古くて新しい!?釜石の未来「スチームパンク」で発信 大野晃平さん、CG作品展
TETTOで作品展「スチームパンク釜石」を開く大野晃平さん
釜石市のイラストレーター大野晃平さん(47)=大町=の作品展「スチームパンク釜石」は、市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。コンピューターグラフィックス(CG)を駆使し、古里の自然や文化、名所を盛り込んだ観光マップやポスター、東日本大震災をテーマにした作品などを紹介。「子どもたちにはデジタル技術を使った表現の楽しさを、年配の人たちには懐かしさを感じてもらえたら」と来場を呼びかける。
大観音、ラーメン…CGデザインで表現した「釜石押し」の作品が並ぶ
震災後に生み出した50点を展示する。半数がB1判(72・8×103センチ)のポスター作品。釜石の街並みをデザインしたマップ風の作品はB0判(103×145・6センチ)という大きさのものもあって目を引く。スチームパンク――蒸気機関を使用した18世紀後半ごろの雰囲気を醸す作風が、かつて煙突が立ち並んだ「鉄のまち釜石」のイメージと重なる。電気的ではないが、機械仕掛けながら進化し続けてきた「可能性の未来世界」が表現され、若い世代の鑑賞者らは新しさを感じながら見入っている。
子どもたちをモチーフに柔らかい印象を残す小作品も紹介
映画や漫画などからインスピレーションを得た作品コーナー
大野さんは大学の芸術学科で油絵を学んだ後、家業を手伝うためUターン。現在は市内の事業所で働きながら、制作活動にも取り組む。岩手デザイナー協会、釜石の美術集団「サムディ45」所属。市内外の観光マップやポスター、パンフレット制作を担い、グループ展などで作品を発表している。個展は今回で2回目。
震災で亡くした友人への思いを込めた2連作「小佐野中学校」
「生まれ変わって幸せに」との願いを込めた4連作「リインカーネーション」
震災の津波では家族が経営していた大町の着物店が被災したが、家族は無事だった。ただ、友人や知人が犠牲になったことなどもあり、「描くことに迷いを感じた時期がある。暗い色調のものも多くなった」と大野さん。「小佐野中学校」と題した2枚一組の作品は、亡くなった同級生がモチーフ。大野さんの母校でもある小佐野中は震災当時、廃校となっていたため、体育館が遺体安置所となった。作品に込めたのは「頑張っていた野球をまた友達と一緒に学校で楽しんでほしい」との願い。4連作「リインカーネーション(輪廻転生)」も犠牲者へ思いをはせた作品だ。
タブレットを使ったデジタル作品づくりのワークショップを開催
期間中の3日間はワークショップを開催。手描きした下絵をパソコン上で合成、色を塗るという過程を体験してもらった。絵を描くことが大好きな佐々木陽菜さん(甲子小6年)は、デジタルアートに初挑戦。慣れない作業に大変さを感じたが、「新しいことに触れられて楽しかった」と目を輝かせた。
小さい頃から絵が好きで、友達に頼まれてキャラクターの絵を描いていたという大野さん。その友達の喜ぶ顔が、今なお続く創作活動の原動力になっている。20代半ばにデジタルソフトをメインにした制作スタイルに移行したが、「これからの時代の子どもたちにはより早くその楽しさを知ってもらいたい」と考えている。パソコンやタブレットの画面上で作ったものをネット上で瞬時に発信。そんな体験を通じ、「手軽に釜石を発信してほしい」と期待する。
「スチームパンクKAMAISHI」(写真左)とホテルマルエのパンフレットデザイン画
「スチームパンクKAMAISHI」。震災後に落ち込んだ気持ちを回復させるきっかけとなった作品だ。「乗り気がしなかったことでも、やってみると新たな発見がある」と大野さん。こうした古里を描いたポスターや観光マップを作る中で寄せられたプラスの反響が、やる気と喜びを思い出させた。「好きなことだけでなく、いろんなことに挑戦したい。彫刻とか。作品作りにいい影響が出てくるはず」と信じる。
同ホール自主事業「アートアットテット」の一環。12日まで。午前9時から午後9時(最終日は同4時)まで。問い合わせはTETTO(0193・22・2266)へ。
釜石新聞NewS
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