タグ別アーカイブ: 防災・安全

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釜石、大槌両市町で県総合防災訓練 関係機関・団体が連携確認 避難者対応の課題共有

外部から入った保健医療福祉の支援者らが釜石市の担当者から避難所の状況の説明を受ける=県総合防災訓練・釜石東中会場

外部から入った保健医療福祉の支援者らが釜石市の担当者から避難所の状況の説明を受ける=県総合防災訓練・釜石東中会場

 
 2025年度の県総合防災訓練は8日、釜石市と大槌町で行われた。釜石市が同訓練会場となるのは2012年以来。巨大地震が発生、大津波警報が発表されたとの想定で、72項目の訓練を実施。83の関係機関、約4300人が参加し、救出救助、避難所運営、支援チームの活動などに関し、自治体と関係機関、団体が連携を確認した。住民が防災意識を高めるための各種体験もあった。当初予定されていた津波避難訓練は、クマ出没の危険回避のため中止された。
 
 訓練は前日の(先発)地震に続き、三陸沖を震源とするマグニチュード8を超える大地震が発生。本県沿岸部で最大震度6強を観測、大津波警報が発表されたとの想定。地震、津波災害で必要となる各種対応を訓練した。釜石市では5会場で実施。鵜住居町の釜石東中では避難所開設後、3日から1週間後を想定し、避難者への各種ケアを中心とした訓練が行われた。
 
日本医師会災害医療チーム(JMAT)の医師や日本赤十字社派遣の医師や看護師らが避難所を巡回し患者(役)の診療を行った

日本医師会災害医療チーム(JMAT)の医師や日本赤十字社派遣の医師や看護師らが避難所を巡回し患者(役)の診療を行った

 
写真上:心のケアを行う災害派遣精神医療チーム(DPAT)=右側と連携を確認 同下:感染制御支援チーム(ICAT)は避難所における感染症予防対策を訓練

写真上:心のケアを行う災害派遣精神医療チーム(DPAT)=右側と連携を確認 同下:感染制御支援チーム(ICAT)は避難所における感染症予防対策を訓練

 
 市、釜石医師会、同薬剤師会による保健医療福祉調整本部訓練は初めて実施。外部から派遣される災害対応の医療、感染制御、福祉などの支援チームの受け入れ、ケアが必要な患者の関係機関への誘導などを具体的シナリオでシミュレーション。情報共有のための報告会も行った。釜石薬剤師会の中田義仁会長は「災害時の混乱の中では、各種チームが円滑に支援に入れるような調整本部が必要不可欠。今回の訓練参加者からも同様の声があった。迅速な対応のためには関係機関の平時からの連携も大事」と話した。
 
市、医師会、薬剤師会が連携し初めて行われた「釜石市保健医療福祉調整本部」の設置・運営訓練

市、医師会、薬剤師会が連携し初めて行われた「釜石市保健医療福祉調整本部」の設置・運営訓練

 
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調整本部は外部から派遣される支援チームの調整や関係機関の情報共有を担った

 
 県、市の国際交流協会は外国人の避難所受け入れ訓練を行った。市から応援要請を受けた同協会員が外国人避難者の受け付けや相談に応じた。中国、ベトナム、バングラデシュ出身の県内在住者4人が訓練に参加。音声翻訳アプリを利用してやりとりしたほか、県が設置する災害時多言語支援窓口に電話して母国語で会話をできるようにし、困りごとなどを確実に把握する訓練も行った。
 
外国人の避難所受け入れ訓練。翻訳アプリや災害時多言語支援窓口も活用し、外国人避難者の要望を聞いた

外国人の避難所受け入れ訓練。翻訳アプリや災害時多言語支援窓口も活用し、外国人避難者の要望を聞いた

 
 バングラデシュから岩手大に留学中のアクター シャーミンさん(31)は「災害時、異なる言語の人にどう対応するのかを学べた」、夫のリアズさん(33)は「私たちは日本語を少しできるが、来日して間もない人たちはとても大変だろう。コミュニケーションがやはり一番難しい」と実感。2人はイスラム教徒で、毎日の礼拝や食事の問題もある。県国際交流協会の大山美和主幹は「長期避難になると新たな課題も出てくる。そういった気付きを協会関係者だけでなく周りの人にも知ってもらうことが大事」と理解促進を願った。
 
 鵜住居町の住民らは避難者として各種訓練に参加した。LINE登録やマイナンバーカードの活用で自治体が避難状況をリアルタイムで把握する避難所運営デジタル化実証訓練、避難所運営ゲーム(HUG)の体験実習などに取り組んだ。
 
避難所運営デジタル化実証訓練では、避難者のスマホで県のLINEアカウントに友だち登録。各種情報を入力してもらうことで避難状況の把握につなげる訓練が行われた

避難所運営デジタル化実証訓練では、避難者のスマホで県のLINEアカウントに友だち登録。各種情報を入力してもらうことで避難状況の把握につなげる訓練が行われた

 
県防災士会が訓練参加者に提供した避難所運営ゲーム(HUG)の体験実習

県防災士会が訓練参加者に提供した避難所運営ゲーム(HUG)の体験実習

 
 釜石東中の菅原怜利さん(2年)は今年7月、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする地震で本県沿岸に津波警報が出された際、学校で避難者の受け入れを実体験。今回のゲームで、「避難所にはいろいろな人が来るので、どこにどう配置すればいいかを学べた。今後に生かせれば」と意識を高めた。岩﨑瑛叶さん(同)は「避難所はみんなで意見を出し合ってやることが大切だと思った」。学校では自主防を組織しており、「防災のことを知らない人たちにも広めていきたい」と思いを強くした。実習をサポートした県防災士会の清水上裕理事長は「東日本大震災の教訓を踏まえたゲーム。実際の避難時にこうした知識があれば、リーダーシップを取って避難所開設が可能になる」とし、より多くの人たちの体験を望んだ。
 
鵜住居町の住民らがHUGを体験。釜石東中生(写真右下)も防災力を高めようと参加

鵜住居町の住民らがHUGを体験。釜石東中生(写真右下)も防災力を高めようと参加

 
 港町のイオンタウン釜石周辺では、津波から逃げ遅れた人をがれきや車の中から救出する訓練を実施。県警や自衛隊のオフロードバイクが要救助者を発見、駆けつけた消防署員らが救出して救護テントに搬送する流れを確認した。能登半島地震で集落孤立が相次いだことなどを踏まえたヘリコプターによる孤立者救助訓練では、県と海上保安庁から2機が出動。救急隊員らが建物屋上に降下し、取り残された避難者を機上に引き上げた。
 
車内に閉じ込められた人を救出する消防隊員ら=港町会場

車内に閉じ込められた人を救出する消防隊員ら=港町会場

 
関係機関が連携し津波から逃げ遅れた人らの救助活動にあたる

関係機関が連携し津波から逃げ遅れた人らの救助活動にあたる

 
ヘリコプターによる救助訓練。孤立者を上空から救出する流れを確認した

ヘリコプターによる救助訓練。孤立者を上空から救出する流れを確認した

 
 大町の市民ホールTETTO前広場周辺では婦人消防協力隊による炊き出しや、指定避難所を想定した電気自動車からの給電訓練などが行われたほか、テントの中に充満させた訓練用の無害な煙で火災の状況を体感するといった防災意識を高めてもらうプログラムも用意された。地震体験車で震度7など大規模地震の揺れを体感した市内の平松寿倖(ひさこ)さん(35)は「(体験では)揺れがくると分かっていたし家具も固定されていたが、実際の災害は突然起こるだろうから不安。家の中につかめるもの、体を支えられるもの、あったかな…。これから先もここで暮らしていくから、身の回りの状況を確かめたい」と備えの大切さを改めて実感していた。
 
TETTO前広場では炊き出し訓練や災害体験などが行われた

TETTO前広場では炊き出し訓練や災害体験などが行われた

 
達増拓也県知事らが各訓練会場を視察。外国人避難者の受け入れではイスラム教徒の礼拝スペースも設けられた(左)

達増拓也県知事らが各訓練会場を視察。外国人避難者の受け入れではイスラム教徒の礼拝スペースも設けられた(左)

 
 訓練後の閉会式で、統監の達増拓也県知事は「災害対応の総合力を強化する重要性を改めて認識。訓練の成果を地域や職場の防災対策に役立ててもらいたい」と総括。副統監の小野共市長は「近年、自然災害が頻発、激甚化し、防災・減災の取り組みはより一層の強化が求められる。訓練で得た課題を検証し、災害対策に生かしていく」と決意を示した。

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ペットと一緒が「当たり前」 釜石で学び、考える備え 同行避難の“カタチ”

セラピードッグと同行避難について学ぶ来場者

セラピードッグと同行避難について学ぶ来場者

 
 災害時にペットを連れて逃げる「同行避難」について考える催しが3日、釜石市大町の市民ホールTETTOであった。環境省のガイドラインでは推奨されているが、「認識の低さ」があってか課題とされるケースが多いのが実情。行政、飼い主、地域の人たちへの理解を広げようと、地元の動物愛護団体「人と動物の絆momo太郎」が主催した。災害救助犬の育成などをする認定NPO法人日本レスキュー協会(本部・兵庫県)が共催し、セラピードッグと触れ合いながらいざという時のための備えを学んだ。
 
 「迷わず、ためらわず同行避難を」。同協会の動物福祉事業責任者、辻本郁美さんが講話で、来場者に呼びかけた。2024年1月の能登半島地震や今年2月に発生した大船渡市の山林火災などを例に、同行避難の方法や心構えを解説。重要なことは、「公助」としての行政側の体制づくりと、「自助」としての飼い主の備えで、「車の両輪のように考えることが重要だ」と強調した。
 
 自治体が避難所にペットを受け入れるための仕組みを整えるとともに、飼い主も▽ペット用の非常用品を備えておく▽ハウストレーニング(ほかの犬や人に対し、ほえないなど)▽ペットとともに避難する際の行動は事前に決めておく―という3つのことが必要になると指摘。「ペットは大事な家族。備えが不十分で避難できないとならないよう、災害が起きていない今の時期に必要なことを調べ、一緒に逃げられるようにしてほしい」と求めた。
 
ペット避難につなげるためにはケージに入る習慣づけが大事

ペット避難につなげるためにはケージに入る習慣づけが大事

 
 辻本さんはハウストレーニングの一例として、ゲージに入る習慣づけをセラピードッグとともに実演。入ったら、えさをあげるといったコツを紹介した。日常の中で取り入れることで「ケージ=安心安全な場所」と認識しリラックスできるとし、慣れない場所でも大きなストレスを感じずに過ごせるようになると解説。来場者も実際に体験してみたりした。
 
セラピードッグと触れ合いながら同行避難を学ぶ子どもたち

セラピードッグと触れ合いながら同行避難を学ぶ子どもたち

 
 パネル展示では、momo太郎など民間有志が行った大船渡市の山林火災での活動を紹介。当初は避難所でペットを受け入れなかったというが、有志らが行政に働きかけて同伴可能な避難所が開設されたこと、開設場所が離れていたことなどから同行避難を断念した飼い主もいたため民間有志が預かった経緯などを分かりやすく示した。
 
大船渡市の山林火災での活動を紹介するパネル展示

大船渡市の山林火災での活動を紹介するパネル展示

 
備えが大事なのは人もペットも同じ。非常用品を紹介

備えが大事なのは人もペットも同じ。非常用品を紹介

 
 津波の恐れがある際に避難が必要な地域で愛犬と暮らす鈴木祐美さん(41)は、いざという時にすぐ逃げられるよう必要な準備を知りたくて来場した。東日本大震災時には同行避難は無理と考え、後ろ髪を引かれる思いで連れずに避難。今も「同行避難ができるのか自体、分からない」ため、もし災害が発生したら愛犬と一緒に車中泊と考えている。辻本さんの「ためらわずに」との言葉を受け、「自助について家族と考えたい」と、ペットの非常用品などの展示を熱心に見つめた。
 
 マルシェ「かまいしワンにゃんフェス」も同時開催。猫や犬をあしらった手芸品や菓子、ペットの占いなど約30店が並んだ。同行避難への理解を広げるもう一つの要素とされるのが「共助」。飼い主同士、そして行政や地域住民との助け合いは必要となり、イベント化することで参加の間口を広げ、「知ってもらうための情報交換の場」「交流の機会」とした。
 
同時開催のマルシェ。動物好きが交流を楽しんだ

同時開催のマルシェ。動物好きが交流を楽しんだ

 
セラピードッグのモフモフ感、愛くるしさにみんな笑顔

セラピードッグのモフモフ感、愛くるしさにみんな笑顔

 
 「気持ちを切り替えるきっかけに」と話すのは、momo太郎の鈴子真佐美代表。ペットの同行避難は国で推奨されているものの、全国的に避難所でペットの受け入れは拒否される事例はあり、「行政の認識は低い。飼い主側にもいる」と感じている。
 
 そして地域によって温度差もあり、隣町の大槌町ではペット同行避難のため避難所でのスペースを確保する動きは進んでいるが、釜石市では検討が始まり模索の真っ最中。同団体など有志らは行政側に要望する一方で、鳴き声や臭いといった衛生上の問題などの課題をやわらげるため、飼い主が普段の生活でできるペットのトレーニング法を伝える活動も続ける。
 
 鈴子代表は「ペットは家族のパートナー。一緒が当たり前。災害時、被災地域に残したペットのもとへ戻らないことは人の命を守ることにもなる」と話し、ペットを飼っていない人も含め広く知ってもらうため、「こつこつと取り組みを進めなければ」と先を見据えた。

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狙い定めて放水「しっかり」 釜石・幼年消防クラブ ふれあいフェスで防災意識向上

消防ふれあいフェスティバルで放水体験をする園児

消防ふれあいフェスティバルで放水体験をする園児

 
 釜石市幼年消防クラブ消防ふれあいフェスティバルが15日、同市鈴子町の釜石消防署で開かれた。市内3保育施設の園児や保育士ら約40人が、消防車両の乗車や放水などの体験を通じて防火の意識を高めた。
 
 平田こども園、ピッコロ子ども倶楽部桜木園、上中島こども園の年長児らが参加した。署員のサポートを受けながら火に見立てた的をホースで狙う放水体験に挑戦。放水ノズルを操って勢いよく水が飛び出すと、笑ったり驚いたり、いろいろな表情を浮かばせた。
 
しっかり消火!消防士になり切って放水

しっかり消火!消防士になり切って放水

 
釜石消防署員に支えられ放水体験「楽しいな」

釜石消防署員に支えられ放水体験「楽しいな」

 
 消防ポンプ車の試乗では、サイレンを鳴らして「火の用心」などと呼びかけてみた。同署の救助隊員によるはしご車を使った救助訓練、ロープを使って高所から降下する訓練を見学。子どもたちは、隊員のきびきびした動きを真剣な表情で見つめた。
 
消防ポンプ車に乗って笑顔を見せる子どもたち

消防ポンプ車に乗って笑顔を見せる子どもたち

 
はしご車を使って高所から人命を救助する訓練を見学

はしご車を使って高所から人命を救助する訓練を見学

 
高所からロープを使って降下する隊員を園児たちが応援

高所からロープを使って降下する隊員を園児たちが応援

 
 市婦人消防連絡協議会(久保久美子会長)による紙芝居や絵本の読み聞かせでは、地震や火事が起きた時にどうしたらいいか、楽しみながら理解を深めた。読み終えたメンバーは「『おはしも』は分かるかな?」と質問。子どもたちは自信たっぷりに「押さない」「走らない」「しゃべらない」「戻らない」と、避難時の合言葉に声を合わせた。
 
 「命は何個ある?」「いっこー!」。そうやりとりをした後、メンバーが「ひとつしかない命を守れるようになってほしい」と思いを伝えると、園児たちは「はい」とうなずいた。「守れるようになりたい」と話していたピッコロ子ども倶楽部桜木園の丑渕夕暖ちゃん(6)が印象に残ったのは乗車体験。「消防士さん、かっこよかった」とはにかんだ。
 
「命を守れるように」と願いを込め読み聞かせ

「命を守れるように」と願いを込め読み聞かせ

 
 上中島こども園の堀川陽雅ちゃん(5)は「火、消すとこが楽しかった。火は怖いから、気をつけるね」とにっこり。いま憧れているのは「自衛隊」で、「みんなを守れるから」と胸を張った。
 
はしご車やパネルの前で記念撮影を楽しむ子どもたち

はしご車やパネルの前で記念撮影を楽しむ子どもたち

 
 この催しは、幼年期の子どもらが楽しく遊び、触れ合いながら防火や防災に関心を持ってもらうのを狙いにする。東日本大震災を機に、防災意識をより高めてもらおうと体験型に転換。消防士と接する機会にもなればと、消防署の施設を利用する形にした。
 
消防署員との触れ合いに笑顔を見せる園児

消防署員との触れ合いに笑顔を見せる園児

 
子どもたちとの交流に頬を緩める消防署員

子どもたちとの交流に頬を緩める消防署員

 
 新型コロナウイルス禍による中断を経て、今回で4回目の開催となった。市内の11クラブ(保育施設)を対象に4回に分けて行っており、この日が最終回。園児や保育士ら計約150人が参加した。
 
 現在、11クラブの子ども計543人(4月1日現在)が所属。さまざまな災害を想定した避難訓練の実施や防火DVDの視聴、同署による防災教室の開催など各クラブで取り組んでいる。同フェスティバルへの参加は全クラブが継続。いくつかのクラブは秋季全国火災予防運動週間に合わせ防火パレードを行う。

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防ごう!特殊詐欺被害 郵便局・釜石SW・警察が“スクラム” 広報チラシ配布で市民に意識啓発

郵便局社員と詐欺被害防止チラシを手渡す日本製鉄釜石SWの石垣航平選手=15日

郵便局社員と詐欺被害防止チラシを手渡す日本製鉄釜石SWの石垣航平選手=15日

 
 県内で増え続ける特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の被害を食い止めようと15日、釜石市内の郵便局で注意喚起のチラシを配る啓発活動が行われた。只越町の釜石郵便局(小野寺幸徳局長)では、地元ラグビーチーム、日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)の石垣航平選手(32)が活動に協力。郵便局社員らと被害防止を呼びかけた。
 
 全国地域安全運動(10月11日~20日)の一環として、年金支給日の15日に合わせて活動。詐欺の手口などが書かれたチラシを訪れた人たちに配り、被害に遭わないよう注意を促した。
 
詐欺被害防止のための啓発活動は釜石郵便局の入り口で行われた

詐欺被害防止のための啓発活動は釜石郵便局の入り口で行われた

 
 岩手県警によると、県内の今年9月末時点での特殊詐欺認知件数は102件(前年同期比67件増)で、被害額は5億283万円(同2億673万円増)。SNS型投資・ロマンス詐欺は73件(同33件増)で、被害額は4億8969万円(同1億7668万円増)。いずれも前年に比べ大幅に増えており、被害の深刻さがうかがえる。
 
 釜石署管内では同時点で各1件の被害だが、詐欺が疑われる不審な電話などの相談は昨年より増えているという。「(警察などの)なりすまし」「架空料金請求」「投資・ロマンス」「還付金」…。手口の巧妙化、複雑化で、年代を問わず被害に遭う可能性がある詐欺事案。釜石署生活安全課の高橋友一課長は「お金の話が出たり、逮捕されたくなかったら…といった不安をあおるような話があった時は、一度電話を切って必ず警察に相談してほしい。絶対にその場で判断しないこと。一人で考えてしまってはだめ」と冷静な対処を呼びかける。
 
年金支給日のこの日は高齢者らが次々に来店。「特殊詐欺などに気を付けて!」と注意を促した

年金支給日のこの日は高齢者らが次々に来店。「特殊詐欺などに気を付けて!」と注意を促した

 
 釜石郵便局では今年、詐欺被害が疑われるような利用事案は見られないというが、窓口営業部の佐藤忍部長は「高額の振り込み、預金引き出しの時点で、必ず理由を聞いて確認するようにしている。県内でこれだけ被害が増えているのは危機的状況。今回のような広報活動を通じて、皆さんに被害防止への意識を高めてもらえたら」と話す。また、日本郵便や郵便局を装った不審な電話、メール、SMSが送られてくる事案も発生しており、「着信しても個人情報を教えない、URLをクリックしない」ようにとのこと。
 
石垣選手は日頃の応援への感謝の思いも胸に地域の安全安心を守る活動に取り組んだ

石垣選手は日頃の応援への感謝の思いも胸に地域の安全安心を守る活動に取り組んだ

 
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 活動に協力した石垣選手は「思っていた以上に被害が多いことを知った。自分は大丈夫と思っている方も多いと思うが、今一度(対策を見直し)、被害に遭わないよう十分に気を付けてもらえれば」と話した。この日は小佐野、釜石中妻の両郵便局でも釜石署署員がチラシを配布した。

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火災から地域を守る!釜石市消防団の教育訓練 団員ら、初歩大事に技術高める

釜石市消防団の基本教育訓練で消防車両から放水

釜石市消防団の基本教育訓練で消防車両から放水

 
 釜石市消防団(菊池録郎団長)の基本教育訓練は10月5日、同市鈴子町の釜石消防署で行われ、団員らが複数台の消防車両を用いてホースを中継する手順などを確認した。この日は、幹部団員の研修会も実施。奏功事例をもとに“消防団の強み”を改めて考え、地域の防災を担う意識を高めた。
 
 市消防団は市内を8つの区域に分け、8分団35部で構成される。団員数は計514人(8月1日現在)。東日本大震災以後、被災地域では消火技術を競う操法大会(2年に1回開催)や消防演習などが縮小され、続く新型コロナウイルス禍による団体活動の制限などで訓練の機会も減っていた。団員数の減少がある一方、新入団やキャリアの浅い団員もいることから、代替として昨年から基本教育訓練を実施。今年も継続し、5回に分けて行っている。
 
消防活動の基本となる礼式訓練

消防活動の基本となる礼式訓練

 
 3回目の訓練となった5日は、5分団(甲子地区)と7分団(栗橋地区)から約30人が参加。敬礼などの礼式の訓練や服装点検などの後、消防隊や各分団が連携した中継訓練に取り組んだ。
 
 消火栓やため池などの水利施設から離れた火災現場での活動を想定。各分団に配備されているポンプ車を操作し、離れた場所まで適切な圧力で水を送り出す方法を確認した。団員らはホースを延ばし、車両2台を連結。消火栓近くに待機した車両が送水を開始すると、各分団員は情報をトランシーバーで伝え合い、水圧を一定に保てるよう動作を調節した。水は数分で端まで到達し、放水が行われた。
 
各分団の消防ポンプ車を使った中継訓練の様子

各分団の消防ポンプ車を使った中継訓練の様子

 
訓練で消火活動や情報伝達の流れを確かめた

訓練で消火活動や情報伝達の流れを確かめた

 
火元に見立てた的に放水。緊張感を持って実践

火元に見立てた的に放水。緊張感を持って実践

 
 団員の多くは仕事などで地区外に出ていることから、いざ火災が発生した場合は地区内にいる団員らがいち早く駆け付け初期の準備を進める。分団、部が連携する中継活動は「あり得る」と団員ら。訓練では、全自動型の小型動力ポンプ積載車には他の車両から延びたホースをつなぐ連結口がないことが分かるなど収穫があった。
 
訓練に臨む仲間の様子をじっと見つめる参加者

訓練に臨む仲間の様子をじっと見つめる参加者

 
 7分団1部の前川英之部長代理(54)は「住家、山火事など火災の種類や状況、人員の数によって車両の配置、資機材のセッティングは違ってくる。経験や訓練の積み重ね、一つ一つが大事になる」と話す。礼式は先輩から後輩に伝えられるものの、整列した形で基本姿勢を確認する機会は多くない。入退団による入れ替わりもあり、教育訓練の実施を歓迎。「若手もベテランも一緒に確認し、得たものを共有して地域を守っていく」と気持ちを引き締めた。
 
訓練で得た情報を共有する7分団1部の団員たち

訓練で得た情報を共有する7分団1部の団員たち

 
 幹部研修会には団本部と各分団から50人余りが参加。同署の小笠原研也副署長を講師に、市内で発生した建物火災での消防団の対応を振り返った。住宅の被害は全焼・部分焼を含め計7棟。背後に山林があり延焼の恐れもあったが、包囲隊形の構築や命令系統の確立、地理・水利への精通などが功を奏し、被害の拡大を防いだ。消防団の強みとされる▽地域密着性▽要因動員力▽即時対応力―が発揮された事例となった。
 
消防団の強みが生かされた事例を振り返った幹部研修会

消防団の強みが生かされた事例を振り返った幹部研修会

 
 消防団は地域住民にとって身近な防災機関であり期待も大きいが、それぞれになりわいを持つ人で構成される組織の運営は難しさがある。それらを念頭に置きつつ、部下への指導や後継者づくりへの配慮といった心得を示した小笠原副署長。釜石市を会場に11月8日実施予定の岩手県総合防災訓練での役割分担についても説明した。
 
 菊池団長は「初歩に戻って、しっかりマスターすることで団員が積極的に取り組んでいける」と話し、訓練や研修の意義を強調した。震災後は高度な訓練ができない状況だったが、来年には釜石、遠野、大槌の3市町の消防団が一堂に会す操法競技会が釜石で開かれる予定で、「やっとやれる」とうなずく。今回の訓練の内容や各分団の活動で参考になる事例を仲間と共有し、レベルアップを図ってほしいと求めた。
 

「できることで地域の役に立ちたい」 女性団員、活躍中

 
消防署員から教わりながら訓練に臨む小林真由美さん(右)

消防署員から教わりながら訓練に臨む小林真由美さん(右)

 
 この日の訓練に、女性団員が1人参加した。5分団1部で活動中の小林真由美さん(31)。先輩団員の動きを見ながら後方でホースを延ばす補助役を担った。「まだ知らないことばかり。消火活動の流れを理解してパッパと動けるようにしたい」。基本の姿勢を吸収しようと集中した。
 
 小林さんは「ヤクルトレディ」(販売員)として市内の家庭や企業などにヤクルトを届けている。偶然か必然か、担当区域には消防署も。職場にあった消防団員募集のチラシを目にし、「何か役に立てるなら」と入団、3年目になる。
 
 団員としての活動は月1回、防火の呼びかけで夜間に地域を巡回する。仕事中に防災無線で出動要請を受け駆け付けたのは数回。現在は、先に到着している車両や先輩団員たちの活動を「見守っている状態」だという。
 
 消防車両での移動も後部座席に乗っていて、「申し訳ない気持ち」だった。自分にできることを考え、思いついたのは運転。部に配備されているポンプ車は「準中型」免許(車両総重量3.5トン以上7.5トン未満)が必要で、市の補助金制度を活用し取得した。運転免許はオートマチック(AT)車限定だったことから、その限定も解除。マニュアルトランスミッション(MT)のポンプ車の運転はまだ「コワイ」が、一員として「何かできる」と実感を得る。
 
消防車両の運転席から顔をのぞかせる小林さん

消防車両の運転席から顔をのぞかせる小林さん

 
 小林さんは積極的に訓練に参加することで技術を身につけ、「実際の現場で力を出せるようになりたい」と意気込む。小学生から中学生まで3人の子育て中で、「家族の応援や理解があるからできる」と感謝する。消防出初式に参加した際に子どもたちからかけられた「かっこいいじゃん」との声を心に留めつつ、「地域も家庭も守る意識を持ち続け、頑張ります」と笑顔を見せた。
 
小林さんは所属する5分団1部の先輩団員と訓練に臨んだ

小林さんは所属する5分団1部の先輩団員と訓練に臨んだ

 
 そんな小林さんを部の仲間があたたかく見守る。「本人にやる気があり、女性ならではの視点で指摘してくれるから助かる」と菊池寛部長(53)。同部には女性団員がもう1人おり、2人のこれからの成長に期待を寄せた。
 
 同署によると、市内では現在16人の女性団員が活躍している。基本教育訓練は10月26日、11月16日にも予定される。

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ゲリラ豪雨想定で避難、炊き出しなど訓練 中小川町内会自主防が実施 上小川住民も初参加

豪雨災害を想定した避難訓練=13日、釜石市中小川地区

豪雨災害を想定した避難訓練=13日、釜石市中小川地区

 
 釜石市の中小川町内会自主防災会(佐々木正雪会長)は13日、ゲリラ豪雨による洪水、土砂災害を想定した防災訓練を行った。周りを山に囲まれ、沢水の大量流出や小川川の増水で住宅地への浸水、崖崩れなどの恐れがある同地域。住民がいち早く危険を察知し、迅速な避難行動をとれるようにと実施した。避難のほか、炊き出しや消火、防災資機材の使い方も訓練。いざという時の備え、命を守る行動へ意識を高めた。
 
 避難訓練は短時間に集中的に激しい雨が降り、小川川が危険水位に達したとの想定で行われた。地区内3カ所で警戒にあたっていた消防団員らから連絡を受けた佐々木会長が、市防災行政無線の屋外拡声子局の放送設備を使用し、川から離れた高台道路を通っての避難を呼びかけた。住民らは家族や隣近所で声をかけ合い、避難を開始。要支援者は車いすを使って搬送した。集合した上小川・中小川集会所駐車場で5つの地区ごとに避難者数を確認。この日は子どもから大人まで計94人が避難行動を取った。
 
中小川町内会自主防災会の佐々木正雪会長が防災無線で避難を呼びかける

中小川町内会自主防災会の佐々木正雪会長が防災無線で避難を呼びかける

 
住民が小川川から離れた高い場所を目指し避難。上小川・中小川集会所駐車場で地区ごとに避難者数を確認した

住民が小川川から離れた高い場所を目指し避難。上小川・中小川集会所駐車場で地区ごとに避難者数を確認した

 
 駐車場では仮設トイレや担架の組み立て、おにぎりを握る炊き出し訓練などを実施。協力した釜石消防署署員の指導で消火器(この日は訓練用水消火器使用)の操作訓練も行った。同型の消火器1本には3キロの粉末消火薬剤が入っているといい、署員は「少しの量でも視界が悪くなる。必ず逃げ道を確保し、無理をせず、命を守ることを優先して」と注意を促した。火災時の煙の充満を再現したテント内を歩く体験もあった。訓練用の無害な煙の中を進んだが、実際の火災では有毒な一酸化炭素を含む黒い煙が発生するため、口や鼻をタオルなどで覆って低い姿勢で避難することが大事。参加者は見通しのきかない怖さを体験し、火災予防への意識を強めた。
 
仮設トイレ(写真右)や担架(同左)を組み立てる訓練

仮設トイレ(写真右)や担架(同左)を組み立てる訓練

 
消防署員、団員らの指導で消火器(訓練用)の操作も体験した

消防署員、団員らの指導で消火器(訓練用)の操作も体験した

 
火災現場を再現。煙(訓練用)が充満するテントの中を歩く。前が見えず立ち止まってしまう人も…

火災現場を再現。煙(訓練用)が充満するテントの中を歩く。前が見えず立ち止まってしまう人も…

 
 中小川町内会は本年度、町内会活動の休止が続いていた上小川地区の住民を受け入れ、組織を再編。両地区合わせ380世帯、745人の町内会組織となった。同訓練に初めて参加した上小川の岩間みき子さん(68)は「自宅近くの川は少しの雨でも水位が上がりやすく心配。危険を感じたら、警報になる前に安全な場所へ早めの避難をすることを家族で確認している」と話し、訓練にも3世代で参加。孫の羽叶さん(9)は「いざという時はお家の人と一緒に逃げたい。訓練で消火器を初めて使った。ちょっと難しかった」と振り返った。
 
 訓練の様子を見守った市防災危機管理課の大澤翔防災係長は「ゲリラ豪雨の場合、通常の台風と違い、避難のための時間が限られる。気象のほか、昼か夜かによっても状況が異なる点を理解し、より安全に身を守る方法を普段から考えておいてほしい」と願う。地区内では昨年、台風による土砂崩れの影響で、市街地に通じる道路が片側通行になる状態が続いた。「訓練をしてみて分かることもある。地域によって危険性や課題は変わってくるので、地区ごとに訓練を重ね、共助の力を高めてもらえれば」と話す。
 
おにぎりをつくる炊き出し訓練は町内会婦人部を中心に実施

おにぎりをつくる炊き出し訓練は町内会婦人部を中心に実施

 
負傷者などを担架で運ぶ訓練

負傷者などを担架で運ぶ訓練

 
 同町内会自主防は東日本大震災を契機に2014年に発足。以来、年1回の防災避難訓練を続けている。小川川上流には1997年に日向ダムが完成。佐々木会長(75)によると、これまでに大規模な洪水被害はないというが、近年増加するゲリラ豪雨など短時間で集中的に激しい雨が降った場合、想定を上回る川の増水や家屋への浸水、土砂崩れによる道路の寸断なども考えられる。佐々木会長は「緊急連絡網や要支援者の避難誘導など体制は整えているが、近年の異常気象で何が起こるか分からない時代。地区内は山から複数の沢が流れ込む地形で、一番心配なのは川の氾濫。高齢者も多いので、とにかく早め早めの避難を心がけてほしい」と呼びかける。

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秋の全国交通安全運動スタート 県内死亡事故多発注意報発令中 法令順守、マナー向上を

交通安全を呼びかける釜石市国際外語大学校の学生=19日、マイヤ釜石店前

交通安全を呼びかける釜石市国際外語大学校の学生=19日、マイヤ釜石店前

 
 秋の全国交通安全運動が21日から始まった。本県では8月から死亡事故が多発し、県警は「交通死亡事故多発注意報」を発令中。ドライバー、歩行者ともにより一層の事故防止意識が求められる。運動スタートを前に釜石市では19日、交通安全関係団体や警察などによる街頭指導が行われた。30日までの運動期間中、啓発活動が続けられる。
 
 19日は街頭活動に先立ち、鈴子町で出発式が行われ、関係者122人が集まった。釜石市交通安全対策協議会(会長・小野共市長)の菊地敏文副会長(県自家用自動車協会釜石支部長)が会長のあいさつを代読。「県内では8月7日から9月1日までの26日間で、11人が交通事故で亡くなっている。釜石市では本日までの758日間、死亡事故は発生していないが、1千人あたりの飲酒運転検挙人数が県内ワースト3と、いつ死亡事故が発生してもおかしくない状況」と説明し、交通事故撲滅に向けた活動への協力を呼びかけた。
 
 日本製鉄釜石交通安全推進会(高瀬賢二会長)が住民の交通安全意識向上、事故の未然防止を願い、同協議会に交通安全物品を贈呈。外舘康治副会長が目録を読み上げ、現物が紹介された。寄贈されたのは▽横断幕▽のぼり旗3種(各100本)▽横断旗200本。同推進会は同社と構内企業など関係各社の従業員らで組織され、会予算から費用を拠出した。横断幕は鈴子町内の十字路交差点に掲示、のぼり旗と横断旗は市内で活用される。
 
「秋の全国交通安全運動」街頭啓発活動の出発式=鈴子町

「秋の全国交通安全運動」街頭啓発活動の出発式=鈴子町

 
日本製鉄釜石交通安全推進会から市交通安全対策協議会に横断幕、のぼり旗、横断旗が寄贈された

日本製鉄釜石交通安全推進会から市交通安全対策協議会に横断幕、のぼり旗、横断旗が寄贈された

 
交通安全宣言を行う釜石市国際外語大学校日本語学科2年の(左から)カトワル スザンさん、ティアヤット ミナさん、シャヒ ドゥルガーさん

交通安全宣言を行う釜石市国際外語大学校日本語学科2年の(左から)カトワル スザンさん、ティアヤット ミナさん、シャヒ ドゥルガーさん

 
 この日の活動には、釜石市国際外語大学校日本語学科の2年生16人も参加した。代表の3人が交通安全宣言。交通ルールの順守や自転車のヘルメット着用など3点について宣誓し、「安全を第一に考えた行動ができるよう、お互いに声をかけ合い、支え合っていく」と決意を示した。同校の外国人学生は全員が自転車通学。入学時に警察の交通安全講習を受け、教職員らによる日常的な指導も行われている。
 
 参加者は銀行やスーパーなど4施設の入り口で、運動のチラシや夜光反射材などの啓発物品を配布。国道283号沿いではハンドポップやのぼり旗を掲げ、ドライバーに安全運転を呼びかけた。本運動のスローガンは「反射材 わたしとかがやく 夜の道」。これから冬にかけて日没が早まり、視野がとりづらい状況となるため、歩行者の反射材着用、車ライトの早め点灯、自転車利用時のヘルメット着用―など事故防止への意識的な行動を呼びかける。
 
ネパール出身学生が日本語で「交通安全お願いします!」と声をかけながら啓発物品を配布した

ネパール出身学生が日本語で「交通安全お願いします!」と声をかけながら啓発物品を配布した

 
国道283号沿道ではハンドポップを使ってドライバーに安全運転を促した

国道283号沿道ではハンドポップを使ってドライバーに安全運転を促した

 
日本製鉄釜石交通安全推進会寄贈の「のぼり旗」もさっそく活躍!

日本製鉄釜石交通安全推進会寄贈の「のぼり旗」もさっそく活躍!

 
 釜石警察署によると、本年1月から8月末までの釜石市の交通事故発生件数は人身事故が6件(負傷者8人、前年同期比4件減)、物損事故は283件(同比33件減)。物損事故は駐車場の壁や縁石にぶつかるといった単独事故やシカとの衝突事故が多いという。
 

“かわいい”反射材で事故防止を! 小佐野交番員が今年も手作り デザイン5種「どれつける?」

 
「今年も作りました!」 手作りの反射材キーホルダーと地域安全血圧手帳をPRする小佐野交番の矢神海輝巡査

「今年も作りました!」 手作りの反射材キーホルダーと地域安全血圧手帳をPRする小佐野交番の矢神海輝巡査

 
 釜石警察署小佐野交番(川野正行所長)は秋の全国交通安全運動に合わせ、オリジナルの「反射材キーホルダー」を手作り。希望する住民に配布している。小佐野交番連絡協議会(多田慶三会長、32人)が協力する昨年に続く取り組みで、今年はデザインを5種に増やすなどバージョンアップ。「楽しくつけて事故防止を!」と幅広い世代の活用を呼びかける。
 
 反射材キーホルダーは同交番勤務の署員4人で作成。市販の反射テープに警察庁の広報用キャラクターなどをプリントした絵柄を貼り付け、ラミネートフィルムで加工している。今年は「ここにいる!いつでもピカッと反射材」「暗い道 命を守る反射材」などの交通安全標語も加え、署員それぞれの独創性あふれるデザインに仕上がっている。現在までに約150個を作成。最終的に200個を目指す。
 
楽しいデザインが目を引く反射材キーホルダー。小佐野交番で配布する<

楽しいデザインが目を引く反射材キーホルダー。小佐野交番で配布する

 
 同交番勤務2年目の矢神海輝巡査(21)は「ユーモアも交え、親しみを持ってつけてもらえるよう工夫した」と太鼓判。反射材の視覚効果は大きい。「少しの光でも“ピカッ”とすれば、ドライバーも『人がいるのでは』と注視し、事故防止につながっていく」と話す。
 
 同交番で配布するほか、管内の公民館や集会所で開催される「百歳体操」や「お茶っこの会」の参加者にも配る予定。同交番では、交通安全や防犯に関わる標語が記された地域安全血圧手帳も作成していて、2025年度版もお目見え。反射材キーホルダーと合わせ、自分の身を守る一助としてほしいと願う。両グッズについての問い合わせは小佐野交番(電話0193・23・5149)へ。
 

高齢者ら 最新の「サポートカー」を体験 認知機能診断で安全意識向上も

 
釜石警察署で開かれたサポカー体験会=19日

釜石警察署で開かれたサポカー体験会=19日

 
 釜石警察署(松本一夫署長)は19日、秋の全国交通安全運動の取り組みの一環として、サポートカー(通称サポカー)体験会を同署で開いた。高齢運転者が交通事故の当事者となるケースが増える中、事故の危険性を再認識し、事故防止への意識を高めてもらおうと開催され、約40人が参加した。
 
 スバル東北岩手営業部釜石松倉店が協力。最先端の運転支援システムを搭載した新型「フォレスター」(4月発売)を持ち込み、自動でブレーキがかかる機能を体感してもらった。搭載の義務化が進む自動ブレーキは、カメラやレーダーが前方の車や歩行者を検知し、衝突の危険がある場合に音やランプでブレーキ操作を警告。操作がない場合に自動でブレーキを作動させ、衝突回避や被害軽減を図るもの。体験会では前方に立てたマットを先行車に見立てて時速6キロで走行。ドライバーがブレーキ操作をせずに進み、マットとの衝突を避ける状況を、助手席や後部座席に乗って体験した。体験者は自動でブレーキがかかり、衝突を回避する機能に感心しつつ、「6キロでもけっこうな衝撃」「後部座席もシートベルトは必須」などと話し、ドライバーが早めに危険を察知し、適切なブレーキ操作をする大切さを実感していた。
 
自動でブレーキがかかる機能を体験し、驚きの声を上げる参加者。衝突の危険を検知すると音やランプで警告する(写真左上)

自動でブレーキがかかる機能を体験し、驚きの声を上げる参加者。衝突の危険を検知すると音やランプで警告する(写真左上)

 
先行車に見立てたマットの約1メートル手前で止まり、衝突を回避

先行車に見立てたマットの約1メートル手前で止まり、衝突を回避

 
 甲子町の78歳男性は「いざという時に身を守る助けにはなるので、安心して乗れるのかな。運転サポートの面では有効なんだろう」と感想。それでも事故防止は「スピードを出し過ぎず、車間距離を十分に取って走ることが基本。後期高齢者なのでその辺は慎重に」と気を引き締めた。
 
 同車両には、衝突時に歩行者や自転車利用者を保護するためにフロントガラス外側に展開するエアバッグ、事故発生や体調不良などの緊急時に同社のオペレーターとつながるSOSボタンなどの装備もあり、参加者は最新システムに驚きながら説明に聞き入った。
 
写真上:認知機能の簡易診断を受ける参加者 同下:頭と体を同時に動かす「コグニサイズ」に挑戦

写真上:認知機能の簡易診断を受ける参加者 同下:頭と体を同時に動かす「コグニサイズ」に挑戦

 
 この他、損害保険ジャパン岩手支店の協力で、運転に必要な認知機能の簡易診断、同機能を維持・向上させるのに有効な頭と体の同時運動「コグニサイズ」の体験も行われた。唐丹町の77歳女性は「自分ではまだ運転は大丈夫と思っているが、年とともに認知機能の衰えは避けられない。十分な注意を怠らずに運転したい」と話した。

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迷わず助けて!消防大好き小学生4人「一日救急隊長」 学んだ救命法、伝える

救急医療への理解を深めてもらおうと開かれたイベント

救急医療への理解を深めてもらおうと開かれたイベント

 
 消防が大好きな小学生4人が7日、釜石消防署の「一日救急隊長」を務めた。釜石市港町のイオンタウン釜石で開かれた応急手当の普及などが目的のイベント「救急ひろば」で、胸骨圧迫や自動体外式除細動器(AED)の実演などをした。「倒れている人がいたら迷わず助けて」。そんな思いを胸に抱きながら、買い物客らに「やってみて」と促した。
 
 イベントは「救急の日」(9月9日)、「救急医療週間」(2025年度は7―13日)にちなんだもの。市民らの救急業務への理解促進に一役買ってもらおうと、小佐野小の濱田遥可さんと佐藤碧さん、鵜住居小の戸張藍さんと佐々木結萌さん(いずれも5年生)を一日救急隊長に任命した。8月にあった消防体験学習で熱心に活動する様子が釜石消防署員の目にとまり、起用された。
 
イベントを前に小佐野、鵜住居の各小学校で任命式が行われた(撮影・釜石消防署)

イベントを前に小佐野、鵜住居の各小学校で任命式が行われた(撮影・釜石消防署)

 
 消防、レスキュー、救急隊員の制服姿の4人は、親子連れらに声をかけ、救助に関するクイズを解いてもらった。人形を使った胸骨圧迫や訓練用のAED操作体験も呼びかけ。「倒れている人がいたら、胸やおなかが動いているかを見る」「周りに人がいたら協力を求めて。人数は多い方がいい」「胸骨圧迫はけっこう力がいる。腕を伸ばして、しっかり押す」「心肺蘇生は救急車を待っている間、ずっと続ける」などと、事前学習で覚えたことを伝えた。
 
救急医療への理解を深めてもらおうと開かれたイベント

クイズの答え合わせで解説を加える「一日救急隊長」たち(右)

 
「みんなもできるよ」。AEDの使い方を同年代の子に教えた

「みんなもできるよ」。AEDの使い方を同年代の子に教えた

 
 介護士を目指している濱田大地さん(遠野緑峰高3年)は、将来必要になるとクイズ、胸骨圧迫にも挑戦。「知らないことがいろいろあった。実際にやってみると大変さが分かるし、刺激にもなった」と、夢実現への力にした。
 
 「みんなに伝えられるか不安だったけど緊張しないでできた」と話す佐藤さん。心臓マッサージ(胸骨圧迫)のやり方、AEDの使い方を知ってほしいと活動した。「手のひらの硬い部分をきちんと使う。押すときの深さは単三電池の長さ、5センチくらい。1秒間に2回のペースで繰り返す」。しっかりできたと胸を張る。消防が好きな理由は「車両も制服もかっこいいから」。レスキュー隊員に憧れ、「新しい知識をもっと増やしたい」と笑った。
 
救急医療を知ってもらおうと広報活動に取り組んだ

救急医療を知ってもらおうと広報活動に取り組んだ

 
 戸張さんがイベントで熱心に体験活動を促した訳は「倒れている人がいたら迷わず助けてほしいから」。いざという時に動ける人が増えてほしいと願いを込めつつ、「心肺蘇生や救命の方法を覚えたら、人を助けることができてうれしいと思うし、かっこいい」とはにかむ。将来の夢は人を助ける仕事をすることで、今、一番の志望は消防士。一日救急隊長として「勉強したことを生活に生かしたい」と表情を引き締める。さらに言葉を続ける。「AEDを開けると説明があるから迷わず使って」。
 
任務をやり遂げ頬を緩める「一日救急隊長」の小学生4人

任務をやり遂げ頬を緩める「一日救急隊長」の小学生4人

 
 同署によると、管内の救急に関する出動要請件数は年間約1500件で、平均すると1日に約4件の要請がある計算になる。救急車が119番通報を受けてから現場に到着するまでの時間は、全国平均で約10分。釜石の市街地では全国とさほど変わらないが、半島部や山間部に向かう場合はさらに時間を要する。
 
買い物客らが足を止めて体験した「救急ひろば」

買い物客らが足を止めて体験した「救急ひろば」

 
胸骨圧迫のポイントを丁寧に教える釜石消防署員

胸骨圧迫のポイントを丁寧に教える釜石消防署員

 
 心肺停止状態の人には一刻も早く、心臓の動きを回復させるための処置が必要で、近くにいる人が胸骨圧迫やAEDの操作をすることで救命率は向上する。同署救急係の木村一生係長は「応急手当によって脳の酸欠状態を解消することで、命をつなぐことができる。特別なことではないことを一人でも多くの人に感じてもらいたい。行動したら、大切な人を守るためになる。イベントが救急の輪を広げる機会になれば」と期待した。

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救急医療週間(7~13日)を小学生が防災無線で広報 7日には「一日救急隊長」としてイオンでPR

「救急医療週間」を防災行政無線で広報するための録音作業=8月23日、釜石消防署

「救急医療週間」を防災行政無線で広報するための録音作業=8月23日、釜石消防署

 
 9月9日は「救急の日」、7日から13日は「救急医療週間」として、救急業務への理解や心肺蘇生法などの応急手当ての普及を目的とした各種広報活動が行われる。釜石市では釜石消防署が防災行政無線の放送を通じて、市民への呼びかけを行うが、その声を担当するのが市内の小学生4人。7日には「一日救急隊長」として、イオンタウン釜石で広報活動に取り組む。
 
 一日救急隊長に任命されたのは小佐野小の濱田遥可さんと佐藤碧さん、鵜住居小の戸張藍さんと佐々木結萌さん(いずれも5年生)。4人は7月に行われた同市少年消防クラブの消防体験学習に参加したのが縁で同署から声がかかり、「やってみたい」と手を挙げた。
 
「一日救急隊長」を務める市内の小学生4人が防災無線の録音作業のため集まった

「一日救急隊長」を務める市内の小学生4人が防災無線の録音作業のため集まった

 
 最初の“お仕事”は声の広報。救急医療週間中に防災無線で市民に啓発するため、8月23日、同署で録音作業を行った。広報文は9日に放送する「救急の日」バージョンと7、11、13日に放送する「救急医療週間」バージョンの2種類で、近くで傷病者が出た時の応急手当てについて家族で話し合おうと呼びかけるもの。同署の木村一生救急係長から「大きな声で、ゆっくり、はっきり、気持ちを込めて」とアドバイスを受けた4人は、練習を重ねた後、録音室に入り、マイクの前で“本番”に臨んだ。
 
録音室に入り、広報文を読み上げる小学生。ちょっぴり緊張?

録音室に入り、広報文を読み上げる小学生。ちょっぴり緊張?

 
教わったポイントを意識しながら、練習の成果を発揮した

教わったポイントを意識しながら、練習の成果を発揮した

 
 録音後は、7日午前にイオンタウン釜石で開く「救急ひろば」に向けた事前学習を行った。当日は来場者に「救急クイズ」に答えてもらい、胸骨圧迫や自動体外式除細動器(AED)の使い方を体験してもらう予定。4人は自らクイズに挑戦し、答え合わせをしながら、木村係長から覚えておくべきポイントを教わった。心肺停止状態の人には一刻も早く、心臓の動きを回復させるための処置が必要で、近くにいる人が胸骨圧迫やAEDの操作をすることで救命率が向上する。4人はクイズ学習の後、訓練用のAEDを使って、操作手順を確認した。
 
木村一生救急係長(左上)からAED(左下)の役割などを学ぶ

木村一生救急係長(左上)からAED(左下)の役割などを学ぶ

 
7日の「救急ひろば」で来場者に心肺蘇生法を体験してもらうために事前学習

7日の「救急ひろば」で来場者に心肺蘇生法を体験してもらうために事前学習

 
訓練用人形を使って胸骨圧迫(心臓マッサージ)に挑戦

訓練用人形を使って胸骨圧迫(心臓マッサージ)に挑戦

 
 小佐野小の濱田遥可さんは防災無線の録音に「すごく緊張した。文章の頭の文字を意識してゆっくり話すように心がけた。出来は…90点ぐらい?」と自己評価。市内全域に自分の声が流れるのは「ちょっと恥ずかしいけど、聞くのは楽しみ」とはにかんだ。消防の仕事に興味があるといい、一日救急隊長の“任務”も楽しみにする。鵜住居小の佐々木結萌さんは「言葉が続くところが難しかった。普段、(防災無線の声を)やっている人はすごいと思った」と貴重な経験を心に刻んだ。救急ひろばでは「来てくれた人にAEDの使い方をしっかり伝えたい。自分も練習して人を助けられるようになれたら」と意欲を示した。
 
AEDの音声ガイドに従って電極パッドを人形の胸に貼り付ける

AEDの音声ガイドに従って電極パッドを人形の胸に貼り付ける

 
電気ショックの前には、傷病者に触れないよう周りの人に「離れて」と声がけする

電気ショックの前には、傷病者に触れないよう周りの人に「離れて」と声がけする

 
 4人の活動を支える木村係長は「消防が大好きな子どもたちなので、それを全面に出して元気に活動してもらえれば。AEDは誰でも操作できることを子どもたちによって伝えられたら」と期待を寄せる。
 
【救急医療週間の防災行政無線放送日程】
9月7日(日)午前9時 
9月9日(火)、11日(木)、13日(土)午前8時04分
 
【救急ひろば開設】9月7日(日)午前9時~正午 イオンタウン釜石2階アスビーファム前

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太古の地球が生んだ絶景ビーチに感激 遊んで学んで自然の両側面知るワンデイキャンプ

12回目を迎えた「海あそびワンデイキャンプ」=8月24日、箱崎半島

12回目を迎えた「海あそびワンデイキャンプ」=8月24日、箱崎半島

 
 釜石市の箱崎半島入り江の海岸で8月24日、親子で海遊びを楽しむ日帰りキャンプが行われた。地元で海に関わる活動を行う団体や漁師らでつくる、海と子どもの未来プロジェクト実行委「さんりくBLUE ADVENTURE(ブルー・アドベンチャー)」が主催。しっかりとした安全管理のもとで海に親しみ、郷土の豊かな自然や危険から身を守るすべを知ってもらおうと始められ、今年で12年目を迎える。中学生以下の子どもと保護者が対象で、今回は市内外から42人が参加した。
 
 キャンプ地の海岸には、箱崎町の白浜漁港から地元漁師が操縦するサッパ船で“上陸”。通称「小白浜」という名で地元住民に古くから親しまれてきた隠れ家的ビーチは大槌湾に面し、美しい白砂、周辺の山林と太陽光で生み出される海面の色合いが目にも鮮やかな景色を見せている。
 
三陸ジオパーク内にある箱崎白浜の絶景ビーチ“小白浜”。手付かずの自然が残る

三陸ジオパーク内にある箱崎白浜の絶景ビーチ“小白浜”。手付かずの自然が残る

 
 ウエットスーツとライフジャケットを身に着けた参加者は、海遊びの前に安全に関する説明を受けた。地震津波発生時は海に流れ込む沢伝いの斜面を駆け上がり、高台のハイキング路に迅速避難すること、人の目の届かない危険な岩場には行かないことなどを確認した。万が一のクマ出没に備えた注意喚起や追い払いの方法の実演も。この日は同イベントを初回から支える釜石ライフセービングクラブのメンバーやダイビング関係者、漁師など“海の専門家”と、大槌高の生徒などボランティアスタッフ計42人が参加者をサポートした。
 
遊びの前に緊急時の避難路やライフセーバー(右上)の役割などを説明

遊びの前に緊急時の避難路やライフセーバー(右上)の役割などを説明

 
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シュノーケリング用の道具は主催者が貸し出し

 
インストラクターから装備やパドルのこぎ方を教わり、海遊びスタート!

インストラクターから装備やパドルのこぎ方を教わり、海遊びスタート!

 
 参加者はインストラクターの手ほどきを受けながら、シーカヤックやスタンドアップパドルボード(SUP=サップ)、シュノーケリングに挑戦。海面を進む爽快感を味わったり、水中の生き物を探したりと思い思いに楽しんだ。救助や監視に使う水上オートバイに乗せてもらえる体験も。浜辺と海上で海の魅力を存分に味わった。午後からは海中転落や溺れそうになった時に取る姿勢「浮いて待て(浮き身)」の方法を学ぶ講習も行われた。
 
ボードに乗って、いざ大海原へ。ワクワク感いっぱい

ボードに乗って、いざ大海原へ。ワクワク感いっぱい

 
さまざま遊びに笑顔を輝かせる子どもら。海の気持ち良さを満喫

さまざま遊びに笑顔を輝かせる子どもら。海の気持ち良さを満喫

 
 大船渡市の熊谷裕子さん(40)、唯さん(15)親子は初めて参加。過去に溺れかけた経験から「海は苦手」という唯さんに「少しでも克服してもらえれば」と、裕子さんが誘った。カヤックや水上オートバイに乗った唯さんは「思ったよりも楽しかった。水上バイクは普段行くことのない海域まで行って、いろいろな発見があった」。深い所に足を踏み入れるのは「まだ怖い」が、美しい景色に癒やされ、夏の思い出を一つ増やした。裕子さんは「海は身近な場所。豊かな自然に触れて感じたことを心にとどめながら成長していってくれれば」と願った。
 
 奥州市の内山輝一さん(6)は「泳ぐの、楽しかった。海の色がきれい」と大喜び。姉の優綾さん(9)は「ゴーグルをつけて泳ぐと魚が見えるので、プールより楽しい。フグとかフナみたいな形の魚がいた。帰ったらママに話したい」とにっこり。父晃太さん(32)がボランティアに誘われた縁で、子ども3人も参加。釣りが好きで、海にはよく来ているという一家だが、この海岸は初めて。「いい所ですね。(岩手にも)こういう場所があることを知れて良かった」と晃太さん。楽しそうな子どもたちの姿に目を細め、「自然に身を置く体験をさせたい。今はどうしてもゲームとか動画とかに夢中になりがちなので…」と野外活動で得られる効果を期待した。
 
海にはいろいろな生き物が… 採集した魚などを見て触って観察

海にはいろいろな生き物が… 採集した魚などを見て触って観察

 
ライフジャケットを着用しているので浮くのも楽々。手足を伸ばして水に体を委ねる

ライフジャケットを着用しているので浮くのも楽々。手足を伸ばして水に体を委ねる

 
 サポートスタッフの中には首都圏からの参加者も。ダイビング仲間の誘いで初めて釜石を訪れた東京都の鈴木洋平さん(48)は、複雑に入り組んだリアス海岸特有の地形や海中の透明度、白砂の美しさに感激。東日本大震災後に進んだ“海離れ”を食い止めようと活動する地元関係者の取り組みに共感し、「自然の厳しさと楽しさ、両面を知って海で遊ぶというのは大事なこと。子どものころの自然体験の思い出が強いほど、大人になった時に日常から自然にふらっと戻れるようになる。自然を大切にしていこうという気持ちも生まれると思う」と話した。
 
ライフセーバーは海上パトロールや水上オートバイ体験の操縦に大忙し

ライフセーバーは海上パトロールや水上オートバイ体験の操縦に大忙し

 
協力団体、企業のフラッグを掲げ、記念写真に収まる参加者とスタッフら

協力団体、企業のフラッグを掲げ、記念写真に収まる参加者とスタッフら

 
 主催する実行委は2013年の設立以降、同キャンプを継続。トライアスロン競技で釜石と縁の深いマイケル・トリーズさんが震災後に立ち上げた支援組織「Tri 4 Japan(トライ・フォー・ジャパン)」が、資金の提供などで活動を支えてきた。20年からは、釜石市のふるさと納税「団体指定寄付」の対象にもなっている。

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体験でもっと身近に!消火・救助活動 釜石市少年消防クラブ 学び高める防災意識

釜石消防署員と一緒に放水を体験する小学生

釜石消防署員と一緒に放水を体験する小学生

 
 小中学生の防災意識を育てようと、釜石市少年消防クラブ(会長・小林太釜石消防署長、10校)の消防体験学習が7月26日、同市鈴子町の釜石消防署で開かれた。5回目の今回は児童15人が参加。消火や救助活動を体験しながら身の回りの防災や有事の際の対応について理解を深めた。
 
 同クラブは、防火・防災思想の普及を図ることを目的に全国各地で結成されている防災組織。釜石では火災予防や防災に関する知識、身を守る技術の習得と合わせ、将来の地域防災の担い手の育成を狙いに、2017年に取り組みが始まった。
 
 釜石署管内の学校単位で組織され、発足時は6校(小学校5校、中学校1校)だったが、18年に4校(全て小学校)が加わった。25年4月1日現在、計10校の児童生徒約1300人が所属。火災予防ポスターの作成、着衣泳など水の事故防止を学ぶ水上安全訓練、救急救命講習など消防署や関係機関の力を借り、各校で取り組んでいる。
 
釜石消防署で行われた体験学習の参加者。ビシッと敬礼

釜石消防署で行われた体験学習の参加者。ビシッと敬礼

 
 この日の消防士体験のスタートは格好から。実際に火災現場で装着する重い防火服、特殊ヘルメットを身に着けたり、敬礼を教わったりした。空気呼吸器の装着体験も。消防署員が手を離すと、子どもたちはよろめき、10キロほどの重さを肩や背に感じていた。
 
防火服を着て空気呼吸器を背負って重さを体感

防火服を着て空気呼吸器を背負って重さを体感

 
 消防車両や釜石署の訓練棟を利用し初期消火、煙体験、はしご車の試乗などを実施。ヘルメット着用した小学生を消防士、救急救命士ら署員約10人がサポートした。
 
 ポンプ車による消火体験では、消防ホースでの放水に挑戦。署員に支えられながら放水ノズルを操り、勢いよく水が飛び出すと子どもたちは笑顔を見せた。山火事の時などに使用する背負い式水のう「ジェットシューター」を使った放水も体験。今春に大船渡市で発生した大規模山林火災の現場でも活躍したとの説明を真剣な表情で聞いた。
 
消火体験はホースを伸ばし、ノズルを装着したり準備が必要

消火体験はホースを伸ばし、ノズルを装着したり準備が必要

 
消防署員のサポートを受けながら放水を体験する子どもたち

消防署員のサポートを受けながら放水を体験する子どもたち

 
背負い式の消火水のう「ジェットシューター」の操作体験

背負い式の消火水のう「ジェットシューター」の操作体験

 
 高さが35メートルまで伸びるはしご車は、市内のほとんどの建物の消火、救助活動に対応できる。児童らは先端のバスケットに署員と2人ずつ乗り込み、高さ15メートルまで上昇。余裕の子どもたちは地上で見守る友達や家族に自慢げに手を振った。
 
消火や救助の現場で活躍するはしご車の搭乗体験

消火や救助の現場で活躍するはしご車の搭乗体験

 
はしご車の試乗や写真撮影を楽しむ参加者

はしご車の試乗や写真撮影を楽しむ参加者

 
 釜石署に配備されている救急車3台のうち2台に電動ストレッチャーが装備されている。指1本によるボタン操作で、自動での上げ下ろしができる仕様。男性署員が3人がかりで対応していたようなケースも「女性署員でも持ち上げられる」という。2年連続で参加した女子児童は消防士を将来の仕事として視野に入れていて、黙々と体験をこなしているようだったが、感想を聞くと「楽しい」とはにかみながらうなずいた。
 
救急車の装備を見たり消防車両に乗って走行体験もした

救急車の装備を見たり消防車両に乗って走行体験もした

 
訓練棟での煙体験。しゃがんで煙の濃さを確かめた

訓練棟での煙体験。しゃがんで煙の濃さを確かめた

 
 参加者の中には家族が釜石署で働いているという子も。小学1年の佐々木晴太郎さん(6)もそんな一人で、「お父さんの仕事を見たかった」。一緒に放水を体験したりし、「(お父さんは)かっこよかった。大変そうだと思ったけど楽しかった」とうれしそうに話した。
 
 釜石署予防係の佐藤直樹係長は「体験を通じて消防の仕事や防災について興味を持ってほしい。クラブでの経験を生かして将来、一緒に働いてもらえたら」と、子どもたちに呼びかけた。
 
少年消防クラブの児童が作成した防火ポスター

少年消防クラブの児童が作成した防火ポスター

 
 同クラブの取り組みとして防火ポスターコンクールの参加があり、市内の児童が寄せた約100点の作品をイオンタウン釜石(同市港町)で展示している。夏は、花火やバーベキューなど屋外で火を取り扱う機会が多くなることから、市内では夏季火災予防特別警戒を実施中。その期間に合わせ8月20日まで作品を見ることができる。

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カムチャツカ半島付近地震津波 釜石でも最大50センチ観測 警報で1531人が避難

高台の市道から潮位の変化を見つめる住民ら=30日午前10時50分ごろ、鵜住居町根浜

高台の市道から潮位の変化を見つめる住民ら=30日午前10時50分ごろ、鵜住居町根浜

 
 7月30日午前8時25分ごろ発生したロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする巨大地震で、日本の太平洋沿岸などに出された津波警報と注意報。本県では午後8時45分に警報から注意報に切り替わり警戒が続いていたが、31日午後4時30分に注意報は解除された。釜石港でこれまでに観測された津波の最大は、30日午後2時13分の50センチ。津波の影響による潮位の変化はしばらく続く可能性があり、引き続き注意が必要だ。
 
 マグニチュード8.7と推定される今回の地震。釜石市では揺れを感じない状態で突如、鳴り響いた防災行政無線のサイレンに緊張が走った。同市では気象庁が午前8時37分に発表した津波注意報を受け、浸水想定区域に避難指示を発令。午前9時40分に注意報から警報に警戒レベルが引き上げられると、対象範囲を拡大した(6362世帯、1万1382人)。市内の小中学校など6カ所に避難所が開設され、最大で計1531人が避難した。
 
 市の緊急避難場所、拠点避難所に指定されている鵜住居町の鵜住居小・釜石東中には注意報の発表後、地域住民や地区内で働く人などが続々と避難してきた。同地区生活応援センターと学校が連携し避難所を開設。通常は体育館が避難所となるが、厳しい暑さのため、エアコンが設置されている各種教室などを開放し、避難者を受け入れた。同所には最大で373人が避難した。
 
避難所が開設された釜石東中校内。子どもから高齢者まで多くの人が避難した

避難所が開設された釜石東中校内。子どもから高齢者まで多くの人が避難した

 
避難者は警報の早期解除を願いながらエアコンのある部屋で待機

避難者は警報の早期解除を願いながらエアコンのある部屋で待機

 
 川沿いにある双日食料水産は、ベトナム人技能実習生18人を含む70人が同校に避難。注意報発表時は始業時間と重なり、点呼などを経て午前10時前には避難を開始した。東梅拓也工場長は「年1回、避難訓練を実施しており、みんな落ち着いて行動できた。従業員は東日本大震災の津波経験者が多いので防災意識は高い」と話した。学校近くの復興住宅に暮らす70代と80代の女性は「全然揺れないで、急にサイレンが鳴ったのでびっくり。暑い時の避難は大変。長い階段を休み休み上がってきた」と涼しい部屋でしばし休憩。「何もなく、早く(警報が)解除されれば」と願った。
 
 鵜住居町根浜地区では旅館や観光施設の従業員らが客を帰した後、津波到達予想時刻の午前10時半前に高台避難を完了。震災後に造成された海抜20メートルの復興団地内の集会所に身を寄せた。岸壁で作業中だった漁業者も即座に高台へ。地区住民らは自宅待機し、テレビなどで情報収集した。
 
震災後に整備された根浜復興団地内の集会所に避難した人たち。テレビやスマホで情報収集

震災後に整備された根浜復興団地内の集会所に避難した人たち。テレビやスマホで情報収集

 
 同地区では7月28日から国内外の中高生ら13人がリーダー育成プログラムのキャンプ中だった。14年前の震災の教訓を学ぶのも目的の一つ。津波注意報発表時は、海辺でのライフセービング体験に向かう直前だった。岡﨑律さん(高3、東京都)は「津波について学んでいる最中だったので、より恐怖を感じ、他人事ではないと思った。避難の不安もあったので、実際の災害を想定して家の備蓄品や持ち出し品を確認しなければ」と気を引き締めた。佐々夏希さん(高1、同)は「初めての経験でちょっとパニックになり、右往左往するところがあった。想定外のことにも一旦冷静になり、対処することが大切。日頃から訓練しておきたい」と学びをさらに深めた。4泊5日のプログラムは一連の影響で変更を余儀なくされた。
 
グローバルリーダーシッププログラムのキャンプで釜石を訪れた中高生らは根浜MINDの佐々木雄治さんから東日本大震災の被災状況なども学んだ

グローバルリーダーシッププログラムのキャンプで釜石を訪れた中高生らは根浜MINDの佐々木雄治さんから東日本大震災の被災状況なども学んだ

 
津波警報の発表で国道45号は通行車両も激減。午後からは通行止めの区間も。市内の商業施設は警報解除まで営業を見合わせた

津波警報の発表で国道45号は通行車両も激減。午後からは通行止めの区間も。市内の商業施設は警報解除まで営業を見合わせた

 

避難所開設に大きな力 自主防結成の釜石東中生 率先して避難者をサポート

 
避難者に非常食の缶パンを配る釜石東中の生徒=30日午前

避難者に非常食の缶パンを配る釜石東中の生徒=30日午前

 
 鵜住居小・釜石東中の避難所開設で今回、大きな力を発揮したのは、釜石東中(高橋晃一校長、生徒86人)の生徒36人。夏休みの部活で登校していた1、2年生らが、避難者の案内や食料の配布、困りごとの聞き取りなど精力的に活動し、長丁場となった避難所運営を支えた。今年1月に生徒会が中心となって自主防災組織(自主防)を立ち上げた同校。日頃の学びや訓練の成果が生かされた。
 
 7月30日、生徒らは午前8時半ごろから、部活の活動場所となっていた学校近くの市民体育館で準備を進めていた。ほどなくして津波注意報のサイレンが…。生徒らはすぐさま、高台の学校へ避難。避難者が増える中、避難所開設の必要性が高まり、教職員の指示のもと受け入れを開始した。エアコンがある図書室や音楽室など4室を開放。入り口で受付を済ませた避難者を生徒らが各部屋に案内した。
 
 昼前には、校内に設置されている市の防災備蓄倉庫から飲料水と非常食の缶パンなどを運び出し、避難者に配布。トイレットペーパーの補充、段ボールベッドの組み立てなども行い、校内を回りながら避難者の困りごとを聞いた。熱中症対策や感染症予防を呼びかける校内放送も生徒が担当。地元製パン業者が差し入れたパン、夕食用に市から配送された非常食カレーなどの配布も手伝った。
 
生徒らは鵜住居小の教室にも飲料水や非常食を届けた

生徒らは鵜住居小の教室にも飲料水や非常食を届けた

 
避難者の案内、御用聞きも行い、運営をサポート。写真右上は校内放送の呼びかけ文の一部

避難者の案内、御用聞きも行い、運営をサポート。写真右上は校内放送の呼びかけ文の一部

 
 現1、2年生は実際の避難所開設、運営にあたるのは初めての経験。2年の板澤莉琉さん、旦尾歩暖さんは「最初は落ち着かなかった。みんなそわそわして…。でも『避難所、やらなきゃないのでは』との声も多かった」と、注意報から警報への時間帯の仲間の様子を振り返った。1年の新屋碧さん、小國怜義さんは「困っている人には積極的に話しかけ、要望などを聞いている。少し不安もあるが、互いに声をかけ合って頑張っている」とし、「また同じようなことがあったら、今回の経験を生かしたい」と意を強くした。
 
学生に教えながら段ボールベッドも組み立てた

小学生に教えながら段ボールベッドも組み立てた

 
差し入れのパンの種類と数を記録する手伝いも

差し入れのパンの種類と数を記録する手伝いも

 
 同校では4月に防災オリエンテーションを実施。その後も小中合同の下校時津波避難訓練のほか、朝活動での防災意識向上を図る取り組みを続けている。高橋校長は「日常的に防災に特化した活動をやっているので、生徒たちはスムーズに動けたのではないか。これまでの学びがしっかり身に付いている」と活動の成果を実感。また、「市の対応にはなるが、防災備蓄倉庫の物品の補充、更新など定期的な点検も必要と感じた」と今後の課題も示した。この日は警報から注意報になった時点で、市教委から生徒の保護者への引き渡しの指示があり、午後10時ごろまでに学校にいた全生徒が帰宅に向かった。