釜石市内の風景などが並んだ市民絵画教室の作品展
釜石市民絵画教室(小野寺豊喜会長、会員11人)の作品展は7~9日まで大町の市民ホールTETTOで開かれた。会員と講師の菊池政時さん(87)が、この1年間に制作した作品など96点を展示。作品を見てもらう喜びを分かち合いつつ、互いの創作活動に刺激を受け、継続への意欲を高めた。
同教室は1978年度、市の社会教育講座としてスタート。その後自主活動グループに移行し学習、作品発表を続ける。教室は毎月2回、隔週水曜日に青葉ビルで開催。合評会、スケッチ旅行(新型コロナウイルスの影響でここ数年は実施を見送る)を経て、絵画展で1年間の成果を示す。
1年間の成果を発表した市民絵画教室の会員ら
「私たちの絵画展」と銘打つ作品展は、今年で42回目となった。同教室で取り上げた花や魚の静物、市内の海景や街並み、庭先を彩る植物、自画像などテーマはさまざま。画材も油彩、水彩、アクリル、パステル、色鉛筆と多様だ。
作品に込めた思いを伝えたり、会話を楽しみながら絵画鑑賞する人も
「釜石港」と題した松崎さんの作品。これからも描き続けたいテーマだという
「釜石に住んでいるなら、やっぱり海」と話したのは松崎洋さん(90)。釜石港や造船所、廃船など海にちなんだ作品を多く並べた。東日本大震災前は両石町で暮らしたが、被災し大渡町で生活を再建。拠点は変わっても海は身近にあり、描き続けたいテーマに変わりはない。今も自営業者として働いていて、「仕事が終わってボヤっとするよりは何か趣味があった方がいい」と、絵を描くことが元気のバロメーターになっている様子。教室にはできるだけ参加し、仲間と腕を磨き合う時間も楽しみで、「いい絵を描いているのを見ると、『負けないぞ』という気持ちになる」と意欲満々だった。
にこやかな笑顔で来場者を出迎えた女性会員ら
小野寺会長(74)は「にぎやかな展示。描きたいものを自分なりに表現したり、大きいサイズの作品に挑戦したり、いい傾向」と、うれしそうに会場を見回した。創立45年となり、思い出すのは32回目の作品展のこと。その初日に起こった震災で、展示中の作品が津波にのみ込まれた。泥の中から回収・修復した作品を加えた絵画展を翌年に再開。その後のコロナ禍で2年開催を見送ったが、昨年から再始動し、「創作を楽しめる、いつもの日常が戻ってきた」と感じている。
そして、続けることの大切さをあらためて思う展示にもなった。小野寺会長は「工夫したり勉強してきたものを発表できることは創作の力になる。自分にないものを、仲間を通して見いだすことができる。それを自分のものにするため研さんを積み、刺激し合っていきたい」と前を向いた。