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スマホ・ゲーム利用の約束、親子で考えよう 釜石・白山小で情報モラル教室

インターネット利用について学ぶ白山小の児童と保護者

インターネット利用について学ぶ白山小の児童と保護者

 
 釜石市嬉石町の白山小(鈴木慎校長、児童33人)で7日、インターネットを正しく安全に使うための情報モラル教室が開かれた。スマートフォンやオンラインゲームなどインターネットを介した情報のやりとりが増える中、利用の仕方を親子で考える機会にしてもらおうと、授業参観日に合わせて実施。全校児童と保護者ら約60人が参加した。
 
 教室は、釜石市とソフトバンク(東京)が2020年に締結した地方創生に関する連携協定の一環で、釜石公民館事業として行われた。これまで、市内の3つの小学校で実施してきたが、白山小では初開催。他校では高学年児童が対象だが、同校ではスマホ所有の有無や学年、年齢にかかわらず「みんな何かしら触れている」うえ、国が推進する「GIGAスクール構想」で、児童1人に学習用のタブレット端末が1台ずつ配られていることもあり、使い始めの1年生にも学んでもらおうと全校児童を対象にした。
 
 講師は、同社の北海道・東北地域CSR部の鈴木利昭参与(64)。「小学生では高学年になると半数がスマホを持っている。最近は6~7割と増加傾向」と全国的な動向を紹介したうえで、参加者にスマホやゲーム機の所有、利用の時間帯を聞いた。白山小ではスマホ所有は半数ほどだが、ゲーム機はほぼ全員が持っていると意思表示。深夜2時くらいまで使っている子もいた。
 
SNSのリスクなどを解説した鈴木利昭参事(右上の写真)

SNSのリスクなどを解説した鈴木利昭参事(右上の写真)

 
クイズや質問に意思表示しながらネット利用を学ぶ児童ら

クイズや質問に意思表示しながらネット利用を学ぶ児童ら

 
 ネットの世界で起こることすべてが自分のせきにん―。「交通ルールがあるようにネットにもルールがあり、守るから安全。ただ、ネットの言葉は難しいものが多いから、無理せず分かること、できることから始めて」と鈴木参与。「簡単で便利、そして無料。使う人が多いから、トラブルも多い」と話した上で、交流サイト(SNS)を取り上げて使い方や注意点を解説した。
 
 事例に挙げたのは「LINE(ライン)」でのやりとり。会話でよくないところを考えてもらい、▽急がず、きちんと伝える(文字だけで伝えようとすると誤解が生じることも。絵文字を使ったり工夫する)▽守ろう、時間!(長時間は迷惑になることも。相手がいることを忘れない)▽やめよう!人を傷つける発信(ネットに書き込んだ言葉は良いことも悪いことも一生消えないと思って。発信する前に読み返す。見る、受け取る相手の気持ちを考える)―との守ってほしいルールを伝えた。
 
児童も保護者も講師の話にしっかりと耳を傾ける

児童も保護者も講師の話にしっかりと耳を傾ける

 
 また、ネットにひそむ危険性も説明。手軽に世界とつながり便利な反面、顔が見えないことで怖い面もあるとし、他人が見ることを考えて写真の位置情報や、個人を特定できるような写真は投稿しないよう強調した。災害発生など非常時にデマが流れたり、うそや思い込みの話題も多いとし、見極めの大切さや大人への相談の必要性を指摘。より正しく楽しく使うため、「1日に○時間だけにするなど家族でルールを決めてほしい」と呼び掛けた。
 
 終わりに、親子で「スマホデビュー検定」に挑戦。オンラインゲーム中にしてはいけない行動や、「スマホ依存(スマホの使用がやめられなくなってしまう状態)」にならないよう気を付けることなど、使い方を振り返ったり、話し合いながら知識を深めた。
 
「スマホデビュー検定」に挑戦する親子

「スマホデビュー検定」に挑戦する親子

 
正しい?間違っている?問いに向ける視線は真剣

正しい?間違っている?問いに向ける視線は真剣

 
 小山琉世さん(6年)は「知らない人とつながってしまうのが怖いから、オンラインゲームはやっていない。スマホを持つようになったら気を付けて使いたい」と話し、妹の結凪さん(4年)もうなずいた。父親の純平さん(36)は「うちは厳しい方」と言うが、「中学生になったらスマホを」と思案中。「子どもたちを信頼しているけど」と母親の美紀子さん(36)と顔を合わせ、「親が口うるさく言うことを分かってもらえただろう」と、教室の開催を歓迎した。「ネットは自己責任」とは言え、子どものことはやはり親に責任があるとの考えで、「親も一緒に学んで理解して使えば、子どもも正しく安全に使ってくれるだろう」と話した。
 
 鈴木校長は「危険にあってから知るのでは遅い。今の利用の仕方を見直す機会に。ルールづくりに親子で取り組んでほしい」と求めた。
 
楽しそうに話し合いながら情報モラルについて学んだ

楽しそうに話し合いながら情報モラルについて学んだ

 
「水、くださーい」。力を合わせたプール掃除も楽しそう

「水、くださーい」。力を合わせたプール掃除も楽しそう

 
 親子で学習した後は、プール清掃でも協力。大変なことも「一緒に楽しく」取り組んで、子どもたちの成長を見守り、支えていく。

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土砂災害を知る!釜石・甲子中、工事現場見学 「地域の守り手に」岩手県沿岸振興局、期待込め

工事現場で活用されるドローンの操作を体験する生徒ら

工事現場で活用されるドローンの操作を体験する生徒ら

 
 釜石市甲子町の甲子中(山蔭深思校長、生徒112人)の2年生39人は6日、地元で進められている砂防工事現場を見学し、防災対策や建設業へ理解を深めた。土砂災害に関する出前授業もあり、座学と模型実験を行って有事に身を守る意識を高めた。
 
 建設業の担い手確保などを狙いに、岩手県沿岸広域振興局(土木部)が主催。沿岸振興局が手掛ける「大松砂防堰堤(えんてい)改築工事」(同町大松地内)の現場見学では、土木部の職員や工事を担う山長建設(大只越町)、建設機械レンタル会社イブキ産業(本社・宮古市)の社員らが講師を務め、「土石流などの災害から地域住民の命や財産を守るため」に進める工事の概要を説明した。
 
砂防工事の現場見学で建設業に理解を深めた甲子中2年生

砂防工事の現場見学で建設業に理解を深めた甲子中2年生

 
 もともとあった砂防堰堤は1961(昭和36)年に築造された石積みのもので、60年以上経ち老朽化していた。水漏れや土砂の堆積などにより崩壊し災害につながる恐れがあることから、2023年3月から補強する工事に着手。鋼製の型枠を設置し元の堰堤との間にコンクリートを流し込んで固める作業は数日前に終え、堤長約93メートル、堤高11.5メートルの堰堤本体が完成した。工期は今年8月末までで、今後は原状復旧などを進める。
 
もともとあった砂防堰堤を補強する形で改築工事を進めた

もともとあった砂防堰堤を補強する形で改築工事を進めた

 
砂防堰堤の上流部に堆積する土砂(手前)。大小さまざま

砂防堰堤の上流部に堆積する土砂(手前)。大小さまざま

 
 生徒は、工事の計画づくりや進捗(しんちょく)確認などに使うドローンや土砂を掘削するのに使うバックホーの操作に挑戦。安全教育として仮想現実(VR)で落下物の事故に遭う体験、高所作業車にも試乗した。講師らは「建設現場では未来の形という最新技術をうまく利用している」とアピール。その形を生徒たちがつないで「建設業の未来をつくってほしい」と思いを伝えていた。
 
現場の地形を把握するのに活躍するドローンの操作体験

現場の地形を把握するのに活躍するドローンの操作体験

 
高所作業車に乗って工事現場を見渡す生徒ら

高所作業車に乗って工事現場を見渡す生徒ら

 
VRでの事故体験は建設業の安全教育に活用する

VRでの事故体験は建設業の安全教育に活用する

 
 座学は学校で行い、土木部の職員が土砂災害の発生状況や土石流、地滑り、崖崩れの特徴を写真や映像で解説した。模型実験で生徒たちは、堰堤などの砂防施設が上流から流れる土砂を受け止め、勢いを弱める様子を見て、その役割を認識。安心感を得た生徒らに、講師は「必ず砂防堰堤があるわけではなく、あったとしても災害は想定を上回ることもある。大丈夫と思わず、逃げることを考えてほしい」と強調した。
 
模型を使った実験で、砂防施設の役割を学ぶ生徒

模型を使った実験で、砂防施設の役割を学ぶ生徒

 
土砂災害についても学び、身を守る意識を高めた

土砂災害についても学び、身を守る意識を高めた

 
 建設業についての説明も。座学の講師を務めた沿岸振興局河川港湾課技師の三浦賢太郎さん(26)は大槌町の出身で、小学6年生の時に経験した東日本大震災とそこからの復旧、復興の歩みを見つめ建設業や土木関係の仕事に興味を持った。「地元のために役立てる仕事をと選んだ道。自分たちが計画した事業が形になった時の喜びは大きい。中学生に建設業に触れてもらってうれしいし、きっかけは何でもいいので興味を持ってほしい」と望んだ。
 
 建設現場で働く姿を想像しながら、さまざまな体験活動に取り組んだと話すのは、小林悠人さん。「重機の操作は難しいけど、楽しかった。いろいろ覚えられるのもすごい。(建設業は)楽しさだけじゃない、どこかで事故が起きるかもしれない厳しさもあると感じた。知らなかった職業を知る機会になったのは良かった」と視野を広げた。
 
重機の操作は真剣に、高所作業車の試乗は楽しく

重機の操作は真剣に、高所作業車の試乗は楽しく

 
工事関係者と触れ合い笑顔を見せる生徒たち

工事関係者と触れ合い笑顔を見せる生徒たち

 
 佐々木ひよりさんは「災害があったとしても生きていられるのは、こうした構造物をつくる活動のおかげで、感謝しながら生活したい。地域のことを考えて仕事をしていることが分かった。災害への備えも大事だと改めて感じた。防災マップを確認したり、家族が別々の場所にいた時の避難とか対策を考えてみる」とうなずいた。
 
 中高生ら若い世代に建設業界の魅力を伝えようと実施する出前授業や現場見学会は本年度、計6回予定する。沿岸振興局調整課の本間健一郎課長(技術特命参事)は「楽しみながら体験することで、一人でも多く興味を持ってもらい、将来の選択肢に考えてほしい。地域、地元の守り手になってもらえたら」と期待する。

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漬梅×しょうゆ×鶏肉 釜石産食材で新商品誕生 未利用資源活用へ4社がタッグ

「梅ぇ鶏(うめぇどり)プロジェクト」新商品発表会=6日、TETTO

「梅ぇ鶏(うめぇどり)プロジェクト」新商品発表会=6日、TETTO

 
 釜石市の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)の梅酒製造で出る「漬梅(つけうめ)」を活用した新商品が誕生した。漬梅ペーストとしょうゆで味付けした鶏肉の冷凍加工品で、その名も「むね肉の漬梅焼き」。同市で操業する食品加工の麻生三陸釜石工場(本社・神奈川県平塚市)、鶏肉生産加工販売のオヤマ(本社・一関市)、みそ、しょうゆ製造販売の藤勇醸造(釜石市)が協力して開発した。生産者と事業者の連携、SDGs(持続可能な開発目標)を意識した取り組みで、地域農畜産業の活性化、地元食材の発信につなげていく。
 
 「梅の日」の6日、同市大町の市民ホールTETTOで新商品の発表会が開かれ、市内飲食店、宿泊業者を含む関係者約50人が出席した。商品開発に関わった4社の代表と梅生産者がこれまでの経緯を説明。解凍して加熱した商品が振る舞われた。試食した人たちからは、肉のやわらかさに感激する声が。鼻から抜ける梅のさわやかな香りも好評だった。
 
新商品開発について話すプロジェクトメンバーら

新商品開発について話すプロジェクトメンバーら

 
新商品「むね肉の漬梅焼き」を試食する発表会の出席者ら

新商品「むね肉の漬梅焼き」を試食する発表会の出席者ら

 
 平治旅館(中妻町)の平松正浩代表(65)は「むね肉のパサつき感がなく食べやすい。梅の香りもあり、しょうゆとの風味のバランスもいい」と話し、「焼き鳥みたいに串に刺したり、提供の仕方も工夫すれば(旅館の食事にも)使えそう。客に『これが食べたい』と思わせるようなストーリー的アピールがあればなお良い」と発信力に期待した。
 
 原材料には、オヤマが釜石市の養鶏農場などで生産するブランド鶏「奥州いわいどり」が使われる。漬梅の種を取りペースト状にしたのは、数年前から研究を重ね、加工技術を確立してきた麻生。味付けには漬梅ペーストとともに、釜石市民なじみの味、藤勇のかけしょうゆが使われた。オヤマ独自の技術で“しっとりやわらか”な口当たりを実現。一口サイズの適度な薄さのカットで、火が通りやすく家庭でも消費しやすいよう配慮した。
 
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写真左:浜千鳥が販売する梅酒 同中:(上から)梅酒製造に使う地元産青梅、製造後の漬梅、麻生が加工した「漬梅ペースト」 同右:藤勇醸造の「かけしょうゆ」

 
解凍後、加熱した「むね肉の漬梅焼き」

解凍後、加熱した「むね肉の漬梅焼き」

 
 商品化に向け一番の課題だったのは梅のえぐみの解消。オヤマの開発チームが試行錯誤の末、ベストな味バランスにたどり着いた。同社の小山達也常務取締役は「鶏のイノシン酸、しょうゆのグルタミン酸、梅のクエン酸と3つの掛け合わせが、うまみの相乗効果を生み、まさに『最高傑作』ができた」と太鼓判。クエン酸には疲労回復、抗酸化作用による美肌効果があるとされ、高タンパク、低脂質の鶏むね肉とともに健康食材としてもアピール。「自由にアレンジしてもらい、飲食店や子ども食堂、学校給食など幅広く活用してもらえれば」と望んだ。
 
新商品を熱くPRするオヤマの小山達也常務取締役(左)

新商品を熱くPRするオヤマの小山達也常務取締役(左)

 
 浜千鳥は地元産青梅を使った梅酒製造のため、2010年に生産者からの一括集荷を開始。当初は1トン程度の集荷で、梅酒販売も夏限定だったが、14年に生産者らによる釜石地方梅栽培研究会(前川訓章会長)を立ち上げたことで栽培技術が向上。年に約2~3トン集まるようになり、通年販売も可能となった。生産拡大に伴い、会では梅酒製造後に廃棄されていた漬梅の活用策も模索してきた。これまでに県外業者への販売、地元ジェラート店での活用、ジャムやサイダーの商品化が実現しているが、継続的な廃棄量ゼロには至っていなかった。
 
釜石地方梅栽培研究会の青梅集荷会=昨年6月、栗林町

釜石地方梅栽培研究会の青梅集荷会=昨年6月、栗林町

 
 会の事務局を務める浜千鳥の奥村康太郎醸造部長は、「なかなか利活用が進まなかった」漬梅の新商品開発について、「オヤマさんの技術の結集で、すごくおいしい商品に仕上がった。梅の香りが後からフワッとくる」と絶賛。オヤマの養鶏農場は栗林町にあり、同町には梅生産者も多いことから、「業種の違うものが同じ地区でコラボできたのは喜ばしい。釜石の農畜産物の新たな連携の形として、今後にも期待したい」と話した。
 
 釜石市は地形的に広い農地の確保が難しく、耕地面積は市の総面積の1.7%。23年産の農業産出額は1億5千万円で、県内最下位となっている。畜産業を含む課題解決に乗り出す市は、収益性の高い農畜産物の生産、地産地消の推進を掲げ、他産地との差別化、市内での購入機会増、事業者による利活用促進を図る。今回の新商品開発もそうした取り組みの一環。市の声掛けにオヤマなどが賛同し、昨年12月にプロジェクトが発足。約半年という短期間で商品販売にこぎ着けた。
 
新商品の試食に先立ち、釜石市の農畜産業の現状と課題解決への取り組みが説明された

新商品の試食に先立ち、釜石市の農畜産業の現状と課題解決への取り組みが説明された

 
 「むね肉の漬梅焼き」は内容量300グラムで、希望小売価格600円。店頭販売は道の駅釜石仙人峠、かまいし特産店(シープラザ釜石内)で実施。通信販売はオヤマのネットショップ「奥州いわいネット」で購入可能。今後、同市のふるさと納税の返礼品としても活用される予定。

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今週末は釜石・甲子「陽子の庭」へ! 公開10年目 バラが織りなす色彩の競演に来場者感嘆

美しく咲き誇るバラが来場者を迎える「陽子の庭」=5日、甲子町洞泉

美しく咲き誇るバラが来場者を迎える「陽子の庭」=5日、甲子町洞泉

 
 赤、黄、紫、ピンク、オレンジ…。目にも鮮やかな花色で今、訪れる人たちを魅了しているのは、釜石市甲子町洞泉の高台にある私設ガーデン「陽子の庭」。バラの開花時期に合わせた一般公開は今年で10年目を迎え、連日、市内外のファンが足を運んでいる。今年は花の開花が遅れたことから、当初予定の9日までの公開を1週間ほど延長する。所有者の菊池秀明さん(77)、陽子さん(78)夫妻は「週末にはさらに咲き進むと思う。ぜひご覧いただければ」と来場を呼び掛ける。
 
 菊池さん夫妻が開放している自宅周辺の庭は広さ約700坪。山の斜面を利用し、17年ほど前から夫婦2人で造り上げてきた。多種多様な樹木や花々、自然石などで彩られる園内は、傾斜に沿って設けられた小道を通って間近で植物を観賞できるのが魅力。エリアごとに日本庭園、イングリッシュガーデン、ロックガーデン…と趣の異なる風景が広がる。
 
 1年の中でも特に華やかなのが、多くのバラが開花するこの時期。今や同庭の象徴となったバラの競演は、訪れる人の心をつかんで離さない。庭造りを始めて4~5年後、陽子さんが植え始めたバラは、年々、種類や株数を増やし、今では約170種に及ぶ。中でも60本あるという“つるバラ”は、秀明さんが棚やアーチに這わせて造形。全体のバランスを考えながら、巻き直しやせん定を繰り返し、毎年見事な花のトンネルやタワーを造り上げている。
 
色とりどりの花が競演。園内はバラのいい香りが漂う

色とりどりの花が競演。園内はバラのいい香りが漂う

 
菊池秀明さん(右)が3種のつるバラを這わせた棚は上から見ても素敵

菊池秀明さん(右)が3種のつるバラを這わせた棚は上から見ても素敵

 
庭のシンボル「春風」のタワー(左)は今年、直径を2倍に。3~4日かけてつるを巻き直した。他のつるバラ(右)も咲き始めたばかり

庭のシンボル「春風」のタワー(左)は今年、直径を2倍に。3~4日かけてつるを巻き直した。他のつるバラ(右)も咲き始めたばかり

 
 一般公開は例年6月1日から10日間開催。近年は地球温暖化の影響もあってか、5月下旬の早咲き種の開花が1週間ほど早まる傾向にあったが、今年は逆に遅れ気味。いつもは6月5日ごろが見ごろだが、今年は同日で5割ほどの開花。「雨も多く、気温の低い日が続いたからかな。他でも今年は遅いと聞く」と秀明さん。公開後も曇りや雨の日が続いたが、気温の上昇とともに、徐々に開花が進んでいる。
 
5年前に設けたバラ専用のエリア。約90本が育つ

5年前に設けたバラ専用のエリア。約90本が育つ

 
(左上から時計回りに)パパ・メイアン、レディ・オブ・シャーロット、エグランタイン、ディスタント・ドラムズ

(左上から時計回りに)パパ・メイアン、レディ・オブ・シャーロット、エグランタイン、ディスタント・ドラムズ

 
 青空がのぞいた5日は、開花を待ちわびた人たちが足を運んだ。同市の佐々木聖子さん(71)、佐藤まさ子さん(76)は「旅行気分で毎年一緒に来る。癒やされています」と笑顔満開。色とりどりの形や大きさの異なる花の前で、その都度足を止め、美しい花姿をスマホカメラに収めた。2人とも花が好きで、自宅で育てている。「これだけの庭を維持するには日々の手入れが欠かせない。せん定、草取り、施肥、病害虫防除…。(菊池夫妻2人での作業は)本当にすごいですね」と感心する佐々木さん。自宅で数本のバラを育てる佐藤さんは「つぼみが膨らんできて開花しようという時が一番好き。テンションが上がる」とバラ栽培の醍醐味に共感。「身近にこういう場所があるのは非常にうれしい。ぜひ続けてほしい」と声をそろえた。
 
訪れた人たちはきれいなバラにうっとり。身も心も癒やされる

訪れた人たちはきれいなバラにうっとり。身も心も癒やされる

 
 菊池さん夫妻の庭造りは、秀明さんの定年退職を機に始まった。後に、高齢で自宅庭の管理が難しくなった市民などから育ててきた植物を託されるように…。東日本大震災の被災者からも庭石の活用を望まれ、園内の造成を続けてきた結果、現在の規模にまで拡大した。「まさかこんなに大きくなるとは(思いもしなかった)。今は亡き市内の庭愛好家の方々の思いも詰まった庭。お父さん(秀明さん)はそういう皆さんの気持ちもつなぎたかったんだと思う」と陽子さん。そんな2人も年齢を重ね、庭の維持管理の負担は年々増している。今年は友人、知人ら10人ほどがボランティアで草取りを手伝ってくれた。「最初は2人でもできていたが、年とともに作業量も落ちてくる。皆さんの助けがあって成り立っている」と話す。
 
庭を造ってきた菊池秀明さん、陽子さん(右)夫妻。10年目の公開に感慨もひとしお

庭を造ってきた菊池秀明さん、陽子さん(右)夫妻。10年目の公開に感慨もひとしお

 
 昨年は公開期間中、約800人が訪れた。このうち、初めて足を運んだという人は約300人。リピーターは当初に比べ大幅に増えた。「10回までは…」と一般公開を続けてきた秀明さん。来年以降について聞くと、「毎年楽しみにしてくださる方が多いので、開催期間を短縮するなどして無理のない形でできれば」と今後のあり方を考える。
 
 園内では7、8の両日、合唱やバンド演奏などのイベントも予定される。庭の公開時間は午前9時から午後4時まで。庭の入り口に設ける受付は9日までで、以降は基本的に安全に注意してもらっての自由見学とする。場所は、市街地から向かう場合は国道283号を釜石鉱山方面に西進。内陸からは釜石自動車道を釜石仙人峠インターチェンジで降り、同方向へ。道の駅釜石仙人峠を通過して少し行くと、右手に誘導看板が見える。
 
◇7、8日のイベント情報
7日(土)11時~「わっか」文化箏中村ひろみ箏教室演奏 13時~「甲子歌う会」合唱
8日(日)11時~、13時~「釜石ベンチャーズ」バンド演奏
 
園内にはさまざまな草木が植えられている。花が咲いたような葉姿が人気のヤナギの一種も

園内にはさまざまな草木が植えられている。花が咲いたような葉姿が人気のヤナギの一種も

 
園内の最も高い場所には「見晴らし台」も。釜石道や遠くの山並みを一望できる

園内の最も高い場所には「見晴らし台」も。釜石道や遠くの山並みを一望できる

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「第8回かまいし百円市」の出店者を募集します

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釜石まちづくり(株)では、2025年7月26日(土)「第8回かまいし百円市」 (以下、百円市) を開催します。販売商品を全て100円とするフリーマーケットやバザーのような“100円均一フリマ”といったイメージです。

 

【例えばこのような商品の出品を想定しています!】
リユース可能な子供用品、持て余してしまったお歳暮や引き出物の中身、まだまだ使えるおもちゃ、ダブったガチャガチャ、ちょっとしたコレクションアイテム、端数が残ってしまったパック商品、かつての趣味の名残、ハンドメイド商品、お菓子などの食品・・・などなど、価格を100円として頂ければ、一部の取扱い禁止商品以外は何でもOKです。

 

均一価格のため販売益は限定されるかもしれませんが、以下のような点に意義を見出してくださるご出店者様を募集いたします。
・リユースの促進による社会活動的意義
・みんなで出店する楽しさ
・街の賑わいの場づくり
・ハンドメイド作品などの販売機会 など

 

各種サークル活動などのグループをはじめ、社会福祉法人やNPO等の社会活動団体、町内会やクラブ・少年団活動等の地域活動の一環として、学校や幼稚園・PTAや保護者会の催しとしてなど、皆様のご出店をお待ちしております(個人での出店も可能です)。

開催概要

日時:2025年7月26日(土) 11:00~14:00
場所:釜石市民ホールTETTO・ホール前広場
主催:釜石まちづくり(株)
キャッチコピー:「100円握ってお宝探し!」
 

出店の基本情報

◎全ての商品を以下の価格で販売すること
・100円(税込)
◎下記の品数をご用意頂けること(多い分には大歓迎!)
・50個以上
◎「出店について」の要件を遵守頂けること
・参加可能枠を超えるご応募があった際は抽選とさせて頂きます
・チャリティ活動(売上は○○へ寄付、○○を支援、教育や社会福祉活動資金に充当)が伴う場合は、条件により別枠での出店が可能ですのでご相談下さい

出店について

◆物品の販売以外のサービスを商品として提供することはできません
(マッサージ、ヘアカット、診断、占いなど ※縁日等に類するものや主催者が要請したものは除く)
◆出店料は以下となります
・500円(税込)
◆出店スペースの広さは、幅2~2.5m×奥行1.5~2mを目安に調整させて頂きます
 また、販売台、シート、釣銭等は各自でご準備下さい(主催者による両替には限りがあります)
◆会場は屋外となりますので、各自で出店時の気候対策等をお願いします
◆駐車場は釜石大町駐車場をご利用ください(1時間毎100円 (入庫~30分まで無料))
◆ペット等を同伴しての出店は禁止です(介助犬等を除く)
◆火器の使用や発電機の持込みは禁止です

取扱い禁止商品

《以下の商品の取扱い及び取引は禁止といたします》
生鮮食品など衛生管理上好ましくない物、その場で調理提供する飲食品(キッチンカーを除く)、ペット等の生き物、偽造品や盗品など法律に抵触する商品、受発注や目録を介しての後日取引を前提とした商品、取扱い資格の必要な危険物や薬品(有資格者でも不可)、公序良俗に反する物、大量の火薬類、再販売やオークション等への出品を前提とした取引
 
※大量の酒類を取り扱う場合は事前にご相談ください
※この他、主催者が不適切と判断した商品については取扱いを中止頂く場合があります

出店の申し込み方法

出店に関しての各種事項(開催概要、基本条件、出店について、取扱い禁止商品)を必ずご確認・ご理解のうえ、下記の出店申込書を記入して釜石まちづくり(株)までお申込み下さい。
 
●釜石まちづくり(株)の社員によるご紹介やご案内をご希望の場合は、直接担当社員(菅原)まで
●それ以外の場合は、下記のいずれかの方法でご送付ください
・釜石まちづくり(株) FAX:<0193-27-8331>
・担当者メールアドレス:s-sugawara@kamaishi.co.jp

※FAXやメールでのお申込みが難しい場合は「釜石情報交流センター(釜石市大町1丁目1-10)」の受付にお越しいただき、出店申込希望の旨をお伝えください。

 
申し込み締切:2025年7月4日(金)
 
問合せ等については、釜石まちづくり(株) TEL<0193-22-3607>までお願いします。

出店概要&申込書

PDF版(1.1MB)
「第8回 かまいし百円市」の出店概要&申込書
 
Word版(272KB)
「第8回 かまいし百円市」の出店概要&申込書

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

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釜石のドンコ、最高~! 平田小5年生 さばいて食べて知る地魚の魅力 魚食推進&水産資源理解へ

児童たちがさばくのは「ドンコ」。口から飛び出た胃袋にもびっくり!左下黄丸は下あごに生える“ひげ”

児童たちがさばくのは「ドンコ」。口から飛び出た胃袋にもびっくり!左下黄丸は下あごに生える“ひげ”

 
 釜石市の平田小(佐守直人校長、児童142人)で5月30日、魚さばきを体験する教室が開かれた。同市地域おこし協力隊で魚食普及コーディネーターとして活動する清原拓磨さん(27)が講師を務める特別授業。5年生23人が三陸を代表する魚「ドンコ」(正式名称:チゴダラ)を自分たちでさばき、ドンコ汁(みそ汁)に調理して味わった。同校での同教室は昨年に続き2回目。
 
 家庭科の授業の一環として実施。この日は釜石沖で、かご漁で漁獲されたドンコ12本が用意された。講師の清原さんは最初にドンコの生態や体の特徴などを解説。児童らが興味を示す口から飛び出た袋について、「深い海から水揚げされることで(急激な水圧低下が起こり)体内の浮き袋が膨らみ、その影響で胃袋が出たもの」と説明した。あごの下に1本だけある“ひげ”は味やにおいを感じる触覚で、光がほとんど届かない深海で餌を探すのに役立っていることも教えた。
 
 調理は6班に分かれて実施。具材のネギ、ダイコン、豆腐を切って下準備した後、清原さんの指導を受けながらドンコをさばいた。包丁の背や専用器具でうろこをきれいに取り、腹を切り開いて内臓を取り出した。ドンコ汁の味の要、肝(きも=肝臓)は取り分け、緑の苦玉(胆のう)をつぶさないように取り除いた。きもと腹の中は水できれいに洗った。
 
腹を切り開いて内臓を取る。肝は取り分けてドンコ汁に使う

腹を切り開いて内臓を取る。肝は取り分けてドンコ汁に使う

 
尾から頭に向かって包丁を入れる。エラとあごの付け根ははさみで切る(写真左)。肝も刻んで準備万端(同右)

尾から頭に向かって包丁を入れる。エラとあごの付け根ははさみで切る(写真左)。肝も刻んで準備万端(同右)

 
内臓を取ったら腹の中を流水できれいに洗う

内臓を取ったら腹の中を流水できれいに洗う

 
 ドンコは頭と尾を落とし、身は人数分に切り分けた。頭はだしを取るのに使い、煮ている間はアク取りも。みそ、昆布だしで味を調えた後、ネギや豆腐、身などを投入。中火で軽く沸騰させながら煮た。「ドンコは身がやわらかいので、崩れないよう、沸騰させすぎずにやさしく煮るのがコツ」と清原さん。
 
頭と尾を切り落とし、身を人数分に切り分ける

頭と尾を切り落とし、身を人数分に切り分ける

 
ダイコンとドンコの頭、酒を入れて煮る。身は崩れやすいので最後に入れる

ダイコンとドンコの頭、酒を入れて煮る。身は崩れやすいので最後に入れる

 
 「魚をさばくのは初めて」という菊池陽葵(ひなた)さんは「お腹を切るところが難しかった。釜石の海にこういう魚がいるのはびっくり」と姿形にも興味津々。「魚は好きでよく食べるけど、ドンコ汁は初めてなのでどんな味か楽しみ」と試食を心待ちにした。父が漁師という佐々木藍里さんは「家でもやったことがある」と言うだけあって、「内臓を取ったりするのは結構できた」とにっこり。地元漁師らが取ってくれる魚を口にできるのは「うれしい」と話し、「いっぱい魚が取れるといい。お父さんといろいろな魚料理を作ってみたい」と目を輝かせた。
 
学校ボランティアの女性にサポートしてもらいながら味付け

学校ボランティアの女性にサポートしてもらいながら味付け

 
 児童らの様子を見守った担任の佐々木祐子教諭は「普段の家庭科の授業ではできない貴重な経験。魚が苦手な子も自分で作ったものはおいしく感じられたのではないか。こういう体験を通して、命を大事にいただく心が育まれ、好き嫌いもなくなれば」と期待した。
 
 講師の清原さんは「釜石の魚のおいしさを子どもたちに伝えたい」と、昨年度から市内小中学校で同様の教室を開催。昨年は2小学校、4中学校で開き、数種の魚のさばき方から調理までを教えてきた。「釜石に住んでいても地魚のおいしさを知らない子は多い。新鮮な魚で調理体験ができるのは釜石ならでは。少しでも思い出として刻まれれば」と清原さん。目下の夢は「全校制覇!」。今後の取り組みについても構想中で、「座学を含め、地元の魚、水産業にもっと目を向けてもらえるような仕掛けを考えたい」と意気込む。
 
みんなで協力して作った「ドンコ汁」完成! 最後まで頑張りました

みんなで協力して作った「ドンコ汁」完成! 最後まで頑張りました

 
大満足の味に笑顔満開! 「家でも作ってみたい」と話す児童も

大満足の味に笑顔満開! 「家でも作ってみたい」と話す児童も

 
 この日教材となった「ドンコ」は東北の太平洋側、主に三陸地方で食べられる。清原さんによると、水揚げ量に大きな変化はないが、特異な見た目や鮮度落ちの速さから一般消費者には敬遠されがちだという。「新鮮なドンコはにおいもない。ちゃんと調理することでおいしく食べられる」と“推し”の魚をアピールする。

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“にこ食”においで!多世代交流の子ども食堂 釜石・平田地区 地域結ぶ、笑顔つなぐ

平田にこにこ食堂でカレーライスを頬張る子ども

平田にこにこ食堂でカレーライスを頬張る子ども

 
 釜石市平田地区の子どもと高齢の住民らが集う「にこにこ食堂」が5月24日、上平田ニュータウン集会所で開かれた。同地区で100歳体操に取り組む「平田いきいきサークル」(藤澤静子代表、会員約30人)が主催する「子ども食堂」で、5回目となる今回は約40人が参加。お手玉を使ったゲームで遊んだり、食事を囲んでおしゃべりを楽しんだりと交流を深めた。
 
 子どもは平田小の児童を中心に13人が集まった。この日のメインメニューはカツカレーライスで、子どもには優しさという調味料を加えた「甘口」を用意。骨まで食べられるイワシの甘露煮、ワカメたっぷりのスープ、バナナなどが添えられ、大人も含めた参加者みんなのためバランスの取れたあたたかい食事を提供した。
 
おいしそうに頬張る子ども見つめて大人も笑顔に

おいしそうに頬張る子ども見つめて大人も笑顔に

 
 交流活動では、かごにお手玉を投げ入れる遊びで盛り上がった。はしゃぐ子どもたちの姿を年配者らは目じりを下げて見守り、会場は終始、和やかな雰囲気。塗り絵やジェスチャーゲーム、軽運動、合唱など多彩なプログラムを一緒に体験しながら楽しんだ。
 
子どもから高齢者まで一緒に玉入れを楽しむ

子どもから高齢者まで一緒に玉入れを楽しむ

 
塗り絵やお絵描きを楽しんだりゲームで交流したり

塗り絵やお絵描きを楽しんだりゲームで交流したり

 
幅広い年代が入り混じったジェスチャーゲーム

幅広い年代が入り混じったジェスチャーゲーム

 
 カレーライスをおいしそうに頬張る女子児童(2年)は「からいのが好き」と食を進めた。同じテーブルを囲む“おばあちゃん”に積極的に話しかけ、「いろんなことを話しながら食べるの、楽しい」とにっこり。タオルを使った玉入れが印象に残った様子で、普段とは違った遊びを知る機会になったと喜んだ。
 
 「素直に話してくれるからいい」「小さい子と一緒に食事するのがうれしい」と高齢の参加者たちは目を細めた。平田地区の老人クラブ「ニュー悠々会」の佐藤清会長(81)は「子どもたちから元気をもらえる。生き生きするね」と明るい笑顔。登下校時の児童の見守りや地域の安全活動に取り組む菊池重人さんは(83)は「地域に子どもは少なくなった。こうした交流で顔を合わせ、コミュニティーづくりを盛り上げていければいい」と期待した。
 
たくさんの笑顔が集った平田にこにこ食堂

たくさんの笑顔が集った平田にこにこ食堂

 
 釜石市内で子ども食堂の取り組みは2023年夏に始まった。2番目にスタートしたのが平田地区で、初回は24年3月に開設。全国的にも広がる子ども食堂は経済的な課題を抱える家庭の子ども支援という目的で設置されることも多いが、釜石では子どもの居場所づくりや地域住民同士の交流の場の提供などを目的に開設されている。
 
 平田地区の特徴は、地域住民でつくる団体の活動の一環という点。実施主体の同サークルでは週1回の体操のほか、月1回のサロン(食事会)活動を行っていて、サロン活動の数回を子ども食堂として世代間交流を楽しむ。サークルの役員らが中心になり、運営、食事を用意。食材や飲料水、帰りのおみやげなど市内の事業所から協力も得る。
 
地域住民が協力し運営。手作りのあたたかさを散りばめる

地域住民が協力し運営。手作りのあたたかさを散りばめる

 
高学年の児童が運営をサポートし交流活動を盛り上げる

高学年の児童が運営をサポートし交流活動を盛り上げる

 
 サークル代表の藤澤さん(83)は「最近は道で会うと、子どもたちから『にこ食のおばちゃん』と声を掛けられたり。互いの見守りにもなっているのかな」と手応えを感じている。一方で、子どもの参加は伸び悩み、大人は“リピーター”と同じ顔触れが多く、参加者の開拓が課題。今回は高学年の児童に交流活動のサポートをお願いし、より積極的な関わり合い方を試してみた。「支え合える居場所をつくっていくため」と、運営方法は現在進行形。次回は9月の開設を予定する。
 
子どもと年配者が食を囲む様子を見つめる藤澤静子さん

子どもと年配者が食を囲む様子を見つめる藤澤静子さん

 
子どもも大人も地域住民が集う「にこ食」はこれからも

子どもも大人も地域住民が集う「にこ食」はこれからも

 
 藤澤さんは回数を増やしたい考えだが、サークル役員の意見はそれぞれ。「ケンカしつつ、みんなで話し合えば、結果的にいい方にいく。それが今の形」と声がそろう。取り組みに協力する市の出先機関、平田地区生活応援センターの樋岡悦子所長は「運営メンバーは若い頃から何かを一緒に取り組んできた年代。無理のないよう、自分たちにできるペースで続けられる活動にしてほしい」と見守っている。

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釜石市内でも目撃多数 クマに注意 被害に遭わないための対策を! 環境整備も重要

釜石市内で目撃されているツキノワグマ¬(資料写真:三浦勉さん撮影、以下同)

釜石市内で目撃されているツキノワグマ(資料写真:三浦勉さん撮影、以下同)

 
 釜石市内では連日、ツキノワグマの目撃情報が相次いでいる。市に寄せられた4月、5月の目撃件数は前年同期を上回り、住宅地近くに長時間とどまる事例も。市内の目撃のピークは例年6月で、引き続き注意が必要だ。人身、物的被害に遭わないよう、自宅周辺の環境整備、入山時の装備など意識的な対策が求められる。
 
 市水産農林課によると、今年に入り同市に寄せられたクマの目撃件数は3月2件(前年同月0件)、4月29件(同6件)。5月は28日現在53件で、前年同月1カ月間の26件をすでに上回っている。4月24日には小佐野町の民家敷地から小佐野保育園園庭に侵入する1頭が確認されたほか、26日には中妻町の商業施設裏に迷い込んだ1頭が麻酔で捕獲される事例があった。5月21日には小佐野橋付近で木に登る1頭が確認され、わなを設置したものの捕獲には至らなかった。今のところ、人身被害はない。
 
 「同じ個体が何回も目撃されているケースもあり、一概に(増えていると)は言えないが、目撃が多くなる時期としては今年は早い印象」と同課。今の時期は山に餌となる木の実などがなく、クマは餌を求めて活発に動き回るが、これまでの情報では民家周辺で何かを食い荒らされた様子はないという。ただ、これからの時期は子グマが親離れし、新たな生活場所を求めて行動範囲を広げるため、人里への出没が増える可能性もある。
 
今年4月21日に橋野町青ノ木で見られたクルミの木に登るクマ

今年4月21日に橋野町青ノ木で見られたクルミの木に登るクマ

 
クマは川沿いの移動が多い傾向に。これからの時期は親離れした子グマの移動が活発になるので要注意 

クマは川沿いの移動が多い傾向に。これからの時期は親離れした子グマの移動が活発になるので要注意

 
 2024年度、同市に寄せられたクマ目撃情報は164件。人身被害はなかったが、空き家被害が1件確認された。昨秋は山のドングリやクルミ、クリなどの堅果類が豊作だったことで、凶作だった23年度に比べると9~11月の目撃情報は少なく、冬眠前に見られるカキの食害もほぼなかったという。
 
 鳥獣被害対策の3原則は①環境整備(寄せ付けない環境づくり)、②防除(農地などを柵や網で囲って侵入防止)、③駆除(個体を捕獲)。第一段階として、やぶや空き家の放置をなくし、家の周りに(クマが隠れられるような)陰となる場所をつくらない、クマの誘引物(生ごみ、ペットフード、果実、米ぬか…など)を侵入される恐れのある場所に置かない―などの対策が重要だ。
 
背丈の高い草木は刈り取り、見通しを確保。農地などには侵入を防ぐ柵・網を設置する対策を

背丈の高い草木は刈り取り、見通しを確保。農地などには侵入を防ぐ柵・網を設置する対策を

 
山に餌がないと人里に下りてくる頻度も高まる。十分な警戒を!

山に餌がないと人里に下りてくる頻度も高まる。十分な警戒を!

 
 この他、キャンプや登山、山菜・キノコ採りなどで山に入る際には①クマ鈴、笛、ラジオなど音の出るもの、クマ撃退スプレーを携帯する、②複数人で行動する、③クマの目撃情報や痕跡(ふん、爪痕)のある場所は避ける―など、被害に遭わないための装備、行動が必要だ。

 市水産農林課の清藤剛課長補佐(兼林業振興係長)は「市全域が民家のすぐ裏手に山があるような地形のため、どこに出没してもおかしくない状況。クマは川沿いに移動する傾向もあり、散歩やジョギングコースにしている人は十分な注意が必要。クマの行動が活発になる朝、夕の時間帯は特にも警戒し、目撃情報があった時は周辺に立ち入らないようにしてほしい」と呼び掛ける。

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困っている人の力に!大船渡林野火災の被災者支援へ かまいし絆会議の小中学生が募金

小野共市長(左)に募金を託す「かまいし絆会議」の生徒

小野共市長(左)に募金を託す「かまいし絆会議」の生徒

 
 大規模林野火災で被害に遭った大船渡市の被災者支援に役立ててもらおうと、釜石市の14小中学校(9小学校、5中学校)でつくる「かまいし絆会議」は昨年度末に各校で募金活動を展開。児童生徒約1700人、保護者らから41万2376円が集まった。日本赤十字社(日赤)を通じて現地に送ることにし、21日に代表者2人が日赤岩手県支部釜石市地区長を務める小野共市長を訪ね、寄せられた善意を託した。
 
 市役所を訪れたのは、絆会議会長の白野真心(まみ)さんと副会長の岡本あいるさん(ともに釜石中3年)。2人は「今、被災している人たちに何かできることはないかと考えた。少しでも生活の足しになれば。よろしくお願いします」と、活動で使った募金箱を目録代わりに小野市長に手渡した。
 
釜石市内の児童生徒の思いを届けた釜石中の生徒と教諭ら

釜石市内の児童生徒の思いを届けた釜石中の生徒と教諭ら

 
 小野市長は大船渡の林野火災の状況に触れ、「2月26日に発生し、4月7日に鎮火宣言が出るまで、41日間にわたる長い消火活動があった。3300ヘクタールを超える面積が焼失する、本当に大規模な火災だった。皆さんと同じ年代の小学生、中学生も被災されたと聞く」などと説明。「困っている人たちがいたら助けたいという、絆会議の皆さんのあたたかい気持ちが本当にうれしい。受け取った思いをしっかり届ける」と述べた。
 
 今回の活動は釜石中が発案し、各校が呼びかけに応えた。釜中では生徒会執行部が中心となり、3月7日から9日に校内で展開。9日が卒業式だったこともあり、卒業生の家族らも気持ちを寄せた。他校も同様に年度末だったことから、短期間で実施。同席した釜中の藤原幹伍教諭(生徒会執行部担当)が経緯を説明し、最終的な集計金額を数日前に聞いて白野さんや岡本さんと感激を共有したことも加えた。
 
小野市長らと懇談。募金活動の経緯や込めた思いを伝えた

小野市長らと懇談。募金活動の経緯や込めた思いを伝えた

 
 釜中では募金のほか、鵜住居町の市民体育館が緊急消防援助隊の宿営地となった際に消火活動に尽力する隊員らへの感謝と激励を込め寄せ書きを記した横断幕を製作し、贈る活動も行った。絆会議の会長、副会長を務める2人は学校でもそれぞれ生徒会長、副会長として仲間を引っ張った。
 
募金箱を持つ白野真心さん(左)と岡本あいるさん

募金箱を持つ白野真心さん(左)と岡本あいるさん

 
 岡本さんは「小学校、中学校のみんなで集めた募金が被災した人たちのために使われて、一日でも早く元の生活、笑顔あふれる日常に戻ってほしい」と願った。白野さんは「私たちは東日本大震災の年に生まれた。さまざま支援をしてもらったので、今、困っている人たちに返せることはないかと思った。何もない方がいいけど、これからも何かあったら自分たちにできることを少しでもやっていきたい」と背筋を伸ばした。
 
 絆会議ではこれまでに「トルコ・シリア地震救援金」「令和5年7月7日からの大雨災害義援金(秋田県)」「令和6年能登半島地震災害義援金」としても募金活動を展開し、寄付している。

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釜石・橋野鉄鉱山、世界遺産登録10年 歴史と自然感じる記念ウオーク 雨に負けず笑顔満開

満開の八重桜のトンネルを歩き笑顔を見せる参加者

満開の八重桜のトンネルを歩き笑顔を見せる参加者

 
 世界遺産に登録されて7月で10周年を迎える釜石市橋野町青ノ木の「橋野鉄鉱山」を巡るウオーキングイベント(釜石市ウォーキング協会主催)が17日にあり、市内外の約20人が自然と歴史に触れながら歩いた。あいにくの雨模様ながら、ちょうど満開となった八重桜の歓迎を受けた参加者には天候を吹き飛ばす笑顔の花が咲いた。
 
 10周年を記念したイベントは同協会の例会行事。一般参加もあり、盛岡市など市外からも集まった。案内役は、同協会員で釜石観光ガイドとしても活動する地元の小笠原明彦さん(68)。インフォメーションセンターを発着点に、高炉跡、普段は立ち入りが制限されている区域にある青ノ木橋、旧道・笛吹街道(地元では青ノ木街道とも言う)の一部をたどる往復約5キロのコースを歩いた。
 
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インフォメーションセンターを出発し高炉跡方面へ向かう

 
二番高炉跡を見学し、さらに歩みを進める参加者

二番高炉跡を見学し、さらに歩みを進める参加者

 
 高炉跡周辺には「種焼窯」「種置場」と記された遺跡が点在していて、小笠原さんは「種って何?…鉄鉱石のことをそう呼んでいた。名付け方が日本人ぽいよね」と解説。高炉の石組みにある凸凹を示し、「これは日本独自のもの。西洋を参考にはしたが、日本の技術も生かした鉄づくりが橋野にはあった」と強調した。寛永年間の時代からあったとされる旧街道では「子どもの頃のあそび場だった」と話し、地元ならではの魅力もこっそり教えたりした。
 
ガイドの説明を聞いたり、ゆっくりと遺跡周辺を歩く

ガイドの説明を聞いたり、ゆっくりと遺跡周辺を歩く

 
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笛吹街道を踏みしめた参加者。後方は遠野方面に続く

 
 「鉄の話を聞くうちに歩けちゃった」とうれしそうに話したのは80代の女性。「行ったことのないところに行ける」のが団体に所属するメリットだが、年齢を重ね「みんなと歩くのは大変」になり、今回のコースも途中で離脱するつもりだった。高炉跡周辺や旧街道に続く道が明るく、手入れされているのも歩が進む要因になったようで、「健康づくりに歩くことを続けたい」と前を向いていた。
 
雨にも負けず、参加者はぐんぐんと力強く歩いた

雨にも負けず、参加者はぐんぐんと力強く歩いた

 
自然との出合いや仲間との会話もウオーキングの楽しみ

自然との出合いや仲間との会話もウオーキングの楽しみ

 
 同協会の遠野健一会長(81)は「ガイドの説明を聞いて頭の体操にもなり、健康を感じてもらえただろう。製鉄の歴史を見ても、製造工程や鉄の品質、技術、日本はどこにも負けないものを持っている。そのスタートが釜石。世界遺産登録10周年を機に歴史の重みを再認識し、170年ほど前に働いていた人たちのことを思いながら、この地を踏みしめてもらえたならいい」と充実感をにじませた。
 
満開の八重桜に参加者は表情をほころばせる

満開の八重桜に参加者は表情をほころばせる

 
橋野鉄鉱山がデザインされたパネル前で記念にパチリ

橋野鉄鉱山がデザインされたパネル前で記念にパチリ

 
 2025年度は24回のウオーキング行事を計画。釜石市内だけでなく、岩手県内各地の協会主催行事にも参加する。6月には「魹ケ崎灯台散策ウオーク」(宮古市重茂・姉吉キャンプ場駐車場集合)や「栗林・大沢川流域化石探訪ウオーク」(釜石市栗林町・砂子畑集会所集合)を予定。9月には三陸鉄道の旅と「三陸大王杉」(大船渡市三陸町越喜来)の見物を楽しむ企画を用意。10月実施の「鉄と魚とラグビーのまち釜石潮騒ウオーク」は、今回と同じく橋野鉄鉱山世界遺産登録10周年記念の冠を掲げる。

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「あったね~」「これ何?」 昭和の家電が面白い! 釜石・郷土資料館で6月1日まで遺産展

“昭和100年”にちなんだ市郷土資料館の収蔵資料展。暮らしを豊かにした電化製品などが並ぶ

“昭和100年”にちなんだ市郷土資料館の収蔵資料展。暮らしを豊かにした電化製品などが並ぶ

 
 日本の高度経済成長に代表される「昭和」の時代―。その昭和が始まった1926年から数えて100年目の今年、当時の出来事や流行に触れる機会が増えている。釜石市鈴子町の市郷土資料館(小笠原太館長)では、昭和の時代に製造、利用された家電(家庭用電化製品)を集めた遺産展を開催中。“昭和世代”には懐かしく、平成・令和生まれには新鮮な驚きがある空間となっている。6月1日まで開催する。
 
 本年度の同館収蔵資料展の一環として開催。展示資料47点は市民から寄贈されたもので、普段は非公開の品々だ。会場には衣食住のほか、娯楽に関わる製品が並ぶ。家電は戦前から製造されていたが、戦中は“ぜいたく品”として、ラジオなどを除き、製造販売が制限されていたという。一般家庭に広く普及していったのは戦後。洗濯機、冷蔵庫、炊飯器などの便利品が家事労働の負担を軽減した。
 
洗濯機や掃除機の商品カタログをパネル化して展示。「ザ・昭和」を感じる

洗濯機や掃除機の商品カタログをパネル化して展示。「ザ・昭和」を感じる

 
昭和の時代に製造された家庭用電化製品の数々を展示する会場

昭和の時代に製造された家庭用電化製品の数々を展示する会場

 
 炊飯器は火力調整が必要なガスから電気に。1955(昭和30)年、国産初の自動式電気炊飯器が登場。後に、炊飯と保温が一体化したジャー炊飯器、内釜全体を発熱させるIH(電磁誘導加熱)炊飯器が登場した。家庭用電子レンジは65(昭40)年に初めて発売されたが、当初は価格が高く、普及が進まなかった。76(昭51)年に低価格のファミリータイプが発売され、購入層が拡大した。今回の展示では、20年ほど前まで使われていたという、ごく初期の電子レンジも見ることができる。
 
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重量感たっぷりの電子レンジ(左)。約20年前まで“現役”だったという

 
 家事が楽になり、時間的余裕が生まれると、娯楽に関する製品が増えていった。53(昭28)年の国内テレビ放送の開始で、ブラウン管の白黒テレビが出始めたが、当時は高価。60(昭35)年のカラーテレビ放送開始、64(昭39)年の東京五輪開催がテレビの普及を後押しした。70(昭45)年代に入ると、カラーテレビの価格が下がり、“一家に一台”時代を迎える。これに伴い、家庭用ビデオデッキやテレビゲーム機も登場。83(昭58)年発売、任天堂のファミコン(ファミリーコンピューター)は一世を風靡(ふうび)した。
 
4本脚の白黒テレビ(左)とカラーテレビ(右)。当時はダイヤル式のつまみを回してチャンネルを変えていた

4本脚の白黒テレビ(左)とカラーテレビ(右)。当時はダイヤル式のつまみを回してチャンネルを変えていた

 
 今回の展示品で最も古いものとみられるのが、真空管ラジオ。戦後復興期の主流で、55(昭30)年に国内初のトランジスタラジオが発売されると小型・軽量化が進み、ラジオは急速に普及した。その後、カセットテープレコーダーにラジオチューナーを一体化させた「ラジカセ」が発売され、いつでもどこでも気軽に録音・再生が楽しめるようになった。最近、デジタル世代がアナログ音源や機材に興味を持ち、ラジカセで音楽を楽しむ姿もあるという。
 
左から)真空管ラジオ→トランジスタラジオ→ラジカセへと進化。ラジカセは昭和レトロを好む若者にも人気

(左から)真空管ラジオ→トランジスタラジオ→ラジカセへと進化。ラジカセは昭和レトロを好む若者にも人気

 
 家庭用の映像記録の始まりは8ミリフィルムカメラ。撮影した映像は映写機でスクリーンに映して楽しんだ。同機で映画鑑賞も。昭和50年代後半にはビデオテープが普及し、撮影機器も変化していく。写真撮影のフィルムカメラ(二眼レフ)は昭和初期から。一眼レフは昭和30年代に登場し、同50年代にかけてオートフォーカス技術が進化していった。通信技術の遺産はダイヤル式電話機とアマチュア無線機。
 
8ミリフィルム映写機(左)とカメラ(中)。後に簡単操作、高画質のビデオカメラ(右)へ移行していく

8ミリフィルム映写機(左)とカメラ(中)。後に簡単操作、高画質のビデオカメラ(右)へ移行していく

 
ワープロ(左上)、ダイヤル式電話機(右上)、アマチュア無線機(下)。貴重な昭和遺産

ワープロ(左上)、ダイヤル式電話機(右上)、アマチュア無線機(下)。貴重な昭和遺産

 
 会場では昭和家電の商品カタログや取り扱い説明書も展示される。同館の佐々木寿館長補佐は「ラジオやテレビ、写真、ビデオ、電話…。今やスマホ1台でできてしまうことも、昭和のこうした技術の進化が基になっていることを感じてもらえれば」と話す。自分が使っていたものを懐かしんだり、知らない世代には新鮮な発見があったり…。同世代、世代間の会話も弾む展示会となっている。同館の開館時間は午前9時半から午後4時半まで(最終入館:午後4時)。火曜日休館。

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釜石市 プラスチックごみ分別収集開始から1カ月 現状は? 24日から市内8地区で説明会実施

釜石市で地区ごと月1回(土曜日)行われているプラスチックごみの収集=17日

釜石市で地区ごと月1回(土曜日)行われているプラスチックごみの収集=17日

 
 釜石市は本年度4月からプラスチックごみの分別収集を開始した。月1回(地区ごとに定められた土曜日)、すでに実施しているペットボトルと合わせ、同じ日に収集している。地球環境に配慮したプラスチックの再資源化を促し、同市のごみ処理費用を削減するのが大きな目的。開始から1カ月が経過したが、市民からは一般ごみとの分別の判断に迷う声も聞かれる。現状を取材した。
 
 同市が分別収集するプラごみは「プラスチック製容器包装」と「製品プラスチック」。容器包装は「プラ」マーク表示のある食料品や日用品などの容器、包装、緩衝材で、袋やボトル、ケース類、ペットボトルのキャップ・ラベル、発砲スチロール、食品トレイなど。製品プラは「プラ」表示はないが、プラ100%でできていて、大きさ50センチ以下のもの(厚さ5ミリ未満)。例としては食品保存容器や食器、バケツ、CD・DVDなど。収集できるのは食品の油分や塩分が付着していない、洗剤やシャンプーの中身が残っていない…など、いずれも汚れのないきれいな状態のものだけ。
 
 洗ったものは乾かし、容器包装、製品ともに中身を確認できる透明または半透明の袋に入れて、収集日当日午前8時までに集積所に出す。市指定ごみ袋で出す場合は袋に「プラ」と書き、一般ごみではないことを示すと良い。
 
4月から収集を開始した「プラスチック製容器包装(“プラ”表示あり)」と「製品プラスチック(同表示なし)」の例

4月から収集を開始した「プラスチック製容器包装(“プラ”表示あり)」と「製品プラスチック(同表示なし)」の例

 
地区ごとに定められている月1回の収集日(市配布のごみカレンダー参照)午前8時までに出す

地区ごとに定められている月1回の収集日(市配布のごみカレンダー参照)午前8時までに出す

 
市の委託業者「新菱和運送」によるプラごみの収集作業(ペットボトルと同時回収)。17日は車両6台が稼働

市の委託業者「新菱和運送」によるプラごみの収集作業(ペットボトルと同時回収)。17日は車両6台が稼働

 
 市生活環境課によると、4月の収集実績は5日484キロ、12日819キロ、19日1112キロ、26日708キロで、計3123キロ。分別が始まったばかりというのもあるが、「市全体の収集量としてみると、当初見込みよりもまだまだ少ない状況」だという。汚れの付着やプラ以外の混入で資源物にならなかった残渣(ざんさ)は4週で計140キロ。これは「割合としては比較的少なく、気を付けて分別してもらっている印象」と受け止める。
 
 市民からの問い合わせで多いのは、収集可能なプラの判断基準。次の再資源化につなげるためには「完全にきれいなもの」が求められるが、始まったばかりの現時点では市民の対応が追い付かない側面もあることから、「汚れを落とすのに手間や労力を要する場合や、どの程度洗えばいいか迷った時は一般ごみに。まずは分別の意識を高めてもらい、できるところからご協力を」と呼び掛ける。
 
収集した家庭プラごみは岩手資源循環の処理施設(釜石総合リサイクルセンター)に搬入される(17日午前撮影)

収集した家庭プラごみは岩手資源循環の処理施設(釜石総合リサイクルセンター)に搬入される(17日午前撮影)

 
プラごみは検品後、機械に投入。破集袋機で回収時の袋をはずす

プラごみは検品後、機械に投入。破集袋機で回収時の袋をはずす

 
 プラごみは市の収集運搬委託業者(釜石清掃企業、新菱和運送)が収集。リサイクルのための選別、梱包(こんぽう)を請け負う同市平田、岩手資源循環(谷博之代表取締役)の処理施設に持ち込まれる。破集袋機で回収時の袋をはずし、手選別ラインでプラ再生できないものを除去。磁選機で混入金属を回収した後、圧縮梱包機で「プラスチックベール」という固まりする。プラベールは再生事業者に引き渡され、再生プラ製品の一部材料となるペレットや物流パレット(荷役台)に加工される。
 
資源としてプラ再生できないものを人の目で見極め除去する手選別ライン

資源としてプラ再生できないものを人の目で見極め除去する手選別ライン

 
収集時に交じってしまったペットボトルもラインからはずす。ペットボトルは別に梱包するため

収集時に交じってしまったペットボトルもラインからはずす。ペットボトルは別に梱包するため

 
最後は圧縮梱包機で「プラスチックベール」に加工。1個の重さは約250キロ

最後は圧縮梱包機で「プラスチックベール」に加工。1個の重さは約250キロ

 
 同市のプラ分別収集について谷代表取締役は「搬入されているものは非常にきれい」と好感触。ペットボトルと同時収集だが、梱包は“容器包装、製品プラ”と“ペットボトル”それぞれに行うため、「必ず別々の袋に入れて出してほしい」と呼び掛ける。スタート1カ月の搬入量から、「(分別収集を)まだ知らない人が多いのでは。人口規模からすると、月に30トンぐらいは出ると思われるが、今はまだ10分の1程度」と話す。家庭から出るごみの約6割はプラごみ。分別するだけで、一般ごみの量は半分以下になるという。同社では市民の直接搬入も受け入れる(無料)。プラごみ、ペットボトルともに平日(月~金)は午前8時半から午後4時半まで、土曜日は午前8時半から正午まで受け付ける。
 
プラごみの処理作業には社員とパート10人前後があたる(19日午前撮影)

プラごみの処理作業には社員とパート10人前後があたる(19日午前撮影)

 
 2022年4月の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の施行で、自治体は容器包装プラに加え、製品プラの分別収集・再商品化が努力義務となった。容器包装プラの分別収集は本県33市町村のうち23市町村で開始済み。沿岸南部では大槌町だけが実施していた。釜石市は今回、容器包装と製品両プラの分別収集に着手。同市のごみは3市2町で運営する岩手沿岸南部クリーンセンター(同市平田)で溶融処理するが、プラ分別でセンターに持ち込む量を減らすことで、同市の処理費用の負担割合を減らしたいとの狙いがある。2023年度、同市のごみ処理にかかった費用は約6億1000万円。市民1人あたり、年間約2万円を負担している計算になる。
 
 市生活環境課の二本松史敏課長は「プラ分別の浸透には時間がかかると思うが、市広報などで繰り返し周知しながら、精度も高めていければ」とし、より多くの市民の意識変容、実践に期待する。
 
プラごみ分別収集開始に先駆け、栗林町で開かれた説明会。栗林共栄会が市に要請し開催した=3月30日

プラごみ分別収集開始に先駆け、栗林町で開かれた説明会。栗林共栄会が市に要請し開催した=3月30日

 
 市はプラスチック分別の方法についての住民向け説明会を5月24、25、31日に市内8地区で開催予定。実際にやってみて分からないこと、迷っていることなどを聞いてほしいとしている。日程、場所は市広報5月15日号に掲載している。
 
5月24、25、31日に開かれるプラスチック分別方法の説明会日程

5月24、25、31日に開かれるプラスチック分別方法の説明会日程