
栗林小学習発表会「栗っ子祭り」=25日、同校体育館
釜石市の栗林小(高橋昭英校長、児童25人)は25日、本年度の学習発表会「栗っ子祭り」を同校の体育館で開いた。児童自らが考え、掲げたスローガンは「みせよう25人の成長~栗橋愛なら、だれにも負けない~」。全校児童が力を合わせ、創り上げた劇や合唱を集まった保護者や地域住民に披露し、“栗っ子魂”を存分に発揮した。
1、2年生が開会のあいさつ。全校児童が11月の小中学校連合音楽会に向け取り組んでいる合唱「大切なもの」「さんぽ」の2曲を歌った。1~4年生15人による劇は、宮沢賢治の童話をモチーフにした「どんぐりと山ねこ」。セリフに地元の名所“橋野鉄鉱山”や“義人桜”などを取り入れ、地域色豊かに物語を展開した。おなじみの「誰が一番偉いか」で争うどんぐりたちの裁判では、児童一人一人が、これまでにできるようになったことをアピール。「漢字を書けるようになった」「リコーダーをうまく吹けるようになった」「かけ算ができるようになった」など成長ぶりを示した。

「最後まで心を込めて発表します。ごゆっくりご覧ください!」開会のあいさつをする1、2年生(上)。児童たちが考えたスローガンも掲示(下)

全校合唱では心を一つに歌声を重ねた(上)。発表会には保護者のほか多くの地域住民が来場(下)

1~4年生が演じた劇「どんぐりと山ねこ」。宮沢賢治の名作を“栗小バージョン”で

どんぐり裁判の場面では児童たちが頑張ったことをアピール。保護者はわが子の成長をうれしそうに見つめた
2年児童の母葛西祐香さん(31)は「1年生の時に比べ、すごく成長しているのを感じられた」と喜びの笑顔。「3年生になっても楽しみながら学びを深め、さらに成長していってくれたら」と期待を込めた。
5、6年生10人は、江戸時代末期、嘉永の三閉伊一揆(1853年)の指導者の一人として村人を救った地元の「三浦命助」を題材に劇を発表した。「ふるさと学習」で、郷土の偉人である命助について学んできた児童ら。「石碑があるのは知っていたけど…」「偉人なのに、なぜ牢に入れられた?」など、さまざまな疑問を出発点に調べ学習を進めてきた。その集大成がこの劇。講談師役の2人が命助の生涯を紹介しながら物語を展開。命助家族が盛岡藩の厳しい課税に頭を悩ます場面、命助ら沿岸各地の農民が仙台藩への越訴を目指す場面、要求はかなったものの脱藩の罪で牢に入れられた命助が、面会に来た地元民に思いを託す場面を全員で演じ切った。

5、6年生は江戸時代に地域住民を救った三浦命助の劇を発表。これまでの学びの成果を物語に織り込んだ

「小○」の旗を掲げ、仙台藩への越訴を決意。長い道のりでけが人も出るが、要求を認めてもらうため、必死に歩き続ける
劇中では、今年4月に県指定文化財となった命助関係資料(35点)の一つ「獄中記」を、命助が家族に届けてほしいと託す場面も。有名な一節「人間は三千年に一度咲く優曇華(うどんげ)なり」という言葉とともに、命の尊さ、人としてのまっとうな生き方を伝えようとした姿をしっかり表現した。児童らは、命をかけて戦った命助の「最後まであきらめない心、相手を思いやる心は今、私たちにも受け継がれ宿っています」と栗橋住民の誇りを表した。

盛岡の牢に入れられた命助は、自らの思いを記した「獄中記」を見舞いにきた松之助に託す

劇の最後には命助から学んだことを発表。「誰かを思う温かい心をこれからも大切にしていく」と決意を述べた
命助役の遠野姫瑠さん(6年)は「気持ちを込め、命助さんになりきって一生懸命演じました」。みんなで心を一つにした舞台は「100点満点!」と自信をのぞかせた。劇のタイトル“やり遂げる覚悟”を自らの人生に重ね、「私も自分の決めた目標や将来の夢を達成できるように頑張りたい」と意識を高めた。「まちの人のために良いことをやった命助さんがなんで捕まったのだろう」と興味を持った八木澤敬斗さん(5年)は、「調べ学習はワクワクして楽しかった」と振り返る。劇では一揆に参加した農民の一人を演じた。一揆に向かうところは「自分たちが何かをやる時にみんなで力を合わせるのと似ていた」と話す。命助は「憧れの人。自分もそういう人になりたい」と理想の人間像を描いた。
高橋校長は「一人一人が自ら進んで、いきいきと活動していた。学年の垣根を超えて、助け合いながら準備や練習に取り組む姿を心からうれしく思った」と感激し、教職員、家族、地域住民の支えに深く感謝した。同校は9月末に策定された同市学校規模適正化・適正配置推進計画で、2027年度を目標とする鵜住居小との統合が計画される。今後、統合準備委員会が設置され、具体的検討が始まる見込み。「子どもたちの不安を少しでも解消し、一緒になった時により良い学校生活が送れるよう全力を尽くしたい」と高橋校長。
心温まる発表会 栗林小に思いを寄せる人たち多数来場 伝統のPTA合唱でサプライズも

栗林小の伝統、PTAによる「コールマロン」の合唱
地域とともに歴史を重ねてきた栗林小。栗っ子祭りには30年以上前から続く伝統のプログラムがある。PTAでつくる「コールマロン」の合唱。今年は「もみじ」「365日の紙飛行機」の2曲を歌った。
同活動を始めた当時のPTAは今、現児童の祖父母世代に…。子ども3人が同校に通い、現在は孫が在籍する藤原マチ子さん(73)も“初代”コールマロンの一人。この日は同世代の洞口政伸・栗林共栄会長の“鶴の一声”で同合唱に飛び入り参加。「伝えるべきものが今に受け継がれているのはうれしい限り」と声を合わせた。児童数が減少する中でも「先生方は時代に合った教育を一生懸命やってくれている。地域とのつながりを大事にしてくださっていることにも感謝」と話した。

発表会には栗林小前校長の八木澤江利子さん(手前)も招かれた
この日は、昨年度まで3年間、同校校長を務めた八木澤江利子さん(現宮古市立田老第一小校長)も駆け付けた。同合唱では、高橋校長のサプライズ指名で「もみじ」を指揮。児童らの発表で一段と成長した姿を目にし、うれしそうな表情を浮かべた。「栗林小の子どもたちはすごく真っすぐで、何事にも全力。地域の偉人の劇では、脈々とこの地に受け継がれている信念や人々の思いをしっかり受け止め、表現している。子どもたちの頑張りにはいつも元気をもらう」と八木澤さん。同祭りは「この地域にとってかけがえのないもの」と実感する。

八木澤さんの指揮で「もみじ」を合唱。会場はふるさとを思う温かい空気に包まれた
八木澤さんと栗橋地域にはもう一つ、深い縁がある。八木澤さんの誕生時、教師だった両親が橋野小和山分校に赴任していたこと。自身は生まれたばかりで記憶はないが、事あるごとに両親から和山での生活について聞いていたという。「生まれた時、そしてまた半世紀の時を経て、この地域の皆さまには大変お世話になり支えられた」と感謝の思いを口にした。


























































































