タグ別アーカイブ: 防災・安全

hidankaidan01

「追悼、防災」変わらぬ思い“竹灯籠”に込め… 根浜・津波避難階段で5年目の点灯開始

自分たちで作った竹灯籠の前で…/14日、点灯式(根浜津波避難階段)

自分たちで作った竹灯籠の前で…/14日、点灯式(根浜津波避難階段)

 
 東日本大震災の津波で大きな被害を受けた釜石市鵜住居町根浜地区。来月11日で発災から15年となるのを前に、地区内の高台につながる津波避難階段に今年も竹灯籠が設置された。震災犠牲者を追悼し、命を守る行動の意識啓発を図る5年目の取り組み。3月までの土日祝日と震災命日の11日に午後5時から同7時まで点灯される。
 
 竹灯籠の製作から点灯まで一連の活動を続けるのは、根浜キャンプ場などを管理する同市の観光地域づくり法人かまいしDMC。製作は地元町内会の「根浜親交会」と一般向け体験会の参加者の協力で行われる。今年は1月31日、2月1日に製作体験会が開かれ、市内外の家族連れなどが参加した。参加者は市内の竹林から切り出された竹に、さまざまな模様がプリントされた型紙を貼り、電動ドリルで穴を開ける作業を体験した。
 
好みの模様の型紙を選んで竹に貼り付ける/1日、製作体験会(根浜シーサイド・レストハウス)

好みの模様の型紙を選んで竹に貼り付ける/1日、製作体験会(根浜シーサイド・レストハウス)

 
子どもたちも電動ドリルの使い方を教わって穴開けに挑戦!

子どもたちも電動ドリルの使い方を教わって穴開けに挑戦!

 
 釜石市の法人スタッフの男性(37)は「自分で作ったものは記憶に残るし、津波や防災のことを知る良いきっかけになる」と取り組みの趣旨に共感。震災ボランティアが縁で同市に移住した。仕事で子どもたちと関わるが、「自然の中で活動することも多い。楽しさだけでなく、時には怖い面も持ち合わせていることを知ってほしい」と自然災害への心構えも伝えていきたい考え。
 
 北上市の羽藤翔さん(38)は家族ぐるみで初めて作業を体験。「誰よりも夢中になっています」とドリルを動かした。子どもたちは震災を知らないが、「昨年12月の大きな地震は怖かったよう」。その時に沿岸には津波もあることを教え、「震災や防災のことも勉強しに来たいと思っていた。今回はとてもいい機会。楽しみながら学んでもらえたら」と期待を寄せた。
 
模様にそって大小の穴を開ける。ここから明かりが漏れるしくみ

模様にそって大小の穴を開ける。ここから明かりが漏れるしくみ

 
今年は竹の耐久性を高めるために背面にあらかじめ切り込みを入れる工夫も(左)。先端を斜めに切ったことで右下のようなデザイン(ニコちゃんマーク)も可能に

今年は竹の耐久性を高めるために背面にあらかじめ切り込みを入れる工夫も(左)。先端を斜めに切ったことで右下のようなデザイン(ニコちゃんマーク)も可能に

 
 多くの人たちの手で完成させた竹灯籠54本は、キャンプ場から高台の市道箱崎半島線につながる津波避難階段に取り付けられた。今月14日に点灯式が行われ、製作に関わった人たちなど約30人が集まった。発電機のスイッチを入れると、竹の中に仕込んだLED電球の明かりが漏れ、“命を守る道”が浮かび上がった。親子らが自分たちで作った灯籠を探しながら、階段を上り下り。美しい光景を写真に収め、「津波時は高台へ―」という避難行動の基本を改めて脳裏に刻んだ。
 
みんなでカウントダウンをして竹灯籠に点灯。子どもたちがさっそく駆け上がる。階段は111段

みんなでカウントダウンをして竹灯籠に点灯。子どもたちがさっそく駆け上がる。階段は111段

 
実際に避難階段を歩いてみる。いざという時の「命を守る行動」を体験

実際に避難階段を歩いてみる。いざという時の「命を守る行動」を体験

 
「あなたもにげて」「上へ上へ」と文字を浮かび上がらせる灯籠も。高台避難の大切さを伝える

「あなたもにげて」「上へ上へ」と文字を浮かび上がらせる灯籠も。高台避難の大切さを伝える

 
 家族4人で製作にも参加した大槌町の男性(44)は「それぞれデザインが違う。いっぱいあると、こんなにきれいになるんですね」と驚いた様子。震災の津波で同町の実家が被災し、祖父母が犠牲になった。当時、自身は仙台市に住んでいたが、実家の再建のため3年後にUターンした。「あっという間の15年。震災で人生も大きく変わった…」。4歳の娘にも震災のことを伝えているが、「(避難訓練をしていることもあり)どうやら理解しているよう」。震災を経験していない世代が着実に増えていく中、「こういうイベントで、みんなの思いが形になるのはすごくいいこと」と、震災を“忘れない”思いを共有する。
 
階段を上がった先には複数の竹を組み合わせたものも。子どもたちの目もくぎ付けに…

階段を上がった先には複数の竹を組み合わせたものも。子どもたちの目もくぎ付けに…

 
 津波避難階段は2021年に完成。キャンプ場や芝グラウンドがある観光施設「根浜シーサイド」から迅速な高台避難が可能。同DMC地域創生事業部の佐藤奏子さんによると、施設利用者には受付時に必ず、同階段の存在といざという時の避難について口頭で説明している。夜間は施設スタッフがいなくなるが、キャンプ場利用者とは連絡が取れる態勢を取っており、昨年、夜に地震が発生した際は「この階段を上がって避難した」との連絡があった。毎年の竹灯籠設置効果もあり、「階段の周知が進み、避難への意識付けも図られている」という。
 
写真上部に点在するのはキャンプ場の照明。津波の恐れがある時はこの避難階段を使っていち早く高台へ!

写真上部に点在するのはキャンプ場の照明。津波の恐れがある時はこの避難階段を使っていち早く高台へ!

 
 佐藤さんは「皆さんが変わらず、追悼の思いを持って作ってくれた」と竹灯籠作りへの協力に感謝。点灯期間中、多くの人に足を運んでもらい、「追悼、震災伝承、避難の大切さをみんなで共有し、いざという時に命を守れるようにしてほしい」と願う。点灯のための発電機の燃料には、地域の廃食油を精製したバイオディーゼル燃料が使われていて、太陽光発電も活用し、未来の持続可能な地域づくりにも貢献する。

bousai01

釜石小「ぼうさい甲子園」で2度目の優秀賞 “災害時は自ら考え行動”命を守る教育、実践評価

2025年度「ぼうさい甲子園」で釜石小が優秀賞。6年生児童が教育長らに受賞報告=3日

2025年度「ぼうさい甲子園」で釜石小が優秀賞。6年生児童が教育長らに受賞報告=3日

 
 全国の防災教育に関する先進的取り組みを顕彰する本年度の1.17防災未来賞「ぼうさい甲子園」(兵庫県など主催)で、釜石市の釜石小(五安城正敏校長、児童66人)が、優秀賞を受賞した。東日本大震災前から継続する防災教育を深化させ、児童らが主体的に考え、家庭や地域を巻き込んだ実践的な活動を行っていることが評価された。1月24日、神戸市で開かれた表彰式には6年生児童が出席。自分たちの活動について発表も行った。
 
 6年生9人は今月3日、同市の教育長、危機管理監らに受賞を報告した。表彰式で行った活動発表を報告の場で披露。釜石小ぼうさい安全少年団の山﨑柊琳団長、佐野楓花副団長がこれまでの取り組みについて発表した。
 
1月24日の表彰式での発表を市、市教委の幹部職員らに披露した

1月24日の表彰式での発表を市、市教委の幹部職員らに披露した

 
 同校では三陸沖地震津波の発生確率が高まる中、2008年から市内小中学校に先駆け、下校時津波避難訓練など本格的な防災教育を開始。11年の震災発生時、児童らは帰宅していたが、自ら判断し高台などへ避難。全児童184人が命をつないだ。その後、多様化する災害を見据え、同教育活動は深化を続ける。
 
 震災発生日の3月11日にちなみ、毎月11日を「釜小ぼうさいの日」とし、少年団団長が校内放送で防災に関するメッセージを発信。同少年団通信として地域住民にもメッセージを届けている。火災、垂直避難、不審者対応の訓練なども実施。6年間かけて行う防災学習では地震津波のほか、土砂災害、河川洪水についても学び、年1回、「いのちの学習参観」として保護者と一緒に防災を考える時間を設けている。児童が防災学習シートを持ち帰り、家族がメッセージを返すことも。
 
写真左上:「釜小ぼうさいの日」に行った火災避難訓練。同右上:児童が作成した「ぼく、わたしのぼうさい安全マップ(写真提供:釜石小)

写真左上:「釜小ぼうさいの日」に行った火災避難訓練。同右上:児童が作成した「ぼく、わたしのぼうさい安全マップ(写真提供:釜石小)

 
 本年度の6年生は5年時に、「市の避難訓練に地域住民の参加が少ない」ことを知り、参加を呼びかけるチラシやポスターを作成。地域住民に配り、市役所などへの掲示も依頼した。本年度、特に力を入れて取り組んだのが「ぼく、わたしのぼうさい安全マップ」の作成。全校児童が家族と一緒に居住地区の危険箇所(地震津波、洪水、土砂災害、クマ出没など)を調査。地区リーダーの6年生は地域住民から釜石の昔の災害について教えてもらう聞き取りも行った。調査内容は横幅5メートルほどのパネルにまとめ、全校児童の前で発表。同パネルは昇降口に掲示し、いつでも見られるようにしている。
 
 震災前から続ける下校時津波避難訓練は、市や消防団の協力を得て実施。事前に地域住民にも知らせ、参加を促している。毎年繰り返すことで、児童らの避難意識は格段に向上。昨年12月8日深夜に発生した青森県東方沖地震で津波警報が出た際も、児童らは家族に「逃げよう」と声をかけ、いち早く避難を開始した。
 
釜石小が震災前から続ける「下校時津波避難訓練(2024年10月撮影)」。自ら判断し、最も近い高台の津波避難場所に向かう

釜石小が震災前から続ける「下校時津波避難訓練(2024年10月撮影)」。自ら判断し、最も近い高台の津波避難場所に向かう

 
 こうした経験を重ねてきた6年生は、「防災について学んだことから自ら判断し、命を守る行動をとる」「命はかけがえのない大切なものと思い続ける」ことなどを肝に銘じ、「これからも校内、地域の人たちとつながり、みんなの役に立つ人になりたい」との思いを強くする。
 
 釜小の校長経験もある髙橋勝教育長は脈々と続く同校の防災教育について、「みんなは形だけでなく、(先輩方の)心も受け継いで防災に取り組んできた。これからも大事にしてほしい。行動を起こすことで現状は変えられる。最初の小さな一歩が大きな力になる」と児童らの取り組みをたたえた。
 
髙橋勝教育長に優秀賞の賞状や盾を見せながら受賞を報告する児童

髙橋勝教育長に優秀賞の賞状や盾を見せながら受賞を報告する児童

 
 同顕彰事業は、阪神・淡路大震災をはじめとする災害の記憶を後世につなぎ、防災教育の推進で未来の安全安心な社会をつくるのが目的。21回目となる本年度は全国111校・団体から応募があり、選考委員会による審査で各賞が決定した。釜石小は小学生部門で、ぼうさい大賞に次ぐ優秀賞を受賞した。同顕彰での同校の受賞は2011年度のぼうさい大賞、12年度の優秀賞、24年度の特別賞(はばタン賞)に続き4回目。
 
関係職員が児童らの取り組みをたたえ、防災への協力に感謝

関係職員が児童らの取り組みをたたえ、防災への協力に感謝

 
 山﨑柊琳団長は「防災の活動を6年間重ねてきた中での受賞なのでうれしい。表彰式では他の地域の発表も聞けて参考になった。今後に生かしたい。後輩たちにもこの活動を引き継いでほしい」と願う。佐野楓花副団長も「釜小の取り組みを全国の人に知ってもらえた」と喜ぶ。生まれる前の大震災で自宅も津波の被害を受けた。「下校時津波避難訓練はすごくためになっている」と話し、次の世代に向け、「小さい頃から防災の学習をして、もしもの時に命が助かれるように行動してほしい」と思いを込める。
 
 11年の震災時も同校にいた“いのちの教育”担当の及川美香子教諭は「防災学習は地域の現状を踏まえ、アレンジしながら継続していくことが大事」と改めて実感。今春、中学に進む6年生に対し、「自分たちがやってきたことを他の小学校出身者にも伝え、みんなでこの地域の命を守れる人になってほしい」と期待した。

idaten01

震災15年― 誓う!「津波時は高台へ」 避難の教訓 新春韋駄天競走で釜石から再発信

第13回新春韋駄天競走。震災後に生まれた小学生も津波避難の教訓を学ぶ

第13回新春韋駄天競走。震災後に生まれた小学生も津波避難の教訓を学ぶ

 
 未曽有の被害をもたらした東日本大震災からまもなく15年―。津波で多くの尊い命が奪われた大災害を教訓に、迅速な高台避難を啓発する「新春韋駄天競走」が今年も釜石市で行われた。同市大只越町の日蓮宗仙寿院(芝﨑恵応住職)が主催。2歳から81歳まで計122人が、高台の寺につながる急坂を懸命に駆け上がった。震災の記憶が薄れていく一方で、国内外では自然が猛威をふるう大規模災害が多発。参加者は地震津波以外にも通じる“命を守る行動”の大切さを改めて心に刻んだ。
 
 同寺の節分行事と連携し13回目を迎える韋駄天競走。開催日となった1日は一時、雪がちらつくなど、厳しい寒さとなった。参加者が駆け上がるのは震災時、津波で浸水したエリアから市指定津波避難場所となっている同寺までの286メートル。高低差は約26メートルあり、急坂や急カーブが連続する。スタート前には運営責任者から参加者に「競走はするが、一番の目的は津波避難の練習」との開催趣旨が伝えられた。
 
 年代別に6部門に分かれてスタート。親子の部では幼い子どもの手を引いて高台避難を疑似体験する姿が見られた。小中学生は日頃、運動の機会があるだけに坂道もなんのその。元気にゴールまで走り切った。
 
小学生以下の子どもが父母と参加する親子の部。手をつないで元気にスタート

小学生以下の子どもが父母と参加する親子の部。手をつないで元気にスタート

 
ゴールまであと少し。沿道の声援を受けながら仙寿院境内を目指す親子

ゴールまであと少し。沿道の声援を受けながら仙寿院境内を目指す親子

 
中高生の部は釜石の硬式野球チームの中学生が多数参加。激しいトップ争いを繰り広げる

中高生の部は釜石の硬式野球チームの中学生が多数参加。激しいトップ争いを繰り広げる

 
 一方、大人は…。男女とも先頭では“競走”らしいトップ争いを見せたほか、勢い余って最後の最後に転倒する人も。後続も力の限りを尽くし、それぞれのペースでゴールを目指した。沿道では声援を送ったり、拍手で出迎えたりと参加者を後押し。ゴール近くでは地元の只越虎舞がお囃子(はやし)を響かせて盛り上げた。
 
女性の部は過去の1位経験者らがトップ争い。余裕の表情で駆け上がる

女性の部は過去の1位経験者らがトップ争い。余裕の表情で駆け上がる

 
ゴール前では勢い余って転倒する参加者も…

ゴール前では勢い余って転倒する参加者も…

 
「きっつー!」。最後の上り坂で顔をゆがめる男性参加者

「きっつー!」。最後の上り坂で顔をゆがめる男性参加者

 
 「大変かなと思ったけど、意外に走れた」と笑顔を見せたのは、釜石市の最年少震災語り部、鵜住居小6年の佐々木智桜さん(11)。3年時に母と研修を受け、「大震災かまいしの伝承者」として語り部活動を始めた。震災の教訓を伝える同行事に「こういう経験をしていれば、津波警報や注意報が出た時にすぐ逃げられる。すごくいいと思う」と共感。「中学生になっても語り部を続け、もっと分かりやすくみんなに伝えていきたい」と伝承への思いを強くした。一緒に参加したのは弟の智琉さん(9)。「楽勝っす!」と余裕の訳は、同小で続けられる「てんでんこマラソン」で3年男子の1位になった自慢の脚力。「いざという時は必ず逃げる。この行事でみんなも覚えていてくれると思う」と話した。
 
初参加の行事を楽しんだ佐々木智桜(ちさ)さん、智琉(さとる)さん姉弟。津波から命を守る行動を再確認した

初参加の行事を楽しんだ佐々木智桜(ちさ)さん、智琉(さとる)さん姉弟。津波から命を守る行動を再確認した

 
 昨年から団体参加するのは釜石市国際外語大学校で日本語を学ぶ留学生ら。今年は昨年来日したミャンマー、ネパール出身の1年生男女17人が参加した。釜石に来てから学校の津波避難訓練で震災のことも学んだ学生ら。ミャンマー出身のター トー テイ ザさん(20)は急な坂と厳しい寒さに体力を奪われたようで、「疲れた」と一言。それでも「個人的に練習してきた」という成果を発揮し、男性34歳以下で上位に入る健闘を見せた。同じくミャンマー出身のシュエー ウェー ヤン トゥッさん(20)は「走るのは得意。楽しかった」とにっこり。母国では海のない所にいたため、「津波は怖い。慌てないで避難場所に早く逃げることが大切だと思う」と釜石での学びを脳裏に刻んだ。
 
釜石市国際外語大学校の留学生も必死に坂を駆け上がった。全員無事完走!

釜石市国際外語大学校の留学生も必死に坂を駆け上がった。全員無事完走!

 
女性の留学生からは笑みも…。津波防災を学ぶとともに釜石生活の思い出を作った

女性の留学生からは笑みも…。津波防災を学ぶとともに釜石生活の思い出を作った

 
写真上:各部門で1位になった参加者ら。「福○○」で良き年に期待! 同下:今年も只越虎舞が協力。表彰式の前に演舞し、参加者を楽しませるのが恒例

写真上:各部門で1位になった参加者ら。「福○○」で良き年に期待! 同下:今年も只越虎舞が協力。表彰式の前に演舞し、参加者を楽しませるのが恒例

 
 各部門の1位には「福男」「福女」「福親子」の認定書が贈られた。男性34歳以下で1位となった奥州市の団体職員、田代優仁さん(28)は10年ぶり2回目の参加で2回目の「福男」。山田町出身で震災時は中学1年生。家族は無事だったが、津波で自宅が流失し、盛岡市に転居した。韋駄天競走には高校3年生の時に初参加。陸上競技部で鍛えた足で、男性29歳以下(当時の部門)で1位となった。今回は、転職で地元岩手に戻ってきたこともあり、「大船渡の山火事や能登の地震などさまざまな災害が起こる中で、(震災を経験した身として)避難の意識付けを啓発していく立場でありたい」と参加を決めた。「災害はいつどこで何が起こるが分からない。どんな状態でも逃げられるよう、常に意識を持っておかないと。県人のDNAとして受け継いでいきたい」と後世に伝えたい思いを口にした。
 
10年ぶりの参加で2度目の「福男」となった田代優仁(まさひと)さん(中央)。「いつでも逃げられるように…」と教訓伝承へ思いを強くする1

10年ぶりの参加で2度目の「福男」となった田代優仁(まさひと)さん(中央)。「いつでも逃げられるように…」と教訓伝承へ思いを強くする

 
しっかりと手をつなぎ、ゴールを目指す女性参加者。気持ちを一つに一歩一歩前へ…

しっかりと手をつなぎ、ゴールを目指す女性参加者。気持ちを一つに一歩一歩前へ…

 
 同行事は兵庫県西宮市、西宮神社の新年開門神事「福男選び」を参考に2014年にスタート。同神社開門神事講社の平尾亮講長(49)が釜石を訪れ、運営に協力する。交通事故の後遺症で右足が不自由ながら、毎回、松葉づえをついて参加者と一緒に坂を駆け上がる。起源は鎌倉時代とされる歴史ある同神事に携わるが、「釜石に来ると、皆さんの熱意に『負けとるやないか』と悔しい思いになる。僕らも負けてられへん!」。西宮市は阪神・淡路大震災の被災地でもあり、両震災の教訓継承に思いを同じくする。
 
西宮神社開門神事講社の平尾亮講長。誰もが直面する避難への意識を持ってほしいと毎回、この坂を駆け上がる

西宮神社開門神事講社の平尾亮講長。誰もが直面する避難への意識を持ってほしいと毎回、この坂を駆け上がる

 
海の方角に向かって黙とう。この行事の最後に必ず行う震災犠牲者への祈り

海の方角に向かって黙とう。この行事の最後に必ず行う震災犠牲者への祈り

 
 来月で東日本大震災から15年となる中、仙寿院の芝﨑住職は「(参加者の)皆さんのように津波のことを考えてくれる人たちは少なくなってきた。被災者がつらい思いからまだ抜けきっていないことも多くの人は忘れてしまっている」と警鐘を鳴らし、「津波はいつくるか分からない。『大震災を忘れてはならない』『身を守るには逃げるしかない』ということを声高に伝えてほしい」と願った。

otraining01

迅速・的確に!油流出に備え、防除手順確認 関係機関、釜石港で訓練 連携深める

油の流出を想定した訓練で防除の手法を確認する参加者

油の流出を想定した訓練で防除の手法を確認する参加者

 
 釜石港や周辺海域に関係する26機関でつくる岩手県沿岸排出油等防除協議会釜石地区部会(事務局・釜石海上保安部)は21日、釜石市大平町の県オイルターミナル(略称・IOT)専用桟橋周辺で油の海上流出事故に備えた対策訓練を行った。釜石海保や石油会社など同協議会の関係者ら35人が参加。早期解決に向けた関係機関の連携、被害を抑えるために必要な対応策を確認した。
 
 同協議会は、船舶事故などで油や有害液体物質が海に排出された際、関係機関が連携、協力を図って被害拡大を防止する。釜石地区部会ではコロナ禍で同訓練の実施を見送っていたが、2023年に必要な資機材の取り扱いを確認する形で再開した。
 
油流出事故に備えた対策訓練の開始式

油流出事故に備えた対策訓練の開始式

 
 開始式であいさつした釜石地区部会長の尾野村研吾・釜石海上保安部長によると、釜石港には年間1100隻ほどの大型船舶が出入港し、IOTには総容量約2万4000キロリットルの石油タンク(計8基)がある。各事業者の事故防止や防除体制の強化などにより、「ここ数年、油などの排水事故は発生していない」。
 
参加者を激励する釜石海保の尾野村研吾部長

参加者を激励する釜石海保の尾野村研吾部長

 
 全国的にも減少傾向だというが、「事故が発生した場合、地域生活や経済活動への悪影響は甚大」と指摘。「被害をいかに最小限に食い止めるかが重要。原因者の迅速かつ的確な防除と合わせ、関係者が協力して対処することも必要となる。訓練で日頃の取り組みを振り返り、練度の向上、相互連携の強化につなげてほしい」と激励した。
 
 訓練は、タンカーが岸壁に接触して船体に穴が開き、重油が海に漏れたとの想定。IOTの関係者は海上保安部に通報し、被害状況を調査。重油の広がりを防ぐため海上にオイルフェンスを張り、油吸着材を使って回収する手順を確かめた。
 
油に見立てた着色剤で海面が染まったのを確認、情報伝達を受け動き出す参加者

油に見立てた着色剤で海面が染まったのを確認、情報伝達を受け動き出す参加者

 
油の広がりを抑えるためオイルフェンスを張る作業船

油の広がりを抑えるためオイルフェンスを張る作業船

 
油防除訓練で回収作業地点に資機材を運び込む参加者

油防除訓練で回収作業地点に資機材を運び込む参加者

 
油吸着材を使用して油を回収する手順を確認した

油吸着材を使用して油を回収する手順を確認した

 
 釜石海保の巡視船「きたかみ」の搭載艇やゴムボートによる放水、航走攪拌(かくはん)も実施。万一、設置したオイルフェンスから漏れ出た場合の分散処理につながる方法として実演した。海に見立てた水槽に油を浮かべ、油吸着材による回収や油処理剤の散布による微細化の様子を見せる講習もあった。
 
船からの放水や高速走行で油の分散処理につなげる訓練

船からの放水や高速走行で油の分散処理につなげる訓練

 
重油を使って吸着材や処理剤の取り扱いを説明する講座

重油を使って吸着材や処理剤の取り扱いを説明する講座

 
 警察や消防、港湾関係者ら約20人が見学しており、釜石海保警備救難課の池田隆課長が訓練内容を解説した。自身が携わった事案として、2021年に八戸港沖で発生した外国船籍の貨物船の油流出事故を挙げ、「船を撤収するまでに5年かかった」と、ひとたび起これば長期間、その地域に甚大な被害をもたらす可能性があることを示唆。「いつ、どこで、こうした事故が起こるか分からない。この訓練での動き、感じ考えたことをそれぞれの機関で共有してほしい」と求めた。
 
 IOTの柏﨑理(おさむ)統括マネジャーによると、同桟橋にオイルタンカーが着岸する際、日常的にオイルフェンスの展張を行っている。訓練では普段の作業時と同様にスムーズにできたとした上で、「協議会の連携強化と防除のスキル向上について、参加者の真剣な姿勢によって十分に達成されたと認識。特に油吸着材の効果的な使用法についての実践は今後の貴重な財産となった」と手応えを実感。「皆さんが使うエネルギーを預かっていることから、安定供給と安全操業を続ける」と気を引き締めた。
 
訓練参加者の動きを見守り、総評したIOTの柏﨑理統括マネジャー

訓練参加者の動きを見守り、総評したIOTの柏﨑理統括マネジャー

 
 池田課長も「油防除の手法を会員にしっかりと伝えられ、有効な訓練となった」との認識。油流出の事故が起きた場合、「早い通報、流出範囲の特定など時間の速さが大事になる。協議会の会員が持つ資機材を集め、できるだけ早く現場に投入することも重要で、今回の訓練を生かし、連携して対応したい」と話した。

shobo01

県消防職員意見発表会 釜石大槌消防本部代表に前川柊哉さん(釜石署)を選出

意見発表した(右から)釜石消防署の佐藤優樹さん、前川柊哉さん、大槌消防署の大久保太陽さん

意見発表した(右から)釜石消防署の佐藤優樹さん、前川柊哉さん、大槌消防署の大久保太陽さん

 
 2月16日開催の第49回岩手県消防職員意見発表会(県消防長会主催)への出場者を決める釜石大槌地区行政事務組合消防本部(駒林博之消防長)の選考会が14日、釜石市鈴子町の釜石消防庁舎で開かれた。釜石、大槌両消防署に勤務する消防士3人が、業務に関わる課題や改善策を発表。審査により、釜石署の前川柊哉さん(28)が同消防本部の代表に選ばれた。
 
 同発表会は若手消防職員が業務の諸課題解決へ意識を高め、さらなる研さん、業務改善につなげるのが目的。県内12消防本部から代表1人が出場して意見発表を行う。釜石大槌地区消防本部の本年度の代表選考会には、釜石消防署の佐藤優樹さん(25)、前川柊哉さん(28)、大槌消防署の大久保太陽さん(23)が出場。制限時間5分の中で、自らの経験を基にそれぞれの視点で意見を述べた。
 
県消防職員意見発表会に向けた釜石大槌地区行政事務組合消防本部の代表選考会=14日

県消防職員意見発表会に向けた釜石大槌地区行政事務組合消防本部の代表選考会=14日

 
「サイレンが届く社会へ」と題して発表した佐藤優樹さん(25)

「サイレンが届く社会へ」と題して発表した佐藤優樹さん(25)

 
 佐藤さんは、救急出動など緊急車両の走行時に進路を譲ってもらえない場面が増えていることに危機感を表した。一般車両が進路を譲ることは道路交通法で定められている義務だが、社会意識の低下が見られるという。改善策としてシミュレーターなどでの緊急車両の接近体験、緊急走行中の動画を利用したSNSなどでの意識啓発、子どものころからの交通教育を提案。「サイレンが届かない社会は命の優先順位を失った社会。進路を譲る行為は人の命を救う行動である」と訴えた。
 
「消防分野におけるAI導入の現状と有用性」と題して発表した大久保太陽さん(23)

「消防分野におけるAI導入の現状と有用性」と題して発表した大久保太陽さん(23)

 
 大久保さんは、消防分野へのAI導入の可能性について発表した。AI(人工知能)技術を利用した消防ロボットシステムの研究、広域監視型火災検知システムの導入など国内の動きを挙げ、消防へのAI導入が職員の負担軽減につながると期待。緊急通報の内容解析、出動指令の自動分類のほか、火災現場などで隊員の心身の状態をAIが評価することで、疲労や心的ストレスによる受傷事故を未然に防げるのではないかと考えた。「今後、重要になるのはテクノロジーと現場知識の融合」とし、安全で効率的な消防活動の未来を描いた。
 
「私だから言えること」と題して発表した前川柊哉さん(28)

「私だから言えること」と題して発表した前川柊哉さん(28)

 
 同消防本部に採用される前、千葉市消防局で6年間勤務した経験を持つ前川さんは「私だから言えること」と題して発表した。都市部と地方の救急、火災件数や活動事案、課題の違いを示した上で、近年、顕著な広域化する大規模災害への対応には両方の経験が強みになると主張。都市部と地方の消防職員の交換留学(相互派遣)制度の運用を提案した。経験の幅が広がることで現場の対応力が格段に向上、ネットワークができることで緊急消防援助隊の派遣でも効力を発揮するなどの利点を挙げ、「実現すれば若手職員のレベル、モチベーションアップにもつながる」と今後の制度整備を望んだ。
 
 市教委の髙橋勝教育長、駒林消防長ら4人が審査員を務め、▽論旨の明確性、説得力▽業務に対する問題意識、発展性▽発表態度、表現力―の3項目で採点した。その結果、前川さんが同消防本部の代表に選ばれた。審査長の髙橋教育長は講評で、「喫緊の課題への対応、大規模災害を見据えた提言、新たな技術の活用と三者三様の提案で、とてもいい発表だった。代表の前川さんには県大会でもいい成績を挙げられることを期待したい」と述べた。
 
3人の発表には審査員のほか、消防職員約20人が耳を傾けた

3人の発表には審査員のほか、消防職員約20人が耳を傾けた

 
審査長の市教委、髙橋勝教育長(左)が講評。発表者3人の着目点をたたえ、今後につながるアドバイスも行った

審査長の市教委、髙橋勝教育長(左)が講評。発表者3人の着目点をたたえ、今後につながるアドバイスも行った

 
 代表に選ばれた前川さんは「都市部でも地方でも消防としてやることは変わらないが、出動件数、組織の風土、地理的環境などの違いがあり、目的達成までの過程も異なる。今回のような問題提起があれば、消防全体がさらに良くなるのでは」と期待。県大会に向け、「共に発表した2人の思いも背負って発表できれば。抑揚など伝え方をもう少し工夫し、本番に臨みたい」と意気込んだ。県消防職員意見発表会は2月16日午後1時から、盛岡市のアートホテル盛岡で開かれる。

110ban01

事件、事故は「110番」、 困り事は交番などへ 安全安心に暮らすために釜石署2交番啓発活動

「110番の日」にちなみ、高齢者に防犯などを呼びかけた釜石署署員と市職員ら=13日

「110番の日」にちなみ、高齢者に防犯などを呼びかけた釜石署署員と市職員ら=13日

 
 1月10日は数字の語呂合わせで「110番の日」。緊急通報用電話番号「110」の重要性や適切な利用を広報しようと、1985年、警察庁により制定された。全国各地でこの日にちなんだ啓発活動が行われるが、釜石市内では昨年に続き、釜石警察署小佐野交番(川野正行所長、4人)と同釜石駅前交番(髙橋長武所長、7人)が独自の取り組みを行った。「事件、事故は迷わず110番。緊急性のない相談事は地元警察、交番へ連絡を―」。同活動では、いざという時の警察への通報はもちろん、犯罪被害や交通事故に遭わないための意識啓発も行った。
 

子どもたち大喜び! 箱の中身は?? 小佐野交番 ペーパークラフト作品で「110番の日」PR

 
110ban01

保育施設に贈るペーパークラフト作品を制作した小佐野交番勤務の警察官ら

 
 小佐野交番では「110番の日」の啓発活動として、子どもたちに警察を身近に感じてもらえるようなペーパークラフト作品を制作。管内の保育施設6園に贈った。大小のパトカー12個、110番通報や交番などをモチーフにした箱型模型6個を交番員4人で約2カ月かけて手作りし、10日前後に各園に届けた。
 
 川野所長の発案で始まった同活動は今年で3年目。一昨年はパトカーや警察官、信号を渡る親子などを配置した釜石の街並み模型、昨年はパトカーと白バイ、交通安全メッセージを添えた大型“デコうちわ”を制作したが…。今年はさらにアイデアを駆使した作品がお目見えした。
 
 空き箱を利用した模型は、ふたを開けると警察の仕事が分かる仕掛け。昨年の“クマ出没増”を受け注意を促すものや、人気刑事ドラマをモチーフにした作品も。交番員それぞれの個性が光り、大人も楽しませる仕上がりとなった。本年度、同交番に赴任した金野章子巡査部長(43)は「工作は小学校以来?かな。大変でした」と笑いつつ、「絵は大きめにカラフルにして、子どもたちが箱を開けた時、『ワー!』ってなるようにしたくて…」と制作過程を振り返った。
 
空き箱を活用したペーパークラフト模型。さまざまなモチーフで警察を身近に感じてもらう

空き箱を活用したペーパークラフト模型。さまざまなモチーフで警察を身近に感じてもらう

 
金野章子巡査部長(右)からクラフト作品を受け取る上中島こども園の園児ら=9日

金野章子巡査部長(右)からクラフト作品を受け取る上中島こども園の園児ら=9日

 
 9日は、金野巡査部長と矢神海輝巡査(21)がクラフト作品を持って、上中島こども園(楢山知美園長、園児31人)を訪問。園児の代表に大小のパトカーと交番模型を手渡した。堀川陽雅君(5)は「お巡りさんがいっぱい。かっこいい」とボックスに目を輝かせた。巡回などで来てくれる矢神巡査が大好きで、先日は不審者対応避難訓練の後に、友達と“矢神さん(警察)ごっこ”をして遊んでいたという堀川君。将来は「みんなを守る人になりたい」と憧れのまなざしを向けた。
 
箱を開ける楽しみもプラスした交番模型。外側にはさまざまな姿の警察官が描かれる

箱を開ける楽しみもプラスした交番模型。外側にはさまざまな姿の警察官が描かれる

 
金野巡査部長と矢神海輝巡査(右)には園児からお礼のペンダントが贈られた。「いつも見守ってくれてありがとう!」

金野巡査部長と矢神海輝巡査(右)には園児からお礼のペンダントが贈られた。「いつも見守ってくれてありがとう!」

 
過去2年分の作品と一緒に、しばらくは入り口で展示(写真右下)。「事件、事故に遭わないよう気を付けます!」

過去2年分の作品と一緒に、しばらくは入り口で展示(写真右下)。「事件、事故に遭わないよう気を付けます!」

 
 子どもたちが犯罪に巻き込まれないように、交通事故に遭わないようにとの願いが込められたクラフト作品。釜石署管内でも子どもへの声掛け事案があり、重大な事件に発展する可能性も否めない。矢神巡査は「子どもたちにも(危険な目にあった時、助けを求める)110番通報があることを知ってほしい。今回の模型などで交番の存在も知ってもらい、いざという時には頼ってもらえれば」と思いを込めた。
 

詐欺被害防止へ 釜石駅前交番 高齢者宅を訪問し注意喚起「知らない電話には出ないで」

 
高齢者世帯の訪問活動に向かう釜石駅前交番の中川原正紀巡査部長(先頭)ら

高齢者世帯の訪問活動に向かう釜石駅前交番の中川原正紀巡査部長(先頭)ら

 
 釜石駅前交番は13日、市地域包括ケア推進課と連携し、管内の高齢者宅を訪問。全国的に増加する電話などによる詐欺被害防止を呼びかけた。2年目の取り組みで、千鳥町と天神、大只越町地区を2班に分かれて巡回訪問した。
 
 千鳥町では、同交番主任の中川原正紀巡査部長(35)と市地域包括支援センターの社会福祉士、萬武大さん(50)が訪問活動を実施した。高齢者に「変わりないですか?」と近況を聞き取り、緊急時の連絡先を確認。「変な電話や訪問はありませんか?」と聞くと、ほとんどの人が怪しい電話の着信を経験していた。「登録している番号以外は出ない」「出てしまっても、息子などに相談している」と自衛策を取っている人が多く、中川原巡査部長は「身に覚えのない電話は切って。迷惑電話設定や常時、留守番電話にしておくのも手。釜石でも詐欺の予兆電話が増えているので十分気を付けて」と伝えた。
 
詐欺の手口を記したチラシや防犯ガイドを手渡し、被害に遭わないよう注意を促す

詐欺の手口を記したチラシや防犯ガイドを手渡し、被害に遭わないよう注意を促す

 
 特殊詐欺の手口、匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」に関するチラシ、日常生活における防犯生活ガイドも手渡し、緊急時には110番、不急の相談事は釜石署や交番に連絡するよう促した。萬さんも名刺を手渡し、「体調変化や生活の困り事など支援が必要な時は電話を」と伝えた。
 
市地域包括支援センターの萬武大さん(中)ら保健福祉に関わる市職員も同行。地域の高齢者、空き家の状況などを警察と情報共有した

市地域包括支援センターの萬武大さん(中)ら保健福祉に関わる市職員も同行。地域の高齢者、空き家の状況などを警察と情報共有した

 
 中川原巡査部長は「最近は詐欺電話などに対する防犯意識は高い印象だが、犯罪の手口はどんどん巧妙になっているので、素早く的確な情報提供に努めたい。相手はあせらせるのが手口。不安に感じる電話があったら、まずは一呼吸おいて、必ず警察や家族に相談してほしい」と話した。一緒に回った萬さんは「ほとんどの方が地域や家族とつながりを持っていて、そこは安心材料。外とのつながりは介護予防にもなる」と孤立回避の重要性を指摘。警察官との巡回は「必要な情報を共有できるのがメリット。有意義な活動だった」とし、関係機関の連携による高齢者の見守り継続を望んだ。

2026dezome01

東日本大震災15年― 釜石市消防団 出初式で地域防災力強化へ志新た 市民に火災警戒も呼びかけ

消防出初式で分列行進する釜石市消防団の団員ら=12日、大町目抜き通り

消防出初式で分列行進する釜石市消防団の団員ら=12日、大町目抜き通り

 
 2026年の釜石市消防出初式(市、市消防団主催)は12日、大町の市民ホールTETTOなどで開かれた。消防団員と来賓約450人が参加。全国で多発する大規模火災、地震津波や豪雨など自然災害への脅威が高まる中、地域防災力強化の必要性を改めて認識。東日本大震災から15年となる本年に防災への誓いを新たにし、市民の生命、財産を守る活動に意欲を示した。
 
 震災犠牲者へ黙とう後、市防災市民憲章を唱和。統監の小野共市長は式辞で、「日頃の備えこそが、市民の命を守る力となる。消防団員には研さんを重ね、変化する災害リスクに的確に対応できるよう不断の努力をお願いする。地域を守る力は市民一人一人の意識と行動に支えられていることも共有できれば」と話した。
 
市民ホールTETTOで行われた式典。団員400人が参加した

市民ホールTETTOで行われた式典。団員400人が参加した

 
釜石市防災市民憲章を全員で唱和。東日本大震災の教訓を心に刻む

釜石市防災市民憲章を全員で唱和。東日本大震災の教訓を心に刻む

 
統監の小野共市長が式辞(上)。地域防災を支える団員に感謝し、期待を述べた

統監の小野共市長が式辞(上)。地域防災を支える団員に感謝し、期待を述べた

 
 長年にわたる消防防災への功績、職務精励などで団員55人を表彰。釜石市長表彰では勤続30年の団員4人に「永年勤続功労章」が授与された。公益財団法人岩手県消防協会遠野釜石地区支部表彰(支部長:菊池録郎釜石市消防団長)では、2023年5月20日から25年11月30日まで925日間、無火災を達成した第7分団(栗橋地域管轄)など3つの分団が「無火災竿頭綬」を受章。40年勤続で3人、25年勤続で7人、15年勤続で18人、10年勤続で19人が「勤続章」を受けた。消防技能に熟達し、規律厳正、消防業務に率先して精励した4人に「精練章」が授与された。
 
写真左:釜石市長表彰を受ける第7分団第2部の藤原三夫部長。同右:無火災竿頭綬を受章した第7分団。他に第1分団(無火災730日)と第2分団(同711日)が受章した

写真左:釜石市長表彰を受ける第7分団第2部の藤原三夫部長。同右:無火災竿頭綬を受章した第7分団。他に第1分団(無火災730日)と第2分団(同711日)が受章した

 
敬礼もきびきびと…。新年スタートにあたり消防防災活動へ意欲を高める

敬礼もきびきびと…。新年スタートにあたり消防防災活動へ意欲を高める

 
 式典後、団員らは大町目抜き通りで分列行進。ラッパ隊に続き、まとい振り、徒歩部隊、消防車両(38台)がパレードし、本年1年の消防防災活動へ気を引き締めるとともに、市民に防火、防災意識高揚を促した。1月1日現在、同市消防団の団員数は513人(うち機能別団員83人)。
 
 40年勤続で表彰された第6分団本部の佐々木実分団長(61)は「消防団活動の要は火災予防。住民の皆さんの意識を高めるのが一番の役目」と、車両巡回による注意喚起、巡視・警戒活動に積極的に取り組む。管轄する鵜住居地域は東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた。発災から15年にあたり、「いつ、また大きな震災があるか分からない。当時の経験を忘れることなく、命を守る行動をとれるよう地域一体となって訓練していければ」と願う。近年は消防団員の減少、高齢化も課題。「若い団員を確保し、技術を継承していかなければ、地域防災力を維持できない」。コロナ禍以降は特にも、操法訓練が手薄になっている現状もあり、若手団員の基本技術習得にも力を入れたい考え。
 
伝統のまとい振りで火消しの心意気を示す

伝統のまとい振りで火消しの心意気を示す

 
熟練団員は堂々の動作で…。火災のない1年を願う

熟練団員は堂々の動作で…。火災のない1年を願う

 
隊列を組んで整然と行進する第6分団。6分団本部の佐々木実分団長(左下写真先頭)は40年勤続で表彰された

隊列を組んで整然と行進する第6分団。6分団本部の佐々木実分団長(左下写真先頭)は40年勤続で表彰された

 
消防車両38台もパレード。子どもたちが盛んに手を振って応援

消防車両38台もパレード。子どもたちが盛んに手を振って応援

 
 同市の昨年の火災発生は3件(建物2、その他1)。前年より4件減少した。一方で、昨年2月に発生した大船渡市の大規模山林火災をはじめ、全国では気象状況で被害が拡大する事例も増えてきている。本年1月からは、自治体が地域の気象状況など火災の危険性に応じて発令できる林野火災注意報、同警報の運用(期間:1~5月)が始まった。発令時は、山林またはその周囲1キロで火の使用が制限されるが、釜石市と大槌町は全ての地域が該当区域に含まれるため、全域が対象となる。山林、原野などでの火入れ、花火、たき火、可燃物付近での喫煙などが制限される。注意報発令時は努力義務、警報発令時は従わない場合、30万円以下の罰金または拘留が科せられることがある。(発令基準や制限内容など詳しくは同市ホームページで確認)
 
 釜石消防署によると1日以降、同注意報は3回(3、8、10日)発令。8日と10日は注意報から警報に警戒レベルが引き上げられた。空気が乾燥し、風が強く吹く日が多いこの時期、火の取り扱いには十分な注意が必要だ。

rescue01

クマによる外傷事案 釜石消防署員が救急活動を検討 県、市の鳥獣担当とも情報共有

rescue01

釜石消防署が開いたクマ外傷事案の救急活動事例検討会

 
 釜石消防署(小林太署長)は10日、クマによる人身被害の救急対応を考える事例検討会を開いた。県内では今年、死者が出るなどクマによる負傷事案が増加。負傷者の収容から搬送まで救急活動を担う消防署員は、一連の活動の中でさまざまな状況判断や決断が求められることから、今後の活動に生かすために開催した。同署員約30人のほか、県と市の鳥獣担当部署の職員も参加し情報共有。クマによる人身被害対応では二次被害防止の観点からも関係機関の連携が重要であることを再確認し、協力体制強化へ意識を高めた。
 
 会では大槌消防署の和田泰介救急救命士(消防士長)が、県内の狩猟解禁日(11月1日)に大槌町金沢の山林で発生したクマによる顔面外傷事案について説明した。受傷者(70代男性)は仲間と狩猟中、発砲したクマに倒されたところを、別の1頭に襲われ顔面を負傷した。仲間からの119番通報で、同署の救急隊と現場安全管理のための消防隊が出場した。プレアライバルコール(救急隊が現場到着までの間に電話で通報者から情報収集)で受傷者の状態を聞き取り、通報者に圧迫止血を依頼。現場到着後、顔面の複数の裂創を確認した。受傷者は会話はできたが重症状態で、止血や創の被覆などの応急処置を行って病院へ搬送した。
 
rescue01

大槌消防署の救急救命士がクマによる顔面外傷事案の救急出場から搬送までの活動について説明した

 
 出場時に県のドクターヘリを要請したが、暴風警報発令中で対応不能とのことで、最終的に県高度救命救急センター(岩手医大付属病院)への陸路搬送を開始した。釜石道で容体が急変したため、直近の医療機関での安定化が必要と判断し、県立釜石病院へ搬送。受傷者は必要な処置を受けた後、同センターへ転院搬送された。
 
 和田救急救命士は時間経過と活動の流れを振り返り、「状況判断と病院選定に苦慮した。クマ外傷時の活動マニュアルや訓練経験がないので、実際に現場に行くと、想像に欠ける点があった」と話した。二次被害防止策にも言及。署内の話し合いでは▽消防車両上部から周辺を監視する人員の配置▽現場近くに住宅がある場合は車両積載マイクで屋内避難を広報▽ポンプ車などへのクマよけスプレーの常時積載―などの意見が出されたという。
 
rescue01

事例発表を聞きながら現場活動のあり方を考える釜石消防署の署員ら

 
 同署の佐藤純平救急隊長(消防司令補)は、救急隊の医療機関選定について話した。消防法の改正を受け、本県では2011年に救急搬送実施基準が定められている。搬送先医療機関の選定基準としては▽傷病者または家族などから申し出のあった、かかりつけ医▽搬送時間が最短▽病院群輪番制の医療機関―があり、症状や病態とともに総合的に判断して搬送する。佐藤救急隊長は今回のクマ外傷の病院選定について考察。質疑応答では救急隊の活動人員や重症時の判断などに関し、実際に現場を経験した2人に考えを聞いた。
 
署員らは市水産農林課の職員からクマ対策の知識も得た

現場での処置や病院選定について発表者に質問も。事例共有でより良い活動を目指す

 
 釜石消防署の小林署長は「県内のほとんどの消防署ではクマ対策にかかる消防活動や救急活動のマニュアルを作成していない」とし、装備を含む課題を指摘。自治体の中にはクマの緊急銃猟実施の際に担当課の要請で救急車を安全な場所に待機させたり、クマが出没した際、小中学校の登下校時に消防車両が巡回を行う体制をとっているところもあるというが、まだまだ課題は多い。会では県や市の鳥獣担当職員とも情報共有。署員らはクマの習性や追い払いの方法、緊急銃猟の実施基準などについても学んだ。
 
署員らは市水産農林課の職員からクマ対策の知識も得た

署員らは市水産農林課の職員からクマ対策の知識も得た

 
 釜石大槌地区では今年、クマ事案での救急出場は釜石市1件(軽傷)、大槌町1件(重傷)。釜石消防署では特異事案があるたびに今回のような署内研修を行い、情報共有や知識習得に努めているが、県や市の関係部署を招いての事例検討会は初めて実施。県沿岸広域振興局保健福祉環境部・釜石保健所環境衛生課の髙橋秀彰課長は「それぞれの組織には強みがある。何より大事なのは連携で、チームで対応することがポイント」と相互協力の必要性を示した。
 
行政職員との意見交換は貴重な機会。互いの活動を知り、今後の連携に生かす

行政職員との意見交換は貴重な機会。互いの活動を知り、今後の連携に生かす

 
 クマ事案での救急活動は現場周辺にクマがひそんでいる可能性もあるため、二次被害を防ぐための安全確保も重要なポイント。小林署長は「署員も危険を伴う対応。関係機関と連携しながら、任務分担して活動することが大事。状況を見極め、あせらず冷静に」と、よりベストな活動を望んだ。

kotsu01

冬の交通事故、年末年始の犯罪被害を防ごう! 2運動15日からスタート 安全安心なまちへ関係者一丸

交通事故、犯罪被害防止へ―。パトロールに出発する車両を見送る関係者ら=15日、TETTO前広場

交通事故、犯罪被害防止へ―。パトロールに出発する車両を見送る関係者ら=15日、TETTO前広場

 
 冬の交通事故防止県民運動と年末年始地域安全運動が15日から始まった。積雪や凍結で道路環境が悪くなる冬季の交通事故防止、強盗や侵入窃盗などが多発傾向にある年末年始の犯罪被害防止を呼びかけようと展開。釜石市では運動初日の15日、同市と大槌町の交通安全、防犯関係団体などから約180人が参加し、出発式が行われた。交通事故防止運動は24日まで、地域安全運動は来年1月3日まで実施される。
 
 両運動の出発式は同市大町の市民ホールTETTO前広場で行われた。釜石地区防犯協会連合会の岩渕善吉会長は「岩手県では鍵をかけずに泥棒に入られたり、自転車の盗難被害に遭う割合が全国より高い傾向にある」とし、改めて各種防犯活動の徹底を呼びかけた。釜石市交通安全対策協議会(会長:小野共市長)の菊地敏文副会長(県自家用自動車協会釜石支部長)は会長あいさつを代読。今月4日、自転車で登校中の高校生が転倒し死亡した事故に触れ、「尊い命が失われたことは大きな悲しみ。交通安全の取り組みをさらに強化しなければならない」と強い決意を示した。
 
冬の交通事故防止県民運動、年末年始地域安全運動の出発式で啓発活動への意欲を高める参加者

冬の交通事故防止県民運動、年末年始地域安全運動の出発式で啓発活動への意欲を高める参加者

 
 釜石警察署の松本一夫署長は同署管内の治安状況などを説明。「子どもや女性への声かけなどの脅威事案が断続的に発生しているほか、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の予兆電話に関する相談が多数寄せられている。警察や公的機関を語った電話が後を絶たないほか、国際電話も多くなってきている」とし、さらなる警戒を呼びかけた。本年の同署の刑法犯認知件数は11月末現在、76件(前年同期比1件増)。約半数が窃盗事案だという。一方、交通事故発生件数は12月14日現在、人身事故が12件(前年同期比5件減)、1人が亡くなり14人が負傷している。物損事故は561件(同比4件増)。
 
主催団体の代表へ“出動宣言”を行う正福寺幼稚園の園児ら

主催団体の代表へ“出動宣言”を行う正福寺幼稚園の園児ら

 
 式には甲子町の正福寺幼稚園(松岡公浩園長、園児24人)の年中、年長児15人も参加し、「地域の安全安心のため、交通事故防止、特殊詐欺被害防止の活動に出動します」と元気いっぱいに出動宣言。警察車両と防犯パトロールを行う青色回転灯車両の出発を見送った後、イオンタウン釜石に移動し、防犯を呼びかけるチラシを配った。
 
 年末年始地域安全運動のスローガンは「なくそう犯罪 ふやそう笑顔 みんな大好き岩手県」。運動の重点に▽特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺の被害防止▽子どもと女性の犯罪被害防止▽住まいと自転車の鍵かけの徹底―を掲げる。
 
園児の応援を受け、防犯パトロールに向かう釜石市防犯協会の青パト車両

園児の応援を受け、防犯パトロールに向かう釜石市防犯協会の青パト車両

 
「詐欺などに気を付けて!」。正福寺幼稚園の園児は防犯チラシの配布もお手伝い

「詐欺などに気を付けて!」。正福寺幼稚園の園児は防犯チラシの配布もお手伝い

 
最後は、事故や事件に遭わないよう気を付けることを誓っておまわりさんとハイタッチ!

最後は、事故や事件に遭わないよう気を付けることを誓っておまわりさんとハイタッチ!

 
 TETTO前の県道沿いでは交通安全団体のメンバーらがハンドポップを掲げ、ドライバーに安全運転を呼びかけた。交通指導隊員らは横断歩道で歩行者の誘導にあたった。冬の交通事故防止県民運動のスローガンは「飲む前に 車じゃないよね? 再確認」。忘年会シーズンを迎え飲酒の機会が増えることから、より一層の「飲酒運転根絶」を目指す。この他、▽スピードダウンの徹底▽高齢者と冬休み中の子どもの交通事故防止▽冬道用タイヤ装着の徹底―も運動の重点に据える。
 
TETTO前の道路ではドライバーや歩行者に交通事故防止をアピール

TETTO前の道路ではドライバーや歩行者に交通事故防止をアピール

kuma01

釜石駅付近にクマ、市内初「緊急銃猟」で1頭駆除 岩手県内で2例目

釜石市中心部に出没したクマ。緊急銃猟で駆除された

釜石市中心部に出没したクマ。緊急銃猟で駆除された

 
 クマの出没を受け、釜石市は11月26日、自治体判断での発砲を可能とする「緊急銃猟」を実施し、1頭を駆除した。岩手県内初の緊急銃猟となった同月20日の洋野町に続いて2例目で、同市では初めて。
 
 市によると、駆除されたクマは体長約120センチの雌(体重80キロ)で、成獣とみられる。26日午前7時25分ごろ、鈴子町で「クマが木に登っている」と住民から市に連絡があった。駆け付けた市職員や釜石大槌猟友会、県警などが木の上にいるクマ1頭を確認。木の下に箱わなを設置し、警戒に当たった。
 
木の上に居座るクマの様子をうかがう関係者

木の上に居座るクマの様子をうかがう関係者

 
 現場はJR釜石駅の沿線で、駅から東側に約200メートルの鈴子排水区雨水ポンプ場近く。国道283号沿いで交通量が多く、日中は人通りもある。周囲には土産物店が入る「シープラザ釜石」や魚屋などが入る市場「サン・フィッシュ釜石」、ホテル、レンタカー店などが点在する。
 
 市は追い払いを試みたものの、クマは木の上からほとんど動かず、付近にとどまり続けた。わなにもかからず、約5時間半こう着状態に。「山に追い払おうにも市街地を通っていかなければいけない状況だった。危険だということで緊急銃猟しかないな…」と関係者間で協議、判断した。
 
木の下に箱わなを設置するもクマは木の上から動かず

木の下に箱わなを設置するもクマは木の上から動かず

 
近くの線路を列車が通ってもクマは木の上から動かず

近くの線路を列車が通ってもクマは木の上から動かず

 
市街地に出没したクマを警戒する警察官とにらみ合い

市街地に出没したクマを警戒する警察官とにらみ合い

 
 クマを貫通するなどした銃弾を遮る「バックストップ」が確保され、列車が通らない時間帯だったことなどの条件もそろい、市長に状況を報告。午後0時半ごろに市長が許可し、緊急銃猟のため釜石署が同0時50分ごろから現場付近で交通規制した。
 
 周囲の安全を確認した上で、市鳥獣被害対策実施隊の隊員が午後1時ごろに1発撃った。銃弾を受けたクマは近くにある別の木の上に移動。同1時半ごろ、さらに2発を発砲し、駆除した。同1時45分ごろに交通規制を解除。けが人や物的被害は確認されていない。
 
国道283号を通行止めにして緊急銃猟を実施。弾を受けたクマは別の木に移ったが、駆除された

国道283号を通行止めにして緊急銃猟を実施。弾を受けたクマは別の木に移ったが、駆除された

 
 市の担当者は「こうした状況(緊急銃猟の実施)にはなりたくないというのが正直な話」としつつ、「関係機関と良好な関係が築けていたのでスムーズにできた」と振り返った。緊急銃猟について、市はマニュアルを作成し、9月には関係機関と対応訓練を行っていたことが、今回の円滑な連携と対応につながったという。
 
 一方で、緊急銃猟の難しさを感じる場面も。1発目の弾丸は命中したもののクマが移動したため、再度、市長への報告や許可を得る必要が生じた。市の担当者は「(緊急銃猟を行う)一連の場所が動けばシチュエーションが変わり、その都度、市長の判断が必要になる。ややもすれば忘れてしまうかもしれないと心配にはなった」と話した。
 
 市によると、昨年11月のクマの目撃情報は4件だったが、今年は26日現在で27件と大幅に増加。クマを人間の生活圏に近寄らせないための対策として、生ごみを出さないことや放置果樹の撤去などを呼びかける。
 
市街地に出没し緊急銃猟で駆除されたクマ

市街地に出没し緊急銃猟で駆除されたクマ

 
 緊急銃猟は鳥獣保護法が改正され、今年9月に始まった制度。人の生活圏にツキノワグマなどが出没した場合、人に弾丸が当たらないよう安全確保した上で市町村の判断で銃猟を可能とする。市町村長は①住宅地などに侵入またはその恐れがある②危害防止のため緊急に対応が必要③銃猟以外で的確かつ迅速な捕獲が困難④住民らに弾丸が当たる恐れがない―と判断した場合、市町村職員や委託したハンターに緊急銃猟をさせることができる。

minerva01

釜石で学ぶ!震災復興の歩み、避難行動 米ミネルバ大の学生 地域課題探り、戦略提案も

避難体験で高台に続く階段を駆け上がるミネルバ大学の学生ら=11月8日

避難体験で高台に続く階段を駆け上がるミネルバ大学の学生ら=11月8日

 
 世界の各都市を巡りながら実践的な学びを深める教育に取り組む米・ミネルバ大学(本部・サンフランシスコ)の2年生約50人が11月8日から10日にかけて釜石市を訪問。「災害復興と防災」をテーマに東日本大震災の被災状況や復興まちづくりの過程を学んだ。同市と同大、ミネルバジャパン(東京)の3者で結ぶ包括連携協定によるもの。被災者の体験談を聞いたり避難行動を追体験したり、復興後のまちの課題について関係者への聞き取りも行いながら、防災や観光などの面から市への提言や新たな取り組みのアイデアを残した。
 
 同大は2014年に開校した4年制の大学。キャンパスを持たず、学生は世界の複数の都市に移り住みながら、少人数での議論を中心とするオンライン授業に参加する。現地の企業やNPOなどと協働し、課題解決型の学習も展開。約640人の学生(大学院生を含む)のうち、世界約100カ国からの留学生が85%以上を占めているのも特徴だ。
 
 世界8カ所目となる日本拠点を8月に東京に開設。フィールドワークの場の一つとして釜石市が選ばれ、10月に協定を結んだ。受け入れ先の市や観光地域づくり法人かまいしDMCなどが学びと交流の場を提供すべく準備を進めてきた。
 
釜石市、ミネルバ大など3者が10月に協定を結んだ

釜石市、ミネルバ大など3者が10月に協定を結んだ

 
 釜石入りしたのは、26カ国の学生とドルトン東京学園高の生徒らの一行。岩手県主催の総合防災訓練が市内で展開された8日、住民参加の避難訓練はクマの出没が相次いでいるため中止となったが、一行はプログラムの一つとして独自に避難訓練を行った。
 
 学生らは引率者の合図で、宿泊先のホテルから近くの高台にある仙寿院(大只越町)に向かった。寺に続く階段を急ぎ足で上って避難。その様子を見つめた芝崎恵応住職は「歩いて坂を上る学生がいた。のんびり歩いていたら助かりません。もし津波が来ていたら、みなさんの3分の1はお亡くなりになっていた」と告げた。
 
学生らは仙寿院で避難訓練を体験し、映像で震災当時の状況を学んだ=11月8日

学生らは仙寿院で避難訓練を体験し、映像で震災当時の状況を学んだ=11月8日

 
 本堂に招き入れ、震災の津波襲来時の映像を見せながら講話。津波から命を守る避難行動を意識づけるため継続する「新春韋駄天(いだてん)競走」にも触れ、寺に続く急坂を懸命に駆け上がる市民らの様子も紹介した。
 
 一行はその後、大槌町へ。NTT東日本が企画した防災プログラムでデジタル活用の事例と課題などを考えるワークショップなどに臨んだ。さらに、釜石・鵜住居町に移動し、いのちをつなぐ未来館や祈りのパークを見学。震災時に小中学生がとった避難行動をたどる追体験にも取り組んだ。案内役は同館職員の川崎杏樹さん(29)。当時、釜石東中2年生で、学生は当時の状況を聞きながら、釜石鵜住居復興スタジアムから恋の峠まで約1.6キロの道を歩いた。
 
震災時に鵜住居地区の子どもたちがとった避難行動を追体験

震災時に鵜住居地区の子どもたちがとった避難行動を追体験

 
 自然災害が少ないというエストニア出身のレティ・イードラさん(20)は、坂道を走って逃げるのは初めての体験だった。体験者の「リアルなストーリー」から「当時、何を感じていたのか、どんな思いで行動したのか、心に触れられた。小さい頃から自衛的に得られたものがここにはあり、人として学ぶことが多い」と受け止めた。
 
 同年代との交流の時間も。震災の伝承や防災活動に取り組む釜石高校の生徒有志グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」副代表の高橋美羽さん(2年)は「災害が多い地域で高校生が立ち上がって行動していることを海外の人に伝えられた」とうれしそうに話した。将来、語学を駆使した仕事を視野に入れていて、「英語をもっと勉強し、質問に直接答えられるようにしたい」と、学生から刺激をもらった。
 
釜石高生から震災の語り部活動や防災の取り組みを聞いた

釜石高生から震災の語り部活動や防災の取り組みを聞いた

 
 9日は、かまいしDMCの河東英宜代表取締役や市オープンシティ・プロモーション室の佐々木護室長から復興まちづくりの過程などの説明を聞き、ハード整備を終えた市中心部の街並みを見て回った。海を生かした観光などに取り組む人らとの意見交換も行った。10日は学びの成果を発表。10のグループに分かれ、▽高齢者の避難を助ける乗り物の導入▽防波堤の野外アートギャラリー化―などのアイデア、課題解決策を提言した。
 
復興まちづくりに関する講話に耳を傾ける学生=11月9日

復興まちづくりに関する講話に耳を傾ける学生=11月9日

 
釜石の未来戦略を提案⁉学びの成果を発表する学生=11月10日

釜石の未来戦略を提案⁉学びの成果を発表する学生=11月10日

 
ミネルバ大の学生は多様な考え方に触れながら学びを深め合う

ミネルバ大の学生は多様な考え方に触れながら学びを深め合う

 
 被災者の体験談や都市再生の過程から「生きるために必要なレジリエンス(回復力)を学ぶ場」としての可能性を見いだしたのは、アメリカ人のウォルフガング・サンダーさん(18)。「災害があってもこの地で生き続ける覚悟や、ふるさとを受け継ぐために希望を作り続ける人々に触れた。習慣化された心のあり方や思考に変化をもたらすような体験を提供することは観光振興にもつながるだろう」と想像した。
 
 同じグループの入江颯志さん(20)は福岡県大野城市出身。震災のニュースは記憶するが、「外から見るのと現地で実体験を聞くのではギャップが大きかった。コミュニティーのつながりを大事にし、不屈の精神を持つ人が多いと感じた」と学びを振り返った。印象に残ったのは「つながり人口」という言葉。外部との交流で新たな活力を育み、復興後の持続的成長を導こうとする市の「オープンシティ戦略」に掲げられるもので、「新しいポジティブな考え。発見として持ち帰り、深堀りしてみたい」と感化された。
 
新たな視点を学び合ったミネルバ大の学生、釜石市の関係者ら

新たな視点を学び合ったミネルバ大の学生、釜石市の関係者ら

 
 発表を聞いた市関係者から「人口減、高齢化の課題はあっても、災害から命を守る行動の重要性は変わらない。解決につながりそうな提案であり、他の自治体でも使える考え。この話、進めましょう」などと声が上がっていた。学生たちの知見に期待感を示し、次年度以降も受け入れを続けたい考え。学びの場の提供に加え、子どもらとの交流も見込む。
 
 同大学の2年生は1年間、日本で学ぶ。現地学習は釜石市のほか和歌山県田辺市、兵庫県姫路市で行われる。

bousai01

釜石、大槌両市町で県総合防災訓練 関係機関・団体が連携確認 避難者対応の課題共有

外部から入った保健医療福祉の支援者らが釜石市の担当者から避難所の状況の説明を受ける=県総合防災訓練・釜石東中会場

外部から入った保健医療福祉の支援者らが釜石市の担当者から避難所の状況の説明を受ける=県総合防災訓練・釜石東中会場

 
 2025年度の県総合防災訓練は8日、釜石市と大槌町で行われた。釜石市が同訓練会場となるのは2012年以来。巨大地震が発生、大津波警報が発表されたとの想定で、72項目の訓練を実施。83の関係機関、約4300人が参加し、救出救助、避難所運営、支援チームの活動などに関し、自治体と関係機関、団体が連携を確認した。住民が防災意識を高めるための各種体験もあった。当初予定されていた津波避難訓練は、クマ出没の危険回避のため中止された。
 
 訓練は前日の(先発)地震に続き、三陸沖を震源とするマグニチュード8を超える大地震が発生。本県沿岸部で最大震度6強を観測、大津波警報が発表されたとの想定。地震、津波災害で必要となる各種対応を訓練した。釜石市では5会場で実施。鵜住居町の釜石東中では避難所開設後、3日から1週間後を想定し、避難者への各種ケアを中心とした訓練が行われた。
 
日本医師会災害医療チーム(JMAT)の医師や日本赤十字社派遣の医師や看護師らが避難所を巡回し患者(役)の診療を行った

日本医師会災害医療チーム(JMAT)の医師や日本赤十字社派遣の医師や看護師らが避難所を巡回し患者(役)の診療を行った

 
写真上:心のケアを行う災害派遣精神医療チーム(DPAT)=右側と連携を確認 同下:感染制御支援チーム(ICAT)は避難所における感染症予防対策を訓練

写真上:心のケアを行う災害派遣精神医療チーム(DPAT)=右側と連携を確認 同下:感染制御支援チーム(ICAT)は避難所における感染症予防対策を訓練

 
 市、釜石医師会、同薬剤師会による保健医療福祉調整本部訓練は初めて実施。外部から派遣される災害対応の医療、感染制御、福祉などの支援チームの受け入れ、ケアが必要な患者の関係機関への誘導などを具体的シナリオでシミュレーション。情報共有のための報告会も行った。釜石薬剤師会の中田義仁会長は「災害時の混乱の中では、各種チームが円滑に支援に入れるような調整本部が必要不可欠。今回の訓練参加者からも同様の声があった。迅速な対応のためには関係機関の平時からの連携も大事」と話した。
 
市、医師会、薬剤師会が連携し初めて行われた「釜石市保健医療福祉調整本部」の設置・運営訓練

市、医師会、薬剤師会が連携し初めて行われた「釜石市保健医療福祉調整本部」の設置・運営訓練

 
bousai01

調整本部は外部から派遣される支援チームの調整や関係機関の情報共有を担った

 
 県、市の国際交流協会は外国人の避難所受け入れ訓練を行った。市から応援要請を受けた同協会員が外国人避難者の受け付けや相談に応じた。中国、ベトナム、バングラデシュ出身の県内在住者4人が訓練に参加。音声翻訳アプリを利用してやりとりしたほか、県が設置する災害時多言語支援窓口に電話して母国語で会話をできるようにし、困りごとなどを確実に把握する訓練も行った。
 
外国人の避難所受け入れ訓練。翻訳アプリや災害時多言語支援窓口も活用し、外国人避難者の要望を聞いた

外国人の避難所受け入れ訓練。翻訳アプリや災害時多言語支援窓口も活用し、外国人避難者の要望を聞いた

 
 バングラデシュから岩手大に留学中のアクター シャーミンさん(31)は「災害時、異なる言語の人にどう対応するのかを学べた」、夫のリアズさん(33)は「私たちは日本語を少しできるが、来日して間もない人たちはとても大変だろう。コミュニケーションがやはり一番難しい」と実感。2人はイスラム教徒で、毎日の礼拝や食事の問題もある。県国際交流協会の大山美和主幹は「長期避難になると新たな課題も出てくる。そういった気付きを協会関係者だけでなく周りの人にも知ってもらうことが大事」と理解促進を願った。
 
 鵜住居町の住民らは避難者として各種訓練に参加した。LINE登録やマイナンバーカードの活用で自治体が避難状況をリアルタイムで把握する避難所運営デジタル化実証訓練、避難所運営ゲーム(HUG)の体験実習などに取り組んだ。
 
避難所運営デジタル化実証訓練では、避難者のスマホで県のLINEアカウントに友だち登録。各種情報を入力してもらうことで避難状況の把握につなげる訓練が行われた

避難所運営デジタル化実証訓練では、避難者のスマホで県のLINEアカウントに友だち登録。各種情報を入力してもらうことで避難状況の把握につなげる訓練が行われた

 
県防災士会が訓練参加者に提供した避難所運営ゲーム(HUG)の体験実習

県防災士会が訓練参加者に提供した避難所運営ゲーム(HUG)の体験実習

 
 釜石東中の菅原怜利さん(2年)は今年7月、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする地震で本県沿岸に津波警報が出された際、学校で避難者の受け入れを実体験。今回のゲームで、「避難所にはいろいろな人が来るので、どこにどう配置すればいいかを学べた。今後に生かせれば」と意識を高めた。岩﨑瑛叶さん(同)は「避難所はみんなで意見を出し合ってやることが大切だと思った」。学校では自主防を組織しており、「防災のことを知らない人たちにも広めていきたい」と思いを強くした。実習をサポートした県防災士会の清水上裕理事長は「東日本大震災の教訓を踏まえたゲーム。実際の避難時にこうした知識があれば、リーダーシップを取って避難所開設が可能になる」とし、より多くの人たちの体験を望んだ。
 
鵜住居町の住民らがHUGを体験。釜石東中生(写真右下)も防災力を高めようと参加

鵜住居町の住民らがHUGを体験。釜石東中生(写真右下)も防災力を高めようと参加

 
 港町のイオンタウン釜石周辺では、津波から逃げ遅れた人をがれきや車の中から救出する訓練を実施。県警や自衛隊のオフロードバイクが要救助者を発見、駆けつけた消防署員らが救出して救護テントに搬送する流れを確認した。能登半島地震で集落孤立が相次いだことなどを踏まえたヘリコプターによる孤立者救助訓練では、県と海上保安庁から2機が出動。救急隊員らが建物屋上に降下し、取り残された避難者を機上に引き上げた。
 
車内に閉じ込められた人を救出する消防隊員ら=港町会場

車内に閉じ込められた人を救出する消防隊員ら=港町会場

 
関係機関が連携し津波から逃げ遅れた人らの救助活動にあたる

関係機関が連携し津波から逃げ遅れた人らの救助活動にあたる

 
ヘリコプターによる救助訓練。孤立者を上空から救出する流れを確認した

ヘリコプターによる救助訓練。孤立者を上空から救出する流れを確認した

 
 大町の市民ホールTETTO前広場周辺では婦人消防協力隊による炊き出しや、指定避難所を想定した電気自動車からの給電訓練などが行われたほか、テントの中に充満させた訓練用の無害な煙で火災の状況を体感するといった防災意識を高めてもらうプログラムも用意された。地震体験車で震度7など大規模地震の揺れを体感した市内の平松寿倖(ひさこ)さん(35)は「(体験では)揺れがくると分かっていたし家具も固定されていたが、実際の災害は突然起こるだろうから不安。家の中につかめるもの、体を支えられるもの、あったかな…。これから先もここで暮らしていくから、身の回りの状況を確かめたい」と備えの大切さを改めて実感していた。
 
TETTO前広場では炊き出し訓練や災害体験などが行われた

TETTO前広場では炊き出し訓練や災害体験などが行われた

 
達増拓也県知事らが各訓練会場を視察。外国人避難者の受け入れではイスラム教徒の礼拝スペースも設けられた(左)

達増拓也県知事らが各訓練会場を視察。外国人避難者の受け入れではイスラム教徒の礼拝スペースも設けられた(左)

 
 訓練後の閉会式で、統監の達増拓也県知事は「災害対応の総合力を強化する重要性を改めて認識。訓練の成果を地域や職場の防災対策に役立ててもらいたい」と総括。副統監の小野共市長は「近年、自然災害が頻発、激甚化し、防災・減災の取り組みはより一層の強化が求められる。訓練で得た課題を検証し、災害対策に生かしていく」と決意を示した。