タグ別アーカイブ: 防災・安全

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深夜の「おや?」が命を救う 高齢者見つけ介抱 2人に感謝状 釜石警察署

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三浦正人署長から表彰状を受けた菊池匠さん(中)、菅原晃輝さん(左)

 
 釜石警察署(三浦正人署長)は1月27日、高齢者を発見し、適切な措置を講じて警察活動に協力した釜石市内在住の自営業・菊池匠さん(33)、アルバイト・菅原晃輝さん(58)に署長感謝状を贈った。2人は「深夜の路上を一人で歩いている高齢者の異変に気づいて介抱した」という点で共通するが、実は異なる事案。ただ、同じ日、同じ時間帯に発生するという偶然が重なった。高齢化が進む中、こうしたケースは「増える懸念も」と同署。「地域を知る市民の目が必要。おやっと感じたら110番通報を」と求める。
 
 同市中妻町の同署で、三浦署長が2人に感謝状を手渡した。三浦署長は「奉仕の精神によって命が救われた。社会的に意義深い。今後もご協力を」と謝意を伝えた。
 
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釜石警察署で行われた感謝状贈呈式

 
 同署などによると、昨年12月22日午前2時すぎ、立て続けに2件の110番通報が寄せられた。「家族(高齢)の姿が見えない」「ふらついていた高齢者を保護している」。つながった―と思いきや、実際は異なる事案だった。対象となる高齢者は2人。同時間帯に市内2カ所で似たような事柄が発生していた。
 

違和感、見逃さず動く

 
 菊池さんは22日未明、妻まみさん(34)が運転する車で帰宅途中に、新町の国道283号を住吉町側から横断する男性(80代)に目が留まった。いったんは通り過ぎたものの、「ふらふらしていた。なんか変だ」と感じたため、まみさんに「戻れ」と伝えた。
 
 車から降りた菊池さんが「こんな時間に何してんの?」と男性に声をかけると、「たばこを買いに行く」と答えが返ってきた。男性の様子をうかがうと、長時間歩いたのか衰弱しているように見え、外は寒いからと車に乗せた。そして、「直感」で110番通報。午前2時5分頃だった。
 
 その後、到着した警察官が男性を自宅まで送り届けた。男性の家族は、その時に初めて男性が外に出ていたことを知ったようだったという。男性には認知症の疑いがあったとのこと。
 
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三浦署長から感謝状を受け取る菊池さん

 
 感謝状の贈呈には、まみさんも同行していて、「あの時は、知らない人を車に乗せるのが少し心配だった。けど、無事でよかった」とほっとしていた。一瞬の違和感を見逃さなかった菊池さんは「おかしいと感じたりした時は協力したい」と胸を張った。
 

高齢者の行動 想像して対応

 
 一方、菅原さんが手助けをしたのは女性(80代)で、場所は大只越町内の路上だった。新聞配達中、あるグループホームの前を通りかかった際、施設職員から近くに住む女性がいなくなり、探していることを聞いた。
 
 「高齢の女性が歩くとしたら…」と歩行速度や思考を想像し、普段の配達コースを変更して作業していると、ガードレールにつかまりながら歩いている女性を発見。一度は通り過ぎたが、女性が時折胸のあたりを抑え、立ち止まっている様子が気になり、戻って声をかけた。「どこに行くの?」「家はどこ?」「大丈夫?」。声をかけ続けていると、警察車両が通りかかった。
 
 実は警察では、午前2時12分頃に家族からの通報を受け、女性を探していた。認知症の疑いがあり、グループホームの利用者でもあった女性を心配する声がつながり、女性は夜が明けきらないうちに無事、家族のもとに帰ることができた。
 
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三浦署長から感謝状が贈られた菅原さん

 
 菅原さんは「特別なことをしたわけじゃない。やれる範囲でやったこと」と静かに振り返った。ただ、そうした行動には、昨年亡くなったという母親の姿が思い出されたからとも。「おふくろにやってやれなかった分の孝行、できたかな」とつぶやいた。
 
 2件とも発見は深夜で、冬期で冷え込みも厳しい。当時の気温は3、4度。発見や声かけが遅れれば、命に関わる事故などに遭遇、発展していたかもしれない。
 
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高齢者を手助けした菅原さん(左)、菊池さん(中)

 
 同署生活安全課の高橋友一(ともかず)課長は、高齢化の進展で同様の事案が増える可能性を指摘。その上で、「(署では)夜間は当直の人員が限られ、地域を知る人の目の重要性を改めて感じている。生活の中で、いつもとは違うと感じたら通報してほしい」と強調する。加えて、交通安全分野の視点“ながら見守り”を広げたい考えで、「散歩しながら、通常の生活をしながら、地域ぐるみで見守りをしていければ」と協力を呼びかける。

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広がれ!防災の輪 釜石市民×外国人住民 災害の備え かるた、クイズで楽しく学ぶ

防災かるたを使って災害発生時の適切な行動を学ぶ参加者

防災かるたを使って災害発生時の適切な行動を学ぶ参加者

 
 災害時に役立つ防災知識を釜石市在住の外国人に知ってもらう催しが26日、同市鈴子町の市国際外語大学校で開かれた。「難しい」と思われがちな防災用語を、分かりやすく伝えるアイテムとして用意されたのは「かるた」。簡単な日本語とそれに合うイラストが入った札に手を伸ばし、楽しみながら防災意識を高めた。
 
 地域住民との交流促進を目指して実施している「釜石グローバルラウンジ」(市、市国際交流協会主催)の一環。技能実習や特定技能の在留資格を持ち、市内で働くベトナムやインドネシアなどの出身者、同校で学ぶネパール人留学生ら約40人に加え、同協会員や国際交流に関心のある中高生なども参加した。
 
 外国人、日本人が輪になって勝負。参加者の多くは絵札に入った頭文字の平仮名を理解しているようで、目当ての札を見つけると素早く手を出した。札をのぞき込む表情は真剣だったが、手が重なり合ったり、お手付きしたりすると、笑顔に一変。地域住民が本領を発揮し、「バンッ」と大きな音を出しながら札を取ると、実習生らは驚きつつも、「お~」と感動の声を上げたりした。
 
釜石で暮らす人たちが輪になって「防災かるた」に挑戦

釜石で暮らす人たちが輪になって「防災かるた」に挑戦

 
 「気を付けよう 地震は一回じゃ 終わらない」「戻らない 走って逃げよう 高いところへ」「明日かも 災害はいつ起きるか わかりません」「普段から(いつも)調べておこう 避難場所」。かるたの読み札は、同校外語観光学科の学生が既製の「防災かるた」を参考に、「やさしい日本語、想像しやすい言葉」を選んで作製。短い言葉をつなげるといった工夫も加えた。
 
簡単な日本語をつないで作られた読み札

簡単な日本語をつないで作られた読み札

 
読み手の声に聞き耳を立て、構える参加者

読み手の声に聞き耳を立て、構える参加者

 
 市国際交流課の職員による講話もあり、災害の種類や災害時に使われる日本語、避難場所と避難所の違いなどを確認。「家や、おみせにいます。地震がおきました。すぐ、外ににげますか?」といった問いかけ、クイズを通して普段から地域の人と関わりを持つことや、避難訓練に参加しておくことなど備えの大切さも学んだ。
 
防災用語などを解説する市職員の話を熱心に聞く参加者

防災用語などを解説する市職員の話を熱心に聞く参加者

 
話し合いをしながら防災に関するクイズにも挑戦した

話し合いをしながら防災に関するクイズにも挑戦した

 
 初めてのかるたで15枚の札を取ったネパール出身の学生パビトラ ネウパネさん(20)は日本の正月遊びを楽しみながら、災害発生時の行動を記憶。「揺れたとき 机やイスの下に はいりましょう」との読み札の言葉を頭に浮かべた。
 
 フィリピン出身のエルマー ダイダイさん(29)は「初めての経験だったが、説明してもらって少しわかった。いろんな人と会って話すことができたのも良かった」とうなずいた。「溶接」の特定技能を有し即戦力として造船会社で働いていて、日本での生活は5年になる。「日本語をしゃべれるし、平仮名、カタカナは分かるけど、漢字は難しい」と肩をすくめる。あと数年在留でき、釜石で仕事を継続する予定。「防災無線をしっかり聞くようにしたい」と、情報収集の必要性に認識を深めた。
 
防災を通じて交流を深めた外国人と地域住民

防災を通じて交流を深めた外国人と地域住民

 
 同課によると、現在釜石で暮らす外国人は約450人で、増加傾向にある。半数はベトナム人で、水産加工や機器製造に携わる技能実習生が多い。近年、大規模な地震や台風などの自然災害が頻発していることから、被災経験の少ない外国人にも防災に関する知識を学んでもらおうと企画。「災害はいつ起きるか分からない。準備が大切」と繰り返し強調し、今後もこうした取り組みを続けたい考えだ。

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「110番の日」 釜石警察署が広報活動 高齢者や子どもの防犯・安全意識アップ!

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地域住民にチラシなどを手渡す釜石警察署員ら

 
 釜石警察署は「110番の日」の10日、事件事故用の緊急ダイヤル110番の適切な利用を促す広報活動を、釜石市内各所で行った。同署釜石駅前交番(鈴子町、髙橋長武所長)は市高齢介護福祉課と連携し高齢者宅を回って啓発チラシを配布。同小佐野交番(小佐野町、川野正行所長)は手作りの啓発品を保育施設に贈って交通安全意識の向上を図った。
 

釜石駅前交番 巡回で啓発、特殊詐欺防止や鍵かけ徹底

 
 釜石駅前交番の活動は大只越町で展開され、警察官3人と市職員2人が2班に分かれて高齢者世帯を中心に巡回。チラシなど啓発グッズを手渡しながら、特殊詐欺被害や交通事故に気をつけるよう声をかけた。
 
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地図を手に地域を回る釜石駅前交番の警察官ら

 
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訪問活動を通じて住民の声を聞き取る警察官

 
 特殊詐欺に関し、市内で予兆電話や実際の被害が発生していることを伝えつつ、「変わったことはないですか?」と心配事を聞き取ったり、「詐欺に気を付けてください」「知らない番号の電話に出てしまっても、名乗らないで。ガチャっと切ってもいいから」などと対処法を助言した。在宅時にも「日常的に鍵をかけて」と呼びかけたほか、「万一の時は110番を」と促した。ただ、現在は岩手県警本部につながることから、釜石署や駅前交番の電話番号を記したチラシも渡した。
 
 髙橋所長とチームを組んだのは同課地域包括支援センターの小岩身知子さん(社会福祉士)。市内では高齢者世帯や独り暮らしが増え、空き家も多くなっているうえ、市民が抱える困り事は複雑化し、複合的な問題も少なくないという。警察、市単独での対応では解決が難しい場合もあり、関係機関の情報共有や連携を強化する機会にした。
 
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住宅街を歩く髙橋長武所長(右)と小岩身知子さん

 
 2時間ほどの活動で、髙橋所長が感じたのは住民らの防犯意識の高さ。家にいる時も玄関に鍵をかけていたり、固定電話には番号表示機能を備え、留守番電話対応にしている人が「思いのほか多かった」。また、空き家の増加を改めて認識しつつも、小岩さんの「住民同士が隣近所を気にかけ合っている」という印象に同調した。
 
 駅前交番は7人体制で治安維持に努めている。「地道に歩く。これが“おまわり”の原点だ」と髙橋所長。これからも、こつこつと活動を積み重ねていく構えだ。釜石署では「事件、事故は迷わず110番」とする一方、「困り事や相談など不要不急の110番は控えて」と適正に利用するよう呼びかけている。
 

小佐野交番 紙クラフトで親近感、保育施設へ届ける

 
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小佐野交番が手作りしたペーパークラフトとデコうちわ

 
 小佐野交番ではパトカーや白バイのペーパクラフトを使った啓発品を制作し、管内のこども園など6カ所に贈った。子どもたちに110番や交通安全を呼びかけようと、交番の警察官4人でこつこつと手作り。「警察や交番を身近に感じ、親しみやすいイメージを持ってもらえたら」と思いを込めた。
 
 制作はパトカー1台が1~2時間程度、白バイは細かいパーツを組み合わせるため合計1日分の時間かかったという。「110番の日」のPRや「おうだんほどうは てをあげて わたろうね」とメッセージを入れた“デコうちわ”を添え、さらに今年のえと「巳(み)」にちなんでヘビのイラストも加えている。
 
 子どもたちの喜ぶ姿を想像しながら作業に励んだ高橋真奈華巡査(24)は「白バイが大変だったが、頑張った。事件、事故で亡くなる人、悲しむ人を減らしたい」と背筋を伸ばす。地域に入り、住民と協力しながら防犯パトロールにも取り組む矢神海輝巡査(20)は、日々感じている“やりがい”や“感謝”の気持ちも込めた。「気になることがあれば頼ってほしい。不安なことを相談しに交番に来てもらえたら、一緒に解決策を考えます」と力強く話した。
 
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「安全な地域を」と願う小佐野交番の警察官

 
 小佐野交番では場合によっては不在になるケースもあり、存在感を高めることを狙って昨年からペーパークラフトの制作、保育施設への寄贈を続ける。「細やかな活動だが…」と控えめに話す川野所長がこの活動に込めるのは、巡回中に手を振ってくれる園児への“お礼の気持ち”だ。「交番には優しいお巡りさんがいるので安心してほしい」と、変わらぬメッセージを送る。

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金融機関を狙った強盗事件 東北銀行釜石支店で対応訓練 万が一に備え危機意識醸成

東北銀行釜石支店で行われた強盗事件を想定した対応訓練

東北銀行釜石支店で行われた強盗事件を想定した対応訓練

 
 釜石市大渡町の東北銀行釜石支店(水野吾一支店長)で4日、強盗の侵入を想定した行員の対応訓練が行われた。年末にかけ、金融機関を狙った強盗事件が多発傾向にあることから、釜石地区金融機関防犯協会(会長:安田重行岩手銀行釜石支店長、26機関)が会員機関で毎年実施している訓練。同行同支店では約10年ぶりの開催となった。訓練の様子は他機関の職員も見学し、いざという時の対応を学んだ。
 
 訓練は釜石警察署(三浦正人署長)の協力を得て実施。想定は、口座開設を希望する客を装った犯人が窓口を訪れ、行員が対応する中、もう一人の犯人が拳銃を発砲して行内に侵入。ロビーに座っていた女性客を人質に取り、行員らを脅して現金を強奪するというもの。
 
2人組の強盗犯が時間差で侵入。拳銃を向けて行員を脅す(訓練)

2人組の強盗犯が時間差で侵入。拳銃を向けて行員を脅す(訓練)

 
犯人は来店客を人質に取り、現金をかばんに入れるよう要求(訓練)

犯人は来店客を人質に取り、現金をかばんに入れるよう要求(訓練)

 
 警察官が扮(ふん)する犯人は大声で威嚇し、指示に従うよう要求。行員を後方の壁際に立たせ、女性行員に現金を出すよう命令した。金庫から出した金を差し出すが、犯人は再度要求。持参したかばんに金を詰めさせ奪うと、発砲して逃走した。行員3人がすぐさま追いかけ、逃走車両に蛍光塗料を付着させるためのカラーボール(訓練用)を投げつけた。行内では人質になった客のけがの有無を確認し保護。犯人の足跡を消さないよう逃走経路に新聞紙を敷き、移動範囲をテープで仕切り現場保存(証拠保全)した。
 
逃走した犯人を追いかけ、防犯カラーボール(この日は訓練用)を投げる。地面などに当て車両に蛍光塗料を付着させるのが目的

逃走した犯人を追いかけ、防犯カラーボール(この日は訓練用)を投げる。地面などに当て車両に蛍光塗料を付着させるのが目的

 
逃走経路に新聞紙を敷き、人質になった客を安全な場所に誘導。見学者が一連の行動を確認した

逃走経路に新聞紙を敷き、人質になった客を安全な場所に誘導。見学者が一連の行動を確認した

 
 犯人侵入直後に行員が押した非常通報ボタンで、警察は事件発生を認知。指令を聞いた近くをパトロール中の警察官がまもなく駆け付け、行員から犯人の体格や服装、逃走方向や車種、ナンバーなどを詳しく聞き取り、情報が無線で伝えられた。
 
駆け付けた警察官の聞き取りに、犯人の情報をできるだけ詳しく伝える

駆け付けた警察官の聞き取りに、犯人の情報をできるだけ詳しく伝える

 
 訓練後、釜石署生活安全課の高橋友一課長は「被疑者の人相や着衣を覚える人、カラーボールを投げる人、現場保存する人など役割分担ができていて、落ち着いて対応していた。臨場した警察官への説明もうまくできていた」と評価。その上で、「被害に遭った時、一番大事なのは自分たちと客の身の安全を確保すること。防犯カメラの映像も重要な手掛かりとなるので、日ごろから設備の点検や店外の様子の確認を」と防犯意識を促した。参加者からは拳銃を使った犯罪への望ましい対応についても質問があった。
 
 入行1年目の佐々木長政さん(23)は初めての訓練だった。非常通報ボタンを押し、犯人の特徴を覚え、カラーボールを投げる係を担当したが、「カウンターの中にいると下半身が見えなくて。さらには犯人に後向きにさせられたので、人相とかの記憶が曖昧(あいまい)だった」と振り返り。対応の難しさを感じつつ、「まずは慌てないこと。お客さまに被害を与えないよう、日ごろから対策を確認し、非常時に備えることが大事」と意識を高めた。
 
写真上:訓練後の振り返り。犯人の特徴を記憶していたかをチェック 同下:水野支店長の話を聞く参加者

写真上:訓練後の振り返り。犯人の特徴を記憶していたかをチェック 同下:水野支店長の話を聞く参加者

 
 水野支店長(54)は「訓練とはいえ迫力があり、みんな気が動転していたようだが、防犯教材などを見て準備してきたことはある程度、冷静にできていたと思う」と所見。予測できない強盗事案への対策として「日ごろからお客さまの目を見て話す、怪しい人物が入ってきた時は一声かけるなど、犯罪のけん制になる対応を心がけたい。今回の訓練を振り返り、行員全員で気を引き締めていく」と話した。
 
 協会の安田会長は「全国的に金融強盗は減少傾向にあり、県内でも2006年を最後に18年間発生していないが、近年の特徴として出退勤の職員を脅して店内に侵入し、金庫を開けさせるという事案も発生している」と説明。訓練を見学した各機関の職員に対し、「今日出た注意点を持ち帰り、各店で再確認、徹底を」と呼び掛けた。

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海中転落事故防止へ釜石海保など啓発パトロール 夜釣り楽しむ人へ「装備しっかりと」

釜石港で釣り人に注意を呼びかける釜石海上保安部の職員

釜石港で釣り人に注意を呼びかける釜石海上保安部の職員

 
 夜釣り中の事故を防止しようと、釜石海上保安部や釜石警察署などは22日夜、釜石市の釜石港と唐丹漁港で合同パトロールを行い、釣り人へ注意を呼びかけた。この時期は日暮れが早く、海水温も低下するため、転落すると発見の遅れや低体温症による危険性が高まるという。そのため、第2管区海上保安本部の管内では11月を「釣り海難防止活動期間」として注意喚起している。
 
 この日は、同保安部と同署、市、岩手県沿岸広域振興局の職員ら約10人が活動。夜間の寒さが増す冬季は気象条件が厳しい反面、漁港の街灯下にイカなどが寄ってくるため釣り人も少なくない。港内もそうした狙いを持った人たちの姿があり、釣り人一人ひとりに注意を促すチラシを手渡した。
 
海中転落事故の防止に向け、釣り人に声をかけながらチラシを配った

海中転落事故の防止に向け、釣り人に声をかけながらチラシを配った

 
 港近くで働く関渡さん(75)は、仕事終わりに釣りを楽しむのが日課。この日も顔なじみの釣り人らと岸壁から釣り糸を垂らしていた。ライフジャケットは着用していたが、事故防止の声がけに「海に落ちたら大変だからね。安全に楽しみたいし、気を付ける」と再確認。狙いのヤリイカは「久しぶりの大漁」だったようで、“いか”にして味わうか考えを巡らせた。
 
 同保安部交通課によると、県内では昨年までの5年間に釣り人の海中転落事故が18件発生。うち夜間に起きたのは12件で半数以上を占める。原因は岸壁などからの足の踏み外し、つまずきなど“不注意”が多いという。
 
 今年は既に3件発生。うち1件が夜釣り中の事案で、釜石市内で起こった。いずれの事故もライフジャケットは未着用だった。
 
多くの人が岸壁から釣り糸を垂らす。今夜の獲物はヤリイカ

多くの人が岸壁から釣り糸を垂らす。今夜の獲物はヤリイカ

 
「決まりを守って安全に夜釣りを楽しんで」と関係者ら

「決まりを守って安全に夜釣りを楽しんで」と関係者ら

 
 港内を巡った同課の美野重和課長は「救命胴衣を着けていない人が多かった。命に関わる事故に発展しかねないので、万一のために着用を心がけてほしい」と強調。加えて、▽気象や海象を確認し無理な行動はしない▽単独行動は控え複数人で行動する▽危険な場所には立ち入らない▽釣り場環境に応じた装備の選択を▽海の緊急通報は118番―といったポイントも呼びかける。

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「危機管理は災害イメージ、対処法準備、実践訓練から」 釜石市アドバイザー・越野修三さん講演

釜石市防災講演会=釜石PIT、16日

釜石市防災講演会=釜石PIT、16日

 
 地震津波、台風、集中豪雨などの自然災害により、全国各地で想定を超える被害がもたらされている昨今―。そうした中、釜石市は16日、自然災害への理解を深め、防災対策に役立ててもらうための市民向けの講演会を開いた。講師は同市の防災・危機管理アドバイザーを務める越野修三さん。「大災害から学ぶ危機管理」と題した講演で越野さんは、災害リスクを知り、具体的にイメージして対処法(戦略)を構築、実践訓練で検証する重要性を説いた。
 
 大町の釜石PITで開かれた講演会には自治会役員、消防団員、防災士を中心に約50人が参加した。講師の越野さんは陸上自衛隊出身。在任時に阪神・淡路大震災(1995年)の災害派遣を経験した。2006年に退官後、県の防災危機管理監に就任。08年の岩手・宮城内陸地震、11年の東日本大震災で県の災害対応を指揮した。釜石市では同震災検証委員会の委員長を務め、18年から防災・危機管理アドバイザーとして助言を行っている。
 
講師の越野修三さん(釜石市防災・危機管理アドバイザー)

講師の越野修三さん(釜石市防災・危機管理アドバイザー)

 
 越野さんは6000人以上が犠牲になった阪神・淡路大震災について、危機意識と事前準備が不十分で救助活動や行政対応が遅れたことを指摘。危機の認識には災害への関心や知識が必要で、「全く関心のない人にいくら情報を与えても行動は起こさない。避難を呼びかけても逃げないのも同じ。危機意識を持つか持たないかで行動は全く変わってくる」と話した。
 
 では、どうすれば危機(災害)対応がうまくいくのか。越野さんは危機管理には「事前対応」「応急対応」「事後対応」の3段階があり、危機に対し、いかに早く適切に対応できるかは事前対応(準備)にかかっていると教えた。一番大切なのは「危機をどれだけ具体的にイメージできるか」ということ。「ハザードマップなどで自分が住む地域の災害の可能性(リスク)を知り、それが起きたらどのような状況になるのかを考える」。これが危機管理の出発点だとした。
 
越野さんは「大災害から学ぶ危機管理」と題し講演した

越野さんは「大災害から学ぶ危機管理」と題し講演した

 
 越野さんが県の防災危機管理監に就任する際、「30年間に宮城県沖地震が発生する確率は99%」とされていたが、県職員の防災への問題意識は決して高くはなかったという。着手したのは、大地震、津波発生時に何が課題となり、どう対処すべきかを考えること(課題解決のための戦略の構築)。就任から1年後の07年には県総合防災訓練、08年には自衛隊と自治体の共同訓練(みちのくアラート)を行い、災害時の応急対策活動(人員・資器材の集結、情報共有、部隊配置、救出救助・医療、緊急物資輸送など)を検証した。災害対策本部機能の強化も図り、これらの取り組みは11年の東日本大震災の対応に生かされた。
 
 一方で東日本大震災では、本県で約6000人が津波の犠牲になった。なぜ、避難行動が遅れたのか。越野さんは震災後に釜石市で実施した住民アンケートから、激しい揺れを感じ津波の情報を得ていたにもかかわらず、約40%の人はすぐには避難していなかった実態を明かした。一因に「自分は大丈夫」「今まで被害がなかったから」「隣の人も逃げていない」など根拠のない理由を自分に言い聞かせ、逃げない自分を正当化しようとする、人間誰しもが持つ心理的作用があるという。
 
越野さんの話に耳を傾ける参加者。災害への関心、危機意識を持つ大切さを学んだ

越野さんの話に耳を傾ける参加者。災害への関心、危機意識を持つ大切さを学んだ

 
 近年増加する大雨、洪水、土砂災害のリスクについても説明。1時間に50ミリ以上の雨が降り続いた場合にどんなことが起こりうるかを過去の災害を例に説明した。2018年の西日本豪雨で51人が犠牲になった岡山県真備町では、合流する2河川が大雨で増水。支流の水が合流地点で流れにくくなり水位が急激に上昇、堤防が決壊し浸水する「バックウオーター現象」があった。本年9月の能登半島の大雨災害では、線状降水帯が発生するなどして1時間に100ミリ以上の降雨を記録。上流からの流木が橋でせき止められ、ダム化することで予想外の浸水被害を引き起こした。
 
全国で発生した大雨災害の事例も紹介。同様の被害は釜石市でも起こりうる

全国で発生した大雨災害の事例も紹介。同様の被害は釜石市でも起こりうる

 
 越野さんは「釜石市は平地が少なく、居住地の背後に険しい山をかかえる。大雨が降ると山から谷に流れ込むイメージ。甲子川にも支流があり、バックウオーター現象や流木による浸水被害が起こりうることをイメージする必要がある」と助言。津波同様、ハザードマップであらかじめリスクを確認しておくことが重要とした。
 
 また、土砂災害で死亡した人の90%は土砂災害警戒区域で亡くなっていること、線状降水帯は日本中どこでも発生する可能性があることも伝え、災害が起きそうな雨量の目安を知り、避難行動の基準(避難スイッチ)を決めておくよう促した。
 
「地震はいつどこでも起こりうる」。過去の地震災害の特徴も学んだ

「地震はいつどこでも起こりうる」。過去の地震災害の特徴も学んだ

 
講演の前には全員で「釜石市防災市民憲章」を唱和した

講演の前には全員で「釜石市防災市民憲章」を唱和した

 
 大規模災害では発災直後は公助(行政、警察、消防、自衛隊)の力を当てにできない。自分の命は自分で、地域は地域で守る必要がある(自助、共助、協働)。越野さんは「訓練でできなかったことは実際の危機(災害)時にできるわけがない。個人、地域、行政など、それぞれの立場で対処法を準備し実践的訓練を重ねる。最悪の場合を想定し行動することが大事」と呼び掛けた。
 
 防災士の資格を持つ鵜住居町の佐々和代さん(76)は近年増加する大雨災害を危惧。居住地前の長内川の形状や草の繁茂による大雨時の水位上昇を心配し、「氾濫や土砂災害の可能性もあることを考えておかないと。『ここは大丈夫』という意識は禁物。(講演で言われたように)日ごろから防災への意識を高めておくことが大切」とうなずいた。
 
今後の防災対策に必要なことを学んだ参加者

今後の防災対策に必要なことを学んだ参加者

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「負けるもんか!」大地震、豪雨被害の石川・珠洲で奮闘 重量挙げ指導で夢追う浅田久美さん 古里釜石で講演

宝樹寺で開かれた浅田(旧姓・長谷場)久美さんの講演会。釜石での講演は2010年10月以来

宝樹寺で開かれた浅田(旧姓・長谷場)久美さんの講演会。釜石での講演は2010年10月以来

 
 釜石市出身で石川県珠洲市在住の重量挙げ女子日本代表元監督、浅田(旧姓・長谷場)久美さん(61)が19日、古里釜石市で講演した。本年1月の能登半島地震、9月の石川県北部豪雨と2度の大災害に見舞われる中、指導する子どもたちの競技環境の立て直しに奔走。「珠洲から世界へ」と“年中夢求”の挑戦を続ける浅田さんは、能登の復旧の現状と逆境に負けず競技に励む子どもたちの姿を映像で見せながら、「(東日本大震災から復興してきた)釜石を見習って、決してあきらめずに頑張っていきたい」と力を込めた。講演会は天神町の宝樹寺(野嶋諭住職)が主催し、約40人が集まった。
 
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重量挙げ女子日本代表監督を務め、現在は石川県珠洲市で子どもたちを指導する浅田久美さん

 
 講師の浅田さんは5歳で釜石を離れ、移住した茨城県水戸市で高校までを過ごした。体育大学に進み、陸上の砲丸投げ選手として活躍していたが、卒業後に体育教諭として赴任した埼玉栄高で重量挙げ競技の関係者の目に留まり転向。1987年、24歳で女子競技の初めての世界選手権に出場した。以降、国内第一人者となり、全日本選手権12連覇。91~93年まで3年連続で世界選手権銀メダルを獲得した。五輪種目になることを願い競技を続けたが、採用された2000年は37歳となり、けがの影響もあって出場はかなわなかった。
 
 現役引退後は指導者の道へ。日本オリンピック委員会(JOC)専任コーチ、女子日本代表監督を歴任後、結婚を機に夫の出身地珠洲市に移住。2012年、子どもたちの重量挙げチーム「スズドリームクラブ」を立ち上げ、現在に至る。
 
浅田さんは1月の能登半島地震の被災状況を映像を見せながら伝えた

浅田さんは1月の能登半島地震の被災状況を映像を見せながら伝えた

 
 浅田さんは始めに1月1日に発生した能登半島地震について話した。地震発生時は、帰省先の釜石から自宅に戻る途中だった。夫の両親の無事は確認できたものの、半島につながる主要道は全てストップ。金沢市までたどり着き、珠洲市に向かうことができたのは4日の昼。車中から目にしたのは「言葉にならない風景」だった。建物は上から押しつぶされたような状態。道路はひび割れ、陥没箇所も。津波から逃れる高台への避難道路までもが建物の倒壊などで寸断されたという。
 
 未曽有の被害から9カ月半―。被災地は仮設住宅が建ち、ようやく倒壊家屋などの解体工事が始まった。そうした中で襲った9月21日の豪雨災害。浅田さんは復興の勢いが停滞している現状を示し、「奥能登は高齢化率が50%を超え、独居世帯も多い。経済的に自宅再建をあきらめざるをえない人も。まちがさら地だらけになるのではと心配」と復興への課題を口にした。
 
講演のタイトルは「負けるもんか! 珠洲から世界を目指す~年中夢求~」

講演のタイトルは「負けるもんか! 珠洲から世界を目指す~年中夢求~」

 
 大地震の発生は、重量挙げ競技に励む子どもたちの練習環境にも大きな打撃を与えた。練習場は地震による倒壊は免れたものの、災害復旧支援者の待機場所となり、しばらく使えない状況が続いた。今年はクラブ立ち上げ時に最年少だった子どもたちが高校3年生となる年で、インターハイでの団体優勝を目標に掲げていた。主力選手6人は避難先にある金沢学院大と津幡高に分かれ、2月に練習を再開。全員一緒に練習できる場も必要なため、クラウドファンディングで支援を募り、近県で週末の合宿を行った。協力したのは本県北上市のガス製造販売業、北良(笠井健代表取締役)。練習場は3月に入り使用可能となった。
 
 各方面の支援で練習を継続できた高校生らは、3月の高校選抜大会、4月の全日本大会で自己新記録や日本新記録を出すなど培った力を発揮。インターハイでは男子団体で準優勝したほか、各階級の個人で優勝を果たした。浅田さんはクラブ立ち上げからの軌跡を、映像を見せながら紹介。子どもたちの頑張りに会場からは拍手が湧き起こった。
 
珠洲市で重量挙げ競技に励む子どもたちの活躍を映像で紹介

珠洲市で重量挙げ競技に励む子どもたちの活躍を映像で紹介

 
 浅田さんは東日本大震災の教訓や復興に向かう釜石の状況を事あるごとに珠洲市民に伝え続けており、「釜石から学ばせていただくことはたくさんある。これからも釜石をお手本にして、少しでも幸せな日常が戻ってくるように日々、頑張っていきたい」と講演を締めくくった。
 
 市内の70代女性は「貴重な話を聞けた。釜石もそうだったが、復興への道のりは長い。能登もまだまだ大変だろうが、これから皆さんで復興を成し遂げてほしい。一生懸命頑張っている子どもたちも応援したい」と思いを寄せた。
 
浅田さんの講演に聞き入る来場者。東日本大震災の経験と重ね、能登の被災者を思いやった

浅田さんの講演に聞き入る来場者。東日本大震災の経験と重ね、能登の被災者を思いやった

 
 講演後の取材に浅田さんは「今の能登の現状を知っていただきたかった。皆さんが真剣に聞いてくださりうれしい。帰ったら今の釜石の状況も伝え、珠洲もくじけずにやれば何とかなると思ってもらいたい」と話した。重量挙げ指導者としての大きな目標は「五輪選手を育てる」こと。「珠洲から出る第1号の五輪選手に」と意気込む子どもたちと今後も夢を追い続ける。

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学校以外で地震、津波に遭遇したら… 釜石小 17年目の下校時避難訓練 児童ら自ら判断し高台へ

訓練・大津波警報を受け高台の仙寿院境内に向かう釜石小児童=11日

訓練・大津波警報を受け高台の仙寿院境内に向かう釜石小児童=11日

 
 釜石小(五安城正敏校長、児童79人)は11日、学校管理下以外で地震、津波が発生した場合を想定し、全校児童の下校時津波避難訓練を行った。帰宅途中または帰宅後に、児童が自ら判断し、適切な避難行動をとれるようにするのが狙い。同校は2011年の東日本大震災時、下校していた全児童184人が迅速な避難で自らの命を守った。08年から取り組んできた同訓練の成果とされる。その “防災のDNA”を受け継ぐ現児童らは本訓練にも真剣に取り組み、いざという時の行動を体で覚えた。
 
 この日、1、2年生は午後2時20分に、3~6年生は午後3時10分に下校した。午後3時30分ごろ、市の防災行政無線で大地震発生の緊急地震速報が流れると、それぞれにいる場所で頭を守る低姿勢(シェイクアウト)をとった。下校中の児童は周りの危険を回避しながらその場でかがみ、ランドセルなどで頭を覆った。自宅など建物内にいた児童はテーブルの下などに入り、揺れがおさまるのを待った。
 
写真左:下校時の地震発生を受け、ランドセルで頭を守り低い姿勢をとる児童(訓練) 同右:大津波警報、避難指示発令の放送で高台への避難を開始(訓練)

写真左:下校時の地震発生を受け、ランドセルで頭を守り低い姿勢をとる児童(訓練) 同右:大津波警報、避難指示発令の放送で高台への避難を開始(訓練)

 
市指定津波避難場所・仙寿院に向かう階段を懸命に駆け上がる

市指定津波避難場所・仙寿院に向かう階段を懸命に駆け上がる

 
 続いて大津波警報が発表され、避難指示が発令されると、その場から最も近い高台を目指して駆け出した。転ばないように足元にも注意しながら、階段や坂道を早足で駆け上がった。市の津波避難場所に指定されている大只越町の寺、仙寿院には同町や只越町などに自宅のある児童らが次々に避難。地域住民や天神町のかまいしこども園の園児らも訓練に参加した。訓練開始から10分後、同所担当の教諭が避難した児童の名前、人数などを学校に報告した。仙寿院への避難児童は1~6年の10人。
 
頂上は間もなく… それぞれのペースで境内を目指す

頂上は間もなく… それぞれのペースで境内を目指す

 
釜石小が訓練の声掛けをした、かまいしこども園の園児も天神町側の階段から上ってきた

釜石小が訓練の声掛けをした、かまいしこども園の園児も天神町側の階段から上ってきた

 
 訓練を振り返る場では▽地震発生時、頭を守りながら周りに危険がないか見ることができたか▽津波避難場所に素早く避難できたか▽真剣に取り組むことができたか―を挙手でチェック。一連の自分の行動がどうだったかを確認した。
 
 帰宅後に防災無線が鳴った福士愛梨さん(5年)は「すぐに机の下に隠れて周りを見た。(避難路は)急坂で疲れたが、いざという時は全力を出して逃げ切りたい」と気を引き締めた。山﨑詩さん(同)は1年時から訓練を重ねてきたことで、「身を守りながら素早く行動できるようになってきた。家にいる時はここに避難すると決めている」と成長をのぞかせた。
 
 「避難の態度はとても立派だった」と話したのは、大只越2丁目町内会の柏木成一郎会長(70)。災害時に必要なものを入れた防災リュックを背負って、自身も訓練に参加した。「実際の災害時は思うように行動できないことも。周りの人や先生の言うことを聞いて逃げてください。家から避難する時はこれを持って逃げるというのを決めておくといい」とアドバイス。急傾斜という土地柄、「山や建物の崩落が心配。シカが多いのも気になる」と、避難の妨げも考えられる環境変化を指摘した。
 
避難完了後、自分たちの行動を振り返り。柏木町内会長は非常時の持ち出しについてもアドバイス

避難完了後、自分たちの行動を振り返り。柏木町内会長は非常時の持ち出しについてもアドバイス

 
 大町の薬師公園には児童約20人が避難。澤舘仁さん(6年)は、放送をしっかり聞いて行動することを意識した。目標を達成できた様子で、「津波がきた時は焦らないで、冷静に行動することを大切にしたい。高いところに避難できたら、先生たちの指示をきちんと聞く」と実際の災害時を想定した。
 
 反省会では「放送が鳴ってすぐに身を守り、素早く避難できた」「家にいた時にサイレンが鳴ってびっくりしたけど、避難場所に早く来られて良かった」などの声が聞かれた。付き添いの教諭は、「足元に気をつけて」と自分から声掛けしていた6年生を評価。スクールガードとして普段から児童を見守る地域住民は震災時の避難行動に触れ、「訓練を繰り返し、身に付いていた結果。みんなも自然に動けるようになったらいい」と訓練の重要性を示した。
 
学校に近い薬師公園に避難する釜石小児童(正面上り口)

学校に近い薬師公園に避難する釜石小児童(正面上り口)

 
薬師公園へのルートは正面以外にも。児童らは最短で上れるルートを選択

薬師公園へのルートは正面以外にも。児童らは最短で上れるルートを選択

 
落ち葉や濡れた路面で転ばないよう気を付けながら避難。頂上広場では反省会も行われた

落ち葉や濡れた路面で転ばないよう気を付けながら避難。頂上広場では反省会も行われた

 
 同校では毎月11日を「釜小ぼうさいの日」と定める。防災安全少年団の6年生が中心となり、防災や安全に関わる話を校内放送で流したり、防災市民憲章を唱和したりしながら意識を高める工夫をしている。この日に合わせて校内での避難訓練なども実施。下校時避難訓練は年1回、10月に行っている。
 
 学区内には高台の同校を含む計8カ所の市指定津波避難場所があり、訓練参加者全員が各所に避難することができた。緊急地震速報から始まった訓練で、児童らは避難の流れを確認。同校によると、シェイクアウトは多くの児童が実践できていたが、緊急地震速報を聞いてすぐに避難場所に向かった児童もいた。「まずは建物の倒壊などに巻き込まれないよう、安全な場所でシェイクアウト。ある程度、揺れがおさまった後、津波注意報や警報の発表で避難場所への避難を開始する」ことを再度、周知する。                               

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園児たち「火の用心」 防火パレードで啓発 秋の火災予防運動、一足早く釜石市民に

「火の用心」と呼びかけたかまいしこども園の園児たち

「火の用心」と呼びかけたかまいしこども園の園児たち

 
 来月の秋季全国火災予防運動週間にちなみ、釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児88人)は11日、防火パレードを行った。4~5歳児約30人が「戸締り用心、火の用心」と大きな声で歌いながら市街地を行進。道行く人に啓発物を渡して注意を促した。
 
 同園児でつくる幼年消防クラブの活動の一環。例年は釜石消防署に出向いて放水体験などに取り組んできたが、地域の防火意識の向上に一役買おうと初めてパレードを企画した。
 
 そろいの消防はんてんを着た子どもたちは、園舎前に整列。藤原園長は「だんだん寒くなって、火を使う季節になった。『使う時は気をつけて』と地域に元気に呼びかけようね」と激励した。
 
園舎の前で出発式。気合を入れる子どもたち

園舎の前で出発式。気合を入れる子どもたち

 
 釜石署の小林太署長がパレードを先導した。住宅街や目抜き通りを進むと、歌声に誘われ建物から出てくる住民も。子どもらは「火の用心」と記した紙を添えた風船をプレゼントした。
 
「火の用心」と伝える園児らを小林太署長が引っ張る

「火の用心」と伝える園児らを小林太署長が引っ張る

 
地域住民に風船を手渡して「火の用心」を呼びかけ

地域住民に風船を手渡して「火の用心」を呼びかけ

 
 大町広場で、防火の集い。市民らが見守る中で、園児らは「火遊びはしません。火のそばで遊びません」などと誓った後、防火の心構えを伝える歌を元気いっぱい歌った。小林署長は「地域の人に火の用心の心が伝わったはず」と協力に感謝した。
 
大町広場で地域の人たちに防火の誓いを伝える子どもら

大町広場で地域の人たちに防火の誓いを伝える子どもら

 
とじまりよ~じん、ひのよ~じん♪元気に歌った

とじまりよ~じん、ひのよ~じん♪元気に歌った

 
 釜石署によると、市内で今年発生した火災はこれまで5件。前年同時期と比較すると少ないという。原因として多いのは“不注意”で、「火の取り扱いに注意を徹底してほしい。使ったら離れない」と呼びかける。
 
パレードで風船を掲げてアピール「お願い!火の用心」

パレードで風船を掲げてアピール「お願い!火の用心」

 
 同運動は、11月9日から15日まで展開される。暖房器具など火器の使用が増え、空気の乾燥や強風により火災が発生しやすい時季を迎えることから、火災予防意識の高揚が目的。釜石署管内では期間中、市消防団や婦人消防協力隊による広報活動、道の駅などでの啓発活動を予定する。年間を通して行う保育施設での防災教室や事業所の立ち入り火防点検・消防訓練は継続する。

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ライフセービングを競技で 釜石・根浜海岸で大会初開催 スキル向上、次世代の人材育成へ

根浜海岸で開かれた第2回さんりくリアスカップライフセービング競技大会

根浜海岸で開かれた第2回さんりくリアスカップライフセービング競技大会

 
 海水浴シーズンを中心に水辺の事故防止活動に尽力するライフセーバー。その技術向上や活動人材育成を目的とした大会が9月29日、釜石市鵜住居町の根浜海岸で開かれた。「さんりくリアスカップライフセービング競技大会」(同実行委主催)と銘打った大会は、昨年の宮城県気仙沼市での開催に続き2回目。関係者は「未経験者にも競技に触れてもらい、東北のライフセービング活動の裾野を広げていきたい」と大会継続に意欲を示す。
 
 本大会長を務めた地元、釜石ライフセービングクラブの菊池健一会長は「今シーズンの海水浴監視活動を無事故で終えられたことに敬意を表したい。この大会は日ごろの活動成果を試すとともに各クラブ間の交流の深める場でもある。自分の力を出し切って楽しんでほしい」と参加者を歓迎した。
 
 競技には岩手、宮城両県から7~58歳の男女35人が参加。日本ライフセービング協会の派遣スタッフがコース設定や審判で協力した。競技は砂浜と海上で行うものがあり、年代、男女別に16種目が用意された。砂浜では70メートルダッシュを競う「ビーチスプリント」、ゴールに背を向けたうつ伏せ体勢からスタートし、ゴールにあるフラッグ(バトン)を奪い合う「ビーチフラッグス」、400メートルの海岸線を走って往復する「ビーチラン」、海上では約200メートルのコースを泳ぐ「サーフレース」、救助や監視に使うボードに乗って同コースを泳ぐ「レスキューボードレース」、小中学生の「ニッパーボードレース」が行われた。リレー競技もあった。
 
70メートルの砂浜を走り、速さを競うジュニア男子ビーチスプリント

70メートルの砂浜を走り、速さを競うジュニア男子ビーチスプリント

 
小中学生対象のニッパーボード(レスキューボードの縮小版)レース

小中学生対象のニッパーボード(レスキューボードの縮小版)レース

 
一般女子レスキューボードレース。波打ち際の高波を乗り越えて沖へ。設定されたコースを回り砂浜へゴールした

一般女子レスキューボードレース。波打ち際の高波を乗り越えて沖へ。設定されたコースを回り砂浜へゴールした
 
海上で競技する選手に声援を送る釜石ライフセービングクラブのメンバーら

海上で競技する選手に声援を送る釜石ライフセービングクラブのメンバーら

 
 盛岡ライフセービングクラブに所属する宮古市の上野杏華さん(10)は体験会を機に昨年から競技を始めた。「ボードに乗って泳ぐのが楽しい」と話し、本大会のニッパーボードレースでは1位を獲得。海にたくさん通って練習を重ねているといい、9月上旬に行われたジュニアの全国大会ではボード競技で決勝に進んだ。「もっと速くなりたい。ライフセーバーの活動にも少し興味がある」と向上心を見せる。
 
 東日本大震災後、東北のライフセービング関係者は事故や災害から人命を守る同活動を根付かせようと、ジュニアの大会に着手。コロナ禍による休止を経て、幅広い年代が参加できる同大会を立ち上げた。大きな目的の一つが未経験者にも競技に触れてもらい、ライフセービングの魅力や意義を知ってもらうこと。今大会には昨年よりも多い未経験者のエントリーがあった。
 
 岩手医科大(矢巾町)に通う麻田恭大さん(26)は同大水泳部の友人と初参加。「海での競技は初めて。波に合わせて泳ぐのがきつかった」と息を切らした。実際に活動するライフセーバーと接し、「体力も体格もすごい。自分はまだ泳ぐだけで精いっぱいだが…」と苦笑い。それでも、いち早く人命救助にあたれるライフセーバーに魅力を感じ、「医師と両立できれば、救命の現場でもより役立つことができそう」と話した。
 
ゴールに背を向けたうつ伏せ体勢からスタートし、競技者より少ない数のフラッグ(バトン)を奪い合う「ビーチフラッグス」

ゴールに背を向けたうつ伏せ体勢からスタートし、競技者より少ない数のフラッグ(バトン)を奪い合う「ビーチフラッグス」

 
日ごろから訓練を重ねるライフセーバーは迫力のスピード!

日ごろから訓練を重ねるライフセーバーは迫力のスピード!

 
競技未経験者も全力でバトンの争奪戦。ビーチ競技の面白さを体感

競技未経験者も全力でバトンの争奪戦。ビーチ競技の面白さを体感

 
 毎年、夏の海水浴シーズンは、全国各地で水辺の事故により命を落とす人が後を絶たない。気仙沼ライフガードの浦健太さん(32)は「ライフセーバーがいないところで事故が起きているというニュースも聞く。全国的に(海水浴期間中)ライフセーバーが常駐していない海岸はまだまだ多く、活動人員の拡大が望まれる。こうした大会を通して子どもたちが役割を知り、大人になった時に活動に加わってくれたら」と期待を寄せる。
 
 今回、大会開催地となった根浜海岸はトライアスロンやオープンウオータースイミング(遠泳)の大会が開かれてきた場所でもあり、ライフセーバーは競技者の安全確保にも大きな力を発揮してきた。近年は海遊びイベントへの協力などさらに活躍の場を広げている。
 
トライアスロン、オープンウオータースイミングに次ぐ新たなスポーツ大会会場となった根浜海岸

トライアスロン、オープンウオータースイミングに次ぐ新たなスポーツ大会会場となった根浜海岸

 
ライフセービングの基本的スキル「泳ぎ」を競うサーフレース。リレーも行った

ライフセービングの基本的スキル「泳ぎ」を競うサーフレース。リレーも行った

 
 釜石ライフセービングクラブの事務局を務める中田深雪さん(43)は「ライフセービングというと人命救助に目が向きがちだが、私たちの活動のメインは事故を未然に防ぐこと。出動体制は整えているが、まずはパトロールの強化や事故防止の啓発で最悪の事態にならないようにすることが大事」と活動趣旨を強調。競技大会などで敷居の高さを払拭しながら、「興味のある方は臆せず入ってきてほしい。救助技術などは訓練で身に付く。ぜひ一緒に活動を」と呼び掛ける。
 
一般男子レスキューボードレース。ゴール間近の先頭争い

一般男子レスキューボードレース。ゴール間近の先頭争い

 
砂浜の緑の旗がゴール地点。計測タイムを記録し順位が確定。力を尽くした競技者を砂浜のメンバーが温かく迎える

砂浜の緑の旗がゴール地点。計測タイムを記録し順位が確定。力を尽くした競技者を砂浜のメンバーが温かく迎える

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秋の全国交通安全運動展開中 SW選手、上中島こども園児も協力/小佐野交番は手作り反射材配布中

ラグビー体操で交通安全運動を盛り上げる上中島こども園児と日本製鉄釜石シーウェイブス選手

ラグビー体操で交通安全運動を盛り上げる上中島こども園児と日本製鉄釜石シーウェイブス選手

 
 秋の全国交通安全運動が30日まで展開される。スローガンは「反射材 光って気づいて 事故防止」。日没が早まるこの時期は特にも夕方の視野がとりづらい傾向にあり、ドライバー、歩行者ともにより一層の注意が必要。歩行者は反射材の着用で、ドライバーに自分の存在を知らせることが大切だ。釜石市では21日からの運動開始を前に19日、街頭啓発活動が行われた。活動にはラグビーの日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)の選手、上中島こども園の園児が協力。交通事故防止の啓発に一役買った。
 
 街頭活動に先立ち、上中島多目的グラウンドで出発式が行われた。交通安全関係団体、警察署などから約130人が参加。市交通安全対策協議会(会長=小野共市長)の菊地敏文副会長(県自家用自動車協会釜石支部長)は会長挨拶を代読し、「市内では昨年8月から交通死亡事故は発生していないが、引き続き全年齢層への事故防止対策が重要。運動期間中の取り組みを通して、交通ルールの順守と正しい交通マナーの実践を習慣づけていただきたい」と呼び掛けた。
 
 釜石警察署の三浦正人署長は「日没が早まるこの時期はものの色や形が識別しにくく、道路横断中の高齢者が犠牲となる交通事故が増加する傾向にある。皆さまとの連携協力で各種取り組みを進め、市民の安全意識の高揚を図っていきたい」と話した。
 
 上中島こども園(楢山知美園長、園児39人)の5歳児が交通安全宣言。「道路には飛び出しません」「車が来ないか右、左、右をしっかり見ます」「道路を渡る時には大きく手を挙げます」などと声を上げ、安全に気を付けることを約束した。3、4歳児を含め総勢22人でラグビー体操を披露。SWの山田裕介(26)、川上剛右(30)、ヘルダス・ファンデルヴォルト(29)の3選手も一緒に体を動かした。
 
上中島こども園の5歳児が元気に交通安全宣言!

上中島こども園の5歳児が元気に交通安全宣言!

 
ラグビーのプレーの動きを取り入れた「ラグビー体操」。SW選手も一緒に…

ラグビーのプレーの動きを取り入れた「ラグビー体操」。SW選手も一緒に…

 
交通安全運動参加者はかわいらしい園児らの姿に元気をもらった

交通安全運動参加者はかわいらしい園児らの姿に元気をもらった

 
 啓発活動は同グラウンド近くで実施。2商業施設の入り口では反射材や交通安全チラシが入った啓発グッズを配布。市道沿いではハンドポップを掲げて、ドライバーに安全運転を促した。同運動は▽反射材用品などの着用推進や安全な横断方法の実践などによる歩行者の交通事故防止▽夕暮れ時以降の早めのライト点灯やハイビームの活用促進と飲酒運転などの根絶▽自転車・特定小型原動機付き自転車利用時のヘルメット着用と交通ルール順守の徹底―を重点に据える。
 
買い物客に反射材と交通安全チラシのセットを配り意識啓発

買い物客に反射材と交通安全チラシのセットを配り意識啓発

 
上中島町の市道ではハンドポップを掲げ、ドライバーに安全運転を呼び掛けた

上中島町の市道ではハンドポップを掲げ、ドライバーに安全運転を呼び掛けた

 
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 今季新加入のWTB川上剛右選手は「ラグビーも日常生活と一緒でルールがあり、順守が求められる。交通ルールも同じ。しっかり守って交通安全につなげてほしい」と願った。この日は自身にとって初めての地域貢献活動で、「声をかけると皆さん、SWのことを知ってくれていて、認知度の高さに驚いた。チームも毎日きつい練習を重ね、いい形でプレシーズンマッチ初戦を迎えられるのではとわくわくしている。ぜひ試合も見に来てほしい」と期待を込めた。
 
SWの選手も啓発活動に協力。10月5日から始まるプレシーズンマッチのチラシも一緒に配った

SWの選手も啓発活動に協力。10月5日から始まるプレシーズンマッチのチラシも一緒に配った

 
 釜石署によると、今年1月から8月末までの釜石市の交通事故発生件数は人身事故が10件(前年同期比5件減)、物損事故は316件(同6件増)。八重樫徹交通課長は「市内での交通事故は地元住民が日常生活の中で起こした事故が多く、駐車場以外の事故の4割は単独事故。一人一人が事故防止を意識し、安全確認を徹底すれば大きな事故も減る」と意識高揚を促す。
 

小佐野交番 署員が反射材キーホルダーを手作り 2年目の地域安全血圧手帳と合わせ活用を

 
手作りの反射材キーホルダーと地域安全血圧手帳をPRする小佐野交番の署員

手作りの反射材キーホルダーと地域安全血圧手帳をPRする小佐野交番の署員

 
 釜石警察署小佐野交番(川野正行所長、4人)は秋の全国交通安全運動に合わせ、署員が手作りした「反射材キーホルダー」を管内の希望する住民に配布している。限定300個。同交番で受け取ることが出来る。昨年から製作している「地域安全血圧手帳」も好評配布中。交通事故や犯罪から身を守るため、「ぜひ活用を」と呼び掛ける。
 
 反射材キーホルダーは小佐野交番連絡協議会(多田慶三会長)から資金援助を受け、同交番に勤務する署員4人で製作する。市販の反射テープに「小佐野交番」の文字と警察庁の広報用キャラクターをプリントしたものを貼り付け、ラミネートフィルムで加工。耐久、防水性を高めた。完成品は縦約9センチ、横約4センチ。手作りすることで費用が抑えられ、同交番オリジナルのグッズに仕上がった。
 
署員手作りの反射材キーホルダー。左は小佐野交番の署員をイメージしたプレミアムデザイン

署員手作りの反射材キーホルダー。左は小佐野交番の署員をイメージしたプレミアムデザイン

 
 同連絡協との協働で取り組むもう一つのグッズが地域安全血圧手帳。朝と夜、2回の血圧測定の値を書き込める手帳には、各ページの下に交通安全や防犯に関わる標語が記されている。「身を守り 家族も笑顔に ヘルメット」「前を見て どっちが大事 スマホと命」「留守電は あなたを守る 警察官」「本当かな 振り込む前に 110番」…。連絡協の会員から標語を募集し、各賞受賞作品を中心に掲載している。1日2回、標語を目にすることで、被害に遭わないように注意を促すのが狙い。
 
標語入り血圧手帳とキーホルダーの活用で住民の安全安心な暮らしを願う交番署員

標語入り血圧手帳とキーホルダーの活用で住民の安全安心な暮らしを願う交番署員

 
 同交番の管轄地域は上中島町から野田町までと広く、管内には約5千世帯、約9千人が生活する。川野所長は「近年は独居の高齢者も増えていて、交通事故や詐欺被害に遭わないよう、より一層の注意喚起が必要。反射材キーホルダーや地域安全血圧手帳を活用し、自分の身を守る行動を取ってほしい」と話す。
 
毎日の血圧測定で標語を確認。夕暮れ~夜の外出には反射材キーホルダーの装着を!

毎日の血圧測定で標語を確認。夕暮れ~夜の外出には反射材キーホルダーの装着を!

 
手帳とキーホルダーは小佐野交番で配布中。数に限りがあるので希望者はお早めに

手帳とキーホルダーは小佐野交番で配布中。数に限りがあるので希望者はお早めに

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鳥インフル対応訓練 万一に備え 埋却作業の手順確認 岩手県、建設業協会釜石支部など連携

鳥インフルエンザの発生を想定して行われた対応訓練

鳥インフルエンザの発生を想定して行われた対応訓練

 
 釜石市内にある肉用鶏農場で11日、鳥インフルエンザ等発生時対応訓練が行われた。岩手県沿岸広域振興局、県南家畜保健衛生所などが共催。感染時の死亡率が高い高病原性鳥インフルエンザが発生したとの想定で、防護服の着脱や埋却作業に取り組み、手順や役割を確認した。
 
 訓練は鳥インフルエンザなどの発生時に、迅速で適切な防疫活動に取り組めるよう実施。本年度、肉用鶏農場が稼働したことを受け、釜石、大槌地域では初めての本格的な訓練となった。
 
 沿岸振興局を中心にした県の各関係機関の職員のほか、県建設業協会釜石支部(八幡康正支部長)の支部員ら約50人が参加。本番に近い形の実践として、作業を担当する職員らは防護服やマスク、手袋、長靴などを順番に身につけ、袖や足首などにすき間ができないよう入念にテープを巻いた。
 
防護服の着脱訓練をする参加者。すき間がないようしっかり

防護服の着脱訓練をする参加者。すき間がないようしっかり

 
 その後、埋却作業では事前に掘削した埋却溝(深さ4メートル、下幅5メートル、上幅9メートル)に重機で消毒用の消石灰を散布した上で、ブルーシートを敷設。殺処分した鶏に見立てた土のうを投入し、さらにシートで覆い、再度、消石灰をまいた。
 
 釜石にある鶏農場では16万羽を飼育する。鳥インフルエンザが発生した場合、今回の訓練で利用した土のうで換算すると、約2500個分となる見込み。そうした説明も聞いた参加者は一連の作業の流れを確認しながら、注意点などに理解を深めていた。
 
埋却溝に消石灰を散布してシートを敷き、土のうを重機に取り付け投入準備

埋却溝に消石灰を散布してシートを敷き、土のうを重機に取り付け投入準備

 
溝に投入した土のうをシートで覆い、消石灰を散布するまでの手順を確認した

溝に投入した土のうをシートで覆い、消石灰を散布するまでの手順を確認した

 
 重機を使った作業があるため、有資格者がいる建設業協会の協力は欠かせない。訓練を見守った八幡支部長は「マニュアルで分かってはいたが、イメージだけなので、訓練への参画はいい経験になる。体で覚えると忘れないので、継続したい。役割分担など検討が必要だと感じるが、今回の内容を協会内で共有し、いざという時に動けるようにしたい」と気を引き締めた。
 
埋却作業を見守る建設業協会釜石支部の関係者ら

埋却作業を見守る建設業協会釜石支部の関係者ら

 
 沿岸振興局によると、高病原性鳥インフルエンザ発生は2023年秋~24年春にかけて、全国で10県11事例あり、85万6000羽が殺処分された。県内では22年秋~23年春に1事例が確認された。佐藤朝則副局長は「どこで起きてもおかしくないので、危機感を持った対応が必要」と強調する。
 
 埋却・消毒ポイント設置班長を担った佐々木雅章土木部長は「寒い夜間、長時間の作業も見込まれることから、平時から手順を確認することが重要。課題を見つけ、備え、万が一の時は一体となって活動することが大事だ」と参加者に呼びかけた。