開設10年 かまいしこども園が感謝の夏まつり 震災後の支援者らもお祝い 再会の笑顔花開く
かまいしこども園開設10年記念夏まつり=20日、市民ホールTETTO
釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児80人)は本年度、開設から10年目を迎える。前身の釜石保育園(大渡町)が2011年の東日本大震災津波で全壊。甲子町松倉の旧釜石南幼稚園園舎を借り保育を続けた同園は15年、幼保連携型認定こども園として、現在地で新たなスタートを切った。これまで同園を支えてきた人たちに感謝の気持ちを伝えようと、園は19、20の両日、記念イベントを開いた。
19日は園舎で「にじいろわくわくこどもえんまつり」と銘打って、施設見学会を実施。震災後に支援してくれた市内外の人たちや交流のある地域住民らを招いて、園内の様子を公開した。園児らははんてん姿で来園者をおもてなし。手作りチケットを配り、ホールに設けた縁日広場で“お客様”に楽しんでもらった。綿あめ、ポップコーン、かき氷、ヨーヨー釣り…など各ブースで園児らが力を発揮。情操教育の一環で取り組む茶道のお点前も披露し、抹茶を振る舞った。
園舎で行われた「にじいろわくわくこどもえんまつり」。園児らが縁日広場で来園者をもてなした=19日
来園した高齢者施設の利用者、職員と交流する園児。笑顔の輪が広がる
この日は、ハロウィーンや花の日の訪問活動で交流のある大町の高齢者施設、やかた(看護小規模多機能ホーム、グループホーム、デイサービス)から利用者8人も来園。園児らと触れ合った。菅原満子さん(85)は「ほんとにかわいいねぇー。おいしい抹茶までいただいた。今は子どもが少ないからね。とっても楽しかった」と顔をほころばせた。
神奈川県川崎市の自由業、島田弘一さん(57)は震災後の支援活動で同園とつながり、今も年に数回、足を運び続ける。「子どもたちは相変わらず元気で楽しそう。大人もそういう子どもたちに励まされて元気になっていくのかな」。震災後の11年7月に初めて釜石入り。津波の痕跡がまだ色濃く残る時期を目にしていて、姿を変えた今のまちにも目を見張る。「『いつでもおいで』と温かく迎えてくれる人たちがいるからこそ、不安なく来られる。今後もお手伝いできることがあれば…」と話す。
昼にはお祭りメニューの給食をバイキングで…。楽しい雰囲気に箸も進む
20日は市民ホールTETTOと釜石PITで夏まつりを開催した。園児も虎舞を習う釜石虎舞保存連合会がオープニングを飾った。ホール前広場にはキッチンカーなどが並び、軽食や飲み物を販売。ホールBなどにさまざま遊び、工作、ゲームコーナーが用意され、子どもたちが楽しんだ。同園に併設される子育て支援センター「バンビルーム」の活動紹介コーナーも。PITではこれまでの歩みを記録した写真やポスター、新聞記事の展示、映像上映も行われた。
20日の夏まつりは威勢のいい釜石虎舞で幕を開けた
開始から多くの来場者でにぎわう会場=TETTO前広場
工作やゲームなど楽しい体験がいっぱい!子どもたちを喜ばせた
会場には現園児と保護者、卒園児のほか、地域住民や震災後の同園を支え続けてきた多くの支援者らが足を運んだ。1歳半から同園に通った内山銀さん(双葉小6年)は「お祭り気分で楽しいし、園で一緒だった友達にも久しぶりに会えてうれしい」と笑顔。母早苗さん(33)は「松倉の仮園舎の時に入園し、今のこども園に移った。大変なこともあったが、園の行事も豊富で(子どもは)すごく楽しそうに通っていた。両方の思い出がたくさんある」と懐かしんだ。
松倉の仮園舎時の夕涼み会で歌を披露したボランティアも駆け付けた
親子で楽しい時間を満喫。夏の思い出の1ページに…
岩手県私立保育連盟の髙橋学会長(盛岡市、下太田保育園園長)は、仮園舎や台風被害を受けた現園舎に見舞いに駆け付けた当時を振り返りながら、「藤原園長は子どもたちのためだけではなく、先生方、地域の人のためにと頑張ってこられた。特に沿岸は子どもの減少が進むが、地域に若い夫婦が居つくためには保育施設がないといけない。困難を乗り越え、存続してきた同園をこれからも応援していきたい」と話した。
園の歩みを紹介する展示コーナー。懐かしい写真、映像などが公開された=釜石PIT
天神町の「かまいしこども園」園舎。近くには市庁舎や復興住宅がある
被災、仮園舎での保育、こども園としての園舎再建、コロナ禍…。震災後の13年を振り返る藤原園長は、これまでの数えきれない支援に「みんなにありがとうしかない」と深く感謝。会場に足を運んだ卒園児がすくすく育っている姿にも感激し、「園にいた時の保育、教育が少しでも今の成長に役立ってくれているならうれしい」と話した。今回のイベントは若い職員に園の歩みを理解してもらう機会にもなった。「いろいろな人が関わってくれて、助けられてここまできたことを知ってほしい。今回、みんなが頑張ってくれたことで新しいつながりが生まれ、また前に進んでいける。職員一同、力を合わせ、次の歴史を築いていければ」と未来を見つめた。
釜石新聞NewS
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