壁アートの完成を喜ぶ制作者ら。このあと写真左側の壁に設置
釜石市大平町の釜石大観音仲見世通りに1月24日、新たなアートスポットが誕生した。市内の建造物の外壁などをパブリックアートで彩る活動を行う市民グループ「ゼロスポット」(小笠原梓代表)が、公募で選ばれた作品を制作。同通りのシェアオフィス「co-bakamaishi marudai(コーバ釜石マルダイ)」入り口の壁に設置した。見る人の心を明るくし、フォトスポットとしても楽しんでもらう狙いで、まちのにぎわい創出の一助とする。
同グループが進める「マチナカラフル」プロジェクトの一環。昨年8月から実施した作品案の募集には県内各地から10点の応募があり、展示やオンラインでの一般投票と審査員審査の結果、釜石市在住の三浦綾さん(39)、佐々木江利さん(41)が共同出品した案が採用された。2人が中心となり、12月から本格的に制作を開始。24日、総仕上げと設置作業が行われた。
作品は縦160センチ、横95センチ。合板材を白ペンキでビンテージ風に塗り、上部に取り付けた流木から人工の草花を吊り下げた。こだわりはリボンで形作った「Love」の文字。1本でつながるリボンの両端をカップルや友人、家族で手にし、写真を撮ってもらう仕様。草花の間からは、ボードに記した「me&you always」の文字も見え隠れする。
三浦さん(宮城県出身)は夫の仕事の関係で2012年に、佐々木さん(神奈川県同)は結婚を機に16年に釜石市へ移住。子育てイベントなどで顔を合わせるうちに仲良くなった〝ママ友〟で、昨年9月、ゼロスポットが開催したアートイベントに足を運び、同企画への応募を決めた。
もともとインテリアやもの作りに興味があり、好みが似ていた2人。大好きな自然をモチーフに三浦さんがイメージを膨らませ、佐々木さんがパソコンで応募用のイメージ画を作成した。制作作業では写真映えを意識しながら、草花の配置を細かく調整。スマートフォンのカメラで何度も確認し、納得のいく作品に仕上げた。
「テーマは〝愛〟ある日常。外から来ている人も多い釜石。いろいろな人が愛情を持ってつながっていければとの思いを込めた」と三浦さん。想像以上の出来栄えに「手伝ってくれた仲間に感謝です。みんなの優しさ、温かさに触れ、これこそ愛だなって」と感激の表情。
佐々木さんは「他の人たちの作品案を見て正直だめかと思ったが、選ばれてびっくり。思いを形にする機会をいただき、実現できたことが何よりうれしい」と喜びを表す。
さわやかな風が吹き抜けるナチュラルガーデンのような雰囲気を醸すオリジナルアート。2人は「幅広い世代に来てもらい、思い出に残る写真を撮ってほしい。SNS時代の人気スポットになれば」と期待。建物のオーナーで、同仲見世の再生に取り組む宮崎達也さん(49)は「女性らしい感覚で、通りも華やかになる。多くの人の目に触れてほしい」と話す。