感動共有!笑顔つなぐ読み聞かせ 釜石・甲子小PTA「お話しどんどこ」 活動20年目に


2023/12/06
釜石新聞NewS #地域 #文化・教育

「お話しどんどこ」が甲子小で続ける読み聞かせ活動

「お話しどんどこ」が甲子小で続ける読み聞かせ活動

 
 釜石市立甲子(かっし)小の読み聞かせボランティア「お話しどんどこ」が、活動を始めて20年目に入った。始まりは保護者によるPTAサークル活動。今では祖母世代や近隣住民などが加わった地域ぐるみの活動に深化する。授業の合間の休み時間を活用した不定期の取り組みは、月1回の朝活動に変化。働き世代の保護者らにとっては忙しい時間だが、米澤美紀代表(47)は「本を通して子どもたちと対話しながら一緒に楽しんでいる。いとおしい反応や笑顔、パワーをもらう、すてきな時間。読み手が増え、ずーっと続く活動に」とほほ笑む。
 
 「どこにいるかな? にげた金魚、みんなも一緒に探してくれる?」。11月30日朝、甲子町の同校1年2組(23人)の教室で、米澤代表が児童に優しく語りかける。「いるー、そこ、そこー!」「よかったー」。話の世界に引き込まれた子どもたちが指さしたり全身でアピールする。こんなやりとりが繰り返され、約15分があっという間に過ぎてゆく。
 
 どんどこは2004(平成16)年に学校の呼びかけで、当時の保護者10人ほどで立ち上げた。当初は2、3時間目の授業の間の休み時間(中休み)を使い、図書室で低学年を対象にした読み聞かせを不定期に実施。続ける中で、月に1回、全学年向け、各教室での活動と形が変わった。現在の活動日、第4木曜日は「朝どんどこ」として“甲子っこ”にすっかり定着している。
 
子どもたちを物語の世界に引き込む千田雅恵さん

子どもたちを物語の世界に引き込む千田雅恵さん

 
 登録メンバーは11人で、米澤代表のように在校生の保護者もいれば、祖母だったり、卒業児の家族、元教員、地域住民とさまざまだ。この日活動したメンバーは7人。2年2組(20人)の教室では、立ち上げ時からのメンバー千田雅恵さん(61)が季節に合わせて選んだウクライナの民話「てぶくろ」や、100年前に生み出された物語ながら新鮮味や面白さが色あせない「子どものすきな神さま」(新美南吉作)を穏やかな語り口で聞かせた。
 
 朝活後、図書室で反省会。持ち込んだ本を見せ合い、選択に込めた思いを共有したり、記録を残したりした。さらに、この日は20年目の活動を祝うセレモニーを企画。中休みに6年生(43人)を迎えて、図書の寄贈(10冊)やパネルシアターの上演でふれあった。
 
記念セレモニーで学校に図書を贈呈。児童はお礼の手紙をお返し

記念セレモニーで学校に図書を贈呈。児童はお礼の手紙をお返し

 
クイズ形式で展開するパネルシアターは大盛り上がり

クイズ形式で展開するパネルシアターは大盛り上がり

 
 千田さんが20年の活動を振り返り。「楽しいお話が次々出てくるようなイメージ」を込めた団体名の由来、「子どもたちのために少しでもできることを」とたくさんの大人が思いをつないできたこと、学校の心強い後押しにも触れた。「気づいたら20年。本の世界をみんなでドキドキしたり感動したりできる読み聞かせは楽しい。今度はみんなが読み手になって、どんどこを続けてほしいな」と期待した。
 
20年の活動を振り返る千田さん(左)

20年の活動を振り返る千田さん(左)

 
贈った図書を紹介する米澤美紀代表(左)

贈った図書を紹介する米澤美紀代表(左)

 
 図書委員の髙橋龍之助君は「いつもおもしろく、本との出合いの機会になっている」と感謝を伝えつつ、「ヨシタケシンスケさんの本が好きなので、今度読んでほしい」とリクエスト。母良田(ほろた)凪君は物語の世界を情感たっぷりに表現する読み手の姿が印象に残っていて、「自分もやってみたい」と目標の芽を伸ばしている。
 
 同校には現在、児童244人が在籍する。メンバーは季節や学年を考慮しながら取り上げる本を選んでいるが、共通するのは「感動」という視点。まずは自分たちが心揺さぶられ、そうした思いをつづられた文字にのせ届けている。艦砲射撃を題材にした作品を紹介し、まちの歴史も伝えたり。朝どんどこを見守る菊池一章校長は「読み手の皆さんが楽しんでいるのが神髄。聞き手との一体感、空気感がすごくいい」と目を細める。
 
あちこちから小さな手が伸びる「朝どんどこ」

あちこちから小さな手が伸びる「朝どんどこ」

 
「次に読む本は?」。反省会は選書のヒントを得る場に

「次に読む本は?」。反省会は選書のヒントを得る場に

 
読んだ本と子どもたちの反応を記録に残す

読んだ本と子どもたちの反応を記録に残す

 
 米澤代表は「大きくなると読み聞かせはしなくなるが、親以外から伝えられることもある。忙しい朝だけど、子どもたちとの交流はひと息できる楽しい時間でもある」と保護者の立場からも意義を実感。どんどこのサークル活動のほか、PTAの図書ボランティア部隊として週2回、図書室の読書環境づくりにも携わり、「甲子小にたくさんの笑顔の花を咲かせるよう、元気に活動していきたい」と意欲を見せた。
 
活動継続へ気持ちを新たにする「お話しどんどこ」メンバー

活動継続へ気持ちを新たにする「お話しどんどこ」メンバー

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