「夢をかなえるには?」 元空手道日本代表の大内美里沙さん 釜石商工高生に授業 部活指導も

釜石商工高で行われた元空手道日本代表・大内美里沙さん(左)の保健体育特別授業=2日
元空手道日本代表で俳優の大内美里沙さん(23)が2日、釜石商工高(小松了校長、生徒176人)を訪れ、1年生(55人)に特別授業を行った。日本テレビ放送網がスポーツ庁の委託を受けて行う「アスリート全国学校派遣プロジェクト」の一環で来校。自身の競技人生で得たことなどを語り、空手の動きを取り入れた体づくりの講習を行ったほか、空手道部の部員にも実技指導した。
大内さんは大阪府出身。4歳から祖父の空手道場で競技を始め、中学3年時から9年間、日本代表メンバーとして戦った。世界大会で2度優勝、計6回の日本一にも輝いた。昨年12月に現役を引退。今春上京し、子どもの頃からの夢だった俳優の道を歩み始めた。

授業は1年生を対象に実施。はじめに講話が行われた
講話では、空手の目標達成のために進学した日本航空高(山梨県)時代を振り返り、「日本一を目指して切磋琢磨した仲間や監督との出会いが、自分の空手人生の考え方を大きく変えた」と話した。高校生に伝えたいこととして、▽徳積みをする▽食事をきちんと取る▽目標設定を明確に▽挫折を挫折と思わない▽周りの人を大切に―という5つの人生訓を示した。
大内さんは「徳積み=自分に恥じない行動」とし、“ごみを拾う”“スリッパをそろえる”など、「気付いたら見て見ぬふりをせず即行動」を提案。日々の小さな積み重ねが自信となり、「いざという時に(自分が望む)結果につながったりする」と述べた。食事がメンタルに及ぼす影響も指摘。「必要な栄養を取らないとマイナス思考になりがち」と自らの経験を明かし、「未来の体は今、摂取するもので作られる。5大栄養素をバランス良く取って」とアドバイスした。

自身の空手人生で得たことなどを話す大内さん

生徒らは今後に生かそうと、メモを取りながら大内さんの話に聞き入った
夢や目標をかなえるために有効な方策として「マンダラチャート」を紹介。小学校時に始めたという大内さんは「自分が今やるべきことが明確になる。その通りにやっていたら結果につながっていった」と実体験を示した。さらに「かなえた先の未来の設定」も呼び掛けた大内さん。自身は中学3年時に立てた「空手日本一、世界一」の後に「俳優になる」という目標をしっかり果たした。
日常で重要視するのは「時間の有効活用」と「逃げない姿勢」。与えられた時間は平等で、どう使うかでその先の未来が変わってくる。大内さんは「逃げ癖がつくと目標達成が遠のく。やるべきことが分かっているなら、自分に甘えず、向き合い続けることが大事」と言葉に力を込めた。

講話後、生徒からはさまざまな質問が…。貴重な学びの時間となった

「体づくりを部活に生かしたい」との学校の要望で行われた運動の授業

空手の基本動作「突き」を学ぶ。大内さん(右上)の動きをまねて…
講話後は道着に着替えた大内さんが、空手の礼儀や基本動作を教えた。生徒らは「突き」や「蹴り」、上下左右の動きを取り入れた連続動作を実践。初めての経験に新鮮さを感じつつ、楽しみながら体を動かした。
ラグビー部に所属する舘洞愛実さん(総合情報科)は「(掲げた)目標のさらに上の目標まで立てるということを学んだ。自分も取り入れて、輝ける選手になりたい。日々の感謝や礼儀、食事管理も見直し、東北選抜選手に選ばれるよう頑張る」と意識を高めた。
同アスリート派遣事業は3年目。釜石商工高は初めて応募し、実施校に選ばれた。本県では今年度、小中高23校で、各競技のトップアスリートによる授業が行われている。高校生を相手に授業をするのは初めてという大内さんは「進めていくうちにみんなの顔が緩んできて、空手の実技もノリノリでやってくれたので私自身も楽しかった。競技を通して学んできたことに加え、日々の生活の中で人間性を高めていくために大事なことが伝わっていれば…」と期待を込めた。

教諭が持つミット目がけ「蹴り」にも挑戦! なかなかない体験にこの笑顔

複数の基本動作を組み合わせ、空手の「形」を疑似体験
授業の後、大内さんは同校空手道部の指導にもあたった。3年生部員が引退し、現在2年生2人で活動中の同部。2人は1年生と一緒に特別授業も受けた。現役時代「形」の種目で戦ってきた大内さんは、1時間半という限られた時間の中で基本動作の重要ポイントを伝授。肩などに力が入りすぎていることを指摘し、「丹田(へそ下の部位)に重心を落とす感覚でやると余分な力が抜ける」「関節を開放し、丹田から技を繰り出すイメージで」などと助言した。“脱力”はスピードやパワーを発揮するのに重要な要素で、意識して練習することで感覚をつかめるようになるという。

授業の後に行われた空手道部の部員への実技指導

体の重心を意識しながら前に踏み出す練習
高校から空手を始めたという堤久夢希さんは「突きや引手で、できていなかった部分を指摘してもらい、すごく勉強になった。教わったことを生かして、大会でいい結果を残したい」と感謝。小学2年から空手を続ける佐藤怜磨さんは大内さんの演武を直接目にし、「体がぶれないところや(動作の)強弱、息の使い方がうまかった。音も何か違う」とトップレベルの技に驚き、刺激を受けていた。

部員らは大内さんに「形」の演武も見てもらい、アドバイスを受けた
同部顧問の山田英之教諭は「ナショナルチームにいたトップレベルの先生に教えてもらえる機会はなかなかない。私たちの普段の指導とは発想が違い、発見が多かった。生徒たちも楽しそうで、いろいろなことを吸収させてもらった。ありがたい」と喜んだ。

釜石新聞NewS
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