タグ別アーカイブ: 福祉

100age1

自然体で満100歳 釜石の高橋廣志さん 高齢者施設に夫婦で入居「一緒に長生きしよ」

桃色のちゃんちゃんこと帽子を身に着けた100歳の高橋廣志さん(左)と妻の嘉子さん

桃色のちゃんちゃんこと帽子を身に着けた100歳の高橋廣志さん(左)と妻の嘉子さん

  
 釜石市甲子町(中小川)の住宅型有料老人ホーム「カサ・デ・ファミリア」で生活する高橋廣志さんが26日、満100歳となった。ともに入居する妻嘉子さん(96)や、県内外で暮らす家族が駆け付けて長寿を祝福。バースデーケーキをパクパクと食し、シャンパンもグイグイ飲み干す廣志さんは「自然と100歳になっちゃった」と、すこぶる元気だ。
  
 廣志さんは1923(大正12)年、鈴子町に生まれた。18歳ごろから定年退職まで約40年製鉄所で働いた。看護師だった嘉子さんと結婚し、1男2女を育て、孫3人、ひ孫1人に恵まれた。多趣味で、特に登山やスキー、釣り、ソフトボールなど体を動かすことが大好き。小佐野町に居を構えると、町内会活動にも積極的に参加した。
  
 体調を崩した嘉子さんの入院を機に、昨年10月から2人一緒に同ホームで暮らす。「かかりつけ医なし」という廣志さんは耳が遠くなってきているが、つえなどの補助なしで歩行ができるほど健康。「好きで一緒になったから大事にしなきゃ。妻を残していけない、長生きしないと」と、週2回通うデイサービスでは筋トレをしたり、今なおアクティブに過ごす。
  
鈴木部長から祝い金などを受け取った廣志さん(中)

鈴木部長から祝い金などを受け取った廣志さん(中)

  
 廣志さんの誕生日に合わせ、釜石市は特別敬老祝い金5万円と記念品の羽毛肌掛け布団、野田武則市長が筆をとった「寿」の額入り祝い状を贈った。届けた市保健福祉部の鈴木伸二部長が「戦争や災害など激動の時代を生き抜いてきた。ご夫婦で長生きしてください」と声をかけると、「わざわざすいません。まさか、こんな風に祝ってもらえるとは夢みたい。何も考えていなかったけど、自然と(100歳まで)いっちゃう感じ。動きは重くなってきたが、これからも体を動かしていきたい」などと応じた。
  
 そんなやりとりを長女小野節子さん(74)=愛知県大府市、次女佐々木惠子さん(70)と夫幸弘さん(68)=盛岡市=が見守った。「穏やかで、責任感があり、家族思いの父。とにかくファミリーが大事で、旅行の思い出もたくさん。あたたかい笑顔は変わらない」と小野さん。自宅のような環境でゆったり過ごす日々が続くことを願っていた。長男一行さん(66)も翌日、愛知・豊橋市から祝いに駆け付けた。
  
「おめでとう」。廣志さん(左から2人目)の長寿を喜ぶ家族ら

「おめでとう」。廣志さん(左から2人目)の長寿を喜ぶ家族ら

  
 釜石市の高齢化率(65歳以上)は5月末現在で40.3%。100歳以上は廣志さんを含め28人(男性1人、女性27人)おり、最高齢は105歳の女性。

「第1回 かまいし五百円市」「第4回 かまいし百円市」の出店者を募集します

「第1回 かまいし五百円市」「第4回 かまいし百円市」の出店者を募集します

 

釜石まちづくり(株)では、「2023年7月29日(土)「第1回かまいし五百円市」 (以下、五百円市)」、「2023年9月2日(土)「第4回かまいし百円市」 (以下、百円市)」を開催します。販売商品を全て500円(五百円市)、100円(百円市)とするフリーマーケットやバザーのような形態で、“500円均一フリマ”、“100円均一フリマ”と言ったイメージです。

 

例えばこのような商品の出品を想定しています・・・
リユース可能な子供用品、持て余してしまったお歳暮や引き出物の中身、まだまだ使えるおもちゃ、ダブったガチャガチャ、ちょっとしたコレクションアイテム、端数が残ってしまったパック商品、かつての趣味の名残、ハンドメイド商品、お菓子などの食品・・・・などなど、価格を500円・100円として頂ければ、一部の取扱い禁止商品以外は何でもOKです。

 

均一価格のため販売益は限定されるかもしれませんが、五百円市・百円市ともに以下のような点に意義を見出して下さる皆様のご出店を募集いたします。
・リユースの促進による社会活動的意義
・みんなで出店する楽しさ
・街の賑わいの場づくり
・ハンドメイド作品などの販売機会
など

 

各種サークル活動などのグループをはじめ、社会福祉法人やNPO等の社会活動団体、町内会やクラブ・少年団活動等の地域活動の一環として、学校や幼稚園・PTAや保護者会の催しとしてなど、皆様のご出店をお待ちしています(個人での出店も可能です)。ハンドメイド作家さんのご出店も歓迎いたします!

 

開催概要

日時:
【五百円市】 2023年7月29日(土)10:00~14:00
【百円市】 2023年9月2日(土)10:00~14:00
場所:釜石市民ホールTETTO・ホール前広場 (両日とも)
主催:釜石まちづくり(株)
 
◇9/2(土)の百円市では、同会場・同時間帯にて「第30回釜石市ふれあい福祉まつり」も開催されます。詳細については「縁とらんす」イベントページ等での情報更新をお待ちください。

 

出店の基本情報

◎全ての商品を以下の価格で販売すること
【五百円市】500円(税込)
【百円市】100円(税込)
◎下記の品数をご用意頂けること(多い分には大歓迎!)
【五百円市】30個以上
【百円市】50個以上
◎「出店について」の要件を遵守頂けること
・参加可能枠を超えるご応募があった際は抽選とさせて頂きます
・チャリティ活動(売上は○○へ寄付、○○を支援、教育や社会福祉活動資金に充当)が伴う場合は、条件により別枠での出店が可能ですのでご相談下さい

 

出店について

◆物品の販売以外のサービスを商品として提供することはできません
(マッサージ、ヘアカット、診断、占いなど ※縁日等に類するものや主催者が要請したものは除く)
◆出店料は以下となります
【五百円市】2,000円
【百円市】 500円
◆出店スペースの広さは、幅2~2.5m×奥行1.5~2mを目安に調整させて頂きます
また、販売台、シート、釣銭等は各自でご準備下さい(主催者による両替には限りがあります)
◆会場は屋外となりますので、各自で出店時の気候対策等をお願いします
◆出店者には、釜石大町駐車場の24時間駐車券(通常800円)を500円にて斡旋いたします(団体の場合は駐車台数分の購入OK)
◆ペット等を同伴しての出店は禁止です(介助犬等を除く)
◆火器の使用や発電機の持込みは禁止です

 

取扱い禁止商品

以下の商品の取扱い及び取引は禁止といたします
 
生鮮食品など衛生管理上好ましくない物、その場で調理提供する飲食品(キッチンカーを除く)、ペット等の生き物、偽造品や盗品など法律に抵触する商品、受発注や目録を介しての後日取引を前提とした商品、取扱い資格の必要な危険物や薬品(有資格者でも不可)、公序良俗に反する物、大量の火薬類、再販売やオークション等への出品を前提とした取引
 
※大量の酒類を取り扱う場合は事前にご相談ください
※この他、主催者が不適切と判断した商品については取扱いを中止頂く場合があります

 

出店の申し込み方法

出店に関しての各種事項(開催概要、基本条件、出店について、取扱い禁止商品)を必ずご確認・ご理解のうえ、下記の出店申込書を記入して釜石まちづくり(株)までお申込み下さい。
 
・釜石まちづくり(株)の社員によるご紹介やご案内による場合は直接担当社員まで
・それ以外の場合は、釜石まちづくり(株)FAX <0193-27-8331>

 

《申込み締切》
【五百円市】7月18日(火)
【百円市】8月22日(火)

 

問合せ等については、同様に担当社員にご連絡いただくか、釜石まちづくり(株)TEL <0193-22-3607> までお願いします。

出店概要&申込書

「第1回 かまいし五百円市」の出店概要&申込書
PDF版(829KB) / Word版(32KB)

 

「第4回 かまいし百円市」の出店概要&申込書
PDF版(835KB) / Word版(31KB)

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

jichinsai1

障害者の働く場確保と生活支援を一体で 釜石・上中島町に福祉複合施設 翔友、来春開所へ

福祉複合施設の地鎮祭でくわ入れする長谷川忠久理事長(中)

福祉複合施設の地鎮祭でくわ入れする長谷川忠久理事長(中)

 
 釜石市上中島町福祉複合施設(仮称)の新築工事地鎮祭は16日、上中島町4丁目地内の建設地で行われた。障害者の就労継続支援事業所(B型)と生活介護事業所(通所型)を一体的に整備するもので、社会福祉法人翔友(長谷川忠久理事長)が運営する。千鳥町の障害者就労施設「釜石市福祉作業所」が日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の津波想定で浸水域に入ったことを受けた対応で、避難に手助けが必要な要支援者を受け入れる予定。2023年度中の完成、24年4月からの利用開始を目指す。
 
 同法人の関係団体、NPO法人釜石市身体障害者協議会(長谷川忠久理事長)が運営する市福祉作業所は甲子川沿いにあり、津波新想定で5~10メートルの浸水の可能性があるとされる。緊急避難場所の八雲神社は2キロほど離れているうえ、▽避難経路の歩道は狭かったり障害物があったり車いす利用者らは移動しにくい▽重度の障害がある利用者の避難は時間を要する―といった課題があり、早期の機能移転が必要だった。
 
 また、障害のある人や介護者の高齢化によって生活介護のニーズが増しているのに加え、新型コロナウイルス禍で日中に自由な活動をしながら過ごせる場所が少ないことも問題として顕著化。施設の利用者、職員の安全を確保しつつ、障害者の雇用と生活の安定を図るため、複合施設の整備を決めた。
 
釜石市身体障害者福祉センター(中央)に隣接する新施設の建設地 

釜石市身体障害者福祉センター(中央)に隣接する新施設の建設地

 
 新施設は、市身体障害者福祉センターに隣接する市有地に整備する。鉄骨造り平屋建て、延べ床面積約655平方メートル。作業室や休憩室、多目的ホール、リフト付きの入浴施設などを設ける。事業費は約2億5500万円。市営住宅や児童館が立地していたが、建物の老朽化で解体され更地にした敷地面積約2600平方メートルの用地を市が無償貸与する。
   
 就労継続事業は市内企業からの受託作業(部品組み立て、食品の表示ラベル貼りなど)をしながら個々の能力、知識向上に必要な訓練も行う。生活介護事業では日常生活の支援(食事、入浴など)や自由な活動(作品づくり、レクリエーションなど)をして過ごせる場を提供する。ともに定員は各25人。
 
地鎮祭で関係者が玉串をささげ、工事の無事を祈った  

地鎮祭で関係者が玉串をささげ、工事の無事を祈った

  
 施工者の山長建設(大只越町)が主催した地鎮祭には、関係者約30人が出席。くわ入れなどの神事を行った後、建築主の長谷川理事長(81)が「障害者であろうとなかろうと、共に地域の中で暮らしていくというインクルージョンを進展させていかなければ。障害者が頑張って生きていけるような地域をつくっていきたい」とあいさつした。
 
 現在、福祉作業所を利用するのは知的・身体・精神の障害者計39人。災害時に車で避難することも条件付きで可能とされているが、地域の避難訓練では乗車に時間がかかるなどスムーズに進められなかった。自力歩行での避難が原則ということもあり、新施設には足の不自由な人を中心に半数ほどが移る見込みだという。

shien1

県立釜石病院分娩休止から1年半―妊産婦の声をくみ取る支援策、母子ケアの体制整備を

助産師らに見守られながら、ゆったりと時間を過ごせるサロン=4月19日、釜石市鵜住居町

助産師らに見守られながら、ゆったりと時間を過ごせるサロン=4月19日、釜石市鵜住居町

 
 釜石市甲子町の県立釜石病院で分娩(ぶんべん)の取り扱いが休止されてから1年半がたった。現在、釜石市や大槌町に暮らす妊産婦らは車で40~50分かかる県立大船渡病院(大船渡市)など遠方の医療機関を利用する。経済的負担を軽減するため、両市町では通院交通費の助成など支援策を講じる。3月、そうしたサポートについて妊産婦の意見を聞く会が用意されたが、そこには体調が安定しない中での移動や急に産気づいた時の対応などに不安を感じている女性たちの声があった。また、産前産後ケアの充実を求める声も共通。4月、釜石市内でそんな母子を支え続ける団体の取り組みをのぞいてみた。
  
 県立釜石病院は2021年10月から普通分娩の扱いを休止。釜石市、大槌町では市町外で出産する妊婦に対し、健診や出産のために通院する交通費や宿泊費をそれぞれ助成している。
 
妊産婦から出産に関わる不安や課題を聞き取る意見交換会=3月22日、釜石市大渡町

妊産婦から出産に関わる不安や課題を聞き取る意見交換会=3月22日、釜石市大渡町

 
 「交通費の補助は良かった」「臨月に入ると、いつ陣痛がくるか分からない。生まれるかと思って病院に行ったが、まだ早いということで帰された。移動距離がネック」「宿泊費補助はあるが、出産までホテルで待機…ないかな」。3月22日、釜石市大渡町の市保健福祉センターで開かれた意見交換会。野田武則市長や平野公三町長を囲み、妊産婦5人が近隣自治体の医療機関まで出産に行かなければならない苦労や精神的な負担を訴えた。
  
平野町長(右)に出産前後に困った経験を伝える妊産婦たち

平野町長(右)に出産前後に困った経験を伝える妊産婦たち

 
 この時、妊娠7カ月だった二本松春美さん(26)は今回が初産だという。体調が安定しない中、自分で運転して大船渡病院まで健診に通った結果、つわりがひどくなってしまい、1カ月も入院した経験がある。「家族に迷惑をかけた」とする一方、「身近に頼れる人がいなくて不安に思っている人は多いのでは」と気遣いも見せた。
 
 「嫁ぎ先が釜石だったから」「仕事の関係で…」などと地域外の出身者もいて、「気軽に相談できる場がもっとあるといい」と声をそろえた。昨年8月に長女汐莉ちゃんを出産した遠藤香織さん(40)もそんな一人。「夫は日中仕事で、実家は遠方なので頼れない。誰に相談していいか分からず、ずっと不安のまま過ごした。子育ても思うようにできず、一人で思い悩んでいた」と振り返った。そんな時に知ったのが、育児指導などを受けられる産後ケア。「誰かと話せる場。不安が改善した」と穏やかに話した。
 
「よりよい支援策を」。妊産婦の厳しい声を受け止める野田市長(左)

「よりよい支援策を」。妊産婦の厳しい声を受け止める野田市長(左)

 
 ほかにも、釜石では緊急時にタクシーを利用できるような仕組みがなく、「妊婦は乗車を断られたりする」といった声も。こうした意見に対し野田市長は「釜石病院の産婦人科再開に向け県に要望していくが、医師の働き方改革や診療科の集約が進められていて、感触的には厳しい」とした上で、「出産、子育ての不安を解消できるよう支援策を改善する必要性を強く感じた。産後ケアは、回数を増やすことも考えたい」と応じた。
 
助産師らが寄り添う釜石まんまるサロン=4月19日、釜石市鵜住居町

助産師らが寄り添う釜石まんまるサロン=4月19日、釜石市鵜住居町

 
 不安を抱える妊産婦の支援として注目されるのが「産前産後ケア事業」。鵜住居町の鵜住居地区医療センターでは、市産前産後サポート事業「釜石まんまるサロン」と「釜石まんまるヨガ」、市産後ケア事業「まんまるぎゅっと」が展開されている。委託を受けた花巻市のNPO法人「まんまるママいわて」(佐藤美代子代表理事)が手がけ、助産師による育児相談や母親に休息の場を提供する。
 
 4月19日のサロンには親子2組が参加。助産師や利用者同士で談笑したり、お茶を飲みながらゆったり過ごしたりしていた。2歳と生後6カ月の子どもがいる上中島町の40代主婦は「市外出身で、知り合いがいない。サロンではいろんな人と話せる。同じくらいの子どもたちが楽しそうに過ごしているのを見るのもうれしい」と目を細めた。
 
ママたちは子どものことや世間話をしながら交流を楽しむ

ママたちは子どものことや世間話をしながら交流を楽しむ

  
 17年設立の同法人だが、産前産後の母子を支える活動のきっかけは11年の東日本大震災。県内で被災地域の妊産婦が集うサロンを開くなどして寄り添ってきた。釜石サロンも同様に続けられ、18年からは市の委託事業になった。助産師で2人の子どもの母でもある佐藤代表理事(44)は、釜石病院の分娩休止による妊産婦の不安を推測しつつ、「サロンは助産師に会える貴重な時間だけでなく、育児の大変さを伝え共有できる場でもある。気楽に来てほしい。ママたちの気持ちが楽になるケアを地域内で循環、根付かせられたら」と先を見据える。
 
「気楽にどうぞ」と産前産後ケア事業をアピールする佐藤代表理事

「気楽にどうぞ」と産前産後ケア事業をアピールする佐藤代表理事

 
 サロンとヨガは月1回ずつ、いずれかの水曜日に開設(午前10時~正午)。市内在住の妊婦、1歳未満の乳児を育てる母親らが対象で、参加費は無料。デイサービス型の「まんまるぎゅっと」は毎月第1か第2水曜日の午前10時~午後3時。茶と軽食付きで、料金は1組500円。母親の休息や乳児のもく浴などもできる個別ケア用の部屋も用意する。いずれも予約制。利用希望者は前日の午後4時までに電話で予約する。
  
 予約、問い合わせは平日の午前9時~午後4時に同法人(電話090・2981・1135)へ。

heitakominkan1

階段の上り下り「楽ちん」 釜石市の公共施設3カ所 いす式昇降機設置

平田生活応援センターに設置されたいす式階段昇降機

平田生活応援センターに設置されたいす式階段昇降機

 
 釜石市平田町の平田地区生活応援センター(小笠原達也所長)はこのほど、施設を利用する高齢者らの利便性を確保しようと階段に昇降機を設置した。集会スペースとして活用される大会議室は施設の2階にあるが、エレベーターなどは設置されておらず、高齢で足腰が弱っている利用者らから不便さ解消を求める声が寄せられていた。
 
 設置されたのは、いす式階段昇降機「楽ちん号」。既存の階段に取り付けたレールに沿っていすが昇降する構造で、高齢者らの移動をサポートする。いすに腰掛ける要領で座り、手元の操作ボタンで移動。使用しない時には折りたためるので、ほかの利用者らの邪魔にもならない。
 
折りたたみ式でコンパクト(写真左)。操作方法を教えてもらう高齢者(写真右)

折りたたみ式でコンパクト(写真左)。操作方法を教えてもらう高齢者(写真右)

 
 独居老人らの支え合いサロン「平田はまなす」が開かれた12月某日、参加者に試乗してもらった。サロンは年10回開催されるが、歩行につえを使う90代の女性は、昇降機が設置されたことを聞いて半年以上ぶりに参加。階段を上るのが大変なうえ、下る際は後ろ向きで時間をかけていて、参加の足は遠のいていた。試し乗りした感想は「本当に楽ちん。幸せ。音も静か」。顔なじみの住民と会話を弾ませ、「これからは気軽に来ることができる。いっぱい交流を楽しみたい」とうれしそうに笑った。
 
 階段がUの字型に折り返す部分もスムーズに移動し、ほかの高齢者も「思ったより揺れない。シートベルトもするし、安心」と高評価。昇降機には箱型のスイッチがコードで接続されていて介助者が移動をサポートすることもできる。
 
座った状態で階段の移動ができ、うれしそうな施設利用者

座った状態で階段の移動ができ、うれしそうな施設利用者

 
接続のスイッチで介助者が移動をサポートする方法も

接続のスイッチで介助者が移動をサポートする方法も

 
 小笠原所長は「階段を理由に利用を控えていた人も少なくなかった。昇降機の設置でより多くの住民にセンターを使ってもらいたい。高齢者らが少しでも外に出る機会が増えればうれしい」と見守る。
 
 昇降機は市が宝くじ助成金を活用し整備。平田のほか、甲子地区生活応援センター(甲子町)と市立図書館(小佐野町)にも設置した。
 

fukushi1

福祉学習の成果、演じて発信 大平中生、認知症の劇披露「みんなで支えよう!」

認知症がテーマの劇で熱演する大平中3年生

認知症がテーマの劇で熱演する大平中3年生

 
 釜石市大平町にある大平中(蛸島茂雄校長、生徒101人)は、地元の高齢者福祉施設と交流しながら福祉学習に取り組んでいる。3年生39人は、3年間の学びの集大成として認知症をテーマにした劇を創作。8日、同じ学区内にある平田町の平田小(鈴木崇校長、児童148人)で披露し、福祉学習の成果を後輩たちに伝えた。
 
 劇のタイトルは「野菊ばあちゃん物語」。認知症の症状が出始めた高齢女性の振る舞いに戸惑いながらも暖かく見守る家族や地域の人たちを描いた。「物忘れが多くなった」「身の回りのことに無頓着」「外に出なくなった」「同じことを何回も話す」といった高齢女性の変化を見せ、「認知症かも?」と家族が気付く症状を明示。医療機関の受診を渋ったり、食事した後に「ごはんまだ?」と繰り返したりした時の悪い対応事例を演じた後に、時間を巻き戻す演出で同じ場面を再現して関係をこじらせない接し方や心得も分かりやすく紹介した。
 
「もしかしたら認知症?」。早めの受診を促す方法を紹介

「もしかしたら認知症?」。早めの受診を促す方法を紹介

 
 認知症の人を地域全体で見守る体制の大切さも発信した。その一歩が、声がけ。ポイントは、▽驚かせない▽急がせない▽心を傷つけない―ことで、「『こんにちは。きょうは寒いですね』とかごく普通のあいさつをして、『どこまで行くの?』とゆっくり穏やかに優しく声かけるのよ」と、せりふで示した。高齢者らが行方不明になった際の早期発見を目的にした市事業「認知症高齢者徘徊(はいかい)SOSネットワーク」も紹介。自分たちが暮らす地域でも「困ったときはお互いさま」という気持ちが広がってほしいと思いを込めた。
 
「相手の視界に入って優しく声がけを」。認知症の人への接し方を伝えた

「相手の視界に入って優しく声がけを」。認知症の人への接し方を伝えた

 
 大平中の福祉学習は総合的な学習の一環で、社会福祉法人清風会(平田)が支援。3年生は認知症サポーター養成講座や介護技術体験などに取り組んできた。同法人が運営する特別養護老人ホームあいぜんの里を訪問し、ソーランを披露するなど交流も。3年間積み上げた学びを劇に盛り込んだ。
 
 「野菊ばあちゃん」を演じた佐々木梨杏さんは「認知症についてたくさん学んで、知ったことを伝えられた。対応の仕方が分かったので、学びを生かして地域で暮らしていきたい。これからも福祉に興味を持って、知識を深められたらいい」とうなずいた。
 
人を思いやる大切さや大事な人を守り抜く尊さを伝える合唱も披露した

人を思いやる大切さや大事な人を守り抜く尊さを伝える合唱も披露した

 
 劇の披露は、中学校での福祉学習の様子を伝え、地域のために尽くそうとする心を育てるのが狙い。平田小4~6年生約70人が見学した。児童から「調べたり学習したことを劇にしたのがすごい」「認知症は身近に潜んでいると思った」「家族に認知症の高齢者がいる。劇を参考にして優しく接してあげたい」などと感想があった。
 
劇の発表を通じて交流を深めた大平中の生徒と平田小の児童

劇の発表を通じて交流を深めた大平中の生徒と平田小の児童

 
 同法人の関係者や教育、福祉関係の市職員らも鑑賞し、「核家族化やコミュニティーの希薄化が進み、地域や世代間の交流が少なくなる中、福祉に関する正しい理解を育む取り組みが求められている。継続を」と期待。それに応えるべく、大平中では「支え合い・助け合い、安心して暮らせるまちづくり」を全校共通テーマとして学習、交流を深めていく考えだ。

fukushimatsuri1

障害者の社会参加促す 釜石・ふれあい福祉まつり ボランティア、市民と交流

福祉団体の手作り製品を求める市民らでにぎわった

福祉団体の手作り製品を求める市民らでにぎわった

 
 釜石市内外の社会福祉団体が一堂に会し、障害者、ボランティア、市民が交流する「ふれあい福祉まつり」(同実行委員会主催)が3日、大町の釜石市民ホールTETTOなどで開かれた。障害への理解を深めてもらおうと、福祉作業所などによる物販やアート作品の展示といった多彩な企画を用意。家族連れらが訪れ、思い思いにブースをまわって楽しんだ。
 
 障害の有無にかかわらず一緒にまちづくりに参画することなどを目的に開催し、今回で29回目。釜石や大槌の作業所や福祉団体が出店し、手作りの菓子や手芸品などを販売した。甲子町の80代女性は「みんなの頑張りが伝わってくる。一つでも多く買いたい」と品を手に取った。
 
わらび学園の販売ブースで接客を担当する利用者(右側)ら

わらび学園の販売ブースで接客を担当する利用者(右側)ら

 
 大槌町の障害福祉サービス事業所「わらび学園」はパンなどを並べ、大盛況。接客を楽しむ施設利用者を見守る支援員の阿部功悦さん(47)は「コロナ禍の制限で外部との接触は減っている。外に出て人と触れ合うのは久しぶり。接することで、施設で行う作業の意欲につながれば」と期待した。
 
個性、独創性あふれる作品が並んだ展示コーナー

個性、独創性あふれる作品が並んだ展示コーナー

 
 作品展示では、釜石祥雲支援学校の生徒らが授業の中で制作した絵画や陶芸などを紹介。文字や数字をつなげる奔放自在な造形表現が魅力の小林覚さん、カラフルでポップな作風が目を引く藤原美幸さん、さまざまな苦労を抱えて生きる人の姿を描く古川祐市さんら地元アーティストの作品も並んだ。
 
フラダンスなどステージイベントを楽しむ来場者

フラダンスなどステージイベントを楽しむ来場者

 
安価な品が並んだバザーは大勢の人でにぎわった

安価な品が並んだバザーは大勢の人でにぎわった

 
 ステージイベントではフラダンス、ギターや大正琴の演奏などがあり、会場を盛り上げた。隣接する釜石PITでは釜石商工会議所女性会による福祉バザーも。日用品や雑貨などが並び、掘り出し物を格安で手に入れようと多くの人でにぎわった。
 
 同実行委員長を務める市社会福祉協議会の丸木久忠会長は「団体や施設のさまざまな活動を紹介できる機会。多様性を理解する人の裾野が広がり、楽しい時間を共有してもらえるとうれしい。街なかを行き交う人が立ち寄りやすい、半屋外式の会場でより触れ合いが進むようになった」と喜んだ。

teamorange1

地域で支える認知症 釜石・鵜住居「チームオレンジ」結成 「お互いさま」「おせっかい」精神で 

teamorange1

認知症の人をサポートするチームオレンジ・はまぼうふうのメンバー

  
 釜石市鵜住居町で6日、認知症の人やその家族を地域で支援するためのボランティア団体「チームオレンジ・はまぼうふう」が結成された。養成講座などで専門知識を身につけた有志の認知症サポーター31人がメンバーとして登録。「認知症になっても安心して暮らせるまちづくり」を目指し、高齢者サロンや声掛け、見守り活動などを展開する。
  
 チームオレンジは認知症支援のため国が進める施策で、認知症の人やその家族らの困り事ニーズと認知症サポーターを結び付ける仕組み。2025年までに全市町村に設置することを目標に掲げる。オレンジは認知症サポーターを象徴する色。県内では矢巾町と滝沢市で結成されている。
   
 鵜住居町では認知症の住民に寄り添った地域づくりを推進しようと、13年度からサポーター養成講座を開催。高齢者だけでなく、小中学生も対象にし、地域を挙げて認知症の理解促進に取り組んできた。定期的に設けられている地域課題を話す場で、主体的に活動するチーム立ち上げの機運が高まり、19年度からステップアップ講座など追加の研修を重ねてきた。
  
teamorange2

結成式でチーム体制や活動内容を確認した

   
 同日、鵜住居地区生活応援センターで結成式があり、登録した60~80代の約20人が参加。チーム体制や役割について共有した。活動のシンボルカラーにちなんだリストバンド「オレンジリング」が配布され、早速身に着けたメンバーは認知機能向上に効果があるという「しゃきしゃき百歳体操」に挑戦。映像に合わせて頭と身体の両方を動かす体操で、2つの動作を同時に行うことに苦戦つつ、笑い声を漏らしていた。
 
teamorange3

サポーターのシンボル・オレンジリングが配布された

  
 団体名には、浜辺に根を張って育つセリ科の多年草「はまぼうふう(ハマボウフウ)」のように活動が地域に広く浸透してほしい―との願いを込めた。日向(ひかた)地区の川崎シゲさん(81)は「自分だけでなく地域には年寄りが多い。『お互いさま』というように見守り合っている。これからも、家族やきょうだいのように接していきたい」と穏やかに話した。同地区では百歳体操で交流を深めるグループが発足していて、活動を継続していく。
  
 「コロナ禍でおせっかいは引っ込めていたが、これからは前向きにおせっかいになろうと思う」。そう話すのは新神町内会長の岩﨑久延さん(73)。約180世帯が暮らすが、ここ数年は地区を挙げた草刈りで2回ほど顔を合わせる程度になっているという。自身の健康、認知症予防のためにも声を掛け合える地域づくりを望んでいて、「積極的に出かけて話し相手を探したい」と意欲を見せた。
 
teamorange4

活動の参考にと、しゃきしゃき百歳体操を楽しむメンバーら

  
 今年度はメンバーが中心となって町内会単位での啓発活動や介護予防に取り組む。3カ月に1回集まり、取り組み状況や課題を共有。市社会福祉協議会、同センター、市地域包括支援センターが事務局を担い、活動を後押しする。
  
 市地域包括支援センターでは、高齢者らが行方不明になった際の早期発見を目的に、認知症高齢者徘徊(はいかい)SOSネットワーク事業を実施。昨年11月からQRコードラベルを活用した情報共有システム「どこシル伝言板」を導入し、見守りの広がりを期待する。関係者らは「鵜住居限定の小さな活動が先進的な取り組みとなり、市内全域に波及してほしい」と願う。

100歳の佐藤敏子さん(前列中)、長寿を喜ぶ親族ら

すこぶる元気、佐藤敏子さん(釜石・野田町)100歳 「好きなことをやってきた」

100歳の佐藤敏子さん(前列中)、長寿を喜ぶ親族ら

100歳の佐藤敏子さん(前列中)、長寿を喜ぶ親族ら

 
 釜石市野田町の佐藤敏子さんが20日、100歳の誕生日を迎え、市から特別敬老祝い金5万円と記念品の羽毛肌掛け布団、野田武則市長が筆をとった「寿」の額入り祝い状が贈られた。自宅では実妹や親族らが集まって、「ますます元気に」と佐藤さんの長寿を祝った。
 
 市保健福祉部の小笠原勝弘部長が佐藤さん宅を訪問。祝い金などを受け取った佐藤さんは「わざわざ来てもらって、申し訳ない気持ち。(親族や地域住民ら)みんなに世話になり、いたわられて、ここまできた。この年で祝ってもらうなんて、本当は恥ずかしい」とはにかんだ。
 
小笠原部長から祝い金などを受け取った佐藤さん(右)

小笠原部長から祝い金などを受け取った佐藤さん(右)

 
 佐藤さんは1922(大正11)年に東京で生まれ、2歳頃に父親の仕事の関係で釜石に移り住んだ。20歳で小学校教員となり、釜石や大槌の学校で60歳まで働いた。教員生活を始めた頃は太平洋戦争中で、初任地中妻小に勤務していた45(昭和20)年4月、児童が遠野市に集団疎開することになり引率。同年9月に戻ったため、米英連合軍による2度の艦砲射撃を実際には経験していないが、変わり果てたまちの様子に心を痛めたという。
 
 退職後はボランティア活動に励み、障害者施設などで洗濯物をたたんだり、布巾づくりに取り組んだ。ものづくりが好きで木目込み人形、ステンドグラス、墨絵など習い事に熱中。通信教育で習字や色鉛筆画などにも挑戦した。新型コロナウイルス禍で外出の機会は減っているが、現在もコーラスに行ったりと、「好きなことをやる」という充実した日々を過ごす。
 
祝いに訪れた人たちを見送ろうと外に出る佐藤さん

祝いに訪れた人たちを見送ろうと外に出る佐藤さん

 
 旅行も好きな佐藤さん。沖縄以外の日本各地を巡ったという。93歳の時には、教え子たちに招待され東京で行われた同窓会に参加。年賀状のやり取りも続いていて、「いい生徒、仲間に恵まれ、素晴らしい教員生活を送ることができた。本当にいい思い出」と穏やかな笑みを浮かべた。
 
 佐藤さんは「コロナさえなければ、みんなで旅行したいね」と、すこぶる元気。自力で歩き、家事のほとんどを自分でこなす。妹の井上市子さん(83)、中島澄子さん(81)=ともに小川町=は買い物などをサポートしていて、「元気で頭のいい姉。何でも自分でやるのがすごい。好きなことを好きなように楽しんでいるのがいいんだろうね。まだまだ頑張って」と寄り添う。
 
 釜石市の高齢化率(65歳以上)は4月末現在で40・3%。100歳以上は佐藤さんを含め29人(男性1人、女性28人)おり、最高齢は106歳の女性。

オンライン版「異言語脱出ゲーム」で、謎解きに挑戦する手話サークル「橋」のメンバー

オンラインでお化け退治!? 釜石・手話サークル「橋」 聴覚障害者と挑む謎解き

オンライン版「異言語脱出ゲーム」で、謎解きに挑戦する手話サークル「橋」のメンバー

オンライン版「異言語脱出ゲーム」で、謎解きに挑戦する手話サークル「橋」のメンバー

 

 岩手県内で初めて手話言語条例を制定した釜石市で、聴覚障害者への関心と手話を広げようと活動するグループがある。手話サークル「橋」(中里麻衣代表)だ。新型コロナウイルスの流行が続く中、感染拡大防止を考慮し、聴覚障害がある人との交流は控えている。手話をする機会を増やし、「伝える力」「理解する力」を養おうと模索。2月23日、聴覚障害者と協力してゴールを目指す体験型の謎解きゲーム「異言語脱出ゲーム」に挑戦した。

 

 異言語脱出ゲームは、ワークショップなどを行う一般社団法人「異言語Lab.」が生み出した、謎解きの要素に手話・筆談・音声などを組み合わせた新しいスタイルの脱出ゲーム。聴覚障害者と耳の聞こえる健聴者が協力しなければ謎を解くことができず、より深いコミュニケーションが不可欠となる。

 

 今回は、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使ったオンラインゲーム「リモートDEお化け退治大作戦~遺された想い」に挑んだ。同サークルのメンバー6人(全員健聴者)がチームとなり、聴覚障害者からお化け退治の依頼を受けるという設定。依頼者からヒントをもらいながら、さまざまな謎を解いて除霊を目指す。制限時間は60分。

 

 参加者は手話だけでなく、身振り手振り、スマートフォンなどを使い、相談しながら数々の謎解きに挑戦した。「○○って手話はどうするの?」「ヒントではなんて言ってた?」。やりとりを重ねて謎を解き、制限時間ぎりぎりで任務完了。6人は「よし!」と達成感をにじませた。

 

気持ちを伝えるため動きを合わせるメンバー。画面越しの交流を楽しむ

気持ちを伝えるため動きを合わせるメンバー。画面越しの交流を楽しむ

 

 釜石高2年の川原凜乃さん、矢内舞さんは「ひらめき」で任務遂行に一役買った。中学生で手話を始めた川原さんは「まだ勉強中で、分からないこともたくさんある。画面越しでも楽しみながら交流できた」と充実した表情。昨年11月に手話の面白さを知ったばかりの矢内さんは「思いついた動きでもやってみると伝わるのが分かった。ただ、きちんとした手話を知らないと思いが伝わらず、相手を困らせてしまうことがあるかもしれない。サークルの大人たちみたいなやりとりができるよう、もっと頑張りたい」と刺激を受けていた。

 

 同サークルは1970年に発足し、県内で最も長い歴史のある団体。現在、10人ほどが週1回活動する。手話での声なしスピーチ、かるたなどゲームで聴覚障害者らとの交流を通し、楽しく手話の知識を深め合っている。メンバーには耳が聞こえず、目が見えない盲ろう者がいるが、コロナ禍で参加を見合わせている。サークル外活動も難しい状態が続くが、昨年は障害者らも集う祭りで手話歌を披露した。

 

中里代表(左)、若手を見守る岩鼻さん(左から2人目)

中里代表(左)、若手を見守る岩鼻さん(左から2人目)

 

 実戦経験になるとオンラインイベントへの参加を決めた中里代表(32)。「思った以上に会話が広がり、どうすれば相手に伝わるかを考え、自分とは違った見方があることを知る機会にもなった」と手応えを得た。画面越しでも他地域の人とつながる体験に新鮮味を実感。「手話の技術、知識を深めるため、いろんな考えを伝え合えるサークル活動を続けたい」と思いを強めた。

 

 手話通訳士の資格を持つ岩鼻千代美さんは今回、サポート役に徹した。メンバーたちが謎解きに集中し、聴覚障害者が「次、どうすればいいの?」などと問いかけても反応しない場面があり、「誰か返事して。コミュニケーションとって」と助言。もどかしさを感じながらも、「伝え合おう」とする若手たちを温かく見守った。「条例を作って終わりではなく、手話を学び、相手を理解しようという人の輪が広がってほしい」と願う。

釜石市の支線部で運行されるコミュニティーバス

釜石市支線部バス4月ダイヤ改正へ 効率運行、利便向上で「住民の足」維持

釜石市の支線部で運行されるコミュニティーバス

釜石市の支線部で運行されるコミュニティーバス

 

 釜石市が市内事業者に委託して運行する支線部バス(4路線)のダイヤが、4月から改正される。利用の少ない便を廃止し、一部区間に新たに予約制を導入。各路線と市教育センター(鈴子町)を結ぶ直通便の復路運行を新設する。料金の一部値上げ、学生への優遇措置も予定。高齢化の進行に伴い、増加が見込まれる運転免許返納者の足の確保、持続可能な公共交通維持のため、地区懇談会(市内18カ所で開催)の意向を踏まえ、事業の見直しを図る。

 

 東日本大震災後の環境変化を受け、2019年6月に再編された市内のバス路線の運行は、国道などの幹線部を岩手県交通が、半島・山間地域の支線部を市が担う。支線部は、鵜住居駅と上平田を幹線との乗り継ぎ拠点とする南北のコミュニティーバス(マイクロバス)、にこにこバス(ハイエース)を運行。ダイヤ改正は20年4月以来、2年ぶりとなる。

 

支線部バスエリア

 

 4路線共通の変更点は2つ。平日の支線部と教育センターを結ぶ直通便(釜石のぞみ病院経由)に同センター発の午後の便を新設し、帰りの足に配慮。1日1往復を確保する。料金は一部区間で100円値上げ。通学利用の負担軽減策として小中高生は上限200円とする優遇措置を講じる。

 

 これまでの利用状況を踏まえ、北部コミュニティーバス(青ノ木・中村方面)は、平日の中村発の始発便と鵜住居駅発の最終便を前後の便に統合。土日祝日の運行は土曜日のみに変更する。南部コミュニティーバス(大石・荒川方面)は、平日の便数を減便(上平田方面行き6→4便、大石・荒川同5→4便)。水曜日の教育センター発の便で、予約による平林への乗り入れを可能とする。

 

市の委託を受けた岩手旅行社が運行する北部コミュニティーバス

市の委託を受けた岩手旅行社が運行する北部コミュニティーバス

 

 箱崎白浜方面から日向、室浜地区を運行するにこにこバスは、箱崎地区の運行経路を見直し、3バス停を新設。片岸、日向地区からの乗車が少ないことから予約制を導入する。尾崎白浜、佐須方面のにこにこバスは、平日の上平田方面行きを1便(午後4時台)減便する。

 

前勝タクシーが委託運行するにこにこバス(箱崎白浜~日向~室浜エリア)

前勝タクシーが委託運行するにこにこバス(箱崎白浜~日向~室浜エリア)

 

 ダイヤ改正を含む2022年度の支線部バス運行計画案は、20日に市民ホールTETTOで開かれた市地域公共交通活性化協議会(会長・晴山真澄副市長、委員31人)で承認された。関係機関への申請、市議会での予算審議を経て4月1日から実施される見通し。

 

支線部バスのダイヤ改正などを承認した市地域公共交通活性化協議会=20日

支線部バスのダイヤ改正などを承認した市地域公共交通活性化協議会=20日

 

 同市の支線部路線は震災以降、仮設住宅を通るバス路線を対象とした国の被災地特例補助金の交付を受け運行してきたが、20年度で同補助は終了。22年度から既存の補助事業を導入し、市の財政負担軽減を図りながら必要な移動手段確保に努めるが、4路線の1便当たりの利用人数は平均1~2人と厳しい状況が続く。担当課の和賀利典生活環境課長は「工夫して効率的な運行体系を構築していく必要がある。将来の路線存続のため、積極的なバス利用を」と呼び掛ける。

釜石市が導入した「シュアトーク」。手話と音声が文字に変換、表示される

手話や音声をリアルタイムで文字に AIシステム「シュアトーク」を窓口で活用、釜石市

釜石市が導入した「シュアトーク」。手話と音声が文字に変換、表示される

釜石市が導入した「シュアトーク」。手話と音声が文字に変換、表示される

 

 釜石市は3日、聴覚障害者とのコミュニケーション環境の向上を図ろうと、人工知能(AI)の技術を使って手話を日本語の文字に変換するシステムの利用を始めた。ソフトバンクなどが開発中の「SureTalk(シュアトーク)」というシステムを入れたタブレット端末を大渡町の市保健福祉センター2階、地域福祉課窓口に設置。端末に向かって手話で話しかけるとリアルタイムで文字に変換して画面に表示され、手話ができなくても円滑なやり取りが可能になる。健聴者の音声も文字に変換する機能が備わっており、加齢に伴い聴力が衰えてくる高齢者らとの会話にも使え、窓口対応の充実に役立つと期待される。

 

 地域福祉課窓口で向かい合って座る職員と聴覚障害者それぞれの目の前に、カメラを搭載した専用のタブレットが置かれ、シュアトークの画面が映る。左側に健聴者の職員と聴覚障害者の姿、右側には会話がチャットで表示される。AIで手話の映像や音声を解析し文字化する仕組みで、画面越しに対話ができる。

 

聴覚障害者と健聴者はシュアトークが入ったタブレット端末を通じて対話ができる

聴覚障害者と健聴者はシュアトークが入ったタブレット端末を通じて対話ができる

 

 例えば、同課窓口に聴覚障害者が訪れた際、職員がタブレットに向かって「どうされましたか」と声をかけると画面にすぐに文字が出た。聴覚障害者が手話で話しかけると、5秒ほど後に「障害者手帳をなくしました」と文字が出た。その後も、「再発行したい」「分かりました。書類を準備します」と会話が続き、職員が手話を理解できなくても、意思を伝達することができた。

 

 市では6月、聴覚障害者への理解促進と手話の普及などを定めた「市手話言語条例」を県内で初めて施行し、それに伴って同システムを導入した。市によると、市内で障害者手帳を所持する聴覚障害者は153人で、うち手話をコミュニケーション手段としているのは6人。一方、手話通訳士は同課職員の1人だけ。有資格職員が不在時には健聴者の職員が筆談で対応してきたが、うまく説明できないこともあった。また、聴覚障害のある人が窓口を訪れる際は健聴者が付き添うケースがほとんどだが、当事者を取り残して話が進み、知るべき情報の理解や納得が十分ではないと感じる場面もあったという。

 

手話通訳士の資格を持つ市地域福祉課の職員もシステム導入を歓迎する

手話通訳士の資格を持つ市地域福祉課の職員もシステム導入を歓迎する

 

 手話通訳士の資格を持つ同課の岩鼻千代美課長補佐は「円滑に意思疎通する手段の一つになる」と導入を歓迎。手話に興味を持つ職員が増えればと期待も寄せる。市では共生社会の実現を目指した取り組みを進めており、村上徳子課長は「聴覚障害のある人も遠慮することなく窓口に来てもらう体制が整った。誰もが社会で活動できるよう、こうした手段を増やしていきたい」と力を込めた。

 

シュアトークの導入は市職員が手話になじむきっかけにもなると期待される

シュアトークの導入は市職員が手話になじむきっかけにもなると期待される

 

 シュアトークは現在、手話の単語約1500を文字化できるが、手話は方言や地域固有の表現があり、AIが学習するために必要な大量のデータがまだそろっていないという。そのためソフトバンクは、同条例を制定した全国11自治体にシステムを1年間無償提供していて、窓口を訪れた人に利用してもらい、手話データなどを収集した上でシステムの精度をあげようとしている。

 

 同社の田中敬之担当課長は「聴覚障害を持つ社員がおり、コミュニケーションのずれを解消したいと開発を始めた」と活用を促す。7月には手話の動作画像の登録機能がついたiPhone(アイフォーン)向けのアプリも発表。「手話を知らない人も動作をまねて登録してもらえれば、いろんな手話を認識できるようになる。AIが手話を学習していくことで変換の精度が向上し、利便性も高まる。言語の一つとして認識が深まれば」と協力を呼びかけていた。