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地場産食材「おいしいの、いっぱい!」 釜石の小中学生、海・山の恵み 給食で味わう

釜石産食材を使った給食を味わう鵜住居小児童

釜石産食材を使った給食を味わう鵜住居小児童

 
 釜石市産の食材を使った「まるごと釜石給食」は20日、市内の小中学校全15校(支援学校を含む)で提供された。子どもたちが地域の海や山で育まれた豊かな恵みに舌鼓。地元の魅力に関心を高めた。鵜住居小(佐藤一成校長、児童144人)では、生産者や市関係者らと食卓を囲んで交流した。
 
 メニューは釜石湾で養殖するサクラマスの塩こうじ焼き、ニンジンやキュウリなどとあえた大根のナムル風、栗林町産ひとめぼれを炊き上げたご飯、三陸ワカメのみそ汁、リンゴ、牛乳で、食材8種類を使った。
 
 鵜小では4年生(29人)の教室で試食会があり、市学校教育課学校給食センターの沢里舞帆栄養教諭が食材を紹介。「釜石のおいしい食材を集めた特別なメニュー。生産者の皆さんが大切に育てて届けてくれた貴重な野菜をたくさん使っています。感謝しながら、みんなで味わいましょう」と呼びかけた。
 
料理を盛り付けて「まるごと釜石給食」が完成

料理を盛り付けて「まるごと釜石給食」が完成

 
作ってくれた人に感謝を込めて「いただきます」

作ってくれた人に感謝を込めて「いただきます」

 
 「いただきます」と声を合わせると、子どもたちは地域の恵みたっぷりの料理に箸を伸ばした。サクラマスの味が気に入った前川幹橙さんは「やわらかくておいしかった。(給食の献立に)もっと増やしてほしい」と満面の笑顔。寒さが増す季節となり甘さが加わったという白菜やネギも入ったみそ汁を「ほど良い味」と表現した佐々木惟楓さんは「釜石にもこんな食材があるんだ」と、おいしい発見を喜んだ。
 
「おいしいね」。生産者と一緒に給食を味わう子どもたち

「おいしいね」。生産者と一緒に給食を味わう子どもたち

 
 ネギを提供した橋野地区直売組合員の小笠原幸太郎さん(70)=甲子町=は児童と会話しながら触れ合いも楽しんだ。別の学校に通う孫たちが同じ献立を味わっている様子を想像し、「こんな風に喜んでくれていると思う。きちんとした良いものをたくさん作りたい」と改めて実感。同組合員でリンゴを届けた二本松誠さん(61)=鵜住居町=も子どもらの笑顔に意欲を高め、「いっぱい食べて元気に育って」と願った。
 
楽しい給食の時間はおいしい笑顔がいっぱい

楽しい給食の時間はおいしい笑顔がいっぱい

 
子どもとの楽しい触れ合いに食材提供者もにっこり

子どもとの楽しい触れ合いに食材提供者もにっこり

 
 市は地産地消、農業や水産業など地域産業への理解促進を狙いに2021年度から、まるごと釜石給食を設けている。新米が出回る時期に合わせ実施しており、今回は約2050食を提供。学校給食センターの山根美保子所長は「地元のおいしい農水産物を知ってほしい。試食会が生産者の意欲向上につながり、たくさん作ってもらえたら、釜石産を提供できる機会が増える…かな」と、おいしい楽しみに余韻を残した。

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友達づくり楽しく!サッカー遊びで交流 釜石で初の試み、4つのこども園合同イベント

釜石市球技場でサッカー遊びを楽しむ子どもたち

釜石市球技場でサッカー遊びを楽しむ子どもたち

 
 釜石市内の4つの認定こども園合同イベント「交流サッカー遊び」が14日、同市甲子町の市球技場で開かれた。5歳児計80人が参加し、16の“ミックスチーム”を編成。初めは緊張気味だったものの、4ブロックに分かれてボールを追いかけているうちにたくさんの“にこにこ顔”が生まれた。市内でこうした活動が行われるのは初めて。「来春に小学生になる子どもたちの顔合わせになれば」と各園共通のあたたかい願いが込められた。
 
 参加したのは甲子町の正福寺幼稚園(松岡公浩園長、園児28人)、野田町の甲東こども園(野田摩理子園長、園児106人)、上中島町の市立上中島こども園(楢山知美園長、園児38人)、天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児88人)の4園。鬼ごっこをした後、ボールを使った陣取り遊びやサッカーのミニゲームを楽しんだ。
 
初顔合わせの友達と声を合わせて「エイエイオー」

初顔合わせの友達と声を合わせて「エイエイオー」

 
鬼ごっこが準備運動。思い切り走ってにこにこ顔

鬼ごっこが準備運動。思い切り走ってにこにこ顔

 
陣取りゲームでボールや仲間との触れ合いを楽しむ

陣取りゲームでボールや仲間との触れ合いを楽しむ

 
 子どもたちの遊びをサポートしたのはキッズサッカーの指導者でもある松岡園長(59)や、岩手県サッカー協会のキッズリーダー4人。一定のルールの中で伸び伸びさせつつ、ゴールを決めたり、諦めずボールを追ったり頑張った子はもちろん、転んだ仲間に優しく声をかけたり、ボールの片付けに積極的に取り組んだ園児らに「グリーンカード」を何度も提示してフェアプレー精神の大切さも伝えた。
 
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子どもたちのすてきな行動に「グリーンカード」を次々に提示

 
 ミニゲームの前後に園児らは元気にあいさつを交わした。開会のあいさつで松岡園長が呼びかけた「ゲームは敵、味方があるけど、敵という相手がいなければゲームはできない。相手はある意味、仲間。ゲームが終わったら『ありがとう』と握手しよう」を守った形。甲東こども園の福成昴君(6)は「シュートするのが楽しかった。(園が異なる子と)なかよくなれた。またやりたい」とチームメートと手をつないでいた。
 
ミニゲームでは真剣な表情で熱戦を繰り広げた

ミニゲームでは真剣な表情で熱戦を繰り広げた

 
試合後には握手して「ありがとう」と笑顔を交換

試合後には握手して「ありがとう」と笑顔を交換

 
サッカー遊びで思い出をつくって友情を結んだ園児たち

サッカー遊びで思い出をつくって友情を結んだ園児たち

 
 この初の試みは、4園長の集まりがきっかけ。各園の保育内容や遊びなど情報交換する中で、松岡園長が今年から始めた「サッカー遊び」の話題に他園から関心が集まった。少子化で園単独での活動に難しさを感じていたことが共通し、広い場所で思いっきり駆け回る体験を楽しんでもらおうと計画された行事に、3園が“便乗”。小学校入学で園とは学区が異なる子もいて、「あの時一緒にサッカーで遊んだよね」と入学前の交流にもつながるとの考えも一致した。
 
4園合同イベントを初開催した松岡公浩園長(後列左)ら

4園合同イベントを初開催した松岡公浩園長(後列左)ら

 
「ありがとう」。子どもたちの笑顔が大人にも伝わった

「ありがとう」。子どもたちの笑顔が大人にも伝わった

 
 大人たちの願いは子どもたちにも伝わった様子。正福寺幼稚園の常盤汐季ちゃん(5)は「たくさん友達になった。また会うのが楽しみ。小学生になったらもっといっぱい友達つくりたい。勉強、遊ぶのも楽しみ」と期待を膨らませた。「いろんなお友達、バイバーイ」。別れ際、駆け寄ってハイタッチしたり、手を振り合う光景が広がった。
 
 「ふっ飛んで走っていた」と満足そうに見つめる松岡園長。幼少期に始めたサッカーをシニア世代になっても続ける。競技のおかげで学校外のつながり、仲間を大事にすることを学んだといい、子どもたちにもそうした経験をしてもらうのが狙い。サッカーとなると不得手と感じる子もいると考え、行事名に“遊び”を加えた。各園とも好感触を得た様子で、「市内全体に広がれば」との声も。運動会的なことになればいいかも―大人たちも想像を膨らませる。

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ここって釜石?! 隠れ家ビーチで海の魅力再発見 泳いで潜って乗って… 安全も学ぶ1DAYキャンプ 

11年目を迎えた「海あそびワンデイキャンプ」=8日、箱崎町白浜

11年目を迎えた「海あそびワンデイキャンプ」=8日、箱崎町白浜

 
 リアス海岸の地形が生んだ絶景ビーチでさまざまな遊びを楽しめる日帰りキャンプが8日、釜石市箱崎町白浜地区で行われた。地元の海に関わる団体や漁師らでつくる、海と子どもの未来プロジェクト実行委「さんりくBLUE ADVENTURE(ブルー・アドベンチャー)」が主催。漁船で上陸した箱崎半島の白砂の海岸で、親子連れら約50人が各種マリンレジャーを楽しんだ。
 
 キャンプ地は白浜漁港から船で2キロほどの場所にある、通称「小白浜」と呼ばれる入り江の海岸。背後は山林で、高台には三陸ジオパークのジオサイトの一つ、花こう岩の景勝地「千畳敷」へのハイキング路が連なる。漁港でウエットスーツとライフジャケットを着用した参加者は地元漁師の船で浜に上陸。さまざまな海遊びに興じた。
 
白浜漁港から地元漁師の船で“小白浜”に向かう

白浜漁港から地元漁師の船で“小白浜”に向かう

 
 シーカヤック、スタンドアップパドルボード(SUP=サップ)を操り、海上からの眺めを楽しむ人。シュノーケリングで海中の生き物を探す子ども。波打ち際で砂遊びに夢中になる親子。それぞれに好きなことをして、海の面白さを体感した。
 
 鵜住居町の佐々木結萌さん(10)は「楽しそうだったから」と初めて参加。小学校の友人と泳いだり潜ったりと、時間を惜しんで満喫した。夏休みには海水浴にも行ったが、「ここは海の色がすごくきれい。水に浮かぶのが一番楽しかった。帰ったら家族に報告したい」と今夏の思い出を増やした。
 
「海だー!」砂浜から駆け出す子どもたち

「海だー!」砂浜から駆け出す子どもたち

 
思い思いに海遊びを楽しむ。みんな笑顔満開!

思い思いに海遊びを楽しむ。みんな笑顔満開!

 
近年人気のスタンドアップパドルボード(SUP)。海上をゆっくり散歩

近年人気のスタンドアップパドルボード(SUP)。海上をゆっくり散歩

 
シーカヤックは初心者でも操縦可能。海面を滑るように進む

シーカヤックは初心者でも操縦可能。海面を滑るように進む

 
 人気を集めたのは海上パトロールや救助にも使われる水上オートバイの乗船体験。全国組織のシーバードジャパンが協力し、4艇を使って約30分の長距離走行を実現した。釜石、気仙沼(宮城県)、さがえ(山形県)の東北3拠点のほか、千葉県からも隊員が応援に駆け付け、代わる代わる参加者を乗せて大槌湾に繰り出した。ライフセーバーの資格を持つ13人の隊員は、浜辺や海上から参加者の安全にも目を配った。
 
シーバード隊員が操縦する水上オートバイに乗っていざ大海原へ

シーバード隊員が操縦する水上オートバイに乗っていざ大海原へ

 
写真上:水上オートバイから見るリアス海岸は絶景 同下:沖から見た“小白浜”

写真上:水上オートバイから見るリアス海岸は絶景 同下:沖から見た“小白浜”

 
 片岸町の小笠原泰樹さん(41)家族は同キャンプ初参加で、水上オートバイにも初めて乗った。長男皐太さん(9)は「水を跳ねて海を走っていく感じが最高。景色も陸から見るのとは違った。(岩肌には)小さい神社の鳥居も見えた」、母恵子さん(40)は「御箱崎灯台が見えるところまで行った。天気が良くて海がキラキラ輝いていた。魚の群れも見えた」と大興奮。泰樹さんは「三陸ジオパークとしてPRしているのは知っていたが、じかに見たことはなかった。釜石にもこんな素晴らしい観光資源があったとは。特別感がある体験」と感激。「もっとみんなに知ってほしいし、ぜひ見てもらいたい」と夫婦で口をそろえた。
 
 シーバード富津(千葉県)の古賀健一郎代表(57)も「仲間に誘われ、ずっと来てみたかった場所。エメラルドグリーンというか、海の色が全然違う」と驚きの表情。大津波が襲った震災後、海離れが進んだ話も聞いていたが、子どもたちがはしゃぐ姿を目にし、「海に携わる人間としては本当にうれしいこと。せっかくの大自然。ぜひ、多くの人に触れてほしい。子どものころの体験は親になった時に自分の子どもを連れてくることにもつながる」とほほ笑んだ。
 
海中の白砂が見えるぐらい透明度抜群のビーチ

海中の白砂が見えるぐらい透明度抜群のビーチ

 
海の楽しさを満喫する参加者

海の楽しさを満喫する参加者

 
 震災後の「海離れ」を食い止めたい、地元の豊かな自然に誇りと愛着を持ってほしい―と始められたキャンプは、今年で11年目に突入。釜石ライフセービングクラブ(菊池健一会長、10人)など海の安全に関わる団体、箱崎白浜の漁師、市内外のボランティアなど多くの支援者の協力で継続されている。海の専門家による安全管理体制が整っていることで保護者の信頼も厚く、リピーターも多数。キャンプでは、海への転落や溺れてしまった時に自分の身を守る「浮いて待て(浮き身)」の方法を教える講習も欠かさない。開始前には地震、津波時に逃げられる高台への避難ルートの確認、仮設トイレで使う非常用便器の使用法の説明など、防災に関わる知識、意識の普及にも努める。こうした地道な活動を通して“海のまち”で生きる力を育む。
 
スタッフが紹介され、海での注意点などが伝えられた開会行事

スタッフが紹介され、海での注意点などが伝えられた開会行事

 
災害時に役立つ簡易トイレの使い方を説明

災害時に役立つ簡易トイレの使い方を説明

 
 同実行委共同代表の佐藤奏子さん(45)は「防災や野外活動など各種分野の専門家の協力を得て、有意義な活動ができている。この11年で自分たちの経験値も上がり、仲間も少しずつ増えてきた。地域の活力にもつながっていると感じる。毎年参加してくれる子どもたちもいて、成長を見られるのもうれしいこと」と話す。今年は運営スタッフとして、市内外から30人余りが協力した。
 
漁船からも参加者を見守る。ライフセーバーは海上を巡回して安全を確認

漁船からも参加者を見守る。ライフセーバーは海上を巡回して安全を確認

 
シュノーケリングで海中の生き物探し。普段見られない世界に子どもも大人も夢中

シュノーケリングで海中の生き物探し。普段見られない世界に子どもも大人も夢中

 
ヒトデや貝、アメフラシなどさまざまな生き物が見つかった

ヒトデや貝、アメフラシなどさまざまな生き物が見つかった

 
 この活動には、釜石はまゆりトライアスロン国際大会に参加していたマイケル・トリーズさんが立ち上げた被災地支援組織「Tri 4 Japan(トライ・フォー・ジャパン)」が初回から協力。ウエットスーツや活動資金を提供している。
 
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子どもも大人も!みんなの「うのたみ食堂」でワイワイ交流 釜石・鵜住居地区で初開設

初開催の「うのたみ食堂」で食事を楽しむ参加者

初開催の「うのたみ食堂」で食事を楽しむ参加者

 
 釜石市の鵜住居地区民生委員児童委員協議会(小澤修会長)は24日、同市鵜住居町の鵜住居公民館で子ども食堂を開いた。食事はもちろん、遊びや防災グッズの工作を楽しんだ参加者。学校が長期休みに入ったこともあり、「夏を目いっぱい楽しむぞー」と元気だ。子ども食堂は市内の他地区で取り組みが先行しているが、同地区では初開催。運営方法や行事内容、食事の献立、食材の調達など手探りながらの“お試しプレ企画”だったが、地元企業が食材を提供したり地域連携の機会として可能性を広げた。
 
 鵜住居小の夏休み合わせて企画し、児童約40人が公民館に集まった。お楽しみ会として用意された遊びはパラスポーツのボッチャ。協力団体として参加する地域会議や公民館職員、市社会福祉協議会の関係者らも加わり、学年や世代を超え、歓声を上げながら競技に熱中した。
 
ボッチャに挑戦する子どもたち。「あれれー」

ボッチャに挑戦する子どもたち。「あれれー」

 
明暗分かれる…真剣勝負には子どもも大人もなし

明暗分かれる…真剣勝負には子どもも大人もなし

 
 東日本大震災や防災を学ぶ時間も。同地区の主任児童委員市川淳子さん(60)が、地域のお盆恒例行事の復活を描いた絵本「ぼんやきゅう」(ポプラ社、文/指田和、絵/長谷川義史)を読み聞かせした。箱崎白浜地区に住み、被災や避難所生活の経験を伝え、紙皿を使った、こまづくりも紹介。ペットボトルのキャップとストローを使った遊び、新聞紙でつくる即席スリッパを見せながら、「大変な時でも楽しいことを見つけられるんだよ」と子どもたちに語りかけた。
 
市川淳子さん(右)による絵本の読み聞かせを楽しむ児童

市川淳子さん(右)による絵本の読み聞かせを楽しむ児童

 
 昼食は、協議会の会員や公民館で活動する男の手料理教室のメンバーらが手作りした冷やしうどん、サケフレークなどを混ぜ込んだおにぎりを無料で提供した。麺のトッピングとして用意されたワカメは地産地消の箱崎白浜産。米は協議会員の知人から寄せられた熊本県産を使った。
 
おいしいものを味わってもらおうと住民が協力して調理

おいしいものを味わってもらおうと住民が協力して調理

 
「はい、どうぞ」。高学年の児童が料理運びをお手伝い

「はい、どうぞ」。高学年の児童が料理運びをお手伝い

 
 添えられた唐揚げは子どもたちに大人気。1人2個としていたが、澤本大吾さん(1年)は追加を希望して「おいしい」とうれしそうに頬張った。佐々木萌彩(めいあ)さん(6年)は「みんなとワイワイご飯を食べたりできてうれしい。ボッチャでボロ負けしたからリベンジしたい。夏休みの行事はまだあるし、目いっぱい楽しみたい」と笑顔を見せた。
 
口を大きく開けてパクリ。唐揚げを頬張る子ども

口を大きく開けてパクリ。唐揚げを頬張る子ども

 
ずらりと並んだ唐揚げ。おいしさに子どもたちの箸も出る

ずらりと並んだ唐揚げ。おいしさに子どもたちの箸も出る

 
 唐揚げを提供したのは、栗林町に養鶏農場がある鶏肉生産加工販売業オヤマ(本社・一関市)。「からあげグランプリ」で最高賞を複数回獲得する自慢の味わいを知ってもらおうと、「室根からあげ」を200個(100人分)用意した。
 
 この日は、同社の小山達也常務取締役(48)が足を運んで、児童らと交流。岩手県内の自社農場で鶏を育て生産者の顔が見えること、食材のおいしさを上乗せする味付けの秘密などを教えたりした。たくさんの喜ぶ顔に感激した様子で、「釜石には水産だけでなく、畜産もあると知ってもらえたら。次回は、地元の食材とコラボした釜石産ブランド『釜から』を持ってくるよ」と約束。養鶏を通した町おこし、食育への意欲も口にした。後日、平田地区と小佐野地区で開かれた子ども食堂でも唐揚げを振る舞った。
 
「からあげー、イエーイ!」と喜ぶ児童と小山達也常務

 「からあげー、イエーイ!」と喜ぶ児童と小山達也常務

 
 鵜住居地区は震災後、新たに建った学校を中心に地域交流を進めてきたが、新型コロナウイルス禍で行事参加が見送られたことで、「顔つなぎ」の機会が減っていた。昨年から他地区で子ども食堂が開かれ、鵜住居でも同協議会の会員間で機運が高まり事業を計画。今回は低予算で継続できる形をつかむための試行だったが、小澤会長(74)は「うまく手分けしてできたと思う。子どもたちに大人たちの顔を覚えてもらう機会にし、声をかけ合える地域づくりにつながればいい」と会場を見回した。
 
子どもたちの笑顔に小澤修会長も頬を緩ませる

子どもたちの笑顔に小澤修会長も頬を緩ませる

 
 鵜住居地区の子ども食堂は「うのたみ食堂」と銘打つ。集う“鵜住居の民”と主催する“鵜住居の民生委員”から文字をとった。来年度は、子どもだけでなく地域住民を対象にして世代間交流の場として実施する予定だ。

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開設10年 かまいしこども園が感謝の夏まつり 震災後の支援者らもお祝い 再会の笑顔花開く

かまいしこども園開設10年記念夏まつり=20日、市民ホールTETTO

かまいしこども園開設10年記念夏まつり=20日、市民ホールTETTO

 
 釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児80人)は本年度、開設から10年目を迎える。前身の釜石保育園(大渡町)が2011年の東日本大震災津波で全壊。甲子町松倉の旧釜石南幼稚園園舎を借り保育を続けた同園は15年、幼保連携型認定こども園として、現在地で新たなスタートを切った。これまで同園を支えてきた人たちに感謝の気持ちを伝えようと、園は19、20の両日、記念イベントを開いた。
 
 19日は園舎で「にじいろわくわくこどもえんまつり」と銘打って、施設見学会を実施。震災後に支援してくれた市内外の人たちや交流のある地域住民らを招いて、園内の様子を公開した。園児らははんてん姿で来園者をおもてなし。手作りチケットを配り、ホールに設けた縁日広場で“お客様”に楽しんでもらった。綿あめ、ポップコーン、かき氷、ヨーヨー釣り…など各ブースで園児らが力を発揮。情操教育の一環で取り組む茶道のお点前も披露し、抹茶を振る舞った。
 
園舎で行われた「にじいろわくわくこどもえんまつり」。園児らが縁日広場で来園者をもてなした=19日

園舎で行われた「にじいろわくわくこどもえんまつり」。園児らが縁日広場で来園者をもてなした=19日

 
来園した高齢者施設の利用者、職員と交流する園児。笑顔の輪が広がる

来園した高齢者施設の利用者、職員と交流する園児。笑顔の輪が広がる

 
 この日は、ハロウィーンや花の日の訪問活動で交流のある大町の高齢者施設、やかた(看護小規模多機能ホーム、グループホーム、デイサービス)から利用者8人も来園。園児らと触れ合った。菅原満子さん(85)は「ほんとにかわいいねぇー。おいしい抹茶までいただいた。今は子どもが少ないからね。とっても楽しかった」と顔をほころばせた。
 
 神奈川県川崎市の自由業、島田弘一さん(57)は震災後の支援活動で同園とつながり、今も年に数回、足を運び続ける。「子どもたちは相変わらず元気で楽しそう。大人もそういう子どもたちに励まされて元気になっていくのかな」。震災後の11年7月に初めて釜石入り。津波の痕跡がまだ色濃く残る時期を目にしていて、姿を変えた今のまちにも目を見張る。「『いつでもおいで』と温かく迎えてくれる人たちがいるからこそ、不安なく来られる。今後もお手伝いできることがあれば…」と話す。
 
昼にはお祭りメニューの給食をバイキングで…。楽しい雰囲気に箸も進む

昼にはお祭りメニューの給食をバイキングで…。楽しい雰囲気に箸も進む

 
 20日は市民ホールTETTOと釜石PITで夏まつりを開催した。園児も虎舞を習う釜石虎舞保存連合会がオープニングを飾った。ホール前広場にはキッチンカーなどが並び、軽食や飲み物を販売。ホールBなどにさまざま遊び、工作、ゲームコーナーが用意され、子どもたちが楽しんだ。同園に併設される子育て支援センター「バンビルーム」の活動紹介コーナーも。PITではこれまでの歩みを記録した写真やポスター、新聞記事の展示、映像上映も行われた。
 
20日の夏まつりは威勢のいい釜石虎舞で幕を開けた

20日の夏まつりは威勢のいい釜石虎舞で幕を開けた

 
開始から多くの来場者でにぎわう会場=TETTO前広場

開始から多くの来場者でにぎわう会場=TETTO前広場

 
工作やゲームなど楽しい体験がいっぱい!子どもたちを喜ばせた

工作やゲームなど楽しい体験がいっぱい!子どもたちを喜ばせた

 
 会場には現園児と保護者、卒園児のほか、地域住民や震災後の同園を支え続けてきた多くの支援者らが足を運んだ。1歳半から同園に通った内山銀さん(双葉小6年)は「お祭り気分で楽しいし、園で一緒だった友達にも久しぶりに会えてうれしい」と笑顔。母早苗さん(33)は「松倉の仮園舎の時に入園し、今のこども園に移った。大変なこともあったが、園の行事も豊富で(子どもは)すごく楽しそうに通っていた。両方の思い出がたくさんある」と懐かしんだ。
 
松倉の仮園舎時の夕涼み会で歌を披露したボランティアも駆け付けた

松倉の仮園舎時の夕涼み会で歌を披露したボランティアも駆け付けた

 
親子で楽しい時間を満喫。夏の思い出の1ページに… 

親子で楽しい時間を満喫。夏の思い出の1ページに…

 
 岩手県私立保育連盟の髙橋学会長(盛岡市、下太田保育園園長)は、仮園舎や台風被害を受けた現園舎に見舞いに駆け付けた当時を振り返りながら、「藤原園長は子どもたちのためだけではなく、先生方、地域の人のためにと頑張ってこられた。特に沿岸は子どもの減少が進むが、地域に若い夫婦が居つくためには保育施設がないといけない。困難を乗り越え、存続してきた同園をこれからも応援していきたい」と話した。
 
園の歩みを紹介する展示コーナー。懐かしい写真、映像などが公開された=釜石PIT

園の歩みを紹介する展示コーナー。懐かしい写真、映像などが公開された=釜石PIT

 
天神町の「かまいしこども園」園舎。近くには市庁舎や復興住宅がある

天神町の「かまいしこども園」園舎。近くには市庁舎や復興住宅がある

 
 被災、仮園舎での保育、こども園としての園舎再建、コロナ禍…。震災後の13年を振り返る藤原園長は、これまでの数えきれない支援に「みんなにありがとうしかない」と深く感謝。会場に足を運んだ卒園児がすくすく育っている姿にも感激し、「園にいた時の保育、教育が少しでも今の成長に役立ってくれているならうれしい」と話した。今回のイベントは若い職員に園の歩みを理解してもらう機会にもなった。「いろいろな人が関わってくれて、助けられてここまできたことを知ってほしい。今回、みんなが頑張ってくれたことで新しいつながりが生まれ、また前に進んでいける。職員一同、力を合わせ、次の歴史を築いていければ」と未来を見つめた。

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5年ぶり飲食復活 上中島こども園夕涼み会 隣の児童館が初出店 幼児~高校生共に育つ環境へ第一歩 

児童館の出店でかき氷を受け取る園児=上中島こども園夕涼み会

児童館の出店でかき氷を受け取る園児=上中島こども園夕涼み会

 
 釜石市立上中島こども園(楢山知美園長、園児40人)の夕涼み会は13日、園庭で開かれた。新型コロナウイルス感染症の影響で休止していた飲食を5年ぶりに復活。隣接する上中島児童館(鈴木崇館長)は、同館を利用する児童生徒らによる出店を開き、参加者を楽しませた。園児と保護者に加え、卒園児らも集まり、夏の夕べのひとときに笑顔の花を咲かせた。
 
 園児の盆踊りで開幕。浴衣や甚平姿で「ピカチュウ音頭」「月夜のぽんちゃらりん」を元気いっぱいに踊った。児童館の建物との間の駐車場を囲み、さまざまな店が並んだ。園が用意したおもちゃ屋のほか、児童館企画のかき氷、トロピカルジュース、各種ゲームコーナーも。スタンプカードやチケットを手に親子や友達同士で店を回った。工藤精肉店(大渡町)は焼きそばやフランクフルト、焼き鳥などを販売。園児手作りのちょうちんや風鈴で彩られた園庭で家族がテーブルを囲み、久しぶりの“飲食あり”の会を楽しんだ。
 
夕涼み会のオープニングを飾った園児の盆踊り

夕涼み会のオープニングを飾った園児の盆踊り

 
暑さに負けず、元気に跳びはねる園児。周りでは保護者が熱心にカメラを向けた

暑さに負けず、元気に跳びはねる園児。周りでは保護者が熱心にカメラを向けた

 
おもちゃに食べ物、飲み物…。さまざまな出店に子どもたちは大喜び

おもちゃに食べ物、飲み物…。さまざまな出店に子どもたちは大喜び

 
園庭では家族で飲食を楽しんだ。夕涼み会の久しぶりの光景

園庭では家族で飲食を楽しんだ。夕涼み会の久しぶりの光景

 
 安斉茉柚ちゃん(5)は「ヨーヨー釣りが楽しかった。唐揚げとソーセージとおにぎりとかき氷を食べたよ。浴衣はお母さんが着せてくれた」とご満悦。4歳男児の母親は「(飲食を伴う)夕涼み会は上の2人のお姉ちゃんの時以来。この子は初めてなので、とても楽しそう。食欲も大人並み」とほほ笑んだ。「子どもたちは外で食べたり飲んだりするのが好き。祭りの夜店のようなわくわく感は今も昔も同じ。親子のすてきな思い出になれば」と楢山園長。
 
 今回、会に協力した上中島児童館は本年度から「健全育成型」に形態を変え、18歳未満の子どもの放課後と土曜日利用が可能に。一日平均20人余りが訪れているという。隣り合う同こども園とは4月から月1回の交流を開始。同館に園児が訪問し、季節の行事などを共に楽しんでいる。この日は児童館側から小中高生10人が協力。園児に喜んでもらおうと、それぞれの持ち場で奮闘した。
 
上中島児童館の中学生らはかき氷などを販売した

上中島児童館の中学生らはかき氷などを販売した

 
児童館のチケット売り場も盛況。園児らが次々に訪れた

児童館のチケット売り場も盛況。園児らが次々に訪れた

 
児童館企画のゲームコーナーも人気。景品のプレゼントも

児童館企画のゲームコーナーも人気。景品のプレゼントも

 
 小山幸亜さん(釜石中1年)は「小さい子とどう関わればいいかとかも分かってくる。自分たちも楽しめている」と笑顔。保育士を目指す村上七望さん(釜石高3年)はこれまでにも市内のこども園のイベントやこども食堂のボランティアとして活動。「みんなにこにこしていて、こっちもうれしくなる。将来は子どもを取り巻く問題を少しでも解決できる保育士に」と意欲を高めた。鈴木館長は「子ども同士、横のつながりだけでなく縦の関わりが増えていくいい機会。今後も一緒にいろいろな活動ができれば」と期待する。
 
 少子化や人口減で子どもの数が減少し続けている同市。市内では小学校の学区ごとに幼児教育・保育施設と小中学校が連携して、地域ぐるみで子どもを育てていこうという動きが出ている。園同士もつながりながら取り組むもの。その一環として、上中島こども園では8月3日から毎週土曜日(午前9時~正午)に、未就学児(0~5歳)と保護者を対象とした遊び場として、園内ホールや園庭を開放する。他園に通う子どもも利用可能。小学生以上の兄、姉は隣接する児童館を利用できる。詳しい利用方法は7月15日号の広報かまいしに掲載。
 
 楢山園長は「当園は三陸道釜石中央インターチェンジ(新町)からも近く、利便のいい場所にある。市内全域の親子にどんどん利用してもらい、より良い環境下での子育てに役立ててもらえれば」と話す。
 
最後は花火の観賞。大きな音と火花に歓声を上げる子どもら

最後は花火の観賞。大きな音と火花に歓声を上げる子どもら

 
写真左:園舎軒下には園児手作りのちょうちんと風鈴が飾られた。同右:会には園児のきょうだいや卒園児らも多く訪れた

写真左:園舎軒下には園児手作りのちょうちんと風鈴が飾られた。同右:会には園児のきょうだいや卒園児らも多く訪れた

子どもたちの学びの場を広く公開 新校舎移転3年目 釜石祥雲支援学校「学校へ行こう週間」

 

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「学校へ行こう週間」で小学部の授業を見学する地域住民=27日、釜石祥雲支援学校

 

 釜石市平田町の県立釜石祥雲支援学校(安達史枝校長、児童生徒53人)は6月24日から28日まで、授業の様子や校内の施設、設備などを保護者や地域住民に公開した。学校教育への理解と関心を高めてもらい、開かれた学校の推進を図る本県の取り組み「学校へ行こう週間」の一環。5日間で約50人が来校し、同校の指導体制や教育環境へ理解を深めた。

 

 同校では同週間の学校公開を年2回実施。保護者にとっては授業参観の意味合いもあり、期間中、都合のいい日、見学したい授業に合わせて足を運べるメリットもある。本年度1回目の今回は午前中に見学時間が設けられ、事前に予約した保護者や地域住民らが訪問。訪れた人たちは各教室で行われている2~4校時の授業を見学したほか、校内の各種特別教室やプールなども見て回った。

 

写真上:旧釜石商業高跡地に立地する新校舎。同下:見学者は校内のさまざまな教室も見て回った

 

 現在、同校には小学部に19人、中学部に9人、高等部に16人が在籍するほか、定内町の国立病院機構釜石病院内のしゃくなげ分教室で9人が学ぶ。小学部は病弱・肢体不自由、知的障害、重複障害のクラスがあり、日常生活の指導、生活単元学習、遊びの指導などを実施。実態に応じた国語や算数、自立活動の学習もあり、一人一人に合った教育で、日常生活に必要な力を身に付けながら心豊かな生活を送れるようにサポートしている。

 

小学部の自立活動の授業。カタツムリを触ったり季節を感じながら歌や太鼓を楽しんだ

 

新聞紙をちぎって紙の感触を味わう。音楽に乗せて紙のシャワーも

 

 27日に訪れた平田町内会の中川崇司会長(72)は「先生方が愛情を持って接し、子どもたちも信頼しきっている様子がうかがえる。家ではできないいろいろな経験もでき、とてもいい環境で学べているようだ」と実感。少子化の進行、不登校の増加と教育課題が複雑化する中、地域全体で子どもたちを見守り、関心を寄せる必要性も感じ、「地域の学校は一度は見ておくべき。ここも縁あってこの地に立地した。見学の機会を通して距離を縮め、登下校時にはあいさつを交わせるような関係ができれば」と期待を寄せる。

 

 同校は前身の県立釜石養護学校時代に建設された定内町の校舎で小、中学部が学び、高等部は甲子町の釜石高に併設されていたが、校舎の老朽化などの課題解決のため移転新築。旧釜石商業高跡地に新校舎が建設され、2022年8月に移った。これにより小中高の一貫指導が可能に。木材を基調とした新校舎は車いすの行き来がしやすい広い造りで、体育館やプール、広いグラウンドも整備されたことでより良い教育環境が整った。児童生徒らは伸び伸びと学んでいて、小中高各部間の交流も増え、喜んでいるという。

 

木のぬくもりが感じられる明るい校内。プールは2つの水深で子どもたちに合った利用が可能

 

 「引っ越してきたばかりで、地域の方もどんな子がいてどんな勉強をしているのか、まだ分からない部分もあると思う」と中館崇裕副校長。学校公開など住民理解を図る取り組みは今後も継続していきたい考えで、「これから何十年とこの地でお世話になることと思う。学校のことを地域住民に少しずつ理解してもらい、いろいろな地域資源の活用にもつなげていけたら」と展望する。

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祝・かまいしこども園開設10年 人気絵本作家サトシンさんが記念の読み聞かせライブ

絵本作家サトシンさんのライブを楽しんだかまいしこども園児と保護者

絵本作家サトシンさんのライブを楽しんだかまいしこども園児と保護者

 
 釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児80人)は本年度、開設から10年目を迎える。5月29日、記念イベントとして、人気絵本作家のサトシン(本名:佐藤伸)さん(61)を招いての読み聞かせライブが園内で行われた。作品を歌で伝えたり、物語を作る面白さを園児に体験させたりと、絵本のさまざまな楽しみ方を提案。この日は保育参観日で、園児と保護者がかけがえのない時間を過ごした。
 
 サトシンさんは新潟市出身、在住。広告制作プロダクション勤務、専業主夫、フリーのコピーライターを経て40代前半から絵本作家に。これまでに50作品以上を手掛ける。2010年に出版した「うんこ!」は数々の賞を受賞。大きな反響を呼んだ。テレビやラジオ番組、全国を回ってのライブなどで、絵本の楽しさや大切さを伝えている。
 
 今回は釜石では初のライブ。自身の代表作をさまざまな手法で聞かせた。あいさつの大事さを表現した作品「こんにちは、ばいばい」は同園の教諭と掛け合い。登場する動物の鳴き声で楽しませた。いろいろな曲調で物語を歌で伝える活動もしているサトシンさんは、「とこやにいったライオン」などを歌って聞かせた。虫好きが高じて作った「はやくおおきくなりたいな」、子どもたちへのメッセージが込められた「おとなからきみへ」も披露した。
 
トレードマークの王冠帽子とマント姿で、園の先生と絵本を読み聞かせるサトシンさん(写真右)

トレードマークの王冠帽子とマント姿で、園の先生と絵本を読み聞かせるサトシンさん(写真右)
 
日本昔ばなしや自身の作品を歌で披露。「ソング絵本」としてCDも発売している

日本昔ばなしや自身の作品を歌で披露。「ソング絵本」としてCDも発売している
 
スクリーンにページを写しながら読み聞かせ(写真上)。物語の世界に引き込まれる親子(同下)

スクリーンにページを写しながら読み聞かせ(写真上)。物語の世界に引き込まれる親子(同下)

 
 サトシンさんを一躍有名にした「うんこ!」は楽しい絵本の代表格。近寄ってきたネズミやヘビ、ウサギに「くっさーい」と敬遠されながらも、仲間を探す旅に出るうんこが主人公。最後は農家さんに出会い、肥やしになっておいしい野菜を育てるのに役立つ。悔しがる時に発する「くっそー」、考える時の「うん、こーしよう」など駄じゃれを交えたセリフもあり、会場の親子は一緒に声を出して楽しんだ。
 
発売から10年で50万部売れた人気作品「うんこ!」。掛け声で楽しめるのはライブならでは

 発売から10年で50万部売れた人気作品「うんこ!」。掛け声で楽しめるのはライブならでは

 
サトシンさんのエネルギッシュなライブに拍手と笑顔

サトシンさんのエネルギッシュなライブに拍手と笑顔

 
 サトシンさんが考案した「おてて絵本」という遊びも紹介。手のひらを絵本に見立てて即興で物語をつくるもので、園児も体験した。この日は好きな動物から話を展開。サトシンさんが園児に質問しながら会話するうちに、自然と1つの“お話”が出来上がった。「子どもは大人に話を聞いてもらいたい生き物。親がその気持ちを受け取り、やり取りする中でコミュニケーションが生まれ、子どもは満足する。作っている話の中で日常では見えなかった子どもの気持ちが見えてくることもある」とサトシンさん。絵本を読んだり物語を考えたりすることで「想像力が育まれる」とも。
 
「おてて絵本」で“物語作り”体験。希望した園児と藤原園長が挑戦した

「おてて絵本」で“物語作り”体験。希望した園児と藤原園長が挑戦した

 

 
 言葉遊びの面白さ、何げないやり取りの中に込められた自分らしく生きるためのヒント…。子どもだけでなく大人にも響く作品を存分に楽しんだ親子は、たくさんの笑顔を広げた。サトシンさんの作品に初めて触れた久保梓ちゃん(4)は「楽しかった!絵本大好き」とにっこり。母静樺さん(27)は「子ども向けの絵本だけど、深いメッセージが込められている。サトシンさんご自身の言葉で聞けて良かった」と大満足。夜、寝る前の読み聞かせを習慣にしていて、「絵本は子どもとの貴重なコミュニケーション。忙しい中でもその時間は大事にしている。今日聞いたことも今後に生かしたい」と話した。
 
 ライブ後は本の販売やサイン会、記念撮影も行われた。サトシンさんは「自分の人生を自分のカラーで切り開いていって」などと声を掛けながら、親子と親しく会話。思い出に残るひとときを提供した。この日は、同園が開設する子育て支援センターバンビルームの記念イベントとしても同ライブが行われ、大町の市民ホールTETTOで市内の親子連れや大槌町のこども園の園児らが楽しんだ。
 
会場では絵本の販売も。サトシンさんからサインももらった

会場では絵本の販売も。サトシンさんからサインももらった

 
一緒に写真も撮って思い出づくり。かけがえのない時間となった

一緒に写真も撮って思い出づくり。かけがえのない時間となった

 
 両ライブでサトシンさんは「絵本を読む時間はほんの3~4分。忙しい中でもできる。子どもにとって一番うれしいのは、大好きなお父さん、お母さんが寄り添って言葉や愛情をかけてくれること。家庭でもぜひ、親子で絵本を楽しんでほしい」と呼び掛けた。
 
 かまいしこども園は2015年に開園した。前身の釜石保育園(大渡町)が11年の東日本大震災津波で被災。甲子町の旧釜石南幼稚園舎を借りて保育を続けた後、幼保連携型認定こども園に衣替えし、現在地で新たな歴史を刻む。藤原園長は「多くの人の助けがあってここまでこられた。応援してくれる方、頑張ってやってきてくれた職員がいるからこその10年。本当に感謝」と目を潤ませる。7月には10年の歩みを振り返るイベントも開催予定。19日は同園の施設見学、20日は市民ホールTETTOで夏まつりを企画する。

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進む食、弾む会話 釜石・甲子地区で「子ども食堂」初開設 市内3カ所目 波及に期待

 「みんなで食べるとおいしいね!」甲子地区で初めて開かれた子ども食堂=正福寺幼稚園

「みんなで食べるとおいしいね!」甲子地区で初めて開かれた子ども食堂=正福寺幼稚園

 
 子どもの居場所、孤食防止、地域交流の場として各地で開設が進む「子ども食堂」。釜石市内では昨夏から学校の長期休暇に合わせた行事として、地域団体による試行がスタート。同市の女性奉仕団体、国際ソロプチミスト釜石はまぎく(佐々木未知会長、会員14人)は3月31日、初の試みとなる同食堂を甲子町の正福寺幼稚園で開いた。地域の幼児から小学生39人が参加し、遊びと食事で楽しい時間を過ごした。
 
 この日のメニューは子どもたちが好きなカレーライス。会員9人が前日から準備にあたり、約80人分を調理した。食材は地元住民からの寄付金などを利用して購入。米は正福寺が寄付した。ジュースやヨーグルト、帰りのおみやげも市内の事業所などが協賛した。
 
カレーライスの調理にあたる国際ソロプチミスト釜石はまぎくの会員ら

カレーライスの調理にあたる国際ソロプチミスト釜石はまぎくの会員ら

 
 食事の準備が整うまでの間、子どもたちはいろいろな遊びに夢中になった。折り紙、輪投げのほか、パラリンピック種目にもなったヨーロッパ発祥のスポーツ「ボッチャ」も体験した。大型絵本の読み聞かせもあった。
 
正福寺幼稚園内のホールが会場。大勢の子どもたちが集まった

正福寺幼稚園内のホールが会場。大勢の子どもたちが集まった

 
折り紙を楽しむ子ども。作品に顔を描き入れたり自由な発想で

折り紙を楽しむ子ども。作品に顔を描き入れたり自由な発想で

 
市内でも普及が進む「ボッチャ」に挑戦(写真上、左下)。大型絵本の読み聞かせも(右下)

市内でも普及が進む「ボッチャ」に挑戦(写真上、左下)。大型絵本の読み聞かせも(右下)

 
 午前11時半すぎ、ホール内にテーブルを並べて着席すると佐々木会長(54)があいさつ。子ども食堂開設の経緯などを説明し、みんなで「いただきます」をして昼食となった。子どもたちは「おいしい」と笑顔を輝かせながらカレーを頬張り、おかわりする子も多数。ご飯が足りなくなるほど好評だった。
 
ソロプチミストの会員らは配膳に大忙し。運営の大人の分も含め約80人分を用意した

ソロプチミストの会員らは配膳に大忙し。運営の大人の分も含め約80人分を用意した

 
みんなで「いただきます」のあいさつ。作ってくれた人に感謝して…

みんなで「いただきます」のあいさつ。作ってくれた人に感謝して…

 
 菊池芽生さん(甲子小3年)は「カレーライス大好き。うまい」とにっこり。おかわりもして存分に味わった。初めてのボッチャも「楽しかった」と話し、「またやってほしい。次も来る」と気に入った様子。母未来さん(37)は「近所には同年代の子が少ない。休日に多くの子どもたちと同じ時間を過ごせるのは貴重。食欲も増しているよう」と喜んだ。
 
 1年男児の母親(35)は「子どもだけだと不安もあったので、親も参加できるのはありがたい。少し緊張もあるようだが楽しそう」とわが子の様子に目を細めた。子ども食堂については「いろいろな人に会っておしゃべりできる場があるのはすごくいいこと。親以外にもつながりを持ち、一人ぼっちにならないことが大事」と話した。
 
春休み中の子どもたちは久しぶりの友だちとの食事。楽しい雰囲気に食欲も倍増!?

春休み中の子どもたちは久しぶりの友だちとの食事。楽しい雰囲気に食欲も倍増!?

 
 ソロプチミスト釜石は同市の子ども食堂の実情を聞き、必要性を実感。「まずは一歩を踏み出そう」と、未開催だった甲子地区を対象に選んだ。甲子小を通じてチラシを配り、春休み中の子どもたちに参加を呼び掛けた。申し込みは予想以上。市子ども課や地元の民生委員・児童委員、事業所などに協力してもらい、初運営に挑んだ。「子どもたちも喜んでくれて感激。反響は思った以上」と佐々木会長。長く続けていくには地域母体への運営移行も必要と考え、「私たちがきっかけづくりをして、地域の人たちが自分たちでできるようになっていけば」と今後を思い描く。
 
 市子ども課によると、同市での子ども食堂の実施は昨年7月、本年1月の小佐野地区(同地区民生委員・児童委員協議会)、3月の平田地区(平田いきいきサークル)に続き、甲子地区(国際ソロプチミスト釜石はまぎく)が3カ所目(かっこは実施主体)。小佐野地区が一つのモデルとなり、徐々に広がり始めている。村山明子子ども課長は「釜石の場合は地域の顔が見える関係づくりに主眼を置く。顔見知りになれば見守りも可能。常設は難しいが、単発でも無理なく続けることが大事」と話す。

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街なかに戻る歓声 釜石・大只越公園リニューアル 震災後の仮設商店街から復旧、利用再開

大只越公園がリニューアル。新しい遊具で楽しむ子どもたち

大只越公園がリニューアル。新しい遊具で楽しむ子どもたち

 
 東日本大震災後に仮設商店街用地となっていた釜石市大只越町の大只越公園(愛称:青葉公園)の復旧整備工事が完了し、3月下旬から利用が再開された。幅広い年代が体を動かせるよう遊具を新調。トイレはバリアフリー化した。樹木を伐採、せん定して見通しの良い開放的な空間を確保。街なかに戻ってきた憩いの場に子どもたちの歓声や住民の笑顔が広がっている。
 
 市中心部の東部地区にある公園は面積約3300平方メートル。3つのエリアに分類し、遊具エリアに設置した滑り台やブランコなど子ども向け遊具3基はリニューアル。大人も楽しめるよう健康遊具2基を新たに加えた。休憩場所にもなるあずまや1カ所を新設。運動エリアは細かく砕いた石を敷いたダスト舗装に改修し、転倒時のけが軽減など安全性の向上を図った。
 
子どもたちが夢中になる「遊具エリア」

子どもたちが夢中になる「遊具エリア」

 
大人も体を動かせる健康遊具を設置した

大人も体を動かせる健康遊具を設置した

 
走ったりボールで遊んだりできる「運動エリア」

走ったりボールで遊んだりできる「運動エリア」

 
 石応禅寺境内に隣接し、静かなたたずまいも特徴の一つ。自然観賞エリアはもともとある人工池などを生かしつつ、周囲の立木を手入れした。公園内には、明治の津波などに関する記念碑、供養碑が点在し、まちの歴史を知る散策も楽しめる。トイレも改修し、車いすやベビーカーでも気軽に利用できるようスロープを設けた。
 
「自然観賞エリア」で池をのぞき込む子どもたち

「自然観賞エリア」で池をのぞき込む子どもたち

 
記念碑などがあり津波の歴史を知ることもできる

記念碑などがあり津波の歴史を知ることもできる

 
 3月25日に現地で開園式があり、近隣住民や市関係者ら約50人が参加。あいさつに立った小野共市長は「公園が地域の活性化につながり、子どもたちの健やかでたくましい成長の一助になれば」と期待を述べた。
 
 子どもたちはさっそく広場でボール遊びをしたり、思いっきり走り回った。真新しい遊具に触れて、うれしそうな笑顔も次々と伝ぱ。根元璃玖君(10)は「全力で走れる。友達と何回も来るー」と言って駆け出し、母眞生さん(32)は「フェンスがあり、安心して送り出せる。なじみのある場所だったが、震災後は声が減ったイメージがあった。明るさが戻ってきた」と喜んだ。
 
開園式に参加した地域住民や関係者ら

開園式に参加した地域住民や関係者ら

 
 同公園は1978年の供用開始から市民活動の場として親しまれてきた。2011年の震災後は被災事業者支援のため仮設の青葉公園商店街として営業し、なりわい再建を後押し。各事業者が本設の店舗を構えたことから役割を終え、2020年に解体撤去した。公園の復旧整備に向け、市は地域住民らを交えたワークショップを3回開催。寄せられた意見を設計に取り入れ、昨年9月に工事に着手。今年3月に整備を終えた。
 
 大只越町内会の山崎義勝会長(70)は「限られた予算の中で創意工夫し、私たちの意見を十分に反映してもらった。憩いの場、交流の場として大いに活用したい」と歓迎。開園式の参加者にきれいな環境を保つような利用の仕方、協力も求めていた。

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「防災ポリパン」って? 幼い子を持つ母親ら災害時に役立つ知識学ぶ 震災経験の先輩ママが伝授

かまいしこども園子育て支援センターバンビルーム「防災に役立つポリパン作り」

かまいしこども園子育て支援センターバンビルーム「防災に役立つポリパン作り」

 
 災害時、被災者の命をつなぎ、心身に力を与えるのはやはり食事。限られた食材、調理器具で簡単に作れるメニューは知っておいて損はない。その一つが「ポリパン」。高密度ポリエチレンの袋に材料を入れてゆでるだけでできるパンだ。蒸しパンのようなやわらかい食感、具材を入れれば味のアレンジも可能で、幼い子どもでも食べやすい。釜石市天神町のかまいしこども園子育て支援センターバンビルームが開催したポリパン作り教室を取材した。
 
 同センターの3月のイベント。市保健福祉センター内の調理室で開かれた教室にはセンターを利用する母親4人が参加した。講師を務めたのは同市在住で、一般社団法人ポリパンスマイル協会(梶晶子代表理事)認定のポリパンジュニアマイスター櫻井京子さん(40)。天然酵母を使ったフライパンでのパン作りなども教えている。
 
 ポリパンの材料は強力粉、薄力粉、ベーキングパウダー、砂糖、塩、卵、牛乳、オリーブオイル。湯せん調理が可能な高密度ポリエチレン袋に2種の粉を同量ずつ入れ、砂糖、塩、ベーキングパウダーを加えて、袋を振ってよく混ぜる。次に、溶いた卵に牛乳とオリーブオイルを加えたものを袋に入れ、さらに混ぜる。卵や牛乳のアレルギーがある場合は水でも代用可能。この日は具材として甘納豆、レーズンが用意され、好みで入れた。材料が混ざったら空気を抜いて袋を閉じる。袋は菜箸につるし、湯を沸かした鍋に入れて、弱火で20分ほどゆでる。時々、袋を動かし、熱が均一に伝わるようにする。
 
粉類を入れた高密度ポリ袋は空気を入れて振り、よく混ぜる

粉類を入れた高密度ポリ袋は空気を入れて振り、よく混ぜる

 
卵を溶き牛乳、オリーブオイルを加えたものを袋に入れ粉と混ぜる。空気を抜いた袋は菜箸につるしてゆでる

卵を溶き牛乳、オリーブオイルを加えたものを袋に入れ粉と混ぜる。空気を抜いた袋は菜箸につるしてゆでる

 
 櫻井さんは「災害時は断水で洗い物ができない場合がある。袋調理なら食器も不要。計量スプーンの代わりにペットボトルキャップ(約大さじ2分の1)も利用可能。最近は計量目盛りのある紙コップも販売されている」などと教えた。この日は、同じ要領で作る簡単“肉じゃが”も作った。肉の代わりにコンビーフを入れ、調味料は麺つゆを使った。
 
 ゆで時間を利用し、講師の櫻井さんは自身の東日本大震災の経験を語った。当時は海岸部の会社に勤務。後輩と避難し津波から逃れた。妊娠初期だった櫻井さんは避難所に身を寄せたが、体調が悪くても自分からは言い出しにくかったという。「困った時に『助けて』と言えるのは大事。声を上げないと、助けたいと思っている人も助けることができない。子育ても同じで1人では限界がある。『受援力』を身に付けて」とアドバイス。
 
 産前産後の母親のサポート活動も行い、2児の母でもある櫻井さん。小学生の子どもが準備したという防災(避難)バッグも見せ、非常持ち出し品や飲料水、非常食など備えの例を説明した。「車に膝掛け、子どもの着替え、お菓子などを常備しておくと、普段はもちろん、災害時にも役立つ。幼い子どもがいる場合はそれ用の準備も必要」と話した。
 
講師の櫻井さんは自身の子の避難バッグを紹介。必要と思うものを子どもが自分で詰めたという

講師の櫻井さんは自身の子の避難バッグを紹介。必要と思うものを子どもが自分で詰めたという

 
震災時の経験や乳幼児と避難するための準備について話す櫻井京子さん

震災時の経験や乳幼児と避難するための準備について話す櫻井京子さん

 
 ゆで上がったパンは少し試食し、子どもと一緒に食べるのを楽しみに持ち帰った。1歳2カ月の子を持つ沼倉絵梨さん(34)は「ゆでるだけでパンができるのは新たな発見。とても簡単。子どもも食べられそう」と感激。災害時の心配は、やはり子どもの食事。「何を食べさせたら…と不安はある。今日はいろいろ勉強できてありがたかった」と話し、「この機会に防災バッグの中身も再度確認したい」と意識を高めた。
 
時間がたつにつれ、袋の中の生地が膨らむ。出来上がりを待つ参加者

時間がたつにつれ、袋の中の生地が膨らむ。出来上がりを待つ参加者

 
袋の中のパンを切ってみると、ふっくらとした仕上がりに…

袋の中のパンを切ってみると、ふっくらとした仕上がりに…

 
 ポリ袋調理は災害時だけでなく、キャンプなどアウトドア活動でも活躍。講師の櫻井さんは、みそを使った常備食のレシピなども教えた。防災食といっても災害時に特化したものばかりではない。日常の食のアレンジが非常時にも有効であることが分かる教室となった。
 
ポリ袋調理でできた簡単肉じゃが(写真左)。みそに切干し大根や椎茸を混ぜた常備食は湯で溶けばみそ汁に(同右)

ポリ袋調理でできた簡単肉じゃが(写真左)。みそに切干し大根や椎茸を混ぜた常備食は湯で溶けばみそ汁に(同右)

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バリアフリーな環境で心豊かな体験を 子どもたちが旬の魚マダラをさばいて食す 生態にも興味津々

インクルーシブおさかな体験教室=根浜海岸レストハウス

インクルーシブおさかな体験教室=根浜海岸レストハウス

 
 障害の有無や性別、人種などに関係なく、互いを認め合い共生していく「インクルーシブ」社会。その理念を基にした各種取り組みが釜石市でも行われている。2月25日、鵜住居町の根浜海岸レストハウスでは「インクルーシブおさかな体験教室」が開かれた。バリアフリーでつくる釜石自然遊びの会(佐々木江利代表)が主催。市内外から13家族37人が参加し、旬のマダラをさばいて調理。食事も楽しんだ。
 
 講師は同市地域おこし協力隊員で、魚食普及活動を行っている清原拓磨さん(26)。この日は地元の定置網で漁獲された体長60~80センチのマダラ3匹が用意された。はじめに生態を説明。水深約200メートルの深海に住み、口元のひげでにおいなどを感知して餌を探すこと、雄は白子に価値があり、雌の倍の値段で取引されることなどを教えた。子どもたちは体を触ったりしながら観察。疑問に思ったことを次々に質問した。
 
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体のまだら模様が特徴の魚「マダラ」。触ってみると?

 
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マダラの生態について教える清原拓磨さん(左)

 
 観察後はさばき方。子どもたちが最初に体験したのはうろこ取り。専用の道具や金たわしを使って、きれいにうろこを取り除いた後、清原さんが腹を切り開き、身と内臓を分けた。子どもたちは初めて見る腹の中に興味津々。驚きの声を上げながら見入った。切り分けた身から細かい骨を取り除く作業も体験した。切り身はタラフライに。衣をつける調理にも挑戦した。
 
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うろこ取りを体験。清原さんいわく、残っていると食感が悪くなったり、においが出てしまうそう

 
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目を凝らして細かい骨抜きにも挑戦した

 
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清原さんが丁寧にさばき、体の中の各部位も観察した=写真提供:主催者

 
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切り身はタラフライに。衣をつける作業も子どもたちで

 
 盛岡市の菅原蓮君(10)は「タラの体は思ったよりやわらかい。胃袋は大きくてイワシが入っていたのにはびっくり」と目を丸くした。友人の冨澤えみりさん(7)は「ちょっと魚がかわいそうだけど、人は魚を食べて生きているので感謝しないと。自分で調理したのを食べるのは楽しみ」と声を弾ませた。2人の母親は、切り身になる前の魚の姿を見る貴重な機会を歓迎。「魚への興味、調理への関心も高まれば」と期待した。
 
 同教室を企画した「バリアフリーでつくる釜石自然遊びの会」は昨年発足。医療的ケア児の母である佐々木代表(44)が根浜でのバリアフリービーチ実現への第一歩として、インクルーシブを理念とした交流の場を持ちたいと立ち上げた。これまでに海辺でのお茶会、たき火やカレー調理、ピザ作りなどのキャンプ体験を観光施設・根浜シーサイドの協力で実施。当事者家族だけでなく同年代の子を持つ家族を含めた活動の機会を通じて、互いに助け合える関係づくりの構築を進めてきた。
 
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タラフライは手作りパンにはさんでバーガー風に(写真上段)。楽しい体験を終え笑顔を輝かせる参加者(同下段)=写真提供:主催者

 
 今回の教室には障害などで支援が必要な親子4組が参加した。親の一人は「これまで海に行くのはすごくハードルが高かった。今回、室内ではあるが、魚と触れ合えたことで、海にも一歩近づけた気がする」と話した。
 
 医療的ケアや支援が必要な子どもたちの親は、助けが必要な場面でも「自分たち家族の問題」と我慢してしまいがちだという。しかし、家族だけが頼りでは限界がきてしまう。佐々木代表は「本人にとっても家族以外の人に甘えられる環境は必要。まずは顔見知りになり、お互いを理解するところから」と小さな一歩の積み重ねを願う。未来に生きる同様の家族のためにも「『これが大変だから手伝ってほしい』と声をあげられる環境をみんなで作っていきたい」と思いを込めた。