困難乗り越えつなぐ「歓喜の歌」 3年ぶり復活「かまいしの第九」に市民ら胸熱く


2022/12/19
釜石新聞NewS #文化・教育

2019年以来3年ぶりに開かれた「かまいしの第九」演奏会。43回目の開催=11日

2019年以来3年ぶりに開かれた「かまいしの第九」演奏会。43回目の開催=11日

 
 釜石の師走に待望の「歓喜」の歌声が響いた―。新型コロナウイルス感染症の影響で中止が続いていた「かまいしの第九」演奏会(実行委主催)が11日、市民ホールTETTOで3年ぶりに開かれた。本番1カ月前に指揮者が急病で交替。東日本大震災以来の大きな困難に直面しながらも、持てる力を結集し堂々の演奏を聞かせたメンバーら。心を一つに“釜石の宝”をつなぎ、約350人の観衆を魅了した。
 
 オーケストラはウッドランドノーツ(東京都)、釜石市民吹奏楽団メンバーら総勢45人。合唱隊は感染拡大防止のため規模を縮小し、県内在住者を中心に68人で編成。ソリストとして4人の声楽家を迎えた。ベートーベンの交響曲第9番1~4楽章を演奏。合唱は例年の半数ほどの人員となったが、オーケストラに負けない歌声を響かせ、コロナ前と変わらない迫力の演奏で、会場を感動で包んだ。
 
ベートーベン交響曲第9番を「混声4部合唱」で歌い上げた

ベートーベン交響曲第9番を「混声4部合唱」で歌い上げた

 
開催できなかった2年分の思いを込め、力強い歌声を響かせる男性メンバー

開催できなかった2年分の思いを込め、力強い歌声を響かせる男性メンバー

 
 釜石市甲子町の佐藤登喜子さん(75)は「素晴らしかった。釜石の第九は平和の印。まだまだコロナも多くて心配だが、やっぱりこういう時間は必要。気持ちが豊かになりました」と余韻に浸った。大槌町の駒木明郎さん(85)は「一生懸命歌う姿が震災の年の第九と重なった。もう少しお客さんが入ってくれたら。合唱メンバーも高齢化が進む。もっと若い人たちが参加してくれるといいね」と願った。
 
 長年、指揮を担当する地元在住の音楽家山﨑眞行さん(72)が11月中旬、病に倒れ急きょ降板。山﨑さんの弟子で、東京で音楽活動を続ける釜石出身の瓦田尚さん(39、都立高教諭)が代役を務めた。瓦田さんは中学時代から同演奏会に参加。主宰するオーケストラ「ムジカ・プロムナード」で第九の指揮を経験している。実行委からの打診に「重責なので最初は迷った」というが、「自分の原点は釜石の第九。つながねば」と決意。本番では「力強くクリアな歌声。オケの集中力。全員のパワーと思いで成立した演奏」と出演者をたたえ、「来年は山﨑先生とまた一緒に…」と願った。
 
代役で指揮者を務めた釜石出身、東京在住の瓦田尚さん(中央)

代役で指揮者を務めた釜石出身、東京在住の瓦田尚さん(中央)

 
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 釜石高音楽部の小林鈴菜さん(2年)は「初めての体験なのでワクワクしていた」と本番を心待ちにしていた様子。「ドイツ語の発音が難しく、足りていない部分はあったと思うが、オケの迫力に負けないよう頑張った。市民メンバーだけでこんなにすごい第九が歌えるなんて」と感動の言葉を口にした。
 
 大船渡市の土井尻季恵さん(78)は、ソリストとして出演を続けるソプラノ土井尻明子さん(46)の母で、明子さんの娘夏鈴ちゃん(6)と3世代初共演。明子さんは甲子小1年在学時に、季恵さんが手作りした衣装を着て同第九に初めて出演。今回、その時の衣装を夏鈴ちゃんが身にまとい、3人でステージに立った。季恵さんは「釜石の第九は次世代に歌い継ぐという使命がある。こういう日が来ることを望んでいた。家族、地域の支えがあって私たちは舞台を踏める。幸せなこと」と喜びを表した。明子さんと練習を重ねた夏鈴ちゃんは「楽器の音が大きくて自分の声が聞こえなかった。でも楽しかった!」とにっこり。初舞台を鮮明に覚えているという明子さんは「当時の体験が(声楽家としての)今の自分につながっている。思い出の地で母、娘と舞台に立てて感慨深い」と話した。
 
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演奏会のフィナーレは「歓喜の歌」を再度演奏

演奏会のフィナーレは「歓喜の歌」を再度演奏

 
例年、観客も一緒に声を重ねる最後の「歓喜の歌」は、今年は手拍子で…

例年、観客も一緒に声を重ねる最後の「歓喜の歌」は、今年は手拍子で…

 
 同演奏会は1978年の初演から毎年12月に開かれ、震災があった2011年も途切れることなく続けられてきた。コロナ禍で20、21年はやむなく中止したが、復活を期して本年から再始動。12月の感染状況が見通せない中ではあったが、7月から合唱練習を続け、念願の演奏会を実現させた。
 
 「かまいし第九」実行委の川向修一会長(70)は「大きな山をみんなの努力で越えられた。一人一人の思いが膨らみ、それが客席に届いたのではないか…」。今年に入り、長年一緒に歌い続けてきたメンバー、裏で舞台を支えてくれていた仲間を相次いで亡くした。コロナ禍だけでなく、メンバーの高齢化、資金面など継続への課題は多いが、「今回、少ない人数でもこれだけの第九ができるというのを感じられたのは一番の収穫。これを力に変え、何とか来年以降も続けていければ」と思いを込めた。
 
出演者には会場から惜しみない拍手が送られた

出演者には会場から惜しみない拍手が送られた

 
 同演奏会では2003年から、市内の中学校単位で合唱を披露する「オーケストラと歌おう」のコーナーを設けているが、本年はコロナ禍を考慮し見送った。

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