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行政運営のデジタル化推進・地域産業振興へ 釜石市、2企業と連携協定

釜石市はデジタル化推進に向け県内2企業と連携協定を結んだ

釜石市はデジタル化推進に向け県内2企業と連携協定を結んだ

  
 釜石市は8月24日、行政運営のデジタル化推進や地域産業の振興に向け、ITベンチャー企業のエルテス(本店紫波町、菅原貴弘代表取締役)、NTT東日本岩手支店(盛岡市、片岡千夏支店長)とそれぞれ連携協定を結んだ。ICT(情報通信技術)を活用し、住民サービスの向上や地域活性化につなげる考えだ。
  
野田市長と協定書を取り交わしたエルテスの菅原代表取締役(右)=釜石市役所

野田市長と協定書を取り交わしたエルテスの菅原代表取締役(右)=釜石市役所

  
 エルテスとの締結式は釜石市役所で行われ、野田武則市長と菅原代表取締役が協定書を取り交わした。連携内容は▽行政サービスに関する情報取得や手続きなどができる住民総合ポータルアプリの導入▽お散歩アプリ導入による住民の健康促進▽情報セキュリティー研修の実施-など。デジタルリスク対策事業などを手掛ける同社は紫波町や矢巾町と同様の協定を結んでおり、これまでの知見を反映、発展させた取り組みを進める。
 
 菅原代表取締役は「ハイレベルなサービスを提供できる」と強調。野田市長は「誰一人取り残さないデジタル化を進めたい。使い方を広く普及することで利便性を享受できる地域づくりを」と期待した。
  
協定書を手にする野田市長とNTT東日本岩手支店の片岡支店長(左)=釜石情報交流センター

協定書を手にする野田市長とNTT東日本岩手支店の片岡支店長(左)=釜石情報交流センター

  
 NTT東日本岩手支店との締結式は大町の釜石情報交流センターで実施。野田市長と片岡支店長が協定書に署名した。協定書によると、◇養殖サクラマス「釜石はまゆりサクラマス」のブランド化◇市内企業のICT・デジタルトランスフォーメーション(DX)化支援◇ドローン空撮による漁港設備点検の実証など地域資源の新たな価値創造に関する取り組み―などを連携して進める。
  
 同社はすでに市内企業などと協働でサクラマスの脂質測定によるブランド化に取り組んでいて、片岡支店長は「縁を深めた結果の協定。情報通信事業者としての強みを生かし、付加価値を作り上げ、地域の振興発展に貢献したい」と意欲を示した。野田市長は「1次産業を中心とした地域資源の新たな価値創造、地域活性化につながる」と歓迎した。

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釜石港にサンマ第一船 4・7トン水揚げ 関係者「漁の好転」切に願う

釜石市・新浜町魚市場へのサンマ初水揚げ=8月28日午前6時20分ごろ

釜石市・新浜町魚市場へのサンマ初水揚げ=8月28日午前6時20分ごろ

 
 釜石市の新浜町魚市場に8月28日朝、今季初のサンマが水揚げされた。ここ5年では最も早い8月中の初水揚げとなったが、量は約4・7トンと低迷。地球温暖化の影響とみられる海水温の上昇や燃料費の高騰などサンマ漁を取り巻く環境は厳しさを増すが、関係者は「何とか好転してほしい」と本格化するシーズンに期待を寄せる。
 
 釜石港に入ったのは富山県魚津市の中島漁業の大型船、第八珠(す)の浦丸(199トン、乗組員17人)。大型船漁解禁日の20日、北海道根室市の花咲港を出港し、同港から東に約1300キロの北太平洋公海で操業。7年連続で釜石に初サンマを届けた。港では野田武則釜石市長や市漁業協同組合連合会の木村嘉人会長ら関係者が出迎え、飲料水などを差し入れした。サンマは1匹100グラム以下と全般に小型で、1キロ当たり430円で取引された。
 
サンマ水揚げのため釜石港に入る「第八珠の浦丸」=28日午前5時45分ごろ

サンマ水揚げのため釜石港に入る「第八珠の浦丸」=28日午前5時45分ごろ

 
猟田雄輔漁労長(中)に仙人秘水などを差し入れ

猟田雄輔漁労長(中)に仙人秘水などを差し入れ

 
北太平洋公海で漁獲されたサンマ

北太平洋公海で漁獲されたサンマ

 
 全量買い取った新浜町の水産加工会社「平庄」の平野隆司社長(46)は「8月に(サンマ船が)釜石に入るのはまれ。初水揚げはうれしいが、型が小さく単価的には厳しい」と複雑な面持ち。それでも、「昨年よりは取れるという予報もある。これから型が良くなり、量も増えてくれれば」と望みを託した。この日のサンマは大部分が関東方面に鮮魚出荷された。
 
釜石に初サンマを届けた第八珠の浦丸の乗組員ら

釜石に初サンマを届けた第八珠の浦丸の乗組員ら

 

 
 ロシアのウクライナ侵攻による日ロ関係悪化の影響で、公海に漁船が集中する今年のサンマ漁。ロシアが主張する排他的経済水域(EEZ)を迂回して漁場に向かう船もあり、航行距離が延びることでの燃料費の負担増なども漁業者を悩ませる。第八珠の浦丸の猟田雄輔漁労長(67)は「1つの漁場に外国船が約100隻、日本船が40~50隻集まっている。水温が高く、サンマが散って船の下に寄ってこない状況もあり、かなり厳しい。9月下旬になれば少しはいい型がでてくるとは思うが…」と現状を話した。
 

 
 釜石港の昨年のサンマ水揚げ量は255トン(取引額約2億468万円)。全国同様、過去最低の水揚げ量となった。近年の不漁傾向で先は見通せないが、市漁連の木村嘉人会長(68)は「廻来船が来てくれると市場の運営としても助かる。入る、入らないでは市場の活気も違う。1隻でも多く入港し、水揚げしてもらえれば」と漁の好転を願う。

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企業版ワーケーション受け入れ好調の釜石を視察 北海道・富良野市の観光関係者ら、応用へ手応え

ワーケーションの現場視察で釜石市を訪れた富良野市の関係者ら

ワーケーションの現場視察で釜石市を訪れた富良野市の関係者ら

 
 新型コロナウイルス禍で注目されるのが、仕事と休暇を組み合わせた労働形態「ワーケーション」。全国各地で普及に向けアイデア合戦が繰り広げられる一方、一過性にとどまらず都市から地方への人の流れを定着できるか試行錯誤が続く。美しいラベンダー畑など雄大な自然を抱く観光地、北海道富良野市もワーケーションによる「持続可能な観光(サスティナブル・ツーリズム)」に着目するが、発展途上。2018年以降4年連続で「世界の持続可能な観光地100選」に選ばれた釜石市の取り組みからヒントを探ろうと、富良野の市職員や観光関係者ら9人が5日から2泊3日の日程で来釜、現場を視察した。
 
 富良野はテレビドラマ「北の国から」のロケ地として知られ、コロナ禍前は延べ約190万人が訪れる人気観光地。ただ、ドラマファンらは50代以上と年齢が高めで、観光の先細りを防ぐため、若年者といった新しい客層の取り込みを模索する。美瑛町など近隣市町村と地域連携DMOを設立しているが、独自の取り組みを推進する必要性を認識。宿泊費助成などでワーケーション客の受け入れを進め、今年度、現時点での実績は約40人。全体ビジョンや戦略が固まっておらず、提供する体験プログラムの開発などが課題だという。
 
釜石情報交流センターや市民ホールがある中心市街地を視察

釜石情報交流センターや市民ホールがある中心市街地を視察

 
 釜石でワーケーション事業を担うのは、観光地域づくり法人「かまいしDMC」(河東英宜代表取締役)。ワーケーション施設を開設するだけでなく、市の観光振興ビジョン「釜石オープン・フィールド・ミュージアム構想」をもとに、釜石に生き、暮らす人、そのなりわいに光を当て、それらをプログラム化し、固有の自然や歴史、文化を学ぶことができる仕組みを作っている。地域交流を通じた新たな価値創造につながると期待が高まり、今年はこれまでに延べ約250人が利用する。
 
根浜海岸では震災後の地域づくりに理解を深めた

根浜海岸では震災後の地域づくりに理解を深めた

 
いのちをつなぐ未来館では利用状況を聞いた

いのちをつなぐ未来館では利用状況を聞いた

 
 今回の視察では5日に、河東代表取締役らの案内で大町の釜石市民ホール、鵜住居町のいのちをつなぐ未来館、根浜海岸などをめぐり、東日本大震災後の復興まちづくりや防災、海を生かした観光の取り組みなどの説明を受けた。かまいしDMCが指定管理する魚河岸の魚河岸テラスで、観光まちづくりの実践を聞き取った。
 
 河東代表取締役は「利用者は日常と離れた学び直しの機会に注目している。観光資源のない釜石が持続可能な観光づくりを進めるには体験プログラムを磨いていくしかない。地域のことを深く学び、関わることで繰り返し来る。それが釜石の観光」と強調。企業や団体をターゲットにニーズを聞きながらプログラムを充実させてきた経緯などを伝えた。
  
魚河岸テラスではワーケーション普及に向け意見交換した

魚河岸テラスではワーケーション普及に向け意見交換した

  
 富良野の10人は、釜石市内全域を「屋根のない博物館」に見立てた同構想に興味を持った様子。法人立ち上げの資金、プログラムの開発法、観光協会といった既存組織との連携などについて熱心に質問した。翌日には地元漁師が案内する漁船クルーズ体験を控え、富良野市企画振興課の松野健吾主査(51)は「富良野には応用できる地域資源、素材がある。やり方を工夫すれば魅力的なプログラムを作れる」と実感を込めた。
 
 同商工観光課の本田寛康課長(49)は「ワーケーションを企業単位で受け入れている成功事例が釜石。手法をまねれば、できるものでもない。参考にし、ワーケーション実践者を引き付けるものを見つけたい」と刺激を受けた。知名度を生かした観光に、持続可能性を見据えた取り組みを加えるには「民間の力が必要」と再認識。「地域の産業に密着し、実践者も地域も喜ぶ取り組みにしたい」と前を向いた。

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ワーケーションを通じて地域課題解決に挑戦を!かまいしDMC、企業をつなぐ体験プログラム充実

かまいしDMCが提供するワーケーションプログラムの様子

かまいしDMCが提供するワーケーションプログラムの様子

  
 仕事と休暇を組み合わせた働き方「ワーケーション」の受け入れに力を入れる釜石市。観光地域づくり法人「かまいしDMC」(河東英宜代表取締役)は自然や食文化、災害を克服してきた事例などから地域を知り、学ぶワーケーションプログラムを充実させ、誘致活動を後押ししている。ワーケーション実践者のスキルを生かし、地域課題の解決や地域活性化につなげてもらうプログラムも提供。7月26日にはNTT東日本岩手支店(片岡千夏支店長)の7人が1泊2日の体験で滞在し、地元の水産加工会社から東日本大震災後の挑戦について聞き取りながら地域貢献策を考えた。
  
 7人は、魚河岸テラスで釜石ヒカリフーズ(唐丹町)の佐藤正一社長(62)から震災後の会社立ち上げと水産業再起の歩み、産学官連携の挑戦、今後の展望などを聞き取り。両社は、釜石湾で試験養殖するサクラマスの脂質検査を協働で行っており、さらなる連携や地域貢献について意見を交わした。
  
佐藤社長(左)の話に耳を傾けるNTT東日本岩手支店の社員ら

佐藤社長(左)の話に耳を傾けるNTT東日本岩手支店の社員ら

  
 NTTは従業員のテレワーク(在宅勤務)を推進しており、同支店でも約1年前から実践。他者との協業を通じて新たな価値創造のきっかけ、働き方改革の一助につなげようと釜石でワーケーションプログラムを体験した。高鷲直哉副支店長(44)は、同社が持つICT(情報通信技術)の1次産業への利活用を思案。「通信をベースに価値を創造し、住民生活を向上させるプランを地域と協働で提供する流れをつくっていければ。参加者一人一人が感じたことを共有し、発想力を生かしながら新たな取り組みに挑戦したい」と刺激を受けた様子だった。
  
 かまいしDMCは昨年10月、市内初のワーケーション施設を開設。これまでに延べ約230人が利用した。釜石ならではの体験プログラムを提供する中で、「ワーケーション実践者のスキルを生かして地域の課題解決や地域活性化に取り組んでもらうことはできないか」と模索。「地域企業とのセッション」というプログラムを用意し、地方創生に関心があり知見を生かしたい実践者と外部の力を活用したい地元企業をつないでいる。

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挑戦!釜石湾口防波堤で波力発電 マリンエナジー実証試験開始、再生エネルギー「地産地消」目指す

釜石港湾口防波堤上に設置された波力発電の装置

釜石港湾口防波堤上に設置された波力発電の装置

  
 釜石港湾口防波堤を舞台に、波の力で発電してエネルギーを地産地消する仕組みづくりに向けた実証試験が7月31日、始まった。釜石市内の4社が立ち上げた「マリンエナジー」(泉修一社長)を主体に、環境省から委託を受けて実施。波力発電装置の設計から製造、設置、システム開発、維持管理までを地元や県内事業者の技術を結集させた「オール岩手」の取り組みで、関係者は「地域活性化につながる」と期待を寄せる。既設の防波堤に波力発電装置を設置するのは世界初の試みでもあり、実用化されれば全国、世界への幅広い展開という可能性を秘める。
  
 発電装置は、湾口防北堤に設置。波の上下動で空気の流れをつくりタービンを回転させる仕組みで、空気の通り道となるダクト・空気室とタービン発電機を備えた機械・電機室からなる。高い波用と低い波用の2種類のタービンを組み合わせているのが特徴で、AI(人工知能)を使って波の強さを予測し、状況に応じてタービンを切り替えることで効率よく発電させるという。発電した電気は1・5キロの海底ケーブルで新浜町にある陸上観測所に送られ、陸上養殖実験施設など水産業に役立つ機器で活用する。
  
報道向けの見学会で設備を紹介する泉社長

報道向けの見学会で設備を紹介する泉社長

  
機械・電機室にある2種類のタービン

機械・電機室にある2種類のタービン

  
 マリンエナジーは、市内にある及川工務店(海洋土木工事)、小鯖造船工業(造船)、アイ・デン(電気工事)、エイワ(繊維強化プラスチック〔FRP〕製造)の4社が出資する株式会社。技術指導などで東京大先端科学技術研究センターや釜石・大槌地域産業育成センターなど多数の機関が共同で取り組み、2020年度から環境省事業の「インテリジェント吸波式波力発電による地域経済循環ビジネスモデル実証事業」を進めている。期間は22年度までの3年間で、予算は約3億9000万円。実証試験では23年3月まで発電装置1台を運転させ、実用化に向けたデータ収集や検証を行っていく。
  
運転開始のボタンを押す泉社長(左端)ら

運転開始のボタンを押す泉社長(左端)ら

  
 この日、観測所で運転開始式を行い、関係者ら約50人が出席。マリンエナジーの泉社長は「世界でも例を見ない防波堤を活用した波力発電システムの開発から普及まで、地域の力を結集して進めていく。漁業への利活用を中心とした経済循環による地域の活性化を目指す」と力を込めた。代表者ら5人が運転開始のスイッチを押し、実証試験をスタートさせた。
  
 将来的には装置を5台に増やす計画も。その場合の年間発電量は一般家庭約80世帯分に相当する約33万2800キロワット時を見込む。設備の大半が海面上にある今回のシステムは設置工事やメンテナンスが比較的容易でコスト削減を図れるのがメリットの一つ。泉社長は「改良を進めて量産化につながれば、全国の港湾や離島、海外島しょ国への展開も期待できる」と先を見据えている。
  
実証試験の開始に喜びつつ、気を引き締める関係者ら

実証試験の開始に喜びつつ、気を引き締める関係者ら

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海の生き物とふれあい体験 県水産技術センター(釜石・平田) 公開デーで理解促す

ワカメの芯抜き作業を体験する親子ら

ワカメの芯抜き作業を体験する親子ら

 
 海や水産について理解を深めてもらおうと、釜石市平田の県水産技術センター(神康俊所長)は23日、「公開デー」として庁舎を一般開放した。三陸沿岸に生息する魚介類、養殖水産物などを展示して同センターの研究内容を紹介。子ども連れの家族が多く訪れ、海の生物とのふれあい体験を楽しんだ。
 
 カラフルな魚拓やペットボトルを使った顕微鏡づくり、塩蔵ワカメの芯抜き作業体験などのコーナーが並んだ。地域未利用資源を活用した食品技術の開発やフィードオイル(魚油)などを添加した餌によるサケ稚魚の成長促進についての研究などをパネルで紹介。県が誘致を目指している超大型加速器、国際リニアコライダー(ILC)に関する展示コーナーも設けられた。
 
公開された漁業指導調査船「岩手丸」

公開された漁業指導調査船「岩手丸」

 
家族連れらが船内見学を楽しんだ

家族連れらが船内見学を楽しんだ

 
 漁業指導調査船「岩手丸」(154トン)も公開。船内には海洋の水温調査、底引き網漁での魚種調査などで活躍する最新鋭の観測・漁労装置が並び、乗船した人たちは興味深そうに眺めた。備えられた機器や用具に触れたり使い方を聞く子どもたちの質問に答えたりした村上孝弘船長(53)は「将来一緒に働いてくれたら」と期待を込めた。
 
カラフルな魚拓づくりに挑戦する子どもたち

カラフルな魚拓づくりに挑戦する子どもたち

  
 ウマヅラハギの魚拓づくりに挑戦した佐々木祷吾君(平田こども園年長)とお手伝いした弟祷羽君(同年少)は「うまくできた。楽しかった」と喜んだ。2人の兄祷気君(平田小2年)は、ウニやホタテなどをかたどったシールで海の生き物マップを作り上げて満足げ。漁師の父親を「かっこいい」と自慢し、なじみのある海や魚について「もっと勉強してみたい」と意欲を見せた。
 
 公開デーは「海の日」に合わせて行ってきたが、ここ数年は新型コロナウイルスの感染防止対策のためウェブ公開など代替え企画で施設を紹介。直接体験イベントを楽しむ形での開催は3年ぶりとなった。神所長は「センターの取り組みをより分かりやすく伝えることができる。魚、海、水産、環境など何かに興味を持ってもらうきっかけになれば」と望んだ。

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見て触れて学ぶ!科学の楽しさ、情報通信技術がもたらす未来 釜石でまるごと体感

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人型ロボットとの対話を楽しむ親子連れ

  
 最先端の科学や情報通信技術(ICT)に触れる「いわてまるごと科学・情報館」は16日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。県内の先端技術に関わる企業や研究機関が集まる、科学・情報の文化祭といえるイベント。子どもはもちろん、大人も楽しみながら最新技術がもたらす未来社会を体感した。
   
 県内企業や研究機関など12団体が展示・体験コーナーを用意。国際リニアコライダー(ILC)計画やブラックホール、バイオテクノロジーを使った研究などをパネルで紹介したほか、病気や障害などで外出が困難な人たちの社会参画を支える分身ロボット「オリヒメ」、人型ロボット「ペッパー」、コミュニケーションロボット「ソータ」などと対話を楽しむ体験が提供された。
  
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子どもたちは分身ロボット「オリヒメ」の操作体験に夢中

 
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VRゴーグルを身に着け、仮想空間を楽しむ子どもたち

  
 仮想現実(VR)の映像技術などを用いた疑似体験も多数紹介された。来場者は、自転車に乗りながらスマートフォンを見たり操作したりする「ながらスマホ」の危険性や西和賀地区の美しい河川流域をめぐる楽しさなどを体感した。
  
 専用のVRゴーグルを装着して高さ約20メートルの鉄塔での作業を体験し、「落ちたー。リアルに怖い。ひざがガクガクする」と目を見開いていたのは大船渡市の熊谷陽向(ひなた)君(大船渡小5年)。将来の夢は「天文学者」でブラックホールに関する展示を目当てに足を運んだが、「いろんな体験ができて楽しい。プログラミングとかにも挑戦してみたい」と刺激を受けた。母あゆみさん(38)は、普段できない体験に目を輝かす愛息を見つめ「どんな夢でも応援したい」と笑みをこぼした。
  
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「深海生物のフシギ」を紹介した藤倉さん(右から2人目)

 
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深海生物の標本に子どもたちは興味津々

  
 特別セミナーとして、海洋研究開発機構(神奈川県横須賀市)の藤倉克則上席研究員が「深海にいるユニークな生き物」をテーマに講演。科学で解明してきた深海生物の生態について解説し、「まだまだ謎だらけ。変な形や巨大ということも面白い深海生物だが、生き方を知るのはもっと面白い。暗く冷たい、大きな水圧、食べ物が少ないなど人間から見たら過酷な環境で生きるためにいろいろ工夫している」と衰えない探究心を示した。「ミツクリエナガチョウチンアンコウ」「オオメンダコ」「ナギナタシロウリガイ」など日本近郊で採取した深海生物の標本なども紹介し、子どもたちの知的好奇心をくすぐった。
  
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親子でさまざまな体験を楽しんだ

  
 県や大学、民間事業者などでつくるいわてまるごと科学館実行委員会、いわてSociety5.0実行委員会が主催。これまで別々に行っていた科学技術振興の普及啓発イベント「いわてまるごと科学館」と情報通信やICT利活用の利活用促進の普及啓発イベント「いわてICTフェア」を集約した。新型コロナウイルス感染症の影響で20年は各イベントをオンライン開催、集約して実施予定だった21年は中止しており、実地での開催は3年ぶりとなった。
  
 両実行委事務局を担う県ふるさと振興部化学・情報政策室の大橋真里菜主任(デジタル推進担当)は「科学、情報通信技術がもたらす未来を体感してもらい、これからの生活を考えるきっかけにしてもらえたら。大事な技術に関わる人材の育成にもつなげたい」と期待した。

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愛称は「釜石はまゆりサクラマス」 釜石湾・養殖2季目初水揚げ ブランド化へ期待

釜石市魚市場に今年初めて水揚げされた養殖サクラマス

釜石市魚市場に今年初めて水揚げされた養殖サクラマス

  
 釜石市や岩手大学などが釜石湾で試験養殖するサクラマスが11日、今季初めて釜石市魚市場に水揚げされた。これに合わせ市は、愛称が「釜石はまゆりサクラマス」に決定したことを発表。ブランド化を目指し、発信に力を入れていく。
  
 この日は午前5時すぎに水揚げが開始。平均体長約50センチ、重さ約2キロに育ったサクラマス約4トンが水揚げされた。1キロ当たり800~1380円で取り引きされ、地元の鮮魚店や水産加工業者などが買い取ったという。
  
関係者らが見守る中で水揚げされた養殖サクラマス

関係者らが見守る中で水揚げされた養殖サクラマス

  
水揚げ後すぐ重さによってより分けられた

水揚げ後すぐ重さによってより分けられた

  
 試験養殖は市と同大三陸水産研究センター、釜石湾漁業協同組合、地元水産会社などが研究コンソーシアムを結成して取り組む。2年目の今回は、昨年11月に開始。釜石湾内に設置したいけす1基に、300グラムほどの稚魚約2万尾を入れ、育てていた。
  
作業の様子を見守り、笑顔を見せる関係者ら

作業の様子を見守り、笑顔を見せる関係者ら

  
 管理を担う泉澤水産(両石町)の泉澤宏社長は「水温が低く、成育に時間がかかったが、その分脂乗りがいい魚に育った」と自信を持つ。サクラマスは日本の在来種でなじみもあり、「安定供給し、まずは地元で定着させたい」と意欲的。今季は、前年の2倍の約30トンの水揚げを見込んでいる。
  
愛称は「釜石はまゆりサクラマス」。ブランド化を目指す

愛称は「釜石はまゆりサクラマス」。ブランド化を目指す

  
 愛称は市の花「ハマユリ」にちなんだ命名。水揚げの様子を見守った野田武則市長は「東日本大震災の津波で浜辺に自生するハマユリも被害を受けたが、生き延び、花開いた。そんな力強さに、復興への思いや養殖発展への願いを託した。おいしいサクラマスの発信に力を入れたい」と強調した。釜石湾漁協の佐藤雅彦組合長は「新しい漁業」として養殖に期待。不漁が続く秋サケなどに代わる魚種の確保にもなることを願う。
  
 同センターの平井俊朗センター長は2期目の滑り出しを「順調」とするが、全国的に広がるサーモン養殖の中で「サクラマスは歴史が浅く、発展途上」と指摘する。主流のギンザケ、トラウトサーモンに比べると出荷サイズが一回り小さい、産卵期が早いなどの違いがあり、「より養殖に向いた魚」にするための研究が必要だという。環境に適した種苗づくりも進めていて、「サクラマスならではの生産技術を確立させ、ブランド化に生かしたい」と力を込めた。

 

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森林計測の作業効率向上、省力化へ 林業関係者 無人ヘリ調査の活用学ぶ

産業用無人ヘリコプターを活用した森林計測研修会=釜石地方森林組合敷地

産業用無人ヘリコプターを活用した森林計測研修会=釜石地方森林組合敷地

 
 産業用無人ヘリコプターによる森林計測サービスの活用法を学ぶ研修会が6月30日、釜石市で開かれた。釜石地方森林組合(植田收代表理事組合長)が県内の自治体、森林組合職員らを対象に開催し、約30人が参加。同市片岸町の組合事務所周辺で、計測システムを運用するヤマハ発動機(静岡県)の社員がデモフライトを実演し、航空計測の利点や解析データの活用事例などを紹介した。
 
 広大な森林面積を誇る本県。適正な森林管理は気候変動に伴う集中豪雨災害防除のためにも重要視されるが、所有者の高齢化や施業人材の不足などにより、持続的な整備には課題も多い。そうした中、森林整備に不可欠な調査業務をレーザー計測機を搭載した無人ヘリコプターで行うことで、作業の負担軽減や効率化を図るサービスが注目を集める。
 
ヤマハ発動機森林計測部・加藤薫部長が無人ヘリによる計測サービスについて説明

ヤマハ発動機森林計測部・加藤薫部長が無人ヘリによる計測サービスについて説明

 
 同サービスを提供するヤマハ社は、農薬散布を行う無人ヘリの運用実績を基に、上空からの森林計測技術を開発。無人ヘリに搭載した機器から森林にレーザー光を照射(1秒間に75万回)することで、対象範囲の立木数、位置、樹種、樹高などの詳細なデータを得るシステムを確立した。レーザーはさまざまな角度で照射でき、地表面や幹にも到達。森林を内部まで3次元デジタルデータ化することで、見たい角度から立体的に全体を把握できる。各種データは地上計測に匹敵する高い精度で得られる。
 
立木の3次元デジタルデータの例が示された

立木の3次元デジタルデータの例が示された

 
 無人ヘリは地上からの遠隔操作のほか、あらかじめ設定した航路で飛ぶ自動航行機能も備える。1回の最大飛行時間は約100分、航続距離は約90キロで、1日最大約100ヘクタールの計測が可能。デモフライトでは地上から80メートルの高度(樹高30+50メートルを想定)での飛行や降下、水平移動、旋回などを実演した。前日に市内の山林で取った試験データも見せた。
 
森林計測用無人ヘリコプターのデモフライト

森林計測用無人ヘリコプターのデモフライト

 
無人ヘリの安定飛行の様子を地上から見学

無人ヘリの安定飛行の様子を地上から見学

 
可視化された計測データの説明を聞く参加者

可視化された計測データの説明を聞く参加者

 
 計測データは同社の解析により、顧客の用途や要望、GIS(地理情報システム)に対応した可視化が可能。得られたデータは、材積計算や路網設計、間伐作業の優先度など詳細な施業計画立案に生かされる。
 
 研修会に参加した釜石市水産農林課林業振興係の宮本祥子係長は「人が山に入っての調査は時間がかかり、その間、手付かずの状態が続いてしまう。紹介されたような計測法を活用できれば、施業の遅れを回避し早期の森林整備につなげられるのでは」と期待。森林環境譲与税の施行(2019年)により、今後、個人が管理不可能な私有林を市に委託するケースが増えることも予想され、「調査作業の負担軽減、技術的補完が可能な計測サービスを利用できれば非常に助かる」と話した。
 
研修会参加者は新たな森林計測手法に興味津々

研修会参加者は新たな森林計測手法に興味津々

 
 ヤマハ発動機森林計測部の加藤薫部長は「利用者からは精度の高いデータを得られるところが一番喜ばれている。森林所有者は自分の財産をより正しく理解でき、整備を委託される側も経済性の確認がとれる。地形データにより危険な傾斜地を把握することで、労働災害防止にもつながる」とメリットを説明した。無人ヘリによる森林計測サービスは19年に同社の新規事業としてスタート。東北ではこれまでに福島県での計測実績があるという。

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梅酒の実、再利用した加工品づくりへ 釜石地方梅栽培研究会「可能性に期待」

梅酒の実を再利用した試作品を味わう生産者たち

梅酒の実を再利用した試作品を味わう生産者たち

 
 釜石地域で栽培されたウメの実を使い、地元の酒造会社浜千鳥(新里進社長)が製造する「梅酒」。ウメの実を提供する生産者らでつくる釜石地方梅栽培研究会(前川訓章会長)が、梅酒製造後のウメの実(漬梅)を利用した加工品づくりで知恵を絞っている。6月20日、会員企業で漬梅加工品の開発を進める「麻生」(本社・神奈川県)の三陸釜石工場(釜石市片岸町)を見学。試作品のジャムを味見し、「おいしい」と手応えを得た。同会事務局によると、市内外で漬梅利用の動きもちらほら。資源・副産物を再利用して環境にやさしい循環型の取り組みにする考えだ。
 
釜石地方梅栽培研究会ではウメの安定生産や漬梅の有効活用を考える

釜石地方梅栽培研究会ではウメの安定生産や漬梅の有効活用を考える

 
 同会は釜石市、大槌町のウメ生産者、梅酒製造の浜千鳥、漬梅を利用した商品開発を進める食品加工業や菓子製造業、小売販売業者ら22個人・団体で組織。良質なウメの栽培や安定した生産の確保を目指し、栽培講習などで技術力の向上、栽培推進を図っている。
 
 ここ数年、浜千鳥による青梅集荷量は3~4トンで、梅酒は継続的、安定的に製造できるようになった。課題は漬梅の活用で、「食べてもおいしい」がすべてを使い切るのは難しかった。麻生三陸釜石工場が一部を使って加工試験事業を進めているが、種抜きなどで思いのほか手間がかかることが分かった。実を細かくする作業を効率よく行えるよう、昨年、カッターミキサーを購入。同会が県や市の補助金を活用し資金を出したほか、麻生も一部を負担した。
 
麻生三陸釜石工場で導入したカッターミキサーを確認した

麻生三陸釜石工場で導入したカッターミキサーを確認した

 
 20日の工場見学には会員ら15人ほどが参加し、導入したカッターミキサーを確認。試作品のジャムを試食した。加熱し種抜きした漬梅をミキサーでみじん切りした後、さらに過熱・煮詰めた試作品は「おいしい。ハイカラな味」と評価は上々。商品化、ジャムを活用した加工品づくりへ期待感を高めた。
 
 2022年度総会も開かれ、昨年の青梅集荷実績(4138キロ)、前年産の青梅を使った梅酒の出荷量(720ミリリットル入り約9300本)などが報告された。本年度は計4回の集荷会、せん定や病害防除を学ぶ栽培講習会、先進地研修などを計画。生産者勧誘と生産面積の拡大運動、漬梅の商品開発と試験販売にも力を入れる。
 
収穫したウメの実を持ち込む生産者。期待を込め浜千鳥に託す

収穫したウメの実を持ち込む生産者。期待を込め浜千鳥に託す

 
 収穫したばかりの青梅の実を持ち込む参加者もいた。今年は春先に雨が少なく、木の成長と実のなり具合に不安があるとこぼす前川会長(76)だが、漬梅の活用が広がることで、ウメの単価や生産者への還元率が上がることを期待。一方、生産者の高齢化が課題だとして、「退職後に参入できるよう受け入れ態勢を整え、この地で末永くウメ栽培を継続させたい」と前を見据える。
 
釜石地域の農業振興に意欲を高める会員、助言する市や県関係者

釜石地域の農業振興に意欲を高める会員、助言する市や県関係者

 
 浜千鳥醸造部長で杜氏(とうじ)の奥村康太郎さん(41)によると、地元の観光施設や盛岡市のホテルなどが漬梅を使ったジェラートや和洋菓子を売り出しているという。県外から漬梅自体の販売を希望する問い合わせもあり、全量を再利用できる可能性が見えてきた。市の地域振興作物として生産力向上へ支援を受けることができるようになり、「安定生産と新たな地場産業を結びつけた取り組み。知名度が上がれば、遊休農地の活用にもつながる。釜石型の農業振興に役立てたい」と意欲を見せた。

 

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市民に愛され3年目 「かまいし軽トラ市」スタート! 11月まで月1回開催

6月から始まった本年度の「かまいし軽トラ市」

6月から始まった本年度の「かまいし軽トラ市」

 
 地元の農産物や水産加工品などを生産者が直売する「かまいし軽トラ市」が今年もスタート。6月26日、釜石市大町の市民ホールTETTO屋根のある広場で本年度初の販売会が開かれ、待ちわびた市民らが買い物を楽しんだ。市が主催し、2020年度から始めて3年目。地場産品の発信、生産者と消費者の交流の場として定着してきた同イベントは、11月まで月1回の開催を予定する。
 
 市内の農業生産者、水産加工業者、障害者就労支援施設など11店が出店。農産物はタマネギ、キャベツ、ナスなどの採れたて野菜のほか、収穫期を迎えたウメの実、市内では珍しい無臭ニンニクなど10数種類が並んだ。水産物は塩蔵ワカメ、新巻きザケ、ホタテなど貝類の味付け加工品など。菓子やワイン、手工芸品も買い物客の目を引いた。
 
地元産の新鮮野菜は大人気!直売ならではの低価格も魅力

地元産の新鮮野菜は大人気!直売ならではの低価格も魅力

 
新巻きザケの切り身やワカメなど海藻類の加工品を販売したリアス海藻店

新巻きザケの切り身やワカメなど海藻類の加工品を販売したリアス海藻店

 
釜石産ブドウで作ったワインや手作り雑貨が注目を集めたまごころ就労支援センター

釜石産ブドウで作ったワインや手作り雑貨が注目を集めたまごころ就労支援センター

 
 大只越町の櫻庭秀子さん(72)はサンショウの実を手にし、「家でも庭先に植えているが、使い方は限定的。今日は地元の農家さんから調理法を教わった。やってみます」とうれしい発見も。「秋にかけてリンゴとかも出てくるので今後も足を運びたい」と楽しみにした。
 
 この日は、岩手県立大総合政策学部、吉野英岐教授のゼミ学生6人がフィールドワークの一環でイベント運営を手伝った。平井凪未(なみ)さん(3年)は「客ではなく運営側に立つことで、見えてくる課題もある。岩手出身だが、まだまだ知らないことが多い。釜石の特産物、地域活動などを知るきっかけにもなった」と貴重な学びの場を喜んだ。
 
アンケート回収などイベント運営を手伝う岩手県立大の学生

アンケート回収などイベント運営を手伝う岩手県立大の学生

 
 生産者の所得向上、地産地消の推進などを目的に始まった軽トラ市は、農作物の収穫時期に合わせて開催。昨年度は6月から11月まで計6回の開催を計画したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で8、9月は中止。全4回の開催に延べ1542人が来場した。事業を担当する市水産農林課の小山田俊一課長は「水産関係を含め一次産業全体の出店者を増やしたい。高齢の生産者は対面販売で元気ももらっているようで、人や地域のつながりへの貢献も期待できる。さらなる集客へ工夫しながら取り組みたい」と今後を見据える。
 
1回200円でチャレンジ!菌床シイタケの詰め放題コーナー

1回200円でチャレンジ!菌床シイタケの詰め放題コーナー

 
昨年度から軽トラ市の会場となっているTETTO屋根のある広場

昨年度から軽トラ市の会場となっているTETTO屋根のある広場

 
 次回の軽トラ市は7月24日日曜日、鵜住居町のうのすまい・トモス朝市と同時開催で、午前9時から11時までトモス広場(三陸鉄道鵜住居駅前)で開かれる。

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電気やエネルギーをもっと知って! 釜石・小佐野小で出前講座 東北電力

手回し発電機を使った実験に取り組む小佐野小4年生

手回し発電機を使った実験に取り組む小佐野小4年生

 
 釜石市小佐野町の小佐野小(千葉裕之校長、児童288人)の4年生66人は22日、東北電力岩手支店(近藤一英支店長)のエネルギー出前講座を受け、電気の重要性や発電の仕組みなどについて理解を深めた。
 
クイズで振り返りながら進む講座に児童は積極的に参加した

クイズで振り返りながら進む講座に児童は積極的に参加した

 
 講座はクラスごとに行い、1組(34人)の授業では同支店の社員らが、電気が家庭に届くまでの工程や発電方法のメリットとデメリットを解説した。エネルギー資源を選ぶ時のポイントは、▽安定的に手に入る▽値段が安い▽地球環境への影響が少ない(発電するときに出す二酸化炭素の量など)―ことと説明。3つ全てが当てはまる完璧な資源はなく、安定供給にはさまざまな方法(火力・水力・原子力など)を組み合わせて発電する「エネルギーミックス」という考え方が大事になると伝えた。
 
火力発電の仕組みを見せる模型に子どもたちは興味津々

火力発電の仕組みを見せる模型に子どもたちは興味津々

 
「光った」。児童たちは力を合わせて豆電球を点灯させた

「光った」。児童たちは力を合わせて豆電球を点灯させた

 
 手回し発電機を使った実験にも挑戦。高山柑菜さんは「電気をつくるのはすごく大変だった。当たり前にあるものだと思っていたけど、大切に使わないといけないと思った。知ったことを家族にも伝えて、できるだけ節約するようにしたい」と意識を高めた。
 
 日本のエネルギー自給率は約10%で、多くを輸入していることを知った梅島貴春君は、輸入先(国)が気になった様子。「電気やエネルギーのことをもう少し勉強してみたい」とうなずいた。
 
電気の力やエネルギーの大切さを伝える東北電力の出前講座

電気の力やエネルギーの大切さを伝える東北電力の出前講座

 
 講座は同支店が2019年から県内小中学校を対象に開くエネルギーチャレンジ校の一環。出前講座、発電所など施設見学、学習成果発表会・サイエンスショーを組み合わせたプログラムで、子どもたちが電気やエネルギーについて関心を持ち、考えるきっかけにしてもらうのが狙い。本年度、釜石市内では同校のほか、栗林小でも実施し、すでに講座と施設見学を終えた。一関市の新沼小も実施校に選ばれている。