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地場産食材「おいしいの、いっぱい!」 釜石の小中学生、海・山の恵み 給食で味わう

釜石産食材を使った給食を味わう鵜住居小児童

釜石産食材を使った給食を味わう鵜住居小児童

 
 釜石市産の食材を使った「まるごと釜石給食」は20日、市内の小中学校全15校(支援学校を含む)で提供された。子どもたちが地域の海や山で育まれた豊かな恵みに舌鼓。地元の魅力に関心を高めた。鵜住居小(佐藤一成校長、児童144人)では、生産者や市関係者らと食卓を囲んで交流した。
 
 メニューは釜石湾で養殖するサクラマスの塩こうじ焼き、ニンジンやキュウリなどとあえた大根のナムル風、栗林町産ひとめぼれを炊き上げたご飯、三陸ワカメのみそ汁、リンゴ、牛乳で、食材8種類を使った。
 
 鵜小では4年生(29人)の教室で試食会があり、市学校教育課学校給食センターの沢里舞帆栄養教諭が食材を紹介。「釜石のおいしい食材を集めた特別なメニュー。生産者の皆さんが大切に育てて届けてくれた貴重な野菜をたくさん使っています。感謝しながら、みんなで味わいましょう」と呼びかけた。
 
料理を盛り付けて「まるごと釜石給食」が完成

料理を盛り付けて「まるごと釜石給食」が完成

 
作ってくれた人に感謝を込めて「いただきます」

作ってくれた人に感謝を込めて「いただきます」

 
 「いただきます」と声を合わせると、子どもたちは地域の恵みたっぷりの料理に箸を伸ばした。サクラマスの味が気に入った前川幹橙さんは「やわらかくておいしかった。(給食の献立に)もっと増やしてほしい」と満面の笑顔。寒さが増す季節となり甘さが加わったという白菜やネギも入ったみそ汁を「ほど良い味」と表現した佐々木惟楓さんは「釜石にもこんな食材があるんだ」と、おいしい発見を喜んだ。
 
「おいしいね」。生産者と一緒に給食を味わう子どもたち

「おいしいね」。生産者と一緒に給食を味わう子どもたち

 
 ネギを提供した橋野地区直売組合員の小笠原幸太郎さん(70)=甲子町=は児童と会話しながら触れ合いも楽しんだ。別の学校に通う孫たちが同じ献立を味わっている様子を想像し、「こんな風に喜んでくれていると思う。きちんとした良いものをたくさん作りたい」と改めて実感。同組合員でリンゴを届けた二本松誠さん(61)=鵜住居町=も子どもらの笑顔に意欲を高め、「いっぱい食べて元気に育って」と願った。
 
楽しい給食の時間はおいしい笑顔がいっぱい

楽しい給食の時間はおいしい笑顔がいっぱい

 
子どもとの楽しい触れ合いに食材提供者もにっこり

子どもとの楽しい触れ合いに食材提供者もにっこり

 
 市は地産地消、農業や水産業など地域産業への理解促進を狙いに2021年度から、まるごと釜石給食を設けている。新米が出回る時期に合わせ実施しており、今回は約2050食を提供。学校給食センターの山根美保子所長は「地元のおいしい農水産物を知ってほしい。試食会が生産者の意欲向上につながり、たくさん作ってもらえたら、釜石産を提供できる機会が増える…かな」と、おいしい楽しみに余韻を残した。

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釜石が誇る「鉄の歴史」 一年の学びを発信 栗林小児童「先人の熱い思い、つなぐ」

鉄の学習発表会で栗林小児童が取り組みを紹介した

鉄の学習発表会で栗林小児童が取り組みを紹介した

 
 釜石市の児童・生徒による鉄の学習発表会が9日、同市大町の市民ホールTETTOであった。同時開催された「海と希望の学園祭」(市、東京大の連携イベント)のプログラムとして実施。栗林小(同市栗林町、八木澤江利子校長、児童30人)の代表児童4人が近代製鉄の歴史や先人の思いに触れる学びの中で感じた気持ちを素直に伝えた。
 
 世界遺産・橋野鉄鉱山が学区内にある同校では、総合的な学習として隔年で鉄の学習に取り組む。今年度は5、6年生(13人)が市世界遺産室による座学、鉄の歴史館や橋野鉄鉱山の見学などで「鉄の町」の歴史に理解を深めてきた。夏には世界遺産を有する岩手県内3地域の児童交流会が釜石であり、学びを生かしてガイド役を担当。クイズなどで分かりやすく伝える工夫をし、古里の魅力を発信、学ぶ楽しさを共有した。
 
 一年の総まとめとして、民営釜石鉱山田中製鉄所時代の1886年に連続出銑を成功させた功労者の田中長兵衛、横山久太郎、高橋亦助らに焦点を当てた劇を作って同校の学習発表会「栗っ子祭り」(10月)で上演した。その物語のフィナーレ部分を放映し、「何度失敗しても、49回目での成功を迎えるまでの釜石の職工たちの努力や、夢に向かって諦めずに立ち向かうことの大切さを伝えられた」と成果を報告した。
 
学びの成果や地域の魅力を伝える栗林小の児童

学びの成果や地域の魅力を伝える栗林小の児童

 
 発表者の中平栞愛さんと遠野姫瑠さん(ともに5年)、藤原大叶さんと小國怜義さん(同6年)は学習を通し、先人たちの心の強さや粘り強さ、目標や自分で決めたことに向かって進む姿勢が強く印象に残ったと紹介。日本の原動力になった鉄づくりの歴史が続く地域のすばらしさを改めて感じたようで、「釜石には自慢がたくさんある。頑張る人を支えたり、熱い思いを持った人がいたことも誇り。自分たちの生活にも生かし、つなげていきたい」と声を合わせた。
 
 同発表会は例年、「鉄の記念日」(12月1日)を含む「鉄の週間」の関連イベントとして実施。今回は、同学園祭への子どもの参画促進を狙って組み込まれた。市民のほか、大学教授や日本製鉄の関係者らも聴講。終了後には、「先人たちから今に続くチャレンジを調べてくれてうれしい」「地域に伝える活動も学びの成果だ」などと感想を児童に伝えた。釜石市の高橋勝教育長は「地域資源を生かしたり、苦労しても知恵を出し合い工夫しながら学ぶことは今も同じ。考え続けていこう」と声をかけていた。
 
同時開催イベントの来場者も子どもたちの発表に耳を傾けた

同時開催イベントの来場者も子どもたちの発表に耳を傾けた

 
同時開催イベントで展示された作品「橋野鉄鉱山3番高炉」。ブロック約2万個を組み合わせて高炉を再現した

同時開催イベントで展示された作品「橋野鉄鉱山3番高炉」。ブロック約2万個を組み合わせて高炉を再現した

 
 子どもたちの学習を支える市世界遺産室の森一欽室長による講話もあった。鉄の町になった要因について地質や世界との関わりなどの視点を交えて解説。日本と釜石の鉄産業の近代化にも触れ、「皆さんは何回まで失敗できますか?…数回ならいいけど、10回だったらヤバいと思いますよね。釜石では48回失敗しても、やった。そのおかげで鉄の歴史が今なお続く」と強調した。
 
鉄の歴史やそれを生かした取り組みを説明した森一欽室長

鉄の歴史やそれを生かした取り組みを説明した森一欽室長

 
 釜石の鉄の歴史は「ストーリーとして把握し、なぜそうなったのか、自分ならどうするかを考える学び」と森室長。製鉄所や鉱山の坑道などの見学、たたら製鉄体験、鉄の検定など多彩な体験メニューで、学び考える機会を提供していることを紹介した。世界遺産やジオなどのつながりを生かした他自治体との連携事業も推進。さらに、2025年は橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産登録10周年を迎える。翌26年には近代製鉄の父・大島高任生誕200周年、27年は釜石鉱山発見300年と続き、周年事業を計画中。「広く釜石のことを伝え、来てもらうネタを考えていきたい」と展望した。

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16年ぶりの祭りに感涙 釜石・尾崎神社本宮(尾崎白浜) 震災、山火事、台風被害乗り越え…

曳き船(みこし海上渡御)などが行われた尾崎神社本宮式年大祭=釜石・尾崎白浜

曳き船(みこし海上渡御)などが行われた尾崎神社本宮式年大祭=釜石・尾崎白浜

 
 釜石市平田尾崎白浜地区にある尾崎神社本宮(佐々木裕基宮司)の式年大祭が10日、16年ぶりに行われた。東日本大震災(2011年)、尾崎半島林野火災(17年)、台風19号による豪雨災害(19年)と度重なる苦難に見舞われながら復旧・復興への道を歩み続けた地区住民にとって、祭りができる喜びはひとしお。地区を離れた元住民らも多数駆け付け、久しぶりの曳き船(みこし海上渡御)や地元の神楽奉納に目を潤ませながら見入った。
 
 3年に1度行われる同祭は、同神社の氏子総代らでつくる奉賛会(佐々木靖男会長)が中心となり復活させた。10日は、浜町の里宮から迎えたみこしに本宮のご神体を移す神事が行われた後、みこしが高台の神社から漁港までを渡御。岸壁から漁業者の船に乗せられた。大漁旗をはためかせる地元漁船が次々に出港。みこしを乗せたお召し船を先導し、防波堤の外に出ると全23隻の船が大漁や地域の平穏を祈願しながら海上を3周した。
 
高台の神社からご神体を乗せたみこしが出発

高台の神社からご神体を乗せたみこしが出発

 
尾崎白浜漁港に向かう祭り行列。漁港では多くの人が行列を出迎えた

尾崎白浜漁港に向かう祭り行列。漁港では多くの人が行列を出迎えた

 
色とりどりの大漁旗で飾られた漁船が次々に出港

色とりどりの大漁旗で飾られた漁船が次々に出港

 
防波堤外側の釜石湾を周回する漁船。紅葉の木々や青い海に大漁旗が映える

防波堤外側の釜石湾を周回する漁船。紅葉の木々や青い海に大漁旗が映える

 
 防波堤から曳き船を見守った地元の70代女性は、約50年にわたり夫婦で漁業を営んできた。「夫も70半ばになり(出船を)迷ったが、娘や孫に見せたいと参加を決めた。久しぶりの光景に感動で涙が出てくる」と胸がいっぱいの様子。地元産業の漁業は後継者不足が顕著だが、「行政などの支援も活用し、何とか継承していってほしい。若い担い手が育つことを期待する」と思いを込めた。
 
 父、兄、夫、息子と一族総出で祭りに参加した同地区出身の及川侑美さん(40、大船渡市)。自身も子どものころ、母と一緒に漁協女性部の手踊りに出ていた。「家族みんな祭りが大好きなので…。太鼓の音が聞こえると胸が高鳴る」と及川さん。今回、夫と次男はみこし担ぎで参加。前回の大祭時は高校生の次男はまだ生まれておらず、16年という時の流れを子どもらの成長と重ね合わせた。実家は漁業で、家族らは2隻の船に乗り込んだ。「祭りがなくなると寂しい。どうにかつないでいってほしい」と愛着を見せた。
 
見物客は防波堤などから船団を見守った。乗船者らが手を振って応える

見物客は防波堤などから船団を見守った。乗船者らが手を振って応える

 
 海上渡御を終えた船団が漁港に戻ると、みこしに向かって祝詞がささげられ、各団体の代表が神前に玉ぐしを供えた。地区唯一の郷土芸能、尾崎神社本宮神楽(佐々木雄大会長、10人)が踊りを奉納。継承する3演目の一つ「操作」は神前でのみ踊られるもので、今回の祭りのために復活させた。3年ほど前に同神楽会に入会した松本大輝さん(30)は初めて同演目を披露。「3人の踊りの輪を崩さないように必死に練習してきた。地区の皆さんに見せることができてうれしい」と声を弾ませた。「メンバーは練習を頑張り、(難しい)踊りも覚えてくれた。ありがたい」と佐々木会長(45)。「頼もしい後継者もいる」と語る視線の先には、紙で手作りした権現様(獅子頭)を手にする子どもの姿があり、将来の担い手として期待した。
 
漁港ではみこしを前に「尾崎神社本宮神楽」が踊りを奉納

漁港ではみこしを前に「尾崎神社本宮神楽」が踊りを奉納

 
16年ぶりに披露された演目「操作」。神前でのみ踊られる

16年ぶりに披露された演目「操作」。神前でのみ踊られる

 
3人の舞い手が息の合った踊りを見せる。見物客もなかなか見られない踊りに興味津々

3人の舞い手が息の合った踊りを見せる。見物客もなかなか見られない踊りに興味津々

 
神楽会は後継者の育成にも意欲。会場では手作りの権現様で踊りをまねる子どもも(写真左下)

神楽会は後継者の育成にも意欲。会場では手作りの権現様で踊りをまねる子どもも(写真左下)

 
 みこしの担ぎ手衆は地元在住、出身、縁故者らで、10代から60代までの約30人。初めてみこしを担いだ同地区の高校生堀内駿汰さん(17)は「ずっしりと重かった。(尾崎の神様に)この地域を見守っていてほしい」と願い、大役を担う責任も実感。祭りで地域が活気づくのも初めての経験で、「みんなでわいわいできるのが最高。自分たちが盛り上げて伝統の祭りを継承していければ」と未来を見据えた。担ぎ手衆をまとめる尾崎神社本宮奉賛会氏子総代の佐々木豊さん(59)は「地区を離れて暮らす若い人たちも祭りには帰ってくる。地元愛がうれしい」と喜び、「浜(漁業)も今、元気がないので、大漁祈願の祭りで少しでも上向けば」と願った。
 
みこし担ぎには高校生ら若手も協力。祭りを通して地域の良さを感じた

みこし担ぎには高校生ら若手も協力。祭りを通して地域の良さを感じた

 
海上渡御を終え、神社に戻るみこし。地域住民らが手を合わせて感謝した

海上渡御を終え、神社に戻るみこし。地域住民らが手を合わせて感謝した

 
地区を見下ろす高台にある尾崎神社本宮。尾崎半島のさらに先には奥宮と奥の院がある

地区を見下ろす高台にある尾崎神社本宮。尾崎半島のさらに先には奥宮と奥の院がある

 
 同神社の大祭は開催年だった2011年に震災でできなくなって以降、休止が続いていた。津波被害を受けた漁港施設の整備に時間を要し、尾崎半島林野火災、台風豪雨による土砂災害、新型コロナウイルス禍もあり、祭り復活の機を逸してきた。開催年の今年、地区内7カ所の砂防ダムの建設が完了したことも後押しし、「何としても今年こそは」と08年以来の実施を決めた。
 
 「感無量…。天候に恵まれたのが一番。海も穏やかで本当に神様のおかげだね」。16年ぶりの華やかな光景に感極まる尾崎白浜町内会の箱石忠男会長(69)。震災前、同地区では124世帯に340人が暮らしたが、今は100世帯を切っているという。人口減少や基幹産業の漁業の不振など課題はあるが、住民同士の助け合いやいざという時のまとまりの良さは今も変わらない。「祭りは町内の団結力も育む。住民の高齢化もあり、今後の形は未定だが、やっぱり(祭りは)必要だと思う」と話した。

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米、雑穀、野菜… 手作りメニューで収穫の喜び味わう 釜石・橋野で18回目の水車まつり

青空の下で開かれた第18回水車まつり=3日、橋野どんぐり広場

青空の下で開かれた第18回水車まつり=3日、橋野どんぐり広場

 
 釜石市橋野町の初冬の恒例行事「水車まつり」が3日、産地直売所の橋野どんぐり広場周辺で開かれた。米や雑穀、野菜などの農産物を昔ながらの食べ方で味わってもらい、同地域の魅力発信、誘客につなげるイベント。橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)、栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が共催する。18回目の今年も市内外から家族連れなど大勢の人が足を運び、地元住民らによる手作りメニューを味わった。
 
 同振興協の菊池会長が歓迎のあいさつをし、餅まきからスタートした。主催、協賛団体の代表が軽トラックの荷台から約800個の紅白餅をまいた。収穫祝いの餅が宙を舞うと、子どもも大人も手を伸ばし、にぎやかな歓声が響いた。
 
水車まつり恒例の餅まき。老若男女が楽しんだ

水車まつり恒例の餅まき。老若男女が楽しんだ

 
 毎回好評の豚汁は約300食分が用意された。地元産の野菜を使い、同振興協女性部が調理。無料のお振る舞いに長い列ができた。手打ちそば、雑穀おにぎり、きびの焼き団子は約150~260食分用意され、安価で販売された。手打ちそばの提供には鵜住居公民館で活動する「そばの三たて会」(奥山英喜会長)が2018年から協力している。来場者は好みのメニューを買い求め、青空の下で農作物の恵みを堪能。周辺の山々の紅葉は始まったばかりだったが、山間部ならではのすがすがしい空気に包まれながら、心地よい時間を過ごした。
 
豚汁のお振る舞いには長い列ができた。この味を求めて足を運ぶ人も多い

豚汁のお振る舞いには長い列ができた。この味を求めて足を運ぶ人も多い

 
豚汁、手打ちそば、雑穀おにぎり…。実りの秋を存分に

豚汁、手打ちそば、雑穀おにぎり…。実りの秋を存分に

 
炭火で焼くきびだんご。手作りのみそだれが香ばしさを倍増

炭火で焼くきびだんご。手作りのみそだれが香ばしさを倍増

 
会員がそば打ちをし、ゆでたてを提供する「そばの三たて会」

会員がそば打ちをし、ゆでたてを提供する「そばの三たて会」

 
 同市箱崎白浜地区から足を運んだいとこ同士という佐々木寧々さん、佐々木蒼さん(ともに小4)は「豚汁はジャガイモが大きくて、味も家で食べるのとは違う。お餅も10個ぐらい拾った。橋野は自然がいっぱいで好き。山にも登ってみたい」と笑顔満開。蒼さんの父隆寛さん(34)は「まつりには初めてきたが、子どもたちが楽しめて良かった。外で食べるのもうれしそう。何でも好き嫌いなく食べて元気に育ってほしい」と望んだ。
 
青空の下で食事を楽しむ来場者

青空の下で食事を楽しむ来場者

 
子どもたちもさまざまなメニューをおいしくいただきました!

子どもたちもさまざまなメニューをおいしくいただきました!

 
 どんぐり広場隣の親水公園には、かやぶき屋根の水車小屋があり、来場者が内と外から見学。橋野町には昔、集落ごとに共同利用の水車小屋があり、水力で動かすきねで米や雑穀をつき、もみ殻をはずす作業を一昼夜かけて行っていたという。この日は、農機具が機械化される前に精米などに使われていた「唐箕(とうみ)」の実演も行われた。7.5キロのもみ米を水車でついた後、木製の唐箕に投入。つまみを回して風を送り、米粒と粉状になったもみなどを分ける作業を公開した。精米した米は2合ずつ見学者にプレゼントされた。
 
今では目にする機会のない「唐箕」の実演に来場者は興味深げに見入った

今では目にする機会のない「唐箕」の実演に来場者は興味深げに見入った

 
 滝沢市から山田町の実家に帰省した吉田陽子さんは「昔はこうやって米を食べられるようにしていたんですね。子どもたちも『これ何するの?』と興味津々でした。昔の農業を知るいい機会」と喜び、ぬか漬け用に米ぬかももらってほくほく顔。「きびだんごとそばがおいしかった」と話す娘の梨緒さん(小2)と「来年も来たいね」と目を合わせた。
 
 橋野どんぐり広場の藤原英彦組合長は今年の農作物の出来について、「大きい台風で稲が倒れることもなく、米の収量はまずまず。野菜も昨年のような酷暑の影響はなく、良いほう。後は野生キノコの出荷制限が早く解除されれば」と来季に期待した。
 
水車が回る親水公園は散策の楽しみも。裏手には「ママシタの滝」がある

水車が回る親水公園は散策の楽しみも。裏手には「ママシタの滝」がある

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好きすぎて…「鳥」 作家・ライター細川博昭さん(釜石出身) 語る「人間に似ている」

書店に並ぶ本をのぞき込む人たち=釜石市大町・桑畑書店

書店に並ぶ本をのぞき込む人たち=釜石市大町・桑畑書店

 
 文化の日の3日、釜石市大町の桑畑書店(桑畑眞一社長)に、あるテーマの書籍を紹介するコーナーがお目見えした。客たちがのぞき込む先にあったのは「身近な鳥のすごい辞典」「鳥と人、交わりの文化誌」「インコのひみつ」などとタイトルが記された本。お気づきの通り、テーマは「鳥」で、釜石出身の作家・サイエンスライター細川博昭さん=神奈川県相模原市在住=が手がけた。その細川さんが来釜中だったことから、同日、トークイベントを開催。市民ら15人ほどが耳を傾け、「初めて聞く話で面白かった」と新たな視点や知識との出合いを楽しんだ。
 
「鳥」にまつわる書籍がずらり。著者は作家の細川博昭さん

「鳥」にまつわる書籍がずらり。著者は作家の細川博昭さん

 
 細川さんは釜石南高(現釜石高)卒。14歳の時に決めた「理系の物書き」になるため物理を学ぼうと上智大理工学部に進んだ。卒業後は一時一般企業で働いたが、執筆活動も行い、フリーに転身。物書き一本に絞ってからは鳥を中心に、歴史と科学の両面から人間と動物の関係をルポルタージュするほか、先端の科学や技術を紹介する記事も精力的に執筆、書籍の編集なども手がける。
 
 イベントでは、物書きという人生設計に至った中学時代の生活や思考、飼育する・しないに関わらず身近に鳥がいる地域性、あたためている鳥にまつわるネタなど、聴講者とやりとりしながら紹介した。
 
細川さん(手前)を迎えて開かれたトークイベント

細川さん(手前)を迎えて開かれたトークイベント

 
 鳥との暮らし、見ることが「自然だった」細川さん。社会人時代は鳥との関わりが薄い時期もあったが、27年前に出合った(拾った)セキセイインコの感情の豊かさに「賢い」と感じ、鳥の調査、研究に注力。鳥の体の機能や性格が人間と近かったり、優れていたり、新たな発見に「人生観が変わる」と改めて実感した。「鳥は一生懸命やっている。人間の方がいい加減で、鳥をもっと理解してほしい」と執筆を続けている。
 
 近著は「人も鳥も好きと嫌いでできている インコ学概論」(春秋社)。細川さんが言うには、鳥には「明確に好き嫌いがある。人間を対等の生き物として見ていて、好きの順番もあったり。面白い」と知的好奇心を刺激されている様子だ。
 
 熱を込めた話題は「恐竜から鳥への進化」について。定説となったその説を著書「鳥を識(し)る」(同)で解説する。その副題にもなった「なぜ鳥と人間は似ているのか」に関し、姉妹本的な新書が間もなく刊行予定。鳥と人間の「行動」の類似点について科学と心理学的要素から掘り下げた内容とのことだ。
 
ページをめくりながら鳥にまつわる話題を聞かせた

ページをめくりながら鳥にまつわる話題を聞かせた

 
参加者は熱心に耳を傾け、質問もさまざま出た

参加者は熱心に耳を傾け、質問もさまざま出た

 
 スズメ、カラス、メジロ、ヒバリ…「鳥ごとにいろんな話がある」と話は尽きない細川さん。ある自著を手に取って、「実は3倍くらいの原稿がある」と明かし、「紙の値段が上がっていて大変だが、売れると次が発行される」としっかり宣伝した。
 
 売り込みの工夫として、読者の力も借りているという。飼育書的な内容の本では写真を多用しているが、SNS(交流サイト)を活用して鳥の写真を募集。2000枚ほど寄せられ、整理という作業の労力は侮れないが、「購買者にもなってもらっている」と利点を挙げる。こうした読者との接点を持つ取り組みとして、トーク後にはサイン会も。「本が売れれば、書店のサポートにもなる。共存、共栄で執筆活動をしていければ」とペンを走らせた。
 
細川さんと読者や市民が触れ合ったサイン会

細川さんと読者や市民が触れ合ったサイン会

 
好奇心を刺激され、気になる本を手に取る市民

好奇心を刺激され、気になる本を手に取る市民

 
 桑畑書店の客のように平積みされた一角をのぞいてみると、「老鳥との暮らしかた」「くらべてわかる 文鳥の心、インコの気持ち」(誠文堂新光社)など、「確かに人間も…」と考えさせられるようなタイトルの本があったり、「オカメインコとともに」(グラフィック社)など写真が目を引くものが並んでいた。「宇宙をあるく」(WAVE出版)と毛色の違った本もあった。
 
 他にも「鳥を読む」(春秋社)、「大江戸飼い鳥草紙」(吉川弘文館)、「江戸の鳥類図譜」(秀和システム)、「知っているようで知らない鳥の話」(SBクリエイティブ)など多数出版されていて、支倉槇人名義での著作(文芸、パソコン関連など)もあるとか。手に取って、新しい文化の扉を開いてみるのもいいのでは―。

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平田に廃プラ対応のリサイクルセンター開設 11月から産廃処理開始、家庭プラは来年4月から

岩手資源循環 釜石総合リサイクルセンター完成見学会(自治体、報道機関向け)=10月31日

岩手資源循環 釜石総合リサイクルセンター完成見学会(自治体、報道機関向け)=10月31日

 
 岩手資源循環(谷博之代表取締役)が釜石市平田に建設を進めていた「釜石総合リサイクルセンター」が完成した。同施設は自治体収集の家庭プラスチックごみの再資源化を主に、産業廃棄物処理にも対応。来年度からの家庭プラごみ分別収集を計画する同市を含め、沿岸地域の資源再生への取り組み加速が期待される。11月からの施設稼働を前に10月31日から11月3日まで、自治体や法人関係者、地域住民向けの見学会が開かれた。
 
 31日は同市関係者約30人が見学。谷代表取締役(49)が工場棟を案内した。同施設は敷地面積約8120平方メートル。釜石など3市2町のごみ処理を行う岩手沿岸南部クリーンセンター隣の日本製鉄所有地を借りて整備された。工場棟(約1500平方メートル)はテント型の鉄骨組み幕構造。中に、家庭プラスチックごみと産業廃棄物を処理する装置がある。
 
釜石市平田第3地割に整備された「釜石総合リサイクルセンター」 写真上:左が工場棟、右が事務所棟

釜石市平田第3地割に整備された「釜石総合リサイクルセンター」 写真上:左が工場棟、右が事務所棟

 
 自治体が分別収集した家庭排出のプラスチックごみは検品後、機械に投入。2台の破集袋機で回収時の袋をはずし、手選別ラインでプラスチック再生できないものを除去。磁選機を経て、最終的に圧縮梱包機で「プラスチックベール」という固まりにし、再生業者に引き渡す。1日(8時間稼働)に12トンまで処理可能。釜石市のプラごみ分別収集が始まる来年4月から、市の委託事業として操業を開始する。
 
自治体回収の家庭プラごみを選別、圧縮梱包する機械装置

自治体回収の家庭プラごみを選別、圧縮梱包する機械装置

 
再生可能なプラごみを圧縮梱包機でプラスチックベール(写真左下)にする。プラベールは1個300キロ

再生可能なプラごみを圧縮梱包機でプラスチックベール(写真左下)にする。プラベールは1個300キロ

 
 産業廃棄物は機械投入前に、危険物のチェックを含め人の手でしっかり分別。廃プラスチック、木くず、繊維くず、ガラス・陶磁器くずなどに分け、品目ごとに機械に入れる。1次破砕機で約5センチ角に破砕。磁選機を経てベルトコンベヤーで運ばれ、品目ごとに下部の保管ボックスに落ちる仕組み。廃プラは2次破砕機でさらに細かく粉砕(約2センチ角)。再生プラスチックを成型するための原料、または化石(石炭)代替燃料として出荷する。廃プラは1日(同)100トンの処理が可能。産廃処理は11月中に開始する。 
 
産業廃棄物を破砕処理する機械。一番奥に2次破砕機がある

産業廃棄物を破砕処理する機械。一番奥に2次破砕機がある

 
 同社は、東日本を中心に廃棄物処理や再資源化事業を行う有明興業(東京都江東区)グループの3社が共同出資し、2022年5月に設立。23年2月、同市と工場立地協定を締結し、同年12月から建設工事が進められてきた。工場棟のほか、事務所棟(木造平屋建て、約250平方メートル)を有する。事業費は約10億円。従業員は地元雇用の24人。今後、選別作業に高齢者や障害者を含むパート採用も行っていきたい考え。
 
 谷代表取締役は「廃プラスチックの再生を一番の目的とした工場。家庭プラごみの選別、梱包は釜石市から始めて、他の沿岸自治体の受け皿にもなっていければ。沿岸特有の漁業系廃棄物はプラスチックが多く使われている。一つでも多くリサイクルし、新たな原料として生かせるようにしたい」と話す。既に多くの漁業関係者や一般法人が関心を寄せているという。全体で年間約9000トンの処理を当初目標とする。
 
左上写真:施設について説明する谷博之代表取締役 右上写真:説明を聞く小野共釜石市長ら

左上写真:施設について説明する谷博之代表取締役 右上写真:説明を聞く小野共釜石市長ら

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険しさも和らぐ秋景色かな 釜石・仙人峠マラソン 急坂挑むランナーら「楽しい」

標高差約400メートルの険しいコースに挑んだ「かまいし仙人峠マラソン大会」

標高差約400メートルの険しいコースに挑んだ「かまいし仙人峠マラソン大会」

 
 急勾配を駆け抜ける「かまいし仙人峠マラソン大会」(同実行委主催)は10月27日、釜石市甲子町大橋の旧釜石鉱山事務所を発着点に行われた。15回目となった大会には、国内外から122人が参加。秋色深まる峠道は見るに楽しいが、アップダウンの激しさも併せ持ち、そんな難コースにランナーたちは果敢に挑んだ。
 
自然や季節を体感!峠道の特徴を生かしたコースが持ち味

自然や季節を体感!峠道の特徴を生かしたコースが持ち味

 
 2010年に始まった同大会は、仙人峠の紅葉のように美しく明るいまち、険しい道のりを乗り越える力を育むことを目標に掲げる。新型コロナウイルス禍で中止していたが、昨年4年ぶりに復活。従来の2コース(17.2キロ、10キロ)を一本化させた形の、約10キロの峠コースに絞って実施した。
 
 今回は昨年の峠コースを16.9キロに延伸。国道283号を下った大松と、標高差約400メートル、平均斜度約5%の坂を上った遠野市との境となる仙人トンネルの釜石側入り口付近の2地点で折り返すコースにした。
 
峠コースの挑戦者たちがにこやかな表情で一斉にスタート

峠コースの挑戦者たちがにこやかな表情で一斉にスタート

 
 高校生から80歳までのランナーは一斉にスタートし、大松までの下りを快走。4.8キロ地点で折り返すと、一転して緩やかな上りとなり、大橋トンネルを抜けた10キロ地点に姿を見せた挑戦者の表情はさまざまだった。軽快さを残す人もいれば、顔を赤らめたり、息があがっていたり。すでに歩きを取り入れている様子も見受けられたが、さらに険しさを増す急坂へ向かった。
 
大橋トンネルを抜けた辺りでランナーは笑顔を見せるも…

大橋トンネルを抜けた辺りでランナーは笑顔を見せるも…

 
峠のきつい坂を懸命に駆け上がる参加者ら=仙人大橋手前

峠のきつい坂を懸命に駆け上がる参加者ら=仙人大橋手前

 
女子は18~68歳の11人がエントリー。上位者はまだ余裕の表情

女子は18~68歳の11人がエントリー。上位者はまだ余裕の表情

 
それぞれのペースで完走を目指す。下りは大幅にスピードアップ(写真下)

それぞれのペースで完走を目指す。下りは大幅にスピードアップ(写真下)

 
 仙人トンネル手前の地点までひたすら続く坂道を体力と精神力で駆け上がり、下るランナーを沿道からの声援が後押し。「ファイト!」「がんばれー」「あと少し」を力にゴールした挑戦者たちには「達成感」という笑顔が共通していた。
 
釜石スポーツ界のレジェンドも見事な走り(左:新日鉄釜石ラグビーV7戦士の氏家靖男さん  右:はまゆりトライアスロンで活躍した東洋さん)

釜石スポーツ界のレジェンドも見事な走り(左:新日鉄釜石ラグビーV7戦士の氏家靖男さん 右:はまゆりトライアスロンで活躍した東洋さん)

 
ゴールテープはすぐ目の前!ランナーを中学生らが迎えた

ゴールテープはすぐ目の前!ランナーを中学生らが迎えた

 
 最も遠くからの参加者に贈られる「遠来賞」を受けた川本啓さん(44)は知人の誘いがあって、12年以来2回目の参加。コースの“きつさ”を知っていたことから余力を残す形で、木々で色づく景色やあたたかい応援を楽しみに走った。開会式で担当した選手宣誓を有言実行。「参加者同士で励まし合いながら、幸せや釜石の未来を思って走り抜いた」とすがすがしい表情を見せた。
 
 誘った知人というのが、釜石出身のリンドステット佳奈さん(42)。スウェーデンから里帰り中で、夫のトーマスさん(45)が初参加していて「本当は私たちが遠来賞だね」と笑っていた。ゴール近くで待ち構えた子どもたち、コンラッドさん(8)、クヌートさん(6)の歓迎を受けたトーマスさんは「ハードで、ちょっとタフなコースだったが、とっても楽しかった。距離は短いかな」とニヤリ。沿道から聞こえてきた野球少年の声や自然の美しさが印象に残ったと満足そうだった。
 
「遠来賞」の川本啓さん(左)とリンドステット トーマスさん一家

「遠来賞」の川本啓さん(左)とリンドステット トーマスさん一家

 
 「満身創痍(そうい)」「いや、余裕っスよ」。完走後にそんなやりとりをしていたのは釜石海上保安部の5人で、巡視艇「きじかぜ」に乗って海の安全・保全業務に励む仲間だ。2回目の参加となる船長の昆諒平さん(35)が「釜石勤務時の思い出づくりに」と声をかけ、いずれも初エントリーの岩波健太郎さん(37)、小野潤一さん(28)、小谷涼太さん(21)、岡安健太さん(28)とともに力走した。海上から陸上へ足場を移した活動に、「山は海の恋人といいますから」と笑い合い、団結力を強化。体力アップも図り、「愛します!守ります!海のもしもは118番」とアピールも忘れなかった。
 
完走し達成感をにじませる釜石海上保安部の5人

完走し達成感をにじませる釜石海上保安部の5人

 
 大漁旗Tシャツとラグビーボールのかぶりもので“釜石愛”を見せたのは、東京都の会社員飛澤潔一さん(39)。第1回大会から欠かさず参加し、「ちょうどハロウィーンの時期なので」と、ちょんまげやネコ耳など毎回、頭のプチ仮装で楽しませる。「昨年は10キロだったので、今年は途中からすごくきつくて…。沿道の応援やきれいな紅葉が励みになった」。釜石に親戚がいて、「遊びにくる口実に」と大会参加を続ける。「39歳以下の部への参加は今回で最後。振り返ると感慨深い。今年は参加者が少ないようだが、来年また盛り返してくれるといい」と望んだ。
 
釜石を全力応援!東京都の飛澤潔一さんは同大会“皆勤賞”。今年のかぶりものは「ラグビーボール」

釜石を全力応援!東京都の飛澤潔一さんは同大会“皆勤賞”。今年のかぶりものは「ラグビーボール」

 
 難コースでつらさを予想するも、意外と多いのが笑い顔。東京都北区の笹岡由喜枝さん(65)も満面の笑みを蓄えながらゴールした。東日本大震災の復興支援が縁で同大会への参加を重ねてきたが、昨年はケガで断念。再戦を果たした今回、喜びを体現しながら走り切った。沿道から届く「走りに寄り添うような応援がありがたくて笑顔を返すの」と話し、信条とする「スマイルラン」で再来を思い浮かべていた。
 
笑顔が印象的な笹岡由喜枝さん。3位入賞(男女年齢別)で8個目のトロフィーを手にした

笑顔が印象的な笹岡由喜枝さん。3位入賞(男女年齢別)で8個目のトロフィーを手にした

 
 挑戦者たちの走りを地域住民、小中学生ボランティアが支えた。甲子中生はゴール付近で計測タグを回収したり水を手渡したり補助員として活躍。6カ所に分かれ給水係を担ったのは甲子地域会議内の各町内会員ら約50人で、釜石野球団Jr.(ジュニア)など野球少年も加わった。
 
 釜石ファイターズから20人余りが参加。小原璃青さん(小学5年)は「みんな、最後まで走り切ろうと頑張っていてすごい。自分たちの応援でゴールまで行ってほしい」と気持ちを込めて声を出した。「ゴーゴー仙人?」「さーいきましょう。やってきました仙人マラソン」など、野球の応援をアレンジした節や替え歌で盛り上げたり、選手とハイタッチする姿も。松本航汰さん(同2年)は「懸命に走っていてかっこよかった。地域の活動をお手伝いして、役に立つことができた」とうなずき、八重樫光彦コーチ(41)は「子どもたちがスポーツの力を感じ、刺激になれば」と期待した。
 
野球の応援をアレンジし参加者に声援を送る釜石ファイターズの団員。ハイタッチで交流も=仙人大橋付近

野球の応援をアレンジし参加者に声援を送る釜石ファイターズの団員。ハイタッチで交流も=仙人大橋付近

 
給水係には甲子地域会議の各町内会員約50人が協力。拍手で参加者を迎えた=仙人大橋たもと

給水係には甲子地域会議の各町内会員約50人が協力。拍手で参加者を迎えた=仙人大橋たもと

 
大橋トンネル付近の給水所やコース沿いでも市民が声援を送った

大橋トンネル付近の給水所やコース沿いでも市民が声援を送った

 
 「マニアックなコースを楽しんでもらった」と小泉嘉明実行委会長(市体育協会長)。昨年に続き、運営体制などを考慮し規模を縮小した形となったが、「このコースはまれ。どうにか生かしたい。親子で楽しめることを考えてみたり…」と、継続への思いは上向きのようだ。
 
美しい紅葉に元気をもらい一歩一歩前へ…。仙人峠の秋風景も参加者を引きつける大きな魅力

美しい紅葉に元気をもらい一歩一歩前へ…。仙人峠の秋風景も参加者を引きつける大きな魅力

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保健福祉、文化財保護、消防防災、林業振興の4分野で活躍 釜石・市勢功労者6人

釜石の市勢発展に貢献し功労者表彰を受けた受賞者ら

釜石の市勢発展に貢献し功労者表彰を受けた受賞者ら

 
 釜石市は10月31日、2024年度の市勢功労者表彰式を港町の陸中海岸グランドホテルで開いた。保健福祉の向上や文化財の保護管理、消防防災の各分野で市勢の発展に貢献した自治功労者として5人を表彰。林業の振興に尽くした1人を特別功労者としてたたえた。
 
 自治功労では、学校歯科医として及川陽次さん(61)=大町、学校医としては小笠原善郎さん(65)と濱登文寿さん(60)=ともに上中島町=が表彰を受けた。それぞれ保健福祉の向上、子どもへの献身的な活動を継続中。市文化財保護審議会長を4年余り務めた川原清文さん(81)=唐丹町、消防団員として47年間活動し、市消防団本部分団長などの要職も務めた千葉茂さん(71)=同=も受賞した。
 
各分野で力を尽くし自治功労表彰を受けた5人

各分野で力を尽くし自治功労表彰を受けた5人

 
 特別功労には、釜石地方森林組合代表理事組合長を通算5年間務めた久保知久さん(76)=平田町=を選出。長年、地域林業の振興発展に力を注いでおり、16年に自治功労表彰を受けている。
 
釜石市が開いた2024年度の市勢功労者表彰式

釜石市が開いた2024年度の市勢功労者表彰式

 
 式辞に立った小野共市長は「新たな時代、新しい釜石を築き、持続可能なまちづくりを進めるには市民の力添えが欠かせない。これまで培ってきた豊かな識見と経験のもと、一層の支援と協力をお願いする」と述べた。
 
市勢の発展に尽くす6人をたたえた小野共市長

市勢の発展に尽くす6人をたたえた小野共市長

 
代表して謝辞を述べる川原清文さん

代表して謝辞を述べる川原清文さん

 
 受賞者を代表し、川原さんが「それぞれの分野で活動してきたことが、人とのつながりや地域、市勢の発展に少しでも貢献できたことはこの上ない喜び。受賞は、周囲の支援や協力のおかげ」と謝辞を述べた。人の営みや歴史をうかがい知れる文化財の魅力を語り、「深みにはまった」とニヤリ。後進の活躍に期待を寄せつつ、「これからも市民が安心して暮らせるような、より魅力的なまちとなるよう努力していきたい」と話した。
 
リラックスした様子で写真撮影に臨む受賞者ら

リラックスした様子で写真撮影に臨む受賞者ら

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秋空にキラリ!神輿に活気づく・釜石まつり 曳き船中止も、伝統継ぐ試みで盛り上げ

市街地を進む尾崎神社と日本製鉄北日本製鉄所釜石地区山神社の神輿=20日

市街地を進む尾崎神社と日本製鉄北日本製鉄所釜石地区山神社の神輿=20日

 
 釜石市の尾崎神社(浜町)と日本製鉄北日本製鉄所釜石地区山神社(桜木町)合同の「釜石まつり」は18日から3日間にわたって行われた。19日に予定していた尾崎神社の神輿(みこし)を乗せた漁船十数隻がパレードする「曳(ひ)き船まつり」は悪天候が予想されたため中止され、ご神体を迎える船など数隻のお渡りとなった。最終20日は秋晴れの下、市街地を背景に両神輿が渡御。沿道は多くの見物人でにぎわった。
 
 19日の釜石港。曳き船のパレードは中止となったが、尾崎神社奥宮から里宮に移るご神体を載せた神輿を迎えようと、岸壁では虎舞や神楽などの芸能団体、市民らが待ち構えた。大漁旗をなびかせた御召船が着岸すると、威勢のいい掛け声やおはやしが響き渡り、活気づいた。
 
大漁旗で彩られた御召船を虎舞などの芸能団体が迎えた=19日

大漁旗で彩られた御召船を虎舞などの芸能団体が迎えた=19日

 
 大漁祈願に―。萬漁業生産組合(箱崎町桑ノ浜)は、色鮮やかな大漁旗を掲げた2隻の船を岸壁に寄せ迎えた。「まつりだから。漁ができる感謝もあるし」と萬文貴組合長。今年の漁は上向き基調だったが、ここ1カ月ほどは厳しい状況とのこと。サバ、ソッコなどのブリ系統を狙っていて、「回遊してくる可能性はある。漁師たるもの、もうけねば」と、乗組員14人とともに腕をまくった。
 
海への感謝、漁の好転へ願いを込める萬漁業生産組合の漁師ら

海への感謝、漁の好転へ願いを込める萬漁業生産組合の漁師ら

 
 この日は、家々の前で舞を披露する門打ちが早い時間から行われた。大町の釜石情報交流センター周辺でも各団体が虎舞や神楽を繰り広げ、市民らが見物。近くの青葉通りには縁日広場が開設され、夜遅くまで屋台遊びを楽しむ姿が見られた。
 
k虎舞、神楽、七福神…門打ちで祭り気分を盛り上げる芸能団体

虎舞、神楽、七福神…門打ちで祭り気分を盛り上げる芸能団体

 
青葉通りにずらりと並んだ屋台は夜遅くまでにぎわった

青葉通りにずらりと並んだ屋台は夜遅くまでにぎわった

 
 神輿の合同渡御は20日昼過ぎに鈴子町を出発。市内15団体、約1000人の行列は魚河岸の釜石魚市場を目指した。途中の「御旅所」周辺など目抜き通りで各団体が神楽や虎舞、鹿踊りなどを披露。沿道を埋めた見物客から盛んな拍手を受けた。
 
 神輿の担ぎ手として参加した父親の姿を「かっこいい」と見つめた松澤優之介君(5)。きらめく神輿が「きれいだった」と笑った。一緒に訪れた60代の祖母らは東日本大震災の影響で海から少し離れた場所に転居し、まつり見物は「久しぶりだ」という。笛や太鼓のおはやし、掛け声といった祭りの音、大勢が集うまちの景色をしみじみと懐かしんだ。
 
日差しを受けた2基の神輿が市街地を練り歩く=20日

日差しを受けた2基の神輿が市街地を練り歩く=20日

 
色鮮やかな衣装をまとった踊り手たちが行列を華やかに彩る

色鮮やかな衣装をまとった踊り手たちが行列を華やかに彩る

 
子孫繁栄の願いを込めた鹿踊り、自前の神輿や山車も参加

子孫繁栄の願いを込めた鹿踊り、自前の神輿や山車も参加

 
さい銭をあげて手を合わせたり、大勢が行列を見守った

さい銭をあげて手を合わせたり、大勢が行列を見守った

 
 山神社の神輿に続いて「わっしょーい」とかわいらしい掛け声が聞こえてきた。小さな神輿の担ぎ手は、製鉄所や関連企業に勤める社員の子どもら13人。山口伊織さん(9)、橙利さん(7)の兄弟は「初めて参加した。楽しかったし、また担ぎたい」と笑顔を見せ、母親の彩乃さん(32)は「迫力あるまつり。子どもたちの頑張り、かわいい姿を見ることができた」とうれしそうだった。
 
修繕された神輿を担いで行列を盛り上げた子どもたち

修繕された神輿を担いで行列を盛り上げた子どもたち

 
 製鉄所で働く人が暮らす社宅は市内各地にあり、社宅ごとに神輿もあったという。今回、小川地区に残っていた神輿を修繕、復活させた。同社釜石総務室の高橋聡太郎さん(30)は「子どもの頃から地域の取り組みに参加することで愛着を持ってもらえる。まつりの盛り上げにもなる」と意義を強調。大人たちの神輿も「釜石の地で長く事業を続けられているのは地域の支えがあってこそ。感謝を伝える機会として、まつりは重要な位置づけ。人数の確保は容易ではないが、(参加を)定着、継続したい」と熱を込めた。
 
薬師公園御旅所に入る尾崎神社の六角大神輿と山神社の神輿(右)

薬師公園御旅所に入る尾崎神社の六角大神輿と山神社の神輿(右)

 
 尾崎神社六角大神輿の担ぎ手にも助っ人が加わった。防災や伝統文化の継承をテーマにした体験研修で来釜した東海大学観光学部の服部泰講師のゼミに所属する3、4年生計25人で、男子学生8人が力を貸した。東京出身の竹中凌さん(3年)は「神様、昔ながらの伝統を感じながら神輿を担ぐのは初めて。手を合わせて迎える人がいたり、そんな重みが肩にのしかかった。まち全体が文化を大切にしていた」と新鮮な経験を楽しみつつ、爽やかな汗を流した。女子学生は物持ちとして列に加わった。
 
大学生や近隣市町からの助っ人も加わった渡御行列でまちが活気づく

大学生や近隣市町からの助っ人も加わった渡御行列でまちが活気づく

 
 魚市場御旅所では神輿還御式が行われ、奥宮にかえるご神体を各団体がおはやしで見送った。主催の同まつり実行委事務局によると、19、20の2日間で計約1万人の人出があった。

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国蝶「オオムラサキ」の幼虫すくすくと 釜石・日向ダム湖畔でふ化 観察会参加者「いた、いたー!」

「オオムラサキの幼虫はどこにいるでしょうか?」 答えはこの後の写真で…

「オオムラサキの幼虫はどこにいるでしょうか?」 答えはこの後の写真で…

 
 釜石市の小川川上流、日向ダム周辺で、環境省の準絶滅危惧種に指定されているチョウ「オオムラサキ」の幼虫が見られている。8月に産み付けられた卵からふ化したもので、体長2~3センチの黄緑色の幼虫が、餌となるエゾエノキの葉を食べて元気に育っている。15日には、同所での繁殖を願いエゾエノキの植樹を続けている、かまいし環境ネットワーク(加藤直子代表)が観察会を開いた。
 
 オオムラサキの幼虫が見られるのは、同ダム管理棟の北西に位置する多目的広場に向かう途中の“語らいの森”。同ネットワークが2007年に苗木を植えて育ったエゾエノキがある場所だ。会員で同所の保護、オオムラサキの観察を続ける菊地利明さん(59)が「目の前にいる」「葉の先端」などとヒントを与えると、必死に目を凝らす参加者から「見つけたっ」「あーいた、いた」「目が慣れてくると、いっぱい見える」と歓声が上がった。
 
参加者はオオムラサキの幼虫が見られるエゾエノキがある日向ダム「語らいの森」へ…

参加者はオオムラサキの幼虫が見られるエゾエノキがある日向ダム「語らいの森」へ…

 
菊地利明さん(左)が指差す先に目を凝らすと…

菊地利明さん(左)が指差す先に目を凝らすと…

 
1枚目の写真の答えは…黄丸部分!「 皆さん、見つけられましたか?」

1枚目の写真の答えは…黄丸部分!「 皆さん、見つけられましたか?」

 
 菊地さんによると、今の時期に見られるのはふ化後、3回脱皮した三齢幼虫。頭に大きめの2本の角、背中に4対の突起があるのが特徴。正面から見ると、漫画のキャラクターになりそうな愛らしい顔をしている。野鳥やスズメバチなどの天敵に見つかりにくいように、この時期は葉とほぼ同色で、餌を求めて活発に動き回るのは朝や夕方。寒くなって落葉するまでは樹上で過ごすが、寝床と餌場は別の場所で、葉を食べた後、再び寝床に戻る習性があるという。
 
エゾエノキの葉の上を移動するオオムラサキの幼虫。「顔、かわいいー!」

エゾエノキの葉の上を移動するオオムラサキの幼虫。「顔、かわいいー!」

 
「お食事中??」かな。「いっぱい食べて大きくなーれ!」

「お食事中??」かな。「いっぱい食べて大きくなーれ!」

 
 オオムラサキの雌の成虫は1匹で約500個の卵を産むというが、卵100個のうち成虫にまでなれるのはわずか1%。観察会では、無精卵か寄生虫の侵入が原因とみられる、ふ化できなかった卵の痕跡も見つかった。
 
 幼虫は葉を食べながらさらに大きくなる。11月初め~中ごろに落葉すると、樹上から下りてきて落ち葉にくるまって冬眠。冬季の体は枯れ葉のような保護色に変わる。年を越し、芽吹きの季節になると再び木に登り、6月にかけてサナギを形成する。7~8月が羽化の時期。雄が先に羽化する。
 
ふ化しなかった卵の痕跡も確認。成虫になるまでにはさまざまな困難が…

ふ化しなかった卵の痕跡も確認。成虫になるまでにはさまざまな困難が…

 
エゾエノキの根元には冬眠用の枯れ葉が飛ばないよう囲いを施している

エゾエノキの根元には冬眠用の枯れ葉が飛ばないよう囲いを施している

 
 昨年5月、同ダム周辺で行われたエゾエノキの植樹会にも参加した同市の川上凜さん(23)は、初めて見るオオムラサキの幼虫に感激。「最初は全然見つけられなかったが、よく見ると角があったり特徴的。来年はサナギや成虫も見てみたい」と期待を膨らませる。成長過程を知ることで植樹の意義も感じ、「自然は1年や2年でどうこうなるものではない。地元の人たちが環境を守り、次世代につないでいこうとする活動は素晴らしい」と敬意を示した。
 
 この日は、ダムが完成した1997年から続けられてきたエゾエノキの植樹箇所も見て回った。ダム完成時に植えられたものは大木に成長。近年植えられたものはシカの食害を防ぐために防護ネットで囲われていて、まだ低木ながら順調に成育している。エゾエノキにはオオムラサキのほか、ゴマダラチョウやテングチョウも卵を産むという。
 
植樹したエゾエノキが育つ場所にも足を運んだ。来年以降、近いうちに産卵が見られそうとのこと

植樹したエゾエノキが育つ場所にも足を運んだ。来年以降、近いうちに産卵が見られそうとのこと

 
 案内した菊地さんは「野生に近い形で環境を守ることが大事。オオムラサキは北海道から九州まで広く分布するが、地域によって羽の色や模様が異なる。その独自性を維持することも保護活動の重要なポイント。決して他の場所から卵や幼虫を持ち込んではいけない」と教えた。“日向ダム周辺をオオムラサキの里に”と、植樹やその後の保護活動を続ける同ネットワークの加藤代表は「ダム完成時に一緒に植えたクリやミズナラも林となり、樹液を餌とする成虫のオオムラサキも寄ってくるようになった。来年はぜひ成虫の観察会も開きたい」と話した。
 
オオムラサキの写真を見せながら生態について話す菊地利明さん

オオムラサキの写真を見せながら生態について話す菊地利明さん

 
 オオムラサキはタテハチョウ科に属し、羽を広げると10センチ前後になる。雄は羽の表面が青紫色、雌は黒褐色で、白や黄色の斑紋がある。日本昆虫学会が1957年に「国蝶(こくちょう)」に選定している。

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~釜石ラグビッグドリーム~ 釜石SWプレマッチ2戦目 日野に40-19 ホーム戦勝利に観客沸く

プレマッチ2戦目で勝利し、歓喜に沸く日本製鉄釜石シーウェイブス=釜石ラグビッグドリーム、13日

プレマッチ2戦目で勝利し、歓喜に沸く日本製鉄釜石シーウェイブス=釜石ラグビッグドリーム、13日

 
 ラグビーワールドカップ(W杯)2019日本大会釜石開催から5年―。大会レガシー(遺産)を継承し、「ラグビーのまち釜石」の一層の発信を図るイベント「釜石ラグビッグドリーム」が13日、釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた。くしくも、この日は5年前のW杯釜石第2戦、ナミビア対カナダの試合が台風の影響で中止となった日。カナダ代表の選手らが、豪雨で浸水した住宅地で土砂除去のボランティア活動を行ったことは多くの市民の記憶に残る。その特別な日のイベントで雄姿を見せたのは、地元の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)。今季、ジャパンラグビーリーグワン2部で共に戦う日野レッドドルフィンズとメモリアルマッチを行い、40-19の勝利で観客を沸かせた。同ゲーム前には小中学生の交流マッチもあり、秋のスタジアムはラグビー一色に包まれた。
 
メモリアルマッチ「日本製鉄釜石SW(白)-日野レッドドルフィンズ」=釜石鵜住居復興スタジアム

メモリアルマッチ「日本製鉄釜石SW(白)-日野レッドドルフィンズ」=釜石鵜住居復興スタジアム

 
 今季スローガンに「STEEL WAVE」を掲げ、2部トップ4入りを目指す釜石。プレシーズンマッチ2戦目のこの日の相手は、今季2部に復帰した日野。釜石は新加入の3選手を含む先発メンバーで臨んだ。先制したのは釜石。前半5分、相手ゴール前のラックからロック、ハミッシュ・ダルゼルが押し込んでトライ。11分には期待の若手WTB阿部竜二が、この日ゲームキャプテンを務めるナンバー8サム・ヘンウッドからロングパスを受け、自慢の俊足で右に回り込み、インゴールに持ち込んだ。チームを引っ張るヘンウッドは26分、相手を振り切る力強い独走で自ら追加点。その後、日野に1トライを許すも、前半終了間際の39分、ゴール前ラインアウトからのモールを押し、最後尾からパスを受けたSH南篤志が飛び込んでトライ。4トライ4ゴール、28-7で前半を折り返した。
 
前半11分、WTB阿部竜二が右サイドに走り込み、SW2本目のトライ

前半11分、WTB阿部竜二が右サイドに走り込み、SW2本目のトライ

 
前半26分、相手ディフェンスを突破しトライを決めたナンバー8サム・ヘンウッド(中央)

前半26分、相手ディフェンスを突破しトライを決めたナンバー8サム・ヘンウッド(中央)

 
前半39分、モールから出したボールをSH南篤志が飛び込んでトライ。笑顔で喜びを分かち合う(右)

前半39分、モールから出したボールをSH南篤志が飛び込んでトライ。笑顔で喜びを分かち合う(右)

 
先発した新加入のSOミッチェル・ハント(右から2人目)は3ゴールも決めチームに貢献

先発した新加入のSOミッチェル・ハント(右から2人目)は3ゴールも決めチームに貢献

 
 勢いづいた釜石は後半4分、相手ディフェンスの隙を突き、SO落和史が右にロングパス。今季新加入のWTB川上剛右がきっちり決め、33-7と突き放した。後半は両チームとも選手を大きく入れ替え。釜石はターンオーバーされる場面が増え始め、残り10分までに日野に2トライを献上。最後の見せ場は31分、右ゴール前ラインアウトから左に展開し、じわじわと前進。相手ディフェンスを引きつける間に再び右へ大きく振り、最後はフランカー髙橋泰地が決めた。40-19で試合終了。バックスタンドの大漁旗が大きく揺れた。
 
 2選手が同じ職場で働いているという釜石市の小林英樹さん(40)は「久しぶりの盛り上がり。勝てて良かった」と大喜び。「地元で勝つことが釜石の元気にもつながる。今季はぜひ勝ちにこだわって1つでも多く勝ってほしい」と期待を込めた。
 
後半、相手に圧力をかけるプレーでゴール前にボールを運ぶ釜石SW

後半、相手に圧力をかけるプレーでゴール前にボールを運ぶ釜石SW

 
後半31分、CTB畠中豪士からナンバー8セタ・コロイタマナ、フランカー髙橋泰地とパスをつなぎ、右隅にトライ

後半31分、CTB畠中豪士からナンバー8セタ・コロイタマナ、フランカー髙橋泰地とパスをつなぎ、右隅にトライ

 
釜石SWの活躍に応援の大漁旗がはためく

釜石SWの活躍に応援の大漁旗がはためく

 
 試合後、釜石SWの須田康夫ヘッドコーチは「相手に圧力をかけ続けるという今年のテーマを選手たちがしっかり守ってやってくれた結果。後半、メンバーが入れ替わった時のゲームマネジメントに課題が見えた」と振り返った。ゲームキャプテンのヘンウッド選手は「すばらしい勝利だった。ゲームプランの遂行というところをちゃんとできたのが鍵だったと思う」と評価。チームの成長も感じ、「若い選手が育ってきている。試合の大事な場面でうまく対処できる力がついてきている」と話した。
 
 釜石SWは19日のプレマッチ第3戦、IBC杯ラグビー招待試合で、今季3部に参入したヤクルトレビンズ戸田と対戦。40-21(前半26-7)と、こちらも快勝した。SWのプレマッチはこの後11、12月に3戦を予定する。リーグワン初戦は12月21日(対九州電力キューデンヴォルテクス)。釜石鵜住居復興スタジアムでの初戦は12月28日の第2節、グリーンロケッツ東葛戦となる。
 

夢追う子どもたちも熱戦 会場内では多彩なアトラクションも うのスタで楽しい1日

 
釜石SWジュニアと宮古ラグビースクールが対戦した小学生交流マッチ

釜石SWジュニアと宮古ラグビースクールが対戦した小学生交流マッチ

 
 メモリアルマッチに先立ち行われた小学生の交流マッチは、釜石SWジュニアと宮古ラグビースクールが対戦。両チームのメンバーが入り交じっての試合も行われた。この日は秋田県で開催された6年生による東北大会に、両チームが合同チームを結成して出場したため、4、5年生メンバーでの対戦となった。SWジュニアのゲームキャプテンを務めた野田大耀さん(小佐野小5年)は「僅差でなく勝てたのでチームの成長を感じられた。パス回しやタックルでまだできていない部分があるので、これからの練習で改善したい」と前を向いた。
 
中学生交流マッチは釜石、甲子、釜石東の特設ラグビー部が熱戦を繰り広げた

中学生交流マッチは釜石、甲子、釜石東の特設ラグビー部が熱戦を繰り広げた

 
 中学生の試合には釜石、甲子、釜石東3校の特設ラグビー部が出場。市内の中学校は例年、他競技の中総体終了後にチームを結成し、10~11月に行われるラグビー競技の県中総体に挑む。それに向けた前哨戦ともなるこの交流マッチ。3戦を行い、2勝をあげたのは昨年、同スタジアムで開催された県中総体で初優勝を果たした釜石中。本年度は2、3年生20人でチームを結成し、8月から練習を開始した。佐藤碧空主将(3年)は「チャンスをものにし得点できたところは良かったが、ラックヤードの入り込みやディフェンスのラインで改善点があるので県大会までに修正したい。2連覇を目標にチーム一丸となって試合に挑む」と意気込んだ。
 
 会場内では自衛隊や警察、消防車両を体験できる「震災復興支援・働く自動車展」が人気を集め、フードコーナーもにぎわった。釜石を応援しようと今春結成された「ちあ釜」は、SWの試合のハーフタイムで念願のフラッグパフォーマンスを披露。試合後は誰でも楽しめるラグビー体験、餅まきも行われた。
 
自衛隊、警察、消防の車両がずらり!運転席に座り笑顔を見せる子ども

自衛隊、警察、消防の車両がずらり!運転席に座り笑顔を見せる子ども

 
SW対日野の試合のハーフタイムにフラッグパフォーマンスを見せた「ちあ釜」

SW対日野の試合のハーフタイムにフラッグパフォーマンスを見せた「ちあ釜」

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釜石の民俗芸能・片岸虎舞 6年ぶりに演舞 待ちわびた住民ら「最高だ」目頭熱く

心一つに片岸虎舞を披露する保存会のメンバー

心一つに片岸虎舞を披露する保存会のメンバー

 
 釜石市片岸町で伝承される「片岸虎舞」が13日、住民らを前に6年ぶりに躍動した。地元鎮守・片岸稲荷神社の例大祭に合わせ舞の奉納や門打ちを行ってきたが、新型コロナウイルス禍の影響や少子高齢化による人手不足などから活動が停滞。そんな状況に危機感を持った保存会の中堅メンバーらが「地域の宝を守らねば。できることをやろう」と再び動き出した。
 
 70人ほどの人が集まった同神社前の広場。笛や太鼓の音、威勢のいい掛け声を町内に響かせながら近づく特設の山車を多くのワクワク顔が迎えた。片岸虎舞保存会(柏﨑育也会長)の有志約30人は鎮守にあいさつ。「よし、やるかー!」と、気持ちを一つに舞台に向かった。
 
 遊び戯れる様子を表現する「片岸虎」、笹で牙を磨く場面を見せる「笹喰(ば)み」を勇ましく舞った。「うさぎ」「甚句」「大漁万作」など手踊りも披露。鳥を捕らえる姿を表する「刺鳥舞」は風流な歌い節に合わせて舞い手が軽やかに踊り、住民から盛んな拍手を受けた。
 
片岸稲荷神社前にある広場で虎舞を披露した

片岸稲荷神社前にある広場で虎舞を披露した

 
多彩な手踊りを次々と繰り広げるメンバーら

多彩な手踊りを次々と繰り広げるメンバーら

 
 片岸虎舞は江戸時代から続き、市内でも古い歴史を有する芸能の一つ。1998年に市の無形文化財に指定された。虎舞のルーツとされる国性爺合戦の和藤内の虎退治の場面を演じ、多くの手踊りがあるのが特徴。虎の勢いのよいしぐさを表現した勇壮な舞と、テンポの速いおはやしも持ち味となっている。
 
 「おはやし、耳になじんでいる」「懐かしいね」「こんなに人が集まるのは久しぶり。ウキウキする」「覇気もらった」「虎舞がないなんて…考えられない」。民俗芸能が人、地域をつなぎ、住まう人たちに伝統を大切にする思いが根付く。
 
ベテランメンバーの歌声が舞い手を盛り立てる

ベテランメンバーの歌声が舞い手を盛り立てる

 
虎舞、再会を待ちわびた住民らには笑顔が広がった

虎舞、再会を待ちわびた住民らには笑顔が広がった

 
 そんな虎舞も近年、思うような活動ができない状況が重なった。片岸地区は2011年の東日本大震災で被災。虎頭や太鼓、踊り道具も津波で失ったが、全国からの支援でそろい、翌年に復活。その後は10月の同神社例大祭で舞を奉納、門打ちを行ってきた。
 
 19年、釜石も会場となったラグビーワールドカップ(W杯)日本大会では2試合目が台風災害の影響で中止されたが、同じように祭り時期を迎えていた虎舞もお披露目が取りやめとなった。以降、コロナ禍で制約の多い生活が続いた上、保存会メンバーの高齢化、踊り手となる子どもの減少などもあり、祭り神事での奉納だけとなった。門打ちはせず、郷土芸能が一堂に会す催しへの出演も控えていたため、住民の多くは目にする機会が減った。
 
 震災後、住民が散り散りになった同地区では再建が進んだものの、地区外に居を移した人も少なくない。保存会のメンバーも然り。そんな中、地区内に住む保存会メンバーの耳に「虎舞が見たい。おはやしが聞きたい。今年はどうするの、踊らないの?」などと声が届くようになっていたという。
 
 伝統継承-。思いを持ち続けていた保存会事務局の柏﨑洋也さん(41)が中心となって仲間に声掛けし、「伝え続けるため、やれることをやろう」と決めた。今年は11日が同神社例大祭で、前日の宵宮祭で虎舞を奉納。平日だったこともあり門打ちは行わず、週末の日曜日に披露する形にした。
 
つなぐ誇りを胸に虎舞、手踊りを披露する保存会のメンバー

つなぐ誇りを胸に虎舞、手踊りを披露する保存会のメンバー

 
 当初、40代メンバー8人ほどの予定だったが、本番には「やりたい」という子どもや地区外からも仲間が集った。見る側の住民も同じで、久しぶりの再会を楽しむ姿もあった。洋也さんは「地域の人たちが喜んでくれたのが一番。集いの場を作るいい機会にもなった」とうれしそうに目を細めた。
 
 地元の新屋碧さん(鵜住居小6年)は5年前に練習に参加したものの祭りが中止となり、「どうしても踊りたい」と、友達の三浦琉生さん(同)を誘って参加した。数回の練習だったことから緊張したというが、保存会メンバーの教え方や雰囲気が心地よく、「楽しかった」と満足げ。来年は中学生となり、部活などで忙しくなるが、「地域にこういう伝統があるのを誇りに思う。残していきたいから続けたい」と受け止めた。
 
ベテラン、若手、子ども、OBも加わり伝統芸をつなぐ

ベテラン、若手、子ども、OBも加わり伝統芸をつなぐ

 
息の合った演舞とおはやしに住民らが拍手を送った

息の合った演舞とおはやしに住民らが拍手を送った

 
 片岸の虎頭は市内でも数少ない木彫り。がれきの中から見つかった1つは修復し大切に保管する。支援で2つが新調された。かつてはケヤキが使われていたが、今回は桐の木を使い軽量化。それでもズシリとした重さは舞い手たちに残る。洋也さんも久々の感触に「年齢を感じる」というが、表情には充実感がにじむ。
 
 かつてメンバーだった70代男性のもとに現役メンバーが歩み寄り、「どうだ?」と虎頭を手渡す場面も。男性は「軽いと思って踊っていたけど、重いなー。昔を思い出す。片岸に住んでいたら、やっぱりやらなきゃ。虎舞が死んだら、地域も死ぬ」と目頭を熱くする。そして、しみじみと…「最高だ」。足腰が弱くなったというが、「来年は踊っているかも、そんな力をもらった。ありがてぇ」と笑顔も光らせた。
 
虎舞がつなぐ世代間交流。笑顔がまぶしい

虎舞がつなぐ世代間交流。笑顔がまぶしい

 
大人の演舞に感化されてウズウズ。子ども虎舞も躍動

大人の演舞に感化されてウズウズ。子ども虎舞も躍動

 
 若い世代につなぐステップに―。保存会では「来年は門打ちを」と気持ちを一つにする。そして、今回披露できなかった演目・和藤内の復活も目指す構え。片岸虎舞の見どころの一つで、子どもの舞い手が欠かせない。洋也さんは「今回、思いのほか子どもたちが参加してくれた。その意気込みを大事にしたい」と話した。
 
伝統芸が地域を彩る景色…来年もまた見られますように

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