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園児が描く「釜石の海」 未来への希望を表現 「海の日」絵画コンクールで7人表彰

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「海の日」絵画コンクールの入賞者、実行委関係者ら

 
 釜石市「海の日」実行委員会(会長・野田武則市長)が主催する絵画コンクールの表彰式が17日、港町のイオンタウン釜石で行われた。新型コロナウイルス感染症の影響で3年ぶりの実施。市内の教育・保育施設の園児たちが「釜石の海」をテーマに色彩豊かな作品を寄せ、入賞した7人を表彰した。入賞作を含めた全作品は同会場で19日まで展示された。
  
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「釜石の海」をテーマにした色彩豊かな作品が並んだ

  
 コンクールは海の恩恵に感謝する「海の日」の普及を目的に、写真と絵画部門で作品を募集し実施してきたが、コロナ禍で2020、21年は中止した。3年ぶりとなる今回は海に夢を持った子どもたちを育てるのを狙いに、絵画のみで開催を決定。こども園や幼稚園、保育園などに話を持ち掛け、賛同した8施設から125点が集まった。審査で金賞1点、銀賞1点、銅賞2点のほか、特別賞として市長賞、釜石海上保安部賞、釜石港湾振興協議会賞の各1点を選んだ。
  
 表彰式で、野田市長は「海の素晴らしさや怖さを共有しながら、海と共に生活していくことを小さいころか学んでほしい。海に関心を持ち、みんなで豊かな海、自然を守っていこう」とあいさつ。釜石海保の虻川浩介部長が「青いきれいな海にたくさんの生き物、船をカラフルに描いた作品ばかり。未来に残そうという希望が表現され、頼もしい」と講評した。各賞受賞者に野田市長、虻川部長らから表彰状と記念品が贈られた。
  
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野田市長から表彰を受ける小笠原叶華ちゃん

 
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入賞作品の前で記念写真を撮る子どもの姿も

  
 金賞に輝いた中妻子供の家保育園の小笠原叶華(かのか)ちゃん(6)は、海で船釣り楽しむ家族の様子を描いた。船に乗ったことがなく、「いつかやってみたい」と夢見る思いを表現。釣ってみたい魚を聞くと、「マグロ!」と元気に答えた。
  
 叶華ちゃんを除いた入賞者は次の通り(敬称略)。
▽銀賞=三浦栞乃(小佐野保育園)
▽銅賞=岩井瑠莉(同)、小池一颯(中妻子供の家保育園)
▽釜石市長賞=小笠原大智(かまいしこども園)
▽釜石海上保安部賞=櫻庭えま(同)
▽釜石港湾振興協議会賞=久保夢空瑠(中妻子供の家保育園)

 

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3年ぶり「釜石まつり」10/14~16開催 コロナ対策施し2神社合同みこし渡御

3年ぶりの開催が決まった「釜石まつり」=資料写真(2017年)

3年ぶりの開催が決まった「釜石まつり」=資料写真(2017年)

 
 釜石市の秋を彩る「釜石まつり」は10月14日から3日間、市内東部地区を中心に開催される。新型コロナウイルス感染症の影響で2020、21年は中止されたが、今年は感染症対策を施し、規模を縮小して実施する。15日に開かれた同まつり委員会(委員長=野田武則市長)事務局会議で日程が決定した。
 
 釜石まつりは、浜町の尾崎神社と桜木町の釜石製鉄所山神社の合同祭。1967(昭和42)年の市制施行30周年を機に始まり、同市の秋の一大イベントとして市民に親しまれてきた。委員会は今年、新型コロナの感染状況や、市内経済、郷土芸能の後継者育成への影響などを総合的に判断し、感染症対策をした上での実施を決めた。
 
15日に開かれた釜石まつり委員会事務局会議

15日に開かれた釜石まつり委員会事務局会議

 
 内容はほぼ例年通りだが、最大限の感染防止対策を講じる。渡御行列の参加は市内芸能団体に限定。各団体は参加人数を抑制し、マスクやフェイスガードの着用、手指や道具類の消毒を徹底する。感染対策の責任者を置き、練習参加者の2週間前からの体調確認も行う。各団体には対策費を補助する。
 
 露店は出店数を例年の3分の2程度とし、配置の見直し、出店時間の短縮などで感染リスク低減を図る。各会場ではアナウンスや立て看板などで一般来場者にも対策を呼び掛ける。芸能団体の踊り披露時には、観客との距離を確保する。
 
19年の曳き船まつりは悪天候で中止。今年は4年ぶりの開催となる=資料写真(17年)

19年の曳き船まつりは悪天候で中止。今年は4年ぶりの開催となる=資料写真(17年)

 
2神社合同みこし渡御は例年通り、市内目抜き通りを練り歩く=資料写真(17年)

2神社合同みこし渡御は例年通り、市内目抜き通りを練り歩く=資料写真(17年)

 
 3日間の日程は次の通り。
 
▽10月14日(金) 午後6時~ 尾崎神社宵宮祭(同神社)
 
▽10月15日(土) 午前10時~ 尾崎神社みこし海上渡御「曳き船まつり」(釜石港)/午後5時半~ 日本製鉄(釜石製鉄所)山神社宵宮祭(同神社)
 
▽10月16日(日) 午前8時~ 尾崎神社出御祭(同神社)/午前9時~ 日本製鉄山神社例大祭(同神社)/午前11時20分~ 両神社合同祭神事(鈴子町・釜石消防署横)/午後0時10分~ 合同みこし渡御(鈴子町→大渡町→大町→只越町→魚河岸)/午後3時半~ みこし還御式(魚市場御旅所)

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書道・山野草・煎茶道・絵画がコラボ 「秋を彩る」合同展示 異種の組み合わせで相乗効果

書と絵画、山野草の展示に茶席が加わる独特の情緒を楽しむ合同展

書と絵画、山野草の展示に茶席が加わる独特の情緒を楽しむ合同展

  
 「秋を彩る」をテーマにした書道・山野草・煎茶道・絵画の合同作品展は9~11日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。釜石書道協会(佐々木和子会長、会員約20人)、釜石草友会(古舘昭吉会長、同5人)、釜石蘭煎会(桑畑美梢会長、同約30人)、美術集団サムディ45(鈴木睦代表、同約20人)の4団体がコラボレーション。和洋、異種の組み合わせながら風趣に富んだ空間を提供し、足を運んだ市民らは「芸術の秋」を先取りした。
   
丹精込めて育てられた山野草に見入る来場者

丹精込めて育てられた山野草に見入る来場者

  
筆致勇壮、多彩な書体の力作が並んだ

筆致勇壮、多彩な書体の力作が並んだ

   
 山野草はイワショウブ、イワギボウシ、ヤブラン、サワヒヨドリなどの草花を単品、寄せ植えなどの形で約30点を展示。書道は篆書(てんしょ)、隷書、漢字仮名交じり書、甲骨文字などを額、掛け軸、びょうぶ、短冊にした約30点を並べた。
   
 コスモスなど季節の草花を散りばめた鉢物、「初秋の彩り」としたためられた書、色とりどりの花が描かれた油彩画などが飾られた茶席では、蘭煎会の会員がおもてなし。来場者は秋を感じさせる作品の数々にじっくりと見入ったり、お茶で一服の清涼感を味わったり、穏やかなひとときを過ごしていた。
  
出品者と交流しながら会場内をめぐる人も4

出品者と交流しながら会場内をめぐる人も

  
季節の草花を前に笑顔でおしゃべりを楽しんだ

季節の草花を前に笑顔でおしゃべりを楽しんだ

  
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山野草と書、油彩画を眺めながら優雅に一服

  
 書道協会と草友会は2013年から合同で作品展を開催。さらに心安らぐ鑑賞の場にしようと、15年から新たに煎茶の呈茶を加えて開いてきた。新型コロナウイルスの流行で20年と21年は中止。3年ぶりの合同展示では、同時期、同施設で個別に作品展を計画していた同集団と共演する形にした。
  
 古舘会長(78)は「秋の開催は初めてで、季節を感じて楽しんでもらえるよう花を咲かせるのが大変だった。4つの組み合わせは不安もあったが、うまく調和した。この雰囲気がいいし、見せ方、飾り方などいい勉強になる」と相乗効果を語った。新会員の加入など運営面で明るい話題もあった佐々木会長(82)は「マンネリから抜け出した展示になった。鑑賞の雰囲気作りに工夫することで、ゆっくり、じっくりと見てもらえる。コラボはいい」と効果的な発表の場の継続に期待を寄せた。
   
個性豊かな作品が並ぶ「サムディ45」の56回展

個性豊かな作品が並ぶ「サムディ45」の56回展

   
 サムディの56回展は同ホールギャラリーで行われ、日本画、洋画、切り絵、色鉛筆画、写真、工芸など幅広いジャンルの力作約60点が並んだ。地元釜石のほか、北上、仙台、鹿児島など県内外に広がる会員16人が出展。代表経験者の故菅野幸夫さん、故岩井利男さんの作品計3点も紹介した。
   
 5年ほど前から同集団に参加する平田の小笠原美津子さん(76)は浮世絵をモチーフにした刺しゅう画、ビーズを使ったモザイクアートなどを出品。病気で左半身にまひが残るが、力の入る右手一本で創作活動に励む。リハビリを兼ねているというが、「細かな作業が好き。作りたくてしょうがない」とにっこり。「こんな体でもできるんだよ」と達成感を味わえるのが制作の原動力で、作品を見てもらうことで喜びもかみしめる。
   
切り絵の体験コーナーでは創作活動の一端に触れた

切り絵の体験コーナーでは創作活動の一端に触れた

   
 同集団は講師を置かず、個々に創作活動に取り組んでいるのが特徴。事務局では「描くことが大好きな仲間、先輩方が培ってきた活動を絶やすことなく続けていくことが私たちの役割。次の世代へと引き継いでいきたい」と活動継続へ願いを込める。

釜石大槌地区中学校新人大会 バレーボール競技=10日、甲子中体育館

釜石大槌地区中学校新人戦 コロナ下初 全競技で保護者観戦解禁 選手ら雄姿披露

釜石大槌地区中学校新人大会 バレーボール競技=10日、甲子中体育館

釜石大槌地区中学校新人大会 バレーボール競技=10日、甲子中体育館

  

 2022年度釜石大槌地区中学校新人大会(同地区中学校体育連盟主催)は10日、釜石市、大槌町の各会場で8競技が行われた。新型コロナウイルス感染症の影響で6月の中総体と同様、各種制限下での大会運営が続くが、今大会は初めて全競技で保護者観戦を可能とした(人数制限はあり)。選手たちは日ごろの部活動の成果を家族に見てもらえる機会を喜び、力に変えて試合に挑んだ。

  

 少子化による生徒数の減少で、団体競技は年々、単独校での出場が難しくなっているが、3年生が引退し人数がさらに減る同大会はその状況が一層顕著に。今大会、軟式野球は3校で組んだ合同チーム同士の対戦(釜石・釜石東・大槌―大平・唐丹・甲子)となった。サッカー、バレーボール男子は参加1チームのため、地区予選はなし。剣道男子も団体戦はなく、個人戦のみ行われた。

  

 そのような中で明るい話題があったのが柔道競技。近年は釜石、大槌の2校で部活動が継続され、個人戦のみ行われてきたが、今大会で2013年以来9年ぶりとなる団体戦が復活。観戦可能となった保護者が見守る中、両校各5人で勝敗を決する試合が行われた。結果は4対1で釜石が勝利。地区予選を経ての県大会出場を決めた。

  

9年ぶりに団体戦が行われた柔道競技。選手、関係者の喜びもひとしお=釜石中格技場

9年ぶりに団体戦が行われた柔道競技。選手、関係者の喜びもひとしお=釜石中格技場

  

柔道会場は本年度中総体から保護者観戦が可能に

柔道会場は本年度中総体から保護者観戦が可能に

  

 釜石中柔道部の野嶋晏慈(あんじ)主将(2年)は「みんなで戦う団体戦は楽しい。勝てたので満足」と充実の表情。部員数が少ないことで「自分と同じ階級(60キロ級)の練習相手がいなかったりと苦労する部分もある」が、県大会に向けさらなる精進を誓う。「前回は1回戦負けで終わってしまったので、今回は2回戦に進めるよう頑張る」と意気込んだ。

  

剣道女子、白熱の個人戦。剣道競技も釜石、大槌2校のみが参加=釜石中体育館

剣道女子、白熱の個人戦。剣道競技も釜石、大槌2校のみが参加=釜石中体育館

  

 バレーボール女子は5校によるトーナメント戦が行われた。圧倒的強さを見せたのは釜石東。小学生から競技を継続する主力選手を中心に、強烈なサーブで相手チームを翻弄(ほんろう)。攻守でその実力が光った。小林夏穂主将(2年)は「新人戦に向け、サーブカットとサーブを強化してきた。スパイクの速攻もいいチャレンジができている」と自信をのぞかせた。堂々の優勝を果たし、県大会ベスト8を目標に掲げた。

  

バレーボール女子準決勝・釜石東―甲子は2-0で釜石東(青)が勝利

バレーボール女子準決勝・釜石東―甲子は2-0で釜石東(青)が勝利

  

 バドミントンは鵜住居町の市民体育館が会場。6月の中総体同競技は、3月に発生した地震の影響で同館が臨時休館中だったため、市内2中学校の体育館で男女分散開催。修繕工事が終わり今月から利用可能となったことから、会場を戻しての開催となった。参加人数が多いため、2階観客席は生徒と保護者エリアをきっちり分け、学校単位で割り当て。不要な接触を極力避け、競技の合間の換気も徹底した。

  

バドミントン競技は今月1日から利用が再開された市民体育館で実施

バドミントン競技は今月1日から利用が再開された市民体育館で実施

  

卓球男子の最終試合は全参加者が見守る中で開催

卓球男子の最終試合は全参加者が見守る中で開催

  

 釜石大槌地区の代表が出場する県大会は、前期が10月15、16日(バスケットボール、軟式野球、ソフトテニス、サッカー)、後期が11月19、20日(バレーボール、卓球、バドミントン、剣道、柔道は20日のみ)に県内各会場で開催される。

  

 今大会各競技の結果は大会成績一覧表の通り。地区予選がなかった競技の県大会出場チームは、▽サッカー/釜石東、▽バレーボール男子/釜石・吉里吉里合同、▽剣道男子/釜石。

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自分で浴衣を着る楽しみを子どもたちに 文化庁事業で釜石初開催「和装・作法教室」

小中高生を対象に初開講した「和装・作法教室」

小中高生を対象に初開講した「和装・作法教室」

 
 子どもたちを対象とした「和装・作法教室」が4日、釜石市で開講した。同市小佐野町に本部を置く三陸きもの学院(及川ナツ子学院長)が母体の同教室はまゆりの会(会長=及川学院長)が主催。文化庁の伝統文化親子教室事業の採択を受け、本年度初めて取り組む。10月まで全6回の教室で浴衣の着付けや和装時の礼儀作法などを学ぶ。
 
 小中高生を対象に受講者を募集。10人が申し込んだ。初回は会場の市民ホールTETTOで開講式が行われ、小学1~5年の6人と同会の指導者11人が顔をそろえた。及川会長(83)は「日本の伝統文化の着物の中で、一番着やすいのが浴衣。普段着のような感覚で着られる。自分なりにゆっくりと学んで」とあいさつ。受講生、指導者がそれぞれ自己紹介し、さっそく講習に入った。
 
 受講生が持参した浴衣と帯を使い、自分で着る方法を教えた。浴衣の丈は“くるぶし”ぐらい、外出時は若干長めが基本。この日は襟合わせ、ひもの使い方から帯の結び方まで一通りの流れを体験した。低学年は兵児(へこ)帯を結び、高学年は半幅帯で手軽な「文庫結び」に挑戦した。
 
マンツーマンで浴衣の着付けを教えてもらえる教室。手順を習ったら1人でも挑戦

マンツーマンで浴衣の着付けを教えてもらえる教室。手順を習ったら1人でも挑戦

 
ふわふわの“へこ帯”は子どもの浴衣姿を一層かわいらしく演出

ふわふわの“へこ帯”は子どもの浴衣姿を一層かわいらしく演出

 
高学年は「文庫結び」を体験。これを覚えれば「蝶結び」などのアレンジも可能

高学年は「文庫結び」を体験。これを覚えれば「蝶結び」などのアレンジも可能

 
 和装時の立ち居振る舞いも体験。履物の扱い、座敷での歩き方、座り方、立ち方、お辞儀の仕方を教わった。及川会長は「畳1畳を4~5歩で。背筋を伸ばして」などと声掛け。時と場合によって使い分ける3種のお辞儀「真礼・行礼・草礼」も紹介した。
 
 井上千里さん(双葉小1年)は「いつもはおばあちゃんに着せてもらう。今日やってみたら自分でも上手に着られてうれしかった」とにっこり。柏舘夕奈さん(甲子小4年)は「最初は難しかったけど、教わってうまく着られると達成感がある。最後には全部自分でできるようになって、着付けてくれていたおばあちゃんに見せたい」と希望。見守った夕奈さんの母直子さんは「真剣そのもの。教室が親子や祖母と孫との会話のきっかけにもなれば。国際交流の場で、日本の魅力の一つとして着物や浴衣の紹介ができるような人になってほしい」と期待した。
 
「うまくできたかな?」初めて結んだ帯の様子を指導者とチェック

「うまくできたかな?」初めて結んだ帯の様子を指導者とチェック

 
教室を主催した、はまゆりの会の及川ナツ子会長(右)。学院生らと子どもたちの指導にあたる

教室を主催した、はまゆりの会の及川ナツ子会長(右)。学院生らと子どもたちの指導にあたる

 
 教室ではこの後、浴衣の着付けや礼法の実践を繰り返しながら着物の知識なども学ぶ予定。最終の10月30日には発表会を行う。及川会長は「子どもでも思ったよりできていた」と初回の手応えを実感。今後に向け「帯もいろいろな結び方があるので、楽しみながら学んでくれたら。お辞儀の仕方もぜひ覚えてほしい。回数を重ねることで着物に興味を持ってもらいたい」と願った。
 
和装時の歩き方を学ぶ受講生。最後の発表会も楽しみ!

和装時の歩き方を学ぶ受講生。最後の発表会も楽しみ!

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コロナ下でも「やりたい」を実現 釜石高で学校祭 生徒ら、青春の思い出刻む

文化祭を楽しむ釜石高の生徒ら=2日

文化祭を楽しむ釜石高の生徒ら=2日

 
 県立釜石高(青木裕信校長、全日制422人、定時制12人)の「釜高祭」は2、3日、釜石市甲子町の同校で開かれた。釜石南と釜石北の両校の統合から15回目の学校祭。新型コロナウイルス感染症の影響が続き、3年連続で一般公開は見送った。制約が多い中でも「我等(われら)青春謳歌(おうか)隊」をテーマに、できる対策をとって生徒たちの「やりたいこと」を実現。催しやステージ発表で団結を示して特別な思い出を刻んだ。
 
 同校では、感染症の流行で行事が規模縮小になったり部活動の大会が中止になったりと多くのことが制限されてきた。特に3年生は入学時からコロナ禍で過ごし、一番楽しい思い出づくりとなるはずの修学旅行が延期の末、中止された。同祭実行委員長の菊池瑞穂さん(3年)は「高校生は青春をもっとも楽しめる時期。青春を謳歌したい。制約はあるが、思い出をつくる場面、やりたいことは自分たちの手で実現させる」と準備。市内の感染状況を踏まえ非公開としたが、ステージ発表などはユーチューブでライブ配信し、保護者らに校内の雰囲気をアピールした。
  
化学の実験道具でスライム作りに挑む女子生徒=2日

化学の実験道具でスライム作りに挑む女子生徒=2日

 
男子生徒は対戦ゲームに熱中した=2日

男子生徒は対戦ゲームに熱中した=2日

 
模擬店担当の3年生は調理に大忙し=2日

模擬店担当の3年生は調理に大忙し=2日

  
 初日は午後から各クラスの出し物を見て回った。1年生は段ボールで作った迷路やシューティングゲームなどの遊びを企画し、2年生はお化け屋敷を運営。3年生はフライドポテトやチョコバナナなどを売る模擬店で楽しい1日を演出した。文科系クラブは作品展示で活動成果を発表。文部科学省の指定を受けるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の探究活動について、グループ単位で研究成果をまとめたポスターも紹介された。
  
装飾フォトスポットで撮影を楽しむ生徒=2日

装飾フォトスポットで撮影を楽しむ生徒=2日

 
知的好奇心が光る探究活動の成果を紹介=2日

知的好奇心が光る探究活動の成果を紹介=2日

 
 藤井魁都君(1年)は「親とかに見てもらえないのは残念だけど、中止せずに開催してもらい、うれしい。先輩の活動を見て、いいところを取り入れて、もっといい企画を作り上げられるようにしたい」と刺激を受けた。
  
バンド演奏などで文化祭を盛り上げた=3日

バンド演奏などで文化祭を盛り上げた=3日

  
 ステージ発表は3日に実施。体育館で有志によるダンスやバンド演奏があり、多彩な才能を見せた。音楽、吹奏楽部による演奏披露もあった。密になるのを防ぐため、前日に3年生だけで楽しむ機会が設けられた。
 
「銀河鉄道」をモチーフにした定時制の展示コーナー=3日

「銀河鉄道」をモチーフにした定時制の展示コーナー=3日

 
 定時制の文化祭テーマは「歩協和音」。将棋の「歩(ふ)」からとり、「一人の力は小さいかもしれないが、みんなで一つのものを作り上げよう」との思いを込めた。展示は、体験学習で訪れた花巻市の宮沢賢治記念館などから着想を得て「銀河鉄道」をメインモチーフに。日ごろの学習や部活動の様子も掲示した。
 
「こすもっチ」を販売した定時制の生徒=3日

「こすもっチ」を販売した定時制の生徒=3日

 
 農業体験学習で育てたジャガイモを使った焼き菓子「こすもっチ」は3日、1日限定で販売した。「自分たちで育てたことで食材を大事にする気持ちを育むことができた」と生徒会長の佐々木遼(はる)君(3年)。生徒数は少ないが、一人ひとりが頑張りながら学習、生活を楽しんでいるといい、「学年間の壁をなくし、いろんな活動に協力して取り組んでいきたい」と気持ちを新たにした。
 

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気楽に過ごせる生徒の居場所 釜石高、官民連携で放課後に開設「774プロジェクト」

釜石高生の放課後の居場所「774プロジェクト」=8月25日

釜石高生の放課後の居場所「774プロジェクト」=8月25日>

  
 釜石市甲子町の釜石高(青木裕信校長)の校内に週2回開設されるフリースペース「774(ナナシ)プロジェクト」。勉強や探究、おしゃべりなど放課後に高校生たちが自由な活動をして過ごす。地域の大人と日常的に関わることができる、家庭でも教室でもない、「第3の居場所」をつくろうと官民学が連携し運営。生徒の相談に耳を傾け、やりたいことを支援する場所にもなっていて、高校生にさまざまな刺激を与えている。8月23日には、海外留学などに関心を持つ生徒向けにオンライン国際交流イベントを開催。首都圏の大学に通う留学生らから話を聞き、国際的視野や将来への選択肢を広げた。
 

「海外留学」をテーマにオンライン国際交流

留学をテーマに将来について考えるオンライン国際交流イベント=8月23日

留学をテーマに将来について考えるオンライン国際交流イベント=8月23日

  
 国際交流イベントは、独立行政法人国際協力機構(JICA)海外協力隊の派遣前研修で釜石に滞在中の候補生阿部璃音さん(福島出身)が企画。今年3月に日本体育大(東京)を卒業したばかりで、同大の留学経験のある学生、ドイツや台湾からの留学生をオンラインでつないで体験談を高校生に伝えてもらった。
 
 参加した釜石高生は8人。パソコンの画面越しに、留学を決めた理由や得たことなどを聞いた。新型コロナウイルス禍の留学にためらいを持つ生徒が助言を求めると、1年間スウェーデンに留学した経験を持つ学生は「やりたいと思った時が始めるタイミング。いつかではなく、一歩踏み出す勇気を持って。留学先で何がしたいのか、目的を固めるのも大事。やることが明確になり、収穫も大きい」などと答えた。
 
画面越しでも積極的なやりとりを楽しんだ¬=8月23日

画面越しでも積極的なやりとりを楽しんだ¬=8月23日

  
 チェコ共和国での留学経験を紹介した阿部さんも、言語や生活文化が違うことを認識した上での事前準備の必要性を強調。「言語は情報を得るためのツール。現地で使う言葉を勉強することで、交流の幅が広がる」とアドバイスした。留学生らは日本の歴史、文化に関心があって留学を決めたものの、日本語でのやり取りは難しく、寂しさを感じることがあると本音をポロリ。それでも「好きなことを仕事にする」という目標のため、日々勇気を出して学び、人間関係づくりをしていると前向きな姿勢を見せた。
  
海外留学への思いを強めた生徒たち=8月23日

海外留学への思いを強めた生徒たち=8月23日

  
 釜石高の藤原和海(なごみ)さん(1年)は将来、海外の人と関わる仕事をと思い描く。留学も考えているが、「先延ばし中」と苦笑。学生らの助言に背中を押され、「今できることをやる。語学力、コミュニケーション力を磨きたい」と意識を高めた。中学時代に市の海外派遣事業でオーストラリアを訪問する予定だったが、コロナの影響で中止。悔しさを希望につなげる一歩にしようとしていた。
  

大人が話を聞いてくれる居場所「774」

地域の大人たちとおしゃべりを楽しむ生徒=8月25日

地域の大人たちとおしゃべりを楽しむ生徒=8月25日

   
 774プロジェクトは同校敷地内のセミナーハウスを活用し、2020年8月に開設された。地域の大人との日常的な関りから学びを深めてもらうのを狙いにした官民学連携事業。市教育魅力化コーディネーターや子どもたちの地域参画を後押しする活動を行う大人たちが運営し、毎週火曜日と木曜日の放課後の生徒たちに、▽気楽に立ち寄ることができる場▽興味関心に合わせたイベントの企画など地域資源との接続▽やりたいこと支援-などを提供する。
  
 8月25日の放課後、利用した生徒らは探究活動で使うグッズをつくったり、まちづくりをテーマにした催しの打ち合わせをしたり、思い思いに放課後の時間を過ごした。イベントの企画運営を得意とする大人に、防災に関するプロジェクトの企画案についてアドバイスを受ける女子生徒も。雑談を楽しむグループもあった。
  
企画する催しの打ち合わせをするグループ=8月25日

企画する催しの打ち合わせをするグループ=8月25日

  
 帰りの公共交通を待つ時間つぶしに利用する里見天(そら)さん(2年)は、同コーディネーターの恒屋梢海さんと“恋バナ”で盛り上がっていた。「お菓子を食べに来て」と誘われ利用してみると、居心地の良さで常連に。「何でも話を聞いてくれる大人がいる場所。友達と話しているみたいで、気楽に過ごせる」と目を細めた。
  
「ナナシ」との呼び名は、あえて場所の名を示さない「名無し」という意味もある。そう教えてくれたのは、運営をサポートする釜石まちづくり会社の常陸奈緒子さん(38)。高校生と大人が力を合わせ、自分たちが使いたくなる場所をデザインしていこう―。そんな思いが込められているという。
  
探究活動で使う道具作りに取り組む生徒たちを見守る八木橋さん(右)=8月25日

探究活動で使う道具作りに取り組む生徒たちを見守る八木橋さん(右)=8月25日

  
 同コーディネーターの八木橋朋広さん(27)によると、これまでに利用した生徒は延べ約2000人。月100人程度が足を運ぶ。「学校が地域連携に積極的。大人と接し、話し合いながら、やってみたいことや目標という自己実現の種を見いだす場になっている」と手応えを実感する。一方で、地域おこし協力隊制度を活用した市非常勤職員でもある同コーディネーターには任期があり、連携の在り方が課題と指摘。「民間の力の活用、後継者の発掘・育成に取り組み、継続させてほしい」と願う。

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釜石市民吹奏楽団 震災乗り越え36年ぶり東北大会へ 支援への恩返しに心一つ

東北吹奏楽コンクールに向け練習に励む釜石市民吹奏楽団=28日夜

東北吹奏楽コンクールに向け練習に励む釜石市民吹奏楽団=28日夜

 
 釜石市民吹奏楽団(山内真紀人団長、団員60人)は、9月4日に福島県いわき市で行われる第65回東北吹奏楽コンクール職場・一般の部に本県代表として出場する。同団の東北大会進出は1986年以来、36年ぶり5回目。全日本コンクールの東北代表が選ばれる高みの舞台。団員らは東日本大震災で受けた支援への感謝を胸に、最高の音を響かせようと練習に励む。
 
 同団は7月31日に北上市で行われた第60回岩手県吹奏楽コンクールに沿岸地区代表として出場。県内5地区から10団体が出場する中、評点で1位、最高賞の金賞を受賞した。2位で金賞のパシフィック・ブラス・オルケスタ(盛岡地区)とともに東北コンクールへの出場権を獲得した。
 
団は週2~3回、市民ホールTETTOで練習中

団は週2~3回、市民ホールTETTOで練習中

 
 釜石市吹は本年度の全日本コンクール課題曲5曲の中から「ジェネシス」(鈴木英史作曲)を選択。自由曲は「Comet(コメット)」(堀田庸元同)とし、沿岸地区予選、県大会に挑んできた。86年以降も県大会での金賞受賞はあったが、東北大会出場には手が届かずにいた同団。今年、堂々トップの成績で目標の舞台への切符を手にした。
 
 県大会は新型コロナウイルス感染防止対策のため、会場で他団体の演奏を聞くことができず、結果発表もメール通知となった。団員らは帰宅後、個々に結果を知った。「まさに青天のへきれき。ここ数年では一番いい演奏ができた実感はあったが、驚きの方が先だった」と山内団長(48)。指揮者としても団をまとめる立場で、「自分たちが目指してきたことと審査員が求めることが合致したのでは」と分析する。
 
指揮者として演奏全般も指導する山内真紀人団長(左)。音の響かせ方のイメージを伝える

指揮者として演奏全般も指導する山内真紀人団長(左)。音の響かせ方のイメージを伝える

 
大小さまざまな金管楽器を奏でるメンバー

大小さまざまな金管楽器を奏でるメンバー

 
 同団は1978年創立。コンクールへの出場のほか、定期演奏会、各種イベントへの出演など多彩に活動し市民に愛される。2011年の震災では活動拠点としていた市民文化会館が津波で浸水。団の楽器も失われるなど大きな被害を受けた。一旦は1年間の活動休止を宣言したが、支援に駆け付けた県内外のブラス仲間の演奏に心を動かされ、3か月後には練習を再開。翌年5月には定期演奏会開催にこぎ着けた。旧大松小音楽室を借りて練習を続け、16年の県コンクールでは11年ぶりに金賞を受賞。同年の定期演奏会は通算50回目を数えた。
 
合奏練習前にはパートごとに音出し。個々の演奏も入念にチェック

合奏練習前にはパートごとに音出し。個々の演奏も入念にチェック

 

 
 現団員の中には過去の東北大会出場経験者も。ホルンの多田由佳さん(68)は4回の東北大会を経験、高橋一見さん(64)は入団した86年に出場している。2人とも今回の決定を知った時は「まさか。信じられない」と目を疑ったそうだが、再びの大舞台に喜びもひとしお。「みんな張り合いができ、目標に向かって頑張っている。自分も無事に吹き切れれば」と多田さん。高橋さんも「いつも通り平常心で。気持ち良く演奏できれば」と気負いはない。
 
東北大会出場を報告した釜石市民吹奏楽団役員5人(中央)=22日

東北大会出場を報告した釜石市民吹奏楽団役員5人(中央)=22日

 
 22日には、山内団長ら役員5人が野田武則市長に東北大会出場を報告した。山内団長は「オールアマチュアで代表になれたのは大きい。釜石は元々、新日鉄釜石、釜石南高の全国、東北大会出場を含め、吹奏楽の土壌があった地域。今回も反響をいただいている」と注目の高さを実感。目標の一つだった東北大会で、「これまでの積み重ねを存分に発揮し、震災後の支援への恩返しをしたい」という団員の強い思いを代弁した。
 
県吹奏楽コンクールで獲得した金賞トロフィーや賞状を披露

県吹奏楽コンクールで獲得した金賞トロフィーや賞状を披露

 
 野田市長は「震災からよくぞここまで復活し、素晴らしい成績を収められた。これを糧にさらに上位を目指してほしい。皆さんの頑張りは他の文化活動団体の励みになる」とエールを送った。

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釜石にもあった!「金」の山 橋野町青ノ木で砂金探しイベント 市民ら夢中

川底の砂をすくって砂金を探した「ゴールデンハシノ」=橋野町青ノ木、金山沢

川底の砂をすくって砂金を探した「ゴールデンハシノ」=橋野町青ノ木、金山沢

 
 世界遺産「橋野鉄鉱山」を有する釜石市橋野町青ノ木地区。鉄鉱石を採掘し、洋式高炉で鉄生産が行われていたことは多くの人が知るところだが、金鉱石の採掘事業で栄えた時代があったことは市民にもあまり知られていない。同町の金山の歴史を知り、砂金採り体験を楽しむイベントが20日、現地で開かれ、子どもから大人まで15人が地元の山に眠る地下資源に思いを巡らせた。
 
 「ゴールデンハシノ(砂金を探せ!!)」と銘打った同イベントは、市世界遺産課と商工観光課が企画。「三陸ジオパーク」に認定される同市の魅力を“鉄”以外でも味わってもらおうと初めて開催した。講師を務めたのは、市内の金山調査を長年続ける小田島圭司さん(75)=産金遺跡研究会釜石支部=と、青ノ木出身で橋野の歴史や自然に精通する三浦勉さん(70)=釜石観光ガイド会=。講話と体験の2本立てで、その価値を伝えた。
 
 歴史資料などによると、橋野地域には5つの金山があったとされる。今回、砂金採りを行った青ノ木川支流・金山沢沿いの「六黒見(むくろみ)金山」は、1800年代初頭の試掘に始まり、江戸、明治期の採掘の記録が残る。昭和初期(1935~43年)には日立系列の日本鉱業が本格的採掘に乗り出し、約200人が働いた。9年間の採掘量は約8万5千トン。鉱石は鵜住居から貨物列車に積み込み、山田線回り盛岡経由で茨城県日立市の精錬所まで運んだ。
 
橋野町の六黒見金山について説明する三浦勉さん

橋野町の六黒見金山について説明する三浦勉さん

 
 現地では複数の坑道や選鉱場、事務所などの場所が確認されており、今でも坑道や社宅跡、関連すると見られる石碑を見ることができる。講話の中で三浦さんは、同金山で働いた測量士、事務員から聞き取った話、自身が見つけた金鉱石の写真なども紹介した。
 
 橋野鉄鉱山インフォメーションセンターでの講話後、金山沢下流域に移動。小田島さんらの指導の下、砂金探しに挑戦した。縁部分に溝がある丸皿に川岸や岩陰にたまった砂を取り、水と一緒に回しながら“光るもの”に目を凝らした。約1時間の探索で数ミリほどの砂金を幾つか発見。参加者は金山の存在をあらためて実感した。
 
六黒見金山を流れる「金山沢」下流域が採集場所

六黒見金山を流れる「金山沢」下流域が採集場所

 
砂金の採り方を教えた小田島圭司さん(右)

砂金の採り方を教えた小田島圭司さん(右)

 
「砂金はあるかな?」 丸皿の中を見回して探す

「砂金はあるかな?」 丸皿の中を見回して探す

 
 甲子町の洞口陽希君(11)は小田島さんからお墨付きを得た砂金を手に、「さっきから全然採れなかったので、すごくうれしい。コレクションにする」とにっこり。父雄紀さん(41)は「釜石でも金が採れるのを初めて知った。市内に住んでいても知らないことは多い」と貴重な学びの場を歓迎。陽希君が喜ぶ姿に「都会ではできないこと。釜石ならではの体験を今後もさせてあげたい」と話した。
 
見つけた砂金(右下拡大・白丸部分)に興味津々で見入る参加者

見つけた砂金(右下拡大・白丸部分)に興味津々で見入る参加者

 
 「初めてで(砂金が)採れるのはあまりないこと。ここまで出るとは思わなかった」と驚く小田島さん。市の担当者は参加者らの予想以上の反響に「坑道跡の見学会なども企画できれば」とさらなる構想を膨らませた。
 

fushigi9605

知って楽しい「三陸ジオパーク」 釜石の子どもたちが郷土の魅力再発見!!

fushigi9569

自分で作ったアンモナイトのレプリカを手に笑顔を見せる親子

 
 ジオパークの観点から郷土の自然や歴史を知るイベント「釜石ふしぎ発見~化石発掘?!ジオの魅力大調査~」が6日、釜石市大平町の市立鉄の歴史館で開かれた。市商工観光課、世界遺産課が共催する夏休み自由研究応援企画の第2弾。市内の小学生と保護者18人が参加し、講話やものづくりを通して三陸ジオパークの面白さを体感した。
 
 青森県八戸市から宮城県気仙沼市まで約220キロに及ぶ三陸ジオパークは国内最大の面積を誇る。2013年に日本ジオパークとして認定された。釜石市のジオサイト(見どころ)は釜石鉱山、橋野鉄鉱山、千丈ヶ滝、根浜海岸、箱崎半島千畳敷、両石の明治、昭和の津波記念碑―の6つ。約5億年前の地球活動から始まる三陸の歴史、長い年月をかけて形成された地形や景観、地下資源など多様な遺産に触れることが出来る。
 
最初に市商工観光課の職員から三陸ジオパークについて学んだ

最初に市商工観光課の職員から三陸ジオパークについて学んだ

 
 イベントでは市商工観光課の佐々木収主事が同ジオパークについて解説。▽旧釜石鉱山事務所にある「ナウマンの地質図」は三陸の成り立ちを物語る重要な資料であること▽両石町水海川の上流にある「千丈ヶ滝」周辺では、3~4億年前に赤道近くで生えていた植物“リンボク”の化石が見つかっていること―などを挙げ、参加者は太古の地球活動に思いをはせた。
 
 講話の後は順番に3つのメニューを体験。熱湯で軟らかくなるゴム素材を型に詰めて作るアンモナイトのレプリカ製作、VR(仮想現実)ゴーグルでの三陸ジオサイト巡り、手製の鋳型に溶かしたスズを流し込んでキーホルダーを作る鋳造体験と、ジオの一端に触れる時間を楽しんだ。
 
VRゴーグルで三陸のジオサイトを体験する子どもたち(右側)

VRゴーグルで三陸のジオサイトを体験する子どもたち(右側)

 
職員に教わりながら、キーホルダーの鋳型作り

職員に教わりながら、キーホルダーの鋳型作り

 
230度に熱して溶かしたスズを鋳型に流し込む様子を見学

230度に熱して溶かしたスズを鋳型に流し込む様子を見学

 
 小佐野小3年の千葉栞奈さんは「自分の住んでいるまちに(ジオに関わる)いろいろな場所があることを初めて知り、びっくりした。海のところ(千畳敷)に行ってみたい」と好奇心をそそられた様子。甲子小5年の髙橋龍之助君は「釜石にもジオサイトがあるのはうれしい。VRでいろいろな所を詳しく見ることができた。化石にも興味がある」と学びを深めた。
 
 参加者が体験した三陸ジオパークのVRゴーグルは、鵜住居町の根浜海岸レストハウスでも体験できる。施設内には三陸ジオを紹介する展示物もある。鉄の歴史館のキーホルダーを作る鋳造体験は事前予約が必要。問い合わせは同館(電話0193・24・2211)へ。
 
鋳型に流したスズは5分ほどで固まり、左下のようなきれいな形になる

鋳型に流したスズは5分ほどで固まり、左下のようなきれいな形になる

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釜石と青森の中学生、相互訪問 学び・友情を深め合う 平和と防災学習をテーマに

交流を楽しむ釜石市と青森市の中学生=9日、鵜住居町・うのすまいトモス

交流を楽しむ釜石市と青森市の中学生=9日、鵜住居町・うのすまいトモス

 
 夏休み期間を利用し、釜石市と青森市の中学生が相互訪問する交流事業が行われた。太平洋戦争末期に艦砲射撃や空襲で市街地が壊滅的な被害を受けた両市。それぞれ市内5校の1年生10人を派遣して「平和と防災学習」をテーマに学びを深め合った。
 
 終戦間近の1945(昭和20)年、釜石市は7月14日と8月9日の2度にわたって米英連合軍による艦砲射撃を受け、市街地は焼け野原になり、市民ら780人以上が犠牲になった。青森市は7月28日夜、米軍のB29爆撃機の空襲を受け、市中心部は焦土化し、死者は1000人を超えた。
 

青森での活動を報告

 
野田市長に青森市での活動を報告した釜石の中学生ら=3日、只越町・釜石市役所

野田市長に青森市での活動を報告した釜石の中学生ら=3日、只越町・釜石市役所

 
 釜石の生徒たちは7月27~29日の日程で青森を訪れ、現地の中学生と交流。三内地区の防災訓練や平和祈念式典に参加したり、戦災遺構をめぐって歴史に触れた。現地での活動を報告するため、8月3日に釜石市役所の野田武則市長を訪ねた。
 
 大平中の小野鳳(ふう)君は「痛々しい戦争の遺構を見た。平和の大切さだけでなく、戦争の愚かさも伝えなければ」と意識を高めた。釜石中の菊池恋捺(れな)さんは、新型コロナウイルスの感染防止を踏まえた避難所運営訓練が印象に残った。防護服を着用した状態での作業の大変さを体感。妊婦の居場所をつくるなど避難者が快適に過ごせるよう工夫していることに感心し、「避難後の生活も考えた訓練は参考になる。学んだことを各校で共有したい」と話した。世界文化遺産の三内丸山遺跡を見学したワクワク感を伝える生徒もいた。
 
 野田市長は「さまざまな経験をし、成長を感じる。他のまちを見ることで学び得たことを周りの人に伝えてほしい」と期待した。
 

戦争の歴史と防災の取り組みを次代に

  
戦争体験者の秋元厚子さん(左)に質問を投げかける青森市の中学生=9日、只越町・釜石市役所

戦争体験者の秋元厚子さん(左)に質問を投げかける青森市の中学生=9日、只越町・釜石市役所

  
 青森の中学生らは8月8~10日の3日間釜石に滞在。9日、青森に派遣された生徒たちと再会し、さまざまな交流活動で友好を深めた。鵜住居町の「いのちをつなぐ未来館」では震災当時の被災状況や児童生徒らの避難行動についてガイドから話を聞いた。戦没者追悼式に参加した後、市郷土資料館を見学。市役所では、釜石ユネスコ協会顧問などを務める唐丹町の秋元厚子さん(87)の戦争体験に耳を傾けた。
 
 浪打中の木村華乃さんは、唐丹村立国民小学校5年生の時に艦砲射撃を経験した秋元さんが紹介したユネスコ憲章前文にある「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」との言葉が強く印象に残った。世界では紛争や内戦が続く国や地域が絶えず、平和を保つ重要性を再認識。「人は個性豊か。個性を認め合うこと、思いやりを持つことが大切だ」とかみしめた。
 
震災の被害状況や児童生徒の避難行動を学ぶ青森の中学生ら=9日、鵜住居町・いのちをつなぐ未来館

震災の被害状況や児童生徒の避難行動を学ぶ青森の中学生ら=9日、鵜住居町・いのちをつなぐ未来館

 
 防災に関しては、備えの大切さを実感した人が多く、浪岡中の齊藤航平君も「自然災害はいつか起きてしまう。いつ起きても対応できるようにし、被害を少なくしたい。学んだことをどう次に伝えるか、どんな行動につなげるか、みんなで考えたい」と前を向いた。
  
未来館の見学で感じたことを伝え合い、交流を深めた

未来館の見学で感じたことを伝え合い、交流を深めた

  
 青森市では2018年から平和・防災学習事業として釜石に中学生を派遣。戦没者追悼式への参加や同年代の生徒と交流しながら、平和の尊さや防災について学んできた。コロナ禍で20、21年は実施を見送った。一方の釜石側も貴重な学びの機会になると、今年初めて子どもたちを派遣。今後隔年で青森を訪問する予定だ。
 

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「届け!ぼうさいのたね」全児童津波逃れた釜石小・卒業生ら 命守る教育、後輩へつなぐ

篠原優斗さん(手前右)と避難先ルートを歩く児童たち

篠原優斗さん(手前右)と避難先ルートを歩く児童たち

 
 東日本大震災時、学校管理下になかったものの、184人の児童全員が無事だった釜石小の事例から、生きることや命を守るために必要な力について考える小学生対象の学習会が3日、釜石市内で行われた。大津波を生き抜いた同校の卒業生と当時の教職員有志でつくる「2011team(チーム)釜石小ぼうさい」が主催。同校の防災教育や元児童の証言などをまとめた伝承本「このたねとばそ」も製作・配布し、震災後に生まれた子どもたちの心に新たな種をまいた。
 
 学習会には市内の小学5、6年生10人や教育関係者らが参加。同校卒業生で只越町の地方公務員篠原優斗さん(24)の案内で、震災当時の避難経路をたどる体験からスタートした。「もしも今、大地震が起きたらどう行動しますか」。篠原さんはそんな問い掛けをし、復興住宅や雨水ポンプ場が近くにある同町地内を歩き始めた。
  
あの日の避難行動を説明。緩やかな坂道の先に旧釜石小跡地がある

あの日の避難行動を説明。緩やかな坂道の先に旧釜石小跡地がある

  
 6年生だった篠原さんはあの日、同級生やその弟ら十数人と友達の家で遊んでいた。地震後に大津波警報が発令されると、すぐに避難することにしたが、避難先に迷った。距離は近いが海側に向かう「避難道路」か、より海から離れるが緩やかな坂道が続く「旧釜石小跡地」(天神町)か。みんなで話し合い、坂道に向かって走り出した―。
 
 信号機が止まり混乱するまちの様子や選択時の気持ちなどを伝えた篠原さん。上り坂に差し掛かったところで、「走ってみよう」と提案。あの日の避難行動を再現した。旧釜石小跡地に着くと、「走るだけでも大変だよね。でもね…」と一呼吸。低学年の児童を先に走らせ、遅れそうな子はおんぶしたりして高学年の子が手助けしたことを紹介し、「いざという時にも役立つ人とのつながりを大切にしてほしい」と呼び掛けた。
 
青葉ビルで行われたパネルディスカッション。中央が内金崎愛海さん

青葉ビルで行われたパネルディスカッション。中央が内金崎愛海さん

 
 大町の青葉ビルに移動し、パネルディスカッション。パネラーに、岩手医大医学部2年の内金崎愛海(あみ)さん(20)=盛岡市=が加わった。震災当時は釜石小3年生。自宅に一緒にいた祖父母は過去の経験から逃げようとせず、泣きながら必死に避難を促した。結果、自分の命を守り、家族の命も救った。「弱虫で泣き虫だったけれど、説得できたのはきっと学校での防災教育があったから。経験はなくても『50センチの波でも人は流される』ことを知っていたし、映像で見た津波の恐ろしさも頭にあった」と振り返った。
  
災害への備えや生きることについて話し合う子どもたち

災害への備えや生きることについて話し合う子どもたち

  
 先輩2人の経験を聞いた後、児童たちはグループワークに取り組んだ。避難の判断ができた理由や必要な力、自分たちにできることを話し合った。「普段の生活や行動の積み重ねが、いざという時に力になる」「避難訓練は本気でやる」など備えの大切さを再認識した。
 
 釜石小6年の井上柊真(とうま)君は1年ほど前に八幡平市から転校してきたばかりで、釜石の歴史や防災の取り組みを知りたいと参加。「家にいる時でも即時に対応し、避難ができてすごい。相手を信頼する大切さを知ることができた。避難の方法は災害の種類や地域によって違いがあるみたい。もっと勉強したい」と刺激を受けた。双葉小5年の川上仁愛(にちか)さんは「大人を説得する勇気に感動した。命は自分で守らなきゃいけない。学んだことを整理して、友達や家族に伝えたい」と背筋を伸ばした。
 

防災教育伝承本「このたねとばそ」 証言や職員対応まとめる

 
伝承本「このたねとばそ」を紹介する加藤孔子さん

伝承本「このたねとばそ」を紹介する加藤孔子さん

  
 チーム釜石小の代表を務めるのは、震災発生時に釜石小校長だった加藤孔子(こうこ)さん(64)=盛岡市、岩手大学教職大学院特命教授。11年余りの時を経て人々の記憶から薄れ始め、学校では経験をしていない世代が増える中、風化を防ぎ、教訓を伝えようと学習会を企画した。
  
 本は同校の防災教育を未来へ、全国へ発信しようと製作した。7月28日に発刊。A4判、83ページで、▽津波防災安全マップ作りや下校時避難訓練など防災教育の実践▽あの日、自己判断で避難した児童の証言▽震災後の学校再開に奔走した教職員の対応-などの詳細を記録する。学習会で経験を伝えた篠原さん、内金崎さんも執筆。加藤さんが名誉館長を務める鵜住居町の「いのちをつなぐ未来館」で50冊を無料配布している。
  
 学習会の様子を見守った加藤さんは「震災を体験した先輩たちの声という種を飛ばすことができた」と目を細める。学校の管理下になかった子どもたちが自分たちで判断、行動し、全員が各自で命を守った同校の防災教育は、他県の教育関係者からも注目を集めるが、「まねるだけでは形骸化してしまう」との懸念も。「地域、子どもたちに合わせたものをつくらなければいけない。釜小の実践や提言、あの時の思いを種として改めて届けたい。各地で新たな防災教育の芽が出て花を咲かせてほしい」と願う。
  
いつどこでどんな災害が起こっても、自分なりの避難行動をとって―と願いを込め、体験を発信する

いつどこでどんな災害が起こっても、自分なりの避難行動をとって―と願いを込め、体験を発信する