甲子川沿い(上中島町~岩井町)で行われたクリーンアップ活動。たくさんのごみが回収された=5日
釜石市上中島町から岩井町にかけての甲子川河川敷で5日、市民らによるごみ拾いが行われた。市民グループ「かまいし環境ネットワーク」(加藤直子代表、31人)が、地域の水辺環境を守るとともに、海洋環境汚染につながるごみ流出を防ごうと企画した。同所での活動は2022年11月以来2回目となる。呼び掛けに応えた65人が約1時間にわたって作業。想像以上のごみの量に心を痛め、「不法投棄は絶対やめて。責任を持って適切な処理を」と願った。
市内外から幅広い世代が参加。中妻地区生活応援センター駐車場で、加藤代表が活動目的、注意点などを説明した後、ごみ袋やトングを手に河川敷に向かった。路肩斜面、草地、川砂利と広範囲に散らばり、落ちているごみを拾い集めた。
開始にあたり、活動目的などを説明するかまいし環境ネットワークの加藤直子代表(写真右上)=中妻地区生活応援センター駐車場
河川敷にはさまざまなごみが…。今回は粗大ごみ以外のものを拾い集めた
河川敷には古くに農作物を栽培していたとみられる畑跡が複数あり、野生動物よけのネットなど風化した資材が残る場所も。人目に付きにくい箇所には不法投棄とみられるごみの散乱もあった。“ポイ捨て”の空き缶や瓶、ペットボトル、たばこの吸い殻、発砲スチロールや容器包装ビニールなどの廃プラスチック、廃金属…。多種多様なごみが見つかり、参加者を驚かせた。ごみ袋はすぐにいっぱいになり、2枚目、3枚目と袋を開け、可能な限り拾い集めた。
農業用資材とみられるごみも。土に埋もれかけていたネットや袋を引っ張り出す
釜石海上保安部職員も“海ごみゼロ”を願って精力的に活動
写真左:手製の木枠にごみ袋を取り付け効率よく作業する参加者も 写真右:追加の袋を開けさらにごみを集める
“海宝漬”の製造販売でおなじみの同市鈴子町の中村家(島村隆代表取締役社長)からは、社員ら約10人が初めて参加した。同社は記録的不漁のサケの資源維持を目指し、サケ・イクラ使用商品の売り上げの一部を稚魚放流に役立てる「#シャケノベイビー運動」を昨年から開始。その一環として、海につながる河川環境を守りたいと同活動に賛同した。業務部の佐々木智也課長(46)、営業部の坂本直樹次長(43)は「思った以上に大きなごみが多い。古びた自転車とかもあった。量も想像以上」と驚いた様子。前回の活動の様子をネット記事で見ていたが、変わらない現状に「残念な気持ち。環境を守るにはやはり市民一人一人の心がけが大事」とごみの適切処理を願う。社員らは今年、サケの稚魚放流活動にも参加する予定だという。
この日、回収されたごみは約300キロ。前回活動時の約2倍の量で、軽トラック2台分にも及んだ。活動エリアの川沿いは工場などが建ち並ぶ地域で、地元住民の目が届きにくい。地域清掃もなく、いわば手付かずの状態。特に五の橋に近いエリアでごみが多い状況にある。
道路脇の斜面から広がる草地に足を踏み入れ、ごみを探す参加者
加藤代表は「こんなにひどいとは。ここは散歩する人も通るが、ごみを見ながらというのもねぇ…」とがっかり。プラスチックごみの多さも指摘し、海に流れ出たプラごみを海洋生物が飲み込んでしまい死に至るケース、紫外線による劣化でメタンなどの温室効果ガスが発生し、地球温暖化の要因となっていることも懸念。「今日は参加者の皆さんが必死になって拾ってくれたが、まずは『自然界にごみを捨てない』ことが大前提。近年は温暖化が影響しているとされる豪雨災害も各地で頻発。未来を生きる子どもたちが大変な思いをしないよう、環境教育にももっと力を入れてほしい」と願った。
市内外からごみ拾いに参加した皆さん「おつかれさまでした!」
環境ネットワークは、5月末から6月初旬にかけての「春の海ごみゼロウィーク」(環境省、日本財団主催)に合わせた活動も計画中で、多くの市民の参加を期待する。