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震災祈念碑に「あなたも逃げて」〜釜石鵜住居復興スタジアム、ワールドカップ観戦客に教訓伝える

震災祈念碑に「あなたも逃げて」〜釜石鵜住居復興スタジアム、ワールドカップ観戦客に教訓伝える

震災祈念碑を除幕し、海に向かって黙とうする関係者

震災祈念碑を除幕し、海に向かって黙とうする関係者

 

 今秋のラグビーワールドカップ(W杯)の試合会場となる釜石市鵜住居町の釜石鵜住居復興スタジアムに、東日本大震災の教訓、避難の重要性を訴える祈念碑が建立され、16日、現地で除幕式が行われた。碑に記された言葉は「あなたも逃げて」。悲劇を繰り返さないようにとの遺族らの願いを刻む言葉は、国内外から訪れる観戦客らに「あの日」の教訓を発信し続けるメッセージとなり、未来の命を守る。

 

 祈念碑は黒御影石製で、高さ約1・5メートル、幅約2メートル、奥行き約70センチ。盛岡市出身で東京在住の書家武田夏実さん(59)が揮ごうした「あなたも逃げて」と文字が刻まれている。

 

 上部には窓のような四角い箱型の造形物が載っている。のぞいてみると、見えるのは鵜住居の街並み。あの日の真実を見つめることで教訓をしっかり受け止め、同時に未来も見つめてもらえるよう思いを込めた。

 

 傍らには避難を訴える日本語と英語の説明板も設置。「命は、あなただけのものではありません」「自らの命が助からなければ、人を助けることができないから。だから必ず逃げて」などと呼び掛ける。

 

 祈念碑は同スタジアム西側にある掲揚ポールそばに整備された。そこは旧鵜住居小の跡地。震災時、校舎は津波にのまれ事務職員が行方不明のままとなっている。

 

 今も戻らぬ大切な人を思う遺族が、「逃げる」という避難の教訓を伝え続けるため形に残すべきだ―と、鵜住居地区復興まちづくり協議会(藤原博会長)に要望。思いをくみ取り、地域住民らからの寄付金(約200万円)を活用し同協議会が祈念碑を整備した。用地は市有地を無償で借りた。

 

 降りしきる雨の中で行われた除幕式で、同協議会の佐々木憲一郎会長代行(51)が刻まれた言葉に込めた思いを打ち明けた。「私は逃げる。だからあなたも逃げて。相手を思いやる、やわらかい言葉。被災した私たちだからこそのメッセージ。それだけでなく、逃げたくても逃げることができなかった人の声かもしれない…」。世界中から訪れる観光客でW杯が盛り上がることを望む一方、この地での開催意義を考えてほしいとも願う。雨風に耐える祈念碑。「未来の命を守ってくれる」と信じる。

 

 式に駆け付けた武田さんは「刻まれたのは呼び掛け、祈りのような願いの言葉。優しいけど凛(りん)とした叫びをイメージし、子どもたちも読めるように分かりやすく、動きのある印象強い字体にした」と紹介。「逃げる」ことが記憶に残り、伝えられていくことが「生きる」ことにつながる―と思いを寄せた。

 

 野田武則市長は「悲劇を繰り返さないまちづくりへ祈念碑が大きな役割を果たす」と、震災の教訓を次世代につなぐ思いを強めた。

 

(復興釜石新聞 2019年6月19日発行 第800号より)

 

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津波防災機能を向上させ、規模も拡大した水門、防潮堤の威容を体感する住民

小白浜海岸防潮堤を見学、地域住民「安心せず、避難を」〜6年をかけ3月に完成

津波防災機能を向上させ、規模も拡大した水門、防潮堤の威容を体感する住民

津波防災機能を向上させ、規模も拡大した水門、防潮堤の威容を体感する住民

 

 東日本大震災の復旧事業として県が施工した「小白浜海岸水門・防潮堤」の完成見学会は9日、地域住民25人が参加して行われた。沿岸広域振興局の担当者が案内し、住民は津波を想定した防災機能の高度化、優れた操作性を確認した。担当者は「津波の備えは向上したが、万一の際は避難する意識を持ってほしい」と訴えた。

 

堤体構造、設備を一新

 

 同防潮堤は水門や陸閘(りくこう)を備えていたが、震災の津波で壊れ、水門の機能も失った。復旧工事は2013年度から6年をかけ、今年3月に完了した。総事業費は約70億円。

 

 工事では、片岸川河口の水門部分を海側に85メートル移し、震災前には水門の右岸と防潮堤の北側(小白浜集落側)設置点の市道にあった陸閘を市道側の1カ所に集約した。片岸漁港につながる道路は、堤体の南端、片岸グラウンド側に「乗り越え式」で整備した。

 

 防潮堤の総延長520メートル、高さ14・5メートル。開閉する鉄製の水門は高さ4・7メートル、幅7・2メートルが2基。1基の重さは約100トンあり、機械や通信機器を収納する操作室3棟は堤頂から約7メートル立ち上がる。

 

 堤体の構造、形状は旧設備を拡充し、「粘り強い機能を持たせた」(担当者)。

 

 陸閘は幅7・2メートル、高さ4・7メートル、延長99・12メートル。海側に回転式の門扉を設置した。

 

 水門の閉鎖は、消防団員などの安全を確保する「県水門・陸閘自動閉鎖システム」に対応。津波注意報以上のレベルで自動的に起動し、約4分で閉鎖する。解除は遠隔操作、手動でも可能。陸閘の閉鎖も同様で、通行車両、人に拡声器で注意を促し、ランプやLEDの文字盤、遮断機で操作を周知する。

 

 遠隔操作の指示は県庁、沿岸広域振興局のほか、釜石市役所、釜石大槌地区消防本部庁舎でも可能だ。

 

 沿岸振興局土木部の千葉信英副部長は「防潮堤は地権者、地域の協力で完成できた。しかし、津波防災に完璧はない。あくまでも避難が大事」と強調した。

 

 小白浜地区の70代の女性は「説明を受け、立派な設備ができたので安心しました。でも、避難する気持ちは忘れてはいけない」と語った。

 

 市内では21漁港・海岸で河川の水門などの復旧工事が行われ、この3月までに小白浜など11カ所が完成した。

(写真説明)

 

(復興釜石新聞 2019年6月15日発行 第799号より)

 

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三陸防災復興プロジェクト開幕〜被災地再生 世界に発信、沿岸13市町村で8月7日まで

三陸防災復興プロジェクト開幕〜被災地再生 世界に発信、沿岸13市町村で8月7日まで

開幕セレモニーに続いて行われたパネル討論

開幕セレモニーに続いて行われたパネル討論

 

 東日本大震災の教訓を伝え、本県の復興の現状を発信する「三陸防災復興プロジェクト」が1日から開幕、オープニングセレモニーが釜石市大町の市民ホールTETTOで行われた。同プロジェクトは8月7日までの68日間にわたり、沿岸部13市町村を会場に防災に関するシンポジウムや展示会、コンサートなど22事業を展開。ラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催などで三陸地域が世界から注目を集める中、復興に向けて力強く取り組んでいる地域の姿、多様な文化や魅力を広く発信する。

 

 オープニングセレモニーには、一般、関係者ら約700人が出席。実行委員長の達増拓也知事が「このプロジェクトを通じ、復興に取り組みながら、互いに幸福を守り育てる希望郷実現の一歩にしよう」と開幕を宣言した。

 

開幕セレモニーの司会を務め、「震災の風化防止へ、手に手を取り合おう」と呼び掛ける陸前高田市出身の俳優村上弘明さん(右)

開幕セレモニーの司会を務め、「震災の風化防止へ、手に手を取り合おう」と呼び掛ける陸前高田市出身の俳優村上弘明さん(右)

 

 国連防災機関駐日事務所の松岡由季代表は、震災が国際的な防災議論に与えた影響を説明。「東北のみなさんの経験は世界の防災・減災につながる。これを国際社会で共有し、意識啓発に役立てたい」と思いを述べた。

 

 米国大使館ジョセフ・ヤング主席公使は、「トモダチ作戦」として自身が関わった震災後の救援活動や、被災地の高校生が米国留学するなどの研修プログラムに触れ、「留学を経験した若者が誇りと志を持って生き生きと活躍している。今後も日米の防災協力に期待する」とスピーチした。

 

 同研修プログラムへの参加をきっかけに宮古市でNPO法人を立ち上げ活動する吉浜知輝さんが、復興への取り組みを報告。復興支援で岩手とのつながりが深いシンガー・ソングライター八神純子さんのライブもあった。

 

 八神さんは、大槌町の子どもたちとの交流から生まれた「かれ木に花を咲かせましょう」など7曲を披露。「声の続く限り、みなさんと一緒に歌い、歩んでいきたい」と呼び掛けた。

 

三陸復興へ歌声でエールを送る八神さん

三陸復興へ歌声でエールを送る八神さん

 

 続いて行われたシンポジウムでは、台湾・長栄大学の邵珮君教授が基調講演したあと、「災害に強い地域づくり」をテーマにパネル討論。「自助、共助、公助の連携、地域の総合防災力を高めることが、これからの災害に強い地域づくりに不可欠」との指摘もあった。

 

 市民ホールの周辺では「防災復興展示会」が開かれ、防災士による講座、応急手当て体験などが行われた。

 

 2日は、「災害看護・災害時の公衆衛生」をテーマに分科会が同ホールで開かれたほか、鵜住居公民館では「いわての復興教育」をテーマにパネル討論が行われた。

 

(復興釜石新聞 2019年6月5日発行 第796号より)

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魚河岸テラスでは支援活動や地域づくりに取り組む団体関係者らと意見交換㊦

防災の思いを世界へ、国連水鳥事務総長特別代表〜鵜住居視察 復興啓発誓う、津波伝承活動関係者と懇談

いのちをつなぐ未来館でスタッフから説明を受ける水鳥事務総長特別代表(左)

いのちをつなぐ未来館でスタッフから説明を受ける水鳥事務総長特別代表(左)

 

 国連の水鳥真美事務総長特別代表(防災担当)は23日、釜石市を訪れ、東日本大震災からの復興状況を視察。震災経験者から当時の避難の様子や、復旧・復興まちづくりに向けた民間の取り組み、被災者の現状についても説明を受けた。就任後、本県を視察するのは初めて。現状を確認した水鳥氏は「住んでいる人々の心の復興が大事。世界の人々のより良い復興、事前予防につながるよう啓発活動に役立てたい」と述べた。

 

 鵜住居町では、市が整備した追悼施設「釜石祈りのパーク」や震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」を視察。野田武則市長、未来館の村上清館長が被災状況や復興まちづくり、教訓伝承に向けた取り組みなどを説明した。

 

 未来館に勤務するかまいしDMCの菊池のどかさんは、中学3年生の時に震災を経験。地震発生時の状況や避難行動、防災の取り組みを静かに淡々と伝えた。

 

 今秋のラグビーワールドカップ(W杯)の試合会場となる釜石鵜住居スタジアムも見学。水鳥氏は「自然の中のスタジアム。楽しみですね」と期待感を示した。

 

 魚河岸地区の魚河岸テラスに移動。市内で被災者支援や地域づくり、人づくり、津波伝承などの活動に取り組む団体関係者らと懇談した。

 

魚河岸テラスでは支援活動や地域づくりに取り組む団体関係者らと意見交換

魚河岸テラスでは支援活動や地域づくりに取り組む団体関係者らと意見交換

 
 話題に上がったのは、8年が経過した被災地の課題。「年月がたつほど、自分の心の痛みを打ち明けられない人もいる」といった多様化、複雑化する被災者の悩み、地域活動やボランティア参加への意欲を高める子どもたちの変化などを聞き取った。

 

 水鳥氏は、世界中でさまざまな災害が起こる現状を踏まえ、「日頃の訓練の重要性などをもっと伝えていかなければならない」との認識。国際機関の役割は伝えることと強調し、「つらい経験を踏まえた生の声から、教訓を発信したいとの気持ちが伝わってきた。釜石の震災経験が世界の災害予防につながれば。啓発活動を進めたい」と語った。

 

 24日は陸前高田市を視察。県庁も訪れた。

 

 水鳥氏が現職に就任したのは2018年3月。震災被災地はこれまで宮城、福島県を訪れている。

 

(復興釜石新聞 2019年5月29日発行 第794号より)

 

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1万人目の来館者となった瀬川さん(左から3人目)

いのちをつなぐ未来館 1万人達成、予想より早く〜授業の一環、視察も相次ぐ

1万人目の来館者となった瀬川さん(左から3人目)

1万人目の来館者となった瀬川さん(左から3人目)

 

 釜石市鵜住居町の津波伝承施設「いのちをつなぐ未来館」の来館者数が16日、1万人を達成した。セレモニーがあり、1万人目の来館者に指定管理者のかまいしDMC(社長・野田武則市長)から花束などの記念品が贈られた。オープンから2カ月足らずでの達成に、「予想以上の早さだ」と関係者。東日本大震災の惨禍と教訓を伝え続ける気持ちを新たにしている。

 

 1万人目となったのは、奥州市水沢の瀬川ハル子さん(73)。数日後に迎える誕生日のお祝いに、長女るみさん(50)と一泊旅行を楽しむ途中で同館に立ち寄った。

 

 瀬川さんは「思いがけないこと」と驚いた様子。鵜住居地区防災センター跡地に整備された追悼施設「釜石祈りのパーク」で、震災の津波で犠牲になった親族の名も確かめ、「忘れられない、忘れてはいけない場所だと感じた。また訪れたい」と言葉をかみしめた。

 

 未来館は、鵜住居駅前周辺に整備された公共施設(愛称=うのすまい・トモス)の一つで、3月23日にオープンした。震災の津波の痕跡が残る壁や津波来襲の時刻を示す壁時計などの遺物、釜石の防災教育と震災当時子どもたちがとった避難行動、生存者の証言など展示物で震災の教訓を伝える。最新技術のシステムで体を動かしながら津波の仕組みを学ぶこともできる。

 

 当初、年間1万6千人の来館者を目標に設定していた。かまいしDMCでは、津波から避難した経験を持つ運営スタッフの話をじかに聞いたり注目度の高さもあり、来館者数が伸びたと分析。県内の中高生が授業の一環で訪れたり、行政や企業の視察も相次ぐ。

 

 セレモニーに出席した野田市長は「祈りのパークと合わせ、この場所の存在、重さを痛感。忘れてはならない場、悲劇を繰り返さないため教訓を伝える施設であり、さらに多くの人に訪れてほしい。展示の内容も充実させたい」と述べた。

 

 同じ日にオープンした観光交流拠点施設「鵜の郷(うのさと)交流館」はすでに来館者1万人を達成。15日までで、2万6226人となっている。

 

(復興釜石新聞 2019年5月18日発行 第791号より)

 

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手をつないで避難する園児と児童

手を携え仲良く高台避難〜平田小と平田こども園、共助の心 訓練で養う

手をつないで避難する園児と児童

手をつないで避難する園児と児童

 

 平田小(中野順一校長、児童153人)と、隣接する平田こども園(小松美香園長、園児66人)は7日、合同で避難訓練をした。大きな地震の発生に伴い津波注意報が出されたとの想定。児童らは避難の流れや園児の避難支援の方法などを確認しながら共助の心を養った。

 

 合同訓練は、昨年開園したこども園が市立幼稚園として運営、園舎が建設された4年前から行っている。小学校とこども園は道路を挟んで約50メートルの距離にあり、低学年の児童の学習に園児が参加したりして交流している。

 

 午前9時45分、同時に訓練開始。小学校では児童が机の下に入って難を逃れた後、校庭に集まった。こども園の園児らは全員が園庭に待機。さらに、高台にある指定避難場所の君ケ洞広場を目指し、約300メートルの避難経路を歩いた。

 

 6年生30人が園児の手を取り誘導。園児が不安がらないよう「もう少しだよ、頑張れ」などと励ましたり、歩道側を歩かせたりして気を配った。1年生には5年生が付き添って移動。約10分で避難場所に到着した。

 

 反省会で、児童は「素早く安全に行動できた」などと感想を発表した。中野校長は「立派に避難できた。訓練は大事で、まずは自分の命を守ってほしい。注意報は災害のおそれがあるということ。少し時間がある場合は高学年が中心となり、こども園の友達と避難してほしい」と講評。小松園長は「小学生の格好いい姿を見習って、避難することを少しずつ覚えてほしい」と期待した。

 

 山崎陸翔君(6年)は、園児の手を引いて逃げるという体験に緊張したが、声掛けや歩く速さを園児に合わせるよう心掛けた。「責任を持ってできた」と充実した表情。しっかりと訓練に取り組み、有事の際の心構えや助け合いの意識を高めた。

 

 平田小では年6回の避難訓練を予定。火災、不審者対応訓練なども行う。

 

(復興釜石新聞 2019年5月11日発行 第789号より)

 

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佐藤釜石分駐隊長は隊員と共に安全への決意を表明

釜石道 事故抑止へ全力、県警高速隊釜石分駐隊活動開始〜釜石署で発足式、隊員19人 決意新たに

佐藤釜石分駐隊長は隊員と共に安全への決意を表明

佐藤釜石分駐隊長は隊員と共に安全への決意を表明

 

 県警(島村英本部長)は釜石周辺の高速道路網が整備されたことを受け、交通の安全を担う高速道路交通警察隊釜石分駐隊を編成。11日、釜石警察署で発足式を行った。島村本部長の激励を受け、佐藤喜博分駐隊長(警部)ら隊員19人は、東日本大震災からの復興を支える大動脈の交通事故抑止へ決意を新たにした。

 

 島村本部長は「三陸沿岸道路及び東北横断自動車道釜石秋田線は沿岸地域の『希望と命の道』といわれる。釜石分駐隊は治安確保、交通事故防止で復興の一助を担うよう願う。隊員は緊張感を持った高い士気の職務執行を」と激励した。

 

島村本部長(前列中央)ら幹部も隊員を激励

島村本部長(前列中央)ら幹部も隊員を激励

 

 釜石市の窪田優一副市長、南三陸国道事務所の折笠徹所長はそれぞれ、分駐隊への期待を述べた。高速道路交通警察隊の吉田孝夫隊長(警視)が謝辞。佐藤分駐隊長は「隊訓(融和団結、敏速確実、創意実行)を順守し、釜石秋田線、三陸沿岸道路の治安を確保し、事故防止に全力を尽くす」と決意を表明した。

 

 東北横断道釜石秋田線の釜石道は3月9日に釜石ジャンクションで三陸沿岸道と結節、全線が開通した。これを受け、県警は高速道路交通警察隊に釜石分駐隊を新設した。同警察隊は本隊のほか、北上、西根、一戸に釜石を加え4分駐隊で編成し、吉田隊長以下90人体制で活動する。

 

 釜石秋田線での活動は、花巻以東の延伸に応じ、2013年6月、本隊直轄隊釜石対策班を花巻市東和町に設置していた。釜石分駐隊の発足に伴い、同分駐隊東和分遣班に改称した。パトカー、事故処理車など合計9台を運用する。

 

 釜石分駐隊の管轄範囲は釜石市を中心に釜石道66・4キロ、三陸道は宮城県境から釜石北インターチェンジ(IC)まで約60キロ。大槌町内の整備に伴い、管轄区間はさらに伸びる。

 

 佐藤分駐隊長は「高速道路の安全確保が第一の職務。大動脈の交通障害は社会的な影響が大きい。利用者には、天候と路面状況に応じた速度、十分な車間距離に留意してほしい。動物の飛び出しによる衝突事故も散見される」と安全運転を呼び掛けた。

 

(復興釜石新聞 2019年4月10日発行 第781号より)

 

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釜石初の女性消防士に〜震災機に防災意識高める、いずれは救急救命士へ

釜石初の女性消防士に〜震災機に防災意識高める、いずれは救急救命士へ

「優しい職場。配慮もうれしい」と意欲を高める多田さん

「優しい職場。配慮もうれしい」と意欲を高める多田さん

 

 釜石大槌地区行政事務組合消防本部(金野裕之消防長)に初の女性消防士が誕生した。遠野市宮守町出身の多田和佳菜さん(19)が採用試験に合格。1日、同期の男性3人と共に辞令を受け、「女性の視点で、震災で被災した地域住民に役立つ仕事をしたい」と意気込みを語った。

 

 多田さんが消防職員を志した背景には、小学生の時に起こった震災が大きく影響したという。中学時代は大槌中と交流があり、合唱でエールを交換。住民からも震災や復興の話を聞き、防災意識を高めた。

 

 小学生の時には野球に取り組み、中学から陸上、駅伝、空手と幅を広げた。花巻南高から専門学校に進み、消防職員の採用試験に挑んで見事合格。「いずれは救急救命士になりたい。火災予防でも、女性の視点で役に立てればうれしい」と思いを膨らませる。

 

 男性ばかりの職場に飛び込むことになるが、「性格は負けず嫌い。自分が(釜石広域消防の)女性消防士第1号になる」と前向きに考える。

 

 釜石広域消防では、女性職員の加入による住民サービスの向上、組織の活性化、優秀な人材の確保を期待してきた。2015年に成立した「女性の職業生活における活躍の推進に関する支援対策推進法」を追い風に、受け入れ準備を強化した。

 

 ハード面では、釜石、大槌の両消防署庁舎にそれぞれ、女性職員に対応した設備やスペースを確保。ソフト面では、中学校や高校での消防訓練でアピールするほか、職場説明会などで呼び掛けている。

 

 女性職員を受け入れる意識向上も強化。ハラスメント(パワー、性別など)に関する職員研修などを重ね、理解を深めていた。同本部の岩間英治総務課長は「多田さんを迎え、ハラスメントの考え方を再確認、共有する」と今後の姿勢を示す。

 

 多田さんら4人は、今月3日に県消防学校に入校。10月に卒業し、新たな配属先で現場業務をスタートする。

 

 多田さんの配属と勤務体制については、10月までに検討を重ねる。また、20年度までに2人目の女性を採用し、複数体制を目指す。

 

 県内の12消防本部では17年度末で36人の女性消防士が勤務。未採用は釜石大槌広域など3本部となっていた。

 

(復興釜石新聞 2019年4月6日発行 第780号より)

 

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「うのすまい・トモス」完成間近、報道関係者向け現地説明会〜今月末の事業完了を予定、「震災8年」11日に一時公開

「うのすまい・トモス」完成間近、報道関係者向け現地説明会〜今月末の事業完了を予定、「震災8年」11日に一時公開

鵜住居駅前地区に整備が進む「うのすまい・トモス」。左から「釜石祈りのパーク」「いのちをつなぐ未来館」「鵜の郷交流館」

鵜住居駅前地区に整備が進む「うのすまい・トモス」。左から「釜石祈りのパーク」「いのちをつなぐ未来館」「鵜の郷交流館」

 

 釜石市は6日、鵜住居町の鵜住居駅前周辺に整備を進めている公共施設(愛称=うのすまい・トモス)の報道関係者向け現地説明会を開いた。津波伝承施設「いのちをつなぐ未来館」は東日本大震災の遺物や生存者の証言など展示物、津波の仕組みを体験的に学ぶシステムの設置を終えたことから内覧。鵜住居地区防災センター跡地にできる追悼施設「釜石祈りのパーク」と観光交流拠点施設「鵜の郷(うのさと)交流館」は整備状況を説明した。これらの施設は、震災8年となる11日に一時公開。両館は三陸鉄道リアス線の全線開通に合わせて23日に開館する。

 

 内覧された未来館は木造平屋建て、延べ床面積は334平方メートル。入ってすぐに防災学習室があり、NTTドコモと岩手大が連携して制作した「津波の仕組み学習システム」を展示する。同社の特許技術を活用したもので、ディスプレーに映ったCG(コンピューターグラフィックス)映像を離れた場所から疑似的に触って動かすと、地形や水面のCGが変化。体を動かしながら津波発生の仕組みを学び、理解を深めることができる。

 

 展示室には震災の被害状況などを伝えるパネルや映像、当時の市職員らの手書きメモ、被災を物語る避難場所の標柱、遺留品などが並ぶ。津波で多くの犠牲を出した同センターの事実を伝えるコーナーでは悲劇を検証した結果のほか、津波の痕跡が残る壁や遺族が設けた祭壇、追悼の品々も紹介。釜石の防災教育を伝える一角では、震災当時子どもたちがとった避難行動をパネルで解説している。

 

 書籍や写真などを収蔵する資料閲覧室も配置した。事業費は約1億8千万円。ほとんどを復興交付金、全国自治体や企業からの寄付金で賄った。

 

 市震災検証室の臼澤渉室長は「復興が進む中、語り継ぐことが課題。子どもたちや地域住民らが集い、教訓を伝える施設にしたい」と見据えた。

 

震災の教訓を発信する展示を報道陣に公開

震災の教訓を発信する展示を報道陣に公開

 

 祈りのパークは約4900平方メートル。震災犠牲者を慰霊、追悼し、生きることの大切さ、素晴らしさを感じる場として整備。震災犠牲者の芳名板・献花台を備えた慰霊碑のほか、震災の津波の高さを示すモニュメント、市防災市民憲章碑、防災センター跡地を示す碑を設ける。中央の慰霊の場は階段で結ばれ、円形の緩やかなスロープに沿ってパーク内を巡ることもできる。

 

 11日に献花式などを行う。仕上げ舗装、スロープなど一部外構工事が残り、12日から22日は入場を制限。3月末の事業完了を予定する。

 

 交流館は木造平屋建て、延べ床面積538平方メートル。テナントとして3事業者4店舗(物販2店、飲食2店)が入る。飲食スペース(72席)、情報案内スペースも配置。併設するトイレは24時間使用できる。建物は完成しており、開館に向け事業者らが陳列など準備を進めている。

 

(復興釜石新聞 2019年3月9日発行 第772号より)

 

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親子の部のスタート。子どもの手を引き、仙寿院目指してダッシュ!

教訓つなぎ 駆け上がる〜仙寿院で6回目 新春韋駄天競争、過去最多154人 高台へ

親子の部のスタート。子どもの手を引き、仙寿院目指してダッシュ!

親子の部のスタート。子どもの手を引き、仙寿院目指してダッシュ!

 

 津波発生時は一目散に高台へ―。東日本大震災の教訓をつなぎ、津波から命を守る避難行動を意識づける「新春韋駄天(いだてん)競走」が3日、釜石市大只越町の日蓮宗仙寿院(芝﨑恵応住職)をゴール地点に行われた。兵庫県西宮市、西宮神社の開門神事「福男選び」をヒントに、2014年から始まった同寺の節分行事。6回目を迎える今年は6部門に過去最多の154人が参加し、津波浸水区域から境内に続く急坂を懸命に駆け上がった。

 

 只越町の消防屯所付近を出発点に、津波避難場所となっている同寺(標高約30メートル)までの286メートルのコースで実施。スターターを務める野田武則市長、釜石シーウェイブス(SW)RFCゼネラルマネジャー兼監督の桜庭吉彦さんらの銅鑼(どら)の音を合図に各部門がスタート。道幅が狭く、急カーブもある参道を必死に走り切り、迅速な津波避難の重要性を心に刻んだ。

 

 野田町の高橋千佳子さん(39)は1歳になったばかりの愛娘、美羽ちゃんと親子の部に初参加。所々で抱っこしながら歩みを進め、無事、境内にたどり着いた。「よちよちですけど歩くようになったので、出てみようと。成長したらこの経験を聞かせ、行事の意味を伝えたい」と千佳子さん。3回目の参加となる夫直樹さん(39)、息子友輝君(6)と一緒に防災意識を高め、家族4人の絆を結んだ。

 

力を合わせ坂を上る高橋さん親子(左)

力を合わせ坂を上る高橋さん親子(左)

 

 各部門の1位には「福男」「福女」などの認定書と共に、同神社から福の神「えびす様」の木像、SWからタンブラーの記念品が贈られた。芝﨑住職は「悪天候の中での津波避難もあり得る。いつ、どこで、どんな災害に遭うか分からない。自分の身を守って逃げることだけは多くの人に伝えてほしい」と全員に呼び掛けた。

 

各部門の1位「福親子、福男、福女、福少年」が勢ぞろい

各部門の1位「福親子、福男、福女、福少年」が勢ぞろい

 

 男性29歳以下の「福男」となった高橋隆史さん(19)は、宅地造成などの復興事業を手がける熊谷組釜石中央ブロック作業所に勤務。毎年、参加している職場の先輩らと7人でレースに挑んだ。「練習では転んだりもしたが、完走でき、1位も取れてほっとしている。高台避難のイメージを観客にも伝えられたらと思い走った」と元陸上部の本領発揮。一関市出身。震災復興での地元貢献を志して入社し、昨年5月、釜石に赴任した。「あと1年ほどで終了予定の工事が無事故、無災害で終えられるよう自分自身も頑張りたい。早期復興が一番の願い」と社会人2年目を迎える本年に希望を膨らませた。

 

ゴールまでもう少し。最後の力を振り絞り、走る男性参加者=仙寿院境内

ゴールまでもう少し。最後の力を振り絞り、走る男性参加者=仙寿院境内

 

 同行事は、関東在住の釜石出身者有志が中心となって11年に発足した「釜石応援団ARAMAGI Heart(あらまぎはーと)」が発案。津波の教訓を地域に根付いた形で未来に伝えたいと仙寿院に相談し、実現させた。釜石在住メンバーで運営責任者の下村達志さん(43)は「趣旨をちゃんと理解し、参加してくれている人が多いのがうれしい。特に親子の参加が増えている。震災後に生まれた子どもたちに、親が津波の事実を伝え、どう行動しなければならないかを教えている証しで、非常に意義深い」と、6年目の手応えを実感した。

 

レース後は海に向かって震災犠牲者に黙とう

レース後は海に向かって震災犠牲者に黙とう

 

 高橋さん以外の各部門の1位は次の通り。

 

 【親子】後藤竜也(47)、尚希(11)=花巻市【女性】新田彩乃(31)=花巻市【小学生】菅原優作(12)=釜石市【中高生】照井海翔(15)=花巻市【男性30歳以上】佐藤芳行(30)=釜石市

 

(復興釜石新聞 2019年2月6日発行 第763号より)

 

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