タグ別アーカイブ: 産業・経済

ringyo4020

建設業者の林業参入を支援 県主導で技術研修会初開催 地域の森林環境保全へ新たな取り組み

林業研修で伐木の技術を学ぶ参加者=片岸町、釜石地方森林組合事務所

林業研修で伐木の技術を学ぶ参加者=片岸町、釜石地方森林組合事務所

 
 東日本大震災の復興工事が終わり事業量が減った沿岸地域の建設業者が、人手不足の林業へ参入するのを支援しようと、県主導の取り組みが釜石地域で始まった。24日、建設会社の社員などを対象とした林業の知識や技術習得のための研修会が、釜石市片岸町の釜石地方森林組合事務所で開かれた。
 
 研修会は県沿岸広域振興局農林部が、林業新規参入者スキルアップ事業(地域経営推進費)として実施。釜石、大槌、山田の3市町の建設業5社とNPO法人などから23人が参加した。研修に先立ち眞島芳明農林部長は「2019年度から始まった森林経営管理制度により、各市町村では森林整備事業の増加が見込まれる。建設業者の本格的な参入を支援するため、スキルアップ事業を実施していく」と研修の目的を示した。
 
県沿岸広域振興局が初めて開いた「林業新規参入者スキルアップ研修」

県沿岸広域振興局が初めて開いた「林業新規参入者スキルアップ研修」

 
 釜石地方森林組合(植田收代表理事組合長)の職員らが講師となり、座学と実技講習が行われた。座学で同組合の高橋幸男理事(兼参事)は「管内(釜石市・大槌町)の民有林3万8000ヘクタールのうち、現在、所有者が組合に管理を委託しているのは5700ヘクタールで、管理委託は年々増加傾向にある」と説明。近年は地球温暖化の影響とみられる豪雨災害が増えている状況もあり、「CO2の吸収量増、強固な地盤形成を促す適正な森林管理が求められる」と話した。
 
林業の仕事について説明する釜石地方森林組合の高橋幸男理事(兼参事)

林業の仕事について説明する釜石地方森林組合の高橋幸男理事(兼参事)

 
 参加者は作業道の開設方法、地拵(こしら)え、植林、下刈り、除・間伐、伐木作業の基本ルールなど林業に必要な基礎知識を学習。座学の後、チェーンソーで立木を伐倒することを想定した実技講習が行われた。木が倒れる方向をコントロールしながら安全、正確に切り倒すための受け口、追い口の作り方などを組合職員から教わった。
 
 本研修実施の背景には、社会情勢の変化に伴う建設業と林業が抱える問題がある。東日本大震災の復興工事がほぼ完了し、公共工事の事業量が減少した建設業では雇用の維持が課題。林業は高齢化などで従事者が減少傾向にある一方、「森林経営管理制度」の実施で今後、事業の増加が見込まれている。同制度は、手入れが行き届かない森林の所有者に市町村が意向調査を行い、経営管理の委託を受けた場合に地域の林業経営者に再委託するほか、林業経営に適さない森林は市町村が公的に管理するというもの。
 
座学の後、組合の敷地内で行われた実技講習

座学の後、組合の敷地内で行われた実技講習

 
伐倒方向を意識した切り込みを入れる練習

伐倒方向を意識した切り込みを入れる練習

 
 同組合管内では2年ほど前から建設業者の林業への参入が試験的に行われ、現在、釜石市内の2社が組合の業務を請け負う形で技術習得を進めている。「林業の担い手確保は大きな課題。新規参入は非常に助かる」と高橋理事。将来的には自社で山を所有し、森林経営をするのが理想だが、「経営が成り立つかどうか不安もあるだろう。議論を重ね、持続可能な形へ一番いい方法を見つけていく必要がある」と話す。
 
組合職員(右)がチェーンソーの扱い方を伝授

組合職員(右)がチェーンソーの扱い方を伝授

 
 研修に参加した青紀土木(釜石市鵜住居町)の吉田智春さん(37)は、昨年5月から同組合の業務に携わる。異業種参入に「林業は体力的にきついところもあるが、新しいことに挑戦でき満足感も。地域の環境を守る仕事でもあり、貢献できるのはうれしい」と意欲を見せる。
 
 研修はこの後12月まで4回実施予定。実際に現場に入り、下刈りや植林、除伐、間伐などの実習を行うことにしている。

meijiphoto3189

「明治日本の産業革命遺産」写真で感じる魅力満載 フォトコン作品展 釜石で8/31まで開催

鉄の歴史館で開催中の「明治日本の産業革命遺産フォトコンテスト」作品展

鉄の歴史館で開催中の「明治日本の産業革命遺産フォトコンテスト」作品展

 
 釜石市の「橋野鉄鉱山」など全国8県11市23資産が世界遺産登録されている「明治日本の産業革命遺産」。日本の近代化を急速に推し進めた製鉄・製鋼、造船、石炭産業に関わる各遺産は、今も目に見える形で私たちに歴史的意義を伝え続ける。2015年の世界遺産登録から間もなく10年を迎えるのを前に、その価値を再認識し広く発信する機運醸成にと昨年度、フォトコンテストが行われた。橋野鉄鉱山を撮影した作品が最優秀賞に輝いた同コンテストの作品展が31日まで、同市大平町の市立鉄の歴史館で開かれている。
 
 同館2階会議室で開かれる作品展は市が独自に企画。最優秀賞を受賞した橋野鉄鉱山の作品「悠久のたたら場跡と星空」=佐々木弘文さん(釜石市)撮影=をはじめ、優秀賞2点(端島炭鉱、遠賀川水源地ポンプ室)、エリア賞8点を拡大プリントしパネル展示する。釜石のエリア賞は「原燃料の山と橋野一番高炉」=藤原信孝さん(同)撮影=が受賞している。
 
最優秀賞を受賞した佐々木弘文さん(釜石市)の橋野鉄鉱山の写真(右)は多くの人が感嘆の声を上げながら見入った

最優秀賞を受賞した佐々木弘文さん(釜石市)の橋野鉄鉱山の写真(右)は多くの人が感嘆の声を上げながら見入った

 
釜石のエリア賞を受賞した一番高炉を捉えた藤原信孝さん(釜石市)の作品

釜石のエリア賞を受賞した一番高炉を捉えた藤原信孝さん(釜石市)の作品

 
 同コンテストは、構成資産のある県、市で組織する「明治日本の産業革命遺産」世界遺産協議会(事務局:鹿児島県)が登録10周年に向けたプロモーションの一環として企画。「つなぐ」をテーマに、昨年12月から本年2月まで作品を募集したところ、1084点の応募があった。審査はプロの写真家の選考と資産エリアの自治体投票で行われた。8エリア(佐賀、長崎、三池、鹿児島、八幡、萩、韮山、釜石)の各賞は、関係自治体に選考が任された。
 
優秀賞を受賞した長崎市の端島炭坑の写真(右)は普段なかなか見られない角度が印象的

優秀賞を受賞した長崎市の端島炭坑の写真(右)は普段なかなか見られない角度が印象的

 
静岡県伊豆の国市の韮山反射炉の写真「秋空に映える」=韮山・エリア賞

静岡県伊豆の国市の韮山反射炉の写真「秋空に映える」=韮山・エリア賞

 
福岡県北九州市の官営八幡製鉄所旧本事務所の写真「夢と浪漫を求めて」=八幡・エリア賞

福岡県北九州市の官営八幡製鉄所旧本事務所の写真「夢と浪漫を求めて」=八幡・エリア賞

 
 受賞作11点は同コンテストのWebサイトで公開されているが、展示会場で見る大型パネル作品は、来場者の視覚に訴える色彩の美しさや構図の迫力が際立つ。古い建物や構造物、遺跡など一見地味な遺産が撮影者の視点と技で魅力的に切り取られており、大型パネル化でより一層、見る人に強い印象を与えている。
 
 会場では、釜石の「橋野鉄鉱山」に関する応募作62点から抜粋した10点(撮影者5人)も展示。季節の移り変わりでさまざまな表情を見せる高炉場跡が、同所になじみのある市民にも新たな感動をもたらしている。
 
橋野鉄鉱山の応募作品の一部を公開。季節や時間帯で多彩な光景が見られる

橋野鉄鉱山の応募作品の一部を公開。季節や時間帯で多彩な光景が見られる

 
橋野鉄鉱山の山神社跡に目を向けた作品。鳥居の両側の大木が圧巻

橋野鉄鉱山の山神社跡に目を向けた作品。鳥居の両側の大木が圧巻

 
 同協議会は遺産を分かりやすく解説した新たなパンフレットも作成した。掲載のために撮影したプロ写真の中から16点を本作品展で公開している。コンテスト応募者が題材にしなかった資産を中心に紹介する。
 
 会場では、来場者が作品の感想を付箋に書いて貼る参加型企画も実施。市世界遺産課の森一欽課長補佐は「われわれでは発信できない視点で切り取られた作品が並ぶ。釜石市民が見慣れた橋野鉄鉱山も普段とは違った見方で魅力を感じてもらえるのではないか。寄せられたコメントも楽しんで見てみては」と来場を呼び掛ける。
 
 同コンテストは本年度も開催中で、10月15日まで作品を募集している。テーマは「記憶」。作品は応募者本人が過去1年以内に撮影した未発表のものに限る。応募方法などは同コンテストの特設サイトで閲覧できる。

 

釜石鉱山フォトコンテストも開催中 旧鉱山事務所の国有形文化財登録10周年で市が作品募集

 
鉱石の採掘が行われたことを示す跡が残る釜石鉱山周辺

鉱石の採掘が行われたことを示す跡が残る釜石鉱山周辺

 
 釜石市は「近代製鉄発祥の地」の原点となった甲子町大橋の釜石鉱山をテーマとしたフォトコンテストを開催している。市が管理する「旧釜石鉱山事務所」が国登録有形文化財(建造物)になってから本年で10周年を迎えるのを記念し企画。事務所や周辺に残る痕跡など釜石鉱山の残したい風景を写真で募集する。応募は10月30日まで。
 
 釜石鉱山は1727(享保12)年に発見された。後に盛岡藩士大島高任が同地に洋式高炉を築造。1858(安政4)年、鉄鉱石を原料とした連続出銑に日本で初めて成功した。1880(明治13)年、鈴子に官営製鉄所が操業すると鉄道が開通し、機関車で鉄鉱石を運搬。製鉄所が民間経営となった後も供給が続いた。同鉱山からは銅鉱石や石灰石も産出され、2000(平成12)年まで採掘が行われた。
 
 大橋に残る旧釜石鉱山事務所は1951(昭和26)年に建設された。2008(平成20)年に日鉄鉱業が建物を市に寄贈。市は寄託された鉱山関連の資料を一般公開する施設として運営している。建物は2013(平成25)年に国登録有形文化財となっている。
 
旧釜石鉱山事務所の建物や鉄、銅鉱石の選鉱場跡が残る一帯

旧釜石鉱山事務所の建物や鉄、銅鉱石の選鉱場跡が残る一帯

 
急峻な場所に礎石だけが残る鉄鉱石の選鉱場跡

急峻な場所に礎石だけが残る鉄鉱石の選鉱場跡

 
釜石鉱山学園跡地から臨む中ノ沢堆積場(写真正面奥)。積まれているのは選鉱後の不要な砕石

釜石鉱山学園跡地から臨む中ノ沢堆積場(写真正面奥)。積まれているのは選鉱後の不要な砕石

 
 募集する写真は応募者本人が過去1年以内に撮影した未発表のもの。立ち入り禁止場所や個人、企業の敷地などで了承を得ず撮影した作品は応募不可。応募方法や規約はポスターやチラシ、市広報7月15日号掲載のQRコードから確認できるほか、市のホームページからも検索できる。
 
 市は登録10周年記念事業として、旧釜石鉱山事務所の愛称募集も行う予定。フォトコンテストの受賞作品や選ばれた愛称は、「鉄の週間」期間中に行われる行事で発表することにしている。

sakana0844

見て、触れて知る釜石の魚 中妻公民館と岩手大 夏休み中の子どもたちに体験学習の場提供

サクラマスの解剖に挑戦する子ども=おさかな学習会、中妻公民館

サクラマスの解剖に挑戦する子ども=おさかな学習会、中妻公民館

 
 釜石市上中島町の中妻公民館(菊池拓朗館長)で5日、地元の海に生息する魚などに親しむ学習会が開かれた。同館が夏休み中の子どもたちを対象に企画。同市平田の釜石キャンパスで学ぶ岩手大農学部食料生産環境学科水産システム学コースの学生を講師に迎え、釜石湾で養殖事業が進むサクラマスの解剖や海の生き物に触れるタッチプールで子どもたちの興味、関心を引き出した。
 
 魚の解剖学習には市内の小学生8人が参加。同大同コースの4年生5人が講師を務めた。サクラマスの名前の由来、産卵期の体の変化、サケのように川でふ化し、海に出て産卵のため再び川を上ることなどを学んだ後、解剖に取り組んだ。
 
サクラマスの特徴を教える岩手大4年の吉郷向陽さん(右)

サクラマスの特徴を教える岩手大4年の吉郷向陽さん(右)

 
学生らに教わりながら解剖開始。慎重にはさみを入れる

学生らに教わりながら解剖開始。慎重にはさみを入れる

 
 用意されたサクラマスは、研究のために釜石キャンパス敷地内で育成した陸上養殖魚。子どもたちはピンセットとはさみを使って身を切り開き、体の中のさまざまな部位を取り出した。魚にも心臓や肝臓、胃など人間と同じようなさまざまな臓器がある一方、呼吸のための“えら”、浮き沈みの調節や肺の役割をする“浮き袋”など魚類特有の部位があることを学んだ。雌の個体からは卵も出てきて、子どもたちは大興奮。生まれ故郷などを識別するために入れられたタグ(標識)も見つかり、興味をそそられた。
 
はさみを器用に使い、体の中の各種部位をきれいに切り離す

はさみを器用に使い、体の中の各種部位をきれいに切り離す

 
こちらは大学生顔負けの腕前!? 体の中からは魚の由来を示すタグ(左上黄枠)も見つかった

こちらは大学生顔負けの腕前!? 体の中からは魚の由来を示すタグ(左上黄枠)も見つかった

 
取り出した部位をじっくり観察。学生らがやさしく見守る

取り出した部位をじっくり観察。学生らがやさしく見守る

 
 菊池彩楓さん(10)は初めての解剖体験に「さまざまな部位をきれいに分けることができて、気持ち良かった。魚の体の中を実際に見るのは初めて。心臓が思いのほか小さくてびっくりした」と新たな発見を喜んだ。
 
 解剖後は、学生らが研究のために釜石の海で捕まえた生き物に触れる体験。地元では“ドンコ”の呼び名で親しまれる「チゴダラ」、体のしま模様がラガーシャツに似ていることから釣り人らに“ラグビー”の愛称で呼ばれる「リュウグウハゼ」、カジカ類のほか、キタムラサキウニやイソガニ、ナマコなど12種が水槽に放たれた。軟体動物のアメフラシは、触ると防衛反応で紫色の液体を放出。子どもたちを驚かせた。タッチプールには、解剖学習参加者のほか事前に申し込んだ親子連れも体験に訪れた。
 
海の生き物タッチに笑顔!左下白枠は子どもたちに触られて紫色の液体を出したアメフラシ

海の生き物タッチに笑顔!左下白枠は子どもたちに触られて紫色の液体を出したアメフラシ

 
恐る恐るウニを手に取ってみる子ども(右)。初めての感触は?

恐る恐るウニを手に取ってみる子ども(右)。初めての感触は?

 
生きた魚にじかに触れられるのは貴重な経験

生きた魚にじかに触れられるのは貴重な経験

 
 学生メンバーの代表、吉郷向陽さん(21)は「海のある釜石に住んでいても、磯場などで生き物に触れ合ったことがないという子も多い。実際に見て触れての学習は、自分もそうだったが成長につながる。こういう機会を通じて少しでも魚に興味を持ったり、地球温暖化などで変化している海洋環境にも目を向けてもらえれば」と期待する。
 
 同大釜石キャンパスの学生は昨秋、市役所本庁舎とイオンタウン釜石で、地元の海に生息する魚などを水槽展示する「移動水族館ちょこっとかまいSEA(シー)!」を開催。市民が海の生き物に親しむ場を提供し、好評だった。中妻公民館では昨冬に同様のイベントを開催。「またやってほしい」との要望を受け、今回は「自由研究の題材にも」と夏休み中の実施を企画した。館内では7月31日から学習会当日まで水槽展示も行われた。厳しい暑さが続く今夏とあって、来館者からは「涼しげでいいねぇ」など歓迎の声が聞かれたという。
 
中妻公民館では5日の学習会まで水槽展示も行われ、来館者から好評だった

中妻公民館では5日の学習会まで水槽展示も行われ、来館者から好評だった

koukaiday1

見て触れて学ぶ 岩手の海 県水産技術センター(釜石) 公開デー 家族連れ、興味津々

岩手県水産技術センターの施設内探検ツアーを楽しむ参加者

岩手県水産技術センターの施設内探検ツアーを楽しむ参加者

  
 釜石市平田の岩手県水産技術センター(神康俊所長)で22日、公開デーとしてイベントが催され、家族連れらが施設見学や研究の紹介、体験活動を通して身近な海や水産について理解を深めた。
   
 公開デーは「海の日」に合わせて行ってきたが、ここ数年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止したり、入場などを制限する形の実施が続いた。制約のない開催は4年ぶり。同センターの研究に触れてもらう新企画を用意した。
  
 その一つが、探検ツアー。神所長らが環境化学実験室など普段は入ることができない施設内部を案内した。種苗棟ではアサリや海藻の養殖試験の様子を見学。地元企業などと協力し開発・商品化を進めた、ワカメを高速で塩漬けする機械「しおまる」について、神所長は「洗濯機に似ている。500キロを均質に効率よく作ることができる。三陸地域で約500台が使われ、広島や島根、北海道など全国で活躍している」と説明した。
  
 二枚貝や海藻類の養殖研究の様子を見学。施設内には震災の爪痕も残る(右下写真)

二枚貝や海藻類の養殖研究の様子を見学。施設内には震災の爪痕も残る(右下写真)

   
 この日くみ取った海水を顕微鏡で観察するコーナーも初企画。「アメフラシのたまご」などプランクトンが生息する小さな世界に大人も子どもも夢中になった。海の生き物に関するクイズを楽しむ、かるたも好評。「オタマジャクシじゃありません。口に4本のひげ。地震の前に暴れます」などと読み上げられると、子どもたちは元気よく「ナマズ」の絵札に手を伸ばした。
  
海のプランクトンを顕微鏡で観察。小さな世界に子どもたちは夢中

海のプランクトンを顕微鏡で観察。小さな世界に子どもたちは夢中

  
魚にまつわるクイズを解きながら挑むかるたも白熱した

魚にまつわるクイズを解きながら挑むかるたも白熱した

  
 ヒトデやウニなどの生き物に触れるタッチプール、塩蔵ワカメの芯抜き作業体験は恒例の催しながら、変わらず人気。60センチほどもあるタチウオの魚拓づくりに挑戦した大船渡市の中井幹太君(大船渡北小2年)は「うまくできた。うちに飾りたい。いろんな体験ができて楽しい」と満足げだった。
  
カラフルな魚拓づくりに挑んだ中井幹太君(左)。出来栄えに満足げ

カラフルな魚拓づくりに挑んだ中井幹太君(左)。出来栄えに満足げ

  
さまざまな海の生き物と触れ合えるタッチプールは子どもたちに人気

さまざまな海の生き物と触れ合えるタッチプールは子どもたちに人気

  
 漁業指導調査船・岩手丸(154トン)も公開。海洋の水温調査や底引き網漁での魚種調査などで使われる観測・漁労装置が並ぶ船内を興味深そうに巡った地元釜石の菊池結衣さん(甲子小2年)は夏休みに入ったばかりで、「船がかっこいい。絵日記に書ける」とにっこり。父・正利さん(53)も「こんな船は見る機会がないから楽しい。海が身近にある地域に住んでいるので、泳ぎに行ったり思い出をつくりたい」と目を細めた。
  
漁業指導調査船・岩手丸の船内巡りを楽しむ家族連れ

漁業指導調査船・岩手丸の船内巡りを楽しむ家族連れ

  
ずらりと並んだ調査用装置に大人も子どもも興味津々だった

ずらりと並んだ調査用装置に大人も子どもも興味津々だった

  
 海況変動に関する研究や貝毒に関する調査、県内水産物のブランド化を支える加工技術の開発など同センターの取り組みもパネルで紹介。神所長や研究員らは来場者と触れ合いながら、やりがいなども伝えていて、「何でもいいから興味を持ってもらえたら。そして将来、海や水産業に関わる人が増えたら」と期待した。

 

sakuraws1

出遅れ感 希少性で知名度アップなるか!? 釜石はまゆりサクラマス 地元飲食店、加工業者ら活用法模索

釜石はまゆりサクラマスの活用を探るワークショップ

釜石はまゆりサクラマスの活用を探るワークショップ

 
 釜石湾で養殖する「釜石はまゆりサクラマス」の事業化に伴い、釜石市はプロモーション活動に力を入れる。18日、地元の味として定着させようと、飲食店や水産加工業者対象のワークショップを「魚河岸テラス」で開催。料理人ら約10人が刺し身、焼き物などで味わいを確かめ、新メニュー開発にアイデアを出した。
 
 岩手県内の沿岸部では、サケやサンマの記録的な不漁を背景にサーモン類の養殖が各地で展開されるが、サクラマス生産に取り組むのは釜石だけ。その希少性を強みとして「ご当地グルメ」に育てていくのが狙いで、6月に実施した先行事例を学ぶセミナーに続く取り組みだ。
 
 アイデア出しの前に、釜石地域の地魚の良さを発信する魚食普及コーディネーターの清原拓磨さん(25)=市地域おこし協力隊員=が、サクラマスの味の特徴を紹介。生食に注目されがちな養殖魚だが、釜石産は脂がのっているのにさっぱりとしていて、塩焼きがおすすめだといい、生食以外の活用を提案。魚を数日間寝かせ、本来の味に加えうまみや食感を向上させる「熟成」についても解説し、「釜石を誇れる魚の一つ。海の環境に配慮した給餌方法など努力していて、味も秀でている。貴重な食材としてアピールできるので、いろんな食べ方で喜ばせてほしい」と期待を込めた。
 
味の特徴など清原さん(右)の話に耳を傾ける参加者

味の特徴など清原さん(右)の話に耳を傾ける参加者

 
 この日、水揚げされたサクラマスを刺し身、塩焼きやあぶり、ソテーなど焼き方を工夫しながら調理した後、試食。「ただ火を通すより、油でソテーする方がいい」「とれたては焼くと油分が出てこず食感がパサパサ。さっと焼き上げるのがいい」「養殖独特のにおいがする」などと声が上がった。
 
焼き方などを工夫しながら手分けして調理する参加者

焼き方などを工夫しながら手分けして調理する参加者

 
参加者は試食しながら味や調理法など情報交換した

参加者は試食しながら味や調理法など情報交換した

 
 市では秋ごろに市内飲食店でのサクラマスフェアの開催を計画中で、「自分の店だったらどんな料理、加工品を提供したいか」と案を求めた。参加者はマリネや天ぷら、ムニエル、カルパッチョなどを提案。「サクラマスをメインにするのは意外に難しい。癖が少なく、どう宣伝していくか…」と思考する声もあった。市内への流通量の確保や保存の在り方など先行きが不透明なことも多く、思い悩む人も。「他のサーモンに比べると、認知されておらず売り出しづらい」「食の多様性から養殖に取り組むのはいいが、釜石は出遅れた」と厳しい意見も聞かれた。
 
 市内ですし店を営む男性も「サクラマスは後発組」と辛口だが、活用のアイデアはあり、今後の動きを注目していくという。魚河岸テラス内で営業する「ヒカリ食堂」では漬け丼など2種のメニューを提供中で、料理長の阿部香さん(45)は「今後も使うことになると思うので、新たな献立を考えていかなければ」と思案。ワークショップで、ほかの事業者から「燻製(くんせい)がいい」と新発想を得て、「調理法を組み合わせれば面白そう」と腕をまくった。
 
フェア開催に向け売り出し方などについて意見を出し合う

フェア開催に向け売り出し方などについて意見を出し合う

 
 市では今回出た事業者らの声を踏まえ、フェアに向け統一ルールなどを設定する考え。新メニュー開発も進めるほか、イベント開催を通じて、ご当地グルメとしての知名度向上を図る。

mizuage1

釜石はまゆりサクラマス 養殖事業化後、初水揚げ 特産品化へプロモーション活動も

釜石市魚市場に今季初めて水揚げされた養殖サクラマス

釜石市魚市場に今季初めて水揚げされた養殖サクラマス

  
 釜石湾で養殖されている「釜石はまゆりサクラマス」が6月27日、今季初めて釜石市魚市場に水揚げされた。昨秋に事業化してからの“初もの”は、体長60~80センチ、重さ1.7キロほどに育った計8.4トン。試食も用意され、「身ぶりが良い」「特長のさっぱりした脂がしつこくなく、おいしい」と関係者らは好感触を得る。事業化に伴ってプロモーション活動にも着手。岩手県内で主流のギンザケやトラウトサーモンとの差別化を図り、希少性を生かした取り組みに力を入れていく構えだ。
   
 サクラマスの養殖は2020年に市や岩手大、地元水産会社などが研究コンソーシアムを結成して試験的に始めた。成育が順調で、比較的高値で取引されるなど市場での評価もよく、生存率の向上など技術習得も進んだことから、計画を1年前倒しして22年秋に事業化した。これまでは直径20メートルのいけす1基で育てていたが、今季は直径40メートルのいけす2基を増設。稚魚も前年の2万1000匹から15万8000匹と大幅に増やした。
  
釜石湾で順調に生育したサクラマスに漁業者たちの顔もほころぶ

釜石湾で順調に生育したサクラマスに漁業者たちの顔もほころぶ

   
 この日は午前5時ごろに水揚げが始まり、漁師らがサイズによって選別。市によると、1キロ当たり100~1000円で取り引きされ、地元の鮮魚店などが買い取ったという。作業を見守った野田武則市長は「魚のまち復活へ明るい見通しが立ってきた。特産として、さらに発信していきたい」と手応え。岩手大三陸水産研究センターの平井俊朗センター長は「主流のサーモン養殖と、どう差別化を図るかが事業拡大の鍵になる」と指摘した。
   
 試食も用意され、養殖事業を担う泉澤水産(両石町)の担当者は「昨年より大きく育った。脂乗りもいい。さっぱりとしつこくなく、おいしい」とアピール。AI(人工知能)搭載の給餌機を導入して効率化を図り、昨季の約7倍、200トンの水揚げを見込んでいる。
 
サクラマスの刺し身を試食する野田武則市長(右)ら

サクラマスの刺し身を試食する野田武則市長(右)ら

  

どう売り出す?釜石サクラマス 地元飲食店、宿泊業、水産加工業者が先進地の成功事例学ぶ

  
釜石はまゆりサクラマスプロモーションキックオフセミナー=6月23日

釜石はまゆりサクラマスプロモーションキックオフセミナー=6月23日 

  
 釜石はまゆりサクラマスの生産拡大に伴い、昨年10月には一体的なプロモーション活動を行うための産学官によるコンソーシアム(共同事業体)も設立されている。県内沿岸では、サケやサンマの記録的な不漁を背景にサーモン類の養殖が各地で展開されるが、サクラマス生産に取り組むのは釜石市だけ。その希少性を強みとして「ご当地グルメ」に育てていこうと、関係者による取り組みが始まる。
  
 今季の初水揚げに先立ち、6月23日には平田の岩手大釜石キャンパスで、プロモ活動への第一弾となるセミナーを開催。地元飲食店、宿泊業者、水産加工業者などを対象に開かれ、オンラインを含め約40人が参加した。
  
 市水産農林課がこれまでの養殖の経過と今季の水揚げ見込みなどを説明。市外への流通が多かったサクラマスを今後、地元の味として定着させるためにメニュー開発を行っていきたい考えが示された。
  
 先進地の成功事例として、兵庫県南あわじ市が中心となって売り出す「淡路島サクラマス」のメニュー開発の経緯などが紹介された。事業に携わった、じゃらんリサーチセンター・ご当地グルメ開発プロデューサーの田中優子さんがオンラインで説明した。
  
「淡路島サクラマス」のご当地グルメ開発の事例を学ぶ

 「淡路島サクラマス」のご当地グルメ開発の事例を学ぶ

  
 同市では養殖サクラマスを春(3~5月)の味覚として前面に打ち出し、2017年から3年がかりでメニュー開発。丼と鍋料理から始め、後にピザやパスタなどのカフェグルメ、弁当、土産物などにも拡大していった。3年目には淡路島全体(3市)に取り組みを広げ、40店舗で76メニューを提供するまでになった。3年間の売り上げは2億3186万円。
  
 田中さんはご当地グルメ開発のポイントとして、目標・目的の共有、効果検証(販売数、売り上げなど)、振り返りによる課題抽出・解決策の実行-などを挙げたほか、メディアへの効果的なプレスリリースやSNSによる情報発信で話題性を作ることも重要視した。
  
 休憩時間にはサクラマスの刺身の試食も行われた。県中華料理生活衛生同業組合釜石支部長の小澤浩美さん(スナック経営)は「養殖なので、生でも安心して食べられるのが大きなメリット。欲しい時に手に入るよう、安定した供給をしてもらえるとありがたい」と期待。今後のプロモ活動については「みんなでスクラムを組んでやらないと。単独では難しい」と連携の必要性を示した。
  
サクラマスの刺し身を試食。「あっさりして甘みがある」「腹も背もおいしい」などの声が…

サクラマスの刺し身を試食。「あっさりして甘みがある」「腹も背もおいしい」などの声が…

  
 市水産農林課によると、本年度は商品化に向けたメニュー開発・意見交換、市内飲食店でのサクラマスフェアなどを予定する。同課の小笠原太課長は「今後の取り組みの中で、ターゲットやどのような売り方をするのか模索していきたい。地域が潤い、地域が誇れるようなものを作っていきたい」と話す。

hamachidori8

楽しみ尽くす 浜千鳥・釜石 パーティー、4年ぶり開催 合言葉は「酒、時々…」

多様な浜千鳥の味を楽しむパーティーは4年ぶりに開かれた

多様な浜千鳥の味を楽しむパーティーは4年ぶりに開かれた

  
 釜石市小川町の酒造会社浜千鳥(新里進社長)は13日、「浜千鳥のすべてを楽しむパーティー」を大町のホテルクラウンヒルズ釜石で開いた。新型コロナウイルス禍での休止を経て4年ぶりの開催。待ちわびた約120人が集い、蔵人が精魂込めて造った多様な清酒の風味を堪能した。
   
 パーティーは今回で31回目。冒頭であいさつした新里社長は、大槌町産の酒米「吟ぎんが」と地下水を使用した「源水」を紹介し、「地域おこしの酒で、ここに来れば飲める。地域を元気にする取り組みに関わることができてうれしい」と熱弁。久しぶりの顔合わせに気分も上々で、「いろんな酒があり、すべて飲み干すと呑(の)まれてしまう。『酒、時々、水』を合言葉に飲めば、爽やかに楽しめる」と来場者にすすめた。
  
hamachidori2-2

来場者に自慢の酒をアピールする新里社長(中)

   
 源水の開発で協力したソーシャル・ネイチャー・ワークス(大槌町)の藤原朋代表取締役がミニ講演。開発の物語に加え、今回、酒と合わせて提供する料理の食材となった「ジビエ(野生鳥獣の肉)」を活用した町おこしプロジェクトを紹介した。
 
hamachidori3-2

「源水」誕生のストーリーなどを紹介する藤原さん

  
 2つの取り組みに共通するのが、地域住民を巻き込んだ「対話」と、行政や関係者らとの「協働」。課題だと思っていることは「みんなで話し合えば、なんとかできる。そして専門性のある人と取り組めば前に進む」と実感を込めた。今後の目標は、ただ事業や産業をつくるのではなく、「100年続く文化をつくること」と強調。この熱い思いを、参加者らは程よい“食前酒”にした。
 
hamachidori4

卓上には夏限定の「純米うすにごり 銀河のしずく」「源水」などが並んだ

  
 源水をはじめ、岩手県最上級のオリジナル酒米「結の香(ゆいのか)」を原料とする「純米大吟醸結の香」、米焼酎「纜(ともづな)」、梅酒、非売品の「大吟醸古酒」など約20種類がずらり。14日蔵出しの「純米うすにごり 銀河のしずく」も一足早く並んだ。漆塗りの杯で味わう立ち呑み処(どころ)「いわて漆亭」もお目見え。5種類の酒を判別する利き酒もあり、参加者はじっくりと味の違いを確かめていた。
 
hamachidori5

20種を超える浜千鳥の銘柄がずらり…お気に入りは?

 
hamachidori6 

漆塗りの杯で美酒と会話を楽しむ立ち飲みコーナー

 
hamachidori7

利き酒も行われ、ゲーム感覚で舌の鋭敏さを競った

  
 遠野市の小林裕介さん(34)は「転勤族で、その地で造られている酒を飲みたいから参加した。浜千鳥はご飯を食べながら、おいしく飲める。全部、いい酒。年1回でなく、定期的にやってほしい」と望んだ。
  
 合間には、同社に酒米を供給する大槌酒米研究会の佐々木重吾会長、同社醸造部長で杜氏(とうじ)の奥村康太郎さんが昨年の酒米の出来と酒造りの手応えを紹介。佐々木会長が太鼓判を押す酒米で造った酒について、奥村さんは「米の膨らみ、柔らかみを味に表すことができた。酒造りでは最終的に米を溶かすが、溶けすぎると雑味が出て、溶けないと薄く、そっけない印象になる。じわじわと溶けていき、いい仕上がりになった」と自信を見せた。
 
hamachidori8

酒米、酒造りへの思いを明かす佐々木会長(右)、奥村さん

  
 日本酒が大好きな小笠原いづみさん(55)は“ここぞとばかり”に飲み比べを楽しんでいる様子。「酒造りに携わる人たちの思いを知ると、より味わい深い」と杯を傾けた。大槌町で暮らし、源水の誕生を歓迎。「町の酒といえるものができてうれしい」と頬を桃色に染めていた。
   
 同社は今年、創業100周年。地域に根差した“うまい”酒を造り続けながら、新たなチャレンジもしていく―。新里社長らは、会場に広がる喜ぶ顔を力にする。
 

hamachidori4431

大槌産酒米「吟ぎんが」に理解 釜石・浜千鳥の酒造り体験塾で80人が田植えに挑戦!

酒米の田植えでスタートした「浜千鳥酒造り体験塾」=5月28日、大槌町

酒米の田植えでスタートした「浜千鳥酒造り体験塾」=5月28日、大槌町

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)が行う「酒造り体験塾」が今年もスタート。5月28日、同社に酒米を供給する大槌町の農家の田んぼで田植え体験会が開かれた。県内外から約80人が参加。地元の酒米「吟ぎんが」で仕込む酒の味わいに期待を膨らませながら、丁寧に苗を植え付けた。秋には稲刈り、冬には仕込み作業などを体験する。
 
 作業の安全、豊作を祈る神事では、同社醸造部の田村真央さん(28)が田んぼにくわ入れ。参加者の代表が植え始めの儀式を行った。田んぼの所有者で、大槌酒米研究会(5個人、1法人)会長の佐々木重吾さん(66)が苗の植え方を説明した後、参加者が一列に並び、昔ながらの手植え作業に挑戦した。
 
新里進社長らが神前に玉串をささげ豊作を祈願。醸造部・田村真央さんがくわ入れした(左下)=写真提供:浜千鳥

新里進社長らが神前に玉串をささげ豊作を祈願。醸造部・田村真央さんがくわ入れした(左下)=写真提供:浜千鳥

 
佐々木重吾さん(左)から苗の植え方を教わる参加者=写真提供:浜千鳥

佐々木重吾さん(左)から苗の植え方を教わる参加者=写真提供:浜千鳥

 
 この日の天候は曇り。途中から雨も降り出したが、「曇天のほうが苗が乾かず、田植えには好都合」と佐々木さん。泥に足を取られて転んでしまう参加者もいて、泥まみれの子どもたちは周囲の笑みを誘った。約1時間半の作業で、7アールの田んぼはきれいな青苗の列で埋まった。
 
酒米「吟ぎんが」の苗を手植え。雨の中、作業に励んだ

酒米「吟ぎんが」の苗を手植え。雨の中、作業に励んだ

 
泥まみれも楽しい思い出。子どもたちも一生懸命頑張りました!

泥まみれも楽しい思い出。子どもたちも一生懸命頑張りました!

 
 東京都から参加した前川さやかさん(28)は大槌町出身。和食居酒屋で副店長を務めており、店では全国の日本酒を提供している。「酒匠」として酒の勉強を重ねる中、「原料の米についても学びたい」と体験塾に足を運んだ。田植えは小学校の体験学習以来。「すごく大変だったが、お酒を飲むのも売るのもより楽しみになった」と貴重な体験を喜んだ。最近は「全国的に地元の米を使ったこだわりの地酒が増えている」といい、来店客の注目度も高い。「浜千鳥は海産物に合う酒としてお薦めしている。まだあまり知られていないところもあるので、さらに広めたい」と意気込んだ。
 
 釜石市の小國賢太さん(釜石中2年)は両親と共に幼児のころから同体験会に参加。「昨年は学校のテストと重なり来られなかったので久しぶりの田植え。めっちゃ疲れた。手植えだけだった昔は本当に大変だっただろう」と想像を巡らせた。
 
慣れてくると作業もペースアップ。植え終わるまであと一息

慣れてくると作業もペースアップ。植え終わるまであと一息

 
hamachidori4483
 
 同研究会メンバーの今年の作付面積は合わせて約20ヘクタール。30代の新規就農者も参入し、会では後継者育成にも力を入れる。昨年、浜千鳥に供給された大槌産吟ぎんがは約78トン(前年対比約6トン増)。佐々木さんは「(天候などが順調に推移し)今年もさらに良くなってくれれば」と願う。
 
 吟ぎんがは岩手オリジナル酒米として普及が図られ、県内の多くの酒蔵で使われる。沿岸で栽培しているのは大槌地域だけ。今では、浜千鳥が吟ぎんがで仕込む商品は全て大槌産米が使われ、同社商品全体の5割を占める。コロナ禍の3年間は宴会などの減少で同社の販売数も落ち込んだ。新里社長は「コロナの収束で需要も回復傾向にある。これまでは生産調整を余儀なくされるなど苦しい状況が続いたが、今年は増産できる見込み。この地区の酒米が豊作になるよう祈る」と期待をにじませる。同社は今年、創業100周年を迎える。
 
最後の記念写真は出来上がった酒のボトルラベルに使われる

最後の記念写真は出来上がった酒のボトルラベルに使われる

sangyophoto1

「明治日本の産業革命遺産」フォトコン 最優秀賞に橋野鉄鉱山(釜石) “ばえる”星空とコラボ

野田武則市長(左)に受賞を報告した佐々木弘文さん(左から2人目)、藤原信孝さん(同3人目)ら

野田武則市長(左)に受賞を報告した佐々木弘文さん(左から2人目)、藤原信孝さん(同3人目)ら

  
 「明治日本の産業革命遺産」を対象にしたフォトコンテストで、釜石市橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」を被写体にした作品「悠久のたたら場跡と星空」が最優秀賞に輝いた。撮影したのは、大渡町で化粧品専門店を経営する佐々木弘文さん(55)。高炉が稼働していた時代の“熱”を想起させる一枚だ。同じモチーフを別の視点で捉えた「原燃料の山と橋野一番高炉」は栗林町の藤原信孝さん(74)の作品で、エリア賞を獲得。2人は10日に市役所を訪れ、野田武則市長に喜びを伝えた。
  
 コンテストは「明治日本の産業革命遺産」世界遺産協議会(事務局・鹿児島県)が主催。橋野鉄鉱山など8県11市に点在する23の資産で構成される同遺産の世界遺産登録10周年(2025年)に向けた機運を盛り上げようと初めて企画された。「つなぐ」をテーマに作品を募り、全国から1084点の応募があった。釜石エリアでは62点。最優秀賞1点、優秀賞2点、構成資産に応じたエリア賞8点が選ばれた。
  
g_sangyophoto

最優秀賞に輝いた佐々木さんの「悠久のたたら場跡と星空」

  
 最高賞となった佐々木さんの作品は、一番高炉と星空がモチーフ。撮影したのは1月下旬で、雪に覆われた高炉には静けさが漂うが、外灯に照らされた雲が高炉の炎で赤く染まったように見え、独特の雰囲気を醸している。「高炉が動いていた頃の風景はこんな感じだったのかな」と往時に思いをはせながら、今ある風景を切り取ったという。「下見あってこそ。いい構図に仕上がった。受賞は驚いたが、とてもうれしい」と感想。子どもの頃に遠足で訪れた場所が思いがけず世界遺産となり、「どちらかというと地味な場所だが、誇りある場所でもある。工夫し、ひと味加えることで“ばえる”写真を撮り続けたい」と意欲を見せた。
 
e_sangyophoto

釜石エリア賞を受けた藤原さんの「原燃料の山と橋野一番高炉」

  
 エリア賞を受けた藤原さんは釜石観光ガイド会事務局長を務め、週に数回、ガイドやパトロールのため橋野鉄鉱山に足を運んでいる。日々の活動の中で、何気なくスマートフォンを取り出してシャッターを押しているといい、今回の受賞作もそんな一枚。通り雨のあとの、すっきりした青空と緑豊かな森、色づき始めた木々に心動かされて撮ってみると、「資産の全体像をイメージできる一枚」になった。写っていたのは高炉、鉄鉱石の採掘場、木炭の原材料となる森林など。「この自然、環境全体が日本の鉄づくりを支えた。ガイドとして説明したいことを収められた」と満足げだった。
  
sangyophoto2

懇談では写真に込めた思いや撮影のポイントなどを明かした

  
 野田市長は「10周年に向けた展開の足掛かりになる。写真を活用し、まず市民に橋野鉄鉱山の良さを理解してもらい、世界への発信につなげたい」と期待を述べた。
  
 2作品は今後、市役所など公共施設で巡回展示を予定している。
 

kamaisiDXthum

【事業者向けセミナー】しごと・くらしサポートセンター 5月のイベント・セミナー情報

kamaisiDX
DXセミナーチラシ[PDF:3.75MB]

セミナー内容

地方企業の課題にせまる!デジタル人材を育てよう(ジョブカフェかまいし共催セミナー)
 
「デジタルトランスフォーメーション(DX)」は達成することが意味を持つものではありません。様々な業種があり、「ゴール」のような物差しがある取り組みではなく、会社によって異なります。
今回のセミナーでは、お申し込み時にいただいた課題についてのデジタル化の事例と必要性や、デジタル人材の必要性についてお話しします。

日時

5月23日(火)13:30~15:00

講師

local hack合同会社 代表 鈴木 広法さん

主催

local hack合同会社

申し込み

下記の申込フォームからお申込みください。
個人の方のお申込みも可能です。
 
申込フォームはこちら

会場

しごと・くらしサポートセンター/ジョブカフェかまいし
岩手県釜石市港町2丁目1-1 イオンタウン釜石2F(大戸屋様となり)

しごと・くらしサポートセンターとは?

しごと・くらしサポートセンター(就労・UIターン・空き家相談)
しごと・くらしサポートセンターHP

お問合わせ

しごと・くらしサポートセンター
TEL:0193-27-6177
E-MAIL:info@jobcafe-kamaishi.jp

この記事に関するお問い合わせ
産業振興部 商工観光課 商工業支援係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-22-2111 / Fax 0193-22-2762 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2021112600047/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
suisan1

目指せ!浜の戦力 いわて水産アカデミー5期生入講 釜石の松木さん「漁業に若い力を」

漁業の担い手を目指す「いわて水産アカデミー」の5期生=4月13日

漁業の担い手を目指す「いわて水産アカデミー」の5期生=4月13日

  
 岩手県の漁業を担う人材を育成する「いわて水産アカデミー」(同アカデミー運営協議会主催)は4月13日に開講。第5期生として10~40代の6人が、就業に必要な知識・技術の習得に向け実践研修を始めた。「地域に認められる漁業者に」。1年後に浜の戦力として踏み出すため、仲間と思いを共有しながら腕を磨き合う。
   
 同協議会は、県内の漁業関係団体や市町村単位で設立された新規漁業就業者育成協議会、県で構成。アカデミーは2019年に始まり、これまでに29人が修了している。
   
入講式に臨む5期生。研修生活のスタートに気を引き締める=4月13日

入講式に臨む5期生。研修生活のスタートに気を引き締める=4月13日

   
 5期生の入講式は4月13日に釜石市平田の県水産技術センターであり、研修生を代表して佐々木イザベルさん(43)=大船渡市三陸町綾里、フランス出身=が、同協議会長を務める県農林水産部の藤代克彦部長から研修許可書を受け取った。
   
 研修6人のうち4人はこの春に高校を卒業したばかり。「仲間同士で刺激し合い、共に成長し、地域に認められる漁業者に。精いっぱい努力する」と代表宣誓した松木孝貴さん(18)もその一人で、釜石から参加する未来の担い手だ。
  
「地域に認められる漁業者に」と誓う松木孝貴さん=4月13日

「地域に認められる漁業者に」と誓う松木孝貴さん=4月13日

  
 地元・唐丹町で漁師になることを決めたのは、父親(漁協准組合員)の漁を手伝ったり、釣りが好きだから。そのため、海洋システム科のある高田高校(陸前高田市)に進み、小型船舶免許2級やダイビングの資格を取得するなど準備してきた。将来的には定置網業に従事することになるが、さまざまな漁法を体験したいとアカデミーに参加。「若い力で地域に貢献したい」と前を向く。漁師の減少、高齢化に危機感を持っていて、「もっと若い世代が海の良さを知り、興味を持つ取り組みもしたい」と先を見据えた。
   
 さまざまな思いを抱き、一歩を踏み出した研修生たち。藤代部長は水産業を取り巻く厳しい現状に触れながらも、「夢や目標の実現に向けしっかりと学び、仲間や地域の皆さんとのつながりを大切にし、研さんを」と激励した。
   
 研修生は1年間、基礎から漁業経営に必要となる高度知識までを学ぶ。釜石市、大船渡市、陸前高田市、宮古市、田野畑村の漁業者の下でそれぞれ定置網漁や養殖業を実践。ICT(情報通信技術)の活用や6次産業化、水産加工などの理解を深めながら、小型船舶操縦士などの免許取得も目指す。
   
集合研修でロープワークに挑む研修生ら=4月25日

集合研修でロープワークに挑む研修生ら=4月25日

   
 本格的な研修は4月下旬にスタート。集合研修2日目の25日は同センターで漁業の種類や漁法などに関する座学のあと、漁具・漁業資材販売業アサヤ釜石支店(大平町)の小林英人支店長らを講師に、漁師に必須となるロープワークを学んだ。3本より、8本よりのロープを一度ほどいてアイ(輪)をつくってから再びロープに編み込んでいく「さつま編み加工」などをおさらい。5期生たちは、「もう一歩で上手になる」「『なんだ、その手つき』と言われるぞ」などと講師に鼓舞されながら真剣な表情で臨んでいた。
   
講師や仲間に声がけしながら積極的に学ぶ松木さん(中)=4月25日

講師や仲間に声がけしながら積極的に学ぶ松木さん(中)=4月25日

   
 松木さんは「分かっていても、うまくいかないこともある」とこぼしつつ、「やり方、教えて」と仲間に積極的に声がけし意欲満々。研修前に浜で漁の手伝いをしてきたというが、「実際の漁は、教科書に載っているやり方ではなかった。今はただ見ているだけ。現場でいろいろ覚えなければ」と力不足を認識。先輩漁師のすごさを目の当たりにし、「やってやるという気持ち。足場をしっかりと固めながら働いていく」と前を向く。
 

sake0610

「元気で帰ってきてね~」 かまいしこども園児が甲子川にサケの稚魚5000匹放流

sake0610

かまいしこども園の年長児によるサケの稚魚の放流=甲子川

 
 釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児80人)の年長児が4月24日、同市を流れる甲子川にサケの稚魚を放流した。地元の海や水産業に親しみ、郷土愛を育む学習の一環。園児たちは大きく成長したサケが4年後に戻ってくることを期待し、大海原に旅立つ“赤ちゃんサケ”を見送った。
 
 同園は海洋教育パイオニアスクールプログラム(笹川平和財団海洋政策研究所など主催)の助成を受け、2021年度から年長児がサケの学習に取り組む。本年度の学習のスタートは稚魚の放流。千鳥町の河川敷に到着した園児18人は始めに、同学習の講師を務める岩手大三陸水産研究センター特任専門職員の齋藤孝信さんから、放流したサケがどこで大きくなり食卓まで届くかを学んだ。齋藤さんは「川を下ったサケは北の寒い海をぐるぐる回り、餌をいっぱい食べて大きくなってから4年後に戻ってきます。みんなが小学3年生になる秋ごろです」と教えた。
 
sake0499

講師の齋藤孝信さんからサケの成長について学ぶ

 
sake0535

今年は例年より大きく育てた稚魚(左下写真)を放流した

 
 園児たちは釜石湾漁協甲子川さけ人工ふ化場から運ばれた稚魚を小さなバケツに分けてもらい、「元気に帰ってきてねー」などと声をかけながら水中に放した。稚魚は甲子川など地元河川に戻ってきたサケから採卵し受精、ふ化させたもの。体長7~8センチ、重さ3グラムに成長した約5000匹を放流した。回帰率を高めるため、今年は県全体の指針に沿って例年の倍以上大きくして放流している。
 
 千葉菫ちゃん(5)は稚魚の様子を「手を振っている(さよならしている)みたいな子やけんかしている子もいた」と表現。サケを食べるのも「大好き」といい、「うろこが虹色に光るような、かわいい大きなサケになってほしい」と成長を楽しみにした。
 
川の中で元気に泳ぐサケの稚魚を見守る園児たち

川の中で元気に泳ぐサケの稚魚を見守る園児たち

 
 同ふ化場の佐々木有賢場長によると、甲子川で放す稚魚には独自の耳石標識をつけており、漁獲した時に“生まれ故郷”が分かるようになっているという。「地元で放したサケがちゃんと帰ってくると知ることで、地域の川をきれいにしようという意識も生まれる。生き物の命を大事にいただくという姿勢も学んでくれたら」と佐々木場長。
 
 近年、サケの不漁は深刻。甲子川に遡上するサケはピーク時には1シーズン約4万7000匹に達したが、震災以降減少。佐々木場長は「平均で約3万匹はとれていたが、ここ2年は10分の1以下にまで減っている」と厳しい状況を明かす。県内のサケふ化場は現在、4カ所に集約。釜石、大槌地域の河川(片岸、甲子、鵜住居、大槌)でとれたサケは一度、甲子川ふ化場に集めて採卵。稚魚にして、各河川から放流する形を取っているという。
 
sake0735

無事に放流の役目を果たし、満面の笑顔を広げた

 
sake0765

最後に園児の代表が甲子川ふ化場の職員にお礼のメッセージカードを手渡した

 
 同園のサケ学習は全3回の予定で、残る2回はサケを漁獲する定置網漁や魚市場の学習、雌サケを解体して給食で食べる体験を計画する。市内では、釜石小と釜石高も同プログラムの助成を受けて海に関する学習を行う予定。同園と両校の採択は3年連続。