共に生きる社会へ 福祉新拠点「かまいしガーデン」開所 障害者の就労と生活、一体支援


2024/04/22
釜石新聞NewS #福祉

釜石市上中島町に完成した福祉複合施設「かまいしガーデン」

釜石市上中島町に完成した福祉複合施設「かまいしガーデン」

 
 釜石市の社会福祉法人「翔友」(長谷川忠久理事長)が、上中島町に建設を進めていた福祉複合施設「かまいしガーデン」が完成し、17日に開所式があった。障害者が働きながら技能を身に付ける就労継続支援B型事業所と、介護を必要とする人が日中に過ごせる通所型の生活介護事業所を一体的に整備。新施設での事業はすでに始まっていて、長谷川理事長は「障害者を理解してもらう行動を続けるための基地。共生社会の実現へ地域の皆さんと共に努力していきたい」と力を込める。
 
 こうした複合施設を整備した背景には、災害への備えという点で課題があった。同法人関係団体のNPO法人市身体障害者協議会(長谷川理事長)が運営する千鳥町の市福祉作業所が日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の津波想定で浸水エリアに入り、土砂災害への警戒区域であることも判明。甲子川沿いにあり、5~10メートル未満の浸水が想定されるが、障害のある利用者らの避難誘導は緊急避難場所までの距離や周辺の道路事情などで困難な点が多く、安全確保の観点から機能移転などの対応が必要になった。
 
甲子川(手前)沿いに位置する千鳥町の福祉作業所。災害時の早期避難に課題があった

甲子川(手前)沿いに位置する千鳥町の福祉作業所。災害時の早期避難に課題があった

 
 加えて、高齢化で生活介護のニーズは増すが、感染症の影響もあって日中に自由な活動をして過ごせる場所が少ないことも問題として顕著化。障害者の雇用と介護を必要とする人の生活の安定を図るため、複合施設の構想を練った。岩手県の社会福祉施設等施設整備費補助金の活用を考え、申請。交付決定を受け、昨年5月に着工。約9カ月の工期を経て建物が完成した。
 
 新施設は、市身体障害者福祉センターに隣接する敷地面積2637平方メートルの市有地に整備した。鉄骨造り平屋建てで、面積は671平方メートル。建設費は約2億5500万円。4月に入ってすぐに供用を開始した。
 
新施設は市身体障害者福祉センター(右側の建物)に隣接する

新施設は市身体障害者福祉センター(右側の建物)に隣接する

 
 就労支援事業所は「市福祉作業所2nd(セカンド)」との名称で開設。作業室や相談室、食堂などを設けた。市内企業から部品組み立てや袋詰め、食品の表示ラベル貼りなどの作業を受託し、利用者個々の能力や知識の向上に必要な訓練を行う。新設を機に翔友へ事業承継し、千鳥町の施設は従たる事業所として運営する。定員は2施設合わせ40人で、現在は知的・身体・精神の障害者計38人が利用。新施設では足が不自由な人を中心に22人(定員25人)が移って作業に従事している。
 
真新しい施設で作業に励む利用者たち

真新しい施設で作業に励む利用者たち

 
 生活介護事業所の名称は「かまいしケア・ステーション」。リフト付きの入浴施設、多目的ホールなどを備えた。介護が必要な障害者や高齢者らの入浴や食事といった日常生活を支援するほか、創作やレクリエーションなど自由な活動をして過ごせる場を提供。屋外にはイベント広場も整備した。1日当たりの利用定員は20人。現在11人が利用申請している。
 
開所式であいさつする長谷川忠久理事長

開所式であいさつする長谷川忠久理事長

 
 開所式には関係者ら約40人が出席。長谷川理事長は「共生社会をつくるために大事なのは相手を理解すること。その礎となる施設が完成し、感慨ひとしおだ。障害の有無ということではなく、誰もが一人の人間として生きていくことのできる社会の実現を目指す」とあいさつした。建設工事を担った山長建設(大只越町)の山﨑寛代表取締役に感謝状を贈呈。祝辞に立った小野共市長は「不足するサービスを補い、融合した施設。新たな活力を生み出す拠点に」と期待した。
 
 長谷川理事長、小野市長ら6人がテープカットし、新施設の完成を祝った。福祉作業所の利用者を代表して紅白のテープにはさみを入れた40代の女性は「以前より遠くなって通うのに時間はかかるが、安全が確保された場所で安心。きれいな施設で、仕事を頑張りたい」と気持ちを新たにした。
 
新施設の完成を祝ってテープカットする関係者

新施設の完成を祝ってテープカットする関係者

 
入り口は事業ごとに分かれる。作業の様子や入浴施設が公開された

入り口は事業ごとに分かれる。作業の様子や入浴施設が公開された

 
 新設の2つの事業所に配属されたスタッフは計12人で、職業指導や生活支援にあたる。隣接する福祉センターは市から譲渡され、翔友の運営に移行。総合的に事業を展開し、障害者福祉を進展させていく。

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