タグ別アーカイブ: 防災・安全

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夏の交通事故防止を呼び掛け ドライバーはこまめな休憩を! 鵜住居町で初の街頭指導

夏の交通事故防止県民運動 街頭啓発活動=12日、鵜住居町

夏の交通事故防止県民運動 街頭啓発活動=12日、鵜住居町

 
 夏の交通事故防止県民運動が15日から始まった。釜石市では一足早く12日に、市交通安全対策協議会(会長=小野共市長)による統一街頭指導が鵜住居町で行われた。夏場は暑さで疲労がたまりやすく、居眠りや注意力低下で運転中の事故発生が懸念される。長時間運転するドライバーは特にもこまめな休憩が必要だ。24日までの運動期間中、市内では防災行政無線や車両巡回、横断幕やのぼり旗などでの広報活動を行い、事故防止を呼び掛ける。
 
 12日は街頭指導に先立ち、うのすまい・トモスで開会式が行われた。交通安全関係3団体、交通指導隊、警察署から計83人が参加。同協議会会長の小野市長は「県内では高齢者が関係する交通事故が多い現状に加え、全国的に子どもが被害に遭う事故も後を絶たず、全年齢層での交通事故対策が必要。関係機関、団体の連携を密にし、運動を推進していきたい」とあいさつした。
 
うのすまい・トモスで行われた開会式

うのすまい・トモスで行われた開会式

 
 釜石警察署の三浦正人署長は「管内では今年、人身、物損事故ともに昨年より若干増加傾向にある」とし、ドライバーや歩行者へのさらなる注意喚起の必要性を指摘。重大事故に直結する横断歩行者妨害や速度超過などの交通指導取り締まりを強化していく方針を示した。
 
 この後、鵜住居小・釜石東中前の交差点からスーパーマルイチまでの国道45号沿いの歩道に参加者が散らばり、街頭啓発活動が行われた。ハンドポップを掲げてドライバーに安全運転を呼び掛けたほか、歩行者や自転車利用者にチラシを配り、事故防止への意識を促した。
 
国道45号は小中学生の通学路。下校途中の児童にも交通安全をアピール

国道45号は小中学生の通学路。下校途中の児童にも交通安全をアピール

 
ドライバーや自転車利用者にチラシを配り安全運転を呼び掛けた

ドライバーや自転車利用者にチラシを配り安全運転を呼び掛けた

 
 同運動のスローガンは「わたるまえ わすれずかくにん みぎひだり」。運動の重点に▽暑さなどによる過労運転の防止▽高齢者と夏休み中の子どもの交通事故防止▽飲酒運転の根絶▽全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底―を掲げる。同協議会では18日夜に大町青葉通り周辺の飲食店を訪問し、飲酒運転根絶への協力を呼び掛ける予定。
 
 釜石署によると、今年1月から7月15日までの管内の交通事故発生件数は人身事故が13件(うち死者1人、負傷者12人、前年同期比1件増)、物損事故が311件(同10件増)。八重樫徹交通課長は「交差点付近の車と人の事故は、安全確認をしっかりしていれば防げたであろう事故が多い。高速道路の釜石道、三陸道は東北道のようなサービスエリアなどがないので、高速道を降りての休憩も意識してほしい」と話す。
 
スーパーの買い物客にもチラシを配り、交通安全意識の高揚を願った

スーパーの買い物客にもチラシを配り、交通安全意識の高揚を願った

 
間もなく夏休みに入る子どもたち。交通ルールを守って事故に遭わないよう気を付けよう!

間もなく夏休みに入る子どもたち。交通ルールを守って事故に遭わないよう気を付けよう!

 
 同協議会は季節ごとの各種交通安全運動の街頭指導をこれまで大町や中妻町で実施してきたが、今回初めて鵜住居町で行った。今後は市中心部以外でも活動していく方針。

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安全、安心な地域づくりに尽力 警察業務への協力で釜石署が3団体8個人に感謝状贈呈

警察業務への協力で感謝状を贈られた釜石・大槌地区の団体や個人=1日、釜石警察署

警察業務への協力で感謝状を贈られた釜石・大槌地区の団体や個人=1日、釜石警察署

 
 犯罪や交通事故の防止活動などで警察業務に協力してきた団体や個人への感謝状贈呈式が1日、釜石市中妻町の釜石警察署(三浦正人署長)で行われた。長年の貢献で2人に県警察本部長感謝状、3団体6人に釜石警察署長感謝状が贈られた。
 
 警察業務協力者への感謝状贈呈は、1954(昭和29)年7月1日に現行の警察制度が施行され、都道府県警察が発足したことにちなみ、毎年この日に行われている。釜石署では今回、登下校時の児童の見守り、少年の非行防止、交通安全意識の啓発、防犯パトロール、特殊詐欺被害防止の広報活動などで功労のあった団体と個人が対象となり、三浦署長が一人一人に感謝状を手渡して気持ちを伝えた。
 
県警本部長名、釜石署長名の感謝状が贈られた

県警本部長名、釜石署長名の感謝状が贈られた

 
三浦正人署長(右)が対象者に賞状を手渡し、感謝の気持ちを表した

三浦正人署長(右)が対象者に賞状を手渡し、感謝の気持ちを表した

 
 三浦署長は同署管内の治安情勢についても説明。刑法犯認知件数は2015年以降、減少が続いていたが、21年から増加に転じ、中でも詐欺被害が増えていることを指摘。本年度に入り、SNSの利用で多額の現金をだまし取られる被害も発生していることを伝えた。昨年の交通事故件数は前年より減少したが、今年に入り増加傾向に。2月には大槌町内で死亡事故もあり、「予断を許さない状況」とし、「地域住民の安全、安心のため力添えを」と引き続きの協力を願った。
 
 県警本部長感謝状を受けた佐々木喜一さん(83)は町内会長を務める小佐野町で、20年近く下校時の児童の見守り、月1回の町内防犯パトロールなどを継続。小佐野交番の開所時には同交番連絡協議会の立ち上げにも尽力した。「今のところ大きな犯罪はないが、町内を走る国道は過去に死亡事故が多発していた。幸い今年はゼロだが、高齢者が信号のない場所を横断するケースがあり心配。さらに注意喚起をしていきたい」と気を引き締めた。
 
「県警察本部長感謝状」を受けた佐々木喜一さん

「県警察本部長感謝状」を受けた佐々木喜一さん

 
 釜石署長感謝状を受けた柴田渥さん(77)は松原町内会長で、地域の防犯意識向上、犯罪予防活動に尽力する。東日本大震災の津波被害を受けた同地区は、世帯数が3分の1に減少。独居高齢者が増え、本人や周囲が気付かぬまま犯罪に巻き込まれる危険性もあることから、「詐欺が疑われる不審電話、しつこいセールスなど電話対応に関する注意喚起は一層重要。100歳体操など定期的に集まる機会は情報交換の場にもなっているので、防犯への心構えも呼び掛けていきたい」と話した。
 
防犯、交通安全など地域を守る活動を長年続けてきた皆さん。住民の安全安心に大きく貢献

防犯、交通安全など地域を守る活動を長年続けてきた皆さん。住民の安全安心に大きく貢献

 
 感謝状を受けた団体、個人は次の通り。
【県警察本部長感謝状】 祝田稔平(大槌町上町)、佐々木喜一(釜石市小佐野町)
【釜石警察署長感謝状】 ▽団体:釜石市立甲子小学校、釜石遊技業組合、中妻地区見守り隊 ▽個人:猪又春一(平田)、佐々木静男(平田町)、佐々木義晴(小佐野町)、柴田渥(松原町)、武石勝雄(野田町)、佐々木正雪(甲子町)※いずれも釜石市

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空高く“水のカーテン” 守る!心構え示す一斉放水 釜石市消防団演習 任務遂行へビシッと

空に向けた一斉放水で防火への心構えを示す釜石市消防団員

空に向けた一斉放水で防火への心構えを示す釜石市消防団員

 
 釜石市消防団(坂本晃団長、全8分団36部、団員524人)の2024年度消防演習は9日、鈴子町の釜石消防庁舎駐車場などで行われた。団員443人、ポンプ車など38台が出動。ビシッと姿勢を正して観閲を受けたり、空に向けた一斉の放水訓練などを繰り広げ、災害や火災から「住民の安全安心を守る」と心構えを示した。
 
 開会行事で、統監の小野共市長が訓示。全国各地で頻発する地震や近隣自治体で発生した山林火災などに触れながら、「いざという時に頼れるのは消防団。地域に密着した防災活動の中核として職務に尽力してほしい」と求めた。統監らによる閲覧を受けた団員たち。姿勢を正し、任務遂行へ士気を高めた。
 
統監の小野共市長の訓示(左下写真)に聞き入る団員ら

統監の小野共市長の訓示(左下写真)に聞き入る団員ら

 
消防団を背負う団員たち。敬礼し、職務遂行へ気を引き締める

消防団を背負う団員たち。敬礼し、職務遂行へ気を引き締める

 
 災害現場や火災予防で優秀な活動をした団員や部をたたえる市長表彰として、17人に功績章、5つの部に竿頭綬(かんとうじゅ)を授与。在職3年以上で職務精励、消防技能に優れた5人に市消防団長表彰の精勤章を贈った。
 
 新規入団者4人が辞令を受け、代表して第8分団2部(唐丹町本郷)所属の伊藤康生さん(22)が「良心に従って誠実に消防の義務を遂行する」と宣誓した。
 
表彰では優れた活動を続ける部や団員をたたえた

表彰では優れた活動を続ける部や団員をたたえた

 
坂本晃団長の前で宣誓を行う新入団の伊藤康生さん

坂本晃団長の前で宣誓を行う新入団の伊藤康生さん

 
 千鳥町の甲子川河川敷にポンプ車を並べ、豪快な放水訓練を実施。川からくみ上げた水を天高く放ってつくった“水のカーテン”に、見守る市民から大きな拍手が送られた。近くに住む大澤七奈さん(9)は「生で見るのは初めて。水の勢いがすごかった」と目を大きくし、父賢一さん(43)は「このような放水が行われることがないようにしなければいけないが、身近にたくましい人たちがいるのを感じてもらえただろう」とうなずいた。
 
川に向かって一斉放水。訓練で身に付けた技能を発揮した

川に向かって一斉放水。訓練で身に付けた技能を発揮した

 
 岩手県防災ヘリコプターによる救助救出訓練もあった。風水害や大雨による河川氾濫、津波の浸水などが発生し、ビル(建物)の屋上で孤立している要救助者がいるとの想定。消防庁舎訓練棟周辺の上空に到着した防災ヘリから航空隊員がロープで降下し、要救助者役の釜石消防署員を抱えるなどしてヘリに引き上げた。団員や市民らは離れた場所から救助の様子を見つめた。
 
岩手県防災ヘリとの連携を確認する救助救出訓練

岩手県防災ヘリとの連携を確認する救助救出訓練

 
放水訓練や消防車両を見ようと釜石消防署周辺に市民が集った

放水訓練や消防車両を見ようと釜石消防署周辺に市民が集った

 
 釜石市内では昨年、10件の火災があり、1人が死亡、3人が負傷した。今年はこれまでに5件の火災が発生。前年の5月末までと比べると1件少ないだけで、警戒が必要だ。坂本団長は「頼られる団であるよう団員一丸となって訓練に励み、組織の充実、強化を図っていく」と気を引き締めた。

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クマ被害防止へ対策を! 釜石市内でも目撃情報多数 自宅周辺、入山時、寄せ付けない工夫を

釜石市内で目撃されたツキノワグマ(資料写真提供:三浦勉さん)

釜石市内で目撃されたツキノワグマ(資料写真提供:三浦勉さん)

 
 釜石市内でも春以降、ツキノワグマの目撃情報が相次いでいる。目撃件数が大幅に増加した昨年同時期よりは少ないものの、市内各地で目撃があり、市は注意を呼び掛ける。例年5~6月は目撃件数が増加する時期。地形上、民家の背後に山が接近する同市では、登山や山菜採りなど意図して入山する以外にも、家屋周辺にクマを寄せ付けるものを放置しないなどの日常生活での対策も求められる。
 
 市水産農林課によると、今年に入り同市に寄せられたクマの目撃件数は74件(6月9日現在)。春を迎えてからは4月が6件(昨年同月16件)、5月が26件(同47件)で、昨年同時期に比べるとほぼ半減しているが、餌となるクワの実がなる6~7月は例年、目撃情報が多くなることから注意が必要。
 
クマは餌となる木の実などを求めて樹木に登る。頭上にも注意(資料写真提供:三浦勉さん)

クマは餌となる木の実などを求めて樹木に登る。頭上にも注意(資料写真提供:三浦勉さん)

 
クマの目撃情報は市内各地である。防災行政無線や市のLINEなどで情報収集を

クマの目撃情報は市内各地である。防災行政無線や市のLINEなどで情報収集を

 
 同市の2023年度のクマ目撃件数は、前年度の2倍以上となる321件。人身被害は10、11月に計2件発生し、高齢女性2人が負傷した。自宅近辺のカキの木が誘引物になったとみられている。5月には只越町の市役所付近で、クマ1頭がアパート駐車場に居座り、約3時間後に捕獲されるという事案もあった。
 
 釜石警察署によると、市内では今年、クマによる人身被害は今のところ発生していないが、6月に入り、米ぬかを保管していた倉庫が荒らされるクマによるものとみられる被害が発生している。
 
 クマの目撃は例年、夏場は減少するが、カキやクルミ、クリなどの実がなる秋は再び増加傾向にある。山に入る際はクマよけの鈴や笛、ラジオなど音の出るもの、クマ撃退スプレーを携帯し、複数人で行動。見通しの悪い場所、周りの音が消される沢沿いでは特に意識して音を出し、人間の存在をクマに知らせることが大切だ。クマの目撃情報がある場所は避け、ふんや爪痕を見つけたら引き返す判断も。
 
クマが引っかいたとみられる爪痕が残る樹木

クマが引っかいたとみられる爪痕が残る樹木

 
クマの目撃情報がある場所では特に注意が必要

クマの目撃情報がある場所では特に注意が必要

 
 被害に遭わないためには自宅周辺の対策も必要。▽納屋などに果物、穀物、アルコール類など、においが強いものを保管しない▽生ごみは収集日の朝に出す▽庭や家庭菜園に果実などを放置しない(クマが寄り付く前に収穫など)▽墓の供え物は持ち帰る―。人間の居住区にクマを寄せ付けないことが重要だ。
 
 市では目撃情報が寄せられるたびに地元猟友会などと現場に出向き、状況把握や原因分析、爆竹を鳴らすなどの追い払いを行っている。市水産農林課の清藤剛林業振興係長は「民家近くへの出没の多くがカキ目当て。誘引物をなくすと来なくなるケースがほとんど。木の所有者には適正な管理をお願いしたい」と呼び掛ける。入山時については「(クマが)いる所に入っていくということを意識してほしい。目撃が多い朝、夕は避け、出没情報がある場所にはできるだけ行かないことも大事」と警戒を促す。
 
伐採した木など朽ちた木片に集まるアリもクマの誘引物となるので注意(資料写真提供:三浦勉さん)

伐採した木など朽ちた木片に集まるアリもクマの誘引物となるので注意(資料写真提供:三浦勉さん)

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9カ月間事故死ゼロ 岩手県警本部、釜石市に賞賛状 記録伸長へ「気を引き締め」

 「交通事故死ゼロ」継続へ気持ちを引き締める関係者

「交通事故死ゼロ」継続へ気持ちを引き締める関係者

 
 釜石市は、交通死亡事故ゼロ9カ月を5月24日に達成し、31日に岩手県警察本部(増田武志本部長)から賞賛状が贈られた。同市役所で伝達式が行われ、小野共市長や同席した交通安全関係者らが事故防止に向けてさらに意識を高めた。
 
 釜石署の三浦正人署長、八重樫徹交通課長らが市役所を訪ねた。菊池重人釜石地区交通安全協会長、佐藤鉄太郎市交通指導隊長らが見守る中、三浦署長が小野市長に賞賛状を伝達。「官民一体の事故防止活動によって地域の安全な交通環境が確保された。この記録がさらに伸長されるのを期待する」と引き続きの協力を求めた。
 
三浦正人署長が小野共市長(左)に賞賛状を伝達した

三浦正人署長が小野共市長(左)に賞賛状を伝達した

 
 小野市長は「市民、警察、交通安全関係者の協力のおかげ」と強調。一方で、全国的には子どもたちを巻き込んだ事故、あおり運転、飲酒運転などさまざまな事故を誘発する行動が連日報道されているとし、「交通死亡事故抑止を9カ月で終わらせず、長く続くよう力を尽くしていきたい」と気を引き締めた。
 
 同署によると、市内では2023年8月24日に鵜住居町内の主要地方道で農業用運搬車を運転していた高齢の男性が車両の下敷きになり犠牲となる事故があって以来、死亡事故が発生していない。ただ近年はこのケースのように想定外、思いがけない事故が発生。防波堤からの転落など沿岸部特有の事故も目立つという。
 
 交通安全・事故抑止の広報啓発は人や車両の通行が多いところで展開されるが、菊池会長や佐藤隊長は想定外の事故発生を見据えた取り組みの必要性を指摘。高齢の独居者が増える市内の状況を踏まえた呼びかけ強化についても連携して実行したい考えを伝えた。
 
懇談では事故抑止への思いを語り合った

懇談では事故抑止への思いを語り合った

 
 今年4月に甲子町内の東北横断道で高齢者による死亡事故が発生しているが、高速道路上での事故はこの制度では含まないとのこと。ただ、利用も多いうえ、「油断した時に事故は起きる」ことから、同署では高速道路交通警察隊などとも協力して事故抑止を図る考えだ。
 
 県警による顕彰制度は基準日数(人口規模によって異なる)に達した市町村に贈られる。17年4月に改正され、抑止期間が1年から9カ月に変更。釜石市は、23年3月にも9カ月達成の賞賛状を受けている。

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安全、確実、迅速に!消防救助の技 訓練成果披露 岩手県大会に向け選考会 釜石・大槌署

煙道内から要救助者を救出する技術の練度を見せる消防署員

煙道内から要救助者を救出する技術の練度を見せる消防署員

 
 消防救助技術岩手県大会に向けた釜石大槌地区行政事務組合消防本部(駒林博之消防長)の選手選考会が5月29日、釜石市鈴子町の釜石消防署(小林太署長)で開かれた。釜石、大槌の2署から隊員17人が出場。県大会でエントリーする陸上の部4種目で訓練の成果を見せた。
 
 消防の基本技能となる15メートルの「はしご登はん」、高所に水平に張られた長さ20メートルのロープを渡って対面する塔上の要救助者を助け出す「ロープブリッジ救出」(4人一組)、8メートルの煙道をくぐって要救助者を救出・搬送する「ほふく救出」(3人一組)、地下などでの災害を想定した訓練で空気呼吸器を装着して下降しロープを用いて要救助者を引き上げる「引揚救助」(5人一組)を実施。それぞれ動作の正確さ、タイム、安全性などを確認した。
 
指導陣が見守る中で行われた県大会派遣メンバーの選考会

指導陣が見守る中で行われた県大会派遣メンバーの選考会

 
ロープを渡って要救助者を助け出すロープブリッジ救出

ロープを渡って要救助者を助け出すロープブリッジ救出

 
地下やマンホール内などでの災害を想定した引揚救助

地下やマンホール内などでの災害を想定した引揚救助

 
 はしご登はんは、命綱を作る「結索(けっさく)」から、高さ15メートルの壁にかかったはしごを登るまでの合計タイムで競われる。ロープで作った命綱の端の長さや輪っかの大きさなども採点されるため、正確性も求められる。
 
 その競技に挑んだのは2人。釜石消防署の篠原優斗さん(25)は「普段通りにできなかった。しっかり修正し、今後も頑張っていく」と前を向き、大槌消防署の大津果穂さん(23)は「高いところで救助を待っている人を素早く、安全確実に救助できるよう、学んだ技術を生かしたい」と力を込めた。
 
一本勝負!成果披露の本番に向けて集中力を高める

一本勝負!成果披露の本番に向けて集中力を高める

 
高さ15メートルのはしごを勢いよく登る出場者

高さ15メートルのはしごを勢いよく登る出場者

 
 出場者は5月上旬からそれぞれ鍛錬。その努力を発揮しようと競技に臨み、「いいぞ、Go!」「最後まで、丁寧に」など互いに声援を送り合った。磨いた技術を出し切った署員もいれば、救助の流れの正確さを欠くなどして審査が中止された種目も。各自課題を見いだし、選考会後には先輩署員の助言も受けながら訓練を重ねた。
 
選考会で課題を確認し、向上心を高めた隊員ら

選考会で課題を確認し、向上心を高めた隊員ら

 
救助技術を磨こうと選考会後も熱心に訓練に臨んだ

救助技術を磨こうと選考会後も熱心に訓練に臨んだ

 
 成績上位者は6月27日に矢巾町の県消防学校で行われる県大会に出場する。同本部の選手たちが目指す東北地区指導会は7月27日に青森県八戸市、全国大会は8月23日に千葉県市原市で実施。また、水上の部は7月17日に東北地区指導会(宮城県利府町)があり、同本部から「溺者救助」(3人一組)に選手を派遣する予定だ。

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意識高まる津波防災は…?釜石に学ぶ インドネシア・アチェの教員ら、避難疑似体験

東日本大震災時に子どもたちが避難した経路を歩くインドネシア・アチェ市の教員ら

東日本大震災時に子どもたちが避難した経路を歩くインドネシア・アチェ市の教員ら

 
 インドネシア・スマトラ島最北端にあるアチェ州のバンダ・アチェ市の中学校教員や津波博物館職員ら17人が7日、釜石市鵜住居町を訪れ、東日本大震災の教訓や津波防災の取り組みを学んだ。同じ地震津波の常襲地として釜石の防災教育への関心は高く、震災の記憶を追体験することで教育現場の対応や当時の避難行動に理解を深めた。
 
 JICA(国際協力機構)の草の根技術協力事業を活用した「バンダ・アチェ市における地域住民参加型津波防災活動の導入プロジェクト」の一環で来釜。根浜海岸の観光施設「根浜シーサイド」で、観光地域づくり法人かまいしDMCが提供する研修プログラムに参加した。
 
震災当時の事例から教育現場の対応などを考える体感ワーク

震災当時の事例から教育現場の対応などを考える体感ワーク

 
 鵜住居町のいのちをつなぐ未来館職員が進行。鵜住居小と釜石東中の児童・生徒らがいち早く高台に避難して助かった出来事を紹介し、「もし自分が東中の副校長だったら、どんな指示を出すか」という想定で、グループで話し合いながら教育現場の対応を考えた。
 
 その後、実際の避難行動をたどるため、同小中の跡地に立つ釜石鵜住居復興スタジアムへ。当時、東中2年生だった同館職員の川崎杏樹さん(27)は「地震発生から逃げ始めるまでにかかった時間は5分弱。いろんな情報を仕入れて判断し、動いた」と、インドネシア語の通訳を交えながら当時の状況を説明した。
 
釜石鵜住居復興スタジアムの石碑の前で体験を伝える川崎杏樹さん(右)

釜石鵜住居復興スタジアムの石碑の前で体験を伝える川崎杏樹さん(右)

 
教員らはメモをとったりしながら体験談に耳を傾けた

教員らはメモをとったりしながら体験談に耳を傾けた

 
 約1.1キロ先の福祉施設近くで足を止め、海の方向を振り返った川崎さんは「押し寄せる波の色は黒く、壁のようだった。海の香りに下水道の臭いが混じったようだった」と、あの時の記憶を伝えた。さらに押し寄せる波に「いつ死んでもおかしくない。そんな心境だった。助かるために高台を目指して全力で走った」と話し、そこからさらに約500メートル先の恋の峠まで歩いた。
 
 同館や祈りのパークを見学し、根浜に戻った一行。津波の速度体感に挑んだ。遡上(そじょう)する津波の平均速度とされる時速36キロで走るワゴン車を、津波に見立てて並走。その速さや、迫る恐ろしさを追体験した参加者に、川崎さんは「防災学習や訓練は楽しくできることも知ってほしい」とヒントを残した。
 
津波の速度を疑似体験。ワゴン車は時速36キロで走った

津波の速度を疑似体験。ワゴン車は時速36キロで走った

 
 2004年のスマトラ沖大地震・インド洋津波で甚大な被害を受けた同国。アチェ市第17中学校のカダルスミ校長(46)は「釜石の出来事、子どもたちの避難行動に感銘を受けた。学校の教育が大事だと感じた。私たちの学校は海に近く、津波の危険を帯びている。学んだことを今後の活動に生かしたい」と受け止めた。
 
 津波博物館のチュット・インタン・ダマヤンティさん(35)も「実際に避難経路を歩くと、写真だけでは分からない発見がたくさんあった。震災前から行われてきた防災教育の成果も感じた」と強調。今後起こりうる災害から命を守るための手段として学びの可能性を再認識したようで、「地域の災害と教訓を発信していく」と力を込めた。
 
 一行は、8日に東中や大槌高で教諭や生徒らと意見交換したりして交流。陸前高田市や宮城県石巻市なども回って震災遺構を見学し、11日に帰路に就いた。
 
釜石の津波防災や教育に理解を深めた参加者と支える関係者

釜石の津波防災や教育に理解を深めた参加者と支える関係者

 
 同プロジェクトを進めるのは、釜石市の一般社団法人根浜MIND(マインド)。同国では、防災に関する教育や活動が不十分で意識の低下が課題となっており、同法人が復興まちづくりの経験や津波防災活動の知見・ノウハウを提供しながら、住民主体の防災プログラムの開発をサポートしている。22年8月にスタートし、博物館スタッフや教育者、防災関係者らにオンライン講座を実施。現地に出向き、中学生を対象にしたプログラムも進行させている。
 
 同事業プロジェクトマネジャーの細江絵梨さん(37)は「各地の防災教育のいい部分を持ち帰ってもらえたら。手段は何でもいいので理解し、意味を考えて活動を継続していけるような自分たちのプログラムをつくってほしい」と期待。この後、現地に向かう同サブマネジャーの常陸奈緒子さん(39)はモデル校となる2つの中学校で子ども主体の活動を見守る予定で、「津波防災への意識、知識を高めるための仕組みをつくる、そのきっかけづくりをサポートしたい」と熱を込めた。

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振り返り備える…事前防災へ 釜石市、スマホで避難行動分析 訓練で実証実験、結果を報告

スマホの位置情報を活用し人流を解析する実証実験の結果説明会

スマホの位置情報を活用し人流を解析する実証実験の結果説明会

 
 釜石市は19日、3月の地震・津波避難訓練で行ったスマートフォンの位置情報データを活用して避難行動を分析する実証実験の結果説明会を市役所で開いた。リアルタイムな動きを可視化することで人が集まった場所を確認でき、想定されていなかった新たな経路を発見するなど情報収集ツールとして有用性も認識。市はデータをホームページで公開するほか、行動の振り返りで活用するといった「事前防災」に役立てることを視野に導入について検討を進める。
 
 実証実験は3月3日の避難訓練に合わせて実施した。ソフトバンク子会社で位置情報を活用したビッグデータ事業を手掛ける「Agoop(アグープ)」(東京)が協力。同社が提供する歩数計測アプリをスマホにインストールした約200人の行動データを分析した。
 
実証実験の概要や結果を説明する加藤有祐取締役兼CTO

実証実験の概要や結果を説明する加藤有祐取締役兼CTO

 
 説明会には市幹部職員、小中学校の校長、市議ら約50人が参加。同社の加藤有祐取締役兼最高技術責任者(CTO)が、リアルタイムの人流に岩手県が公表した最大クラスの津波浸水想定のシミュレーションを重ねた動画などをモニターに表示しながら説明した。
 
 人流データをモニタリングしたのは市内の4エリア。スマホの衛星利用測位システム(GPS)を活用したもので、最短3分前の行動を可視化、1分ごとに情報が更新される。ほとんどの人は警報発令の1~3分後に避難行動を開始し、10分ほどで避難が完了。素早く適切に行動できていることを確かめることができた。
 
釜石市内4エリアの人流データに津波シミュレーションを重ねて表示

釜石市内4エリアの人流データに津波シミュレーションを重ねて表示

 
 実験では「市が想定していなかった新たな経路を見つけられた」と報告もあった。避難は短距離ルートで-と考えていたが、唐丹地区では「遠回り」の動きが見られた。現地の様子を確認すると、勾配はあってもより早く浸水想定域を抜けることができ、加藤取締役は「素早く高台に避難するという教育が基になった行動では」と分析。訓練後に可視化データを見て振り返ることで、「危機意識や訓練への参加意識の醸成につながるのでは。平時からの利用が大事で、データ分析を活用してほしい」と強調した。
 
想定外ルートの発見につながった事例などを示しながら解説した

想定外ルートの発見につながった事例などを示しながら解説した

 
 市防災危機管理課の川崎浩二課長は「避難時に行動や場所をどう見いだしているか、可視化したことで知ることができた」と手応えを得る。避難訓練ではAI(人工知能)搭載のカメラを使って避難者の属性などを把握する実験も行っていて、こうした技術を組み合わせ、事前防災に役立てたい考え。行動の見える化で「訓練参加のモチベーションにつながれば」と期待する。
 
 ただ、県公表の浸水想定域には約1万1000人が暮らすが、最終的な訓練参加者は約2400人で、いかに増やすかが課題として残る。また、分析の鍵となるのはデータ量で、訓練の周知と合わせアプリのインストールも呼びかけたが、想定より少なかった。協力者を増やす取り組みも課題として挙がった一方で「下校時の避難訓練で活用したい」との声もあり、市は防災教育や地域防災の場での活用を検討していく。
 
 位置情報を用いた人流データは1月の能登半島地震でも活用された。同社が提携企業から収集した位置情報を基に通行実績マップを作成し、災害派遣医療チームや支援団体などに提供。救援ルート、物資供給の優先度の検討に役立てられたという。釜石の訓練では避難者がいる場所が自動で検知され、避難所に集まった人数がランキング形式で表示された。市の猪又博史危機管理監は「人の流れが自動的に目に見えれば、次の対応につながる。想定外の避難場所を見つけるのにも使えるのではないか。導入に向け、庁内で協議を重ねたい」とした。

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サバイバルマスター 1DAYチャレンジ!SOS編

サバイバルマスター 1DAYチャレンジ!
 

災害時に役立つスキルを手に入れろ!
 
2024年4月29日(月・祝) SOS編
 
/// 人の手助けができるサバイバルマスター®️に ///
 
全国の子どもたちにお願いです。
災害時は、大人たちだけでは対応できないことが次々に起こります。
そんな時のために一緒に学び続けよう。

8つのサバイバルプログラム

講習を受けると修了証、実技・筆記試験に合格するとワッペンがもらえます。
スキルが身についているか?学んだことを理解しているか?が合格の基準。
8つのプログラムすべてのワッペンがそろうと「サバイバルマスター」として認定されます。
 

サバイバルマスター 1DAYチャレンジ!チラシ(PDF/545KB)

スケジュール

9:30 受付開始
 
10:00 講習開始
このスキルを身に着けたら、どういった場面で役にたつか、学びながら練習しよう!
 
12:00 昼食
 
13:30 実技試験
スキルが身についているかテスト!
 
14:30 筆記試験
知識がしっかり身についているかテスト!
 
14:50 ふりかえり
 
15:00 解散

定員

15名(先着順)※最小催行:3名

インストラクター

■ディレクター
伊藤 聡(さんつな)
72時間サバイバル教育協会 認定ディレクター
釜石高等学校 探求学習講師「防災ゼミ」 外部講師
<<主な資格>>
防災士、防災検定2級、JVCAボランティアコーディネーション力検定2級、MFAチャイルドケアプラス
 
■コーチ
中島 崇(うみと私と)
72時間サバイバル教育協会 認定コーチ
岩手県環境アドバイザー
<<主な資格>>
MCAJキャンプディレクター2級、JSPAインストラクター、赤十字ファーストエイドプロバイダー、MFAチャイルドケアプラス

お申し込み

予約フォームよりお申し込みお願いします!
https://reserva.be/santsuna
 
日程:2024年4月29日(月・祝)
料金(税込):各回3,500円/一人あたり
対象:小学3年生以上
会場:うのすまいトモス (釜石市鵜住居町4丁目901番2)※三陸鉄道 鵜住居駅前
料金に含まれるもの:
※プログラム費、検定費、保険代など含みます
※Tri4JAPANの協力により、通常の参加費(5,500円)より割安になっています
※子ども向けの内容ですが大人も参加大歓迎です
注意事項:
●参加費は当日受付でお支払いお願いします(現金、PayPay)
●保護者や、対象年齢以外のご家族も付き添い(見学のみ)可能です

主催・お問い合わせ

さんつな(三陸ひとつなぎ自然学校)
LINE https://lin.ee/RvMUVBk
TEL 0193-55-4630 / 090-1065-9976
mail santsuna311@gmail.com

協力

うみと私と
Tri4JAPAN
72時間サバイバル教育協会

さんつな

さんつな

自然と災害という二つの要素を織り交ぜながら、若者の生きる力を高めるための体験機会を提供しています。

問い合わせ:0193-55-4630 〒026-0301 岩手県釜石市鵜住居町29-17-20
メール / LINE / 公式サイト / Facebook

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「防災ポリパン」って? 幼い子を持つ母親ら災害時に役立つ知識学ぶ 震災経験の先輩ママが伝授

かまいしこども園子育て支援センターバンビルーム「防災に役立つポリパン作り」

かまいしこども園子育て支援センターバンビルーム「防災に役立つポリパン作り」

 
 災害時、被災者の命をつなぎ、心身に力を与えるのはやはり食事。限られた食材、調理器具で簡単に作れるメニューは知っておいて損はない。その一つが「ポリパン」。高密度ポリエチレンの袋に材料を入れてゆでるだけでできるパンだ。蒸しパンのようなやわらかい食感、具材を入れれば味のアレンジも可能で、幼い子どもでも食べやすい。釜石市天神町のかまいしこども園子育て支援センターバンビルームが開催したポリパン作り教室を取材した。
 
 同センターの3月のイベント。市保健福祉センター内の調理室で開かれた教室にはセンターを利用する母親4人が参加した。講師を務めたのは同市在住で、一般社団法人ポリパンスマイル協会(梶晶子代表理事)認定のポリパンジュニアマイスター櫻井京子さん(40)。天然酵母を使ったフライパンでのパン作りなども教えている。
 
 ポリパンの材料は強力粉、薄力粉、ベーキングパウダー、砂糖、塩、卵、牛乳、オリーブオイル。湯せん調理が可能な高密度ポリエチレン袋に2種の粉を同量ずつ入れ、砂糖、塩、ベーキングパウダーを加えて、袋を振ってよく混ぜる。次に、溶いた卵に牛乳とオリーブオイルを加えたものを袋に入れ、さらに混ぜる。卵や牛乳のアレルギーがある場合は水でも代用可能。この日は具材として甘納豆、レーズンが用意され、好みで入れた。材料が混ざったら空気を抜いて袋を閉じる。袋は菜箸につるし、湯を沸かした鍋に入れて、弱火で20分ほどゆでる。時々、袋を動かし、熱が均一に伝わるようにする。
 
粉類を入れた高密度ポリ袋は空気を入れて振り、よく混ぜる

粉類を入れた高密度ポリ袋は空気を入れて振り、よく混ぜる

 
卵を溶き牛乳、オリーブオイルを加えたものを袋に入れ粉と混ぜる。空気を抜いた袋は菜箸につるしてゆでる

卵を溶き牛乳、オリーブオイルを加えたものを袋に入れ粉と混ぜる。空気を抜いた袋は菜箸につるしてゆでる

 
 櫻井さんは「災害時は断水で洗い物ができない場合がある。袋調理なら食器も不要。計量スプーンの代わりにペットボトルキャップ(約大さじ2分の1)も利用可能。最近は計量目盛りのある紙コップも販売されている」などと教えた。この日は、同じ要領で作る簡単“肉じゃが”も作った。肉の代わりにコンビーフを入れ、調味料は麺つゆを使った。
 
 ゆで時間を利用し、講師の櫻井さんは自身の東日本大震災の経験を語った。当時は海岸部の会社に勤務。後輩と避難し津波から逃れた。妊娠初期だった櫻井さんは避難所に身を寄せたが、体調が悪くても自分からは言い出しにくかったという。「困った時に『助けて』と言えるのは大事。声を上げないと、助けたいと思っている人も助けることができない。子育ても同じで1人では限界がある。『受援力』を身に付けて」とアドバイス。
 
 産前産後の母親のサポート活動も行い、2児の母でもある櫻井さん。小学生の子どもが準備したという防災(避難)バッグも見せ、非常持ち出し品や飲料水、非常食など備えの例を説明した。「車に膝掛け、子どもの着替え、お菓子などを常備しておくと、普段はもちろん、災害時にも役立つ。幼い子どもがいる場合はそれ用の準備も必要」と話した。
 
講師の櫻井さんは自身の子の避難バッグを紹介。必要と思うものを子どもが自分で詰めたという

講師の櫻井さんは自身の子の避難バッグを紹介。必要と思うものを子どもが自分で詰めたという

 
震災時の経験や乳幼児と避難するための準備について話す櫻井京子さん

震災時の経験や乳幼児と避難するための準備について話す櫻井京子さん

 
 ゆで上がったパンは少し試食し、子どもと一緒に食べるのを楽しみに持ち帰った。1歳2カ月の子を持つ沼倉絵梨さん(34)は「ゆでるだけでパンができるのは新たな発見。とても簡単。子どもも食べられそう」と感激。災害時の心配は、やはり子どもの食事。「何を食べさせたら…と不安はある。今日はいろいろ勉強できてありがたかった」と話し、「この機会に防災バッグの中身も再度確認したい」と意識を高めた。
 
時間がたつにつれ、袋の中の生地が膨らむ。出来上がりを待つ参加者

時間がたつにつれ、袋の中の生地が膨らむ。出来上がりを待つ参加者

 
袋の中のパンを切ってみると、ふっくらとした仕上がりに…

袋の中のパンを切ってみると、ふっくらとした仕上がりに…

 
 ポリ袋調理は災害時だけでなく、キャンプなどアウトドア活動でも活躍。講師の櫻井さんは、みそを使った常備食のレシピなども教えた。防災食といっても災害時に特化したものばかりではない。日常の食のアレンジが非常時にも有効であることが分かる教室となった。
 
ポリ袋調理でできた簡単肉じゃが(写真左)。みそに切干し大根や椎茸を混ぜた常備食は湯で溶けばみそ汁に(同右)

ポリ袋調理でできた簡単肉じゃが(写真左)。みそに切干し大根や椎茸を混ぜた常備食は湯で溶けばみそ汁に(同右)

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「過去の津波に学び、今一度備えを」 釜石市郷土資料館が防災啓発の企画展

市郷土資料館企画展「津波・震災 過去に学ぶ、次への備え」

市郷土資料館企画展「津波・震災 過去に学ぶ、次への備え」

 
 明治、昭和の三陸地震津波、十勝沖地震津波、チリ地震津波、東日本大震災―など、幾度となく津波災害を経験してきた釜石市。被害の実態や教訓はさまざまな形で伝えられるものの、発災から時がたつことによる防災意識の低下は避けられないものがある。過去の津波災害の資料を所蔵する鈴子町の市郷土資料館(佐々木豊館長)では今、同市の津波の歴史を学び、日ごろの備えを見直してもらおうという企画展が開かれている。
 
 1933(昭和8)年3月3日に発生した昭和三陸地震津波、2011(平成23)年3月11日発生の東日本大震災。多くの死者、行方不明者が出た両災害の発生月に合わせ、同館では毎年この時期に津波に関する企画展を開催している。今年のテーマは「津波・震災 過去に学ぶ、次への備え」。新たに作成した説明パネルを含む131点の資料が公開される。
 
 三陸地方を襲った主な地震津波の年表は869(貞観11)年の津波にまでさかのぼって記載。マグニチュード6~9レベルの地震で津波が発生し、各地で人身、浸水被害があったことが記されている。1896(明治29)年の地震津波は三陸沖を震源とするものだが、最大震度は2~3。揺れは小さかったものの、死者・行方不明者は2万1000人以上に上った。2011年の東日本大震災は最大震度7。日本周辺における観測史上最大の地震で、死者・行方不明者は1万8000人を超えた。
 
 被害の大きかった5つの津波は、釜石市の被災状況を数字データや写真を交えたパネルで紹介。惨状は風俗画報(明治)や写真で残されており、それらも額入りで展示された。
 
館内の展示室では131点の津波関連資料が公開される

館内の展示室では131点の津波関連資料が公開される

 
明治、昭和の三陸地震津波、チリ地震津波、十勝沖地震津波は風俗画報や写真で惨状を紹介

明治、昭和の三陸地震津波、チリ地震津波、十勝沖地震津波は風俗画報や写真で惨状を紹介

 
 津波への備えを啓発するパネルは緊急避難場所を示す緑と白のマークを添え、「いち早く、より高い安全な場所へ避難する必要がある。日ごろから街を歩いてルートや所要時間などを確認しておこう」と呼び掛け。非常持ち出し品(避難する時に最初に持ち出すもの)や備蓄品(発災後、数日間を自活するために最低限必要なもの)の例も紹介している。備蓄用の食品や飲料水は消費、賞味期限切れを防ぐため、「ローリングストック」方式を勧める。
 
津波への備えを教える展示コーナー。非常持ち出し品や備蓄品のチェックにも役立ててもらう

津波への備えを教える展示コーナー。非常持ち出し品や備蓄品のチェックにも役立ててもらう

 
 この他、東日本大震災で被災した市の施設などから流出した遺物や関連書籍、新聞なども展示公開される。
 
世界各地で大規模自然災害が多発する時代―。いつ、どこで直面するかわからない天災から身を守るには日ごろの備えが最も重要となる。佐々木館長は「災害は“忘れたころ”ではなく“忘れぬうちに”やってくるようになった。三陸は津波の常襲地でもあり、特にも津波に対する心構えはしっかり持ってほしい。この企画展が見直しのきっかけになれば」と願う。企画展は5月6日まで開催する。
 
東日本大震災の写真やがれきの中から見つかった遺物なども展示。写真集や記録誌も閲覧できる

東日本大震災の写真やがれきの中から見つかった遺物なども展示。写真集や記録誌も閲覧できる

 
 また、館内では2022~23年にかけて発掘調査が行われた橋野町「太田林遺跡」の出土品などを公開する速報展も開かれている。調査は新消防屯所建設に伴う記録保存のために実施。縄文時代の竪穴住居跡や耳飾り、土器、石器などが見つかっている。展示は3月31日まで。
 
橋野町「太田林遺跡」発掘調査の成果を公開する速報展

橋野町「太田林遺跡」発掘調査の成果を公開する速報展

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「3・11」は感情、記憶めぐる日…そして未来つなぐ、決意の日 震災13年・釜石

午後2時46分。釜石祈りのパークで大切な人を思い、黙とうする市民ら

午後2時46分。釜石祈りのパークで大切な人を思い、黙とうする市民ら

 
 釜石市内で912人の命を奪い、152人の行方不明者を出した東日本大震災は11日、発生から13年を迎えた。歳月が流れても大切な人への思いは変わらない―。多くの人がさまざまな場所で祈りをささげた。震災を知らない世代が増えていく一方、元日の能登半島地震など自然災害は頻発。釜石の記憶や教訓を世代、地域を超えて伝える重要性を胸に刻む日にもなった。
 
 市内全域の犠牲者1064人のうち、1003人の芳名が掲げられる鵜住居町の追悼施設「釜石祈りのパーク」では朝から、祈りが続いた。両親を亡くした町内の柏﨑公雄さん(67)は妻幸子さん(66)と訪れ、「いつまでも忘れないよ」と手を合わせた。「未来」と名付けた愛娘は新たな命を生み育てていて、「素晴らしい未来をつなげてほしい」と願う。進学のため町を離れる山﨑成美さん(18)は、世話になった人たちに報告。「震災を風化させたくない。これから先の災害で犠牲になってほしくない。そのための対策を学んで地域の防災・減災に関わっていく」と決めた。
 
祈りのパークで、犠牲になった人たちに花を手向ける親子

祈りのパークで、犠牲になった人たちに花を手向ける親子

 
 市の追悼式は、今回初めて祈りのパークを会場に行われ、約150人が訪れた。午後2時46分の地震発生時刻に黙とう。式辞で、小野共市長は「この場に立ち、正面の津波高を示すモニュメントを目の当たりにすると断腸の思い」とした上で、「大きな犠牲による教訓を、決して風化させないという決意を新たにする日でもある。二度とあの悲劇を繰り返さないため事実と教訓を語り継ぎ、安心して暮らせるまちづくりに取り組む」と誓った。
 
釜石市の追悼式は祈りのパークで行われ、多くの人が犠牲者をしのんだ

釜石市の追悼式は祈りのパークで行われ、多くの人が犠牲者をしのんだ

 
 災害を語り継ぐ、伝承に震災の経験は関係なく、未来を願う思いが防災、減災につながる―。遺族代表で追悼の言葉を述べた佐々木智之さん(41)は、津波で亡くした母妙子さん(当時60歳)、今も見つかっていない姉仁美さん(当時33歳)を思いながら、未来へメッセージを送った。この13年の間に各地で災害が発生し、伝承の重要性を感じる中、長女智桜さん(10)が備えの大切さを伝える語り部活動を始めた。同じように震災の経験がない若い伝承者が徐々に増える今、SNSなどで批判されるのを懸念。だからこそ、当事者として訴える。「みんなの思いは災害で犠牲者を出さないことだ。大震災の教訓を生かし、悲しい思いを背負う人がなくなり、明るい未来があるよう、防災意識が高まるよう、語り継ぐ人たちの活躍を願う」
 
追悼の言葉を送った佐々木智之さんにとって、3月11日は「いろんな感情が巡る日」。この日は智桜さんが生まれた日でもあるから。大役を終え、父親の顔に戻って笑顔。「ケーキが家に届いていて、このあとは全力で祝います」

追悼の言葉を送った佐々木智之さんにとって、3月11日は「いろんな感情が巡る日」。この日は智桜さんが生まれた日でもあるから。大役を終え、父親の顔に戻って笑顔。「ケーキが家に届いていて、このあとは全力で祝います」

 
続く祈り。刻まれた名にじっと手をあて、思いを伝える姿もあった

続く祈り。刻まれた名にじっと手をあて、思いを伝える姿もあった

 
 式の後も遺族や縁故者らが次々に訪れ、献花して手を合わせた。両親、義姉を亡くした片岸町の小笠原亜弥子さん(44)は、下校中の長女明香里さん(11)、長男輝琉君(9)と立ち寄り、「健やかに育っているから安心して」と伝えた。「母さんが会いに来たよ…元気で、また来年な」。家族思いだった息子の名に触れ、高齢の母親はぎゅっと目をつぶった。
 

祈りの一日 各所でささげる犠牲者への思い 鎮魂、誓い… 心寄せる人々

 
日蓮宗の青年僧らが題目を唱えながら釜石市内を歩き、震災犠牲者を慰霊した=11日午前

日蓮宗の青年僧らが題目を唱えながら釜石市内を歩き、震災犠牲者を慰霊した=11日午前

 
 県内外の日蓮宗寺院の青年僧は釜石市内を行脚。うちわ太鼓を鳴らしながら、題目「南無妙法蓮華経」を唱えて歩き、震災犠牲者の魂を慰めた。同宗派が2015年から沿岸被災地で行っている慰霊法要の一環。関西や北東北の20~40代の僧侶18人が、魚河岸テラスから礼ヶ口町の日高寺まで約5キロを歩いた。岩手県日蓮宗青年会代表の三浦恵導さん(37)=龍王寺(山田町)住職=は「物質的な復興は進んだが、心のケアは十分ではない。私たち僧侶ができることは犠牲者の慰霊と被災地に暮らす方々の安心(あんじん)を達成すること。寄り添っていかねば」と意を強くした。
 
殉職した消防団員の名が刻まれた顕彰碑には白菊が手向けられた

殉職した消防団員の名が刻まれた顕彰碑には白菊が手向けられた

 
 鈴子広場(鈴子町)にある「殉職消防団員顕彰碑」には、震災で職務遂行中に命を落とした仲間8人の名前が刻まれている。献花式で、坂本晃団長(69)は「もう二度と誰の名も刻むことがないように。それが願いだ。団員の安全を確保した上で、住民の命や生活を守るため、日々の訓練を重ねていく」と力を込めた。
 
忘れない…竹灯籠でかたどった文字が浮かび上がる青葉通り

忘れない…竹灯籠でかたどった文字が浮かび上がる青葉通り

 
 大町の青葉通りの一角に浮かび上がる「忘れない」の文字。かたどった約1200個の竹灯籠に明かりがともり、追悼の光が揺らめいた。釜石仏教会(大萱生修明会長、17カ寺)による竹灯籠供養。市東部地区の住民らの思いをくみ、これまで行ってきた祈りのパークから会場を移した。同会の芝﨑恵応・仙寿院住職は「亡くなった人をしのび、教訓を伝えなければ、意味がないんです」と言葉を残した。
 
「天に届け―」思いを込めた風船を大空に放つ根浜地区の住民ら=11日午後2時46分

「天に届け―」思いを込めた風船を大空に放つ根浜地区の住民ら=11日午後2時46分

 
 13年前、震災の津波が低地の集落を襲い、住民15人が犠牲になった鵜住居町根浜地区。地震発生時刻の午後2時46分―。海抜20メートルの高さに宅地造成された復興団地の津波記念碑前では、集まった住民が海に向かって黙とう。故人や未来へのメッセージを記した風船を空に放った。
 
 「会いたい―」。津波で大槌町役場職員だった次女(当時32)を亡くした前川良子さん(71)。「日々、『生きていたら…』と思う時はある」と娘の笑顔を思い浮かべる。夫と営む民宿を2013年に自力再建。海の仕事もしながら、この地で生きることを選んだ。地区住民とは家族ぐるみの付き合い。「みんなの顔を見るとほっとする」と地域の支えに感謝する。能登半島地震の被災者にも心を寄せ、その痛み、悲しみを自分事として受け止める。「(希望の)明日はある。自分を見失わず生活していってほしい」と願った。
 
11日の根浜海岸は穏やかな風景が広がった。津波で亡くなった人たちを思い、多くの人が足を運び、祈りをささげた

11日の根浜海岸は穏やかな風景が広がった。津波で亡くなった人たちを思い、多くの人が足を運び、祈りをささげた

 
 今も多くの行方不明者が眠る三陸の海―。人々の祈りをたたえた海はこの日、穏やかな波が寄せては返していた。
 
 暗くなった根浜海岸の海上には、今年も「3・11」の舟形あんどんが浮かべられた。鎮魂と未来への希望を明かりに込める「とうほくのこよみのよぶね」。アーティストの日比野克彦さんが12年から出身地岐阜市の仲間と訪れ、釜石市民と製作している。午後7時には鎮魂の花火「白菊」が打ち上げられた。地元実行委が20年から継続。支援の減少で本年休止も検討されたが、能登半島地震発生を受け、クラウドファンディングでの打ち上げを目指した。趣旨に賛同し130人が支援を寄せた。
 
鎮魂の花火「白菊」と「とうほくのこよみのよぶね」(写真左)。白菊を手がける「嘉瀬煙火工業」の好意で他の花火も打ち上げられた(同右)

鎮魂の花火「白菊」と「とうほくのこよみのよぶね」(写真左)。白菊を手がける「嘉瀬煙火工業」の好意で他の花火も打ち上げられた(同右)

 
 ボランティア活動で6年前から同市を訪れている紫波町の女性(56)は震災時、テレビの生中継で津波の襲来を目にした。「何もできない無力感でいっぱいだった」。震災を機に命について考え続ける。大事な人を失った悲しみは計り知れないが、「生かされた命を大事に、少しでも楽しく生きられる人生であってほしい」と夜空を見上げた。