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山の春到来! 橋野鉄鉱山で“2大”石割桜見頃 インフォセンター周辺の桜ロードもおすすめ

「橋野鉄鉱山」高炉場跡の山神社エリアに自生する“石割桜”=24日午前撮影

「橋野鉄鉱山」高炉場跡の山神社エリアに自生する“石割桜”=24日午前撮影

 
 釜石市内の山々では市街地より遅れて、各種桜が見頃を迎えている。橋野町青ノ木の世界遺産「橋野鉄鉱山」とその周辺は自生するヤマザクラに加え、植樹したさまざまな桜が咲き出し、花色の濃淡が美しい景色を生み出している。高炉場跡にひっそりとたたずむのは、高炉の石組みの材料にもなった花こう岩に根を張る「石割桜」。隣接する国有林地にも同様の石割桜があり、自然の植物の生命力の強さを感じさせている。地元在住で、釜石観光ガイド会副会長の小笠原明彦さん(69)によると、今年の青ノ木の桜の開花は1週間ほど早いという。
 
 三番高炉の東側、山神社の拝殿跡や山神碑、牛馬観世音碑が残るエリアに自生している石割桜は、花こう岩の上に3本のヤマザクラが根を張る唯一無二の姿を見せる。花こう岩は山神碑側から見て、横幅5.84メートル、奥行き4.37メートル(市調べ)の大きさ。桜の根は岩を抱えこむように伸び、岩の割れ目に沿って地面まで到達している部分も見られる。花の開花時期は例年5月初旬だったが、近年は春先の気温が高く、4月中の開花が続く。今年は21日ごろから咲き始め、24日時点で8分咲きまで進んだ。
 
花こう岩の上に3本のヤマザクラの幹がそびえる。岩の割れ目に桜の種が入り成長?

花こう岩の上に3本のヤマザクラの幹がそびえる。岩の割れ目に桜の種が入り成長?

 
岩の上部は傾斜があるが、各方向にしっかりと根を伸ばす。晴れの日には青空にピンク色の花が映える

岩の上部は傾斜があるが、各方向にしっかりと根を伸ばす。晴れの日には青空にピンク色の花が映える

 
 同所には今年、新たな見どころが加わる。石割桜がある場所からさらに斜面を上った先に見えるのが、昨年11月に発見された同鉄鉱山の「開山碑」。見学エリアの外側、国有林地内に鎮座する石碑は、同鉄鉱山の操業開始時期を解明する手がかりになるものとされる。見学エリア柵内から見ることができる。市は今年、同石碑の見学会も予定している。
 
石割桜からさらに斜面を上ると、昨年発見された「開山碑」を見ることができる(写真右)。コケを取り除いた垂直面の岩が開山碑。見学は柵の中から

石割桜からさらに斜面を上ると、昨年発見された「開山碑」を見ることができる(写真右)。コケを取り除いた垂直面の岩が開山碑。見学は柵の中から

 
 もう一つの石割桜が見られるのは二番高炉の東側、国有林地の山肌の急斜面。昨年11月の育樹祭で倒木などの処理作業を行ったことで、その全容が見やすくなった。日光が届きやすい環境になったことも影響してか、今年は特に花色が美しい。二番高炉と石割桜を入れた写真の“映え”スポットとしても注目を集める。高炉場跡は昨年度から見学路と遺構標示の整備が進められていて、舗装された道は車椅子での移動が可能になっている。
 
二番高炉の東側、国有林地に見られる石割桜。岩には切り出そうとしたとみられるタガネの跡が残る。今年は特にも花色がきれい

二番高炉の東側、国有林地に見られる石割桜。岩には切り出そうとしたとみられるタガネの跡が残る。今年は特にも花色がきれい

 
一番高炉と二番高炉の間にある一本桜(写真右)とも花の競演!

一番高炉と二番高炉の間にある一本桜(写真右)とも花の競演!

 
昨年度整備された新たな見学路。舗装された歩道が三番高炉前まで続く

昨年度整備された新たな見学路。舗装された歩道が三番高炉前まで続く

 
 インフォメーションセンター周辺から高炉場跡に続く“桜ロード”も開花が進む。高炉場に向かって右側の道路沿いではソメイヨシノが開花していて、周辺の私有地に自生するヤマザクラと共に花色のグラデーションを楽しめる。同左側に連なる八重桜は大型連休中には開花しそう。橋野町振興協議会が行う恒例の八重桜まつりは5月10日に開催予定。
 
インフォメーションセンター駐車場から高炉場跡に向かう道路沿いは濃淡の花色が重なり、さらに美しい光景を生み出している

インフォメーションセンター駐車場から高炉場跡に向かう道路沿いは濃淡の花色が重なり、さらに美しい光景を生み出している

 
 八重桜が囲む芝生広場では、2018年に震災復興支援の一環で植えられた「宇宙桜」が順調に花をつける。これは2008年、福島県三春町の“三春滝桜”の種をスペースシャトル・エンデバー号で国際宇宙ステーションに届け、日本のモジュール「きぼう」船内で若田光一宇宙飛行士とともに地球を回る旅をした桜。帰還した種を同町の小学生が育て、同市に贈られた。宇宙桜の周りにはドウダンツツジがハート形に植えられている。
 
2018年に植樹された“宇宙桜”(三春滝桜の子孫木)も開花。将来、大きく成長した枝垂れ桜になるのが楽しみ

2018年に植樹された“宇宙桜”(三春滝桜の子孫木)も開花。将来、大きく成長した枝垂れ桜になるのが楽しみ

 
宇宙桜は発芽から16年。順調に花芽を増やしている

宇宙桜は発芽から16年。順調に花芽を増やしている

 
 小笠原さんは青ノ木の桜について、「ヤマザクラから八重桜の開花にかけ、2~3週間が桜のシーズン。石割桜は今年、周りの木々があまり目立たず、樹形や花がきれいに見えるのでおすすめ」とPR。インフォメーションセンターには毎日、観光ガイドが常駐しており、「遺跡や桜について話を聞きながら巡るとさらに楽しめる。ぜひ、山里の春を満喫しに足を運んでいただければ」と呼びかける。
 
 山あいの気候は春でも朝晩の冷え込みがあり、花の開花が足踏みすることもある。訪れる前にインフォメーションセンターに問い合わせしてみるといいかも。橋野鉄鉱山インフォメーションセンターの電話番号は0193・54・5250(営業時間:午前9時半~午後4時半)。
 
高炉場跡のおまけの春景色。ハート形の葉が風に揺れるカツラの木(写真左上、右)。地面にはカタクリの花(写真左下)も…

高炉場跡のおまけの春景色。ハート形の葉が風に揺れるカツラの木(写真左上、右)。地面にはカタクリの花(写真左下)も…

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開放的に新装!釜石・野田中央公園 震災後の仮設住宅用地から復旧 利用再開に歓声

新しくなった野田中央公園で遊ぶ子どもたち

新しくなった野田中央公園で遊ぶ子どもたち

 
 東日本大震災後に被災者向けの仮設住宅用地となった釜石市野田町の野田中央公園の復旧整備工事が完了し、9日、現地で開園式が開かれた。生い茂っていた樹木を伐採し、グラウンドを新しくするなど、市民の憩いの場は明るく開放的な空間にリニューアル。久しぶりの開放を待ちわびた子どもたちがさっそく公園内を元気に駆け回っていた。
 
 住民や関係者ら約60人が出席。小野共市長は「地域の憩いの場として幅広い世代に愛される公園に。子どもたちの健やかでたくましい成長の一助となることを願う」とあいさつした。
 
開園式に参加した野田町の住民や釜石市の関係者ら

開園式に参加した野田町の住民や釜石市の関係者ら

 
 「お花見スポット」としても地域に親しまれる公園では、早咲きのサクラがちょうど見頃に。木の下でひと休みする大人たち、風に舞った花びらを拾い集めて遊んだりする子どもらの姿も見られた。
 
 小佐野小6年の石田晃悠さんは「久しぶりに開放された。気分、いい感じ。友達とキャッチボールとかして遊びたい」と笑顔を見せた。
 
花見スポットとしても地域に親しまれる野田中央公園

花見スポットとしても地域に親しまれる野田中央公園

 
子どもたちは桜の花びらを集めたり、グランドを駆け回ったり

子どもたちは桜の花びらを集めたり、グランドを駆け回ったり

 
 公園は老朽化したフェンスの更新や、周囲を覆っていた大木化した樹木(ヒマラヤスギを中心に)の伐採などで見通しを確保。水はけ力が低下していたグラウンドは土を入れ替え、排水設備も整えた。新たに駐車場(10区画)を設け、利便性の向上を図った。整備面積は約6000平方メートル。事業費は約5000万円。
 
利用しやすいようにと新たに駐車場が設けられた

利用しやすいようにと新たに駐車場が設けられた

 
 野田集会所に隣接する同公園は1986年に供用が始まり、地域住民の活動の場として利用されてきた。震災後は被災した人たちの生活再建を支える仮設住宅用地として使用され、市は6棟36戸を整備。2019年12月まで使われ、20年10月に撤去された。
 
2019年の桜の季節には仮設住宅が並んでいた

2019年の桜の季節には仮設住宅が並んでいた

 
憩いの場としてリニューアルした野田中央公園

憩いの場としてリニューアルした野田中央公園

 
 公園の復旧整備に向け、市は地域住民らを交えたワークショップなどを実施。寄せられた声をもとに整備内容を検討し、昨年9月に工事に着手。今年3月に整備を終えた。
 
 近くに住む野田十和町内会の木谷哲会長(78)は「さっぱりしたいい公園が戻ってきた。子どもたちが自由に遊びまわる姿を見るのが楽しみ。どんどん使ってほしい」と願った。
 
子どもたちをうれしそうに見守る木谷哲さん(左)

子どもたちをうれしそうに見守る木谷哲さん(左)

 
 野田中央公園の近くにはほかにも仮設住宅用地として使われた公園が2カ所あり、市は同時に整備内容を検討。まず野田中央を憩いの場として再整備し、今後予定する野田西は子どもの遊び場、向定内は運動の場としての利用を見込み、復旧整備事業を進める。

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市指定文化財「上栗林のサクラ」 堂々の巨木 14年目のライトアップ 夜空に浮かぶ花姿圧巻

ライトアップ14年目を迎えた「上栗林のサクラ」=11日撮影

ライトアップ14年目を迎えた「上栗林のサクラ」=11日撮影

 
 釜石市栗林町の市指定文化財(天然記念物)「上栗林のサクラ」は、今年も花の開花に合わせ、夜のライトアップが行われている。地元住民組織、上栗林振興会(三浦栄太郎会長)が2013年から始めた取り組みは春の風物詩として定着。樹齢400年以上と推定される巨木の見事な花姿と枝ぶりを暗闇に浮かび上がらせている。ライトアップは葉桜になる一歩手前ごろまで実施予定。点灯時間は午後6時半から同9時半まで。
 
 上栗林集会所そばの私有地に自生する同桜はエドヒガン種。2006年の市の調査では胸高幹周りが約4.9メートル、根元周りは約8メートル。07年に市の文化財に指定された。地元では「種蒔(たねまき)桜」と呼ばれ、開花は農事の目安とされてきた。住民によると、以前は4月下旬に満開を迎えていたが、近年は地球温暖化が影響してか開花が早まっている。
 
 今年はつぼみ状態の5日に照明機器を設置。翌6日から花が開き始めた。週末の11日には見頃を迎えたが、この日の市内は強風に見舞われ、早めに開花した花は花びらを散らしてしまった。夜も風の強い状態が続き、見物客はまばらだったが、いい状態の桜を愛でようと市民らが足を運んだ。
 
さまざまな角度からの照明で樹形を浮かび上がらせる

さまざまな角度からの照明で樹形を浮かび上がらせる

 
枝いっぱいに薄桃色の花をつけ、美しい光景をみせる

枝いっぱいに薄桃色の花をつけ、美しい光景をみせる

 
開花後、最初の週末となった11日はあいにくの強風となったが、楽しみにしていた見物客がマイカーなどで訪れた

開花後、最初の週末となった11日はあいにくの強風となったが、楽しみにしていた見物客がマイカーなどで訪れた

 
 橋野町の83歳女性は「車で(県道を)通行する際に見てはいたが、近づいて見るのは今日が初めて」と、頭上高く枝を伸ばした桜を見上げた。「素晴らしいねぇ。これだけ太い幹もなかなか無い。本当に立派。地域の誇りだね」と感嘆の声。同所より標高が高い橋野の桜はこれからが開花時期で、「あとは地元の桜を楽しみに…」と一緒に訪れた友人と顔を見合わせた。
 
 同桜のライトアップは、振興会の夜の会合後、役員が懐中電灯で試しに照らしてみたのがきっかけ。当初は地元建設会社の協力で工事用投光器を用いていたが、後に花の色がより美しく見えるよう光源の種類や数、角度など試行錯誤を重ね、2色のLED照明による現在の形を確立した。始めた頃は震災復興のさなかで、沿線の県道釜石遠野線を工事関係車両が行き交い、仕事帰りに足を止める人も。上栗林集会所で避難生活を送った被災者らも仮設住宅から足を運び、交通整理をするほどのにぎわいだった。復興工事の終了、高速道路網の整備で同県道の通行車両が減り、見物客も少なくなったが、今でも市内外から訪れる人が後を絶たない。
 
2色の照明で幻想的な姿を生み出す。幹の太さが長い年月を積み重ねてきたことを物語る

2色の照明で幻想的な姿を生み出す。幹の太さが長い年月を積み重ねてきたことを物語る

 
真っ暗になる前は背後の空色ともコラボ。暗くなってからは、晴れていれば星や月との競演も

真っ暗になる前は背後の空色ともコラボ。暗くなってからは、晴れていれば星や月との競演も

 
 「毎年楽しみに見に来る人のほか、初めて足を運ぶ人もいる。美しい里山の風景を後世につなぎ、地域に活力を生む一助にしたい」と三浦会長(75)。同桜は古木ながら樹勢は衰えず、毎年花を咲かせている。「市と連携し防虫対策などもしっかり行い、今後も注意深く見守っていきたい」と話した。

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春ですね!釜石からお届け、桜の便り 定番スポットで散策、花見「楽しんでいます」

釜石市を流れる小川川流域の桜並木=12日

釜石市を流れる小川川流域の桜並木=12日

 
 春、桜の季節―。釜石市の花姿がきれいなお花見スポットをめぐってきた。4月に入り、あたたかさに早咲きの桜が花開き始めたものの、冷たい空気が流れ込む日もあったりし、市内に多い桜、ソメイヨシノの開花は足踏み。それでも、暖気と冷気を行ったり来たりしながら、6日頃には花がほころんだ。第2週の週末は青空が広がり、花見日和に。多くの人たちが花をめで、「今だけの瞬間」を楽しんでいた。
 
大渡橋のたもとで一本桜の花見を楽しむ親子ら=8日

大渡橋のたもとで一本桜の花見を楽しむ親子ら=8日

 
小学校の入学式を終えた親子が記念に写真を撮る光景も

小学校の入学式を終えた親子が記念に写真を撮る光景も

 
 「きれいだね~」。大渡町の大渡橋たもと、橋詰広場に立つ“一本桜”周辺では、少し早めに花見気分を味わう人たちの姿がみられた。花とつぼみが半々だった8日に訪れた鵜住居町の袰岩綾華さんは「長く楽しめそう」とにっこり。2歳になる長男の廉ちゃんがはしゃぐ様子を見つめ、「四季の変化を楽しめる大人に」と願った。
 
見ごろを迎えた釜石市内のソメイヨシノ

見ごろを迎えた釜石市内のソメイヨシノ

 
定内公園の桜の木の下でジャンプ!元気な子どもたち

定内公園の桜の木の下でジャンプ!元気な子どもたち

 
 「桜餅、食べたーい」。8日、定内町の定内公園で小佐野小の児童が桜の花びらに触れようと手を伸ばしていた。ジャンプしても手は届かなかったが、仲良し3人組(小学3年生)は「また来ようね」と約束。「サンドイッチとか持って来よう」と、“花より団子”だった。
 
小川川に架かる歩行者専用のつり橋から眺めた桜=12日

小川川に架かる歩行者専用のつり橋から眺めた桜=12日

 
咲き誇る桜並木を散策する人たち。川側に張り出す枝ぶりも魅力

咲き誇る桜並木を散策する人たち。川側に張り出す枝ぶりも魅力

 
 小川川流域(小川町・桜木町)や甲子町松倉の甲子川沿い、そして唐丹町本郷の桜並木…。桜ポットめぐりをした12日、各所の花はほぼ満開。多くの人たちが桜と青空を背景に写真を撮ったり、「桜ロード」を散策したり、思い思いに季節を感じていた。
 
甲子町松倉の川沿いに続く並木道は桜の名所の一つ

甲子町松倉の川沿いに続く並木道は桜の名所の一つ

 
桜並木のアーチは散策、サイクリングに絶好のコース

桜並木のアーチは散策、サイクリングに絶好のコース

 
桜のトンネルが出来上がり!唐丹町本郷の並木道

桜のトンネルが出来上がり!唐丹町本郷の並木道

 
春の本郷地区は風情漂う景色をより楽しめる

春の本郷地区は風情漂う景色をより楽しめる

 
大町の薬師公園頂上広場のソメイヨシノ

大町の薬師公園頂上広場のソメイヨシノ

 
 中心市街地を一望できる大町の薬師公園では、遊歩道をちょうちんで彩る恒例の「桜まつり」を25日まで実施。昼は空をバックにした桜のパノラマを楽しむことができ、夜は明かりに浮かび上がる花姿を静かに味わえる。
 
昼も夜もめでる!ちょうちんが揺れる薬師公園桜まつり

昼も夜もめでる!ちょうちんが揺れる薬師公園桜まつり

 
 市内にはこのほか、橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」や甲子町大橋の旧釜石鉱山事務所の周辺など、少し時期をずらして楽しめるスポットもある。

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令和生まれ小学1年生に 釜石9校に112人入学 栗林小 4人の新入生迎え最後の1年へ

栗林小学校に入学した笑顔弾ける新1年生=8日

栗林小学校に入学した笑顔弾ける新1年生=8日

 
 釜石市内の9小学校は7、8の両日で、2026年度の入学式を行った。新入学児童は計112人。このうち来年度、鵜住居小と統合する栗林小(高橋昭英校長、児童24人)は最後の入学式で、4人の新入生を迎えた。児童、教職員、保護者は同校の最後を飾るメモリアルイヤーを有意義で思い出深い1年にしようと、心を一つに新年度をスタートさせた。
 
 栗林小の入学式は8日、同校体育館で行われた。会場を彩った花々は、校名の漢字が同じという縁で震災後、交流が続く香川県高松市の栗林(りつりん)小から贈られたもの。新入生4人は在校生や保護者らの拍手に迎えられて入場し、ちょっぴり緊張しながら席に着いた。1年担任の万城目遥教諭が一人一人名前を呼ぶと、新入生は「はい」と元気よく返事をして立ち上がり、高橋校長に一礼した。
 
在校生や保護者の拍手に迎えられ入学式会場の体育館に入場

在校生や保護者の拍手に迎えられ入学式会場の体育館に入場

 
新入生は名前を呼ばれると、返事をして立ち上がりお辞儀をした

新入生は名前を呼ばれると、返事をして立ち上がりお辞儀をした

 
 高橋校長は「入学おめでとう。今日からみんなは栗林小の児童です」と歓迎。演台の下から手製のクラフト「栗っ子号」を取り出し、乗車する新入生にメッセージを送った。大切にしてほしいこととして挙げたのは自分、友達や家族(周りの人)、あいさつや返事、命。「栗っ子号は誰一人取り残しません。みんなで支え合って未来に向かって進んでいきます」と話した。保護者には来年度の統合を見据え、「子どもたちにとってより良い環境となるよう準備を進めていきたい」と協力を願った。
 
高橋昭英校長(左)は児童全員が乗る未来行きバス「栗っ子号」のクラフトを見せながらあいさつ

高橋昭英校長(左)は児童全員が乗る未来行きバス「栗っ子号」のクラフトを見せながらあいさつ

 
 市教委の川﨑浩二教育部長、同校の栗澤敬太PTA会長が祝いの言葉を述べた。在校生を代表し、藤原柚夏児童会長(6年)は「皆さんが入学してくるのをとても楽しみに待っていました」と迎え、「小学校はいろいろな勉強や運動ができるところです。栗林小には素敵な行事もたくさんあります。元気に登校して楽しい学校生活にしましょう」と呼びかけた。本年度の教職員9人も紹介された。
 
藤原柚夏児童会長(左上)が歓迎の言葉。校歌を歌い、教職員9人を紹介して式を閉じた

藤原柚夏児童会長(左上)が歓迎の言葉。校歌を歌い、教職員9人を紹介して式を閉じた
 
式を終え、記念撮影前のひととき。高橋校長が手にする「栗っ子号」に目がくぎ付け

式を終え、記念撮影前のひととき。高橋校長が手にする「栗っ子号」に目がくぎ付け

 
 式を終え教室に戻った新入生は緊張も和らいだ様子で、担任の万城目教諭のホームルームに臨んだ。机の上には交通安全の黄色い帽子やワッペン、教材、PTAからの入学祝い品などが並べられていて、担任の話を聞いたあと、真新しいランドセルにそれらをしまい込んだ。
 
 川﨑琴和さんは「1年生になってうれしい気持ち。サッカーを頑張りたい。お友達みんなで仲良くする」とにっこり。栗澤学希さんは同校に通う姉(5年)から学校の話を聞いていて、「ずーっと楽しみにしていた」という。物を入れたランドセルは「ちょっと重たい」とはにかみ、「小学校で楽しみなのは遠足。勉強では算数と体育を頑張る」と胸を躍らせた。学希さんの母幸紀さん(31)は「栗林小での学校生活は残り1年ですが、いろいろな行事などで周りの人とコミュニケーションを取って楽しんでほしい。本人のペースでやりたいことをさせてあげたい」と望んだ。
 
教室に戻り、初めてのホームルーム。担任の万城目遥教諭の話を聞く

教室に戻り、初めてのホームルーム。担任の万城目遥教諭の話を聞く

 
たくさんのお祝い品を贈られた新入生。ピカピカのランドセルに大事にしまう

たくさんのお祝い品を贈られた新入生。ピカピカのランドセルに大事にしまう

 
平田の「釜石トラ作りの会」が市内全小学校の新1年生に贈った虎舞を模したキーホルダーも児童らの手元へ

平田の「釜石トラ作りの会」が市内全小学校の新1年生に贈った虎舞を模したキーホルダーも児童らの手元へ

 
 同校の学校教育目標は▽よく考えやりぬく子(かしこく)▽豊かな心と思いやりのある子(やさしく)▽健康で明るい子(たくましく)。児童24人は友情を育みながら、教職員らの指導のもと閉校までの1年を元気に明るく大切に過ごしていく。
 
初めての小学校生活にワクワク、ドキドキ! 期待を膨らませる栗林小1年生。「1年間、がんばるぞ!」

初めての小学校生活にワクワク、ドキドキ! 期待を膨らませる栗林小1年生。「1年間、がんばるぞ!」

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夢実現へ出発!三陸鉄道(宮古)で入社式 「憧れの運転士に」釜石出身者も仲間入り

三陸鉄道に入社した南舘琉空さん(左)と北村侑彩さん

三陸鉄道に入社した南舘琉空さん(左)と北村侑彩さん

 
 岩手県沿岸を走る三陸鉄道(本社・宮古市)に1日、高校を卒業したばかりのフレッシュマンたちが仲間入りした。通称「三鉄」として地域に親しまれる同社に愛着を持つ2人。そのひとりが釜石市出身の南舘琉空(たく)さん(18)で、憧れの「運転士」になるための出発点に立った。「笑顔を忘れず、あたたかい気持ちが伝わるような運転をしたい」。夢に向かい、同期入社した宮古市出身の北村侑彩(ありさ)さん(18)とともに前へ進む。
 
 宮古市栄町の本社事務所内であった入社式。2人は真新しい制服に身を包み、引き締まった表情で臨んだ。石川義晃社長は1人1人に辞令を手渡し、歓迎。地域の生活の足として役割を担っていること、豊かな自然の景観を生かしたトレイルや宮古港へのクルーズ船寄港などで外国人観光客が増えていることに加え、東日本大震災から15年目の節目を迎えたことにも触れ、「沿岸地域の復興と発展の一端を担っているという誇りを持ち、会社と一緒に成長を目指していこう」と激励した。
 
石川義晃社長から辞令を受け取る南舘さん(中)

石川義晃社長から辞令を受け取る南舘さん(中)

 
新入社員2人を先輩たちがあたたかく迎え入れる

新入社員2人を先輩たちがあたたかく迎え入れる

 
 運転士候補生として入社した南舘さんは、釜石商工高(機械科)の出身。三鉄沿線の地域に住んでいることや家族の影響もあって、幼い頃から鉄道が大好きだった。走行する車両を見るのもいいが、車窓から見る景色が特別で魅力なのだという。好きを身近にした環境で、「運転士」は憧れの職業に。「地域に貢献できる仕事に就きたい」と思っていたこともあり、「三鉄一択」で就職活動をした。
 
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先輩社員から敬礼のやり方を教えてもらう南舘さん(右)

 
 夢実現の入り口に立ち、「ずっと憧れてきた会社に入ることができた」と素直にうれしさを表す南舘さん。配属は運行部。車両清掃や連結作業など見習い業務に携わりながら、運転士になるための勉強に励む。資格を得るまで2年~2年半かかるといい、「先輩たちの力を借りながら、早く一人前の運転士になれるよう努力する」と背筋を伸ばした。
 
ビシッと敬礼して石川社長(中)と記念撮影する新人2人

ビシッと敬礼して石川社長(中)と記念撮影する新人2人

 
 宮古商工高を卒業した北村さんは、宮古駅の駅務係に配属。乗客の案内など窓口、改札業務に当たる。「地域のため」と、震災後に三鉄がいち早く運転を再開させたことを知り、「私もこんな勇敢な方々のもとで働きたい」と入社を希望。「三鉄の魅力を発信したい。笑顔を届けて、また来たいと思ってもらえるような案内をしたい」と未来を思い描き、笑顔を弾けさせた。
 
「笑顔を忘れず、共に成長を」とエールを送る石川社長(中)の期待に応え、ほほ笑む南舘さん(左)と明るい笑みを広げる北村さん

「笑顔を忘れず、共に成長を」とエールを送る石川社長(中)の期待に応え、ほほ笑む南舘さん(左)と明るい笑みを広げる北村さん

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新年度始まる 釜石市役所に21人入庁 市民のため貢献誓う/小野市長 幹部職員に訓示

服務宣誓書を全員で読み上げる釜石市の新規採用職員=1日、辞令交付式

服務宣誓書を全員で読み上げる釜石市の新規採用職員=1日、辞令交付式

 
 2026年度のスタートとなった1日、釜石市内でも新社会人らがそれぞれの職場で入庁式や入社式に臨んだ。釜石市役所には新規採用職員21人が入庁。小野共市長から辞令を受け取り、市職員としての第一歩を踏み出した。同市は本年度、第6次市総合計画後期基本計画(5カ年)の初年度を迎えるほか、建設中の新市庁舎が完成し9月から稼働する。小野市長は幹部職員への訓示で、今後10年の市発展に必要な施策の3本柱を示し、さらなる尽力を求めた。
 
 新規採用職員の辞令交付式は市役所大会議室で行われた。小野市長が一人一人に辞令を交付後、代表の佐久間洸土(ひろと)さん(23)が先導し服務宣誓。「全体の奉仕者として誠実かつ公正に職務を執行する」と全員で声を合わせた。小野市長は市政の軸とする「地域医療、子育て、産業振興、教育、防災」について説明。「20年後の釜石をつくるのは皆さん。釜石の将来を担うという覚悟を持って、仕事にあたっていただきたい」と激励した。
 
小野共市長から辞令を受け取る2026年度新規採用職員

小野共市長から辞令を受け取る2026年度新規採用職員

 
男女21人が釜石市職員として新たな一歩を踏み出す

男女21人が釜石市職員として新たな一歩を踏み出す

 
 佐久間洸土さんは同市浜町出身。「地元で働きたい」と考え、「マルチにいろいろなことに関われる市職員」を志望した。辞令を受け、公務員としての責任を自覚。総合政策課に配属された。「まずは与えられたことをしっかりコツコツとやること」と目標を掲げる。東日本大震災時は釜石小の2年生。同5年の兄、祖母と自宅近くの高台に逃げ、津波から命を守った。市職員となった今、「浜の方にも安心して家を構えられるようになれば。魅力あるまちをつくり、人口流出を防ぐことが重要」と将来を見据える。
 
小野市長の前で宣誓書を読み上げる佐久間洸土さん

小野市長の前で宣誓書を読み上げる佐久間洸土さん

 
 生活環境課からスタートする三浦花音さん(20)は新社会人の船出に「心配より楽しみの方が大きい」と期待を高める。「生まれ育った故郷に、市民と一番近い距離で直接的に貢献できるのでは」と思い、市職員の道を選んだ。「市民に寄り添った対応ができる職員に。ぜひ、力添えできれば」と理想像を描く。幼稚園年中の時に震災を経験。まちの復興とともに小中学生時代を過ごしてきた。「昔ほどの活気を取り戻すのは難しいかもしれないが、今ある資源を最大限活用し、まちを盛り上げていければ」。趣味の旅行で見聞も広め、地元に還元していきたいと望んだ。
 
新社会人として故郷への貢献を誓う三浦花音さん。被災した鵜住居小の新校舎卒業一期生

新社会人として故郷への貢献を誓う三浦花音さん。被災した鵜住居小の新校舎卒業一期生

 
 辞令交付式を終えた小野市長は、新年度スタートにあたり、幹部職員約40人を前に訓示した。新市庁舎へ移転する本年度は「業務の効率化、市民サービス向上への大きな転機」とし、後期基本計画の3本柱▽交流人口拡大▽地域力拡充▽人材育成―を改めて強調。「外部の知恵を釜石発展の力に変える」「地域の自発的な力を引き出す」「持続可能なまちを支える人材を育てる」。これらを念頭に市政運営にまい進するよう促した。指摘される人口減少については「人口の増減だけで判断されるのは不本意。大事なのは『ここに住んで良かった』と、誇りと自信を持って言える釜石であること。住民が満足し、プライドを持って生きられるような施策を考えていく必要がある」と述べた。
 
小野市長(右上写真)が幹部職員を前に訓示。「釜石発展のストーリー」を描き、必要な施策3本柱を説明した

小野市長(右上写真)が幹部職員を前に訓示。「釜石発展のストーリー」を描き、必要な施策3本柱を説明した

 
 同市は新市庁舎への移転を好機とし、新たな部局間連携や業務の効率化を図る方針で、保健福祉部を中心とした組織改編を実施。係の統合、新設などで、市民にとって分かりやすい組織体制を構築する。人材育成のため、国などへの職員派遣も実施する。1日時点の職員数は373人(任期付き、再任用含む)。

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楽しい!安い!「かまいし百円市」祝10回 お宝ゲット、リユース推進、交流人口増市内外から注目

100円握ってお宝探し! 10回目を迎えた「かまいし百円市」=3月29日、TETTO前広場

100円握ってお宝探し! 10回目を迎えた「かまいし百円市」=3月29日、TETTO前広場

 
 釜石まちづくり会社主催のフリーマーケット「かまいし百円市」は3月29日に開かれ、市内外からの来場者でにぎわった。2022年夏から始まった同イベントは、年3回のペースで続けられ、今回で10回目を迎える。商品は全て“100円”という誰でも気軽に買える価格、家庭に眠っている物を必要な人に使ってもらえるリユース実践と買う側、売る側双方にうれしい企画は、近年の物価高、資源循環型社会推進も背景に注目を集める。主催者は今後も定期的に開催し、「来れば必ず楽しみと発見がある」場を提供していきたい考え。
 
 百円市の会場は釜石市大町の市民ホールTETTO前広場。午前10時の開店を前に大勢の人たちが詰めかけた。今回は釜石、遠野、大船渡の3市から12店が出店。衣類、おもちゃ、食器、古本、ハンドメイド雑貨…など多彩な品物が並んだ。来場者は各店を回り、気になったものを品定め。子どもたちはシールやステッカー、ぬいぐるみなどに夢中になり、親子でお得な買い物を楽しんだ。
 
市内外から12店が出店。来場者が各店を回って掘り出し物を求めた

市内外から12店が出店。来場者が各店を回って掘り出し物を求めた

 
一番人気は衣類。開店と同時に人だかりができた

一番人気は衣類。開店と同時に人だかりができた

 
子どもたちは人気ゲームのカードやステッカーに目がくぎ付け

子どもたちは人気ゲームのカードやステッカーに目がくぎ付け

 
 釜石市の工藤久さん(67)は初出店。趣味で30年ほど続けてきた小鳥飼育の用品を持ち寄った。鳥かご、つぼ巣、餌入れ、足輪…。「趣味が高じて、いろいろ集めてしまった。使い切れず、捨てるのももったいないので、使っていただける方があればと思って」。ジュウシマツやベニスズメなど小型の鳥を代替わりしながら飼育。数か月前、最後の1羽が旅立った。フリマでは珍しい品だけに興味津々で足を止める客も。鳥飼育以外にも応用できそうなものもあり、視線が集まった。
 
小鳥の飼育用品を並べた工藤さんのブース。大型の鳥かごは早々にお買い上げ。発想次第でさまざまな用途に活用できそう

小鳥の飼育用品を並べた工藤さんのブース。大型の鳥かごは早々にお買い上げ。発想次第でさまざまな用途に活用できそう

 
 今回の出店者の3分の1は過去にも出店経験のある“常連さん”。遠野市の菊池陽絵さん(36)は友人と2人で、衣類やアクセサリー、雑貨などを並べた。中には一度も着ることなくタグがついたままタンスで眠っていた洋服も。副業の弁当・焼き菓子店で販売しているクッキーなども販売した。「自分たちも楽しいし、お客様にも喜ばれているよう。さまざまな方々と交流できるのも魅力」と隣町での出店を重ねる。
 
遠野市で「AYAORI HOT CAT」という店を開く菊池さん。家庭で眠っていた衣類や雑貨のほか、店で出している焼き菓子も販売した

遠野市で「AYAORI HOT CAT」という店を開く菊池さん。家庭で眠っていた衣類や雑貨のほか、店で出している焼き菓子も販売した

 
 イベントの周知はチラシの市内新聞折り込みのほか、同社のインスタグラム、フェイスブックなどで行っている。SNSでの情報発信は予想以上に目にしている方が多いようで、会場には市外から足を運んだという人も。定期開催しているのを知ると、「また、ぜひ」と会場を後にした。
 
 花巻市から家族4人で初めて訪れた女性(36)は「フリマってよくあるけど、100円というのが分かりやすくていい。悩まないで買えるし…」とにっこり。子ども服、絵本、ぬいぐるみなどを購入した。幼児用品は使用期間も限られるため、子育て世代にとって安く手に入れられるのはうれしい限り。「見るだけでも楽しい」と声を弾ませた。宮城県気仙沼市の熊谷牧子さん(50)は友人と3人で訪れた。「これが目当てで」。昨年に続いて2回目の来場と明かし、金魚鉢や食器、鉄鍋などバラエティーに富んだ袋の中を見せてくれた。「100円で買えるのはうれしいですよね。掘り出し物を探すのも楽しい。それぞれ特色あるお店で面白かった」と満喫。「また、おじゃまします」と再訪を望んだ。
 
子育て世代にうれしい子ども服やおもちゃ。出店者にとってもまだ使えるものを次の利用者につなげられるのは最高の喜び

子育て世代にうれしい子ども服やおもちゃ。出店者にとってもまだ使えるものを次の利用者につなげられるのは最高の喜び

 
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過去にも複数回出店している古本屋さん。来場者には内容や感想を聞いて購入できるメリットも

 
初企画の100円詰め放題コーナーも盛況!「ふりかけ何個入るかな?」

初企画の100円詰め放題コーナーも盛況!「ふりかけ何個入るかな?」

 
 今回は10回記念として、主催者が用意した“100円詰め放題”コーナーもあった。手のひらサイズの小袋にふりかけ、おやつサラミ、キラキラストーンのいずれかを、入るだけ詰めるお楽しみ企画。大人も子どもも夢中になった。
 
 同社の下村達志事業部長は「リサイクル、リユースが推奨される時代というのもあり、そういう意識で出店される方も増えている。出店者、来場者ともに市外から来てくれる方もいて、交流人口拡大にも貢献できているよう。今後も周知を広げ、安定的に継続していきたい」と意欲を見せる。
 
開店から20分ほどで空になるハンガーも続出。お目当てのものをゲットしたい方は早めの来場がおすすめ

開店から20分ほどで空になるハンガーも続出。お目当てのものをゲットしたい方は早めの来場がおすすめ

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創造する楽しさを!北上機械鉄工業協、「夢のような」ものづくり体験 釜石にお届け

多彩な創作体験に笑顔を見せる子どもたち

多彩な創作体験に笑顔を見せる子どもたち

 
 子どもたちに創造する楽しさを体感してもらう「エコ・ものづくり体験まつり」(北上機械鉄工業協同組合主催)は3月28日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。家族連れらが訪れ、さまざまなジャンルの工作にチャレンジ。思い描いたものを形にしたり、好きなものを組み合わせたり、自分なりのアレンジを加えた“一点もの”を作り出す時間に夢中になった。
 
 同組合は、北上市の自動車整備、板金・鋳物加工など11社(正・賛助会員含む)でつくる組織。ものづくりが好きな子どもを育てようと、北上で同様のイベントを実施しており、これまで12回を数える。釜石での開催は2024年以来、2回目。幼少期から地域のものづくりに触れて魅力を知ってもらうとともに、東日本大震災後に人口流出が課題となる岩手県沿岸部への企業誘致につながるきっかけになればとの復興応援の目的もある。
 
多彩なものづくりを体験できるコーナーがお目見えした

多彩なものづくりを体験できるコーナーがお目見えした

 
 体験コーナーは全部で24あり、キーホルダーやストラップ、壁掛け、小物入れづくりなどさまざま。素材もビーズやビー玉、リボン、木材など質感の異なるものを使った。講師は北上市のほか、県沿岸部からも参加。共催する大槌町の「おおつちおばちゃんくらぶ」が声がけに協力した。
 
 会場では子どもたちが思い思いに工作を楽しむのはもちろん、趣味仲間で訪れた大人たちも普段とは違った手芸、作品づくりに熱中。ドライフラワーなどをガラス容器に入れて専用のオイルに浸して長期間保存するハーバリウムやリースづくりが人気だった。
 
小さなおもちゃのお弁当作りを楽しむ子どもら

小さなおもちゃのお弁当作りを楽しむ子どもら

 
皿回し、割り箸鉄砲など昔遊びは子どもたちに人気

皿回し、割り箸鉄砲など昔遊びは子どもたちに人気

 
身近にあるものを使ったものづくりに大人も夢中

身近にあるものを使ったものづくりに大人も夢中

 
 馬をかたどった木製玩具の色塗り体験に取り組んだ菊地駿伍さん(13)は、カラフルに仕上げた作品を手に「かっこいいのができた」と満足げに笑った。中学校が春休みのため、栃木県那須塩原市から父親の実家がある釜石に帰省中。「自分で考えられる」ものづくりに関心があり、多様な体験ができるイベントを歓迎。一番好きなのは絵を描くことだというが、ビー玉を使ったストラップづくりに挑戦したり、「やったことのない体験もできて楽しい」と、新たな出合いに刺激を受けた様子だった。
 
馬の人形に色を塗る作業に熱中する参加者

馬の人形に色を塗る作業に熱中する参加者

 
 大好きな工作を目いっぱい満喫したのは、地元の久保夢空瑠さん(9)。家庭で肩たたき、食器の片付けなどのお手伝いをし、その対価のお小遣いで体験コーナーをめぐった。11個目の体験として選んだのは、ビーズのチャーム(小さな飾り)づくり。「だんだんと形になっていくところがいい。達成感がある」と目を輝かせた。この後も、さらに探求活動を続行。母親の康子さん(47)は「いろいろなものに触れられ、子どもの脳にもいいと思う。やりたいことがあって、できることを頑張ったから、きょうは好きなことを存分に楽しんでほしい」と見守った。
 
作業を見守りながら参加者との触れ合いを楽しむ講師(左)

作業を見守りながら参加者との触れ合いを楽しむ講師(左)

 
 体験を提供した講師らとの交流も魅力の一つで、それは講師にとっても同じ。久保さんら子どもたちと接した北上市の主婦、藤田稲子さん(68)は「手を使うものづくりは脳を活性化させるし、創造する力も出てくる。子どもたちのアレンジ力は面白く、刺激になった」とほほ笑んだ。幼少期から編み物、裁縫などに親しみ、今回は「今、ハマっている」ビーズアクセサリーづくりを紹介。「自分が作ったものを褒められた記憶が今の手仕事につながっている」と話し、そうしたうれしさを誰かにつなぐ活動をこれからも続けていく。
 
子どもも大人も、来場者も講師も思い思いに楽しむ

子どもも大人も、来場者も講師も思い思いに楽しむ

 
使用済みの油を使ったせっけんづくりに取り組む参加者

使用済みの油を使ったせっけんづくりに取り組む参加者

 
 北上市の川辺商会代表取締役の川邉公雄さん(68)は、廃油を再利用した「EMせっけん」づくりを通じ身近にあるものの活用や、不要になったものでも無駄にせず有効活用する方法を伝えた。使用済みのサラダ油に、乳酸菌や酵母などの微生物を培養させたEM発酵液などを混ぜ、1カ月保存すると完成。「時間はかかるが、実際に使ってみると、汚れ落ちは抜群」とPR。「自然に優しいものづくりを喜んでもらえたら」と期待した。
 
 同組合がある北上市は県内有数の工業都市。同組合の斎藤一雄理事長=斎藤鉄工代表取締役社長=は「県内で最も早くできた工業団地は、65年以上の歴史がある」と強調し、まつりで「ものづくりのまち」の底力を見せた。まちの魅力として「口内鬼剣舞」も紹介。勇壮な舞に見物人から大きな拍手が沸いた。餅まき、菓子のつかみ取り、はずれなしの抽選会などもあった。
 
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勇壮な舞で来場者を楽しませた口内鬼剣舞

 
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「こっちにもー」。餅まきを楽しむ来場者

 
 この体験まつりは、子ども未来支援財団・子どもサポート基金の助成金を活用。同組合事務局の昆野清一さん(68)は「未就学児から小中学生を中心にものづくりのイメージを与えられたら。夢のようなイベントを楽しんでいる姿を見られるのがとてもうれしい」と穏やかに話した。

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釜石唐丹「星座石、測量之碑」日本天文遺産に 伊能忠敬の足跡残した地元の葛西昌丕は住民の誇り

「星座石と陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」の日本天文遺産認定を喜ぶ本郷文化財愛護少年団育成会の小池直太郎会長

「星座石と陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」の日本天文遺産認定を喜ぶ本郷文化財愛護少年団育成会の小池直太郎会長

 
 釜石市唐丹町本郷で200年以上にわたって受け継がれる「星座石」と「陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」が、公益社団法人日本天文学会(太田耕司会長)が選ぶ日本天文遺産に認定された。これらの石碑は、江戸時代に全国を歩いて測量し、初の実測日本地図作成に至った伊能忠敬(1745-1818)が唐丹村(当時)で天体測量したことを示しており、伊能の業績を同時代に顕彰したものとしては全国唯一とされる。認定にあたっては地元の長年にわたる保全活動が高く評価された。
 
 日本天文遺産の認定は、歴史的に貴重な天文学・暦学関連遺産の価値を広め、保全、活用を図るのが目的。唐丹の両石碑は2025年度(第8回)の選考委員会で選ばれ、本年1月の代議員総会で認定が決まった。3月5日に京都府で行われた授賞式には、保全活動に尽力する本郷文化財愛護少年団育成会の小池直太郎会長(79)が出席。学会から認定証と認定パネルを贈られた。
 
5日に京都府で行われた授賞式に出席した小池会長(中)。日本天文学会・日本天文遺産選考委員会の松尾厚委員長(左)、亀谷收委員(右)と(写真提供:釜石市教委文化財課)

5日に京都府で行われた授賞式に出席した小池会長(中)。日本天文学会・日本天文遺産選考委員会の松尾厚委員長(左)、亀谷收委員(右)と(写真提供:釜石市教委文化財課)

 
 伊能忠敬は測量の際、北極星などの高度から緯度を算出する天文測量を行っていた。その業績を示すのが、唐丹町本郷の高台に保存されている両石碑。伊能と同時代を生き、天文学を習得していた地元の知識人、葛西昌丕(1765-1836)によって作られたものだ。測量之碑は1814(文化11)年建立。星座石も同時期のものと推定される。
 
 測量之碑には、伊能が1801(享和元)年9月24日に唐丹村で測量し、天体観測で「北緯39度12分」の値を得たことが記されている。葛西は伊能の業績をたたえるとともに、この緯度が「時間がたっても不変なのか、あるいは西洋の学説にあるような地球の微動により変動するのかを後世の人々に解明してほしい」というメッセージを刻んでいる。“地球微動”の意味は明確ではないが、「章動や極運動のことと考えられ、19世紀初期の西洋天文学が日本の地方にまで伝わっていたことを示す重要な遺産」とされる。星座石は中央に「北緯39度12分」を意味する文字が刻まれていて、周囲には星座を示す黄道十二宮、季節を示す十二次が交互に刻まれている。
 
陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑(左、写真提供:釜石市教委文化財課)。測量之碑の前に星座石が置かれている(写真右手前)

陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑(左、写真提供:釜石市教委文化財課)。測量之碑の前に星座石が置かれている(写真右手前)

 
星座石。中央に「北極 出地弎 拾九度 十弐分」と刻まれている。「北極出地」は北緯を意味する用語で、「北緯39度12分」を意味している(写真提供:釜石市教委文化財課)

星座石。中央に「北極 出地弎 拾九度 十弐分」と刻まれている。「北極出地」は北緯を意味する用語で、「北緯39度12分」を意味している(写真提供:釜石市教委文化財課)

 
 両石碑は当初、設置された場所から移動されていて、正確な原位置は不明だが、▽伊能が唐丹村で緯度観測を行った歴史的証拠の一つ▽葛西が緯度変化(地球微動の有無)の証明を後世の天文学者たちに託そうとした努力の痕跡▽地元で2世紀以上にわたって受け継がれ、市民団体や同市によって管理、保全されている―などで、同遺産に認定された。
 

唐丹本郷の宝「日本天文遺産」認定に地元住民ら「名誉なこと」と歓迎

 
日本天文遺産に認定されたことを示すパネル。認定証とともに贈呈された

日本天文遺産に認定されたことを示すパネル。認定証とともに贈呈された

 
 「星座石」と「陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」は1985(昭和60)年に県指定有形文化財(歴史資料)となるなど、歴史的価値が評価されてきた。これまで複数の大学教授らの調査も行われてきたが、今回、天文学の観点から再評価を受けたことは地元にとっても大きな喜び。本郷文化財愛護少年団育成会の小池直太郎会長(79)は本郷町内会長でもあり、町内会総会で地区住民にこの朗報を報告。住民らは「名誉なこと」と歓迎したという。
 
 石碑で伊能忠敬の業績を後世に残した葛西昌丕は、唐丹村本郷の生まれ。五十集(いさば=水産加工)業を営む地元の名家で育ち、若くして仙台に出て天文地理学や国学を学んだ。歴史や文学にも精通。天保の大飢饉の際には新道開削などで貧民救済にも尽力した。現在、両石碑がある場所には、葛西の没後に門弟らが建てた遺愛碑(1836年建立)も並ぶ(1978年、市指定文化財)。博識で人格者―。「本郷の住民は地元の天文学者として尊敬してきた。郷土の偉人が残した2つの石碑は地域の宝」と小池会長。
 
測量之碑は高さ133センチ、幅71~76センチ。覆屋の中に設置されている

測量之碑は高さ133センチ、幅71~76センチ。覆屋の中に設置されている

 
星座石の副碑。碑文の損耗が著しく、やがて滅失することを憂慮し、2001年に建立された

星座石の副碑。碑文の損耗が著しく、やがて滅失することを憂慮し、2001年に建立された

 
 これら文化財の保全活動にあたってきたのが同愛護少年団。本郷地区の小学4~6年生が団員で、春と秋に育成会とともに石碑とその周辺、葛西が隠居後に暮らした仏ヶ崎(半島)中央部南岸の屋敷「奇巖(きがん)亭」跡地の清掃を続けてきた。少年団は東日本大震災後、活動を休止しているが、育成会が清掃を継続する。小池会長は「認定の趣旨からすると、今回の授賞は少年団、育成会の長年にわたる保護、保全活動の実績が認められたことによるもの」と自負。地域で文化財愛護の精神、先人を敬う心が自然と育まれ、次世代への継承につながっているとみられる。「今後も市と連携しながら守っていきたい」と小池会長。
 
唐丹町本郷の高台にある石碑群の設置場所。測量之碑の左隣に葛西昌丕の門弟が建てた遺愛碑がある。覆屋の外には星座石、遺愛碑の副碑も

唐丹町本郷の高台にある石碑群の設置場所。測量之碑の左隣に葛西昌丕の門弟が建てた遺愛碑がある。覆屋の外には星座石、遺愛碑の副碑も

 
 伊能忠敬に関する顕彰碑は明治以降のものはあるが、伊能が生存中に建立され現存しているのはここだけとされる。当時、伊能の偉業に注目し、後世に残さねばと考えられたのは、葛西昌丕にそれだけ天文学の知識があったということ。残念ながら、明治の大津波やその後の大火で地元には葛西に関する資料はほとんど残っておらず、伊能と葛西の面識の有無や両石碑の原位置、移動された経緯など判明していない部分も多い。星座石は、小池会長が小学生の頃には唐丹小の玄関前にあったという。今後の謎の解明にも期待が高まる。

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不法投棄はダメ!片岸海岸に「バスターズ」出動 地元釜石の環境団体 初企画の清掃活動

投げ捨てられていたとみられるごみ袋を回収する参加者

投げ捨てられていたとみられるごみ袋を回収する参加者

 
 釜石市片岸町の片岸海岸で3月16日、約70人が参加する清掃活動「不法投棄バスターズ」があった。2月下旬に一般ごみの不法投棄現場を発見した「かまいし環境ネットワーク」(加藤直子代表)が「広く現状を知ってほしい」と初めて企画した。「どうして、こんなものを…」と言葉をなくす参加者たち。海辺の景観を守る取り組みを通じ環境問題を考える機会にした。
 
 活動の場は、大槌湾を臨む県道231号沿いの斜面。自然保護活動に取り組む同団体のメンバーが付近を通った際に大量のごみが投げ捨てられているのを見つけた。市指定のごみ袋に入った家庭ごみ、バーベキューの残骸、ペットボトルや空き缶なども散乱。事前に確認した加藤代表(79)によると、付近では常習的にポイ捨てが行われているもようだが、「あまりにもひどい。悪質」と憤る。
 
片岸海岸に向かう県道231号沿いに捨てられたごみ

片岸海岸に向かう県道231号沿いに捨てられたごみ

 
県道を歩いて活動場所に向かう参加者。左下には白い物体が散乱

県道を歩いて活動場所に向かう参加者。左下には白い物体が散乱

 
 同団体は年に数回、「海ごみゼロウィーク」(環境省、日本財団主催)の全国一斉清掃キャンペーンなどに合わせて活動している。加藤代表は「自分たちで片づけてしまうこともできるが、それでは啓発にならない。ごみを捨てていいと思われないよう、たくさんの人に現状を見てもらいたい」と、今回のバスターズを計画。新聞紙面などで広く参加を呼びかけたところ、普段の3倍以上の“人の手”を得た。
 
中学生、高校生、地域住民が協力してごみ拾い

中学生、高校生、地域住民が協力してごみ拾い

 
プラスチック片など細かなごみもできる限り拾い集めた

プラスチック片など細かなごみもできる限り拾い集めた

 
 初参加の市民、市や県の環境関係課の職員らに交じり、中高生の姿も。力を合わせ、海岸一帯で約1時間にわたり、ごみを拾い集めた。2月の発見時とほぼ変わらない状態の道路脇の斜面には飲食料容器などが詰め込まれたビニール袋、衣料品、キャンプ・アウトドア用品などが放散。クッションや敷布団、塗料がはげた置物、大型のものでは洗濯機の洗濯槽などもあった。集められたごみの量は約250キロにもなった。
 
片岸海岸付近に不法投棄されたごみ。総重量は200キロ超

片岸海岸付近に不法投棄されたごみ。総重量は200キロ超

 
集められたごみを軽トラックに積み込む釜石市の職員ら

集められたごみを軽トラックに積み込む釜石市の職員ら

 
 「自分が住む地域にこんなにゴミがあるなんて、悲しい」と話したのは、釜石東中2年の岩洞涼星さん。この海岸を利用する機会はあまりなかったが、釣りやサーフィンなどを楽しむ人もいることを聞き、「ポイ捨てが多いと、地域外から来た人たちが悪い印象を受けるかもしれない。いい思い出を持ち帰ってもらえるようにしたい」と、作業に励んだ。目立ったのは、たばこの吸い殻と空き箱。「ごみを捨てるのを見かけたら声をかけるのが大切だと思う」と受け止めた。
 
 東中では新聞記事を見た教員らが働きかけ、それに応えた1、2年の生徒有志約20人が活動に協力。ごみを拾い、きれいになった海岸を見渡し、「きもちいい」とすがすがしさを共有した。
 
片岸海岸で行われた「不法投棄バスターズ」の参加者

片岸海岸で行われた「不法投棄バスターズ」の参加者

 
 釜石商工高機械科1年の鈴木蒼さんも掲載された記事を読み「現状を見たい」と、同級生の望月翔太さんを誘って参加した。市南部の平田地区で暮らし、通学路に落ちたごみを拾うなど環境保全の意識は高い。今回の参加を機に、同団体の活動や不法投棄についてさらに理解を深めた様子。「身の回りのどこにでも、ごみは出てくる。正しく廃棄し、処理することが大事。自分にできることを考え、行動したい」と刺激を受けた。
 
身近にある海辺の環境を守ろうと企画された清掃活動

身近にある海辺の環境を守ろうと企画された清掃活動

 
ごみの不法投棄がもたらす環境への影響を訴える加藤直子代表(手前)

ごみの不法投棄がもたらす環境への影響を訴える加藤直子代表(手前)

 
 加藤代表は、若い年代の参加を歓迎。「地域の人たちが大事にしている海岸。ごみが一つでもあると、捨ててもいいと思う気持ちが膨れ上がる。道行く人がごみを捨てる地域って、どう思う?…自分たちが暮らすまちにもっと目を向けて生活してほしい」と願った。

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釜石から能登へ― 安全に通学を! 新入学児童にトラキーホルダー トラ作りの会が2年目の贈呈

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能登半島地震被災地の新入学児童に虎舞を模したキーホルダーを贈った「釜石トラ作りの会」。平田公民館で活動中

 

 能登半島地震発生から間もなく2年3カ月。東日本大震災で被災した釜石市平田の市民グループ、釜石トラ作りの会(前川かな代表、7人)は、同地震被災地の新入学児童の交通安全を願い、郷土芸能“虎舞”をモチーフにした手作りキーホルダーを3市町の小学校に贈った。「復興を進める大人たちの力の源は子どもたちの笑顔。元気に学校に通ってほしい―」。15年前の震災を経験したメンバーらが能登の早期復興への思いを届ける。

 

 黄色のクラフトテープを編んで作るトラキーホルダーは、同会メンバーが考案したオリジナルデザイン。モチーフの虎舞は、「虎は千里行って千里帰る」という故事にあやかり、漁業が盛んな三陸地方で漁師らの無事帰還を願って踊り継がれてきた芸能で、同震災後は復興に向かう市民に大きな力を与えてきた。黄色は交通安全のシンボルカラーでもあり、新入学児童が安全に通学し、無事に帰宅してほしいとの願いを込める。

 

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交通安全のお守りにと、会員が考案した「トラキーホルダー」

 

 能登半島地震の被災小学校への寄贈は昨年に続き2回目。今年は輪島市、能登町に加え、珠洲市への贈呈が決まり、3市町の14校に今春入学する児童95人分のキーホルダーを贈ることになった。キーホルダーには「入学おめでとう 交通安全に気をつけてね!」というメッセージカードが添えられている。

 

 会の意向をくみ能登との橋渡しをしたのは、被災地の民間ボランティアセンターでコーディネーターとして活動してきた釜石市の伊藤聡さん(46)=さんつな代表=。今月2日、会から託されたキーホルダーを3市町の教委や学校に届けた。被災の影響で中学校の校舎を間借りして学校生活を送ってきた輪島市の門前東小、門前西小両校は、新年度から小中一貫校「門前学園」としてスタートする。両校の宮本久美子校長は「同じ被災を受けた釜石からの支援は心強い。子どもたちは全国から応援をいただき、今度は自分たちから何か行動しようという気持ちが芽生えるだろう」と感謝。同学園の新1年生は15人。「いただいた交通安全の思いを受け止め、気をつけて通学してほしい」と願った。

 

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輪島市の門前東、門前西小(新年度から門前学園)にキーホルダーを届けた伊藤聡さん(左)。両校の宮本久美子校長(右)が受け取った=写真提供:伊藤さん

 

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初の贈呈となる珠洲市の8校31人分は同市教委にお届け。河﨑裕子学校教育係長(右)は「新1年生の安全を願う気持ち、釜石とのご縁をいただき、大変ありがたい」と感謝した=写真提供:伊藤さん

 

 釜石トラ作りの会は、震災で被災した同市平田地区の住民が立ち上げた。仮設住宅入居時に集会所のサロン活動でクラフトテープによるものづくりを覚え、7年ほど前から“トラキーホルダー”の制作を開始。近隣小学校の新入学児童に贈ってきた。今年は初めて市立小全9校(入学児童111人)への贈呈も実現した。初期メンバーの一人、松坂康子さん(87)は「自分たちが作ったものを子どもたちが持ってくれるのはうれしい。地域貢献や被災地支援にもつながっているのは最高の喜び」と声を弾ませる。

 

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釜石トラ作りの会の前川かな代表(中)は目標だった釜石市の全小学校への寄贈実現に「夢がかなった。みんなの頑張りのおかげ」

 

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キーホルダーにはお祝いのメッセージカードが添えられる

 

 2年目となった能登支援について前川代表(61)は「私たちもいろいろな支援に助けられ、ここまでくることができた。何かの形で恩返しできればとの思いから始めた活動。現地に行くのは難しいが、せめてこういうものに思いを乗せてお礼の気持ちを伝えられたら」と話す。会は現在、平田公民館で活動するが、参加は同地区住民に限らず、誰でも歓迎。仲間を増やし、贈呈活動も継続していきたい考えで、「一人ではできなくても、みんなでやればできることもある。興味のある方はぜひ」と呼びかける。

 

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昨年1年間で、新入学児童への寄贈用に約250個を制作した

 

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ものづくりの楽しさを味わえる活動。地域貢献もメンバーの生きがいにつながっている

 

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平田出身の伊藤さんは会のメンバーとも顔なじみ。被災から立ち上がり、活動を続ける住民らの今を共に喜ぶ

 

 発災1カ月後から現地で活動を続ける伊藤さんは、能登の現状について「これから災害公営住宅が建ち始めるところだが、被災家屋の撤去もまだ残っている。住民は独居の高齢者が多く、仮設住宅を出た後の生活に不安を抱えている」とし、継続的な支援の必要性を実感。住民の引きこもり防止も課題で、トラ作りの会の前身のようなコミュニティーにつながる活動が求められるという。

 

 釜石と能登をつなぐトラキーホルダー。会のメンバーは子どもたちの喜ぶ姿を想像しながら、今後も楽しく活動を続けていく。