が参加した。
 
 木下大輝実行委員長(全医労釜石支部書記長)は「働く人たちを取り巻く状況は悪化の一途をたどっている。物価高、終わりの見えない戦争…。今日集まった全員で、より良い社会をつくるために声を上げていきたい」とあいさつ。来賓の日本共産党岩手県東部地区委員会の深澤寿郎委員長は昨年、県内外で行われた医療労組のストライキについて「戦ってこそ権利が守られる」、釜石市平和委員会の岩鼻美奈子会長は2015年から釜石駅前で継続する反戦行動、市内の医療機能低下などに触れ、「現役労働者が力をつけていかないと時代は変わらない」と述べた。
 
 県医労釜石病院支部、釜石市職労など4団体が連帯の決意表明。物価上昇を上回る大幅賃上げと全国最下位の本県最低賃金の抜本的な引き上げ、長時間労働や格差の是正、軍事費増額や殺傷兵器輸出解禁など軍拡への反対―を求め、団結するメーデー宣言を採択した。参加者は横断幕やプラカードを掲げ、大町から大渡町をデモ行進した。
 
集会ではプラカードコンテストも実施。3団体に賞が贈られた

集会ではプラカードコンテストも実施。3団体に賞が贈られた

 
デモ行進し、生活改善や平和実現を訴える釜石地方労連集会の参加者

デモ行進し、生活改善や平和実現を訴える釜石地方労連集会の参加者

 
 木下実行委員長は「賃上げも物価高には追い付いていない状況。このまま労働者の負担が増え続けると子育て世代はさらに厳しい。本県では医療現場の人手不足も深刻。働く現役世代の訴えをしっかり届けなければ」と話した。
 
連合岩手釜石・遠野地域協議会 第95回釜石地区メーデー集会=1日夕

連合岩手釜石・遠野地域協議会 第95回釜石地区メーデー集会=1日夕

 
 連合岩手釜石・遠野地域協議会のメーデー集会は1日夕、大町の釜石PITで開かれ、県職労、岩教組、民間企業各労組など15組合から約90人が参加した。小島安友実行委員長(日本製鉄釜石労組)は「今年の春闘では、連合の中間集計で5.77%の賃上げがあったとされる。加えて、(4月から)医師や建設、運送業従事者に対しても残業(時間外労働)規制が始まった。深刻な人手不足で事業継続さえ危ぶまれる中で、人が辞めないような働き方を進める必要がある。より良い暮らしを求めるため、われわれは声を上げ続けていかねばならない」とあいさつした。
 
 来賓が紹介され、代表して大久保隆規県議(釜石選挙区)があいさつ。「自治権の7割は国が握っているのが実態。地域だけの努力では大きな課題解決に向かわないのではないか」と、政治を動かす必要性を示した。
 
 今春闘の賃上げの勢いを中小企業の組合などに波及させること、働く者・生活者の立場に立った政治勢力の結集・拡大を目指すこと、石川県能登半島地震の早期復旧・復興への被災地支援活動―などを盛り込んだメーデー宣言を採択。団結「ガンバロウ」を三唱し結束を図った。会場ではお楽しみ抽選会、被災地支援の募金も行われた。
 
決起集会では参加15組合が決意表明を行った

決起集会では参加15組合が決意表明を行った

 
組合旗や風船を手に大町周辺をパレードする連合釜石・遠野地域協集会の参加者

組合旗や風船を手に大町周辺をパレードする連合釜石・遠野地域協集会の参加者

 
 決起集会で各労組が決意表明を行い、約7年ぶりにパレード(デモ行進)も実施。全ての労働者の処遇改善、ジェンダー平等の実現、暮らしの底上げ強化など安心社会の実現へシュプレヒコールを繰り返した。