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米、雑穀、野菜… 手作りメニューで収穫の喜び味わう 釜石・橋野で18回目の水車まつり

青空の下で開かれた第18回水車まつり=3日、橋野どんぐり広場

青空の下で開かれた第18回水車まつり=3日、橋野どんぐり広場

 
 釜石市橋野町の初冬の恒例行事「水車まつり」が3日、産地直売所の橋野どんぐり広場周辺で開かれた。米や雑穀、野菜などの農産物を昔ながらの食べ方で味わってもらい、同地域の魅力発信、誘客につなげるイベント。橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)、栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が共催する。18回目の今年も市内外から家族連れなど大勢の人が足を運び、地元住民らによる手作りメニューを味わった。
 
 同振興協の菊池会長が歓迎のあいさつをし、餅まきからスタートした。主催、協賛団体の代表が軽トラックの荷台から約800個の紅白餅をまいた。収穫祝いの餅が宙を舞うと、子どもも大人も手を伸ばし、にぎやかな歓声が響いた。
 
水車まつり恒例の餅まき。老若男女が楽しんだ

水車まつり恒例の餅まき。老若男女が楽しんだ

 
 毎回好評の豚汁は約300食分が用意された。地元産の野菜を使い、同振興協女性部が調理。無料のお振る舞いに長い列ができた。手打ちそば、雑穀おにぎり、きびの焼き団子は約150~260食分用意され、安価で販売された。手打ちそばの提供には鵜住居公民館で活動する「そばの三たて会」(奥山英喜会長)が2018年から協力している。来場者は好みのメニューを買い求め、青空の下で農作物の恵みを堪能。周辺の山々の紅葉は始まったばかりだったが、山間部ならではのすがすがしい空気に包まれながら、心地よい時間を過ごした。
 
豚汁のお振る舞いには長い列ができた。この味を求めて足を運ぶ人も多い

豚汁のお振る舞いには長い列ができた。この味を求めて足を運ぶ人も多い

 
豚汁、手打ちそば、雑穀おにぎり…。実りの秋を存分に

豚汁、手打ちそば、雑穀おにぎり…。実りの秋を存分に

 
炭火で焼くきびだんご。手作りのみそだれが香ばしさを倍増

炭火で焼くきびだんご。手作りのみそだれが香ばしさを倍増

 
会員がそば打ちをし、ゆでたてを提供する「そばの三たて会」

会員がそば打ちをし、ゆでたてを提供する「そばの三たて会」

 
 同市箱崎白浜地区から足を運んだいとこ同士という佐々木寧々さん、佐々木蒼さん(ともに小4)は「豚汁はジャガイモが大きくて、味も家で食べるのとは違う。お餅も10個ぐらい拾った。橋野は自然がいっぱいで好き。山にも登ってみたい」と笑顔満開。蒼さんの父隆寛さん(34)は「まつりには初めてきたが、子どもたちが楽しめて良かった。外で食べるのもうれしそう。何でも好き嫌いなく食べて元気に育ってほしい」と望んだ。
 
青空の下で食事を楽しむ来場者

青空の下で食事を楽しむ来場者

 
子どもたちもさまざまなメニューをおいしくいただきました!

子どもたちもさまざまなメニューをおいしくいただきました!

 
 どんぐり広場隣の親水公園には、かやぶき屋根の水車小屋があり、来場者が内と外から見学。橋野町には昔、集落ごとに共同利用の水車小屋があり、水力で動かすきねで米や雑穀をつき、もみ殻をはずす作業を一昼夜かけて行っていたという。この日は、農機具が機械化される前に精米などに使われていた「唐箕(とうみ)」の実演も行われた。7.5キロのもみ米を水車でついた後、木製の唐箕に投入。つまみを回して風を送り、米粒と粉状になったもみなどを分ける作業を公開した。精米した米は2合ずつ見学者にプレゼントされた。
 
今では目にする機会のない「唐箕」の実演に来場者は興味深げに見入った

今では目にする機会のない「唐箕」の実演に来場者は興味深げに見入った

 
 滝沢市から山田町の実家に帰省した吉田陽子さんは「昔はこうやって米を食べられるようにしていたんですね。子どもたちも『これ何するの?』と興味津々でした。昔の農業を知るいい機会」と喜び、ぬか漬け用に米ぬかももらってほくほく顔。「きびだんごとそばがおいしかった」と話す娘の梨緒さん(小2)と「来年も来たいね」と目を合わせた。
 
 橋野どんぐり広場の藤原英彦組合長は今年の農作物の出来について、「大きい台風で稲が倒れることもなく、米の収量はまずまず。野菜も昨年のような酷暑の影響はなく、良いほう。後は野生キノコの出荷制限が早く解除されれば」と来季に期待した。
 
水車が回る親水公園は散策の楽しみも。裏手には「ママシタの滝」がある

水車が回る親水公園は散策の楽しみも。裏手には「ママシタの滝」がある

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好きすぎて…「鳥」 作家・ライター細川博昭さん(釜石出身) 語る「人間に似ている」

書店に並ぶ本をのぞき込む人たち=釜石市大町・桑畑書店

書店に並ぶ本をのぞき込む人たち=釜石市大町・桑畑書店

 
 文化の日の3日、釜石市大町の桑畑書店(桑畑眞一社長)に、あるテーマの書籍を紹介するコーナーがお目見えした。客たちがのぞき込む先にあったのは「身近な鳥のすごい辞典」「鳥と人、交わりの文化誌」「インコのひみつ」などとタイトルが記された本。お気づきの通り、テーマは「鳥」で、釜石出身の作家・サイエンスライター細川博昭さん=神奈川県相模原市在住=が手がけた。その細川さんが来釜中だったことから、同日、トークイベントを開催。市民ら15人ほどが耳を傾け、「初めて聞く話で面白かった」と新たな視点や知識との出合いを楽しんだ。
 
「鳥」にまつわる書籍がずらり。著者は作家の細川博昭さん

「鳥」にまつわる書籍がずらり。著者は作家の細川博昭さん

 
 細川さんは釜石南高(現釜石高)卒。14歳の時に決めた「理系の物書き」になるため物理を学ぼうと上智大理工学部に進んだ。卒業後は一時一般企業で働いたが、執筆活動も行い、フリーに転身。物書き一本に絞ってからは鳥を中心に、歴史と科学の両面から人間と動物の関係をルポルタージュするほか、先端の科学や技術を紹介する記事も精力的に執筆、書籍の編集なども手がける。
 
 イベントでは、物書きという人生設計に至った中学時代の生活や思考、飼育する・しないに関わらず身近に鳥がいる地域性、あたためている鳥にまつわるネタなど、聴講者とやりとりしながら紹介した。
 
細川さん(手前)を迎えて開かれたトークイベント

細川さん(手前)を迎えて開かれたトークイベント

 
 鳥との暮らし、見ることが「自然だった」細川さん。社会人時代は鳥との関わりが薄い時期もあったが、27年前に出合った(拾った)セキセイインコの感情の豊かさに「賢い」と感じ、鳥の調査、研究に注力。鳥の体の機能や性格が人間と近かったり、優れていたり、新たな発見に「人生観が変わる」と改めて実感した。「鳥は一生懸命やっている。人間の方がいい加減で、鳥をもっと理解してほしい」と執筆を続けている。
 
 近著は「人も鳥も好きと嫌いでできている インコ学概論」(春秋社)。細川さんが言うには、鳥には「明確に好き嫌いがある。人間を対等の生き物として見ていて、好きの順番もあったり。面白い」と知的好奇心を刺激されている様子だ。
 
 熱を込めた話題は「恐竜から鳥への進化」について。定説となったその説を著書「鳥を識(し)る」(同)で解説する。その副題にもなった「なぜ鳥と人間は似ているのか」に関し、姉妹本的な新書が間もなく刊行予定。鳥と人間の「行動」の類似点について科学と心理学的要素から掘り下げた内容とのことだ。
 
ページをめくりながら鳥にまつわる話題を聞かせた

ページをめくりながら鳥にまつわる話題を聞かせた

 
参加者は熱心に耳を傾け、質問もさまざま出た

参加者は熱心に耳を傾け、質問もさまざま出た

 
 スズメ、カラス、メジロ、ヒバリ…「鳥ごとにいろんな話がある」と話は尽きない細川さん。ある自著を手に取って、「実は3倍くらいの原稿がある」と明かし、「紙の値段が上がっていて大変だが、売れると次が発行される」としっかり宣伝した。
 
 売り込みの工夫として、読者の力も借りているという。飼育書的な内容の本では写真を多用しているが、SNS(交流サイト)を活用して鳥の写真を募集。2000枚ほど寄せられ、整理という作業の労力は侮れないが、「購買者にもなってもらっている」と利点を挙げる。こうした読者との接点を持つ取り組みとして、トーク後にはサイン会も。「本が売れれば、書店のサポートにもなる。共存、共栄で執筆活動をしていければ」とペンを走らせた。
 
細川さんと読者や市民が触れ合ったサイン会

細川さんと読者や市民が触れ合ったサイン会

 
好奇心を刺激され、気になる本を手に取る市民

好奇心を刺激され、気になる本を手に取る市民

 
 桑畑書店の客のように平積みされた一角をのぞいてみると、「老鳥との暮らしかた」「くらべてわかる 文鳥の心、インコの気持ち」(誠文堂新光社)など、「確かに人間も…」と考えさせられるようなタイトルの本があったり、「オカメインコとともに」(グラフィック社)など写真が目を引くものが並んでいた。「宇宙をあるく」(WAVE出版)と毛色の違った本もあった。
 
 他にも「鳥を読む」(春秋社)、「大江戸飼い鳥草紙」(吉川弘文館)、「江戸の鳥類図譜」(秀和システム)、「知っているようで知らない鳥の話」(SBクリエイティブ)など多数出版されていて、支倉槇人名義での著作(文芸、パソコン関連など)もあるとか。手に取って、新しい文化の扉を開いてみるのもいいのでは―。

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平田に廃プラ対応のリサイクルセンター開設 11月から産廃処理開始、家庭プラは来年4月から

岩手資源循環 釜石総合リサイクルセンター完成見学会(自治体、報道機関向け)=10月31日

岩手資源循環 釜石総合リサイクルセンター完成見学会(自治体、報道機関向け)=10月31日

 
 岩手資源循環(谷博之代表取締役)が釜石市平田に建設を進めていた「釜石総合リサイクルセンター」が完成した。同施設は自治体収集の家庭プラスチックごみの再資源化を主に、産業廃棄物処理にも対応。来年度からの家庭プラごみ分別収集を計画する同市を含め、沿岸地域の資源再生への取り組み加速が期待される。11月からの施設稼働を前に10月31日から11月3日まで、自治体や法人関係者、地域住民向けの見学会が開かれた。
 
 31日は同市関係者約30人が見学。谷代表取締役(49)が工場棟を案内した。同施設は敷地面積約8120平方メートル。釜石など3市2町のごみ処理を行う岩手沿岸南部クリーンセンター隣の日本製鉄所有地を借りて整備された。工場棟(約1500平方メートル)はテント型の鉄骨組み幕構造。中に、家庭プラスチックごみと産業廃棄物を処理する装置がある。
 
釜石市平田第3地割に整備された「釜石総合リサイクルセンター」 写真上:左が工場棟、右が事務所棟

釜石市平田第3地割に整備された「釜石総合リサイクルセンター」 写真上:左が工場棟、右が事務所棟

 
 自治体が分別収集した家庭排出のプラスチックごみは検品後、機械に投入。2台の破集袋機で回収時の袋をはずし、手選別ラインでプラスチック再生できないものを除去。磁選機を経て、最終的に圧縮梱包機で「プラスチックベール」という固まりにし、再生業者に引き渡す。1日(8時間稼働)に12トンまで処理可能。釜石市のプラごみ分別収集が始まる来年4月から、市の委託事業として操業を開始する。
 
自治体回収の家庭プラごみを選別、圧縮梱包する機械装置

自治体回収の家庭プラごみを選別、圧縮梱包する機械装置

 
再生可能なプラごみを圧縮梱包機でプラスチックベール(写真左下)にする。プラベールは1個300キロ

再生可能なプラごみを圧縮梱包機でプラスチックベール(写真左下)にする。プラベールは1個300キロ

 
 産業廃棄物は機械投入前に、危険物のチェックを含め人の手でしっかり分別。廃プラスチック、木くず、繊維くず、ガラス・陶磁器くずなどに分け、品目ごとに機械に入れる。1次破砕機で約5センチ角に破砕。磁選機を経てベルトコンベヤーで運ばれ、品目ごとに下部の保管ボックスに落ちる仕組み。廃プラは2次破砕機でさらに細かく粉砕(約2センチ角)。再生プラスチックを成型するための原料、または化石(石炭)代替燃料として出荷する。廃プラは1日(同)100トンの処理が可能。産廃処理は11月中に開始する。 
 
産業廃棄物を破砕処理する機械。一番奥に2次破砕機がある

産業廃棄物を破砕処理する機械。一番奥に2次破砕機がある

 
 同社は、東日本を中心に廃棄物処理や再資源化事業を行う有明興業(東京都江東区)グループの3社が共同出資し、2022年5月に設立。23年2月、同市と工場立地協定を締結し、同年12月から建設工事が進められてきた。工場棟のほか、事務所棟(木造平屋建て、約250平方メートル)を有する。事業費は約10億円。従業員は地元雇用の24人。今後、選別作業に高齢者や障害者を含むパート採用も行っていきたい考え。
 
 谷代表取締役は「廃プラスチックの再生を一番の目的とした工場。家庭プラごみの選別、梱包は釜石市から始めて、他の沿岸自治体の受け皿にもなっていければ。沿岸特有の漁業系廃棄物はプラスチックが多く使われている。一つでも多くリサイクルし、新たな原料として生かせるようにしたい」と話す。既に多くの漁業関係者や一般法人が関心を寄せているという。全体で年間約9000トンの処理を当初目標とする。
 
左上写真:施設について説明する谷博之代表取締役 右上写真:説明を聞く小野共釜石市長ら

左上写真:施設について説明する谷博之代表取締役 右上写真:説明を聞く小野共釜石市長ら

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険しさも和らぐ秋景色かな 釜石・仙人峠マラソン 急坂挑むランナーら「楽しい」

標高差約400メートルの険しいコースに挑んだ「かまいし仙人峠マラソン大会」

標高差約400メートルの険しいコースに挑んだ「かまいし仙人峠マラソン大会」

 
 急勾配を駆け抜ける「かまいし仙人峠マラソン大会」(同実行委主催)は10月27日、釜石市甲子町大橋の旧釜石鉱山事務所を発着点に行われた。15回目となった大会には、国内外から122人が参加。秋色深まる峠道は見るに楽しいが、アップダウンの激しさも併せ持ち、そんな難コースにランナーたちは果敢に挑んだ。
 
自然や季節を体感!峠道の特徴を生かしたコースが持ち味

自然や季節を体感!峠道の特徴を生かしたコースが持ち味

 
 2010年に始まった同大会は、仙人峠の紅葉のように美しく明るいまち、険しい道のりを乗り越える力を育むことを目標に掲げる。新型コロナウイルス禍で中止していたが、昨年4年ぶりに復活。従来の2コース(17.2キロ、10キロ)を一本化させた形の、約10キロの峠コースに絞って実施した。
 
 今回は昨年の峠コースを16.9キロに延伸。国道283号を下った大松と、標高差約400メートル、平均斜度約5%の坂を上った遠野市との境となる仙人トンネルの釜石側入り口付近の2地点で折り返すコースにした。
 
峠コースの挑戦者たちがにこやかな表情で一斉にスタート

峠コースの挑戦者たちがにこやかな表情で一斉にスタート

 
 高校生から80歳までのランナーは一斉にスタートし、大松までの下りを快走。4.8キロ地点で折り返すと、一転して緩やかな上りとなり、大橋トンネルを抜けた10キロ地点に姿を見せた挑戦者の表情はさまざまだった。軽快さを残す人もいれば、顔を赤らめたり、息があがっていたり。すでに歩きを取り入れている様子も見受けられたが、さらに険しさを増す急坂へ向かった。
 
大橋トンネルを抜けた辺りでランナーは笑顔を見せるも…

大橋トンネルを抜けた辺りでランナーは笑顔を見せるも…

 
峠のきつい坂を懸命に駆け上がる参加者ら=仙人大橋手前

峠のきつい坂を懸命に駆け上がる参加者ら=仙人大橋手前

 
女子は18~68歳の11人がエントリー。上位者はまだ余裕の表情

女子は18~68歳の11人がエントリー。上位者はまだ余裕の表情

 
それぞれのペースで完走を目指す。下りは大幅にスピードアップ(写真下)

それぞれのペースで完走を目指す。下りは大幅にスピードアップ(写真下)

 
 仙人トンネル手前の地点までひたすら続く坂道を体力と精神力で駆け上がり、下るランナーを沿道からの声援が後押し。「ファイト!」「がんばれー」「あと少し」を力にゴールした挑戦者たちには「達成感」という笑顔が共通していた。
 
釜石スポーツ界のレジェンドも見事な走り(左:新日鉄釜石ラグビーV7戦士の氏家靖男さん  右:はまゆりトライアスロンで活躍した東洋さん)

釜石スポーツ界のレジェンドも見事な走り(左:新日鉄釜石ラグビーV7戦士の氏家靖男さん 右:はまゆりトライアスロンで活躍した東洋さん)

 
ゴールテープはすぐ目の前!ランナーを中学生らが迎えた

ゴールテープはすぐ目の前!ランナーを中学生らが迎えた

 
 最も遠くからの参加者に贈られる「遠来賞」を受けた川本啓さん(44)は知人の誘いがあって、12年以来2回目の参加。コースの“きつさ”を知っていたことから余力を残す形で、木々で色づく景色やあたたかい応援を楽しみに走った。開会式で担当した選手宣誓を有言実行。「参加者同士で励まし合いながら、幸せや釜石の未来を思って走り抜いた」とすがすがしい表情を見せた。
 
 誘った知人というのが、釜石出身のリンドステット佳奈さん(42)。スウェーデンから里帰り中で、夫のトーマスさん(45)が初参加していて「本当は私たちが遠来賞だね」と笑っていた。ゴール近くで待ち構えた子どもたち、コンラッドさん(8)、クヌートさん(6)の歓迎を受けたトーマスさんは「ハードで、ちょっとタフなコースだったが、とっても楽しかった。距離は短いかな」とニヤリ。沿道から聞こえてきた野球少年の声や自然の美しさが印象に残ったと満足そうだった。
 
「遠来賞」の川本啓さん(左)とリンドステット トーマスさん一家

「遠来賞」の川本啓さん(左)とリンドステット トーマスさん一家

 
 「満身創痍(そうい)」「いや、余裕っスよ」。完走後にそんなやりとりをしていたのは釜石海上保安部の5人で、巡視艇「きじかぜ」に乗って海の安全・保全業務に励む仲間だ。2回目の参加となる船長の昆諒平さん(35)が「釜石勤務時の思い出づくりに」と声をかけ、いずれも初エントリーの岩波健太郎さん(37)、小野潤一さん(28)、小谷涼太さん(21)、岡安健太さん(28)とともに力走した。海上から陸上へ足場を移した活動に、「山は海の恋人といいますから」と笑い合い、団結力を強化。体力アップも図り、「愛します!守ります!海のもしもは118番」とアピールも忘れなかった。
 
完走し達成感をにじませる釜石海上保安部の5人

完走し達成感をにじませる釜石海上保安部の5人

 
 大漁旗Tシャツとラグビーボールのかぶりもので“釜石愛”を見せたのは、東京都の会社員飛澤潔一さん(39)。第1回大会から欠かさず参加し、「ちょうどハロウィーンの時期なので」と、ちょんまげやネコ耳など毎回、頭のプチ仮装で楽しませる。「昨年は10キロだったので、今年は途中からすごくきつくて…。沿道の応援やきれいな紅葉が励みになった」。釜石に親戚がいて、「遊びにくる口実に」と大会参加を続ける。「39歳以下の部への参加は今回で最後。振り返ると感慨深い。今年は参加者が少ないようだが、来年また盛り返してくれるといい」と望んだ。
 
釜石を全力応援!東京都の飛澤潔一さんは同大会“皆勤賞”。今年のかぶりものは「ラグビーボール」

釜石を全力応援!東京都の飛澤潔一さんは同大会“皆勤賞”。今年のかぶりものは「ラグビーボール」

 
 難コースでつらさを予想するも、意外と多いのが笑い顔。東京都北区の笹岡由喜枝さん(65)も満面の笑みを蓄えながらゴールした。東日本大震災の復興支援が縁で同大会への参加を重ねてきたが、昨年はケガで断念。再戦を果たした今回、喜びを体現しながら走り切った。沿道から届く「走りに寄り添うような応援がありがたくて笑顔を返すの」と話し、信条とする「スマイルラン」で再来を思い浮かべていた。
 
笑顔が印象的な笹岡由喜枝さん。3位入賞(男女年齢別)で8個目のトロフィーを手にした

笑顔が印象的な笹岡由喜枝さん。3位入賞(男女年齢別)で8個目のトロフィーを手にした

 
 挑戦者たちの走りを地域住民、小中学生ボランティアが支えた。甲子中生はゴール付近で計測タグを回収したり水を手渡したり補助員として活躍。6カ所に分かれ給水係を担ったのは甲子地域会議内の各町内会員ら約50人で、釜石野球団Jr.(ジュニア)など野球少年も加わった。
 
 釜石ファイターズから20人余りが参加。小原璃青さん(小学5年)は「みんな、最後まで走り切ろうと頑張っていてすごい。自分たちの応援でゴールまで行ってほしい」と気持ちを込めて声を出した。「ゴーゴー仙人?」「さーいきましょう。やってきました仙人マラソン」など、野球の応援をアレンジした節や替え歌で盛り上げたり、選手とハイタッチする姿も。松本航汰さん(同2年)は「懸命に走っていてかっこよかった。地域の活動をお手伝いして、役に立つことができた」とうなずき、八重樫光彦コーチ(41)は「子どもたちがスポーツの力を感じ、刺激になれば」と期待した。
 
野球の応援をアレンジし参加者に声援を送る釜石ファイターズの団員。ハイタッチで交流も=仙人大橋付近

野球の応援をアレンジし参加者に声援を送る釜石ファイターズの団員。ハイタッチで交流も=仙人大橋付近

 
給水係には甲子地域会議の各町内会員約50人が協力。拍手で参加者を迎えた=仙人大橋たもと

給水係には甲子地域会議の各町内会員約50人が協力。拍手で参加者を迎えた=仙人大橋たもと

 
大橋トンネル付近の給水所やコース沿いでも市民が声援を送った

大橋トンネル付近の給水所やコース沿いでも市民が声援を送った

 
 「マニアックなコースを楽しんでもらった」と小泉嘉明実行委会長(市体育協会長)。昨年に続き、運営体制などを考慮し規模を縮小した形となったが、「このコースはまれ。どうにか生かしたい。親子で楽しめることを考えてみたり…」と、継続への思いは上向きのようだ。
 
美しい紅葉に元気をもらい一歩一歩前へ…。仙人峠の秋風景も参加者を引きつける大きな魅力

美しい紅葉に元気をもらい一歩一歩前へ…。仙人峠の秋風景も参加者を引きつける大きな魅力

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保健福祉、文化財保護、消防防災、林業振興の4分野で活躍 釜石・市勢功労者6人

釜石の市勢発展に貢献し功労者表彰を受けた受賞者ら

釜石の市勢発展に貢献し功労者表彰を受けた受賞者ら

 
 釜石市は10月31日、2024年度の市勢功労者表彰式を港町の陸中海岸グランドホテルで開いた。保健福祉の向上や文化財の保護管理、消防防災の各分野で市勢の発展に貢献した自治功労者として5人を表彰。林業の振興に尽くした1人を特別功労者としてたたえた。
 
 自治功労では、学校歯科医として及川陽次さん(61)=大町、学校医としては小笠原善郎さん(65)と濱登文寿さん(60)=ともに上中島町=が表彰を受けた。それぞれ保健福祉の向上、子どもへの献身的な活動を継続中。市文化財保護審議会長を4年余り務めた川原清文さん(81)=唐丹町、消防団員として47年間活動し、市消防団本部分団長などの要職も務めた千葉茂さん(71)=同=も受賞した。
 
各分野で力を尽くし自治功労表彰を受けた5人

各分野で力を尽くし自治功労表彰を受けた5人

 
 特別功労には、釜石地方森林組合代表理事組合長を通算5年間務めた久保知久さん(76)=平田町=を選出。長年、地域林業の振興発展に力を注いでおり、16年に自治功労表彰を受けている。
 
釜石市が開いた2024年度の市勢功労者表彰式

釜石市が開いた2024年度の市勢功労者表彰式

 
 式辞に立った小野共市長は「新たな時代、新しい釜石を築き、持続可能なまちづくりを進めるには市民の力添えが欠かせない。これまで培ってきた豊かな識見と経験のもと、一層の支援と協力をお願いする」と述べた。
 
市勢の発展に尽くす6人をたたえた小野共市長

市勢の発展に尽くす6人をたたえた小野共市長

 
代表して謝辞を述べる川原清文さん

代表して謝辞を述べる川原清文さん

 
 受賞者を代表し、川原さんが「それぞれの分野で活動してきたことが、人とのつながりや地域、市勢の発展に少しでも貢献できたことはこの上ない喜び。受賞は、周囲の支援や協力のおかげ」と謝辞を述べた。人の営みや歴史をうかがい知れる文化財の魅力を語り、「深みにはまった」とニヤリ。後進の活躍に期待を寄せつつ、「これからも市民が安心して暮らせるような、より魅力的なまちとなるよう努力していきたい」と話した。
 
リラックスした様子で写真撮影に臨む受賞者ら

リラックスした様子で写真撮影に臨む受賞者ら

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秋空にキラリ!神輿に活気づく・釜石まつり 曳き船中止も、伝統継ぐ試みで盛り上げ

市街地を進む尾崎神社と日本製鉄北日本製鉄所釜石地区山神社の神輿=20日

市街地を進む尾崎神社と日本製鉄北日本製鉄所釜石地区山神社の神輿=20日

 
 釜石市の尾崎神社(浜町)と日本製鉄北日本製鉄所釜石地区山神社(桜木町)合同の「釜石まつり」は18日から3日間にわたって行われた。19日に予定していた尾崎神社の神輿(みこし)を乗せた漁船十数隻がパレードする「曳(ひ)き船まつり」は悪天候が予想されたため中止され、ご神体を迎える船など数隻のお渡りとなった。最終20日は秋晴れの下、市街地を背景に両神輿が渡御。沿道は多くの見物人でにぎわった。
 
 19日の釜石港。曳き船のパレードは中止となったが、尾崎神社奥宮から里宮に移るご神体を載せた神輿を迎えようと、岸壁では虎舞や神楽などの芸能団体、市民らが待ち構えた。大漁旗をなびかせた御召船が着岸すると、威勢のいい掛け声やおはやしが響き渡り、活気づいた。
 
大漁旗で彩られた御召船を虎舞などの芸能団体が迎えた=19日

大漁旗で彩られた御召船を虎舞などの芸能団体が迎えた=19日

 
 大漁祈願に―。萬漁業生産組合(箱崎町桑ノ浜)は、色鮮やかな大漁旗を掲げた2隻の船を岸壁に寄せ迎えた。「まつりだから。漁ができる感謝もあるし」と萬文貴組合長。今年の漁は上向き基調だったが、ここ1カ月ほどは厳しい状況とのこと。サバ、ソッコなどのブリ系統を狙っていて、「回遊してくる可能性はある。漁師たるもの、もうけねば」と、乗組員14人とともに腕をまくった。
 
海への感謝、漁の好転へ願いを込める萬漁業生産組合の漁師ら

海への感謝、漁の好転へ願いを込める萬漁業生産組合の漁師ら

 
 この日は、家々の前で舞を披露する門打ちが早い時間から行われた。大町の釜石情報交流センター周辺でも各団体が虎舞や神楽を繰り広げ、市民らが見物。近くの青葉通りには縁日広場が開設され、夜遅くまで屋台遊びを楽しむ姿が見られた。
 
k虎舞、神楽、七福神…門打ちで祭り気分を盛り上げる芸能団体

虎舞、神楽、七福神…門打ちで祭り気分を盛り上げる芸能団体

 
青葉通りにずらりと並んだ屋台は夜遅くまでにぎわった

青葉通りにずらりと並んだ屋台は夜遅くまでにぎわった

 
 神輿の合同渡御は20日昼過ぎに鈴子町を出発。市内15団体、約1000人の行列は魚河岸の釜石魚市場を目指した。途中の「御旅所」周辺など目抜き通りで各団体が神楽や虎舞、鹿踊りなどを披露。沿道を埋めた見物客から盛んな拍手を受けた。
 
 神輿の担ぎ手として参加した父親の姿を「かっこいい」と見つめた松澤優之介君(5)。きらめく神輿が「きれいだった」と笑った。一緒に訪れた60代の祖母らは東日本大震災の影響で海から少し離れた場所に転居し、まつり見物は「久しぶりだ」という。笛や太鼓のおはやし、掛け声といった祭りの音、大勢が集うまちの景色をしみじみと懐かしんだ。
 
日差しを受けた2基の神輿が市街地を練り歩く=20日

日差しを受けた2基の神輿が市街地を練り歩く=20日

 
色鮮やかな衣装をまとった踊り手たちが行列を華やかに彩る

色鮮やかな衣装をまとった踊り手たちが行列を華やかに彩る

 
子孫繁栄の願いを込めた鹿踊り、自前の神輿や山車も参加

子孫繁栄の願いを込めた鹿踊り、自前の神輿や山車も参加

 
さい銭をあげて手を合わせたり、大勢が行列を見守った

さい銭をあげて手を合わせたり、大勢が行列を見守った

 
 山神社の神輿に続いて「わっしょーい」とかわいらしい掛け声が聞こえてきた。小さな神輿の担ぎ手は、製鉄所や関連企業に勤める社員の子どもら13人。山口伊織さん(9)、橙利さん(7)の兄弟は「初めて参加した。楽しかったし、また担ぎたい」と笑顔を見せ、母親の彩乃さん(32)は「迫力あるまつり。子どもたちの頑張り、かわいい姿を見ることができた」とうれしそうだった。
 
修繕された神輿を担いで行列を盛り上げた子どもたち

修繕された神輿を担いで行列を盛り上げた子どもたち

 
 製鉄所で働く人が暮らす社宅は市内各地にあり、社宅ごとに神輿もあったという。今回、小川地区に残っていた神輿を修繕、復活させた。同社釜石総務室の高橋聡太郎さん(30)は「子どもの頃から地域の取り組みに参加することで愛着を持ってもらえる。まつりの盛り上げにもなる」と意義を強調。大人たちの神輿も「釜石の地で長く事業を続けられているのは地域の支えがあってこそ。感謝を伝える機会として、まつりは重要な位置づけ。人数の確保は容易ではないが、(参加を)定着、継続したい」と熱を込めた。
 
薬師公園御旅所に入る尾崎神社の六角大神輿と山神社の神輿(右)

薬師公園御旅所に入る尾崎神社の六角大神輿と山神社の神輿(右)

 
 尾崎神社六角大神輿の担ぎ手にも助っ人が加わった。防災や伝統文化の継承をテーマにした体験研修で来釜した東海大学観光学部の服部泰講師のゼミに所属する3、4年生計25人で、男子学生8人が力を貸した。東京出身の竹中凌さん(3年)は「神様、昔ながらの伝統を感じながら神輿を担ぐのは初めて。手を合わせて迎える人がいたり、そんな重みが肩にのしかかった。まち全体が文化を大切にしていた」と新鮮な経験を楽しみつつ、爽やかな汗を流した。女子学生は物持ちとして列に加わった。
 
大学生や近隣市町からの助っ人も加わった渡御行列でまちが活気づく

大学生や近隣市町からの助っ人も加わった渡御行列でまちが活気づく

 
 魚市場御旅所では神輿還御式が行われ、奥宮にかえるご神体を各団体がおはやしで見送った。主催の同まつり実行委事務局によると、19、20の2日間で計約1万人の人出があった。

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国蝶「オオムラサキ」の幼虫すくすくと 釜石・日向ダム湖畔でふ化 観察会参加者「いた、いたー!」

「オオムラサキの幼虫はどこにいるでしょうか?」 答えはこの後の写真で…

「オオムラサキの幼虫はどこにいるでしょうか?」 答えはこの後の写真で…

 
 釜石市の小川川上流、日向ダム周辺で、環境省の準絶滅危惧種に指定されているチョウ「オオムラサキ」の幼虫が見られている。8月に産み付けられた卵からふ化したもので、体長2~3センチの黄緑色の幼虫が、餌となるエゾエノキの葉を食べて元気に育っている。15日には、同所での繁殖を願いエゾエノキの植樹を続けている、かまいし環境ネットワーク(加藤直子代表)が観察会を開いた。
 
 オオムラサキの幼虫が見られるのは、同ダム管理棟の北西に位置する多目的広場に向かう途中の“語らいの森”。同ネットワークが2007年に苗木を植えて育ったエゾエノキがある場所だ。会員で同所の保護、オオムラサキの観察を続ける菊地利明さん(59)が「目の前にいる」「葉の先端」などとヒントを与えると、必死に目を凝らす参加者から「見つけたっ」「あーいた、いた」「目が慣れてくると、いっぱい見える」と歓声が上がった。
 
参加者はオオムラサキの幼虫が見られるエゾエノキがある日向ダム「語らいの森」へ…

参加者はオオムラサキの幼虫が見られるエゾエノキがある日向ダム「語らいの森」へ…

 
菊地利明さん(左)が指差す先に目を凝らすと…

菊地利明さん(左)が指差す先に目を凝らすと…

 
1枚目の写真の答えは…黄丸部分!「 皆さん、見つけられましたか?」

1枚目の写真の答えは…黄丸部分!「 皆さん、見つけられましたか?」

 
 菊地さんによると、今の時期に見られるのはふ化後、3回脱皮した三齢幼虫。頭に大きめの2本の角、背中に4対の突起があるのが特徴。正面から見ると、漫画のキャラクターになりそうな愛らしい顔をしている。野鳥やスズメバチなどの天敵に見つかりにくいように、この時期は葉とほぼ同色で、餌を求めて活発に動き回るのは朝や夕方。寒くなって落葉するまでは樹上で過ごすが、寝床と餌場は別の場所で、葉を食べた後、再び寝床に戻る習性があるという。
 
エゾエノキの葉の上を移動するオオムラサキの幼虫。「顔、かわいいー!」

エゾエノキの葉の上を移動するオオムラサキの幼虫。「顔、かわいいー!」

 
「お食事中??」かな。「いっぱい食べて大きくなーれ!」

「お食事中??」かな。「いっぱい食べて大きくなーれ!」

 
 オオムラサキの雌の成虫は1匹で約500個の卵を産むというが、卵100個のうち成虫にまでなれるのはわずか1%。観察会では、無精卵か寄生虫の侵入が原因とみられる、ふ化できなかった卵の痕跡も見つかった。
 
 幼虫は葉を食べながらさらに大きくなる。11月初め~中ごろに落葉すると、樹上から下りてきて落ち葉にくるまって冬眠。冬季の体は枯れ葉のような保護色に変わる。年を越し、芽吹きの季節になると再び木に登り、6月にかけてサナギを形成する。7~8月が羽化の時期。雄が先に羽化する。
 
ふ化しなかった卵の痕跡も確認。成虫になるまでにはさまざまな困難が…

ふ化しなかった卵の痕跡も確認。成虫になるまでにはさまざまな困難が…

 
エゾエノキの根元には冬眠用の枯れ葉が飛ばないよう囲いを施している

エゾエノキの根元には冬眠用の枯れ葉が飛ばないよう囲いを施している

 
 昨年5月、同ダム周辺で行われたエゾエノキの植樹会にも参加した同市の川上凜さん(23)は、初めて見るオオムラサキの幼虫に感激。「最初は全然見つけられなかったが、よく見ると角があったり特徴的。来年はサナギや成虫も見てみたい」と期待を膨らませる。成長過程を知ることで植樹の意義も感じ、「自然は1年や2年でどうこうなるものではない。地元の人たちが環境を守り、次世代につないでいこうとする活動は素晴らしい」と敬意を示した。
 
 この日は、ダムが完成した1997年から続けられてきたエゾエノキの植樹箇所も見て回った。ダム完成時に植えられたものは大木に成長。近年植えられたものはシカの食害を防ぐために防護ネットで囲われていて、まだ低木ながら順調に成育している。エゾエノキにはオオムラサキのほか、ゴマダラチョウやテングチョウも卵を産むという。
 
植樹したエゾエノキが育つ場所にも足を運んだ。来年以降、近いうちに産卵が見られそうとのこと

植樹したエゾエノキが育つ場所にも足を運んだ。来年以降、近いうちに産卵が見られそうとのこと

 
 案内した菊地さんは「野生に近い形で環境を守ることが大事。オオムラサキは北海道から九州まで広く分布するが、地域によって羽の色や模様が異なる。その独自性を維持することも保護活動の重要なポイント。決して他の場所から卵や幼虫を持ち込んではいけない」と教えた。“日向ダム周辺をオオムラサキの里に”と、植樹やその後の保護活動を続ける同ネットワークの加藤代表は「ダム完成時に一緒に植えたクリやミズナラも林となり、樹液を餌とする成虫のオオムラサキも寄ってくるようになった。来年はぜひ成虫の観察会も開きたい」と話した。
 
オオムラサキの写真を見せながら生態について話す菊地利明さん

オオムラサキの写真を見せながら生態について話す菊地利明さん

 
 オオムラサキはタテハチョウ科に属し、羽を広げると10センチ前後になる。雄は羽の表面が青紫色、雌は黒褐色で、白や黄色の斑紋がある。日本昆虫学会が1957年に「国蝶(こくちょう)」に選定している。

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~釜石ラグビッグドリーム~ 釜石SWプレマッチ2戦目 日野に40-19 ホーム戦勝利に観客沸く

プレマッチ2戦目で勝利し、歓喜に沸く日本製鉄釜石シーウェイブス=釜石ラグビッグドリーム、13日

プレマッチ2戦目で勝利し、歓喜に沸く日本製鉄釜石シーウェイブス=釜石ラグビッグドリーム、13日

 
 ラグビーワールドカップ(W杯)2019日本大会釜石開催から5年―。大会レガシー(遺産)を継承し、「ラグビーのまち釜石」の一層の発信を図るイベント「釜石ラグビッグドリーム」が13日、釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた。くしくも、この日は5年前のW杯釜石第2戦、ナミビア対カナダの試合が台風の影響で中止となった日。カナダ代表の選手らが、豪雨で浸水した住宅地で土砂除去のボランティア活動を行ったことは多くの市民の記憶に残る。その特別な日のイベントで雄姿を見せたのは、地元の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)。今季、ジャパンラグビーリーグワン2部で共に戦う日野レッドドルフィンズとメモリアルマッチを行い、40-19の勝利で観客を沸かせた。同ゲーム前には小中学生の交流マッチもあり、秋のスタジアムはラグビー一色に包まれた。
 
メモリアルマッチ「日本製鉄釜石SW(白)-日野レッドドルフィンズ」=釜石鵜住居復興スタジアム

メモリアルマッチ「日本製鉄釜石SW(白)-日野レッドドルフィンズ」=釜石鵜住居復興スタジアム

 
 今季スローガンに「STEEL WAVE」を掲げ、2部トップ4入りを目指す釜石。プレシーズンマッチ2戦目のこの日の相手は、今季2部に復帰した日野。釜石は新加入の3選手を含む先発メンバーで臨んだ。先制したのは釜石。前半5分、相手ゴール前のラックからロック、ハミッシュ・ダルゼルが押し込んでトライ。11分には期待の若手WTB阿部竜二が、この日ゲームキャプテンを務めるナンバー8サム・ヘンウッドからロングパスを受け、自慢の俊足で右に回り込み、インゴールに持ち込んだ。チームを引っ張るヘンウッドは26分、相手を振り切る力強い独走で自ら追加点。その後、日野に1トライを許すも、前半終了間際の39分、ゴール前ラインアウトからのモールを押し、最後尾からパスを受けたSH南篤志が飛び込んでトライ。4トライ4ゴール、28-7で前半を折り返した。
 
前半11分、WTB阿部竜二が右サイドに走り込み、SW2本目のトライ

前半11分、WTB阿部竜二が右サイドに走り込み、SW2本目のトライ

 
前半26分、相手ディフェンスを突破しトライを決めたナンバー8サム・ヘンウッド(中央)

前半26分、相手ディフェンスを突破しトライを決めたナンバー8サム・ヘンウッド(中央)

 
前半39分、モールから出したボールをSH南篤志が飛び込んでトライ。笑顔で喜びを分かち合う(右)

前半39分、モールから出したボールをSH南篤志が飛び込んでトライ。笑顔で喜びを分かち合う(右)

 
先発した新加入のSOミッチェル・ハント(右から2人目)は3ゴールも決めチームに貢献

先発した新加入のSOミッチェル・ハント(右から2人目)は3ゴールも決めチームに貢献

 
 勢いづいた釜石は後半4分、相手ディフェンスの隙を突き、SO落和史が右にロングパス。今季新加入のWTB川上剛右がきっちり決め、33-7と突き放した。後半は両チームとも選手を大きく入れ替え。釜石はターンオーバーされる場面が増え始め、残り10分までに日野に2トライを献上。最後の見せ場は31分、右ゴール前ラインアウトから左に展開し、じわじわと前進。相手ディフェンスを引きつける間に再び右へ大きく振り、最後はフランカー髙橋泰地が決めた。40-19で試合終了。バックスタンドの大漁旗が大きく揺れた。
 
 2選手が同じ職場で働いているという釜石市の小林英樹さん(40)は「久しぶりの盛り上がり。勝てて良かった」と大喜び。「地元で勝つことが釜石の元気にもつながる。今季はぜひ勝ちにこだわって1つでも多く勝ってほしい」と期待を込めた。
 
後半、相手に圧力をかけるプレーでゴール前にボールを運ぶ釜石SW

後半、相手に圧力をかけるプレーでゴール前にボールを運ぶ釜石SW

 
後半31分、CTB畠中豪士からナンバー8セタ・コロイタマナ、フランカー髙橋泰地とパスをつなぎ、右隅にトライ

後半31分、CTB畠中豪士からナンバー8セタ・コロイタマナ、フランカー髙橋泰地とパスをつなぎ、右隅にトライ

 
釜石SWの活躍に応援の大漁旗がはためく

釜石SWの活躍に応援の大漁旗がはためく

 
 試合後、釜石SWの須田康夫ヘッドコーチは「相手に圧力をかけ続けるという今年のテーマを選手たちがしっかり守ってやってくれた結果。後半、メンバーが入れ替わった時のゲームマネジメントに課題が見えた」と振り返った。ゲームキャプテンのヘンウッド選手は「すばらしい勝利だった。ゲームプランの遂行というところをちゃんとできたのが鍵だったと思う」と評価。チームの成長も感じ、「若い選手が育ってきている。試合の大事な場面でうまく対処できる力がついてきている」と話した。
 
 釜石SWは19日のプレマッチ第3戦、IBC杯ラグビー招待試合で、今季3部に参入したヤクルトレビンズ戸田と対戦。40-21(前半26-7)と、こちらも快勝した。SWのプレマッチはこの後11、12月に3戦を予定する。リーグワン初戦は12月21日(対九州電力キューデンヴォルテクス)。釜石鵜住居復興スタジアムでの初戦は12月28日の第2節、グリーンロケッツ東葛戦となる。
 

夢追う子どもたちも熱戦 会場内では多彩なアトラクションも うのスタで楽しい1日

 
釜石SWジュニアと宮古ラグビースクールが対戦した小学生交流マッチ

釜石SWジュニアと宮古ラグビースクールが対戦した小学生交流マッチ

 
 メモリアルマッチに先立ち行われた小学生の交流マッチは、釜石SWジュニアと宮古ラグビースクールが対戦。両チームのメンバーが入り交じっての試合も行われた。この日は秋田県で開催された6年生による東北大会に、両チームが合同チームを結成して出場したため、4、5年生メンバーでの対戦となった。SWジュニアのゲームキャプテンを務めた野田大耀さん(小佐野小5年)は「僅差でなく勝てたのでチームの成長を感じられた。パス回しやタックルでまだできていない部分があるので、これからの練習で改善したい」と前を向いた。
 
中学生交流マッチは釜石、甲子、釜石東の特設ラグビー部が熱戦を繰り広げた

中学生交流マッチは釜石、甲子、釜石東の特設ラグビー部が熱戦を繰り広げた

 
 中学生の試合には釜石、甲子、釜石東3校の特設ラグビー部が出場。市内の中学校は例年、他競技の中総体終了後にチームを結成し、10~11月に行われるラグビー競技の県中総体に挑む。それに向けた前哨戦ともなるこの交流マッチ。3戦を行い、2勝をあげたのは昨年、同スタジアムで開催された県中総体で初優勝を果たした釜石中。本年度は2、3年生20人でチームを結成し、8月から練習を開始した。佐藤碧空主将(3年)は「チャンスをものにし得点できたところは良かったが、ラックヤードの入り込みやディフェンスのラインで改善点があるので県大会までに修正したい。2連覇を目標にチーム一丸となって試合に挑む」と意気込んだ。
 
 会場内では自衛隊や警察、消防車両を体験できる「震災復興支援・働く自動車展」が人気を集め、フードコーナーもにぎわった。釜石を応援しようと今春結成された「ちあ釜」は、SWの試合のハーフタイムで念願のフラッグパフォーマンスを披露。試合後は誰でも楽しめるラグビー体験、餅まきも行われた。
 
自衛隊、警察、消防の車両がずらり!運転席に座り笑顔を見せる子ども

自衛隊、警察、消防の車両がずらり!運転席に座り笑顔を見せる子ども

 
SW対日野の試合のハーフタイムにフラッグパフォーマンスを見せた「ちあ釜」

SW対日野の試合のハーフタイムにフラッグパフォーマンスを見せた「ちあ釜」

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釜石の民俗芸能・片岸虎舞 6年ぶりに演舞 待ちわびた住民ら「最高だ」目頭熱く

心一つに片岸虎舞を披露する保存会のメンバー

心一つに片岸虎舞を披露する保存会のメンバー

 
 釜石市片岸町で伝承される「片岸虎舞」が13日、住民らを前に6年ぶりに躍動した。地元鎮守・片岸稲荷神社の例大祭に合わせ舞の奉納や門打ちを行ってきたが、新型コロナウイルス禍の影響や少子高齢化による人手不足などから活動が停滞。そんな状況に危機感を持った保存会の中堅メンバーらが「地域の宝を守らねば。できることをやろう」と再び動き出した。
 
 70人ほどの人が集まった同神社前の広場。笛や太鼓の音、威勢のいい掛け声を町内に響かせながら近づく特設の山車を多くのワクワク顔が迎えた。片岸虎舞保存会(柏﨑育也会長)の有志約30人は鎮守にあいさつ。「よし、やるかー!」と、気持ちを一つに舞台に向かった。
 
 遊び戯れる様子を表現する「片岸虎」、笹で牙を磨く場面を見せる「笹喰(ば)み」を勇ましく舞った。「うさぎ」「甚句」「大漁万作」など手踊りも披露。鳥を捕らえる姿を表する「刺鳥舞」は風流な歌い節に合わせて舞い手が軽やかに踊り、住民から盛んな拍手を受けた。
 
片岸稲荷神社前にある広場で虎舞を披露した

片岸稲荷神社前にある広場で虎舞を披露した

 
多彩な手踊りを次々と繰り広げるメンバーら

多彩な手踊りを次々と繰り広げるメンバーら

 
 片岸虎舞は江戸時代から続き、市内でも古い歴史を有する芸能の一つ。1998年に市の無形文化財に指定された。虎舞のルーツとされる国性爺合戦の和藤内の虎退治の場面を演じ、多くの手踊りがあるのが特徴。虎の勢いのよいしぐさを表現した勇壮な舞と、テンポの速いおはやしも持ち味となっている。
 
 「おはやし、耳になじんでいる」「懐かしいね」「こんなに人が集まるのは久しぶり。ウキウキする」「覇気もらった」「虎舞がないなんて…考えられない」。民俗芸能が人、地域をつなぎ、住まう人たちに伝統を大切にする思いが根付く。
 
ベテランメンバーの歌声が舞い手を盛り立てる

ベテランメンバーの歌声が舞い手を盛り立てる

 
虎舞、再会を待ちわびた住民らには笑顔が広がった

虎舞、再会を待ちわびた住民らには笑顔が広がった

 
 そんな虎舞も近年、思うような活動ができない状況が重なった。片岸地区は2011年の東日本大震災で被災。虎頭や太鼓、踊り道具も津波で失ったが、全国からの支援でそろい、翌年に復活。その後は10月の同神社例大祭で舞を奉納、門打ちを行ってきた。
 
 19年、釜石も会場となったラグビーワールドカップ(W杯)日本大会では2試合目が台風災害の影響で中止されたが、同じように祭り時期を迎えていた虎舞もお披露目が取りやめとなった。以降、コロナ禍で制約の多い生活が続いた上、保存会メンバーの高齢化、踊り手となる子どもの減少などもあり、祭り神事での奉納だけとなった。門打ちはせず、郷土芸能が一堂に会す催しへの出演も控えていたため、住民の多くは目にする機会が減った。
 
 震災後、住民が散り散りになった同地区では再建が進んだものの、地区外に居を移した人も少なくない。保存会のメンバーも然り。そんな中、地区内に住む保存会メンバーの耳に「虎舞が見たい。おはやしが聞きたい。今年はどうするの、踊らないの?」などと声が届くようになっていたという。
 
 伝統継承-。思いを持ち続けていた保存会事務局の柏﨑洋也さん(41)が中心となって仲間に声掛けし、「伝え続けるため、やれることをやろう」と決めた。今年は11日が同神社例大祭で、前日の宵宮祭で虎舞を奉納。平日だったこともあり門打ちは行わず、週末の日曜日に披露する形にした。
 
つなぐ誇りを胸に虎舞、手踊りを披露する保存会のメンバー

つなぐ誇りを胸に虎舞、手踊りを披露する保存会のメンバー

 
 当初、40代メンバー8人ほどの予定だったが、本番には「やりたい」という子どもや地区外からも仲間が集った。見る側の住民も同じで、久しぶりの再会を楽しむ姿もあった。洋也さんは「地域の人たちが喜んでくれたのが一番。集いの場を作るいい機会にもなった」とうれしそうに目を細めた。
 
 地元の新屋碧さん(鵜住居小6年)は5年前に練習に参加したものの祭りが中止となり、「どうしても踊りたい」と、友達の三浦琉生さん(同)を誘って参加した。数回の練習だったことから緊張したというが、保存会メンバーの教え方や雰囲気が心地よく、「楽しかった」と満足げ。来年は中学生となり、部活などで忙しくなるが、「地域にこういう伝統があるのを誇りに思う。残していきたいから続けたい」と受け止めた。
 
ベテラン、若手、子ども、OBも加わり伝統芸をつなぐ

ベテラン、若手、子ども、OBも加わり伝統芸をつなぐ

 
息の合った演舞とおはやしに住民らが拍手を送った

息の合った演舞とおはやしに住民らが拍手を送った

 
 片岸の虎頭は市内でも数少ない木彫り。がれきの中から見つかった1つは修復し大切に保管する。支援で2つが新調された。かつてはケヤキが使われていたが、今回は桐の木を使い軽量化。それでもズシリとした重さは舞い手たちに残る。洋也さんも久々の感触に「年齢を感じる」というが、表情には充実感がにじむ。
 
 かつてメンバーだった70代男性のもとに現役メンバーが歩み寄り、「どうだ?」と虎頭を手渡す場面も。男性は「軽いと思って踊っていたけど、重いなー。昔を思い出す。片岸に住んでいたら、やっぱりやらなきゃ。虎舞が死んだら、地域も死ぬ」と目頭を熱くする。そして、しみじみと…「最高だ」。足腰が弱くなったというが、「来年は踊っているかも、そんな力をもらった。ありがてぇ」と笑顔も光らせた。
 
虎舞がつなぐ世代間交流。笑顔がまぶしい

虎舞がつなぐ世代間交流。笑顔がまぶしい

 
大人の演舞に感化されてウズウズ。子ども虎舞も躍動

大人の演舞に感化されてウズウズ。子ども虎舞も躍動

 
 若い世代につなぐステップに―。保存会では「来年は門打ちを」と気持ちを一つにする。そして、今回披露できなかった演目・和藤内の復活も目指す構え。片岸虎舞の見どころの一つで、子どもの舞い手が欠かせない。洋也さんは「今回、思いのほか子どもたちが参加してくれた。その意気込みを大事にしたい」と話した。
 
伝統芸が地域を彩る景色…来年もまた見られますように

伝統芸が地域を彩る景色…来年もまた見られますように

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園児たち「火の用心」 防火パレードで啓発 秋の火災予防運動、一足早く釜石市民に

「火の用心」と呼びかけたかまいしこども園の園児たち

「火の用心」と呼びかけたかまいしこども園の園児たち

 
 来月の秋季全国火災予防運動週間にちなみ、釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児88人)は11日、防火パレードを行った。4~5歳児約30人が「戸締り用心、火の用心」と大きな声で歌いながら市街地を行進。道行く人に啓発物を渡して注意を促した。
 
 同園児でつくる幼年消防クラブの活動の一環。例年は釜石消防署に出向いて放水体験などに取り組んできたが、地域の防火意識の向上に一役買おうと初めてパレードを企画した。
 
 そろいの消防はんてんを着た子どもたちは、園舎前に整列。藤原園長は「だんだん寒くなって、火を使う季節になった。『使う時は気をつけて』と地域に元気に呼びかけようね」と激励した。
 
園舎の前で出発式。気合を入れる子どもたち

園舎の前で出発式。気合を入れる子どもたち

 
 釜石署の小林太署長がパレードを先導した。住宅街や目抜き通りを進むと、歌声に誘われ建物から出てくる住民も。子どもらは「火の用心」と記した紙を添えた風船をプレゼントした。
 
「火の用心」と伝える園児らを小林太署長が引っ張る

「火の用心」と伝える園児らを小林太署長が引っ張る

 
地域住民に風船を手渡して「火の用心」を呼びかけ

地域住民に風船を手渡して「火の用心」を呼びかけ

 
 大町広場で、防火の集い。市民らが見守る中で、園児らは「火遊びはしません。火のそばで遊びません」などと誓った後、防火の心構えを伝える歌を元気いっぱい歌った。小林署長は「地域の人に火の用心の心が伝わったはず」と協力に感謝した。
 
大町広場で地域の人たちに防火の誓いを伝える子どもら

大町広場で地域の人たちに防火の誓いを伝える子どもら

 
とじまりよ~じん、ひのよ~じん♪元気に歌った

とじまりよ~じん、ひのよ~じん♪元気に歌った

 
 釜石署によると、市内で今年発生した火災はこれまで5件。前年同時期と比較すると少ないという。原因として多いのは“不注意”で、「火の取り扱いに注意を徹底してほしい。使ったら離れない」と呼びかける。
 
パレードで風船を掲げてアピール「お願い!火の用心」

パレードで風船を掲げてアピール「お願い!火の用心」

 
 同運動は、11月9日から15日まで展開される。暖房器具など火器の使用が増え、空気の乾燥や強風により火災が発生しやすい時季を迎えることから、火災予防意識の高揚が目的。釜石署管内では期間中、市消防団や婦人消防協力隊による広報活動、道の駅などでの啓発活動を予定する。年間を通して行う保育施設での防災教室や事業所の立ち入り火防点検・消防訓練は継続する。

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「餅鉄で鉄瓶を作ろう」第2弾 れんが積みの炉で木炭熱し製鉄成功 鉄のまち釜石で市民ら奮闘

炉から流れ出るノロ(不純物)に興味津々の参加者=「餅鉄で鉄瓶を作ろう」第2弾

炉から流れ出るノロ(不純物)に興味津々の参加者=「餅鉄で鉄瓶を作ろう」第2弾

 
 “近代製鉄発祥の地”釜石市で行われている餅鉄から鉄瓶を作るプロジェクトが第2段階を迎えた。5月に橋野町の河川で採集した餅鉄を使い、手作りの炉で製鉄する作業が9月29日、10月6日の両日、甲子町大橋の旧釜石鉱山事務所前で行われた。参加した市民らは、日本古来のたたら方式の製鉄を体験。複数の工程を経て生まれる鉄に興味をそそられながら見入った。12月には盛岡市で鉄瓶ワークショップが予定される。
 
 製鉄のための炉はコンクリートブロックを基盤に、耐火れんが約100個を組み上げて作る。底にはこねた耐火モルタルを敷き詰め、側面には高さを変えた2カ所に鉄パイプの送風口を取り付け。低部の送風口は後にノロ(不純物)出しにも使われる。加熱中に炉の中を見られるのぞき口も取り付けた。れんがの上部には鉄製の煙突を重ねる。約3時間で3基の炉を完成させた。1日目は採集した石状の餅鉄を約1時間半加熱し、ハンマーで細かく砕く作業も行われた。
 
9月29日の作業。耐火れんがを積み、3基の炉を設置した

9月29日の作業。耐火れんがを積み、3基の炉を設置した

 
木炭を燃やして約800度で餅鉄を加熱。ハンマーで細かく砕いた(原料の下準備)

木炭を燃やして約800度で餅鉄を加熱。ハンマーで細かく砕いた(原料の下準備)

 
 1週間後、いよいよ鉄づくりが始まった。午前9時、各炉に燃料となる木炭20キロを入れて1時間加熱。その後、餅鉄1キロ、木炭2キロ、石灰100グラムの割合で、材料を10分おきに投入していく。風を送りながら加熱を続け、午前10時40分ごろには炉の下部で約1000度に達した。炉内の温度は炎の色で判別できるという。途中で送風口を切り替えると、中の炎の色が変わった。炉内の温度は最終的に約1300度にまで達した。
 
風を送りながら加熱中の炉。煙突口には投入した木炭が見える=10月6日午前10時半ごろ

風を送りながら加熱中の炉。煙突口には投入した木炭が見える=10月6日午前10時半ごろ

 
午前10時から10分おきに材料を投入。左は木炭、右上は石灰をまぶした餅鉄

午前10時から10分おきに材料を投入。左は木炭、右上は石灰をまぶした餅鉄

 
鉄パイプののぞき口から炉の中の様子を撮影する参加者。炎の色の変化などを確認できる

鉄パイプののぞき口から炉の中の様子を撮影する参加者。炎の色の変化などを確認できる

 
 材料の投入から約1時間10分後、各炉でノロ出し。送風口のパイプをはずし、中をつつくとオレンジ色の粘りのある液体が流れ出た。ノロの主な成分はケイ素、シリカ、硫黄。砂の上にたまったノロは外気に冷やされて固まった。水に入れて冷やした後、ノロのかけらをハンマーでたたいてみると簡単に割れた。鉄の場合は割れずに延びるという。
 
ノロ出しは2回。写真上段は2回目の様子。勢いよく流れ出る光景に「マグマだー!」と子ども

ノロ出しは2回。写真上段は2回目の様子。勢いよく流れ出る光景に「マグマだー!」と子ども

 
 昼食をはさみ午後1時ごろ、2回目のノロ出し。その後、煙突をはずして約30分蒸らした。参加者は炉の近くでその熱さを実感。作業員の大変さも知った。炉を解体すると、姿を現したのは「ケラ」と呼ばれる鉄塊。割ったものに磁石を近づけ、くっついたものを袋に集めた。最終的に、種焼きした餅鉄20キロから6.5キロの鉄が取れた。
 
煙突を取り除き炉を解体。耐火れんがを一つ一つはずしていく。高温になったれんがに水をかけると真っ白い水蒸気が上がった

煙突を取り除き炉を解体。耐火れんがを一つ一つはずしていく。高温になったれんがに水をかけると真っ白い水蒸気が上がった

 
炉底には「ケラ」(写真右上)と呼ばれる鉄の塊ができていた

炉底には「ケラ」(写真右上)と呼ばれる鉄の塊ができていた

 
ハンマーで叩いて割れないものが鉄。磁石にくっつくかも判断基準

ハンマーで叩いて割れないものが鉄。磁石にくっつくかも判断基準

 
「磁石についたよ」。餅鉄由来の鉄の出来上がり!

「磁石についたよ」。餅鉄由来の鉄の出来上がり!

 
 同市の小学生藤井啓輔さん(10)は両親と参加。炭にまみれながらも懸命に作業し、「材料を火で燃やしたり、できた鉄を磁石で集めたりするのが面白かった。意外と楽しい」とにっこり。「煙突で炭が燃えているところやオレンジ色の(ノロ)が出たのが印象的だった」と話し、「昔の人は大変そう」と思いをはせた。父祐一さん(53)は「“鉄のまち”ならではの体験。息子はものづくりにも興味があるよう。いろいろな経験をして将来の選択にもつなげてほしい」と願った。
 
 炉作りから参加した市内の男性(70)は「釜石で生まれ育ったが、鉄づくりの工程は全然知らなかったので、いい学びの機会になった。たたらと近代製鉄の違いも分かり、大島高任が洋式高炉で連続出銑に成功したことはすごいことだったんだと改めて実感した」と貴重な経験を心に刻んだ。
 
 同プロジェクトは滝沢市の南部鉄瓶職人田山和康さん(74)=田山鐵瓶工房代表=の提案で始まった。田山さんは以前、釜石産餅鉄からつくられた鉄で鉄瓶を製作した経験がある。今回は5月の餅鉄採集から加わり、釜石市民とともに鉄づくりに挑戦。盛岡たたら研究会代表でもある田山さんは、今回準備した3基の炉のうち1基に炭を埋め込んで、保温性を高める実験も行った。
 
鉄瓶職人の田山和康さんも各種作業に夢中。鉄瓶作りを楽しみにする

鉄瓶職人の田山和康さんも各種作業に夢中。鉄瓶作りを楽しみにする

 
 田山さんによると、今回のように小型炉で木炭を燃料につくった鉄は純度を高められる利点があるが、鋳物にする場合は合金でないと鋳型にうまく流すことができないという。できた鉄はこの後、県工業技術センターで分析してもらい、炭素量などの成分調整をして流れやすくする。田山さんの手によってどんな鉄瓶が生まれるのか、参加者は楽しみにする。
 
餅鉄からできた6.5キロの鉄を前に笑顔を輝かせる参加者

餅鉄からできた6.5キロの鉄を前に笑顔を輝かせる参加者

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震災伝承に三陸道活用を 釜石で地域活性化フォーラム 女性目線で提案「魅力の新形」

震災伝承と三陸道の活用を考える地域活性化フォーラム

震災伝承と三陸道の活用を考える地域活性化フォーラム

 
 東日本大震災の伝承施設と被災地を縦貫する三陸沿岸道路を活用した交流人口の創出を考える地域活性化フォーラムが2日、岩手県釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。一般財団法人「3.11伝承ロード推進機構」(宮城県仙台市、今村文彦代表理事)が主催し、「三陸の新しい魅力」をテーマに講演やパネル討論を展開。行政や観光、建設などの業界関係者ら約80人が耳を傾けた。
 
 東北大学災害科学国際研究所の奥村誠教授(地域・交通・土木計画学専門)が「未来に役立つ災害伝承のための三陸沿岸道路の役割」と題して基調講演。三陸道(青森県八戸市-宮城・仙台、全長359キロ)の全線開通による移動時間の変化や来訪者数の推移に関するデータを示し、「無料区間が延伸され、時間の短縮と交通費用の低下が実現したが、岩手県外からの来訪者に関して顕著な増加は見られない」と指摘した。
 
三陸道の役割についてデータを示しながら解説する奥村誠教授

三陸道の役割についてデータを示しながら解説する奥村誠教授

 
 そのうえで、「量より質を目指しましょう」と呼びかけ。質の向上につながるヒントに―と滞在時間の変化に関するデータも紹介し、「県外からの来訪者は帰りの駅や空港までの時間が読めると、滞在可能な時間がのびる。そうして生まれた時間で地域との交流が生まれ、その人にあった満足が提供できるようになる」とした。
 
 震災伝承のあり方について「多くの人に安く提供するのではなく、少数でも深い学びを提供することが重要」と強調。時間の確保という点で、「三陸道など復興支援道路が持つ、時間的な信頼性が役立つ」と見解を示した。
 
 パネル討論のテーマは「女性が語る三陸の新しい魅力」。石巻専修大の庄子真岐教授が進行役を務め、パネリスト4人で展開された。
 
「女性が語る三陸の新しい魅力」をテーマにしたパネル討論

「女性が語る三陸の新しい魅力」をテーマにしたパネル討論

 
新しい三陸の魅力発信について意見を交わすパネリスト

新しい三陸の魅力発信について意見を交わすパネリスト

 
 釜石・鵜住居町のいのちをつなぐ未来館スタッフの川崎杏樹さんは、学校などの教育旅行や企業のワーケーション研修の実績を紹介。「コロナ禍で落ち込んだが、現在は上昇傾向にあり、釜石式の防災にニーズがある」と感じる一方で、「防災だけを売りにすると飽きられる」とキッパリ。ラグビーやインフラ、産業など多様な要素と組み合わせたプログラムの提供を始めており、「さまざまな面から防災を考えられるよう入り口を広げ、リピーター獲得につなげたい」と展望した。
 
 同じく鵜住居にある旅館・宝来館おかみの岩崎昭子さんは地域にあるものをつなげたり、団体が手を取り合って共に盛り上げる視点の必要性を熱弁。「災害の形は違っても三陸の経験や学びは生かせるはず。世界遺産や歴史、海、環境などに関わる各主体がアイデアや知恵を出し合って魅力ある釜石を発信すべき」と力説した。
 
釜石から岩崎昭子さん(左の写真)と川崎杏樹さんが加わった

釜石から岩崎昭子さん(左の写真)と川崎杏樹さんが加わった

 
 伝承ロードは、震災被災地にある遺構や石碑、慰霊碑、伝承施設をネットワーク化したもので、訪れた人が効果的に教訓や防災などを学べる仕組みを構築する。同機構は、国土計画協会の支援を受け、新たな交流人口を創出する未来志向の地域活性化事業を実施中。今年9月には、政府が新設した「NIPPON防災資産」に選ばれた。
 
震災伝承に三陸沿岸道路の活用を=大船渡市三陸町付近

震災伝承に三陸沿岸道路の活用を=大船渡市三陸町付近

 
 アドバイザーとして討論に加わった同機構の原田吉信業務執行理事は、道路整備により内陸との横の連携だけでなく、三陸道で結ばれた縦の連携も考える必要性を指摘。伝承施設を拠点に観光面でも活用していくことで、「三陸地域の良さや魅力の発信につながる。求められているのは、『今だけ、ここだけ、あなただけ』というプログラム。地域内外で協力して作っていければ、人を呼び込む強みになる」と締めくくった。