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ゲストを迎え、2年ぶりにコンサートを開いた「トキドキクインテット」

木管5重奏団「トキドキクインテット」2年ぶりのコンサートで観客魅了

ゲストを迎え、2年ぶりにコンサートを開いた「トキドキクインテット」

ゲストを迎え、2年ぶりにコンサートを開いた「トキドキクインテット」

 

 釜石市民吹奏楽団の団員有志で活動する木管5重奏団「トキドキクインテット」は6日、釜石市大町の市民ホールTETTOで4回目のコンサートを開いた。初の試みとしてソロや2~4重奏も披露。各楽器の個性が光る演奏を約50人が楽しんだ。コンサートの模様はユーチューブで生配信された。

 

 2014年に結成した同グループは、17年から独自のコンサートを開始。昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催を見送ったが、今年は各種感染症対策を講じ、観客を迎えた。

 

 3部構成のプログラムは3人のゲストと共に届けた。1部は5楽器(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、イングリッシュホルン)を組み合わせた2~4重奏で、オペラやクラシック曲を演奏。木管5重奏には通常ホルンが入るが、今回はホルンパートをオーボエの仲間「イングリッシュホルン」が担当。一味違った音色で魅了した。

 

 2部のソロはピアノゲストの佐々木洋子さんと共演し、メンバー3人が好みの1曲を演奏。ファゴットの渡辺律さんは、自作のわらべうたメドレーの1部分「あんたがたどこさ」で観客の手拍子とコラボ。徐々にテンポアップし、観客を楽しませた。3部の5重奏はオーボエパートをフルートに替えて、ディズニー作品など映画音楽を中心に6曲を聞かせた。

 

自作のわらべうたメドレーで楽しませたファゴット奏者の渡辺律さん(右)

自作のわらべうたメドレーで楽しませたファゴット奏者の渡辺律さん(右)

 

手拍子で演奏を楽しむ観客。会場のホールBはロビー側を開け放ち、気軽に立ち寄れる空間に

手拍子で演奏を楽しむ観客。会場のホールBはロビー側を開け放ち、気軽に立ち寄れる空間に

 

 北上市の佐藤直子さん(64)は「木管の温かい音色が好き。ソロはメンバーのカラーが出たり、選曲も良くて楽しいプログラムだった。沿岸はフルートコンサートなど木管の演奏会が盛ん。今日も素敵な演奏に感動しました」と大喜び。この日が結婚記念日、夫の誕生日という佐藤さんは夫婦で鑑賞。サプライズで「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」の演奏も贈られ、感激しながら会場を後にした。

 

 クラリネットの佐々木義成さん(46)はメンバーになって初めてのコンサート。「得意な部分と苦手な部分がはっきりと分かれた」と自己分析しながら、「課題も見つかったので、次のコンサートまでに力をつけていきたい。次回は余裕を持って演奏できるように」と願った。フルートの佐々木勤子さん(64)は「月2回の練習も5人全員がそろうことはなかなかできなくて。それでも何とか本番にこぎ着けた」と安堵(あんど)の表情。コロナ禍でじかに演奏を聞いてもらう機会が減る中、「お客様の拍手や〝ブラボー〟は何よりの励み。次また頑張ろうという気持ちになる」と感謝した。

2019年の「かまいしの第九」演奏会(写真:実行委提供)

師走恒例「かまいしの第九」演奏会 新型コロナの影響で今年も中止に

2019年の「かまいしの第九」演奏会(写真:実行委提供)

2019年の「かまいしの第九」演奏会(写真:実行委提供)

 

 「かまいし第九」実行委員会(川向修一会長)は、新型コロナウイルス感染症の収束見通しが立たないため、本年12月に開催予定だった演奏会「かまいしの第九」の中止を発表した。昨年に続き2年連続。県内外の参加メンバーの移動による感染リスクなどを考慮した。

 

 本年度の第43回「かまいしの第九」演奏会について同実行委は、国内の感染状況、ワクチン接種の見通しなどから、開催は難しいと判断した。オーケストラメンバーの多くが首都圏在住で、釜石までの移動に感染リスクがあること、例年200人規模になる全出演者、観客、スタッフの安全を担保できない現状を鑑み、開催を見送ることにした。

 

 同演奏会は旧釜石市民文化会館が落成した1978年にスタート。師走を彩る風物詩として市民に親しまれてきた。東日本大震災が発生した2011年も休まず公演し、復興にまい進する市民に明日への力を与えながら回を重ねてきた。18年に開始から40年を迎え、次の10年へ新たな一歩を踏み出した矢先のコロナ禍。実行委の川向会長(69)は「昨年に続く中止は非常に残念だが、この空白を40年余りにわたって繋(つな)いできた『かまいしの第九』のより良いあり方を見直す機会と捉え、来年は『かまいしの第九』の再出発を『歓喜の歌』に込めて歌いあげたい」としている。

障害者アートを重機にラッピング 青紀土木が釜石東中生にお披露目

障害者アートを重機にラッピング 青紀土木が釜石東中生にお披露目

障害者アートを重機にラッピング 青紀土木が釜石東中生にお披露目

 

 釜石市鵜住居町の建設会社青紀土木(青木健一社長)は、盛岡市の福祉企画会社ヘラルボニー(松田崇弥社長)との共同企画で、知的障害者が描いたアート作品を重機にラッピング。3日、デザインの投票を行った釜石東中(米慎司校長、生徒97人)の生徒の前でお披露目し、世界に1台の〝ラッピッグバックホー〟の誕生を共に祝った。

 

 この企画は、「知的障害を個性として捉え、多様性を認め合える社会」の実現を目指すヘラルボニーの事業理念に共感した青木社長が発案。子どもたちにも、障害の有無に関わらず、互いを尊重し共に生きることの大切さを知ってほしいと、地元の東中生の参画を得て実現させた。

 

 昨年12月、現2、3年生はヘラルボニーの松田文登副社長の講話を聞き、障害者への理解を深めた。この際、バックホーのラッピング候補5作品から1点を選ぶ投票を実施。作品は、花巻市のるんびにい美術館で活動する知的障害を持つアーティスト2人によるもので、投票の結果、工藤みどりさんの作品が選ばれた。多彩な色づかいと独創性豊かなタッチで描かれた作品は、気仙沼市の業者によってラッピングされた。

 

工藤みどりさん(るんびにい美術館所属)の作品がラッピングされた青紀土木のバックホー

工藤みどりさん(るんびにい美術館所属)の作品がラッピングされた青紀土木のバックホー

 

 3日は全校生徒の前でラッピッグバックホーを披露。生徒の代表がアームなどの操作も体験した。澤本航汰君(3年)は「いろいろな色があってきれい。障害のある方とこのような形で関われて良かった。現場で使われて、多くの人に見てもらえるようになれば」、川﨑拓真君(2年)は「自分が選んだ作品だったのでうれしい。これを機に、障害を個性としてみんなで認め合えるようになりたい。他の障害者の作品に目を向けるきっかけにもなれば」と期待した。

 

自分たちがデザイン投票を行ったバックホーの完成を拍手で祝う釜石東中の生徒

自分たちがデザイン投票を行ったバックホーの完成を拍手で祝う釜石東中の生徒

 

生徒の代表は社員の指導で操作も体験した

生徒の代表は社員の指導で操作も体験した

 

 青木社長は、ヘラルボニーが工事現場の仮囲いに障害者アートを施す活動を目にし、同社に注目。自分たちが関わることで共生社会実現に貢献できればと、今回の企画を立ち上げた。「私自身、震災を機に地域の未来に対しての責任を考えるようになった。震災直後、がれきの撤去に活躍したバックホーが、10年たって地域を支える新たな一面を示せたことは意味あること。見た人が興味を持ち、多様性を考える一歩になれば」と願った。

 

 ラッピングバックホーは工事現場での稼働のほか、子どもたちの現場見学会での体験乗車などで使われる予定。

袋の中に作った畑に夏野菜の苗を植えた園児。水やりも仲良く

「カンタン袋栽培」で夏野菜を作ろう~上中島こども園 育てた野菜は給食で

省スペースで野菜づくりが楽しめる袋栽培を始めた上中島こども園の園児たち

省スペースで野菜づくりが楽しめる袋栽培を始めた上中島こども園の園児たち

 

 プランターの代わりに袋に土を入れて野菜を育て、給食の食材に役立てようという取り組みが、釜石市上中島町の市立上中島こども園(楢山知美園長、園児62人)で始まった。子どもたちに自分達の手で野菜を育て、植物の成長を観察したり収穫することで、▽安らぎの心▽不思議に思ったり、驚いたりする心▽命を感じ、大切にする心▽楽しむ心―といった「4つの心」を身につけてもらう食育の一環。1日、5歳児16人が夏野菜の苗の植え付けに挑戦した。

 

 袋栽培は、ホームセンターなどで売っている培養土の袋をそのまま使用し、種や苗を植えて育てる方法。新たにプランターなどを用意しなくてもよく、手軽に始めることができるのが魅力の一つ。ベランダやテラス、屋上や玄関先など、限られたスペースで野菜を育てるのに便利で、栽培が終わったあとの片付けも楽だという。

 

袋の中に作った畑に夏野菜の苗を植えた園児。水やりも仲良く

袋の中に作った畑に夏野菜の苗を植えた園児。水やりも仲良く

 

 この日、園児が植え付けたのはパプリカ、ナス、ミニトマトの3種類の野菜。培養土が入った袋の中を畑に見立て、穴を掘って苗を置いた。優しい手つきで土をかぶせた後、たっぷりと水やりをし、「大きくなってね」と声掛け。豊かな実りに期待を込めた。

 

 新屋陽菜ちゃん(5)は「(植えるの)カンタン。楽しかった。おいしくなってほしい。サラダ、食べたい」と収穫が待ち遠しそうだった。園児たちは、当番を決めて水やりをしながら成長を見守り、夏ごろに収穫。給食の食材として使ってもらい、新鮮なおいしさをみんなで味わうことにしている。

 

「大きくなってねー」と声掛けし、成長と実りに期待を膨らませる子どもたち

「大きくなってねー」と声掛けし、成長と実りに期待を膨らませる子どもたち

 

 同園ではガラス張りにした給食室を設け、調理過程を見せることで食に興味を持ってもらうといった食育活動を進めている。これまで給食事業は市運営で行ってきたが、今年からシダックスフードサービス(東京)に委託。同社から食育に関する情報と合わせ、苗など袋栽培の資材提供を受け、試験的に行っていた。

 

 今回、食育の推進につながると本格的な導入を決め、園独自で資材を購入。この袋栽培では収穫を終えた後も土を乾かすと再利用でき、3回ほど楽しめるという。環境に優しい仕組みに、同園では子どもたちのリサイクル力を磨く機会にもなると期待。楢山園長は「体験活動を通じ、大切にしてほしい心や気持ち、子どもたちの力を育んでいければ」と見守る。

柳家細川流舞踊師範らによる舞「漁火挽歌」

待望のホール公演で艶舞 柳家細川流舞踊コロナ禍にひとときの楽しみを提供

柳家細川流舞踊師範らによる舞「漁火挽歌」

柳家細川流舞踊師範らによる舞「漁火挽歌」

 

 釜石市の「柳家細川流舞踊」=細川艶柳華(伊東恵子)家元=は5月30日、大町の市民ホールTETTOで震災復興支援チャリティーショーを開いた。当初、昨年4月に開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2度の延期を余儀なくされ、1年余りを経て待望の発表会が実現した。会場にはこの日を楽しみにしていた観客が集まり、コロナ禍を忘れさせるひとときに笑顔を広げた。

 

 釜石、大槌、山田の各支部などで稽古に励む24歳から85歳までの22人が出演。家元による長唄舞踊「松のみどり」で幕を開け、演歌や歌謡曲、民謡などに振り付けをした新舞踊を中心に27演目を披露した。名取の踊りでひときわ注目を集めたのが、今回の出演者中唯一の男性、細川恵ノ丞(千葉陽斗)さん(24)。「夜叉のように」であでやかな女形を披露した後、「狼」では一変してりりしい男踊りを見せ、観客から盛んな拍手を送られた。

 

色香漂う舞に拍手喝采!観客を魅了した細川恵ノ丞さんによる「夜叉のように」

色香漂う舞に拍手喝采!観客を魅了した細川恵ノ丞さんによる「夜叉のように」

 

 同団体の発表会には、通常は子どもたちも出演し観客を沸かせるが、コロナ禍の諸事情から今回は出演を取り止め。師範や名取などベテラン勢を中心に大人の舞い手が総力を結集し、舞台を創り上げた。きらびやかな衣装を身にまとい、たゆまぬ稽古の成果を発揮する見応え十分の舞台に観客は酔いしれ、明日への活力をもらった。

 

 箱崎町の佐々木長市さん(80)は「最高だね。踊りも演出も素晴らしくて。準備も大変だったろう」と関係者の労をねぎらい、「自分も老人クラブの集まりなどで踊ったりする。やっぱりこういう楽しみがないとね。またやってほしい」と大満足で会場を後にした。

 

 同団体が震災後、市内で発表会を開くのは、2016年のホテルでの開催以来。新設された同ホールでの初公演を目指し、19年から準備を進めていたが、新型コロナのため、開催までに3年を要した。この間、門下生らが体調を崩したり、学校や仕事との両立が難しくなるなど、実現には数々の試練を伴った。会場では各種感染症対策を徹底し、客席は通常の半分400席ほどに制限。観客の協力を得て無事に公演を終えた。

 

ソーシャルディスタンス席で舞台を楽しむ観客

ソーシャルディスタンス席で舞台を楽しむ観客

 

曲の世界観を円熟の舞で見せた「藤十郎の恋」。 細川艶柳華家元(右)らのステージ

曲の世界観を円熟の舞で見せた「藤十郎の恋」。細川艶柳華家元(右)らのステージ

 

 艶柳華家元(72)は「客数を制限するのは寂しいが、こういう状況下で見に来てくれた方がいたことが何よりうれしい。コロナが落ち着いたら福祉施設のボランティア慰問も再開し、皆さんに喜んでいただけるようにしたい」と望んだ。本発表会では会場案内や受付、感染症対策などの要員として高校生アルバイトが活躍。「これを機に若い人たちが舞踊に興味を持ってくれたら」と艶柳華家元。

 

 同団体は、細川流舞踊を立ち上げ、30年以上率いた細川艶奨柳(ツヤ)家元が13年1月に逝去(享年75)後、一番弟子だった艶柳華さんが先代の遺志を引き継ぐ形で、「柳家細川流舞踊」として再スタート。今年、改名から8年を迎えた。

丹精込めて育てたサツキが見ごろを迎え、花姿を満足げに眺める会員ら=3日

釜石皐月愛好会がTETTOギャラリーで「さつき展」を開催 ―6月11日から13日(日)まで―

丹精込めて育てたサツキが見ごろを迎え、花姿を満足げに眺める会員ら=3日

丹精込めて育てたサツキが見ごろを迎え、花姿を満足げに眺める会員ら=3日

 

 釜石・大槌地域を中心としたサツキ盆栽の愛好者らでつくる釜石皐月愛好会(東梅英夫会長、会員10人)は、あす11日から13日まで釜石市大町の市民ホールTETTOギャラリーで花季展示「さつき展」を開く。昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止となり、開催は2年ぶり。東梅会長(75)は「2年分のエネルギーをため込んで咲かせた花をたくさんの人に楽しんでほしい」と来場を呼び掛けている。

 

 同会は「暮らしに花と緑を」をテーマに活動。会員は70、80代が中心で、釜石・大槌のほか、山田町、遠野市にも広がる。個々に花を楽しみ、月1回、育て方など疑問を持つ花を持ち寄って勉強会を開催。互いに“ケチ”をつけ合い、アドバイスし合っている。

 

 3日は展示会に向け、東梅会長、山﨑悟さん(72)らが会員宅を回ってサツキの花の開き具合などを確認した。源太沢町の黒川富也さん(81)は自宅敷地の一角、約20坪のスペースで大小200ほどの盆栽を手入れ。今年は暖かい日が多く、開花が早いというが、長く花を楽しめるよう工夫していて、東梅会長らは「上出来だ」と好感触を示した。

 

花の色や枝ぶりなど個性を確認しながら、展示会に並べる作品

花の色や枝ぶりなど個性を確認しながら、展示会に並べる作品を選んだ=3日

 

 出展するサツキの品種が、できるだけ重ならないよう調整も行った。大只越町の石塚良秋さん(83)は自宅のベランダやガレージ、敷地に設けた温室などで多種多様な品種を育てていて、「山の光」「煌陽」など4点を出品する予定。ほかにも、「枝ぶりがいい」と評価された小品も並べたいと考えている様子だ。

 

 会員らは「(サツキ盆栽は)奥が深く、いつも悩む。大変だけど、それがいい。一年のうちのつかの間、花開いた時の喜びは何とも言いようがない」「やればやったなりの成果が明らかに出る。生き物なので日々勉強」と顔を合わせる。

 

  同展では席飾り20点のほか小品盆栽や添え草など、会員が丹精込めて作り上げた皐月盆栽の豪華な花姿を展示する予定。会員は「きれいな姿を一緒に楽しみましょう。育ててみたいという若い仲間が増える機会にもなれば」と話している。

 
 
  入場無料で、開催時間は午前10時から午後5時まで(最終日は午後3時)。問い合わせは会長の東梅さん(電話090・6227・3623)へ。

川畑館長に絵本を手渡した菊池会長(左)=釜石市立図書館

お金の大切さを学ぼう 釜石商議所青年部 市立図書館に絵本

川畑館長に絵本を手渡した菊池会長(左)=釜石市立図書館

川畑館長に絵本を手渡した菊池会長(左)=釜石市立図書館

 

 釜石商工会議所青年部(菊池直樹会長)は5月28日、子どもたちにお金の大切さを教える絵本「おかねってなぁに?」2冊を釜石市小佐野町の市立図書館(川畑広恵館長)に贈った。絵本は「日本資本主義の父」といわれる渋沢栄一(1840-1931年)が登場し、お金の役割や正しい使い方を解説する内容。菊池会長は「多くの子どもたちに読んでほしい」と期待する。

 

 菊池会長から手渡された絵本に目を通した川畑館長は「分かりやすい内容。子どもたちがお金の大切さや仕事のことを考えるきっかけになる」と感謝。多くの人に手に取ってもらうため、1冊は同館児童書コーナーに、もう1冊は移動図書館車に配架することにしている。

 

明治から大正時代にかけてさまざまな会社や団体の設立に携わった渋沢は、商工会議所の生みの親。2024年から流通する新1万円札に肖像画が使われることになっている。

 

 日本商工会議所青年部では渋沢の功績を周知するプロジェクトを立ち上げ、渋沢のやしゃご澁澤健さんの監修で絵本を制作。プロジェクト第2弾として、約1万6500部を全国の各青年部を通じて公立図書館などに寄贈している。

 

 釜石商議所青年部では釜石市教育委員会にも絵本33冊を寄贈。幼稚園、小学校などに配布してもらう考えだ。

先輩社会人から生き方や仕事に対する思いを聞いて職業観を広げた釜石商工生

「自分の道」を考える機会に 釜石商工高でキャリア教育授業・釜石コンパス

先輩社会人から生き方や仕事に対する思いを聞いて職業観を広げた釜石商工生

先輩社会人から生き方や仕事に対する思いを聞いて職業観を広げた釜石商工生

 

 釜石商工高(菊池勝彦校長、生徒234人)で5月27日、社会人との対話交流を通じて将来・進路について考えるキャリア教育授業「Kamaishiコンパス」が行われた。3年生94人が働くイメージや仕事に求める価値観などについて自己理解を深め、高校卒業後の進路を自分の意思で前向きに選択する機会にした。

 

 同授業は釜石市と、市内の高校や民間団体で構成する実行委員会が連携して取り組む高校生のキャリア構築支援事業の一環。生き方やキャリアの多様性を知り、視野を広げてもらおうと、県内外のさまざまな業種の人を講師に招いて毎年実施している。

 

 新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、今回は市外にいる講師とオンラインでつなぐ試みを導入。消防士、銀行員、市職員ら釜石市内の社会人11人による対面型講座のほか、盛岡市にいる建設業者など3人が講師となるオンライン講座が設けられた。

 

オンライン講座を取り入れて行われた釜石コンパス

オンライン講座を取り入れて行われた釜石コンパス

 

 生徒は関心のある講座を1つ選んで、講師を囲んだり、パソコンやスクリーンの画面越しに意見交換。進路や将来を決めた転機、現在の仕事のやりがいなど質問をぶつけた。

 

 同校では3年生の約7割が就職を希望。ただ、「どんな仕事に就くか」「地元に残るか、外に出るか」など、進む道に迷いを持つ生徒も少なくないという。進路を選ぶ時の考え方について生徒が質問すると、釜石地方森林組合の小林怜央(れお)さん(21)は自己理解の大切さを指摘しつつ、「客観的、周りの人の意見も必要。職場見学に参加すると、知らなかった感動に出合ったり、視野が広がる」と実体験を伝えた。

 

 地元就職を考えているが、職種については決めかねている電気電子科の小山内礼君は「知らない分野の仕事を知る機会になった。就職に有利になるよう、取得できる資格があれば挑戦したい」と刺激を受けた。

 

 今回の授業では、講師と1対1で向き合う時間も設けられた。自分の考えを年上の人に伝える経験をしてもらうのが狙い。機械科の近藤秀哉君は県外就職を心に秘めていたというが、講師の「後悔するよりチャレンジした方がいい」との言葉に背中を押された様子で、「親に思いを打ち明けてみる」と行動に移す勇気を得た。

 

社会人との個別対面に臨んだ生徒。年上の人に考えを伝える力を磨いた

社会人との個別対面に臨んだ生徒。年上の人に考えを伝える力を磨いた

福祉の森で開かれた山野の鳥観察会。参加者は緑生い茂る空間で鳥の観察を楽しんだ

自然の豊かさから環境保全を考える~鳥の鳴き声に耳済ませ、福祉の森で観察会

福祉の森で開かれた山野の鳥観察会。参加者は緑生い茂る空間で鳥の観察を楽しんだ

福祉の森で開かれた山野の鳥観察会。参加者は緑生い茂る空間で鳥の観察を楽しんだ

 

 6月は「環境月間」。環境保全に関心と理解を深め、保全活動に対する意欲を高めることを目的にする。環境に配慮することが大切であることは分かっていても、日常の中で意識し続けるのは簡単ではない。

 

 住宅地のすぐそばに森が広がるまち、釜石市。海のイメージが強いが、実は9割が山林で緑豊かな地域。耳を澄ますと、さまざまな鳥の鳴き声が聞こえてくる。ふと見上げた空には悠々と鳥が飛んでいたり、電線や屋根の上にあるテレビアンテナ、庭に植えた木々などで鳥たちが休息していたり。自然の豊かさを身近に感じることができる。

 

 そんな身近な自然に理解を深める観察会が5月16日、甲子町大畑の福祉の森で開かれた。テーマは「山野の鳥」。多彩な鳥を観察することで環境保全について考えてもらおうと、市生活環境課が主催した。

 

 市内から約20人が参加した。釜石野鳥の会(臼澤良一会長)の会員6人を案内役に、参加者は双眼鏡を片手に森の中を散策。鳥の鳴き声に耳を澄ませ、声がする方向に双眼鏡を向けると、高木の枝に止まる鳥の姿を見ることができた。

 

双眼鏡をのぞき込んで鳥の姿を確認。図鑑と照らし合わせ、名前や特徴を学んだ

双眼鏡をのぞき込んで鳥の姿を確認。図鑑と照らし合わせ、名前や特徴を学んだ

 

 午前10時すぎから1時間余りの観察で、鳴き声だけ聞こえたものも含め16種類を確認。シジュウカラ、ヤマガラ、アオゲラ、セグロセキレイなど多様な鳥が姿を見せ、会員らは「多くの種類が見られるほど、自然が残っている、豊かな証拠」と強調した。

 

 生き物が大好きな松田翔希君(甲子小5年)、駿希君(同1年)兄弟は「いろんな鳥が見られて楽しかった」と満喫。父智行さん(51)、母真帆さん(45)は「こんな近くに十何種類も鳥がいるとは驚き。それぞれの特徴を教えてもらいながら散策を楽しめた。地域を知る機会になった」と話した。

 

祉の森を抜けた住宅地付近でも鳥の姿を発見。地域にある自然の豊かさを感じた

福祉の森を抜けた住宅地付近でも鳥の姿を発見。地域にある自然の豊かさを感じた

 

 同課では冬時期に海のそばで野鳥観察会を実施。今後も年2回程度、自然に親しむ機会を設ける考えだ。

 

 自分たちが暮らす地域で耳を澄ましてみると、新たな発見があるかもしれない。野鳥観察のような自然の楽しみ方を生活に取り入れ、地域環境について定期的に思い起こす機会にしてみては―。

小・中が力を合わせた「唐丹っ子なかよしリレー」

唐丹っ子の元気を発信!~小・中合同運動会で73人が躍動~

堂々の入場行進で唐丹小・中合同運動会が開幕

堂々の入場行進で唐丹小・中合同運動会が開幕

 

 釜石市の唐丹小(柏﨑裕之校長、児童57人)、唐丹中(八木稔和校長、生徒16人)の合同運動会は25日、両校の校庭で開かれた。22日に実施予定だったが、雨で2度延期され、晴天に恵まれたこの日、ようやく開催にこぎつけた。児童、生徒が力を合わせ、〝唐丹っ子〟魂を発揮する姿に、見守った保護者から盛んな拍手が送られた。

 

最後まであきらめない子どもたちに拍手を送る保護者

最後まであきらめない子どもたちに拍手を送る保護者

 

 2011年の東日本大震災で被災した両校は、地域復興の原動力とするべく、以降の運動会を「唐丹復興運動会」として開催。一般住民も参加し、交流を深める形で回を重ねてきたが、昨年来の新型コロナウイルス感染拡大により、今年も住民参加は見送られた。児童、生徒らは競技時以外のマスク着用、種目の合間の手指消毒など感染防止対策を徹底して運動会に臨んだ。

 

 児童・生徒全73人を赤組、白組に分けた対抗戦。応援合戦を含む15のプログラムが用意された。定番の徒競走やリレーなどに加え、唐丹小・中独自のアイデア競技も。中学生はゴム跳び、たが回し、竹馬など昔の遊びを取り入れたレースや3人が2つのボールを体ではさみ、先頭が触角付きヘルメットをかぶって走る「昆虫レース」、小学校高学年は2人で運ぶ長いポールを後続が次々に飛び越える「唐丹タイフーン」で躍動した。14年から取り組む小・中合同競技「唐丹っ子なかよしリレー」は、コロナ対応の新メニューを中学生が考案した。元気全開のダンスや迫力のソーランは大きな感動を呼んだ。

 

ユーモラスな姿で楽しませた中学生の「昆虫レース」

ユーモラスな姿で楽しませた中学生の「昆虫レース」

 

「唐丹タイフーン」には6年生の保護者も参戦

「唐丹タイフーン」には6年生の保護者も参戦

 

小・中が力を合わせた「唐丹っ子なかよしリレー」

小・中が力を合わせた「唐丹っ子なかよしリレー」

 

 初めての運動会となった長山未咲さん(小1)は「一番楽しかったのは、嵐の〝ハピネス〟のダンス。いっぱい練習した」と満足げ。姉の未來さん(小3)は「雨でなかなかできなかったけど、今日できてうれしい。赤組が勝てるよう最後まで頑張る」と意気込んだ。開催中は中学生のリーダーシップが光った。村上颯人君(中3)は「最高学年として下級生を引っ張り、運動会を成功させることができた。仲間の頑張りに自分も刺激を受ける。今後も大きな高みを目指したい」と、中学最後の1年を見据えた。

 

小学校低学年は「ハピネス」のダンスで笑顔満開

小学校低学年は「ハピネス」のダンスで笑顔満開

 

 本年度、同小に赴任した柏﨑校長(53)は「今まで見た中でナンバーワンの運動会。小・中一貫教育的な素晴らしさがある」と感激。震災後、同じ敷地内で児童館から中学校までが学ぶ同地域の教育環境に触れ、「憧れの姿を示してくれる中学生が身近にいることは大きい。小学生も児童館の子たちも今日の姿を見て、将来、自分もと思いを強くしたと思う」と話し、児童らの今後の成長に期待を寄せた。

 

 全員が持てる力を発揮し、みんなで創り上げた運動会。結果は赤、白同点で両組優勝となった。最後は互いの健闘をたたえてエール交換。児童、生徒らは充実感をにじませ、11回目の復興運動会を終えた。

3年生以上の児童が田植えに挑戦。一列に並んで丁寧に植え付けた

泥だらけも楽しく 白山小水田 41回目の田植え

3年生以上の児童が田植えに挑戦。一列に並んで丁寧に植え付けた

3年生以上の児童が田植えに挑戦。一列に並んで丁寧に植え付けた

 

 学校敷地内に水田を設け、児童が稲作体験に取り組んでいる釜石市嬉石町の白山小(熊谷直樹校長、児童34人)で14日、恒例の田植えが行われた。3年生以上の約20人が、1アールの田にもち米種のヒメノモチを植え付け。児童たちは手足を泥だらけにしながら楽しそうに取り組んだ。

 

 稲作体験は今年で41回目の取り組み。毎年苗を提供している甲子町上小川の農業藤井茂さん(81)、大船渡農業改良普及センターの農業普及員佐々木俊祐さんらが田植えの要領を伝えた。

 

 田んぼには格子状の目安が付けられていて、一定間隔に苗を植え付けることができるよう工夫した。苗を手に、田に足を踏み入れた児童は、やわらかい泥の感触に歓声。泥に足を取られながらも前進し、一つ一つ丁寧に植えていった。

 

やわらかい泥に足を取られながらも楽しそうに田植えに取り組む児童

やわらかい泥に足を取られながらも楽しそうに田植えに取り組む児童

 

 佐々木柚芽稀(ゆめき)さん(4年)は2回目の田植えで、上手にできたと満足げだった。腰を曲げた体勢に農作業の大変さも実感。「みんなで協力して頑張ったから、おいしい米がいっぱいとれるといいな」と期待を膨らませた。

 

 同校の水田は1979年度に開かれた。当初から5年生の体験学習に位置づけてきたが、児童の減少による学級編成の複式化などが常態化。数年前から全校児童が参加する形にして取り組みを続けている。

 

学校田に緑色の苗の点線を描いて満足げな白山小児童とサポーターたち

学校田に緑色の苗の点線を描いて満足げな白山小児童とサポーターたち

 

 今年は4月以降、1・2年が小石拾い、3・4年は田起こしを担当。水田づくりには地域住民らが力を貸し、畔(あぜ)の改良や周囲の除草などを進めた。

 

 児童は今後、除草作業をしながら生育状況を観察する。稲刈りと脱穀は10月を見込み、3年生以上で実施。11月に予定する収穫祭で実りに感謝しながら全員で味わい、水田学習を締めくくる。

 

 昨年度の収量は16キロ。藤井さんらサポーターは20キロの実りを期待している。

ワークショップメンバーが加わった第3部「古関裕而の世界」。振り付けも交え、曲の世界観を表現した

ノイホフ 2年ぶりに母の日コンサート~コロナ禍の新たな形構築へ~

4人で心を合わせ、美しいハーモニーを届けるメンバー。アニメ曲や童謡・唱歌メドレーで楽しませた

4人で心を合わせ、美しいハーモニーを届けるメンバー。アニメ曲や童謡・唱歌メドレーで楽しませた

 

 釜石市の「親と子の合唱団ノイホフ・クワィアー」(小澤一郎代表)は9日、第141回ファミリーコンサート「ははのそぼたちのうた~その27~」を大町の市民ホールTETTOで開いた。母の日にちなんだコンサートは5月の恒例行事だが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大で全国に発令された緊急事態宣言を受け、やむなく中止された。収束が見通せない中で、感染防止と合唱活動をいかに両立させるか。本演奏会は、withコロナ時代の新たな形を模索していく一歩となった。

 

 演奏会では感染防止のガイドラインに示されている対策を可能な限り講じた。会場内全員のマスク着用、手指消毒、検温、来場者の連絡先記入、間隔を空けた客席配置のほか、出演者の振り付けも接触を避けるなど慎重を期した。合間には換気タイムも設けた。

 

心温まるステージに感激し、団員に拍手を送る観客

心温まるステージに感激し、団員に拍手を送る観客

 

 2年ぶりの母の日コンサートは3部構成。1部の「スタジオ・ジブリ名曲集」は、昨年12月のクリスマスコンサートで歌う予定だったが、コロナ禍で中止となり、念願の披露となった。「魔女の宅急便」「もののけ姫」など名作アニメから10曲を演奏。2部は「童謡・唱歌四季のメドレー」から春と夏の曲をテンポよく歌い上げた。

 

 3部は昨年のNHK連続テレビ小説で主人公となった作曲家・古関裕而(福島県出身)の楽曲を集めた。昭和初期に数々の名曲を残した古関氏。「とんがり帽子」「長崎の鐘」など年配者には懐かしい曲のほか、早稲田大、慶応義塾大の応援歌、多くの人になじみのある夏の全国高校野球大会の歌「栄冠は君に輝く」など、その手腕が光るメロディーが続いた。古関氏は釜石市とも縁がある。1937(昭和12)年の市制施行を記念して作られた「釜石市民歌」は古関氏が作曲。この日は5番まで全て聞かせた。

 

ワークショップメンバーが加わった第3部「古関裕而の世界」。振り付けも交え、曲の世界観を表現した

ワークショップメンバーが加わった第3部「古関裕而の世界」。振り付けも交え、曲の世界観を表現した

 

 同団1期生として創始者の故渡辺顕麿さんから指導を受けたという市内の男性(79)は「涙、涙で言葉にならない」と感激し、「市民歌も久しぶりに聞いた。ノイホフの歌は心が潤う。コロナも当分寄り付かないと思います」と明日への活力を得た様子。

 

 今回の出演者は市内在住の6人。例年、東京から駆け付けるメンバーなど4人が出演を見合わせ、少人数でのステージとなった。石山友里花さん(釜石高3年)は「いつかは(演奏会が)できるという気持ちで、みんな頑張ってきた。お客様がにこにこしながら聞いてくれて、うれしくなった」と喜びの表情。小学4年からの活動を振り返り、「誰かを笑顔にできる歌の力ってすごい。自分の生活の中でも合唱は大きい存在。卒業しても続けたい」と思いを強くした。1カ月のワークショップを経てステージに立った佐藤禮子さん(73)は「最初はドキドキでしたけど、歌っているうちにワクワクしてきた。声を出しているとコロナのストレスとか気持ちも発散できる」と充実感をにじませた。

 

釜石高3年の石山友里花さん(右)、同1年の千代川陽琉さんはフレッシュな歌声で「ひこうき雲」を披露

釜石高3年の石山友里花さん(右)、同1年の千代川陽琉さんはフレッシュな歌声で「ひこうき雲」を披露

 

 同団は昨年、緊急事態宣言が明けた6月から活動を再開。呼吸がしやすいマスクグッズを活用するなど工夫しながら、感染防止策と両輪で練習を重ねてきた。小澤代表(44)は本演奏会について「悩みつつも、開催する方向で取り組んできた。発表の場を失っている他団体が再び動き出すきっかけにもなれば」と話した。