タグ別アーカイブ: 産業・経済

観光農園の整備支援を目的にする連携協定を結んだ野田市長(左)と木島社長

ラベンダー観光農園整備を後押し 釜石市とロクシタンジャポン、連携協定

観光農園の整備支援を目的にする連携協定を結んだ野田市長(左)と木島社長

観光農園の整備支援を目的にする連携協定を結んだ野田市長(左)と木島社長

  
 釜石市は5月27日、フランスの自然派化粧品メーカーの日本法人「ロクシタンジャポン」(東京都千代田区、木島潤子社長)と、観光農園の整備支援を柱とする連携協定を結んだ。同社は東日本大震災の復興支援として交流拠点の復旧や公園の整備などで釜石応援を継続。今後、ラベンダーの栽培や鑑賞を通じた市民の憩いの場づくりや自然環境、植物の多様性の保護活動などを進めながら、釜石の地域活性化や国際交流の推進、観光振興を後押しする。
 
 協定では、▽観光農園の整備にかかるクラウドファンディングの実施▽支援製品キットの販売▽ふるさと納税返礼品の企画▽ラベンダー苗の定植▽ラベンダーを通じた国際交流の推進-などに連携して取り組む。同社製品を返礼品にしたクラウドファンディングは6月9日に開始予定。目標額は500万円で、農園整備の資金に役立てる。
 
 同社では、ラベンダーを使ったチャリティーキットの販売も始めた。フラワーソープ(150グラム)とリラックスハンドクリーム(30ミリリットル)を税込み3080円で、2500セット販売。阪急阪神百貨店や高島屋の店舗のほか、ロクシタン公式オンラインショップで購入できる。収益を市に寄付する。
 
ロクシタンジャポンが販売するラベンダーを使ったチャリティーキット

ロクシタンジャポンが販売するラベンダーを使ったチャリティーキット

 
 釜石の姉妹都市フランスのディーニュ・レ・バン市が、ロクシタン創業者の出身地だったことが縁で始まった復興支援。2012年には、津波で被災した青葉ビルの復旧費を支援。市中心部の交流拠点施設の再建は、地元に勇気と希望を与えた。その後も、薬師公園のリニューアル整備や津波で失われた海浜植物ハマナスの群落復活に向けた活動を支えている。
 
観光農園予定地では昨年植えたラベンダーの苗が順調に育っている

観光農園予定地では昨年植えたラベンダーの苗が順調に育っている

 
 今回、ラベンダー栽培が盛んなディーニュ市から、友好の証しとして栽培を提案され、「釜石ラベンダープロジェクト」を立ち上げた釜石市。観光農園を、甲子町の道の駅釜石仙人峠近くの遊休農地約1・2ヘクタールを利用して整備する。農園づくりは昨年から始まっていて、土づくりを終えた一部に甲子小児童らがラベンダーの苗を植栽、順調に育っている。ディーニュ市から種の寄贈を受け、現在市内の農家が育苗中。今後さらに定植し、25年のオープンを目指している。
 
協定書に署名する木島社長(手前)と野田市長

協定書に署名する木島社長(手前)と野田市長

 
 協定の調印式は、両者にゆかりのある青葉ビルで行われた。野田武則市長は「花を観賞するだけでなく、市民の癒やしや健康維持、子どもたちの教育、観光、地域活性化など多様な場として活用したい。双方に魅力ある取り組みになってほしい」と期待を述べた。
 
 同社は観光農園整備の趣旨に賛同し、協定締結を決めた。木島社長は「植物の多様性を知る、人がつながるといった製品づくりの理念と重なる。未来を広げていくことのできる取り組みにワクワクしている。復興の新しいステージに協力したい」と意欲を見せた。

「ガンバロー」三唱で気勢を上げる連合岩手の釜石地区メーデー集会

働き方改革、賃金改善を 連合岩手釜石・遠野地域協 メーデー集会で訴え

「ガンバロー」三唱で気勢を上げる連合岩手の釜石地区メーデー集会

「ガンバロー」三唱で気勢を上げる連合岩手の釜石地区メーデー集会

 
 連合岩手釜石・遠野地域協議会は1日、第93回釜石地区メーデー集会を釜石市大町の市民ホールTETTOで開いた。18組合から約70人が参加。新型コロナウイルス禍やウクライナ情勢などを念頭に「つながり」「団結」「多様性」「平和」などのために力を合わせるとの思いを共有した。
 
 感染予防のため、参加者を絞って規模を縮小。時間も短縮し、パレードの実施は見送った。集会であいさつに立った小島安友実行委員長(日本製鉄釜石労組)は「5月1日は労働者、労働組合の大切な記念日で、賃金の改善、働き方改革を要求する流れを継承していく」と強調。コロナ禍、カーボンニュートラルの実現、ウクライナ情勢など不透明さを増す社会情勢であっても、「感染対策をしっかりした上でいろいろな活動を継続していく。連携して行動していこう」と呼び掛けた。
 
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参加者はメーデー宣言を大きな拍手で採択した

 
 社会を支え続ける仲間、働く仲間の奮闘をたたえ合い、一人ひとりが尊重され、多様性を認め合う社会を目指し、「輝く未来を、力を合わせてつくっていく」との決意を込めたメーデー宣言を採択。「ガンバロー」と三唱し、思いを一つにした。
 
地場産品などが当たる抽選会。和やかな雰囲気で行われた

地場産品などが当たる抽選会。和やかな雰囲気で行われた

 
 集会の最後は、お楽しみ抽選会。地場産品などを手にした参加者は表情を和らげていた。社会貢献活動「連合・愛のカンパ」への協力も呼び掛け。昨年度は国内外から9715万円余りの善意が寄せられ、NGO・NPO団体などの事業支援、自然災害による被災者に対する救援・支援に役立てられた。

 

釜石大槌地区に就職した若者を激励する「就職おめでとう大会」

「学び、能力を古里に還元」釜石・大槌地区新規就職者 歓迎大会で決意新たに

釜石大槌地区に就職した若者を激励する「就職おめでとう大会」

釜石大槌地区に就職した若者を激励する「就職おめでとう大会」

 
 この春、釜石市と大槌町の企業などに就職した新規学卒者、U・Iターン者を歓迎する「就職おめでとう大会」(釜石商工会議所、大槌商工会、釜石公共職業安定所、釜石地域雇用開発協会主催)が27日、釜石市大町の市民ホールTETTOで行われた。新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催。33人が参加し、古里に貢献する決意を新たにした。
 
 主催者を代表して釜石商議所の菊地次雄会頭があいさつ。「当地域はコロナの流行で日常生活、経済活動が多くの制約を受け、東日本大震災の影響も少なからず残っている。困難に直面しても真正面から挑戦し、真剣に考え、勇気を持って行動を。個々の会社で活躍し、地域の発展に貢献してほしい」と期待を込めた。
 
釜石地区を代表し記念品を受け取る足立さん(右から2人目)

釜石地区を代表し記念品を受け取る足立さん(右から2人目)

 
 参加者には記念品として図書カードが贈られた。津田商店に就職した足立貴子さん(22)が釜石地区を代表し、野田武則市長から記念品を受け取った。釜石高から東北芸術工科大(山形県)に進み、「コト」のデザインやイベント企画、商品開発について学んだ。食品に関わる仕事を希望し、「漁業が盛んな地域で、水産加工に携わることができるのは意義深い。仕事面だけでなく、人として成長したい。夢中になれる何かも見つけられたら」と思い描く。
 
 釜石大槌地区行政事務組合消防本部の前川柊哉さん(24)は「都会で培った能力を還元したい」とUターン。釜石消防署に配属、地域住民の生命や暮らしを守るため第一線で活動している。大槌町吉里吉里出身で、震災時の救援活動やドラマで見た消防士の姿に憧れ、釜石高卒業後に千葉市消防局に入庁。やりがいを感じながら職務に当たってきた。帰郷を決めたのは「一人っ子だから」。‶サラッと″とした口調だったが、「小さい力だが、地元に帰ることで地域が元気に、活性化されたらいい」と続く言葉に、古里への愛着を感じさせた。
 
 式後にはパソナ東北創生(甲子町)の戸塚絵梨子代表取締役による講話があり、社会人としての心構えや楽しく仕事ができる思考法などを助言した。

子育て応援企業に認定されたエヌエスオカムラの佐藤副社長(右から2人目)ら

釜石市内で6番目 子育て応援企業に認定 エヌエスオカムラ 仕事との両立支援

子育て応援企業に認定されたエヌエスオカムラの佐藤副社長(右から2人目)ら

子育て応援企業に認定されたエヌエスオカムラの佐藤副社長(右から2人目)ら

 
 釜石市は21日、鋼製家具製造事業を手掛ける鈴子町のエヌエスオカムラ(鎌倉康雄社長)を、子育てと仕事の両立支援など男女が働きやすい職場環境づくりに取り組む「子育て応援企業」に認定した。市内での認定は6番目。
 
 この認定制度は市の少子化対策の一環として2009年に設けられた。従業員の育児休業や介護休業に対し法の規定を上回る措置や職場復帰支援を行うなどの取り組みを進めている企業側の申請を受け、一定基準を満たした企業を市が認定。認定企業は市の広報紙やホームページで紹介され、子育て応援企業であることをPRできる。
 
 同社では、介護休暇を通算1年(法定は93日)取得できるほか、育児・介護のための所定外労働の制限については就学前(法定では3歳未満)の子を持つ職員が利用できるよう期間を延長。育児や介護休業期間中の社員への職場復帰支援や年次有給休暇の取得促進など独自の取り組みも行っている。
 
野田市長らとの懇談で、より良い職場づくりへの思いを語る佐藤副社長(左)

野田市長らとの懇談で、より良い職場づくりへの思いを語る佐藤副社長(左)

 
 認定書交付式は市役所で行われ、同社の佐藤裕副社長、藤原由香里総務課長が出席。野田武則市長から認定書を受けた佐藤副社長は「少子高齢化で採用環境は悪い。能力ある女性は多く、潜在的能力を生かせる企業、働く満足感を得られる職場環境づくりは会社、従業員双方にメリットがある」と強調した。現在の従業員数は約140人で、うち女性はパートを含め16人。従業員に対し3年ごとに満足度調査を行っているといい、「(満足度は)まだ低い。やれることを示し、納得感のある形で取り組みを進めていく」と力を込めた。
 
 野田市長は「各企業が取り組むことで、子育てしやすいまちづくりが進む。女性が安心し仕事に専念できる企業づくりを続けてほしい。他の企業に子育てを支える取り組みを参考にしてもらい、制度に目を向けるきっかけになれば」と期待した。

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コロナ下、3度目の新年度始まる 釜石の新規採用者「前向きに」

ラグビー研修に参加した新規採用職員。期待や責任を胸に一歩を踏み出す=4日、釜石鵜住居復興スタジアム

ラグビー研修に参加した新規採用職員。期待や責任を胸に一歩を踏み出す=4日、釜石鵜住居復興スタジアム

 

 新年度が始まった1日、釜石市内の役所や企業も新たなスタートを切った。新型コロナウイルス禍の中で迎えた3度目の春も感染対策を徹底し、マスク姿で辞令交付式、新人研修を実施。感染流行の収束はいまだ見通せないが、社会人としての一歩を踏み出した若者からは前向きな言葉が聞かれた。

 

釜石市役所 新採用職員に辞令交付 センバツ出場の大尻さん「恩返しを」

 
釜石市の新職員を代表して宣誓書を読み上げる大尻悠矢さん=1日、釜石市役所議場

釜石市の新職員を代表して宣誓書を読み上げる大尻悠矢さん=1日、釜石市役所議場

 

 釜石市役所では議場に一堂に会す例年のスタイルで、新採用職員への辞令交付を行った。本年度の新職員は13人。それぞれ緊張の面持ちで野田武則市長から辞令交付を受けた後、新職員を代表して大尻悠矢さん(22)が「市民全体の奉仕者として、誠実、公正に職務を遂行する」と宣誓書を読み上げ、社会人としての決意を固めた。

 

 大尻さんは平田出身で、釜石高時代は野球に熱中。2016年の第88回センバツ大会に21世紀枠で出場し、8番打者、捕手として甲子園のグラウンドに立った。その時に全市を挙げた応援を受け、「いつか恩返しを」と決意。東北学院大(宮城県)教養学部に進み、教員免許も取得したが、「釜石市のために働きたい」と、この道を選んだ。
 
 市職員としての歩みは総合政策課オープンシティ推進室から始まる。高校時代は1年生で正捕手を任され、強気なリードが持ち味だった。主将としてチームをまとめた経験もある。「仕事する上では、若い意見も必要になると思う。積極的に発言し、盛り上げていきたい」と背筋を伸ばした。

 

マスク姿で野田市長の訓示に聞き入る幹部職員=1日、釜石市役所議場

マスク姿で野田市長の訓示に聞き入る幹部職員=1日、釜石市役所議場

 

 辞令交付を終え、野田市長が訓示。晴山真澄副市長や各部長など約30人の幹部職員に対し、「東日本大震災からの復興、激甚化する災害への対応、感染症対策、人口減と経済縮小、新市庁舎建設-さまざまな課題を抱えている。一致団結して課題に取り組み、市民の期待に応えていこう」と呼び掛けた。まちづくりの合言葉は「不撓(ふとう)不屈」と強調。その力を得るためは、逆境から粘り強く立ち直る力を意味する「レジリエンス」が必要だとし、「挑戦していく力、思いを持ち続けてほしい」と奮起を促した。
 

役所・企業の新戦力 ラグビー研修でチームプレー体感

 
チームプレーや声掛けの大切さを体感するラグビー研修=4日、釜石鵜住居復興スタジアム

チームプレーや声掛けの大切さを体感するラグビー研修=4日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
 市は4日、鵜住居町の釜石鵜住居復興スタジアムで新規採用職員を対象にしたラグビー研修を行った。「ラグビーのまち」に理解を深めてもらおうという新人研修の一環。市内企業の新人も含む計18人が参加し、パスをつないでトライまでの速さを競ったりしながらチームプレーの大切さを体感した。
  
 新人職員らは、2019年のラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催の概要や得たレガシー(遺産)、ラグビー憲章に掲げられている▽品位▽情熱▽結束▽規律▽尊重-という5つの精神がまちづくりにも通じることなどを学んだ後、グラウンドへ。新採用職員の一人でスポーツ推進課に配属された釜石シーウェイブス(SW)RFC元選手の佐伯悠さん(37)らの指導で、タグラグビーなどに取り組んだ。
 
「きつい」と言いつつ、ラグビーを楽しむ新人職員ら=4日、釜石鵜住居復興スタジアム

「きつい」と言いつつ、ラグビーを楽しむ新人職員ら=4日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
 地元の建設業青紀土木から4人が参加。小川町の昆夏樹さん(23)はグラウンドを縦横無尽に駆け回り、「息が切れたけど、良いところ見せようと頑張った。初対面の人とコミュニケーションをとってチームをまとめる経験は仕事にも役立つ。建設業は生活を支えるすごい仕事。分からないことばかりだが、前向きにしっかり学んでいきたい」と力を込めた。
 
 1日からは成人年齢が18歳に引き下げられた。市総務課に配属が決まっている佐々木里桜さん(18)は「成人したとの実感はないが、社会人として責任の重さは感じている。住んで良かったと思ってもらえるようなまちづくりに少しでも貢献できる職員になりたい」と意欲。高校時代は吹奏楽部に所属していたといい、「お金をためて楽器(フルート)を買えたら、市民吹奏楽団に入りたい」と新生活へ期待も広げていた。

協定書を手にする損害保険ジャパン・上野好章岩手支店長(左)、トヨタL&F岩手・高橋一仁社長(右)、野田武則釜石市長

損保ジャパン、トヨタL&F 災害時の車両支援で釜石市と協定締結

協定書を手にする損害保険ジャパン・上野好章岩手支店長(左)、トヨタL&F岩手・高橋一仁社長(右)、野田武則釜石市長

協定書を手にする損害保険ジャパン・上野好章岩手支店長(左)、トヨタL&F岩手・高橋一仁社長(右)、野田武則釜石市長

 

 損害保険ジャパン岩手支店(上野好章支店長、盛岡市)、トヨタL&F岩手(高橋一仁社長、矢巾町)は18日、災害時に両社が保有する電動車両やフォークリフトなどを無償貸与する協定を釜石市と結んだ。防災や福祉などで地域貢献を目指す両社は昨年11月、包括連携協定を締結。その取り組みの一環で、災害時における自治体への車両支援を決めた。釜石市との協定が県内初となる。

 

 協定締結式は市役所で行われ、上野支店長、高橋社長、野田武則市長が協定書に署名。災害時に両社が同市に対して行う応急対策支援の内容を確認した。

 

 協定は、釜石市内で災害が発生、または発生する恐れがある場合に、市の要請に基づき、両社が保有する車両などを貸与するもの。損保ジャパンは「電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池自動車、車両からの外部給電に必要な機器」、トヨタL&Fは「フォークリフトなど、災害対応に関する機器」を無償貸与。指定避難所への給電、応急復旧現場での活用を想定する。貸与期間中にかかる費用(電気、燃料、消耗品)は市が負担。円滑な連携を図るため、両社は市が行う防災訓練にも協力する。

 

協定締結式で、災害時の3者連携について確認

協定締結式で、災害時の3者連携について確認

 

 上野支店長は「有事の際は真に実効性のある対策が必要。蓄積したノウハウ、事業の強みを生かし、釜石市の役に立てれば」、高橋社長は「先日も大きな地震があった。今回の協定で市民に少しでも安心を届けられたら」と願う。野田市長は「2社の力をいただけるのは大変心強い。震災の教訓を生かし、『誰一人として犠牲にならないまちづくり』にまい進していく」と感謝した。

 

 SDGs(持続可能な開発目標)達成への取り組みを進める両社は、昨年11月、「笑顔あふれる岩手づくり」を目指した包括連携協定を締結。防災・減災、健康福祉、環境など市民生活に関わる地域課題解決に向けタッグを組む。釜石市との協定を機に、複合連携をさらに進めていく考えだ。

釜石ガスで行われたカーボンニュートラルLNG受け入れ式=15日

釜石ガス「カーボンニュートラルLNG」導入開始 脱炭素社会貢献へ

釜石ガスで行われたカーボンニュートラルLNG受け入れ式=15日

釜石ガスで行われたカーボンニュートラルLNG受け入れ式=15日

 

 釜石市鈴子町の都市ガス業者・釜石ガス(渡邉浩二社長)は、自社の二酸化炭素(CO2)排出量を森林の吸収量と相殺し、実質ゼロにするための取り組みを開始した。石油元売り大手のENEOS(エネオス、大田勝幸社長)が昨年11月から販売する「カーボンニュートラルLNG(液化天然ガス)」を購入し、都市ガス製造設備、事務所の給湯や空調などの都市ガス使用分に充てる。年間15トンの供給で、約50トンのCO2排出量削減に貢献する。

 

 カーボンニュートラルLNGは、海外の森林保全プロジェクト由来のCO2クレジットを活用し、「天然ガスの採掘から燃焼までの工程で発生するCO2」を「植林や森林保全によるCO2吸収量」で埋め合わせすることで、実質排出量ゼロとみなされるもの。

 

 両社が同LNGの売買契約を締結。15日、鈴子町の同社で、エネオスの冨士元宏明ガス事業部長が渡邉社長に供給証明書を手渡し、受け入れを開始した。渡邉社長は、国が目指す2050年までのカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現(20年10月宣言)、釜石市のゼロカーボンシティ宣言(昨年10月)に触れ、「エネルギー利用者として少しでも貢献できれば。お客様からの要望があれば、カーボンニュートラル都市ガスの販売も検討していきたい」と努力姿勢を示した。

 

エネオス冨士元ガス事業部長(左)から供給証明書を受け取る釜石ガス渡邉社長

エネオス冨士元ガス事業部長(左)から供給証明書を受け取る釜石ガス渡邉社長

 

 今回のカーボンニュートラルLNGの導入は、県内の都市ガス業4社が足並みをそろえて行い、釜石のほか花巻ガス(花巻市)、水沢ガス(奥州市)、盛岡ガス(盛岡市)も同様の売買契約を結んだ。4社で1年分の使用量計104トンを購入し、約340トンのCO2排出量削減につなげる。

甲子町大畑地区の柿畑で行われた甲子柿剪定講習会

甲子柿の品質向上へ 生産組合、剪定講習会 栽培農家の底上げ、ブランド力強化図る

甲子町大畑地区の柿畑で行われた甲子柿剪定講習会

甲子町大畑地区の柿畑で行われた甲子柿剪定講習会

 

 釜石市の甲子柿の里生産組合(佐々木裕一組合長、組合員約30人)は2日、柿の木の剪定(せんてい)講習会を甲子町内の柿畑などで開いた。栽培農家の底上げを狙った試み。組合員ら約20人が参加し、高品質で良い柿を届けようと真剣な表情で臨んだ。

 

 昨年、国の2つの制度(地理的表示[GI]保護制度、機能性表示食品)で特性を認められた甲子柿。ブランド力強化を進める中、高品質安定生産に向けた栽培管理、技術向上を図るため、毎年この時期に講習会を開いている。大船渡農業改良普及センター農業普及員の柳本麻衣さん(29)が講師を務めた。

 

 柏木充夫さん(82)の柿畑(甲子町大畑)にある1本の木を使って、剪定作業を実演した。剪定の目的は「葉や実に光が当たりやすいようにすること」と柳本さん。ノコギリやハサミを手に、収穫期に良い実を出すために軸となる枝を決め、不要な枝を切っていった。摘果や収穫など作業をしやすくするのもポイント。「できるだけ木をコンパクトに。切りすぎかなと思うくらいでも大丈夫、枝は伸びる。素直に伸びている枝を残す」などと指導した。

 

柳本さん(左から2人目)の実演に見入る参加者

柳本さん(左から2人目)の実演に見入る参加者

 

 柏木さんは約200坪の畑で柿の木200本ほどを育てる。昨年は例年に比べると不作の年となったが、柏木さん方では数的に若干影響はあったものの、糖度が高く(20度を超えるものも)味のいい柿を出荷することができた。長男幹彦さん(53)によると、地域外からの問い合わせや購入者もいて、認知度の向上を実感。知識を深める講習会の開催を歓迎していて、「枝を切るのはもったいないと思ってしまうが、学びを生かし、実践したい。消費者が面白いと思ってもらえる農業に取り組み、地域を盛り上げたい」と意欲を高めた。

 

洞関地区コミュニティ消防センターで行われた座学では講師の説明に耳を傾けた

洞関地区コミュニティ消防センターで行われた座学では講師の説明に耳を傾けた

 

 組合員2人の畑を回った後、洞関地区コミュニティ消防センターに移動して病害虫防除を中心に座学。組合では害虫アザミウマ、カイガラムシ、病害の落葉病など徹底防除に取り組むことにしていて、柳本さんは計画的な殺菌・殺虫対策について助言した。

 

 甲子柿に魅了された若者が生産に乗り出す動きがあり、今回の講習にも参加。盛岡市の団体職員佐々木路子さん(38)は「ノー知識できた。内容は難しいが、逆に役立てると思う。農福連携と絡めた取り組みにしたい」と前を見据えた。

 

 佐々木組合長(71)は新たな参入を喜ぶ。「今年こそ豊作で終わりたい。消費者に満足してもらえる、おいしい柿を届けるため、みんなでしっかり取り組みたい」と力を込めた。

災害時に使用可能な蓄電池などを贈ったSMC釜石工場の関係者(右)ら

災害時の備えに 釜石に工場立地のSMC、可搬式蓄電池などを釜石市に寄贈

災害時に使用可能な蓄電池などを贈ったSMC釜石工場の関係者(右)ら

災害時に使用可能な蓄電池などを贈ったSMC釜石工場の関係者(右)ら

 

 空気圧機器メーカーSMC(東京都千代田区、高田芳樹社長)は2日、災害の備えとして、釜石市にポータブル太陽光パネルと蓄電池などをセットで贈った。市は市役所本庁舎や、市役所が使えなくなった場合に代替施設として使用する予定の小佐野コミュニティ会館などに配備する。

 

 同社は1991年に市の誘致企業として工場の操業を開始。現在、第5工場を建設中で、三陸沿岸地域の産業と雇用を支える企業となっている。2009年には市と「災害時における応急対策用資機材の調達、応急対策要員確保の要請に関する協定」を締結。▽災害発生時に同社が備蓄している食品や防災資機材の提供▽全国から寄せられる救援物資の受け入れ、仕分けを担う要員の確保-などで災害対策を後押しする。今回の寄贈は社会貢献活動の一環。

 

 同社釜石事業所釜石工場の浦島勝樹工場長ら4人が市役所を訪問。野田武則市長に蓄電池などを手渡した浦島工場長は「東日本大震災の時、真っ暗闇の中で一昼夜過ごした経験があった。今後そういうことがないよう、明かりのあるところで過ごしてもらいたいと考えた。災害時の使用が前提だが、普段から地域のイベントなどで活用してもらえれば」と思いを伝えた。

 

寄贈した蓄電池などを前に、野田市長(左)と懇談する浦島工場長(中)ら

寄贈した蓄電池などを前に、野田市長(左)と懇談する浦島工場長(中)ら

 

 贈られたのは、持ち運びができる小型の蓄電池「ポータブル電源」と折り畳み式のソーラーパネルが各5台、延長ケーブルは5本。蓄電池はソーラーパネルを使うと約13時間でフル充電でき、たまった電力でスマートフォンなら約35回分の充電が可能だという。

 

 震災の経験から電気の大切さを痛感する野田市長。今年1月に南太平洋・トンガ沖の海底火山噴火で発生した津波では釜石市にも津波警報が発令されたが、「冬の夜」だったこともあり、避難した人が少なかった―と振り返り、「積極的な避難行動に結び付くよう環境を整える必要がある。十分な資機材を備蓄できていない中、寄贈はありがたい。寒さや暗さにためらうことなく安心して避難できる体制、必要な時に使える体制を構築したい」と感謝した。

「未来へつなぐ三陸の海を考える」をテーマに開かれた水産・海洋研究フォーラム

三陸の海の可能性―水産・海洋研究フォーラム 漁業者ら水産業の未来像共有

「未来へつなぐ三陸の海を考える」をテーマに開かれた水産・海洋研究フォーラム

未来へつなぐ三陸の海を考える」をテーマに開かれた水産・海洋研究フォーラム

 

 釜石市主催の水産・海洋研究フォーラムは2月25日、大町の釜石PITで開かれた。「未来へつなぐ三陸の海を考える」をテーマに、研究者や漁業者らが市内外で進む水産業の新たな取り組み事例を発表。会場とオンライン配信合わせて約70人が参加し、取り組みを共有することで三陸の海の可能性を考えた。

 

釜石の水産業への思いを明かす泉澤宏社長

釜石の水産業への思いを明かす泉澤宏社長

 

 地元の水産会社泉澤水産(両石町)の泉澤宏社長は、自動引き網システムや魚群探知機を定置網につけて沈め、24時間監視することにより定置網漁を「見える化」する操業支援システムの導入など全国で進む実証研究を紹介。操業方法の省人化や自動化の動きは作業の効率化、就労時間の削減など利点が多く、今後取り入れたいと考えを示した。

 

 経営悪化で魚市場が閉鎖された網代漁港(静岡県)で水産関係者が新たに取り組んだ、▽漁獲物の供給調整と不可価値向上(計画出荷と活魚・畜養など)▽価格形成への参加(生産者による競り、入札での販売など)▽直接販売(鮮魚の直接販売、料理店の経営)-なども説明。「少なくとって大きく売る取り組みが最も重要になる。持つ資源を積極的に活用し、売り上げの最大化を図ることが大事だ」と強調した。

 

釜石湾のサクラマス養殖試験研究を紹介する平井俊朗教授

釜石湾のサクラマス養殖試験研究を紹介する平井俊朗教授

 

 岩手大三陸水産研究センター長の平井俊朗教授は釜石湾で行うサクラマス養殖試験について、第1期(2020年7月~21年9月)の成果を報告。「魚体サイズ、価格のバラツキが大きい。早熟のためギンザケなど他のサーモンよりも出荷期間が短く、技術的に改善しなければいけない部分も多い」とした。

 

 釜石サーモン養殖は「これからが本番」とした上で、「他魚種、他地域との競合の中で埋没しないための戦略が必要。多様な事業形態の共存、異業種間連携の促進、若者の地域参入に寛容な風土づくりという視点が大事になる」と指摘。一過性ではない、真の地域産業化に向け、「釜石ならではの(サクラマスの)種苗づくりを進める」と前を見据えた。

 

研究者や漁業者の報告や事例に耳を傾けた参加者

研究者や漁業者の報告や事例に耳を傾けた参加者

 

 リモートで参加したNPO法人海辺つくり研究会の木村尚(たかし)理事は、多様な主体の連携による里海保全の取り組みについて講演。ワカメを通した釜石とのつながりも紹介した。21年まで釜石市まちづくり復興アドバイザーを務めた北海学園大経済学部の濱田武士教授は釜石水産業の課題と期待について独自の視点を示した。

 

 野田武則市長は「地域の経済産業活動を支える水産業は震災の影響、漁業者の高齢化、後継者不足、水産資源の減少などの課題がある」と研究への期待を述べた。

久保知久組合長のあいさつで総代会がスタート

釜石地方森林組合総代会~久保組合長勇退 新執行体制で22年度事業推進へ

釜石地方森林組合 第59回通常総代会。コロナ禍を考慮した会場レイアウトで行われた

釜石地方森林組合 第59回通常総代会。コロナ禍を考慮した会場レイアウトで行われた

 

 釜石地方森林組合(久保知久代表理事組合長、組合員1613人)の第59回通常総代会は2月25日、釜石市鵜住居町の市民体育館で開かれた。会では、2017年5月に発生した尾崎半島林野火災の被災地復旧事業が本年3月で完了する見込みとなったことが報告された。5年間、組合長として尽力してきた久保知久さん(74)の退任が発表され、役員18人を改選。新たな執行体制で、地域の森林経営を支える。

 

 昨年12月に総代選挙が行われ、新体制で迎えた同会には、総代員200人中169人が出席した(委任、書面出席含む)。久保組合長は「コロナ禍や世界経済の変化で木材輸入が減少。国産材の需要が一気に高まり、昨秋から丸太価格も上昇傾向」と、“ウッド・ショック”と言われる現象に注目。「これを追い風に、ニーズを的確に把握しながら販路拡大に努めたい」とあいさつした。

 

久保知久組合長のあいさつで総代会がスタート

久保知久組合長のあいさつで総代会がスタート

 

 同組合の2021年度(21年1月~12月)木材取扱量は、バイオマス材を含め2万3820立方メートル(計画比82%)。取扱量は減少したが、単価の上昇、組合が加盟する「上閉伊地区木材流通協議会」の建築資材販売などで、計画比81%の収益を計上した。森林経営管理委託契約は新規で19人から申し込みがあり、年度末時点で725人と契約を締結。国や地方自治体などの事業の受注、各種補助事業の積極的導入で森林環境保全への取り組みを強化。計画比105%の収益につながった。

 

 釜石市から受注した尾崎半島林野火災被災地復旧事業は、19年10月の台風被害により工期が1年延びていたが、特殊地ごしらえ、防護網設置、植林作業が進み、本年3月で完了する見込みとなったことが報告された。

 

提出議案について審議する釜石市、大槌町の総代

提出議案について審議する釜石市、大槌町の総代

 

 22年度は、ウッド・ショックに伴う木材流通の活性化を好機とし、間伐材の販売拡大、上閉伊地区木材流通協議会の地域産材製品のPRに力を入れ、組合員の所得増につなげる。同組合の特長である「二酸化炭素森林吸収源取引」を活用した森林整備事業の推進、日本製鉄に販売するバイオマス代金の利益分を基金に積み、森林環境保全を図る取り組みも進める。低コスト作業と合わせ、組合員の負担を軽減する事業体制づくりに努める。

 

 21年度の事業内容、22年度の事業計画案は損益などと共に承認された。任期満了に伴う役員改選も行われ、昨年12月の役員推薦会議で候補者に選ばれた理事15人と監事3人に対する信任投票を実施。新執行体制が決まった。新任は4人。昨年4月の森林組合法改正で、事業執行体制の強化策として実践的能力を持つ理事の1人以上の配置が義務化されたことを受け、高橋幸男参事(57)が理事を兼務する。

 

新役員選任のための総代員による信任投票

新役員選任のための総代員による信任投票

 

2022年度から3年間役員を務める理事15人と監事3人

2022年度から3年間役員を務める理事15人と監事3人

 

 この日は、今期で退任する役員4人に花束を贈り、長年の労をねぎった。理事として6期18年、16年12月から代表理事組合長を務めてきた久保知久さん(74)は、翌17年に発生した尾崎半島林野火災の復旧事業に力を注いできた。「森林環境の再生はもちろん、少しでも山主さんの利益になるよう、被災木の活用促進に取り組んできた。関係者の理解と協力に感謝したい」と久保さん。国産材が注目され、公共物への木材利用も進む昨今。「山林所有者にとっては本当にいい機会が巡ってきている。希望を持ってほしい。釜石は89%が山林。そこに眠る資源を有効活用できるような組合に」と今後に期待した。

 

本総代会で退任した理事と監事。右から2人目が久保知久代表理事組合長

本総代会で退任した理事と監事。右から2人目が久保知久代表理事組合長

 

 総代会で選任された理事、監事は次の通り(敬称略)。後日の互選で、植田収さん(箱崎町)が代表理事組合長に就任した。

 

【理事】阿部公一(大槌町)、植田収(箱崎町)、臼澤勲(大槌町)、栗澤廣(栗林町)、佐々木四郎(甲子町)、佐々木重吾(大槌町、新任)、佐々木廣(平田)、佐々木裕一(甲子町)、高橋幸男(山田町、新任)、二本松誠(鵜住居町、新任)、畠山一信(唐丹町)、藤原元助(橋野町)、三浦幸保(大槌町)、水上済(唐丹町)、和田功(橋野町)
【監事】柏木公博(天神町)、三浦蔵人(大槌町、新任)、山崎巍(唐丹町)

釜石ロータリークラブ70周年

釜石ロータリークラブ70周年 住みよいまちへ「奉仕の心」新たに

釜石ロータリークラブ70周年

 

 釜石ロータリークラブ(須藤寛人会長、会員19人)は2月22日、釜石市大町の釜石ベイシティホテルで創立70周年記念式典を開いた。会員、来賓ら26人が出席。社会奉仕などで貢献した市民3人を表彰したほか、子ども支援の一環で関係施設に物品購入資金を贈った。

 

 須藤会長は同クラブ発足の経緯をあらためて説明し、「目立たない活動かもしれないが、会員それぞれが職業奉仕などを通じ地域に貢献してこられた。これからも活動を継続すべく精進していきたい」とあいさつ。来賓の野田武則市長は、長年にわたる市内の各種団体への支援、震災復興支援にあらためて感謝の気持ちを伝えた。

 

釜石ロータリークラブ創立70周年記念式典

釜石ロータリークラブ創立70周年記念式典

 

 社会奉仕部門で2人を表彰。松原町の柴田渥さん(75)は東日本大震災後、住民のつながりを維持するため町内会が開催してきた「まつばら会(昼食会)」で、運営の中心的役割を担った。甲子町の元小学校教員、菊池義一さん(89)は、不登校の児童・生徒、親の相談に乗り、釜石地区父母会代表として30年間尽力。社会の理解が不十分で苦しい思いをしていた親子らを献身的に支えた。

 

震災後の10年間、「まつばら会」の運営に尽力。表彰を受ける柴田渥さん(右)

震災後の10年間、「まつばら会」の運営に尽力。表彰を受ける柴田渥さん(右)

 

長年にわたる不登校児への支援活動で表彰を受ける菊池義一さん

長年にわたる不登校児への支援活動で表彰を受ける菊池義一さん

 

 国際奉仕部門では20年以上にわたり、釜石在住外国人に日本語を教えてきた岡本真由美さんを表彰した(式典欠席)。

 

 継続事業として、市立図書館(小佐野町)と児童の発達支援を行う市すくすく親子教室(上中島町)に資金を贈呈。同館は釜石ロータリー文庫の児童書、同教室は知育玩具の購入に充てる。式典では年間無欠席会員の表彰も行った。

 

釜石ロータリークラブの70周年を祝う会員ら

釜石ロータリークラブの70周年を祝う会員ら

 

 同クラブは1952(昭和27)年2月12日、会員21人で発足。同年6月、認証伝達式が行われ、国際ロータリー第2520地区(岩手、宮城)で3番目、本県では2番目のクラブ創立となった。釜石東ロータリークラブ創立時のスポンサークラブでもある。