バリアフリーな環境で心豊かな体験を 子どもたちが旬の魚マダラをさばいて食す 生態にも興味津々


2024/03/05
釜石新聞NewS #地域 #子育て #福祉

インクルーシブおさかな体験教室=根浜海岸レストハウス

インクルーシブおさかな体験教室=根浜海岸レストハウス

 
 障害の有無や性別、人種などに関係なく、互いを認め合い共生していく「インクルーシブ」社会。その理念を基にした各種取り組みが釜石市でも行われている。2月25日、鵜住居町の根浜海岸レストハウスでは「インクルーシブおさかな体験教室」が開かれた。バリアフリーでつくる釜石自然遊びの会(佐々木江利代表)が主催。市内外から13家族37人が参加し、旬のマダラをさばいて調理。食事も楽しんだ。
 
 講師は同市地域おこし協力隊員で、魚食普及活動を行っている清原拓磨さん(26)。この日は地元の定置網で漁獲された体長60~80センチのマダラ3匹が用意された。はじめに生態を説明。水深約200メートルの深海に住み、口元のひげでにおいなどを感知して餌を探すこと、雄は白子に価値があり、雌の倍の値段で取引されることなどを教えた。子どもたちは体を触ったりしながら観察。疑問に思ったことを次々に質問した。
 
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体のまだら模様が特徴の魚「マダラ」。触ってみると?

 
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マダラの生態について教える清原拓磨さん(左)

 
 観察後はさばき方。子どもたちが最初に体験したのはうろこ取り。専用の道具や金たわしを使って、きれいにうろこを取り除いた後、清原さんが腹を切り開き、身と内臓を分けた。子どもたちは初めて見る腹の中に興味津々。驚きの声を上げながら見入った。切り分けた身から細かい骨を取り除く作業も体験した。切り身はタラフライに。衣をつける調理にも挑戦した。
 
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うろこ取りを体験。清原さんいわく、残っていると食感が悪くなったり、においが出てしまうそう

 
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目を凝らして細かい骨抜きにも挑戦した

 
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清原さんが丁寧にさばき、体の中の各部位も観察した=写真提供:主催者

 
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切り身はタラフライに。衣をつける作業も子どもたちで

 
 盛岡市の菅原蓮君(10)は「タラの体は思ったよりやわらかい。胃袋は大きくてイワシが入っていたのにはびっくり」と目を丸くした。友人の冨澤えみりさん(7)は「ちょっと魚がかわいそうだけど、人は魚を食べて生きているので感謝しないと。自分で調理したのを食べるのは楽しみ」と声を弾ませた。2人の母親は、切り身になる前の魚の姿を見る貴重な機会を歓迎。「魚への興味、調理への関心も高まれば」と期待した。
 
 同教室を企画した「バリアフリーでつくる釜石自然遊びの会」は昨年発足。医療的ケア児の母である佐々木代表(44)が根浜でのバリアフリービーチ実現への第一歩として、インクルーシブを理念とした交流の場を持ちたいと立ち上げた。これまでに海辺でのお茶会、たき火やカレー調理、ピザ作りなどのキャンプ体験を観光施設・根浜シーサイドの協力で実施。当事者家族だけでなく同年代の子を持つ家族を含めた活動の機会を通じて、互いに助け合える関係づくりの構築を進めてきた。
 
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タラフライは手作りパンにはさんでバーガー風に(写真上段)。楽しい体験を終え笑顔を輝かせる参加者(同下段)=写真提供:主催者

 
 今回の教室には障害などで支援が必要な親子4組が参加した。親の一人は「これまで海に行くのはすごくハードルが高かった。今回、室内ではあるが、魚と触れ合えたことで、海にも一歩近づけた気がする」と話した。
 
 医療的ケアや支援が必要な子どもたちの親は、助けが必要な場面でも「自分たち家族の問題」と我慢してしまいがちだという。しかし、家族だけが頼りでは限界がきてしまう。佐々木代表は「本人にとっても家族以外の人に甘えられる環境は必要。まずは顔見知りになり、お互いを理解するところから」と小さな一歩の積み重ねを願う。未来に生きる同様の家族のためにも「『これが大変だから手伝ってほしい』と声をあげられる環境をみんなで作っていきたい」と思いを込めた。

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