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「明治日本の産業革命遺産」写真で感じる魅力満載 フォトコン作品展 釜石で8/31まで開催

鉄の歴史館で開催中の「明治日本の産業革命遺産フォトコンテスト」作品展

鉄の歴史館で開催中の「明治日本の産業革命遺産フォトコンテスト」作品展

 
 釜石市の「橋野鉄鉱山」など全国8県11市23資産が世界遺産登録されている「明治日本の産業革命遺産」。日本の近代化を急速に推し進めた製鉄・製鋼、造船、石炭産業に関わる各遺産は、今も目に見える形で私たちに歴史的意義を伝え続ける。2015年の世界遺産登録から間もなく10年を迎えるのを前に、その価値を再認識し広く発信する機運醸成にと昨年度、フォトコンテストが行われた。橋野鉄鉱山を撮影した作品が最優秀賞に輝いた同コンテストの作品展が31日まで、同市大平町の市立鉄の歴史館で開かれている。
 
 同館2階会議室で開かれる作品展は市が独自に企画。最優秀賞を受賞した橋野鉄鉱山の作品「悠久のたたら場跡と星空」=佐々木弘文さん(釜石市)撮影=をはじめ、優秀賞2点(端島炭鉱、遠賀川水源地ポンプ室)、エリア賞8点を拡大プリントしパネル展示する。釜石のエリア賞は「原燃料の山と橋野一番高炉」=藤原信孝さん(同)撮影=が受賞している。
 
最優秀賞を受賞した佐々木弘文さん(釜石市)の橋野鉄鉱山の写真(右)は多くの人が感嘆の声を上げながら見入った

最優秀賞を受賞した佐々木弘文さん(釜石市)の橋野鉄鉱山の写真(右)は多くの人が感嘆の声を上げながら見入った

 
釜石のエリア賞を受賞した一番高炉を捉えた藤原信孝さん(釜石市)の作品

釜石のエリア賞を受賞した一番高炉を捉えた藤原信孝さん(釜石市)の作品

 
 同コンテストは、構成資産のある県、市で組織する「明治日本の産業革命遺産」世界遺産協議会(事務局:鹿児島県)が登録10周年に向けたプロモーションの一環として企画。「つなぐ」をテーマに、昨年12月から本年2月まで作品を募集したところ、1084点の応募があった。審査はプロの写真家の選考と資産エリアの自治体投票で行われた。8エリア(佐賀、長崎、三池、鹿児島、八幡、萩、韮山、釜石)の各賞は、関係自治体に選考が任された。
 
優秀賞を受賞した長崎市の端島炭坑の写真(右)は普段なかなか見られない角度が印象的

優秀賞を受賞した長崎市の端島炭坑の写真(右)は普段なかなか見られない角度が印象的

 
静岡県伊豆の国市の韮山反射炉の写真「秋空に映える」=韮山・エリア賞

静岡県伊豆の国市の韮山反射炉の写真「秋空に映える」=韮山・エリア賞

 
福岡県北九州市の官営八幡製鉄所旧本事務所の写真「夢と浪漫を求めて」=八幡・エリア賞

福岡県北九州市の官営八幡製鉄所旧本事務所の写真「夢と浪漫を求めて」=八幡・エリア賞

 
 受賞作11点は同コンテストのWebサイトで公開されているが、展示会場で見る大型パネル作品は、来場者の視覚に訴える色彩の美しさや構図の迫力が際立つ。古い建物や構造物、遺跡など一見地味な遺産が撮影者の視点と技で魅力的に切り取られており、大型パネル化でより一層、見る人に強い印象を与えている。
 
 会場では、釜石の「橋野鉄鉱山」に関する応募作62点から抜粋した10点(撮影者5人)も展示。季節の移り変わりでさまざまな表情を見せる高炉場跡が、同所になじみのある市民にも新たな感動をもたらしている。
 
橋野鉄鉱山の応募作品の一部を公開。季節や時間帯で多彩な光景が見られる

橋野鉄鉱山の応募作品の一部を公開。季節や時間帯で多彩な光景が見られる

 
橋野鉄鉱山の山神社跡に目を向けた作品。鳥居の両側の大木が圧巻

橋野鉄鉱山の山神社跡に目を向けた作品。鳥居の両側の大木が圧巻

 
 同協議会は遺産を分かりやすく解説した新たなパンフレットも作成した。掲載のために撮影したプロ写真の中から16点を本作品展で公開している。コンテスト応募者が題材にしなかった資産を中心に紹介する。
 
 会場では、来場者が作品の感想を付箋に書いて貼る参加型企画も実施。市世界遺産課の森一欽課長補佐は「われわれでは発信できない視点で切り取られた作品が並ぶ。釜石市民が見慣れた橋野鉄鉱山も普段とは違った見方で魅力を感じてもらえるのではないか。寄せられたコメントも楽しんで見てみては」と来場を呼び掛ける。
 
 同コンテストは本年度も開催中で、10月15日まで作品を募集している。テーマは「記憶」。作品は応募者本人が過去1年以内に撮影した未発表のものに限る。応募方法などは同コンテストの特設サイトで閲覧できる。

 

釜石鉱山フォトコンテストも開催中 旧鉱山事務所の国有形文化財登録10周年で市が作品募集

 
鉱石の採掘が行われたことを示す跡が残る釜石鉱山周辺

鉱石の採掘が行われたことを示す跡が残る釜石鉱山周辺

 
 釜石市は「近代製鉄発祥の地」の原点となった甲子町大橋の釜石鉱山をテーマとしたフォトコンテストを開催している。市が管理する「旧釜石鉱山事務所」が国登録有形文化財(建造物)になってから本年で10周年を迎えるのを記念し企画。事務所や周辺に残る痕跡など釜石鉱山の残したい風景を写真で募集する。応募は10月30日まで。
 
 釜石鉱山は1727(享保12)年に発見された。後に盛岡藩士大島高任が同地に洋式高炉を築造。1858(安政4)年、鉄鉱石を原料とした連続出銑に日本で初めて成功した。1880(明治13)年、鈴子に官営製鉄所が操業すると鉄道が開通し、機関車で鉄鉱石を運搬。製鉄所が民間経営となった後も供給が続いた。同鉱山からは銅鉱石や石灰石も産出され、2000(平成12)年まで採掘が行われた。
 
 大橋に残る旧釜石鉱山事務所は1951(昭和26)年に建設された。2008(平成20)年に日鉄鉱業が建物を市に寄贈。市は寄託された鉱山関連の資料を一般公開する施設として運営している。建物は2013(平成25)年に国登録有形文化財となっている。
 
旧釜石鉱山事務所の建物や鉄、銅鉱石の選鉱場跡が残る一帯

旧釜石鉱山事務所の建物や鉄、銅鉱石の選鉱場跡が残る一帯

 
急峻な場所に礎石だけが残る鉄鉱石の選鉱場跡

急峻な場所に礎石だけが残る鉄鉱石の選鉱場跡

 
釜石鉱山学園跡地から臨む中ノ沢堆積場(写真正面奥)。積まれているのは選鉱後の不要な砕石

釜石鉱山学園跡地から臨む中ノ沢堆積場(写真正面奥)。積まれているのは選鉱後の不要な砕石

 
 募集する写真は応募者本人が過去1年以内に撮影した未発表のもの。立ち入り禁止場所や個人、企業の敷地などで了承を得ず撮影した作品は応募不可。応募方法や規約はポスターやチラシ、市広報7月15日号掲載のQRコードから確認できるほか、市のホームページからも検索できる。
 
 市は登録10周年記念事業として、旧釜石鉱山事務所の愛称募集も行う予定。フォトコンテストの受賞作品や選ばれた愛称は、「鉄の週間」期間中に行われる行事で発表することにしている。

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カメラ持ちて宝探し 釜石の写真家・菊池賢一さん つれづれなる作品展 何気ない風景、撮りつくせば

釜石市民ホールTETTOギャラリーで作品を展示する菊池賢一さん

釜石市民ホールTETTOギャラリーで作品を展示する菊池賢一さん

  
 釜石市大町の市民ホールTETTOで開催中のギャラリー展「art at TETTO(アート・アット・テット) Vol.9 随撮(ずいさつ)」。釜石・大槌地域で活動する作家を紹介する同ホール自主事業のこの企画で、9番目に登場したのは釜石・只越町で写真店「光陽写真」を経営するフォトグラファー菊池賢一さん(53)だ。本業もさることながら、趣味としてカメラを携え被写体という宝探しを楽しむ日々。普段の何気ない暮らしの中で目に留まった風景、人々の表情などを写した約60点を展示する。20日まで、入場無料。
   
並んだ作品の多くは釜石市内の風景。でも、どこにでもある暮らしの一コマ

並んだ作品の多くは釜石市内の風景。でも、どこにでもある暮らしの一コマ

   
 賢一さんは家業が写真店だったが、「やりたいことを自由に」という環境があり、大学卒業後は臨時教諭として岩手県内で働いた。2001年、父の故・宗親さんから相談を受けて古里へ。当時はカメラ撮影がフィルムからデジタルへの移行期で、店内の機材をデジタル化に対応させ、賢一さんの担当とした。同じ時期、店が拠点となっていた愛好者グループ「釜石写光クラブ」にも入会。本格的にカメラを手にした。
   
 初めに渡されたのはコンパクトデジタルカメラだったが、クラブ会員の多くはフィルム撮影で、賢一さんも「憧れが出てきた」。まねをしながら撮影していると、「飽き足りなくなった」。工作が好きだったこともあり、レンズの代わりに針で開けた小さな穴から光を取り込んで印画紙に焼き付けるピンホールカメラの自作・撮影を開始。フィルムもだが、「どんな画が写っているか、現像してみなければ分からない不便さ、面白さ」に夢中になった。
   
 そんなアナログ・白黒の世界、ピンホールカメラの楽しさを体感できるワークショップが12日にあった。元教員・賢一さんの自由性を尊重する教えのもと、参加者は手作りカメラで遊び、特設された暗室での現像体験では画が浮かび上がってくる魔法の時間を堪能した。千葉市の本行多恵子さん(47)も「構図を決めるのが難しいけど、楽しかった。現像液につける時間のさじ加減にドキドキ、ワクワクした」と満足げだった。
   
ピンホールカメラを作って、撮って、楽しむワークショップの風景

ピンホールカメラを作って、撮って、楽しむワークショップの風景

  
ワークショップ中もカメラを手に参加者の活動を記録する賢一さん

ワークショップ中もカメラを手に参加者の活動を記録する賢一さん

  
ホール内の特設暗室。参加者が写した世界も展示に加えられた

ホール内の特設暗室。参加者が写した世界も展示に加えられた

   
 最先端技術を持つデジタルカメラは撮るとすぐに画を確認できる「速さ」がメリット。アナログは「思うように撮れないところが魅力。失敗して、気づかなかったことに気づく。偶然性が楽しい」と賢一さん。それぞれの特徴、良さを使い分けており、ギャラリー展ではそうした手段を使った作品を並べる。
   
 ところどころに付け加えられた説明文。そこには賢一さんの撮影スタイルが記されている。これがキャラリー展のタイトル「随撮」につながる。写真にはキャプションという短い説明文を添えることがあり、これを「随筆」として捉え、もじった。「筆をカメラに持ち替えてみた…みたいな」といたずらっぽく笑う。ただ、写真は「それだけで対話ができる」とも。言葉が分からずとも、画を見ただけで共感できたり、「一つの言語なのかも」とうなずく。
   
フィルム、デジタルを使い分け商用、趣味的な作品を紹介する

フィルム、デジタルを使い分け商用、趣味的な作品を紹介する

  
作品に添えられた説明文。賢一さんの写真の楽しみ方が見えてくる

作品に添えられた説明文。賢一さんの写真の楽しみ方が見えてくる

   
 グループ展などで作品を紹介することが多く、個展は“ほぼ”初めて。「せっかくの機会、少し違った雰囲気に」と作品の見せ方にひと工夫。写真は平面だが、厚さ2センチほどのパネルを貼りつけて立体感を演出したり、サイズをA3、B2、全紙、全倍、2Lとバラバラにして動きを出した。
   
 ワークショップに参加した、賢一さんをよく知る同級生、工藤理宏さん(53)は「小さい頃から人と違う見方をする。堅そうだけど柔らかくもあり、ユーモアがあるけどふざけ過ぎていない、絶妙なバランスを持っている人。その視点、人柄が写真にも出ている」と明かした。
   
「撮っている時の楽しさが伝われば」と破顔する賢一さん

「撮っている時の楽しさが伝われば」と破顔する賢一さん

   
 家業を引き継いだのは08年。そして今年、写光クラブの会長になった。宗親さんは写真や仕事に関して厳しかったというが、そんな父の姿に賢一さんは「憧れ」を抱く。何でも言い合える仲間の存在とその信頼関係もしかり。「当時は人も時代も活気にあふれていた。好きなことを楽しむ、熱量を共感する感じだった」と記憶をたどり、現在の仲間と「そんな力強さを感じる関係にたどりつく」のが目標だ。
   
 ただ、撮影スタイルは「のんびりと」。外に出る時はいつもカメラを持ち、面白いものとの出合いを楽しむ。「何気ないもの、ふと目に留まったものにレンズを向け、シャッターを切る。その感覚に酔いしれたい」。共感する趣味仲間を求めている。

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新しい風 釜石の美術集団・サムディ45 「見てもらう喜び」実感 57回展

釜石市民ホールで開かれた「サムディ45」の57回展

釜石市民ホールで開かれた「サムディ45」の57回展

  
 釜石市の美術集団「サムディ45」(小野寺浩代表、会員21人)の第57回展は14~16日まで、大町の市民ホールTETTOで開かれた。発表の機会を求めて新たに3人が加入したほか、招待作品として若者4人が描く世界を紹介。「見てもらう喜び」を実感する「新しい風」の存在が刺激となり、会員らは創作意欲を高めている。
  
 同グループは、岩手県沿岸部を走る国道45号線沿いの美術愛好家の仲間たちが土曜日(フランス語で「サムディ」)に集まったのが始まり。講師を置かず、絵画、日本画、デザイン、工芸、刺しゅう、写真など多彩な分野の人が個々に創作活動に取り組んでいるのが特徴で、会員は地元釜石のほか、北上、花巻、鹿児島など県内外に広がる。
  
展示会場には幅広いジャンルの個性豊かな作品が並んだ

展示会場には幅広いジャンルの個性豊かな作品が並んだ

  
 作品展には幅広いジャンルの約60点が並んだ。モチーフは地元の山や海、アジサイなど自然の風景、静物、動物、反戦を訴える作品など多様。油彩や水彩、色鉛筆、「押す絵の具」と呼ばれるプッシュカラー、水面に垂らした絵の具で模様を描いて紙に写し取るマーブリング、ビーズを使ったモザイクアートなど用いた技法もさまざまだ。
  
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来場した人たちが多様な表現手法の作品をじっくりと鑑賞

  
 同集団での活動10年目の髙橋稔さん(43)は、フェルトを使った小物づくりを得意とする。勤務先の郵便局で、手作りの展示物で市民に季節感を届けており、「喜ぶ姿が励みになる」と継続。今回もチクチクと針仕事を進め、ゲームキャラクターをかたどった約100個のストラップを出品。「若い人たちにも、ものづくりに興味を持ってもらい、将来的にサムディに入ってもらえたら」と仲間入りを期待した。
  
 新加入の3人は市内の別グループでも活動する。会員の減少で展示会の開催が難しくなっていたところ、サムディの関係者から参加の誘いを受けた。釜石港や岩手山などを題材にした風景画3点を並べた中野カツ子さんは「展示場所を設けてもらい、本当にありがたい。見てもらうといろんな意見が聞こえるが、受け入れることで気づきを得て成長できる。『作品を出さなくっちゃ』と意欲もわく」と明るい笑みを広げた。
  
新加入した中野カツ子さんの作品「釜石港」「ひょうたん」

新加入した中野カツ子さんの作品「釜石港」「ひょうたん」

  
 招待作品は県内沿岸部の14~26歳の若者たちが描いた5点。カラー筆ペンや水性ボールペンなどを使い、細やかな筆致で描き込んだ作品が目を引いた。「母のふるさと」「おじいさん元気でいだすか(「いますか」の意)」と題名がついた作品は、家族の温かさが伝わってくるよう。「まだ表に出ていない、すてきな作品を見てほしい」と小野寺代表(63)が出展を声がけした。
   
会場では切り絵の体験会も。細やかな手作業に驚きの声が聞かれた

会場では切り絵の体験会も。細やかな手作業に驚きの声が聞かれた

   
 小野寺代表は「新しい風が吹いた。いろんな人の声を聞いたり、ほかの人の作品を見ることでいい影響がきっと出る」と手応えを得た。次は秋ごろに開かれる市民芸術文化祭への参加。見てもらう喜びを力に、会員それぞれがつくり上げる新たな世界を待ち望んでいた。

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声の便り 届けて30年 視覚障害者へ 釜石・ハマナスの会 記念誌発行 受け継ぐ朗読奉仕

完成した記念誌を手に笑顔を見せるハマナスの会の会員たち=7月2日、釜石市立図書館

完成した記念誌を手に笑顔を見せるハマナスの会の会員たち=7月2日、釜石市立図書館

  
 釜石市小佐野町の市立図書館を拠点に活動する朗読奉仕「ハマナスの会」(藤原由香里会長)。目の不自由な人のために地元新聞などから季節の話題や身近な情報を選んでCDに録音し、提供するボランティア団体だ。昨年、30周年を迎えたことから記念誌の作成を進め、このほど完成した。「アットホームな雰囲気で楽しい」「月1回の活動が張り合いに」「いつの間にか年齢が上に。もう少し続けて頑張ろうかな」。会員たちの思いがつづられている。
  
 1992年に発足した同会は、月に1回活動する。2011年の東日本大震災後2カ月間は同館が休館したため活動ができなかったが、それ以外は毎月欠かさず30年間継続。年に1回、朗読技術向上のための研修も行っている。録音だけでなく、利用者から希望があった際は本や雑誌を対面で朗読することもある。
 
 A4判全38ページの記念誌では年表で30年の歩みを振り返る。現在の会員のほか、利用者や活動を支えてきた図書館長や講師、元会員ら7人が寄稿。朗読奉仕活動の価値や効果、感謝の気持ち、懐かしい思い出などが、それぞれの視点で記されている。
 
会の歩みや声を通した交流の思い出などがつづられた記念誌

会の歩みや声を通した交流の思い出などがつづられた記念誌

 
野田市長に記念誌を手渡す(右から)松村さん、川畑さん、鈴子副会長=6月16日、釜石市役所

野田市長に記念誌を手渡す(右から)松村さん、川畑さん、鈴子副会長=6月16日、釜石市役所

 
 50部作成し、利用者や会員らに配布。一部は市に寄贈し、同館にも置かれている。6月16日には市役所の野田武則市長を訪ねて記念誌の発刊を報告。94年に入会した川畑光子さん(85)は「声を通して人とのつながりを感じている。ボランティアだが、いい加減な読みは許されない」と活動への強い思いを伝えた。「生の声でふわっとしたあたたかみを楽しんでもらっていると思う」と利用者の様子を想像するのは松村弘子さん(85)。鈴子和子副会長(67)は「先輩たちの力のおかげ。知恵を絞り合って、ますます頑張りたい」と意欲を見せた。
  
視覚障害者に届ける記事を読み、録音する松村さん(左)と藤原会長=7月2日、釜石市立図書館

視覚障害者に届ける記事を読み、録音する松村さん(左)と藤原会長=7月2日、釜石市立図書館

 
 「みなさん、お変わりございませんか。今日も新しい話題、心あたたまるお話、お届けします」
 
 ゆったりと穏やかな語りが、図書館の一室から聞こえてきた。活動日となった7月2日、全会員7人が集合。声の出し方や読み上げる速度、間の取り方、アクセントなど細部まで気を配りながら記事の朗読、録音活動にいそしんだ。この日、会員が持ち寄ったのはSL銀河のラストランや釜石よいさの復活を伝える記事など約30本。行政、教育、論説、エッセーなど多様なジャンルに触れてもらえるよう選別し、70分ほどのCDを作成した。
 
 完成品は後日郵送。受け取る視覚障害者の負担金などはなく、現在11人がサービスを利用する。「地域の話題をタイミングよく取り上げている」「いろんな読み手がいて退屈しない」「なまりにホッとする」などと評価は上々。そんな声に、届ける側の会員たちも力をもらっている。「まだまだ未熟で、今も勉強中」と口をそろえ、やる気、向上心は衰え知らず。仲間や利用者との声を通した交流を楽しんでいる。
  
 「また来月お会いしましょう ごきげんよう」
  
滑舌よく伝えるため早口言葉で発声練習=7月2日、釜石市立図書館

滑舌よく伝えるため早口言葉で発声練習=7月2日、釜石市立図書館

 
黒板に項目と録音時間を記して選別。下読みも入念に=7月2日、釜石市立図書館

黒板に項目と録音時間を記して選別。下読みも入念に=7月2日、釜石市立図書館

  
 和気あいあいとした雰囲気の同会では、50~80代の女性たちが活躍している。ここ数年は、会員の高齢化や若年層の担い手不足が課題。利用者の拡大も目標となっている。「利用する方がつつがなく暮らし、生活の彩りやゆとりを感じてもらえるといい。これからも無理せずに長く活動を続けたい」と藤原会長(56)。
 
 同会では会員を募集中。性別、年齢、経験の有無は問わない。通常は毎月第1日曜日が活動日。「来たれ若者よ!興味のある方は気軽に見学を」と呼びかける。詳しくは市立図書館(電話0193・25・2233)へ。

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流通経済大 アート、ラグビー、トークなどで釜石市民と交流 若いエネルギーを被災地に出前

流通経済大が7月2日まで釜石市で開く「であうアート展」=TETTO

流通経済大が7月2日まで釜石市で開く「であうアート展」=TETTO

 
 流通経済大(本部・茨城県龍ケ崎市)の「であうアート展」が、7月2日まで釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれている。24、25の両日開かれた開催記念イベントでは学生が市民と交流。トークセッションにはニュースキャスターの膳場貴子さん(同大客員教授)も出演し、震災復興の力となったラグビーワールドカップ(W杯)、同市が発信する防災教育などについて市民と意見を交わした。
 
 であうアート展は「つながる地域、学生、障がい者」をコンセプトに、同大が新松戸(千葉県)、龍ケ崎の両キャンパスで2021年から開催。千葉県成田市のNPO法人グループ彩「生活工房」所属のアーティストらの作品を展示し、さまざまな出会い、つながりを生み出している。22年からはキャンパス外にも広げ、釜石は4カ所目の開催地となった。
 
 今回は東北障がい者芸術支援機構などの協力で岩手、宮城のアーティストの作品を加え、約50点を展示。絵画や造形、ニードルワークなど独創性豊かな作品が並ぶ。本県花巻市のるんびにい美術館所属、釜石市出身の小林覚さんの絵画3点も公開されている。TETTOギャラリーで、午前10時から午後6時まで鑑賞できる。
 
上段:生活工房(千葉県成田市)のアーティストの作品、下段:宮城、岩手のアーティストの作品

上段:生活工房(千葉県成田市)のアーティストの作品、下段:宮城、岩手のアーティストの作品

 
釜石市出身・小林覚さん(花巻市・るんびにい美術館所属)の作品

釜石市出身・小林覚さん(花巻市・るんびにい美術館所属)の作品

 
 約2週間の開催期間中日のスペシャルイベントには学生と教職員約100人が来釜。24日は釜石鵜住居復興スタジアムで、同大男女ラグビー部と市民がタッチラグビーの試合で交流。25日はTETTOで、チアリーディング、ダンス、吹奏楽の各部がステージパフォーマンスを繰り広げた。
 
 トークセッションには地元釜石から、釜石ラグビー応援団副団長の浜登寿雄さん、震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」スタッフの川崎杏樹さんが出演。大学側からは客員教授の膳場さん、副学長の龍崎孝さんが参加した。会場の様子は学園祭が行われている新松戸キャンパスにも配信され、相互交流も行われた。
 
25日に行われた、流通経済大×釜石市民トークセッション

25日に行われた、流通経済大×釜石市民トークセッション

 
 話題の一つは、釜石復興の推進力となった2019年のラグビーW杯日本大会。浜登さんは“ラグビーのまち釜石”が大会招致に手をあげた理由を説明し、「あの空間が作られ時間を共有できたことは、まちと子どもたちの未来への財産になった」と振り返った。当時、試合に招待された小中学生にその後行ったアンケートの結果も紹介。世界の同世代とのつながりを求める声や、地域に貢献するボランティア活動への意欲が見られたという。
 
釜石から出演した川崎杏樹さんと浜登寿雄さん

釜石から出演した川崎杏樹さんと浜登寿雄さん

 
 川崎さんは、スタジアム建設地に震災前あった釜石東中の出身(震災当時2年生)。「W杯で国内外から訪れた大勢の人たちが、ラグビーを入り口に震災や防災に目を向けてくれた。その光景にこの場所に建てられた意味の大きさを実感した」と話した。同所では釜石高生が震災の語り部や防災普及活動を続けており、次世代への活動継承にも期待。自身は釜石の経験を海外に伝える活動にも携わり、防災による世界とのつながりも見据える。
 
 膳場さんは浜登さん、川崎さんがまちの魅力の一つとして示す「地域コミュニティーの強さ」に共感。震災直後に取材した水産加工会社が宮城の被災同業者に工場の一部を貸し出し、事業を助けたことを印象深く語り、「自社も被災し大変な状況なのに困っている仲間を助ける精神。これはまさに釜石に共有されているものではないか」と話した。
 
 高校、大学でラグビーをした経験を持つ龍崎副学長も、ラグビー精神「One for all、All for one(一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために)」が釜石の復興、共生社会の実現につながっていると実感。その地域性や市民性を称賛した。
 
流通経済大の龍崎孝副学長と膳場貴子客員教授。釜石とのつながり継続を願った

流通経済大の龍崎孝副学長と膳場貴子客員教授。釜石とのつながり継続を願った

 
トークセッションに集まった市民らはまちの未来に期待を高めた

トークセッションに集まった市民らはまちの未来に期待を高めた

 
 アート展の釜石開催は、同大スポーツ健康科学部の教員が震災後、釜石の子どもたちをサマーキャンプに招き、タグラグビー交流などを行っていた縁で実現。学生らは震災被災地の訪問を通して「命を守る」ことへの学びを深め、人と人とのつながりの大切さを感じた。
 
釜石に元気と活力を届けた流通経済大の学生ら

釜石に元気と活力を届けた流通経済大の学生ら

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久しぶりの“声援”を力に8競技で熱戦 釜石大槌地区中総体 コロナ制限なく開催

コロナ制限がない通常開催は4年ぶり。釜石大槌地区中総体=17日

コロナ制限がない通常開催は4年ぶり。釜石大槌地区中総体=17日

 
 2023年度釜石大槌地区中学校総合体育大会(中総体)は17、18の両日、釜石、大槌、遠野3市町の公共体育施設や学校体育館で行われた。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行後、初の大会。基本的に観戦者の制限は行わず、各会場の感染拡大予防策に準じる形をとった。声出し応援も解禁となり、選手たちは家族や仲間の声援を受けながら、これまでの練習の成果を思う存分発揮した。
 
 本来は9種目の大会だが、サッカーは参加1校のため今回も試合ができず、8種目での開催。ソフトテニスは地区内での会場確保が難しく、遠野運動公園テニスコートを借用して行われた。
 
 卓球は大槌町の城山公園体育館が会場。団体戦男子は4校によるトーナメント戦、女子は2校での決戦となり、シングルス4、ダブルス1で県大会出場の1枠をかけて戦った。個人戦(シングルス)には男女ともに6校から参加があり、トーナメント戦で優勝を競った。2階観客席の座席数の関係で、保護者観戦は選手1人につき2人までとなったが、選手たちは応援に力をもらい全力プレーを見せた。
 
卓球女子団体戦は甲子と大槌の対戦。チームの総力で挑む

卓球女子団体戦は甲子と大槌の対戦。チームの総力で挑む

 
 卓球男子団体戦で準優勝となった甲子中の白岩優一朗キャプテン(3年)は「点を取った時とかに拍手をもらうと、やる気がみなぎる。中学最後の大会なので家族も楽しみにしていたと思う」と、過去2年は味わえなかった会場の雰囲気を満喫。「来年は今の2年生に優勝を成し遂げてほしい」と望みを託した。自身は水泳個人(自由形50M、100M)で県大会出場が決まっていて、記録更新へさらなる努力の日々が続く。
 
 バスケットボールは大槌学園体育館で行われた。男子4校はトーナメント戦、女子3校は総当たりのリーグ戦。一昨年の新人戦で県大会初優勝を果たした男子の釜石は選手層が厚く、今大会でも大量得点を重ねて優勝。女子は一昨年の新人戦から連覇を続ける大平が今大会も他校を制し、県大会出場を決めた。
 
バスケットボール男子1回戦・釜石-大槌。釜石の強さは今年も顕在

バスケットボール男子1回戦・釜石-大槌。釜石の強さは今年も顕在

 
 大平中女子バスケ部の阿部愛華キャプテン(3年)は「チームは勢いがあり雰囲気もいい。コロナ禍の2年は道具や椅子の消毒に手間を取られるなどプレー以外の負担も大きかった。今年は多くの応援もあって頑張れる」と笑顔。「全員がシュートを入れ、自分たちのプレーをして勝ちたい」と挑んだ結果、望み通り、県大会への切符を手にした。昨年の新人戦県大会はベスト8。「今年はそれ以上を」と意気込んだ。
 
 大会前日の雨の影響で平田公園野球場のグラウンドコンディションが整わず、18日に順延となった軟式野球。少子化による生徒数の減少などで野球は年々、1校単位でチーム編成するのが難しくなっており、2校、3校で合同チームを結成し大会に出場するケースが増えている。今大会は3校ずつ2チームを結成しての対戦(大槌・釜石東・釜石―大平・唐丹・甲子)となった。
 
 試合は3回まで両チーム無得点。4回裏、走者を3塁に進めた「大槌・釜石東・釜石」は先制点のチャンス。「(大会)最後の3年生を絶対にかえす」と、釜石中2年川崎頼仁選手が放った打球はレフト前へ。待望の1点は決勝点となり、最終回で粘りを見せた「大平・唐丹・甲子」を抑え、1-0で県大会出場を決めた。重要な場面でのヒットに川崎選手は「レフト方向は得意なほう。今日はバッチリはまった」と喜びを表した。
 
4回裏、大槌・釜石東・釜石合同チームは釜石中2年の川崎頼仁選手(右下写真)のヒットで先制

4回裏、大槌・釜石東・釜石合同チームは釜石中2年の川崎頼仁選手(右下写真)のヒットで先制

 
優勝を喜ぶ3校の選手(上段)と保護者(下段)

優勝を喜ぶ3校の選手(上段)と保護者(下段)

 
 3校25人をキャプテンとして率いた釜石東中3年の小笠原颯真選手は「3校合同って本当に難しいと思うが、練習を重ねるうちにみんな仲良くなってチームとしてまとまることができた」。緊張もあったが、「チャンスでしっかり点を取れた。みんな最後まで諦めず、声を出し合い、メンバー全員で勝ち取った勝利」と胸を張った。チームの県大会目標はベスト8。これまで培ったチームワークでさらなる高みを目指す。
 
県大会出場を決めた大槌・釜石東・釜石の選手ら

県大会出場を決めた大槌・釜石東・釜石の選手ら

 
いつもの野球応援の風景が戻ったスタンド。3校の保護者も力を結集

いつもの野球応援の風景が戻ったスタンド。3校の保護者も力を結集

 
 チームを応援する家族も団結した。1塁側スタンドで太鼓を鳴らしながら熱い声援を送ったのは釜石中など3校の保護者。声を出して応援できる喜びを感じながら、選手たちを精いっぱい鼓舞した。釜石中野球部に兄弟で所属する栗澤琉彗(3年)、虹空(1年)両選手の母美香さん(45)は「どんな形であれ、野球をできることが子どもたちにとっては一番。支えてくれる人たちに感謝して頑張ってほしい」。選手たちの労をねぎらい、県大会での活躍にも期待を寄せた。
 
バレーボール女子・釜石東-大平。釜石東は攻守で力を見せつけた

バレーボール女子・釜石東-大平。釜石東は攻守で力を見せつけた

 
 各競技の地区代表が出場する県中総体は7月15~17日に県内各会場で開催される。
 
2023年度釜石大槌地区中学校総合体育大会成績一覧表

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6月3日は橋野高炉跡の国史跡指定日 市民ら環境美化活動と記念講演で郷土の宝に理解

「みんなの橋野鉄鉱山」環境美化活動=3日

「みんなの橋野鉄鉱山」環境美化活動=3日

 
 釜石市橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」で3日、高炉跡周辺の環境美化活動が行われた。市民らに史跡への関心、保護意識を高めてもらおうと市が主催する7年目の活動。市内外から25人が参加し、草刈りや落ち葉、枯れ枝の回収などを行った。講演会も開かれ、郷土の先人についても理解を深めた。
 
 「みんなの橋野鉄鉱山」と題した同行事は、世界遺産内の高炉場跡(橋野高炉跡)が国史跡に指定された1957(昭和32)年6月3日にちなんで、指定60周年となった2017年から行われている。
 
 今年は一番高炉と二番高炉周辺で活動。重点的に行われたのは高炉脇を流れていた水路の清掃。石垣の間や底部の草を刈ったほか、落ち葉などを回収した。高さのある石垣の上部の足場に土を入れ、踏み固める作業も行われた。同所では3基の高炉が稼働し、それぞれに風を送る装置「フイゴ」が併設されていた。フイゴは水車の力で動かすため、近くの二又沢川から水を引いた水路が南北に約400メートルにわたって延びていた。
 
水路跡の石垣の除草作業にあたる参加者

水路跡の石垣の除草作業にあたる参加者

 
高炉跡の周りも雑草を取り除いてきれいにした

高炉跡の周りも雑草を取り除いてきれいにした

 
 清掃後、同鉄鉱山インフォメーションセンターで記念講演会が開かれた。講師は市世界遺産課課長補佐の森一欽さん。釜石で洋式高炉による連続出銑に成功した盛岡藩士・大島高任(1826-1901)と、国内最大級とされる三閉伊一揆で農漁民を率いた釜石・栗林村出身の三浦命助(1820-64)にスポットを当て、2人の生涯の分岐点となった1853(嘉永6)年6月3日をキーワードに講演した。
 
 大島高任は釜石での高炉建設の前年1856(安政3)年に、水戸藩那珂湊で反射炉による大砲の鋳造に成功しているが、そのきっかけとなったのが53年6月3日のペリーの浦賀来航。一方、三浦命助は53年5月に勃発した2度目の三閉伊一揆で、南下してきた先発隊に6月3日、大槌で合流したとされている。
 
 同時代を生き、地元民とともに大きな困難に立ち向かった両者だが、森さんは「2人は敵対する関係だったと思う。実際に本人同士が会ったということもあり得ないのではないか」と自身の推論を述べた。
 
三浦命助、大島高任にスポットを当てた記念講演

三浦命助、大島高任にスポットを当てた記念講演

 
郷土に功績を残した先人2人の話に聞き入った

郷土に功績を残した先人2人の話に聞き入った

 
 住田町の小学校教諭㓛刀稔也(くぬぎとしや)さん(26)は、5年生が取り組む郷土学習で地元の「栗木鉄山」をテーマにした学習を進行中。製鉄について自身も学びを深めたいと、今回の橋野鉄鉱山行事に参加した。「大島高任や初めて知った三浦命助のことなど大変勉強になった。子どもたちの学習に役立てたい」。環境美化活動にも精力的に取り組み、「地域の人たちが力を合わせ、世界遺産を守っていこうと主体的に活動する姿勢が素晴らしい」と感銘を受けていた。

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届け!伝統の魅力 釜石・小佐野小児童 勇壮に舞う「小川しし踊り」 楽しさ継承

「伝統を継ぐ」と思いを込め、しし踊りを披露する小佐野小児童

「伝統を継ぐ」と思いを込め、しし踊りを披露する小佐野小児童

  
 釜石市小川地区に伝わる郷土芸能「小川しし踊り」が、小佐野小(千田有美校長、児童285人)の運動会で披露された。廃校になった地域の小学校から受け継ぎ演舞するのは5、6年生107人。鹿頭(ししがしら)をかぶった児童が笛や太鼓の音に合わせ大地を跳ねたり踏みしめながら勇壮に、色鮮やかな衣装に身を包んだ子どもたちはりりしく舞った。「もっといい踊りを」と後輩につなぐ高学年の勇姿がキラリ。小佐野町の同校校庭に詰めかけた保護者らから拍手が沸き起こった。
  
鮮やかな衣装を身に着けた踊り手たちは凛とした姿が印象的

鮮やかな衣装を身に着けた踊り手たちは凛とした姿が印象的

  
 同校は2005年に旧小川小と統合。小川小伝統のしし踊りを引き継ぐため伝承活動委員会や特設クラブを設け、学習発表会や地域の交流イベントで演舞を披露してきた。統合から13年目の17年、新たな伝統の一歩にしようと運動会での公開を開始。委員会などはなくなったが、授業に取り入れ高学年が継承し、運動会のプログラムとして定着している。
  
 5月の大型連休後から小川しし踊り保存会(佐々木義一会長)の指導(3回)を受けながら、授業と授業の間の休み時間(中休み)や昼休みも利用したりと毎日練習を重ねてきた5、6年生。「腰をしっかり落としてから跳びはねるとかっこいい」「指先に目線を合わせながら動くと踊りがきれいに見える」といった助言をかみしめつつ、力強く舞った。
  
鹿頭をかぶった児童は幕をはためかせながら、格好いい舞いを披露

鹿頭をかぶった児童は幕をはためかせながら、格好いい舞いを披露

  
半被姿の手踊りグループも元気いっぱい跳びはねて躍動した

半被姿の手踊りグループも元気いっぱい跳びはねて躍動した

  
踊りを盛り上げる笛や太鼓のおはやしグループ。軽快な音を響かせた

踊りを盛り上げる笛や太鼓のおはやしグループ。軽快な音を響かせた

  
 頭のリーダー、櫻庭蒼天(そうま)さん(6年)は最後尾で踊る「しんがり」役もこなし、「楽しい。最高」と心地よい汗を流した。手踊りのリーダー、照井美莉愛(みりあ)さん(同)も高学年としての自覚を持って、心を一つに踊り切ったとすがすがしい表情。「伝統を受け継ぐことができ、いい思い出になった。(後輩たちには)もっといい踊りをしてほしい」と期待した。
  
 「子どもたちは、地域の伝統を受け継ぎたいと頑張ってきた。元気な踊りを見てもらうことで地域に恩返ししたいという気持ちもある」と千田校長。そんな思いを全身で表現する児童を優しく見守り、「小佐野小にいた証し。学校を離れても思い出が体に染みて、誇りに思ってもらえたら」と願った。
  
コロナの5類移行を受け、久々ににぎやかな風景が戻った小佐野小の運動会

コロナの5類移行を受け、久々ににぎやかな風景が戻った小佐野小の運動会

  
 新型コロナウイルス感染症が「5類」に移行してから初めての運動会。声出しの応援復活や家族の参観に制限を設けず、マスク着用も個人の判断など久々に平時に近い形で行われた。プログラムは午前のみで、従来あった昼食時間は設けず実施。保護者への意向調査を踏まえた形だという。
  
 プログラムは全16種目。赤、白に分かれた児童は応援合戦、「天下分け目の小佐小合戦」と題した団体種目で力を合わせて競技を繰り広げた。ラストラン間近のJR釜石線を走るSL銀河をモチーフに趣向を凝らした種目も。リレーや徒競走では元気よく校庭を走った。
   
運動会スローガン「正々堂々」にちなんだ旗で応援合戦

運動会スローガン「正々堂々」にちなんだ旗で応援合戦

  
仲間と力を合わせて競技を楽しむ子どもたち

仲間と力を合わせて競技を楽しむ子どもたち

  
力いっぱい競技する児童を家族らが笑顔で見守った

力いっぱい競技する児童を家族らが笑顔で見守った

  
 「運動会ができることに感謝を」と、どの種目にも本気で挑んだ子どもたち。カメラなどを向けた家族らから、たくさんの声援が送られた。

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見て感じた「いいな」の声 創作の力に 釜石の絵画グループ・彩美会 36回展

個性あふれる作品が並んだ第36回彩美会展

個性あふれる作品が並んだ第36回彩美会展

  
 釜石市の絵画グループ「彩美会」(小原孝夫会長、会員14人)は19日から21日まで、大町の市民ホールTETTOで36回目の作品展示会を開いた。全会員が1~11点の作品を出展し、講師の佐々木實さん(二科会会友)の5点を加えた72点を展示。思いを込めた作品を見てもらう喜びに“のせられた”会員らは次なる作品に取りかかる意欲を高めた。
   
 彩美会は具象画を中心に取り組み、モチーフは市内外の四季折々の自然風景、動植物、人物、地域文化・芸能、静物などさまざま。油彩や水彩、パステル、クレヨン、色鉛筆など多様な技法を用いた力作が並んだ。
  
多様な技法で描かれた作品を興味深げに鑑賞する来場者

多様な技法で描かれた作品を興味深げに鑑賞する来場者

  
流木を使ったオブジェも来場者の目を楽しませた

流木を使ったオブジェも来場者の目を楽しませた

  
 隣町の大槌町から参加する上野宏明さん(72)は、1年かけて仕上げた油彩画「秀麗早池峰山」など7点を出品した。誘いを受け加入して7年目。もともとの趣味だった写真とは違った視点、構図を求められる絵の奥深さに「はまった」という。撮影したものをキャンバスに残そうと「必死にもがきながら描き、指導を受けて雰囲気が出できた感じ」と控えめながら成長の手応えもある。これからは好きな山登りや散歩の途中で心揺さぶられる風景をその場でスケッチするのが目標。「スケッチブックが相棒になったら最高。絵に込めた思いを自由に感じ、いいなと思ってもらえたらうれしい」と目を細めた。
  
心を動かされた雪景色を表現した「秀麗早池峰山」を見つめる上野宏明さん

心を動かされた雪景色を表現した「秀麗早池峰山」を見つめる上野宏明さん

  
 40代から90代までの会員らは個々に創作に励んでいるほか、月2回、定内町3丁目のひまわり集会所で勉強会を開いている。高齢の会員が多いが、小原会長の口癖「歳は奪い取るもの!」のもと、会員らは明るく元気に活動。和気あいあいと笑い声の絶えないグループの特徴は「互いの良いところを見つけて褒め合う関係性」と声をそろえる。「のせられているという感じもあるけど…。また描こうという気持ちになるよね」と笑顔も重ねる。
  
仲間と共に創作活動を楽しむ彩美会の会員ら

仲間と共に創作活動を楽しむ彩美会の会員ら

  
 事務局の千葉幸子さん(71)は「佐々木先生は形を押し付けず、個性に合わせて指導してくれるので、絵を描いている時間が楽しい。展示された作品には、その人ならではのワールドがあるでしょう」と、うれしそうに会場を見回した。集まりへの参加は都合のいい時だけ―。「ある時は真剣に絵を描き、ある時間はおしゃべりを楽しむ会」に興味を持ち、仲間が増えることを期待していた。
 
 

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将棋の世代間交流大会 釜石で4年ぶり開催 プロ棋士・小山怜央四段誕生で地元愛好熱高まる

2019年以来の開催となった「釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会」

2019年以来の開催となった「釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会」

 
 日本将棋連盟釜石支部(土橋吉孝支部長)主催の釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会は4月30日、上中島町の中妻公民館で開かれた。新型コロナウイルス禍による休止を経て4年ぶり5回目の開催。同市は、この4月に本県初のプロ棋士となった小山怜央四段(29)の出身地。朗報で地元が盛り上がる中、再開された大会に県内外から約40人の愛好者が集い、団体戦で市長杯の栄冠を目指した。
 
 大会は3人1チームの団体戦。スイス式トーナメント戦4局を行い、勝ち点などで順位を競った。対局では段や級の棋力差に応じて駒落ちハンディ(最高6枚落ち)を採用。下手(棋力が下の者)の希望により平手(ハンディ無し)も可とした。対局時計を使用し、各20分の持ち時間で行われた。
 
 今大会には県内の支部や愛好会、学校の同級生などで組んだ12チームが参加。小学4年生から85歳まで、棋力もさまざまな愛好者が真剣勝負を繰り広げた。勝負が決まると互いの健闘をたたえ合い、他メンバーの対局の行方を見守った。対局の合間には地域や年代を超えて言葉を交わし、親睦も深めた。
 
県内各地から12チームが参加。次の手を考え、頭をフル回転

県内各地から12チームが参加。次の手を考え、頭をフル回転

 
小学生も参戦。見事な集中力で大人たちとの対局に挑む

小学生も参戦。見事な集中力で大人たちとの対局に挑む

 
 市内小川町の佐々木満さん(74)は小学5年の孫とチームを組み初参加。第1局では特別参加の野田武則市長との対局も楽しんだ。3年ほど前に佐々木さんが将棋を教え、教室にも通うようになったという孫。「どんどん腕を上げ、今では私が負けるほど。かなりのめり込んでいる」とその成長ぶりに驚く。「将棋はものの考え方の勉強になる。1つだけでなく複数の方法を考えられる力がつくと、挫折しても他の道を考えながら前に進んでいけるようになる」と、柔軟な思考への効果も期待する。
 
 釜石中の3年生は同じクラスの将棋仲間でチームを結成。大会初参加の大下桜雅さんは「いろいろな年代、レベルの人との対戦は普段無いのでいい経験。駒が少ない状態でどう戦えばいいのかも相手から学べた。また出てみたい」と次回大会へ意欲。小学生以来3回目の参加となった野嶋晏慈さんは「駒落ちの対策とかを考えてその成果を出せた。狙った作戦が決まるとうれしい」。午前の2局はいずれも勝利し「全勝したい」と意気込みを語っていたが、その言葉通り4戦全勝し、個人の全勝賞を獲得した。
 
釜石中チームは同級生3人で参加。真剣な表情で盤上を見つめる

釜石中チームは同級生3人で参加。真剣な表情で盤上を見つめる

 
「次はどう出る?」仲間の勝敗の行方にも目が釘づけに…

「次はどう出る?」仲間の勝敗の行方にも目が釘づけに…

 
 2016年に始まった同大会は駒落ちハンディを取り入れた団体戦という独自スタイルで、幅広い愛好者が勝負の面白さを感じ、多くの人と交流できるようにしている。第1回大会には、今春からプロの道を歩み始めた小山四段が弟真央さん、母聖子さんとチームを組み参加している。全日本アマチュア名人戦全国大会で県勢初の優勝を果たした後で、プロ棋士への夢も語っていた。
 
 土橋支部長は大会復活に、「4年ぶりに会う人たちの元気な顔が見られてほっとした。小山新四段をきっかけに、またみんなで将棋を楽しんでいこうという雰囲気が感じられてうれしい。釜石の将棋文化をさらに盛り上げたい」と話す。野田市長も参加者の熱心な姿を肌で感じ、「子どもたちも頑張っていた。みんな目標を持って取り組んでいる。小山怜央さんのこともあり、将棋への興味、関心が高まっていると思うので今後が楽しみ」と期待した。
 
市長杯のトロフィーはどのチームに? 静かなる熱戦が続く会場

市長杯のトロフィーはどのチームに? 静かなる熱戦が続く会場

 
【団体戦結果】
1位/遠野支部(新沼光幸、中村道典、萩野良三) 2位/山田将棋愛好会(黒澤由次、山内秀一、白土輝男) 3位/久慈支部(笹原賢二、星川勝久、中川原達哉) 
 
【個人全勝賞】
野嶋晏慈(釜石中学校)、川畑裕也(朋哉とその仲間たち)、相澤誠(チーム稜平)、坂下晴規(チームうみねこ)、中村道典(遠野支部)

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デザインに魅せられ 貫く“イズム” 小田島凌一展 83歳、現役看板職人【釜石】

釜石市民ホールで作品展を開く小田島凌一さん=只越町のアトリエで

釜石市民ホールで作品展を開く小田島凌一さん=只越町のアトリエで

  
 あくまで手描き、手作業で―。デザイン一本で美術活動を貫き通す釜石市のグラフィックデザイナー小田島凌一さん(83)の個展が、大町の市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。ポスターデザインに魅せられて60年余り、今なお看板業を営む現役職人。東日本大震災での被災、健康面で不安を抱える出来事があっても生み出し続けた、「小田島イズム」がにじむ作品約40点を展示する。同ホール自主事業「アートアットテット」の一環。7日まで。
  
 ソンタクロース、福紙…言葉遊びを楽しむタイトルがついた作品、地球温暖化や海洋汚染などをテーマに問題提起するデザイン画が並ぶ。米露中、北朝鮮の緊張を表現した「取扱注意」、パネル全体を真っ黒に塗りつぶし、その中に壊れゆく子どもの顔を描き「戦争やめろ!」と訴える意欲作も。「ポスターで、すぐには平和の糸口は見いだせないかもしれない。しかし、戦争を終結させる手段の一つではないか」。そんな言葉が添えられている。小田島イズム、その1。「余計なものは入れない。説明しない。パッと見て分かるよう、視覚的に追及する。ポスターデザインのワザ」
  
TETTOで開催中の小田島凌一展。40点ほどが並ぶ 

TETTOで開催中の小田島凌一展。40点ほどが並ぶ

  
地球温暖化対策の必要性や反戦…簡潔なイラストと文言で訴える

地球温暖化対策の必要性や反戦…簡潔なイラストと文言で訴える

  
「上品ではない。泥くさい作品だから」と小田島さん。社会的な話題を取り上げ問題提起する

「上品ではない。泥くさい作品だから」と小田島さん。社会的な話題を取り上げ問題提起する

   
 びっしりと蛍光色のシールが貼られた「丸・三角・四角」と題した作品。タイトル通り、3つの形を重ね合わせ、ひたすら貼りまくった。使ったシールは約3200枚。デジタル時代の今、パソコン上でデザイン、画像処理してプリントすれば数分で仕上がるが、小田島さんは手作業にこだわる。「創作には面白い仕掛けがなきゃ。デジタルにはユーモアがないし、創造ができないでしょ」。いたずらっぽく笑いながら、小田島イズムをポロリ。楽しむ視点は他にもあり、展示品はほぼ全てが手描きで仕上げられ、「色むらがあったり、筆の毛が混じっていたり。そんなところを見るのが面白い」
   
3000枚超のシールを貼って作り上げた「丸・三角・四角」=只越町のアトリエで

3000枚超のシールを貼って作り上げた「丸・三角・四角」=只越町のアトリエで

   
 ゴーイング・マイウエー。自分なりの道を突き進んできた小田島さんは幼いころから絵を描くことが好きだった。通信教育で挿絵やレタリングデザインを学び、22歳になると、浜町にあった看板店で修業を開始。同じ頃、独自のスタイルで創作活動をしていた4人で美術集団サムディ45も立ち上げた。33歳で独立、只越町に「日美画房」の看板を掲げた。仕事の傍ら、創作活動にも励み、グループ展や美術展に出品し、入選・入賞経験も多数。そして2011年、東日本大震災の津波で店と近くにあった自宅が全壊、40数点の作品も失った。5カ月にわたる避難所生活で再建の道を探っていると、ぼちぼち仕事が入るように。「負けられん」
   
津波の難を逃れたデザイン画「泰然自若」。右上写真のように爪痕は残したまま

津波の難を逃れたデザイン画「泰然自若」。右上写真のように爪痕は残したまま

  
「泰然自若」をモチーフにした作品の一つ。こちらは、がれきの写真をコラージュ

「泰然自若」をモチーフにした作品の一つ。こちらは、がれきの写真をコラージュ

   
 この個展では、流失を免れ手元に戻った、たった1枚のデザイン画「泰然自若」も紹介する。20年ほど前の二科展入選作。これをもとに考えた新しい作品数点も掲示し、「震災は必ずくる」「明日かも!あなたは『地震』に『自信』が持てますか」と問いかける。目の当たりにした巨大津波への恐怖と復興を願う熱い思いを看板形式で表現した「海は黒かった。」もインパクト大。第35回東北6県公共キャンペーン作品展(12年)で最高位の国土交通大臣賞に輝いた作品だ。がれきを処理する重機の爪を復興の象徴としてシンプルにデザイン。「爪が挟んだ赤丸がポイント」と教えてくれた小田島さんは願う。「復興の魂を込めた。感じてもらえたら、いいなぁ」
  
重機の爪をデザインした、シンプルながら迫力ある看板「海は黒かった。」

重機の爪をデザインした、シンプルながら迫力ある看板「海は黒かった。」

  
 「ロールモデル(お手本になる人物)だ」。展示を見た同年代の人、創作活動をしている若年者らがつぶやいている。「只越から離れたくない」とその地で看板業を再開し、近くにある災害公営住宅に家族と暮らす小田島さん。数年前から体調を崩したり思い通りにいかないことも多くなったが、創作意欲は衰えていない。自身初となる個展は「周囲の協力のおかげ」と感謝する。そして、「あと何年描けるか分からないが、シンプル イズ ビューティフルライフ(単純は美しい)をモットーに作品創りをしていきたい」とも。小田島イズム、健在(けんざい)。
  
「日美画房」の看板を掲げるアトリエへの通勤は自転車で

「日美画房」の看板を掲げるアトリエへの通勤は自転車で

  
被災の痕を残すアトリエも小田島イズムそのもの

被災の痕を残すアトリエも小田島イズムそのもの

  
◇記者のちょい足しキーワード◇
段落の先頭文字をつなげてみて。続けて段落の最後の文字も結んでみると「小田島イズム」が見えてくる⁈

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笑顔と刻む 新たな歴史 釜石・小佐野保育園 ピカピカ園舎に子どもらの歌声響く

真新しい園舎に大喜びの小佐野保育園の園児ら。元気な歓声が響いた

真新しい園舎に大喜びの小佐野保育園の園児ら。元気な歓声が響いた

  
 釜石市小佐野町の小佐野保育園(小笠原真理子園長、園児60人)が新築され、22日に落成式が行われた。園児や保護者、地域住民、園関係者ら約100人が参加。ピカピカの学び舎(や)に完成を喜ぶ子どもたちの元気な歌声が響いた。1967年に建てられて以来、大規模な建て替えは56年ぶり。今年2月上旬に建築工事は完了しており、同月中旬から既に新園舎で保育を始めている。
 
 同園の歴史は戦前までさかのぼる。1938年に私設の保育所として開設された後、移転や保育園への移行、運営主体の変更などを繰り返した。45年、米英軍による艦砲射撃の影響で事業を一時中止したことも。66年に私立から社会福祉法人運営の小佐野保育園となった。67年に現在の場所に園舎を整備。81年設立の社会福祉法人釜石愛育会が運営を引き継ぎ、増改築を重ねてきた。
  
 旧施設は老朽化が進行。加えて、2011年の東日本大震災の地震は乗り切ったが、今後の災害に耐え得るか不安もあったことから、建て替えを決めた。昨年7月下旬から新園舎の建築工事に着手。今年2月10日にしゅん工、引き渡しを受けた。工期中は野田町の野田集会所を仮園舎として利用した。
  
完成した小佐野保育園の新園舎

完成した小佐野保育園の新園舎

  
 新園舎は木造一部2階建てで、延べ床面積648平方メートル。1階には保育室(6室)やホール、事務室、医務室、調理室などを設け、2階には会議・応接室を配置した。園児の安心安全への配慮、職員の快適な執務環境の構築を目指して設計され、自然採光を取り入れられるよう保育室などの配置を工夫。季節の移ろいを体感してもらおうと、ひさしを設けた半屋内の活動空間をつくり、園庭の遊具なども再整備した。
  
 式で、釜石愛育会の小野寺哲理事長は「多くの力添えで、待望の施設が完成した」とあいさつ。建設業者ら協力者6人に感謝状を贈った。同会の山﨑ミキヨ理事も「どこからも光が入り、明るい色調が子どもたちを温かく優しく包み込み、ぬくもりある、ほっと安心できる施設に生まれ変わった。子どもたちは元気に伸び伸びと遊び、楽しいそうな声が園内に響き渡っている」と謝辞を述べた。
 
喜びを込めて元気いっぱいに歌う子どもたち

喜びを込めて元気いっぱいに歌う子どもたち

 
園児らを優しく見守る小野寺理事長(前列左)や保護者ら

園児らを優しく見守る小野寺理事長(前列左)や保護者ら

 
 年中・年長児と今春の卒園児ら約30人は手話を交えながら「にじ」を元気いっぱいに歌って、園生活の楽しさを表現。保護者が参加する縁で尾崎青友会が駆け付けて虎舞を披露し、お祝いムードに花を添えた。
 
 出番を終えて満足げな佐野史佳ちゃん(5)に新しい園舎の印象を聞くと、「きれい。うれしい」と答えが返ってきた。普段は友達とままごとを楽しんでいて、これからやってみたいことは「なわとび」とのこと。帰りがけには園庭にある遊具に駆け出し、友達と遊びながら歓声を響かせた。
 
木のぬくもりを感じる明るい保育室

木のぬくもりを感じる明るい保育室

 
園庭に整備された遊具は子どもたちのお気に入り

園庭に整備された遊具は子どもたちのお気に入り

 
 園児の頑張りに目を潤ませた小笠原園長。新園舎で始まる歴史を、子どもたちの笑い声とともに刻んでいくことを思い描く。小野寺理事長も「園児ファースト。愛の精神を大切にした保育で、子どもたちの感性や自由性を育んでいく」と力を込めた。