釜石小「ぼうさい甲子園」で2度目の優秀賞 “災害時は自ら考え行動”命を守る教育、実践評価

2025年度「ぼうさい甲子園」で釜石小が優秀賞。6年生児童が教育長らに受賞報告=3日
全国の防災教育に関する先進的取り組みを顕彰する本年度の1.17防災未来賞「ぼうさい甲子園」(兵庫県など主催)で、釜石市の釜石小(五安城正敏校長、児童66人)が、優秀賞を受賞した。東日本大震災前から継続する防災教育を深化させ、児童らが主体的に考え、家庭や地域を巻き込んだ実践的な活動を行っていることが評価された。1月24日、神戸市で開かれた表彰式には6年生児童が出席。自分たちの活動について発表も行った。
6年生9人は今月3日、同市の教育長、危機管理監らに受賞を報告した。表彰式で行った活動発表を報告の場で披露。釜石小ぼうさい安全少年団の山﨑柊琳団長、佐野楓花副団長がこれまでの取り組みについて発表した。

1月24日の表彰式での発表を市、市教委の幹部職員らに披露した
同校では三陸沖地震津波の発生確率が高まる中、2008年から市内小中学校に先駆け、下校時津波避難訓練など本格的な防災教育を開始。11年の震災発生時、児童らは帰宅していたが、自ら判断し高台などへ避難。全児童184人が命をつないだ。その後、多様化する災害を見据え、同教育活動は深化を続ける。
震災発生日の3月11日にちなみ、毎月11日を「釜小ぼうさいの日」とし、少年団団長が校内放送で防災に関するメッセージを発信。同少年団通信として地域住民にもメッセージを届けている。火災、垂直避難、不審者対応の訓練なども実施。6年間かけて行う防災学習では地震津波のほか、土砂災害、河川洪水についても学び、年1回、「いのちの学習参観」として保護者と一緒に防災を考える時間を設けている。児童が防災学習シートを持ち帰り、家族がメッセージを返すことも。

写真左上:「釜小ぼうさいの日」に行った火災避難訓練。同右上:児童が作成した「ぼく、わたしのぼうさい安全マップ(写真提供:釜石小)
本年度の6年生は5年時に、「市の避難訓練に地域住民の参加が少ない」ことを知り、参加を呼びかけるチラシやポスターを作成。地域住民に配り、市役所などへの掲示も依頼した。本年度、特に力を入れて取り組んだのが「ぼく、わたしのぼうさい安全マップ」の作成。全校児童が家族と一緒に居住地区の危険箇所(地震津波、洪水、土砂災害、クマ出没など)を調査。地区リーダーの6年生は地域住民から釜石の昔の災害について教えてもらう聞き取りも行った。調査内容は横幅5メートルほどのパネルにまとめ、全校児童の前で発表。同パネルは昇降口に掲示し、いつでも見られるようにしている。
震災前から続ける下校時津波避難訓練は、市や消防団の協力を得て実施。事前に地域住民にも知らせ、参加を促している。毎年繰り返すことで、児童らの避難意識は格段に向上。昨年12月8日深夜に発生した青森県東方沖地震で津波警報が出た際も、児童らは家族に「逃げよう」と声をかけ、いち早く避難を開始した。

釜石小が震災前から続ける「下校時津波避難訓練(2024年10月撮影)」。自ら判断し、最も近い高台の津波避難場所に向かう
こうした経験を重ねてきた6年生は、「防災について学んだことから自ら判断し、命を守る行動をとる」「命はかけがえのない大切なものと思い続ける」ことなどを肝に銘じ、「これからも校内、地域の人たちとつながり、みんなの役に立つ人になりたい」との思いを強くする。
釜小の校長経験もある髙橋勝教育長は脈々と続く同校の防災教育について、「みんなは形だけでなく、(先輩方の)心も受け継いで防災に取り組んできた。これからも大事にしてほしい。行動を起こすことで現状は変えられる。最初の小さな一歩が大きな力になる」と児童らの取り組みをたたえた。

髙橋勝教育長に優秀賞の賞状や盾を見せながら受賞を報告する児童
同顕彰事業は、阪神・淡路大震災をはじめとする災害の記憶を後世につなぎ、防災教育の推進で未来の安全安心な社会をつくるのが目的。21回目となる本年度は全国111校・団体から応募があり、選考委員会による審査で各賞が決定した。釜石小は小学生部門で、ぼうさい大賞に次ぐ優秀賞を受賞した。同顕彰での同校の受賞は2011年度のぼうさい大賞、12年度の優秀賞、24年度の特別賞(はばタン賞)に続き4回目。

関係職員が児童らの取り組みをたたえ、防災への協力に感謝
山﨑柊琳団長は「防災の活動を6年間重ねてきた中での受賞なのでうれしい。表彰式では他の地域の発表も聞けて参考になった。今後に生かしたい。後輩たちにもこの活動を引き継いでほしい」と願う。佐野楓花副団長も「釜小の取り組みを全国の人に知ってもらえた」と喜ぶ。生まれる前の大震災で自宅も津波の被害を受けた。「下校時津波避難訓練はすごくためになっている」と話し、次の世代に向け、「小さい頃から防災の学習をして、もしもの時に命が助かれるように行動してほしい」と思いを込める。
11年の震災時も同校にいた“いのちの教育”担当の及川美香子教諭は「防災学習は地域の現状を踏まえ、アレンジしながら継続していくことが大事」と改めて実感。今春、中学に進む6年生に対し、「自分たちがやってきたことを他の小学校出身者にも伝え、みんなでこの地域の命を守れる人になってほしい」と期待した。

釜石新聞NewS
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