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「シナノキ」の“新”巨木 橋野町和山で確認 関係者が市文化財指定の可能性探る

橋野町和山で確認されたシナノキの巨木=6日

橋野町和山で確認されたシナノキの巨木=6日

 
 釜石市北西部、橋野町の和山高原で新たなお宝発見―。これまで“知る人ぞ知る”巨木で、地元の人でもほとんど見たことがなかったという「シナノキ」の大木を、このほど市文化財保護審議会(川原清文会長、委員15人)の委員らが視察した。同高原には1969(昭和44)年に市の文化財(天然記念物)に指定された「和山のシナノキ」があるが、今回確認した“新”シナノキは幹周り、樹高ともそれを上回る大きさ。審議会では今後、新たな文化財指定の候補物件として検討を進めていく予定。
 
 視察には川原会長、同審議会第3専門部会(史跡、名勝、天然記念物)委員、市文化振興課職員ら7人が参加。同地を所有する一般社団法人栗橋地域振興社(菊池録郎代表理事会長)の小笠原明彦監事(釜石観光ガイド会事務局長)が現地を案内した。
 
現地に向かう釜石市文化財保護審議会の委員と市文化振興課の職員ら=林道入り口

現地に向かう釜石市文化財保護審議会の委員と市文化振興課の職員ら=林道入り口

 
 シナノキの巨木があるのは、風力発電事業者ユーラスエナジー釜石の事務所から南西方向に位置する標高761メートルの高原地帯。市道から約3キロの林道を車で上り、終点から歩いて現地に向かった。かつての放牧場に隣接する雑木林を進むと、見えてきたのは周囲の樹木よりはるかに幹が太い1本の大樹。近づくにつれ、参加者はその迫力に驚きの声を上げた。
 
県が整備した林道を車両で進む

県が整備した林道を車両で進む

 
終点からは歩いて現地へ。広葉樹林の斜面を上っていく

終点からは歩いて現地へ。広葉樹林の斜面を上っていく

 
元放牧場沿いに進んでいくと、ひときわ大きな木が目に飛び込んできた

元放牧場沿いに進んでいくと、ひときわ大きな木が目に飛び込んできた

 
 市職員が計測したところ、幹周りは7.3メートル(根元から高さ1.3メートル部分)、根元周りは8.29メートル。大人6人が両手をつないで周る太さだ。根元から1.8メートルほどの高さで4本に枝が分かれ、最も太いものは3.32メートル。樹高は目測で約20メートル、枝幅は約27メートルと推定される。一部に枝の欠損があるが、樹勢の衰えは感じられない。新緑の季節を迎え、枝先には葉が生い茂り、この時期ならではの樹姿を見せている。専門家による年輪調査がないと詳細は分からないが、樹齢は「300年以上ではないか」と推定。
 
市の職員がシナノキの大きさを計測しデータ収集

市の職員がシナノキの大きさを計測しデータ収集

 
周りの木よりはるかに太い幹が年数を重ねてきたことを感じさせる

周りの木よりはるかに太い幹が年数を重ねてきたことを感じさせる

 
幹周りは驚きの7.3メートル(胸元高)

幹周りは驚きの7.3メートル(胸元高)

 
幹周りは大人6人が両手をつないだ長さ!本当に太い

幹周りは大人6人が両手をつないだ長さ!本当に太い

 
 現場は風通しが良く、日光もたっぷり降り注ぐ場所で、樹木の生育にも適しているとみられる。参加者からは「想像以上の大きさ」「立派だ」「勢いがある」など絶賛の声が聞かれた。また「他の木のつるが絡まると弱っていく可能性もある。手入れをして守ったほうが寿命が延びるのでは」という意見もあった。
 
 同委員で、環境省の環境カウンセラーでもある佐々木光壽さん(74)は「和山の(寒冷な)環境で、これだけ太く大きくなったのはすごい。シナノキでここまでの大きさのものは市内では他に確認されていないのではないか」と驚嘆。「間違いなく価値あるものの部類に入る。市の文化財指定の可能性はあると思う」と話した。
 
木の上部には日光がたっぷり降り注ぐ。横に伸びた枝ぶりも見事!

木の上部には日光がたっぷり降り注ぐ。横に伸びた枝ぶりも見事!

 
見上げると木の高さにもびっくり!

見上げると木の高さにもびっくり!

 
 案内した小笠原監事(67、橋野町)は振興社の人から情報を聞き、今年4月に初めて現地を確認。「自分も最初に見た時は感激した。力強さがあり、元気をもらえる木」と地元の宝を誇る。森林資源が豊富な同地域では古くから木炭生産が盛んで、世界遺産になっている「橋野鉄鉱山」でも製鉄の燃料に木炭が使われた。「この辺も木を切り出す人が入っていたと思われるが、地元の人たちは土地の守り神(御神木)としてこのシナノキだけは残したのではないか。先人の思いが詰まっているのでは…」と小笠原監事。
 
写真左:小笠原監事が4月に訪れた時のシナノキ。まだ冬枯れの景色(小笠原監事提供)わずか2カ月で写真右の姿に…

写真左:小笠原監事が4月に訪れた時のシナノキ。まだ冬枯れの景色(小笠原監事提供)わずか2カ月で写真右の姿に…

 
木の全体像を一枚の写真に収めるのもなかなか難しい!?

木の全体像を一枚の写真に収めるのもなかなか難しい!?

 
 和山高原はかつて肉牛の放牧が盛んで、昭和の時代には高原を活用した大規模イベントの開催、市内の学校や町内会の遠足地としての利用などがあり、多くの人が訪れていた。時代の変遷とともに放牧事業は縮小化。人口減も相まってレジャー客も激減した。同振興社は近年、新たな土地利用策の一環で、市指定文化財のシナノキ周辺にサクラやレンゲツツジの植樹を進め、市民や観光客の憩いの場創出に努めている。
 
 振興社の菊池会長(72)は今回注目された“新”シナノキについて、「和山のシンボルが増えた。ぜひ多くの人に知ってほしい」と文化財指定に期待。「現場までの林道を整備すればハイキングコースにもいい」と活用策に考えを巡らす。和山の自然が育んだ2大巨木「シナノキ」、植樹したサクラやツツジ…。「7年後には発電用の新しい風車も完成予定と聞いている。新たな景観を生かし、皆さんに訪れてもらえる和山にしていきたい」と今後を見据える。
 
和山の“新”シナノキを視察した参加者は貴重な光景を目に焼き付けた

和山の“新”シナノキを視察した参加者は貴重な光景を目に焼き付けた

 
シナノキ周辺に広がる景色も絶景。雪の残る早池峰山も見える

シナノキ周辺に広がる景色も絶景。雪の残る早池峰山も見える

 
 市指定文化財(天然記念物)の巨木は現在8件。栗橋地区では「和山のシナノキ」のほか、▽古里の御神楽スギ(1969年指定、橋野町)▽明神かつら(1973年同、栗林町)▽上栗林のサクラ(2007年同、栗林町)が指定されている。

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自然を感じ歩く、味わう 開通5周年!みちのく潮風トレイル 釜石で記念イベント

潮風を感じながら根浜海岸沿いを歩く参加者たち

潮風を感じながら根浜海岸沿いを歩く参加者たち

 
 岩手県沿岸部を含む長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」の全線開通5周年を記念した「鵜住居トレイル&畜養ウニ剝(む)き体験ウォーク」が1日、釜石市鵜住居町で行われた。地元の観光地域づくり会社かまいしDMCと市が共同で企画。県内外から約20人が参加し、海沿いの景色や旬の味を楽しみながら歩いた。
 
 潮風トレイルは、青森県八戸市から福島県相馬市までの太平洋沿岸をつなぐ全長1025キロの自然歩道。東日本大震災を経て、被災地に人を呼び込む復興支援策として検討が進み、2019年6月9日に全線が開通した。
 
 釜石区間は国指定天然記念物の三貫島や太平洋を望む海岸線、江戸時代から三陸を結ぶ生活の道として多くの旅人が往来した浜街道、震災後の復興の歩みを感じる市街地をめぐる約68キロのコース。市関係者らによると、「景色がよく自然を体感できるが峠道が多く、どちらかと言えば玄人向けかな」ということだ。
 
みちのく潮風トレイルは海景や自然を体感できるのが魅力

みちのく潮風トレイルは海景や自然を体感できるのが魅力

 
 そこで、初心者や歩き慣れていない人にトレイルの楽しみ方を知ってもらおうと、アップダウンの少ない特別コースを用意。鵜住居地区の海岸沿いの景観を楽しみつつ、復興まちづくり、震災の教訓にも触れることができる往復約6キロのルートで、同社の菊池啓さん(56)がガイドを務めた。
 
スタート前に三陸鉄道鵜住居駅前の広場で集合写真をパチリ

スタート前に三陸鉄道鵜住居駅前の広場で集合写真をパチリ

 
 三陸鉄道鵜住居駅をスタートした参加者は、片岸海岸の防潮堤や鵜住居川水門の上を通って根浜海岸へ。地元で「夫婦岩(めおといわ)」と呼ばれる岩石、震災の津波や地盤沈下で失われたものの人工的に再生された砂浜を眺めながら歩いた。
 
釜石鵜住居復興スタジアムを背に鵜住居川沿いを進む

釜石鵜住居復興スタジアムを背に鵜住居川沿いを進む

 
鵜住居川水門を見学して防災・減災に理解を深めながら歩く

鵜住居川水門を見学して防災・減災に理解を深めながら歩く

 
古い時代の地層⁉…参加者は「夫婦岩」に興味津々

古い時代の地層⁉…参加者は「夫婦岩」に興味津々

 
 観光施設「根浜シーサイド」のレストハウスではウニ剝きに挑戦。唐丹湾で人工的に育てられた畜養のキタムラサキウニが提供され、参加者はキッチンバサミを使って殻を割り、中に残る海藻などをピンセットで丁寧に取り除いた。スプーンで身をすくってパクリ。「おいしい」と顔をほころばせた。
 
レストハウスで畜養ウニの殻むきを体験し満足げな参加者

レストハウスで畜養ウニの殻むきを体験し満足げな参加者

 
 海の恵みを堪能してウオーキングは後半戦に。震災で被災した鵜住居小と釜石東中の跡地に建てられた釜石鵜住居復興スタジアムへ移動し、施設の特徴など説明を聞いた。そして、同小中の児童生徒が津波から避難した経路をたどって追体験。新しい街並みを進んで、駅に戻った。
 
 同市浜町の藤元裕一さん(71)、福子さん(71)夫妻は普段からウオーキングを楽しんでいて、潮風トレイルに興味があった。「車で通る時には気づかなかったことを発見したり、感動がたくさん。歩くことで釜石の良いところを知った。鳥のさえずりを聞いたり風を感じたり、自然を体験するぜいたくな時間だった」と笑顔を重ねた。ウニ剝きでは漁業者の細やかな仕事ぶりを実感。おいしさを届けてくれていることに感謝した。
 
松林が美しい根浜海岸を通り抜ける足取りは軽やか

松林が美しい根浜海岸を通り抜ける足取りは軽やか

 
潮風トレイルの魅力を体感し笑顔を見せる参加者たち

潮風トレイルの魅力を体感し笑顔を見せる参加者たち

 
 5周年を迎えた潮風トレイルは、英紙タイムズが掲載した記事「日本で訪れるべき場所14選」で取り上げられるなど、海外からも注目を集める。同社や市では誘客に期待し、コース整備に取り組む考え。今回の企画のような魅力発信につなげるイベントを秋頃にも催したいとしている。

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にぎわい創出!釜石大観音仲見世通り 出店促す〝縁結び〟 5回目マルシェ盛況

釜石大観音仲見世通りで開かれた「えんむすびマルシェ」

釜石大観音仲見世通りで開かれた「えんむすびマルシェ」

 
 釜石市大平町の釜石大観音仲見世通りで25日、地域活性化イベント「えんむすびマルシェ」が開かれた。さまざまな出会いの場を提供しようと、釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクト(宮崎達也代表)が主催し、5回目。飲食や手作り雑貨などの出店のほかステージイベントもあり、親子連れら多くの来場者でにぎわった。
 
 市内外から28の団体・個人が出店した。パンやスイーツ、手作りアクセサリー、木工製品などバラエティーに富んだ品ぞろえ。訪れた人たちは店主らと会話を弾ませながら品定めを楽しんだ。クレープやコーヒーなどを提供するキッチンカーも並んだ。
 
飲食や買い物、店主との交流を楽しむ来場者

飲食や買い物、店主との交流を楽しむ来場者

 
多彩な露店が並ぶ中で駄菓子屋は子どもたちに人気

多彩な露店が並ぶ中で駄菓子屋は子どもたちに人気

 
「すてきだね」。和柄のバッグなど手作り品に興味津々

「すてきだね」。和柄のバッグなど手作り品に興味津々

 
 地元釜石の漁師久保宣利さん(51)、翼さん(20)親子はホタテやカキなどが盛りだくさんの海鮮焼き、串焼きを販売。「お客さんとじかに顔を合わせ、反応を見ることができて楽しい」と腕を振るった。「両石港 隆丸」と旗印を掲げ、週末にはイベント出店。自分たちが養殖したり、仲間から買い付けた魚介や海藻を使って地域の海の魅力を発信する。「魚を通して、人とつながれる」。そう実感する親子は、漁業と出店、どちらも本業の“二刀流”でゆく。
 
店先で作って提供…かつての風景が通りに戻ったよう

店先で作って提供…かつての風景が通りに戻ったよう

 
浜の魅力を発信する久保宣利さん、翼さん親子ら

浜の魅力を発信する久保宣利さん、翼さん親子ら

 
 大漁旗柄のフラッグを用いた元気なパフォーマンスで会場を盛り上げたのは、釜石を応援するカラーガードチーム「ちあ釜」。4月に立ち上がったばかりで、地元メンバー4人はこの日が初舞台となった。
 
 小学校教諭の兼澤桃花さん(27)は「青空の下、気持ちよく踊れた」と晴れやかに笑った。佐久間桜音さん(11)、森美惠さん(17)は「緊張したけど楽しかった。かっこよく踊れるよう、もっと練習する」と意欲がアップ。60代のメンバーは「私でもできるので!」と仲間が増えることを期待した。代表の葛巻舞香さん(39)=ラグビー・日本製鉄釜石シーウェイブスオフィシャルサポーター、モデル、フリーアナウンサー=は「笑顔をつないで、みんなでまちをポジティブにしていきたい」と展望した。
 
大漁旗柄のフラッグを振り演舞する「ちあ釜」

大漁旗柄のフラッグを振り演舞する「ちあ釜」

 
地元釜石などから参加するメンバーと葛巻舞香さん(左)

地元釜石などから参加するメンバーと葛巻舞香さん(左)

 
 家族で訪れた同市平田の大和田崇士さん(47)は「正月に初詣で訪れた時より、にぎわっている。このイベントには初めて来たが、市外の人やものと触れ合えていい。続けてもらえれば、客として出店者たちの活動を応援したい」とうなずいた。
 
 同プロジェクトは、「釜石○○(まるまる)会議」から生まれた市民グループで、空き店舗が目立つ同通りを再生させ、にぎわいや交流の場を創出する活動を行う。大観音は「恋人の聖地」にも選定されていて、人のつながりや縁を広げる機会になればと2018年からマルシェを実施。新型コロナウイルス禍で数年見送ったが、23年に再開した。
 
幅広い年代、業種の人たちの縁を生み出す活動は続く
幅広い年代、業種の人たちの縁を生み出す活動は続く幅広い年代、業種の人たちの縁を生み出す活動は続く

 
 空き家となった遊休不動産の利活用を中心に、地元高校生と連携した催しや岩手県内・三陸沿岸地域で活動するアーティストらの展示などの企画にも力を入れる宮崎代表(52)。多様な取り組みを打ち出すことで、「出店したくなるようなまちづくり」を進めていく。

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世界遺産で楽しむ春の休日 橋野鉄鉱山八重桜まつり 来年の登録10周年へ弾み

はしの四季まつり第一弾「橋野鉄鉱山八重桜まつり」=12日

はしの四季まつり第一弾「橋野鉄鉱山八重桜まつり」=12日

 
 釜石市の世界遺産「橋野鉄鉱山」で12日、春恒例の八重桜まつりが開かれた。地元住民組織、橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)と栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が主催。高炉場跡に向かう道路沿いの並木の花は終盤だったが、濃桃色の花が青空や新緑とともに美しい景観を生み出し、来訪者を出迎えた。同鉄鉱山インフォメーションセンター駐車場では餅まきや豚汁のお振る舞い、産直の出張販売などがあり、約400人が楽しんだ。
 
 同所の八重桜は1980年代に釜石ライオンズクラブが植樹。橋野鉄鉱山が世界遺産登録された2015年には同振興協が新たな植樹を行い、若木も順調に花を咲かせている。同祭りは地域活性化などを目的に2007年にスタートした。東日本大震災(11年)による休止を経て、12年からは世界遺産登録を後押ししようと「橋野高炉跡」の冠をつけて開催。餅まきや豚汁の振る舞い、高炉場跡見学など今の形が定着した。登録後の16年から「橋野鉄鉱山」に祭り名を改称している。新型コロナ感染症の影響で20年から3年間は中止した。
 
 今年も釜石観光ガイド会(瀬戸元会長、会員29人)の案内で巡る高炉場跡の見学ツアーから開始。3人のガイドがグループごとに見学希望者を引き連れ、史跡エリアに向かった。ガイドらは鉄鉱山の成り立ち、現甲子町大橋で洋式高炉による国内初の連続出銑成功後、橋野で製鉄が始まった経緯、製鉄の方法、操業時の生産規模などを説明。橋野の3基の高炉は現存最古で、「明治日本の産業革命遺産」(8県11市23構成資産)の一つとして世界遺産登録されたことなどが伝えられた。
 
釜石観光ガイド会会員の説明を聞きながら高炉場跡に向かう

釜石観光ガイド会会員の説明を聞きながら高炉場跡に向かう

 
沿道では八重桜とツツジが競演!春はさまざまな花が楽しめる

沿道では八重桜とツツジが競演!春はさまざまな花が楽しめる

 
第一高炉跡で当時の操業の様子を聞く参加者

第一高炉跡で当時の操業の様子を聞く参加者

 
 餅まきには子どもから大人まで大勢の人たちが集まった。同振興協の菊池会長(69)が歓迎のあいさつ。地域の代表がトラックの荷台に上がり、約1000個の紅白餅をまいた。毎回好評の豚汁のお振る舞いには長い列ができた。振興協女性部が腕を振るう豚汁は山菜のワラビ、ウルイ、フキも入り具だくさん。来場者はおにぎりなどと一緒に味わった。会場内では昨年に続き、大槌町のバンド「ZENBEY絆」が演奏。今年は釜石市の女形舞踊・尚玉泉さんも共演し、まつりを華やかに彩った。
 
お楽しみの餅まき。紅白の餅約1000個がまかれた

お楽しみの餅まき。紅白の餅約1000個がまかれた

 
「こっちにも~」と手を伸ばしてアピール

「こっちにも~」と手を伸ばしてアピール

 
長蛇の列ができた豚汁のお振る舞い

長蛇の列ができた豚汁のお振る舞い

 
ZENBEY絆(写真右上)、尚玉泉さん(同左上)の歌と踊りで会場はにぎやかに

ZENBEY絆(写真右上)、尚玉泉さん(同左上)の歌と踊りで会場はにぎやかに

 
 同市の佐々木章斗君(8)は「豚汁もおいしかったし、歌も聞けた。きれいな花に囲まれて気持ちいい」とにっこり。母雅子さん(44)は「コロナも明けて、家族や親族など大人数で出かけられるようになった。まちの活気も戻ってきたようでうれしい」と声を弾ませた。同市甲子町から足を運んだ女性(37)は「今年は全般的にサクラの開花が早かったので、ここも終わっているかなと思って来たが、こんなに咲いているとは。青空にも映えてきれい。この後、並木の下を散歩して帰ります」と心を躍らせた。
 
 市北西部に位置する橋野町。鉄鉱山のある青ノ木地区は遠野市につながる笛吹峠の上り口にあり、冬から春先は市街地よりも気温が低い。サクラも市内では遅い開花だが、近年は地球温暖化の影響が顕著。10年ほど前までは5月下旬に見ごろを迎えていたが、最近は中旬までには満開になる年が多い。ただ、急激な高温や降雪に見舞われるなど極端な気象の年もあり、開花や満開時期の予想が難しく、主催者は祭り開催日の設定に頭を悩ませる。今年は6~7日ごろに満開になったという。
 
八重桜の木の下で豚汁を味わう家族連れ

八重桜の木の下で豚汁を味わう家族連れ

 
子どもも大人も祭り名物の豚汁に舌鼓

子どもも大人も祭り名物の豚汁に舌鼓

 
 同祭りでは震災後、甲子町から会場まで無料送迎バスが運行されている。今年は大型2台、中型1台が運行され、約90人が利用。市内で働く外国人の若者も10数人訪れ、日本の春を満喫した。
 
 橋野鉄鉱山は来年、世界遺産登録から10周年を迎える。釜石観光ガイド会の川崎孝生副会長(83)は「市民でもまだ(現地に)来たことがないという人もけっこういる。地元の世界遺産の価値を知り、誇りに思ってほしい」と願い、「ガイド会としても心を込めたお迎え、お見送りを大事にし、限られた時間でポイントを押さえ説明できるよう個々のスキルを高めていきたい」と節目の年を見据える。
 
ガイドの説明を聞きながら見学すると同所の価値がよく分かる

ガイドの説明を聞きながら見学すると同所の価値がよく分かる

 
もみの大木の間の鳥居を抜けると山神社跡。石碑などが残る

もみの大木の間の鳥居を抜けると山神社跡。石碑などが残る

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いいよ!釜石の海 ウニむき、漁船クルーズで“みりょく”体感 GW限定企画に満足

ゴールデンウイークを彩った釜石の海の魅力を発信する催し

ゴールデンウイークを彩った釜石の海の魅力を発信する催し

 
 ウニむき体験に、漁船クルーズ-。海の魅力を体感してもらう催しがゴールデンウイーク(GW)期間中の3日間、釜石市魚河岸の魚河岸テラスを拠点に展開された。施設を管理運営する観光地域づくり法人かまいしDMC(河東英宜代表取締役)が企画。この時期ならではの食や景色を味わい、もてなす漁師らとの触れ合いを楽しんだ人たちは釜石が発信する“みりょく”に満足げだった。
 
 ウニむき体験は3、4日に実施。畜養事業に取り組む唐丹町漁協の協力を得て、キタムラサキウニ約150キロを用意した。挑戦者たちはキッチンバサミやピンセットを使って「口開け」。殻を割って海藻などを丁寧に取り除き、スプーンで身をすくって味わった。「甘い」「濃厚」「うまい」「いつも食べているのと違う」と感想はさまざま。神奈川県大和市の小学生松村海里君(11)は「触ったのも、むきたてを食べるのも初めて。おいしいし、米が欲しくなる」と頬を緩めた。
 
魚河岸テラスで開かれたウニむき体験を楽しむ家族連れ=3日

魚河岸テラスで開かれたウニむき体験を楽しむ家族連れ=3日

 
黙々と。子どもも大人も真剣な表情で作業に集中した

黙々と。子どもも大人も真剣な表情で作業に集中した

 
 提供された畜養ウニは、海藻が少なくなる「磯やけ」やエサの減少によるやせたウニの増加といった漁業が直面する厳しさを改善させる手段として漁業者が育てた。その取り組みを岩手大学釜石キャンパス特任専門職員の齋藤孝信さん(62)が解説。エサとして漁協の加工場で出る塩蔵ワカメの端材などを与えていて、「価値のないものや捨てるもの、そんなマイナスを組み合わせてプラスに持っていきたいという漁業者の思いが込もっている」と伝えた。
 
齋藤孝信さんの手ほどきを受け、ウニむき体験を楽しむ親子

齋藤孝信さんの手ほどきを受け、ウニむき体験を楽しむ親子

 
「口、とった」「うまーい」。いい表情を見せる子どもたち

「口、とった」「うまーい」。いい表情を見せる子どもたち

 
 愛知県名古屋市の井上峰行さん(41)、由里恵さん(43)夫妻は、東日本大震災のことを考える“三陸めぐり旅”の途中で立ち寄った。「海と断絶された高い壁のような防潮堤」が印象的だったというが、海という資源に対する地域の思いやSDGsという視点に触れる機会にもなった。ウニむき作業は浜の人たちの手にかかると3分ほどというが、2人が要した時間は約20分。細やかで手間のかかる作業を日々繰り返している漁業者の仕事ぶりに思いを巡らせながら、そのひとすくいの「味力(みりょく)」をかみしめた。
 
絶好のクルーズ日和。水面や景色の近さを楽しむのは漁船ならでは=5日

絶好のクルーズ日和。水面や景色の近さを楽しむのは漁船ならでは=5日

 
 釜石湾内の漁船クルーズは5日限定で「定期便」を運航した。魚河岸テラス前を発着に、波が比較的穏やかな湾口防波堤の内側を巡る約1時間の船旅。通常は事前予約(乗船希望日の2日前まで)が必要だが、この日は出港時間を決めて6便航行した。
 
 乗客は涼しげな潮風を受けながら、釜石港周辺の産業中心地や尾崎半島にかけての大自然を堪能。海上から見上げるガントリークレーンの迫力、正面から望む釜石大観音など、普段見られない視点からの光景に「観力(みりょく)」を感じた様子だった。
 
産業中心地の風景を間近で眺め、普段とは違った角度に面白さを感じたり

産業中心地の風景を間近で眺め、普段とは違った角度に面白さを感じたり

 
 このクルーズの魅力は、漁師の船長がガイドを務めていること。第1便は釜石湾漁協に所属する平田の佐々木剛さん(71)が乗客をもてなした。漁船内の魚槽や魚群を探知する機器などを見せながら、「今、この辺にはサバの群れがいるってことです」などと解説。カキやサクラマスなど湾内で行われている養殖、2011年の東日本大震災や2017年の林野火災の被害と再生の取り組みにも触れた。
 
ガイドとして乗客をもてなす漁師の佐々木剛さん(写真中央)

ガイドとして乗客をもてなす漁師の佐々木剛さん(写真中央)

 
釜石湾内で行われているサーモン養殖のいけすに興味津々

釜石湾内で行われているサーモン養殖のいけすに興味津々

 
 福島県須賀川市から訪れた阿部仁一さん(47)、志帆さん(46)夫妻は「水面が近く、風も感じられてリフレッシュした。台本通りではないガイドが素朴で味があったし、いけすを見られたのもよかった」と笑顔を重ねた。鵜住居町の根浜海岸ではオートキャンプを満喫。宿泊サイトは満杯だったものの静かで快適な時間を過ごしたといい、釜石の海レジャーに好感触を残した。
 
 GW後半は天候に恵まれ、釜石港の岸壁では釣り客も多かった。水中に糸をたらし、寄ってきた小魚を網ですくい取る子ども、サバなどをバケツいっぱいに釣り上げた人もいた。「釣りをやってみたい」という子どもらの希望を受けてやってきた盛岡市の40代男性は「道路がつながって三陸が近くなった。年に数回、平田で釣りをしていて、釜石の海にいいイメージを持っている。子どもたちも楽しんでいる」と目を細めた。
 
魚市場近くの岸壁では釣りを楽しむ人の姿も多く見られた=5日

魚市場近くの岸壁では釣りを楽しむ人の姿も多く見られた=5日

 
「とったー」。魚を釣り上げてピースサインをつくる子ども

「とったー」。魚を釣り上げてピースサインをつくる子ども

 
 ウニむき体験は、畜養しても活用方法や販路の確保を模索していた漁協を後押ししようと、昨年のGWに続いて2回目の実施。漁船クルーズは海を生かした持続可能な観光振興を目指し取り組む。どちらも反響は上々で、イベントを担当するかまいしDMCの佐々木和江さん(46)は「魚食、遊び、人との関わりなど多様な要素を取り入れた企画で、臨海部ならではの魅力を発信していきたい」と先を見据えた。

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大型連休 久しぶりのにぎわい 釜石駅前の春まつり 観光客ら海の幸、市内外の味覚堪能

天候にも恵まれ、市内外から客が訪れた「かまいし春まつり」=4日

天候にも恵まれ、市内外から客が訪れた「かまいし春まつり」=4日

 
 新型コロナウイルス感染症の5類移行後、初めて迎えた春の大型連休。釜石市内は連休後半、晴天が続き、絶好の行楽日和となった。鈴子町の釜石駅前が会場となる恒例の「かまいし春まつり」は4日、シープラザ釜石、サン・フィッシュ釜石の両施設で行われた。来場者は市内外の出店者によるさまざまな味覚やステージイベントを楽しみ、釜石の春を満喫した。
 
 同まつりはこれまで駅前広場を主会場としていたが、今回初めて、駅に隣接する観光物産施設シープラザ釜石の西側駐車場に出店ブースを設けた。市内外からキッチンカーを含む19店舗が出店。地元釜石からは各事業者がホタテ焼きやジェラート、海宝漬、ラスクなどを販売。釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売し、地元ならではの味をアピールした。
 
釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売。ご飯のお供、おつまみに…

釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売。ご飯のお供、おつまみに…

 
釜石の春を盛り上げようと市外からの出店も多数

釜石の春を盛り上げようと市外からの出店も多数

 
 ラグビー「日本製鉄釜石シーウェイブス」の試合会場となる釜石鵜住居復興スタジアムでの出店が縁で、本まつりに出店した市外の事業者も。宮城県気仙沼市の大島から来たのは、飲食店&ゲストハウス「大漁丸」を経営する菊地幸江さん(63)。別店舗「GO-HEI」を構える娘夫婦と菓子などを販売した。三陸沿岸道路の開通で釜石までは車で約1時間。「つながりができてうれしい。地元以外の出店は新たな出会いがあって楽しい」と喜ぶ。13年前の震災津波、直近のコロナ禍で大島の観光、飲食業者も大きな打撃を受けた。「釜石も気仙沼も素晴らしい海が魅力。再び多くの人が訪れるようになるといい」と今夏に期待を寄せた。
 
気仙沼市・大島から出店した菊地幸江さん(左)家族。釜石との縁を喜ぶ

気仙沼市・大島から出店した菊地幸江さん(左)家族。釜石との縁を喜ぶ

 
塩蔵ワカメの詰め放題企画。子どもたちは丸めて入れたり工夫も

塩蔵ワカメの詰め放題企画。子どもたちは丸めて入れたり工夫も

 
正午のメカブ汁のお振る舞いには長い列ができた

正午のメカブ汁のお振る舞いには長い列ができた

 
 会場内では塩蔵ワカメの詰め放題企画、昼には先着200人限定のメカブ汁のお振る舞いもあり、人気を集めた。シープラザの建物内ではステージイベントも。釜石市出身の民謡歌手佐野よりこさんや同市の柳家細川流舞踊などが出演し、来場者を楽しませた。
 
 宮城県石巻市から親族4人で訪れた佐藤美智子さん(65)は新聞広告で同まつりを知り、初めて釜石市に足を延ばした。「ホタテやツブ、途中の道の駅ではホヤもいただき、海鮮づくしの一日。どれもおいしかった」と満足そう。今の三陸沿岸の景色に「(被災後の整備で)まちそのものはきれいになったが、家屋が少なくなったのはちょっと寂しい」。新型コロナの制限がない久しぶりの大型連休に「明日は孫、子どもたちとバーベキューです」と声を弾ませた。
 
シープラザ釜石では民謡や舞踊のステージイベントも

シープラザ釜石では民謡や舞踊のステージイベントも

 
肉の串焼きやかき氷はボリューム満点(左)。好みのものを買い求め飲食を楽しんだ

肉の串焼きやかき氷はボリューム満点(左)。好みのものを買い求め飲食を楽しんだ

 
 駅前橋上市場サン・フィッシュ釜石は3~5日まで、三陸の海産物を堪能できる企画を用意。各店で購入した好みの魚介の刺し身でオリジナル丼を楽しめる「のっけ丼」、貝類やエビ、イカなどをその場で焼いて食べられる「浜焼き」を提供した。隣のシープラザでイベントがあった4日は午前10時ごろをピークに大勢の客が訪れた。
 
 神奈川県横浜市の高橋広也さん(49)は家族3人で花巻市の実家に帰省。めい2人、母と連れ立って同まつりに足を運んだ。「新鮮な海産物のおいしさは格別」とのっけ丼、浜焼きを堪能。時間も場所もゆったりと食事を楽しんだ。三陸名物の“牛乳瓶入り”ウニを目当てに来たが、この日はあいにく水揚げがなく「後日、注文します」と楽しみは先延ばしに。コロナ禍でかなわなかった帰省は昨年から解禁。「子どもの顔を見せられるし、親族で集まれるのはすごく幸せ」と笑顔を輝かせた。
 
サン・フィッシュ釜石でのっけ丼や浜焼きを楽しむ家族ら

サン・フィッシュ釜石でのっけ丼や浜焼きを楽しむ家族ら

 
 サン・フィッシュ会場では、かまいしDMCが開発した「うにしゃぶ」鍋スープをお試しサイズ(2~3人前)で味わえる企画も。スープ、ワカメ、ご飯をセットにして、3日間限定20食を販売した。

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足慣らし、行こうよ! 岩手・三陸沿岸最高峰「五葉山」山開き 春の芽吹き、爽やか

五葉山が山開き。シーズン到来に笑顔を見せる登山者

五葉山が山開き。シーズン到来に笑顔を見せる登山者

 
 釜石、大船渡、住田の3市町にまたがる三陸沿岸最高峰・五葉山(標高1351メートル)は4月29日、山開きした。リアス海岸や奥州山系の山並みなど山頂から望む雄大な景色、原生林や花々の群落など標高によって異なる表情を見せる豊かな自然が魅力。待ちわびた登山者はこの時期ならではの眺望や芽吹きを楽しみながら爽やかな汗を流している。
 
 両市境の赤坂峠登山口で安全祈願祭があり、五葉山神社の奥山行正宮司が登山道を清めて無事故を祈った。3市町村で組織する五葉山自然保護協議会長の渕上清大船渡市長が「皆さんに快適に登山してもらえるよう、登山道の適切な維持管理や自然の保全保護などを行っていく」とあいさつ。山頂を目指して歩き出した登山客に「安全第一で楽しんでください」と声をかけた。
 
多くの登山者が待つ赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われた

多くの登山者が待つ赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われた

 
五葉山神社の宮司が登山道を清めて無事故を願った

五葉山神社の宮司が登山道を清めて無事故を願った

 
 間隔を確保しながら列を作って、思い思いのペースで山歩き。ツツジやシャクナゲの新芽、新緑を眺めたり、自然を楽しむ姿も見られた。登山仲間と訪れた釜石市の青柳あや子さん(73)は「水場や避難小屋があって安心で、登りやすい山。花はまだだろうから、風や空気、おしゃべりを楽しみながらゆっくり行く」とにっこり。山田町の佐々木千恵さん(73)、宮古市の畠山亮子さん(69)と顔を合わせ、「そちこちの山に遠征するから、きょうは足慣らしだね」と元気だった。
 
ぐんぐん力強い足取りで頂上を目指す登山者

ぐんぐん力強い足取りで頂上を目指す登山者

 
「きょうは足慣らしです」。元気な“山レディー”たち

「きょうは足慣らしです」。元気な“山レディー”たち

 
「山、登りたい!」と宮城県から足を運んだ小学生グループ

「山、登りたい!」と宮城県から足を運んだ小学生グループ

 
 五葉山は山頂まで比較的緩やかな道が続き、家族連れや年配者、初心者でも登りやすい。山開き前に楽しんだ人もいて、「上の方に雪が残っていた」「雪はないけど、ぬかるんでいた」と情報交換したり。近年は雪が少ない傾向で、季節の進み具合も感覚的に早まっている。
 
 この日も例年の服装では汗ばむ陽気に。暑さを感じて袖をまくったり、半袖姿の人もいた。そうは言っても、天気の急変など何が起こるか分からないのが自然。山岳関係者は「装備はしっかりと。自分の体力に合わせて登ってほしい。山のマナーも忘れずに」と呼びかける。
 
半袖や袖をまくったりする姿も。そんな暖かさにツツジも反応?

半袖や袖をまくったりする姿も。そんな暖かさにツツジも反応?

 
春の行楽シーズン到来に登山客の顔も自然とほころぶ

春の行楽シーズン到来に登山客の顔も自然とほころぶ

 
山頂へ向かう登山者。新緑の中をゆっくり進んでいく

山頂へ向かう登山者。新緑の中をゆっくり進んでいく

 
 5月のゴールデンウィーク(GW)期間のほか、ツツジやシャクナゲが咲く5~7月にかけてもにぎわいが予想される。

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鉄鉱石産出日本一「釜石鉱山」の価値を後世に デジタル技術活用で保存・理解促進へ

旧釜石鉱山事務所「国登録有形文化財」登録10周年記念事業の公開=甲子町大橋、同事務所

旧釜石鉱山事務所「国登録有形文化財」登録10周年記念事業の公開=甲子町大橋、同事務所

 
 日本最大の鉄鉱山として栄えた釜石市甲子町大橋の「釜石鉱山」。豊富な資源を基に国内で初めて洋式高炉による連続出銑に成功したこの地は、「近代製鉄発祥の地」として知られる。現存する旧釜石鉱山事務所の建物は2008年に日鉄鉱業から同市に寄贈され、市は寄託資料の展示公開を行っている。建物は13年に国の有形文化財(建造物)に登録され、昨年6月で10周年を迎えた。これを記念し、市は同鉱山への関心を高めてもらう各種事業を実施している。
 
建物が国の有形文化財になっている「旧釜石鉱山事務所」。鉱山の歴史を物語る貴重な資料を展示

建物が国の有形文化財になっている「旧釜石鉱山事務所」。鉱山の歴史を物語る貴重な資料を展示

 
 NTT東日本岩手支店(後藤高宏支店長)、NTT Art Technology(アートテクノロジー、国枝学代表取締役社長)の協力で取り組んだのは、デジタル技術を活用した鉱山の歴史の保存と発信。同事務所に残る、ドイツ人地質学者ハインリッヒ・エドムント・ナウマンが手がけた東北部の予察地質図(1886年刊行)を高精細のデジタル化技術で複製。レプリカの展示で実物の劣化を防ぎ、現在の状態を画像データで保存する目的で行われた。実物は明治初期に石版印刷で刷られたものだが、今回のデジタル化で細部の拡大が可能となり、当時の技術の高さが浮き彫りになった。
 
ナウマンの地質図などのデジタル化について説明するNTTアートテクノロジーの国枝学社長

ナウマンの地質図などのデジタル化について説明するNTTアートテクノロジーの国枝学社長

 
 同鉱山の坑道を360度カメラで撮影した映像をパソコンやスマートフォンなどで見られるVR(仮想現実)コンテンツも制作した。普段は一般公開されていない坑道を2キロにわたり撮影。花こう岩の音響実験室(グラニットホール)や鉄鉱石採掘場跡、ミネラルウオーター「仙人秘水」の採水地も現地にいる感覚で見ることができる。旧鉱山事務所のVR映像も制作した。
 
 地質図、坑道、旧事務所の各コンテンツは「釜石鉱山デジタルアーカイブ」(http://kamaishi.org)で公開。同アーカイブには、鉱山労働者らが暮らした大橋社宅街の写真を投稿してもらうフォーマットもある。同事務所(釜石鉱山展示室)では5月13日まで、ナウマンの地質図の実物とレプリカを並べて展示公開。坑道と事務所のVR体験もできる。
 
釜石鉱山坑道を360度カメラで撮影した映像でバーチャルツアーを楽しめる

釜石鉱山坑道を360度カメラで撮影した映像でバーチャルツアーを楽しめる

 
小野共市長(手前右から2人目)もVR体験。「見ると現地にいる感覚に。実際に行って空気感などを体感してみたくなる」

小野共市長(手前右から2人目)もVR体験。「見ると現地にいる感覚に。実際に行って空気感などを体感してみたくなる」

 
 「ナウマンの地質図」実物はどっち?? ぜひ、足を運んで見比べを!

「ナウマンの地質図」実物はどっち?? ぜひ、足を運んで見比べを!

 
 NTTアートテクノロジーの国枝社長は「高精細であればあるほど、本物を見たいという人は多い。デジタルアーカイブを見た人が興味を持って現地を訪れるというような循環につながれば。あらかじめ見どころをつかんで足を運べば、より一層理解も深まると思う」と期待する。同社はこれまで数多くの文化・芸術作品のデジタル保存を手掛けているが、産業関連では今回の釜石での取り組みが初めてだという。
 
 同市とNTT東日本は2022年8月、地域活性化に向けた連携協定を締結。水産業の課題解決や自治体業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化などで一体的な取り組みを進めてきた。今回の事業公開にあたり、6日、同事務所で行われた開会式では小野共市長から後藤支店長に感謝状が贈呈された。後藤支店長は「大変意義ある事業にNTT東日本グループとして参画させていただきうれしい」と話した。
 
 式では、市が昨年募集した旧釜石鉱山事務所の愛称も発表された。全国から6点の応募があり、市職員と釜石鉱山社員14人で選考した結果、釜石市の小林潤(さかえ)さん(52)が考案した「Teson(てっさん)」に決まった。小林さんによると、「鉄山」とスペイン語で“粘り強い”を意味する「teson(テーソン)」を組み合わせ、発音を変えた造語だという。「釜石の歴史を築いてきたのは鉄山だけでなく、その事業を支えた先人たちの粘り強い精神。多くの人たちが釜石を訪れ、その歴史や精神に触れることを願う」と小林さん。
 
考案した愛称「Teson(てっさん)」が採用され、感謝状を贈られる小林潤さん

考案した愛称「Teson(てっさん)」が採用され、感謝状を贈られる小林潤さん

 
釜石鉱山フォトコンテストの全応募作品も公開

釜石鉱山フォトコンテストの全応募作品も公開

 
 記念事業の公開では、昨年実施した釜石鉱山フォトコンテストの応募作品30点も全てプリントして展示。最優秀賞を受賞した釜石市の藤原信孝さん(75)の作品など、応募者の視点で捉えた鉱山の魅力を感じることができる。
 
 記念事業の展示は5月13日まで開催。旧釜石鉱山事務所の開館時間は午前9時から午後5時まで(最終入館は午後4時)。毎週火、水曜日は休館。大型連休中の5月1日(水)は特別開館。入館料は一般300円、小中学生100円。
 
開会式に出席した関係者。旧事務所訪問やVR体験で釜石鉱山の歴史、価値に触れてほしいと願う

開会式に出席した関係者。旧事務所訪問やVR体験で釜石鉱山の歴史、価値に触れてほしいと願う

sakuramankai202405

桜の宝庫・釜石 各所で*満開* 昼も夜も花見客繰り出す 写真、ピクニック…春の楽しみ存分に

満開の桜の下で花見を楽しむ親子=13日、上中島町

満開の桜の下で花見を楽しむ親子=13日、上中島町

 
 釜石市内の桜は13日までに多くの場所で満開となり、天候に恵まれた13、14の両日は各地で花見を楽しむ人たちの姿が見られた。新型コロナウイルス感染症の5類移行後、初の花見シーズンを迎え、桜の木の下で弁当などを広げ飲食を楽しむ光景も戻ってきた。桜とともにツバキやモクレン、レンギョウなどが見られる場所もあり、花色の競演も春の風景を一層引き立てている。山あいの地域ではこれから満開となる桜もあり、釜石の桜シーズンはまだまだ続く。
 
 上中島町の日本製鉄多目的グラウンド広場の桜は薄桃色の花が美しい並木が市道沿いに連なる。13日は家族連れが訪れ、レジャーシートを広げて昼食を楽しんだり、ボール遊びをする姿が見られた。妹、母と鈴子広場(公園)で遊んだ後、昼食を食べようと同所に立ち寄った甲子町の佐藤愛奈ちゃん(5)は「桜はお花がきれいだから大好き。(見られて)うれしい」とにっこり。母手製の弁当を頬張り、春の休日を楽しんだ。
 
青空とのコントラストも美しい桜並木=日本製鉄多目的グラウンド広場

青空とのコントラストも美しい桜並木=日本製鉄多目的グラウンド広場

 
「さくら、きれい。お弁当もおいしいよ!」笑顔も満開の子どもたち

「さくら、きれい。お弁当もおいしいよ!」笑顔も満開の子どもたち

 
 11、12日で一気に咲き進み、満開となった小川川下流域の桜並木。13日は見ごろを逃すまいと多くの人が足を運んだ。両岸に木が並ぶ一帯は2つの橋を渡って周回できる絶好の散歩コース。親和橋のたもとでは花を間近で見ることができ、至近距離で撮影する人たちも。近くの多目的広場では子どもたちや若者グループが遊びに興じ、歓声が響いた。
 
今年もボリューム満点の花を咲かせる小川川沿いの桜並木=13日

今年もボリューム満点の花を咲かせる小川川沿いの桜並木=13日

 
 野田町の佐々木彩加さんは4世代家族8人で訪れた。同所には毎年足を運んでいて、「遠くに行かなくても桜を楽しめる場所があるのはとてもいい」と笑顔。長男(3)は今春、こども園に入園したばかり。「今年も無事に家族みんなで桜を見られた。毎年ここで撮っている写真を見ると、子どもたちの成長を実感する」と幸せいっぱいの表情を浮かべた。
 
 東日本大震災後、小川川に隣接する桜木町は当時あった旧市民体育館が被災者の避難所となり、多目的広場には仮設住宅が建ち並んだ。毎年変わらず花を咲かせる同所の桜は被災者の傷ついた心を癒やしてきた。日本製鉄釜石山神社や市民弓道場近くの桜は2014年から昨年まで運行したSL銀河の撮影スポットにもなり、多くの鉄道ファンでにぎわった。同所には毎年、市内の老人福祉施設の利用者らも訪れており、13日も職員らと花見を楽しむ姿が見られた。
 
美しい桜風景に癒やされながら川沿いを散策。桜木町は一日中、花見客でにぎわった

美しい桜風景に癒やされながら川沿いを散策。桜木町は一日中、花見客でにぎわった

 
多目的広場で遊んだり、木の下で飲食を楽しんだりするグループも

多目的広場で遊んだり、木の下で飲食を楽しんだりするグループも

 
 桜が咲くこの時期は鉄道写真愛好家にとっても心躍る季節。鈴子町、釜石駅近くの線路沿いの桜並木は今年も美しい花を咲かせ、JR東日本、三陸鉄道の車両を出迎える。13日は開業40周年を迎えた三陸鉄道が発売した「400円で全線乗り降り自由」の記念切符の利用日。乗客らは沿線の桜風景とともに鉄道旅を満喫した。
 
 山田町の及川祥さん(31)は同切符を利用し、宮古から釜石へ。釜石駅で下車し、昼ごろ、桜並木の下で同駅を発着する2社の車両撮影にいそしんだ。「元々、家の前をJR山田線(現三陸鉄道リアス線)が通っていて、鉄道には昔からなじみがあった。列車の写真を撮り始めたのは10年ぐらい前から。1年の中でも桜の季節は撮影が楽しい」と顔をほころばせる。「この後、ひなび(JR新観光列車)も撮って帰ります。今年は三鉄40周年の企画が目白押しなので期待している」と話した。
 
満開の桜がお出迎え!釜石駅に到着するJR車両

満開の桜がお出迎え!釜石駅に到着するJR車両

 
開業40周年の三陸鉄道は13日限定、400円で乗り放題切符を事前販売。乗客は車窓から見る桜も満喫

開業40周年の三陸鉄道は13日限定、400円で乗り放題切符を事前販売。乗客は車窓から見る桜も満喫

 
 中心市街地を一望できる大町の薬師公園は、昼とともに夜も桜を楽しめる人気スポット。今年も釜石観光物産協会などによる夜間のちょうちん点灯が行われていて、昼とは違った風景を広げている。坂道の遊歩道沿いにはシダレヒガンザクラなどが咲き誇り、頂上広場のソメイヨシノも少し遅れて満開を迎えた。13日は家族連れやカップルが次々に訪れ、ちょうちんや街路灯で浮かび上がる夜桜に見とれた。
 
ちょうちんの明かりで夜桜も堪能できる「薬師公園桜まつり」

ちょうちんの明かりで夜桜も堪能できる「薬師公園桜まつり」

 
 大渡町の女子高校生(16)は下から見える遊歩道のちょうちんの明かりに誘われて足を運んだ。「夜の桜は初めて見た。昼とは違い、幻想的な雰囲気。まるで映画の世界みたい」と感激。スマホカメラでたくさん写真を撮り、「釜石ではなかなか見られない風景。写真は家族に見せたい」と声を弾ませた。ちょうちんの点灯は日没から午後9時までで、21日まで実施。
 
坂道の遊歩道を彩る桜は複数種。ツバキの花、三日月ともコラボ(写真左)

坂道の遊歩道を彩る桜は複数種。ツバキの花、三日月ともコラボ(写真左)

 
訪れた人たちは幻想的な景色にうっとり。写真も撮ってお土産に

訪れた人たちは幻想的な景色にうっとり。写真も撮ってお土産に

 
桜の木々の合間からは市街地の夜景も…。震災復興で建った建物などで多くの明かりが見える

桜の木々の合間からは市街地の夜景も…。震災復興で建った建物などで多くの明かりが見える

 
 市内ではこのほか、小川川上流の日向ダムで管理事務所周辺の桜が満開。ダムの上流、船着き場付近は複数種の桜が咲き始め、これからシダレザクラなどが開花する見込み。橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」周辺のソメイヨシノやヤマザクラは14日時点でつぼみ状態で開花はこれから。同所では高炉場跡の石割桜、道路沿いの八重桜の開花と5月にかけて桜シーズンが続く。
 
日向ダム周辺にも多くの桜が生える。ダム上流部にはこれから開花する花も

日向ダム周辺にも多くの桜が生える。ダム上流部にはこれから開花する花も

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桜前線釜石に 見ごろ予想は今週末 「上栗林のサクラ」ライトアップ&各所の開花状況

青空に映え、美しく咲き誇る釜石市内の桜。写真左下はライトアップされた市指定文化財「上栗林のサクラ」=10日

青空に映え、美しく咲き誇る釜石市内の桜。写真左下はライトアップされた市指定文化財「上栗林のサクラ」=10日

 
 日本の春の象徴、桜の季節が今年もやってきた-。釜石市内の桜は最高気温が20度を超えた7、8の両日で一気に咲き進み、10日時点で5~9分咲きの所が多数。青空が広がった10日は並木道を散歩したり、美しく咲き誇る花をカメラに収めたりする人の姿が各所で見られた。市指定文化財(天然記念物)の「上栗林のサクラ」は7日から夜のライトアップを開始。幻想的な花風景を広げている。
 
 甲子町松倉の甲子川沿いの市道はエドヒガン、ソメイヨシノ、シダレザクラなどが混在する市内有数の並木道。今年は早咲きが4日ごろ開花し、10日にはほぼ満開状態になった。機を逃すまいとカメラを向ける人、車両で通行する人などそれぞれの楽しみ方で美しい光景を目に焼き付けた。
 
甲子川沿い、野田町西端から甲子町松倉まで連なる桜並木。古くから市民に愛される桜スポット

甲子川沿い、野田町西端から甲子町松倉まで連なる桜並木。古くから市民に愛される桜スポット

 
10日午前はわずかにつぼみが残る木もあったがほぼ満開

10日午前はわずかにつぼみが残る木もあったがほぼ満開

 
 同所では6日、かまいし環境ネットワーク(加藤直子代表)主催の「お花見クリーンアップ」が行われた。市民ら約80人が参加し、並木の下や土手、河川敷のごみを拾い集めた。前日には、地区内の久保沢川で工事中の佐野建設(甲子町)がボランティアで同河川を清掃。両日の活動で計約150キロのごみが回収された。31年前、自主的に清掃を始め、同所の環境を見続けてきた加藤代表は「ごみの量は少なくなってきてはいるが、相変わらずポイ捨てが後を絶たない」と話し、通行者のモラル向上を願う。一方地元では、この一斉清掃以外にも個々でごみを拾い集める住民が増えており、着実な環境保護意識の高まりも感じさせる。
 
甲子川沿いの桜並木周辺で市民らが行った「お花見クリーンアップ」=6日

甲子川沿いの桜並木周辺で市民らが行った「お花見クリーンアップ」=6日

 
約1時間の清掃で空き缶、ペットボトル、ビニール片などさまざまなごみを拾い集めた

約1時間の清掃で空き缶、ペットボトル、ビニール片などさまざまなごみを拾い集めた

 
 大渡町の大渡橋たもと、橋詰広場の一本桜も10日時点でほぼ満開。橋上市場があった時代の名残を見せる桜は、2011年の東日本大震災の津波にも耐え、毎年花を咲かせている。10日午後には市内の水産加工会社で働くインドネシア出身の女性3人が休暇を使って訪れ、美しい花姿を楽しんだ。釜石に来て1~2年目という3人。来日して初めて目にした日本の桜に「すばらしい。きれいな花を見るとうれしくなる」と笑顔を広げ、しきりにスマホカメラのシャッターを切った。撮った写真は母国の家族に送るといい、「他の場所の桜も見てみたい」と期待を膨らませた。
 
大渡町の橋詰広場の桜もきれいに咲きそろう=10日午後

大渡町の橋詰広場の桜もきれいに咲きそろう=10日午後

 
日本の桜に感動し、撮影の手が止まらないインドネシア出身女性

日本の桜に感動し、撮影の手が止まらないインドネシア出身女性

 
 市内最大とされる栗林町上栗林の一本桜は、気温が20度を超えた7日から多くの花が開花。昨年より5日遅いものの、7、8連日の20度超えで次々に花開き、雨上がりの10日は全体がほぼ咲きそろった。地元住民組織、上栗林振興会(三浦栄太郎会長、28世帯)が行うライトアップは今年で12年目。2色のLED照明で浮かび上がる夜桜は毎年足を運ぶファンも多く、連日、家族連れなどが訪れている。
 
ライトアップ中の「上栗林のサクラ」。今年は県道側に丸太椅子が設置され、座っても観賞できる

ライトアップ中の「上栗林のサクラ」。今年は県道側に丸太椅子が設置され、座っても観賞できる

 
 樹齢400年以上と推定される同桜はエドヒガン種。地元では「種蒔(たねまき)桜」と呼ばれ、開花は農事の目安とされてきた。2007年に市の文化財に指定されている。古木ながら今も成長を続けているとみられ、花勢も衰えてはいない。地元住民によると、今年は花が小ぶりだというが、枝いっぱいに花をつける姿は例年と変わらない。訪れた人たちは見る角度によって違った風情を醸す桜を撮影しながら、春の夜のひとときを楽しんだ。
 
「どこから見てもきれい」。来場者を魅了する一本桜。下から見上げたり、離れた所から観賞したり楽しみ方いろいろ

「どこから見てもきれい」。来場者を魅了する一本桜。下から見上げたり、離れた所から観賞したり楽しみ方いろいろ

 
晴れた日には星空とも競演!周辺を移動時は足元が暗いので十分注意を

晴れた日には星空とも競演!周辺を移動時は足元が暗いので十分注意を

 
 三浦会長(73)は「新型コロナ感染症の余波もあり、道路沿いへの看板掲示はまだ控えている状態だが、一般の方やキッチンカー出店希望者から問い合わせをいただくことも。口コミでの広がりはあり、逆に効果的なよう。来年以降は開花時期に合わせた音楽イベントも企画できれば」と話す。ライトアップは14日までの実施は確実で、以降は花の散り具合により判断する。点灯は午後6時半から同9時半まで。
 
 釜石市内は13、14日も気温が平年より高めに推移する見込みで、桜が満開となる所もさらに増えそう。ここからは10日時点の市内の桜の開花状況を写真で紹介する。
 
 【野田中央公園】住宅地側のヤマザクラは満開。風が吹くと花びらがちらほら。甲子川側の並木はもうすぐ満開

【野田中央公園】住宅地側のヤマザクラは満開。風が吹くと花びらがちらほら。甲子川側の並木はもうすぐ満開

 
【定内公園】「今年は一斉に咲いた感じ。花が特にもきれい」と近所の女性(80)。川をはさんだ小佐野町、せいてつ記念病院敷地の桜も咲き誇る

【定内公園】「今年は一斉に咲いた感じ。花が特にもきれい」と近所の女性(80)。川をはさんだ小佐野町、せいてつ記念病院敷地の桜も咲き誇る

 
【小川川下流域】両岸のソメイヨシノの枝が川に垂れる人気スポット。散歩する80代女性は「5分咲きかな。老木ながら毎年こんなに咲くのには驚き。今週末には満開になるのでは」と予想

 【小川川下流域】両岸のソメイヨシノの枝が川に垂れる人気スポット。散歩する80代女性は「5分咲きかな。老木ながら毎年こんなに咲くのには驚き。今週末には満開になるのでは」と予想

 
【唐丹町本郷】1933(昭和8)年の三陸大津波からの復興を願って植樹された。道路の両側に立ち並び、桜のトンネルを形成。10日は9分咲き

【唐丹町本郷】1933(昭和8)年の三陸大津波からの復興を願って植樹された。道路の両側に立ち並び、桜のトンネルを形成。10日は9分咲き

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走り続け40年…これからも!三陸鉄道 記念列車、釜石へ 「ありがとう」思い乗せ

釜石駅に到着した三陸鉄道の開業40周年記念列車

釜石駅に到着した三陸鉄道の開業40周年記念列車

 
 岩手県沿岸を走る三陸鉄道(本社・宮古市、石川義晃社長)は1日、開業40周年を迎えた。「ありがとう」との文字を配したヘッドマークを付けた記念列車を運行。釜石市鈴子町の釜石駅では関係者が大漁旗を振って歓迎した。東日本大震災など幾多の苦難を乗り越え、地域の足として親しまれている“三鉄”。記念イヤーに合わせ多彩な企画を用意していて、「これからも走り続ける」との思いを発信する。
 
開業40年を記念した上り列車。トリコロールカラーの車両が甲子川にかかる橋りょうを進む風景は開業時から変わらない

開業40年を記念した上り列車。トリコロールカラーの車両が甲子川にかかる橋りょうを進む風景は開業時から変わらない

 
 記念列車は三鉄カラーの赤青白のトリコロール車両(2両編成)で、上下線で運行した。正午頃、大船渡・盛駅発の下り列車が釜石駅に到着。ホームでは市職員ら約10人が出迎え、乗客に地元の特産品「仙人秘水」や観光パンフレットなどを手渡した。
 
 電車や新幹線といった鉄道車両が好きな及川朝陽君(10)は「三鉄40周年、どうしても乗らなきゃ」と盛岡市から、宮古市に住む祖母のもとへやって来て、一緒に乗車。「車体のカラーリングがかっこいい。海の景色もいいし、いろんな人と話もできて楽しい」と旅を満喫した。祖母の小林みきえさん(70)は普段から三鉄を利用。「交通の足で、なくなると困る。ずっと走ってほしい」と望んだ。
 
釜石駅ホームで下り列車を歓迎する関係者。大漁旗を振ったり利用客に土産品をプレゼントしたり

釜石駅ホームで下り列車を歓迎する関係者。大漁旗を振ったり利用客に土産品をプレゼントしたり

 
唐丹駅に到着した下り列車。乗客は記念の三鉄旅を楽しむ

唐丹駅に到着した下り列車。乗客は記念の三鉄旅を楽しむ

 
 三陸鉄道は1984(昭和59)年4月1日、県や沿線自治体が出資する国内初の第三セクター路線として開業。当時は南リアス線(盛―釜石、36.6キロ)、北リアス線(宮古―久慈、71.0キロ)に分かれて運行していた。2011(平成23)年3月の震災では路線や駅舎が流失するなど全線で運行が不能となったが、わずか5日後に北リアス線の一部区間で無料の「復興支援列車」を運行。南リアス線も含め復旧を進め、14(同26)年4月に全線復旧した。
 
 同じように震災で不通となったJR山田線釜石―宮古間(55.4キロ)は路線存続が危ぶまれたが、県や沿線自治体の強い要望を受け、JR東日本が鉄道を復旧。19(同31)年3月に三鉄に移管され、現在の形、大船渡・盛駅と久慈駅をつなぐ総延長163キロの三陸鉄道リアス線となった。
 
JRから移管された路線を走行する下り列車。震災で被災した鵜住居町を活気づける

JRから移管された路線を走行する下り列車。震災で被災した鵜住居町を活気づける

 
 その約半年後、三鉄は再び逆境に見舞われた。19(令和元)年10月の台風19号で鉄路の約7割が不通に。翌20(同2)年3月に復旧したが、ほぼ同時に新型コロナウイルス禍が影を落とし、苦しい状況が続いた。それでも、被災地域を活気づける「復興のシンボル」として工夫を凝らした企画を打ち出し、観光振興へ力を注いでいる。
 
 釜石駅の山蔭康明駅長(59)は「震災や台風、コロナ禍と、この十数年は苦労が多かった。地域や乗客の支えがあって、この日を迎えられた」と感慨もひとしおだ。「40年、よくやったな」。入社1期生で、三鉄が歩んだ歴史は自身の歩みとも重なる。先行きが見えない時期も、利用客の「ありがとう」という言葉が働く意欲につながった。記念イヤーは、感謝を込めた企画がめじろ押し。「必要としてくれる人がいる。マイレール意識を持ってもらえるよう、そして地域外のたくさんの人が乗って楽しめる鉄道を目指し、これからも走り続ける。沿岸全体がにぎやかになるように」と未来を思う、その表情は明るかった。
 
「ありがとう!」などの言葉が入る横断幕と釜石駅の山蔭康明駅長

「ありがとう!」などの言葉が入る横断幕と釜石駅の山蔭康明駅長

 
「これからも…」。釜石の街なかを三鉄車両は走り続ける

「これからも…」。釜石の街なかを三鉄車両は走り続ける

 
 記念事業として記念切符や硬券セット、御朱印の鉄道版「鉄印」の販売を始めた。13日には宮古市内で記念式典を予定。企画の詳細は公式ホームページで確認できる。

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「世界の持続可能な観光地トップ100選」6年連続選出の釜石でフォーラム 視察者も先進事例学ぶ

釜石持続可能な観光フォーラム=1月29日、釜石PIT

釜石持続可能な観光フォーラム=1月29日、釜石PIT

 
 釜石持続可能な観光フォーラム2024(かまいしDMC、釜石市主催)は1月29日、同市大町の釜石PITで開かれた。観光地域づくり法人(DMO)の先進事例を学ぶため、全国各地から同社の視察に訪れた18人を含む42人が参加。基調講演や、同市の観光振興ビジョン「オープン・フィールド・ミュージアム構想」に基づくこれまでの取り組み成果を聞いた。
 
 同市は観光を通じた東日本大震災からの復興、持続可能な観光の実現を目指し、2017年に同構想を宣言。観光地域づくり法人として設立された、かまいしDMC(河東英宜代表取締役)を中心に体験プログラムの開発、観光マーケティング分析などを行いながら、地域に貢献し、国際社会に認められる観光地づくりに取り組んでいる。持続可能な観光の国際基準(GSTC)の導入を進め、認証を行う第三者機関グリーン・デスティネーションズ(オランダ)が発表する「世界の持続可能な観光地トップ100選」に18年から6年連続で選出され、国内関係者から注目を集める。
 
 フォーラムではGSTC公認トレーナーで、NPO法人大雪山自然学校(北海道)代表理事の荒井一洋さんが基調講演。サステナブルツーリズム(持続可能な観光)と観光を 活用した地域づくりについて話した。国連世界観光機関(UNWTO)が示すサステナブルツーリズムとは「来訪者、産業、環境、受け入れ地域のニーズに適合しつつ、現在と将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮した観光」のこと。荒井さんは「観光の悪影響を減らし、良い部分を伸ばすことがポイント。サステナブルな旅は旅行者にも求められている」とした。
 
講師の荒井一洋さん(左)はNPO法人エコツーリズムセンター理事、北海道アドベンチャートラベル協議会会長なども務める

講師の荒井一洋さん(左)はNPO法人エコツーリズムセンター理事、北海道アドベンチャートラベル協議会会長なども務める

 
 観光を活用した地域づくりを考える場合、重要なのは「観光で何を得たいのかを明確にすること」。客が来ることで収益増、環境や文化の保全、地域維持につながるなど、貢献度を高めることが“持続可能”実現には不可欠だという。荒井さんが勧めるのは、地元住民もやっている体験。「価値をつくるには“本物”のおすそ分けが最適」とし、漁業、林業、防災教育など釜石市民の日常に価値を見いだす。同市ではすでに「ミートアップ釜石」と題した20以上の観光プログラムが提供されており、売り上げも伸びてきている。
 
 この日は、観光人材育成への取り組み発表もあった。本年度、観光庁「地域活性化のための観光教育推進事業」モデル地域に選ばれた同市では、釜石商工高と連携。総合情報科の2年生5人が同市の観光戦略を学び、かまいしDMCが提供する観光プログラムを体験した。釜石湾漁船クルーズ、根浜海岸漂着物調査、ウニむき体験、釜石地方森林組合による講話など全7回の学習を行った。生徒らは地元の自然の豊かさを実感する一方で、地球温暖化を防止するための森林環境整備の大切さ、磯焼け対策として唐丹町漁協が取り組むウニの蓄養についても理解を深めた。
 
地域の観光を学ぶフィールドワークの成果を発表した釜石商工高総合情報科の2年生

地域の観光を学ぶフィールドワークの成果を発表した釜石商工高総合情報科の2年生

 
 生徒らは釜石の観光の課題を考察。発表では「体験プログラムはやり方や見せ方を工夫することで、もっと観光客を呼び込める」「釜石ならではの文化を体験できるような仕掛けをもっと考えるべき」「世界遺産などをうまく活用できていない。イベント開催やSNS発信で知られざる魅力をPRしていくことが必要」といった意見が出された。
 
 小笠原のゑさんは本学習で、環境に関する持続可能な活動の多さ、海と山に囲まれた豊かな自然を武器にした観光に強みを感じたよう。「17年間、釜石で生きてきた中で初めて知ることが多かった。こんなに魅力があるのに何で広まらないのだろう」と疑問が生じ、「自分たちも積極的に行動し、広めていき方をもっと考えたい」と今後の活動に意欲を見せた。
 
 同校では来年度、3年生の選択科目(週2時間)に「観光ビジネス」を導入予定で、今回発表した5人も履修するという。総合情報科科長の正木博之教諭は「本学習で生徒たちは、釜石の取り組みが外部から評価されていることを知り、自分たちの住む地域の可能性をあらためて認識した。地域に貢献したいという思いも芽生え、観光分野の仕事へ興味を持った生徒もいるようだ」と話す。
 
視察に訪れた全国のDMO関係者らも参加し、講演や発表に耳を傾けた

視察に訪れた全国のDMO関係者らも参加し、講演や発表に耳を傾けた

 
 同市の「オープン・フィールド・ミュージアム構想」は市内全域を博物館に見立て、地域に眠る宝(自然、歴史、文化、人、産業など)を発掘しながら、住民と来訪者をさまざまな形でつなぐ観光地域づくりの手法。持続可能な観光の国際基準を採用し、継続的な収益を生むと同時に住民の郷土愛醸成、地域活性化につなげる。
 
 かまいしDMCの河東代表取締役は、常設の体験ブログラムで観光への関わり人口が増え、内容の充実や複数の体験が宿泊にもつながっている状況を説明。体験プログラムの入場料は19年度の約250万円から増加が続き、本年度は3000万円に届く勢いだという。来年度は主に大学生を対象とした「オープン・フィールド・カレッジ」の創設を予定。好調なワーケーションへの対応として、参加企業の寄付で新たな研修施設を建設する計画で、25年3月の完成を目指す。
 
参加者は釜石オープン・フィールド・ミュージアムの取り組みに理解を深めた

参加者は釜石オープン・フィールド・ミュージアムの取り組みに理解を深めた

 
 釜石市の観光客入り込み数はラグビーワールドカップ(W杯)があった2019年度は91万人を超えたが、その後は新型コロナ感染症の影響で減少。21年度は約49万人、22年度は59万8000人とコロナ禍前の6割程度にとどまっている。