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釜石・鵜住居川、甲子川にアユの稚魚放流 釣り解禁はともに7月6日 順調な成育に期待 

鵜住居川漁業協同組合による同川へのアユの稚魚放流=11日

鵜住居川漁業協同組合による同川へのアユの稚魚放流=11日

 
 釜石市の鵜住居川と甲子川に、このほどアユの稚魚が放流された。大船渡市の盛川漁業協同組合で中間育成された体長約7~8センチの稚魚を両河川の関係者が放流。釣り解禁日はともに7月6日。稚魚の繁殖保護のため、6月1日から解禁日前日まで全魚種が禁漁となる。(区域は現地の立て看板などを参照)
 
 鵜住居川への放流は11日、鵜住居川漁業協同組合(川崎公夫代表理事組合長、組合員153人)の組合員約30人によって行われた。鵜住居町の日ノ神橋下流域から橋野町の産直・橋野どんぐり広場付近までの区間18カ所に、重量にして400キロ(約4万6500尾)を放流した。稚魚は、人工放流のない三陸の河川に遡上する天然魚の卵から育ったもので、一尾平均8.6グラム。
 
 組合員らは2班に分かれて作業。稚魚を積んだトラックからバケツリレー、またはホースを延ばして放流した。稚魚購入代など放流にかかる費用は組合費、一般釣り客の遊漁料、関係企業・団体からの協力金で賄われている。
 
組合員らがバケツリレーで川岸まで稚魚を運んで放流=日ノ神橋下流

組合員らがバケツリレーで川岸まで稚魚を運んで放流=日ノ神橋下流

 
稚魚が入ったバケツをロープにくくり付け、慎重に下ろす=雲南橋

稚魚が入ったバケツをロープにくくり付け、慎重に下ろす=雲南橋

 
「解禁日に会おう!」順調に育つよう願いを込めながら…=住川橋

「解禁日に会おう!」順調に育つよう願いを込めながら…=住川橋

 
 同組合によると、昨季のアユ釣りは釣果、型ともに上々。遊漁券の売り上げは前年を若干上回り、過去最高を更新した。集客の要因の一つが「釣り場への入りやすさ」。例年、シーズン前に同組合や流域の各地区、県の委託業者が環境整備の一環で土手や河川敷の草刈りを行っていて、釣り客の評価も高い。
 
 川崎組合長は「河川も漁協経営は厳しい状況。沿岸地域の人口減もあり、全体的に釣り客は減っている。市外からもどんどん来ていただき、鵜住居川での釣りを楽しんでもらえれば」と期待する。本年度の組合員費は年間5000円。一般遊漁料は年券が7000円、日券が1500円。遊漁券は市内釣具店や流域の赤いのぼり旗を掲げた販売所のほか、スマホアプリ「フィッシュパス」で購入可能。
 
今季のアユ釣りを楽しみにする組合員ら。川の状態も確認(写真左)

今季のアユ釣りを楽しみにする組合員ら。川の状態も確認(写真左)

 
 一方、甲子川への放流は12日に行われた。甲子川鮎釣協力会(安久津吉延会長)、甲子地域会議、クボタ環境エンジニアリングの三者で実施。約20人が放流にあたった。2班に分かれ、上流は甲子町砂子渡付近から、下流は源太沢町と礼ケ口町の中間地点からそれぞれ甲子町松倉までの区間、計21カ所で計250キロ(約3万2000尾)を放流した。稚魚は盛川漁協から購入した。一尾平均7.8グラム。
 
甲子川鮎釣協力会などが行ったアユの稚魚放流=12日、松倉橋上流

甲子川鮎釣協力会などが行ったアユの稚魚放流=12日、松倉橋上流

 
 同協力会の安久津会長は「昨年の釣果は雨や気温の上下が激しかった関係で全体的に良くなかった。それでも大きいものでは22~23センチのものも。甲子川は水質が良く、アユの餌となるいいコケが育つので、味はおいしいと言われる」とし、今季の集客に期待を寄せる。
 
 甲子川には河川漁協がなく、入漁料を徴収しないため、稚魚の放流は同協力会に寄せられる釣り人らの協力金や企業の寄付金などで支えられる。250キロの放流は昨年と同じ量となる。例年だと、解禁日には16~18センチほどに成長する見込み。
 
最後はトラックの水槽からホースを延ばして稚魚を送り出した=松倉橋下流

最後はトラックの水槽からホースを延ばして稚魚を送り出した=松倉橋下流

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花の見頃はお預けもにぎわい 「橋野鉄鉱山」で八重桜まつり 世界遺産登録10周年をお祝い

春恒例の「橋野鉄鉱山」八重桜まつり。今年は世界遺産登録10周年も祝って開催。約500人が楽しんだ

春恒例の「橋野鉄鉱山」八重桜まつり。今年は世界遺産登録10周年も祝って開催。約500人が楽しんだ

 
 釜石市橋野町青ノ木の世界遺産「橋野鉄鉱山」で11日、八重桜まつりが開かれた。地元住民組織、橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)と栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が主催する、この時期恒例のイベント。遺産エリア周辺の八重桜は大型連休後半から続いた低温や降雨の影響で開花が遅れ、花の見頃はお預けとなったが、訪れた人たちは餅まきや豚汁の振る舞い、高炉場跡のガイドツアーなどを楽しんだ。橋野鉄鉱山は今年7月で世界遺産登録から10周年を迎える。
 
 釜石観光ガイド会(瀬戸元会長、32人)による高炉場跡の見学ツアーでは、2人のガイドがインフォメーションセンターから希望者を案内し、史跡エリアに向かった。同会の川崎孝生副会長(84)は同所で鉄づくりが始まったきっかけ、1~3番高炉の稼働状況、高炉周辺にあった種砕水車場、長屋や御日払所などの役割を説明。良質な鉄鉱石の産出、燃料の木炭材料となる豊かな森林資源、高炉操業に必要な水車を回す水流(二又沢川)があったことで、一大製鉄産業が実現したことを教えた。
 
明治日本の産業革命遺産(8県11市23資産)の構成資産の一つ「橋野鉄鉱山」。見学エリアには3基の高炉の石組みなどが残る

明治日本の産業革命遺産(8県11市23資産)の構成資産の一つ「橋野鉄鉱山」。見学エリアには3基の高炉の石組みなどが残る

 
釜石観光ガイド会会員が当時の鉄づくりや操業規模などを説明。参加者は同所の歴史的意義も学んだ

釜石観光ガイド会会員が当時の鉄づくりや操業規模などを説明。参加者は同所の歴史的意義も学んだ

 
 釜石市内から足を運んだ紺野和子さん(45)は同ガイドツアーに初めて参加。子どもたちが学校で釜石の製鉄の歴史を学び、鉄の検定を受けてきたこともあり、「子ども伝いに話は聞いていた」が、ガイドの解説でさらに理解を深めた様子。「『へえ~』というのがいっぱいありました」と声を弾ませ、「橋野は(四季のイベント開催などで)PRも頑張っている印象。世界遺産登録10周年を機に、より多くの人にここの魅力を知ってほしい」と願った。
 
 まつり恒例の餅まきには幅広い年代が集まった。同振興協の菊池会長(70)ら地域の代表がトラックの荷台に上がり、「橋野鉄鉱山世界遺産登録10周年、おめでとうございます」との掛け声を合図に約800個の紅白餅をまいた。
 
大勢の人たちが楽しんだ餅まき。同まつりで長年続くおもてなし

大勢の人たちが楽しんだ餅まき。同まつりで長年続くおもてなし

 
子どもたちも手提げ袋を手に「こっちにも~」。たくさんの笑顔が広がった

子どもたちも手提げ袋を手に「こっちにも~」。たくさんの笑顔が広がった

 
 同振興協女性部が調理した豚汁のお振る舞いには、今年も長い列ができた。12の具材には地元産の山菜ウルイ、ワラビ、フキも入り、春ならではの味を提供。手作りみそで仕上げた豚汁は来場者に好評で、この味を楽しみに毎年足を運ぶ人も多い。会場内では大槌町のバンド「ZENBEY絆」の演奏や釜石市の女形舞踊・尚玉泉さんの踊りもあり、まつりを盛り上げた。
 
具だくさんの豚汁(右下)を求めて順番待ちの列に並ぶ来場者

具だくさんの豚汁(右下)を求めて順番待ちの列に並ぶ来場者

 
この日は寒さを感じる気候。豚汁が来場者の体を温めた

この日は寒さを感じる気候。豚汁が来場者の体を温めた

 
昨年からまつりを華やかに盛り上げる尚玉泉さん。スマホカメラを向けて楽しむ人も

昨年からまつりを華やかに盛り上げる尚玉泉さん。スマホカメラを向けて楽しむ人も

 
 大槌町の黒澤典子さん(61)は母スワさん(92)を連れて来場。「花は残念だったけど、おいしい豚汁をいただき、餅まきやバンド演奏もあって楽しめた。いい『母の日』になりました」と典子さん。初めて訪れたスワさんも「とてもいい時間を過ごせた」と笑顔を重ね、「(八重桜が)満開の時にまたぜひ」と再訪を望んだ。
 
 同所の八重桜は1980年代に釜石ライオンズクラブが植樹。橋野鉄鉱山が世界遺産登録された2015年には同振興協が新たな植樹を行い、若木も花を咲かせている。インフォメーションセンタースタッフによると、昨年のまつり開催日(12日)は散り始めていたが、今年は開催日前1週間に寒さが続いたため、咲き始めたのは前日から。当日も曇り空で気温が低く、にわか雨や風もあって、多くがつぼみ状態だった。天気予報によると、今後1週間は最高気温が20度超えの日が続く予想で、一気に開花が進むとみられる。
 
咲き始めたばかりの八重桜=11日午前。14日には4分咲きまで進んだ。週末には見頃を迎えそう

咲き始めたばかりの八重桜=11日午前。14日には4分咲きまで進んだ。週末には見頃を迎えそう

 
 同まつりは地域活性化などを目的に2007年にスタート。震災やコロナ禍での中止以外は毎年継続している。同振興協の菊池会長は「天気は悪かったが、大勢のお客さまに来ていただき、ありがたい。皆さんに愛されているまつりと実感する」と感謝。世界遺産登録10周年を迎える今年は、市主催の記念行事も多数計画される。「登録当初は年間1万人を超える来訪があったが、今は減っている。われわれ地元も市と連携しながら、少しでも来訪者増につながるよう魅力を高める取り組みを行っていきたい」と意気込む。

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水辺の生き物続々 根浜ビオトープ開設1周年 観察&環境整備で今後の多様性に期待

根浜ビオトープに生息する生き物をタッチプールで観察=6日

根浜ビオトープに生息する生き物をタッチプールで観察=6日

 
 釜石市鵜住居町の根浜海岸観光施設「根浜シーサイド」内に昨年4月、整備されたビオトープ(生物生息空間)で6日、開設1周年記念イベントが開かれた。沢水が流れ込む大きな池にはこの1年の間にカエルやイモリなどがすみ付いていて、集まった家族連れらが生き物観察を楽しんだ。さらに種類や数が増えることを願い、記念植樹も実施。同所を管理する根浜シーサイドなどは今後、定期的にモニタリング観察会を開き、生き物の生息状況の推移を見守っていく方針だ。
 
 同ビオトープは、東日本大震災の津波で失われた水辺環境と生態系を復活させ、自然との触れ合いや環境教育の場にしようと作られた。同施設の市指定管理者かまいしDMC(河東英宜代表取締役)と市民団体かまいし環境ネットワーク(加藤直子代表)が、多目的広場(運動場)西側の山林隣接地を市から借用して整備。約80平方メートルの敷地には、山からの沢水が循環する大型の池が設置されている。
 
 1周年イベントには市内外から親子連れなど約60人が参加。池に生息しているヤマアカガエルのオタマジャクシ、アカハライモリがタッチプールに放たれ、参加者が見て触れて姿かたちを確認した。最初は恐る恐るだった子どもも、慣れてくると手のひらに乗せてじっくり観察。やさしくなでたりしながら“小さな命”を体感した。
 
オタマジャクシを手のひらに乗せ、間近で観察。触感も確かめる

オタマジャクシを手のひらに乗せ、間近で観察。触感も確かめる

 
活発に動き回るアカハライモリに興味津々

活発に動き回るアカハライモリに興味津々

 
 池へとつながる小川では、トウホクサンショウウオとヤマアカガエルの卵も観察した。ともにゼリー状の物質に覆われているが、トウホクサンショウウオはバナナ形の「卵のう」の中に卵が入っているのに対し、ヤマアカガエルは大きな塊状の「卵塊」で産み付けられていて、形状や触感の違いを確かめた。
 
トウホクサンショウウオの卵(左上)とヤマアカガエルの卵(左下)。「プ二プ二」「ヌルヌル」… 触った子どもたちの感想もさまざま

トウホクサンショウウオの卵(左上)とヤマアカガエルの卵(左下)。「プ二プ二」「ヌルヌル」… 触った子どもたちの感想もさまざま

 
 陸前高田市の臼井航太郎さん(6)は「生き物を捕まえたりするのが楽しい。カエルの卵はぬるぬるして気持ち悪かった。カエルになった時にまた見に来たい」と目を輝かせた。家族で訪れ、前日から施設内でキャンプを満喫。イベントを知り足を運んだ。母真美さん(40)は「身近に生き物と触れ合える場所は少なくなってきている。ここは観察しやすくてとてもいい場所」と感激。「家ではスマホやタブレットで何かしていることが多い。キャンプも自然と触れ合ってほしいとの思いから」。生き物に夢中の愛息を温かく見守り、「次に図鑑を見る時には今日見た生き物を思い出してくれそう」と喜んだ。
 
池のほとりから目を凝らし生き物を探す子どもら

池のほとりから目を凝らし生き物を探す子どもら

 
身近な生き物との触れ合いは今や貴重な体験。親子の思い出づくりにも

身近な生き物との触れ合いは今や貴重な体験。親子の思い出づくりにも

 
 同所一帯には震災前、根浜地区の集落があり、田んぼも広がっていた。多様な生き物が生息していたが、津波で全て流失。住民らは高台移転し、跡地には同観光施設が整備された。ビオトープの整備地周辺には被災後も山から流れ出る沢水で湿地が形成されていたことから、これを活用して生息空間の再生が図られた。
 
 同環境ネットワークによるとこの1年で、カエル類では他にシュレーゲルアオガエル、ニホンアマガエル、タゴガエル(鳴き声のみ)の生息を確認。トンボ類ではオオルリボシヤンマ、シオカラトンボ、ウスバキトンボの姿も確認されているという。この日は事前に捕獲したシュレーゲルアオガエルの成体、オオルリボシヤンマのヤゴ(幼虫)も参加者に見てもらった。
 
今夏、羽化するとみられるオオルリボシヤンマのヤゴ(左上)。鮮やかな体色が目を引くシュレーゲルアオガエル(右上)。生き物は観察後、再び池に放した

今夏、羽化するとみられるオオルリボシヤンマのヤゴ(左上)。鮮やかな体色が目を引くシュレーゲルアオガエル(右上)。生き物は観察後、再び池に放した

 
昨年4月に完成した根浜ビオトープ。豊かな生態系の復活に期待

昨年4月に完成した根浜ビオトープ。豊かな生態系の復活に期待

 
 「たった1年でこれだけの生き物が見られるようになったのはびっくり」と加藤代表(78)。予想では「もっとかかると思っていた」が、2年目の今春、池には大量のカエルの卵が産み付けられた。「生き物がこの池を待っていたんだろうね」。確信が現実となり安心した様子で、「水草や周辺の草が増え、生き物の隠れ家ができてくれば、集まってくる種類もさらに多くなるのでは」と期待感を高めた。
 
 トンボや野鳥に詳しい同ネットワーク会員の菊地利明さん(60)は「トンボは水の匂いと光の反射で水辺を察知して飛んでくると言われている。鳥がカエルの卵などを水かきに絡ませて飛び、遠く離れた水辺に着水することで、それまで見られなかった種が突然見られるようになることも」と話し、今後の生態系の推移に注目する。
 
 この日は生き物観察のほかに記念植樹も行われた。池の周辺に植えられたのは、国蝶のオオムラサキが卵を産み付けることで知られる「エゾエノキ」の幼木2本。菊地さんが日向ダム周辺で育つ木の種を育て、3~4年が経過したもので、同ネットワーク会員らが協力して植え付けた。周りにはシカよけ用のネットも張り、順調に育つように保護した。いつかオオムラサキの滑空が見られる日がくるかも…。
 
植樹するエゾエノキについて説明する菊地利明さん(右)。エゾエノキには国蝶「オオムラサキ」が卵を産み付ける

植樹するエゾエノキについて説明する菊地利明さん(右)。エゾエノキには国蝶「オオムラサキ」が卵を産み付ける

 
植えたエゾエノキの周りにシカよけのネットを張る、かまいし環境ネットワークの会員ら

植えたエゾエノキの周りにシカよけのネットを張る、かまいし環境ネットワークの会員ら

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マグロ、毛ガニ…海産物で「魚のまち」アピール 釜石で春まつり 観光客でにぎわう

かまいし春まつりで買い物客を沸かせたマグロの解体ショー=4日

かまいし春まつりで買い物客を沸かせたマグロの解体ショー=4日

 
 5月の大型連休中の3、4日、釜石市鈴子町の釜石駅前周辺で「かまいし春まつり」(釜石観光物産協会主催)が開かれた。駅前橋上市場サン・フィッシュ釜石では海の恵みを体感する多彩な企画を展開。駅に隣接する観光物産施設シープラザ釜石の西側駐車場には出店ブースや遊びのコーナーが設けられ、市内外から訪れた観光客が思い思いに楽しんだ。
 
 サン・フィッシュでは「魚のまち」をアピールする催しを多数用意。地元で水揚げされた新鮮な魚介類を市価の半額ほどの“浜値”で販売し、その場で焼いて食べられる「浜焼き」を提供した。毛ガニ釣りチャレンジは好評で、4日は開始早々に終了。マダコやトゲクリガニ、リュウグウハゼなどの釜石海域の生き物に触れられるタッチプール(岩手大釜石キャンパスが協力)は子どもたちの人気を集めた。
 
海の生き物に触れられるタッチプールは子どもに大人気

海の生き物に触れられるタッチプールは子どもに大人気

 
毛ガニ釣りに挑む子どもたちに周囲の大人が声援を送る

毛ガニ釣りに挑む子どもたちに周囲の大人が声援を送る
 
マグロの重さ当てクイズも。じっと目を凝らす挑戦者

マグロの重さ当てクイズも。じっと目を凝らす挑戦者

 
 4日、大にぎわいとなったのはマグロの解体ショー。施設を運営する釜石駅前商業協同組合の八幡雪夫理事長が中心となって、長崎・五島産の養殖クロマグロ(ホンマグロ)を出刃包丁などで手際よくさばいた。
 
多くの見物客でにぎわったマグロ解体ショー

多くの見物客でにぎわったマグロ解体ショー

 
 「脂、ヤバー」。頭やカマ、身を切り落とす度に、買い物客から歓声が上がった。解体後は大トロや中トロ、赤身に切り分けてパック詰めされ、安価で販売。解体を見守っていた人らが次々と買い求めた。
 
マグロの解体ショーを通じて触れ合う鮮魚店と買い物客ら

マグロの解体ショーを通じて触れ合う鮮魚店と買い物客ら

 
解体後、マグロを買い求める人たちで長い列ができた

解体後、マグロを買い求める人たちで長い列ができた

 
 マグロの重さ当てクイズも行われ、269人が挑んだ。「55キロ」とぴったり当てた2人にはトロと赤身の「サク」の詰め合わせをプレゼント。「当たっちゃった」と驚く神奈川県藤沢市の会社員八木俊明さん(44)は思いがけない戦利品を手に、「刺し身にして味わう」と頬を緩めた。妻の実家への帰省に合わせ、毎年この時期に来釜。「海鮮はおいしいし、山と海の景色もすごくいい。落ち着く」と目を細めた。
 
 八幡理事長は「どこから人がくるのか…ありがたい。いかにして人を集めるか、周辺施設や行政、出店者らの協力があってこそ」と予想以上の人出に手応えを口にした。漁獲量の減少、水揚げされる魚種の変化への対応など鮮魚店の経営は厳しさもあるが、「駅前を盛り上げたい」との思いは変わらず、「計画中」という秋のイベントに向け、早くも腕をまくった。
 
春の陽気と食を楽しむ家族連れでにぎわった

春の陽気と食を楽しむ家族連れでにぎわった

 
 春まつり開催中は晴れの日が続き、行楽日和となった。屋外では串焼きやかき氷などを味わったり、ゴーカートなど子ども用の乗り物での走行を楽しむ家族連れらでにぎわった。

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真っすぐ、時に曲がりながら 若者が刻む田んぼのリズム 釜石で田植え体験イベント

独特のリズム⁉田植え体験で参加者が描いた苗の点線

独特のリズム⁉田植え体験で参加者が描いた苗の点線

 
 釜石市甲子町の水田で3日、県内外の若者たちが田植えに取り組んだ。青々と成長した「ひとめぼれ」の苗を積んだ田植え機での作業に挑戦。真っすぐだったり、曲がりくねったりと多彩な苗の点描が現れた。電子音楽と食を組み合わせた体験型イベント「DEN DEN GAKU」での一場面。農作業を通じ自然や人との触れ合いも楽しんだ。
 
 小佐野町でゲストハウスを運営する「シェアヴィラやまとき」代表の大井祥紀(よしき)さん(30)を中心とする企画。田植えとのかかわりがあるとされる日本古来の伝統芸能「田楽」に、現代の感性を取り入れた新しい体験を提案するのが狙いで、東京を拠点に活動を展開するクリエイティブチーム「ノット」とタッグを組んだ。
 
 体験の場は「やまとき田んぼ」(約40アール)。生まれは釜石だが、育ちや生活拠点は首都圏の大井さんが昨年から挑むコメ作りの場で、祖父(故人)から引き継いだ大切な水田だ。この日は、水を張った17アールの田んぼで作業。大井さんの実演後、希望者が小型の田植え機を動かした。
 
田植え体験をした「やまとき田んぼ」。周囲には豊かな自然が広がる

田植え体験をした「やまとき田んぼ」。周囲には豊かな自然が広がる

 
コメ作り2年目の大井祥紀さんが描く線は真っすぐのびる

コメ作り2年目の大井祥紀さんが描く線は真っすぐのびる

 
大井さんにアドバイスを受けながら機械を動かす参加者

大井さんにアドバイスを受けながら機械を動かす参加者

 
 山形県にある東北芸術工科大デザイン工学部3年の星川涼介さん(20)、小林晴(はる)さん(20)は農業初体験。農機の操縦も初めてだったが、「ゆっくり、気張らず。ちょっとずれてもいいから」「植える先、前を見て」とのアドバイスを受けて気楽に挑み、「楽しい」と声をそろえた。「コメ農家は就きたい仕事のイメージがなかった」と本音を明かしつつ、「育ったコメを食べたい」「自然が豊かで、ジブリみたい。ひとときでも現実から離れ、リフレッシュになる」と、農業に対する好感を植え付けた。
 
田植え機の操縦を丁寧に教える大井さん(右)

田植え機の操縦を丁寧に教える大井さん(右)

 
田んぼに足を踏み入れ、泥の不思議な感覚を楽しむ

田んぼに足を踏み入れ、泥の不思議な感覚を楽しむ

 
 田植え体験は午前中に始まり、昼休みには野外でバーベキューを堪能。午後の作業時にはノットが電子音楽を響かせる中、首都圏などから訪れた若者ら約30人が機械を動かしたり、作業の進み具合を見守ったりした。
 
コメ作り拠点となる施設の前で食と音楽を楽しむ

コメ作り拠点となる施設の前で食と音楽を楽しむ

 
特設の音楽ブースの奥で田植え機が行き交う

特設の音楽ブースの奥で田植え機が行き交う

 
 「みんなでやるから楽しい」。参加者の様子を見つめながら、大井さんは実感した。「コメ農家は辞めていく人も多く、衰退してしまう」と危機感を抱き、「みんなで楽しんでやる農業を広げたい。(祖父が残してくれた)田んぼがちょうどいい広さで、自分も楽しみながらできる。こういう形なら、農業も残っていくのでは」と考えている。
 
 コメ作りへの挑戦には地域の協力も欠かせない。苗を提供するのは、甲子町の農業佐々木隆さん(83)。大井さんの祖父の代からの付き合いだといい、若い挑戦者をあたたかく見守る。「新規に従事する人が増えるのは、いいことだ。パワーがあり、研究も熱心。販売網などアイデアも持っている。若い人の力を借りながらでなければ、やっていけない」と歓迎。若者たちが田んぼに描いた点線に目を向け、「秋に応えてもらえるよう、丁寧にやらないと」と助言を残した。
 
田植え機を動かす大井さん。地域の力も借りて挑戦を続ける

田植え機を動かす大井さん。地域の力も借りて挑戦を続ける

 
 やまとき田んぼでの田植え作業は今月いっぱい続く見込みで、地元の子どもたちも手伝う予定。大井さんはこうした農業体験のほか、ゲストハウスを拠点に首都圏の人との交流など活動を広げていく考えだ。

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塗り直し作業、完了 永遠の平和祈る女神像 釜石・薬師公園 児童も参加、思いつなぐ【戦後80年】

塗り直し作業が行われた薬師公園の「平和女神像」

塗り直し作業が行われた薬師公園の「平和女神像」

 
 釜石市大町の薬師公園で進められていた「平和女神像 塗替えプロジェクト」は、このほど完了した。「戦後80年の節目に」と地元企業が企画。経年劣化で塗装がはげ落ちたり、ひびが入った部分を補修し塗り直すことで美しい景観をよみがえらせた。この活動に、近くの釜石小(五安城正敏校長、児童68人)の5、6年生ら21人が協力。「像が建てられたのはなぜか」など地域の歴史や平和について考える機会にした。
 
 太平洋戦争末期の1945(昭和20)年、釜石市は米英軍による2度の艦砲射撃(7月14日と8月9日)で甚大な被害を受けた。戦後、市は永遠の平和を祈念し、54(同29)年に平和女神像を建立。台座を合わせた高さは9.4メートルにもなる。市などによると、修復・塗装作業は2009年に行われていた。
 
 今回のプロジェクトは、佐々栄建工(甲子町)代表取締役の佐々木拓也さん(41)が「今年は戦後80年の節目。戦争の記憶と女神像が持つ平和へのメッセージを次の世代に引き継ぎ、守っていかなければ」と発案。子どもたちとできる取り組みを考え、中妻町の松草塗装工業(伊東公一代表取締役)の協力を得て、今年3月から作業を進めていた。
 
子どもたちが参加して行われた像の塗り直し作業

子どもたちが参加して行われた像の塗り直し作業

 
 児童が塗装に取り組んだのは4月28日。像本体の塗装は終えており、土台部分などの仕上げの上塗り作業を手伝った。像の前にある地球儀を模した平和のオブジェもお色直し。はけやローラーを使い、水性塗料を丁寧に塗っていった。作業の様子を見守った松草塗装の佐藤宏さん(53)が、ムラのない塗り方をアドバイス。きれいに仕上がると、子どもたちは満足そうな表情を浮かべた。
 
地球儀を模したオブジェに塗料で色を塗る釜石小の児童ら

地球儀を模したオブジェに塗料で色を塗る釜石小の児童ら

 
子どもたちは職人に教わりながら楽しく作業を進めた

子どもたちは職人に教わりながら楽しく作業を進めた

 
平和女神像の土台もお色直し。丁寧に塗っていった

平和女神像の土台もお色直し。丁寧に塗っていった

 
 公園内では平和学習も行った。艦砲射撃に関する説明が書かれたパネルを前に、市教委文化財課世界遺産室の森一欽室長が解説。「なぜ、釜石は狙われたのか?」と問いかけると、児童から「鉄を作っていたから」と声が上がった。製鉄所があったことで標的にされたが、周辺の関係のない施設にも被害が及んだことを説明。今でも不発弾が見つかっているとも加え、「昔の話だと思うだろうが、80年経っても名残がある」と話した。
 
平和を願う女神像に見守られながら戦争の歴史を学んだ

平和を願う女神像に見守られながら戦争の歴史を学んだ

 
 名残は公園内にも。児童らは、平和女神像のそばにある「忠魂碑」にも目を向けた。砲弾をかたどったもので、日清・日露戦争の戦死者を弔うために建てられたとされる。公園がある薬師山の山頂は戦時中、高射砲陣地となったため、やはり標的に。2回目の砲撃で周囲は破壊され、碑も倒れ落ちた。碑は終戦後も再建されることはなく、横たわったまま。そうした背景を持つ地に恒久平和への深い祈りを込め、先人たちは平和女神像を建てた。
 
「忠魂碑」を間近に見て戦争や平和について考えた

「忠魂碑」を間近に見て戦争や平和について考えた

 
 森室長は「この80年間、世界から戦争がなくなった日は一日もない。平和は簡単に壊れてしまう。戦争はまずい、してはいけないことを、像を塗ることで感じ、平和について考えてほしい」と望んだ。
 
 昨年度まで釜石小に在学し、八戸市から駆け付けた宮里結愛(ゆあ)さん(青潮小5年)は「戦争の話を聞いて、(当時の人たちは)寂しかったり、つらかったりしたと思う。私も家族に会えなくなったら絶対嫌だ。像がまた汚れたら、今度は私が小さい子に平和の思いをつなげていきたい」と受け止めた。
 
 山﨑柊琳(とうり)さん(釜石小6年)は「汚れたところがきれいになってうれしい。楽しかった」と言いつつも、「海外では戦争をしているところがあって平和ではない。世界中が楽しくなるよう、平和への気持ちを守りたい」と学びを深めた。
 
発案者の佐々木拓也さん(左上の写真)、平和学習講師の森一欽さん(右上の写真)の思いをつなぐ釜石小5、6年生。学びをより深めていく

発案者の佐々木拓也さん(左上の写真)、平和学習講師の森一欽さん(右上の写真)の思いをつなぐ釜石小5、6年生。学びをより深めていく

 
 発案者の佐々木さんは「女神像がつくられた経緯や戦争について知ってもらう機会になったようだ。平和と鎮魂の思いを次の世代につなげられたなら。やってよかった」と手応えを感じた。プロジェクトは地元企業として「地域を守り、若い世代に引き継ぐ」との思いを込め、地域貢献活動として展開。今後も子どもたちと取り組める活動を探っていく考えで、「成長した子たちが次の発案者に」と期待を込めた。

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三陸が誇る宝「五葉山」山開き 登山者ら四季の風景に期待! 花の季節ももうすぐ

五葉山の山開き「安全祈願祭」=4月29日、赤坂峠登山口

五葉山の山開き「安全祈願祭」=4月29日、赤坂峠登山口

 
 釜石、大船渡、住田3市町にまたがる三陸沿岸最高峰の五葉山(標高1351メートル)が4月29日、山開きした。釜石、大船渡両市境、赤坂峠登山口で安全祈願祭が行われ、関係者約40人がシーズン中の無事故を祈った。「花の百名山」の一つとしても知られ、県内外の登山客に愛される五葉山。これからの季節はツツジやシャクナゲの群落が愛好家の目を楽しませる。
 
 安全祈願祭は3市町でつくる五葉山自然保護協議会(会長=小野共釜石市長)が主催。神事に先立ち渕上清大船渡市長が、2月26日に同市で発生した大規模林野火災への消火協力、物資支援などに深く感謝。「今後の火災予防を徹底し、新たな視点で災害対策を考える起点にしたい」と決意を述べた。五葉山神社の奥山行正宮司が祝詞を奏上。自治体、警察、各関係団体の代表が玉串をささげ、登山者の安全を祈った。小野共釜石市長は三陸ジオパークのジオサイトに五葉山を登録する方向で協議が進んでいることを明かし、「五葉山が三陸の大きな魅力の一つとして数えられる日も近い。今年1年、十分に安全に留意し、四季折々の美しさを堪能していただければ」と願った。
 
大規模林野火災への対応、支援に対する感謝を述べる渕上清大船渡市長(左)。五葉山自然保護協議会会長の小野共市長(右)は登山者らの環境整備への協力に感謝

大規模林野火災への対応、支援に対する感謝を述べる渕上清大船渡市長(左)。五葉山自然保護協議会会長の小野共市長(右)は登山者らの環境整備への協力に感謝

 
登山道を清める五葉山神社の奥山行正宮司

登山道を清める五葉山神社の奥山行正宮司

 
自治体、警察、観光関係者らが神前に玉串をささげ、今年1年の登山の無事を祈った

自治体、警察、観光関係者らが神前に玉串をささげ、今年1年の登山の無事を祈った

 
 この日朝の同登山口周辺は雨が降ったりやんだりで、一時、濃霧や強風に見舞われる時間帯も。祈願祭後には雨雲が流れて日が差すなど、「山の天気は変わりやすい」との言葉通りの天候となった。このため、頂上を目指す登山客は少なめ。例年見られるグループ登山のにぎわいもしばしお預けとなった。
 
 装備を整え登山道に向かった釜石市の米澤英敏さん(82)は、同市の「アトラス山岳会」に所属。年に5~6回は五葉山に登るという。「季節ごとの花々や新緑、紅葉などいつ来ても楽しめる山。今年も何回か登れれば」と意欲。20代から始めた登山。年齢を重ねても「年相応に達成感、満足感がある」と魅力を語った。
 
雨の中、山開き登山に出発する愛好家ら。例年より気温も低め。手袋も装着して…

雨の中、山開き登山に出発する愛好家ら。例年より気温も低め。手袋も装着して…

 
 祈願祭から程なくして軽い足取りで下山してきたのは、釜石市の菅野愛子さんと佐藤伯子さん(ともに78)。五葉山の山開きには毎年足を運ぶが、今年は「雨なので最初から途中までと思って…」と、3合目まで行って戻ってきたという。「釜石岳友会」のメンバーで、毎月1~2回は岩手、秋田の山を中心に登山を楽しんでいる。「てっぺんで食べるご飯は最高。何を食べてもおいしい」と菅野さん。「今年もいっぱい登りたい。あとは体力と気力次第」と笑う。2人とも登山歴は長く、「登っている時は日々の煩わしさも忘れる。何も考えずに登れて、行って帰ってくると気持ちも晴れ晴れ」と佐藤さん。今年1年の山行に期待を膨らませた。
 
沿道の木々の芽吹きは見られるものの、まだ冬枯れの印象の登山道

沿道の木々の芽吹きは見られるものの、まだ冬枯れの印象の登山道

 
登山口付近の花芽はまだ閉じたまま。山の本格的春の到来が待ち遠しい

登山口付近の花芽はまだ閉じたまま。山の本格的春の到来が待ち遠しい

 
 五葉山自然保護管理員の松田陽一さん(61、釜石市)によると、例年に比べ残雪は少なめだが、8合目から上には雪があり“踏み抜き”(下の雪がやわらかく足が沈み込む現象)への注意が必要。管理員らによる整備で、赤坂峠からの登山道は歩きやすくなっていて、9合目にある山小屋「石楠花(しゃくなげ)荘」のトイレや水場も問題なく使える。松田さんは「三陸道や釜石道の開通後、登山者は増えている印象。遠くからの車のナンバーも見受けられる」とし、五葉山の認知度アップを実感する。
 
 今の時期はヤマザクラが咲き誇り、例年5月中旬にはツツジ、6月下旬にはシャクナゲが開花。山頂付近にはヒノキアスナロの原生林が広がり、頂上からは三陸のリアス海岸や奥羽山系の山々を一望できる。野生動物も豊富。登山の際にはクマ鈴やラジオの携帯で、人間の存在を知らせることも大切だ。

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おかげさまで開駅10周年 道の駅釜石仙人峠で大創業祭 「ありがとう」を還元

買い物客らでにぎわう道の駅「釜石仙人峠」

買い物客らでにぎわう道の駅「釜石仙人峠」

 
 釜石市甲子町の道の駅「釜石仙人峠」が10周年を迎え、4月27日から大創業祭を開いている。観光客を呼び込む施設として地元の特産品や“ソウルフード”の釜石ラーメンなどの特売品を並べ、地元住民に親しまれる施設にと全国のうまいものを紹介。「お客さんあっての道の駅」と日頃の感謝を込めた売り出し企画を5月6日まで繰り広げる。
 
 初日の27日は松倉町内会(甲子町)の約30人が郷土芸能「松倉太神楽」と「松倉虎舞」を披露。元気なかけ声と踊りで地域の祝い事を華やかに盛り上げた。
 
食や観光の発信基地として「開駅10周年」を迎えた道の駅「釜石仙人峠」

食や観光の発信基地として「開駅10周年」を迎えた道の駅「釜石仙人峠」

 
10周年を祝って威勢良く踊る松倉虎舞。創業祭を活気づけた

10周年を祝って威勢良く踊る松倉虎舞。創業祭を活気づけた

 
 売り場では、物価高の今だからこその生活応援企画「ファイトキャンペーン」を展開中。釜石ラーメンは生麺のほか、味比べを楽しめる土産品タイプのインスタント麺もお買い得価格で売り出す。挑戦し続ける人を応援しようと、大規模林野火災があった大船渡市や、地震被害を受けた石川県能登地域の商品も販売。品定めする観光客や住民らでにぎわっている。
 
種類豊富な味を楽しめる釜石ラーメンの販売コーナー

種類豊富な味を楽しめる釜石ラーメンの販売コーナー

 
 国道283号沿いにある同駅は2015年4月に開業した。釜石自動車道釜石仙人峠インターチェンジ(IC)に隣接し、内陸部から市中心部に入る「玄関口」の拠点施設。指定管理者の釜石振興開発(新里進社長)が運営する。地元を中心にした農家でつくる販売組合が特産の甲子柿や季節の野菜などを直売するほか、海産物、地酒などもあり、食や観光の情報発信基地として力を発揮。トイレ棟もあり、休憩のために立ち寄る人も多い。
 
 食堂もあり、釜石ラーメンやご当地ソフトクリームなどを味わう人の姿も多く見られた。休憩を楽しんだ源太沢町の川村保さん(76)、ミサ子さん(71)夫妻は「(施設は)小さいけど、品数が多い。コンパクトに買い物を楽しめる。スタッフも明るくていい」と好印象を持つ。釜石道を利用する際には立ち寄っているようで、店員とは顔なじみ。郷土芸能を見て、ネギや菜花など野菜を購入した後は、「新緑の季節だから、ふらっとドライブに」と笑顔を重ねた。
 
新鮮野菜、海産物、土産物などを並べて地域発信「これからも」

新鮮野菜、海産物、土産物などを並べて地域発信「これからも」

 
 佐々木雅浩駅長(62)によると、ここ数年は新型コロナウイルスの影響を受けたものの、客足の落ち込みは2割程度にとどまった。「狭い店舗だけど」「小さいからこそ」と従業員がアイデアを出し合い陳列を工夫したり、客との触れ合いを重視したり、「短所を逆手に取った運営」を展開。すると、23年には客足が戻り、利用者数はこれまでの記録を更新した。
 
 「遠方からの来訪者に釜石を紹介するだけでなく、地元のお客さんにも寄り添った運営を目指している」と佐々木駅長。利用への「ありがとう」を形にしたのが大創業祭で、「おいしさと特価でお返し。至る所に特売品があるのでお立ち寄りを」と呼びかける。
 
特別販売の「うにぎり」。豊かな風味にファンも多いとか

特別販売の「うにぎり」。豊かな風味にファンも多いとか

 
 10周年を記念した売り出しのほか、催しも用意。5月3~4日はホタテの浜焼き販売(各日とも午前10時~なくなり次第終了)、4~5日は地元・永野商店の訳あり干物即売会(各日とも午前9時~午後1時まで)を予定する。同駅の名物として人気の「うにぎり」(磯スープで炊いた米やウニみそを使った風味豊かなおにぎり)を1個250円で特別限定販売。500円以上の買い物をした希望者には「10周年記念切符」を贈る。

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「上小川・中小川集会所」落成 供用開始祝う会で住民にお披露目 2町内会合併で組織力強化へ

新築された「上小川・中小川集会所」のホールで歌や食事を楽しむ住民ら=27日

新築された「上小川・中小川集会所」のホールで歌や食事を楽しむ住民ら=27日

 
 釜石市甲子町の上小川、中小川両地区住民が利用できる新しい集会所が完成し、4月から供用を開始した。27日、新しい施設のお披露目を兼ねた落成を祝う会が開かれ、歌や踊り、食事を楽しみながら住民が交流した。両地区の町内会は本年度から合併。単一組織として新たな住民活動をスタートさせる。
 
 新集会所の名称は「上小川・中小川集会所」。甲子町第15地割内、住宅型有料老人ホーム「カサ・デ・ファミリア」の隣接地に市が整備した。敷地面積は1674平方メートル。建物は木造平屋建てで、延べ床面積は214平方メートル。ホール、会議室、和室、調理室などを備え、物資収納に活用できるロフトも整備した。昨年5月に着工、今年2月に完成した。
 
 両地区にはこれまで、それぞれに集会所(上小川は地域所有・管理)があったが、共に築45年余りが経過。老朽化が進んでいたことから、住民から建て替えの要望が出されていた。市は世帯数、人口の減少を鑑み、各地区町内会と協議し、両地区住民が利用可能な施設整備を検討。2024年度事業で建設した。
 
甲子町第15地割内に整備された「上小川・中小川集会所」。広い駐車スペースも確保

甲子町第15地割内に整備された「上小川・中小川集会所」。広い駐車スペースも確保

 
調理室はホールと隣接。格子戸を開けると続き間に…

調理室はホールと隣接。格子戸を開けると続き間に…

 
 新集会所の建設と並行し、両町内会は組織の再編を模索。上小川町内会が役員不足などで5年間活動を休止していたことから、中小川町内会が上小川住民の加入を受け入れる形で、新・中小川町内会を発足することになった。役員会や新規加入の住民説明会を経て、27日に合併に伴う初の町内会総会を開催。新組織の役員に上小川住民が入り、中小川町内会長を務めてきた佐々木正雪さん(75)が新町内会の会長に選出された。
 
 総会後は新集会所落成を祝う会がホールで開かれた。町内会婦人部が調理したひっつみ汁や惣菜をテーブルに並べ、飲食とステージイベントを楽しんだ。同市在住の歌手・尾崎都さんの歌、舞踊家・尚玉泉さんの踊りに続き、「釜石応援ふるさと大使」の書家・支部蘭蹊さん(宮城県仙台市在住)による書のパフォーマンスがあった。支部さんは大判紙に「夢」「希」などの字を書いて見せたほか、同集会所に掲げるケヤキの看板に集会所名などをしたためた。
 
集会所落成記念の会を盛り上げた尾崎都さん(右)と尚玉泉さん(中)

集会所落成記念の会を盛り上げた尾崎都さん(右)と尚玉泉さん(中)

 
上小川、中小川地区の住民が手拍子をしながらステージを楽しんだ

上小川、中小川地区の住民が手拍子をしながらステージを楽しんだ

 
支部蘭蹊さんが集会所に掲げる看板を揮毫。「蛍の里」もアピール

支部蘭蹊さんが集会所に掲げる看板を揮毫。「蛍の里」もアピール

 
 食事の準備をした町内会婦人部の女性(80)は「新しい集会所は調理室も広くて使いやすい。ありがたいですね。コロナ禍などでしばらく行事もできなかったので、これからここを利用してみんなで集まる機会を増やせれば」と望んだ。新町内会に加入した上小川地区の女性(71)は「歴史ある上小川町内会に終止符が打たれるのは寂しいが、高齢化や役員のなり手不足、未加入世帯の増加などで町内会運営は難しい時代」と、今回の合併を受け入れ。近年、多発する自然災害を見据え、「やはり町内会単位の連絡が密でないと…。横のつながりは一層必要。互いに助け合っていかなければ」と気を引き締める。
 
 約420世帯が暮らす両地区は周辺が山に囲まれ、地区内には小川川が流れる。同河川は市内有数のゲンジボタルの生息地で、古くから住民らによる環境保全活動が続けられてきた。中小川町内会は防災活動も盛ん。佐々木会長は新集会所の整備について、「紆余(うよ)曲折あったが、長年の懸案がようやく解決できた」と一安心。新町内会のスタートにあたり、「人口減や高齢化は避けられないが、年間行事を活発化させ、両地区住民、世代間の交流を図れれば。要支援者の支援、防災活動にもさらに力を入れていきたい」と話した。

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釈迦の誕生祝い「花まつり」 釜石・正福寺幼稚園 華やかに稚児行列 ほころぶ春彩る

華やかな装束をまとい保護者らと練り歩く正福寺幼稚園の園児

華やかな装束をまとい保護者らと練り歩く正福寺幼稚園の園児

 
 釜石市甲子町の正福寺幼稚園(松岡公浩園長、園児25人)は27日、お釈迦(しゃか)様の誕生日(4月8日)を祝う「花まつり」を行った。きらびやかな装束姿の園児が近隣を行進。誕生を祝う歌を響かせながら、かわいらしく歩く姿に沿道から笑顔がこぼれた。
 
 「灌仏会(かんぶつえ)」とも呼ばれる仏教行事の一つ。誕生時に天から降りた竜が甘露水を注いだという伝説から、「甘茶を仏様へ灌ぐ(そそぐ)」のが習わしとなっていることが由来とされる。祝いに合わせ、華やかな稚児衣装を着て練り歩くと、釈迦の功徳を授かって健やかに成長できると伝わり、子どもたちの健康を祈る行事でもある。
 
かわいらしく着飾った子どもたち。おすまし顔でパチリ

かわいらしく着飾った子どもたち。おすまし顔でパチリ

 
 同園では、隣接する正福寺(須藤寛人住職)の行事に参加する形で毎年行っている。出発式で、同園を運営する学校法人釜石学園理事長でもある須藤住職が「お釈迦様はみんなが元気に幼稚園に来られるよう見守っています。お釈迦様が生まれた時、枯れ木ばかりの山で一気に花が咲いたことから、お祝いのため花まつりと呼びます。みんなが誕生日に甘いものを食べるように、お釈迦様には甘い水をかけてお祝いしましょう」などとあいさつした。
 
須藤寛人住職(右下の写真)の話に耳を傾ける園児ら

須藤寛人住職(右下の写真)の話に耳を傾ける園児ら

 
 年中、年長児15人が参加した。赤や緑色の上衣と紫色のはかま、男児は烏帽子(えぼし)、女児は宝冠を身に着け、父母らに付き添われ園を出発。行列には釈迦像を乗せた白象をかたどった山車も加わり、近隣を周回する約1.5メートルの道をゆっくりと歩いた。
 
母親らに付き添われて練り歩く子どもたち

母親らに付き添われて練り歩く子どもたち

 
住職らが先導した稚児行列。笑顔を見せながら近隣を巡った

住職らが先導した稚児行列。笑顔を見せながら近隣を巡った

 
白象の山車。釈迦の母親が白い象の夢を見た後に釈迦が生まれたとの伝説に由来する

白象の山車。釈迦の母親が白い象の夢を見た後に釈迦が生まれたとの伝説に由来する

 
 音に誘われた住民らが外に出て、笑顔で見守った。祝いに駆け付けたお礼として、園関係者が縁起物の「散華(さんげ)」を配布。保護者たちはわが子の晴れ姿に口元をほころばせ、「かわいいね」などと話しながら写真を撮っていた。
 
お祝いに駆け付けた住民らに縁起物を手渡す

お祝いに駆け付けた住民らに縁起物を手渡す

 
道端に咲く春の花と一緒に釈迦の誕生日をお祝い

道端に咲く春の花と一緒に釈迦の誕生日をお祝い

 
 正福寺本堂前には花で飾られた小さなお堂「花御堂(はなみどう)」が用意され、行列を終えた釈迦像を安置。同寺梅花講のメンバーが仏の教えをたたえる和讃(わさん)を唱える中、園児がひしゃくで甘茶をかけて祝福した。
 
稚児行列に参加し、釈迦像にひしゃくで甘茶をかける子ども

稚児行列に参加し、釈迦像にひしゃくで甘茶をかける子ども

 
 柴田明心(あこ)ちゃん(5)は「(衣装が)きれい。楽しかった」とうなずいた。昨年は参加できなかったといい、今回が最初で最後の稚児行列。父親の晃裕さん(39)は「昔の服装を着る機会は少なく、いい思い出になった。健康に育ち、季節の行事に触れながら友達と楽しく過ごしてもらえたら」と目を細めた。
 
 同園では、仏教の教えを保育に取り入れ、「子どもたちが持つ潜在的な能力を伸ばし、元気や優しさ、明るさ、協調性、思考力を育む」との理念を掲げる。松岡園長は「行事を通じ、人に対する思いやり、感謝する気持ちを感じてもらえれば。そうした心を忘れないでいれば道が開けるということが伝わるといい」と見守った。

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住民の絆つなぐライトアップ花見会 栗林町砂子畑で4年目の開催 “笑顔”も咲く

地元が誇る桜のもとで花見会を楽しむ栗林町砂子畑地区の住民ら=19日夕方

地元が誇る桜のもとで花見会を楽しむ栗林町砂子畑地区の住民ら=19日夕方

 
 釜石市内の桜前線が市街地から山間地域に移る中、同市栗林町砂子畑地区では19日夜、ライトアップした桜を愛でる花見会が開かれた。地元町内会「砂子畑共正会」(栗澤陽一会長、113世帯)が主催する地域交流行事の一環。今年で4年目の開催で、約30人が飲食を共にしながら、楽しい時間を過ごした。
 
 ライトアップされたのは、市指定文化財(天然記念物)の巨木「明神かつら」からほど近い、鵜住居川沿いの私有地に生えるソメイヨシノ。土地所有者の藤原信孝さん(76)の弟啓二さん(故人)が1985年ごろに植えたもので、根本から7本に分かれて幹を伸ばす姿が独特の樹形を生み出している。背後の藤原さん宅の庭には、同時期に濃桃色の花を咲かせるハナモモの木などがあり、開花時期には3色の花が競演。川をはさんだ対岸を走る県道釜石遠野線からも目に付く春の光景となっている。
 
植樹から約40年が経過した藤原信孝さん方のソメイヨシノ

植樹から約40年が経過した藤原信孝さん方のソメイヨシノ

 
ライトに照らされ、夕闇に美しい桜景色を広げる。写真右側に流れるのが鵜住居川

ライトに照らされ、夕闇に美しい桜景色を広げる。写真右側に流れるのが鵜住居川

 
 藤原さんによると、今年の桜の開花は例年より2~3日遅かった。当初、花見会を予定した12日時点では2~3分咲きだったため、1週間延期してこの日の開催となった。その間に風雨に見舞われる日もあり、花は満開のピークを若干過ぎていたが、ライトに照らされた桜は例年通りの存在感を放った。
 
 参加者はビールやお茶を飲みながら、おでんや焼きそば、ホルモン焼きなどを食した。近所に住む女性(78)はライトアップされた桜を眺め、「すてきだよね~。見ると気持ちが浮き浮きする」とにっこり。「こうしてみんなと話をするのも好き。いろいろな情報も入るので。他にも行事をやってほしい」と望んだ。
 
アルコールも入って気分上々。会話も弾む花見会

アルコールも入って気分上々。会話も弾む花見会

 
町内会単位の花見会は今では数少ない光景。住民同士をつなぐ

町内会単位の花見会は今では数少ない光景。住民同士をつなぐ

 
 桜のライトアップは栗澤会長(65)が発案。新型コロナウイルス禍で2年ほど町内会行事ができなかったこともあり、感染拡大が収束に向かった2022年に初めて試験的に実施した。夜桜を見ながらの飲食も解禁。以来、町内会行事として継続している。栗澤会長は「今年は開花時期が読めなくて、周知がうまくいかなかったところもあるが、開催できて何より。会は世代間交流の場にもなっている。少子化などで人口減は避けられないが、そうした中だからこそ大切な機会。ぜひ、これからも続けていきたい」と話した。
 
河川敷につながる土手にはカラフルなイルミネーションも設置(写真左)。年に1回のお楽しみ!

河川敷につながる土手にはカラフルなイルミネーションも設置(写真左)。年に1回のお楽しみ!

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初のTETTO開催 浜千鳥のすべてを楽しむ会 ファン100人25銘柄味わい尽くす

奥村康太郎杜氏(右)から各銘柄の特徴などを聞き、酒の試飲を楽しむ参加者

奥村康太郎杜氏(右)から各銘柄の特徴などを聞き、酒の試飲を楽しむ参加者

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は18日、浜千鳥のすべてを楽しむ会を大町の市民ホールTETTOで開いた。春恒例の催しは今年で33回目。市内外から約100人が参加し、今季醸造の酒など全25銘柄を飲み比べながら、その味わいを堪能した。昨年12月、日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことで、その価値にも注目が集まる日本酒。同社はさらなる消費拡大、認知度向上に期待を寄せる。
 
 この催しは1989年にスタート。当時、あまり認知されていなかった同社醸造の酒の種類(純米酒、本醸造、純米吟醸…など)を広く知ってもらおうと企画された。以来、冬から春にかけての酒造りを締めくくる催しとして多くの浜千鳥ファンに親しまれている。開会にあたり新里社長は、2003年から始まった大槌町での酒米生産を機に、より地域資源にこだわった酒造りが進んでいることを明かし、「地酒メーカーとして歩み続ける当社の特徴ある酒を楽しんでほしい」と呼び掛けた。
 
TETTOホールBを初めて会場にした「浜千鳥のすべてを楽しむ会」

TETTOホールBを初めて会場にした「浜千鳥のすべてを楽しむ会」

 
参加者全員で乾杯! おいしい酒に笑顔がこぼれる

参加者全員で乾杯! おいしい酒に笑顔がこぼれる

 
 全員で乾杯した後は、同社の全銘柄を味わえるパーティー。各テーブルには大槌町源水地区の湧水で仕込んだ限定醸造の「源水純米吟醸」、釜石鉱山の仙人秘水で仕込んだ「仙人郷純米酒」などが並んだほか、試飲コーナーには吟醸酒、純米酒、米焼酎、梅酒とさまざまなラインナップがずらり。中には1991年、2001年醸造の30年、20年ものの古酒もあった。参加者は同社社員らの話を聞きながら、気になった銘柄を飲み比べ。味や香りの違いを楽しみ、日本酒への理解を深めた。
 
おつまみは料亭幸楼の仕出し料理(写真左上)。試飲コーナーには古酒(同右上)を含む浜千鳥のさまざまな酒が並んだ。

おつまみは料亭幸楼の仕出し料理(写真左上)。試飲コーナーには古酒(同右上)を含む浜千鳥のさまざまな酒が並んだ。

 
 5種の酒を判別する利き酒コーナーも人気。多くの人が挑戦した。初チャレンジという山田町の三田地千絋さん(32)は「飲めば飲むほど分からなくなった。甘口と辛口ぐらいは分かるが、どれとどれが同じかは…??」と笑い、結果発表を楽しみに。華やかな香りとすっきりとした味わいが特徴とされる吟醸酒が好みといい、「移住してから沿岸の蔵元の酒をよく飲むようになった。浜千鳥さんの梅酒も大好き」と地域が育む味をお試し中。杜氏の多い本県の酒造り文化にも興味が湧いているという。
 
お楽しみの利き酒コーナー。成績優秀者には認定書と賞品のプレゼントが…

お楽しみの利き酒コーナー。成績優秀者には認定書と賞品のプレゼントが…

 
 会には東京など県外からの参加者の姿もあった。秋田県から夫婦で足を運んだのは佐藤一徳さん(60)。地元店舗のオープン記念でもらった「仙人郷」を飲んだのがきっかけで、浜千鳥の蔵元見学や酒造り体験塾参加を重ね、今回、念願の“楽しむ会”に初参加。「定年で時間的余裕ができたこともあり、やっと来られた。今まで飲んだことがない味もあってとても楽しめた。地元の仕込み水と杜氏さんの技術が相まって非常に魅力的な酒に仕上がっている印象。これからも機会あるごとに足を運びたい」と顔をほころばせた。
 
 会では、奥村康太郎杜氏(44)がユネスコの無形文化遺産に登録された日本の「伝統的酒造り」について、その歴史や技術、評価されたポイントなどを解説。こうじ菌を使った酒造りは日本の気候風土に適し、その技術は清酒のみならず焼酎や泡盛などにも応用され、祭礼や年中行事に欠かせない文化として発展を遂げてきたことを紹介した。新里社長は同登録を「日本酒を見直すきっかけになったと思う」と歓迎。本県沿岸に足を延ばす訪日外国人観光客の増加にも期待し、「酒蔵見学などで日本酒を正しく理解してもらうのはもちろん、ぜひ、地元食材を使った料理と一緒に味わってほしい」と望んだ。
 
浜千鳥の新里進社長(中)と「はい、ポーズ!」

浜千鳥の新里進社長(中)と「はい、ポーズ!」

 
客の好みに合う酒を社員らが提案(写真左)。日本酒にはやっぱり和食。飲んで食べて参加者同士の交流も(同右)

客の好みに合う酒を社員らが提案(写真左)。日本酒にはやっぱり和食。飲んで食べて参加者同士の交流も(同右)

 
 この催しをTETTOで開くのは初めて。市中心部で100人規模の宴会などを開催できる場所がなくなったため、同ホールに相談。ホールBを会場とし、仕出し料理を持ち込んでのパーティーが実現した。新里社長は「当社の場合はこれまでも従業員が飲料提供のサービスをしてきたこともあり、違和感なく運営できた。会場内にはあらかじめ、ごみ箱を設置。皆さんにもご協力いただく形にした」とし、同所利用の新たな可能性を示した。