楽しみ尽くす 浜千鳥・釜石 パーティー、4年ぶり開催 合言葉は「酒、時々…」
多様な浜千鳥の味を楽しむパーティーは4年ぶりに開かれた
釜石市小川町の酒造会社浜千鳥(新里進社長)は13日、「浜千鳥のすべてを楽しむパーティー」を大町のホテルクラウンヒルズ釜石で開いた。新型コロナウイルス禍での休止を経て4年ぶりの開催。待ちわびた約120人が集い、蔵人が精魂込めて造った多様な清酒の風味を堪能した。
パーティーは今回で31回目。冒頭であいさつした新里社長は、大槌町産の酒米「吟ぎんが」と地下水を使用した「源水」を紹介し、「地域おこしの酒で、ここに来れば飲める。地域を元気にする取り組みに関わることができてうれしい」と熱弁。久しぶりの顔合わせに気分も上々で、「いろんな酒があり、すべて飲み干すと呑(の)まれてしまう。『酒、時々、水』を合言葉に飲めば、爽やかに楽しめる」と来場者にすすめた。
来場者に自慢の酒をアピールする新里社長(中)
源水の開発で協力したソーシャル・ネイチャー・ワークス(大槌町)の藤原朋代表取締役がミニ講演。開発の物語に加え、今回、酒と合わせて提供する料理の食材となった「ジビエ(野生鳥獣の肉)」を活用した町おこしプロジェクトを紹介した。
「源水」誕生のストーリーなどを紹介する藤原さん
2つの取り組みに共通するのが、地域住民を巻き込んだ「対話」と、行政や関係者らとの「協働」。課題だと思っていることは「みんなで話し合えば、なんとかできる。そして専門性のある人と取り組めば前に進む」と実感を込めた。今後の目標は、ただ事業や産業をつくるのではなく、「100年続く文化をつくること」と強調。この熱い思いを、参加者らは程よい“食前酒”にした。
卓上には夏限定の「純米うすにごり 銀河のしずく」「源水」などが並んだ
源水をはじめ、岩手県最上級のオリジナル酒米「結の香(ゆいのか)」を原料とする「純米大吟醸結の香」、米焼酎「纜(ともづな)」、梅酒、非売品の「大吟醸古酒」など約20種類がずらり。14日蔵出しの「純米うすにごり 銀河のしずく」も一足早く並んだ。漆塗りの杯で味わう立ち呑み処(どころ)「いわて漆亭」もお目見え。5種類の酒を判別する利き酒もあり、参加者はじっくりと味の違いを確かめていた。
20種を超える浜千鳥の銘柄がずらり…お気に入りは?
漆塗りの杯で美酒と会話を楽しむ立ち飲みコーナー
利き酒も行われ、ゲーム感覚で舌の鋭敏さを競った
遠野市の小林裕介さん(34)は「転勤族で、その地で造られている酒を飲みたいから参加した。浜千鳥はご飯を食べながら、おいしく飲める。全部、いい酒。年1回でなく、定期的にやってほしい」と望んだ。
合間には、同社に酒米を供給する大槌酒米研究会の佐々木重吾会長、同社醸造部長で杜氏(とうじ)の奥村康太郎さんが昨年の酒米の出来と酒造りの手応えを紹介。佐々木会長が太鼓判を押す酒米で造った酒について、奥村さんは「米の膨らみ、柔らかみを味に表すことができた。酒造りでは最終的に米を溶かすが、溶けすぎると雑味が出て、溶けないと薄く、そっけない印象になる。じわじわと溶けていき、いい仕上がりになった」と自信を見せた。
酒米、酒造りへの思いを明かす佐々木会長(右)、奥村さん
日本酒が大好きな小笠原いづみさん(55)は“ここぞとばかり”に飲み比べを楽しんでいる様子。「酒造りに携わる人たちの思いを知ると、より味わい深い」と杯を傾けた。大槌町で暮らし、源水の誕生を歓迎。「町の酒といえるものができてうれしい」と頬を桃色に染めていた。
同社は今年、創業100周年。地域に根差した“うまい”酒を造り続けながら、新たなチャレンジもしていく―。新里社長らは、会場に広がる喜ぶ顔を力にする。
釜石新聞NewS
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