釜石艦砲射撃76年 記憶語り継ぐ戦災記録集「かまいしの昭和20年」再版


2021/08/19
釜石新聞NewS #文化・教育

亡夫の遺志を継ぎ、長女とともに戦災記録誌を再版した岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

亡夫の遺志を継ぎ、長女とともに戦災記録誌を再版した岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

 

 太平洋戦争末期、釜石市が米英軍による2度の艦砲射撃で甚大な被害を受けてから今年で76年を迎えた。8月8日、艦砲射撃による戦禍から逃れた故岩切潤さん(享年82)の体験談をつづった記録誌が市内の書店に並んだ。「伝えねばなんねんだ」。戦争体験者が減る中で、戦災の記憶を語り継ぐ大切さを口にしていた岩切さんの遺志を継ぎ、遺族が再版した。

 

 記録誌は、2015年に岩切さんが自費出版した「戦後70年に想う かまいしの昭和20年-艦砲射撃を生き延びて」。艦砲射撃や避難した防空壕(ごう)での様子、疎開先での暮らしぶりなど当時釜石国民学校(現釜石小)5年生だった岩切さんの実体験を、艦砲射撃を受けた市内の風景などの写真や被弾図など資料を交え書き記している。

 

再版された「かまいしの昭和20年-艦砲射撃を生き延びて」

再版された「かまいしの昭和20年-艦砲射撃を生き延びて」

 

 初版は800部発行し、全て市や図書館、戦没者慰霊祭の参列者らに寄贈した。岩切さんは同時期に市内の小中学校や老人クラブなどでの講演活動も開始。戦争体験者として記憶の継承に精力的に取り組もうとした矢先、17年9月に急逝した。生前、関心のある人たちが購入という形で記録誌を手にし、「地域の歴史や平和について考えてほしい」と望んでいたという。

 

 そういった遺志を、長女晃子さん(54)=東京都杉並区=と妻久仁(くに)さん(78)=釜石市小佐野町=が引き継ぎ、再版した。新たに850部を発行。約670部を市内の中学3年生に贈る。残りは市内の桑畑書店、盛岡市のさわや書店などで販売する。A4判36ページで、1部990円(税込み)。

 

「潤さんも喜んでいると思う」。店頭に並んだ戦災記録誌を見つめる岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

「潤さんも喜んでいると思う」。店頭に並んだ戦災記録誌を見つめる岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

 

 8日、桑畑書店を訪れ、店頭に本が並ぶ様子を見守った久仁さん。「家で多くは語らなかった。心の中で思っていたんだなと思う。70年たって語ろうとしたようだけど・・・」と本を見つめる。11年に東日本大震災を経験した岩切さんは、戦後復興の歩みに震災復興への思いを重ね合わせ、「戦災と震災は語り継がなければなんねんだ」と繰り返し言っていたという。久仁さんは「潤さん、喜んでいると思う。手に取って読んで、感じ、考えてもらえたら」と願う。

 

 太平洋戦争末期の1945(昭和20)年、釜石市は7月14日と8月9日の2度にわたって米英連合軍から艦砲射撃を受けた。市街地は焼け野原になり、市民ら780人以上が犠牲になるなど大きな被害を出した。

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