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3年ぶり有観客開催~全国虎舞フェスティバル~市内外の9団体が躍動の演舞

観客を入れて行われた「第12回全国虎舞フェスティバル」

観客を入れて行われた「第12回全国虎舞フェスティバル」

 
 釜石市内外の虎舞伝承団体が集う第12回全国虎舞フェスティバル(釜石観光物産協会、市主催)が5日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で一昨年は中止、昨年は映像配信となり、有観客開催は3年ぶり。参加9団体は久しぶりの大舞台に喜びを感じながら熱演。約400人の観客も胸を躍らせながら伝統の舞を堪能した。
 
 本フェスティバルは当初、2月に予定されていたが、新型コロナの感染状況から延期を決め、4カ月遅れの開催となった。開会にあたり野田武則釜石市長は「“全国”と銘打った虎舞フェスは釜石だけ。今年は寅年。あらためて目を向け、虎舞から元気をもらってほしい」とあいさつした。
 
 釜石市からは同市の無形文化財に指定されている錦町虎舞(1998年指定)、尾崎町虎舞(尾崎青友会、98年同)、鵜住居虎舞(鵜住居青年会、2012年同)など6団体と、市内7団体で組織する釜石虎舞保存連合会が出演。代表的な3演目(矢車、跳ね虎、笹喰み)や手踊りを披露し、観客を楽しませた。
 
平田虎舞(平田青虎会)のステージ。踊りは地元の舘山神社祭典で奉納される

平田虎舞(平田青虎会)のステージ。踊りは地元の舘山神社祭典で奉納される

 
市無形文化財5虎舞の一つ、尾崎町虎舞(尾崎青友会)。浜町2丁目(旧称・台村)に伝わる

市無形文化財5虎舞の一つ、尾崎町虎舞(尾崎青友会)。浜町2丁目(旧称・台村)に伝わる

 
各団体の演舞を楽しみ、大きな拍手を送る観客

各団体の演舞を楽しみ、大きな拍手を送る観客

 
 市外からは大槌町の陸中弁天虎舞、宮城県加美町の同消防団「中新田火伏せの虎舞保存会」が出演した。加美町の虎舞は室町時代から継承され、650年以上の歴史を誇る。毎年4月29日の初午(はつうま)祭りで踊りを奉納し、地域を練り歩いて家々の防火や家内安全を祈願する。同県の重要無形文化財。釜石での演舞は1992年、2014年、18年に続き4回目。今回は30~60代のメンバー20人が訪れた。
 
加美町消防団 中新田火伏せの虎舞保存会は防火祈願の舞を披露

加美町消防団 中新田火伏せの虎舞保存会は防火祈願の舞を披露

 
客席を回るのに替えて写真撮影タイム。独特の虎頭をパチリ!

客席を回るのに替えて写真撮影タイム。独特の虎頭をパチリ!

 
 同保存会の大杉義和会長(61)は「コロナ禍で地元の祭りもここ3年中止。今回、大きな舞台での発表機会をいただけたことは非常にうれしく、メンバーも達成感でいっぱい。伝統芸能継承のためにも、来年は何とか祭りができれば」と願った。
 
 釜石市内では各地で14の虎舞が保存、継承される。同フェスティバルは1992年に開かれた「三陸・海の博覧会」の釜石会場で初開催された後、2010年から年度事業として定着。11年の東日本大震災後も会場を転々としながら継続し、震災復興に向かう市民らに大きな力を与えてきた。
 
 中妻町の澤村幸治さん(74)は「被災前の市民文化会館での開催から見ている。近年はコロナ禍で地域の祭り行列がなくなっているので、虎舞を見られる貴重な機会。懐かしさと共に心が躍る」と話し、秋の釜石まつりの復活に期待を込めた。
 
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 本フェスティバルの模様は後日、ユーチューブチャンネル「かまいしの観光」で配信するほか、DVDの販売も予定する。

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ナツハゼ苗木、育成中 全国植樹祭へ 釜石・栗林小「大事にお世話」

全国植樹祭に向け苗木育成事業に取り組む栗林小児童、県職員ら

全国植樹祭に向け苗木育成事業に取り組む栗林小児童、県職員ら

  
 釜石市栗林町の栗林小(八木澤江利子校長、児童33人)は、来春本県で行われる第73回全国植樹祭(県など主催)に向けた苗木の育成事業に取り組んでいる。1、2年生8人がナツハゼの苗木10本を育成中。12月上旬まで世話をする予定で、「どんどん大きくなるよう、水やりを頑張る」と意欲を見せる。
   
 植樹祭で植栽する苗木を県内の小中学校の児童生徒に育ててもらう取り組み「苗木のスクールステイ」の一環。児童生徒に森林づくりの大切さを伝え、植樹祭成功の機運醸成を図ることを目的にする。本年度は県内54の学校や緑の少年団などが取り組んでおり、苗木計445本の育成を委託する予定。釜石・大槌地域では3校で実施している。
  
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「大事に育てるぞ」。県職員(右)からナツハゼの苗木を受け取る児童

   
 3日、県沿岸広域振興局農林部の職員3人が同校を訪問。育成を担当する児童らは緑の少年団「橋野森林愛護少年団」として、赤い帽子と緑のスカーフを身に付けて出迎えた。同部林業振興チームの主査林業普及指導員、新井隆介さんが子どもたちに苗木を引き渡した。
  
苗木に興味を示す子どもたち。水やりのタイミングを教わった

苗木に興味を示す子どもたち。水やりのタイミングを教わった

 
「大きくなって」と水やり。12月まで成長を見守る

「大きくなって」と水やり。12月まで成長を見守る

   
 受け取った子どもたちは、ナツハゼに興味津々。同部職員から、▽国内に自生するツツジ科の落葉低木で、黒い実を付けることから「和製ブルーベリー」とも呼ばれている▽夏にハゼノキのような紅葉を見せるのが名前の由来―などと特徴を聞き取った。「土を触ってみて、乾いていたら水をたっぷり上げてください。根元に優しくかけてあげて。花がいっぱい咲き、実がたくさん付くように大事に育ててほしい」と依頼を受けた児童は元気に「はーい」と応えた。
   
 佐々木貫汰君(2年)は「ナツハゼという植物を初めて知った。木が腐らないようにみんなと一緒に水やりを頑張る。葉っぱの色が変わったり、花が咲いたり、実がなるって聞いたから、変わるところを観察しながら育てたい」と胸を張った。
  
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森林づくりの大切さを伝える学習で自然への興味関心を高める子どもたち

   
新井さんによる森林環境学習も行われた。「いわて森林(もり)の恵みガイドブック」を使い、森林の働きや林業の仕事を解説。児童は、「県の木は?」というクイズに挑戦しながら、自然に対する理解や興味関心を高めていた。
   
 育てた苗木は12月に回収され、2023年春に陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園で開催が予定される全国植樹祭で植えられる。

釜石商工高で行われた釜石コンパス。生徒たちは講師の話に熱心に耳を傾けた

夢への進路 社会人に学ぶ 釜石商工高でキャリア教育授業・釜石コンパス

釜石商工高で行われた釜石コンパス。生徒たちは講師の話に熱心に耳を傾けた

釜石商工高で行われた釜石コンパス。生徒たちは講師の話に熱心に耳を傾けた

  
 釜石商工高(伊東道夫校長、生徒201人)で24日、社会人から多様な生き方や価値観を学ぶキャリア教育授業「Kamaishiコンパス」が行われた。3年生87人が、先輩から働く喜びや心構えなどを聞き取り。対話を通じて将来・進路を考えた。
  
 製造業や水産加工業、福祉施設、薬局など市内7事業所の社会人8人による対面型講座のほか、保育士2人とつないだオンライン講座を用意。生徒は関心のある講座を1つ選んで、講師を囲み、進路や将来を決めた転機、現在の仕事のやりがいなどを聞いた。
 
講師には釜石商工高卒業生も。後輩たちに進路選択のヒントを伝えた

講師には釜石商工高卒業生も。後輩たちに進路選択のヒントを伝えた

 
 同校では3年生の8割が就職を希望。地元で働くことを望む生徒も多いというが、職種を決めることができずにいたり、進路に迷いを持つ生徒も少なくない。同校OGで日鉄テックスエンジ東北支店に入社4年目の八幡千夏さん(21)も進路選択で困った経験があり、気になる企業や自分に合う仕事の探し方を助言。自ら進んで調べたり、周囲の大人の意見に耳を傾ける姿勢が必要だと指摘した。高校時代には学んでいない電気設計という業務に携わるが、▽地域に貢献できる▽新しいことに挑戦できる―と前向きに捉えることも大事と強調。高校時代にやっておくこととして、「やっぱり勉強はした方がいい。特に数学。やったことはいつか役立つ場面がくる。必ず生きてくるので、いろんな知識を増やして」と伝えた。
 
 総合情報科の阿部紅愛(くれあ)さんは、「やりたいことはあるが自分に合っているか」と迷いを抱える。希望する職種について「大変だよ」と聞いたことが、足踏みさせているという。講師の「自分で人生を楽しくすることが大事」とのアドバイスが印象に残ったといい、「とりあえず、やってみようと思う。県外に就職して、いろんなものにも触れてみたい」と刺激を受けた。
 
社会人との個別対話は生徒の不安や悩みを和らげる機会に

社会人との個別対話は生徒の不安や悩みを和らげる機会に

 
 講師と1対1で向き合う時間も設けられ、生徒たちは積極的に質問を投げかけた。地元で高齢者と関わる仕事をすると決意を固めたのは機械科の鈴木瑛斗君。「人と話すのが好きで、楽しく働ける仕事だと思う。今のうちからコミュニケーション力を磨き、準備していく」と意欲を高める。趣味の釣りや幼少期から続けるラグビーを楽しめる環境に愛着を持ち、「家を守り、地域を担える人に」と未来を描く。
  
 同授業は釜石市と、市内の高校や民間団体で構成する実行委員会が連携して取り組む高校生のキャリア構築支援事業。生き方やキャリアの多様性を知り、視野を広げてもらおうと、2015年度に始まり8年目。本年度は同校と釜石高で計7回実施することにしている。

根浜シーサイドで行われたコアラキャンプで食を満喫する子どもたち

釜石と豪州 五輪後もつながり継続 コアラキャンプ〜オンラインで食・文化交流

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根浜シーサイドで行われたコアラキャンプで食を満喫する子どもたち

 
 東京五輪・パラリンピックでオーストラリアを相手国に復興「ありがとう」ホストタウンに登録され、交流活動を続けてきた釜石市。両地域をオンラインで結び、音楽・食・スポーツなどで交友を深めるイベント「コアラキャンプ」(同プロジェクト主催)が21、22日に開かれた。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、参加は関係者らに制限したが、イベントの模様はネット配信され、一般市民らも自宅などで楽しんだ。
 
 鵜住居町の根浜シーサイドキャンプ場と、シドニー、パース、ブリスベンなどオーストラリア各地の会場をオンラインでつないだ交流プログラムを実施。オーストラリア大使館(東京都)、市国際交流課の職員らが運営に協力した。
 
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野田市長(左から2人目)やオーストラリア大使館関係者らは両地域の友好継続に期待を寄せる

 
 釜石会場には約50人が集った。イベントは21日午後6時にスタートし、同大使館の徳仁美さんが「皆さんは大切な友人。両国が深めてきた交流を継続できてうれしい」とあいさつ。通訳のマット・ダグラスさんは「キャンプを楽しむポイントは食。自然豊かな環境で、オージー・ビーフとワインを味わおう」と盛り上げた。
 
 野田武則釜石市長は青少年を中心としたスポーツ、文化交流、観光面での連携など友好関係の発展に期待。「コロナが収まったら、ぜひ釜石に」と呼び掛け、相互に訪問できる日が来ることを願った。
 
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オーストラリアと三陸産の食材が提供されたバーベキュー

 
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「外で食べるの、いいよね」。おいしい牛肉や海産物が食欲をそそる

 
 パース・スワンリバーと釜石を結んだバーベキューでは、オージー・ビーフの愛称で日本の食卓にも並ぶオーストラリア産牛肉、ラム肉などが提供された。三陸産のホタテやイカ焼き、刺し身などもお目見え。両地域の時差は1時間程度で、参加者は互いの様子を紹介し合い、雄大な景色を感じながら味わった。
 
 ジャズミュージシャンらによるオンラインライブがあり、イベントのために作った楽曲などを紹介。釜石会場では音楽家の小島ケイタニーラブさんが、NHKみんなのうた「毛布の日」、「荒城の月」などを歌った。パースにある天文台とつないだ星空交流も。北半球、南半球の星座の違いや星にまつわる物語を交換した。
 
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自然の中でおいしいもの味わいながら音楽も楽しんだ

 
 佐々木篠さん(小佐野小5年)は「外でご飯が食べられて楽しい。海も近くていい。いつか友達とキャンプしたり、花火がしたい」とにっこり。語学に関心があり、学校で英語の授業を楽しんでいるといい、「覚えた言葉で海外の人と交流してみたい」と目を輝かせた。
 
 22日は、オーストラリア各地の家庭を結んだ「朝ごはん(Brekkie)」紹介やシドニー在住のヨガ講師とつないで朝ヨガを体験。釜石シーウェイブス(SW)RFC選手らによるラグビー体験もあった。
 
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コロナ禍で参加者を限定して開催。交流を継続させる方法を模索する

 
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参加者はモニターに映された様子を見ながら交流を楽しんだ

  
 釜石市が同国を相手国に選んだのは、東日本大震災当時に釜石SWに所属していた同国出身のスコット・ファーディー選手が救援活動に尽力したり、震災後の海外派遣事業で中学生を受け入れるなど心を寄せていることに謝意を表すため。2017年11月のホストタウン登録以来、同国と青少年を中心とした交流活動を行ってきた。ここ数年はコロナの流行が続き、オンライン交流を企画。中学生らが動画メッセージをやり取りしたり、小学生はパラ選手から東京大会の様子などを聞き取ったりした。
 
 同キャンプは20年12月に続き、2回目の開催。市では「世界とつながるKAMAISHI―を目指し、継続的に釜石とオーストラリアの交流を深めるよう事業を展開していく」としている。

「オリジナル安否札」を手渡しながら防災を呼び掛けた「夢団」の活動

届け!「防災」の願い 釜高生 うのスタ震災伝承活動で「オリジナル安否札」配布

「オリジナル安否札」を手渡しながら防災を呼び掛けた「夢団」の活動

「オリジナル安否札」を手渡しながら防災を呼び掛けた「夢団」の活動

 
 釜石高の生徒有志で結成する防災・震災伝承グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」(30人)は8日、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで防災啓発活動を行った。ジャパンラグビーリーグワン2部、釜石シーウェイブス(SW)RFCのホーム戦に合わせて実施。観戦客に東日本大震災の経験を伝え、新たに作成した「オリジナル安否札」の配布などで災害への備えの大切さを呼び掛けた。
 
 スタジアムでの試合開催時に伝承活動を続けている夢団。今季4回目の活動となったこの日は、12人が参加した。施設内に建つ震災の教訓を伝える祈念碑の前では、矢内舞さん、戸澤琉羽さん(ともに3年)が「語り部」活動。鵜住居で起こった当時の出来事などを伝え、命を守る行動、日ごろの備えの重要性を訴えた。
 
スタジアム内の祈念碑の前で行った震災伝承の「語り部」活動

スタジアム内の祈念碑の前で行った震災伝承の「語り部」活動

 
震災時、スタジアムの場所にあった鵜住居小、釜石東中の児童生徒の避難行動などを説明する戸澤琉羽さん。背後には高台移転した現校舎が見える

震災時、スタジアムの場所にあった鵜住居小、釜石東中の児童生徒の避難行動などを説明する戸澤琉羽さん。背後には高台移転した現校舎が見える

 
 メンバーの発案で作成したオリジナルデザインの安否札は、この日が初お披露目。災害避難時に玄関に掲示し、すでに避難したことを知らせる安否札は、家族や地域の犠牲を減らすことにつながる。B5判サイズで、表面には避難場所、裏面には連絡先や伝言を書き込める欄を設け、活用の仕方も記載した。メンバーは観戦客らに直接手渡し、防災意識を高めるのに一役買った。
 
安否札の使い方を説明する夢団メンバー(右)

安否札の使い方を説明する夢団メンバー(右)

 
 安否札を配った佐々木結咲さん(2年)は「初めて知った人もいるよう。今日は県外から来ている人も多く、震災の経験を伝えるにはいい機会。教訓を広め、防災を身近にしてもらい、これからの被害を少しでも小さくできたらいい」と願った。
 
 「夢団」は2019年12月に結成。同スタジアムが会場となったラグビーワールドカップ(W杯)開催時に、震災の教訓と復興支援への感謝を伝えようと活動した生徒らが、継続的な活動をしたいと団体を立ち上げた。生徒のアイデアで作成し、W杯来場者に配った「津波伝承うちわ」は団に受け継がれ、今も伝承活動で生かされる。これまでに6千枚を配り切り、今回の安否札作成に合わせて1千枚を増刷。2種のツールでさらなる防災力向上を促す。
 
この日は増刷した「津波伝承うちわ」も配られた

この日は増刷した「津波伝承うちわ」も配られた

 
 語り部を担当した矢内さんは震災時6歳。唐丹町の自宅が津波で全壊し、仮設住宅で7年間を過ごした。自身の経験も盛り込み、感じたことを伝える中で口にしたのは、多くの支援に対する感謝と助け合いの精神。「災害時は近隣はもちろん、見ず知らずの人でも助け合いや声掛けが重要」とし、「話を聞いた人が家庭や地域で広めてくれて、多くの人が防災知識を身に付けるきっかけになれば」と期待した。
 
自身の被災体験を交え、震災の教訓を伝えた矢内舞さん(右)

自身の被災体験を交え、震災の教訓を伝えた矢内舞さん(右)

 
 東京都の平木香織さん(38)は「当時、幼かった子たちが怖い思いをしながら逃げたこと。今、こうして自分たちの経験を次につなげようとする姿。話を聞いていると涙が出そうになった」と思いを共有。平木さんの母博美さん(65)=兵庫県神戸市在住=は、阪神・淡路大震災で実家が半壊した経験を持つ。「釜石の『津波てんでんこ』は有名。多くの子どもたちが助かったのは、家庭や地域で受け継がれてきたからなのだろう。率先して逃げられるのは(避難が)体に染みついている証拠」と地域の力を実感。全国で大規模災害が多発する現状に「重要なのは防災と減災。自然は止められないが、どう対処できるかを知っていることで被害を減らせることは確か」と話した。

釜石高定時制の農業体験がスタート。サツマイモの苗などを植え付けた

野菜栽培に汗流す 釜石高定時制生徒、農業体験学習スタート

釜石高定時制の農業体験がスタート。サツマイモの苗などを植え付けた

釜石高定時制の農業体験がスタート。サツマイモの苗などを植え付けた

 
 釜石市甲子町の県立釜石高(青木裕信校長)定時制(生徒12人)は6日、地元農家の畑を借りて農業体験学習を始めた。ジャガイモの種イモとサツマイモの苗の植え付け作業に挑戦。10月まで計8回の活動を予定し、草取りや水やりなど環境整備に取り組みながら豊かな実りを待つ。
 
 農作業を中心とした体験学習を通じ、生産や協働の喜び、やりがいを実感してもらおうと、2018年から実施する授業の一環。多様な職業や年齢の人たちとの地域間交流により自己成長を図るのも狙いにする。本年度は地元・甲子町洞泉の「創作農家こすもす」(藤井サヱ子代表)で根菜類の植え付けや収穫、山田町でのそば打ち体験を予定する。
 
創作農家こすもすで開講式。藤井さん(左)が作業の進め方を説明した

創作農家こすもすで開講式。藤井さん(左)が作業の進め方を説明した

 
 初日は、こすもすで開講式を行い、畑を提供する藤井さん(77)が「交流しながら野菜を育てていきたい。力を貸してくださいね」と呼び掛け。種イモなどを約30センチ間隔で植えることや、芽が出やすいように土はかけすぎないことなど注意点を説明した。
 
 畑(約3アール)に足を踏み入れた生徒たちは、藤井さんの助言を受けながら男爵イモの種イモ10キロ、ベニアズマの苗28本を植え付けた。長方形をした平鍬(くわ)を使って畝(うね)作りに挑む男子生徒の姿も。みんなで協力し手際よく作業を進め、気持ちのいい汗を流していた。
 
畝づくり、種イモの植え付けなど農作業を体験する生徒たち

畝づくり、種イモの植え付けなど農作業を体験する生徒たち

 
藤井さん(右)の指導を受けながら苗の植え付け作業を進めた

藤井さん(右)の指導を受けながら苗の植え付け作業を進めた

 
 生徒会長の佐々木遼(はる)君(3年)は「一人ひとりが頑張って作業しよう」と仲間に声掛けする。「農業はここでしか触れられない貴重な体験。普段の授業とは違ったことをするので新鮮。自分で植え、育てたものが食材になる。達成感がある」と充実した表情。自身が中心となり、「みんなを引っ張っていく」と意気込む。
 
 生徒らは今後、除草作業などをしながら野菜栽培を体験する。8月にジャガイモを収穫し、釜高祭(9月)で加工したものを販売する予定。10月にサツマイモの収穫、11月には収穫祭を行う。

劇団もしょこむ主催 第1回演劇ワークショップ

「芝居づくりって面白い!」 釜石の劇団もしょこむ 市民ら対象にワークショップ

劇団もしょこむ主催 第1回演劇ワークショップ

劇団もしょこむ主催 第1回演劇ワークショップ

 
 釜石市の「劇団もしょこむ」(小笠原景子代表、10人)は5日、大町の釜石PITで、一般市民を対象にした演劇ワークショップ(WS)を開いた。芝居づくりの楽しさを味わってもらおうと初めて企画。高校生と社会人7人が、構想から台本作り、舞台上での演技まで一連のプロセスに挑戦。一から創り上げる演劇の魅力を体感した。
 
 小笠原代表(38)、同劇団立ち上げメンバーで、現在はプロの俳優として東京を拠点に活動する菅野結花さん(31)が講師を務めた。始めに、自分の気持ちに向き合う、仲間とコミュニケーションを取りながら体を動かすといった表現WSで心身をリラックス。2人1組で自己紹介し合った後、会話を文字に起こし、書き起こしたものを再現するという体験をした。
 
互いの自己紹介を文字に起こし再現する台本WS

互いの自己紹介を文字に起こし再現する台本WS

 
 「芝居というと舞台上で仰々しく演じるイメージがあるかもしれないが、今のような普通の会話のキャッチボールでも脚本(台本)ができ、1分半の芝居が完成する。難しく考えずにやってみて」と小笠原代表。この後、高校生(3人)と社会人(4人)に分かれチームを結成。劇団メンバー(3人)も1チームを作り、10分の芝居作りに取り組んだ。
 
 台本には、くじ引きで1人1枚ずつ引いた単語を何らかの形で盛り込むことが条件。高校生チームは「タンゴ、船、まほう」、社会人チームは「芸人、みかん、部活、○○太郎」、劇団チームは「病気、マイケル、平」という“お題”を劇中に入れ込むことに。アイデアを出し合い、試行錯誤しながらストーリーを作り上げた。
 
小笠原代表(中央)から台本作りの基礎を学ぶ

小笠原代表(中央)から台本作りの基礎を学ぶ

 
 台本完成後は演技の稽古。セリフや掛け合いの練習、衣装や小道具の準備、ステージの使い方のシミュレーションなど、発表に向けて各チームが奮闘した。最後は出来上がった芝居を披露。オリジナリティーあふれるストーリー展開、笑いの要素、堂々の演技など、4時間余りで作ったとは思えないほどの完成度を見せた。
 
 これまで釜石市民劇場に7回出演している高校生、矢浦望羽さん(16)は「お題に沿って話の構成を考えるのが難しかった。3人の意見をまとめるのも大変で…」と脚本作りに苦労した様子。それでも経験豊富な演技のほうはアドリブも飛び出す余裕。「自分なりに想像して演じるのが楽しくて大好き。今後はエキストラにも挑戦したい」と目を輝かせた。
 
息もぴったり!堂々とした演技で大人たちを感心させた高校生チーム

息もぴったり!堂々とした演技で大人たちを感心させた高校生チーム

 
話のオチも盛り込み、完成度の高い芝居を見せた大人チーム

話のオチも盛り込み、完成度の高い芝居を見せた大人チーム

 
 市職員の八木橋朋広さん(27)は「何げない会話が舞台の題材になりうるというのが面白い経験だった」と新鮮な驚き。演技自体も初めて体験。「人前で演じるのはまだハードルが高いが、こういう(WSの)機会があればまた参加してみたい」と興味をそそられていた。
 
 小笠原代表は釜石市民劇場や講師を務める宮古市のこども劇団で、子どもたちの生き生きとした姿を目の当たりにし、演劇を続けられる環境の必要性を実感。演じるだけでなく舞台を支えるさまざまな役割がある演劇には「いろいろな職業の種が散らばっている」とし、「個々の才能を生かせる場づくりのきっかけにもなれば」と今回のWSを企画した。今後も継続していきたい考え。
 
演劇の魅力を共有したWS参加者と劇団メンバー

演劇の魅力を共有したWS参加者と劇団メンバー

 

「もしょこむ」創設メンバーの菅野結花さん 釜石の演劇活動継続に喜び

 
劇団もしょこむの立ち上げメンバーで、現在は東京を拠点に俳優として活動する菅野結花さん

劇団もしょこむの立ち上げメンバーで、現在は東京を拠点に俳優として活動する菅野結花さん

 
 演劇WSで講師を務めた菅野結花さん(陸前高田市出身)は、2015年に誕生した「劇団もしょこむ」の初代メンバー。当時は岩手日報社の記者として釜石支局に勤務。市民劇場出演で知り合った小笠原景子さんと意気投合し、新劇団を立ち上げた。旗揚げ公演では、震災で両親を亡くし仮設住宅で暮らす姉妹の心の葛藤を描いた作品を演じ、被災者らの共感を得た。
 
15年3月の劇団旗揚げ公演「平行螺旋」。小笠原さん(右)と姉妹役を演じる菅野さん

15年3月の劇団旗揚げ公演「平行螺旋」。小笠原さん(右)と姉妹役を演じる菅野さん

 
 釜石を離れて1年後、俳優の道を志し上京。劇団青年座研究所を経て、現在は映像作品への出演を中心に活動する。今回は“古巣”での久しぶりの活動。自身のこれまでの経験を生かし、WS参加者に演劇の魅力を伝えた。
 
表現WSでは演劇で鍛えた体のしなやかさも披露。参加者を驚かせた

表現WSでは演劇で鍛えた体のしなやかさも披露。参加者を驚かせた

 
 「自分たちがやりたいことを実現するために、みんなで知恵やアイデアを出し合う。互いに学び合い、教えられる対等な関係でできるのが演劇」と菅野さん。「やりたいと思った時にすぐに参加できる場が身近にあることも大事」とし、今回のWSのような地方での学びの機会の意義を強調する。
 
 この日は懐かしい仲間とも再会を果たした。「勢いで立ち上がった劇団が7年も続いている。感慨深い」と喜びを口にし、興味を持つ若い世代への経験やノウハウの継承で釜石の演劇文化がさらに盛り上がっていくことを期待した。

かまいしDMC天文部が橋野鉄鉱山で開いた「春の星空観察会」

「見えた!」春の5星座に歓声 世界遺産・橋野鉄鉱山で楽しむ星空観察会

かまいしDMC天文部が橋野鉄鉱山で開いた「春の星空観察会」

かまいしDMC天文部が橋野鉄鉱山で開いた「春の星空観察会」

 
 釜石市の観光地域づくり法人、かまいしDMC(河東英宜代表取締役)は4月30日、橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」で春の星空観察会を開いた。社員有志で結成する天文部(6人)が企画。市内の親子ら32人が参加し、“春の大三角形”で有名な星座群などを肉眼や望遠鏡で観察した。星空観察会は今後も四季ごとに開催していく予定。
 
 月明かりの少ない新月の時期に、鵜住居町根浜海岸などで行ってきた同観察会。今回は標高が高く、街灯の明かりの影響を受けない橋野鉄鉱山を観察会場に選んだ。天文部の川崎杏樹さん(25)=いのちをつなぐ未来館スタッフ=が解説を担当。春に見られる代表的な5星座を配布資料で示しながら紹介した。
 
星空観察会
 
配布資料を見ながら春の星座について学ぶ参加者

配布資料を見ながら春の星座について学ぶ参加者

 
 7つの星がひしゃく形に並ぶ“北斗七星”で知られる「おおぐま座」、“北極星(ポラリス)”が目印の「こぐま座」は、北の空で1年中見ることができるが、高く上る春からが観察におすすめ。「うしかい座」「おとめ座」「しし座」は、目印となる明るい星(一等星、二等星)を結んだ“春の大三角形”が有名。川崎さんは各星座の特徴、位置関係などを説明し、見つけ方をアドバイスした。
 
 観察会前日の29日が「東方最大離角」(内惑星が太陽から最も離れて見える時)で、水星の一番の観察チャンスとなったことも紹介。西の低い空に見えることから、西側が開けた場所での観察をすすめた。夜間の過剰な照明や不必要な点灯が動植物に与える影響「光害(ひかりがい)」についても解説し、環境問題への意識啓発を図った。
 
 会スタート時は薄曇りで星が見えるか心配されたが、資料解説が終わるころには雲が晴れ始め、頭上の北斗七星は肉眼でも確認できるまでに。参加者は天文部が用意した天体望遠鏡を代わる代わるのぞき込み、春の星座群に理解を深めた。
 
天体望遠鏡でも星を観察。なかなか見られない光景に興味津々

天体望遠鏡でも星を観察。なかなか見られない光景に興味津々

 
 鵜住居町の佐々木智桜さん(8)は「家から見るより、たくさんの星が見えた。しし座やおとめ座も見ることができた。自分の生まれ星座のうお座も見てみたい」と興味をそそられた様子。母智恵さん(39)は「街灯がないので見えやすい。解説にギリシャ神話の話もあったが、このような体験が子どもの読書や調べ学習のきっかけにもなれば」と期待する。
 
 同社天文部は星好きの社員が意気投合し、2020年12月に結成。「釜石にも星がきれいに見える場所があることを知ってほしい」と市民向けの観察会を始めた。メンバーは市主催の星空観察会でも講師を務める。佐々学さん(42)=うのすまい・トモス施設管理者=は「釜石は全体的に星がきれいだが、地元の人は意外と意識していない。ここ橋野では宇宙を旅した種から育てられた“宇宙桜”(日本三大桜・三春滝桜の子孫木)も育つ。子どもたちが天文学者を目指すなど宇宙に夢を持つ機会にもなれば」と、継続開催に意欲を見せた。
 
約1時間の観察を楽しみ、最後は全員で記念撮影

約1時間の観察を楽しみ、最後は全員で記念撮影

音楽ファンを魅了した釜石市民吹奏楽団のスプリングコンサート

春の爽やかさ、ブラス生演奏に乗せ~釜石市民吹奏楽団 半屋外型コンサート

音楽ファンを魅了した釜石市民吹奏楽団のスプリングコンサート

音楽ファンを魅了した釜石市民吹奏楽団のスプリングコンサート

 
 釜石市民吹奏楽団(山内真紀人団長、団員50人)は1日、大町の市民ホールTETTOでスプリングコンサートを開いた。昨年に続き2回目の開催で、新型コロナウイルスの影響が続いていることから、感染防止策を講じた屋外空間で演奏を楽しむスタイルを継続。肌寒い雨空にもかかわらず、音楽好きな市民らは懐かしい曲や軽やかな音色に足を止め聴き入っていた。
 
 ホールBと屋根のある広場を一体化する半屋外式の会場設営で行った。第一部はアンサンブルステージとし、5グループが出演。フルートをこよなく愛するメンバーによる五重奏ではディズニー映画、木管五重奏や金管五重奏で「春」をテーマにした曲を披露し、柔らかな暖かさを音で届けた。サックス八重奏、打楽器四重奏と続いた。
 
4~8人でチームを組んで演奏、楽器の魅力を伝えた

4~8人でチームを組んで演奏、楽器の魅力を伝えた

 
全団員による演奏では懐かしいサウンドやクラシックの名曲を聴かせた

全団員による演奏では懐かしいサウンドやクラシックの名曲を聴かせた

 
 第2部は全団員によるステージで、オープニングのマーチ「ベスト・フレンド」は「コロナ禍でも大好きな人に会いたいな」との思いを乗せて演奏。ポップスや歌謡曲など耳なじみのある7つのプログラムで観客を楽しませた。昭和アイドルコレクションでは「ダンシング・ヒーロー」「赤いスイトピー」など、クラシック・メドレー(ブラス・ロック)では「交響曲第9番新世界より第4楽章」「ウィリアム・テル序曲」などを聴かせた。アンコールに応え、演奏したのは「五月の風」。爽やかなマーチング曲で季節感を演出した。
 
 団員の家族という上中島町の60代男性は「いろんな音を近くで聴いたり、楽器の弾き方を見ることができて、いい。コロナ禍で何もしないのではなく、気を付けながら日常を送っていけば」と見守る。自身もクラシックギターの演奏を楽しんでいて、「音楽は聴くのも、演奏しても気持ちが安らぐ。ストレス発散にもなる」と実感を込めた。
 
立ち見が出るほど多くの人がブラスの生演奏を楽しんだ

立ち見が出るほど多くの人がブラスの生演奏を楽しんだ

 
 釜石市吹は沿岸他市(宮古~気仙沼)の社会人吹奏楽団と一緒に、三陸自動車道の早期完成を願う「ルート45港町コンサート」を1997年から毎年春に開催してきた。コロナの流行で中止され、代替えとして昨年、スプリングコンサートを企画。今年も発表の機会にと継続した。山内団長(48)は「コロナ禍でも、感染対策を講じてできること、形を発信したかった。楽器演奏や歌、音楽をやりたい若い人たちの受け皿になり、釜石に根付いた音楽文化を残していくことができるよう活動していきたい」と意欲を見せる。

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「人を描く」鵜住居町の古川祐市さん 震災で途切れた描く喜び取り戻し、地元で初個展

「人の姿」をテーマに絵を描き続けている古川祐市さん

「人の姿」をテーマに絵を描き続けている古川祐市さん

  
 工事現場で働く作業員、車いす生活を送る人、入院・自宅療養中の家族-。目に入らない、見えにくい場所で苦労したり努力している人々の姿を描いた作品を紹介する絵画展が大型連休中、いのちをつなぐ未来館(釜石市鵜住居町)で開かれた。描いたのは、地元のアマチュア画家古川祐市さん(32)。東日本大震災後、心身の不調から創作活動を離れた時期があり、自身も苦労を抱えた経験を持つ。描く喜びを取り戻して約5年。初めての個展を実現させた。
 
 絵画展では2018年以降に創作した油彩、アクリル画など17点を紹介。工事現場で一息つく作業員を描いた「復興へ」とタイトルが付けられた作品がある一方、震災で被災した母校跡地に建設中のスタジアムをモチーフにした絵には「復興はまだ終わっていない」と重機を前面に配置し、風刺を込めた。骨が浮き出るほど痩せ細った晩年の父、病院のベッドに横たわる穏やかな表情の祖母、ギプス姿でも笑顔を見せる母。身近な人、実在する人を写実的なタッチで「生かす」作品を並べた。
 
苦労している人、頑張る人の表情を描いた作品などが並んだ

苦労している人、頑張る人の表情を描いた作品などが並んだ

 
 古川さんは、よく絵を描いてくれたという父の影響で、幼い頃から、お絵かきが大好きだった。釜石北高で美術部、県立大宮古短期大学部では美術サークルに所属して油彩の腕を磨いた。釜石市内の水産加工会社に就職して1年後、震災の津波で鵜住居町の自宅が全壊。保管していた作品約100点も流失した。仮設住宅に移った後、多くのものを失ったショックや環境の変化で心身とも疲弊し、好きだった絵を描くこともできなくなった。
 
 入院療養を経て、17年に復興住宅に入居すると、新しい生活拠点を得たことで心が落ち着いた。日差しの明るさを感じられる環境に「そうだ!絵を描こう」と気持ちも前向きになり、再び筆を手にした。そんな、絵を描く喜びを取り戻した自身の心象風景を表現した「青い壁」も展示。青空というキャンバスに雲やシャボン玉の‶落書き″を楽しむ子どもの姿を描いた空想画だ。
 
絵を描く喜びを表現した「青い壁」。込めた思いを来場者に伝えた

絵を描く喜びを表現した「青い壁」。込めた思いを来場者に伝えた

 
 ほとんどの作品に登場するのが、「人」。これまでは気にとめていなかった場所、あまり目をとどめることのなかった所で苦労していながらも頑張っている人を見つけると、描きたい衝動に駆られるようになった。そして、震災前は「見たものをそのまま描かなければ」と気を張っていたが、今は「自分のイメージをのせて自由に描くのも面白い」と思考も変化。「震災がなければ、今の作風にはなっていなかった」と振り返る。
 
 「描くしか取りえがない。人の姿と、好きという気持ちを大事にして制作していきたい」と古川さん。現在、取り組んでいるテーマは「ロシアによるウクライナ侵攻」。作品を見てもらいたい―と、2回目の展示会に向け意欲を見せた。
 
 絵画展では、自身の作品を印刷したはがきを販売。売り上げの半分をウクライナの人道支援のために寄付することにしている。

「鵜住居青年会館」の落成を喜ぶ会員ら=16日

震災11年「鵜住居青年会館」待望の再建 会員ら地域の宝「虎舞」継承へ決意新た

「鵜住居青年会館」の落成を喜ぶ会員ら=16日

「鵜住居青年会館」の落成を喜ぶ会員ら=16日

 
 釜石市鵜住居町の虎舞保存団体「鵜住居青年会」(小原正人会長、会員50人)はこの春、東日本大震災の津波で流失した活動拠点「鵜住居青年会館」の再建を果たした。被災から11年を経て、やっと得られた本設拠点。会員らは寅(とら)年の本年に踏み出す新たな一歩にさらなる活動意欲を高め、江戸時代から受け継がれる地域の宝を守り伝えていくことへ思いを強くする。
 
 震災前の同会館は、被災して移転新設された現在の鵜住居小、釜石東中の駐車場付近にあった。建物の老朽化で2003年に新築したばかりだった会館は、11年の震災津波で跡形もなく流失。館内に保管していた虎舞の道具類も全て流された。希望の光となったのは、大量のがれきの中から見つかった道具類(小太鼓4、大太鼓3、虎頭1)。中には会所有で最古の1878(明治11)年作の大太鼓も。これらは全て修復され、大切に受け継がれる。
 
 震災後、小中学校の仮設校舎体育館、復興支援で設置されたプレハブ施設、生活応援センターなどを借りて稽古を継続し、市内外で舞を披露してきた同青年会。完全復活へ最後の懸案となっていたのが、同会館の再建だった。
 
再建された鵜住居青年会館の外観。左側にシャッター開閉の山車収納庫を備える

再建された鵜住居青年会館の外観。左側にシャッター開閉の山車収納庫を備える

  
 新たな会館は、同町2丁目、鵜住神社参道近くの市有地約80平方メートルを借用して建設。木造平屋建ての建物は、延べ床面積53・82平方メートル。神棚を祭ったフローリングの居室、山車収納庫、流し、トイレを備える。費用は同会の自己資金で賄い、大槌町の建設業者が施工。昨年12月に着工、本年3月に落成した。
 
「鵜住居虎舞」の踊りで使う虎頭が並ぶ居室

「鵜住居虎舞」の踊りで使う虎頭が並ぶ居室

 
天井が高い山車収納庫。左側に道具類を収納できる棚も設置されている

天井が高い山車収納庫。左側に道具類を収納できる棚も設置されている

 
 小原会長(35)は「ようやく念願の拠点ができた。まちの復興整備が遅れたこともあり、再建は今の時期にずれ込んだが、これでやっと落ち着ける」と一安心。震災後、転々としてきた道具類や山車の保管場、会議部屋などを確保でき、「今まで以上にもっといい踊りを見せられるよう精進したい」と意気込む。
 
 鵜住居町は市内で最も甚大な津波被害を受けた。青年会会員も多くが自宅を失い、家族や親族を亡くした。深い悲しみや数々の困難に直面しながらも、全国からの支援や励ましでいち早く立ち上がり、11年秋には活動を再開した同会。これまで、地域復興の原動力、住民の心の支えとして貢献してきた功績は非常に大きい。
 
震災から半年後、被災した住民を元気づけようと舞った鵜住居青年会=2011年9月25日

震災から半年後、被災した住民を元気づけようと舞った鵜住居青年会=2011年9月25日

 
がれきの中から見つかった太鼓を補修、代替道具などを用い手踊りを披露する会員

がれきの中から見つかった太鼓を補修、代替道具などを用い手踊りを披露する会員

 
 震災を機につながった全国の支援者との交流は今も続く。寅年の本年は、11年に招待された茨城県日立市の秋祭りへの出演が予定されている。「震災後、道具がそろって初めて、踊りを披露させてもらった思い出の地。10年以上たった今でも私たちのことを気にかけてくれる人たちがいるのは本当にありがたい」と小原会長。結ばれた絆を胸に最高の舞を届ける日を心待ちにする。

釜石市の中心市街地で自然観察の体験活動を行ったボーイスカウトの団員ら

自然の中で遊びまくれ!新団員獲得へ、ボーイスカウト体験活動 次回は4月23日「春を探そう」

釜石市の中心市街地で自然観察の体験活動を行ったボーイスカウトの団員ら

釜石市の中心市街地で自然観察の体験活動を行ったボーイスカウトの団員ら

 
 ボーイスカウト釜石第2団(菊地次雄育成会長、末永正志団委員長、約50人)の体験活動が9日、釜石市内で行われた。団員や入団に関心を持つ子どもや保護者ら約40人が参加し、自然観察をしながら街中を散策。ロープ結びなどの知識や観察力を確かめるクイズなどにも挑戦し、活動への理解を深めた。
 
 体験活動の発着点は、港町のホームセンター駐車場。子どもたちは2班に分かれ、大型ショッピングセンター内を通って大町広場へ。6人で協力し、ひもとゴムを使って空き缶を運び積み上げるゲームに挑んだ。「力いっぱい(ひもを)引っ張って」「そっと置いて」などと声を掛け合い、成功すると「よし!」とガッツポーズし喜びを表した。
 
大町広場では空き缶を運び積み上げるゲームに挑戦した

大町広場では空き缶を運び積み上げるゲームに挑戦した

 
 青葉公園(大只越町)に移動すると、「足元に注意。矢印を見つけて仙寿院へ」と指令を受けた子どもたち。矢印が示す方向に進んで高台にある仙寿院に着いたら、「階段は何段だった?」との質問が待ち受けていて、「途中まで数えていたけど…」などと思い悩む子どもたちの姿が見られた。
 
 一休みをした後は、石碑や津波避難場所を伝える看板などの写真でつくられた地図を手に、ゴールを目指して再び歩き出した。チェックポイントの釜石市役所本庁舎(只越町)前ではロープ結びに挑戦。高学年の児童や中学生メンバーが、「本」「はな」「8の字」「もやい」の4種の結び方を体験参加者、低学年の団員に教えた。
 
「疲れたー」と言いつつ、元気に階段を駆け上がる子どもたち

「疲れたー」と言いつつ、元気に階段を駆け上がる子どもたち

 
団員らは地図を手に、ゴールを目指して街中散策を楽しんだ

団員らは地図を手に、ゴールを目指して街中散策を楽しんだ

 
 入団を考えている菊地美有さん(白山小1年)は「いろんなところを歩いて楽しい」と感想。母礼美(ひろみ)さんは(49)は「自然を通した学びは考える力を養うことにつながり、いつか役に立つ。歩くことで新しい発見もある」と見守る。大槌町の藤原朋さん(37)はボーイスカウト出身で、長女ほのかさん(大槌学園小学部1年)に参加を提案。協調性を養い、世代交流、失敗と成功を繰り返す体験ができるといった利点に加え、「いろんな地区の子どもたちが集まり、コミュニティーが増えるのがいい」と勧める。
 
 班長を務めた阿部雅俊君(大槌学園中学部9年)は「日常生活とは違う、普段やらないことをたくさんできる。一緒にいろんな体験をしてほしい」と仲間が増えることを期待した。
 
ロープ結びに取り組む団員。野外活動を通じて安全、環境、防災などの知識とスキルを身に付ける

ロープ結びに取り組む団員。野外活動を通じて安全、環境、防災などの知識とスキルを身に付ける

 
 ボーイスカウトの活動は自然の中で集団活動しながら仲間たちとの友情と礼儀を身に付け、健全育成を図ることが目的。昨年創立60年を迎えた釜石2団では、ビーバー隊(小1、2)、カブ隊(小3~小5)、ボーイ隊(小6~中3)、ベンチャー隊(高校生)、ローバー隊(19~25歳)が活動する。近年は少子化や習い事の多様化などで会員が減少。こうした活動を知ってもらおうと、4~5月に希望者を交えた体験会を行っている。
  
 次回は23日に実施予定で、「春をさがそう」をテーマに自然観察ビンゴなど野外ゲームを楽しむ。現在、小学校1~3年生を対象に参加者を募集中。午前9時に甲子町大畑の「福祉の森」東屋(あずまや)に集合し、正午に現地解散となる。希望者は末永団委員長(電話090・7338・3043)に申し込みを。当日参加も可。未就学児も保護者同伴で参加できる。
 
 末永団委員長(72)は「自然の中での遊びを通じ、好きなことを見つけてもらえたら。仲間とともに楽しい思い出をつくり、釜石の良さを知ってほしい。自然の中で遊びまくれ」と呼び掛ける。