タグ別アーカイブ: 文化・教育

katfes1

釜石商工生が商品開発「鹿肉カツバーガー」 3年ぶりに公開「商工祭」で販売

課題研究で開発に取り組んだ「レモンタルタル鹿肉カツバーガー」

課題研究で開発に取り組んだ「レモンタルタル鹿肉カツバーガー」

 
 釜石市大平町の県立釜石商工高(伊東道夫校長、生徒198人)で10月22日に開かれた「商工祭」は、生徒の同居家族に限定して公開された。商業、工業高の統合から14年目の学校祭。工業系、商業系の特徴を生かして成果を発表する中、来校者の人気を集めたのは、総合情報科の3年生7人が地域企業と商品開発・販売した「鹿肉カツバーガー」。1個600円で100個を限定販売すると、約2時間半で完売した。
  
「おいしいよ」。調理、売り込みなど役割分担しながら販売体験する生徒

「おいしいよ」。調理、売り込みなど役割分担しながら販売体験する生徒

  
 カツバーガーは課題研究の一環で開発。7人は、▽市内でシカが多く目撃され、農林業被害だけでなく一般住家の庭木などの食害もある▽わなの設置などで捕獲する対策の実施―などを学び、「駆除したシカをうまく利用できないか」と考え、約半年間取り組んできた。
 
 開発には、農業被害が課題となっている二ホンジカの活用に官民連携で取り組む「大槌ジビエソーシャルプロジェクト」が協力した。カツに使ったのは、調理しやすいモモ肉。ソースはさっぱり系の「レモンタルタル」と、こってり系の「味噌(みそ)カツ」の2種類を用意した。シカ肉が初めてという人も食べやすいよう試行錯誤した。
 
 同日限りの販売だったが、2つの味を楽しもうと複数個買う保護者もいた。開発グループのリーダー中根愛子(あこ)さんは「かみ切りやすい肉の厚さ、肉に合うソースの味を調整するのが大変だったが、納得いく出来。タルタルソースは自分たちで手作りし、レモン風味でさっぱりしている」と自信たっぷり。「地域課題に向き合えた」と手応えを感じていて、カツバーガーをきっかけに「シカ肉を使った料理や革製品づくりが市内でも広がってほしい」と願った。
 
生徒7人が学びや願いを込めて「鹿肉バーガー」を販売した

生徒7人が学びや願いを込めて「鹿肉バーガー」を販売した

 
 学校祭のテーマは「We make everybody smile~伝統を越えろ商工生」。新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、制限付きながらも3年ぶりに一般公開できる喜びを込めた。電気電子科は電子回路の実演やエネルギー模型の展示、機械科は旋盤や溶接作業の実演などを行った。総合情報科は伝統の「商工マーケット」を開き、全国から仕入れた菓子や飲料などを販売。ステージ発表もあり、商工虎舞や吹奏楽が登場した。
 
旋盤の実演を見守る来校者。工業系学科はものづくり実習の様子を公開した

旋盤の実演を見守る来校者。工業系学科はものづくり実習の様子を公開した

 
総合情報科(商業系)の「商工マーケット」は全国のおいしいものを販売した

総合情報科(商業系)の「商工マーケット」は全国のおいしいものを販売した

 
文化祭を盛り上げるステージ発表。若々しい虎舞の演舞を披露した

文化祭を盛り上げるステージ発表。若々しい虎舞の演舞を披露した

 
 同校入学時からコロナ禍で過ごした3年生は、修学旅行など多くの行事が中止されてきた。そんな中で保護者らを招いた商工祭の開催に、機械科の前川覇龍(はる)君は「自分の頑張りを親に伝えられたことがとてもうれしかった」と喜ぶ。来春からは県内企業で働くことが決まっていて、「実習の中でやってきたものを生かせるよう努力する」と前を向く。勉強のほか、虎舞にも取り組んできた前川君の様子を見守る両親は「最後の文化祭、よく頑張った。ここでやりたいことを見つけることができたのが一番の成果。希望した仕事も見つけたんだから、熱意を持って取り組んでほしい」と目を細めた。

yumedan1

防災意識の地域格差を埋めたい! 釜石高生有志「クロスロード」作成 災害時に迫られる選択を追体験

「釜石版クロスロード」を作成した釜石高生

「釜石版クロスロード」を作成した釜石高生

  
 災害時にどのような行動を取るべきかをいくつかの選択肢から選ぶ防災ゲーム「クロスロード」。釜石高の生徒有志で結成する防災・震災伝承グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」のメンバー4人がこのほど、釜石版を作成した。「イオンタウン釜石で買い物中に大地震が起こったら、あなたならイオン内で垂直避難する?より高台の避難場所の薬師公園に逃げる?」。東日本大震災時に釜石市民が置かれた状況や実際の避難行動、実在する場所を盛り込んで選択を迫る。18日、三陸探究実習で釜石市を訪れた盛岡三高1年生40人に体験してもらった。
  
 体験会は鵜住居町の鵜住居公民館で開催。盛岡三高生は5、6人のグループに分かれ、釜石高生の進行に従ってクロスロードに挑んだ。用意された問いは、「避難しないと言い張る祖父母を置いて逃げるか、説得するか、一緒に逃げるか」「車いすの人を自分一人で助けに行ったが、15分たってしまった。諦めて逃げるか、ほかの案を考えるか」「ペットを連れて避難所に入るか」など六つ。「Yes(はい)」「No(いいえ)」の2択、あるいは想定される行動などの3択から「自分ならどうするか」を考えた。
  
クロスロードに挑戦する盛岡三高の生徒。いざという時の判断を考えた

クロスロードに挑戦する盛岡三高の生徒。いざという時の判断を考えた

  
 「海で遊んでいると大地震が発生。『これほど大きな揺れでは避難先の宝来館も危険』と言われ、宝来館の裏山まで逃げた。このことを知らない多くの人が宝来館に集まっている。波が見えるほど迫っていることを知らせに行くか」との問題は、「Yes」「No」で判断。「たくさんの命を助けられる」「走れば間に合う」という理由で「Yes」を選ぶ生徒もいれば、「叫べばいい。戻ってはいけない」と「No」を強調する声もあった。どの問題にも正解はなく、ほかの人の意見を聞きながら多様な視点を共有した。
  
選んだ答えとその理由を発表する盛岡三高生

選んだ答えとその理由を発表する盛岡三高生

  
 命を左右する選択が続き、盛岡三高の奥玉悠花さんは「判断が難しい。もっとたくさんの選択肢があると感じたが、沿岸で暮らしたことがなく、その時にならないと分からないことが多い。沿岸で暮らす人の声をもっと聞いてみたら、よりよい選択ができ、考えが深まる。自分の地域の災害に当てはめて考えてみるのもいい」とうなずいた。
  
ほかのグループの活動を見て回り、多様な考えに触れた

ほかのグループの活動を見て回り、多様な考えに触れた

  
 釜石版は、出身中学校によって防災意識の差があることに着目し、その差を埋めようと作成された。発案者は、震災時に津波から避難した経験のある中居林優心(こころ)さん(2年)。1年生の探究活動で、津波に関する防災意識や避難訓練参加の有無などを同級生らから聞き取ったところ、市内の内陸部と沿岸部の学校では格差があることを発見した。同じまちに暮らす全員が同じレベルの防災意識を持ってほしい―。津波からの避難を経験した小笠原桜さんや佐々木太一君、大瀧沙來(さら)さん(ともに2年)とチームを組んで、実在する場所での実体験を交えた設問を考えた。
 
「防災意識が頭の中に長く残るように」。発案者の中居林さん(画面左上)は期待する 

「防災意識が頭の中に長く残るように」。発案者の中居林さん(画面左上)は期待する

  
 盛岡三高生が真剣に取り組む姿に、「想像以上にちゃんと考え、話し合ってくれた。自分の選択とは異なる人の意見を聞くことができて新鮮だった」と4人。「その人」の考えに共感も反対もできる時間、互いの意見が見える機会に手応えを感じ、「市内の小中学校でも活用できたら」と思いを巡らせる。中居林さんは「防災の意識が少しでも長く頭の中に残っていれば。自分の命を守るのは自分しかいない」と言葉に力を込めた。

 

photolife1

楽しく撮影、楽しく展示―フォトライフ写真展 “日常”を独自の視点で捉えた60点

四季折々の自然などを独自の視点で切り取った作品が並ぶ=20日・TETTO

四季折々の自然などを独自の視点で切り取った作品が並ぶ=20日・TETTO

 
 「楽しく撮影、楽しく展示」を合言葉に、写真が好きな人なら誰でも自由に出品できる「フォトライフ写真展」(同実行委員会主催)が23日まで、釜石市大町の市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。新型コロナウイルス感染症の影響で3年ぶりの開催。同実行委の多田國雄代表(79)は「家族や風景、旅行の記録など、さまざまな作品が並ぶ。社会活動が動き始めたように、やる気になった撮影者たちの視点から日常を感じ、楽しんでほしい」と来場を呼びかける。
 
 作品は6ツ切サイズに統一しているが、展示は気軽な自由参加が基本。市内外の写真愛好者ら15人がこれまでカメラに収めた中からお気に入りの作品2~8点、計56点を出品した。海や山など四季折々の風景、「SL銀河」の雄姿、郷土芸能、旅の思い出、身近にある動植物、家族のスナップ写真…。撮影者が出合い、心動かされた「日常」が並ぶ。
 
何気ない日常の風景を写す作品にじっくり見入る来場者=20日・TETTO

何気ない日常の風景を写す作品にじっくり見入る来場者=20日・TETTO

 
 日常に親しみを―。この写真展は独自に撮影を楽しんでいる写真愛好者らが年に一回、見てもらいたい写真を持ち寄り、展示を通じ交流を深める場となっている。地元の写真家、故浅野幸悦さんが中心になって1997年からスタート。浅野さんの亡き後、遺志を継いだ多田代表らが回を重ねてきた。コロナ禍で2020、21年は自粛。24回目となる今回は会場を変えて気分一新。「ため込んだエネルギーを注ぎ込んだ一枚」を並べる。
 
撮影者のお気に入りの一枚を使った写真展の案内状

撮影者のお気に入りの一枚を使った写真展の案内状

 
 展示会を前に15日、出品者が小川町の市働く婦人の家に集まり、作品のタイトルづくりなどを行った。写真歴が50年を超える小佐野町の市村利幸さん(68)は「光が作り出す景色」を好んで撮影しているといい、今回は釜石大観音と朝日をテーマにした作品など6点を出品。「いい写真はなかなか撮れない。だから続く。満足したら終わり。下手だから、いいんじゃないか」と謙虚さをのぞかせる。
 
展示会に向けた準備に取り組む写真愛好者ら=15日・市働く婦人の家

展示会に向けた準備に取り組む写真愛好者ら=15日・市働く婦人の家

 
 長く続くコツは「批評しないこと」と出品者ら。「好き勝手楽しんでいる人たちが見てもらいたいものを展示。テーマを決めているわけではなく、あれこれ考えず活動できる。束縛がない」と、展示会を通して顔を合わせる機会を楽しんでいる。
 
日常に親しみ、撮影を楽しんでいる出品者たち=15日・市働く婦人の家

日常に親しみ、撮影を楽しんでいる出品者たち=15日・市働く婦人の家

 
展示会場でもカメラを手に「日常」を写す多田代表(左)=20日・TETTO

展示会場でもカメラを手に「日常」を写す多田代表(左)=20日・TETTO

 
 展示する作品は芸術的、商業用写真もあるが、趣味として撮影したもの、家族の記念写真などもある。写真展を開催することで、展示に参加する人が増えることを期待。多田代表は「日常で出合った光景を写すだけ。型にはまらず自由に楽しんでいる様子、年々変化する撮影者の視点から、それぞれの日常を感じてもらえたら」と話す。
 
 写真展は入場無料。開催時間は午前9時~午後6時まで(最終日は午後4時)。
 

salmon8937

地元漁師、大学職員からサケの定置網漁学ぶ かまいしこども園児 海や魚に興味津々

海や魚について講師に質問する園児=かまいしこども園サケ学習

海や魚について講師に質問する園児=かまいしこども園サケ学習

 
 釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児77人)の年長児11人は11日、地元漁師や大学職員からサケの定置網漁について学んだ。海洋教育パイオニアスクールプログラム(笹川平和財団海洋政策研究所など主催)の助成で取り組むサケ学習の一環。映像を見ながら、サケの特徴や定置網での漁獲方法などを教わった。12月には雌サケの解体も予定する。
 
 7月に平田の県水産技術センターを見学し、本県でとれる魚などを学んだ園児たち。2回目となるこの日の学習は同園で行われた。講師を務めたのは釜石東部漁協所属の漁師佐々木崇真さん(37)と、魚食普及や漁業体験、海洋教育のコーディネートを行う「すなどり舎」代表で、岩手大三陸水産研究センター特任専門職員の齋藤孝信さん(61)。地元で行われる定置網漁の映像を見せながら解説した。
 
実物と同じ重さのサケのぬいぐるみを抱え、その大きさを実感

実物と同じ重さのサケのぬいぐるみを抱え、その大きさを実感

 
定置網でサケを漁獲する様子などを映像で見せた

定置網でサケを漁獲する様子などを映像で見せた

 
初めて見るサケ漁に目がくぎ付け。驚きの表情も

初めて見るサケ漁に目がくぎ付け。驚きの表情も

 
 佐々木さんは「サケの雄と雌は鼻の形で見分けることができ、卵を持つ雌は腹が膨れている」と説明。図を使って定置網漁の仕組みを教えた。定置網では魚が前にしか進めない特性を利用して囲われた網に誘導。周回するうちに魚が入る「落とし網」と呼ばれる場所に2船をつけ、片方の船が近づきながら網を絞り漁獲する。周回中に魚の約6割は網の外に逃げるため、「とりすぎない自然にやさしい漁法」と齋藤さん。
 
漁師の佐々木崇真さん(右下写真)が定置網の構造や魚の動きについて解説

漁師の佐々木崇真さん(右下写真)が定置網の構造や魚の動きについて解説

 
 三陸沿岸の近年のサケ水揚げ量は激減している。佐々木さんは「昔はこの時期になれば1万本ぐらいとれていたが、今は1カ月に3、4本ということも。水温が高くなってしまったことが要因」と海洋環境の変化も示した。この日は、同園の教諭らが撮影した釜石市魚市場の水揚げや競りの様子も上映。園児たちは市場の仕事についても学んだ。
 
 最後は園児からの質問コーナー。「魚はどうやって眠るの?」「サケが戻ってくる川にごみを捨てたらどうなるの?」「深い海にも魚はいるの?」―などなど、好奇心旺盛な疑問が飛び出した。中には、世界的な問題となっている海洋プラスチックごみについて質問する子も。齋藤さんは海ごみの流出原因などを説明し、「2050年には海の中の魚よりもプラスチックごみが多くなるという計算もある。そうなると魚も食べられなくなる。みんなも海にごみを流さないような努力をしてほしい」と話した。
 
「なぜ」「どうして」。子どもたちは知りたいことがいっぱい!

「なぜ」「どうして」。子どもたちは知りたいことがいっぱい!

 
園児の質問に丁寧に答える齋藤孝信さん。海洋環境への関心向上を願う

園児の質問に丁寧に答える齋藤孝信さん。海洋環境への関心向上を願う

 
 佐藤和君(5)は「お話聞くの、楽しかった。サケはお家でも食べる。塩焼きが好き。シャチのお勉強もしてみたい」と海の魚に興味津々。生のサケを見る次回の学習を心待ちにした。
 
 海洋教育パイオニアスクールプログラムは笹川平和財団、日本財団、東京大海洋教育センターが共同で実施。海の学びに取り組もうとする学校などに費用を助成する。幼児教育施設で取り組むのは全国で同園だけ。昨年度に続き2年目の採択を受け、「サケの学習を通して育む郷土愛と釜石のDNAの継承」と題して学習を進める。市内では本年度、同プログラムで釜石小がワカメの学習、釜石高が深海魚の学習に取り組んでいる。

taishogoto1

大正琴で懐かしのメロディー 琴城流・白百合会(釜石) 成果発表「若くあるため挑戦」

稽古の成果を披露する白百合会の「大正琴のつどい」

稽古の成果を披露する白百合会の「大正琴のつどい」

 
 釜石市の琴城流大正琴・白百合会(鈴木琴節永代表)は8日、大町の市民ホールTETTOで「大正琴のつどい」(市民芸術文化祭参加)を開き、日ごろの稽古の成果を発表した。女形舞踊を披露する尚玉泉さん、同会に練習場所を開放する日本キリスト教団新生釜石教会の牧師柳谷雄介さんが賛助出演。演奏に乗せて踊って歌うにぎやかな舞台を約100人の観客が楽しんだ。
 
観客は大正琴の演奏に合わせ踊りや歌も楽しんだ

観客は大正琴の演奏に合わせ踊りや歌も楽しんだ

 
 鈴木代表と会員5人が出演し、「北上夜曲」「南部蝉しぐれ」「上を向いて歩こう」など昭和から平成の歌謡曲など15曲を演奏した。柳谷さんや会員の北條市さんが演奏に乗せて歌う場面では、マスク越しながら観客も歌詞を口ずさみ歌声を重ねた。「津軽の花」「雪椿」「女のしぐれ」では尚さんのあでやかな舞を堪能。「釜石小唄」では手踊りや手拍子で演奏を盛り上げる人の姿も見られた。
  
会員は稽古の成果を発揮し息の合った演奏を披露した

会員は稽古の成果を発揮し息の合った演奏を披露した

  
はつらつとした歌声を響かせた柳谷さん(右)

はつらつとした歌声を響かせた柳谷さん(右)

 
尚さんはあでやかな舞で観客を魅了した

尚さんはあでやかな舞で観客を魅了した

  
 大渡町の佐々木かつのさん(80)は東日本大震災後の避難生活で親交を深めた友人2人と鑑賞。懐かしさがにじむような大正琴の音色、朗らかな歌声、華麗な踊りを一度に楽しんで満足な様子で、「耳と目の保養になった」と目を細めた。
  
 同会の活動は35年続く。現在の会員は70~90代の8人。月2回、同教会で稽古に励む。市内の復興住宅や各地区の生活応援センターなどで開く演奏会は新型コロナウイルスの感染状況に配慮しながら継続。つどいも欠かさず開催し、回を重ねてきた。
  
 大正琴を始めて22年目の小笠原みき子さん(72)=栗林町=は「お客さんとの距離が近くて緊張したが、手拍子などの反応があってだんだん気分が乗って楽しく演奏できた。老化で覚えは悪くなっているが、仲間がいるから続けられる。演奏会を見て興味を持ってもらえたら、うれしい。知っているような曲ばかりなので、一人でも多くの人に触れてもらえたら」と期待した。
 
演奏会を終え、充実感あふれる笑顔を見せる会員ら

演奏会を終え、充実感あふれる笑顔を見せる会員ら

  
 つどいでは会員5人に琴城流大正琴振興会本部表彰の伝達も行われた。80歳以上の永年表彰は北條さん、増田ツル子さん、川畑節さんが受賞。大正琴の普及に貢献した功労者として小笠原さん、阿部孝子さんに賞状が贈られた。
  
 鈴木代表は「35年、いろんな人に出会い、助けられた。それが何より。『若くあるためには挑戦すること』がいいと聞く。新しい曲に挑みながら、活動を続けたい。趣味や活動の場が広がるような演奏会も開いていきたい」と前を向いた。
 

tukimichakai1

浴衣姿で茶道の稽古 釜石・表千家こども教室 秋色の月見茶会、おもてなし学ぶ

浴衣姿でお茶をいただく表千家茶道教室の子どもたち

浴衣姿でお茶をいただく表千家茶道教室の子どもたち

 
 釜石市伝統文化表千家茶道こども教室が8日、只越町集会所で行われ、受講生らが浴衣姿で参加した。十五夜の「後の月」とも呼ばれる十三夜にちなみ月見茶会を企画し、和装に親しんでもらおうとの趣向。子どもたちは、おしとやかな立ち居振る舞いを心掛けながら稽古に励んだ。
  
 同教室は表千家成和会(互野宗哲会長)を母体に実行委員会を組織し開催(文化庁の伝統文化親子教室助成事業)。19回目の今年は7月に開講。小中学生10人が、礼儀作法からお点前まで茶道の知識や技を学ぶ。新型コロナウイルス感染症の影響で8月と9月の稽古は休み、この日が2回目の勉強会となった。
 
今年2回目の稽古に臨む浴衣姿の受講生ら

今年2回目の稽古に臨む浴衣姿の受講生ら

 
 集会所には「旦坐喫茶」と書かれた掛け軸、ススキやツキミソウ、シュウメイギクなど季節の花を生けた席が用意された。講師陣を客として迎え、受講9年目の川﨑拓真君(釜石東中3年)が「立礼点前」を披露。千田愛結(あゆみ)さん(双葉小4年)、千葉結花さん(平田小5年)らはお運びでもてなしに協力した後、客側も体験した。
 
月見茶会では長年稽古に励んできた中学生がお点前を披露した

月見茶会では長年稽古に励んできた中学生がお点前を披露した

 
 継続年数や習熟度に合わせグループ分けした稽古では、ふくささばき、お茶やお菓子のいただき方、お運びなどの所作をおさらい。ほぼ完璧なお点前を披露した川﨑君は、もてなしのために準備した茶器や茶わん、茶しゃくなどの道具を「拝見」に出す所作を確認したいと講師に申し出て、向上心を見せた。
 
 受講3年目の白野真心(まみ)さん(釜石小6年)は「浴衣を着ると懐紙(かいし)とかを入れるところがあって便利。普段より歩幅が狭くなって、決められた所作で歩くことができる」と実感。指導を受けているお点前を「一人でしっかりできるようにする」のが目標だという。
 
「一服どうぞ」。所作を確認しながらお点前の稽古

「一服どうぞ」。所作を確認しながらお点前の稽古

 
習熟度別指導に生徒たちは熱心に取り組んだ

習熟度別指導に生徒たちは熱心に取り組んだ

 
 勉強会は来年1月まで月に2回程度を予定する。互野会長は「世の中は不安定でも季節は忘れずにめぐり、美しいものや喜びをもたらす。茶の世界で、秋は趣のある豊かな季節。工夫しながら一服のお茶を楽しんでもらえたら。稽古に楽しみを見いだし、茶道の心を学んでほしい」と期待する。

shimingassho7702_

釜石の音楽文化継承へ決断の一歩 「市民合唱祭」感染症対策施し3年ぶりに開催

2年の中止を経て再開された「釜石市民合唱祭」

2年の中止を経て再開された「釜石市民合唱祭」

 
 第42回釜石市民合唱祭(市、市芸術文化協会、市合唱協会主催)は2日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス感染症の影響で一昨年、昨年と開催が見送られてきたが、同市が誇る合唱文化を絶やすまいと、感染防止対策を施しての実施を決断。3年ぶりのステージが実現した。市内で活動する8団体約100人が出演し、再開を待ち望んだ観客と喜びの時間を共有した。
 
 同祭は、釜石市内で活動する合唱団体や高校音楽部が一堂に会する年1回の発表の場。市民芸術文化祭の発表部門の一つとして位置づけられる。初演は1978年12月。同ホールの前身「釜石市民文化会館」の落成を記念して開催されたのが始まりで、翌79年4月に市合唱協会が設立された。
 
 長い歴史を誇る同祭だが、感染症が原因での2年連続の中止は異例のこと。収束が見通せない中で、各団体の活動意欲を維持し、釜石の合唱の灯(ひ)をともし続けるためには発表の機会は不可欠と、同協会は開催への道を模索してきた。各団体が日々の練習から基本的な予防策を忠実に実行すること、ステージでもマスクを着用し、間隔をとって並ぶことなどを申し合わせ、開催にこぎ着けた。参加団体は3年分の思いを胸に、女声合唱や混成合唱などで美しいハーモニーを響かせた。
 
 親と子の合唱団ノイホフ・クワィアーは今年で創立45年。3月のコンサート後、44年在籍した団員が急逝するという深い悲しみを経験した。この日は3月に共に歌った「群青」「未来へ」の2曲を歌唱。小澤一郎代表(45)は「きっと会場のどこかで一緒に歌ってくれていたと思う。唯一の大先輩で、多くのことを学ばせてもらった。教えを受け継ぎ活動していきたい」と誓いを新たにした。
 
亡くなった先輩団員への思いを胸に声を合わせるノイホフ・クワィアー

亡くなった先輩団員への思いを胸に声を合わせるノイホフ・クワィアー

 
 釜石童謡を歌う会は平均年齢76歳。手話を交えた「小さな世界」と、花がテーマの曲でメドレーを聞かせた。現在、3人で活動中の釜石高音楽部は「AVE MARIA Ⅱ」をアカペラで、「パプリカ」を振り付きで発表。少ない人数で最大限の力を発揮した。昨年30周年を迎えた甲子歌う会は、地元ミュージカルで歌った「夢の街かまいし」などを披露。懐かしいまちの姿を思い起こさせるセリフの掛け合いも交え、楽しいステージを繰り広げた。
 
手話を交えた合唱を披露した釜石童謡を歌う会

手話を交えた合唱を披露した釜石童謡を歌う会

 
一人一人が持てる力を発揮した釜石高校音楽部

一人一人が持てる力を発揮した釜石高校音楽部

 
セリフを盛り込んだ舞台で楽しませた甲子歌う会

セリフを盛り込んだ舞台で楽しませた甲子歌う会

 
 大渡町の中村健勇さん(27)、真偉佳さん(26)夫妻は同祭に初めて来場。「マスクをしながらも皆さん、声がよく響いていて、きれいな歌声だった。知っている曲もあり楽しめた」と心地良い時間を堪能。コロナに負けず、頑張っている各団体に「元気をもらう。さまざまな困難の中でも活動をつないでいこうという姿勢は素晴らしい」と口をそろえた。
 
震災後に発足し、精力的に活動する鵜住居歌う会

震災後に発足し、精力的に活動する鵜住居歌う会

 
各団体の発表を楽しみ、大きな拍手を送る観客

各団体の発表を楽しみ、大きな拍手を送る観客

 
 合唱協会の柿崎昌源会長(66)は「これ以上中止が続くと、釜石の合唱そのものが消滅してしまうのではという危機感もあった。(感染症を)怖がるだけでは何も解決しない、どんな形であれやってみようと準備を進めてきた。今回やり遂げたことは、みんなの自信にもなったと思う。次につながる一歩になれば」と願った。

energy6966

栗林小3、4年生 エネルギー学習の成果発表 好奇心くすぐるサイエンスショーも

 「東北電力エネルギーチャレンジ校」として取り組んだ学習の成果を発表する栗林小の3、4年生

「東北電力エネルギーチャレンジ校」として取り組んだ学習の成果を発表する栗林小の3、4年生

 
 東北電力岩手支店(山中貞一支店長)の支援を受け、電気やエネルギーの学習を進めてきた釜石市の栗林小(八木澤江利子校長、児童33人)で9月28日、成果発表会が開かれた。5月から同学習に取り組んできた3、4年生13人が、3つのテーマでまとめ発表。自分たちの未来に関わるエネルギー問題について、他学年の児童らに分かりやすく伝えた。発表後は岩手大理工学部の高木浩一教授によるサイエンスショーもあり、科学の楽しさを体感した。
 
 同校は、同支店が取り組む本年度の「東北電力エネルギーチャレンジ校」に応募。社員によるエネルギー出前講座、同社の栗橋発電所(水力)見学から得た学びの成果を児童たちがまとめた。縦割りで作った3グループがそれぞれ、1.いろいろな発電の種類2.地球温暖化とエネルギー3.環境にやさしいエネルギー、というテーマで発表した。
 
 1グループは火力、原子力、風力、バイオマスの各発電方法と長所、短所を紹介。2グループは地球温暖化(二酸化炭素増加)の原因、温暖化が及ぼす影響、防止策について説明した。3グループは水力、太陽光発電に着目。自作したミニ発電機やソーラーカーでの実験、発電機の分解などに挑戦した様子を映像で見せた。
 
各グループがそれぞれのテーマで学習成果を発表

各グループがそれぞれのテーマで学習成果を発表

 
発電実験の映像を見せながら発表したグループも

発電実験の映像を見せながら発表したグループも

 
 限りある資源、安定的な電力確保、地球環境への負荷低減などの視点で、今後必要な施策として3つのグループが導き出した答えは「エネルギーミックス」という考え方。長所を生かし短所を補うためにさまざまな発電方法を組み合わせることが大事とし、同時に節電など自分たちができる行動も不可欠とした。
 
 実験に取り組んだ小國怜義君(4年)は「電気を作るのは大変だった。使う量を減らすなどエネルギーを大切にしていきたい。学んだことは家族にも伝える」と意欲的。学習機会をくれた東北電力の仕事にも興味をそそられた様子で、「将来、入れたら」と憧れをのぞかせた。
 
電気やエネルギーに関わる楽しい実験を見せた岩手大理工学部電気電子通信コースの高木浩一教授

電気やエネルギーに関わる楽しい実験を見せた岩手大理工学部電気電子通信コースの高木浩一教授

 
 発表会の後はお待ちかね、サイエンスショーの開演。前段で高木教授は児童たちにクイズを出しながら、エネルギーや二酸化炭素の特性について解説。日本人1人が1日に使っているエネルギーを石油の重さで表すとどのくらいか、二酸化炭素が増えすぎるとどうなるか―など具体例を紹介した。この後、マイナス190度の液体窒素を使い、空気も熱をエネルギー源に動いていることを示す実験などを行った。目の前で起こる不思議な現象に、児童らは驚きの声を上げながら見入った。
 
日本人1人が1日に使うエネルギー10キロの重さを体験する児童

日本人1人が1日に使うエネルギー10キロの重さを体験する児童

 
膨らませた風船をマイナス190度の液体窒素に入れると一瞬でこんな形に

膨らませた風船をマイナス190度の液体窒素に入れると一瞬でこんな形に

 
液体窒素に漬けたスナック菓子を口に入れた児童は思わぬ感覚にこの表情!

液体窒素に漬けたスナック菓子を口に入れた児童は思わぬ感覚にこの表情!

 
 液体窒素に浸したスナック菓子を口にした佐々木さやかさん(5年)は「アイスとも違う初めての感覚。鼻から出る空気も冷たいまま」と貴重な経験に大喜び。さまざまな実験で起こる現象に目を輝かせ、「面白いし不思議。どうしてそうなるのか仕組みも調べてみたい」と科学(理科)に対する学習意欲をかき立てられた様子。
 
 高木教授は「児童たちが水力発電をやってみて難しいと感じたように、自分で試して初めて分かることは多い。知識だけで分かった気にならず、試してみようという気持ちが大事。経験することで身になっていく」と話した。
 
しぼんだ風船はしばらくすると元通りに。児童らは不思議な現象に興味津々

しぼんだ風船はしばらくすると元通りに。児童らは不思議な現象に興味津々

 
電気エネルギーの実験に目がくぎ付け!

電気エネルギーの実験に目がくぎ付け!

 
酸素と二酸化炭素を入れた2つの風船の重さを体験

酸素と二酸化炭素を入れた2つの風船の重さを体験

 
 東北電力エネルギーチャレンジ校は岩手支店独自の取り組みで、2019年にスタート。小中学生の電気やエネルギーへの関心を引き出し、未来につなげることを目的とする。本年度は県内3小学校で実施された。参加した栗林小には同支店から教育備品としてプログラミングスイッチが寄贈された。

tetsuzukuri1

たたら製鉄を体験 釜石・甲子中1年生の学習は15年目 炭にまみれながら奮闘

tetsuzukuri1

炉内から不純物を取り出す「ノロ出し」と呼ばれる作業を見守る甲子中1年生=16日

 
 甲子中(柏舘秀一校長、生徒128人)の1年生45人による「鉄づくり体験」は15、16の両日、釜石市甲子町大橋の旧釜石鉱山事務所前で行われた。2クラス4班がたたら技法による製鉄に挑戦。木炭にまみれながら粗鉄(ケラ)の取り出しに成功した。生徒たちはものづくりの大変さ、力を合わせる大切さ、達成感などを味わいながら、「鉄のまち」の歴史に理解を深めた。
 
 初日は炉の構築、木炭を割る作業に取り組んだ。炉はコンクリートブロックを基盤に耐火レンガ約100個を組み上げ、湯出し口や送風管などを固定した。生徒たちは設計図と写真を基にした炉づくりに悪戦苦闘。土台などを設置せずに作業を進めてしまい、最初からやり直しする班もあった。市文化振興課文化財係の加藤幹樹主任(37)らが指導。「平面の設計図を立体にイメージして」などと助言し、生徒たちの活動を見守った。
 
tetsuzukuri2

設計図を手に話し合いながら炉をつくる生徒たち=15日

 
tetsuzukuri3

子どもたちの活動をそっと見守る加藤主任(後列左)=15日

 
tetsuzukuri4

炉の完成を喜びつつ、炭割り作業にも精を出した=15日

 
 2日目が本格的な製鉄体験。火入れし、木炭約30キロで炉を加熱していった。釜石鉱山産の磁鉄鉱10キロ、石灰1キロを、木炭20キロと共に10回に分けて投入。時間を計り、炉内の温度を確認しながら、炭にまみれる地道な作業を続けた。昼前から不純物(ノロ)の抽出を行い、1000度以上の熱を確認。午後1時過ぎ、前後して4基の炉が解体された。全ての炉でケラが得られ、生徒たちの奮闘は報われた。
 
tetsuzukuri5

鉄鉱石と石灰をまぜたもの、砕いた炭を投入する作業を10回繰り返した=16日

 
tetsuzukuri6

ノロ出しし、作業が順調に進んでいることを確認した=16日

 
tetsuzukuri7

熱さを感じながら炉の解体作業を見つめる生徒たち=16日

 
 B組2班リーダーの佐々木凌空(りく)君は「初めての体験だったが、みんなと力を合わせてできた。レンガは重いし、火は熱いし、この方法でつくっていた人たちのつらさが分かった。大変な中でやり切ったという達成感がすごい。感動」と目を輝かせた。
 
 A組1班リーダーの本多莉奈さんは「今の時代は機械もいろいろとあるが、大島高任は何もないところから作って本当にすごい」と感心。炉づくりで手間取ったというが、「班員をまとめ工夫と試行錯誤を重ねる経験ができた」と充実した表情。10月には文化祭があり、「みんなで協力する必要がある。スムーズに進められるよう、学びを生かしたい」と前を向いた。
 
tetsuzukuri8

全ての炉で鉄の混合物「ケラ」の取り出しに成功。左下写真で白っぽく見える部分が鉄=16日

 
 同校の鉄づくり体験は、総合的学習の一環。近代製鉄発祥の地・釜石の歴史や製鉄の今昔を体験的に学ぶ。幕末に大島高任が近代製鉄技法による鉄の連続出銑に成功して150周年に当たる2008年度から始まり、今年で15年目。1年生は大島に関する講話、鉄の歴史観の見学・鋳造体験、世界遺産「橋野鉄鉱山」の見学も重ねた。一連の学習成果は文化祭「愛校祭」で発表。市などが実施する「鉄の検定」にも挑む。
 
tetsuzukuri9

大島高任が洋式高炉による鉄づくりに挑んだ地で続く子どもたちの製鉄体験

 
 本年度から市内の中学校全5校の1年生が鉄づくり体験に取り組む。加藤主任は「近代製鉄発祥の地で歴史を学び、ものづくりの大変さや大切さを知ってほしい。失敗から学ぶ体験や、同じ目標に向かうチームをまとめ指示を出す人、それを支えるという体験ができる場でもあり、次世代のリーダー育成につながれば」と期待した。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

園児が描く「釜石の海」 未来への希望を表現 「海の日」絵画コンクールで7人表彰

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

「海の日」絵画コンクールの入賞者、実行委関係者ら

 
 釜石市「海の日」実行委員会(会長・野田武則市長)が主催する絵画コンクールの表彰式が17日、港町のイオンタウン釜石で行われた。新型コロナウイルス感染症の影響で3年ぶりの実施。市内の教育・保育施設の園児たちが「釜石の海」をテーマに色彩豊かな作品を寄せ、入賞した7人を表彰した。入賞作を含めた全作品は同会場で19日まで展示された。
  
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

「釜石の海」をテーマにした色彩豊かな作品が並んだ

  
 コンクールは海の恩恵に感謝する「海の日」の普及を目的に、写真と絵画部門で作品を募集し実施してきたが、コロナ禍で2020、21年は中止した。3年ぶりとなる今回は海に夢を持った子どもたちを育てるのを狙いに、絵画のみで開催を決定。こども園や幼稚園、保育園などに話を持ち掛け、賛同した8施設から125点が集まった。審査で金賞1点、銀賞1点、銅賞2点のほか、特別賞として市長賞、釜石海上保安部賞、釜石港湾振興協議会賞の各1点を選んだ。
  
 表彰式で、野田市長は「海の素晴らしさや怖さを共有しながら、海と共に生活していくことを小さいころか学んでほしい。海に関心を持ち、みんなで豊かな海、自然を守っていこう」とあいさつ。釜石海保の虻川浩介部長が「青いきれいな海にたくさんの生き物、船をカラフルに描いた作品ばかり。未来に残そうという希望が表現され、頼もしい」と講評した。各賞受賞者に野田市長、虻川部長らから表彰状と記念品が贈られた。
  
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

野田市長から表彰を受ける小笠原叶華ちゃん

 
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

入賞作品の前で記念写真を撮る子どもの姿も

  
 金賞に輝いた中妻子供の家保育園の小笠原叶華(かのか)ちゃん(6)は、海で船釣り楽しむ家族の様子を描いた。船に乗ったことがなく、「いつかやってみたい」と夢見る思いを表現。釣ってみたい魚を聞くと、「マグロ!」と元気に答えた。
  
 叶華ちゃんを除いた入賞者は次の通り(敬称略)。
▽銀賞=三浦栞乃(小佐野保育園)
▽銅賞=岩井瑠莉(同)、小池一颯(中妻子供の家保育園)
▽釜石市長賞=小笠原大智(かまいしこども園)
▽釜石海上保安部賞=櫻庭えま(同)
▽釜石港湾振興協議会賞=久保夢空瑠(中妻子供の家保育園)

 

kamaishimatsuri4890

3年ぶり「釜石まつり」10/14~16開催 コロナ対策施し2神社合同みこし渡御

3年ぶりの開催が決まった「釜石まつり」=資料写真(2017年)

3年ぶりの開催が決まった「釜石まつり」=資料写真(2017年)

 
 釜石市の秋を彩る「釜石まつり」は10月14日から3日間、市内東部地区を中心に開催される。新型コロナウイルス感染症の影響で2020、21年は中止されたが、今年は感染症対策を施し、規模を縮小して実施する。15日に開かれた同まつり委員会(委員長=野田武則市長)事務局会議で日程が決定した。
 
 釜石まつりは、浜町の尾崎神社と桜木町の釜石製鉄所山神社の合同祭。1967(昭和42)年の市制施行30周年を機に始まり、同市の秋の一大イベントとして市民に親しまれてきた。委員会は今年、新型コロナの感染状況や、市内経済、郷土芸能の後継者育成への影響などを総合的に判断し、感染症対策をした上での実施を決めた。
 
15日に開かれた釜石まつり委員会事務局会議

15日に開かれた釜石まつり委員会事務局会議

 
 内容はほぼ例年通りだが、最大限の感染防止対策を講じる。渡御行列の参加は市内芸能団体に限定。各団体は参加人数を抑制し、マスクやフェイスガードの着用、手指や道具類の消毒を徹底する。感染対策の責任者を置き、練習参加者の2週間前からの体調確認も行う。各団体には対策費を補助する。
 
 露店は出店数を例年の3分の2程度とし、配置の見直し、出店時間の短縮などで感染リスク低減を図る。各会場ではアナウンスや立て看板などで一般来場者にも対策を呼び掛ける。芸能団体の踊り披露時には、観客との距離を確保する。
 
19年の曳き船まつりは悪天候で中止。今年は4年ぶりの開催となる=資料写真(17年)

19年の曳き船まつりは悪天候で中止。今年は4年ぶりの開催となる=資料写真(17年)

 
2神社合同みこし渡御は例年通り、市内目抜き通りを練り歩く=資料写真(17年)

2神社合同みこし渡御は例年通り、市内目抜き通りを練り歩く=資料写真(17年)

 
 3日間の日程は次の通り。
 
▽10月14日(金) 午後6時~ 尾崎神社宵宮祭(同神社)
 
▽10月15日(土) 午前10時~ 尾崎神社みこし海上渡御「曳き船まつり」(釜石港)/午後5時半~ 日本製鉄(釜石製鉄所)山神社宵宮祭(同神社)
 
▽10月16日(日) 午前8時~ 尾崎神社出御祭(同神社)/午前9時~ 日本製鉄山神社例大祭(同神社)/午前11時20分~ 両神社合同祭神事(鈴子町・釜石消防署横)/午後0時10分~ 合同みこし渡御(鈴子町→大渡町→大町→只越町→魚河岸)/午後3時半~ みこし還御式(魚市場御旅所)

godoten1

書道・山野草・煎茶道・絵画がコラボ 「秋を彩る」合同展示 異種の組み合わせで相乗効果

書と絵画、山野草の展示に茶席が加わる独特の情緒を楽しむ合同展

書と絵画、山野草の展示に茶席が加わる独特の情緒を楽しむ合同展

  
 「秋を彩る」をテーマにした書道・山野草・煎茶道・絵画の合同作品展は9~11日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。釜石書道協会(佐々木和子会長、会員約20人)、釜石草友会(古舘昭吉会長、同5人)、釜石蘭煎会(桑畑美梢会長、同約30人)、美術集団サムディ45(鈴木睦代表、同約20人)の4団体がコラボレーション。和洋、異種の組み合わせながら風趣に富んだ空間を提供し、足を運んだ市民らは「芸術の秋」を先取りした。
   
丹精込めて育てられた山野草に見入る来場者

丹精込めて育てられた山野草に見入る来場者

  
筆致勇壮、多彩な書体の力作が並んだ

筆致勇壮、多彩な書体の力作が並んだ

   
 山野草はイワショウブ、イワギボウシ、ヤブラン、サワヒヨドリなどの草花を単品、寄せ植えなどの形で約30点を展示。書道は篆書(てんしょ)、隷書、漢字仮名交じり書、甲骨文字などを額、掛け軸、びょうぶ、短冊にした約30点を並べた。
   
 コスモスなど季節の草花を散りばめた鉢物、「初秋の彩り」としたためられた書、色とりどりの花が描かれた油彩画などが飾られた茶席では、蘭煎会の会員がおもてなし。来場者は秋を感じさせる作品の数々にじっくりと見入ったり、お茶で一服の清涼感を味わったり、穏やかなひとときを過ごしていた。
  
出品者と交流しながら会場内をめぐる人も4

出品者と交流しながら会場内をめぐる人も

  
季節の草花を前に笑顔でおしゃべりを楽しんだ

季節の草花を前に笑顔でおしゃべりを楽しんだ

  
godoten6

山野草と書、油彩画を眺めながら優雅に一服

  
 書道協会と草友会は2013年から合同で作品展を開催。さらに心安らぐ鑑賞の場にしようと、15年から新たに煎茶の呈茶を加えて開いてきた。新型コロナウイルスの流行で20年と21年は中止。3年ぶりの合同展示では、同時期、同施設で個別に作品展を計画していた同集団と共演する形にした。
  
 古舘会長(78)は「秋の開催は初めてで、季節を感じて楽しんでもらえるよう花を咲かせるのが大変だった。4つの組み合わせは不安もあったが、うまく調和した。この雰囲気がいいし、見せ方、飾り方などいい勉強になる」と相乗効果を語った。新会員の加入など運営面で明るい話題もあった佐々木会長(82)は「マンネリから抜け出した展示になった。鑑賞の雰囲気作りに工夫することで、ゆっくり、じっくりと見てもらえる。コラボはいい」と効果的な発表の場の継続に期待を寄せた。
   
個性豊かな作品が並ぶ「サムディ45」の56回展

個性豊かな作品が並ぶ「サムディ45」の56回展

   
 サムディの56回展は同ホールギャラリーで行われ、日本画、洋画、切り絵、色鉛筆画、写真、工芸など幅広いジャンルの力作約60点が並んだ。地元釜石のほか、北上、仙台、鹿児島など県内外に広がる会員16人が出展。代表経験者の故菅野幸夫さん、故岩井利男さんの作品計3点も紹介した。
   
 5年ほど前から同集団に参加する平田の小笠原美津子さん(76)は浮世絵をモチーフにした刺しゅう画、ビーズを使ったモザイクアートなどを出品。病気で左半身にまひが残るが、力の入る右手一本で創作活動に励む。リハビリを兼ねているというが、「細かな作業が好き。作りたくてしょうがない」とにっこり。「こんな体でもできるんだよ」と達成感を味わえるのが制作の原動力で、作品を見てもらうことで喜びもかみしめる。
   
切り絵の体験コーナーでは創作活動の一端に触れた

切り絵の体験コーナーでは創作活動の一端に触れた

   
 同集団は講師を置かず、個々に創作活動に取り組んでいるのが特徴。事務局では「描くことが大好きな仲間、先輩方が培ってきた活動を絶やすことなく続けていくことが私たちの役割。次の世代へと引き継いでいきたい」と活動継続へ願いを込める。