「釜石ラーメン」映画完成 地元で上映会・トークショー 撮影秘話に市民ら興味津々
完成披露上映会で撮影秘話を紹介する出演者ら
麺は細いが、絆は太い。人情・根性、釜石ラーメン―。釜石市が舞台の映画「喜劇 釜石ラーメン物語」が完成し、3日に大町の市民ホールTETTOで地元向けの上映会が開かれた。チケットが完売する盛況ぶりで、市民ら約800人が鑑賞。上映後には監督や出演者によるトークショーもあり、作品に込めた思いや撮影秘話を紹介した。
映画は、架空のラーメン店「小川食堂」が舞台。店主として味を守っていた母が東日本大震災で行方不明となり、代わりに父が店を切り盛りしている。苦境の経営を巡って姉妹がぶつかり合う中、父が倒れて入院。心配する町の人が次々と見舞いに来る中で、姉妹は店の存在意義や家族の絆を見つめ直していく。そして、母がつないできた味「最高の一杯」を目指して奮闘する―というストーリー。監督は今関あきよしさん、主人公の姉役を俳優の井桁弘恵さんが演じた。
今年4月に市内で撮影。小川町をメイン舞台に、昭和の風景が色濃く残るノスタルジックな食堂、町並みを映し出した。釜石出身の俳優佐々木琉(りゅう)さんのほか、多くの市民もエキストラとして参加。上映会は全国で公開する前に、協力してくれた住民たちに見てもらおうと催された。
記念撮影で観客にポーズを指示する今関監督(前列左)ら出演者
多くの市民らが映画鑑賞とトークショーを楽しんだ
上映後のトークショーで、今関監督は「釜石を訪れ復興の様子を見る中で、この街で映画を撮りたいと考えた。帰りにラーメンを食べた時、『これだ!』と。震災がテーマで暗い部分もあるが、ラーメンを中心に家族愛に満ちた、笑いあり、明るさを散りばめた映画にしたかった」と思いを明かした。
物語に登場する釜石ラーメンは、細い縮れ麺と琥珀(こはく)色に透き通ったスープが特徴のシンプルなしょうゆラーメン。市内では約30店舗で提供している。父役の利重剛さんは「3分の1は食べた。あと20軒ある。いつか…」と余韻を残した。思い出深い作品になったと振り返り、「応援しようという気持ちで撮影に臨んだが、結局応援され、励まされて元気をもらって帰ることに。大きな家族愛を感じながら演じた。その雰囲気を楽しんでほしい」と見どころを伝えた。
作品に込めた思いを語る今関監督(左)、利重さん
ロケ中の秘話として今関監督が挙げたのは、井桁さんが豪快に麺を落とした湯切りのシーン。井桁さんは「結構難しい。でも特技が湯切りになった。ラーメンを作る役はいつ来ても大丈夫」と胸を張り、会場を沸かせた。
釜石の印象で出演者から多く聞かれたのは、咲き誇る桜や野生のシカとの遭遇といった自然の豊かさ。子グマを目撃したと目を大きくしたのは、小川食堂の常連客で美容室店主役の大島葉子さん。「クスッとするような小川町のお笑い担当」と自己紹介し、思い出深い市民エキストラとの触れ合いを回想した。
撮影中のエピソードを紹介する井桁さん(左)、大島さん(中)、佐々木さん
今作が、映画デビュー作となった佐々木さん。監督から「カット、OK!」と伝えられたが、しっくりせず撮り直しを申し出たエピソードが紹介されると、前向きな姿勢に客席から大きな拍手と声援が届いた。俳優という職業、古里の良さを改めて実感。祖父母が鵜住居町でラーメン店を営んでおり、しっかりと宣伝もした。
映画の主題歌「ひかり射し込む場所」を熱唱する洸美さん(左)
映画の主題歌を担当する日台ハーフのシンガーソングライター洸美(ひろみ)さんも登場し、「ひかり射し込む場所」を披露。許しと希望をテーマに、台本を何度も読み、撮影中の釜石の風景写真を見ながら制作したことを紹介した。
映画は来年4月から県内で上映し、その後全国で公開される予定。今関監督は「英語字幕をつけて海外でも上映し、ワールドワイドに釜石を発信したい。被災したイメージだけではなく、映画を通して釜石のもっといろんな面(麺)を知ってほしい」と熱を込めた。
上映会終了後、感動を伝える観客に笑顔で応える出演者ら
野田町の佐々木誠治さん(75)、公子さん(74)夫妻は「面白かった」と声をそろえた。「なじみのある景色ばかり。つながり、絆がやっぱり大事だね。映画がヒットして、釜石ラーメンが知られるようになったらうれしい。たくさんの人に来て食べてもらえたら復興につながる」と笑顔を重ねた。
釜石新聞NewS
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