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活気、熱意込め 11年ぶり みこし行列 館山神社(釜石・平田地区)で例大祭

館山神社例大祭の神輿渡御で笑顔を見せる担ぎ手たち

館山神社例大祭の神輿渡御で笑顔を見せる担ぎ手たち

 
 釜石市平田の館山神社例大祭(実行委員会主催)は11日、2014年以来11年ぶりに行われた。台風災害、新型コロナウイルス禍を経て待望の再開となり、神輿(みこし)渡御や郷土芸能の奉納などで地域は活気に満ちた。東日本大震災の被災地域でもある平田地区では復興事業により街の姿が変化。住民の減少や高齢化なども進み、まつりの参加者確保は厳しくなったが、「復興を祝おう」「今できることをやろう」「子どもたちの記憶に残したい」と熱意を込めた。
 
11年ぶりに行われた「平田まつり」。神輿渡御に活気づく

11年ぶりに行われた「平田まつり」。神輿渡御に活気づく

 
 平田町内会(約280世帯)、平田船頭組合、平田神楽保存会、虎舞の平田青虎会が中心になり、3年に1度行う式年祭。「平田まつり」として親しまれ、地域住民の無病息災、豊漁や航海の安全などを願い、神に感謝を伝えてきた。11年は震災のため見送られ、「古くから親しまれたコースをたどるのは最後…」と復興事業が本格化する直前の14年に祭り行列を行った。
 
 「復興が終わったら」。そうした思いを地域で共有し、予算を積み立てていたが、19年の台風19号による豪雨災害、コロナ禍などで実施できなかった。住民の高齢化が進み、神輿の担ぎ手を集めるのは年々厳しくなる中、住民から「やらないの」「早くやろう」「再開だ」との声があり、復活を果たした。
 
階段は約100段。高台の神社から下りてくる神輿

階段は約100段。高台の神社から下りてくる神輿

 
 館山神社での神事の後、150人余りの行列が出発。ご神体を載せた神輿の担ぎ手たちはかけ声を響かせながら、土地区画整理事業などによって変化した道路、家並みの間を進んだ。
 
 神輿の担ぎ手は約30人。尾崎神社の神輿担ぎ手団体「輿衆(よしゅう)会」の力を借りた。地元企業も協力し、岩手資源循環からは9人が参加。同社の佐々木公輔さん(33)は19年の台風で被災し尾崎白浜地区から移り住み、初めての平田まつり。「久しぶりにやる祭りで神輿を担げてうれしい。隣近所とはあいさつ程度の交流なので、祭りを通して関係が深まる機会になればいい」と話し、担ぎ棒にぐっと肩をあてた。
 
新しいまちを進む神輿。「復興が終わったら」を実現した

新しいまちを進む神輿。「復興が終わったら」を実現した

 
神輿が通ると手を合わせ、願いを込めた。「みなが元気で」

神輿が通ると手を合わせ、願いを込めた。「みなが元気で」

 
 「御旅所」とする釜石祥雲支援学校や荒神社、釜石湾漁協では地域の代表らが神輿に玉串をささげ平穏を祈願し、神楽や虎舞を奉納。見守る住民らも一緒に手を合わせたり、勇壮、華麗な舞、威勢のいいおはやしに心を躍らせた。
 
地域の芸能団体も加わった神輿行列が練り歩く

地域の芸能団体も加わった神輿行列が練り歩く

 
白装束で厳かに神輿渡御。芸能団体は華やかに彩りを添える

白装束で厳かに神輿渡御。芸能団体は華やかに彩りを添える

 
御旅所では芸能団体が虎舞や神楽を奉納した

御旅所では芸能団体が虎舞や神楽を奉納した

 
 漁港にはお祭り広場が設けられ、ステージ上では平田こども園の園児らによる「ちびっこ虎舞」や唐丹町の鼓舞桜会の桜舞太鼓などが繰り広げられた。行列をはやし立てた虎舞は地域を盛り上げる演舞を披露。行列に彩りを添えた平田神楽は伝承する祝いの舞を届けた。
 
 支援学校そばにある復興住宅で暮らす佐々木真里子さん(77)は「祭り大好き。わくわくして楽しい気分。感動した」とにこやかに笑った。行列に参加する子や孫の姿を見つめた礼ケ口町の80代夫婦は「かっこいいね。家族がみんな健康であればいい」と願った。「思い出、写真の1枚もない。海に持っていかれた」と70代男性はつぶやきつつ、「いい祭りだ。久しぶりに顔を合わせた人もいる」と満足そうだった。
 
お祭り広場ではちびっこ虎舞や祝いの舞が披露された

お祭り広場ではちびっこ虎舞や祝いの舞が披露された

 
芸能団体の演舞を楽しむ大勢の人でにぎわった

芸能団体の演舞を楽しむ大勢の人でにぎわった

 
 「懐かしい」と目を細めたのは久保知久さん(77)。震災前の行列には手踊りなども加わっていてにぎやかだったと教えてくれた。少し寂しさも感じるが、「地域行事は人と人がつながる機会になる。他の地域から来た人たちがなじみ、一緒にまちを盛り上げてもらえれば」と期待した。
 
 行列に加わった子どもたちの多くは今回、初めて地域に祭りがあることを知った。平田神楽の遠藤凜さん(13)は「みんなで踊るのが楽しいし、見てもらえてうれしい。平田にもお祭りがあってすごいと思ったし、もっと好きになった」と破顔。青虎会の福士千尋さん(10)は「太鼓やかけ声を頑張った」と胸を張った。リズムに乗った演舞を繰り広げる大人たちは憧れ。「伝統文化を継ぐ」との思いは強く、「平田の人たちは優しくて好き。いつか自分が盛り上げられるようになりたい」とうなずいた。
 
行列参加者も見物客も関係者も!笑顔が広がる平田まつり

行列参加者も見物客も関係者も!笑顔が広がる平田まつり

 
 平田町内会の中川崇司会長(73)は「こんなにいっぱい集まってくれるとは。年配者が懐かしみ、子どもらに地域の歴史文化を伝え継ぐ機会になった」と話し、充実感をにじませた。震災後、人が変わり、街並みも変わった。住民の減少、高齢化もあり、行列参加者の確保やコースの変更など数カ月前から準備。「陰で支えてくれる多くの力があった」と感謝を口にする。つながりを大事にし、誰もがとけ込める地域づくりは途上。手探りながらも、「新しいまちのひとつのスタート」として復活させた祭りを守っていく構えだ。

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釜石・鵜住居川、甲子川にアユの稚魚放流 釣り解禁はともに7月6日 順調な成育に期待 

鵜住居川漁業協同組合による同川へのアユの稚魚放流=11日

鵜住居川漁業協同組合による同川へのアユの稚魚放流=11日

 
 釜石市の鵜住居川と甲子川に、このほどアユの稚魚が放流された。大船渡市の盛川漁業協同組合で中間育成された体長約7~8センチの稚魚を両河川の関係者が放流。釣り解禁日はともに7月6日。稚魚の繁殖保護のため、6月1日から解禁日前日まで全魚種が禁漁となる。(区域は現地の立て看板などを参照)
 
 鵜住居川への放流は11日、鵜住居川漁業協同組合(川崎公夫代表理事組合長、組合員153人)の組合員約30人によって行われた。鵜住居町の日ノ神橋下流域から橋野町の産直・橋野どんぐり広場付近までの区間18カ所に、重量にして400キロ(約4万6500尾)を放流した。稚魚は、人工放流のない三陸の河川に遡上する天然魚の卵から育ったもので、一尾平均8.6グラム。
 
 組合員らは2班に分かれて作業。稚魚を積んだトラックからバケツリレー、またはホースを延ばして放流した。稚魚購入代など放流にかかる費用は組合費、一般釣り客の遊漁料、関係企業・団体からの協力金で賄われている。
 
組合員らがバケツリレーで川岸まで稚魚を運んで放流=日ノ神橋下流

組合員らがバケツリレーで川岸まで稚魚を運んで放流=日ノ神橋下流

 
稚魚が入ったバケツをロープにくくり付け、慎重に下ろす=雲南橋

稚魚が入ったバケツをロープにくくり付け、慎重に下ろす=雲南橋

 
「解禁日に会おう!」順調に育つよう願いを込めながら…=住川橋

「解禁日に会おう!」順調に育つよう願いを込めながら…=住川橋

 
 同組合によると、昨季のアユ釣りは釣果、型ともに上々。遊漁券の売り上げは前年を若干上回り、過去最高を更新した。集客の要因の一つが「釣り場への入りやすさ」。例年、シーズン前に同組合や流域の各地区、県の委託業者が環境整備の一環で土手や河川敷の草刈りを行っていて、釣り客の評価も高い。
 
 川崎組合長は「河川も漁協経営は厳しい状況。沿岸地域の人口減もあり、全体的に釣り客は減っている。市外からもどんどん来ていただき、鵜住居川での釣りを楽しんでもらえれば」と期待する。本年度の組合員費は年間5000円。一般遊漁料は年券が7000円、日券が1500円。遊漁券は市内釣具店や流域の赤いのぼり旗を掲げた販売所のほか、スマホアプリ「フィッシュパス」で購入可能。
 
今季のアユ釣りを楽しみにする組合員ら。川の状態も確認(写真左)

今季のアユ釣りを楽しみにする組合員ら。川の状態も確認(写真左)

 
 一方、甲子川への放流は12日に行われた。甲子川鮎釣協力会(安久津吉延会長)、甲子地域会議、クボタ環境エンジニアリングの三者で実施。約20人が放流にあたった。2班に分かれ、上流は甲子町砂子渡付近から、下流は源太沢町と礼ケ口町の中間地点からそれぞれ甲子町松倉までの区間、計21カ所で計250キロ(約3万2000尾)を放流した。稚魚は盛川漁協から購入した。一尾平均7.8グラム。
 
甲子川鮎釣協力会などが行ったアユの稚魚放流=12日、松倉橋上流

甲子川鮎釣協力会などが行ったアユの稚魚放流=12日、松倉橋上流

 
 同協力会の安久津会長は「昨年の釣果は雨や気温の上下が激しかった関係で全体的に良くなかった。それでも大きいものでは22~23センチのものも。甲子川は水質が良く、アユの餌となるいいコケが育つので、味はおいしいと言われる」とし、今季の集客に期待を寄せる。
 
 甲子川には河川漁協がなく、入漁料を徴収しないため、稚魚の放流は同協力会に寄せられる釣り人らの協力金や企業の寄付金などで支えられる。250キロの放流は昨年と同じ量となる。例年だと、解禁日には16~18センチほどに成長する見込み。
 
最後はトラックの水槽からホースを延ばして稚魚を送り出した=松倉橋下流

最後はトラックの水槽からホースを延ばして稚魚を送り出した=松倉橋下流

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釜石PIT 2025年5月のスケジュール

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釜石PITの5月のスケジュールです。
太字で表示されているイベントは一般の方も参加できます。イベントに関するお問い合わせは、各主催者までお願いいたします。
 
施設に関する詳細はこちらのページをご覧ください。

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

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マグロ、毛ガニ…海産物で「魚のまち」アピール 釜石で春まつり 観光客でにぎわう

かまいし春まつりで買い物客を沸かせたマグロの解体ショー=4日

かまいし春まつりで買い物客を沸かせたマグロの解体ショー=4日

 
 5月の大型連休中の3、4日、釜石市鈴子町の釜石駅前周辺で「かまいし春まつり」(釜石観光物産協会主催)が開かれた。駅前橋上市場サン・フィッシュ釜石では海の恵みを体感する多彩な企画を展開。駅に隣接する観光物産施設シープラザ釜石の西側駐車場には出店ブースや遊びのコーナーが設けられ、市内外から訪れた観光客が思い思いに楽しんだ。
 
 サン・フィッシュでは「魚のまち」をアピールする催しを多数用意。地元で水揚げされた新鮮な魚介類を市価の半額ほどの“浜値”で販売し、その場で焼いて食べられる「浜焼き」を提供した。毛ガニ釣りチャレンジは好評で、4日は開始早々に終了。マダコやトゲクリガニ、リュウグウハゼなどの釜石海域の生き物に触れられるタッチプール(岩手大釜石キャンパスが協力)は子どもたちの人気を集めた。
 
海の生き物に触れられるタッチプールは子どもに大人気

海の生き物に触れられるタッチプールは子どもに大人気

 
毛ガニ釣りに挑む子どもたちに周囲の大人が声援を送る

毛ガニ釣りに挑む子どもたちに周囲の大人が声援を送る
 
マグロの重さ当てクイズも。じっと目を凝らす挑戦者

マグロの重さ当てクイズも。じっと目を凝らす挑戦者

 
 4日、大にぎわいとなったのはマグロの解体ショー。施設を運営する釜石駅前商業協同組合の八幡雪夫理事長が中心となって、長崎・五島産の養殖クロマグロ(ホンマグロ)を出刃包丁などで手際よくさばいた。
 
多くの見物客でにぎわったマグロ解体ショー

多くの見物客でにぎわったマグロ解体ショー

 
 「脂、ヤバー」。頭やカマ、身を切り落とす度に、買い物客から歓声が上がった。解体後は大トロや中トロ、赤身に切り分けてパック詰めされ、安価で販売。解体を見守っていた人らが次々と買い求めた。
 
マグロの解体ショーを通じて触れ合う鮮魚店と買い物客ら

マグロの解体ショーを通じて触れ合う鮮魚店と買い物客ら

 
解体後、マグロを買い求める人たちで長い列ができた

解体後、マグロを買い求める人たちで長い列ができた

 
 マグロの重さ当てクイズも行われ、269人が挑んだ。「55キロ」とぴったり当てた2人にはトロと赤身の「サク」の詰め合わせをプレゼント。「当たっちゃった」と驚く神奈川県藤沢市の会社員八木俊明さん(44)は思いがけない戦利品を手に、「刺し身にして味わう」と頬を緩めた。妻の実家への帰省に合わせ、毎年この時期に来釜。「海鮮はおいしいし、山と海の景色もすごくいい。落ち着く」と目を細めた。
 
 八幡理事長は「どこから人がくるのか…ありがたい。いかにして人を集めるか、周辺施設や行政、出店者らの協力があってこそ」と予想以上の人出に手応えを口にした。漁獲量の減少、水揚げされる魚種の変化への対応など鮮魚店の経営は厳しさもあるが、「駅前を盛り上げたい」との思いは変わらず、「計画中」という秋のイベントに向け、早くも腕をまくった。
 
春の陽気と食を楽しむ家族連れでにぎわった

春の陽気と食を楽しむ家族連れでにぎわった

 
 春まつり開催中は晴れの日が続き、行楽日和となった。屋外では串焼きやかき氷などを味わったり、ゴーカートなど子ども用の乗り物での走行を楽しむ家族連れらでにぎわった。

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自主防結成後初 釜石東中が新年度スタートで防災オリエンテーション 校内の備えを確認

避難所開設時に使う段ボールベッドを組み立て、寝心地を確かめる=釜石東中防災オリエンテーション

避難所開設時に使う段ボールベッドを組み立て、寝心地を確かめる=釜石東中防災オリエンテーション

 
 釜石東中(高橋晃一校長、生徒86人)は4月30日、年度初め恒例の防災オリエンテーションを行った。2011年の東日本大震災で受けた同校の被害、復興の歩みを知り、防災力を高めるための活動。本年1月に県内初の中学生による自主防災組織(自主防)を立ち上げた同校。“結成元年”の取り組みを深化させるべく、生徒らは各種災害への備えを再確認するなどし、発災時の適切な行動を考えた。
 
 全学年を縦割りにした3つの組団ごとに6項目の活動を展開。2、3年生は初めて臨む新1年生(33人)にアドバイスしながら活動した。校内の災害への備えを確認する活動では、ウオークラリー形式で消火器・栓、担架、自動体外式除細動器(AED)が設置してある場所をチェック。校舎図に印を付けて全体の配置も頭に入れた。合わせて避難経路も確認した。
 
校舎内を歩き、消火器などがある場所を確認。いざという時、速やかに使えるように…

校舎内を歩き、消火器などがある場所を確認。いざという時、速やかに使えるように…

 
AEDや担架は普段の傷病者発生時にも必要。しっかり場所をチェック

AEDや担架は普段の傷病者発生時にも必要。しっかり場所をチェック

 
 2階の防災備蓄倉庫では在庫の種類と数を確認し、リストに書き込んだ。同校が鵜住居小と共用する校庭と体育館はそれぞれ、地震津波、火災、洪水・土砂災害時の緊急避難場所、拠点避難所に指定されている(市指定)。発災が生徒たちの在校時間帯の場合、自らの命を守り、安全が確認された後には、自主防として避難所開設にあたることを目指している。生徒らはこの日、毛布や飲料水、炊き出し釜、暖房器具など必要な備品が倉庫内のどこにどれだけあるかを把握。災害用の簡易トイレや段ボールベッドの組み立てを体験し、避難者名簿の作成の仕方も教わった。
 
「防災備蓄倉庫には何がある?」備蓄品の種類や数を確認

「防災備蓄倉庫には何がある?」備蓄品の種類や数を確認

 
災害時に避難所となる体育館で段ボールベッドの組み立てを体験

災害時に避難所となる体育館で段ボールベッドの組み立てを体験

 
簡易トイレの設置の仕方を学ぶ。座り心地も試した

簡易トイレの設置の仕方を学ぶ。座り心地も試した

 
 震災前から行われてきた同校の防災の取り組み、被災から復興までの歩みを知る活動も。2009年に当時の1年生が制作した津波防災の啓発DVD「てんでんこレンジャー」の視聴では、自分の命を守るために必要な、▽大きな地震がきたら高い所を目指してひたすら逃げる▽いつでも避難できるよう枕元に衣服や持ち物を置いておく▽避難場所や待ち合わせ場所を普段から家族で話し合っておく―ことを学んだ。
 
釜石東中オリジナル防災キャラクター「てんでんこレンジャー」が教える、津波から命を守る方法を心に刻む

釜石東中オリジナル防災キャラクター「てんでんこレンジャー」が教える、津波から命を守る方法を心に刻む

 
 同校には14年前の震災被害や世界中から受けた多くの支援を一堂に見ることができるメモリアルルームが開設されている。津波で全壊した校舎を含む鵜住居地域の甚大な被害、数えきれない支援に力をもらい地域とともに歩んだ復興への道のり…。生徒らは先輩方が経験してきたことを写真や支援品などから感じ取り、学校や地域のためにこれからできることを考えた。
 
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東日本大震災の被害や復興への歩みを知ることができるメモリアルルーム

 
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さまざまな展示品を見ながら気付いたことを書き留める生徒ら

 
 1年の川崎煌聖さんは「段ボールベッドの組み立てなど、避難してきた人たちへの対応の仕方が少し分かった。寝ている時とか、いつ災害があっても逃げられるよう準備していきたい」と知識を深めた様子。震災は生まれる前の出来事だが、親から話を聞き、幼稚園、小学校と避難訓練を重ねてきていて、「いざという時の行動は身に付いている」。中学生になったことで、「自分の命は自分で守ることはもちろん、周りに人がいる時は呼び掛けをしながら逃げたい」とステップアップを望んだ。
 
 同校の自主防は全校生徒と教職員で組織する。本年度は教職員19人を含め105人体制。会長を務める千葉心菜さん(3年、生徒会長)は結成後初の本格的な活動を終え、「みんな真剣に協力し合って取り組めていた」と一安心。組織の立ち上げに携わり、本年度が実質1年目となるが、「災害時に誰もが自分の立場を理解し、的確な判断と行動ができるよう学年を超えて学んでいけたら。全校参加の地域を巻き込んだ訓練もやりたい。活動を浸透させるために回数も増やせれば」と願う。
 
 同校が掲げる生徒像の一つが「助けられる人から助ける人へ―」。防災、命の学習に加え、各種地域貢献活動で「人を助ける」「誰かのために動く」ことができる人間を目指す。意欲的に取り組めるよう設けられているのが「EAST(イースト)レスキュー隊員」制度。各学習、地域活動への参加でポイントを集めると5~1級まで取得可能。普段から地域とのつながりを深めることで、災害時のスムーズな連携を図る狙いもある。オリエンテーションではその隊員証も配られた。
 
 復興・防災教育担当の佐々木伊織教諭(28)は「防災に関してはやれることをやりたいという生徒も多い。自身で必要なことを判断し、地域のために動けるようになってほしい。いかに楽しく学んで力をつけていくかが大事。新しいことにもどんどんチャレンジを」と期待を寄せる。

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三陸が誇る宝「五葉山」山開き 登山者ら四季の風景に期待! 花の季節ももうすぐ

五葉山の山開き「安全祈願祭」=4月29日、赤坂峠登山口

五葉山の山開き「安全祈願祭」=4月29日、赤坂峠登山口

 
 釜石、大船渡、住田3市町にまたがる三陸沿岸最高峰の五葉山(標高1351メートル)が4月29日、山開きした。釜石、大船渡両市境、赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われ、関係者約40人がシーズン中の無事故を祈った。「花の百名山」の一つとしても知られ、県内外の登山客に愛される五葉山。これからの季節はツツジやシャクナゲの群落が愛好家の目を楽しませる。
 
 安全祈願祭は3市町でつくる五葉山自然保護協議会(会長=小野共釜石市長)が主催。神事に先立ち渕上清大船渡市長が、2月26日に同市で発生した大規模林野火災への消火協力、物資支援などに深く感謝。「今後の火災予防を徹底し、新たな視点で災害対策を考える起点にしたい」と決意を述べた。五葉山神社の奥山行正宮司が祝詞を奏上。自治体、警察、各関係団体の代表が玉串をささげ、登山者の安全を祈った。小野共釜石市長は三陸ジオパークのジオサイトに五葉山を登録する方向で協議が進んでいることを明かし、「五葉山が三陸の大きな魅力の一つとして数えられる日も近い。今年1年、十分に安全に留意し、四季折々の美しさを堪能していただければ」と願った。
 
大規模林野火災への対応、支援に対する感謝を述べる渕上清大船渡市長(左)。五葉山自然保護協議会会長の小野共市長(右)は登山者らの環境整備への協力に感謝

大規模林野火災への対応、支援に対する感謝を述べる渕上清大船渡市長(左)。五葉山自然保護協議会会長の小野共市長(右)は登山者らの環境整備への協力に感謝

 
登山道を清める五葉山神社の奥山行正宮司

登山道を清める五葉山神社の奥山行正宮司

 
自治体、警察、観光関係者らが神前に玉串をささげ、今年1年の登山の無事を祈った

自治体、警察、観光関係者らが神前に玉串をささげ、今年1年の登山の無事を祈った

 
 この日朝の同登山口周辺は雨が降ったりやんだりで、一時、濃霧や強風に見舞われる時間帯も。祈願祭後には雨雲が流れて日が差すなど、「山の天気は変わりやすい」との言葉通りの天候となった。このため、頂上を目指す登山客は少なめ。例年見られるグループ登山のにぎわいもしばしお預けとなった。
 
 装備を整え登山道に向かった釜石市の米澤英敏さん(82)は、同市の「アトラス山岳会」に所属。年に5~6回は五葉山に登るという。「季節ごとの花々や新緑、紅葉などいつ来ても楽しめる山。今年も何回か登れれば」と意欲。20代から始めた登山。年齢を重ねても「年相応に達成感、満足感がある」と魅力を語った。
 
雨の中、山開き登山に出発する愛好家ら。例年より気温も低め。手袋も装着して…

雨の中、山開き登山に出発する愛好家ら。例年より気温も低め。手袋も装着して…

 
 祈願祭から程なくして軽い足取りで下山してきたのは、釜石市の菅野愛子さんと佐藤伯子さん(ともに78)。五葉山の山開きには毎年足を運ぶが、今年は「雨なので最初から途中までと思って…」と、3合目まで行って戻ってきたという。「釜石岳友会」のメンバーで、毎月1~2回は岩手、秋田の山を中心に登山を楽しんでいる。「てっぺんで食べるご飯は最高。何を食べてもおいしい」と菅野さん。「今年もいっぱい登りたい。あとは体力と気力次第」と笑う。2人とも登山歴は長く、「登っている時は日々の煩わしさも忘れる。何も考えずに登れて、行って帰ってくると気持ちも晴れ晴れ」と佐藤さん。今年1年の山行に期待を膨らませた。
 
沿道の木々の芽吹きは見られるものの、まだ冬枯れの印象の登山道

沿道の木々の芽吹きは見られるものの、まだ冬枯れの印象の登山道

 
登山口付近の花芽はまだ閉じたまま。山の本格的春の到来が待ち遠しい

登山口付近の花芽はまだ閉じたまま。山の本格的春の到来が待ち遠しい

 
 五葉山自然保護管理員の松田陽一さん(61、釜石市)によると、例年に比べ残雪は少なめだが、8合目から上には雪があり“踏み抜き”(下の雪がやわらかく足が沈み込む現象)への注意が必要。管理員らによる整備で、赤坂峠からの登山道は歩きやすくなっていて、9合目にある山小屋「石楠花(しゃくなげ)荘」のトイレや水場も問題なく使える。松田さんは「三陸道や釜石道の開通後、登山者は増えている印象。遠くからの車のナンバーも見受けられる」とし、五葉山の認知度アップを実感する。
 
 今の時期はヤマザクラが咲き誇り、例年5月中旬にはツツジ、6月下旬にはシャクナゲが開花。山頂付近にはヒノキアスナロの原生林が広がり、頂上からは三陸のリアス海岸や奥羽山系の山々を一望できる。野生動物も豊富。登山の際にはクマ鈴やラジオの携帯で、人間の存在を知らせることも大切だ。

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地域と共に 釜石「うのすまい・トモス」6周年 味覚に手仕事…記念マルシェにぎわう

オープンから6周年を迎えた「うのすまい・トモス」

オープンから6周年を迎えた「うのすまい・トモス」

 
 釜石市鵜住居町のうのすまい・トモスで23日、6周年記念マルシェが開かれた。東日本大震災の教訓を伝えるとともに、地域の交流拠点にもなるよう願いが込められた施設。市内外のおいしいものや雑貨などの出店、工作体験などの催しがあり、家族連れらでにぎわった。
 
 地元釜石のほか、盛岡市や遠野市などから43店が出店した。ホタテなどの浜焼き、もつ煮、ピザなど各店がこだわりの味を提供。手作りのアクセサリーや着物のリメイク小物など手仕事の技を込めた商品も紹介した。鵜住居町内会は綿あめやポップコーンをお振る舞い。陸中海岸青少年の家(山田町)は貝殻や松ぼっくりなど海と森の素材で彩るフォトフレームづくり体験で楽しませた。
 
市内外のおいしいものが並び、来場者は品定めを楽しんだ

市内外のおいしいものが並び、来場者は品定めを楽しんだ

 
食べて、体験して、会話を楽しむ人たちの笑顔が広がった

食べて、体験して、会話を楽しむ人たちの笑顔が広がった

 
 三陸鉄道鵜住居駅がすぐそばにあり、列車を利用し来場した人にはマルシェ限定の買い物券を配布するサービスも用意された。そうした後押しに応えようと、三鉄(本社・宮古市)が今回、初出店。黒字化の願いを込めたポン菓子「クロジカせんべい」や駅名板キーホルダーなどを並べた。釜石駅の山蔭康明駅長は「沿線地域のものを紹介しながら、一緒に活気づけられたらいい。ゆっくり列車に乗って旅を楽しんでもらえると、もっとうれしい」と、店先で買い物客をもてなした。
 
三陸鉄道の販売ブースに並んだ品々をのぞき込む来場者

三陸鉄道の販売ブースに並んだ品々をのぞき込む来場者

 
 家族で飲食を楽しんだ二本松勝さん(45)は「イベントがあれば訪れる」と、今回も同級生や親戚が出店していることから足を運んだ。顔を合わせる機会にもなっていて、「こういうにぎわいの機会をもっと増やしてほしい」と願った。
 
 「元気出していくぞー」。地元の釜石東中の1、2年生の有志約40人がソーラン節を披露し、会場を盛り上げた。「若い力を感じて、地域も人も元気になってほしい」。生徒会長の千葉心菜さん(2年)は法被をなびかせながら、力の入った踊りにそう思いを込めた。ソーランリーダーの花輪和穂さん(同)は練習の成果を発揮できたと満足げ。伝統の“東中ソーラン”を引き継ぎつつ、「地域の人にも踊ってもらえるようにしたり、『映(ば)える』活動を発信して活発化させたい」と目標を掲げた。
 
息を合わせソーラン節を踊る釜石東中の生徒たち

息を合わせソーラン節を踊る釜石東中の生徒たち

 
「地域に元気を」と思いを届け、満足げな笑顔を見せた

「地域に元気を」と思いを届け、満足げな笑顔を見せた

 
 うのすまい・トモスは震災の教訓伝承、地域活動や観光交流を促進する拠点として公共施設を一体的に整備し、2019年3月にオープン。釜石祈りのパーク、いのちをつなぐ未来館、鵜の郷(さと)交流館などで構成され、両館の来場者数は3月22日現在で約66万人。新型コロナウイルス禍で減少した時期があったものの、修学旅行先や企業研修先として堅調に推移している。
 
 うのすまい・トモスの菊池啓統括マネジャーは「普段は防災や災害の備えを学ぶ県外からの利用が多いが、地域に根差した施設でありたいという思いがある。人が集う機会を定期的に設け、鵜住居駅前地区のにぎわいを創出し、地元を中心とした事業者の潤いにつなげていければ」と展望する。