タグ別アーカイブ: 福祉

pethinan01

ペットと一緒が「当たり前」 釜石で学び、考える備え 同行避難の“カタチ”

セラピードッグと同行避難について学ぶ来場者

セラピードッグと同行避難について学ぶ来場者

 
 災害時にペットを連れて逃げる「同行避難」について考える催しが3日、釜石市大町の市民ホールTETTOであった。環境省のガイドラインでは推奨されているが、「認識の低さ」があってか課題とされるケースが多いのが実情。行政、飼い主、地域の人たちへの理解を広げようと、地元の動物愛護団体「人と動物の絆momo太郎」が主催した。災害救助犬の育成などをする認定NPO法人日本レスキュー協会(本部・兵庫県)が共催し、セラピードッグと触れ合いながらいざという時のための備えを学んだ。
 
 「迷わず、ためらわず同行避難を」。同協会の動物福祉事業責任者、辻本郁美さんが講話で、来場者に呼びかけた。2024年1月の能登半島地震や今年2月に発生した大船渡市の山林火災などを例に、同行避難の方法や心構えを解説。重要なことは、「公助」としての行政側の体制づくりと、「自助」としての飼い主の備えで、「車の両輪のように考えることが重要だ」と強調した。
 
 自治体が避難所にペットを受け入れるための仕組みを整えるとともに、飼い主も▽ペット用の非常用品を備えておく▽ハウストレーニング(ほかの犬や人に対し、ほえないなど)▽ペットとともに避難する際の行動は事前に決めておく―という3つのことが必要になると指摘。「ペットは大事な家族。備えが不十分で避難できないとならないよう、災害が起きていない今の時期に必要なことを調べ、一緒に逃げられるようにしてほしい」と求めた。
 
ペット避難につなげるためにはケージに入る習慣づけが大事

ペット避難につなげるためにはケージに入る習慣づけが大事

 
 辻本さんはハウストレーニングの一例として、ゲージに入る習慣づけをセラピードッグとともに実演。入ったら、えさをあげるといったコツを紹介した。日常の中で取り入れることで「ケージ=安心安全な場所」と認識しリラックスできるとし、慣れない場所でも大きなストレスを感じずに過ごせるようになると解説。来場者も実際に体験してみたりした。
 
セラピードッグと触れ合いながら同行避難を学ぶ子どもたち

セラピードッグと触れ合いながら同行避難を学ぶ子どもたち

 
 パネル展示では、momo太郎など民間有志が行った大船渡市の山林火災での活動を紹介。当初は避難所でペットを受け入れなかったというが、有志らが行政に働きかけて同伴可能な避難所が開設されたこと、開設場所が離れていたことなどから同行避難を断念した飼い主もいたため民間有志が預かった経緯などを分かりやすく示した。
 
大船渡市の山林火災での活動を紹介するパネル展示

大船渡市の山林火災での活動を紹介するパネル展示

 
備えが大事なのは人もペットも同じ。非常用品を紹介

備えが大事なのは人もペットも同じ。非常用品を紹介

 
 津波の恐れがある際に避難が必要な地域で愛犬と暮らす鈴木祐美さん(41)は、いざという時にすぐ逃げられるよう必要な準備を知りたくて来場した。東日本大震災時には同行避難は無理と考え、後ろ髪を引かれる思いで連れずに避難。今も「同行避難ができるのか自体、分からない」ため、もし災害が発生したら愛犬と一緒に車中泊と考えている。辻本さんの「ためらわずに」との言葉を受け、「自助について家族と考えたい」と、ペットの非常用品などの展示を熱心に見つめた。
 
 マルシェ「かまいしワンにゃんフェス」も同時開催。猫や犬をあしらった手芸品や菓子、ペットの占いなど約30店が並んだ。同行避難への理解を広げるもう一つの要素とされるのが「共助」。飼い主同士、そして行政や地域住民との助け合いは必要となり、イベント化することで参加の間口を広げ、「知ってもらうための情報交換の場」「交流の機会」とした。
 
同時開催のマルシェ。動物好きが交流を楽しんだ

同時開催のマルシェ。動物好きが交流を楽しんだ

 
セラピードッグのモフモフ感、愛くるしさにみんな笑顔

セラピードッグのモフモフ感、愛くるしさにみんな笑顔

 
 「気持ちを切り替えるきっかけに」と話すのは、momo太郎の鈴子真佐美代表。ペットの同行避難は国で推奨されているものの、全国的に避難所でペットの受け入れは拒否される事例はあり、「行政の認識は低い。飼い主側にもいる」と感じている。
 
 そして地域によって温度差もあり、隣町の大槌町ではペット同行避難のため避難所でのスペースを確保する動きは進んでいるが、釜石市では検討が始まり模索の真っ最中。同団体など有志らは行政側に要望する一方で、鳴き声や臭いといった衛生上の問題などの課題をやわらげるため、飼い主が普段の生活でできるペットのトレーニング法を伝える活動も続ける。
 
 鈴子代表は「ペットは家族のパートナー。一緒が当たり前。災害時、被災地域に残したペットのもとへ戻らないことは人の命を守ることにもなる」と話し、ペットを飼っていない人も含め広く知ってもらうため、「こつこつと取り組みを進めなければ」と先を見据えた。

umitour01

海辺地域の活性化へ 釜石の箱崎・根浜で障害児家族対象に初の“海業”モニターツアー

釜石初開催の「海業モニターツアー」で漁船クルーズを楽しむ家族連れ=3日

釜石初開催の「海業モニターツアー」で漁船クルーズを楽しむ家族連れ=3日

 
 海や漁村の資源を活用し地域振興を図る「海業(うみぎょう)」。国が推進し、全国的な広がりを見せる中、本県では2024年度から海での各種体験をメニューとした一般向けのモニターツアーを実施している。釜石市で2、3の両日、開催されたのは障害児とその家族を対象とした初の同ツアー。県内各地から4家族が参加し、漁船クルーズや海の生き物タッチプールなどで楽しい“海旅”時間を過ごした。主催した県農林水産部漁港漁村課は「いずれは各地域で自走化を」と期待を寄せる。
 
 海業は、気候変動による不漁が続く漁業者の所得向上、漁村地域の活性化などを目指す取り組み。1泊2日のモニターツアーはこれまでに大槌町と山田町で開催。3カ所目となる釜石市では鵜住居町の根浜海岸周辺と箱崎町の箱崎漁港が海業推進地区になっていて、現地パートナーの観光地域づくり法人かまいしDMCが企画を担当した。同社は地元の障害児支援NPOと連携し、障害の有無にかかわらず誰でも海を楽しめる「ユニバーサルビーチプロジェクト」を進行中で、その取り組みを海業にも生かしたいと考えた。
 
 参加者は2日に釜石入り。オリエンテーションの後、市内の3宿泊施設に泊まった。3日は2班に分かれ、漁船クルーズとタッチプールを交互に体験した。大槌湾内を巡るクルーズは箱崎漁港から出発。スロープを使って車いすやバギーのまま、家族と一緒に乗り込んだ。船上では船主の説明を聞きながら、リアス海岸特有の景観や定置網漁場を見学。震災後の漁港の復興状況についても教わった。
 
参加者は車いすやバギーに座ったまま乗船可能。いざ、大海原へ!

参加者は車いすやバギーに座ったまま乗船可能。いざ、大海原へ!

 
船上では地元漁師が大槌湾内の漁業や海岸線の景観、震災復興の様子などを説明

船上では地元漁師が大槌湾内の漁業や海岸線の景観、震災復興の様子などを説明

 
大槌町赤浜の名勝「蓬莱島」(ひょうたん島)も海上から見学。シンボルの赤い灯台は震災の津波で倒壊し、その後再建されたもの

大槌町赤浜の名勝「蓬莱島」(ひょうたん島)も海上から見学。シンボルの赤い灯台は震災の津波で倒壊し、その後再建されたもの

 
 船を出した漁業者の一人、柏﨑之彦さん(71、片岸町)は震災前、根浜地区で行われていたグリーン・ツーリズム事業に参加。震災後は復興支援で訪れた人たちなどを船に乗せて案内してきた。「自分たちの仕事や自然を見せられるのはうれしいこと。人とのつながりもでき、その後、交流が続いている人たちもいる」。海業ツアーが事業化され、収入につながることも期待するが、「何より乗った人が喜んでくれるのが一番」とおもてなしの心をのぞかせる。
 
湾内の定置網漁について教える柏﨑之彦さん(右)

湾内の定置網漁について教える柏﨑之彦さん(右)

 
 根浜海岸レストハウスでは、岩手大釜石キャンパスで学ぶ3、4年生3人が準備した“海の生き物”タッチプールを楽しんだ。学生らが釜石の海で釣り上げた魚を中心に16種類の生き物が放たれた。子どもたちは恐る恐る水中に手を伸ばし、魚貝類の手触りを確かめた。
 
岩手大釜石キャンパスの学生らが釣った魚やナマコ、ウニなどが放たれたタッチプール

岩手大釜石キャンパスの学生らが釣った魚やナマコ、ウニなどが放たれたタッチプール

 
マダコの感触にびっくり仰天!笑顔を広げる親子

マダコの感触にびっくり仰天!笑顔を広げる親子

 
 北上市の医療的ケア児、羽藤凰ちゃん(3)は両親、祖母、兄2人と参加した。保育施設での誤えん事故で低酸素脳症となり、後遺症の重い障害のため家族の介助で暮らす凰ちゃん。船上では視線を左右に向け、手に乗せてもらった海の生き物もじっと見つめた。母緋沙子さん(37)によると、凰ちゃんの退院後、宿泊を伴う家族旅行は初めて。これまでは外出の際、あきらめざるを得なかった場面が多々あったが、「漁船に乗せてもらい、人の手を借りれば(凰ちゃん)何でもできるんだ」と実感できたという。宿泊先の宝来館でも積極的に要望を聞いてくれて、夜間に必要な呼吸器など多くの荷物の搬入も手伝ってもらった。「聞いてもらうことで、逆に『これが足りなかった』とか、自分たちも気付けなかった課題が見えた」と話す。
 
初めての漁船クルーズを楽しむ羽藤さん一家。次男杏くんはおひさまの光と波の揺れに身をまかせウトウト?(左)

初めての漁船クルーズを楽しむ羽藤さん一家。次男杏くんはおひさまの光と波の揺れに身をまかせウトウト?(左)

 
さまざまな海の生き物に触れ、たくさんの思い出を作った

さまざまな海の生き物に触れ、たくさんの思い出を作った

 
 兄弟3人で同じ体験をさせてあげられたことも喜ぶ緋沙子さん。海が好きだという長男優さん(10)は初めて見る船上からの景色に目を輝かせ、「水しぶきを飛ばしながら走る船が楽しかった。面白かったのは、漁師さんが教えてくれた鬼の伝説の話。また乗りたい」と心を躍らせた。家族で夢のような時間を過ごせたことに感謝する羽藤さん一家。緋沙子さんは「モニターとしての自分たちの経験が、同じ悩みを持つご家族の役に立てば。当事者家族にとってこうした情報が得られるかどうかも大きなポイント。積極的な情報発信にも期待したい」と話した。
 
 レストハウスでは、箱崎町白浜の漁業者がマダラやアイナメ、イカのさばき方を実演。昼食は参加者全員でバーベキューを楽しんだ。
 
地元漁師が魚のさばき方を実演。プロの手際に興味津々

地元漁師が魚のさばき方を実演。プロの手際に興味津々

 
 県が補助金を入れて行う同モニターツアーは各地区で2年間実施。釜石市では今回の参加者のアンケートをもとに修正を加え、来年度も実施する計画。かまいしDMC地域創生事業部の佐藤奏子さん(根浜・箱白地域マネジャー)は「ユニバーサルビーチの取り組みを土台にした新たなチャレンジ。参加者の声をもらいながら、持続可能な形でどう実現できるか検討していきたい」と今後の展開を見据える。

odairachu01

「お互いさま」で助け合うまちに 釜石・大平中3年生 学びの集大成、福祉劇披露

福祉学習の集大成として認知症劇を披露した大平中3年生=2025年10月11日

福祉学習の集大成として認知症劇を披露した大平中3年生=2025年10月11日

 
 釜石市大平町の大平中(高橋信昌校長、生徒75人)の文化祭が11日にあり、3年生18人が認知症をテーマにした劇を披露した。力を入れてきた福祉学習の集大成。高齢化が進む地域の一員として「みんなが笑顔で暮らせるまちを」とメッセージを送り、「小さくてもいい、できることをする。あなたは?」と実現に向けた投げかけもした。
 
 文化祭が開かれた同校の体育館。「福祉について学習した3年間の集大成ともいえる『野菊ばあちゃん物語』を上演します」とアナウンスが流れ、舞台が暗転。約40分の劇が始まった。
 
3年間の学びを盛り込んだ「野菊ばあちゃん物語」を上演

3年間の学びを盛り込んだ「野菊ばあちゃん物語」を上演

 
 同校では7年前から、特別養護老人ホーム「あいぜんの里」(同市平田)を運営する社会福祉法人清風会の協力を得て福祉の学習を続けている。現3年生は総合的な学習の時間を活用し、防災、職業といった分野を学ぶほか、福祉についても1年生の時から座学や交流活動を通じて理解を深めてきた。
 
 最終学年となった今年の学習スタートは、あいぜんの里の訪問活動。ソーランなどを披露し、入居者らと触れ合った。市や同法人などが地域づくりのプラットフォーム(土台)として月1回実施する「平田つながるカフェ」の運営にも挑戦。1年次には“お客さま”として参加したが、地域社会の一員としての積極的な関わり合いを目標に企画段階から加わった。
 
助言を受けつつカフェの準備をする中学生=2025年6月30日

助言を受けつつカフェの準備をする中学生=2025年6月30日

 
3年生が企画運営した世代間交流カフェ=2025年6月30日

3年生が企画運営した世代間交流カフェ=2025年6月30日

 
1年生の時は招待者としてカフェに参加=2024年1月22日

1年生の時は招待者としてカフェに参加=2024年1月22日

 
 高齢の地域住民と未就学児との交流を促す催しは大好評。中学生にとっても「『ありがとうね』と言われたのが印象的。すごくうれしかった」「感動がいっぱいの生活をしてもらいたい」と、学習への意欲を高める機会となった。その後、認知症サポーター養成講座とステップアップ講座を受講。認知症の人とその家族の気持ちを共感的に理解し、どうサポートできるかを考え、話し合ったりした。
 
地域住民との交流を深めた3年間。笑顔は変わらない

地域住民との交流を深めた3年間。笑顔は変わらない

 
認知症サポーターステップアップ講座の様子=2025年8月27日

認知症サポーターステップアップ講座の様子=2025年8月27日

 
講義を受け自分たちにできることを話し合った

講義を受け自分たちにできることを話し合った

 
 3年間の学びのまとめが認知症をテーマにした劇の披露。文化祭のほか、市内の認知症サポーターらの研修会で発表することになり、練習に取り組んできた。
 
 迎えた本番。認知症の症状が出始めた高齢女性の振る舞いに戸惑う家族の様子、医療機関の受診を渋った時や食事した後に「ごはんまだ?」と催促された場合の対応など、4つの場面を中心に劇が展開された。悪い対応事例を演じた後に、時間を巻き戻す演出で、関係にしこりを残さずに済む接し方を紹介した。
 
odairachu01

劇では演出を工夫したりスライドを使って学びを伝えた

 
 声かけする際は「驚かせない」「急がせない」「気持ちを傷つけない」という3つの“ない”が大事だと、せりふを通して発信。認知症の人を地域全体で見守る大切さも訴えた。「みんな違っていい。困った時はお互いさま。できることをして支え合おう」という気持ちが地域に広がることを期待し、幕を下ろした。
 
 主人公「野菊ばあちゃん」役の中嶋真帆さんは「いい劇にできた」と晴れやかな表情で話した。印象深い学びは、認知症になった本人や家族のつらさを知ったこと。少し前まで認知症の家族と暮らした経験も生かし、「大事にしているもの、価値観は人によって違う。だけど、助ける側も助けてほしい側も『お互いさま』を大事にしてほしい。私も対応の仕方を考え、優しく接することができるようにしたい」と気持ちを込め、役を全うした。
 
学びをせりふに込めた「野菊ばあちゃん」役の中嶋真帆さん

学びをせりふに込めた「野菊ばあちゃん」役の中嶋真帆さん

 
 同校の特徴の一つとなっているのが、この福祉学習。劇の構成や演出を担当する森潮子教諭(3学年主任)は高齢化の進行を背景にこれからの時代を考えると、世代や障害の有無を超えた福祉の視点は大事だと指摘する。「知っていると、知らないでは大きな差が出てくる。身近に学習できる環境があれば生かすべきで、つながりを理解してもらえたら」と、生徒たちを見守る。
 
 学びを支えるあいぜんの里の久保修一副施設長や同在宅介護支援センターの高野加奈子所長らも鑑賞し「中学生がここまで熱心に取り組んでくれたのがうれしい」と感心。久保副施設長は「将来、福祉の仕事に就いてほしいとの気持ちはあるが、福祉の視点はどんな仕事にも役に立つ。早いうちからの下積みが脈々と続けば、優しいまちづくりにつながるのではないか」と意義を強調した。
 
 大人たちの思いを生徒たちはしっかりと受け止めている。劇中で町内会長役を演じた生徒会長の三浦孝太郎さんは以前から、高齢者との接し方や世代間の関係などに課題、問題があると感じていて、「中学生のうちから触れ合う知識を身につけられるのはいい」とうなずく。「何事も備えておくことが大事だと思う。何が起きても大丈夫なように学びをしっかり身につけ、対応できるようにしたい」。自身の意識を深めつつ、下級生にも「学習を充実させてほしい」と望んだ。
 
全員が主役。気持ちを一つに合唱を披露した3年生

全員が主役。気持ちを一つに合唱を披露した3年生

 
 3年生による認知症をテーマにした福祉劇は、28日に釜石PIT(同市大町)で開かれる「チームオレンジ交流会」で再上演される。「ベテランの(認知症サポーターの)皆さんに、地域の将来を担っていく私たちが福祉について理解していることを見せられたら」と三浦さん。頼もしさをにじませる。

animalfes01

「おいで」愛犬との絆 強める 釜石で動物ふれあいイベント 命を守るしつけを

簡単なゲームで愛犬との絆を強める参加者

簡単なゲームで愛犬との絆を強める参加者

 
 「動物ふれあいフェスティバル2025 in釜石」(岩手県獣医師会遠野支会、県沿岸広域振興局主催)は10月5日、釜石市平田のホテルシーガリアマリン・ドッグラン「シーガルパーク」で開かれた。動物愛護週間(9月20~26日)行事の一環として実施。簡単なゲームに挑戦する“ワンちゃん運動会”が繰り広げられ、飼い主のもとに元気よく駆け寄る愛犬の姿がみられた。
 
 イベントは、動物の愛護や適正な飼養について理解を深めてもらおうと、同週間に合わせて釜石、大船渡の両地域で交互に隔年で開催している。今回は市内外から犬と飼い主ら33組が参加した。
 
 盛岡ペットワールド専門学校常勤講師の三上祐太さん(39)が、散歩中に他の犬や人との接触を避けさせる方法、おやつを使った移動などのトレーニングについて助言。実践の場となった運動会で、参加者は「だるまさんがころんだ」やパン食いゲームなどに臨み、愛犬と触れ合った。
 
animalfes01

三上祐太さん(左)の助言を聞きながら「お散歩レース」に挑む参加者

 
animalfes01

ゲーム中のお題「アイコンタクト」。絆を深める大切な時間

 
animalfes01

パン食いゲームに挑戦する愛犬を飼い主らがじっと見つめる

 
 大槌町の小学生黒澤力翔さん(10)は愛犬ろろちゃん(トイプードル2歳、雄)と参加。「呼ぶと来てくれて、うれしかった。かわいくて、癒やしてくれるところが大好き。元気でいてほしい」と笑った。愛息と愛犬の触れ合いを見守った母親は「おいでおいでゲーム」で見せた、ろろちゃんの行動に感激。「離れた場所からでも、呼べば駆け寄ってくる。事故や災害が起こりそうな時に命を守るのにつながる」と、収穫を喜んだ。
 
animalfes01

愛犬の頑張り、かわいさに笑顔を見せる参加者たち

 
 運動会で種目ごとに、飼い主の歩く速さやリードの操り方、声がけの仕方などポイントを伝えた三上さん。▽犬の性格を考える▽嫌がることは無理にやらせなくてもよい―などと緩やかな接し方を促した。大切になるキーワードは「おいで」。呼んできちんと来れば、命が助かりやすくなると強調し、「しつけは命を守る、一つの方法。こういう機会で見直したり、重要性を再確認してもらえたら。日常にしつけが入っているように接してほしい」と呼びかけた。
 
animalfes01

飼い主の動きをサポートしながら犬との接し方を伝えた三上さん(左)

 
 イベントでは動物愛護団体の活動紹介、飼い方相談のコーナーも設けられ、犬の健康を心配する飼い主らが熱心に話を聞いた。新しい飼い主を待つ犬や猫の情報をまとめたポスター展示もあった。
 
animalfes01

イベントは犬も人も情報交換ができる場になった

 
 主催した県獣医師会遠野支会の池上健治支会長はイベントを通じ、ペットを家族の一員とする意識が高まっていることを改めて実感。「一緒に活動することで良いところや悪いところを認識する機会になる」と話した。近年、気になるのは災害時のペットの「同行避難」のこと。理解してもらうためにも「ほかの犬との触れ合いの機会を作り出すことが大事だ」とした上で、「家族の命を守るのは大切なこと。最低限のしつけやマナーを楽しみながら学んでもらえたら」と願った。

fukushifes01

多様な人たちで作る住みよいまちの実現へ 32回目の「ふれあい福祉まつり」 約1100人が交流

fukushifes01

大勢の来場者でにぎわった釜石市ふれあい福祉まつり=6日、TETTO

 
 第32回釜石市ふれあい福祉まつりは6日、同市大町の市民ホールTETTOで開かれた。市、釜石広域基幹相談支援センター、市社会福祉協議会が共催。物品販売や作品展示、ダンスや楽器演奏のステージなど多彩な内容で来場者を迎えた。障害の有無や国籍、年齢などに関わらず多様な人たちが集い、互いを理解し、共に生きる地域社会の実現を目指し、続けられる同まつり。今年は参加団体と来場者合わせ、約1100人が交流の輪を広げた。
 
 物品販売には、障害者の生活、就労支援を行う釜石大槌の事業所を中心に11団体が出店した。利用者が作った手芸品や雑貨、パンや菓子などさまざまな商品が並び、来場者が出店者と交流しながら買い物を楽しんだ。能登半島地震の被災地支援として、石川県七尾市の多機能型事業所「みのり園」のポン菓子や菊芋茶を販売するコーナーもあった。
 
地域活動支援センターふるはーと(野田町)はカラフルなリースやクラフトバッグ、コースターなどを販売

地域活動支援センターふるはーと(野田町)はカラフルなリースやクラフトバッグ、コースターなどを販売

 
能登半島地震の復興応援販売コーナー。石川県七尾市の事業所が作る菓子などを販売した

能登半島地震の復興応援販売コーナー。石川県七尾市の事業所が作る菓子などを販売した

 
 同まつりに初めて参加した紫波町の一般社団法人いわてこどもホスピス(工藤美穂代表理事)は、小児がん、心疾患など生命に関わる病気や重度障害のある子どもとその家族を支援する目的で、昨年から活動を開始。医療関係者の協力で外食やイベント参加を可能にするなど、当事者家族の「やってみたい」をかなえる場を提供する。最大の目標は付き添い家族が安心して過ごしたり、病院や自宅ではできないことを体験できる「ファミリーハウス(こどもホスピス)」を建設すること。
 
一般社団法人いわてこどもホスピスの「アップルジューススタンド」。活動を知ってもらい、支援への協力を呼びかけた

一般社団法人いわてこどもホスピスの「アップルジューススタンド」。活動を知ってもらい、支援への協力を呼びかけた

 
 会場では、その取り組み周知と支援の呼びかけ活動として、県内各地で展開する“アップルジュース募金”を実施した。2022年に重度心疾患で当時4歳だった息子を亡くした工藤代表理事(51)は「難しい病気を抱える子どもたちが存分に生きて輝ける時間を作りたい。こどもホスピスは全国でも2カ所しかなく、寄付で成り立っているのが実情。支援の輪を広げながら、当事者家族が一歩外に出て周りとのつながりを得られる場を提供できたら」と願う。
 
 作品展示会では釜石祥雲支援学校(平田町)、市すくすく親子教室(上中島町)など4団体1個人が多彩な作品を公開した。遊び場ブースではパラリンピック種目で注目を集める「ボッチャ」や、スポーツレクリエーションの「ラダーゲッター」を楽しむ姿が見られた。初参加の釜石建設組合は木工作品や風車の製作体験教室を開き、来場者から好評だった。各種福祉活動の紹介では、市内で活動する11団体がパネル展示を行ったほか、困りごとの相談にも応じた。
 
作品展示(上)や福祉関係団体の活動紹介、情報提供コーナー(下)も

作品展示(上)や福祉関係団体の活動紹介、情報提供コーナー(下)も

 
ボッチャを楽しむ子ども(左)。釜石建設組合の木工体験も人気(右)

ボッチャを楽しむ子ども(左)。釜石建設組合の木工体験も人気(右)

 
 TETTO前広場で行われたステージ発表には8団体が出演。かまいしこども園の虎舞、正福寺幼稚園の鼓隊と続き、フラダンスやバンド演奏、手話歌などが披露された。日本赤十字社の献血バスは、まつり初お目見え。呼びかけに応えた人たちが全血献血に協力した。
 
オープニングを飾った「かまいしこども園の虎舞」

オープニングを飾った「かまいしこども園の虎舞」

 
さまざまなジャンルの発表が来場者を楽しませた。会場では手話通訳も(右上)。まつりでの献血活動は初(右下)

さまざまなジャンルの発表が来場者を楽しませた。会場では手話通訳も(右上)。まつりでの献血活動は初(右下)

 
「ブラック★かまリンズ」のバンド演奏も手話を交えて…

「ブラック★かまリンズ」のバンド演奏も手話を交えて…

 
 毎年楽しみに足を運ぶという松原町の女性(65)は昨年、出店者に注文して作ってもらったクラフトバッグを提げて来場。「障害者の方々の素晴らしい作品、頑張っている姿に刺激を受け、自分も何かやらなきゃと元気づけられている」と話す。同まつりの大きな意義を感じ、「障害者が親を亡くした後も自立して生きていくためには周囲の支えが必要。地域の人たちと互いの存在を理解し合い、共に暮らしていける社会を実現するためにも、こういう交流の場をどんどん増やしてほしい」と願った。
 
 まつりと同時開催の2イベントも盛況だった。釜石PITで開かれたのはユニバーサルシネマ。障害児支援を行う認定NPO法人プラス・ワン・ハピネスが、医療機器の音や光、発声、立ち上がりなどを気にせず、誰でも映画を楽しんでもらおうと初めて企画した。沿岸各地から当事者家族など48人が申し込み、人気アニメ作品を観賞した。
 
映画上映の前には「さくらんぼの会」(釜石市)が大型紙芝居を上演=釜石PIT

映画上映の前には「さくらんぼの会」(釜石市)が大型紙芝居を上演=釜石PIT

 
初開催のユニバーサルシネマ。客席は暗くせず、緊急時の対応もしやすく…

初開催のユニバーサルシネマ。客席は暗くせず、緊急時の対応もしやすく…

 
 TETTO前広場では、釜石まちづくり会社が第9回かまいし百円市を開催。市内外から8者が出店し、日用雑貨、古本、古着、手作り小物などを販売した。商品は全て100円とあって、開店と同時に大勢の買い物客でにぎわった。
 
おなじみとなった「かまいし百円市」。福祉まつりと同時開催で集客力アップ

おなじみとなった「かまいし百円市」。福祉まつりと同時開催で集客力アップ

 
 同まつり事務局を務める市社協地域福祉課コミュニティ推進係の小原裕也主任は「多様な団体に参加していただき、ネットワークの広がりが見られる。それに伴い、来場者数も増加傾向にある」と実感。イベントを楽しみながら、「地域はいろいろな人で成り立っていることを理解し、福祉事業者やボランティア団体の活動にも、ぜひ目を向けてもらえたら」と話した。

universal-beach01

根浜を「ユニバーサルビーチ」に 障害児(者)の海水浴サポート 「やりたい」をかなえる一歩 釜石で発進

釜石初開催の「ユニバーサルビーチ」。たくさんの笑顔が弾ける

釜石初開催の「ユニバーサルビーチ」。たくさんの笑顔が弾ける

 
 釜石市鵜住居町の根浜海岸で9日、障害児(者)の海水浴をサポートする初の試みが行われた。同市で障害児の支援活動を行う認定NPO法人Plus One Happiness(プラス・ワン・ハピネス、横沢友樹理事長)が、当事者家族の願いをかなえようと企画。県内から6組の家族が参加し、スタッフの助けを借りながら、海に入る楽しさや喜びを存分に味わった。
 
 国内で先駆的な取り組みを行う兵庫県神戸市のNPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト(木戸俊介理事長)から7人が訪れ、ノウハウを提供。地元の釜石ライフセービングクラブ(菊池健一会長)、医療関係者、ボランティアスタッフらが協力し、サポートにあたった。
 
NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト(神戸市)のメンバー(水色しまTシャツ)らが子どもたちをサポート

NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト(神戸市)のメンバー(水色しまTシャツ)らが子どもたちをサポート

 
浅瀬からゆっくりと足を踏み入れ、波の感触を楽しむ

浅瀬からゆっくりと足を踏み入れ、波の感触を楽しむ

 
 砂浜には、車いすでの移動が可能なビーチアクセスマットが敷かれた。「水陸両用車いす」が用意され、車いすに座ったまま海中に入ることも可能。同車いすは水上での沈み具合が異なる2種類。救難用のライフジャケットを身に付けた利用者は、車いすをはずしてあおむけで水に浮くこともでき、参加家族の意向に合わせて対応した。周辺には参加者専用の更衣室、シャワー、駐車場を設置。ドクターカーも配備した。
 
砂浜に敷かれたビーチアクセスマットは車いすやベビーカーでの移動も楽々

砂浜に敷かれたビーチアクセスマットは車いすやベビーカーでの移動も楽々

 
水陸両用車いす(左)は座ったまま海に入れる。身に付けた救難用ライフジャケットは頭部後方に座布団状の浮き袋があり、車いすをはずして自分で浮くことも可能(右下)

水陸両用車いす(左)は座ったまま海に入れる。身に付けた救難用ライフジャケットは頭部後方に座布団状の浮き袋があり、車いすをはずして自分で浮くことも可能(右下)

 
水陸両用車いすは別の種類も(右)。電動車いすを利用する須磨のスタッフがデモンストレーション

水陸両用車いすは別の種類も(右)。電動車いすを利用する須磨のスタッフがデモンストレーション

 
 滝沢市から参加した小学4年の男児は腸疾患と自閉症があり、これまで海に入ったことがなかった。波打ち際に座って「バシャバシャ」しながら、砂や海水の感触を初めて味わった。「すごくはしゃいでいましたねー」と母の室岡美幸さん(50)。「こういうサポートがないと、親2人だけで海に連れてくるのはやっぱり怖くて…」と今回の取り組みを歓迎。一歩踏み出す勇気を後押ししてくれる新たな動きに共感し、「私たちだけではできなかったことを動かしてくれるきっかけになる。海だけじゃなく、いろいろな活動に波及していけば」と期待を寄せた。
 
 神戸市の同NPO活動は、交通事故で車いす生活になった木戸理事長のオーストラリアでのビーチ体験が基になっている。出身地の神戸で活動を始めたところ、他県からも希望者が殺到。「全国の海でできるように」と出張チームを結成し、各地の団体が自走できるようサポートを続けてきた。岩手県では陸前高田市で実現していて、釜石は2カ所目。秋田大介副理事長(49)は「同じ県内でも実施場所が増えれば互いの連携も図れる。単発のイベントではなく、海水浴場開設期間中の土日ならいつでも受け入れるといった態勢づくりができれば、当事者家族も安心して来られる」と本県でのユニバーサルビーチの広がりを願った。
 
根浜海岸での継続的なユニバーサルビーチの可能性を探る関係者ら(手前)

根浜海岸での継続的なユニバーサルビーチの可能性を探る関係者ら(手前)

 
 今回の企画は、釜石市に暮らす心臓疾患のある女児(4)の母佐々木江利さん(45)の「障害や病気があっても、やりたいことをあきらめたくない」との思いから始まった。佐々木さんは2023年に「バリアフリーでつくる釜石自然遊びの会」を立ち上げ、障害の有無にかかわらず、さまざまな自然体験ができる場を提供。障害児や医療的ケア児への理解を進めることも念頭に活動してきた。最終目標だった根浜海岸での「ユニバーサルビーチ」は、自身もスタッフとして関わるNPOプラス・ワン・ハピネスが構想をまとめ、関係機関、団体の協力を得て実現した。同市ふるさと納税の団体支援制度で寄せられた寄付金が活動費に充てられた。
 
 佐々木さんは「当事者だけでなくサポートするスタッフも楽しそうで、最高の形で開催できた」と大喜び。佐々木さんの子どもが装着する酸素ボンベは普段、両親が背負うなどしているが、この日はスタッフが持ってくれて心理的負担も軽減。わが子の表情をしっかり見る余裕もでき、「笑顔がキラキラ輝いていた。顔色も悪くならなかったので、本当に楽しかったのだろう」。いつもは「自分たちだけで頑張らなきゃ」という気持ちになってしまうが、「今日はちょっと甘えて皆さんにおまかせできた」と感謝した。
 
海水浴を楽しむわが子の姿をうれしそうに見つめる佐々木江利さん(右)

海水浴を楽しむわが子の姿をうれしそうに見つめる佐々木江利さん(右)

 
 2年越しの夢をかなえた佐々木さんだが、障害児や医療的ケア児を取り巻く環境にはまだまだ課題も多い。「当事者家族とサポートする側が互いにリスクを理解しつつ、できるところまでやってみる。須磨さんのように寄り添ってくれる団体があることは大きな希望。釜石でも関係機関、団体が連携しながら当事者のチャレンジを支えられるような仕組みができれば」と将来像を描いた。
 
 主催したNPOプラス・ワン・ハピネスは当事者もいる支援者団体。「君の『やりたい』を『できる』に変える」を活動理念に掲げ、「できない」ではなく「やるためにはどうしたらいいかを考える」組織を目指す。自身も障害児の親である横沢理事長(44)は「一つの『できる』が次の『できる』を呼んで、子どもたちの可能性が広がっていく。今回のユニバーサルビーチも今後につながる大きな一歩」と実感する。9月6日には釜石市ふれあい福祉まつりと同時開催で、釜石PITで「ユニバーサルシネマ」も開催予定。医療機器の音や光、子どもの発声、多動などを気にせず、みんなで映画を楽しもうという催しで、もちろん健常児とその家族の鑑賞もOK。同団体が目指す姿の一つは障害の有無などにかかわらず、多様な人たちが互いを尊重し、共に生きていく“インクルーシブ”社会。横沢理事長は「子どものころから同じ空間で過ごし、いろいろな人がいることを知って育てば、障害に対する世の中のハードルはもっと下がるはず」と交流機会の増加も願う。
 
この日は小野共釜石市長(中)も視察に訪れた。主催NPOの横沢友樹理事長(左)が取り組みについて説明した

この日は小野共釜石市長(中)も視察に訪れた。主催NPOの横沢友樹理事長(左)が取り組みについて説明した

niconico01

“にこ食”においで!多世代交流の子ども食堂 釜石・平田地区 地域結ぶ、笑顔つなぐ

平田にこにこ食堂でカレーライスを頬張る子ども

平田にこにこ食堂でカレーライスを頬張る子ども

 
 釜石市平田地区の子どもと高齢の住民らが集う「にこにこ食堂」が5月24日、上平田ニュータウン集会所で開かれた。同地区で100歳体操に取り組む「平田いきいきサークル」(藤澤静子代表、会員約30人)が主催する「子ども食堂」で、5回目となる今回は約40人が参加。お手玉を使ったゲームで遊んだり、食事を囲んでおしゃべりを楽しんだりと交流を深めた。
 
 子どもは平田小の児童を中心に13人が集まった。この日のメインメニューはカツカレーライスで、子どもには優しさという調味料を加えた「甘口」を用意。骨まで食べられるイワシの甘露煮、ワカメたっぷりのスープ、バナナなどが添えられ、大人も含めた参加者みんなのためバランスの取れたあたたかい食事を提供した。
 
おいしそうに頬張る子ども見つめて大人も笑顔に

おいしそうに頬張る子ども見つめて大人も笑顔に

 
 交流活動では、かごにお手玉を投げ入れる遊びで盛り上がった。はしゃぐ子どもたちの姿を年配者らは目じりを下げて見守り、会場は終始、和やかな雰囲気。塗り絵やジェスチャーゲーム、軽運動、合唱など多彩なプログラムを一緒に体験しながら楽しんだ。
 
子どもから高齢者まで一緒に玉入れを楽しむ

子どもから高齢者まで一緒に玉入れを楽しむ

 
塗り絵やお絵描きを楽しんだりゲームで交流したり

塗り絵やお絵描きを楽しんだりゲームで交流したり

 
幅広い年代が入り混じったジェスチャーゲーム

幅広い年代が入り混じったジェスチャーゲーム

 
 カレーライスをおいしそうに頬張る女子児童(2年)は「からいのが好き」と食を進めた。同じテーブルを囲む“おばあちゃん”に積極的に話しかけ、「いろんなことを話しながら食べるの、楽しい」とにっこり。タオルを使った玉入れが印象に残った様子で、普段とは違った遊びを知る機会になったと喜んだ。
 
 「素直に話してくれるからいい」「小さい子と一緒に食事するのがうれしい」と高齢の参加者たちは目を細めた。平田地区の老人クラブ「ニュー悠々会」の佐藤清会長(81)は「子どもたちから元気をもらえる。生き生きするね」と明るい笑顔。登下校時の児童の見守りや地域の安全活動に取り組む菊池重人さんは(83)は「地域に子どもは少なくなった。こうした交流で顔を合わせ、コミュニティーづくりを盛り上げていければいい」と期待した。
 
たくさんの笑顔が集った平田にこにこ食堂

たくさんの笑顔が集った平田にこにこ食堂

 
 釜石市内で子ども食堂の取り組みは2023年夏に始まった。2番目にスタートしたのが平田地区で、初回は24年3月に開設。全国的にも広がる子ども食堂は経済的な課題を抱える家庭の子ども支援という目的で設置されることも多いが、釜石では子どもの居場所づくりや地域住民同士の交流の場の提供などを目的に開設されている。
 
 平田地区の特徴は、地域住民でつくる団体の活動の一環という点。実施主体の同サークルでは週1回の体操のほか、月1回のサロン(食事会)活動を行っていて、サロン活動の数回を子ども食堂として世代間交流を楽しむ。サークルの役員らが中心になり、運営、食事を用意。食材や飲料水、帰りのおみやげなど市内の事業所から協力も得る。
 
地域住民が協力し運営。手作りのあたたかさを散りばめる

地域住民が協力し運営。手作りのあたたかさを散りばめる

 
高学年の児童が運営をサポートし交流活動を盛り上げる

高学年の児童が運営をサポートし交流活動を盛り上げる

 
 サークル代表の藤澤さん(83)は「最近は道で会うと、子どもたちから『にこ食のおばちゃん』と声を掛けられたり。互いの見守りにもなっているのかな」と手応えを感じている。一方で、子どもの参加は伸び悩み、大人は“リピーター”と同じ顔触れが多く、参加者の開拓が課題。今回は高学年の児童に交流活動のサポートをお願いし、より積極的な関わり合い方を試してみた。「支え合える居場所をつくっていくため」と、運営方法は現在進行形。次回は9月の開設を予定する。
 
子どもと年配者が食を囲む様子を見つめる藤澤静子さん

子どもと年配者が食を囲む様子を見つめる藤澤静子さん

 
子どもも大人も地域住民が集う「にこ食」はこれからも

子どもも大人も地域住民が集う「にこ食」はこれからも

 
 藤澤さんは回数を増やしたい考えだが、サークル役員の意見はそれぞれ。「ケンカしつつ、みんなで話し合えば、結果的にいい方にいく。それが今の形」と声がそろう。取り組みに協力する市の出先機関、平田地区生活応援センターの樋岡悦子所長は「運営メンバーは若い頃から何かを一緒に取り組んできた年代。無理のないよう、自分たちにできるペースで続けられる活動にしてほしい」と見守っている。

100sai01

「ありがとう」と笑顔で100歳 盛トセさん 長寿を囲み 釜石の特養ホームで祝う会

桃色のちゃんちゃんこと帽子を身に着けた100歳の盛トセさん(左)、長男の久男さん

桃色のちゃんちゃんこと帽子を身に着けた100歳の盛トセさん(左)、長男の久男さん

 
 釜石市甲子町の特別養護老人ホーム仙人の里(千葉敬施設長、長期利用66人、短期利用14人)で暮らす盛トセさんが15日、満100歳を迎えた。誕生日に合わせ、同施設では「百歳を祝う会」を開催。施設に入居する仲間や職員らから「すごいね」との感嘆の声と拍手を受けた盛さんは手を合わせて「ありがとう」と思いを返した。
 
 祝う会には、盛さんの長男久男さん(75)が滝沢市から駆け付けた。市保健福祉部の鈴木伸二部長も出席し、盛さんに特別敬老祝い金や羽毛肌掛け布団などを贈った。同施設を運営する社会福祉法人陽風会の清野信雄理事長は「これからも健康で楽しく毎日を過ごして」と花を手渡した。
 
「いつまでもお元気で」。誕生祝いの花を受け取る盛さん(中)

「いつまでもお元気で」。誕生祝いの花を受け取る盛さん(中)

 
盛さんの100歳を祝う家族、施設や市の関係者ら

盛さんの100歳を祝う家族、施設や市の関係者ら

 
 盛さんの生い立ちや生き方について、清野理事長が紹介した。1925(大正14)年4月15日、遠野市上郷町生まれ。子どもの頃は、子守奉公に出て働き手となったため、小学校にはほとんど通えなかったという。時を経て、20代前半に釜石鉱山で働いていた才太郎さん(故人)と結婚。ヤクルトの販売や学研の教材の配達などをしながら、2男を育てた。
 
 甲子町内の自宅前の畑で野菜を育て近所の人に配ったり、漬物にしてお茶飲みに誘ったりもしたそう。性格は穏やかで、人の悪口は言わない。思いやりがあり、近所づきあいを大切に生活。認知症になった知り合いの様子を毎日のように見にいっていたことなど、人柄が分かるエピソードを披露した。
 
 同施設の利用は2002年から。始まりはデイサービス、21年から短期滞在も利用し、25年2月から長期入居となった。最近は車いすでの移動がほとんど。耳も遠くなったが、近くで大きめの声でゆっくり話せば、笑顔を返す。施設職員や入居する仲間とお茶飲みしながら雑談するのが日課だという。
 
 長い付き合いとなったデイサービスの担当職員らもプレゼントを用意。思い出を切り取った数枚の写真が貼り付けられたメッセージカードには「明るい笑顔のかわいらしい盛さんにたくさんの幸せが訪れますように」と願いがつづられた。
 
デイサービス担当の職員からの贈り物に感謝する盛さん

デイサービス担当の職員からの贈り物に感謝する盛さん

 
施設職員と記念にパチリ。盛さんはにこやかに笑う

施設職員と記念にパチリ。盛さんはにこやかに笑う

 
 祝福されるたびに手を合わせて、頭を下げる盛さん。そばに寄り添った久男さんは「こんな素晴らしいお祝いをしてもらい、ありがたい」と感謝する。「働き者」の母に、子どもの頃はよく怒られていたというが、施設では心穏やかに過ごしていると実感。「何十年もお世話になり、かわいがってもらっている。元気になって、(母も)満足しているだろう」と肩の力を抜いた。
 
ちゃんちゃんこへの変身をサポートしてくれた職員に「ありがとう」

ちゃんちゃんこへの変身をサポートしてくれた職員に「ありがとう」

 
穏やかに笑う盛さん(左)を久男さんが見守る

穏やかに笑う盛さん(左)を久男さんが見守る

 
 同施設には100歳以上が3人おり、盛さんは4人目。「長寿の先輩にあやかって、みんなで長生きしましょう」。昼食には赤飯が用意され、入居者で味わった。
 
 釜石市の高齢化率(65歳以上)は3月末現在で40.9%。100歳以上は盛さんを含め32人(男性2人、女性30人)いる。最高齢は105歳の女性(市外施設に入所中)。

teamkurihashi01

地域まるごとサポーター!認知症見守りへ 釜石・栗橋地区住民有志 チーム結成

認知症の人や家族を支える「チームオレンジ くりはし」のメンバー

認知症の人や家族を支える「チームオレンジ くりはし」のメンバー

 
 釜石市の栗橋地区(栗林町、橋野町)の住民有志は12日、認知症の人やその家族を支える活動に取り組む「チームオレンジ くりはし」を結成した。もともと地域の団結力が強く、根づく住民同士の見守り、支え合いの風土を生かす。各種講座を受けて理解を深めたメンバーが、それぞれ自主的に取り組んできた活動をさらに前進。認知症に関わらず、「共生」の地域づくりを目指す。
 
 同地区には、486世帯986人(2月末現在)が暮らす。昨年秋頃にチームづくりの機運が高まり、認知症サポーター養成講座とステップアップ講座を順次開催。延べ167人が修了している。
 
 結成式は栗林町の砂子畑さんあいセンターで開催。10~90代の約60人が参加し、認知症支援のシンボルカラーであるオレンジ色のリングを受け取った。栗林、橋野それぞれにリーダーは置くが、メンバー各自が「地域まるごと認知症サポーター」として隣近所での見守り合いを継続。栗橋地区生活応援センターや市社会福祉協議会と連携し、認知症カフェの開催なども予定する。
 
各地区のリーダーからオレンジリングを受け取るメンバー

各地区のリーダーからオレンジリングを受け取るメンバー

 
 栗林地区リーダーの小笠原サキ子さん(74)は、親の介護のため7年前に古里に戻った。その頃から地域にチームオレンジをつくる目標を持っていたといい、「結成は結果で、これまでのプロセスや住民の気持ちの動きが大事」と深く感じ入った様子。若い世代の参加もうれしい動きで、「世代が違っても気持ちがつながっていればいい。その輪を広げていきたい」と思いを深めた。
 
 橋野地区リーダーの菊池信子さん(73)は「表情が気になる人がいたら声をかけている。経験者の話も聞きながら活動していきたい」と話した。百歳体操、グラウンドゴルフ、お茶っこ会などの集まりは継続。停滞しているという老人会の活動を見直したり、季節の植物を地域で楽しむ機会を増やしたい考えだ。
 
「地域みんなが顔見知り」。普段のつながりを活動に生かす

「地域みんなが顔見知り」。普段のつながりを活動に生かす

 
 市内では鵜住居、小佐野、唐丹地区に続き4番目の結成となった。栗橋地区生活応援センターの二本松由美子所長は「支え合い文化が根づいた地域で、ゼロからのスタートでない。これまでの支え合いの延長線として考えてもらえたら」と、緩やかな視点での活動を期待した。

plusonehappiness01

障害児のプール着替えの助けに NPOプラスワンハピネス釜石市に寄付 ふるさと納税活用 

釜石市に寄付金を贈呈した認定NPO法人プラスワンハピネスの高橋大輝副理事長(右)

釜石市に寄付金を贈呈した認定NPO法人プラスワンハピネスの高橋大輝副理事長(右)

 
 障害児支援活動を行う釜石市の認定NPO法人Plus One Happiness(プラスワンハピネス、横沢友樹理事長)は2月27日、市営プール多目的トイレへのフィッティングボード(収納式着替え台)設置などに使ってもらおうと、市に20万円を寄付した。ふるさと納税の団体支援制度を活用したもので、同NPOの同市への寄付は初めて。高橋大輝副理事長が市役所を訪ね、小野共市長に寄付金を手渡した。
 
 同NPOは2022年2月に設立。24年12月、税制上のさまざまな優遇措置がある“認定NPO”になった。誕生のきっかけは「生まれた場所、住んでいる場所によって、受けられる支援が違うのはおかしい」という障害児の親からの声。支援の地域差を埋められるようにと、同市出身の医療、福祉従事者らが立ちあげた。ダウン症児の家族交流会、同赤ちゃん体操教室の開催のほか、定内町に開設した釜石広域基幹相談支援センター(高橋大輝センター長)での障害児放課後預かり、月1回(休日)のおもちゃ図書館(遊び場)開放などを行っている。
 
釜石市と大槌町から委託を受け、昨年4月に開設した釜石広域基幹相談支援センターのセンター長も務める高橋さん。障害児(者)支援の取り組みについて話した 

釜石市と大槌町から委託を受け、昨年4月に開設した釜石広域基幹相談支援センターのセンター長も務める高橋さん。障害児(者)支援の取り組みについて話した

 
 「君の『やりたい』を『できる』に変えるプロジェクト」として昨夏には、海に入ることが困難な障害児に海水浴を楽しんでもらうイベント「ユニバーサルビーチ」を企画(台風のため中止、25年度開催予定)。今回はプロジェクト第2弾として、着替えに介助が必要な障害児のために、市営プール内に男女共用着替えスペースを確保する資金を寄付した。
 
 高橋副理事長は「ふるさと納税でたくさんの寄付をいただいている。今後も障害児(者) が市内で暮らしやすい環境に寄与していければ」と決意。小野市長は「障害を持つ人たちにやさしいまちは誰にとってもやさしい。(同NPOへの)市民、県民の期待の大きさを感じる。今後とも市政推進にご協力を」と願った。
 
小野市長らと子どもの遊び場についても意見交換した

小野市長らと子どもの遊び場についても意見交換した

 
 同NPOは障害の有無に関わらず、地域の子どもたちが通年利用できる屋内型遊び場の整備も検討中。懇談では市との連携も話題に上った。「理想はインクルーシブ。地域にはいろいろな子どもがいる。『みんな違って、みんないい』というところを感じてもらえる場所にできれば」と高橋副理事長。今後も「当事者の声、ニーズを一つ一つ丁寧に拾っていける法人でありたい」と話した。
 
 同市のふるさと納税の団体支援制度は2020年度から開始。現在8団体が支援対象となっている。

100year01

釜石・唐丹出身 河東慶子さん満100歳に 「これからもみんなと仲良く」 入居中のあいぜんの里でお祝い

小野共市長から100歳の祝い状を贈られた河東慶子さん(右)

小野共市長から100歳の祝い状を贈られた河東慶子さん(右)

 
 釜石市平田の特別養護老人ホームあいぜんの里(菊池公男施設長/長期利用70人、短期同20人)で暮らす河東慶子さんが1月31日、満100歳を迎えた。今月4日、同施設でお祝いの会が開かれ、駆け付けた家族や親族らとともに多くの祝福を受けた。この日は小野共市長が訪れ、市からの祝い金や記念品を贈呈。思わぬ“晴れ”の場に照れた様子の河東さんは「皆さんのおかげで…」と周囲への感謝の気持ちを表した。同施設の100歳以上の利用者は河東さんを含め4人となった(最高齢102歳)。
 
 祝う会には利用者、職員らが集まった。施設を運営する社会福祉法人清風会の小泉嘉明理事長は「河東さんは礼儀正しく、いつも丁寧なお辞儀をして恐縮される方。これからも元気で、みんなの中心となって明るく生きてほしい」とあいさつ。小野市長は「健康に留意し、ますます長寿を重ね、心豊かな人生を」と願い、市からの特別敬老祝い金(5万円)と記念の額入り祝い状、羽毛肌掛け布団を河東さんに手渡した。施設からも花や職員手作りの祝い品が贈られた。
 
市からは特別敬老祝い金と羽毛肌掛け布団、施設からは花のプレゼントも

市からは特別敬老祝い金と羽毛肌掛け布団、施設からは花のプレゼントも

 
 河東さんは1925(大正14)年1月31日、同市唐丹町花露辺に生まれた。4人きょうだいの長女で弟が3人。漁協組合長の父の体を気遣い、母の家事を手伝いながら弟たちの面倒を見た。23歳で、同町片岸の天照御祖神社の宮司を務める河東家の長男栄光さんと結婚。栄光さんは11人きょうだいの3番目。結婚当初は大家族で、神社の仕事を手伝いながら家事全般をこなした。男3人の子宝に恵まれ、子育てもしながら忙しい毎日を送った。
 
 長男で現宮司の直江さん(75)は「神社では年中行事が次々にあり、母はその準備で大忙しだった。そんな母をねぎらい、父はいつも正月明けに旅行に連れて行ってくれた。母はとても喜び、感謝していたようだ」と話す。
 
 河東さんは昭和三陸大津波(1933年)、東日本大震災(2011年)と2度の津波も経験した。13年前の震災時は高台の神社兼自宅で療養していた。周辺の小学校や児童館、住宅は黒い波にのまれ、引き波で海底が見えるほどの大津波。ベッドから飛び起き、眼下の惨状に心を痛めていたという。神社には約100人の地域住民らが避難。1カ月余りにわたって避難生活を送った。
 
たくさんのお祝いを受け、記念の一枚!

たくさんのお祝いを受け、記念の一枚!

 
 市内外の2施設を経て、2014年4月にあいぜんの里に入った。担当介護士の板澤広好さん(33)は「施設で使うおしぼりの畳み方とか、職員の仕事をいつも手伝ってくれる。家事的なことをしたいようで、『畳みものをしないと午後寝られない』と話す」と笑う。食欲もあり、甘いものが好き。テレビは「水戸黄門と大相撲」がお気に入りで、他の利用者との会話も多いという。「具合が悪い利用者さんを気遣ったり、職員の心配をしたり、とても気配りをされる方」と板澤さん。河東さんは施設行事のドライブを楽しみにしているといい、「家(神社)のことを一番気にかけているので、近くにも連れて行ってあげたい」と話した。
 
 祝う会では終始うつむき加減だった河東さん。終了後、話しかけると「緊張したぁー」と、やっと表情を緩ませた。「おかげさまで(ここまで生きられた)。ありがとうございます。これからも皆さんと仲良く暮らしたい」。はきはきと話す河東さんに職員らも安心した様子で笑顔を重ねた。
 
施設職員に囲まれ、顔をほころばせる河東さん。緊張が解け、和らいだ表情に…

施設職員に囲まれ、顔をほころばせる河東さん。緊張が解け、和らいだ表情に…

 
 会には長男直江さんのほか、夫栄光さん(故人)の末弟河東眞澄さん(84)と妻智子さん(81)が駆け付けた。母が100歳を迎えられたことに「思ってもいなかったこと。しかもこんなに元気でね。これからも穏やかに暮らしてくれれば」と直江さん。義姉について眞澄さんは「こんなにしっかりした100歳も珍しいのでは。一時、命の危険もあったが、そのこともちゃんと理解し、医師の言うことを守ってきた。さすが苦労してきただけある」と感心。親族で100歳まで生きたのは初めてで、「あやかりたいものだね」とほほ笑んだ。
 
 3人は「本当に施設のおかげ。医療体制などバックアップも整っていて、職員がちゃんと面倒を見てくれている」と感謝。この日の会も「まさかこんなに本格的とは」と驚き、「本人は華やかな式的ものは辞退したがるので、今日はびっくりしたのかな。いつもより言葉少なめ」と顔を見合わせた。
 
会に出席した長男直江さん(後)と義弟眞澄さん(右)、智子さん(左)夫妻から、お祝いの言葉をかけられ、ちょっぴり照れ気味の河東慶子さん

会に出席した長男直江さん(後)と義弟眞澄さん(右)、智子さん(左)夫妻から、お祝いの言葉をかけられ、ちょっぴり照れ気味の河東慶子さん

 
 釜石市の100歳以上の方は河東さんを含め29人(男2、女27)となった。最高齢は105歳の女性。(2月4日現在)

award01

障害を乗り越え社会とつながる 釜石市の小笠原さん、厚労大臣表彰 市長に報告

厚生労働大臣表彰を受けた小笠原拓生さん

厚生労働大臣表彰を受けた小笠原拓生さん

 
 身体などのハンディキャップを克服し社会活動を継続・活躍している人や、障害者の自立支援に貢献してきた人らを対象に国から贈られる「障害者自立更生等厚生労働大臣表彰」。2024年度の第74回表彰では、自立更生者として釜石市の小笠原拓生さん(57)が選ばれた。9日に小野共市長を訪ね、受賞を報告した。目に障害を抱えながらも経営者として力を発揮し、ボランティアや音楽活動などにも取り組む小笠原さん。「私でいいのかと思ったが、一生に一度…。周囲の支えあっての活動が認められたものだから、励みにしたい」と穏やかな笑みを浮かべた。
 
小野共市長(左から2人目)に受賞を報告した小笠原さん(同3人目)

小野共市長(左から2人目)に受賞を報告した小笠原さん(同3人目)

 
 今回の表彰では、全国から自立更生者12人、更生援護功労者32人、身体障害者等社会参加促進功労者1人が選ばれた。小笠原さんは、自らの障害を克服し自立更生をして他の障害者の模範と認められ選出。このほか、岩手県内から更生援護功労者として1人が選ばれた。東京會舘(東京都千代田区)で昨年12月12日に表彰式が開かれた。
 
 小笠原さんは、東京で働いていた20代前半の頃に難病のベーチェット病を患い、弱視の期間を経て20代後半に視力を失った。その後、30歳で古里・釜石にUターン、家業のビルメンテナンス会社「協立管理工業」で新たな生活を始めた。2011年の東日本大震災では只越町にあった社屋が被災し、会長や社長を務めていた親族らを亡くした。建物の清掃管理業務、公共施設の運営管理(指定管理者)などを担う中で、自らが代表取締役に就任し、事業を継続させた。施設の維持に努めると同時に、パートを含めた社員約100人の生活も保持。現在は野田町に拠点を移し、事業を続ける。
 
 本業の傍ら、“当事者目線”の社会活動にも力を注ぐ。2000年に点訳グループ「楽点舎(らくてんしゃ)」を立ち上げ、市広報の点字版作成に協力。視覚障害者に役立つ情報を届けている。釜石視覚障害者福祉協会の事務局も担い、障害がある人の社会参加活動を後押し。さらに、地元の音楽仲間とアコースティックバンド「ブラック★かまリンズ」を結成し、メインボーカル兼ベース担当として活動。イベント出演を通じて地域を盛り上げている。
 
福祉イベントで「楽点舎」の活動を紹介する小笠原さん(中)=2023年9月に撮影

福祉イベントで「楽点舎」の活動を紹介する小笠原さん(中)=2023年9月に撮影

 
ブラック★かまリンズのステージ(バンドのFacebookより)

ブラック★かまリンズのステージ(バンドのFacebookより)

 
 市役所を訪れた小笠原さんは「意図せず障害者となったが、克服しようと前を向いて進むことは、震災で被災したまちを復興させていく気持ちと通じるものがある」と振り返る。「自分にできることを増やすことが力になる」と強調。社会とつながり、人脈を築く中、「関わってくれた人たちの気持ちが一番の力になっている」と感謝の意を示した。
 
 この日は、ボランティアや音楽活動の仲間でもある市職員、岩鼻千代美さんのサポートを受けて市役所を訪問。小笠原さんは「手や肩を借りると、その人のあたたかい気持ちが伝わってくる。その気持ちが自分の中で種火のように残り、燃えているように感じる。そこから力を得て、できることを増やしてきた」と笑顔を見せた。
 
小野市長ら市関係者に表彰状や式の写真を披露した

小野市長ら市関係者に表彰状や式の写真を披露した

 
小笠原さん(手前)の人柄を伝えた岩鼻千代美さん

小笠原さん(手前)の人柄を伝えた岩鼻千代美さん

 
 表彰式の後、皇居にて天皇、皇后両陛下に拝謁した小笠原さん。「私にはないと思っていた表彰だが、こんな機会は一生に一回しかないと思う」と感激を語った。緊張の中でも、「両陛下がかがんで目線を合わせられ、親近感のある話し方で柔らかく笑っている印象を受けた」と思い起こし、目尻を下げた。
 
 受賞を「励みにしよう」と話す小笠原さん。「これからもできることを増やしていく」とポジティブな姿勢は変わらない。「なんでも楽しそう」という岩鼻さんの言葉にうなずきながら、「社会との関わりを広くしていきたい」と晴れやかに笑った。
 
 小野市長は「ぜひこれからも、いろんな分野でご活躍いただけたら」と期待を込めた。