タグ別アーカイブ: 地域

donto01

焚き上げに込める祈りと感謝 釜石・八雲神社どんと祭 子どもたちが餅つきで彩り

八雲神社で行われた新春恒例の「どんと祭」

八雲神社で行われた新春恒例の「どんと祭」

 
 松明けの7日、正月飾りを焚(た)き上げる伝統行事「どんと祭」が釜石市八雲町の八雲神社(成瀬幸司宮司)で行われた。参道の石段の下に焚き上げ場が設けられ、朝早くから住民らが松飾りなどを持ち込んだ。午前7時過ぎに点火され、勢いよく炎が上がると、訪れた人たちは静かに手を合わせ、新しい年の多幸や平穏を祈った。
 
 焚き上げ場のそばに立ち、世話役と火の監視役を務めたのは同神社神和会の氏子や地元の消防団第2分団の団員たち。周辺から歩いて訪れる人、車やタクシーで駆け付ける人たちから松飾りなどを受け取り、ビニール袋を取り除いて火の中に投じ続けた。
 
正月飾りを持ち寄った人たちが感謝を込めて手を合わせる

正月飾りを持ち寄った人たちが感謝を込めて手を合わせる

 
地域の消防団員が飾りを受け取り、分別して火に投じた

地域の消防団員が飾りを受け取り、分別して火に投じた

 
 近くに住む佐々木静子さん(79)は「秋には80歳になるので、無事に一年を過ごせたらいい。百歳体操を続ける仲間とおしゃべりを楽しみたい」と穏やかに話した。
 
 成瀬宮司によると、この伝統行事は「神様に一年間、守っていただいた感謝を伝える祭り」という。そして、「生かされていることに感謝し、全ての人のために幸せや平和を祈る場」でもある。「ありがとう」と手を合わせた後は、「陽気に邪気をはらう」のが習わし。同神社では拝礼を終えた人たちにあたたかい甘酒、つきたての餅を振る舞った。
 
社務所前で餅や甘酒をお振る舞い。おみくじを結ぶ光景も

社務所前で餅や甘酒をお振る舞い。おみくじを結ぶ光景も

 
 餅つきは新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって、行うのは5年ぶり。以前から子どもたちが役目を担っていて、今回も“常連”の中妻子供の家保育園(海藤祐子園長、園児59人)の4、5歳児15人が往復1.5キロを歩いて訪れ、きねを振るった。「よいしょー」。元気なかけ声が周囲の笑顔を誘った。
 
 梅島涼成君(6)は「楽しかった」と笑い、ご褒美のきな粉をまぶした餅をおいしそうに頬張った。春には小学生になり、「ドリルをがんばりたい」と期待を膨らませた。
 
「よいしょー」。餅つきを楽しむ子どもたち

「よいしょー」。餅つきを楽しむ子どもたち

 
感謝や祈りを伝え、手を合わせ願う安寧…これからも

感謝や祈りを伝え、手を合わせ願う安寧…これからも

 
 にこやかに見守った第2分団の柳一成分団長(68)は「これからが始まり。災害が少ない一年であればいい」と願う。昨年は元日に能登半島地震が襲った。被害状況を伝える映像を目にして、東日本大震災での被害や復旧、復興の歩みを改めて思い起こされ、「地域を守る」気持ちが深まったという。能登地震の半年後に被災地に入ったというが、「何もできなかった」と心残りがある。そして、豪雨による被害も加わった現地を思い、「今年は奥能登に行き、できることをしたい」。何か、誰かを支える活動を続けていく。

2025start01

釜石、2025年の船出 市魚市場、市役所で仕事始め「厳しさあるも、力強く前進」

釜石市魚市場にマイワシを水揚げする漁業者=4日

釜石市魚市場にマイワシを水揚げする漁業者=4日

 
 2025年、新しい一年が本格的に動き出した。釜石市内では、各業界で働く人たちが仕事始めを迎えた。市魚市場(魚河岸)の初売り式では前年を上回る水揚げがあり、幸先のいいスタートを切った。市役所(只越町)では小野共市長が年頭訓示。「気概を持ってまちづくりを進めよう」と奮起を促した。
 

水揚げ好調、漁業関係者「上々のスタート」

 
朝早くから動き出す釜石市魚市場=4日

朝早くから動き出す釜石市魚市場=4日

 
 市魚市場では4日、初売り式が行われた。午前6時ごろから定置網船が次々と入港し、マイワシを中心に約95トンを水揚げ。24年初日の約14トンを大幅に上回り、上々の出だしとなった。
 
 同市場の24年4~12月の水揚げ量は6268トン(23年同期比66%増)、金額は16億3100万円(同45%増)。サンマ棒受け網漁業、かご漁業の好調が押し上げ要因となった一方、秋サケの記録的な不漁やサバなどの取扱量は伸び悩みも見られた。市漁業協同組合連合会の木村嘉人会長は「不透明さが増す状況にあっても、巻き網船やサンマ船の取り扱い増加を重点に積極的な誘致活動に取り組む」と意気込みを語った。
 
 市場開設者の小野市長や漁業関係者らが鏡開きや手締めをして景気づけ。初競りでは買い受け人が真剣な表情で鮮魚を見定め、取引を進めた。
 
初売り式で関係者が鏡開きをし、豊漁を祈った

初売り式で関係者が鏡開きをし、豊漁を祈った

 
買い受け人らの掛け声が響き活気づく魚市場

買い受け人らの掛け声が響き活気づく魚市場

 
 萬漁業生産組合(萬文貴組合長)も、この日が初漁日。萬宝丸(19トン)など2隻で暗いうちから水揚げ作業を続けた。いくら揚げてもなかなか魚槽の底が見えず、「飽きた」とこぼす漁師もいたが、声の主の顔をのぞくと、目尻は下がっていた。「おー、イキがいい」。うれしそうに手を動かした。
 
水揚げ、仕分け作業に励む漁師の目元は…緩む

水揚げ、仕分け作業に励む漁師の目元は…緩む

 
「とれるものをとる」と話す萬文貴組合長(奥)

「とれるものをとる」と話す萬文貴組合長(奥)

 
 まとまったマイワシの水揚げは昨年末から続き、「予定通り」と淡々と話す萬組合長(47)。とはいえ漁業の厳しさは依然として残り、「秋サケも諦めたくはないが、自然の状況に合わせてとれるものを狙う。それが漁師だ」と語る。自身は巳(み)年生まれの年男で、「事業拡大を視野に入れ、攻めていきたい。チャンスを得てチャレンジすれば、いいことがある。努力していかないと」と粘りを見せる。
 

市長、訓示「気概を持って前へ」

 
仕事始め式で訓示する小野共市長=6日

仕事始め式で訓示する小野共市長=6日

 
 市の仕事始め式は6日に市役所議場で行われ、小野市長が幹部職員ら約60人を前に訓示。手探りだった就任1年目を振り返りつつ、「令和7年は小野カラーを出していく」と強調した。人口減少や地域経済の悪化などを課題に挙げ、「原因や理由を探り、それに基づいた施策や事業を考える必要がある」と指摘。その上で、「まず歳入のことを考えながら事業などの精度を上げていく。長期的に体質を変えていく必要がある」と、財政健全化に本腰を入れる考えを示した。
 
 持続可能なまちづくりに向け、人材育成や、都市機能を縮小・集約して維持する「コンパクトシティー」化も進めたい考え。職務に臨む姿勢として、「釜石を引っ張っていくという気概を持って前に進んでいこう。能力をまちのために役立ててほしい」と協力を求めた。
 
訓示を聞き、身を引き締める幹部職員ら

訓示を聞き、身を引き締める幹部職員ら

 
 巳年生まれという中村達也総務企画部長は「住んでよかった、来てよかったと誇りに思えるまちづくりを進めたい。より実のある取り組みをしていかなければ」と気を引き締めた。来年、定年を迎えるにあたり「引き継ぎもしていかないと」と引き際を意識し始めている様子も。まちの持続性を守るため、行政マンとしての経験も後進に伝えていく。

hatsumoudewalk01

神社や寺を詣でながら初歩き 正月恒例ウオーキング 釜石で20回目 気分すがすがしく

20回目を迎えた釜石市ウオーキング協会主催の「初詣ウオーク」=2日

20回目を迎えた釜石市ウオーキング協会主催の「初詣ウオーク」=2日

 
 釜石市ウオーキング協会(遠野健一会長、会員50人)主催の「初詣ウオーク」は、今年も正月2日に行われた。新年最初の例会行事として定着する“初歩き”は回を重ね20回目。同協会員だけでなく誰でも参加可能で、1年のスタートにあたり、健康づくりの一歩を後押ししている。参加者は気持ちも新たに歩みを進め、立ち寄った神社なで無病息災、心願成就などに祈りを込めた。
 
 釜石のほか盛岡、北上、遠野、大船渡の各協会から計28人が参加。中妻町の昭和園クラブハウス前で行われた出発式で遠野会長は巳(み)年にちなみ、「ヘビは脱皮することで丈夫に大きくなるという。私たちは脱皮はできないが、『一皮むける』という言葉がある。そういう気持ちで1年を過ごしていければ」とあいさつ。ストレッチで体をほぐし、ウオーキングに向かった。
 
 コースは八雲神社(八雲町)、八幡神社(大渡町)、薬師山観音寺(大町)、尾崎神社(浜町)を巡る10キロ。体力に合わせ、途中から合流する5キロコースも設けられた。松飾りや門松などで正月の風情漂う市街地のほか、甲子川沿いの遊歩道も歩き、豊かな自然を満喫。この日は元日とは一転、強めの風が吹く厳しい寒さとなったが、青空のもと参加者はすがすがしい気分で、仲間との初歩きを楽しんだ。
 
最初に訪れた八雲神社。1年の無事を祈る。境内にある石像にも興味津々(写真右下)

最初に訪れた八雲神社。1年の無事を祈る。境内にある石像にも興味津々(写真右下)

 
甲子川河川敷の遊歩道では野鳥の群れがお出迎え

甲子川河川敷の遊歩道では野鳥の群れがお出迎え

 
陽光に輝く製鉄所の火力発電所、三陸鉄道の鉄橋など釜石ならではの風景も楽しみながら…

陽光に輝く製鉄所の火力発電所、三陸鉄道の鉄橋など釜石ならではの風景も楽しみながら…

 
 釜石の初詣ウオークは初めてという北上市協会の鈴木文雄さん(75)は「アップダウンの多いコースは海岸部ならではで面白い。海も好きなので」と満喫。今年もまずは「健康第一」。趣味の旅行を兼ね、「全国各地のウオーキングイベントにも足を運びたい」と心を躍らせる。ウオーキング歴は10年ほど。腰の手術で歩けなくなった時期もあるが、「何とか回復できた。足は第二の心臓とも言われる。できる限り歩きたい」と意欲を見せる。
 
 2001年発足の釜石市協会は地元を中心とした月2回の例会開催のほか、県内外のウオーキングイベントにも参加。ただ歩くだけではなく、自然散策や史跡めぐりなどを取り入れたさまざまな企画で、健康づくりプラスアルファの魅力を発信している。初詣ウオークは05年にスタート。新型コロナウイルス感染症の影響による21年の中止以外は毎年続けられてきた。遠野会長は「会員の入れ替わりはあるが、ここまで続いてきたのは会の絆が強いから。コースは同じでもやはり新年は気が引き締まる。今年も世の中の平穏を願いつつ、会員みんなが健康で楽しく参加できるよう願う」と話した。
 
きつい勾配の石階段を上り切りこの表情!=八幡神社(大渡町)

きつい勾配の石階段を上り切りこの表情!=八幡神社(大渡町)

 
高台の八幡神社の敷地からは市中心市街地が一望できる

高台の八幡神社の敷地からは市中心市街地が一望できる

 
門松などが飾られ正月の装いの商店街を歩く=大町目抜き通り

門松などが飾られ正月の装いの商店街を歩く=大町目抜き通り

 
 人生100年時代に欠かせないのが運動。中でもウオーキングは誰でも手軽に始められる。釜石市協会では昨年から、通常例会に会員でなくても参加できるようにした。「今後は協会だけでなく、行政や観光団体とタイアップしながら行事を組んで、より多くの人に歩く楽しみを感じてもらえたら」と遠野会長。1月18日の例会は「里山ウオークin栗林」と題し、史跡などが多い栗林町を歩く予定。当日は午前9時、砂子畑集会所集合。参加料は300円。申し込みは当日受け付ける。
 
最後の参拝地、尾崎神社まであと少し。息を弾ませながら進む

最後の参拝地、尾崎神社まであと少し。息を弾ませながら進む

 
写真右:中妻町から浜町までのコースを完歩し充実の表情を見せる参加者 同左:「皆さんも一緒に歩きませんか?」仲間が増えることを願う遠野会長

写真右:中妻町から浜町までのコースを完歩し充実の表情を見せる参加者 同左:「皆さんも一緒に歩きませんか?」仲間が増えることを願う遠野会長

2025year01

2025年スタート 家族、親族、仲間で迎える新年 集う喜びひしひしと 各所の初詣にぎわう

2025year01
 
 2025年が幕を開けた―。国内では能登半島地震発生から1年が経過。海外ではロシアの侵攻を受けるウクライナでの戦争が4年目に入ろうとしている。頻発する自然災害に長期化する戦争…。心穏やかに暮らせる日々のありがたみをより強く感じさせる中での新年スタートとなった。釜石市内では年末年始を古里で過ごそうと帰省した人たちが多く見られ、正月三が日、各地の神社や寺は初詣客でにぎわった。
 

栗林町沢田・八幡神社 本殿建て替え後、初の年越し 地域住民らが参拝

 
2025year01

昨年建て替えられた八幡神社本殿の前で参拝する家族連れ=元日午前0時20分ごろ、栗林町沢田

 
 昨年6月、本殿の建て替え工事が完了した栗林町沢田の八幡神社は初めての年越しを迎えた。元日午前0時を回ると地域住民らが参拝に訪れ、新しい本殿の前でさい銭をあげて手を合わせた。
 
 近くに住む小林康生さん(36)は一家6人で参拝。バレーボールに励む小中高生の娘3人の活躍、次女の高校受験合格などを祈願した。箱崎町で東日本大震災津波に遭い、仮設住宅での生活を経て栗林町に自宅を再建。「こちらに来て10年以上になる。地域の方々がやさしく、とても暮らしやすい。生活も落ち着いた」と新天地での人生を歩む。願うは“子どもたちの健やかな成長”。一家の大黒柱として家族を守る。
 
2025year01

沢田八幡神社の新本殿(写真上)。前の建物に近い形で改築された。本殿は参集殿より高い場所にある(同下)

 
 同神社は文政年間(江戸時代後期)の建立。参集殿から続く階段を上った先に別棟の本殿がある。木造の本殿は1955年に屋根のふき替え(かや→瓦)のみが行われていたが、本体の老朽化が進んだため、地元町内会の沢田新生会(川崎浩一会長、98世帯)が中心となって建て替えを計画。地域住民や縁故者、企業から寄付を募り、一昨年春に工事に着手。地元産のケヤキ、ヒノキ材を使い、屋根は銅板で仕上げた。
 
2025year01

かしわ手を打ち、新年の無事などを祈る地域住民(写真上)。参集殿には神社の歴史を物語る写真が飾られている(同下)

 
 工事を担当した菊池建設(橋野町)の菊池浩代表取締役(60)は「若い職人にとってもいい経験で、技術の継承にもつながった」と貴重な機会を喜ぶ。栗林町民でもある菊池代表は元日の初詣一番乗りで、川崎会長(61)らと新年のあいさつを交わした。川崎会長は「昨年秋の祭りは本殿改築を祝って盛大に行われた。新しい年が災害や事故のない穏やかな1年になれば」と地域の安全を願った。
 

海面照らすまばゆい光 初日の出は洋上の雲から 明るい1年に期待

 
2025year01

仮宿漁港から望む2025年の初日の出=元日午前7時27分ごろ

 
 晴れ予報で「初日の出」への期待が高まった元日朝の釜石。市内でも数少ない海面から昇る初日を拝める場所、箱崎町仮宿地区には、午前6時52分の日の出時刻に合わせ、家族連れなどが訪れた。漁港を臨む集落の高台から日の出を待つも、洋上に雲がかかり、なかなか太陽が顔を出さない。同7時14分ごろ、雲の隙間から一時、陽光が差すも、再びお預け。雲の上部から太陽が見え始めたのは同7時25分ごろで、数分の間に漁港内に神々しい光の帯が延びた。
 
2025year01

午前7時14分ごろ、雲の間から陽光が漏れる。集まった人たちは今か今かと日の出を待つ

 
2025year01

刻一刻と変化する光景に目が離せない。雲の上部から光が差し込むと見物客に笑みが広がった

 
 いとこ同士という同地区出身の女性4人は愛犬と初日の出を拝んだ。小学5年の臺彩華さん(11)は「めっちゃきれい。いい気持ちで新しい年を始められる」とにっこり。最上級生となる今年は「1~5年生を引っ張っていけるような6年生になりたい」と頼もしさを見せ、「運動会のリレー選手になれるよう頑張る」と目標を掲げた。福島県から帰省した高彩世さん(23)は「この4人で初日の出を見るのが恒例。今年も見られた」と喜びの表情。昨年は保健師となり、社会人としての第一歩を踏み出した。「国家試験に初めての仕事…。何とか乗り越えてこられた。2年目の今年も甘えなく」と気を引き締める。原動力は常に心の中にある古里“仮宿”。「震災で一時期、減った住民もだいぶ戻ってきた。仮宿は自然豊かで、おっとりした感じが好き。一番落ち着く場所」と愛着をにじませた。
 
2025year01

初日の出にパワーをもらった仮宿出身の女性ら。「今年も1年がんばるぞ!」

 

「巳」にちなんだ墨絵で活力届ける・日高寺

 
2025year01

「今年の一絵」を囲む参拝者の表情はにこやか=元日午前、日高寺

 
 礼ヶ口町の日高寺(菊池錬城住職)では元日、新春祈祷(きとう)に続き、「今年の一絵」と題した墨絵の書き初めが披露された。約2メートル四方の紙に描かれたのは、干支(えと)の「巳(み)」にちなんだヘビ。親しみを感じる表情や力強い筆致に、参拝者らは「きっといいことあるね」と笑い、活力を得た。
 
 同寺には毎月1日に参拝する「月参り」という風習がある。自由参拝としていて、この日の祈祷もその延長で行われた。40人ほどが心身を清めるとともに、新しい年の始まりにあたって家族の健康や仕事の成功など、それぞれの願いを胸に手を合わせた。家族7人で訪れた市内の鈴木照子さん(71)は巳年生まれ。墨絵を見つめながら、「家族みんなが健康であれば。力強い絵のように、じっくり構えて目標を達成させたい」と心の奥にある思いをそっと口にした。
 
2025year01

菊池錬城住職は心身を清める「加持祈祷」を行った

 
2025year01

「春の海」の音色に合わせて墨絵を描く菊池住職(右)

 
 「皆にご利益があるように」と、一筆ごとに気持ちを込めて絵を仕上げた菊池住職。「ヘビは金運をもたらす存在とされるが、即効性はなく、粘り強くいこうという意味もある。例えば、ヘビは獲物をとらえても時間をかけてのみ込む」とした上で、「じっくり取り組んで好機を待つ。辛抱強く続けることで、希望したものが手に入る」と、心の持ちようについてヒントを示した。
 

釜石大観音に初詣客続々 正月3が日、天候にも恵まれ約8千人が拝観

 
2025year01

初詣客でにぎわう釜石大観音=観音像入り口、元日午前11時35分ごろ

 
 市内最大の初詣スポット、大平町の釜石大観音には市内外から大勢の初詣客が訪れた。今年は曜日配列の関係で5日までの正月休みとなった人も多く、分散参拝の傾向に。客足は4、5の両日も続いた。正月3が日で昨年並みの約8千人が参拝に訪れた。
 
 おおみそか午後10時に開館。年越しの午前0時前後、初日の出を拝める元日午前7時前後を中心に境内は多くの人でにぎわい、駐車場は午後3時半ごろまでほぼ満車状態が続いた。今年はコロナ禍明け2年目の正月で、帰省した家族もさらに増えた印象。訪れた人たちは昨年の加護に感謝しながら手を合わせ、今年1年の無事や達成したい願いを胸に祈りをささげた。
 
2025year01

子どもたちもきちんと手を合わせてお参り。「今年の願いは??」

 
2025year01

無事に新しい年を迎え、笑顔満開の家族連れ。境内では観音像や海をバックに記念撮影する姿が見られた

 
 参拝後はお守りやお札を買い求めたり、おみくじを引いたりと正月ならではの光景が広がった。青空に映える白亜の観音像、眼下に臨む釜石湾の絶景をバックに記念撮影する人たちも。境内には市内外のキッチンカー4台も出店し、温かい飲み物や食べ物が好評だった。
 
 釜石市の佐々木貴幸さん(43)は家族5人で初詣。「昨年は子どもたちのクラブ活動や習い事の応援で忙しかった」と振り返り、「今年も家族みんな元気でいられますように」と願いを込めた。中学3年の長男柚貴さん(15)は「修学旅行で行った東京ディズニーシーが楽しかった」と昨年の思い出を話し、「今は高校進学に向けて受験勉強の真っ最中。合格して思い出深い高校生活を送りたい」と意気込んだ。
 
 神奈川県から釜石の実家に帰省したディアズ麻紀さん(26)は米国出身の夫、長女、実弟と参拝。夫の仕事の関係で近い将来、米国に移住する見込みで、「最後の機会になるかもしれないので」と足を運んだ。「家族で健康に過ごせる1年に」と手を合わせ、長女(2)の成長を楽しみにした。つかの間の正月休み。「主人も釜石が大好き。心も体もリラックスできています」。長女の出産時はコロナ禍で、家族の立ち会いができなかった。「みんなで普通に同じ場所にいられることは本当に幸せなこと」と麻紀さん。
 
2025year01

引いたおみくじに見入る家族連れ(写真左上) 釜石湾の絶景も楽しむ(同下) 仏舎利塔も青空に映えて…(同右上)

 
 同市を代表する観光スポットでもある釜石大観音。小野寺俊雄係長は観光客数について、「コロナ禍明けで一気に伸びたが、以降は横ばい。昨年は安産祈願やお宮参りが増え、少子化の中でも明るい兆し」と喜ぶ。新年を迎え、願うのは世界の平穏。長引く戦争で多くの命が失われている海外の現状を憂慮し、「観音様が建てられた目的の一つが世界平和。その願いが世界に届けば」と話した。

kamaishitora01

新入学児童のお祝いに… 釜石トラ作りの会(平田)キーホルダー製作中 「一緒に作りませんか?」

入学祝いのキーホルダーを作る「釜石トラ作りの会」のメンバーと体験参加者

入学祝いのキーホルダーを作る「釜石トラ作りの会」のメンバーと体験参加者

 
 釜石市の平田公民館(樋岡悦子館長)の自主活動グループ、釜石トラ作りの会(前川かな代表、会員10人)は、来春入学予定の地域の子どもたちに贈ろうと、郷土芸能「虎舞」をモチーフにしたキーホルダー作りに励んでいる。黄色のクラフトテープを編んで作るトラは、会員の山下テイさん(91)が考案したオリジナルデザイン。交通安全のお守りにと、心を込めて手作りしている。同会は来年1月19日に市民ホールTETTOで開かれる芸術体験フェスタ(県主催)にも出展予定。「一緒に作りませんか」と体験参加を呼び掛ける。
 
 同会の活動の起源は2011年。東日本大震災で被災した平田地区に仮設住宅が建設され、支援活動をしていたNPO法人カリタス釜石が被災住民にクラフトテープを使った籠づくりを教えたことがきっかけだった。その場に参加していたのが山下さん。編み物をするなど元々、手先が器用だった山下さんは、「テープを細く裂けばいろいろなものができるのでは」と考えた。
 
クラフトテープで作った作品を手にする山下テイさん(写真左)。初めての人に編み方を教える(同右上)

クラフトテープで作った作品を手にする山下テイさん(写真左)。初めての人に編み方を教える(同右上)

 
 最初は仲間と指先サイズの“ミニランドセル”キーホルダーを作り、「小学校入学祝いに」と平田幼稚園の卒園児にプレゼント。後に、黄色のテープにヒントを得た山下さんはトラの顔も作ってみることに…。試行錯誤しながら顔の原形を作り、目やひげ、耳などのパーツを付けた試作品を地元の虎舞団体のメンバーに見てもらうと、「大丈夫、(トラに)見える。作れ、作れ」とお墨付きをもらった。これを機に入学祝いのプレゼントもトラのキーホルダーに。幼稚園から小学校に変更した贈呈先は、平田小プラス唐丹小の2校となり、来春は白山小にも拡大したい考え。
 
作り手によってさまざまな表情に仕上がるトラ。頭の上には鈴が付けられている

作り手によってさまざまな表情に仕上がるトラ。頭の上には鈴が付けられている

 
 自身のアイデアが地域活動にまで発展したことに山下さんは「まさかこうなるとは思いもしなかったが、みんなで楽しく作れるのはうれしいこと。子どもたちも大事にしてくれているようなので、作り手としては励みになる」とにっこり。
 
 山下さんら初期メンバー5人は当初、仮設団地内にあった店舗の一角で活動していた。復興住宅入居や自宅再建後は、現代表の前川かなさん(60)が活動場所の確保や材料の準備など必要な事務を一手に引き受け、月2回の活動を継続してきた。「将来的には市内全小学校の入学児童に(トラキーホルダーを)プレゼントできれば」との夢もあり、前川さんは今年度、仲間を増やすために会の活動発信に乗り出した。
 
会の活動継続のために尽力する代表の前川かなさん(右)。メンバーの信頼も厚い

会の活動継続のために尽力する代表の前川かなさん(右)。メンバーの信頼も厚い

 
 平田地区生活応援センター(平田公民館)だよりで活動を紹介してもらい、夏場に2回の制作体験会を実施。10月に同公民館の自主活動グループとして登録し、11月の公民館まつりにも参加した。「現メンバーは高齢者が多い。次の世代に活動を継続するため若い人たちにもどんどん加わってもらい、郷土愛を育むトラの贈り物を続けていければ」と前川さん。
 
11月に行われた平田公民館まつりでは初の販売活動も。売り上げは材料購入のための費用に充てる

11月に行われた平田公民館まつりでは初の販売活動も。売り上げは材料購入のための費用に充てる

 
まつりは地域住民に活動を知ってもらう機会にもなった=11月27日

まつりは地域住民に活動を知ってもらう機会にもなった=11月27日

 
 今月21日、会が活動する平田集会所(同公民館)を訪ねると、メンバーがトラの顔の原形を作る作業中。月2回の活動は午前10時から午後3時までの間、いつでも出入り自由で、それぞれ都合のいい時間帯を制作に充てている。メンバーらは手を動かしながら会話も弾ませ、終始和気あいあい。この日は、活動を知った人が体験に訪れる姿もあった。地区内から足を運んだ83歳女性は「トラ(虎舞)は縁起物なので興味があって…。見るだけと思って来たが、皆さんがやさしく教えてくれて何とか半分ぐらいまでできた。最初は難しいかもしれないが、続ければ楽しいと思う」と話した。
 
活動中は笑顔が絶えない。手も口も動かし、認知症予防にも

活動中は笑顔が絶えない。手も口も動かし、認知症予防にも

 
 千葉県から帰省中の中込利枝さん(66)はこの日が3回目の参加。一人暮らしの母の様子を見に帰ってくるうち、近所に住む同会会員から誘われて参加するようになった。「トラの顔がみんな違うので面白い。そこが手作りの良さ。虎舞は釜石の伝統芸能。こうした小物はまちのPRや交流のツールにもなる」と実感。新入学児童へのプレゼント活動について、「皆さん、すごく丁寧に作業していて、子どもたちへの愛情が伝わってくる。その気持ちも受け取ってもらえたら」と願う。
 
 仕事柄、高齢者と接する機会が多い前川さんは「手を動かしてものづくりをしている人はやはり元気。認知症にもなりにくい。こうして集まって会話しながらというのも大きい。家にこもりがちな高齢者が外に出るきっかけにもなる」と健康面の効果も期待する。
 
互いに教えあいながら作業が進む。慣れると編むスピードもアップ

互いに教えあいながら作業が進む。慣れると編むスピードもアップ

 
心を込めて一つ一つ手作り。新1年生が喜ぶ顔を思い浮かべながら…

心を込めて一つ一つ手作り。新1年生が喜ぶ顔を思い浮かべながら…

 
 1月19日にTETTOで開かれる芸術体験フェスタでは、午前10時から午後3時まで体験ブースを開設する。対象は小学生以上。トラの顔の原形に目やひげなどのパーツを取り付ける仕上げ作業のほか、希望者はテープを編むところからの体験も可能。「ぜひ会場でやってみてほしい」と呼び掛ける。

heiwa02

「戦争を身近に考えることから」 高校生平和大使、釜石中で講演 被団協ノーベル賞に触れる

釜石中で開かれた高校生平和大使による講演会

釜石中で開かれた高校生平和大使による講演会

 
 戦争を身近なものとして考えてほしい―。高校生平和大使として活動する佐藤凛汰朗さん(釜石高2年)が13日、母校の釜石中(佐々木一成校長、生徒294人)で講演。核兵器廃絶への思いや釜石が経験した戦争の記憶を語るとともに、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が今年のノーベル平和賞に選ばれた意義にも触れ、戦争の記憶を後世に伝える重要性と平和の尊さを訴えた。
 
 釡中の講演会は総合的な学習の時間を活用して行われ、全校生徒が耳を傾けた。佐藤さんは、1998年に長崎から始まった「高校生平和大使」の活動が全国に広がり、岩手県では2011年からスタートしたことを紹介。今年、27代目として活動する全国の仲間とともに核兵器廃絶を求めて集めた署名は約9万6000筆に達し、これまでの累計で262万筆以上がスイス・ジュネーブの国連欧州本部に届けられたことを説明した。そして、「一人ひとりの行動が核兵器廃絶の力になる」と強調した。
 
平和の尊さを伝える高校生平和大使の佐藤凛汰朗さん

平和の尊さを伝える高校生平和大使の佐藤凛汰朗さん

 
 佐藤さんは、被団協の受賞について「体験を語り続けてきたことで、核兵器の非人道性が国際社会に共有された結果。廃絶を求める長年の努力が認められたことは率直にうれしい」と喜ぶ。一方で「被爆者の平均年齢が85歳を超え、記憶を直接伝えられる時間が限られている今、私たち若い世代がその思いを引き継がなければならない」と語りかけた。
 
 広島・長崎の被爆者の証言や原爆の写真をもとに、核兵器の非人道性についても解説。「原爆は家族や生活を一瞬で奪い去る。核兵器が使われれば、その影響は日本だけでなく世界全体に及ぶ」と述べ、廃絶の必要性を改めて訴えた。被爆者が長期にわたって放射線による被害や差別に苦しんできた状況も伝えた。
 
佐藤さん(奥)の話に中学生が熱心に耳を傾ける

佐藤さん(奥)の話に中学生が熱心に耳を傾ける

 
 核兵器が使われるような状態にしないためにも二度と戦争をしてはいけない。そうは言っても「戦争は遠い国の出来事だから、イメージ湧かない」と思う人はいる。では、どうすればいいか―。
 
 「戦争を身近なものと考えることから始めてみたらいい」と佐藤さん。釜石が受けた艦砲射撃や捕虜収容所の存在に触れ、「釜石は戦争の被害地である一方で加害地でもある」と指摘した。釜石製鉄所が標的となった本州初の艦砲射撃の歴史や、捕虜が過酷な労働を強いられた実態を紹介。「地元の歴史から戦争の現実を知ってほしい。戦争はどこか遠い世界の話ではなく、私たちが住む場所でも起きた現実」とした。
 
「どう感じた?」。被爆地の写真などを見せながら問いかけた

「どう感じた?」。被爆地の写真などを見せながら問いかけた

 
 戦争のない社会に向けてできることは―。佐藤さんは「微力だけど、無力じゃない」という高校生平和大使の合言葉を紹介し、後輩たちに「できることを考えて」と問いかけた。「被爆者や戦争体験者の思いを引き継いでいく」「交流サイト(SNS)で世界に発信する」。そんな意見に対し、佐藤さんは▽ニュースや新聞を読んで、世界で起きていることを知る▽勉強を頑張る▽平和について考える仲間をつくる―などヒントを示し、「実現には一人ひとりが行動を起こすことが大切。今の時代に合った方法で平和の思いを広めてほしい」と呼びかけた。
 
 釜中の岩間心来(ここな)さん(2年)は「戦争を身近なものとして理解し、次の世代へ伝えていく工夫をしたい」と感想。川端俐湖さん(1年)は「『子どもだから知らない』ということをなくし、多くの人が平和について考えることができるよう、周囲に伝えていきたい」と関心を深めた様子だった。
 
平和への思いを共有する佐藤さんと後輩の釜中生たち

平和への思いを共有する佐藤さんと後輩の釜中生たち

 
 この講演会は佐藤さんの持ち込み企画で、恩師の協力を得て実現。「平和賞の受賞もあり、取り組みを加速させることが重要。『核兵器は人類と共存できない』。被爆者の声を継承し、世論を形成していくという意識を持ち、できることを続けたい」と意欲を語った。

xmas01

あふれる笑顔!釜石で楽しむクリスマス サンタとの触れ合い、異文化交流、光の輝き

釜石から届ける楽しいクリスマスの風景

釜石から届ける楽しいクリスマスの風景

 
 華やかなイルミネーションに彩られた街、家族や友人との時間を楽しむ季節・クリスマスがやってきた。サンタクロースと触れ合ったり、クリスマスのあれこれを学んだり…。釜石市内でも一足早く、その雰囲気を味わう人たちの姿が見られる。寒空にあたたかみを加える光の造形もさまざま登場。笑顔を広げる市民の様子を紹介する。
 

サンタ訪問で特別な思い出を

 
サンタクロースと触れ合った上中島こども園の子どもたち

サンタクロースと触れ合った上中島こども園の子どもたち

 
 クリスマスといえばサンタクロース。上中島町の市立上中島こども園(楢山知美園長、園児38人)には19日、北欧フィンランドからサンタがやってきた。プレゼントと一緒に届けたのは、元気と夢。子どもたちは“本物”との触れ合いを特別な思い出にした。
 
 赤い衣装に白くて長いひげを蓄えたサンタが登場すると、子どもたちは大歓迎。「何に乗ってきたの?」「どんなパジャマを着てるの?」などと次々に質問した。サンタからお菓子が詰まった袋を受け取った子どもたちは、にこにこ顔。お礼に歌をプレゼントし、「また来てね」とお願いもした。鈴木さくらちゃん(4)は「会えてうれしい。大きくて、あったかかった」と喜んだ。
 
サンタとハイタッチする園児。「あったかーい」

サンタとハイタッチする園児。「あったかーい」

 
 盛岡市の百貨店「川徳」による恒例企画。フィンランド商工会議所公認のサンタを招き、同店や岩手県内の幼児施設などを回っている。新型コロナウイルス禍で中断したが、昨年から再開。東日本大震災後は沿岸を中心に訪問しており、今年は同園など釜石市内2カ所を訪ねた。
 

パーティー気分⁉でオープンキャンパス

 
 この時期は学校や大学が特別なオープンキャンパスを開催することも多い。進学を考える学生やその家族だけでなく、地域住民も参加できる場合がある。鈴子町の釜石市国際外語大学校では22日、クリスマスをテーマにしたプログラムを用意し校内を公開。市内外から20人余りが参加し、進学の情報収集や異文化交流を楽しみ、季節感を満喫した。
 
クリスマス仕様の教室で留学生と会話を楽しむ参加者

クリスマス仕様の教室で留学生と会話を楽しむ参加者

 
折り紙でかわいらしいサンタが完成。手軽さに大満足

折り紙でかわいらしいサンタが完成。手軽さに大満足

 
 外語観光学科の学生はクリスマスの意味や歌、楽しみ方を紹介するスライドショーを見せたり、折り紙づくり体験を提供した。折り方を伝える際は終始英語で話し、学びの成果を披露。参加者はサンタやベルを作り、教室の壁面に用意されたツリーに飾り付けた。英語に触れる体験授業も。進学を考える参加者は、先輩学生の様子を見聞きして学校生活のイメージを膨らませた。
 
 日本語学科のネパール人留学生は同国の音楽に合わせたダンスを見せた後、本場の「チヤ」(ミルクティー)を振る舞い、参加者をもてなした。踊りの列を作ったり、チヤを手におしゃべりしたり交流。留学生の中には「クリスマスを祝うのは初めて」という人もおり、触れ合いや分かち合いの季節の中で新たな文化体験を楽しんだ。
 

街を彩るイルミネーション巡り

 
 冬の夜空を彩るイルミネーションは、クリスマスを盛り上げる演出として定着する。小佐野町では小佐野コミュニティ会館の外壁や通路の樹木がカラフルな照明で飾られ、夜のまちを明るく照らす。
 
小佐野コミュニティ会館を彩るイルミネーション

小佐野コミュニティ会館を彩るイルミネーション

 
カラフルな光に笑顔を広げる子どもたち

カラフルな光に笑顔を広げる子どもたち

 
 「明るいまちに」と地域の大人たちが願いを込めて継続。近所の子どもたちが訪れ、「きれいだね」と、笑顔という輝きを加えている。点灯は日没から夜明けまでで、来年1月12日までを予定する。
 
 甲子町の菊池秀明さん、陽子さん夫妻(ともに77)は、自宅前の庭で恒例のイルミネーションを点灯している。樹木を模した電飾がいくつも並び、多用した青色の光は雪を表現。「静かな森をイメージ。見て楽しんで心に潤いを」と願う。
 
「静かな森」をイメージした甲子町・菊池邸のイルミネーション

「静かな森」をイメージした甲子町・菊池邸のイルミネーション

 
散策も楽しめる菊池邸。釜石道のライトが明るさを加える

散策も楽しめる菊池邸。釜石道のライトが明るさを加える

 
 文字の表示として、今年選んだ言葉は「共存」。戦争や災害が絶えない世界を思い、「地域をつなぐ光に」とのメッセージを込めている。釜石花巻道路(釜石道路)からも楽しめる輝きは午後4時半~9時半に点灯。来年1月7日までを予定する。
 
 規模は小さいながらもあたたかみのあるイルミネーションが市内に点在している。目抜き通り、住宅街、そして普段は通り過ぎる港、産業・工場地帯でも光の造形が楽しめたりもする。寒い季節の凛とした空気の中で、輝く光を探してみては―。
 
青葉通りのツリーと復興住宅が共演(左の写真)。右はグリーンベルトで出合ったツリー?

青葉通りのツリーと復興住宅が共演(左の写真)。右はグリーンベルトで出合ったツリー?

 
釜石製鉄所の火力発電所(左の写真)や釜石港も光を楽しむスポットに

釜石製鉄所の火力発電所(左の写真)や釜石港も光を楽しむスポットに

chiikirenkei01

地域の医療課題解決へ病・医院、行政がタッグ “連携推進法人”設立目指し釜石市で準備委発足

「地域医療連携推進法人」設立に向けた準備委員会の総会=3日、釜石PIT

「地域医療連携推進法人」設立に向けた準備委員会の総会=3日、釜石PIT

 
 地域の医療機関が連携し、医師の相互支援や医療機器の共同利用などで経営の安定化、患者の安心につなげる「地域医療連携推進法人」設立への取り組みが釜石市で始まった。3日、市内の医療法人や医師会、市などによる設立準備委員会が発足。会則や体制、法人の名称を決め、連携方針を確認した。今後、一般社団法人として組織化し、2025年度内に同連携推進法人の認定を得たい考え。認定されれば県内では初の事例となる。
 
 準備委は医療法人楽山会(せいてつ記念病院、佐藤滋理事長)、独立行政法人国立病院機構(釜石病院、岡田千春審議役)、医療法人仁医会(釜石厚生病院、釜石のぞみ病院、鹿野亮一郎理事長)、医療法人社団KFC(釜石ファミリークリニック、上村明理事長)、一般社団法人釜石医師会(小泉嘉明会長)、釜石市(小野共市長)で構成。3日に開いた準備委設立総会で、会長に楽山会の佐藤理事長、副会長に医師会の小泉会長を選出した。
 
 法人の名称は「釜石スクラムメディカルネット」に決定。“ラグビーのまち釜石”にちなみ、手を取り合い、スクラムを組んで地域医療の充実を図りたいとの思いが込められる。ロゴマークにもラグビーボールやスクラムをイメージしたデザインが採用された。
 
設立準備委は医療法人、医師会、市などの6者で組織

設立準備委は医療法人、医師会、市などの6者で組織

 
法人のロゴマークは4デザイン案からD案(写真右)を選んだ

法人のロゴマークは4デザイン案からD案(写真右)を選んだ

 
 「地域医療連携推進法人」は地域内で医療機能の分担、連携を進めるため、国が2017年度に創設した法人制度。釜石保健医療圏(釜石市、大槌町)では人口減少に伴い患者数が減少。少子高齢化による労働人口の減少もあり、医療従事者の不足など各医療機関は多くの経営課題を抱える。そうした厳しい状況下でも、住民が求める医療提供体制を維持していく必要があると、同市の医療法人が中心となり、同連携推進法人の立ち上げを決断した。
 
 同市で目指すのは、回復期から慢性期、退院後の在宅医療までを担う各医療機関の連携。推進法人に参加する5病院・診療所は機能的重複がないことから、それぞれの医療資源を最大限に活用し、機能分担と業務連携を推進する。急性期からの受け皿としての役割を果たし、介護事業との連携で「地域包括ケアシステム」の充実を図る方針。具体的には▽医師の相互支援▽医療従事者の確保、育成▽医療機器の共同利用▽医薬材料、医薬品の共同交渉、購入▽在宅医療の充実―などを掲げる。
 
 準備委は今後、同連携推進法人の認定に必要な法人格(一般社団法人)取得に向け動く。連携推進法人の認定可否は、一般社団法人から申請を受けた都道府県知事が、医療審議会の意見を聴取して決定する。
 
設立準備委の佐藤滋会長(写真右上)が議長を務め、提出議案を審議した

設立準備委の佐藤滋会長(写真右上)が議長を務め、提出議案を審議した

 
 準備委会長を務める楽山会の佐藤理事長は「多くの課題はあるが、まずは一つ一つ向き合い、前に進めていければ。回復期、慢性期の医療を担っている私たちがスクラムを組み、必要とする方々が不自由のないようにしていきたい」と話した。

hamayuri01

好きに撮る!風景写真 気の合う愛好家「写遊はまゆり」三人展・釜石 多様な視点で

魅力的な写真を展示した(左から)阿部秀見さん、村上民男さん、沼田義孝さん

魅力的な写真を展示した(左から)阿部秀見さん、村上民男さん、沼田義孝さん

 
 自然の風景を大判プリントの写真で堪能-。アマチュア写真家の村上民男さん(77)=大槌町、阿部秀見さん(74)=釜石市、沼田義孝さん(71)=大槌町=は12月1日まで、釜石・大町の市民ホールTETTOで三人展を開いた。四季折々の風景を独自の視点で切り取った作品を迫力のサイズで見せた。
 
 写真歴50年超の村上さん、30年以上カメラを手にする阿部さん、本腰入れて約10年となる沼田さんの3人は趣味として撮影を楽しむ仲間。10年継続した愛好グループ・釜石写遊会で作品発表を重ねながら親交を深め、解散した今も情報交換し合う「気の置けない仲」だ。
 
 村上さんと阿部さんは「大型写真を目にする機会を」と5年前に二人展を開いた。撮りためた写真、見てもらいたいものが多くなってきたことから「そろそろ、やろうか」と意気投合。今は矢巾町で暮らす沼田さんにも声をかけ、もとの愛好グループの名をつなぐ「写遊はまゆり」として写真展を催した。
 
「写遊はまゆり」として開かれた三人展

写遊はまゆり」として開かれた三人展

 
 ここ数年に撮った作品を、全倍(90センチ×60センチ)、全倍のほぼ半分の全紙サイズを中心に計約40点展示。国内外の海や山、花や木々、トンボなど、3人それぞれが「これ!」と選び抜いた豊かな自然風景を持ち寄った。
 
 村上さんは、ピンク色に色づき始めた木々の間から望む残雪の岩手山を写した「春・爛漫」、散歩中に見かける三陸鉄道のカラフルなラッピング列車を記録する組み写真「復興の三鉄」など10数点を並べた。モノクロの独特な風合いが魅力的なフィルム時代の作品も紹介。ユニークなタイトルも“ならでは”で、四角い建物の間からのぞく釜石港の荷役クレーンを捉えた一枚には「喜寿にして習作・遠近」と“遊び心”も加えた。
 
村上さんは身近な風景を切り取った作品を並べた

村上さんは身近な風景を切り取った作品を並べた

 
ソニー製カメラを愛用中。フィルム時代の作品も(右)も紹介

ソニー製カメラを愛用中。フィルム時代の作品も(右)も紹介

 
 阿部さんは、釜石大観音の朝焼けや朝霧に浮かぶ満開の桜(遠野市)など、早朝の絶景写真を多数見せた。何度も足を運ぶ中で撮影できた貴重な瞬間が来場者の目をくぎ付け。「何回も失敗して…でもそれも楽しい。同じ被写体でも視点を変えれば印象も違う。同じシチュエーションもない。一瞬を撮るのが面白い」と、どっぷりハマる。主役のヒガンバナを印象的に浮かび上がらせた「赤と黒」などカメラの性能を駆使した作品も紹介したり、意欲作を20点ほど出品した。
 
来場者に撮影場所や独自の視点を伝える阿部さん(奥)

来場者に撮影場所や独自の視点を伝える阿部さん(奥)

 
愛機はキャノン製。色彩の対比が印象的な作品が展示された

愛機はキャノン製。色彩の対比が印象的な作品が展示された

 
 沼田さんは心動かされる被写体をいつも狙っているといい、「感動したことが出てくるのが写真の良いところ」と笑った。6点出品し、イチ押しの作品はライトアップされた黄葉の木々と御堂が沼に映り込む光景を捉えた「黄金の平泉御堂」。風もなく、ピタッと時が止まった瞬間と現地の感動を封じ込めた。「これだよ!こういうの」「よっしゃー」。撮影者のそんな気持ちを感じ取った多くの人が足を止め、じっくりと見入っていた。
 
「感動の分かち合い」を楽しむ沼田さん(右)

「感動の分かち合い」を楽しむ沼田さん(右)

 
キャノン製カメラを相棒に狙った風景写真がずらり

キャノン製カメラを相棒に狙った風景写真がずらり

 
 3人の撮影スタイルは、グループ活動していた頃から変わらない。「自由に、好きなように。肩肘張らずに楽しんでいこう」が合言葉。村上さんは「気心知れたメンバーだから。みんながリーダー」と、いたずらっぽい笑みを浮かべた。“生きる証し”というカメラは手放せないようで、「いいなと思ったものを撮り続けたい」と意欲は衰えない。
 
 また展示会を―。早くも、次の構想は動き出している。「喜寿の記念に」とつぶやく阿部さんに、「傘寿を迎える頃には見せたい写真がさらに増えているな」と返す村上さん。「展示しきれないものをプロジェクターとか使って映して見せたい。スライドショー、いいね」と、沼田さんは案を出したり。三者三様だ。

irontown01

橋野鉄鉱山含む「明治日本の産業革命遺産」とは? 世界遺産登録10周年を前に市立図書館で講座

鉄の記念日に合わせ、市立図書館が開いた「鉄の町かまいし歴史講座」

鉄の記念日に合わせ、市立図書館が開いた「鉄の町かまいし歴史講座」

 
 釜石市の橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(8県11市23資産)は来年、世界遺産登録から10周年を迎える。これを前に同遺産の内容を学ぶ講座が1日、釜石市立図書館で開かれた。「鉄の記念日」に合わせた市民教養講座として同館が企画。同市世界遺産室の森一欽室長が講師を務め、市民ら20人が聴講した。
 
 日本における製鉄・製鋼、造船、石炭産業の急速な発展(1850年代~1910年)を物語る遺構が「顕著な普遍的価値」を有するとして、世界遺産に登録された同遺産。日本の産業革命は非西洋地域では初めて、さらには約60年という短期間で達成されたことから「東洋の奇跡」とも呼ばれる(英産業革命は200年を要した)。
 
 「日本の産業革命はその過程が独特」と森室長。1857(安政4)年、釜石・大橋で日本初の洋式高炉による連続出銑に成功した大島高任は、現物を見ずして蘭学書を頼りに高炉建設を実現した。試行錯誤の挑戦は世界遺産の鹿児島(旧集成館)、韮山、萩の反射炉建設でも象徴される。後に外国人技術者の招へいや留学から戻った日本人の活躍で、長崎、三池の造船、石炭産業を中心に西洋の科学技術導入が進む。明治末期までに官営八幡製鉄所が軌道に乗り、三菱長崎造船所や端島炭鉱(長崎)、三池炭鉱(福岡)の近代化で日本の産業基盤が確立されていった。
 
市世界遺産室の森一欽室長が「明治日本の産業革命遺産」について解説した width=

市世界遺産室の森一欽室長が「明治日本の産業革命遺産」について解説した

 
 世界遺産の構成資産以外にも重工業の産業革命に関連する資産は数多くあるものの、登録には「完全性」と「真実性」が求められるため、「“本物”が残っていないものは世界遺産にはならない」と森室長。近代製鉄発祥の地とされる釜石でも、最初に操業に成功した大橋の高炉は現物が残っていないため、翌年から稼働した橋野鉄鉱山(国内現存最古の洋式高炉がある)が世界遺産になったことを明かした。
 
 森室長は3分野の資産の相関図も示した。製鉄・製鋼の分野では、釜石(大橋、橋野)で成功した鉄鉱石を原料、木炭を燃料とした連続出銑、官営釜石製鉄所の失敗、釜石鉱山田中製鉄所のコークス燃料での大量生産実現が、後の官営八幡製鉄所(銑鋼一貫)の成功につながっていった歴史を紹介。八幡製鉄所の高炉建設では大島高任の息子、道太郎が技監を務め、釜石の田中製鉄所から技術者や熟練労働者が派遣された。八幡ではドイツの最新技術が導入されたものの相次ぐトラブルで操業停止に追い込まれ、高炉の改良や本格的なコークス炉の導入で操業を可能にしたのは、釜石でコークス操業技術を確立した野呂景義の尽力によるものだった。
 
コークス燃料での高炉操業に成功した釜石鉱山田中製鉄所に関連する遺構や遺物を紹介

コークス燃料での高炉操業に成功した釜石鉱山田中製鉄所に関連する遺構や遺物を紹介

 
長崎県は最も多い8資産(造船、石炭産業)が世界遺産に登録されている

長崎県は最も多い8資産(造船、石炭産業)が世界遺産に登録されている

 
 森室長は全国8エリアに分類される各地の構成資産についても説明した。釜石と他地域の資産とはつながりも多く、韮山のれんがが釜石の官営製鉄所で使われたり、釜石で作られた鉄が長崎で造船の原料になったり、釜石で採掘された銅の精錬に三池の石炭が使われていたり…。あまり知りえない話に聴講者は興味をそそられながら聞き入った。
 
市立図書館で開催中の「鉄の記念日図書展」。さまざまな書籍が並ぶ

市立図書館で開催中の「鉄の記念日図書展」。さまざまな書籍が並ぶ

 
 市立図書館では1日から「鉄の記念日図書展」も開催中。ユネスコに提出した「明治日本の産業革命遺産」世界遺産推薦書の原本のほか、釜石の鉄の歴史に関する著作、鉄がどうやってできるかを記したものなど、さまざまな視点の鉄に関する本が並ぶ。ほとんどが貸し出し可能。川畑広恵館長は「釜石のものづくりの精神が世界遺産に結実したのが10年前。身内が製鉄業に携わっていたという方も多いと思う。普段、手が出ない分野という方もこの機会に手に取っていただき、理解を深めてもらえれば」と来館を呼び掛ける。図書展は15日まで開催されている。
 
鉄をテーマに集めた本のほか、市が作成した橋野鉄鉱山に関するパンフレットなども展示

鉄をテーマに集めた本のほか、市が作成した橋野鉄鉱山に関するパンフレットなども展示

shakaifukushi01

誰もが安心して暮らせるまちへ 釜石市社会福祉大会で誓い新た 子どもらも関心高く

幼児福祉絵画コンクール入賞作品の前で記念撮影する親子ら=釜石市社会福祉大会

幼児福祉絵画コンクール入賞作品の前で記念撮影する親子ら=釜石市社会福祉大会

 
 第45回釜石市社会福祉大会は11月21日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。市社会福祉協議会、市共同募金委員会、市民生児童委員協議会が主催した。福祉功労者と小中高生の福祉作文コンクール、幼児の福祉絵画コンクールの入賞者計29人を表彰。生活課題解決への取り組みを進め、「地域共生社会」の実現を目指す大会宣言を採択し、住民同士の支え合いによる住みよいまちづくりへ誓いを新たにした。
 
 関係者約80人が参加。東野武美大会長(市社会福祉協議会会長)は4月に施行された孤独・孤立対策推進法に触れ、「コロナ禍で孤立、孤独の問題が一層顕在化した。今後、単身(高齢)世帯の増加が見込まれ、問題の深刻化が懸念される。住民が自ら望む地域で生きがいや希望を持ち、安心して生活できるよう重層的支援に努める」と話した。
 
 社会福祉事業功労者として介護職員や福祉施設職員、民生委員児童委員ら14人、共同募金運動功労者として行政連絡員1人を表彰。小佐野地区で民生委員児童委員を務めてきた佐藤國治さんが受賞者を代表し、東野大会長から表彰状を受け取り、謝辞を述べた。
 
社会福祉事業、共同募金運動功労者として15人を表彰。代表して民生委員児童委員の佐藤國治さん(写真左上)が表彰状を受け取り謝辞を述べた<

社会福祉事業、共同募金運動功労者として15人を表彰。代表して民生委員児童委員の佐藤國治さん(写真左上)が表彰状を受け取り謝辞を述べた

 
 同大会の取り組みとして長年続けられる「福祉作文コンクール」には本年度、小中高6校から39点が寄せられた。釜石中1年の菊池すずさんの作品「すべての人の幸せに向けて」が最優秀賞を受賞。他に優秀賞2点、佳作4点が選ばれた。表彰後、菊池さんが作文を朗読した。
 
 菊池さんは小学生の時に知的障害児をからかう上級生を止められなかった経験から、福祉への関心が芽生えた。自分にできることを探そうと、障害者が働く福祉作業所を見学。理解を深めたことで、将来、当事者の役に立ちたいと思うようになったといい、自らの福祉に対する考えを作文につづった。発表後、菊池さんは「障害への偏見はまだまだある。多くの人が福祉について知り、興味を持つことでそうしたものもなくなっていくと思う」と話し、「すべての人が幸せに生活できるように行動する」という福祉の理念の広がりに期待した。
 
福祉作文コンクールの入賞者(写真左) 最優秀賞の釜石中1年菊池すずさんが受賞作品を朗読した(同右)

福祉作文コンクールの入賞者(写真左) 最優秀賞の釜石中1年菊池すずさんが受賞作品を朗読した(同右)

 
 年長児を対象とした福祉絵画コンクールには11施設から148点の応募があった。「ぼくの、わたしのだいすきなひと」をテーマにした作品は、家族や友だちの姿が伸び伸びと表情豊かに描かれる。金賞は正福寺幼稚園の琴畑成太君の作品「だいすきなおともだちとおにごっこ」が受賞した。他に銀賞2点、銅賞4点が選ばれ、入賞者全員に大会で記念品が贈られた。福祉絵画の全応募作品と福祉作文の入賞作品は12月15日から18日まで市民ホールTETTOギャラリーで展示される予定。
 
shakaifukushi01

絵画コンクールでは琴畑成太君(正福寺幼稚園)の作品が金賞を受賞(写真左)

 
絵画コンクールで入賞した子どもと保護者ら

絵画コンクールで入賞した子どもと保護者ら

 
 最後は地域の現状を踏まえた大会宣言を採択。▽住み慣れた地域で生活ができるよう、互いを思いやり支え合うコミュニティーづくり▽防災意識を高め、震災を風化させることなく被災者を支援。住民同士がつながり支え合う地域づくり▽高齢者の生きがいと健康づくり。障害者が安心して社会参加できるまちづくり▽福祉教育の推進と児童健全育成に向けた取り組み▽福祉人材の確保、福祉サービスの質の向上―に努めることを確認した。
 
 大会運営にあたった市社協の佐々木理香さんは「子どもたちが福祉に対しての考えを持ち続けて成長していけば、釜石の未来も明るいものになっていくと思う。どんな人でもつらい時はある。その時に明るく乗り越えられる底力みたいなものも育まれれば」と願った。
 
第45回釜石市社会福祉大会の出席者ら

第45回釜石市社会福祉大会の出席者ら

tetsunokinen01

12月1日は「鉄の記念日」 近代製鉄発祥の地・釜石で企画展多彩に 関連3施設無料公開も

tetsunokinen01

鉄の歴史館で開かれている企画展「1894 転機 ―日本近代製鉄の新たなステージ―」

 
 12月1日は鉄の記念日―。1857(安政4)年、大島高任が釜石・大橋に建設した洋式高炉で国内初の鉄の連続出銑に成功した日だ。“鉄のまち”の歴史を物語る数々の遺産を有する釜石市では、関連施設で各種企画展を開催中。鉄の歴史館(大平町)、釜石鉱山展示室Teson(甲子町大橋)、同市郷土資料館(鈴子町)は11月30日、12月1日の両日、無料で見学できる。普段は公開していない貴重なお宝にも出会えるチャンス。22日から始まった2つの企画展を紹介する。
 
 鉄の歴史館では「1894 転機 ―日本近代製鉄の新たなステージ―」と題した企画展を開催している。日本の近代化を確固たるものとした製鉄産業の転換点1894(明治27)年にスポットを当てた展示。同年は、大橋での成功を受け翌58年から稼働していた橋野鉄鉱山(青ノ木)が終焉(しゅうえん)を迎え、一帯の採掘権を得た釜石鉱山田中製鉄所が栗橋分工場(沢桧川東岸)で操業を開始した年。青ノ木周辺で燃料の木炭原木が不足、沢桧川上流に有力な鉄鉱山があり、製品を海岸部まで運搬する距離的負担が軽減されることで同地を選んだとされる。
 
tetsunokinen01

橋野町沢桧川沿いで操業した釜石鉱山田中製鉄所栗橋分工場の説明パネル

 
 栗橋分工場の高炉には品質が向上した釜石産の耐火れんがが使われたことで、長期間の連続操業が可能となり、高炉1基で稼働(青ノ木では3基を改修しながら操業)。田中製鉄所は製品運搬のため、橋野-鵜住居間の道路も新設した。峠道の険しさが解消され、途中から導入したトラック輸送の安全、時間短縮にもつながった。企画展では解説パネルのほか、鉄鉱石を運んだ馬車鉄道の軌道が描かれた工場周辺の図面、建設道路のルート図、生産された銑鉄、新旧の耐火れんがなどを見ることができる。
 
tetsunokinen01

栗橋分工場の設備配置図。二股、高前、細越の採鉱場で鉄鉱石をとりトロッコで工場まで運んだ

 
tetsunokinen01

写真下:栗橋分工場で生産された木炭銑。長さ約1メートル、重量約60キロ。両石の港から積み出された

 
 もう一つの“1894”は、廃業した鈴子の官営製鉄所の払い下げを受けた田中製鉄所(1887年創業)が、改修した大型の30トン高炉で操業に成功したこと。燃料を木炭からコークスにかえ、出銑量が飛躍的に増加した。官営時代にもコークス窯(ビーハイブ式)を建造し、精製した燃料で出銑を試みたことがあったが、質が悪く操業停止に追い込まれている。田中時代のコークス窯(コペー式)は2018(平成30)年の発掘調査で、下部の煙道部と考えられるれんが構造物が見つかっている。使用れんがは品川白煉瓦(東京)の製品。
 
tetsunokinen01

コペー式窯で作ったコークスを燃料に稼働した鈴子の製鉄所

 
 コークス燃料の高炉の成功は日本初で、初出銑の鉄で作られた釜石製鉄所山神社(桜木町)の鳥居の扁額は市指定文化財となっている。国立科学博物館(東京)は11(平成23)年に同扁額を、21(令和3)年にコークス窯を未来に残したい遺産として登録した。企画展では、田中製鉄所創業者の田中長兵衛が払い下げ時に国産への強い意志をつづった文書、明治30年代前半の鈴子構内の見取り図、コークスでの高炉操業成功の立役者の一人香村小録の日記のコピーなどを展示。コークス導入に関与した人物の相関図、コークス転換の有用性などを解説したパネルもある。これらの功績は新たに加えられた常設展示でも見ることができる。
 
tetsunokinen01

人物にスポットを当てた展示も興味深い

 
tetsunokinen01

未来遺産になったコークス窯について解説する新たな常設展示も始まった

 
 同市世界遺産室の森一欽室長は「コークス採用で大量生産に成功した歴史がなければ、日本の産業発展はあり得なかった。近代製鉄発祥の1857年だけでなく、第2のギアがかかる1894年という転機についても知っておいてほしい。普段は見られない原図面なども公開しているのでぜひ来館を」と呼び掛ける。
 
 同館では他に無料公開の2日間限定で、県の文化財指定から50周年となる幕末の高炉操業を描いた絵巻「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図(しほんりょうてっこうざんおやまうちならびにこうろのず)」(1974年指定)を公開する。文久年間(1860年代前半)に盛岡藩のお抱え絵師が描いたとされるもので、大橋、橋野両鉄鉱山の全体図や高炉などの「設備編」、鉄鉱石の採掘から運搬、高炉の操業、出荷までの工程が描かれた「作業編」の2巻から成る。
 
tetsunokinen01

11月30日、12月1日限定で公開される高炉絵巻。年に1回の見学チャンス

 

釜石鉱山展示室Tesonは「鉱山(やま)の鉄道」展 鉱石運ぶ鉄路にスポット

 
tetsunokinen01

釜石鉱山展示室Tesonで開催中の企画展「鉱山(やま)の鉄道」

 
 釜石鉱山展示室Teson(旧釜石鉱山事務所)では、「鉱山(やま)の鉄道」と題した企画展を開催している。採掘場から鉱石を運び出し、製鉄所に供給するための重要な輸送手段であった鉄道にスポットを当てる。
 
 明治政府は鈴子に建設した官営製鉄所に鉄鉱石を運ぶため、1880(明治13)年、大橋採鉱所から鈴子、釜石港に至る釜石鉄道を敷設。小川製炭所からの支線と合わせ26.3キロの鉄道は、国内3番目の運行開始で知られる。官営廃止後は釜石鉱山田中製鉄所が馬車鉄道を新設。鉱石のほか物資輸送、客馬車運行も行った。1910(明治43)年には「釜石鉱山専用汽車軽便鉄道」が開通。機関車が走り旅客、貨物も扱った。市民に“社線”として親しまれた鉄道は1965(昭和40)年まで運行した。
 
tetsunokinen01

社線を走ったさまざまな機関車。左のC1 20形機関車は廃線まで活躍。現在、鉄の歴史館の駐車場内に展示される

 
tetsunokinen01

1953(昭和28)年ごろの日鉄鉱業釜石鉱業所の構内付近の見取り図には大橋駅周辺が描かれる

 
 鉄道は鉱山内の鉱石運搬でも活躍した。田中製鉄所は1911(明治44)年に蒸気機関車を導入し、山の高さごとに上、中、下段の「運鉱汽車軌道」を敷設した。上段は新山鉱床を始点に第6インクライン上部まで(標高約650メートル)、中段(通称・桜山運鉱線)は同インクライン下部から大橋選鉱場上部まで(同約500~450メートル)、下段は同選鉱場下部から社線大橋駅まで(同約300メートル)。
 
 33(昭和8)年には500メートル坑が開口。高さの違う坑道を縦坑で結び、坑内で下部まで鉱石を落として運ぶ方法も確立されていった。最終的に350メートル坑からの坑外搬出が中心となり、46(同21)年までに上、中段の専用鉄道は廃止された。50(同25)年に国鉄釜石線(花巻-釜石間)が全線開通すると、社線による通勤旅客輸送が廃止された。54(同29)年には選鉱場から陸中大橋駅までのベルトコンベヤー輸送システムが完成。下段の鉄道も廃止された。
 
 企画展では53(昭和28)年ごろの大橋周辺の見取り図、蒸気からガソリン、電気などへと替わっていく機関車の変遷、15トン電気機関車の無線コントローラーなどを展示。鉄鉱石の採掘が終了する93(平成5年)に撮影された周辺の建物などの記録写真も興味深い。鉱山で走った電気、バッテリー機関車は野外展示でも見ることができる。企画展は8日まで開催中(9日から冬季休館)。
 
tetsunokinen01

左上から右回りに、中段運鉱汽車軌道、500メートル坑道から出るガソリン機関車、国鉄での鉱石運搬用に建設された大橋駅ホッパー、350メートル坑道から選鉱場に鉱石を運ぶ電気機関車

 
tetsunokinen01

野外展示されている電気機関車(左上が6トン、下が15トン)。右上は6トンバッテリー機関車

 
tetsunokinen01

常設展示の鉄道コーナーにもさまざまな資料が…。右上は立体交差、右下は並走する国鉄線と釜鉄社線

 
 「鉄の記念日」関連の企画は他施設でも実施。郷土資料館では「釜石の鉄人(スポーツマン)」をテーマにした企画展を28日から開催中(来年1月26日まで)。橋野鉄鉱山インフォメーションセンターでは、本年度の高炉跡発掘調査の出土資料を12月8日まで展示する(センターは9日から冬季休館)。イオンタウン釜石では12月2日まで、県内3世界遺産のパネル展が開催される。市立図書館では12月1日午後1時半から、市世界遺産室の森一欽室長が「改めまして 明治日本の産業革命遺産とは?~世界遺産登録10周年を目前に~」と題して講演する(事前申し込みが必要)。館内では1日から15日まで釜石の鉄の歴史に関する図書とパネルの展示が行われる。