釜石の海、今を伝える「おさかなフェス」 岩手大生が初開催 触れ合い創出・水産資源の魅力発信
釜石で水揚げされた新鮮な魚介類を買い求める人でにぎわう
釜石市平田の岩手大学釜石キャンパスで16日、地元の海や水産資源の魅力を発信するイベント「おさかなフェス」が初めて開かれた。同大農学部食料生産環境学科水産システム学コースの学生が企画した同キャンパス独自の学園祭的な催しで、海洋生物との触れ合い、鮮魚の格安販売、魚や海にまつわる知識を試す検定などの体験プログラムを用意。市内外から多くの家族連れらが訪れて思い思いに楽しみ、「釜石の海」に理解を深めた。
子どもたちに人気だったのは、三陸の海でとれた10種類以上の生物を間近で観察できるタッチプール。タコ、ヒトデ、ヤドカリ、ホヤ、カレイ…多様な生き物に和田優広ちゃん(2)は夢中になり、あちこちから手を伸ばして触れていた。子どもに楽しんでもらおうと北上市から足を運んだ父・哲志さん(35)は「生き物や自然を大切にしようと気持ちを育んでもらえたらいい。岩手は漁港から見る海の景色、海のそばにある街並みがきれいなところが多い。そんな地域性も感じてもらえたら」と目を細めた。
海洋生物に触れながら学びを深める子どもたち
多様な生き物に触れ合う機会に大人も子どもも夢中
学生が考えた問いに挑戦する「釜石さかなと海の検定」もプログラムに加えて実施。3回目となった今回も小中学生は40問(制限時間30分)、一般(高校生以上)は70問(同60分)の出題で、4つの選択肢から正解を選ぶ方式で行った。魚介類の生態や地理、海洋変化、漁港に関することなど幅広い知識を試す内容。それぞれの部門に合わせて約20人が挑んだ。
終了後、小学生の部では答え合わせがあった。ギネス登録されている釜石港の湾口防波堤の水深について、同系統の魚の見分け方など、子どもらが解答に悩んだ問題を伝えると、学生がホワイドボードに図を描いたりして解説。「へ~、そうなんだー」と知識を増やした。
検定を終えて学生の解説に耳を傾ける子どもたち
初挑戦の前川大悟さん(8)は“ゆるい感じ”と思っていたら、“本格的な試験”で「驚いて緊張した」というが、海や釣り、生き物が好きなこともあって「楽しかった」とうなずいた。父・仁さん(49)は「頼もしい」とうれしそうな笑顔を見せ、「いろんなものに興味を持って、どんどん挑戦していってほしい」と背中を押した。
大人たちが関心を示したのは、市魚市場で水揚げされた魚介類の販売コーナー。学生が市内の水産会社を通して仕入れたブリやサンマ、ドンコ、カワハギ、ワラサなどが「ほぼ仕入れ値と同じ価格」で並んだ。「安い!」と品定めすると、来場者が次々と購入。なじみのある「マアジ」の隣に並んだ「メアジ」が気になった人が、学生に質問して交流する場面も見られた。
釜石の魚市場に揚がった魚介類が並び人気を集めた
朝5時に起きて、いち早く買い物を楽しんだ市内の70代女性は「知らなかったことだらけ。釜石の新鮮な魚を安く買えたし、(学生の)若いエネルギーももらえた」と喜んだ。
高品質の水産資源、水産業の魅力を広く知ってほしい―。そんな願いを込めて催しを企画し、全体を統括した髙山琢磨さん(4年)は、予想を上回る来場や反響に手応えを感じた様子だった。
消費者となる買い物客に仕入れた魚種の説明をする髙山琢磨さん(中)
釜石キャンパスでは現在、同コースの3、4年生22人が学ぶ。普段、授業や研究では「漁獲量を増やすには」といった視点で漁業者と関わることが多いが、消費者に届けるという流通面に携わる機会は少ないという。そこで今回、“実践”という経験を積む場として鮮魚販売を設定。メアジやシイラ、ムツなど“なじみがない”魚種も積極的に仕入れて、「今の釜石の海が分かる」よう準備を進めてきた。
「消費者とも関わることができてうれしい」と話す髙山さんら学生たち。そばで見守った釜石キャンパス特任専門職員の齋藤孝信さん(63)は「初めてのチャレンジ、よく頑張ってたどり着いた。ゼロから考え企画して実践、清算、報告書作りという一連の流れを経験することは、社会人の準備に役立つだろう。糧として釜石から巣立ってほしい」と願った。
釜石新聞NewS
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