タグ別アーカイブ: 防災・安全

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災害再現VR 釜石で体験会 “その瞬間”どう動く?自らの判断力と対応力を試す

VRを使って地震や津波などの災害を疑似体験する中学生

VRを使って地震や津波などの災害を疑似体験する中学生

 
 災害時、必要な行動をとることができるか―。地震や津波を疑似体験しながら身を守る行動や防災スキルのレベルを確認できるVR(仮想現実)コンテンツの先行体験会が14日、釜石市鵜住居町の「いのちをつなぐ未来館」で開かれた。防災担当の自治体職員や教員、中学生ら約30人が参加。大きな揺れで物が落下したり、津波とともに車が押し寄せてきたりする架空の映像などから災害の怖さ、備えの重要性を認識し、防災意識を高めた。
 
いのちをつなぐ未来館で行われた災害VRの先行体験会

いのちをつなぐ未来館で行われた災害VRの先行体験会

 
 VR映像は、防災設備メーカーの能美防災(東京、岡村武士社長)が開発を進める「地震・津波臨場体験VR~命をつなぐ選択」。▽震度6強の前震▽震度7の本震▽火災▽大津波▽避難場所―という5つの場面が登場し、身を守るために必要になる行動の実践可否を問われながらストーリーが展開する。同社は岩手県を継続的に訪問していて、東日本大震災被災地の経験や教訓を織り交ぜている点が特徴の一つ。体験後には防災スキルのレベルが判定される仕掛けもある。
 
 街が地震や津波に襲われたら、そこにいる“ひとり”として、どう行動するか。選択できるか―。
 
 体験会で、参加者はダイジェスト版を視聴。大きな揺れによる落下物でけがをしたり意識がない人を手助け「できるか」、自宅や職場からの避難場所を「把握しているか」、避難を渋る人がいたとしても「率先して行動を起こせるか」、避難した先での食料や飲み水を「確保しているか」など、場面に応じて必要な動きを選択していった。
 
開発が進む「地震・津波臨場体験VR」の一場面

開発が進む「地震・津波臨場体験VR」の一場面

 
仮想空間に入り込む生徒。楽しみながら防災を学ぶ

仮想空間に入り込む生徒。楽しみながら防災を学ぶ

 
VRでは場面ごとに命を守る行動を選び、防災スキルも確認

VRでは場面ごとに命を守る行動を選び、防災スキルも確認

 
 グラフィックなど目から入る情報だけでなく、周囲の声や警報音など災害発生時の状況がVR上でリアルに再現され、参加者たちは体験空間に入り込んだ様子だった。「地震で物が落ちてくる。やばいよ」「あ、津波。なんかいっぱい流れてきた」などと思わず声を発したり、椅子に座って体験していたが勢いよく立ち上がったり。行動の選択を迫られることで、自分の防災知識や向き合い方を振り返る機会にした。
 
 釜石東中の生徒らも体験。2年生は震災当時1歳、1年生は生まれていない。記憶がない、知らない世代の生徒たちはゲーム感覚で楽しんだ。舘鼻大滋さん(2年)は「VRに入り込み、リアルな感じ。防災を学んでいるけど、書いて理解するよりイメージがわいた。実際に動けるか、考えられた」と話した。一方で、「映像がリアルで、気軽にやると小学生とかは怖い体験になるかも」と想像。「災害が起きて混乱しても早めに逃げて、自分もみんなの命も守れるよう声をかけたい」と表情を引き締めた。
 
生徒が視聴する映像が映し出されたモニターに見入る教員(左)

生徒が視聴する映像が映し出されたモニターに見入る教員(左)

 
 同校教諭の佐々木伊織さん(28)は釜石出身で、震災当時は中学2年生。今回、VRを体験した生徒たちと同じ年頃に津波を目の当たりにした。警報音、渦を巻く波…脳裏にこびりつく、忘れられない記憶。生徒らの様子をそばで見つめながら「(津波襲来の映像は)見せたくないという思いはあるが、この地で暮らす子どもたちには必要な学び。行動しないと、命がなくなってしまうことがあると感じてもらえたら。楽しく体験することで防災を知り、伝承を担う一人として学びを深めてほしい」と望んだ。
 
 同社は火災防災を主軸とした事業を展開する。VRコンテンツとして、2022年にオフィスでの火災を想定した「火災臨場体験VR」を公開。今回の地震・津波編は第2弾となる。近年は災害が頻発・激甚化しており、さまざまな災害への備えを事業に生かそうと、釜石や陸前高田市など震災被災地での社員研修を継続。視察や、語り部から聞いた当時の状況などもVRのストーリーに盛り込んだ。
 
「地震・津波臨場体験VR」の開発を進める佐々木聡文さん(左)

「地震・津波臨場体験VR」の開発を進める佐々木聡文さん(左)

 
 VRコンテンツを担当する同社特販事業部主査の佐々木聰文(あきふみ)さん(48)は釜石出身。「震災を経験していない子どもも増えており、伝え継ぐツールとして使ってほしい」と思いを込める。VRには「避難するか」「戻る、戻らせない」といった葛藤の場面がいくつもあり、古里で聞いた声を踏まえたという。釜石の経験、教訓を次の防災にと考えていて、「南海トラフ巨大地震などリスクの高い他地域にも展開したい。自身の防災スキルを振り返るツールとして活用を」と願う。
 
 地震・津波臨場体験VRは体験会での反応や意見を踏まえ、精度を高めて今春に公開する予定。自治体の防災イベントや企業の避難訓練などでの活用を見込んでいる。未来館など釜石での展開は未定。

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「まちを守る皆さんへ」 釜石中、消防援助隊へ寄せ書き横断幕 感謝の思い込め

感謝の寄せ書き横断幕を持つ緊急消防援助隊員と釜石中の生徒=釜石市民体育館

感謝の寄せ書き横断幕を持つ緊急消防援助隊員と釜石中の生徒=釜石市民体育館

 
 釜石中(佐々木一成校長、生徒294人)は7日、大船渡市の大規模山林火災に伴い、釜石市鵜住居町の市民体育館を拠点に消火活動に尽力する新潟、茨城、栃木各県の緊急消防援助隊に感謝や激励を込めた寄せ書きを記した横断幕を贈った。「まちを守ってくれてありがとう」「助かります」。慣れない地域での活動を日夜続ける隊員らを思って、文字をしたためた。
 
釜石中の全校生徒がメッセージを書き込んだ横断幕

釜石中の全校生徒がメッセージを書き込んだ横断幕

 
 「消火活動に来てくれた人たちに、中学生としてできることで感謝を伝えよう」と、同校の生徒会が横断幕の贈呈を提案。執行部の岡本あいるさん、久保伶奈さん、岩間心来さん(いずれも2年)、三浦碧人さん(1年)の4人が市民体育館を訪れ、隊員に手渡した。
 
 横断幕は3枚製作。それぞれ中央部分に「全国の消防隊の皆様に心から感謝します」「みなさんはわたしたちのヒーローです」「全国からのご支援ありがとうございます」と文字が記され、その周囲に「力を貸してくれてありがとう」「大船渡のために来てくれてありがとう。頑張ってください」などと全校生徒がメッセージを寄せた。
 
「大船渡がんばろう!」「まちを守る姿がかっこいい」などとメッセージ

「大船渡がんばろう!」「まちを守る姿がかっこいい」などとメッセージ

 
「力を貸してくれてありがとう」「遠くからありがとう」などと感謝をつづる

「力を貸してくれてありがとう」「遠くからありがとう」などと感謝をつづる

 
横断幕の贈呈を見守る3県の緊急消防援助隊員たち

横断幕の贈呈を見守る3県の緊急消防援助隊員たち

 
 4人は「全国から大変な思いをしながらも必死で消火活動に取り組んでいる方々に感謝の思いでいっぱいです。本当にありがとうございます。今回の山林火災を目の当たりにして釜石中としてもより一層防災への意識を高めていこうと改めて思いました。これから未来へつないでいきます」と思いを伝えた。
 
 新潟県の後方支援隊長を務める新潟市中央消防署の田中勝消防司令(55)は「地震や山林火災など自然災害が相次ぎ大変だが、お互いに助け合っていきたい」と気を引き締める。中学生から届けられた気持ちを受け止め、表情を緩める場面も。「樹木などに火種が残っていたり厳しい環境だが、頑張れる」と力にした。
 
生徒たちの思いが込められた横断幕が体育館に掲げられた

生徒たちの思いが込められた横断幕が体育館に掲げられた

 
 同校では、被災者を支えようと募金活動も展開。岡本さんは「山林火災が早く鎮火するよう、頑張ってもらいたい。親戚が大船渡に住んでいるので、早く元の生活に戻ってほしい」と願った。
 
 この日、釜石市も激励として飲料水(仙人秘水)を各隊に贈った。
 
 大船渡の山林火災は隊員らによる地道な活動などによって、延焼の恐れがなくなったことから、9日夕、大船渡市が鎮圧を宣言。それにより、釜石に拠点を置く3県の消防援助隊も活動を終える。

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東日本大震災の教訓、世代を超えて 釜石の語り部3人に復興庁から感謝状

感謝状を受けた藤原信孝さん(右)、佐々木智恵さん(中)と娘の智桜さん

感謝状を受けた藤原信孝さん(右)、佐々木智恵さん(中)と娘の智桜さん

 
 東日本大震災の語り部として活動する釜石市の藤原信孝さん(76)=釜石ガイド会、佐々木智恵さん(42)=かまいしDMC=と長女で小学生の智桜(ちさ)さん(10)の3人にこのほど、復興庁から感謝状が贈られた。震災伝承、防災への備えを伝えようと取り組む姿が評価。震災から13年と時が経過する中、3人は「3世代で受賞できたのがうれしい。こんな風に世代をつなげて伝えていきたい」と継続へ気持ちを重ねた。
 
 震災以降、各被災地では多くの語り部が活動。自らの被災体験や地域の被害状況、復旧・復興の取り組みを発信することで、防災の知識の普及に貢献してきた。復興庁では、そうした取り組みに謝意を示し、活動の充実を期待するとともに、記憶と教訓を次代へ伝えて防災・減災対策に生かすため担い手の確保にもつなげようと、感謝状を贈呈。今回、岩手、宮城、福島各県の伝承団体や市町村からの推薦を受け、計52人を選んだ。受賞者は昨年12月に公表され、それぞれに感謝状を伝達。岩手では釜石の3人のほか、宮古、陸前高田、山田の3市町で活動する計4人にも贈られた。
 
 藤原さんは釜石ガイド会に所属して長年、地域の魅力を伝えてきた。震災の津波で被害が大きかった鵜住居町の隣にある栗林町に住み、発災直後は避難者の受け入れなどに取り組んだ。「実体験をしていない」と震災の語り部活動に悩んだこともあったというが、「体験した人がいなくなってからでは遅い。被害状況を目の当たりにした一人として伝えていくことは自分の義務だ」と感じ、活動を重ねている。
 
鵜住居町を訪れた外国人らに震災の被災状況を説明する藤原信孝さん(手前右)=2014年6月

鵜住居町を訪れた外国人らに震災の被災状況を説明する藤原信孝さん(手前右)=2014年6月

 
 震災を知らない世代が増える中、語り部活動で必ず話すことは避難訓練の大切さ。大人でも知らないことや勘違いしていることがあると感じていて、「普段の訓練が生かされれば、生きられる。体験、やってみるという備え、心構えを持ってほしい」と強調する。
 
 「伝承は、次の世代につないでいくことが大事」。気持ちを切り替えて活動してきたことが評価され、「地域を代表していただいた」と喜ぶ。そして今回、「おじいさんの私、お母さんの智恵さん、孫のような智桜さんと、3世代で評価されたのはよいことだ」と目じりを下げた。
 
 智恵さんは、鵜住居町の震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」に勤務。来場者への伝承活動は3年目となる。修学旅行などで訪れる児童生徒や、学生らに話す機会が多く、「防災」という言葉に身構える様子が感じられるという。「難しいことではないんだよ。自分の持ち物に何か一つ加えてみよう」などと、身近で取り組みやすい視点をヒントとして残すよう伝え方に工夫。そうした活動が評価され、「励みになる。地震、津波だけでなく、災害全般の防災について伝えていきたい」と気を引き締めた。
 
いのちをつなぐ未来館で絵本の読み聞かせをする佐々木智恵さん(右)=2023年3月

いのちをつなぐ未来館で絵本の読み聞かせをする佐々木智恵さん(右)=2023年3月

 
 鵜住居小5年の智桜さんは、感謝状をもらって「うれしいです」と素直に喜ぶ。震災からちょうど3年後の2014年3月11日生まれ。誕生日でもあるその日は、祖母と伯母が津波の犠牲になった日でもあり、家族や学校で日々教えられている「命の大切さを伝えたい」と、智恵さんと共に市主催の研修を受講。「大震災かまいしの伝承者」として2年前の春から活動し、未来館でガイドしたり、企業研修などで語り部をしたりする。
 
いのちをつなぐ未来館で企業研修の語り部を務めた佐々木さん親子(右)=2023年10月

いのちをつなぐ未来館で企業研修の語り部を務めた佐々木さん親子(右)=2023年10月

 
防災士に必要な救命技能を生かした活動も行う佐々木智桜さん=2024年9月

防災士に必要な救命技能を生かした活動も行う佐々木智桜さん=2024年9月

 
 昨年秋には民間資格の防災士を県内最年少で取得するなど防災学習も深めている。「学んだことをしっかり引き継ぎたい」と気持ちは前向き。語り部は緊張するが、話しているとほぐれてくるといい、「聞き取りやすい語り」を心がける。将来の夢を聞くと、「未来館で働きたい」と即答。英語も勉強中で、たくさんの人に自分の言葉で伝えていくつもりだ。
 
市役所を訪れた3人。小野共市長らに受賞を報告した

市役所を訪れた3人。小野共市長らに受賞を報告した

 
 藤原さん、佐々木さん親子は2月20日、釜石市役所を訪れ、小野共市長に受賞を報告した。小野市長は「震災時に何があったのか、学んだことを後世に伝え、つなげていくことが重要。語り部の皆さんが発信することで、災害に備え、考えるきっかけになれば。これからも全国に伝えてほしい」と期待した。

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「助けられる人から助ける人へ」 釜石東中が自主防災組織結成 災害発生時、生徒自ら初動対応

自主防災組織結成を市に届け出た釜石東中生徒会の役員ら=17日、釜石市役所市長室

自主防災組織結成を市に届け出た釜石東中生徒会の役員ら=17日、釜石市役所市長室

 
 釜石市鵜住居町の釜石東中(佃拓生校長、生徒84人)生徒会が、災害発生時の初動対応を行う自主防災組織(自主防)を立ち上げた。防災学習や訓練で得た知識、技能を生かし、生徒が主体的に災害時の避難所開設や避難者誘導を行おうとするもの。1月の生徒会総会で決議し、2月17日、千葉心菜生徒会長(2年)ら役員5人が市に設置届を提出した。学校単位での自主防登録は県内初。同市では48番目の結成となった。
 
 同校は2011年の東日本大震災津波で校舎が全壊。仮設校舎を経て17年、町中心部に整備された高台造成地に、鵜住居小と併設する形で移転再建された。小中が利用する校庭、体育館は市により、地震津波や洪水、土砂災害時の緊急避難場所、拠点避難所に指定されている。
 
 同震災前から防災教育が盛んだった同校。震災では生徒らが隣接する同小児童の手を引いて高台を目指し、迫り来る津波から命を守った。その教育理念は震災後も受け継がれ、下校時津波避難訓練や総合防災訓練を小中合同で毎年実施。総合防災訓練では、校内にいる時の地震、津波発生を想定したシェイクアウト、より高い場所への避難のほか、体育館での避難所開設、避難者誘導、校庭での炊き出し訓練などを行っている。積み重ねてきた防災の取り組みをより深化させ、「地域の支えになりたい」と結成したのが、生徒会による自主防。全校生徒と教職員で組織し、生徒会長が自主防の会長を務める。
 
釜石東中、鵜住居小合同で行われる総合防災訓練。(左上から時計回りに)高台避難、避難者誘導、仮設トイレ組み立て、炊き出し=資料写真(2021年撮影)

釜石東中、鵜住居小合同で行われる総合防災訓練。(左上から時計回りに)高台避難、避難者誘導、仮設トイレ組み立て、炊き出し=資料写真(2021年撮影)

 
生徒会役員らは小野市長に同校の防災の取り組みなどを説明した

生徒会役員らは小野市長に同校の防災の取り組みなどを説明した

 
自主防災組織結成への思い、今後の活動に対する決意を述べる千葉心菜生徒会長

自主防災組織結成への思い、今後の活動に対する決意を述べる千葉心菜生徒会長

 
 17日、小野共市長に設置届を手渡した千葉生徒会長(自主防同)は「身が引き締まる思い。地域の方々にアドバイスをもらいながら少しずつ成長し、地域の自主防災組織と肩を並べられるように強い意志、覚悟を持って活動していきたい」と決意を述べた。小野市長は「自分たちの地域は自分たちで守るという気概がとてもうれしい。皆さんの活動は市の大きな助けになっている。今後も被害を少なくできるようご協力を」と願った。
 
 東日本大震災発生から間もなく14年―。「防災活動の発展」を重点目標に掲げた生徒会に自主防結成を提案した佃校長は「中学生も震災を知らない世代になってきて、防災学習にも難しい側面が出てきている。自主防結成が新たな決意で防災に取り組むきっかけになれば」と期待。地元住民組織、鵜住居地域会議の古川幹敏議長は今後、高い確率で発生が懸念される日本海溝・千島海溝沿い地震を見据え、「地域としても心強い。生徒の皆さんの気持ちを生かし、一緒に命を守る活動を展開していきたい」と意を強くする。
 
鵜住居地域会議の古川幹敏議長(右)も地元中学生の取り組みを歓迎。若い力を得て地域の防災力アップを願う

鵜住居地域会議の古川幹敏議長(右)も地元中学生の取り組みを歓迎。若い力を得て地域の防災力アップを願う

 
髙橋勝教育長らの励ましを受け、自主防としての活動へ意欲を高める生徒ら

髙橋勝教育長らの励ましを受け、自主防としての活動へ意欲を高める生徒ら

 
 大規模災害発生時は、市職員がすぐに各避難所に駆け付けることが困難になる状況も予想され、地域住民による初動対応は必要不可欠。特にも学校が避難所の場合、校内をよく知り、普段から訓練を重ねている生徒が率先して行動できれば、地域にとって非常に大きな力となる。
 
「助けられる人から助ける人へ―」。災害に対する危機意識の醸成、各種訓練の充実、発災時の主体的行動などに意欲を見せる釜石東中生徒会。震災後に生まれた佐々木一真副会長(1年)は「小学生のころから親や先生に震災のことを教わり、当時の映像も見ている。自然災害はとても怖く、犠牲者をなくすために訓練していかねばと思う。上級生から学んできたことを下の学年にも伝えていきたい」と話した。
 
 釜石東中生徒会は3月2日に市が実施する地震・津波避難訓練にも参加。高台避難のほか、避難所開設を想定した段ボールベッドや仮設トイレの設置などに取り組む予定。

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震災命日まで1カ月― 犠牲者追悼、防災の願い込め、根浜津波避難階段に竹灯籠点灯開始

根浜の津波避難階段で始まった竹灯籠の点灯=11日、鵜住居町

根浜の津波避難階段で始まった竹灯籠の点灯=11日、鵜住居町

 
 東日本大震災からまもなく14年―。津波で大きな被害を受けた釜石市鵜住居町根浜地区に、今年も震災犠牲者を追悼する竹灯籠が設置された。温かな明かりで浮かび上がるのは震災後に設けられた津波避難階段。“命を守る道”の周知も目的とした取り組みは今年で4年目を迎える。震災命日まで1カ月となった11日、点灯式が行われ、集まった人たちが同震災の記憶の継承、教訓の実践に思いを新たにした。
 
 灯籠作りから点灯までを手掛けるのは、キャンプ場などの観光施設を管理する、かまいしDMC。1月25、26の両日、根浜レストハウスで製作体験会を開き、市民にも協力してもらった。30日には今回初の試みとして、地元の放課後子ども教室でも製作。鵜住居小の児童9人が電動ドリルで竹に穴を開ける作業に挑戦した。1年の小笠原彩夏さんは「力が要って大変だったけど、物を作るのが好きなので楽しかった。飾るのも見てみたい」と期待を膨らませた。
 
放課後子ども教室で行われた竹灯籠作り=1月30日、長内集会所

放課後子ども教室で行われた竹灯籠作り=1月30日、長内集会所

 
型紙の模様に合わせて電動ドリルで竹に穴を開ける児童

型紙の模様に合わせて電動ドリルで竹に穴を開ける児童

 
 みんなで手作りした竹灯籠は約60本。避難階段の手すりや地区の高台避難場所を示す標識の足元に取り付けられた。点灯式には灯籠作りに参加した市民など約20人が集まった。設置目的などが説明された後、カウントダウンで点灯。夕闇に美しい光の階段が浮かび上がると、キャンプ場から海抜20メートルの市道につながる111段を上った。
 
竹灯籠の明かりで照らされた避難階段を上ってみる。津波発生時はここから高台へ

竹灯籠の明かりで照らされた避難階段を上ってみる。津波発生時はここから高台へ

 
放課後子ども教室で作った竹灯籠は津波避難場所の標識の足元に設置

放課後子ども教室で作った竹灯籠は津波避難場所の標識の足元に設置

 
 同市の新谷詩乃さん(37)は長男拓己君(6)と灯籠を作った。「釜石にいるからには、子どもに震災や防災の話もしていきたいと思って参加した。作業は大変だったが貴重な経験ができた」と振り返る。拓己君はこども園で毎月、高台避難の訓練もしている。「津波という言葉とかは身近に感じているだろうが、実際見たことはないので(どこまで理解しているか)。家では、地震があれば自分から机の下に隠れたりしている。こういうイベントも機に、少しずつ(身を守る方法を)覚えていってもらえれば」と期待する。
 
 津波避難階段は2021年に完成。竹灯籠の点灯は根浜を訪れる人に階段の場所を知ってもらい、いざという時の迅速避難を促す狙いもある。かまいしDMC地域創生事業部の佐藤奏子さんは「避難路は実際に歩く機会があまりなかったりする。こうして1回歩くことで皆さんの記憶に残り、災害時の避難に役立てば」と話した。
 
 竹灯籠はLED豆電球で明かりをともす。電力は家庭から出る廃食油を精製したバイオディーゼル燃料で発電。竹は地域の間伐材を用い、脱炭素や資源循環を意識した取り組みとなっている。
 
LED電球の明かりでさまざまな模様が浮かび上がる。避難誘導の言葉と矢印を配した灯籠も(写真左)

LED電球の明かりでさまざまな模様が浮かび上がる。避難誘導の言葉と矢印を配した灯籠も(写真左)

 
この日は月明かりともコラボ。真っ暗になると幻想的な光景が広がった

この日は月明かりともコラボ。真っ暗になると幻想的な光景が広がった

 
 竹灯籠は3月まで土日祝日の午後5時から同7時まで点灯。震災命日の3月11日も同様に点灯し、追悼の祈りの場とする。

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「津波だ、逃げろ!」高台避難の教訓 震災知らない世代にも 新春韋駄天競走111人が坂道駆ける

韋駄天競走は親子の部からスタート。「走れ、逃げろ」と子どもに声掛けする親も

韋駄天競走は親子の部からスタート。「走れ、逃げろ」と子どもに声掛けする親も

 
 「津波から命を守る行動を―」。津波発生時の迅速な高台避難を促すことを目的とした「新春韋駄天競走」が2日、釜石市で行われた。東日本大震災の教訓を後世につなぐ節分行事で、同市大只越町の日蓮宗仙寿院(芝﨑恵応住職)、釜石仏教会が主催。12回目の今年は、コロナ禍以降では最多の111人が参加した。同震災を経験していない子どもたちの姿も多く、いざという時の避難の大切さを体で覚える貴重な機会となった。
 
 参加者は津波浸水域の只越町、消防屯所付近から最も近い津波避難場所、仙寿院境内までを駆け上がる。距離にして286メートル、高低差は約26メートルで、途中に急カーブやきつい勾配がある難コースだ。1~80歳の参加者は6部門に分かれてスタート。小学生以下の子どもと保護者が対象の親子の部は、幼児が父母と手をつないだり、おんぶや抱っこをしてもらいながら、高台の境内を目指した。小中高生や一般の男女は、それぞれのペースで坂を駆け上がり、津波避難意識を高めた。
 
小学生も懸命に急坂を駆け上がる。沿道の声援を力に変えて…

小学生も懸命に急坂を駆け上がる。沿道の声援を力に変えて…

 
日ごろのスポーツ活動で脚力を鍛える中高生らはさすがのスピード

日ごろのスポーツ活動で脚力を鍛える中高生らはさすがのスピード

 
毎年参加の中学生硬式野球チーム「釜石ボーイズ」。この表情は「きつーい」「余裕」さあどっち?

毎年参加の中学生硬式野球チーム「釜石ボーイズ」。この表情は「きつーい」「余裕」さあどっち?

 
男性35歳以上の2位争いはデッドヒート!ラストスパートにかける

男性35歳以上の2位争いはデッドヒート!ラストスパートにかける

 
 釜石市国際外語大学校で昨秋から日本語を学ぶネパール人留学生5人は初めての参加。学校で同行事の目的を教えてもらい、17~20歳の男女が手を挙げた。一度練習して本番に挑んだカトワル・スザンさん(17)は「釜石に津波がきたこと、津波の時は逃げることを勉強しました。ちょっと疲れましたが、楽しかったです。来年、またチャレンジして1番欲しいです」と日本語で感想。日本の文化に触れるため、応援に駆け付けた留学生仲間と一緒に、午後から行われた節分の祈祷(きとう)、豆まきにも参加した。
 
国際外語大学校のネパール人留学生も力走。初めての津波避難模擬体験

国際外語大学校のネパール人留学生も力走。初めての津波避難模擬体験

 
楽しみながら、いざという時の避難行動を学んだ釜石在住のネパール人学生ら

楽しみながら、いざという時の避難行動を学んだ釜石在住のネパール人学生ら

 
 同市の小学校教諭川村悠平さん(33)は釜石赴任を機に家族で初参加。「(高台避難は)こんなにきついんだなと。それでも実際に(津波に)あったら自分の命を守らないといけない。子どもたちにも津波がきたら逃げること、日ごろの備えの大切さを教えていきたい」と身に染みた様子。次女(1)をおんぶ、長女(2)の手を引いて坂を上がった妻紀子さん(32)は「この子(長女)が上まで行けるか不安だったが、最後まで上り切れた。自分が逃げられるのは当たり前だが、一番守りたい命(子ども)を守れるよう常に考えていきたい」と経験を心に刻んだ。
 
親子4人で参加した川村さん家族。「子どもたちが成長したら震災のことも教えたい」と父悠平さん

親子4人で参加した川村さん家族。「子どもたちが成長したら震災のことも教えたい」と父悠平さん

 
 各部門の1位には「福男」「福女」などの認定書が芝﨑住職から贈られた。小学生の時に父と「福親子」3連覇を成し遂げた花巻市の後藤尚希さん(17)は高校2年になった今年、中高生の部で2回目の1位に。兄妹で「福男」「福女」となった八幡平市の山本雄太郎さん(30)は男性34歳以下の部で4回目、妹恵里さん(28、盛岡市)は女性の部で3回目の1位。2年ぶり3回目の“ダブル福”を手にした。
 
写真上:各部門で1位になり、感想を述べる参加者ら 同下:最後は海の方角に向かい震災犠牲者へ黙とうをささげた

写真上:各部門で1位になり、感想を述べる参加者ら 同下:最後は海の方角に向かい震災犠牲者へ黙とうをささげた

 
 男性35歳以上の部1位は山田町の漁業、渡邊強輝さん(37)。これまでに2位を3回経験し、初の「福男」となった。13年前の震災では自宅が全壊。別宅に暮らしていた祖母が津波の犠牲になった。「時間がたっていくと自分自身、避難意識が低くなっているような気がして」と同行事への参加を継続。「あの時、逃げていれば…(助かった)という人がたくさんいた」と悔やまれる思いを口にする。高校2年の長男は当時の記憶はなく、中学1年の長女は震災の3カ月後に生まれた。「知らない世代に自分の行動を示し、とにかく伝え続けることが大事」と教訓伝承に思いを込めた。
 
写真左:初の「福男」となった渡邊強輝さん 同右上:釜石陸上のレジェンド長岡直人さん(80)も元気にゴール

写真左:初の「福男」となった渡邊強輝さん 同右上:釜石陸上のレジェンド長岡直人さん(80)も元気にゴール

 
ゴールまであと少し。力を振り絞り前に進む女性参加者

ゴールまであと少し。力を振り絞り前に進む女性参加者

 
手を取り合い、最後まで頑張る女性参加者に沿道から温かい拍手が送られた

手を取り合い、最後まで頑張る女性参加者に沿道から温かい拍手が送られた

 
 同行事は兵庫県西宮市、西宮神社の新年開門神事「福男選び」をヒントに2014年から始まった。同神社開門神事講社講長の平尾亮さん(48)が足を運び、運営に協力。コロナ禍などでしばらく来られなかったが、今年5年ぶりに訪問が実現した。平尾さんは事故による後遺症で右足が不自由ながら、毎回、参加者と一緒に釜石のコースに挑む。今回も松葉づえをついて、急坂を懸命に駆け上がった。
 
参加者に交じり、5年ぶりに韋駄天のコースを駆け上がった平尾亮さん(写真右)。西宮神社開門神事講の赤いはんてんとジャージー、「ガッツくん」トレーナーは釜石でもおなじみとなったスタイル

参加者に交じり、5年ぶりに韋駄天のコースを駆け上がった平尾亮さん(写真右)。西宮神社開門神事講の赤いはんてんとジャージー、「ガッツくん」トレーナーは釜石でもおなじみとなったスタイル

 
 「走る前に『競走ではあるが、津波避難の教訓を後世に残すことが大きな目的』と、繰り返し伝えているのが印象的。福男選びも本来、1年の初めにえびすさんに福をもらいにいくという初詣に似た意味合いがあるが、あまりにも競う部分がクローズアップされすぎて…。釜石は理想の形」と平尾さん。
 
 今年は阪神・淡路大震災(1995年)から30年―。「震災の記憶、教訓をどう継承していくかは被災地共通の課題。大切な命を守るために私たちができることをしっかりやっていきたい」。遠く離れた両市に思いを寄せ、末永い交流を願った。西宮神社からは今回、同震災復興支援のシンボルキャラクター「ガッツくん」がデザインされたタオルが釜石の参加者に贈られた。

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深夜の「おや?」が命を救う 高齢者見つけ介抱 2人に感謝状 釜石警察署

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三浦正人署長から表彰状を受けた菊池匠さん(中)、菅原晃輝さん(左)

 
 釜石警察署(三浦正人署長)は1月27日、高齢者を発見し、適切な措置を講じて警察活動に協力した釜石市内在住の自営業・菊池匠さん(33)、アルバイト・菅原晃輝さん(58)に署長感謝状を贈った。2人は「深夜の路上を一人で歩いている高齢者の異変に気づいて介抱した」という点で共通するが、実は異なる事案。ただ、同じ日、同じ時間帯に発生するという偶然が重なった。高齢化が進む中、こうしたケースは「増える懸念も」と同署。「地域を知る市民の目が必要。おやっと感じたら110番通報を」と求める。
 
 同市中妻町の同署で、三浦署長が2人に感謝状を手渡した。三浦署長は「奉仕の精神によって命が救われた。社会的に意義深い。今後もご協力を」と謝意を伝えた。
 
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釜石警察署で行われた感謝状贈呈式

 
 同署などによると、昨年12月22日午前2時すぎ、立て続けに2件の110番通報が寄せられた。「家族(高齢)の姿が見えない」「ふらついていた高齢者を保護している」。つながった―と思いきや、実際は異なる事案だった。対象となる高齢者は2人。同時間帯に市内2カ所で似たような事柄が発生していた。
 

違和感、見逃さず動く

 
 菊池さんは22日未明、妻まみさん(34)が運転する車で帰宅途中に、新町の国道283号を住吉町側から横断する男性(80代)に目が留まった。いったんは通り過ぎたものの、「ふらふらしていた。なんか変だ」と感じたため、まみさんに「戻れ」と伝えた。
 
 車から降りた菊池さんが「こんな時間に何してんの?」と男性に声をかけると、「たばこを買いに行く」と答えが返ってきた。男性の様子をうかがうと、長時間歩いたのか衰弱しているように見え、外は寒いからと車に乗せた。そして、「直感」で110番通報。午前2時5分頃だった。
 
 その後、到着した警察官が男性を自宅まで送り届けた。男性の家族は、その時に初めて男性が外に出ていたことを知ったようだったという。男性には認知症の疑いがあったとのこと。
 
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三浦署長から感謝状を受け取る菊池さん

 
 感謝状の贈呈には、まみさんも同行していて、「あの時は、知らない人を車に乗せるのが少し心配だった。けど、無事でよかった」とほっとしていた。一瞬の違和感を見逃さなかった菊池さんは「おかしいと感じたりした時は協力したい」と胸を張った。
 

高齢者の行動 想像して対応

 
 一方、菅原さんが手助けをしたのは女性(80代)で、場所は大只越町内の路上だった。新聞配達中、あるグループホームの前を通りかかった際、施設職員から近くに住む女性がいなくなり、探していることを聞いた。
 
 「高齢の女性が歩くとしたら…」と歩行速度や思考を想像し、普段の配達コースを変更して作業していると、ガードレールにつかまりながら歩いている女性を発見。一度は通り過ぎたが、女性が時折胸のあたりを抑え、立ち止まっている様子が気になり、戻って声をかけた。「どこに行くの?」「家はどこ?」「大丈夫?」。声をかけ続けていると、警察車両が通りかかった。
 
 実は警察では、午前2時12分頃に家族からの通報を受け、女性を探していた。認知症の疑いがあり、グループホームの利用者でもあった女性を心配する声がつながり、女性は夜が明けきらないうちに無事、家族のもとに帰ることができた。
 
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三浦署長から感謝状が贈られた菅原さん

 
 菅原さんは「特別なことをしたわけじゃない。やれる範囲でやったこと」と静かに振り返った。ただ、そうした行動には、昨年亡くなったという母親の姿が思い出されたからとも。「おふくろにやってやれなかった分の孝行、できたかな」とつぶやいた。
 
 2件とも発見は深夜で、冬期で冷え込みも厳しい。当時の気温は3、4度。発見や声かけが遅れれば、命に関わる事故などに遭遇、発展していたかもしれない。
 
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高齢者を手助けした菅原さん(左)、菊池さん(中)

 
 同署生活安全課の高橋友一(ともかず)課長は、高齢化の進展で同様の事案が増える可能性を指摘。その上で、「(署では)夜間は当直の人員が限られ、地域を知る人の目の重要性を改めて感じている。生活の中で、いつもとは違うと感じたら通報してほしい」と強調する。加えて、交通安全分野の視点“ながら見守り”を広げたい考えで、「散歩しながら、通常の生活をしながら、地域ぐるみで見守りをしていければ」と協力を呼びかける。

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広がれ!防災の輪 釜石市民×外国人住民 災害の備え かるた、クイズで楽しく学ぶ

防災かるたを使って災害発生時の適切な行動を学ぶ参加者

防災かるたを使って災害発生時の適切な行動を学ぶ参加者

 
 災害時に役立つ防災知識を釜石市在住の外国人に知ってもらう催しが26日、同市鈴子町の市国際外語大学校で開かれた。「難しい」と思われがちな防災用語を、分かりやすく伝えるアイテムとして用意されたのは「かるた」。簡単な日本語とそれに合うイラストが入った札に手を伸ばし、楽しみながら防災意識を高めた。
 
 地域住民との交流促進を目指して実施している「釜石グローバルラウンジ」(市、市国際交流協会主催)の一環。技能実習や特定技能の在留資格を持ち、市内で働くベトナムやインドネシアなどの出身者、同校で学ぶネパール人留学生ら約40人に加え、同協会員や国際交流に関心のある中高生なども参加した。
 
 外国人、日本人が輪になって勝負。参加者の多くは絵札に入った頭文字の平仮名を理解しているようで、目当ての札を見つけると素早く手を出した。札をのぞき込む表情は真剣だったが、手が重なり合ったり、お手付きしたりすると、笑顔に一変。地域住民が本領を発揮し、「バンッ」と大きな音を出しながら札を取ると、実習生らは驚きつつも、「お~」と感動の声を上げたりした。
 
釜石で暮らす人たちが輪になって「防災かるた」に挑戦

釜石で暮らす人たちが輪になって「防災かるた」に挑戦

 
 「気を付けよう 地震は一回じゃ 終わらない」「戻らない 走って逃げよう 高いところへ」「明日かも 災害はいつ起きるか わかりません」「普段から(いつも)調べておこう 避難場所」。かるたの読み札は、同校外語観光学科の学生が既製の「防災かるた」を参考に、「やさしい日本語、想像しやすい言葉」を選んで作製。短い言葉をつなげるといった工夫も加えた。
 
簡単な日本語をつないで作られた読み札

簡単な日本語をつないで作られた読み札

 
読み手の声に聞き耳を立て、構える参加者

読み手の声に聞き耳を立て、構える参加者

 
 市国際交流課の職員による講話もあり、災害の種類や災害時に使われる日本語、避難場所と避難所の違いなどを確認。「家や、おみせにいます。地震がおきました。すぐ、外ににげますか?」といった問いかけ、クイズを通して普段から地域の人と関わりを持つことや、避難訓練に参加しておくことなど備えの大切さも学んだ。
 
防災用語などを解説する市職員の話を熱心に聞く参加者

防災用語などを解説する市職員の話を熱心に聞く参加者

 
話し合いをしながら防災に関するクイズにも挑戦した

話し合いをしながら防災に関するクイズにも挑戦した

 
 初めてのかるたで15枚の札を取ったネパール出身の学生パビトラ ネウパネさん(20)は日本の正月遊びを楽しみながら、災害発生時の行動を記憶。「揺れたとき 机やイスの下に はいりましょう」との読み札の言葉を頭に浮かべた。
 
 フィリピン出身のエルマー ダイダイさん(29)は「初めての経験だったが、説明してもらって少しわかった。いろんな人と会って話すことができたのも良かった」とうなずいた。「溶接」の特定技能を有し即戦力として造船会社で働いていて、日本での生活は5年になる。「日本語をしゃべれるし、平仮名、カタカナは分かるけど、漢字は難しい」と肩をすくめる。あと数年在留でき、釜石で仕事を継続する予定。「防災無線をしっかり聞くようにしたい」と、情報収集の必要性に認識を深めた。
 
防災を通じて交流を深めた外国人と地域住民

防災を通じて交流を深めた外国人と地域住民

 
 同課によると、現在釜石で暮らす外国人は約450人で、増加傾向にある。半数はベトナム人で、水産加工や機器製造に携わる技能実習生が多い。近年、大規模な地震や台風などの自然災害が頻発していることから、被災経験の少ない外国人にも防災に関する知識を学んでもらおうと企画。「災害はいつ起きるか分からない。準備が大切」と繰り返し強調し、今後もこうした取り組みを続けたい考えだ。

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「110番の日」 釜石警察署が広報活動 高齢者や子どもの防犯・安全意識アップ!

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地域住民にチラシなどを手渡す釜石警察署員ら

 
 釜石警察署は「110番の日」の10日、事件事故用の緊急ダイヤル110番の適切な利用を促す広報活動を、釜石市内各所で行った。同署釜石駅前交番(鈴子町、髙橋長武所長)は市高齢介護福祉課と連携し高齢者宅を回って啓発チラシを配布。同小佐野交番(小佐野町、川野正行所長)は手作りの啓発品を保育施設に贈って交通安全意識の向上を図った。
 

釜石駅前交番 巡回で啓発、特殊詐欺防止や鍵かけ徹底

 
 釜石駅前交番の活動は大只越町で展開され、警察官3人と市職員2人が2班に分かれて高齢者世帯を中心に巡回。チラシなど啓発グッズを手渡しながら、特殊詐欺被害や交通事故に気をつけるよう声をかけた。
 
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地図を手に地域を回る釜石駅前交番の警察官ら

 
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訪問活動を通じて住民の声を聞き取る警察官

 
 特殊詐欺に関し、市内で予兆電話や実際の被害が発生していることを伝えつつ、「変わったことはないですか?」と心配事を聞き取ったり、「詐欺に気を付けてください」「知らない番号の電話に出てしまっても、名乗らないで。ガチャっと切ってもいいから」などと対処法を助言した。在宅時にも「日常的に鍵をかけて」と呼びかけたほか、「万一の時は110番を」と促した。ただ、現在は岩手県警本部につながることから、釜石署や駅前交番の電話番号を記したチラシも渡した。
 
 髙橋所長とチームを組んだのは同課地域包括支援センターの小岩身知子さん(社会福祉士)。市内では高齢者世帯や独り暮らしが増え、空き家も多くなっているうえ、市民が抱える困り事は複雑化し、複合的な問題も少なくないという。警察、市単独での対応では解決が難しい場合もあり、関係機関の情報共有や連携を強化する機会にした。
 
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住宅街を歩く髙橋長武所長(右)と小岩身知子さん

 
 2時間ほどの活動で、髙橋所長が感じたのは住民らの防犯意識の高さ。家にいる時も玄関に鍵をかけていたり、固定電話には番号表示機能を備え、留守番電話対応にしている人が「思いのほか多かった」。また、空き家の増加を改めて認識しつつも、小岩さんの「住民同士が隣近所を気にかけ合っている」という印象に同調した。
 
 駅前交番は7人体制で治安維持に努めている。「地道に歩く。これが“おまわり”の原点だ」と髙橋所長。これからも、こつこつと活動を積み重ねていく構えだ。釜石署では「事件、事故は迷わず110番」とする一方、「困り事や相談など不要不急の110番は控えて」と適正に利用するよう呼びかけている。
 

小佐野交番 紙クラフトで親近感、保育施設へ届ける

 
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小佐野交番が手作りしたペーパークラフトとデコうちわ

 
 小佐野交番ではパトカーや白バイのペーパクラフトを使った啓発品を制作し、管内のこども園など6カ所に贈った。子どもたちに110番や交通安全を呼びかけようと、交番の警察官4人でこつこつと手作り。「警察や交番を身近に感じ、親しみやすいイメージを持ってもらえたら」と思いを込めた。
 
 制作はパトカー1台が1~2時間程度、白バイは細かいパーツを組み合わせるため合計1日分の時間かかったという。「110番の日」のPRや「おうだんほどうは てをあげて わたろうね」とメッセージを入れた“デコうちわ”を添え、さらに今年のえと「巳(み)」にちなんでヘビのイラストも加えている。
 
 子どもたちの喜ぶ姿を想像しながら作業に励んだ高橋真奈華巡査(24)は「白バイが大変だったが、頑張った。事件、事故で亡くなる人、悲しむ人を減らしたい」と背筋を伸ばす。地域に入り、住民と協力しながら防犯パトロールにも取り組む矢神海輝巡査(20)は、日々感じている“やりがい”や“感謝”の気持ちも込めた。「気になることがあれば頼ってほしい。不安なことを相談しに交番に来てもらえたら、一緒に解決策を考えます」と力強く話した。
 
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「安全な地域を」と願う小佐野交番の警察官

 
 小佐野交番では場合によっては不在になるケースもあり、存在感を高めることを狙って昨年からペーパークラフトの制作、保育施設への寄贈を続ける。「細やかな活動だが…」と控えめに話す川野所長がこの活動に込めるのは、巡回中に手を振ってくれる園児への“お礼の気持ち”だ。「交番には優しいお巡りさんがいるので安心してほしい」と、変わらぬメッセージを送る。

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金融機関を狙った強盗事件 東北銀行釜石支店で対応訓練 万が一に備え危機意識醸成

東北銀行釜石支店で行われた強盗事件を想定した対応訓練

東北銀行釜石支店で行われた強盗事件を想定した対応訓練

 
 釜石市大渡町の東北銀行釜石支店(水野吾一支店長)で4日、強盗の侵入を想定した行員の対応訓練が行われた。年末にかけ、金融機関を狙った強盗事件が多発傾向にあることから、釜石地区金融機関防犯協会(会長:安田重行岩手銀行釜石支店長、26機関)が会員機関で毎年実施している訓練。同行同支店では約10年ぶりの開催となった。訓練の様子は他機関の職員も見学し、いざという時の対応を学んだ。
 
 訓練は釜石警察署(三浦正人署長)の協力を得て実施。想定は、口座開設を希望する客を装った犯人が窓口を訪れ、行員が対応する中、もう一人の犯人が拳銃を発砲して行内に侵入。ロビーに座っていた女性客を人質に取り、行員らを脅して現金を強奪するというもの。
 
2人組の強盗犯が時間差で侵入。拳銃を向けて行員を脅す(訓練)

2人組の強盗犯が時間差で侵入。拳銃を向けて行員を脅す(訓練)

 
犯人は来店客を人質に取り、現金をかばんに入れるよう要求(訓練)

犯人は来店客を人質に取り、現金をかばんに入れるよう要求(訓練)

 
 警察官が扮(ふん)する犯人は大声で威嚇し、指示に従うよう要求。行員を後方の壁際に立たせ、女性行員に現金を出すよう命令した。金庫から出した金を差し出すが、犯人は再度要求。持参したかばんに金を詰めさせ奪うと、発砲して逃走した。行員3人がすぐさま追いかけ、逃走車両に蛍光塗料を付着させるためのカラーボール(訓練用)を投げつけた。行内では人質になった客のけがの有無を確認し保護。犯人の足跡を消さないよう逃走経路に新聞紙を敷き、移動範囲をテープで仕切り現場保存(証拠保全)した。
 
逃走した犯人を追いかけ、防犯カラーボール(この日は訓練用)を投げる。地面などに当て車両に蛍光塗料を付着させるのが目的

逃走した犯人を追いかけ、防犯カラーボール(この日は訓練用)を投げる。地面などに当て車両に蛍光塗料を付着させるのが目的

 
逃走経路に新聞紙を敷き、人質になった客を安全な場所に誘導。見学者が一連の行動を確認した

逃走経路に新聞紙を敷き、人質になった客を安全な場所に誘導。見学者が一連の行動を確認した

 
 犯人侵入直後に行員が押した非常通報ボタンで、警察は事件発生を認知。指令を聞いた近くをパトロール中の警察官がまもなく駆け付け、行員から犯人の体格や服装、逃走方向や車種、ナンバーなどを詳しく聞き取り、情報が無線で伝えられた。
 
駆け付けた警察官の聞き取りに、犯人の情報をできるだけ詳しく伝える

駆け付けた警察官の聞き取りに、犯人の情報をできるだけ詳しく伝える

 
 訓練後、釜石署生活安全課の高橋友一課長は「被疑者の人相や着衣を覚える人、カラーボールを投げる人、現場保存する人など役割分担ができていて、落ち着いて対応していた。臨場した警察官への説明もうまくできていた」と評価。その上で、「被害に遭った時、一番大事なのは自分たちと客の身の安全を確保すること。防犯カメラの映像も重要な手掛かりとなるので、日ごろから設備の点検や店外の様子の確認を」と防犯意識を促した。参加者からは拳銃を使った犯罪への望ましい対応についても質問があった。
 
 入行1年目の佐々木長政さん(23)は初めての訓練だった。非常通報ボタンを押し、犯人の特徴を覚え、カラーボールを投げる係を担当したが、「カウンターの中にいると下半身が見えなくて。さらには犯人に後向きにさせられたので、人相とかの記憶が曖昧(あいまい)だった」と振り返り。対応の難しさを感じつつ、「まずは慌てないこと。お客さまに被害を与えないよう、日ごろから対策を確認し、非常時に備えることが大事」と意識を高めた。
 
写真上:訓練後の振り返り。犯人の特徴を記憶していたかをチェック 同下:水野支店長の話を聞く参加者

写真上:訓練後の振り返り。犯人の特徴を記憶していたかをチェック 同下:水野支店長の話を聞く参加者

 
 水野支店長(54)は「訓練とはいえ迫力があり、みんな気が動転していたようだが、防犯教材などを見て準備してきたことはある程度、冷静にできていたと思う」と所見。予測できない強盗事案への対策として「日ごろからお客さまの目を見て話す、怪しい人物が入ってきた時は一声かけるなど、犯罪のけん制になる対応を心がけたい。今回の訓練を振り返り、行員全員で気を引き締めていく」と話した。
 
 協会の安田会長は「全国的に金融強盗は減少傾向にあり、県内でも2006年を最後に18年間発生していないが、近年の特徴として出退勤の職員を脅して店内に侵入し、金庫を開けさせるという事案も発生している」と説明。訓練を見学した各機関の職員に対し、「今日出た注意点を持ち帰り、各店で再確認、徹底を」と呼び掛けた。

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海中転落事故防止へ釜石海保など啓発パトロール 夜釣り楽しむ人へ「装備しっかりと」

釜石港で釣り人に注意を呼びかける釜石海上保安部の職員

釜石港で釣り人に注意を呼びかける釜石海上保安部の職員

 
 夜釣り中の事故を防止しようと、釜石海上保安部や釜石警察署などは22日夜、釜石市の釜石港と唐丹漁港で合同パトロールを行い、釣り人へ注意を呼びかけた。この時期は日暮れが早く、海水温も低下するため、転落すると発見の遅れや低体温症による危険性が高まるという。そのため、第2管区海上保安本部の管内では11月を「釣り海難防止活動期間」として注意喚起している。
 
 この日は、同保安部と同署、市、岩手県沿岸広域振興局の職員ら約10人が活動。夜間の寒さが増す冬季は気象条件が厳しい反面、漁港の街灯下にイカなどが寄ってくるため釣り人も少なくない。港内もそうした狙いを持った人たちの姿があり、釣り人一人ひとりに注意を促すチラシを手渡した。
 
海中転落事故の防止に向け、釣り人に声をかけながらチラシを配った

海中転落事故の防止に向け、釣り人に声をかけながらチラシを配った

 
 港近くで働く関渡さん(75)は、仕事終わりに釣りを楽しむのが日課。この日も顔なじみの釣り人らと岸壁から釣り糸を垂らしていた。ライフジャケットは着用していたが、事故防止の声がけに「海に落ちたら大変だからね。安全に楽しみたいし、気を付ける」と再確認。狙いのヤリイカは「久しぶりの大漁」だったようで、“いか”にして味わうか考えを巡らせた。
 
 同保安部交通課によると、県内では昨年までの5年間に釣り人の海中転落事故が18件発生。うち夜間に起きたのは12件で半数以上を占める。原因は岸壁などからの足の踏み外し、つまずきなど“不注意”が多いという。
 
 今年は既に3件発生。うち1件が夜釣り中の事案で、釜石市内で起こった。いずれの事故もライフジャケットは未着用だった。
 
多くの人が岸壁から釣り糸を垂らす。今夜の獲物はヤリイカ

多くの人が岸壁から釣り糸を垂らす。今夜の獲物はヤリイカ

 
「決まりを守って安全に夜釣りを楽しんで」と関係者ら

「決まりを守って安全に夜釣りを楽しんで」と関係者ら

 
 港内を巡った同課の美野重和課長は「救命胴衣を着けていない人が多かった。命に関わる事故に発展しかねないので、万一のために着用を心がけてほしい」と強調。加えて、▽気象や海象を確認し無理な行動はしない▽単独行動は控え複数人で行動する▽危険な場所には立ち入らない▽釣り場環境に応じた装備の選択を▽海の緊急通報は118番―といったポイントも呼びかける。

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「危機管理は災害イメージ、対処法準備、実践訓練から」 釜石市アドバイザー・越野修三さん講演

釜石市防災講演会=釜石PIT、16日

釜石市防災講演会=釜石PIT、16日

 
 地震津波、台風、集中豪雨などの自然災害により、全国各地で想定を超える被害がもたらされている昨今―。そうした中、釜石市は16日、自然災害への理解を深め、防災対策に役立ててもらうための市民向けの講演会を開いた。講師は同市の防災・危機管理アドバイザーを務める越野修三さん。「大災害から学ぶ危機管理」と題した講演で越野さんは、災害リスクを知り、具体的にイメージして対処法(戦略)を構築、実践訓練で検証する重要性を説いた。
 
 大町の釜石PITで開かれた講演会には自治会役員、消防団員、防災士を中心に約50人が参加した。講師の越野さんは陸上自衛隊出身。在任時に阪神・淡路大震災(1995年)の災害派遣を経験した。2006年に退官後、県の防災危機管理監に就任。08年の岩手・宮城内陸地震、11年の東日本大震災で県の災害対応を指揮した。釜石市では同震災検証委員会の委員長を務め、18年から防災・危機管理アドバイザーとして助言を行っている。
 
講師の越野修三さん(釜石市防災・危機管理アドバイザー)

講師の越野修三さん(釜石市防災・危機管理アドバイザー)

 
 越野さんは6000人以上が犠牲になった阪神・淡路大震災について、危機意識と事前準備が不十分で救助活動や行政対応が遅れたことを指摘。危機の認識には災害への関心や知識が必要で、「全く関心のない人にいくら情報を与えても行動は起こさない。避難を呼びかけても逃げないのも同じ。危機意識を持つか持たないかで行動は全く変わってくる」と話した。
 
 では、どうすれば危機(災害)対応がうまくいくのか。越野さんは危機管理には「事前対応」「応急対応」「事後対応」の3段階があり、危機に対し、いかに早く適切に対応できるかは事前対応(準備)にかかっていると教えた。一番大切なのは「危機をどれだけ具体的にイメージできるか」ということ。「ハザードマップなどで自分が住む地域の災害の可能性(リスク)を知り、それが起きたらどのような状況になるのかを考える」。これが危機管理の出発点だとした。
 
越野さんは「大災害から学ぶ危機管理」と題し講演した

越野さんは「大災害から学ぶ危機管理」と題し講演した

 
 越野さんが県の防災危機管理監に就任する際、「30年間に宮城県沖地震が発生する確率は99%」とされていたが、県職員の防災への問題意識は決して高くはなかったという。着手したのは、大地震、津波発生時に何が課題となり、どう対処すべきかを考えること(課題解決のための戦略の構築)。就任から1年後の07年には県総合防災訓練、08年には自衛隊と自治体の共同訓練(みちのくアラート)を行い、災害時の応急対策活動(人員・資器材の集結、情報共有、部隊配置、救出救助・医療、緊急物資輸送など)を検証した。災害対策本部機能の強化も図り、これらの取り組みは11年の東日本大震災の対応に生かされた。
 
 一方で東日本大震災では、本県で約6000人が津波の犠牲になった。なぜ、避難行動が遅れたのか。越野さんは震災後に釜石市で実施した住民アンケートから、激しい揺れを感じ津波の情報を得ていたにもかかわらず、約40%の人はすぐには避難していなかった実態を明かした。一因に「自分は大丈夫」「今まで被害がなかったから」「隣の人も逃げていない」など根拠のない理由を自分に言い聞かせ、逃げない自分を正当化しようとする、人間誰しもが持つ心理的作用があるという。
 
越野さんの話に耳を傾ける参加者。災害への関心、危機意識を持つ大切さを学んだ

越野さんの話に耳を傾ける参加者。災害への関心、危機意識を持つ大切さを学んだ

 
 近年増加する大雨、洪水、土砂災害のリスクについても説明。1時間に50ミリ以上の雨が降り続いた場合にどんなことが起こりうるかを過去の災害を例に説明した。2018年の西日本豪雨で51人が犠牲になった岡山県真備町では、合流する2河川が大雨で増水。支流の水が合流地点で流れにくくなり水位が急激に上昇、堤防が決壊し浸水する「バックウオーター現象」があった。本年9月の能登半島の大雨災害では、線状降水帯が発生するなどして1時間に100ミリ以上の降雨を記録。上流からの流木が橋でせき止められ、ダム化することで予想外の浸水被害を引き起こした。
 
全国で発生した大雨災害の事例も紹介。同様の被害は釜石市でも起こりうる

全国で発生した大雨災害の事例も紹介。同様の被害は釜石市でも起こりうる

 
 越野さんは「釜石市は平地が少なく、居住地の背後に険しい山をかかえる。大雨が降ると山から谷に流れ込むイメージ。甲子川にも支流があり、バックウオーター現象や流木による浸水被害が起こりうることをイメージする必要がある」と助言。津波同様、ハザードマップであらかじめリスクを確認しておくことが重要とした。
 
 また、土砂災害で死亡した人の90%は土砂災害警戒区域で亡くなっていること、線状降水帯は日本中どこでも発生する可能性があることも伝え、災害が起きそうな雨量の目安を知り、避難行動の基準(避難スイッチ)を決めておくよう促した。
 
「地震はいつどこでも起こりうる」。過去の地震災害の特徴も学んだ

「地震はいつどこでも起こりうる」。過去の地震災害の特徴も学んだ

 
講演の前には全員で「釜石市防災市民憲章」を唱和した

講演の前には全員で「釜石市防災市民憲章」を唱和した

 
 大規模災害では発災直後は公助(行政、警察、消防、自衛隊)の力を当てにできない。自分の命は自分で、地域は地域で守る必要がある(自助、共助、協働)。越野さんは「訓練でできなかったことは実際の危機(災害)時にできるわけがない。個人、地域、行政など、それぞれの立場で対処法を準備し実践的訓練を重ねる。最悪の場合を想定し行動することが大事」と呼び掛けた。
 
 防災士の資格を持つ鵜住居町の佐々和代さん(76)は近年増加する大雨災害を危惧。居住地前の長内川の形状や草の繁茂による大雨時の水位上昇を心配し、「氾濫や土砂災害の可能性もあることを考えておかないと。『ここは大丈夫』という意識は禁物。(講演で言われたように)日ごろから防災への意識を高めておくことが大切」とうなずいた。
 
今後の防災対策に必要なことを学んだ参加者

今後の防災対策に必要なことを学んだ参加者