釜石地方森林組合 持続可能、先駆的取り組みなどで農林水産、環境両大臣賞を初受賞
受賞報告会で県沿岸広域振興局の眞島芳明農林部長(中右)から表彰状を受け取った釜石地方森林組合の植田収組合長(中左)
釜石地方森林組合(植田収代表理事組合長)は本年度、公益社団法人国土緑化推進機構主催の全国育樹活動コンクールで「農林水産大臣賞」、一般社団法人日本ウッドデザイン協会主催のウッドデザイン賞で「環境大臣賞」を受賞した。共に最高位の賞で、同組合の受賞は初めて。適正な森林整備や人材育成、国連の持続可能な開発目標(SDGs)、脱炭素社会への貢献などが認められた。
同コンクールは地域の育樹活動の普及、向上に著しい実績をあげた個人、団体を表彰。最小限の皆伐と積極的な搬出間伐を実践する同組合は、木質バイオマス燃料の販売収入を原資とした基金を創設し、所有者負担のない森林整備を推進。2017年に発生した尾崎半島林野火災の復旧にも生かされた。管内外の林業事業体との業務提携のほか、企業や団体などのボランティア協力を得て、10年かかるとみられた復旧を5年で完了した。林業人材の育成、森林環境教育、企業との木製品開発など、新たな挑戦も評価されての受賞となった。
火災で森林が焼失した尾崎半島で行われたボランティアによる植樹活動(2018年6月、復興釜石新聞より)
同デザイン賞は暮らしや社会を豊かにする木造建築や木製品、木材利用の取り組みなどを表彰。同組合は、月額制の別荘利用サービスを提供し、収益の一部で植林を行うSanu(福島弦CEO、東京都)に釜石地域産木材(スギ間伐材)を供給。環境再生型事業の良質なモデルとして同サービス「SANU 2nd Home(サヌ セカンドホーム)」が、最優秀4大臣賞の一つ、環境大臣賞を受賞した。同社、同組合、ADX(福島県)、二葉測量設計事務所(静岡県)によるグループ受賞となった。
同組合は東日本大震災の津波で事務所が全壊。役職員5人が犠牲になった。組合存続の危機に立たされたが、国内外の企業の支援を受けながら事業を再生。将来に向けた持続可能な林業のため、異業種のアドバイスも受け、課題克服へのアイデアを形にしてきた。世界的金融機関バークレイズグループの支援を受けた林業スクールは、森林を総合的にデザインできる人材の育成を目指して開講。2015年から5年間で115人が受講し、同組合に就職した人もいる。
釜石・大槌バークレイズ林業スクールでチェーンソーの扱い方を学ぶ受講生(2016年10月)
尾崎半島林野火災の被災木の活用も積極的に行った。2019年のラグビーワールドカップ(W杯)会場となった「釜石鵜住居復興スタジアム」建設の際には、同被災木が客席シートや諸室の壁材などに使われ、木質化の良さを全国に発信。シートはボランティアらのメンテナンスで大切に守られている。
釜石鵜住居復興スタジアムの木製シートを清掃するボランティア活動(2019年6月)
12日、両大臣賞の受賞報告会が大槌町内のホテルで開かれた。関係者約70人が出席。県沿岸広域振興局の眞島芳明農林部長が、全国育樹活動コンクール「農林水産大臣賞」の表彰状を植田組合長に伝達した。
植田組合長は「震災から11年目にこのような賞をいただいたことは、非常に感慨深い。津波被害、林野火災の復興を成し遂げられたのは、県内外から大勢の人たちが協力してくれたおかげ。今回の受賞は数々のご支援があったればこそ」と感謝。今後を見据え、「森林は50年、100年と続くもの。持続した経営ができるよう、組合も世代交代が必要。若い人たちにどんどん入ってきてほしい」と願った。
「農林水産大臣賞」の表彰状を手にする釜石地方森林組合の植田収組合長
受賞報告会は山神祭(安全祈願祭)、労働安全大会に合わせて行われた
同組合は世界で重要視されるSDGs、CO2削減への取り組みにもいち早く着手。昨年8月には大槌町と構成する釜石地方森林管理協議会として、適正な森林経営で環境保全に貢献していることを証明する「FSC認証」を取得した。高橋幸男参事は「自分たちが模範となり森林を適正に管理することで、他地域にも波及していく。釜石、大槌の90%を占める森林資源を活用し地域に貢献することが、目標とする組合の在り方」と話した。
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