タグ別アーカイブ: 地域

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ふるさとの味に舌鼓 釜石・橋野で水車まつり 農作物の恵みに感謝し「いただきます!」

晴天に恵まれた第19回水車まつり=2日、橋野どんぐり広場

晴天に恵まれた第19回水車まつり=2日、橋野どんぐり広場

 
 農作物の収穫を祝う釜石市橋野町の「第19回水車まつり」は2日、産地直売所橋野どんぐり広場駐車場で開かれた。季節ごとに地域の魅力を発信する「はしの四季まつり」の1年の締めくくりイベント。今年も地元の秋の恵みをふんだんに使った各種メニューが用意され、約300人が青空の下で古里の味を堪能した。
 
 橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)、栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が共催。菊池会長が歓迎のあいさつをし、恒例の餅まきからスタートした。軽トラックの荷台からまかれた紅白餅は約800個。老若男女が手を伸ばし、昔ながらの祝いムードが広がった。
 
釜石の祝い事には欠かせない“餅まき”。子どもも大人も楽しむ

釜石の祝い事には欠かせない“餅まき”。子どもも大人も楽しむ

 
宙を舞う紅白餅。ダイレクトキャッチも? 手前の女の子は洋服の前見頃を袋代わりに…

宙を舞う紅白餅。ダイレクトキャッチも? 手前の女の子は洋服の前見頃を袋代わりに…

 
 お振る舞いは地元産の野菜を使った同振興協女性部手作りの豚汁。この味を求めて足を運ぶ客も多く、約300食の提供に今年も長蛇の列ができた。2種のおにぎり、手打ちそば、きびの焼き団子は安価で販売。来場者は好みのものを買い求め、豚汁とともに味わった。
 
食欲をそそる橋野自慢の味「どうぞ、召し上がれ~」

食欲をそそる橋野自慢の味「どうぞ、召し上がれ~」

 
無料の豚汁には長い列が…。炭火で焼くきび団子は香ばしさ満点

無料の豚汁には長い列が…。炭火で焼くきび団子は香ばしさ満点

 
 さらに今年は、同町和山地内に同市2カ所目となる養鶏農場を建設中の一関市のオヤマが初出店。自慢の「いわいどり」ももの唐揚げを販売した。用意した約100パックは早々に完売。同社商品開発課の加藤寛美係長(54)は「まだお客さまが並ばれていたところをお断わりする形になってしまって…」と予想以上の売れ行きにうれしい悲鳴。地域密着のまつりの雰囲気にも感激し、「とてもいいおまつり。皆さんに温かく迎えていただきありがたい。新しい農場もできるのでさらに交流を深められたら」と願った。
 
水車まつり初出店のオヤマ(一関市)。からあげグランプリ最高金賞の一品を多くの客が買い求めた

水車まつり初出店のオヤマ(一関市)。からあげグランプリ最高金賞の一品を多くの客が買い求めた

 
 会場周辺の山々は紅葉シーズン本番。駐車場の植え込みも赤く色づき、秋本番の景色を愛でながら、食事を楽しむ来場者。子ども2人と二戸市から橋野町の実家に帰省した佐藤優美さん(35)は、地元のいとこらと計8人でまつりを楽しんだ。「子どもたちは豚汁が大好き。こうして外で食べるのもいいですね」と声を弾ませ、「橋野は人口が減っているが、イベントなどで多くの人が足を運んでくれるのはうれしいこと」と古里のにぎわいを喜んだ。
 
紅葉や青空に囲まれて食べる豚汁は最高のごちそう。子どもたちの箸も進む

紅葉や青空に囲まれて食べる豚汁は最高のごちそう。子どもたちの箸も進む

 
 大只越町の和田美穂さんは妹親子に誘われて来場。3人で豚汁のほか3メニューをいただき、「そばは手打ちの麺がおいしい。おかわりしました」と舌鼓。会場までの道中は美しい紅葉も楽しみ、「周りの景色に癒やされて、お腹も満たされて…。最高ですね」と秋の休日を満喫した。
 
豚汁、唐揚げ、雑穀おにぎり…。「みんなで食べるとおいしいね!」

豚汁、唐揚げ、雑穀おにぎり…。「みんなで食べるとおいしいね!」

 
 橋野どんぐり広場の藤原英彦組合長によると、今年の地域の農作物は「米は例年並みの収量ながら、野菜は夏の高温、日照りの影響であまり良くなかった」という。今はダイコンやサツマイモが出始め、これからハクサイも並ぶ。この日は店頭に干し柿用のカキも並んだ。
 
 同地域は市内でも有数の農業地帯だが、生産者の高齢化で近年は休耕地が増加。産直への出荷も減っており、担い手確保が最重要課題となっている。昨年6月から漬物の製造販売に保健所の営業許可が必要になったことも影響する。国が定める衛生基準を満たすには設備投資が必要で、個人生産者はほぼ販売をやめてしまった。藤原組合長は「現在、地域の漬物販売の復活に向け動いているところ。近い将来、また橋野ならでは味をお届けしたい」と希望を見いだす。「学校がなくなり、商店も減った今、産直は最後のとりで。地域を維持していくためには絶対必要」と継続への模索が続く。

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明治日本の産業革命遺産8エリアのガイド 釜石で初研修 世界遺産登録10周年機に価値発信へ意欲

世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」のガイドによる研修会=10月23日、橋野鉄鉱山

世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」のガイドによる研修会=10月23日、橋野鉄鉱山

 
 世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」のガイド研修会が10月22、23の両日、釜石市で開かれた。8県11市にある23の資産で構成される同遺産は今年、世界遺産登録から10周年を迎えた。各地で遺産の価値、保全の重要性を伝える活動を担うガイドらが一堂に会する研修は、登録(2015年)の翌年にスタート。構成資産「橋野鉄鉱山」がある釜石市が会場となるのは今回が初めてで、座学や遺産の現地視察を行った。
 
 関係自治体で組織する世界遺産協議会が、ガイドの情報交換や資質向上、価値の共有を目的に開催。8エリアからガイドと自治体職員計66人が参加した。初日は大町の釜石PITで事例発表などが行われた。始めに協議会事務局の鹿児島県世界文化遺産室の加世田尊主査が、遺産価値やガイドに求めることを説明。同遺産は23構成資産全体で一つの価値を有する遺産であり、「全エリアで共通の説明を行うことが大事」と話した。伝えるべきポイントとして▽全体の遺産価値▽構成資産としての位置付け▽地域としての価値-を挙げた。
 
全国8エリアのガイドが集まり学びを深めた=10月22日、釜石PIT

全国8エリアのガイドが集まり学びを深めた=10月22日、釜石PIT

 
釜石の鉄の歴史について話す釜石市教委文化財課世界遺産室の森一欽室長

釜石の鉄の歴史について話す釜石市教委文化財課世界遺産室の森一欽室長

 
 事例発表では地元釜石市から2人が登壇した。同市教委世界遺産室の森一欽室長は磁鉄鉱を生んだ三陸の大地の成り立ち・地質、たたらから近代化に至る釜石の製鉄の歴史、他エリアとの関わりについて説明。参加者の質問にも答えた。
 
 橋野鉄鉱山をはじめ、同市のさまざまな分野のガイド活動を行う「釜石観光ガイド会」の菅原真子さんは、2002年の会発足からの活動経過を紹介した。東日本大震災(11年)以降、三陸海岸の日本ジオパーク認定(13年)、明治日本の産業革命遺産の世界遺産登録(15年)、ラグビーワールドカップ釜石開催(19年)と、ガイド活動に新たな要素が次々に加わった。釜石のジオサイトには橋野鉄鉱山や釜石鉱山も含まれる。「ジオの側面から鉄鉱石を解明していくのも魅力的」と菅原さん。活動の課題として人口減少や高齢化による人材不足を挙げた。鉄への共感の難しさはあるが、「橋野鉄鉱山の本当の歴史的価値を伝え続けることが私たちの大きな役割。『来て良かった。また来たい』と言ってもらえるようなガイドをしていきたい」と意欲を示した。
 
事例発表でこれまでの活動について話す釜石観光ガイド会の菅原真子さん

事例発表でこれまでの活動について話す釜石観光ガイド会の菅原真子さん

 
「明治日本の産業革命遺産」の他エリアのガイド活動などに理解を深める参加者

「明治日本の産業革命遺産」の他エリアのガイド活動などに理解を深める参加者

 
 この日夜には、走行する三陸鉄道車内を貸し切って交流会も開かれた。2日目はいよいよ、橋野鉄鉱山(橋野町青ノ木)の現地視察。釜石観光ガイド会の会員10人がアテンドした。市中心部から運行した送迎用大型バス2台にも会員が乗り込み、約30キロの道中ガイドも行った。現地では4グループに分かれ、会員の案内で一般公開されている高炉場跡の見学を行った。
 
構成資産の一つとなっている釜石市の「橋野鉄鉱山」。高炉場跡には3基の高炉の石組み、水路跡などが残る

構成資産の一つとなっている釜石市の「橋野鉄鉱山」。高炉場跡には3基の高炉の石組み、水路跡などが残る

 
種焼場跡にある石に磁石を近づけてみる参加者。鉄鉱石が今も残る

種焼場跡にある石に磁石を近づけてみる参加者。鉄鉱石が今も残る

 
 官営八幡製鉄所拡張に伴い、工業用水確保のために設置された「遠賀川水源地ポンプ室」が構成資産となっている長崎県中間市でガイド活動を行う下山要さん(84)は八幡製鉄所のOB。1901(明治34)年に記念すべき火入れが行われた東田第一高炉の第10次改修高炉(1962年から10年間稼働)で働いた経験を持つ。橋野鉄鉱山を初めて訪れ、「(八幡につながる)近代製鉄の基礎を作った大島高任さんの実績に触れることができ、感激です」と大喜び。各地のガイドとの意見交換も有意義だったようで、「皆さんの活動に刺激を受けた。ガイドを始めて12年になるが、若い人に語り継ぐ大切さを日々、感じている。できるだけ続けていければ」と思いを新たにした。
 
釜石観光ガイド会の会員らが橋野鉄鉱山について解説。ここで行われていた作業などを聞き、参加者も興味をそそられた

釜石観光ガイド会の会員らが橋野鉄鉱山について解説。ここで行われていた作業などを聞き、参加者も興味をそそられた

 
 長崎市の構成資産「端島炭鉱」(軍艦島)のデジタルミュージアム専属ガイド、政次斗志郎さん(71)は、端島の石炭が深く関わる製鉄の歴史に興味津々。田中製鉄所時代の釜石での“48回の失敗、49回目の成功”に触れ、「まさに失敗は成功のもと。最初はうまくいかなかった八幡製鉄所を釜石から招いた技術者が成功に導いたことも印象的」と話す。橋野鉄鉱山の高炉場跡を実際に歩いたことで、「鉄をつくるための天然の条件がすべてそろっていたのだと感じられた」。登録10周年にあたり、「多くの先人の失敗や犠牲に導かれ、今、私たちは文化的生活を送れている。歴史を知るとその大事さが分かる。これからもその伝道師として頑張っていきたい」と政次さん。
 
エリア内には山神社跡も。山の斜面には石碑が残る(右上)。案内したガイドは春に“石割桜”が花を咲かせる写真も見せた(右下)

エリア内には山神社跡も。山の斜面には石碑が残る(右上)。案内したガイドは春に“石割桜”が花を咲かせる写真も見せた(右下)

 
「また会いましょう!」世界遺産でつながるガイド仲間を見送る釜石観光ガイド会員ら

「また会いましょう!」世界遺産でつながるガイド仲間を見送る釜石観光ガイド会員ら

 
 釜石観光ガイド会の藤原信孝副会長は「登録10周年の年に全国のガイドの皆さんを釜石にお迎えできてうれしい。8エリアの一体感を感じた」と感慨深げ。一つの世界遺産ということを実感できると、「発信力も高まっていく。この世界遺産登録のおかげで、多くの人とのつながりもできた」と喜ぶ。この10年の間には、橋野鉄鉱山の台風被害、コロナ禍などガイド活動に影響を及ぼす事案も多々あった。「これからは蓄えてきたガイド力を存分に発揮する時期。若いガイドも育ってきているので、より活動を発展させていければ」と次の10年を見据える。

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鮮やか秋の味!釜石特産・甲子柿 生産組合が目揃会「豊作だけど、お早めに」

出荷シーズンを迎え、きれいに箱詰めされた甲子柿

出荷シーズンを迎え、きれいに箱詰めされた甲子柿

 
 釜石市特産の「甲子(かっし)柿」が出荷シーズンを迎えた。真っ赤に色づいた秋の味覚が道の駅や産直などを彩り、市民らが味わいを楽しんでいる。甲子柿の里生産組合(佐々木裕一組合長、24人・5団体)は28日、同市甲子町の林業センターで品質を確認する「目揃(めぞろえ)会」を開催。今年は豊作の見込みで、生産者は甘くとろける自慢の味を全国に届けようと意気込む。
 
 目揃会には生産者や市の担当者ら約20人が集まり、持ち寄った品の大きさや色つやなどを確かめた。佐々木組合長(74)によると、今季は高温、少雨と作物にとっても過酷な気候状況だったが、ふたを開けてみると実の出来は上々。何と言っても「味がいい」と太鼓判を押す。病害虫の被害も少なく、収量は「例年以上になる」と確信。糖度の高い仕上がりに自信ものぞかせた。
 
目揃会で出来を確かめ笑顔を見せる生産者ら

目揃会で出来を確かめ笑顔を見せる生産者ら

 
 今年仲間入りした甲子町(中小川)の自営業(製材)、外川直樹さん(52)が持ち込んだ品は試食用として振る舞われた。実は小ぶりながら色つやはよく、味についても先輩たちから「おいしい」との評価を得、ほっとひと息。パック詰めの仕方などまだ手探り状態なことも多く、組合員らの助言をしっかり聞いた。現在は庭木として育てる2本から約1000個を収穫し、知り合いの組合員のもとで渋抜きをしてもらっている。数年前に苗木10本を植えて増産へ準備中。「地域の一員として甲子柿を守りたい」と意欲を見せた。
 
鮮やかな紅色とぷるんとした食感が特徴の甲子柿

鮮やかな紅色とぷるんとした食感が特徴の甲子柿

 
一口大に切った柿を試食し甘さや食感を確かめた

一口大に切った柿を試食し甘さや食感を確かめた

 
 甲子柿は、渋柿の一種の小枝柿を「柿室(かきむろ)」と呼ばれる暗室で1週間ほどいぶして作る。渋抜きされた実はトマトのように赤く熟し、ゼリーのような柔らかい食感になる。地域の農林水産物や食品のブランドを守る地理的表示(GI)保護制度への登録や、機能性表示食品の認定も受け、全国からの引き合いが一層高まっている。
 
 そうした背景もあり、組合員の内舘靖さん(56)は新しい包装や発送の方法、高級感を持たせた仕様について、さまざまなアイデアを出す。個包装にして配達時に実が割れるのを防いだり、地元の銘酒浜千鳥と組み合わせた贈答パックを企画したり。市のふるさと納税返礼品としての取り扱いを視野に木箱に詰めたものも検討中だ。探究の原動力は「いいものを届けたい」との思い。「地域の魅力」「伝統の味力」として甲子柿を守り盛り上げるため、組合の仲間と試行を続ける構えだ。
 
木箱入りや特産品を組み合わせた贈答用パックの見本

木箱入りや特産品を組み合わせた贈答用パックの見本

 
 出荷作業は11月20日ごろまで続く見込み。市内では産直や一部スーパーで販売中だ。道の駅釜石仙人峠(甲子町)でも店頭を彩り、買い物客らが手に取っている。「話のタネに」と購入したのは、埼玉県さいたま市の平塚信也さん(63)。岩手県内陸部での用を済ませ、沿岸部を車で周遊する途中で立ち寄った。「駅にポスターがあって、気になっていた」と話し、「ゼリーみたいな感じなのかな…食べるのが楽しみ」と想像を膨らませた。
 
真っ赤な特産が所狭しと並んだ道の駅釜石仙人峠の店内

真っ赤な特産が所狭しと並んだ道の駅釜石仙人峠の店内

 
 目揃会に顔を出した道の駅の佐々木雅浩駅長は、豊作との見立てに期待をのぞかせ「自慢の味を少しでも多く販売したい」と張り切る。11月2日には甲子柿祭りを開催。食のほか、甲子郷小川しし踊り(市指定無形民俗文化財)の演舞(午前11時~)も楽しめる。
 
 同組合では市外への認知度アップも進める。10月31日、11月1日に藤崎百貨店前(宮城県仙台市)で開かれる「GI産品とうまいものフェア」に参加。販売会は11月5日・カワトク(岩手県盛岡市)、14日・さくら野百貨店八戸店(青森県八戸市)で予定する。

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“栗橋愛なら、だれにも負けない” 栗林小児童 郷土の偉人の劇や合唱で学習成果発表

栗林小学習発表会「栗っ子祭り」=25日、同校体育館

栗林小学習発表会「栗っ子祭り」=25日、同校体育館

 
 釜石市の栗林小(高橋昭英校長、児童25人)は25日、本年度の学習発表会「栗っ子祭り」を同校の体育館で開いた。児童自らが考え、掲げたスローガンは「みせよう25人の成長~栗橋愛なら、だれにも負けない~」。全校児童が力を合わせ、創り上げた劇や合唱を集まった保護者や地域住民に披露し、“栗っ子魂”を存分に発揮した。
 
 1、2年生が開会のあいさつ。全校児童が11月の小中学校連合音楽会に向け取り組んでいる合唱「大切なもの」「さんぽ」の2曲を歌った。1~4年生15人による劇は、宮沢賢治の童話をモチーフにした「どんぐりと山ねこ」。セリフに地元の名所“橋野鉄鉱山”や“義人桜”などを取り入れ、地域色豊かに物語を展開した。おなじみの「誰が一番偉いか」で争うどんぐりたちの裁判では、児童一人一人が、これまでにできるようになったことをアピール。「漢字を書けるようになった」「リコーダーをうまく吹けるようになった」「かけ算ができるようになった」など成長ぶりを示した。
 
「最後まで心を込めて発表します。ごゆっくりご覧ください!」開会のあいさつをする1、2年生(上)。児童たちが考えたスローガンも掲示(下)

「最後まで心を込めて発表します。ごゆっくりご覧ください!」開会のあいさつをする1、2年生(上)。児童たちが考えたスローガンも掲示(下)

 
全校合唱では心を一つに歌声を重ねた(上)。発表会には保護者のほか多くの地域住民が来場(下)

全校合唱では心を一つに歌声を重ねた(上)。発表会には保護者のほか多くの地域住民が来場(下)

 
1~4年生が演じた劇「どんぐりと山ねこ」。宮沢賢治の名作を“栗小バージョン”で

1~4年生が演じた劇「どんぐりと山ねこ」。宮沢賢治の名作を“栗小バージョン”で

 
どんぐり裁判の場面では児童たちが頑張ったことをアピール。保護者はわが子の成長をうれしそうに見つめた

どんぐり裁判の場面では児童たちが頑張ったことをアピール。保護者はわが子の成長をうれしそうに見つめた

 
 2年児童の母葛西祐香さん(31)は「1年生の時に比べ、すごく成長しているのを感じられた」と喜びの笑顔。「3年生になっても楽しみながら学びを深め、さらに成長していってくれたら」と期待を込めた。
 
 5、6年生10人は、江戸時代末期、嘉永の三閉伊一揆(1853年)の指導者の一人として村人を救った地元の「三浦命助」を題材に劇を発表した。「ふるさと学習」で、郷土の偉人である命助について学んできた児童ら。「石碑があるのは知っていたけど…」「偉人なのに、なぜ牢に入れられた?」など、さまざまな疑問を出発点に調べ学習を進めてきた。その集大成がこの劇。講談師役の2人が命助の生涯を紹介しながら物語を展開。命助家族が盛岡藩の厳しい課税に頭を悩ます場面、命助ら沿岸各地の農民が仙台藩への越訴を目指す場面、要求はかなったものの脱藩の罪で牢に入れられた命助が、面会に来た地元民に思いを託す場面を全員で演じ切った。
 
5、6年生は江戸時代に地域住民を救った三浦命助の劇を発表。これまでの学びの成果を物語に織り込んだ

5、6年生は江戸時代に地域住民を救った三浦命助の劇を発表。これまでの学びの成果を物語に織り込んだ

 
「小○」の旗を掲げ、仙台藩への越訴を決意。長い道のりでけが人も出るが、要求を認めてもらうため、必死に歩き続ける

「小○」の旗を掲げ、仙台藩への越訴を決意。長い道のりでけが人も出るが、要求を認めてもらうため、必死に歩き続ける

 
 劇中では、今年4月に県指定文化財となった命助関係資料(35点)の一つ「獄中記」を、命助が家族に届けてほしいと託す場面も。有名な一節「人間は三千年に一度咲く優曇華(うどんげ)なり」という言葉とともに、命の尊さ、人としてのまっとうな生き方を伝えようとした姿をしっかり表現した。児童らは、命をかけて戦った命助の「最後まであきらめない心、相手を思いやる心は今、私たちにも受け継がれ宿っています」と栗橋住民の誇りを表した。
 
盛岡の牢に入れられた命助は、自らの思いを記した「獄中記」を見舞いにきた松之助に託す

盛岡の牢に入れられた命助は、自らの思いを記した「獄中記」を見舞いにきた松之助に託す

 
劇の最後には命助から学んだことを発表。「誰かを思う温かい心をこれからも大切にしていく」と決意を述べた

劇の最後には命助から学んだことを発表。「誰かを思う温かい心をこれからも大切にしていく」と決意を述べた

 
 命助役の遠野姫瑠さん(6年)は「気持ちを込め、命助さんになりきって一生懸命演じました」。みんなで心を一つにした舞台は「100点満点!」と自信をのぞかせた。劇のタイトル“やり遂げる覚悟”を自らの人生に重ね、「私も自分の決めた目標や将来の夢を達成できるように頑張りたい」と意識を高めた。「まちの人のために良いことをやった命助さんがなんで捕まったのだろう」と興味を持った八木澤敬斗さん(5年)は、「調べ学習はワクワクして楽しかった」と振り返る。劇では一揆に参加した農民の一人を演じた。一揆に向かうところは「自分たちが何かをやる時にみんなで力を合わせるのと似ていた」と話す。命助は「憧れの人。自分もそういう人になりたい」と理想の人間像を描いた。
 
 高橋校長は「一人一人が自ら進んで、いきいきと活動していた。学年の垣根を超えて、助け合いながら準備や練習に取り組む姿を心からうれしく思った」と感激し、教職員、家族、地域住民の支えに深く感謝した。同校は9月末に策定された同市学校規模適正化・適正配置推進計画で、2027年度を目標とする鵜住居小との統合が計画される。今後、統合準備委員会が設置され、具体的検討が始まる見込み。「子どもたちの不安を少しでも解消し、一緒になった時により良い学校生活が送れるよう全力を尽くしたい」と高橋校長。
 

心温まる発表会 栗林小に思いを寄せる人たち多数来場 伝統のPTA合唱でサプライズも

 
栗林小の伝統、PTAによる「コールマロン」の合唱

栗林小の伝統、PTAによる「コールマロン」の合唱

 
 地域とともに歴史を重ねてきた栗林小。栗っ子祭りには30年以上前から続く伝統のプログラムがある。PTAでつくる「コールマロン」の合唱。今年は「もみじ」「365日の紙飛行機」の2曲を歌った。
 
 同活動を始めた当時のPTAは今、現児童の祖父母世代に…。子ども3人が同校に通い、現在は孫が在籍する藤原マチ子さん(73)も“初代”コールマロンの一人。この日は同世代の洞口政伸・栗林共栄会長の“鶴の一声”で同合唱に飛び入り参加。「伝えるべきものが今に受け継がれているのはうれしい限り」と声を合わせた。児童数が減少する中でも「先生方は時代に合った教育を一生懸命やってくれている。地域とのつながりを大事にしてくださっていることにも感謝」と話した。
 
発表会には栗林小前校長の八木澤江利子さん(手前)も招かれた1

発表会には栗林小前校長の八木澤江利子さん(手前)も招かれた

 
 この日は、昨年度まで3年間、同校校長を務めた八木澤江利子さん(現宮古市立田老第一小校長)も駆け付けた。同合唱では、高橋校長のサプライズ指名で「もみじ」を指揮。児童らの発表で一段と成長した姿を目にし、うれしそうな表情を浮かべた。「栗林小の子どもたちはすごく真っすぐで、何事にも全力。地域の偉人の劇では、脈々とこの地に受け継がれている信念や人々の思いをしっかり受け止め、表現している。子どもたちの頑張りにはいつも元気をもらう」と八木澤さん。同祭りは「この地域にとってかけがえのないもの」と実感する。
 
八木澤さんの指揮で「もみじ」を合唱。会場はふるさとを思う温かい空気に包まれた

八木澤さんの指揮で「もみじ」を合唱。会場はふるさとを思う温かい空気に包まれた

 
 八木澤さんと栗橋地域にはもう一つ、深い縁がある。八木澤さんの誕生時、教師だった両親が橋野小和山分校に赴任していたこと。自身は生まれたばかりで記憶はないが、事あるごとに両親から和山での生活について聞いていたという。「生まれた時、そしてまた半世紀の時を経て、この地域の皆さまには大変お世話になり支えられた」と感謝の思いを口にした。

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伝統、世代、思いつなぐ「釜石まつり」 神輿・曳き船 勇壮、華やかに練る

2基の神輿が市街地を練り歩く釜石まつり=19日

2基の神輿が市街地を練り歩く釜石まつり=19日

 
 釜石市の尾崎神社(浜町)と日本製鉄北日本製鉄所釜石地区山神社(桜木町)合同の「釜石まつり」(同実行委主催)は17日から3日間にわたって行われ、秋の気配を感じるまちに華やかな色彩を加えた。18日は呼び物の「曳(ひ)き船まつり」が釜石湾内で繰り広げられ、最終19日は神輿(みこし)が市中心部を練り歩いた。沿道は多くの見物人でにぎわい、主催者によると、18、19の2日間で約1万3000人の人出があった。
 
多くの見物人でにぎわう曳き船まつり=18日

多くの見物人でにぎわう曳き船まつり=18日

 
 曳き船まつりは、尾崎神社の神輿が海上を渡御する伝統神事。尾崎半島青出浜の同神社奥宮で神輿にご神体を迎えた16隻の船団が港に戻ると、神楽や虎舞などの郷土芸能団体が威勢のいいかけ声、太鼓や笛の音を響かせ歓迎した。色鮮やかな大漁旗を掲げた船団は湾内を3周。海上安全や豊漁などを祈願した。
 
神輿をのせたお召し船を中心に十数隻が大漁旗をなびかせた

神輿をのせたお召し船を中心に十数隻が大漁旗をなびかせた

 
 釜石市出身でまつり見物のため里帰りした静岡県在住の德原まりのさん(31)は「おはやしを聞けば胸が高鳴る」と楽しむ。子どもの頃、南部藩壽松院年行司支配太神楽のメンバーとしてまつりに参加していたといい、「海から見ていた景色を初めて浜から見た。新鮮だった」とにっこり。夫正伸さん(34)や2人の子どもたちは初見で、「船が(海上を)練り歩くのに感動した」と、目を大きくした。
 
 昨年は悪天候で中止になったため2年ぶりの開催だった。今年は乗船する人数が限られ、芸能団体の演舞はおはやしが中心となり、「寂しいな」との声も。それでも、まつりは人が集まるきっかけにもなり、市内の野澤晴美さん(58)は「子や孫と3世代で楽しめた。また来年も」と願った。
 
秋めく街中を練り歩く尾崎神社の六角大神輿=19日

秋めく街中を練り歩く尾崎神社の六角大神輿=19日

 
 合同神輿渡御には郷土芸能15団体を含む約1500人が参加。鈴子町のシープラザ釜石西側駐車場で合同祭の神事を行った後、魚河岸までの目抜き通りを2基の神輿が練り歩いた。先導した各団体が、途中の「御旅所」や大町のお祭り広場で神楽や虎舞、鹿踊りなどを披露。沿道の見物客から盛んな拍手を受けた。
 
尾崎神社と日本製鉄山神社の神輿が並んで街を練る

尾崎神社と日本製鉄山神社の神輿が並んで街を練る

 
お祭り広場で鹿踊りなどの芸能が披露された

お祭り広場で鹿踊りなどの芸能が披露された

 
 大町から只越町の目抜き通りで、2基の神輿は並んでゆっくりと進んだ。出迎えた市民らはさい銭をあげて神輿に手を合わせ、地域の守り神に感謝。80代の女性はこれまで子どもの成長や地域の安寧などを願ってきたというが、今年は自身の思いを祈りに込めた。「来年も(守り神に)会えるよう、元気でいるから」。神輿を見送り、「歳をとると一年は貴重なの」と柔らかな笑顔を見せた。
 
さい銭で気持ちのやりとりをする親子と行列参加者

さい銭で気持ちのやりとりをする親子と行列参加者

 
通りを練り歩く神輿に手を合わせる釜石市民ら

通りを練り歩く神輿に手を合わせる釜石市民ら

 
 尾崎神社の神輿担ぎ手団体「輿衆(よしゅう)会」は、近隣の大槌町などからの助っ人と声を合わせ六角大神輿を担ぎ上げた。メンバーで岩手県職員の伊藤満さん(49)=大船渡市在住=は「重みが肩にずっしり。大変だけど、みんなで力を合わせられるのがいい」と笑みをこぼす。東日本大震災前に当時の会長から誘われ参加し、「何となく担いでいた」。その人は震災の津波で帰らぬ人に。まつり継続への思いを引き継ぎ、「地域振興につながるよう、できることを続ける」と熱を込めた。
 
目抜き通りを練り歩く日本製鉄山神社の神輿

目抜き通りを練り歩く日本製鉄山神社の神輿

 
小さな神輿は製鉄所に勤める社員らの子どもが担ぎ手に

小さな神輿は製鉄所に勤める社員らの子どもが担ぎ手に

 
 釜石製鉄所に勤務する村上陽平さん(27)は「歴史あるまつりを継承する一役を担う」と気持ちを込め、山神社の神輿を肩にのせた。釜石シーウェイブス(SW)RFCに所属するラグビー選手でもあり、チームメート7人とともに参加。3カ月前に合流したオーストラリア出身のルル・パエアさん(22)ら海外出身選手が「新鮮で、めっちゃおもしろい」と楽しむ様子を見つめ、「日本の伝統文化に触れ、地域になじんでもらえたら」と期待する。声を出しチームを盛り上げるスクラムハーフ(SH)の村上さん。「勝利へエナジー、パッションを与えていく」と顔を上げた。
 
 さい銭を首から下げ、まつり行列に参加した二村沙羅さん(22)は、神奈川県在住の大学生。「ありがとうございます」と言葉を交わし、見物人と交流した。釜石市のお試し移住制度を活用し滞在中で、地元とは違った文化に触れる機会を満喫。「若い人たちが声を出して盛り上げているのがいい。朝から活動ができ、健康的な生活ができる」と、街の印象を話した。
 
神楽や虎舞など各団体が伝統の舞いで魅せる

神楽や虎舞など各団体が伝統の舞いで魅せる

 
 行列が魚市場御旅所に到着すると、神楽、虎舞の6団体が最後の踊りを奉納。尾崎神社の神輿はご神体を奥宮にかえすため船にのせられ、各団体がはやし立てる中、岸壁を離れた。見送りは船が見えなくなるまで続いた。

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岩手3世界遺産(平泉・橋野鉄鉱山・御所野遺跡)を同時発信 登録10周年の釜石でまつり

3世界遺産応援団キャラクターと記念撮影!(左から)かまリン、ケロ平、ごしょどん

3世界遺産応援団キャラクターと記念撮影!(左から)かまリン、ケロ平、ごしょどん

 
 国内最多、鹿児島、奈良両県と並んで3つの世界遺産を有する岩手県。その価値を一堂に発信し、理解や誘客につなげようと、県主催の「いわて世界遺産まつり」が今年も開かれた。会場となったのは、登録から10周年を迎えた「橋野鉄鉱山」がある釜石市。11、12の両日、同市大町の市民ホールTETTOで開催され、来場者が講話やディスカッション、展示で遺産への理解を深めるとともに、民俗芸能や音楽ライブを楽しんだ。
 
 本県の世界遺産は2011年登録の「平泉(の文化遺産)」、15年登録の「橋野鉄鉱山」、21年登録の「御所野遺跡(一戸町)」の3つ。橋野鉄鉱山は「明治日本の産業革命遺産(8県11市23資産)」、御所野遺跡は「北海道・北東北の縄文遺跡群(4道県13市町17資産)」の構成資産として登録された。同まつりは22年から始まり4回目の開催。釜石が会場となるのは23年以来2回目となる。
 
本県の3世界遺産を紹介するパネル展示。子どもたちはブロックに目がくぎ付け

本県の3世界遺産を紹介するパネル展示。子どもたちはブロックに目がくぎ付け

 
 12日のイベントではオープンスクールとして、平泉と橋野鉄鉱山の概要などを学べる講話があった。平泉町世界遺産推進室長補佐の島原弘征さんは、奥州藤原氏が目指した仏国土(仏の教えによる平和な理想社会)について「(世界遺産になった)中尊寺金色堂や毛越寺の浄土庭園は平和の理念を当時の人々に分かりやすく伝えるためのもの。最先端の技術を使い、文化レベルの高さを示すことで、朝廷(京都)と対等な関係を築こうとした」と解説。池の形や道路の位置など当時の地形、風景が状態よく残っていたことも評価のポイントに挙げた。
 
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平泉の文化遺産について説明する島原弘征さん(右下)

 
 釜石市教委文化財課世界遺産室長の森一欽さんは、明治日本の産業革命遺産について「イギリス、フランスでは約200年かかった産業革命を、日本では60年ぐらいで成し遂げている」と、その価値を示した。同遺産は「製鉄・製鋼」「造船」「石炭」の3分野を基盤に急速な発展を遂げていく過程を3段階で示す。①試行錯誤の挑戦…萩や韮山の反射炉建設、大島高任が蘭学書を頼りに釜石で高炉を建設し、鉄鉱石からの鉄づくりに成功した時期。②西洋の科学技術の導入…外国人技術者の招へいによって西洋の科学技術導入が進み、長崎の造船、石炭産業が発展していく時期。③産業基盤の確立…釜石のコークス炉の技術を導入した官営八幡製鉄所が成功。長崎(端島)、三池の石炭産業が近代化され、日本が国際水準に達していく時期。森さんは釜石と他の遺産エリアとのつながりも紹介。製鉄では「近代製鉄発祥は釜石。達成は八幡」と覚えやすいフレーズを残した。
 
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釜石市の森一欽さんは明治日本の産業革命遺産について分かりやすく解説した

 
 会場では岩手の世界遺産に関係したものづくりのワークショップを開催。御所野は組紐、橋野は鋳造、平泉は絵付け体験などを実施。県内高校生による民俗芸能公演もあった。音楽ライブには奥州市出身の鶴田流薩摩琵琶演奏家千山ユキさん、大槌町出身の大久保正人さんを中心に結成する音楽集団「和美東(わびとう)」が出演した。千山さんは源氏物語をテーマにした「春の宴」、奥州藤原氏初代清衡の平和への願いを込めたオリジナル曲「修羅と浄土」を披露。和美東は、自然や神への思いを込めた「光る海」「涙の糸」など4曲を演奏。両者のコラボで「祇園精舎」、宮沢賢治作品「ポラーノ広場」の中の歌曲も披露した。
 
高校生の民俗芸能披露の場を提供するのも目的の一つ。写真は花巻農業高の鹿踊(ししおどり)

高校生の民俗芸能披露の場を提供するのも目的の一つ。写真は花巻農業高の鹿踊(ししおどり)

 
鶴田流薩摩琵琶演奏家の千山ユキさん。なかなか触れる機会のない弾き語りに来場者はじっくりと聞き入った

鶴田流薩摩琵琶演奏家の千山ユキさん。なかなか触れる機会のない弾き語りに来場者はじっくりと聞き入った

 
「和美東」は和と洋を融合させた独自の音楽で観客を魅了。千山さんの琵琶ともコラボした

「和美東」は和と洋を融合させた独自の音楽で観客を魅了。千山さんの琵琶ともコラボした

 
被災家屋のタイルや屋根瓦も楽器に…深みのある音色を作り出す

被災家屋のタイルや屋根瓦も楽器に…深みのある音色を作り出す

 
 母親と訪れた市内の小学生菊池芽生さん(10)は来場とともに体験コーナーへ。スズを溶かして鋳造するキーホルダーづくりを楽しんだ。干支の“羊”をかたどり、「(出来栄えは)まあ、いいほうかな」とにっこり。県内の世界遺産は「橋野と平泉は知っていた。3つもあるのはすごいと思う」。歴史が好きで大河ドラマも視聴。行ってみたい世界遺産を聞いてみると「清水寺(古都京都の文化財、1994年登録)」との答えが返ってきた。
 
釜石・鉄の歴史館でおなじみの鋳造体験。高温で溶かしたスズを流し入れてキーホルダーを作る

釜石・鉄の歴史館でおなじみの鋳造体験。高温で溶かしたスズを流し入れてキーホルダーを作る

 
 県文化スポーツ部文化振興課の和田英子総括課長は「世界遺産は価値の普及が大事。保存の必要性を知り、世界の宝としてみんなで守り、引き継いでいく姿勢が必要」と話す。3遺産は地理的距離があり、「県外の方は1回で回るのは難しいと思うので、先々でのさまざまな観光も楽しみに何回も足を運んでもらえれば」と期待する。

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虎舞を国際交流のツールに 郷土芸能伝承を考える釜石高生ら 魅力再認識し担い手増加策に意欲

釜石高生が披露する虎舞を楽しむハワイからの観光客=10日、箱崎集会所

釜石高生が披露する虎舞を楽しむハワイからの観光客=10日、箱崎集会所

 
 郷土芸能「虎舞」を通じた地元高校生と外国人観光客の交流会が10日、釜石市箱崎町の箱崎集会所で開かれた。虎舞を披露したのは、郷土芸能の担い手不足解消をテーマに研究する釜石高2年のゼミグループメンバーを中心とした有志11人。同市の観光地域づくり法人かまいしDMCの企画に協力した。「みちのく潮風トレイル」を目的にハワイから来日した3人に演舞を披露。お囃子(はやし)や虎の頭(かしら)を操る体験もしてもらい、郷土色豊かな国際交流が繰り広げられた。
 
 この日集まった1、2年生11人は居住する釜石、大槌、山田3市町で、虎舞や神楽、鹿踊(ししおどり)の団体に所属。夏に米国や中国からの訪日学生に虎舞を披露した経験もあり、同社から声がかかった。生徒らは自己紹介や踊りの演目説明を英語で行い、虎舞の代表的演目「矢車」「跳ね虎」「笹ばみ」を披露した。
 
自己紹介や虎舞の解説は日本語の後に英語で。女子生徒2人が担当

自己紹介や虎舞の解説は日本語の後に英語で。女子生徒2人が担当

 
春のうららかな日差しを浴びて虎が遊び戯れる様子を表現した「矢車」

春のうららかな日差しを浴びて虎が遊び戯れる様子を表現した「矢車」

 
威勢のいいお囃子とかけ声で演舞を盛り上げるメンバー(左)。外国人客は初めて見る虎舞にこの笑顔(右)

威勢のいいお囃子とかけ声で演舞を盛り上げるメンバー(左)。外国人客は初めて見る虎舞にこの笑顔(右)

 
 演舞の後は体験コーナー。外国人客は囃子の一節を太鼓で叩いたり、虎頭を動かしてみたりと初めての体験を楽しんだ。生徒らは覚えている英単語と身ぶり手ぶりで、道具の使い方を教え、地域の芸能の魅力を発信した。
 
 同社によると、みちのく潮風トレイルを訪れる訪日客は増加傾向にあり、市内では箱崎白浜の「御箱崎の宿」や根浜の「宝来館」、キャンプ場に宿を取るハイカーが目立つという。こうした訪日客は地元住民との交流も大切にしており、今回は同社が管理する御箱崎の宿の宿泊者向けに同交流会を企画した。リー・ベリンダさん(45)は「とても感動的。踊ってみると簡単じゃないことが分かって、パフォーマンスの素晴らしさを実感した」、チョー・ダンさん(48)は「若い高校生世代が地域に伝承しようと活動する姿に感銘を受けた。踊りや音楽の歴史的、文化的背景について知っているのも素晴らしい」と、貴重な体験を喜んだ。
 
外国人客は虎頭や幕の動かし方を教わって踊り体験

外国人客は虎頭や幕の動かし方を教わって踊り体験

 
お囃子の太鼓にも挑戦!見よう見まねでリズムを刻む

お囃子の太鼓にも挑戦!見よう見まねでリズムを刻む

 
 ゼミメンバーの一人で、幼い頃から只越虎舞で活動する菅田悠真さん(2年)は「郷土芸能の魅力を発信する上で、海外の人の印象を知ることも必要。英語をもっと頑張って発信力を高めたい」と意気込む。国際交流を機に有志で結成する“釜石高虎舞”は「今までの団体間の垣根を超えて、もっと広い視点で虎舞を広めていこう」と、生徒らが各団体の良さを融合させて演舞。男女や居住地関係なく門戸を開き、担い手育成につなげたいとの思いも込め、新たな活動を模索する。
 
最後は集まったみんなでお囃子体験。外国人客も声を出して一体感を味わう

最後は集まったみんなでお囃子体験。外国人客も声を出して一体感を味わう

 
 同企画を立案した、かまいしDMCで活動中の市地域おこし協力隊の木野遥香さん(24)は「箱崎半島を訪れる訪日客は漁村文化の体験にも関心が高い」との感触を得て、海岸部に古くから伝わる虎舞に着目。釜石高“郷土芸能ゼミ”の活動を知り、今回のオファーにつなげた。「高校生が国際交流できる機会を提供すると同時に、訪日客が釜石を訪れる際の付加価値のようなものを見い出せれば。交流会の継続開催を視野に、より良い形を考えていきたい」と木野さん。先輩社員らと今後の展開に夢を膨らませる。
 

現在進行中! 釜石高“郷土芸能ゼミ”とは? 三陸国際芸術祭で活動紹介

 
郷土芸能の担い手不足解消をテーマに探究活動を行う釜石高2年生のゼミメンバー

郷土芸能の担い手不足解消をテーマに探究活動を行う釜石高2年生のゼミメンバー

 
 釜石高の2年生が取り組むゼミ活動は、生徒たちの興味や疑問を出発点に自らテーマを決め、調査・研究などの探究活動を行うもの。数人がグループとなり1年を通して活動するが、今年度、地域課題に目を向けたグループの一つが「郷土芸能ゼミ」。担い手不足をどう解消するか―をテーマに活動している。5日は市民ホールTETTOで開かれた「三陸国際芸術祭」に参加。自分たちの活動についても紹介した。
 
 同ゼミメンバーは普段、各地の郷土芸能団体で活動する5人。釜石市の玉木里空さん(東前太神楽)、菅田悠真さん(只越虎舞)、三浦海斗さん(小川しし踊り)、大槌町の三浦神虎さん(陸中弁天虎舞)、山田町の山﨑柚希さん(八幡太神楽)だ。「年々、郷土芸能に参加する若者が少なくなっている」と感じていたことから、地域の祭りを途切れさせないためにも担い手を増やしたいと考えた。
 
5日に行われた三陸国際芸術祭で自分たちの活動を紹介=TETTO

5日に行われた三陸国際芸術祭で自分たちの活動を紹介=TETTO

 
 「郷土芸能について詳しく知らないため、参加しづらいのでは?」と仮説を立てた5人。検証のため、地域の小中高生にアンケートを行った。郷土芸能に対しての印象、芸能団体への所属状況、祭り参加者を増やすための方策など6項目について聞いた。浮かび上がったのは、参加への敷居の高さや送迎問題、少子化による影響。さまざまなデータを得て、担い手を増やすには▽地域を限定しない受け入れ態勢▽各団体が互いに尊重し合い、協力し合える関係の構築▽効果的な魅力発信―などの必要性を感じた。
 
観客にも問いかけながら活動発表。「郷土芸能は絶対に絶やしてはならない」との声があった

観客にも問いかけながら活動発表。「郷土芸能は絶対に絶やしてはならない」との声があった

 
ゼミメンバーらは会場で演舞を披露した鵜住居虎舞の演目「跳ね虎」も体験

ゼミメンバーらは会場で演舞を披露した鵜住居虎舞の演目「跳ね虎」も体験

 
 4、5の両日、開催された同芸術祭には約3千人が来場。同ゼミメンバーは若手芸能者が継承について語り合う公開ディスカッションにも参加し、多くの学びを得た。玉木さんは郷土芸能への興味、関心の高さを感じ、「担い手の一員としてうれしい。自分たちの芸能に誇りを持ってやっていける」と励みになった様子。ゼミでは今後、釜石、大槌の団体を招いて地元小中高生に伝統芸能の良さを体験してもらう会も開きたい考えで、「次世代を担う自分たちが積極的に動くことで担い手を増やし、地元郷土芸能を盛り上げていきたい」と意を強くする。

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世代つなぐ、笑顔広がる!遊べる農園ココイロこすもすファーム 釜石の新拠点へ

多世代が触れ合う憩いの場「ココイロこすもすファーム」=9月15日

多世代が触れ合う憩いの場「ココイロこすもすファーム」=9月15日

 
 東日本大震災後に子どもの遊び場として整備され多くの人に親しまれた釜石市甲子町の「こすもす公園」。3年前に惜しまれつつ閉園したが、その跡地を生かし新たな取り組みが始まった。“笑顔あふれる公園”というコンセプトを引き継ぎつつ、“多世代の笑顔をつなぐ遊べる農園”に深化させ、今夏に開園。季節の移ろいを感じながら楽しい時間を過ごせる空間に“にこにこ顔”が続々と集まっている。
 
 遊び場、農園、カフェを併設する「ココイロこすもすファーム」は8月5日にオープン。同市の任意団体「ココイロいわて」(石塚佳那子代表)が運営する。
 
 開園から約1カ月を経た9月15日、農園で収穫したズッキーニやブルーベリー、地場産のフレッシュバジルなどを使った手作りピザを味わうイベントがあった。市内外の親子や夫婦ら10人余りが参加。地元特産・甲子柿入りのトマトソースなどを使った“おかず系”、果物をのせた“スイーツ系”のピザを作り、敷地内の石窯で焼き上げた。
 
農園で育った野菜をゲット!笑顔がいっぱい=9月15日

農園で育った野菜をゲット!笑顔がいっぱい=9月15日

 
自然に触れながら思い思いにピザづくりを楽しむ参加者

自然に触れながら思い思いにピザづくりを楽しむ参加者

 
 地元の小学生佐々木優綺さん(8)はひと口頬張り、親指を立てるサインで「いいね」と、おいしさを表現した。農園での種まき・苗植えを体験したり遊び場を駆け回ったり、“自分の庭”のように利用していると話し「めちゃくちゃ楽しい」とにっこり。母親の琴実さん(33)は「自由に遊べて食育にもなる。お気に入りの場所」と目を細めた。
 
kみずみずしい食材たっぷりの手作りピザに大満足

みずみずしい食材たっぷりの手作りピザに大満足

 
 公園は震災前、コスモス畑だった。所有する藤井了さん(79)、サヱ子さん(80)夫妻が震災で遊び場をなくした子どもたちのために再整備。木製の大型滑り台などの遊具もあり親しまれたが、年齢を重ねる中で維持管理が難しくなり、遊具の老朽化などもあって2022年に閉園した。目の前にあったレストランは24年まで営業した。
 

地域の応援、仲間の力 重ね合わせ「持続可能な運営を」

 
 思いを引き継ぎたい―。石塚代表(37)は25年1月、気持ちを同じくする移住者や子育て中の母親らと団体を立ち上げた。農園や交流スペース施設の整備を目的にクラウドファンディング(CF)を実施。275人から目標の300万円を上回る約340万円が寄せられた。
 
ピザの作り方を伝える石塚佳那子代表(左)

ピザの作り方を伝える石塚佳那子代表(左)

 
 イベントに参加した人たちはCFの支援者。盛岡市の団体職員猪俣広志さん(58)、恵子さん(60)夫妻は以前、釜石で生活しており公園やレストランを利用していた。懐かしい思い出があったことから応援。新たな取り組みを歓迎し、「野菜をとっている子がかわいらしかった。自然の中で伸び伸びでき、新鮮な食材を味わえる場所が続いてほしい。孫を連れてきたいね」と笑顔を重ねた。
 
 違った形で応援する人もいる。同ファームが目指す子どもの遊び場、学びの場づくりに共感し、雫石町で小岩井農場を運営する小岩井農牧(本社東京)がオオヤマザクラの苗木2本を提供。10月1日、同社代表取締役社長の辰巳俊之さん(68)が運び込み植樹した。
 
苗木を届けた辰巳俊之さん(右)、石塚代表=10月1日

苗木を届けた辰巳俊之さん(右)、石塚代表=10月1日

 
首都圏の企業ボランティアらが植樹作業を手伝った

首都圏の企業ボランティアらが植樹作業を手伝った

 
 北方系の品種で丈夫、ソメイヨシノより濃いめのピンク色の花がつく。辰巳さんは「この地に根づき、開花したらうれしい。人と人の縁がつながり、笑顔の花がどんどん咲いて広がってほしい。願わくば、満開の木の下でピクニックしたい」と笑った。
 
 釜石と雫石の縁をつないだ奈良県天理市の種苗メーカー大和農園の金子久美さん(48)も一緒に作業した。食卓に彩りを添え、多くの“笑顔”を広げるため開発した、ルビーのような深い赤色に輝くトウモロコシ「大和ルージュ」を全国に紹介する活動を展開。石塚代表にも話を持ちかけ、今年同ファームで栽培した。サクラの植樹は、3者の願いと思いが重なり実現。金子さんは「同じ岩手、根っこでつながれ」と願った。
 
サクラの成長と開花を期待して作業に励んだ参加者

サクラの成長と開花を期待して作業に励んだ参加者

 
 「みんなが集う、その真ん中にサクラがあれば」。笑顔あふれる風景を想像する石塚代表は、大事に成長を見守る構え。植樹に加わったサヱ子さんは、思いを託した石塚代表に穏やかな視線を向け「続けるのには大変なこともあると思うが、できるだけ応援したい。行動力を生かし、もっと地域を元気にしてもらえたら」とほほ笑んだ。
 
新ファームを応援する藤井了さん(右写真・手前)とサヱ子さん(左写真・手前)

新ファームを応援する藤井了さん(右写真・手前)とサヱ子さん(左写真・手前)

 
 富山県出身の石塚代表は復興支援ボランティアをきっかけに、14年に東京から釜石に移住。会社員として働きながら、藤井夫妻のサポートもしてきた。多くの人が関わり生まれた場所を「失わせたくない」と発起。2児(3歳と1歳)の子育て中で、「自然の中で好きに遊び、自由に過ごせる空間は貴重。多世代が交流し、地域に見守られながら子どもが育つ場所を」と一歩を踏み出した。
 
 遊び場には竹で作ったジャングルジムなどの遊具を用意。農園では野菜を植え、収穫を楽しめる。カフェは、地元でとれた季節の野菜や県産食材を使った料理を盛り付けたランチプレート(1200円)やカレー(1000円)、アレルゲン7品目が不使用のキッズカレー(500円)を提供。米粉と豆乳を使ったチーズケーキ、農園ブルーベリーをたっぷり使ったスムージーなども味わえる。
 
開園した「ココイロこすもすファーム」=9月15日

開園した「ココイロこすもすファーム」=9月15日

 
カフェの運営は石塚代表(右)ら3人体制=10月8日

カフェの運営は石塚代表(右)ら3人体制=10月8日

 
 こすもす公園同様、たくさんの応援を力に新しい道をつくり始めたココイロこすもすファーム。石塚代表は「まだ学ぶことが多い。藤井さんたちが大事にしてきたことを大切にしながら、関わる人、来てくれる皆さんと一緒に遊べる農園をつくっていきたい。無理せず、持続可能な形で」と明るい表情を浮かべた。
 
多世代が遊べる農園!石塚代表が描く“青写真”

多世代が遊べる農園!石塚代表が描く“青写真”

 
 火、水、金、土曜に営業。遊び場は午前10時から、カフェは午前11時半から、午後4時まで利用できる。交流を促すイベントなども企画し、インスタグラムで発信している。

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ロボットが誘う物語の世界 釜石・平田こども園で紙芝居読み聞かせ 和やかに交流

ペッパー(手前)との交流を楽しむ平田こども園の園児

ペッパー(手前)との交流を楽しむ平田こども園の園児

 
 釜石市平田の平田こども園(小松美香園長、園児75人)で10日、人型ロボット「Pepper(ペッパー)」による読み聞かせ会があった。参加した2~6歳児56人は、ペッパーの語りに興味津々。ダンスを披露する場面もあり、園児たちはその多才ぶりに目を輝かせながら一緒に踊ったりして触れ合いを楽しんだ。
 
 ペッパーが読み聞かせたのは、宮城学院女子大の学生がゼミ活動の中で制作したデジタル紙芝居4作品。冒険やものづくりを通して主人公の成長を描く内容で、友情や勇気、助け合いの大切さをテーマにする。子どもたちはゆったりとした語りに耳を傾け、コミカルな動きには視線をくぎ付け。想像力を膨らませながら物語の世界に入り込んだ。
 
デジタル紙芝居を読み聞かせするペッパー

デジタル紙芝居を読み聞かせするペッパー

 
子どもたちを物語の世界へいざなうペッパー

子どもたちを物語の世界へいざなうペッパー

 
 合間に踊りを披露することになったペッパーに、子どもたちは「がんばってー」と声援。その声に応え、「ドラえもん」の曲に合わせて軽快に踊ると、園児は「歩いてる」「かわいい」などと歓声を上げた。一緒に踊る時間もあり、選曲されたのは「ラジオ体操」。園児らは元気いっぱいに手足を動かし笑顔を広げた。
 
ペッパーのダンスをじっと見つめる園児たち

ペッパーのダンスをじっと見つめる園児たち

 
ペッパーの動きをまねして踊る子どもたち

ペッパーの動きをまねして踊る子どもたち

 
 集合写真を撮ったり、会話を楽しむ時間もあった。「ロボットがしゃべるとこがすごい。かわいいし、楽しかった」とはにかむ平野結愛ちゃん(6)。「またきてねー」と手を振っていた。
 
おしゃべりしたり写真を撮ったり触れ合いを楽しむ

おしゃべりしたり写真を撮ったり触れ合いを楽しむ

 
 今回の読み聞かせ会は、ソフトバンクが協力。子どもたちの想像力や感性を育むとともに、ロボットやデジタル技術に触れることで興味を芽生えさせるのを狙いにする。岩手県内で実施するのは初めて。同社北海道・東北地域CSR部の鈴木利昭参与(64)が案内役として講師を務めた。
 
触れ合いの機会を作った鈴木利昭さん(左)

触れ合いの機会を作った鈴木利昭さん(左)

 
 ペッパーを活用して認知症サポーター養成講座や情報モラル教室などを各地で開いている鈴木さん。少子高齢化などが社会課題となる中、進化する人工知能(AI)や情報通信技術で解決できればと社会貢献の意識で取り組む。
 
 読み聞かせにと作られた紙芝居は、幼児教育を学ぶ保育士志望の学生らが「子どもが楽しむ」「保育士の仕事の助けになる」よう期待を込めたもの。会終了後に、同園の保育士らにアンケートへの協力を依頼した鈴木さんは「幅広い意見を聞き、よりよいものにバージョンアップさせたい」と先を見据えた。

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広報かまいし2025年10月15日号(No.1866)

広報かまいし2025年10月15日号(No.1866)
 

広報かまいし2025年10月15日号(No.1866)

広報かまいし2025年10月15日号(No.1866)

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【P1】
表紙

【P2-5】
特集 参加して、見て、体験して「命を守る」ことを学ぶ

【P6-9】
教育広報 釜石市学校規模適正化・適正配置推進計画を策定しました

【P10-11】
キャッシュレス決済ポイント還元事業 対象店舗で最大20%戻ってくるキャンペーン
第55回 釜石市民芸術文化祭 他

【P12-13】
新規出店を応援します! 釜石市空き店舗対策事業補助金のご案内
国勢調査調査票の提出はお済みですか? 他

【P14-15】
まちの話題

【P16-17】
保健案内板
世界遺産登録10周年記念コラム
図書館長のおすすめ本

【P18-19】
まちのお知らせ

【P20】
市民百景

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 オープンシティ・プロモーション室
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8463 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2025100900010/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
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火災から地域を守る!釜石市消防団の教育訓練 団員ら、初歩大事に技術高める

釜石市消防団の基本教育訓練で消防車両から放水

釜石市消防団の基本教育訓練で消防車両から放水

 
 釜石市消防団(菊池録郎団長)の基本教育訓練は10月5日、同市鈴子町の釜石消防署で行われ、団員らが複数台の消防車両を用いてホースを中継する手順などを確認した。この日は、幹部団員の研修会も実施。奏功事例をもとに“消防団の強み”を改めて考え、地域の防災を担う意識を高めた。
 
 市消防団は市内を8つの区域に分け、8分団35部で構成される。団員数は計514人(8月1日現在)。東日本大震災以後、被災地域では消火技術を競う操法大会(2年に1回開催)や消防演習などが縮小され、続く新型コロナウイルス禍による団体活動の制限などで訓練の機会も減っていた。団員数の減少がある一方、新入団やキャリアの浅い団員もいることから、代替として昨年から基本教育訓練を実施。今年も継続し、5回に分けて行っている。
 
消防活動の基本となる礼式訓練

消防活動の基本となる礼式訓練

 
 3回目の訓練となった5日は、5分団(甲子地区)と7分団(栗橋地区)から約30人が参加。敬礼などの礼式の訓練や服装点検などの後、消防隊や各分団が連携した中継訓練に取り組んだ。
 
 消火栓やため池などの水利施設から離れた火災現場での活動を想定。各分団に配備されているポンプ車を操作し、離れた場所まで適切な圧力で水を送り出す方法を確認した。団員らはホースを延ばし、車両2台を連結。消火栓近くに待機した車両が送水を開始すると、各分団員は情報をトランシーバーで伝え合い、水圧を一定に保てるよう動作を調節した。水は数分で端まで到達し、放水が行われた。
 
各分団の消防ポンプ車を使った中継訓練の様子

各分団の消防ポンプ車を使った中継訓練の様子

 
訓練で消火活動や情報伝達の流れを確かめた

訓練で消火活動や情報伝達の流れを確かめた

 
火元に見立てた的に放水。緊張感を持って実践

火元に見立てた的に放水。緊張感を持って実践

 
 団員の多くは仕事などで地区外に出ていることから、いざ火災が発生した場合は地区内にいる団員らがいち早く駆け付け初期の準備を進める。分団、部が連携する中継活動は「あり得る」と団員ら。訓練では、全自動型の小型動力ポンプ積載車には他の車両から延びたホースをつなぐ連結口がないことが分かるなど収穫があった。
 
訓練に臨む仲間の様子をじっと見つめる参加者

訓練に臨む仲間の様子をじっと見つめる参加者

 
 7分団1部の前川英之部長代理(54)は「住家、山火事など火災の種類や状況、人員の数によって車両の配置、資機材のセッティングは違ってくる。経験や訓練の積み重ね、一つ一つが大事になる」と話す。礼式は先輩から後輩に伝えられるものの、整列した形で基本姿勢を確認する機会は多くない。入退団による入れ替わりもあり、教育訓練の実施を歓迎。「若手もベテランも一緒に確認し、得たものを共有して地域を守っていく」と気持ちを引き締めた。
 
訓練で得た情報を共有する7分団1部の団員たち

訓練で得た情報を共有する7分団1部の団員たち

 
 幹部研修会には団本部と各分団から50人余りが参加。同署の小笠原研也副署長を講師に、市内で発生した建物火災での消防団の対応を振り返った。住宅の被害は全焼・部分焼を含め計7棟。背後に山林があり延焼の恐れもあったが、包囲隊形の構築や命令系統の確立、地理・水利への精通などが功を奏し、被害の拡大を防いだ。消防団の強みとされる▽地域密着性▽要因動員力▽即時対応力―が発揮された事例となった。
 
消防団の強みが生かされた事例を振り返った幹部研修会

消防団の強みが生かされた事例を振り返った幹部研修会

 
 消防団は地域住民にとって身近な防災機関であり期待も大きいが、それぞれになりわいを持つ人で構成される組織の運営は難しさがある。それらを念頭に置きつつ、部下への指導や後継者づくりへの配慮といった心得を示した小笠原副署長。釜石市を会場に11月8日実施予定の岩手県総合防災訓練での役割分担についても説明した。
 
 菊池団長は「初歩に戻って、しっかりマスターすることで団員が積極的に取り組んでいける」と話し、訓練や研修の意義を強調した。震災後は高度な訓練ができない状況だったが、来年には釜石、遠野、大槌の3市町の消防団が一堂に会す操法競技会が釜石で開かれる予定で、「やっとやれる」とうなずく。今回の訓練の内容や各分団の活動で参考になる事例を仲間と共有し、レベルアップを図ってほしいと求めた。
 

「できることで地域の役に立ちたい」 女性団員、活躍中

 
消防署員から教わりながら訓練に臨む小林真由美さん(右)

消防署員から教わりながら訓練に臨む小林真由美さん(右)

 
 この日の訓練に、女性団員が1人参加した。5分団1部で活動中の小林真由美さん(31)。先輩団員の動きを見ながら後方でホースを延ばす補助役を担った。「まだ知らないことばかり。消火活動の流れを理解してパッパと動けるようにしたい」。基本の姿勢を吸収しようと集中した。
 
 小林さんは「ヤクルトレディ」(販売員)として市内の家庭や企業などにヤクルトを届けている。偶然か必然か、担当区域には消防署も。職場にあった消防団員募集のチラシを目にし、「何か役に立てるなら」と入団、3年目になる。
 
 団員としての活動は月1回、防火の呼びかけで夜間に地域を巡回する。仕事中に防災無線で出動要請を受け駆け付けたのは数回。現在は、先に到着している車両や先輩団員たちの活動を「見守っている状態」だという。
 
 消防車両での移動も後部座席に乗っていて、「申し訳ない気持ち」だった。自分にできることを考え、思いついたのは運転。部に配備されているポンプ車は「準中型」免許(車両総重量3.5トン以上7.5トン未満)が必要で、市の補助金制度を活用し取得した。運転免許はオートマチック(AT)車限定だったことから、その限定も解除。マニュアルトランスミッション(MT)のポンプ車の運転はまだ「コワイ」が、一員として「何かできる」と実感を得る。
 
消防車両の運転席から顔をのぞかせる小林さん

消防車両の運転席から顔をのぞかせる小林さん

 
 小林さんは積極的に訓練に参加することで技術を身につけ、「実際の現場で力を出せるようになりたい」と意気込む。小学生から中学生まで3人の子育て中で、「家族の応援や理解があるからできる」と感謝する。消防出初式に参加した際に子どもたちからかけられた「かっこいいじゃん」との声を心に留めつつ、「地域も家庭も守る意識を持ち続け、頑張ります」と笑顔を見せた。
 
小林さんは所属する5分団1部の先輩団員と訓練に臨んだ

小林さんは所属する5分団1部の先輩団員と訓練に臨んだ

 
 そんな小林さんを部の仲間があたたかく見守る。「本人にやる気があり、女性ならではの視点で指摘してくれるから助かる」と菊池寛部長(53)。同部には女性団員がもう1人おり、2人のこれからの成長に期待を寄せた。
 
 同署によると、市内では現在16人の女性団員が活躍している。基本教育訓練は10月26日、11月16日にも予定される。

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祝20回! 10.2(とうに)「唐丹の日」大会 住民の連帯、地域の誇り胸に住みよいまちを後世に

第20回「唐丹の日」地域安全大会を輪踊りで祝う住民ら(写真提供:唐丹公民館)

第20回「唐丹の日」地域安全大会を輪踊りで祝う住民ら(写真提供:唐丹公民館)

 
 10月2日を数字の語呂合わせで「唐丹(とうに)の日」とする釜石市唐丹町。「地域の安全について考え、一人一人が今できることを」と、唐丹駐在所連絡協議会の呼びかけで2003年に始まった地域の日にちなみ、今年も地域安全大会が開かれた。東日本大震災やコロナ禍を経て、住民の連帯意識をより強めてきた同町。大会は20回目を迎え、住民らは安全で快適な生活ができるまちを後世につなごうと、さらなる結束を誓い合った。
 
 同大会は4日、唐丹小・中体育館で開かれ、地域住民ら約150人が集まった。同協議会前会長の下村恵寿さん、今年度から会長を務める佐々木孝さんがあいさつ。釜石警察署唐丹駐在所の髙田敏宏所長が防犯、交通安全講話を行った。髙田所長は増え続ける特殊詐欺被害に関し、「+(プラス)から始まる電話番号は海外を拠点とする詐欺グループの可能性が高い。最近は警察や裁判所、市役所を名乗り、個人情報を聞き出そうとする手口も多い。そうした電話には出ない、出てしまってもすぐに切る」よう注意を促した。また、県内の交通死亡事故が多発している現状を示し、「速度超過、車間距離には特にも気を付けて」と安全運転を呼びかけた。
 
約150人が参加。地域安全に関する講話で防犯意識を高める

約150人が参加。地域安全に関する講話で防犯意識を高める

 
 唐丹中3年の齊藤瑛飛斗さんは「わたしの主張釜石地区大会」で最優秀賞を受賞した弁論を発表した。保育園時代、いつも一緒に遊んでいた親友を病気で亡くした経験、唐丹小、中で得たかけがえのない仲間との信頼関係について語り、「今、私たちに親友がいることは決して当たり前ではない。事故や災害で、ある日突然いなくなってしまうかもしれない。今いる親友を大切にしてください。感謝の気持ちを伝えてください。『親友でいてくれてありがとう』と」。住民らは齊藤さんの思いを受け止め、大きな拍手を送った。大会では唐丹中(生徒27人)の金野学校長、唐丹小(児童38人)の三浦栄一副校長から、生徒、児童の近況も伝えられた。
 
最優秀賞を受賞した弁論を発表する唐丹中の齊藤瑛飛斗さん(右上)。唐丹小・中の近況も報告された(左)

最優秀賞を受賞した弁論を発表する唐丹中の齊藤瑛飛斗さん(右上)。唐丹小・中の近況も報告された(左)

 
 会場では唐丹公民館まつりも同時開催された。同館などで活動する15の自主グループの紹介、手芸などの作品展示、日本女子大学生と住民が行ったワークショップ「唐丹 三世代の遊び場」の展示などがあり、来場者が地域活動への理解を深めた。産直や地元農家の販売、キッチンカーの出店も。
 
唐丹地区で活動する自主グループの作品展示。洋裁リフォームや各種手芸作品が並んだ

唐丹地区で活動する自主グループの作品展示。洋裁リフォームや各種手芸作品が並んだ

 
ワークショップで作った三世代の遊び場マップの展示(上)。農家の野菜や果物販売は大好評(下)

ワークショップで作った三世代の遊び場マップの展示(上)。農家の野菜や果物販売は大好評(下)

 
 講話の後は住民お待ちかねの郷土芸能の披露。今や市内外のイベントに引っ張りだこの同町本郷の「桜舞太鼓」(鼓舞櫻会)が「神楽」「櫻響」「騎馬太鼓」など全5曲を演奏。地元が誇る芸能に盛んな拍手が送られた。過去にも招かれるなど唐丹住民らと深い絆を結ぶ同市鵜住居町出身の民謡歌手、佐野よりこさんは「釜石小唄」「南部俵積唄」「大漁御祝い」など6曲を歌って20回目の大会に華を添えた。
 
7人のメンバーで全5曲を演奏した「桜舞太鼓」

7人のメンバーで全5曲を演奏した「桜舞太鼓」

 
迫力の和太鼓演奏に客席から盛んな拍手が送られた

迫力の和太鼓演奏に客席から盛んな拍手が送られた

 
岩手を代表する民謡などを披露した佐野よりこさん。10月生まれの方に自身のCDをプレゼントした(写真提供:唐丹公民館)

岩手を代表する民謡などを披露した佐野よりこさん。10月生まれの方に自身のCDをプレゼントした(写真提供:唐丹公民館)

 
 初回から欠かさず足を運ぶ住民の上村年恵さん(77)は「地域の人たちみんなで集まって交流できるのがいい。同じ町内でも遠く離れている人と会えたり…。生活のためになることや地域の現状も知ることができる」と、年に一度の楽しみに顔をほころばす。
 
 佐々木会長(69)は「唐丹の人たちは団結力が強い。困難なことにも協力して立ち向かい、祭りなどでもみんなで地域を盛り上げようとする姿勢が根付いている」と話す。20回目を迎えた同大会もその象徴で、「幅広い年代が集い、人と人とのつながりも生んでいる。今後も続けていければ」と意欲を示した。