タグ別アーカイブ: 産業・経済

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脱炭素社会実現へ連携 釜石市、ゼロボード(東京都)、岩手銀行が基本合意

釜石市内における脱炭素社会実現に向けた連携について発表した(右から)岩手銀行の佐藤求専務、野田武則市長、ゼロボードの坂本洋一本部長

釜石市内における脱炭素社会実現に向けた連携について発表した(右から)岩手銀行の佐藤求専務、野田武則市長、ゼロボードの坂本洋一本部長

 
 釜石市は脱炭素社会実現に向け、温室効果ガス(GHG)排出量算定・可視化クラウドサービスを提供するゼロボード(渡慶次道隆代表取締役、東京都)、岩手銀行(岩山徹代表取締役頭取)と連携し各種取り組みを進めることを17日、発表した。同市の公共施設にサービスを導入し、GHG排出量を測定。計画を立て削減に取り組むとともに、市内企業への普及啓発を図っていく方針。両社と本県自治体との同様の連携は6例目となる。
 
 同市は昨年10月、2050年までにカーボンニュートラル(GHG排出量実質ゼロ)実現を目指すことを表明。本年1月、ゼロカーボンシティ推進室を立ち上げた。全市的な取り組みへの第一歩として、同市が所管する公共施設のGHG排出量を把握し、実効性のある削減策につなげる事業に着手する。排出量の測定にはゼロボードが開発、提供するシステムを利用。約350施設に順次導入し、測定データを基に23年度内に削減計画を策定。24年度から計画に基づく取り組みを開始したい考え。
 
 岩手銀行は6月から脱炭素経営に取り組む企業向けの融資を開始した。金利優遇などで支援するほか、事業者とゼロボードをつなぐ役割も果たす。ゼロボードはシステム利用の指導、データベース管理、削減に関するアドバイスなどを担う。
 
基本合意書締結にかかる発表会=17日、市役所

基本合意書締結にかかる発表会=17日、市役所

 
 3者は14日に基本合意書を締結。17日、市役所で経緯や連携内容などについて報道陣に発表した。野田武則市長は「これらの取り組みが市内に広く展開され、2050年までのカーボンニュートラル実現が加速することを期待する」、ゼロボードの坂本洋一ビジネス本部長は「環境配慮が深く根付く地域社会の達成に貢献したい」、岩手銀行の佐藤求取締役専務執行役員は「締結を機に地域の脱炭素支援に一層尽力していく」と思いを述べた。
 
 県は毎年、各自治体を対象にエネルギー使用量現況調査を実施。同市ではこれまでエクセル表でデータを取りまとめてきたが、集計などさまざまな業務の手間、表の見づらさがあった。導入するクラウドを使ったサービスは作業効率の向上、負担軽減、公表しやすさなどのメリットがある。市の担当者は「市役所が率先して見える化の取り組みを進めることで、企業を含め市全体の関心を高めていきたい」と話す。

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地元漁師、大学職員からサケの定置網漁学ぶ かまいしこども園児 海や魚に興味津々

海や魚について講師に質問する園児=かまいしこども園サケ学習

海や魚について講師に質問する園児=かまいしこども園サケ学習

 
 釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児77人)の年長児11人は11日、地元漁師や大学職員からサケの定置網漁について学んだ。海洋教育パイオニアスクールプログラム(笹川平和財団海洋政策研究所など主催)の助成で取り組むサケ学習の一環。映像を見ながら、サケの特徴や定置網での漁獲方法などを教わった。12月には雌サケの解体も予定する。
 
 7月に平田の県水産技術センターを見学し、本県でとれる魚などを学んだ園児たち。2回目となるこの日の学習は同園で行われた。講師を務めたのは釜石東部漁協所属の漁師佐々木崇真さん(37)と、魚食普及や漁業体験、海洋教育のコーディネートを行う「すなどり舎」代表で、岩手大三陸水産研究センター特任専門職員の齋藤孝信さん(61)。地元で行われる定置網漁の映像を見せながら解説した。
 
実物と同じ重さのサケのぬいぐるみを抱え、その大きさを実感

実物と同じ重さのサケのぬいぐるみを抱え、その大きさを実感

 
定置網でサケを漁獲する様子などを映像で見せた

定置網でサケを漁獲する様子などを映像で見せた

 
初めて見るサケ漁に目がくぎ付け。驚きの表情も

初めて見るサケ漁に目がくぎ付け。驚きの表情も

 
 佐々木さんは「サケの雄と雌は鼻の形で見分けることができ、卵を持つ雌は腹が膨れている」と説明。図を使って定置網漁の仕組みを教えた。定置網では魚が前にしか進めない特性を利用して囲われた網に誘導。周回するうちに魚が入る「落とし網」と呼ばれる場所に2船をつけ、片方の船が近づきながら網を絞り漁獲する。周回中に魚の約6割は網の外に逃げるため、「とりすぎない自然にやさしい漁法」と齋藤さん。
 
漁師の佐々木崇真さん(右下写真)が定置網の構造や魚の動きについて解説

漁師の佐々木崇真さん(右下写真)が定置網の構造や魚の動きについて解説

 
 三陸沿岸の近年のサケ水揚げ量は激減している。佐々木さんは「昔はこの時期になれば1万本ぐらいとれていたが、今は1カ月に3、4本ということも。水温が高くなってしまったことが要因」と海洋環境の変化も示した。この日は、同園の教諭らが撮影した釜石市魚市場の水揚げや競りの様子も上映。園児たちは市場の仕事についても学んだ。
 
 最後は園児からの質問コーナー。「魚はどうやって眠るの?」「サケが戻ってくる川にごみを捨てたらどうなるの?」「深い海にも魚はいるの?」―などなど、好奇心旺盛な疑問が飛び出した。中には、世界的な問題となっている海洋プラスチックごみについて質問する子も。齋藤さんは海ごみの流出原因などを説明し、「2050年には海の中の魚よりもプラスチックごみが多くなるという計算もある。そうなると魚も食べられなくなる。みんなも海にごみを流さないような努力をしてほしい」と話した。
 
「なぜ」「どうして」。子どもたちは知りたいことがいっぱい!

「なぜ」「どうして」。子どもたちは知りたいことがいっぱい!

 
園児の質問に丁寧に答える齋藤孝信さん。海洋環境への関心向上を願う

園児の質問に丁寧に答える齋藤孝信さん。海洋環境への関心向上を願う

 
 佐藤和君(5)は「お話聞くの、楽しかった。サケはお家でも食べる。塩焼きが好き。シャチのお勉強もしてみたい」と海の魚に興味津々。生のサケを見る次回の学習を心待ちにした。
 
 海洋教育パイオニアスクールプログラムは笹川平和財団、日本財団、東京大海洋教育センターが共同で実施。海の学びに取り組もうとする学校などに費用を助成する。幼児教育施設で取り組むのは全国で同園だけ。昨年度に続き2年目の採択を受け、「サケの学習を通して育む郷土愛と釜石のDNAの継承」と題して学習を進める。市内では本年度、同プログラムで釜石小がワカメの学習、釜石高が深海魚の学習に取り組んでいる。

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砂防工事現場 釜石の中学生が見学 沿岸振興局、担い手不足解消へ建設業の魅力紹介

砂防工事の現場見学で建設業に理解を深めた生徒たち

砂防工事の現場見学で建設業に理解を深めた生徒たち

 
 釜石市平田尾崎白浜地区で進められている砂防堰堤(えんてい)の工事現場を14日、大平中(蛸島茂雄校長、101人)の2年生33人が見学した。岩手県沿岸広域振興局土木部が主催したもので、生徒たちは土砂災害を予防する砂防事業や建設業への理解を深めた。
  
 生徒たちは、2019年の台風19号豪雨で発生した土石流などの被害を受けて沿岸振興局が同地区で手掛ける事業の現場2カ所を見学。1年余りかけて今年6月に完成したばかりの砂防堰堤では、大雨時、大量に流れてくる土砂をため込み下流に流れ出るのを防いだり、勢いを弱めたりする機能について説明を受けた。
  
砂防工事の現場見学会に参加した大平中生

砂防工事の現場見学会に参加した大平中生

  
 来年3月中旬までの工期で整備が進む砂防堰堤(堤長64メートル、高さ9・5メートル)では、工事を担う及川工務店(新浜町)の現場責任者らが概要や進ちょく状況を説明。生徒らはショベルカーなど重機に試乗したり、現場で実際に使われている測量機器を使って測量を体験したりもした。
  
建設現場で活躍する重機の試乗体験を楽しむ生徒

建設現場で活躍する重機の試乗体験を楽しむ生徒

 
子どもたちは普段見慣れない測量機器に興味津々

子どもたちは普段見慣れない測量機器に興味津々

  
 学校に戻って座学。沿岸振興局土木部の職員が土砂災害の種類、全国・県内の発生状況、災害対策などを解説した。近年の発生件数は増加傾向にあり、梅雨や台風など雨が多い時期に発生確率が高くなっていて注意が必要とした上で、砂防堰堤などの構造物整備により被害を防いだ県内の事例を紹介。ただ、自然災害は人の想像を超えることがあり、身を守るためには▽家の周りや避難経路などにある危険な場所を事前に確認▽いざという時は、勇気を持って早めに避難する―ことが大切だと強調した。
  
砂防事業の出前講座に臨む大平中の2年生

砂防事業の出前講座に臨む大平中の2年生

  
 模型を使って、土石流が勢いよく家や橋を押し流す様子、流出する土砂の勢いを弱める堰堤の対策の効果も試した。阿部愛華(あゆは)さんは「工事現場を見学するのは初めて。被害が起きないよう高い費用を使っていたり、いろんな人が関わっていることが分かった。災害に対しての備えも大事だとあらためて感じた」と学びを深めた。
  
砂防堰堤の設置の効果を模型で試す実習もあった

砂防堰堤の設置の効果を模型で試す実習もあった

  
 工事現場の見学会は建設業の担い手不足解消に向けた取り組みの一環で、中学生に建設業へ興味を持ってもらうのが目的。道路や橋などの社会基盤をつくる「土木」、住宅など建物をつくる「建築」の2種類があり、構造物の維持・修繕や災害復旧など「みんなが安心して暮らせるよう地域を守る」という役割があると魅力、やりがいも伝えた。砂防工事の現場を通じ、土砂災害とその対処の方法を知ってもらう狙いもある。東日本大震災後、釜石・大槌地区では初めての実施。本年度は1校のみだが、次年度以降も継続していく予定だ。

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「魚河岸ジェラート」に新メニュー 釜石産トマトのうまみ凝縮「すずこまシャーベット」

魚河岸ジェラート部の新メニュー「すずこまシャーベット」

魚河岸ジェラート部の新メニュー「すずこまシャーベット」

 
 釜石市魚河岸の魚河岸テラスで提供されている地域の味を取り入れたジェラートに今夏、地元農家が育てたトマト「すずこま」を使ったメニューが仲間入りした。トマトのうまみを凝縮し、レモン果汁を加えてフルーティーに仕上げた、その名は「すずこまシャーベット」。きれいな赤い色をした見た目も印象的な一品で、10月頃まで楽しめるという。
 
 指定管理者のかまいしDMCが運営する店舗「魚河岸ジェラート部」では常時10種類程度を販売。釜石特産の甲子柿、浜千鳥の酒かす、藤勇醸造のみそを使った菓子などを用いて地元色を前面に押し出した豊かな味わいがそろう。
 
すずこまを使ったシャーベットを開発した新沼さん

すずこまを使ったシャーベットを開発した新沼さん

 
 新メニューは、湯むきしたトマトを角切りにし種ごと煮込み、砂糖やレモン汁を加えてペースト状にしたものを、ベースのシャーベット(水に砂糖を加えて凍結させた冷菓)に混ぜて仕上げた。「そのまんま、すずこまで勝負」と自信を見せるのは、開発を担当した同社の新沼貴子さん(54)。「酸味が強めのトマトで、素材本来の味を生かすため加糖は最小限にとどめ、うまみと爽やかさのバランスを崩さないようこだわった。牛乳など動物性タンパク質を使っていないので、ベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者)の方も楽しめる」とアピールする。
 
 すずこまは東北農業研究センター(盛岡市)などが開発した加熱調理用トマトで、抗酸化作用を持つリコピンを多く含む。生食でも味わえるが、火を通しても煮崩れしない、赤みがあせないなどの特徴があるという。釜石市が推奨する農産物の一つで、2021年度から市内の生産農家4人が試験栽培に取り組んでいる。
 
試食した生産者の佐々木さん(左)と二本松さんの評価は上々

試食した生産者の佐々木さん(左)と二本松さんの評価は上々

 
 8月31日に魚河岸テラスで発表会があり、生産者が試食した。鵜住居町の二本松誠さん(58)は「トマトの味が濃い。うまみがぎゅっと詰まっていておいしい」と太鼓判。すずこまは、「芽かき」作業が不要など栽培時に手間がかからず、40グラムほどの小ぶりな実が“鈴なり”になり、一定の収量も見込める。橋野町の佐々木かよさん(71)は加工品への活用が広がるのを歓迎。自身は遊休農地を活用するため栽培に協力していて、「生産者として作りがいがある。特産へと育ち、釜石を知ってもらうきっかけになれば」と期待した。
 
 すずこまシャーベットは、シングル280円。ジェラート部の開店時間は午後2時~同4時まで(月曜定休)。
 
地元色を押し出した豊かな味わいを提供する「魚河岸ジェラート部」

地元色を押し出した豊かな味わいを提供する「魚河岸ジェラート部」

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行政運営のデジタル化推進・地域産業振興へ 釜石市、2企業と連携協定

釜石市はデジタル化推進に向け県内2企業と連携協定を結んだ

釜石市はデジタル化推進に向け県内2企業と連携協定を結んだ

  
 釜石市は8月24日、行政運営のデジタル化推進や地域産業の振興に向け、ITベンチャー企業のエルテス(本店紫波町、菅原貴弘代表取締役)、NTT東日本岩手支店(盛岡市、片岡千夏支店長)とそれぞれ連携協定を結んだ。ICT(情報通信技術)を活用し、住民サービスの向上や地域活性化につなげる考えだ。
  
野田市長と協定書を取り交わしたエルテスの菅原代表取締役(右)=釜石市役所

野田市長と協定書を取り交わしたエルテスの菅原代表取締役(右)=釜石市役所

  
 エルテスとの締結式は釜石市役所で行われ、野田武則市長と菅原代表取締役が協定書を取り交わした。連携内容は▽行政サービスに関する情報取得や手続きなどができる住民総合ポータルアプリの導入▽お散歩アプリ導入による住民の健康促進▽情報セキュリティー研修の実施-など。デジタルリスク対策事業などを手掛ける同社は紫波町や矢巾町と同様の協定を結んでおり、これまでの知見を反映、発展させた取り組みを進める。
 
 菅原代表取締役は「ハイレベルなサービスを提供できる」と強調。野田市長は「誰一人取り残さないデジタル化を進めたい。使い方を広く普及することで利便性を享受できる地域づくりを」と期待した。
  
協定書を手にする野田市長とNTT東日本岩手支店の片岡支店長(左)=釜石情報交流センター

協定書を手にする野田市長とNTT東日本岩手支店の片岡支店長(左)=釜石情報交流センター

  
 NTT東日本岩手支店との締結式は大町の釜石情報交流センターで実施。野田市長と片岡支店長が協定書に署名した。協定書によると、◇養殖サクラマス「釜石はまゆりサクラマス」のブランド化◇市内企業のICT・デジタルトランスフォーメーション(DX)化支援◇ドローン空撮による漁港設備点検の実証など地域資源の新たな価値創造に関する取り組み―などを連携して進める。
  
 同社はすでに市内企業などと協働でサクラマスの脂質測定によるブランド化に取り組んでいて、片岡支店長は「縁を深めた結果の協定。情報通信事業者としての強みを生かし、付加価値を作り上げ、地域の振興発展に貢献したい」と意欲を示した。野田市長は「1次産業を中心とした地域資源の新たな価値創造、地域活性化につながる」と歓迎した。

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釜石港にサンマ第一船 4・7トン水揚げ 関係者「漁の好転」切に願う

釜石市・新浜町魚市場へのサンマ初水揚げ=8月28日午前6時20分ごろ

釜石市・新浜町魚市場へのサンマ初水揚げ=8月28日午前6時20分ごろ

 
 釜石市の新浜町魚市場に8月28日朝、今季初のサンマが水揚げされた。ここ5年では最も早い8月中の初水揚げとなったが、量は約4・7トンと低迷。地球温暖化の影響とみられる海水温の上昇や燃料費の高騰などサンマ漁を取り巻く環境は厳しさを増すが、関係者は「何とか好転してほしい」と本格化するシーズンに期待を寄せる。
 
 釜石港に入ったのは富山県魚津市の中島漁業の大型船、第八珠(す)の浦丸(199トン、乗組員17人)。大型船漁解禁日の20日、北海道根室市の花咲港を出港し、同港から東に約1300キロの北太平洋公海で操業。7年連続で釜石に初サンマを届けた。港では野田武則釜石市長や市漁業協同組合連合会の木村嘉人会長ら関係者が出迎え、飲料水などを差し入れした。サンマは1匹100グラム以下と全般に小型で、1キロ当たり430円で取引された。
 
サンマ水揚げのため釜石港に入る「第八珠の浦丸」=28日午前5時45分ごろ

サンマ水揚げのため釜石港に入る「第八珠の浦丸」=28日午前5時45分ごろ

 
猟田雄輔漁労長(中)に仙人秘水などを差し入れ

猟田雄輔漁労長(中)に仙人秘水などを差し入れ

 
北太平洋公海で漁獲されたサンマ

北太平洋公海で漁獲されたサンマ

 
 全量買い取った新浜町の水産加工会社「平庄」の平野隆司社長(46)は「8月に(サンマ船が)釜石に入るのはまれ。初水揚げはうれしいが、型が小さく単価的には厳しい」と複雑な面持ち。それでも、「昨年よりは取れるという予報もある。これから型が良くなり、量も増えてくれれば」と望みを託した。この日のサンマは大部分が関東方面に鮮魚出荷された。
 
釜石に初サンマを届けた第八珠の浦丸の乗組員ら

釜石に初サンマを届けた第八珠の浦丸の乗組員ら

 

 
 ロシアのウクライナ侵攻による日ロ関係悪化の影響で、公海に漁船が集中する今年のサンマ漁。ロシアが主張する排他的経済水域(EEZ)を迂回して漁場に向かう船もあり、航行距離が延びることでの燃料費の負担増なども漁業者を悩ませる。第八珠の浦丸の猟田雄輔漁労長(67)は「1つの漁場に外国船が約100隻、日本船が40~50隻集まっている。水温が高く、サンマが散って船の下に寄ってこない状況もあり、かなり厳しい。9月下旬になれば少しはいい型がでてくるとは思うが…」と現状を話した。
 

 
 釜石港の昨年のサンマ水揚げ量は255トン(取引額約2億468万円)。全国同様、過去最低の水揚げ量となった。近年の不漁傾向で先は見通せないが、市漁連の木村嘉人会長(68)は「廻来船が来てくれると市場の運営としても助かる。入る、入らないでは市場の活気も違う。1隻でも多く入港し、水揚げしてもらえれば」と漁の好転を願う。

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企業版ワーケーション受け入れ好調の釜石を視察 北海道・富良野市の観光関係者ら、応用へ手応え

ワーケーションの現場視察で釜石市を訪れた富良野市の関係者ら

ワーケーションの現場視察で釜石市を訪れた富良野市の関係者ら

 
 新型コロナウイルス禍で注目されるのが、仕事と休暇を組み合わせた労働形態「ワーケーション」。全国各地で普及に向けアイデア合戦が繰り広げられる一方、一過性にとどまらず都市から地方への人の流れを定着できるか試行錯誤が続く。美しいラベンダー畑など雄大な自然を抱く観光地、北海道富良野市もワーケーションによる「持続可能な観光(サスティナブル・ツーリズム)」に着目するが、発展途上。2018年以降4年連続で「世界の持続可能な観光地100選」に選ばれた釜石市の取り組みからヒントを探ろうと、富良野の市職員や観光関係者ら9人が5日から2泊3日の日程で来釜、現場を視察した。
 
 富良野はテレビドラマ「北の国から」のロケ地として知られ、コロナ禍前は延べ約190万人が訪れる人気観光地。ただ、ドラマファンらは50代以上と年齢が高めで、観光の先細りを防ぐため、若年者といった新しい客層の取り込みを模索する。美瑛町など近隣市町村と地域連携DMOを設立しているが、独自の取り組みを推進する必要性を認識。宿泊費助成などでワーケーション客の受け入れを進め、今年度、現時点での実績は約40人。全体ビジョンや戦略が固まっておらず、提供する体験プログラムの開発などが課題だという。
 
釜石情報交流センターや市民ホールがある中心市街地を視察

釜石情報交流センターや市民ホールがある中心市街地を視察

 
 釜石でワーケーション事業を担うのは、観光地域づくり法人「かまいしDMC」(河東英宜代表取締役)。ワーケーション施設を開設するだけでなく、市の観光振興ビジョン「釜石オープン・フィールド・ミュージアム構想」をもとに、釜石に生き、暮らす人、そのなりわいに光を当て、それらをプログラム化し、固有の自然や歴史、文化を学ぶことができる仕組みを作っている。地域交流を通じた新たな価値創造につながると期待が高まり、今年はこれまでに延べ約250人が利用する。
 
根浜海岸では震災後の地域づくりに理解を深めた

根浜海岸では震災後の地域づくりに理解を深めた

 
いのちをつなぐ未来館では利用状況を聞いた

いのちをつなぐ未来館では利用状況を聞いた

 
 今回の視察では5日に、河東代表取締役らの案内で大町の釜石市民ホール、鵜住居町のいのちをつなぐ未来館、根浜海岸などをめぐり、東日本大震災後の復興まちづくりや防災、海を生かした観光の取り組みなどの説明を受けた。かまいしDMCが指定管理する魚河岸の魚河岸テラスで、観光まちづくりの実践を聞き取った。
 
 河東代表取締役は「利用者は日常と離れた学び直しの機会に注目している。観光資源のない釜石が持続可能な観光づくりを進めるには体験プログラムを磨いていくしかない。地域のことを深く学び、関わることで繰り返し来る。それが釜石の観光」と強調。企業や団体をターゲットにニーズを聞きながらプログラムを充実させてきた経緯などを伝えた。
  
魚河岸テラスではワーケーション普及に向け意見交換した

魚河岸テラスではワーケーション普及に向け意見交換した

  
 富良野の10人は、釜石市内全域を「屋根のない博物館」に見立てた同構想に興味を持った様子。法人立ち上げの資金、プログラムの開発法、観光協会といった既存組織との連携などについて熱心に質問した。翌日には地元漁師が案内する漁船クルーズ体験を控え、富良野市企画振興課の松野健吾主査(51)は「富良野には応用できる地域資源、素材がある。やり方を工夫すれば魅力的なプログラムを作れる」と実感を込めた。
 
 同商工観光課の本田寛康課長(49)は「ワーケーションを企業単位で受け入れている成功事例が釜石。手法をまねれば、できるものでもない。参考にし、ワーケーション実践者を引き付けるものを見つけたい」と刺激を受けた。知名度を生かした観光に、持続可能性を見据えた取り組みを加えるには「民間の力が必要」と再認識。「地域の産業に密着し、実践者も地域も喜ぶ取り組みにしたい」と前を向いた。

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ワーケーションを通じて地域課題解決に挑戦を!かまいしDMC、企業をつなぐ体験プログラム充実

かまいしDMCが提供するワーケーションプログラムの様子

かまいしDMCが提供するワーケーションプログラムの様子

  
 仕事と休暇を組み合わせた働き方「ワーケーション」の受け入れに力を入れる釜石市。観光地域づくり法人「かまいしDMC」(河東英宜代表取締役)は自然や食文化、災害を克服してきた事例などから地域を知り、学ぶワーケーションプログラムを充実させ、誘致活動を後押ししている。ワーケーション実践者のスキルを生かし、地域課題の解決や地域活性化につなげてもらうプログラムも提供。7月26日にはNTT東日本岩手支店(片岡千夏支店長)の7人が1泊2日の体験で滞在し、地元の水産加工会社から東日本大震災後の挑戦について聞き取りながら地域貢献策を考えた。
  
 7人は、魚河岸テラスで釜石ヒカリフーズ(唐丹町)の佐藤正一社長(62)から震災後の会社立ち上げと水産業再起の歩み、産学官連携の挑戦、今後の展望などを聞き取り。両社は、釜石湾で試験養殖するサクラマスの脂質検査を協働で行っており、さらなる連携や地域貢献について意見を交わした。
  
佐藤社長(左)の話に耳を傾けるNTT東日本岩手支店の社員ら

佐藤社長(左)の話に耳を傾けるNTT東日本岩手支店の社員ら

  
 NTTは従業員のテレワーク(在宅勤務)を推進しており、同支店でも約1年前から実践。他者との協業を通じて新たな価値創造のきっかけ、働き方改革の一助につなげようと釜石でワーケーションプログラムを体験した。高鷲直哉副支店長(44)は、同社が持つICT(情報通信技術)の1次産業への利活用を思案。「通信をベースに価値を創造し、住民生活を向上させるプランを地域と協働で提供する流れをつくっていければ。参加者一人一人が感じたことを共有し、発想力を生かしながら新たな取り組みに挑戦したい」と刺激を受けた様子だった。
  
 かまいしDMCは昨年10月、市内初のワーケーション施設を開設。これまでに延べ約230人が利用した。釜石ならではの体験プログラムを提供する中で、「ワーケーション実践者のスキルを生かして地域の課題解決や地域活性化に取り組んでもらうことはできないか」と模索。「地域企業とのセッション」というプログラムを用意し、地方創生に関心があり知見を生かしたい実践者と外部の力を活用したい地元企業をつないでいる。

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挑戦!釜石湾口防波堤で波力発電 マリンエナジー実証試験開始、再生エネルギー「地産地消」目指す

釜石港湾口防波堤上に設置された波力発電の装置

釜石港湾口防波堤上に設置された波力発電の装置

  
 釜石港湾口防波堤を舞台に、波の力で発電してエネルギーを地産地消する仕組みづくりに向けた実証試験が7月31日、始まった。釜石市内の4社が立ち上げた「マリンエナジー」(泉修一社長)を主体に、環境省から委託を受けて実施。波力発電装置の設計から製造、設置、システム開発、維持管理までを地元や県内事業者の技術を結集させた「オール岩手」の取り組みで、関係者は「地域活性化につながる」と期待を寄せる。既設の防波堤に波力発電装置を設置するのは世界初の試みでもあり、実用化されれば全国、世界への幅広い展開という可能性を秘める。
  
 発電装置は、湾口防北堤に設置。波の上下動で空気の流れをつくりタービンを回転させる仕組みで、空気の通り道となるダクト・空気室とタービン発電機を備えた機械・電機室からなる。高い波用と低い波用の2種類のタービンを組み合わせているのが特徴で、AI(人工知能)を使って波の強さを予測し、状況に応じてタービンを切り替えることで効率よく発電させるという。発電した電気は1・5キロの海底ケーブルで新浜町にある陸上観測所に送られ、陸上養殖実験施設など水産業に役立つ機器で活用する。
  
報道向けの見学会で設備を紹介する泉社長

報道向けの見学会で設備を紹介する泉社長

  
機械・電機室にある2種類のタービン

機械・電機室にある2種類のタービン

  
 マリンエナジーは、市内にある及川工務店(海洋土木工事)、小鯖造船工業(造船)、アイ・デン(電気工事)、エイワ(繊維強化プラスチック〔FRP〕製造)の4社が出資する株式会社。技術指導などで東京大先端科学技術研究センターや釜石・大槌地域産業育成センターなど多数の機関が共同で取り組み、2020年度から環境省事業の「インテリジェント吸波式波力発電による地域経済循環ビジネスモデル実証事業」を進めている。期間は22年度までの3年間で、予算は約3億9000万円。実証試験では23年3月まで発電装置1台を運転させ、実用化に向けたデータ収集や検証を行っていく。
  
運転開始のボタンを押す泉社長(左端)ら

運転開始のボタンを押す泉社長(左端)ら

  
 この日、観測所で運転開始式を行い、関係者ら約50人が出席。マリンエナジーの泉社長は「世界でも例を見ない防波堤を活用した波力発電システムの開発から普及まで、地域の力を結集して進めていく。漁業への利活用を中心とした経済循環による地域の活性化を目指す」と力を込めた。代表者ら5人が運転開始のスイッチを押し、実証試験をスタートさせた。
  
 将来的には装置を5台に増やす計画も。その場合の年間発電量は一般家庭約80世帯分に相当する約33万2800キロワット時を見込む。設備の大半が海面上にある今回のシステムは設置工事やメンテナンスが比較的容易でコスト削減を図れるのがメリットの一つ。泉社長は「改良を進めて量産化につながれば、全国の港湾や離島、海外島しょ国への展開も期待できる」と先を見据えている。
  
実証試験の開始に喜びつつ、気を引き締める関係者ら

実証試験の開始に喜びつつ、気を引き締める関係者ら

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海の生き物とふれあい体験 県水産技術センター(釜石・平田) 公開デーで理解促す

ワカメの芯抜き作業を体験する親子ら

ワカメの芯抜き作業を体験する親子ら

 
 海や水産について理解を深めてもらおうと、釜石市平田の県水産技術センター(神康俊所長)は23日、「公開デー」として庁舎を一般開放した。三陸沿岸に生息する魚介類、養殖水産物などを展示して同センターの研究内容を紹介。子ども連れの家族が多く訪れ、海の生物とのふれあい体験を楽しんだ。
 
 カラフルな魚拓やペットボトルを使った顕微鏡づくり、塩蔵ワカメの芯抜き作業体験などのコーナーが並んだ。地域未利用資源を活用した食品技術の開発やフィードオイル(魚油)などを添加した餌によるサケ稚魚の成長促進についての研究などをパネルで紹介。県が誘致を目指している超大型加速器、国際リニアコライダー(ILC)に関する展示コーナーも設けられた。
 
公開された漁業指導調査船「岩手丸」

公開された漁業指導調査船「岩手丸」

 
家族連れらが船内見学を楽しんだ

家族連れらが船内見学を楽しんだ

 
 漁業指導調査船「岩手丸」(154トン)も公開。船内には海洋の水温調査、底引き網漁での魚種調査などで活躍する最新鋭の観測・漁労装置が並び、乗船した人たちは興味深そうに眺めた。備えられた機器や用具に触れたり使い方を聞く子どもたちの質問に答えたりした村上孝弘船長(53)は「将来一緒に働いてくれたら」と期待を込めた。
 
カラフルな魚拓づくりに挑戦する子どもたち

カラフルな魚拓づくりに挑戦する子どもたち

  
 ウマヅラハギの魚拓づくりに挑戦した佐々木祷吾君(平田こども園年長)とお手伝いした弟祷羽君(同年少)は「うまくできた。楽しかった」と喜んだ。2人の兄祷気君(平田小2年)は、ウニやホタテなどをかたどったシールで海の生き物マップを作り上げて満足げ。漁師の父親を「かっこいい」と自慢し、なじみのある海や魚について「もっと勉強してみたい」と意欲を見せた。
 
 公開デーは「海の日」に合わせて行ってきたが、ここ数年は新型コロナウイルスの感染防止対策のためウェブ公開など代替え企画で施設を紹介。直接体験イベントを楽しむ形での開催は3年ぶりとなった。神所長は「センターの取り組みをより分かりやすく伝えることができる。魚、海、水産、環境など何かに興味を持ってもらうきっかけになれば」と望んだ。

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見て触れて学ぶ!科学の楽しさ、情報通信技術がもたらす未来 釜石でまるごと体感

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人型ロボットとの対話を楽しむ親子連れ

  
 最先端の科学や情報通信技術(ICT)に触れる「いわてまるごと科学・情報館」は16日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。県内の先端技術に関わる企業や研究機関が集まる、科学・情報の文化祭といえるイベント。子どもはもちろん、大人も楽しみながら最新技術がもたらす未来社会を体感した。
   
 県内企業や研究機関など12団体が展示・体験コーナーを用意。国際リニアコライダー(ILC)計画やブラックホール、バイオテクノロジーを使った研究などをパネルで紹介したほか、病気や障害などで外出が困難な人たちの社会参画を支える分身ロボット「オリヒメ」、人型ロボット「ペッパー」、コミュニケーションロボット「ソータ」などと対話を楽しむ体験が提供された。
  
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子どもたちは分身ロボット「オリヒメ」の操作体験に夢中

 
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VRゴーグルを身に着け、仮想空間を楽しむ子どもたち

  
 仮想現実(VR)の映像技術などを用いた疑似体験も多数紹介された。来場者は、自転車に乗りながらスマートフォンを見たり操作したりする「ながらスマホ」の危険性や西和賀地区の美しい河川流域をめぐる楽しさなどを体感した。
  
 専用のVRゴーグルを装着して高さ約20メートルの鉄塔での作業を体験し、「落ちたー。リアルに怖い。ひざがガクガクする」と目を見開いていたのは大船渡市の熊谷陽向(ひなた)君(大船渡小5年)。将来の夢は「天文学者」でブラックホールに関する展示を目当てに足を運んだが、「いろんな体験ができて楽しい。プログラミングとかにも挑戦してみたい」と刺激を受けた。母あゆみさん(38)は、普段できない体験に目を輝かす愛息を見つめ「どんな夢でも応援したい」と笑みをこぼした。
  
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「深海生物のフシギ」を紹介した藤倉さん(右から2人目)

 
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深海生物の標本に子どもたちは興味津々

  
 特別セミナーとして、海洋研究開発機構(神奈川県横須賀市)の藤倉克則上席研究員が「深海にいるユニークな生き物」をテーマに講演。科学で解明してきた深海生物の生態について解説し、「まだまだ謎だらけ。変な形や巨大ということも面白い深海生物だが、生き方を知るのはもっと面白い。暗く冷たい、大きな水圧、食べ物が少ないなど人間から見たら過酷な環境で生きるためにいろいろ工夫している」と衰えない探究心を示した。「ミツクリエナガチョウチンアンコウ」「オオメンダコ」「ナギナタシロウリガイ」など日本近郊で採取した深海生物の標本なども紹介し、子どもたちの知的好奇心をくすぐった。
  
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親子でさまざまな体験を楽しんだ

  
 県や大学、民間事業者などでつくるいわてまるごと科学館実行委員会、いわてSociety5.0実行委員会が主催。これまで別々に行っていた科学技術振興の普及啓発イベント「いわてまるごと科学館」と情報通信やICT利活用の利活用促進の普及啓発イベント「いわてICTフェア」を集約した。新型コロナウイルス感染症の影響で20年は各イベントをオンライン開催、集約して実施予定だった21年は中止しており、実地での開催は3年ぶりとなった。
  
 両実行委事務局を担う県ふるさと振興部化学・情報政策室の大橋真里菜主任(デジタル推進担当)は「科学、情報通信技術がもたらす未来を体感してもらい、これからの生活を考えるきっかけにしてもらえたら。大事な技術に関わる人材の育成にもつなげたい」と期待した。

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愛称は「釜石はまゆりサクラマス」 釜石湾・養殖2季目初水揚げ ブランド化へ期待

釜石市魚市場に今年初めて水揚げされた養殖サクラマス

釜石市魚市場に今年初めて水揚げされた養殖サクラマス

  
 釜石市や岩手大学などが釜石湾で試験養殖するサクラマスが11日、今季初めて釜石市魚市場に水揚げされた。これに合わせ市は、愛称が「釜石はまゆりサクラマス」に決定したことを発表。ブランド化を目指し、発信に力を入れていく。
  
 この日は午前5時すぎに水揚げが開始。平均体長約50センチ、重さ約2キロに育ったサクラマス約4トンが水揚げされた。1キロ当たり800~1380円で取り引きされ、地元の鮮魚店や水産加工業者などが買い取ったという。
  
関係者らが見守る中で水揚げされた養殖サクラマス

関係者らが見守る中で水揚げされた養殖サクラマス

  
水揚げ後すぐ重さによってより分けられた

水揚げ後すぐ重さによってより分けられた

  
 試験養殖は市と同大三陸水産研究センター、釜石湾漁業協同組合、地元水産会社などが研究コンソーシアムを結成して取り組む。2年目の今回は、昨年11月に開始。釜石湾内に設置したいけす1基に、300グラムほどの稚魚約2万尾を入れ、育てていた。
  
作業の様子を見守り、笑顔を見せる関係者ら

作業の様子を見守り、笑顔を見せる関係者ら

  
 管理を担う泉澤水産(両石町)の泉澤宏社長は「水温が低く、成育に時間がかかったが、その分脂乗りがいい魚に育った」と自信を持つ。サクラマスは日本の在来種でなじみもあり、「安定供給し、まずは地元で定着させたい」と意欲的。今季は、前年の2倍の約30トンの水揚げを見込んでいる。
  
愛称は「釜石はまゆりサクラマス」。ブランド化を目指す

愛称は「釜石はまゆりサクラマス」。ブランド化を目指す

  
 愛称は市の花「ハマユリ」にちなんだ命名。水揚げの様子を見守った野田武則市長は「東日本大震災の津波で浜辺に自生するハマユリも被害を受けたが、生き延び、花開いた。そんな力強さに、復興への思いや養殖発展への願いを託した。おいしいサクラマスの発信に力を入れたい」と強調した。釜石湾漁協の佐藤雅彦組合長は「新しい漁業」として養殖に期待。不漁が続く秋サケなどに代わる魚種の確保にもなることを願う。
  
 同センターの平井俊朗センター長は2期目の滑り出しを「順調」とするが、全国的に広がるサーモン養殖の中で「サクラマスは歴史が浅く、発展途上」と指摘する。主流のギンザケ、トラウトサーモンに比べると出荷サイズが一回り小さい、産卵期が早いなどの違いがあり、「より養殖に向いた魚」にするための研究が必要だという。環境に適した種苗づくりも進めていて、「サクラマスならではの生産技術を確立させ、ブランド化に生かしたい」と力を込めた。