方言の面白さ満載!釜石・遠野・青森の語り部が地元に伝わる昔話を披露 相撲甚句の演出も


2023/02/13
釜石新聞NewS #文化・教育

2年ぶりの対面開催となった「おらほ弁で昔話を語っぺし」の出演者

2年ぶりの対面開催となった「おらほ弁で昔話を語っぺし」の出演者

 
 第9回おらほ弁で昔話を語っぺし(岩手大主催)は4日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。同市で方言による民話の伝承活動を行う、漁火の会(会員7人)が市内に伝わる逸話を語り聞かせたほか、民話劇も披露。交流が続く遠野市、青森県八戸市の語り部もゲスト出演し、舞台を盛り上げた。会場では約100人が楽しみ、ユーチューブ配信と地元ケーブルテレビ局の生放送でお茶の間にも“おらほ弁”の魅力を届けた。
 
 昨年、絵本の読み聞かせで同イベントデビューを飾った釜石市内の小学3年生、大信田さくらさんがトップバッター。同市両石町に伝わる「長い長い綱っこ」を暗唱し、堂々の語りを見せた。「漁火の会」の7人は地元釜石のほか、遠野市などに伝わる民話を聞かせた。千葉まき子さんは旧伊達藩唐丹村で語られた「椿姫の誕生」を初披露。北村弘子さんは江戸時代から橋野地域に残る「母人形(かかじんじょ)」を語った。「じんじょ」は人形(にんぎょう)を指す方言で、主に旧南部藩域で使われてきたという。
 
漁火の会会員も期待を寄せる“小学生語り部”大信田さくらさん

漁火の会会員も期待を寄せる“小学生語り部”大信田さくらさん

 
熟練の語りで観客を民話の世界に引き込む千葉まき子さん(左)と北村弘子さん(右)

熟練の語りで観客を民話の世界に引き込む千葉まき子さん(左)と北村弘子さん(右)

 
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 ゲストは「遠野昔話語り部の会」と「八戸童話会」の4人。八戸の語り部は新型コロナウイルス禍でビデオ出演が続いていたため、釜石での生語りは3年ぶり。同会の若手ホープ木下勝貴さん、ベテラン柾谷伸夫さんが身ぶり手ぶりを交えた寸劇のような舞台を繰り広げ、観客を笑わせた。
 
表現力豊かに物語を展開する八戸童話会の柾谷伸夫さん(左)と木下勝貴さん(右)

表現力豊かに物語を展開する八戸童話会の柾谷伸夫さん(左)と木下勝貴さん(右)

 
 最後は同イベント恒例となった漁火の会の“動く民話劇”。全国区の昔話「五徳と犬」を会員の全力演技で見せた。今回はサプライズ演出も。藤原マチ子さんが、得意の“相撲甚句”で民話を表現。2人の会員と力士姿で登場し、最後は土俵入りまでやってみせた。さまざまな趣向を凝らし楽しませようとする姿に、観客は惜しみない拍手を送った。
 
漁火の会による民話劇「五徳と犬」。コミカルな演技で会場の笑いを誘った

漁火の会による民話劇「五徳と犬」。コミカルな演技で会場の笑いを誘った

 
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土俵入りや相撲甚句で楽しませた漁火の会の藤原マチ子さん(中央)

 
 同市中妻町の60代女性は友人に誘われ、初めて来場。「方言のラジオ番組が好きで、よく聞いている。身近に使っている方言もけっこうあるが、孫たちは分からない。いつか自分も書き出してみたいと思う」と刺激を受けた様子。出演者の昔話語りを直接見聞きし、「自分もちょっとやってみたくなった」と興味をそそられていた。
 
 2019年に漁火の会に入った髙橋タミさん(77)は2回目の出演で、「まだ70点ぐらいかな」と自己評価。元々、同会の“追っかけ”をしていて「いつか仲間に入りたい」と思っていた。小学校や公民館で行う出前語りにも参加していて、「みんなが楽しんでくれるのがやりがい。語り部は年をとってもできる。自分の仕事だと思って頑張っている」と生涯現役を目指す。
 
2回目の大舞台で「海の水はなぜ辛い」を語る髙橋タミさん

2回目の大舞台で「海の水はなぜ辛い」を語る髙橋タミさん

 
 同イベントは東日本大震災後の2015年にスタート。方言の保存・継承活動で地域コミュニティー再生を後押しする、文化庁「被災地における方言の活性化支援事業」の採択を受け、継続開催されてきた。同じく事業に取り組む弘前学院大が第1回から共催する。本年度は、同庁が新たな枠組みで支援する「消滅の危機にある方言の記録作成及び啓発事業」の一環として実施された。

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