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地元ドライバーの車で橋野鉄鉱山へ 道中ガイド楽しく 釜石初の「事業者協力型自家用有償運送」開始

栗橋地域在住ドライバーの自家用車で橋野鉄鉱山へ!「事業者協力型自家用有償旅客運送」の試走会=5日午後

栗橋地域在住ドライバーの自家用車で橋野鉄鉱山へ!「事業者協力型自家用有償旅客運送」の試走会=5日午後

 
 釜石市の世界遺産、橋野鉄鉱山への移動手段確保を目的とした「事業者協力型自家用有償旅客運送」が始まった。運営するのは一般社団法人釜石観光物産協会(新里進会長)。講習を受けた登録ドライバーが自家用車に観光客を乗せ、道中ガイドもしながら現地までを往復するもので、来訪者の利便性向上や旅の満足度アップにつながるものと期待される。5日、登録ドライバー3人に協会から登録証が交付され、試走会が行われた。
 
 釜石駅前で行われた運行開始式で新里会長は、公共交通空白地帯での同運送の導入について説明。橋野鉄鉱山までのルートには歴史的遺産や魅力的な自然景観が多いことを挙げ、「ガイドを添えることで理解が深まる。地域資源をコンテンツとして盛り込み、観光客を呼び込みたい」と話した。運行に必要な講習を受講したドライバー3人(藤原信孝さん、和田利男さん、菊池弘充さん)に新里会長から登録証が手渡された。式の後、市職員が客として乗り込み、3人が橋野鉄鉱山まで試走した。
 
釜石駅前広場で行われた「ガイド de GO!」運行開始式

釜石駅前広場で行われた「ガイド de GO!」運行開始式
 
「自家用有償旅客運送運転者」の登録証を手にする(前列左から)和田利男さん、菊池弘充さん、藤原信孝さん

「自家用有償旅客運送運転者」の登録証を手にする(前列左から)和田利男さん、菊池弘充さん、藤原信孝さん

 
 同運送は道路運送法に基づき、交通空白地などで例外的に自家用車による有償旅客運送を許可する国の制度の一つ。バスやタクシーの会社が運行や車両整備管理を担い、安全確保に努める(事業者協力型)。本県での許可は紫波町に続き2例目。自家用車を使用しての観光での運行は初となる。
 
 釜石市では橋野鉄鉱山までの路線バス運行がなく、移動手段の確保が課題となっていた。昨年6月、市地域公共交通活性化協議会で現状と課題を共有。釜石観光物産協会が実施主体、市内のタクシー会社スクー(平松篤代表取締役)が協力事業者として導入に向けた準備を進めた結果、本年7月30日、岩手運輸支局から運行の許可を受けた。事業名は「ガイド de GO!」。
 
運行時には有償運送車両であることを示す右下の表示を車体に付けて走る

運行時には有償運送車両であることを示す右下の表示を車体に付けて走る

 
橋野鉄鉱山へレッツゴー!講習を受けたドライバーが客を送迎

橋野鉄鉱山へレッツゴー!講習を受けたドライバーが客を送迎

 
 発着地点は釜石駅、鵜住居駅のほか、市内宿泊施設からの運行も可能。料金は1台30分あたり2500円。モデルコースの鵜住居駅発着(120分)は1万円、釜石駅発着(150分)は1万2500円。タクシー料金の約7割で利用でき、運行時間や経由地を柔軟に設定できる。一番の魅力は、地元をよく知るドライバーから歴史や文化などの話を聞けること。ルート上には魅力的な観光資源が豊富で、客の希望で史跡や滝、巨木などの景観名所に立ち寄ることも可能。
 
客の希望でルート上の史跡や産直施設などにも立ち寄ることができる

客の希望でルート上の史跡や産直施設などにも立ち寄ることができる

 
試走会では栗林町の偉人三浦命助の碑に立ち寄り、ドライバーの説明を聞いた

試走会では栗林町の偉人三浦命助の碑に立ち寄り、ドライバーの説明を聞いた

 
橋野鉄鉱山インフォメーションセンター駐車場に到着。釜石駅からは直通で約45分

橋野鉄鉱山インフォメーションセンター駐車場に到着。釜石駅からは直通で約45分

 
 試走会では、幕末に起こった三閉伊一揆の指導者の一人「三浦命助」の碑(栗林町)に立ち寄り、ドライバーから話を聞くなどした。参加した市生活環境課の鈴木生真主事は「釜石出身でも知らないような興味深い話をたくさん聞かせてもらい、道中、とても楽しかった」と感激。鉄路などで市外から訪れる観光客が橋野鉄鉱山に向かうには、これまでタクシーやレンタカーしかなかったが、新たな制度の導入で選択肢が増える。「お客さまにとってもメリットが多いサービス。効果的な周知でしっかり情報を届けることができれば、利用者もある程度、出てくるのではないか」と話した。
 
 登録ドライバーの菊池弘充さん(61、橋野町)は試走を終え、「お客さまを乗せてというのはまた違った緊張感があったが、慣れてくれば大丈夫。一生懸命、ガイドしたいほうなので」とにっこり。現役時代は三陸鉄道に勤務し、運転士を20年務めた。釜石観光ガイド会会員でもあり、ガイド歴は24年。「運転者講習では道路状況に応じたお客さまへの心遣いも学んだ。安全安心で快適な観光をサポートできるよう努力していきたい。併せて地元の魅力もたくさんアピールできれば」と運行を楽しみにする。
 
 基本の運行時間は午前9時から午後5時まで。1週間前までの事前申し込みが必要。利用の申し込み、問い合わせは釜石観光物産協会(電話:0193・27・8172、FAX:0193・27・8173、E-mail:info@kamaishi-kankou.jp)へ。

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写真でたどる“鉄のまち”の変遷 釜石製鉄所開業140周年記念で鉄の歴史館が企画展

鉄の歴史館で開かれている企画展「日本最古の稼働製鉄所『釜石製鉄所』の140年の変遷」

鉄の歴史館で開かれている企画展「日本最古の稼働製鉄所『釜石製鉄所』の140年の変遷」

 
 “鉄のまち釜石”の象徴、釜石製鉄所は開業から本年で140周年を迎える。明治時代に稼働を開始した製鉄所は釜石市の玄関口、釜石駅前(鈴子地区)に立地。圧倒的な存在感を放ってきたが、時代の移り変わりとともにその姿も大きく変貌してきた。現代に至るまでの工場と周辺の街並みを写真でたどる企画展が、大平町の市立鉄の歴史館で開かれている。展示は2階会議室で行われ、8月31日まで見学できる。
 
 釜石製鉄所の始まりは、廃業した官営製鉄所の払い下げを受けた田中長兵衛が部下の横山久太郎、地元の製鉄経験者高橋亦助、村井源兵衛らと3トン高炉を建設。試行錯誤の末、1886(明治19)年10月16日、49回目にして製鉄に成功したことに由来する。翌87(同20)年、「釜石鉱山田中製鉄所」が設立され、鈴子に4基、大橋に2基、栗橋に1基の計7基の小高炉が稼働する。94(同27)年には官営時代の高炉を改修し、国内初のコークスを用いる30トン高炉の操業に成功。1903(同36)年には銑鋼一貫体制を確立し、翌04(同37)年には明治期最大の60トン高炉が建設された。
 
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写真左:釜石製鉄所の経営変遷を示すパネル 同右:田中製鉄所時代の製鉄所。上が明治20年代、下が明治40年代

 
大正5年(田中時代)の製鉄所。大渡橋の先に左に折れる鈴子橋が架かり、工場の前には多くの社宅が並ぶ(写真右上)。三の橋の奥には第8高炉が見える(同左上)

大正5年(田中時代)の製鉄所。大渡橋の先に左に折れる鈴子橋が架かり、工場の前には多くの社宅が並ぶ(写真右上)。三の橋の奥には第8高炉が見える(同左上)

 
 企画展では明治20年代からの製鉄所の全景写真を公開する。構内施設の変遷のほか、大正、昭和初期にかけ、鈴子の工場前に社宅が建ち並ぶ様子、周辺に鉱山小学校(大橋は分校)や病院、旅館などが整備されていく過程を見ることができる。現在、商業施設が建つ中番庫地区は湿地帯で、現公共ふ頭の辺りは砂浜が広がる海水浴場だったという。
 
 2度の組織変更を経て、1934(昭和9)年には日本製鉄釜石製鉄所となる。現在地に本事務所が建ったのは41(同16)年。この頃には第8~10の大高炉が稼働し、戦争が始まると軍需工場と化した。太平洋戦争末期の45(同20)年には、2度にわたる艦砲射撃を受け、製鉄所や市街地は壊滅的な被害を受けた。戦後は高炉などの設備復旧が進められ、48(同23)年、第10高炉に火入れ。本格的な操業が再開される。製鉄所の発展で、63(同38)年には人口が9万1千人に達するが、その後の合理化で生産規模が縮小され、89(平成元)年には最後の第1高炉が休止した。
 
昭和15年(日本製鉄時代)の製鉄所。社宅だった場所に製鋼工場が建ち、後に釜石駅前のシンボルとなった5本の煙突が並ぶ(写真右上)。三の橋の背後には第8、第9、第10高炉3基が並ぶ(同左上)

昭和15年(日本製鉄時代)の製鉄所。社宅だった場所に製鋼工場が建ち、後に釜石駅前のシンボルとなった5本の煙突が並ぶ(写真右上)。三の橋の背後には第8、第9、第10高炉3基が並ぶ(同左上)

 
昭和25年(富士製鉄時代)の製鉄所。写真右端中央に現在も使われる本事務所(白い建物)があり、その下には附属病院の建物も見える。左端には釜石線の線路が走る

昭和25年(富士製鉄時代)の製鉄所。写真右端中央に現在も使われる本事務所(白い建物)があり、その下には附属病院の建物も見える。左端には釜石線の線路が走る

 
昭和60年(新日鉄時代)の製鉄所。手前に大渡橋に並行して架かる橋上市場(赤屋根)が見える(写真右上)ほか、三陸鉄道のトラス橋りょうの背後には第1(元第10)高炉と第2(元第8)高炉が見える(同左上)。写真は第2高炉休止時に撮影

昭和60年(新日鉄時代)の製鉄所。手前に大渡橋に並行して架かる橋上市場(赤屋根)が見える(写真右上)ほか、三陸鉄道のトラス橋りょうの背後には第1(元第10)高炉と第2(元第8)高炉が見える(同左上)。写真は第2高炉休止時に撮影

 
 企画展では写真のほか、時代とともに変わる製鉄所構内の施設配置図も展示され、両者を照らし合わせて各時代の製鉄所の姿を知ることができる。写真では1950(昭和25)年の国鉄釜石線全線開通、84(同59)年の三陸鉄道開業で変わる製鉄所周辺の街並みの変化も見て取れる。2011(平成23)年の東日本大震災前後の空撮写真もあり、製鉄所を中心に釜石湾から上中島町に至るエリアを俯瞰(ふかん)できる。
 
平成26年(新日鉄住金時代)に撮影された空撮写真。上中島多目的グラウンドや昭和園グラウンドに仮設住宅が建ち並ぶ。海上には津波で破壊された湾口防波堤の跡が…

平成26年(新日鉄住金時代)に撮影された空撮写真。上中島多目的グラウンドや昭和園グラウンドに仮設住宅が建ち並ぶ。海上には津波で破壊された湾口防波堤の跡が…

 
釜石製鉄所の風景は多くの人たちが描いてきた。写真は最近寄贈された油彩画

釜石製鉄所の風景は多くの人たちが描いてきた。写真は最近寄贈された油彩画

 
 会場には釜石製鉄所をモチーフとした絵画2点、絵はがき2セット、関連する古文書2点も展示する。市教委文化財課世界遺産室の森一欽室長(鉄の歴史館長)は「今回の企画展では釜石製鉄所の風景の変化にスポットを当てた。昭和の時代を知る市民には懐かしさを感じてもらい、観光客には釜石が鉄のまちであるということを改めて知ってもらえれば」と来館を呼びかける。
 
 鉄の歴史館の開館時間は午前9時から午後5時(最終入館午後4時)。火曜日休館。入館料は大人500円、高校生300円、小中学生150円。

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釜石・片岸公園が「自然共生サイト」に 震災津波からの環境再生の取り組み 国が評価

環境省東北環境局の東岡礼治局長(中)から「自然共生サイト」の認定証を受け取った釜石市の小野共市長(右)、かまいしDMCの村上舞子さん(左)

環境省東北環境局の東岡礼治局長(中)から「自然共生サイト」の認定証を受け取った釜石市の小野共市長(右)、かまいしDMCの村上舞子さん(左)

 
 沼や池があり、野鳥や水生生物がすみ着く釜石市片岸町の片岸公園が、国の「自然共生サイト」に認定された。東日本大震災津波で失われた自然環境を回復させ、地域の各種団体と連携して行う保全活動が評価された。27日、代表申請者の市と連携活動実施者の観光地域づくり法人かまいしDMC(河東英宜代表取締役)に認定証が贈られた。本県での同認定は6カ所目となる。
 
 認定証授与式は市役所で行われた。環境省東北環境局の東岡礼治局長が認定の経緯を説明。小野共市長と同社旅行マーケティング事業部の村上舞子さんが東岡局長から認定証を受け取った。
 
 国は、さまざまな要因で失われつつある自然環境を回復させる取り組みの一環で、企業や市町村が地域で行う生物多様性増進の活動計画を認定。活動実施区域を「自然共生サイト」として広く周知している。釜石市は震災後に整備した片岸公園の生物多様性“回復”を目指す保全活動実施計画(2026年~5カ年)を申請。環境、農林水産、国土交通3省の最終審査を経て同サイトの認定を受けた。
 
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認定証授与式には東岡局長と東北環境局の関係部署職員3人が訪れ、認定の経緯などを説明した

 
 鵜住居川左岸河口域に位置する片岸公園は、震災津波で流失した豊かな自然環境を取り戻したいとの市民の声を受け市が整備。2021年6月に供用を開始した。一帯は震災前、みのすけ沼を中心に多くの野鳥や魚類が生息する湿地帯だったが、津波でヨシ原などの植生が全て流失した。公園は一部残った沼地のほか、減災機能を兼ねて作った遊水池を中心に水辺環境を確保。丘陵地には樹木を植え、遊歩道も整備した。年月を重ねる中で、水辺周辺にはヨシ原が再生。水生生物やトンボなどの昆虫が増えてきた。鵜住居川と行き来する野鳥の姿も見られるようになり、冬にはオオハクチョウの飛来地として市民に親しまれる。
 
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東日本大震災の津波で植物などが流失した現片岸公園のエリア=2011年4月撮影

 
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2021年に完成した片岸公園。遊水池の周りに遊歩道を整備し、さまざまな木々を植樹した

 
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野鳥やトンボなどさまざまな生き物が見られるようになった遊水池。冬にはオオハクチョウが飛来する

 
 今回の認定について東岡局長は「全国でも事例の少ない『回復』タイプ。震災で失われた自然環境を再生し、生物多様性を回復していく取り組みが評価された。震災復興を経て新たな自然共生の姿を示す大変意義深い事例」と称賛。同市は2024年9月に環境省の「脱炭素先行地域」にも選定されていて、環境に配慮した取り組みを推進する。「ネイチャーポジティブ(自然再興)と地域脱炭素を一体的に推進する先進的なモデル」としても高く評価されたという。東岡局長は「片岸公園が多様な生き物と人とが共に暮らす地域のシンボルとして、次世代に受け継がれていくことを願う」と期待した。
 
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「釜石の取り組みは全国のモデルとなる」と話す東岡局長。今後の活動にも期待した

 
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片岸公園では野鳥観察会なども開かれてきた。市は今回の認定を機に子どもたちの環境学習にも力を入れたい考え

 
 小野市長は「震災以降、手探りで続けてきた取り組みが国に認められたことは励みになる」と喜ぶ。世界規模の気候変動で自然環境にも大きな影響が出る中、「釜石市として何ができるか?しっかり考え行動し、グローカルな考え方を行政の責任として子どもたちにも伝えていきたい」と話した。市では認定により、地域の自然への理解や愛着がさらに深まることを期待。環境学習や交流人口拡大にもつなげていきたいとする。
 
 保全活動計画には、浚渫(しゅんせつ)やヨシの間引きなどで水の循環を促し、水質維持のための定期的なモニタリング調査を行うことが盛り込まれる。かまいしDMCはサスティナブルツーリズム(持続可能な観光)を推進し、首都圏企業を中心に企業研修を受け入れている。そのコンテンツの一つが片岸公園の保全活動で、外来植物の除去や研究機関と連携した水生生物による水質調査などを実施。村上さんは「活動を通じて環境に対する行動変容が生まれるよう工夫している。認定を機に未来へ向けた活動をさらに進めていきたい」と意を強くする。
 
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かまいしDMCの村上舞子さんは企業研修に取り入れている片岸公園の保全活動について紹介した

 
 国は2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する世界目標「30 by 30(サーティーバイサーティー)」の達成に向け、自然共生サイトの認定を重要な取り組みと位置付ける。認定は2023年度から始まり、今回の釜石を含む26年度第1回認定を合わせ、全国610カ所となった。

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郷土芸能の担い手確保へ 高校生が魅力伝える新団体「結凪會(ゆうなぎかい)」結成  虎舞体験軸に発信

有志団体「結凪會~人と人を繋ぐ郷土芸能~」を設立した沿岸部の高校生ら

有志団体「結凪會~人と人を繋ぐ郷土芸能~」を設立した沿岸部の高校生ら

 
 虎舞、神楽、鹿踊り…など郷土芸能の宝庫である三陸沿岸地域。郷土に根付く貴重な伝統文化を次世代につなぐには担い手の育成が必須だが、人口減、少子高齢化の影響もあり、各団体は人員確保に苦慮している。そうした課題解決に地元高校生が立ち上がった。釜石高を中心に沿岸4校の生徒有志29人で結成したのが「結凪會(ゆうなぎかい)~人と人を繋(つな)ぐ郷土芸能~」。共同代表を務める釜石高3年の玉木里空さん、三浦海斗さんら5人が昨年度取り組んだ“郷土芸能ゼミ”の活動を深化させ、後輩たちにつないでいこうと新団体発足に至った。今月15、19の両日には会結成後初となる虎舞披露&体験の交流活動を展開。郷土芸能の魅力発信へ弾みをつけた。
 
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米国から訪れた高校生9人に虎舞を披露する結凪會のメンバー=15日、釜石PIT

 
 15日は、日本の文化や音楽に興味がある米国の高校生9人を迎えての交流会。東日本大震災後、日本各地を回り太鼓をツールとした文化や平和の学び活動を行う国際交流プログラム「Taiko for Peace(たいこフォーピース)」の参加者だ。結凪會の14人は英語で自己紹介し、三陸を代表する郷土芸能「虎舞」を紹介。矢車、跳ね虎、笹ばみの3演目を威勢のいいお囃子(はやし)で舞って見せた。演舞の後には会のメンバーが教えながら、米国の高校生が踊りやお囃子を体験。同世代で交流の輪を広げた。
 
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初めて見る虎舞に笑顔を広げる米国の高校生(15~18歳)

 
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踊りの解説はメンバーが英語で行った(左上)。黄、白の2頭の虎で「笹ばみ」を披露

 
 マックス・サントスさん(15)は「伝統的な太鼓と虎の動きがシンクロナイズしていて、とても力強い」と感激。虎頭を動かす体験では「実際に自分でやってみるとうまくいかないところも。スクワットもして、後ろの人と動きを合わせる一連の動作は彼らが練習を重ねてきた成果の表れ」と感じ入った様子。アリーナ・オルティーズ・レイモンドさん(16)は「太鼓の演奏と踊りのハーモニーがすごくいい。高校生たちが地元の文化を自分たちの力で次の世代に受け継ごうとしているのはとても大事なこと」と称賛した。
 
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演舞の後は太鼓や踊りの体験。会のメンバーが教えた。会話を弾ませる高校生も

 
 釜石高の2年生が取り組む探究活動で昨年度、地域課題に目を向けたグループの一つが郷土芸能ゼミ。玉木さんらメンバー5人は各地の芸能団体で活動する中で、「年々、郷土芸能に参加する若者が少なくなっている」と実感。小中高生へのアンケートを実施し、担い手を増やすための方策を考えてきた。参加への敷居の高さの払拭、効果的な魅力発信などの必要性を感じたメンバーは、趣旨に賛同する仲間を募って、虎舞の演舞披露と体験を組み合わせた交流活動を展開。市郷土芸能祭では、出演団体のポスターを作成して会場に掲示し、興味のある人と団体をつなぐ橋渡し的役割を担った。釜石を会場に開かれた三陸国際芸術祭では、若手芸能者の公開ディスカッションに参加して継承へのヒントを得たほか、自分たちの活動も発信した。
 
昨年10月の三陸国際芸術祭で郷土芸能ゼミの活動を紹介する玉木さん、三浦さんら。左下白枠は今年2月の市郷土芸能祭で掲示した出演団体を紹介するポスター

昨年10月の三陸国際芸術祭で郷土芸能ゼミの活動を紹介する玉木さん、三浦さんら。左下白枠は今年2月の市郷土芸能祭で掲示した出演団体を紹介するポスター

 
 1年間のゼミ活動で担い手不足問題の深刻さを再認識し、活動継続の必要性を感じた5人。3年生になった本年4月、さらに活動を広げ、後輩たちに引き継いでいってもらおうと団体の設立を決意した。祭りや郷土芸能が盛んな大槌、山田両町の高校生にも声がけ。4校(釜石、釜石商工、大槌、宮古)から計29人が集まった。会の名称は人と団体を結ぶ“結”、水平線から顔を出す太陽が広く海面“凪”を照らす光景に自分たちの活動姿勢を重ね、「結凪會」とした。
 
 基本とするのは上下関係や参集の強制をなくした風通しのよい組織。既存団体への所属の有無、学校も関係なく、やってみたい人なら誰でも歓迎する。「メンバーには全くの未経験者もいるし、団体所属者も虎舞、神楽、鹿踊り、手踊りとさまざま。他校の人たちと触れ合うことで新たな面白さも生まれている」と玉木さん。担い手を増やすには、団体の垣根を越え、互いを尊重し協力し合える関係の構築も必要とし、自分たちでその一歩を踏み出したい考え。「目標はメンバー100人超え!」と活動の広がりを願う。
 
釜石応援ツアーの参加者に虎舞を披露するため、お囃子や踊りの最終確認=19日、宝来館

釜石応援ツアーの参加者に虎舞を披露するため、お囃子や踊りの最終確認=19日、宝来館

 
いいパフォーマンスを見せるため、本番直前までしっかりと練習

いいパフォーマンスを見せるため、本番直前までしっかりと練習

 
 山田町の伝承団体「山田八幡大神楽」で活動する宮古高定時制3年の佐々木晃耀さんは、同団体に所属する釜石高生に誘われて会に加入した。地元の各郷土芸能団体も担い手不足は共通の課題で、「全く郷土芸能に関わったことがない人、身近になかった人たちにこそ、体験を通して『楽しい』とか『かっこいい』と感じてもらえたら」と、体験活動を積極的にサポート。「参加をためらう要因の一つである昔からの敷居の高さを少しでもなくしていきたい」と意気込む。
 
 19日は、一般社団法人Blue Compass(ブルーコンパス)がラグビーワールドカップ2019釜石開催を機に継続する釜石応援ツアーの参加者に、虎舞演舞と体験の場を提供した。約50人の参加者は国内外から集まっていて、この日も英語での説明を交えて会の活動や虎舞の紹介を行った。
 
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子どもたちは迫力の舞におっかなびっくり。外国人客は笑顔で楽しむ=宝来館ロビー

 
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虎の生態を表現したさまざまな動きに目がくぎ付け。足さばきにも注目

 
 会のメンバーは1年生が全体の半数以上を占める。幼い頃から地元団体で虎舞に親しむ釜石高1年の及川椿姫さんはこの日、女子メンバー4人でお囃子の笛を担当した。高校入学のタイミングで会が発足。学校での郷土芸能活動にも意義を感じ、加入を決めた。沿岸地域には虎舞団体が複数あり、お囃子や踊りもそれぞれ異なるが、会の演舞では、それらを調和させてリズムを刻む。「お囃子の似ている団体もあり、いろいろな発見がある」と及川さん。演舞の披露で興味を持ってくれる人が多いことにも喜びを感じ、「今後は小学生とか小さい子たちにも体験の場を設けられれば」と願った。
 
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腰を低くして虎頭を操る虎舞独特の姿勢を教える会のメンバー

 
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お囃子の太鼓に挑戦する女の子。コツをつかむと上手にリズムを刻んだ

 
 副代表の山陰宗真さん(釜石高2年)は現3年生の活動を見てきた一人。若者を中心とした発信活動のきっかけを作ってくれた先輩たちに感謝し、自分たちもさらに活動を発展させていきたいと意を強くする。「若い世代の強みであるSNS発信を充実させ、もっと人を呼び込めるような活動ができれば。地元での体験会を増やすことはもちろん、県内外への遠征でその魅力を発信できたら」と今後を見据える。結凪會の活動は公式インスタグラムで発信していく予定。
 
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結凪會の今後の活動に期待! 高校生パワーで郷土芸能の魅力を発信していく

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展示室一新! 橋野鉄鉱山インフォセンター 世界遺産価値より分かりやすく 大型スクリーンで遺産巡りも

展示を更新した橋野鉄鉱山インフォメーションセンター。「明治日本の産業革命遺産」の理解が深まる=8日

展示を更新した橋野鉄鉱山インフォメーションセンター。「明治日本の産業革命遺産」の理解が深まる=8日

 
 釜石市橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」のインフォメーションセンターが、新たな展示で生まれ変わった。「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(8県11市23資産)の構成資産の一つとして、2015年に世界文化遺産登録されている同鉄鉱山。リニューアルした展示室には遺産全体への理解が深まる共通展示(パネル、映像)を導入。橋野鉄鉱山の解説パネルも内容がより分かりやすく整理され、登録後の発掘調査の成果なども盛り込まれた。映像は従来の5倍の大きさの大型スクリーンで見ることができる。世界遺産登録日の7月8日から公開している。
 
 8日は関係者約20人が出席して、リニューアルオープンのセレモニーが行われた。髙橋勝教育長が小野共市長のあいさつを代読。「これを機に橋野鉄鉱山の世界遺産価値の理解増進を図れれば。観光、生涯学習、学校教育とも連携し、鉄の歴史と文化を生かしたまちづくりに一層取り組む」と決意を述べた。代表者のテープカットで新展示室の完成を祝った。
 
セレモニーに出席した市の教育関係者、工事監理・施工業者ら

セレモニーに出席した市の教育関係者、工事監理・施工業者ら

 
 約80平方メートルの展示室は視覚的に大きく変わった。入ってすぐ左側には「明治日本の産業革命遺産」の共通パネルが並ぶ。全構成資産が一貫した説明で全体の世界遺産価値を示すもので、同遺産の中の橋野鉄鉱山の位置付けも分かる。
 
明治日本の産業革命遺産の共通展示。23資産で構成する遺産の全体像が分かる

明治日本の産業革命遺産の共通展示。23資産で構成する遺産の全体像が分かる
 
日本の近代化を推し進めた3つの産業分野を説明するパネル

日本の近代化を推し進めた3つの産業分野を説明するパネル

 
 対面には、共通パネルとデザインを合わせた橋野鉄鉱山のパネルを配置。三陸ジオパークのジオサイトでもあることから地質の説明も入れ、同鉄鉱山の歴史、資産を構成する「採掘場、運搬路、高炉場」跡、高炉のしくみ・特徴、製品の輸送経路まで、写真と説明文で分かりやすく解説する。高炉場跡で計画的に進められている発掘調査の成果など、登録後の10年間で得られた知見も盛り込む。パネルの下には専門用語の解説も。
 
橋野鉄鉱山を解説するパネルも充実。山の緑を基調としたデザイン

橋野鉄鉱山を解説するパネルも充実。山の緑を基調としたデザイン

 
高炉場跡の発掘調査の成果(写真右下)も盛り込んだ展示。パネルの下には専門用語の解説が添えられる(同左下)

高炉場跡の発掘調査の成果(写真右下)も盛り込んだ展示。パネルの下には専門用語の解説が添えられる(同左下)

 
 パネルは日本語と英語で表記され、中国語、韓国語はQRコードで説明文を読み取れるよう準備中(8月末までに導入)。多言語表示で外国人客の見学をサポートする。
 
 映像は展示室左奥に設置された縦約1.2メートル、横約3メートルの大型スクリーンで見ることができる。明治日本の産業革命遺産世界遺産協議会(事務局:鹿児島県)が作成した共通映像システムで、23構成資産の解説を視聴可能。釜石独自のものとして、待機画面に市郷土資料館(鈴子町)で展示される同鉄鉱山高炉場跡のジオラマを採用したほか、鉄鉱山操業時(1860年代前半)に描かれた絵巻「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図(しほんりょうてっこうざんおやまうちならびにこうろのず)」(市立鉄の歴史館所蔵)のスクロール画像、岩手県の3世界遺産の紹介画像も盛り込む。タッチパネル操作で見学者が見たいものを選択できる。
 
従来の5倍の画面サイズで映像が見られる大型スクリーン。写真画像は待機画面の「橋野鉄鉱山高炉場跡のジオラマ」

従来の5倍の画面サイズで映像が見られる大型スクリーン。写真画像は待機画面の「橋野鉄鉱山高炉場跡のジオラマ」

 
鉄鉱山稼働時の様子が描かれた絵巻はスクロール画像で。本物は12月1日の「鉄の記念日」に合わせ鉄の歴史館で毎年公開

鉄鉱山稼働時の様子が描かれた絵巻はスクロール画像で。本物は12月1日の「鉄の記念日」に合わせ鉄の歴史館で毎年公開

 
タッチパネル操作で全23資産の紹介映像を見ることができる。産業革命遺産巡りをお気軽に!

タッチパネル操作で全23資産の紹介映像を見ることができる。産業革命遺産巡りをお気軽に!

 
 同センターは2013年にオープン。2年後の15年、世界遺産登録決定に伴う展示リニューアルはあったが、今回のような大規模更新は初めて。センター施設や史跡周辺の維持、管理業務を担う橋野町振興協議会の菊池郁夫会長は「オープンから13年が経過し、従来の展示では飽きがきている状況もあった。今回のリニューアルでまた多くのお客さまが来てくれることを願う。市とともに各種イベントも開催しながら誘客に努めていきたい」と話した。
 
 「明治日本の産業革命遺産」の共通展示整備は世界遺産登録時に勧告され、内閣官房の整備計画により2020年度以降、8つのエリアごとに順次導入されてきた。釜石では24年度に設計業務を行い、本年2月から工事が進められてきた。総事業費は約4千万円。
 
橋野鉄鉱山の紹介映像。普段は非公開の「採掘場跡」も映像で(写真下)

橋野鉄鉱山の紹介映像。普段は非公開の「採掘場跡」も映像で(写真下)

 
セレモニー終了後、世界遺産室の森一欽室長が新たな展示について出席者に説明した

セレモニー終了後、世界遺産室の森一欽室長が新たな展示について出席者に説明した

 
 市教委文化財課世界遺産室の森一欽室長は「(共通展示の導入で)世界遺産全体の中での橋野鉄鉱山の位置付けが明確になった。大画面のスクリーンで各地の資産も見られる。他エリアと連携しながら明治日本の産業革命遺産の価値を発信していければ」と話す。

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釜石「御箱崎の千畳敷」を国登録記念物に 文化審が答申 太平洋望む花こう岩風景 名勝価値を評価

国の登録記念物に指定される見通しとなった釜石市箱崎町の「御箱崎の千畳敷」=写真提供:釜石市

国の登録記念物に指定される見通しとなった釜石市箱崎町の「御箱崎の千畳敷」=写真提供:釜石市

 
 文部科学大臣の諮問機関、文化審議会(日比野克彦会長)は19日、釜石市の箱崎半島先端に位置する岩石海岸「御箱崎の千畳敷」を国の登録記念物(名勝地関係)に登録するよう答申した。近く、登録される見通し。長い年月をかけ自然の営みによって生み出された海岸は唯一無二の景観を見せており、名勝地としてその価値が評価された。
 
 大槌湾と両石湾に挟まれた箱崎半島の先端部は急峻な海食崖に囲まれ、両石側には波によって平らに削られた波食棚が最大幅約100メートル、延長600メートル余りにわたって広がる。千畳敷と呼ばれ、地名「箱崎」の由来となった同所には箱状の岩々が重なり、特異な景観を見せる。前期白亜紀、約1億2千万年前にマグマが上昇し、冷え固まってできた花こう岩類が隆起。海食が繰り返されて形成されたものと考えられている。しま状に刻まれた波食溝やでこぼこな岩肌が奇岩怪石を成し、くぼ地の潮だまりなどとともに海岸の表情を豊かにしている。太平洋の青い海の手前に白い千畳敷を臨む風景は美しいコントラストを生み、日の出の名所としても知られる。南東方向には国の天然記念物に指定されている無人島「三貫島」も見える。
 
上空から撮影した箱崎半島の先端部。右側が大槌湾、左側が両石湾=写真提供:かまいしDMC

上空から撮影した箱崎半島の先端部。右側が大槌湾、左側が両石湾=写真提供:かまいしDMC

 
隆起した花こう岩が波による浸食で荒々しい姿を生んでいる

隆起した花こう岩が波による浸食で荒々しい姿を生んでいる

 
千畳敷からは国天然記念物の三貫島などを見ることができる=写真提供:釜石市

千畳敷からは国天然記念物の三貫島などを見ることができる=写真提供:釜石市

 
 釜石市文化財保護審議会の藤原信孝会長は「古くから地元住民に愛されてきた自慢の景勝地が国に認められたのは大変うれしく、願ってもないこと」と喜びを表す。同所は「三陸復興国立公園」や「三陸ジオパーク」の一部でもある。箱崎半島の突端、御箱崎灯台までは自然歩道が整備されているが、千畳敷に下りるには崖伝いの急で狭い道を通らなければならない。観光ガイドでもある藤原さんは「登録で来訪者が増えることも予想される。岩場に下りて見る景色が最大の魅力だが、危険も伴うため、今後はさらなる安全対策が必要」と話す。
 
半島の突端、御箱崎灯台までは歩行可能な散策路が続く。灯台の手前には地元住民が祭った御箱崎神社がある

半島の突端、御箱崎灯台までは歩行可能な散策路が続く。灯台の手前には地元住民が祭った御箱崎神社がある

 
千畳敷は急峻な崖を下りた先に広がる。水平線の大パノラマを見られるのは半島の先端部ならでは

千畳敷は急峻な崖を下りた先に広がる。水平線の大パノラマを見られるのは半島の先端部ならでは

 
長い年月をかけて波に削られ平らな岩盤地形となっている千畳敷。地球の息吹を感じる

長い年月をかけて波に削られ平らな岩盤地形となっている千畳敷。地球の息吹を感じる

 
 みちのく潮風トレイルの人気の高まりで、半島部のトレッキングを楽しむ人は多い。千畳敷は同トレイルの本コースからは外れているが、途中から足を延ばす人も。今回の答申について小野共釜石市長は「この地が持つ文化的・景観的価値が国に認められ、極めて喜ばしい。貴重な文化財として保存に万全を期すとともに、これまで以上に観光への積極的な活用を図っていきたい」と談話を発表した。県内の国登録記念物は4件目となる。

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世界遺産「橋野鉄鉱山」高炉場跡で6月恒例の環境美化活動 新発見の“開山碑”見学会も

「みんなの橋野鉄鉱山」環境美化活動で草刈りに精を出す参加者=6日、高炉場跡

「みんなの橋野鉄鉱山」環境美化活動で草刈りに精を出す参加者=6日、高炉場跡

 
 釜石市橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」高炉場跡で6日、市民らによる環境美化活動が行われた。1957(昭和32)年6月3日の橋野高炉跡国史跡指定を記念した活動は、指定60周年となった2017年から始められ、今年で10年目。清掃後、昨年11月に新たに発見された“開山碑”の見学会も初めて開かれた。参加者は普段立ち入ることができない場所にある石碑を間近で目にし、その大きさに圧倒された。
 
 「みんなの橋野鉄鉱山」と銘打った同活動は、同市が誇る貴重な史跡への理解を深め、保護意識を高めてもらおうと市教委文化財課世界遺産室が開催。今回は市内外から20人が参加し、一番、二番高炉周辺と御日払所跡で草刈りを中心に行った。機械での除草のほか、石垣の隙間から伸びた雑草を鎌やせん定はさみで刈り取り。来訪者がより良い環境で見学できるように作業した。
 
高炉の脇を流れていた水路跡(右上)、御日払所跡(右下)の石垣もきれいに

高炉の脇を流れていた水路跡(右上)、御日払所跡(右下)の石垣もきれいに

 
草刈り機で広範囲を除草した佐々忠建設の社員ら

草刈り機で広範囲を除草した佐々忠建設の社員ら

 
 草刈り機で広範囲の除草に力を発揮したのは、現在、同鉄鉱山インフォメーションセンター展示更新工事に携わっている佐々忠建設(同市新町)の社員ら6人。佐々木正忠代表取締役は「社員にとっても郷土の歴史に触れるいい機会。ここは釜石の宝。みんなで意識的に守っていかなければ」と思いを込めた。
 
 例年は清掃活動の後に、同遺産に関連した講演会を開いているが、今年は高炉場跡の山神社エリアで現地見学会が開かれた。三番高炉の東側に広がる山の斜面には「山神碑」と「牛馬観世音碑」、神社の建物の礎石が残る。橋野鉄鉱山の操業開始は1858(安政5)年。操業時の建物の配置などが分かる絵巻(61~63年頃作)にも神社があったことを示す鳥居が描かれている。69(明治2)年作の両石碑は現在地より高い場所にあった神社の近くに置かれていたとみられる。
 
建設業の職人らは石碑の建ち方にも興味津々

建設業の職人らは石碑の建ち方にも興味津々

 
山神社跡(白枠矢印)、石割桜(黄丸)の場所からさらに上っていくと…

山神社跡(白枠矢印)、石割桜(黄丸)の場所からさらに上っていくと…

 
 山神社跡からさらに上った先、見学エリアの柵の外側には、歴史的発見となった「開山碑」が鎮座。国有林地内のため、普段は立ち入ることはできないが、今回は許可を得て、石碑近くまで足を踏み入れることができた。同碑は昨年11月、高炉場跡のモニタリング調査中に偶然発見された。定点観測用の写真撮影で周辺を歩いていた世界遺産室の髙橋岳係長が、所々コケに覆われた花こう岩の表面に文字らしきものを発見。後日、コケをはがし調査したところ、石碑であることが分かった。
 
発見された「開山碑」(黄丸)は高炉場エリアを見下ろす高い場所にある

発見された「開山碑」(黄丸)は高炉場エリアを見下ろす高い場所にある

 
開山碑は人の背丈を超える大きさ。文字が刻まれている面は所々コケに覆われていた

開山碑は人の背丈を超える大きさ。文字が刻まれている面は所々コケに覆われていた

 
 自然に割れたとみられる岩の表面には、中央に不動明王を表す梵字と「開山」の文字、左右下には高炉建設の技術者で大島高任の補佐役「田鎖仲」と鉱山の事務方を担った支配人「市之助」の名前、「安政五戊午(つちのえうま)年九月十二日」の日付が刻まれる。同日付前後の複数の古文書から推測すると、最初の仮高炉(後の三番高炉)は安政5年6月に着工。約3カ月で完成し、9月に操業を開始したと考えられるという。「碑に刻まれる“9月12日”は仮高炉の実際の稼働開始を意味しているのではないか。不動明王は火の神様なので、高炉の安全操業を祈願して祭ったのでは」と髙橋係長。
 
石碑の文字は「ひかり拓本」で読み取ることができた=資料写真、解説図提供:市教委文化財課世界遺産室

石碑の文字は「ひかり拓本」で読み取ることができた=資料写真、解説図提供:市教委文化財課世界遺産室

 
髙橋岳係長の解説を聞きながら開山碑に目がくぎ付けとなる参加者

髙橋岳係長の解説を聞きながら開山碑に目がくぎ付けとなる参加者

 
 石碑は高さ2メートル以上、横幅約1.7メートルと、近くに行くとその大きさに圧倒される。文字が刻まれた岩の横には、片割れの岩が見られる。タガネが入った形跡がなく、自然の摂理で垂直面が生まれたことにも驚かされる。
 
 花巻市から参加した小笠原直人さん(59)は橋野町出身。子どものころ、高炉場跡に近い場所で祖父母が食堂を営んでおり、「今日見た辺りも祖母に連れられて見に行った記憶がある」と話す。新発見の開山碑を初めて目にし、「まさか、あんな(足元の悪い)場所に石碑があったとは。全く知らなかったのでびっくり」と貴重な遺物を目に焼き付けた。今回はフェイスブックで同活動を知り、「地元にも協力したい」と参加。昨年、世界遺産登録10周年を迎えた同所に「また注目されて観光客がもっと来てくれるといい」と願った。
 
対面に横たわっているのが割れた岩の片割れとみられる(白矢印)

対面に横たわっているのが割れた岩の片割れとみられる(白矢印)

 
開山碑の周辺の様子。高炉の石組みにも使われた花こう岩がごろごろ。多くがこけむしている

開山碑の周辺の様子。高炉の石組みにも使われた花こう岩がごろごろ。多くがこけむしている

 
 橋野鉄鉱山インフォメーションセンターの展示室は6月からリニューアル工事が始まっている。同鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(8県11市23資産)の共通展示を導入するため、パネルや映像を更新。世界遺産登録後、進められてきた発掘調査の内容、本県の3世界遺産の紹介も盛り込むことになっていて、室内のレイアウト変更のための工事が行われている。公開は7月8日を予定する。(工事期間中はエントランスエリア、トイレのみ利用可能)

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今年は満開の下で… 橋野鉄鉱山八重桜まつり 花観賞、世界遺産見学、餅まき… 楽しみ方いろいろ

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満開の八重桜に囲まれ、お振る舞いの豚汁を味わう親子=10日、橋野鉄鉱山八重桜まつり

 
 釜石市の桜シーズンを締めくくる催し「橋野鉄鉱山八重桜まつり」が10日、橋野町青ノ木の現地で開かれた。風はあったものの晴れの天候に恵まれ、濃桃色の花と青空、新緑が織り成す光景に来場者は感激。「きれいだねー」「気持ちいいねー」と山里の春を満喫した。地元の女性らが調理した春の山菜入りの豚汁も味わい、家族連れや友人同士で“満開”の笑顔を広げた。
 
 同まつりは地元住民組織、橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)と栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が主催。両組織が地域の魅力を季節ごとに発信する「はしの四季まつり」のシーズン最初の行事として行われている。今年も市街地から無料送迎バス2台(大型、中型)が運行され、約60人が利用。マイカーも含め、新緑の中のドライブを楽しみながら来場した。
 
 釜石観光ガイド会(瀬戸元会長)会員の案内で巡る世界遺産、高炉場跡の見学ツアーには20人余りが参加。満開の八重桜を愛でながら、史跡エリアに向かった。現存する国内最古の高炉の石組み3基を巡りながら、ガイドが江戸時代末期に始まった同所の製鉄の歴史、出銑の方法、操業規模などを説明。さまざまな裏話も飛び出し、参加者は興味をそそられながら遺産価値に理解を深めた。
 
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釜石観光ガイド会員の案内で巡る高炉場跡の見学ツアー。興味深い話が聞ける

 
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毎年大好評の餅まき。老若男女が手を伸ばして楽しんだ

 
 来場者お待ちかねの餅まきは同鉄鉱山インフォメーションセンター駐車場で行われた。開始時刻が近づくと子どもから大人まで大集合。同振興協、菊池会長の歓迎のあいさつに続き、約1千個の紅白餅がトラックの荷台からまかれた。
 
 先着300杯の豚汁のお振る舞いには今年も長蛇の列ができた。振興協女性部自慢の豚汁は定番の野菜に加え、春の山菜ワラビやウルイが入った具だくさん。12種の具材のうまみと地元の自家製みその味付けが融合し、橋野“ならでは”の味わいを生み出している。会場では地元産直「橋野どんぐり広場」の出張販売もあり、タケノコ、コゴミ、シドケ、ウドなど旬の山の幸を求める人たちでにぎわった。
 
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山菜も入った具だくさんの豚汁を求めて大勢の人たちが列を作った

 
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「あ~ん!」お口を広げて豚汁の豆腐をパクリ。いっぱい食べて大きくな~れ

 
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橋野どんぐり広場の出張販売。旬の山菜はこの日も人気

 
 4月末に長野県から訪れ、橋野町の一般社団法人三陸駒舎でホースセラピーなどの研修を行う清水蛍さん(40)は、同行している子ども4人と来場。「八重桜の並木が連なり、すてきな場所ですね。このまつりがなかったら来る機会がなかったかもしれないので、すごくうれしい」と声を弾ませた。長女の兎さん(8)も「桜、きれい。ハッピーな気分」と笑顔で豚汁の箸を進めた。蛍さんは豚汁のおいしさにも感激。「山菜入りは初めての味。長野では昔からサバ缶とタケノコのみそ汁はよく食べられているけど」と食文化の違いにも驚いた様子だった。
 
 高炉場跡のガイドツアーに参加した甲子町の佐々木正美さん(62)は「世界遺産になったのは知っていたが、足を運ぶのは初めて。昔の人はすごいなあと思って…」と操業当時に想像をめぐらせながら見学。妻の誘いで、無料バスを利用して来場。「八重桜がこんなになっているのも知らなかった。きれいだね。散歩するにもいい場所」と新たな発見を喜んだ。
 
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桜と新緑に囲まれた橋野鉄鉱山は今が一番いい季節。散策にもうってつけ

 
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まつり会場の橋野鉄鉱山インフォメーションセンター駐車場。キッチンカーも出店した

 
 同まつりへの交通手段としてはマイカーや主催者が運行する無料バスが一般的だが、今年はなんと自転車で訪れたつわものも。釜石東中3年の男子生徒3人組だ。橋野町在住の友人の誘いで、鵜住居町から自転車を走らせてきた菅原怜利さん(14)は「途中、足がしびれたりつったりして(自転車を)押しながらというのもあったが、何とか上がってきた」。満開の八重桜の出迎えに「来たかいがあった。ソメイヨシノとかとも違う美しさ」と感動。よくよく話を聞くと、3人は「時々、自転車で来ている。体力づくりと冒険を兼ねて」と口をそろえ、「このまつりは初めてだが、すてきなイベント。また来たい」と笑顔を重ねた。
 
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マイ“自転車”で訪れた釜石東中生。フレッシュな笑顔で記念の一枚!

 
 同まつりは地域活性化などを目的に2007年にスタート。東日本大震災があった11年は休止したが、12年からは世界遺産登録を後押ししようと、餅まきや豚汁の振る舞い、高炉場跡見学などを始めた。登録後の16年から名称に「橋野鉄鉱山」の冠が付き、認知度もさらに高まった。新型コロナ感染症の影響で20年から3年間、中止を余儀なくされたが、23年から復活させた。
 
 同所の八重桜は1980年代に植えられた。世界遺産登録された2015年には新たな植樹も行われ、順調に花を咲かせている。近年は開花が早まる傾向にあるものの、その年の気温の推移や気象によって大きく変わるため、主催者はまつり日程を組むのに苦労する。25年のまつり当日(11日)は多くがつぼみ状態。24年(12日)は終盤、23年(14日)は桜吹雪の中での開催となった。
 
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濃いピンク色の花が目にも鮮やかな八重桜並木。1980年代に釜石ライオンズクラブが植樹した

 
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最高の天気の中で行われた今年のまつり。来場者は豊かな自然にも癒やされ、心地よい時間を過ごした

 
 菊池会長によると今年の開花は4日。1週間かけて満開となり、まつりの日は近年にない最高の状態で迎えた。「何よりも天気が良かったのが一番。皆さんに楽しんでもらえたよう」と安堵する菊池会長。「振興協の会員が毎年、一生懸命準備してくれることにも感謝。長くまつりを続けていくために今後は次世代への継承にも取り組んでいきたい」と話した。
 
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インフォメーションセンター周辺はツツジの花も咲き出し色彩の競演。橋野鉄鉱山の春景色はまだまだ楽しめる

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春山シーズン到来!五葉山 岩手・三陸の最高峰で山開き 幻想的な道中に“霧中”!?

霧に包まれた五葉山。山頂を目指して歩を進める登山者

霧に包まれた五葉山。山頂を目指して歩を進める登山者

 
 釜石、大船渡、住田の3市町にまたがる五葉山(標高1351メートル)は4月29日、山開きした。霧雨が降るあいにくの天気だったが、登山者は湿り気のある道を踏みしめながら山頂へ。“分け入っても霧”という幻想的な山の景色を味わいつつ、春山シーズンの到来を喜んだ。一方、岩手県内では昨年、今年と山林火災が相次いだこともあり、地元消防団が注意喚起のチラシを登山者に配布。安全に、そして安心して山歩きを楽しむためのルールを再認識してもらった。
 
 「昭和の日」の祝日に設定されている山開きは、3市町で組織する五葉山自然保護協議会(会長=小野共釜石市長)が主催。今年も釜石、大船渡の市境となる赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われた。関係者、登山者ら約50人が集まり、山や自然への感謝の気持ちを込めて玉串をささげて拝礼。五葉山神社の奥山行正宮司は登山道を清めて無事故を祈った。
 
五葉山赤坂峠登山口で行われた安全祈願祭

五葉山赤坂峠登山口で行われた安全祈願祭

 
山の安全を祈る神事や登山道の状況説明に臨む登山者ら

山の安全を祈る神事や登山道の状況説明に臨む登山者ら

 
 同協議副会長を務める渕上清大船渡市長が「今年も多くの方々が五葉山を訪れ、四季折々の美しさを感じながら、安全に登山を楽しんでほしい」とあいさつ。自然保護管理員の松田陽一さん(62)=釜石市=は「残雪もなく、登山道は歩きやすくなっている」と状況を説明したうえで、「特に危険な場所はないが、雨が降ると登山道上にある土のうが滑りやすくなるので転倒のないように。低体温症などにも注意して」など呼びかけ、登山客を送り出した。
 
登山道の入り口にある名簿箱。登山者は名を記して山道へ

登山道の入り口にある名簿箱。登山者は名を記して山道へ

 
 濃い霧が立ち込める中、登山者は足元を確認しながら慎重に歩いた。時折顔を上げて立ち止まり、植物の芽吹きや新緑など、この時季ならではの眺望を楽しむ姿も。傘をつえ代わりにして「行けるところまで」とゆったりペースで歩を進めるグループもあった。
 
足元に気を配りながら力強い一歩を踏み出す登山者

足元に気を配りながら力強い一歩を踏み出す登山者

 
時には植物の芽吹きや新緑の景色を味わいながら歩く

時には植物の芽吹きや新緑の景色を味わいながら歩く

 
 五葉山は「花の百名山」としても知られ、初夏にかけてツツジやシャクナゲが見頃を迎える。咲き誇る花の美しさに魅了された盛岡市の佐々木浩正さん(64)、圭子さん(64)夫妻は、春山の登り始めとして毎年五葉山へ。「体慣らし、足慣らしにちょうどいい」と笑顔を重ねる。今年は少し早めのスタートになったため、「花のきれいな時季にまた訪れたい。シャクナゲの最盛期はまだ見たことがないから…ね」と再訪を構想。さらに今シーズンは入山規制が緩和される見通しの岩手山の登頂も計画しているようで、「楽しみはこれから」とワクワク感を漂わせた。
 
「装備はしっかりと」。余裕の笑顔と軽快な足取りの登山者

「装備はしっかりと」。余裕の笑顔と軽快な足取りの登山者

 
霧の中へ。登山を愛好する仲間とともに山頂へ向かう

霧の中へ。登山を愛好する仲間とともに山頂へ向かう

 
 山開きに合わせ、山火事への注意を呼びかける啓発活動を行ったのは五葉山を管轄する大船渡市消防団第9分団。昨年は大船渡で、今年は大槌町で大規模な山林火災が発生しているため、団員3人が入山者に声をかけ、チラシを配った。佐藤雄分団長(52)は「登山者の皆さんも火の取り扱いに十分に気をつけてほしい。ご安全に登山を」と協力を求めた。
 
登山口で入山者にチラシを配る大船渡市消防団第9分団の団員

登山口で入山者にチラシを配る大船渡市消防団第9分団の団員

 
 豊かな自然、雄大な景観を有する五葉山は三陸沿岸の最高峰。季節ごとに表情を変える植生、山頂から臨む三陸の海、早池峰山や奥羽山系の山並みは訪れる人々の心を癒やし、力を与える。こうした価値があらためて認められて、今年3月に三陸ジオパークのサイトに正式に登録された。

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山の春到来! 橋野鉄鉱山で“2大”石割桜見頃 インフォセンター周辺の桜ロードもおすすめ

「橋野鉄鉱山」高炉場跡の山神社エリアに自生する“石割桜”=24日午前撮影

「橋野鉄鉱山」高炉場跡の山神社エリアに自生する“石割桜”=24日午前撮影

 
 釜石市内の山々では市街地より遅れて、各種桜が見頃を迎えている。橋野町青ノ木の世界遺産「橋野鉄鉱山」とその周辺は自生するヤマザクラに加え、植樹したさまざまな桜が咲き出し、花色の濃淡が美しい景色を生み出している。高炉場跡にひっそりとたたずむのは、高炉の石組みの材料にもなった花こう岩に根を張る「石割桜」。隣接する国有林地にも同様の石割桜があり、自然の植物の生命力の強さを感じさせている。地元在住で、釜石観光ガイド会副会長の小笠原明彦さん(69)によると、今年の青ノ木の桜の開花は1週間ほど早いという。
 
 三番高炉の東側、山神社の拝殿跡や山神碑、牛馬観世音碑が残るエリアに自生している石割桜は、花こう岩の上に3本のヤマザクラが根を張る唯一無二の姿を見せる。花こう岩は山神碑側から見て、横幅5.84メートル、奥行き4.37メートル(市調べ)の大きさ。桜の根は岩を抱えこむように伸び、岩の割れ目に沿って地面まで到達している部分も見られる。花の開花時期は例年5月初旬だったが、近年は春先の気温が高く、4月中の開花が続く。今年は21日ごろから咲き始め、24日時点で8分咲きまで進んだ。
 
花こう岩の上に3本のヤマザクラの幹がそびえる。岩の割れ目に桜の種が入り成長?

花こう岩の上に3本のヤマザクラの幹がそびえる。岩の割れ目に桜の種が入り成長?

 
岩の上部は傾斜があるが、各方向にしっかりと根を伸ばす。晴れの日には青空にピンク色の花が映える

岩の上部は傾斜があるが、各方向にしっかりと根を伸ばす。晴れの日には青空にピンク色の花が映える

 
 同所には今年、新たな見どころが加わる。石割桜がある場所からさらに斜面を上った先に見えるのが、昨年11月に発見された同鉄鉱山の「開山碑」。見学エリアの外側、国有林地内に鎮座する石碑は、同鉄鉱山の操業開始時期を解明する手がかりになるものとされる。見学エリア柵内から見ることができる。市は今年、同石碑の見学会も予定している。
 
石割桜からさらに斜面を上ると、昨年発見された「開山碑」を見ることができる(写真右)。コケを取り除いた垂直面の岩が開山碑。見学は柵の中から

石割桜からさらに斜面を上ると、昨年発見された「開山碑」を見ることができる(写真右)。コケを取り除いた垂直面の岩が開山碑。見学は柵の中から

 
 もう一つの石割桜が見られるのは二番高炉の東側、国有林地の山肌の急斜面。昨年11月の育樹祭で倒木などの処理作業を行ったことで、その全容が見やすくなった。日光が届きやすい環境になったことも影響してか、今年は特に花色が美しい。二番高炉と石割桜を入れた写真の“映え”スポットとしても注目を集める。高炉場跡は昨年度から見学路と遺構標示の整備が進められていて、舗装された道は車椅子での移動が可能になっている。
 
二番高炉の東側、国有林地に見られる石割桜。岩には切り出そうとしたとみられるタガネの跡が残る。今年は特にも花色がきれい

二番高炉の東側、国有林地に見られる石割桜。岩には切り出そうとしたとみられるタガネの跡が残る。今年は特にも花色がきれい

 
一番高炉と二番高炉の間にある一本桜(写真右)とも花の競演!

一番高炉と二番高炉の間にある一本桜(写真右)とも花の競演!

 
昨年度整備された新たな見学路。舗装された歩道が三番高炉前まで続く

昨年度整備された新たな見学路。舗装された歩道が三番高炉前まで続く

 
 インフォメーションセンター周辺から高炉場跡に続く“桜ロード”も開花が進む。高炉場に向かって右側の道路沿いではソメイヨシノが開花していて、周辺の私有地に自生するヤマザクラと共に花色のグラデーションを楽しめる。同左側に連なる八重桜は大型連休中には開花しそう。橋野町振興協議会が行う恒例の八重桜まつりは5月10日に開催予定。
 
インフォメーションセンター駐車場から高炉場跡に向かう道路沿いは濃淡の花色が重なり、さらに美しい光景を生み出している

インフォメーションセンター駐車場から高炉場跡に向かう道路沿いは濃淡の花色が重なり、さらに美しい光景を生み出している

 
 八重桜が囲む芝生広場では、2018年に震災復興支援の一環で植えられた「宇宙桜」が順調に花をつける。これは2008年、福島県三春町の“三春滝桜”の種をスペースシャトル・エンデバー号で国際宇宙ステーションに届け、日本のモジュール「きぼう」船内で若田光一宇宙飛行士とともに地球を回る旅をした桜。帰還した種を同町の小学生が育て、同市に贈られた。宇宙桜の周りにはドウダンツツジがハート形に植えられている。
 
2018年に植樹された“宇宙桜”(三春滝桜の子孫木)も開花。将来、大きく成長した枝垂れ桜になるのが楽しみ

2018年に植樹された“宇宙桜”(三春滝桜の子孫木)も開花。将来、大きく成長した枝垂れ桜になるのが楽しみ

 
宇宙桜は発芽から16年。順調に花芽を増やしている

宇宙桜は発芽から16年。順調に花芽を増やしている

 
 小笠原さんは青ノ木の桜について、「ヤマザクラから八重桜の開花にかけ、2~3週間が桜のシーズン。石割桜は今年、周りの木々があまり目立たず、樹形や花がきれいに見えるのでおすすめ」とPR。インフォメーションセンターには毎日、観光ガイドが常駐しており、「遺跡や桜について話を聞きながら巡るとさらに楽しめる。ぜひ、山里の春を満喫しに足を運んでいただければ」と呼びかける。
 
 山あいの気候は春でも朝晩の冷え込みがあり、花の開花が足踏みすることもある。訪れる前にインフォメーションセンターに問い合わせしてみるといいかも。橋野鉄鉱山インフォメーションセンターの電話番号は0193・54・5250(営業時間:午前9時半~午後4時半)。
 
高炉場跡のおまけの春景色。ハート形の葉が風に揺れるカツラの木(写真左上、右)。地面にはカタクリの花(写真左下)も…

高炉場跡のおまけの春景色。ハート形の葉が風に揺れるカツラの木(写真左上、右)。地面にはカタクリの花(写真左下)も…

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市指定文化財「上栗林のサクラ」 堂々の巨木 14年目のライトアップ 夜空に浮かぶ花姿圧巻

ライトアップ14年目を迎えた「上栗林のサクラ」=11日撮影

ライトアップ14年目を迎えた「上栗林のサクラ」=11日撮影

 
 釜石市栗林町の市指定文化財(天然記念物)「上栗林のサクラ」は、今年も花の開花に合わせ、夜のライトアップが行われている。地元住民組織、上栗林振興会(三浦栄太郎会長)が2013年から始めた取り組みは春の風物詩として定着。樹齢400年以上と推定される巨木の見事な花姿と枝ぶりを暗闇に浮かび上がらせている。ライトアップは葉桜になる一歩手前ごろまで実施予定。点灯時間は午後6時半から同9時半まで。
 
 上栗林集会所そばの私有地に自生する同桜はエドヒガン種。2006年の市の調査では胸高幹周りが約4.9メートル、根元周りは約8メートル。07年に市の文化財に指定された。地元では「種蒔(たねまき)桜」と呼ばれ、開花は農事の目安とされてきた。住民によると、以前は4月下旬に満開を迎えていたが、近年は地球温暖化が影響してか開花が早まっている。
 
 今年はつぼみ状態の5日に照明機器を設置。翌6日から花が開き始めた。週末の11日には見頃を迎えたが、この日の市内は強風に見舞われ、早めに開花した花は花びらを散らしてしまった。夜も風の強い状態が続き、見物客はまばらだったが、いい状態の桜を愛でようと市民らが足を運んだ。
 
さまざまな角度からの照明で樹形を浮かび上がらせる

さまざまな角度からの照明で樹形を浮かび上がらせる

 
枝いっぱいに薄桃色の花をつけ、美しい光景をみせる

枝いっぱいに薄桃色の花をつけ、美しい光景をみせる

 
開花後、最初の週末となった11日はあいにくの強風となったが、楽しみにしていた見物客がマイカーなどで訪れた

開花後、最初の週末となった11日はあいにくの強風となったが、楽しみにしていた見物客がマイカーなどで訪れた

 
 橋野町の83歳女性は「車で(県道を)通行する際に見てはいたが、近づいて見るのは今日が初めて」と、頭上高く枝を伸ばした桜を見上げた。「素晴らしいねぇ。これだけ太い幹もなかなか無い。本当に立派。地域の誇りだね」と感嘆の声。同所より標高が高い橋野の桜はこれからが開花時期で、「あとは地元の桜を楽しみに…」と一緒に訪れた友人と顔を見合わせた。
 
 同桜のライトアップは、振興会の夜の会合後、役員が懐中電灯で試しに照らしてみたのがきっかけ。当初は地元建設会社の協力で工事用投光器を用いていたが、後に花の色がより美しく見えるよう光源の種類や数、角度など試行錯誤を重ね、2色のLED照明による現在の形を確立した。始めた頃は震災復興のさなかで、沿線の県道釜石遠野線を工事関係車両が行き交い、仕事帰りに足を止める人も。上栗林集会所で避難生活を送った被災者らも仮設住宅から足を運び、交通整理をするほどのにぎわいだった。復興工事の終了、高速道路網の整備で同県道の通行車両が減り、見物客も少なくなったが、今でも市内外から訪れる人が後を絶たない。
 
2色の照明で幻想的な姿を生み出す。幹の太さが長い年月を積み重ねてきたことを物語る

2色の照明で幻想的な姿を生み出す。幹の太さが長い年月を積み重ねてきたことを物語る

 
真っ暗になる前は背後の空色ともコラボ。暗くなってからは、晴れていれば星や月との競演も

真っ暗になる前は背後の空色ともコラボ。暗くなってからは、晴れていれば星や月との競演も

 
 「毎年楽しみに見に来る人のほか、初めて足を運ぶ人もいる。美しい里山の風景を後世につなぎ、地域に活力を生む一助にしたい」と三浦会長(75)。同桜は古木ながら樹勢は衰えず、毎年花を咲かせている。「市と連携し防虫対策などもしっかり行い、今後も注意深く見守っていきたい」と話した。

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「なんでだろう」が興味の入り口!? 三陸ジオパークの魅力、クイズで発見 釜石で催し

釜石市で開かれた「三陸ジオパーク」の魅力を伝えるイベント

釜石市で開かれた「三陸ジオパーク」の魅力を伝えるイベント

 
 「さんりくジオタウン@釜石」(三陸ジオパーク推進協議会主催)は22、23の両日、釜石市港町のイオンタウン釜石で開かれ、買い物客らがクイズや展示、ご当地キャラクターとの触れ合いなどを通じて「三陸ジオパーク」や地域の魅力に関心を深めた。
 
 「ジオ」とは地球や大地の意味。他の場所では見られない貴重な地形や地質に接することができる場所がジオパーク。その魅力は、地質学的な要素にとどまらない。積み重ねられた地球、そして大地の“歴史”に触れられる場でもある。
 
 三陸ジオパークは青森県八戸市から宮城県気仙沼市まで約220キロに及び、国内最大の面積を誇る。2013年に日本ジオパークとして認定された。大地の様相が南北で異なり(リアス海岸と海成段丘)、約5億年前から続く大地形成の歴史、地質遺産が見所。その歴史が育んだ自然や風土、産業など幅広い要素が脈々と人の営みに関わっているのを感じられるところも魅力だ。
 
興味津々!中生代の化石を展示した気仙沼市のブース

興味津々!中生代の化石を展示した気仙沼市のブース

 
 イベントでは3県16市町村のジオサイトを紹介する展示や特産品を販売するブースを設置。各ブースを回ってもらえるようクイズラリーが用意された。ブースは日によって入れ替えがあり、23日には9市町村が出展。推進協と岩手県立博物館は2日間ブースを構え、計12カ所にクイズポイントが設けられた。
 
 クイズラリーは、興味を持った買い物客や家族連れらが挑戦。「大槌町にある蓬莱(ほうらい)島の岩肌は白い。白い岩の名前は?」「思案坂、辞職坂、思惟坂のうち、田野畑村にない坂は?」「釜石市栗林町で日本最古級(約3億7000万年前)の『ある生物』の化石が見つかった。その生物とは?」など、各ブースを巡って頭をひねりながら地域の特色に触れた。
 
ジオサイトや地域に関したクイズに挑戦する家族連れ

ジオサイトや地域に関したクイズに挑戦する家族連れ

 
 「ちょっと難しかった。でも勉強になって楽しかった」と笑顔を見せたのは釜石の小学生、山内蒔愛さん(7)と菫司ちゃん(6)姉弟。祖母の由美子さん(64)は「クイズで面白く学べるのが良かった。いろんなことに興味を持ってもらえたらいい」と目を細めた。自身は地元の世界遺産・橋野鉄鉱山について発見があった様子。「知らないことっていろいろあるのね」とつぶやいていた。
 
ご当地キャラクターと写真を撮ったり触れ合いを楽しむ

ご当地キャラクターと写真を撮ったり触れ合いを楽しむ

 
 「サーモンくん・みやこちゃん」(宮古市)、「ヤマダちゃん」(山田町)などご当地キャラクターも登場し、子どもたちに人気だった。普代村公認キャラ「昆布ブラザーズ・すっきい&えんぞー」のかぶりものを身に着けて地元PRに励んでいたのは、同村商工観光振興室観光係長の森田陽さん(49)。「三陸ジオパークの中に普代村も入っていることを知ってほしい。トレイルと組み合わせながら、うまく活用することで多角的な学びになると思う。ぜひ普代に来て、見て体感して」と期待を込めた。
 
普代村のブースで来場者と交流する森田陽さん(左)

普代村のブースで来場者と交流する森田陽さん(左)

 
特産品を並べて地域をPRする普代村のブース

特産品を並べて地域をPRする普代村のブース

 
 「ジオは自然と歴史の産物で、地域に受け継がれ残るもの。そういう意味で郷土芸能もジオ。地域の産物として広めたい」。釜石高2年の玉木里空さんは、郷土芸能の担い手不足解消をテーマに研究するセミグループのメンバーらと虎舞を披露。子どもらにおはやしや虎頭を操る体験もしてもらった。イベント参加で虎舞だけでなく、自身が「生きがい」と話す東前太神楽を「伝えたい」との気持ちが増幅。郷土芸能の担い手として「楽しむ」姿を見せて「楽しさ」体感してもらう活動の刺激にした。
 
釜石高生が虎舞を披露し、イベントを盛り上げた

釜石高生が虎舞を披露し、イベントを盛り上げた

 
釜高生に教わりながら虎舞を体験する子どもら

釜高生に教わりながら虎舞を体験する子どもら

 
 乾燥させた海藻、貝殻などを使ったバーバリウムペン、フォトフレームづくりのワークショップは家族連れらが体験。子どもたちが見つけた地域の魅力をまとめた「三陸ジオパークかわらばん」の作品展示もあった。
 
ジオにちなんだものづくりを体験する子どもたち

ジオにちなんだものづくりを体験する子どもたち

 
「三陸ジオパークかわらばん」の作品展示コーナー

「三陸ジオパークかわらばん」の作品展示コーナー

 
 三陸ジオパーク推進協(宮古市)のジオパーク推進員、阿部智子さん(60)は「ジオ活動は多様で難しいと感じられがちだが、実際は地域に住む人の生活に関わっている。例えば、私たちは大地が育んだ食べ物で生きている。それもジオ」と、捉え方のヒントとなる視点を示しながら解説。地域、歴史、文化などあらゆるものに関わる一つひとつのことに感じた「なんでだろう」という疑問をたどると、「ジオにつながる」のだという。
 
 そのうえで、今回のようなイベントを「入り口的なものとして楽しんで、身近に感じてほしい」と阿部さん。「『なるほど!』という気づきが、ジオの醍醐味(だいごみ)」と言葉に熱を込めた。