タグ別アーカイブ: 文化・教育

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大正琴で懐かしのメロディー 琴城流・白百合会(釜石) 成果発表「若くあるため挑戦」

稽古の成果を披露する白百合会の「大正琴のつどい」

稽古の成果を披露する白百合会の「大正琴のつどい」

 
 釜石市の琴城流大正琴・白百合会(鈴木琴節永代表)は8日、大町の市民ホールTETTOで「大正琴のつどい」(市民芸術文化祭参加)を開き、日ごろの稽古の成果を発表した。女形舞踊を披露する尚玉泉さん、同会に練習場所を開放する日本キリスト教団新生釜石教会の牧師柳谷雄介さんが賛助出演。演奏に乗せて踊って歌うにぎやかな舞台を約100人の観客が楽しんだ。
 
観客は大正琴の演奏に合わせ踊りや歌も楽しんだ

観客は大正琴の演奏に合わせ踊りや歌も楽しんだ

 
 鈴木代表と会員5人が出演し、「北上夜曲」「南部蝉しぐれ」「上を向いて歩こう」など昭和から平成の歌謡曲など15曲を演奏した。柳谷さんや会員の北條市さんが演奏に乗せて歌う場面では、マスク越しながら観客も歌詞を口ずさみ歌声を重ねた。「津軽の花」「雪椿」「女のしぐれ」では尚さんのあでやかな舞を堪能。「釜石小唄」では手踊りや手拍子で演奏を盛り上げる人の姿も見られた。
  
会員は稽古の成果を発揮し息の合った演奏を披露した

会員は稽古の成果を発揮し息の合った演奏を披露した

  
はつらつとした歌声を響かせた柳谷さん(右)

はつらつとした歌声を響かせた柳谷さん(右)

 
尚さんはあでやかな舞で観客を魅了した

尚さんはあでやかな舞で観客を魅了した

  
 大渡町の佐々木かつのさん(80)は東日本大震災後の避難生活で親交を深めた友人2人と鑑賞。懐かしさがにじむような大正琴の音色、朗らかな歌声、華麗な踊りを一度に楽しんで満足な様子で、「耳と目の保養になった」と目を細めた。
  
 同会の活動は35年続く。現在の会員は70~90代の8人。月2回、同教会で稽古に励む。市内の復興住宅や各地区の生活応援センターなどで開く演奏会は新型コロナウイルスの感染状況に配慮しながら継続。つどいも欠かさず開催し、回を重ねてきた。
  
 大正琴を始めて22年目の小笠原みき子さん(72)=栗林町=は「お客さんとの距離が近くて緊張したが、手拍子などの反応があってだんだん気分が乗って楽しく演奏できた。老化で覚えは悪くなっているが、仲間がいるから続けられる。演奏会を見て興味を持ってもらえたら、うれしい。知っているような曲ばかりなので、一人でも多くの人に触れてもらえたら」と期待した。
 
演奏会を終え、充実感あふれる笑顔を見せる会員ら

演奏会を終え、充実感あふれる笑顔を見せる会員ら

  
 つどいでは会員5人に琴城流大正琴振興会本部表彰の伝達も行われた。80歳以上の永年表彰は北條さん、増田ツル子さん、川畑節さんが受賞。大正琴の普及に貢献した功労者として小笠原さん、阿部孝子さんに賞状が贈られた。
  
 鈴木代表は「35年、いろんな人に出会い、助けられた。それが何より。『若くあるためには挑戦すること』がいいと聞く。新しい曲に挑みながら、活動を続けたい。趣味や活動の場が広がるような演奏会も開いていきたい」と前を向いた。
 

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浴衣姿で茶道の稽古 釜石・表千家こども教室 秋色の月見茶会、おもてなし学ぶ

浴衣姿でお茶をいただく表千家茶道教室の子どもたち

浴衣姿でお茶をいただく表千家茶道教室の子どもたち

 
 釜石市伝統文化表千家茶道こども教室が8日、只越町集会所で行われ、受講生らが浴衣姿で参加した。十五夜の「後の月」とも呼ばれる十三夜にちなみ月見茶会を企画し、和装に親しんでもらおうとの趣向。子どもたちは、おしとやかな立ち居振る舞いを心掛けながら稽古に励んだ。
  
 同教室は表千家成和会(互野宗哲会長)を母体に実行委員会を組織し開催(文化庁の伝統文化親子教室助成事業)。19回目の今年は7月に開講。小中学生10人が、礼儀作法からお点前まで茶道の知識や技を学ぶ。新型コロナウイルス感染症の影響で8月と9月の稽古は休み、この日が2回目の勉強会となった。
 
今年2回目の稽古に臨む浴衣姿の受講生ら

今年2回目の稽古に臨む浴衣姿の受講生ら

 
 集会所には「旦坐喫茶」と書かれた掛け軸、ススキやツキミソウ、シュウメイギクなど季節の花を生けた席が用意された。講師陣を客として迎え、受講9年目の川﨑拓真君(釜石東中3年)が「立礼点前」を披露。千田愛結(あゆみ)さん(双葉小4年)、千葉結花さん(平田小5年)らはお運びでもてなしに協力した後、客側も体験した。
 
月見茶会では長年稽古に励んできた中学生がお点前を披露した

月見茶会では長年稽古に励んできた中学生がお点前を披露した

 
 継続年数や習熟度に合わせグループ分けした稽古では、ふくささばき、お茶やお菓子のいただき方、お運びなどの所作をおさらい。ほぼ完璧なお点前を披露した川﨑君は、もてなしのために準備した茶器や茶わん、茶しゃくなどの道具を「拝見」に出す所作を確認したいと講師に申し出て、向上心を見せた。
 
 受講3年目の白野真心(まみ)さん(釜石小6年)は「浴衣を着ると懐紙(かいし)とかを入れるところがあって便利。普段より歩幅が狭くなって、決められた所作で歩くことができる」と実感。指導を受けているお点前を「一人でしっかりできるようにする」のが目標だという。
 
「一服どうぞ」。所作を確認しながらお点前の稽古

「一服どうぞ」。所作を確認しながらお点前の稽古

 
習熟度別指導に生徒たちは熱心に取り組んだ

習熟度別指導に生徒たちは熱心に取り組んだ

 
 勉強会は来年1月まで月に2回程度を予定する。互野会長は「世の中は不安定でも季節は忘れずにめぐり、美しいものや喜びをもたらす。茶の世界で、秋は趣のある豊かな季節。工夫しながら一服のお茶を楽しんでもらえたら。稽古に楽しみを見いだし、茶道の心を学んでほしい」と期待する。

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釜石の音楽文化継承へ決断の一歩 「市民合唱祭」感染症対策施し3年ぶりに開催

2年の中止を経て再開された「釜石市民合唱祭」

2年の中止を経て再開された「釜石市民合唱祭」

 
 第42回釜石市民合唱祭(市、市芸術文化協会、市合唱協会主催)は2日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス感染症の影響で一昨年、昨年と開催が見送られてきたが、同市が誇る合唱文化を絶やすまいと、感染防止対策を施しての実施を決断。3年ぶりのステージが実現した。市内で活動する8団体約100人が出演し、再開を待ち望んだ観客と喜びの時間を共有した。
 
 同祭は、釜石市内で活動する合唱団体や高校音楽部が一堂に会する年1回の発表の場。市民芸術文化祭の発表部門の一つとして位置づけられる。初演は1978年12月。同ホールの前身「釜石市民文化会館」の落成を記念して開催されたのが始まりで、翌79年4月に市合唱協会が設立された。
 
 長い歴史を誇る同祭だが、感染症が原因での2年連続の中止は異例のこと。収束が見通せない中で、各団体の活動意欲を維持し、釜石の合唱の灯(ひ)をともし続けるためには発表の機会は不可欠と、同協会は開催への道を模索してきた。各団体が日々の練習から基本的な予防策を忠実に実行すること、ステージでもマスクを着用し、間隔をとって並ぶことなどを申し合わせ、開催にこぎ着けた。参加団体は3年分の思いを胸に、女声合唱や混成合唱などで美しいハーモニーを響かせた。
 
 親と子の合唱団ノイホフ・クワィアーは今年で創立45年。3月のコンサート後、44年在籍した団員が急逝するという深い悲しみを経験した。この日は3月に共に歌った「群青」「未来へ」の2曲を歌唱。小澤一郎代表(45)は「きっと会場のどこかで一緒に歌ってくれていたと思う。唯一の大先輩で、多くのことを学ばせてもらった。教えを受け継ぎ活動していきたい」と誓いを新たにした。
 
亡くなった先輩団員への思いを胸に声を合わせるノイホフ・クワィアー

亡くなった先輩団員への思いを胸に声を合わせるノイホフ・クワィアー

 
 釜石童謡を歌う会は平均年齢76歳。手話を交えた「小さな世界」と、花がテーマの曲でメドレーを聞かせた。現在、3人で活動中の釜石高音楽部は「AVE MARIA Ⅱ」をアカペラで、「パプリカ」を振り付きで発表。少ない人数で最大限の力を発揮した。昨年30周年を迎えた甲子歌う会は、地元ミュージカルで歌った「夢の街かまいし」などを披露。懐かしいまちの姿を思い起こさせるセリフの掛け合いも交え、楽しいステージを繰り広げた。
 
手話を交えた合唱を披露した釜石童謡を歌う会

手話を交えた合唱を披露した釜石童謡を歌う会

 
一人一人が持てる力を発揮した釜石高校音楽部

一人一人が持てる力を発揮した釜石高校音楽部

 
セリフを盛り込んだ舞台で楽しませた甲子歌う会

セリフを盛り込んだ舞台で楽しませた甲子歌う会

 
 大渡町の中村健勇さん(27)、真偉佳さん(26)夫妻は同祭に初めて来場。「マスクをしながらも皆さん、声がよく響いていて、きれいな歌声だった。知っている曲もあり楽しめた」と心地良い時間を堪能。コロナに負けず、頑張っている各団体に「元気をもらう。さまざまな困難の中でも活動をつないでいこうという姿勢は素晴らしい」と口をそろえた。
 
震災後に発足し、精力的に活動する鵜住居歌う会

震災後に発足し、精力的に活動する鵜住居歌う会

 
各団体の発表を楽しみ、大きな拍手を送る観客

各団体の発表を楽しみ、大きな拍手を送る観客

 
 合唱協会の柿崎昌源会長(66)は「これ以上中止が続くと、釜石の合唱そのものが消滅してしまうのではという危機感もあった。(感染症を)怖がるだけでは何も解決しない、どんな形であれやってみようと準備を進めてきた。今回やり遂げたことは、みんなの自信にもなったと思う。次につながる一歩になれば」と願った。

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栗林小3、4年生 エネルギー学習の成果発表 好奇心くすぐるサイエンスショーも

 「東北電力エネルギーチャレンジ校」として取り組んだ学習の成果を発表する栗林小の3、4年生

「東北電力エネルギーチャレンジ校」として取り組んだ学習の成果を発表する栗林小の3、4年生

 
 東北電力岩手支店(山中貞一支店長)の支援を受け、電気やエネルギーの学習を進めてきた釜石市の栗林小(八木澤江利子校長、児童33人)で9月28日、成果発表会が開かれた。5月から同学習に取り組んできた3、4年生13人が、3つのテーマでまとめ発表。自分たちの未来に関わるエネルギー問題について、他学年の児童らに分かりやすく伝えた。発表後は岩手大理工学部の高木浩一教授によるサイエンスショーもあり、科学の楽しさを体感した。
 
 同校は、同支店が取り組む本年度の「東北電力エネルギーチャレンジ校」に応募。社員によるエネルギー出前講座、同社の栗橋発電所(水力)見学から得た学びの成果を児童たちがまとめた。縦割りで作った3グループがそれぞれ、1.いろいろな発電の種類2.地球温暖化とエネルギー3.環境にやさしいエネルギー、というテーマで発表した。
 
 1グループは火力、原子力、風力、バイオマスの各発電方法と長所、短所を紹介。2グループは地球温暖化(二酸化炭素増加)の原因、温暖化が及ぼす影響、防止策について説明した。3グループは水力、太陽光発電に着目。自作したミニ発電機やソーラーカーでの実験、発電機の分解などに挑戦した様子を映像で見せた。
 
各グループがそれぞれのテーマで学習成果を発表

各グループがそれぞれのテーマで学習成果を発表

 
発電実験の映像を見せながら発表したグループも

発電実験の映像を見せながら発表したグループも

 
 限りある資源、安定的な電力確保、地球環境への負荷低減などの視点で、今後必要な施策として3つのグループが導き出した答えは「エネルギーミックス」という考え方。長所を生かし短所を補うためにさまざまな発電方法を組み合わせることが大事とし、同時に節電など自分たちができる行動も不可欠とした。
 
 実験に取り組んだ小國怜義君(4年)は「電気を作るのは大変だった。使う量を減らすなどエネルギーを大切にしていきたい。学んだことは家族にも伝える」と意欲的。学習機会をくれた東北電力の仕事にも興味をそそられた様子で、「将来、入れたら」と憧れをのぞかせた。
 
電気やエネルギーに関わる楽しい実験を見せた岩手大理工学部電気電子通信コースの高木浩一教授

電気やエネルギーに関わる楽しい実験を見せた岩手大理工学部電気電子通信コースの高木浩一教授

 
 発表会の後はお待ちかね、サイエンスショーの開演。前段で高木教授は児童たちにクイズを出しながら、エネルギーや二酸化炭素の特性について解説。日本人1人が1日に使っているエネルギーを石油の重さで表すとどのくらいか、二酸化炭素が増えすぎるとどうなるか―など具体例を紹介した。この後、マイナス190度の液体窒素を使い、空気も熱をエネルギー源に動いていることを示す実験などを行った。目の前で起こる不思議な現象に、児童らは驚きの声を上げながら見入った。
 
日本人1人が1日に使うエネルギー10キロの重さを体験する児童

日本人1人が1日に使うエネルギー10キロの重さを体験する児童

 
膨らませた風船をマイナス190度の液体窒素に入れると一瞬でこんな形に

膨らませた風船をマイナス190度の液体窒素に入れると一瞬でこんな形に

 
液体窒素に漬けたスナック菓子を口に入れた児童は思わぬ感覚にこの表情!

液体窒素に漬けたスナック菓子を口に入れた児童は思わぬ感覚にこの表情!

 
 液体窒素に浸したスナック菓子を口にした佐々木さやかさん(5年)は「アイスとも違う初めての感覚。鼻から出る空気も冷たいまま」と貴重な経験に大喜び。さまざまな実験で起こる現象に目を輝かせ、「面白いし不思議。どうしてそうなるのか仕組みも調べてみたい」と科学(理科)に対する学習意欲をかき立てられた様子。
 
 高木教授は「児童たちが水力発電をやってみて難しいと感じたように、自分で試して初めて分かることは多い。知識だけで分かった気にならず、試してみようという気持ちが大事。経験することで身になっていく」と話した。
 
しぼんだ風船はしばらくすると元通りに。児童らは不思議な現象に興味津々

しぼんだ風船はしばらくすると元通りに。児童らは不思議な現象に興味津々

 
電気エネルギーの実験に目がくぎ付け!

電気エネルギーの実験に目がくぎ付け!

 
酸素と二酸化炭素を入れた2つの風船の重さを体験

酸素と二酸化炭素を入れた2つの風船の重さを体験

 
 東北電力エネルギーチャレンジ校は岩手支店独自の取り組みで、2019年にスタート。小中学生の電気やエネルギーへの関心を引き出し、未来につなげることを目的とする。本年度は県内3小学校で実施された。参加した栗林小には同支店から教育備品としてプログラミングスイッチが寄贈された。

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たたら製鉄を体験 釜石・甲子中1年生の学習は15年目 炭にまみれながら奮闘

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炉内から不純物を取り出す「ノロ出し」と呼ばれる作業を見守る甲子中1年生=16日

 
 甲子中(柏舘秀一校長、生徒128人)の1年生45人による「鉄づくり体験」は15、16の両日、釜石市甲子町大橋の旧釜石鉱山事務所前で行われた。2クラス4班がたたら技法による製鉄に挑戦。木炭にまみれながら粗鉄(ケラ)の取り出しに成功した。生徒たちはものづくりの大変さ、力を合わせる大切さ、達成感などを味わいながら、「鉄のまち」の歴史に理解を深めた。
 
 初日は炉の構築、木炭を割る作業に取り組んだ。炉はコンクリートブロックを基盤に耐火レンガ約100個を組み上げ、湯出し口や送風管などを固定した。生徒たちは設計図と写真を基にした炉づくりに悪戦苦闘。土台などを設置せずに作業を進めてしまい、最初からやり直しする班もあった。市文化振興課文化財係の加藤幹樹主任(37)らが指導。「平面の設計図を立体にイメージして」などと助言し、生徒たちの活動を見守った。
 
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設計図を手に話し合いながら炉をつくる生徒たち=15日

 
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子どもたちの活動をそっと見守る加藤主任(後列左)=15日

 
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炉の完成を喜びつつ、炭割り作業にも精を出した=15日

 
 2日目が本格的な製鉄体験。火入れし、木炭約30キロで炉を加熱していった。釜石鉱山産の磁鉄鉱10キロ、石灰1キロを、木炭20キロと共に10回に分けて投入。時間を計り、炉内の温度を確認しながら、炭にまみれる地道な作業を続けた。昼前から不純物(ノロ)の抽出を行い、1000度以上の熱を確認。午後1時過ぎ、前後して4基の炉が解体された。全ての炉でケラが得られ、生徒たちの奮闘は報われた。
 
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鉄鉱石と石灰をまぜたもの、砕いた炭を投入する作業を10回繰り返した=16日

 
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ノロ出しし、作業が順調に進んでいることを確認した=16日

 
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熱さを感じながら炉の解体作業を見つめる生徒たち=16日

 
 B組2班リーダーの佐々木凌空(りく)君は「初めての体験だったが、みんなと力を合わせてできた。レンガは重いし、火は熱いし、この方法でつくっていた人たちのつらさが分かった。大変な中でやり切ったという達成感がすごい。感動」と目を輝かせた。
 
 A組1班リーダーの本多莉奈さんは「今の時代は機械もいろいろとあるが、大島高任は何もないところから作って本当にすごい」と感心。炉づくりで手間取ったというが、「班員をまとめ工夫と試行錯誤を重ねる経験ができた」と充実した表情。10月には文化祭があり、「みんなで協力する必要がある。スムーズに進められるよう、学びを生かしたい」と前を向いた。
 
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全ての炉で鉄の混合物「ケラ」の取り出しに成功。左下写真で白っぽく見える部分が鉄=16日

 
 同校の鉄づくり体験は、総合的学習の一環。近代製鉄発祥の地・釜石の歴史や製鉄の今昔を体験的に学ぶ。幕末に大島高任が近代製鉄技法による鉄の連続出銑に成功して150周年に当たる2008年度から始まり、今年で15年目。1年生は大島に関する講話、鉄の歴史観の見学・鋳造体験、世界遺産「橋野鉄鉱山」の見学も重ねた。一連の学習成果は文化祭「愛校祭」で発表。市などが実施する「鉄の検定」にも挑む。
 
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大島高任が洋式高炉による鉄づくりに挑んだ地で続く子どもたちの製鉄体験

 
 本年度から市内の中学校全5校の1年生が鉄づくり体験に取り組む。加藤主任は「近代製鉄発祥の地で歴史を学び、ものづくりの大変さや大切さを知ってほしい。失敗から学ぶ体験や、同じ目標に向かうチームをまとめ指示を出す人、それを支えるという体験ができる場でもあり、次世代のリーダー育成につながれば」と期待した。

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園児が描く「釜石の海」 未来への希望を表現 「海の日」絵画コンクールで7人表彰

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「海の日」絵画コンクールの入賞者、実行委関係者ら

 
 釜石市「海の日」実行委員会(会長・野田武則市長)が主催する絵画コンクールの表彰式が17日、港町のイオンタウン釜石で行われた。新型コロナウイルス感染症の影響で3年ぶりの実施。市内の教育・保育施設の園児たちが「釜石の海」をテーマに色彩豊かな作品を寄せ、入賞した7人を表彰した。入賞作を含めた全作品は同会場で19日まで展示された。
  
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「釜石の海」をテーマにした色彩豊かな作品が並んだ

  
 コンクールは海の恩恵に感謝する「海の日」の普及を目的に、写真と絵画部門で作品を募集し実施してきたが、コロナ禍で2020、21年は中止した。3年ぶりとなる今回は海に夢を持った子どもたちを育てるのを狙いに、絵画のみで開催を決定。こども園や幼稚園、保育園などに話を持ち掛け、賛同した8施設から125点が集まった。審査で金賞1点、銀賞1点、銅賞2点のほか、特別賞として市長賞、釜石海上保安部賞、釜石港湾振興協議会賞の各1点を選んだ。
  
 表彰式で、野田市長は「海の素晴らしさや怖さを共有しながら、海と共に生活していくことを小さいころか学んでほしい。海に関心を持ち、みんなで豊かな海、自然を守っていこう」とあいさつ。釜石海保の虻川浩介部長が「青いきれいな海にたくさんの生き物、船をカラフルに描いた作品ばかり。未来に残そうという希望が表現され、頼もしい」と講評した。各賞受賞者に野田市長、虻川部長らから表彰状と記念品が贈られた。
  
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野田市長から表彰を受ける小笠原叶華ちゃん

 
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入賞作品の前で記念写真を撮る子どもの姿も

  
 金賞に輝いた中妻子供の家保育園の小笠原叶華(かのか)ちゃん(6)は、海で船釣り楽しむ家族の様子を描いた。船に乗ったことがなく、「いつかやってみたい」と夢見る思いを表現。釣ってみたい魚を聞くと、「マグロ!」と元気に答えた。
  
 叶華ちゃんを除いた入賞者は次の通り(敬称略)。
▽銀賞=三浦栞乃(小佐野保育園)
▽銅賞=岩井瑠莉(同)、小池一颯(中妻子供の家保育園)
▽釜石市長賞=小笠原大智(かまいしこども園)
▽釜石海上保安部賞=櫻庭えま(同)
▽釜石港湾振興協議会賞=久保夢空瑠(中妻子供の家保育園)

 

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3年ぶり「釜石まつり」10/14~16開催 コロナ対策施し2神社合同みこし渡御

3年ぶりの開催が決まった「釜石まつり」=資料写真(2017年)

3年ぶりの開催が決まった「釜石まつり」=資料写真(2017年)

 
 釜石市の秋を彩る「釜石まつり」は10月14日から3日間、市内東部地区を中心に開催される。新型コロナウイルス感染症の影響で2020、21年は中止されたが、今年は感染症対策を施し、規模を縮小して実施する。15日に開かれた同まつり委員会(委員長=野田武則市長)事務局会議で日程が決定した。
 
 釜石まつりは、浜町の尾崎神社と桜木町の釜石製鉄所山神社の合同祭。1967(昭和42)年の市制施行30周年を機に始まり、同市の秋の一大イベントとして市民に親しまれてきた。委員会は今年、新型コロナの感染状況や、市内経済、郷土芸能の後継者育成への影響などを総合的に判断し、感染症対策をした上での実施を決めた。
 
15日に開かれた釜石まつり委員会事務局会議

15日に開かれた釜石まつり委員会事務局会議

 
 内容はほぼ例年通りだが、最大限の感染防止対策を講じる。渡御行列の参加は市内芸能団体に限定。各団体は参加人数を抑制し、マスクやフェイスガードの着用、手指や道具類の消毒を徹底する。感染対策の責任者を置き、練習参加者の2週間前からの体調確認も行う。各団体には対策費を補助する。
 
 露店は出店数を例年の3分の2程度とし、配置の見直し、出店時間の短縮などで感染リスク低減を図る。各会場ではアナウンスや立て看板などで一般来場者にも対策を呼び掛ける。芸能団体の踊り披露時には、観客との距離を確保する。
 
19年の曳き船まつりは悪天候で中止。今年は4年ぶりの開催となる=資料写真(17年)

19年の曳き船まつりは悪天候で中止。今年は4年ぶりの開催となる=資料写真(17年)

 
2神社合同みこし渡御は例年通り、市内目抜き通りを練り歩く=資料写真(17年)

2神社合同みこし渡御は例年通り、市内目抜き通りを練り歩く=資料写真(17年)

 
 3日間の日程は次の通り。
 
▽10月14日(金) 午後6時~ 尾崎神社宵宮祭(同神社)
 
▽10月15日(土) 午前10時~ 尾崎神社みこし海上渡御「曳き船まつり」(釜石港)/午後5時半~ 日本製鉄(釜石製鉄所)山神社宵宮祭(同神社)
 
▽10月16日(日) 午前8時~ 尾崎神社出御祭(同神社)/午前9時~ 日本製鉄山神社例大祭(同神社)/午前11時20分~ 両神社合同祭神事(鈴子町・釜石消防署横)/午後0時10分~ 合同みこし渡御(鈴子町→大渡町→大町→只越町→魚河岸)/午後3時半~ みこし還御式(魚市場御旅所)

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書道・山野草・煎茶道・絵画がコラボ 「秋を彩る」合同展示 異種の組み合わせで相乗効果

書と絵画、山野草の展示に茶席が加わる独特の情緒を楽しむ合同展

書と絵画、山野草の展示に茶席が加わる独特の情緒を楽しむ合同展

  
 「秋を彩る」をテーマにした書道・山野草・煎茶道・絵画の合同作品展は9~11日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。釜石書道協会(佐々木和子会長、会員約20人)、釜石草友会(古舘昭吉会長、同5人)、釜石蘭煎会(桑畑美梢会長、同約30人)、美術集団サムディ45(鈴木睦代表、同約20人)の4団体がコラボレーション。和洋、異種の組み合わせながら風趣に富んだ空間を提供し、足を運んだ市民らは「芸術の秋」を先取りした。
   
丹精込めて育てられた山野草に見入る来場者

丹精込めて育てられた山野草に見入る来場者

  
筆致勇壮、多彩な書体の力作が並んだ

筆致勇壮、多彩な書体の力作が並んだ

   
 山野草はイワショウブ、イワギボウシ、ヤブラン、サワヒヨドリなどの草花を単品、寄せ植えなどの形で約30点を展示。書道は篆書(てんしょ)、隷書、漢字仮名交じり書、甲骨文字などを額、掛け軸、びょうぶ、短冊にした約30点を並べた。
   
 コスモスなど季節の草花を散りばめた鉢物、「初秋の彩り」としたためられた書、色とりどりの花が描かれた油彩画などが飾られた茶席では、蘭煎会の会員がおもてなし。来場者は秋を感じさせる作品の数々にじっくりと見入ったり、お茶で一服の清涼感を味わったり、穏やかなひとときを過ごしていた。
  
出品者と交流しながら会場内をめぐる人も4

出品者と交流しながら会場内をめぐる人も

  
季節の草花を前に笑顔でおしゃべりを楽しんだ

季節の草花を前に笑顔でおしゃべりを楽しんだ

  
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山野草と書、油彩画を眺めながら優雅に一服

  
 書道協会と草友会は2013年から合同で作品展を開催。さらに心安らぐ鑑賞の場にしようと、15年から新たに煎茶の呈茶を加えて開いてきた。新型コロナウイルスの流行で20年と21年は中止。3年ぶりの合同展示では、同時期、同施設で個別に作品展を計画していた同集団と共演する形にした。
  
 古舘会長(78)は「秋の開催は初めてで、季節を感じて楽しんでもらえるよう花を咲かせるのが大変だった。4つの組み合わせは不安もあったが、うまく調和した。この雰囲気がいいし、見せ方、飾り方などいい勉強になる」と相乗効果を語った。新会員の加入など運営面で明るい話題もあった佐々木会長(82)は「マンネリから抜け出した展示になった。鑑賞の雰囲気作りに工夫することで、ゆっくり、じっくりと見てもらえる。コラボはいい」と効果的な発表の場の継続に期待を寄せた。
   
個性豊かな作品が並ぶ「サムディ45」の56回展

個性豊かな作品が並ぶ「サムディ45」の56回展

   
 サムディの56回展は同ホールギャラリーで行われ、日本画、洋画、切り絵、色鉛筆画、写真、工芸など幅広いジャンルの力作約60点が並んだ。地元釜石のほか、北上、仙台、鹿児島など県内外に広がる会員16人が出展。代表経験者の故菅野幸夫さん、故岩井利男さんの作品計3点も紹介した。
   
 5年ほど前から同集団に参加する平田の小笠原美津子さん(76)は浮世絵をモチーフにした刺しゅう画、ビーズを使ったモザイクアートなどを出品。病気で左半身にまひが残るが、力の入る右手一本で創作活動に励む。リハビリを兼ねているというが、「細かな作業が好き。作りたくてしょうがない」とにっこり。「こんな体でもできるんだよ」と達成感を味わえるのが制作の原動力で、作品を見てもらうことで喜びもかみしめる。
   
切り絵の体験コーナーでは創作活動の一端に触れた

切り絵の体験コーナーでは創作活動の一端に触れた

   
 同集団は講師を置かず、個々に創作活動に取り組んでいるのが特徴。事務局では「描くことが大好きな仲間、先輩方が培ってきた活動を絶やすことなく続けていくことが私たちの役割。次の世代へと引き継いでいきたい」と活動継続へ願いを込める。

釜石大槌地区中学校新人大会 バレーボール競技=10日、甲子中体育館

釜石大槌地区中学校新人戦 コロナ下初 全競技で保護者観戦解禁 選手ら雄姿披露

釜石大槌地区中学校新人大会 バレーボール競技=10日、甲子中体育館

釜石大槌地区中学校新人大会 バレーボール競技=10日、甲子中体育館

  

 2022年度釜石大槌地区中学校新人大会(同地区中学校体育連盟主催)は10日、釜石市、大槌町の各会場で8競技が行われた。新型コロナウイルス感染症の影響で6月の中総体と同様、各種制限下での大会運営が続くが、今大会は初めて全競技で保護者観戦を可能とした(人数制限はあり)。選手たちは日ごろの部活動の成果を家族に見てもらえる機会を喜び、力に変えて試合に挑んだ。

  

 少子化による生徒数の減少で、団体競技は年々、単独校での出場が難しくなっているが、3年生が引退し人数がさらに減る同大会はその状況が一層顕著に。今大会、軟式野球は3校で組んだ合同チーム同士の対戦(釜石・釜石東・大槌―大平・唐丹・甲子)となった。サッカー、バレーボール男子は参加1チームのため、地区予選はなし。剣道男子も団体戦はなく、個人戦のみ行われた。

  

 そのような中で明るい話題があったのが柔道競技。近年は釜石、大槌の2校で部活動が継続され、個人戦のみ行われてきたが、今大会で2013年以来9年ぶりとなる団体戦が復活。観戦可能となった保護者が見守る中、両校各5人で勝敗を決する試合が行われた。結果は4対1で釜石が勝利。地区予選を経ての県大会出場を決めた。

  

9年ぶりに団体戦が行われた柔道競技。選手、関係者の喜びもひとしお=釜石中格技場

9年ぶりに団体戦が行われた柔道競技。選手、関係者の喜びもひとしお=釜石中格技場

  

柔道会場は本年度中総体から保護者観戦が可能に

柔道会場は本年度中総体から保護者観戦が可能に

  

 釜石中柔道部の野嶋晏慈(あんじ)主将(2年)は「みんなで戦う団体戦は楽しい。勝てたので満足」と充実の表情。部員数が少ないことで「自分と同じ階級(60キロ級)の練習相手がいなかったりと苦労する部分もある」が、県大会に向けさらなる精進を誓う。「前回は1回戦負けで終わってしまったので、今回は2回戦に進めるよう頑張る」と意気込んだ。

  

剣道女子、白熱の個人戦。剣道競技も釜石、大槌2校のみが参加=釜石中体育館

剣道女子、白熱の個人戦。剣道競技も釜石、大槌2校のみが参加=釜石中体育館

  

 バレーボール女子は5校によるトーナメント戦が行われた。圧倒的強さを見せたのは釜石東。小学生から競技を継続する主力選手を中心に、強烈なサーブで相手チームを翻弄(ほんろう)。攻守でその実力が光った。小林夏穂主将(2年)は「新人戦に向け、サーブカットとサーブを強化してきた。スパイクの速攻もいいチャレンジができている」と自信をのぞかせた。堂々の優勝を果たし、県大会ベスト8を目標に掲げた。

  

バレーボール女子準決勝・釜石東―甲子は2-0で釜石東(青)が勝利

バレーボール女子準決勝・釜石東―甲子は2-0で釜石東(青)が勝利

  

 バドミントンは鵜住居町の市民体育館が会場。6月の中総体同競技は、3月に発生した地震の影響で同館が臨時休館中だったため、市内2中学校の体育館で男女分散開催。修繕工事が終わり今月から利用可能となったことから、会場を戻しての開催となった。参加人数が多いため、2階観客席は生徒と保護者エリアをきっちり分け、学校単位で割り当て。不要な接触を極力避け、競技の合間の換気も徹底した。

  

バドミントン競技は今月1日から利用が再開された市民体育館で実施

バドミントン競技は今月1日から利用が再開された市民体育館で実施

  

卓球男子の最終試合は全参加者が見守る中で開催

卓球男子の最終試合は全参加者が見守る中で開催

  

 釜石大槌地区の代表が出場する県大会は、前期が10月15、16日(バスケットボール、軟式野球、ソフトテニス、サッカー)、後期が11月19、20日(バレーボール、卓球、バドミントン、剣道、柔道は20日のみ)に県内各会場で開催される。

  

 今大会各競技の結果は大会成績一覧表の通り。地区予選がなかった競技の県大会出場チームは、▽サッカー/釜石東、▽バレーボール男子/釜石・吉里吉里合同、▽剣道男子/釜石。

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自分で浴衣を着る楽しみを子どもたちに 文化庁事業で釜石初開催「和装・作法教室」

小中高生を対象に初開講した「和装・作法教室」

小中高生を対象に初開講した「和装・作法教室」

 
 子どもたちを対象とした「和装・作法教室」が4日、釜石市で開講した。同市小佐野町に本部を置く三陸きもの学院(及川ナツ子学院長)が母体の同教室はまゆりの会(会長=及川学院長)が主催。文化庁の伝統文化親子教室事業の採択を受け、本年度初めて取り組む。10月まで全6回の教室で浴衣の着付けや和装時の礼儀作法などを学ぶ。
 
 小中高生を対象に受講者を募集。10人が申し込んだ。初回は会場の市民ホールTETTOで開講式が行われ、小学1~5年の6人と同会の指導者11人が顔をそろえた。及川会長(83)は「日本の伝統文化の着物の中で、一番着やすいのが浴衣。普段着のような感覚で着られる。自分なりにゆっくりと学んで」とあいさつ。受講生、指導者がそれぞれ自己紹介し、さっそく講習に入った。
 
 受講生が持参した浴衣と帯を使い、自分で着る方法を教えた。浴衣の丈は“くるぶし”ぐらい、外出時は若干長めが基本。この日は襟合わせ、ひもの使い方から帯の結び方まで一通りの流れを体験した。低学年は兵児(へこ)帯を結び、高学年は半幅帯で手軽な「文庫結び」に挑戦した。
 
マンツーマンで浴衣の着付けを教えてもらえる教室。手順を習ったら1人でも挑戦

マンツーマンで浴衣の着付けを教えてもらえる教室。手順を習ったら1人でも挑戦

 
ふわふわの“へこ帯”は子どもの浴衣姿を一層かわいらしく演出

ふわふわの“へこ帯”は子どもの浴衣姿を一層かわいらしく演出

 
高学年は「文庫結び」を体験。これを覚えれば「蝶結び」などのアレンジも可能

高学年は「文庫結び」を体験。これを覚えれば「蝶結び」などのアレンジも可能

 
 和装時の立ち居振る舞いも体験。履物の扱い、座敷での歩き方、座り方、立ち方、お辞儀の仕方を教わった。及川会長は「畳1畳を4~5歩で。背筋を伸ばして」などと声掛け。時と場合によって使い分ける3種のお辞儀「真礼・行礼・草礼」も紹介した。
 
 井上千里さん(双葉小1年)は「いつもはおばあちゃんに着せてもらう。今日やってみたら自分でも上手に着られてうれしかった」とにっこり。柏舘夕奈さん(甲子小4年)は「最初は難しかったけど、教わってうまく着られると達成感がある。最後には全部自分でできるようになって、着付けてくれていたおばあちゃんに見せたい」と希望。見守った夕奈さんの母直子さんは「真剣そのもの。教室が親子や祖母と孫との会話のきっかけにもなれば。国際交流の場で、日本の魅力の一つとして着物や浴衣の紹介ができるような人になってほしい」と期待した。
 
「うまくできたかな?」初めて結んだ帯の様子を指導者とチェック

「うまくできたかな?」初めて結んだ帯の様子を指導者とチェック

 
教室を主催した、はまゆりの会の及川ナツ子会長(右)。学院生らと子どもたちの指導にあたる

教室を主催した、はまゆりの会の及川ナツ子会長(右)。学院生らと子どもたちの指導にあたる

 
 教室ではこの後、浴衣の着付けや礼法の実践を繰り返しながら着物の知識なども学ぶ予定。最終の10月30日には発表会を行う。及川会長は「子どもでも思ったよりできていた」と初回の手応えを実感。今後に向け「帯もいろいろな結び方があるので、楽しみながら学んでくれたら。お辞儀の仕方もぜひ覚えてほしい。回数を重ねることで着物に興味を持ってもらいたい」と願った。
 
和装時の歩き方を学ぶ受講生。最後の発表会も楽しみ!

和装時の歩き方を学ぶ受講生。最後の発表会も楽しみ!

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コロナ下でも「やりたい」を実現 釜石高で学校祭 生徒ら、青春の思い出刻む

文化祭を楽しむ釜石高の生徒ら=2日

文化祭を楽しむ釜石高の生徒ら=2日

 
 県立釜石高(青木裕信校長、全日制422人、定時制12人)の「釜高祭」は2、3日、釜石市甲子町の同校で開かれた。釜石南と釜石北の両校の統合から15回目の学校祭。新型コロナウイルス感染症の影響が続き、3年連続で一般公開は見送った。制約が多い中でも「我等(われら)青春謳歌(おうか)隊」をテーマに、できる対策をとって生徒たちの「やりたいこと」を実現。催しやステージ発表で団結を示して特別な思い出を刻んだ。
 
 同校では、感染症の流行で行事が規模縮小になったり部活動の大会が中止になったりと多くのことが制限されてきた。特に3年生は入学時からコロナ禍で過ごし、一番楽しい思い出づくりとなるはずの修学旅行が延期の末、中止された。同祭実行委員長の菊池瑞穂さん(3年)は「高校生は青春をもっとも楽しめる時期。青春を謳歌したい。制約はあるが、思い出をつくる場面、やりたいことは自分たちの手で実現させる」と準備。市内の感染状況を踏まえ非公開としたが、ステージ発表などはユーチューブでライブ配信し、保護者らに校内の雰囲気をアピールした。
  
化学の実験道具でスライム作りに挑む女子生徒=2日

化学の実験道具でスライム作りに挑む女子生徒=2日

 
男子生徒は対戦ゲームに熱中した=2日

男子生徒は対戦ゲームに熱中した=2日

 
模擬店担当の3年生は調理に大忙し=2日

模擬店担当の3年生は調理に大忙し=2日

  
 初日は午後から各クラスの出し物を見て回った。1年生は段ボールで作った迷路やシューティングゲームなどの遊びを企画し、2年生はお化け屋敷を運営。3年生はフライドポテトやチョコバナナなどを売る模擬店で楽しい1日を演出した。文科系クラブは作品展示で活動成果を発表。文部科学省の指定を受けるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業の探究活動について、グループ単位で研究成果をまとめたポスターも紹介された。
  
装飾フォトスポットで撮影を楽しむ生徒=2日

装飾フォトスポットで撮影を楽しむ生徒=2日

 
知的好奇心が光る探究活動の成果を紹介=2日

知的好奇心が光る探究活動の成果を紹介=2日

 
 藤井魁都君(1年)は「親とかに見てもらえないのは残念だけど、中止せずに開催してもらい、うれしい。先輩の活動を見て、いいところを取り入れて、もっといい企画を作り上げられるようにしたい」と刺激を受けた。
  
バンド演奏などで文化祭を盛り上げた=3日

バンド演奏などで文化祭を盛り上げた=3日

  
 ステージ発表は3日に実施。体育館で有志によるダンスやバンド演奏があり、多彩な才能を見せた。音楽、吹奏楽部による演奏披露もあった。密になるのを防ぐため、前日に3年生だけで楽しむ機会が設けられた。
 
「銀河鉄道」をモチーフにした定時制の展示コーナー=3日

「銀河鉄道」をモチーフにした定時制の展示コーナー=3日

 
 定時制の文化祭テーマは「歩協和音」。将棋の「歩(ふ)」からとり、「一人の力は小さいかもしれないが、みんなで一つのものを作り上げよう」との思いを込めた。展示は、体験学習で訪れた花巻市の宮沢賢治記念館などから着想を得て「銀河鉄道」をメインモチーフに。日ごろの学習や部活動の様子も掲示した。
 
「こすもっチ」を販売した定時制の生徒=3日

「こすもっチ」を販売した定時制の生徒=3日

 
 農業体験学習で育てたジャガイモを使った焼き菓子「こすもっチ」は3日、1日限定で販売した。「自分たちで育てたことで食材を大事にする気持ちを育むことができた」と生徒会長の佐々木遼(はる)君(3年)。生徒数は少ないが、一人ひとりが頑張りながら学習、生活を楽しんでいるといい、「学年間の壁をなくし、いろんな活動に協力して取り組んでいきたい」と気持ちを新たにした。
 

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気楽に過ごせる生徒の居場所 釜石高、官民連携で放課後に開設「774プロジェクト」

釜石高生の放課後の居場所「774プロジェクト」=8月25日

釜石高生の放課後の居場所「774プロジェクト」=8月25日>

  
 釜石市甲子町の釜石高(青木裕信校長)の校内に週2回開設されるフリースペース「774(ナナシ)プロジェクト」。勉強や探究、おしゃべりなど放課後に高校生たちが自由な活動をして過ごす。地域の大人と日常的に関わることができる、家庭でも教室でもない、「第3の居場所」をつくろうと官民学が連携し運営。生徒の相談に耳を傾け、やりたいことを支援する場所にもなっていて、高校生にさまざまな刺激を与えている。8月23日には、海外留学などに関心を持つ生徒向けにオンライン国際交流イベントを開催。首都圏の大学に通う留学生らから話を聞き、国際的視野や将来への選択肢を広げた。
 

「海外留学」をテーマにオンライン国際交流

留学をテーマに将来について考えるオンライン国際交流イベント=8月23日

留学をテーマに将来について考えるオンライン国際交流イベント=8月23日

  
 国際交流イベントは、独立行政法人国際協力機構(JICA)海外協力隊の派遣前研修で釜石に滞在中の候補生阿部璃音さん(福島出身)が企画。今年3月に日本体育大(東京)を卒業したばかりで、同大の留学経験のある学生、ドイツや台湾からの留学生をオンラインでつないで体験談を高校生に伝えてもらった。
 
 参加した釜石高生は8人。パソコンの画面越しに、留学を決めた理由や得たことなどを聞いた。新型コロナウイルス禍の留学にためらいを持つ生徒が助言を求めると、1年間スウェーデンに留学した経験を持つ学生は「やりたいと思った時が始めるタイミング。いつかではなく、一歩踏み出す勇気を持って。留学先で何がしたいのか、目的を固めるのも大事。やることが明確になり、収穫も大きい」などと答えた。
 
画面越しでも積極的なやりとりを楽しんだ¬=8月23日

画面越しでも積極的なやりとりを楽しんだ¬=8月23日

  
 チェコ共和国での留学経験を紹介した阿部さんも、言語や生活文化が違うことを認識した上での事前準備の必要性を強調。「言語は情報を得るためのツール。現地で使う言葉を勉強することで、交流の幅が広がる」とアドバイスした。留学生らは日本の歴史、文化に関心があって留学を決めたものの、日本語でのやり取りは難しく、寂しさを感じることがあると本音をポロリ。それでも「好きなことを仕事にする」という目標のため、日々勇気を出して学び、人間関係づくりをしていると前向きな姿勢を見せた。
  
海外留学への思いを強めた生徒たち=8月23日

海外留学への思いを強めた生徒たち=8月23日

  
 釜石高の藤原和海(なごみ)さん(1年)は将来、海外の人と関わる仕事をと思い描く。留学も考えているが、「先延ばし中」と苦笑。学生らの助言に背中を押され、「今できることをやる。語学力、コミュニケーション力を磨きたい」と意識を高めた。中学時代に市の海外派遣事業でオーストラリアを訪問する予定だったが、コロナの影響で中止。悔しさを希望につなげる一歩にしようとしていた。
  

大人が話を聞いてくれる居場所「774」

地域の大人たちとおしゃべりを楽しむ生徒=8月25日

地域の大人たちとおしゃべりを楽しむ生徒=8月25日

   
 774プロジェクトは同校敷地内のセミナーハウスを活用し、2020年8月に開設された。地域の大人との日常的な関りから学びを深めてもらうのを狙いにした官民学連携事業。市教育魅力化コーディネーターや子どもたちの地域参画を後押しする活動を行う大人たちが運営し、毎週火曜日と木曜日の放課後の生徒たちに、▽気楽に立ち寄ることができる場▽興味関心に合わせたイベントの企画など地域資源との接続▽やりたいこと支援-などを提供する。
  
 8月25日の放課後、利用した生徒らは探究活動で使うグッズをつくったり、まちづくりをテーマにした催しの打ち合わせをしたり、思い思いに放課後の時間を過ごした。イベントの企画運営を得意とする大人に、防災に関するプロジェクトの企画案についてアドバイスを受ける女子生徒も。雑談を楽しむグループもあった。
  
企画する催しの打ち合わせをするグループ=8月25日

企画する催しの打ち合わせをするグループ=8月25日

  
 帰りの公共交通を待つ時間つぶしに利用する里見天(そら)さん(2年)は、同コーディネーターの恒屋梢海さんと“恋バナ”で盛り上がっていた。「お菓子を食べに来て」と誘われ利用してみると、居心地の良さで常連に。「何でも話を聞いてくれる大人がいる場所。友達と話しているみたいで、気楽に過ごせる」と目を細めた。
  
「ナナシ」との呼び名は、あえて場所の名を示さない「名無し」という意味もある。そう教えてくれたのは、運営をサポートする釜石まちづくり会社の常陸奈緒子さん(38)。高校生と大人が力を合わせ、自分たちが使いたくなる場所をデザインしていこう―。そんな思いが込められているという。
  
探究活動で使う道具作りに取り組む生徒たちを見守る八木橋さん(右)=8月25日

探究活動で使う道具作りに取り組む生徒たちを見守る八木橋さん(右)=8月25日

  
 同コーディネーターの八木橋朋広さん(27)によると、これまでに利用した生徒は延べ約2000人。月100人程度が足を運ぶ。「学校が地域連携に積極的。大人と接し、話し合いながら、やってみたいことや目標という自己実現の種を見いだす場になっている」と手応えを実感する。一方で、地域おこし協力隊制度を活用した市非常勤職員でもある同コーディネーターには任期があり、連携の在り方が課題と指摘。「民間の力の活用、後継者の発掘・育成に取り組み、継続させてほしい」と願う。