冬季休館が終わり4月1日から開館した「橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」
釜石市橋野町青ノ木の「橋野鉄鉱山」は7月5日で、世界文化遺産登録から10周年を迎える。日本の近代化の礎を築いた“鉄のまち釜石”を象徴する同史跡は、「明治日本の産業革命遺産」(8県11市23資産)の構成資産の一つとして2015年、世界遺産に登録された。節目の年となる今年は、各種記念行事が予定される。情報発信を担う「橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」は冬季休館期間が明け、4月1日から開館。さらなる認知と見学者増を目指し、関係者は受け入れ態勢を整える。
同市北西部に位置する橋野鉄鉱山は積雪のため、12月上旬から3月末まで同センターを冬季休館としている。開館日の1日は、見学エリアの高炉場跡の積雪も解消。センターでは、市から委託を受けている橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)のスタッフが業務を再開した。本年度は7人が毎日交代(2人体制)で、来館者の応対や施設の清掃、見学エリアのパトロールなどにあたる。
施設入り口にのぼり旗を設置するスタッフ。見学者の受け入れ準備も整った
また、釜石観光ガイド会(瀬戸元会長、32人)は同日から現地ガイドの派遣を開始した。会員約10人でシフトを組み、センター開館時間内に1人が常駐。ガイドを希望する見学者を案内する。藤原信孝副会長は「登録10周年の節目でもあり、ガイド会としても期待に応えたい。訪れた人たちに興味を持ってもらえるような説明ができれば」と気持ちを高める。
世界遺産登録10周年の今年、来訪者増に期待する釜石観光ガイド会の藤原信孝副会長
橋野鉄鉱山周辺は桜の名所でもある。例年4月下旬からさまざまな種類が咲き始める。今年も期待!=資料写真(2019、23年撮影)
市教委文化財課世界遺産室によると、登録10周年記念行事は5月からスタート。登録日の7月5日には「明治日本の産業革命遺産」全体のシンポジウムが東京で行われる。同12日には釜石市で式典、講演会、パネルトーク、翌13日には現地でマルシェ(キッチンカー出店、音楽会などを予定。ラベンダーまつりと共催)が開かれる。10月11、12日には県内3世界遺産持ち回りで開催されている「いわて世界遺産まつり」(県主催)が橋野鉄鉱山を会場に開かれる。スタンプラリーやARアプリ用カードの配布なども予定する。
例年実施しているイベントは登録10周年記念の冠をつけて開催する。本年度は見学路整備に伴う発掘調査(水路跡周辺)が予定されていて、計画的に進める内容確認調査の発掘と合わせ、その成果が注目される。子どもが楽しめる企画も検討中。12月の「鉄の記念日、週間」行事は、橋野鉄鉱山世界遺産登録10年の軌跡にスポットを当てる。
橋野鉄鉱山(高炉跡)の来訪者数は世界遺産登録前は年間500人ほどだったが、登録に向けた取り組みが進むにつれ見学者が増加。登録された2015年は43316人(センター入館カウント)を記録した。16年に台風による豪雨被害、20年から3年間は新型コロナ禍、24年はアクセス路の笛吹峠の通行止めと、度重なる困難を乗り越えながらの10年。24年の来訪は5982人(同)だった。
森一欽世界遺産室長は「遺産価値の周知の面では、この10年でそれなりの成果はあったと思う。製鉄体験や出前講座などで小中学生の理解も深まっている」と実感。課題は経済活動への効果。「“鉄”だけで人を呼び込むのは難しい。三陸ジオパーク、みちのく潮風トレイルなどと組み合わせ、当市の魅力を発信する形ができれば。県内3遺産、世界遺産地域連携会議とのつながりも生かしたい」と森室長。10周年を「今後の10年に向けスタートを切るための年」と位置付け、「市民の皆さんにも積極的に関わってもらい、一緒に盛り上げていきたい」と話す。
なお、近代製鉄発祥の地「釜石鉱山」の資料を公開する甲子町大橋の展示室「Teson」(旧釜石鉱山事務所)も冬季休館が明け、3日から開館している。
地元業者「青紀土木」が地域貢献 社員ら総出で橋野鉄鉱山見学エリア、アクセス路を清掃
橋野鉄鉱山の見学エリアで清掃奉仕に励む青紀土木の社員ら=1日午前
釜石市鵜住居町の建設業、青紀土木(青木健一代表取締役社長、従業員35人)は1日、地域貢献として、世界遺産「橋野鉄鉱山」とアクセス路となる県道の清掃活動を行った。青木社長以下30人余りが参加。日ごろ世話になっている地域への感謝を込めて、環境美化に尽力した。
インフォメーションセンターに集合した同社社員らは午前9時、2班に分かれて作業を開始した。見学エリアの高炉場跡には、冬期間に積雪や強風で倒れた木や折れて落下した枝などが散乱。大きいものは切断したりして、一輪車で運び出した。細かいものは袋に集めた。この日は市から要望のあった山神社付近を中心に清掃。協力し合って、見学者が歩きやすい環境、きれいな景観を取り戻した。
倒れた木や折れて落下した枝などを回収し、見学者の安全を確保
約2時間の作業でエリア内はすっきりとした印象に…
同鉄鉱山へのアクセス「県道釜石遠野線」では、遠野市側に向かって坂道を上りながら、ごみを拾い集めた。同社は県から委託を受け、同路線の路面、側溝清掃など道路維持管理業務を行っているが、この日は通常業務の範囲外の路肩に目を向け、落ちているごみを拾った。ビンや缶、その他に分別しながら袋に集めた。
県道釜石遠野線では路肩の草地に目を凝らし、落ちているごみを拾った
ごみは車からポイ捨てされたとみられる空き缶、ビン、ペットボトルなどが目立った
同社は新年度がスタートする毎年4月1日に、全従業員と関係企業の出席のもと安全衛生大会を開いている。午後からの大会の前に地域に奉仕する活動を行うのが恒例。日ごろの業務の中で気付いた箇所を選定し、清掃している。昨年は三陸鉄道鵜住居、両石2駅の草刈りなどを実施。市役所近くの高台避難道路、市道箱崎半島線のガードレール清掃を行ったことも。橋野鉄鉱山関連では、世界遺産登録された2015年に県道清掃を行っている。同奉仕活動は20年近くに及ぶ。
みんなで声を掛け合いながら作業。新年度のスタートにあたり、仕事への意欲も高めた
青木社長は同活動について「地域への感謝の気持ちを持って1年働こう、頑張ろうという誓いの場にしたい。道路建設に携わっている身として、自分たちの仕事が社会の役に立っていることを再認識する機会にもなれば」と期待。普段は各現場に分かれて仕事をしている仲間が年に1回全員集まり、結束を強める場にもなっているという。