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古くて新しい!?釜石の未来「スチームパンク」で発信 大野晃平さん、CG作品展

TETTOで作品展「スチームパンク釜石」を開く大野晃平さん

TETTOで作品展「スチームパンク釜石」を開く大野晃平さん

 
 釜石市のイラストレーター大野晃平さん(47)=大町=の作品展「スチームパンク釜石」は、市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。コンピューターグラフィックス(CG)を駆使し、古里の自然や文化、名所を盛り込んだ観光マップやポスター、東日本大震災をテーマにした作品などを紹介。「子どもたちにはデジタル技術を使った表現の楽しさを、年配の人たちには懐かしさを感じてもらえたら」と来場を呼びかける。
 
大観音、ラーメン…CGデザインで表現した「釜石押し」の作品が並ぶ

大観音、ラーメン…CGデザインで表現した「釜石押し」の作品が並ぶ

 
 震災後に生み出した50点を展示する。半数がB1判(72・8×103センチ)のポスター作品。釜石の街並みをデザインしたマップ風の作品はB0判(103×145・6センチ)という大きさのものもあって目を引く。スチームパンク――蒸気機関を使用した18世紀後半ごろの雰囲気を醸す作風が、かつて煙突が立ち並んだ「鉄のまち釜石」のイメージと重なる。電気的ではないが、機械仕掛けながら進化し続けてきた「可能性の未来世界」が表現され、若い世代の鑑賞者らは新しさを感じながら見入っている。
  
子どもたちをモチーフに柔らかい印象を残す小作品も紹介

子どもたちをモチーフに柔らかい印象を残す小作品も紹介

  
映画や漫画などからインスピレーションを得た作品コーナー

映画や漫画などからインスピレーションを得た作品コーナー

  
 大野さんは大学の芸術学科で油絵を学んだ後、家業を手伝うためUターン。現在は市内の事業所で働きながら、制作活動にも取り組む。岩手デザイナー協会、釜石の美術集団「サムディ45」所属。市内外の観光マップやポスター、パンフレット制作を担い、グループ展などで作品を発表している。個展は今回で2回目。
 
震災で亡くした友人への思いを込めた2連作「小佐野中学校」

震災で亡くした友人への思いを込めた2連作「小佐野中学校」

 
「生まれ変わって幸せに」との願いを込めた4連作「リインカーネーション」

「生まれ変わって幸せに」との願いを込めた4連作「リインカーネーション」

 
 震災の津波では家族が経営していた大町の着物店が被災したが、家族は無事だった。ただ、友人や知人が犠牲になったことなどもあり、「描くことに迷いを感じた時期がある。暗い色調のものも多くなった」と大野さん。「小佐野中学校」と題した2枚一組の作品は、亡くなった同級生がモチーフ。大野さんの母校でもある小佐野中は震災当時、廃校となっていたため、体育館が遺体安置所となった。作品に込めたのは「頑張っていた野球をまた友達と一緒に学校で楽しんでほしい」との願い。4連作「リインカーネーション(輪廻転生)」も犠牲者へ思いをはせた作品だ。
 
タブレットを使ったデジタル作品づくりのワークショップを開催

タブレットを使ったデジタル作品づくりのワークショップを開催

 
 期間中の3日間はワークショップを開催。手描きした下絵をパソコン上で合成、色を塗るという過程を体験してもらった。絵を描くことが大好きな佐々木陽菜さん(甲子小6年)は、デジタルアートに初挑戦。慣れない作業に大変さを感じたが、「新しいことに触れられて楽しかった」と目を輝かせた。
  
 小さい頃から絵が好きで、友達に頼まれてキャラクターの絵を描いていたという大野さん。その友達の喜ぶ顔が、今なお続く創作活動の原動力になっている。20代半ばにデジタルソフトをメインにした制作スタイルに移行したが、「これからの時代の子どもたちにはより早くその楽しさを知ってもらいたい」と考えている。パソコンやタブレットの画面上で作ったものをネット上で瞬時に発信。そんな体験を通じ、「手軽に釜石を発信してほしい」と期待する。
 
「スチームパンクKAMAISHI」(写真左)とホテルマルエのパンフレットデザイン画

「スチームパンクKAMAISHI」(写真左)とホテルマルエのパンフレットデザイン画

 
 「スチームパンクKAMAISHI」。震災後に落ち込んだ気持ちを回復させるきっかけとなった作品だ。「乗り気がしなかったことでも、やってみると新たな発見がある」と大野さん。こうした古里を描いたポスターや観光マップを作る中で寄せられたプラスの反響が、やる気と喜びを思い出させた。「好きなことだけでなく、いろんなことに挑戦したい。彫刻とか。作品作りにいい影響が出てくるはず」と信じる。
 
 同ホール自主事業「アートアットテット」の一環。12日まで。午前9時から午後9時(最終日は同4時)まで。問い合わせはTETTO(0193・22・2266)へ。
 
 

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世代超えて対局 釜石・子ども将棋教室 プロ試験挑戦中!小山怜央さんの影響で高まる将棋熱

将棋盤を囲んで交流する正棋会の会員と子どもたち

将棋盤を囲んで交流する正棋会の会員と子どもたち

 
 釜石市小佐野公民館(佐藤貴之館長)主催の子ども将棋教室が6日、小佐野町の小佐野コミュニティ会館で開かれ、市内の小学生10人が地域の人から将棋の手ほどきを受けた。冬休み中の子どもの居場所、体験・学習活動の場を提供する「冬休み寺子屋事業」の一環で、市内の将棋愛好者らでつくる「正棋会」(西田晃代表、会員約20人)の協力で、合わせて3回実施。例年、参加者を募ると即埋まるという人気の教室で、新型コロナウイルス禍で約2年ぶりの開催となった今回も定員(先着8人)を上回る申し込みがあった。
 
冬休み中の子どもたちが集まる小佐野公民館の将棋教室

冬休み中の子どもたちが集まる小佐野公民館の将棋教室

 
 「お、しばらくだったね。元気だった?」。顔なじみの高学年児童に声をかけた西田さん(77)は早速駒を並べて対局した。低学年の子どもたちは初顔合わせで、会員が指導対局。「ほー、そこにいくか」「ちょっと、ゆるくない(釜石地域の方言できつい・大変の意味)よ」「悩ませるなー」。会員をうならせる一手を繰り出す子もいて、互いに刺激を受けながら交流を楽しんでいた。
 
低学年の児童の対局は会員が見守り、助言した

低学年の児童の対局は会員が見守り、助言した

 
 1年ほど前に将棋を始めた近藤一葵(いつき)君(小佐野小2年)は、父親以外の大人と将棋を指すのは初めてで、「ドキドキする。でも楽しい」とにっこり。ハンデをもらっても負けてしまうが、「もう一局、お願いします」と何度も勝負を挑んだ。分からない所を教えてもらい、うれしそうな様子で、「パチッという音が、かっこいい。強くなりたい」と意欲を見せた。
 
 平田の澤田秀人さん(81)は、ひ孫のような子どもたちの腕前に「まだまだ」と頬を緩めつつ、「これからが楽しみだ」と優しく見守った。
 
子どもも大人も盤上の攻防に夢中になった

子どもも大人も盤上の攻防に夢中になった

 
 佐藤館長によると、同教室の人気は藤井聡太五冠(20)=竜王・王位・叡王・王将・棋聖=の活躍が影響しているという。しかし最近、市内では別の理由で将棋熱の高まりを感じる場面が増えている。プロの将棋棋士を目指し、アマチュアから編入試験5番勝負に挑んでいる地元・鵜住居町出身の小山怜央さん(29)の存在だ。
 
 少年期、高校生時代の小山さんを知る西田さんは「より強くなっているようだ」と目を細める。編入試験の第3局は20日。小山さんは初戦から連勝しており、あと1勝で棋士養成機関の奨励会未経験のアマチュアとして初めて、かつ岩手県初の棋士となる。「実力を出し切って合格してほしい」。期待を込め、エールを送っている。
 
 西田さん自身は週6日、将棋ざんまい。週2回の正棋会のほか、他地区の集まりにも顔を出して腕を磨いていて、「子どもたちの進歩は早い。どんどん強くなり、大人になっても一緒に将棋を楽しんでもらえれば。われわれも負けずに指し続けたい」と盤面に向かった。
 
 

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困難乗り越えつなぐ「歓喜の歌」 3年ぶり復活「かまいしの第九」に市民ら胸熱く

2019年以来3年ぶりに開かれた「かまいしの第九」演奏会。43回目の開催=11日

2019年以来3年ぶりに開かれた「かまいしの第九」演奏会。43回目の開催=11日

 
 釜石の師走に待望の「歓喜」の歌声が響いた―。新型コロナウイルス感染症の影響で中止が続いていた「かまいしの第九」演奏会(実行委主催)が11日、市民ホールTETTOで3年ぶりに開かれた。本番1カ月前に指揮者が急病で交替。東日本大震災以来の大きな困難に直面しながらも、持てる力を結集し堂々の演奏を聞かせたメンバーら。心を一つに“釜石の宝”をつなぎ、約350人の観衆を魅了した。
 
 オーケストラはウッドランドノーツ(東京都)、釜石市民吹奏楽団メンバーら総勢45人。合唱隊は感染拡大防止のため規模を縮小し、県内在住者を中心に68人で編成。ソリストとして4人の声楽家を迎えた。ベートーベンの交響曲第9番1~4楽章を演奏。合唱は例年の半数ほどの人員となったが、オーケストラに負けない歌声を響かせ、コロナ前と変わらない迫力の演奏で、会場を感動で包んだ。
 
ベートーベン交響曲第9番を「混声4部合唱」で歌い上げた

ベートーベン交響曲第9番を「混声4部合唱」で歌い上げた

 
開催できなかった2年分の思いを込め、力強い歌声を響かせる男性メンバー

開催できなかった2年分の思いを込め、力強い歌声を響かせる男性メンバー

 
 釜石市甲子町の佐藤登喜子さん(75)は「素晴らしかった。釜石の第九は平和の印。まだまだコロナも多くて心配だが、やっぱりこういう時間は必要。気持ちが豊かになりました」と余韻に浸った。大槌町の駒木明郎さん(85)は「一生懸命歌う姿が震災の年の第九と重なった。もう少しお客さんが入ってくれたら。合唱メンバーも高齢化が進む。もっと若い人たちが参加してくれるといいね」と願った。
 
 長年、指揮を担当する地元在住の音楽家山﨑眞行さん(72)が11月中旬、病に倒れ急きょ降板。山﨑さんの弟子で、東京で音楽活動を続ける釜石出身の瓦田尚さん(39、都立高教諭)が代役を務めた。瓦田さんは中学時代から同演奏会に参加。主宰するオーケストラ「ムジカ・プロムナード」で第九の指揮を経験している。実行委からの打診に「重責なので最初は迷った」というが、「自分の原点は釜石の第九。つながねば」と決意。本番では「力強くクリアな歌声。オケの集中力。全員のパワーと思いで成立した演奏」と出演者をたたえ、「来年は山﨑先生とまた一緒に…」と願った。
 
代役で指揮者を務めた釜石出身、東京在住の瓦田尚さん(中央)

代役で指揮者を務めた釜石出身、東京在住の瓦田尚さん(中央)

 
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 釜石高音楽部の小林鈴菜さん(2年)は「初めての体験なのでワクワクしていた」と本番を心待ちにしていた様子。「ドイツ語の発音が難しく、足りていない部分はあったと思うが、オケの迫力に負けないよう頑張った。市民メンバーだけでこんなにすごい第九が歌えるなんて」と感動の言葉を口にした。
 
 大船渡市の土井尻季恵さん(78)は、ソリストとして出演を続けるソプラノ土井尻明子さん(46)の母で、明子さんの娘夏鈴ちゃん(6)と3世代初共演。明子さんは甲子小1年在学時に、季恵さんが手作りした衣装を着て同第九に初めて出演。今回、その時の衣装を夏鈴ちゃんが身にまとい、3人でステージに立った。季恵さんは「釜石の第九は次世代に歌い継ぐという使命がある。こういう日が来ることを望んでいた。家族、地域の支えがあって私たちは舞台を踏める。幸せなこと」と喜びを表した。明子さんと練習を重ねた夏鈴ちゃんは「楽器の音が大きくて自分の声が聞こえなかった。でも楽しかった!」とにっこり。初舞台を鮮明に覚えているという明子さんは「当時の体験が(声楽家としての)今の自分につながっている。思い出の地で母、娘と舞台に立てて感慨深い」と話した。
 
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演奏会のフィナーレは「歓喜の歌」を再度演奏

演奏会のフィナーレは「歓喜の歌」を再度演奏

 
例年、観客も一緒に声を重ねる最後の「歓喜の歌」は、今年は手拍子で…

例年、観客も一緒に声を重ねる最後の「歓喜の歌」は、今年は手拍子で…

 
 同演奏会は1978年の初演から毎年12月に開かれ、震災があった2011年も途切れることなく続けられてきた。コロナ禍で20、21年はやむなく中止したが、復活を期して本年から再始動。12月の感染状況が見通せない中ではあったが、7月から合唱練習を続け、念願の演奏会を実現させた。
 
 「かまいし第九」実行委の川向修一会長(70)は「大きな山をみんなの努力で越えられた。一人一人の思いが膨らみ、それが客席に届いたのではないか…」。今年に入り、長年一緒に歌い続けてきたメンバー、裏で舞台を支えてくれていた仲間を相次いで亡くした。コロナ禍だけでなく、メンバーの高齢化、資金面など継続への課題は多いが、「今回、少ない人数でもこれだけの第九ができるというのを感じられたのは一番の収穫。これを力に変え、何とか来年以降も続けていければ」と思いを込めた。
 
出演者には会場から惜しみない拍手が送られた

出演者には会場から惜しみない拍手が送られた

 
 同演奏会では2003年から、市内の中学校単位で合唱を披露する「オーケストラと歌おう」のコーナーを設けているが、本年はコロナ禍を考慮し見送った。

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「釜石ラーメン」映画完成 地元で上映会・トークショー 撮影秘話に市民ら興味津々

完成披露上映会で撮影秘話を紹介する出演者ら

完成披露上映会で撮影秘話を紹介する出演者ら

 
 麺は細いが、絆は太い。人情・根性、釜石ラーメン―。釜石市が舞台の映画「喜劇 釜石ラーメン物語」が完成し、3日に大町の市民ホールTETTOで地元向けの上映会が開かれた。チケットが完売する盛況ぶりで、市民ら約800人が鑑賞。上映後には監督や出演者によるトークショーもあり、作品に込めた思いや撮影秘話を紹介した。
 
 映画は、架空のラーメン店「小川食堂」が舞台。店主として味を守っていた母が東日本大震災で行方不明となり、代わりに父が店を切り盛りしている。苦境の経営を巡って姉妹がぶつかり合う中、父が倒れて入院。心配する町の人が次々と見舞いに来る中で、姉妹は店の存在意義や家族の絆を見つめ直していく。そして、母がつないできた味「最高の一杯」を目指して奮闘する―というストーリー。監督は今関あきよしさん、主人公の姉役を俳優の井桁弘恵さんが演じた。
 
 今年4月に市内で撮影。小川町をメイン舞台に、昭和の風景が色濃く残るノスタルジックな食堂、町並みを映し出した。釜石出身の俳優佐々木琉(りゅう)さんのほか、多くの市民もエキストラとして参加。上映会は全国で公開する前に、協力してくれた住民たちに見てもらおうと催された。
 
記念撮影で観客にポーズを指示する今関監督(前列左)ら出演者

記念撮影で観客にポーズを指示する今関監督(前列左)ら出演者

 
多くの市民らが映画鑑賞とトークショーを楽しんだ

多くの市民らが映画鑑賞とトークショーを楽しんだ

 
 上映後のトークショーで、今関監督は「釜石を訪れ復興の様子を見る中で、この街で映画を撮りたいと考えた。帰りにラーメンを食べた時、『これだ!』と。震災がテーマで暗い部分もあるが、ラーメンを中心に家族愛に満ちた、笑いあり、明るさを散りばめた映画にしたかった」と思いを明かした。
 
 物語に登場する釜石ラーメンは、細い縮れ麺と琥珀(こはく)色に透き通ったスープが特徴のシンプルなしょうゆラーメン。市内では約30店舗で提供している。父役の利重剛さんは「3分の1は食べた。あと20軒ある。いつか…」と余韻を残した。思い出深い作品になったと振り返り、「応援しようという気持ちで撮影に臨んだが、結局応援され、励まされて元気をもらって帰ることに。大きな家族愛を感じながら演じた。その雰囲気を楽しんでほしい」と見どころを伝えた。
 
作品に込めた思いを語る今関監督(左)、利重さん

作品に込めた思いを語る今関監督(左)、利重さん

 
 ロケ中の秘話として今関監督が挙げたのは、井桁さんが豪快に麺を落とした湯切りのシーン。井桁さんは「結構難しい。でも特技が湯切りになった。ラーメンを作る役はいつ来ても大丈夫」と胸を張り、会場を沸かせた。
  
 釜石の印象で出演者から多く聞かれたのは、咲き誇る桜や野生のシカとの遭遇といった自然の豊かさ。子グマを目撃したと目を大きくしたのは、小川食堂の常連客で美容室店主役の大島葉子さん。「クスッとするような小川町のお笑い担当」と自己紹介し、思い出深い市民エキストラとの触れ合いを回想した。
 
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撮影中のエピソードを紹介する井桁さん(左)、大島さん(中)、佐々木さん

  
 今作が、映画デビュー作となった佐々木さん。監督から「カット、OK!」と伝えられたが、しっくりせず撮り直しを申し出たエピソードが紹介されると、前向きな姿勢に客席から大きな拍手と声援が届いた。俳優という職業、古里の良さを改めて実感。祖父母が鵜住居町でラーメン店を営んでおり、しっかりと宣伝もした。
 
映画の主題歌「ひかり射し込む場所」を熱唱する洸美さん(左)

映画の主題歌「ひかり射し込む場所」を熱唱する洸美さん(左)

 
 映画の主題歌を担当する日台ハーフのシンガーソングライター洸美(ひろみ)さんも登場し、「ひかり射し込む場所」を披露。許しと希望をテーマに、台本を何度も読み、撮影中の釜石の風景写真を見ながら制作したことを紹介した。
 
 映画は来年4月から県内で上映し、その後全国で公開される予定。今関監督は「英語字幕をつけて海外でも上映し、ワールドワイドに釜石を発信したい。被災したイメージだけではなく、映画を通して釜石のもっといろんな面(麺)を知ってほしい」と熱を込めた。
 
上映会終了後、感動を伝える観客に笑顔で応える出演者ら

上映会終了後、感動を伝える観客に笑顔で応える出演者ら

 
 野田町の佐々木誠治さん(75)、公子さん(74)夫妻は「面白かった」と声をそろえた。「なじみのある景色ばかり。つながり、絆がやっぱり大事だね。映画がヒットして、釜石ラーメンが知られるようになったらうれしい。たくさんの人に来て食べてもらえたら復興につながる」と笑顔を重ねた。

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三陸の歴史は5億年前から 釜石は国内最古の植物化石の発見地 市民らジオの視点学ぶ

市内の地質などについて解説した「かまいしの大地の足跡展」講演会=鉄の歴史館

市内の地質などについて解説した「かまいしの大地の足跡展」講演会=鉄の歴史館

 
 三陸ジオパーク(2013年、日本ジオパークに認定)の再審査を来年にひかえ、釜石市では市内のジオ資源の価値を市民らに理解してもらう取り組みが進む。“鉄のまち釜石”を支えた鉄鉱石などの鉱物の産出は、三陸の大地の成り立ちと深く関係しており、同市の6つのジオサイト(見どころ)には釜石鉱山や橋野鉄鉱山が含まれる。大平町の鉄の歴史館では3日、開催中の特別企画展「かまいしの大地の足跡展―三陸ジオパークと釜石―」に合わせ、同市の地質などを解説する講演会が開かれた。県立博物館専門学芸員の望月貴史さんが講師を務めた。
 
 三陸ジオパークは青森県八戸市から宮城県気仙沼市まで南北約220キロ、東西約80キロに及び日本最大。5億年にもわたる地球の営みが刻まれた大地が特徴で、日本有数の鉱物資源が埋蔵される。釜石市は大地の成り立ちが異なる北部北上帯と南部北上帯の境界に位置し、双方の地質が見られる極めて珍しい地域。古生代デボン紀から中生代白亜紀の地層が確認されている。
 
 水海川上流の千丈ヶ滝(ジオサイト)付近に分布する「千丈ヶ滝層」は古生代デボン紀(約4億2千万年前~3億6千万年前)にできた地層で、北上山地の中でもかなり古い。この時代は陸上に最古の森林が形成され、同層最上部の泥岩からは国内最古の植物化石「リンボク」の化石が見つかっている。うろこ状の樹皮を持ち、樹高40メートルにも達した大型シダ植物で、化石には樹皮の模様が見られる。
 
 「千丈ヶ滝層」の露頭が見られる現場=2020年に開かれた県立博物館主催の地質観察会で撮影

「千丈ヶ滝層」の露頭が見られる現場=2020年に開かれた県立博物館主催の地質観察会で撮影

 
千丈ヶ滝層最上部の泥岩から見つかった「リンボク」の化石。うろこ状の樹皮のあとが見られる

千丈ヶ滝層最上部の泥岩から見つかった「リンボク」の化石。うろこ状の樹皮のあとが見られる

 
 千丈ヶ滝層の北側に広がるのが「小川層」。古生代石炭紀(約3億6千万年前~3億年前)に海中で堆積した地層で、主に生物の遺骸がたまってできる石灰岩で構成され、サンゴの化石がよく見られる。千丈ヶ滝層の北東部に広がる「栗林層」は古生代ぺルム紀(約3億年前~2億5千万年前)の地層。最下部に礫(れき)岩層があり、海中生物のウミユリや腕足動物の化石が見つかっている。今も深海に生息するウミユリ(動物)は、この時代の姿とほとんど変わっておらず、「生きた化石」と言われる。
 
石灰岩の中に見られる「サンゴ」の化石(20年の観察会で発見)

石灰岩の中に見られる「サンゴ」の化石(20年の観察会で発見)

 
礫岩の中に見られる「ウミユリ」の化石(20年の観察会で発見)

礫岩の中に見られる「ウミユリ」の化石(20年の観察会で発見)

 
 講師の望月さんは「千丈ヶ滝周辺は古生代後期の3つの時代の地層を歩いて見られる特殊な場所。7千万年にもまたがる長期の時代の地層をこんなに近い場所で見ることができるのはなかなかない」と話した。
 
 中生代(約2億5千万年前~6千万年前)の地質が見られるジオサイトは根浜海岸、箱崎半島千畳敷、釜石鉱山、橋野鉄鉱山。根浜海岸の岩には中生代ジュラ紀(約2億年前~1億4500万年前)の地層があり、「チャート」と呼ばれる深海の堆積岩でできたしま模様の層を見ることができる。千畳敷は中生代白亜紀(約1億4500万年前~6600万年前)初頭にマグマが地下深くで冷え固まってできた花こう岩で形成される。釜石鉱山、橋野鉄鉱山の形成には、白亜紀(約1億2千万年前)のマグマの貫入が関係する。古生代にできた石灰岩などがマグマの熱で変成して生まれたのが、磁鉄鉱や黄銅鉱。一帯では結晶質石灰岩(大理石)なども見られ、スカルン鉱床(接触鉱床)と呼ばれる。豊富な鉱物資源で釜石は日本最大の鉄鉱山、有数の銅鉱山として栄えた。
 
根浜海岸の防潮堤近くの岩で見られるチャート層

根浜海岸の防潮堤近くの岩で見られるチャート層

 
箱崎半島先端部、ジオサイトになっている「千畳敷」。花こう岩の荒々しい景色が広がる

箱崎半島先端部、ジオサイトになっている「千畳敷」。花こう岩の荒々しい景色が広がる

 
 望月さんは同市で複雑な地質が見られる背景として、三陸の大地の成り立ちを紹介した。三陸は北上山地のほぼ中央に位置する早池峰山を境に、地質学上「北部北上帯」と「南部北上帯」に分けられる。南部は約5億年前、太平洋赤道近くにあったゴンドワナ大陸の辺縁で、約4億4千万年前に大陸から分離。一方、北部は大陸の反対側の海底にたまった海洋堆積物が起源(約3億2千万年前~1億4千万年前)で、海洋プレートに乗って移動。南部、北部ともに長い年月をかけて北上し、アジア大陸の東縁で合体。後に日本列島が分離する。
 
講師の望月貴史さん(左下写真)の講演に聞き入る来場者

講師の望月貴史さん(左下写真)の講演に聞き入る来場者

 
 「世界各地で見つかる化石が当時の大地の場所を教えてくれる。大船渡市で見つかった古生代シルル紀のハチノスサンゴの化石と似たものがオーストラリアでも見つかっている。石炭紀以前は両地域が近い場所にあったと考えられる要素」と望月さん。講演では三陸南部特有の地形「リアス海岸」の成り立ちについても説明した。
 
鉄の歴史館で1月9日まで行われる特別企画展

鉄の歴史館で1月9日まで行われる特別企画展

 
 同館の特別企画展では北部、南部北上帯の解説パネル、各地で見つかっている岩石、化石など40点を展示。同館や旧釜石鉱山事務所の所蔵品のほか、県立博物館から借りたモシリュウ(草食恐竜)の上腕骨の複製、リンボクの化石など貴重な資料が公開される。両石の明治、昭和の津波記念碑がジオサイトになっていることに関連し、市内98の津波記念碑の紹介、明治、昭和の大津波被災の絵図や写真の展示なども行っている。1月9日まで開催される(火曜日、12月29日~1月3日は休館)。

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多彩な音色、楽器の掛け合いで聴衆魅了 釜石市民吹奏楽団 第56回定演

息の合った演奏を披露する釜石市民吹奏楽団

息の合った演奏を披露する釜石市民吹奏楽団

  
 釜石市民吹奏楽団(山内真紀人団長、約50人)の第56回定期演奏会は11月27日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。「ウィズ コロナ」を掲げて時勢に応じた演奏活動を模索する中、今夏の東北吹奏楽コンクールに県代表として36年ぶりに出場し、「困難に負けず進んでいこう」との思いを乗せて今できる精いっぱいの熱奏を届けた団員ら。自信に満ちた迫力あるステージを繰り広げ、聴衆560人余りを魅了した。
  
1部のステージでは吹奏楽コンクール課題曲などを披露した

1部のステージでは吹奏楽コンクール課題曲などを披露した

  
 2部構成で、全9曲を演奏。1部では、本年度の全日本コンクール課題曲の一つ「ジェネシス」(鈴木英史作曲)、自由曲として東北大会でも演奏した「Comet(コメット)」(堀田庸元作曲)などを披露した。新型コロナウイルス禍で集まって音を奏でることの難しさを感じながらも、「いいものを作りたい」と挑み続けてきた同団。気持ちを一つにした息の合ったハーモニーを響かせた。
  
画像や照明を使って目も耳も楽しませた2部のステージ

画像や照明を使って目も耳も楽しませた2部のステージ

 
楽器ごとに衣装をそろえたり、ソロや掛け合い演奏も

楽器ごとに衣装をそろえたり、ソロや掛け合い演奏も

  
 2部は映画音楽、演歌、ジャズなど多彩なジャンルの楽曲を吹奏楽バージョンで聴かせた。ミュージカル「レ・ミゼラブル」の劇中歌7曲メドレーは低音が響くドラマティックなオープニングに始まり、「夢やぶれて」「民衆の歌」など、さまざまな曲調、楽器の掛け合いで壮大な世界観を展開させた。ステージのバックスクリーンには曲に合わせたイメージ画が映し出され、雰囲気のある照明とともに聴衆を劇中にいざなった。
 
 観客は声を出しての感動表現を控え、代わりに「ブラボー!」カードを掲げたり、盛んな拍手を送ってアンコールを求めた。2曲を追加演奏した団員らは「サンキュー!」カードで気持ちを返礼。舞台上と客席が音楽を分かち合う喜びにあふれた。
  
感染対策として観客に配られた「ブラボー!」カード

感染対策として観客に配られた「ブラボー!」カード

 
観客の拍手に応え、感謝の気持ちを掲げる団員たち

観客の拍手に応え、感謝の気持ちを掲げる団員たち

  
 毎回足を運んでいる甲子町の佐々美枝子さん(69)は「自信に満ちていて圧倒された。映像と一緒に音が体に入ってくるようで、すごく楽しかった」と感激。定内町の横田みゑ子さん(70)は「コロナで外に出るのを迷ったが、来て良かった」と目を細めた。
  
東北大会での入賞を紹介するコーナーもお目見えした

東北大会での入賞を紹介するコーナーもお目見えした

  
 同団は、第65回東北吹奏楽コンクール(9月4日、福島県いわき市)の職場・一般の部に県代表として出場し、銅賞に入った。会場ではその記録を紹介。山内団長は「聴いてくださる方のために―との思いを心に留め、精進していきたい」と力を込めた。
 

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震災被災地の「心の復興」に貢献 チームスマイル活動終了 釜石で布袋寅泰さんライブ&感謝の会

多くのファンを魅了した布袋寅泰さんのスペシャルライブ(撮影:西条佳泰 / Grafica Inc.)

多くのファンを魅了した布袋寅泰さんのスペシャルライブ(撮影:西条佳泰 / Grafica Inc.)

 
 東日本大震災の被災地で著名文化人やアーティストによる復興支援イベントを手掛けてきた一般社団法人チームスマイル(東京都、矢内廣代表理事=ぴあ社長)は、年内で活動を終了する。東北3県の拠点の一つ「釜石PIT」がある釜石市では11月20日に、これまでの感謝を込め、ギタリスト布袋寅泰さんのスペシャルライブを開催。同法人の活動に協力し、釜石に思いを寄せ続けてきた布袋さんの熱いステージに約720人が酔いしれた。
 
 ライブは釜石PITに隣接する市民ホールTETTOで開かれた。抽選でチケットを手にした観客は、開演前から期待で心を躍らせた。映画「キル・ビル」のテーマ曲で布袋さんが登場すると観客は総立ちに。こぶしを突き上げ、体を揺らした。ソロの代表曲「バンビーナ」「さらば青春の光」「POISON」、バンド、ユニットで魅了した「マリオネット」「BE MY BABY」など、布袋さんが生み出してきた数々の名曲で会場の熱気は最高潮に達した。
 
 布袋さんの同市でのライブは2016年8月以来2回目。前回は同年1月にオープンした釜石PITで行われ、同法人が企画したトークショーにも出演している。布袋さんと同市との縁は少年時代にさかのぼる。当時、親戚が暮らしており、「毎年夏休みに釜石に来るのが楽しみだった」という。16年のトークでは、釜石のいとこに聞かせてもらったビートルズに衝撃を受け、ギターを始めたことも明かしている。
 
 今回のライブでも「豊かな自然、釜石の人たちの屈託のない笑顔、温かさ…。自分にとっても、この地で出会った父と母にとっても思い出のまち」と語った。ライブ前には、19年にラグビーワールドカップ(W杯)会場となった釜石鵜住居復興スタジアムにも足を運んだ。台風の影響でW杯2試合のうち1試合が中止となったが、ロンドンでそのニュースを聞いた布袋さんはすぐさま矢内代表に連絡を取り、落ち込む同市のためにスタジアムでのコンサートを提案したという。その後のコロナ禍で実現はできなかったが、この日のライブで「いつかやりたい」と思いを口にした。
 
 昨年、アーティスト活動40周年を迎えた布袋さん。アニバーサリー曲として制作した「10年前の今日のこと」などアコースティックナンバーも聞かせた。観客は全13曲の演奏と布袋さんの言葉に感激しながら、かけがえのない時間を味わった。
 
 最前列で迫力のステージを堪能した釜石市の水野吾一さん(52)は「布袋さんの音楽は自分の青春そのもの。釜石のことをずっと思ってくれてありがたい。明日からまた頑張れそう」と大喜び。滝沢市の小野寺美奈子さん(52)も高校生のころからの大ファン。「憧れ続けてきた人生の先輩。いつ見てもかっこいい。被災地を盛り上げてくれるのも県民としてうれしい」と胸を熱くした。久慈市の40代男性4人は「めちゃくちゃ楽しかった」と口をそろえ、余韻に浸った。「布袋さんのやさしさに目頭が熱くなった」「ずっと見守ってくれている気がする」―次々にあふれる言葉。震災から10年が経ち風化が色濃くなりつつある中、「見えない部分の復興の力になるのでは」と話した。
 
一般社団法人チームスマイル「釜石PIT」感謝の会=11月20日

一般社団法人チームスマイル「釜石PIT」感謝の会=11月20日

 
 チームスマイルは震災直後、ぴあ社員らによるボランティア活動からスタート。2012年には一般社団法人を立ち上げ、「エンターテインメントによる心の復興支援」を掲げて活動を発展させてきた。活動拠点として14年に豊洲PIT(東京都江東区)を開業。東北では福島県いわき市(15年)、岩手県釜石市(16年)、宮城県仙台市(同)に拠点を設け、同法人主催のイベントのほか地元企画の事業などを行い、復興を後押ししてきた。
 
2016年1月、釜石市大町にオープンした「釜石PIT」

2016年1月、釜石市大町にオープンした「釜石PIT」

 
 16年からは被災地の子どもや若者の支援企画「“わたしの夢”応援プロジェクト」を展開。「東北PIT応援団」に名を連ねた各界の著名人らを3市に派遣し、講演会やトークショー、舞台実演、技術指導などを行ってきた。釜石市では布袋寅泰さんのトークショーを皮切りに20年までに計8回の企画が実現。音楽、美術、古典芸能、スポーツなどの各分野で活躍する14人が訪れ、夢や希望を育んだ。
 
 布袋さんのライブ後、釜石PITでは同活動を支援してきた地元関係者らを招いた感謝の会が開かれた。矢内代表はこれまでの経過を説明し、「10年を目標に活動を続けてきた。心の復興の面では多少なりともお役に立てたのではないか。社団法人としての活動は終わるが、4つのPITは名前を残して継続する」とし、今回のライブチケットの売り上げ全額を同市と釜石まちづくり会社に寄付した。
 
寄付金を贈った矢内廣代表(中)、野田武則釜石市長(右)、釜石まちづくり会社・谷澤栄一社長

寄付金を贈った矢内廣代表(中)、野田武則釜石市長(右)、釜石まちづくり会社・谷澤栄一社長

 
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 野田武則市長は「心が折れそうな時、皆さんが届けてくれる励ましや元気に地域の方々がどれほど勇気づけられたことか。感謝してもしきれない。矢内社長らの精神は釜石PITの名称とともにこの場所で脈々と生き続ける。しっかり守っていきたい」と決意を示した。
 
 釜石PITは同市が建設した釜石情報交流センターの多目的集会室に併設する形でオープン。ライブや映画上映会、パブリックビューイングなど多彩な催しが行われ、住民活動の場としても親しまれてきた。今後も引き続き、同センター指定管理者のまちづくり会社が運営を担い、活用が図られる。

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伝えたい!災害の怖さ、備えや避難の大切さ 釜石東中3年生、栗林小で防災交流会

釜石東中と栗林小の防災交流会ですごろくを楽しむ児童生徒

釜石東中と栗林小の防災交流会ですごろくを楽しむ児童生徒

 
 主体的、実践的な防災学習に力を入れる釜石市鵜住居町の釜石東中(佃拓生校長、生徒102人)の3年生41人は22日、3年間の学びの成果を伝える防災交流会を栗林町の栗林小(八木澤江利子校長、児童33人)で開いた。津波の怖さ、避難の大切さを伝えようと、手作りの紙芝居やかるた、クイズなど8つの体験プログラムを用意し、小学生に挑戦してもらった。
  
すごろくのマスに書かれたお題に沿って机の下に潜る児童ら

すごろくのマスに書かれたお題に沿って机の下に潜る児童ら

  
 小学生は用意されたプログラムから、4つを選んで体験。すごろくでは、サイコロを振り、防災や災害時対応の問いなどが書かれたマスにコマを進めた。「一人で家にいる時に地震が起こったら?」との質問には、「まず身を守る」と答え、近くにあった机の下に潜ってじっとした。実験チームは、災害時に水道が使えなくなった場合の代替策を紹介。2〜3ミリほどの穴を開けたペットボトルを水道の蛇口のように使う方法で、キャップを緩めると穴から適量の水が出て、キャップを閉めれば水が止まる様子に児童は驚いていた。
  
ペットボトルを「簡易蛇口」として使う方法を伝える実験

ペットボトルを「簡易蛇口」として使う方法を伝える実験

 
かるたチームは伝えたい思いを読み札に詰め込んだ

かるたチームは伝えたい思いを読み札に詰め込んだ

  
 「想定にとらわれるな」「確かめよう 避難経路」「軽い気持ちでのぞむな 避難訓練」。地震や津波、日常の災害への備えを分かりやすく伝えようと作られた、かるたの読み札には3年生が伝えたい思いを詰め込んだ。三陸に伝わる「てんでんこ」を題材にした紙芝居では、「津波からそれぞれが身を守って逃げなければならないが、避難する場所を決めておけば、大切な人や家族と会うことができる」と訴えた。防災バックや非常食など事前の準備を強調するプレゼンテーション、避難所生活で気を付けることなどを示したパンフレットを配布するチームもあった。
 
「避難場所を決めて家族で共有して」。紙芝居で教訓を伝える

「避難場所を決めて家族で共有して」。紙芝居で教訓を伝える

 
プレゼンチームは防災バックの重さを体験してもらった

プレゼンチームは防災バックの重さを体験してもらった

 
地震発生時や避難所での行動をまとめた防災パンフレット

地震発生時や避難所での行動をまとめた防災パンフレット

 
 5人組の戦隊ヒーロー「てんでんこレンジャー」も登場。防災について学びを深めた児童たちに「大きくなった時に周りの人を助けられるようになってほしい。一緒に未来につなげていこう」と呼び掛けた。
 
 栗林小の小笠原虹南(にいな)さん(6年)は「クイズが印象に残った。エレベーターに乗っていて地震が起きた時に全部の階のボタンを押せば、最寄りの階で停止すると初めて知った。防災についてもっと勉強して、てんでんこレンジャーのような活動に関わってみたい」と刺激を受けた。
 
地震発生時の行動などを問いかけるクイズに挑戦する児童

地震発生時の行動などを問いかけるクイズに挑戦する児童

 
笑顔で交流した小学生と「てんでんこレンジャー」

笑顔で交流した小学生と「てんでんこレンジャー」

 
 釜石東中3年生は総合的な学習の一環で、防災に関する活動を積み重ねてきた。1年生では東日本大震災時の体験を地元住民らから聞き取り、「防災だより」としてまとめ「いのちをつなぐ未来館」で展示。2年生の時には避難困難者(障害者や高齢者、乳児のいる母親など)の行動の大変さを体験したり、地域住民との意見交換会で災害時に中学生ができることを発表し、助言をもらったりした。3年生では避難所運営訓練を実施。こうした活動をまとめた集大成が交流会で、震災を知らない子が増える中で、学びを次代につなぐため実践した。
  
「逃げれば、助かる!」。写真と映像で分かりやすく伝えた

「逃げれば、助かる!」。写真と映像で分かりやすく伝えた

  
 写真・映像チームは、震災時の鵜住居小児童の避難行動を描いたアニメ動画や同校校舎3階に車が突き刺さる写真などを見せ、「津波の威力はすごいし、とても怖い。でも、しっかり逃げれば命は助かる。津波が来ると分かったら、すぐに逃げよう」と児童に語りかけた。
 
 中学3年生は震災当時、2、3歳。佐々木和哉君は揺れの怖さを記憶するが、伝えられる側の小学生はほとんどがまだ生まれていなかった。知らない世代に分かりやすく伝えられるようリアルな映像やスライドを使うなど工夫。「災害の怖さと避難の大切さを伝えられた。自分の身を守る行動、防災について考えてもらう時間にしてもらえた」と手応えを感じた。花輪祐輔君は「もう守られる立場ではない。伝える立場なので、行動に移していきたい」と背筋を伸ばした。
  
 同様の交流会は、鵜住居小でも行った。
 
 

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みんなで楽しもう!釜石の芸術文化 多彩な市民の力作、展示や舞台発表で発信

釜石市民の多彩な表現活動を紹介した芸術文化祭

釜石市民の多彩な表現活動を紹介した芸術文化祭

 
 第52回釜石市民芸術文化祭(市、市芸術文化協会主催)は12、13の両日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。書道、写真、絵画、盆栽など各分野を愛好する市内の表現者たちが力作を並べ、訪れた市民らが感性豊かな作品を鑑賞した。YouTube(ユーチューブ)生配信も昨年に続いて行い、発表部門の団体が活動の成果を発信した。
 
ぬくもりある光を放つステンドグラス作品を楽しむ来場者

ぬくもりある光を放つステンドグラス作品を楽しむ来場者

 
記念切手など自慢のコレクションを公開した釜石郵趣会

記念切手など自慢のコレクションを公開した釜石郵趣会

 
 芸文協には26団体(約470人)が加盟する。展示部門には加盟団体、一般参加を合わせて17団体が出品。生け花、水墨画、切り絵、ステンドグラス、郵趣品など多彩な分野の力作が並んだ。釜石夏草俳句会(菊池義一代表、会員7人)は、日々の生活で心動かされた一瞬を切り取って詠んだ俳句を柔らかな筆致で書き上げた短冊や色紙などを紹介。俳句歴30年の濱川糸子さん(73)は「世界一短い詩で、十七文字で言い切る。なかなか難しいが、気持ちを表現できる」と魅力を語った。会員の高齢化が進み、新たな入会もなく、活動PRになればと参加。〽芸術祭 思い句に触れ 仲間入り―と期待した。
 
釜石夏草俳句会は心動かされた瞬間を詠んだ作品を並べた

釜石夏草俳句会は心動かされた瞬間を詠んだ作品を並べた

 
廃材を使ったオブジェなど個性豊かな作品がお目見えした

廃材を使ったオブジェなど個性豊かな作品がお目見えした

 
昔懐かしい風景写真などが並んだ「まちかどミニ美術館」

昔懐かしい風景写真などが並んだ「まちかどミニ美術館」

 
 特別企画として「まちかどミニ美術館(博物館)」と題した展示コーナーを用意。市内企業などが所蔵する美術品や個人的に見せたい「我が家の宝物」を紹介でき、12月からTETTOで常設展示となる予定だ。芸文祭に合わせて並んだのは、懐かしいまちの風景や人の笑顔。多くの人が足を止め、一つ一つじっくりと見入っていた。
 
色鮮やかな折り紙を使った壁掛けづくりを紹介した遠藤さん(中)

色鮮やかな折り紙を使った壁掛けづくりを紹介した遠藤さん(中)

 
 エコクラフト、色鉛筆画などの体験コーナーもあり、来場者が手作りの面白さに触れた。傾聴ボランティアとして活動する源太沢町の遠藤哲郎さん(85)は折り紙を使った壁掛けづくりを紹介。安く手軽な遊びを考え続けているという遠藤さんの丁寧な指導に触れた80代の女性は「ありがたいね。楽しさに好奇心が刺激された」と喜んだ。
 
オカリナとフルート演奏、書が融合したパフォーマンス

オカリナとフルート演奏、書が融合したパフォーマンス

 
 ステージでは5団体がダンスやバンド演奏などを披露した。釜石南高(現釜石高)の1969(昭和44)年卒業生でつくる「ふるさと復興支援グループ釜南44」(白田正行代表)は郷土愛を色濃くにじませた作品展示やイベントで芸文祭を盛り上げ、今年で6年目となる。今回は、白田代表の妻とよ子さん(66)=釜石出身、旧姓・菊池=が所属する「ライリッシュオカリナ連盟宮城県北支部・泉の杜」の演奏で釜石市民に癒やしを届けた。同グループメンバーで音楽教室を主宰する釜石の山﨑真行さんがフルートで音を重ね、仙台市在住の書家・支部蘭蹊さん(はせべ・らんけい=本名・一郎、71)が音色に合わせて書のパフォーマンスを見せる演出もあった。
 
釜石ふるさと応援大使に就任した支部さん(前列)

釜石ふるさと応援大使に就任した支部さん(前列)

 
 少年期を釜石で過ごした支部さんは今回、釜石ふるさと応援大使に就任。東日本大震災後、釜石市内の仮設住宅を回って書を届けたり、同グループの活動を通じて復興応援を続けてきた。新型コロナウイルス禍で訪問機会は減っているが、「書道は言葉を伝えるもの。勇気づけられる書を書き続けたい」と意欲。特に、子どもや若い世代に「普段着の書道」「言葉の力」を伝えていく考えだ。
 
表千家茶道こども教室の茶席では中学生がお点前を披露した

表千家茶道こども教室の茶席では中学生がお点前を披露した

 
小学生は緊張しながらもお運びを手伝い、客をもてなした

小学生は緊張しながらもお運びを手伝い、客をもてなした

 
 釜石茶道協会による呈茶もあり、来場者を和ませた。12日には、表千家成和会(互野宗哲会長)を母体に組織する実行委が実施する茶道こども教室の受講生が稽古の成果を披露。遠野愛実さん(大平中1年)と大下桜雅君(釜石中2年)が「立礼(りゅうれい)点前」を見せ、小学生がお運びを手伝った。2年目の佐々木翔空(とあ)君(小佐野小5年)は「人前でのおもてなしに緊張した。練習より上手くできて楽しかった。お点前がかっこいい。自分もできるようになりたい」と刺激を受けた。
 
 芸文協の河東眞澄会長は「芸術文化に対する市民の熱い思いが感じられる」と強調する一方、会員の高齢化などで継続する厳しさも明かす。昨年は3日間の実施だったが、今年は2日と期間を短縮。規模は縮小となっても「ひらめく芸術、きらめく文化のまちを継承するため、みんなで知恵を出し合っていきたい」と思いを巡らせた。
 

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福祉学習の成果、演じて発信 大平中生、認知症の劇披露「みんなで支えよう!」

認知症がテーマの劇で熱演する大平中3年生

認知症がテーマの劇で熱演する大平中3年生

 
 釜石市大平町にある大平中(蛸島茂雄校長、生徒101人)は、地元の高齢者福祉施設と交流しながら福祉学習に取り組んでいる。3年生39人は、3年間の学びの集大成として認知症をテーマにした劇を創作。8日、同じ学区内にある平田町の平田小(鈴木崇校長、児童148人)で披露し、福祉学習の成果を後輩たちに伝えた。
 
 劇のタイトルは「野菊ばあちゃん物語」。認知症の症状が出始めた高齢女性の振る舞いに戸惑いながらも暖かく見守る家族や地域の人たちを描いた。「物忘れが多くなった」「身の回りのことに無頓着」「外に出なくなった」「同じことを何回も話す」といった高齢女性の変化を見せ、「認知症かも?」と家族が気付く症状を明示。医療機関の受診を渋ったり、食事した後に「ごはんまだ?」と繰り返したりした時の悪い対応事例を演じた後に、時間を巻き戻す演出で同じ場面を再現して関係をこじらせない接し方や心得も分かりやすく紹介した。
 
「もしかしたら認知症?」。早めの受診を促す方法を紹介

「もしかしたら認知症?」。早めの受診を促す方法を紹介

 
 認知症の人を地域全体で見守る体制の大切さも発信した。その一歩が、声がけ。ポイントは、▽驚かせない▽急がせない▽心を傷つけない―ことで、「『こんにちは。きょうは寒いですね』とかごく普通のあいさつをして、『どこまで行くの?』とゆっくり穏やかに優しく声かけるのよ」と、せりふで示した。高齢者らが行方不明になった際の早期発見を目的にした市事業「認知症高齢者徘徊(はいかい)SOSネットワーク」も紹介。自分たちが暮らす地域でも「困ったときはお互いさま」という気持ちが広がってほしいと思いを込めた。
 
「相手の視界に入って優しく声がけを」。認知症の人への接し方を伝えた

「相手の視界に入って優しく声がけを」。認知症の人への接し方を伝えた

 
 大平中の福祉学習は総合的な学習の一環で、社会福祉法人清風会(平田)が支援。3年生は認知症サポーター養成講座や介護技術体験などに取り組んできた。同法人が運営する特別養護老人ホームあいぜんの里を訪問し、ソーランを披露するなど交流も。3年間積み上げた学びを劇に盛り込んだ。
 
 「野菊ばあちゃん」を演じた佐々木梨杏さんは「認知症についてたくさん学んで、知ったことを伝えられた。対応の仕方が分かったので、学びを生かして地域で暮らしていきたい。これからも福祉に興味を持って、知識を深められたらいい」とうなずいた。
 
人を思いやる大切さや大事な人を守り抜く尊さを伝える合唱も披露した

人を思いやる大切さや大事な人を守り抜く尊さを伝える合唱も披露した

 
 劇の披露は、中学校での福祉学習の様子を伝え、地域のために尽くそうとする心を育てるのが狙い。平田小4~6年生約70人が見学した。児童から「調べたり学習したことを劇にしたのがすごい」「認知症は身近に潜んでいると思った」「家族に認知症の高齢者がいる。劇を参考にして優しく接してあげたい」などと感想があった。
 
劇の発表を通じて交流を深めた大平中の生徒と平田小の児童

劇の発表を通じて交流を深めた大平中の生徒と平田小の児童

 
 同法人の関係者や教育、福祉関係の市職員らも鑑賞し、「核家族化やコミュニティーの希薄化が進み、地域や世代間の交流が少なくなる中、福祉に関する正しい理解を育む取り組みが求められている。継続を」と期待。それに応えるべく、大平中では「支え合い・助け合い、安心して暮らせるまちづくり」を全校共通テーマとして学習、交流を深めていく考えだ。

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誰もが自分らしく生きられる社会に 釜石で人権のつどい 講演などで理解促進図る

人権マンガ展の入賞者と関係者ら=人権のつどい

人権マンガ展の入賞者と関係者ら=人権のつどい

 
 人権のつどいinかまいし(釜石市主催)は5日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。宮古人権擁護委員協議会の人権啓発活動ネットワーク事業で、新型コロナ感染症の影響により3年ぶりに実施。同市が独自に取り組む「人権マンガ展」の入賞者表彰、応募作品の展示、講演会などが行われ、幅広い世代が人権問題への理解を深めた。
 
 人権意識の高揚、差別のない明るい社会の構築を目指すイベント。開会にあたり野田武則市長は「人権課題解決の一助、自らの人権意識を見つめ直す機会となることを期待する」とあいさつ。同市が1991年から継続する中学生対象の「人権マンガ展」の表彰式が行われた。
 
 本年度は市内3校から16点の応募があり、4賞の受賞者を表彰した。釜石市長賞を受賞したのは髙橋愛里さん(唐丹中3年)。国籍や人種による差別や偏見で事件が発生している世界の現状に心を痛め、差別撤廃や人権尊重の思いを作品に表現した。肌の色が違う4本の手を組ませ、「私とあなたは何の違いもない」とのメッセージを添えた。「相手を知ろうとする姿勢が大事。他国のことを調べたり話し合ったり。インターネットも有効活用し、互いの理解を深められたら」と髙橋さん。
 
釜石市長賞を受賞した髙橋愛里さん(唐丹中3年)

釜石市長賞を受賞した髙橋愛里さん(唐丹中3年)

 
髙橋さんの作品。差別のない社会への思いを表現

髙橋さんの作品。差別のない社会への思いを表現

 
 館内では5、6の両日、本年度の全応募作品と2014年度からの入賞作品の展示も行われた。来場者はいじめ撲滅や個性尊重、世界平和などへの願いが込められた力作を目にしながら、人権の大切さを再認識した。
 
本年度の全応募作品と過去の入賞作品を展示した人権マンガ展

本年度の全応募作品と過去の入賞作品を展示した人権マンガ展

 
 講演会のテーマは「ジェンダーと人権~性の多様性を手がかりに」。釜石市出身で都立高主幹教諭の瓦田尚さん(早稲田大大学院卒)が講師を務めた。瓦田さんは性的少数者(LGBTなど)やジェンダー(社会的、文化的につくられた性)に関する教育をいち早く授業に取り入れてきた。
 
 講演で、男女の役割などについて固定的な観念を持つことを指す「ジェンダーバイアス」の事例を紹介。「バイアス(先入観、偏見)によってつらい思いをする人もいる」と話した。性的少数者の割合は左きき、AB型の割合と同じくらいとも言われる。近年、当事者が支援者と共に理解促進を訴えるパレードを行ったり、同性パートナーシップ制度を導入する自治体が増えてくるなど、取り巻く社会環境は大きく変わってきている。
 
瓦田尚さんの講演「ジェンダーと人権~性の多様性を手がかりに」

瓦田尚さんの講演「ジェンダーと人権~性の多様性を手がかりに」

 
 「少数者が生きやすい社会はその他の人も生きやすい社会。憲法では社会的弱者に対し、国や自治体がその権利、自由を保障する責任を定めている」と瓦田さん。誰でも使えるという「ユニバーサルデザイン」の考え方を紹介し、「物だけでなく考え方、環境をいかに“ユニバーサルデザイン化”していけるかが重要」と話した。
 
 学校では男女別の名簿や定員の廃止、部活の入部条件の改善などが進み、将来的には男女別の体育を一緒にという方向性も示されている。瓦田さんは憲法11、12条の条文を紹介し、「権利をもらって安心するだけでなく、『これでいいのか』と常に考え続けることが大事。困った時に声を上げることが人権を守ることにつながる」と教えた。
 
学校の授業のような雰囲気で進んだ人権講演会

学校の授業のような雰囲気で進んだ人権講演会

 
 この日はアトラクションとして、甲子中生徒によるハカ、唐丹町の桜舞太鼓も披露された。 

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「イカ」の体って面白い! 子どもたちが解剖 エコクラブ講座 海洋プラごみの現状も学ぶ

こどもエコクラブで行われたスルメイカの解剖

こどもエコクラブで行われたスルメイカの解剖

 
 小学生が地元の自然や環境を学ぶ釜石市の「こどもエコクラブ」(市主催)は5日、本年度の第4回講座「海の生物観察会」を開催。会員30人がスルメイカの解剖と海洋プラスチックごみの学習に取り組んだ。大学生や漁業者が講師となり、海洋資源の大切さ、人間の暮らしが海に与える影響などを伝え、子どもたちの理解を促した。
 
 平田の岩手大釜石キャンパスが会場。2班に分かれ、2つのメニューを交互に体験した。イカの生態を教えたのは、同大農学部水産システム学コース専攻の小松原昂樹さん(4年)。イカは日本近海だけでも100種類以上いて、水を吐き出すことで高速移動したり、空中を飛ぶことができること、2種類の色素細胞によって体色が自在に変化することなどを教えた。唐丹町の漁師佐々木武さん(40)、佐々木和則さん(56)も講師を務め、スルメイカの漁獲方法などを解説した。
 
漁師の佐々木武さんはイカの漁獲方法を説明した

漁師の佐々木武さんはイカの漁獲方法を説明した

 
はさみとピンセットを使い、スルメイカの解剖に挑戦する子どもたち

はさみとピンセットを使い、スルメイカの解剖に挑戦する子どもたち

 
 スルメイカの解剖では、はさみを使って体を切り開き、各部位を観察。果たす役割も学んだ。慎重に作業するも、墨汁嚢(のう)を切ってしまい、顔に墨を浴びる子も。イカの目は人間と構造が似ていて高性能。子どもたちは取り出した目の中にある透明な水晶体に驚きの声を上げた。イカの血液が青色であることも知った。
 
漁師の佐々木和則さんから教わり目玉を取り出してみると… 中には透明な水晶体が(左下写真)

漁師の佐々木和則さんから教わり目玉を取り出してみると… 中には透明な水晶体が(左下写真)

 
岩大生の小松原昂樹さん(右から2人目)がイカの青い血液について解説

岩大生の小松原昂樹さん(右から2人目)がイカの青い血液について解説

 
 磯﨑雄太君(双葉小3年)は「イカは家で食べるけど、体の中を見るのは初めて。心臓が3つあるのを知ってびっくり。海の生き物に興味がわいた。もっと勉強してみたい」と目を輝かせた。
 
 海の環境汚染で近年、問題視されている海洋プラスチックについて教えたのは、同大大学院生の菅野智愛(ともよし)さん(1年)。子どもたちは始めに、キャンパス近くの漁港で海水を採取。ろ紙でこし、紙に残ったものを顕微鏡で観察した。見えたのは、肉眼ではほとんど確認できなかった糸くずのようなもの。正体は、海に流れ出たプラスチックごみが波にもまれたり、太陽光にさらされたりして微小化した「マイクロプラスチック」。
 
海水を採取(左下写真)し、交じっていたものを顕微鏡で観察

海水を採取(左下写真)し、交じっていたものを顕微鏡で観察

 
岩大大学院生の菅野智愛さんが海洋プラスチックごみについて教えた

岩大大学院生の菅野智愛さんが海洋プラスチックごみについて教えた

 
 菅野さんは魚の腹からペットボトルのキャップが出てきた事例も紹介。「小さなプラスチックが魚の口に入ると、みんなが食べる魚にも影響が出てくるかもしれない。このままだと、海のプラスチックごみが魚の量を超えてしまうという予測もある」と話した。釜石の海のプラスチックごみの現状も示し、誰もができる海ごみ減量の方策として「ポイ捨てをしない。見つけたごみを拾う。ごみの分別をする」ことを呼び掛けた。
 
 長畑良優(みゆ)さん(平田小1年)は「海にプラスチックがたくさん落ちていたり浮いていることを初めて知った。海に行ってごみ拾いをしたい」と環境への意識を高めた様子。体験や座学を通して子どもたちは多くの学びを得た。