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栗林ラビー 20年ぶり全国大会へ 団員ら「楽しんで自分たちのバレーを!先輩たちの分まで…」

第42回岩手県小学生バレーボール育成大会(エンジョイ!バレーボールフェスティバル2025県予選)で初優勝した「栗林ラビーバレーボールスポーツ少年団」=11月9日、写真:父母会撮影

第42回岩手県小学生バレーボール育成大会(エンジョイ!バレーボールフェスティバル2025県予選)で初優勝した「栗林ラビーバレーボールスポーツ少年団」=11月9日、写真:父母会撮影

 
 釜石市の栗林ラビーバレーボールスポーツ少年団(団員31人)は、11月の「第42回岩手県小学生バレーボール育成大会」女子の部で初優勝。今月25~28日に京都府で開催される「エンジョイ!バレーボールフェスティバル2025」に本県代表として出場する。同団の全国大会進出は2005年以来20年ぶり。21年にも全国大会出場権を得る大会があったが、新型コロナウイルス禍で中止となったため、団にとって今回の喜びはひとしお。全国の舞台でも「大会を存分に楽しみ“ラビーの”バレーを!」と、練習にも熱がこもる。
 
 11月8、9の両日、奥州市で開かれた県育成大会女子の部には33チームが出場。3チームずつ11組の予選リーグで1位(2勝0敗)となった栗林ラビー(第2シード)は決勝トーナメントに進み、準々決勝の対下矢作・横田(陸前高田市)、準決勝の対矢巾女子(第3シード)、決勝の対高田東Jr(第4シード)戦をいずれも2-0で下し、同大会初優勝に輝いた。
 
決勝トーナメントは3戦とも2-0で勝利(写真:父母会撮影)

決勝トーナメントは3戦とも2-0で勝利(写真:父母会撮影)

 
チーム一の高身長、谷藤怜香さんのスパイクは圧巻(同)

チーム一の高身長、谷藤怜香さんのスパイクは圧巻(同)

 
 藤原明広監督(66)によると、現チームの強みは「拾ってつなぐ」バレー。中高の強豪チームの練習法などを研究し、強化を重ねてきた。攻撃の要は6年の谷藤怜香さん(小佐野小)、藤原朱莉さん(鵜住居小)の両エース。谷藤さんは県内小学生の中でもトップレベルの実力を誇り、藤原さんはブロックと速攻で、ここ1年急成長を見せる。先の県大会でも「つなぎはトップ。サーブも良く、ミスが少なかったのが勝因」と藤原監督。
 
練習を工夫し、レシーブやフォローの技術を磨いてきた栗林ラビー。「床にボールを落とすまい」と必死に食らいつく

練習を工夫し、レシーブやフォローの技術を磨いてきた栗林ラビー。「床にボールを落とすまい」と必死に食らいつく

 
全国大会まで1カ月となった11月24日、団員らはさらなるレベルアップを目指し、練習に励んだ=栗林小体育館

全国大会まで1カ月となった11月24日、団員らはさらなるレベルアップを目指し、練習に励んだ=栗林小体育館

 
 初の県制覇にエースの藤原さんは「全員で頑張って練習してきたことが成果となって表れた」と評価。自身が競技を始めたのは3年生から。約160センチの高身長、磨きをかける跳躍力を武器に、谷藤さんと切磋琢磨しながらチームの攻撃力を高める。全国大会に向け、「スパイカーとセッターのコンビネーションをもっと良くして、相手ブロックをかわすような攻撃ができれば。頭を使って動きたい」と意気込む。
 
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“2枚エース”の一人、藤原朱莉さんは高身長+腕の長さを生かした攻撃が持ち味。ブロック力も抜群

 
 主力の6年生は5人。藤原監督が「オールラウンダー」と、攻守で信頼を寄せる一人が四宮香蓮さん(小佐野小)。競技を始めたのは昨年からだが、「運動能力が高く、どのポジションでもいける(藤原監督)」という。得点源となるサーブも強み。初の全国の舞台、さらには小学生最後となる大会を「積極的に声を出し、試合を楽しみたい」と心待ちにする。
 
昨年からバレーを始めた四宮香蓮さん。どのポジションもこなせる頼りになる存在

昨年からバレーを始めた四宮香蓮さん。どのポジションもこなせる頼りになる存在

 
 同団の県制覇は2021年以来。同年は3大会で優勝したが、コロナ禍で全国、東北大会共に中止となり、先輩団員らは非常に悔しい思いをした。現団員の中には当時の主力メンバーの“妹団員”が3人在籍。その一人、山﨑良菜さん(釜石小5年)は姉新菜さんの思いを受け継ぎ、1年から同団で活動。監督の勧めで4年からセッターを務める。司令塔としての状況判断に面白みを感じていて、「全国の強いチームにも『負けないぞ』という気持ちで臨みたい」と気合十分。県外の強豪校に進んだ姉も“春高バレー”での全国大会出場が決まっていて、家族はダブルの喜びに包まれる。
 
姉の背中を追ってバレーを始めた山﨑良菜さん。セッターとして攻撃のバリエーションを広げる

姉の背中を追ってバレーを始めた山﨑良菜さん。セッターとして攻撃のバリエーションを広げる

 
 練習中も自ら指示を出し、チームをまとめるのは、主将の金野歩海さん(鵜住居小6年)。姉涼葉さんは三冠を果たした21年時の主将で、「姉の分も…」と全国大会出場への思いは人一倍強かった。昨年の育成大会後、「監督を全国に連れて行く」と全員で誓った。決意表明から1年―。努力を重ねたメンバーは見事、約束を果たした。
 
20年以上にわたり栗林ラビーを率いる藤原明広監督は「スポーツの楽しさを伝えたい」と子どもたちを熱心に指導。現団員らと臨む全国大会を楽しみにする

20年以上にわたり栗林ラビーを率いる藤原明広監督は「スポーツの楽しさを伝えたい」と子どもたちを熱心に指導。現団員らと臨む全国大会を楽しみにする

 
 金野さんにチームの強みを尋ねると意外な言葉が返ってきた。「一番意識しているのは整理整頓。物を雑に扱わない。チーム外の人にもきちんとあいさつをする」。こうした普段の心がけがプレーにも反映されているという。団員、指導者、保護者が一丸となった取り組み姿勢も自負。「ラビー全員のチームワークが岩手で一番だと思う」と誇りを示す。周りを元気にするムードメーカーとしての役割も自覚しつつ、「笛が鳴るまでは絶対にボールを落とさない。最後まであきらめず必死に戦う」と固い決意ものぞかせる。
 
メンバーに声がけしながらチームを盛り上げる主将の金野歩海さん。試合中に足りなかった笑顔と元気を増やそうと、この1年頑張ってきた

メンバーに声がけしながらチームを盛り上げる主将の金野歩海さん。試合中に足りなかった笑顔と元気を増やそうと、この1年頑張ってきた

 
団員の保護者は普段の練習から全面協力。子どもたちと一緒に体を動かし、練習を支える

団員の保護者は普段の練習から全面協力。子どもたちと一緒に体を動かし、練習を支える

 
さまざまな練習メニューを取り入れ、レベルアップにつなげる

さまざまな練習メニューを取り入れ、レベルアップにつなげる

 
 同団は1983年結成。当初は栗林小児童主体のチームだったが、後に広域化を進め、現在は釜石・大槌地区のほか山田町や宮古市からも団員が集う。団員数31人は過去最多。上級生の活躍は下級生のやる気向上にもつながっている。全国大会まで残り20日。藤原監督は「今の精度をさらに上げ、1試合でも多く勝ちたい。現在は所属児童がいない栗林の人たちも応援してくれている。少しでもいい成績を出して恩返ししたい」と言葉に力を込める。
 
全国大会でも「ラビーのバレーを!」。全力で戦うことを誓い合う主要メンバー

全国大会でも「ラビーのバレーを!」。全力で戦うことを誓い合う主要メンバー

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「小川しし踊り」伝承脈々と 小佐野小が「いわてユネスコ文化賞」受賞 旧小川小から活動48年

運動会で「小川しし踊り」を披露する小佐野小児童。長年の伝承の取り組みに「いわてユネスコ文化賞」が贈られた(写真提供=小佐野小)

運動会で「小川しし踊り」を披露する小佐野小児童。長年の伝承の取り組みに「いわてユネスコ文化賞」が贈られた(写真提供=小佐野小)

 
 釜石市立小佐野小(松本孝嗣校長、児童249人)は、岩手県ユネスコ連絡協議会(三田地宣子会長)の2025年度顕彰で「いわてユネスコ文化賞」を受賞した。児童らが代々取り組んできた地元郷土芸能「小川しし踊り」の伝承活動が認められたもの。学校統合前の旧小川小から受け継ぐ活動は今年で48年―。地域の誇り、郷土愛を育む活動は児童らの成長に大きく寄与している。
 
 同協議会は教育、科学、文化の分野で他の模範となる活動を行う児童生徒や指導者を「いわてユネスコ賞」として顕彰している。第30回の本年度は11件(科学賞2、文化賞6、活動奨励賞2、教育賞1)の表彰があり、小中高10校と1個人が受賞した。
 
県ユネスコ連絡協に代わり、釜石ユネスコ協会の岩切久仁会長(左)が小佐野小の松本孝嗣校長(右)に表彰状と盾を届けた=11月26日、同校

県ユネスコ連絡協に代わり、釜石ユネスコ協会の岩切久仁会長(左)が小佐野小の松本孝嗣校長(右)に表彰状と盾を届けた=11月26日、同校

 
 小佐野小への表彰伝達は11月26日、同校で行われた。釜石ユネスコ協会の岩切久仁会長、佐々木聡理事、岩間千枝子理事、高橋宏樹事務局長が訪問。岩切会長が松本校長に表彰状と盾を手渡した。松本校長は「子どもたちにとって、受賞は大きな励みになる」と感謝。全校朝会で報告する際に「受賞の意義をしっかり伝えたい。先輩たちが長い間続けてきた価値を知ることで、『自分たちも』と継続の意識が高まると思う。自己肯定感を得ることにもつながる」と話した。
 
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小佐野小の小川しし踊り伝承活動について懇談する関係者

 
 同校では総合的な学習の時間などを利用し、毎年5、6年生全員がしし踊りに取り組む。小川しし踊り保存会(佐々木義一会長)のメンバーが学校を訪れ、児童らを指導。踊り、太鼓、笛など演舞に必要な役割を分担し、パートごとに練習を重ねる。演舞を披露するのは運動会や学習発表会など。保護者や地域住民の前で練習の成果を発表し、多くの感動を与えている。
 
5月24日に開催された運動会では5、6年生のしし踊りがオープニングを飾った(写真提供:小佐野小)

5月24日に開催された運動会では5、6年生のしし踊りがオープニングを飾った(写真提供:小佐野小)

 
今年度の5、6年生は計約100人。しし頭のほか、小踊り、太鼓、笛などを役割分担(同)

今年度の5、6年生は計約100人。しし頭のほか、小踊り、太鼓、笛などを役割分担(同)

 
 約140年の歴史を誇る小川しし踊り(市指定文化財)。同保存会は地元芸能の伝承、担い手育成を目指し、1977(昭和52)年頃から当時の小川幼稚園、小川小で芸能指導を開始。2005年に小川小と統合した小佐野小でもその取り組みが受け継がれ、現在に至る。保存会は指導者の立場として、昨年度の「いわてユネスコ教育賞」を受賞している。
 
 同保存会副会長として児童らの指導にもあたる釜石協会の佐々木理事は「小川小の運動会でしし踊りを踊り始めたのが私たちの世代」と歴史の重みをかみしめる。全国的に伝統文化の継承が課題となる中、「地元の団体と学校が一緒になって伝承に取り組むのは意義あること。歴史あるものには先人の教えもある。大切にしていくことで、結果的に郷土愛にもつながるのでは」と期待した。
 
小川小卒業生で保存会副会長の佐々木聡さん(右)は学校統合後も続くしし踊りの伝承活動に喜びを表した

小川小卒業生で保存会副会長の佐々木聡さん(右)は学校統合後も続くしし踊りの伝承活動に喜びを表した

 
児童らはそれぞれの役割を果たし、一体感あふれる演舞で保護者や地域住民を魅了した(写真提供:同)

児童らはそれぞれの役割を果たし、一体感あふれる演舞で保護者や地域住民を魅了した(写真提供:同)

 
 同校の活動を推薦した釜石協会の岩切会長は「指導する側と受ける側、双方が受賞できたことは大変うれしい。こうした活動は両者の思いが合致しないと成り立たない。学校のカリキュラムで活動環境を整えてくださっているのは心強い」とし、地域の素晴らしさを感じながら育つ子どもらの健やかな成長を願った。

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食の秋だから!山海グルメ堪能 釜石まんぷくフェス 体験、ステージ、遊びも満喫

多くの人でにぎわう釜石まんぷくフェス=11月23日

多くの人でにぎわう釜石まんぷくフェス=11月23日

 
 交流物産展、水産まつり、農業祭、軽トラ市-。釜石市の食の魅力をPRする催しが一度に楽しめる「釜石まんぷくフェス」(釜石観光物産協会主催)が22、23の両日、同市鈴子町のシープラザ釜石周辺で開かれた。サンマ、甲子(かっし)柿など釜石の海や山の幸のほか、釜石と交流がある自治体の自慢の味も集合。子ども向けの電動自動車の試乗体験やステージイベントもあり、連日、家族連れらでにぎわった。
 
 フェスは2022年から開催。これまでは9月に同市鵜住居町の釜石鵜住居復興スタジアムを会場にしていたが、今回は特産品や食材の“旬”を味わってもらおうと時期を変更し、会場も市中心部に移した。
 
 最終日の23日、開始早々に人だかりができたのは鈴子公園。農業祭恒例の餅まき、シイタケまきで老若男女が手を伸ばした。続いて長蛇の列ができたのは、水産まつりの焼きサンマのお振る舞い。地元で水揚げされた500匹(2日間で計1000匹)は大人気で、来場者の食欲をそそった。軽トラ市では“オール釜石産スープ”を提供。市が栽培促進中のトマト「すずこま」(愛称・かまとまちゃん)、オヤマ(一関市)のブランド鶏「奥州いわいどり」のうち釜石の養鶏農場で生産された鶏肉などが使われた。
 
恒例行事で開幕した農業祭。餅やシイタケが宙を舞う

恒例行事で開幕した農業祭。餅やシイタケが宙を舞う

 
ピーマン釣り、甲子柿販売、スープお振る舞いで山の幸堪能

ピーマン釣り、甲子柿販売、スープお振る舞いで山の幸堪能

 
軽トラ市で人気を集めるのは新鮮な地元野菜

軽トラ市で人気を集めるのは新鮮な地元野菜

 
 炭火で香ばしく焼き上げられたサンマを頬張る陸前高田市の小学生菅野湊也さん(10)は「めっちゃ、おいしい」と箸を進めた。サンマを提供したのは釜石の漁業会社濱幸水産。旬の味を求める人の波を見つめていた同社船舶部長の大和田暢宏さん(53)は「地元の船が水揚げしたものを地元で味わってもらい、うれしい。サンマ漁は終盤戦。いいものを届けられたらいい」と目を細めた。
 
長い列ができたサンマ焼きのお振る舞い

長い列ができたサンマ焼きのお振る舞い

 
サンマを頬張る親子連れ「焼きたて、おいしい」

サンマを頬張る親子連れ「焼きたて、おいしい」

 
 シープラザ釜石西側駐車場を使った交流物産展には釜石市内の飲食店のほか、同市の姉妹都市・愛知県東海市の商工会議所、友好交流都市の富山県朝日町や東京都荒川区などから約50団体が出店。浜焼きや肉料理、スイーツなど多彩なグルメが並んだ。
 
出店、キッチンカーがずらりと並んだ交流物産展

出店、キッチンカーがずらりと並んだ交流物産展

 
自慢の味を提供した盛岡市の「花どんたく」の出店

自慢の味を提供した盛岡市の「花どんたく」の出店

 
 来場者は「熱々でおいしい」などと声を弾ませ、食を堪能した。盛岡市の「酒飲み処 花どんたく」が持ち込んだイチ押しメニューは「博多牛もつ鍋」。本場の味(具材はキャベツ、ニラ、肉)に地元の食材(豆腐)を加えた“博多生まれ、盛岡育ち”のこだわりの一品が食欲を刺激した。店主の長谷川さんは「対面で売るのは会話を楽しめていい。『また食べたい』と思ってもらえたら」と腕をまくった。
 
 サン・フィッシュ釜石では、マグロの解体ショーやカキの釣り体験が行われ、大にぎわい。狙いを定めてカキを釣り上げた中妻町の小学生木下真由さん(10)は「難しかったけど、面白かった。ずっしり重たいのが釣れた。焼いて食べたい」と笑った。
 
カキに狙いを定める家族連れ。「やったー、釣れた!」

カキに狙いを定める家族連れ。「やったー、釣れた!」

 
興味津々!人だかりができたマグロの解体ショー

興味津々!人だかりができたマグロの解体ショー

 
 長崎産の養殖ホンマグロ(体長約150センチ)を前に「丸っとして迫力あるし、ギラギラしてきれいだ」と驚いていたのは、仙台市の相原幸雄さん(60)。切り分けられた赤身の“サク”を手に入れ、「食べるのが楽しみ」と声を弾ませた。東日本大震災前に仕事で釜石に来たことがあるといい、「まちがきれい。歩きやすく整備されている。タイミングよく紅葉も見られて気持ちいい。いい思い出になった」と、隣に立つ愛妻と笑顔を重ねていた。
 
 シープラザのステージイベントには、釜石市国際外語大学校の学生有志が登場。日本語学科のネパール、ミャンマーの留学生はそれぞれ民族衣装に身を包み、伝統の踊りを披露した。同科2年生で、ネパール人のガウタム・サンチさん(20)は「私たちの国の文化を伝えられた。うれしい」と笑顔を見せた。日本人学生は外語観光学科の特色を紹介した。
 
笑顔を弾かせながら踊るネパール人留学生

笑顔を弾かせながら踊るネパール人留学生

 
「心を込めて踊ります」とミャンマー人留学生

「心を込めて踊ります」とミャンマー人留学生

 
 来場者は食、遊び、体験を楽しみながら鈴子町を周遊。主催の同協会関係者は「一度に楽しめるのがポイント。いくつかの企画を組み合わせることで人を呼び込める」と手応えを話した。

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12/1「鉄の記念日」にちなみ釜石2施設で企画展 今年のテーマは世界遺産登録10周年の「橋野鉄鉱山」

発掘調査の成果などが公開される企画展「橋野鉄鉱山展」。鉄の歴史館で開催中

発掘調査の成果などが公開される企画展「橋野鉄鉱山展」。鉄の歴史館で開催中

 
 12月1日は“近代製鉄発祥の地釜石”にとって大切な「鉄の記念日」。1857(安政4)年、盛岡藩士大島高任が釜石(甲子村大橋)に建設した高炉で、鉄鉱石(磁鉄鉱)を原料とした鉄の連続出銑に日本で初めて成功した日だ。釜石市大平町の鉄の歴史館、甲子町大橋の釜石鉱山展示室Teson(てっさん)では今、同記念日にちなんだ企画展を開催中。今年は世界遺産登録から10周年を迎えた「橋野鉄鉱山」にスポットを当て、歴史館では高炉場、Tesonでは採掘場を中心に解説する。普段は公開していない貴重な資料もあり、「ぜひ、この機会に」と来場を呼びかける。
 
 大島高任は大橋での成功を受け、翌58(安政5)年、橋野村青ノ木に仮高炉を建設。これが橋野鉄鉱山の始まりだ。後に一番、二番高炉が建設され、仮高炉は改修されて三番高炉と称される。藩営ではあったが、実際は紫波の豪商・小野権右衛門の資本力による支配人経営。68(明治元)年には幕府の許可を得て銭座を併設し、出銑量は年間1千トン以上に上った。69(同2)年に政府が鋳銭禁止令を出すが、密造が続けられ、71(同4)年の大規模検挙により廃座。同時に一番、二番高炉は操業をやめ、三番高炉での銑鉄生産のみとなった。経営権の移譲が繰り返された後、94(同27)年、釜石鉱山田中製鉄所に売却された。田中が栗橋分工場の操業を開始したことで、橋野鉄鉱山は操業をやめたが、採掘は昭和30年代ごろまで細々と続いた。
 
 鉄の歴史館で開かれている「橋野鉄鉱山展」では、26点の関連資料と解説パネル14点を展示する。橋野地域では高炉による製鉄が始まる前から、砂鉄を原料とした“たたら製鉄”が盛んだった。「和山七ヶ山」と言われる鉄山があり、同展では直近の分布調査で見つかった鉄滓を展示する。大橋高炉で原料となる磁鉄鉱の発見は1727(享保12)年。場所を示す「大橋磁石岩絵図」は市指定文化財となっている。同展ではそのレプリカを展示。藩が作成した橋野鉄鉱山操業の予算書(下書き)も展示する。
 
 写真上:橋野鉄鉱山の北側では古くからたたら製鉄が行われていた。右は橋野鉄鉱山と赤芝鉄山の間で見つかった鉄滓とフイゴの羽口。同下:安政6年の橋野鉄鉱山操業経費の調書の下書き

写真上:橋野鉄鉱山の北側では古くからたたら製鉄が行われていた。右は橋野鉄鉱山と赤芝鉄山の間で見つかった鉄滓とフイゴの羽口。同下:安政6年の橋野鉄鉱山操業経費の調書の下書き

 
 同市では2006年から「橋野高炉跡範囲内容確認調査」を実施。東日本大震災で一時中断したが、18年から再開し、毎年エリアごとに発掘調査を進めている。その年の調査結果は橋野鉄鉱山インフォメーションセンターで速報展という形で公開するが、本企画展では主に19年以降の成果をパネルと出土品で総合的に紹介している。
 
 高さ7メートルの高炉に鉄鉱石や燃料の木炭を投入するには、作業するための建物「覆屋(おおいや)」が必要となるが、22年に行われた三番高炉エリアの発掘調査では、その規模が確認されている。柱跡(礎石、柱根など)をつないでいくと、覆屋の規模は約57坪(188平方メートル)と推定され、これは明治時代の記録と合致する。現在見られる高炉石組みの前に広がる平場は、ほぼ建物で覆われていたと考えられる。
 
三番高炉エリアの発掘調査現場(2022年撮影)。「覆屋」の建物規模が分かった

三番高炉エリアの発掘調査現場(2022年撮影)。「覆屋」の建物規模が分かった

 
 同展では1958(昭和33)年ごろ、製鉄所の人たちが作ったという三番高炉と覆屋の木製模型も展示する。覆屋は幕末の高炉操業を描いた絵巻「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図(しほんりょうてっこうざんおやまうちならびにこうろのず)」で描かれるが、立体的な模型だとその形状がよく分かる。
 
三番高炉と覆屋の木製模型。近代製鉄発祥100周年を記念し、「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図」を参考に再現した

三番高炉と覆屋の木製模型。近代製鉄発祥100周年を記念し、「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図」を参考に再現した

 
 出土品では高炉に使われた花巻産の耐火れんが、高炉の石組み(花こう岩)をつなぐ蝶形の鉄製金具「チキリ」、製品の一部とみられる銑鉄などを展示。三番高炉エリアからは鋳造場跡が確認されていて、鉄瓶の鋳型とみられるものや鉄鍋の耳部分、同所で製造されたとされる鉄瓶も展示している。この他、銭座があったことを示す銭竿や鉄銭、長屋跡から見つかった生活雑貨の皿も。
 
高炉の内部構造を解説するパネル(左)と、部材として使われたチキリ(右上)、耐火れんが(右下)

高炉の内部構造を解説するパネル(左)と、部材として使われたチキリ(右上)、耐火れんが(右下)

 
鉄銭は主に四文銭を鋳造(左)。鉄瓶の鋳型の土台部分とみられる遺物(右上)も出土

鉄銭は主に四文銭を鋳造(左)。鉄瓶の鋳型の土台部分とみられる遺物(右上)も出土

 
 市教委文化財課世界遺産室の森一欽室長は「この10年の発掘調査だけでも新たな発見が多数あった。本企画展ではその成果を集大成という形で出すが、まだまだ分かっていないことがあり通過点。今後も調査を続け、橋野鉄鉱山の全容をより詳しく解明していければ」と話す。企画展は来年1月12日まで開催。毎週火曜日休館。12月29日~1月3日までは年末年始休館となる。
 
 一方、釜石鉱山展示室Tesonでは「鉱山(やま)を極めるⅡ~青ノ木鉱床編~」と題し、関連資料17点、パネル10点を展示する。橋野高炉に供給する鉄鉱石を採掘した「青ノ木鉱床」は高炉場に隣接する二又沢川の上流(高炉場の南南西約2.6キロ)に位置し、かつては“二又鉱床”や“猫軸山”と呼ばれていた。露天掘りや半地下式の採掘場があり、後に坑道掘りも始まった。橋野鉄鉱山の高炉が閉鎖された後も、断続的に採掘が行われ、1956(昭和31)年の大橋側、大峰鉱床の開発で青ノ木の坑道は大峰とつなげられた。
 
釜石鉱山展示室Tesonで開かれている企画展。鉄鉱石を採掘した青ノ木、高前両鉱床にスポットをあてる

釜石鉱山展示室Tesonで開かれている企画展。鉄鉱石を採掘した青ノ木、高前両鉱床にスポットをあてる

 
「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図」で描かれる露天掘りの様子。鉄槌やくさびを使って地表から掘り進めた

「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図」で描かれる露天掘りの様子。鉄槌やくさびを使って地表から掘り進めた

 
 橋野高炉には、沢桧川上流、大平集落の東約1500メートルに位置する「高前鉱床」からも鉄鉱石が供給された。高前の鉱石は、明治初期に沢桧川沿いで稼働した横石、大蕨(わらび)両高炉や栗林高炉にも供給。田中製鉄所栗橋分工場が稼働すると、同工場の主力採掘場となった。
 
 企画展の展示資料、1894(明治27)~1905(同38)年の鉱業施業案綴(つづり)には、田中製鉄所時代の両鉱床の採掘計画(作業人数、採掘量)が記されていて、一部を拡大コピーで紹介。実際の採掘量を記した明細表も合わせて展示する。他にも1906(同39)~11(同44)年に作成された両鉱床の実測図(平面、断面)、明治末頃の青ノ木坑内の写真、1891(同24)年から15年間の高前・男嶽官地の採掘を田中に許可する農商務大臣名の借区券など、普段は見ることができない貴重な資料が並ぶ。
 
明治27~35年の鉱業施業案綴。右下は28年の施業案を読みやすいように文字を打ち直したもの

明治27~35年の鉱業施業案綴。右下は28年の施業案を読みやすいように文字を打ち直したもの

 
青ノ木(二又)、高前両鉱床の坑内実測図の展示。普段は非公開

青ノ木(二又)、高前両鉱床の坑内実測図の展示。普段は非公開

 
高前、男嶽官地の採掘許可を示す「借区券」(右)。左は鉄鉱石や木炭を背負って運ぶための籠「コダス」

高前、男嶽官地の採掘許可を示す「借区券」(右)。左は鉄鉱石や木炭を背負って運ぶための籠「コダス」

 
 同展示室の企画展は12月8日までの開催(火・水曜日休館)。なお、同展示室と橋野鉄鉱山インフォメーションセンターは9日から来年3月31日まで冬季休館となる。

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釜石駅付近にクマ、市内初「緊急銃猟」で1頭駆除 岩手県内で2例目

釜石市中心部に出没したクマ。緊急銃猟で駆除された

釜石市中心部に出没したクマ。緊急銃猟で駆除された

 
 クマの出没を受け、釜石市は11月26日、自治体判断での発砲を可能とする「緊急銃猟」を実施し、1頭を駆除した。岩手県内初の緊急銃猟となった同月20日の洋野町に続いて2例目で、同市では初めて。
 
 市によると、駆除されたクマは体長約120センチの雌(体重80キロ)で、成獣とみられる。26日午前7時25分ごろ、鈴子町で「クマが木に登っている」と住民から市に連絡があった。駆け付けた市職員や釜石大槌猟友会、県警などが木の上にいるクマ1頭を確認。木の下に箱わなを設置し、警戒に当たった。
 
木の上に居座るクマの様子をうかがう関係者

木の上に居座るクマの様子をうかがう関係者

 
 現場はJR釜石駅の沿線で、駅から東側に約200メートルの鈴子排水区雨水ポンプ場近く。国道283号沿いで交通量が多く、日中は人通りもある。周囲には土産物店が入る「シープラザ釜石」や魚屋などが入る市場「サン・フィッシュ釜石」、ホテル、レンタカー店などが点在する。
 
 市は追い払いを試みたものの、クマは木の上からほとんど動かず、付近にとどまり続けた。わなにもかからず、約5時間半こう着状態に。「山に追い払おうにも市街地を通っていかなければいけない状況だった。危険だということで緊急銃猟しかないな…」と関係者間で協議、判断した。
 
木の下に箱わなを設置するもクマは木の上から動かず

木の下に箱わなを設置するもクマは木の上から動かず

 
近くの線路を列車が通ってもクマは木の上から動かず

近くの線路を列車が通ってもクマは木の上から動かず

 
市街地に出没したクマを警戒する警察官とにらみ合い

市街地に出没したクマを警戒する警察官とにらみ合い

 
 クマを貫通するなどした銃弾を遮る「バックストップ」が確保され、列車が通らない時間帯だったことなどの条件もそろい、市長に状況を報告。午後0時半ごろに市長が許可し、緊急銃猟のため釜石署が同0時50分ごろから現場付近で交通規制した。
 
 周囲の安全を確認した上で、市鳥獣被害対策実施隊の隊員が午後1時ごろに1発撃った。銃弾を受けたクマは近くにある別の木の上に移動。同1時半ごろ、さらに2発を発砲し、駆除した。同1時45分ごろに交通規制を解除。けが人や物的被害は確認されていない。
 
国道283号を通行止めにして緊急銃猟を実施。弾を受けたクマは別の木に移ったが、駆除された

国道283号を通行止めにして緊急銃猟を実施。弾を受けたクマは別の木に移ったが、駆除された

 
 市の担当者は「こうした状況(緊急銃猟の実施)にはなりたくないというのが正直な話」としつつ、「関係機関と良好な関係が築けていたのでスムーズにできた」と振り返った。緊急銃猟について、市はマニュアルを作成し、9月には関係機関と対応訓練を行っていたことが、今回の円滑な連携と対応につながったという。
 
 一方で、緊急銃猟の難しさを感じる場面も。1発目の弾丸は命中したもののクマが移動したため、再度、市長への報告や許可を得る必要が生じた。市の担当者は「(緊急銃猟を行う)一連の場所が動けばシチュエーションが変わり、その都度、市長の判断が必要になる。ややもすれば忘れてしまうかもしれないと心配にはなった」と話した。
 
 市によると、昨年11月のクマの目撃情報は4件だったが、今年は26日現在で27件と大幅に増加。クマを人間の生活圏に近寄らせないための対策として、生ごみを出さないことや放置果樹の撤去などを呼びかける。
 
市街地に出没し緊急銃猟で駆除されたクマ

市街地に出没し緊急銃猟で駆除されたクマ

 
 緊急銃猟は鳥獣保護法が改正され、今年9月に始まった制度。人の生活圏にツキノワグマなどが出没した場合、人に弾丸が当たらないよう安全確保した上で市町村の判断で銃猟を可能とする。市町村長は①住宅地などに侵入またはその恐れがある②危害防止のため緊急に対応が必要③銃猟以外で的確かつ迅速な捕獲が困難④住民らに弾丸が当たる恐れがない―と判断した場合、市町村職員や委託したハンターに緊急銃猟をさせることができる。

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読書の秋だから!? 釜石市と東京大の連携イベント「海と希望の学園祭」 テーマは“本”

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本を通し交流が広がった「海と希望の学園祭」

 
 釜石市と東京大学がタッグを組み展開する交流イベント「海と希望の学園祭 in Kamaishi」は22日と23日、同市大町の市民ホールTETTOを主会場に開かれた。4回目となった今回のテーマは「本」。同大教授らが“推し本”との思い出を振り返るトークを繰り広げた。市が進める「本のまちプロジェクト」にちなんだもので、PRポスターコンクールの表彰式やコンサートを開催。鉄文化や郷土芸能にまつわる物語に触れる鉄の学習発表会も催され、新たな“知”との出合いや読書の秋を体感する機会とした。
 
 「いつでも、どこでも、だれでも」をキーワードに読書に親しめるまちづくりを目指し、今年から本格的な取り組が進む同プロジェクト。市内8地区の生活応援センターにある図書コーナーを充実させたり、市広報紙などで市民のおススメ本を紹介している。TETTOにも可動式の本棚「お楽しみ図書館」がお目見え。誰かが読み終えた本が棚に並び、読みたい誰かが手に取る方式で、気になる一冊との出合いを楽しむ姿がみられた。
 
umitokibou01TETTOに置かれた「本のまちプロジェクト・お楽しみ図書館」

 
 市民らを対象に10月末まで募集したPRポスターコンクールの表彰式は22日に実施。市長賞に輝いた今入美智瑠さん(30)の作品「開けば飛び出す物語」は、読書の楽しさやページをめくるワクワク感が表現されている。ほか、未就学児から中学生まで7人が入賞。「日本一、本を読むまちにしたい。読書をきっかけに新しい交流が生まれることを期待」と話した小野共市長らが入賞者に賞状を手渡した。
 
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本のまちをPRするポスターが並ぶ会場で表彰式が行われた

 
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本や物語にちなんだ曲が披露されたコンサート

 
 イベントは同大や社会科学研究所(社研)、大気海洋研究所(大海研)、先端科学技術研究センター(先端研)と結んだ覚書・協定に基づいたもの。生産技術研究所(生研)を加え、各種研究をパネルなどで紹介した。同大の玄田有史副学長や4研究所長、釜石市の高橋勝教育長によるトークイベントは「大切な本」をテーマに和やかに展開。「発見がある」本との出合い、「複数冊を同時に読み進める」など独自の読書スタイルを明かした。
 
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「大切な本」にまつわるエピソードを語る東京大教授ら

 
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東京大学社会科学研究所の所員らの“推し本”がずらり

 
 社研の所員らの“推しの本”42冊を集めた展示コーナーも登場。宇野所長が監修した「選挙、誰に入れる?」など社会科学関連度が高めのものから、「不良のための読書術」など関連度は低めながらも気になるタイトルの本がずらりと並んだ。市内の及川幸世さん(68)は「普段読まないようなものもあったけど、紹介文を見て興味を持った。偏らず、いろんなものを広く浅く読んでみたい」と刺激にした。
 
 海を身近に感じられる展示やワークショップもあり、親子連れらが楽しんだ。岩手大釜石キャンパスは海生生物に触れられるタッチプール、文京学院大(東京)の学生クループはペットボトルのキャップなどを使った巨大絵本の制作体験などを用意。大海研の作品展示の一つ、ヤドカリを模した巨大バルーンアートは写真スポットとして人気だった。
 
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ヤドカリを模した巨大なバルーンアートは子どもに人気

 
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来場者は海に関する展示やワークショップを楽しんだ

 
 今回の学園祭は、複数のイベントが同時開催され、盛りだくさんの内容に。環境省の「脱炭素先行地域」に選定されている釜石市で進行中の取り組みを紹介する「ゼロカーボンフェスタ」はイオンタウン釜石も会場となり、東北電力グループが岩手大生のサイエンスショーや脱炭素化に向けた行動を学ぶアプリの体験などを用意した。
 
 手回し発電や磁力を活用した釣り遊びを楽しんだ小学生藤元爽和さん(3年)は「学校での科学の実験が楽しみなった」とはにかみ、妹の叶和さん(1年)はTETTOで巨大バルーンアートの中に入る体験が「ふわふわで不思議だった」と目を輝かせた。母の聡美さん(40)は「いろいろなことに興味を持ったようだ」と見守った。
 
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同時開催の「ゼロカーボンフェスタ」を楽しむ子どもら

 
 脱炭素化に向け、東北電力は太陽光発電など再生可能エネルギーを活用した各種メニューを提案。同社岩手支店の佐藤利幸部長(岩手三陸営業所長も兼務)は「脱炭素と聞くとハードルが高いと感じられがちだが、実際は身近なところからできる取り組みがいくつもある。体験を通して、感じてもらえたら」と期待した。
 
 鉄の学習発表会は釜石PITであり、釜石小5年生(11人)の代表5人が「鉄の町釜石」と呼ばれる理由を紹介した。釜石の鉄文化や戦争の歴史、暮らし、郷土芸能などを散りばめた物語を朗読で伝える「かまいしのこえ」も上演。京都を拠点に活動するアーティスト集団「安住の地」の作家・演出家、私道かぴさんが地元の人たちに話を聞いて創作し、釜石のタレント養成所「C-Zero(シーゼロ)アカデミー」の生徒らが言葉に感情をのせ届けた。
 
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鉄の学習発表会で発表する釜石小5年生。佐々木結音さんは「鉄の連続出銑ができるまで諦めず努力したのがすごい」と感心した

 
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私道かぴさん(右の写真)が創作した短編作を朗読で披露した

 
 朗読に耳を傾けた佐々木伸一さん(81)は、釜石製鉄所OBで私道さんに話題を提供した一人。「鉄の話、まちの様子、住む人の思いをよくまとめてくれた。私たちの代わりに伝えてくれて、うれしい」とにこやかに話した。
 
 23日は、海に関する本や南極の魅力を紹介するトークイベントなどが行われた。

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釜石の園児へ「絵本、楽しく読んでね」 岩銀取引先・中妻岩友会、10保育施設に贈る

絵本を手に笑顔を見せる園児、小泉嘉明会長(右)

絵本を手に笑顔を見せる園児、小泉嘉明会長(右)

 
 釜石市中妻町の岩手銀行中妻支店(安田重行支店長)の取引先でつくる親睦団体「中妻岩友会」(小泉嘉明会長、会員53事業者)はこのほど、市内の幼稚園や保育園、こども園10カ所に幼児向けの絵本計210冊を贈った。19日、代表として同市野田町の甲東こども園(野田摩理子園長、園児89人)の園児を同支店に招き、贈呈式を開催。小泉会長は園児に絵本を手渡し、「楽しく読んでね」と声をかけた。
 
 「おっ!」「ぱかっ」「ひみつのたからもの」「にじいろのさかな」「のこったのこった」―。テーブルの上に真新しい絵本がずらりと並ぶ。パラパラパラ…。甲東こども園の鮎田恭介くん(5)、板澤梨瑚ちゃん(5)は次々と絵本に手を伸ばし、ページをめくる音を響かせる。贈呈式で見られた一場面だ。
 
絵本のページをめくり笑顔になる甲東こども園の園児

絵本のページをめくり笑顔になる甲東こども園の園児

 
「見てー」。絵本を“見せ合いっこ”して楽しさ共有

「見てー」。絵本を“見せ合いっこ”して楽しさ共有

 
 同園では「甲東文庫」と称した読書活動があり、園児は週1回、約5000冊の中から好きな本との出合いを楽しむ。2人は「多読賞」をもらうほどの“絵本好き”。「見たことない本、あった。うれしい」「いっぱい読みたい」と笑顔を重ねた。
 
 付き添った園関係者によると、絵本が好きな子は多く、「同じ本を何度も借りたり、すぐに汚れたりしてしまう。本は消耗品」とのこと。子どもに人気の本は「すでに園にあったとしても何冊あってもいい。助かる」と喜んだ。
 
笑顔を添えながら絵本を園児に手渡す小泉会長

笑顔を添えながら絵本を園児に手渡す小泉会長

 
 同会の地域貢献活動の一環。子どもたちが本に親しむきっかけを増やすとともに、保育施設での読み聞かせ活動を支援しようと願いを込める。2023年に続く取り組みで、小泉会長は「絵本に触れ、子どもたちに伸び伸び成長してもらいたい。情操教育をバックアップできればいい」と期待。他の園には同会の事務局を置く岩銀釜石支店(安田支店長)の行員らが絵本を届けた。
 
 新型コロナウイルス禍以降の取り組みは絵本寄贈のほか、▽JR釜石線全線開業70周年を記念したラッピング列車の運行企画の提案・協賛▽定内公園へのベンチ設置▽釜石高校への理科実習用機器の寄贈▽中妻地区見守り隊へのベンチコート寄贈▽能登半島地震への義援金寄付―など。まちの活気づけ、地域活動の応援を続けている。

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根浜ビオトープに「地域活動貢献賞」 津波流出の水辺環境再生、地域の未来へ協働の取り組み評価

根浜ビオトープの「地域活動貢献賞」(日本ビオトープ協会第17回顕彰)受賞を喜ぶ関係者=根浜シーサイド

根浜ビオトープの「地域活動貢献賞」(日本ビオトープ協会第17回顕彰)受賞を喜ぶ関係者=根浜シーサイド

 
 釜石市鵜住居町の根浜海岸観光施設「根浜シーサイド」内に昨春整備された「根浜ビオトープ」が、特定非営利活動法人日本ビオトープ協会(東京都)の第17回ビオトープ顕彰で、「地域活動貢献賞」を受賞した。東日本大震災の津波で失われた水辺環境を地元企業、団体が連携して再生。多様な生き物の生息空間を確保し、観察を通して環境保全教育につなげる取り組みが評価された。関係者は受賞を励みに、自然と人との共生、体験型環境教育の充実を図り、同所を地域の宝として守り育てていくことを思い描く。
 
 同顕彰は、優れたビオトープの事例を全国に発信し、多様な生き物の生息環境が人間の生活にとっても重要であることを伝えていこうと2008年度から実施。17回目となる本年度は全国5カ所のビオトープが表彰された。その一つが「地域活動貢献賞」を受賞した根浜ビオトープ。本県で同顕彰を受けるのは6カ所目。沿岸では22年度に「環境活動推進賞」を受賞した「大槌町郷土財活用湧水エリアビオトープ」(ミズアオイ遊水池)に次ぎ2例目となる。
 
 根浜ビオトープは震災前、水田が広がり多様な生き物が生息していた場所に造られた。長年、同所の生き物観察を続けてきた市民団体「かまいし環境ネットワーク」の加藤直子代表(79)が、被災後も山からの沢水が豊富な点に着目。津波被災跡地に整備された市の観光施設の指定管理者「かまいしDMC」(河東英宜代表取締役)にビオトープ構想を持ちかけ、両者の協働で実現の可能性を探ってきた。
 
10月24日には受賞を小野共市長に報告(左下)。かまいし環境ネットワークの加藤直子代表が日本ビオトープ協会相談役の野澤日出夫さんらと訪問した

10月24日には受賞を小野共市長に報告(左下)。かまいし環境ネットワークの加藤直子代表が日本ビオトープ協会相談役の野澤日出夫さんらと訪問した

 
 構想から3年―。国際的奉仕団体「釜石東ロータリークラブ」(現在:平松篤会長、会員29人)が創立60周年記念事業として、同所の環境整備にと寄付を申し出たことで事業が進展。佐野建設(甲子町)が施工にあたり、市から借りた約80平方メートルの土地に沢水が流れ込む大型の池を造成した。
 
根浜ビオトープの造成を行う佐野建設の作業員ら=2024年4月、根浜シーサイド

根浜ビオトープの造成を行う佐野建設の作業員ら=2024年4月、根浜シーサイド

 
芝グラウンドの西側、山林が隣接する土地に整備された大型の池。解説看板(写真左上)も設置されている

芝グラウンドの西側、山林が隣接する土地に整備された大型の池。解説看板(写真左上)も設置されている

 
ビオトープ完成後のお披露目イベントでは、参加者が池のほとりに生き物のすみかを作った=2024年5月

ビオトープ完成後のお披露目イベントでは、参加者が池のほとりに生き物のすみかを作った=2024年5月

 
 昨年4月の完成以降、池にはトウホクサンショウウオや各種カエル、イモリ類がすみ付き、夏にはトンボも見られるようになってきた。同DMC企画のイベントのほか、市内の学校や子どもエコクラブの体験活動で生き物観察、周辺環境の整備が行われていて、環境教育の場として活用される。多様な生き物が見られる環境は、津波で被災し高台に集団移転した根浜地区住民にとっても心安らぐ場になっている。
 
 同ネットワークの加藤代表は、昔ながらの生き物が戻ってきている状況を喜ぶとともに、完成後も環境維持に協力を続ける地域住民や関係者に深く感謝。今回の受賞について、「ビオトープとしての価値はまだまだこれからだが、実現に至るまでの背景、経緯、地域の協働の取り組みなど、そのストーリー性が評価されたものと思う」と同所の意義を改めて実感する。
 
開設1周年記念イベントでは、かまいし環境ネットワークの会員らがエゾエノキの幼木を植樹=2025年5月

開設1周年記念イベントでは、かまいし環境ネットワークの会員らがエゾエノキの幼木を植樹=2025年5月

 
かまいし環境ネットワークの加藤直子代表(左上)、かまいしDMCの佐藤奏子さん(右上)が、釜石東ロータリークラブの中田義仁副会長(写真下右)、同ネットワーク会員の臼澤良一さん(同中)とこれまでの活動を振り返る

かまいし環境ネットワークの加藤直子代表(左上)、かまいしDMCの佐藤奏子さん(右上)が、釜石東ロータリークラブの中田義仁副会長(写真下右)、同ネットワーク会員の臼澤良一さん(同中)とこれまでの活動を振り返る

 
 資金提供した同ロータリークラブの中田義仁副会長(57)はビオトープで子どもたちが生き生きと活動する様子を見聞きし、「クラブとしても子どもたちの成長に少しでも役に立ちたいとの思いがある。地域貢献ができ、こういう受賞にもつながったのは大変うれしい」と喜びを表す。
 
 同ネットワーク会員で、居住地の大槌町でミズアオイ池の保全活動にも取り組む臼澤良一さん(77)は「地域の環境に興味を持ってくれる人がたくさんいることは、私たちの活動のエネルギーの源。ビオトープが自然を大事にする心を醸成する場になれば」と期待を込める。
 
池の周りで生き物を探す子どもたち=2025年5月、開設1周年記念イベント

池の周りで生き物を探す子どもたち=2025年5月、開設1周年記念イベント

 
加藤代表(左)からトウホクサンショウウオの卵を見せてもらう子ども

加藤代表(左)からトウホクサンショウウオの卵を見せてもらう子ども

 
オタマジャクシやカエルの卵に触れてみる。観察後は「元気に育ってね」とリリース

オタマジャクシやカエルの卵に触れてみる。観察後は「元気に育ってね」とリリース

 
 同観光施設内にはキャンプ場や芝グラウンドがあり、年間を通じて多くの利用がある。ビオトープはそうした利用客にも、気軽に生き物と触れ合い、同所の環境に理解を深められる機会を提供する。同DMC地域創生事業部の佐藤奏子さん(47)は「ここは震災の時も水が絶えなかった場所。人々が命をつなぎ、生き物たちもひそかに生き残っていた場所ということからも非常に意味がある」と価値を強調する。
 
 同ネットワークの加藤代表は「自然の生き物を実際に見て、手で感触を確かめる体験は、ゆくゆくは自分の命、他者の命を大切にすることにつながっていくと信じている。これからも多くの子どもたちが足を運び、本物(の命)に触れてほしい」と願う。

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岩手大釜石キャンパス学生が地元水産資源をPR 今年は街なか開催 2年目のおさかなフェス盛況

「釜石の魚、おいしいよ~」地元の海の幸をPRする岩手大の学生ら=9日、おさかなフェス

「釜石の魚、おいしいよ~」地元の海の幸をPRする岩手大の学生ら=9日、おさかなフェス

 
 釜石市平田の岩手大釜石キャンパスで水産を学ぶ学生らが9日、市中心市街地の大町広場で地元海産物の魅力をアピールする「おさかなフェス」を開いた。昨年の同キャンパス敷地内での開催に次ぐ2年目の取り組み。釜石の海で漁獲された鮮魚の販売、海の生き物に触れられるタッチプール、地元業者の出店などで会場はにぎわいを見せ、学生と市民らの交流、釜石の魅力再発見の場となった。
 
 同大農学部食料生産環境学科水産システム学コースの3、4年生24人が企画から運営までを担うイベント。昨年も好評だった鮮魚販売には約20種類の魚が並んだ。浜町の廻船問屋マルワの協力で仕入れた魚介類は、釜石湾や唐丹湾の定置網漁、かご漁で取れたもの。サバやマダイ、タナゴ、ドンコなどおなじみの地魚のほか、ヤガラ、カスベ、マトウダイなど普段、店頭ではあまり目にする機会のない種が目を引いた。学生らは各魚の特徴やおいしい食べ方なども客に教えた。
 
定置網やかご漁でとれた魚介類を販売。学生らが来場者に説明も

定置網やかご漁でとれた魚介類を販売。学生らが来場者に説明も

 
珍しい魚や価格の安さも来場者の目を引いた

珍しい魚や価格の安さも来場者の目を引いた

 
展示用の(下段左から)マンボウ、チカメキントキ、ハリセンボンに興味津々

展示用の(下段左から)マンボウ、チカメキントキ、ハリセンボンに興味津々

 
 鮮魚のほか、サクラマスやサバのみりん干しも販売。サクラマスは早々に完売する人気ぶりだった。魚類の販売価格は100円から1200円。通常価格の半額近いものもあり、来場者は好みのものを複数買い求めた。ウオーキングの帰りに立ち寄ったという、会場近くの復興住宅に暮らす女性(76)はサバとイナダ(ブリの若魚)を購入。「普段より安いよね。子ども2人も岩手大を卒業しているので親しみを感じる。若い人たちがまちを盛り上げてくれるのはうれしいこと」と喜んだ。
 
 今や釜石キャンパス学生の代名詞となった「タッチプール」には、学生が釜石の海で釣った魚、交流のあるかご漁漁師が提供してくれた珍しい魚介類が放たれた。生きた状態を見られる機会はなかなかないだけに、子どもも大人もその動きに注目しながら観察。もちろん、触れるのもOKで、来場者は地元の海の豊かさも感じながら“タッチ”を楽しんだ。
 
研修で釜石を訪れた外国人学生も釜石の海の生き物にびっくり!

研修で釜石を訪れた外国人学生も釜石の海の生き物にびっくり!

 
カイメンを住みかにしたヤドカリ(右上)やキタムラサキウニ(右下)も登場。さまざまな海の生き物に触れられるタッチプール

カイメンを住みかにしたヤドカリ(右上)やキタムラサキウニ(右下)も登場。さまざまな海の生き物に触れられるタッチプール

 
学生(右)は子どもたちに生態なども教えながら釜石の海の素晴らしさを伝えた

学生(右)は子どもたちに生態なども教えながら釜石の海の素晴らしさを伝えた

 
 「岩手大との付き合いは15年ぐらい」という釜石湾漁協白浜浦女性部は昨年に続いて出店協力。えびせんべい、タコの唐揚げ、ウニご飯などを販売した。いち推しは「アカモク」の加工品。塩分の排出効果があるカリウムを多く含む海藻で、この日は、ふりかけや各種料理にアレンジ可能な湯通しした商品を並べた。アカモクを入れたみそ汁のお振る舞いも。同女性部は商品化の取り組みを始めて9年目になるといい、今では同市ふるさと納税の返礼品にも採用される。
 
アカモクの加工品などをPRする釜石湾漁協白浜浦女性部のメンバー

アカモクの加工品などをPRする釜石湾漁協白浜浦女性部のメンバー

 
浜の食文化を伝える機会にもなったおさかなフェス。白浜浦女性部自慢の味覚が並ぶ

浜の食文化を伝える機会にもなったおさかなフェス。白浜浦女性部自慢の味覚が並ぶ

 
 同女性部長の佐々木淳子さん(70)は「釜石市は脳卒中の罹患率が高い。アカモクの普及で市民の健康を守る手助けができれば」とアピール。地元水産物の魅力発信に積極的な岩大生を「頼もしい。同じ仲間として心強いし応援したい」と話し、継続的な連携を望んだ。
 
 水産システム学コースの学生は3年の秋から卒業までの1年半、釜石キャンパスで学ぶ。学生らは学業のかたわら、地元水産業者とタイアップしたイベント開催や小中学生の水産授業のサポートなど、地域住民とつながる各種活動を展開。おさかなフェスもその一つで、学生らは多くの学びを得て成長につなげている。
 
 3年の大友梨央さん(21)は釜石で学び始めて1カ月余り。初めての同フェスでは鮮魚販売を担当した。「思った以上に皆さん買ってくれてびっくり。魚の紹介をしたり、コミュニケーションを取りながら販売できるのがいい」と市民との交流を楽しんだ。人口、若年層の減少が続く沿岸地域において、「学生の出店が集客やにぎわいを生むのなら、地域にある大学として貢献できているのではないか」とも感じた。
 
会場では来場者にアンケートも実施。後輩たちの活動に役立てられる

会場では来場者にアンケートも実施。後輩たちの活動に役立てられる

 
地元販売店や漁師も出店し、にぎわいを見せた大町広場

地元販売店や漁師も出店し、にぎわいを見せた大町広場

 
 「水産のみならず釜石の魅力を幅広く発信できるように」と企画した今年の同フェス。会場には精肉店や菓子店なども出店し、学生企画のイベントを盛り上げた。イベントリーダーを務めた4年の浅野蒼矢さん(22)は「各種申請など事務手続きも全部、自分たちでやった。社会に出てから経験するようなことを先取りできたのは大きい。地域の方とのコミュニケーションの仕方も学べた」と貴重な体験を心に刻む。自分たちの経験は後輩にも伝えたい考えだ。

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ふるさとの味に舌鼓 釜石・橋野で水車まつり 農作物の恵みに感謝し「いただきます!」

晴天に恵まれた第19回水車まつり=2日、橋野どんぐり広場

晴天に恵まれた第19回水車まつり=2日、橋野どんぐり広場

 
 農作物の収穫を祝う釜石市橋野町の「第19回水車まつり」は2日、産地直売所橋野どんぐり広場駐車場で開かれた。季節ごとに地域の魅力を発信する「はしの四季まつり」の1年の締めくくりイベント。今年も地元の秋の恵みをふんだんに使った各種メニューが用意され、約300人が青空の下で古里の味を堪能した。
 
 橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)、栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が共催。菊池会長が歓迎のあいさつをし、恒例の餅まきからスタートした。軽トラックの荷台からまかれた紅白餅は約800個。老若男女が手を伸ばし、昔ながらの祝いムードが広がった。
 
釜石の祝い事には欠かせない“餅まき”。子どもも大人も楽しむ

釜石の祝い事には欠かせない“餅まき”。子どもも大人も楽しむ

 
宙を舞う紅白餅。ダイレクトキャッチも? 手前の女の子は洋服の前見頃を袋代わりに…

宙を舞う紅白餅。ダイレクトキャッチも? 手前の女の子は洋服の前見頃を袋代わりに…

 
 お振る舞いは地元産の野菜を使った同振興協女性部手作りの豚汁。この味を求めて足を運ぶ客も多く、約300食の提供に今年も長蛇の列ができた。2種のおにぎり、手打ちそば、きびの焼き団子は安価で販売。来場者は好みのものを買い求め、豚汁とともに味わった。
 
食欲をそそる橋野自慢の味「どうぞ、召し上がれ~」

食欲をそそる橋野自慢の味「どうぞ、召し上がれ~」

 
無料の豚汁には長い列が…。炭火で焼くきび団子は香ばしさ満点

無料の豚汁には長い列が…。炭火で焼くきび団子は香ばしさ満点

 
 さらに今年は、同町和山地内に同市2カ所目となる養鶏農場を建設中の一関市のオヤマが初出店。自慢の「いわいどり」ももの唐揚げを販売した。用意した約100パックは早々に完売。同社商品開発課の加藤寛美係長(54)は「まだお客さまが並ばれていたところをお断わりする形になってしまって…」と予想以上の売れ行きにうれしい悲鳴。地域密着のまつりの雰囲気にも感激し、「とてもいいおまつり。皆さんに温かく迎えていただきありがたい。新しい農場もできるのでさらに交流を深められたら」と願った。
 
水車まつり初出店のオヤマ(一関市)。からあげグランプリ最高金賞の一品を多くの客が買い求めた

水車まつり初出店のオヤマ(一関市)。からあげグランプリ最高金賞の一品を多くの客が買い求めた

 
 会場周辺の山々は紅葉シーズン本番。駐車場の植え込みも赤く色づき、秋本番の景色を愛でながら、食事を楽しむ来場者。子ども2人と二戸市から橋野町の実家に帰省した佐藤優美さん(35)は、地元のいとこらと計8人でまつりを楽しんだ。「子どもたちは豚汁が大好き。こうして外で食べるのもいいですね」と声を弾ませ、「橋野は人口が減っているが、イベントなどで多くの人が足を運んでくれるのはうれしいこと」と古里のにぎわいを喜んだ。
 
紅葉や青空に囲まれて食べる豚汁は最高のごちそう。子どもたちの箸も進む

紅葉や青空に囲まれて食べる豚汁は最高のごちそう。子どもたちの箸も進む

 
 大只越町の和田美穂さんは妹親子に誘われて来場。3人で豚汁のほか3メニューをいただき、「そばは手打ちの麺がおいしい。おかわりしました」と舌鼓。会場までの道中は美しい紅葉も楽しみ、「周りの景色に癒やされて、お腹も満たされて…。最高ですね」と秋の休日を満喫した。
 
豚汁、唐揚げ、雑穀おにぎり…。「みんなで食べるとおいしいね!」

豚汁、唐揚げ、雑穀おにぎり…。「みんなで食べるとおいしいね!」

 
 橋野どんぐり広場の藤原英彦組合長によると、今年の地域の農作物は「米は例年並みの収量ながら、野菜は夏の高温、日照りの影響であまり良くなかった」という。今はダイコンやサツマイモが出始め、これからハクサイも並ぶ。この日は店頭に干し柿用のカキも並んだ。
 
 同地域は市内でも有数の農業地帯だが、生産者の高齢化で近年は休耕地が増加。産直への出荷も減っており、担い手確保が最重要課題となっている。昨年6月から漬物の製造販売に保健所の営業許可が必要になったことも影響する。国が定める衛生基準を満たすには設備投資が必要で、個人生産者はほぼ販売をやめてしまった。藤原組合長は「現在、地域の漬物販売の復活に向け動いているところ。近い将来、また橋野ならでは味をお届けしたい」と希望を見いだす。「学校がなくなり、商店も減った今、産直は最後のとりで。地域を維持していくためには絶対必要」と継続への模索が続く。

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明治日本の産業革命遺産8エリアのガイド 釜石で初研修 世界遺産登録10周年機に価値発信へ意欲

世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」のガイドによる研修会=10月23日、橋野鉄鉱山

世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」のガイドによる研修会=10月23日、橋野鉄鉱山

 
 世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」のガイド研修会が10月22、23の両日、釜石市で開かれた。8県11市にある23の資産で構成される同遺産は今年、世界遺産登録から10周年を迎えた。各地で遺産の価値、保全の重要性を伝える活動を担うガイドらが一堂に会する研修は、登録(2015年)の翌年にスタート。構成資産「橋野鉄鉱山」がある釜石市が会場となるのは今回が初めてで、座学や遺産の現地視察を行った。
 
 関係自治体で組織する世界遺産協議会が、ガイドの情報交換や資質向上、価値の共有を目的に開催。8エリアからガイドと自治体職員計66人が参加した。初日は大町の釜石PITで事例発表などが行われた。始めに協議会事務局の鹿児島県世界文化遺産室の加世田尊主査が、遺産価値やガイドに求めることを説明。同遺産は23構成資産全体で一つの価値を有する遺産であり、「全エリアで共通の説明を行うことが大事」と話した。伝えるべきポイントとして▽全体の遺産価値▽構成資産としての位置付け▽地域としての価値-を挙げた。
 
全国8エリアのガイドが集まり学びを深めた=10月22日、釜石PIT

全国8エリアのガイドが集まり学びを深めた=10月22日、釜石PIT

 
釜石の鉄の歴史について話す釜石市教委文化財課世界遺産室の森一欽室長

釜石の鉄の歴史について話す釜石市教委文化財課世界遺産室の森一欽室長

 
 事例発表では地元釜石市から2人が登壇した。同市教委世界遺産室の森一欽室長は磁鉄鉱を生んだ三陸の大地の成り立ち・地質、たたらから近代化に至る釜石の製鉄の歴史、他エリアとの関わりについて説明。参加者の質問にも答えた。
 
 橋野鉄鉱山をはじめ、同市のさまざまな分野のガイド活動を行う「釜石観光ガイド会」の菅原真子さんは、2002年の会発足からの活動経過を紹介した。東日本大震災(11年)以降、三陸海岸の日本ジオパーク認定(13年)、明治日本の産業革命遺産の世界遺産登録(15年)、ラグビーワールドカップ釜石開催(19年)と、ガイド活動に新たな要素が次々に加わった。釜石のジオサイトには橋野鉄鉱山や釜石鉱山も含まれる。「ジオの側面から鉄鉱石を解明していくのも魅力的」と菅原さん。活動の課題として人口減少や高齢化による人材不足を挙げた。鉄への共感の難しさはあるが、「橋野鉄鉱山の本当の歴史的価値を伝え続けることが私たちの大きな役割。『来て良かった。また来たい』と言ってもらえるようなガイドをしていきたい」と意欲を示した。
 
事例発表でこれまでの活動について話す釜石観光ガイド会の菅原真子さん

事例発表でこれまでの活動について話す釜石観光ガイド会の菅原真子さん

 
「明治日本の産業革命遺産」の他エリアのガイド活動などに理解を深める参加者

「明治日本の産業革命遺産」の他エリアのガイド活動などに理解を深める参加者

 
 この日夜には、走行する三陸鉄道車内を貸し切って交流会も開かれた。2日目はいよいよ、橋野鉄鉱山(橋野町青ノ木)の現地視察。釜石観光ガイド会の会員10人がアテンドした。市中心部から運行した送迎用大型バス2台にも会員が乗り込み、約30キロの道中ガイドも行った。現地では4グループに分かれ、会員の案内で一般公開されている高炉場跡の見学を行った。
 
構成資産の一つとなっている釜石市の「橋野鉄鉱山」。高炉場跡には3基の高炉の石組み、水路跡などが残る

構成資産の一つとなっている釜石市の「橋野鉄鉱山」。高炉場跡には3基の高炉の石組み、水路跡などが残る

 
種焼場跡にある石に磁石を近づけてみる参加者。鉄鉱石が今も残る

種焼場跡にある石に磁石を近づけてみる参加者。鉄鉱石が今も残る

 
 官営八幡製鉄所拡張に伴い、工業用水確保のために設置された「遠賀川水源地ポンプ室」が構成資産となっている長崎県中間市でガイド活動を行う下山要さん(84)は八幡製鉄所のOB。1901(明治34)年に記念すべき火入れが行われた東田第一高炉の第10次改修高炉(1962年から10年間稼働)で働いた経験を持つ。橋野鉄鉱山を初めて訪れ、「(八幡につながる)近代製鉄の基礎を作った大島高任さんの実績に触れることができ、感激です」と大喜び。各地のガイドとの意見交換も有意義だったようで、「皆さんの活動に刺激を受けた。ガイドを始めて12年になるが、若い人に語り継ぐ大切さを日々、感じている。できるだけ続けていければ」と思いを新たにした。
 
釜石観光ガイド会の会員らが橋野鉄鉱山について解説。ここで行われていた作業などを聞き、参加者も興味をそそられた

釜石観光ガイド会の会員らが橋野鉄鉱山について解説。ここで行われていた作業などを聞き、参加者も興味をそそられた

 
 長崎市の構成資産「端島炭鉱」(軍艦島)のデジタルミュージアム専属ガイド、政次斗志郎さん(71)は、端島の石炭が深く関わる製鉄の歴史に興味津々。田中製鉄所時代の釜石での“48回の失敗、49回目の成功”に触れ、「まさに失敗は成功のもと。最初はうまくいかなかった八幡製鉄所を釜石から招いた技術者が成功に導いたことも印象的」と話す。橋野鉄鉱山の高炉場跡を実際に歩いたことで、「鉄をつくるための天然の条件がすべてそろっていたのだと感じられた」。登録10周年にあたり、「多くの先人の失敗や犠牲に導かれ、今、私たちは文化的生活を送れている。歴史を知るとその大事さが分かる。これからもその伝道師として頑張っていきたい」と政次さん。
 
エリア内には山神社跡も。山の斜面には石碑が残る(右上)。案内したガイドは春に“石割桜”が花を咲かせる写真も見せた(右下)

エリア内には山神社跡も。山の斜面には石碑が残る(右上)。案内したガイドは春に“石割桜”が花を咲かせる写真も見せた(右下)

 
「また会いましょう!」世界遺産でつながるガイド仲間を見送る釜石観光ガイド会員ら

「また会いましょう!」世界遺産でつながるガイド仲間を見送る釜石観光ガイド会員ら

 
 釜石観光ガイド会の藤原信孝副会長は「登録10周年の年に全国のガイドの皆さんを釜石にお迎えできてうれしい。8エリアの一体感を感じた」と感慨深げ。一つの世界遺産ということを実感できると、「発信力も高まっていく。この世界遺産登録のおかげで、多くの人とのつながりもできた」と喜ぶ。この10年の間には、橋野鉄鉱山の台風被害、コロナ禍などガイド活動に影響を及ぼす事案も多々あった。「これからは蓄えてきたガイド力を存分に発揮する時期。若いガイドも育ってきているので、より活動を発展させていければ」と次の10年を見据える。

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鮮やか秋の味!釜石特産・甲子柿 生産組合が目揃会「豊作だけど、お早めに」

出荷シーズンを迎え、きれいに箱詰めされた甲子柿

出荷シーズンを迎え、きれいに箱詰めされた甲子柿

 
 釜石市特産の「甲子(かっし)柿」が出荷シーズンを迎えた。真っ赤に色づいた秋の味覚が道の駅や産直などを彩り、市民らが味わいを楽しんでいる。甲子柿の里生産組合(佐々木裕一組合長、24人・5団体)は28日、同市甲子町の林業センターで品質を確認する「目揃(めぞろえ)会」を開催。今年は豊作の見込みで、生産者は甘くとろける自慢の味を全国に届けようと意気込む。
 
 目揃会には生産者や市の担当者ら約20人が集まり、持ち寄った品の大きさや色つやなどを確かめた。佐々木組合長(74)によると、今季は高温、少雨と作物にとっても過酷な気候状況だったが、ふたを開けてみると実の出来は上々。何と言っても「味がいい」と太鼓判を押す。病害虫の被害も少なく、収量は「例年以上になる」と確信。糖度の高い仕上がりに自信ものぞかせた。
 
目揃会で出来を確かめ笑顔を見せる生産者ら

目揃会で出来を確かめ笑顔を見せる生産者ら

 
 今年仲間入りした甲子町(中小川)の自営業(製材)、外川直樹さん(52)が持ち込んだ品は試食用として振る舞われた。実は小ぶりながら色つやはよく、味についても先輩たちから「おいしい」との評価を得、ほっとひと息。パック詰めの仕方などまだ手探り状態なことも多く、組合員らの助言をしっかり聞いた。現在は庭木として育てる2本から約1000個を収穫し、知り合いの組合員のもとで渋抜きをしてもらっている。数年前に苗木10本を植えて増産へ準備中。「地域の一員として甲子柿を守りたい」と意欲を見せた。
 
鮮やかな紅色とぷるんとした食感が特徴の甲子柿

鮮やかな紅色とぷるんとした食感が特徴の甲子柿

 
一口大に切った柿を試食し甘さや食感を確かめた

一口大に切った柿を試食し甘さや食感を確かめた

 
 甲子柿は、渋柿の一種の小枝柿を「柿室(かきむろ)」と呼ばれる暗室で1週間ほどいぶして作る。渋抜きされた実はトマトのように赤く熟し、ゼリーのような柔らかい食感になる。地域の農林水産物や食品のブランドを守る地理的表示(GI)保護制度への登録や、機能性表示食品の認定も受け、全国からの引き合いが一層高まっている。
 
 そうした背景もあり、組合員の内舘靖さん(56)は新しい包装や発送の方法、高級感を持たせた仕様について、さまざまなアイデアを出す。個包装にして配達時に実が割れるのを防いだり、地元の銘酒浜千鳥と組み合わせた贈答パックを企画したり。市のふるさと納税返礼品としての取り扱いを視野に木箱に詰めたものも検討中だ。探究の原動力は「いいものを届けたい」との思い。「地域の魅力」「伝統の味力」として甲子柿を守り盛り上げるため、組合の仲間と試行を続ける構えだ。
 
木箱入りや特産品を組み合わせた贈答用パックの見本

木箱入りや特産品を組み合わせた贈答用パックの見本

 
 出荷作業は11月20日ごろまで続く見込み。市内では産直や一部スーパーで販売中だ。道の駅釜石仙人峠(甲子町)でも店頭を彩り、買い物客らが手に取っている。「話のタネに」と購入したのは、埼玉県さいたま市の平塚信也さん(63)。岩手県内陸部での用を済ませ、沿岸部を車で周遊する途中で立ち寄った。「駅にポスターがあって、気になっていた」と話し、「ゼリーみたいな感じなのかな…食べるのが楽しみ」と想像を膨らませた。
 
真っ赤な特産が所狭しと並んだ道の駅釜石仙人峠の店内

真っ赤な特産が所狭しと並んだ道の駅釜石仙人峠の店内

 
 目揃会に顔を出した道の駅の佐々木雅浩駅長は、豊作との見立てに期待をのぞかせ「自慢の味を少しでも多く販売したい」と張り切る。11月2日には甲子柿祭りを開催。食のほか、甲子郷小川しし踊り(市指定無形民俗文化財)の演舞(午前11時~)も楽しめる。
 
 同組合では市外への認知度アップも進める。10月31日、11月1日に藤崎百貨店前(宮城県仙台市)で開かれる「GI産品とうまいものフェア」に参加。販売会は11月5日・カワトク(岩手県盛岡市)、14日・さくら野百貨店八戸店(青森県八戸市)で予定する。