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自然災害の語り継ぎは挑戦!? 大震災かまいしの伝承者、研修で考える「教訓としてのメッセージ」

講義に聞き入り、震災を語り継ぐための工夫を考える参加者

講義に聞き入り、震災を語り継ぐための工夫を考える参加者

 
 災害の伝承とは―。東日本大震災から15年が経過した。被災の経験や教訓は世代(年齢)、場所によって内容はさまざま。そして月日が流れ、直接の経験、記憶を持たない人たちも増えている。だが、そうした若い世代でも伝承活動に関わることはできる。一人ひとりの体験、考えは異なっても、「後世に伝える」意義、重要性は変わらない。何を伝承し、発信していくのか。震災とは異なる時代や他地域の事例から、伝える意義を考える研修会が3月29日に釜石市であった。
 
 「人は忘れる。だから考えなければいけない、何を伝え継承するのか、教訓として残していくべきか。語り継ぎはある意味、挑戦でもある」。震災の教訓を伝える市公認の語り部「大震災かまいしの伝承者」ら約30人を前に、講師の東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター長、関谷直也教授(50)=災害社会学・社会心理学=は、そう訴えた。
 
「震災の教訓と伝承」をテーマに講義した関谷直也教授

「震災の教訓と伝承」をテーマに講義した関谷直也教授

 
 かまいしの伝承者の養成は2019年にスタート。震災の記憶の風化防止や市民の防災意識向上などを目指している。震災を語り継ぐ意欲があり、地震のメカニズムや市防災市民憲章などへの理解を深める基礎研修を修了すると、伝承者に認定。これまでに5期の研修が行われており、10~80代の計117人が修了した。認定期間はおおむね2年間で、現在62人が継続。伝え方の工夫など実践的な知識、技能を身につけてもらおうと、任意のステップアップ研修も行っている。この日開催されたのはステップアップ研修で、会場は小佐野町のコミュニティ会館を使った。
 
「大震災かまいしの伝承者」のステップアップ研修

「大震災かまいしの伝承者」のステップアップ研修

 
 関谷教授の講義は約100年前に発生した関東大震災や、東日本大震災被災地の福島県や宮城県の事例を挙げながら、受講者と一緒に「伝える意義」を考えるような内容だった。
 
 災害時の人間の心理について、1991年発生の雲仙普賢岳(長崎県)噴火による火砕流災害や、自身も親族らを亡くした東日本大震災などを例えに、「災害直後は関心を持つが、人は鈍感。いつの間にか忘れる。10数年たったら状況も少し変わっていく。普段は災害を忘れて過ごしている」と解説。人は普段「明日地震が発生する」とか「自分の生命を奪うような災害が起きる」とは考えない「正常化の偏見」が働くという。
 
 しかしひとたび災害が発生すると、過度に不安を抱く「過大視の偏見」に捉われる。関谷教授は「人は災害やトラブルを意識し、忘れる、という繰り返しで生きている」としたうえで「忘れるというのはつらいものを乗り越える知恵でもある。だからこそ人間の心理で言うと、災害の経験や教訓を伝えるのは難しい」と指摘した。
 
メモを取ったりしながら講義に熱心に耳を傾けた

メモを取ったりしながら講義に熱心に耳を傾けた

 
 伝承とは―。広島や長崎で展開される原爆体験の伝承活動に触れ、「反原爆から反戦へ、そして平和というように、忘れないために伝えるべきメッセージをきちんと整えていくことができた。それにより戦後80年となっても語り継ぎはできている」と関谷教授。関東大震災の話に戻り、「それ以前にあった災害のことを伝え、引き継ぐのに失敗した。自然災害の場合、いろんなところで起こるので風化していく傾向がある」と持論を展開するも、次に起こりうる災害に備えた語り継ぎは重要だとした。
 
 人は忘れる。個人だと忘れる。だから社会として、地域としてどうしていくか。「答えはありません。誰に、何を、どう残すか、考え続けていくことが大事なのだろう」と締めくくった。
 
釜石市防災市民憲章を唱和して語り継ぎへ思いを共有

釜石市防災市民憲章を唱和して語り継ぎへ思いを共有

 
 大学生の菊池音乃さん(19)は2年前に伝承者に認定された。今年2月、小学生時代の恩師の協力で平泉町の小学校で語り部として活動。震災の出来事に加え、命を守る大切さを伝えた。その際、「話にリアルさがなければ想像できないのではないか」と考え、震災の津波で祖父母を亡くした自身の心情も打ち明けた。
 
 講義を受け、「自分事ではないから忘れる」「地域によって伝え方が分かれる」と実感した。看護師を目指し、群馬大医学部(看護学専攻)で学ぶ菊池さん。同世代の学生に震災の記憶はほとんどなく、防災への意識にも格差を感じることがあるという。「どんな災害でも命を守ることは同じだから、伝承者として伝えたい。災害で悲しむ人を少しでも減らしたい」。こうした研修に参加したり、独自に理解を深めながら、「できることを続けていく」と思いを強めた。
 
研修を終えた伝承者に修了証明書が手渡された

研修を終えた伝承者に修了証明書が手渡された

 
修了証明書を手に今後の活動に意欲を見せる伝承者ら

修了証明書を手に今後の活動に意欲を見せる伝承者ら

 
 かまいしの伝承者の事務局は今年度から市防災危機管理課が担う。同課の土橋照好課長は、震災経験者の高齢化と減少、知らない世代の増加といった現状を踏まえ「語りつないでいく重要性は増しており、伝承者は貴重な存在」と強調。研修後の実践の場は限られるとするが、家族や学校、職場、地域など身近な語り継ぎ活動に期待する。
 
 次年度、6期目の基礎研修を予定。伝承者たちの語り手としての「質を高めたい」とも考え、ステップアップ研修も続けていく方向だ。

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防災、伝承と小泉八雲の関わりは!? 釜石市郷土資料館で特別展 「明治三陸大津波130年」にちなみ

「明治三陸大津波130年」にちなみ開催中の特別展

「明治三陸大津波130年」にちなみ開催中の特別展

 
 東日本大震災から15年。そして今年は、1896(明治29)年の三陸大津波から130年となる。釜石を含む三陸地域は津波被害を幾度となく体験。「地震津波はいつか必ずあるものだ」と心に留め、備えることを考えてもらおうと、「明治三陸大海嘯(かいしょう)130年」と題した特別展が釜石市鈴子町の市郷土資料館で開かれている。テーマは「稲むらの火と小泉八雲、そして釜石」。防災教材として知られる物語、明治の文豪との関わりから、地域の歴史を振り返ることができる。
 
 特別展は同館津波・震災展示室(常設展示139点)の一角に開設。明治三陸大津波発生当時の英字新聞ジャパン・ガゼット社の記者が釜石を中心に被災状況をリポートしたリーフレット「日本の大災害(The Great Disaster in Japan)」(複製)、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン/1850~1904年)との関わりを紹介する解説パネル、「稲むらの火」が掲載された昭和初期の教科書「尋常科用 小學國語讀本 巻十」などを並べる。
 
津波・震災展示室の一角(左)に設けられた特別展コーナー

津波・震災展示室の一角(左)に設けられた特別展コーナー

 
外国人による明治三陸大津波に関するリポートの文面

外国人による明治三陸大津波に関するリポートの文面

 
 津波発生は1896年6月15日。現在の釜石市にあたる区域での死者・行方不明者は6400人余り、海岸近くの家屋や漁具、漁船などの大部分が失われる大被害を受けた。同社の記者ら2人は21日に横浜を発ち、花巻から人力車、荷馬車を乗り継ぎ遠野に宿泊。22日には仙人峠を越え釜石に入った。当時の釜石町を歩き、インタビュー。23日には海路、南の集落を取材、途中の海上で遺体を収容した。同夜、横浜へ戻るため釜石をあとにした。
 
 このリーフレットは2011年4月、富山大学附属図書館にある小泉八雲の蔵書「ヘルン文庫」から発見された。八雲研究、顕彰を目的とする八雲会会員の中川智視さんが訳出。取材した被災地が釜石であることから、中川さんが複製した資料、抄訳、独自の解説文を郷土資料館に提供した。展示ではファイル資料として英文、和訳が用意され、手に取ることができる。
 
ファイル資料としてリポートの和訳が展示されている

ファイル資料としてリポートの和訳が展示されている

 
防災教材や釜石と小泉八雲の関わりを示すパネルが並ぶ

防災教材や釜石と小泉八雲の関わりを示すパネルが並ぶ

 
 小泉八雲は、1897年に「仏の畑の落穂」という随筆集を米国の出版社から出した。この中に、江戸時代の1854年に起きた安政南海地震津波で多くの人命を救ったとされる和歌山県広村(現広川町)の逸話を元にした「A Living God」(生き神)という物語がある。ここに「Tsunami」(津波)という言葉が出てきて、世界に知られるきっかけになった。やがて、物語に感銘を受けた小学校の教員が「稲むらの火」として普及し、小学校の教科書に収録された。
 
「稲むらの火」が掲載され尋常小学校で使われた国語の教科書

「稲むらの火」が掲載され尋常小学校で使われた国語の教科書

 
 「八雲は96年に起きた明治の大津波に衝撃を受け、のちに『稲むらの火』と知られることになる『生き神』という物語を書いたのではないか」。そう考察するのは、この特別展を企画した同館職員の川畑郁美さん。NHK連続テレビ小説(通称・朝ドラ)「ばけばけ」で注目された小泉八雲が「防災教育につながる物語を書いたのはなぜか」と思ったのをきっかけに、同館所蔵の資料から答えにつながるヒントを探った。
 
 そして形にしたのがこの特別展。「日本の大災害」の中には、「釜石の悲劇と苦難を細かく語るには…重い精神的負担となることだろう」などとつづられている。目を通した川畑さんも「生々しい惨状を伝えている」と胸を突かれた。
 
 このレポートを「八雲は目にしたはず」と、川畑さんは推察する。「津波のこと、逃げること、命を守ることを伝えたかったのではないか。見知ったことを伝え、語り継ぐために、明治とは時代は異なるが、和歌山のエピソードを世に出した。その伝えたい思いにつながるものの一つに釜石の出来事もあったのでは。そう考えると、とても興味深い」と想像を膨らませている。
 
三陸を襲った地震津波の被害状況を伝える常設展示のパネル

三陸を襲った地震津波の被害状況を伝える常設展示のパネル

 
130年前の津波被害や人々の様子をとらえた写真パネル

130年前の津波被害や人々の様子をとらえた写真パネル

 
 関連展示として、明治三陸大津波が発生した後の釜石市内を捉えた写真パネル12点も並べる。陸に打ち上げられた大型船、全壊した家屋、ぼう然とする人々…。東京都在住の古写真収集家、石黒敬章さんが保存していたもので、同館では10年ぶりに公開する。
 
 特別展は6月21日まで開かれている。開館時間は午前9時半~午後4時半(最終入館は午後4時)。火曜日休館。

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東日本大震災から15年― 各地で続く祈り 箱崎町庵寺では8日に初の追悼供養法要

合掌し、震災犠牲者に祈りをささげる箱崎町の住民ら=8日、庵寺1

合掌し、震災犠牲者に祈りをささげる箱崎町の住民ら=8日、庵寺

 
 未曽有の津波被害をもたらした東日本大震災から15年となるきょう11日、沿岸被災地は朝から追悼の祈りに包まれている。死者、行方不明者合わせ1064人(関連死含む)が犠牲となった釜石市では、墓地や海岸などで大切な人を思い、手を合わせる姿が見られる。市北東の半島部に位置する箱崎町では8日、箱崎町内会(髙橋道夫会長142世帯)による震災犠牲者の追悼供養法要が営まれた。同町内会主催の法要は初めてとなる。
 
箱崎町内会が初めて行った東日本大震災犠牲者の追悼供養法要

箱崎町内会が初めて行った東日本大震災犠牲者の追悼供養法要

 
 法要は町内の庵寺で開かれ、在住者と町外に暮らす元住民ら43人が参列した。鵜住居町、常楽寺の藤原育夫住職、藤原政成副住職が読経。津波にのまれるなどし、犠牲となった72人の御霊を慰めた。参列者は順に焼香し、犠牲者の鎮魂、冥福を祈った。法要後、藤原住職は「15年がたち、いろいろな感情が出てくる。人間はつらいことだけを思い浮かべがちだが、その中にも光明がある。仏様に感謝し、手をつないで生きていくことが大事」と話した。
 
常楽寺(鵜住居町)の藤原育夫住職の読経が響く中、参列者が焼香

常楽寺(鵜住居町)の藤原育夫住職の読経が響く中、参列者が焼香

 
亡くなった大切な人たちに手を合わせ、心の中で思いを伝える参列者

亡くなった大切な人たちに手を合わせ、心の中で思いを伝える参列者

 
法要後は藤原育夫住職(写真左)が法話。遺族らの気持ちに寄り添った

法要後は藤原育夫住職(写真左)が法話。遺族らの気持ちに寄り添った

 
 参列した76歳の女性は、町内に暮らしていた父方の叔母夫婦ら親族5人を一度に亡くした。避難途中で津波にのまれたほか、避難したものの、忘れ物を取りに自宅に戻ってしまうなどし、命を落としたという。「おば、おじにはいつも頼りっきりで…。今も何かあるたび胸にぽっかり穴が開く感じ…。何年たってもその穴は埋まらない」。あふれる涙に声を詰まらせる。当時、自身も母と避難する途中で津波にのまれた。同じ波に流され、亡くなった5人を思うと「余計つらい。私たちだけ生きて…と思う時もあった」。被災後、町内の戸建て復興住宅に入居した。共に生き延びた母は昨年2月に亡くなり、「本当に一人になってしまった…」。深い悲しみを抱えながら「母が残した畑を耕すのが今の生きがい」と懸命に前を向く。
 
 箱崎漁港に面する同地域には震災前、273世帯、734人が暮らしていた。津波で47人が死亡、14人の行方が分かっておらず、犠牲者は関連死を含め72人。全体の86%にあたる235世帯が被災した。地域は明治、昭和の三陸大津波でも大きな被害を受けていたが、過去に被害が及ばなかった場所に住む人が避難せず、津波に巻き込まれる事例が多くあった。
 
箱崎町の玄関口の市道沿いには(左から)明治、昭和、平成の津波記念碑が並ぶ。東日本大震災を表す“平成”の記念碑は2021年3月建立。裏面には被災状況が刻まれる

箱崎町の玄関口の市道沿いには(左から)明治、昭和、平成の津波記念碑が並ぶ。東日本大震災を表す“平成”の記念碑は2021年3月建立。裏面には被災状況が刻まれる

 
関係者の協力で箱崎町内会の法要を実現させた髙橋道夫会長(中央)

関係者の協力で箱崎町内会の法要を実現させた髙橋道夫会長(中央)

 
 法要に先立ち、髙橋町内会長(75)は「震災で犠牲になった御霊を供養するとともに、皆さん一人一人が災害に対する意識を高め、地域から犠牲者を絶対に出さないという強い意志を持っていただくことを願う」と参列者に呼びかけた。世帯数は震災前からほぼ半減。高齢者世帯の増加が顕著で、災害時の自助、共助力のさらなる強化が求められる。髙橋会長は「震災後、高さ14.5メートルの防潮堤はできたが、過信してはだめ。自然の脅威は時に想像を超える。過去の教訓を決して忘れず、後世に伝え続けていかなければならない」と誓う。町内会主催の同法要は今後も続けていく予定。

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「3・11」あんどん 岐阜と釜石の有志が制作中 根浜防潮堤で明夜点灯“とうほくのこよみのよぶね”

有志らによる「3・11」あんどんの制作作業=8日、根浜海岸レストハウス

有志らによる「3・11」あんどんの制作作業=8日、根浜海岸レストハウス

 
 東日本大震災発生からあす11日で15年―。沿岸被災地では犠牲者を追悼する準備が進む。津波で大きな被害を受けた釜石市鵜住居町では、「3・11」の数字をかたどったあんどんの制作が8日から始まっている。「とうほくのこよみのよぶね」として、2012年から同町根浜海岸で続けられてきた活動。これまでは漁船の上にあんどんを設置し海に浮かべてきたが、今年は海岸の防潮堤に設置する予定。11日夕方から点灯し、震災犠牲者への祈りの場とする。
 
 同活動は、国内外で活躍するアーティスト日比野克彦さんが中心となり企画。日比野さんの出身地岐阜県岐阜市で2006年から続けられる冬至の行事「こよみのよぶね」を、震災犠牲者の鎮魂、復興の一助に役立てようと始められた。制作には岐阜の実行委メンバーが全面協力。毎年、釜石に足を運び、地元住民や支援者らと制作から点灯まで協働で作業を行ってきた。昨年は諸事情により根浜での実施がかなわず、大槌町吉里吉里海岸に場所を移して開催。今年は根浜での復活に向けた足がかりにと、陸上点灯という形で再開することになった。
 
コロナ禍で参集活動が困難だった2022年に岐阜の実行委が制作し、釜石に運んだあんどん。今年もこの時とほぼ同規模になる見込み

コロナ禍で参集活動が困難だった2022年に岐阜の実行委が制作し、釜石に運んだあんどん。今年もこの時とほぼ同規模になる見込み

 
8日の制作作業には地元釜石から10人余りが参加。分担して各種作業に取り組んだ

8日の制作作業には地元釜石から10人余りが参加。分担して各種作業に取り組んだ

 
 8日から根浜海岸レストハウスで制作作業が進められていて、初日は地元住民ら10人余りが作業に協力。岐阜県の伝統工芸品「美濃和紙」に色を塗り、「3・11」をかたどる竹の骨組み作りを行った。数字型あんどんを並べた完成形は横幅約3~4メートル、高さ約1.5メートルほどになる見込み。
 
 市内の会社員新里拓也さん(32)は、12月から2月にかけて大町青葉通りと大町広場をイルミネーションで彩った、かまいし灯り実行委のメンバー4人で参加。初めての作業ながら「楽しい」と手を動かし、完成形にイメージを膨らませた。岐阜のメンバーが協力し、同活動が続いてきたことに「遠くから釜石に思いを寄せてくださりありがたい」と感謝。自身は震災時、盛岡市で高校生活を送っており、発災から1週間後、古里の惨状を目の当たりにした。あれから15年。復興の進展を改めて実感し、「震災前より明るいまちになってくれたら」と、同年代の仲間とまちづくりへの貢献に思いを強くする。
 
竹の骨組みに貼り付ける「美濃和紙」にさまざまな色を塗る

竹の骨組みに貼り付ける「美濃和紙」にさまざまな色を塗る

 
細く切った竹で数字の「11」をかたどる骨組みを作る

細く切った竹で数字の「11」をかたどる骨組みを作る

 
「・(中点)」は円形にした竹を組み合わせて作る。竹は強度としなやかさを保てる薄さに削って加工

「・(中点)」は円形にした竹を組み合わせて作る。竹は強度としなやかさを保てる薄さに削って加工

 
 今回、岐阜からは8人が制作に協力。根浜と吉里吉里の2班に分かれ、地元住民らと作業を進めている。根浜では再開にあたり、地元の一般社団法人根浜MIND(岩崎昭子代表理事)が活動協力。将来的な海上点灯復活を目指し、再スタートの一歩として、今年は防潮堤での実施を企画した。
 
 2020年から毎年足を運ぶ岐阜市の馬淵弥保さん(49)は「(根浜MINDの)岩崎さんはじめ地元の皆さんの気持ちに応えたいという思いが強い。できるだけお手伝いしたい」と釜石での人との出会い、つながりを大事にする。被災者が自身の経験を話してくれたこともあり、「(震災を)忘れてはいけない。経験していない子どもたちも増えてくる中、大人には後世に伝えていく責任がある」と実感。震災の記憶は消し去ることはできないが、こよみのよぶねが「少しでも(悲しみを抱える)気持ちに温かさをもたらし、海とともに生きる人たちの心の支えになれば」と願う。
 
岐阜メンバーの馬淵弥保さん(左から2人目)から竹の組み立て方を教わりながら作業する釜石の協力者

岐阜メンバーの馬淵弥保さん(左から2人目)から竹の組み立て方を教わりながら作業する釜石の協力者

 
 「3・11」のあんどんはあす11日、宝来館前の防潮堤に設置され、午後5時ごろに点灯される予定。

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釜石市地震・津波避難訓練 2年ぶりに実施 意識低下防げ! 避難場所・経路を再確認

大津波警報発表の訓練放送を受け、津波緊急避難場所の鵜住居小・釜石東中校庭を目指し、学校前の階段を駆け上がる人たち

大津波警報発表の訓練放送を受け、津波緊急避難場所の鵜住居小・釜石東中校庭を目指し、学校前の階段を駆け上がる人たち

 
 釜石市の地震・津波避難訓練は1日、市内全域の住民を対象に行われた。同市では、大船渡市の大規模山林火災の後方支援(昨年3月)、県総合防災訓練時の津波緊急避難場所付近でのクマの目撃(同11月)により、予定していた同訓練を中止したため、今回は2年ぶりの実施。改めて身近な避難場所、経路、所要時間などを確認し、いざという時の“命を守る行動”につなげてもらおうと開催した。東日本大震災の発生から11日で15年―。記憶の風化を防ぎ、経験のない世代への確かな教訓継承へ、さらなる意識醸成が求められる。
 
 訓練は午前8時半、三陸沖を震源とするマグニチュード8を超える巨大地震が発生。同市で震度6強を観測し、沿岸部に大津波警報が発表されたとの想定(予想最大波15メートル、津波到達予想同9時ごろ)で行われた。防災行政無線で緊急地震速報の警報音が鳴らされると、落下物などから身を守る行動「シェイクアウト」を実践。3分後に大津波警報発表のサイレンが鳴り、それぞれがいる場所から最も近い高台への避難を開始した。
 
「急げ!高台へ」 子どもたちも津波時の避難行動を実践

「急げ!高台へ」 子どもたちも津波時の避難行動を実践

 
鵜住神社側の階段を上がり、校庭に向かう住民ら

鵜住神社側の階段を上がり、校庭に向かう住民ら

 
 鵜住居町の市指定津波緊急避難場所の一つ、鵜住居小・釜石東中校庭には、「避難指示発令」の放送が繰り返される中、住民らが続々と避難。正面の大階段のほか、鵜住神社側、商業施設・うのポート側と3方向から、最短ルートで住民らが上がってきた。訓練終了時間の午前9時までに110人が避難した。
 
 2024年に同町に移住した小笠原綾子さん(46)は、小3と未就学の子ども2人を連れて訓練に参加。昨年12月8日深夜に発生した青森県東方沖地震で津波警報が出た際も家族4人で避難し、拠点避難所となっている両校体育館で一夜を明かした。「家族一緒の時はいいが、別々にいる時がやはり心配。子どもたちには、『後で必ず迎えにいくから、不安でも、真っすぐ近くの高台に逃げて』と教えている」と小笠原さん。訓練を重ねることで、「子どもたちに避難の仕方を体で覚えてほしい。ここ(鵜住居)に住む以上は絶対に身に付けておくべきことなので」と幼いころからの意識付けを図る。
 
 震災の津波で自宅が全壊、再建した家に暮らす沖寿雄さん(81)は15年前の避難時の様子を鮮明に記憶する。沖さんらは隣近所に声がけしながら、最も近い高台の鵜住神社境内(当時の市指定津波避難場所)に誘導。同所には160人以上が避難し、津波の難を逃れた。避難者の半数は裏山を越え、さらに内陸部に向かい、足腰が弱い高齢者などは神社で一夜を明かした。「あの時のようなことは二度とあってほしくないけど…。訓練を重ねて足元を固めないと、いざという時、行動できない。何かあったらすぐ逃げられるように避難意識は常に持ち続けていなければ」と訓練の重要性を心に刻む。
 
(訓練)地震発生から13分が経過。校庭に続々と避難者が集まる

(訓練)地震発生から13分が経過。校庭に続々と避難者が集まる

 
鵜小・東中校庭は海抜約20メートルの高台に位置。さらに高い場所にある校舎内の体育館は数日~数カ月の避難生活に対応する拠点避難所となる

鵜小・東中校庭は海抜約20メートルの高台に位置。さらに高い場所にある校舎内の体育館は数日~数カ月の避難生活に対応する拠点避難所となる

 
 地元の鵜住居町内会(古川愛明会長、150世帯)自主防災部は避難訓練に続き、今年も独自に避難所開設訓練に取り組んだ。鵜小・東中の2体育館は災害時に一定期間、避難生活を送るための市指定拠点避難所になっているが、災害の規模が大きいと担当の市職員が即座に集まることができない可能性がある。このため、同町内会は自分たちで避難者の受け入れにいち早く対応できるよう、訓練を重ねる。今回も災害用備蓄倉庫から段ボールベッドやパーテーションを体育館に運び、組み立て作業を行った。
 
災害用備蓄倉庫から段ボールベッドのセットを運び出し、体育館で組み立て作業を体験

災害用備蓄倉庫から段ボールベッドのセットを運び出し、体育館で組み立て作業を体験

 
ワンタッチパーテーションの設置も体験。避難所でのプライバシー確保や感染症対策などに役立てられる

ワンタッチパーテーションの設置も体験。避難所でのプライバシー確保や感染症対策などに役立てられる

 
 同町内会は被災前の3地区(上、仲、川原)をカバーする新たな町内会組織として2018年4月に設立。エリア内には被災後に自宅を再建、または復興住宅に入居した古くからの住民のほか、震災後に新たに移り住んだ住民が混在。新規移住者は年々、増加傾向にある。古川会長(78)は訓練参加者が限定的なことを危惧。「地域の防災力を高めるには町内会組織の充実が不可欠。イベントなどを通じて町内会活動への参加を促し、基盤を固めることで、自主防災にもつなげていければ」と今後を見据える。
 
市立図書館で行われた市災害対策本部運営訓練(写真提供:市防災危機管理課)

市立図書館で行われた市災害対策本部運営訓練(写真提供:市防災危機管理課)

 
 この日は、休日や夜間に大津波警報が発表された場合に市が災害対策本部を置く小佐野町の市立図書館で、災害対策本部運営訓練も行われた。本部長の小野共市長はじめ幹部職員、緊急初動特別チーム第2班の職員(内陸部在住)ら計23人が参集。警報を受け、市長が避難指示を発令し、鵜住居地区災害対策用カメラで鵜小・東中への避難行動の様子をモニターで確認した。同特別チームは緊急避難場所から寄せられる避難者数、釜石消防署が取りまとめる消防団からの避難者数の情報を集計。対策本部へ最新の情報を報告した。
 
 同館には防災行政無線の遠隔制御装置、移動式無線、衛星携帯電話を配備。固定電話6回線は大規模災害時、ボイスワープ機能により、本庁代表電話への連絡が同館の災害対策本部事務局へ転送される仕組みになっている。訓練では配備機材なども使い、情報収集にあたった。災害対策本部員会議では、被害、避難状況の共有、拠点避難所開設、対応方針をシミュレーションした。
 
 意見交換では「緊急避難場所と拠点避難所の違いを正確に理解していない市民も多いと感じる。広報紙やホームページで周知徹底を図る必要がある」「今回の訓練の反省点や課題を庁内で共有し、今後に生かしていかねばならない」などの声が上がった。市防災危機管理課によると、今回の訓練の避難者数は3日時点の報告取りまとめ分で2005人。

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災害時の「ペット同行避難」 釜石市がルールづくりへ初の実証テスト 飼い主らと意見交換

避難所担当の市職員の案内でペット指定場所に向かう飼い主と犬(ペット同行避難実証テスト)=甲子小、21日

避難所担当の市職員の案内でペット指定場所に向かう飼い主と犬(ペット同行避難実証テスト)=甲子小、21日

 
 釜石市は、災害発生時にペットを連れて避難する人たちの避難所対応について課題を探るため、21日、初の実証テストを行った。同市では現状、ペットと一緒に避難する場合の明確なルールがないため、避難者はペットと一緒に車中で過ごすケースが多かった。市は同テストや飼い主らの意見を基にガイドラインを作り、避難者の安全安心、受け入れ体制整備につなげたい考え。テストは市の拠点避難所の一つ、甲子小で行われ、犬7頭と犬・猫の飼い主、地元の動物愛護団体メンバー、同避難所担当の市職員など約30人が参加した。
 
 ペットを連れての避難には、飼い主とペットが避難所内の別々の場所で過ごす「同行」避難、同じ空間で過ごす「同伴」避難の2つの形態がある。市が第一段階として目指すのは「同行」避難のルールの確立。避難者の中にはアレルギーを持つ人や動物が苦手な人がいる可能性があるため、そうした人との直接的な接触を避け、避難できるようにするのが狙い。
 
避難者の居住スペースとなる体育館の前で「同行避難」について説明を受ける

避難者の居住スペースとなる体育館の前で「同行避難」について説明を受ける

 
校舎裏に設けたペット専用スペースに向かう

校舎裏に設けたペット専用スペースに向かう

 
 テストでは、避難所となる体育館の入り口で、飼い主に同行避難について説明。その後、ペットの指定場所とした校舎1階の屋根のある屋外スペースに案内し、持参したケージやクレートに犬を入れてもらった。飼い主は体育館に戻り、避難受付で狂犬病予防注射や病気の有無などペットの情報を専用用紙に記入した。同避難所では台風などの悪天候で屋外にペットがいるのが危険な場合は、隣接する教室に避難できるようにしているという。飼い主や担当職員らは一般避難者との動線の切り分け、複数の犬が集まった場合のペットの状態などを確認した。
 
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「こちらへどうぞ」 屋根がかかった屋外の専用スペースへ…

 
飼い主が持参したケージやクレートを指定場所に設置し、ペットを入れる

飼い主が持参したケージやクレートを指定場所に設置し、ペットを入れる

 
ペットの様子を飼い主や市職員らが観察。日頃からケージやクレートに慣れさせておくことが大事

ペットの様子を飼い主や市職員らが観察。日頃からケージやクレートに慣れさせておくことが大事

 
体育館の受付で連れてきたペットの情報を記入する

体育館の受付で連れてきたペットの情報を記入する

 
 避難行動の体験後、意見交換も行われた。飼い主からは「狂犬病予防注射の有無などペット情報をマイナンバーカードにひも付けできないか、マイクロチップの読み取りで情報共有できないか」「車避難が可能な災害は」などの質問のほか、「ペットと離れるのは不安。一緒に室内で過ごせる『同伴避難』をできるようにしてほしい」との要望が出された。
 
 同伴避難に関して市側は、「アレルギー反応の可能性を考えると、ペットを連れた人たちだけが集まれる場所(建物)が必要。場所の確保、避難所担当職員の振り分けなどを考えると、現状では難しい。まずは同行避難の受け入れを確立させ、その先の実現を目指したい」との考えを示した。愛護団体のメンバーからは「ペットと一緒にいられないなら避難しないという人もいる。ペットの命を守ることは人命を守ることにもつながる。柔軟に考え、スピード感を持って取り組んでほしい」との声も上がった。このほか、ルールづくりの遅さを指摘する声も。
 
飼い主との意見交換会。さまざまな意見、要望が出された

飼い主との意見交換会。さまざまな意見、要望が出された

 
市は実証テストで出た課題を今後のルールづくりに生かす

市は実証テストで出た課題を今後のルールづくりに生かす

 
 10歳の中型犬を飼う女性(68)は「年齢が上がってくると犬も人も行動が遅くなりがち。高齢の飼い主がケージや避難用品を運べるようなリヤカー的な備品があれば」と希望。「他の飼い主さんの話を聞いて気付くこともあった。ペット避難に関し、釜石は遅れている。具体性を持って進めてほしい」と話した。3歳の中型犬を飼う男性(53)は「人が留守にする時はケージに入っているので慣れてはいるが、頭数が増えればストレスがかかる。他の犬との距離が近すぎると体調を崩すことも考えられる」と心配。今回の実証テストを「まずは一歩」とし、「私たちは犬嫌いな人のことも考える。お互いに安心して避難できるような体制を取ってほしい」と願った。
 
 ペット同行避難の検討に取り組む市生活環境課の二本松史敏課長は「出された課題を解決しながら、まずは市職員が配置される市内18カ所の拠点避難所での同行避難の形を確立させたい。将来的な同伴避難も見据え、検討を重ねていく」と話した。

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沿岸部、乾燥状態続く 山火事防止へ郵便局と消防がタッグ 注意喚起のチラシ配布

釜石郵便局と釜石消防署による林野火災防止を呼びかける広報活動=19日

釜石郵便局と釜石消防署による林野火災防止を呼びかける広報活動=19日

 
 昨年2月26日に発生した大船渡市の大規模山林火災からまもなく1年―。同火災を受け本年1月から、地域の気象状況など火災の危険性に応じて自治体が発令できる「林野火災注意報・同警報」の運用が始まった。本県沿岸部は今年に入り、降水量が平年を大きく下回り、乾燥状態が続く。釜石市では連日のように、注意報・警報が出ていて、火の取り扱いにはより一層の注意が必要だ。防災行政無線などで伝えられる発令だが、市民により理解してもらおうと、19日、只越町の釜石郵便局(小野寺幸徳局長)前で広報活動が行われた。
 
 同局社員と釜石消防署署員約10人が活動。林野火災注意報・警報の発令基準、発令時の火の使用制限、違反した場合の罰則、屋外で火を使う時の注意点などが書かれたチラシを来局者や道行く歩行者らに配った。
 
1月から運用が始まった「林野火災注意報・同警報」、山火事防止を呼びかけるチラシを配布

1月から運用が始まった「林野火災注意報・同警報」、山火事防止を呼びかけるチラシを配布

 
 同注意報・警報は1~5月の期間に運用される。注意報は①前3日間の合計降水量が1ミリ以下、かつ前30日間の合計降水量が30ミリ以下②前3日間の合計降水量が1ミリ以下、かつ乾燥注意報が発表された―のいずれかに該当する場合に発令(当日、降水が見込まれる、積雪がある場合はこの限りではない)。警報は注意報の発令基準に加え、強風注意報などが発表された場合に発令される。
 
 発令時には、山林または山林の周囲1キロの範囲(釜石市、大槌町は全域)が「火の使用制限区域」となり、山林・原野などの火入れ(野焼き)、花火、たき火、燃えやすい物の近くでの喫煙―などが制限される(詳細は釜石大槌地区行政事務組合消防本部のホームページで確認)。火の使用制限に違反すると、注意報は罰則を伴わない注意喚起、警報は30万円以下の罰金または拘留が科せられる。
 
郵便局と消防が協力し合い、地域の安全を守る

郵便局と消防が協力し合い、地域の安全を守る

 
活動を行ったこの日も「林野火災警報」が発令中。より一層の注意を促した

活動を行ったこの日も「林野火災警報」が発令中。より一層の注意を促した

 
 同市の大規模山林火災は2008年の唐丹・荒川(4月4日出火~15日鎮火)、17年の尾崎半島(5月8日同~22日同)での火災が記憶に新しい。沿岸特有の急峻な地形で消火活動は困難を極め、いずれも鎮火までに10日以上を有した。釜石消防署の佐藤直樹予防係長は「山林火災は原因が特定できない場合もあるが、まずは人的要因の火災を防ぐことが大事。人の不注意で発生する火災は何としても防ぎたい」と住民の意識向上を強く願う。
 
 合わせて今、心配なのは極端に少ない降水量。気象庁のデータによると、釜石市の1月の降水量は8ミリ(昨年27ミリ)。2月は18日夜に降った雪による1ミリだけ(22日現在)と平年を大きく下回る値となっている。こうした状況から、同市では1月23日から2月23日まで連続で注意報または警報が発令されている。降水量の少なさで川の水量も大きく減少。佐藤予防係長は「消火栓が近くにない場所では川から水を吸い上げて消火しなければならない。山火事の場合は特にも」と危機的な川の水量不足も懸念。同注意報・警報の運用で、市民の予防意識は高まりつつあるとみられるが、「沿岸部の乾燥状態はしばらく続きそう。市民の皆さんにはくれぐれも火の取り扱いに十分な注意を払っていただきたい」と呼びかける。
 
山火事の危険性を伝え、火災防止への協力を求める釜石消防署署員

山火事の危険性を伝え、火災防止への協力を求める釜石消防署署員

 
 同注意報・警報の発令について、同署が直接市民に広報するのは今回が初めて。同局社員が毎朝、発令を耳にする中で、「発令の条件とか、知らない人もいるのでは。周知の部分で郵便局がお役に立てれば」と考え、両者協働での活動を企画した。同局では県との包括連携協定に基づき、2021年から「山火事防止運動」期間中、集配車両(軽4輪)に「山火事注意」のステッカーを貼ってきた。本年は大船渡の山林火災発生日の2月26日から同運動が展開される予定で、5月末まで釜石・大槌の郵便局で稼働する25台にステッカーを貼り、住民への注意喚起を図る。同局では昨年10月には警察などと特殊詐欺被害防止の啓発活動も実施。窓口営業部の佐藤忍部長は「郵便局として地域の安全を守ることに少しでも貢献できれば」と話す。
 
 釜石市内では今年に入り、2件(建物1、その他1)の火災が発生(19日現在)。同署では3月1日から7日まで展開される春季全国火災予防運動と合わせ、広く火災予防の周知徹底を図っていきたい考えだ。
 
「防ごう!山火事」。住民の意識を高めるため共に活動した釜石郵便局社員と釜石消防署署員

「防ごう!山火事」。住民の意識を高めるため共に活動した釜石郵便局社員と釜石消防署署員

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「追悼、防災」変わらぬ思い“竹灯籠”に込め… 根浜・津波避難階段で5年目の点灯開始

自分たちで作った竹灯籠の前で…/14日、点灯式(根浜津波避難階段)

自分たちで作った竹灯籠の前で…/14日、点灯式(根浜津波避難階段)

 
 東日本大震災の津波で大きな被害を受けた釜石市鵜住居町根浜地区。来月11日で発災から15年となるのを前に、地区内の高台につながる津波避難階段に今年も竹灯籠が設置された。震災犠牲者を追悼し、命を守る行動の意識啓発を図る5年目の取り組み。3月までの土日祝日と震災命日の11日に午後5時から同7時まで点灯される。
 
 竹灯籠の製作から点灯まで一連の活動を続けるのは、根浜キャンプ場などを管理する同市の観光地域づくり法人かまいしDMC。製作は地元町内会の「根浜親交会」と一般向け体験会の参加者の協力で行われる。今年は1月31日、2月1日に製作体験会が開かれ、市内外の家族連れなどが参加した。参加者は市内の竹林から切り出された竹に、さまざまな模様がプリントされた型紙を貼り、電動ドリルで穴を開ける作業を体験した。
 
好みの模様の型紙を選んで竹に貼り付ける/1日、製作体験会(根浜シーサイド・レストハウス)

好みの模様の型紙を選んで竹に貼り付ける/1日、製作体験会(根浜シーサイド・レストハウス)

 
子どもたちも電動ドリルの使い方を教わって穴開けに挑戦!

子どもたちも電動ドリルの使い方を教わって穴開けに挑戦!

 
 釜石市の法人スタッフの男性(37)は「自分で作ったものは記憶に残るし、津波や防災のことを知る良いきっかけになる」と取り組みの趣旨に共感。震災ボランティアが縁で同市に移住した。仕事で子どもたちと関わるが、「自然の中で活動することも多い。楽しさだけでなく、時には怖い面も持ち合わせていることを知ってほしい」と自然災害への心構えも伝えていきたい考え。
 
 北上市の羽藤翔さん(38)は家族ぐるみで初めて作業を体験。「誰よりも夢中になっています」とドリルを動かした。子どもたちは震災を知らないが、「昨年12月の大きな地震は怖かったよう」。その時に沿岸には津波もあることを教え、「震災や防災のことも勉強しに来たいと思っていた。今回はとてもいい機会。楽しみながら学んでもらえたら」と期待を寄せた。
 
模様にそって大小の穴を開ける。ここから明かりが漏れるしくみ

模様にそって大小の穴を開ける。ここから明かりが漏れるしくみ

 
今年は竹の耐久性を高めるために背面にあらかじめ切り込みを入れる工夫も(左)。先端を斜めに切ったことで右下のようなデザイン(ニコちゃんマーク)も可能に

今年は竹の耐久性を高めるために背面にあらかじめ切り込みを入れる工夫も(左)。先端を斜めに切ったことで右下のようなデザイン(ニコちゃんマーク)も可能に

 
 多くの人たちの手で完成させた竹灯籠54本は、キャンプ場から高台の市道箱崎半島線につながる津波避難階段に取り付けられた。今月14日に点灯式が行われ、製作に関わった人たちなど約30人が集まった。発電機のスイッチを入れると、竹の中に仕込んだLED電球の明かりが漏れ、“命を守る道”が浮かび上がった。親子らが自分たちで作った灯籠を探しながら、階段を上り下り。美しい光景を写真に収め、「津波時は高台へ―」という避難行動の基本を改めて脳裏に刻んだ。
 
みんなでカウントダウンをして竹灯籠に点灯。子どもたちがさっそく駆け上がる。階段は111段

みんなでカウントダウンをして竹灯籠に点灯。子どもたちがさっそく駆け上がる。階段は111段

 
実際に避難階段を歩いてみる。いざという時の「命を守る行動」を体験

実際に避難階段を歩いてみる。いざという時の「命を守る行動」を体験

 
「あなたもにげて」「上へ上へ」と文字を浮かび上がらせる灯籠も。高台避難の大切さを伝える

「あなたもにげて」「上へ上へ」と文字を浮かび上がらせる灯籠も。高台避難の大切さを伝える

 
 家族4人で製作にも参加した大槌町の男性(44)は「それぞれデザインが違う。いっぱいあると、こんなにきれいになるんですね」と驚いた様子。震災の津波で同町の実家が被災し、祖父母が犠牲になった。当時、自身は仙台市に住んでいたが、実家の再建のため3年後にUターンした。「あっという間の15年。震災で人生も大きく変わった…」。4歳の娘にも震災のことを伝えているが、「(避難訓練をしていることもあり)どうやら理解しているよう」。震災を経験していない世代が着実に増えていく中、「こういうイベントで、みんなの思いが形になるのはすごくいいこと」と、震災を“忘れない”思いを共有する。
 
階段を上がった先には複数の竹を組み合わせたものも。子どもたちの目もくぎ付けに…

階段を上がった先には複数の竹を組み合わせたものも。子どもたちの目もくぎ付けに…

 
 津波避難階段は2021年に完成。キャンプ場や芝グラウンドがある観光施設「根浜シーサイド」から迅速な高台避難が可能。同DMC地域創生事業部の佐藤奏子さんによると、施設利用者には受付時に必ず、同階段の存在といざという時の避難について口頭で説明している。夜間は施設スタッフがいなくなるが、キャンプ場利用者とは連絡が取れる態勢を取っており、昨年、夜に地震が発生した際は「この階段を上がって避難した」との連絡があった。毎年の竹灯籠設置効果もあり、「階段の周知が進み、避難への意識付けも図られている」という。
 
写真上部に点在するのはキャンプ場の照明。津波の恐れがある時はこの避難階段を使っていち早く高台へ!

写真上部に点在するのはキャンプ場の照明。津波の恐れがある時はこの避難階段を使っていち早く高台へ!

 
 佐藤さんは「皆さんが変わらず、追悼の思いを持って作ってくれた」と竹灯籠作りへの協力に感謝。点灯期間中、多くの人に足を運んでもらい、「追悼、震災伝承、避難の大切さをみんなで共有し、いざという時に命を守れるようにしてほしい」と願う。点灯のための発電機の燃料には、地域の廃食油を精製したバイオディーゼル燃料が使われていて、太陽光発電も活用し、未来の持続可能な地域づくりにも貢献する。

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釜石小「ぼうさい甲子園」で2度目の優秀賞 “災害時は自ら考え行動”命を守る教育、実践評価

2025年度「ぼうさい甲子園」で釜石小が優秀賞。6年生児童が教育長らに受賞報告=3日

2025年度「ぼうさい甲子園」で釜石小が優秀賞。6年生児童が教育長らに受賞報告=3日

 
 全国の防災教育に関する先進的取り組みを顕彰する本年度の1.17防災未来賞「ぼうさい甲子園」(兵庫県など主催)で、釜石市の釜石小(五安城正敏校長、児童66人)が、優秀賞を受賞した。東日本大震災前から継続する防災教育を深化させ、児童らが主体的に考え、家庭や地域を巻き込んだ実践的な活動を行っていることが評価された。1月24日、神戸市で開かれた表彰式には6年生児童が出席。自分たちの活動について発表も行った。
 
 6年生9人は今月3日、同市の教育長、危機管理監らに受賞を報告した。表彰式で行った活動発表を報告の場で披露。釜石小ぼうさい安全少年団の山﨑柊琳団長、佐野楓花副団長がこれまでの取り組みについて発表した。
 
1月24日の表彰式での発表を市、市教委の幹部職員らに披露した

1月24日の表彰式での発表を市、市教委の幹部職員らに披露した

 
 同校では三陸沖地震津波の発生確率が高まる中、2008年から市内小中学校に先駆け、下校時津波避難訓練など本格的な防災教育を開始。11年の震災発生時、児童らは帰宅していたが、自ら判断し高台などへ避難。全児童184人が命をつないだ。その後、多様化する災害を見据え、同教育活動は深化を続ける。
 
 震災発生日の3月11日にちなみ、毎月11日を「釜小ぼうさいの日」とし、少年団団長が校内放送で防災に関するメッセージを発信。同少年団通信として地域住民にもメッセージを届けている。火災、垂直避難、不審者対応の訓練なども実施。6年間かけて行う防災学習では地震津波のほか、土砂災害、河川洪水についても学び、年1回、「いのちの学習参観」として保護者と一緒に防災を考える時間を設けている。児童が防災学習シートを持ち帰り、家族がメッセージを返すことも。
 
写真左上:「釜小ぼうさいの日」に行った火災避難訓練。同右上:児童が作成した「ぼく、わたしのぼうさい安全マップ(写真提供:釜石小)

写真左上:「釜小ぼうさいの日」に行った火災避難訓練。同右上:児童が作成した「ぼく、わたしのぼうさい安全マップ(写真提供:釜石小)

 
 本年度の6年生は5年時に、「市の避難訓練に地域住民の参加が少ない」ことを知り、参加を呼びかけるチラシやポスターを作成。地域住民に配り、市役所などへの掲示も依頼した。本年度、特に力を入れて取り組んだのが「ぼく、わたしのぼうさい安全マップ」の作成。全校児童が家族と一緒に居住地区の危険箇所(地震津波、洪水、土砂災害、クマ出没など)を調査。地区リーダーの6年生は地域住民から釜石の昔の災害について教えてもらう聞き取りも行った。調査内容は横幅5メートルほどのパネルにまとめ、全校児童の前で発表。同パネルは昇降口に掲示し、いつでも見られるようにしている。
 
 震災前から続ける下校時津波避難訓練は、市や消防団の協力を得て実施。事前に地域住民にも知らせ、参加を促している。毎年繰り返すことで、児童らの避難意識は格段に向上。昨年12月8日深夜に発生した青森県東方沖地震で津波警報が出た際も、児童らは家族に「逃げよう」と声をかけ、いち早く避難を開始した。
 
釜石小が震災前から続ける「下校時津波避難訓練(2024年10月撮影)」。自ら判断し、最も近い高台の津波避難場所に向かう

釜石小が震災前から続ける「下校時津波避難訓練(2024年10月撮影)」。自ら判断し、最も近い高台の津波避難場所に向かう

 
 こうした経験を重ねてきた6年生は、「防災について学んだことから自ら判断し、命を守る行動をとる」「命はかけがえのない大切なものと思い続ける」ことなどを肝に銘じ、「これからも校内、地域の人たちとつながり、みんなの役に立つ人になりたい」との思いを強くする。
 
 釜小の校長経験もある髙橋勝教育長は脈々と続く同校の防災教育について、「みんなは形だけでなく、(先輩方の)心も受け継いで防災に取り組んできた。これからも大事にしてほしい。行動を起こすことで現状は変えられる。最初の小さな一歩が大きな力になる」と児童らの取り組みをたたえた。
 
髙橋勝教育長に優秀賞の賞状や盾を見せながら受賞を報告する児童

髙橋勝教育長に優秀賞の賞状や盾を見せながら受賞を報告する児童

 
 同顕彰事業は、阪神・淡路大震災をはじめとする災害の記憶を後世につなぎ、防災教育の推進で未来の安全安心な社会をつくるのが目的。21回目となる本年度は全国111校・団体から応募があり、選考委員会による審査で各賞が決定した。釜石小は小学生部門で、ぼうさい大賞に次ぐ優秀賞を受賞した。同顕彰での同校の受賞は2011年度のぼうさい大賞、12年度の優秀賞、24年度の特別賞(はばタン賞)に続き4回目。
 
関係職員が児童らの取り組みをたたえ、防災への協力に感謝

関係職員が児童らの取り組みをたたえ、防災への協力に感謝

 
 山﨑柊琳団長は「防災の活動を6年間重ねてきた中での受賞なのでうれしい。表彰式では他の地域の発表も聞けて参考になった。今後に生かしたい。後輩たちにもこの活動を引き継いでほしい」と願う。佐野楓花副団長も「釜小の取り組みを全国の人に知ってもらえた」と喜ぶ。生まれる前の大震災で自宅も津波の被害を受けた。「下校時津波避難訓練はすごくためになっている」と話し、次の世代に向け、「小さい頃から防災の学習をして、もしもの時に命が助かれるように行動してほしい」と思いを込める。
 
 11年の震災時も同校にいた“いのちの教育”担当の及川美香子教諭は「防災学習は地域の現状を踏まえ、アレンジしながら継続していくことが大事」と改めて実感。今春、中学に進む6年生に対し、「自分たちがやってきたことを他の小学校出身者にも伝え、みんなでこの地域の命を守れる人になってほしい」と期待した。

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震災15年― 誓う!「津波時は高台へ」 避難の教訓 新春韋駄天競走で釜石から再発信

第13回新春韋駄天競走。震災後に生まれた小学生も津波避難の教訓を学ぶ

第13回新春韋駄天競走。震災後に生まれた小学生も津波避難の教訓を学ぶ

 
 未曽有の被害をもたらした東日本大震災からまもなく15年―。津波で多くの尊い命が奪われた大災害を教訓に、迅速な高台避難を啓発する「新春韋駄天競走」が今年も釜石市で行われた。同市大只越町の日蓮宗仙寿院(芝﨑恵応住職)が主催。2歳から81歳まで計122人が、高台の寺につながる急坂を懸命に駆け上がった。震災の記憶が薄れていく一方で、国内外では自然が猛威をふるう大規模災害が多発。参加者は地震津波以外にも通じる“命を守る行動”の大切さを改めて心に刻んだ。
 
 同寺の節分行事と連携し13回目を迎える韋駄天競走。開催日となった1日は一時、雪がちらつくなど、厳しい寒さとなった。参加者が駆け上がるのは震災時、津波で浸水したエリアから市指定津波避難場所となっている同寺までの286メートル。高低差は約26メートルあり、急坂や急カーブが連続する。スタート前には運営責任者から参加者に「競走はするが、一番の目的は津波避難の練習」との開催趣旨が伝えられた。
 
 年代別に6部門に分かれてスタート。親子の部では幼い子どもの手を引いて高台避難を疑似体験する姿が見られた。小中学生は日頃、運動の機会があるだけに坂道もなんのその。元気にゴールまで走り切った。
 
小学生以下の子どもが父母と参加する親子の部。手をつないで元気にスタート

小学生以下の子どもが父母と参加する親子の部。手をつないで元気にスタート

 
ゴールまであと少し。沿道の声援を受けながら仙寿院境内を目指す親子

ゴールまであと少し。沿道の声援を受けながら仙寿院境内を目指す親子

 
中高生の部は釜石の硬式野球チームの中学生が多数参加。激しいトップ争いを繰り広げる

中高生の部は釜石の硬式野球チームの中学生が多数参加。激しいトップ争いを繰り広げる

 
 一方、大人は…。男女とも先頭では“競走”らしいトップ争いを見せたほか、勢い余って最後の最後に転倒する人も。後続も力の限りを尽くし、それぞれのペースでゴールを目指した。沿道では声援を送ったり、拍手で出迎えたりと参加者を後押し。ゴール近くでは地元の只越虎舞がお囃子(はやし)を響かせて盛り上げた。
 
女性の部は過去の1位経験者らがトップ争い。余裕の表情で駆け上がる

女性の部は過去の1位経験者らがトップ争い。余裕の表情で駆け上がる

 
ゴール前では勢い余って転倒する参加者も…

ゴール前では勢い余って転倒する参加者も…

 
「きっつー!」。最後の上り坂で顔をゆがめる男性参加者

「きっつー!」。最後の上り坂で顔をゆがめる男性参加者

 
 「大変かなと思ったけど、意外に走れた」と笑顔を見せたのは、釜石市の最年少震災語り部、鵜住居小6年の佐々木智桜さん(11)。3年時に母と研修を受け、「大震災かまいしの伝承者」として語り部活動を始めた。震災の教訓を伝える同行事に「こういう経験をしていれば、津波警報や注意報が出た時にすぐ逃げられる。すごくいいと思う」と共感。「中学生になっても語り部を続け、もっと分かりやすくみんなに伝えていきたい」と伝承への思いを強くした。一緒に参加したのは弟の智琉さん(9)。「楽勝っす!」と余裕の訳は、同小で続けられる「てんでんこマラソン」で3年男子の1位になった自慢の脚力。「いざという時は必ず逃げる。この行事でみんなも覚えていてくれると思う」と話した。
 
初参加の行事を楽しんだ佐々木智桜(ちさ)さん、智琉(さとる)さん姉弟。津波から命を守る行動を再確認した

初参加の行事を楽しんだ佐々木智桜(ちさ)さん、智琉(さとる)さん姉弟。津波から命を守る行動を再確認した

 
 昨年から団体参加するのは釜石市国際外語大学校で日本語を学ぶ留学生ら。今年は昨年来日したミャンマー、ネパール出身の1年生男女17人が参加した。釜石に来てから学校の津波避難訓練で震災のことも学んだ学生ら。ミャンマー出身のター トー テイ ザさん(20)は急な坂と厳しい寒さに体力を奪われたようで、「疲れた」と一言。それでも「個人的に練習してきた」という成果を発揮し、男性34歳以下で上位に入る健闘を見せた。同じくミャンマー出身のシュエー ウェー ヤン トゥッさん(20)は「走るのは得意。楽しかった」とにっこり。母国では海のない所にいたため、「津波は怖い。慌てないで避難場所に早く逃げることが大切だと思う」と釜石での学びを脳裏に刻んだ。
 
釜石市国際外語大学校の留学生も必死に坂を駆け上がった。全員無事完走!

釜石市国際外語大学校の留学生も必死に坂を駆け上がった。全員無事完走!

 
女性の留学生からは笑みも…。津波防災を学ぶとともに釜石生活の思い出を作った

女性の留学生からは笑みも…。津波防災を学ぶとともに釜石生活の思い出を作った

 
写真上:各部門で1位になった参加者ら。「福○○」で良き年に期待! 同下:今年も只越虎舞が協力。表彰式の前に演舞し、参加者を楽しませるのが恒例

写真上:各部門で1位になった参加者ら。「福○○」で良き年に期待! 同下:今年も只越虎舞が協力。表彰式の前に演舞し、参加者を楽しませるのが恒例

 
 各部門の1位には「福男」「福女」「福親子」の認定書が贈られた。男性34歳以下で1位となった奥州市の団体職員、田代優仁さん(28)は10年ぶり2回目の参加で2回目の「福男」。山田町出身で震災時は中学1年生。家族は無事だったが、津波で自宅が流失し、盛岡市に転居した。韋駄天競走には高校3年生の時に初参加。陸上競技部で鍛えた足で、男性29歳以下(当時の部門)で1位となった。今回は、転職で地元岩手に戻ってきたこともあり、「大船渡の山火事や能登の地震などさまざまな災害が起こる中で、(震災を経験した身として)避難の意識付けを啓発していく立場でありたい」と参加を決めた。「災害はいつどこで何が起こるが分からない。どんな状態でも逃げられるよう、常に意識を持っておかないと。県人のDNAとして受け継いでいきたい」と後世に伝えたい思いを口にした。
 
10年ぶりの参加で2度目の「福男」となった田代優仁(まさひと)さん(中央)。「いつでも逃げられるように…」と教訓伝承へ思いを強くする1

10年ぶりの参加で2度目の「福男」となった田代優仁(まさひと)さん(中央)。「いつでも逃げられるように…」と教訓伝承へ思いを強くする

 
しっかりと手をつなぎ、ゴールを目指す女性参加者。気持ちを一つに一歩一歩前へ…

しっかりと手をつなぎ、ゴールを目指す女性参加者。気持ちを一つに一歩一歩前へ…

 
 同行事は兵庫県西宮市、西宮神社の新年開門神事「福男選び」を参考に2014年にスタート。同神社開門神事講社の平尾亮講長(49)が釜石を訪れ、運営に協力する。交通事故の後遺症で右足が不自由ながら、毎回、松葉づえをついて参加者と一緒に坂を駆け上がる。起源は鎌倉時代とされる歴史ある同神事に携わるが、「釜石に来ると、皆さんの熱意に『負けとるやないか』と悔しい思いになる。僕らも負けてられへん!」。西宮市は阪神・淡路大震災の被災地でもあり、両震災の教訓継承に思いを同じくする。
 
西宮神社開門神事講社の平尾亮講長。誰もが直面する避難への意識を持ってほしいと毎回、この坂を駆け上がる

西宮神社開門神事講社の平尾亮講長。誰もが直面する避難への意識を持ってほしいと毎回、この坂を駆け上がる

 
海の方角に向かって黙とう。この行事の最後に必ず行う震災犠牲者への祈り

海の方角に向かって黙とう。この行事の最後に必ず行う震災犠牲者への祈り

 
 来月で東日本大震災から15年となる中、仙寿院の芝﨑住職は「(参加者の)皆さんのように津波のことを考えてくれる人たちは少なくなってきた。被災者がつらい思いからまだ抜けきっていないことも多くの人は忘れてしまっている」と警鐘を鳴らし、「津波はいつくるか分からない。『大震災を忘れてはならない』『身を守るには逃げるしかない』ということを声高に伝えてほしい」と願った。

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迅速・的確に!油流出に備え、防除手順確認 関係機関、釜石港で訓練 連携深める

油の流出を想定した訓練で防除の手法を確認する参加者

油の流出を想定した訓練で防除の手法を確認する参加者

 
 釜石港や周辺海域に関係する26機関でつくる岩手県沿岸排出油等防除協議会釜石地区部会(事務局・釜石海上保安部)は21日、釜石市大平町の県オイルターミナル(略称・IOT)専用桟橋周辺で油の海上流出事故に備えた対策訓練を行った。釜石海保や石油会社など同協議会の関係者ら35人が参加。早期解決に向けた関係機関の連携、被害を抑えるために必要な対応策を確認した。
 
 同協議会は、船舶事故などで油や有害液体物質が海に排出された際、関係機関が連携、協力を図って被害拡大を防止する。釜石地区部会ではコロナ禍で同訓練の実施を見送っていたが、2023年に必要な資機材の取り扱いを確認する形で再開した。
 
油流出事故に備えた対策訓練の開始式

油流出事故に備えた対策訓練の開始式

 
 開始式であいさつした釜石地区部会長の尾野村研吾・釜石海上保安部長によると、釜石港には年間1100隻ほどの大型船舶が出入港し、IOTには総容量約2万4000キロリットルの石油タンク(計8基)がある。各事業者の事故防止や防除体制の強化などにより、「ここ数年、油などの排水事故は発生していない」。
 
参加者を激励する釜石海保の尾野村研吾部長

参加者を激励する釜石海保の尾野村研吾部長

 
 全国的にも減少傾向だというが、「事故が発生した場合、地域生活や経済活動への悪影響は甚大」と指摘。「被害をいかに最小限に食い止めるかが重要。原因者の迅速かつ的確な防除と合わせ、関係者が協力して対処することも必要となる。訓練で日頃の取り組みを振り返り、練度の向上、相互連携の強化につなげてほしい」と激励した。
 
 訓練は、タンカーが岸壁に接触して船体に穴が開き、重油が海に漏れたとの想定。IOTの関係者は海上保安部に通報し、被害状況を調査。重油の広がりを防ぐため海上にオイルフェンスを張り、油吸着材を使って回収する手順を確かめた。
 
油に見立てた着色剤で海面が染まったのを確認、情報伝達を受け動き出す参加者

油に見立てた着色剤で海面が染まったのを確認、情報伝達を受け動き出す参加者

 
油の広がりを抑えるためオイルフェンスを張る作業船

油の広がりを抑えるためオイルフェンスを張る作業船

 
油防除訓練で回収作業地点に資機材を運び込む参加者

油防除訓練で回収作業地点に資機材を運び込む参加者

 
油吸着材を使用して油を回収する手順を確認した

油吸着材を使用して油を回収する手順を確認した

 
 釜石海保の巡視船「きたかみ」の搭載艇やゴムボートによる放水、航走攪拌(かくはん)も実施。万一、設置したオイルフェンスから漏れ出た場合の分散処理につながる方法として実演した。海に見立てた水槽に油を浮かべ、油吸着材による回収や油処理剤の散布による微細化の様子を見せる講習もあった。
 
船からの放水や高速走行で油の分散処理につなげる訓練

船からの放水や高速走行で油の分散処理につなげる訓練

 
重油を使って吸着材や処理剤の取り扱いを説明する講座

重油を使って吸着材や処理剤の取り扱いを説明する講座

 
 警察や消防、港湾関係者ら約20人が見学しており、釜石海保警備救難課の池田隆課長が訓練内容を解説した。自身が携わった事案として、2021年に八戸港沖で発生した外国船籍の貨物船の油流出事故を挙げ、「船を撤収するまでに5年かかった」と、ひとたび起これば長期間、その地域に甚大な被害をもたらす可能性があることを示唆。「いつ、どこで、こうした事故が起こるか分からない。この訓練での動き、感じ考えたことをそれぞれの機関で共有してほしい」と求めた。
 
 IOTの柏﨑理(おさむ)統括マネジャーによると、同桟橋にオイルタンカーが着岸する際、日常的にオイルフェンスの展張を行っている。訓練では普段の作業時と同様にスムーズにできたとした上で、「協議会の連携強化と防除のスキル向上について、参加者の真剣な姿勢によって十分に達成されたと認識。特に油吸着材の効果的な使用法についての実践は今後の貴重な財産となった」と手応えを実感。「皆さんが使うエネルギーを預かっていることから、安定供給と安全操業を続ける」と気を引き締めた。
 
訓練参加者の動きを見守り、総評したIOTの柏﨑理統括マネジャー

訓練参加者の動きを見守り、総評したIOTの柏﨑理統括マネジャー

 
 池田課長も「油防除の手法を会員にしっかりと伝えられ、有効な訓練となった」との認識。油流出の事故が起きた場合、「早い通報、流出範囲の特定など時間の速さが大事になる。協議会の会員が持つ資機材を集め、できるだけ早く現場に投入することも重要で、今回の訓練を生かし、連携して対応したい」と話した。

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県消防職員意見発表会 釜石大槌消防本部代表に前川柊哉さん(釜石署)を選出

意見発表した(右から)釜石消防署の佐藤優樹さん、前川柊哉さん、大槌消防署の大久保太陽さん

意見発表した(右から)釜石消防署の佐藤優樹さん、前川柊哉さん、大槌消防署の大久保太陽さん

 
 2月16日開催の第49回岩手県消防職員意見発表会(県消防長会主催)への出場者を決める釜石大槌地区行政事務組合消防本部(駒林博之消防長)の選考会が14日、釜石市鈴子町の釜石消防庁舎で開かれた。釜石、大槌両消防署に勤務する消防士3人が、業務に関わる課題や改善策を発表。審査により、釜石署の前川柊哉さん(28)が同消防本部の代表に選ばれた。
 
 同発表会は若手消防職員が業務の諸課題解決へ意識を高め、さらなる研さん、業務改善につなげるのが目的。県内12消防本部から代表1人が出場して意見発表を行う。釜石大槌地区消防本部の本年度の代表選考会には、釜石消防署の佐藤優樹さん(25)、前川柊哉さん(28)、大槌消防署の大久保太陽さん(23)が出場。制限時間5分の中で、自らの経験を基にそれぞれの視点で意見を述べた。
 
県消防職員意見発表会に向けた釜石大槌地区行政事務組合消防本部の代表選考会=14日

県消防職員意見発表会に向けた釜石大槌地区行政事務組合消防本部の代表選考会=14日

 
「サイレンが届く社会へ」と題して発表した佐藤優樹さん(25)

「サイレンが届く社会へ」と題して発表した佐藤優樹さん(25)

 
 佐藤さんは、救急出動など緊急車両の走行時に進路を譲ってもらえない場面が増えていることに危機感を表した。一般車両が進路を譲ることは道路交通法で定められている義務だが、社会意識の低下が見られるという。改善策としてシミュレーターなどでの緊急車両の接近体験、緊急走行中の動画を利用したSNSなどでの意識啓発、子どものころからの交通教育を提案。「サイレンが届かない社会は命の優先順位を失った社会。進路を譲る行為は人の命を救う行動である」と訴えた。
 
「消防分野におけるAI導入の現状と有用性」と題して発表した大久保太陽さん(23)

「消防分野におけるAI導入の現状と有用性」と題して発表した大久保太陽さん(23)

 
 大久保さんは、消防分野へのAI導入の可能性について発表した。AI(人工知能)技術を利用した消防ロボットシステムの研究、広域監視型火災検知システムの導入など国内の動きを挙げ、消防へのAI導入が職員の負担軽減につながると期待。緊急通報の内容解析、出動指令の自動分類のほか、火災現場などで隊員の心身の状態をAIが評価することで、疲労や心的ストレスによる受傷事故を未然に防げるのではないかと考えた。「今後、重要になるのはテクノロジーと現場知識の融合」とし、安全で効率的な消防活動の未来を描いた。
 
「私だから言えること」と題して発表した前川柊哉さん(28)

「私だから言えること」と題して発表した前川柊哉さん(28)

 
 同消防本部に採用される前、千葉市消防局で6年間勤務した経験を持つ前川さんは「私だから言えること」と題して発表した。都市部と地方の救急、火災件数や活動事案、課題の違いを示した上で、近年、顕著な広域化する大規模災害への対応には両方の経験が強みになると主張。都市部と地方の消防職員の交換留学(相互派遣)制度の運用を提案した。経験の幅が広がることで現場の対応力が格段に向上、ネットワークができることで緊急消防援助隊の派遣でも効力を発揮するなどの利点を挙げ、「実現すれば若手職員のレベル、モチベーションアップにもつながる」と今後の制度整備を望んだ。
 
 市教委の髙橋勝教育長、駒林消防長ら4人が審査員を務め、▽論旨の明確性、説得力▽業務に対する問題意識、発展性▽発表態度、表現力―の3項目で採点した。その結果、前川さんが同消防本部の代表に選ばれた。審査長の髙橋教育長は講評で、「喫緊の課題への対応、大規模災害を見据えた提言、新たな技術の活用と三者三様の提案で、とてもいい発表だった。代表の前川さんには県大会でもいい成績を挙げられることを期待したい」と述べた。
 
3人の発表には審査員のほか、消防職員約20人が耳を傾けた

3人の発表には審査員のほか、消防職員約20人が耳を傾けた

 
審査長の市教委、髙橋勝教育長(左)が講評。発表者3人の着目点をたたえ、今後につながるアドバイスも行った

審査長の市教委、髙橋勝教育長(左)が講評。発表者3人の着目点をたたえ、今後につながるアドバイスも行った

 
 代表に選ばれた前川さんは「都市部でも地方でも消防としてやることは変わらないが、出動件数、組織の風土、地理的環境などの違いがあり、目的達成までの過程も異なる。今回のような問題提起があれば、消防全体がさらに良くなるのでは」と期待。県大会に向け、「共に発表した2人の思いも背負って発表できれば。抑揚など伝え方をもう少し工夫し、本番に臨みたい」と意気込んだ。県消防職員意見発表会は2月16日午後1時から、盛岡市のアートホテル盛岡で開かれる。