浜千鳥 創業100年記念し新地酒「源水・純米大吟醸」発売 米、水の産地大槌でお披露目パーティー
源水のすべてを楽しむパーティーで新地域おこし酒「源水・純米大吟醸」の誕生を祝う関係者ら=三陸花ホテルはまぎく
釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は創業100周年を記念した新商品「源水・純米大吟醸(720ミリリットル)」を21日から発売している。同社の酒造りを支える大槌町産酒米“吟ぎんが”と、良質で豊富な湧水で知られる同町源水地区の地下水で仕込んだ「地域おこし酒」の第2弾。発売日、町内のホテルで記念パーティーが開かれ、地域が誇る資源と同社の醸造技術で生まれたこだわりの地酒がお披露目された。
関係者や一般客55人が参加。新里社長は22年前に始まった大槌町での酒米生産、地元発案で3年前から取り組む地域おこし酒「源水」のプロジェクトについて説明。「創業100周年にあたり、地酒メーカーとして『ひとつの柱になるものを』と考え、より品質の高い源水“純米大吟醸”の醸造に至った。皆さんの協力でできた自信作」と新商品を紹介した。
「地域おこし酒 源水の魅力」と題し、関係者4人がトークセッション。古くから町内各地で見られた湧水を「地域おこしの一助に」と考え、酒の仕込み水としての活用を提案した地域商社ソーシャル・ネイチャー・ワークスの藤原朋代表取締役(39)は「住民の生活と密接だった湧水だが、震災で自噴する場所が減ってしまった。今回のプロジェクトで、大槌町の財産である湧水がいかに特別で尊いものかを知ってもらえれば」と期待。浜千鳥の奥村康太郎杜氏(43)は「源水の水はミネラルバランスなどが酵母の活動に適していて、発酵がよく進む。業界でも有名な酒所の水に近い。香りが非常に華やかに出る」と水質の良さを実感。上流の田んぼで生産される酒米との“水つながり”の相性も好要素に挙げた。
これまでの取り組みも紹介しながら源水の魅力について語ったトークセッション
良質で豊富な湧水で知られる大槌町の源水川。希少種「淡水型イトヨ」の生息地
新たな地酒の誕生を祝い乾杯。テーブルには2年前に発売した「源水・純米吟醸」、大槌産米の先駆け酒「ゆめほなみ本醸造」なども並び、参加者が飲み比べをしながら味わいを確かめた。
宮古市の渡辺千津子さん(80)は“大吟醸”の味わいに「これはヒットしそう。さすが浜千鳥さん。いいのを出しましたね」と絶賛。地域資源に着目した取り組みにも触れ、「苦労もあったと思うが、若い人たちが地域のために積極的に頑張っているのは素晴らしい」と感心した。採水地の地元、源水自治会の佐藤孝夫副会長(51)は「昔から町民にはなじみの場所だったが、そこの水で酒が造られるとは思いも寄らなかった。これを機に全国に『源水』の名が広まっていけば」と願った。
「源水・純米大吟醸」の“船出”を祝うパフォーマンス。商品を小舟に載せて会場を一周
参加者全員で乾杯!
プロジェクトでは、商品の売り上げの一部が源水地区の水辺環境保全、子どもたちの自然体験学習などに役立てられる。同パーティーで新里社長は、源水・純米吟醸の2022年11月の発売開始から本年3月までの売り上げの一部(1.8リットル=1本につき40円、720ミリリットル=同20円)計12万7780円を、NPO法人おおつちのあそびの大場理幹事務局長(理事)に手渡した。同町の東京大大気海洋研究所の施設で学ぶ院生でもある大場事務局長(27)は、源水川に生息する絶滅危惧種「淡水型イトヨ」の研究にも関わっていて、「市街地近くにこれだけの湧水地があるのは珍しい。生物進化の研究対象にもなっていて、世界に誇れる場所。地元の人にもっと知ってもらえるような活動をしたい」と意気込む。
浜千鳥の新里進社長(左)がNPO法人おおつちのあそびの大場理幹事務局長に寄付金を贈呈
地酒「源水」は純米吟醸、純米大吟醸ともに、源水地区の地下40メートルの深井戸からくみ上げた水、大槌酒米研究会(佐々木重吾会長)栽培の吟ぎんがを原料に、本県オリジナルの酵母、こうじ菌で仕込む。大吟醸は精米歩合50%まで高めたことで、より洗練された味に仕上がり、バナナのような果実の香り、優しい甘みが感じられるという。奥村杜氏は「発酵が順調に進むことで適度な日数で酒をしぼることができ、雑味も抑えられる。大吟醸はボトルデザインもクール。今までにない当社のラインアップになるのではないか」と話す。
初めて「源水・純米大吟醸」を味わう参加者。お味は?
福を呼ぶにぎやかなアトラクションもパーティーを盛り上げた
プロジェクトの調整役を担うソーシャル・ネイチャー・ワークスの藤原代表は「地域おこし酒はハレの日がコンセプト。大事な人への贈り物、自分への特別なご褒美にもぴったり」と新商品の誕生を歓迎。今後は「源水川をより身近に感じられるようなしくみづくりにも取り組んでいきたい」と夢を描く。
釜石新聞NewS
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