甲子町の加藤直子さん 長年の環境保全活動で「環境大臣表彰」受賞


2021/07/14
釜石新聞NewS #文化・教育

環境大臣表彰を受けた加藤直子さん(前列中央)と伝達式に出席した県、市の職員ら

環境大臣表彰を受けた加藤直子さん(前列中央)と伝達式に出席した県、市の職員ら

 

 身近な生き物観察による環境学習や地球温暖化防止活動で環境保護意識の普及啓発に尽力してきた釜石市甲子町の加藤直子さん(74)が、環境大臣から表彰を受けた。自らの経験を踏まえ、自然との共生、地球環境に目を向ける大切さを訴え続ける加藤さん。表彰は「共に活動してきた仲間たちを代表していただいたもの」と感謝し、活動継続に意欲を示す。

 

 加藤さんは、環境省が6月の環境月間に合わせて行う環境大臣表彰3部門のうち、「地域環境保全功労者」として、本年度の受賞者に選ばれた。同部門では本県から唯一の受賞。2日、表彰伝達式が新町の釜石地区合同庁舎で行われ、県沿岸広域振興局の森達也局長から表彰状が手渡された。小泉進次郎環境大臣のメッセージも伝えられた。

 

 加藤さんは北九州出身。3歳の時に釜石に移住し、自然豊かな甲子川流域で育った。子どものころからカエルや昆虫が大好き。自身の子育てでも、「子どもには自然と触れ合う経験が必要」と強く感じてきた。49歳から環境に関わる取り組みを本格化。「身近な生き物に触れる感動を味わってほしい」と、市内3カ所にビオトープ(生物生息空間)を整備し、環境教育に役立ててきた。

 

加藤さんが講師を務めた鵜住居小児童の環境学習(2006年)を記録したアルバム=加藤さん所有

加藤さんが講師を務めた鵜住居小児童の環境学習(2006年)を記録したアルバム=加藤さん所有

 

片岸町のビオトープで生き物探しをする鵜小児童。この場所は震災の津波で流失した

片岸町のビオトープで生き物探しをする鵜小児童。この場所は震災の津波で流失した

 

鵜住居小の教室で事前学習を行う加藤さん

鵜住居小の教室で事前学習を行う加藤さん

 

 1997年から釜石市のこどもエコクラブ「アースレンジャーかまいし」のサポーターを務める。生き物観察を通じて子どもたちに命の尊さを教え、人間も自然環境の中で生かされていること、その自然を自分たちで守っていかなければならないことを伝え続けてきた。

 

 2005年には同市地球温暖化対策地域協議会の発足に関わり、代表に。エコドライブや環境家計簿の普及活動を推進し、ごみ減量や二酸化炭素排出削減に取り組む。同振興局土木部の「甲子川の明日を語る会」委員(96年~)、県環境アドバイザー(03年~)としても活躍する。

 

 志を同じくする仲間と03年に立ち上げた民間団体「かまいし環境ネットワーク」(加藤代表)では、河川や海辺の清掃活動を通して市民の環境理解、保護意識高揚を促す。東日本大震災後は、津波で流失した絶滅危惧植物「ミズアオイ」の復活に子どもたちと取り組み、注目を集めた。

 

ミズアオイ復活への取り組みを紹介する新聞記事=復興釜石新聞(2012年9月)

ミズアオイ復活への取り組みを紹介する新聞記事=復興釜石新聞(2012年9月)

 

ミズアオイを育成する田んぼで行われたこどもエコクラブの生き物探し(2013年7月)

ミズアオイを育成する田んぼで行われたこどもエコクラブの生き物探し(2013年7月)

 

 長年にわたる活動で一番心に残るのは「ビオトープ」。加藤さんは「卵を産んで次の世代に命をつないでいく姿を繰り返し見られるのはうれしい。その営みを子どもたちにも見てほしい。小さな生き物との出会いによって、命を守っていける能力を身に付けてもらえれば」と期待。一方で、カエルやトンボ、チョウなど子どもたちに身近な生き物が確実に減ってきている現状も危惧し、「多様な自然が失われている。いろいろな生き物が住めるような環境を取り戻したい」と新たなビオトープ構想に夢を描く。

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