人口減、不漁、コロナ禍…環境厳しくも 「活路を見いだす」 釜石で仕事始め
釜石市魚市場に水揚げする定置網漁船の乗組員ら
正月の三が日が明けた4日、釜石市内の官公庁や多くの企業は「仕事始め」を迎えた。魚河岸の市魚市場では新春恒例の初売り式があり、漁業関係者らが鏡開きや手締めで一年の豊漁を祈願。主要魚種の水揚げ不振が続く中、新たな魚種の活用や養殖事業の推進で活路を見いだしたい―と力を込めた。只越町の釜石市役所では野田武則市長が年頭訓示。人口減少・高齢化を踏まえた新たなまちづくり、新市庁舎の建設に向け力を注ぐとの考えを示し、市職員らに協力を求めた。
釜石魚市場で初売り式「魚のまち再生を」
水揚げされた魚を見定め、競りに臨む買い受け人ら
市魚市場には、午前5時ごろから漁船が入港。定置網はマイワシ28・9トン、ムギサバ4・7トンなどが水揚げされた。主要魚種はサケ10匹、スルメイカ237キロにとどまった。初競りに臨んだ買い受け人は魚を熱心に見定め、次々と取引を進めた。
同市場の2022年の取り扱い実績は、昨年末時点で数量が4450トン(前年同期比34%減)、金額は6億8800万円(同23%減)。市漁業協同組合連合会の木村嘉人会長は「秋サケ漁は県全体で尾数、重量が若干増えたが、不漁は数年続くと思われる。巻き網船やサンマ船の積極的な誘致活動を行い、水揚げ増大に取り組んでいく」と前を向いた。
定置網漁船から水揚げしたイワシなどを選別する漁師ら
市場開設者の野田市長は、20年秋から釜石湾で進める「釜石はまゆりサクラマス」の養殖事業に期待する。実証試験2期目の昨年は1万8000尾、30トンを水揚げ。「関係者らと力を合わせてサクラマスの養殖を本格化させ、魚のまち再生のために力を尽くしたい」とした。
釜石市役所で仕事始め式「人事を尽くして天命を開け」
仕事始め式で訓示する野田市長(写真右)。幹部職員らが聞き入った
野田市長は約40人の幹部職員を前に訓示。東日本大震災からの復興完遂は目前とする一方、この10年で人口は4万人から3万700人ほどになっており、人口減という課題に直面する。年間600~700人の減少とすると、「今年は2万人台という歴史的な人口減の姿が現れる年になるかもしれない」と指摘。新しいまちづくりの視点が必要とした上で、「市役所が中心とって解決の糸口をつくり、市民の皆さんに元気を出してもらえる市政運営をしていかなければ」と気を引き締めた。
少子化対策や高齢化を見据えた見守り体制の強化、「ウィズ・コロナ」時代の経済活性、新市庁舎建設の推進など重点的に取り組むべき事項を挙げ、「厳しい年になるだろう」「岐路に立たされている」などと繰り返し強調する野田市長。「人事を尽くす。われわれは、持っている最大限の能力を尽くさなければ。そして、天命を待つのではなく、自らの手で開いていかなければならない」と一層の奮起を促した。
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