タグ別アーカイブ: 産業・経済

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釜石で学ぶ!震災復興の歩み、避難行動 米ミネルバ大の学生 地域課題探り、戦略提案も

避難体験で高台に続く階段を駆け上がるミネルバ大学の学生ら=11月8日

避難体験で高台に続く階段を駆け上がるミネルバ大学の学生ら=11月8日

 
 世界の各都市を巡りながら実践的な学びを深める教育に取り組む米・ミネルバ大学(本部・サンフランシスコ)の2年生約50人が11月8日から10日にかけて釜石市を訪問。「災害復興と防災」をテーマに東日本大震災の被災状況や復興まちづくりの過程を学んだ。同市と同大、ミネルバジャパン(東京)の3者で結ぶ包括連携協定によるもの。被災者の体験談を聞いたり避難行動を追体験したり、復興後のまちの課題について関係者への聞き取りも行いながら、防災や観光などの面から市への提言や新たな取り組みのアイデアを残した。
 
 同大は2014年に開校した4年制の大学。キャンパスを持たず、学生は世界の複数の都市に移り住みながら、少人数での議論を中心とするオンライン授業に参加する。現地の企業やNPOなどと協働し、課題解決型の学習も展開。約640人の学生(大学院生を含む)のうち、世界約100カ国からの留学生が85%以上を占めているのも特徴だ。
 
 世界8カ所目となる日本拠点を8月に東京に開設。フィールドワークの場の一つとして釜石市が選ばれ、10月に協定を結んだ。受け入れ先の市や観光地域づくり法人かまいしDMCなどが学びと交流の場を提供すべく準備を進めてきた。
 
釜石市、ミネルバ大など3者が10月に協定を結んだ

釜石市、ミネルバ大など3者が10月に協定を結んだ

 
 釜石入りしたのは、26カ国の学生とドルトン東京学園高の生徒らの一行。岩手県主催の総合防災訓練が市内で展開された8日、住民参加の避難訓練はクマの出没が相次いでいるため中止となったが、一行はプログラムの一つとして独自に避難訓練を行った。
 
 学生らは引率者の合図で、宿泊先のホテルから近くの高台にある仙寿院(大只越町)に向かった。寺に続く階段を急ぎ足で上って避難。その様子を見つめた芝崎恵応住職は「歩いて坂を上る学生がいた。のんびり歩いていたら助かりません。もし津波が来ていたら、みなさんの3分の1はお亡くなりになっていた」と告げた。
 
学生らは仙寿院で避難訓練を体験し、映像で震災当時の状況を学んだ=11月8日

学生らは仙寿院で避難訓練を体験し、映像で震災当時の状況を学んだ=11月8日

 
 本堂に招き入れ、震災の津波襲来時の映像を見せながら講話。津波から命を守る避難行動を意識づけるため継続する「新春韋駄天(いだてん)競走」にも触れ、寺に続く急坂を懸命に駆け上がる市民らの様子も紹介した。
 
 一行はその後、大槌町へ。NTT東日本が企画した防災プログラムでデジタル活用の事例と課題などを考えるワークショップなどに臨んだ。さらに、釜石・鵜住居町に移動し、いのちをつなぐ未来館や祈りのパークを見学。震災時に小中学生がとった避難行動をたどる追体験にも取り組んだ。案内役は同館職員の川崎杏樹さん(29)。当時、釜石東中2年生で、学生は当時の状況を聞きながら、釜石鵜住居復興スタジアムから恋の峠まで約1.6キロの道を歩いた。
 
震災時に鵜住居地区の子どもたちがとった避難行動を追体験

震災時に鵜住居地区の子どもたちがとった避難行動を追体験

 
 自然災害が少ないというエストニア出身のレティ・イードラさん(20)は、坂道を走って逃げるのは初めての体験だった。体験者の「リアルなストーリー」から「当時、何を感じていたのか、どんな思いで行動したのか、心に触れられた。小さい頃から自衛的に得られたものがここにはあり、人として学ぶことが多い」と受け止めた。
 
 同年代との交流の時間も。震災の伝承や防災活動に取り組む釜石高校の生徒有志グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」副代表の高橋美羽さん(2年)は「災害が多い地域で高校生が立ち上がって行動していることを海外の人に伝えられた」とうれしそうに話した。将来、語学を駆使した仕事を視野に入れていて、「英語をもっと勉強し、質問に直接答えられるようにしたい」と、学生から刺激をもらった。
 
釜石高生から震災の語り部活動や防災の取り組みを聞いた

釜石高生から震災の語り部活動や防災の取り組みを聞いた

 
 9日は、かまいしDMCの河東英宜代表取締役や市オープンシティ・プロモーション室の佐々木護室長から復興まちづくりの過程などの説明を聞き、ハード整備を終えた市中心部の街並みを見て回った。海を生かした観光などに取り組む人らとの意見交換も行った。10日は学びの成果を発表。10のグループに分かれ、▽高齢者の避難を助ける乗り物の導入▽防波堤の野外アートギャラリー化―などのアイデア、課題解決策を提言した。
 
復興まちづくりに関する講話に耳を傾ける学生=11月9日

復興まちづくりに関する講話に耳を傾ける学生=11月9日

 
釜石の未来戦略を提案⁉学びの成果を発表する学生=11月10日

釜石の未来戦略を提案⁉学びの成果を発表する学生=11月10日

 
ミネルバ大の学生は多様な考え方に触れながら学びを深め合う

ミネルバ大の学生は多様な考え方に触れながら学びを深め合う

 
 被災者の体験談や都市再生の過程から「生きるために必要なレジリエンス(回復力)を学ぶ場」としての可能性を見いだしたのは、アメリカ人のウォルフガング・サンダーさん(18)。「災害があってもこの地で生き続ける覚悟や、ふるさとを受け継ぐために希望を作り続ける人々に触れた。習慣化された心のあり方や思考に変化をもたらすような体験を提供することは観光振興にもつながるだろう」と想像した。
 
 同じグループの入江颯志さん(20)は福岡県大野城市出身。震災のニュースは記憶するが、「外から見るのと現地で実体験を聞くのではギャップが大きかった。コミュニティーのつながりを大事にし、不屈の精神を持つ人が多いと感じた」と学びを振り返った。印象に残ったのは「つながり人口」という言葉。外部との交流で新たな活力を育み、復興後の持続的成長を導こうとする市の「オープンシティ戦略」に掲げられるもので、「新しいポジティブな考え。発見として持ち帰り、深堀りしてみたい」と感化された。
 
新たな視点を学び合ったミネルバ大の学生、釜石市の関係者ら

新たな視点を学び合ったミネルバ大の学生、釜石市の関係者ら

 
 発表を聞いた市関係者から「人口減、高齢化の課題はあっても、災害から命を守る行動の重要性は変わらない。解決につながりそうな提案であり、他の自治体でも使える考え。この話、進めましょう」などと声が上がっていた。学生たちの知見に期待感を示し、次年度以降も受け入れを続けたい考え。学びの場の提供に加え、子どもらとの交流も見込む。
 
 同大学の2年生は1年間、日本で学ぶ。現地学習は釜石市のほか和歌山県田辺市、兵庫県姫路市で行われる。

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岩手大釜石キャンパス学生が地元水産資源をPR 今年は街なか開催 2年目のおさかなフェス盛況

「釜石の魚、おいしいよ~」地元の海の幸をPRする岩手大の学生ら=9日、おさかなフェス

「釜石の魚、おいしいよ~」地元の海の幸をPRする岩手大の学生ら=9日、おさかなフェス

 
 釜石市平田の岩手大釜石キャンパスで水産を学ぶ学生らが9日、市中心市街地の大町広場で地元海産物の魅力をアピールする「おさかなフェス」を開いた。昨年の同キャンパス敷地内での開催に次ぐ2年目の取り組み。釜石の海で漁獲された鮮魚の販売、海の生き物に触れられるタッチプール、地元業者の出店などで会場はにぎわいを見せ、学生と市民らの交流、釜石の魅力再発見の場となった。
 
 同大農学部食料生産環境学科水産システム学コースの3、4年生24人が企画から運営までを担うイベント。昨年も好評だった鮮魚販売には約20種類の魚が並んだ。浜町の廻船問屋マルワの協力で仕入れた魚介類は、釜石湾や唐丹湾の定置網漁、かご漁で取れたもの。サバやマダイ、タナゴ、ドンコなどおなじみの地魚のほか、ヤガラ、カスベ、マトウダイなど普段、店頭ではあまり目にする機会のない種が目を引いた。学生らは各魚の特徴やおいしい食べ方なども客に教えた。
 
定置網やかご漁でとれた魚介類を販売。学生らが来場者に説明も

定置網やかご漁でとれた魚介類を販売。学生らが来場者に説明も

 
珍しい魚や価格の安さも来場者の目を引いた

珍しい魚や価格の安さも来場者の目を引いた

 
展示用の(下段左から)マンボウ、チカメキントキ、ハリセンボンに興味津々

展示用の(下段左から)マンボウ、チカメキントキ、ハリセンボンに興味津々

 
 鮮魚のほか、サクラマスやサバのみりん干しも販売。サクラマスは早々に完売する人気ぶりだった。魚類の販売価格は100円から1200円。通常価格の半額近いものもあり、来場者は好みのものを複数買い求めた。ウオーキングの帰りに立ち寄ったという、会場近くの復興住宅に暮らす女性(76)はサバとイナダ(ブリの若魚)を購入。「普段より安いよね。子ども2人も岩手大を卒業しているので親しみを感じる。若い人たちがまちを盛り上げてくれるのはうれしいこと」と喜んだ。
 
 今や釜石キャンパス学生の代名詞となった「タッチプール」には、学生が釜石の海で釣った魚、交流のあるかご漁漁師が提供してくれた珍しい魚介類が放たれた。生きた状態を見られる機会はなかなかないだけに、子どもも大人もその動きに注目しながら観察。もちろん、触れるのもOKで、来場者は地元の海の豊かさも感じながら“タッチ”を楽しんだ。
 
研修で釜石を訪れた外国人学生も釜石の海の生き物にびっくり!

研修で釜石を訪れた外国人学生も釜石の海の生き物にびっくり!

 
カイメンを住みかにしたヤドカリ(右上)やキタムラサキウニ(右下)も登場。さまざまな海の生き物に触れられるタッチプール

カイメンを住みかにしたヤドカリ(右上)やキタムラサキウニ(右下)も登場。さまざまな海の生き物に触れられるタッチプール

 
学生(右)は子どもたちに生態なども教えながら釜石の海の素晴らしさを伝えた

学生(右)は子どもたちに生態なども教えながら釜石の海の素晴らしさを伝えた

 
 「岩手大との付き合いは15年ぐらい」という釜石湾漁協白浜浦女性部は昨年に続いて出店協力。えびせんべい、タコの唐揚げ、ウニご飯などを販売した。いち推しは「アカモク」の加工品。塩分の排出効果があるカリウムを多く含む海藻で、この日は、ふりかけや各種料理にアレンジ可能な湯通しした商品を並べた。アカモクを入れたみそ汁のお振る舞いも。同女性部は商品化の取り組みを始めて9年目になるといい、今では同市ふるさと納税の返礼品にも採用される。
 
アカモクの加工品などをPRする釜石湾漁協白浜浦女性部のメンバー

アカモクの加工品などをPRする釜石湾漁協白浜浦女性部のメンバー

 
浜の食文化を伝える機会にもなったおさかなフェス。白浜浦女性部自慢の味覚が並ぶ

浜の食文化を伝える機会にもなったおさかなフェス。白浜浦女性部自慢の味覚が並ぶ

 
 同女性部長の佐々木淳子さん(70)は「釜石市は脳卒中の罹患率が高い。アカモクの普及で市民の健康を守る手助けができれば」とアピール。地元水産物の魅力発信に積極的な岩大生を「頼もしい。同じ仲間として心強いし応援したい」と話し、継続的な連携を望んだ。
 
 水産システム学コースの学生は3年の秋から卒業までの1年半、釜石キャンパスで学ぶ。学生らは学業のかたわら、地元水産業者とタイアップしたイベント開催や小中学生の水産授業のサポートなど、地域住民とつながる各種活動を展開。おさかなフェスもその一つで、学生らは多くの学びを得て成長につなげている。
 
 3年の大友梨央さん(21)は釜石で学び始めて1カ月余り。初めての同フェスでは鮮魚販売を担当した。「思った以上に皆さん買ってくれてびっくり。魚の紹介をしたり、コミュニケーションを取りながら販売できるのがいい」と市民との交流を楽しんだ。人口、若年層の減少が続く沿岸地域において、「学生の出店が集客やにぎわいを生むのなら、地域にある大学として貢献できているのではないか」とも感じた。
 
会場では来場者にアンケートも実施。後輩たちの活動に役立てられる

会場では来場者にアンケートも実施。後輩たちの活動に役立てられる

 
地元販売店や漁師も出店し、にぎわいを見せた大町広場

地元販売店や漁師も出店し、にぎわいを見せた大町広場

 
 「水産のみならず釜石の魅力を幅広く発信できるように」と企画した今年の同フェス。会場には精肉店や菓子店なども出店し、学生企画のイベントを盛り上げた。イベントリーダーを務めた4年の浅野蒼矢さん(22)は「各種申請など事務手続きも全部、自分たちでやった。社会に出てから経験するようなことを先取りできたのは大きい。地域の方とのコミュニケーションの仕方も学べた」と貴重な体験を心に刻む。自分たちの経験は後輩にも伝えたい考えだ。

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鮮やか秋の味!釜石特産・甲子柿 生産組合が目揃会「豊作だけど、お早めに」

出荷シーズンを迎え、きれいに箱詰めされた甲子柿

出荷シーズンを迎え、きれいに箱詰めされた甲子柿

 
 釜石市特産の「甲子(かっし)柿」が出荷シーズンを迎えた。真っ赤に色づいた秋の味覚が道の駅や産直などを彩り、市民らが味わいを楽しんでいる。甲子柿の里生産組合(佐々木裕一組合長、24人・5団体)は28日、同市甲子町の林業センターで品質を確認する「目揃(めぞろえ)会」を開催。今年は豊作の見込みで、生産者は甘くとろける自慢の味を全国に届けようと意気込む。
 
 目揃会には生産者や市の担当者ら約20人が集まり、持ち寄った品の大きさや色つやなどを確かめた。佐々木組合長(74)によると、今季は高温、少雨と作物にとっても過酷な気候状況だったが、ふたを開けてみると実の出来は上々。何と言っても「味がいい」と太鼓判を押す。病害虫の被害も少なく、収量は「例年以上になる」と確信。糖度の高い仕上がりに自信ものぞかせた。
 
目揃会で出来を確かめ笑顔を見せる生産者ら

目揃会で出来を確かめ笑顔を見せる生産者ら

 
 今年仲間入りした甲子町(中小川)の自営業(製材)、外川直樹さん(52)が持ち込んだ品は試食用として振る舞われた。実は小ぶりながら色つやはよく、味についても先輩たちから「おいしい」との評価を得、ほっとひと息。パック詰めの仕方などまだ手探り状態なことも多く、組合員らの助言をしっかり聞いた。現在は庭木として育てる2本から約1000個を収穫し、知り合いの組合員のもとで渋抜きをしてもらっている。数年前に苗木10本を植えて増産へ準備中。「地域の一員として甲子柿を守りたい」と意欲を見せた。
 
鮮やかな紅色とぷるんとした食感が特徴の甲子柿

鮮やかな紅色とぷるんとした食感が特徴の甲子柿

 
一口大に切った柿を試食し甘さや食感を確かめた

一口大に切った柿を試食し甘さや食感を確かめた

 
 甲子柿は、渋柿の一種の小枝柿を「柿室(かきむろ)」と呼ばれる暗室で1週間ほどいぶして作る。渋抜きされた実はトマトのように赤く熟し、ゼリーのような柔らかい食感になる。地域の農林水産物や食品のブランドを守る地理的表示(GI)保護制度への登録や、機能性表示食品の認定も受け、全国からの引き合いが一層高まっている。
 
 そうした背景もあり、組合員の内舘靖さん(56)は新しい包装や発送の方法、高級感を持たせた仕様について、さまざまなアイデアを出す。個包装にして配達時に実が割れるのを防いだり、地元の銘酒浜千鳥と組み合わせた贈答パックを企画したり。市のふるさと納税返礼品としての取り扱いを視野に木箱に詰めたものも検討中だ。探究の原動力は「いいものを届けたい」との思い。「地域の魅力」「伝統の味力」として甲子柿を守り盛り上げるため、組合の仲間と試行を続ける構えだ。
 
木箱入りや特産品を組み合わせた贈答用パックの見本

木箱入りや特産品を組み合わせた贈答用パックの見本

 
 出荷作業は11月20日ごろまで続く見込み。市内では産直や一部スーパーで販売中だ。道の駅釜石仙人峠(甲子町)でも店頭を彩り、買い物客らが手に取っている。「話のタネに」と購入したのは、埼玉県さいたま市の平塚信也さん(63)。岩手県内陸部での用を済ませ、沿岸部を車で周遊する途中で立ち寄った。「駅にポスターがあって、気になっていた」と話し、「ゼリーみたいな感じなのかな…食べるのが楽しみ」と想像を膨らませた。
 
真っ赤な特産が所狭しと並んだ道の駅釜石仙人峠の店内

真っ赤な特産が所狭しと並んだ道の駅釜石仙人峠の店内

 
 目揃会に顔を出した道の駅の佐々木雅浩駅長は、豊作との見立てに期待をのぞかせ「自慢の味を少しでも多く販売したい」と張り切る。11月2日には甲子柿祭りを開催。食のほか、甲子郷小川しし踊り(市指定無形民俗文化財)の演舞(午前11時~)も楽しめる。
 
 同組合では市外への認知度アップも進める。10月31日、11月1日に藤崎百貨店前(宮城県仙台市)で開かれる「GI産品とうまいものフェア」に参加。販売会は11月5日・カワトク(岩手県盛岡市)、14日・さくら野百貨店八戸店(青森県八戸市)で予定する。

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(一社)栗橋地域振興社70周年 先人の労苦に感謝 和山牧場の新たな未来へ関係者一丸

一般社団法人栗橋地域振興社の創立70周年記念式典で万歳三唱する出席者

一般社団法人栗橋地域振興社の創立70周年記念式典で万歳三唱する出席者

 
 釜石市和山牧場の管理、運営を担う一般社団法人栗橋地域振興社(菊池録郎代表理事会長)は、今年で創立70周年を迎えた。時代の変遷で畜産業が衰退してきた中、同牧場地内では近年、風力発電事業が展開されるなど新たな土地利用が進む。9月28日に開かれた記念式典には同振興社のパートナー事業者も出席。今後の事業展開についても報告され、和山の新たな未来創造へ関係者が協力して取り組むことを誓い合った。
 
 橋野ふれあいセンターで開かれた70周年記念式典には、一般社員と役員、来賓ら約70人が出席した。菊池会長はあいさつで、前身の栗橋牧野農業協同組合からの歴史を振り返り、「昭和58年、最盛期には937頭もの放牧が行われ、華々しい時代もあったが、頭数の減少に伴う赤字経営、東日本大震災などの災禍で、今日に至る道のりには多くの辛苦があったと推察する」と先人たちの努力に敬意を表した。
 
創立70周年にあたり、あいさつする菊池録郎代表理事会長(左)

創立70周年にあたり、あいさつする菊池録郎代表理事会長(左)

 
和山牧場の歴史を聞きながら、振興社の歩みに理解を深める出席者

和山牧場の歴史を聞きながら、振興社の歩みに理解を深める出席者

 
 70周年記念事業として▽記念誌発行、DVD作成▽先人の業績パネル設置▽寄付金贈呈―が報告された。地域貢献事業として行う寄付は総額100万円。贈呈先は市、栗林小、釜石東中で、菊池会長が小野共市長と両校の校長に目録を手渡した。業績パネルは明治、大正時代に地域の畜産業発展に多大な貢献をした佐々木福太郎、小笠原勘十郎両氏の功績をたたえるもので、瀞渡(とろわたり)地区の和山牧場記念碑(1981年建立)近くに設置された。
 
70周年記念事業として記念誌の発行や先人の業績パネルの製作・設置を行った

70周年記念事業として記念誌の発行や先人の業績パネルの製作・設置を行った

 
和山牧場の礎を築いた佐々木福太郎、小笠原勘十郎両氏の功績を紹介するパネル

和山牧場の礎を築いた佐々木福太郎、小笠原勘十郎両氏の功績を紹介するパネル

 
寄付を受ける小野共市長(左)、栗林小の高橋昭英校長(右上)、釜石東中の高橋晃一校長(右下)

寄付を受ける小野共市長(左)、栗林小の高橋昭英校長(右上)、釜石東中の高橋晃一校長(右下)

 
 和山牧場は1940(昭和15)年、当時の帝室林野局から栗橋村が払い下げを認可され村営となった。55(昭30)年には栗橋牧野農業協同組合に無償譲渡。組合は71(昭46)年に市と牧場の賃貸契約を結び、市営和山牧場としての経営が始まった。当初、約300頭だった放牧は年々数を増やし、83(昭58)年には最大の937頭を記録。牧場地内は農地やレジャーにも活用され、和山フェスティバルが開かれるなど多くの市民に親しまれる場所となった。
 
 90年代には放牧数が半減。新たな土地活用として風力発電事業の実施が決まり、2004(平成16)年から隣接する大槌町、遠野市にまたがる「釜石広域ウインドファーム」が稼働した。時代の変遷、子牛価格の暴落などで飼養農家は減り、放牧数も年々減少。11(平23)年の東日本大震災が追い打ちをかけた。現在、放牧を行っているのは8人、12~13頭にとどまっている。
 
 そんな中、畜産業振興につながる新たな取り組みも。今年5月には、福島県の「エム牧場」が和山で肥育を目的とした肉用牛25頭の放牧に着手。“ストレスフリーの健康牛”としてブランド化を図る挑戦が始まった。昨年4月、同市栗林町で養鶏事業を始めた一関市の「オヤマ」は和山地内に第2の養鶏農場「和山ファーム」を建設中。鶏舎6棟、16~17万羽の鶏飼育が可能な施設は栗林とほぼ同規模。工事は順調に進んでいて、2026年11月の稼働を見込む。
 
建設中のオヤマの新養鶏場「和山ファーム」(左上) エム牧場は5月から和山で放牧を開始(左下) 今後の釜石市の畜産業振興に期待が寄せられる

建設中のオヤマの新養鶏場「和山ファーム」(左上) エム牧場は5月から和山で放牧を開始(左下) 今後の釜石市の畜産業振興に期待が寄せられる

 
 ユーラス釜石広域ウインドファーム(事業者:ユーラスエナジーホールディングス、東京都)は約20年間運転してきた風車の更新(建て替え)事業が進行中。計画する11基のうち、東エリア(大槌側)の8基は据え付けが完了し、現在、西エリア(遠野側)3基の建設工事が進む。新発電所の営業運転開始は2026年4月を見込む。また、同社は新たに25基を増設する拡張計画も検討している。
 
「ユーラス釜石広域ウインドファーム」の新しい風車。現在は西エリアの風車建設工事が進められている

「ユーラス釜石広域ウインドファーム」の新しい風車。現在は西エリアの風車建設工事が進められている

 
 和山は豊かな自然環境も大きな魅力の一つ。同振興社は「橋野鉄鉱山」の世界遺産登録を契機に、観光振興策にも力を入れる。地元住民組織と連携し、市指定文化財の巨木「和山のシナノキ」がある長鼻地区に八重桜やレンゲツツジを植樹。市民の憩いの場となるような景観復活に取り組んでいる。このほか、長年にわたり、地域振興につながる各種寄付も継続。地域とともに歩む組織として歴史を重ねている。
 
和山・長鼻地区で行われたレンゲツツジの植樹(2022年10月)。以降、順調に花を咲かせているという

和山・長鼻地区で行われたレンゲツツジの植樹(2022年10月)。以降、順調に花を咲かせているという

 
 現在、和山で放牧を行う飼養農家のうち最年長の小笠原松見さん(76)は、祖父の代から畜産業にいそしむ。多い時で25~27頭を育てたが、今は4頭。平成に入り、短角牛から黒毛和牛に替えた。「赤字もあるが、何とかやってきた。体力の続く限りは(畜産を)やっていきたい」と愛着を示す。式典では、「春のべぇご(牛)上げ=放牧時には、牛同士がけんかする様子を大勢の人が見物した。けんかはボスを決めるためのもの」などと思い出を話した。3事業者による新たな取り組みも歓迎し、「牧場活用が増えるのは良いこと。これを機にまた和山がにぎわってくれたら」と願った。
 
式典で和山牧場の思い出を語る小笠原松見さん(左)。18歳から“牛飼い”一筋。振興社の顧問も務める

式典で和山牧場の思い出を語る小笠原松見さん(左)。18歳から“牛飼い”一筋。振興社の顧問も務める

 
式典後、思い出や今後について語り合う栗橋地域振興社の役員ら

式典後、思い出や今後について語り合う栗橋地域振興社の役員ら

 
 旧栗橋牧野農業協同組合は1955年2月25日設立。当時の組合員数は499人。一般社団法人栗橋地域振興社に組織変更されたのは2022年。25年5月の総会時の社員数は298人となっている。

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新鮮!装いも商品も サンデーホームマート釜石店がリニューアルオープン 利便性アップ

店に入ると野菜がずらり。新鮮な風景に買い物客が集まる

店に入ると野菜がずらり。新鮮な風景に買い物客が集まる

 
 東北地方でホームセンターを展開するサンデー(本社・青森県八戸市、大南淳二代表取締役社長)は8月29日、釜石市上中島町の「サンデーホームマート釜石店」(大山直喜店長)をリニューアルオープンさせた。日用雑貨や住宅設備に関する商品を販売するホームセンターの装いを一新。生鮮食品や総菜なども扱うワンストップ型店舗として利便性をプラスし、「日常づかいの暮らし」をサポートする。
 
 午前8時の開店時間前には150人ほどの列ができた。開店すると買い物客らは新鮮な野菜や弁当、特売品の岩手県産米や卵、冷凍食品などを次々にカートに入れた。小川町の高橋テミさん(81)は近所の人に「売り出し行くよ」と誘われ、「すっ飛んできた」とにっこり。「小川には店がなくて買い物が大変。ここで一気に買い物が済むから生活が便利になりそう。店内も新しくて、気持ちがいい」と歓迎した。
 
食品売り場では買い物客が特売品や総菜、冷凍食品を品定め

食品売り場では買い物客が特売品や総菜、冷凍食品を品定め

 
リニューアルに合わせセルフレジを導入し利便性を高める

リニューアルに合わせセルフレジを導入し利便性を高める

 
 ホームマートは農村地域を中心とする小商圏向けに同社が開発した業態。売り場面積300坪規模で、農業資材や日用品、食品など地域のニーズに柔軟に対応した品を取り扱い、暮らし密着型の店舗として運営する。
 
 釜石店は2000年4月にホームセンターとして開店した。同社では既存の店舗を維持、強化する戦略の一つとしてホームマート型店舗の拡大を計画。売り場面積1000坪の釜石店は「新生ホームマート1号店」で、同規模店では初の業態となる。
 
リニューアルオープンしたサンデーホームマート釜石店

リニューアルオープンしたサンデーホームマート釜石店

 
 リニューアルの大きな特徴が食品コーナー(約160坪)の設置。豆腐や牛乳といった日配品、冷凍食品、そして野菜、肉、魚介類などの生鮮食品、弁当や総菜類も並ぶ。医薬品の売り場も広げ、健康食品の品ぞろえを拡充。「毎日の買い物」に利用してもらえるよう新鮮さと品質も売りにする。
 
 ホームセンターの要素もしっかり残す。水産のまちという釜石の地域特性に対応した水産関連の作業用品や、シカなどによる農作物、庭木の被害が増えていることから電気柵などの防獣対策用品、災害発生に備えた防災用品、防犯用品も充実させた。家庭菜園や室内ガーデニングを楽しむ人向けのコンパクトな園芸用品、植物の育成用土や肥料、カジュアルウエアなども取りそろえる。
 
地域の特性に合わせホームセンター商材もそろえる

地域の特性に合わせホームセンター商材もそろえる

 
買い物客に対応する店員。質問や要望に耳を傾ける

買い物客に対応する店員。質問や要望に耳を傾ける

 
 市内にはイオンタウン釜石の専門店の一つとしてホームセンターに特化した「サンデー釜石港町店」もあるが、ホームマートという新業態による品ぞろえやサービス提供で特色を出し、両立を図る。釜石店の大山店長(52)は「買い物をして楽しいと思える、衣食住がそろう店になった。ぜひ利用を」と呼びかける。営業時間は午前8時~午後8時。
 
「毎日のお買い物にぜひ」と笑顔を見せる大山直喜店長

「毎日のお買い物にぜひ」と笑顔を見せる大山直喜店長

 
 既存のホームセンターを含むサンデーグループの店舗数は111店になる。1000坪規模のホームマートは釜石店を皮切りに、東北各地で展開させていく。

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6年目「かまいし軽トラ市」スタート 初回はトモスdeマルシェと一緒に 買い物&遊び楽しむ3時間

今年度1回目の「かまいし軽トラ市」=17日、うのすまい・トモス広場

今年度1回目の「かまいし軽トラ市」=17日、うのすまい・トモス広場

 
 地元の農林水産物、菓子などの加工品販売で人気の「かまいし軽トラ市」(釜石市主催)が今年も始まった。全4回の初回は8月17日、鵜住居町のうのすまい・トモス広場が会場。かまいしDMC主催の「トモスdeマルシェ」と同時開催され、買い物や各種体験で来場者が楽しい時間を過ごした。
 
 軽トラ市は地元生産者の販路拡大、地産地消、交流の場創出などを目的に2020年度から始まった。農作物の収穫時期に合わせ、夏から秋にかけ月1回開催。市民ホールTETTO前広場での単独開催のほか、市内各イベントとの同時開催で集客を図る。6年目の今年は11月までの開催を予定する。
 
二本松農園(鵜住居町)は早生品種のリンゴ「紅ロマン」やリンゴジュースを販売

二本松農園(鵜住居町)は早生品種のリンゴ「紅ロマン」やリンゴジュースを販売

 
 17日、出店したのは9店。農園や産地直売所、水産加工品販売店などがイチオシの商品を持ち寄った。人気はナスやトマト、キュウリ、枝豆などの夏野菜。採れたて新鮮、直売ならではの価格の安さに買い物客は笑顔を広げた。子どもたちが歓声を上げたのは、無料のピーマン釣り。釜石・大槌地域農業振興協議会の企画で、挑戦者は流れるミニプールに浮かんだピーマンと格闘。楽しみながら食材をゲットした。
 
釜石・大槌地域農業振興協議会の「ピーマン釣り」。ペーパークリップが“釣り針”

釜石・大槌地域農業振興協議会の「ピーマン釣り」。ペーパークリップが“釣り針”

 
 元同市地域おこし協力隊員で、現在は兼業農家の三科宏輔さん(29)は橋野町青ノ木で、複数の野菜をビニールハウスや露地で栽培している。この日は、市が栽培促進を目指すトマト「すずこま」を使ったトマトジュースを販売。トマト本来の甘さ、酸味をダイレクトに味わえ、料理にも使える無添加の一品を来場者にアピールした。同ジュース販売は3年目に入るが、「今年はすずこまのハウスがアナグマなどの野生動物に荒らされる被害があり、収量確保が厳しい状況。他の生産者さんの協力を得て、何とかジュース加工ができれば」と三科さん。
 
「すずこま」が原料のトマトジュースを販売した三科宏輔さん

「すずこま」が原料のトマトジュースを販売した三科宏輔さん

 
 同時開催のマルシェには同市と近隣市町から22店が出店した。飲食の移動販売車や商店などが自慢の“おいしいもの”を販売したほか、ハンドメイド作家が販売と合わせワークショップを開催した。
 
 会場内を回って商品を積極的にPRしたのは釜石東中の3年生。生徒ふんする同校の防災キャラクター「てんでんこレンジャー」が地元産の塩蔵ワカメの購入を呼び掛けた。商品は生徒が漁業体験学習で芯抜きを行い、真空パック詰めにしたもの。販促用のオリジナルシールも貼った。この日は地域貢献として、生徒16人が販売活動を展開。用意した約50袋は1時間ほどで完売した。
 
塩蔵ワカメいかがですか~」 自分たちで芯抜き、袋詰めした商品を販売した釜石東中の3年生=トモスdeマルシェ

「塩蔵ワカメいかがですか~」 自分たちで芯抜き、袋詰めした商品を販売した釜石東中の3年生=トモスdeマルシェ

 
「てんでんこレンジャー」も呼び込みに活躍(右上)。完売後、笑顔を輝かせる生徒、教職員ら(下)

「てんでんこレンジャー」も呼び込みに活躍(右上)。完売後、笑顔を輝かせる生徒、教職員ら(下)

 
 震災後、同校の漁業体験を受け入れるNPOおはこざき市民会議の佐藤啓太理事長(43)は「東中は比較的海に近いが、多くの生徒は船や漁業との縁はほとんどないようだ。体験学習は郷土愛を育むためにもいい取り組み。将来の担い手育成にもつながればうれしい」と期待を寄せた。
 
 「Q&Tタピオカ屋」の店名でジュース類を販売したのは門間真由美さん(40)。イベント出店をメインにしていて、タピオカドリンクや生のフルーツが入ったナタデココジュースがお薦め。2019年に鵜住居町に移住した後、同事業を立ち上げ3年目。現在は夫の仕事の関係で埼玉県に暮らすが、「釜石でできたご縁を大事にしたくて、お声掛けいただくたびに出店に帰ってくる。鵜住居に戻ってこられたら常設店舗を持ちたい」と夢を描く。顔なじみの来店客も多く、店頭では再会を喜び合う姿も見られた。
 
タピオカ、ナタデココドリンクを販売した門間真由美さん(左から2人目)。一緒に帰省した子どもらが接客を手伝った

タピオカ、ナタデココドリンクを販売した門間真由美さん(左から2人目)。一緒に帰省した子どもらが接客を手伝った

 
 マルシェでは体験型企画も好評だった。鵜住居町内会はメダカ、金魚すくいコーナーを開設。日本製鉄釜石シーウェイブスは選手2人が参加し、ラグビーボールを使った「ターゲットウォール」で来場者と交流した。
 
鵜住居町内会による夏の好評企画「メダカ、金魚すくい」。多くの子どもたちが挑戦した

鵜住居町内会による夏の好評企画「メダカ、金魚すくい」。多くの子どもたちが挑戦した

 
日本製鉄釜石シーウェイブスが開設した「ターゲットウォール」。川上剛右、アンガス・フレッチャー両選手が来場者と交流した

日本製鉄釜石シーウェイブスが開設した「ターゲットウォール」。川上剛右、アンガス・フレッチャー両選手が来場者と交流した

 
 昨年11月、県内陸部から同町に移住した小田中智さん(70)夫妻はトモスで開催されるイベントを楽しみにする。「いろいろな店があっていい。野菜も安いし、好きな団子もよく買いに来る。今度、盆踊り大会(30日)もあるので、また足を運びたい」と声を弾ませた。
 
 会場では両イベントの共通企画として、スタンプラリーも実施された。各店で商品を購入し、スタンプを3つ集めると、先着150人に釜石産採れたて野菜をプレゼントするもの。野菜は数種類用意され、客が好きなものを選んだ。次回の軽トラ市は9月28日に大町の市民ホールTETTO前広場で開かれる。時間は午前10時から正午まで。

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夜市も、盆踊りも!超にぎやか、楽しく同時初開催 釜石の街なかに「おいでんせ~」

釜石市の中心部ににぎわいをもらたした夜市と超盆踊り

釜石市の中心部ににぎわいをもらたした夜市と超盆踊り

 
 釜石市の中心街で10日、市民が楽しめる2つのイベントが同時開催された。地元企業が実行委を組織して企画した「かまいし夜市おいでんせ」と、イオンタウン釜石が催した市民参加型の「超盆踊り」。ともに初開催で、「街中ににぎわいを」「夜のまちを盛り上げよう」との共通の思いが重なった。「初めまして、かんぱーい!」「やっぱり、人が集まるっていいよね」。家族連れや帰省客らが多彩な出店、ステージも楽しみつつ、古里の夏を満喫した。
 

夜の街に乾杯!食や酒に舌鼓

 
ビールを片手に談笑する来場者と出店者

ビールを片手に談笑する来場者と出店者

 
 夜市は同市大町が会場。市民ホールTETTO前広場には市内の飲食店が唐揚げや焼き鳥などを提供する「屋台村」や、岩手県内の酒造会社やブルワリーが連なる「カンパイガーデン」がお目見えした。合わせて約20の味わいが楽しめるとあって、客が次々と来場。浜焼きといった地元の味をさかなに酒やビールを飲みつつ談笑する光景が会場内のあちらこちらで見られた。
 
飲食や虎舞などを楽しむ人でにぎわう「かまいし夜市」

飲食や虎舞などを楽しむ人でにぎわう「かまいし夜市」

 
 隣接するイオンタウン釜石前の大町広場にはステージが設けられ、2つの広場を結ぶ道路は歩行者天国となった。郷土芸能の虎舞や吹奏楽、ヒップホップダンスなどのジャンル豊かなパフォーマンスが繰り広げられた。
 
 「思いがけない出会いがいいね」と笑ったのは礼ケ口町の菅野愛子さん(78)。相席になった女性や、隣のテーブルに座っていた若者らと「乾杯ー!」と声を合わせ盛り上がった。初めての試みを歓迎。「面白くて長居してしまった。1回と言わず、回を重ねてほしい」と期待した。
 
「初めまして」「かんぱーい!」。交流が生まれる

「初めまして」「かんぱーい!」。交流が生まれる

 
 人口減や東日本大震災、コロナ禍の影響などで人通りが少なくなった繁華街ににぎわいをもたらす新たなイベントを模索し実現。実行委員長の小澤伸之助さん(48)は「形にこだわらす、やってみた結果、多くの人が喜んでくれた」と頬を緩めた。
 
夜市の開場は午後1時。明るい中でも次々と客が来場

夜市の開場は午後1時。明るい中でも次々と客が来場

 
実行委の仲間と笑顔を重ねる小澤伸之助さん(中)

実行委の仲間と笑顔を重ねる小澤伸之助さん(中)

 
 大町で育った小澤さん。「ここ(大町周辺)は釜石の中心部だけど、じゃなくなった。さまざまな要因で街の形が崩れている」と感じていた。一方で「新しく創り出す、今がそのタイミング」と、前向きな思考も。同じような気持ちを抱く事業者や仲間の有志らが出店し、新たな試行の場になった。釜石産鶏肉を使った台湾風唐揚げ「大鶏排(ダージーパイ)」がその一つ。「釜石ならでは、新名物になり得るものをクリエイトする動きだ」と歓迎した。
 
 今回は「食と音で人をつなぎ、街を創る」をコンセプトとしたが、小澤さんは「もっとやりたいことがある」と継続を視野に入れる。イベント名にした「おいでんせ」は市民に親しみ深い釜石小唄の一節にある、人を迎えるときの言葉。「古き良き釜石の活気を思い起こさせてくれる。多くの人が集い、『おいでんせ』と心でつながれることを考えて実行していきたい」と思い描く。
 

大人も子どもも輪になり一体感

 
大勢の市民らが参加したイオンタウン釜石の「超盆踊り」

大勢の市民らが参加したイオンタウン釜石の「超盆踊り」

 
 「おいでんせ」つながりで踊りの輪が広がったのは、イオンタウン釜石の「超盆踊り」。同市港町の第2駐車場の一角にシンボルのやぐらがお目見えし、日暮れ前には子どもたちが輪をつくり、「マツケンサンバⅡ」などで元気よく踊った。
 
盆踊りパレードを思い思いに楽しむ子どもたち

盆踊りパレードを思い思いに楽しむ子どもたち

 
 夜が更けると、親子連れやお年寄りら老若男女が踊りを楽しむ“超”本番がスタート。夏を彩る祭り「釜石よいさ」のおはやし隊有志が太鼓で盛り上げ、よいさ小町が踊りを先導した。「炭坑節」といった盆踊りの定番曲のほか、「釜石小唄」でも踊りを満喫。参加した人たちになじみがない「ドンパン節」では、進行役の佐野よりこさん(釜石出身のフリーアナウンサー・民謡歌手)が踊り方を教えたりした。
 
進行役の佐野よりこさん(右)、おはやし隊が盛り上げる

進行役の佐野よりこさん(右)、おはやし隊が盛り上げる

 
やぐらを囲むように輪をつくって踊る参加者

やぐらを囲むように輪をつくって踊る参加者

 
 里帰り中の子どもや孫ら11人で夏の夜を楽しんだ唐丹町の尾形康民さん(62)は「震災の津波後は地域のイベントも少なくなり、集まる機会も減った。にぎやかなのは地域が活気づくし、こういう場で(孫たちに)ねだられるのがやっぱりうれしいよな」と目尻を下げ、「来年も」と望んだ。
 
 よいさ小町で大学生の小笠原のゑさん(19)は帰省中に参加。「踊る楽しさを伝えられたら」と笑顔で群舞を引っ張り、9月23日に釜石鵜住居復興スタジアムで開催予定のよいさPRに一役買った。
 
大人も子どもも一緒に踊りの輪をつくって交流を深めた

大人も子どもも一緒に踊りの輪をつくって交流を深めた

 
 市中心部を盛り上げようと企画。「同じ思いだ」と、夜市実行委と情報を共有しながら準備を進めた。イオンタウン釜石の大沼秀璽モールマネジャーは「多くの方が一緒に踊って『超』楽しんでいただけたようだ」と、うれしそうに会場を見渡した。

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地球にやさしいごみ処理に「なるほど!」 沿岸南部クリーンセンター見学会大盛況

ごみクレーンの動きに興味津々の来場者=岩手沿岸南部クリーンセンター施設見学会

ごみクレーンの動きに興味津々の来場者=岩手沿岸南部クリーンセンター施設見学会

 
 釜石市平田の「岩手沿岸南部クリーンセンター」は26日、一般向けの施設見学会を開いた。釜石、大船渡、陸前高田、大槌、住田3市2町のごみを「ガス化溶融炉」で処理する同施設。来場者は普段見ることのない工場棟を見学し、収集されたごみが再資源化されるまでの処理過程に理解を深めた。この日は同見学会としては過去最多の167人が訪れた。
 
 来場者はDVDで施設概要について学んだ後、職員の案内で工場棟に向かった。同施設には、ごみを高温で溶かして処理する溶融炉が2炉ある。炉の内部は1800度にも達し、溶融物は各種処理を経て、「スラグ」と「メタル」という資源物に再生される。1日に147トン(73.5トン×2炉)のごみ処理が可能で、73.5トンの処理からスラグ約6トン、メタル約2トンができる。黒っぽい砂状のスラグは道路などの舗装用材として活用。小石状の鉄の塊メタルは建設機械後部の重しや製鉄所などで有効利用される。これにより、最終処分場での埋め立て量を減らすことができる。
 
ガス化溶融炉や排ガス処理設備、蒸気タービン発電機などを窓越しに見学

ガス化溶融炉や排ガス処理設備、蒸気タービン発電機などを窓越しに見学

 
 施設では、溶融処理で発生するガスの熱エネルギーを利用した発電も行っている。熱で作った蒸気の力で発電機を動かす「蒸気タービン発電機」を備え、作られた電気は場内の設備の稼働、照明、暖房などに利用される。余った電気は電力会社に売電。余熱を利用して湯も沸かし、浴場として平日に無料で一般開放している。溶融炉で発生したガスはダイオキシン類などの有害成分を分解し、薬品やフィルター処理を施した後、クリーンな状態で建屋の煙突から排出される。
 
 来場者は365日24時間体制でプラントを監視する中央制御室、クレーンでごみを撹拌(かくはん)し溶融炉に投入するごみピットなどを見学。クレーンは一度に約700キロのごみをつかんで、15分間隔で炉頂から入れることも聞き、驚きの声を上げた。
 
中央操作室、ごみクレーン運転室にはさまざまなコンピューター機器が並ぶ

中央操作室、ごみクレーン運転室にはさまざまなコンピューター機器が並ぶ

 
ごみを撹拌(かくはん)し、溶融炉に投入する作業について技術担当者が説明

ごみを撹拌(かくはん)し、溶融炉に投入する作業について技術担当者が説明

 
 同市の佐々木久美子さん(70)は浴場の利用やごみの持ち込みで施設を訪れたことはあるが、内部の見学は初めて。「ごみ処理のしくみがよく分かった。普段からごみの分別には気を付けていて、4月から始まったプラごみ分別も頑張っている。収集業者さんに迷惑をかけないよう協力していければ」と意識をさらに高めた。地元平田地区の女性(54)は「処理過程をモニターで見たりするとより理解が深まる。たくさんの熱が生まれているのにも驚き。もっと有効活用が図られれば」と今後に期待した。
 
 この日は施設見学ツアーのほか、県環境学習交流センター(盛岡市)による出張学習会が開かれた。手回し発電体験やエコチェック、自然素材の工作コーナーなどがあり、幅広い世代が楽しんだ。浴場も特別開放した。
 
県環境学習交流センター(盛岡市)が出張。環境に関わる各種体験コーナーを設けた

県環境学習交流センター(盛岡市)が出張。環境に関わる各種体験コーナーを設けた

 
手回し発電機やうちわで発電体験(写真左)。クリーンセンターをモニターで学ぶ機器も(同右)

手回し発電機やうちわで発電体験(写真左)。クリーンセンターをモニターで学ぶ機器も(同右)

 
 同施設は沿岸南部5市町が共同で建設した。稼働開始を予定していた2011年4月を前に東日本大震災が発生。施設は津波による大きな被害は免れ、電気設備の復旧後に本格稼働した。14年8月までは被災4市町の災害廃棄物処理も行った。近年は人口減や資源物の分別収集などで、ごみ処理量は減少傾向にある。2024年度の処理量は約2万5100トン(前年度比約1300トン減)。
 
 施設へのごみの直接持ち込みは現在、平日に限り受け入れているが、生活スタイルの多様化や社会情勢の変化に伴い、休日受け入れについても検討するため、試験的に9月まで月1回(第3土曜日)の受け入れを実施している。対象は釜石市と大槌町の住民。(詳細は市のホームページを参照)

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養殖5季目・釜石はまゆりサクラマス 水揚げ開始 試食会も「サイズ上々、脂のり良し」

釜石湾で養殖され水揚げされたサクラマス

釜石湾で養殖され水揚げされたサクラマス

 
 釜石市で養殖サクラマスの水揚げが始まった。今季初の水揚げとなった6月30日は、釜石湾に設置したいけすから体長約50~60センチ、重さ2~2.5キロほどに育った約23トンが同市魚河岸の市魚市場に入荷した。2020年に試験養殖が始まり、22年に地元の水産会社・泉澤水産(泉澤宏代表取締役)が事業化。5季目の今年は7月中旬ごろまでの予定で、昨季比40%増しの240トンが見込まれる。
 
今季初めて水揚げされた釜石はまゆりサクラマス

今季初めて水揚げされた釜石はまゆりサクラマス

 
 秋サケの不漁が続く三陸沿岸では、その穴を埋めようとサーモン養殖が広がっている。ギンザケやトラウトサーモンが多いが、釜石では「ママス」の名で親しまれるサクラマスに着目。養殖事業を手がける同社は市や岩手大などの協力を得て「釜石はまゆりサクラマス」としてブランド化に取り組んでいる。
 
 “初もの”を積み込んだ漁船は午前5時ごろ魚市場に入港。同社の社員16人が水揚げや選別作業に当たった。作業の効率化に向け、今季から魚を重量ごとに自動選別する機械を導入。サイズをそろえ、ばらつきなく出荷できる体制につなげている。この日は、1キロ当たり950円ほどで取引。主に地元加工場を経て県内外のスーパーやすし店に流通する。
 
水揚げ、選別作業を進める泉澤水産の社員

水揚げ、選別作業を進める泉澤水産の社員

 
自動重量選別機を使って仕分けは効率的に

自動重量選別機を使って仕分けは効率的に

 
規格(重量)をそろえ、ばらつきをなくし出荷へ

規格(重量)をそろえ、ばらつきをなくし出荷へ

 
 今季は、水温などを考慮しながら15回の水揚げを予定。同社によると、餌やりなどのノウハウが定着し、魚の大きさが安定。種苗に占める生産量の割合「歩留まり」もこれまでの5割から7割ほどになっているという。また、環境負荷の小さい養殖業に与えられる国際認証(ASC)を取得しており、水産物の付加価値を高める取り組みにも力を入れる。
 
 30日は試食会も開かれ、関係者らが刺し身や塩焼きで味を確かめた。泉澤代表取締役は「脂のりが良く、期待通りの出来に仕上がった」とアピール。将来的に年間300トンを目指すとし、「地元に魚を安定供給するのが我々の仕事。地元での消費を多くし、加工品づくりにつながる形が望ましい。日本固有の種として全国に売り出すため、販路の幅も拡大したい」と意気込む。
 
水揚げ後に開かれた養殖サクラマスを使った刺し身の試食会

水揚げ後に開かれた養殖サクラマスを使った刺し身の試食会

 
 ブランド化に向けたプロモーション活動も産学官一体で進める。地元の味としての定着やファンづくりを狙いに、市内飲食店でサクラマスを味わえるフェアを開催したり、学校給食でも提供したり。他の養殖サーモンとの差別化を図り、希少性を生かし認知度向上や商品開発などを続けていく。

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鉄と魚とラグビーのまち!? 釜石小5年生「釜石PR大作戦」進行 歴史ストーリー学ぶ

釜石市世界遺産室の森一欽室長の話を聞く釜石小5年生

釜石市世界遺産室の森一欽室長の話を聞く釜石小5年生

 
 釜石小(五安城正敏校長、児童67人)の5年生11人は今年度、総合的な学習の時間を活用し、地域の魅力を学び発信する活動に取り組んでいる。「釜石PR大作戦」と命名したその取り組みで、注目するのは釜石市のキャッチコピー「鉄と魚とラグビーのまち」。手始めは“鉄”の学習で、16日に市文化財課世界遺産室の森一欽室長から地域の歴史について話を聞いた。
 
 鉄の学習は大渡町の同校で行われた。5年生の教室で、森室長はテレビモニターに写真や絵図などを映しながら、「鉄のまち」とうたう理由を地質、歴史の面から解説。児童は、気になったキーワードをメモしながら熱心に耳を傾けた。
 
児童はメモを取ったりしながら鉄の話に聞き入った

児童はメモを取ったりしながら鉄の話に聞き入った

 
 ほとんどの児童が記した「変成」という言葉は、三陸地域の大地や鉄原料の成り立ちについての説明で出てきた。釜石に眠る鉱床は、約1億2千万年前(中生代白亜紀)の火山活動で生まれ、マグマの熱で石灰岩などが溶かされ“変成”。冷え固まる過程でさまざまな鉱物が生成された。変成岩の中でも柘榴(ざくろ)石の近くで鉄鉱石(磁鉄鉱)が見つかっていて、製鉄の歴史につながる。花崗(かこう)岩も多く、森室長は「身近なところではそこ、学校の門柱」と窓の外を指さした。
 
地質の面から地域の特性を解説。釜石小の門柱(左上の写真)など身近にある情報を教えた

地質の面から地域の特性を解説。釜石小の門柱(左上の写真)など身近にある情報を教えた

 
興味津々!鉄の歴史にじっくりと耳を傾ける児童

興味津々!鉄の歴史にじっくりと耳を傾ける児童

 
 「12月1日は鉄の記念日」とのメモ書きも多かった。1857(安政4)年に大島高任が釜石・大橋に建設した洋式高炉で国内初の鉄の連続出銑に成功したことにちなむと話した森さんは「高任がすごいのは外国の技術を学んだことだけでなく、日本のことも学んでいること。ただ知っているだけではダメで、技術を持ち込んだ地元のこともよく知ったうえで実践している」と紹介。地元・釜石出身の高橋亦助らが49回目にして連続出銑に成功したことにも触れながら、“釜石だから”の歴史ストーリーに熱を込めた。
 
 江戸から明治へと時代が変わる中で釜石製鉄所が現在の場所(鈴子町)に建設されたことにより、「日本で3番目の鉄道が走った」ことに反応した児童は、その新知識を文字にした。そんな一人、山﨑良菜(らな)さんは「新しいことをたくさん知れた。マグマにとかされて石が変成する話が印象に残った。気になったことを調べてみたい」と好奇心を刺激された。
 
鉄の学習で気になったことを質問して理解を深める児童

鉄の学習で気になったことを質問して理解を深める児童

 
「知りたいことをどんどん調べて。分かったら教えて」と森室長(左)

「知りたいことをどんどん調べて。分かったら教えて」と森室長(左)

 
 5年生が「釜石PR大作戦」を今年度の活動に設定したのは、なぜか?…「まちのキャッチコピーを多くの児童が不思議に思っていたから。まちの印象としてピンとこない感じだった」と担任の佐藤航平教諭(26)は明かす。3つのキーワードが有名か、今の釜石について尋ねてみると、「それを生かした観光ができていない」「周りの大人や市民もよく知らない」などと意見が出たという。
 
釜石小の校門前から見える製鉄所の建物とまちのキャッチコピー

釜石小の校門前から見える製鉄所の建物とまちのキャッチコピー

 
釜石小周辺から見える街並み。山際に製鉄所の建物が連なる

釜石小周辺から見える街並み。山際に製鉄所の建物が連なる

 
 2015年に橋野鉄鉱山(橋野町)が世界遺産に登録され、今年は10周年の節目。遺産の存在を児童は認識しており、地域の魅力の一つでもある「鉄」に関する学びを深め、郷土愛を育むのを狙いにする。2学期に橋野鉄鉱山、鉄の歴史館などを見学する予定。「魚」「ラグビー」についても学習する計画で、「釜石の未来を切り拓(ひら)く活動」につなげる。
 
 PRの方法はポスターか、動画にするか…思案中。5年生11人は日常として身近に感じている風景、知っているようで知らない「釜石の良いところを発信したい」と気合を入れている。

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「浜千鳥の梅酒」造りに地域の手 釜石産の青梅、丸々 摘み取り体験で魅力再発見

梅の実に手を伸ばす摘み取り体験の参加者

梅の実に手を伸ばす摘み取り体験の参加者

 
 柔らかな口当たりで、ほんのり甘い「浜千鳥の梅酒」。釜石市の酒造会社・浜千鳥(新里進社長)が仕込んで売り出すこの銘柄は、飲みやすさや味わいに定評がある。その“味力”のもとになっているのが、地元で育つ梅の実。収穫時期を迎えた梅林で14日、実の摘み取り体験があり、市内外から12人が参加した。6~7月が梅酒の仕込みシーズンとされ、同社もしかり。初夏の爽やかさも閉じ込める梅酒の味わいづくりに地域の手を借りた。
 
青々、丸々!収穫時期を迎えた釜石地方で育つ梅の実

青々、丸々!収穫時期を迎えた釜石地方で育つ梅の実

 
 釜石地方梅栽培研究会(前川訓章会長)が主催。同社が梅酒製造に使用する青梅を地元農家などから安定的に調達するため設立、釜石や大槌の生産者、漬梅(梅酒製造に使われた梅の実)の活用業者ら34会員が所属する。今回の体験は地元産梅のPRや、自然体験を楽しんでもらおうと初めて企画した。
 
 体験の場は、同会副会長の山崎元市さん(75)が管理する同市片岸町の梅林。約300坪(約990平方メートル)の土地に白加賀(しろかが)、 豊後(ぶんご)など数品種の梅を50本ほど栽培している。普段、収穫は妻とふたりで行い、最盛期には親族が協力。今回の企画を歓迎し、「好きなように取って」と呼びかけた。
 
広い梅林で協力して収穫を体験する参加者

広い梅林で協力して収穫を体験する参加者

 
 参加者は実の大きさを確かめながら収穫。鉄串を使ってヘタ取りにも取り組んだ。作業の合間には、漬梅を使って調理された鶏肉や炭酸飲料を味わっておいしさを再発見。山崎さんから、木の手入れで気を配っていることや実の活用法などを聞いたりする姿もあり、品質向上のため技術を学びながら精を込めて育てる生産者の思いにも触れた。
 
梅の実を摘み取る家族連れ「思ったよりかんたん!」

梅の実を摘み取る家族連れ「思ったよりかんたん!」

 
たわわに実った梅に手を伸ばし…「大きいの、取った」

たわわに実った梅に手を伸ばし…「大きいの、取った」

 
実を収穫したり、ヘタ取りしたり、梅風味の食材を味わったり

実を収穫したり、ヘタ取りしたり、梅風味の食材を味わったり

 
 千鳥町の大澤七奈さん(10)は「大きい実がいっぱい。取りやすいから楽しい」とにっこり。「シャインマスカットみたいでおいしそう」と、妹の世奈さん(6)と一緒に手を伸ばした。父の賢一さん(44)は「本当に楽しそう。遊ぶ場が限られる中、木や自然に触れ、伸び伸びできるのがいい」と、うれしそうに見守った。
 
 友人に誘われ参加した大平町の藤原緑さん(62)は大きく育った青梅を見つめ「きれい」とひと言。買った梅をシロップ漬けにしたり梅干しを作ることもあり、暑い夏に見ると「爽やかな気持ちになる」のだとか。自身が取った青梅が「浜千鳥の梅酒」のひと味に加わるのを想像し、「飲むのが楽しみ」と目じりを下げていた。
 
 同会では良質な梅の生産、安定的な原料供給を目指し、会員らが生産技術向上や生産量拡大への取り組みを続けている。「情報を交換し、共有したり、他の栽培環境を見たり勉強になっている」と山崎さん。昨年は収量が芳しくなかったが、今年の実は「良いあんばい」との見立て。収穫作業は7月中旬頃まで続き、最終的に1トン以上を同社に提供できそうだという。
 
梅の木の特徴を参加者に説明する山崎元市さん(左)

梅の木の特徴を参加者に説明する山崎元市さん(左)

 
 漬梅の活用策も模索。24年分は約3割を県外業者に販売したほか、会員や地元企業がジェラートやジャム、飲料などを商品化し、廃棄量ゼロとした。事務局を担う同社の奥村康太郎杜氏(44)は「収穫を体験してもらうことで、新しい釜石の特産として認知が広まれば。生産者や参加者の気持ちも混ぜ込み、おいしくなるよう仕込みたい。楽しみにしてほしい」と腕をまくる。
 
収穫体験に夢中になった大人たちは梅酒の完成を楽しみに待つ

収穫体験に夢中になった大人たちは梅酒の完成を楽しみに待つ

 
 同社は2010年から地元産梅を日本酒で漬け込む梅酒製造を始めた。11年7月から720ミリリットル入りを販売し、現在は300ミリリットル入りも市場に投入。年間約1万本の販売数を維持する。今年の梅の実は7月中に漬け込み、約3カ月後に実を引き揚げて熟成させる。

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文京学院大(東京)、釜石市で「スタディケーション」 地域の「悩み」に解決策提案

エヌエスオカムラでインターンに取り組んだ文京学院大の学生=5月30日

エヌエスオカムラでインターンに取り組んだ文京学院大の学生=5月30日

 
 文京学院大学(東京都文京区)による産学官連携プログラム「釜石スタディケーション」が5月17日~6月1日まで、釜石市内で展開された。経営学部の学生12人が2週間滞在し、企業や行政機関などでインターンシップ(就業体験、インターン)に挑戦。地域が抱える課題に対して学生ならではのアイデアで提案、解決のヒントを残した。鋼製家具製造事業を手がけるエヌエスオカムラ(釜石市鈴子町)では2人が活動。「悩み」の解決に向けた取り組み、成果発表の様子を取材した。
 
 スタディケーションは「Study(勉強)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語で、参加する学生は地方で遠隔授業を受けながらインターンにも取り組む。大学とは異なる環境で学び、新しい出会いや経験によって学生自身の成長を促すのが狙い。受け入れ先の地域にとっては若い感性や発想力を得ることで職場の活性化や地方創生につながる可能性が期待される。2023年に始まり、今年で3年目。5つの企業などがインターンを受け入れ、集客リサーチ、情報発信力の強化などに取り組んだ。
 
 エヌエスオカムラで活動したのは、松本将汰さん(3年)と関波音(はのん)さん(2年)。5月19日に会社概要の説明を受けたり、製造工場を見学したりした。21日は同社から与えられた課題「外国人労働者の定着率向上に向けた取り組み」の提案について情報収集。佐藤裕副社長から技能実習生らの受け入れ状況や課題付与の背景を聞いた。
 
佐藤裕副社長(右奥)の説明に耳を傾ける関波音さん(手前)、松本将汰さん=5月21日

佐藤裕副社長(右奥)の説明に耳を傾ける関波音さん(手前)、松本将汰さん=5月21日

 
 約150人が働く同社では国際貢献として、23年から「技能実習生」の受け入れや「技人国(ぎじんこく、「技術・人文知識・国際業務」の略称)」と呼ばれる在留資格を有した高度な専門人材の採用を行っている。現在、技能実習生は6人、技人国として2人の外国人労働者が働く。いずれもベトナム人で、年代は10~30代。日本では、生産年齢人口(15~64歳)の減少から労働力不足が問題となっており、外国人労働者は大きな戦力。同様の認識を持つ企業は同社を含め、釜石地域でも少なくない。
 
 技能実習生や技人国は人材育成が本来の目的だが、現状は人手確保や人手不足解消との要素が色濃くなっている。実態とそぐわないことから、政府内で制度の見直しが議論されており、人権保護や労働者としての権利向上の観点から“転籍”も認められる方向にあるという。そうなると、給料の高い都市部や業種に集中する可能性が高く、地方の中小企業は不利な状況に置かれるとの見方も。企業の存続に関わる問題にもなり得るため、「いかに定着してもらうか」が課題となっている。
 
エヌエスオカムラで働く技能実習生。職場で活躍中

エヌエスオカムラで働く技能実習生。職場で活躍中

 
スマートフォンも使いながら外国人労働者とやりとり

スマートフォンも使いながら外国人労働者とやりとり

 
 佐藤副社長は、会社になじんでもらうためバーベキューを行ったり海に連れて行ったり、業務内外での取り組みを紹介。家族に仕送りをするため懸命に働く外国人労働者との関わりで日本人従業員の視野が広がり、いい意味で刺激になっていることから「長く働いてほしい」と考えている。そこで、年齢の近い学生インターンの2人に実習生らの本音を聞いてもらう現状把握、対応策の提案を求めた。
 
 2人は計5日間、同社に出向いて実習生や日本人従業員らへの聞き取り、インターネットなどを活用し他自治体の取り組みなどを調査。釜石のまちを知るため、鉄の歴史館やうのすまいトモスなども見学して、地域に合う解決策を考えた。
 
与えられた課題についての情報集めを進める学生

与えられた課題についての情報集めを進める学生

 
 30日、同社の幹部職員10人を前にまとめの発表を行った。聞き取り調査では、日本語能力に課題がある実習生、指導側の日本人ともに仕事の情報伝達に不安を感じていることを確認。家族の帯同が認められている技人国の一人は「長く働きたい」が、家族の働き先や医療などへの不安があり呼び寄せるのをためらっていると明かしたという。実習生らは出稼ぎという考え方が強く節約志向、食文化の違いに慣れていない、サッカー好きが多いといった情報も得た。
 
幹部職員に対して行ったまとめ発表=5月30日

幹部職員に対して行ったまとめ発表=5月30日

 
 日本語能力の向上やコミュニティー形成の必要性を指摘した上で、定着率向上の解決策として▽社内での日本語教室の実施▽費用を抑えた交流イベントの開催▽雇用の機会を作るベトナム料理店の出店―を提案した。松本さんは「日本になじんでもらうのではなく、外国人労働者に寄り添って互いの文化を尊重し合い、釜石に住みやすくすることが大切」と強調。関さんは「釜石では飲食店で話しかけてもらうことが多く、スタディケーションの励みになった。そのあたたかい地域性を生かして、外国人労働者の生活の手助け、情報共有や相談できる場所の提供となれば魅力的だと思う」とまとめた。
 
「悩み」の解決策を提案する松本さん(左)と関さん

「悩み」の解決策を提案する松本さん(左)と関さん

 
幹部職員らは学生たちの説明に熱心に耳を傾けた

幹部職員らは学生たちの説明に熱心に耳を傾けた

 
 報告を聞いた幹部職員から「分かりやすい。『まさにその通り』と思う内容だった」「諦めずにコミュニケーションを取ろうとする姿勢が大事だと改めて分かった」との声が上がった。同社総務課の八幡拓見課長は「(実習生らと)普段会話していても、悩みや不安は聞けない。職場には言いにくいこともあるだろうし…2人のおかげで、悩み事が少し分かった気がする。正解のない課題だが、参考にして対応していきたい」と感謝した。
 
 釜石での活動を終えた関さんは「働くことに対し漠然としたイメージしかなく不安だったが、挑戦することで現状を一歩飛び越えてみることは大事だと感じた。プレゼンとか人前で話せたのは成長かな」と振り返った。松本さんは「現実的でなくでも、若者ならではの真新しい考えを示すことができたと思う。新しい何かが派生していけばうれしい」と充実した表情を見せた。
 
 最終的な成果報告会は7月(予定)に同大で行われる。