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秋の自然を体感!五葉山トレッキング 森林ガイドが紹介 釜石の魅力「再発見して」

秋の五葉山を味わうトレッキングツアー

秋の五葉山を味わうトレッキングツアー

 
 秋の行楽期、山肌に紅葉が映える魅力的な季節-。釜石、大船渡、住田の3市町にまたがる三陸沿岸最高峰・五葉山(標高1351メートル)では6日、地元の森林インストラクターがガイドを務める初心者向けのトレッキングツアーがあった。色づく木々や草花、落葉で見えてくる樹形など秋ならではの楽しみ方を体感しながら、ゆっくり時間をかけて散策。残念ながら山頂は霧が濃く、絶景は“おあずけ”となったが、「次こそは」と楽しみを残す。
 
 釜石ならではの体験プログラムを集めた「Meetup Kamaishi 2024」の秋季企画の一つ。釜石市が主催し、観光地域づくり法人かまいしDMCが実施主体として事務局を担う。この日は事務局スタッフを含め、8人が参加。20~70代と年代は幅広い。
 
 案内役は、森林インストラクターの石塚勇太さん(34)。釜石・甲子町を拠点に林業やそれに関わるものづくり、研修の受け入れなどを手がけ、人と森、自然とをつなげている。趣味を仕事にというほどの「樹木好き」と自負。知識だけでなく、そうした楽しみが伝わるガイドで引き込む。
 
森林インストラクターの石塚勇太さんが案内

森林インストラクターの石塚勇太さんが案内

 
 「久しぶりの…」という人が多い今回の山登りは、両市境の赤坂峠登山口がスタート地点。人の手が入って歩きやすいよう整備されており、初心者にも優しいコースだ。石塚さんは入山前に、岩手県立自然公園、日本三百名山、花の百名山に選定される五葉山の歴史を説明。藩政時代、伊達藩にとって重要な山だったことから「御用山」と言われていたことが由来とされるが、のちに、山で多く見られるゴヨウマツ(五葉松)にちなんでその名で呼ばれるようになったという。
 
 そして、“本領”の植生解説。「賽(さい)の河原」と名がついた地がある3合目までに見られるのはコナラ、クリ、サクラ、ケヤキなど暖温帯~冷温帯の木々で、そこから9合目にある避難小屋「石楠花(しゃくなげ)荘」までにはミズナラ、ブナ、ダケカンバ、アオモリトドマツなど冷温帯、亜高山帯の植物が混生する。御用山の由来とされる、「伊達藩直轄の火縄産地」として守られたヒノキアスナロも自生。そして、山頂に向かう道では亜高山帯植物のハイマツ、コケモモ、ガンコウランなど低木が根を張る。
 
豊かな植生が見られる登山道を歩く参加者

豊かな植生が見られる登山道を歩く参加者

 
標高によって変わる植生に参加者は興味津々

標高によって変わる植生に参加者は興味津々

 
 「五葉山はおもしろい山」と石塚さん。山頂に向かって歩を進めると、どんどん樹種が変わり、気温の変化が感じられるからだという。高木が生い茂る道を抜けると視界が開ける場所があったり、「同じ木でも小柄なのは風が強いから成長できない。自然のおもしろさ」とニヤリ。固有種「ゴヨウザンヨウラク」(ツツジ科ツツジ属)の存在も特徴とするが、今回は花期ではないことから説明だけにとどめた。
 
解説の時間は休憩の時間。ヒバとクロベの違い(右下・左の写真)やゴヨウマツの特徴(同・右の写真)を紹介したり

解説の時間は休憩の時間。ヒバとクロベの違い(右下・左の写真)やゴヨウマツの特徴(同・右の写真)を紹介したり

 
 秋の気配を感じる登山道には落ち葉も多い。やわらかく歩きやすいようだが、終始曇り空のこの日は、植物には水滴が付着していたこともあり、道が湿っていて滑りそうになることも。それでも参加者は、季節を勘違いしたのか花開くツツジや秋咲きの草花フデリンドウを見つけたり、シラカバとダケカンバの特徴や違いを確認したり…さまざま寄り道を楽しみながら3時間かけて頂上に立った。
 
色づき始めた木々の間を歩いて山頂を目指す参加者

色づき始めた木々の間を歩いて山頂を目指す参加者

 
登山道から大船渡市の街並みが見えた瞬間があった

登山道から大船渡市の街並みが見えた瞬間があった

 
ツツジ⁉、フデリンドウなどかれんな花が咲いていた

ツツジ!?、フデリンドウなどかれんな花が咲いていた

 
 山頂は真っ白な霧に包まれ、四方の景色を望むことはできなかったが、参加者は達成感を味わった。食事休憩後、さらなる解説を耳にしながら2時間ほどかけて下山。「歩きながら植物観察したり、参加者と話しながら登れて楽しかった」「故郷の山だから、一度は登りたかった。60代にして初登頂。山の楽しみ方はさまざまあると知った」「天気のいい日に来たい」などと感想を伝え合った。
 
「五葉山」と記された看板を囲んで記念写真

「五葉山」と記された看板を囲んで記念写真

 
 最高齢の参加者は、平田の西野徳和さん(77)。昨年11月に愛知県名古屋市から移住し、ラグビーの試合観戦や三陸鉄道での旅、囲碁などで釜石生活を楽しむ。春から毎週のようにこの山に通っていて、5合目辺りでUターンして「しゃくなげの湯っこ五葉温泉」(大船渡)に寄るのが、お決まりのコース。健康維持のためトレーニングとして続ける考えで、「緑いっぱいで、海もあり、釜石はいいよ」と笑みを広げた。
 
 「天気のいい日に登りに来て。山頂からの景色がすごくいい」と石塚さん。一度では紹介しきれないほど多くの植物が見られることもあり、「本当の良さを体感してほしい。山の魅力を広く伝えたい」と望む。
 
思い思いに五葉山の魅力を楽しんだ参加者

思い思いに五葉山の魅力を楽しんだ参加者

 
道を譲り合って言葉を交わすのも登山の魅力

道を譲り合って言葉を交わすのも登山の魅力

 
 かまいしDMCの平澤果鈴さん(24)は「釜石の隠された魅力を発見、知って楽しんでもらえたら。案内役となる、ある分野に詳しい人(鉄人)に会いに来てほしい」と呼びかける。ミートアップ関連プログラムとして「くるみ細工体験」(参加費あり)を用意。11月16日(土曜)の午前9時半~、会場は鵜住居町の根浜キャンプ場レストハウスで、講師となる鉄人は石塚さん。問い合わせは同レストハウス(電話0193-27-5455)へ。

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JR観光列車「ひなび」三鉄に初乗り入れ 鉄道がつなぐ秋旅!いわて観光キャンペーン進行

三陸鉄道リアス線を走るJRの観光列車「ひなび」=釜石市鵜住居町

三陸鉄道リアス線を走るJRの観光列車「ひなび」=釜石市鵜住居町

 
 JR東日本の観光列車「ひなび(陽旅)」が9月28日、初めて三陸鉄道に乗り入れた。釜石駅では両社の関係者らが宮古駅からやって来た乗客をお出迎え。津軽三味線と墨絵という和のテイストたっぷりの催しで新しい魅力を発信した。いわて観光キャンペーン推進協議会とJR盛岡支社が主催する「いわて秋旅キャンペーン」の開始に合わせた企画。岩手県内の観光素材をピックアップし多彩なプログラムを提案していて、12月31日まで楽しめる。
 
 ひなびは通常、JRの東北本線、釜石線の盛岡-釜石間で運行されている。三鉄リアス線に乗り入れるのはこれが初めて。開業40周年を迎えた三鉄と連携し、3つのツアーを用意して団体客向けの臨時列車として運行した。グリーン車・普通車の2両編成で、定員は59人。満席となった車両は宮古駅を出発し、乗客は三陸海岸の景色や地元食材をふんだんに使った弁当を味わいながら釜石駅に到着した。
 
大きな窓から三陸の景色を楽しんだ乗客が釜石駅に降り立ち、関係者が歓迎した

大きな窓から三陸の景色を楽しんだ乗客が釜石駅に降り立ち、関係者が歓迎した

 
JR(手前)と三鉄(右)の運転士が引き継ぎのあいさつをする場面も

JR(手前)と三鉄(右)の運転士が引き継ぎのあいさつをする場面も

 
 釜石駅でのもてなしは、墨絵のライブペイント。JRの髙橋恒平釜石駅長(44)による津軽三味線の演奏に合わせ、日高寺(礼ケ口町)の菊池錬城住職(47)がえとにちなみ龍(竜)を描いた。ひなびと伝統芸能の虎舞をテーマにした作品も事前に仕上げてあり、キャンペーン期間中、2作品が駅構内に展示される。
 
JR釜石駅長と日高寺住職による墨絵ライブイベント

JR釜石駅長と日高寺住職による墨絵ライブイベント

 
三味線の演奏と墨絵のパフォーマンスを乗客らが見守った

三味線の演奏と墨絵のパフォーマンスを乗客らが見守った

 
 「ひなびに乗ってみたかった」という人が多く、大槌町の佐藤忠義さん(71)は「車内は快適で、ゆっくり走ってくれたり、サービスも歓迎もされ楽しかった。ビールを飲みながら海鮮弁当を味わえたし、相席になった人と話すのもいい思い出になった」と満喫。盛岡市の小学4年生、葛巻澪緒莉さんは「大きな窓から見える景色がきれいだった」とはにかみ、母親の史子さんは「車内モニターに運転席から見える風景が映し出されていたのが印象的」と笑顔を見せた。約1時間の停車時間に駅周辺を散策。関係者に見送られながら、終点の盛岡駅に向かった。
 
「ひなびに乗ってみたかった」。希望をかなえた家族連れ

「ひなびに乗ってみたかった」。希望をかなえた家族連れ

 
横断幕を掲げ、ひなび「秋は短し旅せよ岩手号」を見送る関係者

横断幕を掲げ、ひなび「秋は短し旅せよ岩手号」を見送る関係者

 
 三鉄の山蔭康明駅長(60)は、沿岸部を出発点とした鉄道旅を歓迎。「互いに取り組みながら交流する機会が増え、沿岸がにぎやかになるといい」とうなずいた。8月中旬に県内に上陸した台風5号の影響で、一部区間で運休が続くが、40周年記念事業は進行中。10月6日~11月10日までの土、日曜を中心に釜石駅-盛駅間で「あわび列車・まつたけ列車」を運行する。秋の味覚づくしで三陸の魅力を上乗せ。上下線でメニューが異なり、「景色と豪華2大食材をぜひ楽しんで」とアピールする。
 
 同キャンペーンは10月1日にスタート。「秋は短し旅せよ岩手」をキャッチコピーに、県内の多彩な魅力の発信や企画を実施しながら、県全域への誘客を図る。沿岸エリアでは長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」や三陸の絶景日の出クルーズ(宮古市・田野畑村)、おおつち潮風テントサウナ(大槌町)といった自然体感スポットを紹介。グルメ・お酒ではヤマキイチ商店 ガストロノミーツアー(釜石市)などのイベントを提案している。
 
改札付近に設置された墨絵作品。ひなびの車内装飾品として使われている花巻市無形文化財「成島和紙」(左下の写真)に描かれた

改札付近に設置された墨絵作品。ひなびの車内装飾品として使われている花巻市無形文化財「成島和紙」(左下の写真)に描かれた

 
 JR釜石駅では10月12日に「鉄道まつり2024」を予定する。釜石初企画の運転シミュレーター体験のほか、鉄道模型(Nゲージ)展示、ひなびの塗り絵展示などの催しを用意。髙橋駅長は「おいしいものがあり、紅葉が美しい季節を迎える。岩手は広く、まだ知らない魅力がある。ひなび、列車でたくさん旅をしてほしい」とPRした。

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知って食べて遊んで大満足!釜石まんぷくフェス 市内外の味を一堂に 地元特産物はお振る舞いで

釜石まんぷくフェス2024=9月23日、釜石鵜住居復興スタジアム

釜石まんぷくフェス2024=9月23日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
 釜石市の秋恒例の味覚イベント「釜石まんぷくフェス」が9月22、23の両日、釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた。コロナ禍による中止後、名称を変更。同スタジアムで開かれるラグビー交流試合「釜石絆の日」イベントと日程を合わせて開催されるようになって3年目となる今年は市内外から約70の出店があり、多くの来場者でにぎわった。地元農水産物のお振る舞い、林業機械の操作体験なども人気を集めた。2日間の来場者数は約2500人(主催者発表)。
 
 同イベントは釜石観光物産協会が主催。スタジアムのグラウンド外周を会場に、キッチンカーやテントで各店が自慢の味を販売。同市の姉妹都市や友好都市も特産品を持ち寄り出店した。焼き物、揚げ物、煮込み料理、デザート類などメニューは多種多様。来場者は会場を回って好みのものを買い求め、その場で味わったり、土産用に持ち帰った。
 
市外からの出店も多数。各地の“おいしいもの”が集まったフェス会場

市外からの出店も多数。各地の“おいしいもの”が集まったフェス会場

 
 釜石湾で養殖される「釜石はまゆりサクラマス」は、同フェスに初めてお目見え。市内の水産加工業者が味付けした幽庵焼きで、1日300食限定で振る舞われた。同魚は
2020年から試験養殖が始まり22年に事業化。サクラマス養殖では生産量日本一を誇り、不漁の秋サケに代わる新たなブランド魚として同市がPRしている。
 
 遠野市の新田佳祐さん(27)は初めて食べる同サクラマスに「すごく脂が乗っていておいしい魚。甘さが感じられる味付けもいい」と舌鼓。「こういう新しい魚で地域が活性化すればうれしいこと。もっと皆さんに食べてもらえるといいのでは」と話した。同フェスへの来場は2回目。家族4人で楽しみ、お持ち帰り用に海産物や県外の特産品なども購入。「毎年続けてほしい」と来年以降にも期待した。
 
幽庵焼きで味わう釜石はまゆりサクラマスのお振る舞いは大人気。開始前から長蛇の列ができた

幽庵焼きで味わう釜石はまゆりサクラマスのお振る舞いは大人気。開始前から長蛇の列ができた

 
初めて食べるはまゆりサクラマスに笑顔を見せる親子

初めて食べるはまゆりサクラマスに笑顔を見せる親子

 
 地元農産物をPRしようと今回初めて振る舞われたのは、釜石産野菜のスープ。タマネギ、ピーマン、ジャガイモ、ニンニクのほか、同市が新たな特産品として生産拡大を進めるクッキングトマト「すずこま」を材料にした。同市に養鶏場を持つオヤマ(本社・一関市)の鶏肉「いわいどり」も使用。トマトベースの味付けでミネストローネ風に仕上げた。300食限定に長い列ができ、1時間ほどで大鍋が空になった。
 
釜石産野菜スープのお振る舞いも大好評。“オール釜石”の食材で地元農産物をPR

釜石産野菜スープのお振る舞いも大好評。“オール釜石”の食材で地元農産物をPR

 
野菜スープにはお好みでチーズをトッピング。「おいしい!」とピースサインの子ども

野菜スープにはお好みでチーズをトッピング。「おいしい!」とピースサインの子ども

 
 市内の農産物生産者らが出店する「かまいし軽トラ市」も同時開催。季節の野菜や加工品を販売した。栗林町の小笠原房子さん(74)はリンゴや同ジュース、カボチャ、ピーマン、ミョウガなどを販売。来店者と食べ方の情報交換もし、「お客さんと会話しながら販売できるのがいい」とコミュニケーションを楽しんだ。リンゴ栽培は3代にわたり、「先祖が残してくれた農地をできるだけ生かし、栽培を続けたい」と話した。
 
初夏から秋にかけ月1回開催中の「かまいし軽トラ市」も同時開催。季節の野菜や果物を販売した

初夏から秋にかけ月1回開催中の「かまいし軽トラ市」も同時開催。季節の野菜や果物を販売した

 
ピーマン釣りを楽しむ子ども。体験者には複数のピーマンをプレゼント。会場では就農相談も実施

ピーマン釣りを楽しむ子ども。体験者には複数のピーマンをプレゼント。会場では就農相談も実施

 
 地元高校生発案の新商品も販売された。釜石商工高総合情報科の3年生8人が、ジェラート(氷菓)販売を手掛けるかまいしDMCとコラボし完成させた「Kamanasu berry(カマナス ベリー)」。ヨーグルトベースのアイスの上に、同市根浜海岸に自生する海浜植物“ハマナス”の実を使ったソースをかけたオリジナルジェラートだ。同社の「さんりくジェラート」キッチンカーで200個を限定販売した。
 
 生徒らは課題研究の授業の一環で商品開発に取り組んだ。「ラグビーのまち釜石」を盛り上げる一助にと、地元チームの日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)をイメージした商品を考えた。ハマナスの実にラズベリーを加えた赤いソースでチームジャージーの色を表現。マスコットキャラクター“フライキー”に似せたホワイトチョコをトッピングした。開発メンバーの一人、山地結逢さんは「ハマナスの酸味とラズベリーの甘みが絶妙にマッチし、ベースのアイスとの相性も抜群。自信作です」と太鼓判。今回のジェラートメニューの中で一番の売れ行きを見せた。10月26、27の両日開催される「商工祭」では同商品のアレンジ版を販売予定だという。
 
自分たちのアイデアを形にしたジェラート「Kamanasu berry」を販売した釜石商工高生。色鮮やかなソースで釜石ラグビーを応援

自分たちのアイデアを形にしたジェラート「Kamanasu berry」を販売した釜石商工高生。色鮮やかなソースで釜石ラグビーを応援

 
 イベント初出店で市民との“再会”を喜んだのは、9月上旬に「US COFFEE(アス コーヒー」という念願のコーヒー店を住田町にオープンした釜石市出身の植田真治さん(38)。震災後にUターンし同市職員として働いていたが、夢の実現へ一念発起。約13年の市役所勤務にピリオドを打ち、起業を決めた。Uターン後、家族と暮らしてきた住田町に「人の集まれる場所を作りたい」と、町の商店街に店を開いた。これまで世話になった釜石への感謝の気持ちも込めた同フェスへの出店。「市役所ではスポーツ関連の業務に従事し、このスタジアムも担当していたので感慨深い。今までと違う立場からこの場所を見られるのも楽しい」とほほ笑んだ。
 
元釜石市職員の植田真治さん(右)は自慢のコーヒーを販売。顔なじみの市民が多数立ち寄った

元釜石市職員の植田真治さん(右)は自慢のコーヒーを販売。顔なじみの市民が多数立ち寄った

 
 会場では地元林業と触れ合える企画も。昨年までの親子木工教室に加え、今年は林業機械の操作体験が人気を集めた。現場で作業効率向上に貢献している機械で、1台で「切る。つかむ。掘る。」の三役をこなす車両も。作業員と一緒に運転席に座り、高性能機械を操作した子どもたちは大興奮だった。釜石地方森林組合の高橋幸男参事は「林業の裾野を広げるいい機会。多くの子どもたちに触れてもらい、将来の担い手育成にもつながっていけば」と期待。同組合では震災後の2013年から小中高生を対象とした林業体験も実施していて、同体験が組合への就職に結びついたケースもあるという。
 
「働く自動車展」に初お目見えした林業機械の操作体験。釜石地方森林組合の職員と一緒に機械を動かす

「働く自動車展」に初お目見えした林業機械の操作体験。釜石地方森林組合の職員と一緒に機械を動かす

 
県建設業協会釜石支部青年部の高所作業車は約15メートルの高さまで上昇。乗車した人たちは最高の眺めを満喫

県建設業協会釜石支部青年部の高所作業車は約15メートルの高さまで上昇。乗車した人たちは最高の眺めを満喫

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雨でも楽しいニジマス釣り 橋野・親水公園で家族連れら挑戦 四季まつり第3弾

「やったー!」釣り上げたニジマスに歓声を上げる親子=22日、橋野町

「やったー!」釣り上げたニジマスに歓声を上げる親子=22日、橋野町

 
 釜石市橋野町の産地直売所「橋野どんぐり広場」隣の親水公園で22、23の両日、ニジマス釣り大会が開かれた。橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)と栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が共催する「はしの四季まつり」の第3弾。例年は一日限りのイベントだが、降雨の影響により急きょ翌日も開催した。
 
 園内の水車小屋から延びる小川に、滝沢市の養魚場から仕入れたニジマス約500匹を放流。地元住民が手作りした竹ざおを貸し出して、トウモロコシの粒を餌に釣りを楽しんでもらった。
 
 22日はあいにくの雨模様。いつもは上から魚群が見える小川も雨粒がはねて視界が悪く、ほぼ手探りでさおを出した。それでも魚の食いつきは思ったより悪くなく、釣りの醍醐味(だいごみ)の“引き”は十分。釣り上げた子どもらは目を輝かせ、楽しい思い出を心に刻んだ。
 
橋野どんぐり広場隣の親水公園。水車小屋から連なる小川にニジマスを放流

橋野どんぐり広場隣の親水公園。水車小屋から連なる小川にニジマスを放流

 
雨がっぱに長靴姿で釣りを楽しんだ=22日午前

雨がっぱに長靴姿で釣りを楽しんだ=22日午前

 
トウモロコシの粒を針に付けて釣る。水中から引き上げると生きのいいニジマスが姿を現した

トウモロコシの粒を針に付けて釣る。水中から引き上げると生きのいいニジマスが姿を現した

 
 同市の小学生、中財帆南美さん(9)は初めてのニジマス釣りで見事6匹をゲット。「引き上げる時は魚の力が強くてびっくり。上げるのが大変だった」と声を弾ませた。家庭では魚をよく食べ、好きな魚はホッケ。「ニジマスは食べたことがないので楽しみ」と夕食を心待ちにした。父誠さん(41)は以前、アユ釣りにも出かけたが、しばらくご無沙汰。「久しぶりに釣りができて楽しかった。子どもにもいい経験になる」と喜び、「人間は自然界の命をいただいて生きているので、無駄なく大切に食べることも学んでくれたら」と期待した。
 
自分で釣り上げた魚に笑みがこぼれる

自分で釣り上げた魚に笑みがこぼれる

 
体長20センチ以上の大物にうれしさいっぱい!

体長20センチ以上の大物にうれしさいっぱい!

 
振興協の女性たちが内臓も取ってくれて至れり尽くせり

振興協の女性たちが内臓も取ってくれて至れり尽くせり

 
 釣った魚は1匹200円でお持ち帰り。スタッフらがさばいて塩を振ってくれるサービスもあり、多くの人が利用した。このイベントではその場で炭火焼きにして食べることもできるが、この日は雨のために取りやめた。
 
 同振興協の菊池会長は「魚嫌いの子も自分で釣った魚は食べるようで、親御さんからも喜ばれている。釣りは年代問わず楽しめ、大人も夢中に…。20年以上続くイベントで、秋の風物詩として定着している」と話す。
 
 橋野の豊かな自然を生かし、地域への誘客や魅力発信につなげる「はしの四季まつり」。年間最後となる「水車まつり」は11月上旬に開催予定。農作物の恵みに感謝し、餅まきや雑穀メニューの販売などが行われる。

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味わって!うにしゃぶ 釜石でお振る舞いイベント 「新名物にな~れ」期待込め 魚屋応援にも

海の恵みがたっぷり詰まった「うにしゃぶ」を味わう親子

海の恵みがたっぷり詰まった「うにしゃぶ」を味わう親子

 
 釜石の新名物に-と期待される「うにしゃぶ」。ウニが香るスープで三陸の魚介を味わう料理だ。この海の“味力”たっぷりの逸品を知ってもらおうと、地域の魅力発信に取り組む若者がイベントを企画。16日、釜石市鈴子町の駅前橋上市場サン・フィッシュ釜石で市民や観光客らに無料で振る舞った。
 
 うにしゃぶは、焼いたりペースト状にしたりして香りを引きたてたウニを加えた貝だしのスープを温め、白身魚や貝類など三陸の海の幸と野菜を湯通していただく。地元の観光地域づくり会社かまいしDMCが食品加工会社と協力して2020年に開発。その“うにスープ”はDMCが指定管理する魚河岸テラスで販売する。市内では一部の飲食店や宿泊施設で提供されるが、事前の予約が必要。市のふるさと納税返礼品として取り扱われているが、市民の目に触れる機会は多くない。
 
 「名物にするには市民から。おいしさを知ってもらおう」と立ち上がったのが、市地域おこし協力隊として魚食普及活動に取り組む清原拓磨さん(26)と、観光地域づくりコーディネーターの横木寛裕さん(23)の2人。5月の大型連休中にもPRイベントを実施しスープを有料で提供したが、今回はDMCの厚意もあって“お振る舞い”という形でサービスした。
 
サン・フィッシュ釜石で開かれたお振る舞いイベント

サン・フィッシュ釜石で開かれたお振る舞いイベント

 
 市場内の飲食スペースが会場。テーブルにはスープが入った鍋、箸休めのレタス、締め用のご飯が用意された。そして、“しゃぶしゃぶ”する具材の刺し身などは市場内の店舗で調達。「地元の海産物をよく知る魚屋さんとの触れ合いも楽しむ」という仕組みにした。
 
「うにスープに合うのは?」。店員が具材選びをお手伝い

「うにスープに合うのは?」。店員が具材選びをお手伝い

 
新鮮な刺し身を手に笑顔の参加者、企画した清原拓磨さん(右)

新鮮な刺し身を手に笑顔の参加者、企画した清原拓磨さん(右)

 
 タコ、ホタテ、エビ、カンパチ、サーモン、エンガワ、ワカメ…。家族連れらが訪れ、スープに合いそうな魚介類をお好みで選んで鍋にサッとくぐらせ、口に運んだ。「うんま!」「ウニの香りがすごい」「濃厚」。スープのうまみが絡んだ味わいに箸が進み、締めの雑炊までしっかりと堪能した。
 
お好みの具材を濃厚「うにスープ」にくぐらせて味わう

お好みの具材を濃厚「うにスープ」にくぐらせて味わう

 
魚介のうまみが加わったスープで雑炊も!最後までうまい

魚介のうまみが加わったスープで雑炊も!最後までうまい

 
 魚介が好きな山田光葉(みつよ)さん(7)は「おいしい。海の味がする」とうれしそうに頬張った。母親の春葉(はるよ)さん(40)は「ウニの香りがふわっと広がる。ぜいたく感があって映(ば)えるから、名物料理になると思う。食材の組み合わせとか特色のあるメニュー化、提供の仕方、見せ方を工夫したりするといいのでは」と期待を込めた。
 
 今回のイベントでは、市場内の店舗を利用してもらうことで売り上げ増にもなり、事業者から歓迎の声が聞かれた。
 
“魚屋さん”との触れ合い促進もイベントの目的

“魚屋さん”との触れ合い促進もイベントの目的

 
新名物にと「うにしゃぶスープ」をPRする横木寛裕さん(右)

新名物にと「うにしゃぶスープ」をPRする横木寛裕さん(右)

 
 清原さんは「うにしゃぶを初めて食べる人が多かった印象。発信するという意味では達成できたと思う」と肩の力を抜いた。魚のさばき方教室と銘打つ食育活動(月1回)や海にまつわる事業者支援などに携わる中で、魚種の豊かさや鮮度の良さなどから「魚のまち釜石」の魅力を実感。魚を売る人たちの情報の多さにも驚き、「気楽に魚屋に行く仕掛けをつくりたい」と考えて形にした。
 
 企画の発案者でうにしゃぶスープのおいしさを知る横木さんも、「これ、合いますよ」と訪れた人に説明しながら、おもてなし。「飲食店で提供が広がるにはまず客となる地元の人が知って、食べたいと思ってもらわないと。おいしいものは食べに行くし、買うし、人にも勧める」という考えは2人とも共通で、今後も企画を考え発信していく。

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「シナノキ」の“新”巨木 橋野町和山で確認 関係者が市文化財指定の可能性探る

橋野町和山で確認されたシナノキの巨木=6日

橋野町和山で確認されたシナノキの巨木=6日

 
 釜石市北西部、橋野町の和山高原で新たなお宝発見―。これまで“知る人ぞ知る”巨木で、地元の人でもほとんど見たことがなかったという「シナノキ」の大木を、このほど市文化財保護審議会(川原清文会長、委員15人)の委員らが視察した。同高原には1969(昭和44)年に市の文化財(天然記念物)に指定された「和山のシナノキ」があるが、今回確認した“新”シナノキは幹周り、樹高ともそれを上回る大きさ。審議会では今後、新たな文化財指定の候補物件として検討を進めていく予定。
 
 視察には川原会長、同審議会第3専門部会(史跡、名勝、天然記念物)委員、市文化振興課職員ら7人が参加。同地を所有する一般社団法人栗橋地域振興社(菊池録郎代表理事会長)の小笠原明彦監事(釜石観光ガイド会事務局長)が現地を案内した。
 
現地に向かう釜石市文化財保護審議会の委員と市文化振興課の職員ら=林道入り口

現地に向かう釜石市文化財保護審議会の委員と市文化振興課の職員ら=林道入り口

 
 シナノキの巨木があるのは、風力発電事業者ユーラスエナジー釜石の事務所から南西方向に位置する標高761メートルの高原地帯。市道から約3キロの林道を車で上り、終点から歩いて現地に向かった。かつての放牧場に隣接する雑木林を進むと、見えてきたのは周囲の樹木よりはるかに幹が太い1本の大樹。近づくにつれ、参加者はその迫力に驚きの声を上げた。
 
県が整備した林道を車両で進む

県が整備した林道を車両で進む

 
終点からは歩いて現地へ。広葉樹林の斜面を上っていく

終点からは歩いて現地へ。広葉樹林の斜面を上っていく

 
元放牧場沿いに進んでいくと、ひときわ大きな木が目に飛び込んできた

元放牧場沿いに進んでいくと、ひときわ大きな木が目に飛び込んできた

 
 市職員が計測したところ、幹周りは7.3メートル(根元から高さ1.3メートル部分)、根元周りは8.29メートル。大人6人が両手をつないで周る太さだ。根元から1.8メートルほどの高さで4本に枝が分かれ、最も太いものは3.32メートル。樹高は目測で約20メートル、枝幅は約27メートルと推定される。一部に枝の欠損があるが、樹勢の衰えは感じられない。新緑の季節を迎え、枝先には葉が生い茂り、この時期ならではの樹姿を見せている。専門家による年輪調査がないと詳細は分からないが、樹齢は「300年以上ではないか」と推定。
 
市の職員がシナノキの大きさを計測しデータ収集

市の職員がシナノキの大きさを計測しデータ収集

 
周りの木よりはるかに太い幹が年数を重ねてきたことを感じさせる

周りの木よりはるかに太い幹が年数を重ねてきたことを感じさせる

 
幹周りは驚きの7.3メートル(胸元高)

幹周りは驚きの7.3メートル(胸元高)

 
幹周りは大人6人が両手をつないだ長さ!本当に太い

幹周りは大人6人が両手をつないだ長さ!本当に太い

 
 現場は風通しが良く、日光もたっぷり降り注ぐ場所で、樹木の生育にも適しているとみられる。参加者からは「想像以上の大きさ」「立派だ」「勢いがある」など絶賛の声が聞かれた。また「他の木のつるが絡まると弱っていく可能性もある。手入れをして守ったほうが寿命が延びるのでは」という意見もあった。
 
 同委員で、環境省の環境カウンセラーでもある佐々木光壽さん(74)は「和山の(寒冷な)環境で、これだけ太く大きくなったのはすごい。シナノキでここまでの大きさのものは市内では他に確認されていないのではないか」と驚嘆。「間違いなく価値あるものの部類に入る。市の文化財指定の可能性はあると思う」と話した。
 
木の上部には日光がたっぷり降り注ぐ。横に伸びた枝ぶりも見事!

木の上部には日光がたっぷり降り注ぐ。横に伸びた枝ぶりも見事!

 
見上げると木の高さにもびっくり!

見上げると木の高さにもびっくり!

 
 案内した小笠原監事(67、橋野町)は振興社の人から情報を聞き、今年4月に初めて現地を確認。「自分も最初に見た時は感激した。力強さがあり、元気をもらえる木」と地元の宝を誇る。森林資源が豊富な同地域では古くから木炭生産が盛んで、世界遺産になっている「橋野鉄鉱山」でも製鉄の燃料に木炭が使われた。「この辺も木を切り出す人が入っていたと思われるが、地元の人たちは土地の守り神(御神木)としてこのシナノキだけは残したのではないか。先人の思いが詰まっているのでは…」と小笠原監事。
 
写真左:小笠原監事が4月に訪れた時のシナノキ。まだ冬枯れの景色(小笠原監事提供)わずか2カ月で写真右の姿に…

写真左:小笠原監事が4月に訪れた時のシナノキ。まだ冬枯れの景色(小笠原監事提供)わずか2カ月で写真右の姿に…

 
木の全体像を一枚の写真に収めるのもなかなか難しい!?

木の全体像を一枚の写真に収めるのもなかなか難しい!?

 
 和山高原はかつて肉牛の放牧が盛んで、昭和の時代には高原を活用した大規模イベントの開催、市内の学校や町内会の遠足地としての利用などがあり、多くの人が訪れていた。時代の変遷とともに放牧事業は縮小化。人口減も相まってレジャー客も激減した。同振興社は近年、新たな土地利用策の一環で、市指定文化財のシナノキ周辺にサクラやレンゲツツジの植樹を進め、市民や観光客の憩いの場創出に努めている。
 
 振興社の菊池会長(72)は今回注目された“新”シナノキについて、「和山のシンボルが増えた。ぜひ多くの人に知ってほしい」と文化財指定に期待。「現場までの林道を整備すればハイキングコースにもいい」と活用策に考えを巡らす。和山の自然が育んだ2大巨木「シナノキ」、植樹したサクラやツツジ…。「7年後には発電用の新しい風車も完成予定と聞いている。新たな景観を生かし、皆さんに訪れてもらえる和山にしていきたい」と今後を見据える。
 
和山の“新”シナノキを視察した参加者は貴重な光景を目に焼き付けた

和山の“新”シナノキを視察した参加者は貴重な光景を目に焼き付けた

 
シナノキ周辺に広がる景色も絶景。雪の残る早池峰山も見える

シナノキ周辺に広がる景色も絶景。雪の残る早池峰山も見える

 
 市指定文化財(天然記念物)の巨木は現在8件。栗橋地区では「和山のシナノキ」のほか、▽古里の御神楽スギ(1969年指定、橋野町)▽明神かつら(1973年同、栗林町)▽上栗林のサクラ(2007年同、栗林町)が指定されている。

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自然を感じ歩く、味わう 開通5周年!みちのく潮風トレイル 釜石で記念イベント

潮風を感じながら根浜海岸沿いを歩く参加者たち

潮風を感じながら根浜海岸沿いを歩く参加者たち

 
 岩手県沿岸部を含む長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」の全線開通5周年を記念した「鵜住居トレイル&畜養ウニ剝(む)き体験ウォーク」が1日、釜石市鵜住居町で行われた。地元の観光地域づくり会社かまいしDMCと市が共同で企画。県内外から約20人が参加し、海沿いの景色や旬の味を楽しみながら歩いた。
 
 潮風トレイルは、青森県八戸市から福島県相馬市までの太平洋沿岸をつなぐ全長1025キロの自然歩道。東日本大震災を経て、被災地に人を呼び込む復興支援策として検討が進み、2019年6月9日に全線が開通した。
 
 釜石区間は国指定天然記念物の三貫島や太平洋を望む海岸線、江戸時代から三陸を結ぶ生活の道として多くの旅人が往来した浜街道、震災後の復興の歩みを感じる市街地をめぐる約68キロのコース。市関係者らによると、「景色がよく自然を体感できるが峠道が多く、どちらかと言えば玄人向けかな」ということだ。
 
みちのく潮風トレイルは海景や自然を体感できるのが魅力

みちのく潮風トレイルは海景や自然を体感できるのが魅力

 
 そこで、初心者や歩き慣れていない人にトレイルの楽しみ方を知ってもらおうと、アップダウンの少ない特別コースを用意。鵜住居地区の海岸沿いの景観を楽しみつつ、復興まちづくり、震災の教訓にも触れることができる往復約6キロのルートで、同社の菊池啓さん(56)がガイドを務めた。
 
スタート前に三陸鉄道鵜住居駅前の広場で集合写真をパチリ

スタート前に三陸鉄道鵜住居駅前の広場で集合写真をパチリ

 
 三陸鉄道鵜住居駅をスタートした参加者は、片岸海岸の防潮堤や鵜住居川水門の上を通って根浜海岸へ。地元で「夫婦岩(めおといわ)」と呼ばれる岩石、震災の津波や地盤沈下で失われたものの人工的に再生された砂浜を眺めながら歩いた。
 
釜石鵜住居復興スタジアムを背に鵜住居川沿いを進む

釜石鵜住居復興スタジアムを背に鵜住居川沿いを進む

 
鵜住居川水門を見学して防災・減災に理解を深めながら歩く

鵜住居川水門を見学して防災・減災に理解を深めながら歩く

 
古い時代の地層⁉…参加者は「夫婦岩」に興味津々

古い時代の地層⁉…参加者は「夫婦岩」に興味津々

 
 観光施設「根浜シーサイド」のレストハウスではウニ剝きに挑戦。唐丹湾で人工的に育てられた畜養のキタムラサキウニが提供され、参加者はキッチンバサミを使って殻を割り、中に残る海藻などをピンセットで丁寧に取り除いた。スプーンで身をすくってパクリ。「おいしい」と顔をほころばせた。
 
レストハウスで畜養ウニの殻むきを体験し満足げな参加者

レストハウスで畜養ウニの殻むきを体験し満足げな参加者

 
 海の恵みを堪能してウオーキングは後半戦に。震災で被災した鵜住居小と釜石東中の跡地に建てられた釜石鵜住居復興スタジアムへ移動し、施設の特徴など説明を聞いた。そして、同小中の児童生徒が津波から避難した経路をたどって追体験。新しい街並みを進んで、駅に戻った。
 
 同市浜町の藤元裕一さん(71)、福子さん(71)夫妻は普段からウオーキングを楽しんでいて、潮風トレイルに興味があった。「車で通る時には気づかなかったことを発見したり、感動がたくさん。歩くことで釜石の良いところを知った。鳥のさえずりを聞いたり風を感じたり、自然を体験するぜいたくな時間だった」と笑顔を重ねた。ウニ剝きでは漁業者の細やかな仕事ぶりを実感。おいしさを届けてくれていることに感謝した。
 
松林が美しい根浜海岸を通り抜ける足取りは軽やか

松林が美しい根浜海岸を通り抜ける足取りは軽やか

 
潮風トレイルの魅力を体感し笑顔を見せる参加者たち

潮風トレイルの魅力を体感し笑顔を見せる参加者たち

 
 5周年を迎えた潮風トレイルは、英紙タイムズが掲載した記事「日本で訪れるべき場所14選」で取り上げられるなど、海外からも注目を集める。同社や市では誘客に期待し、コース整備に取り組む考え。今回の企画のような魅力発信につなげるイベントを秋頃にも催したいとしている。

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にぎわい創出!釜石大観音仲見世通り 出店促す〝縁結び〟 5回目マルシェ盛況

釜石大観音仲見世通りで開かれた「えんむすびマルシェ」

釜石大観音仲見世通りで開かれた「えんむすびマルシェ」

 
 釜石市大平町の釜石大観音仲見世通りで25日、地域活性化イベント「えんむすびマルシェ」が開かれた。さまざまな出会いの場を提供しようと、釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクト(宮崎達也代表)が主催し、5回目。飲食や手作り雑貨などの出店のほかステージイベントもあり、親子連れら多くの来場者でにぎわった。
 
 市内外から28の団体・個人が出店した。パンやスイーツ、手作りアクセサリー、木工製品などバラエティーに富んだ品ぞろえ。訪れた人たちは店主らと会話を弾ませながら品定めを楽しんだ。クレープやコーヒーなどを提供するキッチンカーも並んだ。
 
飲食や買い物、店主との交流を楽しむ来場者

飲食や買い物、店主との交流を楽しむ来場者

 
多彩な露店が並ぶ中で駄菓子屋は子どもたちに人気

多彩な露店が並ぶ中で駄菓子屋は子どもたちに人気

 
「すてきだね」。和柄のバッグなど手作り品に興味津々

「すてきだね」。和柄のバッグなど手作り品に興味津々

 
 地元釜石の漁師久保宣利さん(51)、翼さん(20)親子はホタテやカキなどが盛りだくさんの海鮮焼き、串焼きを販売。「お客さんとじかに顔を合わせ、反応を見ることができて楽しい」と腕を振るった。「両石港 隆丸」と旗印を掲げ、週末にはイベント出店。自分たちが養殖したり、仲間から買い付けた魚介や海藻を使って地域の海の魅力を発信する。「魚を通して、人とつながれる」。そう実感する親子は、漁業と出店、どちらも本業の“二刀流”でゆく。
 
店先で作って提供…かつての風景が通りに戻ったよう

店先で作って提供…かつての風景が通りに戻ったよう

 
浜の魅力を発信する久保宣利さん、翼さん親子ら

浜の魅力を発信する久保宣利さん、翼さん親子ら

 
 大漁旗柄のフラッグを用いた元気なパフォーマンスで会場を盛り上げたのは、釜石を応援するカラーガードチーム「ちあ釜」。4月に立ち上がったばかりで、地元メンバー4人はこの日が初舞台となった。
 
 小学校教諭の兼澤桃花さん(27)は「青空の下、気持ちよく踊れた」と晴れやかに笑った。佐久間桜音さん(11)、森美惠さん(17)は「緊張したけど楽しかった。かっこよく踊れるよう、もっと練習する」と意欲がアップ。60代のメンバーは「私でもできるので!」と仲間が増えることを期待した。代表の葛巻舞香さん(39)=ラグビー・日本製鉄釜石シーウェイブスオフィシャルサポーター、モデル、フリーアナウンサー=は「笑顔をつないで、みんなでまちをポジティブにしていきたい」と展望した。
 
大漁旗柄のフラッグを振り演舞する「ちあ釜」

大漁旗柄のフラッグを振り演舞する「ちあ釜」

 
地元釜石などから参加するメンバーと葛巻舞香さん(左)

地元釜石などから参加するメンバーと葛巻舞香さん(左)

 
 家族で訪れた同市平田の大和田崇士さん(47)は「正月に初詣で訪れた時より、にぎわっている。このイベントには初めて来たが、市外の人やものと触れ合えていい。続けてもらえれば、客として出店者たちの活動を応援したい」とうなずいた。
 
 同プロジェクトは、「釜石○○(まるまる)会議」から生まれた市民グループで、空き店舗が目立つ同通りを再生させ、にぎわいや交流の場を創出する活動を行う。大観音は「恋人の聖地」にも選定されていて、人のつながりや縁を広げる機会になればと2018年からマルシェを実施。新型コロナウイルス禍で数年見送ったが、23年に再開した。
 
幅広い年代、業種の人たちの縁を生み出す活動は続く
幅広い年代、業種の人たちの縁を生み出す活動は続く幅広い年代、業種の人たちの縁を生み出す活動は続く

 
 空き家となった遊休不動産の利活用を中心に、地元高校生と連携した催しや岩手県内・三陸沿岸地域で活動するアーティストらの展示などの企画にも力を入れる宮崎代表(52)。多様な取り組みを打ち出すことで、「出店したくなるようなまちづくり」を進めていく。

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世界遺産で楽しむ春の休日 橋野鉄鉱山八重桜まつり 来年の登録10周年へ弾み

はしの四季まつり第一弾「橋野鉄鉱山八重桜まつり」=12日

はしの四季まつり第一弾「橋野鉄鉱山八重桜まつり」=12日

 
 釜石市の世界遺産「橋野鉄鉱山」で12日、春恒例の八重桜まつりが開かれた。地元住民組織、橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)と栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が主催。高炉場跡に向かう道路沿いの並木の花は終盤だったが、濃桃色の花が青空や新緑とともに美しい景観を生み出し、来訪者を出迎えた。同鉄鉱山インフォメーションセンター駐車場では餅まきや豚汁のお振る舞い、産直の出張販売などがあり、約400人が楽しんだ。
 
 同所の八重桜は1980年代に釜石ライオンズクラブが植樹。橋野鉄鉱山が世界遺産登録された2015年には同振興協が新たな植樹を行い、若木も順調に花を咲かせている。同祭りは地域活性化などを目的に2007年にスタートした。東日本大震災(11年)による休止を経て、12年からは世界遺産登録を後押ししようと「橋野高炉跡」の冠をつけて開催。餅まきや豚汁の振る舞い、高炉場跡見学など今の形が定着した。登録後の16年から「橋野鉄鉱山」に祭り名を改称している。新型コロナ感染症の影響で20年から3年間は中止した。
 
 今年も釜石観光ガイド会(瀬戸元会長、会員29人)の案内で巡る高炉場跡の見学ツアーから開始。3人のガイドがグループごとに見学希望者を引き連れ、史跡エリアに向かった。ガイドらは鉄鉱山の成り立ち、現甲子町大橋で洋式高炉による国内初の連続出銑成功後、橋野で製鉄が始まった経緯、製鉄の方法、操業時の生産規模などを説明。橋野の3基の高炉は現存最古で、「明治日本の産業革命遺産」(8県11市23構成資産)の一つとして世界遺産登録されたことなどが伝えられた。
 
釜石観光ガイド会会員の説明を聞きながら高炉場跡に向かう

釜石観光ガイド会会員の説明を聞きながら高炉場跡に向かう

 
沿道では八重桜とツツジが競演!春はさまざまな花が楽しめる

沿道では八重桜とツツジが競演!春はさまざまな花が楽しめる

 
第一高炉跡で当時の操業の様子を聞く参加者

第一高炉跡で当時の操業の様子を聞く参加者

 
 餅まきには子どもから大人まで大勢の人たちが集まった。同振興協の菊池会長(69)が歓迎のあいさつ。地域の代表がトラックの荷台に上がり、約1000個の紅白餅をまいた。毎回好評の豚汁のお振る舞いには長い列ができた。振興協女性部が腕を振るう豚汁は山菜のワラビ、ウルイ、フキも入り具だくさん。来場者はおにぎりなどと一緒に味わった。会場内では昨年に続き、大槌町のバンド「ZENBEY絆」が演奏。今年は釜石市の女形舞踊・尚玉泉さんも共演し、まつりを華やかに彩った。
 
お楽しみの餅まき。紅白の餅約1000個がまかれた

お楽しみの餅まき。紅白の餅約1000個がまかれた

 
「こっちにも~」と手を伸ばしてアピール

「こっちにも~」と手を伸ばしてアピール

 
長蛇の列ができた豚汁のお振る舞い

長蛇の列ができた豚汁のお振る舞い

 
ZENBEY絆(写真右上)、尚玉泉さん(同左上)の歌と踊りで会場はにぎやかに

ZENBEY絆(写真右上)、尚玉泉さん(同左上)の歌と踊りで会場はにぎやかに

 
 同市の佐々木章斗君(8)は「豚汁もおいしかったし、歌も聞けた。きれいな花に囲まれて気持ちいい」とにっこり。母雅子さん(44)は「コロナも明けて、家族や親族など大人数で出かけられるようになった。まちの活気も戻ってきたようでうれしい」と声を弾ませた。同市甲子町から足を運んだ女性(37)は「今年は全般的にサクラの開花が早かったので、ここも終わっているかなと思って来たが、こんなに咲いているとは。青空にも映えてきれい。この後、並木の下を散歩して帰ります」と心を躍らせた。
 
 市北西部に位置する橋野町。鉄鉱山のある青ノ木地区は遠野市につながる笛吹峠の上り口にあり、冬から春先は市街地よりも気温が低い。サクラも市内では遅い開花だが、近年は地球温暖化の影響が顕著。10年ほど前までは5月下旬に見ごろを迎えていたが、最近は中旬までには満開になる年が多い。ただ、急激な高温や降雪に見舞われるなど極端な気象の年もあり、開花や満開時期の予想が難しく、主催者は祭り開催日の設定に頭を悩ませる。今年は6~7日ごろに満開になったという。
 
八重桜の木の下で豚汁を味わう家族連れ

八重桜の木の下で豚汁を味わう家族連れ

 
子どもも大人も祭り名物の豚汁に舌鼓

子どもも大人も祭り名物の豚汁に舌鼓

 
 同祭りでは震災後、甲子町から会場まで無料送迎バスが運行されている。今年は大型2台、中型1台が運行され、約90人が利用。市内で働く外国人の若者も10数人訪れ、日本の春を満喫した。
 
 橋野鉄鉱山は来年、世界遺産登録から10周年を迎える。釜石観光ガイド会の川崎孝生副会長(83)は「市民でもまだ(現地に)来たことがないという人もけっこういる。地元の世界遺産の価値を知り、誇りに思ってほしい」と願い、「ガイド会としても心を込めたお迎え、お見送りを大事にし、限られた時間でポイントを押さえ説明できるよう個々のスキルを高めていきたい」と節目の年を見据える。
 
ガイドの説明を聞きながら見学すると同所の価値がよく分かる

ガイドの説明を聞きながら見学すると同所の価値がよく分かる

 
もみの大木の間の鳥居を抜けると山神社跡。石碑などが残る

もみの大木の間の鳥居を抜けると山神社跡。石碑などが残る

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いいよ!釜石の海 ウニむき、漁船クルーズで“みりょく”体感 GW限定企画に満足

ゴールデンウイークを彩った釜石の海の魅力を発信する催し

ゴールデンウイークを彩った釜石の海の魅力を発信する催し

 
 ウニむき体験に、漁船クルーズ-。海の魅力を体感してもらう催しがゴールデンウイーク(GW)期間中の3日間、釜石市魚河岸の魚河岸テラスを拠点に展開された。施設を管理運営する観光地域づくり法人かまいしDMC(河東英宜代表取締役)が企画。この時期ならではの食や景色を味わい、もてなす漁師らとの触れ合いを楽しんだ人たちは釜石が発信する“みりょく”に満足げだった。
 
 ウニむき体験は3、4日に実施。畜養事業に取り組む唐丹町漁協の協力を得て、キタムラサキウニ約150キロを用意した。挑戦者たちはキッチンバサミやピンセットを使って「口開け」。殻を割って海藻などを丁寧に取り除き、スプーンで身をすくって味わった。「甘い」「濃厚」「うまい」「いつも食べているのと違う」と感想はさまざま。神奈川県大和市の小学生松村海里君(11)は「触ったのも、むきたてを食べるのも初めて。おいしいし、米が欲しくなる」と頬を緩めた。
 
魚河岸テラスで開かれたウニむき体験を楽しむ家族連れ=3日

魚河岸テラスで開かれたウニむき体験を楽しむ家族連れ=3日

 
黙々と。子どもも大人も真剣な表情で作業に集中した

黙々と。子どもも大人も真剣な表情で作業に集中した

 
 提供された畜養ウニは、海藻が少なくなる「磯やけ」やエサの減少によるやせたウニの増加といった漁業が直面する厳しさを改善させる手段として漁業者が育てた。その取り組みを岩手大学釜石キャンパス特任専門職員の齋藤孝信さん(62)が解説。エサとして漁協の加工場で出る塩蔵ワカメの端材などを与えていて、「価値のないものや捨てるもの、そんなマイナスを組み合わせてプラスに持っていきたいという漁業者の思いが込もっている」と伝えた。
 
齋藤孝信さんの手ほどきを受け、ウニむき体験を楽しむ親子

齋藤孝信さんの手ほどきを受け、ウニむき体験を楽しむ親子

 
「口、とった」「うまーい」。いい表情を見せる子どもたち

「口、とった」「うまーい」。いい表情を見せる子どもたち

 
 愛知県名古屋市の井上峰行さん(41)、由里恵さん(43)夫妻は、東日本大震災のことを考える“三陸めぐり旅”の途中で立ち寄った。「海と断絶された高い壁のような防潮堤」が印象的だったというが、海という資源に対する地域の思いやSDGsという視点に触れる機会にもなった。ウニむき作業は浜の人たちの手にかかると3分ほどというが、2人が要した時間は約20分。細やかで手間のかかる作業を日々繰り返している漁業者の仕事ぶりに思いを巡らせながら、そのひとすくいの「味力(みりょく)」をかみしめた。
 
絶好のクルーズ日和。水面や景色の近さを楽しむのは漁船ならでは=5日

絶好のクルーズ日和。水面や景色の近さを楽しむのは漁船ならでは=5日

 
 釜石湾内の漁船クルーズは5日限定で「定期便」を運航した。魚河岸テラス前を発着に、波が比較的穏やかな湾口防波堤の内側を巡る約1時間の船旅。通常は事前予約(乗船希望日の2日前まで)が必要だが、この日は出港時間を決めて6便航行した。
 
 乗客は涼しげな潮風を受けながら、釜石港周辺の産業中心地や尾崎半島にかけての大自然を堪能。海上から見上げるガントリークレーンの迫力、正面から望む釜石大観音など、普段見られない視点からの光景に「観力(みりょく)」を感じた様子だった。
 
産業中心地の風景を間近で眺め、普段とは違った角度に面白さを感じたり

産業中心地の風景を間近で眺め、普段とは違った角度に面白さを感じたり

 
 このクルーズの魅力は、漁師の船長がガイドを務めていること。第1便は釜石湾漁協に所属する平田の佐々木剛さん(71)が乗客をもてなした。漁船内の魚槽や魚群を探知する機器などを見せながら、「今、この辺にはサバの群れがいるってことです」などと解説。カキやサクラマスなど湾内で行われている養殖、2011年の東日本大震災や2017年の林野火災の被害と再生の取り組みにも触れた。
 
ガイドとして乗客をもてなす漁師の佐々木剛さん(写真中央)

ガイドとして乗客をもてなす漁師の佐々木剛さん(写真中央)

 
釜石湾内で行われているサーモン養殖のいけすに興味津々

釜石湾内で行われているサーモン養殖のいけすに興味津々

 
 福島県須賀川市から訪れた阿部仁一さん(47)、志帆さん(46)夫妻は「水面が近く、風も感じられてリフレッシュした。台本通りではないガイドが素朴で味があったし、いけすを見られたのもよかった」と笑顔を重ねた。鵜住居町の根浜海岸ではオートキャンプを満喫。宿泊サイトは満杯だったものの静かで快適な時間を過ごしたといい、釜石の海レジャーに好感触を残した。
 
 GW後半は天候に恵まれ、釜石港の岸壁では釣り客も多かった。水中に糸をたらし、寄ってきた小魚を網ですくい取る子ども、サバなどをバケツいっぱいに釣り上げた人もいた。「釣りをやってみたい」という子どもらの希望を受けてやってきた盛岡市の40代男性は「道路がつながって三陸が近くなった。年に数回、平田で釣りをしていて、釜石の海にいいイメージを持っている。子どもたちも楽しんでいる」と目を細めた。
 
魚市場近くの岸壁では釣りを楽しむ人の姿も多く見られた=5日

魚市場近くの岸壁では釣りを楽しむ人の姿も多く見られた=5日

 
「とったー」。魚を釣り上げてピースサインをつくる子ども

「とったー」。魚を釣り上げてピースサインをつくる子ども

 
 ウニむき体験は、畜養しても活用方法や販路の確保を模索していた漁協を後押ししようと、昨年のGWに続いて2回目の実施。漁船クルーズは海を生かした持続可能な観光振興を目指し取り組む。どちらも反響は上々で、イベントを担当するかまいしDMCの佐々木和江さん(46)は「魚食、遊び、人との関わりなど多様な要素を取り入れた企画で、臨海部ならではの魅力を発信していきたい」と先を見据えた。

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大型連休 久しぶりのにぎわい 釜石駅前の春まつり 観光客ら海の幸、市内外の味覚堪能

天候にも恵まれ、市内外から客が訪れた「かまいし春まつり」=4日

天候にも恵まれ、市内外から客が訪れた「かまいし春まつり」=4日

 
 新型コロナウイルス感染症の5類移行後、初めて迎えた春の大型連休。釜石市内は連休後半、晴天が続き、絶好の行楽日和となった。鈴子町の釜石駅前が会場となる恒例の「かまいし春まつり」は4日、シープラザ釜石、サン・フィッシュ釜石の両施設で行われた。来場者は市内外の出店者によるさまざまな味覚やステージイベントを楽しみ、釜石の春を満喫した。
 
 同まつりはこれまで駅前広場を主会場としていたが、今回初めて、駅に隣接する観光物産施設シープラザ釜石の西側駐車場に出店ブースを設けた。市内外からキッチンカーを含む19店舗が出店。地元釜石からは各事業者がホタテ焼きやジェラート、海宝漬、ラスクなどを販売。釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売し、地元ならではの味をアピールした。
 
釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売。ご飯のお供、おつまみに…

釜石湾漁協釜石女性部はワカメやメカブの加工品を販売。ご飯のお供、おつまみに…

 
釜石の春を盛り上げようと市外からの出店も多数

釜石の春を盛り上げようと市外からの出店も多数

 
 ラグビー「日本製鉄釜石シーウェイブス」の試合会場となる釜石鵜住居復興スタジアムでの出店が縁で、本まつりに出店した市外の事業者も。宮城県気仙沼市の大島から来たのは、飲食店&ゲストハウス「大漁丸」を経営する菊地幸江さん(63)。別店舗「GO-HEI」を構える娘夫婦と菓子などを販売した。三陸沿岸道路の開通で釜石までは車で約1時間。「つながりができてうれしい。地元以外の出店は新たな出会いがあって楽しい」と喜ぶ。13年前の震災津波、直近のコロナ禍で大島の観光、飲食業者も大きな打撃を受けた。「釜石も気仙沼も素晴らしい海が魅力。再び多くの人が訪れるようになるといい」と今夏に期待を寄せた。
 
気仙沼市・大島から出店した菊地幸江さん(左)家族。釜石との縁を喜ぶ

気仙沼市・大島から出店した菊地幸江さん(左)家族。釜石との縁を喜ぶ

 
塩蔵ワカメの詰め放題企画。子どもたちは丸めて入れたり工夫も

塩蔵ワカメの詰め放題企画。子どもたちは丸めて入れたり工夫も

 
正午のメカブ汁のお振る舞いには長い列ができた

正午のメカブ汁のお振る舞いには長い列ができた

 
 会場内では塩蔵ワカメの詰め放題企画、昼には先着200人限定のメカブ汁のお振る舞いもあり、人気を集めた。シープラザの建物内ではステージイベントも。釜石市出身の民謡歌手佐野よりこさんや同市の柳家細川流舞踊などが出演し、来場者を楽しませた。
 
 宮城県石巻市から親族4人で訪れた佐藤美智子さん(65)は新聞広告で同まつりを知り、初めて釜石市に足を延ばした。「ホタテやツブ、途中の道の駅ではホヤもいただき、海鮮づくしの一日。どれもおいしかった」と満足そう。今の三陸沿岸の景色に「(被災後の整備で)まちそのものはきれいになったが、家屋が少なくなったのはちょっと寂しい」。新型コロナの制限がない久しぶりの大型連休に「明日は孫、子どもたちとバーベキューです」と声を弾ませた。
 
シープラザ釜石では民謡や舞踊のステージイベントも

シープラザ釜石では民謡や舞踊のステージイベントも

 
肉の串焼きやかき氷はボリューム満点(左)。好みのものを買い求め飲食を楽しんだ

肉の串焼きやかき氷はボリューム満点(左)。好みのものを買い求め飲食を楽しんだ

 
 駅前橋上市場サン・フィッシュ釜石は3~5日まで、三陸の海産物を堪能できる企画を用意。各店で購入した好みの魚介の刺し身でオリジナル丼を楽しめる「のっけ丼」、貝類やエビ、イカなどをその場で焼いて食べられる「浜焼き」を提供した。隣のシープラザでイベントがあった4日は午前10時ごろをピークに大勢の客が訪れた。
 
 神奈川県横浜市の高橋広也さん(49)は家族3人で花巻市の実家に帰省。めい2人、母と連れ立って同まつりに足を運んだ。「新鮮な海産物のおいしさは格別」とのっけ丼、浜焼きを堪能。時間も場所もゆったりと食事を楽しんだ。三陸名物の“牛乳瓶入り”ウニを目当てに来たが、この日はあいにく水揚げがなく「後日、注文します」と楽しみは先延ばしに。コロナ禍でかなわなかった帰省は昨年から解禁。「子どもの顔を見せられるし、親族で集まれるのはすごく幸せ」と笑顔を輝かせた。
 
サン・フィッシュ釜石でのっけ丼や浜焼きを楽しむ家族ら

サン・フィッシュ釜石でのっけ丼や浜焼きを楽しむ家族ら

 
 サン・フィッシュ会場では、かまいしDMCが開発した「うにしゃぶ」鍋スープをお試しサイズ(2~3人前)で味わえる企画も。スープ、ワカメ、ご飯をセットにして、3日間限定20食を販売した。

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足慣らし、行こうよ! 岩手・三陸沿岸最高峰「五葉山」山開き 春の芽吹き、爽やか

五葉山が山開き。シーズン到来に笑顔を見せる登山者

五葉山が山開き。シーズン到来に笑顔を見せる登山者

 
 釜石、大船渡、住田の3市町にまたがる三陸沿岸最高峰・五葉山(標高1351メートル)は4月29日、山開きした。リアス海岸や奥州山系の山並みなど山頂から望む雄大な景色、原生林や花々の群落など標高によって異なる表情を見せる豊かな自然が魅力。待ちわびた登山者はこの時期ならではの眺望や芽吹きを楽しみながら爽やかな汗を流している。
 
 両市境の赤坂峠登山口で安全祈願祭があり、五葉山神社の奥山行正宮司が登山道を清めて無事故を祈った。3市町村で組織する五葉山自然保護協議会長の渕上清大船渡市長が「皆さんに快適に登山してもらえるよう、登山道の適切な維持管理や自然の保全保護などを行っていく」とあいさつ。山頂を目指して歩き出した登山客に「安全第一で楽しんでください」と声をかけた。
 
多くの登山者が待つ赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われた

多くの登山者が待つ赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われた

 
五葉山神社の宮司が登山道を清めて無事故を願った

五葉山神社の宮司が登山道を清めて無事故を願った

 
 間隔を確保しながら列を作って、思い思いのペースで山歩き。ツツジやシャクナゲの新芽、新緑を眺めたり、自然を楽しむ姿も見られた。登山仲間と訪れた釜石市の青柳あや子さん(73)は「水場や避難小屋があって安心で、登りやすい山。花はまだだろうから、風や空気、おしゃべりを楽しみながらゆっくり行く」とにっこり。山田町の佐々木千恵さん(73)、宮古市の畠山亮子さん(69)と顔を合わせ、「そちこちの山に遠征するから、きょうは足慣らしだね」と元気だった。
 
ぐんぐん力強い足取りで頂上を目指す登山者

ぐんぐん力強い足取りで頂上を目指す登山者

 
「きょうは足慣らしです」。元気な“山レディー”たち

「きょうは足慣らしです」。元気な“山レディー”たち

 
「山、登りたい!」と宮城県から足を運んだ小学生グループ

「山、登りたい!」と宮城県から足を運んだ小学生グループ

 
 五葉山は山頂まで比較的緩やかな道が続き、家族連れや年配者、初心者でも登りやすい。山開き前に楽しんだ人もいて、「上の方に雪が残っていた」「雪はないけど、ぬかるんでいた」と情報交換したり。近年は雪が少ない傾向で、季節の進み具合も感覚的に早まっている。
 
 この日も例年の服装では汗ばむ陽気に。暑さを感じて袖をまくったり、半袖姿の人もいた。そうは言っても、天気の急変など何が起こるか分からないのが自然。山岳関係者は「装備はしっかりと。自分の体力に合わせて登ってほしい。山のマナーも忘れずに」と呼びかける。
 
半袖や袖をまくったりする姿も。そんな暖かさにツツジも反応?

半袖や袖をまくったりする姿も。そんな暖かさにツツジも反応?

 
春の行楽シーズン到来に登山客の顔も自然とほころぶ

春の行楽シーズン到来に登山客の顔も自然とほころぶ

 
山頂へ向かう登山者。新緑の中をゆっくり進んでいく

山頂へ向かう登山者。新緑の中をゆっくり進んでいく

 
 5月のゴールデンウィーク(GW)期間のほか、ツツジやシャクナゲが咲く5~7月にかけてもにぎわいが予想される。