純粋さがひょっこり!? 釜石に移住したイラストレーター西川真央さん 作品展「自由に楽しんで」


2024/02/07
釜石新聞NewS #文化・教育

西川真央さんの作品を思い思いに楽しむ来場者

西川真央さんの作品を思い思いに楽しむ来場者

 
 釜石市のイラストレーター西川真央さん(28)の個展「MIRAI」は11日まで、大町の釜石市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。水彩やアクリル絵の具で描かれた約20点の作品は空想の世界だったり、目の前に広がる自然風景だったりとモチーフは違っても、柔らかな風合いは共通。「箱馬」を使った目線の低い展示手法を取り入れていて、来場者はその世界観を座ってのんびり楽しんでいる。
 
 京都府舞鶴市出身。東京で社会人生活をスタートさせて少し経った頃、新型コロナウイルスの感染拡大で自宅待機に。1カ月ほど外出を制限され、始めたのが画を描くことだった。「紙とペンがあれば、できるから」。その頃の題材は「頭の中の空想」で、「内側に矢印が向いた作品」だったという。
 
西川真央さんと作品「MIRAI」(右)

西川真央さんと作品「MIRAI」(右)

 
 今回の個展のタイトルとなった「MIRAI」もその頃の作品。画面いっぱいに描かれた子どもの顔が印象的だが、中でも星のようなものが散りばめられた大きな瞳に引き込まれる。「すべての人の心の中には無垢(むく)な部分があって、そこには小さな子どもが住んでいると思う」と西川さん。希望や喜びといった感情、前向きな感じを「キラキラの瞳」で表現した。
 
 釜石に移り住んだのは2021年10月。「人込み苦手だし、何となく面白そう」と、元同僚の誘いに乗って観光地域づくり会社で働き始めた。その傍ら制作活動も続け、Instagram(インスタグラム)で作品を紹介したり、イベントなどに参加して発信したり。都内のカフェなどで作品を飾ったこともあるが、個展は今回が初めてとなる。
 
釜石に移住後に描いた作品。海や森といった自然風景が多い

釜石に移住後に描いた作品。海や森といった自然風景が多い

 
 移住後の作品は8点並べた。釜石大観音から見る海や夕暮れの漁港、五葉山登山や八幡平の旅の思い出など。作品タイトルがないのが特徴で、「固定概念なしに楽しんでほしいから」だ。例えば、青や緑色の四角いもので埋め尽くした作品で表現していたのは「盛岡の空気」。だが、見ていた人から聞こえてきたのは「ガラスかな、ステンドグラス的な」「水面(みなも)だと思った」との声だったり、「迷路だ」とルートを探し始める子もいた。
 
 そんな自由な見方を楽しめる手伝いをしているのが箱馬。撮影や舞台などの現場で足場の高さを調整するためのもので、ホールの備品を有効活用した。いす代わりにして、ゆったりと作品たちに向き合える。画のそばには小さな粘土細工の置物たちもたたずんでいて、穏やかな雰囲気。旅先で拾った石には「古傷がじんわりとにじむ日」など名前が付けられていて、西川さんが持つ独特な心象風景に触れられる空間になっている。
 
箱馬をいす代わりにしてゆったり鑑賞を楽しむ親子

箱馬をいす代わりにしてゆったり鑑賞を楽しむ親子

 
粘土細工の置物や拾った石たちも作品の一部

粘土細工の置物や拾った石たちも作品の一部

 
 期間中の2日間は水彩画の似顔絵を描くワークショップを開催。対面で会話を楽しみながら、その人がまとっている雰囲気やカラー、特徴を捉えて似顔絵を仕上げた。ワクワクした表情で待ったモデルたちは、受け取るとみんな笑顔に。唐丹町の袰岩浩子さん(60)と大町の柳谷直美さん(55)は「かわいい…自分で言うのも何だけど。ほんわかとリラックスした内面が出でいる感じ」などと、仲の良さも表した作品に感激した。
 
約1時間座り続け完成した似顔絵。「似てる?」

約1時間座り続け完成した似顔絵。「似てる?」

 
すてきな似顔絵が完成し笑顔を重ねる夫婦

すてきな似顔絵が完成し笑顔を重ねる夫婦

 
似顔絵も作品の一部に。TETTOスタッフもにこにこ顔

似顔絵も作品の一部に。TETTOスタッフもにこにこ顔

 
 本来は怠け者で、「描きたい時にやるタイプ」と自己分析する西川さん。のんびりペースで活動を続けていくことにしているが、挑戦したいこともある。テーブルの片隅にさりげなく置かれた冊子。自己流で絵本作りに取り組んでいて、「ブラッシュアップしたい」と瞳を光らせる。
 
移住前の作品。まとめて絵本に仕上げて並べている

移住前の作品。まとめて絵本に仕上げて並べている

 
 心の住む子どもたちがひょっこりと顔を出して、楽しくおしゃべりできるように空間に―。西川さんは「友達のお家に遊びに行くような感覚で見にきて」と来場を呼びかける。
 
 同ホール自主事業「アートアットテット」の一環。午前10時から午後6時(最終日は同4時)まで。入場無料。問い合わせはTETTO(0193・22・2266)へ。

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