課題研究で開発に取り組んだ「レモンタルタル鹿肉カツバーガー」
釜石市大平町の県立釜石商工高(伊東道夫校長、生徒198人)で10月22日に開かれた「商工祭」は、生徒の同居家族に限定して公開された。商業、工業高の統合から14年目の学校祭。工業系、商業系の特徴を生かして成果を発表する中、来校者の人気を集めたのは、総合情報科の3年生7人が地域企業と商品開発・販売した「鹿肉カツバーガー」。1個600円で100個を限定販売すると、約2時間半で完売した。
「おいしいよ」。調理、売り込みなど役割分担しながら販売体験する生徒
カツバーガーは課題研究の一環で開発。7人は、▽市内でシカが多く目撃され、農林業被害だけでなく一般住家の庭木などの食害もある▽わなの設置などで捕獲する対策の実施―などを学び、「駆除したシカをうまく利用できないか」と考え、約半年間取り組んできた。
開発には、農業被害が課題となっている二ホンジカの活用に官民連携で取り組む「大槌ジビエソーシャルプロジェクト」が協力した。カツに使ったのは、調理しやすいモモ肉。ソースはさっぱり系の「レモンタルタル」と、こってり系の「味噌(みそ)カツ」の2種類を用意した。シカ肉が初めてという人も食べやすいよう試行錯誤した。
同日限りの販売だったが、2つの味を楽しもうと複数個買う保護者もいた。開発グループのリーダー中根愛子(あこ)さんは「かみ切りやすい肉の厚さ、肉に合うソースの味を調整するのが大変だったが、納得いく出来。タルタルソースは自分たちで手作りし、レモン風味でさっぱりしている」と自信たっぷり。「地域課題に向き合えた」と手応えを感じていて、カツバーガーをきっかけに「シカ肉を使った料理や革製品づくりが市内でも広がってほしい」と願った。
生徒7人が学びや願いを込めて「鹿肉バーガー」を販売した
学校祭のテーマは「We make everybody smile~伝統を越えろ商工生」。新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、制限付きながらも3年ぶりに一般公開できる喜びを込めた。電気電子科は電子回路の実演やエネルギー模型の展示、機械科は旋盤や溶接作業の実演などを行った。総合情報科は伝統の「商工マーケット」を開き、全国から仕入れた菓子や飲料などを販売。ステージ発表もあり、商工虎舞や吹奏楽が登場した。
旋盤の実演を見守る来校者。工業系学科はものづくり実習の様子を公開した
総合情報科(商業系)の「商工マーケット」は全国のおいしいものを販売した
文化祭を盛り上げるステージ発表。若々しい虎舞の演舞を披露した
同校入学時からコロナ禍で過ごした3年生は、修学旅行など多くの行事が中止されてきた。そんな中で保護者らを招いた商工祭の開催に、機械科の前川覇龍(はる)君は「自分の頑張りを親に伝えられたことがとてもうれしかった」と喜ぶ。来春からは県内企業で働くことが決まっていて、「実習の中でやってきたものを生かせるよう努力する」と前を向く。勉強のほか、虎舞にも取り組んできた前川君の様子を見守る両親は「最後の文化祭、よく頑張った。ここでやりたいことを見つけることができたのが一番の成果。希望した仕事も見つけたんだから、熱意を持って取り組んでほしい」と目を細めた。