タグ別アーカイブ: 文化・教育

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知って楽しい「三陸ジオパーク」 釜石の子どもたちが郷土の魅力再発見!!

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自分で作ったアンモナイトのレプリカを手に笑顔を見せる親子

 
 ジオパークの観点から郷土の自然や歴史を知るイベント「釜石ふしぎ発見~化石発掘?!ジオの魅力大調査~」が6日、釜石市大平町の市立鉄の歴史館で開かれた。市商工観光課、世界遺産課が共催する夏休み自由研究応援企画の第2弾。市内の小学生と保護者18人が参加し、講話やものづくりを通して三陸ジオパークの面白さを体感した。
 
 青森県八戸市から宮城県気仙沼市まで約220キロに及ぶ三陸ジオパークは国内最大の面積を誇る。2013年に日本ジオパークとして認定された。釜石市のジオサイト(見どころ)は釜石鉱山、橋野鉄鉱山、千丈ヶ滝、根浜海岸、箱崎半島千畳敷、両石の明治、昭和の津波記念碑―の6つ。約5億年前の地球活動から始まる三陸の歴史、長い年月をかけて形成された地形や景観、地下資源など多様な遺産に触れることが出来る。
 
最初に市商工観光課の職員から三陸ジオパークについて学んだ

最初に市商工観光課の職員から三陸ジオパークについて学んだ

 
 イベントでは市商工観光課の佐々木収主事が同ジオパークについて解説。▽旧釜石鉱山事務所にある「ナウマンの地質図」は三陸の成り立ちを物語る重要な資料であること▽両石町水海川の上流にある「千丈ヶ滝」周辺では、3~4億年前に赤道近くで生えていた植物“リンボク”の化石が見つかっていること―などを挙げ、参加者は太古の地球活動に思いをはせた。
 
 講話の後は順番に3つのメニューを体験。熱湯で軟らかくなるゴム素材を型に詰めて作るアンモナイトのレプリカ製作、VR(仮想現実)ゴーグルでの三陸ジオサイト巡り、手製の鋳型に溶かしたスズを流し込んでキーホルダーを作る鋳造体験と、ジオの一端に触れる時間を楽しんだ。
 
VRゴーグルで三陸のジオサイトを体験する子どもたち(右側)

VRゴーグルで三陸のジオサイトを体験する子どもたち(右側)

 
職員に教わりながら、キーホルダーの鋳型作り

職員に教わりながら、キーホルダーの鋳型作り

 
230度に熱して溶かしたスズを鋳型に流し込む様子を見学

230度に熱して溶かしたスズを鋳型に流し込む様子を見学

 
 小佐野小3年の千葉栞奈さんは「自分の住んでいるまちに(ジオに関わる)いろいろな場所があることを初めて知り、びっくりした。海のところ(千畳敷)に行ってみたい」と好奇心をそそられた様子。甲子小5年の髙橋龍之助君は「釜石にもジオサイトがあるのはうれしい。VRでいろいろな所を詳しく見ることができた。化石にも興味がある」と学びを深めた。
 
 参加者が体験した三陸ジオパークのVRゴーグルは、鵜住居町の根浜海岸レストハウスでも体験できる。施設内には三陸ジオを紹介する展示物もある。鉄の歴史館のキーホルダーを作る鋳造体験は事前予約が必要。問い合わせは同館(電話0193・24・2211)へ。
 
鋳型に流したスズは5分ほどで固まり、左下のようなきれいな形になる

鋳型に流したスズは5分ほどで固まり、左下のようなきれいな形になる

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釜石と青森の中学生、相互訪問 学び・友情を深め合う 平和と防災学習をテーマに

交流を楽しむ釜石市と青森市の中学生=9日、鵜住居町・うのすまいトモス

交流を楽しむ釜石市と青森市の中学生=9日、鵜住居町・うのすまいトモス

 
 夏休み期間を利用し、釜石市と青森市の中学生が相互訪問する交流事業が行われた。太平洋戦争末期に艦砲射撃や空襲で市街地が壊滅的な被害を受けた両市。それぞれ市内5校の1年生10人を派遣して「平和と防災学習」をテーマに学びを深め合った。
 
 終戦間近の1945(昭和20)年、釜石市は7月14日と8月9日の2度にわたって米英連合軍による艦砲射撃を受け、市街地は焼け野原になり、市民ら780人以上が犠牲になった。青森市は7月28日夜、米軍のB29爆撃機の空襲を受け、市中心部は焦土化し、死者は1000人を超えた。
 

青森での活動を報告

 
野田市長に青森市での活動を報告した釜石の中学生ら=3日、只越町・釜石市役所

野田市長に青森市での活動を報告した釜石の中学生ら=3日、只越町・釜石市役所

 
 釜石の生徒たちは7月27~29日の日程で青森を訪れ、現地の中学生と交流。三内地区の防災訓練や平和祈念式典に参加したり、戦災遺構をめぐって歴史に触れた。現地での活動を報告するため、8月3日に釜石市役所の野田武則市長を訪ねた。
 
 大平中の小野鳳(ふう)君は「痛々しい戦争の遺構を見た。平和の大切さだけでなく、戦争の愚かさも伝えなければ」と意識を高めた。釜石中の菊池恋捺(れな)さんは、新型コロナウイルスの感染防止を踏まえた避難所運営訓練が印象に残った。防護服を着用した状態での作業の大変さを体感。妊婦の居場所をつくるなど避難者が快適に過ごせるよう工夫していることに感心し、「避難後の生活も考えた訓練は参考になる。学んだことを各校で共有したい」と話した。世界文化遺産の三内丸山遺跡を見学したワクワク感を伝える生徒もいた。
 
 野田市長は「さまざまな経験をし、成長を感じる。他のまちを見ることで学び得たことを周りの人に伝えてほしい」と期待した。
 

戦争の歴史と防災の取り組みを次代に

  
戦争体験者の秋元厚子さん(左)に質問を投げかける青森市の中学生=9日、只越町・釜石市役所

戦争体験者の秋元厚子さん(左)に質問を投げかける青森市の中学生=9日、只越町・釜石市役所

  
 青森の中学生らは8月8~10日の3日間釜石に滞在。9日、青森に派遣された生徒たちと再会し、さまざまな交流活動で友好を深めた。鵜住居町の「いのちをつなぐ未来館」では震災当時の被災状況や児童生徒らの避難行動についてガイドから話を聞いた。戦没者追悼式に参加した後、市郷土資料館を見学。市役所では、釜石ユネスコ協会顧問などを務める唐丹町の秋元厚子さん(87)の戦争体験に耳を傾けた。
 
 浪打中の木村華乃さんは、唐丹村立国民小学校5年生の時に艦砲射撃を経験した秋元さんが紹介したユネスコ憲章前文にある「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」との言葉が強く印象に残った。世界では紛争や内戦が続く国や地域が絶えず、平和を保つ重要性を再認識。「人は個性豊か。個性を認め合うこと、思いやりを持つことが大切だ」とかみしめた。
 
震災の被害状況や児童生徒の避難行動を学ぶ青森の中学生ら=9日、鵜住居町・いのちをつなぐ未来館

震災の被害状況や児童生徒の避難行動を学ぶ青森の中学生ら=9日、鵜住居町・いのちをつなぐ未来館

 
 防災に関しては、備えの大切さを実感した人が多く、浪岡中の齊藤航平君も「自然災害はいつか起きてしまう。いつ起きても対応できるようにし、被害を少なくしたい。学んだことをどう次に伝えるか、どんな行動につなげるか、みんなで考えたい」と前を向いた。
  
未来館の見学で感じたことを伝え合い、交流を深めた

未来館の見学で感じたことを伝え合い、交流を深めた

  
 青森市では2018年から平和・防災学習事業として釜石に中学生を派遣。戦没者追悼式への参加や同年代の生徒と交流しながら、平和の尊さや防災について学んできた。コロナ禍で20、21年は実施を見送った。一方の釜石側も貴重な学びの機会になると、今年初めて子どもたちを派遣。今後隔年で青森を訪問する予定だ。
 

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「届け!ぼうさいのたね」全児童津波逃れた釜石小・卒業生ら 命守る教育、後輩へつなぐ

篠原優斗さん(手前右)と避難先ルートを歩く児童たち

篠原優斗さん(手前右)と避難先ルートを歩く児童たち

 
 東日本大震災時、学校管理下になかったものの、184人の児童全員が無事だった釜石小の事例から、生きることや命を守るために必要な力について考える小学生対象の学習会が3日、釜石市内で行われた。大津波を生き抜いた同校の卒業生と当時の教職員有志でつくる「2011team(チーム)釜石小ぼうさい」が主催。同校の防災教育や元児童の証言などをまとめた伝承本「このたねとばそ」も製作・配布し、震災後に生まれた子どもたちの心に新たな種をまいた。
 
 学習会には市内の小学5、6年生10人や教育関係者らが参加。同校卒業生で只越町の地方公務員篠原優斗さん(24)の案内で、震災当時の避難経路をたどる体験からスタートした。「もしも今、大地震が起きたらどう行動しますか」。篠原さんはそんな問い掛けをし、復興住宅や雨水ポンプ場が近くにある同町地内を歩き始めた。
  
あの日の避難行動を説明。緩やかな坂道の先に旧釜石小跡地がある

あの日の避難行動を説明。緩やかな坂道の先に旧釜石小跡地がある

  
 6年生だった篠原さんはあの日、同級生やその弟ら十数人と友達の家で遊んでいた。地震後に大津波警報が発令されると、すぐに避難することにしたが、避難先に迷った。距離は近いが海側に向かう「避難道路」か、より海から離れるが緩やかな坂道が続く「旧釜石小跡地」(天神町)か。みんなで話し合い、坂道に向かって走り出した―。
 
 信号機が止まり混乱するまちの様子や選択時の気持ちなどを伝えた篠原さん。上り坂に差し掛かったところで、「走ってみよう」と提案。あの日の避難行動を再現した。旧釜石小跡地に着くと、「走るだけでも大変だよね。でもね…」と一呼吸。低学年の児童を先に走らせ、遅れそうな子はおんぶしたりして高学年の子が手助けしたことを紹介し、「いざという時にも役立つ人とのつながりを大切にしてほしい」と呼び掛けた。
 
青葉ビルで行われたパネルディスカッション。中央が内金崎愛海さん

青葉ビルで行われたパネルディスカッション。中央が内金崎愛海さん

 
 大町の青葉ビルに移動し、パネルディスカッション。パネラーに、岩手医大医学部2年の内金崎愛海(あみ)さん(20)=盛岡市=が加わった。震災当時は釜石小3年生。自宅に一緒にいた祖父母は過去の経験から逃げようとせず、泣きながら必死に避難を促した。結果、自分の命を守り、家族の命も救った。「弱虫で泣き虫だったけれど、説得できたのはきっと学校での防災教育があったから。経験はなくても『50センチの波でも人は流される』ことを知っていたし、映像で見た津波の恐ろしさも頭にあった」と振り返った。
  
災害への備えや生きることについて話し合う子どもたち

災害への備えや生きることについて話し合う子どもたち

  
 先輩2人の経験を聞いた後、児童たちはグループワークに取り組んだ。避難の判断ができた理由や必要な力、自分たちにできることを話し合った。「普段の生活や行動の積み重ねが、いざという時に力になる」「避難訓練は本気でやる」など備えの大切さを再認識した。
 
 釜石小6年の井上柊真(とうま)君は1年ほど前に八幡平市から転校してきたばかりで、釜石の歴史や防災の取り組みを知りたいと参加。「家にいる時でも即時に対応し、避難ができてすごい。相手を信頼する大切さを知ることができた。避難の方法は災害の種類や地域によって違いがあるみたい。もっと勉強したい」と刺激を受けた。双葉小5年の川上仁愛(にちか)さんは「大人を説得する勇気に感動した。命は自分で守らなきゃいけない。学んだことを整理して、友達や家族に伝えたい」と背筋を伸ばした。
 

防災教育伝承本「このたねとばそ」 証言や職員対応まとめる

 
伝承本「このたねとばそ」を紹介する加藤孔子さん

伝承本「このたねとばそ」を紹介する加藤孔子さん

  
 チーム釜石小の代表を務めるのは、震災発生時に釜石小校長だった加藤孔子(こうこ)さん(64)=盛岡市、岩手大学教職大学院特命教授。11年余りの時を経て人々の記憶から薄れ始め、学校では経験をしていない世代が増える中、風化を防ぎ、教訓を伝えようと学習会を企画した。
  
 本は同校の防災教育を未来へ、全国へ発信しようと製作した。7月28日に発刊。A4判、83ページで、▽津波防災安全マップ作りや下校時避難訓練など防災教育の実践▽あの日、自己判断で避難した児童の証言▽震災後の学校再開に奔走した教職員の対応-などの詳細を記録する。学習会で経験を伝えた篠原さん、内金崎さんも執筆。加藤さんが名誉館長を務める鵜住居町の「いのちをつなぐ未来館」で50冊を無料配布している。
  
 学習会の様子を見守った加藤さんは「震災を体験した先輩たちの声という種を飛ばすことができた」と目を細める。学校の管理下になかった子どもたちが自分たちで判断、行動し、全員が各自で命を守った同校の防災教育は、他県の教育関係者からも注目を集めるが、「まねるだけでは形骸化してしまう」との懸念も。「地域、子どもたちに合わせたものをつくらなければいけない。釜小の実践や提言、あの時の思いを種として改めて届けたい。各地で新たな防災教育の芽が出て花を咲かせてほしい」と願う。
  
いつどこでどんな災害が起こっても、自分なりの避難行動をとって―と願いを込め、体験を発信する

いつどこでどんな災害が起こっても、自分なりの避難行動をとって―と願いを込め、体験を発信する

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太古の地球が生んだ鉱石に興味津々 釜石鉱山で親子らが“宝”探し!

鉱山(やま)の宝探し=釜石鉱山、7月30日

鉱山(やま)の宝探し=釜石鉱山、7月30日

 
 近代製鉄発祥の地「釜石鉱山」を楽しく学ぶイベントが7月30日、釜石市甲子町大橋の同鉱山周辺で開かれた。同市が主催する夏休み恒例の特別企画で、その名も「鉱山(やま)の宝探し」。市内の親子ら16人が参加し、日本最大の鉄鉱山として栄えた同鉱山の歴史や産出される鉱物について理解を深めた。
 
 関連資料を展示公開している旧釜石鉱山事務所で、市世界遺産課の森一欽課長補佐が鉱山の歴史を解説。釜石周辺は太古の大陸移動で別々の島が合体し隆起したことで険しい山ができ、マグマの上昇による熱変成で多様な岩石が生まれたという。同鉱山は1727(享保12)年に発見。後に南部藩士大島高任は同地に洋式高炉を築き、1858(安政4)年、日本初となる鉄鉱石を原料とした連続出銑に成功した。
 
 1880(明治13)年、現鈴子町に官営製鉄所が操業すると鉄道が開通。機関車で鉄鉱石を運んだ。製鉄所が民間経営となった後も供給は続き、“鉄のまち釜石”の繁栄を支えた。同鉱山からは銅鉱石、石灰石の採掘も行われたが、2000(平成12)年を最後に採掘を休止している。
 
旧釜石鉱山事務所鉱物室で同鉱山から採れる石を学ぶ参加者

旧釜石鉱山事務所鉱物室で同鉱山から採れる石を学ぶ参加者

 
 イベントでは座学に続き鉱物室を見学。同鉱山で見られる石を教えてもらった後、屋外のずり捨て場で鉱石探しに挑戦した。参加者は目を凝らし、色や形状、輝きなどを観察。手元の表と見比べ、名称を確認した。鉄鉱石は磁石を近づけて、引き寄せられるかどうかを見た。表面だけでは判断しにくい石は、職員にハンマーで割ってもらい内部を確認した。
 
積まれた石の山に目を凝らし“お宝”を探す

積まれた石の山に目を凝らし“お宝”を探す

 
「鉱石はどれかな?」じっくり見極めて…

「鉱石はどれかな?」じっくり見極めて…

 
お目当ての石を見つけようと子どもも大人も夢中

お目当ての石を見つけようと子どもも大人も夢中

 
 佐野海翔君(甲子小4年)は「鉱石の名前を覚えたい」と初めて参加。「鉄鉱石の他にもいろいろな石が見つかった。こんなに種類があるのはすごい」と驚いた様子。集めた石をどうするか聞くと、「磨いてピカピカにしたい」と目を輝かせた。
 
 菊池咲里さん(小佐野小1年)は、家族と訪れた鉄の歴史館で釜石の鉄づくりに興味を持ち、「(現地に)行ってみたい」と同イベントに参加。石で重くなった袋を両手に抱え、「いっぱい拾えて楽しかった。お家に持って帰って飾る」とにっこり。母孝子さんは「大人も楽しめるイベント。こういう体験はすごく貴重。市がいろいろ企画してくれるのはありがたい」と喜んだ。
 
見つけた「ざくろ石」を手に笑顔を輝かせる子ども。左下は「黄銅鉱」

見つけた「ざくろ石」を手に笑顔を輝かせる子ども。左下は「黄銅鉱」

 
 30分ほどの探索で、鉄鉱石、銅鉱石、石灰石のほか、ガーネットの結晶が見られる柘榴(ざくろ)石、黄緑がかった緑簾(りょくれん)石なども見つかった。集めた石は仕切りを施した箱に収め、名称を添えてオリジナルの鉱物標本を完成させた。
 
 参加者は同事務所裏の高台にあった小・中学校「釜石鉱山学園」跡地や山神社なども巡り、多くの労働者やその家族が暮らした往年の時代に思いをはせた。
 
ズリ堆積場(左上)と沢水を流す人工滝(右後)を背景に記念撮影

ズリ堆積場(左上)と沢水を流す人工滝(右後)を背景に記念撮影

 
釜石鉱山学園跡地から臨む堆積場。跡地案内看板の校舎写真(左下)と比べると山の谷間を埋め立てたのが分かる

釜石鉱山学園跡地から臨む堆積場。跡地案内看板の校舎写真(左下)と比べると山の谷間を埋め立てたのが分かる

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晴れ舞台へ決意 全国に挑む釜石市内の児童生徒ら市長表敬 「悔いが残らないよう頑張る」

全国、東北大会での活躍を誓う釜石市内の小中高生

全国、東北大会での活躍を誓う釜石市内の小中高生

  
 スポーツの全国大会や東北大会に出場する釜石市内の小中学生、高校生らは7月29日、市役所を訪れ、野田武則市長らに晴れの舞台での活躍を誓った。野田市長は「懸命に取り組んできた分、得られものがある。持っている力を出し切って悔いのない大会に」と激励した。
  

インターハイ、高総祭、定通制大会へ釜石高生が意気込み

  
野田市長(左)に大会出場を報告した釜石高の選手代表ら

野田市長(左)に大会出場を報告した釜石高の選手代表ら

  
 四国4県を中心に開催中の2022年度全国高校総合体育大会(インターハイ)、東京都で行われる全国高等学校総合文化祭(高総祭)や全国高校定時制通信制体育大会に釜石高から9人が出場する。
   
 インターハイは空手道男子団体組手に7人が挑む。主将の佐藤蓮太君、岩間武蔵君(ともに3年)は個人組手にも出場。佐藤君は「練習してきたことを最大限出し切ってくる」、岩間君は「高校生活最後の大会。悔いが残らないよう全力を尽くす」と意欲を見せた。
  
 高総祭の弁論部門には千代川陽琉(はる)さん(2年)が参加。「『ガラスの壁』の向こうへ」と題し、ジェンダー平等への思いを発信する。「順位にこだわらず、自分の声を届けてきたい」と胸を張った。
  
 同校定時制の佐藤峻平君(1年)はバドミントン県代表選手団の一員として、個人戦に臨む。「これまで応援してくれた方の期待に応えられるようベストを尽くしたい」と抱負を語った。
 
全国大会に臨む決意を伝えた高校生を野田市長が激励

全国大会に臨む決意を伝えた高校生を野田市長が激励

   
佐藤君、岩間君を除いた空手道の出場者は次の通り。
▽男子団体組手=松田郷佑、坂本嘉之(2年)倉澤威琉、菊池遼誇、岩間瑛心(1年)
▽男子個人形=坂本嘉之
  

釜石、甲子中生は東北大会へ 全国切符を決めた釜石小児童の報告も

  
県大会の成績を手に市役所を訪れた小中学生

県大会の成績を手に市役所を訪れた小中学生

  
 東北各地で開かれる東北中学校体育大会には4競技に釜石中、甲子中から計25人が参加する。釜石中のバスケットボール男子(15人)は、県中総体の決勝で石鳥谷(花巻)と対戦し、延長までもつれる激闘を制して初優勝。キャプテンの鈴木琥太郎君(3年)は「感謝の気持ちを大事にしながら戦い、勝ちにいく」、小澤歩武君(同)は「目標のベスト4達成に向け頑張る」と闘志を燃やした。
  
 釜石中からは剣道男子団体に8人が参加。主将の山陰皇騎(おうき)君(同)は「応援されるチームを目標に最後まで全力でプレーする」と決意を語った。個人戦にも出る佐藤謙眞君(同)は既に全国切符を獲得。小学生の時にも全国大会に出場したが、1回戦で敗退していて、「今度は1回勝って、いい報告ができるようにしたい」と意気込む。柔道男子個人66キロ級に臨む佐々木孝一郎君(2年)は「初めての東北大会。負けないよう頑張る」と気合を入れた。
  
 甲子中の白岩優一朗君(2年)は水泳男子50メートル・100メートル自由形に出場。「練習は大変だけど、タイムが伸びるとうれしい。自己ベストで決勝に残れるよう頑張りたい」と背筋を伸ばした。
  
 7月に開催された県小学校陸上競技交流大会の男子5年100メートルで優勝した釜石小の志士富輝(しととみ・ひかる)君は、8月下旬に神奈川県で開かれる全国小学生陸上競技交流会への出場を報告。「ベスト8に残りたい」と目標を設定した。
  
大会出場に向けた意気込みを伝えた小中学生

大会出場に向けた意気込みを伝えた小中学生

  
出場報告に訪れた選手を除く東北大会参加者は次の通り。
▽バスケットボール=田村優空、小川裕輝、大瀧路羽、長谷川寛太、藤原大成、井上凰、小山多聞、押切康大(3年)川村惺雅、永澤泰雅、小原大空、川口竜馬、堀切奏汰(2年)
▽剣道=岩﨑暖、藤原悠生、宮本一輝(3年)菊池一颯(2年)山陰宗真、平松颯介(1年)

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中学生パワーで地域を元気に! 釜石東3年有志 朝市で販売活動&ソーラン

販売活動をした朝市でソーランを披露する釜石東中の3年生=鵜住居町

販売活動をした朝市でソーランを披露する釜石東中の3年生=鵜住居町

 
 釜石東中(佃拓生校長、生徒98人)の3年生35人は24日、学校近くの三陸鉄道鵜住居駅前で行われた「うのすまい・トモス朝市」に参加。海産物の販売や“東中ソーラン”の披露で、地域に活気をもたらした。総合的な学習の一環で本年度初の試み。積極的に取り組む生徒らの姿に来場者も笑顔を広げ、心温まる交流を繰り広げた。
 
 販売活動を行ったのは、NPOおはこざき市民会議(佐藤啓太理事長、箱崎町)のブース。生徒自らが芯抜き、袋詰めした塩蔵ワカメやホタテ焼き、ホヤの串焼きなどを販売した。この日に向け生徒らは、オリジナルの商品ラベル、販促ポップ、購入者へのメッセージカードとワカメ料理レシピを作成。販売開始前はテント設営から携わり、開店準備を整えた。
 
生徒らは手書きのワカメ料理レシピ、メッセージカードなどを作成した

生徒らは手書きのワカメ料理レシピ、メッセージカードなどを作成した

 
ホタテやホヤの炭火焼き担当は暑さと戦いながら懸命に準備

ホタテやホヤの炭火焼き担当は暑さと戦いながら懸命に準備

 
テントには自分たちで作った販促ポップを掲示

テントには自分たちで作った販促ポップを掲示

 
 午前9時、いよいよ販売開始。客の呼び込み、会計、炭火焼きなど作業を分担して取り組んだ。生徒の一部は、同時開催された「かまいし軽トラ市」のピーマン詰め放題コーナーをお手伝い。それぞれの役割をしっかり果たした。
 
「お買い上げありがとうございます!」

「お買い上げありがとうございます!」

 
会場内に出向いて、お客様にワカメ販売をPR!

会場内に出向いて、お客様にワカメ販売をPR!

 
生徒たちの呼びかけに多くの人たちが立ち寄った

生徒たちの呼びかけに多くの人たちが立ち寄った

 
 会場内では東中ソーランも披露。背中に「東魂」と書かれたそろいのはんてんを身にまとい、息の合ったパフォーマンスで来場者を楽しませた。会場を訪れた鵜住居町の70代女性は地域を盛り上げようと奮闘する生徒らの姿に「頼もしいねぇ~。ソーランも初めて見たがとても上手。子どもたちが頑張っているのを見るとこちらも元気になります」と顔をほころばせた。
 

 

 

 
 今回の取り組みは、地域貢献活動を考える中で生徒からアイデアを募って実現。昨年度、漁業体験学習で世話になった同NPOへの恩返しも兼ねて、販売活動を行うことになった。仕事に大切な心構えを学ぶとともに、地場産品への愛着、地域の一員としての自覚を高める狙いがある。
 
 佐々木里夏さんは「祖母からワカメ料理を教えてもらい、みんなでレシピにまとめた。お客さんを呼び込むのは難しかったが、買ってもらった時のうれしさは格別。(自分たちで生産した物を販売するのは)やりがいのある仕事だと思った」と実感を込めた。黒澤強優君は「コロナ禍でイベントが少なくなっていた。こういう場は地域のにぎわいにつながる。地元の産業を学ぶ機会にもなり、普段はできない販売体験も楽しかった」と声を弾ませた。
 
 2時間の朝市で生徒らが売り上げたワカメは59袋。最初に用意した分が1時間ほどで完売し、急きょ商品を補充するほどの盛況ぶりだった。

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師走恒例「かまいしの第九」へ再始動 3年ぶり開催、合唱メンバー「熱い歌声を」

年末の演奏会へ向けて合唱練習を始めた「かまいし第九の会」

年末の演奏会へ向けて合唱練習を始めた「かまいし第九の会」

  
 師走の釜石市を彩る響き、再び-。市民らがベートーベンの交響曲第9番(第九)を歌う「かまいしの第九」が12月11日、大町の市民ホールTETTOで3年ぶりに催される。新型コロナウイルス感染症の影響で中止が続いていたが、再び歴史を刻むべく、23日から「かまいし第九」実行委員会による合唱練習がスタート。合唱メンバーらは、一人でも多くの人に「熱い歌声」を届けようと練習に力を入れる。
   
 7月23日、小佐野コミュニティ会館(小佐野町)で「かまいし第九の会」の発会式があり、約30人が参加。実行委の川向修一会長(70)は「コロナの第7波が急拡大する中、荒波に向かって船をこぎ出す形となった。収束を願いつつ、とにかくスタートし、演奏会ができれば成功だと思う。12月に向かって頑張りましょう」と呼び掛けた。
  
小原さん(左)の指導で、マスクのまま練習するメンバー 

小原さん(左)の指導で、マスクのまま練習するメンバー

   
 式後、早速練習を開始。合唱指導を担当する小原一穂さんのリードで、第九の中でも最もよく知られた「歓喜の歌」などに挑んだ。久方ぶりの練習だが、思った以上に声が出て、「皆さん、待っていたかのよう」と小原さん。再開と再会を喜ぶメンバーらに「集まった人で歌声、思いを合わせるのが合唱の最大の楽しみ。役割分担しながら自分たちの第九を表現して」などと助言した。
  
 今回は、県内在住で第九を歌った経験がある人を中心に参加を呼び掛けた。野田町の石田昌玄さん(48)は15回目の参加。「2年のブランクが不安だったが、歌声を聴いたら、何十年もやってきた先輩たちの貯金があると感じた。音楽は体、心の中に残っている。コツコツと日々の練習を大事にし、みんなと一つのものを作り上げる楽しみを分かち合いたい」と熱を込める。知的な雰囲気に憧れて初参加した人も。平田の坂本和子さん(81)は「歌声がすてき。大変そうだけど、一員になれるよう挑戦したい。悔いのない人生にするために」と前向きだ。
  
練習の合間には笑顔も。みんなで歌う喜びを演奏に乗せる

練習の合間には笑顔も。みんなで歌う喜びを演奏に乗せる

   
 第九の合唱練習は主に土曜日の午後3時半~5時半、同館を使用する。合唱の定員は80人とし、8月6日まで参加申し込みを受け付ける。申し込み、問い合わせは事務局(電話090・6780・0434/メールkamaishinodaiku@yahoo.co.jp)へ。
   
 かまいしの第九は1978年に始まり、東日本大震災のあった2011年も休まず公演。19年まで42回の歴史を刻んできたが、コロナ禍が続き2年間は中止を余儀なくされた。43回目となる今年の演奏会は釜石市民ホールで、12月11日午後1時半の開演を予定する。

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美術工芸品で味わう「鉄のまち釜石」 鉄の歴史館 展覧会で各種31点公開

8月29日まで開催される絵画や鉄器などを集めた「鉄の展覧会Ⅱ」=鉄の歴史館

8月29日まで開催される絵画や鉄器などを集めた「鉄の展覧会Ⅱ」=鉄の歴史館

 
 釜石市大平町の鉄の歴史館は15日から、夏季特別企画展として「鉄の展覧会Ⅱ」を開催している。製鉄業で栄えた同市を象徴する絵画や工芸品、彫刻を見ることができるほか、釜石製鉄所の労働者の文化活動から波及した同市の絵画史などを通して、芸術文化発展の礎を知ることができる。8月29日まで行われる(火曜日休館)。
 
 同展は昨夏に続く第2弾の企画。普段は非公開の同館所蔵品と常設展示品、市郷土資料館などから借用した作品計31点を公開する。本会場の2階会議室を中心に“館内まるごと美術館”として楽しんでもらう仕掛け。
 
 絵画は17点(うち常設3)を公開。釜石製鉄所の高炉を描いた油彩作品を中心に集めた。作者は市内の絵画グループの活動でもその名を残してきた製鉄所OBなどのアマチュア画家ら。地元美術界をけん引してきた先達の貴重な作品が並ぶ。釜石で洋式高炉による連続出銑に成功した大島高任の肖像画などもある。
 
構図やタッチで趣を変える「高炉」の油彩画。作者:(左)及川久さん、(右)菅野幸夫さん

構図やタッチで趣を変える「高炉」の油彩画。作者:(左)及川久さん、(右)菅野幸夫さん

 
本会場内で最大サイズの佐々木由宣さんの作品(右)。2基の高炉が時代を物語る

本会場内で最大サイズの佐々木由宣さんの作品(右)。2基の高炉が時代を物語る

 
 釜石の絵画活動の歴史を語る上で欠かせないのが、1920(大正9)年に釜石製鉄所内で発足した「真道会」。労働者が体育・文化活動に親しむための組織で、美術部は32(昭和7)年ごろに結成。同時期、鉱山小学校でも絵画教室が始まり、46(昭和21)年の「釜石文化協会」結成へとつながっていく。戦後の芸術文化活動をリードした人たちが立ち上げた「美術集団サムディ45」や「釜石市民絵画教室」など、現在も複数のグループが精力的に活動を続ける。
 

 工芸品は釜石産の鉄で鋳造された鉄器類。大正から昭和初期の鉄瓶、火鉢、茶こぼし、花瓶が並ぶ。釜石製鉄所では明治期から鋳物造りが始まり、大正期の質の向上で用と美を兼ね備えた工芸的価値のあるものに発展した。会場では「釜石鉄山製」の銘が入ったものや、学校から受注した卒業記念品などが見られる。
 
さまざまな形、デザインが目を引く鉄瓶が並ぶ

さまざまな形、デザインが目を引く鉄瓶が並ぶ

 
 この他、92(平成4)年に釜石(平田埋立地)をメイン会場に開かれた「三陸・海の博覧会」から30周年となることを記念して、会場のデザイン画(郷土資料館所蔵)も展示されている。同博覧会は7~9月の75日間開催され、201万人が来場した。
 

三陸・海の博覧会の会場デザイン画も複数枚展示

三陸・海の博覧会の会場デザイン画も複数枚展示

 
 同館では「同じ高炉のモチーフでも見る角度や切り取り方によって受ける印象が違う。作者それぞれの表現を味わってもらえれば。この機会に釜石の美術史にも目を向けてほしい」と来館を呼び掛ける。見学時間は午前9時~午後5時まで(最終入館は午後4時まで)。

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見て触れて学ぶ!科学の楽しさ、情報通信技術がもたらす未来 釜石でまるごと体感

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人型ロボットとの対話を楽しむ親子連れ

  
 最先端の科学や情報通信技術(ICT)に触れる「いわてまるごと科学・情報館」は16日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。県内の先端技術に関わる企業や研究機関が集まる、科学・情報の文化祭といえるイベント。子どもはもちろん、大人も楽しみながら最新技術がもたらす未来社会を体感した。
   
 県内企業や研究機関など12団体が展示・体験コーナーを用意。国際リニアコライダー(ILC)計画やブラックホール、バイオテクノロジーを使った研究などをパネルで紹介したほか、病気や障害などで外出が困難な人たちの社会参画を支える分身ロボット「オリヒメ」、人型ロボット「ペッパー」、コミュニケーションロボット「ソータ」などと対話を楽しむ体験が提供された。
  
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子どもたちは分身ロボット「オリヒメ」の操作体験に夢中

 
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VRゴーグルを身に着け、仮想空間を楽しむ子どもたち

  
 仮想現実(VR)の映像技術などを用いた疑似体験も多数紹介された。来場者は、自転車に乗りながらスマートフォンを見たり操作したりする「ながらスマホ」の危険性や西和賀地区の美しい河川流域をめぐる楽しさなどを体感した。
  
 専用のVRゴーグルを装着して高さ約20メートルの鉄塔での作業を体験し、「落ちたー。リアルに怖い。ひざがガクガクする」と目を見開いていたのは大船渡市の熊谷陽向(ひなた)君(大船渡小5年)。将来の夢は「天文学者」でブラックホールに関する展示を目当てに足を運んだが、「いろんな体験ができて楽しい。プログラミングとかにも挑戦してみたい」と刺激を受けた。母あゆみさん(38)は、普段できない体験に目を輝かす愛息を見つめ「どんな夢でも応援したい」と笑みをこぼした。
  
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「深海生物のフシギ」を紹介した藤倉さん(右から2人目)

 
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深海生物の標本に子どもたちは興味津々

  
 特別セミナーとして、海洋研究開発機構(神奈川県横須賀市)の藤倉克則上席研究員が「深海にいるユニークな生き物」をテーマに講演。科学で解明してきた深海生物の生態について解説し、「まだまだ謎だらけ。変な形や巨大ということも面白い深海生物だが、生き方を知るのはもっと面白い。暗く冷たい、大きな水圧、食べ物が少ないなど人間から見たら過酷な環境で生きるためにいろいろ工夫している」と衰えない探究心を示した。「ミツクリエナガチョウチンアンコウ」「オオメンダコ」「ナギナタシロウリガイ」など日本近郊で採取した深海生物の標本なども紹介し、子どもたちの知的好奇心をくすぐった。
  
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親子でさまざまな体験を楽しんだ

  
 県や大学、民間事業者などでつくるいわてまるごと科学館実行委員会、いわてSociety5.0実行委員会が主催。これまで別々に行っていた科学技術振興の普及啓発イベント「いわてまるごと科学館」と情報通信やICT利活用の利活用促進の普及啓発イベント「いわてICTフェア」を集約した。新型コロナウイルス感染症の影響で20年は各イベントをオンライン開催、集約して実施予定だった21年は中止しており、実地での開催は3年ぶりとなった。
  
 両実行委事務局を担う県ふるさと振興部化学・情報政策室の大橋真里菜主任(デジタル推進担当)は「科学、情報通信技術がもたらす未来を体感してもらい、これからの生活を考えるきっかけにしてもらえたら。大事な技術に関わる人材の育成にもつなげたい」と期待した。

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災害対応の現場を知る!釜石商工高電気電子科 非常時につながる漁業無線 役割学ぶ

モールス信号を打ちながら震災時を振り返る東谷傳局長(右)

モールス信号を打ちながら震災時を振り返る東谷傳局長(右)

  
 東日本大震災発生時、「地域の命綱」として漁業無線が活躍した―。非常時につながる漁業無線の役割を学ぼうと、県立釜石商工高(伊東道夫校長、生徒201人)の電気電子科1年生(10人)は13日、釜石市大平町の釜石漁業用海岸局(通称・釜石漁業無線局)を見学した。釜石局は震災時に避難者を収容する一方、通信と中継機能を生かし、迅速で正確な情報発信を重ねて災害対応に貢献。東谷傳(つたえ)局長(67)は当時の緊迫した状況を振り返りながら、「通信障害がいつ起こるか分からない。あらゆる手段の想定を」と伝えた。
  
震災発生当日の無線局の対応を伝える東谷局長

震災発生当日の無線局の対応を伝える東谷局長

  
 「どう命を守るか、考えるきっかけにしてほしい」。大きな受信機が並ぶ通信室で東谷局長が講話した。当時の津波映像や釜石局が発した非常通信情報の音声記録を流し、モールス信号を打ちながら緊迫した状況を再現。「当時の電波法で、無線局同士の連絡はご法度。違法性の懸念を局員に指摘されたが、覚悟の通信だった」と振り返った。
  
 電話回線が不通となる中、国際遭難周波数を使い、千葉、茨城、青森、大船渡と連絡設定。千葉、茨城を通じて県庁との連絡手段を確保した。日没後、海抜70メートルの高台に位置する局舎には自家発電の明かりを頼りに住民らが避難。東谷局長は市内の状況を県に伝えた後、局の近くにある同校に残った生徒、教職員、住民らの名簿を確認し、他県の無線局を経由して安否情報などを県庁に送信した。
  
 1933(昭和8)年の三陸大津波の際も同様の通信が活躍したことも紹介し、「アナログの無線通信は、非常時に通信が途絶した際、その通信網を補完するために活用できる可能性がある」と強調。最近、発生した通信大手の大規模通信障害に触れ、「通信障害はいつ起こるか分からない。あらゆる手段の活用を想定し、日ごろから備えることが大切」と説いた。
 
メモを取りながら大震災の活動を学ぶ釜石商工高生

メモを取りながら大震災の活動を学ぶ釜石商工高生

  
大きな送信機が並ぶ局内も見学した

大きな送信機が並ぶ局内も見学した

  
 村上颯人君は「焦ったと思うが、しっかり情報を伝えられたのはすごい。災害時に使える無線はこれからも必要になる」と実感。震災当時は小さかったが、津波の怖さは感覚として残っているといい、「備える大切さを伝えたり、命を守るため自分たちにできることを考えたい」と意識を高めた。
  
 同校の復興教育の一環。地元で行われた災害対応について学び、地域の復興・発展を支える人材の育成を目的にする。電気や電子という専門分野に関する興味・関心、学習意欲を高めてもらう狙いも。14日には2年生(14人)が釜石局を見学した。
  
釜石漁業用海岸局の外観

釜石漁業用海岸局の外観

   
 釜石局は1929(昭和4)年に開局。釜石無線漁業協同組合が管理し、県知事と同組合の二重免許を受ける。職員は5人。主に釜石地域に所属する大型漁船(遠洋マグロ船など)40隻、小型漁船(イカ釣り船など)180隻と通信。漁船の動静確認などを毎日行っている。釜石局を示す信号符字は「JFT」。

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コロナ下、地域交流に一手 作品展示で老人ホームを元気に―あいぜんの里(釜石・平田)

あいぜんの里で開かれている小野寺浩さんの作品展「色を聴く」

あいぜんの里で開かれている小野寺浩さんの作品展「色を聴く」

 
 釜石市平田の特別養護老人ホームあいぜんの里(古川明良施設長、長期利用者50人、短期利用者20人)で、地元の美術集団「サムディ45」所属の小野寺浩(ゆたか)さん(62)=甲子町=が作品展「色を聴く」を開いている。新型コロナウイルス禍で外部との触れ合いを控えている施設利用者や職員たちに「元気を届けたい」と企画。動物や人物などの愛らしい表情を描いた色鉛筆画、パステル画約40点が並んでいる。
 
 同施設ではコロナ禍前から、利用者らの外出機会が減る冬期に「芸術で潤いを」と考え、別の絵画グループの作品展示を行ってきた。今回はサムディ事務局の橘内道子さん=平田=が、同級生の古川施設長に話を持ち掛け、実施が決まった。
 
 小野寺さんは5年ほど前、市内のパステル画教室に参加したのをきっかけに本格的に絵を描き始めた。もともと色鉛筆画に興味があったことから、画材を併用した作品づくりを開始。サムディのほか、陸前高田市や宮古市の美術団体にも所属し、精力的に制作活動を行っている。母親が別の施設を利用していて、感染症流行前には利用者に楽しんでもらおうと施設でパステル画講座を行ったことも。「世の中が落ち着いたら再開したい」と思っていたこともあり、橘内さんの提案を引き受けた。
 
施設職員と展示作業に取り組む小野寺さん(右)

施設職員と展示作業に取り組む小野寺さん(右)

 
動物や人物、静物などを描いた作品が並ぶ

動物や人物、静物などを描いた作品が並ぶ

 
 6月21日、小野寺さんが追加の作品を持ち込み、施設職員らと展示作業を進めた。窓辺でくつろぐ猫や飼い主になでられ目を細める犬などを描いた作品がお目見えし、離れた場所から作業の様子を見つめる利用者らは「まるでかわいい」「癒される」とにっこり。躍動感あふれる虎舞、凜とした舞妓(まいこ)の姿なども並び、「美術館みたいだ」と一味違う雰囲気を感じていた。
 
 「高齢者施設では塗り絵を楽しんでいる人もいて、色鉛筆はなじみがある。身近にあって気楽に描ける。好きな色を使うから、同じ絵柄でも違った作品になる」と小野寺さん。カリカリ、サラサラ、カツカツ、シャリシャリ…色や芯の太さで異なる「音を聴く」のも楽しみどころとして強調する。今回は「作品を見て会話のきっかけにしてほしい」と願う。
 
仕事の合間に美術鑑賞を楽しむ職員の姿も

仕事の合間に美術鑑賞を楽しむ職員の姿も

 
 同施設では人の出入りを制限してきたが、感染状況が落ち着く中、徐々に緩和。「外からの刺激は利用者の心身の健康に影響する」(古川施設長)といい、大型テレビを使ったインターネット中継で利用者と家族をつなぐなど工夫している。地域との交流も再開させたい考えで、その一手となるのが今回の作品展示。外部の活動を受け入れることで、利用者への刺激が増えることを期待する。
 
 ただ、外部の人との直接的な触れ合いはまだ先になりそう。今回も小野寺さんと利用者の交流や、作品鑑賞のための地域住民への告知は控えた。古川施設長は「IT技術の活用などポストコロナでできる仕掛けを作っていきたい」と思案中。橘内さんは市芸術文化協会の事務局も担っていて、「さまざまな団体の作品を四季折々展示できるようになれば。あいぜん美術館だ」と、古川施設長は夢を膨らませていた。今後、展示された作品を施設ホームページで紹介するという。
 
あいぜんの里で作品を展示している小野寺さん。近々テットでも作品展を開く

あいぜんの里で作品を展示している小野寺さん。近々テットでも作品展を開く

 
 あいぜんの里での展示は7月17日までを予定。小野寺さんの作品を見る機会はすぐにやってきて、29日からは大町の市民ホールTETTOギャラリーで楽しめる。地元のアーティストを紹介するホール主催の展示会「art at TETTO(アート アット テット)」の第5弾。「色を聴く」と題し、8月7日まで鑑賞できる。期間中の7月30日、31日にはワークショップ(有料)を実施。色鉛筆やパステル、クレヨンなど、さまざまな画材を使った塗り絵体験ができる。

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電気やエネルギーをもっと知って! 釜石・小佐野小で出前講座 東北電力

手回し発電機を使った実験に取り組む小佐野小4年生

手回し発電機を使った実験に取り組む小佐野小4年生

 
 釜石市小佐野町の小佐野小(千葉裕之校長、児童288人)の4年生66人は22日、東北電力岩手支店(近藤一英支店長)のエネルギー出前講座を受け、電気の重要性や発電の仕組みなどについて理解を深めた。
 
クイズで振り返りながら進む講座に児童は積極的に参加した

クイズで振り返りながら進む講座に児童は積極的に参加した

 
 講座はクラスごとに行い、1組(34人)の授業では同支店の社員らが、電気が家庭に届くまでの工程や発電方法のメリットとデメリットを解説した。エネルギー資源を選ぶ時のポイントは、▽安定的に手に入る▽値段が安い▽地球環境への影響が少ない(発電するときに出す二酸化炭素の量など)―ことと説明。3つ全てが当てはまる完璧な資源はなく、安定供給にはさまざまな方法(火力・水力・原子力など)を組み合わせて発電する「エネルギーミックス」という考え方が大事になると伝えた。
 
火力発電の仕組みを見せる模型に子どもたちは興味津々

火力発電の仕組みを見せる模型に子どもたちは興味津々

 
「光った」。児童たちは力を合わせて豆電球を点灯させた

「光った」。児童たちは力を合わせて豆電球を点灯させた

 
 手回し発電機を使った実験にも挑戦。高山柑菜さんは「電気をつくるのはすごく大変だった。当たり前にあるものだと思っていたけど、大切に使わないといけないと思った。知ったことを家族にも伝えて、できるだけ節約するようにしたい」と意識を高めた。
 
 日本のエネルギー自給率は約10%で、多くを輸入していることを知った梅島貴春君は、輸入先(国)が気になった様子。「電気やエネルギーのことをもう少し勉強してみたい」とうなずいた。
 
電気の力やエネルギーの大切さを伝える東北電力の出前講座

電気の力やエネルギーの大切さを伝える東北電力の出前講座

 
 講座は同支店が2019年から県内小中学校を対象に開くエネルギーチャレンジ校の一環。出前講座、発電所など施設見学、学習成果発表会・サイエンスショーを組み合わせたプログラムで、子どもたちが電気やエネルギーについて関心を持ち、考えるきっかけにしてもらうのが狙い。本年度、釜石市内では同校のほか、栗林小でも実施し、すでに講座と施設見学を終えた。一関市の新沼小も実施校に選ばれている。