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自然共生サイト認定「片岸公園」の環境は? 親子で生き物探し 外来植物の駆除も

「みのすけキッズチャレンジデー」でトンボとりを楽しむ親子=片岸公園

「みのすけキッズチャレンジデー」でトンボとりを楽しむ親子=片岸公園

 
 沼や池、草地にさまざまな生き物が生息する釜石市片岸町の片岸公園で3日、子どもたちが自然に親しむイベントが開かれた。「みのすけキッズチャレンジデー」と銘打った初の企画で、観光地域づくり法人かまいしDMCが主催。6月に環境省の「自然共生サイト」に認定された同公園の環境を知り、保全への意識を高めてもらおうと開催した。子どもたちは3つのミッションに挑戦。楽しみながら自然環境への学びを深めた。
 
 市内外から親子ら41人が参加した。ミッション(体験メニュー)として用意されたのは生き物探し・観察と外来植物の駆除。スタッフが水中から捕獲した魚や虫などを観察し絵に描くコーナーでは、ドジョウやヌマチチブ(ハゼの一種)、各種トンボのヤゴ(幼虫)、コオイムシなどが見られた。子どもたちは好きな生物を選び、じっくり見ながら絵を描いた。
 
水中から捕獲したさまざまな生き物に目がくぎ付け。「何を描こうかな?」

水中から捕獲したさまざまな生き物に目がくぎ付け。「何を描こうかな?」

 
魚やエビ、ヤゴ(トンボの幼虫)などを観察しながらお絵かき

魚やエビ、ヤゴ(トンボの幼虫)などを観察しながらお絵かき

 
 水辺環境がある公園内にはさまざまな種類のトンボが生息する。子どもたちは虫取り網を手にトンボとりに挑戦。この日は大型のギンヤンマから小型のイトトンボまで複数の種類が確認できた。おまけでチョウやバッタ、コオロギなども捕獲。間近で観察した。
 
虫取り網でトンボなどを捕獲。ミッションをクリアするとシールがもらえる(右下)

虫取り網でトンボなどを捕獲。ミッションをクリアするとシールがもらえる(右下)

 
「何か入ったかな?」草地ではトンボやチョウ、バッタなどさまざまな昆虫が見られた

「何か入ったかな?」草地ではトンボやチョウ、バッタなどさまざまな昆虫が見られた

 
 意外と人気だったのが、外来植物の「セイタカアワダチソウ」の駆除。市内でも元々見られていた植物だが、ここ2~3年で特に目立つようになり、ススキなど他の植物の成長を妨げる要因にもなることから根から引き抜く作業を行った。大きいものでは草丈が2メートルを超えるものもあり、子どもたちは力を合わせて引き抜いた。
 
子どもたちは自分の背丈よりも大きい外来種の「セイタカアワダチソウ」を根から引き抜いた

子どもたちは自分の背丈よりも大きい外来種の「セイタカアワダチソウ」を根から引き抜いた

 
今の時期、黄色い花を付ける「セイタカアワダチソウ」。繁茂しないよう根こそぎ抜き取る

今の時期、黄色い花を付ける「セイタカアワダチソウ」。繁茂しないよう根こそぎ抜き取る

 
 3つのミッションをクリアした参加者は、スタッフからもらった昆虫シールを台紙に貼りつけ受付へ。箱崎町で生産されるイチゴを使ったパウンドケーキ、釜石鉱山から湧き出る天然水で作られた化粧水をプレゼントとして受け取った。
 
 釜石市内から参加した久保夢空瑠さん(9)は「真っ赤なトンボを捕まえた。家の周りにもトンボはいるけど、ここは見たことがない種類が大量にいる」と心奪われた様子。昆虫のほか海の生き物も大好きで、「釜石にいっぱい生き物がいるのはうれしい」と喜ぶ。普段から砂浜のごみを拾うなど、自然環境を守ることにも目を向けている久保さん。母康子さん(47)は「“好き”の延長で環境を守る行動も自然にできているようだ」と見守る。今回は外来植物のことを知り、「気づきの機会を与えてくれるイベント。遊びながら学べるのがすごくいい」と歓迎した。
 
6月に国の「自然共生サイト」に認定された片岸公園。池の周りに遊歩道が整備され、市民の散歩コースにもなっている

6月に国の「自然共生サイト」に認定された片岸公園。池の周りに遊歩道が整備され、市民の散歩コースにもなっている

 
 同公園は東日本大震災の津波被害を受けた場所に整備された。元々、みのすけ沼を中心に魚類や両生類、鳥類などが生息する豊かな自然環境が広がっていたが、津波で全て流失。公園は一部残った沼地や減災機能を兼ねて新たに設けた遊水池を中心に整備され、2021年に完成した。年月を重ね、水辺周辺にはヨシ原などの植生が戻り、水生生物や昆虫、鳥がすみ着くようになった。失われた自然環境を再生し、生物多様性を回復する取り組みが評価され、本年6月、国の「自然共生サイト」に認定された。
 
 イベントのアドバイザー、岩手県立大の島田直明教授(植生学・景観生態学)は同所の環境について、「震災直後は海とほぼ一体化していた時期もあったが、(防潮堤の再建、公園の整備を経て)環境も落ち着いてきた。木々がさらに増えていけば、そこにすむ生き物も戻ってくると思われる」と期待。一方で、元々の沼地は近年、水の循環機能が低下し富栄養化していることから、遊水池への排水や周辺の刈り払いなどで水質改善を図る必要があるとも指摘。「こうしたイベントが問題点把握のきっかけとなり、より良い環境の維持・管理につながっていけば」と望んだ。
 
公園整備から5年。池の周りには草木が増え、生き物のすみかにもなっている。冬にはオオハクチョウも飛来する

公園整備から5年。池の周りには草木が増え、生き物のすみかにもなっている。冬にはオオハクチョウも飛来する

 
 イベント主催者のかまいしDMCは市と連携し、同所の保全活動に取り組む。同社の担当者、村上舞子さんは「地域の自然は地域の皆さんと守っていくことが大事。今後も継続的にイベントを開催し、名実ともに自然共生サイトとなるよう努力していきたい」と話した。

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自慢の味PR!釜石・甲子川のアユをお振る舞い 家族連れら「かぶりつくのがうまい」

甲子川の清流で育ったアユのお振る舞い

 
 釜石市の甲子川鮎釣協力会(安久津吉延会長)、甲子地域会議(田畑孝議長)は9月26日、同市甲子町の道の駅釜石仙人峠で甲子川のアユを味わう会を開き、利用者にアユの塩焼きを無料で振る舞った。
 
 地域自慢の味をPRしようと実施。同協力会など市内外の釣り人らが協力し、7月5日の解禁日から釣り上げた計約350匹を提供した。
 
道の駅釜石仙人峠で開かれた甲子川のアユを味わう会

道の駅釜石仙人峠で開かれた甲子川のアユを味わう会

 
焼き上がったアユにかぶりつく子ども

焼き上がったアユにかぶりつく子ども

 
おいしさを味わって!釣り名人や地域住民が腕を振るう

おいしさを味わって!釣り名人や地域住民が腕を振るう

 
 「楽しみに来た」と話すのは、近くに住む70代の女性。一緒に訪れた小学4年生の孫に「アユはそのままかぶりついて食べるもんだよ」と教えながら、残すものなく完食し、「おいしさは知っている。懐かしい味」と余韻をかみしめていた。
 
 振る舞いは約3時間で終了する盛況ぶり。安久津会長は(85)は「大雨による増水など河川の状況で数を確保できるか心配もあったが、釣り名人の皆さんのおかげで達成できた。来場者の喜ぶ顔を見られてほっとした」とうれしそうに話した。
 
アユの塩焼きをうれしそうに味わう家族連れ

アユの塩焼きをうれしそうに味わう家族連れ

 
清流で育まれたアユの味わいを楽しむ来場者

清流で育まれたアユの味わいを楽しむ来場者

 
 甲子川のアユは、2016年に岐阜県で開かれた「清流めぐり利き鮎会」の味比べでグランプリを獲得するなど、味の良さで釣り人らを魅了する。安久津会長は「アユの餌となるいいコケがあるから、いいアユが育つ。川の環境をできるだけ自然のままにして守り続けたい」と先を見据えた。
 
釣り人や地域住民が力を合わせる活動を来場者も応援

釣り人や地域住民が力を合わせる活動を来場者も応援

 
 河川漁業のない甲子川では、同協力会など釣り愛好家ら有志が市の補助金や寄付を活用して資源管理を行っている。5月にはアユの稚魚250キロ(約2万7700尾)を放流した。会場では募金活動も行い、来場者が寄せた気持ちを稚魚の放流事業に役立てる。

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シープラザ釜石30周年 記念イベント・駅前フェス 「観光の玄関口」活気あふれる

釜石駅前で開かれたシープラザ釜石30周年記念イベント

釜石駅前で開かれたシープラザ釜石30周年記念イベント

 
 釜石市鈴子町の釜石物産センター「シープラザ釜石」が30周年を迎えた。「JR釜石駅からすぐ」との立地により、オープン時から来訪者がまちの情報を集めたり土産物を買ったりできる拠点として利用。イベントフロアなどもあり、人々の交流を促す場にもなっている。節目にあたり「釜石に集い、味わい、一緒に祝おう」と、22日、記念イベント「釜石駅前フェス」を開催。晴れやかな青空の下、多くの来場者でにぎわった。
 
 シープラザ釜石は1996年7月、市が進めた釜石駅周辺整備事業の核施設としてオープンした。建物は地下1階、地上2階。特産品や土産物の販売、まちを紹介する展示コーナー、イベント広場のほか、観光案内所、飲食店なども入る。多い時は約20のテナントが営業していたが、現在は9事業者が入居。プラスチック製のレールなどをつないで列車を走らせる「おもちゃの電車広場」が新たにお目見えした。一時期、民間の団体などが運営を担う指定管理者制度を導入したが、現在は市直営となっている。
 
オープンから30周年を迎えた釜石物産センター「シープラザ釜石」

オープンから30周年を迎えた釜石物産センター「シープラザ釜石」

 
 記念イベントは、市の委託で一般社団法人釜石観光物産協会が主催。釜石観光の玄関口でもある駅前スペースを使い、飲食コーナーや特設ステージを設け、焼きそばやピザなどを販売するキッチンカーをずらりと集結させた。電動カートなどを楽しむ乗り物広場もあり、家族連れで大にぎわい。アマチュアバンドによる演奏が繰り広げられる中、訪れた人たちは買い物をしたり、多彩な味覚を味わった。
 
家族連れでにぎわう釜石駅前フェス。中央の建物がシープラザ釜石

家族連れでにぎわう釜石駅前フェス。中央の建物がシープラザ釜石

 
釜石駅前にずらりと並んだキッチンカーで買い物を楽しむ

釜石駅前にずらりと並んだキッチンカーで買い物を楽しむ

 
バンド演奏を聴きながらおいしいものを味わう人たち

バンド演奏を聴きながらおいしいものを味わう人たち

 
ラグビーでイベントを盛り上げたしんやさん、桜庭吉彦さん

ラグビーでイベントを盛り上げたしんやさん、桜庭吉彦さん

 
 お笑いステージで盛り上げたラグビー芸人しんやさんは、競技の楽しさを伝える体験コーナーにも登場。元ラグビー日本代表の桜庭吉彦さん(前釜石シーウェイブスゼネラルマネジャー)とともに、バスをつないでトライする遊びで子どもたちと触れ合った。
 
 日が傾き始めると、毛色の違った雰囲気に。大人がより楽しむ“乾杯タイム”となり、地酒浜千鳥が振る舞われた。つまみとなる炭火焼きのサンマも約150匹を提供。郷土芸能の虎舞(鵜住居青年会)や、釜石出身のラジオパーソナリティー・民謡歌手の佐野よりこさんが歌う“酒”をテーマにした名曲の数々に酔いしれていた。
 
焼きサンマのお振る舞いには長い列が続いた

焼きサンマのお振る舞いには長い列が続いた

 
サンマを頬張り「おいしい」と喜ぶ家族連れ

サンマを頬張り「おいしい」と喜ぶ家族連れ

 
 初サンマを「おいしい」と喜んでいたのは、花巻市から訪れた夫婦。共に青森県八戸市出身で、定期的に「海が見たくなる」ためドライブがてら立ち寄った。幾度か釜石に来たことはあったが、駅前は初めてだったようで、入場券を買って駅構内の探検も楽しんだ。気になっていた釜石虎舞の演舞も満喫。今回は車の運転があってアルコールは控えたため、「次は汽車で来ればいいのか」とつぶやいた。
 
 浜千鳥のお振る舞いの前、30周年を祝って鏡開きが行われた。同社社長で同協会の新里進会長や桜庭さんらと共に木槌を振った福岡県糸島市の後藤太郎さん(28)は「思いがけない人生初の体験に」と感激。そして「海や山のおいしいものを味わえた」と陽気に笑った。東京との2拠点生活をしながら時々、釜石でシェアハウスなどを運営する団体のもとを訪れ、農業や里山の暮らしを体感中。イベントにも足を運んでその土地柄に触れ、地元の人と時間を共有しつつ自身の成長を促す活動を「これからも楽しみたい」と話した。
 
シープラザ釜石の30周年を祝って鏡開き

シープラザ釜石の30周年を祝って鏡開き

 
 イベント開催に併せ、同協会は1日限定の「乾杯パスポート」を販売した。ドリンク1杯と小料理1品を味わえるチケット2枚に浜千鳥オリジナル升が付いたもので、市内飲食店をめぐってもらうのが狙い。14店舗が協力し、手に入れた“呑(の)ん兵衛”たちは夜のまちへ繰り出した。
 
浜千鳥のお振る舞いにも列。升を手に合言葉は「乾杯」

浜千鳥のお振る舞いにも列。升を手に合言葉は「乾杯」

 
昼から夕方にかけて幅広い年代が楽しめる催しが盛りだくさん

昼から夕方にかけて幅広い年代が楽しめる催しが盛りだくさん

 
 同協会の菊池公男事務局長(64)は「駅がある鈴子地区は釜石の表玄関。駅前を使ってにぎわいをつくり、活性化させるため試験的にイベントをやってみた。天気にも恵まれ、多くの人が楽しめる催しなった」と手応えを得た。30周年の感謝を込めた企画は冬にも実施を予定。「周辺の施設とタイアップしながら、駅前を盛り上げていきたい」と力を込めた。
 
 シープラザ釜石は観光を支える施設だが、東日本大震災の直後は市の災害対策本部が設置され、市職員らが寝泊まりしながら各所に散らばった避難所の支援などにあたった。施設の駐車場付近にはかつて大型テントがあり、支援物資の受け入れ場所になるなど市施設としての機能、役割を果たした。市民生活を取り戻す復旧、復興の過程では各種イベントの開催場所となり、人々をつなぐ拠点としても数多く利用された。
 
 市商工観光課の佐々木智輝課長補佐(48)は30年を振り返りつつ、「シープラザはオープン時から変わらず誘客と情報発信の基地。釜石観光の玄関口にある施設として試行錯誤しながら、まちの魅力発信、誘客促進に取り組みたい」とした。
 

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未来を感じる修学旅行に!東京・文京学院大女子中 訪問地は釜石 震災の復興支援が縁

いのちをつなぐ未来館でガイドの説明を聞く文京学院大女子中の生徒たち

いのちをつなぐ未来館でガイドの説明を聞く文京学院大女子中の生徒たち

 
 防災学習をしながら未来を考える修学旅行に―。東京都文京区の文京学院大学女子中学校(島田美紀校長、生徒320人)の3年生90人が14、15の両日、釜石市を訪れ、東日本大震災の被災状況や復興まちづくりの過程を学んだ。当時の小中学生の避難行動も追体験。「命を守る」ことを自分事として捉え、必要な行動をとるための判断力、選択力を育む機会にした。
 
 同校が修学旅行で東北、岩手県を訪れるのは初めて。昨年度までは京都など関西方面を訪れていたが、近年のオーバーツーリズム(観光公害)の影響もあり宿泊先の確保や公共交通を使った班別活動などが難しくなったのを背景に、新たな訪問先を検討した。文京学院大の学生らが震災の復興支援を機にイベント参加や、現地に滞在し地域活性化に挑むインターンシップ(就業体験)を行うなどして交流を続けていることもあり、釜石市を選んだ。
 
 全国で自然災害が相次ぐ中、防災・減災への関心も高まっており、被災地での学びは時事性の高いテーマの一つ。「生徒が自分の目で被災地を見て、何かを感じ、考えるきっかけに」との教員らの思いもあり、3泊4日の日程の中に被災地での学習を盛り込んだ。
 
記念にパチリ!修学旅行で釜石にやってきた中学生

記念にパチリ!修学旅行で釜石にやってきた中学生

 
 14日は同市大町の釜石PITで、市職員から復興まちづくりに関する話を聞いた。いつ起こるか分からない災害からまちを守るための多重防御、被害の大きかった中心市街地の商業・なりわいの再生とにぎわいの創出などの観点から取り組んだ「まちを創り直す」事業を説明。その際に大切にしたのは「住民の声」で、生徒らは市民がまちづくりに関わり協議する場が何度も設けられたことに関心を示した。
 
釜石PITで行われた復興まちづくりに関する講話

釜石PITで行われた復興まちづくりに関する講話

 
復旧復興に携わった市職員の話に耳を傾ける生徒

復旧復興に携わった市職員の話に耳を傾ける生徒

 
 その後、鵜住居町に移動。3班に分かれ、いのちをつなぐ未来館、釜石鵜住居復興スタジアム、鵜住居川水門と片岸海岸防潮堤の3カ所を巡る防災学習プログラムに臨んだ。
 
震災時の避難を追体験。出発点は釜石鵜住居復興スタジアム

震災時の避難を追体験。出発点は釜石鵜住居復興スタジアム

 
 避難の追体験では震災当時に釜石東中、鵜住居小の児童生徒が津波から逃れるために向かった高台へのルートを、未来館スタッフの案内でたどった。2つの学校があった跡地に建設したスタジアムから国道45号の恋の峠までの距離は約1.6キロ。釜石の子どもらが想定の避難場所ではなく、状況を見極めてより高いところを目指してとった行動を「どう思うか」と問いかけられながら歩き、「自然が相手で、想定外は起こりうる。その時には自分で考え、選択、判断する場面が何度もあり、そのたびに最善を尽くすことが大事」などとの言葉をじっと受け止めていた。
 
震災を経験した未来館スタッフ(左)の語りを受け止める生徒

震災を経験した未来館スタッフ(左)の語りを受け止める生徒

 
震災当時に鵜住居町の子どもたちが避難したルートをたどる

震災当時に鵜住居町の子どもたちが避難したルートをたどる

 
 未来館では震災当時の被災状況、津波の緊急避難場所ではなかったが避難した多くの人が犠牲になった鵜住居地区防災センターの話、釜石東中や釜石小が取り組んできた防災活動について展示やガイドを通じて理解を深めた。水門(長さ180メートル、高さ14.5メートル)では管理する県職員から施設概要や機能などの説明を受け、点検時に入る機械室を見学したりした。
 
発見を共有⁉片岸海岸防潮堤から海を見つめる生徒たち

発見を共有⁉片岸海岸防潮堤から海を見つめる生徒たち

 
 松浦柚希さん(14)は「大きな地震を経験したことがないが、たくさんの人が被害を受ける災害はいつ起こるか分からないから、震災のことを受け継いでいくことが大事だと感じた。実際に歩いてみて、津波の到達した場所が思っていたより広くて驚いた。『情報を信じすぎてはいけない』という言葉が印象に残った。何かあったら命を守るためにできることを考えて行動したい」と意識を高めた。
 
 高橋心鈴さん(15)は「近頃、東京でも地震が連続しているから、防災を学べてよかった。(旅先は変わったけど)楽しいし、結果オーライ」と笑った。被災地を訪ねるにあたり、生徒それぞれが深堀したいテーマを設定しているようで、高橋さんの関心事は、商店街の再生と増加する訪日外国人の受け入れについて。釜石でその一端に触れた後、テーマ別に活動する15日は宮城県南三陸町の復興商店街を訪れ、「別の視点からも理解を深めたい」と意欲を見せた。
 
釜石祈りのパークも見学。生きること、未来を考える機会にした

釜石祈りのパークも見学。生きること、未来を考える機会にした

 
 15日はスポーツや伝承、産業、環境といったテーマの中から生徒が選択して活動。釜石ではラグビー体験、ユニバーサルビーチの取り組みに関する講義、海洋保全を考えるSDGs(持続可能な開発目標)プログラムなどが用意された。
 
 島田校長は「実際に見て聞いて感じる経験が子どもたちにとって大事になる。縁のある釜石で学びつつ、未来や社会に対して何ができるか、自分事して考えるきっかけにしてほしい」と期待。今年2月に釜石の地方創生アドバイザーに就任した学校法人文京学院の島田昌和学院長・理事長も同行し、「東京でも必ず災害は起こると言われている。生活体験のようなこの修学旅行で、いろいろと気がついてもらえたらいい」と見守った。
 
「か・ま・い・Cー」とポーズを決めて写真に納まる生徒たち

「か・ま・い・Cー」とポーズを決めて写真に納まる生徒たち

 
 今回、観光地域づくり法人かまいしDMCが修学旅行を受け入れ、各種プログラムを提供した。今年度、防災学習を含め受け入れた修学旅行生は小中高校を合わせ計20校の約1300人。例年と同程度で推移しているという。修学旅行は秋頃が多い傾向にあり、同社では「これから」とする。
 
 修学旅行の定番とされる地域ではオーバーツーリズムが問題となっているが、訪問先変更に伴う変化は「あまりない」のが現状。それでも好機と捉える同社旅行マーケティング事業部の村上舞子さん(30)は「受け入れの際はどういった学びを得たいか、希望を聞いて提案している。これからも釜石ならではの体験、オーダーメードを売りにやっていく」と話した。

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三陸鉄道「サントリー生ビール号」 釜石発着で初運行 満席、盛況「うまい!最高!」

かけ声は「スコール!」。ビールを片手に乾杯をする乗客たち

かけ声は「スコール!」。ビールを片手に乾杯をする乗客たち

 
 「サントリー生ビールが飲み放題」。そんなぜいたくな時間を楽しむ舞台は、三陸鉄道の車内だった―。6日、三鉄釜石駅(釜石市)-盛駅(大船渡市)間で特別列車が運行され、乗客がおいしいものを味わいつつ、車窓に流れる海街風景や車内イベントを満喫。普段とはひと味違う“ほろ酔い”の鉄道の旅に心を躍らせた。
 
 特別列車の名は、ずばり「サントリー生ビール号」。サントリー東北営業本部(宮城県仙台市)が三鉄を応援し、沿線の交流を盛り上げようと企画する。3年目の運行にして初めて釜石発着が実現。乗客は40人で満席。地元のほか、盛岡市や山田町など岩手県内のみならず、遠くは長野など県外からも参加もあった。
 
 釜石駅でレトロ列車に乗車。サントリー同本部の大類哲朗さん(企画部長)が「飲み尽くせないほどの在庫をしっかりと準備しました。『サン生』(サントリー生ビールの略)を思いっきり飲んで楽しく過ごしてください」と歓迎した。
 
サントリー生ビール号は三陸鉄道のレトロ列車が舞台

サントリー生ビール号は三陸鉄道のレトロ列車が舞台

 
 午後4時10分に列車が走り出し、数分後。乗客は生ビールが注がれた紙コップを手に、さっそく「スコール!」の声を響かせた。スコールは、「乾杯」を意味するデンマーク語。サントリーは同国のビールを参考に商品を生み出していたこともあり、乾杯の時には「スコール」と唱和するのだという。
 
「スコール!」。乾杯を楽しむ声が幾度も車内に響く

「スコール!」。乾杯を楽しむ声が幾度も車内に響く

 
 この日提供された“サン生”は、大類さんによると「王道のビール。爽快な喉ごしがグッとくるのに加え、心地よい麦のうまみ、コクも感じられる。すっと沁(し)みわたっていく味わいが特徴」という。車内にビールのサーバーを設置し、乗客は注ぎたての生ビールを飲むことができた。
 
 釜石の日本料理店「みや川」の特製弁当をつまみに、冷えた生ビールで喉を潤す乗客たち。相席になった人と談笑したり、窓の外を眺めたりした。列車は恋し浜駅、折り返し地点の盛駅で一時停車。終点の釜石駅まで約2時間半の旅の合間には、サン生のこだわりをクイズ形式で紹介するセミナーや、缶ビール1箱(350ミリリットル、24本入り)などの景品をかけたじゃんけん大会、ビンゴ大会で大いに盛り上った。
 
ビールの豆知識クイズ、じゃんけん、ビンゴとお楽しみが満載

ビールの豆知識クイズ、じゃんけん、ビンゴとお楽しみが満載

 
マイジョッキも持参!列車に揺られながら生ビールを味わう乗客

マイジョッキも持参!列車に揺られながら生ビールを味わう乗客

 
 「生4つ」と何度もアピールしていたのは、花巻市から参加した昆静子さん(72)と梁田時子さん(73)。相席になった釜石市の佐藤正樹さん(61)、金森洋一さん(63)と会話を弾ませながら、飲み放題を堪能した。日本酒好きで釜石の酒・浜千鳥押しの梁田さんは「ビールがこんなにおいしいなんて!」と発見。昆さんは釜石出身というが三鉄に乗るのは初めてで、車窓からの海の眺めに感激した。そして、ビンゴ大会で得た景品を佐藤さん、金森さんに“お裾分け”。「釜石の懐かしい話ができて楽しかったし、お弁当も豪華だった。(相席の)組み合わせが良かった。『次もまたみんなで』との意味も込めて、福を分けたの」と笑顔を見せた。
 
 福を得た金森さんだが、実は今回の乗車も運を引き寄せたものだった。このイベント列車は好評の企画で、申し込みが始まるとすぐに満席になるという。キャンセル待ちも多く、金森さんもその一人。待ち順は3番目だったらしく、「滑り込んだ」とうれしそうに笑った。2人一組の参加が必須のため、急きょ声をかけられたのが佐藤さん。やはり運の持ち主で、偶然居合わせた“お姉さんたち”との交流や気の知れた友人との触れ合いに「最高」と満面の笑みを浮かべた。
 
気心が知れた仲間と心地よい旅を楽しむ同級生グループ

気心が知れた仲間と心地よい旅を楽しむ同級生グループ

 
乗って楽しみながら三陸鉄道を応援し続けるファンも

乗って楽しみながら三陸鉄道を応援し続けるファンも

 
 三鉄のロゴが入ったポロシャツを身に付けた原田哉(ちかし)さん(62)は、見た目通りの三鉄好き。各種イベント列車を利用したり、普段から乗って応援している。「車窓の風景の変化」がお気に入り。単身赴任中の大船渡市では沿線に住み、車両の走行音を時計代わりにする生活を楽しむ。今回、同乗した妻の寛子さん(58)は下戸ながら埼玉県新座市から足を運び、ウーロン茶を片手に心地よい時間を共有。原田さんは「何としても乗りたかった。生ビールの泡がよく出ていて、おいしかった。来年もぜひ運行して」と望んだ。
 
居合わせた人と自然に交流が生まれるのがイベント列車の魅力

居合わせた人と自然に交流が生まれるのがイベント列車の魅力

 
 この生ビール号は飲み放題におつまみ、お土産が付き、運賃も込み。それでいて料金はお手ごろとなっている。サントリーの山崎力さん(岩手支店長)は、列車内という非日常的な空間で飲食を味わうことで「ビールを好きに、おいしいと思ってもらえたらいい」と太っ腹。同本部の浜本太郎さん(企画部・部長代理)は「鉄道とタッグを組み、盛り上げられることを考えたい」と、早くも来年以降の企画へ気持ちを向けた。
 
おもてなし担当のサントリー関係者。乗客との交流も楽しんだ

おもてなし担当のサントリー関係者。乗客との交流も楽しんだ

 
 三鉄の山蔭康明さん(釜石駅長)は「きょうの楽しい体験を周囲に伝えてもらえたら幸い。いろいろなイベント列車を運行しているので、チェックして乗ってほしい」と乗客らに呼びかけた。

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釜石鉱山の鉄鉱石はどうやってできた? 秋田大 福山繭子教授が現地で初講演 観光ガイド勉強会で

秋田大理工学研究科の福山繭子教授(中)を講師に招き、釜石鉱山について学んだ釜石観光ガイド会勉強会

秋田大理工学研究科の福山繭子教授(中)を講師に招き、釜石鉱山について学んだ釜石観光ガイド会勉強会

 
 “近代製鉄発祥の地”として名高い釜石市。その鉄づくりを可能とした大きな要因の一つが、良質で豊富な鉄鉱石(磁鉄鉱)を産出する山があったこと。同市甲子町大橋の釜石鉱山は、盛岡藩士大島高任が高炉を築き、鉄鉱石を原料とした鉄の連続出銑に日本で初めて成功した地で、後に国内最大の鉄鉱山として栄えた。「釜石鉱山の鉄鉱石はどのようにして生まれたのか?」。成り立ちや産出される鉱石の特性を岩石学の専門家から学ぶ勉強会が8月25日、釜石鉱山展示室Tesonで開かれた。
 
 勉強会を開いたのは釜石観光ガイド会。同会と三陸ジオパークのガイドを行う沿岸各地の団体などから計21人が参加した。講師として招かれたのは、釜石鉱山など東北地方の鉄鉱床の研究を続けている秋田大理工学研究科の福山繭子教授。現地釜石での講演は今回が初めて。鉄の起源から釜石鉱山を語る上で欠かせない「スカルン鉱床」、「磁鉄鉱」、「餅鉄」について解説した。
 
宇宙誕生にまでさかのぼる鉄の起源から解説。「地球が生命の惑星になったのは鉄のおかげ」と福山教授

宇宙誕生にまでさかのぼる鉄の起源から解説。「地球が生命の惑星になったのは鉄のおかげ」と福山教授

 
 鉄は地球の質量の約35%を占め、最も多い元素。地球の核の中に約90%が存在し、地殻(表層部)にあるのは5%ほど。資源採掘しているのは地下2キロ程度の深さまでだという。太陽系で最も多い元素は水素で、重い元素になるほど数は少なくなるが、鉄だけは特別に多い。これは鉄の原子核の結合エネルギーが金属元素の中で最も大きく、安定しているためだとされる。
 
 地球はできた当初(約45億年前)は二酸化炭素に覆われていたが、海ができ、シアノバクテリア(藍藻)が光合成するようになると大気中に酸素が増加。約22~23億年前に起こったこの現象は「大酸化イベント」と言われる。シアノバクテリアからの酸素と海水中の鉄が結びついてできた酸化鉄は水に溶けずに海底に沈殿。たまってできたのが「縞(しま)状鉄鉱層」で、これが鉄資源(赤鉄鉱)になる。今使われている鉄資源の9割以上がこのタイプ。
 
 鉄資源となるものには縞状鉄鉱層のほかに、鉄スカルン鉱床、沈積岩(レアメタルを含む)、砂鉄、褐鉄鉱(冷泉の湧出口に堆積)があり、釜石鉱山はスカルン鉱床にあたる。スカルンは、地下で石灰岩などの炭酸塩岩の地層にマグマが貫入し、石灰岩とマグマが反応して新たな岩石を生成、マグマから分離した熱水が石灰岩を溶かしながら金属元素を含む鉱物を沈殿させる作用。代表的な鉱物はザクロ石や輝石、緑簾石で、釜石鉱山の大峰鉱床はほとんどがザクロ石を含む。金属を多く含む鉱物は鉄鉱石(磁鉄鉱、赤鉄鉱)、銅鉱石(黄銅鉱)、閃亜鉛鉱など。「日本はスカルン鉱床が非常に多い」と福山教授。それを生み出したのは豊富な石灰岩と活発な火山活動で、できる鉱物はマグマの化学組成に依存しているという。
 
釜石鉱山でも見られる「スカルン鉱床」。石灰岩とマグマが反応してさまざまな鉱物ができた

釜石鉱山でも見られる「スカルン鉱床」。石灰岩とマグマが反応してさまざまな鉱物ができた

 
福山教授は釜石鉱山の地質やスカルン鉱物について解説。「釜石石」と名付けられた新鉱物もあるという

福山教授は釜石鉱山の地質やスカルン鉱物について解説。「釜石石」と名付けられた新鉱物もあるという

 
 釜石鉱山は、白亜紀に地下深くから上昇してきた花こう岩質マグマが古生代に堆積していた石灰岩層に貫入。接触部にスカルン鉱床が形成された。スカルン鉱床は石灰岩が多い鉱山西側に集中し、鉄鉱石のほか銅鉱石を産出している。佐比内鉱床(角礫スカルン)は地表に出ていて露天掘りが行われた。釜石のスカルン鉱物の特徴は「鉄を主成分とする鉱物が非常に多い」こと。福山教授は専門とする放射年代測定で、同じ花こう閃緑岩でもスカルンを作った蟹岳と作らなかった栗橋では形成年代に約3800万年の差があり、栗橋は蟹岳よりも後に形成されたことを突き止めている。
 
 釜石の鉄資源を象徴するものとして興味深いのは「餅鉄」。今も鉱床近くの川で見つかる餅鉄は、鉄鉱石のかけらや塊が川に流されて川底や河岸に堆積したもので、丸みを帯びているのが特徴。見た目は鉄隕石と似ているが、割って中を調べると全然違うものだと分かる。隕鉄は鉄とニッケルの合金(酸素を含まない)であるのに対し、「餅鉄はほぼ純粋な酸化鉄(磁鉄鉱)」だという。
 
 講演で福山教授は、磁鉄鉱と赤鉄鉱の見分け方も教えた。磁鉄鉱は黒色で、磁性(磁石に引きつけられる力)が非常に強い一方、赤鉄鉱は赤褐色や銀灰色で、磁性は弱い(磁石につかない)。参加者は鉱物の表面を条痕板(素焼きの磁器製プレート)でこすり、残った粉の色で判別する方法も体験した。
 
条痕板で磁鉄鉱をこすってみると黒色の粉が…。赤鉄鉱だと赤褐色の粉末がでる

条痕板で磁鉄鉱をこすってみると黒色の粉が…。赤鉄鉱だと赤褐色の粉末がでる

 
 釜石観光ガイド会事務局次長の海老原清子さん(64)は「磁鉄鉱や餅鉄に触れる体験は来訪者に人気。ガイドをする上でもっと知識を深めたいと思っていた。今日の講演は自分が学んできた内容と答え合わせができ、疑問に思っていたことも教えてもらえた。今後のガイド活動に生かし、お客さまに分かりやすく伝えられれば」と貴重な聴講機会を喜んだ。
 
 講演後は展示室周辺を散策。大規模採掘が行われていたことを示す巨大なズリ堆積場や鉱石の選鉱場跡、釜石鉱山学園(小学校)跡などを見て回った。来年2027年は釜石鉱山で磁鉄鉱が発見されてから300年、近代製鉄発祥170年の節目の年にあたる。参加者は三陸ジオパークのジオサイトにもなっている「釜石鉱山」の価値を改めて実感し、さらなる発信に意欲を高めていた。
 
釜石鉱山展示室周辺の散策ではズリが積まれた2つの巨大堆積場や水流を確保するための人工滝、釜石鉱山学園跡地などを見学

釜石鉱山展示室周辺の散策ではズリが積まれた2つの巨大堆積場や水流を確保するための人工滝、釜石鉱山学園跡地などを見学

 
展示室前から臨む鉄、銅の鉱石選鉱場跡。建屋は解体され、今はコンクリートの基礎部分のみ残る

展示室前から臨む鉄、銅の鉱石選鉱場跡。建屋は解体され、今はコンクリートの基礎部分のみ残る

 
磁鉄鉱やザクロ石を含む巨大な岩石を観察。磁石を近づけてみる参加者

磁鉄鉱やザクロ石を含む巨大な岩石を観察。磁石を近づけてみる参加者

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地元ドライバーの車で橋野鉄鉱山へ 道中ガイド楽しく 釜石初の「事業者協力型自家用有償運送」開始

栗橋地域在住ドライバーの自家用車で橋野鉄鉱山へ!「事業者協力型自家用有償旅客運送」の試走会=5日午後

栗橋地域在住ドライバーの自家用車で橋野鉄鉱山へ!「事業者協力型自家用有償旅客運送」の試走会=5日午後

 
 釜石市の世界遺産、橋野鉄鉱山への移動手段確保を目的とした「事業者協力型自家用有償旅客運送」が始まった。運営するのは一般社団法人釜石観光物産協会(新里進会長)。講習を受けた登録ドライバーが自家用車に観光客を乗せ、道中ガイドもしながら現地までを往復するもので、来訪者の利便性向上や旅の満足度アップにつながるものと期待される。5日、登録ドライバー3人に協会から登録証が交付され、試走会が行われた。
 
 釜石駅前で行われた運行開始式で新里会長は、公共交通空白地帯での同運送の導入について説明。橋野鉄鉱山までのルートには歴史的遺産や魅力的な自然景観が多いことを挙げ、「ガイドを添えることで理解が深まる。地域資源をコンテンツとして盛り込み、観光客を呼び込みたい」と話した。運行に必要な講習を受講したドライバー3人(藤原信孝さん、和田利男さん、菊池弘充さん)に新里会長から登録証が手渡された。式の後、市職員が客として乗り込み、3人が橋野鉄鉱山まで試走した。
 
釜石駅前広場で行われた「ガイド de GO!」運行開始式

釜石駅前広場で行われた「ガイド de GO!」運行開始式
 
「自家用有償旅客運送運転者」の登録証を手にする(前列左から)和田利男さん、菊池弘充さん、藤原信孝さん

「自家用有償旅客運送運転者」の登録証を手にする(前列左から)和田利男さん、菊池弘充さん、藤原信孝さん

 
 同運送は道路運送法に基づき、交通空白地などで例外的に自家用車による有償旅客運送を許可する国の制度の一つ。バスやタクシーの会社が運行や車両整備管理を担い、安全確保に努める(事業者協力型)。本県での許可は紫波町に続き2例目。自家用車を使用しての観光での運行は初となる。
 
 釜石市では橋野鉄鉱山までの路線バス運行がなく、移動手段の確保が課題となっていた。昨年6月、市地域公共交通活性化協議会で現状と課題を共有。釜石観光物産協会が実施主体、市内のタクシー会社スクー(平松篤代表取締役)が協力事業者として導入に向けた準備を進めた結果、本年7月30日、岩手運輸支局から運行の許可を受けた。事業名は「ガイド de GO!」。
 
運行時には有償運送車両であることを示す右下の表示を車体に付けて走る

運行時には有償運送車両であることを示す右下の表示を車体に付けて走る

 
橋野鉄鉱山へレッツゴー!講習を受けたドライバーが客を送迎

橋野鉄鉱山へレッツゴー!講習を受けたドライバーが客を送迎

 
 発着地点は釜石駅、鵜住居駅のほか、市内宿泊施設からの運行も可能。料金は1台30分あたり2500円。モデルコースの鵜住居駅発着(120分)は1万円、釜石駅発着(150分)は1万2500円。タクシー料金の約7割で利用でき、運行時間や経由地を柔軟に設定できる。一番の魅力は、地元をよく知るドライバーから歴史や文化などの話を聞けること。ルート上には魅力的な観光資源が豊富で、客の希望で史跡や滝、巨木などの景観名所に立ち寄ることも可能。
 
客の希望でルート上の史跡や産直施設などにも立ち寄ることができる

客の希望でルート上の史跡や産直施設などにも立ち寄ることができる

 
試走会では栗林町の偉人三浦命助の碑に立ち寄り、ドライバーの説明を聞いた

試走会では栗林町の偉人三浦命助の碑に立ち寄り、ドライバーの説明を聞いた

 
橋野鉄鉱山インフォメーションセンター駐車場に到着。釜石駅からは直通で約45分

橋野鉄鉱山インフォメーションセンター駐車場に到着。釜石駅からは直通で約45分

 
 試走会では、幕末に起こった三閉伊一揆の指導者の一人「三浦命助」の碑(栗林町)に立ち寄り、ドライバーから話を聞くなどした。参加した市生活環境課の鈴木生真主事は「釜石出身でも知らないような興味深い話をたくさん聞かせてもらい、道中、とても楽しかった」と感激。鉄路などで市外から訪れる観光客が橋野鉄鉱山に向かうには、これまでタクシーやレンタカーしかなかったが、新たな制度の導入で選択肢が増える。「お客さまにとってもメリットが多いサービス。効果的な周知でしっかり情報を届けることができれば、利用者もある程度、出てくるのではないか」と話した。
 
 登録ドライバーの菊池弘充さん(61、橋野町)は試走を終え、「お客さまを乗せてというのはまた違った緊張感があったが、慣れてくれば大丈夫。一生懸命、ガイドしたいほうなので」とにっこり。現役時代は三陸鉄道に勤務し、運転士を20年務めた。釜石観光ガイド会会員でもあり、ガイド歴は24年。「運転者講習では道路状況に応じたお客さまへの心遣いも学んだ。安全安心で快適な観光をサポートできるよう努力していきたい。併せて地元の魅力もたくさんアピールできれば」と運行を楽しみにする。
 
 基本の運行時間は午前9時から午後5時まで。1週間前までの事前申し込みが必要。利用の申し込み、問い合わせは釜石観光物産協会(電話:0193・27・8172、FAX:0193・27・8173、E-mail:info@kamaishi-kankou.jp)へ。

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写真でたどる“鉄のまち”の変遷 釜石製鉄所開業140周年記念で鉄の歴史館が企画展

鉄の歴史館で開かれている企画展「日本最古の稼働製鉄所『釜石製鉄所』の140年の変遷」

鉄の歴史館で開かれている企画展「日本最古の稼働製鉄所『釜石製鉄所』の140年の変遷」

 
 “鉄のまち釜石”の象徴、釜石製鉄所は開業から本年で140周年を迎える。明治時代に稼働を開始した製鉄所は釜石市の玄関口、釜石駅前(鈴子地区)に立地。圧倒的な存在感を放ってきたが、時代の移り変わりとともにその姿も大きく変貌してきた。現代に至るまでの工場と周辺の街並みを写真でたどる企画展が、大平町の市立鉄の歴史館で開かれている。展示は2階会議室で行われ、8月31日まで見学できる。
 
 釜石製鉄所の始まりは、廃業した官営製鉄所の払い下げを受けた田中長兵衛が部下の横山久太郎、地元の製鉄経験者高橋亦助、村井源兵衛らと3トン高炉を建設。試行錯誤の末、1886(明治19)年10月16日、49回目にして製鉄に成功したことに由来する。翌87(同20)年、「釜石鉱山田中製鉄所」が設立され、鈴子に4基、大橋に2基、栗橋に1基の計7基の小高炉が稼働する。94(同27)年には官営時代の高炉を改修し、国内初のコークスを用いる30トン高炉の操業に成功。1903(同36)年には銑鋼一貫体制を確立し、翌04(同37)年には明治期最大の60トン高炉が建設された。
 
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写真左:釜石製鉄所の経営変遷を示すパネル 同右:田中製鉄所時代の製鉄所。上が明治20年代、下が明治40年代

 
大正5年(田中時代)の製鉄所。大渡橋の先に左に折れる鈴子橋が架かり、工場の前には多くの社宅が並ぶ(写真右上)。三の橋の奥には第8高炉が見える(同左上)

大正5年(田中時代)の製鉄所。大渡橋の先に左に折れる鈴子橋が架かり、工場の前には多くの社宅が並ぶ(写真右上)。三の橋の奥には第8高炉が見える(同左上)

 
 企画展では明治20年代からの製鉄所の全景写真を公開する。構内施設の変遷のほか、大正、昭和初期にかけ、鈴子の工場前に社宅が建ち並ぶ様子、周辺に鉱山小学校(大橋は分校)や病院、旅館などが整備されていく過程を見ることができる。現在、商業施設が建つ中番庫地区は湿地帯で、現公共ふ頭の辺りは砂浜が広がる海水浴場だったという。
 
 2度の組織変更を経て、1934(昭和9)年には日本製鉄釜石製鉄所となる。現在地に本事務所が建ったのは41(同16)年。この頃には第8~10の大高炉が稼働し、戦争が始まると軍需工場と化した。太平洋戦争末期の45(同20)年には、2度にわたる艦砲射撃を受け、製鉄所や市街地は壊滅的な被害を受けた。戦後は高炉などの設備復旧が進められ、48(同23)年、第10高炉に火入れ。本格的な操業が再開される。製鉄所の発展で、63(同38)年には人口が9万1千人に達するが、その後の合理化で生産規模が縮小され、89(平成元)年には最後の第1高炉が休止した。
 
昭和15年(日本製鉄時代)の製鉄所。社宅だった場所に製鋼工場が建ち、後に釜石駅前のシンボルとなった5本の煙突が並ぶ(写真右上)。三の橋の背後には第8、第9、第10高炉3基が並ぶ(同左上)

昭和15年(日本製鉄時代)の製鉄所。社宅だった場所に製鋼工場が建ち、後に釜石駅前のシンボルとなった5本の煙突が並ぶ(写真右上)。三の橋の背後には第8、第9、第10高炉3基が並ぶ(同左上)

 
昭和25年(富士製鉄時代)の製鉄所。写真右端中央に現在も使われる本事務所(白い建物)があり、その下には附属病院の建物も見える。左端には釜石線の線路が走る

昭和25年(富士製鉄時代)の製鉄所。写真右端中央に現在も使われる本事務所(白い建物)があり、その下には附属病院の建物も見える。左端には釜石線の線路が走る

 
昭和60年(新日鉄時代)の製鉄所。手前に大渡橋に並行して架かる橋上市場(赤屋根)が見える(写真右上)ほか、三陸鉄道のトラス橋りょうの背後には第1(元第10)高炉と第2(元第8)高炉が見える(同左上)。写真は第2高炉休止時に撮影

昭和60年(新日鉄時代)の製鉄所。手前に大渡橋に並行して架かる橋上市場(赤屋根)が見える(写真右上)ほか、三陸鉄道のトラス橋りょうの背後には第1(元第10)高炉と第2(元第8)高炉が見える(同左上)。写真は第2高炉休止時に撮影

 
 企画展では写真のほか、時代とともに変わる製鉄所構内の施設配置図も展示され、両者を照らし合わせて各時代の製鉄所の姿を知ることができる。写真では1950(昭和25)年の国鉄釜石線全線開通、84(同59)年の三陸鉄道開業で変わる製鉄所周辺の街並みの変化も見て取れる。2011(平成23)年の東日本大震災前後の空撮写真もあり、製鉄所を中心に釜石湾から上中島町に至るエリアを俯瞰(ふかん)できる。
 
平成26年(新日鉄住金時代)に撮影された空撮写真。上中島多目的グラウンドや昭和園グラウンドに仮設住宅が建ち並ぶ。海上には津波で破壊された湾口防波堤の跡が…

平成26年(新日鉄住金時代)に撮影された空撮写真。上中島多目的グラウンドや昭和園グラウンドに仮設住宅が建ち並ぶ。海上には津波で破壊された湾口防波堤の跡が…

 
釜石製鉄所の風景は多くの人たちが描いてきた。写真は最近寄贈された油彩画

釜石製鉄所の風景は多くの人たちが描いてきた。写真は最近寄贈された油彩画

 
 会場には釜石製鉄所をモチーフとした絵画2点、絵はがき2セット、関連する古文書2点も展示する。市教委文化財課世界遺産室の森一欽室長(鉄の歴史館長)は「今回の企画展では釜石製鉄所の風景の変化にスポットを当てた。昭和の時代を知る市民には懐かしさを感じてもらい、観光客には釜石が鉄のまちであるということを改めて知ってもらえれば」と来館を呼びかける。
 
 鉄の歴史館の開館時間は午前9時から午後5時(最終入館午後4時)。火曜日休館。入館料は大人500円、高校生300円、小中学生150円。

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釜石・片岸公園が「自然共生サイト」に 震災津波からの環境再生の取り組み 国が評価

環境省東北環境局の東岡礼治局長(中)から「自然共生サイト」の認定証を受け取った釜石市の小野共市長(右)、かまいしDMCの村上舞子さん(左)

環境省東北環境局の東岡礼治局長(中)から「自然共生サイト」の認定証を受け取った釜石市の小野共市長(右)、かまいしDMCの村上舞子さん(左)

 
 沼や池があり、野鳥や水生生物がすみ着く釜石市片岸町の片岸公園が、国の「自然共生サイト」に認定された。東日本大震災津波で失われた自然環境を回復させ、地域の各種団体と連携して行う保全活動が評価された。27日、代表申請者の市と連携活動実施者の観光地域づくり法人かまいしDMC(河東英宜代表取締役)に認定証が贈られた。本県での同認定は6カ所目となる。
 
 認定証授与式は市役所で行われた。環境省東北環境局の東岡礼治局長が認定の経緯を説明。小野共市長と同社旅行マーケティング事業部の村上舞子さんが東岡局長から認定証を受け取った。
 
 国は、さまざまな要因で失われつつある自然環境を回復させる取り組みの一環で、企業や市町村が地域で行う生物多様性増進の活動計画を認定。活動実施区域を「自然共生サイト」として広く周知している。釜石市は震災後に整備した片岸公園の生物多様性“回復”を目指す保全活動実施計画(2026年~5カ年)を申請。環境、農林水産、国土交通3省の最終審査を経て同サイトの認定を受けた。
 
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認定証授与式には東岡局長と東北環境局の関係部署職員3人が訪れ、認定の経緯などを説明した

 
 鵜住居川左岸河口域に位置する片岸公園は、震災津波で流失した豊かな自然環境を取り戻したいとの市民の声を受け市が整備。2021年6月に供用を開始した。一帯は震災前、みのすけ沼を中心に多くの野鳥や魚類が生息する湿地帯だったが、津波でヨシ原などの植生が全て流失した。公園は一部残った沼地のほか、減災機能を兼ねて作った遊水池を中心に水辺環境を確保。丘陵地には樹木を植え、遊歩道も整備した。年月を重ねる中で、水辺周辺にはヨシ原が再生。水生生物やトンボなどの昆虫が増えてきた。鵜住居川と行き来する野鳥の姿も見られるようになり、冬にはオオハクチョウの飛来地として市民に親しまれる。
 
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東日本大震災の津波で植物などが流失した現片岸公園のエリア=2011年4月撮影

 
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2021年に完成した片岸公園。遊水池の周りに遊歩道を整備し、さまざまな木々を植樹した

 
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野鳥やトンボなどさまざまな生き物が見られるようになった遊水池。冬にはオオハクチョウが飛来する

 
 今回の認定について東岡局長は「全国でも事例の少ない『回復』タイプ。震災で失われた自然環境を再生し、生物多様性を回復していく取り組みが評価された。震災復興を経て新たな自然共生の姿を示す大変意義深い事例」と称賛。同市は2024年9月に環境省の「脱炭素先行地域」にも選定されていて、環境に配慮した取り組みを推進する。「ネイチャーポジティブ(自然再興)と地域脱炭素を一体的に推進する先進的なモデル」としても高く評価されたという。東岡局長は「片岸公園が多様な生き物と人とが共に暮らす地域のシンボルとして、次世代に受け継がれていくことを願う」と期待した。
 
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「釜石の取り組みは全国のモデルとなる」と話す東岡局長。今後の活動にも期待した

 
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片岸公園では野鳥観察会なども開かれてきた。市は今回の認定を機に子どもたちの環境学習にも力を入れたい考え

 
 小野市長は「震災以降、手探りで続けてきた取り組みが国に認められたことは励みになる」と喜ぶ。世界規模の気候変動で自然環境にも大きな影響が出る中、「釜石市として何ができるか?しっかり考え行動し、グローカルな考え方を行政の責任として子どもたちにも伝えていきたい」と話した。市では認定により、地域の自然への理解や愛着がさらに深まることを期待。環境学習や交流人口拡大にもつなげていきたいとする。
 
 保全活動計画には、浚渫(しゅんせつ)やヨシの間引きなどで水の循環を促し、水質維持のための定期的なモニタリング調査を行うことが盛り込まれる。かまいしDMCはサスティナブルツーリズム(持続可能な観光)を推進し、首都圏企業を中心に企業研修を受け入れている。そのコンテンツの一つが片岸公園の保全活動で、外来植物の除去や研究機関と連携した水生生物による水質調査などを実施。村上さんは「活動を通じて環境に対する行動変容が生まれるよう工夫している。認定を機に未来へ向けた活動をさらに進めていきたい」と意を強くする。
 
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かまいしDMCの村上舞子さんは企業研修に取り入れている片岸公園の保全活動について紹介した

 
 国は2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する世界目標「30 by 30(サーティーバイサーティー)」の達成に向け、自然共生サイトの認定を重要な取り組みと位置付ける。認定は2023年度から始まり、今回の釜石を含む26年度第1回認定を合わせ、全国610カ所となった。

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郷土芸能の担い手確保へ 高校生が魅力伝える新団体「結凪會(ゆうなぎかい)」結成  虎舞体験軸に発信

有志団体「結凪會~人と人を繋ぐ郷土芸能~」を設立した沿岸部の高校生ら

有志団体「結凪會~人と人を繋ぐ郷土芸能~」を設立した沿岸部の高校生ら

 
 虎舞、神楽、鹿踊り…など郷土芸能の宝庫である三陸沿岸地域。郷土に根付く貴重な伝統文化を次世代につなぐには担い手の育成が必須だが、人口減、少子高齢化の影響もあり、各団体は人員確保に苦慮している。そうした課題解決に地元高校生が立ち上がった。釜石高を中心に沿岸4校の生徒有志29人で結成したのが「結凪會(ゆうなぎかい)~人と人を繋(つな)ぐ郷土芸能~」。共同代表を務める釜石高3年の玉木里空さん、三浦海斗さんら5人が昨年度取り組んだ“郷土芸能ゼミ”の活動を深化させ、後輩たちにつないでいこうと新団体発足に至った。今月15、19の両日には会結成後初となる虎舞披露&体験の交流活動を展開。郷土芸能の魅力発信へ弾みをつけた。
 
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米国から訪れた高校生9人に虎舞を披露する結凪會のメンバー=15日、釜石PIT

 
 15日は、日本の文化や音楽に興味がある米国の高校生9人を迎えての交流会。東日本大震災後、日本各地を回り太鼓をツールとした文化や平和の学び活動を行う国際交流プログラム「Taiko for Peace(たいこフォーピース)」の参加者だ。結凪會の14人は英語で自己紹介し、三陸を代表する郷土芸能「虎舞」を紹介。矢車、跳ね虎、笹ばみの3演目を威勢のいいお囃子(はやし)で舞って見せた。演舞の後には会のメンバーが教えながら、米国の高校生が踊りやお囃子を体験。同世代で交流の輪を広げた。
 
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初めて見る虎舞に笑顔を広げる米国の高校生(15~18歳)

 
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踊りの解説はメンバーが英語で行った(左上)。黄、白の2頭の虎で「笹ばみ」を披露

 
 マックス・サントスさん(15)は「伝統的な太鼓と虎の動きがシンクロナイズしていて、とても力強い」と感激。虎頭を動かす体験では「実際に自分でやってみるとうまくいかないところも。スクワットもして、後ろの人と動きを合わせる一連の動作は彼らが練習を重ねてきた成果の表れ」と感じ入った様子。アリーナ・オルティーズ・レイモンドさん(16)は「太鼓の演奏と踊りのハーモニーがすごくいい。高校生たちが地元の文化を自分たちの力で次の世代に受け継ごうとしているのはとても大事なこと」と称賛した。
 
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演舞の後は太鼓や踊りの体験。会のメンバーが教えた。会話を弾ませる高校生も

 
 釜石高の2年生が取り組む探究活動で昨年度、地域課題に目を向けたグループの一つが郷土芸能ゼミ。玉木さんらメンバー5人は各地の芸能団体で活動する中で、「年々、郷土芸能に参加する若者が少なくなっている」と実感。小中高生へのアンケートを実施し、担い手を増やすための方策を考えてきた。参加への敷居の高さの払拭、効果的な魅力発信などの必要性を感じたメンバーは、趣旨に賛同する仲間を募って、虎舞の演舞披露と体験を組み合わせた交流活動を展開。市郷土芸能祭では、出演団体のポスターを作成して会場に掲示し、興味のある人と団体をつなぐ橋渡し的役割を担った。釜石を会場に開かれた三陸国際芸術祭では、若手芸能者の公開ディスカッションに参加して継承へのヒントを得たほか、自分たちの活動も発信した。
 
昨年10月の三陸国際芸術祭で郷土芸能ゼミの活動を紹介する玉木さん、三浦さんら。左下白枠は今年2月の市郷土芸能祭で掲示した出演団体を紹介するポスター

昨年10月の三陸国際芸術祭で郷土芸能ゼミの活動を紹介する玉木さん、三浦さんら。左下白枠は今年2月の市郷土芸能祭で掲示した出演団体を紹介するポスター

 
 1年間のゼミ活動で担い手不足問題の深刻さを再認識し、活動継続の必要性を感じた5人。3年生になった本年4月、さらに活動を広げ、後輩たちに引き継いでいってもらおうと団体の設立を決意した。祭りや郷土芸能が盛んな大槌、山田両町の高校生にも声がけ。4校(釜石、釜石商工、大槌、宮古)から計29人が集まった。会の名称は人と団体を結ぶ“結”、水平線から顔を出す太陽が広く海面“凪”を照らす光景に自分たちの活動姿勢を重ね、「結凪會」とした。
 
 基本とするのは上下関係や参集の強制をなくした風通しのよい組織。既存団体への所属の有無、学校も関係なく、やってみたい人なら誰でも歓迎する。「メンバーには全くの未経験者もいるし、団体所属者も虎舞、神楽、鹿踊り、手踊りとさまざま。他校の人たちと触れ合うことで新たな面白さも生まれている」と玉木さん。担い手を増やすには、団体の垣根を越え、互いを尊重し協力し合える関係の構築も必要とし、自分たちでその一歩を踏み出したい考え。「目標はメンバー100人超え!」と活動の広がりを願う。
 
釜石応援ツアーの参加者に虎舞を披露するため、お囃子や踊りの最終確認=19日、宝来館

釜石応援ツアーの参加者に虎舞を披露するため、お囃子や踊りの最終確認=19日、宝来館

 
いいパフォーマンスを見せるため、本番直前までしっかりと練習

いいパフォーマンスを見せるため、本番直前までしっかりと練習

 
 山田町の伝承団体「山田八幡大神楽」で活動する宮古高定時制3年の佐々木晃耀さんは、同団体に所属する釜石高生に誘われて会に加入した。地元の各郷土芸能団体も担い手不足は共通の課題で、「全く郷土芸能に関わったことがない人、身近になかった人たちにこそ、体験を通して『楽しい』とか『かっこいい』と感じてもらえたら」と、体験活動を積極的にサポート。「参加をためらう要因の一つである昔からの敷居の高さを少しでもなくしていきたい」と意気込む。
 
 19日は、一般社団法人Blue Compass(ブルーコンパス)がラグビーワールドカップ2019釜石開催を機に継続する釜石応援ツアーの参加者に、虎舞演舞と体験の場を提供した。約50人の参加者は国内外から集まっていて、この日も英語での説明を交えて会の活動や虎舞の紹介を行った。
 
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子どもたちは迫力の舞におっかなびっくり。外国人客は笑顔で楽しむ=宝来館ロビー

 
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虎の生態を表現したさまざまな動きに目がくぎ付け。足さばきにも注目

 
 会のメンバーは1年生が全体の半数以上を占める。幼い頃から地元団体で虎舞に親しむ釜石高1年の及川椿姫さんはこの日、女子メンバー4人でお囃子の笛を担当した。高校入学のタイミングで会が発足。学校での郷土芸能活動にも意義を感じ、加入を決めた。沿岸地域には虎舞団体が複数あり、お囃子や踊りもそれぞれ異なるが、会の演舞では、それらを調和させてリズムを刻む。「お囃子の似ている団体もあり、いろいろな発見がある」と及川さん。演舞の披露で興味を持ってくれる人が多いことにも喜びを感じ、「今後は小学生とか小さい子たちにも体験の場を設けられれば」と願った。
 
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腰を低くして虎頭を操る虎舞独特の姿勢を教える会のメンバー

 
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お囃子の太鼓に挑戦する女の子。コツをつかむと上手にリズムを刻んだ

 
 副代表の山陰宗真さん(釜石高2年)は現3年生の活動を見てきた一人。若者を中心とした発信活動のきっかけを作ってくれた先輩たちに感謝し、自分たちもさらに活動を発展させていきたいと意を強くする。「若い世代の強みであるSNS発信を充実させ、もっと人を呼び込めるような活動ができれば。地元での体験会を増やすことはもちろん、県内外への遠征でその魅力を発信できたら」と今後を見据える。結凪會の活動は公式インスタグラムで発信していく予定。
 
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結凪會の今後の活動に期待! 高校生パワーで郷土芸能の魅力を発信していく

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展示室一新! 橋野鉄鉱山インフォセンター 世界遺産価値より分かりやすく 大型スクリーンで遺産巡りも

展示を更新した橋野鉄鉱山インフォメーションセンター。「明治日本の産業革命遺産」の理解が深まる=8日

展示を更新した橋野鉄鉱山インフォメーションセンター。「明治日本の産業革命遺産」の理解が深まる=8日

 
 釜石市橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」のインフォメーションセンターが、新たな展示で生まれ変わった。「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(8県11市23資産)の構成資産の一つとして、2015年に世界文化遺産登録されている同鉄鉱山。リニューアルした展示室には遺産全体への理解が深まる共通展示(パネル、映像)を導入。橋野鉄鉱山の解説パネルも内容がより分かりやすく整理され、登録後の発掘調査の成果なども盛り込まれた。映像は従来の5倍の大きさの大型スクリーンで見ることができる。世界遺産登録日の7月8日から公開している。
 
 8日は関係者約20人が出席して、リニューアルオープンのセレモニーが行われた。髙橋勝教育長が小野共市長のあいさつを代読。「これを機に橋野鉄鉱山の世界遺産価値の理解増進を図れれば。観光、生涯学習、学校教育とも連携し、鉄の歴史と文化を生かしたまちづくりに一層取り組む」と決意を述べた。代表者のテープカットで新展示室の完成を祝った。
 
セレモニーに出席した市の教育関係者、工事監理・施工業者ら

セレモニーに出席した市の教育関係者、工事監理・施工業者ら

 
 約80平方メートルの展示室は視覚的に大きく変わった。入ってすぐ左側には「明治日本の産業革命遺産」の共通パネルが並ぶ。全構成資産が一貫した説明で全体の世界遺産価値を示すもので、同遺産の中の橋野鉄鉱山の位置付けも分かる。
 
明治日本の産業革命遺産の共通展示。23資産で構成する遺産の全体像が分かる

明治日本の産業革命遺産の共通展示。23資産で構成する遺産の全体像が分かる
 
日本の近代化を推し進めた3つの産業分野を説明するパネル

日本の近代化を推し進めた3つの産業分野を説明するパネル

 
 対面には、共通パネルとデザインを合わせた橋野鉄鉱山のパネルを配置。三陸ジオパークのジオサイトでもあることから地質の説明も入れ、同鉄鉱山の歴史、資産を構成する「採掘場、運搬路、高炉場」跡、高炉のしくみ・特徴、製品の輸送経路まで、写真と説明文で分かりやすく解説する。高炉場跡で計画的に進められている発掘調査の成果など、登録後の10年間で得られた知見も盛り込む。パネルの下には専門用語の解説も。
 
橋野鉄鉱山を解説するパネルも充実。山の緑を基調としたデザイン

橋野鉄鉱山を解説するパネルも充実。山の緑を基調としたデザイン

 
高炉場跡の発掘調査の成果(写真右下)も盛り込んだ展示。パネルの下には専門用語の解説が添えられる(同左下)

高炉場跡の発掘調査の成果(写真右下)も盛り込んだ展示。パネルの下には専門用語の解説が添えられる(同左下)

 
 パネルは日本語と英語で表記され、中国語、韓国語はQRコードで説明文を読み取れるよう準備中(8月末までに導入)。多言語表示で外国人客の見学をサポートする。
 
 映像は展示室左奥に設置された縦約1.2メートル、横約3メートルの大型スクリーンで見ることができる。明治日本の産業革命遺産世界遺産協議会(事務局:鹿児島県)が作成した共通映像システムで、23構成資産の解説を視聴可能。釜石独自のものとして、待機画面に市郷土資料館(鈴子町)で展示される同鉄鉱山高炉場跡のジオラマを採用したほか、鉄鉱山操業時(1860年代前半)に描かれた絵巻「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図(しほんりょうてっこうざんおやまうちならびにこうろのず)」(市立鉄の歴史館所蔵)のスクロール画像、岩手県の3世界遺産の紹介画像も盛り込む。タッチパネル操作で見学者が見たいものを選択できる。
 
従来の5倍の画面サイズで映像が見られる大型スクリーン。写真画像は待機画面の「橋野鉄鉱山高炉場跡のジオラマ」

従来の5倍の画面サイズで映像が見られる大型スクリーン。写真画像は待機画面の「橋野鉄鉱山高炉場跡のジオラマ」

 
鉄鉱山稼働時の様子が描かれた絵巻はスクロール画像で。本物は12月1日の「鉄の記念日」に合わせ鉄の歴史館で毎年公開

鉄鉱山稼働時の様子が描かれた絵巻はスクロール画像で。本物は12月1日の「鉄の記念日」に合わせ鉄の歴史館で毎年公開

 
タッチパネル操作で全23資産の紹介映像を見ることができる。産業革命遺産巡りをお気軽に!

タッチパネル操作で全23資産の紹介映像を見ることができる。産業革命遺産巡りをお気軽に!

 
 同センターは2013年にオープン。2年後の15年、世界遺産登録決定に伴う展示リニューアルはあったが、今回のような大規模更新は初めて。センター施設や史跡周辺の維持、管理業務を担う橋野町振興協議会の菊池郁夫会長は「オープンから13年が経過し、従来の展示では飽きがきている状況もあった。今回のリニューアルでまた多くのお客さまが来てくれることを願う。市とともに各種イベントも開催しながら誘客に努めていきたい」と話した。
 
 「明治日本の産業革命遺産」の共通展示整備は世界遺産登録時に勧告され、内閣官房の整備計画により2020年度以降、8つのエリアごとに順次導入されてきた。釜石では24年度に設計業務を行い、本年2月から工事が進められてきた。総事業費は約4千万円。
 
橋野鉄鉱山の紹介映像。普段は非公開の「採掘場跡」も映像で(写真下)

橋野鉄鉱山の紹介映像。普段は非公開の「採掘場跡」も映像で(写真下)

 
セレモニー終了後、世界遺産室の森一欽室長が新たな展示について出席者に説明した

セレモニー終了後、世界遺産室の森一欽室長が新たな展示について出席者に説明した

 
 市教委文化財課世界遺産室の森一欽室長は「(共通展示の導入で)世界遺産全体の中での橋野鉄鉱山の位置付けが明確になった。大画面のスクリーンで各地の資産も見られる。他エリアと連携しながら明治日本の産業革命遺産の価値を発信していければ」と話す。

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釜石「御箱崎の千畳敷」を国登録記念物に 文化審が答申 太平洋望む花こう岩風景 名勝価値を評価

国の登録記念物に指定される見通しとなった釜石市箱崎町の「御箱崎の千畳敷」=写真提供:釜石市

国の登録記念物に指定される見通しとなった釜石市箱崎町の「御箱崎の千畳敷」=写真提供:釜石市

 
 文部科学大臣の諮問機関、文化審議会(日比野克彦会長)は19日、釜石市の箱崎半島先端に位置する岩石海岸「御箱崎の千畳敷」を国の登録記念物(名勝地関係)に登録するよう答申した。近く、登録される見通し。長い年月をかけ自然の営みによって生み出された海岸は唯一無二の景観を見せており、名勝地としてその価値が評価された。
 
 大槌湾と両石湾に挟まれた箱崎半島の先端部は急峻な海食崖に囲まれ、両石側には波によって平らに削られた波食棚が最大幅約100メートル、延長600メートル余りにわたって広がる。千畳敷と呼ばれ、地名「箱崎」の由来となった同所には箱状の岩々が重なり、特異な景観を見せる。前期白亜紀、約1億2千万年前にマグマが上昇し、冷え固まってできた花こう岩類が隆起。海食が繰り返されて形成されたものと考えられている。しま状に刻まれた波食溝やでこぼこな岩肌が奇岩怪石を成し、くぼ地の潮だまりなどとともに海岸の表情を豊かにしている。太平洋の青い海の手前に白い千畳敷を臨む風景は美しいコントラストを生み、日の出の名所としても知られる。南東方向には国の天然記念物に指定されている無人島「三貫島」も見える。
 
上空から撮影した箱崎半島の先端部。右側が大槌湾、左側が両石湾=写真提供:かまいしDMC

上空から撮影した箱崎半島の先端部。右側が大槌湾、左側が両石湾=写真提供:かまいしDMC

 
隆起した花こう岩が波による浸食で荒々しい姿を生んでいる

隆起した花こう岩が波による浸食で荒々しい姿を生んでいる

 
千畳敷からは国天然記念物の三貫島などを見ることができる=写真提供:釜石市

千畳敷からは国天然記念物の三貫島などを見ることができる=写真提供:釜石市

 
 釜石市文化財保護審議会の藤原信孝会長は「古くから地元住民に愛されてきた自慢の景勝地が国に認められたのは大変うれしく、願ってもないこと」と喜びを表す。同所は「三陸復興国立公園」や「三陸ジオパーク」の一部でもある。箱崎半島の突端、御箱崎灯台までは自然歩道が整備されているが、千畳敷に下りるには崖伝いの急で狭い道を通らなければならない。観光ガイドでもある藤原さんは「登録で来訪者が増えることも予想される。岩場に下りて見る景色が最大の魅力だが、危険も伴うため、今後はさらなる安全対策が必要」と話す。
 
半島の突端、御箱崎灯台までは歩行可能な散策路が続く。灯台の手前には地元住民が祭った御箱崎神社がある

半島の突端、御箱崎灯台までは歩行可能な散策路が続く。灯台の手前には地元住民が祭った御箱崎神社がある

 
千畳敷は急峻な崖を下りた先に広がる。水平線の大パノラマを見られるのは半島の先端部ならでは

千畳敷は急峻な崖を下りた先に広がる。水平線の大パノラマを見られるのは半島の先端部ならでは

 
長い年月をかけて波に削られ平らな岩盤地形となっている千畳敷。地球の息吹を感じる

長い年月をかけて波に削られ平らな岩盤地形となっている千畳敷。地球の息吹を感じる

 
 みちのく潮風トレイルの人気の高まりで、半島部のトレッキングを楽しむ人は多い。千畳敷は同トレイルの本コースからは外れているが、途中から足を延ばす人も。今回の答申について小野共釜石市長は「この地が持つ文化的・景観的価値が国に認められ、極めて喜ばしい。貴重な文化財として保存に万全を期すとともに、これまで以上に観光への積極的な活用を図っていきたい」と談話を発表した。県内の国登録記念物は4件目となる。