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広がれ!防災の輪 釜石市民×外国人住民 災害の備え かるた、クイズで楽しく学ぶ

防災かるたを使って災害発生時の適切な行動を学ぶ参加者

防災かるたを使って災害発生時の適切な行動を学ぶ参加者

 
 災害時に役立つ防災知識を釜石市在住の外国人に知ってもらう催しが26日、同市鈴子町の市国際外語大学校で開かれた。「難しい」と思われがちな防災用語を、分かりやすく伝えるアイテムとして用意されたのは「かるた」。簡単な日本語とそれに合うイラストが入った札に手を伸ばし、楽しみながら防災意識を高めた。
 
 地域住民との交流促進を目指して実施している「釜石グローバルラウンジ」(市、市国際交流協会主催)の一環。技能実習や特定技能の在留資格を持ち、市内で働くベトナムやインドネシアなどの出身者、同校で学ぶネパール人留学生ら約40人に加え、同協会員や国際交流に関心のある中高生なども参加した。
 
 外国人、日本人が輪になって勝負。参加者の多くは絵札に入った頭文字の平仮名を理解しているようで、目当ての札を見つけると素早く手を出した。札をのぞき込む表情は真剣だったが、手が重なり合ったり、お手付きしたりすると、笑顔に一変。地域住民が本領を発揮し、「バンッ」と大きな音を出しながら札を取ると、実習生らは驚きつつも、「お~」と感動の声を上げたりした。
 
釜石で暮らす人たちが輪になって「防災かるた」に挑戦

釜石で暮らす人たちが輪になって「防災かるた」に挑戦

 
 「気を付けよう 地震は一回じゃ 終わらない」「戻らない 走って逃げよう 高いところへ」「明日かも 災害はいつ起きるか わかりません」「普段から(いつも)調べておこう 避難場所」。かるたの読み札は、同校外語観光学科の学生が既製の「防災かるた」を参考に、「やさしい日本語、想像しやすい言葉」を選んで作製。短い言葉をつなげるといった工夫も加えた。
 
簡単な日本語をつないで作られた読み札

簡単な日本語をつないで作られた読み札

 
読み手の声に聞き耳を立て、構える参加者

読み手の声に聞き耳を立て、構える参加者

 
 市国際交流課の職員による講話もあり、災害の種類や災害時に使われる日本語、避難場所と避難所の違いなどを確認。「家や、おみせにいます。地震がおきました。すぐ、外ににげますか?」といった問いかけ、クイズを通して普段から地域の人と関わりを持つことや、避難訓練に参加しておくことなど備えの大切さも学んだ。
 
防災用語などを解説する市職員の話を熱心に聞く参加者

防災用語などを解説する市職員の話を熱心に聞く参加者

 
話し合いをしながら防災に関するクイズにも挑戦した

話し合いをしながら防災に関するクイズにも挑戦した

 
 初めてのかるたで15枚の札を取ったネパール出身の学生パビトラ ネウパネさん(20)は日本の正月遊びを楽しみながら、災害発生時の行動を記憶。「揺れたとき 机やイスの下に はいりましょう」との読み札の言葉を頭に浮かべた。
 
 フィリピン出身のエルマー ダイダイさん(29)は「初めての経験だったが、説明してもらって少しわかった。いろんな人と会って話すことができたのも良かった」とうなずいた。「溶接」の特定技能を有し即戦力として造船会社で働いていて、日本での生活は5年になる。「日本語をしゃべれるし、平仮名、カタカナは分かるけど、漢字は難しい」と肩をすくめる。あと数年在留でき、釜石で仕事を継続する予定。「防災無線をしっかり聞くようにしたい」と、情報収集の必要性に認識を深めた。
 
防災を通じて交流を深めた外国人と地域住民

防災を通じて交流を深めた外国人と地域住民

 
 同課によると、現在釜石で暮らす外国人は約450人で、増加傾向にある。半数はベトナム人で、水産加工や機器製造に携わる技能実習生が多い。近年、大規模な地震や台風などの自然災害が頻発していることから、被災経験の少ない外国人にも防災に関する知識を学んでもらおうと企画。「災害はいつ起きるか分からない。準備が大切」と繰り返し強調し、今後もこうした取り組みを続けたい考えだ。

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水辺に集う野鳥に子どもら大喜び! 鵜住居川河口周辺で観察会 飛ぶ、泳ぐ、ついばむ-多彩な姿に感激

片岸公園内の沼地に着水するオオハクチョウ=25日

片岸公園内の沼地に着水するオオハクチョウ=25日

 
 釜石市の鵜住居川河口周辺で25日、冬季恒例の水辺の鳥観察会(市生活環境課主催)が開かれた。同所には今年も冬の使者・オオハクチョウが飛来。その優雅な姿で訪れる人を楽しませている。観察会の参加者は釜石野鳥の会(臼澤良一会長、7人)の会員に見つけた鳥の名前や特徴を教わりながら観察。色彩豊かな体色や羽を広げて滑空する姿に感動の声を上げた。
 
 同観察会は市民の環境保全意識の醸成などを目的に1977年から続けられる。今年はボーイスカウト釜石第2団が行う観察会との同時開催。子どもから大人まで45人が集まった。
 
 観察は東日本大震災後に整備された片岸公園からスタート。沼地を囲む遊歩道を進んでいくとオオハクチョウの群れが参加者を出迎えた。羽が灰色の幼鳥を含め20羽以上を確認。参加者は間近で見る体の大きさ、くちばしを含む顔の形状、羽の質感などをじっくりと観察した。野鳥の会の会員は「ハクチョウは冬の寒さをしのぐため日本より北の方からやってきます。ここには2月ごろまでいて、再び北に帰ります」などと説明。人の近くに寄って来るが、野生の鳥なので決して餌を与えないよう教えた。鵜住居川周辺では今季、約40羽の飛来が確認されているという。
 
片岸公園の遊歩道から野鳥を探す観察会の参加者

片岸公園の遊歩道から野鳥を探す観察会の参加者

 
オオハクチョウの群れを間近で観察。独特な鳴き声も聞こえる

オオハクチョウの群れを間近で観察。独特な鳴き声も聞こえる

 
幼鳥は灰色の羽が特徴。成鳥になるにつれ真っ白に…

幼鳥は灰色の羽が特徴。成鳥になるにつれ真っ白に…

 
公園内の広場で餌をついばむ姿も。水上では見られない足の形状も分かる

公園内の広場で餌をついばむ姿も。水上では見られない足の形状も分かる

 
 さらに進み、鵜片橋のたもとから川の中州に目をやるとアオサギの群れがいた。フィールドスコープや双眼鏡で見ると青っぽい羽の色や独特の立ち姿が確認できた。橋の上からはヒドリガモやマガモなど複数種のカモを確認。潜水が得意なカイツブリやオオハムも見られた。
 
写真左上から時計周りにオカヨシガモ(雄)、ホオジロガモ、ホシハジロ(雌)、オオバン

写真左上から時計周りにオカヨシガモ(雄)、ホオジロガモ、ホシハジロ(雌)、オオバン

 
ヒドリガモが群れで飛ぶ姿も圧巻。この日は人の頭上近くも通った。水辺でも多くの個体が確認された

ヒドリガモが群れで飛ぶ姿も圧巻。この日は人の頭上近くも通った。水辺でも多くの個体が確認された

 
 長内川と鵜住居川の合流地点、鎧坂橋付近では、鮮やかな体色で“飛ぶ宝石”と称されるカワセミが見られた。土手に横穴を掘って巣を作る習性があり、周辺ではふんで白くなった土が確認されている。営巣に適した環境があることで、ここ数年、毎年見られている。観察会では先行した人たちだけが運良く目にすることができた。
 
釜石鵜住居復興スタジアム前の鎧坂橋付近では毎年カワセミが見られる。左下のカワセミ写真は釜石野鳥の会の菊地利明さんが以前に撮影

釜石鵜住居復興スタジアム前の鎧坂橋付近では毎年カワセミが見られる。左下のカワセミ写真は釜石野鳥の会の菊地利明さんが以前に撮影

 
 約1時間の観察後、出発地点に戻り、見られた鳥の種類を集計した。結果は31種類。この日は風のない穏やかな天候だったためか、風に乗って滑空するオオワシやハヤブサなどの大型猛きん類は確認できなかったが、あまり見られないハシビロガモやシロエリオオハムを見ることができた。
 
ハシビロガモはくるくる回りながら採餌。個体の周りには水の渦ができる。平たいくちばしも特徴

ハシビロガモはくるくる回りながら採餌。個体の周りには水の渦ができる。平たいくちばしも特徴

 
観察会では確認できなかったベニマシコ(雄)を写真で紹介。顔や腹部の赤みが特徴。今の時期に見られる

観察会では確認できなかったベニマシコ(雄)を写真で紹介。顔や腹部の赤みが特徴。今の時期に見られる

 
 同市の麻生茜さん(33)、伊織ちゃん(5)親子は観察会に初めて参加。「いろいろな鳥をいっぱい見た。羽根も見つけたよ。青い鳥が好き」と伊織ちゃん。母茜さんは「今まで鳥は風景の一部として見るだけだったが、今日は雄と雌の模様の違いや生態などを詳しく知ることができてすごく面白かった」と大満足。昨春、同市に越してきた。「岩手釜石に来たからには自然のことをもっと知って、いろいろな気付きを得られれば」と子どもの成長の一助になることも期待する。
 
 ボーイスカウト団員の伊藤颯秀さん(小6)は車で同所を通りかかって鳥を見たことはあったが、じっくり観察したのは今回が初めて。「かわいい鳥もいたし、群れでいたオオハクチョウが印象に残った。釜石にこんなに鳥がいるのはすごい。今度は空を高く飛ぶワシとかタカを見てみたい」と声を弾ませた。
 
 2011年の震災による津波で同所一帯は大きな被害を受け、野鳥の隠れ家となるヨシ原など草木は全て流された。震災後の整備事業で沼地を設けた新たな自然公園が完成し、周辺の植生が徐々に戻るにつれ、激減した野鳥も少しずつ増えてきた。震災前の50種前後には及ばないものの、直近の過去3年は30種前後で推移している。昨年11月の野鳥の会による詳細調査では約40種が確認された。
 
震災後、水門が整備された鵜住居川河口周辺(写真上)、堤防内側の片岸公園(写真下)は草地が再生してきたが、鳥が営巣できる樹木はまだ少ない

震災後、水門が整備された鵜住居川河口周辺(写真上)、堤防内側の片岸公園(写真下)は草地が再生してきたが、鳥が営巣できる樹木はまだ少ない

 
 釜石野鳥の会の臼澤会長は「被災直後に比べ種類は多くなったが、個体数が減っている印象。身近だったスズメもあまり見かけなくなった。地球温暖化などさまざまな環境の変化が影響しているのかも」と懸念。被災から10年以上かけて復活してきた野鳥の生息環境を次世代につなぐため、「観察会をきっかけに自然保護に関心を持つ人が増えてくれるといい。私たちはそのお手伝いを続けていきたい」と話した。
 
参加した子どもたちは双眼鏡やフィールドスコープでさまざまな野鳥を観察。楽しい時間を過ごした

参加した子どもたちは双眼鏡やフィールドスコープでさまざまな野鳥を観察。楽しい時間を過ごした
 
「これは何の羽根?」釜石野鳥の会の臼澤会長(左)に質問も…

「これは何の羽根?」釜石野鳥の会の臼澤会長(左)に質問も…

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みんなで体験!多彩な岩手の芸術文化 釜石でフェスタ 伝統から現代まで「魅力、再発見」

見て、聴いて、触れてやってみる企画満載の芸術体験フェスタ

見て、聴いて、触れてやってみる企画満載の芸術体験フェスタ

 
 芸術体験フェスタin釜石・大槌は18、19の両日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。県内各地の文化芸術団体や個人が歌、踊りなど多彩なステージで観客を魅了した。見て、聴いて、触れて、やってみる―。さまざまな体験企画も用意され、来場者が思い思いに楽しんだ。
 
 フェスタは第77回岩手芸術祭の関連企画で、県が主催し、県芸術文化協会が運営を担当した。釜石、大槌の2市町と両市町芸術文化協会、TETTOとの共催。岩手芸術祭美術展と小中学校美術展で入賞した作品が17日から3日間展示された。
 
 18日は舞台公演が行われた。釜石市合唱協会による「岩手県民の歌」で幕開け。県央・沿岸地区で活動する小柳玲子バレエ教室の生徒ら8人による可憐でしなやかな舞、「チャグチャグ馬コ」や「わんこそば」といった岩手の風物を情緒豊かに舞踊化した県邦舞協会のステージと続いた。民謡を歌い継ぐ大槌一心会の若手3人は伸びやかな歌声を披露。盛岡市の団体によるスピード感あふれるチアダンス、切れ味のあるジャズダンス、心あたたまるフルート演奏などもあった。
 
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華麗な踊りを披露した小柳玲子バレエ教室の生徒

 
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岩手県邦舞協会は地域の魅力を詰め込んだ演目を見せた

 
 県内各地の郷土芸能を楽しめる機会に観客は興味津々。「浦浜念仏剣舞」(県指定無形民俗文化財)は大船渡市三陸町浦浜地区に伝えられている念仏踊りで、鎮魂を思わせる静かな舞に多くの視線が注がれた。岩泉高郷土芸能同好会の生徒約20人は岩泉町小本地区で五穀豊穣(ほうじょう)などを祈り舞われてきた「中野七頭舞」を披露。「先打ち」「薙刀(なぎなた)」など7種類の道具を手に、農民の営みを軽快なおはやし、躍動的な踊りで表現した。
 
 「杵(きね)」を持ち、収穫の喜びを体現した岩泉高2年の外舘愛美さん(同会副部長)は「笑顔で踊るので、その楽しさが伝わったらうれしい」と頬を緩めた。他の部活動との掛け持ちで参加する生徒が多く、練習は週3回。「知っている人がいなくなると歴史が途切れる。絶やさないよう、いろんな人に興味を持ってもらえるよう活動していきたい」と伝承への気持ちを強めた。
 
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息ぴったりな岩泉高郷土芸能同好会の「中野七頭舞」

 
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透き通った歌声を響かせたキッズコーラスあぐどまめ

 
 地元釜石からは鼓舞櫻会(桜舞太鼓)が出演。会所属の新舞踊グループ「桜華颶美(はなぐみ)」とにぎやかなステージを繰り広げ、会場を沸かせた。「うまく踊れた」と満足げな久保樹李さん(唐丹小6年)は、キッズコーラスあぐどまめ(大槌町)のメンバーとしてもステージに立った。「歌も踊りも楽しい。決めるところでしっかり動きを止める、かっこいい踊りができるようになりたい。聞いている人に気持ちが伝わるように歌いたい」と背筋をピンと伸ばした。
 
 19日は体験イベント。川柳や俳句、水墨画、脳活書道、茶道、パステル画、クラシックギター、鹿子踊(ししおどり)など20種類以上のプログラムがあった。マクラメ編みのブレスレットづくり、機織り機を使った「さをり織り」体験は女性たちに人気。和太鼓など伝統芸能は親子連れが楽しんだ。
 
機織り機を使った「さをり織り」体験に熱中する女性

機織り機を使った「さをり織り」体験に熱中する女性

 
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「好きな曲を自分で奏でたい」とギター演奏に挑戦

 
臼澤鹿子踊を体験する子ども。頭をつけて踊ってみた

臼澤鹿子踊を体験する子ども。頭をつけて踊ってみた

 
 生け花に触れた勝又愛さん(10)は、ハランやスイトピーなど花材をバランスよく配置し、「みんな仲良し」と出来栄えに大満足。大正琴や短歌などを体験した80代女性は「いろんなものを習得している人たちの活動を知ることができた。続けてやってみようかと思うものもあった。いくつになっても始められるし、やればできる。楽しい道を求めていきたい」と元気に笑った。
 
箏を弾く楽しさを伝えた岩手三曲協会釜石支部メンバー

箏を弾く楽しさを伝えた岩手三曲協会釜石支部メンバー

 
 箏(こと)に触れる機会を提供したのは、岩手三曲協会釜石支部。名取を含めた7人が遊びながら弾く、音を出す楽しさを伝えた。親子で連弾を楽しむ姿もあったといい、「いい宣伝になったと思う。音をつくる面白さを感じてもらえたかな」と事務局の紺野節子さん。敷居が高いと思われがちだとし、「時代に合わせて進化させていかなければ」と話した。最近は地域の小中学校などで出前授業を実施。「気軽に触れてもらえるようにしたい」と、仲間と継続への思いを共有した。
 
スポーツ雪合戦の体験会。子どもたちが熱戦を繰り広げた

スポーツ雪合戦の体験会。子どもたちが熱戦を繰り広げた

 
 TETTO前広場ではスポーツ雪合戦の体験会(18日)も開かれた。7人一組のチームに分かれ、相手チームに雪玉を当てて全滅させるか、チームフラッグを奪えば勝ちという競技。国際大会ジュニアの部で優勝経験を持つ小中学生チーム「ウル虎ジュニア釜石」のメンバーがデモンストレーション。市民が白熱する競技を興味深そうに見つめた。
 
ひょっこり顔出し⁉防護壁にはりついて接近戦に挑む子ども

ひょっこり顔出し⁉防護壁にはりついて接近戦に挑む子ども

 
 体験では、お手玉のような室内競技用の専用球を使った。初体験の菅原一慧君(釜石小1年)は「ボールを投げるのが楽しかった。またやってみたい」と面白さを体感。チームメンバーの髙木琉之介君(双葉小3年)は「試合で勝つのが楽しい。仲間が増えたらうれしい。一緒にやろう」と誘っていた。
 
 釜石芸文協の河東眞澄会長は「多様な体験をきっかけに興味、面白いものを発見してもらえたら。それが趣味になり、生きがい、仲間づくりにつながればいい」と期待した。

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駅前施設のにぎわい創出へ「かまいし冬まつり」 子ども向けコンテンツ多彩に

出張おもちゃ美術館が人気を集めた「かまいし冬まつり」=11日、シープラザ釜石

出張おもちゃ美術館が人気を集めた「かまいし冬まつり」=11日、シープラザ釜石

 
 かまいし冬まつり(釜石観光物産協会主催)は11日から15日まで釜石市鈴子町の釜石駅周辺施設で開かれた。同市への誘客と地域のにぎわい創出などを目的に開催。花巻市の「花巻おもちゃ美術館」の出張開設をはじめ、子どもたちが喜ぶ各種コンテンツが用意され、家族連れなどが楽しんだ。11日は日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)の公式戦を応援するパブリックビューイングもあり、幅広い年代が足を運んだ。
 
 同駅周辺の冬のイベントは久しぶりの開催。メイン会場の釜石物産センター「シープラザ釜石」には、花巻市の体験型木育施設「花巻おもちゃ美術館」が出張開設した。2020年7月にオープンした同館は、地域の木材と歴史、文化を融合させた遊びの空間がコンセプト。館内にある豊富なおもちゃは、全国に3千人以上いるという“おもちゃコンサルタント”が投票で選んだ「グッド・トイ(優良なおもちゃ)」と呼ばれるもの。選考は毎年行われていて、今回の出張美術館にも歴代のグッド・トイ受賞作が持ち込まれた。
 
花巻おもちゃ美術館(マルカンビル2階)が釜石に出張。“あの”大食堂の名物を模したおもちゃも!(写真左上)

花巻おもちゃ美術館(マルカンビル2階)が釜石に出張。“あの”大食堂の名物を模したおもちゃも!(写真左上)

 
子どもたちはさまざまな木製おもちゃに興味津々

子どもたちはさまざまな木製おもちゃに興味津々

 
ユニークな五連のけん玉も(写真左)。ボールは遊び方も多彩に…

ユニークな五連のけん玉も(写真左)。ボールは遊び方も多彩に…

 
 釜石市の小学生久保夢空瑠さん(7)は「いっぱいおもちゃがあって楽しい。木の匂いがするところが好き」と時間を忘れて夢中に…。母康子さん(46)は「見た目のかわいらしさと触り心地の良さが魅力。木製のおもちゃには子どもの自由な発想で遊べるものが多い」と歓迎。乳幼児と小学生が同じ空間に集う機会も普段はあまりないことから、「互いに思いやりながら遊ぶ姿もほほ笑ましい」と目を細めた。花巻の同館では工作のワークショップも行っていて、「来週はそちらに…」と訪問を楽しみにした。
 
 “出張おもちゃ美術館”はこれまでに県内約10カ所で開催されてきたが、沿岸部での開設は今回の釜石が初めて。同館を運営する小友木材店(花巻市)営業部の平野裕幸部長は「心引かれるおもちゃがあると、子どもたちは自然と長く滞在する。気付いたら『木の空間は居心地がいい』というような感覚を味わってもらえれば」と期待。釜石道の開通で距離感が縮まった内陸と沿岸部相互の交流人口増も願い、「花巻の本館にもぜひ…」と来館を呼び掛けた。
 
シープラザ釜石西側駐車場に設けたコースで電動カートなどを走らせる子ども

シープラザ釜石西側駐車場に設けたコースで電動カートなどを走らせる子ども

 
ボーイスカウト釜石第2団は綿あめづくりやロープ結び体験コーナーを開設

ボーイスカウト釜石第2団は綿あめづくりやロープ結び体験コーナーを開設

 
 まつり期間中は電動カートなどを楽しむ乗り物広場、バルーンアート、ヨーヨー釣りなどの縁日コーナーも。JR釜石駅では釜石線の列車運転シミュレーター体験、駅前橋上市場「サン・フィッシュ釜石」では浜焼きコーナーの開設があった。11日にはシープラザ釜石内のラグビーカフェで、日本製鉄釜石シーウェイブスの今季第3戦、清水建設江東ブルーシャークスとの試合を観戦するパブリックビューイングが行われた。試合は35-24(前半14-21)で釜石SWが逆転勝利。今季初白星を挙げ、釜石は1勝2敗、勝ち点5となった。次戦は25日、福島県いわき市のハワイアンズスタジアムいわきで、花園近鉄ライナーズと対戦する。
 
東京で行われた日本製鉄釜石SWと清水建設江東ブルーシャークスの試合を観戦するパブリックビューイング=11日、シープラザ釜石

東京で行われた日本製鉄釜石SWと清水建設江東ブルーシャークスの試合を観戦するパブリックビューイング=11日、シープラザ釜石

 
釜石SWのトライに湧くファンら。地元釜石から選手らにエール!

釜石SWのトライに湧くファンら。地元釜石から選手らにエール!

 
ラグビーカフェではボールを使ったストラックアウトも。子どもたちが楽しんだ

ラグビーカフェではボールを使ったストラックアウトも。子どもたちが楽しんだ

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“鉄のまち釜石”の小中学生が挑む 「鉄の検定」1、2級認定者18人を表彰

第17回鉄の検定で1、2級を取得し表彰された小中学生(前列)

第17回鉄の検定で1、2級を取得し表彰された小中学生(前列)

 
 釜石市で昨年12月に行われた第17回鉄の検定(鉄のふるさと釜石創造事業実行委主催)の表彰式が11日、大平町の鉄の歴史館で行われた。本年度の検定は一般の部を休止。小学生、中学生の各部に市内3校の児童生徒106人が挑戦した。表彰対象は80点以上の成績優秀者18人。式には8人が出席し、同実行委会長の小野共市長から表彰状などを受け取った。
 
 同検定は“近代製鉄発祥の地”釜石市で、12月1日の「鉄の記念日」にちなんで行われているご当地検定。釜石の製鉄の歴史、関連する人物、地学・鉱物学など鉄に関わる幅広い知識が問われる。例年、小中学生は50問(解答時間30分)、一般は80問(同60分)の出題。80点以上は2級、90点以上は1級、100点満点はアイアンマスターに認定される。
 
11日に鉄の歴史館で行われた表彰式。賞状と副賞が贈られた。左は小学生1位の金野龍真さん(双葉小6年)

11日に鉄の歴史館で行われた表彰式。賞状と副賞が贈られた。左は小学生1位の金野龍真さん(双葉小6年)

 
 今回、1級に認定されたのは小学生、中学生ともに2人。2級は小学生2人、中学生12人が認定された。アイアンマスターはいなかった。小学生の最高得点は92点。同検定初挑戦で最高点をマークした平田小5年の中里陽(あきら)さんは「あまり自信はなかったけど、高い点数が取れてうれしい」と喜びの声。同小では5年生が社会科学習の一環で鉄の学習に取り組んでいて、座学のほか世界遺産「橋野鉄鉱山」、鉄の歴史館見学などで郷土の製鉄の歴史に理解を深めてきた。その成果を十二分に発揮した中里さんは「(鉄について)もっと勉強してみたい」と目を輝かせた。
 
小学生1位の平田小5年中里陽さん(写真左)、中学生1位の釜石中1年川端俐湖さん(同右)

小学生1位の平田小5年中里陽さん(写真左)、中学生1位の釜石中1年川端俐湖さん(同右)

 
 中学生の最高は、92点で単独1位となった釜石中1年の川端俐湖さん。中学時代に2度、アイアンマスターを獲得している兄海惺さん(高2)の影響で、小学生のころから同検定への挑戦を始めた。1級は小学生の時にも取っているが、中学生としては初。今回、弟虹河さん(双葉小6年)は2級認定を受けていて、姉弟ダブル受賞となった。「釜石という小さなまちにこのような素晴らしい歴史や文化があること、それを学んで知識として取り入れられることは釜石市民の誇り」と話し、「中学生のうちにアイアンマスターを取りたい」とさらなる意欲を見せた。
 
表彰式で鉄の検定の感想などを話す小中学生

表彰式で鉄の検定の感想などを話す小中学生

 
主催者からは「学んだ知識を生かし“鉄のまち釜石”を発信してほしい」との願いが伝えられた

主催者からは「学んだ知識を生かし“鉄のまち釜石”を発信してほしい」との願いが伝えられた

 
 同検定は近代製鉄発祥150周年となった2008年にスタート。小中学生は、総合的な学習などで“鉄のまち”の歴史学習や鉄づくり体験に取り組む学校が団体受検をするケースが多い。事業を担当する市文化振興課文化財係の加藤幹樹主査は「子どもたちが一生懸命勉強してくれるので、問題を作る側としてもやりがいを感じる。この勉強を生かして、世界に羽ばたけるような人間になってくれたら」と期待を込めた。

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釜石で冬花火初開催 夜空の光見上げ、2025年それぞれの思い新たに…

釜石冬花火=11日、釜石港

釜石冬花火=11日、釜石港

 
 釜石市の釜石港で11日、冬の花火の打ち上げが行われた。昨年8月11日、台風5号の影響で中止となった納涼花火の代替企画。一般社団法人釜石観光物産協会が主催した。約30分の打ち上げ花火を家族連れや若者グループが楽しんだ。
 
 同市では例年、盆前に納涼花火大会を開催しているが、昨夏は台風の接近で天候悪化が予想されたため、開催日前日に中止を決定。翌日の順延も断念した。それに代わって行われたのが「釜石冬花火」。間もなく発災から14年となる東日本大震災の犠牲者の慰霊と新成人の門出を祝う目的で、震災月命日の11日に開催された。企業や団体などから寄せられていた納涼花火の協賛金を活用した。
 
震災犠牲者に思いを寄せ… 鎮魂の花火

震災犠牲者に思いを寄せ… 鎮魂の花火

 
さまざまな色や形で楽しませた

さまざまな色や形で楽しませた

 
 納涼花火の半分ほどの時間を設定。水中花火は行わず、打ち上げ花火のみで構成した。観覧場所は港町のグリーンベルトと漁港岸壁に設けられた。訪れた人たちは冬の夜空に咲く色とりどりの光の大輪を目に焼き付けたほか、カメラを向けて写真や映像に収めた。
 
 同級生ら10人で訪れた釜石中3年の岩井伶蒼さんは「とてもきれい。種類によって大きさや色合いも違ってすごかった。寒いけど、心を温めてくれるような花火」と感激。2カ月後に迫った高校受験に向けて「パワーをもらえた」と仲間と声を弾ませた。釜石高1年の女子生徒2人は「夏に見られなくて寂しかったけど、今日見られてうれしい。冬の花火は新鮮。寒かったけど見る価値あり。釜石の花火はこれからも続けてほしい」と願った。
 
港の夜景に囲まれて美しさを増した花火

港の夜景に囲まれて美しさを増した花火

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海中転落事故防止へ釜石海保など啓発パトロール 夜釣り楽しむ人へ「装備しっかりと」

釜石港で釣り人に注意を呼びかける釜石海上保安部の職員

釜石港で釣り人に注意を呼びかける釜石海上保安部の職員

 
 夜釣り中の事故を防止しようと、釜石海上保安部や釜石警察署などは22日夜、釜石市の釜石港と唐丹漁港で合同パトロールを行い、釣り人へ注意を呼びかけた。この時期は日暮れが早く、海水温も低下するため、転落すると発見の遅れや低体温症による危険性が高まるという。そのため、第2管区海上保安本部の管内では11月を「釣り海難防止活動期間」として注意喚起している。
 
 この日は、同保安部と同署、市、岩手県沿岸広域振興局の職員ら約10人が活動。夜間の寒さが増す冬季は気象条件が厳しい反面、漁港の街灯下にイカなどが寄ってくるため釣り人も少なくない。港内もそうした狙いを持った人たちの姿があり、釣り人一人ひとりに注意を促すチラシを手渡した。
 
海中転落事故の防止に向け、釣り人に声をかけながらチラシを配った

海中転落事故の防止に向け、釣り人に声をかけながらチラシを配った

 
 港近くで働く関渡さん(75)は、仕事終わりに釣りを楽しむのが日課。この日も顔なじみの釣り人らと岸壁から釣り糸を垂らしていた。ライフジャケットは着用していたが、事故防止の声がけに「海に落ちたら大変だからね。安全に楽しみたいし、気を付ける」と再確認。狙いのヤリイカは「久しぶりの大漁」だったようで、“いか”にして味わうか考えを巡らせた。
 
 同保安部交通課によると、県内では昨年までの5年間に釣り人の海中転落事故が18件発生。うち夜間に起きたのは12件で半数以上を占める。原因は岸壁などからの足の踏み外し、つまずきなど“不注意”が多いという。
 
 今年は既に3件発生。うち1件が夜釣り中の事案で、釜石市内で起こった。いずれの事故もライフジャケットは未着用だった。
 
多くの人が岸壁から釣り糸を垂らす。今夜の獲物はヤリイカ

多くの人が岸壁から釣り糸を垂らす。今夜の獲物はヤリイカ

 
「決まりを守って安全に夜釣りを楽しんで」と関係者ら

「決まりを守って安全に夜釣りを楽しんで」と関係者ら

 
 港内を巡った同課の美野重和課長は「救命胴衣を着けていない人が多かった。命に関わる事故に発展しかねないので、万一のために着用を心がけてほしい」と強調。加えて、▽気象や海象を確認し無理な行動はしない▽単独行動は控え複数人で行動する▽危険な場所には立ち入らない▽釣り場環境に応じた装備の選択を▽海の緊急通報は118番―といったポイントも呼びかける。

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1、2年生チーム 力試しの新人戦 釜石大槌地区中学校 7競技で熱戦 保護者の声援受け懸命プレー

各競技で熱戦を繰り広げた釜石大槌地区中学校新人大会=7日

各競技で熱戦を繰り広げた釜石大槌地区中学校新人大会=7日

 
 2024年度釜石大槌地区中学校新人大会(同地区中学校体育連盟主催)は7日、釜石、大槌両市町の学校体育館、公共スポーツ施設で7競技が行われた。3年生の部活動引退後、1、2年生による新チームを結成しての初の公式戦。本来であれば9競技が行われるが、2競技で対戦のための人数がそろわず、試合を断念した。上位チーム、選手が出場する県大会は10月(前期)と11月(後期)の2つの日程で行われる。
 
 少子化による生徒数の減少などで、単独校での大会出場が難しくなっている団体競技。3年生引退後の新人戦はさらに人数が減り、対戦カードを組めない競技も複数出ている。今大会、軟式野球は地区予選がかなわず、釜石、大平、甲子、大槌の4校合同チームが地区代表で県大会に出場する。バスケットボール女子も釜石、大平、大槌の3校合同チームで県大会へ。柔道は団体、個人とも地区予選ができず、各階級の男女選手が県大会個人戦に出場する。剣道は男子のみの参加で、団体戦は大槌が地区予選なしで県大会に進む。
 
 釜石中体育館で男子個人戦のみ行われた剣道競技には3校から9人が参加。予選リーグの後、6人による決勝トーナメントが行われた。会場では保護者らが試合を見守り、技が決まると拍手で選手をたたえた。個人戦は上位3人が県大会に進む。
 
釜石中体育館で行われた剣道競技の男子個人戦

釜石中体育館で行われた剣道競技の男子個人戦

 
保護者や釜石、大槌の剣道協会員らが見守る中、試合が行われた

保護者や釜石、大槌の剣道協会員らが見守る中、試合が行われた

 
 3位決定戦で勝利し、県大会出場権を獲得した高木壮嘉選手(釜石中1年)は小学4年から剣道に励む。同じく小学校からやっている2選手に「今日は勝ちたかったが、気持ちで負けてしまった部分がある」と反省。県大会に向け、メンタル強化を課題に挙げた。6月の中総体では団体戦ができたが、3年生の引退で今回は人数が足りず、対戦できなかった。「できなかったのはちょっと悲しい。来年の新1年生の入部に期待したい」と仲間が増えることを願った。
 
県大会出場を目指し試合に挑む釜石、大槌の選手

県大会出場を目指し試合に挑む釜石、大槌の選手

 
 甲子中体育館が会場となったバレーボール競技。男子は吉里吉里と釜石・甲子合同チームが対戦した。女子は大平と吉里吉里が合同チームを結成。釜石東、甲子、釜石とともに4校のトーナメント戦が行われた。2階ギャラリーでは保護者が熱い声援を送り、
選手のプレーを後押しした。
 
甲子中体育館で行われたバレーボール競技。女子1回戦 甲子-釜石

甲子中体育館で行われたバレーボール競技。女子1回戦 甲子-釜石

 
選手に声援を送る両チームの保護者ら

選手に声援を送る両チームの保護者ら

 
 甲子中女子の上小路琉月主将(2年)は1回戦で釜石中に勝利後、「声とかつなぎとか練習の成果は出せた。2セット目は最初、相手に取られてあせりもあったが、全員で抑え切れたと思う」と手応えを実感。一方で、「相手の波にのまれると負けてしまうので、自分たちのペースに持ち込めるように頑張りたい」と次戦への意欲を高めた。決勝では釜石東を破り、県大会出場を決めた。
 
甲子の攻撃を止めようと食らいつく釜石の選手(白ユニホーム)

甲子の攻撃を止めようと食らいつく釜石の選手(白ユニホーム)

 
同試合は甲子のリードで進み、2-0で勝利した

同試合は甲子のリードで進み、2-0で勝利した

 
 同地区では本年度の中総体から、サッカー競技に大槌サッカークラブ、バドミントン競技にKBFの2地域クラブが参戦。本大会にも出場し、大槌サッカークラブは釜石東を破り初優勝。KBFは女子団体戦で中総体に続く連覇を果たした。
 
 釜石大槌地区の代表が出場する競技の県大会は前期が10月19、20日(バスケットボール、サッカー、軟式野球、ソフトテニス)、後期が11月16、17日(バレーボール、卓球、バドミントン、柔道、剣道)に県内各会場で開催予定。同地区大会の結果は大会成績一覧表の通り。
 
2024年度釜石大槌地区中学校新人大会成績一覧表(PDF:164KB)

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「鉄のまち」支えた歴史を知る 釜石鉱山坑道見学 電動カートで冒険、鉱石探し

鉄鉱石の採掘跡などを巡る釜石鉱山の坑道見学会

鉄鉱石の採掘跡などを巡る釜石鉱山の坑道見学会

 
 「鉄のまち」の歴史を知ってもらおうと夏季に行われている釜石鉱山(釜石市甲子町大橋)の坑道見学が今年も企画され、7月31日から8月2日の3日間で市内外から計約40人が参加した。製鉄業繁栄を支えた鉄鉱山に残る鉱石採掘跡などを見て回って往時を想像したり、夏の日差しから逃れる冷涼な別世界での探検を楽しんだ。
 
 江戸時代に始まり、明治・大正・昭和と日本の製鉄の発展とともに歩んできた釜石鉱山。良質な鉄鉱石を産出し鉄のまち釜石を支えたが、1993(平成5)年に大規模な採掘は終了した。現在は地下水力発電所での発電や坑道から湧き出てくるナチュラルミネラルウォーター「仙人秘水」の製造販売を主力にする。
 
 8月1日に実施された見学には岩手県内の家族連れら13人が参加。同社総務課の千葉慎吾課長代理(41)の案内を受け、電動カートに乗り込んで標高550メートルの坑口から入った。最初の目的地は坑口から約3000メートル入った地点にある「仙人秘水」の採水地。移動時間は20分ほどで、その間、カートに取り付けられたモニターに映し出された鉱山の歴史を伝える動画で知識を深めた。
 
左上写真がスタート地点の坑口。(時計回りに)電動カートに乗って坑内へ

左上写真がスタート地点の坑口。(時計回りに)電動カートに乗って坑内へ

 
車載モニターに表示される動画を見て釜石鉱山の歴史に触れながら移動

車載モニターに表示される動画を見て釜石鉱山の歴史に触れながら移動

 
 採水地は大峰山(標高1147メートル)の地下約600メートルに位置する。参加者は源水を試飲したり、千葉さんから坑道の概要を聞いたりした。秘水は当初、坑道内にある工場で製造していたが、2009年からは送水管を使って地上で製品化する。
 
 「仙人秘水」の採水地で千葉慎吾さん(右)の解説を聞く参加者

「仙人秘水」の採水地で千葉慎吾さん(右)の解説を聞く参加者

 
長い期間じっくりと岩盤をつたってくる湧き水の味わいを確かめる

長い期間じっくりと岩盤をつたってくる湧き水の味わいを確かめる

 
 鉱石採掘場は、同社保安施設課の新田秀祐課長(52)が案内。当時使われていた削岩機や鉱石運搬車などを示しながら、トンネルの掘削や鉱石の採掘方法を説明した。坑道の総延長は1000キロに及ぶといい、「1回の発破で進めるのは1メートルほど。かなりの年月をかけて(採掘場所を)探ったと思う」と想像。多い時で約3000人が交代しながら作業に携わっており、先人たちの働きぶりに頭を下げた。
 
 鉄鉱石の採掘跡は新田秀祐さんが案内。鉱石を効率よく搬出するため鉱石を投下したタテ坑なども見て回った

鉄鉱石の採掘跡は新田秀祐さんが案内。鉱石を効率よく搬出するため鉱石を投下したタテ坑なども見て回った

 
鉄鉱石、石灰石、トルマリンなどが採掘されていたといい、鉱石探しも体験した

鉄鉱石、石灰石、トルマリンなどが採掘されていたといい、鉱石探しも体験した

 
 花こう岩でできた音響実験室「グラニットホール」を見学し、スタート地点に戻った。この日も気温25度を超える夏日だったが、坑内は気温約10度の別世界。参加者はいっときの涼を体感した。
 
 平泉町の千葉敏明さん(76)、ローズマリーさん(75)夫妻は地域の歴史に関心があり、奥州藤原氏の繁栄を支えた金(砂金)をきっかけに県内外の金山、鉱山などを訪ね歩くのが楽しみだという。今回は「坑内に入れるなんて…逃がせない」と来釜。アリの巣のように伸びた坑道での“冒険”を満喫した一方、「昔の人たちは暗くて、危ない環境の中で働いていた。すごく大変だったろう」と思いをはせた。そうした歴史を伝えるものが残され、保全されることで“観光”ができると感謝。これからも「歴史にちなんだ旅を続けよう」と笑顔を重ねた。
 
グラニットホールも見学。坑内の気温は10度で涼しさを感じる

グラニットホールも見学。坑内の気温は10度で涼しさを感じる

 
 坑道見学は、観光地域づくり会社かまいしDMCが展開する「Meetup Kamaishi 2024」のプログラム。海、鉄、山の切り口から地域の宝物、各分野の専門家“鉄人”と触れ合える釜石ならではの体験(漁業体験、漁船クルーズ、シュノーケリング、シーカヤックなど)を用意している。