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大槌産酒米「吟ぎんが」に理解 釜石・浜千鳥の酒造り体験塾で80人が田植えに挑戦!

酒米の田植えでスタートした「浜千鳥酒造り体験塾」=5月28日、大槌町

酒米の田植えでスタートした「浜千鳥酒造り体験塾」=5月28日、大槌町

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)が行う「酒造り体験塾」が今年もスタート。5月28日、同社に酒米を供給する大槌町の農家の田んぼで田植え体験会が開かれた。県内外から約80人が参加。地元の酒米「吟ぎんが」で仕込む酒の味わいに期待を膨らませながら、丁寧に苗を植え付けた。秋には稲刈り、冬には仕込み作業などを体験する。
 
 作業の安全、豊作を祈る神事では、同社醸造部の田村真央さん(28)が田んぼにくわ入れ。参加者の代表が植え始めの儀式を行った。田んぼの所有者で、大槌酒米研究会(5個人、1法人)会長の佐々木重吾さん(66)が苗の植え方を説明した後、参加者が一列に並び、昔ながらの手植え作業に挑戦した。
 
新里進社長らが神前に玉串をささげ豊作を祈願。醸造部・田村真央さんがくわ入れした(左下)=写真提供:浜千鳥

新里進社長らが神前に玉串をささげ豊作を祈願。醸造部・田村真央さんがくわ入れした(左下)=写真提供:浜千鳥

 
佐々木重吾さん(左)から苗の植え方を教わる参加者=写真提供:浜千鳥

佐々木重吾さん(左)から苗の植え方を教わる参加者=写真提供:浜千鳥

 
 この日の天候は曇り。途中から雨も降り出したが、「曇天のほうが苗が乾かず、田植えには好都合」と佐々木さん。泥に足を取られて転んでしまう参加者もいて、泥まみれの子どもたちは周囲の笑みを誘った。約1時間半の作業で、7アールの田んぼはきれいな青苗の列で埋まった。
 
酒米「吟ぎんが」の苗を手植え。雨の中、作業に励んだ

酒米「吟ぎんが」の苗を手植え。雨の中、作業に励んだ

 
泥まみれも楽しい思い出。子どもたちも一生懸命頑張りました!

泥まみれも楽しい思い出。子どもたちも一生懸命頑張りました!

 
 東京都から参加した前川さやかさん(28)は大槌町出身。和食居酒屋で副店長を務めており、店では全国の日本酒を提供している。「酒匠」として酒の勉強を重ねる中、「原料の米についても学びたい」と体験塾に足を運んだ。田植えは小学校の体験学習以来。「すごく大変だったが、お酒を飲むのも売るのもより楽しみになった」と貴重な体験を喜んだ。最近は「全国的に地元の米を使ったこだわりの地酒が増えている」といい、来店客の注目度も高い。「浜千鳥は海産物に合う酒としてお薦めしている。まだあまり知られていないところもあるので、さらに広めたい」と意気込んだ。
 
 釜石市の小國賢太さん(釜石中2年)は両親と共に幼児のころから同体験会に参加。「昨年は学校のテストと重なり来られなかったので久しぶりの田植え。めっちゃ疲れた。手植えだけだった昔は本当に大変だっただろう」と想像を巡らせた。
 
慣れてくると作業もペースアップ。植え終わるまであと一息

慣れてくると作業もペースアップ。植え終わるまであと一息

 
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 同研究会メンバーの今年の作付面積は合わせて約20ヘクタール。30代の新規就農者も参入し、会では後継者育成にも力を入れる。昨年、浜千鳥に供給された大槌産吟ぎんがは約78トン(前年対比約6トン増)。佐々木さんは「(天候などが順調に推移し)今年もさらに良くなってくれれば」と願う。
 
 吟ぎんがは岩手オリジナル酒米として普及が図られ、県内の多くの酒蔵で使われる。沿岸で栽培しているのは大槌地域だけ。今では、浜千鳥が吟ぎんがで仕込む商品は全て大槌産米が使われ、同社商品全体の5割を占める。コロナ禍の3年間は宴会などの減少で同社の販売数も落ち込んだ。新里社長は「コロナの収束で需要も回復傾向にある。これまでは生産調整を余儀なくされるなど苦しい状況が続いたが、今年は増産できる見込み。この地区の酒米が豊作になるよう祈る」と期待をにじませる。同社は今年、創業100周年を迎える。
 
最後の記念写真は出来上がった酒のボトルラベルに使われる

最後の記念写真は出来上がった酒のボトルラベルに使われる

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「明治日本の産業革命遺産」フォトコン 最優秀賞に橋野鉄鉱山(釜石) “ばえる”星空とコラボ

野田武則市長(左)に受賞を報告した佐々木弘文さん(左から2人目)、藤原信孝さん(同3人目)ら

野田武則市長(左)に受賞を報告した佐々木弘文さん(左から2人目)、藤原信孝さん(同3人目)ら

  
 「明治日本の産業革命遺産」を対象にしたフォトコンテストで、釜石市橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」を被写体にした作品「悠久のたたら場跡と星空」が最優秀賞に輝いた。撮影したのは、大渡町で化粧品専門店を経営する佐々木弘文さん(55)。高炉が稼働していた時代の“熱”を想起させる一枚だ。同じモチーフを別の視点で捉えた「原燃料の山と橋野一番高炉」は栗林町の藤原信孝さん(74)の作品で、エリア賞を獲得。2人は10日に市役所を訪れ、野田武則市長に喜びを伝えた。
  
 コンテストは「明治日本の産業革命遺産」世界遺産協議会(事務局・鹿児島県)が主催。橋野鉄鉱山など8県11市に点在する23の資産で構成される同遺産の世界遺産登録10周年(2025年)に向けた機運を盛り上げようと初めて企画された。「つなぐ」をテーマに作品を募り、全国から1084点の応募があった。釜石エリアでは62点。最優秀賞1点、優秀賞2点、構成資産に応じたエリア賞8点が選ばれた。
  
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最優秀賞に輝いた佐々木さんの「悠久のたたら場跡と星空」

  
 最高賞となった佐々木さんの作品は、一番高炉と星空がモチーフ。撮影したのは1月下旬で、雪に覆われた高炉には静けさが漂うが、外灯に照らされた雲が高炉の炎で赤く染まったように見え、独特の雰囲気を醸している。「高炉が動いていた頃の風景はこんな感じだったのかな」と往時に思いをはせながら、今ある風景を切り取ったという。「下見あってこそ。いい構図に仕上がった。受賞は驚いたが、とてもうれしい」と感想。子どもの頃に遠足で訪れた場所が思いがけず世界遺産となり、「どちらかというと地味な場所だが、誇りある場所でもある。工夫し、ひと味加えることで“ばえる”写真を撮り続けたい」と意欲を見せた。
 
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釜石エリア賞を受けた藤原さんの「原燃料の山と橋野一番高炉」

  
 エリア賞を受けた藤原さんは釜石観光ガイド会事務局長を務め、週に数回、ガイドやパトロールのため橋野鉄鉱山に足を運んでいる。日々の活動の中で、何気なくスマートフォンを取り出してシャッターを押しているといい、今回の受賞作もそんな一枚。通り雨のあとの、すっきりした青空と緑豊かな森、色づき始めた木々に心動かされて撮ってみると、「資産の全体像をイメージできる一枚」になった。写っていたのは高炉、鉄鉱石の採掘場、木炭の原材料となる森林など。「この自然、環境全体が日本の鉄づくりを支えた。ガイドとして説明したいことを収められた」と満足げだった。
  
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懇談では写真に込めた思いや撮影のポイントなどを明かした

  
 野田市長は「10周年に向けた展開の足掛かりになる。写真を活用し、まず市民に橋野鉄鉱山の良さを理解してもらい、世界への発信につなげたい」と期待を述べた。
  
 2作品は今後、市役所など公共施設で巡回展示を予定している。
 

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【事業者向けセミナー】しごと・くらしサポートセンター 5月のイベント・セミナー情報

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DXセミナーチラシ[PDF:3.75MB]

セミナー内容

地方企業の課題にせまる!デジタル人材を育てよう(ジョブカフェかまいし共催セミナー)
 
「デジタルトランスフォーメーション(DX)」は達成することが意味を持つものではありません。様々な業種があり、「ゴール」のような物差しがある取り組みではなく、会社によって異なります。
今回のセミナーでは、お申し込み時にいただいた課題についてのデジタル化の事例と必要性や、デジタル人材の必要性についてお話しします。

日時

5月23日(火)13:30~15:00

講師

local hack合同会社 代表 鈴木 広法さん

主催

local hack合同会社

申し込み

下記の申込フォームからお申込みください。
個人の方のお申込みも可能です。
 
申込フォームはこちら

会場

しごと・くらしサポートセンター/ジョブカフェかまいし
岩手県釜石市港町2丁目1-1 イオンタウン釜石2F(大戸屋様となり)

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お問合わせ

しごと・くらしサポートセンター
TEL:0193-27-6177
E-MAIL:info@jobcafe-kamaishi.jp

この記事に関するお問い合わせ
産業振興部 商工観光課 商工業支援係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-22-2111 / Fax 0193-22-2762 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2021112600047/
釜石市

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釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
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目指せ!浜の戦力 いわて水産アカデミー5期生入講 釜石の松木さん「漁業に若い力を」

漁業の担い手を目指す「いわて水産アカデミー」の5期生=4月13日

漁業の担い手を目指す「いわて水産アカデミー」の5期生=4月13日

  
 岩手県の漁業を担う人材を育成する「いわて水産アカデミー」(同アカデミー運営協議会主催)は4月13日に開講。第5期生として10~40代の6人が、就業に必要な知識・技術の習得に向け実践研修を始めた。「地域に認められる漁業者に」。1年後に浜の戦力として踏み出すため、仲間と思いを共有しながら腕を磨き合う。
   
 同協議会は、県内の漁業関係団体や市町村単位で設立された新規漁業就業者育成協議会、県で構成。アカデミーは2019年に始まり、これまでに29人が修了している。
   
入講式に臨む5期生。研修生活のスタートに気を引き締める=4月13日

入講式に臨む5期生。研修生活のスタートに気を引き締める=4月13日

   
 5期生の入講式は4月13日に釜石市平田の県水産技術センターであり、研修生を代表して佐々木イザベルさん(43)=大船渡市三陸町綾里、フランス出身=が、同協議会長を務める県農林水産部の藤代克彦部長から研修許可書を受け取った。
   
 研修6人のうち4人はこの春に高校を卒業したばかり。「仲間同士で刺激し合い、共に成長し、地域に認められる漁業者に。精いっぱい努力する」と代表宣誓した松木孝貴さん(18)もその一人で、釜石から参加する未来の担い手だ。
  
「地域に認められる漁業者に」と誓う松木孝貴さん=4月13日

「地域に認められる漁業者に」と誓う松木孝貴さん=4月13日

  
 地元・唐丹町で漁師になることを決めたのは、父親(漁協准組合員)の漁を手伝ったり、釣りが好きだから。そのため、海洋システム科のある高田高校(陸前高田市)に進み、小型船舶免許2級やダイビングの資格を取得するなど準備してきた。将来的には定置網業に従事することになるが、さまざまな漁法を体験したいとアカデミーに参加。「若い力で地域に貢献したい」と前を向く。漁師の減少、高齢化に危機感を持っていて、「もっと若い世代が海の良さを知り、興味を持つ取り組みもしたい」と先を見据えた。
   
 さまざまな思いを抱き、一歩を踏み出した研修生たち。藤代部長は水産業を取り巻く厳しい現状に触れながらも、「夢や目標の実現に向けしっかりと学び、仲間や地域の皆さんとのつながりを大切にし、研さんを」と激励した。
   
 研修生は1年間、基礎から漁業経営に必要となる高度知識までを学ぶ。釜石市、大船渡市、陸前高田市、宮古市、田野畑村の漁業者の下でそれぞれ定置網漁や養殖業を実践。ICT(情報通信技術)の活用や6次産業化、水産加工などの理解を深めながら、小型船舶操縦士などの免許取得も目指す。
   
集合研修でロープワークに挑む研修生ら=4月25日

集合研修でロープワークに挑む研修生ら=4月25日

   
 本格的な研修は4月下旬にスタート。集合研修2日目の25日は同センターで漁業の種類や漁法などに関する座学のあと、漁具・漁業資材販売業アサヤ釜石支店(大平町)の小林英人支店長らを講師に、漁師に必須となるロープワークを学んだ。3本より、8本よりのロープを一度ほどいてアイ(輪)をつくってから再びロープに編み込んでいく「さつま編み加工」などをおさらい。5期生たちは、「もう一歩で上手になる」「『なんだ、その手つき』と言われるぞ」などと講師に鼓舞されながら真剣な表情で臨んでいた。
   
講師や仲間に声がけしながら積極的に学ぶ松木さん(中)=4月25日

講師や仲間に声がけしながら積極的に学ぶ松木さん(中)=4月25日

   
 松木さんは「分かっていても、うまくいかないこともある」とこぼしつつ、「やり方、教えて」と仲間に積極的に声がけし意欲満々。研修前に浜で漁の手伝いをしてきたというが、「実際の漁は、教科書に載っているやり方ではなかった。今はただ見ているだけ。現場でいろいろ覚えなければ」と力不足を認識。先輩漁師のすごさを目の当たりにし、「やってやるという気持ち。足場をしっかりと固めながら働いていく」と前を向く。
 

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「元気で帰ってきてね~」 かまいしこども園児が甲子川にサケの稚魚5000匹放流

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かまいしこども園の年長児によるサケの稚魚の放流=甲子川

 
 釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児80人)の年長児が4月24日、同市を流れる甲子川にサケの稚魚を放流した。地元の海や水産業に親しみ、郷土愛を育む学習の一環。園児たちは大きく成長したサケが4年後に戻ってくることを期待し、大海原に旅立つ“赤ちゃんサケ”を見送った。
 
 同園は海洋教育パイオニアスクールプログラム(笹川平和財団海洋政策研究所など主催)の助成を受け、2021年度から年長児がサケの学習に取り組む。本年度の学習のスタートは稚魚の放流。千鳥町の河川敷に到着した園児18人は始めに、同学習の講師を務める岩手大三陸水産研究センター特任専門職員の齋藤孝信さんから、放流したサケがどこで大きくなり食卓まで届くかを学んだ。齋藤さんは「川を下ったサケは北の寒い海をぐるぐる回り、餌をいっぱい食べて大きくなってから4年後に戻ってきます。みんなが小学3年生になる秋ごろです」と教えた。
 
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講師の齋藤孝信さんからサケの成長について学ぶ

 
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今年は例年より大きく育てた稚魚(左下写真)を放流した

 
 園児たちは釜石湾漁協甲子川さけ人工ふ化場から運ばれた稚魚を小さなバケツに分けてもらい、「元気に帰ってきてねー」などと声をかけながら水中に放した。稚魚は甲子川など地元河川に戻ってきたサケから採卵し受精、ふ化させたもの。体長7~8センチ、重さ3グラムに成長した約5000匹を放流した。回帰率を高めるため、今年は県全体の指針に沿って例年の倍以上大きくして放流している。
 
 千葉菫ちゃん(5)は稚魚の様子を「手を振っている(さよならしている)みたいな子やけんかしている子もいた」と表現。サケを食べるのも「大好き」といい、「うろこが虹色に光るような、かわいい大きなサケになってほしい」と成長を楽しみにした。
 
川の中で元気に泳ぐサケの稚魚を見守る園児たち

川の中で元気に泳ぐサケの稚魚を見守る園児たち

 
 同ふ化場の佐々木有賢場長によると、甲子川で放す稚魚には独自の耳石標識をつけており、漁獲した時に“生まれ故郷”が分かるようになっているという。「地元で放したサケがちゃんと帰ってくると知ることで、地域の川をきれいにしようという意識も生まれる。生き物の命を大事にいただくという姿勢も学んでくれたら」と佐々木場長。
 
 近年、サケの不漁は深刻。甲子川に遡上するサケはピーク時には1シーズン約4万7000匹に達したが、震災以降減少。佐々木場長は「平均で約3万匹はとれていたが、ここ2年は10分の1以下にまで減っている」と厳しい状況を明かす。県内のサケふ化場は現在、4カ所に集約。釜石、大槌地域の河川(片岸、甲子、鵜住居、大槌)でとれたサケは一度、甲子川ふ化場に集めて採卵。稚魚にして、各河川から放流する形を取っているという。
 
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無事に放流の役目を果たし、満面の笑顔を広げた

 
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最後に園児の代表が甲子川ふ化場の職員にお礼のメッセージカードを手渡した

 
 同園のサケ学習は全3回の予定で、残る2回はサケを漁獲する定置網漁や魚市場の学習、雌サケを解体して給食で食べる体験を計画する。市内では、釜石小と釜石高も同プログラムの助成を受けて海に関する学習を行う予定。同園と両校の採択は3年連続。

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新設のSMC釜石第5工場 4月から本格操業 雇用拡大、地域経済活性化に期待

4月から本格操業を開始する「SMC釜石第5工場」=釜石市岩井町

4月から本格操業を開始する「SMC釜石第5工場」=釜石市岩井町

 
 空気圧制御機器製造で世界首位のSMC(髙田芳樹社長、本社・東京都千代田区)が国内生産拠点の一つ、釜石市に新工場を建設。4月から本格的に操業を開始する。同市の誘致企業として30年以上の実績がある同社釜石工場。今回の工場新設は国内外の需要増に対応し生産拡大を図るためのもので、同市では5番目の工場となる。順次雇用を増やし、2026年ごろまでに外国人を含む約600人の就労を目指す。
 
 釜石第5工場は第2工場に隣接する形で岩井町に建設。敷地面積は2万6317平方メートル。建物は鉄骨造り2階建てで、工場棟2棟に事務所と食堂を備える。延べ床面積は2万6970平方メートル。既存工場で手掛けてきた電磁弁部品、空気圧補助機器、管継手(かんつぎて)を製造する。
 
 新工場稼働に伴い、中途採用、パートを含む人員確保を進めている。特定技能外国人労働者の雇用も予定。釜石工場では現在、ベトナム、インドネシア、中国出身者ら約50人が就労しており、今後約200人にまで増員する計画。即戦力として期待される。
 
緑のインテリアで彩られた2階の事務所スペース

緑のインテリアで彩られた2階の事務所スペース

 
食事も提供する2階の食堂。室内には自社製品の焼結濾過体を使った照明器具も設置(左下写真)

食事も提供する2階の食堂。室内には自社製品の焼結濾過体を使った照明器具も設置(左下写真)

 
食堂は大型テーブル席のほかソファー席なども

食堂は大型テーブル席のほかソファー席なども

 
 同社の主力製品・空気圧制御機器は、工場の生産ラインなどの自動化に欠かせないもので、自動車や半導体、食品製造をはじめ、あらゆる産業で使われる。日常生活でなじみのあるものではガソリンスタンドの洗車機、バスの開閉扉、歯科医の治療機器―などに組み込まれ、さまざまな装置の自動化を可能にする。同分野の国内シェア65%、世界シェアも40%弱とトップを誇る。
 
 近年では世界的な脱炭素化の動きにも対応する。消費電力、二酸化炭素排出量削減に貢献する省エネルギー製品を開発、設計し、各種産業界に提案。今後、さらなる需要増が見込まれる。
 
 同社の国内生産拠点は埼玉県草加市、茨城県常総市など関東以北に6カ所。海外は約30の国と地域に工場を持つ。釜石市では1991年に第1工場(上中島町)が操業。2000年には第2工場(岩井町)と第3工場(甲子町坪内)、01年には第4工場(甲子町松倉)が設置された。当初50~100人ほどだった従業員は現在、1~4工場合わせ約1500人にまで増え、同市を代表するものづくり企業として内外に認知される。釜石工場では部品製造から組み立て加工まで、製品の一貫生産を行っている。
 
 浦島勝樹釜石工場長は第5工場操業にあたり、「市内の雇用機会創出など、より一層地域に貢献できる工場を目指したい。当社では2026年の全体売り上げ1兆円を目標に掲げる。釜石工場としても人員を確保しながら生産能力を高め、目標達成の一翼を担えれば」と意を強くする。
 
 野田武則釜石市長は「SMCは今では、三陸沿岸地域の産業と雇用を支える県内有数の事業所となった。今回の釜石第5工場の稼働が、地域の雇用や経済振興に大きく寄与することを期待している」とのコメントを寄せた。
 
 同社では今回、需要増への対応として釜石市のほか、本県遠野市、茨城県下妻市の拠点にも新工場を設置している。

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プラスチックごみの再資源化促進 岩手資源循環が釜石・平田に処理工場新設へ 市と立地協定

工場立地の協定書を交わした岩手資源循環の谷博之代表取締役(中右)と野田武則市長(中左)

工場立地の協定書を交わした岩手資源循環の谷博之代表取締役(中右)と野田武則市長(中左)

 
 岩手資源循環(資本金1,000万円、谷博之代表取締役)が運営する「釜石総合リサイクルセンター」が釜石市平田に開設される。自治体が収集する家庭プラスチックごみの選別、再資源化を主事業に、産業廃棄物処理にも対応。施設は今夏、着工予定で、産業廃棄物は2024年10月、一般の廃プラスチックは25年4月からの受け入れを目指す。操業初年度は現地採用を含め25人程度を雇用する。2月22日、同社と市が立地協定を結んだ。
 
 協定締結式は市役所で行われ、野田武則市長と同社の谷代表取締役(47)が署名した協定書を取り交わした。協定には周辺住民の生活への配慮、環境関係法令の厳守、地域企業との連携や受発注などで釜石地域の産業経済振興に努めることなどが盛り込まれた。
 
野田市長(左)と谷代表取締役が協定書に署名

野田市長(左)と谷代表取締役が協定書に署名

 
 同社は、東日本を中心に7社16拠点で廃棄物処理や再資源化事業を行う有明興業(東京都江東区)グループの3社が共同出資し、22年5月に設立。同リサイクルセンターは、釜石など3市2町のごみ処理を行う岩手沿岸南部クリーンセンター隣の日本製鉄所有地約8,120平方メートルを借りて建設する。資源プラスチック・産業廃棄物処理棟はテント型の鉄骨組み幕構造(延べ床面積約1,500平方メートル)、事務所棟は木造平屋建て(同約300平方メートル)。
 
 メインで処理するのは、自治体が分別回収する家庭排出のプラスチックごみ(ペットボトルを除く)。再生可能なものを選別し、再商品化事業者が利用できる原料に加工する。産業廃棄物はプラスチックのほか、木、紙、金属などを受け入れ、再生原料・燃料化。分別、破砕などの中間処理も行う。船舶の解体を含む漁業系廃棄物処理にも対応。年間約9,000トンの処理を当初目標とする。
 
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 22年4月の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の施行で、自治体は容器包装以外のプラ使用製品についても分別収集・再商品化への努力が求められる。同リサイクルセンターの設置は、焼却による温室効果ガスの排出削減、自治体の処理負担軽減につながり、プラごみの分別収集が進んでいなかった沿岸南部地域の取り組み加速も期待される。
 
 同企業グループのフジメタルリサイクルは釜石市港町に、鉄くずの加工処理などを行う工場を22年前から稼働。南北、東西を結ぶ高速道路の結節点、釜石港を利用した船舶での搬出入の利点も踏まえ、今回のリサイクルセンター設置を決めた。
 
 協定締結式で谷代表取締役は「同市と周辺沿岸地域の循環型社会形成の一助となるよう、可能な限りの再生プラスチック原料化、グループ内の再商品化を目指す。この地特有の一次産業の循環型システム構築にも地元企業、自治体と一緒に取り組んでいければ」と意気込みを示した。野田市長は「50年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指す当市で、他地域に先駆けた取り組みが可能になる。処理が困難な漁船も扱うことで、地域課題の解決や産業振興にもつながる」と期待を寄せた。

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身入りよし「畜養ウニ」 釜石・唐丹漁協、試験出荷開始 評価も上々!通年出荷へ期待高まる

釜石・唐丹町の小白浜漁港で畜養されているウニの水揚げ作業

釜石・唐丹町の小白浜漁港で畜養されているウニの水揚げ作業

 
 岩手県沿岸部では海藻がなくなり、藻場が砂漠のようになってしまう「磯焼け」が深刻化し、漁業に悪影響を与えている。要因の一つが、海藻を餌とするウニの過剰繁殖。その一方、コンブなどの海藻を食べ尽くしてしまい餌不足の状態となり、身入りの悪い「やせウニ」が増え、漁業者を悩ませる。そうした中、商品価値のない「やせウニ」を別の場所に移し餌を与えて太らせる畜養が県内各地で進行。釜石市唐丹町小白浜地区では昨年10月から取り組んでおり、2月24日に水揚げ、試験出荷を始めた。関係者が身入りや色付きなどを確かめ、「上々」と“ほっ”とひと息。ウニは出荷時季が限定されてきたが、通年出荷に向けて期待を高めた。
  
 県内各地で進むウニの畜養は、やせウニの有効利用を目的とした県の「黄金のウニ収益力向上推進事業」の一環。畜養で大きくしたウニを通常の夏場以外に出荷することで付加価値を高めるのも狙いだ。2020年度から久慈市の2地区(南侍浜・角浜)、大船渡市三陸町綾里地区で展開。22年度は釜石のほか、久慈2地区、三陸町の越喜来地区で行われている。
 
いけすから取り出したウニを手に頬を緩める漁業者ら

いけすから取り出したウニを手に頬を緩める漁業者ら

 
 釜石・小白浜地区で畜養に取り組むのは唐丹町漁協(木村嘉人組合長)の漁師たち。昨年10月下旬に唐丹湾沖合で取ったウニ約6000個(約400キロ)を、小白浜漁港内に設置した2基のいけすに移し給餌を開始。漁協の加工場で出る塩蔵ワカメの端材などを与え、約4カ月間育ててきた。
 
ウニを割って確認。身入りも色付きも「いいんでない」

ウニを割って確認。身入りも色付きも「いいんでない」

 
身たっぷりの唐丹発・畜養ウニ。漁業者の期待も高まる

身たっぷりの唐丹発・畜養ウニ。漁業者の期待も高まる

 
 24日、漁師らが船でいけすに向かい、水揚げ。出荷に適したウニを見極めて取り出し、殻を割って身入りを確かめた。試験出荷先の旅館宝来館(鵜住居町)の松田一角部長(42)も乗船し、試食。「おいしい。餌はワカメで、自然環境と同じ状態で育っていて、磯の香りもある。思ったより、しっかり育成されている」と評価した。
 
小白浜漁港内に設置された2基のいけす。背後には漁協の加工場もある

小白浜漁港内に設置された2基のいけす。背後には漁協の加工場もある

 
 小白浜地区の畜養は、小割式の網いけすが特徴。90センチ四方の小型いけすを4つ連結させた構造で、畜養する数量に合わせ、いけすの連結数を増やしたり、大きさを調節することができる。連結することで強度も増す。ウニの様子を見やすいようにオレンジ色の網を使用。ウニの取り出しが容易で、少量の注文にも柔軟に対応できるという。深さは1.5メートルと2.5メートルのものがあり、収量や育成の違いなどを試験中。手法が確立すれば、天候などに左右されずに安定的な出荷が可能となり、不漁に苦しむ漁業者の収入増が期待される。
  
給餌の様子。加工場で出た塩蔵ワカメの端材を有効活用する

給餌の様子。加工場で出た塩蔵ワカメの端材を有効活用する

 
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オレンジ色の網を使い、ウニの様子を分かりやすくする工夫も

  
 県沿岸広域振興局水産振興課の山野目健課長(57)は、いけすについて「単純な構造にみえるが、ウニ養殖としては画期的なもの。ウニが接着する面を増やせ、餌やりも簡単。船上でカガミを使ってとるのではなく、たも網で手軽に取り出せる」と自負する。地球温暖化の影響で海の環境が変化し増えてしまったウニを間引きし、適正化しようとする“黄金のウニ”事業。「やせウニを活用し付加価値をつけて安定的な出荷ができるようになれば、地域の水産振興にも貢献できる」と力を込めた。
  
宝来館の調理場で出来を確かめる千葉さん(左)、松田さんら

宝来館の調理場で出来を確かめる千葉さん(左)、松田さんら

  
 水揚げ後、唐丹町漁協参事の千葉博幸さん(60)が宝来館に直送。調理場で料理長らの「これなら」と声を聞いて顔をほころばせた。当面の取引先はこの旅館が主になり、松田部長は「釜石にいつ来てもウニが食べられる、しかもその日取ったものを―というのが魅力。リーズナブルに提供できるようプラン化したい」と腕をまくった。
 
「浜に活気を」。畜養ウニを手に期待を込める千葉さん

「浜に活気を」。畜養ウニを手に期待を込める千葉さん

 
 「コンクリートの上にウニが転がっている感じ」と海の状況を話す千葉さん。「磯焼けが解消されるには5年、10年…年月がかかるだろう。だが、何もせず指をくわえて待っていることはできない」
 
 そんな中で始めた、沖のやせたウニ、ワカメ加工の端材といった商品価値のないものを使った取り組みに手応えを感じている。「通年で生の新鮮なウニを食べてもらえたら」。県の委託で取り組んだ畜養試験は本年度で終了だが、千葉さんは次年度以降も継続させたい考え。ただ、餌の確保や種類、取引先の確保など課題はあり、手探り状態は続く。

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地元就職促進へ企業説明会、釜石職安 高校2年生対象 仕事・未来の選択に向け情報収集

高校2年生を対象に開かれた企業説明会

高校2年生を対象に開かれた企業説明会

 
 高校2年生を対象にした企業説明会「しごと☆みらいスケッチ」(釜石公共職業安定所、釜石地域雇用開発協会主催)が1月24日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。釜石職安管内の釜石(定時制を含む)、釜石商工、大槌、遠野緑峰の各高校から就職を希望する生徒約90人が参加。地元企業やさまざまな職種への理解を深め、就職に関する情報を収集する機会にした。
  
 食品製造、機械製造、建築・土木、医療・福祉など10事業所がブースを構え、商品や職場の写真などの展示、映像も活用しながら生徒らにアピール。会社概要や事業内容、福利厚生の説明をはじめ、若手社員が働く様子を分かりやすく伝えるなど工夫を凝らし魅力を発信した。
  
地元企業の担当者から事業内容について説明を聞く生徒ら

地元企業の担当者から事業内容について説明を聞く生徒ら

  
 津田商店(水産加工品製造販売業)総務経理課主任の藤枝大樹さん(27)は「社員の平均年齢は46歳。若い人を積極的に採用していて、元気のある皆さんに活躍してほしい」と紹介。入社2年目の神田耀人さん(24)は原料となる魚の買い付けを担当していて、「とても難しい仕事だが、先輩が丁寧に教えてくれる。やりがいを感じ、成長を実感できる。魚に詳しくなくても働きながら覚えればよく、心配は無用」と伝えた。
 
 青紀土木(土木工事業)は、インターン学生2人が高校生向けに作った会社紹介冊子を配布。ブース担当者は「高校生に近い存在の大学生、建設業を知らない女子学生の目線で、会社の良さや建設業の役割などが分かりやすくまとめてもらった。理解が深まり興味を持ってもらうことで就職につながれば」と期待していた。
  
身近に感じてもらおうと工夫を凝らした冊子でPRする会社も

身近に感じてもらおうと工夫を凝らした冊子でPRする会社も

  
 生徒らは4つのブースを回って説明に聞き入り、熱心にメモを取る姿も見られた。介護士を目指す男子生徒は「今のうちに準備しておくといいことは?」などと積極的に質問。仕事で大変だと思う場面やプライベートの過ごし方などを聞いて、働くイメージを湧かせていた。
 
 釜石商工高電気電子科の菊池太地さんは、学びを生かせる県外企業への就職を視野に入れる。地元で働く人たちの話を聞いて発見したことがいくつかあったようで、「関係がないように感じていた職種でも、身に着けたことを生かせる仕事があるのが分かった。地元もいいかも。少し揺らいでいる」と、将来への選択肢を増やした。
  
若手社員らの企業PRに耳を傾けて働くイメージを広げる高校生

若手社員らの企業PRに耳を傾けて働くイメージを広げる高校生

  
 釜石職安によると、ここ数年、地元企業への就職率は伸びているが、少子化により生徒数は減っており、企業が望む採用数を満たすのは難しい状況。そうした中で、一人でも多く地元で働いてもらおうと、同説明会を続けている。菊池勝雄所長は「地元企業と触れ合うことで高校生に地域で作られているもの、提供されるサービスを知ってもらえたら。若い時からの地道な種まきを大事にしていきたい」と話した。
 
 

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小形博行エスビー食品会長 ふるさと釜石で講演 市民の健康増進に香辛料の活用指南

出身地の釜石市で講演したエスビー食品の小形博行会長=1月19日、TETTO

出身地の釜石市で講演したエスビー食品の小形博行会長=1月19日、TETTO

 
 釜石市出身で、食品大手のエスビー食品(東京都中央区)代表取締役会長の小形博行さん(65)が1月19日、同市の新春特別講演会に講師として招かれた。東日本大震災後の支援活動、釜石応援ふるさと大使の受任などで、生まれ故郷に思いを寄せる小形さん。講演のほか抽選会、名刺交換会で市民らと交流し、同市の2023年スタートに希望と活力をもたらした。
 
 同講演会は、新型コロナウイルス感染症の影響で20年から中止が続く市新年交賀会の代替イベントとして企画。市、市議会、釜石商工会議所が主催し、3年越しに実現した。講師の小形さんは同市小川町出身。釜石南高から慶應義塾大に進み、1979年にエスビー食品に入社した。管理職、取締役執行役員などを経て2016年6月、代表取締役社長に就任。22年6月から同会長となっている。
 
 小形さんは東日本大震災が発生した11年、同市の秋の名物行事「かまいし仙人峠マラソン大会」に、同社所属のマラソン選手として活躍した瀬古利彦さんを招へい。復興に向かう市民らを勇気づけた。同社は19年、同市の岩手缶詰が製造するサバの洋風缶詰「サヴァ缶」とコラボしたパスタソースを全国発売。売り上げの一部を本県など東日本の復興支援に充てる活動を今も継続する。ラグビーの釜石シーウェイブスRFCのパートナー企業としても名を連ねる。
 
講演では震災後の釜石市とのつながりについても紹介した

講演では震災後の釜石市とのつながりについても紹介した

 
 講演では、国内市場約60%のシェアを誇る同社の主力「香辛料(スパイス、ハーブ)」について話した。古代から薬草として用いられ、中世欧州で食用の需要が高まったという歴史を紹介。一番の特徴である「香り」は食欲増進、消化吸収を助ける作用があり、健康維持に大きな役割を果たすとした。解熱、抗ウイルス、整腸などの薬用効果、ガン予防の研究結果も示した。
 
 脳卒中、心臓病などの重大疾患にもつながる高血圧の最大の要因は塩分の取りすぎ。予防や治療には減塩が必須だが、目標量に抑えるのはなかなか難しい。小形さんは「塩分を減らしてスパイスやハーブを使うことで、薄味の物足りなさを補うことができる」とアドバイス。釜石市は65歳未満の脳血管疾患の死亡率が県内14市の中で男性がワースト1位、女性が3位という状況もあり、「うまく活用して塩分の取りすぎを防いでもらえたら」と話した。
 
スパイス、ハーブの働きなどを説明する小形会長

スパイス、ハーブの働きなどを説明する小形会長

 
講演には約150人が参加。健康増進にも役立つ話に聞き入った

講演には約150人が参加。健康増進にも役立つ話に聞き入った

 
 今や国民食となり、その味が世界でも認められる日本のカレー。その礎を築くきっかけを作ったのが同社の創業者、故山崎峯次郎氏。1923(大正12)年、日本初の純国産カレー粉の製造に成功したことが始まりとされる。講演ではその誕生秘話のVTRも上映された。同社は本年4月で創業100周年を迎える。
 
 講演後は、商工会議所の山元一典会頭が小形さんに花束を贈呈。同社の商品詰め合わせが当たる抽選会や出席者による名刺交換会が行われた。講演の前には小形さんの母校、現釜石高の音楽部による歌の披露、出席者代表15人による鏡開きも行われた。
 
釜石高音楽部の生徒は清らかな歌声で会のオープニングを飾った

釜石高音楽部の生徒は清らかな歌声で会のオープニングを飾った

 
新年のスタートを祝う鏡開き。コロナ禍からの脱却に願いを込めて…

新年のスタートを祝う鏡開き。コロナ禍からの脱却に願いを込めて…

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どれだけ知っている?「魚のまち釜石」 岩大生初企画の検定に市民が挑戦 成績優秀6人を表彰

「第1回釜石さかなと海の検定」の成績上位者ら

「第1回釜石さかなと海の検定」の成績上位者ら

 
 「鉄と魚とラグビーのまち」釜石に“新検定”登場! 釜石市で学ぶ岩手大農学部食料生産環境学科水産システム学コースの4年生有志5人は、地元の海に生息する魚や漁業にもっと関心を持ってもらおうと、「釜石さかなと海の検定」を初めて企画。昨年12月18日、小学1年生から80歳までの市民21人が挑戦した。難問ながら「楽しかった」と、新たな試みを喜ぶ挑戦者ら。今月15日には成績上位の6人が表彰された。
 
 検定は同市の学生活動支援事業補助金を活用して実施。小中学生、一般(高校生以上)の2部門で参加者を募集した。参加資格は市内に在住または勤務する人(小学生以上)。小中学生は40問、一般は70問の出題で、4つの選択肢から正解を選ぶ方式。制限時間は小中学生が30分、一般は60分に設定された。
 
 釜石独自の問題は学生自ら考えた。魚介類の名前、生態、魚へんの漢字の読み方、魚食、漁船、漁港に関することなど幅広い知識を試す内容。歴史や地理にまつわる問いも盛り込んだ。学生らは地元水産関係者の協力で、予備を含め約200問を作成。初回ということで、難易度の判断は手探りだったが、厳選した良問が出題された。
 
昨年12月に岩大釜石キャンパスで行われた検定試験(左下は一般の部)=写真:主催者撮影

昨年12月に岩大釜石キャンパスで行われた検定試験(左下は一般の部)=写真:主催者撮影

 
 検定試験は同市平田の岩手大釜石キャンパスで行われ、小中の部に9人、一般の部に12人が挑んだ。試験終了後には答え合わせ、問題解説の時間も。集めた解答用紙は学生が採点し、昨年中に結果を郵送した。年明けの今月、各部の成績上位3人を表彰する場が設けられた。対象者には表彰状と、副賞として活ホタテ(ヤマキイチ商店)や三陸海宝漬(中村家)が贈られた。
 
 小中の1位となった金野龍真君(双葉小4年)は、スーパーでチラシを見つけて応募。検定に向け、図書館から魚の本を借りたりして勉強したというが、「やったのは1問も出なかった…」とちょっぴり残念そう。それでも、普段から父と海釣りに出かけているというだけあって、「お父さんとおしゃべりした知識が生かされたのでは」と母が代弁。自身は「魚が好き。もっと勉強して2回目も絶対受ける」と意気込んだ。
 
小中学生の部1位の金野龍真君。副賞のホタテを贈られ笑顔!

小中学生の部1位の金野龍真君。副賞のホタテを贈られ笑顔!

 
表彰状を贈られる一般の部1位の佐々木昌貴さん(左)。正答率トップだった

表彰状を贈られる一般の部1位の佐々木昌貴さん(左)。正答率トップだった

 
 一般の1位は唐丹町の公務員佐々木昌貴さん(55)。子どものころから地元の海魚や漁に魅せられ、関連場所などを訪問。「いつか知識を試せる場があれば」と願っていた。今回は絶好の機会。1位という結果に「たまたま知っているのが出たから」と謙遜するが、正答率は参加者中最高の81%。「中身としては難しいが、バランス良く出題されていた。さらに学びを深めたい」と知る楽しさを実感。次回検定を心待ちにした。
 
 主催した学生のリーダー井田幸助さん(22)は「参加者が喜んでくれて何より。子どもたち向けにタッチプールもやったので、海の生物を身近に感じてもらえたのでは。こういう機会を通じて地元の海や魚に興味を持ち、知識を広げてほしい」と願った。
 
子どもたちは海の生き物と触れ合うタッチプールも体験=写真:主催者撮影

子どもたちは海の生き物と触れ合うタッチプールも体験=写真:主催者撮影

 
 同検定は現3年生が引き継ぎ、来年度も開催する方向。学生たちをサポートした同大三陸水産研究センター特任専門職員の齋藤孝信さん(61)は「初めてで、比較的ハードルの高い問題になってしまった。各設問の正答率などを分析し、次回の問題作成に生かしたい。検定が代々続いて、釜石市の水産振興にも役立てれば」と期待する。第1回検定の問題と解答は小佐野町の市立図書館に収蔵され、閲覧可能となっている。

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釜石の消防団員ら 出初式で1年の活動へ意欲/SMC釜石工場が消防団協力事業所に

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新年を迎え、士気を高める団員ら=釜石市消防出初式、15日

 
 釜石市消防出初式(市、市消防団主催)は15日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。市消防団(川﨑喜久治団長、団員546人)から団員約200人、関係者含め約250人が出席。新年のスタートにあたり、消防防災活動への意欲を高めた。例年行う大町目抜き通りでの分列行進、まとい振りなどの街頭パレードは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止した。
 
 東日本大震災の犠牲者に黙とうをささげた後、統監の野田武則市長が式辞。昨年発生した地震、台風などの自然災害、市内の火災状況などを示し、「消防団は火災のみならず、複雑、多様化する災害現場への対応など、期待される役割が大きくなっている。住民の生命、財産を守るため、引き続き尽力を」と呼び掛けた。
 
 長年にわたる消防防災への功績、職務精励などで団員79人を表彰。釜石市長表彰では、勤続30年の団員8人に「永年勤続功労章」を贈り、代表で第3分団第1部の伊藤福明班長が表彰状を受け取った。県消防協会遠野釜石地区支部表彰では、40年勤続で第6分団第1部の堀川正部長、第7分団第1部の栗澤茂行班長に「勤続章」を授与。同様に25年勤続で9人、15年勤続で29人、10年勤続で18人を表彰し、それぞれの代表が受領した。消防技能に熟達し、規律厳正、業務への精励などで他の模範となる団員13人には「精練章」が授与された。
 
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コロナ禍で昨年に続き、式典のみの開催となった市消防出初式

 
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40年勤続で県消防協会遠野釜石地区支部表彰を受ける堀川正さん(第6分団第1部部長)

 
 団員らは式典できびきびとした行動を見せ、今年1年の活動へ気を引き締めた。川﨑団長(73)は「豪雨による河川の増水、倒木、土石流などの危険が高まっている。昨年9月に県が出した新たな津波想定では市内でも浸水区域が拡大した。訓練を重ね、火災や災害被害ゼロを目標に防災力を高めていきたい」と意気込んだ。
 
 昨年は1月に南太平洋トンガ諸島の海底火山噴火で本県沿岸に津波警報が発表され、5月の宮城県沖地震では同市で震度5弱を観測。地震、津波対応は予断を許さない状況が続く。市内の昨年の火災発生は5件(建物2、その他3)。一昨年は4件で、2年連続1桁台となっている。
 
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 市では地域防災力強化のため、今後も消防団車両の更新、老朽化した消防屯所の建て替えなどを計画的に行い、年々減少している消防団員の確保にも力を入れていく方針。
 

SMC釜石工場が消防団協力事業所に 市内13社目の認定 相互連携で防災力向上へ

 
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SMC釜石工場への消防団協力事業所表示証交付式=19日

 
 釜石市は消防団員確保や災害時の協力体制構築を目的とした「消防団協力事業所」に、上中島町のSMC釜石工場(浦島勝樹工場長)を認定した(15日付)。市内13社目の認定。同工場では従業員約30人が同市消防団に加入。火災や自然災害時の出動のほか、自社消防訓練での消火栓運用などでも力を発揮している。本認定を機に新入団員募集への協力、消防機関と連携した地域防災力向上に貢献したいとしている。
 
 19日、野田武則市長、釜石消防署の駒林博之署長ら6人が同工場に出向き、協力事業所表示証の交付式が行われた。交付書と掲示用の表示証を浦島工場長に手渡した野田市長は「消防団員が安心して働き、災害時に迅速に行動できる体制の構築が必要。協力事業所の存在は非常にありがたい。今後も活動への協力を」と願った。
 
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野田武則市長がSMC浦島勝樹釜石工場長(右)に協力事業所の表示証を交付

 
 浦島工場長は「勤務中の出動要請への対応、団員募集ポスターの掲示、新入社員向け説明会などで消防団活動への協力ができれば。社内の消防訓練時には団員である従業員に先頭に立ってもらえると心強い。自社の防災意識も高めながら、地域貢献につなげていきたい」と今後を見据える。同社では大槌町、遠野市の団も合わせると約50人の従業員が団員として活躍しているという。
 
 釜石市の消防団員数は人口減に伴い、減少傾向が続く。近年は全体の約7割がサラリーマン団員で、地域防災力の維持には市内企業の理解と協力が不可欠。同市では団員の確保や活動環境の整備を目指し、2008年度から「消防団協力事業所表示制度」を導入。就業時間中の消防団活動への積極的な配慮、災害時の資器材提供などで協力する事業所を認定することで、新規入団の促進、地域連携による防災力強化につなげている。協力事業所は社屋への表示証の掲示、自社ホームページでの公表などにより、社会貢献企業としての認知を広めるメリットがある。
 
 同市がこれまでに認定した消防団協力事業所は次の通り。
菊池建設、山元、山長建設、新光建設、小澤組、及川工務店、東陸建設、山崎建設、小鯖船舶工業、八幡建設、坂本電気、釜石レミコン、SMC釜石工場
 
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「消防団協力事業所」表示証(右下)の交付を受け、市側と意見交換するSMC釜石工場幹部

 
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 同市の消防団員は本年1月1日現在で546人(正規469人、機能別77人)。駒林署長は「当市では団員の高齢化が顕著。若い世代の加入を増やしていかなければ、10年、20年後には一気に人数が減る。残る団員がほぼ40代以上となると非常に厳しい。ぜひ、多くの若者の入団をお願いしたい」と窮状を訴える。同市消防団員の20~30代の割合は2020年度時点で26・8%。市では25年度までに30%に持っていきたい考え。
 
 同市では引き続き、協力事業所の認定、団員募集の広報活動を行いながら、地域の消防防災体制の強化を図っていきたいとしている。なお、同市消防団の入団要件は18歳以上で、市内に居住または勤務する健康な人。団員には報酬、各種手当が支給される。