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見て感じた「いいな」の声 創作の力に 釜石の絵画グループ・彩美会 36回展

個性あふれる作品が並んだ第36回彩美会展

個性あふれる作品が並んだ第36回彩美会展

  
 釜石市の絵画グループ「彩美会」(小原孝夫会長、会員14人)は19日から21日まで、大町の市民ホールTETTOで36回目の作品展示会を開いた。全会員が1~11点の作品を出展し、講師の佐々木實さん(二科会会友)の5点を加えた72点を展示。思いを込めた作品を見てもらう喜びに“のせられた”会員らは次なる作品に取りかかる意欲を高めた。
   
 彩美会は具象画を中心に取り組み、モチーフは市内外の四季折々の自然風景、動植物、人物、地域文化・芸能、静物などさまざま。油彩や水彩、パステル、クレヨン、色鉛筆など多様な技法を用いた力作が並んだ。
  
多様な技法で描かれた作品を興味深げに鑑賞する来場者

多様な技法で描かれた作品を興味深げに鑑賞する来場者

  
流木を使ったオブジェも来場者の目を楽しませた

流木を使ったオブジェも来場者の目を楽しませた

  
 隣町の大槌町から参加する上野宏明さん(72)は、1年かけて仕上げた油彩画「秀麗早池峰山」など7点を出品した。誘いを受け加入して7年目。もともとの趣味だった写真とは違った視点、構図を求められる絵の奥深さに「はまった」という。撮影したものをキャンバスに残そうと「必死にもがきながら描き、指導を受けて雰囲気が出できた感じ」と控えめながら成長の手応えもある。これからは好きな山登りや散歩の途中で心揺さぶられる風景をその場でスケッチするのが目標。「スケッチブックが相棒になったら最高。絵に込めた思いを自由に感じ、いいなと思ってもらえたらうれしい」と目を細めた。
  
心を動かされた雪景色を表現した「秀麗早池峰山」を見つめる上野宏明さん

心を動かされた雪景色を表現した「秀麗早池峰山」を見つめる上野宏明さん

  
 40代から90代までの会員らは個々に創作に励んでいるほか、月2回、定内町3丁目のひまわり集会所で勉強会を開いている。高齢の会員が多いが、小原会長の口癖「歳は奪い取るもの!」のもと、会員らは明るく元気に活動。和気あいあいと笑い声の絶えないグループの特徴は「互いの良いところを見つけて褒め合う関係性」と声をそろえる。「のせられているという感じもあるけど…。また描こうという気持ちになるよね」と笑顔も重ねる。
  
仲間と共に創作活動を楽しむ彩美会の会員ら

仲間と共に創作活動を楽しむ彩美会の会員ら

  
 事務局の千葉幸子さん(71)は「佐々木先生は形を押し付けず、個性に合わせて指導してくれるので、絵を描いている時間が楽しい。展示された作品には、その人ならではのワールドがあるでしょう」と、うれしそうに会場を見回した。集まりへの参加は都合のいい時だけ―。「ある時は真剣に絵を描き、ある時間はおしゃべりを楽しむ会」に興味を持ち、仲間が増えることを期待していた。
 
 

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将棋の世代間交流大会 釜石で4年ぶり開催 プロ棋士・小山怜央四段誕生で地元愛好熱高まる

2019年以来の開催となった「釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会」

2019年以来の開催となった「釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会」

 
 日本将棋連盟釜石支部(土橋吉孝支部長)主催の釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会は4月30日、上中島町の中妻公民館で開かれた。新型コロナウイルス禍による休止を経て4年ぶり5回目の開催。同市は、この4月に本県初のプロ棋士となった小山怜央四段(29)の出身地。朗報で地元が盛り上がる中、再開された大会に県内外から約40人の愛好者が集い、団体戦で市長杯の栄冠を目指した。
 
 大会は3人1チームの団体戦。スイス式トーナメント戦4局を行い、勝ち点などで順位を競った。対局では段や級の棋力差に応じて駒落ちハンディ(最高6枚落ち)を採用。下手(棋力が下の者)の希望により平手(ハンディ無し)も可とした。対局時計を使用し、各20分の持ち時間で行われた。
 
 今大会には県内の支部や愛好会、学校の同級生などで組んだ12チームが参加。小学4年生から85歳まで、棋力もさまざまな愛好者が真剣勝負を繰り広げた。勝負が決まると互いの健闘をたたえ合い、他メンバーの対局の行方を見守った。対局の合間には地域や年代を超えて言葉を交わし、親睦も深めた。
 
県内各地から12チームが参加。次の手を考え、頭をフル回転

県内各地から12チームが参加。次の手を考え、頭をフル回転

 
小学生も参戦。見事な集中力で大人たちとの対局に挑む

小学生も参戦。見事な集中力で大人たちとの対局に挑む

 
 市内小川町の佐々木満さん(74)は小学5年の孫とチームを組み初参加。第1局では特別参加の野田武則市長との対局も楽しんだ。3年ほど前に佐々木さんが将棋を教え、教室にも通うようになったという孫。「どんどん腕を上げ、今では私が負けるほど。かなりのめり込んでいる」とその成長ぶりに驚く。「将棋はものの考え方の勉強になる。1つだけでなく複数の方法を考えられる力がつくと、挫折しても他の道を考えながら前に進んでいけるようになる」と、柔軟な思考への効果も期待する。
 
 釜石中の3年生は同じクラスの将棋仲間でチームを結成。大会初参加の大下桜雅さんは「いろいろな年代、レベルの人との対戦は普段無いのでいい経験。駒が少ない状態でどう戦えばいいのかも相手から学べた。また出てみたい」と次回大会へ意欲。小学生以来3回目の参加となった野嶋晏慈さんは「駒落ちの対策とかを考えてその成果を出せた。狙った作戦が決まるとうれしい」。午前の2局はいずれも勝利し「全勝したい」と意気込みを語っていたが、その言葉通り4戦全勝し、個人の全勝賞を獲得した。
 
釜石中チームは同級生3人で参加。真剣な表情で盤上を見つめる

釜石中チームは同級生3人で参加。真剣な表情で盤上を見つめる

 
「次はどう出る?」仲間の勝敗の行方にも目が釘づけに…

「次はどう出る?」仲間の勝敗の行方にも目が釘づけに…

 
 2016年に始まった同大会は駒落ちハンディを取り入れた団体戦という独自スタイルで、幅広い愛好者が勝負の面白さを感じ、多くの人と交流できるようにしている。第1回大会には、今春からプロの道を歩み始めた小山四段が弟真央さん、母聖子さんとチームを組み参加している。全日本アマチュア名人戦全国大会で県勢初の優勝を果たした後で、プロ棋士への夢も語っていた。
 
 土橋支部長は大会復活に、「4年ぶりに会う人たちの元気な顔が見られてほっとした。小山新四段をきっかけに、またみんなで将棋を楽しんでいこうという雰囲気が感じられてうれしい。釜石の将棋文化をさらに盛り上げたい」と話す。野田市長も参加者の熱心な姿を肌で感じ、「子どもたちも頑張っていた。みんな目標を持って取り組んでいる。小山怜央さんのこともあり、将棋への興味、関心が高まっていると思うので今後が楽しみ」と期待した。
 
市長杯のトロフィーはどのチームに? 静かなる熱戦が続く会場

市長杯のトロフィーはどのチームに? 静かなる熱戦が続く会場

 
【団体戦結果】
1位/遠野支部(新沼光幸、中村道典、萩野良三) 2位/山田将棋愛好会(黒澤由次、山内秀一、白土輝男) 3位/久慈支部(笹原賢二、星川勝久、中川原達哉) 
 
【個人全勝賞】
野嶋晏慈(釜石中学校)、川畑裕也(朋哉とその仲間たち)、相澤誠(チーム稜平)、坂下晴規(チームうみねこ)、中村道典(遠野支部)

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デザインに魅せられ 貫く“イズム” 小田島凌一展 83歳、現役看板職人【釜石】

釜石市民ホールで作品展を開く小田島凌一さん=只越町のアトリエで

釜石市民ホールで作品展を開く小田島凌一さん=只越町のアトリエで

  
 あくまで手描き、手作業で―。デザイン一本で美術活動を貫き通す釜石市のグラフィックデザイナー小田島凌一さん(83)の個展が、大町の市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。ポスターデザインに魅せられて60年余り、今なお看板業を営む現役職人。東日本大震災での被災、健康面で不安を抱える出来事があっても生み出し続けた、「小田島イズム」がにじむ作品約40点を展示する。同ホール自主事業「アートアットテット」の一環。7日まで。
  
 ソンタクロース、福紙…言葉遊びを楽しむタイトルがついた作品、地球温暖化や海洋汚染などをテーマに問題提起するデザイン画が並ぶ。米露中、北朝鮮の緊張を表現した「取扱注意」、パネル全体を真っ黒に塗りつぶし、その中に壊れゆく子どもの顔を描き「戦争やめろ!」と訴える意欲作も。「ポスターで、すぐには平和の糸口は見いだせないかもしれない。しかし、戦争を終結させる手段の一つではないか」。そんな言葉が添えられている。小田島イズム、その1。「余計なものは入れない。説明しない。パッと見て分かるよう、視覚的に追及する。ポスターデザインのワザ」
  
TETTOで開催中の小田島凌一展。40点ほどが並ぶ 

TETTOで開催中の小田島凌一展。40点ほどが並ぶ

  
地球温暖化対策の必要性や反戦…簡潔なイラストと文言で訴える

地球温暖化対策の必要性や反戦…簡潔なイラストと文言で訴える

  
「上品ではない。泥くさい作品だから」と小田島さん。社会的な話題を取り上げ問題提起する

「上品ではない。泥くさい作品だから」と小田島さん。社会的な話題を取り上げ問題提起する

   
 びっしりと蛍光色のシールが貼られた「丸・三角・四角」と題した作品。タイトル通り、3つの形を重ね合わせ、ひたすら貼りまくった。使ったシールは約3200枚。デジタル時代の今、パソコン上でデザイン、画像処理してプリントすれば数分で仕上がるが、小田島さんは手作業にこだわる。「創作には面白い仕掛けがなきゃ。デジタルにはユーモアがないし、創造ができないでしょ」。いたずらっぽく笑いながら、小田島イズムをポロリ。楽しむ視点は他にもあり、展示品はほぼ全てが手描きで仕上げられ、「色むらがあったり、筆の毛が混じっていたり。そんなところを見るのが面白い」
   
3000枚超のシールを貼って作り上げた「丸・三角・四角」=只越町のアトリエで

3000枚超のシールを貼って作り上げた「丸・三角・四角」=只越町のアトリエで

   
 ゴーイング・マイウエー。自分なりの道を突き進んできた小田島さんは幼いころから絵を描くことが好きだった。通信教育で挿絵やレタリングデザインを学び、22歳になると、浜町にあった看板店で修業を開始。同じ頃、独自のスタイルで創作活動をしていた4人で美術集団サムディ45も立ち上げた。33歳で独立、只越町に「日美画房」の看板を掲げた。仕事の傍ら、創作活動にも励み、グループ展や美術展に出品し、入選・入賞経験も多数。そして2011年、東日本大震災の津波で店と近くにあった自宅が全壊、40数点の作品も失った。5カ月にわたる避難所生活で再建の道を探っていると、ぼちぼち仕事が入るように。「負けられん」
   
津波の難を逃れたデザイン画「泰然自若」。右上写真のように爪痕は残したまま

津波の難を逃れたデザイン画「泰然自若」。右上写真のように爪痕は残したまま

  
「泰然自若」をモチーフにした作品の一つ。こちらは、がれきの写真をコラージュ

「泰然自若」をモチーフにした作品の一つ。こちらは、がれきの写真をコラージュ

   
 この個展では、流失を免れ手元に戻った、たった1枚のデザイン画「泰然自若」も紹介する。20年ほど前の二科展入選作。これをもとに考えた新しい作品数点も掲示し、「震災は必ずくる」「明日かも!あなたは『地震』に『自信』が持てますか」と問いかける。目の当たりにした巨大津波への恐怖と復興を願う熱い思いを看板形式で表現した「海は黒かった。」もインパクト大。第35回東北6県公共キャンペーン作品展(12年)で最高位の国土交通大臣賞に輝いた作品だ。がれきを処理する重機の爪を復興の象徴としてシンプルにデザイン。「爪が挟んだ赤丸がポイント」と教えてくれた小田島さんは願う。「復興の魂を込めた。感じてもらえたら、いいなぁ」
  
重機の爪をデザインした、シンプルながら迫力ある看板「海は黒かった。」

重機の爪をデザインした、シンプルながら迫力ある看板「海は黒かった。」

  
 「ロールモデル(お手本になる人物)だ」。展示を見た同年代の人、創作活動をしている若年者らがつぶやいている。「只越から離れたくない」とその地で看板業を再開し、近くにある災害公営住宅に家族と暮らす小田島さん。数年前から体調を崩したり思い通りにいかないことも多くなったが、創作意欲は衰えていない。自身初となる個展は「周囲の協力のおかげ」と感謝する。そして、「あと何年描けるか分からないが、シンプル イズ ビューティフルライフ(単純は美しい)をモットーに作品創りをしていきたい」とも。小田島イズム、健在(けんざい)。
  
「日美画房」の看板を掲げるアトリエへの通勤は自転車で

「日美画房」の看板を掲げるアトリエへの通勤は自転車で

  
被災の痕を残すアトリエも小田島イズムそのもの

被災の痕を残すアトリエも小田島イズムそのもの

  
◇記者のちょい足しキーワード◇
段落の先頭文字をつなげてみて。続けて段落の最後の文字も結んでみると「小田島イズム」が見えてくる⁈

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笑顔と刻む 新たな歴史 釜石・小佐野保育園 ピカピカ園舎に子どもらの歌声響く

真新しい園舎に大喜びの小佐野保育園の園児ら。元気な歓声が響いた

真新しい園舎に大喜びの小佐野保育園の園児ら。元気な歓声が響いた

  
 釜石市小佐野町の小佐野保育園(小笠原真理子園長、園児60人)が新築され、22日に落成式が行われた。園児や保護者、地域住民、園関係者ら約100人が参加。ピカピカの学び舎(や)に完成を喜ぶ子どもたちの元気な歌声が響いた。1967年に建てられて以来、大規模な建て替えは56年ぶり。今年2月上旬に建築工事は完了しており、同月中旬から既に新園舎で保育を始めている。
 
 同園の歴史は戦前までさかのぼる。1938年に私設の保育所として開設された後、移転や保育園への移行、運営主体の変更などを繰り返した。45年、米英軍による艦砲射撃の影響で事業を一時中止したことも。66年に私立から社会福祉法人運営の小佐野保育園となった。67年に現在の場所に園舎を整備。81年設立の社会福祉法人釜石愛育会が運営を引き継ぎ、増改築を重ねてきた。
  
 旧施設は老朽化が進行。加えて、2011年の東日本大震災の地震は乗り切ったが、今後の災害に耐え得るか不安もあったことから、建て替えを決めた。昨年7月下旬から新園舎の建築工事に着手。今年2月10日にしゅん工、引き渡しを受けた。工期中は野田町の野田集会所を仮園舎として利用した。
  
完成した小佐野保育園の新園舎

完成した小佐野保育園の新園舎

  
 新園舎は木造一部2階建てで、延べ床面積648平方メートル。1階には保育室(6室)やホール、事務室、医務室、調理室などを設け、2階には会議・応接室を配置した。園児の安心安全への配慮、職員の快適な執務環境の構築を目指して設計され、自然採光を取り入れられるよう保育室などの配置を工夫。季節の移ろいを体感してもらおうと、ひさしを設けた半屋内の活動空間をつくり、園庭の遊具なども再整備した。
  
 式で、釜石愛育会の小野寺哲理事長は「多くの力添えで、待望の施設が完成した」とあいさつ。建設業者ら協力者6人に感謝状を贈った。同会の山﨑ミキヨ理事も「どこからも光が入り、明るい色調が子どもたちを温かく優しく包み込み、ぬくもりある、ほっと安心できる施設に生まれ変わった。子どもたちは元気に伸び伸びと遊び、楽しいそうな声が園内に響き渡っている」と謝辞を述べた。
 
喜びを込めて元気いっぱいに歌う子どもたち

喜びを込めて元気いっぱいに歌う子どもたち

 
園児らを優しく見守る小野寺理事長(前列左)や保護者ら

園児らを優しく見守る小野寺理事長(前列左)や保護者ら

 
 年中・年長児と今春の卒園児ら約30人は手話を交えながら「にじ」を元気いっぱいに歌って、園生活の楽しさを表現。保護者が参加する縁で尾崎青友会が駆け付けて虎舞を披露し、お祝いムードに花を添えた。
 
 出番を終えて満足げな佐野史佳ちゃん(5)に新しい園舎の印象を聞くと、「きれい。うれしい」と答えが返ってきた。普段は友達とままごとを楽しんでいて、これからやってみたいことは「なわとび」とのこと。帰りがけには園庭にある遊具に駆け出し、友達と遊びながら歓声を響かせた。
 
木のぬくもりを感じる明るい保育室

木のぬくもりを感じる明るい保育室

 
園庭に整備された遊具は子どもたちのお気に入り

園庭に整備された遊具は子どもたちのお気に入り

 
 園児の頑張りに目を潤ませた小笠原園長。新園舎で始まる歴史を、子どもたちの笑い声とともに刻んでいくことを思い描く。小野寺理事長も「園児ファースト。愛の精神を大切にした保育で、子どもたちの感性や自由性を育んでいく」と力を込めた。
 

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思い思いの釜石風景 市民絵画教室、42回目の作品展 刺激し合う関係 継続の力に

釜石市内の風景などが並んだ市民絵画教室の作品展

釜石市内の風景などが並んだ市民絵画教室の作品展

  
 釜石市民絵画教室(小野寺豊喜会長、会員11人)の作品展は7~9日まで大町の市民ホールTETTOで開かれた。会員と講師の菊池政時さん(87)が、この1年間に制作した作品など96点を展示。作品を見てもらう喜びを分かち合いつつ、互いの創作活動に刺激を受け、継続への意欲を高めた。
   
 同教室は1978年度、市の社会教育講座としてスタート。その後自主活動グループに移行し学習、作品発表を続ける。教室は毎月2回、隔週水曜日に青葉ビルで開催。合評会、スケッチ旅行(新型コロナウイルスの影響でここ数年は実施を見送る)を経て、絵画展で1年間の成果を示す。
   
1年間の成果を発表した市民絵画教室の会員ら

1年間の成果を発表した市民絵画教室の会員ら

   
 「私たちの絵画展」と銘打つ作品展は、今年で42回目となった。同教室で取り上げた花や魚の静物、市内の海景や街並み、庭先を彩る植物、自画像などテーマはさまざま。画材も油彩、水彩、アクリル、パステル、色鉛筆と多様だ。
  
作品に込めた思いを伝えたり、会話を楽しみながら絵画鑑賞する人も 

作品に込めた思いを伝えたり、会話を楽しみながら絵画鑑賞する人も

  
「釜石港」と題した松崎さんの作品。これからも描き続けたいテーマだという

「釜石港」と題した松崎さんの作品。これからも描き続けたいテーマだという

   
 「釜石に住んでいるなら、やっぱり海」と話したのは松崎洋さん(90)。釜石港や造船所、廃船など海にちなんだ作品を多く並べた。東日本大震災前は両石町で暮らしたが、被災し大渡町で生活を再建。拠点は変わっても海は身近にあり、描き続けたいテーマに変わりはない。今も自営業者として働いていて、「仕事が終わってボヤっとするよりは何か趣味があった方がいい」と、絵を描くことが元気のバロメーターになっている様子。教室にはできるだけ参加し、仲間と腕を磨き合う時間も楽しみで、「いい絵を描いているのを見ると、『負けないぞ』という気持ちになる」と意欲満々だった。
   
にこやかな笑顔で来場者を出迎えた女性会員ら

にこやかな笑顔で来場者を出迎えた女性会員ら

   
 小野寺会長(74)は「にぎやかな展示。描きたいものを自分なりに表現したり、大きいサイズの作品に挑戦したり、いい傾向」と、うれしそうに会場を見回した。創立45年となり、思い出すのは32回目の作品展のこと。その初日に起こった震災で、展示中の作品が津波にのみ込まれた。泥の中から回収・修復した作品を加えた絵画展を翌年に再開。その後のコロナ禍で2年開催を見送ったが、昨年から再始動し、「創作を楽しめる、いつもの日常が戻ってきた」と感じている。
  
 そして、続けることの大切さをあらためて思う展示にもなった。小野寺会長は「工夫したり勉強してきたものを発表できることは創作の力になる。自分にないものを、仲間を通して見いだすことができる。それを自分のものにするため研さんを積み、刺激し合っていきたい」と前を向いた。
 
 

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期待膨らむ!新学校生活スタート 釜石市内の小・中学校で入学式 桜も祝福

「はい!」。新入生が元気な声を響かせた双葉小の入学式=7日

「はい!」。新入生が元気な声を響かせた双葉小の入学式=7日

  
 釜石市内の小中学校は10日までに新年度の入学式が行われた。小学校は9校に190人、中学校は5校に172人が進んだ。桜が咲く中で迎えた「ハレ」の日。各校の新入生らは期待に胸を躍らせながら学校生活をスタートさせた。
   
 新町の双葉小(及川美香子校長、児童130人)には19人が仲間入りした。入学式は7日にあり、緑やピンク、水色といったカラフルなランドセルを背負った新1年生が保護者と登校。通学路や学校敷地内では桜が咲き誇り、その祝福に顔をほころばせた。
   
新入生を歓迎するかのように咲き誇る双葉小敷地内の桜=7日

新入生を歓迎するかのように咲き誇る双葉小敷地内の桜=7日

  
保護者と手をつないで初めて双葉小に登校する新1年生=7日

保護者と手をつないで初めて双葉小に登校する新1年生=7日

   
 体育館での式で新1年生は、教員や保護者、6年生(29人)が見守る中、入場。少し緊張気味だったが、名前を呼ばれると「はい」と元気よく返事し一礼した。
  
 及川校長は「早く学校に慣れて好きになってください。優しく、お友達が嫌がることをしないで正しいことをしっかりできる1年生になってほしい。あいさつもしっかりできるといいですね。心の中に双葉が育ち、大きな花を咲かせることができます」と呼びかけた。
  
心の双葉を育てるための取り組みを分かりやすく伝える及川美香子校長=7日

心の双葉を育てるための取り組みを分かりやすく伝える及川美香子校長=7日

  
校長先生の話や教職員の紹介に耳を傾ける双葉小の新入生=7日

校長先生の話や教職員の紹介に耳を傾ける双葉小の新入生=7日

  
 来賓の高橋勝教育長が告辞。「いろいろ、たくさん遊んで勉強し、周りの人たちのために頑張れる小学生になって」と期待を込めた。6年生は「おはようございます」「さようなら」と元気なあいさつの手本を見せ、新たな仲間を歓迎した。
  
 新入生の三浦伊織さんは「勉強を頑張りたい。一輪車に乗れるようになりたい。友達をつくるのも楽しみ」と期待を膨らませた。母の文子さん(40)は「元気いっぱい、いろんなことを経験してほしい」と優しいまなざしを向けた。
  
保護者や6年生らが見守る中、入学式を終えて退場する新1年生=7日

保護者や6年生らが見守る中、入学式を終えて退場する新1年生=7日

  
 新型コロナウイルス対策のマスク着用について、文部科学省は学校向けに緩和する通知を示しており、同校の入学式では新入生については着用を求めなかった。今月から学校の児童生徒や教職員は基本的に不要と通知されているが、出席者のほとんどはマスク姿で、そうした状況はまだ続くとみられる。

 

野田市長(左から2人目)らと記念撮影する小山さん(中央)=釜石市役所

将棋・小山怜央さん 古里釜石に帰省 プロ合格を報告、活躍誓う「応援力に」

釜石市に帰省して地元の子どもたちと指導対局する小山怜央さん(左)=小佐野コミュニティ会館

釜石市に帰省して地元の子どもたちと指導対局する小山怜央さん(左)=小佐野コミュニティ会館

 

 今年2月に将棋の棋士編入試験に合格した釜石市鵜住居町出身の小山怜央さん(29)=横浜市。4月1日付で岩手県初のプロ棋士としてデビューする。新たな舞台への一歩を踏み出す前に、古里に帰省。3月28日は子どもや将棋愛好家らへの指導対局、市長への表敬訪問などで大忙しだった。「おめでとう」「白星重ねて」「もっと強くなりたい」。行く先々で喜びや応援、希望を見いだす声を聞いた小山さんは「困難な時があっても地元の応援を力にし、今後も良いニュースを届けたい」と飛躍を誓う。

 

 小学2年生の頃に将棋を始めた小山さん。中学3年で棋士養成機関「奨励会」を受験するも不合格に終わった。高校2年時の東日本大震災で自宅を失い、避難所や仮設住宅での生活を余儀なくされたが、棋力は磨き続けた。岩手県立大進学後、数々のアマチュアタイトルを獲得。16年には奨励会の「三段リーグ」編入試験に挑戦したが、不合格となった。ただ、社会人になってもプロ棋士という夢を諦めず、アマとして臨んだプロの棋戦で好成績をあげ、編入試験の受験資格を獲得。22年11月から若手プロ棋士相手の五番勝負に挑み、3勝1敗と勝ち越して合格した。

 

将棋教室で特別指導

 

憧れの小山さんと(前列右から3人目)と交流し笑顔の子どもたち=小佐野コミュニティ会館

憧れの小山さんと(前列右から3人目)と交流し笑顔の子どもたち=小佐野コミュニティ会館

 

 合格後の初帰省。28日午前、小山さんは小佐野町の小佐野コミュニティ会館を訪れ、子ども将棋教室に特別参加した。将棋愛好家らでつくる「正棋会」が小佐野公民館と連携して企画する教室には小学生9人を含め20人ほどが集まっていて、「おめでとう」と拍手を添えて出迎えた。そして、時間を惜しむかのように、子ども3人が「六枚落ち」のハンデをもらって対局に挑んだ。

 

 対局後には「感想戦」も。勝負を振り返り敗因となった手などを語り合って、最善手を検討する時間だ。小山さんが「負けました」と発した一局。「完敗だった。金をとられたのが痛かった。いい手をとったね」と声をかけられた中澤朋哉君(釜石小4年)は照れ笑いした。棋士を目指す中澤君にとって、小山さんは夢を実現させた憧れの存在。ハンデありの勝ちは「うれしいけど、ちょっと悔しい。途中、勝ち!と思っていたら、怪しい技を繰り出してきて、ただじゃすまなかった。やっぱり、すごい。もっと強くならなきゃ」と刺激を受けた。

 

将棋愛好家や子どもらを相手に臨む「8面指し」=中妻地区生活応援センター

将棋愛好家や子どもらを相手に臨む「8面指し」=中妻地区生活応援センター

 

子どもも大人も小山さんとの勝負に熱中=中妻地区生活応援センター

子どもも大人も小山さんとの勝負に熱中=中妻地区生活応援センター

 

 午後は上中島町の中妻地区生活応援センターで指導対局。子どもや高齢の愛好家らを相手に真剣な表情で多面指しに臨んだ。小山さんに会うために山田町から駆け付けた斎藤稜平君(豊間根小3年)は「緊張してすごく疲れた。とても強かった。感想戦で攻めのことを教えてもらったから強化したい」と貴重な時間を楽しんだ様子。対局の喜びをかみしめるのは大人たちも同じで、「最高だ」と顔をほころばせていた。

 

市長を表敬訪問

 

野田市長(左から2人目)らと記念撮影する小山さん(中央)=釜石市役所

野田市長(左から2人目)らと記念撮影する小山さん(中央)=釜石市役所

 

 2つの指導対局の合間に、市役所の野田武則市長を訪ねて報告。4月から四段としてフリークラスに参戦する小山さんは「こんなに釜石の方が喜んだり応援してくださっていると改めて感じ、とてもうれしく思います。たくさんの声かけを力に勝利を重ねて少しでも早く突破できるよう頑張りたい」と力を込めた。

 

 同行した小山さんの父敏昭さん(60)、母聖子さん(60)は「諦めず夢をかなえた。試練はあると思うが応援してほしい」と望み、野田市長は「大きな偉業を成し遂げていただいた。勝利した瞬間から釜石の空気が明るい雰囲気に変わった。活躍が市民に元気と勇気を与える。厳しいことは多々あると思うが、市民が応援しているので頑張ってほしい」とエールを送った。

 

土橋さんらから贈られたネクタイを着用。同郷のアーティスト小林覚さんの作品「数字」がデザイン。「白星、数字を重ねて」との願いが込められている

応援への感謝と意気込みを伝える小山さん=釜石市役所

 

 幼少期の小山さんに将棋を教えた土橋吉孝さん(67)=日本将棋連盟釜石支部長=は「成長し、たくましくなった。余力があり、まだ伸びる。白星を稼いで上を目指してほしい。怜央はみんなの目標であり、将棋文化普及の力になる」と期待する。実際、小山さんの活躍により、子どもらの熱の高まりを感じていて、同支部では将棋教室の回数を増やす考え。コロナ禍で開催できずにいた市長杯も4月に予定する。

 

 自身も通った教室に今なお多くの人が集う様子をうれしそうに見つめる小山さん。「こんな、にぎやかな感じが続いていってほしい。子どもたちには、いろんな大会に出て経験を積んで頑張ってほしい。自分も勝負師なので、負けるのは悔しい。またチャレンジさせてください」。控えめながら、将棋にひたむきに向き合う姿勢が印象的だった。

 

応援への感謝と意気込みを伝える小山さん=釜石市役所

土橋さんらから贈られたネクタイを着用。同郷のアーティスト小林覚さんの作品「数字」がデザイン。「白星、数字を重ねて」との願いが込められている

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やりたいこと、実現!「かまっこまつり」準備中 釜石の子どもたち「来てー!」

手製のチラシを手に「かまっこまつり」をPRする子どもたち

手製のチラシを手に「かまっこまつり」をPRする子どもたち

 
 釜石市の子どもたちが中心となって企画する「かまっこまつり」が25日、大町の釜石PITで開かれる。自らアイデアを出し合い、準備から運営まで行う祭りは9回目。手作り雑貨や遊びの出店、ステージ発表などで市民をもてなす。今回は6歳~高校生約30人がスタッフに応募。昨年11月下旬から作戦会議、準備を重ねている。本番を1週間後に控えた18日に大町の青葉ビルで進められた作業をのぞいてみた。
 
 商品の袋詰めや店の看板づくり…。この日は、小中学生と保護者、大人スタッフら15人ほどが集まった。手製のスノードームなどを売り出す「なんか屋」チームの櫻井真衣さん(双葉小5年)は「ものづくりが好きだから楽しい」と手際よく作業。同級生の大井虹色(なな)さんは「春休みは暇だから。いつもと違ったことができるのかなと楽しみ。とにかく、買ってもらえたらよし!」と、せっせと手を動かしていた。
 
スノードームを作ったチーム。販売に向け袋詰めや飾り付けを進める

スノードームを作ったチーム。販売に向け袋詰めや飾り付けを進める

 
看板に描くイラストを考えたり、ダンスの振り付けを確かめたり…大忙し

看板に描くイラストを考えたり、ダンスの振り付けを確かめたり…大忙し

 
 他にもスライムづくりや宝探しゲーム、運動遊びコーナーなどが並ぶ予定。子どもたちは「ルールを考えるのが楽しい」「作り方を知りたいからやってみた」と生き生きした表情でもてなしの準備を進めている。チラシをつくって青葉ビル周辺の住民に配布。宣伝にも力を発揮する。
 
祭り限定の仮想通貨「かまっコイン」。みんなで丁寧に切り取り中

祭り限定の仮想通貨「かまっコイン」。みんなで丁寧に切り取り中

 
 そして祭りの特徴の一つが、限定の仮想通貨。今回の「かまっコイン」は、釜石の海と夕日がデザインされている。考えたのは松田桃さん(鵜住居小2年)。「きれいだと思ったから描いた。優しい気持ちで使ってほしい」とはにかんだ。来場者は受付で仮想通貨をもらって買い物や遊びを満喫。通貨を使い切ったら、各ブースで運営を手伝う“アルバイト”をして報酬の通貨を得る仕組みも楽しみどころだ。
  
「25日にやります。来てください」。チラシを配って呼びかけも

25日にやります。来てください」。チラシを配って呼びかけも

  
 釜石まちづくり株式会社が主催。祭りは東日本大震災後の子どもの居場所づくりを目的に「放課後子ども教室」を運営する市民団体が2013年に始めた。子どもたちのやりたいことを実現させ、地域の人たちとの出会いを促すのを目指し、本年度から同教室の運営を担う同社が取り組みを引き継いだ。
  
 これまで会場にしてきた鵜住居地区を飛び出し、市中心部に乗り込んで初開催。隣接する市民ホールTETTO前広場では、何でも100円で買えるフリーマーケット「かまいし百円市」(同社主催)も予定され、楽しさ倍増で街中ににぎわいを生み出す。同教室事業に長年携わる同社の岩城一哉さん(36)は「子どもたちが時間をかけて作り上げる成果を見てほしい。そして交流することで、互いに声がかけやすい関係づくり、発見や学び合うきっかけになれば」と来場を呼びかける。
 
 かまっこまつりは正午~午後3時まで。同時開催の百円市は同14時半まで楽しめる。
 

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勉強と部活を両立 卒業控えた釜高生4人へ努力の証し「小泉賞」 釜石市ボクシング協会

小泉賞を受けた佐々木悠さん(左)、鈴木佳穂さん(右)と釜石市ボクシング協会の小泉嘉明会長

小泉賞を受けた佐々木悠さん(左)、鈴木佳穂さん(右)と釜石市ボクシング協会の小泉嘉明会長

 
 釜石高ボクシング部で3年間部活動に励んだ3年生部員に贈られる「小泉賞」。肉体、精神ともに過酷なスポーツであるボクシング競技に挑み、そして学業との両立を実践した生徒をたたえようと、釜石市ボクシング協会(小泉嘉明会長)が1999年に創設した取り組みだ。毎年、卒業を控えたこの時期に贈呈式を行っていて、今年は2月21日に中妻町の昭和園クラブハウスで開催。選手2人、マネジャー2人の計4人が努力の証しとなるトロフィーを手にした。
 
昭和園クラブハウスで行われた贈呈式。小泉会長のあいさつに耳を傾ける釜石高ボクシング部員ら

昭和園クラブハウスで行われた贈呈式。小泉会長のあいさつに耳を傾ける釜石高ボクシング部員ら

 
笑顔や充実した表情を見せながらトロフィーを受け取った

笑顔や充実した表情を見せながらトロフィーを受け取った

 
 卒業する3年生のうち選手として活躍した佐々木悠さんと鈴木佳穂さんの2人が参加。小泉会長は「きついことも多かっただろう。それでも続けてきた頑張りには価値がある。今は分からずとも、後で利いてくる。3年間で成し遂げたことをかみしめつつ、人生を開拓してほしい」と激励。後輩や協会役員ら約20人も温かい拍手を送り、新たな道を歩み出す2人の背中を押した。
 
 同校ボクシング部は本年度、1~3年生16人(選手11、マネジャー5)で活動。顧問の和賀大毅教諭によると、女子ピン級の佐々木さんは細身ながら破壊力ある左ストレートが持ち味で、ライトフライ級の鈴木さんは入部後すぐに腰を痛めたものの、うまく付き合う方法を見いだし前に進み続ける頑張り屋。県高総体では佐々木さんが準優勝、鈴木さんは3位入賞と結果を残した。この日は不参加だったが、マネジャーの小野未優さん、菅原彩葉さんは手先の器用さを生かしたお守りづくり、洗濯やリングの掃除などでマメな気配りを発揮し、選手を支えた。
 
トロフィーを手に、経験を将来に生かす思いを新たにする佐々木さん(左)、鈴木さん

トロフィーを手に、経験を将来に生かす思いを新たにする佐々木さん(左)、鈴木さん

 
 佐々木さんと鈴木さんは幼少期からの幼なじみで、格闘技好きの鈴木さんの誘いに「高校では個人競技を」と考えていた佐々木さんが乗って入部。練習のつらさ、廃部の不安など一緒に乗り越えてきた。引退後、練習や試合に挑む後輩たちの姿に力をもらって受験勉強に集中。海洋生物に興味がある佐々木さんは岩手大農学部、鈴木さんはヘアメイクアーティストを目指し仙台市の美容系専門学校へ進学する。
 
 「ボクシングを次の世代につなげてほしい」。2人に共通する思いだ。「周りの支えがあってこそ、リングに立てる。誰かのために懸命になってくれる人がいつもいた」と鈴木さん。それが自身の頑張り、精神面の強化、そして「今度は私が誰かを笑顔にしたい」と夢を描くことにつながったと感じている。佐々木さんは部長として部員をまとめた経験がコミュニケーション力の向上になったと実感。個人競技だが、人との結びつきが強いボクシング部の継承に向け、「部員獲得を頑張ってほしい」と願った。
 
先輩から伝統を引き継ぎ、活躍を誓う佐々木夏さん(左)と菊池麗さん

先輩から伝統を引き継ぎ、活躍を誓う佐々木夏さん(左)と菊池麗さん

 
 同部では、卒業生たちの希望をつなぐ明るいニュースがあった。本年度の県新人戦で女子ピン級の菊池麗(あきら)さん、男子ピン級の佐々木夏さん(ともに2年)が優勝。東北大会へ進んだが、惜しくも全国は逃した。その実績を力に2人は「もっと上に行く」「燃え尽きることができるよう頑張る」と誓う。
  
 仲間の頑張りに刺激された部員たちは「高総体で優勝する」などとそれぞれ目標を設定。そんな頼もしい姿に、卒業生や小泉会長、協会役員らは目を細めていた。
 
 

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冬の星空、見上げてごらん 釜石・こどもエコクラブ 観察会で星座さがし楽しむ

釜石市鉄の歴史館前で夜空を見上げて星空観察を楽しむ子どもたち

釜石市鉄の歴史館前で夜空を見上げて星空観察を楽しむ子どもたち

 
 自然の中での体験活動を通して学び、環境保護の意識を育む「こどもエコクラブ」(釜石市主催)は2月18日、大平町の市鉄の歴史館で冬の星空観察会を開いた。本年度5回目の活動。市内の小学生約30人とその家族ら計約60人が参加し、冬の星座や星の輝きを楽しんだ。今回は最終回でもあり、身近な自然に理解を深めた子どもたちに修了証を授与。市では来年度も継続する方針で、子どもたちは「楽しくて不思議なことがいっぱい。もっと知りたい」とワクワク感を維持させる。
  
 日中、曇り空だったため、鉄の学習に変更。講師の大久保孝信さん(元市職員)が同館を案内した。市世界遺産課主査の髙橋岳さんは、鉄と宇宙の神秘を感じさせる展示物「ギベオン鉄隕石(いんせき)」を紹介。展示ケースから取り出して、じかに触れてもらう特別な体験も用意した。
  
大久保さん(左)の案内で鉄の学習に取り組む子どもたち

大久保さん(左)の案内で鉄の学習に取り組む子どもたち

  
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「ギベオン鉄隕石」に触れ、宇宙に思いをはせる体験も

  
 会が終わるころにはすっかり雲が晴れ、夜空にはたくさんのキラメキが。普段から星空観察を楽しんでいる大久保さんが「南の空を見てみよう」と、子どもたちを施設の外に誘い出した。輝く星々を示しながら、宇宙の知識を解説。冬を代表する星座オリオン座、その1等星ベテルギウスはおおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンと「冬の大三角」を構成し、その姿を確認した。
  
歴史館の駐車場から見上げた星空

歴史館の駐車場から見上げた星空

  
静態保存されている蒸気機関車とパチリ「銀河鉄道⁉」

静態保存されている蒸気機関車とパチリ「銀河鉄道⁉」

  
 オリオン座のやや西には、おうし座の1等星アルデバランが赤く輝く。冬の星空には1等星が多く、ほかの季節に比べてもにぎやかだと大久保さん。「1等星たちを結んで、いろいろな形を楽しみながら星座を見つけてみて。冬のダイアモンドもあるよ」などと夜空を見上げる楽しさを伝えた。
  
 本年度のエコクラブは児童43人でスタート。全5回の活動を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で1回中止となった。修了証は、1回以上参加した37人に贈られた。
  
「見えた」。子どもたちは望遠鏡をのぞき込んで歓声を上げた

「見えた」。子どもたちは望遠鏡をのぞき込んで歓声を上げた

  
 自前の望遠鏡を持ち込んだ根元璃玖君(釜石小3年)は「見えるよ、星」と感激。エコクラブの活動は毎回参加していて、「ホタルを見たり、釜石湾で船に乗ったり、イカの解剖もした。みんな楽しかったし、不思議でいっぱい調べて、いろんなことが分かった」と胸を張った。残念だったのは、昆虫採集が中止されたこと。エコクラブの活動が続くとしたら、「参加したい」と手を挙げた。
  
本年度の活動を終え、修了証を手にした子どもたち

本年度の活動を終え、修了証を手にした子どもたち

  
 市まちづくり課の平野敏也課長は「自然の中でさまざまなことを経験し、地域を知り、環境について勉強することは子どもたちの成長に役立つ」と意義を強調。昨年実施の第15回「かまいし鉄の検定」でエコクラブ出身者が満点を取るなどの実績も紹介する。次年度の実施を見据え、「エコクラブ出身の中学生がサポート役で参加したり、学びを継続できるような取り組みも考えたい」とした。

 

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震災の語り部活動、準備中!釜石高生「自分の言葉で伝えたい」 3月、うのスタで

自分の言葉で震災を伝えるため研修や練習に取り組む釜石高生

自分の言葉で震災を伝えるため研修や練習に取り組む釜石高生

 
 東日本大震災の経験や教訓、防災の取り組みを未来につなげようと活動する釜石高(釜石市甲子町)の生徒有志グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」。地元のラグビーチーム釜石シーウェイブス(SW)RFCのホーム戦に合わせ、会場の釜石鵜住居復興スタジアム(鵜住居町)で語り部活動を展開してきた。今年も、3月に伝承活動を行う予定。震災被災者の経験談を聞いたり、「伝えたい」思いをまとめたり準備を進めている。
 
 夢団は2019年に結成。うのスタが会場となったラグビーワールドカップ(W杯)開催時に震災の教訓と復興支援への感謝を伝えようと活動した生徒らが、継続的な取り組みにすべく立ち上げた。生徒の発案で「津波伝承うちわ」「安否札」を作成・配布しながら、W杯やSWホーム戦の来場者に震災の記憶や防災力向上を発信してきた。
 
震災体験者の話を聞き取る研修=1月26日、鵜住居町

震災体験者の話を聞き取る研修=1月26日、鵜住居町

 
 今年は5人の生徒が語り部に挑む。いずれも2年生。震災当時は4、5歳で記憶していることは多くない。そこで、1月26日に研修として震災経験者から話を聞いた。鵜の郷交流館(鵜住居町)で体験を伝えたのは、嬉石町の横山幸雄さん(85)。「津波を目の前にして足がすくんだ。とっさに家の中に飛び込んだが、津波にのまれ意識を失った」などと、死と隣り合わせの経験を語った。意識を取り戻し、目についた電線を伝って電柱にたどり着き、奇跡的に命をつないだ。「私の行動は一歩間違えれば命取りになっていた」とした上で、「一番大事なのは命。災害時にどう行動するか、日頃から考えておくべきだ」と力説した。
 
 生徒たちは、住み慣れたまちが津波で失われるのを目の当たりにした時の心境や行動の選択で困ったこと、避難所の様子などを聞き取った。海が近い唐丹や鵜住居、平田で暮らす生徒らは、自身の体験との違いを感じた様子。体験者の話をじかに聞くのが初めての生徒もいて、新たに触れた視点を盛り込んで「伝える」との思いを強めていた。
 
横山さん(左)の経験談に耳を傾ける釜石高の生徒=1月26日、鵜住居町

横山さん(左)の経験談に耳を傾ける釜石高の生徒=1月26日、鵜住居町

 
 横山さんは「震災から10年以上がたち、風化を感じる。だからこそ、伝えていくことが大切だ」と強調。釜石観光ガイド会の一員として語り部活動を実践する先輩の立場から、「災害に負けてたまるか。命さえあれば、どんなことでも頑張れるはず。そう思い語り続けている」と明かし、伝承者としての姿勢を探る生徒たちにヒントを残した。
 
 いのちをつなぐ未来館では、施設職員で語り部の川崎杏樹(あき)さんの案内で展示を見て回りながら、おさらい。うのスタでの活動に向け台本作りも始めた。
 
いのちをつなぐ未来館で震災への理解を深める生徒ら=1月26日、鵜住居町

いのちをつなぐ未来館で震災への理解を深める生徒ら=1月26日、鵜住居町

 
放課後の学校で台本作りの準備をする高堰さん(奥)=2月14日、甲子町

放課後の学校で台本作りの準備をする高堰さん(奥)=2月14日、甲子町

 
 2月中旬からは、個別に台本を仕上げる作業を続けている。語り部デビューを目指す高堰愛さんは14日の放課後、同校で作業。夢団の活動を支える「さんつな」代表の伊藤聡さん(43)にアドバイスを受けながら、考えをまとめている。
 
 学校周辺の地区に住む高堰さんは津波の被災はないが、地震の怖さから車中泊をした記憶を残す。大槌町に祖父母が暮らしており、人的被害はなかったものの何度も訪れた思い出の場所が流されたことにショックを受けた。それでも、「津波を直接的に体験していない自分が語れるのか」「伝えられることもある」と自問自答。震災は被災の有無にかかわらず、多くの人の気持ちにダメージを与えたと感じていて、「(私は)思い出を失ったが、支えられ気持ちが楽になった。今度は支える立場になりたい」との思いを力にする。
 
高堰さんの「伝えたいこと」がつづられたノート=2月14日、甲子町

高堰さんの「伝えたいこと」がつづられたノート=2月14日、甲子町

 
 横山さんの話で印象に残ったのは、避難所での生活。津波から逃れても寒く、苦しく、大変な生活があったことを知った。そうした背景も織り交ぜながら、命を守ることや備えの大切さを伝える考え。「人前で話すのは苦手。でも台本があると読んでしまう」と自己分析し、台本は文章ではなく、伝えたい言葉を書き連ねるだけにするつもりだ。「自分の言葉で語りかけたい」。思いを紡いでいる。
 
 今月末に全体練習。SWホーム戦は3月5日、12日、19日に予定され、生徒たちは12日に思いを発信する。

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釜石市民劇場 26日公演 戦時下を生きた女学生、子どもの姿描く 艦砲射撃体験者の証言朗読も

本番まで1週間。釜石市民劇場キャストの稽古=18日、TETTO

本番まで1週間。釜石市民劇場キャストの稽古=18日、TETTO

 
 第36回釜石市民劇場(同実行委主催)は26日、釜石市大町の市民ホールTETTOで公演する。郷土の先人や歴史にスポットを当てた舞台公演を続ける同劇。本年度は太平洋戦争末期、2度の艦砲射撃により壊滅的な被害を受けた同市で、たくましく生き抜いた高等女学生や子どもたちの姿を描く。戦後77年が経過し、戦争体験者が減少していく今、罪なき人々の命を奪う戦争のむごさを確実に後世に伝え、二度と悲劇を繰り返してはならないという強い思いを発信する。当日は、ロシアによる侵攻で苦しい環境下に置かれるウクライナへの支援募金も呼び掛ける。
 
 「七十七年前の出来事」乙女たちの戦い―と題した劇は、戦況が悪化した1945(昭和20)年春から夏の釜石が舞台。国民学校(現小学校)の子どもたちは親元を離れて集団疎開。高等女学校(現中学校)の生徒らは勤労動員や軍事訓練を命ぜられ、敵の標的となった製鉄所では工員が危険と隣り合わせで働いていた。物語は高等女学生を主人公に展開。終戦間際に受けた艦砲射撃のすさまじさ、防空壕で恐怖におびえる市民の様子なども描く。
 
 劇中では当時、釜石高等女学校生徒だった4人の手記の朗読もある。元教諭の箱石邦夫さん(盛岡市在住)が釜石南高勤務時代、生徒たちと一緒に当事者から集めた証言書簡集「八月のあの日・乙女たちの仙人越え」(編者=箱石さん)から抜粋して聞かせる。同書は脚本にも生かされた。
 
小学生キャストは遠野へ疎開した釜石国民学校学童を演じる

小学生キャストは遠野へ疎開した釜石国民学校学童を演じる

 
釜石高等女学校生徒役の釜石商工高なぎなた部員らは劇中で技も披露する

釜石高等女学校生徒役の釜石商工高なぎなた部員らは劇中で技も披露する

 
主人公の両親役(左2人)は経験豊富なキャストが務める

主人公の両親役(左2人)は経験豊富なキャストが務める

 
 キャストは若手を中心とした18人。10人が初参加で、新しい風を吹き込む。公演まで約1週間となった18日は、会場となるホールAでの初稽古。動きながらのセリフ回し、広いステージの使い方などを確認しながら練習に励んだ。
 
 劇中でなぎなたを振るう高等女学生役で出演する高橋ことさん(17)は釜石商工高なぎなた部所属。小学校以来の演劇に挑む。曽祖母から戦時中の話を聞いて育ち、「曽祖母が経験したであろうことを自分が演じるのは不思議な巡り合わせ」と特別な思いを抱く。「公演当日までに完成度を高め、戦時中でも仲間と懸命に生きていた姿を見せられたら」と意を強くする。
 
 警備兵役の八幡祐哉さん(37)は職場の先輩に誘われ初参加。「当時の軍人の振る舞いなど想像がつかない部分があるが、やるからにはしっかり演じ切りたい」と役作りに励む。祖父は特攻訓練を経験、祖母は製鉄所のトンネルに避難し砲撃から逃れた。「今回の出演を亡き祖父母にも報告したい。劇を通して戦争を知らない世代にも伝わるものがあれば」と願う。
 
主人公の女学生「みよ」を演じる矢浦望羽さん(中央)。初の大役に奮闘中

主人公の女学生「みよ」を演じる矢浦望羽さん(中央)。初の大役に奮闘中

 
 主人公の女学生「みよ」を演じるのは、同劇8回目の出演となる矢浦望羽さん(17)。初の大役、戦争というテーマに難しさを感じ、「初めての壁にぶち当たっている」と頭を悩ます。みよは「思ったことをはっきり言うタイプ。感情表現もストレート」。場面ごとに異なる感情の表し方を模索し、努力を重ねる。ロシアとウクライナの戦闘は今なお続き、大勢の一般市民が犠牲になっている。「戦争はだめなもの。一生懸命演じることで、何らかのメッセージを受け取ってもらえたら」と矢浦さん。
 
 釜石市民劇場が戦争を題材にするのは、戦後60年で公演した2005年の作品以来。今回脚本を手がけた同実行委の久保秀俊会長(74)は「戦時下で抑圧されながらも、子どもたちは不平不満を言わずに過ごしていたのだろう。劇中では心の底で思っていたであろう本音も会話に盛り込んだ」と話す。当時、高等女学生だった人たちは多くが90歳以上。記憶のある世代の生の声を聞ける機会は今後さらに減っていく。「今だから伝えねば」と久保会長。
 
キャストの稽古を見守る久保秀俊会長(右側写真手前)

キャストの稽古を見守る久保秀俊会長(右側写真手前)

 
公演本番へ向け、役作りに集中。熱のこもった稽古が続く

公演本番へ向け、役作りに集中。熱のこもった稽古が続く

 
 26日は午前10時半、午後2時半の2回公演。前売り券は1000円(中学生以下500円)、当日券は1300円(同700円)。チケットは市民ホールTETTOなどで販売中。