タグ別アーカイブ: トピックス

rugby_highschool01

全国高校ラグビー強豪校 釜石に集結! 3年目の交流会 雨にも風にも負けず熱戦 震災・防災学習も

“ラグビーのまち釜石”で開かれた「東北復興高校ラグビー交流会」=2日、根浜シーサイド

“ラグビーのまち釜石”で開かれた「東北復興高校ラグビー交流会」=2日、根浜シーサイド

 
 東北復興高校ラグビー交流会2025は1~3日まで、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムなど3会場で行われた。同参加校幹事(野上友一、大西一平代表幹事)、同実行委(小笠原順一実行委員長)が共催。3年目の開催となる今年は17チーム約600人が参加。北海道から九州まで各地の強豪校に加え、本県各校で結成した合同チームが交流試合を行った。東日本大震災から立ち上がり、2019年のラグビーワールドカップ(W杯)開催を成し遂げた地で、高校生らは競技に通じる“不撓不屈(ふとうふくつ)”の精神を学び、レベルアップへの足掛かりとした。
 
 同交流会はW杯日本大会で高まったラグビー熱や大会レガシーを次世代に継承し、選手の心身育成や競技の普及・振興につなげようと企画された。常翔学園(大阪府)ラグビー部の野上友一ゼネラルマネジャーが全国の伝統校に参加を呼び掛け、2023年に初開催。年々、参加校が増えている。
 
 1、2の両日はW杯会場となった同スタジアムのほか、根浜シーサイド多目的広場、市球技場で参加チーム対抗の交流試合が行われた。1試合20分で、できるだけ多くのチームと対戦できるようにし、2日間で43の対戦カードが組まれた。両日はあいにくの雨模様。2日は風もあり、冷え込む中での試合となったが、選手らは気合十分。互いに声を掛け合い、気迫みなぎるプレーを展開した。新年度のチームづくりに向け、自他の力を知る機会にもなり、レベルアップにつながる学びを得た。
 
県内チーム同士の対戦「黒沢尻工業-南昌みらい・岩手・盛岡三合同チーム」=1日、釜石鵜住居復興スタジアム

県内チーム同士の対戦「黒沢尻工業-南昌みらい・岩手・盛岡三合同チーム」=1日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
「名古屋-盛岡工業」中部と東北、離れた地域のチームとの対戦は貴重な機会

「名古屋-盛岡工業」中部と東北、離れた地域のチームとの対戦は貴重な機会

 
 2日は午後の試合の前に防災学習も行われた。スタジアムに全参加者が集まり、震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」スタッフの川崎杏樹さん(28)から話を聞いた。川崎さんは震災当時、中学2年生。スタジアムの場所に学校があり、隣接する小学校の児童の手を引いて津波から逃れた経験を持つ。地震発生から高台避難までの詳細を伝え、津波災害の恐ろしさ、迅速避難の大切さを教えた。「助かったのは防災学習のおかげ。ラグビーの練習も防災も同じ。自分の命を守るために普段から考え、訓練や体験で正しい知識を得て避難行動につなげてほしい」と願った。
 
14年前の震災を経験した川崎杏樹さん(右)から当時の話を聞く

14年前の震災を経験した川崎杏樹さん(右)から当時の話を聞く

 
津波の怖さ、平時の備え(防災学習)の有効性を学んだ高校生ら

津波の怖さ、平時の備え(防災学習)の有効性を学んだ高校生ら

 
 広島県から初めて参加した尾道高の佐藤麗斗主将(3年)は“ラグビーのまち釜石”の訪問を楽しみにしていたといい、「今まで対戦経験のないチームともたくさん試合を組んでもらいありがたい。各校独特のプレーが見られて勉強になるし、自分たちが通用する部分、しない部分が分かったので、さらにレベルアップできそう」。自身は熊本県出身で、小学2年時に熊本地震を経験。川崎さんの話や釜石の津波防災対策が強く印象に残り、「尾道も海に面しているので、いざという時には(避難)行動を取れるようにしている」とうなずいた。
 
初参加の尾道高(黄色ジャージ)。降りしきる雨の中でも全力プレー!トライを重ねる

初参加の尾道高(黄色ジャージ)。降りしきる雨の中でも全力プレー!トライを重ねる

 
 尾道高の田中春助監督(37)は震災直後に釜石を訪問。その後、複数回にわたりボランティア活動に従事した。「ここ(スタジアム)にあった小学校の上階に車が突き刺さっていたのが忘れられない。あれだけの被害を受けたまちがここまで復興した姿に感激している」。部員らには「こうしてラグビーができること自体、決して当たり前ではない。感謝の気持ちを忘れないでほしい。震災を生き延びた人たちの思いを受け止め、自分に何ができるか、意識できる人になってくれれば」と期待を込めた。
 
 最終日の3日は、各校の選抜選手で結成した2チームによるドリームマッチも行われ、予定していた47試合全ての日程を終えた。
 

県外進学の釜石出身高校生ラガー 久しぶり 地元での試合に特別な思い

 
釜石出身!仙台育英でプレーする(左から)眞田羚史さん、八幡玲翔さん、倉田煌生さん(いずれも2年)

釜石出身!仙台育英でプレーする(左から)眞田羚史さん、八幡玲翔さん、倉田煌生さん(いずれも2年)

 
 同交流会に参加した県外の高校には、釜石出身者も複数在籍。2年生部員21人が参加した宮城県の仙台育英学園高には、日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)の子ども育成部門ジュニア(幼児・小学生)とアカデミー(中学生)で競技に励んだ眞田羚史(甲子中出身)、八幡玲翔(釜石中同)、倉田煌生(大平中同)の3選手の姿が…。会場には中学まで指導にあたったSW関係者も足を運び、そのプレーを目で追った。
 
 八幡さんは中学3年時に、県中総体ラグビーで釜石中特設チームの主将を務め、大会初優勝を飾った。同大会など思い出の多い“うのスタ”への来訪は約1年ぶり。「新チームが始まる4月に全国の強豪と対戦でき、自分だけでなく東北全体のレベルアップにつながったと思う」と感謝。仙台育英でのラグビーは「環境が整っていて、自分自身しっかりとラグビーに向き合うことができ、日々、成長できている。東北大会で1位になり、花園でベスト8に入るのが目標」と志を立てた。
 
「仙台育英-札幌山の手」の試合。W杯聖地“うのスタ”で熱戦

「仙台育英-札幌山の手」の試合。W杯聖地“うのスタ”で熱戦

 
釜石出身、國學院栃木で高みを目指す阿部海凛さん

釜石出身、國學院栃木で高みを目指す阿部海凛さん

 
 2、3年生38人が参加した栃木県の國學院大栃木高には、SWアカデミー、甲子中出身の阿部海凛さんが在籍する。関東に出たことで、さまざまなチームとの対戦機会を得ているが、「地元釜石で多くの強豪校と試合ができるのは新鮮」と気持ちも新たに試合に臨んだ。3歳の時に震災を経験。停電し、懐中電灯一つで夜を過ごした記憶が残る。交流会での震災学習について、「津波の恐ろしさ、危険が分からない人が多いと思うので、東北で学んでもらい、将来に生かしてほしい」と願う。寮生活を送りながら努力を重ねる日々。「自分がやるべきことを考え練習に励んでいる」とし、チーム目標の“花園優勝”に向け「一刻も早くメンバー入りして試合に出たい。応援してくれている家族のためにも試合に出て恩返しがしたい」と意気込む。
 
九州王者・東福岡に挑む國學院栃木(紺ジャージ)

九州王者・東福岡に挑む國學院栃木(紺ジャージ)

hashinoinfo01

世界遺産「橋野鉄鉱山」7月で登録10周年 インフォセンターが冬季明け開館/青紀土木は清掃奉仕

冬季休館が終わり4月1日から開館した「橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」

冬季休館が終わり4月1日から開館した「橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」

 
 釜石市橋野町青ノ木の「橋野鉄鉱山」は7月5日で、世界文化遺産登録から10周年を迎える。日本の近代化の礎を築いた“鉄のまち釜石”を象徴する同史跡は、「明治日本の産業革命遺産」(8県11市23資産)の構成資産の一つとして2015年、世界遺産に登録された。節目の年となる今年は、各種記念行事が予定される。情報発信を担う「橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」は冬季休館期間が明け、4月1日から開館。さらなる認知と見学者増を目指し、関係者は受け入れ態勢を整える。
 
 同市北西部に位置する橋野鉄鉱山は積雪のため、12月上旬から3月末まで同センターを冬季休館としている。開館日の1日は、見学エリアの高炉場跡の積雪も解消。センターでは、市から委託を受けている橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)のスタッフが業務を再開した。本年度は7人が毎日交代(2人体制)で、来館者の応対や施設の清掃、見学エリアのパトロールなどにあたる。
 
施設入り口にのぼり旗を設置するスタッフ。見学者の受け入れ準備も整った

施設入り口にのぼり旗を設置するスタッフ。見学者の受け入れ準備も整った

 
 また、釜石観光ガイド会(瀬戸元会長、32人)は同日から現地ガイドの派遣を開始した。会員約10人でシフトを組み、センター開館時間内に1人が常駐。ガイドを希望する見学者を案内する。藤原信孝副会長は「登録10周年の節目でもあり、ガイド会としても期待に応えたい。訪れた人たちに興味を持ってもらえるような説明ができれば」と気持ちを高める。
 
世界遺産登録10周年の今年、来訪者増に期待する釜石観光ガイド会の藤原信孝副会長

世界遺産登録10周年の今年、来訪者増に期待する釜石観光ガイド会の藤原信孝副会長

 
橋野鉄鉱山周辺は桜の名所でもある。例年4月下旬からさまざまな種類が咲き始める。今年も期待!=資料写真(2019、23年撮影)

橋野鉄鉱山周辺は桜の名所でもある。例年4月下旬からさまざまな種類が咲き始める。今年も期待!=資料写真(2019、23年撮影)

 
 市教委文化財課世界遺産室によると、登録10周年記念行事は5月からスタート。登録日の7月5日には「明治日本の産業革命遺産」全体のシンポジウムが東京で行われる。同12日には釜石市で式典、講演会、パネルトーク、翌13日には現地でマルシェ(キッチンカー出店、音楽会などを予定。ラベンダーまつりと共催)が開かれる。10月11、12日には県内3世界遺産持ち回りで開催されている「いわて世界遺産まつり」(県主催)が橋野鉄鉱山を会場に開かれる。スタンプラリーやARアプリ用カードの配布なども予定する。
 
 例年実施しているイベントは登録10周年記念の冠をつけて開催する。本年度は見学路整備に伴う発掘調査(水路跡周辺)が予定されていて、計画的に進める内容確認調査の発掘と合わせ、その成果が注目される。子どもが楽しめる企画も検討中。12月の「鉄の記念日、週間」行事は、橋野鉄鉱山世界遺産登録10年の軌跡にスポットを当てる。
 
 橋野鉄鉱山(高炉跡)の来訪者数は世界遺産登録前は年間500人ほどだったが、登録に向けた取り組みが進むにつれ見学者が増加。登録された2015年は43316人(センター入館カウント)を記録した。16年に台風による豪雨被害、20年から3年間は新型コロナ禍、24年はアクセス路の笛吹峠の通行止めと、度重なる困難を乗り越えながらの10年。24年の来訪は5982人(同)だった。
 
 森一欽世界遺産室長は「遺産価値の周知の面では、この10年でそれなりの成果はあったと思う。製鉄体験や出前講座などで小中学生の理解も深まっている」と実感。課題は経済活動への効果。「“鉄”だけで人を呼び込むのは難しい。三陸ジオパーク、みちのく潮風トレイルなどと組み合わせ、当市の魅力を発信する形ができれば。県内3遺産、世界遺産地域連携会議とのつながりも生かしたい」と森室長。10周年を「今後の10年に向けスタートを切るための年」と位置付け、「市民の皆さんにも積極的に関わってもらい、一緒に盛り上げていきたい」と話す。
 
 なお、近代製鉄発祥の地「釜石鉱山」の資料を公開する甲子町大橋の展示室「Teson」(旧釜石鉱山事務所)も冬季休館が明け、3日から開館している。
 

地元業者「青紀土木」が地域貢献 社員ら総出で橋野鉄鉱山見学エリア、アクセス路を清掃

 
橋野鉄鉱山の見学エリアで清掃奉仕に励む青紀土木の社員ら=1日午前

橋野鉄鉱山の見学エリアで清掃奉仕に励む青紀土木の社員ら=1日午前

 
 釜石市鵜住居町の建設業、青紀土木(青木健一代表取締役社長、従業員35人)は1日、地域貢献として、世界遺産「橋野鉄鉱山」とアクセス路となる県道の清掃活動を行った。青木社長以下30人余りが参加。日ごろ世話になっている地域への感謝を込めて、環境美化に尽力した。
 
 インフォメーションセンターに集合した同社社員らは午前9時、2班に分かれて作業を開始した。見学エリアの高炉場跡には、冬期間に積雪や強風で倒れた木や折れて落下した枝などが散乱。大きいものは切断したりして、一輪車で運び出した。細かいものは袋に集めた。この日は市から要望のあった山神社付近を中心に清掃。協力し合って、見学者が歩きやすい環境、きれいな景観を取り戻した。
 
倒れた木や折れて落下した枝などを回収し、見学者の安全を確保

倒れた木や折れて落下した枝などを回収し、見学者の安全を確保

 
約2時間の作業でエリア内はすっきりとした印象に…

約2時間の作業でエリア内はすっきりとした印象に…

 
 同鉄鉱山へのアクセス「県道釜石遠野線」では、遠野市側に向かって坂道を上りながら、ごみを拾い集めた。同社は県から委託を受け、同路線の路面、側溝清掃など道路維持管理業務を行っているが、この日は通常業務の範囲外の路肩に目を向け、落ちているごみを拾った。ビンや缶、その他に分別しながら袋に集めた。
 
県道釜石遠野線では路肩の草地に目を凝らし、落ちているごみを拾った

県道釜石遠野線では路肩の草地に目を凝らし、落ちているごみを拾った

 
ごみは車からポイ捨てされたとみられる空き缶、ビン、ペットボトルなどが目立った

ごみは車からポイ捨てされたとみられる空き缶、ビン、ペットボトルなどが目立った

 
 同社は新年度がスタートする毎年4月1日に、全従業員と関係企業の出席のもと安全衛生大会を開いている。午後からの大会の前に地域に奉仕する活動を行うのが恒例。日ごろの業務の中で気付いた箇所を選定し、清掃している。昨年は三陸鉄道鵜住居、両石2駅の草刈りなどを実施。市役所近くの高台避難道路、市道箱崎半島線のガードレール清掃を行ったことも。橋野鉄鉱山関連では、世界遺産登録された2015年に県道清掃を行っている。同奉仕活動は20年近くに及ぶ。
 
みんなで声を掛け合いながら作業。新年度のスタートにあたり、仕事への意欲も高めた

みんなで声を掛け合いながら作業。新年度のスタートにあたり、仕事への意欲も高めた

 
 青木社長は同活動について「地域への感謝の気持ちを持って1年働こう、頑張ろうという誓いの場にしたい。道路建設に携わっている身として、自分たちの仕事が社会の役に立っていることを再認識する機会にもなれば」と期待。普段は各現場に分かれて仕事をしている仲間が年に1回全員集まり、結束を強める場にもなっているという。

koho1853thum

広報かまいし2025年4月1日号(No.1853)

広報かまいし2025年4月1日号(No.1853)
 

広報かまいし2025年4月1日号(No.1853)

広報かまいし2025年4月1日号(No.1853)

ファイル形式: PDFファイル
データ容量:2.59MB
ダウンロード


 

【P1】
学校給食費の無償化対象者を拡充します

【P2-3】
かまいしの自然環境を活用した遊びの提供にかかる費用を補助します
高齢者の補聴器購入費用を一部助成します 他

【P4-5】
市職員の給与などを公表します 他

【P6-7】
まちのお知らせ

【P8】
サプライヤーパーク・プレオープンマッチ

 

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 オープンシティ・プロモーション室
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8463 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2025032900010/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
france_haken01

フランスでの異文化体験「未来への財産に」 海外派遣の中学生、釜石で報告会

「メルC」「かまいC」と笑顔で帰国報告する中学生

「メルC」「かまいC」と笑顔で帰国報告する中学生

 
 釜石市の中学生海外体験学習事業でフランスを訪問した中学1、2年計9人の帰国報告会が29日、大町の市民ホールTETTOであった。保護者ら約50人を前に、生徒が外国での生活や異文化体験を振り返った。
 
 生徒たちは14~21日、釜石と姉妹都市提携を結ぶフランス南部のディーニュ・レ・バン市などを訪問した。ディーニュ市の学校では授業に参加し同年代の子と交流。ホームステイ先で現地の生活や文化に触れた。姉妹都市提携のきっかけとなったジオパーク資産・アンモナイト化石群も見学。歴史的建造物も多い市街地の散策、地元ラグビークラブの試合観戦なども楽しんだ。復興支援に尽力した化粧品メーカー「ロクシタン社」(マノスク市)を訪ね、感謝を伝えた。
 
 報告には、釜石中2年の虻川結空さん、阿部紗希さん、久保伶奈さん、若生彩花さん、同1年の三浦碧人さん、大平中1年の今野凛彩さん、唐丹中1年の小野寺頼さん、甲子中1年の佐々舞凪さんと米澤悠真さんの9人全員が参加した。昨年、提携30周年を迎えたこともあり、ディーニュ市では温かい歓迎を受けた。いずれも、多くの出会いや発見があり、視野が広がり、刺激ある体験をさせてもらったことへの感謝を述べた。
 
フランスに派遣された釜石の中学生の帰国報告会

フランスに派遣された釜石の中学生の帰国報告会

 
印象に残った出来事や学びを一人一人が発表した

印象に残った出来事や学びを一人一人が発表した

 
 初めての海外という緊張感や言語に対する不安も共通だったが、現地では翻訳アプリを使いながら不慣れなフランス語や英語でコミュニケーションをとる様子に理解を示し、懸命に耳を傾けるなど親切に接してもらったと声をそろえた。「やっぱり話すことは楽しい」と小野寺さん。虻川さんも「上手に話すよりジェスチャーを交えて伝えようとする姿勢が大切」と実感を込めた。
 
 阿部さんは壁のようなアンモナイト化石群の迫力を語り、佐々さんは同年代の子と音楽を通じた交流を振り返った。フランスの歴史や産業、文化、政策に興味を示したのは三浦さん。SDGs(持続可能な開発目標)に関心を持つ米澤さんは、環境に対する意識の高さに刺激を受けたことを話した。
 
モニターに写真を表示しながら思い出を振り返った

モニターに写真を表示しながら思い出を振り返った

 
 「海外にも友達ができたことが思い出」とはにかむ若生さん。国籍、出身地がさまざまな人が意見を出し合って楽しく学ぶフランスの学校生活が印象的で、「自分も積極的に意見を出していきたい」と背筋を伸ばした。日本語教師との夢を持つ久保さんも多様な価値観に触れ、「互いの文化を知り、認め合うことで考え方は変わる。広い視野を持つためにも言語学習を続ける」と思いを強めた。
 
 聴講した人から「フランスの友達が釜石に来たら何する?」と質問されると、生徒たちは「鉄の歴史を教える」「おいしいものを一緒に食べたい」などと案を出した。今野さんは「ディーニュ市になかった海を紹介したい」と思案。地域を出たことで、自分たちが暮らす古里への関心を深めたようで、「学んだことを地域で生かせるようにしたい」と力を込めた。
 
海外体験で発見したことや感じた日本の良さを伝えた

海外体験で発見したことや感じた日本の良さを伝えた

 
「日本とフランスの架け橋に」と耳を傾けた人たちは期待する

「日本とフランスの架け橋に」と耳を傾けた人たちは期待する

 
 小野共市長は「貴重な体験を楽しいだけで終わらせず、9人それぞれが次なる展開へいいきっかけになったようだ」と成長を実感。高橋勝教育長は本物に触れ続けること、勉強のほかにも打ち込めるものを見つけることへの期待を伝え、「自分自身を伸ばす行動、挑戦をどんどんして。社会との関わりを持ち、生きるための財産、失敗を含めた経験を心の中に増やしてほしい」と激励した。

co2zero01

2050年ゼロカーボン実現へ 「脱炭素先行地域」認定の釜石市 目標達成へ取り組み加速

co2zero01
 
 昨年9月、環境省の「脱炭素先行地域」に選定された釜石市は、2025年度から再生可能エネルギー導入や脱炭素をテーマにした企業研修受け入れへの取り組みを加速化させる。同市が掲げる50年度の「温室効果ガス排出量実質ゼロ(ゼロカーボンシティ)」の目標達成へ、国の財政支援を受けながら官民一体となって取り組む。市民の意識、行動変容も促しながら、地球温暖化防止策を強力に推し進める。
 
 猛暑や豪雨など異常気象発生の要因として考えられる地球温暖化。その対策として世界的に求められている「温室効果ガス排出量削減」に向け、釜石市は2021年10月、脱炭素社会を目指す「ゼロカーボンシティ」を表明。22年1月、同推進室を設置した。23年10月、温室効果ガス排出量を30年度に55%削減(13年度比)、50年度に排出量実質ゼロを目標とする「第二次市環境基本計画」を策定。24年3月には、同市の再生可能エネルギー(陸上風力、太陽光、水力、バイオマス)の活用をさらに進める「市再生可能エネルギービジョン」を示し、再エネ発電、熱利用の導入量を30年度までに約3倍(22年3月比)とする目標を掲げた。
 
釜石市再生可能エネルギービジョン(2024年3月策定)で示された将来像

釜石市再生可能エネルギービジョン(2024年3月策定)で示された将来像

 
 これら目標達成に拍車をかけるのが、環境省による「脱炭素先行地域」の選定。地域特性を生かした脱炭素の取り組みを国が支援するもので、釜石市は第5回の公募で、産学官29の共同提案者と共に選ばれた。同市の計画は、太陽光発電の導入拡大と脱炭素をテーマにした企業研修の受け入れを柱に、温室効果ガスの実質削減、内外の企業や一般市民の意識、行動変容につなげるもの。中心市街地、鵜住居の2エリアを対象に事業を展開する。
 
 中心市街地への再エネ発電による電力供給地として、片岸公園隣接地2.5ヘクタールに「地域共生型太陽光発電」施設を整備。公園周辺の自然環境と共生するため、敷地外周への樹木の植栽、昆虫や野鳥などの生息を助けるエコスタック、バードバスの設置を検討する。年間発電量は約330万キロワットアワー(kWh)。一般家庭約790世帯分を見込む。事業収益の一部は生物多様性保全活動に還元。27年度からの運用開始を目指す。「小規模分散型太陽光発電」として、中心市街地の施設や住宅などへの設備導入も進める。
 
脱炭素先行地域の事業対象は釜石市内2エリア

脱炭素先行地域の事業対象は釜石市内2エリア

 
「地域共生型太陽光発電」が行われる片岸公園周辺。自然環境に配慮した策を検討

「地域共生型太陽光発電」が行われる片岸公園周辺。自然環境に配慮した策を検討

 
 釜石ならではの取り組みの一つが、鉄鋼スラグを活用した藻場再生。ブルーカーボンクレジット(海洋植物の二酸化炭素吸収量を数値化し取引する仕組み)の創出に寄与するほか、ウニ食害対策モデルの可能性も探る。日本製鉄が唐丹町、釜石東部両漁協の協力を得て、24年度は約20トンを設置した。
 
 木質バイオマスの熱利用策として、まきストーブ12台を市内の施設などに導入。みちのく潮風トレイル、世界遺産「橋野鉄鉱山」観光などへの活用を想定し、レンタルEV(電動)バイク10台も導入予定。電気は地域の再エネを活用する。
 
 市内の脱炭素コンテンツをプログラムに取り入れた新たな「釜石版サステナブルツーリズム」(企業研修)を展開するため、研修を受け入れるかまいしDMCが、拠点となる企業向けワーケーション施設を浜町に整備中。エコマテリアル(環境に配慮した材料、技術)を採用し、太陽光発電・蓄電池、まきストーブの導入などで環境配慮のショーケースとしての役割を担う。
 
企業向けワーケーション施設は、かまいしDMCが企業版ふるさと納税などを活用して整備。地域脱炭素の活動拠点となる

企業向けワーケーション施設は、かまいしDMCが企業版ふるさと納税などを活用して整備。地域脱炭素の活動拠点となる

 
 市はこの計画で、電力消費に伴う二酸化炭素(CO2)排出量を約7万トン削減。再エネの地産地消でエネルギー代金の流出抑制、地域内の経済循環を促すとともに、脱炭素・環境を軸としたサステナブルツーリズムで交流、活動人口の拡大を図りたい考え。2月26日には、市、共同提案者、協力事業者らで組織する「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」を設立(正会員30、協力会員9)。規約の承認、役員の選任後、事業推進を図るための15のワーキンググループを設置した。
 
2月26日に開かれた「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」設立総会

2月26日に開かれた「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」設立総会

 
3月21日の釜石市環境審議会では脱炭素先行地域の取り組みが説明された

3月21日の釜石市環境審議会では脱炭素先行地域の取り組みが説明された

 
 25年度は地域共生型、小規模分散型両太陽光発電のためのSPC(特別目的会社)2社の設立に向けた協議、分散型発電の制度設計(民間商業施設、水産関連施設など)、住民や事業者の相談窓口、人材育成、普及啓発セミナー開催などを担う「釜石市デコ活支援センター」の設立を予定する(デコ活=脱炭素とエコを組み合わせた運動の愛称)。
 
 市国際港湾産業課ゼロカーボンシティ推進室の神山篤室長は「先行地域に選ばれたことで国の財政支援が受けられ、地域のCO2排出削減への取り組みを加速化できる。目標達成に向け、事業を着実に進めていきたい」と今後を見据える。
 

企業、団体間連携で広がる脱炭素、エコアクション ラグビー釜石SWホーム戦会場では…

 
co2zero01

日本製鉄釜石SWのホーム戦ではリサイクル可能な「1DAYスチールカップ」が来場者に配られた=8日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
 今月8日、釜石鵜住居復興スタジアムで行われたラグビーリーグワン2部の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)とレッドハリケーンズ大阪の試合。約4400人が訪れた会場内で来場者に無料で配られたのは、リサイクル可能なスチール素材の飲料用カップ。リーグワンプリンシパルパートナー、三菱UFJフィナンシャル・グループの三菱UFJ銀行と、釜石SWメインスポンサーの日本製鉄(市脱炭素先行地域推進協会員)、総合容器メーカーの大和製罐の3社が連携したエコプロジェクトとして実施された。
 
ベアレン醸造所(盛岡市)はスチールカップ利用で樽生ビール内容量4割以上増量のサービスを実施

ベアレン醸造所(盛岡市)はスチールカップ利用で樽生ビール内容量4割以上増量のサービスを実施

 
 釜石SWのチームカラー赤を基調とした限定デザインで、会場内のフードスペース対象店舗で利用すると、飲み物の割引や増量などのサービスが受けられる特典もあった。容器・包装の回収、リサイクルを行う青南商事(釜石SWパートナー)の協力で、使用済みカップの回収ボックスも設置された。ごみ減量、再資源化は地球温暖化対策への第一歩。多くの人たちが環境に配慮した行動への意識を高めた。
 
バイオディーゼル燃料発電で映像を映し出した「大型ビジョンカー」=8日

バイオディーゼル燃料発電で映像を映し出した「大型ビジョンカー」=8日

 
 観光地域づくり法人かまいしDMC(市脱炭素先行地域推進協会員)はこの日、試合をリアルタイムで映し出す大型ビジョンカーの電力供給に協力。使用済みの食用油から作られたバイオディーゼル燃料による発電で、CO2排出量削減に貢献した。
 
 同社は管理・運営業務を行う同市鵜住居町の根浜シーサイド(レストハウス)で、地域から出る廃食油を回収している。集められた油は、再生可能エネルギーを生かした循環型地域づくりに取り組む橋野町の一般社団法人ユナイテッドグリーン(山田周生代表理事)が燃料に精製。市内のスポーツ大会やイベント、イルミネーション点灯などで使う発電機の燃料に活用されてきた。
 
 SWホーム戦での同発電は約2年前から試験的に実施。今回が本格スタートとなった。大型ビジョンカーにつないだ発電機には、同燃料約20リットルを給油。前日のリハーサルから試合終了までの電力供給を担った。この日は、会場内で出店した9店舗から約100リットルの廃食油も回収した。次回のホーム戦の発電で活用される。
 
試合前日、廃食油を精製した燃料を発電機に給油するかまいしDMCのスタッフ

試合前日、廃食油を精製した燃料を発電機に給油するかまいしDMCのスタッフ

 
営業を終えた出店者から使用済み食用油を回収。9店舗が協力した(写真提供:かまいしDMC)

営業を終えた出店者から使用済み食用油を回収。9店舗が協力した(写真提供:かまいしDMC)

 
来場者や出店者にチラシを配布して取り組みをPR(写真提供:かまいしDMC)

来場者や出店者にチラシを配布して取り組みをPR(写真提供:かまいしDMC)

 
 バイオディーゼル燃料は植物由来の油が原料。植物は生育過程で光合成によってCO2を吸収。同燃料の使用時に排出されるCO2量は植物の吸収量と同等とみなされ、地球上のCO2量はプラスマイナスゼロ(大気中のCO2を増やさない)という「カーボン・ニュートラル」の考え方から、地球温暖化防止への効果が期待される。化石燃料の代替エネルギー、資源循環型社会構築の要素としても注目される。
 
 来場者には同発電の取り組みを知らせるチラシも配布した。かまいしDMC地域創生事業部の佐藤奏子さんは「バイオディーゼル燃料は軽油の代替品として使用可能。市が目指す2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロにも貢献できると考える。廃油が資源になり、燃料の地産地消につながる取り組みを今後も継続していきたい」と話す。

tomosumarche01

地域と共に 釜石「うのすまい・トモス」6周年 味覚に手仕事…記念マルシェにぎわう

オープンから6周年を迎えた「うのすまい・トモス」

オープンから6周年を迎えた「うのすまい・トモス」

 
 釜石市鵜住居町のうのすまい・トモスで23日、6周年記念マルシェが開かれた。東日本大震災の教訓を伝えるとともに、地域の交流拠点にもなるよう願いが込められた施設。市内外のおいしいものや雑貨などの出店、工作体験などの催しがあり、家族連れらでにぎわった。
 
 地元釜石のほか、盛岡市や遠野市などから43店が出店した。ホタテなどの浜焼き、もつ煮、ピザなど各店がこだわりの味を提供。手作りのアクセサリーや着物のリメイク小物など手仕事の技を込めた商品も紹介した。鵜住居町内会は綿あめやポップコーンをお振る舞い。陸中海岸青少年の家(山田町)は貝殻や松ぼっくりなど海と森の素材で彩るフォトフレームづくり体験で楽しませた。
 
市内外のおいしいものが並び、来場者は品定めを楽しんだ

市内外のおいしいものが並び、来場者は品定めを楽しんだ

 
食べて、体験して、会話を楽しむ人たちの笑顔が広がった

食べて、体験して、会話を楽しむ人たちの笑顔が広がった

 
 三陸鉄道鵜住居駅がすぐそばにあり、列車を利用し来場した人にはマルシェ限定の買い物券を配布するサービスも用意された。そうした後押しに応えようと、三鉄(本社・宮古市)が今回、初出店。黒字化の願いを込めたポン菓子「クロジカせんべい」や駅名板キーホルダーなどを並べた。釜石駅の山蔭康明駅長は「沿線地域のものを紹介しながら、一緒に活気づけられたらいい。ゆっくり列車に乗って旅を楽しんでもらえると、もっとうれしい」と、店先で買い物客をもてなした。
 
三陸鉄道の販売ブースに並んだ品々をのぞき込む来場者

三陸鉄道の販売ブースに並んだ品々をのぞき込む来場者

 
 家族で飲食を楽しんだ二本松勝さん(45)は「イベントがあれば訪れる」と、今回も同級生や親戚が出店していることから足を運んだ。顔を合わせる機会にもなっていて、「こういうにぎわいの機会をもっと増やしてほしい」と願った。
 
 「元気出していくぞー」。地元の釜石東中の1、2年生の有志約40人がソーラン節を披露し、会場を盛り上げた。「若い力を感じて、地域も人も元気になってほしい」。生徒会長の千葉心菜さん(2年)は法被をなびかせながら、力の入った踊りにそう思いを込めた。ソーランリーダーの花輪和穂さん(同)は練習の成果を発揮できたと満足げ。伝統の“東中ソーラン”を引き継ぎつつ、「地域の人にも踊ってもらえるようにしたり、『映(ば)える』活動を発信して活発化させたい」と目標を掲げた。
 
息を合わせソーラン節を踊る釜石東中の生徒たち

息を合わせソーラン節を踊る釜石東中の生徒たち

 
「地域に元気を」と思いを届け、満足げな笑顔を見せた

「地域に元気を」と思いを届け、満足げな笑顔を見せた

 
 うのすまい・トモスは震災の教訓伝承、地域活動や観光交流を促進する拠点として公共施設を一体的に整備し、2019年3月にオープン。釜石祈りのパーク、いのちをつなぐ未来館、鵜の郷(さと)交流館などで構成され、両館の来場者数は3月22日現在で約66万人。新型コロナウイルス禍で減少した時期があったものの、修学旅行先や企業研修先として堅調に推移している。
 
 うのすまい・トモスの菊池啓統括マネジャーは「普段は防災や災害の備えを学ぶ県外からの利用が多いが、地域に根差した施設でありたいという思いがある。人が集う機会を定期的に設け、鵜住居駅前地区のにぎわいを創出し、地元を中心とした事業者の潤いにつなげていければ」と展望する。

miniart01

釜石の“宝物”が集う新スポット!?「まちかどミニ美術館」 TETTOに開設

釜石市民ホールTETTOに開設された「まちかどミニ美術館」

釜石市民ホールTETTOに開設された「まちかどミニ美術館」

 
 釜石市大町の市民ホールTETTOに、常設展示コーナー「まちかどミニ美術館」が開設された。地域に眠る“宝物”をみんなで楽しもうと、釜石市芸術文化協会(河東眞澄会長)が企画。思い思いの表現活動に取り組む人たちの“見てもらいたい一作”を紹介している。今後は、3カ月ごとに作品を入れ替える予定。「わが家の宝」「創作活動の力作」などテーマを設けたりしながら公募し、作品10点程度を無料で展示していく。
 
 開設に合わせ22日に行われたセレモニーで、河東会長は「釜石にはさまざまな芸術作品が眠っている。地域には絵を描いたり、ものを作ったり、文化活動を楽しむ人たちがいる。そうした活動の中で生まれた宝物をみんなで楽しみましょう」とあいさつ。芸文協の関係者や出品者らが除幕し、文化芸術に触れる場のオープンを喜んだ。
 
まちかどミニ美術館には市民が手がけた多彩なジャンルの作品が並ぶ

まちかどミニ美術館には市民が手がけた多彩なジャンルの作品が並ぶ

 
 同ホール共通ロビーの一角を活用。毛布に包まれて気持ちよさげに眠る猫を描いたパステル・色鉛筆画「爆睡」(小野寺浩さん作、日仏現代美術世界展準大賞受賞)、破けた障子の穴をのぞき込む瞬間を切り取った写真作品「好奇心」(菊池賢一さん作、第45回岩手県写真連盟公募展大賞受賞)、鶏をモチーフにした複雑で細緻な線をつないだ切り絵「まなざし」(黒須由里江さん作、第76回中美展準会員賞受賞)のほか、版画や俳句、彫金、砂絵など多彩なジャンルの作品が並ぶ。13人が出品。団体に所属している人もいるが、多くは個人で創作活動に取り組んでいる。
 
オープニングセレモニーで出品者が作品に込めた思いを解説

オープニングセレモニーで出品者が作品に込めた思いを解説

 
感性豊かな作品が並び、来場者がじっくりと鑑賞を楽しむ

感性豊かな作品が並び、来場者がじっくりと鑑賞を楽しむ

 
 本業の看板業を発展させながら写真やイラストなどの作品を作り続ける多田國雄さん(82)は、「2011.3.11の記憶」とタイトルを付けたデザイン作品を並べた。東日本大震災で被災し避難生活を送る中で唯一、手元に残った記録媒体・携帯電話で撮った写真を散りばめた。全ての窓が抜け落ち土砂に埋まった当時の自家用車、防潮堤を壊した形で岸壁に乗り上げた貨物船、被災後のまちに戻った街灯の明かり…。被災から3年たった頃に手がけたもので、「次第に当時の記憶が遠のく今、薄れかけた記憶を呼びもどす」との気持ちを閉じ込めた。「(災害は)また来るかもしれないでしょ」。毎年3月に個人的に向き合ってきた一作を公開している。
 
震災をテーマにした「2011.3.11の記憶」(左)と作者の多田國雄さん

震災をテーマにした「2011.3.11の記憶」(左)と作者の多田國雄さん

 
 同美術館には「港かまいし 芸術鑑賞散歩」とのキャッチフレーズが付く。芸文協の関係者は「どの作品も個性が全く違う。作品を楽しみに来てもらい、一作一作をじっくりと楽しんでほしい」と期待。公開された作品に刺激を受け、「新たなことに挑戦したり、趣味を見つけてもらえたら。そして、ぜひ展示してみましょう」と、輪の広がりを待つ。
 
制作者、鑑賞者がつながる場としての可能性に期待が高まる

制作者、鑑賞者がつながる場としての可能性に期待が高まる

 
 出品は原則釜石在住の個人、芸術文化団体に所属する人が対象。今後、市の広報紙などで募集する予定だ。同美術館には文化芸術に関する催しのチラシなどを配置する情報コーナーも用意。作品公募の案内も置くことにしており、「鑑賞がてらチェックを」と呼びかける。