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第18回鉄の検定 難問突破、成績優秀小中学生13人を表彰 1級認定は3人

第18回鉄の検定で成績優秀者として表彰された小中学生と学校関係者ら

第18回鉄の検定で成績優秀者として表彰された小中学生と学校関係者ら

 
 “鉄のまち釜石”を深く知ることができる「鉄の検定」が、昨年12月に行われた。18回目となる本年度は釜石市内の小中学生133人が挑戦。中学生の部では90点以上の1級に3人、80点以上の2級に7人が認定された。小学生の部上位3人を含む13人が表彰対象となり、今月17日、大平町の鉄の歴史館で表彰式が行われた。
 
 同検定は“近代製鉄発祥の地”釜石市で続けられるご当地検定。盛岡藩士大島高任が釜石・大橋で国内初の鉄鉱石を原料とした鉄の連続出銑に成功した日に由来する「鉄の記念日(12月1日)」の前後に実施される。鉄のふるさと釜石創造事業実行委員会(会長:小野共市長)が主催。近代製鉄発祥150周年となった2008年から行われている。
 
 本年度は小学生の部に平田小の5年生、中学生の部に釜石中、釜石東中の1年生が団体受検。小中共通の問題50問に挑んだ。出題は大きく分けて▽鉄と釜石に関わる歴史、文化財▽大島高任と田中製鉄所に関わった偉人▽世界遺産―の3分野。答えは4つの中から正解を選ぶ方式で、制限時間は30分。100点満点中、小学生の最高得点は72点、中学生は96点だった。
 
鉄の歴史館で行われた表彰式。対象者9人が出席した=17日

鉄の歴史館で行われた表彰式。対象者9人が出席した=17日

 
小学生の部1位(72点)で表彰された田中玲那さん(平田小5年)

小学生の部1位(72点)で表彰された田中玲那さん(平田小5年)

 
 表彰式には対象となった13人中9人が出席。家族や学校関係者が見守る中、同実行委会長の小野市長から賞状と副賞(文房具、世界遺産記念グッズ、鉄鉱石など)を受け取った。表彰を受けた小中学生からは「鉄についてたくさん勉強できた」「もっと知識をつけたい」「次は1級を目指して頑張る」などの声が聞かれた。
 
 全受検者で最高の96点をマーク、1級に認定された中学生の部1位の佐々木朋哉さん(釜石中1年)は同検定初挑戦。「まさか1位になれるとは」と驚きと喜びを表した。「過去問題を隙間時間にひたすら解いていた。かなり難しかったが、量をこなしていくうちに覚えていった」と勉強法を明かした佐々木さん。「もっと勉強して、次はアイアンマスター(100点に贈られる称号)を目指したい」と意気込んだ。釜石が近代製鉄発祥の地であることに、「誇らしい。知らない人にも釜石の鉄の魅力を伝えたい」と頼もしい言葉も。
 
中学生の部1位(96点)で表彰された佐々木朋哉さん(釜石中1年)

中学生の部1位(96点)で表彰された佐々木朋哉さん(釜石中1年)

 
式には表彰を受けた小中学生の家族らも出席。頑張りをたたえた

式には表彰を受けた小中学生の家族らも出席。頑張りをたたえた

 
 市内の小中学校では郷土学習の一環で、児童生徒が釜石の製鉄の歴史を学ぶ。鉄の歴史館や釜石鉱山展示室Teson、世界遺産になっている橋野鉄鉱山などの見学のほか、市や県から講師を招いて座学を行う学校も。2022年度からは中学校全5校で1年生による「鉄づくり体験」がスタート。本年度から小学校全9校で5年生が「鋳造体験」を行うなど、小中一貫の教育が進む。

 
一人一人、鉄の検定の感想を発表。「もっと勉強してみたい」などの声が聞かれた

一人一人、鉄の検定の感想を発表。「もっと勉強してみたい」などの声が聞かれた

 
表彰式後は親子で館内を見学。各種展示資料に見入った

表彰式後は親子で館内を見学。各種展示資料に見入った

 
 検定の問題を作成した市教委文化財課の加藤幹樹主査は「80点以上はかなり勉強しないと取れないレベル。過去問題やパンフレットでの学習以外に、体験学習や鉄関連イベントへの参加など自ら学びにいかなければ正解できない問題もちりばめた」と明かす。その上で「鉄に関する問題は釜石に特化したものがほとんど。(検定を通じて)子どもたちが知識として蓄えてくれるのはうれしい。地元のことを知る機会をさらに充実させ、やる気を持って取り組めるようにしたい」と今後を見据える。
 
 本年6月には大島高任生誕200年の節目を迎える。市教委の髙橋勝教育長は「鉄を通して古里釜石を大切に思う心を持ち続けてほしい。さらに学びを深め、鉄の魅力を発信できる人になってほしい」と期待した。

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幸多き1年へ― 荒川熊野権現御神楽「悪魔払い」 豊漁豊作、火伏せ、無病息災…願い地域巡行

荒川町内会が年始に続ける「悪魔払い」。家々などを回り1年の無事を祈る

荒川町内会が年始に続ける「悪魔払い」。家々などを回り1年の無事を祈る

 
 釜石市唐丹町の荒川町内会(雲南幹夫会長、80世帯)は11日、新年恒例の伝統行事、“荒川熊野権現御神楽”による悪魔払いを行った。神楽衆約40人が地域の家々や海岸、点在する複数の神社を回り、舞を奉納。厄を払い、新しい年が災難のない穏やかな1年になるよう祈願した。
 
 同市最南端に位置する荒川地区は海岸部から山間部に集落が連なる。住民が信仰する荒川鎮座熊野神社は1187(文治3)年、紀州熊野から分霊を勧請して建立。海上安全、火伏せ、五穀豊穣の守護神として熊野大権現を祭る。この地で古くから受け継がれる年始の行事が、御神楽(権現舞)による“悪魔払い”。新しい年を迎えた家々などを回り、厄払いを行う門打ちだ。
 
 別当の鈴木剛さん(48)宅で天照御祖神社(唐丹町片岸)の河東直江宮司によるおはらいを受けた一行は、熊野権現を化した獅子頭3体を携え出立。海岸部にある熊野神社で舞を奉納後、荒川海岸で「御水(塩)取り」と呼ばれる神事を行った。海水を付着させた笹竹で頭を清め、お神酒、塩を供えて拝礼。海と海神を祭る高台の湊神社に向かって舞を奉納し、海上安全、豊漁を祈願した。
 
荒川海岸で行われた「御水(塩)取り」。海神をあがめる伝統の神事

荒川海岸で行われた「御水(塩)取り」。海神をあがめる伝統の神事

 
海に向かって舞を奉納する「荒川熊野権現御神楽」。海上安全、豊漁を祈願

海に向かって舞を奉納する「荒川熊野権現御神楽」。海上安全、豊漁を祈願

 
 この後、地区内に点在する各神社、班長宅などを回った。自宅裏に八幡神社がある鈴木賢一さん(80)方では、孫の悠真君(5)が獅子頭に頭をかんでもらい、健やかな成長を祈願。「かみかみしてもらって、うれしかった」と笑顔を広げた。姉の紬心さん(7)は父や中学生の兄が参加する神楽で小学生の女の子が踊る姿を目にし、「自分もいつか踊ってみたい」と目を輝かせた。
 
下荒川、鈴木賢一さん方で厄払いの門打ち。家内安全、無病息災などを祈る

下荒川、鈴木賢一さん方で厄払いの門打ち。家内安全、無病息災などを祈る

 
獅子頭に頭をかんでもらう子ども。邪気を吸い取ってくれるとされる

獅子頭に頭をかんでもらう子ども。邪気を吸い取ってくれるとされる

 
地区内には山の神(左上)、五葉神社(右上)など複数の神社がある。神楽衆は各所を回り舞を奉納

地区内には山の神(左上)、五葉神社(右上)など複数の神社がある。神楽衆は各所を回り舞を奉納

 
 三陸最高峰「五葉山」の赤坂峠に続く県道沿いでは、山間部にある「山の神」神社まで足を延ばし、舞を奉納。帰路の荒金集会所では、一行を迎えるために食事を準備していた町内の女性11人の前で複数の演目を踊った。同神楽は熊野神社の信仰とともに伝承され、神の使いである御獅子が悪魔を退散させ、安寧の世に導く意味が込められる。現在は同町内会が4演目を継承し、年始の同巡行のほか、3年に一度の天照御祖神社式年大祭「釜石さくら祭り」で踊りを披露している。
 
 豚汁などのお振る舞いのため前々日から準備にあたった小野寺未徳さん(79)は「年に1回のお祭り。若い衆が頑張って踊ってくれた。きっとご利益があると思う」と晴れの笑顔。同地区山間部では農林業従事者も多い。「クマやイノシシ被害もあるが、頑張っている。今年1年、みんな元気で、秋には豊作になれば」と期待した。
 
笛や太鼓のお囃子(はやし)を響かせながら、荒金集会所に向かう一行

笛や太鼓のお囃子(はやし)を響かせながら、荒金集会所に向かう一行

 
集会所では舞を披露した後、女性たちが準備したお振る舞いをいただいた。室内には小正月のみずき団子飾りも…

集会所では舞を披露した後、女性たちが準備したお振る舞いをいただいた。室内には小正月のみずき団子飾りも…

 
 4班班長の久保正勝さん(69)方の庭には近隣住民も訪れ、御神楽を楽しんだ。「昔からずっと続いている行事。ありがたい」と久保さん。自身も神楽に長年携わってきた。「昔は若い人たちがもっと多かったが、今は後継者不足で。何とかつないでいってほしいが…」と未来を案じる。神楽衆をまとめる世話人長の久保直人さん(45)は「これ(悪魔払い)がないと1年が始まらない。御神楽は地区住民の団結の証し」と誇りを示す一方で、やはり人材不足を課題に挙げる。「荒川から出ている人たちの協力もあって、今はできているが…。激しい踊りなので、若い人たちの参加が不可欠。地元に残る若者が少しでも増えてほしい。地域の伝統はなくしたくない」と願う。
 
上荒川、久保正勝さん方で舞を披露。近隣住民も集まり、新年のあいさつを交わしながら交流

上荒川、久保正勝さん方で舞を披露。近隣住民も集まり、新年のあいさつを交わしながら交流

 
威勢のいい舞に太鼓をたたくメンバーも笑みがこぼれる

威勢のいい舞に太鼓をたたくメンバーも笑みがこぼれる

 
「元気に育て!」。御神楽は子どもたちの健やかな成長も祈る

「元気に育て!」。御神楽は子どもたちの健やかな成長も祈る

 
 荒川地区は2011年の東日本大震災津波で、国道45号東側エリアから今の三陸沿岸道路(震災後に建設)橋脚付近まで浸水。約50戸が被災し、住民数人が犠牲になった。同震災から今年で15年―。町内会の雲南会長(73)は「山に囲まれる荒川地区は沢が多く、豪雨による土砂災害の危険もある」とし、地震津波だけではない自然災害への備えの必要性を認識。地区内には防災士の有資格者が11人いて、「現在、自主防災組織の充実強化を図っているところ」と明かした。町内会は郷土芸能や地域の伝統文化を通じて住民のつながりをより強固にし、コミュニティーの力を防災にも生かしていきたい考えだ。

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輝く未来へ 釜石で「はたちのつどい」 若者自ら盛り上げ 笑顔晴れやか

晴れやかな笑顔が並んだ釜石市の「はたちのつどい」

晴れやかな笑顔が並んだ釜石市の「はたちのつどい」

 
 12日の成人の日を前に釜石市では11日、市と市教育委員会主催の「はたちのつどい」が開かれた。節目を迎えた若者たちが華やかな振り袖やスーツ姿で式典に臨んだ。「困っている人に寄り添える人になりたい」「社会人としてしっかりと」「育ててもらった恩返しをしたい」。夢や目標に向けて確かな一歩を踏み出した出席者に抱負や古里への思いを聞いた。
 
 同市大町の市民ホールTETTOで式典があり、対象者250人中203人が出席した。東日本大震災の犠牲者に黙とうをささげて開式。小野共市長が「20歳は人生の大きな節目。自分の持つ可能性を信じて夢に挑戦し、自分の道を切り開いてほしい」とエールを送った。
 
「実に濃い20年間」を振り返り、夢を語った及川佳倫さん

「実に濃い20年間」を振り返り、夢を語った及川佳倫さん

 
 対象者を代表して抱負を発表したのは、釜石中出身で岩手県立大で学ぶ及川佳倫(よしとも)さん(19)。5歳の時に体験した震災に触れながら「不自由さを感じることなく、元気に育つ環境をつくってくれた」と地域への感謝を口にした。将来の夢は「誰かの未来のために必死に頑張れる教師になること」。教師をしている父親の背中を見て「憧れた」という。「これから先の人生には数え切れないほどの困難があるだろう」と想像しつつ、「支えてくれた地域の皆さんや友人の顔を思い出し強く生きていく」と力を込めた。
 
 対象者から募った有志が進行役を担い、実行委6人が作成した恩師らのビデオメッセージを鑑賞。過ぎし日を懐かしんだ。市民憲章・防災市民憲章の唱和、市民歌斉唱なども行い、社会の一員として気持ちを引き締めた。
 
「未来へ進むための糧に」。式典を進行した実行委メンバーら

「未来へ進むための糧に」。式典を進行した実行委メンバーら

 
恩師から届いたメッセージに笑顔を広げる出席者

恩師から届いたメッセージに笑顔を広げる出席者

 
 有志13人が郷土芸能の虎舞を披露。地域への感謝や、20歳の門出の景気づけになるよう威勢よく舞った。「最高っす!」。鳥居睦樹さん(20)は式典後も同ホールのロビーなどでおはやしを響かせ、元気に跳ね回っていた。子どもの頃から続ける虎舞は「誇り」ときっぱり。市内の広域ごみ処理施設で働き、「大変だけど、頑張っている。立派な大人になりたい」と胸を張った。
 
軽快で若々しい虎舞が式典を盛り上げた

軽快で若々しい虎舞が式典を盛り上げた

 
「虎舞は誇り」。息を合わせた演舞で魅せたメンバー

「虎舞は誇り」。息を合わせた演舞で魅せたメンバー

 
 家族と記念写真を撮っていた佐々木ここみさん(20)は短大での学びを生かし、4月から保育士として働く。「社会人としてしっかりしなきゃ」と、自分に言い聞かせるように話した。新たな生活の舞台に選んだのは埼玉県。「離れて暮らす家族に会いたくなるかも。育ててくれた恩返しができるよう頑張りたい」とうなずいた。
 
両親や祖父母に囲まれ、ほほ笑む佐々木ここみさん(前列中)

両親や祖父母に囲まれ、ほほ笑む佐々木ここみさん(前列中)

 
 そんなかわいい孫の門出を祝おうと会場に駆け付けた佐々木かつ子さん(76)は「何事もなく、すくすく育って、うれしい限り。あっという間の20年」としみじみ。食べ物に気をつけて、病気にならないようにと祈りつつ、「帰る場所があるからね」と見守った。
 
「釜石は安心する場所」と話す久保翔太さん(左)と友人の佐々木悠斗さん

「釜石は安心する場所」と話す久保翔太さん(左)と友人の佐々木悠斗さん

 
 着流しスタイルの久保翔太さんに20歳になって思うことを聞くと、「何となく…ちょっと大人になったかなという感じ」と言って笑った。鍼灸(しんきゅう)師を目指し、盛岡の医療系専門学校に通う。理由は「つぼが好きだから」。釜石市外の高校に進学し、部活動でバドミントンに打ち込む中で、自身の体調を整える方法を探して興味を持った。学校は3年制で、残り1年で知識や技術にさらに磨きをかけるつもり。「困っている人に寄り添い、手助けできたら」と未来を描く。
 
日本語を学ぶ仲間と一緒に「うれしい」思い出を増やすブダトキ ルパさん(右)

日本語を学ぶ仲間と一緒に「うれしい」思い出を増やすブダトキ ルパさん(右)

 
 釜石で日本語を学ぶネパールやミャンマーからの留学生8人も、母国の民族衣装で参加した。水色のサリーに身を包んだブダトキ ルパさん(20)は日本ならではの行事に「とてもおもしろい。みんなとお祝いして、うれしいです」とにっこり。「義務を果たせる人になりたい」と続けた。この春、介護を学ぶ専門学校へ進学。将来は日本で働くことを希望する。釜石に暮らし約1年半。「住みやすいまち」と感じたようで「(釜石に)戻って働きたい。お年寄りのお世話をしたい」と望んだ。
 
色鮮やかな振り袖姿の女性陣。笑顔で写真に納まる

色鮮やかな振り袖姿の女性陣。笑顔で写真に納まる

 
「20」。節目の一日を思い出として刻む若者たち

「20」。節目の一日を思い出として刻む若者たち

 
スマホ片手にパチリ。再会した友人と記念撮影を楽しむ

スマホ片手にパチリ。再会した友人と記念撮影を楽しむ

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小正月の風習 末永く後世に 松倉町内会「みずき団子祭り」 子どもたちと地域つなぐ機会にも

松倉町内会の小正月行事「みずき団子祭り」=10日、松倉地区コミュニティ消防センター

松倉町内会の小正月行事「みずき団子祭り」=10日、松倉地区コミュニティ消防センター

 
 1月15日は小正月。本県では、ミズキ(水木)の枝に色とりどりの団子を飾り、新しい年の五穀豊穣や家内安全などを祈る風習が各地で受け継がれる。釜石市内では、古くは農家や商家など家々で行われたが、今は公民館や幼児施設で季節行事として開催されることが多くなった。甲子町の松倉町内会(佐野賢治会長、580世帯)もその一つ。10日、同地区コミュニティ消防センターで、みずき団子祭りを開き、子どもから高齢者まで約40人が伝統行事で交流を深めた。
 
 同センター2階の集会室には、縁起が良いとされる3段の枝ぶりが見事なミズキが据えられた。始めに団子を刺しやすいように、枝に出ている芽を取り除いた。枝に飾り付ける団子は町内の女性らが下準備し、小学5、6年児童が手伝って仕上げたもの。4色の団子は四季を表すとされる。子どもたちは丸い団子を手に取り、枝の先に刺していった。背の高い部分は、お父さん方が担当。団子のほかミカンや菓子袋、願い事や目標を記した短冊も飾った。
 
ミズキの芽を摘み取る「芽かき」からスタート

ミズキの芽を摘み取る「芽かき」からスタート

 
4色の団子をミズキの枝に飾り付ける子どもら。「うまくできるかな?」

4色の団子をミズキの枝に飾り付ける子どもら。「うまくできるかな?」

 
枝の高い所はお父さん方が担当。カラフルな団子で枯れ木に花が咲いたよう…

枝の高い所はお父さん方が担当。カラフルな団子で枯れ木に花が咲いたよう…

 
 野田紗也佳さん(甲子小5年)は花が咲いたようなミズキに「きれい」と感激。短冊には「勉強で頑張りたいことを書いた。苦手な算数を克服して得意になりたい」と今年の目標を掲げた。鳩岡柚さん(同)は、みずき団子について「知っていたけどやるのは初めて。楽しかった」とにっこり。春には小学校生活最後となる6年生になる。「低学年の子たちにやさしくしたい」と最上級生への自覚を高めた。
 
菓子やミカン、短冊も飾ると、さらに華やかに…

菓子やミカン、短冊も飾ると、さらに華やかに…

 
短冊にはそれぞれの夢や願い事が記された。2026年が「良い年になりますように」との願いも込めて…

短冊にはそれぞれの夢や願い事が記された。2026年が「良い年になりますように」との願いも込めて…

 
 会場には紅白の幕や子どもたちが書き初めをした書道作品も飾られ、華やかなミズキ飾りとともに新年の祝いムードを盛り上げた。その中で、子どもたちは羽子板や福笑いなど昔ながらの正月遊びを楽しんだ。
 
 地元の正福寺住職、須藤寛人さん(61)の講話もあった。今年のえと「午(ウマ)」の話では、5500万年前のウマは中~大型犬ぐらいの大きさしかなく、長い年月をかけて今の大きさになったこと、日本では元々、耕作や運搬など農家の力仕事を手伝ってくれる農耕馬が主流で、競走馬のような足の速いウマは後に外国から入ってきたものであることを教えた。また、みずき団子に込められる実りや成長への願いにも触れ、「みんなも1年の目標を定め、今年の終わりにはそれを達成できるように頑張って」とエールを送った。
 
松倉のみずき団子祭りでは毎年、正福寺の須藤寛人住職(右)が講話。新年にあたり、ためになる話をいただける

松倉のみずき団子祭りでは毎年、正福寺の須藤寛人住職(右)が講話。新年にあたり、ためになる話をいただける

 
正月遊びの定番「福笑い」や「羽子板」は昔も今も変わらず人気。ミズキ団子には子どもたちの健やかな成長への願いも込められる

正月遊びの定番「福笑い」や「羽子板」は昔も今も変わらず人気。ミズキ団子には子どもたちの健やかな成長への願いも込められる

 
竹とんぼを飛ばしてみる親子。この日はお手玉などの昔遊びも用意され、楽しい時間を過ごした

竹とんぼを飛ばしてみる親子。この日はお手玉などの昔遊びも用意され、楽しい時間を過ごした

 
 同町内会のみずき団子祭りは、甲子公民館が1982年から行ってきた行事を受け継ぐ形で今に至る。コロナ禍で5年間中断したが、昨年から再開。以前は100人以上が参加していた時期もあったが、少子化の影響などで、近年はピーク時の半数ほどになっている。
 
 市内では人口減や少子高齢化で町内会活動が難しくなっている地域もある。そんな中で松倉町内会では、子どもたちとその保護者が親子で参加して楽しめるような行事を積極的に導入。子ども会やPTAと連携し、古里の良さを感じながら幅広い年代が交流を図れる機会を設けている。「何か接触がないと(若い世代が)どんどん離れてしまう。こうした行事を通して町内会に参加してもらうことで一体感を高めたい。地域全体で子どもたちを見守っていければ」と佐野会長。この日は集まった保護者らに、子どもたちが楽しめるような企画の提案も呼びかけた。

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正月彩るミニ羽子板作り ぼく、わたしだけの一枚に笑顔 冬休みの思い出 まちづくり会社が後押し

オリジナルの飾り付けを楽しんだ「羽子板作りワークショップ」

オリジナルの飾り付けを楽しんだ「羽子板作りワークショップ」

 
 釜石まちづくり会社主催の羽子板作りワークショップが昨年12月27日、釜石市大町の情報交流センターで開かれた。正月飾りや冬休みの工作に活用してもらおうと、初めて開催。帰省した親子を含む市内外の15人が参加し、レーザー加工機や豊富な装飾パーツを使ったミニ羽子板作りに挑戦した。同社は長期休み中の子ども応援企画第2弾として、あす10日には「冬休み 市内いっせいしゅくだいの日」イベントを市民ホールTETTOなどで開く(詳細は同社インスタグラムで)。
 
 レーザー加工機を使った製品の製作販売を行う大槌町吉里吉里のNRC(細川恵子代表取締役社長)が協力。同社取締役企画部長の井上藍さん(37)が持ち込んだ小型加工機を使って、下地作りからスタートした。羽子板の形にカットしたヒバ材(縦20センチ、横9センチ)に、参加者が選んだ年号やえとの図柄を配置。タブレットでデータ入力し、同加工機で刻印した。
 
羽子板の形、表面に施す図柄を選び、タブレットで配置場所や大きさを調整

羽子板の形、表面に施す図柄を選び、タブレットで配置場所や大きさを調整

 
入力されたデータ通りにレーザー加工機が図柄を刻印。機械の動きに子どもたちも興味津々

入力されたデータ通りにレーザー加工機が図柄を刻印。機械の動きに子どもたちも興味津々

 
 機械の稼働中に、参加者は板に貼り付ける装飾パーツを選んだ。井上さんが準備した木製パーツのほか、まちづくり会社社員が手作りした水引、手芸用の飾りなど豊富な種類が用意され、完成形をイメージしながら好みのものを集めた。木製パーツにはマジックで色付けも。子どもたちはレーザーで模様が刻まれていく様子も見学し、普段あまり見ることのない作業に目がくぎ付けになった。
 
えとの“ウマ”にちなんだ木製パーツや手作りの水引など種類豊富な飾りが用意された。「どれにしようかな?」

えとの“ウマ”にちなんだ木製パーツや手作りの水引など種類豊富な飾りが用意された。「どれにしようかな?」

 
 刻印が終わると最後の仕上げ。選んだ装飾パーツをバランスを考えながら板に並べ、木工用ボンドやグルーガンで接着した。幼児は保護者に手伝ってもらいながら作業。小学生は冬休みの宿題の工作にも応用しようと、それぞれに創造力を発揮した。完成品を手にした子どもたちは、うれしそうな表情を浮かべ、間もなく迎える正月を心待ちにした。
 
着色したパーツを木工用ボンドやグルーガンで貼り付け。ベースデザインとのバランスも考えながら…

着色したパーツを木工用ボンドやグルーガンで貼り付け。ベースデザインとのバランスも考えながら…

 
 小佐野小の前田瑛里さん(4年)、陸仁さん(1年)姉弟(きょうだい)は、ものづくりが大好きで、今回も自ら参加を希望。製作後、感想を聞くと、「楽しかった~」と声をそろえた。陸仁さんは木製パーツを組み合わせ、“雪だるま”や“ミカン”の形に。「頭で想像して形を作るのが楽しかった」と声を弾ませた。瑛里さんは「レーザーで模様が浮かび上がってくるところを初めて見た」と目を輝かせ、オリジナルの“デコ”羽子板を「自分の部屋に飾りたい」と楽しみにした。 2人を見守った母梨沙さん(35)は「一生懸命考えながら、頑張って作っていた。ものづくりを通して、いろいろな発想が豊かになっていけば」と期待した。
 
前田さん姉弟の作品。右が姉瑛里さん、左が弟陸仁さん作。出来は「100点満点!」だそう

前田さん姉弟の作品。右が姉瑛里さん、左が弟陸仁さん作。出来は「100点満点!」だそう

 
「すてきな羽子板ができました!」。大満足の子どもたち(前)と主催者ら(後)

「すてきな羽子板ができました!」。大満足の子どもたち(前)と主催者ら(後)

 
 NRCの井上さんは、東日本大震災後の緊急雇用制度を活用した一般社団法人の活動で、レーザー加工機の操作技術を習得。現会社ではオリジナル雑貨の製作販売のほか、企業や個人からの依頼で記念品などの受注製作を行っている。今回のようなワークショップは「子どもたちが喜んでくれるのがうれしい。レーザー加工機に興味を持ってくれる子もいる。将来、ものづくりに携わる仲間が増えてくれれば」と期待。釜石市ではこれまでにも製作実演会などを行っていて、今後も機会があればイベント協力していきたい考え。まちづくり会社の下村達志事業部長は「楽しんでもらえて良かった。これからも季節に応じたワークショップを開催していきたい」と話した。

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みんなで歩ける喜び感じながら… 新年恒例 釜石「初詣ウオーク」 “健歩”で1年スタート

新年初歩きを楽しむ市内外のウオーキング愛好者ら=2日、初詣ウオーク

新年初歩きを楽しむ市内外のウオーキング愛好者ら=2日、初詣ウオーク

 
 釜石市ウオーキング協会(遠野健一会長、会員46人)の歩き初め、「初詣ウオーク」は正月2日に行われた。市内の神社や寺を詣でながら歩く新年恒例の行事で、21回目の開催。同協会のほか、大船渡市と遠野市の各団体から計20人が参加した。中妻町から浜町まで約10キロの道のりを歩いた参加者は、心地よい疲れとともに笑顔を広げ、「今年もみんなで元気に歩こう!」と誓い合った。
 
 スタート地点は中妻町の昭和園クラブハウス駐車場。開会式で遠野会長は「仲間と歩くことは健康にも効果がある。今年も、より楽しいウオーキング活動を目指していきたい。今日は歩けることに感謝しながら、1年を無事に過ごせるように神社、仏閣で祈願していこう」と呼びかけた。軽いストレッチで体をほぐした後、最初の詣で地、八雲神社(八雲町)に向けて出発した。
 
八雲神社には西側の山道から上って参拝。霜柱が立つ地面を踏みしめ一歩一歩前へ…

八雲神社には西側の山道から上って参拝。霜柱が立つ地面を踏みしめ一歩一歩前へ…

 
鳥居の下の「茅の輪」くぐりも体験。厄を払い、無病息災を祈願

鳥居の下の「茅の輪」くぐりも体験。厄を払い、無病息災を祈願

 
 この日の市内は晴れて気持ちのいい青空が広がったものの、風が強めに吹き、底冷えの一日に…。日陰の土の地面には霜柱が立ち、真冬らしい寒さとなった。それでも、高台にある寺社への坂道や石階段を上り下りするうちに体は温まってきた。参加者は2カ所目の八幡神社(大渡町)でお参りした後、市保健福祉センターに立ち寄りトイレ休憩。水分補給などもして、後半のコースに向かった。
 
駒木町の甲子川河川敷遊歩道を進む。対岸ではシカ2頭がごあいさつ(写真左下)

駒木町の甲子川河川敷遊歩道を進む。対岸ではシカ2頭がごあいさつ(写真左下)

 
大渡町の八幡神社に到着。急な石階段は手すりにつかまって慎重に上る

大渡町の八幡神社に到着。急な石階段は手すりにつかまって慎重に上る

 
薬師山観音寺入り口の樹木にはクマのものとみられる爪痕も。まだまだ注意が必要

薬師山観音寺入り口の樹木にはクマのものとみられる爪痕も。まだまだ注意が必要

 
 同センターに隣接する薬師山観音寺(大町)で参拝後は、中心市街地の県道を進んだ。商店やホテルの門松、正月飾りで新年の始まりを実感しながらウオーキング。道行く人ともあいさつを交わしながら歩き、ゴールとなる尾崎神社(浜町)を目指した。午前9時半前に出発した参加者らは、正午前には同神社に到着。最後の参拝を無事終えた。
 
 釜石協会の大沢寿礼さん(72)は「風は冷たいがピリッとしていいね。新年の初歩きはやはり気持ちが引き締まる」とすがすがしい表情。協会に入って5年ほどになるが、今は月1回発行する「ウオーキングだより」の編集を担当。「手間はかかるが、みんなが楽しみに読んでくれるのがうれしい」と話す。今年は「まだ行ったことがない県外への遠征ウオークにも参加したい。昨年は厄年だったので、今年は“ウマ”くいくように」と願った。
 
 釜石の初詣ウオークは初めてという遠野協会の鈴木幸枝さん(59)は「今年1年、元気で過ごせるようにと拝んで歩いた」。3年ほど前から健康づくりのために始めたウオーキング。「歩くのが苦じゃなくなり、外に出たいという気持ちになった」と心身の変化を実感する。今は他市町の協会が主催する行事にも参加し、「知らない所に行って歩くのが、ちょっとした旅行気分で楽しい。知り合いも増えた」と喜ぶ。2026年に望むのは「体も心も健康に、穏やかに…」。
 
今年3月で東日本大震災から15年―。中心市街地には複数の復興住宅が建ち並ぶ

今年3月で東日本大震災から15年―。中心市街地には複数の復興住宅が建ち並ぶ

 
釜石港を臨む浜町に到着。ゴールの尾崎神社まであと少し。初詣に向かう車列も続く(左)

釜石港を臨む浜町に到着。ゴールの尾崎神社まであと少し。初詣に向かう車列も続く(左)

 
無事に完歩! 感謝の気持ちを込め、尾崎神社で最後の参拝

無事に完歩! 感謝の気持ちを込め、尾崎神社で最後の参拝

 
 昨年は全国的にクマの出没が相次ぎ、これまで気軽にできたウオーキングも「1人では怖い」「コースや時間帯も見直さざるを得ない」状況に陥った。前述の鈴木さんも「クマが怖いので、ジムで運動するようにしていた」と話す。危険回避の観点からも、大人数で歩く協会行事は運動機会確保の一助にもなるものと思われる。
 
 釜石協会は今年も、市内や周辺市町での月2回の例会ウオーキングのほか、県内外のイベントにも参加予定。各地の自然や歴史、文化に触れながら歩き、仲間との交流も深める。会員以外の参加も大歓迎。次回は1月17日、市内平田地区を散策する。10キロのほか5キロでも参加可能。希望者は午前9時に上平田ニュータウン集会所に集合とのこと。一般の参加料は300円。

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2026年幕開け 「何事もウマ(午)くいくように…」それぞれに願い込め、新たな年へ踏み出す一歩

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 2026年、「午(うま)年」の令和8年が始まった。釜石市内は元日早朝から雪が降り出し、冬本番の気候の中、新たな年を迎えた。正月三が日も気温が低い状態が続いたが、晴れの天気に恵まれ、各地の神社や寺は多くの初詣客でにぎわった。充実の1年へ希望を抱く一方で、昨年相次いだ津波警報やクマによる人的被害など、平穏な日常を脅かす事態への不安は尽きない。東日本大震災から15年となる本年―。改めて災害への備えの強化、継続的な危機意識が必要となりそうだ。
 

年越しは冷え込み緩む中で 釜石総鎮守・八雲神社 地元の家族連れらが続々と参拝

 
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 年越しの時間帯を前にした、おおみそか午後11時27分ごろ、岩手県沖を震源とする地震があり、盛岡市で最大震度4、釜石市では震度3を観測。一時、緊張が走ったが、津波の心配はないとのことで、釜石市内の神社や寺には例年通り、新年初のお参りをしようという人たちが足を運んだ。
 
 八雲町の高台に位置する八雲神社(成瀬幸司宮司)には、日付が変わる午前0時を前に参拝客が集まり始め、境内に列を作った。新年を告げる太鼓が打ち鳴らされると、順にさい銭をあげて参拝。昨年の加護に感謝し、新しい年の無事、多幸を願って手を合わせた。本殿では成瀬宮司が「歳旦祭」の祭儀を行い、今年1年の地域の平穏、繁栄を祈願。地元の家族連れらの家内安全、商売繁盛などの祈祷も行った。境内では同神社氏子神和会のメンバーが甘酒を振る舞った。
 
新しい年への願いを込め、神前に手を合わせる参拝客=八雲神社、元日午前0時すぎ

新しい年への願いを込め、神前に手を合わせる参拝客=八雲神社、元日午前0時すぎ

 
境内では氏子神和会のメンバーが参拝客に甘酒をお振る舞い

境内では氏子神和会のメンバーが参拝客に甘酒をお振る舞い

 
 中妻町の友人宅でおおみそかを過ごし、友人家族と連れ立って参拝に訪れた平田の藤原光輝さん(26)は昨年を振り返り、「子どもたちは自我が芽生えて、自分で行動に起こすことが多くなった」と、愛息(4歳、3歳)の著しい成長を実感。今年は「まだやったことがないこととか、いろいろな経験をさせてあげたい」と親心をのぞかせた。自身は社会人野球の選手でもあり、「子どもたちも野球に興味を持ってくれれば」と期待した。
 
 同神社のお膝元、中妻町に暮らす榊原修さん(66)は帰省した娘らと家族4人で初詣。「昨年は病気をしたので、今年は健康第一で」と無病息災を祈願した。毎年、年越しの時間帯に同神社を訪れるが、「参拝客もだいぶ少なくなったね」としみじみ。同地域は人口減や高齢化が顕著だといい、「空き家も多い。若者も高校を卒業して市外に出るとなかなか戻ってこないしね」と寂しさをにじませた。
 
ちょうちんがともされた神社の参道(右)。複数の石段を上った先に社殿がある

ちょうちんがともされた神社の参道(右)。複数の石段を上った先に社殿がある

 
新しい年を迎え、1年の無事を祈るご祈祷(きとう)を受ける家族連れら

新しい年を迎え、1年の無事を祈るご祈祷(きとう)を受ける家族連れら

 
 八雲神社は鎌倉時代の1193(建久4)年の創建。釜石総鎮守として800年以上の歴史を誇り、江戸時代に盛岡藩主となった南部家から与えられた御紋(向かい鶴)が今に受け継がれる。春の例祭(例祭日:4月17、18日)では、みこし渡御が行われてきたが、コロナ禍以降、祭典関係者の高齢化などもあり、行列は見送られている。
 
 新年の恒例行事としては、氏子神和会による元旦のみそぎ(水ごり)や大寒の裸参りもあったが、こちらも担い手不足などで休止中。同会の釜道浩さん(67)は「人材や資金不足などで神社関連の行事は以前のような形が難しい状況が続いている。新たに移り住んだ住民を含めたコミュニティーの再構築が課題。いつかまた“春”が訪れるよう期待したい」と話した。
 

雪降る中、初日の出に願い込め 湾内にのびる“光の道”に見物客から感嘆の声

 
雪模様となった元日早朝。両石港で初日の出を待つ人たち=午前7時前

雪模様となった元日早朝。両石港で初日の出を待つ人たち=午前7時前

 
 深夜から早朝にかけて急激に冷え込んだ釜石市内。日の出前は雪が降り続き、路面を白く染めるほどだったが、夜が明けるにつれ、水平線上では雲の隙間から赤みを帯びた空色が見え始めた。釜石市の日の出時刻は午前6時52分。市内でも数少ない海面から昇る朝日を拝める両石港では、国道沿いの空き地などに車を止め、日の出を待つ人の姿が多く見られた。
 
 今年も水平線上には雲がかかり、海面から直接顔を出す姿は拝めなかったが、時間の経過とともに雲の上からまばゆい光が湾内に差し込んだ。漁港の堤防、震災後かさ上げされた国道の路肩、さらに高い住宅地の一角と、思い思いの場所で御来光を拝み、その美しい光景を映像や写真に収めた。
 
雲の切れ間から太陽が顔を出し、まばゆい光が湾内に差し込む

雲の切れ間から太陽が顔を出し、まばゆい光が湾内に差し込む

 
美しい光景に笑顔を広げる見物客(左)。雲のかかり具合でさまざまな表情を見せる日の出風景(右)

美しい光景に笑顔を広げる見物客(左)。雲のかかり具合でさまざまな表情を見せる日の出風景(右)

 
 埼玉県から鵜住居町の実家に帰省した古川隆功さん(39)、慶雲さん(11)親子は、防潮堤の階段の踊り場で「きれいだねー。見られて良かったね」と笑顔を広げた。正月の帰省は3年ぶり。慶雲さんは小学校生活最後となる今年、「パソコンのタイピングを頑張りたい。勉強と空手を両立させ、空手の一段を取りたい」と目標を掲げた。実家は東日本大震災の津波で被災。現在は前の場所より内陸部に再建した自宅で両親が暮らす。隆功さんは「最近また地震が多いので心配。自分たち家族も2年前から、飲料水や非常食などの防災グッズを備えている。大きな災害のない1年になれば」と願い、「これから初詣して親戚とかにあいさつに行きたい」と久しぶりの再会を楽しみにした。
 

沿岸有数の初詣スポット 釜石大観音 市内外からの初詣客で三が日にぎわう

 
観音像の入り口で新年初のお参りをする人たち=元日午前、釜石大観音

観音像の入り口で新年初のお参りをする人たち=元日午前、釜石大観音

 
 大平町の釜石大観音は例年通り、おおみそか午後10時に開館。年越しの午前0時前後、初日の出時刻の午前7時前後、元日日中は午前10時から午後2時ごろにかけて参拝客がピークを迎えた。朝方の雪の影響はほとんどなく、日の出の時間帯は午前6時ごろから客が一気に増え始め、市営プール前の臨時駐車場まで車両で埋まった。正月三が日の参拝者数は計約7800人。
 
 県内各地のほか、県外から帰省した人たちが地元の家族と一緒に参拝に訪れる姿が多く、中には市内で働く外国人のグループも。幅広い年代が足を運び、それぞれの願いを胸に観音様に手を合わせた。参拝を終えると、おみくじを引いたり、縁起物の熊手や破魔矢、各種お守り、お札を買い求める人たちで境内はにぎわいを見せた。各所で記念写真を撮る人たちも多く、新しい年への期待感を高めた。
 
高さ48.5メートルの大観音。胸元には釜石湾を一望できる展望台がある(右)。浄土橋から観音像を見上げる家族連れ(左)

高さ48.5メートルの大観音。胸元には釜石湾を一望できる展望台がある(右)。浄土橋から観音像を見上げる家族連れ(左)

 
「良き年に…」。拝礼し祈りをささげる参拝客

「良き年に…」。拝礼し祈りをささげる参拝客

 
釜石大観音は2016年に「恋人の聖地」に選ばれた。ハート型のモニュメントは人気の記念撮影スポット

釜石大観音は2016年に「恋人の聖地」に選ばれた。ハート型のモニュメントは人気の記念撮影スポット

 
 大船渡市の嶋鈴子さん(71)は娘や孫ら6人で参拝。昨年は同市で大規模山林火災が発生。クマの出没も多く、心落ち着かない日々が続いた。「(火災で)浜関係の人たちは水揚げが減るなど大変な思いをしている。今年は被災した人たちの暮らしが少しでも良くなればいい」と心を寄せる。自身は今年「年女」。えとの“うま”にかけ、「あちこち飛び回って元気に過ごせれば。旅行にも行きたい」と笑った。孫の金野幸歩さん(21)は仙台市から帰省した。「ばあばのおいしいご飯が食べられるのと、なかなか会えない親戚と話をするのが楽しい」と正月休みを満喫。昨年、保育士となり、今年は社会人2年目に入る。「まずは病気にかからないように…。仕事では自分のやりたいことに挑戦できれば。子ども心を忘れず、寄り添える保育士になりたい」と理想を描いた。
 
 東京都から宮古市の実家に帰省した会社員の男性(19)は、家族と大観音に初詣。おみくじで「大吉」を引き当て、幸先の良い新年のスタートを切った。社会人1年目の昨年は、施工管理技士などの資格を取得し、公私ともに充実。「今年も右肩上がりで生活できれば」と順風満帆な1年に期待する。20歳を迎える年でもあることから、「今までお世話になった人たちに恩返しができれば。感謝を伝えたい」と思いを込めた。
 
おみくじ、お守りなどの販売コーナー、キッチンカーの出店で境内は終日、にぎわいを見せた

おみくじ、お守りなどの販売コーナー、キッチンカーの出店で境内は終日、にぎわいを見せた

 
 境内にはキッチンカーなど飲食の5店が出店した。厳しい寒さの中、温かいコーヒー販売で人気を集めたのは、釜石ではおなじみの移動販売車「HAPPIECE COFFEE(ハピスコーヒー)」。店主の岩鼻伸介さん(48)は今年3月、釜石大観音仲見世通りの空き物件を利用し固定店舗を開く予定で、現在、店内の改装など開店準備を進めている。新店舗は、2024年に発生した能登半島地震の被災地に通い続ける岩鼻さんが継続支援のために構想。能登と釜石をオンラインでつなぎ、コーヒーの入れ方をレクチャーしたり、両地域の住民が交流できるような場として整備する。
 
釜石大観音仲見世通りに新店舗を構える予定のハピスコーヒー店主、岩鼻伸介さん(右)

釜石大観音仲見世通りに新店舗を構える予定のハピスコーヒー店主、岩鼻伸介さん(右)

 
 「能登と釜石の架け橋になる…」。発災から2年となった元日、新たな挑戦に意欲をみなぎらせた岩鼻さん。「コーヒー好きの方に楽しんでもらえるような“とがった”店にしたい。ワクワクしながら待っていてください!」。釜石発のフェアトレードコーヒー専門店に期待が高まる。

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釜石新聞News 2025年プレーバック<その2>

 別れ、積み重ねる歩み、そして新しい挑戦-。主要な出来事を振り返る中で、「入り切らなかったけど、どうしても外せない」場面もあった。静かに、この1年を支えてきた出来事を写真でたどる。
 

惜しまれた別れ

 
 居酒屋「お恵」の店主として釜石の飲食文化を支えてきた菊池悠子さんが12月、急逝した。86歳だった。名物飲み屋街「呑ん兵衛(のんべえ)横丁」でのれんを揺らし、豪快な笑い声とあたたかいもてなしで常連客らに親しまれた。東日本大震災を経験。横丁閉鎖後も市街地で店を営んできたが、持病の悪化などで6月に惜しまれつつ、のれんを下ろした。釜石飲食店組合の組合長を務め地域の飲食文化をけん引し、復興にも尽力したとして、10月に市勢功労者として表彰された。
 
常連客に「お恵さん」と呼ばれ親しまれた菊池悠子さん。左の写真は最終営業の6月25日に店先にのれんを出した菊池さん

常連客に「お恵さん」と呼ばれ親しまれた菊池悠子さん。左の写真は最終営業の6月25日に店先にのれんを出した菊池さん

 

節目を迎えた歩み

 
 釜石市の西の玄関口、道の駅釜石仙人峠は4月で開業10周年を迎えた。釜石自動車道のインターチェンジに隣接する施設は、地元名物の甲子柿や野菜、同市の特産品などを販売。人気の釜石ラーメンを提供する食堂もあり、食や観光の情報発信基地として機能する。和山牧場の管理、運営を担う一般社団法人栗橋地域振興社は創立70周年。牧場地内では肉牛の放牧のほか、風力発電事業が行われている。来年は更新された風車が運転開始予定。新たに養鶏農場も操業する見込みで、参入事業者と手を携えながら牧場の未来を創造する。
 

「開駅10周年」を迎えた道の駅釜石仙人峠。記念の大創業祭は多くの買い物客でにぎわった=4月27日

「開駅10周年」を迎えた道の駅釜石仙人峠。記念の大創業祭は多くの買い物客でにぎわった=4月27日

 

栗橋地域振興社の創立70周年記念式典で万歳三唱する出席者。記念事業で畜産業発展に貢献した先人の業績パネル(右下)を設置=9月28日

栗橋地域振興社の創立70周年記念式典で万歳三唱する出席者。記念事業で畜産業発展に貢献した先人の業績パネル(右下)を設置=9月28日

 

新たな挑戦、ここから

 
 エンターテインメントでまちを盛り上げようと、釜石市初のタレント養成所「C-Zero(シーゼロ)アカデミー」が4月に開校した。演技やダンスなど芸能活動に生かせる知識、技能を学ぶ基礎科に1期生23人が入校。月に8回程度、レッスンを重ねるほか、第一線で活躍する映画監督や演出家らの特別指導を受ける機会も得て、力を蓄積。ラジオドラマや短編映画の出演が決まるなど、夢実現への歩みを着実に前進させている。

 
釜石初のタレント養成所「C-Zeroアカデミー」の開校式に臨んだ第1期生、講師陣ら=4月20日

釜石初のタレント養成所「C-Zeroアカデミー」の開校式に臨んだ第1期生、講師陣ら=4月20日

 
第一線で活躍する演出家の特別指導を受け演技力に磨きをかける生徒ら=8月31日

第一線で活躍する演出家の特別指導を受け演技力に磨きをかける生徒ら=8月31日

 

まちを支える女性の姿

 
 医療、防災、商いの現場で奮闘する女性たちを取材した。命と向き合う新人看護師は、金沢医大が設けた奨学金制度「釜石枠」を利用して勉学に励んだ1期生。火災や災害から地域を守るため活動する消防団員は「準中型」免許を取得して、いざという時に発揮できる力を蓄える。移住者や子育て中の母親らが立ち上げた団体は、地域で愛された公園を新たな憩いの場として開放。女性たちの活躍が、まちに新たな風を吹き込んでいる。

 
患者に寄り添える看護師を目指す佐藤綺美さん。一つ一つ経験を積み重ねていく=5月

患者に寄り添える看護師を目指す佐藤綺美さん。一つ一つ経験を積み重ねていく=5月

 
消防車両の運転席から顔をのぞかせる小林真由美さん。消防団に入団し3年目となる=10月

消防車両の運転席から顔をのぞかせる小林真由美さん。消防団に入団し3年目となる=10月

 

遊び場、農園、カフェを併設する「ココイロこすもすファーム」を8月に開業した石塚佳那子さん=10月

遊び場、農園、カフェを併設する「ココイロこすもすファーム」を8月に開業した石塚佳那子さん=10月

 

受け継ぐ郷土芸能、つなぐ祭り文化

 
 釜石市平田の館山神社の例大祭では11年ぶりに祭り行列が繰り出した。2011年の東日本大震災で津波被害を受けた同地区。復興事業が完了したまちをみこしや神楽、虎舞団体が練り歩き、久しぶりのにぎわいに住民らが喜びの笑顔を広げた。今年は、各地の祭りで奉納される郷土芸能を次世代につなぐ取り組みも活発化した。少子高齢化で担い手不足が課題となる中、市が体験教室を初めて企画。釜石高生はゼミ活動で人材確保の方策を考えた。ゼミメンバーを中心とする生徒有志は虎舞で国際交流し、地域の伝統文化発信に一役買った。

 
11年ぶりに行われた館山神社(平田)例大祭のみこし渡御。担ぎ手たちが笑顔を見せた=5月11日

11年ぶりに行われた館山神社(平田)例大祭のみこし渡御。担ぎ手たちが笑顔を見せた=5月11日

 
郷土芸能の担い手育成を目指し初めて開かれた体験教室。松倉虎舞、太神楽が演舞を披露し、お囃子などを体験してもらった=8月11日

郷土芸能の担い手育成を目指し初めて開かれた体験教室。松倉虎舞、太神楽が演舞を披露し、お囃子などを体験してもらった=8月11日

 
郷土芸能伝承を考える釜石高ゼミの生徒を中心とした有志が釜石を訪れた外国人観光客に虎舞を披露した=10月10日

郷土芸能伝承を考える釜石高ゼミの生徒を中心とした有志が釜石を訪れた外国人観光客に虎舞を披露した=10月10日

 
■後記
 釜石新聞NewSをご覧いただいている皆様、本年のご愛読ありがとうございました。大きなニュースの陰で、確かに積み重ねられた一年の“輪郭”はいかがでしたか?思い返したり、会話のきっかけになりましたら幸いです。どうぞ穏やかな年末をお過ごしください。そして、新しい年が皆様にとって穏やかで希望に満ちた一年となりますように。

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釜石新聞News 2025年プレーバック<その1>

 2025年は戦後80年を迎え、多くの人が平和の尊さを見つめ直す年となった。全国同様、クマの出没や山火事、津波の脅威に脅かされ、防災への意識が改めて問われた。一方で「橋野鉄鉱山」の世界遺産登録10周年など明るい話題もあった。この1年を象徴する出来事を写真で振り返る。

戦後80年・世代超え伝い続ける

 
 太平洋戦争末期の1945年の7月と8月、釜石市は2度にわたり米英連合軍などの艦隊から艦砲射撃を受けた。終戦から80年の節目の今年、「釜石艦砲」の体験者から話を聞く機会が幾度もあった。一方で、戦禍を知る人たちは高齢となり、年々、体験談を聞くのは難しくなっている。そんな中、戦争の記憶をつなごうと、高校生がまちに残る戦跡を巡るツアーを企画し、小学生は永遠の平和を祈念し建立された女神像の塗り替え作業に協力。若い世代に「地域の歴史を伝え継ぐ」という気持ちが芽吹く。
 
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釜石小児童が参加し塗り直し作業が行われた薬師公園の「平和女神像」=4月28日

 
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防空壕跡を案内する高校生佐藤凛汰朗さん(左)と中澤大河さん=7月21日

 
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体験者や高校生らによる討論会。戦争の悲惨さを共有し、平和を誓った=8月3日

 

明治日本の産業革命遺産 世界遺産登録10周年

 
 釜石市の「橋野鉄鉱山」を含む明治日本の産業革命遺産(8県11市23資産)は、世界文化遺産登録から10周年を迎えた。市内では登録が決まった7月を中心に各種記念行事が開催された。釜石での鉄づくりの成功は日本の近代化を急速に推し進める原動力となった。今年は“近代製鉄発祥の地”釜石の誇りを再認識し、橋野鉄鉱山の世界遺産価値を改めて感じる年となった。
 
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世界遺産登録10周年記念シンポジウムでは歴史作家の河合敦さんが講演した=7月12日

 
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現地の記念イベント「橋野鉄鉱山マルシェ」では地元の橋野鹿踊りが10周年をお祝い=7月13日

 
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23構成資産のガイドが初めて釜石で研修。釜石観光ガイド会が橋野鉄鉱山を案内した=10月23日

 

大船渡市山林火災後方支援

 
 2月下旬に発生した大船渡市の山林火災は平成以降、国内最大規模の被害となり、全国から駆け付けた緊急消防援助隊が連日、消火活動にあたった。釜石市は新潟、茨城、栃木3県の消防隊の宿営地として、鵜住居町の市民体育館を提供。24時間体制で火災現場に向かう隊員らを支えた。避難所運営の応援として市職員も派遣。市民らも義援金募金活動などを行い、被災者に心を寄せた。
 
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約500人の隊員が体育館で寝泊まりしながら交代で現場に出動した=3月3日

 
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釜石中の生徒が感謝を込めて寄せ書きした横断幕。緊急消防援助隊に贈った=3月7日

 
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「困っている人の力に」。市内の児童生徒が募金活動を展開し、思いを託す=5月21日

 

クマ出没続く…市初の緊急銃猟も

 
 岩手県内全域に「ツキノワグマの出没に関する警報」が発表される中、釜石市内でも出没の目撃情報は寄せられ、農作物や人身への被害が懸念されるため注意が必要だ。今年9月に鳥獣保護法が改正され、人の生活圏にクマなどが出没した場合、市町村判断での発砲を可能とする「緊急銃猟」の制度が始まった。11月26日には市街地に長時間居座ったクマ1頭を「緊急銃猟」で駆除した。市内では初めての実施で、県内では2例目となった。
 
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釜石市中心部に出没したクマ。警戒する警察官とのにらみ合いが長時間続き、緊急銃猟で駆除された=11月26日

 

津波警報、初の後発地震注意情報「備えを」

 
 今年、本県沿岸には津波注意報や警報の発表が相次いだ。7月にはロシア・カムチャツカ半島東方沖を震源とする巨大地震で日本の太平洋沿岸などに津波警報、注意報が発表された。避難所が開設された鵜住居小・釜石東中では、今年1月に自主防災組織を立ち上げた釜石東中の生徒らが避難所運営で大きな力を発揮した。12月8日深夜に発生した青森県東方沖を震源とする地震では釜石市で震度4を観測。津波警報が発表された。気象庁などはその後1週間、初の「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表し、日頃の備えの再確認を呼びかけた。
 
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カムチャツカ半島地震による津波警報発表で避難所が開設された釜石東中では、夏休み中の部活動で登校していた生徒らが避難所運営に尽力した=7月30日午前

 
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青森県東方沖地震による津波警報発表で避難所が開設された鵜住居小・釜石東中体育館には多くの地元住民が避難した=12月9日未明

 
■後記
 釜石新聞NewSをご覧いただいている皆様、ご愛読ありがとうございます。今年のまちの話題を振り返り、印象深かったものはありましたか?明日は「その2」として、釜石の2025年をさまざまな視点で振り返ります。

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街照らす冬灯り 釜石・青葉通りでイルミネーション 若手事業者が企画「笑顔に」

星形のオブジェがきらめく光のトンネルを進む子どもたち

星形のオブジェがきらめく光のトンネルを進む子どもたち

 
 冬のまちを彩るイルミネーションイベント「かまいし冬灯り」が11日夕、釜石市大町の青葉通りで始まった。「まちを明るく、人を笑顔に」と願いを込め、地元の若者有志が初めて企画。家庭や事業所など市内に眠る明かり(電飾)を集め、高校生らボランティアの力も借りて作り上げられた光の演出が道行く人の心を温めている。
 
 青葉通り緑地帯(ホテルクラウンヒルズ釜石~青葉ビル前)の花壇や樹木が青やピンク、黄色などカラフルに輝く明かりで彩られている。巨大なハートのオブジェや、星形の電飾が施された光のトンネルなども設置。トナカイや雪だるま、雪の結晶をかたどったオブジェを集めたフォトスポットもある。
 
あたたかな光で照らすハートのオブジェ

あたたかな光で照らすハートのオブジェ

 
ツリー、雪だるま、雪の結晶…光のオブジェが集合

ツリー、雪だるま、雪の結晶…光のオブジェが集合

 
クリスマスシーズンを盛り上げるオブジェやメッセージ

クリスマスシーズンを盛り上げるオブジェやメッセージ

 
 初日に現地で点灯式を実施。関係者がボタンを押すと電飾が一斉にともり、集まった親子連れらが「うわぁ~」「かわいいー」などと歓声を上げた。
 
 近くに住む小学生川村奏音(そら)さん(9)は「めちゃくちゃ、きれい」と瞳を輝かせた。母未樹さん(47)は「この場所で、この規模のイルミネーションは初めて見る。まちが明るくなっていい」と頬を緩めた。
 
釜石の冬の夜を静かに彩るイルミネーション

釜石の冬の夜を静かに彩るイルミネーション

 
 イベントは、30代の若手事業者ら5人を中心とする「かまいし灯り実行委員会」が主催。人口減少が進むまちの現状に寂しさを覚えながらも「何とかして変えたい。にぎわいを取り戻そう」と熱い思いを共有する。
 
「釜石を盛り上げたい」。かまいし灯り実行委のメンバー

「釜石を盛り上げたい」。かまいし灯り実行委のメンバー

 
 11月に始動し準備期間や資金などは限られる中、思いに賛同した地元の企業や団体、市が電飾などの資材、装飾場所の提供などで協力。SNSなどで情報を発信し、設置作業では高校生や住民の手も借りた。
 
 代表で美容師の三浦愛美さん(31)は「釜石を明るく、あたたかくしたい。この明かりが暮らす人、帰ってくる人、訪れる人の心を照らすことができたらいい」と目を細める。発案者でもあり、数年前からあたためていた企画が実現し、「やりたいことができるまちだと、子どもたちの希望になれたらうれしい」とも。来年以降も継続するつもりで、「未来につなぐ一歩になった」とうなずいた。
 
青葉通りを彩るイルミネーション「かまいし冬灯り」

青葉通りを彩るイルミネーション「かまいし冬灯り」

 
 来年1月12日まで。午後4時半~翌午前0時に点灯する。12月27日には屋台やハンドベル演奏などを楽しめる催しを予定。期間中にはインスタグラムを活用したフォトコンテストも行う。詳しくは、インスタの実行委公式アカウント(https://www.instagram.com/kamaishi.akari.project/ )へ。

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受け継ごう!地域の食文化 新巻きザケづくりを体験 釜石小児童、おいしさ心待ち

さばいて水洗いしたサケに塩を擦り込む釜石小の児童

さばいて水洗いしたサケに塩を擦り込む釜石小の児童

 
 釜石小(五安城正敏校長、児童66人)の5、6年生約20人が4日、釜石市平田の岩手県水産技術センターで新巻きザケ作りを体験した。ほとんどの児童が魚をさばくのは初めてだったが、同センター利用加工部の宮田小百合部長らから手ほどきを受け楽しそうに作業。食したことのある子も少なく、味わいを想像しながら地域の食文化に触れた。
 
 新巻きザケは、えらや内臓を取り除いて塩漬けにし、寒風にさらして熟成させる北国の伝統的な保存食。釜石の隣町「大槌町が発祥と言われている」と宮田部長が説明した。この日、用意されたのは北海道産のサケ。使われるのは雄が多いことや、サケの種類や特徴についても解説を加えた。
 
魚をさばく講師の手元を見つめる子どもたち

魚をさばく講師の手元を見つめる子どもたち

 
「わ~」「おー」「へ~」とさまざまな表情を見せる児童

「わ~」「おー」「へ~」とさまざまな表情を見せる児童

 
 宮田部長が魚のさばき方を実演した後、いよいよ児童が挑戦。サケを1本ずつ選び、包丁を手にえら、内臓を丁寧に取り除いた。下処理を終えたら、水で身をしっかり洗浄。保存食として役目を発揮してもらえるよう、隅々まで丁寧に塩を擦り込んだ。
 
 「大きいのがいいよね」。サケを選んで、重さを体感

「大きいのがいいよね」。サケを選んで、重さを体感

 
講師に教わりながら魚をさばく子を友達が見守る

講師に教わりながら魚をさばく子を友達が見守る

 
児童はそれぞれ魚をさばき、水で洗う作業に取り組んだ

児童はそれぞれ魚をさばき、水で洗う作業に取り組んだ

 
サケに塩をたっぷり擦り込む児童。作業を終え「イエーイ」

サケに塩をたっぷり擦り込む児童。作業を終え「イエーイ」

 
 作業には岩手大学釜石キャンパスで学ぶ農学部食料生産環境学科水産システム学コースの学生、特任専門職員らが協力。「この三角形がサケの心臓だよ」などと知識も伝え、児童らはサケの生態に関心を深めた。
 
子どもらの活動を岩手大釜石キャンパスの学生がサポート

子どもらの活動を岩手大釜石キャンパスの学生がサポート

 
 6年の金澤花怜さんは「魚をさばくのは初めて。えらを取るのが難しかった。力が必要で大変だったけど楽しかった。(新巻きザケを)食べたことがないけど、おいしくできたらいい」と、仕上がりを心待ちにした。
 
 5年生は今年度、総合的な学習の時間を活用し、「鉄のまち」「ラグビーのまち」など地域の魅力に理解を深める。今回の新巻ザケ作りは「魚のまち」に関する活動。秋サケの不漁について学んだ後の体験に、佐々木恵太さんは「昔からの伝統を知ることができた。スーパーで売られているのを見たことがあったけど、一から作ると大変だと思った。自分達が食べるものを作ることができてよかった」と喜んだ。
 
地域の食文化に触れられる新巻きザケ作り体験

地域の食文化に触れられる新巻きザケ作り体験

 
 宮田部長は「新巻きザケは大槌発祥の伝統保存食。このおいしくなる技法を子どもたちに受け継いでもらいたい。そして地域にサケが戻ってきたら」と願いを込める。児童の学習をサポートしてきた岩大釜石キャンパス特任専門職員の齋藤孝信さんも「釜石近海の環境が変わっていて、サケが採れなくなった。今では貴重品。おいしく味わってほしい」と望んだ。
 
塩抜きや天日干しは学生が担当。釜石小児童が作ったサケも仲間入り

塩抜きや天日干しは学生が担当。釜石小児童が作ったサケも仲間入り

 
 この後、さらに塩漬けし5日後に水洗いして塩抜きをする。それから1週間ほど寒風にさらして乾かすと出来上がり。この作業は釜石キャンパスの学生らが担当する。完成したものは終業式までに釜石小に届けられ、児童が各家庭に持ち帰るという。

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深夜の強い揺れに恐怖 青森県東方沖地震 釜石で震度4、津波20センチ観測 一時369人が避難

津波警報発表で、避難所が開設されている鵜住居小・釜石東中体育館に急ぐ地元住民ら=9日午前0時

津波警報発表で、避難所が開設されている鵜住居小・釜石東中体育館に急ぐ地元住民ら=9日午前0時

 
 8日午後11時15分ごろ発生した青森県東方沖を震源とするマグニチュード7.5の地震で、北海道から福島県にかけての沿岸に津波警報が発表された。警報は9日午前2時45分に注意報に切り替えられ警戒が続いたが、同日午前6時20分に全て解除された。この地震で釜石市では震度4を観測、釜石港では20センチの津波が観測された。気象庁と内閣府は同日午前2時に「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表。今後1週間、日本海溝・千島海溝沿いでは巨大地震が発生する可能性があるとして、備えの確認など十分な注意を呼びかける。
 
写真上:鵜住居町根浜の高台から見下ろす大槌湾=9日未明。同下:避難所のテレビで情報収集する避難者ら(釜石東中校内)

写真上:鵜住居町根浜の高台から見下ろす大槌湾=9日未明。同下:避難所のテレビで情報収集する避難者ら(釜石東中校内)

 
 市は8日午後11時17分、同地震による津波注意報発表に伴い、災害警戒本部を対策本部に引き上げた。同23分、津波警報が発表された(本県沿岸最大予想3メートル)。市は学校体育館など9カ所に避難所を開設。その他の場所への避難を含め、最大で369人が避難した。9日午前6時20分、津波注意報解除と同時に避難指示も解除された。市は9日の一般ごみ収集を中止し、市立小中学校全校を臨時休校とした。同日午後4時現在、地震や津波による人的、物的被害は確認されていない。
 
 市の緊急避難場所、拠点避難所に指定されている鵜住居町の鵜住居小・釜石東中には、8日午後11時30分ごろ、市の拠点避難所担当の職員が駆け付け、地元住民らと体育館に避難所を開設した。避難者が続々と集まる中、大型ストーブや毛布で暖をとれるようにし、段ボールベッドやパーティションも設置して少しでも休めるようにした。同所には避難車両約120台が並び、体育館内には最大85人が身を寄せた。
 
鵜小・東中体育館前の受付で氏名などを記入する避難者

鵜小・東中体育館前の受付で氏名などを記入する避難者

 
体育館では大型ストーブや備蓄品の毛布で暖をとった

体育館では大型ストーブや備蓄品の毛布で暖をとった

 
鵜小・東中の校庭には避難車両が並んだ。車内で待機する人も

鵜小・東中の校庭には避難車両が並んだ。車内で待機する人も

 
 町内に暮らす女性親子は車で避難。東日本大震災津波で被災し、自宅を再建した母親(83)は「ちょこちょこ地震があったから(大きい地震も)予測はしていたが…。またかという感じ。もうたくさんだね」と、被害がないことと警報の早期解除を願った。つえをつく母親を介助しながら避難した長女(54)は「備えはしているつもりでも慌てますね」と避難完了で一息。今年7月のカムチャツカ半島沖地震で避難した時の気付きもあり、夜の防寒対策の備えを強化したという。夜の避難は「辺りの様子が分かりづらいし、最近はクマの出没もあるので、歩いての避難は怖い。迷わず車で来た」と話した。
 
 同町の双日食料水産で働くベトナム人女性ら18人は、日本人社員3人の迎えで工場近くのアパートから車で避難。レーティ・ランさん(28)は「寝る前の地震でびっくりした。怖いですね」と顔をこわばらせた。釜石生活は9年目。津波注意報や警報での避難は3~4回経験していて、「パスポートや銀行のカードなど大事なものに加え、食べ物や服も防災用にすぐ持ち出せるようにしている」と日頃の備えを示した。
 
体育館では市職員と住民らが協力し、段ボールベッドを組み立て。避難者が横になれるようにした

体育館では市職員と住民らが協力し、段ボールベッドを組み立て。避難者が横になれるようにした

 
避難者のプライバシー保護のためのパーティション(間仕切り)も組み立てた

避難者のプライバシー保護のためのパーティション(間仕切り)も組み立てた

 
 同地震では青森県八戸市で最大震度6強を観測。本県では軽米町、一戸町で震度5強を観測するなどし、各地で道路の陥没、建物外壁の落下、断水などの被害が出ている。観測された津波の最大は久慈港の70センチ。
 
 北海道・三陸沖後発地震注意情報は、今後1週間に約1%の確率でマグニチュード8以上の巨大地震が日本海溝、千島海溝沿いで発生する可能性があるとし、地震への備えを呼びかける。避難場所・避難経路、家族との連絡手段、家具の固定、非常食など備蓄品の「確認」を促す。特別な備えとして、「すぐに逃げられる態勢の維持」「非常用持ち出し品の常時携帯」も呼びかける。同注意情報は2022年の運用開始以来、初めての発表。北海道から千葉県にかけての182市町村を “防災対応を取るべき地域”として示している。