三陸の歴史は5億年前から 釜石は国内最古の植物化石の発見地 市民らジオの視点学ぶ


2022/12/12
釜石新聞NewS #文化・教育

市内の地質などについて解説した「かまいしの大地の足跡展」講演会=鉄の歴史館

市内の地質などについて解説した「かまいしの大地の足跡展」講演会=鉄の歴史館

 
 三陸ジオパーク(2013年、日本ジオパークに認定)の再審査を来年にひかえ、釜石市では市内のジオ資源の価値を市民らに理解してもらう取り組みが進む。“鉄のまち釜石”を支えた鉄鉱石などの鉱物の産出は、三陸の大地の成り立ちと深く関係しており、同市の6つのジオサイト(見どころ)には釜石鉱山や橋野鉄鉱山が含まれる。大平町の鉄の歴史館では3日、開催中の特別企画展「かまいしの大地の足跡展―三陸ジオパークと釜石―」に合わせ、同市の地質などを解説する講演会が開かれた。県立博物館専門学芸員の望月貴史さんが講師を務めた。
 
 三陸ジオパークは青森県八戸市から宮城県気仙沼市まで南北約220キロ、東西約80キロに及び日本最大。5億年にもわたる地球の営みが刻まれた大地が特徴で、日本有数の鉱物資源が埋蔵される。釜石市は大地の成り立ちが異なる北部北上帯と南部北上帯の境界に位置し、双方の地質が見られる極めて珍しい地域。古生代デボン紀から中生代白亜紀の地層が確認されている。
 
 水海川上流の千丈ヶ滝(ジオサイト)付近に分布する「千丈ヶ滝層」は古生代デボン紀(約4億2千万年前~3億6千万年前)にできた地層で、北上山地の中でもかなり古い。この時代は陸上に最古の森林が形成され、同層最上部の泥岩からは国内最古の植物化石「リンボク」の化石が見つかっている。うろこ状の樹皮を持ち、樹高40メートルにも達した大型シダ植物で、化石には樹皮の模様が見られる。
 
 「千丈ヶ滝層」の露頭が見られる現場=2020年に開かれた県立博物館主催の地質観察会で撮影

「千丈ヶ滝層」の露頭が見られる現場=2020年に開かれた県立博物館主催の地質観察会で撮影

 
千丈ヶ滝層最上部の泥岩から見つかった「リンボク」の化石。うろこ状の樹皮のあとが見られる

千丈ヶ滝層最上部の泥岩から見つかった「リンボク」の化石。うろこ状の樹皮のあとが見られる

 
 千丈ヶ滝層の北側に広がるのが「小川層」。古生代石炭紀(約3億6千万年前~3億年前)に海中で堆積した地層で、主に生物の遺骸がたまってできる石灰岩で構成され、サンゴの化石がよく見られる。千丈ヶ滝層の北東部に広がる「栗林層」は古生代ぺルム紀(約3億年前~2億5千万年前)の地層。最下部に礫(れき)岩層があり、海中生物のウミユリや腕足動物の化石が見つかっている。今も深海に生息するウミユリ(動物)は、この時代の姿とほとんど変わっておらず、「生きた化石」と言われる。
 
石灰岩の中に見られる「サンゴ」の化石(20年の観察会で発見)

石灰岩の中に見られる「サンゴ」の化石(20年の観察会で発見)

 
礫岩の中に見られる「ウミユリ」の化石(20年の観察会で発見)

礫岩の中に見られる「ウミユリ」の化石(20年の観察会で発見)

 
 講師の望月さんは「千丈ヶ滝周辺は古生代後期の3つの時代の地層を歩いて見られる特殊な場所。7千万年にもまたがる長期の時代の地層をこんなに近い場所で見ることができるのはなかなかない」と話した。
 
 中生代(約2億5千万年前~6千万年前)の地質が見られるジオサイトは根浜海岸、箱崎半島千畳敷、釜石鉱山、橋野鉄鉱山。根浜海岸の岩には中生代ジュラ紀(約2億年前~1億4500万年前)の地層があり、「チャート」と呼ばれる深海の堆積岩でできたしま模様の層を見ることができる。千畳敷は中生代白亜紀(約1億4500万年前~6600万年前)初頭にマグマが地下深くで冷え固まってできた花こう岩で形成される。釜石鉱山、橋野鉄鉱山の形成には、白亜紀(約1億2千万年前)のマグマの貫入が関係する。古生代にできた石灰岩などがマグマの熱で変成して生まれたのが、磁鉄鉱や黄銅鉱。一帯では結晶質石灰岩(大理石)なども見られ、スカルン鉱床(接触鉱床)と呼ばれる。豊富な鉱物資源で釜石は日本最大の鉄鉱山、有数の銅鉱山として栄えた。
 
根浜海岸の防潮堤近くの岩で見られるチャート層

根浜海岸の防潮堤近くの岩で見られるチャート層

 
箱崎半島先端部、ジオサイトになっている「千畳敷」。花こう岩の荒々しい景色が広がる

箱崎半島先端部、ジオサイトになっている「千畳敷」。花こう岩の荒々しい景色が広がる

 
 望月さんは同市で複雑な地質が見られる背景として、三陸の大地の成り立ちを紹介した。三陸は北上山地のほぼ中央に位置する早池峰山を境に、地質学上「北部北上帯」と「南部北上帯」に分けられる。南部は約5億年前、太平洋赤道近くにあったゴンドワナ大陸の辺縁で、約4億4千万年前に大陸から分離。一方、北部は大陸の反対側の海底にたまった海洋堆積物が起源(約3億2千万年前~1億4千万年前)で、海洋プレートに乗って移動。南部、北部ともに長い年月をかけて北上し、アジア大陸の東縁で合体。後に日本列島が分離する。
 
講師の望月貴史さん(左下写真)の講演に聞き入る来場者

講師の望月貴史さん(左下写真)の講演に聞き入る来場者

 
 「世界各地で見つかる化石が当時の大地の場所を教えてくれる。大船渡市で見つかった古生代シルル紀のハチノスサンゴの化石と似たものがオーストラリアでも見つかっている。石炭紀以前は両地域が近い場所にあったと考えられる要素」と望月さん。講演では三陸南部特有の地形「リアス海岸」の成り立ちについても説明した。
 
鉄の歴史館で1月9日まで行われる特別企画展

鉄の歴史館で1月9日まで行われる特別企画展

 
 同館の特別企画展では北部、南部北上帯の解説パネル、各地で見つかっている岩石、化石など40点を展示。同館や旧釜石鉱山事務所の所蔵品のほか、県立博物館から借りたモシリュウ(草食恐竜)の上腕骨の複製、リンボクの化石など貴重な資料が公開される。両石の明治、昭和の津波記念碑がジオサイトになっていることに関連し、市内98の津波記念碑の紹介、明治、昭和の大津波被災の絵図や写真の展示なども行っている。1月9日まで開催される(火曜日、12月29日~1月3日は休館)。

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