青空の下で開かれた第18回水車まつり=3日、橋野どんぐり広場
釜石市橋野町の初冬の恒例行事「水車まつり」が3日、産地直売所の橋野どんぐり広場周辺で開かれた。米や雑穀、野菜などの農産物を昔ながらの食べ方で味わってもらい、同地域の魅力発信、誘客につなげるイベント。橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)、栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が共催する。18回目の今年も市内外から家族連れなど大勢の人が足を運び、地元住民らによる手作りメニューを味わった。
同振興協の菊池会長が歓迎のあいさつをし、餅まきからスタートした。主催、協賛団体の代表が軽トラックの荷台から約800個の紅白餅をまいた。収穫祝いの餅が宙を舞うと、子どもも大人も手を伸ばし、にぎやかな歓声が響いた。
水車まつり恒例の餅まき。老若男女が楽しんだ
毎回好評の豚汁は約300食分が用意された。地元産の野菜を使い、同振興協女性部が調理。無料のお振る舞いに長い列ができた。手打ちそば、雑穀おにぎり、きびの焼き団子は約150~260食分用意され、安価で販売された。手打ちそばの提供には鵜住居公民館で活動する「そばの三たて会」(奥山英喜会長)が2018年から協力している。来場者は好みのメニューを買い求め、青空の下で農作物の恵みを堪能。周辺の山々の紅葉は始まったばかりだったが、山間部ならではのすがすがしい空気に包まれながら、心地よい時間を過ごした。
豚汁のお振る舞いには長い列ができた。この味を求めて足を運ぶ人も多い
豚汁、手打ちそば、雑穀おにぎり…。実りの秋を存分に
炭火で焼くきびだんご。手作りのみそだれが香ばしさを倍増
会員がそば打ちをし、ゆでたてを提供する「そばの三たて会」
同市箱崎白浜地区から足を運んだいとこ同士という佐々木寧々さん、佐々木蒼さん(ともに小4)は「豚汁はジャガイモが大きくて、味も家で食べるのとは違う。お餅も10個ぐらい拾った。橋野は自然がいっぱいで好き。山にも登ってみたい」と笑顔満開。蒼さんの父隆寛さん(34)は「まつりには初めてきたが、子どもたちが楽しめて良かった。外で食べるのもうれしそう。何でも好き嫌いなく食べて元気に育ってほしい」と望んだ。
青空の下で食事を楽しむ来場者
子どもたちもさまざまなメニューをおいしくいただきました!
どんぐり広場隣の親水公園には、かやぶき屋根の水車小屋があり、来場者が内と外から見学。橋野町には昔、集落ごとに共同利用の水車小屋があり、水力で動かすきねで米や雑穀をつき、もみ殻をはずす作業を一昼夜かけて行っていたという。この日は、農機具が機械化される前に精米などに使われていた「唐箕(とうみ)」の実演も行われた。7.5キロのもみ米を水車でついた後、木製の唐箕に投入。つまみを回して風を送り、米粒と粉状になったもみなどを分ける作業を公開した。精米した米は2合ずつ見学者にプレゼントされた。
今では目にする機会のない「唐箕」の実演に来場者は興味深げに見入った
滝沢市から山田町の実家に帰省した吉田陽子さんは「昔はこうやって米を食べられるようにしていたんですね。子どもたちも『これ何するの?』と興味津々でした。昔の農業を知るいい機会」と喜び、ぬか漬け用に米ぬかももらってほくほく顔。「きびだんごとそばがおいしかった」と話す娘の梨緒さん(小2)と「来年も来たいね」と目を合わせた。
橋野どんぐり広場の藤原英彦組合長は今年の農作物の出来について、「大きい台風で稲が倒れることもなく、米の収量はまずまず。野菜も昨年のような酷暑の影響はなく、良いほう。後は野生キノコの出荷制限が早く解除されれば」と来季に期待した。
水車が回る親水公園は散策の楽しみも。裏手には「ママシタの滝」がある