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温かさ上乗せ!釜石の思い、能登へ 1杯のコーヒーに添えるメッセージ キッチンカーでお届け

能登を応援するメッセージを書く客を見守る岩鼻伸介さん

能登を応援するメッセージを書く客を見守る岩鼻伸介さん

 
 あの日のお礼です―。釜石市を中心にキッチンカーで営業するコミュニティーカフェ「HAPPIECE COFFEE(ハピスコーヒー)」店主の岩鼻伸介さん(46)は、能登半島地震の被災地へ温かい飲み物を届けている。東日本大震災で大きな被害を受けた釜石・鵜住居町出身で、支援の恩返しのため。そして、懸命に前を向こうとしている人たちに“ホッと”ひと息つける時間をつくってほしいからだ。同じように思いを寄せる市民は多く、その気持ちも届けようと「寄せ書き」集めを開始。託された応援メッセージをコーヒーに添えて能登の人たちに手渡す。
 
1月に訪れた石川県七尾市の避難所での様子(岩鼻さん提供)

1月に訪れた石川県七尾市の避難所での様子(岩鼻さん提供)

 
 「コーヒーを無料で提供中。岩手県釜石市より、あの日のお礼です。2011.3.11→2024.1.1」。1月中旬に約1週間かけて石川県七尾市の避難所3カ所を回り、延べ約900人に無料で振る舞った。「ひと息つけるタイミングなかったね、そういえば…」「こんなおいしいコーヒー、初めて飲んだ」。手渡された一杯のあたたかさに緊張がほぐれたのか、涙する人もいた。「あの時の自分たちにコーヒーを入れている感じだった」と岩鼻さん。
 
 あの日の僕たちがいた―。震災当時、東京でIT関係の経営コンサルタントとして働いていた岩鼻さん。発災から1週間後に釜石入りすると、実家は全壊していた。片付けのため週末に地元に戻る生活をしながら、古里に恩返しできることを思案。もともとコーヒーを介したボランティア活動に取り組んでいて、2011年秋から移動図書館を運営する団体に同行する形で沿岸の仮設住宅などを回ってコーヒーを提供した。キッチンカーでの活動は12年春から。その時に受けた言葉や人々の姿が、能登の今に重なった。
 
キッチンカーの窓越しに撮影した被災地(岩鼻さん提供)

キッチンカーの窓越しに撮影した被災地(岩鼻さん提供)

 
 震災の時は意識していなかったけど、被災して、人や応援のありがたみが分かった―。七尾市での活動時に多かった言葉。喜んでもらっていると感じた岩鼻さんは、活動の継続を決めた。何度も来てくれる支援者の存在に「忘れられていない」と実感できた自身の経験もあるから。交流サイト(SNS)で活動の様子や思いを発信すると、市民や客から「現地に行けないけど、何か協力したい」と声が寄せられた。
 
店先でメッセージを書く人も。岩鼻さんの活動を後押しする

店先でメッセージを書く人も。岩鼻さんの活動を後押しする

 
 「いわて・釜石から想っています」「あせらず一歩」。大町のTETTO周辺で営業する水曜日、店先で客が思いをつづる。1杯に相当する1口500円のカンパを募り、協力した客が紙製カバー「スリーブ」にメッセージを書き込むという支援の仕組みを用意した。寄せ書きには「頑張れ」と書かないのがルール。「頑張れって言うけど、今もすごい頑張っている。これ以上どう頑張れば…」。被災地のつぶやきは「分かりすぎるくらい分かる」からだ。
 
 無理しないで―。大町で石材店を営む清水麻美絵さん(47)は、13年前の津波で被災しつらかった時期に言われてうれしかった言葉を記した。それと、大量の菓子も差し入れ。「コーヒーと甘いもので一服してもらえたら」と願う。
 
釜石高生の協力に笑顔を見せる岩鼻さん(左から2人目)

釜石高生の協力に笑顔を見せる岩鼻さん(左から2人目)

 
 「ちょっとあったまるべ」「コーヒー飲んでひと休み」。釜石高校では寄せ書き会(2月15日)があり、生徒たちはカラフルなペンでメッセージやイラストを書き込んだ。板谷美空(みく)さん(2年)は「苦しさやつらさに寄り添えられたら。少しでもほっと心が楽になるといいな」と思いやる。
 
色とりどりのペンでメッセージを書き込む生徒

色とりどりのペンでメッセージを書き込む生徒

 
被災地を思い釜石市民や客が寄せ書きしたスリーブ

被災地を思い釜石市民や客が寄せ書きしたスリーブ

 
 一瞬でも安らぐ時間を届けたい―。岩鼻さんは寄せ書きを能登半島へ持ち込み、2度目の活動中。今回も、被災者支援団体のメンバーとして七尾市を中心に回っている。思いが詰まったスリーブをカップに巻いて「はい、どうぞ」。人とのつながりが見えた時、より気持ちが伝わると感じていて、「優しい心が伝播(でんぱ)していくといい」と笑顔を添える。
 
こだわりのコーヒーを提供する岩鼻さん

こだわりのコーヒーを提供する岩鼻さん

 
おいしさアップ!会話を楽しむことが隠し味

おいしさアップ!会話を楽しむことが隠し味

 
 幸せのひとかけらを―。「Happy」と「Piece」を組み合わせた造語を店名にし、岩鼻さんはコーヒーという「人に安らぎを与えるもの」を届け続ける。カップからあふれるのは深い香りと味わい。豆は公正な取引を通じ原産国の生産者を支援するフェアトレードで仕入れ、自家焙煎(ばいせん)する。お湯を注いで丁寧に抽出する間が、客との触れ合いタイム。気さくな岩鼻さんの人柄に引かれ、会話目当ての人も多い。コーヒーを通じて人が集える場は釜石から能登へ。カンパ、寄せ書きへの協力を募って活動を継続する考えだ。

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小中学校規模、配置の適正化へ 釜石市教委 基本方針策定に向けた地域説明会開始 22日まで

小中学校の規模、配置の適正化基本方針へ住民の意見を聞いた地域説明会=中妻地区生活応援センター、15日

小中学校の規模、配置の適正化基本方針へ住民の意見を聞いた地域説明会=中妻地区生活応援センター、15日

 
 少子化の進行や人口減で、今後さらに児童生徒数の減少が見込まれる釜石市。市教育委員会(髙橋勝教育長)は子どもたちにとって望ましい教育環境を整備するため、小中学校の規模、配置の適正化を図る基本方針案をまとめた。15日から5中学校区の生活応援センターで、同案に対する住民の意見を聞く地域説明会が開かれている。市教委はパブリックコメントや保護者アンケートを含めた意見を参考に、本年度内の基本方針策定を目指す。
 
 市教委は児童生徒数の減少で学校の小規模校化が進む状況を踏まえ、2021年3月、釜石市学校規模適正化検討委員会(14人)を設置。学校、保護者、民間団体などから委嘱された委員が小中学生の教育環境をどう整えるべきか議論を重ね、22年11月、市教委に提言。これを受け、市立小・中の学校規模適正化、適正配置に向けた基本方針(案)が作成された。
 
 同市には9小学校、5中学校があるが、いずれも児童生徒数は年々減少。本年度、小学校全学年でクラス替えが可能なのは2校(小佐野、甲子)だけ。複式学級となっているのは3校(白山、栗林、唐丹)。出生数、居住区を基にした今後の推計で22年度と29年度の児童数を比較すると、釜石、双葉でほぼ半減、小佐野で約100人減が見込まれ、釜石、双葉では複式学級の必要性が出てくる。中学校では今後、双葉、釜石両小の児童数減に伴って釜石中の生徒数が大幅に減少する見込みで、34年度には現在の半数以下になることが予測される。釜石以外の4中学校は同年度には全学年1学級となる見込みで、小規模校化が顕著になっていく。
 
 小規模校化に伴う課題としては、小学校では▽同学年で切磋琢磨する環境を作りにくい▽音楽や体育での学習活動の制限▽複式学級担当教員の負担増、中学校では▽専門教科の免許を有する教員が配置されない▽部活動の選択肢が限られる-などが挙げられる。このため市教委は、子どもたちの望ましい教育環境の実現には「学校規模の適正化、適正配置が必要」とし、「全市的な観点からの学校統合」と「小中一貫教育導入の可能性」について検討したい考え。
 
児童生徒数の減少、学校規模確保への方策などが示された基本方針案について説明

児童生徒数の減少、学校規模確保への方策などが示された基本方針案について説明

 
 検討にあたり、学校は地域コミュニティーの中核的な役割も担っていることから、「当面は現在の5中学校区から学校がなくならないよう配慮し、各区内で1小学校は存続させることを基本」とする。いずれの場合も既存校舎を活用する予定。複式学級の措置は可能な限り行わず、小学校の規模は6学級以上(各学年1学級以上)を基準とする。中学校は9学級以上(各学年3学級以上)が望ましいが、学区が広範囲になるなどの課題があることから8学級以下もやむを得ないものとし、小中一貫教育の導入についても検討する。1学級は15~35人とする。配置は通学条件を考慮。通学時間は小学校45分以内、中学校1時間以内を目安とし、通学距離が小学校でおおむね2.6キロ、中学校で同4キロ以上の場合はスクールバスの運行など通学手段の確保に努める。小規模校を存続させる場合の教育の充実、保護者、地域、市民の理解を得ることも方針に盛り込む。
 
釜石中学校区の子どもを持つ親など地域住民(写真下)が市教委(同上)の説明に耳を傾けた

釜石中学校区の子どもを持つ親など地域住民(写真下)が市教委(同上)の説明に耳を傾けた

 
 基本方針案について意見を聞く地域説明会は15日の中妻地区生活応援センター(釜石中学区)を皮切りに始まった。市教委から髙橋教育長、藤井充彦教育部長(兼学校規模適正化推進室長)ら9人が出席。保護者を含む地域住民約20人が参加した。藤井教育部長が方針の概要を説明後、質疑応答が行われた。参加者からは今後のスケジュールの見通し、スクールバスの稼働状況などについて質問が出されたほか、魅力ある学校、育成の仕方、地域説明会の学校開催などに関し意見が出た。
 
 髙橋教育長は「教委としては、当面は複式学級の解消に力点を置きながら進めていきたい。小規模校も大規模校もそれぞれに良さがある。釜石の現状を踏まえ、子どもたちにとって何を大事にすべきか、皆さんと一緒に考えたい」と話した。
 
参加者からはさまざまな質問、意見が出された

参加者からはさまざまな質問、意見が出された

 
 市教委は策定した基本方針を具現化するため、24年度は推進計画の策定に取り組む。推進計画策定委を設け検討してもらうほか、保護者、地域住民との懇談を行いながら計画案を取りまとめていく予定。
 
 基本方針案の地域説明会は19日(月)に松倉地区コミュニティ消防センター、20日(火)に唐丹地区生活応援センター、22日(木)に平田地区生活応援センターで開催する。時間はいずれも午後6時30分から。事前申し込みは不要。

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助け合いの心のせ 釜石野球団、募金活動 能登半島地震の被災地へ「生きる力に」

募金活動を行う釜石野球団のメンバーら

募金活動を行う釜石野球団のメンバーら

 
 釜石市の社会人野球チーム「釜石野球団」(佐藤貴之監督、約30人)とその弟分・小学生を中心とした少年野球チーム「釜石野球団Jr.(ジュニア)」(大瀬優輝監督、23人)は10日、能登半島地震の被災地を支援しようと、大町の商業施設イオンタウン釜石で募金活動を行った。ジュニアメンバーは東日本大震災後に生まれたが、家族ら身近な人の話や学校生活の中で学び、記憶をつなぐ世代。「助けてもらったから、今度は…」。能登の状況を古里の記録に重ね、買い物客に元気いっぱい協力を呼びかけた。
 
 募金は、いち早く応援の取り組みをスタートさせた釜石市赤十字奉仕団(中川カヨ子団長、15人)の主催。野球団は大人、ジュニア合わせて約30人が集まり、奉仕団メンバーら約10人とともに活動した。呼びかけには市社会福祉協議会も協力した。
 
能登半島地震の被災地を思って寄付を呼びかけ

能登半島地震の被災地を思って寄付を呼びかけ

 
「協力を」。奉仕団とともに活動する野球少年ら

「協力を」。奉仕団とともに活動する野球少年ら

 
 参加者は施設入り口3カ所に並び、買い物客に「能登応援の活動をしています」「よろしくお願いします」などと約2時間アピール。ジュニアチーム主将の小林大空(かなた)君(11)は「震災の時は生まれていなかったけど、たくさん助けてもらった(と聞く)。この募金が被災した人たちの生きる力になればうれしい」と思いを寄せた。
 
子どもらの呼びかけに応え、買い物客らが善意を寄せた

子どもらの呼びかけに応え、買い物客らが善意を寄せた

 
 ジュニアは2022年春に発足し、保育園年長から小学生までの男女が野球などの運動に親しむ。能登地震を受け、子どもたちから「何かやらないの?」と声が上がり、応援活動を思案。野球道具の支援や子どもの遊び場確保に役立つことを―とも考えたが、大人たちの経験から「生活再建が最優先」と義援金を送る取り組みに決めた。チーム立ち上げ時に地元企業から運営費の協賛が寄せられたこともあり、地域貢献として施設周辺の美化活動も展開。ごみ袋を手に菓子の空き袋やたばこの吸い殻などを拾い集めた。
 
ごみ拾いで地域の美化活動に協力する子どもたち

ごみ拾いで地域の美化活動に協力する子どもたち

 
 佐藤監督(54)は「震災で助けられた経験を伝え聞いている子どもたちは『今度は自分たちが』という意識がある」と見守る。「やるか!」と実行した今回の活動で、「震災の記憶をつなぎ、助け合いの心を養ってもらえたら」と望むのは大瀬監督(34)。野球は助け合いのスポーツでもあり、「プレーに生きてくる」と信じる。
 
 この日、奉仕団は5時間にわたって呼びかけを展開した。託された義援金は28万9353円。他の活動で集まった思いと合わせて日本赤十字社に送り、被災地の人たちの生活支援に役立ててもらう。中川団長(76)は「息の長い活動になる」と、これからも「恩返し」の支援を続ける構えだ。

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一緒に楽しく~♪合唱ワークショップ ノイホフ・クワィアー 3月に釜石で演奏会

ノイホフ・クワィアーによる合唱ワークショップ

ノイホフ・クワィアーによる合唱ワークショップ

 
 釜石市の「親と子の合唱団ノイホフ・クワィアー」(小澤一郎代表)による歌のワークショップが3日、小佐野町の小佐野コミュニティ会館で開かれた。今後4回ほど練習日を設けた上で、参加者は3月中旬に予定する演奏会で発表する。
 
 「合唱をしてみたいが敷居が高い…」と感じている人や、「趣味を見つけたい」などと考えている人に、声を出すことの楽しさ、それが重なり合った時の奥深さを体感してもらおうと企画した。ワークショップには小学6年生から50代までの4人が参加。事務局の菊池恵美さん(41)が講師を務めた。
 
 同団は46年の歴史を誇る。入団条件は「楽譜が読めなくてもいい。歌が下手でもいい。0~100歳まで」。みんなで歌う楽しさを感じられるようにと、創立者の故渡辺顕麿さんが設けた。その中にある「楽譜」が特徴の一つ。平行な5本の線に音符が記された五線譜ではなく、ローマ字で「d(ド)/r(レ)/m(ミ)…」とつづった独自の楽譜を使う。
 
音符の代わりにローマ字が並ぶ楽譜がノイホフ流

音符の代わりにローマ字が並ぶ楽譜がノイホフ流

 
ペンを持って文字を追いながら声を出してみる

ペンを持って文字を追いながら声を出してみる

 
 まず、その楽譜の読み方からスタート。例えば、「so(ソ)」という文字の下に黒い点が付いているのは「低いso」、上に付いていれば「高いso」となる。音の長さを示す4分音符(1拍)をノイホフ方式にすると、文字だけの表記に。字の下に線が引かれているものは8分音符(2分の1拍)という感じで、参加者から「頭の体操だ」と声が聞かれた。
 
 演奏会への参加は任意だが出番は決まっていて、歌うのは「涙そうそう」「栄光の架橋」「世界に一つだけの花」の3曲。楽譜に慣れたら、早速声を合わせた。どの曲も耳なじみがあり、小学生の2人は「楽しかった。I like music(音楽が好き)だから」と笑顔を重ねた。
 
みんなで声を合わせる楽しさを体感する参加者

みんなで声を合わせる楽しさを体感する参加者

 
 大槌町の会社員阿部千夏さん(25)は、昨年末の「かまいしの第九」最終公演に感動し、「歌いたい」と刺激を受けた。そんな時に合唱ワークショップを知り、参加を即決。ローマ字表記、手書きの楽譜の珍しさに少し戸惑ったが、「音楽をゼロから感じる楽しさがある」と心を躍らせる。団員の練習風景も見学し、その歌声に背筋が伸びた様子。「一緒に歌えるのが楽しみ。スーッと声が出せるよう調子を整えたい。練習あるのみ」と気合を入れた。
 
ノイホフ団員たちも演奏会に向け練習を重ねる

ノイホフ団員たちも演奏会に向け練習を重ねる

 
 団員は現在、高校3年生から70代まで10人。年に2回程度の定期演奏会を開いている。ワークショップは「入団につながれば」との期待もあるが、体験だけでも歓迎。指揮も務める小澤代表は「楽しく一緒に歌いましょう」と控えめに見守る。
 
 本番となる同団の第145回ファミリーコンサートは3月17日(日)、釜石市民ホールTETTOのホールBで開催される。午後2時開演。

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「逃げろ!高台へ」津波避難の基本を体感 釜石・新春韋駄天競走11年目に 震災の教訓脈々と

津波避難場所の仙寿院境内を目指し、急坂を駆け上がる中学生ら=新春韋駄天競走

津波避難場所の仙寿院境内を目指し、急坂を駆け上がる中学生ら=新春韋駄天競走

 
 「津波発生時は迷わず、近くの高台へ―」。釜石市の津波避難啓発行事「新春韋駄天競走」が4日、大只越町の日蓮宗仙寿院(芝﨑恵応住職)周辺で行われた。同寺、釜石仏教会が主催し11回目の開催。市内外の2~63歳まで89人が参加し、地域の津波避難場所となっている高台の寺までの急坂を必死に駆け上がった。東日本大震災から間もなく13年となる沿岸被災地。今年は能登半島地震もあり、災害への心構えの大切さをより意識する日々が続く。参加者は震災の教訓を心に刻み、命を守る行動を体で覚えた。
 
 同行事は兵庫県西宮神社の新年開門神事「福男選び」をヒントに、“競走”という楽しみを盛り込みながら津波避難を体験してもらう節分行事。只越町の津波浸水域から震災時、1000人余りが避難した寺まで286メートル(高低差約26メートル)を駆け上がる。途中には急カーブや傾斜がきつい坂も。幼い子どもたちは父母に手を引かれながら、小学生以上は日ごろのスポーツ活動で鍛えた脚力も発揮しながら、それぞれにゴールを目指した。
 
午前11時、「親子の部」からスタート

午前11時、「親子の部」からスタート

 
父親に背中を押され、懸命に坂を上る子ども(左)。沿道では見物客が温かい拍手で応援(右)

父親に背中を押され、懸命に坂を上る子ども(左)。沿道では見物客が温かい拍手で応援(右)

 
只越町の消防屯所(集会所)前をスタート。高台の仙寿院までは高低差約26メートル

只越町の消防屯所(集会所)前をスタート。高台の仙寿院までは高低差約26メートル

 
女子、女性陣もありったけの力を振り絞り前へ進む

女子、女性陣もありったけの力を振り絞り前へ進む

 
 6部門を設け、それぞれの1位に「福○○」の称号を授与。芝﨑住職から認定書を受け取った人たちは、午後から行われた豆まきにも参加した。閉会式の最後には参加者や応援に集まった見物客全員で、海の方角に向かって黙とう。震災や能登半島地震の犠牲者の冥福を祈るとともに、同地震被災地の早期復興を願った。会場では能登支援の募金も呼び掛けた。
 
各部門で1位になった人たち。「福○○」のたすきをかけて感想を述べる

各部門で1位になった人たち。「福○○」のたすきをかけて感想を述べる

 
東日本大震災、能登半島地震の犠牲者を思い、黙とうをささげた

東日本大震災、能登半島地震の犠牲者を思い、黙とうをささげた

 
 例年、お囃子の太鼓で参加者を鼓舞している「只越虎舞」は、閉会式準備の間、踊りも披露。今年はメンバー3人がはんてん姿で競走にも参加した。応援側から初めて走る側になった菊池幸紘さん(31)は「きつかったですねー。ゴール直前の坂はかなりこたえた」と息を切らした。自身は震災時、浜町の自宅にいて津波にのまれ、がれきの山に流れついて一命をとりとめた。「早く逃げていれば…という思いは今でもある。『大丈夫だろう』という過信は絶対禁物。やっぱり、すぐに逃げるのが一番」と、教訓を深く心にとどめる。
 
今年初めて競走にも参加した「只越虎舞」のメンバーら

今年初めて競走にも参加した「只越虎舞」のメンバーら

 
ゴールまであと少し!沿道の声援を受けひたすら前へ…

ゴールまであと少し!沿道の声援を受けひたすら前へ…

 
 男性35歳以上の部で「福男」になったのは、一戸町の健康運動指導士西舘敦さん(44)。陸上競技に励む娘の朱里さん(18)と「思い出づくり、力試しに」と初参加。朱里さんも女性の部で「福女」になり、見事“親子福”で新春を飾った。
 
 なかなかの難コースに「気持ちで進まないとゴールにたどりつけない。後続の人を津波と思って、『逃げろ』という一心で駆け上がった」と敦さん。災害時は「誰かの手を引いたり、声を掛けながら一緒に逃げることも考えられる。自分の身は守って当たり前。訓練を重ねることで他の人も助けられる力をつけたい」と話す。親子で2カ月間練習を積んで、この日を迎えた。朱里さんは「いろいろな坂を見つけては走ってきた。今日のコースは本当にきつかったが、最後の最後まで競って福女になれたのは良かった」と喜びの表情。13年前の震災では「大きな揺れに怖い思いをした」記憶が残る。「津波はいつ起きてもおかしくないと聞く。沿岸部にいたら、すぐに逃げることを心がけたい」と気を引き締めた。
 
 「福女」の西舘朱里さん(写真左側奥)は僅差で1位に。父親の敦さん(写真右)は後続を寄せ付けず断トツの1位で「福男」に

「福女」の西舘朱里さん(写真左側奥)は僅差で1位に。父親の敦さん(写真右)は後続を寄せ付けず断トツの1位で「福男」に

 
福男、福女の認定書を手に笑顔を見せる西舘さん親子。母と一緒に記念の一枚!

福男、福女の認定書を手に笑顔を見せる西舘さん親子。母と一緒に記念の一枚!

 
 こうした防災の取り組みに父敦さんは「釜石市は震災伝承や避難の啓蒙活動がすごく盛んな印象。私たちも教訓とさせてもらっている」と刺激を受け、朱里さんも「この行事を周りに広め、避難の大切さを知ってもらいたい」と意識を高めた。
 
 芝﨑住職は「(震災を経験していない)子どもたちの参加が増えているのはありがたい。『大きな地震があったら必ず津波が来ると思って高台に避難をする』。この行事で学んだことを多くの方々に教えていただきたい」と望んだ。
 
震災後に生まれた子どもたちも父母と一緒に参加。津波避難を体で覚える

震災後に生まれた子どもたちも父母と一緒に参加。津波避難を体で覚える

 
ゴール前では芝﨑住職ら釜石仏教会のメンバーが参加者の頑張りをたたえた

ゴール前では芝﨑住職ら釜石仏教会のメンバーが参加者の頑張りをたたえた

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仲間・絆大切に 伝統を未来へ 釜石・唐丹小創立150周年 地域みんなで祝う

創立150周年記念式典で元気な歌声を響かせる唐丹小児童

創立150周年記念式典で元気な歌声を響かせる唐丹小児童

 
 創立150周年を迎えた釜石市立唐丹小学校(柏﨑裕之校長、児童52人)で3日、記念式典が開かれた。唐丹町の唐丹小中体育館には在校生、教職員のほか、保護者や同窓生でもある住民、来賓ら約170人が集合し、地域みんなで同校の“150歳”をお祝い。歴史を振り返り、伝統を未来につなぐ思いを新たにした。
 
 同校は1873(明治6)年3月、唐丹学校として創立。1896(明治29)年と1933(昭和8)年に三陸大津波、2011(平成23)年には東日本大震災津波で校舎が大きな被害を受けるなど幾度の災禍をこえ、「唐丹村立」から「釜石市立」への移行、統合、校舎移転など歴史を重ねてきた。
 
 震災では片岸地区にあった校舎のほとんどが損壊し、他地域の小学校を間借りして授業を継続。同様に利用不能となった小白浜地区の唐丹中跡地に仮設校舎が設けられると、地区に戻って中学生と一緒に過ごした。すぐそばで進む新校舎(小中併設)の建設を見守り、17年2月から新しい学びやで生活を始めた。
 
東日本大震災後に完成した唐丹小の校舎。中学生と共に学ぶ

東日本大震災後に完成した唐丹小の校舎。中学生と共に学ぶ

 
 唐丹小の卒業児童数は5000人超。「『自ら学び 心豊かで たくましい子ども』の育成」を教育目標に定め、子どもたちは日々学んでいる。地域と学校が一体となって教育振興に取り組んでいるのが特徴。また、30年以上続く新聞教育は内閣総理大臣賞を始め数多くの受賞歴があり、新聞作りを通して児童らは表現力を高め、ものの見方や感じ方を育んでいる。
 
歴史を振り返り、伝統をつなぐ思いを深めた記念式典

歴史を振り返り、伝統をつなぐ思いを深めた記念式典

 
 式典で、創立150周年実行委員会の留畑丈治実行委員長が主催者を代表して式辞。「みんなと一緒にお祝いができてうれしい。たくさんの応援を感じ、地域を愛する気持ちを持ち続けてほしい」と児童に呼びかけた。柏﨑校長は「地域とスクラムを組んで復興の歩みを進めてきた。これからも協働して歩み続ける。変わらぬ愛情と温かさを持って見守ってほしい」と望んだ。
 
 祝辞に立った小野共市長は同校の卒業生(1983年度卒)で、「地域の文化や伝統を引き継ぎ、明るくたくましく立派に成長して」と激励した。高橋勝教育長も地域協働の学校運営が続くことを期待。歴代校長10人、同PTA会長17人、震災関連などの支援者8人に感謝状を贈ったほか、PTA全国表彰を受けた1人に表彰状を伝達した。
 
表彰を受けた歴代校長や支援者、実行委、学校関係者

表彰を受けた歴代校長や支援者、実行委、学校関係者

 
 学校の歴史を振り返る写真をスライドショーで映した後、児童が思い出や祝いの言葉をつなぐ「呼びかけ」と合唱を披露。児童会長の小川原優陽君(6年)は「僕たちは震災の年に生まれた。家族や地域の支え、全国から支援を受けて今がある。すぐには恩返しできないけど、仲間や絆、誰かを支える気持ちを大切にしていきたい」と思いを込めた。「…荒波ときに よするとも 不屈の心 ゆるぎなし…」。校歌斉唱で締めくくった。
 
呼びかけで日頃の感謝を地域に伝える子どもたち

呼びかけで日頃の感謝を地域に伝える子どもたち

 
「来てくれてありがとう」。記念の紅白餅を手渡す児童

「来てくれてありがとう」。記念の紅白餅を手渡す児童

 

記念事業も 教育目標パネル作成、社交ダンス観賞

 
卒業生が制作した教育目標のパネルをお披露目した

卒業生が制作した教育目標のパネルをお披露目した

 
 記念事業として、教育目標を記したパネル(縦122センチ、横200センチ)を作成。式典に先立って除幕し、お披露目した。市外で看板業を営む卒業生が協力。青色の背景は唐丹の空と海をイメージし、輝く虹を加えた。文字はひらがなを多用し、低学年の児童が理解できるよう優しい配慮も。「唐丹から育った子どもたちが平和な世界を築くための懸け橋になってほしい」との願いを込めた。
  
 プロのダンサーとして活躍する卒業生を招いた「ようこそ先輩~社交ダンス鑑賞会」もその一つ。1月24日に同校で開かれ、東京で社交ダンス教室を経営する上村和之さん(40)=1994年度卒=と、妻の迪子さん(39)が講師を務めた。2人は「ワルツ」などで優雅な踊りを披露。特別レッスンでは子どもたちが実際にステップを踏み、ダンスの楽しさに触れた。
 
社交ダンス鑑賞会で華麗に踊る上村和之さん、迪子さんペア

社交ダンス鑑賞会で華麗に踊る上村和之さん、迪子さんペア

 
音楽に合わせてステップを踏んでみる。上村さんへの質問タイムも

音楽に合わせてステップを踏んでみる。上村さんへの質問タイムも

 
 「ペアで踊るのが魅力。頭も使う」と上村さん。プロを目指した理由を聞かれると、「人と向き合う仕事だから」と答えた。友達と向かい合って互いに手を取り、失敗しても楽しそうに歓声を上げる児童らの様子に目を細め、「思い切ってやりたいことをやってほしい」とエールを送った。
「いい思い出に」。先輩との交流を楽しんだ唐丹小6年生

「いい思い出に」。先輩との交流を楽しんだ唐丹小6年生

 
 子どもたちは「きれいでした」「カッコいい。また見たい」と感想。佐久間桜音(おと)さん(5年)は「少し難しかった。でもだんだん踊れるようになってうれしかった」と笑った。

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つなぐ記憶と教訓 発信に一役!?「大震災かまいしの伝承者」に挑戦 記者体験レポート

「大震災かまいしの伝承者」の基礎研修会

「大震災かまいしの伝承者」の基礎研修会

 
 東日本大震災の体験や教訓を後世に語り継ぐ「大震災かまいしの伝承者」。身近な人や市外から訪れる人たちに事実を伝えて記憶の風化を防ぎ、防災意識の向上につなげようと釜石市が養成する。震災から間もなく13年。経験をしていない世代が増える中、記憶を伝え続ける重みは増す。「どう受け継ぎ、残すか」。伝承者の基礎研修会に記者が参加してみた。
 
 この制度は2019年にスタート。地震のメカニズムと津波被害の特質、市が震災後に定めた防災市民憲章などに理解を深める基礎研修を終えると伝承者に認定される。第3期まで実施していて、累計で98人が修了。認定期間はおおむね2年間で、現在は59人が認定されている。伝承手法などを学べるステップアップ研修(任意)もある。
 
 今回、記者が臨んだのは4期目となる基礎研修会。1月28日に鵜住居町の鵜住居公民館で行われ、中学生から50歳代までの12人が参加した。これまで座学とグループワークを組み合わせ“一日がかり”だったが、今期はグループ活動を行わず、半日で終える内容に変更。代わりに、「釜石の震災」に重点を置く形にし、市の伝承施設「いのちをつなぐ未来館」の見学を組み込んだ。
 
基礎研修で配付されたテキスト

基礎研修で配付されたテキスト

 
メモを取りながら熱心に耳を傾ける参加者

メモを取りながら熱心に耳を傾ける参加者

 
 座学の講師は、岩手大学地域防災研究センターの山本英和准教授(地域防災工学)、小笠原敏記教授(海岸工学)、福留邦洋教授(都市防災・都市計画・復興まちづくり)の3人。合わせると90分ほどの講義は駆け足で進んだ印象。振り返りが必要だ。
 
講師を務めた岩手大学地域防災研究センターの教授ら

講師を務めた岩手大学地域防災研究センターの教授ら

 
 講師陣に共通する指摘は「災害は繰り返し発生し、どこにいても災禍に見舞われる可能性があること」。近年はさまざまな自然災害が各地で多発。講義で示された防災科学技術研究所「地震ハザードステーション」によると、今後30年間に岩手県沿岸地域が大きな揺れに見舞われる確率は約3%だという。が、空き巣や火災、ひったくり被害に遭うのと同程度の確率と聞けば、「低くない。あるかも」と感じた。
 
 「いつかはくる」と予想できても、「予知はできない」と講師ら。だからこそ、「備えを」と繰り返した。過去の災害の経験を後世に伝え、次の災害に備えることは大切である―。記憶の橋渡し、伝承者に期待される役割だと背筋が伸びる気がした。
 
いのちをつなぐ未来館を見学する参加者

いのちをつなぐ未来館を見学する参加者

 
語り部の川崎杏樹さん。経験を織り交ぜ教訓を伝える

語り部の川崎杏樹さん。経験を織り交ぜ教訓を伝える

 
 未来館を案内したのは、施設職員で語り部の川崎杏樹(あき)さん(27)。当時の小中学生が命を守り抜くことができた背景にある実践的な防災教育を紹介し、「この教訓を私たちと同じように発信してほしい」と望んだ。
 
 一方、避難した大勢が亡くなった鵜住居地区防災センターの事実を伝えるコーナーで強調したのは「避難場所」(災害から身を守るため一時的に逃げ込む先)と「避難所」(避難者が一定期間滞在し生活環境を確保できる場所)の違い。「2つの言葉の違いを覚えておく。こういう最低限の知識を身に付けていればいいと思う。小さい防災力が集まれば、大きな防災力になる」と訴えた。
 
研修を終えた参加者に伝承者証が手渡された

研修を終えた参加者に伝承者証が手渡された

 
 こうして研修は無事終了。12人に伝承者証と名札が交付された。これで認定者は71人に。震災の津波で祖父母を亡くした菊池音乃(のんの)さん(釜石高2年)は「当時は何もできなかったけど、これからは語り継ぐことで、災害で悲しむ人を少しでも減らしたい」と意欲を見せた。一緒に伝承者となった妹の音羽さん(甲子中1年)は地域を知る大切さを感じた様子だった。
 
伝承者証を手にする菊池音乃さん(左)と音羽さん姉妹

伝承者証を手にする菊池音乃さん(左)と音羽さん姉妹

 
 国土交通省東北地方整備局職員の沼﨑健(たける)さん(27)は、当時釜石東中2年生。独自に語り部として活動していたが、「独りよがりにならないよう共通認識を」と、古里が勤務地になったのを機に研修を受けた。高校入学時に地域を離れたこともあり、「その間の動きに触れることができ、有意義だった」と感想。同級生の川崎さんが熱心に伝える姿に刺激を受け、そして仲間も得て「語り続ける」気持ちを強めた。
 
 市震災検証室の正木浩二室長は「震災の体験、聞いたこと、学んだこと、防災市民憲章の理念を身近なところで、大切な人に、機会があるごとに語り継いでほしい」と求める。震災から時がたつこともあってか、研修への参加希望者は減少。それでも「未来の命を守るためにも伝え続けなければいけない」と、研修の内容など模索を続ける。
 
伝承者に仲間入りした12人と講師陣

伝承者に仲間入りした12人と講師陣

 
 「覚えてほしい」。講師や語り部たちが時折こぼした言葉。それを誰かに話す―それも伝承になるのではないか。体験者ではなくても、教訓を受け継ぎ、伝えることはできる。その行動が災害に備え、防災意識を高めることにつながるはず。あの日、津波にのまれるまちを「何だろう」とただ眺めていた…気がする。記者となったのは震災後。「自分の記憶も振り返ってみよう」。研修を終え、そんな気持ちになった。その気づきを生かし、まちの動き、市民の思いを伝え続けられるように。

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広報かまいし2024年2月1日号(No.1825)

広報かまいし2024年2月1日号(No.1825)
 

広報かまいし2024年2月1日号(No.1825)

広報かまいし2024年2月1日号(No.1825)

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【P1】
第13回全国虎舞フェスティバル

【P2-3】
令和6年能登半島地震への支援
釜石市地震・津波避難訓練 他

【P4-5】
物価高騰対策給付金
灯油等購入費の一部を助成します 他

【P6-7】
まちのお知らせ

【P8】
イベント案内 他

この記事に関するお問い合わせ
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〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2024020100012/
釜石市

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歌に踊りに、餅つき!釜石平田地区・つながるカフェ 高齢者と中学生 心通わす

つながるカフェでは高齢者も中学生もみんな笑顔

つながるカフェでは高齢者も中学生もみんな笑顔

 
 釜石市平田地区の住民は22日、大平町の大平中(髙橋信昌校長)の1年生(19人)と交流し、餅つきや合唱などを楽しみながら心を通わせた。
 
 市(平田地区生活応援センター)と、地区内の特別養護老人ホームあいぜんの里を運営する社会福祉法人清風会が主催する「つながるカフェ」の一環。心身の健康維持や孤立予防などにつなげるのを狙いに継続し、17回目。
 
 上平田ニュータウン集会所に高齢者ら約30人が集まり、きねと臼を使った餅つきに挑戦。住民と生徒が2人一組になってきねを持ち、調子を合わせて振り上げた。周囲で見守る人たちは「よいしょー、よいしょー」と掛け声を上げて応援。つき上げた餅は小さく切り分け、お汁粉に入れて味わった。
 
餅つきで交流する大平中生と平田地区の住民ら

餅つきで交流する大平中生と平田地区の住民ら

 
「よいしょ」の掛け声と手拍子で餅つきを応援

「よいしょ」の掛け声と手拍子で餅つきを応援

 
 住民を楽しませようと、生徒たちは合唱を披露。「地域の支えで学校生活を送ることができる」と感謝を込めて選曲した「ふるさと」では住民も歌声を重ねた。“腹ごなし”に住民らが取り組む100歳体操を体験したり、「釜石小唄」に合わせて踊ったり。みんな笑顔で、気持ちを一つにして触れ合いを楽しんだ。
 
歌声を重ねる曲は「ふるさと」で決まり

歌声を重ねる曲は「ふるさと」で決まり

 
「釜石小唄」では自然に踊りの輪が広がった

「釜石小唄」では自然に踊りの輪が広がった

 
 孫世代との交流を喜ぶ佐藤清さん(80)は「若いパワーをもらって、より元気になった。孫たちは遠方にいて、子どもと交わる機会は少ないから、こういう場を設けてもらってありがたい。こうした時間を共有することで、地域に愛着を持ってもらえたら」と目を細めた。
 
みんなで元気に100歳体操も楽しむ

みんなで元気に100歳体操も楽しむ

 
 同校では総合的な学習の時間を活用し、3年間、福祉について学ぶ。同法人の支援を受け、介護の現場見学や技術体験、認知症サポーター養成講座などに取り組む。6年目の今年度、1年生はコミュニケーションについての座学で高齢者との関わり方などを学習。同ホームでの実践を予定していたが、感染症の影響で見送っていた。
 
準備や運営も住民と中学生が力を合わせる

準備や運営も住民と中学生が力を合わせる

 
つながるカフェで触れ合いを楽しんだ参加者

つながるカフェで触れ合いを楽しんだ参加者

 
 中島優南さんは、隣り合わせた高齢者に自分から声を掛けた。心がけたのは「ゆっくり、大きな声で話すこと」。家族以外の高齢者と触れ合う機会は少ないが、座学で福祉の大切さを実感。今回の実践は地域の人を知る場になり、「見かけたら、あいさつしたい」と笑顔を見せた。見守る教諭は「つながるカフェは実践の場。子どもたちが主体となって企画、運営できるようになれば」と先を見据えた。

「冬の星空観察会」を開催します

「冬の星空観察会」を開催します

h「冬の星空観察会」を開催します

日時

令和6年2月9日(金)18:30~20:00
予備日:令和6年2月16日(金)18:30~20:00
当日延期または中止の場合は、申込時の連絡先へ電話連絡します。

場所

集合場所:根浜シーサイド≪レストハウス≫(現地集合・現地解散)
駐車場:根浜シーサイド駐車場
観察場所:根浜シーサイドキャンプ場

募集定員

30名(先着順)
申込期限:令和6年2月7日(水)まで
※参加費は無料です。
※小学生のお子様は必ず保護者同伴でお願いします。

申込方法

電話(0193-27-8453)またはFAX(0193-22-2199)でお申し込みください。
FAXの場合、添付の申込用紙をご使用ください。
冬の星空観察会チラシおよび申込用紙[PDF:802KB]
※電話でのお問合せ・お申し込みは平日8:30~17:17のみ

持ち物

筆記用具、懐中電灯、防寒具
※双眼鏡は貸し出せますが数に限りがあります。

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 市民生活部 生活環境課 環境保全係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8453 / Fax 0193-22-2199 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2022111400010/
釜石市

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夢詰まった贈り物“大谷グローブ”釜石にも届く 栗林小児童、やる気スイッチ刺激される

大谷翔平選手から贈られたグローブを喜ぶ栗林小児童

大谷翔平選手から贈られたグローブを喜ぶ栗林小児童

 
 「野球しようぜ!」。話題のグローブが釜石市内にも届いた。同じ岩手県出身、投打「二刀流」で活躍する憧れのメジャーリーガー、大谷翔平選手(奥州市出身)からの“すてきでかっこいい贈り物”に子どもたちは、にこにこ顔。栗林町の栗林小(八木澤江利子校長、児童32人)では23日に贈呈式を行い、キャッチボールで使い始めをした。
 
 大谷選手は2023年、子どもたちに野球に興味を持ってもらおうと、全国の小学校約2万校に計約6万個のジュニア用グローブを贈ることを発表。釜石では同年12月25日に市教育委員会に届けられた。すぐに全9小学校に引き渡したが、冬休み期間中だったため、3学期の始業式に合わせ各校で披露された。
 
大谷選手が小学校に贈ったグローブやメッセージ

大谷選手が小学校に贈ったグローブやメッセージ

 
 栗林小でも始業式(1月17日)で紹介した。大谷選手のメッセージを伝え、職員室前の廊下にグローブを展示すると、児童は「わー」と駆け寄って触ったり、はめてみたりと大喜び。「話題の青だね」とドジャースへの移籍を意識した言葉もあったという。
 
 贈呈式で、「大谷選手はなぜ、このグローブを贈ったか」と児童に問いかけた八木澤校長。添えられたメッセージを引用し、「野球を楽しんでほしいという願いはもちろん、これからを生きる皆さんに夢を与え、勇気づけるためのシンボルになることを望んでいるから。そして、野球こそが大谷さんに充実した人生を送る機会を与えてくれたものだから」と伝えた。グローブを手にするたびに夢について考えたり、何かを頑張ろうという思いを持つことを期待している、と贈り主の気持ちを推察。「すてきでかっこいいグローブを大事に、みんなで楽しみながら使っていきましょう」と呼びかけた。
 
八木澤江利子校長(左上の写真)が児童会長にグローブを手渡した

八木澤江利子校長(左上の写真)が児童会長にグローブを手渡した

 
 「やるぞー!」。5年の藤原大叶(ひろと)君と小林彩恋(あこ)さんが“始球式”ならぬ“使い始めキャッチボール”を行い、ほかの児童は「おぉ~」と歓声を上げながら見つめた。小林さんは「なんか軽い。使いやすかった」と感想。児童会長の小笠原実紅(みく)さんは、贈ってくれた大谷選手への感謝を口にした。
 
使い始めのキャッチボールを見守る栗林小の児童

使い始めのキャッチボールを見守る栗林小の児童

 
憧れの人からの贈り物に笑顔を見せる野球少年

憧れの人からの贈り物に笑顔を見せる野球少年

 
 贈られた“大谷グローブ”は、それぞれ大きさの違う右利き用2個と左利き用1個の計3個。いずれも小指の内側の部分に大谷選手のサインが刻まれている。野球に打ち込む藤原君は、憧れの人からの贈り物に感激。「大谷翔平さんみたいに夢をどんどんかなえていきたい」と“やる気スイッチ”を入れた。
 
大谷選手が送るメッセージ「野球しようぜ!」

大谷選手が送るメッセージ「野球しようぜ!」

 
 同校ではグローブに触れたことがない児童もいて、体育の授業で活用して慣れてもらうことからスタート。ボールを真っすぐに投げたり、キャッチできるようになったら、学年ごとに使う順番を決めて、休み時間などでも楽しむことにしている。

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探す、見つける、知る喜び「今年は何種類?」野鳥の宝庫・釜石で水辺の観察会 自然散策のススメ

釜石・片岸公園に飛来しているオオハクチョウ=13日、水辺の鳥観察会

釜石・片岸公園に飛来しているオオハクチョウ=13日、水辺の鳥観察会

 
 県沿岸有数の野鳥生息地、釜石市片岸町の鵜住居川河口周辺で13日、恒例の水辺の鳥観察会(市主催)が開かれた。東日本大震災の津波で大きな被害を受けた同所。2021年に減災機能を兼ね備えた水辺環境として整備された片岸公園には、今年もオオハクチョウが多数飛来。参加者の目を楽しませた。河口周辺では他にも、大小さまざまな色とりどりの野鳥を確認。フィールドスコープや双眼鏡で見ると、各個体の特徴がよく分かり、参加者は野鳥観察の面白さを体感した。
 
 子どもから大人まで32人が参加。釜石野鳥の会(臼澤良一会長、7人)の5人が講師を務めた。始めに片岸公園駐車場で、同会会員が周辺で見られる野鳥を写真で見せながら紹介。体色や鳴き声など判別のポイントを教えた後、片岸公園から釜石鵜住居復興スタジアム前の鎧坂橋付近までを歩きながら野鳥を探した。
 
釜石野鳥の会の会員が周辺で見られる鳥を紹介

釜石野鳥の会の会員が周辺で見られる鳥を紹介

 
沼地に憩う野鳥の姿を探す参加者(上段)。双眼鏡やフィールドスコープで確認(下段)

沼地に憩う野鳥の姿を探す参加者(上段)。双眼鏡やフィールドスコープで確認(下段)

 
 駐車場から沼地に向かうと、聞こえてきたのは「オオハクチョウ」の鳴き声。羽が灰色の幼鳥を含む群れが見られた。同会の菊地利明事務局長は「ハクチョウは天敵に襲われないよう水面に浮いたまま寝る。朝早く飛び立ち、田んぼにこぼれた米を食べたり、岸辺に生える草の根を食べる。日本で見られる鳥の中では体重が重いほう」と説明。観察時の注意点として、距離を保つことや餌を与えないことを挙げた。周辺を定期的に散歩している方によると、これまでに最大で42羽が確認されたという。沼地ではこの他、頬が白い「ホオジロガモ」や頭が茶色い「ホシハジロ」なども見られた。
 
さまざまな種類の野鳥が集まる片岸公園の沼地

さまざまな種類の野鳥が集まる片岸公園の沼地

 
公園を散歩する人たちの目を楽しませているオオハクチョウの群れ

公園を散歩する人たちの目を楽しませているオオハクチョウの群れ

 
 鵜住居川の中州では「アオサギ」や「クロガモ」、「イカルチドリ」などを確認。鵜片橋上流に目をやると石の上で憩う「マガモ」の雄(頭が緑)、橋の下に広がるヨシ原では「ホオジロ」も見られた。参加者が楽しみにしていたのは“飛ぶ宝石”と称される「カワセミ」。ここ数年、鎧坂橋付近で確認されており、この日は一瞬だが、飛ぶ姿が見られた。特徴である頭から背中にかけての青色が見え、参加者を喜ばせた。
 
鵜住居川水門の近くで見られたアオサギ。体色のコントラストが美しい。下段奥の右側はマガモの雄(緑色の頭が特徴)

鵜住居川水門の近くで見られたアオサギ。体色のコントラストが美しい。下段奥の右側はマガモの雄(緑色の頭が特徴)

 
左上:ダイサギ。右上:イカルチドリ。下段:ヒドリガモ。公園内の草地で餌をついばむ

左上:ダイサギ。右上:イカルチドリ。下段:ヒドリガモ。公園内の草地で餌をついばむ

 
 約1時間の観察後、駐車場に戻ると…。道路沿いに並ぶ電柱の上に鎮座していたのは、タカの仲間「ノスリ」。トビよりも一回り小さく、短めの尾は開くと先が丸みを帯びているのが特徴。獲物を見つけると急降下し、野を擦るように飛んで捕まえることから、この名がついたといわれる。
 
 最後は見た鳥を確認する「鳥合わせ」。見られたのは29種類で、昨年並みだった。鵜住居町の町田音和ちゃん(5)は鳥と恐竜が大好き。保育園の帰りにほぼ毎日、ハクチョウを見に来るほどで、「鳥見るの楽しい。びっくりしたのはカワセミ。パパが買ってくれた図鑑に載っている鳥をもっと見てみたい」と興味津々。母理美さん(41)は「名前を知らなかった鳥も見られた。釜石は自然が豊か。娘にはここでしか見られないものをいっぱい見せてあげたい」。「また来ようよ」と話す音和ちゃんを温かく見守った。
 
 今回の観察会では子どもの参加も増えた。菊地事務局長は「興味を持ってくれて感激。生で見られる場所があるのが釜石の良さ。本物を見ることは子どもたちにとってもいい経験になる」と観察会の継続を願う。
 
子どもから大人まで楽しめる野鳥観察。名前が分かるとさらに面白い!

子どもから大人まで楽しめる野鳥観察。名前が分かるとさらに面白い!

 
夢中でカメラをのぞき込む子に笑顔を見せる臼澤会長(左)。右上:電柱に止まるノスリ。右下:街中でもあまり見られなくなったスズメの群れ

夢中でカメラをのぞき込む子に笑顔を見せる臼澤会長(左)。右上:電柱に止まるノスリ。右下:街中でもあまり見られなくなったスズメの群れ

 
 同観察会は市生活環境課が1977年から継続。悪天候や震災の影響で中止された年もあるが、蓄積されたデータは同所の自然環境の推移を知る一助にもなっている。鵜住居川河口周辺は震災前、野鳥が営巣できる樹木も多く、観察会では50種前後が確認できた。津波で河口の位置が変わり、堤防内外の自然環境も大きく変化したことで、被災後数年間は、見られる野鳥の種類、数ともに激減したが、観察会が再開された直近の過去3年間は30種ほどで推移している。
 
 「さらに草木が増えてくれば、野鳥の生息、飛来数も増える可能性はある。最も重要なのは鳥が餌を食べられる環境。食物連鎖がうまくいくことで、より多くの鳥が生息できるようになる」と野鳥の会の臼澤会長。近年はサケの遡上が減ったことで、産卵後のサケなどを餌とするワシの姿が見られなくなっているという。
 
鵜住居川周辺は絶好の野鳥観察スポット。皆さんもぜひ楽しんでみては?

鵜住居川周辺は絶好の野鳥観察スポット。皆さんもぜひ楽しんでみては?