タグ別アーカイブ: 防災・安全

意見発表した尾形祐貴さん、舘下佑哉さん、長野凌太さん、紺野聖人さん(左から)

消防職員が業務への提言を発表 県発表会に舘下佑哉さん(釜石署)を選出

意見発表した尾形祐貴さん、舘下佑哉さん、長野凌太さん、紺野聖人さん(左から)

意見発表した尾形祐貴さん、舘下佑哉さん、長野凌太さん、紺野聖人さん(左から)

 

 第45回県消防職員意見発表会(2月14日、盛岡市)に向けた釜石大槌地区行政事務組合消防本部(大丸広美消防長)の代表者選考会は12日、釜石市鈴子町の消防庁舎で開かれた。釜石、大槌両消防署から消防士4人が登壇し、それぞれの視点で業務の課題や改善策を発表。審査の結果、SNSによる情報発信で人命を守る策を提言した釜石消防署の舘下佑哉さん(25)が代表に選ばれた。

 

 同発表会は若手消防職員が業務の諸課題解決へ意識を高め、一層の研さん、業務改善につなげる取り組み。県内12消防本部の代表が出場する県発表会に向け、釜石大槌地区消防本部では代表選考のための発表会を幹部職員らの前で行った。

 

 発表者は登壇順に、釜石署の長野凌太さん(25)、大槌署の紺野聖人さん(29)、大槌署の尾形祐貴さん(32)、舘下さんの4人。1人5分の制限時間で、自らの経験を基に消防や救命、津波避難などに関する考えを述べた。

 

職員らは業務の課題、改善策を自らの言葉で発表

職員らは業務の課題、改善策を自らの言葉で発表

 

 長野さんは、新規入団の減少、団員の高齢化が顕著な消防団の課題を取り上げた。火災や災害現場で消防職員と共に大きな役割を担う消防団員確保のための方策として、学生時からの学びの機会を提案。「学校の防災授業で消防団の活動内容や地域にとっての必要性などを教えることで、社会人になった時に入団しやすくなる」と、認知向上への取り組みを提言した。

 

 紺野さんは、傷病者発生時に現場に居合わせた人(バイスタンダー)が救急隊到着までの間に行う処置(心肺蘇生法など)に着目。早期の救命処置を的確に行える人を増やすため、義務教育期の成長段階に合わせた学習プログラムを示した。小学校低学年は119番通報、同高学年は応急手当の実技、中学生は小学校期の学びの復習と災害時に役立つ搬送法などの習得。応急手当講習の義務化が実現すれば「より質の高い多くのバイスタンダーを生むことができる」と強調した。

 

幹部職員や先輩職員らも耳を傾けた意見発表会

幹部職員や先輩職員らも耳を傾けた意見発表会

 

 尾形さんは、東日本大震災の経験から津波避難時のさまざまな場面を想定した問題点を指摘。よりイメージをつかみやすい避難の動画を市のホームページに掲載することを考えた。避難場所までの経路を撮影し、いつでも見られるようにすることで、訓練に参加できない人や外出が困難な人の避難を助ける狙い。動画による情報発信で、「地域住民同士、家族で話すきっかけもでき、防災意識がさらに高まる」とした。

 

 舘下さんは、活字離れやSNSの普及が進む社会情勢の変化に注目。ポスターやパンフレットなどの紙媒体による広報活動だけでは情報発信効果が不十分と考え、火災予防や救急医療の呼び掛けにSNSを活用することを提案。「災害などへの注意喚起、消防団員募集、各種講習の案内に加え、消防署の訓練の様子を発信することで興味を持ってもらえる。住民の理解が深まれば、現場活動でのトラブルも回避できるのではないか」と訴えた。

 

釜石大槌地区行政事務組合消防本部の代表で県発表会に出場する舘下さん

釜石大槌地区行政事務組合消防本部の代表で県発表会に出場する舘下さん

 

 市教委の髙橋勝教育長ら4人の審査員が、▽論旨の明確性、説得力▽業務に対する問題意識、発展性▽発表態度、表現力―の3項目で採点。審査の結果、県発表会への出場が決まった舘下さんは「他の人の発表も聞いて(自分たちの業務には)いろいろな問題点がまだまだあると実感し、とても勉強になった。県大会までに発表の仕方をさらに工夫し、等身大で臨みたい」と話した。

2022年の消防防災活動へ士気を高める団員ら

防火・災害対応へ士気高揚 「釜石市消防出初式」規模縮小し2年ぶり開催

昨年は中止、2年ぶりに開催された市消防出初式

昨年は中止、2年ぶりに開催された市消防出初式

 

 釜石市消防出初式(市、市消防団主催)は8日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス感染拡大防止を考慮し、まとい振りなどの街頭パレードを取りやめ、規模を縮小した式典のみを実施。市消防団(団員563人)などから約100人が参加し、新年のスタートにあたり消防防災活動へ意欲を高めた。

 

 東日本大震災の犠牲者らに黙とう後、統監の野田武則市長が式辞。世界各地で温暖化による気候変動が要因の自然災害が多発している現状に触れ、「災害はまさかと思われる規模で発生するようになった。危機管理体制のさらなる充実が求められる。複雑、多様化する災害に備え、一層の尽力を」と呼び掛けた。

 

2022年の消防防災活動へ士気を高める団員ら

2022年の消防防災活動へ士気を高める団員ら

 

 長年の消防防災に対する功績、職務精励などで団員66人を表彰。無火災956日(2019年6月8日~21年11月30日)を達成した栗橋地域を管轄する第7分団(団員91人)に「無火災竿頭綬」(県消防協会遠野釜石地区支部表彰)が授与された。小澤万寿男分団長(67)は「団員による火災予防運動が功を奏し、住民は防火意識が高い。地域は高齢化が進み、独居世帯も増えている。今後も地域一丸となって啓発活動に努めていきたい」と決意を新たにした。

 

「無火災竿頭綬」を受けた消防団第7分団の幹部

「無火災竿頭綬」を受けた消防団第7分団の幹部

 

10~40年勤続、職務精励で団員66人を表彰

10~40年勤続、職務精励で団員66人を表彰

 

 昨年の市内の火災発生は5件(建物4、その他1)。前年のほぼ3分の1に減少した。火災による死者はおらず、負傷者は1人だった。

 

 式典での表彰団員は次の通り。(かっこ内数字は分団・部、「本」は本部)

 

【釜石市長表彰】
▽永年勤続功労章(30年勤続)
川端裕一(1・1、部長)川向文吾(3・3、班長)加藤孝雄(5・2、同)小向初見(5・6、部長)狐鼻薫(6・5、班長)和田一之(7・本、部長)八幡利則(7・3、同)

 

【県消防協会遠野釜石地区支部表彰】
▽勤続章
*40年勤続
野田幸正(4・本、分団長)佐々木正雪(4・2、部長)小笠原賀伸(6・5、班長)
*25年勤続
佐々木清明(1・本、部長)井上健(2・1、同)小山久雄(4・1)岩﨑英紀(6・5)佐々木隆行(6・6、班長)佐々木光政(6・6)小笠原義雄(7・本、部長)八幡勝明(7・2、班長)三浦勝弘(8・本、副分団長)佐々木和則(8・3)佐々木仁(8・3)鈴木利治(8・5、部長)
*15年勤続
藤原士朗(1・3)竹内俊作(2・1、班長)熊谷仁(3・3)藤井悌壮(4・1)川﨑浩二(6・1)小笠原剛真(6・2)土手広和(6・3)植田賢利(6・3)小笠原尊史(6・5)八幡恵史(7・2)小笠原嘉春(7・3、班長)伊藤貞治(8・本、同)岩城覚(8・2)佐々木健(8・3)内川裕也(8・5、班長)留畑丈治(8・5、同)中嶋康裕(8・5、同)東卓也(8・6、同)青山克徳(8・6、同)久保準一(8・6)
*10年勤続
菅原徹(2・1)泉憲一(3・1)久保弘貴(3・3)佐々木一馬(3・3)三縄聡(3・4)副士光雄(5・1、班長)

 

▽精練章
照井雄騎(1・2)佐々木一哉(1・4)阿部信太郎(1・4)浜田志紀(1・4)小山純平(3・2)高橋光輝(5・3、班長)東谷剛(5・5)小笠原祐樹(6・2)平間佑(6・2)川崎友則(6・5)佐々木滉司(6・5)佐々木北斗(6・6)栗澤正太(7・1)佐々木靖(7・2、班長)中村修(7・2)和田良作(7・3)黍原豊(7・3)東英樹(8・6)

手帳の点検を受ける交通指導隊員

安全な地域づくりをともに 釜石市交通指導隊と防犯隊、初点検 初めて合同実施

初めて合同で実施された交通指導隊と防犯隊の初点検

初めて合同で実施された交通指導隊と防犯隊の初点検

 

 釜石市交通指導隊(佐藤鉄太郎隊長、隊員28人)と市防犯協会防犯隊(三浦栄太郎隊長、同38人)の2022年初点検は7日、大町の市民ホールTETTOで行われた。指導隊は「交通事故の被害」、防犯隊は「犯罪の被害」から住民を守ると任務は少し異なるが、ともに安心安全な地域づくりのため活動していることから、初めて合同で実施。合わせて約20人の隊員が参加し、任務遂行へ気を引き締めた。

 

 野田武則市長、釜石警察署の前川剛署長らが整列した隊員の手帳と警笛を点検した。野田市長が「市民の約4割を占める高齢者の事故防止が最大の課題となる。特殊詐欺、子どもへの声掛け事案が発生しており、抑止も重要な課題の一つ。交通安全、地域安全の意識高揚に努めていく。隊員の活動は多岐にわたり、欠かすことができない。気持ちを引き締め、任務を再確認して活動に尽力してほしい」と訓示した。

 

手帳の点検を受ける交通指導隊員

手帳の点検を受ける交通指導隊員

 

防犯隊員も野田市長らの点検を受けた

防犯隊員も野田市長らの点検を受けた

 

 前川署長は管内の治安情勢を報告した。窃盗などの刑法犯認知件数は昨年11月末現在で65件、前年同期比で18件減。交通事故の発生状況について、昨年1年間は事故死者がなく、人身事故は35件あったが、前年と比べると4件減った。「皆さんの活動のたまもの。引き続き、署を挙げて治安維持に全力で取り組み、各種対策を推進していく。秩序ある交通社会の実現と安全安心なまちづくりのため力添えを」と激励した。

 

 終了後、指導隊は大町周辺で車両に対する街頭指導を行い、防犯隊はショッピングセンターの買い物客らに、地域安全に関するチラシなどを配布する啓発活動を展開した。

 

ショッピングセンターで買い物客らに啓発グッズを手渡す防犯隊員

ショッピングセンターで買い物客らに啓発グッズを手渡す防犯隊員

 

 交通指導隊員の任務は街頭や交通安全教室での指導、各種行事での交通の確保など。佐藤隊長(80)によると、昨年は新型コロナウイルス禍でイベントの中止が多く、活動を控えざるを得なかった。学校での交通安全教室は再開されていて、子どもたちの交通マナーが向上していると実感。「安心安全なまちをつくるため、気持ちが通じ合うような活動を続けたい」と意欲を見せた。

 

 防犯隊は民間のボランティア団体で、市民の自発性、高い志によって活動が維持されている。防犯パトロール、青少年の非行防止、特殊詐欺防止啓発活動、高齢者の安全対策などが任務。市防犯協会の岩渕善吉会長(80)は「市民が安心安全に暮らせるよう、地域に密着して活動。青色回転灯による見せる防犯パトロールでアピールしていく」と力を込めた。

協定書を手にする野田市長(左)と福島工場長(左から2人目)ら。災害時に段ボールベッドなどの提供を受ける

災害時に段ボール製品を供給 釜石と王子コンテナー青森工場が協定

協定書を手にする野田市長(左)と福島工場長(左から2人目)ら。災害時に段ボールベッドなどの提供を受ける

協定書を手にする野田市長(左)と福島工場長(左から2人目)ら。災害時に段ボールベッドなどの提供を受ける

 

 釜石市は22日、段ボール製品製造・販売を手掛ける王子コンテナー青森工場(青森県三沢市、福島明工場長)と災害時の物資供給に関する協定を結んだ。住民の避難が必要な場合に、同工場が製造する段ボールベッドなどを提供。万一に備え、不足した際に供給できる体制を整える。

 

 協定は、市の要請に基づき、同工場が速やかに製品を用意して避難所などに届け、市が費用負担する内容。物資の種類は段ボール製のベッドや紙製簡易トイレ、プライバシーを確保するためのパーテーションなど。また同社グループ企業から、ティッシュペーパーやトイレットペーパー、生理用品などの生活必需物資製品が優先的に提供される。

 

 釜石市役所で締結式を行い、野田武則市長と福島工場長が協定書に署名し取り交わした。福島工場長は「軽くて強度のある段ボールの特性を生かした製品を提案し、地域の皆さんのお役に立ちたい」と強調。パーテーションは床に敷いて利用することもでき、段ボールベッドと合わせ、避難時に体育館など冷たい床で寝るのを避けることで低体温症の防止にもつながるなどと紹介した。

 

パーテーションなどに活用できる段ボールシート

パーテーションなどに活用できる段ボールシート

 

 野田市長は「被災した人、避難した人の安心につながる。いざという時は頼りにしたい」と感謝。日本海溝・千島海溝沿いで発生する2つの巨大地震の被害想定が公表されたばかりで、事前の災害対応に気を引き締め直した。

 

 同工場は、同様の協定を三沢市や六戸町と結んでいる。釜石市は3例目で、岩手県内では初。市内に営業所があることから、社会貢献活動の一環として市に申し出た。
 

釜石市消防団チェーンソー研修会=11月21日

迅速な災害対応に期待 釜石市消防団にチェーンソー配備 団員が扱い方学ぶ

釜石市消防団チェーンソー研修会=11月21日

釜石市消防団チェーンソー研修会=11月21日

 

 釜石市消防団(川﨑喜久治団長)は11月21日、災害現場などでの使用を想定したチェーンソーの研修会を開いた。全8分団から団員約80人が参加。釜石地方森林組合(久保知久代表理事組合長)の職員5人に指導を受け、機材の組み立て方から樹木の切断の仕方まで必要な知識を身に付けた。

 

 市消防団は地域防災力強化のための救助活動用資機材として、2019年度にチェーンソー37台を購入。8分団全37部に1台ずつ装備する計画で、団員研修会を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期を余儀なくされてきた。ワクチン接種が進み、感染者数も減少傾向にあることで、研修会実施が可能となった。

 

釜石地方森林組合の職員から講習を受ける団員ら

釜石地方森林組合の職員から講習を受ける団員ら

 

チェーンソーの組み立て方を教える森林組合職員

チェーンソーの組み立て方を教える森林組合職員

 

 片岸町の同森林組合事務所を会場に約2時間の座学と実技講習を実施。機材の取り扱いの基本、安全対策を重点に研修を行った。実技講習では組み立て、燃料注入、エンジン始動、目立てなどの方法を学んだ後、ゴーグルや保護衣を装着して樹木の切断を体験。台風や地震、津波などで生じる複数の木が折り重なった現場を再現し、安全に処理するためのポイントを教わった。

 

倒木や地震・津波がれきを想定した実技訓練

倒木や地震・津波がれきを想定した実技訓練

 

安全への注意を払いながら樹木の切断に挑戦した

安全への注意を払いながら樹木の切断に挑戦した

 

 第1分団4部の浜田志紀さん(33)は初めてのチェーンソーの扱いに「難しそうだが、現場で必要な時に(誰でも)使えたほうがいいので、団員と知識を共有し扱えるようになりたい」と話した。

 

 消防団員対象のチェーンソー講習は森林組合職員にとっても初めての経験。指導にあたった同組合事業課の坂本和幸課長補佐(54)は「災害現場では倒れた木が複雑に重なるため、支点や重心を見極めながら切断箇所を判断しないと作業者に危険が及ぶ。機材の安全な取り扱いと共に、現場の状況を見る目も必要」とアドバイスした。

 

現場での2次災害を防ぐため、作業時には的確な判断が求められることを教わった

現場での2次災害を防ぐため、作業時には的確な判断が求められることを教わった

 

 これまで倒木、流木などの処理は市や消防署が対応し、地元林業者に協力してもらうケースも多かった。今回の消防団へのチェーンソー配備で、いち早い災害対応につながるものと期待される。川﨑団長は「(近年の異常気象で)台風や豪雨、強風による倒木の増加も懸念される。まずは現場に駆け付け、救急車の通行や市民の生活道路確保のための除去作業が急務となるので、地域を知る多くの団員が扱えるようになれば」と願う。

碑の修復にあたった日髙真吾教授(右)、市文化振興課の藤井充彦課長(左)ら

津波の歴史を後世に 唐丹「海嘯遭難記念之碑」レプリカ 市郷土資料館に展示

「海嘯遭難記念之碑」レプリカの搬入作業=釜石市郷土資料館=15日

「海嘯遭難記念之碑」レプリカの搬入作業=釜石市郷土資料館=15日

 

 東日本大震災の津波で損傷した釜石市唐丹町本郷の明治三陸大津波の碑「海嘯(かいしょう)遭難記念之碑」の原寸大レプリカが、鈴子町の市郷土資料館にお目見えした。本年3月に同碑の修復作業を行った大阪府吹田市の国立民族学博物館が寄贈。資料館の津波展示コーナーに据えられ、過去の津波被害の歴史と教訓を後世に伝える。

 

 15日、修復作業を主導した博物館の日髙真吾教授(50)=保存科学専攻=ら職員5人が資料館にレプリカを搬入。市文化振興課から藤井充彦課長(郷土資料館長)らが立ち会い、寄贈に感謝した。

 

大阪からトラックで運ばれてきたレプリカを降ろす国立民族学博物館の職員

大阪からトラックで運ばれてきたレプリカを降ろす国立民族学博物館の職員

 

碑の修復にあたった日髙真吾教授(右)、市文化振興課の藤井充彦課長(左)ら

碑の修復にあたった日髙真吾教授(右)、市文化振興課の藤井充彦課長(左)ら

 

 同碑は1896(明治29)年6月15日に発生した三陸大津波から33回忌にあたる1928(昭和3)年、地元住民の発案で建立された。碑文には流失家屋300戸、犠牲者800人、生存者20人という壊滅的な被災状況とともに未来への伝承を願う強い思いが刻まれていた。

 

 レプリカは修復方針を立てるためのサンプルとして制作され、同博物館が3月に開いた震災10年を振り返る特別展「復興を支える地域の文化」の中で一般公開された。原寸大で高さ250センチ、幅160センチ。自然石の碑を再現するために用いた素材はFRP(繊維強化プラスチック)で、同加工を得意とするアーティストが造形、吹き付け塗装して仕上げた。

 

 実物の碑は、アスファルト状素材の基盤に浮き彫り、刻字した題字と碑文をくりぬいた石にはめ込んでいたが、震災の津波で碑文の半分が欠損した。修復は「震災遺構」としての意義を重視し、残存部分を補強、接着し直す作業にとどめている。レプリカの文字板は石こう製。3D機器を駆使し、実物そっくりに作られた。

 

実物の質感、色味が忠実に再現された文字部分

実物の質感、色味が忠実に再現された文字部分

 

東日本大震災の津波で欠損した碑文。衝撃の強さを物語る

東日本大震災の津波で欠損した碑文。衝撃の強さを物語る

 

 日髙教授は「原寸大サンプルで検証するのは珍しい。レプリカは出来栄えも上々。釜石の皆さんが震災の記憶をつなぐための一助として活用してもらえれば」と寄贈の理由を明かした。

 

 教授の研究グループは同震災の検証を進める中で、三陸沿岸に過去の津波碑が多く残されている点に注目。現存する場所を地図上に示し、データベース化している。「各地に残る碑に刻まれた大事な教訓が忘れ去られている部分があった。今回の震災であれだけの被害を出してしまったのは大きな反省点。今度こそ、しっかりと記憶を継承していく必要がある」と日髙教授。

 

 市文化振興課の手塚新太課長補佐(文化財係長)はレプリカを目にし、「インパクトがある。ここまで正確に作られているとは驚き。館にとっても貴重な資料となる」と喜んだ。明治、昭和の三陸大津波、東日本大震災と、市内には被害状況や教訓を伝える津波碑が数多く存在する。「石でできたものは残るので強み。末代まで続く伝承ツールとして大きな意味がある」とし、さらなる情報発信に意欲を示した。

震災ガイドで伝えるべき基本事項を受講者に解説する瀬戸元さん(左から2人目)

釜石来訪者のおもてなし強化へ 観光ガイド会新人6人が養成講座修了

釜石観光ガイド養成講座の現地研修=13日

釜石観光ガイド養成講座の現地研修=13日

 

 釜石市の釜石観光ガイド会(三浦達夫会長、27人)は14日、10月から開いてきたガイド養成講座の全日程を終えた。公募で集まった40~60代の男女6人が受講。今後、先輩ガイドの補助を受けながら実習を重ね、独り立ちを目指す。同会には世界遺産「橋野鉄鉱山」や東日本大震災、まちなかガイドなど多様な依頼が寄せられる。会では新人6人の活動に期待し、釜石のさらなる魅力発信に取り組んでいく考えだ。

 

 同会のガイド会員確保のための養成講座は、ほぼ隔年で行われる。10期目となる今回は10月2日から11月14日まで全7回の日程で実施。現会員が講師となり、ガイドの心構え、同市の歴史、観光名所に加え、釜石を発展させた製鉄業の歴史、東日本大震災の被災・復興状況、三陸ジオパークなどについて座学と現地研修を行った。

 

両石町の震災慰霊碑(18年建立)前での研修

両石町の震災慰霊碑(18年建立)前での研修

 

現会員を含む10人が参加し、知識を深めた

現会員を含む10人が参加し、知識を深めた

 

 現地研修最終日の13日は、甲子町の旧釜石鉱山事務所など製鉄業の関連遺産を巡った後、震災研修として両石町の慰霊碑、鵜住居町の祈りのパーク、いのちをつなぐ未来館などを訪問。受講者の八幡恵史さん(48、橋野町)、小笠原明彦さん(65、同)、岩間ゆかりさん(59、中妻町)が、会員からガイドをする際に伝えるべきポイントや分かりやすい説明の仕方を学んだ。

 

 震災研修で講師を務めた瀬戸元さん(76)は各地の被災状況とともに、明治、昭和の三陸大津波の歴史も紹介。先人が伝えてきた津波の教訓“命てんでんこ”や沿岸部に残る津波石碑の重要性を改めて説き、「先人の教訓を生かし切れなかったのが今回の震災。話を聞く人が確実な避難行動をとれるように導くのもガイドの役割」と教えた。

 

鵜住居町の祈りのパークでは、震災犠牲者に手を合わせてから説明を始めることを教えた

鵜住居町の祈りのパークでは、震災犠牲者に手を合わせてから説明を始めることを教えた

 

震災ガイドで伝えるべき基本事項を受講者に解説する瀬戸元さん(左から2人目)

震災ガイドで伝えるべき基本事項を受講者に解説する瀬戸元さん(左から2人目)

 

 受講者の岩間さんは「震災を経験し、微力ながら自分も伝承という部分で釜石のために役立つことができれば」と応募。一連の講座を終え、「すごく勉強になった。まだ不安のほうが大きくイメージは湧かないが、会員として長く活動できるように頑張りたい」と意欲を示した。

 

 同会のガイド分野は、2011年の東日本大震災、13年の「三陸ジオパーク」認定、15年の「橋野鉄鉱山」世界遺産登録により、この10年で大幅に拡大。依頼者の増加、ニーズの多様化に対応するには、会員の能力向上と人員確保が求められる。会員の瀬戸さんは「新人の加入はありがたい。会員の高齢化もあり、引き継いでいく人材が必要。何回も数をこなすことで自信も生まれてくると思うので、ぜひ戦力になり第一線で活躍してほしい。個性を生かしながら活動してもらえれば」と願った。

 

 14日は修了式が行われ、受講者に修了証を交付。活動時に着用するユニフォームが貸与された。

基本方針を確認し、委員の意見を聞いた初会合

~未来の命を守るために~発災から10年 釜石市が震災誌作成へ

第1回釜石市震災誌編さん委員会=8日、市役所

第1回釜石市震災誌編さん委員会=8日、市役所

 

 釜石市は東日本大震災の事実と教訓を後世に伝える市震災誌(仮称)の作成に着手する。震災発生から復旧、復興に至る10年の対応状況などを体系的に記録するほか、避難の検証、防災対策の課題など今後の安全安心なまちづくりにつながる要素を盛り込む。8日、市が委嘱した編さん委員による初会合が開かれ、作成の基本的考え方、今後の作業手順について確認した。2022年度内の完成を目指す。

 

 編さん委員会のメンバーは、同市の震災検証、復興に関わってきた大学教授や被災地域の住民、元市職員ら15人。初会合には市の担当職員を含め19人が出席した。委員長に岩手大の齋藤徳美名誉教授、副委員長に元副市長の山崎秀樹さんを選出した。

 

 震災誌は庁内検証委員会が年度ごとにまとめてきた記録誌を基に作成。9つの項目を柱に58のテーマで、①事実・背景②指示(方針)③対応・結果④教訓―を記す。発災当日、1週間、1カ月の動きから、暮らしや産業などの復興に向けた取り組み、避難行動の検証と防災力強化の課題など、あらゆる視点で未来に生かされる内容を目指す。A4版(カラー)、400ページ程度で構成する予定。

 

 本年度は庁内検証委が素案を作成。編さん委内に作業部会を設け、素案の調整、修正などを行う。同部会では必要に応じて外部関係者の協力、助言を得る。

 

 編さん委の初会合ではこれらの方針を確認。委員からは「なぜ千人を超える犠牲者がでたのか。私たちがやるべきだったのにできなかったことをしっかり検証し、伝えていく必要がある」「震災誌を作ることで何を伝えたいのか。各項目の中で分かりやすく表現できれば」「つらい部分も、あえて掘り下げて次にどうつなげられるか。震災誌の真価が問われるところ」「津波からどう生き延びてきたのかも重要。10年を経た今の段階で震災誌を作る意義がある」などの声が上がった。

 

基本方針を確認し、委員の意見を聞いた初会合

基本方針を確認し、委員の意見を聞いた初会合

 

 齋藤委員長は「災禍を繰り返さないために何をすべきか。一歩踏み込んだ震災誌でなければ未来に発信できない。“防災先進地”釜石として新たな検証とともに、未来に残せるものを作りたい」と意を強くする。

 

 市はこれまでに、6編の震災検証報告書(津波避難行動、災害対策本部、避難所運営など)を作成。これらをもとに市民向けの「教訓集」「証言・記録集」を作成している。また、大勢の犠牲者が出た鵜住居地区防災センターにおける市の対応について、学識者や遺族、弁護士などによる調査委員会が被災調査報告書をまとめている。        

「火の用心」と声を合わせ、地域住民に呼びかける甲東こども園の防火パレード

暖房器具が出番迎える中、まちに響く「火の用心」 甲東こども園防火パレード

「火の用心」と声を合わせ、地域住民に呼びかける甲東こども園の防火パレード

「火の用心」と声を合わせ、地域住民に呼びかける甲東こども園の防火パレード

 

 暖房器具など火気の使用が増える季節を迎えたこの頃。空気も乾燥しており、火事に気を付けたい時期でもある。火災のない安全な地域になることを願い、釜石市野田町の甲東こども園(野田摩理子園長、園児143人)が11日、防火パレードを実施。3歳以上の園児に保護者らを加えた約140人が元気な声で「火の用心」を呼び掛けた。

 

 同園の防火パレードは今年で37回目。そろいの消防はんてんを着た園児は、拍子木や太鼓の音に合わせて「戸締まりよーじん!火のよーじん!」と声を上げながら約1・5キロを行進した。隊列には消防署の広報車、消防団のポンプ車も加わり、呼び掛けをサポート。住民らは家の前に出て、笑顔で見守った。

 

元気な声で「火の用心」を呼び掛ける拍子木隊

元気な声で「火の用心」を呼び掛ける拍子木隊

 

園児たちは火災のない安全な地域になることを願って住宅街を行進した

園児たちは火災のない安全な地域になることを願って住宅街を行進した

 

 近隣を巡った後、園庭で「防火の集い」。園児代表が「火遊びはしません。よい子になります」などと誓い、「マッチ一本、タバコの投げ捨て、子どもの火遊び 火事のもと」と消防標語に声を合わせた。釜石消防署の駒林博之署長は「元気のいいパレードだった。みんなの言葉は住民の多くに届いた。地域の火災ゼロにつながればいい」と協力に感謝した。

 

防火の集いで「気を付けて」とメッセージを送る園児たち

防火の集いで「気を付けて」とメッセージを送る園児たち

 

 全国一斉に展開された秋の全国火災予防運動(11月9-15日)の一環。「おうち時間 家族で点検 火の始末」を統一標語に、重点目標には▽住宅火災防止▽乾燥時や強風時の火災防止▽放火対策の推進▽大規模施設の防火対策の徹底-などを掲げた。釜石署管内では新型コロナウイルス感染症の影響で、例年実施している市消防団による防火広報パレード、戸別の防火訪問指導を中止。年間を通して行う保育施設での防災教室、事業所の立ち入り火防点検や消防訓練は継続し、市民の防火意識向上へ啓発活動に努める。

 

 釜石市内では今年、3件の火災があり、前年同期比6件減となっている。昨年12月には3件の火災が発生しており、釜石も含め全国的に電気や配線器具が関係する出火が多い傾向にある。駒林署長は住宅用火災警報器の点検や更新(10年)の必要性、設置の効果(死者、焼損面積は約半分、損害額は4割減)を強調。普及につながる取り組みを進めつつ、「防火に努めてほしい」と求めている。

伝承施設の取り組みなどを紹介し、今後の役割などへ意見を交わしたディスカッション

東日本大震災の教訓を国の防災力向上に 被災地釜石で“ぼうさいこくたい”

防災推進国民大会(ぼうさいこくたい)2021

防災推進国民大会(ぼうさいこくたい)2021

 

 防災推進国民大会(ぼうさいこくたい)2021=同実行委主催=は6、7の両日、東日本大震災の被災地・釜石市で開かれた。国内最大級の防災イベントで、6回目の今年のテーマは「~震災から10年~つながりが創る復興と防災力」。開催地の野田武則釜石市長は「震災の経験や未来の命を守る教訓を伝えることが責務。ここに『防災教育のまち釜石』を宣言し、全国に当市の取り組みを発信していく」と述べた。2日間で約5800人が来場。各種プログラムを通じて防災意識を高めた。

 

 6日、市民ホールTETTOで行われた開幕のあいさつで、二之湯智・内閣府特命担当大臣(防災)は「災害の被害を最小限に抑えるには、国民1人1人が防災の正しい知識を身に付け実践することが重要。大会を機に我が国の防災力が一層強化されるよう願う」と述べた。同所では2つのディスカッションが行われた。

 

伝承施設の取り組みなどを紹介し、今後の役割などへ意見を交わしたディスカッション

伝承施設の取り組みなどを紹介し、今後の役割などへ意見を交わしたディスカッション

 

 震災伝承に関する議論には5人が参加。地元釜石からは「いのちをつなぐ未来館」スタッフの川崎杏樹さんが登壇。震災時、釜石東中の2年生で、隣接する鵜住居小児童らと全校避難し、津波から逃れた川崎さんは、市内の多くの小中学生が助かった要因に防災教育を挙げた。「当時の小中学生が震災時、『いつも通り行動した』と話すのは、楽しみながら興味を持たせる防災学習があったから」。防災を身近に感じ、自然に命を守る行動につながったことを示した。自らの経験は同館が提供する防災学習プログラムにも生かされる。

 


 

 10年の経験と未来ビジョンを語るセッションには9人が参加した。一般社団法人おらが大槌夢広場の神谷未生代表理事は提供するプログラムで「あなただったら?」という問いを重ね、震災を自分ごととして考えてもらうことを重要視。釜石市の地方創生アドバイザーも務めてきた国連人口基金駐日事務所の佐藤摩利子所長は、釜石の子どもたちの避難行動に着目し、「日本からの発信が世界の子どもたちの命を守ることになる」と今後の発信力に期待した。野田市長は災害に対する危機意識を地域全体で共有する必要性を指摘。防災教育を受けた子どもたちが将来、地域の中核として住民を守る側になることを願った。

 

震災経験者や復興関係者が参加し、これまでとこれからを語ったディスカッション

震災経験者や復興関係者が参加し、これまでとこれからを語ったディスカッション

 

 TETTO内には全国の企業や教育機関、団体などが出展したプレゼンブースが設けられ、防災に役立つ情報を公開した。周辺施設も会場となり、セッション、ワークショップ、屋外展示を合わせ171団体が参加した。福島県郡山市の八田康之さん(52)は自社の出展に合わせ、初めて大会に来場。「出展者の熱意が感じられ、来場者も意識が高い。震災を風化させないためにもいいイベント」と東北開催を歓迎した。

 

TETTO内に設けられたプレゼンブース。防災に関するさまざまな情報を提供した

TETTO内に設けられたプレゼンブース。防災に関するさまざまな情報を提供した

 

来場者の興味を引いた「足紋採取体験」

来場者の興味を引いた「足紋採取体験」

 

 屋外展示会場では親子連れの姿が目立ち、各種体験が人気を集めた。非常持ち出し用リュックに必要物品を詰め、重さなどを確かめる体験、VR機材を使って地震の揺れや津波の速さを映像と音で体感するブース、自衛隊車両の乗車体験など、子どもが防災を意識しやすいコンテンツも用意された。

 

過去の地震の揺れを再現した岩手県の地震体験車

過去の地震の揺れを再現した岩手県の地震体験車

 

非常持ち出し用リュックに何を入れるかを考えた

非常持ち出し用リュックに何を入れるかを考えた

 

自衛隊車両の運転席に乗り興味津々の子どもたち

自衛隊車両の運転席に乗り興味津々の子どもたち

 

 釜石市の三浦幸治さん(41)は、過去の大地震の揺れを再現した車両を家族で体験。「思ったより揺れてびっくり。震災時は釜石で仕事中だったが、忘れかけている部分もある。震災を知らない息子にも当時のことを教え、防災面も見直したい」と気を引き締めた。花巻市の福司姉津佳さん(44)は9歳、6歳の子どもと来場。「子どもがいての防災を意識するようになったのがこの10年の変化。別々にいる時の避難の待ち合わせ、連絡法など考えねば。体験を機に子どもにも防災への関心が生まれれば」と話した。

 

 大会に合わせ、県や市などが企画した「いわて・かまいし防災復興フェスタ」も同時開催。震災の教訓、復興支援への感謝を伝えるパネル展示や語り部動画の上映、三陸鉄道の震災学習列車と伝承施設見学を組み合わせたツアーを行った。大会前日の5日は「津波防災の日」「世界津波の日」にあたり、今後の津波防災を考える講演や意見交換が行われた。

 

釜石市は「復興支援感謝のつどい」で貢献者26人に感謝状贈呈

 

 

 釜石市は7日、市内のホテルで「東日本大震災復興支援感謝のつどい」を開き、同市の復興に力を貸した26人に感謝状を贈った。出席した13人に野田武則市長が感謝状を手渡した後、10年の歩みを振り返り、今後のまちづくりへの意見・助言をもらった。つどいの模様はユーチューブチャンネル「ラグビーのまち釜石」でライブ配信され、収録動画が15日から来年3月31日まで配信される。

 

 
 

釜石市の復興を支えてきた26人に感謝状を贈呈

釜石市の復興を支えてきた26人に感謝状を贈呈

 

釜石復興の歩みを映像で振り返るつどい出席者

釜石復興の歩みを映像で振り返るつどい出席者

 

感謝状授与者は次の通り。
 
【釜石市復興まちづくりアドバイザー】
濱田武士(北海学園大教授)大西隆(東京大名誉教授)橘川武郎(国際大副学長)辻哲夫(東京大客員研究員)片田敏孝(東京大大学院特任教授)
【エンターテインメントを通じたこころの復興支援】
矢内廣(チームスマイル代表理事)
【飲食業の自立再建支援】
田辺恵一郎(プラットフォームサービス相談役)
【東北未来創造イニシアティブ】
米谷春夫(マイヤ代表取締役会長)高橋真裕(岩手銀行取締役会長)大滝精一(大学院大至善館副学長兼学術院長)大山健太郎(アイリスオーヤマ代表取締役会長)野田智義(アイ・エス・エルファウンダー)
【釜石市復興ディレクター】
小野田泰明(東北大大学院教授)遠藤新(工学院大教授)長濱伸貴(神戸芸術工科大大学院教授)
【地方創生アドバイザー】
小安美和(Will Lab代表取締役)枝見太朗(富士福祉事業団理事長)藤沢烈(RCF代表理事)横田浩一(横田アソシエイツ代表取締役)佐藤摩利子(国連人口基金駐日事務所所長)吉野英岐(岩手県立大教授)堀久美子(UBS証券社会貢献CSRアジア太平洋地域統括)大久保和孝(大久保アソシエイツ代表取締役社長)鈴木寛(東京大教授)玄田有史(東京大教授)川久保俊(法政大教授)

横断歩道を渡る児童を見守る釜石SWの選手ら

釜石SW、登校する児童の見守り開始~「おはよう」でエネルギー交換

通学路の安全、がっちり!「横断中」の旗を手に児童の登校を見守るモーガン・ミッチェル選手

通学路の安全、がっちり!「横断中」の旗を手に児童の登校を見守るモーガン・ミッチェル選手

 

 釜石市を本拠地にするラグビーチーム「釜石シーウェイブス(SW)RFC」が、甲子町松倉地区の小学生たちの通学路に立ち、交通事故などに巻き込まれないよう見守る活動を始めた。来年1月に開幕する新リーグ「リーグワン」への参戦に向けた「地域密着」型の新たな取り組みで、チームをより身近に感じてもらう初の試みだという。

 

 チームは学校でのタグラグビー教室や運動会など行事参加で児童らと交流し、地域に愛されるチームづくりを進めてきた。地域貢献・連携活動の一環として、チームの練習グラウンド(市球技場)があり、選手やスタッフが多く暮らす甲子地区の甲子小児童が安心、安全に登校できるよう見守り活動を行うことにした。

 

横断歩道を渡る児童を見守る釜石SWの選手ら

横断歩道を渡る児童を見守る釜石SWの選手ら

 

 活動は基本的に週4日、朝の登校時間に合わせて30分間、市球技場付近の通学路で実施する。初回の1日朝は、7時から自動車販売店そばの2カ所の横断歩道に山田龍之介選手(30)とモーガン・ミッチェル選手(28)、牛窪心希(しんき)選手(25)らが立ち、児童らに「おはよう」などと呼びかけながら登校を見守った。

 

 見慣れない体の大きな選手らに「ちょっと怖い」と思った子もいたようだが、「横断中」と書かれた旗を掲げながら体を張って車を止める姿に、和泉心寧(ここね)さん(甲子小4年)は「守ってくれそう。うれしい」と頼もしさを感じていた。普段から選手らが練習する様子を見ていた子もいて、「また会いたい」と楽しみも増やした。

 

朝のあいさつで交流を深める甲子小児童と釜石SW選手

朝のあいさつで交流を深める甲子小児童と釜石SW選手

 

 牛窪選手は「地域の子どもたちに、こういう形で少しでもチームを知ってもらえたら。出勤時間と重なり、思ったより車が走っていた。運転手には通学路だということを認識してもらい、気を付けて走ってほしい」と求めた。

 

 桜庭吉彦ゼネラルマネジャーは「おはよう―という言葉のキャッチボールが子どもと選手の双方にいい効果をもたらすはず。エネルギーを交換し、1日頑張るぞと思ってもらえたら」と期待。誇りを持ってもらえるチームづくりは地域にとって身近な存在になることが大事だと強調し、「ラグビーのまち釜石」の実現に向け地域と結束した取り組みを続ける構えだ。

津波を想定した初めての避難訓練。中妻町、千鳥町の住民らは八雲神社を目指した

新たな津波浸水想定 釜石市内陸部・中妻地区で初めての避難訓練

津波を想定した初めての避難訓練。中妻町、千鳥町の住民らは八雲神社を目指した

津波を想定した初めての避難訓練。中妻町、千鳥町の住民らは八雲神社を目指した

 

 日本海溝・千島海溝沿いで起こる巨大地震の想定で新たに津波の浸水域に含まれた釜石市中妻地区で14日、住民主体による初めての津波避難訓練が行われた。中妻地区地域会議(佐藤力議長)が主催し、構成する町内会や学校などから住民、児童生徒ら約700人が参加。近くの避難場所と経路、避難開始までの手順などを確認し、いつか起こりうる津波災害への認識を深めた。

 

釜石市ハザードマップ(中妻地区)

釜石市ハザードマップ(中妻地区)

 

 中妻地区は海まで約3キロあり、東日本大震災の津波では浸水しなかった。内閣府が公表した日本海溝(三陸・日高沖)モデルなどを受け、市が昨年10月に行った中妻地区住民対象の説明会では、津波で防潮堤が破壊された場合、最大で5~10メートル、広い範囲で2~5メートルの浸水の可能性があると示された。

 

 浸水想定エリアとなった町内会などから、▽自主防災組織の結成・再編▽避難時要支援者の把握▽防災マップづくり―といった「備える」取り組みを求める声が上がり、同会議などで協議、検討を重ねてきた。地域でできる取り組みの手始めとして避難訓練の実施を決めた。

 

警報が流れると、下校時の児童はその場にしゃがみ込み、ランドセルで頭を覆って身を守った

警報が流れると、下校時の児童はその場にしゃがみ込み、ランドセルで頭を覆って身を守った

 

 日本海溝沿いでマグニチュード(M)9・1の巨大地震が発生して釜石で震度6弱の揺れを観測、気象庁から大津波警報が発表されたとの想定。住民らは防災無線の呼びかけに応じて身を守る行動をとった後、自宅や職場、学校などから近くの避難所や高台、危険を回避できる場所に向かった。

 

 このうち、浸水が想定される中妻町、千鳥町の住民らは津波災害の緊急避難場所となる高台の八雲神社を目指した。参道の階段を急ぎ足で上る児童や、支えられながら一歩ずつ進む高齢者の姿も。中学生はさらに高台の大天場公園に向かい、車いす利用者やカートに乗った乳幼児などは経路を変えて、緩やかな坂道を進んだ先にある運動公園に避難した。

 

八雲神社境内に続く参道の階段を上る参加者

八雲神社境内に続く参道の階段を上る参加者

 

 近くに川があるという中妻町の阿部秀次さん(81)は徒歩に少し不安があり、自転車で避難。震災時に日用品の購入が大変だったことを思い出し、飲食料品や常備薬、数日の下着などを詰め込んだリュックも持参した。徒歩の妻とは「てんでんこ」に避難したが、あらかじめ決めていた場所で落ち合った。「いつどんな災害が起こるか分からないから、本気になって参加。体験することで大変さが分かった」と認識を深めた。

 

 約1キロある神社までの避難を10分ほどで完了した千鳥町の70~80代の女性たちは「これまで津波は関係ない地域だと思っていたので、今回の想定はびっくり。逃げ道、逃げ場を把握できて良かった」と意見が一致。菊池道子さん(80)は「いざという時に走れるよう、足腰を鍛えよう」と心がける。

 

高台から望む中妻町地区。日本海溝沿いで起こる巨大地震の想定では新たに津波の浸水域に含まれた

高台から望む中妻町地区。日本海溝沿いで起こる巨大地震の想定では新たに津波の浸水域に含まれた

 

 同地区では近年、大雨による水害や土砂災害が続き、住民らの防災に対する意識は低くはない。ただ、津波に関しては「まだ他人事の人が多い」と佐藤議長(72)。訓練を機に、備える取り組みに本腰を入れる考えで、「自主防災に関する今までの組織を見直し、実態に合ったものにしたい」と先を見据えた。