タグ別アーカイブ: 文化・教育

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伝えたい!災害の怖さ、備えや避難の大切さ 釜石東中3年生、栗林小で防災交流会

釜石東中と栗林小の防災交流会ですごろくを楽しむ児童生徒

釜石東中と栗林小の防災交流会ですごろくを楽しむ児童生徒

 
 主体的、実践的な防災学習に力を入れる釜石市鵜住居町の釜石東中(佃拓生校長、生徒102人)の3年生41人は22日、3年間の学びの成果を伝える防災交流会を栗林町の栗林小(八木澤江利子校長、児童33人)で開いた。津波の怖さ、避難の大切さを伝えようと、手作りの紙芝居やかるた、クイズなど8つの体験プログラムを用意し、小学生に挑戦してもらった。
  
すごろくのマスに書かれたお題に沿って机の下に潜る児童ら

すごろくのマスに書かれたお題に沿って机の下に潜る児童ら

  
 小学生は用意されたプログラムから、4つを選んで体験。すごろくでは、サイコロを振り、防災や災害時対応の問いなどが書かれたマスにコマを進めた。「一人で家にいる時に地震が起こったら?」との質問には、「まず身を守る」と答え、近くにあった机の下に潜ってじっとした。実験チームは、災害時に水道が使えなくなった場合の代替策を紹介。2〜3ミリほどの穴を開けたペットボトルを水道の蛇口のように使う方法で、キャップを緩めると穴から適量の水が出て、キャップを閉めれば水が止まる様子に児童は驚いていた。
  
ペットボトルを「簡易蛇口」として使う方法を伝える実験

ペットボトルを「簡易蛇口」として使う方法を伝える実験

 
かるたチームは伝えたい思いを読み札に詰め込んだ

かるたチームは伝えたい思いを読み札に詰め込んだ

  
 「想定にとらわれるな」「確かめよう 避難経路」「軽い気持ちでのぞむな 避難訓練」。地震や津波、日常の災害への備えを分かりやすく伝えようと作られた、かるたの読み札には3年生が伝えたい思いを詰め込んだ。三陸に伝わる「てんでんこ」を題材にした紙芝居では、「津波からそれぞれが身を守って逃げなければならないが、避難する場所を決めておけば、大切な人や家族と会うことができる」と訴えた。防災バックや非常食など事前の準備を強調するプレゼンテーション、避難所生活で気を付けることなどを示したパンフレットを配布するチームもあった。
 
「避難場所を決めて家族で共有して」。紙芝居で教訓を伝える

「避難場所を決めて家族で共有して」。紙芝居で教訓を伝える

 
プレゼンチームは防災バックの重さを体験してもらった

プレゼンチームは防災バックの重さを体験してもらった

 
地震発生時や避難所での行動をまとめた防災パンフレット

地震発生時や避難所での行動をまとめた防災パンフレット

 
 5人組の戦隊ヒーロー「てんでんこレンジャー」も登場。防災について学びを深めた児童たちに「大きくなった時に周りの人を助けられるようになってほしい。一緒に未来につなげていこう」と呼び掛けた。
 
 栗林小の小笠原虹南(にいな)さん(6年)は「クイズが印象に残った。エレベーターに乗っていて地震が起きた時に全部の階のボタンを押せば、最寄りの階で停止すると初めて知った。防災についてもっと勉強して、てんでんこレンジャーのような活動に関わってみたい」と刺激を受けた。
 
地震発生時の行動などを問いかけるクイズに挑戦する児童

地震発生時の行動などを問いかけるクイズに挑戦する児童

 
笑顔で交流した小学生と「てんでんこレンジャー」

笑顔で交流した小学生と「てんでんこレンジャー」

 
 釜石東中3年生は総合的な学習の一環で、防災に関する活動を積み重ねてきた。1年生では東日本大震災時の体験を地元住民らから聞き取り、「防災だより」としてまとめ「いのちをつなぐ未来館」で展示。2年生の時には避難困難者(障害者や高齢者、乳児のいる母親など)の行動の大変さを体験したり、地域住民との意見交換会で災害時に中学生ができることを発表し、助言をもらったりした。3年生では避難所運営訓練を実施。こうした活動をまとめた集大成が交流会で、震災を知らない子が増える中で、学びを次代につなぐため実践した。
  
「逃げれば、助かる!」。写真と映像で分かりやすく伝えた

「逃げれば、助かる!」。写真と映像で分かりやすく伝えた

  
 写真・映像チームは、震災時の鵜住居小児童の避難行動を描いたアニメ動画や同校校舎3階に車が突き刺さる写真などを見せ、「津波の威力はすごいし、とても怖い。でも、しっかり逃げれば命は助かる。津波が来ると分かったら、すぐに逃げよう」と児童に語りかけた。
 
 中学3年生は震災当時、2、3歳。佐々木和哉君は揺れの怖さを記憶するが、伝えられる側の小学生はほとんどがまだ生まれていなかった。知らない世代に分かりやすく伝えられるようリアルな映像やスライドを使うなど工夫。「災害の怖さと避難の大切さを伝えられた。自分の身を守る行動、防災について考えてもらう時間にしてもらえた」と手応えを感じた。花輪祐輔君は「もう守られる立場ではない。伝える立場なので、行動に移していきたい」と背筋を伸ばした。
  
 同様の交流会は、鵜住居小でも行った。
 
 

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みんなで楽しもう!釜石の芸術文化 多彩な市民の力作、展示や舞台発表で発信

釜石市民の多彩な表現活動を紹介した芸術文化祭

釜石市民の多彩な表現活動を紹介した芸術文化祭

 
 第52回釜石市民芸術文化祭(市、市芸術文化協会主催)は12、13の両日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。書道、写真、絵画、盆栽など各分野を愛好する市内の表現者たちが力作を並べ、訪れた市民らが感性豊かな作品を鑑賞した。YouTube(ユーチューブ)生配信も昨年に続いて行い、発表部門の団体が活動の成果を発信した。
 
ぬくもりある光を放つステンドグラス作品を楽しむ来場者

ぬくもりある光を放つステンドグラス作品を楽しむ来場者

 
記念切手など自慢のコレクションを公開した釜石郵趣会

記念切手など自慢のコレクションを公開した釜石郵趣会

 
 芸文協には26団体(約470人)が加盟する。展示部門には加盟団体、一般参加を合わせて17団体が出品。生け花、水墨画、切り絵、ステンドグラス、郵趣品など多彩な分野の力作が並んだ。釜石夏草俳句会(菊池義一代表、会員7人)は、日々の生活で心動かされた一瞬を切り取って詠んだ俳句を柔らかな筆致で書き上げた短冊や色紙などを紹介。俳句歴30年の濱川糸子さん(73)は「世界一短い詩で、十七文字で言い切る。なかなか難しいが、気持ちを表現できる」と魅力を語った。会員の高齢化が進み、新たな入会もなく、活動PRになればと参加。〽芸術祭 思い句に触れ 仲間入り―と期待した。
 
釜石夏草俳句会は心動かされた瞬間を詠んだ作品を並べた

釜石夏草俳句会は心動かされた瞬間を詠んだ作品を並べた

 
廃材を使ったオブジェなど個性豊かな作品がお目見えした

廃材を使ったオブジェなど個性豊かな作品がお目見えした

 
昔懐かしい風景写真などが並んだ「まちかどミニ美術館」

昔懐かしい風景写真などが並んだ「まちかどミニ美術館」

 
 特別企画として「まちかどミニ美術館(博物館)」と題した展示コーナーを用意。市内企業などが所蔵する美術品や個人的に見せたい「我が家の宝物」を紹介でき、12月からTETTOで常設展示となる予定だ。芸文祭に合わせて並んだのは、懐かしいまちの風景や人の笑顔。多くの人が足を止め、一つ一つじっくりと見入っていた。
 
色鮮やかな折り紙を使った壁掛けづくりを紹介した遠藤さん(中)

色鮮やかな折り紙を使った壁掛けづくりを紹介した遠藤さん(中)

 
 エコクラフト、色鉛筆画などの体験コーナーもあり、来場者が手作りの面白さに触れた。傾聴ボランティアとして活動する源太沢町の遠藤哲郎さん(85)は折り紙を使った壁掛けづくりを紹介。安く手軽な遊びを考え続けているという遠藤さんの丁寧な指導に触れた80代の女性は「ありがたいね。楽しさに好奇心が刺激された」と喜んだ。
 
オカリナとフルート演奏、書が融合したパフォーマンス

オカリナとフルート演奏、書が融合したパフォーマンス

 
 ステージでは5団体がダンスやバンド演奏などを披露した。釜石南高(現釜石高)の1969(昭和44)年卒業生でつくる「ふるさと復興支援グループ釜南44」(白田正行代表)は郷土愛を色濃くにじませた作品展示やイベントで芸文祭を盛り上げ、今年で6年目となる。今回は、白田代表の妻とよ子さん(66)=釜石出身、旧姓・菊池=が所属する「ライリッシュオカリナ連盟宮城県北支部・泉の杜」の演奏で釜石市民に癒やしを届けた。同グループメンバーで音楽教室を主宰する釜石の山﨑真行さんがフルートで音を重ね、仙台市在住の書家・支部蘭蹊さん(はせべ・らんけい=本名・一郎、71)が音色に合わせて書のパフォーマンスを見せる演出もあった。
 
釜石ふるさと応援大使に就任した支部さん(前列)

釜石ふるさと応援大使に就任した支部さん(前列)

 
 少年期を釜石で過ごした支部さんは今回、釜石ふるさと応援大使に就任。東日本大震災後、釜石市内の仮設住宅を回って書を届けたり、同グループの活動を通じて復興応援を続けてきた。新型コロナウイルス禍で訪問機会は減っているが、「書道は言葉を伝えるもの。勇気づけられる書を書き続けたい」と意欲。特に、子どもや若い世代に「普段着の書道」「言葉の力」を伝えていく考えだ。
 
表千家茶道こども教室の茶席では中学生がお点前を披露した

表千家茶道こども教室の茶席では中学生がお点前を披露した

 
小学生は緊張しながらもお運びを手伝い、客をもてなした

小学生は緊張しながらもお運びを手伝い、客をもてなした

 
 釜石茶道協会による呈茶もあり、来場者を和ませた。12日には、表千家成和会(互野宗哲会長)を母体に組織する実行委が実施する茶道こども教室の受講生が稽古の成果を披露。遠野愛実さん(大平中1年)と大下桜雅君(釜石中2年)が「立礼(りゅうれい)点前」を見せ、小学生がお運びを手伝った。2年目の佐々木翔空(とあ)君(小佐野小5年)は「人前でのおもてなしに緊張した。練習より上手くできて楽しかった。お点前がかっこいい。自分もできるようになりたい」と刺激を受けた。
 
 芸文協の河東眞澄会長は「芸術文化に対する市民の熱い思いが感じられる」と強調する一方、会員の高齢化などで継続する厳しさも明かす。昨年は3日間の実施だったが、今年は2日と期間を短縮。規模は縮小となっても「ひらめく芸術、きらめく文化のまちを継承するため、みんなで知恵を出し合っていきたい」と思いを巡らせた。
 

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福祉学習の成果、演じて発信 大平中生、認知症の劇披露「みんなで支えよう!」

認知症がテーマの劇で熱演する大平中3年生

認知症がテーマの劇で熱演する大平中3年生

 
 釜石市大平町にある大平中(蛸島茂雄校長、生徒101人)は、地元の高齢者福祉施設と交流しながら福祉学習に取り組んでいる。3年生39人は、3年間の学びの集大成として認知症をテーマにした劇を創作。8日、同じ学区内にある平田町の平田小(鈴木崇校長、児童148人)で披露し、福祉学習の成果を後輩たちに伝えた。
 
 劇のタイトルは「野菊ばあちゃん物語」。認知症の症状が出始めた高齢女性の振る舞いに戸惑いながらも暖かく見守る家族や地域の人たちを描いた。「物忘れが多くなった」「身の回りのことに無頓着」「外に出なくなった」「同じことを何回も話す」といった高齢女性の変化を見せ、「認知症かも?」と家族が気付く症状を明示。医療機関の受診を渋ったり、食事した後に「ごはんまだ?」と繰り返したりした時の悪い対応事例を演じた後に、時間を巻き戻す演出で同じ場面を再現して関係をこじらせない接し方や心得も分かりやすく紹介した。
 
「もしかしたら認知症?」。早めの受診を促す方法を紹介

「もしかしたら認知症?」。早めの受診を促す方法を紹介

 
 認知症の人を地域全体で見守る体制の大切さも発信した。その一歩が、声がけ。ポイントは、▽驚かせない▽急がせない▽心を傷つけない―ことで、「『こんにちは。きょうは寒いですね』とかごく普通のあいさつをして、『どこまで行くの?』とゆっくり穏やかに優しく声かけるのよ」と、せりふで示した。高齢者らが行方不明になった際の早期発見を目的にした市事業「認知症高齢者徘徊(はいかい)SOSネットワーク」も紹介。自分たちが暮らす地域でも「困ったときはお互いさま」という気持ちが広がってほしいと思いを込めた。
 
「相手の視界に入って優しく声がけを」。認知症の人への接し方を伝えた

「相手の視界に入って優しく声がけを」。認知症の人への接し方を伝えた

 
 大平中の福祉学習は総合的な学習の一環で、社会福祉法人清風会(平田)が支援。3年生は認知症サポーター養成講座や介護技術体験などに取り組んできた。同法人が運営する特別養護老人ホームあいぜんの里を訪問し、ソーランを披露するなど交流も。3年間積み上げた学びを劇に盛り込んだ。
 
 「野菊ばあちゃん」を演じた佐々木梨杏さんは「認知症についてたくさん学んで、知ったことを伝えられた。対応の仕方が分かったので、学びを生かして地域で暮らしていきたい。これからも福祉に興味を持って、知識を深められたらいい」とうなずいた。
 
人を思いやる大切さや大事な人を守り抜く尊さを伝える合唱も披露した

人を思いやる大切さや大事な人を守り抜く尊さを伝える合唱も披露した

 
 劇の披露は、中学校での福祉学習の様子を伝え、地域のために尽くそうとする心を育てるのが狙い。平田小4~6年生約70人が見学した。児童から「調べたり学習したことを劇にしたのがすごい」「認知症は身近に潜んでいると思った」「家族に認知症の高齢者がいる。劇を参考にして優しく接してあげたい」などと感想があった。
 
劇の発表を通じて交流を深めた大平中の生徒と平田小の児童

劇の発表を通じて交流を深めた大平中の生徒と平田小の児童

 
 同法人の関係者や教育、福祉関係の市職員らも鑑賞し、「核家族化やコミュニティーの希薄化が進み、地域や世代間の交流が少なくなる中、福祉に関する正しい理解を育む取り組みが求められている。継続を」と期待。それに応えるべく、大平中では「支え合い・助け合い、安心して暮らせるまちづくり」を全校共通テーマとして学習、交流を深めていく考えだ。

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誰もが自分らしく生きられる社会に 釜石で人権のつどい 講演などで理解促進図る

人権マンガ展の入賞者と関係者ら=人権のつどい

人権マンガ展の入賞者と関係者ら=人権のつどい

 
 人権のつどいinかまいし(釜石市主催)は5日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。宮古人権擁護委員協議会の人権啓発活動ネットワーク事業で、新型コロナ感染症の影響により3年ぶりに実施。同市が独自に取り組む「人権マンガ展」の入賞者表彰、応募作品の展示、講演会などが行われ、幅広い世代が人権問題への理解を深めた。
 
 人権意識の高揚、差別のない明るい社会の構築を目指すイベント。開会にあたり野田武則市長は「人権課題解決の一助、自らの人権意識を見つめ直す機会となることを期待する」とあいさつ。同市が1991年から継続する中学生対象の「人権マンガ展」の表彰式が行われた。
 
 本年度は市内3校から16点の応募があり、4賞の受賞者を表彰した。釜石市長賞を受賞したのは髙橋愛里さん(唐丹中3年)。国籍や人種による差別や偏見で事件が発生している世界の現状に心を痛め、差別撤廃や人権尊重の思いを作品に表現した。肌の色が違う4本の手を組ませ、「私とあなたは何の違いもない」とのメッセージを添えた。「相手を知ろうとする姿勢が大事。他国のことを調べたり話し合ったり。インターネットも有効活用し、互いの理解を深められたら」と髙橋さん。
 
釜石市長賞を受賞した髙橋愛里さん(唐丹中3年)

釜石市長賞を受賞した髙橋愛里さん(唐丹中3年)

 
髙橋さんの作品。差別のない社会への思いを表現

髙橋さんの作品。差別のない社会への思いを表現

 
 館内では5、6の両日、本年度の全応募作品と2014年度からの入賞作品の展示も行われた。来場者はいじめ撲滅や個性尊重、世界平和などへの願いが込められた力作を目にしながら、人権の大切さを再認識した。
 
本年度の全応募作品と過去の入賞作品を展示した人権マンガ展

本年度の全応募作品と過去の入賞作品を展示した人権マンガ展

 
 講演会のテーマは「ジェンダーと人権~性の多様性を手がかりに」。釜石市出身で都立高主幹教諭の瓦田尚さん(早稲田大大学院卒)が講師を務めた。瓦田さんは性的少数者(LGBTなど)やジェンダー(社会的、文化的につくられた性)に関する教育をいち早く授業に取り入れてきた。
 
 講演で、男女の役割などについて固定的な観念を持つことを指す「ジェンダーバイアス」の事例を紹介。「バイアス(先入観、偏見)によってつらい思いをする人もいる」と話した。性的少数者の割合は左きき、AB型の割合と同じくらいとも言われる。近年、当事者が支援者と共に理解促進を訴えるパレードを行ったり、同性パートナーシップ制度を導入する自治体が増えてくるなど、取り巻く社会環境は大きく変わってきている。
 
瓦田尚さんの講演「ジェンダーと人権~性の多様性を手がかりに」

瓦田尚さんの講演「ジェンダーと人権~性の多様性を手がかりに」

 
 「少数者が生きやすい社会はその他の人も生きやすい社会。憲法では社会的弱者に対し、国や自治体がその権利、自由を保障する責任を定めている」と瓦田さん。誰でも使えるという「ユニバーサルデザイン」の考え方を紹介し、「物だけでなく考え方、環境をいかに“ユニバーサルデザイン化”していけるかが重要」と話した。
 
 学校では男女別の名簿や定員の廃止、部活の入部条件の改善などが進み、将来的には男女別の体育を一緒にという方向性も示されている。瓦田さんは憲法11、12条の条文を紹介し、「権利をもらって安心するだけでなく、『これでいいのか』と常に考え続けることが大事。困った時に声を上げることが人権を守ることにつながる」と教えた。
 
学校の授業のような雰囲気で進んだ人権講演会

学校の授業のような雰囲気で進んだ人権講演会

 
 この日はアトラクションとして、甲子中生徒によるハカ、唐丹町の桜舞太鼓も披露された。 

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「イカ」の体って面白い! 子どもたちが解剖 エコクラブ講座 海洋プラごみの現状も学ぶ

こどもエコクラブで行われたスルメイカの解剖

こどもエコクラブで行われたスルメイカの解剖

 
 小学生が地元の自然や環境を学ぶ釜石市の「こどもエコクラブ」(市主催)は5日、本年度の第4回講座「海の生物観察会」を開催。会員30人がスルメイカの解剖と海洋プラスチックごみの学習に取り組んだ。大学生や漁業者が講師となり、海洋資源の大切さ、人間の暮らしが海に与える影響などを伝え、子どもたちの理解を促した。
 
 平田の岩手大釜石キャンパスが会場。2班に分かれ、2つのメニューを交互に体験した。イカの生態を教えたのは、同大農学部水産システム学コース専攻の小松原昂樹さん(4年)。イカは日本近海だけでも100種類以上いて、水を吐き出すことで高速移動したり、空中を飛ぶことができること、2種類の色素細胞によって体色が自在に変化することなどを教えた。唐丹町の漁師佐々木武さん(40)、佐々木和則さん(56)も講師を務め、スルメイカの漁獲方法などを解説した。
 
漁師の佐々木武さんはイカの漁獲方法を説明した

漁師の佐々木武さんはイカの漁獲方法を説明した

 
はさみとピンセットを使い、スルメイカの解剖に挑戦する子どもたち

はさみとピンセットを使い、スルメイカの解剖に挑戦する子どもたち

 
 スルメイカの解剖では、はさみを使って体を切り開き、各部位を観察。果たす役割も学んだ。慎重に作業するも、墨汁嚢(のう)を切ってしまい、顔に墨を浴びる子も。イカの目は人間と構造が似ていて高性能。子どもたちは取り出した目の中にある透明な水晶体に驚きの声を上げた。イカの血液が青色であることも知った。
 
漁師の佐々木和則さんから教わり目玉を取り出してみると… 中には透明な水晶体が(左下写真)

漁師の佐々木和則さんから教わり目玉を取り出してみると… 中には透明な水晶体が(左下写真)

 
岩大生の小松原昂樹さん(右から2人目)がイカの青い血液について解説

岩大生の小松原昂樹さん(右から2人目)がイカの青い血液について解説

 
 磯﨑雄太君(双葉小3年)は「イカは家で食べるけど、体の中を見るのは初めて。心臓が3つあるのを知ってびっくり。海の生き物に興味がわいた。もっと勉強してみたい」と目を輝かせた。
 
 海の環境汚染で近年、問題視されている海洋プラスチックについて教えたのは、同大大学院生の菅野智愛(ともよし)さん(1年)。子どもたちは始めに、キャンパス近くの漁港で海水を採取。ろ紙でこし、紙に残ったものを顕微鏡で観察した。見えたのは、肉眼ではほとんど確認できなかった糸くずのようなもの。正体は、海に流れ出たプラスチックごみが波にもまれたり、太陽光にさらされたりして微小化した「マイクロプラスチック」。
 
海水を採取(左下写真)し、交じっていたものを顕微鏡で観察

海水を採取(左下写真)し、交じっていたものを顕微鏡で観察

 
岩大大学院生の菅野智愛さんが海洋プラスチックごみについて教えた

岩大大学院生の菅野智愛さんが海洋プラスチックごみについて教えた

 
 菅野さんは魚の腹からペットボトルのキャップが出てきた事例も紹介。「小さなプラスチックが魚の口に入ると、みんなが食べる魚にも影響が出てくるかもしれない。このままだと、海のプラスチックごみが魚の量を超えてしまうという予測もある」と話した。釜石の海のプラスチックごみの現状も示し、誰もができる海ごみ減量の方策として「ポイ捨てをしない。見つけたごみを拾う。ごみの分別をする」ことを呼び掛けた。
 
 長畑良優(みゆ)さん(平田小1年)は「海にプラスチックがたくさん落ちていたり浮いていることを初めて知った。海に行ってごみ拾いをしたい」と環境への意識を高めた様子。体験や座学を通して子どもたちは多くの学びを得た。

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「古里は心のよりどころ」釜石出身、アルゼンチン在住の造園技師 猪又康夫さん映画撮影で帰郷

映画撮影のため帰郷した猪又康夫さん(左から2人目)、長男圭悟さん(同3人目)、フェルナンド・クラップ監督(左)らスタッフ 

映画撮影のため帰郷した猪又康夫さん(左から2人目)、長男圭悟さん(同3人目)、フェルナンド・クラップ監督(左)らスタッフ 

 
 釜石市出身で、南米アルゼンチンに渡り、日本の造園術を広めた猪又康夫さん(84)が自身の人生を描くドキュメンタリー映画の撮影で10月下旬、6年ぶりに帰郷した。首都ブエノスアイレス市の日本庭園を設計、施工するなど、同国の街並みに唯一無二の空間を生み出してきた猪又さん。日本を離れて半世紀以上になるが、古里釜石は今も心のよりどころ。今回の訪問で、旧友との再会や子どものころから慣れ親しんだ景色に力をもらい、生涯現役に意欲を燃やす。
 
 同映画は、日本人移民の著書を執筆したフェルナンド・クラップ監督が猪又さんの人柄とエネルギーに魅せられ、数年かけて口説き落とし、撮影が実現した作品。猪又さんがアルゼンチンで手掛けた仕事や歩んできた人生を紹介するほか、日系社会や両国の関係性について本人の視点で浮き彫りにする。アルゼンチン映画協会が制作を支援する。
 
 猪又さんと長男圭悟さん(44)はクラップ監督ら制作スタッフ3人と来釜。26日午前は漁船に乗っての釜石湾内周遊、午後には鉄の歴史館見学や市広報のインタビュー取材を受ける様子などを撮影した。
 
職員の案内で鉄の歴史館を見学する猪又康夫さん

職員の案内で鉄の歴史館を見学する猪又康夫さん

 
インタビュー取材を受ける様子をスタッフが撮影

インタビュー取材を受ける様子をスタッフが撮影

 
自身の人生について語る猪又康夫さん(釜石市出身、アルゼンチン在住)。撮影:市広聴広報室

自身の人生について語る猪又康夫さん(釜石市出身、アルゼンチン在住)。撮影:市広聴広報室

 
 猪又さんは1938年生まれ。父と兄は製鉄所勤務で、上中島町に暮らした。釜石高から東京農業大に進み、造園を学んだ。叔父は中国で活躍した造園技師で、その仕事を写真で目にしたのもきっかけだった。大学卒業後は北海道札幌市の造園会社に勤め、技術を磨いた。忙しい日々の中、「行き先が決まった人生は歩みたくない」とゼロからの出発を決断。27歳の時に、アルゼンチンで成功した札幌出身の花き栽培業者の呼び寄せで渡航した。
 
 ブエノスアイレス北部のエスコバル市に住み仕事を受け始めたが、当時、日本庭園の魅力を知るのは戦後、開拓で渡った日本人移民だけ。それでも「造って見せないことには誰も信用しない」と、日本で培ったさまざまな技術を駆使し実績を積んでいった。その実直な仕事ぶりや優れた技術は次第に現地の人たちの注目を集めていく。
 
 69年、エスコバル日本人会の依頼で入植記念の日本庭園を完成させた。78年には在亜日本人会から依頼されたブエノスアイレス日本庭園の大規模改修、拡張工事を完了。パンアメリカン高速道路の拡張工事に伴う大木1080本の移植も実現した。エスコバルで毎年行われる国定花祭りでは、大展示場装飾の総監督を50年余り続けている。公共の仕事のほか私邸の造園も行ってきた。2020年には日本文化の普及、在留邦人、日系人への福祉功労で、日本の叙勲「旭日双光章」を受章。アルゼンチン岩手県人会長も務めた。
 
猪又さんが手掛けた「エスコバル日本庭園」。写真提供:小木曽モニカさん(日本ロケコーディネーター・通訳)

猪又さんが手掛けた「エスコバル日本庭園」。写真提供:小木曽モニカさん(日本ロケコーディネーター・通訳)

 
多くの観光客でにぎわう「ブエノスアイレス日本庭園」。写真提供:清水尚子さん(同)

多くの観光客でにぎわう「ブエノスアイレス日本庭園」。写真提供:清水尚子さん(同)

 
 渡航から56年―。己の造園道を貫き、異国の地で確かな足跡を残してきた猪又さん。「子どもたちには苦労をかけたが、なんとかやってきた。商才がないんですね。ただ、文化としての日本庭園は種をまいた。家族には金は残せなかったが、心の財産は残せたと思っている」。
 
 古里釜石の豊かな自然、美しい景色は造園にも生かされる。「意識はしていないが、幼いころから見たものはやっぱり目に焼き付いているのだろう。自然に絵に浮かんでくる」。自身にとってのもう一つの宝は地元の友人ら。今回のロケでも船や車の手配など全面的な協力をもらった。「遠く離れていても気持ちはつながっている。ありがたい」。
 
猪又さんの友人(左)が漁船を出し、海上での撮影も。写真提供:清水さん

猪又さんの友人(左)が漁船を出し、海上での撮影も。写真提供:清水さん

 
震災後の釜石の海景色を目に焼き付ける猪又さん(左)。写真提供:清水さん

震災後の釜石の海景色を目に焼き付ける猪又さん(左)。写真提供:清水さん

 
 造園は自らの人生そのもの。「体は使えなくなってきたが、仕事がくる間は監督、設計は続けていく。これしかできないから。死ぬまで変わらないと思う―」。仕事への情熱は尽きることがない。
 
 猪又さんを追った映画のアルゼンチンでの公開は来年後半を予定する。「日本、釜石でもぜひ公開したい」と撮影陣。現在、制作のためのクラウドファンディングも展開している。

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挑戦!色の“ない”世界を“ある”に 生活体験発表大会で知事賞 釜石高定時制・大里菜々美さん 全国大会へ

全国大会に向け練習する大里菜々美さん(写真左)。原稿には学校生活で得た学びや気付き、思いをつづる(写真右)

全国大会に向け練習する大里菜々美さん(写真左)。原稿には学校生活で得た学びや気付き、思いをつづる(写真右)

 
 岩手県内の定時制、通信制高校に通う生徒たちの「生活体験発表大会」で、「色」と題して語った釜石高定時制2年の大里菜々美さんが最優秀の知事賞に輝いた。不登校だった小中学校時代の6年間は「色のない世界」。高校生となった今は、新しい仲間との出会いや三つの「挑戦」を課すことで前向きに生きている。「人生を彩るのは『挑戦』。どんな色を塗っていこう。想像するだけで胸が高鳴る」。本県代表として全国大会に臨む大里さんは、かつての自分と同じような境遇の人たちにそう語りかけるつもりだ。
 
 県大会は今年で72回目。9月に盛岡市で開かれ、定時制や通信制のある高校9校から12人が出場した。7分の持ち時間で、自身の体験や思いを語って最高賞を手にした大里さん。釜石高の前身、釜石南高時代を含め初めての受賞で、関係者らは喜びを口にする。
 
県大会の賞状を手にする大里さん。トロフィーのペナントリボンに初めて「釜石高定時制」の名が残る

県大会の賞状を手にする大里さん。トロフィーのペナントリボンに初めて「釜石高定時制」の名が残る

 
 大里さんは全国大会に向け、日々練習中。国語科担当の伊藤裕美教諭が付き添い、間の取り方などを助言する。「(大里さんは)本番に強い。淡々としているが、強い意志を感じる語り。滑舌がいい」と評価。原稿を暗記して読み上げるのではなく、「自然に話しているように言葉が出てくるようになれば」と見守る。
 
担当教諭に助言をもらいながら練習を重ねる大里さん

担当教諭に助言をもらいながら練習を重ねる大里さん

 
 「困難なことに立ち向かうことは、面倒なことでしかなかった。だから挑戦から逃げてきた」。小学4年生から休みがちになったという大里さん。陸上記録会の選手候補になったり、校内の広報委員長に推されたり、挑戦しなければならない局面になると、逃げるように休んだ。そして「本格的に不登校になった」。中学校にはほとんど行かなかった。
  
 時間や曜日の感覚が曖昧な昼夜逆転の生活。逃げ続け、たどり着いたのは「色彩のない世界だった」。真っ暗な夜中に目を覚ましては、孤独感に涙した。そんな白黒の世界の中で、自問自答する日々。「このままでいいはずがない」。焦りを感じるようになった中学3年、高校受験が近づいた。「生活を変えたい。彩りのあるものにするためには挑戦する勇気を持たなくては」。環境を変えようと、地元遠野市の隣町釜石市にある釜石高定時制を受験。自宅から列車などで約50分かけて通う日々が始まった。
 
 「やってみる」という一つの挑戦だった高校生活も2年目に突入。これまでに▽生徒会の役員になる▽接客が必要なコンビニでアルバイトをする▽学校を休まない―という三つのことに挑戦した。1年生で生徒会の会計係になり、今年の後期には自ら手を挙げて生徒会長になった。「リーダーに向いているとは思わないが、集団の先頭に立つ経験をし、成長したい」。アルバイトは1カ月だけだったが、無遅刻無欠勤でやり遂げた。「やればできる」と分かった。そして1年間休まず学校に通い、最大の目標、皆勤賞を手にした。「強くなれた。変われた」と実感。皆勤は今も続けている。
  
 なぜ、かつて学校から逃げたんだろう?―「失敗するのが怖かったんだ」と振り返る。挑戦できるようになった今思うことは…「大切なのは成功することではない。経験が財産になる。人生を彩るのは、挑戦そのものだ」
 
大里さんは思いを込めた言葉を紡ごうと練習に励んでいる

大里さんは思いを込めた言葉を紡ごうと練習に励んでいる

 
 「全国か…」。知事賞を受けた気持ちを聞いた時に大里さんがこぼした一言。喜びより逃げ腰かと一瞬感じられたが、「ガチガチに緊張するタイプ。周りに圧倒されないようにしたい」と自己分析していたからだった。これまでの生活を振り返りながら原稿を考える過程で、前向きな気持ちになったと言い、「『失敗してもいいや』。そう思うと、怖いものなしで生きられちゃう」。本番での強さにつながる「心の強さ」が伝わってきた。
 
友達との交流を楽しむ大里さん(左)。彩り豊かな学校生活を実感する

友達との交流を楽しむ大里さん(左)。彩り豊かな学校生活を実感する

 
「大会では一人芝居のように発表する人が多いが、自分にはハードルが高い。ただ言葉を紡いで発する感じだけど、私らしく思いを伝えたい」
 
 また一つ挑戦を重ねる大里さん。人生というキャンバスに新たな色を加える全国大会は11月20日、六本木ヒルズ・ハリウッドプラザ(東京)で開かれる。
 
 

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残そう!ふるさと釜石の味 かまだんご作りに親子で挑戦 「食の匠」の料理伝承会

食の匠(右)から教わりながら、かまだんご作りに取り組む参加者

食の匠(右)から教わりながら、かまだんご作りに取り組む参加者

  
 釜石・大槌地域郷土料理伝承会(同地域農業振興協議会など主催)は10月29日、釜石市大町の青葉ビルで開かれた。地域に伝わる郷土料理の継承と次代の伝承者育成を狙いに企画。同地域の親子ら14人が参加し、釜石地方の郷土菓子として知られる「かまだんご」作りに挑戦した。
  
かまだんごは、釜石地方の農家などに古くから伝わる定番のおやつ。草を刈る鎌の形に似ていることから名付けられたといわれる。それぞれの家庭によって形や中身のあんは少しずつ異なるが、いずれも米粉や小麦粉でつくられたモッチリとした生地の皮の中にトロリとした砂糖が入っている。
  
 講師は、釜石・大槌郷土料理研究会(前川良子会長、11人)会員で、本県の「食の匠」に認定されている橋野町の藤原政子さん(68)。若いころはポテトチップスが好きだったという藤原さんに、かまだんごを通じてゆで上げた小麦の甘い香りや手作り料理の良さ、身近な食材の魅力を伝えたしゅうとめの調理法を独自に改良したレシピを紹介した。材料の薄力粉、米粉などは岩手県産を使用。あんで使うクルミは橋野産で、参加者に地元食材のおいしさを味わってもらうよう準備した。
  
生地作りからスタート。親子で悪戦苦闘する姿も

生地作りからスタート。親子で悪戦苦闘する姿も

  
 参加者は皮作りから開始。材料を混ぜて、耳たぶほどの硬さになるまでこねていった。80グラムほどに分けて丸くのばした皮であんをしっかり包み、鍋でゆで上げた。藤原さんは「生地づくりには熱湯を使う。柔らかさが持続する」「生地はこねすぎない」「たっぷりの熱湯で浮き上がるまでゆでる」など作業ごとにポイントを教えた。
 
子どもたちの作業を優しいまなざしで見つめる藤原さん(右) 

子どもたちの作業を優しいまなざしで見つめる藤原さん(右)

  
「こぼれないようしっかり」。皮であんを包む作業に集中する参加者

「こぼれないようしっかり」。皮であんを包む作業に集中する参加者

  
上手にゆでるコツはかきまぜること(写真左)。浮き上がったらすくい取る(写真右)

上手にゆでるコツはかきまぜること(写真左)。浮き上がったらすくい取る(写真右)

   
 「おいしいかまだんごを作ってみたい」と参加した宮本聖良(せいら)さん(釜石中1年)は「生地を練る作業が思っていたより大変。力をつけて、休みの日に再挑戦したい」と意欲的。コロナ禍で試食はなく持ち帰りとなったが、「みんなで手作りしたから、おいしいはず」と楽しみを残した。祖母の愛子さん(68)も「いろんなポイントを教えてもらい参考になった。食の匠の知恵はさすがだ」と感心。子どもや若い世代が郷土料理や地元食材の良さに触れるきっかけになる伝承会を歓迎した。
  
「手作り料理に心動かされた経験を若い世代に伝えたい」と藤原さん

「手作り料理に心動かされた経験を若い世代に伝えたい」と藤原さん

  
 同地域の漁業、農業に携わる女性らでつくる研究会は20年近く前から地産地消、郷土料理の伝承活動に取り組んでいる。藤原さんは、しゅうとめから教えられた手作り料理のあたたかさを次代につなごうと意欲的に活動。「地元でとれた食材を利用し、家庭で食べ継がれてきた味は地域の財産。素朴だが、知恵と工夫があり、安心して食べられる。つながれてきた思いを伝えたい。伝承会をきっかけに、家庭で気軽に作って味をつないでほしい」と願った。
 
 

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釜石商工生が商品開発「鹿肉カツバーガー」 3年ぶりに公開「商工祭」で販売

課題研究で開発に取り組んだ「レモンタルタル鹿肉カツバーガー」

課題研究で開発に取り組んだ「レモンタルタル鹿肉カツバーガー」

 
 釜石市大平町の県立釜石商工高(伊東道夫校長、生徒198人)で10月22日に開かれた「商工祭」は、生徒の同居家族に限定して公開された。商業、工業高の統合から14年目の学校祭。工業系、商業系の特徴を生かして成果を発表する中、来校者の人気を集めたのは、総合情報科の3年生7人が地域企業と商品開発・販売した「鹿肉カツバーガー」。1個600円で100個を限定販売すると、約2時間半で完売した。
  
「おいしいよ」。調理、売り込みなど役割分担しながら販売体験する生徒

「おいしいよ」。調理、売り込みなど役割分担しながら販売体験する生徒

  
 カツバーガーは課題研究の一環で開発。7人は、▽市内でシカが多く目撃され、農林業被害だけでなく一般住家の庭木などの食害もある▽わなの設置などで捕獲する対策の実施―などを学び、「駆除したシカをうまく利用できないか」と考え、約半年間取り組んできた。
 
 開発には、農業被害が課題となっている二ホンジカの活用に官民連携で取り組む「大槌ジビエソーシャルプロジェクト」が協力した。カツに使ったのは、調理しやすいモモ肉。ソースはさっぱり系の「レモンタルタル」と、こってり系の「味噌(みそ)カツ」の2種類を用意した。シカ肉が初めてという人も食べやすいよう試行錯誤した。
 
 同日限りの販売だったが、2つの味を楽しもうと複数個買う保護者もいた。開発グループのリーダー中根愛子(あこ)さんは「かみ切りやすい肉の厚さ、肉に合うソースの味を調整するのが大変だったが、納得いく出来。タルタルソースは自分たちで手作りし、レモン風味でさっぱりしている」と自信たっぷり。「地域課題に向き合えた」と手応えを感じていて、カツバーガーをきっかけに「シカ肉を使った料理や革製品づくりが市内でも広がってほしい」と願った。
 
生徒7人が学びや願いを込めて「鹿肉バーガー」を販売した

生徒7人が学びや願いを込めて「鹿肉バーガー」を販売した

 
 学校祭のテーマは「We make everybody smile~伝統を越えろ商工生」。新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、制限付きながらも3年ぶりに一般公開できる喜びを込めた。電気電子科は電子回路の実演やエネルギー模型の展示、機械科は旋盤や溶接作業の実演などを行った。総合情報科は伝統の「商工マーケット」を開き、全国から仕入れた菓子や飲料などを販売。ステージ発表もあり、商工虎舞や吹奏楽が登場した。
 
旋盤の実演を見守る来校者。工業系学科はものづくり実習の様子を公開した

旋盤の実演を見守る来校者。工業系学科はものづくり実習の様子を公開した

 
総合情報科(商業系)の「商工マーケット」は全国のおいしいものを販売した

総合情報科(商業系)の「商工マーケット」は全国のおいしいものを販売した

 
文化祭を盛り上げるステージ発表。若々しい虎舞の演舞を披露した

文化祭を盛り上げるステージ発表。若々しい虎舞の演舞を披露した

 
 同校入学時からコロナ禍で過ごした3年生は、修学旅行など多くの行事が中止されてきた。そんな中で保護者らを招いた商工祭の開催に、機械科の前川覇龍(はる)君は「自分の頑張りを親に伝えられたことがとてもうれしかった」と喜ぶ。来春からは県内企業で働くことが決まっていて、「実習の中でやってきたものを生かせるよう努力する」と前を向く。勉強のほか、虎舞にも取り組んできた前川君の様子を見守る両親は「最後の文化祭、よく頑張った。ここでやりたいことを見つけることができたのが一番の成果。希望した仕事も見つけたんだから、熱意を持って取り組んでほしい」と目を細めた。

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防災意識の地域格差を埋めたい! 釜石高生有志「クロスロード」作成 災害時に迫られる選択を追体験

「釜石版クロスロード」を作成した釜石高生

「釜石版クロスロード」を作成した釜石高生

  
 災害時にどのような行動を取るべきかをいくつかの選択肢から選ぶ防災ゲーム「クロスロード」。釜石高の生徒有志で結成する防災・震災伝承グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」のメンバー4人がこのほど、釜石版を作成した。「イオンタウン釜石で買い物中に大地震が起こったら、あなたならイオン内で垂直避難する?より高台の避難場所の薬師公園に逃げる?」。東日本大震災時に釜石市民が置かれた状況や実際の避難行動、実在する場所を盛り込んで選択を迫る。18日、三陸探究実習で釜石市を訪れた盛岡三高1年生40人に体験してもらった。
  
 体験会は鵜住居町の鵜住居公民館で開催。盛岡三高生は5、6人のグループに分かれ、釜石高生の進行に従ってクロスロードに挑んだ。用意された問いは、「避難しないと言い張る祖父母を置いて逃げるか、説得するか、一緒に逃げるか」「車いすの人を自分一人で助けに行ったが、15分たってしまった。諦めて逃げるか、ほかの案を考えるか」「ペットを連れて避難所に入るか」など六つ。「Yes(はい)」「No(いいえ)」の2択、あるいは想定される行動などの3択から「自分ならどうするか」を考えた。
  
クロスロードに挑戦する盛岡三高の生徒。いざという時の判断を考えた

クロスロードに挑戦する盛岡三高の生徒。いざという時の判断を考えた

  
 「海で遊んでいると大地震が発生。『これほど大きな揺れでは避難先の宝来館も危険』と言われ、宝来館の裏山まで逃げた。このことを知らない多くの人が宝来館に集まっている。波が見えるほど迫っていることを知らせに行くか」との問題は、「Yes」「No」で判断。「たくさんの命を助けられる」「走れば間に合う」という理由で「Yes」を選ぶ生徒もいれば、「叫べばいい。戻ってはいけない」と「No」を強調する声もあった。どの問題にも正解はなく、ほかの人の意見を聞きながら多様な視点を共有した。
  
選んだ答えとその理由を発表する盛岡三高生

選んだ答えとその理由を発表する盛岡三高生

  
 命を左右する選択が続き、盛岡三高の奥玉悠花さんは「判断が難しい。もっとたくさんの選択肢があると感じたが、沿岸で暮らしたことがなく、その時にならないと分からないことが多い。沿岸で暮らす人の声をもっと聞いてみたら、よりよい選択ができ、考えが深まる。自分の地域の災害に当てはめて考えてみるのもいい」とうなずいた。
  
ほかのグループの活動を見て回り、多様な考えに触れた

ほかのグループの活動を見て回り、多様な考えに触れた

  
 釜石版は、出身中学校によって防災意識の差があることに着目し、その差を埋めようと作成された。発案者は、震災時に津波から避難した経験のある中居林優心(こころ)さん(2年)。1年生の探究活動で、津波に関する防災意識や避難訓練参加の有無などを同級生らから聞き取ったところ、市内の内陸部と沿岸部の学校では格差があることを発見した。同じまちに暮らす全員が同じレベルの防災意識を持ってほしい―。津波からの避難を経験した小笠原桜さんや佐々木太一君、大瀧沙來(さら)さん(ともに2年)とチームを組んで、実在する場所での実体験を交えた設問を考えた。
 
「防災意識が頭の中に長く残るように」。発案者の中居林さん(画面左上)は期待する 

「防災意識が頭の中に長く残るように」。発案者の中居林さん(画面左上)は期待する

  
 盛岡三高生が真剣に取り組む姿に、「想像以上にちゃんと考え、話し合ってくれた。自分の選択とは異なる人の意見を聞くことができて新鮮だった」と4人。「その人」の考えに共感も反対もできる時間、互いの意見が見える機会に手応えを感じ、「市内の小中学校でも活用できたら」と思いを巡らせる。中居林さんは「防災の意識が少しでも長く頭の中に残っていれば。自分の命を守るのは自分しかいない」と言葉に力を込めた。

 

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楽しく撮影、楽しく展示―フォトライフ写真展 “日常”を独自の視点で捉えた60点

四季折々の自然などを独自の視点で切り取った作品が並ぶ=20日・TETTO

四季折々の自然などを独自の視点で切り取った作品が並ぶ=20日・TETTO

 
 「楽しく撮影、楽しく展示」を合言葉に、写真が好きな人なら誰でも自由に出品できる「フォトライフ写真展」(同実行委員会主催)が23日まで、釜石市大町の市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。新型コロナウイルス感染症の影響で3年ぶりの開催。同実行委の多田國雄代表(79)は「家族や風景、旅行の記録など、さまざまな作品が並ぶ。社会活動が動き始めたように、やる気になった撮影者たちの視点から日常を感じ、楽しんでほしい」と来場を呼びかける。
 
 作品は6ツ切サイズに統一しているが、展示は気軽な自由参加が基本。市内外の写真愛好者ら15人がこれまでカメラに収めた中からお気に入りの作品2~8点、計56点を出品した。海や山など四季折々の風景、「SL銀河」の雄姿、郷土芸能、旅の思い出、身近にある動植物、家族のスナップ写真…。撮影者が出合い、心動かされた「日常」が並ぶ。
 
何気ない日常の風景を写す作品にじっくり見入る来場者=20日・TETTO

何気ない日常の風景を写す作品にじっくり見入る来場者=20日・TETTO

 
 日常に親しみを―。この写真展は独自に撮影を楽しんでいる写真愛好者らが年に一回、見てもらいたい写真を持ち寄り、展示を通じ交流を深める場となっている。地元の写真家、故浅野幸悦さんが中心になって1997年からスタート。浅野さんの亡き後、遺志を継いだ多田代表らが回を重ねてきた。コロナ禍で2020、21年は自粛。24回目となる今回は会場を変えて気分一新。「ため込んだエネルギーを注ぎ込んだ一枚」を並べる。
 
撮影者のお気に入りの一枚を使った写真展の案内状

撮影者のお気に入りの一枚を使った写真展の案内状

 
 展示会を前に15日、出品者が小川町の市働く婦人の家に集まり、作品のタイトルづくりなどを行った。写真歴が50年を超える小佐野町の市村利幸さん(68)は「光が作り出す景色」を好んで撮影しているといい、今回は釜石大観音と朝日をテーマにした作品など6点を出品。「いい写真はなかなか撮れない。だから続く。満足したら終わり。下手だから、いいんじゃないか」と謙虚さをのぞかせる。
 
展示会に向けた準備に取り組む写真愛好者ら=15日・市働く婦人の家

展示会に向けた準備に取り組む写真愛好者ら=15日・市働く婦人の家

 
 長く続くコツは「批評しないこと」と出品者ら。「好き勝手楽しんでいる人たちが見てもらいたいものを展示。テーマを決めているわけではなく、あれこれ考えず活動できる。束縛がない」と、展示会を通して顔を合わせる機会を楽しんでいる。
 
日常に親しみ、撮影を楽しんでいる出品者たち=15日・市働く婦人の家

日常に親しみ、撮影を楽しんでいる出品者たち=15日・市働く婦人の家

 
展示会場でもカメラを手に「日常」を写す多田代表(左)=20日・TETTO

展示会場でもカメラを手に「日常」を写す多田代表(左)=20日・TETTO

 
 展示する作品は芸術的、商業用写真もあるが、趣味として撮影したもの、家族の記念写真などもある。写真展を開催することで、展示に参加する人が増えることを期待。多田代表は「日常で出合った光景を写すだけ。型にはまらず自由に楽しんでいる様子、年々変化する撮影者の視点から、それぞれの日常を感じてもらえたら」と話す。
 
 写真展は入場無料。開催時間は午前9時~午後6時まで(最終日は午後4時)。
 

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地元漁師、大学職員からサケの定置網漁学ぶ かまいしこども園児 海や魚に興味津々

海や魚について講師に質問する園児=かまいしこども園サケ学習

海や魚について講師に質問する園児=かまいしこども園サケ学習

 
 釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児77人)の年長児11人は11日、地元漁師や大学職員からサケの定置網漁について学んだ。海洋教育パイオニアスクールプログラム(笹川平和財団海洋政策研究所など主催)の助成で取り組むサケ学習の一環。映像を見ながら、サケの特徴や定置網での漁獲方法などを教わった。12月には雌サケの解体も予定する。
 
 7月に平田の県水産技術センターを見学し、本県でとれる魚などを学んだ園児たち。2回目となるこの日の学習は同園で行われた。講師を務めたのは釜石東部漁協所属の漁師佐々木崇真さん(37)と、魚食普及や漁業体験、海洋教育のコーディネートを行う「すなどり舎」代表で、岩手大三陸水産研究センター特任専門職員の齋藤孝信さん(61)。地元で行われる定置網漁の映像を見せながら解説した。
 
実物と同じ重さのサケのぬいぐるみを抱え、その大きさを実感

実物と同じ重さのサケのぬいぐるみを抱え、その大きさを実感

 
定置網でサケを漁獲する様子などを映像で見せた

定置網でサケを漁獲する様子などを映像で見せた

 
初めて見るサケ漁に目がくぎ付け。驚きの表情も

初めて見るサケ漁に目がくぎ付け。驚きの表情も

 
 佐々木さんは「サケの雄と雌は鼻の形で見分けることができ、卵を持つ雌は腹が膨れている」と説明。図を使って定置網漁の仕組みを教えた。定置網では魚が前にしか進めない特性を利用して囲われた網に誘導。周回するうちに魚が入る「落とし網」と呼ばれる場所に2船をつけ、片方の船が近づきながら網を絞り漁獲する。周回中に魚の約6割は網の外に逃げるため、「とりすぎない自然にやさしい漁法」と齋藤さん。
 
漁師の佐々木崇真さん(右下写真)が定置網の構造や魚の動きについて解説

漁師の佐々木崇真さん(右下写真)が定置網の構造や魚の動きについて解説

 
 三陸沿岸の近年のサケ水揚げ量は激減している。佐々木さんは「昔はこの時期になれば1万本ぐらいとれていたが、今は1カ月に3、4本ということも。水温が高くなってしまったことが要因」と海洋環境の変化も示した。この日は、同園の教諭らが撮影した釜石市魚市場の水揚げや競りの様子も上映。園児たちは市場の仕事についても学んだ。
 
 最後は園児からの質問コーナー。「魚はどうやって眠るの?」「サケが戻ってくる川にごみを捨てたらどうなるの?」「深い海にも魚はいるの?」―などなど、好奇心旺盛な疑問が飛び出した。中には、世界的な問題となっている海洋プラスチックごみについて質問する子も。齋藤さんは海ごみの流出原因などを説明し、「2050年には海の中の魚よりもプラスチックごみが多くなるという計算もある。そうなると魚も食べられなくなる。みんなも海にごみを流さないような努力をしてほしい」と話した。
 
「なぜ」「どうして」。子どもたちは知りたいことがいっぱい!

「なぜ」「どうして」。子どもたちは知りたいことがいっぱい!

 
園児の質問に丁寧に答える齋藤孝信さん。海洋環境への関心向上を願う

園児の質問に丁寧に答える齋藤孝信さん。海洋環境への関心向上を願う

 
 佐藤和君(5)は「お話聞くの、楽しかった。サケはお家でも食べる。塩焼きが好き。シャチのお勉強もしてみたい」と海の魚に興味津々。生のサケを見る次回の学習を心待ちにした。
 
 海洋教育パイオニアスクールプログラムは笹川平和財団、日本財団、東京大海洋教育センターが共同で実施。海の学びに取り組もうとする学校などに費用を助成する。幼児教育施設で取り組むのは全国で同園だけ。昨年度に続き2年目の採択を受け、「サケの学習を通して育む郷土愛と釜石のDNAの継承」と題して学習を進める。市内では本年度、同プログラムで釜石小がワカメの学習、釜石高が深海魚の学習に取り組んでいる。